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1953-03-09 第15回国会 参議院 予算委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月九日(月曜日)    午前十時十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩沢 忠恭君    理事            高橋進太郎君            左藤 義詮君            森 八三一君            内村 清次君            永井純一郎君            西田 隆男君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            石川 榮一君            石坂 豊一君            石原幹市郎君           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大矢半次郎君            川村 松助君            郡  祐一君            駒井 藤平君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            鈴木 恭一君            山本 米治君            石黒 忠篤君            岡本 愛祐君            片柳 眞吉君            溝口 三郎君            堀越 儀郎君            荒木正三郎君            岡田 宗司君            羽生 三七君            三輪 貞治君            曾祢  益君            堂森 芳夫君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            鈴木 強平君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    大 蔵 大 臣 向井 忠晴君    文 部 大 臣 岡野 清豪君    農 林 大 臣 田子 一民君    通商産業大臣 小笠原九郎君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君   国 務 大 臣 大野木秀次郎君    国 務 大 臣 本多 市郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    保安庁次長   増原 惠吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    法務省刑事局長 岡原 昌男君    大蔵大臣官房長 森永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    引揚援護庁長官 木村忠二郎君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    通商産業大臣官    房長      石原 武夫君    郵政省電波管理    局長      長谷 愼一君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○公述人の選定に関する件 ○昭和二十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これより委員会を開きます。  先般委員長並びに理事に御一任願いました公聴会公述人を次の通り選定いたしましたから御了承願います。即ち、東京大学経済学部教授武田隆夫君、経済同友会事務局長郷司浩平君、千代田銀行頭取金良宗三郎君、日本労働組合評議会常任幹事野本正三君、国民経済研究協会理事藤井米造君、社会保障制度審議会委員今井一男君、全日本開拓者連盟委員長村山藤四郎君、巴商事株式会社専務取締役櫻井英雄君、東京都教育委員会委員長八木澤善次君、全日本海員組合組織部長和田春生君、全日本中小企業協議会委員長中島英信君、以上十一名の方にお願いをいたしました。  なおこの際私から一言申上げたいことは、従来の公聴会には政府側から殆んど出席がないのであります。これは誠に遺憾であります。公聴会国民の公正なる意見を聞く機会でありますから、進んで御出席せられるよう要望いたします。   —————————————
  3. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) それでは先日に引続き質疑を続行いたします。
  4. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 民主政治におきましては殊に重要政策実施ということについて最も重きをおかなければならんということは論がないと思うのであります。自由党もいわゆる十大政綱というものを世間に公約をされ、又ほぼ同様の内容のものが昨年十一月、政府によつて内閣重要施策として公表され、総理施政方針等においても同様のことが述べられておるのであります。その施策方針の中において、総理は本年度は諸般の重要な種蒔きをしなければならん大切な第一年だということを言うておられるのであります。私も全く本年は非常に大事な年だということを考え同感を表しておるものであります。然るに政府及び与党の内部が意思の疏通を欠いたり、或いは余りよろしくないと思われる内紛を繰返したりしておりまして、その結果重要政策実施ということに政府の全力を傾注されておらないことを遺憾千万に考えるものであります。そこで私は政府をして国政施行に誤りなからしめるという国会の第二院たる参議院立場からいたしまして、総理がしばしば言われておるようにいわゆる筋を通す、こういう趣旨を以ちまして質問をいたし、参考意見を申述べることにしたいと考えます。従つて必ずしもすべてに対して答弁要求するものではございまん。併し十分にお考えを願いたいと考えるのであります。  その第一は、政策施行を重点的にするということについての問題であります。新内閣重要施策要綱、昨年十一月に公表されましたものの前文の中におきましても、政府は特にこの各重要施策を重点的に推進するということを明言をしておるのであります。これはまさにしかるべきことだと思うのですが、政府はその実現について何か特に重点的に特別な方法をとることに努められたかどうか、この点を伺いたいと思うのであります。私は重要施策とせられるものにつきましては、閣議で特別慎重な審議を十分に遂げて、その規模、経費、資金、実行順位というようなことを概定をいたして、政府内は勿論、与党にも十分に周知せしめて、統一を期して強力に実行に進まるべきものであると考えるのであります。即ち重要政策についての閣議決定を先ずやつて、そうして予算編成上先ずこれを尊重いたして、全予算編成にこれを重点的に組み込むべきものであると考えるのであります。総理は、先日もこの席で木村委員のこの予算独立性に関しまして熱心な質問があつたのでありますが、それに対して総理は、先ず重要政策を立て、そうして予算を立てたのだから、この予算独立予算であると答えられたのでありますが、果して事実さように運ばれたのでありましようか、どうでありましようか。私は重要政策決定及びその経費概定ということのためには、閣議連夜徹宵をいたして行われても然るべきことだと考えるのでありますが、そういうようなことはなかつたように思うのであります。かようにいたして国家的に政党に偏しないように、又政治的に事務的に堕しないように、重要政策及びその実施のための経費というものは定めらるべきものであると思うのでありますが、現在は決してさようには行つていないと思われる。重要政策などと言つても、主として世間に示すのが目的よう考えられるきらいがあるのであります。予算編成の実情は、成るほど本年度編成方針といつたようなことで一応強い制限というようなものを示すことがあるでありましようが、極めて抽象的な例文的な一般的なものでありまして、決して政策について重点的、具体的方針が先ず立てられて、そうして予算編成上大体その意を体してなされるということにはなつていないと思うのであります。重要政策などというものも、その他のものと一緒に先ずは各省厖大なる要求となつて一くるめにされて提出をされ、そうして各省官僚の間において激烈な争いが展開をされるのに放置されておるというよう状況だと思うのであります。各省官僚、殊に予算関係のある者は実に忠実なる公僕と言うべきものであろうと考えるのであります。職務に関しましてはあたかも動物の本能とも言うべきような非常な緊張を以て各その立場に従いまして、或いはいわゆる重要政策のために、国家のために、或いは国民負担経減のためにそれぞれの立場で身体を害してまでも徹宵力走するというよう状況を呈しておるのであります。然るに総理蔵相というような方々は高みの見物で、徒らにその奪い合いの醜態などをそしつたり、或いは嘆いたり、或いは新らしく入つてみて焼餅の焼きつくらなどと驚き入つたり、冷笑しておられるような姿だと思うのです。併しこれは人ごとではないと私は思う。あなた方自体責任であります。こういうことは私はけしからんことだと思う。総理及び蔵相は、重要政策実現上、先ず予算編成方式について真剣な工夫努力をなすべきであると考えます。当院におきましても、第十三国会におきまして行政整理案審議をされた際に、参考意見として予算編成方式について政府注意を促したことがありました。これは実に大きな行政能率化のための整理の問題でもあるのであります。併しあなた方はそれを採用はされておらないように思う。この方面に対して果してどれだけの工夫努力をされておつたか、私は不幸にしてそれを認めることができない。そうして結局は各省が引つくるめて出して来るところの厖大要求大蔵官僚連夜徹宵をいたして審査をいたし、先日もこの委員会主計局次長であつたと思いますが、言われたように、各省とも水増しがひどくて困る。保安庁は割合に感心にいいほうだなんというようなことを申すようにです、全くの事務的査定に一任されておるのであります。そうしてこの事務的査定が、第一次査定というものが、結局原案となつて、その全く事務的なものに対して、今度は各省官僚連夜徹宵で復活に努力をすると、こういうようなのが依然たる現状であると思う。前回の国会で、総理は、外資導入に関しまして、いわゆる世界銀行の副総裁であるガーナー氏が各方面要求余り多く競合して巨額に上つて困る、順序をつけてもらいたいというよう要求をしたということを警告をされたのでありますが、私もあの人に会うて話したときに同じことを申しておりましたが、それはいろいろな要求に対して、政府国家的に何を重しとするかという順位をつくべきだという要望のように私は聞いたのであります。外資導入に関してなお且つ然り、国家実行をする予算に対しましてはなお更のことだと考えるのであります。今行政府の長に当つておられ、而も党外から蔵相をとられた総理は、重要政策重点的実施の上において遺憾なきよう予算編成工夫努力せられんことを希望してやまないのであります。これが第一であります。  第二には、食糧自給計画について伺いたいと思うのであります。私は食糧問題をあらゆる問題のうちにおいて最も重大なものだと考えております。食糧こそ一家の生命、国家独立、世界の平和の第一の基礎条件だと確信しておるものであります。総理もその重要性をつとに認められて、我々にも諮り、前農相に立案を命ぜられたのでありまして、それがいわゆる食糧自給第一次五カ年計画であり、自由党の十大政策の一つでもあるのであります。それ故に私は前国会におきまして、この席でそれが提案せられないことについて質問をいたして、これを督促をいたしました。なお且つ蔵相に対して、特にこれに重きをおいて頂きたい、予算措置を十分に考えてやつて頂きたい、あなたは従来外米買入についていろいろお力を願うたが、今後は外米輸入しないようにできるだけの力を入れて頂きたいということを申上げておいたのであります。併しながらこれも又今回の予算編成に際しましては、総理及び蔵相重点的取扱を受けぬようになつたのであります。私どもは、予算決定の直前に当りまして、さようになりそうに思われたために、あなた方に対して特に推参いたして注意を促したのでありましたが、顧みられずして、結局事務的な第一次査定に何がしかの増額をすることと相成つて、そうして二十八年度予算重要政策として要求された約半額が認められることになつて、現予算に現われておるのであります。新聞紙の伝えるところによりますというと、蔵相は、農林大臣及び建設大臣坐り込み戦術に非常に悩まれた、そうして酒造米消費量の僅かばかりの増額というようなことで、漸くこの程度まで漕ぎつけたのであるといつたようなことが報道されております。私は金額の多少を云々するものではございません。国政上最も重要な政策とせられるものに対する予算上の取扱方法が誠に当を得ていないことを極めて遺憾とするものであります。で、食糧の必要は、実に日々に迫つておるのであります。従つて増産実現ということは一年も早きを要するのであります。而もその主たる事業であるところの農地改良ということは、誠に非難の多い土木費関係するものでありますけれども、その使用について非常に注意をしなければならんということが、これを必要とする額をチエツクする理由になつてはならんと私は思う。而もその土木は極めて時間を要することが多いのでありますから、着手には一年をもゆるがせにしてはならないのであります。新農林大臣の御答弁によりますというと、五年の間にやればよろしいのだ、なおその後の十年にやればよろしいのだというよう意味にも取れるお言葉でありましたが、そういう意味ではないと私は思う。なぜなれば、年度内に必要なものを出しさえすればそれでよろしいというのではない。成功するのに年がかかるのだから、初年度においてどれだけ、次年度においてどれだけという適当な年次割ということが非常に大事である。元の計画はそれを適当に割当てて、そうしてだんだんに輸入量を減して行くことができる。そうして五年の後においては僅か何百万石かの輸入をするだけで済むよう輸入量の漸減が年次的に実現されるようなはずであつたのであります。今度はその計画の改訂をしなければならんことになつて、年々の需要増農地平均的改廃による供給減、これは平均的の大よその見込でありまして、他面において弾丸道路をどんどんと実行するというようなことになれば、それすら埋めることができないというようなことになるのじやないかと私は思う。そういう平均的の供給減を埋め合わすことが辛じてできるのでありまして、現在の輸入量というものは依然として五年後にも輸入をせなければならんというようなことになるんだろうと思いますが、この点は如何でありますか。又新農相は本会議で、経費継続費とするということの考えでおるということを申されたが、その他の要点、即ち続いて第二次の五カ年計画が続くということや、これに連関した免税事項を規定するというようなことはどうなるのでありますか。それらを包括した法案提出するということは、先議会において、総理大臣は詳細なことは承知しておらないからと言うて、農林政務次官をして答弁せしめられましたが、来議会提出すると言うておられましたが、それはどうなつたのでありますか。  なお、食糧自給の問題に密接しておりまするところの肥料につきまして、ついでを以て通産大臣に伺うのであります。私は前議会で、肥料問題の解決には結局生産費の調査の必要があるということを申したのであります。通産大臣は、これをでき得るだけ努力をする、そうして若し得られたならばそれを示すということを申されたのでありましたが、私は、未だにこれを示されておりません。通産大臣は爾来如何なる努力を各会社に対していたされたのでありますか。これを明らかにせずして、当業者は手早く協定価格を一方的に決したのではないのでありましようか。生産費をほうりぱなしにしておいて、そうして種々の重要問題があとからあとからと続出するのを、何ら手を着けることのできないようになつておるのは私は甚だ遺憾であると思います。これらにつきまして立法をされる必要を認めておるのであるか、どうであるか。そのことを伺つてみたい、こう思うのであります。これが第二点であります。  なお第三点がありますが、それらに関しましてお答えが頂き得るものがありましたら、お答えを頂きたいと思います。
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。予算編成の仕方について、現内閣のやり方についていろいろ御注意若しくは御不満の点は了承いたしましたが、政府として今日まで予算編成についてとつた方針は、一応均衡予算を飽くまでも堅持する、同時に減税の措置をとるという範囲内において重要政策実行するという方針を立てて、そうして予算編成に当つたのであります。その間各省事務当局の間の折衝もあり、又事務当局折衝が折り合わなかつた場合、或いは各省大臣大蔵大臣との間の交渉といいますか、相談といいますか、が折り合わなかつた場合、そのたびごとに或いは関係閣僚の間において相談をし、又閣議の席において協議をなし、そうして各省の間において、各省大蔵省、或いは閣議との間に十分な連絡をつけながら、又円満な話をつけながら進む方針参つてつたのであります。決して私も大蔵大臣高みの見物をしているわけではないのであります。その結果が重要政策になつたのでありますが、この重要政策施行の上において、食糧増産等の問題について御不満もありましようが、何分にも敗戦後の国土の荒廃、いろいろな方面において財政的措置を講ずる要のあるものがあるために、或いは分散ということになつたというお考えもあるかも知れませんが、政府の大体の方針としては、重点的に予算編成した考えであります。  又外資導入のために、この間見えたガーナー総裁の話を引用なされましたが、ガーナー氏は外資導入交渉のために参られたのではないのであつて、いわゆる事実を……フアクト・フアインデイングの目的のために見えて、各方面と自由な話をいたしたのであります。政府としては、ガーナー氏に対して外資交渉をいたしておりません。ただガーナー氏の問わるるままに自由に答えもすれば、又意見も聞いたのでありますが、外資導入交渉の相手としてガーナー氏に交渉いたしたわけではありません。従つて政府外資導入を重点的に考えておることはワシントン政府に直接申入れてございます。この交渉は現在続けておりますが、食糧増産について政府予算の割当が十分でないということは伺いますが、併しながら政府としては昨年度予算に比べて百億程度の増加を組み入れております。これによつて見ても食糧増産を我が現内閣がなおざりにしておるということのないことは御承知を願いたいと思います。  その他詳細のことは各主管大臣からお答えいたします。
  6. 田子一民

    国務大臣田子一民君) お答えいたします。この間食糧増産についてお答えをいたしましたが、只今石黒委員より懇々食糧増産重要性、その実に国家の存立、国民生活の安定上最も重大なことを御指摘になりました。全然これは御同感でございます。不敏ながらその線に沿うて努力いたしたいと思います。なお昭和二十八年度の性格が、五カ年計画の当初予算として不足であり、私は五カ年間には是非この所期の目的を達成したいということを申したのでございます。これは国全体の予算関係がありますので、言い切つて年度どうということを申上げかねましたが、だんだんこの閣内の様子を見まして、どなたもこの点については私同感ように拝察しますので、今後の増産計画につきましては、五年と申しても成るべく近い、手近かなところで実現することに努力をしたいと思います。ただ開墾とか、土地改良ということは、私もしばそばこういうことには会長などの地位におりまして努力をいたしましたが、今日予算を入れてすぐこの効果を挙げるということはなかなか容易でございません。田中内閣計画しました岩手県の山王海というものでも、今年度初めて成立するかと思いましたが、これも来年度に延ばされたようなことがありますから、この事業の容易ならざることはよく知つておりますから、成るべく早く手を着けることに努力をいたして、御質問趣旨に副いたいと存じます。  なお、この促進をするについて法案をどうするかという、来年度にしろとおつしやいましたが、実は就任直後でございましたけれども、この食糧増産重要性に鑑みまして、只今食糧自給促進法というような、仮の名前ではありまするけれども法案審議しまして、近く御提案をいたしたいと思つておるのであります。これには成るべく早く実行しまする意味におきまして、法律の上にもその責任面を明らかにしたく考えております。只今審議中でございますが、このよう方針でございます。  なお免税の点につきましては、これは大蔵当局ともしばしば折衝いたしましたが、法律には書きませんで、実際面の扱いとして減免の実を挙げるということにお話がついておる次第であります。要しまするのに、只今お述べになりましたことは、全然私の、御同感を禁じ得ないところであります。努力をいたしたいと思います。
  7. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 硫安価格の問題でございまするが、この原価計算につきましては、一応その後書類は出ましたが、なお検討中でございまするけれども、同時に肥料対策委員会のほうにも書類が出ております。肥料対策委員会専門委員を設けまして、目下そのコストが果して適当なりや否やということを検討中でございまして、この結果に期待いたしておる次第でございます。  なお春肥価格決定等がいろいろ取急いでおる事情もございましたので、農林省ともよく打合せいたしまして、農林大臣、私どもが、当時の肥料対策委員会委員長、今もしておられる一万田総裁とも相談いたしまして、安定帯価格を過日来設けましたことは御承知通りでございますが、なおこれからの実際問題は、個々に業者折衝あることを期待いたしておる次第でございます。
  8. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 次に私に行政整理議員立法についてお尋ねを申上げてみたいと思います。総理行政整理を是非やりたいという熱意を持つておられることはよく承知しております。私もそれについては賛意を表するものであります。併しこれに関して政府注意を頂きたいことは、十二、十三の国会におきまして、参議院関係事案審議をし、それに対する報告をする際に申上げたのでありますから、それを十分に御参考願いたいと思います。即ち天引の案のごときは甚だ適当なものではない。行政機構の変改ということについては政府だけでやるということは、従来の実例から、経験から申して決して十分なことができるものじやない。故に政府外において、米国のフーヴアー委員会のごときものをこしらえて、年所をかけてもいいのを練り上げて、そうしてそれを強力に実行するということにしてもらいたいということを参考のために申上げてあるように思いますが、それらも十分にお考えを願いたいと思います。新聞紙は一律天引方法を以て政府はこれを実行されようとすることを二月の初めに閣議できめられたとか、或いは二月の末に整理方針閣議決定して、欠員一万人の三割を定員法から削る改正法案提出する、或いは新卒業生の採用はこれくらいにとどめる、それ以上の整理関係大臣に委せる、機構改革については別途に考えるというようなことを閣議できめられたということを報道しておりますが、総理の熱心なる行政整理は如何にされるのでありますか、伺つておきたいと思うのであります。  なお一月二十五日の新聞は吉田総理の演説としまして、国会では予算を増加するような議案を提出したり、政府行政整理をしようとすればそれを妨げようとする傾向がある。どちらがいいか悪いか、国民はよく検討して欲しい、こういうことを述べられたということを報じております。果してさようであつたかどうか。行政整理についての私の考え、御注意は前議会において申上げたから略します。この総理の演説として伝えられるところの一つの部分である国会では予算を増加するような議案を提出するということを嘆じておられますが、これは私も全く御同感であります。議員は立法を発案することの権限を与えられておりますが、この貴重なる権限は濫りに使つてはならんと思うのであります。見解の相違と言えば言えましようが、私はややこれが濫用をされているようなきらいがあるように見て遺憾に存じているものであります。併しそれは一面議員のほうでも何々特別臨時措置法案というようなものの続出するというようなことを慎しみたいと私は思うのであります。積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法なり、雪が降らない所もそれに均霑しようとして湿田単作地域農業改良促進法なり、今度は平たい所でない傾斜のある所が急傾斜地特別措置法案、土壌の所は土壌地帯臨時特別措置法案、砂地の所は砂地の所というようなものを出して行く、これは私は甚だ如何かと思う。賛成に起立いたしませんでした。こういうことをやつているというと、最後には臨時特別措置法案提出理由発見困難地帯臨時特別措置法案(笑声)というものを出さなければならんことになつて来る。そういうことは立法府においても慎しみたいと私は思うのであります。それと同時に政府もこの議員提出法案というものを便宜のために利用されるということを慎しんで頂きたいと私は思う。政府が出すべきものは政府自己の責任において堂々と政府提案として出されるべきものだと私は思う。前の議会において政府重要政策考えているところの電源開発の案を、或る程度まで安本で以てやつておられたかと思うと、これを議員提出にして各派連合で出そうとしてうまく逃げられて、そうして自由党だけの提案となつたというようなことや、又今回の議会におきましても、先日伺つたところによるというと、政府が重大政策の農業政策として定められていることの二つの中の一つである農産物価格安定法案というものを議員提出とすることに閣議決定したというようなことを伺つている。こういうような便宜主義に従つてやられることは慎しんで頂きたいと私は思う。政府責任を負うて重要政策だと思うものは、その法案を堂々とこれを政府提案にされて全力を尽してこれを通過させることを希望するのであります。教育委員会に関する法案の一年の延長のごとき、誠に適当な措置と思い、政府の提案を参議院が賛成して速かに衆議院に送付したのにかかわらず、聞くところによると衆議院の自由党の政務調査会長がこれを握つた。そうして流してしまつた。そのために特別の数十億の経費が支出されざるを得なくなり、その尾が今日まで引いて来ているといつたようなことは、私は政府提案を堂々と実行されるといつたような上において当面大いに注意をして頂かなければならんことだと思うのであります。これらのことに関しまして、私は総理の演説されたところに大体同感をしているのでありますが、併し政府として注意をせられるべきところに注意をせられておらぬような憾みがありますから、これに関しまする意見を申述べまして、私の質問を終ります。
  9. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。行政整理の必要なことはこれは今更繰返しませんが、政府としてはこの方針の下に研究を続けておりますが、今日のところは数字でなくて、人員の整理でなくて、行政能率化、或いは簡素化をするために、機構なり行政の全般に亘つて検討をする必要がある。而もこれを合理的に作り上げるために各方面意見も聞き、又いろいろ研究をしなければならないのであります。ために未だ成案を得ておりませんが、併し行政管理庁において爾来勉強いたして成案を得ようといたしております。又成案を得次第随時提出をして協賛を得たい、こういう方針でやつております。この行政整理行政能率化の上から言つても、又政府の財政支出の上から考えてみても是非とも実行いたさなければならんことであり、又同時に事務の問題の整理のために、或いは必要のために増員をし、若しくは局課を増設しなければならん必要も自然生じますが、これと釣り合せて縮小すべきものは縮小し、増設すべきものは増設するとしても、国全体から考えて見て行政の合理化、能率化を図るために行政整理は飽くまでも合理的に実行の決心で行政管理庁で研究を続けております。  議員提案の法律案については、私も在来の関係から申し、又将来のことから考えまして、何か一定の方針を立てなければいかん。或いは一定の制度を立てなくちやならん。少くとも予算の増加を来たすような議案の提出については、政府としてはよほど考えなければならんという必要を感じて、只今どうしたらいいかということを政府で研究いたしております。成案を得ましたら協賛を得たいと思います。
  10. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 総理の御答弁に少しく行政管理庁の立場から説明を附加しておきたいと存じます。行政整理につきまして、お話の通り一律天引主義ということはこれは不適当でございますので、そうした方法はやらないことを今回は原則といたしております。尤も従来新聞で一律のごとく伝えられてございました場合の整理におきましても、本当は一律にやつたことはないのでございまして、職種によりましてどうしても一律に行かないものが相当ございますので、そうして多数の職種についてそれぞれ例外を設けまして行なつてつたのでございます。行政整理は機構においても、人員においても、結局行政事務と対応するものでございますので、この行政事務の整理なくしてそれに対応する機構、人員に手を付けるということはどうしても無理があるわけでございます。そこで今回の根本方針といたしましては、御承知通り旧来の事務の改廃も考慮しなければならない時代であり、占領政策の是正、或いは又石黒先生も御指摘になりましたように、いろいろ国家の進展ということから考えて見て、それほど緊要でないというよう行政事務も殖えておりますので、そうしたことを整理する、この改廃、是正、整理等に伴つて機構人員をそれに対応するごとく整理して行くということを根本的な考え方として行かなければならないと考えております。今回の提案いたします中に政府として結論に達したものは盛込んでございます。例えば警察制度の改正に伴つて警察の機構、定員等の変更等が出ており、その他二、三も挙つておるのでございますが、ただ全般的に案をまとめるということが急速にはできない事情にあるのでございます。石黒先生も御指摘の通りに、これは相当の研究調査が必要であつて特別に委員会を設けたらどうであるかと仰せられたのですが、政府としても行政審議会というものを法律によつて設けまして、昨年年末発足したばかりでございましたので、急速にここで答申を頂くということもできない事情にあつたのでございます。そこで政府といたしましては、差しおきがたいものを政府としてまとめまして、今回の改正に盛り込んでいるのでございます。又今回の定員法の改正に当つて、一月現在の欠員の三割を一律に天引するということではないかというお話でございますが、これにも最前申上げました通り、どうしても天引しがたい職種を多数これを設けまして、例外を設けたのでございます。更に四月の学校卒業生等の新規増員等についても、欠員の補充に制限を設けておりますが、これらにつきましても、配置転換等によりまして、是非実情に副うようにいたしたいと考えております。政府といたしましては、全体的に考えました場合には、どうしても今の行政機構も人員にしても、国力、国情に不相当であるので、どうしても縮減をしたい。そういう見地から欠員等の補充の場合、制限を加えておりますが、内容におきましても、配置転換によつて実情に副うよう天引整理にならないように善処して行く考えでございます。今後につきましては、実は政令諮問委員会等で頂きました答申、これで旧来の事務の整理、不急の事務の整理等が答申されておりまするし、更に又独立いたしました現在に即応して、政府といたしましても研究中でございます。今後、今回の提案に間に合いませんでしたものにつきましても、引続き行政審議会と並行して審議を進めまして、国会にかけないでできる簡素化等につきましては、休会中といえども整理実行して行く考えでございます。以上の方針努力するつもりでございます。
  11. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は激動する世界の新情勢に対処いたしまする我が国の外交基本方針につきまして、吉田総理大臣に若干の点について御質問を申上げたいと存ずるのであります。先ずスターリン逝去に伴いまする世界情勢の変化が果して戦争への道に行くのか、或いは世界緊張の緩和にプラスになるのか、かような点につきましては、すでにアメリカ、イギリス両国においてはその首脳部の会談においても重要な問題として取上げている。かような情勢におきまして、吉田総理におかれては過般の国会における施政方針演説の中で、極めて楽観的な見通しを述べておられますが、かかる楽観的見通しを、或いは修正し乃至はこの新情勢に対処する外交の見通しと基本方針について、改めて総理に御見解を伺いたいと存じます。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。私の考えが楽観的であるという非難をいろいろな諸君から受けますが、私は楽観に過ぎるとも考えておらず、悲観に過ぎるとも考えておらず、率直に事態の経過から考えて見て、そういう所信を得ておるのであります。又これはスターリン総理大臣と言いますか、総理の亡くなられたということ如何にかかわらず、私は世界の情勢は自由国家の希望するがごとく、戦争は回避し得ると、のみならず世界の情勢は安定しつつあるという所信に変りはないのであります。又この所信を助くる、或いはこれに反対のいろいろな言論もありますが、私は今日までの経過から申して見て、何人も戦争よりは平和を欲するのであり、又第二次世界大戦のために随分ひどい惨害を受けておるのでありますから、これに対して戦争を嫌うという気持は世界的の気持であるべきであり、従つてスターリン総理大臣の、首相の、死なれたとかというようなことに関係なく、世界の全般の傾向は、やはり私は平和に向いつつある、こういう私の所信はいつも変つておりません。
  13. 曾禰益

    ○曾祢益君 戦争不可避の議論は誤りと存じまするが、併し手放しの楽観論も大いに慎んで行かなければならないと思うのであります。ソヴイエト連邦の内部情勢、或いはソ連と衛星国との関係、かようなことがスターリン逝去という非常に大きな事件の結果、如何に変つて行くかについては、もとより今日のところ何人も的確に見通しをつけることはできないと思います。併しながら一方におきましては総理の言われる自由国家群の出方如何も又和戦に関する非常な大きな影響力を持つておることは否めないと存ずるのであります。この見地に立つて、然らばいわゆる自由国家群のチヤンピオンであるアメリカのアイゼンハワー新政権の外交政策、これ如何によりましては、やはり和戦に大きな影響があるという見地から、若干御質問を申上げたいと存ずるのであります。即ち先ず第一にアイゼンハワー新大統領の就任演説、一般教書或いはダレス国務長官のテレビ放送等に現われた—今日まで現われた新政権のいわゆる世界政策或いは積極政策乃至は巻返し政策といわれるものを、総理は如何に御覧になるか、果してそれが手放し楽観を許すものであるかどうか、この点について改めて御見解を伺いたと思います。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の楽観論を手放しと一概に断定せられずに……。私の申しておることは必ずしも手放しではないのであります。只今申したような事由で、理由で、手放しでなくして、楽観を許さない……楽観を許さないというよりも、楽観すべきではないかと私は思うのであります。徒らに国際関係に対して感情を混えて国民に不安を与えるということは、これは私はよろしくないことで国民として危惧の念を持たしめずに、その日常の務めも務めとするというふうにいたすことが政治の要諦ではないか、いわんや私は楽観論でありますが、楽観論と言わるるかも知れないが、手放しの楽観論ではない。例えばアイゼンハワー新大統領、ダレス国務長官にしても、言わるることは、自由国家の団結を固くして、世界の平和を維持し、この点については私も念願いたしておるわけであります。故に新大統領の政策は、演説だけであつて、実際にどういう動きをなすかわからない今日において、その演説等についての批評は差控えますが、併しその希望するところ、言わるるところは、戦争を起すというのではなくつて、自由国家団結して平和を維持したいということでありますから、私としては誠に結構な話であると、こう考えております。
  15. 曾禰益

    ○曾祢益君 アメリカの意図も、戦争をやるということが意図でないことは私たちもそう考えますが、併しその方法如何について問題が出て来るのではないか、そこでいわゆる手放しの楽観と、いわゆる無為無策の外交ではいけないのではないかという問題が起つて来ると思うのであります。先ず第一に然らば朝鮮動乱の終結に対するアメリカの積極的態度、この如何によりましては勿論日本の安全も、東洋の平和も、世界の平和にも至大な関係を持つことは言うまでもございません。で、ありまするから、ただその意思が平和にあるから結構であるどいうようなことでなく、我々の、日本の意思も伝え、そうしてアメリカに対しても行過ぎや焦慮から戦争への結果を招来しないようにこれを警告し忠告することが必要ではないか、かかる観点に立ちまして最近のソ連における重大なる事件、即ちスターリン逝去に伴いましてソ連と中共との関係が如何になるかはわかりませんけれども、過般の国際連合の総会において圧倒的な多数で可決されたあのインドの停戦に関する提案、かかる問題を日本みずから坂上げて、更に新情勢に応じて朝鮮動乱終結の第一歩としてのインド提案に基くこの停戦の問題を日本の意思としてこれを積極的に唱導する御意向はないか、この点をお伺いしたい。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 朝鮮の動乱はアイゼンハワー新内閣においてもはつきり申して、声明せられておる通りに、これを継続するというよりは、むしろ成るべく早く動乱を終止せしめたい。朝鮮の動乱が続くということそれ自身が日本にとつては甚だ迷惑千万のことでありまして、成るべく朝鮮の動乱も収まつて従つて又共産主義の活動等の影響も日本にないようにということになれば結構なことであるので、この朝鮮の動乱というものは、私はこれはアメリカ政府としてこの終結を図づておることはやがて実効を奏するのではないか。然らばどうしてということは私は今ここにはつきり申すことは差控えますが、併しとにかくもうすでに二年余りになるので、この終局については誰も心配しておることでありますから、又いわんや朝鮮国自身にとつても非常な迷惑千万なことであつて、その終結を望んでおることは誰しもこれを了解し得ることであります。故にやがて結末がつくことを希望し、想像いたします。併しながら政府が積極的にどうこうということは、これは今日するだけの力もなければ方法もないのであります。又インド政府が朝鮮問題について、休戦問題について或る提案をなした、これは国際連合においてもすでに取上げられておることで、これが実現しなかつた、実施に移らなかつたことは甚だ遺憾でありますが、併しすでに国連でそういう輿論が起つておるのでありまするから、これも又朝鮮の動乱終止のほうに重大な影響を及ぼすものであり、我々はこれに対して賛成する以上にどうこうということを積極的な態度に出べきかと言われても、今日においては積極的態度に出るだけの手段方法もないのでありますから、特に政府としてはこうするという考えをいたしておりません。静かに形勢の推移を見たいと思います。
  17. 曾禰益

    ○曾祢益君 どうも日本の力の限界ということに囚われて積極的にはやらない、日本だけではどうもならんというお考えようですが、そこは非常に私は遺憾に思うのであります。即ち私の質問のポイントは、アメリカが軍事的な方法によつて、制限的な方法であるかも知れないけれども軍事的な方法によつて、現在のデツドロツクを打開したい、かような方向に日本としては賛成できない。それよりもインド提案のように、何でもかんでも朝鮮動乱が終結すればいいというのではなく、立派に国連の趣旨を達成し、集団保障が前進の形において終結を見なければいけません、併しこの筋の通つたインド提案のような平和的な方法に、最後の最後まで日本の国民としては積極的にその方法を好む、かようなことをアメリカに対し、或いは国連に対し、世界に対し、かかる機会において総理がその意見を積極的に発表して頂きたい、これが私のポイントであります。もう一遍伺います。
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 逆の場合ならばとにかく、その目的とするところは政府も結構なことであるという以上は、特に声明を発して云々ということをすることがいいか悪いか、これは考えるべき問題ではないかと思います。
  19. 曾禰益

    ○曾祢益君 積極的な作戦に関連いたしまして、日本としてはもとより国連に協力する建前から、一切の不便を忍んで事実上の国連軍の基地を日本に置かなければならん恰好になつておるのであります。かような観点からするならば、日本が朝鮮動乱のいわゆる軍事的積極的作戦等の場合に、日本の安全に対する一つの重大な問題が起つて来ることは当然である。従つてかかる国連側、実質的にはアメリカ側の積極的軍事措置ような場合には、あらかじめ日本に協議するということを要求するのが当然ではないか。これは当然しておられると思いますが、それが何らかの公表される形においてこのことを国民に示すことが極めて必要ではないか。例えばダレス・イーデン会談においても、従来すでに米英間には共同防衛の協定によつて、米国はイギリスの基地を使用することができる、又非常事態に際して、この基地の使用はそのときの情勢に照して本国政府の共同決定に基く。かよう趣旨の了解事項、これは確かにあつたというふうに伝えられておりましたが、これを改めて確認してコミユニケを出して、かよう措置国民は希望しておるのではないか。この点に関する総理のお考えをはつきり伺いたいと思います。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、若し日本の安全に危害を生ずるよう措置を米国政府がとるというような場合には、これは当然日本に対して、例えば台湾の中立問題の場合においてのごとく、あらかじめ話があり、又相談を受けることは、これは予期し得ることであり、たとえ約束はなくとも米国政府としては日本に必ず相談をし又前以て話のあることと私は確信いたします。
  21. 曾禰益

    ○曾祢益君 台湾中立解除の問題には通報があつたと伺つておりましたが、御相談がなかつたように私は当時聞いておつたのですが、さようなことでなく、総理の言葉には十分な含みがあるというふうに考えたいのでありますが、一層明確な形でこの際何らかの政治的約束をし、これを国民に発表されたいということを強く希望したいのであります。  次に中共に対しまする政策の中で、更に只今申上げたような純作戦行動でなくて、中共に対する禁輸の強化、或いは海上封鎖、或いは中国の海港をクローズする、閉鎖する、かよう措置考えられておるやに伝えられておるのであります。そこでこの海上封鎖の問題については如何に考えられるか。その場合に日本の船舶及び日本の貿易に至大な関係があるのでこれを伺いたいと思いますし、続けてその関連におきまして、いわゆる禁輸の強化につきましては、これ又先ほど引用いたしましたダレス・イーデン会談によれば、イギリスの支配し得る船舶は、かような戦略物資の輸送に当らせない、又イギリスの管轄下にある土地においては、かかる禁輸物資を積んで中共に赴くことが明らかな船舶に対しては、これに対して石炭、燃料等を供給しない。かような約束が新たに従来の措置以外に協定された。更にこの問題については、関係諸国にもその同調方を両国から勧めるということが言つておりますが、この問題は日本においても起り得る問題です。日本に寄港するところの外国船舶に対してかかる場合には総理は如何なる方針で対処されるかを伺いたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 我々もこの中共に対する密輸については深い関心を持つております。というのは我々がまじめに約束に基いて輸出を制限しておる際に、よその国は勝手に密輸で以てその制限を無効にするような結果を来たすことは、延いては我々がまじめにやつていることが意味がなくなつてしまうのであります。従いまして密輸ということについては一方においてできるだけ取締る。これは日本としても当然やるべきであり、各国がそれを強行することを非常に強く希望しておりまするから、日本の管轄内における地域においても密輸防止についてはでき得る限りの措置を尽すべきであります。そうするつもりでおります。  又海上封鎖等の問題は今いろいろ研究されておるようでありまして、この際確言するような事態に至つておりませんが、今のところは見通しとしては日本の貿易等、これは正常の貿易でありまするが、或いは漁業等が制限を受けるような結果にはならないのじやないかと一応考えております。併し将来何らかそういう事態が起りますれば、これは関係国と相談をいたしまして、理窟のあるところにはこれは当然協力をいたしまするが、できるだけ日本のこの利益を保護するよう措置をとりたいと考えております。
  23. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は海上封鎖のごとき方法は非常に危険なる戦争拡大の方向に進むから反対であるという意思をはつきり表明すべきではないか。密輸の問題については、一方においてはきめたことを守らないこの密輸を取締るのは当然日本に利益になるのですが、同時に誰が見てもこの禁制品、即ち戦略物資と認められないようなものを日本だけが輸出を抑えられているというような状態を直すことが外務大臣の当然の任務であろうと考えるのであります。  次に先般の当委員会におきまする岡田君の質問に対する総理お答えの中で、いわゆる太平洋同盟条約というような問題が、協定というものが起つた場合には、これは実質的には反対する、こういうようなお話であつた。ところがその理由は日本は軍隊がないから、だからそういう地域集団保障に入る……相互安全保障ができないのだから、地域集団保障に入ることの前提がないから当然にそういうことは起らないのじやないか。こういうお話でありましたが、併しそれはおかしい議論ではないかと思います。まあ只今の日本の保安隊等が軍隊であるかないかという議論は暫らくおきまして、ただ国際的な事例から言つても、例えばアイスランドのような国がいわゆる武装をしておらない。その場合でも北大西洋同盟条約に入る、こういう問題が起つて来ている。従つてむしろそういう形式論でなく、実質的にいわゆる太平洋諸国即ちニユージーランド、オーストラリア、或いはフイリピン或いは更に台湾、そういうものとの地域的集団保障ということに対して日本は、総理としてはそういう意味の集団保障は好まない、日米の安全保障条約でこれはいいのだ、こういう意向なのか、それとも日本の将来は地域的集団保障が仮にありとすればもつと東南アジア諸国との親善関係のほうに比重を置いて行くというのが国策として好ましいのか、これらの政策意見をはつきりした上にいわゆる伝えられる太平洋地域集団保障というものが日本として好ましくない、こういうお考えであるかどうかを明らかにして頂きたいのであります。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この間の私の答弁は、いわゆる太平洋同盟でありますか、ということの内容が実は自分によくわからないから、これは直ちにこれに対して賛成と言うことはできないというようなことの意味合いに言つたように思います。これがいずれにしても私の考え方であります。太平洋同盟というものの構想については果して大西洋同盟などと同じものであるか、又違つたものであつて日本が例えばこれに入ろうとするという場合に、まだ日本に入つてもらいたくないと考えておる国もあるでありましよう、にもかかわらず割込むだけの理由もないかと思います。一応日本の安全は日米安全保障条約で以て保護される、それ以上の必要は今日何があるかということは私に今考えつかないのであります。更に進んで太平洋同盟に入るというような意思表示をするということがどういう影響を及ぼしますか、関係国にどういう気持を与えるか、少くともフイリピンとかオーストラリア等の日本に対する感じは必ずしもまだ融和されておらないと思います。この融和を図ることが先ず第一であつて、然る後に同盟というようなことになればとにかくですが、直ちに同盟に入るということの意思表示をすることがいいかどうか、これも考えものじやないかと思います。但し東南アジアとの関係はつけたいと考えます。関係というか親善なる関係は作り上げたいと考えます。従つてこの方面に対する関係を親密にすること、或いは対日感情の融和ということについては極力努めたいと考えております。
  25. 曾禰益

    ○曾祢益君 私の申上げたことが多少不明確だつたと思いますが、私はこの台湾、フイリピン、オーストラリア、ニユージーランド等とのかかる地域安全保障体系には日本は入るべきではない、いわゆるインド、ビルマ、インドネシアというような純粋な東南アジア諸国から見るならば、こういう日本の行き方には賛成しないだろう、かよう意見で申上げたのであります。その点は暫らくおきまして、いま一つ政府の自衛力漸増の計画とアメリカとの関係でありますが、これは言うまでもなく現在新らしいアメリカの政権が新らしい予算を組んでおるのであります。従つてこのアメリカの新予算編成に当りまして、アメリカとしては当然に相互安全保障計画の一環として日本に援助をする、そうしてこれと対応して、言葉は何と言いますか、向うから言えば再軍備というのでしよう、日本としては自衛力の漸増計画と言いますか、そのようなものをもつと漸進してくれ、この話がこれは必ずや楽屋裏であるに相違ない、これに対して政府としては如何なるアメリカからの勧誘なり誘惑なり圧力があつても、現在の予算を守つて行くのだ、こういうお考えでるかどうか。更にかかるアメリカの予算編成期が済んでしまつたあとで、日本が補正予算等でこの自衛力漸増の計画を改めて提出するようなお考えはないかどうか。この点を伺いたいと存じます。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今政府計画としては予算にある通りであります。いわゆる漸増といつても差当りのところは質の向上を図る以上に数を殖やすというようなことは国力、これを許さないと考えていたしません。さて今米国政府から要求があつた場合……要求がないのでありますから、要求があつた場合を想像してとやかく言えませんが、私は多分そういう要求はないだろうと思います。
  27. 曾禰益

    ○曾祢益君 要求があるなしは、これは水掛論でありますが、非常な圧力が加わつておるように私は考えておりまするが、総理は仮に要求があつても現在の方針でやつて行かれる、かように明確にお答え願えますか。
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは一応そう言いますが、併しながら要求に応ずることが国家のために利益であるという場合でもあれば別であります。
  29. 曾禰益

    ○曾祢益君 その点は議論になりまするから……質問を継続いたします、政府総理の一般施政方針の中にも現われておるアメリカを中心とする諸国との外交を重点としておる、これが外交の基調であろうと思うのであります。あながちこれを否定できない現実に我我は置かれておると思いまするが、併し今の基本的な進路は、逐次アメリカに対する偏重外交を是正して、只今総理の言葉にもありました東南アジア、新らしい東南アジアの諸国との親善関係、この方面に積極的な意図をもつともつと現わして行き、その方面から日本の真の自主性のある自主外交を推進して行かなければならないと思うのであります。殊にアジアにおけるいわゆる冷い戦争乃至は局地戦争というような現実に対処するのに、ただ単なる武力一点張りの集団保障だけでは真のアジアの平和は招来できない。かような見地からどうしてもアジアに残つておる殖民地主義を平和的手段でそうしてこれを払拭する、更に世界的た経済的不均衡を是正して、東南アジアの経済開発に国連、世界全体、少くとも自由世界が本当にこれを推進して行く、ただ単なるアメリカ及び西ヨーロツパの自分らのいわゆる生活様式を守るためにそうするのではなくて、アジアのこの経済的な、パンの問題を解決するために本当の実弾を出して行くということが必要ではないかと思う。又このことが日本の政治的な自主性の発揮にも、又日本の経済自立の達成にも極めて重要だと思いまするが、かかる東南アジア開発に対して、例えば日本の賠償問題との関連において積極的に日本が技術援助、経済援助、これを国連の技術援助機関、或いは更に進んで世界的な後進国開発計画を日本みずからが推進する形においてやつて行かれる御意向はないか、基本的な考え方について総理大臣考えを伺いたい。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 非常にあなたの外交方針は規模雄大でありますが、政府としては今日金を貸してやろう、何をしてやろうというほど実は余力がありませんから……方針は結構であろうと思います。そういう東南アジアとの関係は親密にしたいし、又東南アジアの開発によつて日本も又利益を得る、賠償問題のごときも日本は成るべく解決して、そうしてその関係をよくしたいという考えで話を進めるという話をしているというのもおかしな話でありまするが、そういう意向はその東南アジア諸国に直接間接に抱いております。又今後も人を出すなり、政府からも民間からも人を派遣するなりして、そうして東南アジア諸国との間の関係は一層緊密にいたしたいと考えますが、具体案については只今研究中という以上に申上げるだけの具体的なことは申すことはできませんが、努めて具体化するつもりで人を出しますなり、研究を進めておるつもりでございます。
  31. 曾禰益

    ○曾祢益君 最後に、私の申上げることが極めて広大に過ぎるのではなくて、どうも総理考え方は退嬰的であると私は思うのであります。なおこの点について国連の技術援助計画、そのようなものとマツチした賠償問題の解決等については外務大臣通産大臣から御答弁を願いたい。  最後に一つ一点だけ伺いまするが、言うまでもなく日本の独立を完成することが極めて必要である、この見地からあの行政協定の改訂、殊にいま一つは、最近の新らしい事態といたしましてのアメリカの新政権が、只今議会に働きかけておりまする秘密協定を認めないといいまするか、その字句はいろいろまだ審議中であるようでありまするが、その観点において勿論千島、樺太の問題が起つて来ると思うのであります。併しアメリカが真に共産主義国に対する心理的な積極外交をやるというならば、我々は少くともアメリカが自分の日本に対する関係において弱点を持つてつたのでは駄目だ、即ち南樺太、千島を仮にアメリカがソ連に渡したことが悪いということを言うとするならば、先ずアメリカは小笠原、沖縄を日本にそのまま返還する。成るほど条約の案文によると、日本が主権を放棄したことになつておりませんけれども、併し現実にはこれは国連の信託統治にすることが目的であることははつきり書いてある。この過渡的な期間におきましては、行政立法、司法権の全部若しくは一部をアメリカが留保する、この状態は速かに是正して、日本の現実な主権に回復するよう要求する御意向はないか、この点を最後に伺つて、先ほど申しましたような国連の技術援助と賠償問題との観点については、外務大臣及び通産大臣から御答弁を願います。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 先ず初めの問題でありますが、我々も技術的な援助などは、それほど金がかからない場合においては賠償問題の一環としてもやりたいと思つておりますが、とかくこれは誤解がある向きがあるのであります。すでにフイリピン等の新聞にも一部、日本の又昔のような経済侵略というような議論が出ております。従つて形はどうであろうとも、そういう誤解を起さずに技術援助というものができて、そうしてその結果又資源の開発が日本の利益になるというようなことになれば結構でありますから、国連の関係と一緒になつてもこれは差支えないだろうし、又その他の計画と一緒になつてもよろしい。要するに日本だけが何かするのでないというほうが誤解を防ぐゆえんであるならば、できるかできないかは別として、ポイント・フオアとか、コロンボ・プランとか、或いは国際銀行の投融資というようなものも一部には考えられていますから、そういう点をコオデネートして、エカフエも考えてやる、ということは私は結構だろうと思います。その方向でどれくらいの程度のことができるか、実はいろいろ検討をいたしております。  それから小笠原、沖縄、奄美大島等の話につきましては、我々もできる限り早くそういうふうにしたいと考えておりまして、これはいろいろの方法協議いたし、又当方の考えなり、或いは現地の希望等は常に先方に伝えて相談をいたしております。
  33. 内村清次

    ○内村清次君 関連質問で……先ほど曾祢益君から外交の問題につきまして、縷々御質問がありました。その前提になつた問題と只今の問題に関連しまして……。初めて総理のこの楽観論に対しまする心境が明確にされたわけです。この問題は本会議でも、或いは衆議院の予算委員会でも、又私の質問の中にもその点は言つておりましたが、初めて心境がわかつたのですが、その心境の結論を申しますると、総理のほうでは手放しの楽観論はしておらない、これはまあ一つの前提でしよう、それから又問題は政治の要諦として国民に心配をかくるというようなことはこれはしないほうがよい、こういうような点が政治の要諦であるということで初めて心境がわかつた。私は吉田総理のこれは外交問題でなくして国内的な問題或いは又党内的な問題でもここで現われて来る答弁というものはみなこの点から来ておる。ところが私はこれは非常に危険な問題であると思う。これはやはり太平洋戦争のときでも御承知通り、勝つた勝つたの大本営の情報というものに遂に国民は開けて見るとびつくりしてしまつた。こういうよう状況もあります。こういうようなことがたびたび総理の心境として政治の要諦としてなされるということはこれは民主政治、或いは国民外交というような点に対しましても大きな国論の何と申しまするか、自由な考え方、又国民が本当に心配しておる考え方というものが率直に政府に反映しておらないのじやないか。今回の蔵相の演説におきましてはその点ははつきり言つておられます。経済の見通しについての国民の緊張ははつきり言つておる。こういうようなことが総理の口からやはり出べきじやないか。曾祢君の質問の中におきましてもすでにスターリンの死後におけるところの世界情勢は変化しておる。これにはやはり自由国家群も心配しておる。ならば、日本が戦争への道に又近付きやしないかということは国民がひとしく考えておりますから、これに対して総理のただ楽観論楽観論ばかりじやいけない。手放しと申しましても、私は手放しをしたならば政府は無責任だと思う。いわゆる行政責任者として外交の重要な一環としての責任を持つているという総理が若しも手放しをしたならば、国民に相反した政治のとり方であつてこれは無責任である。それはもう当然な話でありまするが、こういうような世界の監視に対して日本の独立を守る見地の施策は率直に私は吐露して頂きたいとかよう考える。この点に対しまして政府はどういうふうにお考えであるかどうか、これが第一点であります。  第二の点は領土の問題をおつしやつたのですが、ヤルタ協定におきましてすでにそのときの署名者は二人だけ死んでしまわれた。あとはイギリスのチヤーチルだけです。ところがこのヤルタ協定は一般教書で明確にアメリカの現大統領の意向は反映しました。この問題はいわゆるあなたが結ばれましたところの調印せられました日本の条約の中の第二章においても明確にその領土の問題が規制されております。私はこのために日本が折角ヤルタ協定の放棄、この秘密条約の放棄を主張したときに、何とも日本の態度というものを公式に打明けておられない。こういうようなことでは私たちはこの条約というものは非常に日本の領土をより以上に制限したいわゆる南樺太の問題、千島の問題を制限した悪条約であるとさえ私ども考えておる。なぜこれの廃棄の国論を起すようなことを外交の手段としてなされないのであるか、どうしてできないのであるか、この点の二つに対しまして総理の御答弁をお願いします。
  34. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。先ほどの第一点については当時戦争中において実際の状態は危険になつたにもかかわらず楽観論をいたしておつた、遂にその結果は不幸なことになつた、故に私の場合も又楽観に過ぎた結果国民が迷惑しやしないかということでありましよう。私の楽観論は確信に基いて申しでおるのであつて、今日世界の情勢は戦争から遠ざかりつつあるということが現実の事態であると私は確信いたします。にもかかわらず言葉を濁すということは却つてよくないと私は考えるから、先ほど曾祢君のお話は悲観に過ぎて或いは国民が不安を起すかも知れない、そういうことはよくないと申したのであります。  それから第二の点は講和条約でありますが、講和条約はポツダム宣言受諾のときに日本に義務付けられたものであります。この義務によつて講和条約が作成せられ、それに調印をいたしたのであります。これは当時において私としても誠に遺憾なことであります、日本の領土が縮小され、若しくは主権を放棄しなきやならんということは誠に遺憾千万なことでありますが、併しながらポツダム宣言受諾のときに日本が義務付けられておるのでありますから、それ以外に、講和条約においてこれを規定する以外に日本は出ずべき道はなかつたのであります。
  35. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 曾祢さんの分は外務大臣お答えで尽きておるかと思いますが、私のほうといたしましては林業、農業各種裁培業などの技術者並びに織布業、染色業、こういう方面に対する技術者の向きに対する協力その他については極めて必要と考えておりますので、極く僅かながらも予算を計上している次第でございます。そういつた方面についてこの国連の線に沿つてやり得ることがありますれば十分お尽ししたいと考えておる次第であります。
  36. 内村清次

    ○内村清次君 最後の御答弁のうちに私はどうもまだ納得できませんことは総理は日本との平和条約を結んだから結局第二章の領土の放棄の問題は今後これは何とも改訂ができない。折角アメリカのほうではヤルタ協定の秘密条約を廃棄するというようなこともやはり上院下院にアイクは出しておる。こういう機運に対しましてスターリンも死んだ、締約者はただチヤーチルだけしかない、こういうよう状況のときにこの条約を結んでおるからこれを改訂するような機運を促進することはできないかどうかということに対しまして総理はできないというようなお考え方のようでありますが、それではこれは如何にアメリカのほうで努力をしてもあなたはソ連にヤルタ協定の署名者がいなくなつた現実の場合においてさえもそういう絶好の機会があつてもこれは日本人として改訂の要求というものが、領土復帰の要求というものがなされないかどうか、この点を私は伺いたいのです。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それなら私のあなたのお話について誤解を持つたのであります。なぜ講和条約締結の場合に、その点を申出てくれなかつたかというお尋ねであつたからつい今のような御返事をしたのでありますが、将来について言つたわけではない。サンフランシスコにおいて講和条約締結の場合になぜこの問題を持出さなかつたというよう質問であつたから今のようお答えしましたが、将来は無論機会があれば政府としては再び復帰せしめるような機会は決して見逃すことはいたしませんつもりであります。
  38. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 三輪君に申上げます。昨日保留になりました点について農林大臣の御出席がありましたから簡単に説明を願います。
  39. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 一昨日の私の質問に対しまして総理は一連の賭博法案これに対しては内閣は反対である、こういうような意向を述べられました。ところが新らしい農相であらせられる田子農林大臣はたしかハイアライ法案の提案者であるということをば我々は承知しておるのであります。吉田内閣として閣内統一してかような賭博法案に反対であるという場合に、田子農林大臣はハイアライ法案に対してどのようなお考えを持つておるか、こういうことであります。
  40. 田子一民

    国務大臣田子一民君) お尋ねのハイアライ法案の提案者の一人でございます。但し、これは衆議院議員としての提案者でありまして、今以て私はこの法案の可否については相当議論をするのであります。但し閣僚としますれば、従来の慣例を調べて見ますと、提案者として、議員提出法律案に署名しておりません。従つて、三日に認証式が行われました直後、提出者氏名削除を手続きいたしております。併しこの法案そのものは、我が日本憲法第八十九条にございますように、この憲法そのものは社会福祉事業に対しまする公私分離、これはアメリカで行われたドクトリンでありますが、日本にこれは憲法となつて現われております。その言葉はなかなか複雑に書いておりますが、申上げれば、公の施設は国家苦しくは公共団体の費用、私設事業は全部これが民間資本でありまして、これには国は補助することも、出金することも、財産の提供もなし得ない、いわゆる公私分離の原則でございます。この憲法が行われまして以来、日本の社会施設、社会事業というものは非常な窮乏に陥りまして施設そのものが子供を収容しても雨が漏る、これの修繕費がないとか、例えば保育所のごときはこれらに日夜心配する従業員の給料のごときも実に稀薄なものでありまして、見るに見兼ねる状態であります。而してアメリカは奨励されまして、日本に御承知の赤い羽根の制度を持ちまして、この赤い羽根は立法化されて、この金によつて社会民間福祉事業立法するということになつていますけれども、これは民間のあらゆる努力によりましても、僅かに十三億の募集しかできませんのみならず、資本家等におきましては相当大きな金を出したいというものがございまするけれども、これにはやはり、何か私はよくわかりませんけれども、課税される金で、いわゆる営業費には繰入れられない、又これらの社会施設のために民間で事業をしますれば、映画のごときは今以てこの費用は民間のものとして免税は見られないのであります、こういう信念から私は社会福祉に用いる金には結構だと思いましたが……。このハイアライそのものの研究はまだ全然いたしておりません。で、往年競馬法によりましてその益金を以て我が国の救護法を行なつたことがございますので、そういうよう考えであります。併しだんだん世論がやかましいようでありますし、又ハイアライそのものの実態もギヤンブリングのようなことがございまするので、私は衆議院におきましても、かよう立法国民の支持があれば、通れば通してもよろしい、然らざれば潰してもいいというようなことを言つてつたのであります。かようなものでございまするので、今日においては取消をいたしたのでございます。(「無責任だ、無責任だ」と呼ぶ者あり)
  41. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 衆議院議員田子氏として提案をされ、慣例によつて三日にお取消になつたという事情はわかりました。なお且つ社会福祉事業のために非常な財源を求めてこの事業を推進することに対する非常な御熱意も、今はつきりお伺いいたしましてわかつたわけであります。そこで田子農林大臣は提案者では勿論ありませんけれども、こういうよう意味において社会福祉事業の財源を得るためにこのハイアライ法案の通過を期待されますかどうか、その点を一つお伺いいたします。
  42. 田子一民

    国務大臣田子一民君) 閣僚としてお答えいたします。この点は反対いたします。
  43. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これにて暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩    —————・—————    午後一時十七分開会
  44. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 午前に引続き質疑を続行いたします。
  45. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 今回の予算を拝見いたしますと、どうもこの項目はもつとたくさんの予算を割かなければならないと思うものは極く僅かしか出していなかつたり、又この項目はそんなに急がないし方法を変えればうんと削減することもできると思うようなものにたくさんの国民の血税が注がれたりいたしておりまするので、その原因について一々追究いたしてみますと、やはり世界が二大陣営の対立で思うように貿易もできなかつたり、その防備費に費やされたりするところに原因があるらしうございます。そしてこのことはひとり日本のみの予算の悩みではなく、世界全体の悩みであり、そして今年のみの問題ではなく、いつまで続く悩みか底が知れないようにも存じます。アメリカではどうもアイゼンハワーが就任後、どうやらソ連とのもつれを話合いで解決させようとすることには七割まで望みを捨てているらしく、力によつて解決せんとする方向に向つておるようにも見えます。或いは又おどすことによつて相手を屈服させようというよう方針ようにも受取れます。併し力で解決をいたしますときには、たとえ米国が勝つときがありましても何分両虎戦うことになりますので、その間の無事の人民の犠牲は許されません。又おどすということになりましてもこうした威嚇外交では昨年以来新世界戦略を発表して実行に着手したり、そうかと思えば又上院で強い質問に会つてみればこれを取りやめにするといつてみたり、又最近は話合いをするからといつてみたり、どうも支離滅裂のようでございますので、却つて足元を見すかされて目的達成が困難になるのではないかと思われます。日本は講和、安保両条約によりまして米国の対外政策の一挙手一投足が直ちに日本の運命を左右することになります。そこで今回スターリンの死後、ソ連がどういう対外政策に出るかということは世界すべての国民が注視いたしておるところでございましていろいろ臆測も行われておりますけれども、私はこの段階ではソ連としての方針もあるかも知れませんけれども、他の民主主義陣営の持つて行き方によりましては大いにソ連の今後の方針が変えられる可能性があるのではないかと存じます。そこで適当な時期にソ連の新政府と民主主義陣営の代表者と極力話合つてもらいたいのでございますけれども、どうも最近の米国のようなやり方では折角ソ連と会つてみましてもなかなか打ち融けて話合もできそうにもございませんし、まとまる話もまとまりにくいのではないかと存じますので、比較的穏健な態度をとつているイギリスのチヤーチルさん、この人はすでに巨頭会談に熱意を持つておりますし、ヤルタの会談の経験も持つておりますので、この際一先ず新しいソ連の代表者と話合つてもらつて、朝鮮動乱の解決或いはよく行きましたならば世界軍縮の線の方までも持つてつてもらつて、この世界の悩みを解決してもらうように二十八年度は最も外交に力を入れてもらいたいと、こう考えるのでございますが、幸いにいたしまして、吉田総理はしきりに米国と緊密な連絡をとつてくれているそうでございますので、こういう問題についても一つ話合つて頂いたらどうかとこう素人考えにも考えるのでございますけれども、如何でございましよう
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お考えの筋は御尤もと考えます。又チヤーチル総理にしましても、又米国新政府においてもあえて戦をしようという考えはなくて、世界の自由、世界の平和を守らんとするのでありますから、そのうち英米その他或いは国連等におきましてお話のような話合ができるような気運になるかも知れませんし、又そういう気運になつたらば大変結構だと思います。但し一言附け加えますが、政府提出しましたこのたびの予算案はお話のような筋とは関係なく、二大陣営に分れたというような点からではなくして、一に日本の現在の国情の必要を主眼として編成されたものであります。又防衛費にしましてもむしろ昨年よりも減らしておるようなわけで、現在の日本の事情に適応した予算を目標として作り上げたものと御承知を願います。
  47. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 言葉を返すようで大変失礼でございますけれども、今回の予算案が世界が二大勢力の対立になつていることとは何の関連もないとのお言葉でございますけれども、私はどうやら随分関連があるように思います。この頃ハイアライ法案が上程されておりますが、こういうふうな一連の賭博、即ちものを生産するでもなく、ものを流通させるでもない、ただ金だけのやりとりによつて、その間の若干の何と申しますか、それで生活しなくちやならないような遊民の群がたくさんできてみたり、街で淫売をする人ができてみたり、或いはそれほど急がないと思う道路を新設してみたり、こういうことはやはり国外と関係がございまして、世界の貿易が十分できますならばこういう人に正しく働いてもらつて暮して行ける途も作ることができると思いますので、こうう点から考えましても世界の二大勢力の対立ということが今日日本の道義の問題にも貧乏の問題にもいろいろ関係があるように思いますけれども如何でございましようか。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この対立は世界の国をなすものに直接間接影響をいたすことは勿論であります。但し今申したように日本の予算案は一に日本の目下の事情に必要なものを上げてそして予算編成の目標としたのであります。成るほど貿易も何といいますか、現在の事情においては拡張ということは望めませんが、これも無論二大陣営の対立からでもありましようが、一つはイギリスとしては輸出入の均衡を図るという考え方からして輸入を抑制する、従つてよその国との関係からいうと輸出が困難になる。併しその結果イギリスだけがその貿易の縮小による結果を利益するのではなくて世界がことごとくそのために苦しいのでありますから、如何にしてこの勢いを打開するか、そのためにはアメリカの関税政策についてもイギリス自身も要望いたしておるような次第で、貿易は、或いは経済のことでありますからときに一進一退はありますけれども、その場合において或いは世界的に或いは国内的にこれに対する応急措置を講じて行くということが世界どの政府もとつておるところの措置であります。
  49. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 朝鮮戦線の米軍に日本人が召使になつたり技術員になつて雇われておるそうでございますが、これはやはり安保条約で、あらゆる方法で国連に協力するというあの趣旨に基くのでございましようか。更にその人員、仕事の内容、雇用條件、そうして又負傷したり死亡したりした人に対してはどういう待遇をしてもらつているか、ちよつとお伺いいたします。
  50. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは一部は国連協力という趣旨から出ておるものもあります。例えば海底電線の修理を行うとか或いは物資の輸送をするとかいうものにつきましては、国連軍に協力するという意味で、無論契約はいたしております、人を出しておるのであります。併しそのほかに私契約で行つておるものもあります。召使のような種類のものから或いはその他いろいろのものが行つておりますが、これはすべて私の契約で行つておるものであります。これらは契約に基いていろいろの場合の処理をいたすことになつております。
  51. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 実際といたしましてはですからどういう契約が行われておるか、大体どのくらいの月給をもらつており、負傷いたしたり死亡いたしておるときにはどういう待遇を現に受けておるか。
  52. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは場合によつてはそういう死亡したり負傷したりするというようなことも理論上なきにしもあらずでありますが、普通密出国と申しますか、政府の認めなしで行つておるものについては、これは監視が及ばない部分がありまして、重傷を負つたというような人があつたと思いまするが、その他のものにつきましてはそういう危険な所には行かないことになつております。併し万一の場合にはそれぞれ契約に基いて処理されることと予測しております。
  53. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 三橋正雄氏が四年間ソ連とスパイ通信をいたしておつたのに、なぜその間当局でキヤツチすることができなかつたかという大きい疑問がございますが、結論から申しますと、日本の空が怪電波に対しましては無警察状態であるらしうございまして、月に平均二千五、六百件ぐらいの怪電波が放送されておるそうでございますが、これは人手と資材の不足のためにこの内容が追及できないそうでございますが、この問題につきまして当局では何か御対策を考えておいででございましようか。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは私の関係する部門は非常に少いのでありますが、この電波の監理は御承知ように電波監理委員会でやつておりまして、これは相当の人を使いまして、相当の各地に施設を持ちまして、一々登録されていない電波の所在を明らかにして追及いたしております。併し大きな例えば国外にまで伝わるような大きな力を持つた電波は、これはそう追及がむずかしくないのでありまして、いわゆる怪電波というのは私設のまあ遊び半分にやつておるような電波も含まれておるものと思います。これらにつきましては電波監理委員会の方で十分なる措置をとつておることと私は了承しております。
  55. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 次は死刑の問題でございますが、過日新聞紙上に表われました二十二歳と二十六歳の青年が、而もこれは死刑囚ですが、これが脱獄いたしまして、つかまえられて再び警察に連れて帰られましたときに、机に泣き伏して何を尋ねても答えないというような事情がございまして、国民の一部の同情を買つたかと存じますが、これで私が疑惑を抱きますのは、二十二歳の死刑囚と申しますと、大体二十一歳頃の犯罪であろうかと思います。二十歳までは少年法で死刑には処せられないことになつております。ところが二十一歳の人間が罪を犯しましたときに、如何に将来反省いたし、改心いたしましても、国家として殺すよりほかに手がないというのは法の行過ぎであるように思います。そこで死刑ということを一応調べてみましたところが、全然今死刑という条文を削ることは、最初から置かなかつたのならば別ですけれども、今それを改正いたしますと改正することの悪影響があると存じますので、今後の取扱の方法といたしましては、やはり判事さんによく考えてもらわなければいけないと思います。二十一歳ぐらいの人間に死刑の判決を下すということは余ほど考えなければいけないと思います。更にいよいよ死刑を執行いたしますときには法務大臣の捺印が必要なんだそうですが、これもやはり法律と町の常識とを勘案さすという御趣旨の今の日本の法務大臣としては、余ほど考えてくれることだろうと思いますが、こういう問題に対しまして何か御答弁を頂きたいと思います。
  56. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) お答えいたします。死刑の問題につきましては、裁判所は勿論のこと、検察当局におきましても大変慎重な態度をとつておりまして、只今御指摘のような事件につきましては、いろいろ具体的な事件の特殊性に応じまして、普通の場合には少年或いはこれに準ずるものについてはもとより死刑というものは成るべくこれを避けるというふうな精神を活かして行くのでございまするが、只今ような事件につきましては、特殊の重い事情があつたものと裁判所が認定したものと存ずるのでございます。なお死刑が確定いたしましても、その後これを執行するにつきましては、只今お話のように法務大臣の特別の指揮を必要といたすのでございまして、この際におきましては確定記録をそれぞれの原庁から取寄せまして慎重に検討を重ねまして、その上で更にこれに対して恩赦に付する事情があるかないか、再審その他の事情があるかないかというふうな点も十分慎重に考慮をいたしまして、その上で現実に法務大臣の指揮がある、かような手続になつておるのでございまして、これ又極めて慎重なる手続をとつておる次第でございます。
  57. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 近頃外人の犯罪が非常に多くなつております。昨日も自動車の衝突が三十四件でございますが、その中で十四件までが外人の自動車との衝突で、これは犯罪とは申せませんでしようけれども、大いに何か考えさせられるところがあるらしうございます。それから毎日のように外人の強盗とか窃盗が新聞に現われますので、大分以前にこれは弁護士会のほうから大使館に申込んでくれたのでありますけれども、なお改まらないようでございますので、この際日本の政府から何かアメリカ大使館のほうに一つ申込んで頂きたいと存じますが、総理大臣如何でございましようか。
  58. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは日米合同委員会におきまして、その都度取上げることになつております。そうして重大なりと思われる犯罪につきましては、直ちに措置をとるように要請いたしまして、それから軽微なものにつきましては、先方の裁判等の結果をこちらに知らせるようにいたしておりまして、軽微なものは大体二月に一遍とか三月に一遍とかまとめてよこしまするが、重いものはその都度やるようにいたしております。又こういうふうに特別何か被害が多いとか、犯罪事実が多くなつたというと、すぐ合同委員会でこれを提起いたしまして先方の注意を喚起し、取締を厳重にするようにいたしております。
  59. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 混血児の問題でございますが、アメリカの父親と日本の母との間に生れました子供で、父親が引取つてくれない子供を、アメリカの有志のかたから養子にもらいたいという申込があるのでございますけれども、移民法が改正されませんと子供たちが受入れられないそうでございます。政府の方から一つ米国政府へ、移民法を改正して受入れてもらえるような途を開いてもらいたいと思いますが、総理大臣如何でございましようか。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 移民法は先般も一応改正になりまして人種的な差別を撤廃する、つまり東洋人と西洋人との区別を撤廃するよう措置をとつたわけであります。従いましてこの移民法というものは、今ではアメリカにとつては、各国いずれにも同じように適用する法律になつておりますので、日本の場合を特別に扱うということはちよつと困難じやないかと想像されまするけれども、混血児等の問題やらその他日本と特別親しい関係に終戦以来なつておりますので、若しそういうことができるとすれば結構だと思いますが、これはいずれ研究いたしてみてからのことにいたしたいと考えております。
  61. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 最近警察の検挙能力が非常に上らないという非難が多うございますけれども、警察側の意見を聞いてみますと、民主主義の行過ぎで刑事訴訟法に非常に欠点があるそうでございます。私たちとしても反省しなくちやならないと思いますが、例えば容疑者は四十八時間以上は警察にとどめておけないとか、弁護士が被疑者と面接いたしますときに警察官吏が立会いませんので、その間いろいろ話合いをされてあとで取調が困難であるとか、或いは取調に当つて答えたくなければ答えなくてもよいのですよという前置きを言わなければならない規則は、誠に行過ぎでございまして、非常に困難だそうでございます。更に各官庁、警察の中には共産党のフラクシヨン活動が入り込みまして、折角検挙してもいつの間にか秘密が漏洩しているという事実が多いそうでございますので、こういう点につきまして当局の御答弁を頂きたいと思います。
  62. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 刑事訴訟法の不自由な点等につきましては、成るほど御指摘の通り警察における持時間というものは四十八時間よりございませんので、その間に取調が完璧に行かないという点は御尤もでございます。ただ実際の運用といたしましては、その後検察庁に送られ、事件によりましては最大二十日間拘留ができますし、その間警察において現実に調べをすることもできるわけでございます。更に今回刑事訴訟法の改正を提案いたしまして、これによつて更に五日間だけ延長しようというような案を出してございまするので、さような手当ができますれば、さような四十八時間の不便というものは是正されるに至るのではなかろうか、かように存じます。  次に警察におきまして、弁護士が被疑者と面会する際に誰か取調官でも立会せたらどうかという問題でございまするが、成るほど具体的にはいろいろその際に証拠湮滅等の打合がされるような場合もあるのでございまするが、併し何分にも弁護権というものは十分尊重しなければならんという建前でできておりまするので、さような問題につきましては相当慎重に事を運ばなければならないものと存ずるのでございます。さような事実が具体的に現われました際には、従来の取扱といたしましては、弁護士会におきましてこれを適当に内部の規律問題として処置しておるようでございます。  次にいわゆる黙秘権の行使の問題でございますが、この点につきましては被疑者に何もしやべらなくともいい権利があるということを告げてから調べるというのは、成るほど心理的な一つの矛盾を感ずるゆえんでもございまするし、憲法では必ずしも権利があるというふうなことまでは書いてございませんので、これ又今回国会に提案いたしておりまする刑事訴訟法の一部改正法律案におきましても、この点の最初取調官が告げる内容を、従来と違いまして、強要されないということだけを告げればよろしいというふうな文字の改めをいたした次第であります。  次に最後にお尋ねの問題でございますが、この点は成るほど機密が漏れたのではないかというふうに思われる事例が一、二ございましたけれども、その点の確証がはつきりしておるわけでもございませんし、私どもといたしましてはさようなことが外部に事前に漏れないように今後とも十分注意して行きたい、かように存じておる次第でございます。
  63. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 文官に恩給を渡す根拠でございますが、今回旧軍人に対する恩給が審議されておりますと、やはり文官にも恩給を渡すということになりますので、文官に恩給を渡す根拠が審議の的になります。官公吏の人たちが現在職業についておりますときに、物価が五%上つたらそれだけ給料を上げてもらうように人事院から保護までされております。どうもこういうふうに保護をされておりますのに、或る一定の年齢になつてやめましたなら恩給までしなくちやいけない、この貧乏国、恩給亡国でほかのものとの釣合い上も誠に困るものだと考えます。そこでこの人たちが現役におります間に、お互いに積立金をしまして、やめたときには共済保険、こういう制度にでも切替えるようにしてもらいまして、いよいよ貧乏な人を社会保障というふうな点で解決してもらうようにしませんことには、恩給ということでいつまでも貧乏予算の財源を割かなくちやいけないというのは、どうも将来は改めなくちやいけないと思うのですけれども総理大臣はどうお考えですか。
  64. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 深川さんに申上げます。今官房長官は見えませんから、答弁は保留させて頂きます。
  65. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 よろしうございます。  その次には学制の改革でございますが、近頃大学が四年制になつておりますが、初めの二年間は教養学部でございます。小学校、中学校の延長のような勉強をいたしておりまして、本当に専門の勉強は後の二年しかいたしておりません。二年間ではみつちりと研究ができませんので、非常に大学を卒業いたした人の学力が低下いたしておりまして、使いものにならないというのが実業家のほうからの声でございます。私はこれは戦争以前の学制のほうがいいと思うのでございます。そして一つ基礎学科は高等学校まででおしまいにしてもらいまして、大学の四年はみつちりと専門の教育に注ぐように改めてもらいたいと思うのですが、これはどうでしようか。
  66. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) お答え申上げます。只今新しい大学の教育内容について御質疑がございましたが、御承知ように、新しい大学教育におきましては、従来の大学或いは専門学校が非常に狭い専門教育に堕しておつたというような論議に鑑みまして、広く一般教育の上にそれぞれの専門の学識或いは技能を授けることを念願といたしまして、今日の教育内容が成り立つております。そういう点からいたしまして最初一年半を一般教育に充てておるわけでございまするが、そういう目的から見ましてお話のように一般教育を全然大学教育から排除することは、その目的から見ましても、又基盤となりまする今日の高等学校以下の教育の状況から見ましても困難であろうと思うのでございます。併しながら一般教育と専門教育との関連をそれぞれの学科の目的に即して更に改善することによりまして、お話のよう改良、改善の方角に向うべきだと私ども考えております。
  67. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 最近投資証券というのが非常に流行いたしております。よく調べますと七割五分までは大体五万円以下の零細なる国民大衆が所有者でございますので、この将来性につきまして非常に案ずるのでございますが保証もございません。昨今のように株の暴落が甚しいという声を聞きますと、こういう投資家は非常に心配いたしておるだろうと思うのです。而も初めのうちはたんす預金を出して買つていたのでしようけれども、一年の間に二倍にもなるという宣伝がききますので、近頃は銀行預金がどんどん引出されておるようでございますので、銀行屋さんのほうも困るだろうと思います。これの将来性、安全性について一つ大蔵省のほうから、或いは総理大臣でも結構でございますが、御説明を願いたい。
  68. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 投資信託につきましては受託者、即ち信託会社が毎月報告を大蔵省提出しまして、それから又大蔵省からも随時検査をいたすことになつておりまして、安全を図つておるのでございます。それから又その証券信託に加わつておるものは或る時期に買戻しを請求して、或る時期には自分の資金を取戻すことができる仕掛になつておりますので、その点で以て自分の利益を保護することはできると思つております。その他受託会社が慎重に資金の運用をしますよう大蔵省から指導はいたしておるのでございます。そこで保証がないという点につきましては、これは各自証券信託に応募しておるものが、自分が資金の投資をする代りに証券信託会社に投資を任せるという形でございますので、やはり多少の危険のあるということは各自覚悟しなければならん。従つて信用のおける信託会社に投資を任せるということにしなければいけないのでございますが、同時に今御質問にありましたように、株式が上るために、初めに入れました金が倍にもなるというふうな宣伝で、そのために預金を出してまで応募しようというふうになりますのは、確かに弊害を招くもとだと思うのでございまして、せいぜいそういう宣伝方法をとらないようにさせたい、そういう方針でおります。
  69. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 東京都の倉庫には六百余りの引取手のない遺骨が未だに保管されておるそうでございます。更に稲毛の弾薬倉庫には二、三万のやはり同じ全国の遺骨が保管されておるそうでございますが、これは政府のほうで何とかお考えにならなければならないのではないかと存じますが、如何でございましようか。
  70. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 深川さんに申上げますが、厚生大臣は今日病気でお休みになつておりますから、一つ答弁は留保をお願いいたしたいと思います。
  71. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 戦時中に秋田県の花岡鉱山で以て中国人三百五十何名が虐殺されたということで、今度中共から引揚げて参りますあの船で遺骨を返してくれるように便宜を図つてくれと中共側から申入れをしておるのでございますけれども、どういう事情なんでございましようか。
  72. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) そういうことがしばしば言われまして調査をいたしておりまして、まだしておるのじやないかと思いますが、大分前のことでありましてなかなかはつきりしたことがわからないように私は聞いております。若しそういうことがはつきりいたしますれば、無論適当に措置をいたしまするが、一部にはこれが非常に何か悪い宣伝にも使われて大げさに伝わつておるようにも思われるのでありますが、調査は確かに依頼して、警察その他で以てやつておるわけであります。
  73. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 自由党ではこの前の選挙のときに修身科を復活させるという公約でございましたが、この四月から間に合うのでございましようか、又教科書はどういうふうにして製作していらつしやいますか。
  74. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) お話の高等学校以下の社会科に関する問題でございまするが、目下関係の教科につきまして専門家、実際家にお集り頂きまして改訂につきまして審議中でございます。教科書は御承知ように文部省の定めまする標準に即しまして、検定教科書が自由に企画され出版される建前になつております。
  75. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 小笠原通産相はかねてから日本経済維持のために中共への輸出品の禁止品目ですか、これの緩和方を申込んでいらつしやつた中で九十三品目ばかり許可になつたとか言われておりますが、大体その品目はおわかりになつていらつしやつたらそれを承わりたいのと、その中に石炭の輸入が解除になつた、これが一番大事な項目であると思いますのでお尋ねをいたします。
  76. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたしますが、九十三品目は当時新聞にも実は出ておりまして、大体その品目、私はその内容について細かくちよつと存じませんが、石炭の分については丁度関係政府委員も来ておりますから御答弁いたさせます。
  77. 石原武夫

    政府委員石原武夫君) お答えをいたします。輸出につきましては、只今の九十三品目をのちほど詳細に資料として御提出を申上げますが、そのうち石炭は入つておらないはずでございます。なお今のお尋ねは輸入でございますかどうかはつきりいたさなかつたのでございますが、輸入でございますれば今一部話合が進行いたしておるものでございます。
  78. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 戦死者の遺家族の援護の支払状況についてお尋ね申上げます。
  79. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 深川さんこれも厚生省関係ですから、前のと一緒に一つお願いいたします。
  80. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 それからこれは通産関係になりますけれども、貸倒れ準備金、価格変動準備金、輸出契約破棄準備金、こういうことについてお考えようでございますが、これについて御説明をお聞きしたいと思います。
  81. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。これは輸出商社強化のためにやつた制度でございまして、輸出損失準備金の方は当該年度における新規輸出契約高の千分の五、それから当該事業年度における貿易量にかかわる所得の百分の三十五の、いずれか低い額の範囲内で輸出損失準備金を積立てた場合は、積立金の累計が新規輸出契約高の当該年度分の百分の一に達するまでは、これを損失に算入することができる、こういうことになつて、この制度は昭和二十八年度から五年間を限つて適用することに相成つております。それから海外支店等の特別償却は、これも貿易業者が海外へ支店を作りました場合に、建物及び構築物については取得後三カ年間普通償却額の五割増の償却を認める、それから建物以外の固定資産及び家屋等の賃借のための権利金等については、取得又は支出の年度において支出額の二分の一を償却することができる、こういうふうにしまして、これも昭和二十八年度から五カ年聞を認めておるわけであります。更に貸倒れ準備金制度は少しこれを拡大いたしまして、卸売及び小売業については現行千分の十であるのを改正率では千分の二十を積立て得ることにいたしたのであります。従つてこれに税がかかりません。価格変動準備金はこれは新たに国債を価格変動準備金に加える等の改善を加えることになつておる次第でございます。
  82. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 武器の出血受洗というものは日本の労力、資材の損失がおびただしいと存じますが、これを防止するため何かもうお考えがなければならないと存じますが、これの具体策をお伺いいたします。
  83. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) いわゆる出血受注というものにつきましては、どの程度の出血かはよくはつきりいたしません。けれども正常なる商売に見ますると、幾らか割合が悪いのじやないか、こういうふうに考えられますので、これについては政府のほうといたしましてもまあ第一に長期に注文があることが非常に必要でありますので、向うにそういうことをいろいろ交渉をいたしております。なおこちらのほうから適当なる受注者を向うへ選んで、こういうところはそういう品物の注文を受けるのに適当だというものは選定いたしまして、そうして向うとの調整を図つております。それで一番よく言われるのは、いわゆる俗に再入札という分でありますが、一遍入札をする、その後更にこの値段では高いからこういうふうに安くなければならん。その次は入札ではありません、もう一遍何と申しますか交渉があるわけであります。そのこと等はこれは大変面白くないことでございますので、先般これは日米合同委員会を通じまして向うにそういうことを申入れました。今後はそういうことをしない、そういう返事を受取つておりますから、さようなことはなかろうと考えております。今度はこの議会に提案しております武器等製造法が通りますとこれによりまして許可認可の制度を政府のほうでとることもできるように相成りまするし、且つ又その受注価格が不適当なものでありますと、これは戒告することができるように相成つておりますこと等で、今後これにつきましてはあの案が通りますれば根本的にいろいろ対処し得ることと考えております。
  84. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 国家公安委員というものは、非常に日本の治安の元締をする人で大切な存在でございます。法務大臣も極めてその権威者を揃えておるというようなことをおつしやつていらつしやいましたが、最近一人を補欠いたしますので、伺つたことでございますけれども、やはりもう一遍全部の国家公安委員の名前、経歴をここにお挙げになつて頂きたい、私たちちよつと考慮してみたいと思いますので。
  85. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 甚だ恐れ入りますが、前に各省大臣に通告を発しておつたのでございますが、今法務大臣がお見えになりませんからいずれ……。
  86. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 最近かあいそうに自動車の運転手が締め殺されます事件が次から次へと起ります。このままに放つておいたら今年の年末までには相当の被害者が出ると思いますので、その真ん中におおいガラスを入れるとか、或いは網を張るとか、或いは車掌をうしろ向きに乗せまして一割ぐらい料金を殖やして車掌の賃金にするとかいろいろ考えてみますけれども、結局はその運転手その人の勘でなければ防ぎ切れないと考えますけれども、やはり当局でもそういうことについてもいろいろ考えていらつしやると思いますけれども、何かかあいそうな事件が再発いたさないように防止策がございますか、(「委員長は何とかしないと答弁できないじやないか」「法務大臣どうした」と呼ぶ者あり)
  87. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 今法務大臣来ますから……。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)今法務大臣見えますから、もう少し……。(「委員長、休憩しなさいよ」「恰好つかないよ」「こんなこと前例がないよ」その他発言する者多し)  それでは二時半まで休憩いたします。二時半かつきりに始めます。    午後二時五分休憩    —————・—————    午後二時四十九分開会
  88. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 休憩前に引続きこれより質疑を開始します。
  89. 木村忠二郎

    政府委員木村忠二郎君) 深川議員の御質問に対しましてお答えいたします。  東京都の倉庫に約六百、稲毛の弾薬庫に約二、三万の遺骨があるというようなお話があつたそうでありますが、こういうことは私聞いておらないのであります。倉庫や弾薬庫等がこういう遺骨を納めるようにはいたしておらないのでありまして、現在稲毛の留守業務部には約二千八百ばかりの御遺骨がございます。これは御遺骨がありまして、その名前がわからないものでございまして、これにつきましては、現在あらゆる手がかりを通しまして、その名前を明らかにするのに努めておるようなわけでございます。その他各府県にあります遺骨で以て、まだ御遺族の所在がわからないというために、渡していないものが千三百五十一柱ございます、そのうちで東京都の持つておりまするものが約三百九十でございます。大体これだけのものが現在御遺族にお渡しすることができないという状態で置かれておるのであります。今後もできる限りその人々の氏名を明らかにいたしまして、御遺族の手にお渡しができるようにいたしたい、かよう考えておるのでありまするが、なおどうしてもこれがわからないというものにつきましては、現在南方諸島で収集いたしておりまするところの御遺骨が、こちらに帰りました際に、これを先般閣議できめましたように、納骨堂等に納めますということに相成りましたならば、その際に併せまして、そこにお納めするようにいたすのが適当であろうと考えております。現在でも倉庫とか弾薬庫の中に置いてあるということはないのでありまして、やはりそれぞれそれを奉安いたしまする施設をこしらえまして、そこに奉安いたしてございます。ただこれらの建物が元の軍の倉庫、或いはそういうようなものでありましたものが、現在復員局関係の建物として使つておりますので、そういうような場所でありまするけれども、決して倉庫にそういうものを置いておるということはいたしておらないつもりでございます。  それから遺族援護費の支給状況でございまするが、現在までの遺族年金及び弔慰金の支給状況は、三月五日現在を以ちまして、受付けましたものが百六十七万、裁定いたしましたものが百四十九万、御遺族に通知いたしましたものが百四十二万、こういうことに相成つております。  それから障害年令は、従来恩給の裁定を受けておりました方々のものが全部これは裁定通知を終つております。その他のものを合せまして、現在まで受付けておりまするものが四万六千件、それに対しまして裁定を終りましたものが四万四千六百件ばかりになつております。
  90. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 先ほどの深川さんの御質問お答え申上げます。  先ず国家公安委員の略歴を説明せよとのお話でございましたので、ここに御説明申上げます。現在国家公安委員委員長をしておられますのは青木均一氏でありまして、この方は品川白煉瓦株式会社の社長をしておられます。又終戦後は内閣復興金融委員会委員をされましたし、更に公職資格訴願審査委員会委員もなさつたわけであります。  次に同じく国家公安委員で金正米吉氏が任命せられております。これは御承知かと思いますが、日本労働組合総同盟の会長であられまして、それ以前にも総同盟の大阪府の連合会長をされたり、或いは全国繊維産業労働組合同盟副会長をされたかたであります。  次に植村環さん、御承知かと思いますが、古くから日本キリスト教女子青年会の会長をしておられまして、世界YMCAの副会長をしておられます。東京の女子学院の理事、津田英学塾の理事をしておられます。  小汀利得さん、御承知ように日本産業経済新聞社の社長であられまして、終戦直後貴族院議員をしておられたかたであります。いろいろの委員会委員をお願いしたこともございます。  それから只今東京高検の検事長に任ぜられました花井忠さん、このかたが国家公安委員をしておられましたが、東京高検の検事長に任命せられまして、まだ欠員になつておる次第でございます。  以上お答え申上げます。(「委員長与党委員はどうした、ちつとも出ていない。駄目だこの委員会は」と呼ぶ者あり)
  91. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 今呼びに行つております。(「どうしたんだ、不熱心だ、最も不熱心だ」と呼ぶ者あり)
  92. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 吉田総理にお尋ね申上げますが、これ以上長く政権を担当されるといたしますと、この後、日本の政治に対して特にどういうことをまだなされたいというお考えでございますか。(笑声、「いい質問だな、いい質問だ」と呼ぶ者あり)
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) いろいろいたしたいこともありますが、いずれにしても、国力の充実ということが大事であつて、そのためには日本の貿易の伸張とか、或いは産業の合理化とかいうような産業政策等についても力を入れてみたいと考えます。又文教政策についても力を入れてみたいと思います。
  94. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 これは私といたしましては、大変失礼な言葉であるかと存じますのですけれども、お気長くお聞取り願いたいのですが、終戦後の混乱時代に内閣を組織されまして以来、数年、ここまで日本を立ち上らして下さつたのは、やはり吉田総理の並々ならん御勉励さがあつたからと私は率直に考えるわけであります。私はときどき吉田総理が箱根に静養においでになつたり、或いは逗子で御休養になることを新聞で伺いますときにでも、やはり一国の総理というものは余りあくせくお忙しいことでなく、ときたまに、こういうふうに誰もいない一人の所で、静かに御考慮になることが必要なことで、これが総理大臣のやはり立派な心だろう、こういうふうにさえ考えるほど贔屓目に見て来たことであります、けれども講和会議も済みまして、どうやらここで日本も一本立ちに総理のお蔭でさして頂きました。(笑声)  それから、どうも今国会にはいろいろ占領政策の行過ぎ是正に対しましてもたくさんの法案が出されたようでございます。そうして見ますと、どうも私個人の考えかも知れませんけれども、政治家というものはやはり望まれて出て、惜しまれて引くというのが非常に大事なことでございまするし、(「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)一人の人がその位置にいつまでもとどまつているために、大変お疲れでもございましようから、やはり若い者に、後進者に道を開くというようなことも、やはり考えなくちやならないことでございましようし、それがやはりお互いに好き不好きということもございますので、長く一人が総裁の位置にとどまりますと、どうしても認められないものが出て来まして、不平不満を醸すかと思つたりいたします。それと、そのほかに一番大事なことは、立派な総理大臣でございますけれども、やはりそこにはどうしても人間は神ではございませんので、性格の特徴がございます。それが同時にその政党の特徴をなします。どういたしましても、そうしてその政府の性格というものは、これは直すことのできないような性質もあると思います。古い話でございますけれども、片山内閣が政権を担当いたしましたときに、ボスの征伐をいたしまして人心を緊張さして、私たちも道義の高揚に非常に役立つんじやないかと感じたときもございますが、そういうときと比べますと、どうもこの内閣は立派なところは多いけれども、例えば一連の賭博財政、或いは一年に三千億円、或いはそれは三倍くらいあるというのですから、一年の財政支出の全部くらいはここ数年間に汚職の財政になつているかも知れない。或いは淫売なんかでも、何遍質問しましても、いつまでたつても街に氾濫している。こういうことはどうも私は財政その他の原因だけではないのであつて、この内閣の性格ではないかしらと思うのです。一応、又多少違つた性格の内閣ができますことは、やはり長短相補なつて国家のためにもいいのじやないか、人心が新たになつていいのじやないか、こういうことも考えます。いつまでも吉田総理ような御判断力の正しいかたが、西園寺さんみたいな位置では困りますけれども、長く蔭にいて日本の政治を誤まらないような御指導、御忠告下さるような位置に長くいて頂きたいと思うのですか、ここらあたりで一つ(笑声)日本の政治を完全なものにするためにやはり多少性格の変つた、多少わさびをきかすことができまして、この敗戦国民の心をもう少し緊張さして、植民地的な性格を一掃さしてもらえるよう内閣に一遍変ることが、この際大事なのではないか、又そのうちには吉田さんが帰つて来て下さることがあつてもいいけれども、この際一遍そういうことが国家のために必要なのじやないかと思います。大変失礼なことでございますけれども、純真な私たちはそう考えるのでございますから、如何でございましようか。(「そうそう」「異議なし」と呼ぶ者あり、笑声)
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 誠に御同情のある御勧告、有難く承わります。併しながら私は、自分一身の毀誉褒貶などは考えておりません。輿論の或いは国民の我が党に支持のある限り、又私が内閣の首班になつていることが輿論の支持を受ける限りは、私の一身の都合或いは毀誉褒貶のために進退はいたさないつもりでございます。
  96. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 安保条約がある間は軍備をする必要がないと、今国会総理大臣は御答弁されたようでございまするが、安保条約の前文には明らかに自衛力の強化を謳つているようでございまするが、安保条約のある間軍備はしない、これでアメリカさんが承知をしてくれるでしようか。そのあたりをちよつと……。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと御質問の趣意を聞き落しましたが、安保条約のある限りはアメリカが日本を助けるかというお尋ねですか。
  98. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 安保条約のある間は軍備をする必要がないと、先だつて国会総理大臣が仰せになりましたが、これの御説明をもう一度して頂きたいのです。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本国としては、敗戦後において日本の国力が、みずからを守る力が不十分である、ここにおいてか、集団保障と言いますか、安全保障条約で日本の独立安全を守る、この政策をとつております。従つて日本の国力が充実したらともかくでありますけれども、充実しない限りは再軍備はいたさない、安全保障条約で以て日本の独立安全を守る、この政策で我が党、我が政策は参るつもりでございます。
  100. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 今度の国会でも皆は今軍備を日本はしておる、秘密の軍備をしておるというけれども国会が現に通過させておるではないか、軍備ならば憲法違反だから国会を通過させないわけなのに、通過させておるではないかというお話でございましたが、絶対過半数の与党を持つておいでになりますので、たとえそれが憲法違反なりと解釈する人が多うございましても、それがなかなか議会を通らない、絶対過半数を占めておる内閣が憲法違反を犯すときは一体どうすればいいか、こういうことについて考えましたところ、やはり輿論の力を借りなければいけない。新聞論調や輿論調査もやはり現在の日本は軍備をいたしておるという結論を出しております。こうなりますと、一体どうなるんですか。(笑声)
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 世論や噂がどうであるといたしましても、政府は再軍備はいたしておりません。
  102. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 万々一、こういうことはないだろうと思いますが、何分元帥の大統領を戴いておりますので、先だつても新世界戦略なんという、およそ私はああいう事態は、近い将来来るようには思つていなかつたようなことを発表されますところを見ますると、どういう事態が起るかも知れないと思いますが、仮にアメリカが今後中共を攻めるとか何とかいうことがございましたときに、朝鮮動乱を早く解決さすための手段だと言われますならば、どうやら朝鮮動乱は国連の行動でございますので、国連の一種の戦略作戦計画の延長であるという言い分もつくかも知れませんけれども、私たちは朝鮮に国連軍がおります間は、国連に協力しなければいけないけれども、朝鮮の土地を離れて新らしい戦略に出ますときには、幾ら安保条約ではあらゆる手段で国連に協力すると申しておりましても、あながちそのままついて行かんでもいいじやないかと思いますが、後日のため、念のため承わりたいと思います。
  103. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと御質問の趣意がよくわかりませんが、若し国連が朝鮮以外に出兵若しくは戦争を起したときに、日本はなお協力するかというお尋ねですが、それに対してはそういう場合を想像できませんからお答えできません。(笑声)
  104. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 これはいずれ後から出て来るだろうと存じますけれども、対日援助金のことであります。これは私の調べたところによりますと、池田前大蔵大臣関係していらつしやる「国の予算」という三センチぐらいの本でございますが、そのうちに対日援助金というものは今までははつきりしていなかつたけれども、講和会議の途中に、日本ははつきりこれを債務と確認したという言葉がございますのですが、これについてお尋ねいたします。
  105. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 債務と確認したことは毛頭ございません。
  106. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 持ち時間が終つたそうですが、最後に日本の輸出は絹織物が王座を占めていたはずでございますのに、最近全くイタリアに販路をとられてしまつております。民主主義陣営のほうの販路を全部とられておる。これでずつと日本はこのまま行くのか、ほかの大臣でも結構ですから伺いたい。
  107. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。絹及び絹織物は今お話のような点がございますが、最近非常に高売行きでございまして、今は稀に見る輸出状況に相成つております。併しこの状況につきましては、国内のほうの消費もいろいろありますので、幾らか優先外貨を割当てる等、及び今度更に二千万円ですか、広告宣伝費等をやることをいたしまして、もつとこの絹織物及び絹糸、特に絹糸でありますが、余計出ますように輸出増進方を工夫いたしておる次第でございます。
  108. 深川タマヱ

    深川タマヱ君 最後にもう一つだけ、日本は非常に硫安の生産力が旺盛になりまして安く輸出いたしておるそうでありますが、本国会予算を拝見いたしますと、非常に食糧増産費が殖えておるようであります。素人考えですけれども食糧増産の対策を具体的に見ますと、やはり土地改良とか或いは開墾であるとかいうような、相変らずの項目が挙つておるようですけれども、さほど硫安の生産力が盛んになれば、そうして硫安は完全肥料と聞いておりますので、この頃の農村では肥料を買う金がなくて困つておるようですなら、そういう方面にそれほどの資金を割くなれば、すべての土地に対して十分に肥料をやる資金を融通してやつて、日本の今の耕地に作つております作物に十二分に肥料をやつてもつと増産をさす。これは一つの食糧自給の対策になるのではないかと思うのですけれども農林大臣如何でしよう
  109. 田子一民

    国務大臣田子一民君) 肥料の問題についてお答えいたします。今土地改良の問題と比較してお話になりましたが、勿論肥料の潤沢な供給も必要であります。併し土地改良そのものもこれを蔑ろにすることはできません。
  110. 曾禰益

    ○曾祢益君 関連質問を……。只今深川委員の御質問に対する総理の御答弁の中に、朝鮮動乱以外の国際紛争の場合に、深川委員は日本としてはどういう態度をとるか、かような御質問があつたのに対しまして、総理大臣はさようなことは考えられないから、まあ仮定の問題には答えられないと、かようにおつしやいましたが、それは非常におかしなことであつて、これは日本の平和条約によつて、はつきり日本は国際連合の国際平和及び安全に対する処置に対しては協力すると、かようなことを誓つておるのであります。国際連合憲章にもさようなことははつきりと書いてあります。安全保障条約にも、日本に駐留するアメリカ軍は、日本に対する攻撃ばかりでなくて、日本及び日本附近における国際平和及び安全のために駐留するんだということが書いてある。従つてような一般的な状況があればこそ、深川委員としては朝鮮以外に国際平和、安全を脅かすような事件が起きて、国際連合として何らかの決定があつた場合に、日本に現実に駐留しておるであろうところのアメリカ軍、或いはいわゆる国際連合の軍の部隊というものは、このときにまだおる可能性があるわけですから、そういう場合には、一般的には日本として国連に協力する義務があるが、現実にはそういう場合には、日本が協議の下に行う必要があるのではないか、こういうような含みを持つてお聞きになつたんであろうと思うのであります。仮定の問題だから答えられないのではなくて、一般的に協力する義務があるが故に、又そのことが日本の安全に非常な関係がありますが故の御質問だと思いますので、いま少し鄭重な御答弁を願いたいと思います。
  111. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今日朝鮮動乱は成るべく早く終結したいと考え、又戦局は拡大しないということを方針としておる以上は、今のような場合があり得ないから、そういう場合はあり得ないと考えるからお答えをしないと申したのであります。(「答弁になつていない」と呼ぶ者あり)
  112. 西田隆男

    ○西田隆男君 私は今更自衛問題でもありませんけれども、この委員会を通じて自衛力の問題について幾ら聞いてみてもはつきりわかりませんので、総理大臣にその点について一、二お伺いしたいと思います。  大体吉田総理大臣は、この参議院予算委員会におきまして、日米安全保障条約は必要がなくなればいつでも破棄するんだと、こういう御答弁をされました。安全保障条約が不必要になつたときということには、私が考えますと、二つの場合が考えられるのであります。その一つは敗戦日本の悲願として規定されました憲法九条の精神を世界のすべての国が採用いたしまして、世界各国が他国を侵略する力である軍備を全廃したときが、その一つのときであろうと考えます。その二は日本が自衛するに足る力を完全に保持することが主観的にも又客観的にも認められた場合であろうと思います。併しながらその第一の場合は人類平和の最高理想の実現ではあり、且つ又敗戦日本の悲願でもありますけれども、現下の複雑な国際情勢から判断いたしますると、そう急には到底望み得ないということは、万人の等しく認めざるを得ないところであろうと考えます。およそ一国の政策百般は国土の防衛と治安の確保がなくしては存立するものではありません。今深川委員も言われましたが、警察予備隊が保安隊となり、戦車や大砲を持つております。海上警備隊はフリゲート艦を持ち、その上に両隊とも飛行機を持つことを政府は明らかにしておきながら、なお戦力ではない、再軍備はやらない、保安隊は軍隊ではない、こういうふうに吉田首相は強弁されております。自衛力の漸増を唱えながらも、何ら今までこの委員会で具体的な方針については明らかにされておりません。大体いつになつたら日本は自衛力を持ち、そうして独立国家にふさわしい生活ができるのでありましようか。全く雲をつかむような頼りなさを国民は感じておるだろうと私は思うのであります。日米安全保障条約は、言うまでもなく、独立した日本が自衛力を完備するまでの暫定措置として、これは国民は承認したのでありまして、安全保障条約の下に、永久に日本の安全を米国に守つてもらうという構えで承認を与えたのではありません。これは吉田首相もよく御承知のことと考えます。であるにもかかわらず、総理委員会或いは本会議を通じて国民の総意が盛り上つて来なければとか、或いは憲法の改正は慎重を期さなければと、全く逃げ口上にも等しいようなことを言われて、その責任を回避しておられるように聞えるのであります。勿論民主主義国家としての主権者は国民であります。従つてその国の安全を保つ責任は、言うまでもなく、国民全体にあるのであります。だからといつて、ときの政府国民にその責任を転嫁することによつて、何もしないでいいというような理窟はどこからも生れて来ないと思います。世界のどこの民主主義国家を見てみましても、政府は常にリーダー・シツプをとつて国民に向うところを知らしめ、祖国の安泰と平和を守り抜く責任を負つております。そうして国民の信頼に応えておるのであります。そこで私は吉田首相に承わりたいのは、憲法の改正を行わないでできる、あなたのおつしやつておる自衛力の漸増の限界はどこであるか、この点について先ずお答えを願いたい。
  113. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申しておることは論弁でも何でもない、普通のことを普通に申しておるだけであります。ごまかしでも何でもないのであります。又この日米安全保障条約に書いてあります通り、日本だけが破棄するなどということは、私は申したことはないと思います。結局日米の間に、その必要がなかつたときは、協議の上に自然なくなる、必要がない条約を存続せしめる理由は、アメリカ側においても、これを承認しないことでもありましようし、アメリカとしては、長く軍隊を駐留せしめたいという理由は毛頭持つておらないので、そこで日本の国力が回復すれば、いつにでも軍隊は引上げる、その趣意から安全保障条約はできておるのであります。そのときはいつかといつても、日本の国力がいつ回復するか、これは時期的に定めることはできませんからお答えいたしません。
  114. 西田隆男

    ○西田隆男君 えらい剣幕でおつしやいましたのですが、何も私は怒られることを聞いておるのじやない。私が考え国民考えておることを率直にあなたにお聞きしておるので興奮しないで、もう少し丁寧にお答えして下さい。(「その通り」と呼ぶ者あり)私が今お聞きいたしましたのは、あなたの言われておる自衛力の漸増、これが憲法を改正しないで行い得る限界はどこであるか、こういうことを聞いておるわけです。もう少し明らかに御説明願いたい。
  115. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 漸増して、ついに軍隊の実力を生ずるがごときことになつた場合には、これは憲法も改正しなければいけないのであります。今日漸増といつても、いわゆる憲法に禁じてある戦力を持つがごときことは、我々は考えておらないところであります。
  116. 西田隆男

    ○西田隆男君 堂々巡りで、同じことを言うのですけれども、これはお答えができないはずはないと思うのです。あなたは自衛力漸増をお唱えになつておるのだから、憲法を改正しないでやられようとする限度はどの程度ですか。今特車といいながら、戦車を持ち、大砲も持つておる。軽飛行機も持たんとしておる。戦闘機も持つかも知れない、或いは爆撃機を持つかも知れないということを国民考えておる。この普通、委員会で論議されます戦力とはどうかということを、私は聞いておるのではありません。憲法を改正しないで済む範囲と限度はどこにあるか。これをもう少し具体的にお答えを願いたい。
  117. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は具体的にお話ししておるのでありますが、この答弁をあなたは答弁なりとお考えにならない以上、同じことを繰返すよりほかにないと思います。
  118. 西田隆男

    ○西田隆男君 呆れた御答弁で、その点はもう追及はいたしますまい。  第二にお伺いいたしたいのは、常々あなたは自衛力漸増、自衛力漸増ということを言つておられます。従つて吉田内閣には自衛力漸増の計画があるはずだと思います。そこで自衛力漸増計画があるならば、その計画の内容をお答え願いたい。
  119. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは予算に書いてある通りであります。それ以上の計画は何もありません。
  120. 西田隆男

    ○西田隆男君 予算に書いてある通りだといつても、これは二十八年度予算で、二十八年度だけの問題なんです。二十八年度だけで自衛力漸増が終りになるならば、これは御説明を承わらんでも結構なんですが、これは二十九年度にも、三十年度にもやるかもわからない。従つていやしくも、一国の安全を守る、国内の治安を守るとおつしやるけれども、国土の安全を守るというような大きな命題について、計画なしに行き当りばつたりにやられるということは、私は国民も恐らく考えておらんと思う。そこで私は今自衛力漸増の具体的な御計画がお持ち合せであれば、それをお示し頂きたい。ないということならば、ないと御答弁頂いて結構でございます。
  121. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今のところ予算にある自衛力を以て、政府は自衛力漸増の計画といたしております。
  122. 西田隆男

    ○西田隆男君 御答弁は甚だ不満足ですが、追及して見てもその程度お答えしかできますまい。  そこで私は吉田総理に一つ御提案申上げたいことがあります。これはさつきも申しましたように、国土の安全と治安の確保がなくしては、どんないい政策も行い得ないことはあなたも御承知通りであります。従つて国土の安全を保つために万全の策を、当然、時の為政者は尽すべきである、こういう観点に立つて、私は国土の防衛計画を早急に一つ樹立してもらいたい。これを樹立するためには、吉田首相、自由党内閣だけの考え方では、或いは支障を来すかわもからない。そこで従来の行きがかりを吉田首相はお捨てになつて、虚心坦懐、政党政派を超越して日本の安全を保つための国防計画といいますか、国土防衛計画と申しますか、こういうものについて協議されるのが適当だと思いますが、御所見を一つ承りたい。
  123. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国防についても政府は全責任を持つておるのであります。この責任を尽す上において、若し将来必要と考えれば、お話のようなこともいたしますが、只今のところは考えておりません。(笑声)
  124. 西田隆男

    ○西田隆男君 どうも質問総理答弁とは、どこまでも平行線みたいで交わらんのですが、何も私が質問したからといつて、もう少し御丁寧な答弁をして頂かんと国民諸君も陰で笑うと思います。  次にお伺いいたしたいのは、吉田首相は第一次吉田内閣成立以来、国民道義の高揚と綱紀の粛正を一枚看板のよりにして強調して来られました。国民も又私も、吉田首相の潔癖過ぎるほど潔癖な道義感の上に立つての道義の高揚、綱紀の粛正には、大きな期待を持つていたのであります。今回の施政方針の演説におきましても、四たびこの点を強調されました。その熱意のほどは私も非常に嬉しく感じております。併しながら事案はどうかと調べてみますというと、これはさつきのこの委員会でも問題になりましたが、会計検査院は二十六年度中において、三十億円の不正支出のあつたことを国会に報告しております。この問題につきましては、大蔵省主計局次長が平謝まりに当委員会で謝まつておりました。又二月二十八日の毎日新聞の報道によりますというと、農林省の農政局員が、その所掌事務に関して、関係者から五十数回に亘つて四百五十万円に及ぶ供応を受けたと、この事実を報道しております。又三月七日の東京日日新聞を見てみますと、衆議院の委員会におきまして、辻政信議員が、保安庁の高級公務員がその妾に保安隊の酒保を経営さしておる事実を指摘しております。これに対しては、木村保安庁長官が早速調査をいたしますという答弁をいたしております。このように全く実際の問題は、首相の意に反した結果が生じております。誠に遺憾千万であります。私はこの予算委員会におきまして、道義の高揚と綱紀の粛正に関する吉田総理予算委員各位との質疑応答を聞いておりまして、そうして非常に強く感じましたことは、吉田総理の心境に何か大きな変化が起きておるのではないかということを私は感じたのであります。なぜそう感じたかといいますと、総理が衆議院における懲罰動議の可決された問題の質問に対しまして、こういう御答弁をしておられます。私は静かに懲罰委員会の結果を待つて善処いたします、こう答弁されたことであります。この答弁考えようによりましては、懲罰委員会の結果が、白になつた場合には、責任をとる必要はないのじやないかというふうに受取れたからであります。即ち法に違反さえしなければ、どんなことをやつても差支えないのじやないかということと大差のない考え方のように、私には思われたのです。勿論法治国家である以上、法律を犯すことのない行為を罰することはできません。併し法に触れないことであれば、道義的にも正しいのだという結論は出て来ないと思います。ここに私は問題点があると思うのです。道義の高揚も、綱紀の粛正も、常に正しいそうして強い道義感の上に立つて主張されなければならんと信じております。若し私が今まで申しましたように、首相の考え方が法に触れさえしなければというふうに変つて来ておるといたしますなら、これは非常に重大な問題であります。全国民はこの点に関しては強い関心を持つておりましよう。道義の高揚と綱紀の粛正を行う根拠を、今後首相はどこに置いて行こうとされておるのか、その御所信を承りたいのであります。
  125. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は法に触れなければ、たとえそれが道義に反してもかまわないなどというようなことは申したことはありません。いずれにしても、今指摘せられた農林省における事態或いは又会計検査院の調査の結果については、政府としても調べております。若しこれが法に反し若しくは道義に反するものがあつたらば、政府は処罰いたします。
  126. 西田隆男

    ○西田隆男君 只今吉田総理大臣の法に反するだけではなく、道義に反したことであつても、綱紀の粛正と道義の高揚のためには、処分をするという、はつきりした御答弁を承わりまして、私は安心をいたしました。  そこで今度緒方官房長官に一つ御答弁を願いたいことがあります。一月二十四日の毎日新聞を見ますというと、写真入りで「三割配当は高過ぎる、業界は反対、通産省善処を要望」という大きな見出しが出まして「石炭価格の引下問題は一般物価引下の焦点として通産、大蔵両省が中心となり、その具体策の検討を行なつているが、これに関連して二十三日夜東京築地金田中で政府、民間、与党の懇談会が開かれた。出席者政府側から緒方官房長官、向井蔵相小笠原通産相、石井運輸相、戸塚労相、与党側から益谷総務会長、水田政調会長、小澤、周東両副幹事長」云々という記事が出ておりますが、これは事実でございますか。
  127. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。石炭業の業者側から、大手筋、それから中小業者も含めまして、石炭の増産、特に石炭価格の低下について、その方法について、十分に自分らの事情がおわかりになつていない点があるかも知れないから、通産省を中心とする各関係閣僚の方々に一度懇談の機会を与えてくれないかということでありましたので、私の名前で今お読み上げになつた、大体名前は違つていないと思いますが、そういう人との間に懇談の機会を作りまして、主として通産大臣から政府考えを言われ、業者側からもその代表者が意見を言われて、相当活発な意見の交換をいたした事実は間違いございません。
  128. 西田隆男

    ○西田隆男君 只今答弁で新聞の記事は事実であつたようであります。で、話合いをされた内容、その他についてはそう詳しく聞く必要もないと思うのでありますが、今官房長官の言われたところによりますと、官房長官の名前で席をとつたと、こう御答弁になつております、さうでございますか。
  129. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 私がとりました。
  130. 西田隆男

    ○西田隆男君 官房長官に聞きますが、支払いはあなたがされましたか。
  131. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) まだ向うから請求が来ておりません。(笑声)
  132. 西田隆男

    ○西田隆男君 私が調べたとろによりますと、金田中の支払いはもう済んでおります。金額は二十一万数千円、或るところの小切手でこれは払われております。あなたはこれは御承知でありますか。
  133. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) それは承知しておりません。
  134. 西田隆男

    ○西田隆男君 なぜ私がこういう問題を、この際取上げたかという点について一言申上げます。衆議院の予算委員会におきまして、この問題について質疑がされております。その際、緒方国務大臣は大体今ここで答弁されたと同じようなことを答弁されております。私が非常に遺憾に思う点は、衆議院の通産委員会における大臣答弁であります。読上げてみます。小笠原国務大臣「私もその席に列しましたが、私はそういうような話は一切聞きません。むしろ私に大声叱呼されたので、業者はかようなおしかりを受けるということは予期しなかつたと言いました。私は諸君はものを頼むときにはまずみずからなすべきことをなさなければならぬではないか。何をぼくの前でするのか、こう言つて席をけつてつたのでありまして、さようなことは私は何も陳情を聞きません。」こういう御答弁をされております。非常に元気のいい答弁ではありますけれども、これは誠に遺憾な私は答弁考えます。今日本の経済自立の面から考えまして、石炭、鉄綱、電力というこの三基礎産業は非常に重要な産業であり、政府としても将来の計画を立てる上においては、これはもう非常に重大な問題であろうと考えます。而も官房長官が言われるように、業者の申出によつて房長官が閣僚の五人を連れて、与党からは、幹事長、政調会長、或いは副幹事長等々の首脳部を引具して、そうして業者と、場所は料亭で、これは納得行きませんけれども、お会いになつた際に、如何ようなことを業者が申したか、小笠原通産大臣はよく業者の話も聞かないで大体席を蹴つて立たれたのです。言葉は非常に勇壮活発ではありますけれども、あなたは通産行政の当面の責任者ではありませんか。こういうことが国会委員会答弁されるとなりますというと、これは石炭業界のために決していい結果をもたらしません。そこで私が通産大臣にお伺いいたしたいのは、どういうことを大体業者がこの席上であなた方に申上げたのか、どういう理由によつてあなたは怒られて席を蹴つて立たれたのか、その理由をあなたはこの委員会を通じてはつきりさしてもらいたい。
  135. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) あの当時の私の言葉が少し過ぎておつたかも知れませんが、そのときの席上では、先ず向うのほうから、今の石炭行政に対して例えば金利の引下げとか或いは融通資金の棚上げとか或いは又政府の税の面について、いろいろ話がありましたあとで、それは私はよく聞いた。第一書き物になつておつたからそれを見たのでありますが、併し政府にこういうことをやれ—政府というものはやるべき限度があります。政府というものは或いは金利の面或いは金融の面、租税の画等をやりますけれども限度がある、限度があるときは、当業者としてもこういうことを話します。こういうことについて炭価引下げに関して協力するということが必要であるということを、私は述べたのでありまして、そのときに、私はものを人に頼んで、こういうことをやつてもらいたいとものを頼むには、あなたがたのほうが、私のほうはこういうことを努力いたしますというのが当り前ではないかということを言つたのであります。従いまして、私は丁度そのとき関西のほうから帰つて来て疲れておつたし、或いは少し気嫌が悪かつたかも知れない、率直に申上げて。これで僕は失礼するからと言つて、話は十分交換した、これから先はこれ以上の話はないと思つてつたのですが、私は石炭行政をあずかつている以上、当業者からの申出に対しては、事大小にかかわらず、注意をするのは当然のことであります。
  136. 西田隆男

    ○西田隆男君 只今小笠原通産大臣の言われたことは、衆議院の委員会答弁されたこととは大分違います。前半は同じでありますが、後半の、席を蹴つて立つた、今あなたは用があつたから帰つたとおつしやるが、あの衆議院の予算委員会答弁をお取消しになるつもりでありますか。
  137. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 当時多少私が荒い言葉で申上げたかも知れませんが、別に席の蹴りようもないので、正直な話は、すぐ立つて帰つただけであります。(笑声)
  138. 西田隆男

    ○西田隆男君 私が申上げたのは、そのときの様子を聞いておるのではありません。衆議院の予算委員会答弁と今の答弁が違う、違うところをお取消しになりますかと、かように申上げておるのです。
  139. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今申上げたほうが実情に合つておりますから、若しそれを取消す必要がありますれば……取消すというほどのことはない。その当時申したのでありますから、そのときの気分がそう言つたのかも知れないが、今日考えればそれほど大げさなことはなかつたというのが実情であります。
  140. 西田隆男

    ○西田隆男君 あなたを余り責めてもしようがない、最後に緒方官房長官に聞きますが、当時は自由党の幹事長問題で相当もめておつたときであります。而もこの前の、休会前の国会においては、私は衆議院の予算委員会におりましたが、復金の二十三億をまけたというので、或る議員が非常に侮辱的な言葉を吐いたようなことも御存じでありましよう。そのように石炭行政に対する国民考え方というものが、今まで余り必ずしも公正でない。石炭業者自身もいいことばかりしておらんと思います。そういう時期であるし、且つ緒方さんは官房長官として副総理であり、五人の大臣が料亭で業者と会わなければ懇談ができないということは私はないと思う。こういうときこそ、綱紀の粛正のためにほかの適当に会う場所は幾らでもあると思う。こういう点に関して、料亭であつても差支えない、当り前であると、こういうふうにお考えになつておられるかどうか、この点もう一遍お答え願いたい。
  141. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 私は石炭業界の事情がよく疏通することが、今日の産業をいいほうに導く上に非常に重大なことであり必要なことであると、従つて私は何らやましいことと考えず、又いいことをしておるつもりでお呼びをしたが、場所は必ずしも料亭でなくてもよかつたわけであります。そこが非常に悪いとは考えておりません。
  142. 西田隆男

    ○西田隆男君 まあ悪いことは考えないというお話でございますが、追及はいたしませんが、大体最近終戦後、国家公務員がいろいろ所掌事務に関しに、関係業者と料亭で会つて酒を飲んだりすることが原因になつて、いろいろな不正事実があることは官房長官も御承知通りであります。少くとも国務大臣は一行政府の長官であります。一行政府の長官が業者と会うのに料理屋で会つても悪いとは思わないというようなお考え方では、公務員のする行為に対する監督も取締りも私はできにくかろうと思う。料亭に行くのは常識だというふうなことをお考えになつておられるようですけれども、この点は、緒方官房長官は国務大臣として、もう少し謙虚な気持でこの委員会には答弁して頂きたい。もう御答弁は要りませんが、吉田総理に最後にお尋ねいたしますが、今あなたの聞かれる通りあなたの官房長官、あなたの副総理、閣僚五人の人々が新橋の金田中で散財したかせんかは知りませんが、二十数万も使つておるじやないか、相当の散財をしておつて、そういうことをやつて石炭の問題を協議した。これはあなたの潔癖過ぎるほど潔癖の道義感から言つて、綱紀粛正の上に差支えないとこうお考えになるかどうか御答弁願いたい。
  143. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今の官房長官の説明で以て会合の席の性質は尽きておると考えますから、私はこれ以上申上げません。
  144. 内村清次

    ○内村清次君 只今の質疑を私ずつと聞いておりまして、これは重大問題です。総理にいたしましても、緒方副総理にいたしましても、これは道義という問題に対しての認識は一つもない。而も私たちがこの委員会でも本会議でも問題になりました総理大臣の一枚看板であります綱紀粛正につきましては、官吏の服務規程にも明確になつておりますように、官吏はこれは部内の機密を漏らすことはできない、この点も一方にあります。同時に又贈与も受けてはならない、同時に又饗応も受けてはならない、この点は明確に服務規程にきまつておるのです。然るにこれは只今二十数万円の金も業者が出して、そうしてこういうような問題をお話合いになつておる。料亭に入つておられる。こういう事態というものは、今特に附言いたして見ますると、各府県、四十六府県の事務所というものが東京にある。私は、府県と連絡を取ることはいいでしよう。いいでしようけれども、この連絡の過程がややもすれば料亭においての本省関係の諸役人の饗応の場所になつておる。これに使用する県費というものは、相当多額になつておるはずです。先般大臣のほうでは、公務員のかたがたの上京というものに対して、一応口では注意をされたようであります。国民の権利ですから、上京して陳情をすることは、これは私たちは抑えるべきでありません。併しながら、饗応せない、そのことというものが解決しないという習慣というものは、今吉田内閣、而も吉田総理、或いは緒方官房長官が言われましたような、そういうところに根ざしておると私は思うのです。これでは綱紀粛正がどうしてできますか。現に服務規程に違反しておるですよ。これをこれでよろしいのだ、料亭に行くのは当然だとこういうようなことで看過できますか。これはこの問題に対しまして、私は綱紀粛正を本当に叫ばれるところの総理といたしましての言質は、どうもこれは違つておると私は思うのです。明確な一つ御答弁を願いたい。
  145. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 私は、先ほど西田君の言われる業者が支払いをした、業者が何か支払いをしたということを聞いて驚いたのですが、私どもは饗応を受けることは、正しい話をするについてもまずい、そこで私の名前で何をしたので、まだ私は支払つた覚えがどうもないのですが、いろんな支払いをしておりますが、それを調べないとわかりませんが、饗応を受けたようなことは少しも覚えがございません。そういうことに非常に注意しておるつもりでございます。
  146. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は……
  147. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 荒木君、前に出て下さい。
  148. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 外交上の問題につきまして吉田総理にお尋ねいたしたいと考えております。先ず日米関係の問題でございますが、総理は施政演説におきまして、アメリカの新政権の出現によつて日米関係の将来に新らしい希望が持てる、こういう意味の演説をなすつておるのであります。これはトルーマン大統領時代の政権に比べて、アイゼンハワー元帥の政権のほうが日本の将来に新らしい希望がある、こういう意味であろうと思うのでありますが、私の考えでは、むしろ日米の関係は困難になるのではないかというふうに考えるのであります。その一つの問題といたしまして、日本の再軍備の問題を考えて見ましても、アイゼンハワーの新政権は、日本に対しまして再軍備の要請がますます強くなる、かよう考えを持つておるのでありますが、これに対して吉田総理はどういう所信を持つておられるのかお伺いしたい、先ず第一点であります。
  149. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私が日米の関係は更に一層よくなるだろうと、こう申すのは、ダレス氏にしても、ドツジ氏にしても、日本の事情をよくわかつておる。しばしば日本に見えてそうして日本の国情については十分了解しておる人であります。又アイゼンハワー新大統領も、日本に、何年でありましたか、終戦の翌年と思いますが、見えて、数日滞在しておらるるのであります。然らざるも、新大統領は長くヨーロツパの国連軍を率いておられる。又それ以前からもヨーロツパの連合軍の司令官として長い経験を持つておられるので、国際関係については最も深い理解を持つておる人と私は想像いたすのであります。私は会つたことがありませんから、自分の感想は述べられませんが、併し、そう私は思つておるのであります。故に日米の関係は、よくはなつても悪くは決してならんと思います。又今のお話によりますと、日本に再軍備を強いる要請が一層強くなるだろう、未だ要請は受けておらんのみならず若し日本の国情について十分の理解がある人であるならば、今日再軍備のごとき要請はせられないものと私は確信をいたします。
  150. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 首相のお話のように、ダレス長官にいたしましても、或いはアイゼンハワ一元帥にいたしましても、日本に対する理解は深いかも知れません。併し日本が当面しておるいろいろな問題について、日本の立場がますます困難になるよう政策がとられようとしておるのではないかということを考えるわけであります。その一つとして、只今再軍備の問題を持出したのでございますが、吉田内閣はしばしば再軍備する意思はない、こういうことをはつきり言つておるわけです。併し新政権が発表しておりまする政策を見ましても、これは日本に対する再軍備の要請は一段と強くなるということは、これは常識を以ても予想されるところではないかと思う。未だその折衝は受けておらない、こういうことでございまするけれども、新政権の政策から見てこのことは強くなるものと考えなければならんと私どもは見ておるわけであります。特に伝えるところによりますと、ダレス長官が近く日本を訪問される、こういうことが言われておりまするが、このダレス長官の来訪は、この再軍備の問題が中心になるのではないかというよう考えておるのでございますが、そのダレス長官の来訪によつて吉田首相はどのような心がまえを持つておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  151. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ダレス長官がいつ見えるかについても承知いたしておりません。従つて目的は何のために見えるか。或いはこの間ヨーロツパに行かれたように、事実視察ということであるのか、その辺についても私は何ら承知いたしておりません。
  152. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 もう一つの例を申上げますと、中華人民共和国との貿易の問題でございます。これは現在バトル法とか、或いは貿易管理令によりまして、非常に強い制限を受けております。併しながら民間の経済人の努力によりまして、その制限内においてもいろいろな苦労をして中共との貿易を回復し、これを増大したいという非常な努力が払われております。今日その芽生えを若干見ることができるのであります。この中共との貿易を拡大するということは、これは国民の世論と申しても私は差支えがないと思うのでありまするが、併し今度の新らしい政権によつてこの問題が如何ように処理されて行くかということを考えますとき、将来この中共との貿易の問題は極めて見通しが暗い、かよう考えるのであります。多くの人たちの努力によつて漸く芽生えが出て参りましたが、それすらも刈取られるのではないかということを強く感ずるのでございますが、この問題についてアメリカのこの中共貿易を更に強く制限しようというこの考え方を、吉田首相は歓迎されておるのかどうか。これは日本の立場として困る問題であると私ども考えるのでございますが、こういう点について御所見を伺いたいと思うのです。
  153. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) いろいろ噂はされておりまするが、実際のところはアメリカの政策はまだきまつておりません。将来どういうふうになりまするか今のところはわからないのであります。併し我々の見るところでは、国際的に相談をして只今定めておりまするもの、これは又将来多少の変化は無論ありましようが、合理的な基礎において各国が納得しつつやつておるものでありまするから、この方式でやればいいのだろうと考えます。むしろ何らかこれに対して強化の措置を講ずるとすれば、こういう約束を守らないで、密輸等の手段によつて何か特殊の利益を得ようとしておるような種類の行為をとめるということが必要なんであつて、この方面の強化は私は結構だろうと思いますが、その他は今の方式で行けばいいのであり、又アメリカ側も恐らくはこれを十分研究して理解しておることと考えております。
  154. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、中共との貿易については現在以上の制限を加える、こういう方策はアメリカとしてはとらないだろうと、こういう見方を外務大臣はしておられるのでありますか。
  155. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今申したのは、それ以外に密輸取締りといつた面はあるのであります。それでなく、通常のいわゆる輸出制限措置というものは、将来これ又多少品目に変化があることはありましようが、情勢が特に変化しない限りは、このまま行くのが適当であろうと考えております。
  156. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは見解の相違になるかも知れませんが、政府の見方というものは非常に楽観的であろうと思うのです。今日の新聞紙などの報道を見ましても、中国との貿易の制限というのは、ますます強化されるのではないかということが十分予想されるわけでございます。そういう点について私どもこの中国貿易に重大な関心を持ち、又日本の経済自立の立場から見ても、どうしても中国貿易を拡大して行かなければならん、こういう考え方を持つておる者にとつては、この中国貿易の制限ということは非常に我が国にとつて重大な問題であるというふうに考えておるわけであります。そういう点について非常に楽観的な見解を述べられておりまするが、これは私は当を得たものではないのではないかというふうに強く感ずるわけでございます。  更に他の例を挙げますと、台湾の中立化の放棄の問題等もございます。この台湾の中立化の放棄の問題は、これは日本にとつて好ましい政策であるかどうか、これは日本にとつても私は重要な影響がある政策であろうと思うのです。今日はまだこの大陸と台湾との間に紛争とか動乱というような顕著な事例は出て参つておりませんけれども、将来は予想され得る問題ではないかと思うのです。私どもはお隣りの朝鮮に動乱が起つたことを非常に悲しむと共に、これが日本の安全に相当大きな影響を与えておつて、或いは世界の平和にも相当大きな影響を与えておる事実から考えて、こういう動乱が我が国の近辺に起らないことを心から念願しておるわけです。併し今度のアメリカの政策によつて、この我々の希望というものが蹈み蹂られるような結果が起るのではないかというふうな見方をいたしておるのでございますが、こういう点について外務大臣は如何よう考え方を持つておられるかお聞きしたい。
  157. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今のところは著しい変化はないだろうと見ております。併し将来のことは勿論予測の限りではないのでありまするが、併し何らか著しい変化でも起るような場合がありとしますれば、これは日米安全保障条約の建前から言いましても、日本としてはアメリカとも十分協議をいたしまして、極東の平和、日本の安全ということの護られるよう措置をするつもりでおります。
  158. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私がお尋ねをいたしておりまする趣意は、この冒頭に述べましたように、アメリカの新政権が持つている政策というものが、必ずしも日本に歓迎され或いは日米関係を希望を持たせる、こういう手放しの楽観は許されない。その例として再軍備の問題や、中国の貿易の問題或いは台湾の問題等を挙げたわけでございますが、私はこの際結論としてお聞きしたいのは、ダレス長官が日本に理解があるのかないのかというふうな問題でなしに、日本が当面しておる重要な問題について、アメリカの政策とかなりの食い違いが起るのではないか、こういう点をお尋ねいたしておりまするので、総括的に総理大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  159. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 詳細なことは別として、先ほど申した通り、今日新政権ができたから特に日本との間の関係が緊張するであろうということは、あなたのお見通しでありますが、私としてはそう考えないことは、今まで申した通りであります。
  160. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 次に行政協定の問題についてお尋ねをいたしておきたいと思うのですが、先ず行政協定の改訂をアメリカに申入れる意思があるかどうか。その点についてお伺いしたいと思います。
  161. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) アメリカ上院におきましては、いわゆるNATOに関する協定が日程に上つております。まだ審議はいたされておりませんが、いずれ審議をされることと予期されまするし、若しこれがアメリカについて批准された場合には、自動的にというのはおかしいのでありますが、その中の裁判権等に関する部分は日本側が希望すればこれを行政協定に入れて、今までのをやめるということになつております。従いまして我々はその結果を待つておるのでありまするが、若しこの四月二十八日で一年になりますが、それまでに批准が成立しないというような場合、或いはその一日くらいあとに批准ができるという見込があれば別でありますが、大体そのくらいに間に合わないという場合には改訂を申入れる考えでおります。
  162. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の答弁でこの問題については政府考えのあるところが十分わかりましたので、とどめておきます。
  163. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して……、今の点で確認しておきたいのでありますが、北大西洋条約の刑事裁判権の問題が確定しますというと、自動的に日本でもそれは改訂される、こういうことになるのですか。行政協定の条文を見ますと、そういう場合には日本からの申入れによつて改めて協議する用意があると、こういうふうに我々は了承しているのです。今の御答弁ではそれがまるで自動的にこれはそれとの関連、NATOとの関連で当然日本も改訂される、こういうふうな楽観論のように聞くのでありますけれども、この点はもつと確認される必要があると思う。明確にしておいて頂きたい。
  164. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと条文では……。私は、まだ違つておるかもしれませんが、実質的には殆んど自動的に変るものと考えております。
  165. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは確認しておいていいですね。我々はそういう了承の上に立つて北大西洋条約の改訂を注目していればいいわけですね。それは先へ行つて混乱が起らないようにはつきりこれは答弁しておいてもらいたい。
  166. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 念のため申上げますと、第十七条にNATOに関する協定が、NATOと書いてありませんが、NATOに関する協定が、「合衆国について効力を生じたときは、合衆国は、直ちに、日本国の選択により、日本国との間に前記の協定の相当規定と同様の刑事裁判権に関する協定を締結するものとする」こうありますから、日本側で選択さえすればそれができる、こういうことであります。
  167. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 次に国連軍の駐屯に関する問題でございますが、先ずお聞きしたいのは、現在アメリカ軍以外の国連軍のうち、どの程度の国々の軍隊が日本に駐屯しておるのか。それからこれらの軍隊がどの程度の日本の施設を利用しているのか、そういう点について概略で結構ですから御説明を願いたい。
  168. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 日本国内に駐屯というのはおかしいのですが、要するに日本国内に軍隊としておることを認められておりますものは、いわゆるコモンウエルス・フオーセスとこう言つております。要するに実質的には英連邦の諸国だけでありまして、ほかの国は軍隊としては持つておりません。そこでこれに要する施設は主として呉の周辺にあるものだけであります。極く小部分が岩国に一部あるかと思います。数はこれは軍の機密でありまして、発表されておりませんが、多くありません。その他の国連軍は例えば休暇で帰つて来るとか或いは病院に入るとかその他往復、帰国する途次立寄るとかこういう種類のものでありまして、これらに対する施設は、若しアメリカ側で以て今使つておりまする施設が空いておるときは、それを使わせる。その他普通の契約というとおかしいのですが、普通の賃金を払つて普通のホテルに泊るというようなこともありますが、主としてアメリカの施設で空いているものがありますと、その限度において一部使わせる、こういうことになつております。
  169. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、岩国の飛行基地と申しますか、ああいう基地、或いはそれに附随している施設或いは呉附近の施設、こういうものは平和条約が発効して、日本が独立をした直後から引続いて今日まで使用されておる、こういうふうに了解して差支えないわけですか。
  170. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) その中には相当程度解除されて、もう使わないものもあります。又そういうものを入れ換えるために、新らしく小部分のものをこちらで提供して、そちらの大きなものを外す、こういうようなこともありますが、要するに平和条約成立以来使つておるわけであります。
  171. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで私の疑問に考える点は、これらの国連軍は、条約による駐屯でない、駐屯という言葉がいけないかどうか知りませんが、ともかく駐留している。条約によらないで、これらの軍隊が日本に駐留するということは、私は重大な問題であろうと思うのです。これは政府限りでそういう了解を与えておるのか。如何なる根拠に基いて、かかる軍隊が日本におるのか、その点を御説明願いたいと思います。
  172. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは条約によつておるのであります。それは平和条約と同時に、いわゆる吉田・アチソン交換公文というものがあります。これは条約と同様に取扱いまして、国会提出して、その承認を求めたのでありまして、そのときの説明も、これは条約と同様のものであるから国会の承認を求める、こういうよう言つております。その中に国際連合の行動に従事する「一又は二以上の加盟国がこのような国際連合の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすること、また、日本の施設及び役務の使用に伴う」云々ということで、これは条約に基いて国内に置くことを認めておるのであります。
  173. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは私は初めて聞いたわけなんですが、吉田・アチソン交換公文が条約である、こういうことは初めて聞いたわけでございますが、これが条約であるということが、国会で承認されたということでございますが、私どもよう考えは今日まで持つておらないのでございます。その間の経緯を詳細に御説明を願いたいと思います。
  174. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはどうも恐れ入つた質問なんでありますが、当時の平和条約及び吉田・アチソン交換公文等の提案理由を御覧下されば、その点ははつきりいたしておりますし、又これに関する委員長の報告等にも本会議で述べられております。そうして委員会等の説明におきましても、同様に説明しておりまして、条約と申しますのは、いわゆる条約もあり、協定もあり、交換公文もあり、プロトコールというようなものもある。いろいろありまするが、広義の条約の一種であることは間違いありません。
  175. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題についての質問は私のほうで調査をいたしまして保留しておきましよう。  次に、外務大臣は施政演説におきまして特に東南アジアとの提携の密接を図り、貿易の拡大をやつて行きたい、こういうことを力説されておるわけでございまするが、この東南アジア諸国との経済的にも、政治的にも提携を密接にして行くためには、先ずまだ締結されていない諸国との間に平和条約を締結することが先決問題であるというふうに考えておるわけでありますが、この点について外務大臣の所見を伺つておきたい。
  176. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それはお説の通りでありまして、先ず平和条約ができるのが順序であります。従いまして、我々は若し賠償問題がこれに障害となつておるならば、賠償を片付けて平和条約の批准を急ぎたいと思いまして、爾来随分話をいたしております。併しなかなか種々の国内事情によりまして、条約の締結ということは今まではかばかしく行かなかつたのでありますが、そういう場合には必ずしも条約の締結を待たなくても経済的な協力ということはできないことはないのでありまするから、こうなると、個別的にできるものだけをやるということになりまするけれども、併し今実際に具体的な問題でいろいろ話をいたして、その協力を進めつつあります。
  177. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この東南アジア諸国との提携の問題は、これは政府言つておられる通りに、我が国の経済自立の上から言つても相当重要な問題であることは明白でございます。而もその前提としては、どうしても平和条約の締結ということがその前提の問題であると思いますが、すでに平和条約が発効いたしましてから一年に近い日月を経過しておるわけであります。なお今日平和条約が結び得ないというのは、これは私は日本側の外交陣に十分な能力がないのじやないかというふうな感じさえ持つのであります。これは甚だ失礼な言い分になるかも知れませんが……。一体この条約の締結がかくも遅延している中心の問題はどこにあるのか。その点を伺つておきたい。
  178. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 東南アジアと申しましても、条約のできておりませんのは、フイリピン、インドネシア及びビルマになるのでありますが、そのうちフイリピンは賠償、これは正確に政府の声明とまでは行つておりませんが、有力な議員の発言等を見ますると賠償問題の解決が先ず必要であるというか、先ず先決問題であるといいますか、少くともその見通しがはつきりしなければ締結まではなかなか行かないという議論をいたしておるようであります。インドネシアにつきましては、サンフランシスコに代表が行きまして、条約を調印して来たのでありますが、帰つて参りますると、国内に反対が非常に多くて、この平和条約の批准がなかなか困難である、国内的に非常にむずかしいというような事情になつておるのであります。ビルマはサンフランシスコには代表を出さなかつたのであります。別個の条約を結びたいという考えで、インドと同様な方向に向つてつたのでありまするが、インドは条約を締結したにもかかわらず、ビルマは未だそこまで行つておりません。その理由はいろいろあるであろうと思います。賠償というものも一つの理由でありましよう。それから国内的にいろいろ新らしい別個の条約となれば、どういうことになるのかという議論もあるようでありまして、これは賠償と国内事情と、双方にあるように思つております。
  179. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 議事進行について……。荒木委員質問中に吉田総理はお立ちになつておりますが、これは如何なる理由によるのですか。
  180. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) お答え申します。午前中から委員長に、総理は今日は非常に腹を損ねて下痢の徴候があるというお話でしたけれども、午前中はああ言つたので勤めてもらつて、今もそういうよう関係からさつき失礼させてくれと……。荒木委員質問が大体外務大臣を相手にせられるような様子でありましたから、私が了承したと、こういうことになつておりますから……。
  181. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 そうなれば荒木委員に対して、総理はすぐ退席をされなければならんから、それに対する質問を先にやつてくれと、こういうことの連絡がなければ我々わからないのです。黙つて質問中に立つて行つた。これでは委員会はどうすることもできないと思います。
  182. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) その点は私手抜かりでございまして済みませんが、以後こういう問題が起ります場合においては、そういうことのないよう注意します。(「了承」と呼ぶ者あり)
  183. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 質問委員が了承されますかね。
  184. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今日は私は外交問題を主として伺いたいと考えておつたのですが、総理にお伺いしたい、まあこういう考えで、主として総理と、こういうことにしておつたのでありますが、できるだけやはり総理出席を私としては希望しておるわけなんです。
  185. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) それで荒木君に申しますが、外交問題についての、もう一度総理出席の際に質問を留保されますか。
  186. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういう点については若干明らかにするために、やはり二、三外務大臣質問を続けたいと思います。  賠償の問題が平和条約の締結に重要な問題になつておるのであつたということを私も考えておるわけなんです。その他の問題で非常に困難な問題はないのではないかというふうに考えております。そこで賠償の問題について、政府はこれらの国と話合いによつて妥結し得ないのか、或いはそういう見込が十分あるのか、そういう点についてお伺いしたい。
  187. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) フイリピンとの間におきましては、すでに新聞にも出ておりますが、実は今月上旬に代表が先方から来るはずでありましたが、国内のいろいろの審議の事情から遅れましてまだ参つておりませんが、今週中ぐらいには……。いつ来るか、来るとすれば飛行機ですからすぐ参りますから、はつきりするはずです。同時に我々は今調査を終りましたが、沈船につきましてこれを引上げる協定を結びたいと思い、若しこの協定が、話合いができますれば、国会提出して審議を求めたいと思つております。これを若し承認されますれば、賠償全般の問題もありますが、これの一部として沈船の引揚げだけは行いたいと考えております。こういうことによりまして、まあ先方からの代表の着きますることによつて話合いも進みますが、日本としてはでき得る限りの賠償の実行についてまじめに考えておるということが先方に十分理解されるものと期待しておりまして、その結果条約の批准も促進されるものと思つております。インドネシアにつきましても、ビルマにつきましても、或いは仏印につきましても、賠償の問題は早く話を進めたいということをこちらから申入れておりますが、先方の国内事情もありまして、はかばかしくこれまで進んでおりません。併し今後ともこの方向に努力するつもりであります。
  188. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは先方の国内事情によつてやはり遅れておるのだと、こういう説明でございましたが、ビルマ等の国では平和条約の内容を日本政府に相当以前にすでに送付しておるのではないかと私は思つておるのです。従つて先方の事情というものはかなり日本政府でもわかつておるのじやないか、そういう点から考えて、私は日本政府のもつと努力をすべき問題じやないかと思う。一体に賠償の問題については、これは誠意を以て当るという私は日本政府が態度を持つことが必要じやないかと思うのです。未だ締結されるに至つていないフイリピンにいたしましても、或いは仏印にいたしましても、ビルマ、インドネシアにいたしましても、これらの国は大体において後進地域であります。従つてこれらの国としては、この経済的な自立のために、その工業化に現在非常な努力をいたしておると思う。その工業化に、経済自立に、日本が何らかの日本の進んだ技術とか、或いは資本問題とかそういうものを以て協力するという態勢を日本政府が示せば、この問題は双方の利益になるような形において解決するのじやないか。こういうふうに考えておるわけなんですが、そういう点について政府はどういうふうに考えておられるか。又東南アジアの実情を見ましても、小笠原通産大臣は、これは飛躍的な発展をするのだと、こういうふうに言つておられますけれども、これは私は容易ならんことと思う。現に東南アジアの地域において、最もその強固な地盤を持つておるのはイギリスだろうと思います。更に最近はアメリカがこれに非常な努力を傾けておる。そういう中にあつて、日本が飛躍的に増進を図るということは、口で言えてもこれは容易ならん問題であろうと思う。日本はもつと温かい気持を以て、これらの国々との共存共栄の上に立つて、そうしてお互いの利益のために提携して行くという態度を以て賠償問題等も考慮することによつて、平和条約の締結を促進し、更に東南アジア諸国と日本との経済的交流を、提携を増進すべきじやないか、かよう考えておるわけでございますが、政府のやつておられることは詳細はよく知りませんけれども、何だかそういう点についてすつきりしないものがあるのではないかという感じを強くするのでありますが、こういう点について小笠原通産大臣にもお伺いしたいのですが、飛躍的に増大するといつても、私は現状のような外交折衝ではこれは容易ならないとかよう考えておりますが、どういう所見を持つておられるか、お伺いしたい。
  189. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お答えいたします。私はその飛躍的な増大を期しておりますが、併し貿易というものは一朝一夕にすぐ右左にやれるものではございません。そこで私どもといたしましては、東南アジアの重要性に鑑みまして、貿易の振興、なかんづく今仰せになりました共存共栄の見地から、向うと経済協力をなすことによりまして、そうして日本の輸入市場としても、この向うの産業の発達によつてこれを確保する、又日本のプラント輸出等によりまして、輸出市場としてこれを確保して参る、かよう考え方の下にすべての施策を進めておる次第でございます。そこで具体的に申しますと、例えば使節団を向うにやりますとか、或いは技術者を向うに送りますとか、向うから技術習得希望者を日本国内に送りますとか、こういうこともやつております。又プラント輸出等をいたします場合に、技術者を向うに送りまして、向うの便宜に資しております。特に例えば染織機械を送りました場合には、特にさようなことをいたしております。今度は今年度予算で重工業機械の相談室というものを作りまして、そういつたサービスにつきましてもでき得るだけのことをいたしたいと、かよう考えておる次第でございます。更に又今度御承知ように輸出入銀行法を改正いたします。そういたしまして、五カ年からのいわゆる投資が向うへできることになりまするので、こちらからプラントを持つてつて、或いはこれがインドネシアであれば日本とインドネシアの合弁計画に基いて産業等をやりまして、おつしやつたようないわゆる共存共栄のことを図つて参りたい、かようなことも考えて今度輸出入銀行法に海外投資ができるということがあれで相成つているのであります。そのほかにいわゆる向うのものをこちらへ入れまする便宜のために、優先外貨を割当てまするとか、或いは特別の措置をいたしまするとか等いたしておりまして、私どもはすぐ、今日あすというふうには行きませんが、この共存共栄の従来の方針をずつと続けて、今の施策を続けて参りますれば、丁度向うの民情その他が、むしろ進んだイギリスのものとかアメリカのものよりは、日本のほうが向いておる事情等もございますので、相当将来において飛躍的発展を期待し得ると考えて、その方向に最大の努力を続けておる次第でございます。
  190. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は従来のように東南アジアを日本の製品の単なる市場と考えたり、或いは又原料の供給国としての東南アジア、こういう考え方だけでは、今後東南アジア諸国との提携ということは、不可能ではないかというふうな考えを持つております。どうしても東南アジア諸国の経済的な計画に、我々が進んだいわゆる工業力というものによつて寄与するという形を打ち出さなければならんのじやないか。そのことが結局日本にとつてもこれは有益なことになるのではないか。而も賠償の問題はこういう関連において解決を図つて行くならば、私は東南アジアヘの進出というものの、非常に効果のある途が開けて来るのではないかというふうな感じを強く持つているわけなんであります。併し私も先般現地に参りまして、現地の諸君のいろいろ意見を聞いて見ましても、これらに対して十分な話合いがなされているようには、どうしても考えられない点が多々ありまするので、これは十分な努力を私はこの際要請をしておきたい、かように思うわけであります。  私は今日の質問において予定しておつた問題は、なお中立に対する問題でございます。これは珍らしく岡崎外務大臣は中立を強く批判する演説をなさつたのでございます。勿論私は自由党がアメリカ一辺倒の外交政策をとつているということは十分知つているところでございますが、併しこの中立的な政策をあれほどきびしく批判されたということは初めてでありますので、これはいろいろ影響するところも少くないと考えております。先ずその点についてお伺いしたいのは、現在私の承知しておる範囲では、東南アジアのインドネシアとかビルマとか或いはインド等の国々は、いわゆる世界の二大勢力の対立から、中立的な態度をとつていると考えております。これらの国々に対して中立というものはあり得ないというきびしい批判が、私はかなりの悪い影響を与えているのではないか。一方では東南アジア諸国との提携を図つて行きたいといいながら、東南アジア諸国がとつている中立的な態度を、殊更に批判し攻撃する、かようなことは外務大臣としては私は如何であろうか、かよう考えを持つているのでございますが、これについて外務大臣の所見を伺いたいと思います。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私も中立というものが全然あり得ないという議論をしておるのではないのでありまして、中立というのは、あの文句は忘れましたが、理論としては成立ち得るのだ。併し日本の置かれたる実際の現実の事態は、この日本に限つては中立ということで以て万一不幸な国際紛争が起つたときには、日本の国は守り得ないであろう。これは歴史その他から結論を得られるわけでありまして、ほかの国が中立をとろうとも、又国によつてはその環境やら、地理的の関係やらで中立をとり得る国もありましようし、又いわゆる武力中立と言いますか、大きなスイスのごときはあの小さい人口で、戦争中は五十万の兵隊を動員しまして中立維持の武力を配置しておるのであります。こういう方法でとれるかも知れない、併し日本の今の現状では、それは万一の場合にとても日本を守り切れるものでない、こういう見通しを述べたのであります。そうして、又国際的には何と申しますか民主主義陣営と共産陣営と、そうして第三国陣営、第三勢力というようなものがあるとかないとかいうような議論は私はいたしておらないのでありまして、結局は中立を守る国もありましようし、或いは中立でない国もありましようけれども、結局はこの自由を認める国と認めない国という二つの国になつてしまう。その自由を認める国には中立的な国も勿論あるでありましよう。併しそれは外国のことであつて、日本のことではないのであります。日本の現在の地位が中立で以て万一のときに守り得るか得ないか。これを私は議論しておるのでありますから、国際的によその国の政策を何ら非難しておるものでもないし、又こうしなきやならんと言つておるのではない。日本の国のこと自体だけを論じておるのであります。
  192. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この中立の問題は、私ども非常に重要な問題であるというふうに考えておるわけであります。で私の考えでは、政府が、日本の安全の保障は、これはアメリカ軍の駐屯によつて保障されておる、こういう説明をしばしば聞くわけでございます。併し私ども考えからすれば、アメリカ軍の駐屯によつて真の日本の安全は保障されないのだ。アメリカ軍隊の駐屯によつて保障されるという考えは、近視眼的な考えに過ぎない、こういうふうに考えておるわけであります。むしろ根本的の問題はこれは世界の平和に繋る問題であつて、アメリカ軍が駐屯しておろうが、しておるまいが、世界の平和が壊れた場合、私はアメリカ軍隊が日本に駐屯しておつても、日本の安全は保障し得ないというふうに考えるわけであります。従つて日本の安全保障のやはり根本的な問題は如何にして世界平和を確保するか、こういう点にあるものだと考えるわけです。そういう考えに立つとき、世界平和を確保するという立場からものを考えてみた場合に、日本としてもこれは中立的な立場というものは確かにある、あり得るというふうな所見を持つておるわけであります。で私は政府がアメリカ軍隊が駐留しておれば、日本の安全を保障されるのだというようなことは、近視眼的な考えであつて、むしろ世界平和に眼を向けるべきではないか、こういうふうに考えるのですが、外務大臣の所見を伺つておきたい。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私も今回ではありませんが、この前の外交演説の中におきまして同様のことを述べております。つまり日本の外交の唯一の目的は、世界平和の維持になければならない。そしてその平和を維持する方法はどうであるかということについて私は自分なりの意見を述べております。で、アメリカとの安全保障条約はいろいろの場合が考えられるのでありまして、例えばその何といいますか、世界大戦といいますか、今とてもアメリカがいても守り切れんだろうと思うような大きな世界戦争が起る場合のときもありましよう。併しそういう世界戦争に至らざる程度において、無責任なるいわゆる軍国主義が出て来て侵略をやるという場合もあります。ちよつと私は朝鮮の問題のようなのはその一例かと思います。(「あれが」と呼ぶ者あり)こういうときに我々はアメリカの軍隊が駐留することによりまして日本の安全は守れると考えております。世界的の大戦争になつたときこれはどうなるか。それは様相によるのでありまして、これはアメリカ自身だつて安全が守れるかどうか、或いはその他の国はどうであるか。そのとまの情勢でありますので、これはなかなか判断ができますまい。併し平和を守る方法としては、これは意見の相違が随分ありましようけれども、私は前に例を引いて申したのは、例えば事情は非常に違いましようが、例としては正しくないかも知れませんが、例えば終戦直後のような汽車の中でいろいろそのかつぎやなどが暴行する場合がある。そのときにさわらぬ神にたたりなしというので、まじめな乗客が、乱暴をされておるのを一体その知らん顔をして横を向いておれば、そういう社会の秩序が乱れるような方向に行く、若し正しい者に味方する、そういう乱暴する者を抑えるということに乗客の一同の気持が向けば、自然にそういう乱暴は防げて社会秩序が維持される方向に行く。これと同じように国際間においても若し正しい主張と正しくない主張とあつた場合に、それで目をつぶつて両方に加担しないことは、国際秩序が私は保てないという考えを持つておるのでありまして、正しいほうにつくのが当り前なことである。これはつまり民主主義国家との強い協力、アメリカだけではありません、ほかの民主主義国家と強い協力をして、これの結束によつて平和の維持を図る。これが私は自分の考えでは、一番実際的な方法であろうとこう考えております。
  194. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題は非常に深く論議しなければならん問題であろうと思いますが、時間の関係もございますので……。我々の最も懸念いたしておりますのは、現在のようないわゆる両陣営の対立がますます深刻化しておるということを憂慮しておるわけです。このことは、この発展はやはり世界平和を危機に陥れるのではないか、かよう考えを持つておるわけであります。従つてどもは何とかこの対立を緩和し、そして平和の方向に持つて行かなければならない。このことのみが日本の安全を保障する根本的な而も唯一の途であるというふうに信じておるわけでありまして、この点についてはいろいろ見解の相違もあります。ここでは議論を許される場所でもないと思いますので、ただ私は先ほど外務大臣が非常に中立的な立場を非難されたことについて、私は今後の東南アジアの諸国に或いは相当な誤解を与えておるのではないかというふうに考えましたので質問いたした次第でございます。  なお、私は総理に対しまして道義の高揚の問題と、それからソ連及び中共との外交関係樹立の問題を残しておりますので、これは極く短時間に次回に質問をしたいと思いますので……。
  195. 羽生三七

    ○羽生三七君 それに関連して、岡崎外務大臣の御答弁の中に、正しいとか正しくないとか、思想の判断で外交の基準をきめられると言われましたが、その判断はどういう基準でおきめになるのか、これが第一点。若し民主主義陣営のほうを正しいときめられた場合アイデイア或いはイデオロギーというものがこれを御判断なさつたんでしようが、日本は曾つてドイツ、イタリアと結んだイデオロギー外交で失敗した歴史を持つておるのですが、そういうアイデアで民主主義陣営に一辺倒した場合、今度アイゼンハワーのロールバツク政策で、具体的な政策としてこのアイク政策が具体的に戦争の危機をはらみ、或いはその危険が予知されるよう政策である場合にも、イデオロギーが一致すればその政策を容認されるのですか。この点について。
  196. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは国際連合その他の世界的な世論を見ましても、正義がいずれにあるかということは私は明白であろうと思いますが、(「明白じやない」と呼ぶ者あり)更にはつきり申しますと、共産主義国の主張は、目的が正しければ手段は自然に正当化されるという考えであります。(「それはアメリカだろう」と呼ぶ者あり)民主主義国家考え方は、目的と同時に手段が正当でなければならん、(「ばか言つちやいかん」と呼ぶ者あり)従つてやり方が民主主義的なやり方では非常に遅くて、独裁的なように早い措置がとれない場合も多いけれども、併しながら正当な方法を用いなければ、目的が正当であつてもその手段は正当化されないという根本的な違いがあろうと考えております。従いまして只今の国際情勢におきましては、私は民主主義国家のやり方が正しいと、こう考えております。なおアメリカとの間のいろいろのお話がありましたが、我々は民主主義陣営の結束が強固になればなるほど戦争の危機が回避される、従つてそういう御懸念にならないようなために国際協力を強く主張しておるのでありまして、その証拠と言つてはおかしいのでありますが、反対側では民主主義陣営諸国のいわゆる中立化ということを非常に強く図つておりまして、アメリカにつくな、イギリスにつくな、ソ連につくな、つくなというのではありませんが、中立的な立場をとれということが、荒木君の言われるようなまじめな考えでなくて、謀略的な意味でしきりに中立化を図るということを宣伝しておるのに徴しても(「どこの国だそれは」と呼ぶ者あり)私は明らかだろうと思います。
  197. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一問。私の質問に対するお答えとちよつと違つた点があるのじやないかと思うのですが、明らかにそれが戦争の危機を予想されるよう政策にまで発展した場合でも、イデオロギーが同じであるならばその政策を容認されるのであるかどうかという問題です。
  198. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私はそういうことについては、実際の場合を見なければわからないと思います。併しそれは正しいことなら容認するのは当り前だと、簡単に言えばそうでありますけれども、国際情勢などというものは実際と理論とかみ合せてやられるものでありますから、理論だけではこういうものを議論してもわからないと思います。実際的な実情を見てからでなければ、そういう点についてはつきりしたことは申上げられないと思いますけれども、要するに今申しておるのは、戦争をするために協力しておるのじやなくて、戦争防止のために協力しておるのだから、そういうような破局を予想しないのであります。この結束が強固なら強固であるほど戦争防止の方向に向いて行く、こう考えておるのであります。
  199. 羽生三七

    ○羽生三七君 今度は質問じやありませんが、ちよつと私の意見だけ述べておきます。それは、どんな問題でも理窟で国際問題が割切れるものじやないということは、これは明らかでありますが、併し今お話になつように、結局これは世界情勢の判断なんかに対する根本的な違いから出て来ると思うのですが、昔大束亜戦争のときにこの間本会議で私申上げましたように東洋平和のためならばと言つた。ですから今度もいわゆる戦争をなくするための戦争ということを曾つて言つた人がありますが、それと意味が違うが、いわゆる平和のためにということですべてが合法化されてやつてつて、その結果は思わざるところで、ひようたんから駒が出るということをよく言いますが、私はそれは或る軍備拡張計画が遂にそこまで発展しなかつた歴史は見ていない。だから岡崎外務大臣が言われていることは、戦争をなくするために、実は平和を守るためにやつているんだという民主主義陣営の政策を合理化されたわけですが、その気持としてはわかりますが、我々の憂うるところは、そういうところから、ひようたんから駒が出て、思わざるところに行かなければいいがということを心配しているので、而もそれは客観情勢における或る程度の情勢の変化に基いて我々はそれを、将来を予見し得ることは不可能じやないか、これは非常に危険になつて来たかどうかということを予見することは不可能ではないか。だから我々はそういう諸般の客観条件を睨み合せて、今の政策が危険をはらんでいる、又その道を歩んでおると思う。幸いにして岡崎外務大臣の言われるように、その危険がなくて無事であれば誠に幸いであります。私の見解だけを申上げておきます。
  200. 曾禰益

    ○曾祢益君 この中立論争は非常に重要な問題だと思うので、只今慎重に伺つておりましたが、岡崎外務大臣に一点お伺いしたい。その前にいわゆる民主主義に対する信念のない中立主義というのは我々は否定しております、このことはアジア社会党会議においてもはつきり認められたことであります。更に又一国が自分の国の利益のための利己的な動機から他国民或いは他国の自由を犠牲にするような、そういう意味の中立ということはいけない。これ又我々が容認していることであるし、アジア社会党会議の決議もかようなことをはつきり謳つておる。それから安全保障の問題につきましては、いわゆる西欧陣営との軍事的な安全保障体制については、これは必要に応じてこれを考慮する、必ずしも排撃しない、これ又アジア社会党会議できめたことであります。併し、だからといつて、今岡崎君の言つておられるような、つまりいわゆる民主主義陣営の名において、アメリカの行動が常に我々の外交の判断の基礎である、民主主義陣営即アメリカである、アメリカの行動がすべて我々を拘束する、自主性を与えない、独立自主の外交の余地がない、こういうようなふうにとられるようなことは、これは我々としては断じて認められない。飽くまで我々はイデイオロギー、主義においては民主主義である、そのイデオロギーをなくした日和見的な中立主義ということは、いやしくも民主主義に徹する限りあり得ない。併し日本の国の外交というものは飽くまで自主独立であるべきであつて、民主主義陣営のほうが常にすべて正しいのだ、これに日本が外交を拘束せられるような御見解であるとするならば、これは極めて危険なる見解ではないかと思うのであります。この点に関するもう一応明白な御答弁が願いたいということが一つ。  いま一つは、岡崎外務大臣の外交方針の演説によりますると初めのほうは吉田総理と同様に、世界情勢を非常に楽観しておられる、然るに途中に至りまして、いわゆる大戦が起つた場合の日本の地位が中位であり得ない、かような議論を展開されておるのはおかしいではないか。もとより日本の安全を図る場合において、この点は岡崎君が言われた通りと思いますが、必ずしも第三次世界戦争にならずとも、いわゆる代理戦争、朝鮮動乱式の暴力革命プラス外国からの共産義勇軍の投入という新しい戦争の方式もあると思う。従つて第三次世界戦争防止が我々の基本的な外交方針であることは変りませんが、だからといつて第三次世界戦争だけを前提としたところの日本の安全保障ということは意味をなさない。この点はそうであります。併し一方において只今申上げたように世界情勢に対する非常に楽観的なことを言つておられる。事いわゆる大戦の場合に交戦国でないという場合の中立という問題になると、中立はあり得ない。こういうふうに言つておられるのは、一体どういう趣意であるか、我々は捕捉に苦しむのであります。この二点についてはつきり御答弁を願いたい。
  201. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私ももとより民主主義陣営の考えというものが即ちアメリカの考えであるとは考えておりません。日本は別としましても、イギリスの考えその他の考えがいろいろチエツク・バランスされて民主主義陣営の考えが出て来る。又日本も民主主義陣営の一国でありますから、日本の考えもそのうちに入つて、全体としての一つの統一した考えが出て来る、それは各国が話合つて納得した方針になる。従つて日本も無論アメリカ、イギリス、フランスその他の国と同一の立場に立つて考えをきめて、そうして正しい方向に向つて行く、これが当然のことと考えております。  それから第二の点でありますが、これは成るほどちよつと変なようにもお考えになりましようが、これは全体の理由じやありませんが、曾祢君も行かれたアジアの、ビルマの会議でも随分中立論というものが論議されたようであります。又それが反映してであるか或いは従来の議論が続いておるか、どちらでもありましようが、国内でも中立であれば如何なるときでも国が守れるんだという意見が出ております。それが非常にまじめな考えからそういう主張をされておるものもあり、又謀略と言つてはおかしいけれども、要するに日本の中立化ということによつて民主主義陣営の結束を弱めるという方向からそういう議論をしておるものも随分あるように見受けられましたから、政府考え方を国民にこの際知らせるほうがいい、こう考えてあのときに演説したのでありまして、前後の調子が合わないかも知れませんが、それは特に最近において又そういう議論が多いから申したのであります。
  202. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今のお話によると、国民に知らせる、行くべき道を知らせるというような、非常な抱負でお書きになつようでありますが、それならばもつともつと正確に、イデオロギーの中立、それから安全保障体制、即ち例えば米ソとの軍事同盟に入らないという意味の中立、更に戦争の場合に交戦国とならないという意味の中立、これらの問題をもつと詳細にお書きになつて、そうして政府の所見を堂々とお訴えになるのが本筋ではないか、この点が一つ。  いま一つは只今のお話を伺つておりますと、いわゆる中立論なるものはすべてが、露骨にいえば赤の謀略に掛つておるというようなお話のようであります。そうでもない。例えば人の名前を挙げるのはどうかと思いますが、辻政信君みたいな武装中立論もある、必ずしも、共産党的な中立論ばかりではない。これらの問題に対してもつともつと政府が所信を堂々と訴えられたらいい。そうでないもので非常にはつきりしない、舌足らずの方針を平和論においてやられるということは、却つて国論を混乱させるだけであるということを申上げて、これに対する岡崎外務大臣の御所見をもう一点伺いたい。
  203. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は随分長く述べたつもりでありまして、あれで政府考えは十分尽されておると思つております。併しこれは中立に関する議論は私が初めて述べたのではありません。ちよつと今記憶しておりませんが、約二年ぐらい前に吉田総理の施政方針演説の中にも極く簡単ではありまするが同様の趣旨が述べてあつたと思います。従いまして吉田内閣考え方はやはり変らずにずつと来ておるわけであります。なお先ほども私は申上げましたが、謀略的なものもあるし、又まじめに考えている人もあり、まじめに考えている人は意見の相違にしかならないわけであります。併し決して全部が全部謀略的だと言つておらないのであります。併し知らず知らずそういう謀略のほうに利用される向もこれはないとは言えない、こう考えております。
  204. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) お諮りします。本日鈴木強平君から、去る六日同君の質疑中不穏な言辞があつたので、これを取消してもらいたいという申出がありましたが、その処理につきましては委員長に御一任を願いたいと思いますが、如何ですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) さよう取計らいます。なお総理に対する質疑が一日ずれましたが、公聴会或いは重要法案関係上、公聴会は十日、十一日、それから重要法案はやはり前御承認を得ました十二、十三、十四、十六の四日間連続しまして、そうして十七日に残りの総理の質疑に入りたいと思いますから、さよう御了承を願いたいと思います。これにて散会いたします。    午後四時五十六分散会