○高橋(一)
政府委員 公安調査庁としましては、国内の治安問題ということについて、特に破壊的な国体というものを中心にして考えておるわけであります。そういう見地からしまして
日本共産党の動向は非常に注意しなければならないというふうに考えておるのであります。共産党が暴力革命の方式をと
つておりますことは、ほとんど疑う余地がないところでありまして、革命を起す場合にどういうふうな準備でこれに当るかと考えますると、大体今のところでは、ソ連を中心としますいわゆる平和擁護運動というようなもので、中間分子を
自分の味方に引きつけ、あるいは少くとも、いざという場合に、中立的な立場を保たしめるというふうな運動をしておるように見えるわけであります。この面につきましては、共産党の方としても、かなり成功しているというふうに考えておるのではないかと思うのでありますが、それだけではしかし革命は起らない。そのためにいわゆる労働者階級の主流というものを革命化するというような段階にあるのではないか。そこで、私
どもの直接関連しまする軍事活動を中心として、要点だけ
お話いたしますと、今共産党として一番力を入れておりますのは、軍事思想の普及とい
つていいのじやないかというふうに考えるのです。それは新綱領から出て参りまして、昨年の二十二回中央
委員会総会の決定にも、むろん強調されておるのでありますが、本年になりましてから、党の非公然の機関紙などで、非常にその点が強調されておりまして、特に労働者に対しまして、議会主義ではもう間に合わない、合法主義のわくを越えなければ事態は改善されないということを、しきりに強調しておるわけです。その
一つの例を申し上げますと、ことしの一月に出ました「労働者階級の闘いと新しい軍事の任務」という文書の「昨年の闘争の成果は何か」というところで、「炭労、電産、国鉄等の基幹産業の労働者は、社会民主主義の思想と戦術が、どんなに有害なものかに気づき、社会党左派、総評、単産幹部の議会主義を憎み、その裏切りと分裂策動にもだえるがごとき」云々ということを書きまして、さらに「これは労働者階級の思想的政治的前進であり、ストライキ労働者が身をも
つて闘
つた大衆自衛の行動と組織は、労働者階級の思想的政治的前進として高く評価しなければならない。」云々ということを言
つております。最近では公然機関紙であります。アカハタの論調すら、そういうふうな傾向をと
つておるのでありまして、最近、指導階級としての労働者階級という主張がございましたけれ
ども、それな
どもそういう
意味で非常に注目されなければならないというふうに考えておるわけでおります。
このようにして一般大衆あるいは特に労働者を対象としまして、軍事思想、暴力主義的な思想の宣伝に非常に努めておるのですが、一方、軍事
委員会以下の特別な軍事組織を中心としまして、軍事
委員会ないし中核自衛隊とい
つたような軍事組織の拡充という問題と、それから軍事訓練、武器の収集とい
つたような直接の軍事活動をや
つておるわけであります。特にその重要なものとしまして、これは記名がないのでありますけれ
ども、本年の三月十五日に「Y組織活動を強化せよ」、軍事組織活動を強化せよという
意味でありますが、この名前の通達が出ております。そこで「武装闘争におけるわれわれの二つの任務」というところで、
一つは先に申し上げました軍事思想の普及ということを申しております。その次に、武装組織を組織として運用指導するということを申しておるのでありまして、ここで中核自衛隊がなぜ解消したか、昨年の上半期の、非常に暴力
事件の頻発した時期において、中核自衛隊が多数結成されたというふうにいわれたのでありますが、それはまだ組織として確立してないものを、中核自衛隊として評価したものもあるというような自己批判をや
つておりますけれ
ども、なぜ解消したかということを検討しまして、これをどうするかという組織面の指示をいたしておるのであります。それで、そこに初めてこの中核自衛隊の統一司令部というものを設けなければならない、従来は軍事
委員会が直接の中核自衛隊の行動の指揮までしてお
つたけれ
ども、それではいけないというようなことを言いまして、統一司令部という考え方が出て参
つておるのであります。
それから、おそらくそれと同じときに出されたのではないかと思うのでありますが、「憲法闘争を強化するためのZ活動を組織せよ」という文書がありまして、こでは武装闘争を強化するための武器活動を組織せよというふうに読めるのでありますが、これでも
つて武単の製造、収集、製作、保管というようなことを具体的にいろいろ指示しておるのであります。
それで、この軍事組織なりあるいは武器の問題につきまして一般的に言えますことは、革命は結局労働者階級、国民大衆の手でやらなければやれない、そこで中核自衛隊なんかも特別な組織というよりは、むしろ直接の、会社とかあるいは居住区域、経営や居住、つまり生産点、生活点に基礎を置いたものをつくらなければならない、学生とかあるいは日雇い労働者の特殊の団体であるとかいうようなものではならない。それから武器の方も、高度のものも研究しますけれ
ども、
自分らの手元にある、身のまわりで間に合うもので、しかも発見されても弁解のできるようなものを用意しなければならぬというような具体的な指示をいたしておるのであります。この中で特に注目しなければならないと思いますのは、最後のとろこで、武装闘争が武器の面で制約されるような事態が生ずるならば
責任は正人であるということを申しておるのであります。従
つて軍事の
責任者としましては、情勢がいつどのようにかわ
つて来るかもわからない、その場合に
自分たちの分担しておる軍事面の準備が不足であるということでは、
責任が非常に重大であるという焦慮の念を現わしておるように思うのであります。このような指示でございまして、これに基いて実際面においていろいろな活動が行われております。たとえば統一司令部という名前を用いましたビラなどが数箇所で発見されております。それから
日本共産党と
関係のある人物が武器を携帯しているところを検挙されたというような事例が幾つかございます。そのほかにも武器の点について、相当高度のものを準備しておるという、相当確実な
情報があるのであります。
今後どういうふうな点を気をつけなければならないかという点でございますが、これは今まで申しましたような、共産党の方が持
つて行こうとする暴力革命の準備の段階に従
つて、対処して行くということになると考えるのであります。私
どもは情勢一般を判断しまして、共産党のいろいろな動向を分析して、大体こういう方向に行くのではないかというふうに判断して参
つておるわけであります。そんな
意味におきまして、一方において平和運動をや
つておりますけれ
ども、他面において、従来に比べますと、非常に地についた、着実な軍事活動に
なつて参
つたわけであります。それに関連してもう
一つ気をつけなければならないのは、労働者のいわゆる思想の革命化というような
意味と、それから直接の労働争議なんかを結びつけまして、また再び生産管理方式が相当とられるのではないかということを、実は考えておるわけであります。
それから行動を起す時期につきましては、最近国際的連帯が非常に強まりまして、そういう
意味で、国際情勢というものの変化に従いまして、必ず
日本共産党その他の行動も規定づけられる。従
つて日本共産党だけの条件を見てお
つたのでは、その行動は全部はわからないというふうに考えておる次第であります。