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1953-07-18 第16回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十八日(土曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 熊谷 憲一君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 田中 稔男君 理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    中山 マサ君       野田 卯一君    福井  勇君       増田甲子七君    渡邊 良夫君       岡田 勢一君    喜多壯一郎君       須磨彌吉郎君    帆足  計君       穗積 七郎君    岡  良一君       大橋 忠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         外務政務次官  小滝  彬君         外務省参事官         (大臣官房審議         室付)     大野 勝巳君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         外務事務官         (情報文化局         長)      林   馨君         運輸事務官         (中央気象台総         務部長)    北村 純一君         運 輸 技 官         (中央気象台         長)      和達 清夫君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 七月十八日  委員池田勇人君及び島上善五郎君辞任につき、  その補欠として渡邊良夫君及び帆足計君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 七月十七日  第二次世界大戦影響を受けた工業所有権の保  護に関する日本国ドイツ連邦共和国との間の  協定批准について承認を求めるの件(条約第  一八号)  第二次世界大戦影響を受けた工業所有権の保  護に関する日本国スイス連邦との間の協定の  締結について承認を求めるの件(条約第一九  号)  妙義地区駐留軍演習地設置反対請願外八件  (小峯柳多君紹介)(第四五三三号)  同外二十八件(武藤運十郎紹介)(第四五三  四号)  同外五件(小峯柳多君紹介)(第四五三五号)  同外三件(小峯柳多君紹介)(第四六五六号)  ソ連地区抑留胞引揚促進に関する請願(押谷  富三君紹介)(第四五三六号)  同(原田憲紹介)(第四六五四号)  同(杉山元治郎紹介)(第四六五五号)  新牧山地区軍事施設設置反対請願池田清  君紹介)(第四五三七号)  日高門別町の駐留軍演習使用区域拡大反対に関  する請願小平忠君外三名紹介)(第四五三八  号)  同(山中日露史君外四名紹介)(第四五三九  号)  同(南條徳男君外四名紹介)(第四六五三号)  海外抑留胞引揚促進に関する請願日野吉夫  君紹介)(第四六一五号)  同(山下春江紹介)(第四六一六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  戦争犠牲者の保護に関する千九百四十九年八月  十二日のジユネーヴ諸条約への加入について承  認を求めるの件(条約第二号)  団結権及び団体交渉権についての原則の適用に  関する条約(第九十八号)の批准について承認  を求めるの件(条約第一二号)  工業及び商業における労働監督に関する条約(  第八十一号)の批准について承認を求めるの件  (条約第一三号)  職業安定組織構成に関する条約(第八十八  号)の批准について承認を求めるの件(条約第  一四号)  日本国とフランスとの間の文化協定批准につ  いての承認を求めるの件(条約第一五号)  日本国フィリピン共和国との間の沈没船舶引  揚に関する中間賠償協定締結について承認を  求めるの件(条約第一六号)  世界気象機関条約への加入について承認を求め  るの件(条約第一七号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  世界気象機関条約への加入について承認を求めるの件、右を議題といたし質疑を行います。通告順によつて発言を許します。田中稔男君。  なおただいま中央気象台より和達気象台長並び関係政府委員としては、小瀧外務政務次官林外務省情報文化局長北村中央気象台総務部長その他来席されております。
  3. 田中稔男

    田中(稔)委員 この条約について日本周辺の諸国で参加していない国がないか、これをひとつお尋ねしたいと思います。
  4. 下田武三

    下田政府委員 日本周辺でございますと、中共朝鮮が参加いたしておりません。
  5. 田中稔男

    田中(稔)委員 中共、つまり中華人民共和国と北鮮朝鮮民主人民共和国ですか、この二つの国が加盟していないということになりますと、日本気象観測の上において非常に重大な欠陥が生ずると思うのでありますが、気象台長が見えておりますならば、その点について御所見を承りたいと思います。
  6. 和達清夫

    和達説明員 御承知のように、天気は西から移つて来るものでありますから、現在中共方面気象資料の入らないことは、わが国にとつて致命的の欠陥となつております。この件に関しまして、以前にも世界気象機関アジア地区委員長に、わが国からこれに対して訴えを出したこともございます。これに対して今日まで別に反響はございません。そういうような状況でありまして、現在世界気象機関にこれらの国が入つていないということは非常に残念ではありますけれどもわが国としてはいたし方ないと思つております。
  7. 田中稔男

    田中(稔)委員 私はこの条約承認することには異議はないのでありますか、日本がこの条約承認しました上において、中国なり北鮮もこの条約加盟するように努力しなければならないと思いますが、そういう御意思があるかどうか、それからもう一つはこういう条約に正式に両国の加盟を見るまでの期間でありますが、気象観測ということは、今度の西日本水害考えましても非常に重要でありますから、それまでの期間において、たとえば日本気象関係機関と、中国なり北鮮気象関係機関とが民間協定みたいなものを結ぶ、ちようど今度の在華同胞の帰国が日赤その他民間団体活動で実現いたしましたように、そういう民間協定ということで、気象業務において国際的な協力を実現するというような方法をお考えになつてはいないか。以上二点をお尋ねいたします。
  8. 下田武三

    下田政府委員 御質問の前段につきましては、私どももまつたく同感でございます。つまり何ら政治的な色彩のない、しかも各国技術的な協力なくしては実現し得ないこういう国際事業には、政治的色彩のいかんにかかわらず、多数の国に参加してもらうということはまことに必要であろうと思います。しいて考えませば、この条約の第三条に国以外の領域を参加せしめるという規定がございます。そこで台湾国民政府大陸自国領域を参加せしめるという宣言をなすことによつて、法律的には入れることが可能かと思いますが、しかしこれは政治的にはきわめてむずかしい問題だと思います。いずれにいたしましても早く日本関係の深いこれらの国々が、この国際的気象協力に参加するということはまことに望ましいと存じます。  また何か民間協力機構考えられないかというお話でございましたが、実は世界気象機関ができます前に、これは民間というわけには参りませんが、各国気象台長一つの結合と申しますか、機関がありまして、それはIWO、国際気象機関と申したのでありますが、どうも政府を当事者といたしませんで、気象台長がエキスパートとしてお集まりになつておる関係で、種々の不便がありますのでその点に基きまして結局政府間機関としてこの機関が発足いたしたような次第でございます。中央気象台長集まりですらそうでございますから、いわんや民間の方々がお集まりになつても、いろいろな予算の面あるいは技術的な設備面等におきまして、この国際的な事業をおやりになるということは、あるいは不可能ではないかと存ずるのであります。
  9. 上塚司

    上塚委員長 次は戸叶里子君。
  10. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今田中委員が御質疑になりましたので私は一点だけ伺いたいと思います。この条約への加入に先だつて加盟申請を行い、国である構成員の三分の二の承認を得ることが、加入条件なつているとございますが、どんな場合か加盟を拒否されるような場合があるのでしようか。
  11. 下田武三

    下田政府委員 これは拒否される場合はもつぱら政治的の関係だと思いますが、今まで日本国際機関加盟に対しましてずいぶん反対を受けました。これは戦時中日本占領いたしました国からの反対がおもでございましたが、そうでなくてもイデオロギー的、政治的の見地からソ連中共中国等に非常な反対を受けた苦い経験を終戦後得ております。しかしこの条約に参加するにあたりましては、後日御審議にあずかります国際民間航空条約というのがございますが、それは特別な規定を設けまして、戦時中日本占領または侵略された国全部が日本加入申請承認しなければ、たとい他の国がいくら賛成しても日本は入れないという趣旨の規定がございまして、これは非常にむずかしかつたのでありますが、幸いこの条約にはそういう特別な規定がございませんために、日本平和条約規定に従いまして、講和発効後六箇月以内に加盟申請することをすでに表明しておりますので、それによりまして昨年六箇月以内の期間加盟申請をいたしまして、それが本年の五月十八日、この機関によりまして三分の二以上の多数をもつて承認せられましたので、ここにこの条約加入することといたしまして御承認を求めることにいたした次第であります。
  12. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それは日本の国の場合だけであつて、ほかの国の加盟の場合には三分の二の許可を得なくてもよろしいわけでしようか。
  13. 下田武三

    下田政府委員 第三条に詳しい規定がございますが、第三条の(C)、つまり独立国であつて気象機関を有するが、この条約の第一附属書に掲げてない国であつてしかも国連加盟国でない国、つまり日本がそれに該当するわけでありますが、そういう日本のような国は、構成員の三分の二による承認を必要とするわけであります。従いましてこの附属書に掲げました国、あるいは国連加盟国につきましては、日本よりも加盟条件が容易になつております。
  14. 戸叶里子

    ○戸叶委員 よろしゆうございます。
  15. 上塚司

    上塚委員長 次は岡田勢一君。
  16. 岡田勢一

    岡田(勢)委員 方よつと関連して質問いたしたいと思います。先ほど田中君の質問にお答えになつた中で、今観測気象情報を得ておりません地域が支那大陸朝鮮といわれたようですが、ソビエトシベリア方面は入つておるのですか。朝鮮という意味は、南鮮北鮮全部でございますか。あるいは、南鮮連合軍からの通報を受けておりますか。
  17. 和達清夫

    和達説明員 南鮮気象情報が入つております。ソビエトはむろん加盟もしておりますし、詳細な気象情報を放送しておりますから、わが国は、それで非常に利益を得ております。ただ入りませんのが、中共北鮮でございます。
  18. 岡田勢一

    岡田(勢)委員 二十五年に台風がたくさん参りましたが、あの台風一つで、台湾海峡から支那大陸に入つて、それから三、四日情報が来なくて、支那大陸で解消したのではないかと思つていたものが、北鮮元山付近から日本海に出て、日本海を真東に進んで能登半島付近に進み、相当な被害をこうむつたことがあるのであります。何台風であつたか知りません。そういう関係から考えても、田中さんなり、戸叶さんから御質問があつたように、これは、重大な関係がありますから、何とかそれらの情報をとるべく——地域的の委員長かなんか前に日本がやつてつたわけですね。これに加盟したら、そういう勧告なり努力なりがなされなければならないと思いますが、それについて、どうお考えですか。
  19. 和達清夫

    和達説明員 お話のような場合に、現在においてわれわれのなし得ることは、東支那海、黄海にあるところの船からの通報、それが唯一のものであると思います。それ以上、もちろん大陸情報は非常に大切でありますから、もし世界気象機関加入いたしまして、この地区委員会に出席できるというような場合は、以前にもそういう訴えをいたしましたが、十分にこのことを訴えたいと思う次第でございます。なお、ただいま日本はこれに加入しておりませんが、実際この地区の準大陸放送という、地区全体の気象情報を集めて放送するという任務を、未加盟国でありますけれども、実際の仕事をしておるのでありまして、まだ格別委員長というわけではありません。
  20. 岡田勢一

    岡田(勢)委員 占領期間中は、進駐軍の方で気象台を管理してやつておられたようでありますが、その後、日本気象当局に、完全にこの業務をまかされましたのは、いつごろでありましようか。それから、進駐軍が管理しておりました当時に、日本内地における気象設備をよほど減らされたように記憶しておりますが、それは今復活しておりますか。同時にまた、日本内地気象業務関係の、たとえば気象台測候所観測所等の数は、戦前と今との比較ではどういうふうになつておりましようか。それから、もう一つは、気象という人類の活動に非常に大事なる影響があります業務に対しての年々の予算は、満足できるだけ盛られておるかどうかというようなことの概略を、なるべく詳細に御説明願いたい。
  21. 和達清夫

    和達説明員 わが国気象業務を完全にわが国自体で行いましたのは、講和以後でございます。その後は、御承知行政協定によりまして、現行の手続において、米国に対して観測資料、その他調査あるいは地震の情報を提供いたしております。その次の御質問気象業務が、終戦以後削減になりましたのは、米軍の示唆もありましたが、その当時の行政整理によつて行われたものでございます。測候所の数は、正確には記憶しておりませんが、二百近くから百五十近くに減つております。ここで中央気象台の今日の困難なことを申し上げるのもどうかと思いますけれども、その後におきましても、しばしばの整理節約を受けまして、今日におきましては、特に今年のごとき節約におきましては、行政協定の線を満足させることすら困難な状況に立ち至つております。私どもといだしましては、わが国災害世界においても特別のものでございますので、単なる外国並というのではなくて、わが国独得の気象事業を持つべきものであると考えております。それには、今日の気象台の人員では、とうていそれを満足に行うのには不足であると私は存じております。
  22. 田中稔男

    田中(稔)委員 今気象台長お話によりますと、中国なり北鮮からの気象に関する情報が得られないから、東支那海及び公海に出ている日本漁船から情報を得て補つているというようなお話があり、そうしてまたそのあとに、日米行政協定によつて気象情報在日米軍に提供しているというお話もありました。こういうようなお話をいろいろ総合してみますと、気象業務政治性ということをわれわれは認めざるを得ないのであります。実は東支那海あたりに出ておりました日本漁船は、中国の側によつて拿捕されたという不幸な事件が先般頻発したのでありますが、これに対する国民印象は、中国が非常に何か不当なことをやつた。自由な公海で自由な漁業をやつているのを理由なくこれを拿捕した、こういう印象を受けておる。また政府の宣伝も大体そうだつたと思いますが、拿捕された漁船の漁民の諸君が、その後何回かにわたつてつて参りました。その話を聞きますと、漁船が出ておりまして、無電でいろいろな気象情報を送る。それが国連軍側に非常に重要な資料となつて採用されて、B二九が沖縄の基地を出まして、北鮮の爆撃に行くというような場合に非常に助けになつた、こういうようなことで表彰を受けた漁船乗組員もあつたという事例があります。こうなりますと、極東において戦争状態が続いている限り、戦争はかりに休戦になりましても、なお極東における国際関係友好的なものとして確立されない限りは、その気象業務というものは単純な技術上の問題ではないのでありまして、非常にこれは政治的な性格を持つたものとなるのであります。ところが私は実は福岡県選出であり、今度の水害緊急対策特別委員会委員にもなつておりますが、今度の西日本水害におきましても、気象観測が非常に不正確であつたということが重要な原因になつておる。特に前回のいわゆる第二台風災害は、あのときの天気予報が正確であつたならば、あれほどの被害はなかつただろう。つまりもう晴れるということで麦をみんな刈り倒して圃場にほしてあつたのであります。それが予報に反して非常な雨が降つたので流れたというのでありますから、第二台風に関してはまつた気象観測の誤りというものが、大きな被害原因になつておる。しかもこういう災害は年々日本においては繰返される。この災害を防止するためには気象の科学的な観測というものが非常に重要になりますが、現状のままで参りますならば、こういう気象観測上のいろいろな欠陥はいつまでもよくならないと思うのであります。私はこの際外務省にお尋ねするのでありますが、こういうふうなことから考えましても、日本中国なり北鮮なりこういう日本隣国と、早く友好関係を回復するための努力をしていただきたいと思います。それについて、たとえばMSAの援助の交渉が行われておりますが、こういう交渉中国北鮮との友好関係を促進する上に役立たないばかりでなく、むしろ隣国との友好をもつと悪くするということになつてはいないか、ひとつ外務省のこういう問題についての御所見を伺いたい。日本気象観測を科学的に正確にするために、極東国際関係の是正についてどういう手を打つことを考えておるかお尋ねしたい。
  23. 下田武三

    下田政府委員 中共北鮮の未加入に対してどういう手を打つべきかというお話でございますが、先ほど申しましたように日本政府といたしましては、こういう技術的な分野における国際協力に、中共なり北鮮なりが協力してくれることはまことに望ましいと思うのでありますが、ただ気象は御承知のように軍事上の価値が非常にありますので、戦事中は国際間の気象協力ということが非常に支障を受けます。また経済的にも関係を持つて参りまして、南氷洋に出漁しておる日本捕鯨船が打つ気象情報のために、日本捕鯨船のありかがわかつて、そこにほかの国の捕鯨船がみんな集まつて非常に被害を受けたというような経済的関連も持つて参ります。そこでなぜ中共が現在気象業務をやらないかということはわかりませんが、やはり朝鮮作戦に関連して、軍事的な意味合いもあるのではないかということも推察されるのであります。そういたしますと、これは日本にとりましてまことに遺憾なことでありまして、この条約は何も加盟国以外の国に気象協力をすることを禁じているわけではないと思います。日本もこの条約加盟する前から実際には国際協力見地から気象放送をすることによりまして、日本のまわりの国にも便益を与えていたのであります。ですから中共に誠意さえあるならば、この条約加盟国なつていなくても、国際的に技術協力をする見地から、気象協力をやつてくれてしかるべきだと思います。軍事的な理由からかどうか知りませんが、今日そういうことをやつてくれないのはまことに遺憾だと思うのであります。
  24. 上塚司

  25. 帆足計

    帆足委員 先ほどの岡田委員からの御質問は、きわめて重要な問題だと思うのでありますが、昨今台風のために非常に苦労しております。日本神風の国といいますけれども、実は台風洪水の国という意味でございましよう。神風というものは技術の幼稚な時代一つ国防力なつ時代もあつたようですけれども、今では洪水を起すばかりで、国土の治水治山ダム式電源開発を内にし、外には正常貿易拡大ということでなければ、国連の隆盛は望めないという重要なときに、気象関係測候関係予算が一億三千万円も削減なつたというようなことを聞いておりますが、われわれ了解に苦しむところであります。従つて気象に対する諸施設を充実することはむだな経費ではなくて、きわめて日本再建のために、特に治水治山のために、たとえば計画流水量測定とか、ダムをつくるにしましても、その耐圧力測定などに欠くべからざる要素でありますのに、その方の予算が不十分である。ただいま所長から伺いましても、きわめて遺憾な状況であるということを伺いましたが、政府当局はそれに対してどのようにお考えでありますか。来年度の予算においてこの問題を真剣に考究するか、または気象専門家意見を聞きまして、多少の措置を予算的にも講ずるようなお考えがおありかどうか伺いたいと思います。また気象台の方ではその問題はどういうふうに今取扱つておりますか。
  26. 和達清夫

    和達説明員 まことに仰せの通りでありまして、私ども現在におきましては現在の与えられたもので最善を尽し、職員一同懸命にいたしておりますが、何分におきましてもこの西日本水害、あるいは相次ぐ天災、それらに対する十分なる気象協力ということは、今日の状態ではほとんど不可能に近いというほどわれわれは困難を来しておる。毎年その点につきまして大蔵省には予算を出しております。来年は特に水害防止を主眼としたところの予算を出す、もう少しこまかく申しますと、わが国におきましての雨量の観測というようなものは、従来行われておりましたけれども、それは平地とか人の多く住むところが主でありまして、山地におけるものは非常に少くて、ほとんどないと申してよろしいのであります、それらが今日の水資源の利用に、あるいは防災におきまして最も重要なものである。これらの観測も急速に行うというようなことなどございますので、この際全面的に長年の懸案を解決したく来年度の予算に要求いたすつもりであります。
  27. 帆足計

    帆足委員 私はこの問題は政府当局の方にも怠慢がありますし、またわれわれ議員としても、実はこの問題について昨日詳しい情報を聞いたのでありまして、その責任を痛感しておるのでありますが、気象台としても私は反省していただきたい点があると思うのです。と申しますのは、一般国民常識では、気象台というものは、あしたピクニツクに行くが天気がいいかどうかというようなことを聞く場所が、気象台だというぐらいに一般市民考えておりまして、この台風の国でこの問題がいかに重要な問題であり、今日の天文科学の進歩は、この問題に対して相当の解決を与え得る段階に到達しつつあるということについての認識が不十分であります。当らぬものは何かというクイズなどで、気象台だというようなつまらぬ答えを出してみずから満足しておる。まるでお稲荷さんと同じように取扱われておる。これは気象台についての啓蒙が十分でない。気象台が十分な政治力を持つていないし、国民常識の中に根を十分におろしていないという点もありますので、ひとつわれわれも気象台を見せていただきますが、もう少しこの問題についての国民の輿論を喚起して、気象台長も単に技術者としての面のみでお考えにならずに、日本治山治水の問題、同時にまた神風などのばかばかしい非科学的な迷信を打破して、将来における日本の地位を高めるための一つの重要な、気象科学ということがポイントであるというような点から、大いに考えもし、努力もしていただきたいと思いますし、われわれも協力したいと思いますので、一段の御奮起をお願いいたしたいと思います。  なお先ほどの田中委員質問に関連いたしまして、一言政府当局にお尋ねいたしたいのですが、実は私が昨年上海に参りましたときに、日本漁船問題について中国当局の一応の意見を聞いてみました。すると中国当局ではいろいろな資料を出しまして私に見せてくれましたが、とにかく当時は占領下のことでありますから、政府当局としても十分な調査はできなかつたと思いますけれども、百隻も漁船が拿捕されて中国に繋留されていた。そうしてその原因は主として魚をとる問題よりも気象通報その他の諜報的任務をしていた、そうしていろいろなことを連合軍に報告したり、司令部に報告するようなことを秘密に義務づけられていた漁夫長などがたくさんあつた。まことに遺憾であるということを聞いて——もちろん一方的意見だけでそうでございますかと思うほどわれわれ自主性のないものでありませんから、参考意見として聞いたのでありますけれども政府当局にはそういうことが耳に入つておられるかどうか、これをお尋ねしたいと思います。幸いにしてこの問題については、朝鮮戦争が終結すれば、過去は過去として、こういう問題は少くなるわけでありますが、百隻以上の漁船といいますと数億円に上るが、拿捕されて政府の補償というものは、その中の一割にも補償はしていないでしよう。ですから中小漁業者の打撃というものは非常に深刻なものでございます。従いましてこういうことが、中国側の言い分が妥当であるか妥当でないかという問題は別といたしまして、こういう問題については、やはり常に国と国との間に誤解もありますし、ましてや戦時体制のボーダー・ラインの場所でありますから、いろいろな不幸なこともありますので、常に国際情勢については話し合い、語り合つて、できるだけ摩擦を少くするということは、私は少くとも超党派的に必要だと思いますが、政府当局はこのような問題について、どのようにお考えになつておられるか。必要とあらばわれわれ資料も提出いたしますが、過去のことは過去のことといたしまして、朝鮮戦争もやがて済むでありましようから、この機会をとらえて中国との外交交渉に入る——保守党の方が再軍備をされようとどうしようと、これはある程度保守党としての常識問題でありましよう。それはともかくとして、とにかく外交交渉をしてできるだけ平和ならしめたいということは、保守たると進歩たるとを問わす、われわれ国民常識であると思う。しかるに中国のことになると、牛乳を飲むとおなかを下すとか、獣肉を食べるのは日本の淳風美俗に反して、昔はたいの刺身だけを食べるのがいいという錯覚があつたように、中共とかソ連とかいうと、何かキリスト教徒が回教徒のうちに行くようにこわがりまして、それと交渉するための努力と誠意を怠つておる。現に今西欧諸国はほとんどすべて北京に参りまして、いろいろ話合いをしているときに、われわれは漁業問題のような重要な問題を前に控えて、現在また問題を論議するにあたつて、こういう問題の論議をする勇気すら持たないということはまことに遺憾であつて、今からでもおそくありませんから、保守党であろうと何であろうとけつこうですから、ひとつ大いに誠実に国民の立場に立つてこういう問題を交渉によつてできるだけ妥結する。武力によつて妥結するといつても武力はないのですから、交渉によつて妥結する。理性によつて妥結することも努力をいたしていただきたい。この問題について私のようにお考えなつているか、その点だけお伺いしたい。
  28. 下田武三

    下田政府委員 仰せのように、終戦中国側に拿捕されました漁船は百隻を下らないというのはまことに遺憾でございます。ただいまのお話によりまして、その拿捕の原因中共側の猜疑心、つまり日本漁船が、無辜な漁夫が気象その他の点で諜報的勤務を行つておるというようなまことに当らない理由帆足さんは何もその理由を肯定されたわけではないでしようが、そういう理由であることを私初めてお伺いするのでございます。これはまことに遺憾なことであります。これは先ほど来気象台長からお話がありましたように東支那海に出漁する漁船は命がけでございます。これは中共から何ら天気の放送もないのでありますから、盲で荒海に乗り出すわけでありますから、当然自己のおる場所の気象日本通報し、また日本の方も船から来た知らせを受けて漁船の安全を確保することは当然な措置であろうと思います。それがそういう諜報的活動とにらまれましたことはまことに遺憾であります。これは逆の例でありますが、昨年の二月日本側が中共漁船を救つてただちに快く八名の漁夫を返してやりました。こういう態度に中共が出て来ることを期待するのでありますが、この日本側の公正な態度のせいか、あるいは一般の邦人帰還のせいか、その態度にばちを合せたのかもしれませんが、本年になつてから四月及び七月に相当数の漁船並びに漁夫の送還が行われましたことはまことに喜ばしいことであります。何ら日本側は中共側の猜疑心を受けるようなことはやつておりませんので、引続き残る不幸な漁船並びに漁夫のすみやかな送還を日本側としては強く希望している次第であります。
  29. 帆足計

    帆足委員 ただいまのようにお考えでありましたならば、それをわれわれに言うだけではなく、堂々と中国に対してなぜ交渉なさらないか。私どもが参りましだときも、民間外交として誠意のほどを示しまして数十名の漁夫を返してもらいました。山本熊一さんが大分熱心に交渉して返してもらいました。しかし民間外交は御承知のように限界があることであつて政府がやるべきことはやると同時に、局長の言われたようなことをわれわれに対して言うだけではなく、上海にどんどん行つて交渉なさればよい。それが相手にされないのは、こちらが超保守的な態度をとるから相手にされないのであつて、せめて英国のイーデン外相くらいの態度をとられたならば、また打つべき手もあろうと思いますが、これ以上局長に申したところでいたし方ないことでありますから、また次の機会に資料をもつて御相談したいと思います。
  30. 上塚司

    上塚委員長 本件に対しましては、ほかに御質疑はございませんか。——御質疑がなければ、本件に関する質疑はこれをもつて終了いたしました。  本件につきましては、討論の通告もないようでありますので、ただちに採決を行います。本件を承認すべきものと議決するに御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければ、本件は承認すべきものと決定いたしました。     —————————————
  32. 上塚司

    上塚委員長 次に、戦争犠牲者の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約への加入について承認を求めるの件を議題といたします。本件につきましても、討論の通告がないので、ただちに採決いたします。本件を承認すべきものと決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めます。よつて本件は承認すべきものと決しました。     —————————————
  34. 上塚司

    上塚委員長 次に団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約批准について承認を求めるの件、工業及び商業における労働監督に関する条約批准について承認を求めるの件、職業安定組織構成に関する条約批准について承認を求めるの件を一括して議題といたします。  本件につきましては、対論の通告がありますので、これを許します。田中稔男君。
  35. 田中稔男

    田中(稔)委員 この三つの条約批准について承認を与えることには賛成でありますが、この機会に政府に要望を呈したいのは、ILOの総会で政府の代表も加わつて決定いたしました条約がまだたくさんあるのであります。ところがその批准が非常に遅れております。われわれは日本の労働者の基本的な権利を守るというために、それらの条約が一日もすみやかにその批准につき承認を求めるために、本国会に提案されることを希望いたしまして賛成の討論を終ります。
  36. 上塚司

    上塚委員長 これにて討論を終結いたしました。  これより採決いたします。ただいまの三件を承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めます。よつてただいまの三件は承認すべきものと決しました。     —————————————
  38. 上塚司

    上塚委員長 次に日本国とフランスとの間の文化協定批准について承認を求めるの件を議題といたします。  本件につきましては討論の通告がございませんので、ただちに採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければ本件は承認すべきものと決しました。  なおただいまの六件につきましての委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任をお願いいたします。御異議ありませんか。     (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさようとりはからいます。     —————————————
  41. 上塚司

    上塚委員長 ただいますぐ外務大臣及び保安庁長官がお見えになりますからしばらくお待ちを願います。——それではこれより国際情勢に関する件につきまして質疑を行います。穗積七郎君。  なおこの際御注意申しておきますが、外務大臣、保安庁長官ともに十二時半くらいまでしかここにおれないそうです。従つて非常に時間が制限されるわけでございますが、質問の通告は約八名ございますので、時間整理の都合上一人当り質問時間を十分程度にとどめたいと思いますから、どうぞさよう御了承を願います。なお外務大臣は午後出席ができるかもしれません。今交渉中であります。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 それでは下田条約局長にちよつと手続上のことをお伺いいたします。十五日からMSAに関する正式交渉をお始めになつたようですが、あと大体スケジュールの予定が立つておりますか。
  43. 下田武三

    下田政府委員 十五日に第一回目の顔合せをいたしまして、その後まだ一回も会う機会がございません。来週初めに、できれば二回目の打合せをしたいと思つております。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 なお政府側としては大体の御予定はお持ちになつておられますか。最近の新聞の報ずるところによりますと向うが大分急いでいるようでありますが、日本側の大体のつもりがあつたら——向うと話合いをした上で正式なスケジユールがきまると思いますが、こちら側のおつもりがあつたらちよつとお示しを願いたいと思います。
  45. 下田武三

    下田政府委員 来週早々二回目の打合せをいたしまして、その際にブロシーデユアー・マターと申しますか、一週間に何回会うかということを打合せたいと思つております。そういうようなことをまずきめまして、それから実質的の交渉に入るわけでありますが、ただいまのところ、どれくらいの期間交渉に要するかという点については、ちよつと見当がつきません。しかしなるべく早くやりたいと思つております。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 なおもう一点手続上のことでお尋ねいたします。この正式交渉にお当りになる顔ぶれは、第一回の会合は新聞発表に間違いはなかろうと思いますが、この問題に関して、あと正式な委員または諮問機関のようなものに、民間あるいは国会からお招きになるような御用意はございませんか。
  47. 下田武三

    下田政府委員 第一回に出ましたのは割合に人数が多いのでございますが、来週から始まる交渉には、この前出た者が全部出ることはないと思います。岡崎大臣とアリソン大使は出ないようでありますし、結局事務当局間の下交渉ということになるだろうと思います。人数は非常に減るだろうと思います。なお、諮問機関のようなものを設ける意思はないかというお話でございますが、その点については私ども考えておりません。大臣に何かお考えがあるかどうか存じませんが、何も聞いておりません。
  48. 並木芳雄

    ○並木委員 MSAの問題ですが、岡崎大臣のあいさつの中に、「この交渉にたずさわることは私の欣快とするところであります。と申しますのは交渉の前提となる部面において既に意見の一致をみているからであります。」こういうことを言われております。これは下田局長は列席しておりましたから、どういうつもりで大臣がこういうあいさつをしたかわかると思うのですが、交渉の前提となる部面においてすでに意見の一致を見ているということは、具体的にどういうことをさすのですか。
  49. 下田武三

    下田政府委員 六月二十四日にわが方から出し、六月二十六日に先方から返事が参りましたその往復文書の中に盛られておる事項について、意見の一致があるということを意味するものだと存じます。
  50. 並木芳雄

    ○並木委員 あれは質問に対しての答弁で、意見の交換とか申込みに対する承諾とかいうものではないと思うのです。質問に対する単なる答弁です。しかもその中には相当意見が一致しておらないということで、この国会でも問題になつておる重要部分があるわけなのです。だからあれじやないと思う。もつとほかに前提となる大きな意見の一致があるのじやないかと思うのですけれども、もし条約局長がわからない点がありましたら、土屋局長は交渉に当つておられる方ですからよくわかると思うのです。どちらでもけつこうです。
  51. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま下田条約局長から申し上げたように私も了解しているのでございます。つまり今回の交渉を進めるのにあたりまして、MSA援助を日本が受ける際、日本の国内治安あるいは経済関係、並びに日本の受持つ軍事義務等が規定されますものが、安保条約規定されている範囲を出ないという点を確認いたしましたので、この点については、日本政府がアメリカ側と交渉いたします前提となる部面について、アメリカ側の意見においてもさよう認めておられるわけでありまして、その意味をここでうたつたのであります。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条約局長にお願いしたいのですが、国連加盟している国で、一番少い軍隊を持つている国の名前とその軍隊の数がおわかりになりましたら、次の機会でけつこうですから承りたいと思います。
  53. 下田武三

    下田政府委員 ただいま持ち合せておりませんので、来週にでも申し上げます。
  54. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 私はこの前終戦以来南北米に在留する同胞、つまり移民関係わが国が受けた直接、間接の利益を調べていただくように要望しておいたのですが、これは調べておつてくださるでしようか、欧米局長にお尋ねいたします。
  55. 土屋隼

    ○土屋政府委員 いつか御依頼がございまして私の方も調べておりますが、たとえば戦後関係者というか、親類その他に送つて来ました救済物資について政府が見ておる数字は出ておりますが、送金その他については今までのところ確たる資料がございませんので、大蔵省の為替局とか関係方面に月下問合せ中でございますから、資料が整い次第お届けいたします。
  56. 上塚司

    上塚委員長 ただいま外務大臣が見えましたので、外務大臣に対する質疑通告順によつて許します。穗積七郎君
  57. 穗積七郎

    穗積委員 残念ながら大臣の御都合で時間が非常に制限されておりますので、簡潔にイエス、ノーをもつてお答えいただきたいと思つております。  第一番にお伺いいたしたいのは、十五日からさらにMSA問題に対して一段と両者の交渉が接近されたようでありますが、それに関連して第一点にお尋ねいたしたいと思いますのは、この援助を受けますことによつて日本が防衛力の発展維持に努力しなければならなくなると思いますが、その場合におきます国内の防衛力の主体というのは、現在の保安隊と理解してよろしゆうございますか。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 保安隊、警備隊と思つております。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 それから、一昨日の参議院の外務委員会で、従来の保安隊の任務に加えて、外からの直接侵略に対しても、これの防衛に当る任務があるということを御答弁になつたようであります。これは私は新聞で拝見したのでありますが、その通りに理解してよろしゆうございますか。
  60. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはイエス、ノーではちよつとお答えしにくいのですが、大体言えば、そうじやありません。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 直接侵略には当らないという意味でございますね。
  62. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お許しを得て少し長く申し上げますれば、協定はまだ交渉をこれからして固まるのですから、MSAの援助を受けることについて、どういう義務が具体的になるかというのは今後の問題であります。従つて、アメリカ側とその点についてまだ話を十分にやつておりません。今日では、言えないのであります。この間の御質問はアリソン大使の十五日に述べました文句についての、いわば理論闘争をやつたのであります。具体的に今度MSAを受けるについてどういう義務を日本が負うかということは、今後の問題なのであります。従つてあれは、私も何へんも断つたのですが、これは仮定の問題であり、また理論だけの問題であつて具体的の問題は今後にあることなんだという、いろいろな前置きをして申し上げたのであります。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 その点に関して、われわれもいただきました向う側の文書を読んで、そこからそういう希望が向うから出て来ることが予見されるのでありますが、それと関連して、防衛力増強の問題については、今まで安保条約におきましては期待であつたものが、もしこの協定を結ぶといたしますと、こちら側の義務になると思います。その内容、量を決定するのは日本政府並びに国民の自主的判断云々となつておりますが、少くともそれを行うという原則的な義務はこちらが負うと思います。それに関連しまして、アメリカ政府の責任者でありますダレスが、最近ただちにではないけれども、終局において十個師団、三十五万云々という話をしておりますが、この問題について、外相は何らかの意味で予備的な意味ででも、向うからお聞きになつたでしようか。
  64. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その点は予備的にも聞いておりません。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 これはこの間政務次官にも、実はわれわれ希望として申し述べておいたのですがMSAの問題につきましては、第一点は、言うまでもなく、これを受けますことによるこちら側の義務がどういう内容のものであるかということと、もう一つは、その裏返上はどういう経済的利益を受けるかということかと思うのです。従つて兵力、防衛力増強の義務並びに予測されます直接侵略に対する防衛の権利と義務を日本の保安隊に課すような、そういう条約が予測される。しかも兵力の問題につきましては、向う側でもすでに数量すら意見を述べているわけでありますので、従つてこの二つの問題につきましては、交渉に入られます前に、向う側の意向を最小の必要条件としてお尋ねいただいて、当委員会に忠実に御報告いただくように、ぜひお願いいたしたいと思いますが、いかがでしようか。
  66. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはダレス氏の、何といいますか、釈明的な再度の談話でもつて、私ははつきりしていると思います。三十万とか三十五万という数字だけをお引出しになるから、驚くようなことになりますけれども、ダレス氏の言つていることは、たとえば日本には再軍備を禁止している憲法があるということを申したり、それから国内に相当平和的な勢力といいますか、反対の勢力があるのだということも言つております。またこれはアメリカ式に考えた場合の究極のことで、日本政府がすべての問題はきめるのだということも言つておりますから、ただ三十五万ということだけ引出して言わ刈れると、ちよつと響きが違うと思いまして、そういういろいろなことを入れてお考えになれば、ダレスの意図しているものはどこであるかは、私ははつきりしていると思います。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 この点に関連して木村保安庁長官にお尋ねいたしますが、防衛力増強の期待でなくて、義務を生じましたときに、しかも向うでも一応の腹案を持つておるわけであります。そういう場合に日本側といたしましては、その原則的な義務に従つてこちら側でも、たとえばダレスの話によりますと、本年度すぐ三十五万云々ということを言つておるのではない、究極においてという言葉を使つておりますが、それにしても、一年、二年にして、急速に十一万から三十五万にふやすということは、いろいろな点においてとうてい困難だと思います。従つて漸増の計画が具体化しなければならない。先般試案としておつくりになつたという問題とは別個に、こういう新たなるMSAの交渉が始まるといたしますれば、もとより、それに対する義務に従つて、こちら側で自主的に防衛力増強の内容を決定しなければなりませんが、そのことについて、どういうふうにお考えになつておられるか、新しい情勢に従つてお尋ねいたします。
  68. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。このMSA援助の受入れは、どういう内容になるかということは、ただいまのところ予測することはできません。しかし、アリソン大使も言つておりますごとく、いかに日本に対して防衛力増強を期待しておろうと、それは日本の政治的及び経済的安定を害してはいかぬのだ、そこに大きな含みがあろうと思います。そこでだんだんに交渉に入つて参りましようが、いよいよ日本がこれを受入れる態勢を整えるということについては、われわれ当局者といたしまして、その交渉の経過にまちましてすべての計画をやつて行きたい。もとよりわれわれといたしましては、十分な資料をふだんから集めまして、これからそういうように内容に入つてつて、時々それを受入れるような計画を立てて行きたいと考えております。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 もうすでにその時期に入つておるとわれわれは判断いたしますが、あえてそうおつしやるなら、これは水かけ論になりますから、これ以上申し上げません。しかし、交渉がだんだんに前に進みまして、それに沿うてもし計画されるならば、今度はひとつお隠しにならないで、試案でもけつこうですから、少くとも当委員会には御発表が願いたいと思います。  なお、十五日におきます向うのアリソン大使の談話の中で、国際的な協力の件について一言触れております。「相互に合意されることがある行動をとること」と言つて、相互に合意されることがあるということについて非常に強調をしておりますが、そういうことになりますと、この場合におきます協定は、言うまでもなく、ソ連または中共等の勢力に対します対立的な政策であることは明瞭でありますので、従つて日本の合意によつてとるべき行動、それは、たとえばソ連なり中共なりに対します日本の政策についてもこの合意の中に入りましようかどうか、お尋ねいたします。
  70. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは「合意」の前に「国際間の緊迫の原因を除去するため」とありますから、中共でもソ連とでも日本との間に緊迫の原因があれば、合意してこれをとるように努力するという意味であります。
  71. 上塚司

    上塚委員長 この際、委員長より一言委員会を代表いたしまして、外務大臣に対し、委員会の希望を申し上げます。  過日MSA問題に関する交渉が開始せられまして、アメリカ大使との間に公状を交換された模様でございますが、右の交渉の経過については、国際関係上さしつかえない限り、最近の機会においてまず第一に当委員会に御報告を願いたいというのが全部の希望であります。今後もまたさような交渉の場合には、ぜひ御報告を願いたいという希望でありますから、この点申し上げておきます。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 十分了承いたしました。
  73. 上塚司

    上塚委員長 なお、木村保安庁長官は、午後の時間他に用事があるそうでございまして、一時ごろまで御出席ができます。それから外務大臣は午後の時間も御都合ができそうでありますから、その意味において、なるべく今日皆さんの質疑を終了いたしたいと考えます。  次は須磨彌吉郎君。
  74. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 順序といたしまして、木村保安庁長官にまず伺いたいのでございます。今回のMSAの交渉の往復の文書並びに今回外務大臣とアリソン大使との間に交換されました演説の両方を見ますときに、明らかにわが国の防衛のためにこの話が出て来たということが見られるのであります。と同時に、今後出て参りますものはすべて防衛である。御指摘申し上げるまでもなく、防衛するということは何回か申しておるのでございますが、わが国の保安庁法の第四条によりますと、平和及び秩序を維持するために保安庁が存在し、また保安隊が存在しておるわけであります。そういたしますと、今すぐでなくても行く行くは、この交渉が成立いたしましたならば、保安庁法の第四条に防衛を加えるということが必然的に必要になつて参ると私は思いますが、そういうお心組みはございますでしようかどうか。
  75. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの御質問まことにごもつともなことであります。そこで今後MSA援助をどういう形で受入れるかということが問題であります。少くとも今の保安隊の性格があるいはかわるのじやないかということを私は考えております。その場合には、もちろん保安庁法の改正は必要になつて来るであろう、そのときには当然国会に法案を提出して御審議をお願いしたい、こう考えております。
  76. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいまの明快なる御答弁に満足いたします。それでだんだんおかえにならなければならないことになりますと、ただいまの保安隊の性格もかえる必要があるというお話も出たのでありますが、このことは外務大臣が二十四日付をもつて送られました文書の中にも、ホーA・デイフエゾス、国土防衛という言葉があるが、このことはダレス国務長官も二、三触れておられ、アリソン大使の言葉の中にもあるのであります。私の見ております感想では、今の吉田総理大臣は軍という言葉を非常におきらいのようでありますが、おきらいなら軍という名はおやめになつても、国土防衛隊というようなものにでもなさるつもりでありましようが、ちよつと伺いたいと思います。
  77. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今申しましたように、保安隊の性格がかわり、保安庁法の改正ができ上るものといたしますれば、もちろん今の保安隊という名称もあるいはその機会にかわるかもしれませんが、しかしどういうぐあいにしてかえて行くかということは、今まだ考えておりません。
  78. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 外務大臣にお伺いをいたします。アリソン大使は、この間の十五日の御演説の中で、「世界の自由諸国家は、自らを護ると同時に侵略及び暴力の勢力を阻止することができるということを如実に示しています。」と言われておる。わが国がMSAを受けますと、結局自由諸国の中に入るわけでございまして、自然直接侵略に対して防衛をいたします義務が、ミリタリー・オブリゲーシヨンズの一つとしてわが国に起つて来ると思いますが、いかがなものでありましようか。
  79. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは的確に申しますと、実はまだそこまで協定交渉が進んでおりませんから、はつきり申し上げることができないのであります。ただ相互安全保障法の五百十一条の(a)項等から一般的に推測しますと、そういう結論が出て来るのじやないかということは言えるわけであります。いずれこれは交渉がもう少し進みまして、的確な形でどういうふうにこれを協定に盛り込むのか、また向うの考えがどういうものであるかということが少しはつきりしませんと、具体的に申し上げる段階にはまだ至つていないと考えております。
  80. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 よくわかりました。そこでもう一つ伺いたいのです。アメリカ側の空気でありますが、これは私先般小瀧政務次官に対しても申し上げた次第であります。十一日及び十三日に行われましたマグナソンとダレス国務長官との会談の中にも出て参りましたが、日本という国はわれわれむずかしい国で、言葉の用語の術をよほど心得ておらないと問題を起すので困る、アート・オブ・ターミノロジイ云々と申しておりまして、敬意を表されたのか、侮辱されたのか私は疑うものでありますが、そういう意味で言いまわしということに非常に重きを置かなければならない、ことにフランク・ナッシユ国防次官補はこのことを露骨に申しておる次第でありますが、そういう点からだんだんわかりますことは、どうも日本は憲法に違反するということでいろいろな問題が起こて来ておる。そこで今一番的確に外務大臣にお伺いしたいことは、だんだん直接侵略に対します義務というようなものが出て参りますと、あるいは政府の今までの御見解では憲法に反するということを申されるかしりませんけれども、たとえば佐々木惣一博士のごとき、最近は岩田宙造博士のごとき、これはわれわれの立場をまた学説的に証明をいたしておるのであります。私どもは自衛の範囲を出ない軍備は憲法の条項とは違反をいたさない、こういう建前をとつて、わが改進党のごときは選挙上あるいは不利であつたかもしれませんが、この防衛を掲げて参つたような次第であります。そういうような建前は、ただいま岩田宙造、佐々木惣一両博士をあげただけでございますが、まだほかにもあるようでございます。さような学説というようなものにつきまして、保安庁長官もこの学説は傾聴に値するというお言葉でございましたが、きようは外務大臣から、アメリカ側にあります空気とあわせて、こういうようなことは政治的に考えれば、大乗的立場から乗り切らなければ、この交渉の成功を期することはできぬと思うのでありますが、いかなる御見解でございますか、伺いたいと思います。
  81. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今須磨君もお話のように、アメリカ側も日本の国内の感情といいますか、輿論の趨向等については非常に鋭敏に考えておりますから、まだ具体的に交渉に入つておりません今日はつきり申し上げることはできませんが、かなりそういう点を考慮して、アメリカ流の考えならまつすぐにぴたつと行くのだという場合にも、日本との交渉であるからまわり道をして、日本国民の感情等も考慮してという点もあるだろうと思います。従いまして、五百十一条にこうあるから、すべて協定の文面はこうなるのだというような結論までは、やつてみないとわからないと思います。一方今おつしやつた日本の国内の有力なる学者の説、佐々木博士とかその他にもあるようでありますが、私、実はあまりそういう方面に専門家でもないし、大して判断する能力もないのでありますが、しろうととして見ますと、それは必ずしも通説とか多数説にまだなつているわけでない、そうでないという意見もずいぶんあるのではないかと思います。私のごときしろうとにお聞きになりますれば、やはり憲法学者、専門家の人が多数がこうなつたというときにその意見が正しいのだろうということで、自分の判断も多少は加えましようが、憲法学者の大多数がこういう意見であると言えば、それが多数の通説になつて、それに普通なら従うということになりましよう。従いまして将来お話のような説が非常に国内で多数行われるということになりますれば、またその説に従うということもあり得るかと思いますが、ただいまのところは、どうですか、私の考えが間違いかもしれませんが、必ずしも多数説とはなつていないのじやないか、こういうふうな気がいたすのであります。
  82. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 よくわかりました。次に話題をかえまして北大西洋条約の待望の行政協定が上院において批准を見たのであります。近くわが外務省はこの改訂の手続をおとりになることはもちろんだと思うのでありますが、これはひとり刑事裁判権に関しますのみならず、私の気のついておりますことは労務の関係、それから調達の関係等について、まだ改正を要する点が輿論としましてもたくさんあるようでございます。この改正も御研究中だと承つておるのでございますが、その中には今の労務並びに調達等の関係についてもおやりになる御意向でございましようか。ちよつとお伺いいたしたいと思います。
  83. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま交渉をしようとしてやつておりますのは刑事裁判権だけでありますが、労務、調達については前々から問題がありますので、すつと研究をしております。しかしただいまの研究では、大部分が行政協定の改訂では結果がわからないのであつて、たとえば基準条項とかなんとかいうものは行政協定にはないのでありますから、これは実際のやり方がまず必要であろう、実際の慣習というかそういうものをつくり上げなければいかぬじやないか。しかし行政協定の改訂によつてでき得るものはもちろん交渉にやぶさかでないのでありますから、各方面の意見も聞きまして、研究はずつと続けております。
  84. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 いま一言附言して伺いたいのでございますが……。
  85. 上塚司

    上塚委員長 時間がもうすでに五分経過しておりますから、簡単に願います。
  86. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 この行政協定の改訂と伴いまして、内灘村その他いろいろな問題が今起つているのでございますが、こういう点等にもかんがみまして、この行政協定改訂の機会に、合同委員会はもつとパブリシティを出すということが、日米関係、対外関係をよくするために、私は非常に必要だと思うのですが、このパブリシティの一つとしても、今の合同委員会のメンバーを、あるいはメンバーに加えることができないといたしますれば、ほかのたとえばカウンシラーズ・ミーティングでもアドヴアイザーズ・ミーティングでもいいから、あるいはその事情に達成しております社会的な人でありますとか、教育者とか、国会議員とか、そういうものを入れたような会合を別に設けて、最も必要な日米関係をこの上悪化させないような手続をおとりになることが、私個人としても必要だと思うのですが、そういうお考えはないものでありましようか、これを伺つて私は質問を打切りたいと思います。
  87. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまのお話は非常に御親切なことで、私もこれこそほんとうに傾聴に値すると考えますから、さつそくその方向に向つてつてみようと思います。
  88. 上塚司

    上塚委員長 次は大橋忠一君。
  89. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 本日の新聞によりますと、最近ポンド地域との貿易が非常に不振であります。本年度のポンド地域との貿易は予定より一億ポンドくらい減つておる。手持ちのポンドも非常な減り方で、昨日は会議があつたそうでありますが、また聞くところによりますと、英国はアフリカにおける広大なる植民地に対して、日本の綿糸布の輸入を禁止するという方法で、日本の貿易を非常に阻害いたしているということであります。その模様は大体どんなものでありましようか、外務大臣からお聞きしたいと思います。
  90. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ポンド貿易が不振であることは事実であります。しかしイギリスとの間の支払協定によりまして、イギリス側は輸入制限をできるだけ緩和するように、各スターリング地域の政府に勧告してくれることになつております。その効果がまだ現われておりませんが、最近に濠州などでもある程度緩和してくれたようであります。けさ私が見ました電報によりますと、シンガポールでも数品目を除いては日本の輸入を自由にしたという総領事からの報告があつたということであります。だんだんにそういう輸入制限措置の緩和というものは効果を上げて来るのではないかと思いますが、今はおつしやる通りたいへん苦しいときであります。一方ポンドの手持ちも非常に少くなつておりまして、この方面はイギリスとの間にさらにポンドを提供してもらうように交渉をいたすことになつております。できるだけ努力はいたしますが、ポンド地域との輸出輸入は前途よほどの奮発が必要であろうと考えます。
  91. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 聞くところによりますと、英国は日本のガット加入に対しても非常に反対をしております。また通商航海条約締結に対してもこれを拒否しておるというようなぐあいで、英国側の日本に対する協力というものはあまりないように思うのであります。私はむろん大局的に見て英国とは協力しなければならぬと思うのでありますが、その協力は相互的でなければならぬと思うのであります。しかるにイランの石油問題でありますが、すでに政府においては英国と協力する意味において、イラン向け石油に対するドル貨の割当を禁止されたのであります。さらにイラン側では非公式に石油を含めたバーター貿易を申し出ておるわけであります。これに対してもどうやら否定的の態度をとつておられるということであります。私は協力は相互的でなければならぬと思う。しかるに英国の方ではきわめて非協力であるときに、日本の方ばかり協力的であるという理由はないように思つておりますが、その点はどういうふうにお考えでございますか。
  92. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はイギリスが、おつしやるように非協力的であるとは今のところ考えておりません。今までの交渉におきましても、いろいろの問題がありますが、イギリス流でなかなか強い交渉をいたしますのは事実でありますけれども、決して腹の中から日本をいじめるとか、日本を競争相手として押しのけようとかいうつもりではおらないと私は信じております。現にそういうふうに思われる事例も幾多あると考えております。ガット加入の問題にしましても、一時そういううわさがずいぶん立ちましたが現在のボットル・ネックはむしろイギリス側ではなくて、アメリカの互恵通商法に関連するところであろうと思つております。  それからイランとの貿易とか石油問題につきましても、これは外務省だけできめられることではありませんから、私からかつてな答弁をすることはどうかと思いますが、世界全体の貿易量を見て、日本の一番貿易がよくできるようなかつこうに持つて行かなければならないと思つておるのでありまして、イランとの友好関係、イランとの貿易ももちろん非常に重要でありますけれども、同時に世界全体として日本の貿易が伸びるようにいたさなければならぬ、こう考えますので、その間いろいろの苦心は必要でありますけれども、私はこちら側だけが非常に協力的で、イギリス側はたいへん冷たい、こういうふうにはどうも正直のところ考えられないのであります。
  93. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 英国は平和条約交渉中におきましても、当初は日本の綿業を制限する、造船業を制限すると言つてつたやつを、ダレス長官の尽力によつて、その制限がなくなつたということを聞いておりますが、太平洋戦争のもとも、本来を言うと、私は英国が日本を商売がたきとして見ておる、これが一番奥にはあつたと見ておるのであります。今日においても日本に対して好意的であるとは私は思えないのであります。いろいろ態度は外交的に緩和しておるのでありましようが、腹の中はわかり切つておると思うのであります。そこでこのイラン問題でありますが、イランの石油が日本に入つて参りますようになつてから、石油は非常に値下りいたしまして、年間に見積りますと約二百億円からの値下りをいたしまして、これがために消費者のこうむる利益は非常なものであり、かつ大切な外貨の節約がこれによつて非常に大きなものになつております。日本経済に与えた影響は非常に大きいと思うのであります。今日本の貿易業者が非常に目をつけておる貿易地帯といたしましては、イラン、イラク、トルコというようなところが非常に大きく浮びしつておるそうであります。こういうような点を考えてみますと、このイランの石油問題を考えられるにあたつて、よほど損得をよく御研究になつて御決定にならぬと、非常に損をするだろうと思うのであります。ことに英国との交渉にあたりまして、いきなりイラン問題については全面的に協力するというようなぐあいにトランプ・カードを出してしまつては、あの老獪なる英国などとは交渉できるものじやないと思う。従つて私はイラン側から非公式ではありますが、バーター協定の申入れがあると聞いておりますが、そういう場合におきましては、その石油の量を制限するとかなんとかそこに色をつけることによつて、しかるべくこれを受入れてやる、そして英国にもあまり大きな刺激を与えぬと同時に、イランも助けてやる、同時にイランに対する、好感が得られれば、イラクにもトルコにも、同じ回教圏であるから伸びるというようなことをよくお考えになつてひとつやつていただきたい。バーター協定の非公式の申入れに対する外相の大体のお考えをひとつお伺いしたいと思うのであります。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まず御説明しなければなりませんのは、イランの石油が入つて来たから、日本の国内の石油の価格か下つたとおつしやるのは、私は多少それは違うのじやないかと思つております。御承知のように石油というものは、今国際的には原産地の価格はきまつておりまして、FOBの価格はきまつておりますが、フレートの値段でもつて各地でその値段が違うわけであります。これは主として最近の船賃の値下りが非常に大きいものでありますから、石油の値段は国際的にイギリスでも下つておりますし、フランスでも下つておる、アメリカでも下つておる。その下り方と日本の下り方とほとんど私はかわりがないと思います。要するに主としてこれはフレートの値下りによるものと思つております。もつとも多少そういうこともありましようが、しかしそれとは別にしまして、イランの今のバーター等のお話でありますが、われわれもお話のようにイランとの貿易、イランとの友好関係ということは非常に重要視しております。そこで今おつしやつたような、結局いろいろの勘定の問題になると思うのでありますが、この点は実は外務省でやるのではなくして、生として通産省の方で、あるいは経済審議庁でいろいろ研究をいたす部分が多いのでありまして、お話の次第はよく了解いたしますが、それに対する的確なるお答えはちよつと外務省ではいたしにくいのであります。
  95. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 イラン油の輸入の結果下つたのじやないとおつしやいますが、イラン油輸入の前は国際カルテルが非常にもうけまして、アメリカにおける石油値段にフレートを加えたものよりもさらに非常にぼつてつた。彼らは十割、二十割というようなもうけを出しておつた。ところがイラン油の牽制にあいまして、そのぼつた部分だけよけいに値下りをした。今では国際カルテルの扱う石油の値段も、普通の利潤に返つて来たということが言われておるのでありますが、この点などよくお調べになつて、イラン、トルコ、イラク方面が、わがお得意として非常に重要性のあることをお考えになり、かつ日本国際カルテルの石油を牽制する、これがためにどれだけ日本が利益を得るかということもよく御勘案の上で、私は英国にもあまり大きな刺激を与えることのないようなバーター協定のようなものについて、石油の量を制限するとか、しかるべく御考慮になりたいということを希望いたします。  次いで私は竹島問題について一言したいと思います。政府においては交渉あるいは第三国の調停によつて、平和裡にこれを解決しようとお考えのようでありますが、これは非常なけつこうなことであります。しかしながら大邦丸の事件の際にも、私は、ただ単に口先や手続だけで解決しようと思つても、相手が相手だからとうていだめであると申しておきましたが、竹島問題のごときはなおさら私は見込みがないと思う。見込みがなくて、このままうやむやに彼らが竹島を自分の支配下に入れて成功したという感じを与えますと、彼らの態度から考えまして、そのうちに対馬もよこせというようなことを言い出すのじやないか。さらに壱岐までよこせというようなことを言い出すのじやないか。私は外交上のことを説明するつもりはありませんが、満州事変が起つたのも、日本の外交があまりに弱かつたがために、向うをつけ上らして、ああいうことを起す原因をつくつた。太平洋戦争も、実は日本の外交が非常に弱かつたがために、こういうようなことになつたのでありまして、おとなしい外交は平和的であるという印象は、実はその逆でありまして、初めのうちによほどしつかりしたところを見せておかないと、向うがつけ上ることによつて、日韓関係というものは収拾すべからざるがんになりはせぬかと私は思うのであります。われわれも日韓関係は最も重大であるから、何とかしてこれを円満にしなければならぬという考えにおいては、外相と全然同様でありますけれども、この竹島問題という小さな問題については、私はただ単に口先や手続だけでいつまでもひつぱつておるということはだめである。そこで木村保安庁長官も御出席でありますから申しますが、私はやはり警備船等を御派遣になつて、そうして韓国側の侵略を防がれて、少しお金はかかつても、これは長くいつまでも続く問題であろうと思いますので、実力によつて向うを一方においてあきらめさせるという手段を御併用にならぬと、結局私は韓国側がまたのさばつて来るということは確実であろうと思いますが、この点についての外相の方針、保安庁長官のお答えをお願いします。
  96. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話の点は、実はごもつともな点が多分にあるのでありまして、われわれもじれつたいような気がいたしておるのでありますが、しかし国際紛争解決の具としては武力は使わないという憲法の大方針もありますし、また今度の問題は、とにかく明々白々なる根拠のあるものでありますから、今までの大邦丸などと違いまして、これは私は解決できる問題であると信じております。この意味では今後ともできるだけ努力をいたすつもりでおります。
  97. 上塚司

    上塚委員長 大橋君時間が参りました。
  98. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 これは国際紛争にはあらずして、日本の領土を防衛する問題であります。従つて私は日本の憲法に何とあつても、安保条約にある通りに、日本は基本的の自衛権を持つておる。それが警察力であろうと、保安隊であろうと、軍隊であろうと、敵が侵して来た場合には、これは防がなければならない。また防ぐ権利があるのであります。私は堂々と警備隊をもつてこれを防がれて、そうして向うをあきらめさせるところまでしんぼう強くがんばられぬと、必ずこれは口先だけや手続でいろいろやつているうちに向うがとつてしまう。そしてまたのさばつて、その次には対馬、壱岐に来るというようなところまで、私は向うの性格を考えて、来ると思います。そうすると日韓関係というものは収拾すべからざるものになると同時に、日本の国内においても非常に不健全なところの国家主義、軍国主義というものが起つて来ると思います。民主主義を脅かすようになることを私はおそれるのでありまして、その点は政府においてもう少し特に御研究になつて、そうして将来万全を期せられんことを希望して、質問を終ります。
  99. 上塚司

    上塚委員長 次は戸叶里子君。
  100. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣にまずお伺いしたいと思いますが、政府がよく言われます言葉は、アメリカは日本の経済の安定を非常に心配している、ということであります。そうであるといたしましたならば、なぜアメリカがドルをもつて日本に援助をされないか。外務大臣はMSAの交渉の過程において、ドルの援助の方が好ましい、償われないような完成兵器よりは、むしろドル援助の方が好ましいというような意向を述べられる意思があるかどうかを承りたいと思います。
  101. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はアメリカが使われないような兵器をそう持つて来るとは思いませんが、しかし日本の外貨の不足ということも事実でありますから、ドルの入つて来るような方法が望ましいこともこれは事実であります。またできたものをもらうよりは、国内の産業が発達するように国内でつくらせるということも、これは日本の経済から利益なことも当然でありますから、なるべくそういう方向に向いたいと考えております。
  102. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その割合だと思うのですけれども、大体外務大臣としては、ドルの入るのが一番望ましいというような御意向をお漏らしになる御意思はあるのかどうか。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 漏らすとか漏らさぬとかいうのではなくて、あからさまに日本の態度としては申すつもりでおります。
  104. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もしもその外務大臣の意向が反映されなかつた場合でも、なおMSA援助をお受けになりますか。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 反映されてもざれなくても、またほかの援助の内容によりまして、それが受けることがけつこうであれば、もちろん受けます。
  106. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、結局外務大臣の御答弁は、ドルが少くても、もしも完成兵器が十分に役立つものであるというふうにお考えになるならば、MSAをお受けになるというふうに了承してよろしいわけですね。
  107. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 大体そういうところであります。
  108. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうことに対しましてはまだたくさん異論がございます。たとえばそれでは私は木村保安庁長官に伺いますが、今日本がアメリカから受けておりますところの完成兵器、つまり武器ですね。あれは日本の保安隊にとつてまことにけつこうな役に立つものである、そうお考えなつていらつしやるかどうか。
  109. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま御承知の通り、日本ではその武器を供給することができないのであります。平たく言えば、自前でやろことができない。そこでアメリカからあれの貸与を受けてやつておるのであります。これをできるだけ能率的、効果的に使用いたしておる次第であります。
  110. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の御答弁はちよつと私の質問からそれていると思います。今の武器は、いざ内乱が起きたときに、保安隊が使うのにたいへん役立つものだと心から思つていらつしやいますか。
  111. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 一部については使用についてわれわれ考えさせられるところがございますが、大体においてこれはさような非常事態においては十分間に合うものと考えて、せつかくこれについての操作研究をやつております。
  112. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは今のと同じようなものが日本に援助として持つて来られましたときには、木村保安庁長官はそれをそのままお受けになる御意思なのでしようか。
  113. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 MSA援助を受けるその内容については、ただいまわれわれは関知することはできないのであります。将来どういう形でもつて援助を受けるかというときに、これは具体的に考えなければいかぬ。私の考えといたしましてはなるたけ日本でつくつたものを使用させたい、それに対しての援助をできるだけアメリカからしてもらいたいというのが私の気持であります。
  114. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それは結局完成兵器よりも、日本の保安隊が使うにふさわしいようなものを日本でつくりたいという御希望だと思いますが、その点も岡崎外務大臣に連絡をおとりになるおつもりですね。  それからもう一つは、もしもそうでなくて、今と同じような武器が援助の内容として与えられましたときには、保安庁長官はどういうふうな態度をおとりになりますか。
  115. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 申すまでもなく、保安隊で今使つております武器は、種々雑多なものであります。これはアメリカから援助を受けて、日本でつくらせて可能なものもありますし、また可能でないものもあります。可能でないものはアメリカからそのまま援助を受ける、日本でつくることの可能なものはできるだけアメリカと十分交渉した上で、日本でつくるようにいたしたい、こう考えております。その点につきましては今後交渉の段階に入りますと、岡崎外相と十分連絡をとつてやりたい、こう考えております。
  116. 戸叶里子

    ○戸叶委員 このMSAの援助を受けることによつて今までは日米、安全保障条約によつて日本は防衛力漸増が期待されていただけですが、今度は義務となつたということがはつきりいたしております。そういたしますと必然的に漸増して行かなければならないことになりますが、この漸増の程度は一体どういうふうにお考えになりますか。たとえば岡崎外務大臣は先ごろ千名ぐらいのことは大した問題ではないとおつしやいましたけれども、そのようにお考えなつていられるかどうか。
  117. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今後MSA援助の交渉に入りましたときに、具体的にそういうことをよく話し合つて行きたいと思つております。今の段階におきましては何名まで増加するとかいうようなことはまだ考えておりません。
  118. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点伺いたいのですが、日本が自分の国を守るために自衛力を漸増するのであつて、決してよそのためにするものではない、これははつきりいたしております。そこでこれは憲法違反にならないと言つて、極力軍隊と異なつているのだということを強調されておりますが、しかし国連規定によりますと、どこの国でも軍隊というものは他の国へ侵略するために設けるのでなくて、自分の国を守るために軍隊を置くのだ、こういうふうに規定されております。そういたしますと、結局日本がいうところの自衛のために保安隊なり何なりを置くということと、それから国連が申しておりますところの軍隊に対する定義というものが、ややもすると同じになるのではないかと考えます。そこでアメリカも自分の国の軍隊というものは、やはり自分の国を守る自衛のためのものだ、こういう考え方のもとに日本との交渉をするといたしましたならば、日本の私ども考える自衛のためのものというのと違つて来るのではないかと思いますが、この点に関して岡崎外務大臣と木村保安庁長官の解釈を承りたいと思います。
  119. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もりくつの上ではお話のようなことだと思いますけれども日本の場合は前に戦争をしまして、それが侵略戦争であるということになつております。そのために自衛という名前で侵略戦争を行うということを特に防ぐというのが憲法の趣旨で、その点を特に強調しているのだと思います。それからなお実際上の問題からいいますと、憲法では交戦権を放棄しておりますので、これは私どもは多少疑問がありますが、もし日本でかりに今の憲法のままで自衛軍というような軍隊を設けたとしましても、交戦権のない軍隊というのは一体ほんとうの軍隊であるかどうか、こういう点では多少の疑問ももちろんあるだろうと思います。
  120. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 岡崎外相の今お答えした通りであります。そこで私の考えでは、保安隊は御承知の通り、今の性格上外国へ持つて行くことはできない。アメリカといかにMSAの交渉がありましても、日本の憲法を無視してまでやらせようとは向うは考えておりません。その点については今岡崎外相の答弁の通りであります。
  121. 戸叶里子

    ○戸叶委員 木村保安庁長官にもう一点伺いたいのですが、アメリカで軍隊が使つている武器を日本の保安隊が使つた場合、これは軍隊が使うものでなくて自衛のために使うものであつて、その同じ武器がアメリカで装備されたときには軍隊で、日本へ来た場合には保安隊となる、その違いを承りたいと思います。
  122. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 これは使用目的によつてかわつて来るわけであります。軍馬を払い下げて農民が使いますれば、これは何といいましようか、だ馬になるのであります。決して同じものだからといつて、いつも同じものであるとは考えられないのであります。使い方によつてつて参るのであります。
  123. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは今アメリカの軍隊が使つていると同じものが日本へ来ているのですか、それとも違つたものが、もう使えなくなつたものが来ているのですか。
  124. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 いや、アメリカで使つてつたものでありまして、決して世の中にいわれております廃品というようなものではありません。ただ使用目的が違つておるのであります。
  125. 上塚司

    上塚委員長 次に並木芳雄君。
  126. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほど須磨委員質問に対して木村長官が、保安隊の性格をかえるつもりである、必要によつては保安庁法の改正も必要であろう、名称もかわるだろうとおつしやつた。私は聞いていてまことにこれあるかなの感を抱いたのです。今日まであらゆる機会に私ども政府に迫つて来たのはこの一点にあつたわけなのですが、木村長官を罪人扱いにしては申訳ありませんが、黙秘権を行使していた被告が遂に口を割つたというような感じがありますし、いい意味ではトンネルが遂に開通した、きせるのやにがとれた、私は自分たちの立場から考えてひそかに快哉を叫んだわけです。木村長官が九州で談話を発表したときも、私は、党内でいろいろ異論がありましたけれども、あれは正直なことを言つているのだ、ああでなくちやいけないのだと言つて実はかばつていた者の一人であります。そういう点からいうと、私どもとしては先ほどの答弁を非常に歓迎するものであります。そこでお伺いいたしますが、保安隊の性格をどういうふうにかえて行かれるつもりでありますか、要するに直接侵略に対しても当然対応できるようにかえて行くと思いますが、これを具体的にお答え願いたい。
  127. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私は今ただちに保安隊の性格をかえようと言つたのではありません。MSA援助の受け方いかんによつては、保安隊の性格もかわつて来るだろう、こういうことを申し上げたのであります。当然そうなることと私は考えております。どういう形でMSA援助を受けるかということは、今後の交渉にまたなくてはならぬのであります。その結果においてあるいは保安庁の性格がかわつて来るかもしれぬ、その場合においては保安庁法の改正は必要となるであろう、しかしてその場合においては国会の十分の御審議を願いたい、こう申し上げたのであります。
  128. 並木芳雄

    ○並木委員 それでいいのです。要するに今まではどうあつても性格もかえない、保安庁法も改正しない。この前高射砲は何に使うのだと、増原次長に質問したところが、あれは間接侵略に呼応して、外から暴徒が入つて来るときのためにでも使うのでしようという苦しい答弁になつた。事ほどさような状態なのです。それが今日は、MSA援助に伴つて性格を変更するかもしれないということになつたことは、これは数段の前進を遂げて来たものであろうと思います。そこで考えられるのは、当然直接侵略に対応するようになろうと思いますが、その点は間違いないでしようか、いかがですか。
  129. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 直接侵略に対して防衛組織をつくるかどうかということについては、やはり今後MSAの受け方いかんによろうかと考えております。しかし私が常に申し上げます通り、直接侵略があつた場合には現在のままでも黙つておるわけではないのです。私は常に言つておるのですが、日本国民の大多数はこれに向つて行くであろう。おめおめと手をあげて侵略にまかせるというようなことは私は想像できません。その場合には国警であろうと自警であろうと、極端に言えば消防隊であろうとやるのであります。保安隊にありましてはこれに対処するということは私は当然なことであろう、こう考えております。
  130. 並木芳雄

    ○並木委員 それはそうでしようが、その点では、私はもう少し深く考えているつもりなのです。それは事実行為として向つて行くことはあつても、保安庁法で保安隊を縛ることはできない。そういうことのためにやはり保安庁法を改正しておく必要がある。私は向うで期待しているのは、一朝事あるときには、事実行為にしても何にしても、駐留軍と協力して、日本の保安隊、海上警備隊が一致した行動に出られるということなのですから、そういう点は、どうしても保安庁法の改正を必要とすると思うのですがどうですか。
  131. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとよりMSA援助の交渉の結果日本が直接侵略に対して防衛するということになりますと、もちろん保安隊の性格もかわつて来るのであります。そのときは先刻申し上げましたように、もちろん保安庁法を改正すべきであろう、こう考えております。
  132. 並木芳雄

    ○並木委員 名称の点でありますが、昨年でしたか一昨年でしたか、吉田首相が保安隊という前に防衛隊という発言をしたことがございます。おそらく今度は防衛隊あるいは自衛隊というふうになると思いますが、長官の腹案をお聞きしたいと思います。
  133. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 実は私は保安庁というのはおかしいと思つております。世間でもよく海上保安庁と間違えられる。名称も相当考える必要があるのじやないかと思つております。しかしどう改正すべきかというと、今決定的な考えを持つておりません。皆さんのお知恵も拝借して考えてみたいと考えております。
  134. 並木芳雄

    ○並木委員 なおその点について陸上、海上のみならず、空軍——空軍というとまた逃げてしまうかもしれませんが、空中隊の計画もあろうと思いますが、その点お尋ねいたします。
  135. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今空の方を御質問になりましたが、これはなかなか容易じやないと思います。御承知の通り飛行機というものは、日進月歩でありまして、これを整備するということは、なまやさしいものじやないと私は考えております。実はそこまで行けば、日本の国も大したものだと考えるのでありますが、なかなかそこまでは、MSA援助を受けても手は届かない、こう私は考えております。とにかくこれは技術面あるいは搭乗員の訓練、その他の面から見て、容易ではないのであります。今後日本が自立態勢を整えて行く上にどうするかということについては、それらのことももちろん考えなければなりませんが、そこまで手の延びるということは容易じやない、こう考えております。
  136. 並木芳雄

    ○並木委員 しかしまあその意思のあることははつきりいたしましたから、その点は大いに強く出ていただきたいと思います。ところで今日の長官の発言は相当重要な発言でございます。今度は逃げないようにしていただきたい。今度は木村試案だとか、男なら対決しようなんということは申すまいと思いますが、今日はなぜ長官がこういうことを発表になつたかといろいろ考えたのですが、あるいは予算案が夕べ通過して安心したから、長官気を許して発言したのかとも思つております。その辺のところをお聞きしてみたい。要するにほかの閣僚、隣にすわつておられる岡崎外務大臣も、今度は当然このことを承知の上だろうと思いますが、閣僚の了解を得ておるかどうか、伺いたいと思います。
  137. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 さようなことについて閣僚の了解も何も得ておりません。しかし私は当然なことと考えておる。MSA援助の交渉の経過過程において、その結論として日本が直接侵略にも当らなければならぬということになれば、保安隊の性格がかわるのは当然であります。これは保安庁法の改正は必要であることは当然であると思います。
  138. 並木芳雄

    ○並木委員 それだけはつきりしておれば、どうして今まで男らしく言つてもらえなかつたかと私は思うのです。MSAの交渉を進めて行くに従つて、必要ならば直接侵略にも当るということは、今まで政府が答弁しておつた点から見ればコペルニクス的転回なのです。そこで私はお尋ねしますが、直接侵略にぶつかつて行くということになれば、当然憲法に抵触して来ます。今までのような解釈をとつて来ている政府の憲法解釈では抵触して来ると思うのです。先ほども岡崎外務大臣のお言葉にありましたが、交戦ということが考えられますと、おそらく政府は今度保安隊、海上警備隊の性格をかえ、直接侵略に向うようにしても、なおこれは戦力ではないと言われるかもしれません。戦力ではないにしても、交戦ということが行われる、——行われなければなりません。そうすると交戦権を放棄した日本の憲法と抵触して来るのではないかと思います。長官あるいは法制局長官いずれでもけつこうですが、政府としての答弁をお願いしたいと思います。
  139. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 お察しの通り、戦力に達しない限度においてというわくは私はあると思います。それからさらに今の交戦権についての御心配でありますが、われわれは憲法議会で審議されました当時から、交戦権の定義をずつと続けて持つて来ておるのであります。それは戦争をする権利ということではないのであつて、交戦者として戦時国際法上認められておる権利というものを放棄しておる、こういうことで来ておるわけであります。そこで戦時国際法上交戦者として持つておる権利というものはありましようが、たとえば敵性中立船舶の拿捕とかいろいろな行為があるわけです。そういう手段は放棄しておる、そういうことになりますから、先ほど岡崎大臣からお答えしましたように、その行動の形において交戦権を放棄しておるという点からの制約は、憲法を改正せざる以上はやむを得ないというような結論になると思います。
  140. 並木芳雄

    ○並木委員 その点につきまして木村長官の御意見を伺つておきたいと思います。先般九州で憲法を改正しなくても、自衛軍というものは持ち得るという説に傾聴したということが、今日初めてぴたりと思い当つて来るわけなのです。ですからここであらためて、ただいままで長官の御発表になつた計画によつてMSA援助を受ける場合に、実行に移つたときに、はたして憲法を改正しないでいいかどうか、長官の見解をこの際はつきりお伺いしておきたいと思います。
  141. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 自衛戦力の問題について私は傾聴に値するということは確かに言つたのです。これはさつき須磨さんも言われたように、佐々木惣一博士が明らかに言つておる。自衛のためならば戦力を持つてよろしい、これに対して最近若き学徒の櫻田譽という人が長文の論説を書いております。私はこの分析的な理論の進め方について、これは傾聴に値するから傾聴に値すると言つたのです。何もそれをそのまま自分が賛意を表するわけではないのであります。実に分析的によく研究されております。しかし、われわれといたしましては、自衛のためであつても戦力は持ち得ないのだ、これは憲法第九条第二項の解釈上、当然そうなるのだということを終始言つて来ておるのであります。そこで、自衛のために戦力を持たなくてはならぬということになれば、憲法の改正の必要はある、これは一貫したわれわれの考え方であるのであります。
  142. 並木芳雄

    ○並木委員 交戦権の点はどうです。
  143. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 むろん憲法第九条第二項によつて、交戦権は否定されておるのでありますから、今申しますように、外国と戦うということになりますと、これは交戦権の問題にひつかかつて来るのではなかろうか、こう考えております。
  144. 上塚司

    上塚委員長 次に田中稔男君。
  145. 田中稔男

    田中(稔)委員 私は、外務大臣と保安庁長官に御質問申し上げたいのでありますが、保安庁長官がお急ぎでありますから、長官にまずお伺いいたします。現在保安隊の隊員が何名か知りませんがアメリカに渡つて、訓練を受けているそうでありますが、この訓練は、どういう法的な根拠に基いて行われているものか、あるいはどういう条約、そういうものに根拠して行われているものであるか、これが第一点であります。第二点は、その訓練を受けております員数、あるいはその階級、それから向うに滞在しております間のいろいろな処遇、そういうことについてお伺いしたい。これが第二点であります、その次には、どういう種類の訓練を受けておるか、このことにつきましては、保安隊のほかに、あるいは警備隊というものも行つておりますかどうか、このことも関連してお尋ねしたいと思いますが、要するに訓練の種類であります。それからそういう訓練は、一体どういう目的で、保安庁としてはおやりになつておるか、さらに、この訓練に要する費用は、日本政府、アメリカ政府、どちらが一体これを負担しているものであるか。あるいは分担しておるなら、その分担の割合、こういうようなことにつきまして、なお、長官が必要と思われる点を補足していただければけつこうであります。
  146. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの御質問に対しまして大づかみの点だけ私から申し上げます。細目は、政府委員の方から申し上げさせていただきます。見学にやつたものは、別にアメリカとの条約とかなんとかいうものではないのであります。いわゆる各省でやつております従来の留学程度のことでございます。しこうして、これに要します費用は、旅費その他は保安庁で支払つております。授業料その他の点は向う持ちということであるのであります。大体訓練の目標といたしましては、先方の組織その他運用、能率がいかにされておるか、あるいは技術的な面がどうなつておるかということについての研究をさせるためにやつたのであります。人員は百四十三名でございます。期間は八週間から十六週間くらいであります。階級は各種にわたつておりますが、大体においてそう上級のものではないのであります。細目の点につきましては、政府委員からお答えいたします。
  147. 増原恵吉

    ○増原政府委員 細部の点を私からお答えいたします。員数は百四十三名でありまして、一等保安正一名、二等保安正一名、これは例外的に一人ずつでありますが、三等保安正が六十名、一等保安士五十四名、二等保安十三十七名、計百四十三名であります。費用は今長官から申し上げましたように、向うにおきます授業料のようなものは、いわゆる免除という形で米国負担であります。他は保安庁経費をもつて支出をいたしておりまして、総額が約八千六百万円であります。
  148. 田中稔男

    田中(稔)委員 ちよつと聞き落しましたが、訓練の種類を次長から詳しく伺いたい。
  149. 増原恵吉

    ○増原政府委員 訓練の種類は、向うにあります米国の軍の学校であります。学校は、歩兵学校、工兵学校、戦車学校、施設学校、武器学校、業務学校、そういうところへ参つております。大体教程といいますのは、準教程に準ずるということでございまして、その準教程というのは、向うの州兵とか予備兵とか、コースト・ガードというような海軍の者が受けまするものを準教程と呼ぶそうでありますが、その準教程に準じてやるというのであります。
  150. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう一つこれは一体どういう目的をもつて、どういう使命をもつてつておられますか。
  151. 増原恵吉

    ○増原政府委員 われわれの方でも、いろいろ小銃なり機関銃なり、あるいは砲なり特車——向うのタンクを借りて特車と呼んでおりますが、施設、器材その他のものを使つて治安維持のための編成、訓練をやつておるわけであります。そうしたものを技術的、能率的に運営することについて教育を受けるということでございます。
  152. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると向うにおいては、準の準というようなお話がありましたが、結局これはやはり軍隊として向うは扱つておるのだと思いますが、どうでしようか。日本の軍隊として、やはり向うでは待遇しているのではないですか。
  153. 増原恵吉

    ○増原政府委員 向うの方も、日本には憲法があつて軍隊はない、保安隊というものの目的はどういうものだということを了承しておりまして、われわれの保安隊の幹部を教育してくれるという建前でございます。
  154. 田中稔男

    田中(稔)委員 なお、これは今後もずつと継続しておやりになる御計画でしようか。
  155. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまのところは、継続してやるという計画を持つておりません。
  156. 田中稔男

    田中(稔)委員 実はアメリカの下院の外交委員会の記録によりますと、前軍事援助局長ジヨージ・オルムステツド少将の証言の中に、日本の保安隊に対しては装備を貸与しておる。これは別にMSAによるものでもなければ、その前のMDAP、そういうものによるものでもない。これは何かアメリカの陸軍省の費用で便宜貸与しておるのだ、こういうことを述べております。しかし日本の保安隊の要員の訓練を実施しているのは、MDAP、相互防衛援助計画といいますか、これに基いて行われているものである、こういうことを述べているようであります。今長官のお話では、ただアメリカに留学させたのだ、文部省その他各省から留学させるようなぐあいに、留学させたのだというお言葉でございますが、留学生とは大分違うように思います。その点はどうなつておりますか。
  157. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 われわれの方の考え方としては、一応向うの学校に入りまして、武器使用の効率的、科学的な運営方法を実習させるためにやつたのです。その点においては、各省で留学生を送るのと、別に性質上かわりはないと私は考えております。
  158. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、外務大臣としましては、この訓練の計画、それは人数もわずかなことでありますけれども、この訓練の計画が、アメリカの下院の委員会の記録に向うの責任者が証言しておりますように、MDAPというようなものに基いた訓練であるかどうか、お尋ねしたいし、また、このことについて御承知になつておると思いますが、一体どういうふうな経緯があつたのか、お尋ねしたいと思います。
  159. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは保安庁で出しておる人でありまして、外交交渉に基いたものではありません。その意味では、文部省から人が出たり、そのほかの省から人が出るのと同じことであります。私どもとしては、一種の留学であると考えております。そのオルムステツド少将の申した証言というのは、調べてからお答えいたします。
  160. 上塚司

    上塚委員長 午後二時三十分より再開し、外務大臣に対する質疑を継続することといたしまして、これにて暫時休憩いたします。     午後一時二十三分休憩      ————◇—————     午後二時五十七分開議
  161. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  外務大臣に対する質疑を継続いたします。外務大臣は午後四時から参議院の予算委員会の方へ呼ばれておりますので、それまでの間質疑を進めることにいたします。従つて、時間は十分ないし十五分ほどにとどめていただきたいと思います。田中稔男君。
  162. 田中稔男

    田中(稔)委員 この間のMSA援助に関する第一回の会合の席上行われましたアリソン大使のあいさつの言葉の中に、米軍はいつまでも日本に駐留しようとは思わない、また日本においても、自国の防衛を外国の軍隊にいつまでもまかしておくことを希望しないであろう、こういうことを言つているのであります。われわれもそういう希望を持つておりますが、これは、私はやはりなかなかむずかしい問題ではないかと思います。一体どういうふうな条件ができた場合において、つまり日本の防衛についてどういう条件が生じた場合において、在日米軍日本を撤退するでありましようか、これについての外務大臣の御見解を承りたいと思うのであります。  さらにそれと合せで、琉球でありますが、琉球にはアメリカの強力な軍事基地があることは御承知の通りであります。しかしあの琉球には日本の主権が残存しているということに伺つております。そうしますと、これは外務大臣としても関心を持たなければならぬ点であろうと思います。日本の国内からはアメリカの軍隊が撤退しても、なお琉球は容易に放棄しないだろうと思いますが、そういうことにつきましての御見解を承りたいと思います。
  163. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 駐留軍の撤退は、いろいろな場合がありましようけれども、一番明瞭に書いてありますのは安保条約の第四条で「国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置」これができたときは、この条約は効力を失う、こうなつておりますが、これが一番明確な規定だと思います。  それから琉球のお話がありましたが、今のお言葉のように、アメリカはなかなか撤退しきだろうとか、そこを握つてなかなか離さないだろうというふうにわれわれは考えておりません。日本の安全が守れるような状況になれば、むしろアメリカといえども早く帰りたいのであつて、何も好んであんなところを握つても、アメリカとして領土の拡張になるわけでも何でもないと思いますので、そういう考え方ではなく、日本の安全を守ることが、やはり世界の平和維持に必要であるという観点からやつておることと考えます。
  164. 田中稔男

    田中(稔)委員 そこで現在日本の自衛権の行使は、国内の治安の維持及び間接侵略に対する備えという意味においては、大体保安隊、警備隊がやつておる。直接侵略に対しましては、アメリカの軍隊に依頼しておる、こういう姿だと思うのであります。この二つの保安隊と在日米軍というのは、別に形式上統合されたものじやありませんが、精神的には一つの統合されたものだと思うのであります。この場合に、在日米軍日本を撤退する前提条件としましては、保安隊なり警備隊がだんだん増強されて参りまして、在日米軍にかわり得る実力を備えた場合だと思います。つまり保安隊が軍隊になつて戦力としての自衛力ということにならなければ、アメリカとしても安心はできない、こういうわけだろうと思うのであります。先ほど保安庁長官はMSA援助の交渉の進展によつては、保安隊の性格がかわり、従つて保安庁法改正をする必要が生ずるであろうと言われたのでありますが、そういうことはもう大体見通しがついていなければならないと思うのであります。ついているのをはつきり言われないのだろうと思うのでありますが、結局保安隊がだんだん強化されて行く、そうしてそれが間接侵略に対してと同時に、また直接侵略に対しても、抵抗し得ろ自衛力——戦力としての自衛力、こういうようになることをアメリカは希望上、期待しておると思います。はつきり言えば、結昼再軍備への発展でありますが、これをわれわれがどれだけ追究しましても、いろいろ言葉の上でこまかしを言われるのでありますが、今日の国会の議論は国民常識からずれておりまして、国民はもう国会の議論なんということには飽き飽きしております。私はここで外務大臣は、木村保安庁長官が午前の答弁で比較的率直に吐露されましたと同じような気持で、はつきりそうだ、アメリカの軍隊が撤退するためには、日本の保安隊を増強し、アメリカの軍隊にかわり得る軍隊、かわり得る戦力というものにならなければ、いつまでたつてもアメリカの軍隊の撤退はできるものでないということを、私は明言していただきたいと思うのであります。無理だろうと思うのですが、ひとつ……。
  165. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういうような場合も、一つのアメリカの軍隊が撤退する場合でありましよう。もちろん安全保障条約によりましても、日本は個有の自衛権を持つておる。しかし片一方には「無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので」云々、こうなつております。従つて無責任な軍国主義というものが世界から駆逐される、つあり日本側が自分でそういうものがあつても防げるという場合と、日本は大して何もしなくても、無責任なる軍国主義というものが世の中から消えてなくなつちまうという場合もありましようし、それから国連の組織が完備して、これによる安全保障の措置が十分にできるという場合もありましようし、場合はいろいろあると思います。あなたのおつ上やるのもその一つの場合かと考えます。
  166. 田中稔男

    田中(稔)委員 無責任な軍国主義と言われますが、これは安保条約に確かに書いてあります。しかし日本周辺においては、一体どこの国がそういう無責任な軍国主義をとつておりましようか。
  167. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は外務大臣としてそういうことを一々申し上げる立場にありませんけれども朝鮮における事変、今の戦闘行為のごときは、やはり一つの無責任なる軍国主義と言えるのじやないかと思います。
  168. 田中稔男

    田中(稔)委員 それと関連しまして、最近のソ連中国のいわゆる平和攻勢、平和政策、こういうものについて、いやしくも外務大臣としてならば、国際情勢の非常に大きな展開でありますから、御意見をお聞かせ願いたいと思うのであります。朝鮮休戦も大体できそうだという先般の私の質問に対する御答弁もありました。それから山本熊一という外務次官をやつておられた方とか、それから読売の嬉野という特派員、これがモスクワから報道をよこしております。この嬉野特派員の報道なり、山本熊一氏の談話なりを通じてみましても、この二人は共産主義者でもなければ、共産主義の同調者でもないことはまず信じていいと思うのでありますが、こういう人がモスクワの生活が非管によくなつた、そしてそこには西欧的な水準に達したゆたかな生活がある。そしてもう見せかけの平和攻勢でなく、ほんとうに平和を念願している大衆のあふるるばかりの気持が見られる、それから東西貿易なんかについても、イギリスその他西欧の諸国が非常に熱心である、戦争なんてもう考えていない、こういうようなことをわれわれは聞くのであります。こういう際に何か無責任な軍国主義の幻影に恐れて、それからソ連及び中国が今にも攻めて来るというような恐怖を抱いて、アメリカとMSA援助の交渉を今始めようとしておられますが、そういう交渉を始められておる際に、国際情勢の大きな見通しを外務大臣から承りたいと思います。
  169. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今おつしやつた平和攻勢ということを一般に言われておりますが、平和攻勢という言葉が実にふしぎな言葉である。しかしその言葉が示すように、これは真の平和であると信じている人は非常に少いのであります。共産陣営側の一つの方法としての平和論であつて、つまり平和攻勢である。これがひつくり返れば武力攻勢にもなり得るのであつて、今は相手方の武力を、軍備といいますか、そういうものを弛緩させる意味の、自分の方というよりも、相手方をゆだんさせるというか、軍備を弛緩させるというか、そういう意味の目的のために平和攻勢をやつている。こういうので平和政策とだれも言つておりません。平和攻勢と言つておる。これで事実わかると思いますが、現にソ連の内部は非常に平和一色で埋まつておるように言われますが、私どもは必ずしもそう思つておりません。ベリヤ事件初め、ウクライナその他各地でもありますし、共産陣営内でもいろいろ問題があるようでおりまして、これは他国のことでありますから一々申し上げませんが、そういう平和で埋まつているというふうには私は考えておりません。もつとも大山氏などはそういうふうに言われておるようですが、これは、見方であります。
  170. 上塚司

    上塚委員長 時間が参りましたから簡潔にお願いいたします。
  171. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の外務大臣のお話はきわめて低調で、そうして非常に一方的な見方で、それでは日本の外交をあずかつていただくのにどうも不安でたまらないのですが、議論になりますからやめますが、一体アリソン大使のあいさつの中に、日本がMSA援助を受けたあとに引受ける義務の一つとして、「自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持のために、自国の政治的及び経済的安定と矛盾しない限りにおいて、自国の人力、資源、施設及び一般的経済状態が許す限り全面的寄与を行うこと」というのがあります。これは日本の純粋の自衛のために考えられたものだとこういうふうに釈明はしておりますけれども、私はやはりこれが気がかりなのでありまして、日本が個別的な自衛だけでなく、集団的な自衛、集団安全保障体制どいうものにいずれは入るようにアメリカ側からいろいろ働きかけられると思うのであります。いわゆる太平洋同盟というようなことになると思うのでありますが、そういうふうな将来への展望というものを考えまして、MSA援助後の日本の行き方を考えてみますと、日本で自衛力が戦力として増強されて、そうして結局再軍備になりました場合に、その軍隊が自国の防衛力だけでなく、自由世界の防衛力の発展のために寄与しなければならぬ、こういうことになりますと、朝鮮でまた戦争でも起りますならば、やはりこの兵隊でも繰出さねばならぬということになるのじやないか。ならないと言いましても、国民はそう簡単に信じないのでありますが、この際ひとつ外務大臣の御見解を承りたい。
  172. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今国連加盟している国でも、特別に軍事条約を結んでおりませんから、どの国も国連の決議によつて兵隊を出すという義務はないのであります。勧告によつて出したいものは出すというのが、朝鮮でも行われている事態だと思います。わが国がよその方へ兵隊を出すとか出さぬとか、今は兵隊もないし、現に保安庁は直接侵略にも防止しない建前を今とつておりますので、これを一足飛びに兵隊をつくることについて考え、またその兵隊が外へ出るか出ないかということを今から議論するのは、実におかしなことと思いますが、しかしこれはいずれにしても、そのときの政府がきめる問題であろうと考えますから、そのときの政府にお聞きになるよりいたし方がないと思うのです。そういうことはまだ何年先かわかりませんし、また太平洋条約というものがいつできるか、これはわかりませんが、自由党の内閣がそこまで続けば、そのときに自由党の政府がお答えいたしますけれども、要するにそのときの政府考えてもらう。これは今議論しても始まらないことだと思います。
  173. 上塚司

    上塚委員長 次に帆足計君。
  174. 帆足計

    帆足委員 中国との貿易について引続いてお尋ねいたしますが、朝鮮戦争の終結の見通しがだんだんついて参りましたので、西ヨーロッパ諸国から北京に大勢経済使節が参りまして、これはバトル法以外の物資が大部分であるようですが、ほとんど一国残らず中国と貿易協定を結んでおるような状況であります。日本はただいま中国向け輸出制限のうちでアメリカ、カナダなどと同じように一番きびしい、ほとんど禁止的範疇の中に入つておりまして、その次がイギリス、その次が西ヨーロッパ・リ入トというふうに承つておりますが、先日外務大臣には西ヨーロツパと差別待遇をされることは確かに不条理であるから、同一に取扱つでもらうように、非戦略物資については貿易振興の一環として、中国との貿易もイデオロギーを離れて努力すると言いまして、われわれもそれを了としておるものですけれども、MSA協定を結びますと、これに連関いたしまして、中国との貿易につきましては、アメリカとの協議を必要とするという協定ができるように世間には伝わつておりますが、そうなれば実質的には中国との貿易については、アメリカの許可、認可を必要とするという、業者から見ればそういうような一つの大きな支障が出て来るわけでございます。従いましてお尋ねいたしたいことは、第一にはMSA協定と関連して中国貿易について、アメリカと協議了解を必要とするというような義務づけが行われるのであるかどうか。第二には万一その場合でも少くとも西ヨーロッパ並という確約を、その場合にはおとりになるお気持はありませんかどうか。それから第三には西ヨーロッパとの差別待遇が現在行われておるのを解除してもらいます交渉は、現在どういう見通しでなされておられるのか。これはきわめて当然のことでございますので、明確なお答えを願いたいと思います。
  175. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まだMSAでそういうような話合いまで入つておりませんから、どうなるか、アメリカ側の希望もまだそこのところは聞いておりません。しかし、もしMSA援助を受ければ、そして中共貿易について米国政府と協議するということでありますれば——西欧のイギリスやフランスその他もみなMSAを受けておりますから、協議をしているのじやないかと思います。もつとも実際に協議をしているかどうか、私は知りませんが、もしあなたのおつしやる通りだとすれば、協議しておるのだと思いますけれども、そういう国でも日本よりゆるやかだといわれておるのですから、このMSA援助を受けたことによつて、特にそういう問題がむずかしくなるようには私は考えておりません。また西欧諸国との間にはゆるやかさが違うという問題については、第一になかなかむずかしいことはデステイネーシヨンがありまして、中共は侵略者としてただいまのところはどこの国も表面的にはきちんと取締ることになつておるわけです。ところが共産諸国はそうでありませんから、それとの貿易は比較的ゆるやかで行けるわけなのです。西欧諸国は共産系の諸国との貿易がゆるやかにできて、その品物が中共に流れて行くという可能性も非常に多いだろうと私は思う。日本の場合はまずヨーロツパの共産圏の諸国に送つて、それから中共にまわつて行くというような可能性は非常に少いので、直接中共に行くものもほとんど限られておりましようから漢門とか香港を通じて行くのがあるかもしれませんが、そこにどうしても多少の違いが出て来るわけですから、われわれとしてはできるだけその点はよその国並というつもりで今後とも行くつもりでおります。
  176. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁で私ども多少納得しがたい点がありますが、ただいまの密貿易の点は、これは主義主張のいかんを問わず、き主つたことは守らねばなりませんから、密貿易は許さるべきではないというので、これは問題外だと思います。外務大臣の御見解と同じでございます。しかし申しあげたいのは、公然と政府が許す貿易についてでございまして、現在でも西欧の方が日本よらゆるい。しかも日本がアメリカと協定を結んで、今のカナダ・リストの中に入れられてしまいますと、西欧よりずつと強くなるわけです。ですから同じアメリカと相談するにいたしましても、われわれはアメリカとそういう協定が何もないことは望ましいと思つておりますが、かりに協定がある場合でも、そのときは最小限度西ヨーロッパ並だけは固執するというだけの御決意が、あるかどうかということをお尋ねしたわけですから、重ねて明確なお答えをお願いしたいと思います。西ヨトロッパから差別したカナダ・リストとか、極東リストというようなものでは困るということを、はつきり確信しておられるかどうかということをお尋ねしたい。
  177. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はカナダ・リストということは聞いたことがないので、そういうものがあるかどうか知りません。むしろ帆足君の方がよく知つているのではないかと思いまして、あとで御説明願つてもいいのですが、われわれは一般西ヨーロツパとか、カナダとか言わずに、つまり大体歩調を合せるのが必要だと思つております。自発的にもつとかたくやる国があれば、それはかつてにやつたらいいので、一般的には一つの筋を引いて、その範囲で非常に厳重にやる国もあり、やらない国もある。その筋だけは一緒にしておいたらよかろう、こういうつもりであります。
  178. 帆足計

    帆足委員 外務大臣の御答弁はきわめてあいまいであつて、筋といいましても、Aとか、Bとか、Cという範疇があつて日本がその一番きつい方の範疇に入れられるのが不合理でないかという、申し上げている意味はおわかりになるのに、大臣はそういう弾力性を残そう、一番きびしい方に入れるというお考えですか。一番ゆるい方に入れるのが日本の国情からいつて日本の経済諸条件からいつて適当であるまいか、こう申し上げているわけです。
  179. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はそのカナダ・リストというものを知らないのです。だから議論にならないのですけれども、いわばできる範囲でよその国がやるものならこつちもやろう、こういうことであります。
  180. 帆足計

    帆足委員 カナダはヨーロッパよりきつく取締りを受けでいるのですから、ヨーロッパ並と申し上げているわけです。ただいまの外務大臣のお話では、西欧の自由諸国並は大いに努力しよう、これは外務大臣として私は当然の御答弁だと思いますけれども、それがあいまいだと、かりに保守党の立場からいいましても、もつときつい制約を受けるということは、私は日本国民全体としてまずいことだと思いますので、外務大臣にその点お答えを促したわけでございます。  それからもう一つお尋ねいたしたいのは、実は旅券の問題でございます。旅券法のことに関しまして緊急の質問をしたい点がございますのは、いつぞや高良女史が外国に参ろうといたしましたときに、前に無断でソ連を通つたから高良女史だけを差別待遇するということがございました。そこで私は日本は法治国だからかりに不愉快なことがあろうと法に従つてつていただきたいということを申しましたら、実はあれは公用旅券だつたからああいう問題が起つたのであつて、私用旅券についてそういう差別待遇をするという法的根拠は何らない、旅券法を犯して刑に処せられた者については差別待遇をし得るけれども政府はあれは少し旅券法を犯しているとお考えになつても、刑にも処せられず、現在の法律では何ら支障がないということになつておる者に対しまして、実刑を受けた者でない者を、ただ気に食わぬからといつて差別待遇をするということはないから、そういう不公正なことはしないという御返事があつて、速記録にも書かれておるのでございます。そこでお尋ねいたしたいのは、たとえば山本熊一さんとか、高良きんとか、西園寺君とか、かく言う私なども政府のお許しなくしてソ連にも中国にも旅行して参つたのですが、そういうここをしたので当局が感情を害されて、かりに私が今度はパリに参りますときにも私用旅券をよこさない、ほかの人には同じ条件でよこしておつてもよこさないというおそれがないかということを確かめておきましたが、法治国である以上そういうことはしないというお答えがあつて、それも速記録に載つておりますが、ただいまそういうふうに解釈することは、これは常識問題でありますが、そういうふうに解釈してさしつかえはないものでありましようか。それとも外務大臣においては特殊の御意見をお持ちでございましようか。お尋ねいたします。
  181. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはだれがお答えになつたか私は知りません。旅券法の非常にこまかい法律的な解釈は、私はあまり自信がないのであります。ですから専門的に取扱つている者の意見が、そういうこまかい法律解釈については正しいだろうと思います。私は、もし法律の範囲でできることなら、少くとも刑罰はなくとも法の趣旨を犯したことは事実でありますから、旅券は出したくないのであります。であるけれども法律でとめてなければどうもやむを得ない、こういうことであります。
  182. 帆足計

    帆足委員 徳川幕府が日本国民にきらわれたのは鎖国をしたからでありまして、すなわち国民の基本的人権を無視したからであります。かつて東條政権のもとにおきましても、ソ連にも中国にも善意をもつて旅行したいという学者やジャーナリストや政治家に対しては旅行は自由でございました。しかるに生命の安全を守るという度の過ぎた御親切のために行かしてくださらなかつた。われわれ地理学的要求が非常に強いので、未知の世界を見たいと思つて見て参つたのでありまして、私にしても、山本熊一さんにしても、西園寺君にしても、教養、徳性、人口、骨柄ともに別に外務六日より非常に悪い人間でないということは周知のことでございます。その意見の違いがあり、立場の違いがあるといつても、外務大臣は気持を了とされてくださることが当然であつて、しかりとするならば、われわれも自分の旅行記の一本くらいは外務大臣に差上げて参考にしていただくというのが市民の礼節だと思います。ただいまの外務大臣の御答弁はまことにりつぱな御答弁で、個人としては多少不愉快であるけれども、法規がそうなつておるならば法規通りにしなければならぬということですから、ちよつと一言申し上げます。旅券法に違反して刑に処せられた者は差別待遇はできることになつておりますが、刑に処せられていない者に対しては差別待遇はできないことになつております。しかるに旅券の申請をいたしましたときに、過去においてそういう事例のありました者だけを差別待遇をしまして、飛行機に乗る時間を間に合わないようにしておくというものがぼつぼつ起つてつておりまして、これは非常に私は人権蹂躙たと思います。こういうことを許すようなら、東京駅長が、あいつどうも気に食わぬから大阪行の切符を延ばしておけというので、人の恋愛問題の妨害にまで出る権能を持ち得ることになり、商用のじやまをまでするという不当な権能を持つことになりますから、ひとつそういうことのないように、法規の通りやるということを外務大臣としては指令していただきたいと思います。法に対して解釈の相違がありました場合は、裁判所のさばきを受けるべきであつて、先日私は損害賠償の要求をいたしましたけれども、私の方が負けました。負けました以上、私はその説に従いまして、また上級裁判所にお願いたしました。裁判所が最終的にきめたことは、まことに遺憾であるといいましても法治国でありますから、われわれはそれを守る、こういう態度こそ私は市民のとるべき態度であると存じておりますから、どうか外務大臣におきましても、お帰りになりましたら、欧米局長、渡航課長等に対して、そういう事例か今あつたならば、ただちに短時間のうちに解決せいという態度をとつていただきたいと思います。委員長にもお願いしておりますので、欧米局長並びに渡航課長を即刻お呼出し願いたいと思います。実はそういう事例が現在起つてつて非常に憂慮をいたしておりますから、外務大臣にもお調べのほどを願いたいと思います。
  183. 上塚司

    上塚委員長 欧米局長と渡航課長には出席を促しておりますけれども、まだ連絡がとれません。とれ次第また御報告をいたします。
  184. 帆足計

    帆足委員 きよう間に合いませんと、あすは日曜日ですから間に合うようにしていただきたい。ただいまのことについて外務大臣は御意見はございませんか。ちよつと御答弁いただいておけばこの問題はすぐ解決することと思いますから、法規通りにやるということを重ねてひとつおつしやつていただきたいと思います。
  185. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほど申した通り、法規が許すならば、そういう人には旅券を出したくない。何となれば少くとも旅券法に違反しておるからです。しかし法規が許さなければ、いやでも出さざるを得ない、そういうことです。
  186. 帆足計

    帆足委員 けつこうです。
  187. 上塚司

    上塚委員長 次は並木芳雄君。
  188. 並木芳雄

    ○並木委員 けさほど時間がありませんでしたから、大臣に対する質問を延ばしておりましたが、保安隊が直接侵略に当るような場合に憲法第九条との関係について質問をしておきたいと思います。  このたびMSAの交渉にあたつて——保安隊及び海上警備隊が直接侵略に当るようになる、少くともなるかもしれないということは、一昨日の外務大臣の参議院外務委員会における答弁、本日の木村長官のこの委員会における答弁で明らかにされたのであります。これはたまたまその前日第一回のMSA交渉が行われた点から考えますと、それに列席された岡崎大臣としては、MSA援助を受くるについては直接防衛にも当らなければならぬ。それが保安隊であり、海上警備隊であるという点に立たれて、ああいう発言になつて来たと思いますが、そのいきさつについてまずお尋ねいたします。
  189. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはけさほど須磨君の御質問に対して答えたと思いますが、協定はどうなるか、これからつくつてみなければわからない。従つて協定の中の話合いもやつてみなければ実際にどうなるのかわからないのですから、その点は別として、この間の参議院における質問は、要するにアリソンの言われたことに対して法律論を闘わしたということであります。それだけの問題にすぎないのです。だからこの問題は非常にむずかしい点があるようでありまして、私もわからないのであります。法制局長官等の意見を十分聞かなければ私にもわからない問題がたくさんあると思います。
  190. 並木芳雄

    ○並木委員 しかしこの点は、前提となる問題じやないでしようか。MSA交渉の一番の重点であつて、その前提となる法律関係、ことに日本の憲法の関係がわからないことで、交渉に当られるのだつたらこれは手落ちだと思います。私は、大臣はもう研究しておると思うのです。ですからお尋ねをいたします。  まず整理をする必要上、かりに保安隊が、自衛軍、防衛軍、あるいは自衛隊、防衛隊というふうに名前をかえ、ある吟は軍というものを名称につけても、それだけでは憲法第九条に抵触しないと政府考えていると思いますけれども、まずその通りでありますか。
  191. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは今申しました通り、いろいろ学者の議論がありまして、学者の中でも意見は一致していないと思います。従いまして政府意見をお聞きになりますれば、私では適任ではありません。それは法制局長官なり、あるいは閣議の決定を経たりしなければ、外務大臣の意見というものば法律的の問題については差控えなければならぬと思います。
  192. 並木芳雄

    ○並木委員 しかし今度はそのことをはつきりしておかなければ交渉ができないのじやないですか。アメリカの方は、日本の憲法で制約されておることを非常に気に病んで、どつちかと言うと今の政府をかばつておるのです。それを大臣が法律関係はわからない、憲法との関係がわからないで臨まれるのでは交渉できないと思います。今私が尋ねたのは名称の点であります。  そこで戦力の問題ですが、ダレス長官の言うところの三十五万というものに増員した場合にも、戦力という解釈によつて、これは憲法第九条にいう軍隊ではない。あの戦力にはならないのだという逃げ道はあるわけです。ですからもしそういう場合が起つたときに、今よりも保安隊が増員をする場合が起つても、そのときになると政府はなおこれは近代戦を遂行するに足る戦力でありませんと言うと思うのでありますが、そういうことを大臣は考えておられるかどうか。
  193. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 このMSAの交渉にあたりましては、アメリカ側は、すべての決定は日本政府がなすべきものである、その日本政府の決定がいかようであろうとも、これに基いてアメリカとしては援助する用意があると言つておるのであります。従つて憲法の関係がどうだというようなことは、日本政府で考慮すべき問題ではありますけれども、アメリカとの交渉においては、日本政府のきめる通りということになつておりますから、交渉においてはさしつかえないと思います。  それから何十万にふやすとかいう問題につきましては、これはただいまの問題でないことはダレス長官も言つているのであります。
  194. 並木芳雄

    ○並木委員 将来起つたらどうですか。
  195. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 将来起つた場合、そのときの情勢をいろいろ見てみなければ——学者の議論もありましようし、また内容にもよりましようからして、これは保安庁長官にでもお聞きにならないと、私としては答弁すべき範囲でないと思います。
  196. 並木芳雄

    ○並木委員 次に交戦権の問題であります。保安隊、海上警備隊が直接侵略に当る場合、要するに防衛いたしますその場合に、憲法では交戦権を認めておりません。従つていわゆる交戦権に基く防衛行動というものはとり得ないと思うのです。ですから憲法に抵触しないという見解をとる以上は、おのずからそこに限界が出て参ります。そこではつきりお伺いしたいのですが、交戦権に基く防衛行動に出る場合と、そうでない場合との違いはどこにあるか、この際はつきりしていただきたいと思います。
  197. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろな法律的の問題ですから違いがあろうと思います。先ほども法制局長官が申し上げました通り、たとえば船を拿捕する権利、臨検する権利、こういうものは交戦権がなければないと一応考えられるだろうと思います。
  198. 並木芳雄

    ○並木委員 そのほかにいろいろ違いがあると思うのです。これはあとで法制局長官条約局長から聞いてもいいと思いますが、その違いをたどつて行くと、結局交戦権に基いてやらないと、大体警察行為程度のものになつてしまう。だから強い防衛行動に出られないということだそうでありますけれども、大臣はその点をどういうふうに考えておられますか。
  199. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 普通の軍隊はもちろん交戦権を持つておるわけであります。交戦権を持つていなければ欠けるところがあるのは、これは当然であります。
  200. 並木芳雄

    ○並木委員 そこでお尋ねしますが、かりに保安隊、海上警備隊を直接防衛に当らせるようになつた場合、憲法を改正しないという建前をとる政府としては、これは交戦権に基くものではないのだという主張をしなければならないと思いますが、そういうつもりでございますか。
  201. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほど保安庁長官も言いましたように、保安庁法をかえるということは、政府として決定しているわけではありません。そういう点についてはまだ何も決定しておりませんが、しかし仮定の議論としては交戦権というものは憲法に放棄しているのですから、当然憲法を改正しない限りは交戦権はない、これは明らかなことだと思います。
  202. 並木芳雄

    ○並木委員 前から政府は憲法は改正しないと言うのですから、聞くのはあるいはむだかもしれませんが、政府は憲法を改正しないと断言いたしますか。
  203. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは総理がしばしば申しております通り、憲法を絶対改正しないとは言わない。しかし憲法というものは不磨の大典とも言われるようなものだから、容易に改正すべきものではなくて、慎重に検討をいたすべきものだ、こういうのが政府の態度であります。
  204. 並木芳雄

    ○並木委員 もし衆議院の三分の二、参議院の三分の二の発議がされるような状態なつたら、憲法改正もあり得るということになりますか、今の大臣の御答弁では……。
  205. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 理論的なことだけ言つているのです。つまり憲法には改正をするという手続が書いてある以上は、改正を予期しておるわけでありますから、未来永劫絶対に改正なしというなら、改正の手続をつくるのがおかしいわけであります。
  206. 並木芳雄

    ○並木委員 憲法を改正しないで保安隊、海上警備隊が直接防衛に当るとなれば、どうしても先ほど申しました通り、非常に力の弱い行動しかとれない。この点はさらに法制局長官に聞いてみます。ですから憲法を改正しないで実際に強い行動に出ようと思うならば、これは芦田説、いわゆる憲法を改正しなくてもよろしいという説をとらなければならなくなると思います。ただこの場合に、芦田説をとるにしても、最後のところへ持つてつて、「国の交戦権ば、これを認めない。」ということが書いてあります。これは前の文章との続きを見てみると、必ずしも連絡しておらないわけです。政府としては「国の交戦権は、これを認めない。」というのを、かりに芦田説をとつても交戦権に関する限りはこれは別だ、そういうふうに解釈されておるかどうか。それとも芦田説によれば、「国の交戦権は、これを認めない。」ということも、憲法第九条第二項へ含まれて、一切合財憲法を改正しなくても交戦権の発動さえできるのだというふうに解釈せられるかどうか。その点について大臣の所見を伺つておきたいと思います。
  207. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはどうぞ法制局長官なり法律専門家にひとつお尋ねを願いたいのでありまして、私どもはしろうとでありますから、憲法論をここで闘わすだけの資格がないのであります。私はいつも言う通り、多数の憲法学者の説をまず傾聴しなければいかぬと考えております。
  208. 並木芳雄

    ○並木委員 しかしそれは大臣、その点をはつきりしてかからなければ、MSAの交渉というものは結論が出て来ないのじやないですか、ことに安保条約で引受けている義務、それよりも一歩進んだ義務を負うことになるであろうということにもなりますし、保安隊が直接防衛にも当る、直接侵略にも当るということになれば、そこまではつきりして行きませんと、私はこの交渉は行き詰まつてしまうと思うのです。さつきも大臣は国際連合に加盟したときと、してない場合との違いをあげて答弁をされておりましたけれども、このアリソン大使の十五日のあいさつの中にある「率直に言えば、日本が安全であるためには窮極において日本は現在保有するよりも遥かに強力な部隊を必要とするであろうとわれわれは信ずるものであります。」それからまた義務のところで言つておる「日本が引受ける義務とは果して何でありましようか?此等の義務は相互安全保障法第五百十一条A項に明文があります。実質的にはそれらの義務は、日本国連の参加国となつた際には引受けるところの義務であります。」こう言つておるところを見ると、現に国連加盟しておらなくても、実質的には今度のMもA援助を受けるならば、日本国連加盟したときと同じ義務を負うものであるということをあいさつしておるのだと思うのであります。この点大臣はどういうふうに会議の席上お聞きになりましたか。そういう点から考えますと、この際はつきり法律関係の点でも、大臣が自分の見解を明らかにしてかからないと、私ども交渉ができないのではないかと思うのですが。
  209. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほど申しますように、交渉におきましては、アメリカ側としては日本政府の決定に何でもよるのだという態度を明らかにしておりますから、その点ではさしつかえないと思います。ただ日本政府が自発的にどういう政策をとるかということは、これは日本政府自体できめることであつて、またそれは必要があるかもしれませんが、それは交渉自体と直接に関係はないものと思つております。  それから今の保安隊でもつて日本の防衛が完全にできるとはだれも思つておりません。従つて安全保障条約の前文においても、自衛力を漸増するということをアメリカ側は期待しており、日本はこれを了承しておるわけであります。ただそれにはいろいろの制約がありまして、経済的、政治的その他各種の制約があつて、それがどういうときに、どういう形で可能になるべくそこに進むかということは今後の問題であります。これは日本政府及び国民がきめる問題である、こういうふうに考えております。  国連の問題につきましては、各国がお互いに助け合つて、平和の維持をするというような原則的な問題は、MSAの五百十一条にもありますし、国連にもあるわけであります。しかし同時に国連加盟した国でも、自分は全然軍備を持つていないから、軍事条項については義務を持てないということを明らかにして加盟しておる国もあるのでありますから、必ずしも国連加盟ということが、あるいは軍備を持たなければならぬ、こういう議論には直接にはならない。ただそれは非常に人口も少い、領土も狭い小さな国であつて日本のような場合は別段こういう政策的の議論はありませんけれども、一応理論的にただ国の大きさとかなんとかいうことを考えずにやれば、軍備のない国でも国連加盟の資格はあるということは、事実が示しておるところであります。
  210. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  211. 穗積七郎

    穗積委員 簡単に大臣にお尋ねしてみたいと思います。MSAの問題は非常に日本の将来に重大な影響を持つ問題であり、私は日本が負うべき義務と憲法との関係一つの焦点であり、それからその援助を受けることによりまして、経済的な利害得失がもう一つの大きな焦点だと思うのです。その議論はまだ交渉が具体化しておらぬというので、仮定に立つて議論することは内容につきましてはむだだと思いますので、予備的な点について特に大臣にお尋ねしたいと思います。それは簡単に二、三の点でありますが、今まで日本の保安隊は直接侵略に対しては、これに出動しないということを大臣初め政府の方々は明言しておられたわけですが、この十五日のアリソンのあいさつ文書を読みますと、明らかに将来は日本の自衛軍に育てる目的をもつて日本の現在の保安隊が直接侵略に対して出動することを求める、そういうことが予想されるわけでございます。そこでお尋ねいたしたいのは、そういうような直接侵略に対して出動する性格にかえることを向うが要求した場合でも、MSA問題の受諾する交渉をおやりになるつもりであるかどうか、その点を第一にお尋ねしておきたいのであります。
  212. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側は、従来から日本が直接、間接侵略に耐え得るようになつてもらいたいということを希望しておることは、これは隠すべきではありません。安全保障条約の前文にもそうなつておる。われわれもこれを了承して寄りますから、できることなら、そつちの方に早く行きたいと思つておりますが、実際上はまだできないわけであります。しかしアメリカ側の今度のMSAの交渉に立つての態度を明らかにしたところは、すべての決定は日本政府が行うのであつて、その日本政府の決定がいかなるものであつても、これに対してアメリカ側としてはそれに応じたる援助をするつもりだと言つておりますから、向う側からそういうことを要請されるということはないのじやないかと思つております。
  213. 穗積七郎

    穗積委員 それではこちらの自由な意思によつてそれがきまるということであるならば、そういうふうにされるつもりであるかどうであるか、大臣の腹をお聞きします。
  214. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは私だけできめる問題じやありません。政府全体として、また党とも相談してきめる問題でありまして、まだその点については何もきめておりません。
  215. 穗積七郎

    穗積委員 もうすでに交渉が始まつておるのでありますから、しかも最も重要なポイントの一つでありますし、そのことの腹がきまらなくて交渉に当るということでは、はなはだ無責任のそしりを免れないと思いますので、急速に閣議をお開きになつて、その点をおきめになる必要があると思いますが、その意思はございませんでしようか。
  216. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほどから繰返して申しておる通り、交渉にあたつては、日本政府の決定によつてそれに応じたる援助をするということになつておるのでありますから、日本政府がどういうふうな決定をしなければ無責任だということはないのであります。日本政府が国内の情勢、政治的、経済的いろいろな情勢を検討して、今のままでいいとなれば今のままで行くし、かえた方がいいとなればかえたらいいということになるし、それに応じてアメリカ側でも援助するということでありますから、交渉には日本政府のかえた決定がなければならぬということじやないのであります。
  217. 穗積七郎

    穗積委員 だからその腹を伺つておるわけです、向うの腹でなくこちらの腹を。近き将来を予想して先ほど保安庁長官は、交渉の経過並びに発展いかんによつては、保安隊の性格を切りかえなければならぬというような個人的な御意見も持つておられるわけであります。従つてこの問題は、日本国民に与えます影響も大きいので、政府として意見、方針を統一される必要があると思うのです。そうでありませんと、われわれとてしもこの問題に対しての賛否の態度をきめるわけに行かない一つの要点がございます。従つて私は向うの腹を聞いているのではなしに、こちらの腹を聞いておるわけです。
  218. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほども保安庁長官は、これは自分の私見であつて政府意見じやないということを言われたように思つております。政府としては今申した通りまだ決定はしておりません。重要な問題でありますからいろいろ……(「聞く必要がない」と呼ぶ者あり)どこにも聞いておるわけじやない、政府がきめる問題であるけれども、重要な問題であるから、これらの点を考慮してまだ決定いたしておりません。
  219. 穗積七郎

    穗積委員 だから日本のために早くおきめいただきたいということを言つておるわけです。そして同時に私がお願いいたしたいと思いますことは、この問題をお互いに討議しますために必要なことは、その政府の方針とそれとの関連において、きよう並木委員からもお話があり、せんだつて委員会でも私もその問題を大臣に提示いたしたのでありますが、憲法との関係について、その問題は大臣は私はその任でないということで、謙遜しておられるのか、逃げておられるのか知りませんが、そういうことであります。この二点を相互の関連において内閣の意見を統一して交渉にかかるべきであるし、それがなければ交渉の内容をコンクリートするわけにも行くまいと思いますので、その点はぜひひとつ憲法との関連において、その解釈に対する政府の態度と方針と、それから保安隊の性格を今後どういうふうにするかということに対する政府の統一した御意見を、至急おきめいただきたいと思うわけでありますが、いかがでありましようか。
  220. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いずれ話合いの結果協定もできるでありましよう。協定は国会に提出して承認を求めるつもりでおります。その際までにはいろいろの具体的の問題はきまるものと思つております。
  221. 穗積七郎

    穗積委員 それでは時間がありませんから、あと二点一括してお尋ねいたしますが、万一外敵の直接侵略に対して対応するための部隊に性格を切りかえますと、憲法第九条の問題も当然でありますが、それだけでなしに、同時に統帥権の問題が当然出て来ると思います。すなわち軍隊の指揮命令でございます。しかもそれは憲法に規定してございません。戦争とか軍隊ということを考えておらぬ憲法ですから規定していない、その問題になりますと名前は保安隊でありましても、現在の保安隊に対します指揮命令の系統をもつてしては、これは外敵に当るということでございますから、そういうことではとうてい現在のままでは許されないことであると思うのであります。憲法の問題も討議される場合には、政府当局として責任のある御答弁のできるように、統帥権の問題についても、それから宣戦布告の問題につきましても、はつきりした統一をしてとりかかつていただきたい、これはアメリカとの交渉に対してもそうでありますし、国民に対する政治的責任からも当然のことであります。その点を重ねて念を押しておきたいと思います。  それからもう一点は——これでもう打切りますが、アメリカとMSAその他の、あるいはまた西ヨーロツパのような集団自衛機構を持つておる国々との関係でございますが、それらがその協定軍事的義務によりまして、いろいろな行動を起す場合にこれに同意することになつておる、そういうことをアメリカが希望しているわけでございますが、そういうことになりますと——日本が兵力を第一に出してこれに協力するかしないかは別といたしまして、そうすると同意だけではなしに、協力するということになると思うのです。ほかのところの文章でもそういうことが出ておるわけですが、そうなりましたときに、アジアにおきましての中ソ条約、それとその日本の行為との関係はどういうことになつて発展して行くか、そのことに対します外相の御解釈を煩わしておきたいと思います。
  222. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 どうもこの問題は仮定に仮定が重なつているようです。全体直接侵略に現在の保安隊が対抗するかどうかという問題もまだきまつておらない、いわんや軍隊を持つかどうかということはきまつておらない、さらに太平洋条約のようなものができるかどうかきまつておらない、そういういろいろの仮定のもとに、そういう場合今度は中ソ条約関係はどうだとお聞きになつても、それはちよつとお答えのしようがないと思います。
  223. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問はそういう意味ではございません。つまり日本が軍隊を持ち、あるいは軍事的義務を背つて、それで軍事行動における協力をするという場合のことを言つたのではなくて、それ以外の協力の場合です。その場合における中ソ条約日本との関係でございます。そのことをお伺いしたのです。軍隊をつくつた後とか、あるいは太平洋の防衛同盟を締結した後の日本中国との関係、そういうことをお尋ねしたのではないので、それ以外の協力です。
  224. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ちよつと具体的に言つていただかないとわかりません。
  225. 穗積七郎

    穗積委員 たとえば経済的な協力、あるいはまた軍隊としてではありませんが役務、戦場における役務の部隊を日本から協力の形でする、あるいは輸送の協力をする、通信の協力をする、あるいは情勢の協力をする、いろいろあると思います。日本の軍隊としての出動の任務行為による軍事協力以外の協力ですね、そういういろいろなば合が想定されると思います。
  226. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれはただいまのところ、よその国に対してはコマーシヤル・ベーシスで武器を売るということは考えております。その他経済上の締結をやつて、貿易その他でお互に親善関係を結ぼうということは考えておりますが、それ以外には別段考えておりません。
  227. 上塚司

    上塚委員長 岡崎外務大臣に対する質疑は今日のところ、この程度にとどめておきます。  (「委員長ちよつと関連して、別の   問題ではありません」と呼ぶ者あ   り〕
  228. 上塚司

    上塚委員長 切りがないですからこの程度にとどめて……。     〔帆足委員「先ほどの問題も解決がついていない、欧米局長も旅券課長も……。」と呼ぶ〕
  229. 上塚司

    上塚委員長 帆足君の御要求の旅券課長、それから欧米局長は今盛んにあちらこちら探して出席を促しておりますけれども、まだ連絡がつきません。
  230. 並木芳雄

    ○並木委員 さつきアリソン大使のあいさつを引用しての安保条約以上の義務を負うこと、保安隊が直接侵略にも応ずる必要があるということは法律上の解釈であるというふうに答弁された、法理論からいうと法律上の解釈はそういうふうになるというので答弁されておりましたけれども、これがいよいよMSAの交渉ができて、協定の中に条文として入つて来ますと、今度は条約上の義務にはつきり具体化されて来るのじやないですか。その点をお伺いしたい。
  231. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 つまりMSAの法律を解釈すればそのようにとれるということを私は申し上げた。ところがMSAの法律というものは、御承知のように世界中が軍隊を持つているという前提のもとに、軍事援助といつて常に軍隊に対する援助というふうな前提のもとにやつておりますから、日本の場合にはこれがいろいろかわる場合があり得ると思つております。現にダレス長官も日本は憲法でこういうものを禁じておるというようなことを言つておるのであります。ですから、MSAは世界日本以外はほとんで軍隊を持つておりますから、それに合うような法律をつくつておる。日本の場合にはそれをかえる必要が出て来ましようから、実際協定をつくつてみないとどういう形になるか、これは相手との交渉にもよりますからわからないのであります。従つてこの間申したのはMSAの法律をそのまま解釈した、法律というか理論を交換したのだということを申し上げました。
  232. 並木芳雄

    ○並木委員 MSAの法律自体の解釈の段階ではもうないのでしよう。今の協定に入つて協定をつくろうという段階なのです。そうしてアリソン大使ははつきり義務は五百十一条(a)項に明文がありますと言つておりますし、日本が引受ける義務は、国連加入しておるときと実質上同じだとはつきり言つておるわけです。ですからそれは大臣少し卑怯だと思うのです。今法律の解釈をやつておるということは、われわれ外務委員会でも土屋さんあたりと一緒にとつくの昔に済んでいるのです。ですからそれは今度の協定に当然入れられることが十五日のアリソン大使のあいさつではつきりしたのじやないですか。だから翌日の参議院の外務委員会では、大臣はああいうふうに答弁されるようになつて来た、私はそういうふうに思うのです。それならそれではつきりして来るのですから、その通り答弁をお願いしたい。
  233. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これも前の予備交渉と同じで、してないものをしたしたと言われて困つたのですが、今度も顔合せはやりましたけれども、実際の交渉はまだやつておらないのです。お互いに準備もありましようからまだやつておりません。事実その通りであります。
  234. 並木芳雄

    ○並木委員 それは最初のところの岡崎さんのあいさつ、「と申しますのは交渉の前提となる部面においてすでに意見の一致をみているからであります。」と書いてあるのです。
  235. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは二十四日と二十六日の手紙の交換のことであります。
  236. 穗積七郎

    穗積委員 大臣にさつきのコマーシヤル・ベースによる取引以外の協力について私はお尋ねしたのですが……。
  237. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それ以外には今のところ何も考えておりません。
  238. 穗積七郎

    穗積委員 もしそれができたときはどうなるかということを聞いておるのです。
  239. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そのときはそのときで考えざるを得ません。
  240. 穗積七郎

    穗積委員 中ソ条約との関係はどうなるかを聞いておるのです。
  241. 帆足計

    帆足委員 ただいまの問題は実は具体的な例がありまして、今晩飛行機が出るのです。それで普通の市民の諸君が本名ばかり政府のお許しによつてヨーロツパに行くわけです。その中の一人が前に外務大臣の気色を損じたということのために旅券がもらえないのです。こういうことは今大臣の言われたように、大臣は旅券法を知らぬからという、知らぬのは勝ちだということになつて、せつかく御質問しても大臣が知つておられればはつきりした答えをするのだが、知らぬから法律通りやるということだけですが、第十三条の条文で旅券法に違反して刑に処せられた者、これは差別待遇できる、しかし手続を違反しても刑に処せられてない者を、気に食わぬことは重々お察ししますけれども、差別待遇することはできないのです。ですから法治国の権威にかけて、今晩飛行機が出るというのに旅券課長は逃げてしまつて、うちへ帰つていない。欧米局長はそれと察知してどつかへ姿をくらましてしまつた。そうすると一人の市民が、その市民の態度については多少の欠点はあるでしよう、政府当局のお気にさわつた点もあるでしよう、それは認めます。しかし憲法及び法律によつて保障されている人権をそのだめになぜ蹂躪されねばならぬか、私はこういうことが許されてはいけないと思うのです。そうして旅行というものはみな荷づくりしなければならぬ、予防注射をうたなければならぬ、それから飛行機の座席をとらなければならぬということで非常に苦労なのです。それをまた遅らしてしまつて、面会を申し込んでも会わない。欧米局長も旅券課長も都合が悪いから外務大臣に遠慮して会わないのです。さぞかしいやだという気持はあるでしようけれども、法治国ですから法律だけは守つていただきたいのです。この前の問題は私は裁判所へ訴えました。訴えましたのはボーダー・ラインであつて、裁判長も苦労したと私に述懐しました。帆足君これは苦労した、今度はどう解釈しても政府に大体において有利だから君はしんぼうして、損害賠償だけは棄却するからかんべんしてくれ、そう言われまして、私は裁判長に、これだけ調べていただいただけで満足です。しかし上告はしますと言つた。それはそれで済んでいるのです。しかしそういう人間を外国に旅行させない、これは海外旅行の基本的人権というのは、明治維新によつて鎖国を打破して闘いとつたところの国民の自由です。しかも自由諸国に行くのになぜ許されないか。それでは外務大臣、月曜日に法律を調べて、はたして旅券課長の方が法律上のそういうことがないのに渋つたとしたら、旅券課長を処罰されるかと私から言われたら、外務大臣は困ると思うのです。私はそういうことを今言いたくない。旅券課長は都合があつたことでしよう。過去のことをあえてとがめようとは思いませんけれども、そういうことをなされては基本的人権の侵害になるのですから、外務大臣どうか欧米局長をお呼び出してくださつて、不愉快な点もございましようけれども、法律に従つて国民の基本的人権は認めていただきたい。旅券法に違反して刑に処せられたる者という文言がありますから、外務大臣もうこれで御異存ないでしようか、どうでしようか。
  242. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 法治国々々々とおつしやいますが、旅券課長は土曜日は半日で帰る法律上の権利を持つておるのです。それを再び呼び出すというのはやはり人権の蹂躪で、特別の用があればこれは役人ですからやりますけれども、それは初めから予期していないので、昼までに片つくように物事は処理しておるのであります。それも特別に用事があれば呼び出しましようけれども、しかし土曜日の午後にはひまがあるというので出かけたのをけしからぬようにおつしやるのは、私は了解できない。(「逃げてるんだ」と呼ぶ者あり)逃げておるとか逃げてないとかそんなことを——役人が逃げるわけはありません。それからその何とかおつしやる人が法治国であるから権利を無視されたとおつしやるが、しかし片方には、刑罰は受けなくても旅券法に違反しておるという事実はおそらく間違いないことだと思います。自分の方の旅券で違反したときは、刑罰を受けなければ何でもないのだ、こういう議論は私はやはり間違つていると思うのです。刑罰の規定はなくても、旅券法の法規に違反しているときにはやはり違反している。   (帆足委員「それは解釈だ」と呼ぶ)
  243. 上塚司

    上塚委員長 帆足君、私語を禁じます。
  244. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 法治国とおつしやるが、やはり役人にも役人としての時間もありますから、義務もあるかわりに権利もあるのですから、その点は御承知願わなければなりません。
  245. 帆足計

    帆足委員 私はただいまの外務大臣の御答弁は遺憾だと思います。手続法に違反したということにつきましては、これは解釈の相違ですから、それはそれでいいでしよう。違反しているのでしたら処罰なさつていいと思います。しかし今新たに旅券を発給するという問題は、旅券法違反として刑に処せられた者という、そういう犯罪を犯した者を差別待遇するということになつておるのであつて、刑に処せられていない者は、政府当局としては遺憾であるとお考えになつても、先ほど外務大臣の言われたように、それはやはり旅券は出さなければならぬという手続になつているのですから、そういう違反をされては困る。旅券課長は朝から催促されて知つておるわけです。欧米局長もこの問題はよく知つておられる以上は、午前中に外務大臣に御連絡して何らかの措置をしてからお帰りになるのが当然だと思います。今晩船が出るのですから……。それで今外務大臣は自分は不愉快だけれども、法律がその通りになつておる以上は、その通りにしなければならぬとすれば、その通りにしていただきたい。それを今の係の方は法律の専門家ですから、よく知つているのです。速記録に載つておるのですから……。それに対してお尋ねしておるのです。その点については、外務大臣は遺憾であつたと言われるだろうと思います。
  246. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは外務大臣が一一旅券を書いて出すわけじやありませんから、それはそれとして、役所には係がみなおるのですから、私にいくらおつしやつても、旅券課長なりその他関係の係の者がやらなければできないことであります。それはまたそれでいろいろ理由がありましよう。私は逃げておるとおつしやる根拠を伺いたいのだが、役人が執務時間に逃げるわけはないのですから、そんなことは私は絶対にないと思うけれども、しかし間に合わない場合も旅券にはよくあるのです。今までだつてある。これは調査の必要なときもありましようし、いろいろな点で間に合わないこともあるのです。これはやむを得ない点もお考えにならなければならぬ。
  247. 帆足計

    帆足委員 同じことを何度申し上げてもしようがない。いろいろ御不快な点もありましようけれども、法律に従つて月曜日に御処置願いたいのでありますが、旅券課長にも私の方から連絡いたしますから、ひとつあなたの方におきましても、意見の相違は相違として、同時に普通の手続は手続として円滑にお運びくださいますようお願いして、私の質問を終ります     —————————————
  248. 上塚司

    上塚委員長 次に日本国とフイリピン共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関する質疑を許します。並木芳雄君。
  249. 並木芳雄

    ○並木委員 一点だけ。フィリピンでは引揚げた船をどういうふうに利用し処分する腹なのですか。
  250. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答えいたします。どういう形で船が引揚げられるかということにつきましては、一船別に破壊してしまうか、あるいはそのまま浮き上らせるか、あるいは全然これは見込みのないというふうにして放棄してしまうか、いろいろな方法があるわけであります。従いましてそれはその船の沈没している現状につきまして、精密な調査をした結果に基いて、一つ一つについて向うの政府官憲とわが方とで打合せをいたしました上で、その打合せに従つて処理して行くわけでございます。
  251. 並木芳雄

    ○並木委員 きのうだつたかおとといだつたか、フィリピンのある国会議員がワシントンへ行つて、対日賠償は二十億取立てるのだというような言明をしております。ああいうことをアメリカへ行つて言明するのは、何か私は含みがあるのじやないかと思うのです。たとえば今度MSAの問題なんかとからんで含みがあるので、そういう意見があるなら、直接日本政府へ言つて来たらよさそうなものですが、ああいう賠償問題について、大野さんはどういうふうに受取つておりますか。
  252. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。ただいま並木さんの御質問の中に指摘されましたのは、先般東京へ立ち寄りまして、今アメリカに滞在中であるフィリピンの上院の外交委員長であるデルガード氏がワシントンのある新聞記者に対して述べたのが、外電によつて報ぜられたことに関連していると思うのでありますが、これはほんとうに新聞報道でありまして、私どもその真相はわからないのです。
  253. 並木芳雄

    ○並木委員 沈船引揚げの作業は、政府が直面営になるのですか、それともだれかに請負わしてやるのか、その責任、今後の方法、業者の選定。
  254. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答えいたします。もちろん沈船の引揚げの作業のやり方は、大体直接方式というのと間接方式というのとあるわけであります。直接方式というのは、実はフイリピン側か直接に日本の沈船引揚げ請負業者に対して、話をして契約を結んで作業の実施に当らしめる方式であります。間接方式と申しますのは、日本政府とフィリピン政府の間の話合いに従いまして、日本政府が実行の責めを直接負いまして、そうしてそれを日本における沈船引揚げの請負業者の間で競争入札をさせまして、落札したものにきめられている作業をしてもらう、こういう方式であるわけであります。ただいまのところどつちの方式にするかということは、確定的にきまつているわけじやございませんが、今の状況で判断し得るところを申しますと、大体間接方式、すなわち日本政府日本のサルページ引受業者の間に特定の条件状況のもとに幾らで引受けるかという入札をさせまして、落札したものが日本政府に対して引揚げ作業を所定の条件に従つて完全に実行する責任を負う、こういう方式になると考えております。
  255. 上塚司

  256. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この沈船引揚げに日本で要する費用がどのくらいかということと、それからその費用は予算のどの費目から出るかということ。
  257. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。ただいまのところ、昨日の本委員会におきまして御説明申し上げましたように、フィリピンの領海の数箇所のところにつきまして、沈船の引揚げを求められているのでありますが、現実に先ほど申しましたような沈没している船を一つずつ精密な調査を完了いたしましたのは、二箇所だけであります。すなわちマニラ湾の中に沈んでおります船舶、それからセブの港の中に沈んでいる分だけについて、一船別の精密調査を完了いたしたのであります。もつともこの二つの地域が船舶が沈んでいる数が一番多いわけであります。その調査を完了している部分についてだけ申し上げますと、概算四十億円くらいの見込みになるわけでございます。それから経費の費目でございますが、平和回復善後処理費の費目からこの経費が出されることになると考えております。
  258. 戸叶里子

    ○戸叶委員 賠償の一部になると思うのですけれども、そういうような重大な予算を、そういうふうに軽く使つていいものでしようか。それは財政法上の違反にならないでしようか。
  259. 大野勝巳

    ○大野政府委員 実は軽く使う意思は毛頭ないわけでございまして、そのために実施細目とか現場で実際どういうふうにやるかということにつきましては、二重、三重に十分に手間をかけまして、両国の政府間並びに当該所轄地方官憲との間におきましても、現場におきまして十分の打合せをいたしておるわけでございまして、政府といたしましては決してこれを軽く使うつもりはございません。ただいま申し上げました概算と申しますのは、計算のための大体の目算程度でございまして、見当を申し上げますればそのくらいになるということで、軽く申し上げたかもしれませんが、決して軽く扱つておる次第ではございません。
  260. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点伺いたいのですが、二条に、「法律が許す限度」ということが書いてあつたと思いますが、法律の許す限度というのはどういう意味でしようか。普通でしたならば日本協力をするとか。そういうふうな言葉をもつて足りると思うのです。
  261. 大野勝巳

    ○大野政府委員 お答え申し上げます。この点が実はフィリピンの特殊な事情に基く次第でございまして、フィリピンにおきましては、日本に対して第二条に掲げてあるような協力をする場合において、特定の経費の前渡しあるいは現物の前渡しなどを予定しておるわけでございますが、その場合予算はフィリピンにおきましては法律で一一きめておるような関係がございまして、その予算に載つていないような場合におきましては、あらためて法律で予算をはつきり決定しなければいけない、そういう事情にあるものでありますからして、先方のそういう特殊な事情を考慮に入れまして、そういう案文にいたしてあるわけでございます。
  262. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうするとこの問題は、フイリピンの予算にまだ計上してないわけなのですね。
  263. 大野勝巳

    ○大野政府委員 その意はまだはつきりしておりませんが、比較的小さなものあるいは政府が行政権をまかされておる範囲内で処理できるようなものにつきましては、あらためて立法措置を要せずに、フィリピンの政府が支出することができると思うのであります。但しそれを越えたりあるいは今まで予定していなかつたような費目について、何か問題が起つて来るようなことがありますと、あらためて立法事項として議会の承認を要するという趣旨だと存じております。     —————————————
  264. 上塚司

    上塚委員 並木君。
  265. 並木芳雄

    ○並木委員 法制局長官はけさほどこの委員会におられましたから、木村長官の答弁よく御存じだと思います。あれに関連いたしまして、交戦権の問題をはつきりしておきたいと思います。つまり保安隊、海上警備隊が直接侵略に当る場合に、日本の憲法は交戦権を認めておりません。従つて交戦権を認めておらない日本の憲法のもとにおいて、憲法を改正せずして直接侵略に当ることができるか。けさほども私ちよつとその点質問したわけであります。もし憲法を改正しないで直接侵略に対抗できるということならば、その限界はどこにあるか。つまり交戦権に基いて行う行動と、交戦権のない日本の憲法のもとにおいて行う直接侵略の防衛の場合とで、どういう違いが出て来るかという点を、詳しく専門的に御説明願いたいと思います。できるだけの例をあげてお願いいたします。
  266. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 交戦権の大体の概要につきましては、先ほどお答えした通りでございますが、憲法制定の際に、金森さんが例にあげておつたのは、たしか先ほどあげました船舶の拿捕の関係でありますとか、あるいは占領関係の行政権のこととか、そういうことをあげておりました。そのほか国際法上どういうものがあるだろうかということについては、たとえば俘虜の待遇を要求する権利というようなことも、数えて行けば入るだろうと思います。私も国際法専門ではございませんから、中心としてそういうものを考えれば、大体の観念はわかると思いますが、なおもう一つ、ホールという国際法の学者がおりますが、その人の本の中に書いてあるところを見ると、交戦の実体として、戦争の場合には、相手をやつける限界というものは、相当幅広く認められているのじやないか、不必要というと語弊がありますが、多少合理的な範囲を越えても追いかけて行つて殲滅させるというようなことも合法と見られる、そういうことがまた一つの交戦権の内容だというようなことを書いておる、こういう学者もあるようであります。しかしそんなことは、私どもは今さしあたつて研究をしなければならぬという責任ある場面には追い込まれておりませんから、そういうことを御紹介する程度にしか確言して申し上げるわけには参りませんけれども、そういうものが一応あるということを考えますと、今度憲法上許された実力部隊が、直接実力行動をやる場合にどういう拘束があるかということになるわけであります。そうしますと、まず間違いのないところは、少くとも保安隊その他警察隊というようなものが、治安上の目的から実力行動をやる場合があります。それと同じ実力行動ができることはこれは問題ないと思います。さらにそれを越えてどういうことができるかというと、先ほど申しました例で言えば、たとえば中立国の船舶が敵性貨物をたくさん積んで目の前を通つて行く、しかしそれを拿捕するということは差控えねばなるまいという種類の問題が出て参ります。それから先ほど触れましたホールという学者の言つておるような見解をかりにとり上げれば、その実力行動の限界はやはりいわゆる警察行動の場合と同じように、比例の原則といいますか、必要の限度における実力の行動でなければならぬというような制約が来るのではないかというようなことで考えておるわけでございます。
  267. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいま引用された比例の原則ですか、比例の限度ですか、その点を説明してください。
  268. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 先ほどの言葉で例をとりますと、戦争の場合ならばずつと追撃してとことんまで追つかけて行つて殲滅させるというようなことが一つの権利として許されておる。ところが普通の警察の実力行使の場合においては、たとえば急迫性の侵害というようなことになれば、その侵害を排除するに必要な限度ということに、実力行使の限界があるというようなことを言われておりますが、そういう点からの違いがありはしないかというようなことであります。
  269. 並木芳雄

    ○並木委員 今の説明ですと交戦権に基く行動と、基かざる行動とでは雲泥の相違があるように感ずるのですけれども、いかがでしようか。つまり一種の警察行動の範囲を出ないであろうというような答弁にも受取れたのですけれども、そうだとすると、保安隊の性格をかえてまで直接侵略に当つて行くという目的などから考えますと、ほとんど用をなさないような感じがいたします。今のままで一旦緩急ある場合には実力行為としてやるであろうという今までの政府の答弁で事が足りるし、またその限度しかできないように思われるのです。ですから交戦権に基く行動というものとの間では、非常にそこに差があるように思われますけれども、その点いかがですか。
  270. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それはやはり憲法解釈の態度の問題になると存じます。憲法九条二項で言つておりますその交戦権というものを、広く戦争する権利ということを言う学者さえありますけれども、それはわれわれとしては先ほど申しましたようにそこまでは考えない、ただ交戦者としての権利を言うのであるということで、これは憲法解釈の問題はそれだけのことでありますが、次にはやはり国際法上どういうものが交戦者の権利として一般的に認められているかという、そこの判断の問題になりますから、私は先ほど決して断定的な意味ではなくて、こういうものが交戦権の問題として考えられますということを申し上げたわけであります。これは保安隊をそういう直接侵略に対応するものに改めるというようなことは、われわれまだ研究を命ぜられてもおりませんから、とことんまで責任あるお答えをここでお求めになりましても、これは御無理であることはおわかり願えると思うのですが、大体の点としてはそういう点が数えられますということを申し上げて、あとそれが雲泥の違いがあるか、あるいは雲泥までは至らぬものであるかということは、これはいろいろの見方の問題じやないかというような気持がいたします。
  271. 並木芳雄

    ○並木委員 やはりそこに逃げ道があるように感じます。いかでしよう。つまり戦力の問題で、これは主観論でどこまで行つてもいたちごつこでらちが明かない。政府は戦力の限度に来ていないということで、憲法に抵触していないと言つてつたのと同じように、交戦権を認めてない日本の憲法に抵触しないということで、やり逃げ道がそこへ出て来るように思いますがいかがでしようか。つまり保安隊かあるいは海上警備隊が直接侵略にぶつかつて行く、実力行為に出る、それが憲法には抵触しないのだ、この限界までは抵触しないのだということで、そこの限界が、今の長官の答弁によつても明らかな通り、かなり幅があるようです。そうすると結局憲法を改正しないで相当交戦権に基くような行動ができるようになつて行くのではないですか、その点いかがですか。
  272. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 逃げ道というお言葉でありますが、要するに私の申し上げておる趣旨は憲法でのわくというものは今申しましたように、戦力についてのわくが一つあることと、交戦権についての制約があります。その範囲内でやれることは憲法はもちろん禁止しておりませんからやれるわけです。これはそれだけのことであります。ただ逃げ道というお言葉の趣旨は、おそらくそういつかいろいろ列挙しているけれども、またそのどたん場になつたら、少し解釈がかわりはしないかという御趣旨であるとするならば、それはさつきも申したように責任ある研究を遂げておりませんから、今思い当る交戦権の態様としては、こういうものがございますという程度のことでありまして、まだ逃げるところまで立至つておらぬということでございます。
  273. 並木芳雄

    ○並木委員 私たちは漠然とこういうふうに考えておつたわけです。いやしくも直接侵略にぶつかつて行くときには、これはもう交戦だ、だから交戦権を放棄した日本の憲法に抵触するんだ、こういうふうに非常にナイーブであつたかもしれませんが、考えておつた。その点においては政府はそういう考え方はとらない、こういうことは言えますか。
  274. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それは憲法制定の審議の際から、政府としては交戦権というのは戦争をする権利ではございません、戦争が客観的にかりにあつたとした場合の、その戦争当事者としての権利というふうに言つておりますから、戦争そのものをする権利というのとは違うということをずつと申して来ているわけであります。
  275. 並木芳雄

    ○並木委員 この際お尋ねしますが、私の方の芦田さんなどは、憲法を改正しないで自衛権を持てるという説を唱えております。ほかの学者にもそういう説を唱える人もあります。ところで第二項の「国の交戦権は、これを認めない。」という項目になつて参りますが、そこまでは私達は芦田さんの意見を聞いたわけではありませんけれども政府としての考えをお聞きいたします。「国の交戦権は、これを認めない。」というのをかりに芦田説をとる場合に含まれているのかどうか、つまりあの憲法の書き方から言うと、その前のところが切れておつて、項をあらためて第三項にしてもよさそうにも思われる節がある。もし三項であるとすると、芦田説をとつても交戦権の問題だけは憲法を改正しなければならないということになります。その点政府はどういうふうにお考えになつておりますか。
  276. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 こちらからお尋ねしようと思つておりましたところ、先まわりしてお尋ねを受けてたいへん恐縮なのですが、実はまことに私もその通りに思うのでして、「前項の目的を達するため、」というのは「その他の戦力は、これを保持しない。」というところで終つて、言葉がマルがついて、そこで終止形になつておる。そこであらためて「国の交戦権は、これを認めない。」とありますから、おそらく今の御疑問は「前項の目的を達するため、」というのは戦力を保持しないというところにはかかるけれども、交戦権の方にはかからぬのじやないかという御疑問だろうと思います。それは私も同じ疑問を持つておりますけれども、これは芦田先生に伺うよりほかにわからぬのじやないかという気がいたします。文字としてはかからないということは私は言えると思います。はつきりマルぼつがついておりますから……。ただ趣旨からいつて芦田さんは「目的を達するため、」というのは下までかかつているのだよとおつしやるかどうか、そこの問題にかかると思います。
  277. 上塚司

    上塚委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十一分散会      ————◇—————