○植田
政府委員
鉄道監督局関係の
所管事項につきまして御
説明申し上げます。「鉄道
監督行政の
現状」というお配りしてあります冊子につきましてごらん願いたいのであります。
組織の概要につきましては省略いたしますが、要約いたしますと、
日本国有鉄道、地方鉄道、軌道並びに鉄道車両工業に対します
監督及びその行政が、この
鉄道監督局の
所管事項の中心をなしておる次第でございます。これらのうち特に重要と思われます点につきまして御
説明申し上げます。
まず国鉄につきまして申し上げますと、現在の
日本国有鉄道は、
昭和二十四年の六月に
公共企業体といたしまして発足いたしたのでありますが、今日まで過去四年間の経験に徴しまして、またさらに最近できました同種企業体等と比較いたしまして、もつと強く企業の自主性を認めた方が、
公共企業体として一層その成果を発揮することができるように考えられます。特に財政経理の面におきましては、そういう点検討すべきところがかなりある、かように存じまして、
日本国有鉄道法の改正につきましていろいろ検討をいたしてお
つたのであります。いずれこの改正法案を提出いたしまして皆様の御審議を煩わしたい、かように存じております。
次に国鉄の輸送状況でございますが、二十八ページにございますように、国鉄の輸送量は
戦前に比べまして相当ふえております。二十七年度は鉄道の旅客輸送人員が三十四億二千七百万人、貨物が一億五千二百万トンでありまして、
戦前の
昭和十一年に比べますと、旅客は約三、一倍、貨物は約二四倍という
数字を示しておるのであります。ただこれに対します
施設及び車両でございますが、直接戦争によります被害の復旧はおおむね完了したということが言い得ろのでありますか、戦争中あるいは戦後の混乱期におきまして、財源の不足あるいはまた資材の不足等のために、また一方におきまして非常に酷使いたしました結果、荒廃いたしたものに対する
整備あるいは修繕の状態は、今日まで相当
努力いたしたのでありますが、まだ不十分と申すほか左いのであります。これらの取替不足のもののうちで、緊急に取替を要するもの、これは国鉄の計算によりますと千八百億くらいに達する、こういうふうな状況でございます。今後これらの
整備につきましては、
財源等につきまして極力
努力を重ねて参りたい、かように存じて、おります。
次に国鉄の当面いたしております事業
計画のうち、おもなものについて申し上げますと、三十二ページ以後にございます国鉄の新線建設でございますが、わが国の
産業資源の開発、あるいはまた輸送系絡上、新線の建設ということは必要でございまして、
一般社会、国民のこれに対する要望もまた非常に強いものがあるのであります。
政府といたしましても、そのために
運輸大臣の諮問
機関といたしまして、一昨年五月新たに鉄道建設審議会を設けたころの基本的な事柄につきましては、鉄道建設審議会の意見を徴しまして、処置いたしておる次第でございます。実際の状態はどうかと申しますると、昨年度におきましては、当初
予算二十億の
予算をもちまして、また年度の補正
予算で五億追加になりまして、結局二一五億の
予算をもちまして、合計二十四線に昨年着手いたしました。本年は引続きこれらの線の継続工事をいたしておるのでありますが、二十八千しの
予算といたしましては、九十億を計上いたしまして、これらの継続を中心といたしまして、新線建設を実施いたしておる次第でございます。なお新線建設につきましては、鉄道敷設法の
予定線といたしまして、掲げてありますところのこの
予定線の追加に対する要望も、一面におきまして切なるものがございます。この点につきましても、鉄道建設審議会におきまして、慎重御審議の結果答申がございましたので、特に十三線につきまして、その
予定線に追加するということを織込みまして、鉄道敷設法の改正法案を近く提出いたす
予定にいたしております。いずれ皆様の御審議を煩わしたい、かように存じておる次第でございます。
次に国鉄の電化でございますが、電化は輸送力の増強、経営の合理化上特に必要と存じておるところでございまして、さしあたり月下工事中の東海道本線、浜松、姫路間のうち、名古屋までは本年の八月、また貨物につきましては稲沢までは十一月に
営業を開始いたす
予定でございます。さらに将来は
予算の事情の許す限り、東北本線あるいは常磐線の電化工事を極力推進いたして参りたい、かように存じておる次第でございます。本年度は先ほ
ども申しました東海道本線あるいは山手貨物線その他の必要な電化工事の
予算といたしまして、約七十八億円の
予算を計上いたしておる次第でございます。なお電化のほか、ディーゼル化等につきましても、
予算事情の許します限り、その
計画実施を進めて参
つておる次第でございます。
次に地方鉄道軌道事業、いわゆる民営鉄道の経営状況につきまして、ごく簡単に申し上げたいと存じます。三十七ページ以後にいろいろの
資料を掲げておりますが、現在わが国におきまして民営鉄道と称するもの、地方鉄道、軌道その他専用鉄道、索道事業等を合計いたしますと、約五百の事
業者がございまして、九千キロあまりの
営業キロを有しておる状況でございます。この経営状況を見ますると、今日まで動力費及び人件費等が増加の一途をたどりまして、これが打開策といたしまして、一面企業の合理化を推進いたしますとともに、数度にわたりまして運賃の改正をいたして参
つたのでありますが、その収支の
現状は、お
手元の
資料の四十三ページかにございますように、百六十一社中百五十社分について見ますると、これは四十四ページの一軸最初の行にございますが、固定資産に対する純益金の割合は六%ということに
なつております。しかもこれは比較的経営状態のいい大都市周辺の、いわゆる郊外電鉄をも含めての
数字でございますので、他の地方の小規模な
一般地方鉄軌道は、その
設備におきましても、また収支の面におきましても、非常に苦しいと申しまするか、憂うべき状態にあるものが少くないのであります。この状況はすでに二、三年前からほとんど変化しておりま
せんが、特に最近におきましては自動車の発達が著しいために、そういう鉄道がますます苦しい立場に追いやられておるのが実情でございます。こういう状態に対しまして、これら民営鉄道が地方における
産業の発達、民生の安定に重要な役割を持
つておるところの公益事業であります点を深く考えまして、私
どもといたしましても、こういう重要な意味を持つ路線につきましては、
施設の維持あるいは改良につきまして、極力
融資のお世話をしたり、そういう点について
努力をいたしておるのでありますが、さらにどうしてもこの収支の相償わない場合の何らかの助成の方法、あるいはまた資源の開発、
産業の振興上特に重要な鉄道の建設等について、何らか助成の必要をかねて痛感いたしておるのでありますが、現在におきまして、はなはだ遺憾ながら、これにつきましての何らの助成の方法もないというのが
現状でございます。この点につきまして非常に苦慮いたしておるような次第でございます。
前後いたしますが、
資料の二十六ページにもどりまして、鉄道車両工業につきまして一言申し上げたいと存じます。最近輸出品といたしまして鉄道車両が特に注目されて参
つておりますが、わが国の機械輸出品の中で、船舶、ミシンに次ぎまして第三位を占めておるのが鉄道車両でございます。この
資料にもございます
通り、特需をも合せますと、年間約三十五億円
程度の
実績を上げておる次第でございます。最近東南アジア、南米等の地方からこれに対する関心が非常に高まりまして、
日本の鉄道車両に対する引合いの数量も増して参りましたし、また実情
調査のため来朝される向きも増して参りまして、前途に明るい希望を寄せておるのでございます。ただ遺憾なことには、主要材料であります鋼材が、国際価格に比較いたしまして高信であるために、鉄道車両の価格に影響いたしまして、行悩みの原因と
なつておりますが、その点についても、打開のため何らかの処置を講ずる必要があろうかと考えておるのでございます。なお
一般的に企業合理化促進のために、
融資あつ
せん等の助長方策をあわせて、推進いたしまして、できるだけ鉄道車両工業の振興、特にこの輸出の振興につきまして
努力いたして参りたい、かように存じておる次第でございます。
以上はなはだ簡単でございましたが、
鉄道監督局の
所管事項につきまして御
説明申し上げました。
さらにお
手元にお配りいたしてあります
日本国有鉄道の
予算参考
資料につきまして、一応国鉄の
予算の概略につきまして御
説明を申し上げたいと存じます。
この第二表の
昭和二十八年度
資金計画につきまして、その全貌を御
説明申し上げます。損益勘定と出資令及び工事勘定とにわかれておりますが、損益勘定の運輸収入は約二千三百九十一億円でございまして、ここにございますように、二十七年度の
予算に比べまして二百十三億の増加でございます。この運輸収入を基本といたしまして、雑収入、
政府会計からの受入れ等を加えまして、合計二千四百三十一億、これが損益勘定におきますところの収入でございます。これに対する支出といたしましては、経営費が千九百八十八億、利子が六十八億、減価償却費四十九億、特別補充取替費二百七十六億、予備費が二十億、これに借入金の返還三十億を加えまして、支出の合計が二千四百三十一億でございます。このうち減価償却費の四十九億、特別補充取替費の二百七十六億、合計三百二十五億余りのものが、実質的な国鉄の
施設維持のために必要な減価償却の豊川といたしまして、これが工事勘定の方に繰入れられております。すなわち工事勘定の方の
資金といたしましては、
資金運用部からの借入れが百四十五億、鉄道債券が八十五億、不用
設備及び物品売却が一億、先ほど申し上げました損益勘定からの繰入れが三百二十五億、合計五百五十六代というのが工事勘定の収入でございます。この五百五十六億のうち九十億が、先ほど御
説明申し上げました建設費、四百六十五億が電化等を含めました改良費、それから九千六百万円、これは出資ということに
なつておりますが、これは
東京の帝都高速度
交通営団の池袋、お茶の水駅間の新線に対する国鉄負担の出資分でございます。以上が国鉄の
予算の概要でございまして、これを款項別に歳入歳出
予算として表示いたしましたものが第一表であります。また損益勘定の
経費の内訳を示しましたものが第三表でございます。
第三表につきまして若干補足いたしますと、人件費の
関係におきましては、昨年度認められました一万三千四百円ベースを基礎として人件費を組んでございます。これに期末手当あるいは奨励手当、休職者の給与等を加えまして八百二億というのが、損益勘定におきます給与総額であります。物件費といたしましては、昨年度補正
予算において認められました電力値上りのほか、輸送量の増加に対処するための増額等を織り込みまして、経営費総額千九百八十八億円ということに
なつている次第でございます。
なお第四表は工事
経費の内訳でございます。これも先ほど来簡単でございましたが、御
説明申し上げた
通りでございます。
第五表は二十八年度
予算人員表で、以上のいろいろの
計画を実施するために要する職員数は、四十四万七千二百四十九人でございます。勘定別にこの表ができておりますが、合計はそういう
数字でございます。前年度に比べまして三百三十人の増加ということに
なつておりますが、これは本年度におきまして、新線開業に伴い必要な人員を加えたものであります。
以上はなはだ簡単でございますが、国鉄
予算の概要を御
説明申し上げた次第でございます。