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1953-07-13 第16回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十三日(月曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 熊谷 憲一君    理事 福田 篤泰君 理事 並木 芳雄君    理事 田中 稔男君 理事 戸叶 里子君    理事 池田正之輔君       麻生太賀吉君    増田甲子七君       須磨彌吉郎君    武藤運十郎君       穗積 七郎君    加藤 勘十君       岡  良一君    安藤  覺君  出席政府委員         法制局次長   林  修三君         法制局第一部長 高辻 正己君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      山内 隆一君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部次長)    大石 孝章君         外務事務官         (国際協力局第         四課長)    嶌内 敏郎君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         経理課長)   高橋 泰彦君         建設事務官         (計画局総務課         長)      八巻淳輔君         参  考  人         (千葉会議         員)      新井 信司君         参  考  人         (千葉豊海町         町長)     櫻井 正中君         参  考  人         (千葉水産部         長)      河野 勝彦君         参  考  人         (群馬県知事) 北野 重雄君         参  考  人         (群馬坂本町         町長)     武井 重三君         参  考  人         (群馬坂本町         農業会会長)  佐藤 一雄君         参  考  人         (神奈川会議         員)      添田 良信君         参  考  人         (神奈川茅ケ         崎市会議員演習         場対策委員長) 新倉 吉藏君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 七月十一日  委員淡谷悠藏辞任につき、その補欠として帆  足計君が議長指名委員に選任された 同月十三日  委員石橋湛山辞任につきその補欠として安藤  覺君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月十日  日本国フイリピン共和国との間の沈没船舶引  揚に関する中間賠償協定締結について承認を  求めるの件(条約第一六号) 同月十一日  妙義地区駐留軍演習地設置反対の請願(小峯  柳多君外一名紹介)(第三五八七号) の審査を本委員会に付託された。 同月十日  韓日会談締結促進に関する陳情書  (第七五〇号)  浅間山の演習地化反対に関する陳情書  (第七九八  号)  内灘永久接収反対に関する陳情書  (第七九九  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日米行政協定に基き駐留軍に提供する施設及び  区域に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 ただいまより会議を開きます。  本日は、去る十日に引続きまして、日米行政協定に基き駐留軍に提供する施設及び区域に関する件を調査するため、参考人より意見を聴取することといたします。  議事に入るにあたりまして本日御出席参考人各位にごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、遠路わざわざ御出席いただき、厚く御礼を申し上げます。当委員会におきましては、国政調査の一項目として、日米行政協定実施状況調査して参りましたが、今回現地方々意見を聴取するため、特に参考人各位の御出席をお願いいたした次第であります。  本日の議事の順序につきまして申し上げますと、まず参考人方々よりおのおのの関係区域に関する御意見を開陳していただき、そのあとにおいて委員よりの質疑がある予定でございます。なお御意見の開陳は一人十分ないし十五分程度にとどめていただきたいと存じます。念のため申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところにより、発言委員長の許可を受けることとなつております。また発言内容意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならないことたなつております。なお参考人委員に対して質疑することはできませんから、さように御了承をお願いいたします。  それではこれより参考人から御意見に聴取いたします。第一、九十九里浜の件につきまして御意見を聴取いたします。千葉会議員新井信司君。
  3. 新井信司

    新井参考人 九十九里における演習基地の証人といたしまして、私と地元豊海町長櫻井氏と千葉水尾部長河野氏が参つております。まず各部門にわたる項目統計的なことは水産部長並びに現地豊海町長よりお聞きを願うことにいたしまして、私は一般経済事情とその基地住民心理状態を申し上げたいと存じます。  九十九里演習基地通称片貝演習場といわれております。接収されておる地域は豊海町が大部分で、白里町の一部が含まれており、両側に白里町、片貝町、鳴浜村が接しておるのであります。この四箇町村九十九里中心に位しておりまして、古くから漁業の盛んなところであります。九十九里いわし漁業として全国的に知名であるとともに、この四箇町村九十九里漁業中心町村として発展を遂げて参つたのであります。しかるところ昭和二十三年に米軍演習地として接収されるや、その間潮流異変等もあげられますが、何といたしましても漁業操業制約が最も大きく影響いたしまして、急激に漁獲の減少を来し、過去五箇年を経過いたしました今日におきましては、あらゆる経済漁業を基盤として成り立つております関係上、漁業はもとより商工業者はほとんど危殆に瀕しておる実情でございます、漁業家は、昨年度多少見舞金程度補償をいただきましたので、辛うじて経営を続けておりますが、漁夫の生活困窮ぶりはまことに目に余るものがあるのであります。配給の米も受取れない、みそ、しようゆにいたしましても二合とか二十銭というような買い方でありまして、タバコも吸えない状態であります。諸先生方にはとても想像はつかないと存ずるような事情でございます。業種といたしましては、水産加工業者の不振が特にはなはだしく感ぜられるのであります。加工業者漁業家とともに各町村の有力な階級であつて、戦前までは町村財政の最大な担税者であつたのでございますが、現在では転落者が多く、残つておる者といえども赤字経営で気息えんえんたる実情でございます。従つてこれらを対象としての商工業者もまた赤字経営でありまして、これ以上の借金はとうていしようがないという現実でございます。これを裏づけるものとしてまず学童の長欠が多くなりつつあります。また青少年の人身売買が盛んに行われておるようなわけであります。最近やみ米の値上けが世上の問題となつておりますが、九十九里沿岸町民の何十パーセントかは実にこのやみ米の持出しがあつたればこそ、この苦境にもかかわらず生き抜いて来たというような実情でございます。当局取締りの徹底によりまして、今や窮余の一策であるこのやみ米の販売も道をふさがれんとしておるような実情にあります。食管法国民生活を守る法律であろうと思いますが、九十九里の場合は死に至らしめる法律とかわるのであります。彼らが警察当局取締りに会い、色を青くして逃げ惑うあの現状、つかまつて現場を没収されたときのあのくやしそうな顔、生きんがための行為が罪人として扱われるあの現状を見るときに、あの漁場が十分に活用ができたならば、これほどの悲惨も見ずに済まされると、基地近くに住んでおる私どもといたしましては、暗然たらざるを得ない状況でございます。この苦境政府に訴えまして、外務省はもちろん水産庁特調には過去二箇年にわたり、数十度を越える陳情を続けて参つておるのでございます。漁業補償は昨年度見舞金程度をいただきましたが、本年は完全補償がなされるとのことで大いに期待しておつたのでございます。ところが最近に至りまして、予想を裏切る最少額の内示でまことに愕然としておるような次第でございます。水産加工業者はいまだに目鼻がついておりません。水産庁特庁の役人の方々は数回にわたりまして現地を御視察をいただき、しかしてよく事情もわかつた、完全な補償をいたすようにとりはからいますと明言をされておるのでございます。しかるにもかかわらず、水産委員会等におきましては、加工業者という名前がいかぬから出せぬというのであります。名前がよかつたら、被害がないところでも補償を出そうという考えでございましようか。私ども名前が何であろうとも、実際被害を受けておるものには補償をすべきだと思うのでございますが、諸先生はどういうお考えでおられるのでありましようか。最近の内灘の問題は、内容項目等はいずれにいたしましても、完全に近い施設あるいは補助費等が出されておるように私は見受けられます。また九州における今回の大水害には、政府をあげて救済に乗り出しておられることは、いずれもけつこうなことであろうと存じます。しかしながらこれらは今日起つた被害であります。九十九里におきましては、過去五年の長い間、なお今後も相当続くかと想像される被害であります。しかるにいまなお救済の手がぐずくずしておるということは、あまりにも不公平な政治だろと私はいわざるを得ないのであります。これまでは九十九里陳情は良心的に進めて参つたつもりでございます。日本の置かれておる国際的情勢を考慮し、軽挙妄動を戒めつ、理解ある政府救済の一日も早からんことを希望して参つたのでございます。本日も地元教育委員会関係あるいは加工業者関係がバス三、四台を連ねて国会に陳情に参つておるような事情でございます。来る二十一日には、現地におきましても、知事を初め国警隊長あるいは教育長、検事正、経済部長、土木、水産、民生各部長等現地視察を願いまして、真実の住民陳情を聞いていただく一大運動を起す準備も整えておるような次第でございます。どうぞ諸先生におきましては、九十九里住民の心情をおくみとりくださいまして、温情ある政治の一日も早く浸透されるようお願いいたしたいと存ずる次第でございます。  以上でございます。
  4. 上塚司

    上塚委員長 次は千葉豊海町長櫻井正中君の御説明をいただきます。
  5. 櫻井正中

    櫻井参考人 私は演習地地元町長として、主として陸上における演習による被害——陸上被害及び海上における被害と二通りありますが、海上被害に関しましては、後の河野水産部長よりお願いいたしまして、私は主として陸上被害に対する損害の状況を申し述べたいと存じます。  まず演習場の所在地でございますが、これは先ほど申し上げましたように、千葉県の九十九里、その中央にございます私たち豊海町を中心にいたしまして、南に白里町、北に片貝町、三町連帯をいたしておりまして、三町で人口約三万の町を形成しておるのでございます。その中心でこの演習が行われておるのでございます。演習の閉始当時からの状況を御参考までに若干申し上げたいと思いますが、昭和二十三年の四月に突然わが豊海町に米軍が参りまして、真亀川の周辺キャンプをつくつた。当時はもちろん現在と違いまして、私は米軍からその通告とかそういうものは一切受けません。突然参りましてキャンプをつくつた。おそらく演習ではなくあるいはわれわれが山でいうキャンプ、ああいうふうに解釈しておつたのであります。そのうちに演習が始まりまして、ああこれは演習なんだ、しかしながらこれが現在に至つてこういう問題を引起すほどの長い間の演習などということは毛頭考えておりませんでした。暫定的な演習だろうというふうに考えておつたのであります。しかるところだんだん演習は進行いたしまして、いつやむともわからないというような状況で、しかも進駐と同時に、周辺土地民有地官有地あるいは町村有地を問わず、あるいは私有の山林であろうとも、彼らがなすがままにこれを伐採し、適当に使用しておつたのであります。それが今日引続いて接収されておりますが、当時もちろん町民一人といえどもこれに対して不満とか不平とかを申し上げる勇気はなかつた。むしろ恐怖感を抱いて、キャンプ周辺へ寄ることさえもできなかつたというのが当時の事情でございます。そのうちに演習はますます盛んになる。漁業はできない。加うるに進駐当時でございますので、米軍個人行為を申し上げますと、アメリカを誹謗するわけではございませんが、まことに狂暴、横暴きわまる状態で、強奪、暴行あるいは日中公然と日本における強盗行為をあえてしておつた。これに対しても町民一人も何ら持つて行きどころがない。ほとんど泣寝入りの状態を続けておつたのでございます。  かくいたしますうちに、いわゆる進駐軍につきもののパンパンが続々と豊海町に繰込みました。演習開始後三、四箇月後にして実にその数は二、三百という多数に上つたのであります。当時はおそらく町民全般パンパンに対する見解は、ほとんど相手にしなかつた、人間扱いしておらなかつたというような関係から、民家借の入れを要求されても絶対にこれに応じなかつた従つて彼らがどういうことをしたか。ほとんど彼らの行う売春行為は白中公然と海岸あるいはキャンプ周辺山林中で行われた、これは明らかな事実でございます。そうして無心な子供はこれを奇異の目をもつて見物しておつた。同時に小学校、中学校の生徒はあるいは誘い合せていわゆるパンパン見物というようなことが行われておつた。それはおそらく現在ではございませんが、進駐当時の状況はそういう状態であつたのでございます。これには町民一般も、もうどうにもならぬ、こういう状態で進むならばどうなるかというふうに考えたのでございますが、そのうちにアメリカ人に対する恐怖感は逐次一般町民にはなくなつたという関係から、パンパンに家を貸す人もできるという状態になつて、そういうあまり忌まわしいような状況はその後長くは続きませんでしたが、当時はそうであつた。そうしているうちに、当初短期間だと思い込んでおつた演習はますます熾烈になり、しかも最初すこぶる小規模であつたキャンプあるいは演習部隊の出入りも逐次増強されてキャンプ周辺には半恒久的な施設が逐次増加された。そこで問題の漁業は全然できなくなつた。たまたま午前中はやつてもいいという話がございましたが、九十九里漁業においては午前中の漁業は実は不可能でございます。そこでこの演習が長く続いたので、漁業家がまず第一に手をあげた。このままで行つたらどうなるか。そこで漁業家は相寄りまして考えた上、今考えたらばかばかしい話ですが、演習協力会——被害を受けている漁業家が、演習に協力する協力会という美名のもとに、彼らに迎合しなければならなかつた。そして少くともそういう名のもとに近寄つて演習条件等に関して若干の緩和、あるいは現地においてできるだけのいろいろな操作をした。  そういうふうなわけで、漁業家演習部隊との関連は一応できましたが、しかしながら昭和二十四、五年に至りますと、時間的制約に加うるに、いわゆる専門家のいう潮流変化というものが加わりまして、九十九里はまさに漁獲は皆無という状態に立ち至つたのでございます。そこで漁獲が皆無になつた場合におきましては、おそらく九十九里沿岸漁民十数万は餓死する、何とかここで対策を講じてもらわなければならぬというので、県あるいは中央におきまして、その状況をよく認めてもらいまして、先ほど新井会議員から仰せられましたように、いわゆる漁業に対する一時見舞金というような制度がしかれて、前後二回にわたつてこの見舞金をいただいておるようなわけでございます。しかしながらその支給されました額も、おそらく漁民が実際に受けた被害と比較するならば、失礼ではございますけれども、まさにすずめの涙という程度のものであつてどうにもならない。しかしながら餓死一歩手前の漁民を多少でも救うことができた、あるいはまた倒産あるいは転業というようなうき目に合う漁業家が、どうやら今日まで営業を継続し得ることのできた一助となつたということだけは、事実だろうと思います。  一方町民におきましては、ますます熾烈をきわめたところの演習と、その派生的に起るいろいろな事故によりまして、まさに米軍に対する非難攻撃がこうごうたる勢いをもつて台頭したのであります。そうしてまた漁業家はいわゆる補償金というようなことを騒ぐ、あるいは町において風紀問題等がやかましく叫ばれるというすきに、ここに現われましたのが、実は当時反米運動と申しますか、あるいはまた直接行動等はなやかにその運動を展開しておりました共産党の当地細胞が、この機をねらいまして、ここに基地反対米軍即時撤退というようなスローガンを掲げて、猛烈な運動を開始したのであります。しかしながら町民はおそらくこれにはあまり乗らなかつた。むしろ町民米軍行動によつて反米思想が台頭しておるのに、水をかけたのではないかというような感がいたすのであります。と同時に当地細胞は、いわゆる占領政策違反というようなかどで軍事裁判にかけられました。そして当時これに関係はしませんが、ただ演説を聞いたとか、あるいは周囲にいたとかいうことだけで、善良な町民が十数名軍事裁判参考人として召喚されております。そうしたことによつて一応町民は、アメリカは何をしても一切文句を言つてはいけないのだというような、非常な恐怖感あきらめというような感じが、町民の間に非常に起つたのであります。もうアメリカに関する限りは一言半句も何も言えないというような感じを、おそらく一番被害を受けておる豊海町の町民感じた、こういうふうに私は考えられるのでございます。これは現在行われておる九十九里のいわゆる補償問題等に対する運動方法が、非常におとなしい、非常に紳士的であるというような、一大原因をなしておるのではないかと私は考えるのであります。と同時にわれわれが今考えさせられることは、そうしたことがわが土地にとつて非常に不利だ、その紳士的な行動によつてはとうてい補償制度というものは受けられないのだというような感じを、強く受けておるのであります。何となれば、その後において、ごく最近の基地として指定されたところの内灘、私たちは二、三日のうちに内灘実態調査に参ることになつておりますが、おそらくこの被害たるや、豊海あるいは九十九里の近辺と比較するならば相当の差がある。その被害は、おそらく九十九里の方は何倍かであると私は想像するのであります。しかるにわれわれの方に対しては、漁業補償の一部だけで、陸上方面に対して何ら手を打たれない。しかるに内灘においては、ああいう運動の結果が相当の効果をもたらしたということを、われわれは漏れ聞いているのであります。事実はわかりませんが、そういうふうに聞いております。そういたしますと、結局恐怖感あきらめというような感じを、われわれ町民全般が持つてつたということは、現在にとつては非常に不利に展開しているというふうにわれわれは考えられるのであります。  われわれはこういうふうな事情に置かれたのでありますが、しかしながら占領中の四箇年というものは、まつた隠忍隠忍を重ねて、その被害に対しても何事も言わなかつた。ことに海上の問題は別として、陸上被害等に対しては、例をあげればたくさんございますが、そういつたことに対して何とも口を開かなかつたというような状態でありましたが、しかしながらああいう状態がいつまでも続いて、これが要するに基地であるわれわれだけが負うべき問題かというふうな考え方は、非常に強くなつて来た。少くとも現在の日本においては、米軍の駐留することはやむを得ない。しかしながら四年も五年もこの恐怖的なことと被害をわれわれのみが負うべきが、少くとも国民ひとしく負荷すべき義務じやないかというような観念が、非常に台頭して参つたのであります。  そこで、いわゆる昨年の四月講和条約の発効とともに、われわれはただちにこの撤去運動を展開したものであります。しかるところ他方におきまして、われわれのこの恐怖的な長い間の犠牲と、あるいは九十九里漁業価値というようなものをお認めくださいまして、この問題が日米合同委員会においても相当討論の的であつたというふうに聞いております。そしてこの決定が非常に長引いたので、われわれも何とかなるのではないかという一縷の望みを持つておりました。どこか移転してくれるとか、あるいは撤去するとかいうような望みをかけておつたのです。しかるに去る五月一日の合同委員会におきましては、この継続使用ということが発表されております。しかしながら幾分演習条件緩和等はされておりますが、継続使用にはかわりがない。前に一週間に五日の演習を四日にしたという程度であつて被害を受ける実際につきましては大したことはないというふうな決定を受けたのであります。そこでわが豊海町民は、これに対して猛烈な批判を下して、一体何をしているのだ、われわれは何年たつてもこのままこうしていじめられるのかというので、先般町民大会を開催いたしました、演習場即時撤廃ということを決議して、われわれあるいは県に対して、少くともこの町民の空気を中央に反映せよというふうに、われわれは町民から叱咤されておるのであります。しかしながらわれわれとしていろいろと事情考えますときに、日本現状国際情勢推移等、こういつたことを考えますときには、いたずらにただ騒いでも、これが撤去できるものかというふうなことを考えますときには、われわれ町民といえども、また私一町の長といたしましても、いろいろと国家でも必要のあることだというふうに考えまして、何らかここに政府におきまして……。
  6. 上塚司

    上塚委員長 櫻井君、時間が来ましたから、できるだけ簡潔に早く進めてください。
  7. 櫻井正中

    櫻井参考人 至急この被害に対しまして、適当な措置が必要であるというふうに私は考えるのであります。ここにわれわれは、豊海町を中心といたしまして、いわゆる被害の共通しております四箇町村と共同いたしまして、九十九里被害対策委員会を結成いたしまして、目下この運動を展開中であります。もしこれがこのまま進むならば、私はいかなる悪条件、いかなる困難とも闘いましてこの撤去に邁進しなければならぬ。なおまた現地におきましても、ために米軍との感情等は悪化の一途をたどるということは考えられるのであります。何とぞ即時調査の上適当な御処置を特にお願い申し上げます。
  8. 上塚司

  9. 河野勝彦

    河野参考人 前二人の参考人の方から主として実情につきまして詳しい御説明がございましたので、私は主として海上被害の点と、それからこれを理論的に少し究明して御参考に供したい、かように存ずる次第でございます。  まず九十九里海上被害の理論的な究明でございますが、九十九里はかつて日本の三大漁場というふうにいわれておつた地点でございまして、昭和十一年の最盛期におきましては、いわしが七千万貫の水揚げがあつたのでございます。これは主として二つ原因でございますが、第一の原因は、紀州沖冷海水ができまして、これが回遊魚をシヤツトしたというような一つの学説がございますが、こういう影響がありまして、回遊魚が非常に減つて参つたという現状一つ、それから大東亜戦争が始まりまして、漸次人間、資材、漁船いろいろな点に制約を受けまして、漁獲高は漸次逓減の方向をたどつて参つた、こういう二つの現象によりまして、九十九里漁業というものが非常な不振の状況に相なつたわけでございます。それが大体昭和十四年、一番原因が大きく現われておりますのが十六年でございますが、十六年、十七年、十八年ごろから急激に漁獲は低減いたしておるのでございます。従いまして終戦後は、その悪条件をさらに倍加せられまして、非常に漁獲は低減いたしまして、一番悪い時期には四百万貫というような急激な減少をたどつたのでございます。それが終戦後の経済復興と、いろいろな回遊魚の増加というような現象が加わりまして、漸次漁獲が漸増の傾向をたどりまして、現在は大体一千万貫を突破する、こういう状況になつておりまして、逐次九十九里漁場の本態を回復しつつある状況でございます。  演習場が設けられましたのは、先ほど御説明がありましたように、昭和二十三年四月でございまして、これは最も被害のひどかつた時代でございます。従いまして漁獲は減り、これは原因二つございますが二つ原因によりまして、漁獲は減つて九十九里漁民が食えないどん底のへとへとの状況になつてつた。この実情のところに演習が始まつた。そして演習時間が大体正午から午後六時までというような時間、それも土曜と日曜を休むだけでありまして、一週間のうちに五日も演習をやる。こういう状況制約を受けましてほんとうに九十九里は、とうてい人間の生活ができないというどん底の生活に追いやられたのでございます。この点におきまして、最低生活を割つた生活を強要したというところに九十九里演習の大きい社会問題があろうと存ずるのでございます。  それからそれに対しまして政府の打たれました手といたしましては、九十九里漁民の猛運動に対しまして、ことに先ほど町長から説明がございましたように、共産党がこれに片棒をかつぎまして、相当の治安欄乱があるかもしれないというような状況政府が御賢察くださいまして、これに涙金的な見舞金が下ることになりまして、二十三年、二十四年に七千七百万円、二十五年、二十六年に八千九百万円の涙金が交付になつて、やつとこの事態を収拾したというような状況でございます。  ところが昨年の春講和条約ができまして、演習場が撤廃になることを望んでおつた漁民に対しまして、演習場は撤廃にならないというような御方針をもちまして、外務省当局から御折衝がありまして、由来行政協定の締結に長い時間を費したというゆえんのものは、九十九里はどうしても撤廃していただかなければならぬという漁民の強い希望でありますから、九十九里演習場は撤廃であるという漁民の希望をいれまして、県当局といたしましては、外務省に対しまして、強硬に撤廃の交渉を続けたわけでございます。しかしながら外務省御当局といたしましては、情勢上とうてい撤廃は困難である。従つて補償金は十分に出すように努力する、九十九里にかわるべき替地を見つける、こういうような二つの条件を提示されまして、どうしてもこの演習場は撤廃できないからのむようにというようないろいろな御指示御勧告がございまして、県及び地元といたしましては、やむなくこの行政協定をのむことになりまして、行政協定が最後まで延びまして、九十九里はやつと本年の六月に最後に締結を見た。かような状況になつておるわけでございまして、その点を十分御賢察いただきたいのでございます。  ところが昭和二十七年度の見舞金——これは昭和二十七年七月二十二日に演習被害補償する補償法が発効しておりますので、これ以後は補償金ということになるわけでございます。ところがこの補償金考え方につきまして、いろいろな疑義があるわけでございます。疑義と申しますのは、外務省御当局といたしましては、撤廃ができないのであるから、これは完全な補償をするのであるという御意見でございますし、また補償の主管官庁であられます特別調達庁におきましては、やはりこの法律によつて漁業経営上当然生ずべき損害を補償するのである、従つてこれは完全補償の建前である、経営のロスを完全補償するのである、こういう考え方から、県庁に対しましてこの完全補償の額の御査定をいろいろ御依頼になりまして、県といたしましては、十分な資料に基きまして、正確にこれを調査いたしました結果、加工業を含めて大体三億八千万円になるという申請を調達庁にお出ししたのでございます。調達庁といたしましては、それを少し下まわる数字で大蔵省に出しまして、目下予算の折衝中であると伺つておるのでございます。ところが大蔵省の基礎的な考え方の問題がどうもわれわれに納得行かない状況を今はらんでおるのでございまして、これが九十九里漁民の間に大きく問題になろうとしておる点でございます。  その大蔵省の考え方の第一点は、演習が始まりますところの前三箇年の水揚高から補償される昭和二十七年度の水揚高を引いたものがすなわち補償額である、こういう議論でございます。ところが先ほど申し上げましたように、演習が始まります昭和二十三年の前三箇年と申しますのは、回遊魚の減少、それから戦争の影響を最もひどく受けた年でございまして、漁獲の四、五百万貫に低下した最も悪条件の年であつたのでございます。ところが漸次経済復興が緒につきまして、二十七年は相当の水揚高をあげておる、こういう状況でございまして、これを算術的に考えますならば、引く数字はゼロ以下、マイナスになるのでございます。引く数字がないということになるのでございます。実は昨年会計検査を受けまして、検査院の御判定によりますれば、引く数字がないにもかかわらず、数字をごまかして引算をやつておる、これは非常な会計の違反であるというような御勧告を受けたのでございますが、本年度におきましても、大蔵省は断固としてこの引算を曲げないのでございます。従つて引算をすればゼロになる、あるいはマイナスになるじやないかということに対しましては、少し数字をごまかせば数千万円は出るじやないか、五千万円か一億円ぐらいの数字をひねり出すのはわけがない、こういういいかげんなことを言つておられるのでございます。ところがわれわれは完全補償の建前からいたしますれば、二十七年度に水揚高が一千万貫あつたのでございますから、一千万貫の水揚げはもし演習の時間の制約——正午から午後六時までというような演習制約がなかりせば、当然これは二千万貫以上の水揚げがなされたであろうとわれわれは想定できるのでございまして、その損害というものは二十七年度の水揚高を基礎として出さなければならぬ。しからずんば漸次水揚げが増加いたしまして、二千万貫、三千万貫というようになりましたならば、ますます演習被害というものはゼロになる。われわれ千葉県から国へ金を差上げなければならぬ。こういう理論はわれわれはとうていこれを納得できないのでありまして、われわれは完全補償の建前からいたしますれば、県庁の真摯な、まじめな態度ではじきましたところの三億八千万円という数字は、どうしてもこれを補償していただかなければならない、こういうことを強く考えているのでございます。ところがこの関係が、国の予算の関係その他のいろいろな条件によりまして、かようなひどい御査定を受けますれば、演習場の撤廃を持ち出しましたときに、外務省がいろいろ完全補償をするから演習場はやらしてくれ、こういうようなお話がありました条件にも違反をいたしますし、漁民の完全な補償をなさらない、こういうことになりますれば、漁民がせつかく納得し、了解しておつたところの線がもろくもくずれてしまうわけでありまして、この点におきまして、今後の治安の状況は、これは国警隊長、公安調査局長ともいろいろ相談をしているのでございますが、われわれは今後の治安状況につきましては責めを負うことはできないというようなせつぱ詰まつた状況に相なるかもしれない、こういう状況でございます。加えて内灘関係におきまして、相当りつぱな補償がなされた。また補償でなくても、行政費が相当につぎ込まれた、こういう状況は、漁民は十分知つているのでございます。九十九里関係漁民二方八千に及ぶところの日本の一大漁場でございまして、わずか人口が千軒程度内灘とは比較にならない大きい被害を受けているのでございます。ところが内灘におきましては、全部が補償金ではないのでございますが、行政費を含めて四億程度の金が出る、九十九里にはわずか一億程度の金で打切られるということになりますれば、これは今後非常な大きい問題をはらむというふうにわれわれは考えるのであります。  最後に、新井会議員からお話がございましたが、九十九里には加工業の問題が一つ特殊な問題としてあるのでございます。この加工業と申しますのは、一般には商工業者というふうに考えられておりますので、非常に問題がむずかしくなつているのでございますが、九十九里の実態を調査いたしますればすぐわかるのでございますが、これは漁民の中で加工部門を営んでいるにすぎないのでございまして、漁民が、ある者は漁撈をやり、ある者は加工をやる。つまり加工と申しましても、原始的な煮ぼしの製品をつくつているのでございます。みりんぼしをつくつているのでございます。こういうものをつくつている業者につきましては、水産加工業組合というのがございまして、こういう組合があるためか、加工業というものが加工という名がつくがゆえに、これが商工業者というわけでほんとうの漁民補償から抹殺されますれば、これも九十九里にとりましては大きい問題をはらむわけでございまして、県といたしましても、加工業者に十分の漁業補償を与えてもらいたいということを理論的に説明をいたしまして、政府に現在お願い申し上げている次第でございます。この点もひとつよろしく御勘案をいただきたい、かように存ずる次第でございます。以上でございます。
  10. 上塚司

    上塚委員長 これにて九十九里浜に関する陳述は終了いたしました。
  11. 並木芳雄

    ○並木委員 議事進行。今お話を聞いていますと、大蔵省関係が出て来ますから、午後のわれわれの質問のときに大蔵省の担当官をここへ来てもらうように、委員長のおとりはからいを願いたい。
  12. 上塚司

    上塚委員長 さようとりはからいます。
  13. 上塚司

    上塚委員長 次は群馬県妙義山関係について、参考人の陳述をお願いいたします。ただいま群馬坂本町長武井重三君、同農業会会長佐藤一雄君が出席いたされておりますが、さらに群馬県知事北野重雄君が出席せられました。つきましては委員各位にお諮りいたしますが、北野群馬県知事参考人に追加いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めます。さようとりはからいます。では武井重三君。
  15. 武井重三

    ○武井参考人 私は坂本町長でございます。基地の妙義、浅間地区の問題につきまして、四月七日に県の方から電話がございまして、八日に坂本町の恩賀地区へ米軍の山岳の演習学校をつくるについて土地の明るい者を案内に出せということが参りまして、八日の朝私の役場の係の者が県の開拓課長とそれから横浜の軍司令部の山岳学校の校長になるリンクという人と、県の外事課かなんかの人と現地へ参りまして、現地住民をなるべくここへ集めて説明をしたいというので申出があつたのですけれども、山へ突然に参つたものですから、二、三の人間しかそこへ集まることができませんでしたが、今度ここへ米軍の山登りの研究練習をする学校ができるので、その敷地に必要なんであるし、もしそれができれば土地の者を優先的に使うし、余つた物はただでやるとか、たいへん有利なような話をして、すぐ今日にも返事をしろというようなことを申されました。現地住民も、これはたいへんなことであるから、今日さつそく返事をすることはできない、十日までに役場の方に返事をいたしますということでわかれまして、十日にはまた県の方からも参りますし、村の方からも参りまして、方方を研究してみましたところが、どうもいろいろな問題がある。風紀問題だとか、または交通の規模だとか、いろいろありますし、そこの部落は百姓はごくわずかで、みな山の仕事をしておりまして、その山の仕事が八分くらいの割合になつているのです。たとえば炭焼きをするとか、材木を切り出して売るとか、まきを切り出して売るとかいうことが八分もある。この学校のできる予定地は八風平と申しまして、その部落の採草地に当つているので、ここをとられますと生活が不安定になつて来るから、それをとられては困りますし、それによく新聞にもございますし、ただいま九十九里浜の方あるいは茅ケ崎の方の方も申されましたように、風紀の問題がございますし、いろいろな心配があるので、それについてはさつそく町中を集めるというわけには参りませんけれども、町会議員とか農業委員とか教育委員とかいうものを寄せ集めまして、懇談会を開いて、どうしたらよいか相談をしようじやないかというので、十三日におも立つた者に通知をいたしまして寄つてもらつて相談をいたしましたところ、これは絶対に困るからさつそく県の方に陳情に行つた方がいいというので、十三日には町会議員や農会議員、おも立つた者二十四人で前橋の開拓課や知事のところに参りまして、これは絶対に反対ですから、ぜひそういうふうにおとりはからいをお願い申しますと申しましたようなわけです。それから次ぐ日の十四日には四人の総代を選びまして、東京の衆議院及び外務省、農林省へ参りまして、それから横浜の方の米軍の司令部の方へ連絡をしていただきまして、司令部にも、困るからぜひあそこでなくほかへこさえて、ほかで演習をしていただきたいということを申し入れたような次第でございます。それから十五日にはあそこの学校で町民大会をした。ただわずか三十人や五十人で懇談をしただけではよくないからというので、中学校でもつて町民大会をいたしましたところが、これはもう絶対にそういうことを許可しては困るから、ぜひ拒否してもらいたいというようなわけです。それから緊急町会をその日に開きまして、反対の決議をいたしますし、あと予定地になつております隣村の十箇町村にも諮かりましたところ、それはもうとんだことである、絶対に許可してはいけない、それは反対をしてくれろということを申し合せまして、そうして十箇町村のほかに軽井沢もまぜまして十一箇村で反対期成同盟会をつくりまして、松井田町長の大河原さんを会長として、その後ますます反対の気勢をあげておつたわけであります。その後三日にあげず県知事のところへ参りますし、それから東京の方へも参りますし、もう始終参つております。一昨日県会で反対の決議をいたしまして、本日は群馬県知事を初め県会議員が全部反対に参つておりますし、私どもの方の部落でも自動車に一台、大バス一台で来て、みんな反対陳情に参つておるような次第でございます。それにこのごろ、ついおとといあたりの新聞を見ましても、何か東京裁判にアメリカから来られた何とかいう弁護士が女中をはらまして、それを認知しろとかなんとか言つているような裁判が出ておるようですし、それからついその前の新聞には、神奈川県の藤沢でもつて、MPが二人でもつて小さい女の子を松原で強姦をしたとか、あるいは私どもの方で、ちようど先月の二十六日に現地懇談会を安中町でいたしましたが、その最中に米軍の将校が板鼻町でもつて小さな赤ん坊をひきつぶしたというようなことがあつて、まだそれの解決がしてないというようなわけで、風紀問題のことを申しましたところが、MPが十一人いてそれがよく警戒をするから、そういうことは心配はないと申しますけれども、現に神奈川県の藤沢では、MPが小さな女の子をジープに乗せて行つて強姦をして、その跡始末はどうなつたかということを、藤沢の市会の決議でもつて申し出ているというような新聞を見ましたようなわけでございます。私どもの方はまことに純真な村でありまして、そういう米軍や何か入つて参りますと、山の中の仕事でありますから、おちついて山の仕事ができないようなわけでございます。どうぞ委員の皆さんもこれには御同情をいただきまして、ぜひ反対の決議をしていただくように切にお願い申します。
  16. 上塚司

    上塚委員長 次は農業会会長佐藤一雄君。
  17. 佐藤一雄

    ○佐藤参考人 ただいま町長から反対の理由を申し述べましたが、私の言わんとするところも、あるいは重複するかもしれませんが、一応申し上げます。  第一の反対の理由は、演習地に含まれておるところの部落民の生活の問題でございます。ただいま町長も申し上げましたように、あの地は山の一つの谷合いの地でありまして、恩賀というところに学校ができておる。そのまわりの山々に演習地ができるのでありまして、谷急、三急、稲村というふうな、この入牧部落約二百戸の周辺演習場ができる予定になつておるのでございます。このような部落が点在しておりますところの周辺演習地ができますと、あの辺の農家は、農家といつても主として山仕事をやつておるのでございます。この山仕事をやるには、子供も細君も娘も、みんな山へ行つて炭を焼き、たきぎをつくり、材木を切り、運搬するという業務に従事しておるのでございますが、この周辺にもし多くの演習地をつくられれば、あの辺の山仕事はとうていできません。皆様は山仕事についてお知識があるかいなかは知りませんが、山の仕事というものは、谷合いの道、いろいろなところを通つて、そうしてその中からいろいろの工作をして運搬して来て、炭を焼いておる状態なんであります。その辺のところで、米軍が五百人も入つて演習をしよつちゆうする中では、とうていその山仕事というものはできないのでございます。ですからそこの二百戸の長落の人は、主としてやるところの生業を奪われたというのにひとしいのでありまして、これが実現すれば、おそらくいろいろ生活上の支障を来すと存ずるのであります。  次に反対の理由といたしましては、風紀の問題をわれわれは考えざるを得ないのでございます。あの辺に、ただいま申し上げましたように約三里にわたつて点在している部落でございまして、その部落の者は、山の中の人間ですから非常に純真なものでありますが、今申し上げましたように子供も娘も、みんな山へ行つて働いておるのでございます。そういうところへ米軍の男の人が五、六百人も入つて来れば、それは今方々基地の例から見ましても、いろいろな事態の起るということは想像にかたくないのでございます。そういう状態であるに加えて、パンパンというようなものが当然入つて来る。純真の土地だけに、その影響は非常に大きいのでございます。それに、そういうふうなみだらな状態が起きますならば、あの辺の風紀、教育、いろいろな面において実に重大な問題になることを、われわれは想像します。そういう意味におきまして私どもは反対しておるのでございます。  次にあの辺は、御承知の通り国立公園の一環でございまして、風光明媚、碓氷、妙義、あの連山は実に観光の土地でございます。妙義は上毛三山といわれておりまして、われわれ上州人の実に誇りであります。精神的に尊敬の的でございます。そういう地が演習地となつて荒されるということは、実に観光の面においてもわれわれは忍びがたいものでございます。そういうふうな点からわれわれは絶対にあの地に基地を設けてもらいたくないという希望を持ちまして、知事初め地元関係四箇町村中心となりまして、外務省、農林省あるいは横浜の米軍の司令部等に陳情陳情を重ねておる次第でございます。しかしまだわれわれの土地演習地として取除かれるようなことは聞かないのでございます。実にわれわれは残念に思つております。あの純真な地元の人たちは、われわれの生活を守り、風紀を守るために、どこまでも皆さんに訴えて、この問題はやめてもらいたいと言つております。問題は山岳戦の訓練ということでございますが、山岳戦の訓練であれば、日本狭しといえども、人家の五里、十里遠いところの山岳も至るところにあると存じます。あるいはあそこが交通の点においていろいろの点において最もいい所だということを言われているそうでございますが、多少は不便であつてもわれわれのこの真の叫びに対して幾分か譲歩して、第二の候補地、つまり影響のない土地、影響が比較的少い土地へ持つてつてくれと私どもは頼んでおるのでございます。われわれは日米協定も知つております。また山岳戦の練習が必要であるだろうとも思います。ですからそういう演習地をやめろとか、そういうことを言つているのじやありません。あの辺は今申し上げたように、実にいろいろの関係において影響の深い土地でございます。その周辺には軽井沢、坂本、松井田、妙義いろいろの小都市がございます。その影響たるや実に大でございます。そんな影響の深い所をお選びにならなくも、もつともつと山岳戦ができる所でもつて影響の少い所をぜひお選びを願いたい、こうわれわれはお願いしておる次第でございます。どうぞ皆様におかれましてもこの点を御了解くださいまして、何分われわれの要求を通していただくように御尽力を願いたいと思います。
  18. 上塚司

    上塚委員長 次は群馬県知事北野重雄君。
  19. 北野重雄

    ○北野参考人 本日妙義地区の山岳戦訓練場の問題につきまして、地元関係者の陳述を聞いた上、さらに特別の御配慮によりまして、地元県知事の私に陳述をお許しくださいましたことに対して、委員長初め委員各位に厚くお礼申し上げます。私は地元県知事の立場からいたしまして、本問題についての意見を申し上げたいと思うのであります。ただいま地元の二人から申し上げましたことと若干重複はいたしますが、要点だけを申し上げたいと思います。  第一に申し上げたいことは、この土地が上毛三山の一つであります。いわゆる霊峰である。そしてこれが群馬県民にとりましては、いわば心のふるさとである。群馬県の象徴とも申すべきところでございまして、これが演習地になりますことは、単に観光上不利益があるというだけでなく、県民感情からいたしましてまことに耐えがたい感じがするのであります。さような関係もございまして、今回の問題につきましては県議会におきまして全員一致をもつて反対の意思を表示しておりました。すでに県議会、県の町村長会、町村議長会、この三つの団体が中心となりまして、強烈な反対の県民運動を起しておるのであります。かようなことは、群馬県始まつて以来ないことでございまして、単に特定政党等の指導によるものではなく、県民全体が自然と期せずしてこの問題について、強い反対の意思を表明せざるを得なくなつたという特異の点に、御留意をいただきたいと思うのであります。  第二の問題は、風紀の問題でございます。何分にも山深いきわめて純朴な、いわば処女地でございまして、早く申しましてアメリカの人を今までに見たこともない、端的に申しますと、非常に排他的な気分さえもあるところでございます。それだけに地元民の素朴な感情といたしまして、風紀の問題には非常な心配を持つております。特に今回の問題につきましては、県内至るところの子供を持ちます母親あるいは男女青年というものが、非常に強い反対をしておりますことから見ましても、この風紀の問題に非常な心配をしておるということが申し上げられるのであります。この問題につきましては政府あるいは米軍当局におきましては、それぞれ取締りの厳重な手段、方法を講ずるということを申しておりますが、率直に申しまして、今までのいろいろな事例からいたしまして、取締ると申しましてもなかなかうまくは行かないのであります。米軍の責任者とも会つてたびたび申しておるのでありますが、この問題につきましては日本人とアメリカ人の性に対する観念あるいは道徳観念というものに、非常な違いがあるということから考えて行かなければならぬと思うのであります。アメリカ人からいたしまして何ら悪徳でないと考えられます男女間の行為も、かような山深い純朴な土地におきましては、とんでもない、実に驚嘆に値する行為になる場合があります。それだけに私は今度の問題が実現いたしました場合に、あの素朴な、しかも群馬の三山の一つであります霊地におきまして、日本人の感情からいたしまして、忌まわしい状態になるということをおそれるのであります。今度の問題につきまして私はしばしば政府並びに米軍当局に申しておるのでありますが、山岳戦訓練場の適地を選ぶにつきまして、あるいは山の状態がいい、あるいはまた交通の便がよいというふうな要件をお考えになつておるようであります。しかしながらかような施設をいたします場合に、もう一つ重要な、考えなければならぬ点があると思うのであります。それは現地民の思想、感情その他現地の特殊の事情というものをよく調べて、そうしてはたしてその土地にさような施設をすることが、適当であるかどうかということを考えていただかなければならぬと思うのであります。例は多少いかがかと思いますが、たとえば異民族の統治をいたします場合に一番大切なことは、その異民族がいかなる思想を持ち、いかなる感情を持つておるか、またいかなる社会経済状態にあるかというその実情が、いわば根本的な考慮の要件にならなければならぬと思うのであります。今度の問題は もちろん異民族統治ではございません。しかしながら米軍が常時五百人に及ぶ将兵を収容いたす施設を、新たにこの山深い所に置くということにつきましては、地元民がいかなる感情を持つか、その点を特に考えていただく必要があろうと思うのであります。この地元の人は、今も申しましたように、アメリカの人をほとんど知らなかつた。従いましてアメリカ人というものについて、信頼感あるいは親しみというものを全然持つていないのであります。そういう意味からいたしまして、今度の山岳戦訓練場を設置する場所といたしましては、非常に不適当な場所だということを申し上げましても、決して言い過ぎではないと思うのであります。  第三には、ただいまも佐藤農業会会長が申し上げましたように、住民生活に重大な影響を及ぼすということであります。しかもこれに対しまして特別の補償、あるいはまた住民経済状態その他生活状態をよくする方法があるかどうかということを考えますと、残念ながらさような方法はないのであります。  この三つの点から申しまして、要するに妙義地区に山岳戦訓練場を設置されますことは、群馬県民といたしまして何らプラスになる面はない。マイナスになる面のみである。私も現在公選知事の立場といたしまして、非常にこの問題に苦慮いたしております。もちろん安全保障条約のありますこと、またこれが政府並びに日本国民の義務であることも、よく承知いたしております。また日本防衛のために、米国軍に格別の援助を願わなければならぬし、またそれのために特定の施設を提供しなければならぬという必要もよく承知いたしておりますが、残念ながらこの問題に関する限り、群馬県の県民の福祉を第一に考えなければならぬ公選知事の立場といたしましては、その県民の福祉に重大なるマイナスを与えるという意味におきまして、これに賛成をすることができないのでございます。  さらに最後につけ加えて、その後の、ごく最近の実情を申し上げたいのであります。それは一つには、現在設置されようとしておりますこの恩賀部落を中心とする地元民が、非常に思い詰めて来ておるということでございます。非常に心配をいたし、また非常に反対の気分が強くなつて参りまして、場合によつては全員玉砕してもよろしい。あるいはみんな沖繩へやられるなら一緒に行こうではないか。こういうように非常に思い詰めた気持を持つておりまして、しかも今度学校をつくられようとする所は民有地なのであります。これを具体的に考えて行きました場合に、この設置の閣議決定をなさることは簡単であろうと思うのであります。しかしながら閣議決定をなさつた場合に、また米国政府と協議決定をなさいました場合に、あとはすべて日本政府の責任においてこれを実行に移さなければならぬのであります。実行に移す場合に、その手順を考えて行きますと、民有地であります数町歩をいかにして使用されるか。結局強制収容の手続まで進まれるのじやないか。さような強権発動ということになつて参りますと、今申しましたように、地元民が非常に思い詰めておりますだけに、いかなる事態が起るかも上れないという非常な心配を持つのであります。もしこれがために不測の事故が起り、あるいはまた国際関係にまで悪影響を及ぼすような事態が生じた場合に、日本政府としても非常にお困りになるのではないか。またさような事態が起るということは、地元県知事としては最も望まざるところであります。その点を特によくお考えいただきまして、実行面をお考えいただきたい。いやしくも地元民が、どうもしかたがないのだ、がまんしてこれを受入れようという気持にまで進まない限り、今のような思い詰めた強硬な反対意思を持つている限り、実行ができないのじやないかという感じを持つのであります。実行のできないことを承知でアメリカ政府とお約束されるのかどうか。その点を私は外務省その他の政府当局にもよく申し上げまして、特に慎重な考慮を払われるようにお願いしておるのであります。  もう一つけ加えたいことは、先月の二十六日に米軍の代表将校二名、外務省、農林省その他関係庁の代表者、特に日米合同委員会陸上演習地分科会の代表の方が現地に参りまして、これは碓氷郡の安中町で会合を開いて、いわゆる現地懇談をいたしたのであります。もちろんその際には、地元坂本町を初めといたしまして、地元民は真摯な素朴な気持から強硬な反対をいたしましたが、たまたま他の部外者の暴行事件等もございまして、遺憾ながら懇談の目的は達し得なかつたのであります。しかしながらあのときのあの状況からいたしまして、米軍の責任将校を初め日本政府代表者も、地元民がいかに切実な反対意思を持つておるかということを、よくおわかり願つたはずであります。そうして代表者は、そのことを合同委員会関係者並びに上司によく伝えまして、これが反映するようにいたしましようということを言つてつておるのでありますが、たまたまその折も折、ちようど大会に参加いたしました者、さらに日米の代表者が会場から引揚げて参りましたときに、沿道の板鼻町におきまして、五歳の男の子をアメリカのジープが轢殺した事件が起きたのであります。これは私もすぐその場に立ち会つたのでありますが、非常なスピードで走つて来たジープのために、いつも自動車には非常に注意をしておるりこうな男の子であつたのでありますが、それが前輪にひつかけられ、もんどり打つて三尺ばかり上つて、それが車の下に落ちて、そうして後輪で頭蓋骨を粉砕されました。私の参りましたときには、なお路上に脳みそが露出されておつた状態なのであります。これは気の毒にも、子供は四人あるのでありますが、三人とも女の子で一人だけ男の子です。そして今五つのかわいい盛りで、非常に利発な子供であつたのでありますが、それが不幸にして轢殺された。折も折とて、ああいう演習地ができることになれば、かような交通事故は瀕発するのであろうというのが、板鼻町を初めといたしまして、各地元町村の痛切に感じておつたところでございまして、これがために一層地元の反対意向が激化して参つておるのであります。しかもこの事件に対しまして、私ども関係省に対してせめて補償金は十分に出してやつてくれと申しましたが、何と申しましても二十一万以上は絶対に出せない、それが閣議の決定であるというのが関係官庁の言い分なのであります。かような折も折、さなきだに日米間の感情が悪くなろうとする心配のある際におきまして、補償については閣議決定があるから、それ以上は出せないという非常に冷酷な扱いを政府はしておるのでございます。かような状態で、はたして今度の問題はうまく解決できるかということを非常に心配するものであります。御承知のように、群馬県におきましては終戦後太田、小泉、尾島、前橋あるいは相馬ケ原と、非常にたくさんの米軍土地を持つております。しかしながら幸いにして県民と米軍との間の感情は非常にうまく行つております。ところが今度の問題によりまして、日米間のせつかくの友好関係に重大な支障が生じやしないかということを、地元県知事としても特に心配しておるのであります。どうかかような事情をとくと御考慮いただきまして、ぜひこの委員会におきましてもこれに対する適切な御措置をおとり願いますよう、切にお願い申し上げます。
  20. 上塚司

    上塚委員長 これにて群馬県妙義山関係に関する参考人意見の陳述は終了いたしました。  次は神奈川茅ケ崎実弾射撃場関係について意見の陳述をお願いいたします。ただいま出席いたしておられる方は、県会議員添田良信君並びに演習場対策委員長、市会議員新倉吉藏君であります。まず添田良信君より陳述をお願いいたします。
  21. 添田良信

    ○添田参考人 かような機会をお与えいただきまして、私ども被害状況を述べる機会をお与えいただきましたことを厚くお礼申し上げる次第であります。  まず第一に、行政協定によりますところの区域状況並びに演習の方法について申し上げて、御理解を得たいと思うのであります。お手元に差出してありますところの参考書類によつて申し上げるわけでありますが、行政協定は私から申し上げるまでもなく、去る昭和二十七年の四月二十七日につくられたわけであります。しかもその内容といたしましては、オーボー第一区域、オーボー第二区域にわかれまして、海上から陸上に向つて射撃の演習をするわけであります。しかもさらに今度は反対に陸上から第一オーボー区域、第二オーボー区域に向つて射撃をするのみならず、逆に上陸演習をするという、この三位一体の総合的な演習が行われるわけであります。しかもその案文によりますと、この総合演習をば隔月ごとに行う、しかも猛烈に行うという案文が示されているわけであります。しかもその演習の日時は十五日間にわたつてこれを行うということになつているわけであります。かような事情からいたしまして、行政協定による演習区域がきわめて広いということと、その演習の方法というものが三つの立体的な要素から成り立つているという、非常に大規模なものであるということが御想像いたされると思うのであります。  次に私ども茅ケ崎市の漁業の性格を御理解願いたいと思うのであります。お手元にあります統計によりますと、人口五万のうちで漁業に従事いたします者が、その家族を入れまして二千近くあります。その担税能力は全市の担程能力の約七分の一を占めるという事情にあるわけであります。しかもそのような関係からいたしまして、一昨年、昨年あるいは本年、来年度にわたる継続事業として茅ケ崎漁港の新設工事が、農林省の御努力によつて現在進行しつつあるということで、本市がどんなに漁業に重きを置くかがおわかりであろうと思うのであります。  次に漁業関係被害は同席の新倉議員から申し述べることといたしまして、演習から受ける文化あるいは教育、風俗の関係から生じますところの被害をかいつまんで申し上げたいと思うのであります。御承知の通り茅ケ崎市は東京都の衛星区域でありまして、ここにはたくさんの勤労者ないしは文化人が住んでおられるわけであります。かようなところで大規模な演習が行われるということは、先ほど群馬県からお話がありました通り、まことに風教上忌まわしい問題が起りまして、次々に私どものまつたく目をおおい、耳をおおうような事柄が頻発しておる現状であります。私ども隠忍自重をしておりましたが、この茅ケ区域から発したところの風教問題として、先ほど群馬県の方がお述べになつた通り、隣の藤沢市のほんとうの処女でありますこの五人が、たまたま演習地に参りまして、はからずもMPに拉致されまして、五人のうち四人は逃げましたが、その残りの一人はMPの手にかかつて暴行を受けた。従つて市会はこの際敢然としてこのMPに向つての処理をCIDに願つておる。こういう実情は単に私ども考えるだけでなく、九十九里浜でも群馬でもるる御説明があつた通り、先ほど来私が申し上げた通りほんとうに私どもが目をおおい、耳をおうような事柄がまさに頻発しておるのでありますけれども、私どもはただ黙々としてこれを黙視するという現状に置かれておるということを御了察願いたいと思うのであります。  漁業被害は次に申し上げますが、特にこの付近に平和学園という、賀川豊彦先生によるところの平和を名とする学園が一つあることであります。さらにこの演習地に近接いたしまして、市立の第一中学があつて、そこには約一千五百名近くの児童が教育を受けておるのであります。ところがこの土地から毎日々々七十五ミりの大砲が海に向つて撃たれるわけであります。この振動からこの二つの学校はまつたく授業ができないのみならず、せつかく新設いたしましたところの二つの学校のガラスはもとよりであります、瓦が屋根から落ちるということが常に私どもの経験するところであります。従つてそれより弱いところの民家は、まつたくガラスあるいは壁、瓦というものが枚挙にいとまなく剥落するという現状にあるわけであります。  さらに四番目に申し上げたいのは、有名なる烏帽子岩の問題であります。お手元に写真が差上げてありますけれども、この烏帽子岩は私から申し上げるまでもなく天然記念物であります。頼山陽が江之島遊覧記の中にこの烏帽子岩について、きわめてその景色の雄大なことと、その形の烏帽子といわれる名前の出どころさえも詳細に説明していることでおわかりであろうと思うのであります。ところがこの烏帽子岩は単に名勝であり天然記念物であるのみならず、この茅ケ崎漁港を中心として去来する船の目標であります。さらに目標であるのみならず、相模湾における小規模なる避難地であります。三番目には冬など漁撈ができないときの生計の手段として、この島において、さざえ約三百八十貫、あわび約二百貫、こういうようなものを、毎年のごとく県から費用をちようだいして養殖しておるのであります。ところがこの烏帽子岩を目標として、私がただいまお示しするような小銃弾が雨あられのごとく撃たれておるわけであります。従つてお手元にありますところの写真でごらんの通り、烏帽子の形をしておつた島がまつたく変形いたしまして、大きなあらしが来るならば、たちまちくずれるような形にあるわけであります。これが現状であります。  こういう結論からいたしまして、先ほど来お話があつた通り、アメリカにとつて最もよき海上作戦あるいは上陸作戦ができるところは、私ども四万五千の市民にとつてもまた最もよき安住の地であり、漁業生産を上げるところの土地であるわけであります。かような土地が先ほど来申し上げた通り担税力がなくなるのみならず、その日のかてをも十分に得られないというような現状で、これまた他の土地と同じように、今までにちようだいしたところの金は見舞金として二回であつて、その額は二千の漁民に対して一人当りわずか百四円にも満たない現状であります。漁業関係における損害はあとの参考人が述べますが、私はあえて申し上げるのでありますけれども、たまたま私どもの方の御出身であり、私どもの方の土地を選挙区とせられるところの岡崎外務大臣は、この点について十分なる御理解があつて、おそらく皆様の熱心なる御支援を得られると思うのであります。この担税力を持つこれだけの人口が、今やまつたくそのかてを得られずに路頭に迷い、失業救済によつてわずかに救われているという現状を十分おくみとり賜わりまして、何とぞ次に述べます漁獲の損害がどんなに多いかということと、私が述べました一般的な損害と照し合せていただきまして、しかる上において結論といたしまして、まず行政協定による茅ケ崎市の演習地がやめられるものであるならばやめていただきたい、もしやめることができなければその区画を縮小していただきたい。さもなければこれら二千の漁民あるいは市がこうむる直接間接の損害について、十分なる御考慮を賜わりたいと思います。  以上申し述べて私の参考意見といたします。御清聴賜わりましてありがとうございました。
  22. 上塚司

    上塚委員長 次は演習場対策委員長、市会議員新倉吉藏君に御意見の陳述をお願いいたします。
  23. 新倉吉藏

    ○新倉参考人 本日外務委員会におきまして、国会議員の皆さん方に茅ケ崎の演習地における実情につきまして申し上げる機会を得ましたことを、茅ケ崎市民を代表いたしまして深く感謝申し上げる次第でございます。  ただいま添田県議が大綱を陳述されましたので、私は小さいことは別として、漁民関係についていささか重複の感がありますが、一応申し上げたいと思います。  私が申し述べたいことは、先ほども添田県議がおつしやつたごとく、この駐留軍演習場については、われわれ常に頭を悩ましておるのでありまして、どうか御審議の結果、ひとつ解約を願いたいというのが私の言わんとする本旨でございます。その理由としては、漁民のこれに対する反対の理由を数項目申し述べて、いささか御批判を願いたいと思つております。  第一に、先ほど烏帽子岩のことを添田県議が申されましたが、これはあの姥島のことであります。えぼしに似ておりますので俗称烏帽子岩と呼んでおりまして、茅ケ崎にはなくてはならない宝物なのでございます。この宝物をわれわれは行末長く保存管理して行かなくてはならぬ立場にあるのでございます。しかるにこの烏帽子岩は、先ほどお話がありましたように、米軍演習地として第一オーボー地域に入つておりますために、常にこれを標的としてたまか撃たれるのであります。先ごろもわれわれは実地調査に参りましたが、現在では昔の面影はほとんどありません。こまかく申し上げる時間はございませんが、亀裂を生じてまつたく変形してしまつておりまして、このままにしておきましたならば、風化作用によつて元の姿はなくなつてしまいます。もとよりこれは、先ほどお述べになりましたごとく船路通いの目標でありまして、もしそうした変形とともに将来これがなくなつてしまうようなことにでもなつたら、漁船の遭難という点からまことに憂慮すべきことではないか。第一に申し上げたいのはこの点であります。  次に第二点として申し上げたいことは、この姥島の岩礁を目標として駐留軍がたまを撃つわけでございますが、ここは御承知の通り、かさごとか伊勢えびとか、あるいは貝類といつたようなものが棲息いたしますのに最適の岩礁でございまして、昭和二十六年たまたま茅ケ漁業協同組合が四十六万四千円の予算をもつて、ここに貝類を植えつけたことは先ほど御説明があつた通りであります。しかしこのせつかくの施設も今日は皆無でございます。何となればその烏帽子から延びました範囲というものは、その付近に散在されまして、これに棲息しておりますところの貝類、せつかく養殖いたしました貝類、あるいは天草とかわかめとかあらめというような海藻類が大体死んでしまつたというような現状でございます。こまかく申し上げたいのでございますが、この辺でひとつ御推察を願いたいと思います。  以上のように姥島を中心といたしましての魚、貝、海藻というものはほとんど収穫皆無といいましようか、申し上げることができないほど減額をしてしまつたというほかはない。こういうことに相なつておるのであります。ことに海藻類のごときは昨二十七年度収穫高が、十七年、十八年、十九年の三箇年の平均収穫高に比べますと、大体六〇%減少になつておることは、お手元に配付いたしておりますその数字によつても、明瞭でありますことを御比見願いたいと思います。このままさらに実弾演習が継続されるならば、われわれ漁民はもとより、先ほど申しました茅ケ崎市民といたしましても非常に困窮きわまるのでありまして、ことに漁民につきましては六十八世帯、合計二千七百二十四人という数字がお手元の表中にございますが、これらの漁民が影響されますところはひとつ御想像願いたいのであります。  さらに第三といたしまして、茅ケ崎には平島という小さな島がありまして、ここにも先ほど県議がおつしやつたごとく築港を継続工事中でございますが、これにたまが常に参りまして、その修築工事に非常に支障を来しておる現状であります。また人命に危険があるということも申し上げるまでもないのであります。  さらに第四といたしまして、この地区には小学校、中学校があります。ことに第一小学校につきましては、学校から約五十メートルくらいの近場で、陸上から第二オーボー地凶の海に向つてぼこぼこと実弾を撃つ。それに撃つときはいつも上でぶうぶうと飛行機がうなる。その砲声と爆音の振動で、校舎はもちろんのこと、教学にすこぶる支障を来しておるということは、先ほど添田県議がおつしやつた通りであります。  第五には、先ほど述べましたことと重複しますが、茅ケ崎は皆様御承知の通り、東京を去る西約一時間の将来文化住宅都市として発展の途上にございます。県有地あり市有地あり、最近はグラウンドをつくり、あるいは平島漁港を継続工事中であり、さらに南海浜の方に文化住宅地として発展させようじやないかという計画になつております。でありますから、このまま射撃が続行して行くなれば、茅ケ崎市将来の発展をすこぶる阻害することに相なるということをわれわれは憂えるものであります。  以上は大体、駐留軍の砲撃をただちにやめてほしいという茅ケ崎市民の声であります。特に漁民といたしましては、お手元へ配付いたしております通り、見舞金のごときも九牛の一毛である。昨年の七月以前の見舞金など、漁場の者にはほんとうにすずめの涙であつて生活のためにはならぬというような現状でありまして、これ以上続くならば、生活は非常に困窮を来すということ相なります。どうかどうかこの声をおくみとり願いまして、行政協定というような線の解約ができますならば、これは願つたりかなつたりでありますが、もし万一できないということならば、どうかこの協定、規約の改訂あるいは縮小を願いたいということを、われわれはあえて深く皆様方に懇請をする次第でございます。この縮小ということにつきましては、過去の見舞金等のこともございますが、茅ケ崎市といたしまして関係官庁に相当足を運んで事務的に見舞金の稟請をしておりますが、なかなか遅々として末端には参りません。漁民生活もひとつお察しを願いたいと思うのであります。最近新聞紙上で見ますと、先ほども聞きましたが、あつちこつちと政府は請願陳情等によりまして施策を講じておられるということを聞いております。他県からもお話がありましたが、どうか茅ケ崎にも理解ある国会議員方々の特別なる御詮議をもちまして、できるならばやめていただきたいのでありますが、万一それができなければこれを補償ということで、大いに御同情願いたいということを私から要請する次第であります。  まだまだ申し上げたいのでありますが、時間がございませんために、お手元にお渡ししました表につきまして若干御説明をいたします。第一表は、茅ケ崎にはこれだけの船があるということで、大体定置網は五つ、地びきが二十、小船が百三十五、こういう数字になつておることを示してあります。これらの漁民の受けております被害は先ほど申しましたことで御想像を願いたいのでございます。なおこの機会に申し上げたいことは、演習がありますために漁に出ることができない。一月から六月までの統計をとりますと、一月は十二日、二月は十一日、三月は八日、四月は十八日、五月は十二日、六月は十一日という数字になつておりまして、計七十二日しか出漁できないような状態でございます。さらにこの数字の中には、せつかく参りましても、しけなどにあつて漁ができなかつたということもありますので、そういう数字も御了承願いたいと思つております。  さらに第二表につきましては平年の漁獲数と、制限を受けまして出漁いたしましたときの漁獲高との差でございます。このように減つております。AからBをマイナスした数字が最後にありますことを御了承願いたいと思つております。  次に第三表は見舞金でございます。ほんとうに九牛の一毛でございます。すずめの涙でございます。これは四月一日から四月二十八日まで、こういつた数字が十四万七千円、これは各業種別によつてつておりますことを御了承願いたい。さらに二十五年、二十六年の両年度におきます見舞金の合計は二百十九万四千円、こういつた数字になつておりますが、きわめて少うございます。昨年の七月以降稟請上申しております事ほどに、いまだに関係官庁としましては何ともしていただかないのですが、これが非常に漁民の難儀であります。  どうかく先ほど添田参考人人のおつしやつたことや、また私が漁民の声、あるいは学校その他茅ケ崎のことにつきましていささか蛇足を加えましたが、あれやこれやをひとつおくみとりを願いまして、特別に茅ケ崎市のために御同情を願いたいと思うのであります。まことにだ弁で、申訳ありませんでしたが、ありがとうございました。
  24. 上塚司

    上塚委員長 これにて本日御来院願いました参考人各位意見の陳述は終了いたしました。よつて暫時休憩いたします。しこうして午後二時より再開いたし、参考人各位に対する質疑を進めることといたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十五分開議
  25. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより各区域ごとに参考人に対し質疑を行うことといたします。整理の都合上、各地区一時間ずつとし、各委員の持ち時間を十五分ないし二十分といたしたいと思います。まず九十九里関係について質疑を許します。並木芳雄君。
  26. 並木芳雄

    ○並木委員 政府委員はどなたが見えていますか。
  27. 上塚司

    上塚委員長 政府委員調達庁総務部長山内隆一君、水産庁経理課長高橋泰彦君、建設省計画局総務課八巻淳輔君、この三名が出席されております。なお外務省関係からもすぐ出席することになつております。
  28. 並木芳雄

    ○並木委員 国際協力局から来ないと、ちよつとまずいと思いますから少し待ちます。——それでは補償の問題で当局にお尋ねいたしたいと思います。先ほど新井さん、櫻井さん、河野さんからそれぞれお話があつたのでありますが、現地方々としては当然外務省、調達庁の御意見によつて完全補償を受けるということを期待されておつたにかかわらず、九十九里の問題については、大蔵省の方の考え方に食と速いが生じている。そのために特に当然補償を受けることができると思つてつた加工業者に対しての補償が行われなかつたということ、それからまた内灘に比較して損害が数倍も大きいのであるけれども、その見舞金また補償については、逆に何分の一にしか相当しないというお話があつたのであります。その点について当局の所見を伺いたいと思います。
  29. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 お答えいたします。今までの質疑応答をよく承知いたしておりませんので、前との関係において的確に申し上げることができるかどうか非常に疑問でありますが、今のお話に対してお答えいたします。  内灘の問題につきましては、いろいろの補償のほかに見舞金等もありまして、全体を比較するといろいろな批評があると思いますが、正式の補償としましては、まだ漁業につきましての補償内灘と青森県の関根、これだけを正式にいたしたわけでありまして、まだ目下各県からの集まつて来た書類を整理して検討中でございますので、正式の補償としてはたとえば講和条約発効後の補償としましてはまだいたしておりません。その意味の比較は困難ではないかと思います。
  30. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどの参考人方々のお話では、二十七年度は法律による補償が行われることになつた、そこで九十九里としては当然完全補償を期待しておつた、外務省と調達庁の関係政府当局完全補償の建前をとつておられた、大体三億八千万でございましたか、現地側の数字も出ておるのです。ところが大蔵省の方でそれに対して法律それ自体に疑義があると言い出したのでこれが行き悩んでおる、こういう参考人方々の御意見なのです。しからば補償法のどういう点にどういう疑義があつて、その疑義が九十九里の問題については、どういうふうに適用されて来るかということを説明願いたい。
  31. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 お答えいたします。調達庁としましてはお言葉の通り、実損補償の建前をとつておりますから、あるいはお言葉の完全補償という意味と一致するのじやないかと思いますが、私どもは実損補償という言葉を使つております。というのは実際に起つた損害を補償するという意味であります。そういうことになりますと、実損ということが確実になれば見方によつて非常な金額の違いということはあり得ないと思うのですが、どうも漁業につきましての実損が幾らであるかということが、非常にむずかしい問題でありまして、おそらく実損がどうなつておるかということの見方によつて、あるいは非常に少額に見たり、あるいは割合に多額に見たりするような結果になるのではないか、なぜことに漁業関係についての実損が、はつきりしないかということを私の考え方で申し上げますならば、土地の農業所得につきましても、見方によつてなかなかいろいろの相違があります。実際に統計面に現われて来る数字と、それから農家が自分で自分の収穫は幾らなんだということの間には、相当な開きのある場合が間々あるのであります。しかし農業については、何といつて土地というはつきりしたものが基礎になりますので、そうえらい食い違いはないと思いますが、漁業につきましては、何といつても水中におる魚の動きであり、またその魚が年によつて非常に多い年、少い年もあつたり、しかもまた水揚げしたものが完全に取扱い機関の手を通じて出る場合と、それから取扱い機関に全部出ないで個々に処理されるというような場合も多々あると思います。そんな関係も相まつて、なかなか実損は幾らということの把握が困難であります。しかもまた漁業者にしましても、幾らといいましても、官庁側から見て、なるほどと思う実証がつかぬというような場合もありまして、非常に漁獲高については正確な把握が困難な実情であります。従つて実損が幾らということはむずかしいので、また各省立場安々によつて多少の意見の違いが起ることは、やむを得ないじやないかと思います。
  32. 並木芳雄

    ○並木委員 大蔵省の方も来てないのでちよつと困るのですが、先ほどの参考人の話の中では、加工業というものが補償の対象にならないので、はなはだ困るという御意見なのであります。加工業はどうして損害の対象にならないのか。もし、法律によつてそれが適用されないならば、法律を改正したらいいわけでありますから、法律改正の考えはないかということをお尋ねしたい。
  33. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 漁業と申しますれば、大体普通の社会通念では、どういう範囲ということは一応頭に描くことができると思いますが、こまかく入つて行きますと、加工業の中にも、特にほんとうの漁業者と密接したものになりますと、なかなか区分が困難でありますが、加工業という名義で漁業に直接しているものと、その次の段階に非常に問題が起りますので、現在のところ審議中と申しますか、私どもとしては特に加工業は入れないという解釈をとつているわけであります。
  34. 並木芳雄

    ○並木委員 法制局の林さんがお見えになりましたが、いきなり質問しておわかりにくいと思いますけれども、こういうことを聞いてみたいのです。九十九里の問題で補償法に基く補償を出す場合に、完全補償をしてもらいたいということは現地の声としては当然であります。それからまた完全補償ということは、実損補償という言葉でも表わされるであろうと今の御答弁であります。どつちでもけつこうです、要するに満足の行く補償をしてもらいたい。しかるに漁業の場合、加工業というものは補償法の中で補償の対象にならない、こう大蔵省は言つておるのだそうです。それはその通りであるかどうか、行政協定に基く損害の補償というものの限界は、どういうところに置くべきであるか。要するに私どもは当然完全補償、実損補償をなすべきであると思うけれども、行政協定における損害補償の限界というものは、どういうところに線を引いて政府考えておられるか、法律上の見地から、はつきりお答えを願いたいのであります。
  35. 林修三

    ○林政府委員 実は私いろいろお話を承つておりませんでしたので、ただいまの並木委員の御質問に従つてお答えいたしますが、多少私の誤解している点があるかもしれませんから、それにつきましては御質問がございますれば重ねてお答えいたします。  ただいまの行政協定の上でいわゆる補償に触れております条文は、御承知の通りに大きくわけて二つかと思いますが、一つはいわゆる不法行為等に基きますところの損害賠償の問題でございます。もう一つはいわゆる駐留軍施設区域として提供した土地なりその他の物件につきまして、その所有等に対していたす補償の問題でございます。この二つは行政協定では取上げられている。前の方の不法行為あるいはこれに近いような行為に対する補償につきましては、日米両国が協定で折半して負担いたすことになつていると用います。それからもう一つ駐留軍施設区域に対します損失等に対する補償は、防衛分担金とは別でございますが、防衛関係の諸費の中に何十億かの予算を計上してございます。これに基いて昨年は九十二億計上されたと思いますが、本年度の予算はちよつと記憶しておりませんけれども、その中から払うことになつておると思います。それ以外にも、なおいわゆる駐留軍との関連で起る損失という問題があるわけでございます。駐留軍行為に伴う特別損失の補償に関する法律案というのが、ただいまたしか水産委員会で御審議になつておると思いますが、これがもう一つ法案として出ております。これは厳格にいえば、どうもいろいろこれは解釈の余地があることと存じます。ただいま国会に出ております法案の対象といたしておりますのは、不法行為でもない、あるいはその権利なり土地等を国が収用し、使用する場合のものでもない、つまり駐留軍の適法な行為に関連いたしまして、たとえば東京湾の入口に防潜網をつくつたために湾内の漁業がまつたくできない、あるいは漁場に行く途中にたとえば施設区域ができたために漁場に行けなくなつた、そういうふうないわゆる間接損害と申しますか、直接に駐留軍行為に伴いまして補償すべきものでない、いわば多少間接的な損害についての法案だと思います。これは御承知の通りただいまのところは当然補償すべきものではなく、いわゆる見舞金として処理されておつたようなものだろうと思います。これにつきまして、今後はこの法律に基きまして、そういう損害があつた場合には補償をいたす、こういう法案をただいま御審議中だと思います。あるいは九十九里等の問題、あるいはその法案の範囲のことではないかと実は考えたのでございますが、そうであるとすれば、この法案では一応防潜網設置に伴う損害であるとか、あるいは防風林を切つてしまつた、あるいはまた防砂施設を除去してしまつたために間接的に受けた損害、その他政令で定める事業の範囲のものについても補償をいたす、実はこういう法案が出ております。これは政令でその損害の範囲なり対象をきめれば補償できる問題ではないかと私は考えております。ただ問題といたしましては、御承知のように今出ております法案は、駐留軍の一応適法な行為に基く補償でございます。これはどこまでも無制限に、いわゆる因果関係相当切れるところまで補償の範囲を広げるということは一般理論としては困難であろう、やはりそこは因果関係が直接に結びついているというところで損失の範囲をきめるべきではなかろうかと存じております。あるいは御質問の趣旨を多少取違えたお答えをいたしたかもしれませんけれども……。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 よいです。その答弁は私の聞こうとしていることに対する答弁なんです。そこで水産部長河野さんでも新井会議員さんでもどちらでもけつこうですが、先ほどの御発言の中にあつた補償の点は、ただいま林次長の答弁によれば、今国会で審議されておる法律のことをさしたのでありますか。それとも前の二つのどれかをおさしになつたのでしようか、どちらですか。
  37. 河野勝彦

    河野参考人 今の御質問でございますが、問題が二つになると思うのであります。  まず第一点といたしましては、現在九十九里その他の演習場のあるところでございますが、その演習場によつて漁場が制限または禁止された場合には、その損害を補償するという法律がすでに昨年の五月か六月に通過しております。その法律の適用を受けられればその法律の適用を受ける。受けられなければ今立案中の防潜網の法律によつて適用を受けたい、こういうことであります。まず第一点といたしまして現在できておりますところの演習被害法律の適用を受けられるかどうかということでありますが、この法律の二条に漁業経営上生ずる通常の損害を補償する、こういうふうに書いてあります。それを漁業上の損害と見るかどうか、こういう問題でございますが、これを形式論的に考えますれば、現在加工業という名前がついておりますので、これは商工業者、こういうふうに見るわけでございまして、商工業者と見れば、これは漁民でもなければ漁業上の損害でもない。こういう形式論的な一つの見解が成り立つわけでございますが、われわれが実態を現地においてつぶさに把握してみますと、これは加工業という名前がついておりますけれども、実際は漁民でございます。午前中に申し上げましたように、漁民の中である人間は漁撈に従事して船に乗つて魚をとる、ある人間は加工業に従事して実際に煮ぼしを煮ておる。こういう煮ぼしを煮ている加工業者漁民から魚を買い取つたら所有権が移転した、こういう事実は全然ないのでございまして、煮ぼしになりまして東京あるいは大阪市場に出まして、金が入りましたときに初めて加工業者、漁撈をやつておる人間が山わけをして利益をとるわけでございますから、これは純然たる加工業者商工業者と見るのは非常に酷である、こういうふうに県としては考えておるのであります。従いましてこういう見解をとりますれば立法論の問題でなく、法律の解釈の問題になると思います。もしどうしてもこういう解釈ができないということになりますならば、現在立案中の防潜網その他の施設による損害、この中に政令としてお入れをいただきたい、こういうことでございます。
  38. 上塚司

    上塚委員長 並木芳雄君に御注意しますが、やがて二十分になりますから簡潔に願います。
  39. 並木芳雄

    ○並木委員 林さん、今お聞きになつてよくおわかりになつたと思います。それに対する一つのはつきりした考え方をお示し願いたい。
  40. 林修三

    ○林政府委員 ただいまのお話よくわかつたのでございますが、昨年できました安全保障条約に基く漁船の操業の制限等に伴う何とかの法律——法律の題名はちよつと覚えておりませんが、ただいま御引用になりました法律、これは漁業権というほどの権利ではなくて、いわゆる漁船の操業が一定の区域において制限される。その一定の区域において従来漁業を営んでおつた者の損失を補償するという法律によつてつたと記憶いたしておるのでございます。従いましてそういう場合に、その漁船の操業が制限禁止された地域において漁業を営んでおつた者にこれが当るかどうかという解釈の問題だろうと思います。これは実は私も実態を存じませんし、単に名目だけが水産加工業である、あるいは網を打つておるとか、つりをしているというだけで片づけるべき問題でもないではないかと存じます。要するに実態で判断すべきものではないか。普通に加工業というのは製造事業で工業の部類に属するものである。漁業といえば原始産業に属するものというのが普通の観念だと思います。はたしてどちらに属するかというのは、実態に即しての解釈の問題ではないかと思うのであります。私その実態を存じませんので、ここで机上の議論をいたしても適切なお答えがあるいはできないのではなかろうかと思うわけであります。必ずしも名前だけで言うのもおかしいかと思います。しかし実態がいわゆる漁撈と申しますか、漁業と言い得べきものであれば、ただいま御引用になりました法律に当ると思います。もしも漁業という範囲に入らない工業であるということになりますれば、ただいま立案中の法律の方でやる——これは相当いろいろの事態が起りますので、政令に相当広い範囲がまかされております。それできまれば場合によつては入り得るのではないかと思います。あるいはまことに御満足の行かない答弁かと思いますが、さように考えております。
  41. 並木芳雄

    ○並木委員 その点は法制局がものを言う場合なんですから、同じ政府の中で大蔵省と外務省、調達庁との間で意見の食い違いがあるわけであります。実態をよく調べなければという林さんの答弁ですから、よく実態をつかんで——実態をつかめば気の毒に違いないんですから、ひとつ現地に有利なように解釈をしてもらいたいと思う。時間がありませんから、もう一つ現地の警備の問題について、法制局にお尋ねをしておきたいと思うのですが、どうもきようの参考人の皆さんのお話を聞くと、アメリカの方のMPも信用できなくなつてしまつた、いろいろ問題も起つている、こうなつたらたいへんなことなのです。治安の維持どころではございません。それこそ反米思想も起るでしようし、行政協定の実施だなどということは思いもよらないと思うのです。そこでどうしてもやむを得ないときには、日本の警察がそういうようなものを十分使うことができないのかどうか、つまり行政協定に基く米兵の取締りを軍の官憲だけでなく、進んで日本の官憲がやることができないのかどうか、裁判管轄権とも関連して来ると思うのです。しかし現実の現場現場の取締りは、やはり施設の外である場合には私はできると思うのです。ですから逆に日本の警察というものが向うのMPを帯同して、そうして取締りにかかる。捕えたものはしようがありません、これは裁利管轄権ですから、今のところ行政協定で先方へ引渡さなければならぬと思つております。そこを十分活用できれば、MP自体に対する不信という問題も解消できるのじやないか、あわせて日本の警察官の優秀なところを示すことができるのじやないか、そうすると、こういうような場合にどうしてもやむを得ず施設ができたような場合に心配される風紀の問題、それから治安の乱れというものを防止できるのではないかと思うのですけれども、その点についてひとつ所見を伺いたいと思います。
  42. 林修三

    ○林政府委員 実際問題は別といたしまして、行政協定の条文の解釈に即しましてお答えを申し上げますれば、御承知のように施設区域として提供いたしました中につきましては、一応駐留軍の軍隊である性質上、その中の警備は駐留軍がいたすことになつておるわけであります。ただ施設区域の外で駐留軍の将兵が犯罪をいたした場合には、もちろん行政協定の上では、日本の警察官も逮捕権なり一定の範囲の捜査権を持つております。それから逮捕いたしました場合には向う側に引渡す、かように相なつておるわけであります。施設または区域の外か内かということで、多少その問題が違つて来るのじやなかろうかと実は思うわけでございます。現地でそういう事態が起つておるかどうかはよくわかりませんが、施設区域の外でありますれば、先方との話合いによりまして、日本側の警察官が捜査なり逮捕なりするということは、これは行政協定上可能だと考えております。
  43. 上塚司

    上塚委員長 岡良一君。
  44. 岡良一

    ○岡委員 九十九里浜へ政府の方から昭和二十三年、二十四年には七千七百万円、二十五年、二十六年には八千九百万円補償されたという参考人の陳述が先ほどありましたが、これは見舞金として出されたものですか、補償の意味で出されたものですか。
  45. 河野勝彦

    河野参考人 これは現在の補償法律ができます前の見舞金でありまして、ほんの涙金程度のものでございます。
  46. 岡良一

    ○岡委員 調達庁の方が来ておられると思いますが、これは見舞金として出されたものでありましようか。内灘の場合は一戸平均五万円程度、五千五百万円ということを一昨日内灘の方から伺いましたが、そこで一体九十九里浜の場合には二箇年間で七千七百万円、しかも人数にしても問題にならないくらい多い被害者がおるのです。一体どうして九十九里浜についてこの程度で妥当であると思われたが、あるいは内灘についてはどうして五千五百万円が妥当であると思われたか、一体どこに基準を置いて妥当であると思われたか。
  47. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 お答えいたします。九十九里浜のすでに補償されたものが、ほんとうの損失の補償かあるいは見舞金かという問題は、私も実は見舞金ですとお答えしようと思いましたが、現地の方からそういうお答えがありましたから控えたわけであります。今まで——今までと申しますと、二十七年四月二十八日講和条約発効以前に処理した事項、あれは見舞金という形でありますので、先ほど申し述べました実損補償というような観念とは相当隔たつておるわけであります。従つて現在法律による補償問題が論議せられておる場合に比べますと、非常に少いような感を持たれることはごもつともだと思いますが、それはどこまでも見舞金として、法律に基かず予算の範囲で処理したものであります。それから内灘の問題は、今一戸平均五万円というお言葉がありましたが、これは別の問題といたしまして、あそこの漁業に対する補償金は一月から四月末までのものとして、先ほど申しますように、これは講和条約の発効後の漁業補償金として出したのでありまして、ちよつと端数は記憶いたしておりませんが、約千四百五十万円を少し欠けておりますが、支出いたしております。これは今申します正式な実損補償の建別から来る補償でございます。五万円の問題はちよつと別な問題でございますので、これを切り離してお考え願いたいと思います。
  48. 岡良一

    ○岡委員 そこで内灘へは、先般も水産委員会では特調の長官の根道さんも、見舞金として五千五百万円贈つた言つておられる。それから一月から四月までの漁業補償として千四百五十万円の現金を贈つておる。問題は五千五百万円というものを見舞金として内灘に出しており、九十九里には先ほど申しましたような数字が出ておる。もちろん特調としては職責上妥当なる数字としてこれを出されたものと思う。してみれば、なぜ九十九里がこの程度で妥当であり、内灘は五千五百万円が妥当であつたのか、ここに私どもは納得のできる基準を示していただきたいということを私は申し上げておるのです。
  49. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 内灘につきましては、九十九里における今話の出ている見舞金以上のものは、これは時期的の関係でありません。内灘漁業に対する補償金として出したのは、どこまでも講和条約発効後の正式な補償金として支出したわけであります。それとの比較は、ちよつと比較するものが今のところないわけであります。二戸平均五万円の問題は、これは漁業者にももちろん出ておりますが、漁業に対する損害の見舞金というそれだけの意味ではありません。これはすでに長官からもあるいは政府のもつと上層部の責任者からお話があつたと思いますが、あれは別の意味でありまして、あれと九十九里漁業についての講和条約発効前の見舞金と比較されますと、ごもつともな不審が起ると思いますが、ちよつとこれは別問題であつて漁業の損害の見舞金というだけの意味ではないわけであります。
  50. 岡良一

    ○岡委員 責任のある方に重ねて御答弁を承らなくては、今の御答弁では私ども納得できない。内灘の場合には何か上層部の話合いでもあつて、特別に五千五百万円を支給したのであるというお話のように私は聞いておるのですが、問題は言いかえれば、何か特殊な形の政治力が動くならば、今後とも日本の国土が在日米軍演習場に供与される場合には、五千万円でも一億でもとれるような印象を、私はただいまの御答弁で受けるのですが、あなたはそういうふうにおつしやつたのですか。
  51. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 私の申し上げたことが少し誤解を引起したかもしれませんが、漁業見舞金としての比較において内灘の五千五百万円を考えていただくことは、私どもから見れば少し違うのじやないか。正式な漁業補償内灘についてはやりましたが、まだ九十九里についての正式な補償はいたしておりません。従つて過去に支出した九十九里見舞金の額と、それから内灘の正式補償金の額と比べますと、これは非常に均衡を失するようにごらんになることはごもつともであります。もともと見舞金はそういう意味で実損補償というところまで行つたわけじやないのでありまして、その点は比較されることがちよつと適当じやないじやないか、こう考えるわけでございます。
  52. 岡良一

    ○岡委員 多少私の考え違いも思い過しもあつたようです。そこでそれでは関連してこの際お尋ねいたしますが、内灘に五千五百万円を出されたのは、純然たるいわゆる農業補償でもなければ漁業補償でもない。少くともあなたのお役所では職責上妥当なりと認めて出されたものでありますが、それではこういうものが今後ともやはりあらゆる在日米軍演習場として成規な手続でその用に供された場合は、政府は出すお考えであるのかどうか、また当然これは一方で出して、一方では出さないというわけにも行かない性質のものと思います。そういう場合の参考に私はお聞きしたいのでありますが、それではあなたのお役所では、内灘に出された五千五百万円が妥当と考えられた根拠を私はお聞きしたい。
  53. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 内灘村に二品平均五万円、合計五千五百万円の見舞金を支出した理由は、内灘のあのほとんど全面にわたる接収といいますか、軍使用という関係において、あそこの産業がほとんどできなくなつて、そうして村民全体が非常な生活難に追い込まれるというような——その他ありますが、調達庁としては、むろん補償要綱というものを全然無視して扱つたというようなことではございませんので、補償要綱のある項目に基いていたしたわけでございます。しかしながらこれはその中の条項にもありますが、非常な特異の現象として、普通の補償基準による事務的といいますか、技術的といいますか、そういうこまかな算出に基いて計算する補償金だけでは、とうてい実情に沿わないというほんとうにまれな特異現象であるというふうにながめまして、そういう条項を適用して支出したわけでございます。
  54. 岡良一

    ○岡委員 それでは私はかえつて対案として私の意見を申し上げたいのですが、山形県の大高根におきましても、まつたく涙金しかもらつておらない。私どもはそういう裏に何かいわくのありそうな見舞金などというようなものでなく、すでに九十九里浜の人が言つておられるように、三億七千円の漁獲の損害が実際あるのだ、そういうものを合理的に——地元の要求のみを是ともできないと思いますが、これはやはり漁業において生活権を失つておる者には合理的な基準における漁業補償をやる、農耕地を失つておる者にはやはり適正な基準における農耕のための補償をやる、こういう形であいまいな見舞金というふうなものを存置しておくというところに、やはりこの問題の解決の一つの空白といいますか、盲点があるのじやないかと私は思うのです。実際実務を取扱つておられるあなた方のお考えとして率直なところいかがでしよう。
  55. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 今の御意見まことにごもつともであります。私どももほんとうにこまかな算出に基いて適正な補償をするというほかに、特殊の事態があるからといつて見舞金というような形は、決して望ましい方法ではないと思つております。ただ内灘につきましては、あまりに特殊な事態でありましたために、さような措置をとつたのであります。従いまして先ほどのお尋ねにありました、ほかの方にもという問題になりますと、現在のところ私どもの予想しておる各地方の問題の中で、あれとまつたく同じであるから同じように扱わなければならぬじやないかというようなところはないと思つております。
  56. 岡良一

    ○岡委員 しかし、ないといいましても、そこのところは主観的な判断が非常に入ると思うのですが、九十九里浜はやはりその沿岸において沿岸を自分たちの生産の場にしておるのです。内灘は一箇年の漁獲高は、ひいき目に見ても八千万円しかない。だから村の壮年者はほとんど山形県のいわし漁に行くか、北海道のいかつりに行つており、村の現金収入はほとんど六割をこれに依存しておる。内灘はあなたのいわれるようにそう特別な例だと言えない。私も地元の一人としてよく知つておる。そういう点を見ますと、この特殊なというふうにみなされるところから、現にやり方が不公平だという声が起つて来る原因があるので、やはり特殊なというようなことでなく、もちろん生活を保障する、それによつて失われた総生産額に合う基準において適当に補償するという建前で、何らかそれ以上の条件をそこに付して問題を特別に取扱おうとするところに——この問題は今後ずつと全国的に起つて来る問題と思いますが、よほど注意をし、慎重に扱わないと、おれたちはおとなしくしておつたのだから、こういう不公平な取扱いを受ける、それではもつとあばれてやろうかということになつては、まつたく日米将来の外交関係においても、日本が法治国としての体面を維持するというような点からも非常に遺憾だと思います。これは私の希望ですが、そういう点はやはり漁業補償なり、また農耕の補償なり、あるいはまたお金ではかれないかもしれませんが、いろいろな文化的な保護なり、そういう点は適正に、地元の納得の行く基準でそういう方向にはつきりと打出した金でもつて補償する、こういうふうなやり方をしていただきたい。特に内灘は特殊な例であると申されましたが、私どもはそうは思わない。だからその点はもし特殊だと思われるなら重ねて現地調査をなされ、出し方が少いというわけではありませんが、ただそういうまことにあいまいなお金、しかも国民の税金から出ておる金を何かしら色めがねをもつてみなされ得るような形で取扱われるということは、われわれの立場からも非常に望まないので、その点は特調としてもよくお考え願いたい。  その次にこの九十九里浜は今年の六月に閣議決定して、米軍演習場として使用されておる。そうすれば講和発効後、その閣議決定でいよいよ正規に日本政府が使つてもいいという通知を米軍に与えるまでの間の補償はだれがするのですか。それからまたこの財源はどの費目から出るのでしようか。  もう一度申しますと、九十九里浜は今年の六月の閣議決定であるとおつしやいました。この閣議でいよいよ九十九里浜を使つてもいいという通知が政府から米軍に出されておるはずである。そういたしますと、昨年四月二十八日講和発効後本年六月の閣議決定によつて、正規に日本の国内法によつて独立国日本が安全保障条約の義務を守るために米軍に国土を提供しておる。しかしそれは六月に日本政府が承諾しておるとすれば、四月土十八日から今年の六月までの補償というものは一体何人が責任を負うのか、米軍が責任を負うのであるか、日本政府が責任を負うものであるか、そうしてその費用はいかなる費目から出て来るのであるかという点を聞きたい。
  57. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 先ほどちよつと聞き取れませんで、失礼しましたが、今のお話によりますと、正式にまだ折衝しないうちに事実上使つておる、その間の損失補償をだれがするかというお尋ねと思いますが、これは日本政府でございます。
  58. 岡良一

    ○岡委員 九十九里浜については、日本政府はまだしておらないわけでございますか。
  59. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 講和発効後閣議で正式に決定するまでの間の分は、今日まで岡崎・ラスク交換公文によつてつております。
  60. 岡良一

    ○岡委員 岡崎・ラスク公文によつてつておると言うが、しかしその補償日本政府の責任であると申されたのであるが、今日まで日本政府はやつておらない。これはいつおやりになるのですか、お答えを願います。
  61. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 ただいま手続中でありまして、いずれ近くお支払いいたす所存であります。
  62. 岡良一

    ○岡委員 それでは最後にお聞きしたいのですが、九十九里浜は国有地のみですか、それとも私有地が入つておりますか。これは地元の方にお聞きしたいのです。  法制局の方が来ておられると思いますので、お聞きします。やはり講和発効後日本の方では行政協定の実施に伴う、いわゆる土地等の特別措置法あるいは国有財産の管理に関する法律等によつて、在日米軍に対し土地等を提供する場合においては、この二つ法律を根拠として実施するというふうにわれわれは了解しておるのでありますが、九十九里浜の場合は、やはりそのようにお取扱いになるのであるかどうか
  63. 櫻井正中

    櫻井参考人 ただいまの九十九里の接収地が国有地であるか私有地であるかという問いに対してお答え申し上げます。現在接収されております場所は、国有地と民有地町村の所有地の道路等を使用しております。現在接収されております全部の土地は、民有地の方がはるかに多く、国有地は一部でございます。
  64. 岡良一

    ○岡委員 それではこれは、国際協力局の第四課長がおられますから、あなたにお聞きしたいのだが、昨年の四月二十八日に講和発効した。しかも引続き使用されておる。やつとことしの六月になつて、初めてこの広大な九十九里浜が在日米軍演習場として使用することを政府が承知しておる。一箇年猶予というのは、いわゆるインデペンデント・ジヤパンにジャパン・オキユパイド・エリアがある。こういうのは単なる行政的な怠慢とは言えない。この責任をどう考えられるか。それから民有地がたくさんあるとおつしやるのだが、それでは土地等の使用等に関する特別措置法によつて使用されるというならば、正式に千葉県の使用委員会の議に諮られ、その承認を得て使用しておられるのかどうか、その手続が完了しておるかどうか、具体的な点をお答え願いたい。
  65. 林修三

    ○林政府委員 今の御質問の前に御質問がございましたので、その点お答えいたします。  御承知のように駐留軍に対して土地等を提供いたします場合の根拠法は、昨年の四月二十八日講和発効後におきましては、国有財産につきましては御指摘の行政協定に基く国有財産の管理に関する法律、それから私有地につきましては、これを強制的に使用または収用いたそうという場合には、土地等の特別措置法がございます。もちろん任意によつて買収し、または借り受ける場合につきましては、必ずしもこういう法律によらないでも、もちろん任意に民事上の契約でできるわけでございます。それから海面につきましては、海面における所有権関係等が、私有財産権のあるところもございますし、ないところもございますが、これにつきましては、また別の法令がありまして、必ずしもこの土地等の使用等に関する特別措置法で行くのではないと存じております。ただ漁業権を消滅させるとか、漁業権を制限させるということにつきましては、やはりこの法律が適用される、かように考えております。  それからこれは実は外務省の方からお答えすべきことであろうと思いますし、私は実際はよく存じませんけれども、昨年の四月二十八日以後の、いわゆる私有地の駐留軍による使用につきましては、御承知のように土地等の特別措置法の附則に経過規定がございまして、一定の期間を限つて一時使用を認める規定もございます。ああいう方法でいわゆる経過的な措置はまかなわれているものと存じます。
  66. 岡良一

    ○岡委員 経過的措置と言われるが、一定期間を置くということになると、どれだけの期間を使うことになつておるのであるか。
  67. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 お答えいたします。ただいまの問題で立法的の事情から強制の場合、それから普通の契約でやる場合においてはどうだというお話がありましたが、全部一応賃貸借契約を締結してお借りをいたしております。
  68. 安藤覺

    安藤(覺)委員 議事進行について。窓外の騒音が非常に高く、ことに後方の席は距離も遠いので、政府委員の方にはまことにお気の毒ですけれども、どうかもう少し高声に御発言願うよう、御注意願いたいと思います。
  69. 上塚司

    上塚委員長 ただいま安藤君の要求がありました通りに、聞えにくいのでありますから、政府委員の方はもう少し高声にお願いします。  次は戸叶里子君。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 私は同僚の岡委員の質問に関連して一点伺いたいと思いますが、この前の外務委員会におきましても、きようの委員会におきましても、補償金の問題でいつも内灘が例に引出されております。この前もきようも特別調達庁の方の御答弁によりますと、内灘の場合は特異なケースとして考えて、ああいう措置を一月から四月の間にとつたと、はつきり四箇月の間の補償としてお認めになつておられます。ところが先ごろ内灘の婦人の陳情団がおいでになりまして、岡崎大臣にお目にかかりましたときの大臣の御答弁によりますと、四箇月で五万円というものは、ほかの補償金に比べたならば、ずつと多いということは、だれだつて認められることであるとはつきりおつしやいまして、それを聞いたのは私だけではありません。そのことはつまり岡崎さんの腹の中に、四箇月以上の場合も考えられるということを含みに入れて言われたと思います。そうしますと、外務省の考え方と、特別調達庁の補償金をお出しになつた方との考え方の食い違いがあると思いますが、その点について特調と外務省関係の方からの御答弁を承りたいと思います。
  71. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 私の申し上げたのは、一戸平均五万円、合計五千五百万円、全部合計して千葉県の見舞金と比べれば、これはもうほとんど議論の余地はないほど均衡を失していることになると思いますが、先ほど申しましたのは、二戸平均五万円出すことが適当であるかどうかということは別問題といたしまして、漁業補償金としての関係では、一月から四月まで千四百五十万円未満支払つておりますので、これは正式の補償金であります。他の方ではまだ青森県の関根に一件ありますが、ほかの方には正式な補償金はまだ払つていないと思つておりますので、九十九里浜の前の見舞金と、今の内灘の一月から四月までの補償金千四百五十万円を比べて、均衡を失するという御批評は、ごもつともですけれども、実はちよつと性質の違うものの比較になりますので、ほんとうの意味においては、まだ比較する時期に達しないのではないか、こんなふうに思つてお答えしたわけであります。従つて外務大臣がどうお答えしたかよく存じませんが、別に私は五万円の問題について深く申し上げておりませんので、食い違いというようなことはないだろうと思います。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 それではあらためて伺いますが、五万円の見舞金は、一月から四月までのつもりでお与えになつたわけですね。それは今後のいろいろな標準にもなると思いますので、承つておきたいと思います。それから今のことですが、並木委員も言われましたが、そういうふうな標準の上に九十九里にもお払いになるかどうかを承つておきます。
  73. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 内灘の一戸平均五万円、合計五千五百万円の見舞金は、一月から四月まで使うことに対しての見舞金と私は承知しております。それから九十九里浜との関係につきましては、そういうものを九十九里浜の方にも出すかどうかということにつきましては、先ほど岡委員のお尋ねに対してお答え申し上げたことによつて御了承願いたいと思います。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 外務省からおいでになつていらつしやるようですけれども、その点はどうなんですか、見舞金の問題について……。
  75. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 まことに申訳ないことでありますが、内灘補償問題につきましては、私はそれに関係しておらなかつた次第で、十分なお答えはできないと思います。本件につきましては、外務省も特調も、その他の政府機関も、食い違いはないと考えます。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 これは非常に重大な問題でありますので、ぜひともこういう場合に責任者に御答弁を願いたいと思います。岡崎さんは、この五万円というものは、今までの例を見ても、四箇月に五万円というのは多過ぎるのではないかということを、はつきりおつしやつております。これを聞きましたのは、私だけではございません。そうであるといたしましたならば、特調と外務省の間に、考え方が非常に違つていたということが言えるのでありますから、私は一時も早く、外務省のおわかりになつていらつしやる責任者をお呼びいただきたい。これは委員長にお願いをいたします。  それからもう一点お伺いいたしたいのは、先ほど新井県議の九十九里のお話の中にありましたが、学童の長期欠席や人身売買が非常に多くなつている。これは経済面からそういうふうになつて来ると思いますが、そうした問題に対しまして、協力局なり、あるいは特調なりに、はつきりした数字を持つて陳情されたことがあるかどうかを承りたいと思います。
  77. 新井信司

    新井参考人 ただいまの御質問でございます。先ほど私が陳情の趣旨の説明のうちに、その問題を取上げましたが、かつてども現地町村におきまして、PTAが非常にこれを取上げまして、学校の長欠児童の調査をいたしたことがあります。私はそのときの数字は確認しておりませんけれども、とにかくあの豊海町を中心としたところの数町村白里豊海片貝、あるいは鳴浜という沿岸町村が、千葉県のうちでも特に長欠児童が多かつたということを、その当時のPTAが調べまして、PTAと学校側とが協力いたしまして、各長欠児童の家庭を訪問し、この長欠児童のよつて来る原因を突きとめて——もちろん経済的な問題が影響しておりましたので、PTAがいろいろと奔走いたしまして、でき得る限りの援助を与えて、長欠児童の少くなるような方法の実際の運動を展開したことを、私は承知しております。それと同時に、人身売買の点につきましては、すでに相当数多く出ておる現状でありまして、つい半年前も、警察当局から手が入りまして、その仲介に立つたたち相当罰せられておるような現実が出ておるのであります。もちろん確たる数字そのものは、私もまだつかんでおりませんけれども警察当局人身売買に非常に注目をいたしまして、その衝に当つたところの仲介に立つた人が、相当検挙されまして、罰せられておるという現状が事実でございますので、その点をお答えしたいと思います。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、そういうようないろいろな実情については、協力局なりあるいは調達庁には、訴えておありになるわけですね。——そこで協力局の方にお答えを願いたいのですが、実際に基地などになつておりまして、いろいろな不満がある思いますが、そういう不満が一々訴えられなければ、調査にいらつしやらないのか。あるいは積極的に、どういう状態になつているかということを調査に行つて、懇談をされているかどうかということについて、伺いたいと思います。
  79. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 ただいまの御質問にお答えします。私はここ一年間、九十九里以外の各演習場の折衝に当つて参りました者でありますが、九十九里に関する限りにおいて、また他の演習場におきましても、ただいまのような人身売買の問題等についての陳情は、受けたことはございません。一般的な問題としては、新聞で見た次第でございますが、具体的に陳情を受けたことは、私の知る範囲におきましては、存じ上げてない次第でございます。しかし地元の要望は、必ず考慮に入れて、これをもつて米軍と折衝して参つたわけであります。その意味におきまして、先ほども御質問がありましたが、九十九里は非常に時間がかかつたわけでありますが、講和発効前の条件よりも、ずつと改善されたわけであります。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 九十九里の方にお伺いいたしますが、今の御答弁に対して、どうお思いになりますか。
  81. 新井信司

    新井参考人 ただいま政府当局からのお答えがございましたが、われわれ地元民といたしましては、現状におきまして、改善されておるところは一歩もないと考えております。むしろあの当時よりも、時間がたち、日がたつに従つて状況はますます悪化の一途をたどつておる現状であると私は考えております。私どもは再三再四、すでに二箇年余にわたつて陳情を続けておるのであります。特に先ほど申し上げましたところの水産加工業者とか、あるいはまたそれに関連する中小業者とか、結局現在における漁業補償の対象にならないところの直接、間接の被害者が相当多いのでありまして、その現状について、何とか打開の道を講じていただくべく、すでに二年余にわたつて陳情を続けておるようなわけでありますが、一歩もそれが向うに進まない状態であるのであります。今まで漁業補償につきましても、先ほど申し上げましたように、地元当局といたしましては、特別調達庁の方々から、千葉県の場合はまことに良心的な資料である、政府の方に申告いたしましたところの補償額そのものの資料も、非常に良心的な資料を出したというお言葉を承つておるのであります。そのおほめのお言葉を受けておるところの良心的な資料から出ましたところの計算では、漁業補償のみにおいて三億八千万という数字になつておるのであります。特別調達庁でもおほめになつておる数字でありますから、当然三億八千万円というものは異議なくちようだいできるものと私ども考えておつたのであります。ところが最近つい半月ほど前から情報が逆転いたしまして、あるいは五、六千万円じやないかというような、情報という程度にしておきたいと思いますが、そういうようなことで、現地としては非常に愕然としておるような状況でございまして、決して一歩も改善の余地が今のところは見られないのであります。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 私はどうしていいかわからないで困つております。現地の方の声を聞きますとちつとも改善されておらない、外務省の方はずいぶん改善された、こういうふうにお答えになりまして、一つのところでこれほど食い違つた答弁ではまことに困ると思うのですが、それでは改善されたとおつしやつた方はどういう点が改善されたとおつしやるのでございましようか。
  83. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 私がただいま申し上げた改善されたという点は、使用条件が改善されたということでございまして、補償の問題については言及しなかつた次第であります。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 使用条件がたいへん改善されたということはお認めになられますか。
  85. 新井信司

    新井参考人 ただいま使用条件が改善されたと言われておりますが、なるほどその点については多少考えるところがある。それは要するに進駐軍の演習が現在までは週五日間で、正午から午後六時までの時間でありました。ところが今度われわれの陳情に御同情をいただきまして、外務省その他の御協力によりまして、結局週四日間と、一日短縮されたわけであります。同時に六月と十二月の年に二箇月間演習が休みになるというように改善されたわけであります。しかし考えてみますと、十二月というのは結局進駐軍の習慣の関係で、あまり演習はやらぬそうですし、六月には九十九里浜が濃霧の関係演習をいたしましても、砲弾の目標がつかないというような関係から、六月と十二月が選ばれたというように私どもは聞いております。同時に、一週間のうちに五日の演習日がたとい一日緩和されましても、多少のことはありましようけれども、それをもつて改善されたというまでにわれわれの利益はないと私は考えております。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題はただ九十九里浜の問題だけではございません。ほかにも実際に演習地になつておりまして、たくさんの問題を持つているところが多いというよりも、どこでも問題を持つていないところはないと言えると思うのです。そこで協力局なり何なりが、もつと積極的にそういうような不満を聞いてやつてもらいたい。陳情が何度も何度もあつて、一年なり二年なり待つていて、ようやく出向いて行つて調査して、それからまた一年なり二年なりたつて補償金額が解決するというようなものでなしに、もつと協力局側の方がその基地状況視察して、そういつた皆さん方の声を聞いて、そしていたずらな反米感情を起させないように解決して行かなければならないと思いますので、そういう点十分お考えのほどを協力局にお願いいたします。そこでさつき私保留しておきましたが、岡崎外務大臣がお見えにならないと思いますので局長に伺います。先ほど問題になりました内灘問題の五万円の見舞金というのは、一月から四月までのつもりで出したという特別調達庁の方の御答弁でございましたが、協力局長の方でもそういうお考えであつたのでしようか、どうでしようか。
  87. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 四箇月分でございます。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは岡崎外務大臣だけが、この五万円は四箇月にしては多過ぎるということを御自身でお考えになつておつしやつたと思いますので、外務大臣に責任ある答弁を次の機会に承りたいと思います。
  89. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 御質問をよく聞いておらなくてわかりませんでしたが、期限としては四箇月でありますが、特別調達庁長官も申しておりましたように、不安に対する慰藉料というものが入つております。不安というものは期限の切れないものではないか、こう思つております。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 私は今の答弁にはまことに不服でございます。この次に岡崎大臣によく伺いたいと思いますので、質問を打切ります。
  91. 上塚司

    上塚委員長 これにて九十九里浜に関する質疑は終了いたしました。  次は妙義山に関する質疑を進めます。須磨彌吉郎君。
  92. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 群馬県の知事さんにお伺いをいたします。先般安中において合同委員会が出張して何か現地におけるお話があつたけれども、それはとうとう満足なる結果を得るに至らずしてやんだと仰せられたのでありますが、群馬県にはまだ基地があるはずでありまして、基地問題については県民の人たちは多少御経験があると思われます。それにもかかわりませず、今度の安中における会議は何の効果ももたらさずして終つたということについて、いま少しく御説明を願いたいと思います。
  93. 北野重雄

    ○北野参考人 お答え申し上げます。御指摘のように群馬県内には、終戦直後からきわめて広汎な地域にわたりまして、当時の占領軍、現在の駐留軍施設がございます。太田、小泉、尾島、前橋さらに相馬ケ原、こういう所に施設があるのでありますが、今日までのところ米軍将兵と県民との間はきわめて友好的な関係にありまして、ほとんど大した事故もなく経過しております。さような群馬県におきまして、はからずも今回妙義地区に山嶽戦訓練場が置かれるということになつたのでありますが、先ほどの陳述で申し上げたように、演習の学校をつくられる場所が非常に山深い所でありまして、アメリカ人に対する親しみ、あるいは信頼というものを持ち得ない、早く申してアメリカ人を全然知らない素朴な人たちなのであります。そして今度の問題につきまして風教上の問題その他から非常に心配しておりまして、非常に思い詰めた気持で、絶対にこれには同意できない、全員玉砕してもわれらの先祖の地を守るんだ、こういう強い気持を持つていると思います。さらに六月二十六日の現地懇談会の際にも、地元坂本町民といたしましては、現地懇談会といつても、これは外務省その他の政府当局が、要するに演習場を設置する強い意図のもとに説得に来るのであろう、われわれは説得には応じられない、せつかくおいでになるのだから、われわれの強烈な反対の意思を表示したい、それだけに出向こう、こういうので、ようやく現地懇談にも出ることになつたのです。従いまして地元民といたしましては、結局政府側からいろいろ状況説明をされようとしたのでありますが、他に非常に興奮しておる人もございましたので、喧噪にわたりまして、政府側の説明もよく聞き取れない、そこで現地民からの反対の強い意思表示をするということになりまして、坂本町の反対決議を読み上げたあと引揚げてしまう、こういうことになつたのであります。そういういきさつからいたしまして、遺憾ながら双方の間に十分話し合いまして、少しでも問題を進めるという運びに至らなかつたのであります。たまたまその地元民が引揚げたあと、一部部外者がなだれ込んで来まして、それが暴行したというような不祥事件もあつたわけであります。さような関係で結局現地懇談会は不成功に終つた。さらに会場外の屋外におきまして臨時の県民大会が開かれまして、そこで地元の人たち中心といたします多数の県民代表の反対意思が表明された、こういうわけでございます。
  94. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 私がお尋ねいたしたいと思つておる点は、私自身も妙義山には二度も登つたことがあり、あれは天下の名山としてひとり上州の三山の一のみならず、われわれ日本人の憧憬おくあたわざる山であります。ただいまの御説明になかつたけれども、私の心中にあつてお伺いをいたしておりますことは、どうしても思い詰めておられるというその気持は、——そういうような懇談会が成功に至らずに終つたということ、これは他にもいろいろな基地を持つておられるにかかわらず、今度は思い詰めておるということは、妙義山だけは渡されぬ、こういうお気持が根になつておるのではなかろうかと私は想像するのでありますが、それはいかがなものでありますか。
  95. 北野重雄

    ○北野参考人 先ほど陳述の際に若干触れたつもりでございますが、十分にその意を尽さなかつたかと思うのであります。確かに今度の妙義地区演習地の反対につきましては、これが県民運動となつておりますその大きな原因は、要するにわれわれ群馬県民の心のふるさとであり、いわば群馬の象徴である上州三山の一のこの妙義の霊峰を軍靴に踏みにじられたくない、何としても残念だ、耐えられないという気持が、非常に強く働いておるわけであります。現地の恩賀部落の人たちはもちろんそれが強くございます。ほかに先ほど申しましたように、非常に素朴な考え方から、どうしてもアメリカの人たちに来てもらいたくない、何が何でものいてもらいたい、こういう思い詰めた気持でございます。
  96. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 これは私の想像でございますが、これは外務省の方にお伺いいたしたい。朝鮮動乱における経験等から、アメリカの軍隊はあの金剛山でございますか、山岳地帯等から思いついて、妙義山のごときはちよつと似ておる、空の上から見れば私は同じでないかと思うのでありますが、そういうようなこともあそこに演習場というか、訓練場をこしらえることが適当だと思つたのではないかというような考えをするのであります。ところが今お聞きの通り、現地の行政官から伺つても、われわれの国民感情、これは妙義山におきましては日本人の国民感情ともなることでありますが、そういうものとかち合うということになりますならば、これは国民的な反感と申しますか、そうでなくとも起つておる反米感情というものを非常に刺激することになるわけでありますが、そういうような点からいま一応もつと強くお説きになつて合同委員会その他の機会におきまして、アメリカ側をして思いとまらせるような見込みはないものでありましようか、伺いたいと思います。
  97. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 米軍はあそこを選ぶにつきましては、過去一年以上にわたつて探したと言つております。なぜあそこがよいかという詳しい事情は、関係課長から後ほど御必要ならば御説明いたさせますが、ともかく技術的に見まして、あるいは地形的に見まして、あるいは交通の便あるいは飛行場の関係あるいは事故の際の病院の関係、それから雪の関係等から見まして、最もあそこがよい、こう申しております。それがたまたま群馬三山と申しますか、そこへぶつかつたわけでございます。これは程度の問題でありまして、決して米軍が永久にあそこを使うと申すわけではありませんし、米陸軍というものはなるべく早く引揚げたいという意向も持つております。何とかしんぼうしてもらえるものではないかと私は個人的には考えております。
  98. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ちようどいい機会でございますから、嶌内課長からも向うで使いたいという技術的な面もちよつと伺つておきたい。
  99. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 ただいま伊関局長から簡単な御説明がございましたが、それをちよつと補足いたします。軍の山岳戦の専門家がクラーク司令官の要請によつてこつちに参つたわけでありますが、この専門家日本全国を調査し、北海道の朝日岳から北アルプス、南アルプスとあらゆる山岳地帯を視察し、そしてただいま局長が申し上げた通り、妙義山地区が山岳訓練の地として一番適しているという結論に至つたということであります。これは岩の性質から山の性質から、またただいま説明がございましたように、補給の面から病院の面から飛行場の便益から、また割と中央に近いところにあるという地理的関係から、妙義地区が訓練上一番適しておるということになつておるわけでありますが、これも日本の各地にある各部隊から、質のいい指導力を多少持つた兵員を集めて、四週間の登山訓練を与える。これもずらして二週間おきに百三十名ばかりの生徒が入つて来て、これを山に親しませて、山岳戦の技術を教え込む、この兵隊はその訓練を受けますと、卒業証書をもらつて、それぞれの部隊に帰るわけでありまして、いざ日本防衛のために必要が起つたときには、どの部隊にも山岳戦に経験のある者がいるということによつて、その防衛の任を果すことができる、こういうような考えから山岳訓練がどうしても必要だということになつているという説明を聞いておるわけであります。またその植物から、気候からまた岩の形から各面から見て、妙義地区で訓練を与えれば、大体日本のどの山岳地帯においてもその訓練を応用することができるというような説明を聞いております。以上であります。
  100. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいま伊関局長からのお話で私は半ば安心をした次第でございますが、いま一応申し上げておきたいことは、この妙義山はひとりわれわれの心のふるさとなるのみならず、御承知のごとく中仙道の通りますところがちようど碓氷峠すなわち碓氷郡でありまして、中仙道というのは、私旅行ずきでよく参つておりますが、あれはやはりわれわれの心の中を流れている道でありまして、あそこに今起きている問題について、思い詰めておる地元の人たちの気持をも押してやるようなことになりますと、私は悪い予言を申し上げますが、ちよつと問題になりはせぬかと感ずるのであります。そういう点から見まして、先ほど伊関局長のお話では、まだまだお心に置いて見ているようでありますから、大いに安心をいたした次第でありますが、特に国民感情が非常に反米的にならんとする今日におきましては、中仙道までつぶして——かつあの山は登つてつておりますが非常にやわらかい山です。登つてもくずれて来るような山です。あそこでもしそういうような山岳演習をやりますなら——先ほどの茅ケ崎の鳥帽子岩のようなものを持つてつて妙義山に移したようなものであります。どうかわれわれ全体の国民感情をもお気持にお入れくださいまして——私も知つておりますが、アメリカ人というものはそんなにばかではないと思いますから、かような見地からのわれわれの気持を訴えるならば、必ず思いとどまるであろうと私は考える次第でございますが、いま一応お願い申し上げまして、私の質問を終りたいと思います。
  101. 武井重三

    ○武井参考人 ただいま須磨衆議院議員さんの御説のように、あの妙義地区の岩山は、このごろ非常に風化されてやわらかくなつておるのであります。ことにことしの正月あの付近の青年が東京へ働きに来ておりまして、たまたま年取りに家へ帰りまして、正月の三日くらいは休養してまた東京へ働きに行くのでありますけれども、その前に山へ行つて親の助けに落ち木でもとつて来てやろうと思つて山へ参りましたところが、やはり山が風化されてやわらかいものですから、すべり落ちまして、それで頭のはちを割つて即死したというような事件があつたのです。まことに模範的の青年で気の毒ではありましたけれども、そういうような事件もあつたのでありますから、もし進駐軍が参りましても、そういうようなことがたまたまあれば、町でも迷惑しますから、ぜひこれはとりとめていただきたいものでありますし、それからあの山岳地帯のうちには小学校がございまして、まわりじゆうからそこへ集まつて行くのですけれども、先ほど申し上げましたように交通事故やなんかありますと——道がごく狭いものですから、そういうことも県念をされますので、ぜひその辺も御考慮をお願いしたいと思います。  以上であります。
  102. 上塚司

  103. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私並びにわが党の質問は、本日は妙義地区演習場問題に集約をいたしたいと思いますので、やや時間の延びますことを御了承いただきたいと思ます。  第一に外務省に伺いたい。外務大臣がお見えになつておらないようですから、伊関協力局長に伺いたいのでありますが、妙義地区を山岳学校の演習場として使うというお話がありまして、これに対して地方民が非常に反対をした。その反対の理由の一番大きなものの一つは風紀上の問題でありました。このことを外務省当局にお話を申し上げますと、いや、その心配はない、五百人ばかり常駐するけれども、素質のいい兵隊ばかりであると思うし、特に十一人のMPを特配をいたしまして、十分に警戒注意をするから、その心配はないということでございました。ところが本日茅ケ崎の参考人からなまなましいMPの暴行事件が報告されておる。少女が五人MP二人に追いかけられまして、四人は逃げおおせたけれども、一人だけはとうとうつかまつて暴行を受けたという事実であります。しかもこのような暴行がありましても、日本の警察も裁判所も手をつけることができない、これを傍観しなければならないというのが行政協定の規定でございます。そうなりますと、一体国民はMPを信頼することもできない、日本の警察なり裁判所をたよることもできない、一番大切な生命、身体、貞操、そういうものに対して、国民は何に保障を求めるのであるか。また政府は、外務省は一体何を根拠として心配はないのだと言われるか、この点をまずお伺いしたいと思うのであります。
  104. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 風紀問題につきましては、私の方で申し上げております点は、立川であるとか北海道の千歳であるとか、横須賀、富士山麓、こういう現在最も悪い地帯をお考えになつてそういう状況が起きるであろうということを御心配になつておりますが、そんな事態は起きないはずだと思うが、少くとも兵隊の数も少い、それから優秀である、これは一週間のうち月曜から金曜までは外出をさせない、土曜日から日曜にかけて希望するのは東京かどこか大都市に送り返す、その上にMPもつけてやる。こういうように申し上げて来て、よそから見ましたならば非常に事故は少かろうということを申し上げているわけでございます。また現に六、七十名か百名くらいおりますレーダー基地につきましては、北海道の奥尻、静岡県の御前崎などは全然問題は起きておりません。現地町長、村長さん等は環境は理想的に行つているということを言つております。そういう事例もあるわけであります。ただいまMPのお話が出ましたが、こうしたことは非常な例外のケースでございまして、こうしたことがあつたからこれが困るとおつしやるのでありましたならば、こうした例外はそれは万一ほかの土地に4起るかもしれませんが、そういう一つの例外をつかまえて、これら風紀問題は絶対に困るということになりますれば、日本全国全部米軍は帰れというようなことになるのではないかと思うのであります。なお日本の警察は逮捕できないとおつしやいますが、現行犯においては逮捕する権限を持つております。
  105. 武藤運十郎

    ○武藤委員 伊関局長は机の上でお考えになるからそういうことを言われますが、私はこの間恩賀部落まで行つて見て来ました。坂本町から二里以上山へ入りまして警察はありません、坂木の町まで行かなければありません。伊関局長はお答えになる前に——まずそう言つては失礼でありますけれども、あなたの奥さんと娘さんを恩賀部落に置いておいたと考えてこの問題を答えてもらいたい。あの山の中で二里も行かなければ警察はない、大きな声を出しても聞えはしない、そういうところへ伊関さんが家族を置いておつて外務省の局長室に納まつておられますか。
  106. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 それは先ほども申し上げておりますように、非常に例外的な事例であると存じておるのであります。私は一般的なことを申し上げてい
  107. 武藤運十郎

    ○武藤委員 伊関さんは御心配ないと言われるが、私は地元が心配するのはあたりまえだと思います。非常に心配をして反対の陳情が来ていることは伊関局長も十分御承知だと思います。そこで先ほど須磨君からもお話がございましたが、この場所はどうしても妙義でなければならぬということは私はないと思う。何かここは典型的な場所であつて、ここで演習をすれば、日本中どこの山岳戦をやつてもまずさしつかえない、ここはいい場所だと言いますなら、そういう場所は被害の少いであろうと考えられるところ、あるいは少し遠くてもそう反対のひどくないところがあると思うのでありますが、この際ひとつ軟弱外交の腰を切りまして、断るというお気持はないでしようか。
  108. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 軟弱外交であるかどうか、これは世間の批判にまちますが、ほかに探せとおつしやつても、北海道とか東北、ことに北海道あたりになりましたならば、人跡未踏の土地もございましよう。そうなりますと、まず第一に気候の関係で、冬季に使えない期間が非常に多い。それから道路、鉄道、その他の問題が起きまして、たとえば非常な山奥まで道路を敷くとなりますと、非常な国費を使わなければならぬというふうな問題も出て参ります。大体そういうふうな交通の便等を考えまして探しましたならば、多かれ少かれ、群馬と同じような立場になる。地元民は、やはり自分の生れたところは、先ほどのお言葉もありましたが、心のふるさとでありまして、妙義だけではなかろうと思います。それから今のようにMPが先頭に立つとお考えになるならば、風紀問題はどこでも起きることであります。
  109. 武藤運十郎

    ○武藤委員 伊関局長にお伺いしますが、浅間は中止をするようにほぼ決定をしたようでありますが、そうでありますか。
  110. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 その通りでございます。
  111. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私たちは最初この問題が起りましたときには、浅間、妙義という言葉によりまして、ここに一体不可分の演習地が設けられるというふうに聞いておりました。特にその計画の内容を伺いますと、四週間のうち最初の三週間は、妙義においてロツク・クライミングの練習をする、それからあとの一週間は浅間で仕上げをやるのだということでありまして、四週間という一定の計画のうちに、妙義と浅間が含まれておつて、この演習地計画というものは、一体不可分のものであるというように考えて参つたのであります。これは私だけではなくて、群馬県民全体がそのように考えておつたと思う。今伺いますと、浅間は大体とりやめというような御意向のようでございます。そうしますと、妙義も不可分の関係において、同時にとりやめにするということを、合同委員会なり何なりでお話になりまして、妙義もまたとりやめにするということにできないものでしようか。お伺いします。
  112. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 浅間は御承知のように、日本で一番大事な、地震の研究をやつておる場所だということでございます。ことにあそこで頂上を使いますのは、わずか十二時間程度でございますが、それでもちようど観測をしようと思つている一番大事な場所と、米軍が使いたい場所とが、たまたま同じ場所だ、非常に近いというふうな結果になりまして、大事な地震の観測という七のに支障を与えるという結論が出ておりますので、私はとりやめになるだろうと申し上げたわけであります。妙義と浅間の計画は、おつしやるように一体をなすものでありますが、四週間のうち浅間に費します時間は、学校を出まして、行軍して浅間に行き、頂上で十二時間ほど演習をして、そしてまた帰つて来る、約二日間であります。だから、四週間のうち、二、三日を除いて、あとは全部妙義でいたすのが、当初からの計画であります。妙義で基礎的な訓練をいたしまして、それの仕上げを浅間でやるというわけでありまして、浅間が使えればそれに越したことはありませんが、先ほど申し上げましたような理由で使えないことになりましたならば、この仕上げができないわけであります。しかし仕上げだけができないということにはなりますが、妙義の方をとりやめるという考えはございません。
  113. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、浅間の仕上げといいますか、一週間はどこにしわ寄せをさせられるのか。結局妙義にしわ寄せをさせられて、浅間が使えなくなつたために、かえつて妙義が全部背負い込むということになるのか。あるいはまた浅間の分はほかでやるのか。この点を参考までに伺いたい。
  114. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 まだ浅間を正式にやめますということは申しておりませんし、浅間をやめました場合に、米軍がどうするかという点につきましては、十分に打合せておりません。先ほども申し上げましたように、四週間のうち浅間に費しますものは、二日か三日でありますから、しわ寄せとおつしやるのは、この二日か三日を妙義から削るか削らないかという問題になると思います。四週間か、あるいは四週間マイナス三日間か、これは地元にとりまして、それほど大きな問題ではないと思いますが、地元からそういう御希望があれば、三日間削つてもいいと思います。
  115. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで問題をかえまして伺いたいのです。妙義の場合、恩賀部落はほとんど全部私有地でございますが、この私有地、民有地を収用する場合には、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実地に伴う土地等の使用等に関する特別措置法——長いですから、これから特別措置法と言いますが、強制使用をする場合におきましては、この法律第十四条に基きまして、それに列記されておりますところの土地收用法の規定が適用されると思いますが、その通りでございますか。
  116. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 収用する場合には、今お話の通りでございます。
  117. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますと、かりに非常に緊急を要するという場合でありましても、土地收用法第百二十三条に基きまして、都道府県収用委員会の採決を経なければ、土地所有権その他の権利は国に移らぬ。従つて絶対にこれを使用することはできないと考えますが、それでよろしゆうございますか。
  118. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 手続はそうでありますが、実はまだ私どもの方で、正式に土地収用委員会にかけて強制使用をしたものはありません。従つて、あまり見通しを断定することもどうかと思いますが、私ども土地收用法の上から絶対に収用することができないとは考えておりません。
  119. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は当局が強制収用をする意思があるかどうかということを聞いておるのではない。法律におきまして、今申し上げたような土地收用法の規定があつて、これによるにあらざれば、かりに特別措置法によりまして内閣総理大臣の認定がございましても、土地の所有権はもちろん、その他の権利も移らない、従つて収用ができないという解釈をしてよいかということを伺つておるのであります。何か特別に収用法によらなければならないとは考えておらぬというようなお言葉がございましたが、それはどういう意味ですか。
  120. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 そう申し上げたのではございませんで、先ほど私は土地收用法で正式に収用した例がないと申しましたが、実は緊急使用という別途にまた急いでやる手続がありまして、それによつてつた例がございます。
  121. 武藤運十郎

    ○武藤委員 でありますから、私はそれを伺つておるので、非常に急ぐ場合であつても、なお百二十三条によつて、いわゆる緊急使用によるほかはないのじやないかということを伺つておるのです。あなたのお話は、強制収用をしなくとも、話合いができるかもしれないから、収用法を必ずしも適用しなければならぬことはないという御趣旨でありまして、もしどうしても合意の成立がない、任意の上で話合いができないという場合には、この特別措置法十四条並びに土地收用法によりまして、都道府県収用委員会の採決を得るほかはないということになるわけですね。もう一ぺんはつきり答えてください。
  122. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 調達庁におきましては、駐留軍土地施設区域の提供を要する場合には、なるべく地元とよく話し合つて自由契約でやりたいという考えのもとに、すべて下部機構等を指導しております。しかしいかに折衝し、また説明しても、どうしても話がつかぬということになれば、お話の通り、この特別措置法に基いて土地收用法を適用して、収用委員会の採決を要求するほかはありません。
  123. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私は重ねて念を押しておきますけれども、そうしますと都道府県収用委員会の採決を経るのは、総理大臣の認定によつて所有権そのほかの権利が移る。単に収用委員会は収用期間とか補償とか決めるというだけではなくて、その採決があつて初めて所有権が移る、そのほかの権利も移る、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  124. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 それは事柄の性質によりまして、土地の所有権自体を収用しなければならぬ場合もあります。また所有権は別に移らなくても、使用権だけを強制して利用できるようになればいいという場合もありますので、これは一概に申されません。
  125. 武藤運十郎

    ○武藤委員 その法律解釈は間違つておりますが、いずれにしましても、収用委員会の採決を経なければ、土地に手をつけて使うことはできないということだけは間違いございませんね。
  126. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 その通りでございます。
  127. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで伊関協力局長に伺いたいのですが、今群馬県におきましては、単に坂本町、恩賀部落のみならず、臼井町、松井田町の近辺町村はもちろん、全県をあげて反対の意思を表示しておる。県議会におきましてもそうでありますし、知事も本日陳述されましたように反対である。従いまして群馬県民一人としてこれに賛成の者はないということになるわけでありますが、この場合に、外務省ではなお押し切つて、これをさつき伊関局長が言われるように使うという場合に、収用委員会のこの難関を切り抜けて行かれるかどうか、どういうお考えか、行かれないとすれば、収用委員会に対して何らか政府が機構上制圧を加えるなり、その権限をどうかするなりという方法があるのかどうか、この見通しと方法とを伺いたい。
  128. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私はただいまおつしやるほど悲観的にものを見ておりませんので、今後事を運びます際に随時適当に対処して行きたいと思つております。そうした事態が起きましたならば、またそのときに所要の措置を考えようと思つております。
  129. 武藤運十郎

    ○武藤委員 もう一つ今度は調達庁に伺いますが、かりに百歩譲りまして県収用委員会の採決があつたとしましても、この緊急使用の場合におきましては、その期間というものは六箇月で、これを更新しない、こういうふうに考えますが、その通りでございますか。
  130. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 その通りであります。
  131. 武藤運十郎

    ○武藤委員 あらためて伺つておきますが、この解釈は、外務省、調達庁、法制局一致した考えと承つてよろしゆうございますか。異議ある省庁がございましたらひとつ伺つておきたい。
  132. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私法制局の高辻でありますが、別に異議がございませんから申し上げるほどのこともないのでございますが、強制してやろうといたします場合には、言うまでもなく特別措置法が動きます。従つてそれは特別措置法の準用しておる土地收用法の規定が動いて参ります。それを簡単に申し上げますれば、結局武藤さんがおつしやつたようなことになるであろうと思います。
  133. 武藤運十郎

    ○武藤委員 伊関さんに伺いますが、合同委員会における民有地を使用してよろしいという承諾の意思表示は、特別措置法第五条に基いて総理大臣が認定したときによろしいという返事をするのか、しからずして、なお収用委員会の採決の手続その他同法に基く手続完了後にしますものか、その点を伺いたい。
  134. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 手続から申しますと、まず閣議で方針を決定します。それから合同委員会におきまして、日本政府としては提供する方針であるということを申します。しかし実際に使いますためには、使います前に特別調達庁が所要の手続をとります。と申しますのは、民有地については契約をするが、契約ができない場合には強制使用の方法をとる。そうしてその措置が終りました上で現実の引渡しが行われる、こういうことになります。
  135. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そうしますると、政府が閣議で決定をし、たとえば妙義を使わせましようという決定をして、それから合同委員会にそういう方針でございます、お使いになつてもよろしいという日本政府の方針であります、こういうふうにお話をなさつて、しかる後にいろいろ収用法による手続をなさるようでありますが、その結果収用委員会の採決が得られない、合意の上はもちろんでありますが、法律の上から申しましても、なかなかこれが得られないということになつた場合には、さきに決定をいたしました閣議の決定あるいは合同委員会に答えた、使わせる方針であるという日本政府の意思表示というものは、どういうふうな結果になるのでありましようか。おしまいになるのであるか、なお生きているのであるか、どういうことになりましようか。
  136. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 今まではそういう事例がございませんでした。また今後あるかどうかわかりませんが、従来はそういうふうな大体の順序で参つておりましたが、この順序は必ずしも先に閣議決定をしてそれから契約をするというのでなくても、順序が前後してもいいわけであります。おつしやるように全然それができない場合どうするかというお話になりましたならば、これは政府として現行法令の許す範囲のことをして、できなければいたし方ない。そうなりますれば、法律を改正するという問題がまた出て来るのではないかと思います。
  137. 武藤運十郎

    ○武藤委員 そこで伺いますが、最近特別措置法によつて収用法を適用することになると、ただいま私が申し上げ、質疑応答がありましたように、収用委員会にかけなければならぬ、その他の手続を経なければならぬのであつて、非常に困難であり、場合によればできないことがあるということで、今度は今伊関局長の言われたように、特別措置法を改正をして、あるいは新しい立法によつて、そういうめんどうな土地收用法その他の手続によらないで、たとえば閣議の決定だけで認定をし、強制収用ができる、使用ができるというふうな趣旨に法律を改正しようということをぼつぼつ考えているのではないかといううわさがあるのでありますけれども、これは伊関さんに聞くのもどうかと思いますが、外務大臣がおりませんので、そういう御意向が政府の方にあるのでしようか。
  138. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 目下のところはございません。
  139. 上塚司

    上塚委員長 武藤君、あと三分許します。
  140. 武藤運十郎

    ○武藤委員 今のところはないと言いますが、いつごろまでが今のところかわかりません。われわれはそういうことにはもちろん反対でございますが、国会も御承知の通り今月一ぱいで終るということになつておりますが、何か国会終了後に政令のようなもので、この法律にかわるべきもの、言いかえますならば、政府の認定だけで強制収用ができる。土地收用法を適用しないでできるという政令をつくろうというお考えがありますか、どうですか。私はそういうことは憲法上できないと考えますが、そのようなお考え政府部内にありますかどうか。あるいは伊関島長個人のお考えでもけつこうですが、最後に承つておきたいと思います。
  141. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私はそういうことまでは全然考えておりません。
  142. 武藤運十郎

    ○武藤委員 私の質問は終ります。
  143. 上塚司

    上塚委員長 次に岡良一君。
  144. 岡良一

    ○岡委員 先ほど法制局から来られた政府委員の御意見では、少くとも講和発効後、新たに国有地なり民有地なりが在日米軍の用に供されるときには、国有地であるならば、国有財産の管理に関する法律民有地であるならば、土地等使用等に関する特別措置法を法律的根拠として使用、収用するというお答えがあつたと思いますが、その点はそうでございましたね。
  145. 高辻正己

    ○高辻政府委員 さようであります。
  146. 岡良一

    ○岡委員 それではたとえば先般予算委員会において伊関局長は国有地については別途の法律的措置もとり得るというお話がありました。また同時に、この間内灘の使用に関する私の質問主意書に対しましては、内閣総理大臣は農地法第七十八条、第八十条第一項を適用したと言われます。すると在日米軍に対して国有地を提供する法律的根拠というものは、農地法の適用によつても可能であるということに解釈されておるのか、そういうお取扱いをなさつておられるのか、伺いたい。
  147. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私は農林省の方からできるということを聞いておりますので、それの詳しい法律説明は私にはちよつとできないのであります。
  148. 岡良一

    ○岡委員 しかしあなたは少くとも日米合同委員会において、在日米軍の用に、国有地なりあるいは民有地なりが提供されることについて、その衝に当つておられるはずだ。その衝に当つておられる方が、日本人のあるいは日本の国の所有権に属する土地を相手方に対して、国有財産は無償で、民有地にあつては収用法を援用して提供しなければならないという、そういう形において問題の処理に当つておられるのであるが、少くとも行政協定の実施に伴つて国有財産なり民有地なりを、在日米軍の用に供するための根拠法規というものの上に立つて当然やるべきだと思う。ところが農地法によつてそれをやつておる。農地法については、詳しいことは法律的には知らないということでは済まぬと私は思うのだが、その点当然あなたの立場からは、在日米軍の用に供する国有地は国有財産管理に関する法律民有地にあつて土地等使用等に関する特別措置法によつて処理さるべきだと考えるが、その点の御説明を伺いたい。
  149. 高辻正己

    ○高辻政府委員 先ほど私ではございませんでしたが、法制局の次長がお答えいたしました際にあげました法律でやることは確かでございます。そのほかに規定がないかという問題と関係があると思うのですが、それにつきましては農地法の第七十八条の規定をごらんになりますと、ある場合に農林大臣がその土地等の管理権を有しておる場合のことが規定してございます。農林省の方からそういうお話があつたということを私は存じませんが、もしそうであればその規定の援用であろうかと想像いたします。その点をつけ加えておきます。
  150. 岡良一

    ○岡委員 それでは法制局の方にお伺いをいたしたい。私から申し上げるまでもなく釈迦に説法でありますが、農地法は耕作農民に土地を与え、その生産を保障するということが、目的の第一条にうたつてある。これは決して在日米軍に対して日本土地や、日本の農地を提供するためにつくつた法律ではない。常識論として私は伺いたいが、その農地法を援用して、開拓予定地として村の者が当てにしているところのものを、この法律の条文をいわば綱渡り的に詭弁的に援用して、駐留軍に対してその土地を提供するということが、日本法律を守り、法律を正当に解釈しようとするあなた方の立場からいつて、はたして正しいやり方であると思われるかどうか、そういうことで国民が納得すると思われるかどうか。その点を伺いたいと思います。
  151. 高辻正己

    ○高辻政府委員 私は農地法の適用でやるということを実は農林省の方から聞いてもおらないわけでありますが、前に農林省からそういうお話があり、かつ伊関局長からもそういうお話があつたというお話を伺つて、ここでながめていますと、どうも農地法第七十八条というのに「国有財産である土地、」云々ということになつておりまして、「自作農の創設又はその経営の安定の目的に供するために、所管換又は所属換を受けたものは、農林大臣が管理する。」という規定があります。その管理権の範囲の問題になるかどうかということであろうかと思いますが、おそらくはその規定のことについてお話があつたのではないか、こういう考えで今引用したわけであります。
  152. 岡良一

    ○岡委員 それはその通りなのです。たとえば第八十条の第一項には、開拓財産として国が県の農業委員会決定によつて買い上げた開拓財産としての国有地、いわば農林省の特別会計に属する開拓財産としての国有地が、もし開拓に至らざる状態にあるときには、農林大臣が省令によつてその所属がえ、所管がえを一時使用についてはやることができるという規定があります。つまり農林大臣がいわばその省令に基いてごく軽くその土地の管理権なり所有権の移転ができると規定してある。しこうして法制局にあらためて御見解を承りたいのであるが、これは管理権や所有権の国内における単なる移転なのです。駐留軍に対して国土が提供されるということは、言いかえれば日本の主権の及ばない土地日本の国内にできるということなのです。これを農林大臣が認めるところにより、その省令によつて所有権、管理権が軽く移転できるということ、そういう軽い取扱いであなた方はいいと思われますか。
  153. 高辻正己

    ○高辻政府委員 いろいろ御議論はあろうかと思いますが、この対象になつておりますのは国有財産でありまして、私有財産については先ほど来お話が出ておりますように、特別措置法をそのまま出す以外に手はないというのであります。国有財産については、これについてもいろいろの規定がございますが、七十八条の規定は一応農林大臣の管理権を国有財産に認めている、しこうして一片の省令について云々ということを仰せられるわけでありますが、それも実は法律に基く省令であるはずであります。そうであります以上は、これを不可能ということができないのではないか、こう考えます。
  154. 岡良一

    ○岡委員 そういう解釈は先ほども申し上げましたように法律の条文を綱渡りする、農地法施行令の第十五条には農林大臣が公共の用に適当と認めればその所有権なり管理権は移転するということが書いてある。ただ問題は管理権や所有権を移転するということが、そう軽く省令ででもできるようにしてあることは、それは単に国内で、たとえば町が学校を建てたいとか、県が道をつくりたいからというときにはそういう措置ができるわけなのです。しかしそういう問題でない証拠には、内灘であろうが、妙義であろうが、全国的にこうして大きな反対運動が起つているのである。それをそんなふうに軽く所有権や管理権の移転を規定した農地法や農地法の施行令によつて、処理しようとするところに、あなた方のこの問題に対する認識が足らないと私は言いたい。そういうところで軽く詭弁的に逃れられ得るものと考えられるところに、この問題の本質に対する理解がない。もし言うならば、この問題に対して国民の側に立つて解決しようという熱意が足らぬということを私は指摘したい。しかしこの問題をここであなたと論争するわけでもない。  もう一つ伺いたいが、問題が少し妙義からずれているが、これは重要なことなので伺いたい。たとえば内灘の問題は昭和二十四年に石川県農業委員会が開拓適地としてこれを買い上げた開拓財産としての国有財産になつておる。ところが元の所有者がこれに対して、これは開拓に適当でないから返せという訴訟を起した。ところが日本の裁判所は開拓適地であるといつて、去年あらためて元の所有者の提起した訴訟を敗訴にしておる。それは一昨日県の農業委員長が来てここで話をしていた。いうならくは日本の司法権は、開拓適地ではないといつて願い出た者に対しては、これを敗訴にしておるわけです。そういう場合、日本の司法権がそういう形において、これは開拓適地なりという軍配をあげておる。ところが今度はこれは在日米軍の試射場として行政権が一方的に開拓適地ではないという形における司法をやつておる。これは司法権に対する行政権の本質的には大きな侵害ではないかとぼくは思うわけです。しかし私は法律のしろうとなので、その点法制局の方がおられるから明快な御答弁を願いたい。
  155. 高辻正己

    ○高辻政府委員 岡委員のおつしやるお気持は実際よくわかるわけですが、私はそういうことを離れまして——離れてというと語弊があるかもしれませんが、まつたく冷やかな法律の規定から見まして、その省令は法律に基いておることではあるし、法律そのものにはこのように、先ほどお話申し上げた通りに規定してあるし、もし法律がいけなければ法律を改正するということも考えなければならないでございましようが、この法律の規定をそのままに読んで行きますれば、先ほど申し上げたようなことになりはしないかと申し上げておるわけです。
  156. 岡良一

    ○岡委員 私はこれも繰返すことになるが、問題は法律といえども、やはりわれわれの権利や義務を守り、また社会の秩序を守るものなんだ。ところがそういう目的を持つた法律なので、しかもこの問題はそういう意味の国内法を援用することによつて問題を処理しようとしておる。この問題が外国の軍隊に日本の国土を提供するということになるわけです。これは国民の誇りなり、現在の日本国民の現実の感情を顧慮しないで、冷たい法律の解釈で、自分の都合のいい解釈でもつて、こういう問題をやつて行くということになりますと、この問題の解決が困難であるだけではなく、かえつて問題が大きく拡大して、だんだんと好ましからざる方向に行きまた好ましからざる力がそれらのうしろをバツク・アツプすることによつて、かえつて政治的にはまことに遺憾な状態が起りつつあるという点から私は申し上げておる。その点はおきましよう。  それでは重ねて伊関局長にお伺いしたいのだが、この場合私どもの理解するどころでは、たとえば内灘の場合は、これは継続使用ということになつておるのであるが、一時使用であるならば、これは農林大臣の省令によつてやれる、継続的な使用であるという場合、あるいはまた永久的な使用である場合、元の所有者の承認を得るとか、あるいは一旦売り払わなければならないということに農地法はなつておると思うのであるが、その点どういうふうに取扱われておるのでしようか。
  157. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 継続使用とか無期限使用とか、一時使用とかいろいろな言葉を使つておりますが、ただいまのところでは内灘は一時使用ということになつております。期限は一年とか二年とかいうふうには切つてございませんが、そんな永久などとは考えておりません。まあ二、三年ぐらいじやないかと私はいつも申しておるのであります。
  158. 岡良一

    ○岡委員 それでは六月十二日の閣議決定、あるいはまたその当時それに関連して日米合同委員会等でとりかわされた文書では、この内灘の使用はテンポラリーですか、インフイニツトですか、私は外交上のテクニックはよく知りませんが……。
  159. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 われわれは二つ使つておりまして、一つはテンポラリー、一つはインフイニットといつておるわけですが、いずれにしてもこれは程度の相違でありまして、内灘の方は今テンポラリーの方に入つております。しかしテンポラリーでも少し長くなれば二、三年ぐらいになる、インフイニツトというのでも、米軍が帰ればなくなるわけです。いずれにしても同じようなもので、今のところは一時使用になつております。
  160. 岡良一

    ○岡委員 この問題でも文字の解釈で何というのかお互いが応酬して……。
  161. 上塚司

    上塚委員長 岡君、あと三分を残しておるだけです。
  162. 岡良一

    ○岡委員 この問題はいずれまたあとで大臣も御出席になつていただく機会にもつと掘り下げてお尋ねしたいと思いますので、私の質問はこれで一応保留いたしたいと思います。この点は先ほど武藤君も指摘しておりましたように、何しろよくお考えを願いたいのは、群馬県にしても全県的な県民運動をして反対をしておる。内灘にしても、権現森の民有地に対しては依然としてそういう形になつておりますから、先ほど来政府側の御答弁のように、これは石川県の土地収用委員会が解決をしない限り絶対に使えないのだ、ここをぜひとも伊関さんも頭に入れておいていただきたい。さつき戸叶さんの御質問に対して、まことに期限のない不安であると申されましたが、内灘の問題については、あなたの前歴があるので、われわれもはかり知れぬ不安を実は感じておりますから、この点はあくまでも土地收用法の規則を遵守されていただきたいということをお願い申し上げる次第であります。
  163. 上塚司

    上塚委員長 並木君。
  164. 並木芳雄

    ○並木委員 簡単にお尋ねします。ただいまも伊関局長から内灘は二、三年じやないかというお話があつて、妙義の方は実は先ほど須磨委員からも質問がありました通り、私は朝鮮の作戦に呼応して使うのじやないかと思つていたのです。ところがさつき課長のお話では、日本の防衛のために訓練をするのだという答弁でありましたけれども、どちらがほんとうでしようか。
  165. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 われわれは日本の防衛が主であると思います。ただ朝鮮に現におります部隊は実戦をやつておるわけですから、そういう訓練を受けておるのでありまして、やはり在日米軍日本防衛のための訓練が目的であります。
  166. 並木芳雄

    ○並木委員 今度のは地上部隊の訓練ですか。それともこれに航空とかほかの訓練も入るのですか。
  167. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 今度の訓練は特殊な地上部隊だけであります。
  168. 並木芳雄

    ○並木委員 朝鮮の休戦気構えという今日、なおかつやはり日本をめぐる情勢というものは、そういう特殊な訓練をあの山岳地帯でしなければならぬほど急迫しておるのですか。
  169. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これは私が責任をもつて答弁するのは非常にむずかしい御質問でありますが、防衛をいたします軍隊といたしましては、いかなる事態にも対処し得るように準備をしておくということだろうと思います。
  170. 並木芳雄

    ○並木委員 それはそうでしよう。そうすると日本の方からも妙義を使うとか浅間を使うとか、そういうような場合に専門家が参加しておりますか。つまりかつての軍の参謀にあつた人とか、要するにアメリカの言うことをそのままうのみにしないで消化して、こちらからも意見を述べるというような専門家が加わつてつておられるかどうか。先ほどの答弁ですと、九州から北海道までずつと視察をした、そういうような場合にも、日本のそういう専門家が加わつているかどうか、また日米合同委員会においては、どういうような専門家が加わつて先方の意見を聞いておるか、詳しくお尋ねしたいと思います。
  171. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 先ほど説明いたしました北海道から南アルプスに至るまでの視察につきましては、これは米軍のみで行われた調査であります。しかし今度の妙義地区に関しましては、われわれの知識で及ばない問題につきましては、逐次専門家意見も聞くことになつておりますが、浅間山の使用については、特に東大なり気象台の専門家意見も聞いて特別委員会まで設けて研究をした次第でございます。
  172. 上塚司

    上塚委員長 並木君、まだありますか。あなたのなには、この次の茅ケ崎の場合もたくさん時間がありますから……。
  173. 並木芳雄

    ○並木委員 それではやめておきましよう。
  174. 上塚司

    上塚委員長 これにて妙義山に関する質疑は終了いたしました。  次は茅ケ崎射撃場に関する質問を続けます。並木君。
  175. 並木芳雄

    ○並木委員 これも今の質問と共通の点になるのですけれども、やはり日本の方から専門家が入つておらないと、アメリカの言いなりほうだいになるのではないか。これは早急に日本の方から専門家日米合同委員会に入れ、また先方と協議させる必要があると思うのですが、そういう計画をお持ちであるかどうか。
  176. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 われわれ合同委員会でいろいろな軍事上の問題を議論しておりまして、私は外務省出身であり、関係各省みな参つておりますが、専門知識についていろいろわからぬ場合がございます。そういう場合には適当に部外の方の御援助を得ております。ただ旧軍人をこういうふうな諮問委員として入れることがいいか悪いかということは、また別個の考慮があるのではないか。必要な知識は専門家に随時聞いております。
  177. 並木芳雄

    ○並木委員 これはどうしても専門家を必要とすると信じます。旧軍人を入れることがいいか悪いか、これはお考え中であるというならば、新たに予定される専門家は保安隊、海上警備隊からですか、あるいはほかに何か考えておられますか。
  178. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 保安隊、海上警備隊と申しましても、なかなか問題もございます。これは保安庁の本部でありますればいろいろ関係もございます。演習場の共同使用もいたしておりますし、合同委員会に参ることも一向さしつかえないわけでありますが、今後上司とも相談して、その点そういうふうな態勢をとるかどうか、あるいは今までみたいに随時の行き方で行くかどうかということは研究したいと思います。
  179. 並木芳雄

    ○並木委員 その点で防衛委員会を内閣の中につくるという話がありましたけれども、どうなつておりますか。
  180. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私は何も聞いておりません。
  181. 並木芳雄

    ○並木委員 私はやはりそういうものは必要だと思うのです。私の言わんとすることは局長にもよくおわかりになると思う。要するにこつちに専門家がいないと向うの言いなりほうだいになつて、妙義よりほかにないと言われればああそうですが、茅ケ崎よりほかにないと言われればああそうですがと言われるおそれがある。ですからどうしても軍略上専門家をやはり必要とする、こういう意味ですから、その点はぜひおとりはからい願いたいと思います。そういうふうにとりはからつていただけますか。
  182. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 ただいまの御質問の前段、ああそうですかという点は違つておると思いますが、後段については考慮いたします。
  183. 並木芳雄

    ○並木委員 茅ケ崎の場合、これはやはり正式にもう契約ができておるのですか。
  184. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これは占領中から引続いて使つておりまして正式になつております。
  185. 並木芳雄

    ○並木委員 引続いて使つておる中で、講和発効後特別の書式によつて何か契約するのではないですか。それとも占領中から使つておるのはそのままですか。最初の九十九里のときにもその話が出たのです。
  186. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 行政協定によりまして正式に日米間で協議決定するということになつておりますから、それに基いて協議決定いたします。両国間の関係はそれでいいわけであります。それから今度は国内法的に見ますと、民有地であれば特別調達庁、国有地であれば管財局等、国内手続はそれでございますが、日米間には行政協定によつて両国政府間で協議決定をする、その手続は済んでおります。
  187. 並木芳雄

    ○並木委員 その場合の書式は何という名前がついておりますか。日米間のメモランダムですか、何というのですか。
  188. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これは九十日以内にきめることになつております。ですから昨年七月二十六日に、施設地域付表の通り両国政府間で合意するというふうにとりきめて文書の交換をいたしております。その後その付表の変更は逐次行われております。それから九十日間に協議に至らなかつたものは岡崎・ラスク交換公文によつてやる、こういうことです。
  189. 並木芳雄

    ○並木委員 その協議決定に至らないものはまだどのくらいございますか。
  190. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 演習場等については、それを使うことについては協議決定になつているわけでありますが、ただ占領中の使い方よりも地元の方に有利な使い方にしようということで、使用条件の細目について話がついておらないものがございます。そういうものが、五十幾つあります演習場のうち、たしか半分か半分足らずまだ残つております。これは従来よりも条件を改善して行くという意味において交渉しているわけでございます。
  191. 並木芳雄

    ○並木委員 茅ケ崎の場合に、参考人方々は口をそろえて、第一にこれをやめてもらいたい、もしそれができなかつたならば区画を縮小してもらいたい、第三には直接間接の損害を十分補償してもらいたいという要望でありますけれども、それに対する局長のはつきりした答弁をいただきたいと思います。
  192. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 やめてほしいという御意見は前からございますが、今のところちよつとほかに適当なかわるものがございませんので、引続き使つておるわけでございます。ただいまの演習のやり方につきましては、第一はそこに烏帽子岩というのがあります。それを撃たないように、人工の仮想標的を撃つようにしてほしいという問題がございます。それから二つ砲座がございますが、一つ演習場外で中学校がすぐそばにありますので、この砲座を演習場内に、学校から少しでも離して置いてほしい、そういう問題もございます。それから廃弾の処理というようなことは、今までよりも以上にあそこでやらないように、というような具体的な話が県当局並びに地元からございまして、目下日米合同委員会並びにその分科委員会両方において取上げられております。それで、ただいまの段階におきましては、現地演習を監督しております部隊長と神奈川県知事との間に現状に即して十分話合いをするようにということを、合同委員会として日米両方から——私の方から県知事、米側の方から現地部隊長に伝えてございます。今県と現地部隊との間で話合いが行われておるところでございまして、円満な結論が出ますれば、それをそのまま合同委員会で協議する、あるいはその話合いにおいて日本側の意見がなかなか通りにくいというようなことがありますれば、また合同委員会で取上げる、こういう段階になつております。
  193. 並木芳雄

    ○並木委員 最後に、ほかの問題にも関係することですけれども、朝鮮の休戦その他国際情勢は、必ずしも冷たい対立から熱い対立にのみ移つているとは思われない。逆に最近はむしろまたよけい冷たくなるのではないかというような情勢にもかかわらず、日本における基地問題はますます悪い傾向を示しているということは残念なのです。それで実際に合同委員会を担当しておられる伊関局長としては、その窓口から見て、今後なおこういう状態というものは続くものと思われますか、つまり区域とか施設演習場、そういうものはなお増加して行く傾向にあるものと思われますか、それとももうこの程度で増加しないだろう、こういう見通しでしようか。あるいはまた朝鮮休戦とともに、相当急激に減少して行くものと思われますかどうか、その辺のところをお聞きしておきたいと思います。
  194. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 大体米軍側からの新規の要求というものは出尽した感じがあるのではないかと私は思つております。ですから今後大きな、政治問題になるようなものはほとんど——例外はございましようが、私はほとんど出て来ないのじやないか、こう考えております。朝鮮休戦に基きまして、どういうふうな変化があるかという点につきましては、私はそれほど変化はないのじやないか。このためにふえるということも、もちろんこれはわれわれとしては困る。しかしそれによつてただちに減るということもないのじやないか。ですから米軍のこの軍事施設というものがどうなつて行くかということは、もつぱら日本側の自衛力漸増と申しますか、そうしたものにかかるのだと私は思つております。
  195. 上塚司

    上塚委員長 次は、穗積七郎君。
  196. 穗積七郎

    穗積委員 私は各参考人の方の供述を基礎にしまして、具体的な事例の中から政府の接収手続に関する問題、それから補償額の査定の問題、それからその後の管理方法に関します問題、さらに軍事基地全般に対します政策の問題についてお尋ねをいたしたいと思つておりましたが、時間がたいへんおそくなりましたし、のみならずそれらの問題は、必ずしも地元参考人の方の御同席を必要としないと思われますので、それらの政府に対します私の質問はこの際次の機会に留保いたしまして、私の質問はきようは御遠慮いたします。
  197. 上塚司

    上塚委員長 次は安藤覺君。
  198. 安藤覺

    安藤(覺)委員 ただいま議題になつております茅ケ崎の演習場の問題について、しばらく質問させていただきたいと存じます。  私はまず参考人の方に承りたいと存じますが、この演習地が指定されます前に、当局から、あるいは知事等から何らか市長あるいはその他の、演習場に最重要なる関係を持つている人々に対して、内的諮問とか、内意を聞くというような事実が行われたものでありますかどうでありましようか。
  199. 添田良信

    ○添田参考人 先ほど局長さんからお話がありましたけれども、終戦後ただちに爆薬の爆発場として使われておつたわけであります。ところが一昨年ぐらいから話が進んだそうでありますが、行政協定が実際に結ばれましたのは、昭和二十七年七月二十三日だと承つておりますけれども、私ども当時市長をいたしておりましたけれども、何らお話を承つておらないような事情でありますので、一応念のために申し上げます。
  200. 安藤覺

    安藤(覺)委員 当局の方にお尋ねいたしますが、他の地の演習地等におきましても、やはり同様に抜打ち的なる処置をおとりになつておられるのでありますか、どうでありますか。
  201. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 いろいろございまして、神奈川の場合あたりは県知事の方から前もつて十分連絡がございました。と申します意味は、できればやめてほしいということを県の方は申して来ておりました。各県とも一応意向は聴取いたしております。しかしこれは参考に聞いたという、結果においてはそういうふうになつたものがあるわけであります。
  202. 安藤覺

    安藤(覺)委員 参考人の方のお話と、ただいまの当局のお話とは、まつこうから食い違いがあるようであります。しかしこれはいずれもほんとうかもしれません。当局は確かに内意を伝えておいたと言われる。また地元においては聞いたことがないと言われる。当局の方は伝えたつもりであつたかもしれないが、不徹底であつた地元の方ではその不徹底さのために耳に達しなくて、そのことに至らなかつた、聞かなかつた、こういうことに相なつているのかと思います。今全日本にわたつてこうした大きな紛争が起き、そうして反米感情が国民の間にほうはいとしてわき起らねばならぬようなことになつてつた。その中には大きな、いろいろ数え上げられる問題もありましようが、こうした当局の小さい心づかいによつて解決し、またその心づかいによつて大きくしないで済む幾多の問題があるのじやないかと思い合せますとき、私はこの点について、局に立たれる方はあくまで民意を察し、御親切に心を煩わされることが一番かんじんではないか、かように存ずるのであります。  次に参考人の方にお尋ねいたしますが、補償の手続がまことに複雑で、費用もよけいかかるというようなお話を地元の方から聞いたことがあります。その点は現実に御経験なさつておられますか。
  203. 添田良信

    ○添田参考人 調達庁の方がお見えになつておりますが、ここにさらに傍聴に漁業協同組合長も参つておりますが、まことに手続が複雑でありまして、私どもが当時伺つたときには、紙数が、大よそ茅ケ崎市内の漁業家の損害補償の手続をいたしますために、半紙が一間半も積み重なる、こういうわけであつたのでありますが、幸いその後御了解を得ました結果、一人十七枚という形になつたのであります。それでも半紙の購入費だけで四十八万三千円を要したということを、実際に私どもが経験いたしておりますことを、お聞き願いたいと思うのであります。
  204. 安藤覺

    安藤(覺)委員 当局にお尋ねいたしますが、ただいま地元参考人の述べられましたように、まことに手続が複雑であり、しかも厖大なる紙等も要し、費用もかさむということでありますが、何らかこれを簡易な方法にごくふうくださることはできませんか。御研究の余地はありませんか。
  205. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 お答えいたします。漁業補償につきましては、お言葉の通り、今日やつているものは相当複雑な手続になつておりまして、まことに関係者に対して申訳ないと思つておりますが、しかしこれは必ずしも調達庁だけでかつてにきめたわけではありませんので、農林省、外務省、大蔵省等、関係各省と事務的に相当回数を重ねて相談の結果、でき上つた補償要綱でありますので、調達庁のみでこれを改めるわけには参りませんが、しかし調達庁だけでも、要綱の解釈といいますか、あるいは運用でも、多少なりと簡易化することのできるものは、極力簡易化するようにいたしております。今参考人からお話のあつたようなことも、これは調達庁だけでやつたのであります。なお形式上今ふまなければならぬようなことで、もつと簡易化することができはせぬかと思いまして、せつかく今簡易化に向つて検討中でございます。何といつても、この漁業関係補償は、組合というものを一つの単位として簡単にやるならば、そうたくさんな紙を使わなくてもいいはずですけれども、結局損害を受ける者は各個人でありまして、一つの組合を対象にしておりましても、各組合員の損害を積み重ねて手続を進めます関係上、紙数が多くなるような状態でありますが、できるだけ御趣旨に従つて簡易化するように努力いたしたいと思います。
  206. 安藤覺

    安藤(覺)委員 ずいぶん御困難な問題ではあろうと思いますけれども、さらにあなたにおかれましては、先ほどの演習地として指定するにあたつて、内意を問うたかどうかというあの問題と同じように、少し親切が加わりますれば、非常に大きな民心をつかむことができるのみならず、またあなた方の事務を事実上簡素化することができる。たとえば内灘の問題のごとき、ああした騒ぎを起して、多くの財を散じ、あるいは時間をつぶし、あるいは国内にさまざまな宣伝をいたさせる結果にならないと思います。一に人のあたたかい心であります。これをひとつあなた様にお願いしておきたいのであります。あなた様が中心になられて、関係各省にこの点が行き渡るようにおとりはからい願いたいと思います。  次に参考人の方にお尋ねいたしますが、茅ケ崎に対して見舞金が出ているということでありますが、事実でありますか。
  207. 新井信司

    新井参考人 見舞金が出ております。
  208. 添田良信

    ○添田参考人 見舞金が出ておりますが、お手元に参考に出しました通り、まことに微々たるものでありまして、その内訳を申し上げますと、昭和二十七年四月一日から同年の四月二十八日まではわずかに十四万七千二百七十五円来ておるだけであります。さらにその前にさかのぼりまして、二十五年と二十六年との爆破の見舞といたしまして、第一地区の小和田地区に百四十二万円、茅ケ崎地区に六十三万二千円、柳島地区という第三凶に対して一万三千円だけ参つておるような事情でありますので、御了察願いたいと思います。
  209. 安藤覺

    安藤(覺)委員 御配付願つたこの資料によりますと、一人当りが百五円または百四円というようになつておるようでありますが、この地区における漁民の諸君の一日の漁獲によつて得られるところの収入は、およそどのくらいに相なりますか。
  210. 添田良信

    ○添田参考人 地びきなりあるいは定置なりあるいは小舟等によつてその差がありますけれども、大体において定置、地びき、小舟等を平均いたしますならば、まことに不漁なときであつても一人当り八百円から千二百円程度の収入があるわけであります。
  211. 安藤覺

    安藤(覺)委員 当局にお尋ねいたしますが、この百五円または百四円というような見舞金は、それは日当として引当ててお出しになりましたのですか。それとも今聞くがごとく八百円から千二百円の一日の漁獲収入を得ている者に対して、百五円というような僅小なものを出すということは、まさか日当に引当てるものではなくして、まさにその言葉の通りお見舞として出されたのだと思うのでありますが、お見舞にいたしましても、八百円のものが百五円に減るとなりますと、生活困窮の問題が極端に現われて参りますが、その辺のところはどんなお考えでお出しになつておるのでしようか。
  212. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 見舞金の問題は先般来たびたび申し上げております通り、実損の補償という意味ではなくて、どこまでも言葉の通り見舞金であります。ただしかし、非常に額が少いから日当という意味ではもちろんございません。その損害に対するごく一部の見舞金というような観念になりますが、もちろん八百円なり千円なりに対して百円ということも実に変な話なのですが、元の八百円とか千円という収入自体について、先ほど申しましたように、はたしてそれがほんとうの収入かどうかという問題になりますと、的確な実証はつかめぬと思います。もつとも見舞金のことですから、そうかた苦しいことはないのでありますが、今後正式の補償に移りかわる場合に同じ問題が起ると思います。見舞金のようにわずかなことはないでしようが、元の漁業の損害は一体どのくらいあるか、あるいは過去の漁獲高はどうであつたかというようなことが、非常に問題になると思うのでありまして、これを円滑に解決するということは非常にむずかしいことじやないかと思つております。
  213. 安藤覺

    安藤(覺)委員 今度出されます場合においては、損害補償としてお出しになりますか。
  214. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 講和条約発効後の分は、正式の損害補償ということになります。
  215. 安藤覺

    安藤(覺)委員 そうしますと、この見舞金自体に対しても、遡及してその補償をやつていただけますか。
  216. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 これは遡及はいたしません。
  217. 安藤覺

    安藤(覺)委員 講和発効後においてもですか。
  218. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 損害補償についてはいまだ実行していないようなわけですが、むろん講和条約発効日までさかのぼつて計算いたします。
  219. 安藤覺

    安藤(覺)委員 先般の委員会におきましても、講和発効当初までさかのぼつて支給せられるよう、われわれとしては要望しておいたのでありますが、ぜひともこのことは実現していただきたいと存じております。  次に参考人の方に承りますが、演習においては烏帽子岩を目標として実弾を打つておるという先ほどのお話でありましたが、その結果として烏帽子岩が現実において変形もしくは消滅の状態を呈しておるのでありますか。
  220. 添田良信

    ○添田参考人 お尋ねにお答えいたしますが、烏帽子岩は先ほど来申した通り、帰帆いたします船の目標であり、同時に魚つき岩礁であり、そこでたくさんの養殖がされておることは前に申し上げた通りであります。しかもこれは天然記念物であつて茅ケ崎市といたしましては、ここを中心にして各種の観光施設をいたしつつある現状であります。たまたまこれが大きな変形をいたしておるわけであつて、この点はすでに調達庁が五月十三日にお出かけくださいまして、しさいにこれをごらんになつて、変形したということを確実にお認め願つたということを御了承願いたいと思うのであります。
  221. 安藤覺

    安藤(覺)委員 この点については地元から県庁を通じてすでに交渉が行われて、他に目標物を求めるなり、あるいは目標艦を置くなりして射撃をするようにということで、現地の知事と現地の司令官との間に交渉が行われておるということでありましたが、これは現地の知事にのみまかせておかずに、外務当局自体があつせんの労をとり、そうしてこの烏帽子岩を撃たないようにすることの努力をされる御用意はありませんか。また現地の知事が現に交渉しているということについてのお見通しはどうでございましようか。
  222. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 先ほど伊関局長から簡単な御説明がございましたが、これは合同委員会日本側におきましてあつせんの労はもちろんとつております。しかし中央よりも県または地元の方が一番その事情に明るいのでございまして、地元並びに県当局をして満足な解決策を考え、軍と折衝してお互いに満足する案が出ましたならば、もちろんこれは合同委員会において承認するわけでありまして、もしそれが日本側に有利でないような結果になつた場合には、もちろんこれは中央から出かけてあつせんの労をとるわけであります。ただいま最後に見通しのことについてお説がございましたが、これは数日前神奈川県の渉外局長のお説によりますと、話は進行しているということでございました。
  223. 安藤覺

    安藤(覺)委員 先ほど見舞の問題をお尋ねしたのでありますが、その見舞金の中には、先ほど外務省の政府委員の方と存じましたが、内灘の場合においては不安料が入つているということを申されたのであります。茅ケ崎の住民諸君はこの演習に対して、ことにその岩を中心としてその周辺において漁業をする人たちにおいて、何ら不安を感じていないのであるかどうか。またこうした収入の激減によつて生活不安を感じていないのであるかどうか、この点をお答えください。
  224. 添田良信

    ○添田参考人 お話の通り、先ほどこれも申し上げたのでありますが、烏帽子岩だけでなくその周辺海上におきましても、あるいは学校二つが非常な不安を受けており、住民は先ほど特別なケースとしてあげられたのでありますが、MPですからも婦女子に暴行するというようなことがあつて以来、非常な不安を覚えているわけであります。なおさらに私は先ほど申し上げませんでしたけれども、爆薬を運ぶために辻堂の駅の周辺が非常な勢いで燃えたというようなことすらあつたのであります。しかしながらただいま初めて伺うようなわけであつて、見舞ですらもわずか一戸百円か百四、五十円であつて、慰藉料のごときは全然私どもはちようだいいたしたことの覚えはないのであります。ただいまお話を承つて特別騒ぐ所にのみこれらのものが行つて、おとなしくしている私どもには何らの処置がついてない、こういうひがみすらも感ずるような事情であります。
  225. 安藤覺

    安藤(覺)委員 当局にお尋ねいたしますが、かくのごとく不安がすでに表明されたる地区において、また現実に不安を感じている地点におきましては、内灘のごとくその他の各地においても不安料を計算に加えられましてお支払いになりますか。
  226. 山内隆一

    ○山内(隆)政府委員 内灘の一戸五万円の見舞金は、いろいろ先ほど申し上げたきわめて特殊なケースとして扱つたのでありまして、ほかにまつたく同じような現象は私どもは今のところないと見ておりますが、不安ということも一つの要素だ、こういう前提をとりまして、それでは至るところに不安があるではないかというようなことになりますと、内灘の場合には決してそう単純な問題では私どもないと思つておりまして、ほかの方にもそういう意味のいろいろな不安はどこの基地にもみなある程度つていると思いますけれども、それだから不安料を見舞金として出すというような話は起つておりません。内灘はどこまでもきわめてまれな特異な事態、こういうふうに考えておりますことを御了承願いたいと思います。
  227. 安藤覺

    安藤(覺)委員 この不安料を込めて払つてあると言われたのは、たしか伊関政府委員つたと思います。あなたにこれをお尋ねしてもしかたがないと思いますから、あらためてこの点は他の機会に伊関政府委員にお尋ねをし、また大臣にもお尋ねをいたします。同時にこの不安は何によつてはかるのか。量定する尺度、はかりぐあい等についてお尋ねいたしたいと思います。
  228. 上塚司

    上塚委員長 安藤君、すでに八分を経過いたしております。
  229. 安藤覺

    安藤(覺)委員 まことに相済みません。もうわずかでありますからお許しをいただきたいと思います。きわめて要点のみをお尋ねしているつもりでありますから、どうかお願いいたします。  次にお尋ねいたしますが、これは参考人の方から簡単に答えていただきたいのでありますが、砲弾が海中において破裂いたしますような場合において、魚が浮き上つたようなことがあるかどうか。また魚の習性として、しばしば砲弾が炸裂するというような結果といたしまして、その周辺に集まつて来ないというようなことはないかどうか。あるいはまたこの烏帽子岩の岩礁地帯をすみかとするところの特殊なそうした魚は、こうしたことによつて散逸するようなことはないかどうか。それからここに貝類を養殖しておられるというが、その発育状態については影響はないかどうか、それについて簡単にお答え願いたい。
  230. 添田良信

    ○添田参考人 第一問にお答えいたしますが、魚は浮き上つております。二番目の、魚は逃げております。なおさらに岩礁に養殖いたしておりますところの海藻あるいは貝類というものは、先般申し上げました通り、二十五年以来毎年四十八万以上の金を使いましたけれども、そのことごとくが壊滅いたしておりますことは、私が先ほど申し述べさしていただいた通りであります。
  231. 安藤覺

    安藤(覺)委員 聞くところによりますと、昨今この演習地内において、ただに砲弾の射撃を演習するのみならず、他の地区において不発であつたところの不良爆弾の処置をしているということでありますが、これは事実でありますか。また事実ありとしますならば、そのことはあなた方のお耳に入つておりますか、どうですか。
  232. 添田良信

    ○添田参考人 不良爆弾をここに捨てるということは、私どもが知つております行政協定の内容には盛られておりません。かように承知いたしておりましたところ、最近他のところから不良爆弾を持つて参りまして、この海岸で焼き捨てるというようなことを行つておりますことは非常に私ども遺憾に存じますので、少くとも行政協定の中に盛られた演習だけの不安に、さらにこの不安が追加されたというような感じがいたしておりますので、現実にこれを捨てているということを私どもは立証をいたします。
  233. 安藤覺

    安藤(覺)委員 当局にお尋ねいたしますが、これは行政協定違反ではありませんか。その点についての当局の見解をお願いいたします。
  234. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 行政協定の第二条によつて施設区域日本政府米軍に提供している次第でありまして、この個個の施設区域については個々の協定ができ、演習場につきましてはこれをいかなる方法をもつて、どんな目的に使用されるかということは規定されてあります。茅ケ崎につきましては不良爆薬処理というような一項も設けてある次第でありまして、これにつきましては米軍説明によりますと、富士山麓方面にかつては持つてつて、そこで処理していたことがあるが、五十何マイルの距離をトラックで運んでいる間に非常な危険が伴うから、なるべく近いところでやりたいというような説明も記憶しております。またこの爆薬処理につきましては、ただいまのところ県当局と軍当局との間において、いかに不安を最小限度にとどめるか、またはなくすかという方法を発見するために、話し合つているということであります。
  235. 添田良信

    ○添田参考人 ただいまのお話でありますが、実情を申し上げたいと思うのであります。私が一昨日県会におきまして知事に、行政協定の内容を御存じかということを申し上げたら、よく知つている、これこれの条件だという話でありました。従つて一部私もこれを読みました。その中には、上陸作戦及び陸上から海上を撃つということが隔月ごとに、しかも十五日間猛烈に演習を行うということしか規定しておりません。爆薬処理のような用途の変更などというものは、私どもは一字すらもこれを発見することができないような事情にあるわけであります。しかも知事ははつきりと、行政協定以外の目的には処理していないということを言明いたしたわけであります。もしその言明がここに来て、爆薬処理を最小限の損害でとどめるとすれば、そこに大きな食言があるのであつて、私どもといたしましては、前の不安に大きな不安が当然加わるわけであります。従つてこの食言については、私ども独自の立場において十分処理していただきたいと思うのでありますが、爆薬の処理は、今申し上げた通り、数年前に辻堂の駅の民家を十数軒焼き、これがために七人というたつとい人命が失われておるということを安藤覺代議士に御記憶を願いたいと思うのであります。
  236. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 ただいまの御発言から、あるいは誤解があるかもしれませんが、ただいま七名のとうとい人名を失われたという事件は、私の記憶しているところでは、昭和二十年十二月の終戦直後の占領なまなましい時代でありまして、講和発効後におきましてはそういうことはございません。
  237. 安藤覺

    安藤(覺)委員 ただいまの参考人の御見解と、政府委員の御見解とひどくまつこうから食い違つております。行政協定内容に不良爆弾の処置が盛り込んであるという御意見と、盛り込んでないという御意見とあるようであります。これは本来ならば、当然その専門の衝にあられる当局を信頼すべきでありましようが、何かわれわれどもは過去数年来、必ずしも一気に信ずるわけに行かぬような気持にされております。ゆえに私はここに行政協定内容のそうしたとりきめのある箇所だけを、資料として提供せられんことを要望いたしますから、委員長、適当なるおはからいを願いたいと存じます。  時間を超過いたしました質問をいたしまして、まことに申訳なかつた次第であります。
  238. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  239. 戸叶里子

    戸叶委員 一点だけお伺いしますが、茅ケ崎からおいでになつた参考人の方がいろいろと御不満を述べられて、改良してほしい点をおつしやいました。その中の一点として行政協定の改訂を望まれておられますし、また先ほど米軍のMPの二少女に対する暴行事件の例をおあげになつて、行政協定の改訂等を述べられております。私も今国会の初めから一日も早く行政協定が改訂さるべきだということを主張して参りましたが、政府の答弁では、アメリカの上院にかかつているNATOの条約がもうすぐ批准されるから、そうしたならば日本の行政協定の改訂も望まれるだろうというような御答弁で、今夏までずるずるになつて参りました。約一週間足らず前の夕刊だつたと思いますが、アメリカの上院でこの国会中にNATOの条約を批准するというようなことが出ておりましたが、はたしてそれが事実であるかどうか。また事実といたしましたならば、すぐにでも日本の行政協定の改訂が行われるか、大体いつごろ日本の行政協定の改訂が行われる見通しをお持ちになつておられるか、局長がおいでにならないのでどうかと思いますが、嶌内さんに伺いたいと存じます。
  240. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 ただいまの戸叶委員の質問にお答えします。行政協定改訂の要望は非常に強いものがあることはよく承知しておりますが、ただいま戸叶委員が引用された新聞は、これはもちろん新聞情報でございますが、実はそういうふうな動きはもちろんあるわけであります。アメリカの上院においてNATOの協定が確実に批准されるかということにつきましては、まだ確実な情報は得ておりません。しかし政府といたしましてはNATO協定の批准のあかつきには、可及的すみやかに日米行政協定の改訂を行いたいという考えでおることには間違いないと思います。
  241. 戸叶里子

    戸叶委員 それではNATOの協定がもしもこの国会で批准されないといたしましたならば、政府はこのまま放置なさるつもりでございましようか。
  242. 嶌内敏郎

    ○嶌内説明員 その問題につきましては、私のような下つぱの者からお答えするのは無理じやないかと存じますから、御回答を差控えます。
  243. 戸叶里子

    戸叶委員 しかたがありませんから、次の機会にいたします。
  244. 上塚司

    上塚委員長 これにて本日の参考人に対する質疑を終了することといたします。  参考人各位には長時間にわたり種々参考となる御意見を承りまして、まことにありがとうございました。委員長より厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十九分散会