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1953-07-25 第16回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十五日(土曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 田中 稔男君 理事 戸叶 里子君    理事 池田正之輔君       麻生太賀吉君    佐々木盛雄君       田嶋 好文君    野田 卯一君       牧野 寛索君    増田甲子七君       三和 精一君    須磨彌吉郎君       帆足  計君    穗積 七郎君       和田 博雄君    淺沼稻次郎君       中村 高一君    有田 八郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務省参事官         (大臣官房審議         室付)     大野 勝巳君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月二十二日  委員佐々木盛雄辞任につき、その補欠として  池田勇人君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員岡良一辞任につき、その補欠として戸叶  里子君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員大橋忠一辞任につき、その補欠として有  田八郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員金光庸夫君、中山マサ君、福井勇君及び淺  沼稻次郎辞任につき、その補欠として牧野寛  索君、三和精一君、田嶋好文君及び岡良一君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員池田勇人辞任につき、その補欠として佐  々木盛雄君が議長指名委員に選任された。 同日  理事熊谷憲一君の補欠として富田健治君が理事  に当選した。 同日  戸叶里子君が理事補欠当選した。 七月二十三日  日華平和条約附属議定書第二項の右効期間延長に関する議定書締結について承認を求める件(条約第二三号) 同月二十二日  妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外十二件(小峯柳多君紹介)(第五〇〇一号)  同外八件(武藤運十郎紹介)(第五〇〇二号)  同(福田赳夫紹介)(第五一一九号)  同(小峯柳多君紹介)(第五一四九号)  同(福田赳夫紹介)(第五一五〇号)  ソ連地区抑留胞引揚促進に関する請願大矢省三紹介)(第五〇〇三号)  海外抑留胞引揚促進に関する請願櫻内義雄紹介)(第五〇〇四号)  同外三件(丹羽喬四郎紹介)(第五〇〇五号)  駐留軍関根演習地拡大反対に関する請願淡谷悠藏紹介)(第五一一八号)  九十九里海岸豊海地区駐留軍射撃場による被害対策確立に関する請願千葉三郎紹介)(第五一四八号) 同月二十三日  駐留軍関係犯罪に関する請願前田榮之助君外二名紹介)(第五二七五号)  妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外九件(小峯柳多君紹介)(第五二七六号) を本委員会に付託された。 同月二十四日  戦犯外地服役者内地送還等に関する陳情書(第一一八九号)  M・S・A受入れ反対に関する陳情書(第一二〇九号)  妙義地区米軍演習地設置反対陳情書(第一二一〇号)  東富士演習場地域住民生存権保障等に関する陳情書(第一二三八号)  同(第一二三九号)  海外抑留胞引揚促進積極的推進に関する陳情書外一件(第一二九四号)  妙義地区米軍演習地設置反対陳情書(第一二九六号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事互選  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件(条約第九号)  日本国フィリピン共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定締結について承認を求めるの件(条約第一六号)  国際民間航空条約への加入について承認を求めるの件(条約第二〇号)  国際航空業務通過協定受諾について承認を求めるの件(条約第二一号)  国際電気通信条約批准について承認を求めるの件(条約第二二号)  日華平和条約附属議定書第二項の有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件(条約第二三号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選任の件についてお諮りいたします。理事熊谷憲一君が去る二十日委員辞任せられ、また理事戸叶里子君が去る二十二日委員辞任せられましたため、理事が二名欠員となつております。この際理事補欠選挙を行いたいと存じますが、これは慣例によりまして委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上塚司

    上塚委員長 御異議ございませんでしたら、富田健治君、戸叶里子君を理事指名いたします。  なお理事会決議の件について御報告申し上げます。二十七日の駐留軍関係参考人意見陳述終了後、時間の余裕がありましたならば、日米通商条約質疑を続行すること、二十八日の日米通商条約関係参考人陳述は二十九日に予定せるものと一括して聴取し、二十九日、三十日両日の参考人招致は、これをとりやめることにいたしました。なお二十九日午前中になるべく通商条約の採決を行いたい予定でございますから、さよう御了承願いたいのであります。
  4. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 ちよつと議事進行で……。この前の外務委員会で私は岡崎外務大臣出席要求いたしまして、政府の従来の方針と、この前の外務委員会の席上における岡崎君の答弁との間には非常な食い違いがありますから、それを伺いたいと思つて要求したのであります。ところがその日は出席されないで、きようはそれが取上げられることになつたのでありますが、きのうの東京新聞によりますと、緒方副総理記者団との会見でこういうことを言つておるわけであります。「たとい日本が原爆やジエツト機を保持しても、これを国際紛争解決の手段として行使しない限り戦力ではない、またその行使は自衛のためであるから、保安隊などの海外派遣は認められない、しかし、陸海軍など軍と名のつくものは憲法上保持できない」こういうようなことを言つておるのでありますが、今、日本の政治において一番の盲点はどこにあるかといえば、自衛力に関する考え方の相違というものは、政府自体の内部においてもかくのごとく不統一を表わしておるのでありまして、これは私は統一ある総理意見を伺いたいと思うのであります。従いましてこの会期中に、吉田総理大臣出席ができるように、委員長はとりはからいを願いたいと思います。
  5. 上塚司

    上塚委員長 淺沼君の御要求については、ただちにそのとりはからいをいたすつもりであります。総理大臣はただいま事務当局より承りますと、今日は出席ができないということの申出があつたそうです。外務大臣に対しましては、これから参議院予算委員会交渉いたしまして、ぜひこちらへ出席のできるようにとりはからうつもりであります。
  6. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について。今議題なつております日比沈船引揚協定の問題につきましては、この前田中委員からお願いをしましたが、実施細目を聞かないと、これについてわれわれは態度をきめるわけに行かないので、秘密委員会でけつこうでありますから、さようおとりはからい願うようにお願いしたのですが、それはどうなつておりましようか。  それからもう一つ通商航海条約を調べれば調べるほど、日本経済の将来に重大な影響を及ぼす条文が多いので、これはこの前の理事会で、一人持時間一時間というような形式的なことでおきめになつたようでありますが、この前戸叶委員その他からも資料提出をお願いいたしまして、十分慎重審議をして態度をきめたいということは、これは全員の異存のないところであると思いますので、従つてもう一度今日の委員会あと理事会をお開きいただきまして、議事進行についてこの前おきめになつたような形式的なやり方でなしに、資料を十分整えて、政府の忌憚のない説明も聞きまして、慎重審議のできるようなおとりはからいが願いたいと思うのであります。  第三点にお願いしたいと思いますのは、もうすでにMSA問題につきまして、三回にわたつて会合が行われ、新聞の伝うるところによりますと、両者間におきまして案文交換すら行われておるわけでありまして、もうすでに起草委員の手に移つておるような報道が行われておるにかかわらず、その案文内容あるいは経過につきましては、当委員会において何らまだ報告を受けておりません。これは外務委員会の権威のためにも、問題の重要性から見ましても、速急にこの資料提出と、経過報告をしていただくように心とりはからいが願いたい、その三点であります。
  7. 上塚司

    上塚委員長 通商航海条約に対する質問は、この前理事会において決定いたしました通りに、一人の持時間一時間ということにして、今日午後からさらに続行するつもりでございます。  なおMSAの問題につきましては、今までこの委員会が開かれなかつたものですから、外務省からの報告がなかつたのでありますが、今日開かれたにつきまして、その後の経過を後ほど国際情勢質疑をやるときに報告をしてもらうことにいたしたいと思います。
  8. 和田博雄

    和田委員 議事進行について一言発言させていただきたいのですが、ただいま淺沼君からの要求のありました、総理大臣を本委員会出席していただいて、そしてMSAの問題についていろいろ質疑をするという件は、これは非常に重大な事件でありますので、ぜひこの会期中に、淺沼君会期中ということを特に言われたのであつて、きようという限定はなかつたのでありますけれども、これは来週にでも総理としてはぜひ本委員会出席して、その後の経過あるいはわれわれが疑問に思つている点について、質疑応答ができるように、これは委員長にどうしてもひとつとりはからつてもらいたいと思うのであります。と申しますのは、やはり今一番重要なのはMSAの問題で、この点については、あらゆる点から国民の間に疑惑がないように、またわれわれの将来を卜する大きな事柄でもありますので、委員としても何らそこに納得の行かないままで、調印がされたりすることがないように、その内容をあらかじめ知つておきたいと思うのであります。従つてこれはやはり総理大臣が御出席なつて、十分われ上れの質疑に答える義務があると思うのでありまして、これは委員長からぜひ強く御要求願いたいと思うのであります。
  9. 上塚司

    上塚委員長 ただいま和田君からの御要求につきましては、極力努力するつもりであります。
  10. 穗積七郎

    穗積委員 沈船引揚実施細目をお伺いすることはどうですか。
  11. 上塚司

    上塚委員長 これは秘密会議をやるということについては、さらにひとつ理事会を開いて、相談の結果お答えいたしたいと思います。
  12. 穗積七郎

    穗積委員 どうぞよろしく御相談くださつて、そしてその希望が実現できるようにお願いいたします。  それからさつきの通商航海条約につきましては、持時間一時間というような形式的なとらわれなしに、われわれは何も作為的に審議を延ばそうというようなつまらない考えは持つておりません、重大な法案であるから慎重に審議をしようというのでありますから、その点もあわせてもう一ぺん理事会で御相談し直していただきたい。お願いいたします。     —————————————
  13. 上塚司

    上塚委員長 次に国際民間航空条約への加入について承認を求めるの件、国際航空業務通過協定受諾について承認を求めるの件、国際電気通信条約批准について承認を求めるの件、日華平和条約附属議定書第二項の有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件を一括議題とし、政府側より提案理由説明を求めます。
  14. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 議事進行について。私はけさほどの理事会申合せで、各党のそれぞれの持時間をきめて、国際情勢について質問をするということをきめましたのは、あらゆる議事に先行してこれをやるということの申合せである、こういうぐあいに了承しておつたわけであります。それから先ほど外務大臣参議院予算委員会都合でというようなことがあつて、この説明を聞いているうちにあるいは外務大臣出席しないかもしれぬというような予感を私は今するわけであります。従いまして必ず出席されるということが前提でなければならぬと私は思うのでありまして、外務大臣は自由党の代議士会には出席いたしまして、みずから所信の表明をやつておるわけであります。公の機関である外務委員会出席しない、こういうような態度は私どもは納得ができません。従いまして私は申合せがもし説明を聞くだけであるというなら了承いたしますけれども、それ以上は議事を進めないで、私は外務大臣の来るまで休憩をして待つということにしていただきたいと思います。
  15. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣あと三十分くらいで出席する予定でございます。それまでの間に、ただいま私から申しました四案について、政府側提案理由説明を聞きまして、そうしてこれに関する質疑あとに譲りまして、国際情勢に関する質疑を行う予定であります。下田条約局長
  16. 下田武三

    下田政府委員 ただいま議題となりました国際民間航空条約への加入について承認を求めるの件につきまして、提案理由の御説明を申し上げます。  この条約は、第二次大戦中における航空技術発達にかんがみまして、一九四四年十一月一日から同年十二月七日までシカゴで開催されました国際民間航空会議において作成されたものでありまして、一九四七年四月四日に効力を生じ、その当事国は現在六十箇国に上つております。  この条約目的は、安全かつ秩序のある国際民間航空発達と、機会均等主義に基く健全かつ経済的な国際航空業務運営とをはかることにありまして、このためこの条約は、国際民間航空及び国際航空運送一般的原則を定めますほか、国際民間航空機関ICAO)を設立することを規定しております。  わが国がこの条約加入するためには、条約への加入に先だちまして加入承認申請を行い、その申請国際連合総会により承認され、国際民間航空機関総会の五分の四の賛成投票及び今次大戦わが国によつて侵略され、または攻撃された国の同意により承認されることが条件とされております。わが国日本国との平和条約に関する宣言に基きまして昨年八月に加入承認申請を行いましたところ、国連総会及びICAO総会によつてこれが承認され、またすべての被侵略国同意が得られましたので、この条約加入しようとするものであります。  わが国がいよいよ国際民間航空を再開する日の近い今日、この条約加入し、かつ国際民間航空機関加盟国となることによりまして、この種の国際的規律に積極的に参加協力することは、きわめて重要な意義を有するものと存ぜられます。  以上の点を了察せられ、御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。
  17. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま議題になりました国際航空業務通過協定受諾について承認を求めるの件につきまして、提案理由の御説明をいたします。  この協定は、国際民間航空条約とともに、一九四四年十二月七日にシカゴで作成されたものでありまして、一九四五年一月三十日に効力を生じ、その当事国は、現在四十一箇国に上つております。  この協定目的は、国際民間航空条約と相まつて国際民間航空運営を円滑にするため、国際航空における原則一つであるいわゆる空の自由、すなわち他国領域における無着陸横断権及び他国領域での運輸以外の目的での着陸権相互に保障することであります。  わが国は、日本国との平和条約に関して行つた宣言において、国際民間航空条約当事国なつた後なるべくすみやかにこの協定受諾する旨の意思を明らかにしました。  わが国国際民間航空条約への加入承認申請は、先般ICAO総会承認されたので、国会の御承認を得た上近く同条約加入いたしたい所存でありますが、右加入と同時に、この協定受諾することにより、この分野における国際協調に寄与するとともに、わが国国際民間航空の発展に資せんとするものであります。  以上の点を了察せられ、御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。  次に国際電気通信条約批准について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明申し上げます。  この条約は、現行国際電気通信条約を改正するため昨年十月からアルゼンチンのブエノスアイレスで開催された会議において作成されたもので、わが国は、全権を派遣して改正の審議に参加せしめ、諸国の代表とともに昨年十二月二十二日にこの条約に調印いたさせました。  この条約は、現行条約と同様、国際電気通信連合の構成及び組織を定め、また、電気通信に関する一般規定及び無線通信に関する特別規定等を掲げており、現行条約実施の経験にかんがみ、今日の事態に適応した改善が加えられております。  この条約は、明年一月一日から実施されることとなつておりますので、わが国としてもこの条約批准し、諸国との同の国際電気通信業務円滑化をはかり、また、この分野において国際協力の実をあげることは、はなはだ有意義であると認められます。  よつて、この条約批准につき御承認を求める次第であります。右の事情を了承せられ、御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次にただいま議題となりました日華平和条約附属議定書第二項の有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国中華民国との間の通商及び航海に関する事項は、昨年八月日華平和条約効力を生じまして以来、同条約附属議定書第二項の通商及び航海に関するとりきめによつて律せられて参りましたが、このとりきめは元来日華両国の間に通商航海条約締結されるまでの暫定とりきめでありまして、その存続期間も一箇年と定められてあり、来る八月四日をもちまして効力を失うことになつております。一方わが国中華民国との間にはまだ通商航海条約締結される段階に至つておりませんので、このたび現行とりきめの存続期間延長につきまして中華民国政府交渉いたしました結果、現行とりきめをさらに二年間または通商航海条約締結されますまでのいずれか早い方の時期まで延長することに意見が一致いたしました。よつて七月十八日、外務大臣と在本邦中華民国大使との間において、その旨の議定書に署名を了した次第であります。  この議定書締結いたしますれば、日華両国は過去一年間におきまして実施いたしましたと同様、それぞれ相手国国民、産品及び船舶に対して、関税、課金等に関する最恵国待遇を、また海運、航海及び輸入貨物について並びに自然人、法人及びその利益について最恵国待遇を与えることになるわけでありまして、このことは両国間の通商貿易関係の増進に資し、相互利益に合致するゆえんと信じます。  よつて、ここにこの議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。     —————————————
  18. 上塚司

    上塚委員長 次に国際情勢等に関する件について質疑を行うことといたします。他の議案審議都合もありますので、できるだけ時間を節約いたしたいと考えますので、この時間は各位二十分ずつにとめられんことをお願いいたします。並木芳雄君。
  19. 並木芳雄

    並木委員 昨日の交渉MSA五百十一条(a)の条件、一から六までというものは、今度の協定に含まれるようになつたかどうかお伺いいたします。
  20. 下田武三

    下田政府委員 MSA交渉はただいままで三回いたしておりますが、そのほかに起草委員会を二回いたしております。さきに日本側から先に案を提出すべしとの強い御希望並木さん、戸叶さんからも表明されました、私どもなるべくそういたしたいと考えまして案をまつ先提出いたしました。しかし、これは米国援助を与えることでありまして、先方が案を出すのを困るというわけには参りません。そこで、日本の案と米国の案が第一回で双方から出されたわけでございます。そこで、どちらを基礎として審議をするかということを争いましてもいたし方がないので、起草委員会日米双方の案をつきまぜた案をただいまつくりつつある次第でございます。案の内容は、これは国際慣例によりまして、まだきまらないどつちかの案をひろうするということは非常に悪いこととされておりますので、どちらからどういう案が出されておるということは、これは申し上げることを御容赦願いたいと思うのであります。しかしながら、並木さんが御推察になりますように、このMSA法第五百十一条の問題も議題なつておりますことは事実でございます。
  21. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、見通しとして、五百十一条は大体そのまま協定の中へ入るということは言えますか。
  22. 下田武三

    下田政府委員 これは、実は大した問題でない、と申しますと語弊がございますが、アメリカMSA法できまつておる問題でございます。MSA援助を与えるには、まず援助を受ける国と協定を結ばなければならないということと、その協定の中には、次に掲げる六項目のことを規定しなければならないということももうきまつておるわけであります。そこで、それならMSA法できまつておることを一々全部協定の中に書き立てるかどうかという、ごく技術的、形式的な問題のみが残るわけであります。ですから、ある国にありましては、一般的に、MSA法の定める条件でと、一口に十ぱ一からげで規定しておる国もあります。しかし最近の例は、五百十一条の義務を一々列挙しておる国が大多数でございます。
  23. 並木芳雄

    並木委員 外電によりますと、フランス英国チリー等アメリカとの間で結ばれている様式が採用されそうであるということが伝えられておりますが、これらの団ではやはり一々列挙されておりますかどうか。それからこの外電はもちろん正しいと思いますけれども、いかがでしようか。
  24. 下田武三

    下田政府委員 五百十一条の六箇条の規定ができましたのは、一九五一年のMSA法でございます。ですから、それ以前に締結されましたイギリスでありますとか、フランスベルギー等とのMSA協定にはまだなかつたわけであります。そこで、アメリカはどういたしたかと申しますと、一九五一年の新しいMSA法ができましてから、イギリスフランス等交換公文をいたしまして、あらためて前の協定には含まれていなかつた五百十一条の事項交換公文規定したということになつておりますから、結局において、いかなる国も、あの事項を現協定あるいは追加の交換公文で約束しておる、そういう関係に相なつております。
  25. 並木芳雄

    並木委員 いずれにしても、この五百十一条が採用されることは事実のようにただいまの御答弁で承りました。そこで、そのフランス英国チリーとの間の協定という点についての外電はその通りであると言われるのですか。
  26. 下田武三

    下田政府委員 フランスはよく検討しておりますが、チリーその他のものは、テキストはございますが、その点今ただちに申し上げられませんが、あるいはそうではないかと思います。
  27. 並木芳雄

    並木委員 そこで例の五百十一条の三の軍事的義務でございます。軍事的義務については、前に局長は、日米安全保障条約限度内でよいと思われるという御答弁をしておられるのでございます。ところが先般来、日米安全保障条約限度内でなく、それよりも少し進んだもつと広い義務を負うものである、つまり、自衛力の漸増という点で、外国から直接侵略を受けた場合、保安隊などがそれにも対抗して行くようになつたと思うのです。その点について、この軍事的義務というものは国内治安限度でよろしい、また日米安全保障条約限度でよろしいという前の局長答弁は、かえて行かなければならないと思いますが、いかがですか。
  28. 下田武三

    下田政府委員 政府当局が最も重大関心を抱ております点は、並木さん初め皆様が本委員会で御表明になりました問題とまつたく一致いたしております。つまり、日本の政治的経済的安定を害してまで、自衛力を漸増することはいかぬということが第一であります。第二は、日米安保条約で、日本が引受けた義務以上の新たなる義務をこの際負うことはいかぬということであります。これは、本委員会に反映されました皆様の御意見を私どももよく体しております。従いまして、ただいま御指摘になりました第二の問題についても、これは推察されるというようなことでなく、二回の第一は、日米往復書簡におきまして、第二は、MSA交渉会議冒頭におきまして、アリソン大使のメツセージにおいても、日本の国は日米安保条約以上に出るものでないということを明白に申しております。この点は、何ら両国間に疑いのない問題であると私どもは存じております。
  29. 並木芳雄

    並木委員 安保条約限度を出るものではないと言われますけれども、かりにそれに一歩を譲つたといたしましても、今度のMSA協定によつて保安隊が直接侵略に対抗する義務が生じて来ると私どもは思うのですが、それはいかがですか。
  30. 下田武三

    下田政府委員 これは安保条約とは関係なく、日本が自主的に決定いたすべき問題であります。日本が独立国であり、主権国であり、他の独立国、主権国と同ずように、国際法上認められた自衛権を持ちます以上は、いかなる限度内におきまして自衛権を行使するかということは、これは条約によつて他国から、求められるものではなくして、わが国が主権独立国として自主的に決定すべき問題であります。従つて義務の問題ではなくして権利の問題であると存じます。
  31. 並木芳雄

    並木委員 それについては、政府としては漸次保安隊を直接侵略に対抗せしめるように打つて行くということは、木村長官も岡崎外相も答弁しておるのであります。ただいま自主的な権利だと言われたが、権利でけつこうです。大いにそれを強くして行かねばならぬという見地から私は聞いておるのでありますから、権利は大いにけつこうですからやつてもらいたい。もしそれをやらなければ、逐次駐留米軍に日本保安隊がかわつて行くのだということは実現できないと思いますけれども、いかがですか。
  32. 下田武三

    下田政府委員 これは、すでに安保条約の前文ではつきり掲げておりますように、米国日本自衛力漸増を期待しておりまして、そうしてその期待が実現せられた場合、つまり日本日本自身の手で守れるようになつたときには、一日も早く本国に帰りたいというアメリカ側の希望は、もうすでに何度も明白にされております。従いまして、ただいま並木さんのおつしやいました通り自衛力の漸増が実現したあかつきにはアメリカ軍は帰る、従つて、安保条約自体がもう存在を必要としなくなるという事態が来るということ、これは道理の当然であろうと存ずるのであります。
  33. 並木芳雄

    並木委員 そこで私はこの際お尋ねをしたいのですが、保安隊が直接侵略にぶつかるということになれば、これは今までの目的がかわつて参ります。私たちは今まで、保安隊それ自身をすでに軍隊であるというふうに言つて参りましたが、かりに今までの政府態度に一歩も百歩も譲つて保安隊は今まで軍隊ではないとしても、自衛軍ではないとしても、今度は目的がかわるのですから、その目的がかわるところを一つのめどとして、今度こそはこれが自衛軍である、これが軍隊である、憲法にいうところの戦力であるというふうに言つて行かないと、はてしない力を軍隊の名前を使わずにつくり上げてしまうおそれがあると思うのですが、いかがですか。
  34. 下田武三

    下田政府委員 自衛軍とおつしやいますが、新聞にも出ておりますように、軍という言葉は、学生軍と申しましたり、救世軍と申しましたり、きわめて不正確な意味で日本では使われておるようでございます。しかし英語でデイフエンス・アーミーと申しますと、これはやはり戦力になる軍隊だと思います。デイフエンス・フオーセスという場合は、これはポリス・フオーセスという場合もありますので、自衛軍と称するかどうかは、これは厳密な法律問題としては大した差別のない問題だろうと考えます。
  35. 並木芳雄

    並木委員 そう軽々しく扱つてしまうと、憲法の九条の精神は台なしになつてしまうと思うのです。私が今聞いたのは、国内治安の維持を目的としたところから、今度は直接侵略にも対抗し得るという目的にかわのだから、そこで初めて憲法にいう戦力になるのだ。少くともかりに軍という名前をつけなくとも、憲法九条には「陸海空軍その他の戦力」という文字が使つてあります。少くとも「その他の戦力」の中にこれが入らないで、ほかに何が入るかと私は思うのです。いかがですか。
  36. 下田武三

    下田政府委員 これは私ども外務省からお答えすべき問題ではないと思いますが、戦力ということは、政府の考えでは近代戦争を有効適切に遂行する能力ということになつております。日本保安隊は、とうてい近代戦争を有効適切に効果的に遂行する能力はないのでございますから、これは憲法にいう戦力に該当しない。たとえば直接侵略が起りまして、国家の基本的権利たる自衛権に基きまして、保安隊の本来の任務以外の措置に出ましても、その措置に出たがために、軍隊でないものが軍隊になるということはないと思います。
  37. 並木芳雄

    並木委員 そこのところが、やはり今まで通り水かけ論でなお残つているのです。私どもは目的でもつてはつきり線を引けば、一歩も百歩も譲つてもよろしい。しかしなおそれを固執するんだつたら、今までの議論を繰返して、これは戦力でないから、憲法に違反しないのだということで、今度は保安隊というものは直接侵略にもぶつかつて行くということになります。それを私は恐れておるわけです。保安隊が直接侵略にぶつかつて行けば、これは軍隊でもない、警察でもないわけです。それは何ですか。その性格は軍隊でもない、警察でもない。今までは保安隊は、少くとも警察の一種だというふうに政府答弁をして来たけれども、今度は何になりますか。
  38. 下田武三

    下田政府委員 保安隊は、保安庁法第四条によりまして、国内の平和及び治安の維持を任務といたすものであります。ただ国内の平和及び治安の維持を任務とするものが、直接侵略が起つたような場合に、自衛的行動に出るということは、これは憲法も禁じませんし、国際法も禁じませんし、また保安庁法の禁ずるところでもない。
  39. 並木芳雄

    並木委員 禁止していなくとも、日本の法律できめなければ強制力はないので、今までは国内の治安だけに保安隊を使うのだということになつておりますから、隊員だつてそのつもりでおります。ところが禁止しておらないということで、当然直接侵略が起つたら、それに向つて行くだろうということはこれは期待であつて、その期待がはずれることがあり得る。その場合には単なるその土地の義勇軍ですか、民兵ですか、単なるそこの集団にすぎないとみなされる場合もある。一つの集団、要するに戦うわけです。交戦するわけですから交戦者になると思うのです。交戦者になるためには、保安庁法を改正して、その法律のもとに行動をとらなければならない、ですからそこで憲法にいう「陸海空軍その他の戦力」に、入るのではないか、交戦をするのですから入つて来るのではないか、こう思うのです。
  40. 下田武三

    下田政府委員 交戦という言葉をお使いになりますとまぎらわしくなりますが、これは現実の敵対行為という意味でお使いになりますならばいいと思います。交戦権を行使して戦うという意味だと、これは憲法と抵触する問題になつて参ります。本来国内の治安及び平和の維持を目的としている部隊が、万一直接侵略がありました場合に、自衛権に基きましてこれを防ぐというごく例外的の場合を予想して、ただいまから保安庁法を改正するかどうかということは、これは法律問題でなく政策問題であろうと思います。  なお並木さんが前にお聞きになりまして、戸叶さんも先日御質問になりまして、留保しております問題がございますので、この際お答えを申し上げたいと思うのであります。国連加盟国で、最も小さな軍隊を持つておる国はどこかというお問合せでございます。調査いたしましたところ、ルクセンブルグでございます。これはわずかに三千人の軍隊しか持つておりません。もつとも三千人と申しますと非常に少いようでございますが、ルクセンブルグという国は、どだい人口が二十九万八千五百である、ざつと三十万人でございますから、この三十万人の国に三千人ということは、ちようど一%に当ります。でございますから日本の八千五百万の一%といいますと、八十五万になります。小さい国では三千人、これはあながち絶対数によつて……。しかしルクセンブルグは、りつぱに軍隊と称しておるわけであります。陸軍と称しておるわけであります。  そこで申し上げますが、結局これは国によつては、三千人の兵力を持つて軍隊として、大いにやつておるのだということを呼号することが得策とする国がございます。そこでルクセンブルグはNATO協定にも参加しておりますし、アメリカからMSA援助ももらつておるわけであります。でございますから、これはまつたく政策の問題でありまして、日本は一体軍隊の名に値しないものを軍と称するのが得策かどうかという問題になりますと、これは現在の国際情勢から見まして、何も近代戦争を有効に遂行する能力がありもしないものを、しいて軍と称するということは、不得策ではないかと思うのであります。
  41. 並木芳雄

    並木委員 今の最少三千人をもつて軍隊とするという説明でありましたけれども、これはまさに一寸の虫にも五分の魂なのです。吉葉山と子供とを比較して、子供にも魂がある、あれが軍隊だというので、それならば日本なんかは、よほどりつぱな魂を持つております。三千人でも魂になるならば。それこそわれわれは自衛軍というものをつくつて、そうして直接侵略があつたときにこれで十分対抗できるだというところに持つて行かなければ、保安隊は戦力に至らざる力でもつて直接侵略を防ぐのだというときに、だれが一体これに応募するものがあるかというのです。あぶなくて保安隊、警備隊に入る人はありません。外国の直接侵略があつても、大丈夫という力を持つて、初めて保安隊などに入る人もありましようけれども、政府のような態度をとつておりますと、あぶなくてしようがない。戦力に至らざるものは、もし来たら、すぐやつけられてしまうかもしれない。  ここで私はもう一つお伺いしたのは、従来日本に駐留している米軍は、あれは戦力である、政府はこういう答弁をしております。そこでしからば駐留米軍と日本保安隊が一緒に協力した場合にはその一部になるのだから、保安隊は戦力ではないのが戦力になるのではないかというわれわれの質問に対しては、目的が違うから戦力になりません、こういう答弁をしております。今度は直接侵略にぶつかると、駐留米軍と一緒になつて、同じ目的に共同動作をとることが起つて参ります。明らかに今度は駐留米軍、すなわち戦力の一部として保安隊は戦力になると思うのでありますけれども、政府の見解を伺つておきます。
  42. 下田武三

    下田政府委員 駐留米軍は、これは戦力以外の何物でもございませんが、但しこれはアメリカの戦力でありまして、日本の戦力ではございません。そこで直接侵略が万一起りました場合には、戦力たる駐留米軍と、戦力ではない保安隊とが共同動作をすることも考えられるところでありますが、その場合には戦力に付加されたものが戦力になるということはございませんので、これはあたかも軍隊と警察と両方とを有する国が、軍隊だけの力でなくて、警察まで自衛的行動に参加するというような場合が生じた場合にに、警察隊あるいは消防隊まで戦力になるということがないと同様であつて、たとえば戦力である米軍と、戦力ではない保安隊が共同動作に出ましても、両者の性格はあくまでも異なつた上での共同動作と観念せられるのであります。
  43. 上塚司

    上塚委員長 次は穗積七郎君。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 大臣が見えてから……。
  45. 上塚司

    上塚委員長 大臣はすぐ出席しますから、その前に大臣以外の所管質問がありましたら……。
  46. 和田博雄

    和田委員 議事進行について。このMSAの問題、国際情勢の問題はやはり大臣がおいでになつてから、大臣から答弁してもらつた方が問題の性質上よいと思うのです。たとえば日米通商航海条約というような問題であれば技術的なこともありますし、事務的なことがありますから政府委員にお尋ねいたしますけれども、これは非常に政治的な問題でありますので、ぜひお願いしたいと思います。
  47. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣が見えるまでの間、日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件について質疑を続けます。
  48. 帆足計

    ○帆足委員 議事進行について。もう一月前のことでございますが、一ぺん当局に資料要求してありますが、一向参りません。かつて委員長からも催促を願つたのですが、さらに参りませんが、先般の御答弁ではパリのココムについてはでき得る限り状況を説明するということと、それからさらにそれについての資料を提供する、なおその資料が提供できないときは、欧米諸国が中国等に輸出しておる品目で、日本のみが禁止されている品目は実際にはわかることであるから、その品目の一覧表を提供するというお約束でありました。また政府当局は日本を西ヨーロツパ並に取扱つてくれということは、外務省の切なる願であるから交渉しているということでありました。交渉している以上はその資料をお持ちのわけでありますから、至急その資料の御提示を願いたい。  第二には、先日旅券法のことについて外務大臣から——欧米局長の言われた速記録と渡航課長の言われたこととまつたく白と点ほど違いますので、その問題について御答弁があるということでございましたので、よろしくお願いします。
  49. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 第一の点につきましてお答えいたします。御要求のございました資料に関しましては、できるだけのものはすでに差上げてあるつもりであります。それからなお資料の収集を要するものということに関しましては、それをただいま収集いたしておりまして、すでに差上げておりますものは、こちら限りで集め得るものは全部差上げたつもりでございます。
  50. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの黄田局長の御答弁はちよつと的がはずれていると思うのです。また私は親切ではないと思うのです。外務省当局は問題について御勉強が足りない、御承知のように西ヨーロツパ諸国は中国、ソ連とも非常に厖大な貿易をしておりまして、われわれは隣邦に対して日本だけが立ち遅れすることを憂慮しております。国民としてはいろいろな意見もありますので、とにかく最大多数の意見は国際連合に協力し、またアメリカとも協調を保ちながらでも、西ヨーロツパ並の貿易をさしてもらいたいというのが、国民の九割、十割の圧倒的多数の意見であります。従いまして、私がお願いいたしましたのは、欧米諸国が中国に対して、ことしになつてもさらに非常に大きな貿易をしておる。それらの認められた品目で、日本だけが許されてない品目の一覧表をもらいたい。実はアメリカ当局は今日本を大体カナダの範疇に入れておりまして、カナダ、フイリピン、ニユジーランド等を含めてこれを極東リストというような観念でやつております。ところが御承知のように、カナダにとつてアメリカ本国が原料供給地でありますし、フイリピン、ニユージーランドにとつてもそうでありまして、日本とカナダとは非常に事情が違うので、日本は立地条件からいつて、西ヨーロツパに似ている高度に工業国であります。従いましてカナダと同じに取扱われては困るのでありまして、やはり、たといMSAを受けようと受けまいと、かりに受けたところで多少の自立の道は残さねばなりませんから、西ヨーロツパがただいま主張していることは私は正しいと思います。国情も日本がアジアのヨーロツパでありまして、西ヨーロツパに似ていると思うのでございます。従いまして西ヨーロツパ諸国が許されている貿易で、日本のみが禁止されているものはどういうものであるか、またそういう品目について、政府アメリカの了解を得るべく交渉しているということをかねて御吹聴になつて、おりますから、それらの品目をお尋ねしているわけです。これは諸外国の貿易統計をつぶさに検討すればすぐにおわかりのことであるし、また当然それを把握していなければ、通商外交はできないのでございますから、決して御無理なことをお願いしているわけでない。  それから第二に、ココムに日本政府から代表が出席しているのですから、その議事内容や問題点をできるだけ詳細に伝える必要がある、場合によつては秘密会でも開いて伝えるというのが、経済局長の当然の義務だと思うのです。無理なことをお願いしているのではありませんので、今は民主政治でありますから、もう少しざつくばらんに御報告つてしかるべきだと思いますが、いかがなものでしよう。
  51. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ある種の国々に対しまして輸出する品目に関して差異がある、これはおつしやる通りであります。ただ、ただいま仰せになりました中で、日本がカナダ並であるとおつしやいますのは、これはおそらく誤りであろうと存じます。と申しますのはカナダは何も輸出せず、何も輸入せずという政策をとつておりまして、実際何も輸出いたしておりません。日本はそうではないのでございまして、相当の品目を出しているのであります。従いまして日本をカナダ並とおつしやいましたのはこれはお間違いだろうと思うのであります。つまりカナダとアメリカとフイリピン、これだけは非常に厳重な統制をやつておる、それから西欧がそうでない方に属しまして、日本がその中間にあるということは、これはその通りでございまして、おそらくカナダを日本と同列に置かれたのは間違いだろうと思うのであります。西欧が中央と非常に大きな貿易をしておるというふうにおつしやいました。これは最近の新聞でもイギリスが初めは片道三千万ポンドというようなことを伝えましたけれども、これは往復で三千万ポンドというのが正しいようであります。フランスも四千七百万ドルあるいは五千七百万ドルというふうな協定をつくつたということが伝えられております。但しその総額にいたしましても、これが締結なつたという報道がありました直後において、イギリス当局自身が、本報道は非常に多数の戦略物資を含んでおる、しかしイギリスの方の立場は政策に何ら変更がないのであつて従つて実際出し得るものはそれの何パーセントにすぎないであろうということを、イギリスの当局はただちに否定いたしておるのであります。従いまして伝えられました数字が非常に厖大に見えますことが、ただちに実現に移されるということは、これは非常に期待薄であろうと存ずるのであります。
  52. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの黄田局長の御答弁は、どうも私は親切が欠けておると思うのです。第一今カナダのことを申しましたが、私はカナダの通りだとは申しませんけれども、しかしどちらかといえば、カナダ、ニュージーランド、フイリピン的な方の別扱いになつて、極東リストというようなこともちよいちよいお話が出ているということを心配しているのですが、ただいまのイギリスフランス、西ヨーロツパ諸国が全部中国と貿易をしておりますのは決して小さな額ではないのでありまして、外務省当局からいただきました諸資料によりましても、人口わずか三百万のスイツツルが、一月から三月までの間に八百万ドルの輸出をしておる。日本が三十六万ドル、しかるにあれだけ隔たつたアルプスの山の中のスイツツルが、わずか三箇月に八百万ドル、英国でも五、六百万ドルしているのです。決して小さな数字ではございません。それから英国が結んだ中に戦略物資が入つておるから今すぐはやらせないと英国外務省当局が言つたことは当然のことでありますが、業界としては朝鮮戦争が済むという見通しのもとに、下半期においてはこの程度のものは機密戦略物資でないので、間接侵略物資であるから許されるであろうという見通しのもとに、続々販路を拡張しておる。なお驚くべきことには、アメリカが相当多額の物資を中国からすでに輸入しておつて、ドルで支払つておるという事実も聞いておるのであります。しかしながら民間におります私どもとしてはこういう問題はやはり公正、合理的に判断し、そして日本で合理的にバランスをとつてやらなければなりませんので、そのために政府当局と御相談いたしますにも資料が必要である。せつかく今カナダと日本との差異を御説明なさるほどの誠意がおありならば——西ヨーロツパ諸国でも、私が聞いておるところによりますと、英国のリストとフランスと違うということでありまして、諸説紛々として実にこの問題は明朗性を欠いておるのでございます。なお、かくまで度はずれの貿易の制限を日本だけが受けて、ヨーロツパ諸国はわずか三箇月の間にどこの国でもたいてい五、六百万ドルの貿易をしております。その総額を合計いたしますと厖大なものでありまして、黄田さんの一九五一年について御発表になつたものでも、西ヨーロツパだけでも中国を除いた鉄のカーテンのかなたと二十二億ドルの貿易をしておるということを聞いて私は驚いたのですが、合計してみると、ちりも積れば山となるで、厖大な貿易をすでに独占されておる。従つて、こういう問題につきましての正確な資料をいただきたい。資料をいただいた上で、国民的見地に立つて党派を離れて御相談すべき問題であると思いますが、経済局長に対して外務委員長からすでに要求しておる、その資料一つもお出しにならない。ただいま御質問をした点については、ぜひひとつ至急資料を整えてお見せ願いたい。重ねて御答弁のほどをお願いする次第であります。
  53. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 朝鮮に平和が来た場合にどういうふうになるかということは、仰せの通り非常に大きな問題でございます。その場合に今までの態度で行くべきか、あるいはもつと貿易を発展するようにやるべきであるか、またそのニユアンスいかんということは非常に大きなことでございますので、おさおさ怠りなく準備をいたしております。  それから第二に、アメリカが中共から相当莫大な物資を、しかもドルで買つておるという風評があるとおつしやいましたが、それはまことに風評だけだと存じます。と申しますのは、私が調べたのでございますけれども、アメリカがドルを使つて中共と貿易をしておるということはございません。御承知のように、アメリカでは外国資産凍結法というのがございまして、ドルを、中共あるいは中共に起源を発するというふうなものに払うことを禁止いたしております。あるいはその払われた場合にもそれた凍結するということがございまして、ドルを使つて中共から物を入れることはあり得ないのであります。ただ非常に緊急物資、戦略物資のようなものをストツクの目的のために買つたということはございますけれども、これは自由港に入つていたもので、それは相当な数量に上るようでありますが、それを買つたのだ、それがたとえば骨董品のようなものでも、オリジンが中共であるという場合には、全部中共ということになりますので、その額が相当に上つておるという発表がございまして、これはたいへんなことだというので聞いてみたところが、そういうことなのであります。従つて、直接中共にドルを払つて中共の物資を買つたということは絶対にございません。これは私がちやんと調べておるのであります。  なお資料でございますが、これは私もさきおとといでございましたか、帆足さんの方からたびたび御催促があるということで調べましたところが、たしか相当の資料が差上げてございますので、先ほど申し上げました通り、まだお手元に行つておりませんものは、あるいは東京だけでわかりませんので調べているというようなものでありまして、差上げられる限りのものは差上げるつもりでございます。
  54. 帆足計

    ○帆足委員 先般来いただきましたのは、実は東洋経済新報社その他の関係で私はもつと詳しいものを持つておるのでございまして、ほとんど役に立ちません。政府当局としては、ヨーロツパ並になさるようにせつかく御努力なさつておるのですから、年報と月報をごらんになればあるのであつて、私どもの手元にないので、当然経経局長として必要なものですから、大至急ひとつお取調べくださいますことをお願いしたいのです。MSA審議に連関して、中国、ソ連との貿易がアメリカとの協議を要することになつておる国が多いような点もあるので、そういうことがあれば円滑に行くように、日本だけ差別待遇をされないようにということも、政府当局とよく相談して大いに交渉をしていただかなければならぬ問題がありますから、それらの参考資料をいただきたいと思つております。とにかく各国の鉄のカーテンのかなたへの輸出制限の状況とそのアンバランスをひとつ全部お取調べくださつて提出願いたい。それがないとこの問題を公正に論議することは困難であります。それについてぜひひとつ資料をとつていただけるか、もしとつてくださらないとおつしやるなら、われわれは自力で経費をかけてでもやりますから、御答弁願いたい。そしてこの審議に間に合うようにしていただきたい。  それから、なおさらに旅券のことについて次官から先日の結論を伺いたい。
  55. 小滝彬

    小滝政府委員 御指摘になりました土屋局長答弁をよく調べましたが、土屋局長が申した点がその通りであります。なお過日渡航課長から説明いたしました点が、言葉の言いまわしであるいは誤解を生じたかと思いますが、土屋局長と渡航課長が言おうとしておつたことには何ら相違はないものと私は解釈しております。それには表現の誤りがあつたかもしれませんけれども、私どもの考えておる政策には、新しい変化は全然ないということを申し上げる次第でございまして、土屋局長の申しました通りでございます。但し帆足委員が御指摘になりました事件につきましては、今調査中であるということをお答え申し上げておきます。
  56. 帆足計

    ○帆足委員 政府当局の答弁がかくのごとく軽率であつて、速記録に照して二つの答弁がまつたく違うのに、一致しておると言われるような御答弁があることは遺憾しごくです。先日の渡航課長の勢いたるや意気揚々たるもので、おそらくあれは自分が警視庁の外事課長のように錯覚しておられたのじやないか。もつとも旧憲法の時代に高文試験を通つて来られたのだから、新憲法の方の勉強が十分にできていないことは了察いたしますが、やはり時勢もかわりましたから、どうか新憲法の精神でやつていただきたいということをお願いすることも、そう無理なことではないと思います。今日欧米局長の御答弁は正式の御答弁であつたという次官の明朗なるお答えをいただいて、さすがに良識ある次官の御答弁だと思つて、大いに敬意を新たにする次第でありますが、そういうような御趣旨でありましたら、私は過去は過去として深くとがめませんが、今後起ります問題について至急善処していただきたい。何となれば欧米局長は、さらにこうまで言つておるのです。この旅券法の問題については、「法の盲点というよりは、実は法の解釈についていろいろ考えができ、また国際情勢を織り込んだ微妙な関係もありますので、国民の方に釈然と行かないという印象を与えたことは、政府としてはなはだ残念であります。」こう申しておりますし、私はこれについて裁判所に異議を申し立てておりますが、裁判所でも、帆足さん、この問題についてはほんとうに苦労しておりますと言つておる。これは法制局の専門家の皆さんもそう言いましたし、法学雑誌も賛否こもごものうち、私に賛成の方が九割というのが客観的事実であります。最高裁判所に参れば私が必ず勝つということは、ほとんどすべての輿論が一致しておるような状況であります。ここで百歩を譲りましても、ボーダー・ラインのものでありますから、われわれの善意も御理解いただきたいと思う。こういうことのために、一国の国会議員たる者を一歩も海外に出さないというような極刑に処するということをどうしてお考えになるのか、その点で私は警視庁の外事課の錯覚があるということを申したのであります。  なお南君の問題について一言お尋ねいたしますが、あれが最後的判断だとすれば、法務大臣と御協議の上でなくてはならぬと思いますが、法務大臣といつ御協議になつたのかお答え願いたい。なお旅券の請求についてお願いいたしました人は、やはり飛行機の旅程のことがありますから、それに間に合うような——私は少くとも出発の一週間前に文書をもつて最後的回答をするというような親心をもつて——実に多くの人がこの問題で困つておりまして、単にこういう鉄のカーテンのかなたにも多少連関がある問題とひつかかつた人たちと、普通のそういうことと関係ない旅行におきましても非常にお困りになつております。従いまして渡航課の手をふやすとか、書類をもう少し能率化するとかしまして、予防注射をいたしましたり、かばんを買つたり、あるいはわかれを惜しんだり、準備が必要でございます。従いましてそういうことも御考慮くださいまして、行く人の身になつて、この渡航課の事務のやり力をこの際次官の方で御検討になつて改めていただきたい。そうして政治上の意見の相違でも——法の解釈としてもし違いがあるならばやむを得ませんが、それでもやはり一週間前に最後の決断を下して、それらの方々があきらめて裁判所に提訴するとか、こういうふうにするのが私は明朗なる民主国家としての行く道じやないかと思います。野党であつても与党であつても、やはり共通のルールとして法律は尊重いたさなければなりません。法の尊重ということを私は第一に考えていただきたいということを切にお願いいたしまして、本日次官がせつかく欧米局長答弁が正しいとおつしやつてくださいましたので、ほかの議事のおさしつかえにもなりますから、これで質問を打切りまして、あとでまた上りますから御善処をお願いいたします。
  57. 田中稔男

    田中(稔)委員 関連して一言簡単に申し上げておきます。在華同胞三万人の引揚げが実現しましたのは、実はこれは外務省のお力ではなくして、むしろその糸口をつけましたのは、今の帆足計君なり高良参議院議員という諸君であります。それからまた新聞の報道によりますと、今度大山郁夫氏がソ連モスクワでモロトフ外相と在ソ戦犯の引揚げ問題で何か相談をしたということで、いよいよ万国赤十字社の手を借りまして、この在ソ戦犯の引揚げができることになりそうなのでありますが、こういうことは日本の国の外交が足りない点を国民外交といいますか、民間外交といいますか、それが補つたものである。だから国全体としましては、これは非常に大きなプラスであり、貢献であると思いますが、今旅券問題なんかにつきまして、こういう非常に国に貢献をした人が、渡航課長の旅券法の解釈に基きまして一切もう外国に出さぬ。まるで罪人扱いをするということになりますと、国会に議席を持つておるような政治家にとつて外国に行かれないということは、まつたく死刑の宣告でありまして、しかもそれが国益を害するところも非常に大きいのでありますから、その辺は実情に即して、今の日本の置かれておる国際的ないろいろな事情、そういうことからむしろ外務省の力の足りない点を補うという意味もありますから、十分御考慮願いたいと思います。今の政務次官の非常にりつぱな御答弁には私どもも敬意を表しますが、その方針で今後進まれることをこの際一言申し上げておきたいと思います。
  58. 小滝彬

    小滝政府委員 国会議員の方で、旅券法を無視せられたような方に対して今後絶対に出さないということは、渡航課長は申さなかつたはずであります。十分この旅券法を尊重しまして、法の規定に基いて、今後こうした問題が起りました際には、それを検討して行くことを申したはずであります。そしてまた現に高良さんも、中共の方へは旅券を持つて行かれたという事実をごらんになつてもおわかりくださるだろうと思います。
  59. 並木芳雄

    並木委員 今の田中委員質問に対しては、前提において私どもはだまつて聞いておられない節がある。ソ連からの引揚げが、高飛びをした連中のために行われるようになつたというふうに私は聞いたのです。ごく最近伝えられるソ連からの引揚げの問題は、政府はそういうふうにおとりになつておるのですか。今の質問の前提にそういうことが触れてあつたのです。その情報はどうなつておりますか。報道では大山氏の談話か何かで、赤十字を通じて交渉すればソ連の戦犯を返すことになるだろうということでありますけれども、それについて外務省としては当然調査はしていると思いますが、どうなつておりますか。
  60. 小滝彬

    小滝政府委員 そういう報道は新聞で伝わつておるだけであつて、何らわれわれの方には公式な話は参つておりません
  61. 並木芳雄

    並木委員 ただそれだけでなく、引揚げということが実現することは非常にいいことなのですから、それに対して外務省としてはあの報道が行われたからどういう手配を行つたか、今後どういうふうにして行くかということについて御答弁願います。
  62. 小滝彬

    小滝政府委員 現に関係国の方へも申入れをするために、在外公館を通じて俘虜特別委員会がわれわれの期待しております通り今秋開かれるように、そして日本からも代表者を出すように目下考慮いたしておるところでありまして、決してこれをないがしろにしている次第ではございません。
  63. 並木芳雄

    並木委員 その俘虜特別委員会というのは、どういうのですか。
  64. 小滝彬

    小滝政府委員 国連の俘虜特別委員会が、ゼネヴアで八月の中ころ開かれる予定なつております。日独両国からも当然代表者が行つて、この審議に加わるのではないかというように予定しております。それを促進するように努力しているわけであります。
  65. 並木芳雄

    並木委員 今度の戦犯者引揚げの報道を政府はどう見ておるのですか。今田中委員が御質問のように、こういう人々が向うへ行つたために、道が開かれたと思つておるのか、それとも最近起つて来た平和攻勢の一環であると断じているのか、その点をはつきり政府がしないと国民は迷うだろうと思うのです。これに関連してブカレストでありますか、青年学生会議が最近開かれると開いております。日本に対しても、旅費やその他の費用を一切持つから、学生、青年に来るようにという招待状が来ているそうであります。そういうものに対して、政府は旅券の問題に対しても、どういう態度で臨むのか、はつきりしていただきたいと思います。
  66. 小滝彬

    小滝政府委員 ブヤレストの方の大会は、出すようになつていないと私今了解いたしておりますが、これは後ほど調べて並木委員の方へお知らせいたします。  今度の、ソ連の戦犯を返すという報道は、新聞報道だけであつて、私どもはこれの真偽については何とも申し上げかねます。しかし現在ソ連の方がヨーロツパにおいても、また東洋の方面においても、平和攻勢に出ていることは、新聞情報でも、いろいろな事件を取上げておりますのを見ても明らかな事実であろうと存じます。従いまして並木委員のように外交通は、これをもつても十分御判断くださることができるだろうと考えます。
  67. 並木芳雄

    並木委員 そうするとやはり戦犯の釈放、または引揚げの実現性はあり得ると見ていいわけですか。平和攻勢の一環としてあり得ると見て、その場合に日本としては中共からの引揚げの場合には、赤十字社の代表のほかに、他の特殊団体の代表が行きましたけれども、あのときに私ども率直に言つてあまりいい感じがいたしませんでした。そこで今度はそういう特殊な団体というものを入れないで、赤十字なら赤十字一本で実現をされるように私は希望するのですけれども、政府の御見解をお尋ねしておきたいと思います。
  68. 小滝彬

    小滝政府委員 並木委員の仰せの通りでありますが、まだ具体的な問題が起つておりませんので、具体的なことは何ら考えておりません。
  69. 上塚司

    上塚委員長 本論に入りたいと思いますが、外務大臣出席を先ほどからお願いしておりまして、何時何分にここに来られて、何時何分までここにおることができるかということを正確に聞きに行つておるのです。まだその硬いが帰つて参りません。それまでの間和田博雄君に通商航海条約質問を許します。和田博雄君。
  70. 和田博雄

    和田委員 通商航海条約質問はこれは連続的にずつとやつて行きたいと思うのです。もう十二時も過ぎているのですから、岡崎外務大臣にはつきり確かめて、午後からお聞きくださることとして暫時休憩していただきたいと思うのです。やはり外務大臣は責任を持つて、この外務委員会を尊重してさつそく返事をよこすべきだと思う。各委員もこれだけ熱心に出席されて、そして岡崎君に質問したいと言つているのです。ことに外務大臣は何よりも外務委員会を尊重しなければならぬと思うのです。その点しかるべくおとりはからい願いたいと思います。
  71. 帆足計

    ○帆足委員 ちよつと一点だけ……。先ほどの次官の御答弁で満足でありますが、お聞き及びの南君個人の問題ですが、旅券の審査の手続が非常に不親切で、もう二度航空機を飛ばしてもまだ正式の御返答がない、先日の渡航課長のお話では、日教組の方で御辞退申し上げたということでしたが、私本日確かめましたら、そういうことではなくて、実際はこれは、悪くいえば脅迫とも言えるでしよう、よくいえば申請者側で恐れをなして、あとの友だちの方々も、それじや南君と同じように審査を延ばして、容易に飛行機に間に合わないぞというけはいを見せたので、恐れをなして、それじやほかの友だちだけを先にいただきたい。南さんのはあとでもしんぼうしましようという意味だつたようなのです。それが実情でしよう。従いましてどうかこの問題について、今明日中にいずれにせよ御回答をしていただきたい。また南さんの旅券を拒否されるならば、法律の第何条によつて拒否するか、また法務大臣と御協議事項なら法務大臣と御協議して問題を明確にしていただきたい。ただ飛行機に乗せないようにしてそれで済んでしまつた、残る煙がしやくの種というようなことが始終行われるということは、私は不明朗であると考えるがどうか。政府の感情問題は感情問題として、法律通りにしていただきたい。私は南君がギヤングや阿片密輸入者のような取扱いを受けねばならぬ必要はないと思うのです。旅券法をつくりましたときの速記録を見ますと、当時は共産現員ですら海外の渡航は自由である。そういう建前であれはできておるのです。従いましてもしあの法案について不満足でありましたら、やはりはなはだしく国益を阻害する人物というあの条項をもつと明確に、外務委員会にお諮りになりまして、定義を明確になさつておけば私は問題にならないのではなかろうかと存じますが、多少政府側の方が感情問題に走つておられる、これは皆様御承知でありましよう、そういう傾向がございますから、南君の問題を一両日中に解決するということだけをひとつ旅券手続として御確認を願いたいと思います。これは御無理な要求でないと思います。
  72. 小滝彬

    小滝政府委員 感情をもつて南君の渡航を押えておるということは絶対にございません。しかし一両日中にこれを出すというようなことはもちろんここで確約できないのでありまして、これは外務省側から申しますと、実は南さんの方がこちらのお願いしておる報告を出されないので、遅れておるのでありまして、われわれはその審議の基礎になるものもいただいていないので、法務省にも相談いたしておりません。公務員であつて、しかも旅券法に違反せられたという事実は、これは帆足委員もお認めになるだろうと存じます。ところがその事実についていろいろお尋ねしたい点について何らの回答もない、しかりとすればこれが審議を進めることができない状態に置いておるのは、南さんであるというふうに申し上げられるのでありまして、私どもとしてはすぐ旅券を出すという取運びには行かない次第であります。
  73. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの問題につきましては、ちよつと外務次官の御存じない点があるのですが、あれはよくこう言われるのです、あらかじめ下相談をして許可になるときまつたら書類を出してくれ、そうしたら一時間で済むからと言われることがよくあつて、南君の場合には前に一回出しておつて人物審査が済んでおるものですから、そういうことになつていたのじやないかと思いますが、ただちに聞きまして次官の意のあるところを向うへ申し伝えます。  それからただいまの旅券法違反のことは、これは違反という言葉を使うべきではなくて、旅券法についての解釈の相違がある、と申しますのは、違反と申しますのは法律を犯したことを言うのでありまして、たとえば道を歩いておりますと、あいつは交通違反の法律にはひつかかつていない、しかし歩いているやつはなまいきなやつだ、こういうことも言いがかりをつければ書い得るわけで、法にひつかからないものはひつかからないから法を免れたとは言えないと思います。それは旅券法をごらんになればおわかりであつて、そこでどうかただいまの問題について、旅券法は出しましてから何日以内くらいに御返答願うのが大体慣例かというような点を、ひとつ慣例をつくつていただいて、こういう行き違いのないように、書類を提出して、大体の見当が何日に審査を願える、そうして飛行機や汽船が出ます前、少くとも一週間か三日前には御回答が願えるというような慣例をつくつていただくように、なお行き違いのことがありましたならば私もお取次いたします。ただいまの次官の御好意、御誠意のあることは私も認めまして、これで質問を打切ります。
  74. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣はただいま参議院予算委員会において質疑が継続されておりまして、どうしても午後一時までは出席ができないそうであります。それで暫時休憩いたしまして、午後一時から再開することにいたしますから、さよう御了承願います。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  75. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  まず国際情勢等に関する件について外務大臣に対する質疑を行うことといたします。この際重ねて申し上げておきますが、質疑の通告者が非常に多数でありまして、議案審議都合もありますから、質疑の時間は各員二十分程度にとどめられんことをお願いいたします。穗積七郎君。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 先般の委員会におきまして、MSA問題と関連して、日本保安隊の性格または目的、それから憲法の解釈等について、政府部内の統一をしていただくようにお願いいたしておきましたが、その後新聞で拝見いたしますと、よりより考え方をまとめておられるようであります。そこで政府のお考えを岡崎大臣を通じてお尋ねしたいと思うのですが、従来あらゆる機会におきまして、日本保安隊は国内の治安のみにとどめるものであつて、直接侵略に対するものは、アメリカの駐留軍のみがこれに当るという意見を強く主張して来られたのです。今度MSA受諾することによりまして、日本保安隊の性格が切りかえられ、直接侵略に対してもこれに当るといつた解釈をしておられるようであります。さらに保安隊を中心といたします防衛力の装備内容あるいは量等につきましても、その後緒方副総理は重大な発言をされて、原子力兵器を持つても、自衛のためのものであるならば、違憲ではないというような解釈をしておられるわけでありますが、そういう国内の治安にのみ当るという保安隊の性格を切りかえようとしておられる政治的な理由は、一体どこにあるのか、それをまず第一に明らかにしていただきたいと思います。
  77. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政治的の理由というのは私よくわかりませんが、切りかえるか切りかえないかは、まだきめていないのだと了解しております。保安庁のことですから、私の責任じやありません。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、もしそういうふうに切りかえなければならないような義務が、MSAを受けることによつて生ずる危険がある場合には、SMAをお受けになるのをおやめになる意思があるかどうか、お尋ねいたします。
  79. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ側は自衛力の漸増ということを念願しておるけれども、その時期、態様等は日本政府がきめるものであつてアメリカが干渉するものでないということを言つておりますから、直接侵略を当るべき義務というようなことが、協定の中に出て来ると私は想像しません。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 それでは日本政府のみずからの意思によりまして、保安隊——まだ名前がどうかわるかわかりませんが、現在の保安隊その他のものを直接侵略に当てる方針をお持ちになるのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私の担当でありませんから、実は申し上げるのは適当でないと思いますが、私の了解するところでは、その点を保安庁でも研究しておると思います。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 この前保安庁長官の御出席をお願いしたのですが、おいでになりません。この前も外相と同じ席上におきましては、場合によればその意思があるということを言つておられました。そして今までの岡崎大臣初め、政府の御説明は、事実行為としての抵抗はあり得ても、自衛戦争としての武力的な抵抗は、直接侵略に対してはないということを言つておられたのですが、今度はそれに対してこれを行うということを言われ、それが憲法違反ではないということを説明しておられるわけですが、その点について重ねてお尋ねいたします。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれの説明は、現在の保安庁法にはそういうことがはつきり出ていないということを言つておるのであります。直接侵略に当つても、戦力にならない力を持つておる限りにおいては、憲法には抵触しないということは何も事新しいことではありません。穗積さんはおられなかつたかもしれませんが、一昨年安全保障条約が国会に審議されるときに、非常に長くその問題については討議されたのであります。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 それではちよつとお尋ねしておきますが、憲法九条の「陸海空軍その他の戦力」というその他の戦力とは何をさしているのか、どういう解釈になつておられるのか、伺つておきます。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は憲法学者ではありませんが、政府の解釈としては、「陸海空軍その他の戦力」とは、わけて見るものであつて、一体として、要するに、陸海空という名前をつけようとつけまいと、戦力にわたるものを持つてはいけない、こういう意味で、「その他」という字も入つている、こう解釈しております。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ不明確であります。これはアメリカが示しました原文によれば、ウオー・ポテンシヤルという言葉を使つておりまして、潜在的な兵力を意味するわけであります。従つて現在の保安隊は、もちろん当初の解釈によりますれば、戦力の基礎になる軍需産業すらこれはアザー・ウオー・ポテンシヤルの中に入るという解釈をしたわけであります。それについては大臣はどういうふうに解釈しておりまんか。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは憲法の条文は日本文において研究いたしておりまして、英文は何も関係しておりません。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 もとより法の解釈は条文によつて解釈すべきですが、そのよつて来ります経過を見ることが、憲法の正しい解釈のゆえんであるから私は申したのであります。従つて「その他の戦力」というのは、名前のいかんにかかわらず、目的のいかんにかかわらず、そういう国際関係の紛争を解決するのに、実力行為をもつてやる危険があるというもの一切を含むという解釈であると思うのですが、その点について所見をお伺いしておきます。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法は自衛の名において侵略的な戦争をすることを非常に押えております。従つて戦争を放棄すると同時に、国際紛争解決の手段として武力を用いないといつております。そうして念のためにさらにその目的を達するために、陸海空軍その他の戦力を持たない。従つて侵略戦争をやめるということが第一の目的であつて、それに続いてこれは出て来ておると思います。従いまして、戦力と申すのは、当然侵略戦争を行い得るような内容を持つたものである。これを言いかえれば、近代戦を行うくらいの装備編成を持つたもの、こういうことに考えております。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 この条文の中に、あるいはこの法のできます過払において、侵略戦争はいけない。それ以外の戦争はいいということがどこにも書いてありませんが、どういうところによつてそういう、すなわち自衛戦争はこれを否定していないという解釈は、一体どこから出て来るのでしようか。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法は侵略戦争を禁じておるのであつて自衛権は持つておるのであります。要するに、憲法がさらに禁じておるのは戦力を禁じておる。従つて戦力を持つということは憲法上許されない。戦力に至らざる範囲内で自衛の力を持つことは当然許される、こう解釈しております。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 自衛戦争という言葉が出ましたが、そういうことであるなら重ねてお尋ねいたしますが、一体自衛戦争と侵略戦争とどこが違うのか。たとえば一点、お尋ねしておきたいのは、近代戦争はもとより陸軍だけではありません。空軍がむしろ主力部隊になるわけで、従つてすでに日本保安隊その他も空軍を保持することを計画をして実行に移しておられるわけですが、そういう場合に向う側から、戦争の理由、目的は別といたしまして、日本に対する直接侵略が行われる、それを自衛をする場合に、自衛をする作戦なり戦時行動をとるためには、日本の本土にのみ待つてつたのではいけないのであつて、たとえば朝鮮なり満洲なりの空軍基地に出て行つて、それを爆撃するというようなことは、自衛目的を達するために、欠くべからざる一つの戦闘行為になつて来ると思うのです。そういう場合におきます朝鮮その他——一例でありますが、日本の領土外の基地に対しまする攻撃、これは一体自衛戦闘行為の中に入るのかどうか、どういうふうにお考えであるかお尋ねいたします。
  93. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはただそういうふうに仮定の問題で言われてもお答えのしようがないのですが、要するに自衛の名のもとにおいて侵略的な戦争をやるということも、これもとめなければならぬという用心深い憲法の規定であろうと思います。つまりよそへ出て行つて戦争をするというのは、自衛のためであつても、何というか近代戦争を遂行するに足る能力がなければ、そこまで出て行つてはできないだろう。ここで防ぐというならば、それは不十分であつても防ぐ手段はできるだけ尽すということはあり得る。従つて近代的の戦争を行う装備編成を持つているということま相当の私は意味があると思います。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 持つたとき、私のお尋ねするのは、自衛目的を達するために、日本領土外において行われる戦闘行為についてお尋ねをしておるのです。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 だから朝鮮へ行つた、どこへ行つた、土地の名前を言つてははなはださしさわりがありますが、外へ出て行つて大いに戦うというような力は、これは社会通念その他で判断しなければなりませんけれども、常識的にいえば戦力になるのじやないかとわれわれは思つおります。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、それは憲法違反であるということでございますね
  97. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 戦力になれば憲法違反であります。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねいたしますが、それは今おつしやつたあれで行きますと、われわれは明らかに戦力であると思うのです。そうして戦力であるものと、戦力でないものとの区別は一体どこに置いておられるか、明確にお尋ねいたしたいと思います。
  99. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は戦力の専門家でないので、担当の大臣ではないのであります。これは保安庁長官にお聞きにならなければなりませんが、われわれも近代戦を有効的確に遂行する能力のあるような編成装備を持つた総合的な力、これが戦力であろうと思つております。
  100. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、時間が参りました。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねいたします。交戦権の解釈についてでありますが、憲法制定当時の交戦権の解釈は、戦争を始める権利並びに戦争状態になりましたときの戦闘、たとえば敵性の外国船を拿捕する権利とか、そういう権利一切を含むと当然解釈されたわけでありますが、政府は最近に至りまして、英語で申しますならば、ライト・ツー・メイク・ウオー、戦争をする権利は主権の当然の属性であるというような解釈をされて、それで交戦権による云々という言葉は、戦争状態になつたときのその行為の合法的な法の保護を受けるということにだけ区切つておられるようですが、これは明らかに法を曲げて解釈するものであると私どもは思います。特に交戦権の問題は対外的な問題でありますので、外務省におかれましても、当然これに対しては主体的な解釈を下すべきだと思うのですが、それについて一応将来のために外相の御所見を伺つておきたい、こういうふうに思うわけです。  それから時間がありませんから第二点にお尋ねいたしたいと思いますのは、一括してお願いいたしておきますが、今度のMSA協定によりまして、アメリカ側の強い要請は、集団的自衛体制の将来できることを強く希望しておるようですが、それに対して将来そういうような太平洋を中心といたします集団的な自衛機構について政府のお考えを伺つておきたい。これは言うまでもなく、外に出る戦闘行為と相当関連がありますので、第二点としてお尋ねいたしたいと思います。  それから第三点は、政府はまちまちではありますが、最も露骨になつて来ました御意見では、自衛のための戦争、あるいは兵力というものを承認しておられるようですが、そうなりますと、日本国憲法には統帥権のことが規定してありません。憲法におきまして自衛権は放棄していない。自衛のための戦闘はできるということになりましたならば、部隊が保安隊であろうと軍隊であうと名前は別といたしまして、部隊を動かすべき統帥権が当然憲法になければならないのですが、それは一体どういうふうに処理せられるつもりであるか、対外的な戦争をしようとするときに、この憲法の規定によらないで、統帥権をかつてに一片の法律をもつてかえるということは考えられないところでありますが、その矛盾を一体どういうふうに解釈されるつもりであるか。  それから第四点に、将来のために明らかにしていただきたいと思いますのは、憲法の趣旨と違いました条約を結んだときに、条約が憲法に優先するという解釈をおとりになつておられるか、あるいは憲法が条約に優先するという解釈をおとりになつておられるのか、これは人により、場所によつて政府御当局の答弁が違つて来ております。そこでこれもMSA問題に関連いたしまして、将来問題を混淆せしめないために、この際明らかにしておきたい一点であると思いますので、以上の四点について一括御答弁をお願いいたします。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 交戦権ということを国内法的に解釈されるかどうか、これは別問題として、われわれの関心を持つのは、もちろん国際法あるいは戦時国際法等のいわゆるベリジエレンシーの権利であります。これには開戦は含んでおらない。(「日本語でやろう」と呼ぶ者あり)これは国際法ですから、どうしても外国語が入つて来る、これは開戦というものでなく、その内容ははつきりきまつております。しかしこれは保護を求めるとおつしやつたが、そういう権利だけではありません。たとえば敵性船舶を拿捕するというような権利も交戦権の中に入つて参ります。それから集団的自衛措置、これは国連憲章にもあるのでありまして、大筋はそれでけつこうだと思いますが、太平洋にそういうものができるかどうか、これは何も議論になつておりません。自衛のための統帥権云々、これは外務大臣の関連するところではないのでありますから、保安庁長官にひとつお聞きを願いたいと思います。  憲法の趣旨と違つた条約を結んだと仮定した場合に、条約が優先するか憲法が優先するか、これは学者によつて議論が違つておるようであります。しかし政府の一貫した立場は、憲法に違反するような条約は結ばない、こういう趣旨であります。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 重大な点が一つ答弁の中から落ちておりますので、重ねてその点をお尋ねいたします。交戦権の中に戦争をする権利を含んでいると解釈すべきであると思うのでありますが、その点について重ねてはつきりお尋ねしておきたい。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう国際法があつたらひとつお見せを願いたい。
  105. 上塚司

  106. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私は去る二十一日、本外務委員会において、須磨彌吉郎君の質問に対して岡崎外務大臣答弁された、その答弁は今までの政府の言明と非常に異なるものがあるのでありまして、この点についてもう一度私は念を押してみたいと考えるわけであります。岡崎外務大臣答弁はこういうぐあいにされておるのであります。「そうすると、憲法を改正しないということ、MSAは特別の事情がない限りは受けるのだ、受けたいのだ、こういう点では上と下のわくは一致しておると思います。その中において自衛軍といいますか、あるいは今保安隊といつておりますが、名前はいろいろ言えましようが、それが実質的に同じようなものになるのだ、こういうことをただいま須磨君がお考えになつても、われわれとしてはやむを得ない、こう考えております。」、ちようど改進党の須磨君の考え方に同じであるという言明をされておるわけであります。改進党は従来自衛軍の組織が必要であるということを説いております。しかも改進党の自衛軍が必要であるという考え方には、芦田さんのように憲法の改正をしないで現行憲法のまま、防衛のための自衛軍組織はできるという考えがございます。大体この考え方が須磨さんの質問なつて現われて来ておると思うのでありますが、そういう考え方と、今までは憲法は改正をしない、再軍備はしない、自衛軍組織それ自体は憲法違反である、こういう考え方を持つてつた政府の考え方との間には、大きな相違があろうと思うのであります。これについてひとつ御答弁を願いたいと思うのであります。
  107. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府は戦力を持つことは憲法に禁止されておる、だから戦力は持たないということを言つております。戦力に至らざるものは現在の保安隊であります。それはじようだんのような話ですが、軍と名づけても何と名づけても、中身が戦力でなければ憲法違反ではない、ただ軍と名づけることの適当なりやいなやということは別問題であります。もし私の了解するところで憲法を改正しない、MSA援助を受ける、こういう点で須磨君の意見と私の意見が一致したとすれば、その中でどうおとりになろうとこれはどうもやむを得ない、こう申したのであります。
  108. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 憲法を改正しないということと、それからMSA援助を受入れる、これが前提で須磨君の考え方と外務大臣の考え方が一致されたということであるから、私はこの前提のもとに一致したということは、須磨君が自衛軍組織は必要である、戦力たる自衛軍組織は必要である、こういう考えに共鳴された、こう理解するのでありますが、そうお答えになつたと違うのでありましようか。それは防衛問題に関して松村幹事長が外務委員会が済んだあと声明といいますか、談話を発表しております。やはり委員会における質疑応答というものは客観性があるものだと私は考えるのであります。主観的に外務大臣がどう考えておつても、世の中の聞く人は同じだと聞いたときは、やはり同じだと理解するのが当然だ、こう思うのであります。その点は主観がいかように動いても、客観的なものがあることを私は知らなければならぬと思うのであります。  そこでこういうことが言われておるのであります。岡崎外相は須磨委員質問に答えて、政府は憲法を改正することなく自衛軍を創設するという改進党従来の主張に同調する趣意を明らかにした、政府は防衛に対する改進党の主張を認めて、これによつてMSA援助について対処せんとするものと認められる、この言明は政府の決定の結果なされたものと認められる云々とありまして、やはり私もこれを聞きまして同様な感じを受けたのであります。もう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  109. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 改進党の松村幹事長のおつしやつたことについては、どうぞ松村幹事長にお確かめを願いたい。私は私の言つたことについてだけ申し上げます。私はその間答におきまして憲法を改正する意思もないし、また大質的に憲法が改正になるような協定を結ぶ意思もない、こう言つております。憲法を改正しないということは、政府としては一貫して戦力は憲法において禁止している、こういう建前をとつておりますから、戦力は持てない、また持たない、こういうつもりでおります。
  110. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 何も私は松村謙三君の言明に対して外務大臣から答弁を求めようと思つたわけでなし、こういうような客観性もあるという一つの事例を引いたのでありまして、やはりそういうような世の中の動きに対して、賢明なる眼を払つてもらいたいという私の考え方を申し上げたのでありますから、この点は御了承願いたいと思うのであります。  そこで問題になりますものは戦力とは何ぞやということであります。今政府で考えております、今までの質疑応答の中で現われたところは、MSA援助を受ける場合においては、新たなる防衛の義務が負わせられると言つておる、負わなければならないであろう、こう言つております。防衛の任務とは何であるかということは、おのずから協定によつて生じて来ようと思うのでありますが、それは木村保安庁長官が言つております通りに、保安庁法のいわゆる第四条の規定をかえて自衛のためなら、防衛のためなら保安隊を使つてもいい、そういうぐあいに書きかえるということが言われておるのであります。それについては昨年の十一月二十六日に政府で発表いたしました戦力の解釈に対する統一した意見がある。その意見との間に私は非常に躍進をした姿を見るのであります。いろいろ書いてありますが、大体この軍備とか戦力というものは、相対的なものであるということは私もこれを承認いたします。しかしながらこの点はやはり社会通念からいたしまして、この間のように現在の保安隊の持つております組織、しかも保安隊については警察予備隊から保安隊に切りかえられる場合において、諸君こそ新国軍の基礎であると言つて総理大臣は警察予備隊の若い隊員に鞭撻激励をなしております。すなわちそこには国軍的考え方を持つてつたことには間違いございません。しかもその際の装備あるいは富士山麓において行われた演習、あれらを見て、これが戦力でないという否定にならないと思う。しかし一歩を譲つて政府の考え通りに解釈をしてみますならば、政府は戦力について保安隊及び警備隊は戦力ではない、これらは保安庁法の第四条に明らかなるごとく、「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊」である、こういう規定をしております。その本質は警察上の組織である、従つて戦争を目的として組織されたものではございませんから、軍隊でないことは明らかであります。また客観的にこれを見ても、保安隊の組織、編制は決して近代戦を有効に遂行する程度のものでないから、憲法の戦力には該当しない、こう言つております。この点は一応認めることにして、今度MSA援助を受入れることになつて、防衛組織を切りかえて、いわゆる外敵の侵略に対してこれを受けとめる機関に保安庁の規定をかえたときに、これは明らかに戦力であると思う。これを戦力でないと言うならば、私は何をもつて戦力とするかということでありまして、明らかに今までの規定より一歩前進をいたしますならば、今まで政府が戦力に対する解釈を統一をしたものから、この解釈が防衛の機関としてこれをとるということに躍進した形だけはわかつて来ようと思う。これに対する御見解を伺いたい。
  111. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府としては、一貫して憲法九条第二項の趣旨は、侵略に流用されることを防ぐために、戦力の保持を禁じておると解釈しております。そこで戦力を保持することを禁じておりますが、この戦力というものの基準が何であるかというと、われわれの解釈では、近代戦争を有効に遂行し得る力である、こう思つておりまして、この有効に近代戦を遂行し得るやいなやということが、戦力の唯一の判定基準であろうと思つております。いろいろ説明するときには、さらにこういうこともある、ああいうこともあるということをつけ加えることもありますけれども、ほんとうの戦力の判定基準は、近代戦争を有効適切に遂行し得る総合的な力、こういうことになると思います。従つて名前は陸軍、海軍と言おうとも、あるいは任務がどうであろうとも、この判定基準において戦力でないものは戦力ではないのである、戦力であるものは戦力なのであります。保安隊は保安庁法で規定されております。これを将来どうするかは保安庁できめることでありますが、りくつだけを申せば、戦力にならないものを持つておる限りにおいては、これは名前をどうつけようと、目的をどうしようと、一向戦力にはならないと考えております。
  112. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そうしますと、侵略に対する防衛措置といつたようなぐあいに、今までは警察的機関として国内治安に当つてつた保安隊が今度は切りかえられて、侵略に対する一つの任務を持つようになつた。そうなつて参りますならば、明らかにこれは戦力であり、一つの軍隊に質的転換を行つたことになると思いますが、その現実も否定するわけですか。それではもう一ぺん伺いますが、緒方副総理の言を引くのでありまして、緒方副総理の言うことに答弁を求めようというのではありませんから、ひとつこれは御了承願つていただきたいと思うのであります。緒方副総理は、昨日の東京新聞を通じてこういうことを言つておる。「たとえ日本が原爆やジエツト機を保持しても、これを国際紛争解決の手段として行使しない限り戦力ではない、またその行使は自衛のためであるから、保安隊などの海外派遣は認められない。」こういうような考えでありますが、これと同じような考え方を政府の統一せる意見として考えてよろしゆうございますか。
  113. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは緒方副総理に聞いていただきたいのですが、私が承知しておりますところでは、緒方副総理が長いこといろいろの事情を話したところが、そのうちのごく一小部分をとらえてクローズ・アツプされたのがその記事のようでありまして、全体の緒方副総理のお話は、大分それとは違うと私は了解しております。
  114. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 そうしますともう一ぺん念のためにお伺いいたします。改進党の自衛軍組織は、今の近代戦争を遂行するに足るものを持ち得ないことは、改進党も私はわかつておろうと思うのであります。従つてそれと同じような考えであるかということについて、もう一ぺん私は言明を願いたい。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は改進党の諸君がどういうふうな真意を持つておられるかということについては、詳しくは確かめておりません。ただ須磨君のお話によりますと、憲法は改正しないのだということであります。またMSA条件もありましようけれども、さしつかえなければ受けた方がよかろうという御意見のようであります。その範囲内においては私は自由党の意見に同調されたものと思います。
  116. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 外務大臣が野党第一党の改進党の外交政策を存じておらない、これははなはだうかつ千万なことであると私は思うのであります。少くとも外務大臣である限りにおいては、改進党といわず一名の共産党といえども、その政党がいかなる外交政策を持つておるかということを考えてやるのが、外務大臣としての当然の任務でなければならぬと思うのであります。これに加えて、友党として大いに政策協定をもやらんとする改進党に対して、外交政策を存じ上げないということは、はなはだ遺憾千万に考えます。そこで独立国家として自衛権のあるということは、私といえども認めます。自衛権がある以上は自衛力の培養もやらなければならぬと思います。しかし自衛力には私は二つあろうと思います。一つは広い意味の自衛力であります。一つは狭い意味の自衛力であります。広い意味の自衛力国民生活の安定であります。狭い意味の自衛力は軍隊であり、戦力であり、大砲であろうと思うのであります。従つて憲法九条の規定は、広義の意味の自衛力といいますか、国民生活の安定ということが確保されることは当然であろうと思うのでありますが、これが組織化され、集中化された力になることは禁止しておるのであろうと思います。明らかに保安隊というものは一つの戦力であり、さらにかりに一歩譲るとしても、MSAを受けることによつて、今までの警察的任務を持つてつた保安隊が、今度は防衛的任務にかわり、直接侵略に対して防衛をやるということになると——もう一ぺん私は念のために伺つておきたいが、それでも戦力でないというお考えですか。
  117. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAを受けるにあたつて保安隊の性格をかえるというようなことは私は言つておりません。これは先方も保安隊なり日本の防衛力をどういうふうに増強するか、その時期とか態様とかは日本政府が決定すべきもので、アメリカ側の関与すべきものでないということは言つております。そこで繰返して言うようで恐縮ですが、戦力でないものならば、りくつから言えば目的のいかんを問わずやはり戦力でない、こうわれわれは考えております。
  118. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 政府の方では、保安隊の考え方をかえるかかえないかということについては、意見が一致しておらない。あなたは考えておらない。木村長官はこの席上において、第四条を改訂して、今までは警察的任務であつたが、これを防衛的任務に切りかえよう、こういうぐあいに言明せられておるようであります。そのときにはたしかあなたもここに同席されておつた。これは新聞で見たのでありますからわかりませんが、同席せられておつたように思います。およそ同僚大臣が同じ席上において言つておることが食い違うということはあり得ないと思うのであります。一体それはどつちがほんとうと考えればよいのですか。
  119. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は考えておらないというのではない。担当大臣ではありませんから、その任務ではないのであつて、保安庁でそれは研究しておりますとただいまも申したのであります。
  120. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 答弁あとで速記録を調べていただけばわかりますけれども、私はそうでなく、そういうことは政府としては考えておりませんということを言われたと思います。こういうような一日自分の言つたことをあとから取消したり、変更するようなことが私は一番いかぬと思うのです。こういう点を申し上げてはいかがであろうと思うのでありますが、われわれ委員として一番とうとぶべきことは発言であります。われわれ一ぺん言つたことはあとで取返すわけには参りません。政府では最近かつてに取消したり何かしておりますけれども、世の中ではそういうことは許されぬことです。やはり政治家として一ぺん品から出たことは、あとまで責任をとらなければならぬのであります。今あなたは前に言つた考えておらぬということを、いやそれはそうじやない、こういうようなことであつては私は非常に遺憾に考えます。それは戦力に対する考え方も同様であります。この間須磨君にお答えになりましたことは、ただそのときのおざなりで、要するに前提があつて一つの歓心を買わんがために言つたことであつて、本心は何らかわりがない、依然としての政府の方針だということですか。
  121. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは速記録もお調べにならないで、私の言つたが間違つて、あなたの言つたことが正しいのだとおつしやることが私にはわからない。私は、政府としてはまだきまつていないのであつて、保安庁としては研究しておるということを申したのであります。何にもその間に矛盾はありません。なお須磨君にお答えしましたのは、私のおざなりではなくして、ずつと考えていることと合うからそう申したのであります。
  122. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 私は何も速記録を見ないで質問をしておるごとくでありますが、もし産経が誤りでありますならば、おのずから別でありますが、これは本社速記として出ておりますから、その言葉を引いて私は申し上げたのでありまして、その点そう私は不用意なことを申し上げておるのではないのであります。何も国を思う発言をするのはあなただけではなく、われわれも真実は真実としてやるのでありまして、須磨君に答えたということは、何ら根拠なくしてやつておるのではないのでありますから、この点もひとつ親切な答弁を願いたい。私の申し上げたいのは、もし産経の本社速記というのが誤りでありますなら別であります。この一番うしろの重要なところを取上げていたのでありますから、決して私はうそなど申し上げません。従つて客観的に見れば、あなたの言つたことがもし正しいということになれば、輿論がこんなに動きません。加えて、政府も統一をするために閣議を開き、自由党においても代議士会を開いてあなたに説明を求めるというようなことはやられません。やはりそういうようなことをやられることは、やはりどこかに疑惑があるからだと思います。この疑惑を解くことは当然でありましよう。私は当然だろうと思うのです。だから私どもが受けた感じから申し上げますならば、改進党の三木君なんかの言つておる、憲法を改正しなければ、なしくずし軍備はだめだという考え方とは違いますけれども、芦田さんの言うような、いわば戦力自衛の憲法解釈に対して、また今の穗積さんとあなたとの質疑応答を聞いていても、自衛戦争、こういう表現が用いられました。自衛戦争でも憲法は禁止しておるはずです。こういう点については、やはりあなたの表現の中に、不用意に改進党と似ているやつが出て来るわけです。それではこのようにして、そうならそうだと一ぺん言つたら、やはりそうだということにしなければならぬ。違うならばやはり違うという点を、もう一ぺん明白にしていただきたいのであります。
  123. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今淺沼君のおつしやるのは、私が今ここで保安庁法の改正について、私は知らないと言つた、保安長庁官は考えておると言つたというふうにおつしやるから、それは違う。今私が申した速記を見なければ、あなたが聞いただけでは正しくない、こう言つたのですが、この産経の末尾というのを私は伺つておりませんから、もう一ぺん読んでいただいてから御返答いたします。  なお自衛戦争と言われたのは穗積君であつて、私が言つたのじやありません。
  124. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 改進党の須磨君に対する答弁、これが一番問題になつておるわけでありますから、もう一ぺん念のために申し上げます。「そうすると憲法を改正しないということと、MSAは特別の事情がな、限りは受けるのだ、受けたいのだ、こういう点では上と下のわくは一致していると思います。その中において自衛軍といいますか、あるいは今保安隊といつておりますが、名前はいろいろ言えましようが、それが実質的に同じようなものになるのだ、こういうことをただいま須磨君がお考えになつてもわれわれとしてはやむを得ない、こう考えております。」須磨君の問いと同じだということを表明しておるわけです。これは明らかにただいまの自衛軍を認めるという改進党の主張と同じだということを言つたから、それで同じかということを聞いておるわけです。
  125. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は同じだとは言つていない。須磨君がそうお考えになつてもやむを得ない、御解釈はやむを得ない、こういうことを言つておるわけです。
  126. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 解釈されても、どうもやむを得ないといつて、木で鼻をくくるような御答弁でございましたが、社会的通念からすれば、やむを得ないという答弁は消極的是認です。これはやはり外務大臣がいくら外交的言葉か知りませんが、世の中においてやむを得ませんと認めることは、消極的是認であるということには間違いありませんし、私は消極的是認をしておるということを確認しておきます。これで終ります。
  127. 上塚司

  128. 田中稔男

    田中(稔)委員 これはこの前もちよつと聞いたことでありますが、アリソン大使が第一回のMSA援助交渉の際に、あいさつを述べられて、その中に、アメリカとしては駐留軍を一日も早く引揚げたい、こういうふうな希望を表明されたのでありますが、その後の交渉の過程においても、米軍の撤退について、相当強い意向が表明されたように聞いおるてのです。これは単なるゼスチユアであるか、それともアメリカとしてはほんとうにそういうことを考えておるのか、外務大臣の御所見を伺いたい。
  129. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ側としては、当初から意見はかわつておりません。安全保障条約を討議しております当時から、これは暫定的のものであつて、でき得る限り早くアメリカ軍は引揚げたいのだ、こういうことを申しております。
  130. 田中稔男

    田中(稔)委員 アメリカの撤退の希望というのは、一体どういう理由、どういう事情に基くものであるかということを、お尋ねしたいと思いますが、アメリカの軍隊が日本に駐留しますと、アメリカの納税者の大きな負担になるという意味で、国内の輿論がやはりそうさせたのであるか。あるいはまた内灘問題その他に現われた、あの日本国民的な一種の抵抗、こういうふうなものにかんがみで、こういう雰囲気のもとにおいて、アメリカの軍隊がいつまでも日本に駐留を続けるということは、いたずらに反米的な感情を激成するだけで、これはどうもアメリカとしては思わしくない、一つはこういう考え方もあろうと思います。あるいはさらに、根本的な問題でありますが、日本の戦略的な地位についての評価の問題であります。先年ロイヤル陸軍長官が日本に参りまして、日本の戦略的の地位というものは、あまり高いものじやない、むしろこの際日本から早期に米軍の撤退を行つてアメリカ日本を放棄したらよくないか、そこまで極端に言わなかつたけれども、とにかくそういうふうな意見を漏らして、マツカーサー元帥と論争したということも聞いております。そういうふうな根本的な見解がいくらかそこにあつて、早く引揚げたいという考えを持つておるのでありましようか。そういうふうに、私どもは三様に想像がされるのでありますけれども、そういうことについての外務大臣の御意見をお伺いをしたい。
  131. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申しましたように、当初からそういう気持を持つておるのですから、内灘問題ができたからとかなんとかいう、今始まつたことじやないのです。但し費用とか、いろいろな理由がたくさんありましよう。しかし根本的な理由は、日本は独立国であつて、独立国が、自分の国を自分が守るのは当然である、ただ現在ただいまにおいて、日本は有効な自衛権を行使する力がないから、それで暫定的にアメリカ軍がおるのだけれども、日本に自分で守れる体制をつくつてもらつて、できるだけ早く引上げたい、こういう根本の考えであります。
  132. 田中稔男

    田中(稔)委員 かりに撤退が行われるとしまして、まず第一に考えられるのは、アメリカの地上部隊、陸軍が日本から撤退するということであろうと思いますが、アメリカの陸軍は撤退いたしましても、海空両軍はなかなか日本から撤退しないのじやないかと思います。これは外務大臣にお聞きしましても将来のことはわからぬというような御答弁かもしれませんけれども、将来撤退があり得るとした場合には、一体どういうふうな順序で撤退が行われるか、そういうことについてお見通しをひとつお聞かせ願いたい。
  133. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 また希望の表明だけで、具体的にどこをどういうふうにすするということは聞いておりませんし、まだ向うも考えは具体的になつていないのじやないかと思います。従つてそういう点についてはお答えする材料を持つておりません。
  134. 田中稔男

    田中(稔)委員 それではお尋ねしますが、アメリカ側の希望希望として、日本側外務大臣として駐留軍が早期に撤退することを要請する、こういうふうなお考えはないか。内灘問題その他を見ましても、国民の感情は米軍に対してよくないことは、事実御存じの通りなのでございまして、もちろんわれわれもアメリカ日本との長きにわたる友好というものは、これは希望するものでありますが、そういう場合に、こういう状態がだんだん深刻化して行くということは、私ども非常にこれは日本のために憂えるのでありますが、外務大臣としてはむしろこちらから早く徹退していただきたいという希望の表明をされたことがありましようか、お聞きしておきたい。
  135. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれの考え方は、たとえば一つの町の中におきまして一軒の家が火の用心を怠つて、火事を起せばよその家に迷惑をかける、国際社会においても一国が防備なしにして侵略をこうむれば、よその自由諸国がみな来て助けなければならぬ、非常な迷惑もこうむるし、これによつて世界の平和が乱されるということになる。従つてこういう意味で日本の防衛の力が足りない間は駐留軍にいてもらつて、ここで防いでもらう、こういう根本的の考えで来ておりますから、日本の力が十分にならないうちにそういうことを言い出す考えはありませんが、できるだけ早く事情が許せば少しずつでも自衛力を増強をして行きたい、こういう気持でおります。
  136. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣から、日本保安隊が漸増されるとしても、なかなか当面急なことではなかろうというようなお話をたびたび承つておるのであります。大体保安隊はその員数をふやしたり、急速に実力を増強するというようなことはあり得ないような御答弁であります。そうだとすれば、日本が直接侵略——こういうものは私はあり得るかどうかわからぬが、とにかく直接侵略があり得るとして、その危険に備えるためには、いつまでもアメリカの軍隊におつてもらわなければならぬということになると思うのです。だからこの場合は二者択一でありまして、引揚げてもらうためにはやはり保安隊を強化する。(並木委員自衛軍をつくれ」と呼ぶ)今隣におる並木君が自衛軍といいましたが、そういうふうな名前はどうでもいいとして、保安隊の実力が強化されなければならぬ、強化されなければそれを補うためにアメリカ軍におつてもらわなければならぬ、そのことは岡崎さんもそうお考えになるでしようし、アメリカ側もそう思うと思つております。その辺のことでありますが、保安隊を強化しない、保安隊の急速な増強はないというようなお話であるとすれば、いつまでもやはり駐留米軍は撤退しないということになりますが、そういうことでよろしいですか。
  137. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は自分の担当でない保安庁の問題について、急速にふやすとかふやさないとか、そんなことは申さない、ことしの予算について申しておつたのであります。ことしの予算については相当急激な増員等が組まれておらないということを申しておつたので、先のことは私の言うべき権限の範囲内ではないのであります。
  138. 田中稔男

    田中(稔)委員 それは大いに関係があると思うのです。まず内閣の一体としての責任もあるし、また外務大臣は外交の交渉、しかもこれは軍事援助ですよ、軍事援助の問題について交渉に入つている。そうして条約協定の条文にどう表現されようと、アメリカ側の関心は、日本が直接侵略の危険に対して十分に備え得るところの実力——これは戦力ともいうべきでありますが、そういう実力を備えることを希望し期待しているわけであります。だから結局やはりそういう保安隊の増強というような問題も、外務大臣として当然頭に入れて折衝の任に当つていただかなければならぬわけでありまして、外務大臣答弁はなはだ私は心得ないと思うのですが、木村保安庁長官は例によつて非常に正直に、こういうことを言われております。二十四日院内で記者会見をいたしました中で、MSA交渉アメリカが表明した駐留軍撤退の意向は、MSA援助と従来米軍が日本の防衛上負つて来た責任等を振りかえようとするものとして、重大な意味を持つておる、こう言つておられます。私はこれがほんとうだろうと思う。つまり米軍が撤退するためには、保安隊が増強されて十分な実力を持つということが、私は前提条件になると思うのです。そのことについてもう一ぺん外務大臣の御答弁をお願いします。
  139. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も日本の防衛の力を漸増したいと思えばこそMSA援助を受けたい、こう言つておる。ただこれをいつ、いかなる程度にどういう形で増強するかというところはこれは私の任務じやない、保安長官が考えることなんだ、ただわれわれとしても独立国である以上は、できるだけ自衛力を増強したい、こう考えておりますから、そういう意味でMSA援助を受けることが適当であろう、こう考えてただいま交渉しております。
  140. 田中稔男

    田中(稔)委員 米軍が撤退する場合の前提条件としましては、保安隊が強化され、十分な実力を持ち、そしてアメリカがこれに託して心配ないという状態になることが必要だろうと思うのです。外務大臣もそういう点については私の質問を肯定されましたが、もう一つの場合、たとえば内灘その他における国民的な抵抗運動というようなものが非常に大きくなる。全国六百何箇所からありますから、至るところに内灘のような問題が起りますと、たいへんなことになる。われわれとしてはもちろん希望しないところでありますけれども、どうも生活がその基地のあるために脅かされる、しかも政府の補償が十分でない、もう食つて行けない、こういうふうなことになつて、そうしてまた例の風紀の問題、その他これは国民の矜恃にかかる、国民の誇りを傷つけるものである、こういうことで若い者や何かが非常に憤激をする、そういうことからだんだん発展して行きまして、駐留軍に対して一つの実力行動というものが起る。外国の例では、たとえばエジプトにおいて、エジプトの国民が英軍のスエズ地帯からの撤退運動を実力に訴えてやつておる、こういうふうな事態が遺憾ながら将来かりに起つたという場合、こういう場合に駐留軍が撤退するということも、私は一心想像できないことはないと思うのでありますが、現在の日本の動向としまして、そういう心配は絶対にないということを、外務大臣はここで言明なさることができるかどうか、これをひとつお伺いしたい。
  141. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 十分にお言葉がとれないのですが、たとえば内港のような問題は、政府にも十分説明の行き届かなかつた点はあるのであります。私は国民の良識がああいうものに全然反対するとは考えておりません。エジプトの例などをお引きになりましたが、もちろんそんなことは私どもは考えておりません。
  142. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう一つ、米軍の撤退が平和的に行われる場合がかりにあるとしますならば、極東において日本を取巻く、諸国アメリカなり、イギリスなり、それからソ連なり、中国なり、北鮮なり、関係諸国が何か極東会議というようなものを持ちまして、そこで話合いをつけた上で、アメリカ軍が撤退するという場合も私はあり得るだろうと思う。しかもこれが最も望ましい状態である。わが社会党におきましては、実は外交政策としていずれ近く発表しようと思つておりますが、日本を永久に平和な国として、これを中立化するために、今申し上げましたような極東並びにもつと広い範囲内での関係諸国会議で、永世中立の国際条約を結んでもらいたいと思うのであります。そうなりました場合には、米軍が撤退し得ると思う。そうして米軍が撤退する、つまり日米安保条約が必要でなくなる。こうなりますと、同時に中ソ友好同盟相互援助条約というものも自然その必要がなくなる。こういうことになりまして、極東の平和が確立し、日本の安全が永久に保障されるということになるのでありますが、こういうわが社会党左派の外交政策についての岡崎外務大臣の御所見はどうでありますか。
  143. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 社会党左派が雄大なる計画を持つておられることは非常に敬服いたしますが、第一次欧州大戦のときは、ベルギーは永世中立国としてまわりの諸国、つまりドイツにもフランスにも、イギリスにも、その永世中立の権利を認められ、かつその義務を履行することを要請されておつたのであります。しかるに戦争が始まりますと、この永世中立の条約は、悪く言えば、一片のほごとされてしまつたのであつて、私はこういう過去の事実から見て、社会党左派の雄大なる計画が実現わされることを望んでやみませんが、自由党内閣ではちよつと受取りかねるのであります。
  144. 田中稔男

    田中(稔)委員 ごもつともで、自由党の内閣では絶対にそういうことはできない。しかしそういうことになりませんと、日本の安全はほんとうに確立しないと思うのでありますが、その問題は意見の相違になりますから、よします。  その次に現在の日本保安隊が戦力でない、これが増強されても戦力には至らないというお話を聞いております。しかもそれは憲法の許さざるところであるから、こういうふうな御説明でありますが、なるほど戦力に至らざる実力ではあつても、アメリカの軍事援助が行われまして、装備その他がだんだん強化されて行きますならば、保安隊の実力がだんだん増強する、しかもこれが急速に増強する、こういうことになりますならば、結局これは戦力に至らざる実力ではあるが、戦力に近い実力ということには私はなろうかと思いますが、外務大臣はどうお考えになりますか。
  145. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府としましては、これは先のことで、いつのことかわかりませんけれども、行く行くはとにかく日本の国は、自分たちの手で守れるようにいたしたいというところまで考えております。但しそこまで行く前には、やはり憲法の改正も必要であろうし、またそれに至るまでには、経済の回復とか、国民の心構えとか、いろいろなことが入り用でありましよう。しかし究極にはそこまで行くべきものだと考えております。ただ憲法に違反するようなことはいたしませんし、もし国民の輿論がそこまで来て、いよいよ憲法改正ということになれば、輿論に従つて改正するだけの話であつて、今のところはただその方向に向つてはおるけれども、憲法を改正するところまで行く考えはないのであつて、いわゆる八合目説になるのであります。
  146. 田中稔男

    田中(稔)委員 そこで日本保安隊が戦力ではないといえば、私どもはそんなことは考えない、戦力だと思うのだが、増強されても戦力ではない、実力だ。しかし米軍がおつて、これは明らかに戦力である。そうすると日米安保条約なり、近く結ばれる相互防衛援助協定、こういう協定の精神によつて、戦力としての米軍と戦力に至らざる実力としての保安隊とが、直接侵略が行われたような場合に、そのために協力するということはもちろんあり得るわけです。そういう場合に保安隊は、それ自体戦力ではなくとも、日本アメリカの総合された戦力の一部分を構成するということは言えると思うのでありますが、これはそう解釈してよろしいかどうか。それ自体は戦力ではないが、戦力を構成する部分であるということは言えると思う。
  147. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 結局アメリカ軍と日本保安隊がどういうふうに協力するかという問題になりましようが、憲法に規定しておりますのは、日本において戦力を持つてはいけない、こういうことでありますから、その憲法の規定に忠実に従い、われわれは戦力を持つもりはない。
  148. 上塚司

    上塚委員長 田中君、もう時間が来ております。
  149. 田中稔男

    田中(稔)委員 たくさん質問したいことがありますが、時間がありませんから一点だけ。外務省の最近のコミユニケによりますと、免税、機密保持、特許権、広報活動につきましては、すでに双方意見が一致を見たと書いてありますが、その中に特に機密保持の問題についてこう書いてある。「両国政府はこの協定従つて供与される機密軍用資材、役務または情報が漏れまたは危険にさらされることを防止するため両国政府の間でその都度合意する安全保障の措置をとる」。私はこの点で御質問したいのは、かつての軍機保護法というようなものが復活する危険を予測するのであります。米軍が与える装備、それからそれを使つてのいろいろな訓練というようなことになり、機密保持の必要が必ず発生する。しかもこれについては外務省同意を与えている。そうなりますと、機密というものはある一箇所に始まりますと、それがずつと蔓延するものでありまして、米軍の機密保持の問題から社会全体に、憲法によつて保障された基本的人権等各種の自由というものをだんだん阻害し、圧迫するというような危険が考えられるのでありますが、こういう点につきまして、外務大臣はどういう手段をお考えになつておりますか。
  150. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 具体的にそこのところをどういうふうにしていいかということはまだ結論が出ておりません。ただごくわかりやすく申し上げますと、たとえばアメリカ側からある兵器が来て、非常に特殊な装置を持つている。これがもしよそへ売ると言つては変ですが、この内容をよその国にやりますれば、何十万ドルという大きな金にかわるような装備を持つておる。もし日本の国内の法令が、こういう大事なものをよそに渡して、たとえば五十万ドルの大金をその代償としてもらつたという場合に、本人がただその職をやめさせられる、懲戒免官になるというだけであつたならば、イデオロギーで共産党とかどうとかでなくとも、ただ利益のためにそういうことをやる場合もあり得るのでありますから、そういう点をどういうふうに取締るか、たとえばそういう危険なものは、日本に取締り法規がなければ、こちらに譲り受けるわけに行かない、こういうような問題になつて来るのであつて、それを具体的に取締ろうというのでありますが、いよいよ何か実際の取締り法規を考えるという場合には、国会の承認を得なければできないことでありますから、そのときに十分御審議ができると思います。
  151. 上塚司

  152. 戸叶里子

    戸叶委員 きのうのMSA交渉の中で、今機密保持のことはお聞きになりましたが、私お伺いしたいのは、今まで日本側が五百十一条の六項目を全部協定中に織り込む必要がないと考えていたのに、今度の交渉でこの六項目全部を織り込むようになつたやに伺つておりますけれども、そのように今日六項目全部を織り込む必要を認めた根拠はどこにあるかを承りたいと思います。
  153. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 初めにお断りしておかなければなりませんのは、ただいまの交渉は、こちらの案というのも、別に政府が確定した案ではないのであります。いわば試みの案であります。先方も試みの案を出して、お互いに意見交換して問題点を発見し、その上でかなり具体的な案の構想ができた場合に、政府としてもそれを検討して、よいか悪いかをきめる。すなわち私などもその案自体の作成にはまだ入つていない段階であります。お互いに考え方を示し合つてはそのよしあしを検討しておる段階であります。そこでただいまのお話のは、これはイギリスフランスその他ユーゴでもどこでも、今までMSA協定を受けておる国との協定をごらんになれば、その第一条の中にこの援助はサブジエクト・ツーと書いてありますが、アメリカ相互安全保障法の規定するタイムス・エンド・コンデイシヨンスに従つて受けるのだ、こういうふうにどの協定文にもなつております。すなわちそれでもつて当然五百十一条の(a)項の六項目というものもその中に入るわけであります。ただそれを協定案文の中に入れるか入れないかということの適否を検討しておるわけであります。いずれにしても、これはどういう形をとりましてもアメリカの安全保障法の規定に基いてこの援助を受けるのでありますから、内容的には大差ないのであります。今どういう形にしたら一番適当であるかということで話合いをしておる段階であります。
  154. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの御答弁によりますと、これは入れても入れなくても大した差がないというお答えでございましたが日本の場合は特殊な国家性格を持つておりますので、この点は非常に違つて来るのではないかと思います。たとえばあの六項目の中で、特に二番目の国際的緊迫の原因を除くため共同の行動をとることか、三番目の軍事的義務の履行とか、そういつたことを述べた場合とそうでない場合とは非常に違つて来るのでありまして、特に日本の場合にはその六項目を述べるとするならば、何かそこに除外規定を設けなければならないように私は考えますけれども、その必要がないとお考えになる根拠を承りたいと思います。
  155. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいずれにしても五百十一条の六項目のみならず、その他のMSAの法律に規定してある条項はみなサブジエクト・ツーになるのであつて、特にそういうことを書かなくても、書かない場合には一般的にタイムス・エンド・コンデイシヨンスの字でカバーされるのであります。ですからいずれにしても同じことであると考えておりますが、ただ念のために日本の場合に、何か特殊にそれをあげてみて、それと違う留保というものが必要かどうか、これはもちろん研究中であります。
  156. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは研究してみなければ、まだその特殊な規定条項を入れる必要がないとおつしやるわけですか。
  157. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 とにかく前から非常に疑いをこうむつておりましたが、これは予備交渉はいたしておらない、この間からがほんとうの交渉なのでありますから、日本の場合にこれがどんなふうに適用になり、どういうことをするかということは、これから話し合つてみなければわからない、今まで話し合つたわけではないのでありずす。
  158. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは岡崎さんが入られて話し合うのはいつでございますか。そしてまた岡崎さん自身外務大臣として、この点は別に今までの考え通りで書いても書かなくてもかわりはないとお考えになられるかどうか。
  159. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も人間であり、ことにあまりできがよい方でないのです一から、今はそう考えておりますが、だんだん研究してみれば考えがかわるかもしれません。今まだ研究の途中でありますから、今の考え方を申し上げます。
  160. 戸叶里子

    戸叶委員 岡崎さんの御答弁はいつでもきつねにつままれたような答弁で、私はまことに遺憾に存じます。私どもが考えると、この点はそのままに協定の中に入れますならば、あとなつてから問題が起きて来るのではないかということを懸念いたしますので今ここで問題といたしましたが岡崎さんはこれから研究してみなければわからないとおつしやいます。これほど重大なことでございますから、もつと早く研究しておいていただきたいということを要望いたします。  もう一つ伺いたいことは、先ほど淺沼委員との質疑応答の中にもございましたが、戦力ということに対していろいろ言われております。近代戦を遂行し得ないものは戦力でない、これは私どもが耳にたこができるほど聞かされております。今ここで常識的に考えてみますと、近代戦というものは結局米ソの二大陣営が相手国として想像されると思うのです。その場合に、フランスにしてもイギリスにしても軍隊を持つておりますが、それはとてもフランスなりイギリスが単独で戦うことはできない。けれども自国を守るためには、地域的集団安全保障なりによつて自分の国の安全を求めており、その義務、責任を果すために、軍隊を持つているのだと私は考えております。それでも戦力を持つ軍隊といわれておるのでありますが、日本ではまるでそれと同じ内容でありながらも、それに対して、戦力は持たない、軍隊ではないという表現をしております。今申し述べたような面からいつて、違つている点を述べていただきたいと思います。
  161. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 戦力というものは、よく申しますように相対的なものであり、地域的な環境とか歴史的な事情によつて違いますから、一概には申せませんけれども、フランスを今お引きになりましたが、フランスは人口こそ日本の半分にも満たないのでありますが、軍隊の数だけを比べましても日本の数倍持つております。また飛行機も非常に優秀なものを持つております。またその他の装備も非常に優秀なものを持つております。これがどこまで行けばというような議論もありますけれども、一般的、社会的な通念からいつて日本保安隊を軍隊、しかもフランスの陸海空と違わないものだということは、私は言えないだろうと思います。
  162. 戸叶里子

    戸叶委員 私はその意味でフランスなりイギリスの例を引いたのではありません。内容の意味で引いたのでありまして、フランスなりイギリスは堂々と軍隊を持つております。けれども内容から申しましたときに、フランスなりイギリスなりは、自分の国を守つて行くために軍隊を持つており、しかもその自分の国を守るには自分の国だけではできない。集団安全保障なり何なりに加わらなければならない。その義務を果すための軍隊を持つておる。そうであるとするならば、日本の場合にもそういう内容を持つているのに、どうして違うかということを承りたいのであります。
  163. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実際の保安隊フランスの陸海空軍とをお比べになるならば、やはり雲泥の相違であります。保安隊がどこまで行けば軍隊になるかということになりますと、それは相対的なことでありますから、はつきりしたことは言えません。これは社会通念から言つて、どこまで行つたらあぶないぞというところはだんだん出て来るだろうと思います。
  164. 戸叶里子

    戸叶委員 私の表現が悪いかどうか知りませんが、外務大臣は、私の聞いていることに答えていただけないのです。つまり何と表現していいか私はわからないのですけれども、今軍隊を持つということは自分の国を守ることであつて、他の国を侵略するために軍隊を持つのだというような、そういう考え方は、おそらく国連憲章によつても許されておらないと思うのです。そういう観点に立つて考えてみたときに、私がフランスなりイギリスなりの大きな国の例を引いたことが間違つておりましたが、さつきルクセンブルグでしたか、三千人しか兵隊がないという国、人口の一%しかないという国、その国の例を引いてもいいのですけれども、そういうような国でもやはり戦力を持つた、自国を守るための自衛隊とでも言つてかまわないと思いますけれども、戦力というものをはつきり持つておりますから、戦力を持つた軍隊と言えると思うのです。そういう意味からいつて日本保安隊というものはどこが一体違うかということを承りたい。
  165. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ルクセンブルグという国を一つあげてはかえつて失礼ですから、国をあげませんが、たとえばある国が三千の、装備の非常にないようなものを持つていて、これを軍隊と称しておる。称すのはかつてでありますので、われわれもたとえば日本における消防隊を消防軍と言つたつて、ちつともさしつかえない。ただ日本の憲法が禁止しているのは、戦力を禁止している。よその国が、三千の非常に貧弱なる装備を持つてつて軍隊といつても、それが戦力であるかどうかという基準は別問題である。軍隊であるから、すべて戦力を持つておるというわけではないのです。同時にわれわれの方からいえば、名前がどうであろうとも、戦力に至るものを持たないということになります。
  166. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、戦力さえ持つていなければ軍隊と呼んでもかまわない、こういうことになつて来ますから、結局自由党のおつしやつていらつしやるところの保安隊というものと、改進党の言われているところの自衛軍というものとの違いがどこにあるか、私頭が悪いのでわからないのですけれども、教えていただきたい。
  167. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私がたびたび申しているように、戦力でなければそれを軍と呼ぼうが、隊と呼ぼうが、それは同じことだというのです。ですからもし改進党のおつしやつた内容が同じことならば、自衛軍と言われようとも何と言われようとも、名前だけの話であつて、中身にはかわりがないのです。ただわれわれが軍と言うのが適当でないというのは、普通の通念からいいまして、軍隊というものは相当の大きな、その国にふさわしい、人口がこれだけあればこのくらいというような通念があるわけであります。また軍隊というものはその国に交戦権がありまして、その交戦権を使うのが当然であります。日本の場合は交戦権を放棄しております。そういう交戦権のない国におけるそういうものを軍隊と呼ぶことが適当であるかどうか、これは呼んだつてさしつかえないわけでありますが、適当であるかどうかというと、私は適当じやないのではないか、こう考えております。
  168. 戸叶里子

    戸叶委員 今交戦権のお話が出ましたが、政府のお考えによりますと、自衛のために侵略軍と交戦するのは、憲法に禁じている交戦権に基くものではない、こういうふうに言われていたと私は了解いたしております。そうなつて来ますと、保安隊がそれをなし得ることになりますから、事実上これは自衛軍ということになる、こういう点から考えてみましても、私は改進党の言われる自衛軍というものと、岡崎さんの言われる保安隊というものが少しも違わないように思いますが、その点はどうかということを承りたい。
  169. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 改進党のお考えとわれわれの考えが同じであれば、たいへんけつこうであると思います。しかし憲法にいいます「国の交戦権は、これを認めない。」ということは、ほかの条項にくつついてはないようでありまして、別の文章になつております。従つて交戦権というものはやはり持てないものであろう、憲法からいえば交戦権というものは放棄したものであろう、こう私は考えております。
  170. 戸叶里子

    戸叶委員 そうするとよそから侵略軍が来た場合に、日本がこれと戦うといいますか、衝突をする、そういう場合には交戦権とは言わないわけなのですね。
  171. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 交戦権というものは、戦時国際法等に、はつきりした規定があります。たとえば敵性船舶とおぼしきものを臨検したり、あるいは拿捕したり、その他捕虜に対する待遇とか、いろいろな規定があります。これを交戦権と申すのであります。
  172. 戸叶里子

    戸叶委員 今の交戦権の問題で、私さつき申しましたように、自衛のために侵略軍と交戦するのは憲法に禁止している交戦権に基くものでないということを政府のどなたかが答弁なすつていらつしやるように私は了承しております。私はそう帳面に書いておるのですけれども、そういうことは間違つておるのでしようか、確かめておきたい。
  173. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国際法上の解釈の問題ですから、具体的に例をもつて申し上げることは差控えますが、要するに交戦権という言葉から言うと、いくさをする権利のように見えますけれども、そうではないのでありまして、戦闘行為のうちにおいていろいろのことができる権利であります。
  174. 戸叶里子

    戸叶委員 戦闘行為の中においていろいろなことができる権利というと、やはりそれを詰めると交戦権になるわけではないでしようか、どうでしようか。条約局長がいられますけれども、それはどうなのでしようか。
  175. 下田武三

    下田政府委員 交戦権を憲法が放棄いたしておりますが、交戦権を放棄するということは、通俗にいいますと、戦つちやいかぬというようにおとりになる方があるかもしれませんが、これは非常に違うことでありまして、交戦権と申しますのはライト・ベリジエレンシー、国際法上一定の関係なり、一定の地位に立つことができる状態をさすわけであります。でございますから、自衛目的のために戦うということは、交戦権を行使するということとは全然無関係のものであります。憲法に規定する交戦権を行使することなく、自衛のために戦うということは憲法の何ら禁じてないことであります。
  176. 戸叶里子

    戸叶委員 そこが一番大事なところだと思います。それは何か言葉のあやのように思うのですけれどもどう考えても、自衛のために戦つていいということになると、やはり交戦権の行使ということになると私は了承しますが、それでもならないのでしようか、それを伺いたい。
  177. 下田武三

    下田政府委員 万一直接侵略が起りましたときに、交戦権を禁止しておるということは戦つちやいかぬということだとすると、これは日本国民みな敵のなすがままに自殺しなければならぬ、そういうことは国際法上禁じていないのであります。これは国家の固有の基本的権利といたしまして、自衛のためには何人といえども戦えるということであります。
  178. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣に対しましては、参議院予算委員会よりたびたび、出席を促して来ております。しかしながらこれをとめているような次第でございますが、なお外務大臣に対する質疑は有田八郎君、池田正之輔君佐々木盛雄君、中村高一君、帆足計君、和田博雄君、かくのごとく多数が残つておりますから、どうか時間を節約されてごく簡単にお願いいたしたいと思います。有田八郎君。
  179. 有田八郎

    ○有田(八)委員 この間の六月十九日の本会議におきます私の質問に対して、総理は、「現在の保安隊にしてもあるいは防衛にしても、でき得べくんば現在の程度でとどめておきたい。これを漸増するということもわれわれは考えております。しかしこれは、国力の充実によつて自然に漸増せらるる線に持つてつてはどうかと思うのでありますが、」「共産主義がどういう態度に出るか。国際の情勢は日にはかるべからざるものがありますから、いかなる場合においても防衛費はふやさぬとは申しません」、こういうふうに言つておられるのであります。もちろんこれはその通りであると思いますが、最近にMSAの問題が起りましてから、この総理の御答弁に対して多少疑いを持つて来たのであります。本日総理外務大臣並びに保安庁長官の御出席がありましたならば、その際に総合的に御質問を申し上げたいと思つたのでありますが、不幸にしてきようは外務大臣だけで、総理も保安庁長官も御出席なつておりません。そこで私は実はこの質問をどうしようかと考えたのでありますけれども総理も非常に御多忙のところでありますからして、また外務大臣も同様でありますから、きようの外務大臣の御出席の機を失します。と、またいつ外務大臣に御質問をする機会があるかわからないと思いますので、ここに外務大臣質問をいたしたいと思うのであります。従つて私の質問のうちにはあるいは保安庁長官の所管と称せられるものがあるかとも思いますけれども、もしそれで外務大臣が御答弁できないというようなことでございますれば、これはさらに後の機会に譲らなければならぬと思うのであります。  まず第一にお伺いしたいことは、戸田氏は、憲法第九条第二項に、「前項の目的を達するため、」という文句を挿入したのは同氏の提案によるものであつて従つて戦力を保持しないというのは絶対的ではなく、侵略戦争の場合に限る趣旨であると述べ、自衛手段としての戦争に用いるものとしての軍備を持つことは、憲法上許されておるという議論をしておられるのでありますが、政府としては憲法第九条を芦田氏のごとく解釈するかどうかということであります。政府は今日までそういう解釈をとつておられなかつたと思うのでありますが、念のために承つておきたいのであります。
  180. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府はやはり理由、目的のいかんを問わず、戦力というものは憲法上持つことを禁止されると考えております。その理由は、はなはだ心もとないようでありますが、芦田博士の議論とか、あるいは佐々木惣一博士の議論とか、あるいは岩田宙造博士の議論とかも伺つておりますが、多くの憲法学者の通説はやはりそういうふうに考えておりまして、その通説に従つておるのであります。
  181. 有田八郎

    ○有田(八)委員 次にただいま外務大臣が申された戦力ということについて簡単にお伺いをいたしたいのであります。政府は最近戦力というものを定義して、近代戦を有効適切に行うことができる能力というふうに解釈しておられますが、そこで私のお尋ねいたしますことは、ここにある近代戦ということはどういうことでございましようか。
  182. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この近代戦の内容は時々刻々かわるだろうと思つておるのでありまして、政府は常に軍備と戦力問題は、これは相対的のものである。つまり非常に極端な例を申し上げますれば、大昔なら弓と矢を持つておれば非常に強い戦力であつたろうけれども、今ではこれは戦力の中には入らない、そういうことから言いますと、やはり近代戦の内容はどんどん進化するものであろう、こう考えております。
  183. 有田八郎

    ○有田(八)委員 現代の近代戦とはどういうことでありましようか。
  184. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは判定が非常にむずかしいのでありまして、われわれもたとえば軍艦が何そう、飛行機が幾つというふうなのが、近代戦を遂行する能力というふうに限定はできないと思つております。また今度は、その置かれている環境によつてもその必要は違つて来ると思います。しかしこれはいずれにしましても社会通念がありまして、この程度なら近代戦を遂行する能力があるのだということの通念はあるだろうと思います。ただいま現在のところは、それにすれすれならば問題になりますが、それよりははるかに下のものであるから、これは安全である、戦力でない、こう考えております。
  185. 有田八郎

    ○有田(八)委員 戦力とは近代戦を戦う云々というふうなことは、何か根拠があつたことと思うのでありますが、その根拠をお知らせ願えれば仕合せだと思うのであります。
  186. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、憲法の大きな目的が、侵略戦争をとめるということにあつたことは間違いないと思います。そしてそのために侵略戦争を自衛戦争というような口実でやりますから、自衛のためといえどもそういう戦力を持つことをとめたとわれわれは了解しております。従いまして侵略戦争を行うことのないようにするために、それに至るべきような力は持たないというところから判定をいたしまして、近代的な戦争を行う能力が戦力だ、こう考えております。
  187. 有田八郎

    ○有田(八)委員 そこでお伺いいたしたいのは、近代戦を戦い得る国は今日の世界においてどういう国であるとお考えでありますか。
  188. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはどの国ができてどの国ができないということは、ちつと私にも言えないし、また言うべきことでないと思いますが、少くともよくいわれるように、アメリカとソ連のみがそういう大きな戦力を持つてつて、ほかの国は戦力は持つてないというほどに狭くは考えておりません。相当多数の国が戦力を持つている。しかし軍隊といつても、戦力に至らざるものも実は中にはあろうと考えております。
  189. 有田八郎

    ○有田(八)委員 戦力を定義して、近代戦を有効適切に行い得るような実力と申しますか、能力というふうに定義した根拠は、侵略戦争をすることができないという見地から来ている、こういうふうな御説明があつたようでありますが、しかし世界のいずこにも非常に小さな国があるのであります。また軍隊と称しても先ほどお話のありましたルクセンブルグのように三千の軍隊しか持たないようなものがあるようであります。アジアの諸国、ことに日本に近接する諸国においても、相当小さな国がある。むしろ小さな国が非常に多いのでありますが、これらの国に対してもし侵略をするというふうな場合には、日本が持ち得る戦力はきわめて小さなものであつても、やはり侵略ができるものであろうと思うのであります。そういうふうなことを考えてみますと、侵略戦争をすることができない、そういうことから近代戦を行い得る能力というふうにとることは、少し徹底を欠くような気持もいたしますが……。
  190. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうふうに突き詰めて参りますと、なかなかむずかしい点があるかと思います。しかし要するに侵略戦を禁圧しようというのが憲法の趣旨でありましようから、外に出て戦うような力ということは、やはりこれは戦力になるのであろう、もつともこれは極端な場合に、非常に少数の国を守る軍隊があるのに対抗する程度のものを持つても戦力というような非常識な議論は別といたしまして、一般に外に出て戦い得るようなちやんとした装備と編成を持つているものは、やはり戦力の部類に入るのであろう、こう考えております。
  191. 有田八郎

    ○有田(八)委員 今日の日本はもちろん外へ出て戦うような力は持つていないのでありますが、ことに海で隔たつておる国でありますから、ただちに隣国を侵略するというふうなことはできない、状態にあると思います。しかしこれはいろいろ奇襲的なこともあり得ますし、またこれからかりに、日本が艦船を持つというようなことになりますれば、近隣の弱い少さな国に対して侵略をするというようなことが、絶対にないとは言われないと思いますので、近代戦を戦い得る云々ということをもつて、憲法第九条の戦力ということの定義にすることは、私はいかがかと思うのでありますが、しかしこの点に関する質問はこれで打切つておきまして、他日またこの点について私の意見を送べる機会があろうと思います。  私にお尋ねいたしたいと思いますのは、憲法第九条第二項には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」という規定をいたしております。この「陸海空軍その他の戦力」とありますが、この意味が陸海空軍の三軍を戦力の代表的なものと認めて、その他の戦力とともにこれを保持しないと規定しておるのではなかろうかと私は考えるのでありますが、この点はいかがでありましようか。
  192. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府の今まで持つております解釈は、「陸海空軍その他の戦力」というのは一つの言葉と見るべきものである、陸海空軍だけを離しまして、また別にその他の戦力というふうに考えておりませんで、全部ひつくるめまして陸海空という名前がついていようといまいと戦力になるものは持たない、こういうことと解釈いたします。
  193. 有田八郎

    ○有田(八)委員 どうもこの点は非常に逆なように考えるのですけれども、あまり追究いたしません。  さらにお尋ねいたしたいのは、日本憲法の、保持を禁じておる三軍は、近代戦を有効的に遂行し得る陸海空軍のことであつて、その程度に至らない三軍の保持は、自衛のためならこれを禁じていないというふうになると思いますが、それでよろしゆうございますか。
  194. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど私の申しましたように、陸海空その他の、戦力という戦力の保持を禁止しておると考えております。従いまして名前はどうあろうとも、内容が戦力であるものはいけないのであります。こういうことになろうと思います。その半面には軍という名前をつけましても、実は理論的には戦力でなければ、これは憲法の違反でない、ただそれを適当とするかどうかは別問題であります。
  195. 有田八郎

    ○有田(八)委員 今までの御説明によりますと、日本がもしかりに陸海空軍を持つといたしますと、戦力に至らないものであれば名はどうでもよろしい、こういうふうなことでありますが、この近代戦を戦うに足る能力というものは、政府は非常に高く考えておるようでありますが、もしそういうふうに高く考えておられるということになりますと、憲法第九条というものは、全然死文に化してしまうということになるおそれがあると思うのでありますが、政府はさようにはお考えにならぬのでありますか。
  196. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほどもお話がありましたように、よその国が全部有効な、非常に大きな戦力を持つておれば、侵略戦争を防ぐためには、それを圧倒するぐらいの戦力がなければできないわけでありますが、事実は、外国にしてもそれほど大きな武力を持つておる国ばかりとは限らないのであります。従いまして侵略戦争を禁圧するという意味から申しますと、この戦力を非常に大きく解釈するということは、私は間違いだろうと思つております。
  197. 有田八郎

    ○有田(八)委員 今の答弁をもう一度お願いします。
  198. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 つまり陸海空軍その他の戦力というこの戦力を非常に大きな高いものと考えれば、それに至るまでは持つて自由ということになれば、憲法は死文になるであろうというお話でありますが、私もその通りだと思つておるのでありまして、この戦力を非常に高いものと見て、どこまで行つてもそこには到逹しないというような考え方は、これは間違いであろうと思つております。
  199. 上塚司

    上塚委員長 有田君、もう時間が参りましたから……。
  200. 有田八郎

    ○有田(八)委員 まだ外務大臣に対する質問は残つておりますが、別の機会に譲ります。
  201. 上塚司

  202. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 この機会に簡単に有田さんの質問に関連してお尋ねいたします。  今の外務大臣の御答弁を聞いておるとわからないのですが、ただいまのものではいけない、一体どの程度ならよいか。あなたも数字ははつきり言えないでしようが、お互いに人間のいわゆる一般的な通念に基いた言葉で表現ができるだろうと思いますが、ひとつわかりやすく御答弁願います。
  203. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはわかりやすく言うのは私にはできないのでありまして、元来戦力がどうであるということを規定するのは私の役割ではないのでありまして、保安庁長官のお答えすべきことをお答えしておるのですから、その意味でお聞きを願いたいのであります。ですから、よけいなことをお答えしておるようなものですが、ただ私は対外的に見まして、たとえば東南アジアというふうに限つては悪いかもしれませんが、それらの国がたくさんありまして、いずれも大なり小なり国を守る力を持つておるわけでありまして、そこでこれらの力を圧倒して、侵略戦争を行い得るような程度のものは、これは相手国の力にもよりますから、相対的なものでありますけれども、常識から見て、こういうものを圧倒して侵略戦争を行い得るということになれば、やはりこれは戦力になろうと思うのであります。従いまして、それに至らない範囲でありますが、政府としてはそれにすれすれのところに行つて、疑惑を起すことのないように、よほどそれよりも下のものを持つべきものであろう、かように考えております。
  204. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうすると別の角度からお尋ねしますが、先ほどから防衛ならいいのだ、侵略はいけない、こういうことを言われておるのであります、これは保安庁長官でなければというお話であるけれども、それはそうじやない。なるほど所管は保安庁長官であるけれども、そうしたものを基準としてあなたは外交折衝に当られる外務大臣です。従つてそういうことを一応知らなければ、また答弁できないようでは外務大臣勤まりません。そういうことでは外務大臣にして置けないということになる。遂にやはり不信任案ということになる。これは後日のことですから、今ここで言明の限りではありませんが、防衛といいましても二色あると思う。たとえば、日本の場合を具体的に考えて、日本の国内にだれかが来たときにこれを防ぐという場合と、いわゆる集団防衛とあるのです。集団防衛の場合には、集団地域内にそういうものが入つて来たときには協力してこれを防衛するということもあり得るのです。これを認めますかどうですか。
  205. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう場合といえども、とにかく戦力に至るものは持つていかぬ、侵略はいけませんけれども、防衛ならいいとか悪いとかというのじやありません。防衛にしても戦力に至るものは持てない、こういうのが憲法の解釈でございます。
  206. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 どうも言葉のあやといいますか、ごまかしみたいになつてしまうのですが、一体戦力というものは、先ほどから有田さんからの質問に対する答えでもわからないのだけれども、政府委員からの午前中の答弁で、ルクセンブルグは三千人しか軍隊を持つていないけれども軍隊だと言うのですが、そうなつて来ると、日本の十一万の保安隊はもつとりつぱなものです。そこで戦力というものをあなたは先ほどぼやかしておつたけれども、かりに戦争ということになつてわれわれが戦うということになれば今想定される相手はアメリカであり、あるいは中共であり、あるいはソビエトであり、いわゆる世界の大国なんだ。ちよつと考えてもわれわれはまさかルクセンブルグと戦争しようと思つていない。これはだれでも起り得ないであろうという通念です。これこそ通念です。だけれども、いわゆる人類の史上において戦力というものはそんな今あなたがおつしやるようなばかげたものじやないのです。そんなこといくら言つてもきりがありませんが、ただ問題は、今私が申し上げたように、集団防衛の場合に、政府は今海外には兵隊を出さないということを強く主張しておる。またわれわれもそれは希望するが、かりにそうした場合があつたとして、一個師団でも二個師団でも集団防衛だか、集団襲撃だかでそれに参加するならば、これは兵力なのです。そういうふうに解釈してどうです。
  207. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 池田君のお話は、憲法の解釈と、実際問題と二つ御質問があるようであります。憲法の方からいいますと、戦力は打てない。従つて戦力を持たない範囲ならば集団防衛に参加してもいい場合があるかもしれない。しかし実際問題としては、政府は、ただいま保安隊にしても、とにかく海外にこういうものを出す意思はない、また出すつもりもないということをはつきり言つておるのであります。戦力であるかないかということと、実際にこれを出すか出さないかということは別問題でありますが、政府はいずれにしても出さないと考えております。
  208. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 だから私は出すとか出さぬとかいうことを聞いておるのじやないのです。今朝鮮戦線でも、アメリカを除いて、小さい国から千人、二千人送つておる。これは戦力をあそこに集結しおるのです。われわれはそう解釈する。日本保安隊は今は毛のはえたようなもので未熟練かしらぬが、来年あたりになれば少くとも台湾の蒋介石の兵隊あるいはインドの兵隊くらい以上の戦力を持つて日本の今の保安隊は戦えるようになる連中だと思う。それでも戦力と見るか見ないか。出す出さぬを聞いているのじやない。あなたは憲法論とごつちやにすると言うけれども、憲法論で言うとあなたはごまかすから、私は常識的に実際問題を実はあなたにお尋ねしておる。
  209. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実際問題だと、たとえば、日本のただいまの国警を外へ出す。この国警が非常に能率がよくてよその国の軍隊よりよく働いたとしましても、国警は国警であります。従つて働きのいかんによつて戦力になつたりならなかつたりしないのでありまして、要するに国内において戦力に至らざるものを持つこと、これは憲法で禁じておらない、こういうことであります。
  210. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣に対しては、参議院において速記をとめて先ほどからずつと外務大臣出席を待つておるような次第でございます。この際佐々木君以下の発言がまだ残つておりますが、この際次の機会にまわしていただきたいと思うのですが、いかがでしようか。
  211. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 それじや私の質問はこれで打切り、あらためてやります。
  212. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 議事進行について。ただいまの委員長の動議の通り、やむなき事情で外務大臣は退席されましたので、質問の権利並びに順序等につきましては、本日の日程をそのまま留保されんことを望みます。
  213. 上塚司

    上塚委員長 佐々木君の御要求は、その通りにいたすつもりであります。     —————————————
  214. 上塚司

    上塚委員長 これより日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件の質疑を継続いたします。和田博雄君。
  215. 和田博雄

    和田委員 私は通商航海条約は相当勉強はして来ているのです。質問もやりますが、ぼくはこの委員会運営がどうもふに落ちないのです。たとえば、通商航海条約なんかは、やはり外交政策の問題にも関係して来るのですから、その意味で大臣がおられて私は質問したいのです。事務の方の方にももちろん質問はありますが、やはり質問の順序として、大臣に総括的な外交方針についての質問をした上で関連してやつて行きたいと思うのです。議題からはずれた質問をするつもりは毛頭ありません。で今日はこの質問は留保して、このまま散会にして次会に大臣が出ていただいたときにやらしていただくようぜひおとりはからい願います。私は何も議事の進行を延ばそうとかなんとかけちな考えは持つていない。大きな問題であるだけに真剣にやりたい、真剣にやりたいにしても、どうも相手の側がおらぬのじや私はちよつと困るのでございます。その点ひとつ御了承をお願いしたいと思います。
  216. 上塚司

    上塚委員長 和田君の御要求はごもつともでありますが、御承知のごとく議会の期日ももはや数日のうちに迫つておるので、各大臣とも各方面に非常に忙しく出席しておるので、ここだけで独占するということはとうてい不可能だと思うのです。それで大臣が来なければ質問の継続ができないということになると、議事はまつたく停頓してしまいますから、この点については議員諸君の良識によつてぜひ継続するように努めていただきたいと思うのであります。
  217. 和田博雄

    和田委員 かしこまりました。その点は私もよくわかつております。
  218. 田中稔男

    田中(稔)委員 それではどうでしよう、日比の方を先にやつたら……。
  219. 帆足計

    ○帆足委員 議事進行につきまして……。
  220. 上塚司

    上塚委員長 帆足君に申し上げます。御要求になりました渡航課長及び文部省関係係官につきましては、渡航課長は休暇をとつて休んでいるのであります。また代理の首席事務官は土曜日のために退庁いたしており、従つて文部省関係官とも連絡がとれません。それでその通り御了承願います。
  221. 帆足計

    ○帆足委員 実はこの問題につきまして、またもや事務当局は行方不明でまことに遺憾でありますが、すでに委員長のお聞き及びの通りに、欧米局長の言われたことが正当であるというきようの次官のお答えでありまして、先日委員長がお聞き及びの、渡航課長がああして非常ないたけだかになつて言われたことは間違いであつたということになつたのでありますが、政府委員の発言というものは速記にとどめてございますから、これは厳粛なものとして今後お取扱いを願いたいのでございます。  なおこの問題についての法の解釈はいろいろでありましようけれども、旅券交付事務というものは、あたかも駅の切符売りのような仕事でございますので、時間の問題があつて、書類の不備などがあればあらかじめ通告して、諾否いずれにせよ明確にして、懇切丁寧に条理を尽して便宜をはかるのが、私は行政の任務であると思いますが、本日の委員会並びに先般来の外務委員会において政府当局が答弁せられたものにつきましては、速記録に権威を持たせますために、今後の運営については速記録に従つて運用するように申し上げました趣旨を、委員長においても御了承くださいまして、格別の御処置をお願いしたいと思います。
  222. 上塚司

    上塚委員長 今独禁法の採決に近づいておりますから、一時休憩して、独禁法の採決が済んだらば、ただちにまた再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後三時三十三分休憩      ————◇—————     午後四時四十七分開議
  223. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  黄田外務省経済局長より、日本友好通商航海条約について発言を求められております。この際これを許します。黄田政府委員
  224. 黄田多喜夫

    ○黄田政府委員 ただいま御審議を願つております日米通商航海条約に関しまして、七月二十一日アメリカの方はこれを通過いたしたのでありますが、最近まだ正式には言つてつておりませんけれども、きわめて非公式ではございますが、向うから申して来ておることがあります。それは、八条二項の関係でございますけれども、いわゆる自由職業というものがございまして、これら自由職業のあるもの、それの公共的性質及び公共的保健のものに関して、アメリカのある州においては、州法あるいは州の憲法等によつて、それらの業種は排他的にアメリカ人にのみ許しておるところがある、そこで批准する場合に、それらのものには日本人は従事することができないというふうな留保を付することに多分なるであろう、ということを申して参りました。従いまして、ただいま御審議を願つております日米通商航海条約日本の方において批准いたします際にも、向うが留保したと同じような内容のことを日本でも留保する、つまり効果はお互いに同じだというふうなことにして批准をしたいという方向で進んでおりますが、このことはまだ正式には申して来ておりません。おそらく月曜には申して来ると考えるのでありますけれども、その際にはあらためてそういう同様の効果を生むようなことを御審議つて、それを付して批准したいというふうに考えておりますので、そのことをただいまあらかじめ申し上げまして御了承願いたいと思います。
  225. 上塚司

    上塚委員長 本条約に関する質疑は次会に、破ります。     —————————————
  226. 上塚司

    上塚委員長 次は、日本国とフイリピン共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件につきましては、田中穗積委員より秘密会の要求がありました。この際この会議を秘密懇談会に切りかえたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたしまして、これより秘密懇談会を開きます。  それでは委員外の方の退席を求めます。     〔午後四時五十一分秘密懇談会に入る〕      ————◇—————     〔午後五時十三分秘密懇談会を終る〕
  228. 上塚司

    上塚委員長 それではこれにて秘密会を閉じまして、委員会を再開いたします。  田中稔男君。
  229. 田中稔男

    田中(稔)委員 これはあるいは前にも質問があつたかもしれませんが、少し党を代表しましてまとめて御質問いたします。マニラ湾、セブ港、その他フイリピンの近海にある沈船の隻数、トン数をお答え願いたいと思います。
  230. 大野勝巳

    ○大野政府委員 田中さんの御質問にお答え申し上げます。実際の調査をしてみなければわからない点がありますので、非常に正確に申し上げることはできないのでございますが、今のところ概略百八十隻ないし多くて二百隻くらいというふうに考えております。もつとはつきりした数字を申し上げ得るのは、先般御説明申し上げましたように、マニラ湾の中の五十二隻、セブ港の十二隻、合計六十四隻につきましては一船別の調査が完了いたしておりますから、これははつきり申し上げることができます。この両者を合せますとグロス・トンネージで二十三万トン、そのうちマニラ湾が圧倒的に多いのでありまして二十二万トン、セブ港は小さな船ばかりでありまして、一万トンであります。
  231. 田中稔男

    田中(稔)委員 それからマニラ湾とセブ港以外のものも含めた全体のトン数の大ざつぱな数字をお伺いいたします。
  232. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいま申し上げましたように、大きな船が固まつて沈んでいるのがマニラ湾でございますから、その他の地区に関しましてはそう大きな船は沈んでいないらしいのございます。どうも沈んでいるという推定だけがつきまして、現実にそれがどのくらいになりますか、まことに遺憾でございますけれども、トン数は私どももはつきりしたことはわかりません。しかし隻数の割にはトン数はそう多くございません。
  233. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると今度引揚げの対象になるのは六十四隻でございますね。
  234. 大野勝巳

    ○大野政府委員 さしあたりそうでございます。
  235. 田中稔男

    田中(稔)委員 その引揚げに要する費用は四十億と聞きましたが……。
  236. 大野勝巳

    ○大野政府委員 概算でございます。
  237. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう一つ平和条約締結前に賠償の協定を結ぶということは私変則だと思うのでありますが、一体こういうような前例が世界にありますか、どうか。
  238. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。仰せの通りこれは変則だと思います。世界に前例がないのじやないかと思つております。ただ法律上平和条約とこの沈船引揚の中間協定とは直接の関係はございませんが、前回申し上げましたように、両者の間に矛盾扞格する点は全然ございません。と申しますのは、後日平和条約が必ず批准されるだろうということを見越しまして、その際にこれが一部になるようなつもりで、決して平和条約の十四条を越えない限度でこの中間協定がつくられているからでございます。
  239. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると今度の四十億概算の引揚げの費用が、最終的に賠償額がきまりました場合には、ちやんとそのうちに計算されるということはもう了解できておりますか。
  240. 大野勝巳

    ○大野政府委員 その通りでございます。
  241. 田中稔男

    田中(稔)委員 こういうふうな変則的なことをやつて、これがビルマ、インドネシア、インドシナとずつと各国との賠償交渉に波及するというおそれがありはしないか、そういうことになりますと、どうせわれわれは賠償しなければならぬということは考えておりますが、この賠償問題が何だかずるずるべつたりの交渉なつてしまつて、賠償額の決定もわけのわからぬようなことになつて、あとで非常に困ることになりはしないかと思いますが、そういうふうな危険がないか、ほかの国にこういうふうな交渉を及ぼすようなことはないか、大野さんにお尋ねしたいと思います。
  242. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。賠償総額とか賠償の全般がかつきりきまらなければ、何事もなし得ないということでございますと、今の状況でありますと、かなり長年月をもつてしないと東南アジアの諸国との国交関係を調整することは、ほとんどできないだろうというのが現状でございまして、これは田中さんもよく御存じだと思うのであります。従いまして変則ではありましても、やはり平和条約予定している項目につきましては、なしくずしにできるものからやつて参りたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  243. 並木芳雄

    並木委員 それについてきよう外電はインドネシアから賠償調査団が来るということを報じております。これは非常にけつこうだと思うのですが、政府にそういう公電が入つておりますか、この内容についてお尋ねしておきたいと思います。
  244. 大野勝巳

    ○大野政府委員 並木さんの御質問にお答えいたします。外電で伝えられましてけさの新聞の一部に出ておりますことは、公電で外務省に入つております。ただこれは賠償調査団でございまして、日本の賠償能力とかその他の点に関しまして、現地のエキスパートをよこして調べたいというのが主たる目的のようでございますが、ただいまのところ、まだどういう人を派遣するかということにつきましては決定を見てないというのが、向うの政府の言い分でありまして、それの決定を見次第、日本側に通告するからよろしく、そういう連絡があつたわけであります。
  245. 並木芳雄

    並木委員 これについては、一昨年の暮れに中間賠償協定というようなものができたはずなのです。私たちはそれについて聞いておりませんから知りませんけれども、あの中間賠償協定案ですか、何ですかできたのは、その後どうなつたのですか。つまりあの協定に基いて今度調査団が来るようになつたのかどうか、あるいは調査団が来て、その結果によつては賠償交渉に入るようなことも考えられるかどうか、その辺のところをお聞きしておきたい。
  246. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいまの御質問にお答え申しますが、インドネシアと日本の間は、仰せのように一昨年暮れに向うから代表が参りまして、昨年の一月十八日に、原則的な大綱だけに関しまして、中間賠償協定案というものが一応できております。しかしこれは調印されていないのです。双方の代表はこれをおのおの自分の国に持つてつて、それを採択するようにということを政府に勧告する、そういう趣旨の文書に両国の代表が署名したことになつております。これは一種の勧告案でございます。しかしその後聞くところによりますと、インドネシアの代表はこれを本国に持つて帰りましたが、残念ながら閣議において必ずしも一致が得られなくて、従つてこれが向うの議会にかけられるような段階には行かなかつたということであります。
  247. 並木芳雄

    並木委員 日本の方としては、中間賠償協定案をどういうふうに扱つたのですか。
  248. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。それはあくまで中間協定案でありまして、協定ではございません。今御審議つております中間協定のように、協定として両国の全権が調印したのではなくて、協定案として、将来妥結するような場合はこういう案でひとつ討議をしようじやないかという程度の意見の一致を見た、つまり草案であります。従いまして日本政府としましては、別にこれを国会にかける段階ではもちろんなかつたわけでございまして、ひとつ御了承願いたいと思います。
  249. 並木芳雄

    並木委員 その内容は大体どんなものだつたのですか、私たち何にも知らないのですけれども……。
  250. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。こく何でもないものでございまして、平和条約十四条の賠償に関する規定を、少し敷衍したような趣旨のものでございます。
  251. 並木芳雄

    並木委員 その当時のインドネシアの内閣はかわつたはずでございますが、今度来るインドネシアの賠償調査団というものは、この前の協定案をつくつたときとは、また全然違つた性格のものと見てよろしゆうございますか。それで来た結果、さつきお話した通り、場合によつては賠償の交渉にまで入る可能性がありますかどうか。
  252. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。当時の内閣はスキマン内閣という内閣であつたのですが、それはすでにもう崩壊しております。その後の内閣も崩壊、総辞職しておりますから、その続きぐあいというものはわれわれにもわからないのですか、新しい内閣はまだできていませんし、従来のものをどういうふうに扱うかということにつきましては、政府といたしましてはまだ聞いておりません。
  253. 上塚司

    上塚委員長 これにて質疑は終局いたしました。  これより討論を行います。田中稔男君。
  254. 田中稔男

    田中(稔)委員 私は日本社会党を代表して、本協定に反対するものであります。  反対の理由を申し述べたいと思います。まず平和条約を結ばないで、当然平和条約内容の一部となるべきこの賠償の問題について協定を結ぶというようなことは、国際的にはかつてないような変則的な扱いである。そういう点でこれに反対いたします。  なおフイリツピンの大統領選挙がこの秋に行われる予定でありますが、リベラリスタのキリノ候補とナシヨナリスタのマグサイサイ候補との一騎討ちと伝えられておりまして、どちらが勝つかこんとんとしてその形勢はわかりませんけれども、私どもの聞くところでは、ナシヨナリスタが非常に優勢であるというふうに聞いております。しかもナシヨナリスタのマグサイサイ候補は、ナシヨナリストとして、フイリピンの独立というようなことにおいて非常に強硬な態度をとつております。ひいては、従来キリノ大統領の向米一辺倒の外交政策に対して、重大な変更を主張しておる。キリノ大統領というのは結局これはアメリカの傀儡政権でありまして、大体日本の吉田内閣と似たようなものであります。私どもはむしろナシヨナリスタの政権がこの秋成立しますことを実は歓迎するものでありまして、そうなりましたならば、アジア人本来の立場に立ち返つたフイリツピンの政府ができる、そうしますと、ほんとうに話合いができるのじやないかと思います。もつともこれはしかし日本側がかわらないとうまく行かないのでありますが、まあおいおいかわると思います。そうなりまして日本とフイリピンとがほんとうにアジア人本来の立場に立つた政府を持つて、そうして両国がアジア人同士、真の友好の感情のうちにこの賠償問題を解決するというようにぼくはあるべきだと思いまして、半年や一年急がなくてもいいのじやないか、どうもこういうことを急がれるのは、要するに似た者同士で早く話をきめて、そうしてアメリカMSA援助両国とも受けて、そうして行く行くはアメリカを盟主とする太平洋同盟をつくるための、これは一つの伏線ではないか、こういうことも想像する。そういうふうに考えますと、この協定を取急いで締結するということの政治的な意義はきわめて深刻であります。従つて私どもは反対するのであります。  なお沈船引揚げという役務を提供して、これを賠償に充てるというような構想は、私はけつこうだと思います。また日本の優秀なサルベージの技能といいますか、技術といいますか、そういうものをこの際世界に示すいい機会でもあると思います。ただ問題は今申しましたように主として政治的問題の側面をいろいろ考慮いたしまして、この協定を今日批准することに私どもは反対をいたします。  なお最後に言つておきますが、わが社会党は賠償問題を誠意を持つて解決したいという気持は十分にあるのでありまして、これをわれわれが反対したからといつて、フイリツピンとの賠償問題にわれわれが関心もたないとか、誠意を持たぬとかいうことでは絶対ないということを重ねて強調しておきます。
  255. 上塚司

  256. 戸叶里子

    戸叶委員 私はただいま議題なつております条約につきまして、条件付で賛成をしたいと思います。  その第一点は、このフイリピンの沈船引揚げに要する日本の国の予算が四十億ほど計上せられておりますが、この沈船引揚げにあたりましては、多くの業者の人たちが関係する仕事でもございますので、その予算を使います場合に、不正なことがないようにくれぐれも監視していただきたいということが第一点、それからまだ日本とフイリピンとの間には平和条約締結されておりませんので、一日も早く平和条約締結されることを第二点として望み、第三点は、この引揚げによつて得たところのスクラツプを、日本に有償で引取ることができるような道を考えていただきたい。そうすることによつて、フイリピンの方もためになるでしようし、日本の方にとつても有利なことでありますから、そういう点について一日も早くそうあるように考えていただきたいと思います。  以上三つの条件をつけまして、この日比の間の沈船引揚に関する中間賠償協定締結によりまして、日本とフイリピンとの間の親交が深まる一歩となることを望んで賛成の意を表したいと思います。
  257. 上塚司

    上塚委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  258. 上塚司

    上塚委員長 起立多数。よつて本件承認すべきものと決しました。  なお本件についての委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさようにとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十四分散会