○
植田政府委員 国有
鉄道並びに
地方鉄
軌道についての税制の
現状並びにこれにつきましての
考え方につきまして御
説明申し上げます。国有
鉄道の税の負担はどういうふうにな
つておるかということにつきましての
現状をまず申し上げますが、
日本国有鉄道法によりまして、
日本国有鉄道には、所得税及び法人税を課さない、また
地方公共団体は
地方税を課さないというのが原則でありますが、特別に例外といたしまして
地方税を課しております。しかもこれは最近におきましては、昨年の六月
地方税法の
改正によりまして、直接
営業用に使わない自動車、自転車、荷車に対してそれぞれ自動車税、自転車税、荷車税が附加されたのであります。かような状態で現在
国鉄が課税されておるものはどういう状態かと申しますと、この第四項のイ、ロにございますように、道府県税、市町村税にと
つてみますと、道府県税におきましては附加価値税、鉱百区税、
事業税を除きまして、その他の税は全部課税にな
つております。入場税、遊興飲食税、自動車税、道府県法定外普通税は課税されておるのであります。また市町村税は
固定資産税、市町村民税を除きまして、これも自転車税、荷車税、電気ガス税、鉱産税、木材引取税、入場税、市町村法定外普通税は、全部課税にな
つておるわけであります。以上の
地方税の額は
昭和二十七年度におきまして、総額におきまして約一億四千万円とな
つておるわけであります。
それで
日本国有鉄道に対する
地方の賦課ということがよく問題になるのでありますが、特に
固定資産税につきまして問題になるのでございますが、別紙の「
日本国有鉄道に対する
地方税賦課について」ということで、
意見を申し述べておりますように、国有
鉄道に対する
地方税の課税は妥当でないと
考えておるのでございます。すなわち
日本国有鉄道は、全額
政府出資の公共企業体としての性格から、国と同等の取扱いであ
つてしかるべきではないかと
考えられるのであります。また
国鉄の事業の運営の面から見ましても、私企業的の立場を越えまして、公共的立場からいろいろの事業をや
つておるのでありまして、先ほ
ども総裁から話がありましたように、路線別に見ますと、
採算のとれない線が過半数であるという状態であります。またいろいろの定期券の高度の割引であるとか、あるいはまた運賃の割引等によりまして、いろいろと
地方の経済圏に寄与しておるところであります。さらに全国的の見地から、交通網を確立するという見地に立
つておるのでありまして、
国鉄に対する
地方税の課税は妥当ではないと
考えておる次第でございます。また
国鉄の現在の財政状態等から見ましても、
固定資産税をこれに賦課するといたしますと、
相当大きな額に上るのであります。とうてい今日の
国鉄はこのままで負担することは至難な状態でございます。こういうようないろいろの見地におきまして、国民の負託にこたえて実施しなければならないいろいろの要請が一方において控えております今日におきまして、とうてい
固定資産税その他
地方税の負担に耐え得ることはできないであろう。かような観点から
地方税の課税の
対象とすることは妥当でないと
考えておる次第でございます。何とぞこの点につきまして十分御検討をお願いしたいと思います。
なお
国鉄について、これは
地方税ではございませんが、いわゆる通行税が現在課せられておるわけであります。この点通行税の問題については、かねて通行税の
廃止ということにつきまして、
政府部内においてもいろいろと折衝を重ねて参つたのでありますが、今日の国の財政の
現状から見まして、通行税の
廃止については、
意見がまとま
つておらない状況でございます。しかしながら通行税の性質から見まして、これはむしろ存続する必要がないのではないかと
考えられるのであります。通行税の
廃止ということにつきましても、ひとつ十分御配慮をお願いしたいと思
つておるのであります。今日御承知の通り
国鉄の運賃は、二等は三等の倍にな
つておりますが、実は二等の倍額の運賃の中に通行税が含まれておるわけであります。
従つて国鉄の実際の収入といたしますと、二等の運賃収入は三等の倍額ではないわけであります。二等の倍から二割が通行税として差引かれるわけであります。それだけ引きましたものが
国鉄の収入にな
つておるわけであります。この点通行税の
廃止ということに、今後とも
政府部内におきましてもいろいろ話合いをして参りたいと思
つておりますので、どうかよろしくお願い申し上げる次第であります。
次に、私鉄の
関係でございますが、これは
地方鉄、
軌道業諸税額表という資料が配付してありますので、それをごらん願いたいと思います。まず国税でありますが、国税のおもなものは法人税でございまして、
昭和二十六年度の決算における法人税の負担額は十億二千六百万円余とな
つております。これは御承知の通り増資あるいは
金融機関からの融資等、
資金調達の
関係上、ある
程度の配当を必要とする
ためでありまして、法人税率四二%というのは、この私鉄におきましては
相当重い税率でありまして、かなり大きな負担にな
つております。次に
地方税でありますが、
地方税の
現状は、実は二十四年、二十五年、二十六年と比較していただきますと明瞭であるのでありますが、
昭和二十五年の七月に
地方税法の
改正がございまして、それ以来私鉄の税負担は著しく増加して参
つております。すなわち
改正前の
事業税の課税標準は、
一般産業と同様に所得額が課税標準であり、また
鉄道用地、
軌道用地等土地は免税であつたのであります。ただ電柱あるいは
軌道、家屋に対してのみ、軽い課税が行われておつたのであります。それが
改正後は
事業税につきましては、電気事業、ガス事業と同じように収入課税、すなわち外形標準課税と
なつたのであります。この結果私鉄の収益力は減り、また赤字の私鉄におきましても、収入総額に対しまして課税されるということになりまして、税負担が非常に重くな
つて参
つておるのであります。
昭和二十四年度の
事業税と
昭和二十六年度の
事業税とを比較いたしますと、約二・三七倍という増加を見ておるのであります。また
固定資産税につきましては、先ほど申しました
鉄道用地等につきましては、全然無課税であつたのでありますが、この
鉄道用地あるいは家屋、土功、隧道、橋梁、車両、その他一切の有形償却資産に課税されることになりました結果、著しい増加を示しております。
改正前の
昭和二十四年度には
固定資産税というものはございませんでしたが、電柱、
軌道、家屋等ごくわずかに課税されておりました
固定資産税に
相当する税額に比較いたしますると、実に四・八倍というふうに税金が多くな
つておるのであります。その他住民税、電気ガス税等を加えますると、
昭和二十六年度中の
地方税の負担額は十五億六千七百万円余にな
つておるのでございまして、
昭和二十四年度、税法
改正前の
地方税の総額に比べますと、約二七倍ということにな
つております。かような状況で、私鉄は概して収益率が低いのでありますが、また一面におきましては厖大な固定資産を有しておる企業でございますので、こういう私鉄事業におきましてはその対策といたしまして、
事業税は従前通り所得課税ということにぜひしていただきたい。また
固定資産税につきましては、
鉄道用地及び
鉄道のいろいろな構築物は、課税の
対象から除外していただきたい、かように
考えておる次第でございます。非常に簡単でございますが、
現状並びに
意見を申し述べた次第であります。