○館
委員 私は
労働省農民党を代表いたしまして、
政府原案及び
修正案いずれにも
反対するものであります。
政府が
保護政策をとりながら、
日本の
海運、ことに
外航海運を伸ばして行とうということは、当然
国民として考えなければならないことでありますけれ
ども、しかしながら
海運といわずどの
企業でありましても、
資本主義制度下において自由
競争を許している態勢をそのままにいたしておいては、この
保護政策によ
つても
日本の
海運は窮極において救われない、私はそう考えるのであります。それと同時にその結論は、いわゆる金
融資本の確立になり、金
融資本を提携している大造
船会社あるいは大
海運業者の利得、が維持されるにすぎない結果になると思うのであります。そういう
意味において、国が
海運保護政策をと
つて助長をして行くということには
賛成であるが、現在の態勢のままではこれは不可能であり、失敗をしてその
保護政策もむだにな
つてしまうだろうという
立場において、この両案に
反対の煮を表明するものでありますが、なぜむだになるかという点を、五項目くらいにわた
つてお話をしておきたいと思うのであります。
現在
金利の補償をやるとか
損失補償をやるとかいうことの根本
原因は、
造船の
船価が非常に高いということである。しかしこの
造船の
船価が非常に高いということは、アメリカ依存の一辺倒のために、中共
貿易その他の近東
貿易が非常に阻害されておるという結果から、
鉄鋼及び石炭等の原料価格が非常に高いことである。これを是正しなければ追いつかないのであります。たとえば重量トンートン当りの建造費は、イギリスに比べて二割高いのであリます。
金利高のために
造船及び
船舶経営が非常に困難であるということでありますが、この
金利高の問題については、
政府が低
金利政策を全般的に施行するがごとく、せざるがごとく、この対処策がきわめてあやふやなために、金融
業者としては高
金利政策を引きおろさないためであります。そのために
船舶経費としては
金利が四八%を占めておる。これをイギリスに比しますと、イギリスの
船舶経営における
利子のパーセンテージは二五%にな
つておるのであります。かくのごとく建造価格の高いこと、
金利の高いことがどこへ行
つておるか。すなわち甲板、機関あるいは司厨等の船員の賃金の低下にしわ寄せをされておるのである。
船舶経費の中に
金利が四八%を占めておるのに、これらの
労働者の経費は
日本ではわずかに一〇%しか占めておらないのである。しかるにイギリスでは
船舶経費の中の
労働者の賃金の率は二七%、およそ
日本の三倍近くにな
つておるのであります。イギリスの船員に比べれば、
日本の
労働者の賃金はわずかに六分の一にしか達しておらない。これらの
金利、高
船価のしわ寄せが、船員の
労働条件におびただしく押しつけられておる。しかもこれが乗組船員だけならいいけれ
ども、
造船労働者及び港湾
労働者にしわ寄せされているのである。
従つて造船労働者の賃金が低くなり、しかもその雇用は打算的に臨時人夫を使うような状態にな
つて、港湾
労働者においてもかくのごとき状態を現出しておるのであります。これらは、
政府の
金利高に対する
政策及び原料高を阻止する中国
貿易なきために、
経営に非常に困難する
経営者に非常に
利益を与えるばかりでなく、その
自由主義経済のために、これに使われておる港湾
労働者、
造船労働者及び船員その他に対する圧迫が非常に大きくな
つているのである。これを是正しないで、いたずらに金
融資本、
造船業者に対する
補給金あるいは
利子の
補給のみに集中しておることは、
自由主義政治のもとでは当然でありましようが、われわれはこれに納得し得ないのであります。
さらにそれでは
経営者側ではどうか。大体
日本の内航あるいは近海の
経営をや
つておる
船舶業者は、
船舶業者のうちの中堅的
経営者であ
つて、最も大事な層に属する人たちである。しかるに内
航船舶は今百万総トンが数えられておるのでありますが、その二三%は遊休船として遊んでおるのであります。遊んでおるということは、内航、近海をやる中堅
船舶業者には非常な痛手であるが、何がゆえに遊んでおるか。いわゆる中共
貿易、ソ連
貿易がアメリカの阻止によ
つてできなく
なつたがために、かくのごとく百万トンのうちの二十三万トン、三分の一が仕事ができない状態である。しかも
海運における国際
貿易戦が激化するに従いまして、すでに遠洋
船舶が近海
船舶の方に割込みをや
つておる。いよいよも
つて中堅船主
業者の苦痛がおびただしくな
つておるのが
現状なのであります。そのために、これらの船主は自分が
海運業者でありながら、そのみずからの
海運業を捨てて、大
海運業者の用船
事業をやり出し、しかも用船料を割引きする。その
経営をするために借入金をしなければならぬし、借入金の返却についても何とかしなければならぬという状態でありますが、さような
不況にあえいでいる
日本の中堅
業者をどうするかという対策に、
政府は触れておらないのであります。ことに同じ
海運業者である機帆船の連中に至
つては、実に
経営が困難である。一九五一年以来の
海運のもうけのときには、一般の
海運業者は非常にもうけておる。しかも上半期には二六%、下半期においては九三%もの
利益率を上げておる。しかも
配当も非常に大きな
配当をや
つておるが、その間に処する
労働者の賃金のベースがどういうものであ
つたかということを、
自由党とその内閣は十分に回想してみる必要がある。そういうことが今出されたこの
法案によ
つてどれだけ配慮されるのであるか。
自由主義経済をとり、
資本主義
経済のもとに
自由主義経営を許してお
つては、
労働者の
立場というものはいつまでた
つても改善はできぬのである。
しかも
政府は敗戦以来この
造船事業あるいは
海運事業に対してどれだけの費用を投じておるか。二十六年度までに千二百四十億円を費しておるのでありますが、そのうち三四%は見返り
資金あるいは
復興金融金庫、そういうところからで、四百何十億円の金を
政府自身がつぎ込んでおる。そうして今こういう
法律案が出る前に、すでに
政府は重大なる決意をも
つて海運助成に当
つて来ておるにもかかわらず、
現状がこの
通りの状態であるどいうことは、
政府の責任はきわめて重大であるといわなければならない。それにもかかわらず、さらに
利子補給をやると同時に、
損失補償もここにカバーしてやらなければならぬという
理由はどこにあるか。しかもそれをや
つて日本の
外航船舶が国際場裡において
競争に耐え得るかどうかという問題であります。実際現実を見ますると、運賃同盟その他の関係で、
日本国内の
大会社のおのおのが運賃同盟に加入したり、同盟外の運航をやるというふうに、国内それ自身における主要な
外航の
船舶業者、あるいは三井
船舶とか、大阪商船、
日本郵船、あるいは国際
海運ですか、そういうのが国内的に
外航の定期航路をとるために、いかに激烈なる
競争をや
つておるかということはおわかりの
通りであります。そうして国内的にその
競争をやりながら、さらに世界的
不況の中に立
つて日本が貨物を吸収しようとかかるようなことは、非常に困難なことである。もし
日本がここに
保護政策をとるとするならば、これらの
大会社が一挙にして社会化する方向をとりながら、そこに国の費用をつぎ込んで行き、国の
政策を集中して行くということであるなら私は合点が行くのであるが、せつかくの血税を集めた大
融資を、今まで七百億、五百億とつぎ込んで来た。しかもそれが見返り
資金であるならば、大衆に食糧を売りつけた大切な金である、それをつぎ込んで来ておりながら、今失敗をしている。
さらに朝鮮休戦がきよう行われるのであるが、朝鮮の休戦が行われることによ
つて軍事物資が動かない、この軍事物資が動かないということは
日本ばかりでなく、世界的な
情勢である。そうして貨物の収奪が、世界
海運業者の間に火花を散らして闘われているこの際に、しかも
日本国内が一本で行けばいいけれ
ども、さらに
日本の国内においてはこの
外航船による
利益をとるために、あるいは貨物をとるために、各
大会社が相争
つておる状態のままに捨てて置いて、そうして
日本の大切な税金からする
補助をこれに与えて行くという
保護政策は、
政府の金を単に
大会社に与え、
従つて大金融をつぶれないようにし、
従つて大
造船所を維持するような方向にのみ効果があるのであ
つて、
日本の対外的な
保護政策の
目的は、実に的はずれな結果に終るであろうということを私は危惧せざるを得ないのである。
しかも
造船をする場合には、適格船主の選定ということを運輸省でやられる。この適格船主の選定ということはどういうことであるか。このために函館ドックにいたしましても、どこの小さいドックにいたしましても、船をつくるために船主と協定をするが、その船主がいわゆる大金
融資本とのつながりがないために、いつも負けておる。そうして大船主に建造の
命令が集中される。大船主に建造の
命令が集中され、許可が集中されますと、
従つてそれに
資本的つながりを持つところの大
造船所にその建造が注文されて、零細な画館ドツクあるいはその他の小さなものは、いつも運動費ばかり多額に食
つて、時間を費して一そうも当らないという結果になる。今日の
船会社に対する金融
政策、ドツク
会社に対する金融
政策というのは、如上述べて来たことくで、
経営の面においても近海航路あるいは内航の中堅船主
業者をして、実にはだ寒き思いをさせておる
現状である。この
補給金の取上げ方、あるいは
利子の
補給方、あるいはこの適格船主の仕方においていかなるお考えを持つか、私がここで説明するまでもなく明らかなことなのである。
こういうようなことで、この
法律案がまたさらに出されることは、全体的に見て
保護政策の完成を望み得るものではなく、かえ
つて逆効果になり、しかも国際
競争における運賃のダンピングまでして、おのおの国内において相争
つており、また集荷のために国内の
大会社がダンピングして争
つている。そういうことに対して、
政府はいかなる態度を持ち、いかなる方針を持
つて、大局的にこの
法律案を出したかということを考えざるを得ない。私はそういう
意味において、
保護政策をと
つて行くということには
賛成であるけれ
ども、
現状の
資本主義
経済のもとにおいて船主に
自由主義経営をやらせておいてこれをや
つたんでは、三文の価値もないし、
従つてまたそこに働いている
労働者諸君、
日本の中小の
船舶業者及び機帆船
業者、それらにまつわ
つて今日ようやく生活を営んでいる大衆の生活改善は、実に困難であるという
意味において、
賛成をするわけには行かないのであります。
労働者でこれに対して
賛成をしている者も中にはあります。これは何とかして自分の
造船主、自分の
会社に一つでも多く船を持
つて来なければ、自分たちの首が危ういぞという気持で
賛成しているのであります。その内情は
労働者として実に苦しいのである。しかしながら
労働者がそういう弱い
立場から
賛成しているにもかかわらず、また
経営当局は
労働者に手伝いをさせているにもかかわらず、
労働者に
経営参加をさせたことがあるか。
労働者の賃金要求のときにどういう態度をと
つているか。
労働者は純粋であります。だから、船を
会社に持
つて来れば
労働者の首が助かる、
労働者は仕事ができるという
意味で、
経営に対して実に良心的な応援をしているにもかかわらず、いまだか
つて造
船会社、
船会社において、あるいはその他の
企業において、
労働者のこの純真さを買
つて経営に参加させて、相ともにこの
企業の進展をさせようとして、良心的な態度をと
つているものがあるかどうか。事実はそうじくやなして、かえ
つて賃金を上げることに停止を食らわせ、ストライキにロック、アウトを食わせている
現状において、私は痛憤やる方ないのである。その
意味でこの
法案に対しては根本的に
政府は考え直すべきである。
資本主義
経済のもとにかかる
保護政策をとることは、実に相矛盾した
政策であるという点からい
つて、この
修正案及び
政府原案に私は絶対的に
反対を表明するものであります。