運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-07-25 第16回国会 衆議院 運輸委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十五日(土曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 關内 正一君    理事 岡田 五郎君 理事 關谷 勝利君    理事 松井 豊吉君 理事 原   彪君    理事 川島 金次君 理事 鈴木 仙八君       岡本 忠雄君    木村 俊夫君       高橋圓三郎君    徳安 實藏君       南條 徳男君    山崎 岩男君       有田 喜一君    臼井 莊一君       松原喜之次君    山口丈太郎君       熊本 虎三君    館  俊三君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  愛知 揆一君         通商産業政務次         官       古池 信三君         運輸政務次官  西村 英一君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君         運 輸 技 官         (港湾局長)  黒田 靜夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   廣瀬 駿二君         大蔵事務官         (銀行局総務課         長)      大月 久男君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      齋藤 正年君         運輸事務官         (船舶監理課         長)      今村 榮文君         運輸事務官         (港湾局港政課         長)      町田  直君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ――――――――――――― 七月二十五日  委員楯兼次郎君、吉川兼光君及び首藤新八君辞  任につき、その補欠として木原津與志君、中居  英太郎君及び森清君が議長の指名で委員に選任  された。     ――――――――――――― 七月二十四日  国鉄北陸本線輸送力強化に関する陳情書  (第一二一九号)  国鉄電化を岡山まで延長に関する陳情書  (第二一七七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する  法律案(内剛提出第一五三号)  港湾運送事業法の一部を改正する法律案岡本  忠雄君外七名提出衆法第三三号)     ―――――――――――――
  2. 關内正一

    ○關内委員長 これより会議を開きます。  港湾運送事業法の一部を改正する法律案議題とし、これより質疑に入ります。山口丈太郎君。
  3. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 まず私は最初に提案者にお伺いしますが、この法律が成立いたしますと、本日本会議予定されておりまする独占禁止法改正条項に触れる点があると思いまするが、それについて改正する意思があるかないかを、まず第一番にお伺いいたしたいと思います。
  4. 岡本忠雄

    岡本委員 ただいま御質問の点につきましては、仰せの通り昨日独禁法は委員会を通過いたしましたし、本日の本会議にかかつてりますおるので、これが通適しますと、十九条の見出しの部分の「及び事業者団体法」という文字を削る必要が生じて参ります。また十九条内の同じく「及び事業者団体法」という文字を削る必要が生じて参りますので、後ほど修正手続をいたし、皆さんの御了承を得たいと考えております。
  5. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただいまの御答弁で、独占禁止法に対する点は了承いたしました。  次に、私はこの法案について二、三重要な点をお伺いいたしたいと思います。この法の改正によりまして、一番必要なことは、運用の面でまず第一番にお聞きしたいのは、登録の問題でございます。業者登録をいたすにつきましては、これはやはり従来からそれに使用いたしまする労働者労働条件、持に労働協約及び就業規則を添付して申請することが必要であると私は了解をいたすのであります。もし労働組合がない場合においては、従業員の三分の二以上の署名による同意書を必要とすると私は考えますが、そういうことが私はどうしても運送事業許可を与える場合に条件にならなければならないと思うのですが、旧法によつてつて参りました従来の実際の運営の仕方、これから将来にわたつてこの法を改正した場合において、さらにそれを必要としますが、それについての運用をどういうふうにして行かれるつもりか、まず第一にお伺いいたします。これは政府委員からお答えいただきたいと思います。
  6. 町田直

    町田説明員 登録の際に就業規則あるいは労働協約条件とするということは、わが国の許可認可立法例にはあまり例がございません。それはいわゆる労働三法労務関係最低限度を保障しておるという面からであろうと思うのであります。私どもといたしましては、港湾運送事業法は、大体事業の健全な発達と公正な競争規定いたしておりますので、そういう面で現行法におきましては、登録基準なつておらないわけであります。今回の改正におきましても労務関係は、労働三法規定しておる事業の面は、港湾運送法でこういう方向に進むべく考えております。現行法におきましても一応そういうものを登録拒否条件にはいたしておらないのであります。
  7. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 どうも今の答弁で見ますと、業者間における無用の競争状態濫立することを防ぐことが、健全な事業発展であるというお答えでありますが、それは同時に労働条件の重要な一つ条件を備えていなければならない。単に労働法あるいはその他の法規にこれをゆだねるということだけでは、健全な発展理由の一方が欠けておると思うのでありましてそういう点では従来そういうことが問題になつていないといたしましても、この法改正後におきます運営の問題としては、労使における、この港湾関係の問題は、業種の健全なる発展、すなわち労働者の生活を確保するものであるという、きわめて健全な出発点から私の方には多くの陳情が参つておるのであります。けれどもそれが将来にわたつて労働条件その他の問題については、これは何らその業種許可に対して基準とはならない、もしくはそれを条件とはしないということで、野放しにされるということでは、これはあまりにもその健全なる業種発展ということに対して、片手落ちの措置ではないかということを強く私どもに申して来ておるのであります。従つて私は今の答弁では、そのような健全な組合の主張に対」ましては、納得をさせる説明ができないと思うのでありますが、その点について何らかの自信のある言明をこの際承つておかないと、はなはだこの法運営に対しましても、将来労使の間に思わざる摩擦を起し、それがひいては港湾運送事業に対しまする健全な発展を阻害する一つ理由に相なると思うのでありますが、いかがでしようか。
  8. 町田直

    町田説明員 お説の通りでございまして事業の健全な発達と申しますのは確かにその使用されておりまする労働者の健全な運営発達ということが中心になつて参ります。特に港湾運送事業におきましては、その大部分労務関係に占められておりまするので、港湾労働の健全な発達というのが、事業の健全な発達であるということはお説の通りであります。そこで現在におきましても港湾運送事業法に直接規定はしてございませんが、港湾運送登録の際に、港湾労働者の数あるいは使用状況、そういうものを調査いたしております。なおこの労働基準法その他労働三法運用いかんにによりまして、あるいはこれを就業規則その他を登録の際の添付書類にするというような方法によりまして、なお労働関係を十分に発展させて行きたいということを考慮いたしたいと考えております。
  9. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 大体今の答弁でいいと思いますが、なお私は申し上げたいのでありますが、これについては基準法施行に伴いまして、これを厳重に守ることはある意味から申しますると、日本の現在の産業実情にはそぐわない点があるかとも言えまするけれども、特にこの港湾事業などにおきましては、そういう点もあろうかと存じます。しかしその基本精神まで曲げて改変するわけには参らないと思う。そこで基準法の実際の実施にあたつて、私も各職場を見て参りますると、たとえば就業規則などの公示などについても全然やられていない。労務者就業規則がしかれているのも知らない、このような状態にございます。また一方におきましては、労働協約等におきましても、ほとんどが協約の結ばれていないような向きが多いのであります。これは一面から見ますると、きわめて小さな事業団体濫立による競争がはげしいために、一面事業体から申しますと、そういうものに対するひまがない。反面から申しますと、これはそれに名をかりて基準法その他労働法関係のある法律の実際の施行を怠る。そうしてただいたずらに労働条件を悪くしているという実情にあると思うのであります。従つてこれらの問題を完全に防止することはできなくても、やはり為政者として、監督者として、ある程度防止する必要を痛感いたすのであります。特に海上作業などにつきましては、危険の防止等につきましては、十全措置を講じなければならないと思うのでありまして、それはできぬことではないのであります。従つてこれらの問題についてさらにもう一歩進めて、この法律施行されます場合の施行規則としてでも、盛り込んで行く意思があるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  10. 町田直

    町田説明員 施行規則に入れる方法でございますが、先ほど申し上げましたように、添付書類といたしまして留保条件とするというような方法で、施行規則に織り込むというような方法を考慮いたします。
  11. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 その点はその通り実行されるということでありますから、それで満足いたしたいと思います。  次にお伺いいたしたい点は、第九条の問題でありますが、今日の港湾運送業というのは、多種多様な業者濫立をいたしまして、その濫立から荷役率の採算のとれないにもかかわらず、競争を激化している状態にあるのでおります。こういうものを阻止するために設けられるものと思いますが、この条件だけをもつていたしましては、十全のそういう措置は講ぜられないのではないか。従つてこの具体的な対策というものを考えた上で、この九条の規定を置かれているかと思いますが、その点に対する具体策をお伺いいたしたいと思います。
  12. 岡本忠雄

    岡本委員 登録基準につきましては、大体政府考え方等をいろいろ検討いたしてみたのでございますが、各港湾実情に応じて当然異なつて参るわけでありますけれども五大港をとつて見ますと、大体一般港湾運送事業の場合におきましては、船内労務者を六十人程度、はしけにつきましては二千トンから三千トン程度沿岸労務者は二十人から四十人程度の線を大体の基準として考えたい、こういうことのようであります。しかし実体から見ますと、大体適当と考えますので、提案者としましては了承いたしまして、本案のごとき案をつくつたわけでございます。従いましてこの基準に合わないところの船主のごときものは登録を受けつけない、拒否するということに相なつております。
  13. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 第九条の第一項と第四項の関連についてひとつお尋ねをしたいのでありますが、この九条によりますと、「港湾運送登録を受けた者、(以下「港湾運送事業者」という。)は、運輸省で定める手続に従い港湾ごと運賃及び料金を定め、これを実施しようとする日の少くとも三十日前までに、運輸大臣に届け出るとともに営業所において利用者の見易いようにこれを掲示しなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。」というように実はなつております。ところが四項によりますと、「運輸大臣は、前項の命令をした場合には、運輸審議会当該港湾運送事業者に対し、当該港湾で開催する公聴会において、運賃及び料金が左の各号の基準に適合する旨を述べる十分な機会を与えた後、提出する答申を得て、当該運賃及び料金が左の各号の基準に適合するかどうかを審査して運賃及び料金変更の要否を決定する」、こうなつておるのであります。まだあとありますが、その但書に、「第一項の規定による実施予定の日から三十日を経過したときは、この限りでない。」一項におきましては、この三十日前までに運輸大臣に届け出る、こういうことになつておりますが、その点に対しては、この但書と第一項本文との間における関連においては、ちよつと矛盾しはしないかと思いますが、これの運用のいきさつをひとつお答えいただきたい。
  14. 町田直

    町田説明員 お答えいたします。ただいまの点は、運賃料金決定いたしまして公示するのは、実施予定の三十日前でございます。その間に異議の申立てがございました場合には、延期命令を出しまして、ここに書いてありますような手続を経て、変更をするなり、あるいはしないなりの決定をいたすわけでございます。その延期命令が出ました場合には、三十日たつ前でありましても、三十日たちましても、当然実施は延期されるわけでございます。但しそれが予定の日から三十日たちましたならば、決定いたさなくても実施されるわけでございます。それを今回は三十日を六十日と変更いたしましたのでございます。こういう事情で別に矛盾はないと存じます。     ―――――――――――――
  15. 關内正一

    ○關内委員長 本案に対する質疑を一時中止いたしまして、次に外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する法律案及び本案に対する修正案一括議題とし、質疑に入ります。通告があります。有田喜一君。
  16. 有田喜一

    有田(喜)委員 今回提案されておる外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する政府提案に対しまして、われわれはあきたらないものがたくさんございますので、昨日自由党両派並びに改進党三壁間における申合せ協議決定事項に基きまして、これに対する修正案提出したのは御承知通りであります。つきましては、修正案提案理由に申し述べておきましたように、法律決定すべきことは法律修正した「のでありますが、三党間の協議決定事項には、法律でなく行政措置でやるべき腹があるのであります。その点について若干問いただしておきたいのであります。  まず第一に伺いたいことは、今回の三党申合せ事項として、二十五年度以降の新造貨物船及び二十六年度以降の新造タンカーに対する開発銀行の貸出し金利は、実質上三分五厘とすることになつております。これがために政府は一分五厘の金利相当額開発銀行に補給するとともに、開発銀行自体においては、現行の七分五厘を五分まで引下げるということに申合せが相なつておるのでありますが、政府、ことに大蔵当局は、右の申合せ通り開発銀行をして実施せしめるところの用意があるかどうか、まずこの点をお伺いしたいのであります。
  17. 愛知揆一

    愛知政府委員 ただいま有田さんからお話の、先般の予算修正基礎になりました外航船利子補給の問題につきましては、予算修正基礎になりましたときの申合せ政府に御連絡をいただき、政府の方で積算いたしました基礎になつたのが、御承知通り貨物船についてはいわゆる第六次船以降、タンカーについては第八次船以降ということになつておりますので、予算上の措置といたしましては、その措置通り修正がされておるわけでありまして、そのことは衆議院予算案修正案提示者の御説明にも明瞭でございますし、また参議院に移りましてからの提案者並びに政府側から御説明がありました中にも明瞭になつておりますから、その方は予算上の措置がとられておるわけであります。そうしてただいま御質疑の点は、その予算上、法律上の問題以外に、行政的な措置が必要になるのでありますが、これは御指摘の通りでございます。従つて政府といたしましては、開発銀行金利を下げることについては、行政上の責任を負うわけでございます。ただ手続上の問題といたしましては、開発銀行当事者がさような決定をしなければなりませんし、またものによりましては、日本銀行政策委員会権限なつているものもございますから、そこできめてもらわなければならぬわけでございますが、そういうきめ方をしてもらうということについて、私どもとしては責任をもつて措置をしなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。
  18. 有田喜一

    有田(喜)委員 開発銀行に対する措置は、今大蔵当局愛知政務次官の話によつてわかりました。先般の三党申合せのときは、なるほどカーゴは六次船以降、タンカーは八次船以降ということに一応きめてありましたが、あのときに、この法案審議伴つて、ほかに適当に織り込むことが正しいと思われるところは織り込んで行こう、こういうことになつたのであります。その結果、先般タンカーは七次船後期から八次船と同じような扱いをするのが適当である、こういうふうに三党間で一致いたしまして、昨日提案いたしました修正案には、さような意味合いで話しているのでございます。おそらく大蔵当局もその後の三党間の申合せによつてタンカーは七次後半から八次船と同様に扱う、こういうふうにお考えになつていると思いますが、念のためにその点を明らかにしていただきたいと思います。
  19. 愛知揆一

    愛知政府委員 この点は率直に私申し上げたのでございます。と申しますのは、現在御承知のように、修正された予算案参議院審議の最中でございます。参議院に対する政府側予算修正案提案者の御説明も、六次、八次ということになつておりますし、従つて予算書の上にもそういうことがはつきり出ているわけでございます。従いまして、昨日有田さん外発議者の御提案によつて出ておりまする法律案修正案が、タンカーについて七次後期が入つているということは私も了承いたしておりますが、これは予算修正案がきまつてから後にはつきり出て来た問題でございますから、もし今出している修正案で金額的に、あるいは予算総則の文章の上でカバーし切れない問題が起りましたならば、これはすみやかに修正しなければならないと考えております。でありますから、私ども了解では、法律案衆議院修正され、そして参議院修正案が成り立つたならば、両院の意思がそれによつて決定するわけでありますから、その決定通り動き得るように予算上も行政上も措置しなければならない、こういう段階になつております。私どもとしては、その予算修正案に関する限り、その積算の基礎は一応六次になつているということだけは明確にしておきませんと、参議院審議に際して問題にもなりますので、この点は明確にさせていただきたいと思うのでありますが、それとは別個に、ただいま申しましたように、十分措置するつもりでございます。この点はくどいようでございますが、電信電話料金値上率が、政府原案の二割五分から二割に下げられた修正が、予算修正後に法律で行われましたのと同様の筋合いとして考えるべき問題だと思つております。
  20. 有田喜一

    有田(喜)委員 大体今の愛知政務次官答弁によりますと、法律でこういうことになるならば、予算も適切な措置をとる、こういうことでありますから、その点は了承いたしますが、実は法律後期を入れることに明らかにしております。われわれ三党間の大体の申合せによりますと、あの予算通つた場合、おそらくこれを交付するのに多少の手続がいるであろう。予算面は八月一日からになつておるが、数日の交付の手続がいるだろう、そういうことをあれこれ考えれば、大体あの予算でまかなえるのではなかろうか。それをしもまかなえない場合には、またあらためて他日予算上の措置をとる、こういうようなことになつておりますから、政府当局もそれを御了承の上善処されたいのであります。  次にお伺いしたいのでございますが、三党申合せ事項として、今のタンカーの七次後半を加えるということとともに、金利負担力の非常に少い外国よりの購入船、すなわち買船金利について、開発銀行金利は現在の七分五厘を五分に下げるそれから日銀外貨貸しによるものは、五分を二分五厘とすることにしたのでありますが、大蔵当局はこれを開発銀行及び日本銀行実施せしめる用意があるかどうか、その点を伺いたいのであります。
  21. 愛知揆一

    愛知政府委員 ただいまのお尋ねは、三党の申合せといたしまして、金利負担の少い外国からの購入船に対する金利について、開発銀行の分は現行の七分五厘を五分に下げる。それから日本銀行外貨貸しは、現行が五分でありましたと思いますが、これを二分五厘に下げるということにつきましては了承いたしております。ただ先ほど申し上げましたごとく、手続といたしましては、それぞれ法律上の権限に基いて、開発銀行当局がきめるというかつこうになりまするし、また日本銀行外貨貸しにつきましては、日本銀行政策委員会権限なつておる事項でもございまするので、これらにつきましては、行政上の措置といいます、か、事実上の連絡協、議によりまして政府がお約束をいたしましたことは必ず実現できるようにするという責任一を、われわれとしては負うものでご事います。
  22. 有田喜一

    有田(喜)委員 政府行政上の措置として、日銀並びに開発銀行にその措置をとらしめるように責任を待つて当るということでありますから、私は愛知政務次官言葉大蔵当局を代表しての言葉、ひいては政府代表言葉としまして、それを信頼してその点は了拭いたします。  次にお伺いしたいのですが、この海理政策につきましてもう一つ大きな問題は、造船用鋼材の問題、これは御承知通り特殊規格による割増料があるのでございますが、これが今日の日本造船単価を高くしておる一つ理由であります。そのために、せつかく外国からの見合いがあつても、輸出ができないというような事情にありますので、これまた三党申合せによりまして、造船用鋼材価格を引下げる政策といたしまして、製鉄業者日本開発銀行より受けておる融資については、現行の一割の金利を七分五厘、また日銀別品外貨貸しによるものについては、現行の五分を二分五厘に引下げることに申合せしたのであります。これまた政府はこれを開発銀行及び日本銀行に対して、それぞれ実施せしめる用意があるか。前にお尋ねした趣旨と同じ意味合いでありまして、同様という御返答をくださつてもけつこうでありますが、とにかくその点を明らかにしたいと思います。
  23. 愛知揆一

    愛知政府委員 前にお答えいたしましたと同様でございます。ただちよつどここで私の方の希望をつけ加えて申し上げたいのでありますが、三党の申合せということをわれわれ了承しておることはもちろんでございますが、すでに法律案として、あるいは法律案修正案がここに議せられておりまするか、その御趣旨が必ずしも法律の案文り上には現われておらぬものがございますので、これは私どもから言えば、いささか言い過ぎて、かつてなことにはりますが、必ずしも法律案の上でなれてもよろしいのでございますが、何りかの形で政府に対してこういうふうに要請したのだという国会の御意思が明確になりますると、われわれが責任をとりやすくなる。開発銀行当局あるいは日本銀行政策委員会に対しましても、話がしやすくなる。ざつくばらんに申しますると、そういう希望を持つておりますことをあわせて申し上げておきます。
  24. 有田喜一

    有田(喜)委員 実はわれわれもそのことを考えておるのであります。法律事項にしようと思つたが、これは立法技術上の関係もあり、必ずしも法律事項でなくてもよろしい。これは行政上の措置として、従いまして国会意思をほかの方法で表現いたしまして、政府責任を持つていただくようにいたします。愛知政務次官の今のお言葉は、われわれもまつたく賛成であります。  次にこれと関連いたしまして、運輸大臣並びに通産当局にお伺いしたいと思います。ただいま申しました三党申合せ製鉄業者に対する日本開発銀行及び日銀別口外貨貸し金利を、それぞれ引下げることによりまして、製鉄業者をして造船用鋼材価格を約一万円引下げることにいたしておるのでありますが、そのことについていかなる具体的措置を講ぜんとされつつあるか。この方途なり、今やつていらつしやる實情、並びにわれわれの申合せ事項に対する政府の決意のほどをお伺いしたいのであります。
  25. 齋藤正年

    ○齋藤説明員 お答えいたします。今度の金利の引下げの範囲でありますか、これは製鉄業者のうちで、造船用の規格鋼材を供給しております六社に対する分だけにつきまして、引下げるというふうにわれわれは聞いております。そういたしますと、それが本年度の当初、すなわち本年三月末のこの六社の、開発銀行並びに日銀別品外貨貸付の残高から計算いたしました金額は、合計約十億七千万円程度になる見込みでございます。この金額はそのまま造船用の鋼材値下げに貸し出すということにつきましては、この六社いずれもまつたく異論はございません。すでに打合せをいたしまして、これら六社はこれをそのまま何らか政府のきめるような方法で、造船用鋼材の価格引下げに使用するということにつきましては、異論がないと申しております。なお製鉄業者といたしましては、造船用鋼材の値段を幾らかでも引下げるべく、従来から努力しておつたわけでございます。その努力は依然として継続いたしまして、この金利引下げによる分以外にも、なおできる限り努力をして引下げたいという意向を持つておることを、私から御報告する次第であります。但しその金額が一万円になりますかどうか、これはずつとこまかい計算をいたさなければわからないのでありまして、現在では、はたしてちようど一万円になりますかどうか、まだそこまでの計算はいたしておりませんので、お答えできない次第でございます。
  26. 有田喜一

    有田(喜)委員 今通産省の方から御答弁がございましたが、われわれは造船用鋼材の価格をトン当り約一万円引下げるところに目途を置いておるのです。その方途として、今の金利措置を講じようというのであります。それで十分でなければ、また他の方法を講ずる必要があると思います。何と申しましても、これは運輸大臣がいかに決意をもつて当るかということにかかつておると思うのであります。とにかく今日造船船価を安くするということは焦眉の急務であります。しかもこの鉄鋼価格を安くするということは、非常に大事なことでありますので、運輸大臣がこれに対していかなる決意を持つておるか、その点をお伺いしたいのであります。
  27. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この鋼材の価格引下げという問題が、造船の問題については一番重要な問題であることはよくわかります。この特殊規格鋼材の値下げに的確にこの金利負担軽減分をリンクせしめるためには、たとえば金利負担軽減相当額をプールいたしまして、これを鋼材使用量に応じて按分して行くなど、適当な調整方法について、製鉄業者と造船業者と相互に話合いをさせまして、自主的にやらせたい。私どももこれを助長して行くつもりでありますが、その方法によりまして、まず鋼材値下げと今度の金利負担軽減とがうまくリンクして行くだろうと思います。
  28. 有田喜一

    有田(喜)委員 大体政府の考え方は了承いたしましたが、今の金利の引下げばかりでは、トン当り約一万円の引下げはあるいは困難な場合があるかもしれません。そのときにはまたわれわれが乗り出して云々せぬでも、主管大臣であるところの運輸大臣がしつかりと構えられて、適切な方途を講じてもらう必要があると思うのですが、私はこの金利引下げだけで一万円安くなれはそれでけつこうでございますが、そうでない場合でも、運輸大臣は何とかしてトン当り一万円程度のものは安くするという決意を聞きたいのであります。その点もう一度はつきりお答えを願いたいと思います。
  29. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 鋼材の価格引下げで、造船の値段が相当下るということは当然考えられるのでありますが、なお造船業者と船主との話合いによりまして、船の設備とか擬装の簡素化をできるだけはかるということが、一つの大きな問題として考えられて来る問題でございます。それからまた造船業者に言わせますと、自分たちも苦しいので、企業の合理化をはかつて経費の節約をしておると申しておりますが、さらにこれだけの政府の力が加えられますならば、自分たちとしては経営の合理化に努力いたしまして、船価が下るようにしたいと言つておりますので、政府としてもそういうふうに指導して行きたいと思つております。こういうことによりまして造船の値段が下り、世界の競争にも耐え得るように持つて行きたいと思つております。そのために努力するつもりであります。
  30. 有田喜一

    有田(喜)委員 私の質問と多少違つた答弁でありましたけれども、とにかく私たちは造船用鋼材をトン当り約一万円は安くするような方途を講じていただきたい。それと同時に、今運輸大臣が言われましたように、造船事業の合理化をはかり、また造船業者の企業努力によつて、現在の船価を一割ないし二割ぐらい下げて、大いに外国日本の造船を輸出するというようなところまで持つて行かなくてはならぬと思う。主管大臣として造船輸出が行くように御努力を願いたいと思うのであります。  最後に運輸大臣にお伺いしたいのでありますが、今回の金利引下げによるところの措置並びに造船用、鋼材の価格の引下げの措置、これらは何と申しましても海運業者並びに造船業者に対して、相当手厚い国家的恩恵であると考えるのであります。もちろん補給金の停止とかあるいは返還という道も講じられております、海運業者なり造船業者の自粛並びに企業努力が、私はきわめて大事だと思う。これらに対して主管大臣たる運輸大臣は、いかなる指導監督をなさんとしておるか、大臣の抱負を承りたいのであります。
  31. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これだけの金利引下げやら利子補給がありますのに対して、今度の法律の上にも一部現われておるのでありますが、経理の監査をする、また必要に応じて業務の方途について勧告をするというようなことによりまして、運輸省はこれだけの利子補給金利引下げによる援助の効果を如実に現わせるように、海運業者等を指導して行きたいと思つております。またこの法律の行き方以外におきまして、行政措置といたしまして、私ども日本の海運がこれによつてほんとうに世界の競争のレベルまで一応下げて闘わせようという案でありますので、これだけの政策をとられる以上は、業者としてはこれでうんと働いて、自分たちの中にも今までよりもより強い意味において、自粛あるいは自主的にいろいろ直すということもやつて、これによつて日本の海運界がりつぱに立ち直るように指導して行きたいと思います。
  32. 有田喜一

    有田(喜)委員 われわれ三が協議決定いたしましたこの修正案趣旨は、言うまでもなくわが日本の海運を大いに振興して、あわせて造船業を発達せしめ、そうして国際収支の改善はもとより、貿易の振興に資し、日本経済の自立を達成する、こういう大きな抱負を待つて、かような修正を加えんとしたのであります。大臣も今後大いに、従来にまきる海運業並びに造船業の重要性を認識されまして、叫大いにわれわれの期待に沿うように、ひいては国民の負託にこたえられるように、ますく習誉れんことを切望いたしまして、私の質問を終ります。
  33. 南條徳男

    ○南條委員 関連して……。今愛知次官に伺おうと思つたのですが、大きな問題ですから、大臣に御答弁願いたいと思います。今度のこの改正案によりますと、政府は昭和二十八年度の補償金として五十八億八千万円計上して曲るわけです。先ほどから話し合つているように、第七次船のタンカーあるいは買船等についての補償が増額になるような申合せもあるのですが、政府は五十八億八千万円のわく内で操作をするつもりか、この買船については別に予算を補正して圧額をする御予定なんですか。
  34. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 五十九億七千万円というのは損失補償の場合の、何といいますか、補償金の限度でございまして、これは今度の利子補給とは関係がないのであります。それは前に政府提案しておりましたものに対しまして、最初は貨物船だけに対して損失補償をする。ところが最近の状況から行きまして、油槽船をつくる場合にも、市中銀行が融資した額に対して、三割を限度として損失補償をするという、貨物船と同様の措置をする必要がある。従いまして前回は四十八億だと思いますが、今回はそれを五十九億に増額いたしまして、これは政府の方から提案しております。従いまして、先ほどの第七次後期の油槽船をこれに追加いたしましたが、これは関係がないのであります。それからこの損失補償の増額分は、これからつくるべき油槽船並びに貨物船に対するものでございます。それからもう一つ開発銀行に対する利子補給金の総額が八十五億、これには関係するのでありますが、この面は先ほど愛知政務次官から答弁がありましたように、予算は八次までの――油槽船は八次まで行つておる。もし予算修正の必要が起つて来ればそのときに考える。しかしもしこの中でやればその限度においてはやる、こういう、先ほど愛知政務次官が御答弁があつた通りに御解釈を願いたいと思います。
  35. 南條徳男

    ○南條委員 そうすると第七次船の、油槽船あるいは買船等についての補償の金額は、どのくらいだということがおわかりなんですか。
  36. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 損失補償の点はこれからつくる船でございまして、七次後期の方はすでにつくつたと思います。それから買船につきましては利子補給というものは必要ないのでございます。先ほど説明がありましたように、開発銀行並びに日本銀行別品の外貨貸し金利を引下げるという措置だけで、予算上は必要ないのでございます。
  37. 南條徳男

    ○南條委員 それに対しては政府は補償しないのですか。
  38. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 それには補償いたしません。
  39. 松原喜之次

    ○松原委員 この外航船舶の利子補給法は、ひとり運輸省に関係するだけでなしに、言うまでもなく通産省、大蔵省、経済審議庁等にも相当関連する重大問題でありますから、われわれが質問をなす場合におきまして、それが各省に関連する一つの問題となつて現われることもあります。すなわち一つ質疑に対して各省から答弁を得なければならないような場合も生ずるわけであります一従いましてわれわれが質問をいたしますには、どうしてもそれらの関係各省から、ある場合には大臣、ある場合には事務当局の御出席の必要が生ずることは当然であります。従いましてこれらの関係大臣及び事務当局が御出席なさるように、委員長の方で適切なおとりおとりはからいをお願いしたいと思います。
  40. 關内正一

    ○關内委員長 今の松原君の御発言のことですが、大蔵省からは銀行局の総務課長並びに主計局の主計官、通産省からも三名見えられております。以上お知らせ申し上げます。
  41. 臼井莊一

    ○臼井委員 ちよつと関連して……。船価高の一つの原因に、ただいま有田君から申されたように、鋼材の値段の引上げの問題について一つ方法として金利の低減ということで、一応トン一万円ということを目標にしているようでありますが、鋼材の引下げについては会社が合理化をして引下げる努力をすることがもとより必要でありましようが、もう一つ船舶用の鋼材の検査料を払う。これは何でも一万円くらいかかつているというように承知しておりますが、一方におきましては大分高いというようなことも聞いておりますが、もしそういう事実があるならば、ある程度引下げるということも一つ方法だろうと思います。その間の事情につきまして事実はどうなつているか一応お伺いしたいと思います。
  42. 今村榮文

    ○今村説明員 今お話がありました検査料一万円ということでございますが、それは検査料ではなくて鋼材のコストにかかつている規格料ではないかと思いますが、もし規格料であるといたしますれば、その内容を簡単に御説明いたしますと、現在鋼材につきましては、鋼材の建値は造船用の厚板につきまして、標準価格は四万七千円ということになつております。その四万七千円の造船用特殊規格鋼材の価格の中には、造船用の特殊規格鋼材は他の無規格の鋼材と違いまして、いろいろな成分の関係規定を要求されまして、特に国際的に厳重な規格が要求されておるわけであります。従いまして日本の製鉄メーカーといたしましては、設備、材料あるいは技術というふうな問題もございまして、イギリス等に比較いたしまして、エキストラ寸法の規格料、あるいはその品質の割増料、あるいは最近御承知のように造船の工作法が従来の鋲接方法から熔接にかわりました関係上鋼材の材質が特にむずかしくなりまして、ある部分におきまして、ギルド鋼、セミ・ギルド鋼という特殊な鋼材を使うことを要求されております。そこで先ほどから申し上げました寸法並びに品質、それから新たに加えられますギルド鋼、セミギルド鋼、こういうふうなものについての割増料を合計いたしますと、その四万七千円の厚板の標準価格の中には、大体においてそういうふうな割増が一万円程度つている、こういうふうに私どもは考えております。
  43. 臼井莊一

    ○臼井委員 その規格料というのは、私よく知らないのですが、それはやはり政府が規格の検査をしてあれするのですか。そうではなくして、実際のコストとして、試験料とか検査料でもコストには違いないでしようが、業者の内輪で、その規格等を審査する場合に必要なんでありましようか。その点かちよつと……。
  44. 今村榮文

    ○今村説明員 お答えいたします。今の規格料はコストとして入つておるわけであります。それはこまかい鋼材の生産コストの分析におきまして、いわゆる歩どまりの面で現われて来るのでありまして、その一部品質、寸法の規格等につきましては、かつて物価庁がありました当時、規格料そのものを明定したこともございます。現在は一トンの鋼材をつくるについて、造船用規格材をつくる場合に、通常のギルド鋼の場合には歩どまりが大体どのくらいになるか。普通の無規格のギルド鋼の場合にはどのくらいになるのか。あるいは最近のギルド鋼、セミ・ギルド鋼の一トンの生産の場合には、歩どまりがどのくらいになるのかというふうな歩どまりの面から、コストの計算に現われて来ております。
  45. 關内正一

    ○關内委員長 松原喜之次君。
  46. 松原喜之次

    ○松原委員 先ほど議事の進行について申し上げましたように本件は非常に重大な問題でございまし、さらにたとえば、これは補給金制度の一つの型として、産業政策の基本に触れる問題であります。従いましてこれはもとより経審長官あるいは通産大臣等から、その御意見を承る必要があると思うのであります。またこの金融問題といたしまして、金利政策あるいは予算全体としての編成方針等に対する御意見をも承らなければならないというような問題がありますから、従いましてこれは大蔵大臣でなければ、おそらくお答えが困難であろうかと思います。従いましてそれらの点に対する質疑は、それらの関係大臣が御出席になつたときに保留いたしまして、その他の点に関してこれから質疑を行おうといたすものであります。  そこでまず大蔵省の当局に承りたいのでありまするが、開発銀行の資金を、修正案によれば三分五厘、市中銀行のものを五分にまで利子負担を引下げるための補給金を与えることになつておりまするが、市中銀行にいたしましては、手取りたしか一割一分何厘かになると思いまするし、開発銀行に五分が七分五厘になると思いまするが、それははたしてそうであるか、そうしてまたそれに対するその資金コストが一体どれくらいになつておるのであるか、この点を承りたいのであります。
  47. 大月久男

    ○大月説明員 お答え申し上げます。まず開発銀行の件について申し上げますが、現在開発銀行の船舶に対する融資の利率は年七分五厘となつております。今般の措置によりまして開発銀行が収受いたします利子は、三分五厘になります。三分五厘と五分との差額は、国から補給金として開発銀行が収受することになりましたので、結論におきまして、開発銀行自体の収支から申しますれば、現在七分五厘の収益があるのが実質五分になる、こういう計算になるわけであります。これに関しまして、開発銀行の資金コストがどのくらいになつておるかということでありますが、御存じのように、現在開発銀行はもとの見返り資金の資金を引継いでいることと、それから復興金融公庫の資金を引継いでいる分と、それから新たに政府といたしまして借入れをやつております。これらの資金をもつて構成されております。一部は融資をいたしました金の回収金が含まれておるわけでありますが、それらを総合いたしますと、見返りその他から入りました政府の出資の面につきましては、これは根本的には資金のコストから申しますとゼロになつておるわけであります。それから資金運用部あるいは産業投資特別会計から入ります金は、現在六分五厘で借り入れることになつておるわけでございます。それでただそのほかに人件費、物件費等の経費もかかるわけでございまして、現在の開発銀行法律によりますれば、借入金は資本金と同額まで、こういうような計算になつておりますので、かりに出資を、資金コストをゼロといたしまして、同額の金を借り入れる、六分五厘の金を借り入れるといたしますと、ちようどコストとしては半分、そういたしますと三分二厘三毛というような計算が出るかと存ずるわけであります。ただそれは人件費、物件費が含まれておらないことと、それから本来日本開発銀行政府機関ではございますが、独立の採算をもちまして、銀行の形態をとつております。従つてこれは今政府に対して納付金をいたしておるのでありますが、この納付金を年幾らに見るかということによつて、そこにある程度マージンがいる。現在人件費、物件費を合せまして、大体一分見当を考えております。そういたしますと、先ほどの三分三厘三毛に一分を加えますと、四分二厘五毛という数字でございますが、これに国に納付金をするということまで考えますと、大体において五分見当の資金であるというように御了解つてけつこうかと思います。それから市中銀行の関係でございますが、現在一般に船に対して出ております金利は、日本興業銀行を中心といたしまして、長期信用銀行、一般の市中銀行等から出ているわけであります。長期の金でありますので、大体において三銭一厘で出ておるわけであります。一割一分見当になるわけでございます。従来政府から出しておりましたのにおきましては、これを実質運輸業者金利負担が七分五厘になるようにということで、大体三分五厘程度利子補給を考えておつたわけであります。今度の修正案によりますれば、海運業者金利の負担が實質五分になるように補給をするということでございますので、一割一分と五分との差の六分程度の補給金になる、こういうように御了解願いたいと思います。  なお市中銀行の資金のコストでございますが、これは銀行に大別をいたし、まして二種類ございまして、興業銀行、日本長期信用銀行というように債券をもつて資金を調達しております長期信用銀行、これは御存じのように金融債のコストが現在表面の利回りで八分五厘、これ異事に発行者のいろいろな経費等を加えますと、九分見当になつておるわけであります。それから一般の市中銀行は預金をもつて金を集めておりますので、資金コストは比較的安いわけでありますが、これが人件費、物件費その他を加えまして、二十七年度の下期、つまり三月末の決算の集計をいたしましたところでは、資金コストほ、税金、人件費、物件費、預金コスト、一切合せまして七分三厘見当になとつております。
  48. 松原喜之次

    ○松原委員 今度の法案の中には、損失補償と利子補給と二つの項目があるのでありまするが、そのうち利子補給の方は、これは確定金額が計上できまするから、予算に計上することがもちろん可能でありまするが、損害補償を予算に計上する場合には、どういうふうな根拠によつて計上されるのか、その点を承りたいのであります。
  49. 廣瀬駿二

    ○廣瀬説明員 損失補償の方は、今度の建前といたしましては、予算総則に金額はあげるわけでございますが、予算総則でなくても、法律の附則でもけつこうでありまして、今度のようかつこうで法律の附則に八十五億あげておれば、これで形式上整つたことになるわけであります。
  50. 松原喜之次

    ○松原委員 この法案にあります関係の損害補償額というものは、今年の予算には関係ないと私は考えておるのであります。将来この損失補償を必要とする予想が起りました節に、どういう根拠に従つてどういうふうな金額を計上せられるかということが承りたいのであります。
  51. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 この損失補償の方は政府提案でございますから、私からお答え申し上げます。この附則に書いてあります五十九億七千万円と申しますのは、これは本年度に三十万トンの船舶を建造いたします。その船舶のフち貨物船については、財政資金が七割でございます。従つて市中資金から二割、それからタンカーにつきましては、この法案を出しますときの考え下は、財政資金を二割、従つて市中から八割、大体タンカーについては一総トン当り幾らという金額が予定がございかます。従つて市中銀行から大体どのくらい借りるか、あるいは貨物船についても同様の予定の価格がございますので、市中から三割借りるとすればその総額が幾らになるか、結局三十万トンつくります場合に、この法案によりますと、市中銀行から借りる金の三割を限度として政府が補償するというのですから、その三割をかけたものが五十九億、従つて政府が損失補償契約を結ぶ場合の最高限度の金をここで押えた、その損失が出たときの、実際の金をその年度の予算に組む、こういうことになるのであります。従つてこの五十九億といいますのは、政府が損失補償契約をする最高限をここできめたわけでございまして、本年度の予算とは何ら関係はございません。
  52. 松原喜之次

    ○松原委員 その点は実は了承しておるのでありまして、予算でありますから、おそらく将来損失の生ずべきことを予想して計上されるだろうと思うのでありますが、それとも現実に損失が出た翌年度において、それを計上され台という順序になるのであるかどうか、その点を承りたいのであります。
  53. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 その損失が現実に起きました場合には、場合によつては予備金で出すこともございましようし、あるいは場合によつては翌年度の予算に組んで支払う、こういうこともあるわけです。その損失の起きたときの状況によつて、現実に政府が支払うべき額を予算に計上し、あるいは予備金等で支払う、こういうことになるのであります。
  54. 松原喜之次

    ○松原委員 次に第三条に八箇年とありますが、この八箇年の根拠はどうか、また第五条には十箇年という年限があるが、それとなぜ一致させなかつたか、その根拠について承りたいのであります。
  55. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 これは現実の市中銀行の造船に対する融資の契約が、興銀あたりで五箇年の融資をするわけです。その場合に一番長い年度を考えますと、その年度が八箇年度にわたる。大体金を貸すのは、最初の契約のときからで、その期限は竣工後五箇年貸すわけです。従いまして、契約のときから竣工して最後の五箇年に達するのに、年度から言いますと、八箇年度にわたそ、こういうことてございます。  それから第五条の十箇年半年賦均等償還は、提案者の方から御説明があるかと思いますけれども、私ども了解しているところでは、単にこれは計算上の便宜のためにこういうものを設けたものと思います。こういうふうな市況ですと、御承知通り船会社は、償還はもちろんのこと、金利も満足に払えない。従いまして最初に借りた金がずつとそのまま残るわけであります。ところがその残高に対していつも利子補給をすると、返す力があつても返さないものがある。それに対して利子補給をするということになると非常にまずいということで、かりに返す力があつても返さない、あるいは返す力がなくても、とにかく毎年一割ずつ減らして行つた額に利子補給をする。それから実際に三割も四割も返したものは、少い方の融資残高に利子補給をするわけですが、返せないものでも、一割ずつ減らしたものに利子補給をする、こういう意味の規定であると考えております。
  56. 松原喜之次

    ○松原委員 海運局長の御説明によりますと、現在の状態においては、日本の海運会社は、その利子を払えるどころか、それ以上の赤字を出しておるような状態であると承つたのでありますが、そういうふうに名目上利子補給の案準が、元木の基準額をだんだん減らすというようなことをやつて行くとするならば、結局はやはりしないのと五十歩百歩というような結果を来すおそれがあるのではないか。この点はどういうふうに考えられておるか、これは修正提案の方でなくても、政府の原案にも、率こそ違え、入つておるだろうと思うのですが、ひとつ当局からお伺いしたいと思います。
  57. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 政府としましても、海運業者の国際競争力を強めますと同時に、今後においてもなお毎年数十万トンの外航船舶を拡充して行きたい、そういう場合に、既往の借入金に対して金利もほとんど支払えないというふうな状況では、今後市中から金を借りるということは絶対不可能になります。従いまして元金は一応契約ができるまで、そのまますえ置きになるのはやむを得ないとしても、せめて利息だけでも海運業者をして払わせるようにいたしませんと、今後の船腹拡充は絶対不可能になつて来る。そこに大きな問題が起つて来るわけです。私どもとしても、ここに提案なつておりますような趣旨の実現を、海運政策上ぜひとも期したいと考えております。
  58. 松原喜之次

    ○松原委員 この際ついでに承つておきますが、これは大臣からお願いしたいのであります。私が今逆に心配したように、修正案をもつてしても、そういう状態も考えられないことはないのでありますしかるにもかか之らす、政府は何がゆえにこの修正案よりはるかに以下の原案をお出しになつたかという点について、お考えを承りたいのであります。
  59. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この原案を作成いたしましたころは、昨年の暮れごろでございます。だんだんに海運界の様子がおもしろくない状況になりまして、政府はまず利子補給をする。同時に損失補償もしなければなるまいということでありましたが、もう少し様子を見るべきだというようなことで、昨年の秋は利子補給だけで終り、そうして今度のように損失補償の問題を入れておつたわけであります。同時に利子補給の問題がこれでいいかということを、盛んに研究しておつたのでありますが、どうもこれでは無理だ、これではただほんの何がしかの足しになるようなことで、ほんとうに海運界を立て直す力はないものだというふうな心持がいたしておつたのであります。しかし御承知のように解散等がありまして、前と同じような筋を出すことになりましたので、私どもはとりあえずこれを出しましたが、同時に行政措置等でできるものはそれでやる。一方法律上の問題で改正を要するものは、そのうちにどんな形かでやつていただくようなものを出したいと思つておるうちに、修正案提案せられるような問題が起つたのであります。それを拝見いたしまして、海運発展のために皆さん方がそこまでやつてくださるという趣旨に対しましては、私どもの思つておる線に沿い、またそれを受入れて日本海運の大きな発展の道が開かれて来るという意味におきまして、賛成をいたしておるのであります、そういうわけで私どもは受入れたわけであります。
  60. 松原喜之次

    ○松原委員 運輸大臣の御答弁は、さもあろうと思いますけれども、しかしながら一旦国会へお出しになつたところの原案については、その他の施策とともに、必ずや自信を待つてお出しになつたはずであると私は考えるのであります。もしそうでなくして提案をされたとすれば、これは実に奇々怪々のことであつて国会を愚弄したことになります。従いまして原案はそれだけの自信をもつてやられたに違いない。国会がこれをよい才に修正してくれたからまことにけつこうだというごあいさつもさることながら、それでは原案を出された信念はどういうことになるのか。私どもは実は海運の重要性にかんがみまして、国際競争力をつけるということに対しては反対しておるものではないのであります。その立場は明らかにしておきます。しかしながらその方法等において、たとえば通産大臣に特に承りたいと思つておることをちよつと申し上げれば、一体産業政策としてそれでバランスがとれておるのかどうか。えてして片手落ちのことをやると、アンバランスになつて、経済界全体がうまく行かないというような結果を来しやすい。その他いろいろの弊害を生ずるのであります。従つてそれらの弊害を除去するためには、全体をにらみ合せつつ、その一環としてこの施策をなさるべきである。かようにわれわれは考える意味において、いろいろの点から御質問を申し上げておるのであります。それで運輸省としては、そういう自信のない案を国会に出されて、国会から修正を受けて、まことにけつこうでございますと言うて、それで能事終れりとされるのであるかどうか承りたいのであります。
  61. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この問題で私ども国会に自信のないものを出して、修正を喜んでお受けした。――結果から見ますとそういうふうに思えますが、私どもはさつきから申しますように、海運界の情勢がだんだん苦しい状態なつて参りますので、一事業としての問題でなく、日本の大きな立場からいたしまして、これが海運策としていいかどうかという問題になりますと、何とかしなければならないという問題は当然考えておつたわけであります。総理大臣が施政方針の演説に海運の問題を特に取上げたのも、その意味であつたのであります。しかし金利の問題、利子補給の問題等につきましては、今お話のように、いろいろな方面の関係もありまするから、今度すぐにこれが実際上に織り込めるかどうか。私どもとして法案提出をいたします場合において、私どもがそうやつて海運界が悪くなつて、もう少し何とかしなければならぬという心持を持つておるならば、それを織り込んで出すべきであつたということをお尋ねなつておると思いますが、私どもそういう心持を持つていろいろ研究をいたしておりましたが、いろいろ各省の関係もありまして、なかなか話が進まないのであります、だんだん時がたちますので、私どもとしては一応この法案提出いたしまして、その審議の途中におきまして、私どもの方で直すことができるような話があれば、あらためてお願いをするという心持でおつたわけでございます。
  62. 松原喜之次

    ○松原委員 次に運輸大臣にもう一点お伺いしたいのですが、いわゆる計画造船の造船希望者を募集される状況を承りますると、いつの場合でも計画よりははるかに多い申込みがあるやに承つておるのであります。従いまして利子補給あるいは損失補償等の面において、政府原案あるいは従来以上にその条件を改善するということは、この方面から見ると必ずしも必要でないのではないかとも考えられるのでありまするが、その間の実情はいかがでありましようか、承りたいのであります。
  63. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この問題で御承知かとも思いまするが、この間本年度の一部分の十万トン足らずの計画造船をやるときに、申込者は数倍も多かつたのであります。ところが実際問題になりまして、金融業者が造船界に金を出すかという問題になると、金融業者はことごとく反対でございます。というのは利子も払えないのが大部分で、このまま行くとだんだんこれが一般的になるであろう。そうするとわれわれはもう造船界に金を出すわけには行かない立場になるというような話もあつたわけでございます。それに対しまして私どもはこういう事情だから、利子補給の問題はこうする、損失補償もこういうふうにするというふうにいろいろ話をいたしまして、ようやくこの間のときは糊塗したようなわけでございました。それでは今度やらずにおいたらどうであるかというと、おそらく政府が全額出すという問題にならなければ、民間からの融資では非常に特殊な場合のほかは困難であるだろうと私は思います。同時に申込みは、ただ申込みをとつておくだけで、あとは許可が出た場合に金融すればいいということで、あとで捨ててしまうかもわからぬというような状態で、そのとき募集しておけばたくさん来るだろう、ところが銀行が確かにお前の方に金を貸すからという、銀行の保証なら保証を待つて来いというと、おそらくこの改正が行われなかつたら、私は非常に少いだろうというふうに情勢を見ております。
  64. 松原喜之次

    ○松原委員 一体政府予定によりますると、貨物船で三〇%、タンカーで二〇%の融資を市中銀行に仰ぐことになつておるのでありますが、たつたそのくらいのパーセンテージを市中銀行から出資させるためにいろいろ努力をし、そうしていろいろ法律でもこしらえて利子補給をやるというようなことよりは、むしろそれくらいのパーセンテージのものは政府直接の力により、あるいは政府の出資になつておるところの開銀、あるいは一部出資しておるところの興銀等の特殊銀行の力にまつことにして、市中銀行のごやつかいにならないことにしさえすれば、これらのめんどうはちつともやる必要がないのではないかと思うのでありますが、この点に対するお考えを承りたいのであります。
  65. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この計画造船ができる、できぬの問題等は、現在目の前に起つて来る二十万トン、三十万トンというようなものに対する問題でありますが、今度行われまする金利引下げ、利子補給等は、海運全体の負債と申しますか、そういうものに対して世界の先進国並の金利の状況にまで待つてつて、そうして世界の競争に当らしめるというのが主眼であります。これから先の造船だけでありますと、あなたのおつしやるような行き方も予算さえいただけばできます。あるいは船舶の数を減らせば、今の予算でもやれるということにもなるわけでありますが、私はもつと広い意味においての損失補償、利子補給趣旨であると思つております。同時に今度の新造船につきましても、こういうふうな日本の海運に対し助成が行われますと、それに対して大体金利も払える者が大部分になるわけでありますから、金融業者も安心して貸せる。そして政府の金と民間の金と合せまして、一ぱいでも多く船をつくりたいというのが私どもの考えであります。
  66. 熊本虎三

    ○熊本委員 私運輸大臣にたくさん質問を持つておりますけれども、今松原君の質問中でございますから、簡単に関連してお伺いいたしたいと思います。  運輸大臣の先ほどからの答弁によりますと、政府が原案を提出したのであるけれども、これにまさる三流の修正案提案されてまことにけつこうでございますというような答弁のように私拝聴いたしました。松原君が、提案権を待つている行政府としての案を唯々として改正することは、不見識だ言われたことはその通りでありますが、私はこの際それを責めようとするのではない。この改正案は非常に厖大なものであつて、これはもう経済的には重大なる一つの変革である。こういうような問題で、これをあげまするならば、開発銀行という国家の金融機関がきめておりまする利子を特別に下げるということであり、そうしてその上に政府の原案は七分五厘のそのまますえ置きであつたのに、それをさらに三分五厘の業者負担に切りかえて、他は国がまるがかえをするという形、市中銀行についても七分五厘の差額に対して約三分五厘程度のものを補給する原案に対して、今度は逆に業者負担が五分となつて、そうして国庫給付が六分となるという、まことに革命的な改正である。こういうようなもの、さらにあとで具体的に質問をいたしまするが、たとえばすえ置くというような内容を含んでおり、八箇年の利子補給期間はこれを十五年だ、十七年だというふうにやつておるし、さらに政府の政令できめる一定配当量を超過したる場合ということについても、十五箇年間の通算によつて決済するということでありま了から、私の解釈論から角きますならば、十五箇年はいくら配当しても、次に損失が出るかもしれないということで死文になつてしまう。こういうような革命的な修正案について、政府はこれをごらんになつて、そしてもしこれが通過されるならばまことにけつこうだというお考えであるかどうか。その点についてなるほど議決権は国会にあります。従つて国会でそうきまれば、政府は好むと好まざるにかかわらず執行するだけであります。しかしながら先ほどから言われておるように、まことにけつこうであると賛意を表される運輸大臣としては、これを全部ごらんになつて、これでもよろしい、この修正案まるまる賛成だというお考えかどうか、念のために聞いておかないと、具体的な質問にさしつかえがあると思います。
  67. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私どもが海運界の立直りのために、また世界の競争の中にこれからさらに進出するためには、どうしても金利問題に触れなければ解決の道はないという大体の方向をきめましていろいろと研究をいたしてまたあちらこちらとも話をいたしておつたわけであります。その線の中にいろいろな案をもつて相談しておるうちに、利子の補給の大よその範囲でありますが、そういうものは私どもの考えておつた範囲でありますので、その意味におきまして、こういうふうに世界の金利の標準まで海運の利子が下げられるということがお認め願えるならば、これはけつこうだという意味でございまして、それによつて日本の海運界は世界の競争に耐え得るという意味でございます。こまかい点につきましては、和ちよつと申し上げかねます。
  68. 熊本虎三

    ○熊本委員 もう一点聞いておきたいことは、国務大臣たる石井さんがまことにけつこうであると言われまするが、たとえば開発銀行の利子改訂、特殊扱いというようなものについては、開発銀行を利用される各産業に全面的に影響するのでありますが、これは開発銀行の率を改訂してしまつて、そして全部の融資は五分にしてしまうという腹であるか。それから日本の金融行政運用を、そういうような形にこれを中心としてかえて行くということを想像されておるかどうか。そのことを根本的に聞いておかないと、どんなに具体的な問題で議論をいたしましても、根本的な金融行政のあり方及び国が重要産業に対するところの保護育成の程度、限度、こういうものについては――なるほど私ども先議会から非常に造船業界に関するところの国家の補助育成については、一生懸命努力をして参つたのでありますから、基本的には何も反対ではありませんけれども、こういうような根本的な改革については、及ぼす影響がまことに甚大だと思います。であるからそういう点について御検討願つておるかどうか。もう一ぺん伺つておきたいと思います。
  69. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 今度の予算全体を見まして、また修正予算等を見ますると、海運問題に対して一番大きく今お尋ねのような点が現われておると思うのであります。これは私自身の考えでありますが、海運の問題をひとつここで大きく解決するということは、ちようど戦争直後こ日本の産業界がぜんだん縮小再生産になつたときに、石炭の増産をはかつて、そして傾斜生産の線に沿うていろいろやつたというような、それとはいろいろ違いますが、それくらいのふん切りをつけて、思い切つた政策をとるべきものじやないか。それにはこの海運のために相当思い切つて力を入れるべきじやないかということを私は考えておつたのでありますから、こういうものができることにつきまして賛意を表したわけでありますが、そのほかのものはどうだということになりますると、またそれぞれ問題はあろうと思いますし、特にこれとあれとバランスをとらなくてはおかしいのじやないかというような問題が必ず出ると思いますが、しかしこの問題が強く取上げられて、それは政府部内におきまして関係の各省の大臣も了承してくれて、これにひとつ力を入れて行こうという線で、これが成り立つたものでありまして、ほかのものがこれに当然ついて来る、あるいはついて行かない、これだけだという問題は、私まだそこまで存じません。
  70. 關内正一

    ○關内委員長 熊本君に申しますが、あなたの質問の時間もありますから、そのときに詳細にやつてください。
  71. 松原喜之次

    ○松原委員 大臣は非常な決意を持つて、国家産業政策の基本問題に触れるようなお考えで、そしてこの海運業というものに重点的な政策、いわば傾斜的な政策をやるのだという御発言でありまして、事は非常に重大であります。従いましてそういう点に関してはひとつ経審長官なり、あるいは通産大臣なり、あるいは緒方副総理なりにお考えを承りたい。実はかように思うのであります。そこで運輸大臣といたされましては、国家がそれほどの力を入れて、そうしてそれほどの世話をするという、この海運業に対して画期的なお考え、従来の相変らず補給金だ、助成金だというような考えでなくして、もつと抜本塞源的な、簡素なやり方をお考えになることができないか。たとえば現に海運界におきましてオペレーターとオーナー、船主と海運業者との違つておる場合も相当にあると承つております。そこから相当に弊害が出ておる。政府のせつかくのこれらの補助金も船主の得るところとなつて、実際オペレーター、船会社はその船主からいわば搾取されるような立場に立つという状況もなきにしもあらずと承つておるおでありますが、そういうふうにオペレーターと所有者が違う場合もあり得るのであります。電源開発においてすでにその開発会社が、国家の全額出資によつて設立されておると同じような構想におきまして、オーナーとしての会社を全額国庫負担でつくつて、そうしてそれをオペレーターに貸すというような構想を持つてこれをやられるならば、私は相当簡素に、しかもその目的を完全に達することができるのではないかと思うのであります。もとよりそれに対して国際関係云々等の話もあろうかと思いますけれども、それは方法によつて必ずしも行き詰まるものではないということを考えつつ、私はこの質問を申し上げるのであります。
  72. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 お説のような考え方もなし得をわけでございまするが、ただ外国航路の性質によりましては、オペレーターが自分で持つている船でないと航路同盟こ入れない、こういう航路もございます。また国が持つている、国有の船を動かすということに対する、外国海運の非常な反撥も懸念されるわけであります。それからさらに国の機関が船をつくるといいますと、自然そこに実際の運航に適せないような船がつくられる懸念もある。またいろいろむだな、非能率な点も出て来るというふうな難点がございまして、そういう形態まで進みまするのには、相当研究を要する問題であると考えるのでございます。やはりできまするならば船会社自身の力をできるだけ活用いたしまして、その創意とくふうのもとに最も航路に適した船をつくらせる、こういうことが一番望ましいかと存じます。お説はそういうことをしてやらすのには、限界が来ているのではないかという点にあるかと思いまするが、その限界が来ているかどうか。それから先ほど述べましたような弊害点が、ばたしてどういう方法で除去されるかどうかということを十分検討した上でないと、そういう方向にまでこの際進む考えがございますということは、ちよつと申し上げかねるかと存じます。
  73. 松原喜之次

    ○松原委員 ある場合の説明におきましては、運輸当局として業者だとかあるいは金融業者に適切な船をつくらせて、そうして適当な量で適当な措置をとらせるというのは非常にむずかしいから、運輸省で大所高所からこれを考慮して、そうしてそのかわりに補助もし、そうしてその方策を実現させるのだという説明をし、ある場合には、そういうやり方をすれば官僚事務になつて、需要こ適したような船がつくれないかもしれなくなるおそれがあるというような、どうもあそこではこう言い、ここではこう言うというように、場なかなか便利に立案せられるようでありまするが、この際特についでのことでありまするから、石井運輸相にも御注意を願いたいと思うことは、われわれが国家管理だとか、あるいは事業の社会化だとかいうようなことを申す場合に、それは現在あるような公社方式であるとか、あるいはいわれておるがごとき弊害多き官僚経営であるとか、そういうものを予想しておるのではございません。もつと現在の民間におけるあらゆる経営手腕、経営技術の粋をえりすぐつて、しかも自由自在にこれを発揮せしめ得るような方策において考えられておるということを、ひとつお考えおきを願いたいのであります。  さて大蔵省の金融関係の方に承りたいと思いますが、先ほど市中銀行の資金コストは七分五厘ほどであるというお答えでございましたが、今日その大部分を国民の税金から支払われておるところの補給金をもつて構成されておるところの市中銀行の受取金利なるものが一割一分を越すという状況、すなわちその間に少くとも三分七厘以上四分に近い利ざやを持つているという点、そうして現在金融機関が日本の経済界に君臨しておるところのあの姿、そしてそれが持つておるところの社会的な本来の重要なる使命等々にかんがみまして、かような国家的な重要施策に協力をする意味におきまして、いま少しくその補給金を切り下げ、そうしてそれが海運業にしわ寄せせられざるような施策をすることが、適当ではなかろうかと思うのでありますが、その点に関して大蔵省の事務当局はどういう方針で臨んでおられるか、承りたいのであります。   委員長退席、松井(豊)委員長代   理着席〕
  74. 大月久男

    ○大月説明員 先ほど御説明申し上げました市中銀行七分三厘、それに対しまして今回の措置によりましても実質的な手取一割一分、その間の利潤が多過ぎるじやないかという御質問でございます。これは御存じのように銀行の中に長期信用銀行と、一般のいわゆる市中銀行とこの二種類ございまして、七分三厘と申しますのはその一般の商業銀行の場合でございます。商業銀行の貸出しの面を申し上げますと、これは短期の商業手形の副引なり、あるいは二箇月、三箇月の短期の貸付をやつておるわけでございまして、この最高の金利は、金利調整法におきまして現在二銭四厘に押えられております。大体七分九厘くらいになると思うわけであります。優良なる貸出しにおきましもはこれは最高でございますので、さらに別の面からいたしまして、国策的に考えられておりますたとえば貿易手形、こういうようなものにつきましては現在最高が一銭九厘というような数字になつておるわけであります。これは六分九厘くらいになるかと思うのであります。商業銀行でございますので、そういうような短期の低利の金が全体の大体八副から八割五分くらいを占めておるわけでございます。先ほどの船の問題は長期の金でございますので、長期の金利として一割一分をとつておるわけでございます。全体の平均といたしましては、必ずしもそれほど大きい利潤があるわけではございません。それから銀行に対する考え方といたしましては、現在配当につきましても最高一割二分五厘ということになつております。これは行政指導でやつておるわけでございまして、これも地方銀行についてそうでございまして、たとえば富士銀行でございますとか、そういうようなものにつきましては現在は一割の配当しかいたしておらないわけでございます。そういうように配当につきましても相違をいたしておりますし、それから一般の経費につきましても、収入に対しまして七八%以内においてまかなうようにという行政指導もいたしております。そうして種々の経理的な指導もいたしておりまして、これらはいずれも多数の預金者を持つている金融機関でございますので、金融機関の資産の内容が悪化するということを一番心配しておるわけでございます。従つてある程度の利潤が出ました分は、大体においてそれを内部留保に向けて、実際に株主に配当するものその他については十分の規制を要望いたしておる、こういうような考え方になつておるわけであります。それから長期信用銀行につきましては、資金のコストは金融債によるわけでございまして、そう大きな利幅を持つておるということはございません。
  75. 松原喜之次

    ○松原委員 そういたしますと、一割一分の金利を市中銀行にとらせるということは、平均してはもつと少いが、この造船金融に対するものは相当高くとらせるように補給金を与えるということに相なります。従つてせつかく国家が金利を補給して、この造船ないし海運を助成しようとするその方策に対して、この金融を通じて銀行が平均よりもはるかに高い金利でもつて、その経営を保証されるというようなかつこうになるということは、いかがかと思うのでありますが、その間の矛盾についてどう考えられますか。
  76. 大月久男

    ○大月説明員 先ほどは短期の金利と長期の金利について申し上げたわけでございますが、長期の金利の中においてお話申し上げますと、現在長期の金利は大体三銭一厘見当が標準になつております。そうして一割一分と申しますのは三銭一厘でございまして、特に長期信用銀行が中心となつてあの融資をいたしております関係から、電力とか、海運、こういうような特に重点的な企業におきましては、特に金利を下げておるわけでございます。ただ長期信用銀行がこういう長期の金の融資の中心をなしておる、こういうことから申しますれば、長期信用銀行の金利というものが長期の標準になつておる。この銀行の建前といたしましては、市中のいわゆる採算ベースに乗るというのが建前でございまして、特に国策的に損をする、あるいはさらに金利面において気持の上で、あるいは実質上若干のサービスということはございましても、コストを非常に割つてやらすということまでは、今の金融機関の建前としては適当でない。従つてその部分を補給金をもつてまかなう、こういう考え方をとつておるわけでございます。もちろん金利全般につきまして低下をはかることにつきましては、一貫しました不動の方針でございまして、コストの引下げについては、金融機関自体についても極力努力さしておる次第でございます。ここ数年来世界的な標準から申しますれば、もちろん高いわけでございますが、逐次低下を見ておるわけでございまして、一般の金利がさらに下りますれば、その下りました金利を標準としてこの補給金が出る、従つて必ずしも現在の金利そのままが補給金の基準になるというものでもございません。
  77. 松原喜之次

    ○松原委員 今お話になりましたから、特にこの際承つておきたいのでありますが、大蔵省には低金利政策を推進しようという不動の方針があつて、今もまた将来もその方針を踏襲して行くものであるということがきまつておるのかどうか、もう一度承りたいのであります。
  78. 大月久男

    ○大月説明員 低金利政策は、ここ数年来大蔵省としてとつてつている政東でございまして、今後も引続きこういう情勢のもとにおいては、これは推進する方針でございます。
  79. 松原喜之次

    ○松原委員 承りますと、最近硫安の輸出会社に対して長期資金のあつせんをするようにというような意見があつて、これに対して大蔵省は非常に反対をしておられるということを聞いているのでありまするが、こういう点にこの造船との関連が相当あつてというか、あるいは両者を見比べるときに、非常にバランスがとれていない、一貫した方針がないというふうな感じを受けるのでありますが、そういう事実があるかどうか、承りたいのであります。
  80. 大月久男

    ○大月説明員 硫安の輸出会社の資金の問題でございますが、これは最初の原案におきましては、政府におきまして資金の融通あつせんその他適切な措置を講ずるものとするというように、原案があつたわけでございます。その意味は、一応政府といたしまして公式な態度においてあつせんをするということ、それから適切の措置の中には、開発銀行その他からの融資命令するというふうな意味が発案者の間には意味されておつた、こう思うのでございまして、公の立場において政府がかりに融資のあつせんをいたしますれば、融資をいたしました金融機関の側におきまして、かりに貸倒れなりあるいは延滞ができました場合には、たれが責任を負うかという問題があるわけでございます。政府が公の立場においてあつせんをして、そしてかりに貸倒れになりました場合には、やはり政府とし、は責任を負わざるを得ない。従来、戦時中でございますが、そういうようは場合には、命令をして融資をいたしました場合には、命令融資といたしまして、必ず政府の保証をつけておつたわけであります。そういうような性格のものでありますので、かりに公の立場においてあつせんをするということにいたしますれば、政府の保証をつけるとか、あるいは損失を生じました場合には損失補償をするというところまで、徹底して行かなければいけない。それから開発銀行の問題につきましては、先ほど愛知政務次官からお話もございましたように、建前といたしまして、開発銀行は独自の判断におきまして、国策にのつとつて融資をするという機関でございまして、やはり政府命令する機関ではございません。そういう意味におきまして、政府のいろわれの資金的な援助ということを表面に出しますれば、政府の財政的な面までもはつきりしなくてはいけない。あれは会社といたしましては民間の会社でございまして、特にそこまで踏み込むことは適当でない、こう考えております。今日輸出会村が金剛上の必要がございましたときには、事実上の問題として、金融政策としては十分考える、こういうことを否定しているわけではないのでありまして、法律上の立場において、法律上あつせんをするということを明文をもつて書くことは適当でない、こういう意見であつたわけでございます。
  81. 松原喜之次

    ○松原委員 事実上のあつせんならばいいが、法律上これ規定することは不適当だ、もしそうであるとするならば、損失補償その他の対策があらかじめ講ぜられておらなければならない、こういうふうな御意見と承りましたが、その際の事実上の問題というとこそに、実は相当問題があるかと私ども思うのであります。先ほども現に愛知政務次官が、開発銀行に対して七分三厘を五分に下げさせる、それから日本銀行の特別外貨の貸付金利の五分を二分五厘に下げさせるというような点について、有田委員からの質問に対して、政府としてはそれを実現するために、できるだけのことをするというお答えがあつたのであります。一体銀行局の方では、常に銀行に対してそういうような相当きつい、民間事業の独自性を害するような干渉を行うことを習慣としておられるのかどうか、この点は相当議論の余地があるかと思うのであります。
  82. 大月久男

    ○大月説明員 愛知政務次官のお言葉も、結局開発銀行あるいは日本銀行が独自の立場においてきめるものでございますので、それを政府において直接実施するわけには参らない、ただ政府といたしましては、そういう開発銀行なり日本銀行に対する監督権を持つておりますし、もちろん国策的にこしらえられた機関でございます日本銀行も、半額は政府出資になつておりますし、開発銀行は全額政府が出しておるものでございます。従いまして、日本銀行あるいは開発銀行の独自の判断におきまして、国策に沿つて資金的なあるいは金融的な業務を行う、これが建前であるわけでございます。従いまして国会においてこういう、金利を下げた方がいいという公の意思が表明され、しかも政府においてそれが適当であると判断いたし、思料いたします場合においては、これは当然強制ではないわけでありますけれども、自発的な判断においてその通りにやるであろうということが期待される、そういう意味におきまして、個々の融資につきまして政府が干渉するということは、従来もいたしておりませんし、またいたすべき筋でもないということは、はつきり態度として持つておるわけであります。
  83. 松原喜之次

    ○松原委員 そこで先ほど運輸大臣からもちよつとお触れになりましたが、造船ないし海運事業に対して、特殊の重点を置いた政策をおきめになつたについては、相当な考慮を払われ、明快な根拠を政府として持つておられるものと思うのであります。従つてそれと他の産業との関連においても、相当なお考えがあると思いますが、そういう点については、通産大臣なりあるいはその代理の政務次官なりに承るといたしまして、私の質問は一応これをもつて終ることにいたします。
  84. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員長代理 山口丈太郎君。
  85. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は質問通告をしておいたのですが、港湾の方の質問をけさから続行する考えでいたので、まだこの外航船舶に関しての質問は、私はいろいろいたしたい点がありますが、これは大蔵、通産等各省大臣の出席の上でないと、質問のできない向きがありますので、その点ひとつ保留させておいていただきたいと思います。  運輸大臣お尋ねいたします点は、今松原委員も指摘されましたが、もちろんこの根拠としては予算修正されて、改進党、分自党及び自由党の三派による修正予算衆議院を通過して、これの成立の公算が大きくなつたというところから、政府提出の原案に対して改進賞、自由党及び分自党の三派間において、一応協議をされて修正された、こういう経緯を持つものと私は判断をいたすのであります。しかしこれは根本的に考えまして、政府の原案に対しましては、この修正案はむしろ修正というよりも、根本的に性格をかえたと考えるが、それについてひとつ運輸大臣の御所見を承りたいと思います。
  86. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 金額的に見ますると、前のものより非常に大きい進出をいたしておりますから、そう見えるでありましようが、私どもやりたいと思つておつた線に沿つておるものであります。それからまた先ほども申し上げましたように、これを作成し、提出し、それから審議をお願いするまでの間に、だんだんと世の中の情業かわり、海運界は悪化の一途をたどりまして、相当大きな助成が金利の上において行われなければ、世界の競争に耐え得ない、私ども日本海運を世界のレベルに持つて行くにはどうだという問題になりますと、今までに私どもの考えておつたようなことではもう追つつかなくなつて来たという際に、こういう修正が行われたのでございまして、金額的には、今申すように相当大きな開きはありまするが、私どもと同じ考えのもとにできておるものだと思うております。
  87. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今大臣の言明によりますと、海運界の不況から見て、利子補給をやるということが可能な限り、私どもの意見としても賛成して出した、こういうことでございますが、それではお尋ねいたします。この修正案によりますと、二年も前に建造した過去の船にまでさかのぼつておるのでございまして、実際には政府原案ではさかのぼつていないことが原則であるように見受けられるのであります。なるほど海運界の不況については、私どもも認めるところではございますけれども、しかしながらこのように大幅に過去にさかのぼつて利子補給を行うことが、はたして妥当であるかどうか、こういう点についてひとつお考えを述べていただきたいと思います。
  88. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 過去にさかのぼつての適用でございますが、実際海運会社が国際海運競争上非常に苦痛を感じておりますのは、今までつくりました船に対する金利負担が重いということでございます。しかしこれまでつくりました船の中でも、昭和二十四年度に着工いたしました船、これは昭和二十五年の朝鮮動乱が起つた直後、あるいは少し二、三箇月たつておるかもしれませんが、そのこうこすべて竣工しております。従いましてそういう船は相当朝鮮動乱の景気を享受いたしまして、銀行から借り入れている金を相当返しておるわけであります。従いましてこういう船は金利負担も割合少い。     〔松井(豊)委員長代理退席、委員   長着席〕 従つて国際競争をいたす上からいたしましても、さほど苦痛を感じない。ところがそれ以後の船におきましては、船ができてから間もなく景気が下り、海運界の景気は貨物船の方では大体昭和二十七年、昨年の三月ごろから景気が下りました。それからタンカーの方は昨年の十一月ごろから下つた。従いまして貨物船につきましては、大体今度の修正案提案で対象になつておりますような、昭和二十五年の末に着工いたしました船以後のものにおきましては、金利負担が非常に重いのであります。そこで私どもはこの修正提案者の方でそういう船を対象にして利子補給を強化する、こういうふうになさつたものと考えるのでございますが、現在の海運界の実情から申しますと、これからつくる船に対して利子補給をしただけではまつたく効果がない。御承知通り海運界がすでに負つております負債は財政資金で八百億、市中資金で七百億、この千五百億に対する金利負担に、まさにつぶれんとしておる状況でございますので、海運政策の効果を上げますためには、どうしても既往にさかのぼる処置が必要である、かように私どもといたしましても考える次第でございます。
  89. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は大臣がせつかくおいでになつているので、ひとつ大臣から答弁をいただきたい。今事務的に答弁をされたのでありますが、しからば政府がそのような考えでおられるとすれば、当然政府の出されました原案についても、薄くともその措置というものがこの中ににおわされてでもいなければならぬ、このように考えるわけであります。ところがそれに対しては私の見る目では、この政府原案においては少しもそういうこともにおわされていないし、見当らない。しかるに今度予算修正されたからというので、急速にそれを表面に出して来られたというような理由が、私は納得の行かない点があると思うのですが、これは一体どういう考えであつたのか。もともとそれならば政府原案というものに対して、なぜそのような措置を講じなかつたかについて、もう一度運輸大臣から御答弁を伺いたい。
  90. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これはさつきからいろいろ申し上げましたように、この法案をこしらえました当時、それから予算の編成のころの情勢等によつて了承願えると思うのであります。今度の予算、案は前のときの予算をそのまま踏襲いたしまして出すということに打合せておりましたものであります。昨年の秋に私どもこれを編成いたしました時分から春になり、だんだん日があらたまるごとに悪くなつ来るのが、非常にはげしくなつて参つたのであります。今度提出するときは修正するのがあたりまえだつたのでありますが、今申しましたようにそのまま提出をいたして、そのあとでできる限り改むべきものは改めるということになりましたので、さつき申しましたように、できれば私ども提案によつてしていただこうと思つているくやつておりますうちに、まだ内輪の話をやつておりますうちにこういうものが出まして、大体の線においてぱ私ども二の案でよかろうと賛成いたしたようなわけでありまして、手順はそういうようなわけで実現できなかつたのであります。
  91. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 予算提出後、政府部内においてこれらの点については十分に措置をしたいというので協議中に、党の方で協議がまとまつて政府提出するに至らないうちに提出された。そこで政府もこれに対しては賛成だ、こういうようなことでございますが、しからばこの案を出された後に政府内部においてそのような協議をされたとよしいたしましても、これは政府と党との間で、いわゆる政党政治でありますからにおきましては、このような重大な変更を加える場合におきましては、当然十分なる連絡をとつた上で、政府提出法案として出し、政府の海運事業に対しまする所信を明らかにされることがこれが最も必要なことではなかつたと考えるのであります。そういう意味におきまして、この修正案の持出の経緯というものは、まつたく政府がこの重大な海運界の助成の方法に対しては、その場当りの政策しか持つていなかつたということを天下に暴露するようなものだ、このように私は考えるのでありますが政府はそれでもこの法案については一字一句修正する箇所もなしに、全面的にこれをうのみにして、これを修正するにやぶさかでないという考えなのかどうか。これは大蔵省関係といたしましては、この財源捻出の方法について、相当重要な決意をしなければならぬのじやないかと思いますから、これについてこう簡単に変更される点がわからないのでありますが、その点について何らのいきさつもないのか。政府機関内における意見は、何らそれについて食い違いのない態度であるのかどうか、ひとつ各省の出席されておりまする当局から意見を承りたいと思います。
  92. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 結果におきましては、私どもが何もせずにいて、修正案がぽかつと出て来たことに賛成々々ということはその通りでございますが、しかし今申しましたように、私どもはこの間までの修正前の予算、それから法案提出いたしましたときから、何とかこれは少し助成の方策を進めなくてはならぬということを思いまして、私どもでもいろいろな、こうなればこうなる、ああなればああなるといういろいろな案を立てまして、それぞれ私どもの方の機関としても相談をいたし、これが一つの材料となつて各党の剛の話が一致したものだと思います。
  93. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 政府の確固とした一つの意見を拝聴することによつて将来に対する施策を安心をして受取ることができるような答弁をしていただきたいと思つて、私は質問をいたしておるのでありますけれども、しかしどうもまだ確信を持つておいでのようには受取れないのであります。これでは海運界といわず、他の産業にしても十分に安心をして行くこともできますまいし、また私ども政府の施策について、この法案に対する質問をして行こうというところまで実はつかめぬのであります。やはり政府の確固たる方針がない限り、またそれが指示されない限り、われわれとしては意見が述べられないのであります。もう少し政府としてはこれについて、このように変更したが、これはあるいは変更であるのか、それとも運輸省としては、基本的には前々からこのような措置を講ずることが適切であると考えていたのであるが、政府予算案を出すに至るいきさつからどうしてもこうならざるを得なかつた。しかし今度の修正によつてそれが可能になる。財源の捻出等も何ら支障がないのだ。あるいはそれについて疑問があるならある、こういう点を明確にわれわれに御答弁をいただきたい。そうでないと、政府としては何だかそこに自信のないようなあるような、あいまいな態度に受取れてならぬと私は思うのでありますが、いかがでしようか。はつきりとしていただきたいと思います。
  94. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 さつきから申し上げました通りでありまして、海運の大きな世界的地位をだんだん占めて行く方策といたしまして、こういうふうな方向による国家的援助というものが、どうしても私はこの際必要であるということを強く考えておつたものでございます。それでこの線に沿いまして、それではどういうふうにするかということをいろいろと案を具しておりまして、それを私どもは党の方とも相談をいたしておつたのでありますが、さつき申しますように、党とこんな打合せができまして、そのできました大きな線は私どもがこいねがつている線でございます。この線に沿いまして、この法案通り予算案が両院を通過いたしますれば、私どもといたしましてはこれによつて、さつきもちよつと私だけの考えではそう思うところを申し上げましたが、非常に傾斜的にこの海運の発展という問題に大きな力を入れるというように私は了解しますのて、この補助の方式等が皆様方の御協賛を得ますれば、私どもはこれによりましてあらゆる方面、造船の方にも海運業者の方面にも、彼らの一段の努力を求め、そうして官民協力いたしまして、ほんとうに日本の海運が伸びて行く基礎をここでしつかりこしらえるかどうか、私は必ずここでこしらえたいというふうに思つているわけであります。
  95. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 非常に明快に御答弁いただきましたので、私はその点に対しては運輸大臣に感謝をいたしますが、その明快な御答弁をいただきましたこの海運助成につきまして、ただ単に船主に対して利子の補給、こういう形だけをもつてしては、海運助成の全部というわけには参らない。少くとも造船に対しまする単価の引下げ等は、根本的な問題を包蔵しておると思うのであります。またこの海運事業自体につきましても、やはり諸外国のとつておりまする事例にならいまして、少くとももう少し近代的な合理的経営がなされることによつて、経費の削減等、この事業に対しまする負担軽減を行うことも、また根本的問題であろうと思うのでありますが、政府はこういつた点について将来どのような政策をとろうとされますか。これについても基本的な問題でございますから、私はこの際運輸大臣から明快に御答弁をいただいておきたいと思います。
  96. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 これも先ほどちよつと触れたのでありますが、今お話の通り金利を下げてやり、利子を補給してやるということだけで、機械的に日本の海運が発達し、造船業が隆盛になるということは考えられないと私も思います。一番大事なものは、これに従事する人たちの心構えであります。これだけのことを政府がやつてくれたら、われわれは今苦しいけれども、さらにもつと中の合理化もし、精神も非常にはつらつとした気持を振い起して、そして海運の仕事に、あるいは造船の仕事に力を入れて行くということにしなくてはならぬことは当然だと思います。また政府としまして、今度の法規の中にもきめてありますが、経理の監査であるとか、義務上のいろいろな監督もできるようになつておりますので、私どももこれらの人たちとできるだけ協力いたしまして、一生懸命やるようにやらせたいと思います。また造船の方では、特にこれから先外国から注文が来るかどうかというような御議論でありますが、これが来なければ、日本にたくさんの造船所がありますがなかなか経営も困難だと思います。これには、さつきから御提案になりました鋼材の利子を下げる問題等によりまして、一応私どもは、一割方くらいは少くも造船の値段が下り得るのじやないかと思つております。こういたしますことは、世界の競争に耐え得るのじやないかということであります。そういう面で日本の造船界がまた息を強く吹き返すことを私どもは期待しておるわけであります。
  97. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はさらにこの修正案の出されました経緯について、きのういろいろ提案者側からも聞いたのでありますが、形式的には三派の一致した意見としてここに修正案を出されているようでありますけれども、しれし実質的にはこの修正に対しましては、相当異論のある向きもあるやに聞いておるのであります。そこで政府もこれに賛成をされて、その修正案提出することを容認されたのでありますから、従つて政府は三派の中で、完全にこれが意見の一致を見ているものと解されておるのか、あるいは実質的には相当異論があるということを私聞いておるのでありますが、その異論のある向きがあつたといたしますならば、その内容について承知をされているかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  98. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 どんな問題でも皆各自いろいろ賛があるものでありまして、おそらくこの問題もその通りであつたと思います。私どももある人はこういう意見、ある人はこういう意見だということを、その話合いに出た人たち個人々々の意見も、間接的にではありますがいろいろ聞いております。しかし私どもといたしましては。最後にみんな話がまとまつたものを、こういうふうにまとまつたということを書類にしていただきまして、それに対しまして私どもはこれが皆様方の御賛成を得まして成立いたしましたならば、忠実に私どもはこの線に沿うて、これの有効なる実行に当るということを申しておる次第でございます。
  99. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 時間が一時半にもなつておりますし、まだ実は質問がございますけれども、一応休憩をしてさらに質問を続行したいと思います。
  100. 關内正一

    ○關内委員長 暫時休憩いたします。     午後一時二十一分休憩      ―――――・―――――     午後四時十三分開議
  101. 松井豊吉

    ○松井(豊)委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続けます。原君。
  102. 原彪

    ○原彪委員(改) 修正案提案者としてでなく、原案を書いた運輸省にお尋ねしたい。金利の問題はいずれ大蔵省の方にお尋ねしたいと思いますが。まずこの法律案を見ますと、利子の補給の対象となる順位というものは、第六次造船の貨物船、これは昭和二十五年起工でございましよう。それから第七次造船の後期タンカーであると私は思つておりますが、そうすると、これは昭和二十六年度に着工して、すでにほとんど竣工しておるものもあると思うのでございます。そのようなもうできてしまつて、航路についておるものに対してまでも、利子を補給しなければならぬ理由が一体どこにあるのか。つまり私をして言わしめるならば、これからのものに対して補給するということなら考えられるのでありますが、もうすでに済んでしまつた跡始末のためにこれを補給するということは、どうも法律案の体裁をなさぬ、法律案としてはまるでどうもしりぬぐい法律案のような気がしてならないのです。その点を一点お伺いしたいことと、もう一つは、利子補給する相手の会社はほとんど海運会社でございますが、この海運会社を見ますると――これは日本経済新聞の株式の一覧表でありますが、海運関係の会社はほとんど欠配、無配、繰越しという会社が多いのでありますが、一割、一割五分、二割配当しているのも相当数あります。この法律案によりますと、一割以下のものだなければ補給しないという話でありますが、これははなはだどうも変な話なんです。日本航空会社が従来四億の資本金であつたのが、このたび六億増資して十億の民間資本で、政府が十億出資して二十億の会社になつておる。ところが六億の増資にあたつての大株主はほとんどが船会社です。飯野海運、日本郵船、大阪商船、そういう大株主として出すだけの資力のある、余力のある会社に利子の補給をはたしてしなければならぬかどうか、これが私は非常な疑問なのでございまして、まずその二点だけをお伺いしたい。
  103. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 今回の改正案では、既往の新造船ですでに動いているものに対しましても利子補給をするようになつていることは、私どももその通り了解しておりますが、私ども現在の海運界の苦しい立場から行つて、これから新造するものだけに対して、今考えられているような助成策を講ずるだけでは十分でない、十分でないというよりはほとんど効果がない、むしろ現在動いている船で、非常に金利負担の高いものの肩を軽くする、金利負担の荷を軽くすることが、現在の日本海運が国際競争の上において打ちかつて行く一番重要なポイントである、かように考えているのでございます。さらにまた今後の船腹拡充を進めます上におきましても、現在まで借りております金に対して、元金の償還はもちろんのこと、ほとんど金利が支払われないような状態でありまして、そういうふうな状況下で、今後の新造船に対する市中からの借入れはまつたく期待できない。従いまして既往の分の金利負担を軽減して、少くとも金利の大部分を支払い可能にすることが、海運競争に打ちかつ上、並びに新造船の拡充を遂行する上におきまして不可欠の要件である、かように私どもといたしましても信じている次第でございます。  なお航空会社に対して海運会社が出資しているというお話でありますが、これは航空と運輸というものは非常に緊密な関係がありまして、戦前におきましても、日本航空に対して日本郵船会社が相当の出資をして、相当の指導力を持つておつた。これは諸外国におきましても、最近の状況は知りませんが、そういう傾向が非常に強かつたように考えます。海と空との違いがありますけれども、その輸送の態様からいいますと、非常に似通つたところかあります。従いまして海運会社としては、航空と海運というものを結びつけて考えたいという気持が相当あるわけでございます。従いまして、そういう観点から、日本航空会社に対してある程度の出資をしたのではないかと考えます。しかしこの出資も、相当海運会社にそういう余力があつた場合の構想に基いて出したものと考えます。すでに約束しておつた点と、今申しました航空に対する異常なる関心並びに関係からいたしまして出資をしたのではないか、かように考えております。、
  104. 原彪

    ○原彪委員(改) 私は自分の会社が経営困難で、につちもさつちも行かないから、政府利子補給をしてもらいたいというなら話はわかるのですが、ほかの会社に投資する余力があつて利子補給をもらうということは、その会社自身がそう苦しくないということであります。日本航空に約六億近い出資金をほとんど船会社が出す。出したこと自体については私は反対ではありませんけれども利子補給の問題とからみ合せますと、ちよつとおかしな話です。会社の経営が楽だからこそ投資をするのです。銀行だつて投資をする金をそう貸すはずはありません。たとえばはつきり申し上げますと、郵船にしても欠配になつています。大阪商船も欠配であります。欠配の会社が利子補給をとる形はいいのでありますけれども、その会社が何億という金を航空機のために出資するのは、非常におかしな話です。どうもそういう点に疑義があるのです。何も航空会社へ出資することはいかぬというのではないのですよ。ただそういう会社が利子補給をしてもらうのはおかしいというのです。もう一ぺんそのことを答弁していただきたい。
  105. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 私が先ほど申しましたように、海運と航空というものは非常に緊密なる関係のある事業である。従いまして海運会社は非常に苦しい状況でありまするが、その緊密なる事業に対してある程度の投資をするということは、やはり自分の事業の遂行上いろいろの好都合な点があるというような観点で出資したものではないか、かように考えるのであります。
  106. 原彪

    ○原彪委員(改) たいへん御答弁がお上手で、これ以上私は申し上げることはありません。ありませんが、それならば利子補給をしなければならない会社の業態について、今まで各海運会社、造船会社が、経営の合理化にどの程度努力したかということについて、利子補給をする前に御検討なさつておるかどうか、この点を承りたい。
  107. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 現在までの私どものしかつめばつた権限から見ますと、海運会社に対して何ら経理監督、あるいな業務監督をする権限はないのでございます。しかしたびたび申します通りに、市中銀行、それから現在では開発銀行でございますが、財政資金は開発銀行から貸し付けておりまして、その金が非常に巨額に上つておる。従つてこういう市中銀行並びに開発銀行におきましては、海運会社に余力のある限り、非常に厳重なる取立てをいたしておるということを聞いておりますし、また私どもといたしましても、関係銀行並びに開発銀行においてそういう態度をとられることを要望しておるわけでございます。従つて海運会社に余裕がある間は、むしろ約定の期限が三年でありますのを、二年で償還をするという措置を今までとつておるのでございます。いろいろ海運会社の経営の状況その他について批判がありますが、少くとも財政資金並びに市中からの借入金につきましては、できるだけの返還をいたして参るというように考えております。もし余裕があるのにその返還を怠りました場合には、船会社というのは次々と新造を計画しておるわけでありまして、従つてその新造の場合における融資を得ますのに、非常に困難なはめに陥るわけでございます。従つて自分の力以上の償還をしているというのが現実でございます。たとえば最近各船会社とも株の値段が額面割れでございますが、額面割れにもかかわらず増資を決行いたしました、これは今まで市中銀行から借りております金に対して、元金はもちろんのこと利子をも支払えないような状況である。しかし利子も払えない、元金も一文も払えないというふうな状況では、今後の新造資金はもちろんのこと、運転資金も作り入れられないしいうので、その増資の金をもつて利子の支払いあるいは元本の一部を支払つて、銀行の信用をつなごうとしてやつておるのが現実の事態であります。従つていろいろ批判されておりますようなそう放漫な経営はいたしていない、かように考えておる次第でございます。
  108. 原彪

    ○原彪委員(改) 海運の助成策については私はあえて反対するものではありません。ただ利子で補給するという方法について非常に疑義があるわけであります。そういう観点に立つて御質問申し上げておるわけでありますが、この法律実施されますと、補償金あるいは利子補給等によつてなるほど船はどんどんつくられて行くようになりましよう。しかし船はできたけれども、フレートの問題で外国の船と競争することがはたしてできるか、私はこれが問題であると思うのであります。国際上のこまかい運賃同盟がどうなつておるか、遺憾ながら私ははつきり存じませんが、運賃のダンピングその他の問題が起きたときに、運輸省としてはどのような態度でこれに臨むか、私は危惧なきあたわざるところであります。それに対する運輸当局の見通しはいかがなものでございましようか。
  109. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 御承知通り船の経営に二つございまして、一つは不定期船経営、それから定期船の経営、定期船の方は大体一定の賃率を設定しまして、その賃率を守つてつて行く。不定期船の方はまつたくの自由競争でありまして、そのときそのときの世界の運賃市況によつて日本船の運賃もきまる。ちようど水が高いところから低いところへ流れますよに、たとえば日本の近海の運賃が非常に高いと、大西洋の方から船がまわつて来て運賃が平均化する、こういうふうなものでございます。従つて不定期船の運賃においては、運賃がどんどんと下つて行きますと、その低い運賃で耐える力のある国の海運が生き残るわけであります。そういう場合に日本の海運は金利が非常に高くて、その支払いをどんどん責められますと、日本の海運経営をしているものは軒並につぶれてしまうという状況にある。これが今日、目の前に出ているような事態であります。  もう一つ定期航路につきましては、一定の賃率を定めまして、おおむねその航路に従事しているものが、一つの同盟を結んでいるわけであります。一つ運賃カルテルといいますか、協約を結んで、その運賃率を維持して行くわけであります。ところがこれについてもいろいろ問題がありまして、そくにアウトサイダーというものがなければ、その運賃率が維持されるのでございますが、往々にしてアウトサイダーが出て来て、それに競争しかける。そこでアウトサイダーと対抗するために、同盟がまたそれに対抗して運賃を下げて行く、そういう場合に、やはり日本側の船主の経済力が弱いと、まず第一に悲鳴を上げるのは日本船であります。たとえば最近ではインドネシア航路でそういう事態がございます。日本の東京船舶と外国の船会社が三社ぐらいで航路同盟をしておる。それに対して戦後の海運ブームで非常にもうけましたメルスク、ラインがアウトサイダーとして競争しかけた。ほかの外国の三社は、これまた相当の力がありますから、そのアウトサイダーに対して対抗措置を講じて行こうというので盛んにやつたわけですが、まず第一に悲鳴を上げましたのは日本の会社であります。そこで私どもも中に入つて一応治まつたわけですが、そういう場合に経済的基礎が弱いと、まず参るのはその弱い国の船である。それから最近ニユーヨーク航路なんかも、いろいろ問題が起つております。これはいろいろ原因がありますけれども――現在これは非常に競争しておりますが、外国船の中には、この競争を激化することによつて、経済力の弱い日本船をたたきつぶそうという意図なきにしもあらず、かように考えられるのでございます。そういう面における運賃の安定を期する、あるいはかりに外国のアウトサイダーが出て来た場合に、それに対抗して、そのアウトサイダーに打ちかつという意味におきましても、どうしても日本の海運の経済適競争力を強くすることが必要である。今日、日本の海運は復興途上にありまして、いろいろな面の摩擦にぶつからなければならない、その摩擦なり抵抗にぶつかつた場合に、現在のような弱い力では、その摩擦なり抵抗を突き抜けることができないような状況でございます。そこで私どもはこの点を非常に憂慮いたしまして、日本海運に対する国際競争力の強化ということを、まるでお念仏のように唱えながら今日に至つたような次第でございます。
  110. 原彪

    ○原彪委員(改) 私は将来の見通しについてお尋ねしたのですけれども、どうもはつきりいたしません。  それではもう一つお尋ねしますが、日本に対する輸出入物資について外国船に積まないように、なるべく日本の船に積むように、どういう保護政策をおとりになるか、承りたい。
  111. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 これは日本の物資を日本の船だけに積むという政策は、外国からの非常な反撃を受けますので、そういうきわだつた行政政策はとり得ないと思います。しかしこれは日本関係政府機関なり、あるいは関係業者のおのずからなる心構えによつて日本船をできるだけ利用しよう、こういう措置しかしかたがないかと思います。
  112. 原彪

    ○原彪委員(改) それから大蔵当局の万に承りたいのです。これはほんとうは大臣か政務次官に承りたいのでありますが、大蔵省は御承知のように、財政と金融の総元締めであります。総元締めである大蔵省が、今度の金利の補給政策に賛成されたということについて、私は疑点を持つておるのであります。少くとも金利に対しては大蔵省は監督官庁であり、その金利行政面の元締めである上においては、現在は少くとも低金利政策でおやりになつておると思います。ところがこの金利政策も――これは今の政府の攻撃にもなりますが、現在の金利政策は円滑に行われていないと私は思います。市中の状態をごらんになればおわかりのように、中小企業は金融難のために、なかなか銀行に行つても金を貸してくれぬ、やむを得ず小さい金融会社から高い金利で金を借りておる始末は御承知通りであります。しかしながら東京であのようなりつぱなビルディングを建てておるのはほとんど銀行です。料理屋へ行けば一番お客さんの多いのは銀行家だといわれております。そのような跛行的な金融情勢下にあつて大蔵当局はどのような金融政策をもつて臨まれるかということに私は疑点を持つておるのです。低金利なら低金利でどのような方策をするか、日銀の通貨発行高はどうするか、あるいは金利の高い低いということについては私から申し上げるまでもなく、貿易の帳じりにもよりましようし、通貨の発行高にもよりましようし、インフレの上昇の度合いにもよりましようし、社会のいろいろなフアクターあもとにきまつて来るわけであります。けれども大蔵省は根本的な金融の措置を講ずる役目でありながら、それをやらずに、造船が大事だからといつて金利を補給するということについて、私は非常に疑いを持つておるわけです。航空機についてはこの前は債務保証のことをやりましたが、やがては航空機についても助成しなければならない、これについても金利の補給が必要でありましよう、あるいは将来農家に肥料を安くするために、硫安会社に対しても金利の補給をしなければならぬ事態が起きましよう。あるいはまた鉄鋼業者においてもしかり。あるいはまた石炭においても、そういう重要産業に金利の補給をしなければならぬということが生れて来た場合に、大蔵省は金融政策が一貫して行われなくなるのではないかと思うのです。だから、そういう点について大蔵省はどのようなお考えでこれに御賛成になつたか、その点を私は承りたいのです。
  113. 大月久男

    ○大月説明員 ただいまの御質問ば非常にむずかしい問題でございまして、私からお答え申し上げるべき筋のものかどうか、あるいは御満足の行くお話にならないかと存ずるのでありますが、私の承知いたしております限りについてお答え申し上げます。  まず第一に低金利政策の問題でございますが、御存じのように現在日本金利は、世界的な水準から比べまして相当高いことは事実でございます。これは根本的にはわが国に資本の蓄積が少いというところにあると思うのでありますが、これを終戦後どうかして下げたいというのが、金融政策の基本的な考え方でございます。それでここ数年来そのことにつきまして一貫して努力して参つて来ておるのですが、終戦後金利が特に上りましたのは、やはりインフレ期におきまして、金融機関のコストが上つたことが第一番でございます。その当時の銀行の貸出し金利の最高は、もちろん短期のものでございますが、二銭九厘程度であつたかと思います。それが逐次努力いたして参りまして、現在の短期の金利は、銀行におきまして二銭四厘を最高といたすということになつておりまして、これは臨時金利調整法の運用をもつてつてつております。それは一般的な金利でございますが、金利高の原因は、何と申しましても資金の量が少いということにあると存じます。戦前と比較いたしますと、物価指数におきまして大体三百何十倍ということになつておるのでありますが、その物価指数でもつて現在の預金の量を割つてみますと、現在絶対数におきましては預金が三兆ちよつと越すことになつております。それを物価指数で割つて、戦前昭和十一年ごろと比較いたしてみますと、実質価値において四〇%という数字になつておるわけであります。御存じのように銀行のコストは、預金の金利と人件費と物件費と税金、これだけの四つの要素があるわけでありますが、そのうちで預金の金利は、金利調整法によりまして、たとえば定期預金が半年五分とか、一年六分というふうにきまつておりまして、それと普通預金その他を合せまし、現在三分四厘程度なつておるわけであります。     〔松井(豊)委員長代理退席、委員   長着席〕 これは資本蓄積、従つて預金をふやすというために逐次上げて来ております。預金の方の金利は逐次上げるという態勢をとつて、できるだけ金をたくさん集める、それによつてコストを下げる、こういう方策をとつておるわけであります。しかし銀行のコスト全体を計算いたしますときには、預金が分母になりまして、現実に支出する経費が分子になるわけでございますので、実質価値が四〇%しかないということは、もし経費が同じであるといたしますれば二倍半のコスト、こういうことになりまして、それをまかなうためにやむを得ず貸出しの金利が高くなつている、これが実情でございます。従いまして貸出し金利を下げる根本の方策は、資金量の増大にある。そういう意味で、例の昭和二十四年の均衡予算以来、インフレをとめ、それによつて資金を吸収するという方策をとつてつております。そのために、税制面におきましては、御存じのように一つは預金に対する課税でありますが、源泉、選択の制度を最初六〇%でございましたのを逐次下げて参りまして、現在五〇%、それを今度の国会におきまして四〇%に下げるという政府の案になつておつたのでございますが、この間の修正案によりまして、源泉、選択でなくして、預金については源泉一本で一〇%にしよう、こういうお話がまとまりましたので、議員提出としてその法案が出る。その結果、預金に対する課税は格段に軽くなる、こういうことが予想されておるわけであります。それから少額の預金の吸収につきましては、貯蓄組合につきまして十万円以下の預金はこれを非課税とする、こういう制度が一本とつてございます。それから無記名預金の制度というのがございまして、御存じのように、預金者の心理といたしまして秘密性をたつとぶということから、預金者がだれであるかということがわからないようにするという方策といたしまして、個人の名前を出さなくても預金ができる。それに対しては税務関係の調査を現実にしない、こういう行政上の措置をとつておるわけであります。そういうようにいろいろ預金吸収の方策を講じた、結局資金量をふやすことによつてコネトを下げるというのが根本であります。それから経費を下げる方面といたしましては、銀行の人件費、物件費、午前中に御説明申し上げました通り、各種の冗費を省くような指導を現実にいたしております。それから店舗の問題がございましたが、これは全体におきまして約五千ばかり銀行の店舗がございますが、東京あたりで非常にはでで大きいという御批判はございますが、これは終戦後の経済情勢に応じまして、配置転換ということをやつた結果でございます。総数におきましては、終戦後店舗の数はむしろ減つておる、こういう関係でございまして、資金の多くあるところに多く店が出ておる、こういう関係でございます。
  114. 原彪

    ○原彪委員(改) いろいろこまかな御説明でありましたが、私のポイントは、金融の大宗である大蔵省が、こういう特殊産業だけに金利の補給をしてよろしいかどうか。金融政策をやるその元が、造船だけにしてよろしいかどうか。それならば、将来セメントにもしなければならぬ、鉄にもしなければならぬ、石炭にもしなければならぬのではないかということをお尋ねしているのです。その点についてどういうお考えですか。
  115. 大月久男

    ○大月説明員 今のように低金利政策をとつておりますが、しかしまだ十分でない。従いまして、特殊重要産業に対してどうするかという問題があるわけでございます。それで現在重点産業に対しましては、政府機関、具体的に申し上げますれば、日本開発銀行あるいは輸出入銀行、それから農林漁業金融公庫、それからただいま御審議中でございます中小企業金融公庫、そういうふうに、国策から申しましてどうしても資金を確保する必要がある面に対しましては、量の面で財政投資をいたしますと同時に、その金利につきましては、今市中の金利以下の金利をつけておるわけでございます。開発銀行の現状におきましても、もちろん重要産業だけに今融資を限つておりますが、一般の金利を一割といたしまして、電力と海運に限りまして七分五厘という現状になつております。それが今回の措置によりまして、船につきましては三分五厘という数字が出るわけでございますが、ただ現在特に船の関係を重視するという意味におきまして、三分五厘にいたしたわけであります。しかしながら産業全体の重点という点から考えまして、この金利の点につきましても、逐次必要があれば調整をはかる、こういうことになろうかと存ずるわけであります。現在のところその段階でないと考えております。
  116. 原彪

    ○原彪委員(改) 必要があれば調整をはかるということは、将来重要産業については、これと同様に利子の補給が行われるべきものと私は了解いたします。  それからもう一点承りたいのは、三分五厘という金利をどうしておきめになつたかという問題です。アメリカは申し上げるまでもなく物資豊富の国であつて日本と比較にならぬ国であります。金利もまた日本と比較にならぬほど安い金利であつて、この金利にならわなければならぬ理由がどこにあるか、その点を承りたい。
  117. 大月久男

    ○大月説明員 これにつきましては、今回の決定政府として関与しておりませんのでございまして、国会のおきめになつたところに従つてつておるわけであります。
  118. 有田喜一

    有田(喜)委員 改進党でこれを提案したときには、少くとも国際競争にわが海運がついて行けるように、ついては金利が高いということが一番大きながんである。少くとも国際水準の金利に持つて行きたい、かようにして最初は海事金融公庫をつくろう、こういう思想から始まつたのでありまして、これは国際水準並にしようという考えから三分五厘というのが出たのであります。
  119. 關内正一

    ○關内委員長 山口丈太郎君。
  120. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は低金利政策に体して大蔵省にお伺いをいたしますが、今各種産業に対してなるたけ低金利政策に沿つてこれを育成して行くという趣旨は、これは日本の国のこの貧困な経済状態におきましては、特に必要なことであり、私は政府もそれに努力をされておるものと思うております。しかしこの法案から割出して見ますと、私に何ら割切れないものがあるのは、そういう船会社に対して行つておるその貸付金利が、何ゆえにまず他の重要産業へ、しかも低金利政策をとつておるのと一致した金利において、融資ができるように措置をしないのかという点がまず一点であります。その政策がとられておるとすれば、このような、今ここで説明されたような金利による船会社の金利は出て来ないというふうに考えるわけですが、それはどういうわけか、ひとつお聞かせ願いたい。
  121. 大月久男

    ○大月説明員 先ほど御説明申し上げましたように、日本金利を下げたいという寿ではいろいろ努力いたしておりますが、現実に下り得ないのが現状でございます。従いまして税金あるいは国債をもつて集めました資金をもちまして、重点産業にのみそういう意味において重要な金の量と質の面から、これを推進するという意味におきまして、一定の財政資金を投入いたしますし、その財政資金については、金利の面でも優遇する、こういう方策をとつておるわけでございます。
  122. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今金の質と量と言われましたが、船会社は御承知のようにこれだけ厖大な金の量がいるのです。私は専門家でありませんから、質ということはどういうことなのか私にはわからないのでありますが、しかしこれだけ鬼大な金のいることがわかつているということは、結局はこれだけ船会社というものは、金の需要の多いものだということを証明しているものだと思うのであります。そういたしますると、それだけ需要の多いものでありまするならば、もう少し開銀なりあるいは市中銀行から融資いたしまするその融資金利に対しては、もう少し根本的に低金利政策というものがとられてしかるべきだと思うのですが、それに対しては、このようにして政府から補給金が交付されるようなきわめて甘い考え方から、そういうことを業者もあまり苦にしていないのであるか、あるいはまたその多額の金を要するために、そういうことを業者としては、声を上げると銀行が損をする――ある雑誌を見ますると、そういうことで、この金融業者というものの船会社の批判というものは、きわめて不遜とまで申してさしつかえないくらいに、船会社の方に対してはこつぴどいことを言つております。たとえばどこそこの社長は割合切れるとか、どこそこの社長は割合にわかつている、実に金融業者として最大の需要家、いわば顧客に臨む態度としては、顧客に臨む態度といえないようなことを、大つぴらに雑誌にまで公表をしておる。こういう点から見て、船会社がこれだけ大きな資金を要する、需要を持つものであるにもかかわらず、これに対してたとえば、わかりやすく言えば、物をよけい買えば何割か引いてくれることは常識なんですが、そういうことを少しもしないで、まかしておいて、そしてあとは政府の補償にゆだねるという、業者もきわめて甘い考えを持つているのではないか。あるいは政府においても、まあまああとは政府で見てやればいいのだ、いわゆる国の財政として、重要なものであるから助成をするという名目のもとに、何らかの解決をすればいいのであるというような、当局者としても甘い考えを持ち、船会社もそういうふうに、銀行に対しては大きな需要が必要であるために、遠慮をして何もよう言わぬ。そこで銀行業者がひとり大きな利益をむさぼり得るという結果を招来しているのである。こういう点について、私はとうもすつきりしたものを感じないのぐございますが、これについてひとつ人蔵当局からはつきりとした見解と、現在とられつつありまする諸政策について、ひとつ承りたいと思います。
  123. 大月久男

    ○大月説明員 重点産業に対しましては、国といたしまして、政府機関よりそういう低い金利の金を出すという方針を最近とつているわけでありますが、市中につきましても、金利調整法によりまして、これを規制いたしておるわけであります。最高金利をそれで押えるという方策をとつているわけでありますが、この船の資金につきましては、もちろん重点的な産業でございますので、開発銀行からの金にいたしましても、ただいま貨物船につきましては七、三の割合で、開発銀行が現在七を出し、市中銀行は三を出す、こういうようなかつこうになつております。それから油槽船につきましては逆に状況が若干有利でございますので、その点は八、二の割合で、市中が八、開発銀行が二というような割合で出しておるわけでございまして、市中の量的な負担ができるだけ軽いようにということを考えておるわけであります。市中の金利につきましては、今のように規制をいたしておるわけでありますが、根本の考え方といたしましては、現在の政府機関以外の金融機関、たとえば市中銀行とかあるいは興業銀行だとか、そういうものは根本が民間の企業でございますので、その資金のコストを割つてまで低い金利を出せということは言えない建前になつておるわけであります。従いまして金利調整法で金利を考えるにつきましても、精密に貧金コストを計算いたしまして、その経理の許す範囲において、できるだけ金利を下げるという方策をとつております。しからば市中金利のうちに、たこえば鉄に行くのと船に行くのとあるいは一般産業に行くのと、金利を違えるかどうかという問題でございますが、これは現在短期金融の面につきましては、貿易手形その他で若干差をつけておりますが、長期の金融につきましては、金融債をもつて資金を集めて、その資金のコストが高いということで、大きく差をつけるだけの余裕がない。しかも市中の関係でございますので、業種ごとにこれを踏み切るということは、戦争中にございましたような資金調整法的な、個別の目的にタッチするというようなところまで踏み込まなければ実行できない。そういうようなことから業種ごとの金利の差をつけるにいうことは、現在やつておらないわけでございまして、全体といたしまして極力下るようにということで努力いたしておるわけであります。経理の点につきましては、預金者を持つておるという建前から、やはり慎重にせざるを得ない。そういう立場にあるということを御承知願いたいと思います。
  124. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今聞きますと、油槽船に対する市銀と開銀との割合は八対二であり、貨物船に対しては七対三の割である、このように承つたのでありますが、油槽船は採算のとれる割合が大きいから、金利も高いところから融通を受けておる。収益率の低い貨物船に対しては、金利の低い開銀を主体に考えてやる。どうもそれは一貫的な考え方からいたしますと、埋め合せのつかないものになつておると思うのです。なぜこれをもつと一貫した筋を通してやるようにしないのか。その理由を聞かしていただきたい。
  125. 大月久男

    ○大月説明員 財政資金につきましても限りのあることでございますので、産業ごとにつきまして重点化をいたしておる。船の面につきましても、御存じのように現在貨物船の市況と油槽船の市況とは状況が違いまして、貨物船の方が特に苦境に立つておるわけでございますから、貨物船の方に財政資金がたくさん来ておる。従つてその結果、市中の金利と開銀の金利との差だけ、貨物船の方が金利負担においても楽になる。両面から実質的に考えて、差をつけておるわけでございます。
  126. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はこの点についてはなおよく検討をいたしたいと考えます。概略の説明了承したわけでありますが、もう一つお伺いしたいのは、外航船を所有する船会社も、それからまた内航船、いわゆる鉄鋼船を使つて内地相互間の航行を担当しております向きにつきましても、たとえば石炭の輸送その他については機帆船で輸送しておる向もありきますが、またそれとは違つて、汽船を所有して、それで運搬をする、これは一例でありますが、そういうふうに内地相互間の貨物輸送に対して大きな役割を果しております。そこで今申しましたように、船会社というものは特別に大きな資金を必要とするものでありますことは、今御説明があつた通りであります。そういたしますと、外航船がもちろん日本の貿易産業として日本経済の中枢であるということは、私はよく承知いたしますが、しかし一面から考えますと、それだけをもつていたしましては万全ではないのであります。今日陸上交通が逼迫をいたしておりまして、これは昨日来鈴木委員が指摘されておりましたが、日本の貨物輸送力は貧困なものでありますから、やはり海上輸送に大いにたよらなければならぬ。このような事情にあるのでありますが、そういう場合において、外航船だけをこのように二年も三年もさかのぼつて利子補給をやる。一方において内航船で内地相互間の輸送に従事をいたしております、たとえば小規模の業者が多いのでありますけれども、これまた今の場合におきましては特に困難をきわめております。大きな会社におきましては、開銀その他指定銀行におきましても相当の資金需要に応じてもらうことができるのでありますけれども、小会社におきましてはそういつた需要に応じてもらえない。従業員の給料すらまともに払えないような悲惨な状態に置かれつつも、なお輸送に非常な努力を傾けておるのであります。こういうものを私は等閑視するわけには参らないと思うのであります。なぜそれらに対しても保護助成の策をとられないのか。とられるとすればどのような考え方を持つておいでになるか。私はこの法案審議するにあたつて、この点を明確にお聞かせ願いたいのであります。
  127. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 内航船と外航船に対する政府としての考え方を申し述べさしていただきたいと思います。私どもとしては、今度国会修正なつたわけですが、運輸省として考えております場合におきましても、一応外航船だけを対象にする。外航船だけを対象にいたしますのは、たびたび申し上げますように、外貨獲得と貿易振興に重点を置いて考えるというところから、外航船だけを対象にしておるのでございます。内航船に対しましては、これはほかの国内産業とあまり差別して考える点はないのではないか。もし内航船に対して外航船政策をとるとすれば、ほかの国内産業に対しても、たびたびお説が出ておりますように、同様の政策をとらざるを得ないであろういうふうに考えておるのでございます。私ども海運行政をやつております者の立場といたしましては、内航船も外航船と同様に取扱つていただけば、これほど幸いなことはないと存じますけれども、国内産業全般を考えました場合に、それほどまで外航船と同様に取扱う必要があるということは言い得ないと考えておる次第であります。
  128. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこで私はお尋ねしたいのですが、今みずから言われますように、他の産業とバランスのとれるようなことは理想であつて、できないということをみずから言われておるのであります。そうすると、この案で行きますと、二年も前までさかのぼつて利子補給を行うというのでありますから、これはとりもなおさず、今の答弁からいたしますと、きわめて矛盾した問題になると思うのであります。それは今、原委員が申されましたように、このような特定の業者、特定のものが、特に重要であるからというだけの理由をもつて、高率の利子補給、特別の保護を受ける理由は少しもないのではないか。むしろそれよりも、現実に即して、日本の財政経済に見合うような措置においてこれを保護するという方策をとる方が適当ではないかと思うのですが、どうでございますか。
  129. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 これは私からお答えする何かどうかわかりませんが、私どもとしては外航船による外貨獲得、貿易振興に対する貢献、こういう点を考えて特に重点を置かれた、かように了解いたします。
  130. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは私は修正されました提案者側からお答えをいただきたいと思います。
  131. 有田喜一

    有田(喜)委員 御承知通り今日日本の経済自立をはかるということは、きわめて緊要なことであります。この達成のためには、私どもは貿易の伸展、ことに輸出の振興をはからなければならぬと考えておる。同時に外貨獲得をやつて国際収支の改善に資さなければならない。貿易の伸展並びに外貨獲得上から申しまして、わが海運、ことに外航船舶のになうところの使命というものは、確かに重大です。御承知通り戦前のわが国の経済は、ことに国際収支は、海運運賃によつてまかなつておつたといつても過言でない。ところが今日の海運は戦争によつて非常にさんたんたる状態で、資本蓄積もほとんどありません。戦後やや復興して参りまして、朝鮮動乱によつて一時をしのいで参りましたが、今日の状況ではわが海運は世界海運に太刀打ちできない。しかもこの困難を乗り越えて日本の経済自立の達成のために貿易振興に資し、外貨獲得に邁進しなければならない。これがためには、日本は船質もいい、また海員の力も相当ある、しかしただ一つ大きな欠陥は金利が高くて国際的に太刀打ちできない。そこで今日この日本の海運の危機を突破し、日本の経済自立のために政府がここに助成方策を講じて、そして日本の経済目立の達成のために邁進する。これが私どもの基本的な考え方でありまして、内地の一般内航船も重要でありますが、特に外航船が焦眉の急務である。かような見地から外航船舶に対してかような助成方策を講じたわけであります。
  132. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今の御答弁は私どももよく承知しておるのです。これは一歳質問のときに特に私は質問をいたしまして、その点については私も決してこの修正提案をされました各委員の方々に劣るものではございません。よく承知をいたしております。しかし金利が非常に高い。その高い金利を使つてそして産業を興しておりまするのは、あるいは事業を行つておりまするのは、ひとり船会社だけではないのであります。一原委員が言われますように、他の産業もすべて高い金利を払つて、そして日本経済のために営々として努力をいたしておるのでありまして、これはひとり船会社だけではないと私は思うのであります。でありまするから、いくら船会社を保護いたしましても、かんじんの船に積み込むところの荷物を生産する会社が、それに苦しんでばたくと倒れて行くような状態に置かれたままで放任をしておいたのでは、私は産業経済の一貫策はとり得ないものだと思うのです。そういう点に関して、特に私は重点を置いて質問をいたしておるわけであります。ですからこれはやはり総合的に考えなければならない。根本的にはすべての金利をもう少し何とか安くするという方法を講じなければならぬことは論をまたない。論をまたないけれども、今日そのようなことにあまり努力をされていないと私は見るのであります。それが証拠に今日の銀行のあの戦後に急速に建築等をしましたのはまず銀行であります。厖大な金利を得ておるのであります。たとえば今日のような貨幣価値の低いときにおいて、一つの支店をまかないまするのには、一億程度の預金が集まれば、それで一つの支店というものは十分にまかなつて行ける。このようなことも私は聞いておるのであります。そういたしますと、悪くいえばあまりにも高い金利で銀行業者を肥しておいて、そうしてそれに対して何ゆえにわれわれがそのような利子に苦しまなければならぬかということが、まず第一点であります。しかも今申しましたように、他産業においても、原委員が指摘されますように、全部やはりその金利に苦しんでおるのであります。しかもその苦しんでおる産業というものは、日本経済の再建のためには、決して船会社の熱意に劣るものではないのであります。そういう意味から申しまして、私は政府の一貫した金利政策というようなものがとれていないところに、非常な矛盾を感ずるのであります。でありまするから、このような事態に対して、一体政府はどのような考えを持つておるのか。またこの修正提案者は、そういつたことを権討して、十分将来に対しまする日本金利政策を検討されたのかどうか。その点があまりにも等閑視されたままに、今日の船会社における現状だけを見て、そして悪くいえば局面を糊塗するような、お茶を濁すようなきわめて浅い政策のもとに、このような修正案を出されておるのではないかということを私は憂うるのであります。こういつた点について、もう一度提案者並びに大蔵当局、及び通産省もおいでになつておるならば、その三者から御意見を拝聴いたしたいと思います。
  133. 有田喜一

    有田(喜)委員 日本金利が高いということは、日本の経済の一つの悩みであります。できるだけ低金利政策で行きたいという、これは政府の考えかどうか知りませんが、私たちはさように考えております。しかしながらなかなか実際問題としまして、一挙に国際水準まで低金利施行するということは困難ではなかろうか。そのうちでも最も重要な基幹産業、ことに今日の日本として大事なことは貿易の伸展で、そのために海運にもつと力を入れてここに利子補給政策を講じたのです。何もかもやりたい気持は一ぱいでありますが、しかし重点的に大事なものから漸次やつて行くのが実際的ではなかろうか、かようなわれわれの気持において、今回の提案をやつたような次第であります。
  134. 古池信三

    ○古池政府委員 通産省の立場といたしましてお答えを申し上げたいと思います。先ほど来伺つておりますると、ただいまの御質問の中に含まれておりまする御趣旨は、私どもも同感する点が多々あるのであります。それからただいま提案者から答弁になりました点も、これはやはり今考えておるところと相当共通しておる点があると考えるのでありますが、何といいましても現在の日本金利というものは、世界各国に比べて相当な開きがあつて、高いということは申すまでもないことであります。何とかこれを安くするということが重大な問題であります。しかしこれにはやはり資本蓄積の問題とか、いろいろ事情があつて一そう簡単に全部を一挙に下げるということは、とうてい困難なことであろうと思うのであります。しかし着々一歩々々金利引下げということに、可能な範囲の努力をして行くということは、われわれとしても必要じやないかと考えておるのであります。そこでしからば全体の産業の立場からいつて、造船関係にのみかような優遇をするということはどうか、こういうようなお話でありまするが、なろうことなら全部の産業に対する金利を下げればけつこうなことでありますが、それがむずかしいとなれば、それでは一体今何が特にそういう点において意義が多いかと申せば、やはり貿易の振興、この貿易の振興の上において外航船の必要であることは、いまさら申し上げるまでもないことであります。しかも船舶における金利の持つウエートというもは相当多いのであります。そこでとりあえず、まずこの方から助成をいたしまして、これを一つの捨石としまして、着々貿易の振興に効果あらしめ、さらに全般の産業の方面にも好影響をもたらして行くということが、やはり全般の産業を振興する上において有利なことは申し上げるまでもないのでありまして、そういう意味からこの修正提案にはわれわれも賛成をいたしたような次第であります。大体通産省の考えておりますことを、ごく概略でございますが申し上げます。
  135. 大月久男

    ○大月説明員 前半の金利の点につきましては、ただいまの皆さんのお話と考え方は全然同じことでございますが、私たちの努力の足りない点もございまして、十分に御期待に沿うような低金利政策というものは推進できておらないのであります。しかし方針といたしましては、あらゆる機会をとらえまして、できる限りの方策を講じておるわけであります。  それから船だけについてどうしてこういう特別の措置を講ずるかという問題でございますが、やはり全体としての金利水準が、どうしても国際水準に下り得ないということになりますれば、重要なものから手をつけるよりしかたがあるまい。基幹産業となつております船、あるいは電気、あるいは石炭、鉄、そういうような問題を十分に取上げまして、それとその経済情勢に応じましてウエートを置きまして、逐次解決して行こうかと存ずるわけでございます。今回のこの提案におきましては、特に船の問題が重要な問題でありますので、こういう案が提出されておるのであろうと了解いたします、
  136. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 あとで松原議員の関連質問がございますから……。私は今聞きました重要々々、これはもう提案のときから重要ということを聞いておるのでありまして、その重要ということはもう言うていただかぬでも私はよく知つておるのであります。けれども、その重要ということを申すのであるならば、これは特に船だけではなくて、私が申すのはこの貿易に関連いたしまする産業というものは、日本の少くとも基幹産業として船とともに私は重要なものだと思うのです。その船とともに重要な、むしろから船では動かせぬのでありますから、それに詰め込むべき重要なもとをつくる産業が、同じような高い金利に悩まされている。そのものに対しては何らの手配も講ぜられないでおいて、そうして運ぶことだけを重要視するということについては、どうも私は納得の行かない点がある。何ゆえにそういうことが重要なのか。これは重要な問題でありますから、もう一度はつきりとその重要な意味をお聞かせ願いたい。あなた方は水の上に船を浮べることだけが重要だと考えておられるのか。私はむしろそれよりも、その中に入れることが重要だと考えておるのでありますが、一体それについてどうか。  それからまた有田さんにお伺いいたしますが、三派の歩み寄りによつてこの提案なつたということで、どうも改進党としての本来の政策について、すなおな答弁を承つていないように思うのであります。一体私は相当の改進党との食い違いがあると思う。少くともこの修正案そのものについては、あなた方三派で十分に検討されて、そして歩み寄りをして出されたものでありましようから、私はそれについてはとやかく申すものではありませんけれども、少くともあなたがほんとうに改進党としてもともと持つておられましたこれに対する政策というものは、どのようなものを持つて臨まれたのであるか。私はこの修正案をつくられるに至るまでの経緯についても質問をしたのでありますけれども、いまだそれに対してのはつきりとした答弁は承つていないのであります。どうかこの点について、それぞれ私ははつきりとした御答弁を承りたい。
  137. 有田喜一

    有田(喜)委員 私たちはこの船舶に力を入れておりますが、何も運ぶことばかり考えておるわけじやないのです。もちろん中に入れる荷物も大事でありますが、しかしその足がしつかりしなければ、せつかく荷があつても貿易振興はできない。ことに海運は御承知通り第三国間の貿易に従事するのであつて日本に荷がなくとも、外国の第三国間をあつさりまわつて、外貨獲得をやるという重要な使命を持つております。かような意味合いにおきまして、私は基幹産業中の最も重点産業と考えておるのであります。今回の修正案は、最初改進党が考えておつたことと多少はかわつております。しかし考え方は少しもかわつていない。この低金利一つの施策として海事公庫をつくろう、こういうような考えがあり、また低金利も、市中銀行に対してももつと徹底した低金利政策を講じよう、こういう考え方もありましたが、しかしこれは改進党ばかりでできるものでなく、相手があり、これがまた政治でありますので、その辺がかわらない以上は、われわれは現在の範囲より以上のものになるならばけつこうだということで、三派協定ができたのであります。かような次第で、われわれが海運を重要視し、またかような施策が重大であるということは、最初と少しもかわりはないのであります。
  138. 關内正一

    ○關内委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  139. 關内正一

    ○關内委員長 速記を始めて。
  140. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 委員長はそう言いますけれども、私はこれで進展しているのです。ですからやはり私は納得の行く答弁をしてもらわないと、お互いにその態度をきめる場合において、非常に問題を残したままではいけない。聞くところによると、まだ参議院においてもこの問題は相当問題になつているということも聞くのであります。けれども私はそのような考えは毛頭持つておりません。こちらはこちらとして、私は独自の立場として衆議院としての審議を行つて行きたい、こういうように考えておるのでありますから、そのように了解してもらいたいと思います。  そこで今申しましたように私は政府政策をただしてみましても、一貫した政策として、二年も前にさかのぼつて利子補給をやるという計画はなかつたのであります。ところがその理由は、予算修正したので、それに従つてこのように修正した。しかもそれは政府内において修正をしようということで話合いをしているうちに、三派で共回してこのような案が出たので、政府も賛成をしたんだ、こういうように言われておるのであります。ですから私はその点については、午前中申しましたように了解をした。こう言つているわけですけれどもやはりわれわれは一つの産業だけを考えて行くわけには参りません。国全体の施策の一環としてこれを考えなければならぬのですから、それで私は具体的な方策について、総合的にどう考えるかということをお尋ねしたわけです。そういうように了承をしてくれるならば、私はこれで、あと松原委員関連質問があるそうですから、その方に譲りたいと思います。
  141. 關内正一

    ○關内委員長 松原喜之次君。
  142. 松原喜之次

    ○松原委員 われわれはできるだけ慎重に質疑をやり、審議をいたしまして、そうしてこれに対する態度を実は決したいと思つておるのでありまして、初めから反対しようという目的を持つたり、あるいは初めから賛成しなければならないというようなことも別に考えておりません。従いましてこれは議員の義務として、ひとつ慎重審議を許されんことを、特に自由党の諸君に了承を願いたい。そこで私は午前中保留いたしておきました通産省関係の問題を一つ二つ、きわめて簡単にお伺いしたいと思うのであります。たしか二十五年かと思いますが、鉄鋼補給金あるいは非鉄金属の補給金、その他いわゆる補給金政策を吉田内閣は捨てたのであります。そうしてできるだけ補給金から温室育ちの産業をつくつてはならないという理由、二つには補給金等助成策についてまわりまするところの国家の干渉を排して、できるだけ自由経済、いわゆる自由党の自由経済の建前からこれを廃されたとわれわれは考えておるのであります。しかるに今回の修正案によりますと、私たちと立場、考えは違いますが、自由党内閣としては、せつかく一貫してその自由経済のために補給金を廃して参られたにもかかわらず、今回の改正案によりますと、形は開銀の金利の補給となつておりますけれども、とにもかくにもこれは旧来の補給金の一の形にすぎません。かような補給金制度をとられるということに対して、御賛成であるかどうか、もし御賛成であるとするならば、吉田内閣の補給金政策に対する考え方をおかえになつたのかどうか、いつからどういう理由でおかえになつたのか、将来どういうふうな方向にひつぱつて行こうとしておられるか、その点を承りたいのであります。
  143. 古池信三

    ○古池政府委員 お答え申し上げます。お話のようにわれわれ自由党といたしましては、また自由党内閣といたしましては、あくまで経済は自由にという基調のもとに進んで参つておることは御存じの通りでありまして、補給金を廃止して参りましたのも、その政策の現われにほかならぬのでございます。しかしながら今回の措置は、これはいわゆる補給金ではございません。ことに一般産業の発展のための基調となる船、特に貿易関係におきましては、あらゆる産業に共通するような基礎的な事業でございまして、そういう意味から行つて、この際どうしても戦前あれだけの日本に有利な影響を持つておりました船の関係を、なるべく早く以前にもどして、そしてこれをベースにして日本の輸出振興にも大いに役立てて行こう、こういう観点から特に今回の改正がなされたものと了解いたしまして、全般的にはもちろん原則として自由経済はあくまで堅持をして、できる限りそういう補給金というような特殊な扱いはしないのが原則でありますけれども、今回のような場合に限つて例外と申しますか、そういう意味合いをもちまして、われわれも賛成をしておるような次第であります。
  144. 松原喜之次

    ○松原委員 そこが問題なのであります。すなわちこの造船用の鉄鋼を突破口として、そこから補給金制度が漸次広まつて行くというような傾向があるように思うのであります。われわれはそれに反対をするのではないのです。実は一貫性ある総合的な政策のもとに、造船あるいは海運事業を助成するというのであるならば、われわれは反対をしないのであります。その方法はいろいろありまするけれども、しかしながら単に運輸事業だけにそういうことをやるのだ、そうしてほかのものは例外であつて、ほかには及ぼさない、こういう考え方自体が非常なアンバランスな政策であつて、やはり産業政策生体に、これは例外だからどうだというようなことは考えないで、全体をにらみ合せて、一貫した総合的な政策をとつて、海運ないし造船業の助成方策ととる、こういう立場に立たれるのがほんとうではないか。われわれはそういう立場において実は質問をいたしておるのであります。現に原案においてはそういう鉄鋼補給金に類するようなものはなかつた。それが今突如として改正案で現われて来た。それに賛成を余儀なくされたから、それでこれは例外として認むるものであるといわざるを得ないでしようけれども、しかしながら政府としてはそこにみずからの政策の基本的方針に破綻を来しておるのではないか。もし初めからそういう考えがあるならば、なぜ原案にそういうことが出されなかつたか。運輸省では従前よりそういう方針を望んでおられたことをわれわれは知つておるのでありまするが、大蔵省なり通産省なり一貫しての政府において、それだけの政策を実行する腹がなかつた。すなわち補給金制度をとる腹がなかつた。けれども今回その本来の基本方針を打破られるようなことを強要されたのではないか。この点に関して率直にお答えを願いたいのであります。
  145. 古池信三

    ○古池政府委員 お尋ねなつておりますお気持は、私もよく了解をいたしますが、最初申しましたようにわが党といたしましては、あくまで自由経済で行きたい、この根本観念にはごうもかわりはないのでありますが、この戦後の産業あるいは貿易をどうしたら振興できるかという、いわゆる生きた経済政策に臨みました場合には、やはり機に応じて最も適切有効なる方策をとつて行くのが、政府としての任務ではなかろうかと思いますので、いわゆる観念的な面ばかりでなく、実際に即してやつて行く。原則には多少の例外というものがあるということは、どこでもあり得ることだと考えておる次第であります。
  146. 松原喜之次

    ○松原委員 すなわち国会からの修正にあつて、その例外を認められて、西府の本来の方向をかえられることがいいというふうに思つておるという話でありますが、何としてもその御答弁は御答弁であつて、そういう御意思であるとは受取りがたいのであります。われわれとしてはもつと政府としては国際収支の改善、そのための貿易の振興、あるいは国際価格に国内物価をさや寄せをするところの諸方策、それらの点を総合的に行つて行かれなければならないと思うのでありまして、さような観点からして、現在の日本の経済の実情、世界の経済の実態、それらのものをにらみ合せまして、とうてい自由経済などというようなちやちな、旧式な時代遅れの方策ではやつて行けない、私どもはさように考えておるのでありまするから、この法案それ自体にはわれわれは反対しないのであるが一しかしそれならばそれでもつと基本的、総合的な一貫した、そうして均衡のとれた政策をもつて、その一環としてこれを出されるならば、われわれは大いに賛成する。こういう点について通産省としては、本来の産業省としての立場を堅持されるように、この際特に私は望んでおきたい。ことにこれとMSAとの関係等は、通産省と非常に関係あるところの経審庁の考え等をもつていたしましても、平和な、平常な貿易の振興によつて、国際収支の均衡をとれるように、回復できるようにしなければならないということをみずから主張をいたしておるのであります。一方においては、その平和産業によるところの国際収支の回復とはまつたく逆行するようなMSAの問題が起つておる、こういうふうな点にこれまた常にお得意の総合性のない、支離滅裂な、そうして均衡のとれていない実態があるのでありまするが、かれこれにらみ合して、ひとつわれわれの意のあるところをよくお考えをいただきたいと思うわけであります。  なおひとつ今後さらに運輸事業、ことに外航船舶に対するところの特別の育成方法というものが、必要に応じて他にも及ぶ可能性のあるということを私どもは認め、すなわちそれを突破口として、もつと大きな政策が打出される、その傾向を余儀なくされるであろうと私どもは予期しておるのでありまするが、その点に関する御感想を承つて、私の質問を打切ることにいたします。
  147. 古池信三

    ○古池政府委員 お答え申し上げます。今後のわが国の産業政策を進めて行く上におきまして、お話のように非常にいろいろな問題があると存じます。従いましてそういう問題を逐次処理して行きまするためには、ただいまお話になりましたような御意見は十分に参考といたして、産業が振興し、国際収支が見合つて、自立経済を一日も早く達成できるように、われわれも努力して参りたいと思いますので、どうぞ御了承願います。
  148. 關内正一

    ○關内委員長 原君。簡単にお願いします。
  149. 原彪

    ○原彪委員(改) 関連して……。ただいま通産政務次官の御答弁によりますると、船の利子補給は例外的にお認めになるというお話なんです。これは通産政務次官としてでなく、大蔵政務次官として、政府側の御答弁と私は解釈するのですが、先ほど大蔵省の方の御答弁によりますと、重要産業であるから利子補給をしなければならぬというお話です。例外的ということになつたならば、ほかの産業はやらぬ、これだけやるというお考えであるか。そうすると今後利子補給をしなければならない問題が必ず起きて参ります。そうすると、これだけ例外にして、ほかはやらぬというふうに聞えるのですが、その点はどうなんですか。政府部内が統一していないではないですか。
  150. 古池信三

    ○古池政府委員 私が例外と申しましたのは、ともかく現在問題になつておりまするこれを全般的に他の産業にも及ぼして行こうという意味ではない。あくまで自由経済政策をとつて行きますけれども、これも例外の一つとして今回はやつたらいいだろうということを申しましたので、今後のいろいろの情勢の変化もございましようから、これ一つであるというような意味ではございません。
  151. 關内正一

    ○關内委員長 熊本虎三君。
  152. 熊本虎三

    ○熊本委員 ずいぶん質疑が熱心に行われましたので、できるだけ整理をして重複しないようにと思いますけれども、同僚の質疑の中でどうしても了解できないものがありますから、重複するかと思いますけれども、お許しを願います。  第一には例外中の例外というようなことを先ほども次官からお話がございましたが、私どももこれは例外中の例外であるというふうに考えております。というのは、開発銀行の利子を三分五厘の業者負担でとめようという一点、それから市中銀行の利子を五分の負担でとめて、あとは国が補償しようというのでありますから、たいへん重大な問題であります。午前中に関連質問で運輸大臣にこれは革命射な考え方であると言つたのでありますが、それほど思い切つた政策だと考えます。そこで問題はそうなつた場合に、先ほどから質問がありますように、それならば造船計画の重大なることはわかつておりますが、これに匹敵するような他に緊急重要なものは見当らないのかどうか。全面的な日本産業経済計画の面から行きますれば、現在のような高利による経営というものは、やはり根本的に改めて、低利政策をとらなければならない。それに悩んでいるものは幾らもあつてつているのでありますが、ほかにはそういうものは見当らないというお考えかどうか。念のために聞いておきたいと思う。
  153. 古池信三

    ○古池政府委員 最初に私が申し上げましたように、わが国の今の産業の状態から申しますと、全般的に金利はもつと安くならねばならぬと確信しているのでありますが、しかし今全面的に金利を引下げるということは、実行問題としてはとうてい困難であるのであります。そこで今度の造船に対する特別な措置が考えられたのでありますが、しからば今これと同様に重要なものがあるかないかという問題は、なかなか重要な問題だと存じます。必ずしもこの造船のみが重要で、他のものは重要でないというようなことは言い切れないのでありますが、かような措置としましては、やはり逐次そのときどきの情勢に応じて考えて行かなければならぬので、今からあらかじめ予想して、こういうようなものにはこうするというようなことは、ちよつと申し上げることもできないのではないかと存じます。
  154. 熊本虎三

    ○熊本委員 私どもは今ここでこれに匹敵するような重要問題をたくさん考えておりますが、しかしここでそれを羅列して討論にわたることは避けたいと思ういます。但し聞いておきたいことは、これに匹敵するような緊急重要の問題があるとすれば、こういう施策をこれから広げて行こうというお考え方があるのか、それはそういうものであつても、もうやらぬとおつしやるのか、ここが一番重大だと思います。私どもの党において一つの結論を出すためにも、この前の十五国会におきましても、国際的な金利の調査を願い、さらに各経営体の利益配当の参考資料を得て、こういうものと勘案をして、この案についてはわが党曲げて賛成してくれという了解を求めるほど、たくさん重要事項をかかえております。従つてこういうような案を出されますならば、党に帰つてどうするかということになりますと、将来の政府の方針を聞いておかないことには、とうていこの結論が出て来ないと思う。その意味において私は聞いておるのでありますから、従つてその点については金利が高いことはだれもわかつておりますから、やはり諸外国の産業政策と並行するように、こういうものはどんどんやつて行く、こういうふうにおつしやつていただくならば、この問題については、われわれもその緊急性は知つておりますから、十分党に納得するように相談をしてみたい、かように考えますので、もう一ぺん御答弁願いたい。
  155. 古池信三

    ○古池政府委員 長い目で見まして、金利をだんだん安くして行くということについては、そうせねばならぬと考えますけれども、今さつそくに取上げて、これと似寄った重要な産業が現われた場合にはどうするかというとこは、ただいま申し上げましたように、これはそのときになつて考えてみないと、今からあらかじめ予測することは困難であろうと存じます。
  156. 熊本虎三

    ○熊本委員 はなはだあいまいな答弁で、私は党に帰つて相談に苦しむのでありますが、のれんに腕押しみたような押問答は避けたいと思います。  次に移ります。政府閧係の方々は口をそろえて低金利政策とおつしやる。まことに私どもの求めてやまざるところであります。満腔の敬意を表します。ところがその低金利政策とは、どういうことかということが問題であります。あなた方は低金利政策ということを言つておられるが、それは業者に対して利子の高いものを補償してやるだけであつて、国の政策としての低金利政策ではない。高い利子を国が補償してやれば高利の裏づけになる。それで一体国の低金利政策というものがどとから出て来るか。高くてしょうがない、経営が成り立たない、外国船舶と競争ができない、それだから、しようがないから国が補償してやる、それが低金利政策と思つておられたら大きな間違いなんだ。低金利政策とは、国の施策を立てて、そして現在行われつつあるところの、金融機関が取上げておる利子を政策によつて下げることである。この点は一体どうお考えですか。
  157. 古池信三

    ○古池政府委員 お言葉のように、低金利政策という以上は、やはり全般的な金利を下げて行くことであつて、特に政府が助成をして金利が下つたからといつて、それは本来の低金利政策ではなかろうと存じます。
  158. 熊本虎三

    ○熊本委員 金利が下つたのではなくて、高い利子の補給を政府が肩がわりするだけなんだ。低金利政策ではない。低金利政策とは、イギリスのように金融機関を国家管理して、そうして産業開発のためには金融政策を根本的に樹立するととがなくちやならない。そのことには、どうも金融譏関のごきげんばかりを考えて、一つも手を触れようとしないでおいて、そうして国が肩がわりをして痛いところを補償してやるから低金利政策だなどということは、私はおかしくてしようがない。私はわからない。私の頭がおかしいのかどうか知りませんが、とにかく第一次欧州大戦当時における英国の金融の状態を見れば、不急不要の金融にやはり英国といえども七割は流れておつた。第二次欧州大戦のああいう痛手を受けたあと、第一次欧州大戦当時のように、再び金融が不急不要の方面に流れて、生産的な方面に流れざることでは国の再建ができないというところから、出発して、金融機関を国家管理に移した。そうして産業計画の根本的樹立のためにこれをやつておる。保守党のチヤーチルが出たつてこれをやめようとしていない。そのことに手を触れようとしていない。いいかげんなだまかし的なおべんちやらではわれわれは了解ができない。なるほど仰せのように、ほんとうに国の施策として低金利政策をとろうとおつしゃるならば、金融面に対する国の方針として、手を入れようとされるかどうか。先ほど山口君も言つておりましたが、私は調査をしておりますが、まだその坪数はわかつて参りません。ひとり東京をながめただけでも、新しく何かビルができたと思うと、ことごとく銀行である。銀行以外のビルでできているのは、鉄道会館みたいに当局と結托して怪しげなことをやつたものだけで、おおむね銀行だけが至るところヘビルを建てている。私は戦後における銀行の建設の坪数を今調べさしておりますが、残念ながら私の手元にまだ来ておりません。それほど金融機関というものは、今日の金融逼迫に乗じてみずからの営利に汲々としているのである。そうして造船というような必要な産業がどうしてもやつて行けぬから、国が国民の税金でもつてこれを補給するといえば喜んで、高くさえとつておけばいつでも補償してくれるから、もつと高くしてもよろしいと増長するだけのことであると思う。こういうものをもつて金利政策などというような考え方は、これは今日以後根本的に改めてもらいたい。金融政策について、現在内閣においてはどういうふうな考え方で将来臨もうとするのか、との点をお聞かせ願いたい。
  159. 大月久男

    ○大月説明員 低金利政策の問題につきましては、政府擾関の金利を下げたりあるいは補給金を出すととろによりまして、企業の負担を減らすことが低金利政策であると考えておるわけではないのであります。一般的な金融機関から出します金利が逐次低くなるように、できるだけその範囲において下げるようにというのが、私らの考えております低金利政策でこぎいまして、二十四年以来これに対しまして、一貫して推進して来ておるわけであります。最高三銭九厘程度でありましたものが、現在短期でございますが、二銭四厘最高というように、金利調整法によつて規制されておりますのもその現われかと思います。もちろん一般の企業にペイするだけの低い金利を出すということは、客観情勢からいつて不可能であるわけでありますが、できる限り下げたいという熱意を持っておるわけであります。  それから先ほどの建築の問題でございますが、こういう点につきましても、現在銀行の不動産の勘定は、自己資本の七〇%以内という方針を立てまして、現に実行いたしておるわけでありまして、現在平均いたしまして自己資本の五〇%ちよつとが、銀行の不動産になつているかと思います。町にできておりますビルその他は銀行のものではないわけでありまして、一部を賃借りしてやつておるわけであります。
  160. 熊本虎三

    ○熊本委員 こういう大きな金融政策の根本問題については、いずれ大蔵大臣に出てもらわないと、はなはだ失礼ですけれども、事務当局で私の納得の行くような答弁のできないのはあたりまえじやないかと思いますから、この問題についてきようはこれ以上お伺いすることは避けたいと考えます。これだけは委員長において留保さしておいていただきたいと思います。ただ申し上げておきたいことは、私も大蔵省の金利調整を三年聞命ぜられまして、戦後の金利の動向については一応知つております。戦後の経済の動乱期におきましては、金利にも上下がございました。しかしながら過去のそういう問題を比較対照するのではなく、現実ただいまにおける国際金利について、イギスと日本の比率を対照してあなた方は悩んでおられる。だから方向がそうなつたということは、経済のおちつかざる動乱期における変態であると私は考えておる。でありますから、だんだんと常態になつて来た場合においては、やはり現実をつかまえて判断をして行つてもらわなければならない。このことについては大蔵大臣にぜひ伝えておいて、明日でも来て大蔵大臣の金利政策なるものを根本的に承りたい、かように留保いたしておきます。  それから次にお尋ねいたしたいのは、あつちこつち飛びましたので、法文の一条、二条というふうな順序に行かないかと思いますから、体係の方から御説明願えればいいと思います。大体政府の原案におきましては、これが補給、補償については二十八年の三月一日とこういう提案でございます。ところが修正案によつては貨物船について二十五年の十二月以降、それから油槽船について二十六年の十二月以降というふうに遡及されております。これはいかなる関係においてそういうことをなされたのか、そうしてそれは政府としても今賛成のようでありますが、なさなければならないものをなされずして提案したのかどうか、これは一体どういうような理由から遡及するような修正案について政府は賛成されておるのか、この点についてもう少し御説明を願いたいと思います。
  161. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 この点につきましては午前中も大臣が答弁いたしましたように、運輸省としてもこういう必要性を痛感しておつたわけですが、これを提案するチャンスを見ておつた。ところがなかなか同様の考えをもつて三党共同修正に相なつた、かように考えまして、もともと運輸省の考えておりました思想と相一致したもの、かように考えております。
  162. 熊本虎三

    ○熊本委員 これも大蔵大臣の方がいいかと思いますけれども、大臣が見えませんから答弁ができたら大蔵当局に願いますが、政府一つの原案を提案する場合においては、多分各関係当局にも打合せの上、法案というものをおつくりになるはずだと思います。従つてただいまの局長の御答弁によりますれば、常々考えておつたの修正案として出されたので、まことにけつこうであるというような答弁でありますが、私どもの考え方からすれば、大蔵当局においてはそれぞれの各重要産業もある関係上、融資その他の関係において、運輸省がそういうふうな希望を持つてつたのであるけれども法案作成については大蔵省の困難な理由がこういうことにしたものと推察するのでありますが、その点について大蔵省は一体どういうお考えで、そうしてそういうことはもう問題ではない。幾ら持つて来ても大蔵省はけつこうだからというお考えであるのか、あるいは提案の以前に打合せがあつたのかなかつたのか、その点を御答弁願いたいと思います。
  163. 大月久男

    ○大月説明員 今回の修正案国会でおきめになりましたものでありまして、大蔵省の意見は全然入つておりません。
  164. 熊本虎三

    ○熊本委員 両者で打合せの上答弁をされたのでは、はなはだ怪しいのでありますが、私どもはいやしくも政府が重要なる法案を出す際に、これに予算の伴うものにして、大蔵省を盲にして単独で出されるいわれはないと思う。しかしこの修正案に賛成されておる運輸省の関係者がおるところで、それは大蔵省困つたからそういうことになりましたと答弁をしたのではなはだ困るから、打合せの上適当なる答弁があつたのだと思いますが、はなはだ不親切だと思う。われわれが聞こうとすることは、打合せがあつたかないかについて責任を問おうとするのではない。先ほども言うように、同じ日本再建のために汗とあぶらで努力しながら、かつなお金融面やその他の面に行き詰まつた、まことに悲惨な業界がある。だから大蔵省の考えとして、こういう程度のものは事情上よろしい。それからもう一つそういうものがありますならば、大いに奮発してそれもいれましようというような打合せの上でやられておるならば、またわれわれは先ほどからいうように十分この案についての考えなければならない。しかし私の推測によれば、どうしても大蔵省と相談の結果、大蔵省の金繰りがどうも運輸省の意見をいれることができなかつた。残念ながら運輸省は本法案をもつて、一時しかたがないと考えられたものである。そこで幸いにも三党が十分なるその点にごしんしやくの上、修正案を出していただいて、大蔵省としては痛いけれども、悲しいけれども、通ればしかたがないというようなことで、こういう種類ものがあとからもし出て来ては、なかなか資金繰りには困るというのが、大蔵省の現状ではないかと思うのですが、一体その点どうなんですか。
  165. 大月久男

    ○大月説明員 政府提案いたします法案につきましては、完全に各省間の了解を得まして提案することになつておりまして、最終の決定関係各大臣の御出席の閣議においてきまるものでございます。従いまして政府提出いたしております第一次案につきましては、十分なお打合せの結果出ております。またその予算につきましても十分双方において――もちろん不満足な点はございますけれども、この点でやむを得ないというところで完全な御了解ができておるものであります。ただ今回の修正案につきましては、国会でおきめ願つたことでありますので、全然意見を申し上げる立場にないということを申し上げるのであります。
  166. 熊本虎三

    ○熊本委員 大体において裏の方がわかつて参りまして、私も修正案のことについては質問はいたしておりませんから、これは大蔵省の責任ではございません。  次に移りますが、それはこういう厖大な補助育成の法案でございますが、何条でございましたか、条文はわかりませんが、利益配当の制限率については政令で定めるということに相なつております。政令は本案が通過した後において、政府が自由に制定するものでございますが、従つてどもが心配をしますることは、こういう国の大きな犠牲によつて育成されるところの造船業というものの利益配当については、最大の関心を持ちます。昨年私が英国並びに米国の業界の利益配当の資料を求めました。ところが低きは五分、最高が八分という数字であつたと記憶いたします。かくのごときおおむね国のまるがかえというような保護の事業において、一定の規制をしようとする利益配当額は、どこに見当を置いておられるか。この前の修正案を見ますと、二割を限度にしておつたものに対していろいろな議論が出て、そうしてその規制を撤廃するというような修正案が出まして、まことに恐ろしき限りであります。従つて本来から言いますならば、この修正案の中に政令で定めるのではなく、条文の中に制限配当率というものは記すべきであると私は考えますが、しかしそれもわれわれの方で修正なつて来るかどうかはまだわかりませんから、そういうことを今むずかしく言おうとは思いませんが、この政令で定める制限の配当率はどこに置こうと当局はされておるのか、この点をひとつお答えを願いたいと思います。
  167. 有田喜一

    有田(喜)委員 これは提案者の方に関係がありますので、提案者の気持だけをお答えしたいと思います。実は金利に対する補給制度をつくりましたのは、先ほど来話したような次第でありまするが、特に海運事業は熊本さんも御承知通り、非常に波のある事業でありまして、電力も同じく重要産業でありますが、電力のごときは比較的安定した事業であり、海運はそこに、重要さは同じにしましても、特質があるわけです。従つてわれわれといたしましては、国民のたつとき税金によつて金利の補給をやるが、もし海運界が好況になつたときには、その補給金は返してもらいたい、政府においてこういう波を調整しようというのが、一つのねらいであります。そこでこの十二条と十三条において、およそ一割程度の配当ができるようになれば、もうそれでストップする。それから一割五分くいの配当になるならば、今まで補給金を出しておつたものを取上げる、こういう考え方であります。しかしそれは御承知通り、会社の資本構成によりまして、配当率で行くということは非常に不合理な点が出て参りますので、この法案にありますように、当該資本に政令で定める率を乗ずる。いわゆる利益率でございます。利益率を幾らにするかということを、ここにはつきりときめた方がいいかもしれませんけれども、しかしそれぞれ資本構成におきまして事情が違い、また時の経済状態一におきまして金利の状況もかわる場合がありますので、これは実情に合うように政令に譲る、その点はひとつ政府を信頼して、適切な措置を講じたらどうか、こういうようにわれわれは立法手段を政令に譲つたのでありますが、今申したような気持で提案者に考えておることと御了承願いたいと思います。
  168. 熊本虎三

    ○熊本委員 政府当局からひとつお答え願いたい。政令はおおむね政府がやるのでしようから……。
  169. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 ただいま提案者から御説明のありました趣意に沿いまして、利子補給金を停止する場合には、おおむね一割の配当が可能になる程度の利益が出た場合、それを資本に対してどの程度の率にするか、これは十分大蔵省と打合せの上できめて行きたいと思います。さらに返還の場合は、一割五分程度配当可能なる利益、こういう趣意でございますので、そういう趣意をくみまして、大蔵省とも打合せて定めて参りたい、かように考えております。
  170. 熊本虎三

    ○熊本委員 そうしますと、利子補給の点については一割程度、元金償還については一割五分程度、かように了承してよろしゆうございますか。
  171. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 私ども提案者から承つておるところでは、一割以上の配当をなし得るような利益を上げました場合には、その期の利子補給を停止するわけであります。ところが一割五分配当可能以上の利益を上げました場合にはその期の配当を停止するほかに、さらに従来から利子補給をもらつている額がありますと、その額を一部ずつ返還して行く、こういうのであります、そういうふうな考えであると了解しております。
  172. 熊本虎三

    ○熊本委員 そうしますと、先ほどの提案者説明と少し食い違つて来ると思うのですが、もう一回お願いしたいと思います。
  173. 有田喜一

    有田(喜)委員 決して違つてないのでありまして、今海運局長から答弁した通りであります。
  174. 熊本虎三

    ○熊本委員 それではさきに進みますが、この利益比率というものは、いわゆる一つの業態の資本によらなければならない、こういうことになろうと思うのでありますが、そうなつて参りますると、たとえば一割と規制をいたしましても、これに再評価の方法をもつて増額されたり、あるいは増資の形式をもつて出資金がふえた場合、これは極端な話をしますると、五倍の出資金になつた場合においては、現在の利益配当五割というものと匹敵するような、こういうような場合のことを想像して、一体これで処置されようとする方針はどこにあるのであるかを、この機会にお尋ねしておきたいと思います。
  175. 有田喜一

    有田(喜)委員 御承知通り日本の現在の海運の資本構成は、自己資本がきわめて少くて、全資本構成の中の二割以下、一割八分程度ではなかろうかと思います。外部資本が八割以上占めておる。イギリスのごときはその逆でありまして少くとも七割以上は自己資本で、外部資本に三割くらい、日本の戦前の状況も今のイギリスのような資本構成であつた。ところが終戦後はかような状態で、非常に外部資本が多うございます。この外部資本の多いことは、日本海運の経営上の一つのがんではなかろうか。私は自己資本がもつと加わることが、経営を健全ならしめるゆえんであると考えます。従いまして、資本に対して利益率が多くなる。おそらく業者は資本の増加にまわるのではなかろうか。これは一つの海運の基礎を固めるゆえんじやなかろうかと思います。むしろその増加は歓迎です。しかしそれも程度がありまして、いわゆる合法的の脱法行為をやるおそれがあります。従いましてわれわれとしましては、ここに法律上明らかに配当率何ぼといつてきめることは穏やかでない。そこで政府で政令によつてももつと詳しいことを書いていただい、て、気持はおよそ配当一割というような気持であるが実際上は一割に満た、ないで、もつと以下になる場合もある。だろうと思います。とにかくさような気持において公平に政令を定めて参りたいというのが、提案者の気持であります。同時にあとの条項にありますか、政府におきまして経理の勧告権あるいはいろいろの勧告条項を強化いたしまして、従来に増したところの適切な勧告をやつて実情に合うように進のたいというのが、提案者の気持であります。
  176. 熊本虎三

    ○熊本委員 ただいまの説明で、気待出わかるのでありますが、しかしながつ当局の勧告権といえども、そういうとうな場合のことをうたわずして、政策的な増資が行われたり、そういう場合に具体的にどうするかということは、私はできないと思う。その条文は私には見つからないわけなんで、それをただいまの答弁では、資本額は大体現状を中心としてというお考えのようでありまして、精神はわかります。しかしそうでなかつた場合に、どの条文でどういうふうに規制するかということが私には見当らない。そういう場合は、単なる勧告と言われますが、勧告でお前は増資しちやいかぬとかいうことまでは、勧告権が行くようにはなつておらぬと私は思う。その点どうですか。
  177. 有田喜一

    有田(喜)委員 ただちに増資を認可にかけたり、そういうことはしておりませんけれども、しかしこの十四条をごらんくださいますればわかりますが、「不当な経理の是正その他経理の改善に関する勧告」ということがあります。これは経理といえば非常に広い範囲を持つておりますので、その点から適切な勧告ができます。その勧告に従わないときには、また今まで補給しておるものを巻き上げるという方途も講じてありますので、その辺のところは政府を信頼してよくはなかろうか、かような提案者の気持であります。
  178. 熊本虎三

    ○熊本委員 そういうところに、意識的か無意識的か知りませんが、ルーズなところがひそんでおると私は思う。このことを何かの法文の中にうたつておかざる限り、そういう面についてはまことに抜け目のない日本の経営者下が、どういうことをして来るかということについて、あまり甘く考えていると、えらいことになりはしないかと考えるのでありまして、この程度の監督権をもつてしてなせばなし得るような道を開くということは、かえつて親切を欠くと思う。だからそういう場合においては、融資当時の資本に対してというような字句の挿入があつてしかるべきだと私は思いますが、当局のお考え方をお伺いしておきたいと思います。
  179. 有田喜一

    有田(喜)委員 当局はあとで答えるでしようが、先ほど申したように、十二条なり十三条を見てもらえばわかりますが、政令で定める率ということがはつきりしている。それは資本に対する率であります。私は海運界の資本がより増資されて行くことはいいことだと思う。先ほど申しましたように、現在の日本の資本構成は非常に不合理です。全体の一判八分という二割以下の自己資本で、外部資本が八割以上を持つておるというのは非常に不健全であるから、増資ができるということはむしろ喜ぶべきことだと思います。従いまして政令で適当の率をきめておるわけですが、この政令できめることになりましたのは、御承知通り配当と利益率は違うのです。不健全な配当をやることもあるし、健実な配当をやることもあるので、むしろ利益率の方から見ていつた方が適切だらうという考え方のもとに、こういう方途を講じたのであります。気持は、およそ配当は一割であるが、しかしそれが八分になる場合もあるし、いろいろな場合もある。五分で停止される、極端にいえば無配当で停止されるという場合もあるかと思います。
  180. 熊本虎三

    ○熊本委員 配当率は不健全な政策配でがあるから、利益率の方がより完全あるということは、私も同感です。そこまでお考えくださつたのが、あなた方の緻密なる調査あるいは研究の結果でありますならば、私の心配する、やろうと思えばやれるがごとき道を開いておくことは、かえつて業者に対して、ややもすれば安易に、そういうようないたずらをしてみようという気持を与えるすきがあるのでありますから、私としましては、やはり融資当時の資本量をあくまでも起算をするということにすることの方が、より妥当だと考えております。増資によつて将来また企業の内容も増大される。従つてそれに伴う利益の増大ということが次に起つて来ることでありますから、次の問題について融資をする場合においては、その融資をする現状において比率をきめるということの方がまことに妥当であつて、健全であると信ずるのでありますが、そういう点をどこにか挿入して明確化する御意思はございませんか。今度は当局から承りたいと思います。
  181. 岡田修一

    岡田(修)政府委員 私は先ほど提案者から御説明がありましたように、むしろ海運会社の増資を促進するという面を重く見るべきじやないか。たとえば船会社が国への返還金を免れるがために増資するものがありましても、それは微々たるものでございましようし、もし増資をして金を得たという場合には、当然それらの金は借入金の償還に振り向けられるもの、かように考えるのです。もしそういう増資の金が償還金に振り向けられないで、他の目的に使われるという場合には、私どもはこの法律で与えられまする監査権によりまして、十分内容を監査すると同時に、経理の改善について監督をいたしたいと考える次第であります。もしこれを現在の融資といいますか、資本金で押えるといたしますと、非常に苛酷といいますか、不当な結果になる。たとえば今資本金五千万円くらいで十億くらい借りているものがある。利益が出ます場合には、その十億五千万円、すなわち使用総資本に対して二割とか三割くらいの利益が出るとすると、十億に対して二割出ると一億であります。ところが資本金に対しましては、五千万円の資本金だと四十割という利益が出る。ここで押えようとします場合に、その五千万円の何割かで押えるわけですが、そうした場合に、会社が多少の増資をしたとしましても、今の船会社の資本構成からいいますと、利益を隠すほどの大きなものにはならないと考えるのでございます。その点はむしろ増資しやすいような形にした方が、海運の資本構成という面からいつて望ましいであろうと考えております。
  182. 熊本虎三

    ○熊本委員 自己資本の増大、また一般増資に基く経済力の増大、これは私どもも皆さんと同様に賛成であります。しかしながらそれと配分制限というものとの関連性はないと思う。そういうことでなければならないということから考えてみますと、逆に私は、今度政令で定めるときの利益率の制限というものは、増大されて行くおそれがあるとさえ心配をいたします。自己資本の増大は私どもも求めてやまないところでありますが、それがこの面において増加されたならば、増加に基いてこちらの補給金並びに補償の程度について関連性が増大するという形は、制限があつてなきにひとしきものであると思う。だからその点は何かそちらの勘違いではないかと思うのであつて、もう一度御答弁願えば幸いだと思います。
  183. 有田喜一

    有田(喜)委員 ちよつとあなたが思い違いをされているのではないかと思う。この法案の第一条を見てもらつてもわかりますように、外航船舶の建造を促進するとともに、わが国海運の健全なる振興をはかるというのが大きなねらいなのです。増資をしますと資本金に対する利益率は少くなる、これは理の当然でございます。しかしそれが同時にわが海運の健全性を増すわけなんです。この法案の補給というようなことをやつて行くのも、結局海運の健全性を増して、国際市場にまみえてりつぱに太刀打ちができるようにする、これがわれわれのねらいです一しかしあまり利益をむさぼるようなことがあつてはいかぬというので、ある一定の利益率になれば補給金を停止する、それ以上は返還をさせるという構想でありまして、あくまで海運の健全性を発揮させる、それで国際競争場裡に出て貿易の伸展と外貨獲得に役立せよう、こういう大きな観点に立つているわけでありますから、その趣旨に立つて政令を出そうという考えであります。
  184. 熊本虎三

    ○熊本委員 この点は見解の相違でありまして、言おうとする精神はわかりますけれども、せつかく一つの制限をしても、仕事をすれば無制限になるという甘つちよろい法案ではしかたがない。せつかくこういうことで一方に資本の増大、経営の健全化をはかりながらも、保護育成をする限りは、返すものは返せということで制限の率がここにあるのだが、もしあつてもないがごときことがあつてもしかたがないのだ、健全化のためにはやむを得ないのだという考え方だと、この政令で規制するという意味がない。この点については、どうもあなた方は一生懸命海運界の安定と増資に基く資本の増大、こういうところにばかり重大性を置かれておるから、そういうお考え方だろうと思うのでありますが、あるいはこれは意見の相違かもしれませんから、この程度にしておきますが、もう一度私の考えておるようなところはとくと御勘案を願つておきたい、かように考えるわけであります。  その次に移ります。ただいまも提案者から御心配になつたようでありますが、この法の対象とするものは、やはり一つの規格の中にはまつた海運界であることは法令にも出ておるようであります。従つて外人の重役などというようなものについては当然まかりならぬ、こういうことに相なつておると思うのでありまして、その点はよいのでありますけれども日本が保護育成することによつて、だんだんと海運界が健全化して行く、こういうことになれば、外資は導入され、増大されるということが、傾向としてあるのではないかと私は思う。そうなつて参りました場合に、この出資制限というものは、たとえば航空法等では三分の一の出資制限がございますが、これには何らの規制がございません。そうなつて参りますと、事実上の執行機関たる重役というものは法に合致いたしましても、その会社を動かすべき実際の実力というものは、出資のバランスによつてものを言うという形に相なると思うのでありますが、そういう面について何か一言触れておかなくても御心配はないとお考えかどうか、その点お尋ねしておきたいと思います。
  185. 有田喜一

    有田(喜)委員 第一の点は、もうくどくしく申し上げませんが一すなわち増資の点であります。増資しますと、その金はおそらく今までの借入金の返済にまわる。そうすると、一方出すべき金も、金利の補給も減つて来る。増資が企業の健全化のためにいい、同時に借金がなくなつてよくなつて行く、こうなつて来ると、政府の補給も減つて来る、こういうような意味合いにおきまして、私は十二条のあれが増資の方にまわつても、それほど心配はいらぬということを申しているのでありまして、決して野放しではありません。  それから次の外資の問題であります。これは非常に重要な問題でありますが、私外資の問題は深くは検討いたしておりませんけれども、たしか今外資に関する法律というものがあるはずです。外資に関する法律によりまして、日本法人に対して外国の資本が過半数入つて来るとかいうようなことはできないようになつている。私の記憶に間違いなかりせば、さように思つているような次第であります。
  186. 熊本虎三

    ○熊本委員 外資に関する法律というものをもつて日本の経営体に対する外国資本の制限があるということでありますから、そうしますと、私不勉強にしてそれをまだ見ておりませんので、当局におきましてはただちに参考資料を御提示願いたい、かように存じます。それを提示していただきまして、もし私の考え方が杞憂であれば、その点は是正することにいたします。  次にお尋ねいたしたいことは、経理運営に関する当局のいわゆる監督権でございます。私どもの考えまするところでは、ああいう底の監督権では、これほどの国をあげての補助育成について、はなはだまだ物足りないという感じを持つております。この点についてもう少し経理内容について強化されたる監督権が必要であると考えますが、その問題についてのお考え方はどうか。  それからもの一つは、造船界に対しまして最も熱烈な関心と、それに対する努力を傾倒しているものは、何といいましても、これは造船に携わるいわゆる労働者であります。この労働者の諸君は、命にかえてもこの造船計画について身を挺して、赤誠もつてそれにこたえようとする情熱を傾けているのでありますが、もちろん経営者といえども、みずからのことでありますから、当然これに抜かりはなかろうとは思いますが、われわれはできるならば、こういうような現状にかんがみて、情熱を傾けてその前線に立つておりまする労働者のその成績増進のために、やはり何らかの形式によつてこれに協力するという態勢が必要かと考えておりますが、これらの点には御一考をなされておらないようでありますが、こういう点についてはどういうようにお考えでございましようか。この機会にお尋ねをいたしておきたいと存じます。
  187. 有田喜一

    有田(喜)委員 経理の監督問題につきましては、ここに「不当な経理の是正その他経理の改善に関する勧告」ということがあります。これは相当幅の広い改善勧告ができる。勧告だからなまやさしいようでありますが、その勧告に対して聞かないときには、あとの条文にありますように、利子補給金に相当する金額の全部又は一部を国庫に納付しろという命令が次に出ております。これは業者に対して相当きつくこたえることだと思います。かようななまはんかの罰金制度よりも、今まで補給したものはみな取上げるぞという命令権があることは、私は相当監督が十分できるゆえんでなかろうか、かように考えます。  それから次に労働者に対する問題でありますが、この海運造船政策を樹立する場合におきまして、改進党といたしましては、海員組合並びに造船関係労働者団体と十分な意見の交換をやりました。海員組合の諸君も、日本の海運が発展してこそわれわれもその生活権が擁護されるのだ、ともどもに海運の進展のたみにわれわれは邁進しようという、かたい決意を海員組合としても表明されたのでありまして、われわれの政策に全面的に賛成されたのであります。造船関係労働者諸君も、むしろ私たちを激励され、今日のような状態では造船界はたまつたものじやない、やがてはわれわれの首切りも次から次へとやつて来る、何とかして造船の振興をはかつていただきたい、改進党が考えているような政策を大いに推進していただきたいという非常な協力を得たのであります。その他御承知通り造船に対しましては二百幾つかの関連産業がございます。その関連産業は多くは中小企業であります。こういう中小企業の関係者も、何とかして日本の造船を旺盛ならしめるという非常なる熱望を持つており、造船がだんだんつくれないようになつて来ますと、これら凡百の中小企業者も共倒れになつて来るのでありまして、かような意味合いにおきましてわれわれは労働者のことも考え、同時は中小企業者の立場も考えて、これは日本の大きな国策として推進すべきであろうというかたい決心を待つて、かような提案をしたような次第でありまして、労働者諸君とも相当の打合せがしてあるということを、皆さんの前に披瀝し得ると思うのであります。
  188. 熊本虎三

    ○熊本委員 この利子補給ということからいつてどうかと思いますけれども政府の監督権というようなものがありますので、その条文の中に、労働者のまじめなる協力並びに生産増強に関する権限に対する発言権、こういうようなものをやはりどこかに挿入するということによつて、大いにその能率、成績の増大を私どもは疑わないのであります。また一方から行きますると、熱意を持つて働きつつある労働者の諸君の中から、この重大産業であります造船産業の運営、経理の面にまで協力を求められたというところに、労働者のさらに進んだまじめな協力は増大されるものと考えおるおるけでありまして、これらの点については忘れてならざる重要な問題だと考えておりますので、さらにその点の実現化のために御一考を願いたい、かように存じます。  先ほどからどうも再々私の発言については方々からの制約がございまして、質問しながらみずからあせじを感じておりますので、あと一つだけをお尋ねして、皆さんの御期待に沿うようにいたしたいと思います。それは何であるかと申し上げますと、罰則規定の中で、罰金三万円というものがございます。これをなさざる者ということになりますと、政府の必要によつて求むる帳簿の提出や、あるいは経理内容の報告等々を怠つたる者ということでございますが、これに三万円とははなはだどうも安きに失するのではないか。私は説明を聞いておりますと、この修正案に基きまするならば、開発銀行からの融資に対する補給金八十五億四百七十三万円と、市中銀行から融資されるものに対する補給は百六十三億、こういうことでありますし、さらに損失補償の金額を見ますると五十九億七千万円、合計いたしまして三百七億七千四百七十三万円という、まことに厖大な国民の費用をもつてこれを育成しようとおつしやるのでありますが、そういうような場合に、政府が法令に従つて求めるものを拒否し、あるいは怠惰によつてなさない、こういう者に対する処罰の方法として、罰金わずかに三万円ということに至つては、不均衡だと考えます。これは決して取上げるのではなくして、まじめに法令に従つてやれば一銭も払うのではありませんから、もし誤つてそういう不心得者がおつた場合においては、最も厳粛なる罰則を付して、さようなことのないようにすることが妥当だと考えますが、これを三万円とおきめになりました理由は、一体どういう関係であろうかをお尋ねいたします。
  189. 有田喜一

    有田(喜)委員 これは提案者としましては、かよなことは一般の慣例に従えという気持でありまして、大きな政策の問題ではありませんので、これは国会の法制局にまかせたような次第でありまして、一般の慣例によつてできたものとわれわれは承知しております。
  190. 熊本虎三

    ○熊本委員 そういたしますと、これは怠らざることを欲するのであつて、取上げるというのが念頭にないことは言うまでもございませんから、そういう意思をもつて修正をされるならば、修正されてもかまわないという御意思であろうかどうか、ちよつと承つておきます。
  191. 有田喜一

    有田(喜)委員 これは先ほど言いましたように、国会の法制局にまかしたような条文でございまして、一般の慣例に従つておるのであります。重要なことは、私の先ほど言いましたいわゆる補給金を返すという方、あの方が重要でありまして、この方はあまり重視していなかつたような次第であります。
  192. 熊本虎三

    ○熊本委員 これでよろしゆございます。
  193. 關内正一

    ○關内委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
  194. 熊本虎三

    ○熊本委員 大蔵大臣に対する質疑を保留しておりますよ。先ほど委員長了解を願つておるのです。
  195. 關内正一

    ○關内委員長 いずれ適当の機会に御意思に沿うようにいたしたいと思います。
  196. 關内正一

    ○關内委員長 次に港湾運送事業法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続けます。山口丈太郎君。
  197. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は午前に引続きまして、時間も相当おそくなつておりますから、簡単に質疑をいたしたいと思います。なおこれは委員長に申し上げておきますが。会期も切迫しておりますので、法案を上げることを急がれるのもけつこうでありますが、しかし私どもはただ反対をするとかいう意思ではないのでありますので、質疑だけは十分にいたして参りたいと考えますが、どうもこういう状態に置かれますと、質問も非常に粗雑になりますし、その点は委員長においてとくと考えていただきたい。また本日行います質疑以外については、事務当局の方へ質問をいたしたい点もございますが、その点についてはあらためて委員長の方で適当に取扱つていただくようにお願いしておきます。  まず午前に引続き御質問を申し上げたい点は、第九条第四項一号では、「能率的な経営の下における適正ね原価を償い、且つ、適正な利潤を含むものである」ということが明記されてあります。今日の業者状態は、濫立によりいたずらに採算を無視するような競争を行い、混乱しておりまして、この条項は実際には有効適切に今までにも適用されていないのではないかといううらみがあるのでございます。従つてこの条項が制定されました場合における具体的な対策はどのように考えられたか、お聞かせを願いたいと存じます。
  198. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 港湾荷役料金が料率委員会――これは各地方に設けてあります。料率委員会で経営者側と中立側と労務者側との会同により、きめた公示料金がありまして、その公示料金を遵守するように指導いたしております。もし公示料金を切り下げるような場合がございましたら、そういう場合については、運輸省といたしましては、荷主にそういうことのないように、事実があれば勧告するような措置をとりたいと思います。
  199. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 公示料金のことについて申されたのでありますが、それでは現行公示料金につきましては、これはお説の通りでございますが、その公示料金はわが国だけではございません。内外の船主やあるいは大手筋の荷主等から、切下げを業者に対して半強制的に要求したりするようなことがあるということを仄聞するのであります。もしかようなことがあるとすれば、その対策はどうするおつもりであるか。もし事実ありとすれば、現行公示料金の違反であることは、当然でありますが、当局者としてそれに対してどのような措置をとられるか、これをお伺いいたします。
  200. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 そういう切下げの事実がございましたら、荷主に勧告して、そういうことのないような措置をとりますし、またなお運送業者が、みずから進んでそういうようなことをやる場合には、登録を停止するというような措置も講ぜられます。
  201. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 講ぜられることはわかつておるのでありますが、聞くところによりますと、今申しましたように、料金の半強制的な切下げを要求するような向きがあるということを仄聞するのであります。そういうことの現実があるということをお聞きになつておるかおらないか、一応お伺いいたします。
  202. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 そういうことがあるということを組合等から聞いたことがありますので、今各出先の海運局に通牒を出しまして、その事実を調べさせております。
  203. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 わかりました。この法案の公示料金の引下げ問題については、むしろ港湾の今の労働者はこの公示料金を守るために、一生懸命の助力を払つていると聞いておりますが、これは当局としてそういうことが耳に入つておるか入つていないか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  204. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 組合の方からそういうことがあるがどうだというような質問がございまして、そういううわさがあるなら、事実を調べてみようというので、目下調べておるところでございます。
  205. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今日港湾が非常に混乱をしておつて、何とかしなければいけないということは私も常々考えておつたのでありまして、私はこの法案を出されました提案者に対しては敬意を表します。けれども今のようなお答えで行きますと、聞かなければ見て見ぬふりをするというような態度でおられるのではないか、私はどうもその点に疑念を持つのですが、もう少し明快に御答弁をお願いいたします。
  206. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 そういうことのないように、出先の海運局が十分指導監督をするように、中央としてもいろいろ会議等におきましてそのことを伝えております。
  207. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それでは十分に私の意を満たした答弁とは言えないのでありますが、時間もおそいようですからまた後刻伺うことにしまして、九条の二についてさらに言いますと、どうもこの規定によりますと、ここにいう利害関係人は経営者のみと解するのではなくて、事業に従事するすべての人がこの規定によつて律せられるというふうに解釈をしていいのかどうか、ひとつ立案者にお伺いいたします。
  208. 岡本忠雄

    岡本委員 荷主、競争の立場にある同じ同業者、さらに公益の立場では運輸大臣、大体かように立案者は考えております。
  209. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そういたしますと今の答弁では、たとえばこの荷主だけではなくて、もし従業員――経営の立場にない者がもし経営者の意を受けてそういうことをやつた場合には、利害対象にならないのですか。やはりそういう従業員も利害関係人の対象に置かれるというのですか、これを伺いたい。
  210. 岡本忠雄

    岡本委員 運賃料金の問題でございますから、従業員は間接には関係がありますけれども、直接利害関係人とは私は考えておりません。
  211. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 わかりました。それでは今度は十六条についてお尋ねをいたしたいと存じます。十六条によりますと「第二条第二号、第三号又は第四号の行為の少くとも一部を自ら行わなければならない。」第二条の二号から四号まではその業主がみずから行うべき範囲を規定いたしておるのでありますが、その一部をみずから行うことによつて資格を得るようになつておりますが、これでは元請はただその下請業を激化させ、混乱を生じ、ひいては不当なる実質的料金引下げを誘発するというような結果になるのではないかということを思うが、どうでしよう。
  212. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 この運送事業を行う場合に一種から四種までございまして、船内とはしけと沿岸を一貫して行うものを一種、船内を二種、はしけを三種、沿岸荷役を行うものを四種といたしておるのでありまして、元請をすることが原則ではございますが、場合によつてはその一音を下請にまわすことができるのでございまして、全部を下請にまわすことは禁ぜられておるのであります。
  213. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今の答弁で、私はこの規定とは逆に思うのです。その一部をみずから行うということに十六条では規定されておりまして、実際にはたとえば百トンの中の十トンだけ自分の方でやる、あとの九十トンはこれは他にまわしてもいい、こういうことに解するのですが、そうするとこのせつかくの規定が、かえつて大つぴらに下請をせしめることになりますし、かえつてそのことによつて実質的には料金低下の原因をなす、こういうふうになり、業者濫立を激発するような競争を起す結果を招来するのではないかということを憂えます。
  214. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 相当量をみずから行いましても、ここで一部という表現を使つておるのでございますが、この一部を今回の改正によりまして、省令ではつきりきめたい、そういうつもりでおります。
  215. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは特に望んでおきますことは、省令でもつて適切な措置を講じていただくように希望いたします。それでしかしこの第一条のかかることでは――さらに省令ではつきりするということでございますが、第一条の目的である秩序維持と公正なる競争の確保は、こういうことがあつては望めないのではないかというふうに私は心配をいたしておつたのであります。また法改正後省令でやられるというのでありますが、これについては私はこういう名目的に荷物をとつて、そうしてほとんど一部をさいて、実質的にはさやをとつて行く、このようなことを極力防がなければならない。今の御意思のあるところはわかりましたが、その考えておられます内容は、本日でなくてもけつこうですから、御無理でしようが、あとでお答えを願いたいと思います。提案者としてどのくらいお考えになつておりますか。
  216. 岡本忠雄

    岡本委員 この点につきましては、いろいろ政府の意見も実は伺つたわけでありましたが、業界の現状を考えますと、初めから無理のない行き方をしなければやはり不自然になりますし、当分は現行法の解釈と同じように一単位作業量ということにして、大体その範囲は取扱い貨物量、各港湾実情、あるいは船型、作業の種類、性質等によりまして具体的に判断しまして、船内荷役ならば一ハッチ分、本船からはしけとり、回漕の場合も同様に考える。沿岸荷役については一ギャングの作業というような程度に考えよう、こういうことでありましたので、そんなことが大体実情から言えばよかろうということで、こういうことになつたのであります。
  217. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 了解をいたしました。次に第三十一条の運輸審議会の問題についてであります。三十一条によつて港湾に関する諸種の諮問を運輸大臣運輸審議会にするようになつているが、私は港湾の特殊事情より見て、むしろ広く港湾関係に直接の関係のない人で、港湾に対する深い理解を持つ有識者を集めまして、そして港湾審議会というようなものをつくつて、ここで適切な措置をするようにいたした方が、港湾行政上妥当ではないかと思いますが、その点について立案者は考察になりましたかどうか、ひとつ承りたいと思います。
  218. 岡本忠雄

    岡本委員 この点につきましてはいろいろ経験を経たのでありますが、さらによい結論を得なかつたために、このままにいたしたのであります。なお政府から、将来の考え方につきましては一種の考えがあると思いますので、答弁していただきます。
  219. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 運輸審議会におきましては、いろいろな専門家が入つております。たとえば海運の専門家、陸運の専門家、法律の専門家、あるいは海運の専門家といいましても港湾に相当な学識経験を持つておる者も入つておりますので、一応こういうふうな構想で進んでおるのであります。
  220. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はこれについては当局に再考をお願いしておきたいのですが、今さしあたり、とつさにこの法律をつくるという立場で行きますと御無理かとも存じますけれども、しかし日本港湾の将来の発展と秩序維持、このようなことにつきましては、やはり運輸審議会では適当とも私は考えられないのです。しかも運輸審議会は将来きわめて広汎にわたつてその業務を担当することになると思いますので、従つて私はぜひともこの港湾審議会につきましては十分に考慮をいただきたいと思います。  それから次にこの港湾の一番重要な点に関してでありますが、私はこの法案を一読いたしまして一番重要と思われます点は、第三十三条にあると存じます。この木船運送に関する特例については、実はこの法の改正はここに一番重要な問題がひそんでおると思うので、なぜこのような条項を入れたの一か、その経緯をひとつ承りたいと存じます。
  221. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 港湾運送事業法が成立いたしまして後に、木船運送法ができた関係等もございまして、港湾の中におきますいろいろな機帆船の運送が、木船運送法によつていろいろ制約なり監督を受けておつたのですが、その木船運送法との調整をとる必要がございまして、たとえば港湾運送事業法では従来ははしけ輸送だけを考えておつたのでございますが、港内におきまして陸から陸へ機帆船で運ぶような場合もございますし、それから本船から機帆船で陸へ運ぶような場合が、そうたくさんはないのでありますが、間々ありますので、これは港湾運送事業法によつて指導監督して行く方がいいのではないかというので、その調整を考えたわけでございます。
  222. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこが私はどうも納得の行かないところでありまして、現在の港湾はあまりにも同種小企業が濫立をしていて、そうして港湾の秩序を維持し、適正なる料金のもとに業者間の正当な競争をさせる、これが健全なる港湾運送を確立する根本になるのでありまして、本法の趣旨も私はそこにあると考えるのであります。そういたしますと、このような趣旨に基いて行われますこの港湾運送法が、この三十三条の三によつてまつたくその趣旨が反対の結果となり、この特例によつて今までできなかつた港湾運送を、新たに木船業者に割込ませるという結果になるのであります。これは港の秩序を守り、公正な公示料金のもとに業者のサービス等によりまして、正当な競争をすることによつて港湾の秩序を維持しようということとまつたく相反して来る。今まではそういうふうな機帆船等によつての港内運送ができなかつた。それを新たにさせることになるのでありますから、私はこのこと自体がまつたく何か変な規定に解されるのですが、私はこの点を十分にお伺いをしたいと存じます。
  223. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 木船運送法というものがありまして、御質問の趣旨とは全然逆でございまして、今まで木船運送法によつて港湾の港運事業が荒されておつたのでございます。港湾運送事業法によらず、木船運送法によつて、機帆船で陸から陸あるいは本船から沿岸に、かつてな料率によつて運んでおつたのでありますが、それでは困るので、登録は木船運送法の方でやつておるから免除はするけれども、いろいろな料金なりその他の制約は、港湾運送事業法の網にかけようということで、この三十三条の三項が記載されておるわけであります。
  224. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はさらにあとでこれは質問をいたしますが、この条項は在来からある港湾運送事業者や陸運業者も反対をしたということは聞いておりますが、何ゆえにこのような条文を挿入しなければならなかつたかということについては、なお今の答弁においても私は非常な疑問を実は持つのであります。なぜかと申しますと、今答弁をなさいましたように、実際には港湾が木船の輸送によつて荒される。だから港湾業者というものを何かの法によつて、すつきりした形で保護しなければならぬというような声が高まつて、そしてこういう港湾運送法ができて、おのおのその運送に対しての分野を明らかにいたしたのが、私は港湾運送法であろうと存じます。しかるにこれを読みますると、また前にもどることに実はなるという懸念を多分に持つのであります。しかも木船業者がこのような運送を行う場合にも、当然この法律の要件というものを満たしていなければならないにもかかわらず、この三十三条の三の二項によりますと、こういうことに実はなつておるのであります。「前項の事業を営む木船運送事業者は、その事業の」――「その」というのは港湾運送のことだと解釈いたします。「事業の開始の日から三十日以内に、運輸省令の定める手続により、運輸大臣にその旨を届け出なければならない。」こういうことになつておる。これは裏を返しますと、業者は仕事を始めているのです。そうしてその三十日間は、大臣の許可を得なくてもやれるわけです。そうすると三十日間もすれば、大体の荷役というものは済んでしまう。その時分に、運輸大臣のいわゆる省令の定める手続によつて、大臣に届出のものが届ければそれでいい、こういう結果になりますから、そうしていかぬと言われてはねられれば、またその次にも、今度は届け出ておるのだ、こういうことでやればいいということになりまして、木船業者は、まつたく底抜けの混乱ぶりを呈すると思います。この点につきましては、こういうふうな理由がありまするから、非常宙に反対をされておつたということを私は聞くのでありますし、私も実際にこの結果をすなおに見ますると、非常に私はその点を憂えるのであります。むしろ正当な港湾運送者の荷のあるときには、適時適所で荷物をとつてしまう、そうして運送できるというはなはだしい矛盾を、私はこの条文に感ずるのであります。すべて先ほど申しましたように、非常に事務的な質問にとどめまして、御努力に感謝をいたすのでありますけれども、しかし私はこの三十三条の問題につきましては、十分に質疑をして、事務的にも、あるいは立案者の御意思からも、納得の行く御説明をいただき、かつこれらの条文があるがゆえをもつて、港が混乱に陥るようなことのないようにすると同時に、港湾業者に対して、将来この条文があるために非常な苦境に陥るようなことがあつてはならない、やはり既存の業者を保護しつつ、港の秩序を維持して参りたい、このように私は考えまするので、特に御質問を申し上げる次第でございます。
  225. 岡本忠雄

    岡本委員 ただいまの御質問に対しまして、一応立法者の考えておりますことを申し上げ、さらに補充すべき点は、現行運用責任者たる政府にも、これを説明していただくことにいたしたいと思います。この条文は、平たく申し上げますと、大体登録は免除するけれども、三十三条の第三項によりまして、全部の下請禁止をする、それから検査もできる、さらにまた営業の停止処分もやるというように、いろいろのそういうこうな規定を定めておるのであります。そこで実際問題としまして、秩序を乱すような者は、大体は取締をことができると考えます。ただこの登録基準が一ぱい船主等に適用されませんから、そういう点でまた疑問が起るわけでありますけれども、実際に適用されないのは、陸と陸との間の場合と、港湾業者の下請として本船接続の回漕を行う場合、この二つだけであると考えます。そこで実際上これらの場合には、基準をつくるとしましても、実は機帆船一隻で十分ということでありますから登録適用の有無によつて相違は来さない。そこでどうなるかと申しますと、ここで機帆船に対する一つの考え方でありますが、機帆船業者は大部分木船業法によつて律せられまするが、こういうような場合に問題を起す船は一ぱい船主でありまして、従来行つておつた事業をやめなければならぬような場合に、一番かわいそうなことになる問題が起るだろうと思います。そこでこういう点から見ますと、単なる一ぱい船主でありましても大きな社会問題になりますし、やはりそういうものが法律上、さつき申し上げました二つの場合には許されるということにしなくてはなるまい。二つの場合のみでございます。実際上におきましては、業者がお互いに協調しまして、不都合な結果が起らないようにやつて行くこともできるでありましようし、また監督官庁としましても、海運当局はこの三十三条の三項というようないろいろの条文にありまして、監督もしなくてはならない、また荷主側にも警告を発するというようにして、秩序を正当の道に保つて行く、かようにしてもらいたいという気持なのでございます。なお足りないところは、港湾当局から説明していただきます。
  226. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 港湾の中におきまする港湾事業は、従来は港湾事業者と、それから木船運送法によつて登録した機帆船業者が行つておるのでございます。そこで港湾運送事業をやる者は、機帆船が陸から陸、あるいは本船から陸にいろいろな貨物を運部場合はやむを得ないとしても、港湾運送事業法によるいろいろな制約を受けるようでなければ、先ほど申しましたように、料金等のいろいろな問題があるので、非常に困るから何とかしてくれという問題が起きたのでございます。そこで私どもも機帆船業者にいろいろ呼びかけをやつて、現地の事情を聞いてみたところが、機帆船の方はなかなか自分たちの都合のいいようなことを言つておりましたが、終局は港湾運送事業の健全な発達になるのだから、それでは港内だけは、機帆船で一部を運ぶ場合でも、港湾運送事業法によるいろいろな法律の制約を受けようということで、協議が成り立つたのでございます。もともと機帆船業者は、こういう港湾事業法によつていろいろな指導を受けることを当初は期待しておられなかつたのでございますが、港湾運送事業法趣旨をよく説明いたしまして、港内における機帆船の陸々なり、あるいは本船、沿岸の輸送については御協力しましようということで、話が成立したのでございます。
  227. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はまだ事務的の質問はあるのですけれども、大体の骨子はわかりましたので、提案者に対しての質問はこれで打切りたいと思います。
  228. 關内正一

    ○關内委員長 残余の質問は次会に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後七時二十一分散会