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1953-07-07 第16回国会 衆議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月七日(火曜日)     午後四時二分開議  出席委員    委員長 關内 正一君    理事 岡田 五郎君 理事 關谷 勝利君    理事 松井 豊吉君 理事 原   彪君    理事 楯 兼次郎君 理事 川島 金次君    理事 鈴木 仙八君       岡本 忠雄君    徳安 實藏君       南條 徳男君    松原喜之次君       山口丈太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         運輸政務次官  西村 英一君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ————————————— 七月六日  山陽線中岡以東電化請願橋本龍伍紹介)  (第二七八六号)  瀬戸記念橋、名古屋駅間国営自動車運輸開始の  請願早稻田柳右エ門紹介)(第二七八七  号)  日向福島修築に関する請願伊東岩男君紹  介)(第二七八八号)  若松港修築に関する請願伊藤卯四郎紹介)  (第二七八九号)  同(岡部得三紹介)(第二七九〇号)  石勝線敷設請願本名武紹介)(第二七九  一号)  三陸沿岸縦貫鉄道等敷設請願小山倉之助君  紹介)(第二七九二号)  大白川駅、只見間鉄道敷設請願田中角榮君  紹介)(第二七九三号)  遠美線敷設請願岡村利右衞門紹介)(第  二七九四号) の審査を本委員会に付託された。 本日の会議に付した事件  外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する  法律案内閣提出第一五三号)  地方鉄道軌道整備法案關谷勝利君外三十九名  提出衆法第九号)  国鉄の事故に関する件     —————————————
  2. 關内正一

    ○關内委員長 これより会議を開きます。  外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する法律案議題とし、まず政府より提案理由説明を求めます。石井運輸大臣。     —————————————     —————————————
  3. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいま議題となりました外航船舶建造融資利子補給法の一部を改正する法律案提案理由及びその概要について御説明申し上げます。  外航船腹を拡充整備いたしますことは、わが国の自立経済達成のため喫緊の要務でありますが、この目的を達成いたしますことは、現下の海上運賃市況並びに海運会社経理状況より見ますると、従前のごとき政府助長策では不十分でありますので、今後の新造船につきましては、財政資金融資援助を七割程度にまで強化いたしますとともに、市中融資について利子補給制度を実施することといたしたのであります。しかるにその後も引続き運賃市況は好転の兆が見えず、他面過去の船舶建造資金融資もすでに巨額に上つており、その返済も困難な状況にあること等によりまして、市中金融機関から新規の造船融資を期待することはきわめて困難な状況であります。しかし損失を補償するという方法であります。従つてこの際外航船舶建造融資利子補給法を改正して、これに損失補償制度を加え、一環の助成施設を確立しようとするものであります。  次にこの法律案概要について簡単に御説明申し上げます。  現在、新造貨物船建造については約七割、油槽船については約二割の資金開発銀行から融資せられることとなつておりますので、市中銀行は残高を融資するとして、この市中融資分について、政府金融機関損失を補償する旨の契約を結び得る制度を実施することがこの法案の根本であります。なお政府が補償する金融機関損失の額は、金融機関担保権を実行してもなお取立て不能となつた元本及び利子について、融資額の百分の三十を限度といたします。  本制度海運会社に対し、利子補給制度と相まつて国家に上る強力な助成を与えることとなります。従いまして国家といたしましては、起り得べき損失を最小限に食いとめる意味からも、海運会社に対して相当な監督をいたさねばなりません。このために本法案では、海運会社の行う利益金処分等に関しまして、必要なる規制を加えることといたしておるのであります。なお本年度におきましては、約三十万総トンの外航貨物船及び油槽船建造対象とし、これらに対する市中融資について契約し得ることといたしておりますが、この契約による損失補償限度額は、将来にわたり五十九億七千万円であります。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。     —————————————
  4. 關内正一

    ○關内委員長 次に地方鉄道軌道整備法案議題とし、これより質疑に入ります。通告があります。川島金次君。
  5. 川島金次

    川島(金)委員 運輸大臣が見えておりますので、この機会地方鉄道軌道整備法案に関して、若干お尋ねを申し上げておきたいと思います。  この地方鉄道軌道整備法案なるものは、御承知通り議員立法の形をとりまして提案をされたもののようでありますが、この法案を見て参りますと、天然資源開発その他産業振興上特に重要な新線、さらに産業維持振興上特に重要な地方鉄道であつて運輸の確保または災害の防止のため大規模な良を必要とするもの、さらにまた設備の維持が困難なため老朽化した地方鉄道であつて、その運輸が継続されなければ国民生活に著しい障害を生ずるおそれのあるもの、こういつたものに対しまして、運輸大臣がその必要を認めた場合には、それぞれのこの法規に従いまして、助成もしくは保護を加えようというのが、目的法律であるのであります。  そこで私はこの機会運輸大臣にお伺いしておきたいのは、この法律案提案を見まして私は感じたのでありますが、一体運輸省といたしましては、もしくは吉田内閣といたしましては、日本国内における陸上輸送あるいは河川、海上等の輸送問題について、基本的にはどういう考え方を持たれておるのかということについて、若干私は理解しがたいところがありますので、これをお伺いするのであります。たとえばこの重要なる資源開発やあるいは地方鉄道において地方公共のためにどうしても欠くことのできない、そうした貨客を問わない輸送問題について、一体今後運輸省、手取り早く申し上げれば政府が直接その問題に乗り出して行くということを重点にするのか、あるいはまたそうでなくして、地方の実情によつて地方の新線を民間において許可をするということを奨励するという建前を持つて日本国内輸送行政を切り開いて行こうとしておられるのか、そういつた基本的な運輸大臣が持たれておりまするところの運輸行政に関するところの考え方を、ひとつこの際私どもに示しておいていただきたい、まずそういうふうに思うものであります。
  6. 石井光次郎

    石井国務大臣 国内開発のために交通網を整備して行くのでありますが、原則的には大きな目から見まして、国家の費用をもつてやらなければならないものが多いであらうと思うのであります。しかし特別な事情がありまして、そこらのある産業開発のために、ある私設計画があるというような場合等におきましては、その私設もこれは認めて行く。国のやることが大体において主であつて地方のというか、私にやられるのが従たる状態なのは、交通というふうなものの行き方としては大体の方向だろうと思いますが、これは各個の場合にならぬとわからないのであります。ただいまは利益がなくとも、将来のため、日本産業開発のためだという線等は、どうして国家が進んでやらなければならない、そういうふうな心持で進んで行きたいと思つております。
  7. 川島金次

    川島(金)委員 今の大臣の御説明によりますと、やはり従来通り別にへんてつもなく、国でやるものと民間がやるものとあつてよろしい。そうしてあまり確固たる計画も立てないで、従来のような形で行くことがいいのだというような考え方に私は今のお話では承つたのですが、どうもそういうことでは、私は国民立場からいたしまして若干納得が行きかねる点があるのであります。現在の国内のこの運輸問題を大きな立場からながめますと、どうもそういうことの弊害が今日現われて来ておる。そういう現われて来たことが、あちらこちらに必要でありながら経営ができなかつたり、あるいはまた現状の民間線路があるにかかわらず、そこへ持つて行つてまた国が投資をして新たに新線をつくらなければならぬような状態が生まれて来たり、こういうことではやはり今大臣が言われたような、無計画とまでは私は申し上げませんが、何か国全体の総合的な運輸についての確固とした計画性というものが、どこかに欠如して来ておつたのではないか。そういう事柄が今日集積されて、そのいろいろな矛盾を解決するために、いろいろな末端的な措置をしなければならないような事柄が随所に起つて来ている。今度の議員立法と言いながら、地方鉄道整備法案が出されるに至りましたのも、やはりそういつた一つの集積の現われではないか、こういうふうにさへ私どもは考えざるを得ないのでございます。従つて大臣が申されたようなことではなしに、もつと政府はすべからく全体をにらみ合せて、今後の運輸行政というものは、むしろ日本資源開発公共福祉を増進するためにはどういう交通綱をつくるべきかということが、大きくしかも計画的に打出されて来なければならないのではないかというふうな気がいたすのであります。ことに公共福祉上やめることのできない線路でありながら、それがどうも経理の都合で国家めんどうを見なければならぬようなことになる。しかしそういうことになりました場合にも、そういうことに対しては利子補給だとか保護政策だとかいうようななまぬるい態度ではなくして、もつと基本的に抜本的にこれを解決するという一つ政策を確立する必要が今日はあるのではないか、こういうふうに私は感ずるのであります。たいへんくどいようで恐縮でありますが、そういう事柄について、大臣としてのもう少し確固たる見解をばわれわれは承つておきたいと思うわけであります。
  8. 石井光次郎

    石井国務大臣 日本国内交通網と申しますか、これは今までの日本の国の経済その他の発達につれて、いろいろなときに地方の盛衰はありましたが、それにもこたえながらだんだんと道路網その他の鉄道網が整備されて参りまして、今日においては一応の主要な線路は、そのために長い間にでき上つて来たのでございます。これから先の問題といたしましては、そういうでき上つたものをもつと有効に動けるようにするとか、あるいはその足らさるものをこれから補正をして行つて、だんだん経済産業発展に応ずるような線を追加して行くとかいうこと等が、全体を見渡しながらやつて行くべき問題だと私どもは思つております。その線によつて大体間違いなく今日までもやられて来たし、これから先もそういうふうにして、今の交通網を中心としてこれの改善をすべきだと思います。たとえば思い切りこの際に道をよくするというような意味で、道路弾丸道路のようなものが考えられるように、鉄道については非常に輸送量の多いところをもつと大きな輸送量にかえろというような問題が考えられなくちやならぬのでありますし、また日本の国の中を結ぶ問題といたしましても、本州と九州を結ぶトンネルはありますが、四国と本州、あるいは本州と北海道を結ぶ地下線路というようなもの等がだんだんと考えられて、一貫したりつぱな鉄道網ができ上ることが望ましいのは当然であります。今度の鉄道敷設法の一部正改によつて、そういうようなものを予定線の中に掲げているというようなことは、私どもの今申したことを裏書きするものだと思います。しかし実際問題になりますと、お説のように何となく物足りない、何かあちらをつつきこちらをつつくというようなことで、とりとめのないような状態である。予算を見ても相当使いながら、一鉄道の問題を見ましても、鉄道だけでももう少し何か固まつてしつかりやつたならば、もつとよくなるのではないかという批評はいろいろできる思うのでありますが、実際の問題といたしますと、あれもしたい、これもしたいというふうで、どうしても集中的にできない状態です。これはなぜかと申しますと、御承知のように今は戦争の災禍を受けたあとの始末を考えながら、また少しずつでも経済発展のための前進もしたいという欲望と二つ合せて、なけなしの資金の中から、両方進むために、そういうことになると思いますが、できるだけこれから先も皆さんの協賛を得、お力添えを得て、力強い日本交通網をつくり上げることに努力いたしたいと思つております。
  9. 川島金次

    川島(金)委員 今大臣が認められました通り、現在の内閣日本交通政策、ことに戦前から戦後に通ずる問題でありますが、大きな立場に立つた確固たる計画的なものがない。われわれはこれを強く感じておるのであります。従つて今後の日本交通政策というものは、従来のような、極端に言えはいわゆる出たとこ勝負のような形でなしに、もつと確固とした計画方針に基いて、日本の文化と経済の積極的な向上に役立つような、重点的な立場をとりつつ、この問題を押し進めて行くという大方針を、この機会に確立する必要があるのではないかと私は考えますので、この点を特に強調しておきたいと思うのであります。  さらにこの会に大臣にお尋ねしておきたいのですが、この法案によりますと、先ほど私が申し上げました大臣の必要と認める助成対象とする地方鉄道認定というものは、大臣がこれをするということになつておるのであります。大臣が独断でそういうことができるというのは、あるいは事務簡素化行政簡素化等からいいまして、あるいは望ましい場合もあろうかと私は思いますけれども、この種のきわめて重要な助成問題対策に対しましては、大臣が一人でこの問題を認定する、きめるという立場をとられるよりも、何か大臣のわきに一つ大臣意見に対し助言のできるような一種の民主的な機関があつて、その機関を通じて意見を問い、その機関の答申に基いて大臣が民主的な形においてそれらの必要なる路線を指定し、そしてその路線に対しての助成方法を進めて行く、こういつた形をとるという方が、何か国民立場から見ましても民主的な決定の仕方であり、同時にまた大臣としての責任の上から考えましても、非常に望ましい姿になるのではないかと私は思うのでございます。こうした問題を大臣一人に押しつけることが大臣としてはやりよいのか、それとも他に大臣意見助言を与えるような機関もある方が、大臣として行政の執行上やりよいものであるかどうか。その点についての大臣としての経験に某く、腹臓のない、率直な御意見をこの際伺つておきたいと思うのであります。
  10. 石井光次郎

    石井国務大臣 ごもつともなお話でありまして、趣旨は賛成であります。しかし今までもたとえば補助金等始末をする、補助金を出すとか出さぬとかいうような問題についての、こういうような固定的な機関を設けた例は今までないようでありますし、すべて大蔵大臣とも相談をすることになりますし、中では運輸審議会等もありますし、これらのものに諮つてやりますので、わざわざ別に諮問機関を設けぬでもいいのではないかと思つております。
  11. 川島金次

    川島(金)委員 今大臣説明によりますと、この法律がかりに実施された場合に、しかも大臣が第三条に基くところの認定をいたします場合には、必ず運輸審議会等の議に諮るというお話がありましたが、それは行政措置として当然やられるという心構えでございますか。その点をひとつ念を押しておきたいと思うのであります。
  12. 石井光次郎

    石井国務大臣 規定上にはつきりそうなつているわけではありませんが、そういうふうな心持でやつて行きたいと思つております。
  13. 川島金次

    川島(金)委員 この問題に私案は重大な関心を持つているわけでありますが、この法文にはそうなつておらない、従つて大臣がこの助成をする路線認定いたします場合に、大臣心持といたしましては審議会等に諮るという心持があるという、その気持はわかりますが、諮らないでもいいということに実はこの法文ではなるわけであります。従つて大臣がこうしたものを認定する場合に、事情によつてめんどうなことが起り得る場合もありますから、めんどうだから自分の判断で認定してしまえ、こういうこともできるわけであります。しかしそういうことをするということによつて、私は大臣をゆめゆめ疑うわけではございませんが、しかし国民立場から見ました場合に、やはり大臣がこういつた重要な問題に対しての決裁をいたします場合には、何か民主的な運営方法として、新たに別の委員会などをつくれと私はしいて申し上げませんが、原則として—原則というよりもむしろ絶対的に何らかの機関に諮つた上でこれを認定する、こういうことになつた方が非常に望ましい姿になるのではないかと先ほどから申し上げている次第でありまして、そういうことの方がいいと思いますので、その点の率直な御見解をくどいようでありますが、もう一ぺん聞かしていただきたいと思います。
  14. 石井光次郎

    石井国務大臣 この規定は、規定の面からいいますれば今お話になりました通りに、だれに諮ることもいらない形になつております。しかし運輸大臣としては最も慎重な態度をとるべきものであります。私に限らずその職にある者は、それぞれの関係の者と話し合つて一番正しいという案を出すべきであると思いますから、わざわざここに諮るということをきめぬでも、その精神は生きて行くものだと考えております。
  15. 川島金次

    川島(金)委員 大臣の今のお話だと、先ほどの前段の御意見と若干食い違つて来たような形でありまして、そばの關谷君などの助言ではないかと想像するのであります。私はそういう形ではなしに、やはりこの種の問題の裁決は、民主的な形で進めているのだという姿を国民の前に明確にしておく、こういうことの方がきわめて望ましいものであろうというのが私の見解であるのであります。しかしこの事柄大臣と押問答をしても意味のないことでありますから、その程度にとどめておきます。  そこで私はこれを提案者にお尋ねいたしますが、今の問題であります。今大庭と質疑応答しておりました通り、私の見解といたしましては、何らかの審議機関を通して、最終的には大臣が良識をもつて決定する、こういう形をとることが最もこの法律をしてよりよき法律たらしめるものではないか、こういうふうに私は考えるのでありますが、提案者はそういう点について考えられたか、それとも考えられずにこの法律提案されたか。その点の見解をひとつ重ねてお尋ねしておきたいと思います。
  16. 關谷勝利

    關谷委員 立案にあたつては、そのようなことも考えないことはなかつたのでありまするが、大体これを運輸大臣認定をいたします際には、大蔵大臣とはもちろん協議をする必要がありますので、協議をいたします。各部内の部門と申しまするか、その方面とも協議をしまするし、なおまた免許基準というものをつくりまして、その免許基準によつてその範囲内で許可するのでありますので、私はわざわざ運輸審議会等に諮る必要がない、大臣大蔵大臣協議をし、さらに部内と相談をして、そして免許基準によつて許可すべきものである、このように考えております。
  17. 川島金次

    川島(金)委員 提案者としてはいろいろ考えられての提案だろうと想像はいたすのでありますが、なるほど一つ許可の場合には基準があり、また認定の場合における一つ基準があるから、それでいいじやないかと言つてしまえば、まさにそれまでであり、その通りでありますが、私はどうもそれではまことにこの法律をして、何か画竜点睛を欠いたものがあるやに私は痛感をいたしておるのであります。そこで提案者にさらにお尋ねするのですが、法文から申し上げましての第三条の、運輸大臣認定にあたつては、たとえば運輸審議会の議を必ず経るといつた意味のことをつけ加えるという意思は、今日のところあるかないか。事情によつてはそういうことも考えるという幅のある考え方を持たれておるかどうか。その点をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  18. 關谷勝利

    關谷委員 ただいま申し上げましたように、大臣がこれを認定するのにいたしましても、いろいろ相談する箇所もありまするし、なお認可基準というふうなものまできめられて、そのわく内において決定するのでありまするので、そのようなものはわざわざつくる必要がない、そういうふうな委員会に諮る必要はない、屋上屋を架する必要はない、このように考えております。
  19. 川島金次

    川島(金)委員 私はくどいようでございますが、この第三条の問題についてはいろいろの懸念を持つものであります。大臣になる方必ずしも——現在の石井運輸相に対してはわれわれも信頼を申し上げておりますが、今後どのような大臣が出て来ぬとも限りません。いつも石井運輸相のような人格高潔、識見の高い者であれば、われわれも何の懸念もいたしません。しかし場合によつて大臣が非常に人格的な者であつても、まわりの動かす人が違つた勢力大臣を押して来るということも、実際の場合にはあり得るであろうし、また大臣と政党の関係におきましても、昔からの実績からいいますれば、必ずしもすつきりして、これでいいのだという確信がわれわれは持てないのであります。従つて大臣立場にいたしましても、そういう何か審議会なら審議会の議を経てやるのだという形ならば、非常に責任も、そう申しては何ですが、軽くなるという形です。また外から見ても、それが非常にすつきりした民主的な感じが強く出て来る。そういうことによつてやはり一種の行政運営民主化というものも、ある程度達成できるものである。必ずしも審議機関があるからといつて民主化が完全に達成するとは私どもは一概には今日思つておりません。今日のごとき日本民主化がまだ発展途上にある過程にあるときでありますから、民主的な機関を設けても、その機関に参画するところの人選を一歩誤まれば、かえつて目的と逆な結果になる場合もなしとはしない。そのこともわれわれは十分にわかつております。しかしそういう弊害が若干あるからといつて、民主的になるものをわざわざそれを拒否するという建物をとるということは、私は当らないと思うのであります。  そこで私はざつくばらんにもう一ぺんお伺いするのですが、提案者の今の御説明によれば、そういうことは絶対必要がない、かりにこの条文に対して私の今申し上げておるような修正案などが上程されたといつたような場合にも、なおかつ提案者としては、そういうことには応ずる意思を持たないというふうに解釈をしていいのであるか、それともそういつた場合には提案者提案者立場において、また何らかの考慮をするという余地がおありなのであるか、その点をさらにつけ加えてお尋ねしておきたいと思います。
  20. 關谷勝利

    關谷委員 私は先ほどから申し上げました通りでありまして、およそ大臣ともなるほどの者でありまするので、そういう人は信頼してさしつかえないと思つておりますし、いろいろ疑えば際限のないものであつて、この基準があり、さらに各部門相談し、大蔵省と打合せをするということで、私は決してそう逸脱するようなことはない、この方法でさしつかえないのではなかろうか、このように考えております。
  21. 川島金次

    川島(金)委員 提案者は、大臣がそれぞれの機関に諮るのだ、それだからいいじやないか。どうせ諮るということが初めから原則的にわかつておるならば、法文に明確に書いておつた方が、書かないよりも私は明確になつてよろしいのだ、こういう見解を持つのですが、その点はいかがでございますか。
  22. 關谷勝利

    關谷委員 私は運輸審議会というものは、こういうものを審議するような機関になつておらないというふうに考えておりますので、運輸審議会というお話もありましたが、そういうふうなところと相談するということは、あるいは適当ではないのではなかろうか、このように考えております。
  23. 川島金次

    川島(金)委員 しからばさらにお尋ねいたしますが、提案者關谷君におかれましては、重要事項について大臣が決定をいたします場合に、大臣の独裁がいいのだ、民主的な、いわゆるより多くの人に相談をする、諮るというこの形というものは望ましくないのだ、こうゆう思想が提案者の根底には流れているように思われますが、一体物事を進めたり、物事を相談するのに、あるいは実行するにあたりまして、きまつたことを実行するのは別といたしまして、何らかのものをきめようとするときに、頂点にある者が一人で独裁することの方がいいのか、それともそうでなしに、従来われわれの間で言われましたいわゆる民主的な形においてそれを決定することの方がよろしいのか、その根本的なお考えについて、若干私と食い違うようですが、どういうふうに提案者は考えられておりますか。
  24. 關谷勝利

    關谷委員 川島委員は、大臣が一人で独裁的にきめるということを言つておられるが、私は最初から詳しく、くどいほど説明しておるのでありまして、大臣が独裁的にきめるのでは決してないのでありまして、各部門相談をするので、私はこれで独裁ということは決して起らないということを考えております。なお形が民主的であるというふうなものはいろいろありましても、あの道路運送審議会あたりも廃止するという、形はまことに民主的であるものが、現在廃止しなければならないようなこともありまするので、煩雑さを省くということも考えて、私はこれに諮る必要はないと考えております。
  25. 川島金次

    川島(金)委員 ぼくは關谷君と論争しようという立場ではございませんが、たとえばという例で、道路運送審議会などを持ち出したが、あれは別です。ああいう問題をここで持ち出して、だから一切の民主的な諮問機関というものは不要である、そして弊害のみ多くして利益はないのだという断定を下すことは、私は關谷君のような賢明な方にしてちよつと即断だろうと思うのであります。根本的な問題といたしましては、なるほど大臣一人で判を押すわけではありません。それはわかります。わかりますが、一の形としてはやはり民主主義という一種の形であります。そのが整うことによつて民主主義というものの実と名が完成するのである。いろいろ相談してやるのだから法律はなくてもよろしい、機構はなくてもよろしい、それで民主的にやれるのだと言うが、その人としてはそういうことができるかもしれぬ。しかしながら形が整わないときには、そういうことが往々にして破れやすいということは、天下の今までの実績が明らかに物語つているところなんです。そこでやはり物事を民主的に推し進め、決定をする場合には、民主的な形と機構をそこにつけるということを考えなくては完全なものができない、こう私は考えます。この点について提案者關谷君は、もはや私ども意見に対しましては対立的な形をことさらにとつているようでありますが、私はまことにこの法案審議の上において、あるいはこの運輸委員会の今後の審議上において、まことに好ましくない形を關谷君はつくろうとしているようにさえ思えるのであります。私はこの法案に反対しているのではございません。反対をしているのではないが、何らかの形において、できれば満場一致の姿においてこの運輸委員会でこの法案を通して行きたい、これが実は私の底意であります。關谷君もおおよそ御推察でありましようが、そういう底意を持つてだんだんの質疑を私は行つているわけであります。  そにでもう一ぺん最後にこれは念を押しておきます。どうしてもこの問題については、この第三条というものは一字一句も曲げることはできないのだ、そういうかたくなな断固たる態度をもつて、あなたはこの法案に臨むのだという決意であるのかどうか。そのあなたの回答いかんによりましては、私は私の立場なりに今後決意を改めなければならぬ、こういうことになるのでありますが、私はけんかはきらいであります。なるべく平和のうちに物事を運び、そしてできるだけ与野党を問わず、超党派的な問題については超党派の形をもつて、満場一致これを決定して行くという形をとることがきわめて望ましいと私は考えているので、念を押すのでございます。
  26. 關谷勝利

    關谷委員 私はこれが独裁に流れるというふうなことはないという私の考えを述べているのであり、そしてまた独裁と断定されるのはそちらで断定しておられるので、私が委員会の例を一つあげると、全部のものがいらぬのであるというふうに断定されるのも御自由でありますが、私は委員会において皆さんがそういうふうなことを賛成されるのにもかかわらず、どうしてもこれをかえないのだというふうな、そういう横車を押すような態度に出ようとは思つておりません。
  27. 川島金次

    川島(金)委員 さすが關谷さんだけありまして、大分やわらかくなつて来た。私はそうでなければならないと思う。どうも一、二分前のあなたの御説明は、これに固執してしまつて、もう幅も弾力もない、こういつたふうなあなたの説明ぶりであります。そういうふうに私は受取つて、心外に思つたのですが、この法案にはそういう幅のある考え方で臨み、できるならばひとつ満場一致にもつて行くことの方が望ましいのだというお考えがありますならば、私は私なりに又あなたに御協力を申し上げることにやぶさかでないということを、この機会にさらに明らかにしておきたいと、かように思うのであります。  そこで私は提案者に、またこれは運輸大臣にもひとつ念を押しておきたいと思うのです。これは根本的な問題になるのでありますが、この第三条の一項第三号にありまする問題であります。「設備の維持が困難なため老朽化した地方鉄道であつて、その運輸が継続されなければ国民生活に著しい障がいを生ずる虞のあるもの」こういう実情にある地方鉄道は、私は今日ではあまり多くはないのではないか、かりにありましても、その路線の延長距離は非常に短かいものではないかというふうに考えられるのであります。これは私は具体的に知つておりませんからわかりませんが、非常に長距離の地方鉄道というのならば、私の意見は若干違つて来るのでありますが、もしさうでないといたしますれば、こういつた廃線を余儀なくされるような窮境に立ち至つた地方鉄道の貴重なる設備、資材を寝かしておく必要がない、同時にまたその貴重な資材と設備があるにかかわらずなかなか立ち行かない、経営困難だということでありますれば、この貴重な施設、資材は、日本経済発展のために別に活用する方法があるのではないかと思う。今日は何も地方鉄道だからといつて、汽車や電車を通すばかりが能ではございません。そのかわりといたしまして、五十人、七十人一ぺんに乗れるバスもあるわけであります。従つてそういうような方面の路線に対しましては、別な輸送力を動員して、地方公共福祉にこたえるという方法もないではないと私は思うのであります。そういうことが考えられるようなものが、当面予定されておりました地方鉄道の中にはあるのではないかと私は推察をいたしますが、そういうものがあるかないか。  それからまたそういうものがあつた場合に、その一つ鉄道だけにこだわらないで、そういう鉄道を別なバスならバスに切りかえる。そうしてその目的を一層果して行く。しかも経費が少くて済んで、国がいろいろとめんどうを見なくても済むし、さらにまたそういつた貴重な設備や資材が別な方向に活用されるというようなことも考えられるのでありますが、そういつたことはどういうふうになつておりますか。
  28. 關谷勝利

    關谷委員 バスとかその他の代替輸送ができるものに対しましては、これは認定をいたしません。降雪地帯とかあるいは山間部等で、これにかわるべきものがない、冬の間はバス等がとうてい通わぬ、地方鉄道なり軌道でなければならぬもの、そういうふうなものを認定するのでありまして、たとい赤字が出ておりましても、そこをバスがかわりに走るとか、あるいはほかの輸送方法がある場合には認定をしない、こういうことであります。
  29. 川島金次

    川島(金)委員 そういうことに決定されているのならばよろしいと私は思います。ただこの法文の中にはそういつたものは私の見たところではございません。そういうところは認定しないのだという明確な法文がないから、こういう疑問が起つたわけであります。しかし原則としてそういうことはないのだということでありますれば、あえて私はこれ以上この問題について質問を続けようとは思いません。私はこの法案に対しての疑問が他にもたくさんありますが、これはみなこまかいことであります。あえてこの委員会で論議をするほどの重大な事柄でないと考えますので、私はこの第三条の問題だけにとどめておきます。
  30. 關内正一

    ○關内委員長 南條徳男君。
  31. 南條徳男

    ○南條委員 簡単に関連いたしまして、政府委員でよろしゆうございますが、ただいま川島委員から質疑があつた第三条の問題は、やはり本員においてもそういう疑念を持ちますので、この点は十分当局において基準をはつきりさせることが、この法案の骨子だと私は思うのであります。そこで現在補助の対象になつている線及びその数がどのくらいあるか、わかりましたら承りたい。つまり第三条の規定に基いて、補助の対象となると当局が考えられるものは、全部でどのくらいありますか、おわかりになつたら承りたい。
  32. 關谷勝利

    關谷委員 大体第三条に該当するのではなかろうかと考えられまするものは、新線の場合が大体四線、大規模な改良をやりますものが大体一線、鉄道電化をする必要があるものが大体四線、北海道拓殖鉄道の補助の関係が七線、欠損鉄道と申しますのが大体十二線、設備改良鉄道の、これに伴う利子補給のものが一線、この程度で、合計二十八線であります。
  33. 南條徳男

    ○南條委員 ただいまのお話の二十八線というのは予定ですか。将来この基準で予算があればもつと補助をしたいとか、しなければならぬというような対象のものがどのくらいあるかということをお聞きしたい。今の二十八線というのは、大体予算がないからこの程度でとりたいということですか
  34. 關谷勝利

    關谷委員 今のところはこの程度であれば十分ではなかろうかというふうに思われるのが二十八線であります。大体現在やつておりまするのはきわめてわずかで、北海道の関係だけでありまして、これも八線で約一千八十万、一線約百万程度のわずかのものであります。この二十八線を全部いたしますると——もちろん年度別になりまするので金額は減つて参りまするが、大体これを完成いたしまするためには、一億九千六百万円で、二億円程度で済みます。
  35. 南條徳男

    ○南條委員 そうしますと、この法案ができて、将来予算の措置においてまたまたその対象となるような線があつた場合には、大蔵省当局と折衝して予算の増額をしなければならぬような場合がありまするが、さようなことも考えておられるわけですか、大体この程度で当分はいいというようなお考えでおりますか。
  36. 關谷勝利

    關谷委員 さしあたりここ一、二年間はこれでさしつかえない程度であります。しかしながら天然資源開発、その他産業上特に重要なものの新線の出願をいたしておるものもありますので、そのようなものが出て参りますと、これよりはふえて参ると考えておりますが、やはりだんだん終つて参りますので、年度に割ります金としては尨大にふえる杞憂はない、こういうふうに考えております。
  37. 南條徳男

    ○南條委員 そこで事務当局に伺いたいのですが、今までにこの基準に基いて民間側から申請をされ、陳情をされているような線はたくさんありませんかどうか。この基準でもつて当局がきめる場合に、何らの支障なくしてやり得るかどうか、さような点の見通しを承つておきたい。
  38. 植田純一

    ○植田政府委員 たとえば新線の場合に、非常に新線が思うようにできませんので、何らかの金融的な措置をぜひ考えてほしい、あるいは赤字の鉄道につきましては、むしろやめさせてほしい、どうしても採算上、経営上困るからやめさしてほしいというような会社側の申出に対しまして、これは唯一の交通機関だから、やめてもらつたら地元としては非常に困つたことになるというような、存続を非常に熱烈に要望される地元からの陳情を従来再三受けております。ただこの法律に基いてのどうしてくれというその申請は、今まではもちろん法律ができておりませんからございませんが、この法案に織り込まれておりますような実態についてのいろいろな話、あるいはそれに基きますところのいろいろの陳情、そういうものはたびたび聞いておりまして、そういう非常に切実なものについて考えましたのが、先ほど提案議員からお話がありました線でございます。
  39. 南條徳男

    ○南條委員 そこでこの法律ができましても、第三条のこの抽象的な項目に基いて、全国的にこういう便宜があるならば、この法律に基いて出願したい、陳情したいという申出がたくさんあつた場合に、二十八線ではなかなか決定が困難なような事情もあるように私は考えるのであります。先ほど川島委員からも言われた通り、そういう点においてこの法案にはなかなかむずかしい点が出て来るのではないかと思うのであります。だからこの点について当局は、この法律ができても、将来そんなに数多く陳情が出て来ぬというふうな見通しがあるか、おわかりならばちよつと知らせていただきたい。
  40. 植田純一

    ○植田政府委員 確かにこの法文だけでは少し抽象的な面もございますので、この補助の対象となりますところの認定あるいは承認の基準というものについて、もう少し明確な基準をつくりまして、これを省令で公にして行きたい。もちろんこれにつきましては、政府部内においていろいろ関係の向きとも折衝いたしまして、そうして省令にはつきり出したい、かように考えているわけであります。今お尋ねのようにこの法律が出ると、予想もしなかつたようなたくさんの申請がいろいろと出て来るのじやないか、あるいは私どもの今までの資料で考えておりました以上の、あるいは予想しておりました以上の申請が出て来るのではないかと思いますが、それにつきましては、さきに申しました基準というものに照し合せまして、先ほど来いろいろ御議論のございましたように、慎重に認定の可否を取扱いたいと思つております。また政府部内におきましても、予算の折衝その他におきまして、当然そういう面からもいろいろと議論がされ、あるいはまた、実際問題としていろいろの制約も受ける、かような状態でなかろうかと考えますので、そういう点、いろいろの事情を十分考えまして、この法案実行の趣旨に沿うように遺憾なきを期して参りたいと考えておる次第であります。
  41. 南條徳男

    ○南條委員 大体了承いたしましたが、この法案ができれば、かような第三条のような抽象的な基準であれば、必ず全国的に申込みが殺到するのではないかというようなことも懸念されますし、またその場合に、選択に非常な難儀をして、当局が非常にいろいろな疑惑を持たれるようなことがあつては、かえつてとの法案をつくつたがために影響が大きいのでありますから、その点をあらかじめ考慮されまして、先ほど提案者の言つた通り、われわれは委員会をつくるというようなことまでも主張はいたしませんが、十分省令その他に基準をはつきりされて、そういうことのないように十分注意されんことを希望しまして、私の質問を終ります。
  42. 楯兼次郎

    ○楯委員 政府委員にお尋ねしたいのですが、二十四条の四項です。これは十五国会のときに私が質問いたしましたところが、提案者は新たにできる新線建設は政府の命令である、こういうふうに断定をされました。その線に沿つて私は賛成をしたわけですが、当時政府委員の回答では、そういうような政府の命令ということにはならないのではないかというような意見があつたのですが、この点提案者と同じ意見であるかどうかということをひとつお伺いしたいと思います。
  43. 植田純一

    ○植田政府委員 現在やつております新線建設が、政府の命令に基くものであるかどうか、かようなお尋ねであつたわけであります。実質的に申しますと、国鉄総裁が自由裁量でどうとかするという余地が非常に少いのでございます。従いまして提案者お話にもありましたように、実質的には命令であるというような見解もとり得るかと思います。しかしいわゆる政府の命令としての形式を備えていないということも事実でありまして、従いまして命令であるかどうかということになりますと、実質に重きを置くか、形式的要件が必要であるかということによりまして、これは非常に議論があろうかと思います。本案の処置につきましては、現在におきましては現実の問題は起つておりません。将来現実の問題が起りましたならば、この法案の運用につきまして、提案者の立法の趣旨をも十分考えまして、この具体的な事例に対しまして遺憾のないように処置したい、かように考えておる次第であります。
  44. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は国有鉄道が、どうしても敷設をしなければならないという新線が将来出て来ると思うのであります。しかし現在は私どもが本委員会においていろいろな論議を聞いておりますと、どうしても国有鉄道の当事者は新線建設というような面についてはあまり賛成ではない。ところが建設審議会等の答申によつて、新線の建設というものが推進をされている。今とつておりますところのそういう形が、政府の命令ということになり得るかどうかということをもう一回くどいようですがお尋ねをしたいと思います。将来国有鉄道がどうしてもこの区間に新線を建設したい、そういう発意に基くときは、私の質問しておることは別問題であります。現在当事者が否定をしつつ、なお新線が建設をされておるという現段階における取扱い方というものは、政府の命令によるものであるかどうかという点をくどいようですが、もう一回お答え願いたい。
  45. 植田純一

    ○植田政府委員 この点は先ほど申し上げましたように形式的な命令であるかどうかということになりますと、形式的要件を備えていないと言わざるを得ないのであります。従いまして本法案の運用におきまして、ここにあります政府の命令というものをどう解釈して行くか、形式的要件をあくまで必要とするかどうか、こういう問題になろうかと思いますが、提案者の立法の御趣旨もございますので、具体的事例につきまして、遺憾のないように処置したい、かように考えておる次第でございます。
  46. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは提案者にお聞きしたいと思いますが、何だかあいまいで、はつきり割切つた回答が得られないわけであります。提案者としましては、ただいま私が申し上げましたようなものを、命令として取扱つて行くような条文の変更方の用意があるかないかということをお伺いしたい。
  47. 關谷勝利

    關谷委員 私は別に命令というふうなものを書き入れなくても、そういうふうな疑義のある場合、またそういう懸念のあるような場合には、大臣から命令書を出さす、こういうふうなこともできる、こう思つております。別にその必要を感じておりません。
  48. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは提案者が、やはり現段階における新線建設は、命令の形であるということをはつきり前の国会においても言明をしておられますから、そのように条文を書いていただくことが、私は最も至当であると思います。ただいまの御答弁でも、大臣が命令をして出すようなこともできるだろうというような、ここにもあいまいな回答があるわけですが、その点をはつきりしていただきたいと思いますが、いろいろ関係があると思いますので、ひとつ提案者が御回答になつた線に沿つて実施をして行くようにお願いをしたいと思います。
  49. 關内正一

    ○關内委員長 他に御質疑ございませんか。原彪君。
  50. 原彪

    ○原彪委員(改) 提案者一つお伺いしたいのです。先ほども御質問がありましたが、明確な御答弁がないようでありますし、この点はこの法案の中心だと私は思いますので、明確にしていただきたいのは、第三条の第一項第三号の問題であります。設備の維持が困難なため老朽化した地方鉄道であつて公共福祉のために継続されなければならぬ、政府がこれに援助しなければならぬという鉄道を、どの尺度で認定するかということが一番むずかしいことと思うのです。内容がよくても、表面税金の関係や何かで苦しいようなかつこうをしておる会社もなきにしもあらずと思うのです。それはほとんどないでしようけれども、あるいはあるかもわからない。だからそれは、その認定の尺度をどの程度まで下げて行くかというところに問題があると思うのですが、そういうようなことについて、これには何も規定がないのです。先ほど川島委員が御心配になつて運輸審議会に諮つたらどうかというようなお話もされましたが、何かそういう基準があればはつきりして来るのじやないかと思うのです。またこの利子の補給という問題が第十六条に出ていますが、いろいろな財政的な援助が地方鉄道に対してなされるということでありますので、どのような会社に対してこれをなすかという尺度がそこにほしいとわれわれは思うのです。提案者にひとつこの点を承りたいのです。
  51. 關谷勝利

    關谷委員 ただいま原委員からお話のありました表面はまことに苦しそうに見えるが、内実はというお話は当らないお話でありまして、これは監査を十分にいたしまするので、決してさようなことはございません。しきりに監査をいたしまして、しかも提案理由にもはつきり書いてあるのでありますが、他にかわるべき輸送機関がなく、経営困難であるというものに対しまして、認定対象に相なるのであります。これはそれにかわるべき輸送機関がないということが条件になつておるのであります。
  52. 原彪

    ○原彪委員(改) 同じ欠損をしておる地方鉄道会社が三つ四つあつた場合、全部が全部補助の対象にすることができない場合には、たとえばその中の二つを補助の対象にしようというときには、その判定は非常にむずかしいと思うのです。その四囲の状況、つまり公共福祉の尺度を、たとえば五つの路線についてどういうふうに酌量するか、その認定というものは、ただ監査だけではとてもできないと思うのですが、こういうような点は、結局最後の判定は運輸大臣の裁断ということになりましようか。
  53. 關谷勝利

    關谷委員 四つも五つもの線というのは、私ちよつと了解しかねるのであります。同じ場所において四つも五つものものが競争いたしておつて赤字を出しておるからというので、それに補助するというのではないのでありまして、一つしがなくて、その一つ維持できないという場合をいうのでありまして、四つも五つもの鉄道が競争しておる場合というふうなことは私たちは考えておりません。
  54. 原彪

    ○原彪委員(改) 競争しておるという意味ではなくて、地域的に離れておつて、欠損しておる地方鉄道が四つ五つあつた場合を言うのです。
  55. 關谷勝利

    關谷委員 四つ五つのものがありましても、それがどうしても国民生活の上から必要であつて、ほかにかわるべきものがない場合には、たとい五つあつても、離れておる場合は、五つとも補助の対象になる、認定対象になると考えております。しかし五つが並行しておるという場合は、考えられないと考えております。
  56. 原彪

    ○原彪委員(改) またそういう補助の対象にするか、あるいはその鉄道を国鉄で買収した方がよいかというような問題が起るのですが、そういう問題は非常に私はデリケートだと思います七そうするとその鉄道は、国鉄で買収しないで生かして行こう、こういうことになるわけですね。
  57. 關谷勝利

    關谷委員 そういう具体的の事例でも示していただかないとわかりませんが、私はそういう場合はあり得ないというふうに考えております。
  58. 原彪

    ○原彪委員(改) むずかしい問題ですが、この程度にしておきましよう。
  59. 關内正一

    ○關内委員長 ほかに御質疑がなければ、本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  60. 關内正一

    ○關内委員長 川島君。
  61. 川島金次

    川島(金)委員 たいへん時間がたつたあと質問を申し上げて恐縮でございますが、この委員会にもいろいろと法案が山積して参りましたので、私の今お尋ねしたいと思いますことを述べる機会が、今後はなかなかないのではないかと思いまして、恐縮でございましたが、総裁の御出席も求めたわけでありますので、その点をひとつ御了承願いたいと思います。  国鉄にとりましても、運輸大臣にとりましても、忘れることのできない近来の事件の一つでありました昨年の六月中旬に発生いたしました日暮里における椿事、この事件が発生いたしまして、今日すでに一年を経過しようとしております。しかるところこの日暮里事件の発生の後におきましては、大臣も総裁も御承知通り、当面の責任者といたしましては日暮里の助役でありまする中山鹿之助氏ほか建築関係の人も加えまして、四名の職員がいずれも業務上過失致死罪によつて訴追をされまして、目下御承知通り審理が続行されておるのであります、ことに承るところによりますれば、毎週一回という頻繁な公判が開廷せられまして、それぞれ裁判当局において慎重なる審理を進めておるように承つております。この事件で不幸にして一命をなくしました方々及びその遺族、あるいはまた当時負傷せられました多くの乗客の各位に対しましては、われわれは総裁、大臣とともそれに国民の一人として弔意を表し、お気の毒の意を表さざるを得ないのでございますが、そこでこの問題自体を私はここで掘り下げてあらためてお尋ねをしようというのではございません。ただこの際総裁に特にお尋ねをしておきたい問題の焦点は、現場におけるこの種の事故の発生の都度、私が見て参りましたところによりますと、まつたく名もなき、力もなき一職員が、全身にその責任を浴びて訴追をされ、そのあげくのはてには刑に処せられて、永年勤続して参りました職員が心ならずも無念の涙をのんで退職を命ぜられ、しかもその事故によつて退職を命ぜられるのでございますから、その後における待遇といえども一般の人とはおのずから異なるような待遇を受けるのやむなきに至るという、実に気の毒な職員が今日まで多数おられるということは、総裁もよく御存じのことと思うのであります。そこで私は特に総裁にお尋ねいたしたいのは、こうした国鉄の現場における事故の発生によつて訴追されまする責任者として、こうした者だけが全責任を負わなければならぬという建前をもつてよろしいとするのかどうか。この点につきまして私は疑問を持つておる一人であるのであります。  さらに運輸大臣はもちろん、総裁もすでに御承知と思うのですが、去る四月の十三日には鴻ノ巣、吹上の間におきまして、荷扱いの人がその繁忙な仕事にまぎれている間にこんろから発火をいたしまして、その一車がまつたく焼失をするという事件が起りました。そのためにその当日の乗務員であつた一人の荷扱いが訴追をされました。これまた最近二、三日前でございまするけれども、略式命令によつて少からざる罰金が来ておるようなありさまであります。日暮里の事件といい、今回のこの事件といい、相当善良な管理をされておつたといたしましても、この事故が起るべくして起つたのではないかという感じがわれわれはいたすのであります。かりに日暮里の当時における駅長とか助役が、何十人の乗客が一ぺんにその陸橋の突き当りに殺到するなんということは、普通の常識においては想像も及ばないことであります。従つて平常の場合においてはこの程度の陸橋であれば、不測の事件を起して乗客に対してたいへんな迷惑を与えることはなかろうというような、一種の良心的な管理の立場でものをながめておろうと思うのであります。しかも駅長などは建築の専門家ではさらにないようでありますから、いわんやそういうことに専門的な心配りをするなどということは思いも及ばないことではないかと思う。ところが事故が発生いたしますと、駅長あるいは助役が、お前が責任者であるということでたちまち検挙され、訴追されて、しかも究極においてはこれらまつたく少数の人々が、その責任を負わなければならない。こういうことになることは、まことに私は遺憾なことではないかと感じております。  吹上、鴻ノ巣間における六〇一号列車事件も、総裁は詳細な報告を受けて全部御承知だと私は推察申し上げるのでございますけれども、総裁は学校を出て現場にもおられたのですから、少くとも現場の実情というものは知られておるはずであります。荷扱いの車の中の状態は、われわれしろうとが外目で見ましても想像に絶するのでありまして、ほとんど車一ぱい、天井に届くまで荷物を満載し、しかも満載した荷物のまん中には、人一人ようやく横にならなければ通れないような細い間隙を設けまして、その中で荷扱手は働いておる。あまつさえそればかりでは足りないで、荷扱手のいこいの場所、仕事の場所、同時に監督の場所であります車掌室と申しますか、小さい部屋がありますが、そこにも荷物を載せなければならない、そういう過剰な積載をいたしまして、輸送力の増強という名のもとに過大な労働をしいられ、しかもその過大な労働に対しても易々諾々として日本経済再建のために働いておるというのが、乗務員の現在の実情であるということも、私が申し上げるまでもなく総裁よく御存じだと思います。しかるにその結果起つたのがこの間の六〇一号列車事件でありまして、この方はたちまち訴追され、莫大な罰金刑に処せられております。かりにこの罰金が他の方法で支払われたといたしましても、本人に課せられた一生涯ぬぐうべからざる刑罰というものは、精神的には断じて抜けないというところに追い込められておるということも、また想像にかたくないのであります。そういう観点からこのような末端の善良な官吏のもとにあつてもなおかつ起るべき事態であつた。責任はむしろ他にある。ただ事件が発生いたしまして、末端の名もなき薄給の者が、全責任を社会的にも内部的にも負わなければならぬという責任体制が、はたして国鉄の発展のためにしかるべき姿であるかどうかということは、大いにこの際再検討をしなければならない事柄ではないかと思うのでありますが、これらの問題につきまして総裁はどのようなお考えを持たれておるか、その基本的な総裁の考え方をこの機会にお尋ねしておきたい、かように思うわけであります。
  62. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 川島委員のただいまのお話、個々具体的な事件につきましては目下訴追中でもありまするし、公判が確定したということでもないので、どういうふうな責任になるのか申し上げることを私は差控えますが、しかしながら責任というものは決して末端だけに負わすべきものでもなければ、また上の者が全部負わなければならぬものでもないので、その場合々々によつて判定されるベきものだと考えます。ただいまのお話の、たまたま薄給の人あるいは末端におる荷扱手が訴追され、そしていろいろ御苦労になるという場合に、国としてこれをどう扱うか、でき得る限りの援護と申しますか、そういうことをして行かなければならぬ、かようには考えております。しかし責任問題の範囲ということになりますと、これは裁判所の方の話でありまして、私どもが何を申してもどうにもならない今日の情勢ではあります。
  63. 川島金次

    川島(金)委員 このケース自体に対する明確な見解を総裁からこの機会に述べていただくことは、私は若干無理だと思うのです。しかし私はたとえばの問題としてこのケースを持ち出したのでありまして、全般的な普遍的な事故の起るたびにそうした事柄が行われておる。そうして最も気の毒な目にあうのは、末端の名もなき力弱き職員にとどまつておる。こういう事態というものは私はとらないところであろうと思う。しかも総裁も御承知であろうと思うのですが、この六〇一号事件というものは、私現場を見たわけではございません。翌日に聞いた事柄で、若干は直接の人から聞いておるので、承知はしておるのですが、先ほど申し上げましたように、この荷物車にはまつたく超満載であります。しかもまん中の通路は、私が申し上げましたように、からだを横にしなければ歩けない、そういうきうくつな中で、次々におろして行く荷物の整理、そしてまたおろす場所に来ればそれをおろさなければならぬ。しかもそれだけにとどまらないで、自分のいるべきところ、休むべき場所、あるいは事務をとるべきあの小さな場所にさえも、新聞、雑誌を満載してしまう。中には貴重な金などもつておつたそうでありますが、そういう現金を輸送いたしまする袋なども、その中に加わつておつたわけであります。そういう中でたまたまこんろが——こんろは御承知通り今日暑いときでありますから、何も好んで荷扱手といたしましてもあるいは車掌としても、そんなところへ入れたくないでありましよう。しかしながら今日の従業員の実情といたしましては、お湯を飲むにもかつてに飲むわけには行かない。昔はお湯を飲むには各駅へそれぞれ連絡があつて、駅からそれらの駅員にもお湯を飲ませる機会を与えろ。あるいは弁当を食べたければ、弁当を買つて自由に食べるというときがあつたのでありますが、今はそういうことができない。従つてやむを得ず車の中でこんろを使つてお湯をわかし、あるいはまた飯を食わなければならぬ。こういうことからいたしまして、必然的にそういう場所にこんろを持ち込まざるを得ないという状態にある。従つてそれがわかつておるから、鉄道当局もこんろを支給しているわけであります。この事柄は総裁も御存じだろうと思う。しかもわずかな人でもつて、この超満載の荷物を整理しておる。その整理しておるときたまたまこんろが倒れて発火をして、遂に大事に至つたのでありまして、その一車は焼けた。その損害額は相当莫大であつということは言うまでもありません。そういう事態にならしめたということは、組合の人たちやあるいは現場の人たちは常に当局に向つて、こういつたことをしなくても仕事ができるように仕向けてほしいというようなことについて、ずいぶん組合等を通じて当局にお願いして来ておるわけであります。しかるにそれがいろいろの事柄からしてできない。できないことによつて遂にこんなことになつた。これがおそらく荷物車だけに規定通りの荷物が積まれており、そしてまた自分の部屋には一つも荷物を積まないで規定通りにあいておりますならば、かりにこんろが倒れたといたしましても、あのような大事は起らずに済んだかもしれぬ、また私は起らずに済んだと思うのであります。何しろ超満員であります。そして自分の部屋にまで満載された荷物の中で仕事をしておつた。でありますから遂にそういう大事を起してしまつた。これはまつたく本人の過失といえば形式的にはそう言えましようが、しかし避くべからざる不可抗力の問題ではなかつたかと、同情的に見ればそうとも見られる問題ではなかろうかと思うのであります。そういうことにもかかわらず、遂にその本人は今申したように訴追をされた、そうして略式によつて罰金を科せられている、こういう問題であるのであります。  なおさらにくどいようでありますが、日暮里のごときにおきましても、これは総裁、運輸大臣はよく御承知と思うのでありますけれども、あの乗客が殺到いたしまして、しかもあの乗客の殺到の、前において当面の駅長は、陸橋は今すぐに危険というわけではないが、どうも不安にたえないものがある、どうかひとつ直してほしい、こういうことを上司に申し出たことも事実であります。さらにまた当面のこの方里分区におきましても、分区長がそれにこたえて、どうしても直さなければならぬと思うから、どうか予算をもらいたいということを申請してあつたことも事実であります。しかるに予算がないと称して、このことが行われずしてあの事件が起つた。こういうことを考えてみますると、ただに分区長の責任あるいはまた日暮里の助役の責任に一切を転嫁することは実に不当なものではないか、こういうふうに私は考えたのであります。これは現実に起つている裁判中の問題を取上げておりますので、総裁もさだめし答弁には苦しいであろうと思いますが、こういう形でいいか悪いかということを、本質的な根本的な問題として総裁には考えていただく必要があるのではないかと思いますので、くどいようですが、その基本的な考え方をひとつ説明してもらいたいと思います。
  64. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 抽象的な感じといたしましては、大体において私の感じでは、施設の不完全ということが大きな原因をなすであろうと思います。ただ今日の日本全体の経済情勢、あるいは日本国有鉄道の財政の現状という面からいたしまして、早急な整備ということは非常に困難であります。この点は私は非常に遺憾に思つておりますので、できるだけこれを早く整備して、ただいま川島委員からお話があつたようなものの根絶を期する。事故というものはあつてはならぬのでありますから、その種類が何であらうとも、事故の根絶を期するという方向に一日も早く進んで行くことが、ただいまのようなお話の出ないことになる一つの大きな素因であろうと考えます。
  65. 川島金次

    川島(金)委員 さらにお尋ねをしておくのでありますが、今申し上げましたように、国鉄の施設あるいはまた国鉄の施設のみならず、国鉄の輸送の現実の状況というものが、全部無理なんです。その無理な条件の中に、低額な賃金を得て、無理に働いている、こういう形が事故の頻発を誘発しているという現実ではないかと思う。従つてこの事故の全責任というものは、単にその職場における従業員、直接関係者だけの責任ではなく、むしろ国鉄自体の全体の責任である。総裁の責任だとか、あるいは駅長にあらずして、管理局長の責任であるとか、こういう人の問題ではなくして、評しろ国鉄全体の現状がそういう問題を起さしているというふうに私どもは感ずるのであります。司法の手に移つているのでありますから、それのよしあしを私は論じようとするのではありませんが、今後私は何かの形において、国鉄の職員が安んじてその職場に挺身し得る、そうして事故が起きたら自分が首になる、訴追されるという脅威のあらしの中に自分のはげしい仕事を進めて行かなければならぬというようなこの現状は、断じて打開して行かなければならない、こういうふうに私は考えるのであります。  そこで私は運輸大臣にちよつとお伺いいたすのですが、今私が総裁にお尋ねしておるようなだんだんの実情でありまして、しかも国鉄の資材、施設あるいは輸送の状況というものは、まつたく無理を重ねております。定員もへちまもありません。積載の定量もへちまもありません。荷物にいたしましてさえも、今お話を申しました通りに、少くとも規定の量分の三倍、四倍の荷物を精んでおる。そうして人員も昔と同じ人員で今日働いておる。そういうように働いておる中での事故に対して、単なるその働いておる一人が全責任を負わなければならないというありさまになつておる。むしろ不可抗力でなかつたかとさえ思われる事故に対して、か弱い無名の一職員が全責任を負わされておる、こういうような状態でありますので、私はこの際積極的に私の意見を申し上げて、御意見を承つておきたいのであります。今ありますかどうですかわかりませんが、海員審判所というものが昔はあつたと私は記憶しております。海員のいわゆる事故等につきましては、ある範囲のものは海員審判所において処理して行くという制度があつたわけです。従つて今後国鉄の事故等につきましても、国鉄の特有の状況にかんがみまして、これは社会的な訴追を受けるべき問題よりも以前に、まず国鉄自身が自身の幾関においてこれを審判する、こういつたことを私は考える必要が今日あるのではないかと思うのです。そう言つては失礼でありますが、一般の警察官、あるいは検事、裁判官、これらの人々は国鉄の事情というものにうといのです。おそらくわれわれから言つてみたら、まつたくしろうとであると言つてもさしつかえないでしよう。国鉄の中で働いた経験もあるわけじやなし、あるいは汽車に乗つたといつても、これは二等車に乗つておるのであつて機関士の苦労も、車掌の苦労、荷扱い人の苦労さえもまつたく知らないと言つても過言でないと思う。そういう人々がにわか勉強でいろいろ調べておる。従つてそういう事情にうとい人が事故発生の責任を追究するのでありますから、そこで責任者に対して非常に過酷なる追究をする、また誤まつた裁判をするということがなきにしもあらずということは申し上げるまでもないのでありますが、そういうことに対して、何らか根本的なそういう問題について改まつた形を打出すという方法を考える必要があるのじやないか、こう思うのでありますが、まずそれについて運輸大臣はどのような考え方を持たれておるか、率直な御意見を承つておきたいと思うのであります。
  66. 石井光次郎

    石井国務大臣 どんな場合でもか弱い立場にある人のみが責任を持つて、そうでない強い立場の者が責任をとらぬでもいいということは、あつてはならぬことは当然のことであります。問題によりましていろいろな場合があるでありましようから、その場合はこうであるべきだ、あの場合はこうであるべきだということを一々申せませんが、精神は一貫すべきものであると思います。今のお話のように国鉄は、実は特殊な社会であるから、国鉄従業員の審判所でも設けたらどうかというお話でありますが、これは私は実は考えたことがありません。初めて承りましたことでありますから、ただいまそれは名案だろうとすぐ申し上げるような材料を持ちません。これはなおよく考え、研究もいたしてみましよう。いずれにいたしましても、さつき総裁も中しましたように、人間の力また設備の力以上のものを動かしておるというところに無理が生じやすいのでありまして、はなはだ申訳ないことでありますが、さればといつて今の日本の人口、日本経済力とかいろいろ勘案いたしまして、それでは安全第一で、今の設備で事故の絶対起らぬと思えるような範囲に運搬量を減らすということになれば、日本経済力はおそらく眠つてしまうだろうという非常に情ない状態でありますので、お互いに張り切つて何とかしてこの難局に耐えて行きたい。そういうことから、結果といたしまして、国鉄運輸の設備がだんだん直つて行くようになり、輸送も安心してやつて行けるような状態を一日も早く、今のままでは満足できないのを、みなの力で一日も早くやつて行くということに努力して行くよりほかに道はないと思つております。私どももそういうお仕事に関連している一員でありますから、できるだけ私どもの力の及ぶ点におきまして力をいたし、そういう悩みを従業員諸君に及ぼさないようにいたしたいと思つております。
  67. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 時間が非常におそいので恐縮ですが、二、三総裁に関連質問をいたしたいと思います。今の川島委員の質問にお答えになつたところによりますと、日暮里の事件でも、日本経済力まで持ち出して答弁をなさつたわけであります。これは一例といつても、国鉄全体から申しますとたくさんあるかもしれないけれども、この事件については、その駅の管理従業者は処置をしておつて、当局に対しても進言をしておつた。管理者として責任を尽していても、なおかつそれが修理ができないで、あのような事故に発展した。しかも当局の方で考えられて——日本経済とは大げさでありますが、国鉄の現状からいたしまして、それに十分な施策をすることが予算上できなかつたということになりますと、この点に関しては不可抗力的要素を多分に持つておるものと考えるのであります。その不可抗力的な要素を多分に持つている事件が、しかも下級管理者である助役の中山氏が、裁判の途中において疲労のために脳溢血で死亡するというところまでそれを追究するということは、ちよつと過酷ではないかと思うのです。こういう人道的な問題については、別個に追究する方法はあろうと思いますけれども、しかし国鉄総裁としてこの問題に対して、どのような裁判上の助言を与えられておるか。今の日本の警察、裁判にいたしましても、私は陸上交通に関してはある程度の知識を持つておると思うのでありますが、そうして私も事故に直面してずいぶん過酷な取調べを受けております。これは実際には予備知識も何も持つていないまつたくのしろうとなんでありますから、知らぬものだから、とにかく責めて白状させるというようなことを昔はやつておつた。今はそういうことは基本的人権が許しませんから、そういう過酷なことはしないだろうと思います。しかしわからないものでありますから、とにかくその人間に自分の意思の方向に白状させて、罪をおつかぶせるという事態も往々にして起るわけです。民間企業におきましては、これらに対しては相当会社当局としても助言的な態度に出て従業員をかばつておるわけですが、国鉄総裁として、従業員がそのような不合理な法の適用を受けようとするのに、何ら裁判所に対しても、それは司法権の問題であるからわれわれとしては関知する問題じやないというような態度で放任されておるのかどうか。私はこれは重要な基本的な人権問題にも発展すると思いますので、ひとつ総裁としてとられた措置について御答弁をいただきたいと思います。
  68. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私今日の検察当局のいろいろな批判あるいは裁判官の批判はいたしませんが、私の経験から申しますと、過去と違いまして最近は機関車に乗つてみたり、いろいろな鉄道の業務について理解しようという機運は非常に濃厚になつております。それで全然のしろうとではございません、その上に私どもの方にいろいろ意見を聞いて参ります。またこちらから積極的に、ただいまの日暮里のお話については、鉄道当局から検察庁の検事に意見を開陳しております。そういうことはいたしております。
  69. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 その意見書なるものを私は見たことがありませんからわかりませんが、具体的には言えないとしても、一体どのような範囲の意見書を出されておるのか、さしつかえなければひとつあらましをお知らせいただきたいと思います。
  70. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 大体結論から申しますと、この事故というものは不可抗力であつたという意見書を出しております。
  71. 川島金次

    川島(金)委員 時間がありませんから、もう一、二点で終りたいと思いますので御了承願います。今山口委員からちよつと触れられましたが、総裁はまだ御存じかどうか知りませんが、今山口委員が申されました通り、日暮里事件の方の当面の助役でありました中山鹿之助、この方は事件以来再三尋問を受け審理を受け、そうしてしまいには若干神経衰弱的な症状が見えたというので、同僚は雄近まで非常に心配しておつた、ところがその結果、直接間接は別といたしましても、つい最近のことでありますが、何か構内で突然に子供が自分の帽子を風に吹かれ飛ばした、その子供がその帽子をとりに線路上に飛びおりた、そのために電車が急停車したというような事件もあつたのであります。そのときにこの事態を目撃したのがたまたま中山助役である。そしていわばもうすでに日暮里事件で一ぱいの頭になつている助役でございますから、たちまちにして飛びおりてそれを救い出した、そうしてその事柄の報告をするために受話器を牛にいたしまして、二言、二言言つているうちに急に脳溢血を起して倒れてしまつた。そうしてその助役室で約二週間にわたつて絶対安静を要するということで、そのまま寝ておる、最近では自宅へ帰りまして自宅で療養をしておるが、まだ、まことにお気の毒ではあるけれども、最も親しい友人が見舞に参りましても、その友人の顔を正確に判断をすることができないというような重体なのであります。脳溢血が起きるべきときに起きたと言えばそれまででありますが、助役は事件以来非常に懊悩をきわめた。しかも子供の帽子の問題を目の前にいたしまして、日暮里事件もあることでありますので、意外なるシヨックを助役は受けたらしい。その事柄から遂に受話器を耳に当てて、その事件の報告をしようとして途中で倒れてしまつたという事件があるわけであります。そういうふうに末端の人に責任が集中されて来て、その集中されて来た者がいかに心を砕き、悩み続けて来たかということは、こうしたことがあつてもなくても想像にかたくないのでありますが、いわんや中山助役におきましてはそういう事態にまで立ち至つて、まことにお気の毒な状態であるのであります。そういうことをいろいろ申し上げても切りがないことでありますが、今山口君からお話がありましたように、こういう問題につきましては総裁が今言われた通りに、まつたく本人の過失ではなくして、むしろ不可抗力というこの条件が非常に強いということもがえんじられておるのであります。ですから今後こうした事件につきましては、事件の内容にもよりますけれども、たとえば今申し上げた日暮里事件に類したような、まつたく不可抗力に近い事件の責件を追究される場合には、徹底的に総裁が親心をもつて、その責任を追究されている職員をかばつてやる、そしてできるだけ刑も軽くし、できればその罪を免れるように絶対の愛情を持つた親心で一切の全力をあげてかばつていただく。またあらゆる手段を講じてあげるという、この心構えを一層固めていただきたいと思うのであります。同時に先ほど運輸大臣に申し上げましたように、これを機会にいたしまして、突然のようでありますが、何か国鉄の内部における裁判制度というか、審判制度というものができるならば、法律上、憲法上可能であるならば、この際大臣ともそれに御相談願いまして、そういつた問題を再検討されて、できればそういつた問題もひとつ進めて行くということを御配慮願うことがしかるべきことではないか、かように思いますので、そのことを私は最後に強く希望なり、意見を述べまして、この問題に対する質疑を終りたいと思うのであります。
  72. 關内正一

    ○關内委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時五千七分散会