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説明員(
井下田孝一君) 旧軍人恩給は文官の恩給と一体を成して終戦当時まで参
つたのでございます。ところが
昭和二十年十一月二十四日に連合国最高司令官から恩給及び恵与と題せられる覚書が発せられまして、それに基いて恩給法の特例に関する件、これは
昭和二十一年勅令第六十八号でございますが、そういう勅令が出まして、
昭和二十一年二月一日以後はいわゆる軍人恩給というものが給せられなくな
つたのでございます。ただ一部の公務傷病を受けた旧軍人、軍属に対してのみ僅かな恩給が制限された
条件の下に給せられてお
つたのでございます。そこで平和条約が発効いたしましてこの覚書に基いた勅令によ
つて給せられなくな
つてお
つた軍人、軍属の恩給をどういうふうにしたらいいかということが問題になりまして、恩給法の特例に関する件の措置に関する法律が前の
国会で議決にな
つて、それに基いていわゆる軍人恩給について調査研究をするため恩給法特例審議会というものが設けられたのでございます。この審議会の権限は調査、研究をしました結果政府の諮問に答申をしたり、或いは進んで建議をすることができる。こういうふうにいたしておるのでございます。そしてこの審議会は今年の六月に
構成されまして、
委員は十五人でございますが、先日まで数十回に亘
つていわゆる軍人恩給についての審議を進めて参
つたのでございます。そして一応の審議会としての結論が出ましたので、それを建議の形で政府に対して提出せられたのでございます。大体の建議がなされるに至
つたいきさつは
只今まで申上げた
通りでございます。
その建議の主な
内容を極く簡単に御
説明申上げますと、昔、昔と言
つても旧軍人軍属の恩給廃止制限当時、つまり先ほど申しました
昭和二十一年二月一日前までに行われていた恩給法と違う点をわかりやすく御
説明いたしたいと
思つております。先ず在職年についてでございますが、原則として加算をとるということにな
つておるのでございます。加算と申しますと、戦地に従軍しますと、実際に一年勤めましても加算を三年として合計四年に計算するという
ような制度でございますが、そういうことを原則としてやめる、但し前に恩給をもら
つてお
つたかたに対しては或る一定の措置をとる
ようにな
つておるのでございます。例えば前に実際に十年勤めまして、そして加算が三年加わ
つて、十三年勤めたことにな
つて、年金恩給を前にもら
つてお
つた人があると仮定いたします。そういたしますと、原則として加算をとりますと、その人は実際には十年しか勤めてない、そうすると年金がもらえなくな
つてしまう。そういう人は気の毒でありますからしてやはり加算の三年も一応認めて年金を与える、権利だけを与える、但しその三年につきましては実際に勤めておりませんので、一定の額だけ減額して
支給する、こういう
ような
考え方をと
つたのでございます。それからその加算の問題でございますが、今度は通算の問題でございます。通算とは初め文官をや
つてお
つて、
あとで軍人をや
つて、そしてやめた、その文官と軍人を通算するかしないか、こういう問題でございます。それにつきましては前に恩給をもら
つてお
つたもの、すでに裁定されたもの、既裁定者と申しますか、既裁定者の恩給については軍人として在職してお
つた年数は通算する、併し未裁定着、まだ恩給をもら
つてなか
つた人、そういう人については軍人としての在職年は最後にやめた日から遡
つて七年間続いて勤めたその年数、七年間、七年以上勤めた年数だけ、もう少し正確に言いますと、最後にやめた時から遡
つて引続いて七年間、引続かなければいけない、引続いて七年間勤めたその年数だけ通算してやろう。こういう
考え方にな
つておるのでございます。従
つて文官をや
つてお
つて、次に軍人を三年やり、そうしてやめて今度又応召かなんかして又三年やり、四年や
つたという
ようなときには、続いておりませんからして合計して七年お
つてもこれは通算しない、というふうにな
つておるのでございます。
それから次が若年停止についてであります。これは年金をもらう権利のある人が若いときには、一定の年齢まで年金をやることを停止する制度でございまして、軍人恩給については、その人が四十五歳未満のときには全部停止する。それから四十五歳を超えて五十歳未満の場合には半額だけ停止する。五十歳以上五十五歳未満の場合には、十分の三だけ停止するというふうに審議会の建議ではな
つておるのでございます。現在の文官におきましては、
只今申しましたよりもそれぞれ五歳ずつ若くな
つております。
それから次が多額所得についてでございますが、これは現在の
公務員の恩給停止の例によ
つて一部を停止すること、こういうふうにな
つておるのであります。これは恩給のほかに一定以上の所得がありますときには、その恩給の額の一部を停止する制度でございますが、それは現在の
公務員並みということにな
つております。
公務員の恩給停止の例によ
つて一部を停止すること、こういうことにな
つております。
それから傷病者についてでありますが、傷病者のうち大ざつぱに申しまして不具廃疾の者、片輪に
なつた者、そういう人には原則として年金をやる。但し拇指一本をなくした
程度以下の軽いもの、これを専門的に申しますと第七項症と申しますが、七項症より軽いものは一時金にする、そうして第六項症よりも重いものについては年金をやる、こういうことにしてあるのでございます。なお従来の軍人恩給については、戦争によ
つて傷病を受けた者と、戦争外の公務によ
つて受けたものを特殊公務と普通公務というふうに分けてそれぞれ
金額等も
考えてお
つたんでございますが、審議会の案ではそれを一本にしておる。それから
金額等につきましては、軍傷者に
比較的厚く、それから
階級の下のほうに
比較的今までよりも厚くする
ように案が
考えられてあるのであります。建議の
内容がそういうふうにな
つております。
それから扶助料についてでございますが、扶助料は普通扶助料と公務扶助料に分かれます。普通扶助料というのは軍人について言えば、病気で亡く
なつた軍人の遺族に給付される扶助料ということにな
つておりますが、大体従前
通りでございます。ただ普通扶助料は普通恩給の半額ということにな
つておりますが、普通恩給については、先ほど申上げました
ように加算を
とつたり、通算の
関係で変
つて来た点がありますので、それに応じて普通扶助料も変
つて来るのでございます。それから公務扶助料、これは公務のために亡く
なつた受給者の遺族に対するものでございまして、公務扶助料につきましても先ほど申した傷病者についてと同様に、特殊公務と普通公務によ
つて亡く
なつたかたの遺族について従来は行われていたのを、これをその区別を撤廃すると共に、
階級の低いものほど従来よりも割高になる
ように審議会ではそういう
内容の建議を出しておるのでございます。
次が一時恩給についてでございますが、一時恩給というのは、御
承知の
ように年金に達しないでやめた人に給付する恩給でございます。従来は加算も入れて三年以上勤めてやめた人に一時恩給を給付してお
つたのでございますが、審議会では引続き七年以上勤めてやめた軍人に一時恩給を給付するというふうに
条件を辛くしてあります。それから一時恩給というのは、従来は兵には出さないことにな
つておりましたのですが、今度は兵にも七年以上勤めてやめた人に出す。それから追放者が追放解除にな
つて一時恩給をもらいますときには、ベース・アップしない額でもらうことにな
つてお
つたのでございますが、この軍人恩給については、ベース・アップして一時恩給を給付するというふうに審議会の建議ではな
つております。
大体審議会の建議の
内容を、これは非常に技術的でございましたが、大ざつぱに
説明すると
只今申上げた
ようなことでございます。
次に審議会の案によ
つて計算をしますと、その人員と
金額がどういうふうになるかということを一応申上げたいと思います。先ず普通恩給についてでございますが、先ほど申しました若干停止をしたものと仮定しての人員と
金額を申しますと、普通恩給は十九万五千人、
金額にして四十七億一千万円、それから増加恩給、増加恩給というのは先ほど申した六項症以上の重い傷病者に対して給される年金恩給ことでございますが、増加恩給は人員が四万五千人で、
金額が三十億九千二百万、それから公務扶助料、公務のために亡く
なつた人の遺族に給される扶助料でございますが、それは人員が百四十三万三千人で、
金額にして五百五十六億七百万、それから普通扶助料が、人員が十六万一千人で、
金額が十七億六千四百万円、合計しますと、人員が百八十三万四千人で、
金額にして六百五十一億七千三百万円、そういうふうにな
つております。なお御参考までに若年停止、若い年の人を停止しなか
つたと仮定したときには大体先ほど一番先に申しました普通恩給でございますが、若年停止というのは普通恩給しかありませんが、普通恩給は、人員は五十七万二千人、
金額にして百十三億四千五百万円、こういうふうになります。そうしますと、恩給の受給者総人員、つまり若年停止をしなか
つたとしたときの、今までいろいろ申上げた各種恩給の全部の合計の人員は二百二十一万一千人、
金額にして七百十八億八百万円、こういうふうになります。但し
只今申上げました
金額は、これはいずれも現在の国家
公務員の
給与水準までベース・アップしての
金額でございます。それから一時金について申上げますと、傷病資金、軽いほうの傷病者でございますが、傷病資金は人員が三千人で
金額が一億八千八百万円、それから一時恩給が、人員が十七万八千人で、
金額が百十五億六千八百万円、で、合計が人員が十八万一千人で、それから
金額が百十七億五千六百万円、こういうふうになります。以上の人員と
金額が審議会が政府に対してなされた建議を元にして計算しますと大体そんなふうな
数字になるのでございます。大体以上であります。