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1953-02-13 第15回国会 参議院 労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十三日(金曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   委員異動 一月三十日委員山内卓郎君辞任につ き、その補欠として川上嘉市君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉田 法晴君    理事            安井  謙君            波多野林一君            村尾 重雄君    委員            野田 卯一君            重盛 壽治君            片岡 文重君            一松 定吉君   政府委員    労働省労政局長 齋藤 邦吉君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○派遣議員報告労働情勢一般に関する調査の件  (電気事業及び石炭鉱業における争  議行為方法規制に関する法律案  要綱に関する件)   —————————————
  2. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは労働委員会を開会いたします。  今月の五日、六日と鬼怒川珪肺病院視察を兼ねて珪肺調査に参りましたが、その報告概要専門員をして報告いたさせます。
  3. 磯部巖

    専門員磯部巖君) それでは命によりまして私から珪肺病院視察につきまして簡単に御報告申上げます。  去る二月五日に出発いたしまして、派遣議員吉田委員長村尾委員重盛委員堀委員、四人のかた、それに磯部専門員のほか数名のものが随行いたしまして、鬼怒川にあります珪肺のための労働省労災病院視察したわけでございます。御承知通りに、先般来金属鉱山において、多数発生いたしておりまする珪肺患者に対する法律上並びに国家の取扱が不十分であるから一日も早く完全なる珪肺法制定してもらいたいという請願並びに陳情が毎国会のたびに相当数出ておりますし、相当問題化いたしております。なお衆議院におきましても、すでに珪肺法制定に関する小委員会ができておりまして、このほうにおかれても、相当調査を進めておられることも御承知通りでございます。従いましてそういう趣旨におきまして、この際参議院労働委員会委員皆さん視察されることになつたわけでございまするが、幸いに当日は労災病院におきましても、大西院長から詳細な説明があり、又入院患者代表からも偽らざる要望の数々が申述べられ、又同行いたされました労働省労働衛生課長からも、専門的な立場からのお話がございました。又丁度機を同じくして金属鉱山関係労働組合代表者、又使用者団体代表者というような皆さんがたもお集まりになりましたので、それぞれの立場からの御発言がございまして、いわゆる珪肺問題に関する問題は出尽したような気がするのでございます。それでそのいろいろな御意見はすべて詳細にこれを写しまして持つてつておるのでございますが、これは追つて次回の委員会に正式の報告書といたしまして委員さんのほうから御報告を頂くことにいたしたいと思いますが、その要点だけを今私から御参考までに御報告したいと思います。  御承知通りにこの珪肺病というのは非常になおりにくい病気でございまして、又発見がなかなか困難なんでございますが、そのための患者希望といたしましては、現在の療養期間が三年に限定されておるのでありまするが、これはどうしても珪肺病の特性から行きましても、少くとも五年程度までは延長してもらいたい。それからなお入院中の生活費を補償する意味において只今休業補償費、それから打切られたあと打切補償費等をもらつておるのでありまするが、これらが十分ではない。だからこれを増額すると同時に、スライド制を適用してもらいたい。それから先ほど申上げましたように、この珪肺病であるということを巡回検診によつて確認せられましてから療養に入りまするのにどうしても事務的に半年乃至一年という長い期間がかかる、これをもつと早くできるようにしてもらいたい。それからなお入院中におきましても現在食費が極めて少い。一日百五円で賄つているので非常にそのために食事が十分でないからもつとこれを増額してもらいたい。それからなお娯楽設備が非常に不十分であるので長くここに続けておりにくいというようなことを申しておつたわけでございます。政府におかれましてはこれらに対しまして本年度においては予算の上において三割五分ばかりの増額に成功されておるという話でございます。従いまして巡回検診を従来も盛んにやつておられましたが、今後もこれを一層拡充する。今までは金属鉱山重点を置いておられましたのを今後はむしろそれ以外の工場等にも巡回されるようにしたい、こういうことでございました。それからこの発病防止対策といたしましては発塵防止、つまり成るべくこの珪肺粉塵が少くなるようにいろいろ鑿岩機湿式にしたり、袋のついた鑿岩機を使用したり、そういうふうな発塵防止、それから防塵マスクを更に徹底して使わせる。更に巡回検診によつて珪肺病早期患者を発見いたしましたらこれを職場転換によつて発病をさせないようにするということについても更に積極的に行なつて行きたいと、こういうふうに言つておられるわけでございます。  それから経営者のほうの意見といたしましては、勿論この珪肺対策としていろいろそういうふうに問題になつておりまするような施設を講ずることは勿論賛成であるが、何しろ企業にはいろいろな格差がありまするので一律にこれを行うことは困難である。それから又珪肺患者でも極く軽い者は現存健康保険で見ておりませんけれども、これを健康保険で見ることができるようにしたいというような意見でございまして、この珪肺法制定につきましてはこれは急激に理想的な法律を作ることについては必ずしも同意するという立場ではないように聞きました、  それから労働者の側からの意見としましては、先ほどお話いたしました湿式鑿岩機粉塵の殆んどすべてを抑えてしまいますので非常に有効であると思うけれども、実際これを使います上においては非常に重いので、運搬が容易でない。それから防塵マスクは現在九〇%の粉塵を防ぎますので非常に有効ではありますが、何しろ呼吸が困難でありますので長時間これを使うことは困難である、従つて九〇%濾過するものを一時間使うよりも五〇%濾過するものを五時間使つたほうが有効じやないかという意見も出ておつたのであります。それで中小企業等ではこの珪肺対策はなかなか費用の面ですることは困難でありまするが、そういう点につきましては早く立法をして年間十億円ぐらいの金があれば大体自分らの要望通りのことがしてもらえると思うから、そういうふうなお取扱に是非ともしてもらいたい。  それからなお職業病研究所の設置を労働省にたびたび陳情しておりますが、いつも却下されておる。こういうような研究機関は早急に必要であると思うから是非ともその方面を促進して頂きたい。又その前に、珪肺症というものは特殊な病気でありますので普通の医者ではなかなか診断が困難であるから医者講習会をもつと開いてもらいたいというような希望がございまして珪肺法早期制定について最も熱心な要望があつたわけでございます。  最後珪肺病に関する日本での最大のオーソリテイーと言われております院長大西博士から珪肺法制定につきましては是非これらの点をお考え願いたいと言われたことは、先ず週期範囲職種別業種別双方から考えてもらいたい、漏れなく患者に法を適用できるようにしてもらいたい。それから第二に珪肺の定義を明確に規定してもらいたい。それから次に予防は、防塵、つまり粉塵を防ぐという方面重点を置くべきである。それからその次に技能者養成目的を以て未成年者鉱山坑内夫に使うことができるように前国会労働基準法改正になつたのでございますが、その場合に少くともツベルクリン反応が陰性であるものは使用しないようにしてもらいたいということを特に強調しておられました。  その次に例の休業補償費でございますが、自宅療養しておるものと入院して療養しておるものとは生活の状態が違いますので、いわゆる医療施設を利用しておるもの、即ち入院者には休業補償費を割増をするようにやつてもらいたい、それでないと折角入院しておりましても自宅生活が心配で尻が落着かなくて十分に療養ができないというような実際上の経験から申されておつたわけであります。  それから珪肺患者であり、且つ結核患者である、いわゆる合併症のものが病院において療養を拒否される事実がしばしばあるようでございますから、そういうことのないように結核予防法の適用を排除してもらいたい。それから診断につきましても二診制にしてもらいたい。それから珪肺患者につきましては、結核予防法規定がありまするように強制入院の途も開いておいてもらいたい。  それから最後法律の問題ではございませんが、病院一同で隅なく視察したわけでございますが、いろいろ不備な点が多いのでございます。例えば患者が全国から集まつて来ておるのでありますが、その慰問のために、又面会のために家族その他のものが参りましてもゆつくり泊つて話をする所がない。幸いにあそこは温泉も湧いておる所でございますから、少しばかりの経費で済むことだから病院の一隅に温泉保養所を作つてもらいたい。これは非常に必要な施設である。  次に治療上の設備が不十分でありますので、可搬的レントゲンの備え付けであるとか、或いはレントゲン深部治療機であるとか、そういうような設備を早く備え付けてもらいたい。それから研究施設が極めて不十分でありますので、この珪肺病の本体を早く把握するために、この研究施設をもつと充実してもらいたい。その他暖房であるとか、水道であるとか、いろいろな点についての要望があつたわけでありますが、それらについての陳情があつて大西院長の話が終つたわけでございます。大体大ざつぱに申上げまして、以上のような内容を以てこの派遣の仕事を終つたわけでございまするが、一同会議をいたされまして、この珪肺病の悲惨であること、並びにこれは一日も放置して置くことができないということは十分認識せられまして、一日も早く完全な珪肺法単行法制定が必要であるということ、並びにその制定と共に珪肺病院充実であるとか、研究機関充実であるとか、それからいろいろ予算面においても、できる限りの充実をいたしまして、不幸なる患者が安んじて療養できるようにしなければならないこと、又予防施設を更に一層徹底普及いたしまして、今後発生する患者を絶滅するようにするというような、いろいろな方面に対して今後参議院委員会として一つ急速に努力をして行きたいというような意見に大体一致せられた次第でございます。  以上簡単ながら御報告申上げます。
  4. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 速記をとめて。    午前十一時三分速記中止    ——————————    午前十一時二十四分速記開始
  5. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは速記を始めて下さい。  鬼怒川珪肺病院視察の経過につきましては、只今磯部専門員から概要報告を聴取いたしましたが、珪肺対策として珪肺特別法制定等今後の運営につきましては、近日中に改めて御協議願うことといたしたいと思います。   —————————————
  6. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは次に今期国会において提出を予定されている電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案要綱について齋藤労政局長から説明を聴取いたしたいと存じます。それでは労政
  7. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 私、先般の異動職業安定局長から労政局長に変りましたものでございますが、甚だ未熟なものでございますのでよろしくお願いいたします。  私から只今委員長からお話がありました法律案要綱について簡単に御説明申上げたいと思います。  先般総理施政方針演説の中におきまして、昨冬の電産、炭労争議経験に鑑みまして公共的性質を有する産業における争議行為について適当な規制を加える法律案提出いたしたい、こう総理が申述べておりますが、その総理施政方針演説に基ずきまして、その総事務的にこの法案の内容を検討いたしておるわけであります。お手許にお配りいたしております要綱は、政府としての最終的な法律案要綱ではございませんで、政府法律案提出する前に一応国民の世論の動向を聞きまして、それに基いて法律案を固めたいといつたふうな意味公聴会を開きたいと考えておりますので、一応公聴会にかける一つの原案ということでございまして、今期国会提出いたしまする法律案としての要綱ではないことをあらかじめ御了承頂きたいと思うのであります。お手許にお配りいたしております公聴会にかける要綱でございますが、これを御説明申上げますと、第一の問題は、この法律案要綱目的規定いたしたものであります。則ちこの要綱目的とするところのものは、先ず第一に電気事業及び石炭鉱業についてのみ争議行為方法についての一つ制限を加えようということが第一点でございます。即ち昨年の冬行われました電産、炭労の両ストライキというものは、幸いにして最後段階において円満に解決されたのでありますけれども、その間における国民経済国民生活に与えました脅威損害というものは、実に莫大なものがあつたと考えております。その昨冬の苦い経験に鑑みまして、この種ストライキ影響最小限度にするため争議行為方法について何らかの制限を加えよう、こういう趣旨でございます。而も制限を加えまする観点は、飽くまでも公共福祉擁護という観点に立つものでございます。即ち労働関係調整ということは、一片の法律によつて制限せらるべきものではむしろないのでありまして、労使双方の良識によつて解決せらるべきものだと、かように考えております。そうして又そういう労使関係調整に関する法律につきましては、昨年の国会におきまして、緊急調整を含む諸般の労働法規改正がいたされましたので、一応労働関係に関する調整に関する法律そのものとして、将来更に又経験を積んで、必要があれば考えることとすればいいのじやなかろうか、従いまして今回の改正におきましては、一般労使関係調整という観点においてものを見るのではなくして公共福祉擁護という観点から、何らかの争議行為手段について必要な制限を加えよう、こういうことでございます。従いましてこの法律案要綱なるものは労働組合法或いは労働関係調整法の一部改正法律案として出すものではないのでありまして、公共福祉という観点からの単独立法を考えておる次第でございます。或る意味から申しますと、純粋の労働関係調整を図るという労働法規ではないのでありまして、国民的な立場に立つ一つ単独立法だということが先ず第一の内容でございます。即ち電気産業石炭産業だけに限定いたしましたのは、昨年の経験に基くのでありまして私どもといたしまして考えまするならば、そのほかにもいろいろ問題はあろうかと思いますけれども考え方としては頭の中で考えついて制限を加えようという意図では全然ないのでございます。即ち昨年の電産、炭労争議というものが国民生活に実に重大なる脅威損害を与えたという、そのことに基いてのみその制限最小限度にとめたい、こういう考え方でございます。第二、第二はこの目的に基きまして規制を加えようとする内容でございます。  即ち第二につきましては、電気事業争議行為方法についての一つの制約でございます。即ち電源スト停電スト給電指令所における職場放棄、この三つが第二の内容とするところのものでございます。即ち第二を読みますと、「電気事業事業主及び従事者は、争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を与える行為をしてはならないものとするごと。」即ち「停止する行為」でありますから、前段には電源ストそのほか一般停電ストというものが含まれます。更に又電気の正常なる供給に直接に障害を与える、この直接な障害というものの中に即ち給電指令所における従業員の一斉職場放棄による電気供給撹乱行為をその内容といたしておるのでございます。即ちこの第二の問題は、電気事業に従事する労働者について、争議権を全面的に剥奪するところのものではございません、単にその一部に過ぎないと私どもは考えております。即ちこうした争議行為は、私が申上げるまでもなく、事業主にとりましても、従事者につきましても、そう大した損害を与えるものではなく、むしろ第三者に与える影響のみが甚大なる争議行為であります。由来争議行為労使間の紛争解決手段として行うものであつてみるならば、労使双方が最も痛いところをお互いに突合つてやることが争議行為としては適当なものだと考えられるのでありますが、こうしたスト行為は、労使双方にはさほどの損失を与えることなく、第三者国民に甚大なる影響を瞬間にして与えるという性質を有するものであります。而も又電気の正常なる供給そのものに直接従事いたしておりまする従業者の数は、電気事業労働者十三万五、六千と承知しておりますが、そのうちの約二〇%のものでございます。即ち二〇%程度従業員が行う停電電源スト並びに給電指令所職場放棄、この三つを制約しようという考えでございます。即ち昨年の電産争議経験に鑑みまして、社会通念上こうした争議行為公共福祉という観点から違法なる争議であると宣言をしようというのが第二の狙いでございます。  第三は石炭鉱業におきまするいわゆる保安要員引揚の問題でございます。この第三の保安要員引揚の問題につきましては、鉱山における人に対する危害を与える虞れのあるような保安要員引揚は、現行労調法第三十六条におきまして私どもはこれを違法なる争建議行為と考えておるのでございます。更に又鉱山における資源滅失若しくは重大なる損壊又は重要なる施設荒廃を生ずるような保安業務の正常なる運営を阻害する行為というものは労働組合法第一条第二項の規定によりまして正当なる争議行為ではないと私どもは従来とも解釈をいたしておつたのであります。従つて昨年の炭労争議に当りましては、政府におきましてはかかる第三に規定しておりまするような保安要員引揚のごとき行為は、労働組合法第一条第二項並びに労調法第三十六条の規定により違法なる争議行為であると政府声明を出したのであります。にもかかわりませず炭労ストにおきましては、保安要員の一斉引揚指令を出したのであります。違法ではないという解釈だと思いますが、そういう解釈の下に保安要員引揚指令いたしたのでありますが、幸いにこの問題は最後段階におきまして緊急調整によりまして争議行為がとまりましたので、現実問題といたしましては保安要員引揚というものは起らなかつたのであります。併しながらその争議の最中におきまして実に長期に亘る争議あとに、而も保安要員の総引揚ということを指令いたしましたときに、国民といたしましては実に甚大なる脅威を感じたことは、私が申上げるまでもなかつたと思うのであります。その観点からいたしまして今回条文におきましては、いわゆる「資源滅失若しくは重大な損壊又は重要な施設荒廃を生ずるもの」、こういうものは労働組合法第一条第二項の正当なる労働行為でないと申しましても、正当という範囲が明確でございませんので、今回政府声明を裏付けまして明文化によつてこの事態を明らかにしよう、こういう考え方でございます。即ち第三の問題は、今日まででも政府におきましては違法なる争議行為として解釈をいたしておりましたものを現実に内容を明らかにいたしまして明文化しよう、これが第三の問題でございます。この保安要員は、大体これも全石炭鉱業に従事いたしておりまする労働者総数のうちの約二割、二〇%程度と言われております。即ち第二、第三とも直接このものによつて規制せられまする労働者の数としては、総数の約二〇%、こういうことになろうかと存じております。なおこの単独立法には罰則は附してございません。即ち第二によりまして停電ストは違法なる行為であるということになり、第三により保安要員の総引揚は違法なる行為であるということになりますれば、当然それは不正当なる行為でありまするから、第二の行為を行いまするときには、公共事業令にすでにこれと同じ趣旨規定がございましてそれには罰則規定せられております。更に又第三の問題につきましては、鉱山保安法罰則がそれぞれ規定せられておりまするので、第二、第三の規定によつて違法なる争議行為といたしまするならば、当然争議行為正当性を奪われまするので、公共事業令なり鉱山保安法なりによつて処罰を受ける、こういうことになりますので、この法律案要綱といたしましては罰則を附ける必要がない、かようなことで罰則は附けない、こういうことでございます。  大体只今申上げましたのがこの法律案要綱内容でございまして、明日から東京大阪福岡の三カ所におきまして労使公益消費者側おのおの五名、合計二十人の公述人にお集まり頂きまして公聴会を開き、そうして最後政府最後案をきめたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  以上公聴会にかけまする法律案要綱につきまして御説明を申上げた次第でございます。
  8. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 御質問ございませんか。……私からちよつと伺いますが、その公聴会東京大阪福岡だけですか。
  9. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 三芳所だけでございます。
  10. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) そうして二十名というのは、その各二十名……。
  11. 村尾重雄

    村尾重雄君 総計二十名でしよう。
  12. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 総数二十名でございまして、労使五名、公益が五角、それからこの法律は主として公共福祉という観点でございますので、一般国民消費者と申しますか、そうした方面消費代表と申しますか、一般国民の御意見五人、総計二十名、こういうふうに考えております。
  13. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) そうするとそれを三カ所でやるというと一カ所二乃至一人ですか。
  14. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 東京総数二十人、大阪でも二十人、その地方地方のかたがたにお集まり頂いてやつて行くということでございます。各地で二十名というわけでございます。
  15. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 北海道はどうしてやらんのですか。
  16. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 北海道で開くという考え方もありましたけれども、大体東京大阪福岡、三地方いたしますれば大体の傾向がわかるのではないだろうか、こういうことでもありましたし、更に又法律案を急いでという考え方もありますので、そういうことにいたしたわけでございます。
  17. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) なお公聴会終つてその後条文にして提案されるだろうと思うのですが、いつ頃になる見通しですか。
  18. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 公聴会東京大阪が明日十四日、福岡が十六日でございますので、福岡公聴会が済んだ結果が入りますのが来週の中頃になると思いますので、私どもといたしましてはその三つ公聴会の御意見等を尊重し、考慮いたしまして、来週末には何とか法律案を固めたい、二十日前後に法律案要綱を固めたい、そういうふうに考えております。
  19. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) そうすると提出は二十日過ぎということになりますか。
  20. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 大体二十日前後になろうかと考えております。
  21. 野田卯一

    野田卯一君 ちよつと質問しますが、今電気事業に対するストライキ制限は、両当事者のほうに対する損害は少い、それに対して第三者たる国民大衆の被害が非常に多い、そういうものをとつたということであります。それから第二点の石炭のほうについてはすでに現行労調法なり労働組合法によつて違反と認められる、又はそう認めると見解を発表したけれども、それをあえて労働組合のほうでその行為をしようとしたというような関係もあつてそれを明文化して行こう、こういう考え方ですが、その他の産業についてやはり同様の問題点が、同じような場合があるのじやないかと思われるのですが、その点は労働省の研究の結果はどうでありますか。
  22. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) よその同種の産業についてこれに当るような点というお尋ねでございますが、公益的な事業をこうずつと拾つてみますと、先ず第一に運輸の関係が問題になりますが、運輸は大半が国鉄でありまして、国鉄は御承知のように争議行為は禁止されておる、残りますのが私鉄だけになります。それから公共的な事業では電信、電話、これは一応公労法によりまして、電々公社におきましてそちらで争議行為がすでに全面的に禁止されておる。水道という問題になりますと、水道は地方公労法によりまして……、大体地方公共団体の系統でありますから、地方公労法によつて争議行為が全面的にこれも禁止せられております。それからその次はガスでございますが、ガスはこれは御承知の民間事業、従いまして公共的な、いわゆる労働組合法等によりまして公共的な事業と言われておりますもので、ちよつと問題になりますのが私鉄の問題とガスの問題、この二つに一応なろうかと考えております。  そこでこの法案を実は考えまするときにそういうふうに公共的な性質を有する事業全部という考え方もこれはたしかに一つ私はあると思います。あると思いますが、御承知のように私鉄等につきましては代替性のある事業でもありますし、電気のような独占的な非常に瞬間的な、生産、消費、瞬間的なものとも違いますし、それから国民経済全般に及ぼす影響ということを考えましても多少違うのではないだろうか、それから過去の実績等におきましても私鉄の争議と申しましても実は半日かまあちよつとのところで、大体ちよつと……長いのも関西等であつた承知いたしておりますが、まあ早く解決をいたしております。即ち国民生活国民経済に及ぼすそういうような影響から申しましても過去にも実績は  ございません。それからガス等におきましては今日まで全然そういうことはありません。従いましてこの法案を考えまするときに頭で考えて、これも危険だ、これも危険だとなりますと、これはわれわれ大変なことになりまして、労働省といたしましてはぎりぎり最小限度にしぼつて行くのが適当だと、こういう観点で実はこういうふうに電気石炭と二つだけに限定して参つたわけでございます。いろいろ考えて参りますと、鉄鋼の熔鉱炉の火を消すのがどうのこうのということになつて参りますと、結局なかなか例示をして参りますと大変な問題になるのでございまして、差当り問題となります電気石炭と二つに限定することが適当ではないかということでこういうふうにいたしたのであります。
  23. 野田卯一

    野田卯一君 公共事業といいますか、パブリツク・ユーテイリテイですね、それについてはよくわかりますが、その他の石炭に類似する産業について少し説明が足りないように思いますが……。
  24. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 実は石炭以外の問題としては一般鉱山の問題でございますが、鉱山保安法は御承知のように石炭、それから一般鉱山、それから石油、大体三種類に分けて鉱山保安に関する内容規定せられております。大体鉱山保安法では、基本的な法律でございまして、基本的な条項のみでありまして、保安業務の詳細な内容は省令に委ねられております。而も省令たるや今も申上げました三つの種類に実は分けて鉱山保安規則というものができております。そうしてそのおのおの三つに分けたということも、鉱山にも石油につきましても保安業務の必要であることは当然であり、それぞれ必要な規定が設けられておりますが、石炭山におけるほどやかましいものではない、性質上そういうことになろうかと思いますが、そういうことに言われておりますし、それから又現在石炭以外の山におきます保安要員の総引揚といつたふうなことの起つた例も承知もいたしておりませんし、まあ何と申しましても、石炭というものがこれらの鉱山事業全般において最も国民経済に重大なる影響を持つておるということを併せ考え、又特に石炭鉱業について保安という問題が非常にやかましく言われておるということ等を併せ考えまして、一応石炭鉱業だけを例示したわけでございます。石炭以外の鉱山業におきましても当然従来の労調法第三十六条或いは組合法第一条第二項の規定によりまして、こうしたことが起れば違法であることは当然でございますが、石炭についてだけ基幹産業中の最重要産業であるという観点から、そのものだけを引き抜いてこういうことにいたしたわけでございます。
  25. 野田卯一

    野田卯一君 それから電産ストですね、炭労ストが起つた後で非常な、一説によると二千億円の国民経済に対する損失が起つたというようなことを読売新聞が書いておりますが、そういうようなことのために輿論調査等をやつてどうしたらいいかということを国民に聞くようなことをするという態度を言論機関はとつておるのです。その中に強制仲裁制度をとれというのが非常に若い層、まあ二十歳代には強制仲裁制度をとれという意見が圧倒的だということですが、そういうような問題についてどういうふうに考えておられますか。
  26. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 私申上げるまでもなく、御承知のように強制仲裁制度を現在とつておりますのは、いわゆる国鉄、専売、そういつたふうな事業でございます。そういう事業は結局において国が或る程度何か面倒を見て最後はしてやらなければならん事業でございます。そこで電気なり或いはこういつたような公共的な事業において争議権を全部奪つて、現在の公労法と同じように全部争議権を取上げて、強制仲裁、こういう一つ考え方があるわけですが、そうなつて参りますと、どうしても、やはりその仲裁の結果、労働賃金が……、そこで賃金その他労働条件がきまる、そうなつたとき仲裁ということになりますと、常識的な話でありますけれども、調停よりも多少上廻つた一つのそこに線が出て来る、そうなつた場合、会社の経理ということになると、国が或る程度補償をしてやらなければならんのではないか、そういう問題になつて来る。やはり何らかの補償というものがなくしてただ強制仲裁というのではしつくり行かないのではないか。而も現在のところ国鉄その他の公労法関係の、いわゆる国の行う公益事業につきましても、強制仲裁をやつておりましても、仲裁通りにはなかなか現実の問題について思うように行つてない現状の際に、一般民間産業について強制仲裁、何らかの国の補償というものを必要とするような強制仲裁というのは、やはり相当考える余地があるのではないかという観点から、そこまで行くということはまだもうちよつと研究の余地があるのではないか、こういうことで実はそういう点は将来の問題として全然考えないで、要するに一つ第三者にだけ迷惑をかけるような行為だけを制限するということでありますれば、労使関係の均等性というものを奪う段階でもありませんので、仲裁制度はこの程度であるならば必要はないと、かように考えたわけでございます。
  27. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) よろしうございますか。
  28. 村尾重雄

    村尾重雄君 これははつきりしておきたいのですが、例えば労調法の改訂であるとか、鉱山保安法の改訂であるとかいうことではなく、単独法で出されるのですか。
  29. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 先ほど申上げましたように、この内容はいわゆる労使関係調整という問題ではなくして、勿論それに関係はあるのでありまするが、主たる狙いというものは、公共福祉という観点からでございますので、組合法の一部改正労調法の一部改正というのではなく、単独立法として考えております。
  30. 村尾重雄

    村尾重雄君 先ほどのお話のうちにガス事業については全然考えは持つておらないという御意見があつたのですが、その点もう一度私確かめたいのですが、公聴会意見を聞き、それを集めた上において要綱をまとめて二十日過ぎに出したいのだと、こうおつしやつているのですが、大阪公聴会ではガスの問題がかなり大きな線で出て参る。これは会社自体もそうでありますが、その事業者団体の、例えば商工会議関係、その他商工団体関係から、ガスをなぜ含めないのかという意見が出るのが多いのではないか、恐らく東京も出るのではないかと思うのですが、その点政府としてガスというものは全然考慮に入れてないということは明確にしてもらつていいですね。
  31. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) この公聴会原案を作ります際には、先ほど来申上げてありますように、昨冬の電産、炭労争議経験に鑑み、実績だけで一つのものを考えて行く、頭で浮んでガスはどうだ、何はどうだと、こう行きますとなかなか大変なことになります。そういうことは一切考えないし、それから又過去においても例もありませんでしたから、将来の政府原案が固まりますときはどうなるかわかりませんけれども、現在の段階では、要するに石炭電気、この二つだけということに考えております。
  32. 野田卯一

    野田卯一君 先ほどの電源スト禁止、それから給電指令所職場放棄の禁止という、その面接の対象になります労働者は全従業員の二〇%ということですが、その保安要員ですね、保安要員というものは一体炭鉱労働者の中の何%くらいになりますか。
  33. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 保安要員のほうもこういう条文でしぼつてあります。大体二〇%でございます。
  34. 野田卯一

    野田卯一君 それは坑内夫全体の……。
  35. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 全労働者のです。
  36. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ちよつと私からお尋ねいたしたいのですが、大体法の規定の仕方が、御説明になりましたように、労働関係法の調整ではなくして、停電スト或いは保安要員引揚が違法だと、こういう宣言の仕方、昨冬の電産、炭労ストに当つて政府の声明を発表されましたああいうのの法律化、こういう建前のようですが、そこで憲法二十八条を拾い上げるまでもありませんが、団結権或いは団体行動権というものが憲法上保障されておる。この憲法の解釈については或いは基本的な権利を二つに分けて、片方は奪うことのできない基本的な人権だ、他方は公共福祉との関連において云々という説明、或いは学説等もありますけれども、併し旧憲法に比べてこういう基本的な権利を保障するという建前をとつております以上、団結権或いは団体交渉権等もこれを保障され、そうしてこれが法律で以て随時奪い去られるということが許されないという建前だということは新憲法の精神だと思うのでありますが、これを法律で以てその一部にいたしましても、或いは電産の場合には大部分かと思うのでありますが、取上げるという法律の建て方が許されるかどうか、労働省としては二十八条、或いは労働組合法或いは労働関係調整法等に従来規定されておりますけれども、それをどんどん奪つて行くような法律の建て方をされるということは、労働省の建前からして問題だと思うのでありますが、こういう点についてはどういう工合に考えておられまするか、伺つておきたいと思います。
  37. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 労働省といたしましては只今委員長からお話のありましたように、団結権の保障の問題につきましては、私どもも団結権というもの、争議権というものはできるだけこれは保障して行くということは私は筋だと思います。その通りだと思います。ただ憲法第十二条には又一面公共福祉のために自由な権利というものを国民は行使しなければならん、行使する責任を負うという条文もありまして、いわゆる争議権というものと公共福祉調整をどこにとつて行くかということが私一つの問題だと思うわけでございます。即ち労調法第三十六条では石炭鉱業のこういう保安業務はすでに私どもは禁止されておると思つております。その考え方というものはいわゆる憲法第十二条の公共福祉という観点からすでに私は労調法第三十六条というものができておる、こういうふうに考えておるものでございます。即ち社会通念において公共福祉争議権調整を図つて行く、これが私はやはり一つ争議権の限界の問題じやないだろうか、従いまして私どもといたしましては憲法第十二条の規定なり、更に又只今委員長のお述べになりました憲法第二十八条のいわゆる争議権の問題でございますが、それにつきましては慎重に考えまして、飽くまで広くこれを持つて行くという考えは全然持つておりません。社会通念においていわゆる公共福祉というそのぎりぎりの限界だけということでございまして、この法律ができましたあと争議権を奪つて行くという考えはさらさら持つていないわけでございます。昨冬の電産、炭労争議の結果国民がいわゆる社会通念としてこういう停電スト第三者だけに迷惑をかける停電ストというものは仰遠慮願つて一つ労使双方が困るような、やるなら集金ストなり検針ストというようなものを労使双方でやつて頂きたい、これは社会通念としてそうなつているのじやないかと、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  38. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 重ねてお尋ねいたしますけれども、憲法十二条、十三条に公共福祉ということが謳われておりますことは私も承知をいたしております。併し公共福祉という概念、これが曾つて公益概念のように大きく憲法を引張つて行くと申しますか、これが今後の日本の指導理念として強く作用いたしますならば、曾つてのフアツシヨ法理が出て来ることはこれは申上げるまでもありませんが、従つて公共福祉という概念を余りに振り廻すということは危険があるということはこれはお認めになると思うのでありますが、そこで問題は今社会通念というお言葉がございましたが、公共福祉に合うか合わないかという問題はこれは社会通念の世論がきめて参りましようけれども、そこで世論の中にこういう議論がございます、例えばこの争議なら争議のやり方について双方これは良識に訴えてやつて参る、或いはどういうストライキをやるか争議をやるかということについてはそれぞれ考えられるでありましようが、法律を以てこれはいかん、或いはこれはいいと、こういう運営の仕方でなくて、実際の経験の中に、或いは公共福祉解釈にいたしましても、おのずから解釈せられるところに従つてつてつたらどうか、そこで例えば或る新聞の論調の中にも、これは論説であつたかと思うのでありますけれども、それじや電産、炭労ストライキから起つて来たその影響についてどれだけそれじや例えば政府なら政府として、或いは労働省なら労働省としても話をして来たか、こういうまあ何と申しますか批判等もございましたけれども、法文でこういう規定の仕方をするのがむしろ或いはこの経験の中におのずから秩序とそれから方向とを見出して行くという二つの方法があると思うのですが、国家権力を以て抑えつけて行く、或いは規定をして行くという行き方は私は民主主義的でないとこういうふうに考えるのです。その点についてはどういう工合にお考えになりますか。
  39. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 前段の公共福祉範囲を広くするかというお尋ねでございますが、私ども公共福祉という言葉の意味する内容を拡げようなどという意図は全然持つていないことを申上げておきたいと思います。後段の問題でございますが、お話のように労使関係の事項は私どものほうといたしましても法を以て抑制規律するというふうなことよりも、労使間の、労使双方の良識と健全な慣行の成熟に待つということが望ましいということは、私が申上げるまでもなくその通りだと思います。併しながら一面又政府といたしましては、労使の良識と健全なる慣行の成熟に待つといたしまして、それを待つておりましてもこれに籍口して徒らにただ手を拭いておるというわけにも私参らんのじやないだろうか、かように考えるわけでございます。即ち昨冬の電産、炭労というあの争議の体験によりまして緊急の問題だけの対策というものは私公共福祉のためにとる必要はあるのじやないか、併し飽くまでもそれは最小限に限定すべきではないか、かようなつもりでおります。労使間の事項は、労使間のことをば法で抑制規律するというよりは労使の良識によつて円満に解決されて行くということが望ましいことは、私どもその通りに見ておりますが、さればといつて、こうした問題が起つたことについて何らかやはり措置をとるということも一面必要ではないだろうか、さように私も考えておるわけであります。
  40. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 重ねて伺いますが、今のお言葉の中にもありました、実際の労使間の中に、この今後の労使関係を見出して行くということが基本的であるならば、言われますような今の保安なら保安、第三なら第三の点については保安要員引揚は実際に行われなかつた保安要員引揚が違法であるか合法であるかということは、これは争われましたが、やり方如何にもよるかと思うのであります。それを実際の経験とそれからその中に新らしき慣行を見出して行くというときに当つてやり方は強権的にと申しますか、或いは国のほうで、政府としてこれは違法である、或いはこれはこういう行為は禁止する、いわば今の御答弁とは逆な方向で出て来る、これは結果に相成るのじやないか。議論のありますところは議論のあるままに実際の運用に任せて、そうしてその経験の中におのずから新らしい慣行を見出して行くというのが労使関係でもあろうと思うのであります。それから労働関係なら労働関係にいたしましても憲法二十八條に保障せられました関係を民主主義的に生み出して行く方法ではないか、かように考えられますが、保安要員引揚問題にいたしましてもいろいろ議論もありましようし、それから御精神とは反するのではないかという解釈もありますが、重ねて一つお答え願います。
  41. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 石炭保安要員引揚の問題は、委員長お話になりましたように、実際は緊急調整等によりまして争議が解決されましたので行われなかつた。行われなかつたけれども、あのときにおきましては、御承知のように、国民生活に非常に影響を与えておつた、そのときに保安要員引揚というものがこれは違法だ、こういう政府声明をしたにもかかわらず、現実問題としては保安要員引揚という指令が出たことはこれは事実でございます。従いまして労使間の調整内容に、政府がこれに関与しようというのではないのでありまして、労使関係調整のやり方というものは現行労調法によつて行くべきものである、それが又政府が関与するということは望ましくないことは申上げるまでもなく、そういうことは労使の良識に待つべきものである、健全なる慣行ができることが望ましいのでありますが、保安要員引揚というものだけは、争議行為としてだけは公共福祉観点からやめて頂きたい。これが要綱の第三の狙いでありまして、私申上げました労使関係調整労使の良識によるということと、国民立場からこのものだけは一つ御遠慮願いたいということはこれは私そう矛盾したことではないと考えております。
  42. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それじやもう少し具体的に言いますが、保安要員引揚問題について、もう少し詳しい姿と事例を出してお尋ねをいたしたいのでありますが、あの炭労争議の際に通産省の鉱山局長から通牒が出ました。それは切羽を維持するために保安要員引揚げるということはないようにという指令で、そうすると切羽に働いております人間を引揚げることが保安要員引揚になるかならんかという問題にも関連して参りますが、私はそのとき質問書も出しておいたんですけれども、切羽に働いております採炭夫を引揚げるということは、これは保安要員引揚に、厳密に言うとなるんではないかとも考えられます。切羽に人間を出して働かせなければ切羽がこれは荒れて参ることは必然の事態でありますが、そこで切羽の人間を引揚げることも保安に関係するので、切羽の人間をできるだけ出してもらいたいという、こういうことになりまするならば、これは常磐等にも起りましたけれども、採炭夫なら採炭夫の争議行為を禁止するということに相成るかとも思います。それから例えば坑内のポンプの番をしております者或いは坑内を巡視しておる者があります。そういう者がその仕事を引揚げるとしても或る意味において保安に関連がございます。それを全部この法律で禁止し、違法であると宣言するのかどうか、こういうことになりますと、極めてむずかしい問題が起つて参ります。二〇%程度というお話でありましたが、二〇%程度というのがどの範囲まで考えられておるのか、その点も承わり、保安要員引揚問題というものをどういうふうに具体的に考えられておるのか承わりたいと思います。
  43. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 切羽の問題、それから巡視等具体的なお尋ねでございますが、私どもといたしましては第三の規定ができますならば、この鉱山保安法の、保安業務の正常な運営を阻害する行為であつて、人に対する危害とか、資源滅失、重大な損壊云々と、こういつたふうな内容については各山元において具体的にきまつて行くと思います。即ち労使間の団体協約等によつてきまることもありましようし、この条文従つてそういう内容が具体的に私はきまつて行くだろうと思います。それに又鉱山保安法では、鉱山保安の技術的な面を担当しておりまする責任者もあると承知いたしておりますので、そういう方面の指示等もおのずから私は山元できまつて行く問題だと、かように考えております。私今お尋ねのような問題につきまして具体的にそうお答え申すことはできませんけれども、私はその山元でやはりこの資源滅失なり、損壊なり、重要な施設荒廃というようなことについての責任の仕事というものは誰がやるかということは、私は鉱山保安法なりによつて規定もされておる事柄であり、労使間の約束等によりまして多少おのずからきまつて行くと、かように考えております。
  44. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 今の御答弁に関連してお尋ねをしますけれども、成るほど鉱山に保安管理者がおります。それから何と申しますか、諮問機関というよりも、協力をして参ります保安委員会というものがあります。労働者も入つて保安委員会を構成しておるわけでありますが、そうすると何が保安問題であるか、或いは何が保安要員引揚に該当するかという問題は、これは実際には今お話の管理者或いは保安委員会等で論議されることになりましよう。それを職場或いは鉱山自身につきまして、どういう工合に維持して行くか、或いはそれをどの程度にその中で争議行為をやつて行くかということは、実際にこの法律ができても、山元で論議せられるわけである。従つて私は基本的にそういう問題というのは、これは良識と申しますか、先ほど社会通念ということを局長が言われたのですが、そういう中に運営されて行くことが、そうして実際の経験の中に慣行、制度を打立てて行くことが民主主義じやないか、或いは法律から見まするならば、従来の何でもかんでも法律できめるということでなくて、英米法的な、或いは普通法を確立して行こうという建前は、私は民主主義的な法を作つて行くという建前からするならば、そういう方向だろうと思います。それに頭から保安要員引揚は違法だという建て方をすることは実際に問題も残ります。問題も残りますが、それは先ほど運用について一番末端のところを申上げましたが、これは非常に困難な問題だ、それよりも今までの法の建て方の体系から言いましても、経験の中に実定法を打立てて行くという法律をなぜやるのか、そういうことを今申上げておるのであります。もう少しその点について明快な御説明を願いたい。
  45. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 第三の事項の運用につきましては、私先ほど申上げましたように、山元で具体的にこの条文にありますような精神に基いて私は団体交渉なりそういう取極をなされるというふうに考えております。それが又適当なことだと思つておりますが、どうしてもそれが話がつかなければ、先ほど申上げましたように、鉱山保安に関する責任を持つている人もあることでございますので、その指示等によつておのずから私はきまつて行く問題だと思います。この規定を置きましたのはそういうこととは別に、要するにこの資源滅失とか、重大な損壊を来たし、重要な施設荒廃を生ずるようないわゆる保安業務の阻害行為ということがございましよう、国民生活国民の経済に非常に大きな脅威を与えるということ、この観点からのみできておるものでありまして、先ほどお話のように、昨年は成るほど保安要員引揚ということは現実にはなかつたけれども保安要員引揚という指令が出たことによつて国民が非常な脅威を感じたことは私事実だと思います。あれだけ長い争議をやり、争議が解決しても、山が潰れやせんだろうかといつたふうに国民が相当あの指令が出たことによつて非常な脅威を感じたと思います。そういう国民の体験に基いてそういう山の荒廃を来たすような保安要員引揚ということだけは一つ御遠慮願いたい。こういうことを規定しようというのでありまして、この内容のきめ方を民主的にきめて行くということと、この問題とは私は矛盾した問題ではないと、かように考えております。労使間のことはできるだけ良識によつて両方で自主的、民主的におきめ頂くということが望ましいということは申上げるまでもないことであります。ただ国民立場からこういうことだけは御遠慮願いたいということだけを立法化そう、こういうわけでございます。
  46. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) その辺はまだ議論はございますけれども、議論をしておるときじやないと思いますから遠慮いたしますが、なお第二の点で、先ほどはつきり聞き取れませんでしたけれども、例えば検針の云々といつたふうなお話もございましたが、これだけの争議を違法だとし、或いは禁止しようという意図として現われておりますが、私ども考えますと、ストライキをやれば、多少国民生活なり国民経済影響を何がしかの程度について与えることは当然だと思うのですが、残つております電産の争議行為というものが何が残りましようか、その点一つお教えを頂きたいと思います。
  47. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 私どうも余り詳細よくわかりませんが、言われておりますのは、いわゆる事務ストというものは全面的にこれは許されるのでありまして、いわゆるこういう停電ストだけを禁止するのでありましてよく言われておりますところによりますと、労使双方が非常に困るというのは、集金スト或いは検針ストというのがやはり労使双方とも非常に困るストの方式のように承わつております。なおそのほかにいろいろなまあ決算ストとか、調整事務スト、出納業務ストとか、挙げますといろいろあるようでありますが、集金スト、検針ストなどは、労使双方から言わせますと、相当両方に痛いストのように言われておるようでございます。
  48. 重盛壽治

    重盛壽治君 これは労働大臣に本来お聞きすべきことだと思いますが、私あとからお伺いしますが、今局長の説明を聞いておると、労働省は余りにも事務的に少し行過ぎておるのではなかろうかと考えております。その前に一つお聞きしたいことは、昨年の暮に起つた争議の実態に鑑みてこういう法律を新らしく作りたいと言われるが、その争議の実態は一体どこから起きて来たかということを先ず究明しなければならない。これは労働組合を育成助長して、労働組合の協力によつて日本の産業を発展せしめなければならん立場にある労働省考え方としては少しおかしいのではないか。従つて、例えば労働組合に対してこういう制約をして、保安要員引揚げないような要請を一応するとしても、然らばいわゆる経営者に対しては、同様な罰則を設けたのか、労働省でやることであるか、通産省でやることであるか知らないが、その点は経営者、いわゆる資本家に対しても、ああいう手態に至らしめたために、或いは至らしめないための何か法律か制約を設ける用意なり又立案なりができているかどうか、一応お川開きしておきたいと思います。
  49. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 先ほど来申上げておりますように、労使関係調整は、私やはり労使間の自主的民主的な交渉に待つべきものであるということは、組合法なり、労調法規定されておるところでありまして、私どももその通りに存じております。政府としては、その労使間の調整に関与し、介入しようという意図は全然私どもつていないわけでございます。この法律案内容といたしますものは、その労使間の調整に立入るものではないのでありまして、飽くまでも公共福祉ということからこのストライキだけは一つやめて頂きたいということを規定しようということだけでありまして、労使間の一方に制限を加え、一方に制限を加えないといつたふうな性質のものではないのであつて国民的な立場から、いわゆるこの争議行為だけはいわゆる公共福祉という観点から一つ御遠慮願いたいということでございまして、私ども事務屋の者といたしましては、労使間のそういう調整の問題には介入しない、これだけは公共福祉観点からということでございます。
  50. 重盛壽治

    重盛壽治君 そういう御説明であればあるほど非常にこういう法律を作ることは逆に危険だと思います。事務屋の立場から見て、現われた現実に即応して、ただ泥縄式に法律を作つて行く、そうしたことが次々に行われるうちに、振返つて見たならば、いつか知らん日本の国民はあらゆる面が法律で拘束されなければ動けないような状態になる。言い換えれば、いつか知らん昔の姿へ次第々々に逆行して行く。今日本は民主的な国家として再建されなければならんときに、こういうものをこの前の私は労働法規の改悪すら、あなたが先ほど来言うように、労使双方の良識によつて、一歩々々この良識が向上されて、日本の民主化のために役立つという方向へ、方向付けするのが本来でなければならん。それにもかかわらず、ああいう法律改正して、更に又ここで法律改正をしようというようなことでは、余りにも事務的であつて、これは日本の国家将来の思想の上に、一大変化を来たす、かように私は考える。勿論齋藤局長と私は議論をしようというのではないが、十分公聴会などを利用して、一つ現われた現実に即応して、ああいう事態が現われたからこれは一つこうしなければならん、こういう案態があつたから、これはこうしなければならんというようなお考えで以ておやりになるとすれば、非常に危険である。将来特に労働省が、私は何度も言うように、最近新局長はどのように考えておられるか知りませんが、労働省考え方と行き方が、ややもすれば、政府一つの機構の中に入り込んでしまつて、はまり込んでしまつて政府の例えば自由党が天下を取れば自由党の意向によつて動く、社会党が天下を取れば社会党の意向によつて動くというような傾向すら見られるので、これはやはり大きな労働者を持つ日本のような国では、もう少し毅然たる態度を打出さなければならん。なかなか新任の局長さんはお骨の折れることであるけれども、これがなされなければ日本の産業の発展はでき得ない。かように私は考えておりまするから、この問題がもう少し具体化してから、いろいろ議論はいたしますけれども、幸いまだ法制化されていない先でございますので、公聴会等を十分広く、偏見的なものにせずに、広い意味合いで、而も現われた現実において労働者のみを法律によつて拘束して行くのだということでなしに、そういうものが、日本の産業に及ぼす、その他国内の思想に及ぼすいろいろな点を考慮して作つて頂きたいということを私は考えておる。勿論私巨体はこれを作るようなことよりは、甚だ時間のかかる問題であるかも知れませんけれども、どうしてああいうような実態に追い込んだか、そうして炭鉱の場合には、最後には保安要員引揚げなければならんというような事態に追いつめた私は労働組合争議行為手段としては、非常に危険であるけれども、そういう事態に追い込まなければならんことに立ち至つた原因は、どこにあるか。果して炭鉱の資本家が良識を以て、国家の重要産業としての責任を以て労働階級を見て来たか、こういう点を考えるならば、もう少し進んで経営者に対して、資本家に対して、通産省がやる仕事か、国家自体がやる仕事か知りませんけれども、啓蒙運動を展開して、こういう事態の起らない前に労使の協調によつて解決つく方法を別に考えるべきである。労働委員会で全部解決できる問題では私はなかろう。かように考えますけれども、折角労働省ができて、労働者労働省を唯一の指導機関とし、そうして自分の利益を守つてくれる機関のように考えておるものがみずから経営者のお先棒を担いで注文もなしに勝手に法律を作り上げて行くというような態度は十分慎まなければならん。公聴会等で十分に広範囲に聞いて頂きたいということを私は要望してわきます。又この問題の議論はあとで  いたします。
  51. 村尾重雄

    村尾重雄君 時間がございませんので、この機会にちよつと齋藤さんに坐つたままで結構ですから、明らかにしておいて頂きたいことがある。局長から事情を伺いたいのですが、中労委の問題、あの中央労働委員は、現在の人の改選がたしか昨年の五月だと思つておるのです。それが未だに改選をしないのですが、これはどういう事情があるのですか。それと、この間新聞で報道を見たのでありまするが、経営者側の三名の委員、五名でしたか、三名のはずでしたが、その補充があつたわけですが、この事情について、坐つたままで結構ですから、坐つたままで御説明願いたい。
  52. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) お答え申上げますが、実は中労委の委員の任期は昨年の五月ですか、六月ですか、切れておること、前局長時代に実は中労委の労働者側の代表の推薦をお願いしておつたのですが、どうも一本になつてまとまつた推薦が出て来ない事態が実はあつたわけでございます。そういうふうなことで、今すぐに労働者側の候補者の推薦を求めることが非常に困難な事態にありましたので、事業主の側のほうでは実は外国に数カ月行くというふうな人も出て参りまして、止むを得ずその面だけを補充する、こういうことにいたしたわけでございます。併し私どもといたしましては、将来できるだけ早い機会に一つ一本になつた候補者推薦ということの出ることを期待いたしております。私代りましてすぐでございましたが、前局長時代に二度までいろいろやつたようでございますけれども、なかなか思うよう参りませんでしたので、止むを得ずもう少し延ばそうと、こういうふうにいたしたわけでございます。
  53. 村尾重雄

    村尾重雄君 そういう御事情を伺うと又一言私意見を申上げなければならんことになるのでありますが、地労委の大体この推薦方法を見ても、私今にわかに、施行規則がありませんが、労組法の中央労働委員の項を見まして、その推薦は、この労働組合から推薦が数において制限はないはずなんです。それから一本にまとめなければならんことはないと、こう思うのです。その点は中労委の選挙母体である労組からすでに推薦されているものだと伺つております。それが一本でなければならんということはあり得ないと思うので、この問題は相当重要な問題だと思うので、昨年の五月から未だ改選がなされないというような状態なので、一つそれは早急にやはり新局長としてやはりお取極め願わなければならんと、こう思うのです。  そこで、私は最後経営者の三名の補充についての事情についての御意見がなかつたのですが、私のお伺いしたい点は、少し疑問に思う点があるのです。というのは、後任者がきまらないから継続してその任についているということは、これは法律も認めておりますからこれはいいことなんです。文句のない点であります。それから補欠が補充されます、それは前任者の残任期間だけを勤めるということだからして、これも法的に異論はないと、こう思うのです。ただ問題はこの間新聞で見た経営者の補充というのがあれは任期が切れて後任者がきまらないからまだその職に止むを得ず就かしてあるという、まあ言葉の言い方がいいかどうか知りませんが、任期が切れてただ後任がきまらないからその職にあるに過ぎないのにその人の補充というのが行われるというところに少し疑問があると思うのです。その点少し明らかにして頂きたいと思いますが、どういうものでしようか。
  54. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 只今のお尋ねでございますが、即ち任期が切れたのに後任をきめるということでございます。これにつきましてはやはり解釈がいろいろあるようでございます。まあそれでもいいのだという説もあります。又一面におきましてはもう任期が切れているのだからこれは新らしい任用だという考え方もあるようであります。まあ二説ありますので、そういう法律的な問題は別といたしまして、いずれにせよ近く労働者側の推薦を待つて近く改選をしなければならんということは事実であります。そうして改選の際に私は今度任命されたかたがたからはまあ一応やめる辞表を出して頂いて、そうしてそこで調整をして行くといういわゆる事業主側三名だけでございますが、やはりそういうやり方で、二説ありますので、どつちがいい悪いということを私申上げるわけではございませんが、いずれにせよ近い機会に改選が行われますので、改選の際にすつぽりこれをはつきりまとめてきめて行く、こういうやり方のほうが適当じやないかと考えております。即ち新規任命だといたしますれば、その改選も四月になりますか、五月になりますか、改選のときにその人から辞表を取つて又新らしい任命にして行けばそれでいいわけでございます。更に又補欠のままでいいんだということでありましても、自然そこで一応切れるわけでありますから、いずれにせよそのときになれば私ははつきり解決すると、かように考えております。ですから実際法の解釈については二説ありますが、具体的な問題として処理して行く、こういうふうに考えております。
  55. 村尾重雄

    村尾重雄君 新局長に望みたいのは、具体的な問題を処理して行く、現実に即して処理して行く、こういう点で、こういう点をもう少し速かに解決を見なければ、これは労働省としてもこの取扱方というところに私は疑問があると思う。例えばこの労働委員会の構成においても、一番重要な公益代表と言いますか、これに中立ですね、中立にしても労使双方委員側から推薦によるとなつているように、その重要な任務をされている中立委員立場においても少し疑問ができて来ると思うのです。それと、例えば補充委員の任期の問題ですね、これは一体補充委員の任期がどうなるのだという点で、今あなたも非常に、改選が行われてそのときに、早くそれを行なつて明らかにしたいのだと、こう仰せられておりまするが、現在が疑問なんですから、その点で一つこの問題を速かに……あなたの御意見ではやはり明白になつておりません。これはやはり明白な立場というものを労働省が持つてもらいたい。そのためには明白なる毅然たる態度を持つてこういう問題についてはやはり臨んでもらいたいということを特に要望しておきます。これは又大臣がおいでになつてから御一緒に一つこの問題を明らかにしてもらいたいと思います。
  56. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 一つつてみたいと思いますが、それは昨年の電産、炭労のストの経験からこの法律案要綱を作つた考え方を作つたということなんですが、昨年の電産、炭労争議に関連いたしまして労働関係法ですか、労働関係ですか、労働関係について労使双方で片付けるということであとは中労委が入りました。それかみ政府等は本会議委員会等で一応いろいろ質問等も出て参りましたが、どういう工合に考えられ、或いは特にその小で自主的に解決する、その中に労働委員会が入る、政府がこれに協力するという建前について政府としてどういう工合に反省をしておられるのですか。政府として足らんところがあつたと考えておられるのか、或いは基本的にあの経過について改善すべきものがあると考えておるのかどうかその点を一つ。  それからもう一つは、労働関係に関します法律の建前がこれで一部崩れるわけです。これは先ほど電産の争議権について尋ねましたが、事務スト、集金スト、検針ストがあるというようなお話ですが、これは電気事業をやつております本来のストライキじやなかろうと思うのです。そうすると事実上停電或いは電源ストを違法だと制限することによつて争議権法律で以て制限する、こういう結果になることは明らかでありますが、アメリカの例を最近は相当例に取られましたけれども、アメリカなり或いはイギリスなりその他の例から考えましてこういう措置をとつておるところがあるのかどうか。例えば大きな鉄鋼スト、或いは炭鉱ストについても、従来私どもが承わつておりましたところについてはこういう争議権を真正面から法律制限するというやり方はなかつたかのように私ども承知するのですが、どういう事例を参考にして立案せられましたのか、その二点を一つ伺いたいと思います。
  57. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 前段の炭労、電産の争議の問題でございますが、これにつきましては先ほど来申上げておりまするように、労使双方の良識、民主的な交渉、更に又中労委というものが入つて行くというこの仕組は私これで結構じやないだろうかと、かように考えております。ただ緊急調整の問題につきましてはいろいろあの条件が非常に厳重ではないかといつたような意見も一部にあるように承わつておりますけれども、まあ政府といたしましては、法制的な立場におきましては、昨年の緊急調整を含むあの改正が行われた、あの改正されました法律の線でまあまあ適当ではないだろうか、若しもつと昨年の経験に鑑みまして考えなくちやならん点があるとするならば、もう少し時日をかして研究するというのでいいのではないだろうか、かように考えております。  それから後段の問題でございますが、電気ストライキにつきましては外国の立法例等、その他も目下調べておりますが、アメリカ等におきましても、昔やはり、大分昔のようでございますが、やはりこういう停電ストというものが一部行われたことがあるそうですが、その後組合の良識によつてなくなつたとも聞いておりますし、又一部何と申しますか、州法でこれを禁止しておるものもあるそうでございます。この立法例も持合わしております。まあ今あちらこちらの具体的な例を調べておりますが、アメリカなどでは最近におきましては、もう停電ストというものは州法で禁止したことが原因でありますか、或いは組合のそうした立場でなくなつたのか存じませんけれども、余り行われていないと承知いたします。法案を最後までまとめるまでにはもう少し資料を準備いたしたい、かように考えております。
  58. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 例えば今の争議権停電スト、或いは電源ストを禁止するごとによつて事実上争議権制限される。それから例えば国鉄の場合でもそうですが、公共企業体ということで争議権を剥奪した、それじや残つてつた唯一の方法等によつて、賜暇、その他ですが、合法的な争議権を使おうとすれば、それも例えば首切りその他で以て制限する、こういう争議権制限が、法律なりあらゆる措置で以て次々と制限して行くという方法は、私は労働関係法規の建て方として民主的でないと考えるのですが、そういう方法をやはり妥当だと考えておられるのかどうか、その点一つもう一遍お聞きしたい。
  59. 齋藤邦吉

    政府委員齋藤邦吉君) 先ほど来たびたび申上げてありますように、私どもといたしましては争議権というものはみだりに制限を加えず、もつともつと制限を加えて行くのだといつたような意図は全然持合わしておりません。こういう争議権を全部奪うといつたことじやなしに、争議権の現われとして一つ争議行為、その争議行為のこういう手段だけは一つ争議行為としては昨年の経験から鑑みまして御遠慮願いたいということを申上げているだけでありまして、全面的に争議権を奪つて行くとか、或いはもつとこういうふうなやり方でどんどん拡げて行くのだといつたやうな考えはさらさら持つていないことを申上げておきます。
  60. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは労働委員会はこれを以て散会いたします。    午後零時四十四分散会