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1952-11-14 第15回国会 参議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十一月十四日(金曜日)    午後一時五十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     吉田 法晴君    理事            安井  謙君            村尾 重雄君    委員            野田 卯一君            早川 愼一君            重盛 壽治君            片岡 文重君            堀木 鎌三君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君    労 働 大 臣 戸塚九一郎君   政府委員    通商産業省公益    事業局長    石原 武夫君   労働省労政局長  加来才二郎君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君   説明員    法務省刑事局長 岡原 昌男君    通商産業省石炭    局長      佐久  洋君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働情勢一般に関する調査の件 ○賃金問題に関する調査の件(電産及  び炭労ストに関する件)   —————————————
  2. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 只今から労働委員会を開会いたします。  本日は労働情勢一般に関する調査及び賃金問題に関する調査といたしまして、電産及び炭労ストに関しその経過並びに政府方策等について説明求むることにいたしております。本日の委員会出席説明を要求いたしました関係大臣は、法務通産及び労働の三大臣でありますが、通産大臣は所用のため出席不能とのことであります。参考までに只今出席しております大臣及び政府委員は、通産省から公益事業局長石炭局長鉱山保安局長説明員として公益事業課長が出席いたしております。労働大臣法務大臣は追つて出席せられる予定であります。  それでは先ず電産及び炭労スト経過並びに方策等について、通産局の公益事業局長及び石炭局長から御説明を願います。
  3. 石原武夫

    政府委員石原武夫君) それでは私から電産ストライキ経過及び通産省としてこれにどう対処すると考えたかという点について御説明を申上げたいと思います。  今日までの経過は或いは詳しく申上げる必要はないかと存じまするが、一応その間の経緯も併せて申上げますと、今回のストライキの始まりは、本年の四月十四日に組合側から基準賃金改訂要求を提出いたしたことから始まつておるのでありまして、その後当事者間に話合をいたしておりましたが、到底話合がつかないということで、五月十六日に組合側自主的解決が困難だということで、中央労働委員会調停の申請をいたしております。中央労働委員会といたしましては九月六日に調停案を提示いたしております。これは本年の十月以降基準賃金として一万五千四百円、現行の賃金に対しまして約二割アツプになりますが、この案を提示されたわけであります。その後この調停案に対しましては先ず組合側拒否をいたし、次いで経営者側拒否をいたしておりますが、さような状況の下に九月二十四日に第二次と申しておりますが、実際には第一回の電源ストを行なつております。第一次というのは、予定は九月十日に予定しておりましたが、この時には実際行いませんでしたので、第二次と称しておりますが、これは第一回のいわゆる電源ストを行なつております。それから更に十月に入りまして三日、それから七日、十一日、十五日と第三次、第四次、第五次というふうにストを続けて、電源ストを行なつております。その後十月十八日になりまして、経営者側から中央一本交渉では交渉が困難なので、会社別地方交渉に移したいという旨の申出を組合側にいたしております。組合側はこれに対して直ちに拒否を行なつております。次いで十月二十一日に至りまして、第六次と称しておるストを行なつておりまして、これは二十一日、二十二日と二日ストをいたしておりますが、これを六次と称しておりますが、二日目の二十二日から電源ストの率を二五%ということで、その前までは二〇%或いはそれ以下でありましたが、その後組合側電源を二五%に抑えるというストに移つているわけであります。十月二十三日に至りまして、かようにストライキが続いて参りましたので、中山中央労働委員会会長双方を呼んでいろいろ事情を聴取をしておいでになります。十月二十七日に経営者側は更に連盟会社側是非地方別交渉に移すことにしたからという通告をしておりますが、組合側は直ちにこれを拒否しております。次いで十月二十八日、二十九日と第七次の電源ストを行なつております。二十九日及び三十一日に同じく中山中労委会長労使双方を呼んで更に中労委調停案中心として交渉を進めるようにいろいろ勧告をしていらつしやいますが、まだそのときには双方とも勧告に応ずるところまで行つておりませんでした。引続きまして四日に中労委会長は更に両当事者を呼んで、中労委裁定案基礎として一つ交渉当事者間で進めることを更に勧告をしておられますが、これに対して組合側統一賃金統一交渉という建前ということが一つと、それから中労委調停案基礎にするということについてはいいけれども、あの案自体を承認するということはできないというようなことを条件にはいたしておりまするが、そうした条件の下では一応交渉してもよろしいという返事をしております。これに対しまして経営者側統一賃金統一交渉ということでは話合をしても到底成功の見込がない、各会社企業経理の実情が違うので個別的にでないと交渉に応じられないということで、これは経営者側拒否をいたしております。さような状況の下に十一月六、七日、いわゆる第八次のストライキが行われたわけでございまするが、二日目の七日におきましては、いわゆる停電ストライキと申します、今までの電源職場放棄と異なりまして変電所スイツチを切るということで、この日停電ストとしては第一回のストを行なつております。更に引続きまして十二日、十三日、一昨日、昨日と続けて、十二日には停電スト、十三日は電源ストを行なつております。なおこの間に多少前後いたしまするが、十一日には中山会長労使双方に更に勧告をしておられますが、更に昨日は大臣が両当事者を呼んでいろいろ勧告されたのであります。更に今後の予定といたしましては、十七日及び十八日に大口停電ストを計画しておりまするし、十九日の午前八時から二十日の午後十二時まで、四十時間に互りまして二〇%の電源スト予定をしておるような状況でございます。  それでこのストにつきまして、政府としては後ほど労働省のほうからお話がございますと思いますが、通産省立場といたしましては、さような電気事業ストライキが非常に消費者側影響するところが大きくございますので、できるだけ早くこれが収拾されることを希望いたしておりまするが、通産省が直接争議の間に斡旋するとか介入するということは適当でないという考えの下に、これは労働省とも従来たびたびお打合せ申しまして、もつぱら現在の段階では中央労働委員会の斡旋に待つことが最も適当だということで、中労委の御努力に期待をしておるような状況であります。  それからなお電源スト影響につきましては、極く簡単に申しますると、最近やつております二五%程度電源ストの場合につきましては、これはもとより各地区によりまして実は多少異なつております。パーセンテージは二五%という同一でございますが影響は多少異なつておりまするが、勿論割合影響の強く出て参ります東京でございますとか関西というところで申しますると、大口電力のうちいわゆる保安電力と申しまして設備を破壊されるというような関係がございましてスイツチを切れない需用がございます。これらはできるだけ保安電力に近いところまで自主的に協力を求めるということでやつております。それからその他の大口のものにつきましては、二日継続するときには一日を大体休んでもらうというぐらいのところでございます。それから一般の線に通じております中小企業等のもの或いは家庭電燈というようなものにつきましては、地域を分けてやはり二日続けば約一日ぐらいというのが大体の標準でございますが、ただ電気は水次第でございますので一応今の二五%というのは九月五日の二五%ということにしておりますので、その時に非常に雨が降りますと動いております発電所発電力が非常に殖えますので必ずしも一様に参りませんで、雨が非常に降りましたときには東京においても午前中だけはやるが午後は殆んどやらんということで済んでおる場合もございますし、地方的にはさような水の状況が違います上に、たまたま九州とか北海道とか炭鉱ストライキが行われております関係上、さような需用が非常に落ちておる関係で、割合他の一般産業に及ぼす影響ということは現在のところ少いという状況でございます。又北陸のほうで電力の多い所は或る程度大口規制をいたしますると一般電力には大した数字は出て参りませんし、一般線についてはあまり規制をしないというようないろいろ各地によりまして必ずしも一様ではございませんが、極く概略を申上げまするとさような状況でございます。我々といたしましては大口小口との間に不公平とか不均衡のないように厳重に会社のほうに注意いたしておりまして、この電源ストライキ関係電気供給が不可能になる度合が大口小口の間に不均衡がないように十分注意をいたさせるようにしております。ただ何を申しましても中小企業企業自体の力が弱いので受ける影響中小企業のほうが多いということは事実だと我我のほうは思いますが、今のところできるだけかたよらないように努めたいというふうに思つております。  一応以上通産省だけの範囲内におきまして、ちよつと我々の考えておるところをお話し申上げた次第でございます。
  4. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは引続いて炭労ストその他について石炭局長説明を求めます。
  5. 佐久洋

    説明員佐久洋君) 炭鉱ストライキにつきまして従来の経過を御報告申上げます。八月の二十五日から十月の九日まで十一回炭労経営者連盟側交渉いたしたのでありますが、遂に意見がまとまりませんでその後ストライキに入つたのであります。交渉中央地方とわかれまして交渉いたしたのであります。中央交渉いたしましたのは大手筋の十六社と中央経営者連盟であります。そのほかに北海道常磐山口九州、この四地区におきまして、同じ炭労ではありますが、中小炭鉱と各地区経営者連盟との交渉をいたしたのであります。交渉の具体的の内容は大要五、六点でありまして、労務者の賃金の問題と、標準作業量の問題、職員の給与の問題、それから基準外賃金の問題、協定期間の問題、なおこのほかに十月以降の賃金の支給の経過措置が議題となつておりますが、交渉が決裂いたしまして、十三日、十四日の両日、第一回のストライキが十六社の間で行われました。その後の経過を申し上げますと、十六社については、只今申しました十三、四日の二日のあと十七日から引続き今日までストライキに入つております。先ほども申しました地方ブロツクにつきましては、北海道の一部が二十七日と三十日、三十一日、常磐地区が一部が二十七日、一部が三十一日、山口地区は二十八日、三十日、九州が二十七日、三十一日とおのおの先月こういう状況ストを実施しておりまして、先月だけのよつて生ずる減産が推定いたしまして百五十六万トン程度になろうと思います。十一月に入りましての状況は、中央交渉をいたしました十六社は十一月に入つてずつとストライキに入つております。地方ブロツクのほうは北海道の一部が五日、六日、常磐地区の一部が一日、山口地区が五日、六日、九州地区が五日、六日、こういうふうなストライキ炭労については実施されておりまして、このほかに日本鉱山労働組合系統のものが今月の三日から大手筋だけが無期限ストに入つているという状況であります。なお十一日に日本鉱山労働組合に所属する一部がストを中止いたしました。山口地区の八炭鉱が二炭鉱ずつに分れて四十八時間ストを実施するということを決定いたしました。それから九州炭労ブロツクも全部が同一行動ではないようでありまして、これはまだ確認されておりませんが、十七組合ほどが無期限ストに入る、更にほかの六組合が十三日から、なお又別の十六組合が十五日から無期限ストに入るという決定をされたようでありますが、これは私どもまだ確認はいたしておりません。それで只今申上げましたように大手十六社については引続きストを実施されておりますが、その他の炭鉱につきましては異なる日においてストライキを実施して今日まで減産が大体推定いたしまして二百八、九十万トンであろうと思います。  以上が今までのストの実施されました概要でありますが、これが需給関係に及ぼす影響について若干申述べたいと思います。本年度の上期におきましては相当の貯炭があつたのでありますが、それは予想ほど国内の一般需要が殖えなかつたということと、火力発電が豊水のために割合石炭をたかないで済んだというような原因がありまして、九月の末には坑所港頭市場におきまして二百六、七十万トンの貯炭がございます。そのほかに工場が手持しておる貯炭が四百五、六十万トンございます、合計して七百万トンをこえる貯炭があつたのであります。それで先ほど申しましたストライキ影響によりまして十月末の貯炭は、正確な数字はまだ集計ができておりませんので申上げかねますが、大体推定いたしまして坑所港頭市場貯炭が二百二十方程度と思われます。ほかに工場手持ち貯炭が二百六、七十万トンであろうと思います。この数字石炭全体から見ますれば相当ゆとりのある貯炭状況でありますが、炭種によりまして考えてみますると、製鉄用原料用炭はかなりゆとりがあるのでありますが、ガス用原料炭についてはそう楽観を許さないのであります。又ガス発生炉用炭については特殊な工場について考えてみますると、かなり窮迫の状況が考えられるのであります。これに対しては現に供給余力のある、つまり他の工場において手持のあるというようなものについては先ず第一に工場相互の融通というようなことを考えて急場をしのがざるを得ないと思います。又一般炭の選炭の方法を変えるというようなことによつて一般炭に使用変えをできるというようなものについてはそういう方法も現に講じておるようであります。下期全体の需給関係から見ますと、いろいろの場合を想定いたしまして、通産省では下期の需給見通しを検討いたしておりますが、或る程度の輸入を考えざるを得ないのではないかというふうに思われる次第であります。このストライキの問題は直接通産省がどうしようという立場ではございませんが、下期の需給が相当混乱するというようなことがあつてはならんということでかなり憂慮をいたしております。只今のところは併しこれをどういうふうな解決にしようというところまでは考えておりませんので、専ら経営者労働者双方の自主的な解決の早からんことを願つておる次第であります。以上大体の経過を御報告いたしました。
  6. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 質疑あとから受けることにしまして引続いて労働省のほうから御説明を願います。
  7. 加来才二郎

    政府委員加来才二郎君) 電産及び炭労争議の概況につきましては通産省のほうから御説明がありましたので、労働省といたしましてはこれにどういう措置をとつて来たか、基本的にはどういう態度でおり、今後どういうふうに見ておるかという点につきまして簡単に御報告を申上げたいと思うのであります。  電産、炭労ともに今度非常に長い争議行為が行われておりまして、従来占領軍がおりましたときと変つた様相が出て参つておるのであります。これは一つ占領期間中におきまする相当弱い且つ異常な経済情勢下におきましてたびたび争議が行われましたが、基本的な解決がつかずにしわ寄せをして来た問題があるということと、もう一つは御承知のように占領期間中におきましては大きな争議、特に公益に関するような争議につきましては最後的には占領軍協力によりまして解決がついたのでありますが、今さような力によりまする解決方法がないというふうなことが永びいている原因一つではないかと思つております。勿論独立後におきまする経済界状況から見まして、安易な考え方では今度の問題の解決は非常にむずかしいということも又その一つ原因になつているということは、申すまでもないと思うのであります。で労働省といたしましては、独立後におけるかような争議行為紛争議に対しまする措置と、特に占領軍がいなくなりましたあと措置ということにつきましては、かねがね研究をいたしまして、前国会においてさような対策の意図も含めまして、労働関係法の一部改正をやつたのでありまするが、基本的には何とかして独立後におきまする日本経済界の中におきまして、かような紛争議というものの解決に当りましては、合理性をもつて、徒らに争議行為に訴えることなく、自主的な協力によつて解決するという慣行を作つて行きたい。殊に公益事業にありましては、双方の自主的な交渉がまとまらない場合には、第三者即ち労働委員会等仲介によりまして、その仲介中心として争議行為に訴えることなくして解決ができて行くような慣行を何とか確立して行くべきではなかろうかと、とかく占領軍のおりましたときには、これは日本経済の異常な状態であつたということもありまするが、取りあえず争議解決するというところに重点がおかれて参つたのであります。従いまして、使用者側にいたしましても、労働組合側にいたしましても、それらの態度につきましては相当批判的な考え方を持つておりまして、特に政府というふうな一つ権力機関介入を非常にいやがるというふうな傾向もあつたわけであります。まあいやがるかどうかは別といたしまして、やはり基本的にはさような介入なしに自主的な交渉解決をするという慣行、特に徒らに争議行為に訴えることなく解決するという慣行の確立を図つて行きたい。かような基本的な考え方で現在いるわけであります。  で従いまして、電産争議につきましては、今日現存なお中労委調停案中心として労使双方自主的交渉解決をつけて行くべきではなかろうかと考えているのでありますが、これは御承知のように組合側統一賃金統一交渉によつてやると言つておりまするし、経営者側各社別交渉によつて各社別賃金を定めるという非常に深い対立を示しておりますので、再度中労委の斡旋によつてこれを片附けるという方法をとらなければ、解決見通しがないのではないかという考え方をいたしているのであります。炭労につきましてはもうすでに一カ月以上の長期に亘つているのであります。で労働省といたしましては、労働者生活というものが、これによりましてどういうふうな状態になるかという点について第一点としては注目をいたし、注意をいたしております。第二は保鉱保安というふうな点からこの問題に非常に注意をいたしております。第三点は石炭需給関係一般産業に対してどんな影響を与える状態が出るかという点に注意をいたしておるのでありますが、目下のところ、組合員生活状態も非常に苦しみながらも未だ平静を保つておりまして、現地において事故を起している状態はございません。保鉱保安の問題にいたしましても労調法違反行為までには至つていないのであります。炭労ではこの十五日から保鉱保安の問題に対しまする争議行為を強化するという態度に出ておりまするが、保安法又は労調法程度に至るような無茶な行動には出ないものであり、又出ております事実も一般的にはないように承知をいたしているのであります。需給関係については通産省と常に連絡を保ちまして非常に注目をいたしておりまするが、これは先ほど佐久局長から御報告申上げましたような状態であります。  従いまして特にこの石炭争議について今日積極的にこの間に第三者介入を求めるという段階までには出ていないように考えておりまするし、特にこの炭労争議一つの特徴といたしましては今度の争議を今度の紛争に関連いたしまして団体交渉を始めました初日において第三者介入を受けないということを申合をいたしておりまして、その態度は今日も変つていないというふうなこともありまして、まだまだ中労委を中に入れてどうするという段階までには至つていないと考えるのであります。併し電産の争議につきましては世論の動向等を考えますとこのままいつまでも放置するということは問題である。こう考えておりますし、炭労争議につきましては今日の現在におきましてはさような状態でありまするが、情勢は必ずしも楽観を許さないような情勢に立入りつつあるのではないか。かような考え方を持つているのでありまして、以上が労働省からの御報告大要でございます。
  8. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは一応説明を終りまして質疑を許すのでありますが、法務大臣都合で成るべく短時間で質疑を打切つて頂きたい、何か別に御都合が悪いようでありますから成るべく先に質疑を願うようにお願いをいたしておきます。
  9. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 私、三時から三、四十分たちますが、又改めて参ります。
  10. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 今の点は含んで頂いて御質疑を願つたら如何かと思います。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  11. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 速記を始めて下さい。
  12. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 先日の本会議におきまして、電産スト威力業務妨害に当てはまる場合を申上げたのでありますが、只今お話のように、簡単でございましたので、その御疑問は御尤もとだと存じますので、一通り私の基本的な考え方を申上げたいと思います。又詳しくなりますと、私にも一々の場合まだわかりかねる点もありまして、これは主として個々ケース重点をおいておるのでありますが、その個々ケースの大よその場合の考え方ということになりますならば、ここに政府委員がおりますから、政府委員からお答えさせたいと思います。  本会議でお聞き下さいましたから誤解はないと思いますが、新聞記事に出ておりますと、電産ストは多くの場合威力業務妨害に当てはまると、こういうふうに出ておるのでございますが、これは大変な間違いでございまして、そういうことは御承知のごとく申しておりません。大体争議権というものを法律で認めております以上、労働者団結の力で自分たちの地位の向上を図ろうとすることも当然認められているのでございまして、その手段として或る場合には労務を提供しない、早く言えばまあ仕事をしないということも、争議権の認めております以上、私どもは直ちにそれが刑法の対象になるとは思つておりません。  又威力業務妨害と申しましても、争議をする場合に団結威力というものが、自然これが利用されるということはあり得るのでありまして、それがすぐ威力業務妨害とも思つておらないのでございます。ただ或る仕事生産設備というものは、御承知のように、これは業務命令労働者経営者が委託したような形になつているのでございますから、経営者が必要と認めまして業務引継を要求いたしまして、そうして引継要員がすでに引継ぐ体制ができて、その場に参りましてもなお且つ引継がせず、そうしてこの頃よく新聞に出ますようにスイツチを切るというような場合は、多くの場合威力業務妨害に当てはまります。先日も申上げましたように、多くの場合と申しますのは、そこに個々の場合に例外も生じ得るのでありまして、殊に発電所の場合はスイツチを切つたほうがよいという場合もありますし、又スイツチを切ることが悪い場合でもよいと本人が思い込めば、そこにいわゆる犯意の阻却があるわけでありまして、これはどうしても一々のケースを慎重に調べることが最も法務当局として当を得ている、こういうふうに私は考えているのでございます。ただ発電所スイツチを切る場合、これは御承知のように、炭坑であるとか、潜水夫がもぐつている間に電気が切れては大変でございますから、又炭坑の中で電気が切れたら命にかかわりますので、そういうのはいわゆる保安電力と申しますが、この保安電力関係するスイツチを切つた場合、これは多くの場合業務妨害に当てはまると思うのであります。これは例を申上げて御了解の参考に提供する次第でございます。  あとはどうもくどいようでございますが、一々のケースで計つて行かなければならない。その場合は労働者の認められております争議権、周囲の状況、そういうようなものから判断いたして考えたい、こういうふうに思つております。
  13. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 今の犬養法相のお言葉だと大体今の電産のやつておる形は業務妨害ではないと、一応根本的にそういう見方をしておる。特別な例として保安電力スイツチのことを申されましたがそういうことは特例であつて常識的にも大体やらないことですね。やらないことをやつたらというような意味合から言われたように考えられるのですが、今までの労働省通産省説明の中から行きますると、労使双方の自主的な解決によつて解決を望むと、もつと積極的な解決方法に乗り出してもよい段階であるにもかかわらずそれくらいの答弁が聞かれておるのですが、いわんや法務大臣としては労働法規のらち内で両方が解決をつけてくれることを好ましいと考えておるという限りにおいては、現在の電産や炭労ストでは、今の段階では法務大臣としてはこれに容喙すべき段階ではないと、これをどうしようという考え方を持つておらないと、こういうようなふうに聞えるのですが、こういうことでよいかどうか。  それからもう一つ一般労働組合に対するいろいろ今まで問題があつたのだが、威力業務妨害というようなものは、私どもはいずれにしても、労働組合が正常な労働争議をやりそういうらち内でやつておることは、当然労働者から見れば、資本家が困るような、或いは一般の人が見た場合に労働組合がひどいじやないかというような打撃を与えることが争議の戦術でありますから、そういうらち内において刑法を発動すると、いわゆる法務省のほうは関連して行くというようなことのないことが当然好ましいと思うのだが、そういう点をもう少し明確に伺いたいことと、それから一般労働組合に若し今のような業務妨害というようなものがあると仮定すれば、あなたのお考えになつておる場合に、今は電産のほうを一応例にとられたのですが、その他に何か例がおありになるかどうか、その点御指摘願いたいと思います。
  14. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 只今承知のように公共事業令というものがありませんで、これに代る立法がございませんので、只今法務当局の処置としては刑法によらざるを得ないのであります。その立場から言いますと、只今申上げたような段階に来ませんと威力業務妨害も成立しないと、こう申上げたのでありまして、それでは国務大臣としてガスも電気もとまり放しでよいのか、これはもう平気でいてよいのかという御質問の趣旨に触れていないと思いますが、触れているとすれば、これは又別の考えがございます。それから第二は何でございましたかな。
  15. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 一般に、例えば電産や炭労ではなくてこれは業務妨害になるのだというような例証を何かつかんでおるのなら示して頂きたい。
  16. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 例証はまだ一つ一つ全部読んでおりませんが、ある場合があると思うのです。  それから保安電力でなくても、すでに四国で二件ほど引継要求のあとスイツチを切つた例がありまして、今のところは二件ございますが、そういうような例もあるように思います。一口の例でないとこれは一概には申上げられません。ただ、スイツチを切つたらすぐこれは犯罪だというふうに興奮してとりかかるという態度は避けたい、こういう意味であります。  又くどいようでございますが、電気ガスがとまりつ放しでいいとは私思つておりませんので、これは別の何で別の立場から一つ別の方法でしたい、こういう考えであります。
  17. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 それに関連して。今のあなたの言われたように、公共事業令というものが失効しておる現在、そうすると争議に関してどういうような処置をとろうと今後なさるのか、或いは又この処置を考えて行こう、将来はあなたの言うように、そういう場合には刑法で行こうと考えておられるのか、どういう処置をとろうとなされるのか。  もう一点は、今四国のことを言われたが、そういうことは私はまあ労働組合のらち内の争議行為の中に私は含まれると考える。若しそういうようなものを指摘して来る場合があるとすれば、例えばいわゆる資本家側のほうでもピケ・ラインなどを張り、それからスキヤツプを雇い入れたりして、それに働かすために暴力団を雇い入れたりというようなことをやつておるの、だが、こういうようなことに対してあなたはどういう見方をするか。この二点を聞かして頂きたい。
  18. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これはまあ具体的な方法をこの前に考えなければなりませんが、資本家がピケをやつて逆に威力で以つてその労働者が恐怖心を起したり、意思の自由を失うところまでやればこれは又不穏当だと思いまして……、併しこの場合も成るべく然るべき労働問題の仲裁方法で行きたいと思つております。  それからどうも電気やガスがとまりつ放しでいいとは思わないということに対して、公共事業令がまあ失効しておる折から、じや刑法だけによるのかという御質問でありますが、これはやつぱり何かそれに代るようなものが合理的に考えられたら考えたいと思つております。又若しそういうこれに代る新らしい法律ができましたら御協賛をお願いする時期もあるかと思います。
  19. 片岡文重

    ○片岡文重君 問題に入る前ですが、ちよつと議事進行ですが、今日も実は政府大臣を初め御出席が余り早いとは私言えないと思うのです。で今後やはり一つ御就任早々注文を付けるのはどうかと思うのですけれども、委員会を成るべく円滑に規定の時間で早く済ましたいと思いまするので、御出席になれない場合は何時までということで一応お約束をあらかじめして頂いて、成るべく所定の時間に一つ進めたいと思いまするので、私どもも精を出しますので、一つこれは委員長にも依頼しておきたいことですが、お願いをしておきたいと思います。  それから所用でお帰りになるそうですが、詳しいことは又お帰りになつてからお伺いすることとして、ただその間にほかに問題があると思いますので、ちよつとお伺いしておきたいと思いますが、今の御説明の中において、大体経営者業務引継を要求した場合にこれを拒否したりすることは、威力業務妨害になるのではないかという御説明があつたように思うのですが、  一つ一つの例を持たなければということにもなろうかと思いますけれども、この意義は非常に私は重大なことになると思うのであります。でこの点についてもう少し詳しく御説明頂きたいと思います。
  20. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 冒頭にお叱りを受けました点は誠に御尤もでありまして、実は言訳ではございませんが、ここのところ閣議が非常に続いておりまして、これは多勢のやることでありますので長い議論をする人があると三時の予定が四時半になつたりするので、今後はそういうことが減ると思います。今日はまあ特別の又別のやかましい問題がありまして私の予期しない問題でちよつと失礼させて頂きましたが、できるだけ御都合を計りまして成るべく正確な時間を申上げるようにいたしたいと思います。  今の御質問でありますが、これは一一の詳しい問題になりますと私もまだ存じない点もありますので根本問題だけを申上げたのでありますが、政府委員からお答えさせてよろしいでございましようか。
  21. 片岡文重

    ○片岡文重君 それじや結構です。
  22. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私も細かいことは政府委員から聞きますが、今大臣の言われたことで大臣に特にお聞きしたいと思うことは、つまり大臣としては国務大臣として電気がとまつたりガスが止つたりすることについては無関心であり得ないというお話があつた。でこれはまあ答弁それ自体として言葉を取れば当然のお話なんです。  ところが私は大臣から特に聞きたいことは、今お話なつた刑法二百三十四条の法理解釈については別にいたしまして、と同時にまあ最終的には具体的でなきやならんが一応の解釈をつけておられる。もつと大臣として労働争議というものについて、労働組合のあり方と日本民主化とそして産業平和と、この三つに一つのお考えが打ち出さるべきだ。大臣らしい御答弁はそれにあるべきだろう、こう考えますので、そういう問題についてただガスがとまつたとき、電気がとまつたときは無関心であり得ないというだけでは非常に一方的な話であります。で法務大臣としては労働組合運動がどうあるべきか、労働組合運動に法務省として場合によつて刑法を適用しなければならんというようなことをどういうふうに考えておるかということを、私の御質問の趣旨が分つたかどうか知りませんが、とまあそういう大きな基本方針というものについてのお考えをお聞きしたい、こう思うのです。今日は最初ですから大きな問題だけにいたしておきます。
  23. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お尋ね下さるお気持は至極御尤もなのでありますが、私法務大臣という立場から、まあはみ出まいとして答弁を整理をいたしましたので、ここにおられる労働大臣の経綸をお聞き下さることが順序だとは思いますけれども、それでは余り如何にも冷淡な失礼なお答えになるかと思いますので、私も多少の考えは持つております、これは法務大臣としてそういうところまで言つていいかどうかわからぬ、多少御遠慮申上げる気もあるのでありますが、法務省の事務を掌つている立場としては、できるだけ中労委その他の仲裁行為にまちたい、そして資本家も反省をし、労働者側も法律に認められた争議権というものを優秀な民族のやつている争議権らしくできるだけ水準の高いものにしてもらいたい。それを望む念慮の基礎にしましてできるだけ法の発動というものはやむを得ないときにしたい。併しそれでは余り公益事業に対して法務当局が如何にも甘いように見えて却つて世論に弊害を与えますようなことも考えますので、いやしくも法に触れましたら断固として法の発動をする。成るべく中労委の仲裁行為にまつて労使双方が反省しつつ、日本民族の争議の有様或いは広く労使の関係というものを優秀な民族に値するだけの有様を示してもらえば本懐であるという気持を、国民の一人として持つております。くどいようでありますが、法務大臣としてはできるだけ中労委の仲裁に待つて法の発動ということはやむを得ないときにやりますが、やる以上は断固としてやる、こういう考えでおります。
  24. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうもその御遠慮なさる必要ないと思うのです。法務大臣としては労働組合なるものを、むしろその争議権を認める以上は、労働大臣としては単純に一方的に争議の結果電気ガスがとまつたということ以外に、この争議権そのものも尊重しなければならない御責務がある。これは労働大臣だけじやなくて法務省自身として御管轄も同じ争議権自身もはつきり認めなければならん。要するに両方の法域の調整というものがあるので、一方的に断固としてとおつしやる必要は私はないと思うのですが、そういう点について具体的に、実は先ほど御質問が少し抽象的だつたから御理解しにくかつたかも知れんが、ここで法務大臣としては、争議権自身も、日本の民主化をやる、そうして公益を守る以上必要であるとお考えになるかどうか、その点だけをはつきり御答弁願いたい。
  25. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答え申上げます。争議権が法律で認められます以上、争議権というものを尊重しながら労働争議状態を眺めて行きたいと思います。法の発動を断固としてと申上げましたのは一方的ではないのでありまして、できるだけ中労委の仲裁を待つというもう一方の思想を持ちながら、やる以上はへなへな腰ではやりません、こういう意味でございます。  それから工場労働者諸君の勤労ということも非常に大切なことでありまして、この人たちが日本の輸出産業のやはり責任者の一人なんでありまして、どうも一般の人が電気やガスがいつまでもとまつて労働者の権利として仕方がないとばかり言つてられないこともございますので、而して公共事業令が失効しております。公益事業というものが、労働者争議権はさることながら一般の社会生活の平和安定ということにもやはり我々関心を持たなくちやなりませんので、その意味において電気ガス等の事業に関する何か合理的な、早まつてない極く当を得た法律を考えてみたい、こう思つているのでございます。
  26. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 あまりくどいがもう一言だけ。今のお話でわかるのですが、つまり公共事業令ができていないから、過程的に刑法二百三十四条というものが特に何といいますか、まあ強いて言えば拡張解釈をして公共事業令に代るような役目をするという考え方自身が、私は大臣にあるのじやないかということが今の御答弁で考えられるのですが、一体それは刑法の適用から言えば甚だしく間違つたものである、刑法は刑法としての分を守つてです、公共事業令があるとないにかかわらず守らるべきものである、こういうふうに私は考えるのです。で、大臣の御意思がそこになければ結構ですが、これは大臣に対する御希望ですが、ともすると司法権を持つておる者が権力を行使して、新らしい日本民主化のこの労働問題についての理解が不十分なために、そういう民主化の問題がないときと同じような考え方、及びそういつちや失礼ですが、あなたの今管下には労働問題の工キスパートとみなされるところの司法官吏は少いのです、これはもう誰も認めている。だからそういう点については、無論私は知識経験がないから軽蔑するわけではありません、いろいろなことをお取扱になるのだから不十分だと、併しその発動についてはよほどその労働問題を専門として終戦以来やつてきた中労委なり地労委と緊密な連絡をお取り願いたい。これは行政権の運用として、ともすると労働委員会自身の見解と司法部の見解とが異なつた場合は更に労働問題を混乱に陥らしめる傾向があるのです。まあそういう点について終戦以来労働問題にタツチいたした私としては特にお願い申上げたい。
  27. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 只今の御注意は私、至極御尤もなる点が多いのでありまして十分考えてやつて行きたいと思います。ただその公共事業令というものがなくなつたので、溺れる者がわらをつかむように二百三十四条を鬼の首を取つたようにそれにかじりついてなるべくこれを大きく拡大解釈しようという気はございません。  それから今御注意のように、法務省のほうの専門家はおりますが、広く労働問題を社会的な眼から見るということは随分反省しておりますが足りないかも知れません。その点は十分気をつけます。併し私就任以来日が浅いのでありますが、私の予想よりはできるだけこの刑法の適用というものを控え目に堅実に考えようという傾向が省内の会議のときの発言で見えますので、私はむしろ弱いと言つて叱られるおこことが委員会で出て来るのじやないかとさえ思つているくらいでございました。併しそれで以て又拡大解釈のほうに逆戻りするようなことは十分気をつけます。それは御了承願いたいと思います。
  28. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 私から一点。それは先ほどあなたの言われた実際問題としていわゆる引継作業というようなものを仮に妨害して行くというようなことは、業務妨害にひつかかるということをちよつと言われたように思うのですが、先ほどの片岡君の質問のときでしたが、私はあなたが法務大臣だからさじを投げた形でその点には触れませんのですがね、これは一番大きな問題です。これを労働省と十分お打合せ願わないと、それをとめるということになるとストライキをやつてることが当然資本家に御迷惑をかけることになる、その点どう一つ打開しようかということになる。それで今度は資本家がスキヤツプをやとつて来て第二作業をやると、第二作業をさせようということをやつちやいかんということをやる場合に、これは業務妨害だということになれば当然第二組合を認めることになる。労働争議を弾圧し労働組合を弾圧するという形に変つて来るだろうと思います。これは当然そういうふうな重要な問題になろうかと思いますが、引継作業であつてもそれを認めて行くというようなことは是非一つ御研究願つて労働省と打合せをして頂きたい。
  29. 犬養健

    国務大臣犬養健君) これは私もう少しはつきり申上げたと思うのですが、恐らく私の言い方が悪いのであります。引継のときにスイツチを切つたからすぐ業務妨害にはなりません。これはすつかりそろつてこれだけそろつているから渡してくれという場合もある。渡せと言つて実は引継要員が準備態勢百パーセントにはそろつていない場合がある。個々の問題になるのです。私就任日が浅うございますから或る意味で一層責任を感じまして、その点いろいろ研究をしております。それで引継作業を断わつたからといつて直ちに威力業務妨害になるとは申上げていなかつたつもりです。結局この問題は個々ケースになりますので、先ほどの御質問のように法務当局の知性と社会的な常識というものが非常にものを言つて来ると思います。それは十分気をつけたいと思つております。
  30. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  31. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 速記を始めて下さい。
  32. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 労働省に伺うちよつと前に通産省政府委員がおられるので極く前提に一言お聞きしたいのです。今度の経過を見てみますと、経営者側が電産については各会社別交渉を元にして非常に強硬にこれを主張しておる。ところが炭労については殆んど十六社の主力が中央交渉をしておる。こういう点なんですが、そういう点に通産省側として会社側に何らかの指示をされたことがあるのか、或いは御相談なすつたことがあるのか、又会社側から了解を求められて、それを通産省としても賛成する形において行われておるのかどうか。これは電産と炭労関係と違いますので石原君だけからでも両方にまたがつた通産省としてのお答えができるなら一言だけお聞きしたい。
  33. 石原武夫

    政府委員石原武夫君) 只今のお尋ね、先ず電産側につきましては、お話のように個別交渉ということを経営者側が非常に強く主張しておりますが、これについて通産省からさような指示と申しますか指図というかさようなことは一切したことはございません。ただ会社側は、我々としてはかような通告を経営者側から労働組合側にやりまして個別交渉ということで目下交渉をしておりますという連絡は受けております。なおついでに石炭につきましては、これも同様全く通産省から交渉の内容等について指示をしたことは全くございません。
  34. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう一言だけ通産省の常識に訴えて聞いておきますが、通産省の常識では賃金問題は通産省の問題ではない、併し通産省から見ても同種の産業について或るバランスのとれた賃金という交渉は当然あるべきだ、こういうふうにお考えになつているかいないか、それだけです。
  35. 石原武夫

    政府委員石原武夫君) 今のバランスのとれた賃金というものは全く同額の統一賃金という御趣旨でありますのか、そうでなくて、各会社の間の実力と申しますか、その辺も併せてバランスのとれた、こういう御趣旨かいずれかちよつとはつきりいたしませんが、現在電気につきまして申しますと、料金制度は政府が認可をしております。その際には一応大体同じような基準で料金の査定をいたしております。併しこの査定は一応同じ方向ではやりますが、会社の現実の経費の支出というものは必ずしも一様じやありません。これは料金表を作りますときに、例えば或る項目につきまして同じ比率で査定するのが正しいということでやつておりますが、その会社がその費目について料金で定めたような経費の支出をしなければならんというようなことはございませんので、具体的には各経費が出たり入つたりというのが実情でございまして、従いまして各社の経理の実情はそういう意味からいつても一様ではございません。又御承知のように水に非常に影響をされますので、具体的な決算表を見ますと非常に大きな差が出て来るということは当然であるのでございます。従いまして一応政府といたしまして料金を定めますまで、実は最近のものは公益事業委員会等で五月にやつたのでありますが、その当時はさような各会社の間には当然差等を予想してやつておるわけではございませんが、現実にはそうなつて来ましようが、その範囲内において或る差が出て来るということは強いてとめる必要はない、具体的に労使双方話合で余計賃金が出て来るということも結果的にはあり得ると思います。
  36. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 質問が抽象的だつたから御了解なさりにくいということもよくわかるのでありますが、ところが通産省としては電気料金につきましては画一的に全国一本の料金をきめておる。そうしてそのときの電気料金を構成するところのコストはいろいろありましよう。併し一体労働賃金だけいろいろ会社の実情によつて違うだろうとおつしやつて、料金のほうは各社別に違つたものができないのだという考え方そのこと自体に私はどういうふうな相関関係を持たしておるのか、そういう点を伺いたい。
  37. 石原武夫

    政府委員石原武夫君) どうも甚だ御質問の趣旨がよく了解できないのでありますが、今料金をきめます場合には各社別の料金を作つておりますが、これは御承知の通り。従いまして非常に地域差ができて、そうした意味で非常に問題になつておるのでありますが、別に料金を作るときにも全国一本の料金ということではございませんので、これは九分割をいたしまして少くとも個別の料金になつておるのでありますが、その各社の料金を査定いたしますときは各項目については成るべく統一した見方で査定しておる。その会社の経理によつて余計出ておる、少く出ておるということはできるだけ避けるという方針でやつておりますが、ただ現在御承知のように九分割いたしましたし、個々の各社の経営は会社全体として必ずしも一様の結果を生ずるということにはなりませんので、おのおのの会社でそれぞれ努力をされていい収益状況、収支を得られるという場合もありまするが、その場合に賃金が必ずしも一様でなければならんということには考えませんので、おのずから当初料金を査定いたしました当時のように、大体各会社の収益状況、それに比例してとる、従つて賃金も大体出し得る賃金というものに統一されるという場合もあると思いますが、又具体的に各社の経営状況が必ずしも一様ではございませんので、個別的に或る程度違いが出て来るという場合もあるのでございます。これは統一がいけない、個別がいいというわけでは、ございません。それはその会社の実情によつて労使双方話合によつてきまるというふうに考えております。
  38. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう一言だけ。五月におきめになつた各社の料金については労働賃金についても一つ考え方を持つておきめになつたはずなんですが、そのときは大体どういうふうになつておるのか、一つ過去の事実を。
  39. 石原武夫

    政府委員石原武夫君) 現在の料金に織込みました賃金はその当時の賃金であります。それは現行賃金中労委の裁定できまつておりますが、それが一本の賃金でありましても、その当時これは勿論地域差は当然でございまするが、一本賃金の料金になります。
  40. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 今のに似た話ですが、結局去年の五月までに各社が同じ賃金中労委裁定でやつて来たのですね。今度の裁定に限つて特に資本家側がそれを要望しているようですが、そのことのために問題がまとまらんと言つてもいいくらいでストが延長している。新たに九分断にしたことは労働組合の進んでやつたことではない、今の政府の前身である吉田内閣のときにやつた仕事であつて、そういう九分断をしてもそのことのために労働者賃金影響を及ぼすようなことがあつてはならんことが真に織込まれなければならんと思う。で、それから実際に企業経営の状態が違うというようなことを言われるのですが、事実どういうふうに違つているかということと、それから常識的にはなお且つその様相と、更にどういうような将来対策を立てることがよろしいと考えておりますか。  もう一つは、今賃金の問題で言われたのだが、金のある所に働いている労働者は余計にもらつてもいい、今貧乏ならば同じ仕事をしておつても、経営状態が悪ければ賃金はもらえたいのだということについては、所管は労働省の問題になると思うけれども、通産省といえどもそれでは企業そのものの発展は期し得ない。そういう点の見解はどのように持つておられるか、この点一つ
  41. 石原武夫

    政府委員石原武夫君) 只今の御質問の第一点の九分割をされても賃金統一賃金でなければならんかというような御質問と思いましたが、その点については私は九分割の当時いかなるところの経緯がございますか存じませんのでそのいきさつについてはなんとも実は私からお答えいたしかねますが、現実の問題といたしましては、現状におきまして或る程度料金率では平等と申しますか統一的に考えておりましても、具体的に会社の経理状況は違つて来るということはあり得る。その場合に賃金が常に統一してなければならんということになりますると、それは労使双方のお話合で或る所は余計出すということができますれば、それはそれでもいいのじやないかというふうに思います。  それから現実の利益がどうなつておるかという点につきましては、今回の料金改訂になりましてからの決算がこの九月末です。今各社から我々の手許に上期の九月末の決算についての状況を集めつつあります。近いうちに若し必要でございますれば資料として各社の収益状況をお示しできると思います。極く短期間にまとめるつもりでおりますが、大体のところは来週早々にでもなれば各社別にこの程度の利益があるということをお示しできると思いまするが、本日まだ詳しい収益が出ておりませんし資料を持合せておりませんのでちよつと今お答えいたしかねる状況でございます。ただ概括的に申上げるといたしますれば、今年は非常に全国平均して上期は一割二分の豊水でございますので、各社とも収益状況は上期としては非常によろしいのでございます。なお公共事業令に基く規則によりまして渇水準備金というものを豊水から得た利益の一部で積立ててございます。それを計算しておりますが九社合せて大体四十億くらいになろうかと思つております。細かい数字は多少変るかも知れません。それで只今のところ上期におきましては相当各社とも収益の状況はいいものというふうに考えております。  それから今後の対策というお話でございましたが、私といたしましては、一応将来の問題でございますので私の或る程度個人的な見解になることをお許し願いたいと思いますが、例えば将来いつかの機会にやはり料金改訂という問題が起り得るかも知れません。その際に一体今のような賃金をどうするかという問題に先ずお答え申上げることは或る程度細かくはなるかと思いますが、これは今までは実績も統一賃金でございましたのでそのままその賃金を料金べースに織込んでおつたわけでございます。若しその料金改訂をいたします際に、各社では賃金が仮に整つておつたその際に、賃金をどうするかということになりますと、これは多少今後研究をしなければならない問題と思いまするが、私はその現実の賃金そのままを原価計算に入れることは必ずしも適当じやないのではないか。やはりほかの費目につきましても各社の収益は実績に織込んでおりますので、その間何らかの調整を考える必要があると思います。若しさようにいたしませんと、たまたま何かの関係で収益状況の悪い会社労働者は常に賃金が低いということになりますと、これは甚だ不合理だと思います。かような際には、やはり賃金についても一つ標準と申しますかさようなもので考えて行かなければならん。かように考えておるわけであります。
  42. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 炭鉱局長さんの操業の一部を中止した所もあるという説明がございましたが、どういうわけで中止してそういうことになつておるか、ちよつと伺いたいと思います。
  43. 佐久洋

    説明員佐久洋君) これは今朝ほど電話でちよつと連絡がありましたのでその内容が詳しくわかつておりませんのですが、いずれストをやめて交渉を継続するということだろうと思うのです。
  44. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 これは委員長にお願いしておきますが、通産省での炭労と電産スト経過について取り得た方法労働省がやられた方法はずつと一つ書類にして出して頂きたい。当然今日出て来るだろうと思いましたが、そんなことすらおわかりにならないと、御注文しておかなければならん(笑声)、こう思いましたので特に申上げておきます。  それから労働大臣にお聞きしたいのですが、先ほどの賀来労政局長説明労働大臣もお聞き願つたと思うのです。今度の労働大臣は非常に慎重に労働問題に対処しておられることはわきから見ててよくわかるのです。問題は、先ほど賀来労政局長が言われておるのですが、使用者側労働者側も権力機関介入をいやがつている。だからできるだけ中労委の活動というものによつてこの問題を解決して行きたいのだ。これは私、労働大臣もそうだろうと思いますが、先ほど賀来労政局長が言われた労働組合法と労働関係三法の改正に当りまして、従来労働省の官吏に現われた思想は権力介入がしたいという思想であることは実は万人が認めておるところなんです(「異議なし」と呼ぶ者あり、笑声)。それで独立後の労使の問題についてそういう基本的方針がおきまりにならんならば労働委員会を強化する。私どもは労働問題に権力機関介入することは、労働組合自身に政治闘争を非常に忠告しながら、而もみずから労働組合を政治闘争にいざなうということから、実はその点から労働調整法の緊急調整につきまして政府原案に対して修正を出したような次第なんです。  それから労働委員会の問題についても或る程度の我々の意見が出たわけなんですが、その点について今後とも労働委員会のあり方を尊重してこれによつて労使双方の問題が円満に解決する方向でもつてやることが、新らしい労働省としての御方針であるかどうかという問題を一つお聞きしたい。
  45. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 只今のお尋ねでございまするが、私は自分がよくわからないものだからというふうにおとり頂いても困るのでありますが、成るべく、中労委というものがあつてその調停なり斡旋なりしておる機関があるのだから、努めてその線によつてこうした争議解決を図つて行くということがいいのじやないか、こういうふうに思つておるわけです。昨日実は電産で双方当事者に来て頂きまして、勧告という意味ほど強くないのですが、中労委の線に従つてとにかく交渉をするという段取りにしてもらいたいということを申したようなわけで、これも私の気持ではそう労働省介入しているというような気持ではないつもりなんであります。  それから、只今お話の、過去において労働省の役人が介入を好んだ、こういう点については私まだ十分わきまえませんので、それは場合によつて何か中労委と打合せるとかいうようなことで介入する場合があるかも知れない、そういうことはないようにしてもらいたい、かように考えております。  又今後の問題につきましてはまだ私も就任早々で十分考えもまとまつておりませんが、努めて今申上げたような気持で行くのがいいのじやないか、こういうふうに考えております。
  46. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 余り、私みたいな労働問題ばつかりやつている者が、御新任早々の立場を考慮しないで御質問するようなことは私も避けたいと思う。実は権力介入ということは労働問題を決して円満に平和的に解決するゆえんでない。だからできるだけああいう三者構成の委員会を活用しその調停を尊重して行くという線は、まあこれはもう大臣におなりになりまして最初の日からおきまりになる問題だと思うのです。改めて実はその問題だけをお聞きしたいのです。まあ過去の労働大臣があなたの自由党の内閣で何度も変ることは我々として非常に迷惑なんですが、とにかくその点だけはつきり確認さしておいて頂いたらいいと思います。もう少したつたら具体的に申上げたいと思いますが、その点だけ確認したいので申上げたのですが、これは御異議がないと思います。  それでそういうふうになりますと、実は非常に実態的のものが労働行政プロパーとして出て参る。労働委員会を活用する基本的なものは何だというと、私は労使双方労働協約が常にブランクであつてはいけない、常に両方からの労働協約が締結されている、そうして空白時代があつてはいけない。その問題は労働行政の基本的なもので労働行政としても終始一貫そういうお考えであるべきですが、大産業については無論のこと、中小企業労働協約がないために非常に労働問題が正常に解決されないという憾みがある。これは労働省の一貫した御方針だつたと思うのですが、つまり労使双方に争点が起つたときには、労働協約でこれを労働委員会に持込むという約款が常にあるということは私は必要なものだと思うのですが、その問題に関してそういうものがあれば非常にいい、そういうふうな行政方針を今後もおとりになるのかどうか。その点は賀来君ゆつくりでいいのですよ、事務的の問題は。それで私はその点は今度もだから電産なり炭労なりにそういう基本的な線が立つていれば一方は当事者交渉はいやだ、或いは炭労については中央労働委員会なりその他に持込むのはいやだというこういう問題は出て来ないと思うのです。そういう問題について少し具体的の問題が起りましたから、最初に賀来君から実質上お話を願つて、それから労働大臣がお考え願つて御答弁願つて結構であります。
  47. 加来才二郎

    政府委員加来才二郎君) 終戦後におきまする労働組合労働協約につきましての考え方と実情について申上げたいと思いますが、数字から申しますと、昭和二十四年の労働組合法改正後労働協約締結率は非常に落ちて参りまして無協約状態が出て参りました。締結率が三四、五%まで減つてつたのでありますが、その後労働省といたしましては、御指摘のように労働協約締結促進運動というふうなものを実施をいたしまして、又労使双方考え方も非常に変つて参りまして漸次これが増加いたしまして、本年六月現在におきまする労働協約締結率は五二%という数字が出ているのであります。大産業は御指摘のように殆んど締結いたしておりますがやはり中小企業が非常に少いのであります。これはもう御承知と思いますが、実は終戦直後この労働協約締結につきましては、極左の諸君がソヴイエト方式と申しますか、さような意味合におきまする労働協約を経営者がまだ昏迷状態にありました当時におきまして強行して締結をいたしました。この労働協約は真の労使対等の協約と申しまするよりも、一方的な、人権宣言的な、僅か条文にいたしますと十条前後というふうな労働協約が多く結ばれて参つたのであります。これに対しまして、戦前から長い経験を持ち、且つ非常に労働協約締結権の獲得のために闘つて参りましたここにおられます重盛委員等の御関係の系統の組合におきましては、それに非常に反発をされておつたわけであります。で、さような経過が続きました結果労使関係の不安定が生じ、且つ又協約の精神から見まして適当でないということになりまして、極端な例を申しますと本労働協約は人民政府が成立の日まで継続するというふうな協約さえ出て参りました。そのような実情が出ましたので昭和二十四年に労働組合法を改正いたしましてさようなことのないように措置をとつたのであります。その結果漸次さような労働協約は破棄されて参りまして無協約状態というものが生じて参つたの一つ原因だと思うのであります。  もう一つ原因といたしましては、さような破棄状態が続いて参りますと共に、一方正常な労働協約を締結しようとする組合運動に対しまして若しさようなことがあつたならば、今堀木委員から御指摘のありましたように、労使関係の安定の基礎労働協約におこうというふうな行き方が一般的になりますと、折角労使関係を不安に陥れその結果経済界の撹乱を計り場合によりましては革命まで持つて行こうとする意図の者にとりましては極めてこれは不便であるというふうな建前からいたしまして、労働協約につきましては積極的に結ばないというような組合も出て参りましたがために、労使双方の間でさような状態から無協約状態というふうなものが生じて参りました。使用者側におきましても協約があつては便利が悪い、何とかして一方的な措置をとろうという又使用者も出て参りました。さような関係が錯綜して無協約状態というふうな現象が生じて参つたのであります。その後先ほど申しましたように組合法の改正及び労使関係の自覚と双方の力の均衡化ということが漸次出て参りました結果、又二三年の経験もありまして、やはり労働協約は結ぶべきであるというふうな意向がだんだん強くなりまして、それが労働協約締結率が向上して来た原因だと思うのであります。  併し問題はなお殘つておるのであります。一つ組合側にいたしましても使用者側にいたしましても、この労働協約の改訂期に当つて既得権を何とかして確保しようというような考え方がありまするし、それに対しまして一方ではこの際に従来のバランスを打破しようというふうなこともありまして、なかなかこの協約の問題のまとまりが非常に速度がゆるいというようなことがあるのであります。  もう一つは極左方式の考え方が極左方式であるという自覚なしに労働組合の中に残つておる部面もあるわけであります。例えば労使双方の間に紛争議が生じたときに、これに関連をいたしまして中労委に行くとか或いは苦情処理機関を設けるというふうなことは反対である、それは労働者の持つておる権利をみずから束縛するものであるというふうな極左の諸君の宣伝であつたにもかかわりませず、それをあたかも労働者としてとるべき金科玉条の態度であるというふうな考え方のまだ残つておりますために、紛争権を第三者によつて片付けよう、或いは苦情処理機関によつて片付けようとする傾向は、我々は常時努力いたしておりますがなかなか徹底をいたさないという状況であります。  更にもう一つは、実は労働委員会制度と関連をして来るのでありますが、炭労争議に関連いたしまして労使双方とも第三者仲介はこれを認めないという申合せ、そういう労働協約のもとに団体交渉を始めた今度の争議の特に理由は、過去五年間におきまする炭鉱調停が、大きな争議になりますると、最後的に司令部の介入によつて片が付いて労使双方とも極めて不満な経験を持つたということが一つ。もう一つ中央労働委員会ではいわゆる炭鉱の複雑なる賃金というものを理解し得るような適切な委員がなかなか得られにくいので信頼を欠くというふうなことがあつたと思うのであります。  さようなこともありましてなお現在締結率が五二%という状態にあります。併し労働省といたしましては、やはり堀木委員の御意見のように、何とかして紛争議が起れば第三者、併し起つた場合或いは起る前の平素の労使関係を正常な労働協約によつて安定しておくということは、最も適切であり且つ労働省の我々といたしましても是非ともこれは進めて行かなければならない問題であると、かように考えておる次第でございます。
  48. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 労働大臣は特にお付け加え下さることございませんか。
  49. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 私も今賀来君の答えを聞きつつだんだんわかつて来た点が多いように思うのであります。(笑声)お説の通りでありますから努めて正常な労働協約が確立されて行くように、こういうふうに私考えたらいいと思います。
  50. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私はその点で今度の争議に関して、炭労経営者側争議解決について平和的条項を入れた労働協約を結ばないことが、日本民主化の新しい線からみれば違つた方向だという、両者が反省する、又中央労働委員会が果してそういう欠陥があるならばそれを強化するという方向に向くことが当然であつて炭労だけの問題じやございませんが、そういうことについては労働省自身の従来の何と申しますか、労働行政の方向とも反するし、そういうことが起つて炭労のような殊に日本産業の大きな産業としての基幹産業、そういうものがそういう状態にあるということは非常に私は欠陥だということをお認め願わなければならない、こういうふうに考えるのです。ただ労使双方が頼らないことを、これは炭労についてはこの前のときにもそういうふうな情勢つたのですが、特にそういう点については労働省がお考えを願いたい点だと、こう思つて労働争議に関連して一つの基本的な考えとして申上げたのです。お考えおきを願いたいと思います。  それから第二は、労働大臣今度は御熱心だつたんですが、マーケツト・バスケツト方式で賃金を要求することは政治闘争だとお考えにならないだろうと思いますが、念のためにその点を一つと、それから今度の炭労、電産の争議が非常に政治闘争だと言われるのでありますが、その点についての労働省の御見解を一つ、この二つだけお聞きいたします。
  51. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) マーケツト・バスケツト方式ですが、政治的意味をというよりは、まだあの方式が十分なものと考えられない要素がからんでいるのだというような意味で今まだ私どもは考えない、こういうふうに考えております。  それから第二番目をちよつと……。
  52. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今度の電産、炭労争議に政治的闘争だと言われる分があるのですが、その点については労働省はどうお考えになつておりますか。
  53. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 根本としては別に政治的闘争だとまでは申しておりません。
  54. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 少しあいまいなんですが、私マーケツト・バスケツト方式そのものについての認識は持つているのでございます。ところがマーケツト・バスケツト方式で賃金を要求することは今の一般産業労働者賃金と比較し、それから日本経済が自立経済を達成しなくちやならんという一つの要請と比べてみると、その裏には政治闘争的な動きがあるのだと、こういうふうなことが世評にはあるわけなんです。それに対して労働大臣はどうお考えになつているかということと、それからもう一つの問題は政治闘争だとも思わないとおつしやるのですが、もう少しその点はつきり御見解をおもらし願つたらどうか、こう思うのでございます。
  55. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 今の方式そのものがという意味で私先ほど申上げたのですが、これをまあ各種の産業と申しますか、だんだん拡げて行つてやるやり方が政治的意味を含んでいるというふうに思われる節がないわけではない、こういうふうに思うのでございます。
  56. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ちよつと失礼します。今の御答弁はマーケツト・バスケツト方式そのものが政治的な要素を持つておると、こういうような御答弁のように私は承わつたのですがそうなのでしようか。
  57. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 方式そのものが政治的というふうには私は考えないが、これを何といいましようか、各種の場合にまとめてそういうやり方をして主張して行くというところに政治的なものがある。
  58. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうも私その点ちよつと御答弁が短いので理解しにくい所があるのですが、労働省が自分の生活をまあ何とか向上して行こうというのは正当な欲求だと思うのです。だからそれが一つのマーケツト・バスケツト方式をとつて行く、それが他産業労働賃金とは相当の開きがある現在は、そういう点は或る程度事実だと思いますが、それだからといつてマーケツト・バスケツト方式によつて高い賃金を獲得しようとすること、そしてそれが労働者が共感を持ちつつだんだん拡がつて行くということが政治闘争的な、政治的な労働問題でしようか。その点ちよつとよくわからないのですが、かく拡げて行くとどうもあなたの話では政治闘争になりそうな気がしましてね。(笑声)その点これは併し賀来君が答弁することじやないと思いますがね、労働大臣が答弁されることだと私は思うのですよ。(笑声)その点についてまあ併し必ずしも御自信がなければ一応事務当局に答弁さしても結構ですけれどもその点について一応労働大臣はどういうお考えになつているかということを承わりたい。
  59. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) これは人情で、割のいいものを主張する一つの例がある、これがいいならば我々もという場合がある。それは今のあなたのおつしやるようだと思うがそのつながりがどうかと、てんでんが成るべく条件のいいほうがいいというふうに考えることはあるが、その裏に現在ではちよつと社会的に考えてもどうかと思われるようなことをつながりがあつてやる場合に私はいけないのじやないか、こういうふうに思つたのですが、なお局長からもう少し……。
  60. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 もう少し説明して下さい、第一の基本方針を。
  61. 加来才二郎

    政府委員加来才二郎君) このマーケツト・バスケツト方式の要求自体について政治的な意図があるとか、或いはそれに関連いたしまして今度の電産、炭労争議についてもさような批判というものが特に使用者側においてあるように聞いておるのであります。この意見は一応別といたしまして先ず我々が見ておりますのは第一は、二点ありますが、一つは客観的にと申しますか見て参りますと総評がマーケツト・バスケツト方式をとつておること自体からはさようなものは出て参らないと思います。ただマーケツト・バスケツトの方式に関連して最低賃金制というふうな考えが出て参ります。でその金額は相当高い、現存の日本の経済状態からみまして払えないような業者が多くいる。経営者側はそれに対して経営をこわすものであるという意味のことを言つておるが、これに対して総評ではそれらの差額いわゆる払えないような状態、これは社会経済の全体の問題であるといつておるのと、もう一つは払えないような場合に政府がこれに対して補助金を出すべきであつてその財源は再軍備の費用、防衛の費用等々とにらみ合わすべきであるというところに目標が入つて参りますと、これは多分に政治的な要素を含んでおるという批判も私は一応もつともの批判と云わざるを得ないと思うのであります。  もう一つの観点は総評が二万五千円のマーケツト・バスケツトの提唱賃金方式によりまする賃金を提唱いたしておりますが、これの基礎を見てみますと、或いはこの考え方について単純に純理論的に来ておるかどうかという点についてやはり問題がないでもないと思うのであります。具体的な例を申上げますると、その算定方式におきまして、物価の倍率を総評は三八六においておるのであります。それから戦前九〜十一年の基準賃金というものを六十六円六十銭という計算をいたしておるわけであります。これで計算しますと、実質賃金というものは水準が三九〇倍ということになるのであります。これから計算が始まつて参りますと二万五千円という数字が出て参ります。ところがこの三八六という総評の物価倍率というものが果して客観性があるかということになりますと、これにはやはり問題がありまして、この倍率の基礎というふうなものをどこにとるかということによりまして違つて参ります。更にこの算式はL式を使つておりますという点、このL式によりますると、御承知のように戦争前に白米を食つておつた。従つて戦後今日においても全部白米で行くべきである、戦争前ではやみで買うと申しますかそういうような量は四合程度であつたものが現在は三升くらいになつている、それでも白米で計算するというような方式を加えて参りますと、非常に差額が出て参りまするし、基準の期間にいたしましても、昭和十一年の一カ年だけとつておりまするし、而もこの賃金額は六十六円六十銭と言つておりまするのに対して、その対象になりましたのは機械器具工業であつて、而も女子及び十六才未満を除いてわざわざ計算をいたしまして、このウエイトのおき方も又違つてつておるというふうな条件、殊にウエイトは六十六円六十銭と計算を出しながら、その取りました標準は七十円から八十円の給料者をもとといたしてとつておる。こういうようなことから考えると特に二万五千円という数字を出して参りましたその計算の基礎の内容において純理論的でないのではないかという批判があり得る。この方式を単に払える産業のみならず全産業に亘つてこれで断乎闘争をするというふうな行き方に持つて行きますると、どうしてもそこのやり方の基盤と申しますか、背景に政治的というものがあるのではないかという批判を受けましても、この点につきましては総評としてはよほどしつかりした反論をやらなければならないのではないか、かように考えるというわけであります。
  62. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうも労政局長は今電産やその他が要求しているマーケツト・バスケツトの内容を詳しく御説明つたのは有難いのですが、どうも併しそういう合理性から見たいろいろなデーターのとり方、こういう問題はこれは労働組合自身も反省しなければならないと同時に、労働組合自身が成長しない場合には、その客観的妥当性を持たない賃金という要求があることは、これは終戦以来どれをとつてもそうなんです。これは賀来君がよく知つておると思う。だからその内容、合理性から見てどうかと思われる点についてそれで闘争するからということを言われるのは、どうも賀来君としては甚だ失礼だが少しおかしな話です。もう少し悪口を言つてもいいのですが、今日は初めての労働大臣の下で悪口を言つては申訳ないからこの程度でやめますが、ただ労働大臣が先ほど言われたことは、これはまだ説明としては非常に誤解を招く点があるのです。つまり経済的要求、そうして労働者団結しようとする力、それが必ず全国的にもあるだろうし、他の産業との何もある、これは世界共通の動きで、それをそういう空気になつたからこうだとおつしやることは、私はまあこれは荒立てて取上げれば大した荒立て得ることだとは思いますが、今日初めておいでになつたので、その点について私は少しお考え直しをなさる点がなかろうか。そうしてもう少し御研究なされる点がないかという点を率直に私申上げておきたいと思います。  それと私がこう申上げたけれども、ともかくもマーケツト・バスケツト方式なり、又合理的、客観的妥当性が得られない賃金を要求して、それが各種の産業が結びついて行く形というものは政治闘争だとおつしやることは、これはもう非常に私は問題の点があると思う。先に賀来君が言われたうちで先ず納得できるというものは、再軍備をさせないのだというふうな形からいろいろな意図が動いて、それによつて一つのそういう理論的な生活賃金の要求が出て来ておるのだという点をはつきりすればともかくですが、賀来君が私は純客観的合理性のないのと再軍備問題との関係を今取上げられるのは、少し現在の労働問題の動きとしては早過ぎるのじやないかという気もしますが、と同時に大臣のおつしやつたこと自体が、あの形だけの御説明では非常に誤解を招く。今日は私時間がございませんから、この問題については他の委員から又お話があるでしようし、又労働大臣には常に委員会でお目にかかる機会がありますので、その点だけを特に念を押して申上げて御再考を促したい、こう思つております。
  63. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 私の考え直すべきところは私は幾らでも考え直しますが、私の言葉が足りんものだから、又言い廻し方が下手というのかも知れませんが、方式そのものについては全然さようには思わないが、それの動き方と言いましようか、そういうものを今は賀来君がいろいろ説明しましたが、それによつて政治的の意味を含むように思われる場合があるかも知れんという気持を私が常識的にちよつと考えまして申上げたわけであつて只今堀木さんのお話のように、そこがあいまいであると却つていけないということでございますれば、私も十分研究いたしまして間違いのないようにいたします。
  64. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今その問題についての再質問は私としては保留しますが、ほかの委員に対する御答弁で別にありますれば、それでも一向差支えありません。私の今日の質問はこれで終ります。
  65. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 労働大臣は衆議院のほうで待つておるそうですから、関連しておつたら簡単に……。
  66. 片岡文重

    ○片岡文重君 ちよつと簡単にお尋ねいたしますが、今の問題は非常に大きな問題ですし、恐らくこれはここだけで一存にお答えになると、大変失礼だけれども、今までの御答弁では閣議で問題を起すことに私はなるのじやないかと思う。よくそれは吉田内閣の性格を現わす問題になつて来ると思いますので、一つ十分に御研究頂きたいと思います。そこで問題は炭労、電産の争議を私どもとしては一日も早く解決して欲しいと思つておるわけですが、第三者介入労使双方とも欲しておらない。それから又成るべく自主的に解決をさせたい、これは全く同感であります。併し特に先ほどの労政局長の話を聞いておりますと、労働者側も苦しいながらも平静を保つて闘争を続けておるし、保安維持の状態労調法等の離反も先ずはない、需給関係もさしたる不安もない。だからこのままもう少し静観だと、こういうふうな結論に導かれたように思うのですが、ここで少し考えて頂かなければならないのは、アメリカや英国あたりの労働争議と違うということ、特に日本の炭坑労働者生活というものが極めて水準が低くて困難な状態に置かれておる。これらの諸君が今日以後なおこの苦しい生活に堪えて闘争を続けなければならない。これは果して労働省はどういうふうに考えておられるのか。それから更に経済再建の過程にある、而もこれが占領軍の手から離れて幾ばくもない時期に、こういう長期の争議が行われておる。これが経済の再建に非常な影響を与えるであろうことも申上げるまでもないと思うのだが、そういう情勢を十分に勘案した上に立つて、なお且つこの争議労使双方の自主的な解決がもたらされるまで、労働省としては静観をする態度であるか。労働大臣は昨日も勧告という程度のものではない、そういう強いものではないが、とにかく交渉に応ずるようにということを経営者側に提示した、労使双方に申入れられたそうですが、少くとも組合側としては交渉に応ずる態勢があるやに私は見ておるのだが、これに対してもつと権力的な介入をする意思はないとしても、更に好転して行く方向に考える余地は労働省としてないのかどうか。昨日の新聞なんかでは、中労委会長でさえ経営者側の意向に対しては極めて不満の意を強く表明しておられるように考える。労働省がこれに対してどういうふうに考えておられるのか。なお、この静観の態度を続けて行くのかどうか、まあこれだけ一つ御答弁を頂きたいと思います。
  67. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 炭労関係のほうでこのままいつまでも放つておくかというようなお尋ねに承わつたのでありますが、先ほど局長から申上げましたのは、従来の経過と、なおこの両当事者からの申出もない、希望もないというので中労委のほうに斡旋調停というような段取りにまだなつていない、とこういうふうに答えたわけでございまして、併し今お話のように政治問題等もありまして、又国の経済問題等を考えましても非常な不利なことであることはお話の通りでございまするが、今少し様子を見て、或いは中労委を介してでも何とか方法を講じなければならんような場合に立至らんとも限らないと思いますが、先ほど局長から申上げたのは、今のところまだ私どもとしては出て行かないというふうに御了解を頂きたいと思います。  それから電産の関係のほうで経営者のほうが意地張つておる、中労委会長も、そういうふうな意見を出しておるというお話がございましたが、この点は非常にむずかしいと思うのでありまして、両者の主張が、少くとも交渉に対する主張がぶつかつたというよりも行き違つておるような恰好になつておるのでございます。併し組合側お話のように統一交渉ならばというので、いつでも会長の下に交渉してもいい、こういうふうに言うておりますし、経営者側は各社別、こう言うておりまするが、一応中労委会長調停案を出しておるのでありまするから、その線に沿うて交渉に入ることが最もいいのではないかという意味で昨日は申したのでございます。又経営者の側が外しておるというふうに世間で見られない限りもないので、そういう点については十分考えなくちやいかんのではないかという意味を附加えておいたのでございます。ただどちらがいいとか悪いとかいうことを私としては只今申したくないのでございますが、そういう点については世間から見られた第三者の判断があるのだから、それにそういうこともよく考えてやらなければいけないという程度に話しております。
  68. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは労働大臣についての質問まだおありになるかと思いますが、衆議院のほうで先ほどから待機して持つておるそうですから……。
  69. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 今日はこれで打切りですか。
  70. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) いや、あと法務省の刑事局長が…。
  71. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 どうだね賀來さん十分ぐらい残つて二つに分れてやつては、……大臣がこちらにいれば一番いいが、一言、二言聞いておきたいことがあるんだが……。
  72. 加来才二郎

    政府委員加来才二郎君) はあ。
  73. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それではさように……。
  74. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 問題は昨日労働大臣が両方を呼んで要請したその最後的結論をもう少し明確に、特にいわゆる経営者側のその結論を一点と、それから炭労、電産の争議に対して政府はどう考えておるか、労働省が基本的に一体どう措置して行こうと考えるか、どうしなければならんかというその結論を一応出して頂きたい。それから特に今度の電産の問題で一番問題になつておるのは統一賃金統一交渉、この問題であるが、これは二回、三回に亘つて会社側が蹴つておるということ、このことは表面常識的には我々にもわかるが、その真意を労働省がわかつておるか。そうしてこの統一交渉統一賃金労働省としてはどういうふうに考えておるか、これが一点。  それからこれに関連して、九月六日に中労委の電産調停案の第七項の中に各企業の状態云々というような字句が用いられておるように聞いたのですが、企業別交渉をああいう字句を使つたことによつて暗示されておるように私は考える。統一交渉を主張する電産労組の言い分を一応認めておるように見えて、実際は企業の個別の交渉に引込むもののように見えるがどうか。中山氏を中心とするような労働委員会で私はさようなことはないと考えるが、ここでも統一賃金で同じ労働をやつても、若し経営状態が悪ければ、若干低い賃金でも止むを得ないのじやないかというような思想が現われているやに考えるが、その点労働省はどういうふうに見ておられるか。もつと突込んで言うならば、この条項を入れたことによつて労働省あたりの、或いは中労委との話合い等があつたのではないかというふうにすら考えられる。その点があつたかないかという問題を先ず四点ばかり賀来さんから聞きたい。本当は労働大臣から聞きたいんだが……。
  75. 加来才二郎

    政府委員加来才二郎君) 第一点につきましては、大臣組合側に対しましては中労委調停案中心として交渉に入りたい、但しその場合には四つの条件があるということを組合は言われておる。できたならばその条件にこだわらずに中山委員長の斡旋の下に交渉に入られてはどうかという要請であります。それに対し組合側は直ちにそこで意向を表明いたしまして、我々の四条件というものは何ら調停案の趣旨から離れたものではないのだ、どうも条件にこだわらずということの言われ方が納得できないが、いつでもその条件を以て交渉に応じ、或いは斡旋に応じる用意があるという意思表示をされて帰つたのであります。経営者側に対しまして大臣からは、各社別賃金各社別交渉を言うておられるが、中山会長もそれぞれ考えておられることだし、専門的に従来の御経験もあるのだから、中山さんの調停案中心として交渉に入つたらどうか。特にこの職権斡旋等の措置を講ずるのを待たずして自主的なさような判断をされてはどうかということを申されましたのに対して、経営者側は一応帰つて相談をいたしまして御返事をいたします、こういうことでありました。その返事については、回答に時間的な期限があつたかというふうな意味でありましたが、これは大臣といたしましてはさような条件を付けておりません。併し経営者側はできる限り早くという意向でありました。我々今朝十時から経営者は協議をいたしておるということは聞きましたが、まだ只今現在で私のほうには返事があつたという連絡はございません。  第二点の炭労と電産の争議に対しまして、労働省は今後の措置はどういうことを考えておるかというお話でありますが、基本は、何とかして争議解決を図りたいという基本的な考え方は捨てておりません。それと同時に、政府の強権によりまする介入は極力避けたい。せめて第三者の斡旋でやつてもらうならば、一番そういう慣行が確立することが望ましいという考え方は持つておるのであります。併し一応大臣も申されましたように、炭労にいたしましても、例えば目下の需給関係ということについては、通産省においてそれぞれ措置されておりまするが、併しこのまま進みまして、適当な時期にぎりぎりのところで解決いたしましても、来年になりましての石炭の炭価の問題等を考えて参りますと、これは長期に亘りまする観察から見ますと、さようにいつまでも放つておくことができないし、労働者生活に対しまする影響も差当りは平静でありまするが、これがやはり長期に亘りますと、長期の影響を受けて来る。例えば一カ月或いは四十日に亘つて賃金が入りませんと、今全くぎりぎりの賃金をもらつておりまして、二日休んでもすぐそれがこたえるという程度賃金でありますように聞いておりますので、今度仮に何%か上りましても、今後一カ年間は賃金が上らなかつたと同じような結果になりまするし、更に組合が最も強力であるべき一つ条件は、争議資金を十分に持つておるという力の強さでありますが、これを全部使い果して参りますると、これはなかなか回復に困難であります。特に炭労は長年かかつてこの争議資金を蓄えておつたのであります。さようなことから申しましても、余りに目の前だけの考え方でこれを考えるわけには参らん点があるのではないかというので、特にこの四、五日或いは一週間あたりの動きにつきましては、今日以前に比較いたしまして相当重大な関心を持ちましてこれを注視いたしておるという状況でございます。  第三点でありまするが、電産の経営者統一賃金統一交渉に反対いたしまして、各社別賃金各社別交渉をと言つております。言うところの気持はわからないでもありませんが、併し全部がそのまま了解できるとは考えておりませんし、殊に差当つてこの争議第三者に対しまして相当の影響を与えておりまする今日、自己の主張を全面的に強く持ちまして、そうして交渉に入らないというふうなことにつきましては、大臣も申されましたように、労働省としては遺憾に考えておるのであります。二の賃金の、会社が主張いたしまする方式が是か、或いは組合の主張しておりまする方式が是かという点につきましては、いろいろの観点で批判なり議論なりはでき得ると思いますが、御承知のように労働省といたしましては、基本的に賃金に対しましては二つの考え方を持つております。一つは、労働組合法に基きまする団体交渉によつてこれをきめて行くという方式のもの、一つは、基準法の定めで、まだ具体的にはなりませんが、最低賃金制ということを考えて行くという二つの線を持つておるわけでありますが、前者のきめ方で電産の賃金方式は定めらるべきである。従いましてどちらにきまりましようと、或いは両者を合せたようになりましようとも、これは介入をすべきではないという考え方を持つておるのであります。この中山委員長調停案の第七項に御指摘のように、各社別でやつてもいいではないかという意味のものが付いておることは了承いたしております。如何なる意味かということを予測することは、解釈を我々がやることは適当でないと思いまするが、少くとも中山会長のなされました考え方を我々が聞いておるところによりますると、会長考え方としては、各社別賃金で行くべきであるという考え方の下に言われてはいないようであります。調停の過程におきまして、さような意向はないのかというふうなこともたびたび聞かれておりまするが、経営者側からその問題について具体的な資料の提出もなかつたし、結局調停委員会といたしましては、やはり現行の賃金の率を上げて行くという形を原則といたしておるようでありまするが、併し会社が各社別になつて参つた以上、各社別といいますか、独立採算制をとつた以上、この方式で払えないものがあるならば、この点についても考えていいのじやないかという意味で、第七項が付いたように承知をいたしております。従つて基本の考え方でかくあるべしという意味の調停案ではなく、実際の実情を基礎としての調停であるというふうな考え方であるというように聞いておるのであります。  この各社別の問題につきまして、労働省中労委に対し、かくあるべしという意思表示をしたかというお話でありますが、これは基本的な考え方につきまして、我々は先ほど申しましたような態度をとつておりますし、特に中労委という機関に対しましては、その独立性というものを十分尊重といいますか、完全に尊重するという基本的な態度をとつておりますので、その調停案についてかくかくのものを出してもらいたいと言うはずがございません。さような事実はないと承知をいたしております。ただ電産の組合の諸君が労働大臣に会いまして、さようなことをやつたのではないかということについての抗議がございました。その席に私は立会つておりませんでしたが、基本的な考え方は、労働省といたしましては動かしていない。即ち労働委員会の裁定については完全に不介入態度をとるべきであり、労働賃金というものは、これは団体交渉によつて定めらるべきものであるという考え方を動かしていないのでございます。以上お答え申上げます。
  76. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 一番重要な統一賃金統一交渉の問題を大臣が……。(笑声)その問題はただいずれがいいか、例えば電産の諸君が主張しておることが正しいのだ、労働省としては当然そうあるべきだと考える。その考え方は、もう少し労政局長としてはぴんと出て来んと、新らしい労働大臣を迎えて、そういうことを余り書いてもらつては困るが、教育をする役割を持つ労政局長として、その考え方大臣はさつき行き違つた点に対してと言つたが、その行き違つておるということは、統一交渉をするか、単独交渉をするかという点で行き違つておるのだ、この行き違つておるというのは双方に言い分があつてこういう解釈をしておるのですけれども、これは逆で、やはり統一交渉一つで、特異なものは統一交渉の中で別交渉をするものである。これは労働組合交渉の定義である。そのくらいのことは賀来労政局長から教えて頂き、そういう方向付けをしなければならんように私は努力してもらいたいと思います。いろいろ申上げたいことがありますが、時間もないから打切ります。その点一点ただ統一賃金がさつきも言つたように同一作業をして、極端なことを言うと、九分断にしたら一つの分断の重役陣が濫費をして非常に行詰りを来たしてしまつた。そのために労働者賃金を下げるということがあつていいかどうか。これは労働省としてはいかんと言うだろうと思いますが、その点明確になつていないから、その点一言だけ言つて今日は終りにします。
  77. 加来才二郎

    政府委員加来才二郎君) 重盛委員の御質問の趣旨はよく了解できるのであります。特に会社の経理のみに労働者賃金が依存していいかということになりますと、これは我々労働省といたしましてはそれでよろしいというお答えはいたしかねますし、先ほど申しましたように、基準法の趣旨もありまして、基本的にはやはり最低賃金制というものを何とか早く作つて行かなければならないという態度をとつているわけであります。ただその範囲をずつと上廻つて参りますると、目下のところはやはり団体交渉で行きたい、行くべきであろうという考えを持つておりまして、理論的に申しますと、この点につきましては、我々といたしましても意見は持つておりまするが、特に目下電産の問題がこの問題を中心にして非常に微妙な段階に入つておる際でもございますので、意見の開陳につきましては遠慮さして頂きたいと思います。
  78. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) それでは先ほど来法務大臣について御質問がございました点が一つつておるのでありますが、賀来労政局長に一点だけお伺いいたします。それはこの間から本会議で総理大臣労働大臣通産大臣法務大臣等に質問がありました、この各氏の労働問題についての答弁の中で、法務大臣から簡単に威力業務妨害罪という言葉が出て参りました。先ほどの御答弁を聞いておつても、これは恐らくここに岡原刑事局長もおられますけれども、岡原刑事局長としてもわかりにくい御答弁であつたと私は思うのでございます。そういう問題が出て参りますことについて労働省としては好ましいという工合にお考えになりますのか。それとも争議権の正当な形については法で以て関与、或いは権力で関与すべきでないという御答弁からしますならば、好ましくないとお考えになりますか、その点を一つつておきたいと思います。
  79. 加来才二郎

    政府委員加来才二郎君) 労働省立場労働者団結権、団体交渉権及び団体行動権につきまして、法の定めるところでこれを擁護して行かなければならないという見解を持つておるわけであります。従いまして他の法律なり、法律の措置によりまして、この行動権が弾圧され、或いは侵害されるというふうなことに対しましては、やはり断乎たる態度でこれに対処して行かなければならない、さように考えておるわけであります。ただ問題は、さような権利擁護の立場にありまするが、同時に労働者が権利を濫用するということに対しましては、これを厳に戒めまして行かなければならない。と申しますのは、濫用をやつておりまするうちに、社会の批判にあいまして、みずから持つておりまする権利まで制限され、失うような状態が出ないとも限らない。そのような意味におきまして権利の濫用を防止すべきである。特に公益性の強い事業におきましてはさような考え方を強くその組合は持つてもらいたいという考え方でおる次第でありまして、併し具体的な問題になりますと、これが非常にむずかしい点も出て参りますので、検察当局を御信頼申上げつつ、常時我々のほうと検察当局と連絡をとつて、その遺憾なことの起らないように努力をいたしておる次第であります。
  80. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) その点については、これは要望だと思うのでありますが、労働省労働者の理解者であり、或いは擁護者でなくなつたならば、労働省はいらなくなると思うのでありますが、最近の労働行政については多少反省を願わなければならん面がなきにしもあらずと考えられますので、その点は要望申上げましておきます。  それから僅かな時間ではありますが折角残つて頂きました岡原刑事局長にお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、先ほど来の法務大臣の御答弁によりますると、業務引継態勢ができたときに、引継要因が十分揃つたか否かという点に威力業務妨害罪成立成否の鍵が一つある、こういう御答弁だつたかのようであります。それからもう一つ保安電力を切つたような場合には業務妨害罪が成立するのじやないか、具体的にそういう御答弁しかなかつたと思うのでありますが、威力業務妨害罪を規定しました刑法二百三十四条の構成要件を考えるとき、業務引継態勢ができたとかできんとか、それから保安電力を切つたとか切らないとか、そういう問題はこれは構成要件とは直接関係はないように私は思うのであります。これはむしろ文学のほうにお詳しい法務大臣として或いは法律的な表現に十分でないことはわかるのでありますが、法律的に一つ刑事局長から明らかにしておきたいと思うのであります。
  81. 岡原昌男

    説明員(岡原昌男君) お尋ねの点は御尤もでございます。先ほど法務省の大体の考え方を申上げましたが、これを刑法論的に法律的に若干敷衍して申上げますならば、刑法に定めますいろいろな構成要件、例えば今御指摘の二百三十四条の威力業務妨害罪につきましては、この構成要件を充足したから直ちにこれを処罰するというふうなわけではないのでございます。それが同時に消極的な結果といたしまして、違法性を阻却しないということを条件とするわけでございます。で卑近な例から申上げますと、例えば人を殺した者は死刑、無期、若しくは三年以上の懲役に処する、例えば人を殺したら全部そのようになるかというと、例えば死刑執行人の場合は自分の正当な業務行為としてこれをやつておる。又正当な緊急避難、或いは正当防衛といつたようなことで人を殺した場合には、これ又違法性を阻却される、これが刑法三十五条以下に規定されている趣旨でございます。そこで一つ争議行為をやります場合に、それが同時に刑法の法規或いはその他の処罰の規定に触れる場合がございます。これは客観的ないわゆる構成要件を充足する場合がございます。併しながらそれが同時に違法性を阻却される場合があるということが労働組合法の一条二項に書いてあるわけでございます。この労働組合法の一条二項は私どもの見解を以ていたしますれば、この法文がなくても刑法の一般原則の適用するところによつて当然行くべき筋合のものであるというふうに理解しておりまするが、なおこれは明確化させるほうがよかろうというので、この組合法の一条二項という規定が設けられたと理解しております。従いましてこの規定の有無にかかわらず争議権の正当な行使によつて客観的には刑法その他の刑罰法規に触れるかのごとき形を呈する、つまり構成要件が一応充足される場合におきましても違法性が阻却される場合がある、かように理解しておるわけでございます。で、今の引継態勢の整つた場合にいいとか悪いとか、或いは保安電力スイツチ・オフの場合はいいとか悪いとかいう問題は、つまり違法性の問題になつて来るわけでございます。御承知の通り違法性と申しますのは、その事案、事案によりまして労働争議行為の、例えば労働争議の問題を申上げておるのでありますから、それに限極いたしますと、争議行為一つの態様がその当時の争議の実情に照しまして果して許される限度であるかどうか、憲法において許される限度であるか、又労働法規その他で制限される点はあるかないかというような点が問題になるのでありまして、従いましてさような労働法規に違反するような場合、或いは誰が見てもこれはけしからん、都合が悪いといつたような場合には違法性が阻却されないというふうなことになつて参るのでございます。  今誰が見てもというふうに、非常に通俗的な言葉を申上げましたが、違法性阻却、つまり刑法三十五条以降の規定の根本思想は結局そこでございまして、或いは諄風美俗と申し、或いは通常人の常識とも申しますが、要するに誰が見てもいけないことはいけないんだ、これは非常に法律的には正確でございませんが、そういつたような表現で申上げるのが一番わかりやすいじやないだろうか、さような場合に違法性が阻却されないわけでございます。従つて只今申上げました引継態勢が整つたにかかわらず、それを排除してなお且つ無理にスイツチを切るというような場合には、これは最近の判例が幾つか出ておりますけれども、いわゆる生産管理的な一つの場合といたしましてこれは違法であるという判決が出ております。最高裁判所の判決が出ておりますが、さような判決が適用される限度におきましてはやはりそれは違法性を阻却されないということになるだろうと思います。ただその判例と申しますけれども、或る事件についての判決でございますけれども、それが場合が違つて来ると、違つた適用があるということをまた留保しておきたいと思います。
  82. 片岡文重

    ○片岡文重君 これは抽象的にははつきりその説明は私はできないと思うのです。こういう問題については、それだけに今度は逆な立場に立てば、それだけに利用しやすい言葉であつたと思う。而もそれが司法の最高責任者である法務大臣から極めて軽やかに出された言葉である。そこに我々としてはやはり聞き逃し得ないものがあつたと思います。そこで御都合の悪いのを強いて残つて頂いてお尋ねするのですが、違法性阻却の問題にしても、例えば労働組合法の第八条に、損害賠償の責めには応じなくてもよろしい、請求ができないのだということがはつきりしてある。それから第一条第二項に対する今局長の御解釈、これは私はおおむね同感だと思うのですが、こういう明文がなくともわかり切つておるにもかかわらずあえて触れてあるということは、そういう間違いを起しやすい、或いは利用しやすいときにも、なおそれを防ぎ得るというために私はなされたと思うのですが、今の争議に当てはめて考えた場合に、まあ引継態勢の有無が条件にならないというお話でしたから、大体了解はできるような気もするのですが、例えば争議行為というものは申上げるまでもなく一つのこれは不法行為ですね。正常の場合における違法行為である。それをやつて争議をするのが争議行為なんだから、不法行為なんだから、たとえ使用者側において引継態勢がなされようがなされまいが、職場を放棄して組合のほうで対抗しておる場合には、その引継態勢の有無、それから職場の何といいますか、開放といいますか、そういうような点は全然この場合考える余地はないというように我々は考えたいと思うのですが、そういう点についてもう一つ突つ込んだ説明をして欲しいのです。
  83. 岡原昌男

    説明員(岡原昌男君) 先ほど引継があるかないかということは犯罪の成否には直接の影響がないとは申上げませんので、要するにそれも違法性を阻却するかどうかの判断の重要な資料になるというわけでございます。そこで只今お話のございました引継態勢が整つて、そうしてなお且つこれを引継ぎさせずにスイツチを切ることはどうかという具体的なお尋ねでございますので、その点に局限してお答えいたしますと、例えば引継態勢が整つたと一口に申しますけれども、例えば技術の能力のない者がやつて来た。或いは未成年のおかしなやつが引継ぎだと言つてつて来た。会社からの委任状はあるけれども、果して本当かどうかわからないという場合もあろうかと思います。さような場合において、労組側においてこれはこんなやつに渡したら大変なことになるというようなことを以て、引継ぎさせなかつたというふうな場合には、多くの場合これは逆に違法性が阻却される、罰せられないということがあり得ると思います。それから又逆な場合にいたしまして、引継態勢が整つて、そうして而もそれ相当な技術者がやつて来た。従つて客観的には引継ぐほうがよかつたのであろうというふうなことが言われる場合におきましても、当事者側がその人間の顔を知らない。成るほど委任状はあるけれども、変なよぼよぼな爺さんがやつて来た。で昔の技術者というものを知らない場合に、こんな者に渡したら大変なことになるのじやないかという場合がこれ又あり得ると思います。従つて具体的な事案、事案によりまして、第一には客観的にさようなことが、引継態勢が整つたかどうかという問題が一つあることは事実、それが整つたと思つたか、或いは整わないと労組側で思うかについて合理的な理由があるかないかということが更に問題になるわけであります。そういうような細かい点が一一問題になりますが、一概に申上げますと、非常に誤解を招く恐れが相当ございます。そこで実は私どもといたしましては、割切つてこの場合にはなる、この場合にはならんと言うことは努めてこれを避けるようにいたしておるわけでございます。御了承願います。
  84. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 今の御答弁に関連してお尋ねいたしますが、先ほど大臣はよいと思つた場合には犯意が認められないだろう、犯意阻却という言葉を使いましたが、そういう言葉を使われました。そうすると今の設例の場合に例えば引継ぎに来たとしても、それに渡さないことのほうがむしろよいのだと、こう考えたのなら犯意も、それから違法性もなくなるのじやないか、こういう御説明だつたと思うのです。もう少し具体的に例を挙げますが、例えばこれは変電所の中でどこのスイツチがどこに行つているかという、こういう点はこれは同じ会社でもなかなかその変電所の事情に通じている人でなければならんだろうと思う。それから又考えられるような、よその会社から電気技術者がやつて来て引継ぎをしたいと、こういう場合でもその引継ぎがいいか悪いかということは技術者として考えて見て、これは問題になるだろうと思う。そうすると犯意の点からいたしましても、犯意があるかないか、それから条件からいたしましても、言われるような違法性を生むような態勢ができたということはなかなか困難たということは言えると思うのですが、私が尋ねておつたのは、そういう引継ぎ態勢ということを言われるが、それはまあ違法性に関係あるかも知れませんが、一応三十五条以下の原則的な問題は勿論当然これは貫かれているとして、その上で構成要件を問題にするわけですが、威力を用い、人の業務を妨害したという構成要件が二百三十四条の構成要件になり、作業場に、そうして引継ぎに来る人にしても、先ほどのように或いは外部からか、或いは事情を知つた者がやつて来るということは十分考えられないだろう。そういう場合に引継ぎがなかつた、或いは何々スイツチを切つたとしても、それを威力業務妨害罪の構成を充たしたというわけにはならないのじやないか、こういうことを申上げたわけなんでありますが、その点もう少しはつきり御説明願います。
  85. 岡原昌男

    説明員(岡原昌男君) 刑法第二百三十四条におきます威力の解釈につきましては、若干の学説上の争いがございます。併し大体におきまして通説とされるところは、判例も同じ態度をとつておりますが、他人の自由意思を制圧するというふうな力を申すというふうに申しております。それでは具体的な、そのような場合に他人の意思を制圧するような力があつたかなかつたか、これは先ず今御指摘のように構成要件を充たすかどうかという先ず最初の問題でございます。これに当らなければ構成の問題も何も起つて来ない。その点はお尋ねの通りでございます。そこで具体的の場合にそのような威力が用いられたかどうかということを判断するわけになるわけでございます。そういう場合にはスイツチを切る切らないは、すぐ威力云々には結びつかないだろうというのが通説でございます。その点も若干争いがございます。そこでさように理解いたしますと、さようなスイツチを切ること自体が威力であるかないかということがむしろ消極的に解釈するということを前提にいたしますれば、とにかく引継人が来た場合にこれに対して最も明白なる場合は暴力をもつてこれを拒否する。これに次ぐものといたしましては、多数の人間が今にも暴力を使うがごとき態勢を示して近寄りがたいような姿を見せるというような場合、それからだんだん進んでどの程度までによいか或いは犯罪になるかということになりますと、これ又個々の問題で相当分れて参ります。そこでさような構成要件が充足したことを第一前提といたしまして、更に問題になるのが、それが争議権の範囲として許されるかどうかという二段目の問題になつて来るわけでございます。そこで暴力を使わない場合、労働組合法第一条二項の但書に当らないような場合、それで第一の判断が出て参ります。暴力を使つてしまえば当然違法状態が出て参りますから、これは問題になりません。それから今度は、第一条二項の本文で受ける、これが一つ段階といいますか、限界がございます。そこで又具体的な判断が出まして、若しそれが争議行為として設される限度であると認められれば、それで許される。かようなことになつて来るわけでございます。それからもう一つ、本人たちがそういうことをするのは当然である、或いは許されるというふうに思つた場合には、それで犯意が阻却されるというふうな先ほどの大臣お話でありますが、これは若干敷衍して申上げなければならんのですが、この或る行為を許されるということを本人が言えば、それで全部許されるのかというと、これはさようには参らんわけでございます。例えば人の物を盗つて逃げた、実はあれは自分の物だと思つておつた、そう言えばそれで罪はなくなるのかということになりますと、これは問題でありまして、要するに具体的な事案に応じて弁解として、それが立つか、立たないかという証拠との関係一つ出て参ります。そこでそれの証拠上それが認められる、例えばこの発電所の場合についてこれを申しますれば、或る機械がときどき故障を起す、その故障の箇所が非常に重要なところであつて、而もときどき思わざるときに発生する、それをよく承知しておる従業員が、この故障のしよつ中起る機械は放つておいたら或いはバネが飛ぶかも知れない、これはスイツチを切つておかなければ危いという合理的な理由があれば、それは当然許されることになる。併し非常に精巧な自動装置の付いた機械、十時間や二十時間勤務員がおらなくとも、おのずから調整されて、これが廻つて行く、そうしてそのときの天候状態、水の状態、その他で別に特に動くような様子も見えないというような事情にかかわらず、引継ぎ態勢を拒んで、これを切るというような場合においては、又別個の観点から見なければならんような場合も出て来ないとは限らないわけでございます。さような観点から具体的にたとえ一つスイツチを切るといつたような行為でも分れて参ります。先ほどから何度も申上げておる通り、一一判断して行きたい。それだけに最後に申上げたいことでございますが、私どもといたしましては、これらの事件の処理については十分慎重な態度をとつているわけでございまして、暴力行為のあるような現行犯の場合は格別、然らざる限り慎重に上のほうと一応協議をするようにというふうな措置をとつております。
  86. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) そこで大臣の答弁の半分、それから今の岡原刑事局長の答弁を聞いておりますと、正当な労働争議としてなされる場合には電産争議の問題といえども、又その他の場合といえども、威力業務妨害罪というものが成立するということは極めて少なかろう、こういうことが言い得ると思う。それにどういういきさつであつたか知りませんけれども、新聞記者会見ならばとにかくそういうものが過去にあつたと思いますが、本会議において威力業務妨害罪というものを軽々に、私どもに言わせると軽々でありますが、軽々におつしやられるということは、これはやややはり軽卒といいますか、そういう政治的な印象を受けるわけなんです。私は大臣を補佐して、そういう答弁をなさしたのは誰であるか知りませんが、法務省として不謹慎であるということは言い得ると思う。そういうようにこれはお思いになりますか、それとも威力業務妨害罪をどんどん作つてつて行こう、こういうおつもりなのか、その点を一つ伺いたいと思います。  もう一つは時間がありませんから簡単に伺いますが、さつき四国の例を二件ほど、こういう問題があるかのような御答弁になりましたが、これは詳しくその事例を申上げる時間もございませんけれども、その現場においては殆んど問題にならないようで来たものを、検察官が以後において相当問題にしておられるかのように私ども承知しておるのです。而もその問題が席上で大臣から一つの事例として決定的のものじやないが、威力業務妨害罪に当るかも知れないという事例として述べられたということはこれ又甚だ私不謹慎だと思うのです。この点について岡原局長からはつきりした御答弁をお願いをしておきたいと思います。
  87. 岡原昌男

    説明員(岡原昌男君) 先般の本会議におきまして大臣にあの答弁をさせましたのは私でございます。実はあの答弁を用意いたしました事情は、あの時の質問が、速記録をお調べ願うとわかると思いますが、亀戸か何かの変電所において、一旦引継態勢が整つて、従事員の交替があつた。そうしてその後に前の労組員が又行つて、そして会社側が管理しておる機械を、スイツチを切つたというふうな質問でございました。さような場合におきましては、これも速記録をお調べ願いますとおわかりと思いますが、多くの場合という留保をつけました。先ほどの生産管理の判例の趣旨に則りますと、多くの場合それは違法になるわけでございます。そこでさような場合においては、業務妨害罪の成立がある場合も多かろうと、さように御答弁申上げたはずでございます。従いまして具体的な事案については、この多くの場合に当るかどうかということを、違法性とするかどうかという観点から検討する必要があるということになります。  四国の事件につきましては、たしか高知県の管内の、分水第一と、分水第二の、この二つの発電所が問題になつたのでありますが、たしか引継態勢が整つて引継を要求した際に、ピケ・ラインを張つて、そうしてこれを妨害したという事案であつたかと思います。現地からの報告が非常に簡単な電報でございますのでわかりませんですが、私どもといたしましては、先ほどから申上げましたように、一応威力による業務妨害という構成要件を充足する以上は、それが違法性を阻却するかどうかという点を更に検討しなければならん。そこで更にこれを慎重に検討する必要があろうかということで着手したものと考えております。但し身柄の処置につきましては、こういう際でもございますので、勿論在宅のまま、身柄を引張らず、単に事情を聴取して調べをするというような措置をとつておるのでございます。従いまして特にその事情がはつきりいたしまして、違法性を阻却するという条件が出て参りますれば、それで結構なことだと思いますし、又恐らくかような事案の処理については、具体的に今回の争議の進行状況とも睨み合せまして、更に慎重な態度をとることと存じますが、なおこの点は最高検のほうにも申伝えるつもりでございます。
  88. 片岡文重

    ○片岡文重君 時間がありませんから……。今の問題は、今後の労働運動を進めて行く上に非常に重大な問題になると思いますのですが、亀戸の問題、四国の問題等につきましては、その経緯、経過の、当局で携わられた結果まで、一つ印刷か何か、書きものにして、資料として御提出を頂いて、なおそれによつて次の委員会等において、お互いに研究したい、こう思います。どうか一つ出して頂きたい。
  89. 岡原昌男

    説明員(岡原昌男君) 実はその点非常に私のほうの、何と言いますか、報告が簡単なものでございまして、今も申上げました通り、而も調べが始つたばかりだと私承知しております。なおこれをこの際非常に大きく取上げることが却つて本件争議介入したるがごとき印象を与えてはいかんというようなことも考えまして、実は或る立場からは生ぬるいというふうなことをおつしやられるかも知れませんが、慎重な態度をとつておるわけでございまして、従いましてその結論と申しますか、調査の結果と申しますか、そういうものは、実はまだ余りよく現われておりませんので、わかり次第……よほど余裕を置いて頂いたほうが、私責任を持つてお答えできるのじやないか、かように存じます。
  90. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうもそういうことになりますと、本会議等の答弁にそれを引用されたということは、先ほどの委員長の言葉通り、ますます以て私どもに腑に落ちないということになる。とにかく、そうはつきりしておらないものを本会議の答弁に引用されたことはですね。それからなお深いお考えを持つて望まれることは結構です。私も同感ですが、ただ事の起り等についてはわかつておられるのではないですか。若しそれがわかつておられるとするならば、私はその程度でも結構だと思います。なおその後の問題については、おつしやる通り争議の関連性もありますから、それは余裕を置いても結構だと思うのです。ただ私が考えるのは、この引継態勢ができておるかおらないかという問題よりも、この締め出しですね。この締め出しがというか、更に大きく行けば労働争議の法的解釈如何というようなところにまで私は行くと思うのです。この問題はそういう点もありまするので、一応研究材料として私たちに提出されれば結構だと、こう思うのです。
  91. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 速記はとめて……。
  92. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  93. 吉田法晴

    委員長吉田法晴君) 速記を始めて下さい。  それでは本日の委員会はこの程度を以て散会いたします。    午後四時五十八分散会