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1953-07-22 第16回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十二日(水曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 福田 篤泰君    理事 並木 芳雄君 理事 田中 稔男君    理事 池田正之輔君       麻生太賀吉君    佐々木盛雄君       富田 健治君    喜多壯一郎君       須磨吉郎君    帆足  計君       穗積 七郎君    和田 博雄君       淺沼稻次郎君    中村 高一君       石橋 湛山君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正己君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      中村 文彦君         外務政務次官  小滝  彬君         外務省参事官         (大臣官房審議         室付)     大野 勝巳君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         特許庁長官   長村 貞一君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局渡航課         長)      松尾 隆男君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月二十一日  委員渡邊良夫君及び武藤運十郎君辞任につき、  その補欠として池田勇人君及び和田博雄君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十二日  委員池田勇人君、戸叶里子君及び加藤勘十君辞  任につき、その補欠として佐々木盛雄君、淺沼  稻次郎君及び中村高一君が議長の指名委員に  選任された。     ――――――――――――― 七月二十一日  妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外五十  五件(福田赳夫紹介)(第四八〇六号)  同(武藤運十郎紹介)(第四八〇七号) の審査を本委員会に付託された。 同日  妙義地区米軍演習地設置反対陳情書  (第一〇四  五号)  同  (第一〇四六号)  同  (第一〇四七号)  同  (第一〇八三号)  同  (第一一二二号)  同  (第一一二三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海  条約批准について承認を求めるの件(条約第  九号)  日本国フィリピン共和国との間の沈没船舶引  揚に関する中間賠償協定締結について承認を  求めるの件(条約第一六号)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 ただいまより会議を開きます。  委員各位に御報告を申し上げます。委員長は、衆議院外務委員会を代表いたしまして、今日午前八時横浜埠頭岸壁に横づけされました白山丸を出迎え、フィリピンより帰還された霊に対し礼拝をし、また今般巣鴨に移られました諸君並びに釈放された諸君に対しまして、それぞれごあいさつをいたしておきました。この段御報告を申し上げます。
  3. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 議事進行について。外務大臣は御出席になりますか。きのう外務大臣がこの委員会において、改進党の須磨吉郎君に答えられた答弁は、非常に重大な意義を持つておると思うのであります。従いましてそれについて質問をいたしたいと思うのでありますが、ここに出席になられますか。もし出席にならないなら、出席されるようにおとりはからいを願いたいと思います。
  4. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣は、ただいまMSAの第二回交渉をやつておられます。それで、それが済み次第こちらに見えることになつておりますので、しばらくお待ちを願いたいと思います。  本日は、日本国アメリカ合衆国その間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件、日本国フイリピン共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定締結について承認を求めるの件、この二件を議題といたしまして質疑を続行いたします。なお外務大臣がお見えになりましたらば、すぐ切りかえて国際情勢質疑に移ります。
  5. 中村高一

    中村(高)委員 この通商航海条約資料戸叶委員から相当の数を要求してあるそうですが、提出せられましたかどうか。まだでしたらひとつ至急政府に要請してから審議したいと思います。
  6. 上塚司

    上塚委員長 約半数ほどすでにこちらに参つているそうです。しかしまだ全部整つておりません。——並木芳雄君。
  7. 並木芳雄

    並木委員 次官にひとつ質問しておきたいのですが、行政協定関係することで、駐留米軍労務基本契約について日本政府先方との間で交渉が行われて来たはずであります。残念ながら私どもそれについて関知しておりません。そこでどういうような労務基本契約についての改訂交渉が行われているのか。きようあたりは駐留軍労働組合大会が行われるやに聞いております。最近行政協定改訂という問題が非常にやかましく出て来ている折から、日本側に不利なような申出があつたとはわれわれは夢想だにもしておらない。そこで一体今度の改訂でどういうような点が問題になつているのか、今までの経過を知りたい。
  8. 小滝彬

    小滝政府委員 私詳細のことを知つているわけではございませんが、私の知つている範囲のことを御説明申し上げまして、必要があれば後に係官出席を求めて説明さすことにいたします。  この問題につきましては、去年の十二月以来合同委員会の下に特別の小委員会を設けまして、必要に応じて労組の代表も交えて交渉を継続して来たわけであります。大体この三月の末に基本的なラインの合意を見まして、四月六日に、軍側契約官に対して同月の十三日に日本側対案を提出するというようになつておりますが、これは向う側の考え方とわれわれの方の考え方とに非常な相違がありましたために、交渉が非常に長引いたわけであります。ところが四月十三日に日本側対案を出したけれども、なかなか向うから返事がないので督促をいたしまして、ようやく六月十三日に軍側から最終案の提示を見ました。爾来交渉いたしまして大体妥結をするというところまで来ている次第であります。軍側で考えておりますところでは、特に日本の法規に違反ないし矛盾するような箇所も一、二ございまして、これが非常に交渉を長引かしたわけであります。たとえば保安要員罷業禁止、それから軍の安全の理由によつて解雇される、セキユリテイ関係での解雇条件というようなものについて、こちら側から詳細なる条件を具備してもらわぬと、あと紛争が起るからというのでつつ込みましたので、そうした面で非常に交渉が長引いたわけであります。基本協定は非常に長いものでありまして、私はここに一応参考資料は持つて来ておりますけれども、これを一々御説明申し上げましても長くなりますから、あるいはあとで書面で差上げるか係官が来て説明するかにしたいと思いますが、いかがでしよう。
  9. 中村高一

    中村(高)委員 関連して。私はそれを知つているのですが、次官はそれをお読みになつていますか。(笑声)
  10. 小滝彬

    小滝政府委員 読んでおります。
  11. 中村高一

    中村(高)委員 それではその中に好ましからざる人物米軍の方で解雇ができるということになつている点がありますが、その点はどういうところが問題になるのか。労働組合諸君の方はむろんこれを問題にしているのでありますけれども、一体好ましからざる人物というものは、日本政府米軍調達庁も参加しているはずでありますが、どういう議論があつてその点を一体日本政府は認めなければならなかつたのか、お尋ねします。
  12. 小滝彬

    小滝政府委員 私は直接交渉には出席しておりませんので、どういう議論のとりかわしをしたか詳細存じません。しかし軍機の保持の必要というような点を向うは非常に強調しておりますし、しかしわが方では軍の解雇要求濫用を防がなければならないという点に重点を置いて交渉した次第であります。詳細の点は、先ほど並木委員からも要求がありましたので、係官が来たときに説明いたします。
  13. 中村高一

    中村(高)委員 いろいろ質問したい点があるのですが、どうもその程度の御答弁ではとうてい私の質問に答えられる準備がないようでありますからやりませんが、基本給与の点について従来よりは悪くなるという問題、これもまた非常に問題になつているようでありますけれども、おわかりになつておりましようか。
  14. 小滝彬

    小滝政府委員 給与はこれによつて悪くなるという点は存じませんが、私どもこれまでこの交渉の間に取上げた問題は、例の回転基金の問題でありますが、これはもう御承知の通り解決するようになつたことを私報告を受けております。しかしこの給与の問題につきましても、これを専門にやつております関国際協力局次長が参りましたら詳細御説明を申し上げることと存じます。
  15. 中村高一

    中村(高)委員 それも係の人が来られましたらお尋ねをいたしますが、問題になります労働争議権、これは日本労働組合にとつても非常に大きな問題であるし、日本国内におきましての法律でありますならば、問題ないのでありますけれども、日本労働組合法にある労働基本権というようなものに対しましては、この基本契約においてはどういうことになりますか、これもあとでお答え願えますか。
  16. 小滝彬

    小滝政府委員 労働争議権は原則として認められておりますが、しかし保安要員罷業禁止について向うが非常に強い主張を持つてつた次第であります。しかしこれは労働組合の方ともいろいろ話し合いまして、現行法を拡張解釈することによつて、できるだけ目的を達成するように努力しようということ、及び労働組合保安要員罷業不参加労働協約締結することが、最も現実的な解決策ではなかろうかというように考えまして、組合の方にも話しまして、この方法によつて先方の希望を最小限度にいれたらいかがかということで進んでおる次第であります。これも係の者が参りましたら最終的な結論を申し上げると存じます。
  17. 並木芳雄

    並木委員 それではこれは政策的のことですから、次官にお尋ねいたします。もしこの勢いで行くと、全国駐留軍労務者ストライキに入るかもしれません。そうなつたらこれは新しい大きな事態として相当な影響を与えると思うのですが、その場合に外務次官としてはどういう処置をとるつもりか、全然放任しておくつもりか、これはアメリカ日本との関係ですからして、行政協定に基く新しいケースにもなるので、どういうような態度でこれに臨んで行かれるか。
  18. 小滝彬

    小滝政府委員 私どもといたしましては、この契約をかえて行つて、そうした事態が起らないようにするために、これまで協定交渉努力をして来たわけであります。行政協定の十二条とか、あるいは二十三条とか、この協定規定によるところの日本の義務があり、同時に労働保護立場、この二つをいかに調節するかということに努めて来たわけでありまして、そのために交渉も非常に長引いたわけであります。もしそういうことが起つたらどうなるか、そういう際にはわれわれとしては、行政協定実施を円満に行わなければならない立場にありますが、しかし現実の問題が起りました際は、外務省といたしましては、主管官庁等に協力いたしまして、できるだけ円満にそうした問題が解決するようになお努力いたしたいと考えております。
  19. 並木芳雄

    並木委員 今の答弁ですと、万一ストライキになるようなことが起つても、それはやむを得ないというふうに受取れますが、それでもいいですか。それとも絶対にストライキを起させないように、その前に政府としては何とか努力をするという意味ですか。私はやはり行政協定に基く安全保障関係する問題ですから、ストライキというような事態に持ち込むということは非常にまずいと思う。持ち込ませないようにすべきであると思うから質問しておるのですが、その点いかがですか。
  20. 小滝彬

    小滝政府委員 ごもつともでありまして、その意味で私もこの交渉において、日本側主張を非常に強く固執して来たことを申し上げた次第でありまして、今後もこれの実施にあたりまして、そうした相互間の紛争がないように最善の努力をすることを申しておるのであります。御質問の際に、起つたらどうするかとおつしやいましたので、先ほどのような答弁をした次第であります。
  21. 中村高一

    中村(高)委員 関連して。この労働基本契約の中を見ますと、もし紛争が起つた場合には、米軍日本政府とが協議をする、それで納まらなかつた場合には、日米合同委員会にかけて、合同委員会で処理するというふうに書かれておるようであります。これは協定がまだ成立しておるわけではないのでありますから、それ以前に、その協定の内容に、労働組合にとつては非常に屈辱的な規定、あるいはいつでも馘首される危険な規定などがありまして、反対をいたしておるのでありますが、これはむろん国際関係にも大きな影響を及ぼす問題でありまして、進駐軍労務関係で万一大きな全国的な争議でも起りますと、ただいま並木さんの言われましたように、全国的に及ぼす影響も大きなものになると思うのでありますが、まだそういう協定ができておりませんから、正式に成立しておるのかどうか明確ではありませんけれども、もし争議が起るというような事態になりますと、非常に心配でありますので、政府としては争議が起つたからというて、いきなり米軍に押えられるようなことをせずに、労働組合要求も取上げて善処するというようなことをやることが必要だと思うのでありますが、この点につきましては、争議になりそうな情勢にあるというようなことを御報告を受けておるのでありましようか、何か政府の方でおわかりになつておりましようか。連日方々で大会をやつて、なかなか険悪な情勢にあるのでありますけれども……。きようは全国大会もあると聞いておるのですが、だれも知つておらぬとたいへんな問題であります。
  22. 小滝彬

    小滝政府委員 労働省と係の国際協力局の方が始終連絡をとつておるはずであります。
  23. 中村高一

    中村(高)委員 きよう協力局の人はおりませんか。
  24. 小滝彬

    小滝政府委員 きようは通商条約審議でだれも参つておりませんので、すぐ……。
  25. 中村高一

    中村(高)委員 どうもその方の係の人がおらぬので、さつぱり要領を得ませんから、係の方が来られてから質問いたします。
  26. 帆足計

    帆足委員 議事進行についてちよつと発言したいのですが……。
  27. 上塚司

    上塚委員長 今並木君に許しておる間に関連質問でありましたから、また並木君に発言を許します。
  28. 並木芳雄

    並木委員 それでは通商条約質問いたします。入国、在留が自由になるということでありますけれども、そうすると今度は日本からアメリカ入国をし在留することが、現在よりも非常に有利になつて参りますかどうか。たとえばマツカラン法などの制限があります。この間徳川夢声氏ですか、入国を拒否されたというような報道もあるのですが、こういう点は、この条約が成立するとよほど改善されるかどうか、その見通しを伺いたい。
  29. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 入国居住滞在のことは第一条に規定いたしてございますが、通商航海条約を結びまして、それによつて入国居住が非常に楽になるということが保障されておりますのは、条約商人及び条約投資家というものであります。ただいまでは通商航海条約が両国間にございませんので、それらの条約商人とかあるいは条約投資家というものの入国滞在が非常に不便でございます。ことにただいまおつしやいましたように、マツカラン法が昨年の十二月でございますか施行されまして、それ以後というものは通商航海条約を結んでいない国の条約商人あるいは条約投資家というものの入国は、以前に比べまして非常に困難になつているのであります。従いまして現在ではこれらの商人アメリカに参りますのは非常に困難でありまして、交易その他にも支障があるというふうな状態であります。本条約が効力を発生いたしますならば、それらの困難は解消されまして、条約商人あるいは条約投資家というものの入国滞在居住というものは非常に楽になる次第であります。ただ第三項におきまして、公共目的のための制限ということは、当事国の権利ということに留保されております。これはむろん一方的ではございませんで、両方ともそうでありますけれども、一定の者がおのおのの当事国の定めるところの法令に従いまして制限を受けるということはあり得るわけであります。
  30. 並木芳雄

    並木委員 日本国内における円の取引統制の問題ですが、今度は自由になつてしまう。その結果、株式などで将来日本経済が把握されてしまうのじやないかということは、昨日もちよつとお聞きしたのです。これは国際通貨基金の規約では、その国々の自由にまかされておつて日本なら日本がやろうと思えば、ある程度制限することができることになつていると思います。その点はまず局長に確かめたいのですが、もしそうだとすれば、今度のような場合でも、やはり円による取引でも、必要に応じては日本の大蔵省がこれを管理することができるようにしておいた方が、安全ではないかと思うのであります。その点全然心配ないという見通しで、こういうふうにきめたのか。あるいは会議のときに問題になつたのか、それを聞いておきたいと思います。
  31. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 アメリカの巨大なる資本日本のいわば脆弱なる資本とが、表面上対等の位置において条約を結ぶとしたならば、アメリカの巨大なる資本によつて日本経済機関が大ゆすぶりにゆさぶられることがありはしないかということに関連する御質問かと存ずるのでありますが、本条約の第十二条におきまして、為替の管理はなるべく自由にしようということを大前提としてうたつております。但し、自由にするということは理想ではありますけれども、現実事態と去ること遠く、世界におきましてもアメリカ、カナダ、スイスという少数の国を除きましては、おのおの厳重なる為替統制をやつているという事態でございますので、同条の第二項におきまして、通貨準備を適度に増加するため、為替制限をなし得るということを規定いたしまして、日本においても為替制限をなし得ることにいたしております。なおまた議定書におきまして、アメリカ資本が入つて来る場合に、それが日本の健全なる発達を助長するものであるかいなかということによりまして、入つて来る外資審査し得るという規定を置いております。むろん議定書はこの条約一体をなすものでありますから、それによりまして十分入つて来る資本審査を行い得るという関係になつております。それからまた議定書の第十五項におきまして、旧株取得を本条約效力発生後三年間は制限し得るということにいたしております。外資が入つて参りました場合に、日本経済に関与する程度、これは大部分株式取得によるのでありますけれども、旧株取得は本条約效力発生後三年間制限をなし得るということにいたしておりますので、この点からも、最初に申し上げましたような杞憂に備えました保障手段というものを講じておるのであります。
  32. 並木芳雄

    並木委員 外資審査するというのは、どういう機関でどういうふうに審査をするのですか。
  33. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 ただいま外資委員会というものがありまして、大蔵大臣を会長といたしまして関係機関が協力して一々審査をいたしておりますのがその日本側機関であります。
  34. 並木芳雄

    並木委員 旧株取得を三年間制限するというのでありますが、三年たつてなお日本経済が脆弱であつて心配だという場合には、さらにこれを延長することができる含みが残つておるかどうか。これは絶対的の三年間という期間であるかどうか。
  35. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 それは絶対的の三年間の期間であります。その間には日本経済をそれに対抗できるようにしたいというこれは含みでありまして、三年間ときめます場合には、各界の御意見を拝聴いたしましてきめた次第でありますが、これは絶対的な期間であります。
  36. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、三年たつてこちらから、この三年はどうしても無理だからもう少し延長してくれということは、絶対にできないわけですか。
  37. 小滝彬

    小滝政府委員 一応これをつくりますときには、三年間でさしつかえないという構想のもとにやつたのでありますが、二十四条の第一項をお読みになると協議規定があります。「この条約実施に関する事項について行う申入れに対しては、好意的考慮を払い、且つ、その申入れに関する協議のため適当な機会を与えなければならない。」という規定もありますので、一応どうしてもやむを得ないという事態が起れば、この約条によつて協議することもできるだろうと考えております。しかしこの株式につきましては、今日本には外資による株式が百億円ありまして、これはいずれ資料として差上げるかとも存じますが、そのうち新株が七六%、旧株が一三%ということになつておりまして、旧株は主としてアメリカ人が持つておりますけれども、とにかく五千数百億円に上るところの全株式から見れば、この百億円の外資というものは非常に僅少なものであります。しかもこの百億円を分析して考えてみますと、大部分外資送金を保証されたもの、いわゆる外資法によつて許可を得たものがそのうちの大部分であります。でありますからして、旧株を円で買つて、そうして円で日本で持つておるというような場合は、そうたくさん今後ふえて行くということは想像できないわけであります。この旧株取得を三年間と押えたということ、これは円取引の問題であります。今の許可をするとかしないとかの問題は、送金を伴うものについてはいつまでも、三年たつたあとでも外資法によつて日本許可権を持つわけでありますから、それは押えることができます。また旧株の中でも制限業種に関するものは、円取引においてこれを押えることができる、こういう関係になつております。今後増資がどれだけ行われるかというような点は、これははつきり予想することはできませんけれども、とにかく再評価というようなことも行われるし、増資を年一千五百億円ぐらいと見ますと、三年間に今の株式が現在より倍程度になるのじやないか、こういうように考えられますし、日本経済力もそのうちに伸張して行くというように考えますと、この三年間の例外規定だけで十分じやないかというように、実際的見地からは考えられるわけであります。しかし私は第二十四条の第一項を引用することによつて、万一の場合には備えることができる、こういう解釈をとつておる次第であります。
  38. 並木芳雄

    並木委員 黄田局長、今の御答弁でいいのでしようか。さつきの局長の御答弁ですと、絶対的にだめなように聞きましたが、なお次官答弁のように余地があるのかどうか。
  39. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 議定書の第十五項には三年間ということを決定的に書いてありまして、それを延長し得るというような書き方ではございません。そういうことを申し上げたのでありまして、ただ、ただいまの二十四条の援用、これはあらゆることにかぶる問題でありますので、一般的にはこれを援用し得る立場に立つております。
  40. 並木芳雄

    並木委員 小瀧次官考え方は、私專門家ではありませんが、楽観的ではないかと思うのです。為替の率の問題なんかのことも出たのじやないかと思うのです。今の三百六十円という率で行つた場合に、やはり日本経済というものがかなり苦しいところへ追い込まれる。為替の率のことにつきましては、条約審議の途上において何らかの話が出なかつたかどうか、また出ないにしても、日本政府の方としては今後為替レートについてどのように臨む所存であるか、何かありましたら聞いておきたいと思います。
  41. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 通商航海条約審議いたします間に、為替レートが問題になつたことはございません。これはむしろ国際通貨基金の方との問題でございまして、これが問題になつたことはございません。十二条の第三項の中に、「二以上の為替相場実施されている場合には、当該回収に適用される相場は、国際通貨基金によつて」云々ということが書いてございますけれども、日本の方にはただいまのところ二重為替というものはございません。従つてこれは直接的に関係があるとは申せません。ただいま申し上げました通り、通商航海条約審議いたしております場合に、三百六十円のレートが高いか安いかというふうなことが問題になつたことはございません。
  42. 並木芳雄

    並木委員 沿岸航路の問題ですけれども、この条約が成立すると、日本の船がアメリカ行つて向うの沿岸航路に従事することができるようになるのかどうか、日本における場合もそういう問題はあると思います。航海における有利になる点を示していただきたいと思います。
  43. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 御指摘の点は第十九条の第六項に規定してございますが、「この条約の他のいかなる規定にもかかわらず、各締約国は、沿岸貿易、内国漁業及び内水航行に関して自国の船舶のため排他的の権利及び特権を留保する」ということがございます。沿岸貿易は各締約国とも自国に留保することができる、おそらくそういうことに相なります次第で、沿岸貿易に従事するということはできません。
  44. 並木芳雄

    並木委員 これについては何か議論が行われなかつたのですか。
  45. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 沿岸貿易に関しましては、伝統的に各国とも自国に留保しておりますのが現状でございます。これは当然確立されたる原則といたしまして、本件が議題となつて論議がかわされたということはございません。
  46. 並木芳雄

    並木委員 既得権の問題でありますけれども、銀行業務などは、アメリカ日本と違つて各州ごとに銀行が設立されておると思います。せつかくこういう条約をつくつても、州によつて日本の方が不利をこうむることはありませんか。せつかく条約をつくつても州の法律でこうだということでもつて拒否されるような不利をこうむることがないかどうか、こういう点であります。
  47. 小滝彬

    小滝政府委員 ニューヨークではお説の通り預金業務は行われないのでありますが、しかし現に住友や東京銀行はサンフランシスコでは預金業務を行つております。但しその場合は現地の法人にならなければならないわけです。現地の法人になることによつて、銀行預金業務を認めておる州は相当あるわけであります。ただ一番大事なニユーヨークの方では、そこの法規によつて残念ながらこれが認められないというのが現状であります。
  48. 並木芳雄

    並木委員 アメリカでは大部分が預金業務というものを認めていないのじやないですか。
  49. 小滝彬

    小滝政府委員 私が今申し上げましたのは、現地の法人になることは制限がない。現地の法人になると認められるということを申し上げたわけです。
  50. 並木芳雄

    並木委員 現地の法人になるというと、向うに本店を持つて日本の銀行でなくなるということですか。
  51. 小滝彬

    小滝政府委員 法律的にはそうであります。戦前もドイツなどでもそうやつておりました。税の関係などでもその方がかえつていいので、ほかの現地法人、ドイツ法人などをつくつたのと同じ手続であります。
  52. 並木芳雄

    並木委員 私専門家でないのですが、それでさしつかえなければいいのですけれども、つまり日本から支店を出したのと同じになるのかどうか、この点大丈夫ですか。
  53. 小滝彬

    小滝政府委員 現にやつておりますし、私の知つている範囲では、現地法人、その国の法人になる方が有利な場合が少くないので、これはもう国際的に長く行われている慣行であります。
  54. 並木芳雄

    並木委員 既得権の尊重の問題でありますけれども、日本アメリカに持つておる既得権というものには何と何がありますか。あまりたくさんないのじやないかと思う。それに比べてアメリカ日本で享有する既得権というものの方が、はるかに有利であるという説が行われておるのですけれども、これに対して当局の見解を示していただきたいと思います。
  55. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 既得権の問題が起りますのは、第七条第二項に書いてあります制限業種に関してのみでございます。その他の問題に関して既得権の問題が起るということはないのであります。それから日本の方がアメリカに対して既得権を持つているものは何があるかと申しますと、それは第七条第二項にも「土地その他の天然資源の開一発」という言葉が使つてございますが、これは農業等を含むことになりまして、日本人がアメリカにおいて農業に従事しておる、これがすでに既得権を持つているわけでございますが、向う側の法令等の改廃によりまして、将来そういうものが持てないというふうな法令ができました場合においても、従来の既得権はそのまま認められる、こういうことになるのでありまして、どつちがどのくらい大きいだろうかという比較考量は、対象が違いますので、必ずしもできにくいのであります。
  56. 上塚司

    上塚委員長 それでは田中稔男君。
  57. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 沈船引揚に関する中間賠償協定に関してお聞きいたします。今フィリピンでは大統領選挙を前にしております。ナシヨナリスタのマグサイサイ候補とリベラリスタのキリノ候補との一騎討だといわれておる。これはどつちが勝つかわからぬ非常な接戦だそうでありますが、この選挙においてどちらの候補者が、どちらの政党が勝つかによりまして、アメリカに対するフィリピンの政治的な態度、それから日本との関係というものに重要な影響を私は及ぼすのじやないかと思う。そういう際に賠償に関してフィリピンといろいろ交渉するということは、私は実はどうかと思うのでありまして、政府はフイリピンとの間の賠償に関する最終とりきめについて、今までまだはつきりした交渉はできていないのだと思いますが、それと中間賠償との関係について、ちよつとお伺いしたい。
  58. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答えいたしますが、ことしの秋のフイリピンの大統領選挙の帰趨いかんということは、今のところだれもいかなる観測もなし得ないわけでありまして、そういう不確定な要素を考慮に入れた政策は実は立たないわけであります。ただはつきり申し上げることができますのは、フイリピンの政界におきましても、与党も野党もこぞつて日本からの賠償の給付されることを、切に望んでいることが事実であることは、非常にはつきりいたしておるのでございますし、またそれがなされない限り、懸案になつておりますサンフランシスコ平和条約フィリピン国による批准ということも、さしあたり望み得ないような状況であります。従いましてわが国といたしましては、秋の大統領選挙後の帰趨のいかんにかかわらず、当然今の段階でやつておかなければならないことだけは、ぜひやつておきたいというふうに考えております。また選挙の結果、朝野両党の帰趨がフィリピンにおきましてどういうふうにかわるかということにつきましても、はつきりしたことはもちろん予想が立たないのでありますが、ただ平和条約の比准のためには、上院の三分の二の多数を要するわけでありまして、その観点から申しますと、フィリピンにおける与党と野党との現在の勢力関係から考えましても、なかなか容易にいずれの一党でも三分の二の多数を制するというふうなことは困難なのではないか。常識的に考えましてもその点だけは申し上げ得るわけでございまして、その観点から申しますと、賠償問題はやはりフィリピン国において超党派的な扱いをしてもらえることが、日本といたしましても非常に好都合だと考えているわけであります。
  59. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私の質問の要点は、最終とりきめについての交渉はまだ何も行われていないのでありますね。
  60. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいまの御質問、お答えするのに漏れたのでありますが、沈船に関しましては、ただいま議題になつているような形で御承認を求めているわけでありますが、その他の部分が全部まとまりますと、全般的な賠償とりきめになるわけでございまして、沈船以外のサービスに関して、どういうものをどういうふうにやるかということにつきましては、現に交渉が進んでいるというふうに申し上げてさしつかえないと思います。
  61. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 その進んでいるものの中間報告でもやつていただくわけに行きませんか。
  62. 大野勝巳

    ○大野政府委員 もしできますならば御報告も申し上げたいのでございますが、非常に機微な関係もございますし、先ほど申し上げた先方の今秋の選挙を考慮に入れたフィリピン国内における内政関係もきわめて機微なようでございますので、一層この交渉が機微なものになつて参ります関係上、ただいまの段階ではここで御報告申し上げかねるのでございます。
  63. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今度戦犯が釈放されて帰つて参りましたが、戦犯釈放と中間賠償協定ということとは何ら関係はないのでしようか。あるいは戦犯を返してもらうというような含みで、この協定を急がれたということはないのでしようか。
  64. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げますが、戦犯の釈放と中間賠償協定の直接の関係はございません。前々会に御報告いたしましたように、沈船引揚げに関する交渉が昨年の十月から開始され、わが国から、マニラ湾並びにセブ港等の沈船を調査するため君島丸が派遣されまして、フィリピンの人たちが見ておる目の前で一々潜水夫がもぐりまして一船別に調査を実行し、さらにそれに基きまして現場において詳細な打合せが進行中であつたという事実が、フィリピンの官民に対しまして多大の印象を与えたことは事実であります。従つてそういうことも日比間の最近のいい空気を醸成するのにあずかつて力があるといたしますならば、自然その結果として戦犯の釈放といつたような気持も促進されたかと思いますが、直接の関係はございませんことをここで申し上げておきます。
  65. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 第三条に本協定実施細目のことが書いてありますが、大野参事官の先般の本委員会におけるお話では、これは何か公表をはばかるというようなことであつたと記憶しておりますが、本委員会を秘密会という形式で運営する場合は、実施細目の詳細にわたつてお話を伺えるでしようか。
  66. 大野勝巳

    ○大野政府委員 第三条には実施のための細目が出ておりますが、それはフィリピン政府側の要望もありまして公表されないことになつておりますので、日本側はそれに拘束されております。従つてかりに秘密会あるいは速記なしの会にしていただきましても、実施細目そのものの全貌を全部細部にわたつてここでごひろう申し上げることは、先方に対する関係もありまして差控えざるを得ないと思いますが、ただその中の重要な問題につきまして概要の説明を申し上げることは、政府といたしましては考慮いたしたいと存じます。
  67. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私は、今のこの協定実施の細目の公表をはばかるということについて、あいまいな印象を受けるのであります。実はこういう賠償協定というような性質の協定におきましては、本文というものはわずか三条か四条、実は実施細目こそこれは重要でありまして、実施細目につきまして、詳細な御説明がなければ、ただまんじゆうの皮だけみたいな、こういう片々たる条文だけについて御説明を聞いたのでは、どうも納得行かない。どうも秘密会でもだめに、われわれ国会議員をまるで侮辱するようなお話でありますけれども、それはそれといたしまして、もう一つお尋ねしたいのは、先にもどりますが、今秋のフィリピンの大統領選挙の見通しは、私もフィリピンの選挙についての消息通でも何でもないのでありますから、確かなことを申し上げるわけには行きませんけれども、新聞紙の報道などから察しますと、どうもナシヨナリスタのマグサイサイ候補の方が優勢のように思うのであります。なるほどフイリピンにおきましては、対日賠償の問題は、超党派的な国民的な要望であるということも承知しております。しかしながらこのナシヨナリスタが政権につきますというと、フイリピンの外交政策におきまして、対米依存、向米一辺倒というような従来のキリノの外交政策が、重大な訂正を受けるのじやないか、こういう予想があるのであります。そうなりました場合に、それはナシヨナリストでありますから、あるいは国権の回復というような立場から、日本に対する賠償の要求も、従来よりもより強く出て来るということも一応考えられないではないのでありますけれども、しかし、またナシヨナリスタがナシヨナイストとして、民族の独立というものを確立する、そうしてフイリピン人がアジア人の本来の立場に立ち返る、こういうことになりました場合には、同じアジア人として、日本国民に対しても、非常に友好的な感情を新たにし得るのじやないか。その場合もちろん日本側におきましても、ほんとうに平和的な、民主的な日本にならなければならぬのでありますけれども、そういうふうな条件日本側において整いますならば、私はナシヨナリスタが政権についた場合においては、従来リベラリスタが政権をとつて盛りました時代とは違つて、むしろ日本側とは話合いがしやすくなるのじやないか、こう思います。そういうふうな予想も立ち得る場合において、向米一辺倒の外交政策をとり、リベラリスタのキリノの政権のもとにおいて、賠償とりきめを急ぐ。最終とりきめができないにしても、その一部分である中間賠償についての協定を急ぐという態度が、私はどうもおかしいと思うのでありまして、これはどうも吉田内閣がやはり向米一辺倒の政策をとる点において、キリノと同じ立場におり、似た者同士が話合いをしておる、こういう感じを受ける。これは何も秋まで待たれないという話じやないのです。私はむしろフイリピンの大統領の選挙の帰趨を見きわめた上に、そうしてナシヨナリスタが政権にでもつきましたならば、アジア人の本来の姿に立ち返つたフイリピンの政府を相手に、新たに本格的な賠償交渉を始めるべきだと思います。これら忙ついての政府の御所信を伺いたいと思います。
  68. 上塚司

    上塚委員長 淺沼君に申します。先ほど御要求外務大臣は、ただいま参議院の予算委員会出席して質問に応じております。督促をいたしましたけれども、午前中はどうしてもこちらに出席することができないと言つて参りました。御了承をお願いします。
  69. 淺沼稻次郎

    淺沼委員 午後まで会議は続行されるのですか。
  70. 上塚司

    上塚委員長 これはあと理事会を開いて決定したいと思います。
  71. 小滝彬

    小滝政府委員 ちよつと速記をとめていただきたい。
  72. 上塚司

    上塚委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  73. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めて。
  74. 大野勝巳

    ○大野政府委員 ただいまの御質問にお答えいたしますが、先ほど来御説明申し上げましたように、フイリピンのことしの秋に予想される大統領選挙の帰趨いかんということは、これはだれにもはつきりわからないことでありますむろん外務省といたしましては諸般の情報を常に手にいたしております。また現地からの報告も当然参つておりますので、外務省といたしましては、ある種の観察はもちろん下しておりますが、しかしながら、これは他国の内政上の問題でありますから、とやこう言うべき筋合いのものではございません。また今度の秋の選挙の前の時期におきましても、沈船以外の賠償の項目につきまして、話合いがつかないということは予断できないのでありまして、政府といたしましては、一日もゆるがせにせずに交渉を進めるのが当然の責務と考えますので今日なお推進いたしておるわけであります。従つてフィリピンにおける全然予断できない将来の政治的な結果というものに対して、ある種の予断をいたしまして、その上で何か考えるということにつきましては、わが政府はこれをとらないのであります。またよしんば総選挙後にいずれの党が勝つといたしましても、先ほど私が御説明申し上げましたように、上院におきまして三分の二の多数を得なければ、サンフランシスコ平和条約というものの批准が達成されないのであります。その意味にお品きまして、ある一党だけで上院で三分の二の多数を獲得するということは、ただいまの状況では容易でないという観測だけは立ち得るのでありまして、そういう状況から申しましても、これは今の段階において、現在のフイリピンの政府交渉を続けることが不得策ではないかというような御意見でございましたが、政府はその御意見に同ずるわけには実は参らないのであります。またこの賠償の問題を契機といたしまして、向米一辺倒であるとかないとかというふうな問題は、まつた関係のないことであるということを、ここではつきりとお答えいたしておきたいと思います。フイリピンにおける朝野両党とも、フイリピンの国の歴史、その成立ちからいたしましても、どのみち米国とは緊密なる関係を維持して行かなければならないいきさつにあると、私どもは観察しておるのでありまして、いずれの党が向米一辺倒であるとか、いずれの党が国家主義的な色彩が非常に強いというふうなことをここで取立てて、わが国の政策、賠償交渉政策を左右するような要素にするということは必ずしも妥当でない、こんなように考えております。
  75. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これはちよつとそれますけれども、今の大野参事官の政治感覚といいますか、これはどうもずいぶん怪しいものだと思いますが、一体外務省の役人が対外交渉に当る場合に、ただその外交技術的な点だけを追究して、相手国の政情というようなものをほんとうに掘り下げて分析して、それで交渉に当るということでなければいけないと思いますが、どうもその点において私はまつたく政治に関するセンスがないように思う。それでこれについてもやはり秋の総選挙の帰趨を今からよく考えて、そうして帰趨がわからぬならこういうのはむしろ手控える、そうしてその帰趨をまつてからやる、帰趨が今からはつきりしており、予測できるならば、その予測に基いてやる、こういうことであるべきだと思うのです。同様のことはやはり東南アジア諸国についての今後の外交交渉について共通した問題だと思うのです。政府は東南アジアに緒方副総理から始めて、たくさんの大臣あるいは民間の使節を送つたりして、盛んに親善外交をやろうとしておられますが、なかなかうまく行かない、うまく行かないのも、たとえばビルマの現在の政府は社会党の政権である、そのほか東南アジアの諸国におきましては、やはり日本の自由党なんかとは性格の違う非常に革新的な性格を持つた政権が多いのでありまして、そういうふうなものとうまくマツチする考え方をもつて外交交渉に臨まなければ、これはうまく行かぬのである。大野参事官は外務大臣でありませんけれども、やはり重要なポストにあつて交渉のことに当られるのでありますから、私は今後そういうことについては、もう少し政治学の勉強をしていただきたいということをこの際に要望いたします。
  76. 上塚司

  77. 帆足計

    帆足委員 渡航課長がお見えのようですから、旅券問題についてお尋ねします。過日は時間がありませんでしたので、渡航課長はたいへんかつてなことを言われまましたけれども、がまんして聞いておりましたが、官僚としまして一番大事なことはお客様に親切なことと、それから法律を守るということであります。厳に旅券法に違反しないように気をつけていただきたいのでございますが、昨日渡航課長が言われますのには、政府の主義に反して鉄のカーテンのかなたを実地見学して参つた有能の士に対しては、二度と国外に出る場合の一般旅券を提供しないということを言われました。これは旧警視庁時代の特高外事課長に就任なさつたような錯覚を持たれたのではなかろうかという点を心配するのでありますが、もし法律を守られるならば、旅券法に違反した場合には処罰がちやんとあるのです。その規定に従いまして刑に処せられた者を差別待遇できるようになつておりますが、それにつきまして欧米局長に私は実は質問したのであります。旅券法の問題は、各人の趣味、長うたがすきとか浪花節がすきとかいう趣味によつて決定されたのでは困るのでありまして、基本的人権でありますから、あいつは行かせたくないと思つても行く権利がある。この権利はかつて吉田松陰が外国で勉強したいと思つた、彼は非常な民族主義者、国粋主義者であつたにかかわらず、外国を勉強したいという意思を持つてつた、その意思すら徳川幕府によつて弾圧されて違反行為とされた。しかし今は世界の民主勢力のおかげと国民の常識の進歩によりまして、海外旅行というものは基本的人権にみつておりまして、いまさら中国、ソ連の単なる旅行が国益を阻害するとか、生命に危険があるというような異常なことを言う政府は、世界に一つもないという状況であります。そこでこのことを欧米局長に確かめました。かりに高良さんのような場合に政府は違反であるという、高良さんは違反でないという、それについての証拠は結局裁判の裁決をまたねばならぬので、旅券法の条文をよく知らぬ人が奇妙な声を出して言うてみたところでしかたのないことなのです。法律をよく調べて、それによつて公正な判断を求めるというのが民主的な態度でございます。従いましてそういうものに対して、政府はただ趣味として一般旅券を出しますときに差別待遇をされるようなことをなさるのか。かりに一つの例を申し上げますと、高良さんがインドに行かれるようなときに、前に政府の考えと違うことをしたから、旅券を出すことを政府は拒絶するかという例で一般原則をお尋ねしましたところ、これは昭和二十八年二月十日の海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会の議事録第六号でございますが、「高良さんがこの前一般旅券で違反した、あるいは条項違反であつたということから、かりにインドに行く場合においては旅券を出すかということのお尋ねですが、これも御質問に従いまして、その御要求になる旅券をわけまして、外交旅券であるか、公用旅券であるか、一般旅券であるかというわくに従いまして、帆足委員の方は一般旅券だけに興味をお持ちだと思いますので、一般旅券についてお返事をいたしますと、この前の違反云々の問題は、一般旅券を発給するときの考慮になりませんから、出すことは当然であります。」こういうふうに明確な御答弁を土屋欧米局長はいたしておるのでございます。しかるに昨日渡航課長にお尋ねいたしましたら、私たちに対しては、鉄のカーテンのかなたを旅行した者に対しては、まず旅券は出さないつもりでございます、こういうことを聞きまして、私ども政府と多少意見の相違がありましても、そういうことのために、海外旅行の基本的人権をあなた方によつて奪われなければならぬかどうか、またいかなる法規に従つてそういうことをなされようとするのか、現在は徳川幕府の時代ではなく、新憲法の時代である、そういう見地から、ひとつ明確なお答えをお願いしたいと思います。
  78. 松尾隆男

    ○松尾説明員 帆足委員から、お前の頭は前の警規庁の特高時代の官僚の頭である、親切にしろとかいう非常に御好意のあるお言葉がありましたけれども、私もまた新憲法のもと、公務員として忠実にやつておる次第であります。私たち渡航課の課員といたしましては、窓口業務を担当しております関係上、いらつしやる各位に対しては、きわめて親切にやるようにということは、大臣以下各上司の方からかねがね注意されておるのでありまして、私たち課員一同は、その意思に従つて至れり尽せりのサービスをいたしておるつもりでございます。もとより私どもは完全な、神様ではないのでありまして、たまにはそちら様の方からごらんになれば、御不満の点があろうと思いますけれども、私どもの信条といたしましては、あくまでも公務員という精神に徹して、十分親切丁寧に事務を処理いたしておるのであります。  今お前は一般旅券でもつて中ソ両地域に入つた者に対しては、今後旅券を出すか出さないかという点に対しまして、私ははつきり申し上げておきます。政府の方針といたしまして、中共、ソ連に旅券法違反で入つた方には今後旅券を出さないというのが、私の理解しておるところでは政府の方針であると思うのであります。公務員といたしまして、私は政府の方針に忠実に従つておるつもりでございます。
  79. 帆足計

    帆足委員 それではお尋ねいたしますけれども、第一には、あなたは多分高文の試験をお通りになつておるから法律は御存じだと思いますが、旅券法の第何条によつてそういうことをなされようとするのか。  第二には、ただいまの私が朗読いたしました土屋欧米局長のこの発言に対して、これとの矛盾——あなたの上司がこの速記録に述べておることと、下僚としてのあなたのただいま了解されておることとの矛盾を、どのようにお考えになるか、御答弁願いたい。
  80. 松尾隆男

    ○松尾説明員 土屋欧米局長答弁の内容につきましては、私からとやかく申し上げる筋合いはないと思うのであります。もし御質問がございましたならば、土屋欧米局長に直接お聞取り願いたいと思います。
  81. 帆足計

    帆足委員 あなたは欧米局長の下に使われておるものでありますから、従つてときには旅券問題に関する速記録なり見て、そうして上司たる欧米局長が、国の最高の判断の機関であり、主権が存在するところであるところの国会において、説明された解釈であつて、その解釈があなたが理解しておるところと多少の行き違いがあるとするならば、ただちに上司と相談して、食い違いがないように努めることが任務であつて、お前がかつてに欧米局長に聞けばいいじやないかというような答弁は、どうも私はあまりよくないと思います。  それから第二に私がお尋ねしたのは、そういうことは、あなたの趣味によつてなさるべきものでもない。また単に上司から気に食わぬ者はなるべくやるなと言われたから、それが一般方針でございますというようなことを、ただ唯々諾々として言うのであるならば、それは正当でないのでありまして、法律の第何条によつてそういう差別待遇をするか、その法的根拠をお示し願いたい。もし東京の鉄道駅長が、あの人間は少し気に食わぬからひとつ下関にはやらないなどというようなことを一々されて、汽車が出てしまつたあとで、あのどき出してもよかつたとか、損害賠償をいただいても、事すでにおそしで、旅行というものは時期の問題がございますから、そういう態度では困るのでありまして、どういう法規の第何条によつてそういうことをやろうというのでありますか。旅券法ではそういうことをこまかくきめておりますから、その法規に従つてつていただきたい、御答弁願いたい。
  82. 松尾隆男

    ○松尾説明員 お前はお前の趣味によつて、ある人には旅券を出し、ある人には旅券を出さないと帆足委員はおつしやいますけれども、私はそういう趣味は持つておりません。はつきりと申し上げます力そうして何のどういう法的根拠でそういうことをお前は一課長としてやるのかという御質問でございますけれども、もし帆足委員が丹念に御専門の旅券法を十分お読みくだされば、第十三条第一項第五号にはつきりと私はうたつておると思うのであります。
  83. 帆足計

    帆足委員 これはこうなつております。第十三条の第四号に「第二十三条各号の一に該当して刑に処せられた者」刑に処せられた者の例を皆様に御了解を願うために申し上げますと、「左の各号のの一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」その中の一つとして、虚偽の記載をして海外に行つた者、これはよろしくないことに当然であります。それから虚偽の記載をして、渡航先の追加再交付を受けた者、他人名儀の旅券を行使した者、旅券をかつてに他人に譲つた者、旅券の返納を命ぜられたときに返納せずにいた者、効力を失つた旅券を間違つて使つた者、こういうもので、なおかつそれが悪意があつて刑に処せられた者に対しては、そういう差別待遇をし得る、そういう不届きな者に対して——高良さんやその他私どもがしましたのは、それのいずれにも入つておりません。虚偽の記載はいたしておりません。(発言する者あり)虚偽の記載は全然いたしておりません。そこでそのいずれにも当つていない。当つていないけれども、政府の主観的判断から見れば、私どものやつたことは政府として好ましくないということが言えると思うのです。好ましくないということは言えますけれども、法律に違反したとかなんとかいう問題ではこれはないのであつて、世の大部分の法律雑誌をごらんなさい。私どもの要求の方が正しいというのが、法学界の雑誌の八割まで占めておるのでございます。しかしながら法律の問題というものはやはり多少解釈の違いがありますから、政府がかく主張され、われわれが反対いたしましても、最後の決定は最高裁判所で決定してもらうべきであつて、私はそれでいいと思うのです。意見の相違のために争うほどのことでもないでしよう。しかしながら、だからといつて今度再び私どもが海外に一歩でも出ようとするのに対しては、一律に一般旅券をやらないというような苛酷なことが——これだけの違反行為、資犯罪法にも当らぬほどの、刑に何も処せられぬ違反行為によつて外務省からそういうしうちを受けるべき義務はない。その上欧米局長は現にはつきりと——速記録のままを申しますと、「一般旅券についてお返事をいたしますと、この前の違反云々の問題は、一般旅券を発給するときの考慮になりませんから、出すことは当然であります。」、将来私どもが海外旅行を再びいたしますときに、かくのごとき問題が起りはしないかということを心配いたしまして、あらかじめこのことを、高良さんの問題と関連して実は土屋欧米局長にただして、欧米局長はこういう明快な答弁をされたので、私は喜んで政府との意見の相違は裁判所で争いましよう。それで私は釈然といたします。そうして今後のことは欧米局長がこのような態度をとられるならば、私はそれで納得して参つたのであります。ところが昨日突然南君のことを聞きましたので、私は非常に不快でございました。従いまして今渡航課長は、欧米局長の言うたこと、上司の言うたことなどは、わしや知らぬといわれますけれども、私が今速記録を読んで不審にお考えになりますならば、これを差上げますから、どうぞ見てください。これとあなたの今の解釈との関係はどうなりますか。さらにまた私どもが技術的に違反したことをとがめるのであるならば、ただいまの問題は欧米局長の解釈で解消しておる。ところが今渡航課長は新しい条項を発明しまして、国益を著しくかつ直接に阻害するに足る相当の理由ある人物という条項を今何やらつぶやいたようでございますが、私が鉄のカーテンのかなたに旅行したことが、国益を著しくかつ不当に阻害する相当の理由ある人物の中に入れられるのでありますならば、先日島津赤十字社長は鉄のカーテンのかなたに旅行いたしました。かの地に旅行したというこの事実が国益阻害であるならば、島津赤十字社長もとがめらるべきであつて、技術的条件に違反したという政府の不快の感情からわれわれを責めるというのであるならば、同時に歌米局長の御答弁で解決しておるのでございます。従いまして渡航課長をこれ以上責めたところでしかたがありませんが、むしろ良識ゆたかな外務次官にごあつせん願いまして、こういうことが二度とないように、良識によつて解決していただきたい、私はひとつ次官から御答弁願いたいと思います。
  84. 小滝彬

    小滝政府委員 土屋欧米局長の申した点と渡航課長の言つておる点に矛盾があるというお話がありましたが、この点はさらに私どもの方でよく取調べ、誤りのないようにいたそうと思つております。ただ、先ほど帆足委員とこちらで私的にお話いたしました節にも申しましたように、帆足委員はしきりに第十三条の四を御引用になりますけれども、外務省といたしましては、むしろ渡航課長も言及したかと存じますが、五号の方を考慮に入れておつたかと了解いたしております。しかし具体的な問題については帰つてよく考慮いたすことを約束しておきます。
  85. 上塚司

    上塚委員長 帆足君、まだ御質問がありますか。——簡単に願います。
  86. 帆足計

    帆足委員 この問題はきわめて重要な問題でございまして、先ほど課長はおもしろ半分に考えておられるようですけれども、島国日本といたしましては、世界旅行ということは非常に重要な国民の権利でございまして、ただいま二つの新聞記者がモスクワと北京におりますけれども、これが生命に異状があるとか、または国益を阻害しておるということを私は言うことはできないのであつて、一利一害で政府が言われることなら私は了解いたしますけれども、それがとたんに国益阻害に値する人物に変化して、そうして今後は海外のどこにも一歩も出れないというような苛酷なことを、一渡航課長の手かげんできまつてしまうというようなことが、日本国民に対して許されていいかどうか、ひとつ良識ある次官において十分慎重の御考慮を願います。これは貿易国としてきわめて重要な問題でありますから、重要な問題としてひとつ御研究願いまして、いろいろりくつをつけられるよりも、良識によつて解決していただくように切望いたしまして質問を打切ります。
  87. 小滝彬

    小滝政府委員 十分お説を考慮に入れまして善処いたしたいと思います。
  88. 上塚司

  89. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は本日は外務大臣、それから犬養法務大臣、法制局長官の出席を求めておつたわけですが、都合によつて出席がございませんので、法制局の高辻第一部長が出席のようでありますから、かわつて答弁を願いたいと思います。  私の質問いたしたい点は、昨日の岡崎外務大臣の自衛軍の問題あるいは保安隊の問題、これらの問題に関連をいたしまして、(「大臣を呼んだ方がいいよ」と呼ぶ者あり)ちよつと待つてください。私は主として違憲審査の問題等につきまして承つておきたいと思いますから、あえて政治的な御答弁がなくてもけつこうでございます。重大な問題ですから承つておきますが、まず第一に昨日岡崎外務大臣が、現行の憲法の範囲内において、憲法を改正することなく自衛軍をつくろうという改進党の主張に同調したということを新聞は報じておりますが、私は岡崎外務大臣がはたしてこの報道通りの答弁をしたかどうかについてはつまびらかでございません。そこで岡崎君の言明は別といたしまして、改進党の主張するごとく、現行の憲法の範囲内において、憲法改正を行うことなく自衛軍をつくるということが憲法に違反をするということになりはせぬか、私は最終的には最高裁判所において審判を受けなければならない問題であると考えますが、政府といたしましてはどういうような見解を持つておられるかという点につきまして、まずこの点を承つておきたいと思います。
  90. 高辻正己

    ○高辻政府委員 きわめて重要な問題でございまして、私からお答えして御満足がいただけるかどうか、私自身危ぶむ次第でございますが、一応私どもの考え方を申し上げますれば、この改進党の御見解というもの、これも正規にどういうものであるか、私ども承知いたしませんが、芦田先生等の御見解等を伺うところによりますと、九条の第二項というのは、「前項の目的を達するため」と書いてあるから、それはいわゆる侵略戦争のための戦力の保持は禁止されるけれども、自衛のためならよろしいという御解釈であるように存じております。ところで法制局の在来の考え方と申しますのは、実は憲法改正の際の考え方と同じでございますが、第二項の「前項の目的を達するため、」というのはそういうこととは解釈しておりませんで、国際平和を誠実に希求するという、それ自身を達成する目的である、こういうように考えております。従つて自衛のためといえども陸海空軍その他の戦力は持てないということでございますが、ただここでこれも御承知の通りのところでございますが、例の戦力というものの限界を一応政府考え方としては言つておりますから、その限界を越えるものについてはいけないけれども、越えないものならよろしいという結論に今までなつておるわけでございます。
  91. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は後ほど聞きたいことがあります関係上、あるいはすでに何回も答弁されたことであるかもわかりませんが、ちよつと一、二点だけ承つておきたいと思います。  木村保安庁長官が先般保安隊というものの目的をかえて、外敵に対する防衛ということを主目的にしよう、そういう性格を持つた、名前は保安隊と申しますか、自衛隊と申しますか、自衛軍か知りませんが、とにかく外敵に対する防衛を主目的とした防衛力を持とうということを申されました。そういうことになりましたときに、外敵に対する防衛というものは私は考え方によつては戦力である、木村法務総裁の説明に、原子爆弾を持たなければ戦力でないというようなお話もあつたようでありますが、それでは今日の朝鮮の軍隊はあれは軍隊ではないのか、あるいはインドネシアの電隊は軍隊ではないのか、エチオピアの軍隊は軍隊ではないのか、これは一般国際通念として通らない議論であろうと私は考えます。従いまして、外敵に対する防衛を主目的としたものに保安隊の性格が切りかわつても、なおかつそれは戦力ではない、こういうように政府が言いさえすれば、そういうふうに認めさえすればそれでいいというようなお考えでありましようか。
  92. 高辻正己

    ○高辻政府委員 保安庁法を改正いたしまして、それをもつぱら軍事目的のために使うという場合にどうかということでございますが、これは抽象的に申し上げてはなはだ恐縮でございますが、結局戦力に当るものかどうかということを、一応判定してからお答えをしなければならぬということになるのであります。ただ、たとえば現在の保安隊におきましても、これは今までしばしば、私に限りませんが、いろいろ政府側から申し上げておるところでございますが、保安隊の使命と申しますのは、保安庁法の第四条か何かに明らかでありますように、わが国の平和と秩序を維持し云々というふうになつておりまして、あれは本来は警察目的のためだ、こう解釈されておるわけであります。しかしながら、たまたまそういうものが、外国の侵略がありました場合に、旗を巻いて山の中に逃げなければならぬかというと、そうではなくて、その際にはやはりそれに力及ばずといえども、ある程度の抵抗ができるであろう、しかしそれだからといつてそれは軍隊として解すべきでないということは当然であろうと思います。従つてそういう限度においての作用というものがあるために、軍隊になるということはもちろんないのであろうと思います。これは御参考のためにつけ加えておく次第であります。
  93. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私の承つておりますのは、外敵に対する防衛を主目的とした場合においても、なおかつそれは戦力ではないかどうかという問題を承つておるのであります。もとよりいかなる生物におきましても、自分で自分の身を守ろうという本能があることは当然でありまして、これは緊急やむを得ざる場合において、外敵の侵略に対してわれわれがいかなるものをもつてもこれに対抗し、自己の防衛をすることは当然本来固有の権利である、その意味において自衛権というものは本来固有のものである、独立国には当然あるのだという考えを持つておるのでありますが、従来の保安隊の警察目的からさらに飛躍をいたしまして、対外的な、つまり外敵の侵入を予想し、その場合に自由を防衛するということを主目的としてできた場合においても、なおかつこれは戦力でないかどうか、政府としてはどういうふうな見解をお持ちになつておるかという点であります。
  94. 高辻正己

    ○高辻政府委員 これは何もあらためて今申し上げるわけではございませんで、今までしばしば申し上げておることを繰返すにすぎないのでございますが、政府は自衛権というものはある、従つてそれ相当の実力があれば自衛権の発動というものはさしつかえないわけであるけれども、九条の二項によつて戦力というものは持つてはいけないということを規定しておる、従つて戦力に当るかどうかというのがまさに基準のわかれ道であつて、それに当ればいけないし、それに当らなければよろしいというのが今までの見解でございます。それは先ほど申し上げた通りでございます。
  95. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私の質問に答えておられないようです。私は外敵の侵略に対して防衛することを主目的として防衛力であつても、それは戦力でなきやいなやという点であります。
  96. 高辻正己

    ○高辻政府委員 でありますから単に対外戦争の目的があるからといつて、それだけで戦力に当るとは解されない。戦力に当るかどうかということは、さらに目的のほかに実力行使としての総合力を判定してきまることであるというのが、ただいままでの解釈でございます。
  97. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私が先ほど申しましたように、今日の日本の保安隊の持つております、必要な場合において立ち上ることのできる実力というものと、エチオピア、インドネシアの持つておるものと比べましたときに、はるかに日本の方が強大であろうと考えます。しかして、エチオピアやインドネシア等においてはこれを軍隊と認め、国際的にもそう認めておりますときに、日本におきまして、これは現状のままでもけつこうでありますが、しかし今後MSAを受諾するとなると、従来日米安全保障条約によつて日本の自衛力を増加して行くということが期待されておつたことから、おそらくは今度のMSAによつて義務づけられて一歩前進するものであると考えるわけであります。その意味において、何個師団となれば戦力であるとか、あるいはどの程度になれば戦力として認めるかということについて、一体基準でもあるのでありますか、これらの点についてどういうふうな見解を持つておられるかを承りたい。
  98. 高辻正己

    ○高辻政府委員 エチオピアの軍隊等の例をあげられまして、日本の保安隊の実力と比べてどうかというような御質問でございました。これは今までも相当出ておる問題でございますが、世界の一番弱小の国の力よりも強いからといつて、それが必ずしも戦力になるとは考えられないのでございまして、それはもちろん日本の現在置かれておる環境のもとにおいて、日本が一定の規模の戦争を有効適切に遂行し得るかどうかということが問題になるわけです。従つてわが国の前の時代にりつぱに戦力であるといつても、それが今日戦力とは言えないように、また同じ時代においても、他の国の軍隊よりも少し強いからといつて、それがわが国の戦力になるとは言えないのでございまして、そのことは御了解いただけると思うのでございます。そこでMSAの義務の問題でございますが、この点は私しかと承知しておりませんので、また別の方からの御答弁にまつていただきたいと思います。
  99. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは私は重ねてあなたの警察とか軍隊というものに対する考え方、概念を伺いたい。私は一般の概念として、国内の治安警備に当るものが警察であり、外部的の脅威に対して備えるもの、たとい自衛の目的であろうと、あるいは一歩進んで国権の伸張としてこれを使う場合であろうと、ともかく対外的な目的のものにできたのが軍隊である、こういうふうに考えるわけでありますが、私の見解が間違つておれば指摘をしていただきたい。
  100. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私も大体同感でございます。陸海空軍と警察というものとの相違は、警察は治安維持のためにする実力部隊でございますし、陸海空軍といえば対外戦争の遂行を本来の目的とするものであろうと思います。但し憲法にいつております戦力は、必ずしも陸海空軍そのものをいつておるのではありません。「陸海空軍その他の戦力」といつております。そこで先ほど来私が申し上げたようなことをいうわけでございます。
  101. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 くどいようですが、重ねて結論的に申し上げます。それでは今日の保安隊の目的を、警察的なものから外敵の侵略に対して備えるもの、つまり防衛を第一目的としたものにかえても、それはなおかつ戦力でないのかどうか、先ほどあなたは外敵を対するものが軍隊であつて国内の治安に当るものが警察であるという概念には同感ですと意思表示をなさいました。そのあなたの前提からいたしますれば、当然外敵に対抗する場合においては、これは軍隊の性格を持つたものであると解釈されますが、私の考え方に理論の飛躍、あるいは矛盾があるのでありましようか。
  102. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私は今申し上げたつもりでございますが、悪かつたのかと思いますけれども、軍隊と警察との区別については、まさにあなたのおつしやるところに本質があると思うのであります。ただし、憲法が禁止しておりますのは陸海空軍その他の戦力でありまして、要するに陸海空は戦力の例示でございますが、戦力については、従来から法制局ないし政府として、御承知の通りの解釈をとつております。従つて陸海空軍であつても、それが第一項のようなおそれがないまつたく弱いものであり、戦力に当らないものであれば、九条は禁止しておらないというのが今までの解釈でございます。それを申したわけであります。それを申したわけであります。
  103. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は今の最後の答弁がちよつとはつきりしないのでありますが、主目的を外敵に備えるものにしても、それがすぐさま軍隊である、戦力であるというふうにはならぬ、こういう御趣旨でございますか。
  104. 高辻正己

    ○高辻政府委員 陸海空というのは、戦力の例示だというのが法制局の考え方でございます。従つて戦力に当らなければ、必ずしも九条二項で禁止されておらないという考え方でございます。
  105. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そこで、これが憲法に反するやいなやという違憲審査というものは、最終的には最高裁判所でやることになつております。ところで、先般も社会党左派の諸君が保安隊は憲法に違反するということを提訴した、あるいは改進党の苫米地さんが、先般行われた国会の解散は憲法第六十九条、つまり不信任案が成立した場合の適用を受けないから、憲法に違反するものであり、従つて自分は依然として議員であるから歳費を要求する権利があるということで、提訴されております。これに対して最高裁判所は、今日の日本憲法においては、外国の憲法裁判所などと違うから、手続上こういう問題を受付けるわけに行かない。つまり下級裁判所から順次持つて行かなければならぬことになつております。これは手続上受付けることができないというので、手続上の欠陥があるという理由によつて却下されておる。ただその場合に、最高裁判所の真野判事が自分の個人的見解であるといいながら補足意見を述べておる。それによると、これは明らかに憲法違反であると自分は思う、六十九条によらざる解散は憲法の違反であると思うという意思表示をされておる。これは各新聞やその他にも一般に公にされております。そこで、憲法第八十一条は、法令の審査権に関する規定でありますが、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」従つて先ほど申し上げましたような社会党の問題であるとか、あるいは苫米地さんの問題は、おそらく下級裁判所の方から順を追つて最終的に最高裁判所において、憲法に違反するやいなやを決定してもらわなければならぬことになると思います。そこで裁判所法第七条によりますと、最高裁判所の裁判権というものは、「最高裁判所は、左の事項について裁判権を有する。」これは上告と、それから訴訟法において特に定める抗告、これ以外にはないわけであります。従つて、ここでは頭から最高裁判所で憲法に違反するかどうかという問題を判定することができません。そこで、それではかりに、今現に行われております議論であるとか、現に行われております保安隊の改編の問題等をしばらく別といたしまして、これは純然たる法理論的立場から承るのでありますが、今日の憲法のもとにおきましては、総理大臣は、各大臣の任免権も持つている、統帥権も持つておる、最高裁判所長官の任免についても、実際上政治力は少くとも持つておる、こういうことになつて参りますと、実質上、関白太政大臣以上の権限を法律上付与されることになる。私はたまたまわが自由党のようなきわめて穏健なる政党であるからこそ間違いはありませんが、もしきわめて過激なる政党が政権を把握するといつたような場合におきまして、今日のこの憲法を改正することなく、軍隊をつくつてどんどん人を徴発することもできます。そのときに、それは軍隊であるから、軍隊をつくることは憲法違反であるから、従つて自分はこれに応ずる必要はないという場合において、その個人が下級裁判所にこれを提訴して、それが最終的に最高裁判所で判決を受けるまでの間には、今日の法律上の手続から考えて、少くとも数年の日時を要する。そうすると、現実には、一切の憲法に違反する行為は、片つぱしからやつてもこれを審査するところがない、すぐさまこれに対して違憲なりやいなやを判決するところがないということになりますと、憲法によつて保障された国民の権利義務はどうなる。少くともその最後の判決が下るまでの間、おそらくは数年あるいはそれ以上もかかるでありましよう。その間に侵される国民の権利義務は、はたしてどうなるでありましようか。私はこれらにつきまして、重大なる欠陥があるのではなかろうかと考えるわけでありますが、法制局当局においてはどのようにお考えになつておるか、承りたいのであります。
  106. 高辻正己

    ○高辻政府委員 ただいま仰せになりましたことは、裁判権の問題として一般的な問題であると思うのでございます。ただいまの裁判所の制度、これは憲法上の裁判所の制度になるわけでございますが、その裁判制度が弊害があるのを一体どうするかというような問題になると思うのでございます。これは根本的には憲法における裁判所の制度なり、そのもとでの、もし必要があれば法等の改正ということにまでなる問題でありますが、私どもといたしましては、そんなことを考えるあれはないのでございまして、現行法のもとにおいてどうかということを申し上げるよりほかしかたがない。そこで現行法のもとにおきましては、もちろんただいま仰せになりましたように事実上の問題はいろいろあろうと思いますけれども、裁判所がしつかりしており、また現にそうであろうとは思いますが、おります限りは、国民がその権利義務にわたる事項について、国の違法があります場合には、もちろん訴訟を提起することになるわけでありまして、その裁判所に信頼を欠けば、とにかくでございますが、われわれとしては、裁判所に信頼を置きます以上は、さしつかえないと考えざるを得ないのではないか、こう考えます。
  107. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 たとえば先ほど申しましたように、保安隊が憲法違反であるとかいうような問題、軍隊ができるかできらいかということは、これはすぐさま国民に重大な利害関係を持つあのでございます。基本人権につながつた問題であります。今日のような、物事が非常にスピーデイに進んで行く時代におきまして、すぐさまこれが憲法に違反するやいなやという問題を判定するところがないということは、私は重大な欠陥ではないかと思います。そこであなたは事務当局でありますが、最高裁判所を憲法裁判所のようにするとか、今の裁判所法の中に、一部改正をいたしまして違憲審査ということを加えることによりまして、憲法違反から来るところの、憲法に違反するやいなやという問題を即座に判定するということに私はすべきではないかと思うのでありますが、そういうようなことをあなたはお考えにならないまでも、政府当局において、何かお考えになられてはいないでしようか、いかがでありましよう。
  108. 高辻正己

    ○高辻政府委員 まず第一段の問題でございますが、例の現在の保安庁法の改正等にからんでのお話でございましたが、それは申し上げるまでもなく、保安庁法の改正をする際には、もちろん国会の御審議を経るわけでございまして、それは国会において適正なる御判断をされればいいわけであります。もちろんそれで通過をいたしました場合にも、なおかつそれが違憲のものであれば、違憲の問題として残るわけでございますが、それは、それこそ国民が法律上の争訟として裁判所に持ち込む余地がもちろんりつぱにあるわけでございますから、ただいま仰せられましたような心配がないとは考えられません。但し、今御心配のもとをだんだん推察いたしてみますと、いわゆる法令自体、たとえば保安庁法が改正された場合に、その改正された保安庁法を即座に憲法に違反するとして判断をするところがあつてほしいというお考えのようでございますが、これはまつたく論理の問題としては非常にある問題でございまして、これはもちろんそういうことが好ましいという考え方もございましよう、当局におきまして、それをどうであるかと申し上げる段階にはないと思いますけれども、論理としては、もちろん十分にあり得る考え方であると思います。
  109. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そこでたとえば保安隊の問題でも何でもけつこうでありますが、国会におきましては、憲法に違反するという判定を下す、御承知のように国会の両院法規委員会というものがございます。国会法によつて認められておる。その「両院法規委員会は、左の各号の事項を処理する。」という中の、「新立法の提案又は現行の法律及び政令に関して、両議院に勧告する。」ということもできるわけであります。この勧告で国会としての一つの見解が決定をいたした場合に、政府はこれと異なつた見解を持つ。たとえば今度の保安隊を自衛軍のようなものに切りかえるといつた場合に、これが憲法に違反するものであるという見解を国会が持つ、これに対して政府は、さにあらず、現行の憲法内において、これは認められた行為であるというように考えたときに、もとより最終的判定は最高裁判所の判決にまつ以外にありませんが、政府としては、国会がそういうふうな意思表示をしたときに、どういう態度をおとりになるか、どちらを優先的にお考えになるかという点であります。
  110. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私、ただいまの御質問の真意が実はよくわからないのでございますが、もし違つておりましたら御指摘を願いますけれども、たとえば特定の法律を制定される。それは国会の権限に属する事項でございますが、そういう法律を制定されておりながら、その制定された法律が憲法に違反するということを法規委員会が勧告なさるということは、ちよつとあり得ないように考えるのでございます。しかしそれはともかくといたしまして、憲法第七十三条で明らかでございますように、法律を誠実に執行するという責務が、内閣の基本的な責務としてあるわけでございます。従つてもし国会で今御引例のような法律ができましても、それをまた執行しないと国会からおしかりを受けるということになるわけでございます。要は法律問題として、最終的には裁判所が決定するわけでございますが、そのような勧告がある事前に当然考えられるのは、国会がそういう法律を制定される際に十分御考慮になる問題であろうと考えます。
  111. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 いかなる問題にしろ、国会が憲法違反であるということを断定する意思表示をしてしまつた。ところが政府は、憲法違反でないと言つてそれを押し切ろうという場合においては、最終的には最高裁判所の判決をまつ以外にないわけでありますが、政府としてはまず立憲政治の根本からいつて、国会の意見を優先させるべきであると考えるのですが、その点はどうですか。
  112. 高辻正己

    ○高辻政府委員 あるいは私の理解が間違つてつたかも存じませんが、さきの御質問では、かりに法律ができまして、その法律が憲法に違反しておる場合というように伺つたと思つたのでございます。従つてそういう法律は、国会がおつくりにならぬだろうということを前提として申し上げたのでございます。しかし、もし法律が憲法に適合しているけれども、その執行方法が憲法に違反するような方法でやつておるということでありますれば、これは国会で、もちろんいわゆる国政調査権等を十分に御活用になるとか、あるいは今仰せになりましたような方法がございましよう。その際には政府は1仮定の問題でございますが、それが憲法に違反しているようなことについて十分御指摘があり、まさにその通りと解しますならば、是正することは当然であろうと思います。
  113. 上塚司

    上塚委員長 これにて暫時休憩します。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた