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1953-03-07 第15回国会 参議院 予算委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月七日(土曜日)    午前十時二十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩沢 忠恭君    理事            高橋進太郎君            左藤 義詮君            森 八三一君            内村 清次君            永井純一郎君            西田 隆男君            木村禧八郎君            岩間 正男君   委員            石川 榮一君            石坂 豊一君           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大矢半次郎君            川村 松助君            郡  祐一君            駒井 藤平君            白波瀬米吉君            鈴木 恭一君            山本 米治君            石黒 忠篤君            加藤 正人君            片柳 眞吉君            溝口 三郎君            堀越 儀郎君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            三輪 貞治君            加藤シヅエ君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    大 蔵 大 臣 向井 忠晴君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    農 林 大 臣 田子 一民君    通商産業大臣 小笠原三九郎君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 本多 市郎君    国 務 大 臣 水田三喜男君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    保安庁次長   増原 專吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁経理局長 窪谷 直光君    経済審議庁次長 平井富三郎君    大蔵政務次官  愛知 揆一君    大蔵大臣官房長 森永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    農林大臣官房長 渡部 伍良君    通商産業大臣官    房長      石原 武夫君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今より委員会を開きます。昨日に引続き質疑を続行いたします。千田君。
  3. 千田正

    千田正君 昨日増産対策に対して首相からお答えを頂いたのでありますが、次に私は伺いたいのは人口問題であります。現在世界各国日本に対して向けておる目は、再軍備という問題もさることながら、むしろこの日本の狭い国土に年々増加するところの人口から来るところの脅威である、こういう点であろうと思うのであります。例えて言えば、日本人口の過剰は、やがては労働ダンピングになつてくるのではないだろうか。或いは国際マーケツトにおけるところの、輸出入品におけるところの、いわゆる生産コスト競争になつて来るのではないだろうか、こういうような面において、海外各国日本人口過剰というものに対して、非常なる関心を持つておると思うのであります。ことに最近濠洲等におきましては、外務大臣はよく御承知のことと思いますが、アラフラ海に新しく真珠貝採取をしに出て行つた日本の人に対しても、濠洲国民は、これは日本のいわゆる平和侵攻ではないか、平和的侵入ではないだろうか、日本人口が過剰するに従つて軍備はしないけれども、平和的にあらゆる面において各国に向つて侵入を企てて来るのではないかという疑心暗鬼の下に、日本人口過剰というものに対しては、非常な関心を持つておるのであります。そこで私はお伺いいたしたいのは、この狭い国土に毎年数百万になんなんとするところの人口が殖えておる。国内においては生活の困窮が日に増し増加しておるし、海外に向つてはあらゆる平和的なこの日本人口過剰によつて生ずるところの労働力ダンピング、若しくは日本品生産コストの低下から来るところの国際市場におけるところの製品競争、こういうような問題で日本の経済的、或いは人口過剰におけるところの、あらゆる面における武力以外の進展が、世界に及ぼす影響は大きいとして見ているのでありまするが、この点におきまして人口過剰に対する政策は何かあるのかどうか、こういう点について吉田首相のお考えを伺いたいと同時に、この政策を如何にするかという問題は、厚生省の担当だと思いますので、厚生大臣から特にこの面の施策について、方針を承わりたいと思うのであります。  外務大臣からは、今の濠洲におけるところの感情は決してよくない、アラフラ海の真珠貝採取によつて生ずるものは、勿論濠洲政府了解の下に進んでおるか、或いは日本が再び平和的な何かのいわゆる圧迫を加えているのじやないかという感情をもたらしているのではないかという点についての了解点について、お伺いいたしたいのであります。  先ず首相にこの人口過剰が、やがて国内における生活不安、国外に対してはむしろ一つの、人口による日本民族圧迫を加えられて来るのじやないかという不安を、どうしたらば調整しながらやつていけるかという点についての、首相が何かお考えがあるならば一つ伺いたいと思うのであります。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。人口問題についてはしばしばこの委員会においても、本議場におきましても、私の所見を述べておりますが、人口問題に対する即効薬と言いますか、万能薬というものは、これはないのが本当であります。何となれば、人口は日々殖えて行くのであります。一方においては食糧増産がこれに伴わないということも事実であります。人口問題が単に日本の問題ばかりでなく、一面においては世界的の問題であります。ゆえに列国が協力してこの人口問題解決に、例えば未開拓開拓されておらない地方に対して開拓なり何なり、新らしい土地資源の開発というようなことも考えられるでありましようし、同時に又国内においては食糧増産であるとか、或いは産業の発達であるとかいう面を考えて、内外において、国際的にも国内的にもこの問題は重大な問題でありますからして、絶えず深い注意を以てこの問題の解決に国を挙げて当るという以外に、即効薬と言いますか、万能薬は、これはないはずであります。併しながら、ゆえにうつちやらかしておくわけには行かないのであります。ゆえに政府としてはすべての努力を試みるつもりであります。  一言ここに附け加えますが、今日日本人口過剰、それによつてダンピングが生ずる、ダンピングの憂えありということは、これは直ちに私は肯定ができないのであります。何となれば、日本労銀は決して安くはないのであります。世界的の標準から言つてみて、むしろ高いとは言つても、決して過去におけるがごとく低廉なことはないということは御承知通りであります。ゆえに日本労銀が安いから労働ダンピング労力ダンピングになるだろうというようなことよりも、むしろイギリス等におきましては戦争中に起つたいわゆるアトロシテイの問題が問題になつておるので、労働人口過剰、低賃金から来る圧迫というよりも、この低賃金から来るダンピングは、国際労働関係その他において多くいろいろ方法を講じております。従つて国際条約或いは国際的の協力の面から申して、日本労力ダンピングはチエツクする方法があると考えておるので、これから来る日本に対する誤解若しくは脅威ということはだんだん薄らぎつつあると思います。その他の問題は主管大臣からお答えいたします。
  5. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) お答えを申上げます。人口問題はしばしば各種の委員会においても申上げておるところでありまするが、重大な問題であります。ただ只今数百万年々殖えるというお話でございましたが、最近の日本人口増加につきましては、相当検討すべき問題を含んでおるのであります。結果的に申上げますると、最近は数万百にあらずして、最近の統計から申しますれば百三、四十万であります。戦後一番この増加の多かつたのは昭和二十三年でありますか、出生率は千分の三十四というのが最高であります。二百七十万が最高、これは終戦後において帰還者も多く又一時的の現象で出生率が非常に多かつたのでありますが、一面には又死亡率も減つております。これは公衆衛生普及等によつて戦前は大体千分の十七でありましたのが、最近は千分の九ぐらいに減つております。従つて出生率も減つており、死亡率も減つておるのでありまするが、併し只今仰せのごとく数百万は殖えていないんで、昨年、一昨年あたりは大体百三十万乃至百三十五万ぐらいに推定されるのであります。併しいずれにいたしましても、懸念されまするのは、十五歳から五十九歳あたりまでのいわゆる生産年齢に達しておる人口が九十万ぐらい殖えて参ります。従つて、この人口問題は極めて重要でありますので、政府といたしましては、今総理お話のごとく、この点につきましては重大な関心を持つて、この予算案審議の中にも、人口問題審議会に対する予算を御審議つておるわけでありまするが、人口問題に関しましてはいろいろな面からこれを検討しなければならんのでありまして、大きく分けますれば二つ、丁度昭和二十二年でありましたか、二十三年でありましたか、内閣人口問題審議会を持つた際に、先ず以て人口吸収という面と人口調節という面と、この二面を内閣審議会で検討して参りましたが、その後この審議会は廃止されましたので今回新たに内閣人口問題審議会を持つて大体五つの面から人口問題を検討して行こうということになつたのです。先ず第一に生活水準との関係、第二は産業構造との関係、第三には資源との関係、第四には受胎調節との関係、第五には優生法見地から、この五つの面から人口問題を検討して行こうということになつております。一番大きな問題は人口を如何に吸収するかという問題でありますが、この点につきましては、日本資源との関係、又日本産業構造との関係只今お話のごとく貿易の振興と、今総理からお答がございましたが、いわゆる労働ダンピングにならないようにやらなくてはいかんということのお話がありましたが、これは只今総理お話のごとく、日本の現在の状況から行けば、労働ダンピングということはあり得ないと思います。それから産業構造との関係につきましては、これは通産大臣その他からお話がありましようが、私どもの感じといたしましては、先ず以て受胎調節の点から、人口調節の面から万全を期して行きたい。現在四百四十カ所ぐらいの優生保護相談所を以てこの面に努力を払つております。  なお厚生省といたしましては所管でありますから一言申上げますが、日本食糧問題との関係であります。日本人口というものはとにかく殖えて参りますものですから、食糧問題との関係においては、或いは一面においては仰せられるような、海外労働ダンピングをするという危険さえ生ずる憂えもありますので、厚生省におきましては、食糧改善栄養改善見地から、この人口問題を検討いたしております。で、主として考えておりますのは、今の日本のいわゆる食糧政策と言いまするか、そういう面につきまして一番考えなくちやいけないのは米麦の偏食であります。これは食糧問題という見地以外の栄養改善という見地から相当考えなくちやいかんと思うのであります。最近には大体において米は三百五十グラムぐらい、麦は百三十五グラムでありますから、合計いたしまして四百八十五グラム今とつております。昭和二十二年に食糧及び栄養改善対策審議会というものを設けた際に、大体日本人栄養摂取量目標を御承知通り二千二百五十カロリーを以て目標にいたしております。その際に大体蛋白質を七十五グラム、脂肪を二十五グラムを目標にいたしておりました。昨年、一昨年あたり脂肪が十八、蛋白質が六十八グラムになつております。こういう見地から米麦を是非二、三割減らして、それによつて、例えば動物性蛋白質を加えるということにいたして、何とかして食糧の面、従つて栄養の面についても改善図つて、そうして食糧問題の点から、人口問題の解決図つて行こうということを考えているのであります。これに対しましては、大体水産とか畜産の増産図つて、そうして人口問題のネツクを解決して行こう。こういうふうないろいろな面から人口問題に対して政府は考慮いたしております。
  6. 千田正

    千田正君 外務大臣のお答を頂く前に、もう一つ岡崎外務大臣に伺いたいのは、只今人口問題に鑑みまして、外務省におきましては移民局を設けまして、非常に結構なことでありまして、むしろ遅きに失しているような感があるのであります。日本戦前において海外への移民を奨励した場合においては、大正の末期から昭和の初めに至るまで、いわゆる拓務省なるものを内閣の中に作つて、そうしてどんどん日本農民開拓団南米であるとか満洲であるとかいうふうに、各方面に鉦や太鼓で送り出した。そのときでさえも、最高において十万を超えるやつと僅かに一、二万しか我々は知らないのであります。今度移民局なるものを作つて、一体どれぐらいの海外移民を目途として考えておられるのか。特に曾ての日本移民というものに対しては、国際的の教養の水準が遥かに低いという意味において、或る場合においては相当の非難を受けたことがある。これからの移民は、日本国民世界のどこへ行つても歓迎されるような日本人でなければならない。アメリカに行こうが、南米に行こうが、或いは濠洲に行こうが、立派な日本人として世界各国から歓迎されるような移民を出して行くのじやなかつたならば、日本移民対策というものは成り得ないと思うのでありまして、こういう点から、一体どれだけの移民目標として取りあえず移民局を作られたか、なお且つ又、こうした外国へ行くところの移民の諸君に対する、日本国民外国行つて、いわゆる外国国民になるという心構えに対する一つの教育というものは、どういうふうな方向に向つて方針を定めてやつておるのか。こういう点におきまして、外務大臣お答えを、併せて先ほどの濠洲との問題と一緒にお答えを願いたいと思うのであります。
  7. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 濠洲のほうにつきましては、これは元来公海で行う作業でありまするから、普通ならば勝手に行けるわけでありますが、ただ誤解を避ける意味において、又濠洲に近い所で行いますから、その意味でできるだけ濠洲側了解を得て行きたい、こう思つてつているわけでございます。  なお、移民局、これはまあ名前は移民局と言いませんが、これを作つたから、すぐに非常にたくさん出られるというわけには参りませんけれども、今おつしやつたような、立派な人を出すということによつてだんだん殖えて行くのじやないか、まあそれを努力いたしております。差当り全部合せましても、一万に至らんだろうと思いまするけれども、来年、再来年になれば、これがだんだん殖えて行く、そのつもりで努力をいたします。
  8. 千田正

    千田正君 先ほど厚生大臣から、日本人口増加に伴うところの重大問題は、やはり食糧問題である、食糧目標というものに対しての一つの調整を図つて行かなくてはいかん、そのためには、米麦から更にいろいろな脂肪蛋白吸収という面から言つて、今後の農薬政策に非常な問題が発展して行くだろうと思いますが、農林大臣にお伺いいたしたいのは、昨日も私は質問の中に申上げておりますように、五カ年の増産対策を樹てていながら、少くともこの当初の二十八年度予算には、六百億ぐらい見込んで置かなければならない予算であるにかかわらず、二百八十億しかこの増産対策に見込んでおらない。そうすれば、僅かに昨年の、いわゆる二十七年度に比較しまして約二割程度増加しか、土地改良であるとか、開拓政策にはこの予算は見込まれない。僅かこれだけの二割になるかならんかという増産程度では、今の人口増加に比例して日本食糧解決ができないと私は思うのであります。そこでどういうふうにして今の人口増加に伴うところの国内のいわゆる米麦であるとか、蛋白資源の補給とかいう面において、農林省施策を持つておられるか、その点と。最近は政府外国から高い米を買うのに、農民からは安く買上げておる。而も農家必需品であるところの肥料の点においては、外国へは安く出すが国内農民には極めて高く売りつけておる。貿易政策の一環としては出血輸出も止むを得ないとしておるが、一面増産を図らなければならんのに、農家必需品であるところの硫安その他の肥料に対しては、正に逆に農民の負担の下に、こうした外国への輸出出血政策を背負わされておる。こういうような農民の窮境に対して、農林大臣はどういうような施策をもつて、今後のこの日本増産対策に対する方針を定めて行かれまするか。田子農林大臣にお伺いしたいのであります。
  9. 田子一民

    国務大臣田子一民君) 増産計画予算の問題を御質問でありますが、これは五カ年計画、後の五カ年、合わせて十年間における大体の計画を立つておることをよく知つておるのでありますが、二十八年度予算につきましては、只今指摘のように、農林省考えと又大蔵省考えとの調節には、相当の苦労があつたのでございます。大体この増産は必ずしも二十八年度そのものに予定の実現をしませんでも、当初の五カ年の計画を実行いたすことによりまして、完全になし得るものと考えるのでありまして、そのときどきの財政上の都合ででこぼこのありますこと止むを得んと思うのであります。但し法案等審議を終えましたならば、これも継続費でいつも安心して行けますようにします対策考えられなければならんと存じております。なおまだ細かなことは私よくわからん点がございますから、そういうものはもう正直に政府委員に答弁して頂きまして、だんだん将来研究を続けたいと思います。  人口問題そのものにつきまして今お話でありましたが、この増産人口問題をきちんと合わせるということはなかなか容易でありますまいけれども、私長年個人的な主張としましては、我が農民は米のみに依存することなく、あらゆるものを摂取する、例えば麦でありますとか、肉でありますとかいう、あらゆる面のもの々摂取することにいたしたいということを考えております。それから何でしたつけ。
  10. 千田正

    千田正君 外国に安い肥料を売つておるが、国内農民に対しては高い肥料で行く。農民が非常にそういう意味において……、
  11. 田子一民

    国務大臣田子一民君) わかりました。肥料輸出物資産業としまして指定されておりますことは御承知通りであります。従つて国際市場に売ります価格についての規定は、国際的に定まるわけでございますから、その価格決定内地生産者販売価格との差はおのずから生ずるということは、これは止むを得んと思うのであります。今御指摘にありましたが、輸出における損害農民に負担するということをおつしやいましたけれども、さような事実は調べた結果ではございません。
  12. 千田正

    千田正君 今の農林大臣のお答にはまだまだ私は追及したいのでありますが、例えば今の硫安の問題などは、これは通産大臣のほうにも関係がありますので、分科会譲つて改めて専門的にお伺いいたします。  次に吉田首相は再三綱紀粛正を唱えられまして、この席上におきましても、官公吏、いわゆる公務員綱紀粛正に対しては断乎として臨んでおられるのであります……ところが不幸なることには、会計検査院からの国会に対する報告書を見ると、年々減るどころじやなくて、むしろ殖えて行く。吉田首相の親心で十分監督されるのでありましようけれども、現実においてはこの綱紀粛正が如実に現われていない。最近におけるところの二十六年度会計検査院批難事項報告の中にも、一昨年十二月から昨年の十一月までの検査の結果によりますと、いわゆる国費を不当に支出したところの批難事項としましては、四百四件の多きに達しております。更に不正行為、いろいろ合せますというと、一千百九十八件という厖大なるところの事項がある。いわゆる公務員の不正なる支出批難事項として現れて来ておるのでありまするが、国費損害額は約三十億五千八百万円、その内容を見ますと、国民血税が不用意に、単に年度末の剰余金を何とかした方法において使わなければならないと、例えば保安庁におきましては、不必要であるところの薬品であるとか、器具というようなものを買付けて、そうして倉庫の中に梱包のまま転がつておる。何ら必要ないものにもかかわらず、年度末の金が余るからというので、不必要なものを買つておる。或る場合におきましては、建設省関係におきましては、いわゆる仮想労働賃金を支払うために、仮想労働者を数百名、数十名作つては請求して、それに支払いをしておる。或る場合においては、偽造していろいろな請求書を出して、それに支払つている。数限りのない公務員のこうした不正、罪悪に対しては、吉田首相断乎として臨むとおつしやられまするが、これは毎年の予算の編成に当りまして、前年度に使用された、こうした不徳をなすところの、いわゆる国費の無用なる支出に対して、厳重に大蔵省は監査しなければならないと思うのでありまするが、大蔵大臣がここにお見えになつておりませんけれども、かような国民血税が無意味に使われておる、而も犯罪の対象に使われているということは、吉田首相の道義の高揚、綱紀粛正断乎として行おうという首相にとつては、誠に不愉快なことと思いまするけれども、これからの予算のいわゆる作成に当つて、こういう問題はどういうふうに取扱つて行くつもりであるか、なお且つ又吉田首相は、この年々殖えて行くところのいわゆる国費の不正の浪費、こういう問題に対しまして、もう一度吉田首相から御所信を承わつておきたいと思うのであります。
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御指摘になつた会計検査院決定報告によつて会計検査院が不正、不当と見られる事件が殖えつつある、これは私も関心を持つてその事態について只今研究させておりますが、一応の回答と言いますか、取調べる会計検査院の見るところと、行政官庁考え方と多少の食い違いがあつて行政官庁としては不当と考えず、又検査院としては不当と考えている問題も随分あるようであります。これはなお厳重に調査いたしますが、そうして又こういう事件が起らないように注意いたしますが、さてどういうふうに注意するかということになります。それでこの予算の使い方、予算支出若しくは予算に割当てられた国費が適切に使われるように、支払う以前において監督をする、或いは支払う途中において監督するとか、方法を講ずべきであると考えて、大蔵大臣はその方法をどうするか、どこの官庁に扱わせるかということを只今研究いたしております。いずれ結論を得ましたならば、御披露をいたしますが、決してなおざりにいたしておるわけではございません。詳細は大蔵当局その他から説明をいたさせます。
  14. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 私ちよつと連関して質問いたしたいと思います。只今の御質問になりました中に、不当支出についての会計検査院批難事項というものが相当にたくさんある。それを決算委員会において十分詳細に厳重に調べて、そうして本会議に報告があるのでありますが、前議会の決算委員長報告の本会議の状況を見ますと、殆んど国務大臣は御出席ありませんでした。あつても一人くらいのものだ。私はないように思う。遺憾なことには同僚議員諸君の出席もたくさんではありません。僅かに定足数を保つに過ぎなかつたのであります。併し政府関係者の出席は殆んどなかつた、全部なかつたと私は信じます。こういうことは、首相が常に言われている綱紀粛正という面から見ましても、行政の整備の面から見ましても、非常に重きを置いてやるべき要点だと私は思うのでありますが、今後の国会の決算の本会議における報告及びそれの承認ということに対しましては、行政府におかせられましても又立法府におきましても、もつと重きを置いてやるようにいたしたい、こう考えますが、首相のお考えは如何でございましようか。
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。御意見は御尤もと私も考えます。今後は注意いたします。行政府として考慮いたします。御注意のようなことのないように、お気付きのようなことのないようにいたします。
  16. 永井純一郎

    永井純一郎君 先ほどの関連で、千田君の質問委員長にお願いしたんですがお許しがなかつたので、ここで申上げますが、私は先ほどの田子農林大臣の答弁について総理に伺いたいと思うのでありまするが、この新農林大臣の答弁は答弁になつておらないと私は考える。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はそこで、ここで総理にお伺いいたしたいと思いますのは、憲法の何条でありましたか忘れましたが、総理国務大臣を任意に罷免することができる、というふうに規定をいたしておる。私どもの考えでは、少くとも国会中所管大臣を罷免するということは、あの憲法の解釈上許されないというふうに考えます。それは先ほどの田子農林大臣が答弁いたしますように、殆んどその農林行政の最高責任者としての責務を果しておらないのであります、国会の答弁におきまして。で私は、総理が憲法によつて任意に罷免し得る場合は、いわゆる総理の我儘勝手な考えによる全く便宜的な自由裁量権があの条文によつて認められておるのではなくして、少くとも条理によつて拘束され、或いは又万人が認め、特に国会が成るほどと認める程度のものでない限りは、私は罷免はできない、こういう観点から見ますると、立案をした当の農林大臣が国会の審議中において送るということは、職責をどうしても果せなくなる、現に今田子氏の答弁を聞いておりますると、その通りであります。私はこういうことを質問をするつもりはなかつたのでありまするけれども、只今田子農林大臣の答弁を聞きますると、明らかにその職責を果さなくなつてしまつた。このことについては同僚の諸君が二、三日前に総理質問をいたしましたときに、総理は、途中で所管大臣が変つて政府として責任を負うのであるから、かまわないと思うという意味の答弁をなさつたのでありまするが、そのように現に内閣がなつておりません。そこで私は今後の問題もあることでありまするから、憲法のあの総理が持つ国務大臣の罷免権は厳重に私は解釈すべきものである、こういうふうに考える。そうでない場合、特に国会の開会中において我々が審議をする途中において、自由に国務大臣の罷免が総理の勝手な感情によつてされ、或いは党内の内紛等が理由で、こういうことが行われるということは、非常な国会の審議に私は支障を来すと思う、現に来しております。今後の問題もありまするから、あの条規の解釈を私は厳格にすべきものである、こう考えまするが、総理のこの点についての御所見を承つて置く必要がありと、かように考えたのであります。
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 総理大臣の持つておる権限はことごとく慎重に考えべきものであつて、又私が農林大臣を罷免したことを以て、私の気随気儘にやつたというような御意見でありますが、私としてはそういう考えはないのであります。十分考慮した上やむを得ずこれを断行いたしたのであります。又先ほど田子農林大臣の弁明も、答弁も、これは研究した上お答えをするというので、慎重にお答えをする考えから出たものであつて、このために審議が支障を来したとは考えません。若し必要があれば、政府委員その他からして十分御説明いたします。
  18. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は前農相の廣川君と何ら個人的に知り合いでもなし、私は全然こういうことに個人的には関与するところは勿論ないのでありまするが、只今総理の答弁を聞いておると、つい私はもう一つ、それではお尋ねしたくなるのであります。それでは国会中にわざわざ前廣川農林大臣を罷免された理由を承りたい、かように存じます。
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それは私が職権を以ていたしたのでありますから説明はいたしません。
  20. 内村清次

    ○内村清次君 私はこれは私の質問の際に重大でありますから、総理にお伺いをいたすわけです。で、これは総理の問題と関連した問題でありまするからして、而も又予算委員会といたしましては、重要な二十八年度予算審議するに当りまして、農林行政というものは、先ほど来各大臣が答弁をされますように、又委員関心を持つておりまするように、日本食糧問題というものは、これは重要な問題である。即ち食糧問題というものは独立後におきましては、これは第一番に取上げて行かなくてはならない問題である。国力の増強は先ず食糧の増強から入つて行かなくちやいかん、こういうような点でありまするからして、私はこの予算審議中に総理が罷免をされたということについては、予算審議上において相当困難性があるのではないか、こういうことを私は総理に答弁を求めたわけでございますけれども、そのときの答弁は、総理は二十八年度予算政府が責任を持つて出したのであるからと、こういうような答弁である。ところが只今農林大臣の御答弁では、これは非常に大きく予算審議上に支障がある。(「その通り」と呼ぶ者あり)而も首相のこの点は、先ほど千田君の質問に対しましては、自由党が公約し、同時に又政府が堂々と政府農林省機関を動員されて、そうして計画をされて発表された食糧五カ年計画と——この五カ年計画はこの二十八年度が初一年として実施の過程に来ておる。その五カ年計画の大要というものは、全額三千億の費用を要する。これを初一年度には一体どれくらい使われるか。而も初一年度というものは、全く広汎なその基礎固めである。土地の改良にいたしましても、或いは輸入食糧の減にいたしましても、又その他耕種の改良にいたしましても、いろいろの諸点に対しまして基礎固めです。それにこれを五カ年に割りましても、六百五十億ぐらいの費用が要るわけでありまするが、それが二百八十億しか組んでいない。こういうようなことで困難な食糧問題の解決ができるか、食糧輸入を少くすることができるかどうか。こういうことは重大な、予算審議の一番大きな問題の一つですよ。それを只今ではこの予算関係で、五カ年間においてこれを勘案するからいいじやないかというような、吉田内閣は一体五カ年間あと続かれる予想があるのでございましようか。或いは政府の公約というものは、これは年を逐うてはつきりして行かなければならない問題でございましよう。ございましようが、この実際の予算が、すべてのこの予算関係から勘案いたしましても、これ以上は到底出ないという私たちは見込みを持つておるのであります。政府の声明が全く空手形では、これはどうしますか。国民はこれは、特に又農村関係国民の方々は政府の公約というものは当てにならない。こうなつたら、日本の政治というものは、もう駄目になつてしまうですよ。そういうような重大性があるにかかわらず、農林大臣一つも答弁ができないと、あとは政府委員にやらすというようなことはこれは無責任極まる問題ではございませんか。  それで私は更に二つの点を問います。一つは廣川前農相の罷免というものは自分が勝手にやつた。深く考慮してやつたと修正されておりますけれども、予算審議国民の大事なこの審議を停頓させるような方法、国会に迷惑をかけるような方法で、即ちあなた自体の考え方、自由党自体の考え方で、国会の審議に支障をするような方法をやられたと私は認めますが、それに対する答弁が一つと、第二の点は、即ちこの無責任な答弁に対しまして、吉田内閣増産計画というものは空手形かどうか。必ず五カ年間に、これを逐次、今年度予算の不足というものは来年度においては必ずこれは平均より以上の増額をやる決意があるかどうか。この二点に対しまして総理の答弁を要求いたします。
  21. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 当局大臣の答弁は即答を要するわけではないのであります。即答が義務付けられているのではないのであります。慎重に調べて、そうしてお答えをするという農林大臣考え方は、私は不都合はないと思います。若し審議に支障があると、こういうならば、政府委員その他において代つて答弁する、私に対する質問政府委員その他が代つて答弁することもでき得るのでありますから、農林大臣が、取調べた上で極く慎重に答弁をする、これは決して私は差支えないものと思います。  もう一つは、これは事情にもよりましようが、そのときの事情にもよりましようが、殖やすことが必要であれば殖やし、減らすことができれば減らす。そのときの事情にもよりますが、政府としては食糧増産は重要政策一つ考えておりますので、必要があれば増額をするなり何なり、いずれにしましても、その実効を期します。
  22. 永井純一郎

    永井純一郎君 ちよつと、ちよつとですよ。答弁をしないという総理の答えかたはいけないんですよ。
  23. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 本論から大分離れたから。
  24. 永井純一郎

    永井純一郎君 本論ではないよ。その点だけ明らかにしておきます。
  25. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 千田君。
  26. 永井純一郎

    永井純一郎君 だめだよ、委員長。そういうことをしてはいけません。約束が違うんじやないですか、理事会の。
  27. 千田正

    千田正君 日米通商条約を前にしまして、閣議の意見が不一致ではないかという点について、一応お伺いいたしたいと思います。  日米通商条約は申すまでもなく、日本の独立後におけるところの重大なる案件の一つでございますが、この通商条約の認識点について、外務省と大蔵省が全然違つておる。全然というほどではないけれども、そこに非常に認識が相違しておる。というのは今度の日米通商条約の中で、いわゆる旧株の取得権、日本の公企業若しくはアメリカの私企業との関係の権益の問題等につきまして、外務省と大蔵省が意見の相違がある。我々は新聞紙上で見ておるのであります。というのは、先般の閣議において、大体閣議決定したように見受けられるところの、外務省の案とするところの、いわゆる戦前の取得権益は、両国の相互主義に基いて認められておるけれども、占領中を含む戦後の場合は、認めがたい、この一点と。この原則は現に取得権益となつているところの金融業務、即ち預金であるとか、信託等に対しては適用しないという外務省の観点に対しまして、大蔵省側はこれとは別な観点を持つておる。大蔵省側の観点から見まするというと、金融業務に関する適用排除の条項は、本条文としないで議事録にとどめておくべきであるという観点、この点について米国側が納得できないならば、条文には一切既得権に触れないことにすべきであるという大蔵省の観点であります。これは日米通商条約を目前に控えておいて、日本政府の閣内において、十分な検討のなされないということは、我々は誠に遺憾と考えるのでありますが、この重大なる日米通商条約を目前に控えて、この閣内におけ意見の対立ということは、我々国民としては誠に遺憾でありまするが、これをどういうふうにまとめて行かれるか。この点につきまして、吉田総理大臣はこの日米通商条約における認識の相違の観点に対して、どういうふうに調停して行かれるつもりでありまするか、お答えを願いたいと同時に、外務省の意見と大蔵省の意見とのこの対立に対して、主管大臣お答えを願いたいと思うのであります。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この日米通商条約によらず、いろいろな問題について、各省がその立場上意見の異ることは、これは自然であります。併しながらそれが閣僚の間で以て相談をいたしまして、意見がまとまれば、その意見にどの省も従うのも、これ又当然であります。この日米通商航海条約の内容につきましては、只今交渉中でありますから、まだ申上げる時期に達しておりませんけれども、大蔵省と外務省との間に立場上の意見の相違があつたにせよ、すでにその問題は十分話合つて、閣議において了解をされておりまして、今日においては一つ方針の下に進んでおりまして、その間に意見の相違はありません。又日米通商航海条約は、その結果として相当早く妥結に至る見込みであります。
  29. 千田正

    千田正君 大分、時間もありませんから簡単にやろうと思いますが、今度の重要法案の中に、独占禁止法案の改正の問題があるのでありまするが、これに伴うところの、国内におけるところの産業には相当の重大なる変化が起るものと私は考えております。で、この独占禁止法案の改訂に基いて、日本の資本家、少くとも一流の資本家におけるところのカルテル、或いはトラスト化する虞れが私はあると思う。又、それを目標にしているとも見受けられる。産業の面において一流のメーカー、いわゆる企業家、或いは資本家が合同或いはそうした企業の協同化において及ぼすところの影響というものは、過去の世界の歴史を見ましても、ややもすればそのトラスト或いはカルテル化しために、労働勢力に対するところの圧迫が現われて来る。一面において今度の、いわゆる重要法案の中には労働三法の改正が行われております。行われんとしております。一面は非常に資本家或いは企業家には開放されたような方向に向つて行き、一応今度の労働面においては、それを規制したような関係になつて来る。こういうような関係になつて来るというと、将来の産業面において相当な重大の影響を及ぼして来ると思いまするが、殊に中小企業の圧迫相当強い立場に立たれて来ると思う。こういう点につきまして、一流企業の合同、或いは一流資本家のいわゆるカルテル化することによつて日本の中小企業若しくは労働その他に対して相当圧迫が加えられるものと、私は杞憂を持つているものでありますが、この点につきましては、首相はどういうふうにお考えになつておられるか、且つ又通産大臣はこれを、かような一流の企業家の合同或いはカルテル化することによつて、中小企業への圧迫が起るような情勢に立ち至つた場合において、現在の中小企業への補助的な僅かな金融政策などにおいては、到底日本の中小企業の育成強化はできないと思う。この点につきまして、首相並びに通産大臣お答えを願いたいと思うのであります。
  30. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。今度の独禁法の改正というものは、不況の場合及び合理化の場合のみ限られるのでありまして、不況の場合等におきましては、まあ今日では昔の財閥時代と違つて、特に大きい、いわゆる大資本家というものが日本にございません。併し仮に中小企業より少し大きいというものはございましよう。併しそういうものは、不況の場合等には殆んど一体となつているのでありまして、こういう不況対策、或いは合理化対策等に進みまする場合には、何もそれが中小企業若しくはほかの商社にしわ寄せをする。こういうことはないと私どもは思う。むしろ産業は一体であつて、一体で不況を乗切つて行くことに役立つものと考えている次第であります。更に又その影響等が中小企業等へ及ぼすことが仮にあるような場合が予想されますれば、これは認可事項ですから、認可しないこともできるのでありまして、日本経済を健全に発達させ、言い換えますると、世界のどこにもないような、ああいう行き過ぎた独占禁止法というものは、これは日本のような経済の底の浅い国の実情に当てはまらんのでございます。而も特にこの趣意は変えないで、併し不況の場合、或いは合理化の場合に限つてこれを認めようとするものでありまして、御懸念のごときことは万ないものと確信いたしております。
  31. 千田正

    千田正君 通産大臣に対してはこれで終りたいと思いますが、昨年の炭労ストを契機としまして、産業界においては、石炭から重油へと燃料計画が変更しつつあるということは御承知通りであります。ところが最近におけるところの、アメリカにおける石油の面、或いは石油の産出の価格統制が撤廃されたのであります。その結果アメリカの輸出石油に対しての価格が上つて来た。国内の炭労ストが起きたところの石炭の方は一応押えて行つて、そうして重油に転換して重油によつて燃料政策を賄おうとしたところが、逆にアメリカの国内におけるところの、いわゆる石油の輸出或いはその他に対して及ぼすところの、アメリカ国内における価格統制の撤廃に基いて影響するところの日本の今後における輸入という問題に対しては、相当私は高率の燃料をこれは入れなければならない。国内の石炭政策と、それから国外から入つて来るところのこの重油の輸入との調整はどういうふうにして行なつて、今後の日本国内における産業に寄与するところのこの燃料政策というものを解決して行くか、この点に対して通産大臣のお考えをお伺いしたい。
  32. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 千田さんの御指摘なつたように、昨年統制撤廃の結果本年二月十七日改まりまして、十一バレル二ドル五セントが二ドル十五セントになりました。併し世界的に見ますると、いま油はどちらかと申せば非常に余つておるのでありまして、今後さように騰貴すると私は考えておりませんが、併し現在石炭を重油に換える分は、これは非常に重油の取扱によつて値段も下り、又便利な点も多いのでございまして、石炭に対する一つ価格対策等の関係もございますから、引続き私どもは今後重油を入れさしたい、そうしてすでに転換しておるものに対しては外貨の割当等をいたしまして重油を入れさせる、こういう方針でございます。併しそれがむしろ日本産業には非常に合理化その他に役立つものと、かように考えております。石炭対策につきましてはたびたび申上げたからここで繰返して申上げません。
  33. 千田正

    千田正君 これで終ります。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私質問に入る前に委員長一つ要望いたしたいと思います。それは先ほど田子農林大臣の答弁に対しまして、同僚永井、内村議員が、これは国会の審議に悪い影響を及ぼすものであるということについて総理大臣の所信を質しましたが、この問題はあいまいにできないと思います。相当重要な問題だと思う。(「そうです」と呼ぶ者あり)参議院の予算委員会といたしましても全体の問題でありますので、ただ審議の時間がございませんでしたので、委員長も恐らく遺憾ながら審議を尽さしたかつたけれども、時間がなくて心ならずも永井氏の再質問、内村氏の再質問を途中で遮られたと思います。この問題は又改めて理事会で問題を明らかにするように処理されることを一つお諮り願いたいと思います。(「賛成々々と」呼ぶ者あり)
  35. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 承知しました。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は二十八年度予算の基本的な前提条件について若干の質疑をいたしたいと思う。その第一は、総理大臣は今後の施政方針演説におきまして、独立予算提出するに当りまして、という言葉を使われております。そうしてこの独立予算提出するに当り日米親善関係と占領中の行政の行過ぎ是正、こういうものを中心にして予算を編成されているということを言われておりますが、独立予算とは言うまでもなく独立国にふさわしい予算という意味でございます。換言いたしますれば、占領中のような予算ではない、いわゆる占領継続予算ではない、こういう意味と思う。成るほど形から見ますると、占領中におきましては予算編成に当つて一応司令部にお伺いを立て、そうしてそのOKをもらわなければなかなか立てにくかつた。併しいわゆる講和独立後におきましては政府において独自に予算編成をするということになつた、これは私は結構だと思う。併しその予算の実体において果して独立国にふさわしい予算と言えるか。独立予算という意味総理はその実体についても独立国にふさわしい予算と確信を持たれておるかどうか、先ずその点についてお考えを伺いたい。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府はその考えでこの予算の編成をいたしました。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 昨年の十月、いわゆる講和独立後初めての選挙が行われたが、それに基いて第四次吉田内閣ができた。第三次吉田内閣の延長であつてはならない、いわゆる占領下における政府の延長であつてはならないことは明らかでありまして、そうしていわゆる独立後最初の第四次吉田内閣としていわゆる独立後の新政策を発表された。その新政策に基いてこの予算を編成されたと思う。併し実体は果して新政策自体においても講和後において日本の民族が独立を本当に自覚して、そうしてこれから新らしく向うべき方向をこの新政策が明らかにし、そうして又その具体的な計画政府が発表してそれをこの予算に盛り込んで私は出されたとは思えない。総理がこの予算は実体においても独立国にふさわしい予算と言われるならば、どういう点において独立国にふさわしい予算であるか。私はそうではないと思いますが、その理由を私はお伺いいたしたい。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 先ず政府としては十大政策を立てて、その政策によつて予算を立てたのでありますから、政府としては独立国にふさわしい予算考えております。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は両条約、行政協定に縛られている下で、而も両条約、行政協定は占領下においてこれは結ばれたのだ。そうして独立的な政策は実現できない状態にあつて、そうしてどうして独立国にふさわしい予算が編成できるのか。両条約、行政協定の下にあつてそうしてこの日本が独立しているとこういうふうに一体言えるかどうか。総理は独立しているとしよつちう言われるのですが、私はどうしてこの両条約、行政協定に縛られている日本が独立していると言えるか、この点この予算の独立性と関連して重大でありますからお伺いしたいと思います。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 一国が条約の束縛の下に或る制限を受けるということは当然であります。その条約なるものは日本が対等の資格において結ばれたものであるということはしばしば申したところであり、而してその条約は議会が協賛せられた条約である。その条約の下に或る制約の下に国がおる、これは当然の話であります。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 仮に対等の立場において結び、或いは又国会が協賛を与えても、その条約、行政協定の内容が、アメリカが他の諸国と結んだ国際的条約、そういう国際慣例よりも斉しく不利な内容の条約、行政協定を結べば、そうしてそれによつて日本が国際的慣例以下にアメリカに政治的、経済的に隷属するような状態にあれば、これは日本は独立しているとは言えない。従つて具体的に私にお伺いしたい。先ず対等の立場で結ばれたと言いますが、安全保障条約にしてもあれは一方的防衛であつて、双務防衛協定ではないと私は思う。これは私は北大西洋条約と異なると思います。こういう点についてすでに国際的慣例と遣うと思う、そのために著しく不利な負担を、又いろいろな条件を日本は負つたのであります。これで果して日本は国際的観点からみて、国際的慣例より著しく不利な条約の下に置かれているという意味で独立していない、こういうふうに言えないかと思うんです。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 安全保障条約が双務的でないということは、これはその通りであります。併しながら日本のように八千五百万の人口があつて、工業も発達しており、教育も非常に普及しておる国で、つまり世界においても相当有力な国であつてしかも軍隊を一つも持たないという、こういう国も世界には例がないのであります。双務条約を結びたくともこちらに軍備がなければ結べないのは当然であり、且つ軍備のない現状において直接の侵略を防ぐ方法はほかにないので、やむを得ず安全保障条約になつたのでありますから、これはその意味ではほかに例がないかも知れない。併しながら、その条約を結ぶに至つた経緯においては全く対等の立場でやつたことは、これは総理のしばしば申上げた通りであります。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは岡崎外務大臣の御説明はわかるのです。併しながらその結果を、成るほど日本が軍隊を持たない、持たないから、よその国と比べて珍しい状態で、そうして従つてアメリカ軍に日本を防衛してもらう、そういう形自体が日本が独立できない状態になつておる。このことをお伺いしたい。この現実を、その過程はその御説明の通りである、その結果として、あとでこれも御質問いたしますが、経済的にもいろいろな方面において非常な隷属が出ているのです。その現実を、これはいい、悪いは他の批判があるのでありますけれども、現実をお伺いしたい。
  45. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 世界には軍備を持たない国もほかにも小国ならばあります。又軍備を持ちましてもその軍備相当に貧弱である国もあります。併しながら国際連合の趣旨から申しましても、各国の国としての尊厳を認める、つまり総会における投票権も、どんな大きな国もどんな小さな国も平等である、あらゆる基本的人権を認めるように、国としての独立性を認めて対等の立場に立つ。これが原則でありまして、日本におきましては、軍備はなくても済めばそれで結構なんでありますが、周囲の状況はこれを許さないから安全保障条約を結んだのでありますが、それがあるからと言つて独立していないということには私は到底ならないと思うのであります。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは岡崎外務大臣は、現実をもつと直視される必要がある。私は今一応議論をするために質問しているのではないのです。ですからこういう条約を結んだことがいいか悪いか、こういう行政協定がいいか悪いか、これはいろいろ政治的立場に立つて違うのですから、これは又別な立場で議論するわけです。そうではなくて一応こういう形の行政協定を結んだ結果として日本はアメリカに隷属状態にある。これは私は日本国民に十分この実情を知らせる必要があると思う。政府は道義高揚を一大政策と言われました。又教育制度の刷新も言われています。併し道義高揚、それから教育制度の刷新も、吉田総理の暴言を批判したり或いは又岡崎外務大臣のこの選挙違反、こういうものを指摘することも興味のないことではないかも知れませんが、私は道義高揚の一番重要なことは、敗戦後のこの日本、長い間占領された日本が隷属的な根性にならんことです、日本国民が。本当の今の日本民族の自覚に基く民族意識をここで取戻して立上つて、そういうための併しそれは軍国主義的なものではございませんので、そういう意味での道義高揚でなくてはならない。そのためには形は独立したごとくに見えて、結果において、日本がアメリカに政治的にも経済的にも隷属しているのだという、その現実を正しく国民に私は認識させなければならん。そのためにはここで単に外務大臣総理大臣と議論するという簡単なことではないのでありまして、私はこの点を一番心配しているんです。日本民族が民族的に堕落してしまつたらこれは取返しがつかないことになる。私が独立しているか、いないかを聞くことは、日本は何と言おうともこの両条約、行政協定下においては政治的にも経済的にも隷属的な立場にある。はつきり言えば植民地的な立場にあるということ、この冷厳なる事実を私は認識しなければならん。それから出発して政治でも経済でも日本が独立するための努力を展開しなければならんというので質問しているんです。従つて単にこの場合において言葉上私を説得すればいいということでなく、本当に日本民族の一員として日本の国をこれから祖国を独立させなければならん、そういう情熱を持つて私は答弁をして頂きたい。そういう意味で私は質問しているんです。この両条約を結んでしまつた、行政協定を結んでしまつた、我々は反対しましたが、それが結ばれてしまつた、これは現実なんです。その現実を十分認識しなければならんというので質問しているんです。  そこでこの安全保障条約によつて、これは一方的防衛協定であり、更に再軍備を漸増的に実行する約束を前文でしているんです。従つてこれはだんだんやつて行かなければならんわけです。ところが政府の十大政策、新政策には何らこれに触れてない。又二十八年度予算にも何らこれが示されておらない。これは何かかくされている。いわゆる日本の再軍備を漸増的に実行するという、あの安全保障条約の約束は具体的にどうなつているのか、又どういうふうにして行くのか、この点お伺いいたしたい。
  47. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 安全保障条約におきましては、別にこの約束ではなくして期待をいたしているということでありまして、併し期待をしているということを書く以上は、日本側にもそのつもりがあることはこれは当然であります。そこで日本としては、いろいろの意味で自衛の力を漸次高めて行くつもりでありますけれども、只今のところ財政その他の事情が許さないので、これは何年にどれだけやるというところまで別に言つているところではありません。そのつもりで今後も今も努力はいたしまするが、これが今年の予算に出ていなくても、これはどうもそのときの事情でいたし方がないのであります。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 直接予算に出ていませんでも、御承知のように再軍備を仮にやるとすれば兵器生産ですね、兵器生産をするためには厖大なインベストメントが必要です。電力、石炭、鉄鋼その他の基礎産業、そういうものから着手して行く。従つて直ぐに防衛費という名目は出ていなくても、兵器生産をする前提としてのそういう基幹産業の育成の予算というものの中に出ていなければならん。五年後においてやるとしてももうすでに今からそういうものに着手しなければ間に合わない。従つて若しそういうことがこの予算に出ていないならば、それは私はこういう約束をしたけれどもこれは実行不可能だ。それはただ実行不可能であるけれども、一応そういう約束をして将来いつだかわからんけれどもまあ再軍備をするのだ、そういう程度の軽いもんなんですか。
  49. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 自衛力というものは必ずしも再軍備ということには直ぐにならないのであります。再軍備に至らざる自衛力もあるはずであります。併しながら今申上げた通り、それが今年の予算関係ないとしても、これは見方によつてあるという人もいるかも知れませんが、あるにしてもないにしても、必ず今年の予算に組まなければならんという性質のものではないということを申上げておきます。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最近政府は自衛力というのはいわゆる武力ではない、再軍備ということを意味しないということを言われていますが、なるほどそういうふうに解釈できないこともございませんが、安全保障条約では「直接間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負う」となつてつて、直接侵略についてもやはり防衛する、防衛力を漸増する責任を負う、直接侵略、これはいわゆる外国の侵略、これは武力によらなければならんと思う。ですからそれを意味している。これに関連して保安隊の任務を、木村長官は昨日の御答弁で国内治安だけに、いわゆる間接侵略だけに備えるのだという御答弁があつたのですが、ところが自衛力漸増計画は、安全保障条約の約束では、直接侵略についてもこれは漸増的に強化する責任を負うことになつているのです。この点で保安隊も緊急事態が起れば、これはやはり一緒に直接侵略にも当る建前になつているのです。そこで指揮権がどこへ行くかということが問題になつたのであります。昨日の答弁ではあいまいになつているのです。この点は将来非常に重要でありますから御答弁願いたいと思います。
  51. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは木村長官が御答弁するのが当り前でありまするが、私の方の関係から申しますと、直接侵略に対しては保安隊のみならず誰でも当るのが当り前であります。で、その任務は国民皆帯びていると思いますが、従つて保安隊もその一部としては当然そういう場合には出て行くはずでありますけれども、保安隊の任務として今予想されているのは国内の治安維持、こういうことに限られているのであります。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは又あとで木村保安長官にも御答弁願いたいと思います。  それから行政協定には、行政協定の有効期間がない。米比行政協定では九十九カ年、北大西洋条約では一応四カ年、これについては一応国際的慣例と違つて期間がないということは、これは非常に私は不利な条約だと思います。それから日米合同委員会の運営の仕方についても、これは最後に解決がつかなければ結局アメリカの裁判所に持込まれて行くことになつていると思う。こういう意味で日米合同委員会が行政協定を運営するのですけれども、紛争が起きて最後に解決つかないというときには結局アメリカの裁判所に持つて行かれる、これでどうして日本が自主性があるか。更に又協定二十四条の緊迫事態、この場合の共同防衛から日米統一行動の範囲、こういう場合も合同委員会の最後の紛争が起きたときの決定がアメリカの裁判所に移るということになれば、これも決して日本の自主性を確保したものじやない。更に又刑事裁判権の問題についてはもう言うまでもない。それから基地の範囲におきましても、日米行政協定では日本全土が基地になり得る建前になつています。一応会議できめますけれども結局合同委員会で向うが有利になります。又基地使用に対する補償についても、米比協定においては民有財産に対する補償はアメリカ政府が支払うことになつているのに、日米行政協定第二条第二項では日本政府がこの補償をするということになつている。更に調達関係におきましては、北大西洋条約でも米比協定でも調達についてはその当事国の官憲を通じてやる、いわゆる間接調達です。而も占領中において直接調達と間接調達の二本建であつたのが、むしろいわゆる独立したと言いながら、逆に全部をそれが直接調達になつて、アメリカの公契約法に基く軍需調達規則というアメリカの法律によつて日本に発注が行われる。日本の業者はそれに基いて不利な、いわゆる出血受注的な注文を受けている、こういう状態でどうして日本経済は独立していると言えましようか。而も適用を受ける金額は大きい。特需三億ドルといえば一千億円以上である。こういう状態でどうして日本経済が独立していると言えますか。又直接間接の財政負担、こういうものについてもこれは駐留軍が基地を設ける。それに関連して公共事業費関係で又道路を造る。或いは日本の市町村の府県の又間接的支出が出る。パンパンによる病毒が蔓延すれば医療費として日本の医療対策費の中からそういうものが出る。こういうような間接のこの財政負担というものを考えるとこれもなかなかばかにならない。これでどうして日本が独立したと言えますか。これは実質的には占領の継続ではないのですか。それを形だけ対等の形において条約を結んでそうして独立したごとき錯覚を与えられて、そういう前提に立つて作られた予算である。これがどうして独立予算と言えますか。私が只今言いました安全保障条約及び行政協定における各具体的な項目において、国際的慣例より著しく不利であるということは岡崎外務大臣はお認めにならないかどうか。この点をお伺いしたい。
  53. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実は安全保障条約と行政協定の問題はすでに前の国会で論議を尽されておりますので、繰返すようになりますが、簡単に申上げますと、占領の継続だという観念に対して私はこれは全く違うと思います。占領中は日本の法律に服さない、占領軍は又日本の行政権、司法権、立法権に干渉できる、こういう立場をとつております。今のアメリカの駐留軍は日本の法律に服するということは行政協定に明確に書いてあります。又駐留軍が日本の行政権なり、立法権なり、司法権に干渉するということは一切ありません。従いましてこれは全然性格を異にするものだということを申上げておきます。  なお行政協定に期限がないのはどうか。これは安全保障条約に基く駐留軍の地位を決定するものでありますから、安全保障条約に基く駐留軍がなくなれば当然なくなるものでありますから、安全保障条約のいわば施行規則のようなものでありますので期限を付しておらない。安全保障条約の方は期限はありませんけれども、その第四条におきまして、はつきりと如何なる場合にこれを廃止するかということが規定してあります。  それから合同委員会のことについていろいろお話がありましたが、合同委員会は決して不平等なものではなくして、全く対等な立場で話しております。その間に意見が合致しない場合には、行政協定に基いて日本政府とアメリカ政府のもつとハイヤー・レベルの話合で協議を決定することになつております。その中の具体的な問題になりますと、アメリカ側を被告とするものはアメリカの裁判所に訴えることもありましよう。日本側を被告とするものは日本の裁判所に訴えることもありましようが、それは個々の事情によりその国際私法的な関係からいずれも規定されるものであつて、別に特に行政協定でそういうものを別に規定したということはありません。すべて国際司法に基いて決定されるものであります。  それから特需三億といつてこれがなんでも駐留軍の注文のように言われまするが、それは全然違うのであつて、米国の駐留軍は、日本国内における駐留軍としての必要を満たす調達等は行いまするけれども、いわゆる朝鮮問題に関連する特需についてはこれは全然別個であります。従つてこれは行政協定で規定する範囲ではありません。それから補償や調達の問題につきましても、これは行政協定に基いてやつておりまするが、別に特に日本側に不利であるというようなことは私は考えられません。もとよりアメリカの軍隊を日本にいてもらつて、これによつて安全を保障してもらうのでありまするから、その限度において金も出す、便宜も供与する、これは約束しております。それ以上のことは特に不利なことはないと考えております。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは岡崎外務大臣、実情を御存じないのです。この直接調達によつて財界が如何に困つたかということを御存じないと思うのですよ。それは日本の商習慣が無視されておるのです。いろんな点で無視されておるのです。それを御存じないのです。私は時間がございませんから詳しくは申しませんが、更に又これによつて日本の労働法規がPD工場の労働者に適用されない。いわゆる軍令解雇が行われておる。これでどうして独立国の労働者であると言えますか。実情をちつとも明らかにされてない。如何にも独立したかのごとく見せかけて、実際は独立しておりません。  時間がございませんから私は次の質問に移りますが、ついでに今日の毎日新聞によりますと、アメリカ側はこの特需について、ドラム罐、無煙火薬などのこの価格の引下を要求して来ておる。いわゆるそうなると又出血受注になります。それを何か政府が補助金を、助成措置を与えなければならんようなことに報道されております。そうなると又国民の負担が多くなる。アメリカの防衛のために我々が税金によつてこれを負担する、こういつた形がこの日本の経済の特徴になつて来ておるのです。通産大臣この点御存じですか。
  55. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 今日の新聞に出ておる記事については、まだ私よく承知しておりませんが、先方から日本で注文しておるものが、例えば火薬類についてみると、高い、もう少く安くできんものかという相談があつたことは事実であります。併しながら政府の方といたしましては何らこれに対して助成的措置をとるようなことは、今予算その他でも出ておる通り、いたしておりません。ただ金融のことに多少の便宜を与えるとかいうようなこと或いは租税の面で、例えば少し償却年限を短縮してやるというような事柄については、これはまだ相談いたしておりますが、それ以外に何ら助成的措置もとつてはおりませんし、又とる考えも持つてはおりません。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に経済の問題についてお伺いしたいのですが、この独立予算の前提として、やはり講和後の日本の経済の実態というものが問題だと思うのです。そこで講和後の経済について、いわゆる独立後の経済について、総理大臣はこれは最初講和条約を結んだときと大分見込み違いになつて来たというふうなお考えはございませんですか。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと御質問の趣意がわかりませんが、講和条約のときに日本の経済事情がこうなろうというような前提を持つておつたわけではないので、その後日本の経済事情は全然落着きもすれば向上いたしていることは御覧の通りであります。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 で、総理は今後心配ないと、こういうようにお考えですか。
  59. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ときに日本の経済が、どこの国の経済も、一張一弛があるのでありましようが、併し全体を通じて、私は特に日本の経済について心配すべきもの、たとえてみれば貿易がどうとかということがありましようが、これは昨日も説明いたした通り、ときに景気がよくなかつたり悪くなつたりすることは当り前の話でありまするから、景気が悪くなつた場合、或いはこの日本の経済を救うにはどうしたらいいか、そのときどきの事情に応じて善処すればいいのであつて、今日悲観するとか何とかということを考えて、そうして前途が危いなどということは、私は考えられない。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そのときどきによつてと、その都度外交のように、その都度経済、その都度財政、何ら一貫的な計画的な方針がないと私は思わざるを得ないのですが、併し実は講和条約を結んだ当時、日本国民に対して日本の経済は心配ない、むしろばら色の復興の夢が訪れるのではないかということが報道されたのです。そうして日本政府も、講和後の日本の経済については二つの重要なことを前提としておられたはずです。その一つとして総理もしばしば言われた外資導入です。もう一つ貿易が非常に殖えるということ、二十七年度予算の前提として十六億一千百万ドルまでに貿易が殖える、輸出貿易が。そうして電源開発の資金として約三億ドルの外資の導入が行われて、電源開発と輸出貿易が十六億一千百万ドル、貿易規模が拡大することによつて日本の経済は発展して、その基礎の下に約二千二百億円の不生産的な防衛費的なものが負担できるんだと、こういう前提であつたはずではありませんか。私はそうだと思います。ところがこの二つの条件が崩れているんです。外資導入というものは、政府が最初予定されたようなあれで入つて来ません。貿易は十六億一千百万ドルが十一億五千万ドル台に予想を裏切つてうんと減つてしまつておる。それで日本経済が拡大するという前提に立つて二千二百億円も不生産的支出を計上したんですが、これでは、条件が狂つて来ているんですから、そんなにたくさんの不生産的支出日本の経済は負担できない状態になつておると私は考えるのですが、この点最初日本経済は心配ないと言われたようですが、実はそうではなくて、当にしたことが当が外れているんですよ。貿易なんか総理はそのときどきで減るときもある、悪くなるときもあると、それは外国が不景気になるということもありますが、日本輸出貿易の現状というものはそう簡単なものではないと思うのです。これはよほど努力しなければ十六億台になつて来るのは大変です。非常に長期的な問題だと私は思うのですが、この点総理は前に外資導入を盛んに言われておりました関係上、何か当が外れたという感じはしておられませんですか。
  61. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外資導入の計画については更に交渉或いは相談が進捗しております、私は当が外れたとは毛頭感じておりません。貿易については通産大臣より申上げます。
  62. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 貿易の二十七年の事情は今お話通りでございますが、これはまあ世界的に貿易の縮小したことと、又日本がほんの独立した早々のことでありましたのでまあさようになつた。又各国等ともまだ条約等が締結されてない、そこで私どもは、繰返し申すようでありますが、いわゆる経済外交の強化、それと国内における輸出競争力の増加或いは商社の強化等に努めておることは御承知通りであります。従いまして二十八年度は少しよくなるだろうと思つておりますけれども、この間木村さんあたりに差上げたように、一応の見通しとして昭和二十八年は貿易の面は輸出十一億ドル乃至十二億ドル、これはポンド地域に対する交渉の関係がありますので、乃至がつくのであります。又輸入十七億ドル乃至十八億ドル、特需その他のいわゆる受取勘定これが約七億ドル、従いまして国際収支から申せば少くとも五千万ドル以上の黒字になるという見込を立てております。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は心配ないと言つていますが、向井大蔵大臣は財政演説で日本の経済をかなり悲観されております。底の浅い経済である、「自立を達成し得るかについては、必ずしも楽観を許さない状況であります。」と言われておるのです。そうして「景気後退の現象は、中小企業等の面に相当深刻な影響を及ぼし、これが対策を必要としているのでありますが、我が国経済としては、基本的にはどうしてもこの世界経済の調整過程に適応して行かなければなりません。」、即ち調整強化にやはり入らざるを得ない、こういうことを私は言つておると思うのです。向井大蔵大臣は、二十八年度予算の編成の前提で日本の経済を決して楽観しておりません。そこで私はこれは向井大蔵大臣にお伺いしたいのですが、底が浅い、自立困難なこの経済の下でどうしてこんな非生産的な、二千億にも上る非生産的な防衛関係支出を負担できると思いますか。私はこれは過大じやないかと思う。その点経済を底が浅い、自立経済は困難だと言いながら、而もこれはいろいろの間接的なものを入れますと、約三割という非生産的な支出を負つているのです。これで一体健全と言えますかどうか、大蔵大臣如何ですか。
  64. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 楽観を許さずというのは、ぼんやりしていちやいけない、こういう意味です。(笑声)それで二千億、或いは三割くらいに当る非生産的な防衛関係の出費をするということは、これは自立経済にするために是非やらなきやならないものと思うので、ほかの苦しみは我慢してもそのほうはやる、それが私は日本を救う途であろうと存じまして、これは今のお言葉でございますけれども、底が浅ければそれを深くするための努力、そう考えておるので、この際においてやらなければいつまでも浅くて困る、(笑声)そういうのでございます。(「尤もなことでございます」「名答弁」と呼ぶ者あり)
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併し非生産的な支出は少しでもこれは減さなきやならんということは必要な又可能なわけですね。そういう努力を払うべきだということは、大蔵大臣これは否定できないと思うのです。一番何と言つても防衛費だと思う。私はこの予算を組むとき、いわゆる防衛支出金について政府はどういうこれを減すための努力を払われたか伺いたいのですが、具体的にはこれは大蔵大臣に先ず伺いたいのですが、いわゆる「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の協議のための合同会議公式議事録」、これによりますれば、岡崎外相は、日本の「防衛のための経費が増加するということにかんがみて、日本国にある合衆国軍隊の維持のための」、いわゆる防衛支出金の「経費の減額に考慮が払われるよう要請する。」ということを言われた。これに対してラスク氏は「合衆国は、そのような考慮を払おう。」とはつきり言われておる。「しかし、当方としては、日本国が、そのような要請をするに当つて、共同及び相互的の防衛の努力のため必要とされる合衆国の経費も増加することについて妥当な考慮を払われるよう希望する。」と言つていますが、一応「考慮を払おう。」と言つておるのです。そこで大蔵大臣日本のこの二十八年度予算のうちで非常に大きな支出分を占める防衛支出金について、保安庁経費との関連において、それが殖えれば防衛支出金を減らすように考慮が払われる、こういう取極があるのですから、これに基いて大蔵大臣は折衝されたのか、その点。
  66. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 防衛支出金を、こちらが保安庁費とか或いはその他日本の防衛に要る金を、金が殖えるでなく、自衛力の漸増に伴つて減らして行きたいということは約束にもありましようし、我々も希望するところでございます。そこで実情を見ますと、日本で防衛支出金とか或いは保安庁費を出しますその合計額と、それからアメリカ側が日本の出します防衛支出金に対応する意味支出が、向うの報告で見ますと、向うの出している金が我我の負担する金の分よりもよほど多くなつているということを見まして、これではまだ防衛費のほうを減らすという建前でないということを考える次第でございます。従つてそういう交渉はまだ私は無論いたしませんで、この次の予算にでも起りますれば、そういう場合を交渉いたすつもりでございます。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはおかしいですね、大蔵大臣、二十八年度予算の一番の大きい問題ですよ、これは。それで防衛支出金とそれから保安庁費との関係は、行政協定の防衛支出金負担に関する2の規定は約一億五千万ドルです。きまつておるのですよ、大体。ですから、ラスク次官が、合衆国は「考慮を払おう。」と言つたのは、日本保安庁費が殖えれば、防衛費が殖えれば、その条約で取極になつておるそれを減額することを考慮するという意味に取らなきやならないのです。ですからこういう取極を折角しておりながら、従つて取極があるのだから、この予算において重大な大きな金額を占めているのですから、そうして非生産的なんですから、なぜ先ず第一にアメリカに折衝しないか、これは岡崎外務大臣は折衝されなかつたですか。
  68. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その当時防衛関係の直接必要な経費は、安全保障費も含めまして約千八百億を見込まれておつたのであります。そこで今回、実は前にも申しましたが、そのうちの安全保障費を落しましたことについては、アメリカ側では実は意外な感を抱かれておつたようであります。これは説明してよくわかつたわけでありますが、差引御承知のように三百五十億ばかり前年度から減つておる、こういう建前になつております。お話の、当時の先方の考え方はとにかくそういう日本のほうで非常に実際に日本の経費が必要であるという場合には、アメリカ側の分担金のほうは、これは当然要る金ではあるけれども、日本の経済の実情を見て考慮しましようということにはなつております。なつておりますが、今申した通りで、今回はまだそういう点の減額の話をすべき時期になつていないと思いまして話をいたしておりません。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に怠慢だと思うのです。減額の時期になつていないとか何とか、今の日本の経済は底が浅くて自立できないほど貧弱な経済なんです。その中で防衛費負担が重いから税金が重くなる。国民は困つておるのです。そういうとき岡崎外務大臣はラスク次官とこういう取極を行なつたのだから、これに基いて折衝の努力を払われるのは当然じやありませんか。それじや今後どうするのですか。来年度予算においてはどうする、とにかく話合を全然しないということは無責任極まる。こういうふうな取極をしておきながら、全然それをしなかつたというのはどういうわけです。じや今後はどうなんですか。二十九年度の、そういう今後の防衛支出金と保安庁費との関係、防衛力漸増とか増加との関連はどうなつているのですか、お伺いしたい。
  70. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実は五百六十億でしたか、安全保障費を落すということについて先方に十分の理解を求めなければならないわけでありまして、この点において大蔵大臣が勇断を以て落された、これによつて経済に相当の財政上いい影響があつたと考えられます。これは当初は実は余りはつまり予想しておらなかつたことと考えておるのでありますが、これができましたことは一つの進歩であろうと思つております。将来も又財政上の必要があれば勿論いろいろの交渉をいたします。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう考えが隷属的であるというのです。道義高揚を説いても、日本民族としての自覚がそこにないというのです。今の安全保障諸費を削るのは当り前です。リツジウエイ声明によりまして、駐留軍の移転はアメリカの国費において行われるということを声明されました。アメリカ予算である。従つて今度はあの安全保障諸費が余つた場合、それを国内費に使つてもいいということを大体言われています。ですから安全保障諸費が減るのは当然です。移転するのはアメリカですから当り前です。それとは別なんです。それを何だか岡崎・ラスク会談のあれが、努力が結果において払われたごとく見せようとしておりますが、筋は全く違います。非常に政府の私は怠慢であると思う、その点は。日本国民は税金が高くて困つている。不生産支出がたくさんあつてつているのに、合法的に合理的に不生産的支出を減らし得る余地があるのに政府努力しない。それは隷属根性があるからです。こんなことでどうして日本の経済が維持して行けますか。私は時間がなくなりましたから次に……。
  72. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつと関連質問……。もう一遍お伺いしますが、防衛支出金の中に在日合衆国軍交付金が五百五十八億で、これは日米行政協定の第二十五条に定める一億五千五百万ドルをそのまま受け入れようとしているものだと思います。ところが先ほど木村委員質問をしたように、この協定は定期的に再検討をするということになつておると思うのですが、再検討をされたかどうかということをもう一遍明瞭に御説明願いたい。というのは、この金額の定期的な再検討は毎年一回、日米双方の予算決定に当つてなすというふうなことであつたと記憶するのですが、それをやられたかどうか、もう一遍明瞭にお答えを願いたい。
  73. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この考え方は、例えばアメリカの駐留軍の内容が何らかの理由によつて変化して、これだけの経費が要らないと見込まれるような場合、或いは何らかの理由によつて施設等の必要がなくなつて、それだけ経費が少くなる場合、或いは或る平価のものが多くなつて、他の平価のものが少くなつた結果、経費の増減が生ずる、こういうような場合に検討するのでありまして、これは毎年必ず一度やるとも限りません。必要があればその間においてやつても差支えないのでありまして、要するに事実上の変化があつた場合には、それに応じて費用が減れば減らそう、こういう話であります。従つて只今のところ事実上の変化があると私は認めておりません。
  74. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 事態の変化があつたときに改めて協定をしなければならないことは、これは当然なことで、協定にそういうことを書いてなくたつてそれは当然になさなければならないことだと思うのです。ただあのときに協定に考えられた、その協定に考えられたことは、定期的にこれを再検討する、従つてそのことは、毎年一回予算審議する前に、予算決定する前に一応再検討して、従来のままでいいのかどうか、或いは防衛費の関連において、特に保安庁費との関連においてこれを検討をして、若し保安庁費が増加するならば、それと関連をしてこちらの支出金のほうを減らす、それを定期的にやるのだ、予算決定の前にそれを一応協定をするのだ、再検討するのだということがあるときの考え方だつたと思うのですが、そうでなかつたのかどうか、改めて御説明を願いたい。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) あのときの考え方には、予算を作る前にというようなことは全然ありません。実際上の予算を作る前にあるべきことでありましようけれども、そういうこととは関係なく、事態が変化した場合、或いはこれは予算関係ありましようが、日本側で非常に大きな変革によつて日本国内の費用が殖えた場合、こういう場合に相手方と交渉する、こういうことになります。
  76. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは定期的ということだつたと思うのですが、その点はそれじや改めて私もう一遍よく調査しまして、質問を留保いたします。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一月六日に総理大臣がリツジウエイ司令官とお会いになつているのですが、それはこの問題についてお話なつたやに新聞で伝えられましたが、この防衛費関係で……いや、アメリカ大使です。一月六日です。そういうことはございませんか。
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 一月六日に米国大使に会つたか会わないか、ちよつと記憶いたしませんが、いずれにしても防衛費問題でアメリカ大使と話をしたことはありません。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に歳入面についてちよつと伺いたいのですけれども、減税ということは今度の政府の重大な公約ですが、大蔵大臣にちよつと伺いますが、今度の減税額は幾らでありますか。
  80. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 一千九億。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは減税額でございますね。これは減税額と言つていいですか。成るほど我々は配付された予算説明書には一千九億と出てます。併しこれは減税ではございません。減収額です。それではお伺いしますが、お酒の減税額は幾らですか。酒税の減税額は幾らですか。
  82. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 酒は減税をしたのですが、売れ高が殖えるというので、差引は税は殖えております。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 千九億という減税額は、そういう差引増収額も含めて、それで全部計算した結果が千九億です。ですからこれは減収額です。減税額じやございません。減税額というならはつきり出て来なければなりません。なぜ減収と減税は違うかは、私が言うまでもありませんが、減税額といえば、所得税を多くとればたくさん増収になるので、これだけとらないから減収することになるというので、この予算説明書を御覧になれば明らかにこれは減収額であつて減税額でありません。ですから大蔵大臣の財政方針でお述べになつてる減税千九億というは御訂正になるでしようか。その中に書いてある減税という言葉は減収額にしなければならん。これは非常に不正確です。ですから御訂正になるおつもりはございますか。
  84. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 訂正いたします考えはございません。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは減税であるという根拠を私はお示し願いたい、減税であると、国民に対して減税千億と言われるのですが、それは減税ではなく減収であるのですから……。減収と減税ははつきり違うのです。こういうことで公約をごまかしてはいけません、重大な問題です、公約の内容に関する……。我々国会議員に対する説明において減税を減収とごまかしている、減収額と減税額と変えてもらわなければならない。なぜ私は大蔵大臣お取消しにならないか、これは率直にお取消しになつたらいいじやないですか。どうですか。(「池田減税の後継だ」と呼ぶ者あり)
  86. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 私から……。税法改正による減収額をいわゆる減税と言つておるのであります。同一の所得のものが新らしい税法を適用されますとそこに減税が生まれるのであります。その意味におきまして千九億の減税になると思つています。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私もう時間がございませんから議論できません。従つて大蔵委員会等において質したいと思います。これははつきりしております。こんな馬鹿な話はございません。国民をごまかすものです。もつと正確に、殊に我々国会議員に配付されたこういうところでは減税と減収をごまかさないように……。  最後に項目的にお伺いしたいのですが、その第一は、総理関係で情報調査収集費が一億二千三百七十万円計上されております。二十七年度よりも一億一千七百二十万円殖えております。総理府の調査収集費というものは、内容はどういうものですか。いわゆる今度問題になりました情報機関と関連あるのではないか、そうなりますとその機構、それからその目的、そういうものについて、できるだけ一応御答弁は要点だけで結構ですが、若し十分でなければあとで資料にでも……。この情報機関的なものをお作りになるならば、そういうものの内容をお示し願いたい。  それから農林中金で損失補填、これは農林省の一億二千七百六十三万円、約一億二千万円、この農林中金の損失補填というものの内容は何であるか。  第三に、通産省関係で工作機械の試作費の補助というのが一億というのですが、一体何ですか。この工作機械というのはどういう工作機械の試作の補助か、どうも我々は兵器生産に関するものじやないかと思うのですが、これの内容を明らかにして頂きたい。  最後に経済審議庁の運営費でございますが、これは二億一千九百三十六万円になつて、一挙に一億九千八百万円、ざつと二億一挙に殖えている、これは何か。どうも我々何のためにこういう調査費が殖えたか、こういうのは何か情報関係のような調査と関連があるのか。或いは今後の日本の再軍備計画のための調査費として計上されているのかどうか。この点についてお伺いいたしたい。
  88. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 総理府調査室の二十八年度予算一億五千万ばかりの内訳は今私ここに持つて参りませんので、調べさせて……。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一応目的だけを……。
  90. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) それは牒報でなくいわゆる情報、主としてラジオ放送、無線放送を集めるつもりでありまして、これは今までの調査室にない新たな仕事でありまして、この調査室の経費が非常に殖えております。なお細かいことはこの次にお答えをいたします。
  91. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 工作機械の試作費は、これは優秀なる工作機械を、あの七年間の空白時代があつたものですから今輸入しているのでありまして、それに倣つて優秀な工作機械を国内で作りたい、作る。こういうことの助成であります。細かいことは、どういうものをどう作るかということは、又あとで資料として差上げることにいたします。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経済審議庁の予算が殖えたという原因の一番大きいのは、やはりベース・アツプを中心とする人件費そのほかの雑件の殖えたもので、もう一つ国土調査を新たにやる、この経費が七千万殖えている、こういうのが一番大きい原因であります。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 農林中金の……。
  94. 河野一之

    政府委員(河野一之君) これは昭和二十三年の九月に農林漁業金融の暫定措置という閣議決定があつたのでございますが、農林漁業の金融につきまして当初復金、つまり復興開発金庫から融資をいたす計画になつておつたのでありますが、その後この復金は農林漁業関係には融資をいたさないことになりまして、同様なものを農林中金において復金と同じような条件におきまして貸したものでございます。従つてそこに資金コストの上において損が出ましたので、その損に対してこれを補償してやるという経費でございます。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう時間がございませんので、私の質問はこれで終ります。
  96. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これで暫時休憩いたします。    午後零時二十八分休憩    —————・—————    午後一時五十一分開会
  97. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これより午前に引続き、質疑を続行いたします。
  98. 岩間正男

    ○岩間正男君 午前中の委員会におきまして、木村君から、日本の現在の態勢について、独立してないじやないか、全く隷属国の姿じやないか、経済、外交、内政のあらゆる面においてそういう事態が足許に来ているのじやないかというような質問があつたのであります。これに対して、そうでないというような答弁があつたのでありますけれども、私は現状をつぶさに見ますときに、全く政府の答弁とは違うような態勢が日本の現実の中に生れていると思う。その中で一番大きな問題は、そうして国民が大きな関心を払つている問題は、何と言つても軍事基地の問題だろうと思うのであります。これは行政協定によりますと、区域、施設、こういうような名前で実にあいまいにぼかされておりますけれども、今日この基地の周辺、又基地の様相を眺めますときに、これが明らかに軍事基地の様相を呈していることは疑いのない事実であります。そこで私は先ず第一に総理に伺いたいのでありますけれども、この前の日米合同委員会におきまして、講和発効後におきまして、大体三百件の無期限使用、更に一時的使用といたしまして三百十二件、合計六百十二件の施設、区域、いわゆる基地なるものがここで調印されたことになつておるのであります。これに対してその後どのような変化があるか。その後約一カ年になんなんとするのでありますけれども、しばしば合同委員会が持たれ、数次に亘る会談の結果いろいろな取極がなされていると思うのであります。このことは議場を通じてやはり国民に明らかにされる必要があると思う。こういう点から言いまして、私はその後の経過についてどういうような形になつているか、この点を先ず伺いたいと思うのであります。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 現在政府が米軍に貸しておる施設を、これを基地と言うか言わないかは別として、とにかく行政協定或いは安全保障条約によつてできたものであつて、これは政府の義務に属するものであります。政府の義務に属することが独立のしないという証拠であるとするならば、世界各国いずれの国にも独立国はないということになるのであります。
  100. 岩間正男

    ○岩間正男君 私のお聞きしているその後の経過について、これは御説明がなかつたわけでありますが、只今総理の御答弁について言いますというと、政府のこれは条約を結んだのだから義務である。従つてこれを履行する、それが当然だと、こういうようなお話でありますが、大体この前条約を結ぶときに、吉田内閣はどういうことを言つて国民に臨んだか、アメリカは和解と信頼の条約を結ぶんだ、日本に対して和解と信頼の精神を持つて条約を結ぶ、従いまして、占領時代より悪かろうはずがない、こういうことを言つて国民にあの条約の必要性を説いたのです。国民はこれに対しまして、それもそうだろうと、とにかくあの占領時代の圧制に対して堪えかねた嫌悪の情がありましたので、或いは条約を結べばこの状態が変るだろう、こういうような感じを持つてあの講和に賛成をした人も国民の中には相当あるだろうと思う。ところが現実を見ますというと、全くこれは和解と信頼というような精神から考えますときには、まるでこれが違つた方向に行つておると思う。その後軍事基地はどうなつておるか。最初に合同委員会によつて決定されましたところの六百数件のこの基地というものは、その後数回に亘つて委員会が持たれ、そうして新たな区域、施設の増強がなされておるのです。この点を明らかにされることが私は必要だと思うのですが、この点についての御答弁はこれは頂けないのですか。どういうふうになつておるか、総理大臣は大綱だけでもこれはお知りになつていらつしやると思うのです。これは重大な問題です。日本の民族の将来にとつて重大な問題です。いや将来だけではない、現実の生活にとりまして実にのつぴきならない深い関連を持つて来るのであります。こういう問題について、全体の方向としてはどういう方向に行つておるか、こういう点は御存じだろうと思いますのでお伺いいたします。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答えをいたします。
  102. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 今外務大臣を呼んでおりますから、ちよつと待つて下さい。
  103. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは外務大臣からその経過については後ほど承わるとしまして、現在接収され、又新たに接収されようとしておるところのこの基地に対しまして、どういう事態が起つておるか、このことにつきまして、これは総理大臣は御存じありませんか。今までこういうような施設、区域と称せられるこの基地について、視察をされたことがあるかどうか。そうしてここにおる周辺の住民の生活、殊に海岸におきましては漁民の生活、それから農地取上げの場合には農民生活、こういうものがどういうような様相に追込まれておるか、この実態を御覧になつたことがございますか、どうですか、この点承わつておきたい。総理大臣にお伺いしているのです、これは総理大臣が見られたかどうかということですから……。
  104. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) この基地というのは、施設、区域のことだと思いますが、これらにつきましては、農民なり漁民なりの合意を得て今までいろいろな施設や区域を指定しておりまして、合意がなくして法律によつて土地を収用するというようなことは今までのところは幸いに一回も起つておりません。その間にいろいろ風紀の問題であるとか、或いは生活上の困難であるとかいうようなことは言われております。我々も或る程度の事実があることは承知いたしておりまするが、これについては双方においてでき得る限りの抑制の措置をとり、且つ補償等によつて関係国民生活の困らないようにでき得る限りの措置をとつております。
  105. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は総理大臣が見られたことがあるかどうかということをお聞きしておるのです。この点総理の答弁を願いたい。(「必要ない」と呼ぶ者あり)これは重要なんだ。総理の答弁を求める。
  106. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) おのおの主管がありますからして、政府の主管からしてお答えいたします。
  107. 岩間正男

    ○岩間正男君 そんなことはあつさり答えられると思う、見たとか見ないとか……。私がそれは非常に重要だというのは、先ほどの木村君の御質問にもありますように、現実この目を以て見たか見ないかで問題は非常に違うのです。現実の様相を見て御覧なさい。そうするというと、農民がこれを了承して喜んでこういうような基地を提供しておるというようなことが言えるかどうか。先ほどのお話では、合意によつてなされておる、そういう説明でありましたけれども、これに対して本当に心服しておるか。もう止むを得ず提供しなければならないような方法を講じられておるのです。これは後ほど触れようと思うが、そういう形で実は接収されておる。誰が一体先祖伝来の田畑や漁区、山林、こういうものを放棄して、そうして自分の生活権を奪われることに喜んで応ずる者があるか。これは止むを得ずそういう恰好で強引にやられておる、そこに問題があると私は思うのです。二つの条約は和解と信頼、そういう名目で宣伝されて、いわば国民としては、うまうまだまされた。現実開いてみるというと、この内容はどうか。占領時代より遙かに悪い事態が起つておる。基地に対して一体どうですか。基地の建設に対して、先ほど外相がいられないとき総理質問したのでありますが、お答えがなかつたので、これは外相にお伺いしますけれども、その後何回合同委員会が持たれたか、そうしてその中で接収解除というものがありましようが、それが何件ありますか、新に追加されたものが何件になるか、そうしてその面積はどのようなことになるか、こういう点についてこれは先ず経過を最初にお伺いしたい。
  108. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 基地の区域、施設については、成るほど一部には不便なことを感ずる人もありますけれども、日本の全体の防衛のためには必要だと考えて、喜んで提供してもらつておるような実情であります。又或る地域においては、是非自分のほうへ来てくれという要請のある所もたくさんあるのであります。なお、只今その資料はここに丁度持ち合せがありませんから、後刻お届けいたしますが、これは発表いたしておりますから、何も隠すことはありません。施設にしましても、区域にしましても、或いは住宅にしましても、占領終了後今日まで相当数が減じております。減つておるほうばかりであります。その点を明らかにいたしておきます。
  109. 岩間正男

    ○岩間正男君 喜んで提供するというふうな話があつたのでありますが、これは本当でしようか。重大な問題だと私は思う。喜んで提供していますか。来てくれという話があつたが、我々最近の情報ではそういうことは聞かん。例えばこの前の大砲の試射地の問題のごときは伊良湖崎、御前崎、内灘、この三カ所で以て、実にこれに対する反対運動が起り、そうしてこれは止むを得ずして内灘のほうに行つた、その結果相当ですね、これは政府としても補償せざるを得ない、こういう恰好になつておる。これは補償のこともあとでお聞きしようと思うのですが、こういう形で住民は喜んでいない。喜んで提供するという話がありましたが、どこでございましようか。ちよつと念のために承わりましよう。どこの地域です。
  110. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) あなたのほうは喜ばないほうばかり探しておられるから、そうお考えになるかも知らんが、喜んで提供しておる区域もたくさんあるのです。もともとそれは先祖からの土地を離すのでありますから、その点は苦痛でありますけれども、日本の全体の防衛のためからは、これは喜んで出そう、こういう人もたくさんあるのです。又自分のほうに駐留軍の施設を持つて来てくれという希望のある所もたくさんあります。
  111. 岩間正男

    ○岩間正男君 これに具体的に私お聞しているのだが、たくさんありますというような概念的なことで答弁されたのではわからない。まあ一、二を挙げて下さい。どこです。
  112. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは挙げますと、そこに行くか、行かないか、こういう問題が出て来まして、又そうすると行かない場合には、招致をしようとしたその町の例えば町長なり、村長、或いはその他の人々に迷惑がかかるのでございますが、併し来てくれという事実は確かにあるのであつて、私決してこうい委員会でいい加減なことを言つているわけじやありません。
  113. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは実相を知らないでそういうことを言つているのでしよう。恐らく基地ができて……、基地局辺を私は相当歩いて来ましたけれども、そういう所は、できた所では喜んでいる所なんか一つもありません。実にこれは困つたものだと言つている。更に生活権をもう殆んど奪われて、もうひどい目に会つて、もう全くこれは困難な状態に入つているのです。だからそういう点は私は明らかにされる必要があると思う。来てくれなんと言うのは恐らく実相を知らないでいて、そうして入つて来ればこれはいいことがあるのだろうと思うと、実際そこへ入つて来ると、とんでもないことが起つている。こういうことはまあいいとしまして、先ほどの大体新らしい所が接収された地点は一つもないというお話、全部接収解除になつたというような話でありますけれども、そうですか。その点間違いありませんか。現在どれくらいのこれは案件がありますか。そういう点もう一遍確かめておきたい。
  114. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私の申すことをもう少しよく聞いて頂くと、二重に御答弁しなくて済むのでありますが、私は新らしく接収されたものはなくて、全部解除だと言つておりやしない。占領中と現在とではいろいろの施設とか、区域とか、住宅とか、種々ありまするが、その全体の数なり、その面種なりは占領中よりも減つておる、こう申しております。
  115. 岩間正男

    ○岩間正男君 だからよくあなたも私の聞いていることに答弁してもらいたい。そうでしよう。私は新らしく接収されるのはどこだと聞ているのです。それにそういう漠然としたことを答えられるからそういう混乱が起る。新らしく接収されたのは最近のところでは……、これを言つて御覧なさい。これを挙げて御覧なさい。
  116. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは今正確な資料を持つていないから、後刻資料を以てお答えしますと言つている。
  117. 岩間正男

    ○岩間正男君 併し一、二はわからないですか、外務大臣は……。
  118. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 例えば内灘はその一つであります。
  119. 岩間正男

    ○岩間正男君 じやこれはいつもらえるのですか、資料は。
  120. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはできておりまするから、資料を取り寄せればいつでも差上げられます。
  121. 岩間正男

    ○岩間正男君 では、これは早速欲しいと思う。面積についてもまあ話があつたのですが、先ほどのお話にもございました新らしい接収個所、それから解除の個所、それからその案件、それから月日、それからそれについての面積、こういうものを挙げてこれは示して頂きたい。そうでないと、一体非常にこの問題は大きな影響を持つと思うのです。基地というのはこれは米軍の作戦の基地、そういうような基地としての様相のほかにいろいろな性格を持つと思う。現在六百有余の基地によつて日本は囲まれているのです。考えようによつては基地と基地との間にこれは生きておるのだ、日本人というのは……。そういう態勢です。これは例を挙げればたくさんありますけれども、そういうところに追い込まれているのだ。而もこの米軍が駐留するということは、日本の独立というものと深い関連があることは先ほど木村君も述べたところであります。現在、一体日本に米軍はどれくらいいるのです。これは外務大臣、軍機で話せませんか。どのくらいいるのです。
  122. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 米軍の数は申合せによつて発表しないことになつております。
  123. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは政府には通知があるようになつておりますか、どうですか。
  124. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 政府承知しております。
  125. 岩間正男

    ○岩間正男君 すると、それに関連して予算が組まれというわけでありますね。そうすると、予算の検討の際、これはその数は飽くまでも機密で出せないと、こういうことになりますか。(「予算に関連ないよ」と呼ぶ者あり)
  126. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 軍事上の機密に属する事項は発表できません。
  127. 岩間正男

    ○岩間正男君 そのまあ機密というから、その点について、これは漠然とした推定しかできないでしようけれども、政府はこれは知つている。それに則応したいろいろな分担金とか、そういうものが当然ここに問題になつて来ているのだ。少くともこれは相当な数いるだろうと思う、日本にですね……。この狭い四つの島に相当な数が駐留している。ところが、イギリスあたりではこれは一個師団いる。これだけでも非常に自主性が侵されてそのために困る。いろいろとやはり内政に対する圧迫なり、影響もある。こういうことで、あの日本よりは遥かに強大なるイギリスにしても、これは米軍が駐留することによつてイギリスの内部の政治が独立性を失つておる、こういうことで困るということをこれはベヴアンあたりが盛んに述べているところであります。こういう点から考え日本はその数倍も……、この数については今は明らかにされないけれども、これは我我の推定して見るところ、もう相当多くの数がいる。こういう中で日本の内政、更にまあ財政経済政策、そういうものが非常に大きな影響を受けると思う。日本の財政の問題につきましては後ほど触れたいと思うのですが、そういうような面であの軍事基地というものは日本を、大きくこの島国を、今吉田内閣がとつている一つの向米一辺倒の政策というような中でがんじがらめにして、そうして財政経済政策、更に国土国民を挙げてそつちのほうに協力させるような態勢に強引に引つ張つて行くところの一番源泉をなすものが基地である。こういう点で私は非常に重要な問題だと思うので、この点について政府は問題を明らかにする必要があると思う。  私は総理にお聞きしたいのでありますが、一体このような基地がどこまで今後無制限に増強されるのかどうかということは、国民が非常に心配している問題です。大体先ほどの話によりますというと、この前六百有余の基地がきまつてから、新らしく接収された所が出ておる、こういうような話なんでありますが、而もこれは行政協定によれば、作戦上の必要があれば協議によつて……、一応協議によつてということにはなつていますけれども、これは向うの要求に応じなければならない、こういうような態勢になつていると思う。従いまして、この点は今後どこまでこの基地が拡大されるかということは、今後の日本の政治、経済の面において大きな影響を持つと思う。政府としてはこの問題についてどういうような根本的態度を以て今後臨まれるか、この点が非常に私は重要だと思うのであります。この点から吉田総理にお聞きしたいと思うのでありますが、今後基地を拡大される方向に行かれるのか、米軍の要求については飽くまでこれを受入れて進むような態勢をとるのか、それとも、もう今後基地の提供については限度に来ている、こういうような考えで進まれるのか、そのような要求があつた場合に、これに対してこれを拒否するというような態勢を以て進まれるのか、この点重要でありますから、お聞きしておきたいと思う。
  128. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと御訂正しておきますが、……
  129. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理大臣に答えてもらいたい。
  130. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 基地というものはないのであつて、区域及び施設になつておりますから、何となく基地ということを印象付けられるようなお言葉でありますが、事実そうでありませんから、お断りしておきます。施設とか区域というものは、これはもう行政協定でも明らかでありますように、要らなくなればいつでもこれを止める、要る場合には新らしく作る、こういうことになつておりまするから、あなたの言われるように、もう今後は決してやらないのだとか、或いは今後は際限なく増加するのだとか、そういうような性質のものじやないのでありますが、いずれにしてもそんな極端なものではありませんが、多少の出入りはありましようが、大体においては只今計画がまだまだ実際に進行していない部分が多少ありますが、今見るところではこれ以上非常に大きな変動はないだろう、若しあればだんだん少くなるほうに進むであろう、こう考えております。
  131. 岩間正男

    ○岩間正男君 基地はないのだと言つておりますが、私は昨年の夏千歳基地に参りました。ところが、そこの診療所に千歳基地診療所、これはまずい話ですが、パンパンの診療所らしいですが、千歳基地診療所という看板がはつきり出ております。だから、これを区域、施設などと言つたつて、丁度特車というような名前で戦車を偽つているのと同じですよ。こういうような欺瞞をやつちやいかん。基地だと現に書いております。看板を見て御覧なさい。千歳基地へ行つて御覧なさい。だから先ほどあなたたちが見られたかどうかということが大切だと言うのもそれなんです。現にそう書いてありますよ。そういうところはごまかしたつて問題にならんと思うのです。あそこで何が行われているか、私は戦車に乗つてみましたが、特車というのに乗つてみた。政府の言う特車ですね、ところが、これはちやんと偽りもなく戦車だ、どう考えつて……。これは木村保安庁長官にのちほど聞いてみようと思うのですが、戦車と特車の違いというものは私はわかりません。乗つてみた体験から言つてお聞きしたい。これと同じようなことですよ。基地と区域、それから何とかいう名前で呼んでいるようなもの、全部同じでしよう。どこが違います。現に看板には基地と書いてある。そういうような何はやめようじやありませんが。そうしてすつぽり衣を脱いで、日本の民族の問題としてこれは論じなければならない。言葉の魔術でそんなごまかしをやつちやいけませんよ。国民を欺いちやいけませんよ。  その点は別としまして、今の私は基本的な態度についてお聞きしましたが、今後の情勢如何によつてこれは拡がるかも知らん、それから拡がらないかも知らん、併し今のところは非常に少くなつて行く方向に向つておると言いますけれども、大体どうですか、これは私の聞いたり、又雑誌なんかで見た点でありますから、政府の資料ほどにはいかんと思うのですが、非常に新らしく接収されている基地が多いと思うのです。例えば八戸湾の区域に二カ所、松島区域で二カ所、仙台区域、沼津区域、それから北海道の勇払区域という七カ所、これは上陸用演習地として取られた。それから全国で沿岸或いは海上演習場、そういうような所が非常に最近殖えている。あなたの御郷里の茅ケ崎、ここでもこれは海上千五百ヤードに及ぶところの厖大な演習基地がとられておると思うのです、接収されておる。これはこの前本会議で申上げましたから、この点は余りくどく触れようと思いませんけれども、併し現にあなたの選挙地盤の茅ケ崎でそういう問題が起つているじやありませんか。例えばジープで海岸に干してあつたところの地引網がずたずたに裂かれるとか、附近の雄島がめちやめちやになつて魚が寄りつかない、こういう問題が起つているでしよう、これはお聞きになりませんか。そうしてこういうふうにどんどん新らしいところ殖えて行く。而も最近の情勢はどうですか、世界情勢と対応して考えるときに、日本の今置かれている現実、而もアイク教書による新らしい態勢、いわゆる巻き返し戦術の態勢、その中でこの基地が今後減る、こういう保障がありますか。私は今の情勢の中で少くとも日本を厖大な軍事基地にして、そうしてその中で日本の再軍備を徹底的にやる、これがまさにこの巻き返し戦術のこれが扇の要になつている、このことができないで、一体アイクの言う、アイゼンハワーの言うところの一体巻き返し戦術というものはこれは行えないのじやないかというふうに考える。こういう点から言つて日本の軍事基地は今後減るという保障はどこにありますか。これは国際情勢とも関連しまして私は総理から承わりたい。総理はこういうところで大所高所から一つその見解を示してもらいたい。
  132. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) あなたのおつしやることは共産党の公式な意見としてたびたびいろいろの方面から聞いておりますが、私はそうは考えておりません、今の情勢では。今後日本防衛のために更に余分の予防措置が必要であるということになれば、これは格別であります。併しながら今のところそういう必要も認められませんから、この上大きな施設なり、区域なりを必要とすることはなかろう、むしろあれば減るほうであろうと、こう今でも考えております。
  133. 岩間正男

    ○岩間正男君 現実をもう少しやはり直視される必要があると思うのです。今のお話だというと、そういうふうに国民誤解するのじやないか。共産党の公式論だなどという、こんなばかなことをおつしやつちやいけない。我々は共産党の公式論によつて言うのじやありません。我々は現実を見て来たのだ。こういう所を随分視察したのだ。そうしてそのあとに得た結論であります。事実を調査した後に得た結論であります。もう少し外相も歩いて御覧なさい、あなたの郷里だけでもそれだけの問題が起つているのですね、足許で今のような新らしい方向にどんどんどんどんこれは接収されている状態が出ているのじやありませんか。これは何の必要からこういうものが出ているか、若しあなたの政府方針が、そういうものを拒否するという、これ以上殖さないという方針であつたならば、なぜ拒否しないのですか。数次の合同委員会においてこのような新らしい接収地を出されて、いつの間にか調印させられたのかしたのか知らないけれども、こういう形でいつの間にかこういうものがきまつてしまう。これはどう説明せられるか、先ほどの説明と現実は違う、この点の食違いをはつきり質しておきたい。
  134. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 合同委員会の結論に達する前には閣議の決定を経ておりまするから、今私は資料を持つておらないから正確には申上げられないが、合同委員会の結論のたびに解除をされる件数のほうが新らしく必要とする施設、区域の件数よりも遥かに多いのであります。いつでもそうであります。  なお私は自分の郷里でありますからよく知つておりますが、烏帽子岩がめちやめちやになつたというようなことはありません。又その辺で、漁業が著るしく茅ケ崎で困難になつておるという事実はありません。但し鵠沼地方におきましては、これは占領中から継続された演習地でありまして、これは今までも今も同様に使つております。
  135. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも新らしい接収をどういうふうにさつきの説明と照応してこれは説明されるかということをお聞きしたのですが、解除されるのはこれは資料がないので、資料を実は見て具体的に指摘しなければならんのでありますけれども、どうなんですか、どういうものが解除されて、どういう所が一体接収されておる、ここに資料を持つて来ていないのですか、どうしても国会の答弁は資料が必要なんですよ、我々も資料でやつているのです、貧しい資料かも知らんが……。政府側はどうもそんな突き放したような態度ではまずいと思うんです。持つて来ておられませんか。早速取寄せたらどうですか。  総理に伺います。先ほどの問題はこれは非常に重要でありますから、今後一体これを拡大する方向に行くのか、それから、これを縮小する方向に行くのか、現状よりは殖さないという方向ではつきり決心を固めておられるのか、この点は非常に重要であります。飽くまでこれは協議によつてやるというような、任意の意思表示ができることになつておるのでありまして、日本の現状を見ますと、これは飽和点に達していると思う。こういう点から考えて今後の、而も世界情勢はそれをなかなか許さないところに私は来ていると思う、アジアの情勢を見ますと……。そういう中でこの基地問題というものに対してこれは国民政府の態度を明らかにするということは非常に重要な問題です。総理にこれは決意のほどを伺つておきたい。
  136. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今外務大臣の答弁の通りであります。
  137. 岩間正男

    ○岩間正男君 外務大臣には方針がないのです。何ら方針はありません。ただふらふらしている。外務大臣は外交方針と言われておりますが、ないというような形はあるかもわかりません(笑声)ないのです。何もないということは……、そうでしよう。だから岡崎外交はないということは定評なんです。(「あるよあるよ」「その都度外交だ」と呼ぶ者あり)その都度外交だ、ケース・バイ・ケースであります。だから吉田外交ということになつているでしよう。だからこれは総理に伺わなければならん。今の外相の答弁はなつていません。少くともあなたたちにすれば、独立したと言われておる日本の外交を全身に担つておるのだが、それは民族のために立つているところの外交じやない。そういう点からこれは駄目です。だから総理はそういう意味ではつきりあなたの見識を伺つておきたい。どうなんです。民族の破壊はどこで食い止めるかということと関連深いのです。どうぞ答弁願いたい。
  138. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 外務大臣の答弁の通りであります。(笑声)
  139. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は吉田総理は、岡崎外交、つまりこれはナンセンスでありますが、そういうような外交とは違うと考えておつたのです。もう少しやはり見識をお持ちになる、こう考えておつたのですが、残念ながらこれは外務大臣の答弁と同じだということになりますと、向うが今後要求すればそれにはやはり無制限に応ずるということになりますか。(「質問らしい質問をしろ」と呼ぶ者あり)質問をしているじやないか。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ほどから御説明しておるように、新らしくできるものもありましようが、要らなくなつたものはやめるから、差引すると減る傾向にある。これ以上多く殖える傾向にはない、こう申上げております。(「明瞭だ」と呼ぶ者あり)
  141. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも世界情勢との関連で私は伺つているのですけれども、そういうものに対する何ら回答なしに、そういう減る傾向にあると言つて現実は殖えている、こういう恰好になると、殖えているのは、これは資料でわかるけれども、返されているのはこれは殆んど役にも立たないような所で、そうして実際殖えている所は、今日本食糧問題とも関係がありますけれども、実にこれは深い関係を持つています重要な生産の場面、こういう所が相当接収されておる。こういう点から住民はこれに対して非常な関心を持つています。そこで住民から非常な反対が現在出ていると思う。大体そういう問題について、これは住民から陳情や反対運動という、そういうものが出ている最近の傾向はどうか、これに対する外務省に届いているところの案件は、これはどういうものですか。
  142. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 一番心配しておるのは、やはり風紀に関連する問題であります。第二はこれは一般の施設、区域とは限らんのでありますが、いわゆる犯罪の問題であります。それから更に農業とか漁業とかに阻害がある、こういうような問題もあります。又その半面には先ほど申したように、自分のほうに早く駐留軍の施設を持つて来てくれというような陳情もあります。これらにつきましては、実情の誠に考慮すべきものもたくさんありますので、いろいろその実情に応じまして必要な手段をとつております。
  143. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでその実情は調査しておられますか、実情を調査して報告を受けておられますか。それに対する反対陳情というようなもの、それから現にもう基地になつた所でそういう事態が起つているということは調査が届いておりますか。
  144. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 調査はいろいろやつております。報告も受けておりまするし、又実際に視察にやらして、その結果による報告も受けております。大体においての実情は大きい所については私は知つているはずであります。小さい所では知らないのは勿論若干ありますが、それは係のほうで十分承知しております。
  145. 岩間正男

    ○岩間正男君 例えばこういう実情についてはこれは御承知ですか。山形県の大高嶺の飛行場戸沢村、ここでは御承知のように射撃演習をやつています。約四千町歩が接収されているはずでありますが、ここで夜となく昼となく米軍が三つの陣地から撃ち出す、最初は村はずれの余り被害のないような所でやつておつたのでありますが、最近になつて部落に陣地が二つ新たに大きく建設され、而も最近においては二つの部落を屋根を越して撃つておる、夜となく昼となく撃つている。だから現在非常に平和が守られているという日本のこの領土の中におきまして、実は弾道の下におびえている村がある。現実は頭の上を弾丸が越えている、朝となく夜となく……これが平和と言われますか、これが和解と信頼と言われますか。土地の住民は全くこのためにおびえています。そうしてそれだけではなくて農地が、山林がどんどん取られ、薪草採炭も最近はできない。又生活が非常に困つているので弾丸掘りに行つた、弾丸掘りというのは、弾丸の破片が山に引つかかつてささつている、これを掘り出して屑鉄を集める、こういうことをやつておるのであります。それをやつておつた者で、不発弾に引つかかつて一人は吹つ飛んでしまつて直ぐ即死、そうして三人は血まみれになつて倒れた、こういうことが起つている。例えば大高嶺のこういうような実情について御存じなかつたかどうか、この点はどうですか。
  146. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 不発弾等を扱いまして怪我をしたような事態があることは承知いたしておりまするが、これはそういうことをなさざるようにできるだけの注意を加えております。又演習をする場合におきまして弾丸が空中を飛ぶ、これは当然でありまするが、それが住民に困難を及ぼさないようにできるだけの措置をいたしております。
  147. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはできるだけの措置と言うのですけれども、部落の頭の上を……これは何十戸かある二部落、二つある、その上を弾丸がひゆうひゆうと越えて行く。(「出たらめ言うな」「くだらん」と呼ぶ者あり)くだらん、見たか。委員長注意して下さい、出たらめとは何ですか、失礼ですよ。私は見て来たんだ、現実に……信ぜられないほど怒つている。日本の現実をば君たちは信ぜれないか、ばかなことを言うな、私は見て来ている。そうしてそれは私は聞いている。全くこれは夜例えば砲弾がひゆうひゆうと越えて行く、慣れたろうと聞いたところが、慣れるものか、とてもこれは寝られない、夜ひゆうひゆうひよろといつて弾丸が頭の上を越えて行く音が聞えている。一体これが何千発もあるというのに、一発もその部落の中に落ちないという確率はあるか。これは物理的にちやんと証明できる、落ちるということが。重大問題です。これについて外務省は調査する必要がある。こういうことは御存じないだろうと思う。不発弾で死んだ、そういうことは聞いたと言うけれども、今のような不安におびえているこの姿については、これは外相は御存じない。吉田総理も御存じないだろう。併しこれが日本の現実の問題です。現にそれは大高嶺で起つている。そうして何千人かの住民はこのために非常に不安におびえておる。実際に私はこの村に行つて住民とも懇談して見ました。ところがもう話をしないです。行つたところで……。どんなに聞いてもしない。二時間、三時間懇談したのですけれども殆んど何も言わない。ところが帰り際になりましたら、そつと一人が手紙を出しました。若し私のしやべることが村に拡がるというと村八分を食うかも知れない。それほど恐怖的な支配がこの村を圧倒している。こういうような形で実にこの基地周辺の住民というものは恐怖に襲われている。現にどうです。現にコーリヤ・ジヤパン・エーリヤ、朝鮮日本戦域、そういう状態の中では、我々は知らないでおるかも知れないけれども、この基地の中ではこれと同じような事態が幾らも起つているじやないですか。吉田総理はこういうことを御存じないのですか。このことを御存じなくて日本の独立を説いて見ても、日本の平和を説いても私は無意味に等しいと思う。もつともつと大きい例を挙げることはできます、又青森県の大三沢、これも是非行つてもらいたいと思う。漁業権がどうなつているか。而も今まで従来海岸に陣地がたくさん作られておつた、砲撃の陣地が……。最近になりますというと、その村の漁獲高が七割もありますところの四川目という部落はそこに高射砲陣地ができた。そこから大砲がどんどん打出されておる。最近においては、この村の唯一の生産でありますところの漁獲が殆んどできない。こういうところに追込まれておる。而もこれはまだ協定に達していないということを聞いておる。この四川目の高射砲陣地について……。ところがここで私は驚いたことには、岡崎・ラスク交換公文というものが生きておる。これが生きておる、現実においては……。あなたがちやんとこれは調印された。あの中には、今まで使用しておる占領中接収されたる地域、そういう地域であつて新たな協定に達しない場合には、従前通りこれを継続するという一項が入つているのです。こういう条項のために全然土地の人たちには最後の拠点であるところのこの漁獲の問題について、やめてくれ、もう弾打ちをやめてくれ、そうして我々の漁獲を守つてくれと、こういう要求を出しておるにもかかわらず、この交換文書によつてがつちり縛られておる。岡崎・ラスク交換文書というようなことは、なかなか日本国民は知つていない。ところがこの大三沢村の四川目に参りますと、岡崎・ラスク交換公文というものは皆の住民が知つています。そこまで行つている。こういうような事態がはつきり起つている。これについてどういうふうに岡崎外相は感ずるか。こういう問題について、この岡崎・ラスク交換公文というものをもつと改訂する手はないのか。行政協定の問題と関連すると思うのですが……。このようにして住民の生活権を奪つて、そうして長くこの基地を継続するというようなことを今後とられるならば、日本の独立も何もあつたものではない。この点からはつきりした見解を承わりたい。
  148. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 交換公文の趣旨は、独立後早く、そういうものは九十日以内に片付けるべきものでありまするが、そのためには十分なる、双方で納得するような話合いができなければならない。又できても引移る場合には、その引移るところの宿舎なり施設なりができていなければ引移れないからして、過渡的にそういうものができるまでの間は従来のものを継続して使用できるということが書いてあるのですが、殆んど只今のところは両者の間に協定ができて、まだできていない場合のは極く例外的なものに過ぎません。従いまして恐らく今年度中ぐらいには大体全部に達するだろうと予想をしております。そうして住民等については困難な事情もある場合が勿論ありますので、政府において、できるだけの補償その他の措置をとつておりまして、おつしやるようなそれほどのひどいことは決してないことを私は確信をしております。
  149. 岩間正男

    ○岩間正男君 四川目の今の話はどうですか。具体的に伺います。
  150. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その問題も報告を受けておりますが、あなたのおつしやるような大袈裟なものではないと確信いたしております。
  151. 岩間正男

    ○岩間正男君 確信しておると言つても、予算委員会から我々は調査に行つたのですよ。我々が行つた際、これは私が単に……、共産党が言つておるというからあなたは突つぱねようとして言つておるが、皆が行つたのですよ。御存じでしようか。その結果我々は土地の住民に九時まで飯も食べないでつかまつて、切実な経緯を聞いた来たのです。なお口で言つても足らんから、我々も飯も食わないからもつとやれと言うのですが、漸く私たちは飯を食つたという有様で問題を聞いて来たのです。そうしてそういう態勢を確信します。そういうことを確信すると言つたが、あなたは行つて見て聞いたのですか。私は行つて聞いたのでよ。
  152. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 要求がないと言つておりません。そういう報告は聞いております。併しあなたが今述べられたような大袈裟なものではないと信じております。
  153. 岩間正男

    ○岩間正男君 大袈裟なものでないとはどういうことです。大体はここにあります。これについては町長から町会議長、それから漁業協同組合長、その他こういうような人たちの連署で、それをやめて欲しいういう熱烈な請願が出ておるはずです。私の言つておることが大袈裟なものとは何んですか。一体行つて御覧なさい。実際行つていないから、これは属僚任せの仕事をしておるから、そういうことが出て来る。そうして日本のそういう基地周辺においてはどんどん日本が侵蝕されておるではないか。日本であつて日本でない所が六百有余もある。基地周辺の日本の自主権は完全に冒されておる。そうしてそういう米軍が駐留することによつて、財政経済の大きな収奪の声となつておる。こういうことを考えるときに、この問題というものは、軍事基地の問題というものは軽々に見逃すことができない。あなた方は二つの条約と行政協定によつて、そうしてそのような下においてどのようなことが起るかということを考えないのか。そうして父祖伝来の国土に、やすやすとあなた方は判を捺してしまつたのではないですか。犠牲をこうむるのは誰ですか。あなた方はただ判を捺せばいいが、犠牲をこうむるのは誰ですか。このために、そうしたところの犠牲、更に先ほどの大高嶺の人のごときはどう言つておるか。もう山を返されても何千発の不発弾が入つておるかも知れない、この山はもう使いものにならない。もう両三年もすれば而も禿山になつてしまう。而も一昨年のごときは、ここに黄燐弾が打込まれて山火事になつた。ところがこれを消そうとして村人が駆けつけたが、ところが米軍が入れない。山は半月燃えておつた。そうして約七十町歩の山が燃えておる。こういう事態をあなたは御覧になつて言つておるか。又仙台に行つて御覧なさい。私は東北の問題を挙げておるが、成るほど東京周辺の重要基地の問題は、これは相当問題になります。ところが東北の辺陬の土地には封建主義も確かにひどいでしよう。だが実にひどい状態が起つておる。なかなかこれを解決する者がない。それをあなたたちは、共産党の者だからと言つておりますが、もう仙台に行つて御覧なさい。仙台は厖大な王城寺ケ原が三千六百町歩も燃えておつた。ところがそれに対して新らしく仙台の北の町、青葉城裏山の周辺のところから、更に根白石村、七北田村、こういう所にかけて約二千二百三十町歩も新たに接収される。キヤンプはどうか。躑躅ケ岡のキヤンプ、原ノ町のキヤンプ、苦竹というところにもある。又矢本というところにある。私たちは苦竹のキヤンプを見せてもらつた。米軍の好意で見せてもらいました。厖大なものです。それで而も今度はどういうことが起つているかというと、一方ではその矢本飛行場の附近の松島海岸地区は上陸用演習地というものが三カ所もとられようとしている。現にこれ又立入禁止であります。それから仙台の青葉城の裏山、これが又厖大にとられようとしておる。こういうことで基地の谷間ということが仙台でははやつておるのであります。ところが仙台がこのように軍事化されているということは殆んど輿論としては聞えていない現状であります。行つて見て御覧なさい。三千人のパンパンがあの周辺にいる。どこでもそうですけれども、東北の実態について、あなたたちは御存じかどうか。七北田の農民に足を運んで話を聞いて見るというと、我々はこの耕地を取上げられ、百四十七戸の人たちがどうしてもここから立退きを命ぜられるようになる、そうするというと我々は、土地をとられた農民というものは、まるで水から跳ね上つて陸に上つたような魚みたいなもんだ、こう言つて歎きを繰返している、これは鎌倉時代から続いた農家なんです。こういうなうな実態についてあなたたちはこういう実態を御覧になつていない。それを見ないでそうしてやすやすと調印とか何とか言つておるけれども現実を見て御覧なさい。そうしてこの被害を受けるのは全部土地の住民たちなんです。こういう点でもつとあなたたちは慎重にやるべきだと思うけれども、そうして今後このような基地に対して徹底的にこれはこのような要請を断わり、更にこのような基地をどんどんどんどん戻してもらう努力をすべきだと思うけれども、そういう点について行政協定の改訂を、そのような現実的な国民の輿論と結びついたところの問題について吉田内閣努力する覚悟があるかどうか。これは吉田総理から私ははつきり伺いたいと思う。
  154. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 共産党のその綱領を伺うと駐留軍の即時撤退ということを謳つているので、あらゆる方面からその方向に話を持つて行こうとされるのもこれは無理はないかも知れませんが、現実はあなたのおつしやるようではありません。我々も併し住民の利益等はこれはもう極力考慮するのは当然でありまして、あらゆる意味において住民の困ることの少くなるように努力はいたします。まだ現実の事態は遺憾ながら直接侵略の危機がまだ去りませんからして、それに必要な米駐留軍の存在は日本にとつては緊要なのでありまして、従つてそれを維持するに必要な施設、区域はこれはやはり必要なことでありまするから、必要な限度においてはこれを提供するにやぶさかでないのでありますが、不必要なものであれば直ちにこれは解除するごとにいたします。
  155. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) もう時間が来たからこれで一つ……。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたは何か共産党のなにということをおつしやいましたね。いつでも共産党、共産党と言つて、共産党を言えば何か問題が解決するような錯覚を持つのはやめなさい。とんでもない話だ。ここに理由を示します。例えば米軍の撤退についてこれは日本国民が希望していないようなことをあなたたちは言つている。ところが見て御覧なさい。例えば最近の輿論調査は随分これは変つて来ています。一例を示して見ます。朝日新聞の二月十一日の世論調査であります。これによりますと、第一に米軍の問題、あなたはアメリカ軍隊に引続き日本にいてもらいたいと思いますか。早く帰つてもらいたいと思いますか。これに対して、いてもらいたいというのは三三%、帰つてもらいたいというのが四二%であります。意見なしが二五%であります。これは一年前、何年前の調査から見ればものすごいこれは変化であります。こういうことは言つていなかつたと思う。ところがこのような事態がはつきり輿論調査にも現われているのであります。それからアメリカは日本に軍隊を置いたり、大砲や戦車、軍艦などを貸したりしていますが、これは日本のためを考えてのことだと思いますか。アメリカのためを考えてのことだと思いますか。日本のためというのは七%に減つています。アメリカのためだというのが四四%であります。その他双方のため、その他、わからない、こういうふうになつておりますけれども、アメリカのために日本が使われ、そうして基地化され、これによつて軍事化され、日本国民国土が挙げてそつちのほうに持つて行かれるということについては、日本のためにやつているというのが七%に対しまして、アメリカのためだというのが四四%になつている。こういうことを見て頂きたい。又これと関連しましてアイゼンハワーのアジアの政策、巻返し戦術、こういうものについてどうか。こういうことにつきましてもいやな気がしたというのが一九%、今更無責任な発言だというのが一七%、日本は戦争に巻き込まれたくないというのが七〇%、こういうことを認めている。当然だ、それでよいというのは六%、これはあなたたちの仲間かも知れないのであります。(笑声)こういうふうにものすごいのです。又こういうような巻返し戦術によつて平和が来ると考えているのが八%、平和は来ないと考えているのが三九%どちらともいえない、これが一六%、わからない三七%、こういうふうに輿論がはつきり示していると思うのです。又朝鮮戦争についてこれは早く終つたほうがよいというのが八五%、もつと続いたほうがよいというのがこれは大体特需関係かも知れませんが、これは三%であります。(笑声)こういうふうにはつきり日本国民の輿論が示しているのだ。最近の姿だ。私は根拠なく言つているのではない。何でもそれを共産党、共産党の主張だとか……共産党は無論日本国民の大多数が当然民族の独立と平和のためにやつて行くその問題について闘うのは当り前じやないか。政党の任務です。それをやつて当り前だと思う。そういう点ではむしろ我々の主張が全国民の主張に合致して来るのは当り前だ。あなたたちこそはずれている。こういう点から考え吉田総理の私は一言承わつて私の質問を終りたいと思うのでありますが、少くとも輿論政治ということを前提にされている、民主主義の政治を前提にされているその立場におきまして、このように日本の輿論が最近大きな変動を示している。この事実は何かというと、あなたが和解と信頼、そうして必ず講和を結べばよくなる、今までよりも悪くなるはずはないと言つて結ばれたところの講和条約が一年後には現実的に目に余るところのいろいろな態勢、我々は一つの軍事基地化だけの問題を通じてこのことを申したに過ぎないのでありますが、経済の面、外交の面、内政の面、最近の場合五大法案に関連した逆コースの面、あらゆる面において日本の戦争の危機を非常に我々は考える。これに対して不安でたまらない。それから現実に生活が脅かされていることが起つている。従つてこのような国民の輿論に対して吉田総理ははつきりこの国民の輿論を聞いて、これに善処するところの政治をすべきであると思うのでありますが、これはどう考えられるか。私は吉田総理の最後の答弁を求めるところであります。若しもこのような輿論の政治を、輿論に対して真剣率直に聞いてこれに従うところの政治をしないというなら即刻吉田内閣は退陣すべきだ。私はそういうことを附加えまして総理の最後のこれに対する答弁を求めます。
  157. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 現内閣としては輿論に聞いて善処することはその主義といたしております。併しながら共産党の主張に従うことはできません。(笑声)
  158. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 一月三十日の施政方針演説におきまして、吉田首相は次のように述べられております。「独立日本として、占領中の施策中、行過ぎの感あるものに対して、又は占領中必要にしてその必要の去りしものに対しては、この際これを是正するは当然の措置でなければならぬと考えます。」かように述べられまして、次に組閣に際して政府政策の基調として声明をされました道義の高揚、治安の確保、国民生活の安定についてのいわゆる公約の実施のために、その道義の高揚のためにはいわゆる義務教育費の全額国庫負担法の制定、治安の確保のためには警察制度の改革、次々に述べられておるのであります。とにかくこの一月三十日の施政方針演説の大部分のものが占領中の占領政策の行過ぎを是正するということについて非常に強調をされているのであります。言葉を換えまするならば、吉田内閣の本年度政策の一枚看板は占領政策の是正にある、こういうことさえ言えると思うのであります。かようにいたしまして、このお考えに基きまして政府は警察制度の改革、すでに出ておりまするが、或いは重要産業のスト制限を含む労働法規の問題、或いは独禁法の緩和、義務教育費の全額国庫負担法等の一連のいわゆる是正政策を打出そうとされておるわけであります。このほか更に刑事訴訟法の改正、或いは地方制度の改革、農業団体の再編成等いわゆる政府の手許で試みようとされているこれらの改革は、いずれもこれは理窟を付けて見れば今申しました占領政策の行過ぎを是正するということに相成つておると思うのでございます。思うにこの占領政策の目的というものは、一体何であつたかということを今更のように反省をして見ますると、これは日本の軍国主義の徹底的な根絶を目標といたしまして、この日本の軍国主義を支えておつたところの、支柱であつたところの中央集権的な政治機構、独占資本の支配態勢、農村の地主的土地所有形態、画一的な、中央集権的な教育機構の改革、こういつたような封建的な政治経済教育機構の根本的な打破をいたしまして、民主主義的に日本の国の再編成をする、更にこれらの封建的な諸機構の下に抑圧をされておりました国民の基本的な人権を確立いたしまして、再び戦争を誘発するような原因をなくしてしまう、こういうことによつて占領政策はこの大目的に副つて打立てられておつたと思うのであります。むしろ我々の考えるところによりますると、連合国間の意見の不調整のために、この大目的のためにとられた諸政策のためには不徹底の憾みこそ相当にありましたが、一体行過ぎが……、今日この目的がすでに貫徹をしてもう不必要である、こういうふうには恐らくこれは私のみならず世界のいずれの国の人々といえども考えはいたさないのであります。日本を民主化するという目的が変つたならいざ知らず、日本の徹底的な民主化を図るということがなお且つ一貫した方策であるとするならば、恐らく行過ぎておる、或いはもう必要がなくなつた、日本はこの目的に副うて徹底的に民主化されたということは言えないと思うのであります。この今までの政策を行過ぎておる、こういう考え方の中に、即ち未だに低い封建的な政治に憧れを持つておる考え方というものがあることをば立証しておるものと私は思うのであります。そこでこの行過ぎであるとか、或いは行足らないというようなことは恐らくこれは比べたことでありまして、或る一つの線を予想してこれよりも過ぎておる、これよりも足らない、こういうことであります。そこで一体今までとられたこれらの警察法或いは教育の民主化、農地開発その他の方策というものが行過ぎておると言われるならば、一体何を基準にして行過ぎておると言われるのか、この点を先ず明らかにして頂きたいと思うのであります。我々はむしろ新らしい制度というものには慣れにくいのであります。今まで上から命令をすればさつと下に通じて行く、こういうような命令一下動くというような制度に慣れた我々にとりましては、この新らしい制度は成るほどこれは消化しにくい。併しながらこの新らしい制度が日本の民主化のために役立つとするならば、これは慣れる努力をしなければならない。それをば行過ぎておるという一片の理窟で根本からこれをば改めて行く。こういうことになるならば、一体日本国民は何のために今まで七年の間日本の民主化のためにやつて来たかということを疑わざるを得なくなると思うのであります。私は先ず初めに総理は何を基準にして日本の諸政策を行過ぎておると考えられ、一体何を基準にしてこれらの政策を不必要であるとお考ええになるのか、先ずお考たをお伺いしたいと存ずるのであります。
  159. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題はしばしば本議場等において説明をいたしましたが、進駐軍の日本の民主制度を確立するという趣意は終始一貫しておりますが、同時に日本に対して相当誤解があつたのでありますが、占領当初においては日本が全く軍国主義であり、警察国家であるというような誤解から、いろいろな制度がいわゆる行過ぎたという考え誤解に基いた行過ぎはあるのであります。故に現在の状態では、或いは国情に応じた、又日本国民生活に応じた制度に布き直すというのが趣旨であつて、民主主義を根抵から覆えすということは考えておらないところであります。
  160. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 私は民主主義ということの解釈はいろいろあると思いまするけれども、私なりにこれをば考えて見ますると、とにかく国民が国の主人公である。吉田総理でもなければ天皇でもない。国の主権者は国民であるということであろうと思うのであります。そうであるといたしまするならば、そういう形をば政治、経済すべての上に確立をして、これが最も大切な日本民主化の目標でなければならない。日本の新らしい憲法は明らかにそれをば謳つておるのでありまして、この憲法の中においては憲法そのものを否定する団体をすらこれを許そうとしておる。これが民主主義なんです。これが幾ら内閣によつて好まれなくても、主人公は国民であるから、国民が嫌いなものは幾らどんなレツテルを貼つても、国民がこれをば退けるであろうし、幾らうまいものだと言つて勧めても、国民がこれをば判断する。これがいわゆる民主主義の建前なのであります。ところが昨年の第十三国会において通過いたしました破防法のごときは、相当多数の国民か反対をしておりますにもかかわらずこれを強行する。ところが丁度同じ頃に住宅金融公庫法の一部改正というのが出ておりまして、これは御承知のように住宅金融公庫が保険を、自分が貸して建てた家について保険事業を得なおうとするものであります。非常に住宅金融公庫で建てた家については、監督も厳重であり、手続も簡素でありますから、保険会社に非常に喜ばれる対象になる。そこで保険会社は、二、三十人集まつて猛烈な反対をする。これはどういう取引が裏でされたか知らないが、一週間審議をしておるうちに、わけもなく引下げられてしまう。一方は何十万という人間が反対してもこれを通す。こういうやり方自体が非常に民主化というものに逆行するものであつて政府のこういう考え方からするならば、反動的な考え方からするならば、恐らくこれは民主的な諸制度というものはすべて行過ぎである、すべて不必要である、こういうふうにこれはなつて来るのであります。そこで政府のその考え方の問題が最も中心にたるわけでありますが、私たちは行過ぎているものを是正するということについては、これは決して反対ではないのであります。例えば今日の東京でも、或いは全国津々浦々に至るまで、非常に賭博等がはやつておりまして、全く亡国的た様相を呈しておりますが、これなんかは大いに行過ぎておりますから是正しなければならない。この賭博については吉田総理も非常にお嫌いでありまして、前にドツク・レースでありましたか、モーター・ボートの競争でありましたか、折角出ておつたものも総理のお声がかりでこれを引込めたこともありました。こういうことは恐らく私は勇敢に是正をしてもらうべきものだと思う。そこで最近出ているハイアライ法については、総理は又これは自分としては反対だ、こうふうに意見を述べておるのであります。それではこのハイアライ法、これは一体吉田総理は反対であるか、あなたの内閣の閣僚すべてはあなたと同じような御意見で、ハイアライ法には反対であるが、更にこういつたような一連の賭博法というものはこれは行過ぎておるから是正をする、こういうふうに意見が統一をされておりまするかどうか、その点を先ずお伺いいたします。
  161. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ハイアライ法ですが、これは内閣としては閣僚ことごとく反対であります。
  162. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 誠に結構でありまするが、実は遺憾ながらこのハイアライ……回力球競技法ですか、これの提案者の中にたしか閣僚の方がお入りになつておると思うのであります。これはたしか新農林大臣がその中に名を連ねられておる。これは全く奇怪であります。総理大臣は、自分の内閣は一致してこれには反対をしておる。こう言われるけれども、その議員提出法案の提案者にたつておられる人が閣僚におられる。この事実を一体総理は知つておられて今の御答弁をされたかどうか、重ねてお伺いしたい。どうなんですか。
  163. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、新農林大臣が名前を連ねておるかどうかは知りませんが、入閣後事情を聞かれたらば必ず訂正せられるであろうと思います。(笑声)
  164. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 農林大臣、見えておりますか。(「取消した、これは取消しました」と呼ぶ者あり)そういう訂正、出ていますか。(「署名を取消した」と呼ぶ者あり)  農林大臣にお伺いいたします。私らはまだ法案の訂正の印刷物をもらつていないのでありまするが、事実お取消しになり、提案者から名を除かれておりまするかどうか。(「大丈夫、大丈夫」と呼ぶ者あり)大丈夫つて、もらつてないんだよ。来てないんだよ。(「農林大臣に趣旨弁明をさせろ」「取消したんだ」と呼ぶ者あり)
  165. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 後刻見えますから、今の問題、先へ一つ……。
  166. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 党内の事情で、非常に重要なときに予算案なり法律を作成するという責任にあつた大臣は、総理大臣の職権で理由も国会では述べられないで……、質問しても述べられないのでありますが、併しながら重大なる、この総理の全く嫌いであるこういう法律に対して非常に熱心な提案者である、恐らくこれは相当利権に関係があると言われておりまするから、まあこの提案者は相当そういう方面についても興味を持つておられる諸君が多いんだろうと思われまするが、こういう人をばそのあとに据えておられる。又今度の肥料業界の意見で見るというと、廣川農林大臣のあとに新らしい農林大臣が来て、恐らく一俵について十円ぐらいは儲かつたという話をしておる。そういうことから見ると、これは相当そういう方面には練達の士であるように思われるのであります、党内事情でお代えになるのは差支えないとしても、これは非常に大きな国政の問題であります。そういうようなことをば詳しく御調査にならないで後釜に据えられるということは、これは非常に遺憾でありますが、この点についていろいろ御答弁を求めても仕方ありませんから、農林大臣についてお尋ねいたします。  次にお尋ねいたしたいのは、総理大臣は占領政策については占領中一貫して変化かなかつた、こういうふうに先ほど述べられましたが、私ら実はそうは思わないのであります。占領期間中に相当これは占領政策の中に違つたものが出て参りました。米ソの対立、冷戦の激化、朝鮮動乱等に際しまして相当にこの占領政策というものに変化か出て参りまして、それが日本の政治について相当な要求と申しまするか、これは行過ぎであつたというふうに、むしろその行過ぎは占領軍自体が感じて相当日本の行過ぎ是正をいわゆるやつて来たようであります。そこで今日のアイクの登場によるアメリカの政治動向等を見ますると、相当にこれは今までよりも、占領期間中よりももつと積極的に日本の資本主義化を要望し、日本の再軍備政策をば要求して来ると思われるのであります。丁度今吉田内閣は新聞等で見ておりますると相当な危機に逢着しておるようであります。これと同じような事態が実は一昨年の暮にダレス氏が訪日されたときにあつたと思うのです。丁度このときはダレス氏と吉田総理大臣の間に相当日本の再軍備について意見の相違がありました。そのためにこれはひよつとするとおれのほうに政権が来るというのでそれについて相当進軍ラツパを吹いた諸君もあつたようであります。そのあとに改進党も結党された。併しながらこのダレス氏と吉田氏の間の意見の食い違いは表面的に再軍備はしないが、実質的になし崩しに再軍備をするという例の台湾承認に次ぐ第二ダレス書簡によつて何とか妥協かついたようであります。そうして再軍備相当強硬に主張した米陸軍を納得せしめて吉田内閣はとにかく延命をし得た、今日まで続いて来た、こういうふうに私たちは当時の状況から見ておる。ところが今度更に同じような事態が私は出ておると思う。最近ダレス氏が来る、これは相当私は強い要求を持つて来ると見なければならない。一昨年の暮に来たときよりももつと積極的な日本に対する再軍備の強要をされるかもわからない。そのための下準備としての日本国内体制の、機構の改革ということをば求められるだろう。こういうふうに考えますると、それと符節を合せていわゆる行過ぎ是正ということによつて占領政策のここに是正がされようとしておるのも決して故なきでないと思います。そこで私は吉田総理にお伺いしたいのは、一体行過ぎというこの考え方はあなたの独自な、日本独自の考え方を中心にしてこれはなされておるのか、又極く最近来朝されると言われるダレス氏の一つの贈り物的な意味においてこれはなされようとしておるのか、その点を一つお示し願いたいと思うのであります。
  167. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話の中には私が毛頭知らない事実もたくさんあるようでありますが、(笑声)当局者として率直に申しますと、この行過ぎ是正ということは全く内閣の独自の立場であるのみならず、この問題はこの前リツジウエイ将軍がおられたときにも話はすでに始まつておるのであつて、リツジウエイ将軍に自分はこう思う、こういう必要があるからと言つて説明をいたしたくらいで、この問題はすでに一年以前の話でダレス氏とは何ら関係がないのであります。  それから又進駐軍の政策は終始一貫と言いますが、私は終始一貫とは言つておらないのであります。初めは日本に対して相当誤解があつた。日本は軍国主義である、或いは警察国家である、中央集権と言いますか、とにかく民主主義に逆行した制度であるという観点からいろいろな政策、或いは法制や組織を主張しましたが、だんだん日本の事情がわかるにつれてそういうことのないことを発見して、従つて日本に対する了解ができて、又日本の国家組織、社会組織についての十分な理解ができると共に、この国を独立せしめなければならないという考えになつて必ずしも破壊ばかりを主にしたような政策はとらなかつたのであります。これはどこの国でもそうでありますが、終始一貫なんということはあるものじやないので、事情に応じて変化するのは当然であります。従つて進駐軍の対日政策というものは決して終始一貫しておるものではない。終始一貫しておるものがあるとすればそれは民主主義の確立でありましよう。それから又いろいろ今お話がありまして、私の内閣がしばしば危機に瀕したようなお話でありますが、未だ曾つて危機に瀕して、そしてとやかくしたことはないのであります。現在といえども私は危機に瀕したとは考えておりません。(笑声)
  168. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 占領中においても、リツジウエイ大将からもそういうようなお話があつたというふうに言われまするし、又先日の衆議の予算委員会においても、この行過ぎ是正については、すでにマツカサー元帥も了承を与えておつたと、こう言われておりまするが、このこと自体が、すでにアメリカの政策相当途中において変つて来ており、行過ぎの是正どころではない、むしろ私は忠実なる占領政策の延長であるとさえも言えると思うのであります。若し是正をするということがあるとするならば、これは占領期間中に漸く芽生えて来た民主主義の芽生えと是正で摘んでしまう、幾らかでもこれに制限を加える、これがいわゆる民主主義の是正である。言葉を変えられたほうがよいと思いますが、併しこれは恐らく見解の相違ときめつけられましようから、これを更に追及はいたしません。併しながら最後に、私はこの問題について終りにお伺いいたしまするが、これは占領期間中、忠実にこの占領政策というものをば実行せられて、そのたびごとに、この提案をされるたびにそれをば謳歌して来られたところの吉田内閣自体が、独立後直ちに自分たちの今までやつておつたことは行過ぎであつた、こう言つて是正をされることを私は実におかしいと思う。むしろ是正をされようとするならば、誰かに譲つたあとで是正したほうがいいのじやないか。これが私は憲政の常道ではないと思うのでありますが、吉田総理の御見解をお伺いしたいと存じます。
  169. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 若し是正するならば、初めから事情を知つておる我が党内閣が是正するのが一番適切であると私は確信いたします。(笑声)
  170. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 そのことをば始めるときには金科玉条のように言つておいて、あとで一番事情を知つておるから、我が党が一番これを是正するに適当である。これは実におかしな言い方でありまして、幾らこの提案の際に、我々がいろいろな角度からこれをば批判をいたしましても、全くこれが至上のものであるということで、今まで一貫して来られたのであります。それを今日是正するのは我が党が一番適当であると考える、全くこれは詭弁だと思うのであります。  次に、去る二日の衆議院における予算案の通過に当りまして、与党である自由党が次のような条件を二十八年度予算に附けたようであります。即ち、財政資金の撒布超過多額なるに備えて、長期の財政経済計画を樹立し、貯蓄増強策を強化し、財政整理を行い、中央地方の財政を調整することを附帯決議として政府に要望する、かような附帯決議付で衆議院は通過をいたしております。これにつきまして、毎日新聞の四日の社説は、次のように評しております。多額の財政撒布超過は、いわばインフレと同義語である。貯蓄の増加は火事の事実を認めて、消防の必要を説くようなものである、要するに自由党みずからが本年度予算はインフレ予算であるということを白状しておる、かように毎日の四日の社説は評しておるのであります。我々は本年度予算を一見いたしまして懸念いたしますることは、国債の三百億、国鉄、電信電話両公社債二百二十億、或いは政府所有公債三百八十億の日銀売却等がインフレの前ぶれになるのではないかということであります。公債の発行そのものは、これは建設的な政策に役立つ限り、又国民がこれを買つて消化するのであれば、必ずしも反対すべき理由はないと思うのでありまするけれども、問題は一度大政策が改められまして、堰を切つて出たら最後、最後はあとからあとから公債の発行が行われて、ひどいインフレの原因になるのではないか。これが国民のひとしく憂慮しておるところであるわけであります。この国民の危惧に対して答えるところがなければならぬと思うのであります。そこでこの重大なる政策の転換に伴いまして、財政の長期計画国民の前に明らかにされねばならない、こういうことで衆議院の予算委員会においては、前申しましたような附帯決議がなされたと思うのであります。然るに今日においても全くそれが示されてない。長期の財政計画というものが示されていないのであります。一体政府において長期の財政計画ができておるのでありますかどうか。できておるといたしますならば、それをばお示し願いたいのであります。又少くとも自由党といたしましては、附帯決議をする前に、与党でありまするから、相当長い間かかつて連絡調整をされたと思うのでありますので、その要望を実際に明年度予算に盛込めばよかつたのであります。それを附帯決議によつて表明せねばならなかつたということは、これは現在の複雑な党内事情の然らしむるところであり、相当政府の重大なるこれは怠慢であると思うのでありまするが、前の長期計画について大蔵大臣より、あとの与党、政府の責任については総理大臣より、それぞれ見解をお伺いいたしたいと存じます。
  171. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 長期の予算計画を作りますことは勿論必要なことでございまして、これはいろいろと研究中でございます。早急にこれを作るつもりでおります。  それから附帯決議につきましては、これもその趣旨を尊重しまして、早くこれを実行に移すように努力しております。
  172. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは与党と政府と一致した意見であるのでありますから、政府として何ら責任を感じません。
  173. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 長期の財政計画につきましては、今研究中であるということでありまするが、勿論これは未確定な要素等も、相当将来に亘ることでありますから、多いのでありまして、計画の樹立は成るほど困難な時期の予算案ではあろうと思います。併しながらそれならそれのように、なお一層の見通しを持つことが心要であると思われます。例えば将来における公債増加の最大の要因になると思われるところの再軍備の問題、自衛力の漸増の問題、これにつきましては、財政的にどの範囲で賄うのだ、こういう漠然たる枠でも明らかになれば、まだしも公債に対する不安が減ずるであろうと思われるのでありますが、自衛力の漸増と言われるいわゆる実質的な再軍備の財政的範囲は如何様なるものでありますか、その見通しについて、これは大蔵大臣より御答弁をお願いいたします。
  174. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 自衛力は漸増でございまして、これをどの程度に増すかということは、やはり国力との関係に行くのでございまして、大蔵省といたしましては慎重に研究をいたしまして、国力に応じた程度の自衛力の漸増、そういたしますから範囲というふうなものは、只今は申上げかねるのでございますが、国民負担の非常なる増加というようなことには決していたさないつもりでございます。
  175. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 それでは自衛力の漸増によつて公債の発行が増加するというようなことはない、こういうふうに了解してようございますか。
  176. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 御質問通りで、公債などを以て自衛力の漸増だという考えはございません。
  177. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 次に、公債発行の予算が提示せられますや、国民の間に与えたところの影響は実に軽視できないものがあるのであります。まだ実際にこの予算が行われておらないのでありますけれども、如何にもインフレ必至であるというような考え方が国民の間では相当あるのでございまして、物価を上昇し換物思想等を煽りまして、最近においてスターリンのことに関して株価が下落する以前には相当な上昇を見ておりまして、ダウ平均四百五十円を超えるような有様でありまして、大衆のインフレを必至とするところの確信と思惑が却つてインフレを促進するというような現象が出ておつたと思うのであります。でありまするから政府としてはこの際、将来においてはこれを更にあとからあとからと公債増加政策を行うんではないのだ、決してインフレにはならないのだというような確たる見通しを国民の間に発表して、この国民の換物思想と物価上昇必至、インフレ必至とする考え方をば抑えなければ、この面からして私は思わざるインフレの危機が出て来るというようなことを恐れるのでありまするが、政府は何らかのこれに対する対策をお考えになつておりまするかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  178. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) 公債の発行につきまして、これがインフレを助長するのではないかという御質問でございますが、公債は国民の消化し得る程度及び方法によつて発行いたしますので、今次の公債の発行はインフレを招来しないと存じます。その他財政の撒布超過というふうなことがありまして、これがインフレを誘引するという心配をする人もあります。これは貯蓄の奨励とか、或いは財政と金融の操作の方法を以てインフレになるようなことの治められる方法を講じるつもりでございますし、殊に物資の生産が今日のように相当増加いたしておる状態において、物を買つておくほうが必ず儲かるということは現実において現れにくい状態でありますので、この点からもインフレを招来する大きな要素があるとは存じません。その他輸出入の関係などでもインフレ防止の効果はあるものと存じますから、かたがたインフレにはなるまいと私は信じております。そうして公債をどしどし出して、これから後にもインフレの危険を民衆が思うということを防ぎますためには、公債の発行はしないこと、そうきめまして、国民に安心をしてもらうことに考えております。
  179. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 時間がありませんから、この問題はこのくらいにいたしまして、次に、中国貿易関係について若干質問いたしたいと存じます。昨日もちよつと話が出ておつたんでありますが、アイクの新政策によりまして、トルーマン前大統領以来行われておりました台湾中立化の命令が解除されまして、いわゆる二月二日のアイク発表による教書には「第七艦隊は中共を防衛せぬ」という重要な一項が含まれておるのであります。これは中共の朝鮮における攻勢を大陸防衛に転じさせようとする意図によることは明らかでありまするが、これは我が国と中国との貿易関係に深い関連を持つて来ると思うのであります。日本と中国との貿易日本のココム加入後もはかばかしく進展を示していないのであります。民間人の貿易取極め後もいろいろな都合で難点がありまして、決済の手続或いは配船というようなことや、その他のことで期待したほどの実績を挙げていないのであります。政府は昨年末以来、禁輸入物資の解除につきましてアメリカ政府との交渉を続けられまして、一月三十日約九十三品目の解除に成功された旨を発表いたしたのでありますが、皮肉にもその数日後台湾の中立化解除がなされることになつたのであります。これは中国貿易の前途に暗影を投ずると思いますが、外務大臣並びに通産大臣の見解をお伺いいたしたいと存じます。むしろうがつた見方をする人にとりましては、事実上できないと見て九十三品目の解除を許可したんだという疑いさえあるほどであります。
  180. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 中共との貿易につきましては、できるだけ国連協定の線に外れざる限り、これを円滑に運びたいという、こういう考え方の下に九十三品目もその線に沿つて自主的に増加したのであります。それで現在のところ、御承知のように決済方式がいろいろむずかしいので止むを得ずバーター方式をとつておるのであります。それでビーター方式をとりますと輸入品についての信用状の問題が起ります。輸入の信用状の場合は、これはやはりコンマーシヤル・ベースでやる以外にございませんので、その点で何かと不自由を与えておるように思いまするが、併し去年の十二月以来はやや増加しておる情勢にあることは三輪さんお聞き及びの通りであると存じます。なお或いはお愚ねのうちにあつたかと思いますが、今の方式は、大体私どもとしては輸入先行方式、先ず輸入をさしてその後の方策をとりたいと思うのでありますが、それでは貿易が円滑に運びませんので、止むを得ず輸出先行方式をとつておるのであります。そういたしますると、多少今のバーターの見地から輸入に危険をも感じなければなりませんので、止むを得ず一〇%、一割の保証をさしておるのでございますが、併しこれも今後状態がうまく推移いたしますれば、これらの保証は減じて参りたい、かように考えておるのであります。なお台湾の中立の関係につきまして、現在のところ直ちにそう影響を持つとは思いませんので、過日も開らん炭等の問題が香港等を通じて話がついておる等の点もございまして、私どもは差当りそういう大きな影響はあるまい、かように考えておる次第でございます。
  181. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 影響がなければいいのであります。併しながらこれは国民政府が今日まで日本と中共との貿易を心よからず思つておりました。中共と取引をする日本の商社は台湾との貿易には参加させない、こういうふうな意思表示を行なつたことを挙げれば、台湾中立化解除は、中日貿易に阻害を来たすということは明らかであります。なぜかと申しますると、この中立が解除になりますと、日本と中共間の貿易船、或いは香港と中共間の貿易船が国府海軍の制圧を受けるという可能性があり得るわけであります。又昨日も質問いたしましたように、東京貿易商会がすでに釧路から天津向けに英船のパテイソン社のサン・アーネツト号というので出帆いたしておりますが、このほかにもまだ、近く巴商事が中国向けの配船をしようといたしております。又今通産大臣お話のありましたように、開らん炭の問題もすでに決定をいたしております。八幡、富士、日本鋼管等の鉄鋼三社は紡織機とのバーターで開らん炭十万七千トンを啓明交易を通じて入れようとしておる。或いは又化学肥料とのバーターで五万トンの開演炭を東西交易を通じて入れようとしておる。更に四日の閣僚審議会幹事会では大豆粕の相当量が又バーターで輸入をしようとされておる。こういうふうに考えますると、次々と日本の船が中国向けに行かなければならない。こういう事態が考えられるわけであります。ところが先に申上げましたように、国民政府が中共との貿易を喜ばない。中共との貿易をする商社は台湾とは貿易をしない、こういうようなことをば意思表示をしておることを考えますると、将来においてこの日本と中国間の貿易船、香港と中国間の貿易船が国府軍の制圧下にさらされるということも考えられるところであります。又一方逆に中共の船に対する危険も感ぜざるを得ない。こういうふうになるというと、これは近々まだ一カ月余でありまするから、その影響は具体的に出ていないとしても、これは将来十分にこの虞れはあるわけであつて、私は外務省としてはこの問題についての何らかの対策をばこれは立てられなければならない問題であると思うのであります。現在現れていないからいいとすべき問題でないと思うのでありますが、これは外務大臣に対してお伺いをいたしたいと思います。
  182. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々もその危険なしとは決して言つておりませんが、只今のところはその気配が見えない、こういうだけであります。これは日本のみならず香港その他においても研究をされておることでありまして、我々としても決していい加減に放つとくのではありません。十分に注意を払つて、今後とも事態を見守るつもりであります。
  183. 内村清次

    ○内村清次君 関連して。先ほどこの中共との貿易に対しまして、今回のアイクの一般教書、とられた政策において、相当影響がありやしないかということに対しましての通産大臣の御答えは、国連の協力の範囲内においては、やはりこの問題は進行させて行く、こういうようなお話であつたのでありますが、そういたしますと、この外務大臣の四日の衆議院におきまする答弁と大分違つたような感じがいたしておるのでございますが、衆議院の外務委員会での岡崎外相の御答弁では、中共貿易は制限して行く、できれば禁輸というような方向に列国と足並みを揃えて行かなくてはならないというような意味の答弁をしておられるようであります。これは相当大きなセンセーシヨンが国内貿易業者の中にも起つておると思いますが、その点を今一つ明快にしておいて頂きたい。
  184. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは速記録を御覧になれば、もつとはつきりおわかりになると思いますが、そういう意味で申したのではなくして、例えば列国との足並みを揃えて、例えば九十何品目はいいという、解除されましても、それ以外に密輸等がありまして、とかくそれ以外のものが輸入される傾向があると伝えられておるのであります。真偽はわかりませんが。そこで日本としては正直にきめたものを守つておるのであるからして、ほかのほうも日本に足並みを揃えて、密輸等の取締をやつて、足並みが揃うように厳重にしなければいかん、こういう趣旨のお話なんであります。
  185. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 中共貿易について今三輪君から御質問がありましたが、それとちよつと関連があるのですが、台湾貿易について、これは通産大臣にお伺いしたいのですが、砂糖の輸入ですね。キユーバ糖なんかでは今トン当り八十ドルか九十ドル、それをなぜ台湾との間に百四十ドルも百五十ドルも、高いものを買わなければならないのか。そういうようなことをやりながら、貿易振興とか国際収支の改善……、キユーバ糖を買えば八十ドルか九十ドルで買えるじやありませんか。それを百五十ドルも百六十ドルも、高いものを、そういう点どうして改善して、外貨の節約をしないか。  それから第二は、台湾とキユーバ糖との国際カルテルですが、砂糖の販売カルテルを結ぼうとしております。そうなると、非常に高い台湾糖の値段でキユーバ糖をアジアにおいてはそういう価格で供給することになり、これは国際カルテルになるのです。そういうものに対して、それは何か対抗的な抗議を持込む必要があるのじやないですか。その点についてどうお考えですか。ついでですから。
  186. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。これは以前の話じやないかと思いまするが、当時キユーバ糖が百ドルしたときに、台湾糖が百五十ドルの唱え値がありました。実際の取引はそういうものは殆どなかつたように私承知いたしております。百三十ドルぐらいのものが若干あつたかと思います。その後値が下つておりまして、この頃は九十ドル程度じやないかと思います。従つて台湾のほうでは今のところ、唱え値でこれは百二十ドルそこそこであると思います。従いましてこれはそのときのこちらからやりまする対価の関係等をいろいろ織込みましてやつておりますが、さような不利益なことを受けることは、如何なる場合でもカバーしませんから、一定の施策の下にこれをやる考えであります。
  187. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 三輪君、簡潔にして下さい。簡潔に願いますよ。
  188. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 先ほど尋ねないうちに通産大臣からちよつと御答弁がありましたが、中国からの輸入の際に、輸入保証金の一〇%を政府に積立てることになつておるのでありまするが、これはその他の地域、いわゆるポンド地域が〇・一%、ドル地域が一%の場合に比べますると、非常に中国貿易について差別待遇をされておるような感じがしてならないのであります。将来においてこの輸入保証金の一〇%を、更に他の地域と同様にお引下げになる御意思がありますかどうか、その点をお伺いいたします。
  189. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 三輪さんに先ほど申上げました通り、実は私のほうとしては、輸入先行方式をとりたいのでありますが、先方の事情もありまして、止むを得ず輸出先行方式をとつております。ところがよその地域と違いまして、バーターによる以外に決算方式はございませんので、この輸入確保の点に、ほかと違つて若干のリスクが認められますので、一〇%といたしておるのでございまするが、情勢がずつと変つて参りまして、何らの危険等がなく円滑にこれが運んで行くことになりますれば、勿論これは下げて然るべきものと考えております。ただ実施後ほんの二月ぐらいにしかなりませんので、少しく模様を見た上で考えたい、かように存じております。
  190. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 これは簡単に申しまするが、次に貿易金融についてであります。特に昨日の質問でもお答えを頂きましたように、巴商事が信用状を開設してもらえなくて非常に困るという例を挙げましたが、こういうような中小の貿易業者に対する問題であります。折角取引が成立いたしましても、資金の都合上、非常に不利な状態にあることは、今申した通りであります。そのために中小企業の貿易金融をば輸出入銀行、或いは開発銀行の融資の線上に載せて欲しいというのが、業界からの頻りなる要望であるわけであります。通産大臣はこれを積極的に支援される御意思がありますかどうか。その点をお伺いしたいと存じます。  次に、時間がないので、一緒に外務大臣にお伺いしておきまするが、貿易振興には何と申しましても、相手国に出かけて参りまして、取引の折衝なり、商品の紹介等を行わなければならないのであります。それをばいろいろな方法で間接的にやつておりましては、どうしてもうまく行かないのでありまするので、中国への渡航の自由ということが、中国貿易にとつて非常に大きなフアクターになるかと思うのであります。この中国への渡航の自由は、近い将来において確保される見通しがあるかどうか。この点について外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  191. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。輸出の場合でございますると、これは非常に容易なのでございますが、輸入の場合でございますると、銀行がコンマーシャル・ベースの下に信用状を発行しなければならんのでありまして、これを政府が実は強いるわけに参りません。ところが今度輸出取引法が変りまするというと、組合を作ることができます。従いまして特に関西には中小の人が多いのでありまして、これは組合を作りますと、組合の力によつてコンマーシヤル・ベースの下にクレジツトの発行が比較的容易になるのじやないか。そういうような見地から今度の改正案をお願いいたしておる次第でございまするので、それまでは実は政府は損失保償をしてやるというわけにも参りかねますので、現状以外に止むを得んかと存じております。
  192. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 貿易の大切なことは無論でありまするが、中共地区とはまだ国交が回復しておりません。国交が回復できない理由はいろいろあるのでありますが、それは省略いたしまして、現実に国交が回復しておりませんのと、中共側のラジオ等の宣伝が、いろいろ日本の現在の憲法に対してとかくの批評をなし、面白からざる宣伝も多いのであります。こういう事情の下においては、自由に往復するということはまだまだ困難であろうと考えます。
  193. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これにて本日は散会いたします。    午後三時四十一分散会