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1953-03-06 第15回国会 参議院 予算委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月六日(金曜日)    午前十一時三十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員原虎一君辞任につき、その補 欠として曾祢益君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩沢 忠恭君    理事            左藤 義詮君            森 八三一君            内村 清次君            永井純一郎君            西田 隆男君            岩木 哲夫君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            石坂 豊一君            泉山 三六君            大矢半次郎君            川村 松助君            郡  祐一君            駒井 藤平君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            鈴木 恭一君            山本 米治君            石黒 忠篤君            岡本 愛祐君            加藤 正人君            片柳 眞吉君            荒木正三郎君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            三輪 貞治君            加藤シヅエ君            曾祢  益君            棚橋 小虎君            堂森 芳夫君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            鈴木 強平君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    大 蔵 大 臣 向井 忠晴君    文 部 大 臣 岡野 清豪君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    農 林 大 臣 田子 一民君    通商産業大臣 小笠原三九郎君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君    国 務 大 臣 本多 市郎君    国 務 大 臣 水田三喜男君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    大蔵省主計局長 河野 一之君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    文部省監理局長 近藤 直人君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十八年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十八年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これより委員会を開きます。  先日の委員会において内村委員から質疑されました対日援助費の問題につきまして、今朝理事会を開きまして協議をいたしました結果、政府はこの問題について、明確にして統一ある答弁を明七日の本委員会に示されんことを要望することに決定いたしました。よつて政府は、明七日の本委員会においてこの問題に関し明確なる答弁をなされんことを要望しておきます。  昨日に引続き総理大臣に対する質疑を続けます。
  3. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私は総理大臣に、日本独立というものは現在達成されておるのかどうか、日本独立の行手と申しましようか、あり方というものは一体どう考えておるのかということについてお尋ねしたいのでありますが、政府は、中立はあり得ない、そうして再軍備は行わないという、併し共同防衛の又責任も持たなければならない、国連には加入促進を図つておる、かと思いますと、太平洋軍事同盟などには入らないという。そうかと思うと、北海道領空侵犯に対する排除、いわゆるまだ講和が結ばれておらない国を相手とした意味に、世界的にも又国内的にも印象付けられる侵犯排除声明をした、これは一つ休戦中ではあるが、休戦中の或る国に対して又揺り起したいわば宣戦布告にも等しい態度であります。そうかと思うと、又中共封鎖には協力すると言う、或いは日本財政とか、軍備とか、いろいろの問題であろうと思いますが、白洲氏や池田氏を海外に派遣し、又は派遣せんとして、どうも日本のこの自衛態勢にいたしましても、外交の問題にいたしましても、あとで申上げまする経済問題にいたしましても、一体日本独立というものはどこにどうあるのか、いつまでもアメリカ依存態勢を以て日本独立を築かんとするのか、この点につきましての所信を承わりたい。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。独立あり方如何ということは甚だ明瞭な話であつて講和条約を以て独立した以上は、日本主権行動条約以外に何ら拘束されておらないのであります。而うして再軍備しないというのは、再軍備するかしないかは全く日本の自由である。即ち独立一つ証拠であると思います。太平洋同盟のことについては何ら我々は承知いたしておりません。同盟内容なるものも知らず、又曾つて外国からそういう交渉を受けたことはないのであります。従つて太平洋同盟、その内容のわからないものに入らないというのは当然であります。内容を研究してのちの話であります。北海道における領空侵犯排除、これは独立国として当然の話であります。又中共封鎖中共封鎖はこれは米国軍と言いますか、或いは台湾政府と言うか、これが封鎖をした、これに対して我々は関与しない。又白洲氏或いは池田氏を海外に派遣するということも、これは独立国である以上は誰を派遣しようが当然であります。又日本としては海外事情或いは日本事情説明するために、絶えず人を送り出し、或いは海外における外国国際情況について最新の知識を持つておる、これは独立国として当然なことであつて、これがことごとく日本独立国を侵害し、若しくは独立が危うくなるとか、或いは米国依存とかというようなことは私としては了解ができないのであります。
  5. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 日本独立するということは、いわゆる日本を守るというあり方について先ず第一の問題がなければならん。これに対して日米安全保障条約、続いて行政協定などを結ばれたのでありましようが、一体こうしたような状態で、事実上防衛の第一責任共同防衛ではあるが、対等防衛ではないのであつてアメリカ依存防衛態勢のままで日本独立が進められて行く、それが見当がつかない。総理は国力が充実して自衛措置が完了すれば、或いはこれらは修正され、或いは破棄されるということを言われるかも知れないが、一体そういう見込みはどこにあるのかどうか。この際日本独立前途を憂うる多数国民に対して一言明らかにして頂きたい。特に外交におきましても、先般日米漁業条約或いは近く結ばんとする通商航海条約状態におきましても、或いは李承晩ライン東支那海漁業地区の漁船が拿捕された問題、その他戦犯解放が未だにできない、或いは沖縄小笠原島の主権が未だに回復されておらない、これらは事実日本が未だ独立しておらないということに対する深刻な事態だろうと思うのですが、これに対して総理はどう考えているか、なお経済問題につきましても、総理は先の国会においても、外資導入日本復興を図らにやいかんという外国依存状態を強調しておられるのでありますが、これは実現されておらない。実現されんと思うたやつが通商航海条約などの偏頗な状態で現われかけんとしておる。バトル法によつて中共に対しまする貿易正常貿易はできない、こういつたような状態などは一体日本独立を確保しているのかどうか、国民といたしましても極めて不可解、不審な問題であります。これを重ねて承りたい。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お示しのことが、これはことごとく日本独立であることを事実証明しておるものであつて、これが日本独立をしておらないという事実の証明とは私は受取られないのであります。例えば日米安全保障条約にしても、これは日本が対等な地位において結ばれたのであつて、何ら圧迫によつて結ばれたのではないのであります。而もこれは国会協賛を経て結ばれたのであります。通商条約については、今専らアメリカ等については交渉中であります。これも又アメリカの圧力その他によつて日本独立を侵害するような条約を結ばない考えでおります。李承承晩ライン、これは承認いたしておりません。戦犯の問題については、これは条約もあり、又国際関係もありして、戦犯を直ちに釈放するということは条約上の規定にもないことであります。それから琉球の問題、西南諸島の問題については、日本主権は認められておるのであります。併しながら現在行政権が停止せられておる、この停止もだんだん解除せられつつあり、又解除せられることに交渉中であります。それから外資導入もこれは只今交渉中であります。この交渉はまだ見込みがないとか、或いは交渉が中絶されたわけではないのであります。日本の要望或いは向うの希望等については只今交渉中であります。やがて成立いたすと考えます。
  7. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 余り私も言葉を捉えて申したくないのですが、独立した証拠であるからとおつしやいまするが、例えば戦犯のごときは、それでは条約に反しておらないのであるならば、直ちに戦勝国がつけたこういう戦犯なる名前及びその措置については、速かに解放措置をとるし、又主権回復も徐々に進んでおると申しますが、実際問題として、これは将来日本の、あとで私が申上げまする対日援助費などの問題とからんだことになりつつあるのではないかという国民の憂慮は深刻であります。独立国なら、これは当然早くこうした問題も即時解決すべき問題であろうと思うのでありますが、恐縮でございまするが、重ねて承わりたい。
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今の戦争裁判受刑者とか、沖縄等の島嶼の問題は、これは平和条約規定いたしておりまして、この平和条約日本は受諾し、且つ国会で圧倒的多数で承認せられたものであります。この条約に認められておる範囲のことを、独立国だからと言つて直ぐ条約に反するような行動をとることは私はどうかと思うのでありますが、実情に即して徐々に解決いたす見込みは十分あろうと思つております。
  9. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それでは次に総理にお尋ねしたいことは、日本自立計画につきましては、自衛外交その他の問題もありましようが、特に私がお尋ねいたしたいことは、御承知のごとく人口は殖える、毎年食糧は足らない、貿易は不振、小貨は順次減つて来る、産業復興に対する計画性は殆んど見るべきものはない。物価は国際価格に比して割高であるから、なかなか貿易伸張前途は多難である。外資導入は甚だ心細い、或いは将来朝鮮戦線などの状態から特需減退が予想される。株式は昨日大暴落をする。財政支出はこうした状態に増加一方であつて国民担税能力はもう極点に達しておる。足らないから穴埋めに公債政策で賄おうとする。これらは一面インフレ必至の、又日本経済破壊状態であります。こうした状態軟弱外交と申しますか、いろいろの問題で国際的に依然として伸張し得ない日本態勢が不幸にしてまだこのまま続いている。でこうした状態で一体総理日本自立計画というものはどう立てて行こうとされるのか、どういう目標を以てなされんとするのか、一つ構想を承わりたい。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 人口問題についてはしばしばお答えをいたしておる通り人口が殖えておる、これに対していわゆる万能薬とも称すべきような対策はないことは当然であります。人口は殖える、世界的に増して、食糧の増産はこれに伴わない。或いは産業は殖える、これに対して原料の不足、これは世界的の問題であります。故に人口問題にしても世界的に考えるべきであり、又内国的と言いますか、日本に関するところにおいては産業の発達なり或いは又経済伸張なりによつて政策全体の上からして人口の収縮をできるようなふうに導く以外に方法はない。これはどこの国でも同じであります。  貿易についても時に一進一退があります。併しそのたびごとにさあ減つた、さあ殖えた、殖えたからして喜ぶべきであらず、又減退したからといつて直ちに悲観する理由はないのであります。減退したならば直ちにこれに対する対応策を講ずればいいのであります。  外資導入については只今お話した通りであります。  今日の株式暴落は、これはスターリン総理大臣病気なつた、或いは危篤である、この原因のために暴落したのであつて日本経済全体のためにどうこうというのではないのであります。直接の原因スターリン総理大臣病気危篤なつたということであります。その他何でしたかしら……。
  11. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 公債政策などでインフレ激化が必至の状態であるが、財政計画はどういう……。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは財政計画全体の施策について、この只今政府考えておる施策がその実効を奏するならば漸次この問題も解決ができる。或いは日本の今日生活の安定或いは産業減退ということが……、これはいずれにしても近来産業にしても経済指数にしても上昇しつつあることは事実であります。朝鮮特需が云々と言われますが、時に特需は或いは減退するかも知れませんが、又他の原因で以て増加することもあるでありましようし、一時の現象をとらえて直ちに日本独立はどうするかというようなお考えは、少々私としては承服ができないのであります。
  13. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 スターリンが死んだから将来日本特需その他におきましても見通しが少くなるから株式が下る、それが日本経済に大きな影響を及ぼすというぐらい日本経済は脆弱である。外国依存アメリカ依存状態が顕著であることを私は指摘したのでありますが……。  次にお尋ねいたしたいのは、これは先ほど委員長からも触れましたが、対日援助費債務と心得ておるならば払うという意思を表示しておるものと思う。ところが対日援助費は数千億に及ぶのであります。尤もこのうち全額払うのかどうか私はわからないが、一体この日本将来の経済の上に財政及び諸般の問題に極めて重要な問題に対して、日本が今日独立したというのに、この見通しについて何らかの政府のまだ方針がきまつておらん、態度が明確でないということは極めて不安であります。債務と心得ておるというだけですでに二十六、七年においては平和回復処理費というものを百億ずつ計上しておるが、これはもとより対日援助費ばかりでないと当局は言われますが、その説明の中にはこれを含んでおるということを言うておるのです。そういたしますと財政法違反であることも顕著で、私は今財政法違反の問題を特に取上げたくないのでありますが、総理は対日援助費債務と心得ておるということの原則を立てられておるのであるが、一体今日まで見返資金は大企業産業に殆んどこれが貸付けられておる。そうでありますならば、対日債務費はこの見返資金返還を求め或いは返還されたものから仮に払うて行こうというのが我々の筋合と思うておるのでありますが、総理はこういう方法において返還考え方を持つのかどうか、或いは国民税金のうちから……、すでに二十六、七年においては国民税金のうちからこれを返済しようとしておる、こういつた問題に対する、将来非常な大きな日本経済なり国民感情として重要な問題であろうと思いまするから、特に総理から御回答をお願いいたしたい。  それからもう一つ御返事を求めたいことは、対日援助費身代つて沖縄及びその他南西諸島主権回復の問題と、日本軍備との交換条件に棒引しようといういわば浮説があるのでございますが、それはそういつた状態に対日援助費債務を充当しようというのか、私が前段申上げたようにこれを考えられておるのかを明らかにしてもらいたい。
  14. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 私から御答弁申上げます。見返賞金はいわゆる対日援助費でございますが、これは債務と認めて債務ときまつておるわけではございませんが、若し日本がこれを債務として返済する場合には、その資金は二十八年度におきましては、一般会計平和回復善後費から支出することになります。又昭和二十九年度以降におきましては現在のところ返済条件及び金額が未定でありまして、将来の財政事情を十分勘案しまして返済を決定するつもりでございます。その場合に見返資金特別会計から払う、或いは一般会計から払うというふうなことはまだきまつておりません。  それから南西諸島とか沖縄とかその他のほうの件と、この対日援助費との相関性があるかどうかというお話でございますが、これは全く無関係でございます。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど委員長から対日援助の弁済の問題については七日までに政府が統一した答弁をされたいということを要求されましたが、その七日までに答弁されるに当りまして、私は只今岩木委員が質問されたことに対する大蔵大臣答弁において財政法違反の点がございますので、その点を私ここで一応質問いたしまして、それを又考慮に入れて政府答弁されたいと思うのです。それで僅かの時間ですからちよつとお許し願いたいと思います。  昨日内村委員のやはり対日援助費の質問に対して大蔵大臣は、「債務と心得たということはこちら側の考えでございまして、それを払うことになりますと、いよいよ払うときになりますと、これは国会に出しまして協賛を仰ぐわけでございます。」こういうふうに答弁されておる。そうしますと百億平和回復善後処理費の中に含まれておる対日援助返済費はこれは歳出として計上されておるわけでございます。併しこの歳出国庫債務負担行為としての歳出だと思うのです。国庫債務負担行為については財政法十五条に規定してございます。これは前には歳出として国庫債務負担行為を計上することもできますし、それから予算外契約としてもできます。ところが大蔵大臣歳出としてこれをここに計上しておりながら、将来これを払うときには又国会協賛を得る、こういうふうに御答弁なすつているんです。そうなりますとですよ、そうなりますと、これは予算外国庫債務負担行為の場合にはそれでいいと思うんです。一応歳出として国会承認を得て、払うときに又これを協賛を得るということは、これは私は筋が通らない。ですからこの対日援助費債務と心得るという政府が心得ている間はいいんです。具体的に歳出として計上されて来ているんです、これは。そうなりますと、これは国庫債務負担行為です。国庫債務負担行為には歳出として計上する場合もありますし、予算外国庫債務負担行為として計上する場合もありますが、大蔵大臣答弁では、予算外国庫債務負担行為なのか、歳出としての国庫債務負担行為なのか明らかになりません。この点一体どういうふうに、この対日援助費債務ということを、この財政法上どういうふうにこれをお考えになつて計上されているんです。
  16. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) この件は政府委員からお答えをいたします。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に重要でありますから、大蔵大臣がこれを計上する場合にですよ、歳出として計上しているときに、これを個々の性格をはつきり私はお知りにならないでこういうものを計上されたということは私は重大であると思うんです。大蔵大臣から御答弁を願いたいと思う。
  18. 河野一之

    政府委員河野一之君) 私から……国庫債務負担行為債務を負担する一つ行為であります。併しこれを払う場合に、現実に現金として支出する場合にはやはり予算がなくてはいけないのであります。憲法の八十五条によりまして国が債務を負担するには国会承認が要るのでございますが、その承認を……債務を負担する承認の形式といたしましては法律もございますし、或いは国際的な協定もございますし、或いは予算もございますし、国庫債務負担行為もおのおのあるわけでございます。従いまして大蔵大臣が昨日言われました意味は、対日援助費をこれを債務と心得ておるが、これが確定的な債務とするためには国会の御承認が要るわけでありまして、その御承認を経た後において平和回復善後処理費において支出することになる、こういうような意味で申上げたのでございます。
  19. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 木村君に申上げますが、この問題はすでに開会当初において政府に申入れてありますからここで又議論を繰返すことは如何かと思いますが、どうです。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ああそうですか、それでは議論はやめます。ただ一つ主計局長答弁されたことについてあと政府答弁されるとき一言だけ私は申述べておきたい、簡単にですね。  只今河野主計局長が言われたことは我々みんな知つております。大体国庫債務負担行為についてはどういう場合があるかということは我々みんなわかつているわけなんです。今河野主計局長が言われた以外にもございます。あれでは不十分です。我々は十分検討しております。従つて不用意な説明をされないようにお願いします。大体歳出として百億の中にも出て来ているんです。だから国庫債務というものはここで我々承認すれば生じて来るんです。これは前の旧憲法時代におけるいわゆる予算外契約と同じものであるとすれば、契約というものが前提にないならば……契約がなくてこういうような国庫債務負担歳出に計上するのは間違いである。従つて予算を組替えるべきです。いわゆる予算のうち丁号国庫債務負担行為として出すべきである。私はそれだけ述べて、これは又長くなりますからあとで又……。
  21. 内村清次

    内村清次君 只今河野局長発言のうちにこれ又重大な問題があります。これを債務と国が認むる前提として憲法八十五条によつて国会承認を求めなくちやならない、それまでは対日平和回復見積費としてそれが予算化されて、そうしてその今の予算書の中にも入つているのだ、こういうふうなことです。予算国会承認求むることもあろうし、それから又国会にそれだけを切離して求めることもあると、こういうような発言内容であつたようですが、これは私は明確にしてもらわないと、八十五条の憲法規定というものは、やはりこの債務総額ですね、どれだけの総額債務と認めてもらうか、国会に出する提前提とし或いは支払方法はどういうふうにするか、又期限は一体いつまでに支払をするか、こういうようなことが明確になつておらないといかないわけです。それをなし崩しに、又それは債務と確定したならば、憲法八十五条によつて国会承認を求めます。それまではなし崩し的に、この予算において平和回復善後処理費でこれを持つております。支払つてはおらんが、持つているだけだ、こういう意味であるとすれば、これは財政法違反です。こういうようなことを歳出の額に出すというようなことは、これはもう明らかに財政法上の違反と私は考えますが、こういうような関連性がどうも明確でない。この点は十分注意して、今回の委員長の申入に対しまして、政府は見解を新たにして頂きたいということをお願いしておきます。
  22. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 対日援助費の問題につきましては、又後日に我々譲ることにいたします。  次にお尋ねいたしますことは、北海道領空侵犯排除に関する声明を出されるときに、日本政府は独自で出されたのか、アメリカ駐留軍協議の上で出されたのか、若し日本独自で出されたというなら、これに対応する自衛戦力というものはどういう対抗計画を持つているか、又アメリカ協議されたというならば、どういう日本のシステムでアメリカ協議をされたのか、この点を伺いたい。
  23. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ協議をいたして声明を出しました。その意味日米安全保障条約一般的条項に基いてのアメリカの応援を求めたわけであります。で、その前にはいろいろ事情を調査して、領空侵犯の事実が確かにあり且つ偶然でないと、こう認めましたので、アメリカの側と協議をいたしまして、先方のこれに応援するという回答を得ました上で公表いたしました。
  24. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 その日本協議するというのは、日米合同委員会又はその委員会の中に軍事委員会というようなものをこしらえてやつたのか、これはまさに日本の軍事行動に関します声明であります。で、この辺をお聞きいたしたいのでありますが、若しアメリカ日米安全保障条約に基いてやるといつたならば、何故政府李承晩ラインは認めないという、或いは竹島は日本領有である、これは韓国は韓国の領有であるといつたような問題、或いは大邦丸などの不法射撃の問題に対して、日米安全保障条約に準拠して何故これに対する同様の措置をとらないのか、この辺を明らかにして頂きたい。
  25. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 合同委員会の仕事は行政協定できまつております。これは主として施設、区域等に関するもの、更に日米両方の間の従業員その他の紛争に関するもの、これが主なるものであります。  次に今回の措置政府アメリカ政府協議をしてそうしてとつた措置であります。従つて合同委員会は通じておりません。なお日米安全保障条約は、御承知の通り日本の安全を保障するための条約でありまするが、竹島の帰属というものは、仮にこれが問題になつたとしても、日本の安全を危うくする性質のものとは考えておりません。又李承晩ラインとか、或いは大邦丸の事件等も、これは成るほど非常に不幸な事件でありまして、いろいろ厄介な問題は起りまするけれども、これも日本の安全に直接の脅威等があるとは考えません。つまり領空侵犯等のものとはこれは性質を異にする。安全保障条約によつての解決は求める考えはございません。
  26. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それはなかなか奇怪なことでありまして、竹島の帰属の問題は日本の安全に直接関係がない、李承晩ラインも関係がないと言われますが、それでは李承晩ラインを突破して漁業行動をする、その他の行動をしたならば韓国はこれを韓国侵略者としてみなして不法射撃をする、こういうことを命令しておる。これは即ち日本の安全を非常に損う問題でありますが、これは日本の安全を損わない問題というのはどの感覚を以て言われるのかお答え願います。
  27. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日本の安全というのはこれは日米安全保障条約言つておりますのはいわゆる直接侵略なり、間接侵略なり、若しくはそれに関連するような事項であります。韓国と日本はまだ基本条約等は結ばれておりませんけれども、全体から見て韓国が日本の安全を危うくするような考えを持つておるとは到底考えられません。又元来事の性質が例えば一つの島の帰属の問題を争われるとしましてもこれは日本の安全を、つまり直接なり間接なりの侵略等に関連する問題とは今の実情からは考えておりません。又李承晩ライン等につきましてもこれは一つの問題として抗議をいたし、賠償その他の措置を要求するのはこれは自然のことでありまするけれども、この事件は元来我々としては故意に出たのではなくして、間違いに出でたものと考えております。又これは個々の問題として処理すべきものであつて日本国に対する安全を危うくする問題とは今の実情では考えておらないのであります。
  28. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 この問題は甚だ奇怪でありまして我々は了得できないのでありますが、これは後日に譲ります。
  29. 内村清次

    内村清次君 ちよつと関連して、今の問題は重大ですから関連して……。
  30. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) では内村君。
  31. 内村清次

    内村清次君 先ほど岩木君の質問に対しまして総理大臣李承晩ラインは認めないと、こう言つていらつしやいます。で日本の権益はやはりそのラインは認めない形で今後も漁区の問題にいたしましても、漁獲の問題についての漁船の行動というものは展開されて行く。ところが李承晩大統領がこの声明を出しました中には、これは明らかにそのライン内に入つて来る、即ち日本の漁船、艦船があるとしたならば、これは日本が韓国との関係を元のように敵対的なものにしようと望んでいることである、敵対行動であると、ここまで強く李承晩大統領は声明しておるのですよ。日本総理大臣はこれは日本の権益内である、李承晩ラインは認めない。こういうようなことになつて一国のこの大統領及び又一国の総理大臣がここにラインを基点として一方に侵入すれば敵対行動と認めるというような重大発言がなされておるのに、一体これはどういうふうになつて参りますか。外務大臣のおつしやつたようなことではこれは到底現地におけるところの紛争というものは解決しないのです。重大な問題になつて来るのですよ。この点は総理大臣といたしましては明確に私は先ほども、昨日の質問にもこれは言つておりましたが、根本的な解決を早急にとる、而も又早急にとる以前に、これは総理大臣の言を、即ち日本は信じてどこまでも漁船その他は現地の、即ち漁区の問題や、或いは漁獲の問題は、行動をするというようなことを併せて声明一つするような答弁がなくてはならない時機ではなかろうかと思う。それに対しましては総理大臣はどうお考えになりますか。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 韓国側ではいろいろの声明とか発表とかをいたしておりまするが、それが常に政府の正確な発表であるか、或いは李承晩大統領の発表であるか多少正確でない場合が多いのでありまして、これは恐らく韓国側でまだそういう点についてのやり方が確定していないからじやないかと思います。いずれにいたしましても、李承晩大統領は、日本と韓国の間の関係をできるだけ密接にすることがこの際は非常に必要だということを力説しておられるのでありまして、私はその根本的な考え方から出発いたしまして、勿論この国と国との間のいろいろの意見の相違はありましよう、これらは忍耐強く相互に話合つて解決する以外に方法はないのでありまするが、併し根本的には日韓両国の親善ということを李承晩大統領も基調といたしており、吉田総理もこれには全く同意見なのでありまするから、これで解決ができると私どもは信じております。いずれにしましても只今岩木委員お答えいたしましたのは、こういう根本観念からいたしまして、李承晩ラインについては、これは勿論我がほうには異議があり、認めておりませんけれども、併しそれによつての紛争は日本の安全を危殆ならしめる種類の、性質のものでない、こう信じておるのであります。
  33. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 ますます奇々怪々の御答弁でありますけれども、これは私は他に重要な質問を総理にいたしたい関係上省略、後日に譲ります。  次にお尋ねいたしたいことは、朝鮮に昨日五百名余りのものがそれぞれ行つておるということを、内村委員の質問に対して答えられておりますが、極く最近パキスタンのイムロウプ新聞の報道によりますれば、日本の保安隊が米国の海兵隊に分属配置されておる。それは今朝鮮にありますインドの野戦病院で治療を受けている日本人の兵士は、日本の訓練所で特別の訓練を受けて朝鮮に送られたものである。彼らは特別の兵器で二週間の訓練を受け、七十人乃至八十人ずつに分れて米海軍陸戦隊第一師団の野戦部隊に送られて来たのである。こうして負傷した日本兵の語るところによると、在鮮米軍司令部は日本人兵士を最も危険なところに使つているので、日本兵士のうちに一番多くの死傷者が出ている。こう言つておりますが、政府朝鮮には絶対派遣しないと言つておるが、事実はかようなことがあるのではないかどうか、総理にお尋ねいたします。
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今パキスタンの新聞をお読みになつて、そういうことがあるのかということですが、私は責任を持つて申上げます。断じてさような事実なし。私は身を以て保安隊は海外へ出動させんと言つております。さような事実は毛頭ないということをはつきりこの席上からお答えいたします。誤解があつてはいけませんから、重ねて私は申上げます。
  35. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 これはどうも押し問答で、私も現場を見たわけではないから言えないが、この噂は相当……火のないところへ煙の譬えに等しい状態が全世界に展開されておるのでありますから、若しやこういうことがあつてはいけないから、政府は早急に調査をされたい。  それからついでのことでお尋ねいたしたいのでありますが、若し外敵の侵略があつた場合に、日本の保安隊はこれに対抗するということは、これは当然のこととして、これらの場合の指揮者はアメリカの軍事顧問団が現在何名おられるか知りませんが、その指揮下に入るのか、駐留軍の指揮下に入るのか、或いは日本総理大臣の指揮下に入るのではないか、そうであるならば日本総理大臣の指揮というものには、軍事訓練をしなければならない、総理大臣行動訓練をしなければならない。一体外敵が侵入したというような重大な事態の場合に、日本の保安隊の指揮者というものは、誰がどうするのでありますか、明らかにして頂きたい。
  36. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 常々申上げます通り、外敵の直接侵略に対しては、日米安全保障条約によつてアメリカ軍がこれに当るのであります。保安隊は申すまでもなく、国内の平和と治安を維持するための部隊であります。いわゆる普通の警察力では到底これを措置し得ないような場合において、初めて出動する部隊であります。従つて不幸に突然外敵が侵入して来た場合どうするか、その場合は勿論直接侵略でありますから、主としてアメリカ軍がこれに当るのは当然であります。併しながらその場合においては、日本人としておめおめ手を挙げておるわけに行きません。これはいつも申上げます通り日本の警察であろうと何であろうと、保安隊であろうと、必ずやこれに立向うであろうと考えております。併しながら直接侵略に対しては、常に米軍が当つておるのでありますから、米軍がこれについてすべての計画を立てております。我々保安隊は内地の治安維持のためのものでありますから、普段からそういう場合を予想して、総理大臣がこれの指揮に当るというようなことは考えておりません。
  37. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 これは日米安全保障条約の審議の場合にも、相当問題になつてつたのでありますが、そのときには日本総理大臣が指揮をすると、私は確かに答弁をされたと思う。今の大臣の御答弁アメリカ軍の指揮下に入る、こういうことなんです。日米安全保障条約アメリカ軍の指揮下に入るということがどこかにあるのかどうか。一体外国の軍隊の指揮下にありまして砲煙弾雨の中に国民の命をさらすということがあり得るということは、これは重大な問題で、日本のいわゆる祖国防衛態勢国民は貴重な金を投じておると思われるが、これに対する指揮者がアメリカ軍が指揮者であつたら、アメリカ軍の指揮者が沖縄に出ろ、朝鮮に出ろと言つたらこれに従わなければならんことになるが、海外に派遣しないと言つても、アメリカ軍が作戦の必要上海外に派遣を命じた場合には、それに従わなければならんということになると思いますが、如何なものでありますか。
  38. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は保安隊はアメリカ軍の指揮下に入るのだということを毛頭言つた覚えはありません。今私が答弁したのも、さようなことを言つておるのじやありません。日本の保安隊は内地の平和と枚序を維持するために行動する部隊であるから、決してアメリカの指揮下に入るのではない、直接侵略の場合においては主としてアメリカ軍が当るのであるが、併しその場合においては勿論日本の警察であろうと、保安隊であろうと出動するであろう、その場合においても決してアメリカ軍の指揮下に入るのじやない、日本の保安隊、警察隊は、日本の指揮下に入つて行動することは、これは当然の事実であると私は考えておる。
  39. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連して、そうすると行政協定第三十四条の緊急事態に共同措置をとる限りは統一した指揮権が必要なんだ。現に北大西洋軍においてはそれをやつておるわけです。そうしてはつきりとアメリカがこれは指揮権を握つてつて渡さない。イギリス軍や、フランス軍には渡さないのです。何とかしてアメリカは握つている。第一代目はアイゼンハワー、第三代目はリツジウエー、これが北大西洋同盟軍の指揮権を握る。それとの関連において、日本行政協定二十四条の緊急事態が起つた場合はどうするか、今の答弁答弁にならんと思う。
  40. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 北大西洋条約がどうであろうと、日本アメリカとの関係は、日本アメリカの間できめるのであります。行政協定二十四条に日米両国間で適当な措置協議すると書いてある。適当なことを協議すればよろしいのであつて、基地をどこにするかというような問題もあり、別々の指揮をしたからできないということはちつともない。一番適切な方法協議すればいい。それだけのことであります。
  41. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことは事実に合わないと思います。現に共同措置ということをきめておいて、そうして統一したところの作戦をさせる場合に、そういうようなばらばらでいいというようなことは事実不可能だと思う。北大西洋条約はどうであろうと、日本はどうだという説明がありましたが、北大西洋軍の前例というものは非常に大きく、日本にも適用されると思います。そういう点から考えて、この点がすでに審議のときも問題になつたのですが、未だにこれは不明瞭になつているわけであります。日本軍がアメリカ軍の指揮下に入らないという保証はどのようにして確立するか、この点はつきり吉田総理大臣から承わりたい。
  42. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今日本軍がと言われましたが軍はないのであります。
  43. 岩間正男

    ○岩間正男君 ありますよ。
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 北大西洋条約は各国の軍隊の集まりでありますから、統一指揮が当然必要かも知れません。日本の場合は今保安庁長官が言われたように、直接侵略に当るものはアメリカの駐留軍であり、日本の保安隊は国内の平和と秩序を守り、国民の生命と財産を守る、おのずから任務が違つて来るのであります。従つてその間をどういうふうに考慮するかということは協議はいたしまするが、それがどちらの指揮に誰が入るのだということはない。おのずから任務も違うのであります。
  45. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 この問題も非常にまだ問題が残つておりますが、別の機会に譲ります。  総理大臣にお尋ねいたしたいのは、中共の引揚、帰還と申しますか、今民間団体でやつておる、政府がこれにタツチしようとしたがノツク・アウトを受けた。ところが民間代表が今のところスムースに順序よく行きそうな気配であることは、御同慶の至りに堪えません。政府はこうした問題に対して国費その他で引揚者に対する万般の措置をとろうということは民間を政府の、或いは合体の作業だとも見られるのでありますが、そこで私がお尋ねいたしたいのは、こういう工合に民間の団体が、例えばバトル法に抵触しない物資を、中共と民間団体が貿易促進の行動をとつたものに対しましては、中共引揚と同様な工合に、この渇望する貿易伸張の実態から見ても、政府はこれを助成すべきだ、こう思うのでありますが、総理大臣はどうお考えになりますか。
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと質問の御趣旨がわからないが、どういうことですか。
  47. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 どうも失礼いたしました。中共引揚は民間団体が中心となつて引揚の促進が具体化して、実現が今なされんとして、政府はそれをうしろで助成している。このような工合に中共貿易も、民間団体が、中共の民間団体と交渉をして、いわゆる国民的な自主貿易が、バトル法に抵触しない範囲内で行われるという場合があつたならば、政府はそれを容認するかどうか。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは場合にもよりましようが、ちよつと私も場合を想像ができないのでありますが、併し主義を異にいたしておつても、貿易ができれば結構な話であります。ただそれが国連協定に反しないならば、いわゆる正常の貿易であるならば、正常の貿易というのもおかしな話でありますが、貿易ができれば差支えない限り貿易をさしたいという希望であります。今の引揚の問題も条約のない国との話というような固苦しいことではなくて、引揚が一人でも余計できれば結構な話で、これは関係の親戚故旧からいつて見ても喜ばしいことである。成るべく政府はこれに便宜を与える。貿易においても、条約がないから不法なりといつて貿易を禁ずる考えはありません。貿易ができれば、いわゆる国連協定その他に反しない貿易であるならば、これは政府では成るべく許したいと思います。実際問題については、これは通産大臣からお聞きを願いたいと思います。
  49. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 私は実際問題をお尋ねしているのではないのであつて国民の在外引揚については民間団体でやつて、これは結構なことで政府は歓迎をしているのであります。国連規約に抵触しない範囲内、即ちバトル法には抵触しないということになつて、民間団体がいわゆる中共の民間団体と相談して、おのおの民間同士の話合で中共貿易をやろうというものであつたならば、政府はこれを促進すべきことだと、同じ筆法から思うものでありますが、その辺を明らかにしてもらいたい。
  50. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 国連協定の線に反せざる限り、民間団体との交易関係についてはこれを認める方針でありまして、漸次、例えば品目等についてもこれを増加することにいたしておることは御承知の通りと存じます。
  51. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 関連して。私は今の問題について、具体的にお尋ねを関連して申上げたいと存じます。それは十二月の末に、本委員会において通産大臣にいろいろお尋ねをいたしたのでありますが、実は民間で巴商事が相当の契約をば結んで参りました。ところがその後のその具体化についてはいろいろな隘路がありまして、これは実際に進捗していない。その隘路の一つとしては、日本の銀行が輸入信用状の開設について、これを渋つておる。そのためにそれができないという一つの問題がある。それと最近台湾の中立化解除の問題によりまして、今までもこの保険を、海保或いは災保について、この貿易船について渋つておりました保険会社が更に渋つてつた。そこで外国の保険会社によつてこれをばしておつたのでありますが、それさえも今日渋りつつあるという状態、こういうのが実は隘路になつておるわけであります。これを如何に打開されようとするのか。それから具体的にそういう問題が非常に渋つておりますために、巴商事は実際に契約を結びながら、その実行ができなかつた。ところが東京貿易商会が輸入先行の方法によりまして、実は塘沽からふすまをば一千トンばかり持つて参りまして、釧路でそのバーターとしてこんぶを相当数買込みまして、イギリスの船に載せてこれが出帆をしておる。これがそのうち安全に向うにつくかどうかといつたようなことは、これは将来この方面の製品に非常な影響があるわけです。それに対して政府は一体どのような安全の保障のための措置をとつておられるかどうか。こういう具体的な問題についてお答えを願えれば、或いは所信をはつきりして頂ければ、大分その点はつきりして来るんじやないかというのでお尋ねするわけであります。
  52. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) お答えいたします。巴商事の場合につきましては、私はその銀行が巴商事の信用が十分でないというところからクレジツトを与えなかつたものと承知いたしております。従いまして若し信用が十分であればクレジツトを与えたものと存ずるのであります。  それから今、あとの問題につきましては私まだ詳しく聞いておりませんが、併し香港決済等の方法によつてつておる分もございまするので、そういつた方法をとつておるのではないか。但し政府としては、これに対して普通の商売のことでございますから、特に保証或いは援助等のことは考えておりません。
  53. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 巴商事に対しては、巴商事そのものがこの信用の状態が、信用がないと申しまするか、疑問があつた、そういう状態であつたろうというお話でありまするが、それでは巴商事に限らず、全般的に対中国貿易の輸入信用状の開設については、政府は銀行に対してこれをなすように、中国貿易の振興の立場から奨励されると申しまするか、支持をされる御意思がありますかどうか、その点お伺いしておきたいと思います。
  54. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 円滑なる両国間の貿易は心から望むところでございますが、銀行等に対してこれに信用状を与えたらどうかというようなことを干渉する立場にはありません。
  55. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それからお尋ねいたしたいことは、これは今日の新聞にも出ておつたことでありますが、今回中共からの引揚の中には、シベリアで共産教育を受けた非常に有能な共産党員が約三千名送り込まれるということが先般来報じられておるのであります。これに対して政府はどういう対策を講じられるか。この受入の方法について承わりたい。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いろいろ報道はされますけれども、実際本当であるかどうかは、来て見なければわからないわけであります。併し今の政府のいろいろの治安上の組織は、たとえそういう人が来ても、一時的に多少の混乱はあるかも知れませんけれども、決して心配のない程度の十分の措置はできるという確信を持つております。
  57. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 次に防衛分担金のことで特に総理にお尋ねいたしたいのであります。防衛分担金につきましては、先の第十三国会でこれが説明をされているのでありますが、ところが六百五十億の防衛分担金のうち、日本政府が直接支出する九十二億及び税金の何がしかを差引いた五百七億というものを、日本側はアメリカの陸海空軍の合同支出官に渡して、アメリカの国庫金にこれを繰入れているのであります。尤もこの繰入の方法につきましては、四期に分つているようでありますが、アメリカの合同支出官は、アメリカ軍の装備その他基地に必要なもの、その他朝鮮作戦に必要なもの等をも含む日本に対して、いろいろ特需を発しているうちから、日本の円小切手でこれを支払うているのであります。と申しますことは、日本防衛分担金を受持つてアメリカと共同支出するということはわかつているが、一体日本の金がアメリカの国庫に入るというようなことは、総理大臣は御承知であるのかどうかということが一点。  それから第二点は、日本が繰入れた五百七億が全部特需に廻つたとは私は決して申しませんが、アメリカ軍が日本に発注した特需のうちには、朝鮮の直接戦闘用、それから韓国軍の装備強化に関する費用、それから韓国の民需用、沖縄空軍基地及び工事用並びに民需用が含まれているもののようでありますが、そういつたような工合に、日本防衛分担金がアメリカの合同支出官において一部これらもミツクスされて、どんぶりの中に入つて使用されているということは御承知でありますかどうかお尋ねいたしたいと思います。
  58. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) それは…。
  59. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 いや、総理大臣に御承知であるかどうか伺つているのであります。内容説明を求めているのじやありません。
  60. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 防衛支出金のうち、在日合衆国軍交付金につきましては、アメリカ側の陸海空軍を通じて単一の合同支出官がこれの支出に当つております。この経費はすべて在日合衆国軍の経費の一部に充当するものでございます。明白に朝鮮作戦等の別個の目的のために用いられるものは米側の資金から支出されております。なお日本側の提供した在日合衆国軍交付金によつて支弁した経費につきましては、一件ごとの支出書類の写しをすべて六月末までに日本側に送付しているのであります。それで只今仰せのような、アメリカの支出官の手許に朝鮮に出兵した軍の金までがまぜこぜにされて日本の金が使われているということはございません。
  61. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 アメリカ日本の金を国庫に繰入れて、そうして合同支出官が出しているうちには、今大蔵大臣はその中には日本が出した金は含まれておらないと言つておりますが、含まれておらないという証拠は、それは国会に出せますがどうですか。政府関係の或る書類によりますれば、明らかにこれらの特需代金の支払方法は日米合同協定に入れられた。だからアメリカの金も日米合同勘定に入れられた。日本の金も日米合同勘定に入れられた。名前は合同勘定だが、日本の分はアメリカの国庫に入つちやう。アメリカの国庫に入るという建前になつている。そのうちから特需が発注されている。だからその特需なるものの、告般来の終戦処理費から出すものの問題は別にいたしましても、防衛分担金のものを含んだどんぶりの中から、いわゆる特需の金というものは支払われておる。これは全部とは申しませんが、アメリカも莫大に支出しておるのでありますから、おおむねアメリカの支出金であろうと思いますけれども、併し日本のものも含まれておるということは明らかなんです。若し政府がそうじやないというならば、そうじやない書類を国会に出せますかどうか、これをお尋ねしたい。
  62. 河野一之

    政府委員河野一之君) 私から代つて、五百七億の分担金につきましては、毎四半期十日前に日本銀行における合同支出官の勘定に振込むわけです。そういたしましてこれは明白に在日軍の維持のための経費に充てられております。一件々々ごとの証憑書類、これは非常に厖大なものでございますが、写しを添えまして、翌月の末までに我々の所へ頂戴いたしております。勿論在日米軍の経費は五百七億だけで支弁されておるのではございませんので、そのほかに米軍が自身で負担しておる分がございます。これは支出官が八人に亘りまして、これもおのおの日本銀行に口座を持つております。その分につきまして、毎月、翌月末までにその維持のための経費、米側から出した書類を毎月頂いております。我々が今まで調査いたしましたところにおきましては、特需等の経費は出しておりません。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今河野主計局長から、アメリカはその共同勘定の中から特需向けを出しておらないと言いますが、昨年十月六日の日本経済新聞を御覧になりますと、こういうふうに書いてあります。この日米行政協定に基く防衛分担金の収支は、これは集計して大体五カ月を経過した後、八月末にその収支を発表いたしましたが、その中で米側負担額の大部分は朝鮮向け特需としての肥料、鉄鉱石、セメント、その他の重工業製品買付けに充てられているといわれている。そうして項目別の支出契約額の累計をちやんと発表しておるのであります。それでこれはもう世間も殆んど周知の問題になつておるのであります。この共同勘定に特需向け勘定が入つておるということが非常に問題になつておるわけです。その点は主計局長はもつと正確にお話になる必要があると思うのです。そこでこういうふうに新聞にもうはつきりと金額まで出ておるのでありますから、今御説明なつたことは、私は非常に事実と違うのではないかと思う。そこで資料を出して頂きたい。資料をお出しになれば、これは正確になつて来ると思う。そこで先ほど言われたことについての詳細な政府側の資料を一つ、司令部側の共同勘定について毎朝報告する義務があるのですから、その資料を出して頂きたい。
  64. 河野一之

    政府委員河野一之君) 新聞記事のことは存じ上げないのであります。合同支出官の勘定で出しておりますものにつきましては、特需というようなものは一切ございません。米側自身の負担でお出しになつておるものがございますが、一々証憑書類を付けて頂いておるのでありますが、その主なるものは、輸送であるとか、或いは通信機であるとか、そういつたことにつきましての一切のなにがございます。最近までのそれの状況ということでございますれば、資料を御提出できると思います。
  65. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 これは、今木村委員から触れられましたが、事実は、通信費とか輸送費という問題もございますが、特需という言葉が適当であるかどうか知りませんが、アメリカの合同支出官から日本の民間に発注したようなものがミツクスされたどんぶりの国庫の中から、特別国庫から円小切手で支払われておる事実は明らかであります。それでこれがいわゆる朝鮮の民需とか、朝鮮の作戦であるとか、沖縄の工事、沖縄の民需であるとか、いろいろの問題に使われておるものにも含んでおるということは、これは事実であります。で、若しそれが一々そうでないというならば、速かに政府は五百七億の日本側が支出した内訳を一つ国会提出してもらいたい。  それから次はお伺いいたしたいことは、本年度六百五十億の防衛支出金の中から五百七億をアメリカの国庫に入れたというが、この防衛支出金の中から政府は終戦処理費に四十二億を流用してないかどうかお伺いいたしたい。
  66. 河野一之

    政府委員河野一之君) 岩木さんのおつしやる意味がちよつとわかりかねますが、この中から終戦処理費を出した事実はございません。
  67. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 それでは六百五十億の中から五百七億を出した残余の金は何に使われたのか。どの名目で使つたのですか。防衛支出金を終戦処理費の目的に出しておるのではないのですか、四十二億を。明らかにこれは財政法違反でありますが、どうですか。
  68. 河野一之

    政府委員河野一之君) 六百五十億の支出の内訳につきましては、補正予算の際に詳細に御説明申上げたと思つております。つまり施設の維持に関する経費、施設の維持の、借料でありまするとか、その他各種の補償関係、漁業の補償でありまするとか、鉱工業に関する補償でありまするとか、そういつた経費であるということを申上げたいと思います。
  69. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 これは問題が小さくなりましたが、それはそうではないのです。これはもう確かに政府から出しておる書類に四十二億を一時流用したということが明らかに出ておる。であるから、その一時流用によつてアメリカから一九五一アメリカ会計年度で二万九千ドルですか、ドルで弁済金を受取つておる事実があるじやないですか。どうですか。
  70. 河野一之

    政府委員河野一之君) 防衛支出金を終戦処理費の目的に使つたという事実はございません。
  71. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 このアメリカの合同勘定に入れられた、即ちアメリカの国庫に日本の金が繰入れられるということについては、財政法違反だと思いますが、大臣は如何に思いますか。
  72. 河野一之

    政府委員河野一之君) 私から…、在日米軍交付金といしまして米軍に交付してあるのでございまして、これは別に財政法違反だとは考えないのであります。
  73. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 これは米軍に交付したのではなくして、アメリカの国庫に入れられたので、明らかに財政法違反であろうと思います。併しこの議論は又あとの機会に譲りたいと思います。  それから最後に、もう時間がないようでありまするので、総理にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、総理はこの自衛力漸増という問題につきまして、国民の、財政上国力が伴うならば順次やると言つておるが、最近アメリカからも日本の保安隊を三十一万五千に殖やすとか、いろいろの希望があるとよく世間、新聞紙上その他で謳つておるのでありますが、先般外務省の伊関局長が大阪で、本年度、二十八年度に取りあえず保安隊四万を増強して十五万にすることになつた。これに基いて保安隊関係の発註等が計画されておると言明いたしておりまするが、一体この自衛力の漸増計画というものは、総理大臣は、国力の増強を以て、或いは国民経済の改善を待つてと言うが、実際どのような目標で、目標というものが、どのような目標で何年度に亘つてどうしようと言われておるのか、この辺を承わりたいと思います。
  74. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 伊関君のことが新聞に発表になつておりまするから、誤解があつちやいけないから申上げたいと思います。伊関君については、本人にそういうことを言つた事実があつたのかどうか聞き質した。断じてさような事実はない。というのは、今日本で保安隊を増強、増員する計画はない、アメリカから要請があつても、これはできない、ただ併し日本の状況からいつて、万一必要があれば、三万くらいは増強し得る可能性はあるじやろう、これだけのことを言つたに過ぎないのでありまして、これを増強するとか言つた事実は毛頭ないということであります。責任者たる私から誤解のないように申上げたいのであります。  それから自衛力の増強につきましては、これは私は昨日の委員会で申上げた通りで、一体自衛力とは何ぞやということに対して、我々は内外から来る如何なる原因たるとを問わず、日本の安全、平和を撹乱する行為に対して、これを抑圧する総合力と申しておるのであります。それで保安隊、警察、これを自衛力の一部であろうと考えておるのであります。そこで我々は国内情勢なり、国際情勢とすべて睨み合せて、如何に警察力を増強して行くか、或いは保安隊の内容を如何にして整備して行くか、この計画を今立てておるのであります。大きく言えば又工業力の発展、或いは電力の開発だとか、いろいろな面において日本のいわゆる自衛力の増強というものは、これは当然図つて行かなくちやならんと考えております。政府においては、この点について種々考慮をめぐらしておるのであります。今申上げました通り、直接の内地の平和を維持するためには、警察法の改正を以て一面をやり、又一面保安隊は増強はいたしませんが、内容の整備充実を図つて治安の維持の万全を期したい、こう考えております。
  75. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長、ちよつと関連して……。
  76. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 岩間君、簡単に願いますよ。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の木村保安庁長官の説明だけでも私は非常に問題だと思います。伊關局長はどういう考えで言つたか知れないのですが、要請があれば三万くらいは増強できる可能性はあるだろう、こういうようなことは、政府が、総理を勧めとして保安庁長官もはつきり増強しない。こう言つておる現段階において、そういう可能性があるだろうというような、外務関係の局長がそういうような話をするということは、同時にこれはアメリカ側をして要請させる根拠になり得る。そういう点からこの発言は非常に軽々に聞き逃すことはできないと思いますが、そういう点で政府の方針と違反するようなこのような言明に対して総理はどのように考えるか、総理から。
  78. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 岩間君は非常に私の言つたことを誤解しておるようでありますが、アメリカから要請があつたならば三万は増強すると言つたのではない。必要があるならば三万くらい増強する能力があるだろう、こう言つた。能力の問題である。決してアメリカの要請によつて三万を増強するとか何とか言つたのではない。このことは私は只今申上げておく。常に私は、保安隊は現在の十一万で今のところは十分である、情勢の変化によつてはわからんが、現在の情勢においては今のところ十一万以上に増強する必要なし、これを整理充実して行くのだ、こう言つておる。伊關君もまさに裏を返せば、私の言つた通りであります。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 要請云々は別として、必要があればということであつて政府のとつておる方針と違反する。こういうような可能性があるとか何とかいうことは、政府当局が責任を以て発表すべき問題であつて、一局長がこのような見通しについて発表すべきではない。同時にアメリカがこれを聞き付けたら、三万できるのなら七万でも増強してもらいたい、こういうような根拠になり得る。(「了解々々」「答弁必要なし」と呼ぶ者あり)なぜ必要がないか。重大問題じやないか。総理答弁を願います。
  80. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 重ねて私から。私は常に、要請があつても、只今の段階においては増強しない。伊關君も仮定論である。決して今これを必要があるからやろうというのではない。万一必要があつた場合、それだけの能力があるだろうと、こう言つたのです。
  81. 岩間正男

    ○岩間正男君 仮定論は言わんと言つたじやないか。
  82. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 時間がないようですから、それでは総理に一点だけお尋ねしたいと思います。総理にお聞きしたいのは、皆有能な大臣が御答弁になるので、どうもわけがわからなくなるのでありますが、(笑声)アイゼンハワー大統領は、先般ヤルタ協定は破棄する考えのある意味のことが謳われ、その後多少修正されましたが、とにかくアジアにおける民族解放であるとか、或いは奴隷解放であるとかいつたような問題、即これは日本などを意味した問題なのでありますが、これは領土の問題にも重大関連する問題でありますと共に、現在の日米安全保障条約並びに行政協定の問題などにもまんざら関係のないことはない。もとより日米が共同して日本防衛するという建前については、このヤルタ協定破棄の問題とは直接関係はないけれども、これらのものは一貫的に流れておるのであります。例えば行政協定における裁判管轄権の問題にいたしましても、基地獲得の問題にいたしましても、その他もう各種の問題にいたしましても、現在日本独立がどこにあるか、かしこにあるかわからんくらいのような、この歪められたような情勢の日本の姿というものは、早く経済復興と共に、併せてこれらの条約協定においても改正をする政府の努力がなくちやならんと思うのでありますが、こうしたような問題に相呼応して、又は行政協定がすでに一年を閲せんといたしておりますが、政府はこうした問題を引つくるめて外交交渉及びこれらの行政協定の改正に今準備を進められておるのかどうか。或いはそういう考えを持つておるのかどうか。これは是非総理にお尋ねしたい。
  83. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 行政協定については外務大臣からすでにお答えをいたしております。NATO条約ですか、協定が発効したらば、そのときに行政協定考えるということになつております。その他新大統領の声明等について、私もその意味合いについては十分公式に確めておりませんし、又新大統領の声明を問題にしてとやかく言うことは、私として差控えます。
  84. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これにて暫時休憩いたします。    午後零時五十八分休憩    —————・—————    午後二時三十四分開会
  85. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今より午前に引続き質疑を続行いたします。
  86. 鈴木強平

    鈴木強平君 日米の安保条約なり或いは行政協定なりでいろいろな論議が尽されております際、私といたしましてはやわらかな方面の文化問題について首相の所信をお尋ねしたいと思います。  最近私どもの仲間の文化人が有名と無名を問わずフランスに渡つて大いにその文化を堪能しておりますが、この際政府はフランスとの間に文化協定をお作りになるような御意思はないか。若し文化協定をお作りになるのでありますならば、どのような内容を以てお作りになりますか。首相にお尋ねいたします。
  87. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 文化協定のようなものはいずれの国とも大いにやろうと思つておりまするが、フランスのごときについては、特にその必要を認めております。で、これは普通の一般の文化交流というようなこと以外に、例えば留学生の交換とか、教授の交換、更に加えては、例えば学位を双方で認め合うというようなところまで行きたいと思いまして、只今具体的に話を続けております。これは近いうちに殆んど解決するのじやないかと思つております。多少予算上の措置が、フランス側でも要るようでありまするが、これにつきましても大体の話合は順調に進んでおります。
  88. 鈴木強平

    鈴木強平君 それでは政府は近いうちに文化協定をおやりになるように承わつて差支えないようでございますが、然らばその文化協定内容をもう少し詳細にお話願いたいことと、同時に又いつ頃までにおやりになるか、大体の、フランスにおいて予算措置が必要かも知れませんが、すでに相当話合いが進んでおるのではないかと思いますので、もう少し詳細にお話を願いたいと思います。と申しますのは、本年の六月になりますれば皇太子殿下が英国に戴冠式にお出かけになるに当りましても、フランスには両三度お立寄りになると聞いております。このような協定が結ばれまするならば従つて文化使節の派遣もされるだろうと思います。そうすれば文化使節の派遣などは皇太子殿下の御出発になる前がよいのではないかと思いますので、もう少し詳細に承わりたいと思います。
  89. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 政府は昨年の夏以来日本におきましてフランス大使館との間に協定交渉を続けておるのであります。フランス側は各国との間にもうすでに文化協定を作つておりますが、東亜におきましては日本が一番重要だというので日本との協定を強く希望しております。その内容はまだ交渉中でありますので確定はいたしておりませんが、今申上げました通り一般の文化協定と同様に書籍や刊行物その他の文化資料の送付とか、交換とか或いは放送、演劇、美術、音楽、スポーツ等を通ずる交歓、留学生、教授その他文化人の派遣交換、或いはこれに対する便宜供与、文化使節に対する便宜供与等の原則的な規定が含まれるはずであります。又協定の目的を達成するために日仏両国人から成る混合委員会を置くという形をとりたいと思つておりますが、大体こういうような内容にいたしまして時期はまだはつきりわかりませんが、恐らくかなり近いうちに話合いが結末が着くと考えております。
  90. 鈴木強平

    鈴木強平君 今日の朝日新聞にはユーゴースラビアとの通商再開が迫つておる。数日のうちには使節団が派遣せられて機械その他の買付の商談が始まるような報道がされておりますが、果して事実であるか。ユーゴースラビアは御承知の通り共産主義国ではありますけれども、その共産陣営と自由主義陣営の間に入つて丁度日本が自由主義国に属しておりますけれども、ソ連や中共との間近かに、又朝鮮事変の側に控えております関係から同じ苦しみを持つておると思う。そういう国々でありますから、立場こそ違つておりましても、その環境からいろいろな文化なり経済なり或いは貿易なりの話が相当にとり進められてよい折であろうと考えております。今日の朝日の紙上から言つてかような使節団が参つた節に、貿易協定までおやりになるか、或いは貿易協定を結んだ場合におきましては、どういうような深さを持つておやりになるかお伺いしたいと思います。
  91. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ユーゴとの間の貿易は戦前も戦後も極めて少額でありましたが、昨年日本の公使館が先方にできましてユーゴの公使も日本にやつて参りました。その結果双方で似て産業経済等の事情をよく御紹介いたしました上い、たまたま日本の商社の代表者がユーゴに参りまして、これで大変お互いの間の事情がよくわかりました。で、先方でも工業化の途上にありますものですから、日本からいろいろ機材を買いたいということでありまして、今度一般に日本経済事情の調査のためにセルビヤの共和国の元副首相をいたしておりました人を団長として、三名の政府の調査団が来ることになつております。一行の考えておりますものは、発電所のプラントとか紡績機械、化学工業その他一般の機械のようであります。先方では新たに日本との間に貿易協定を作る下準備も兼ねているように思われますので、この調査団が参りましたならば、この取引希望の品目等をよく検討しますと共に、貿易伸張のための方針等を十分話合いたいと考えております。又電気プラントのごときものは先方で非常に希望いたしますならば、日本の方としては或る程度のクレジツトくらいは提供してもいいのではないかと考えて今その準備をいたしております。
  92. 鈴木強平

    鈴木強平君 ユーゴスラビヤは米国からも百二十億円の食糧品が援助を受けております。さように国がらも決して楽でないのであります。日本も最近のできました機械がなかなか東南アジアに出て行かない。かような折でありますのでそうした機械類などにつきましてはクレジト等は相当にやつてもらいたいと思いますが、大体その辺の見当がおわかりになればお尋ねしたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはまだ使節団が参つて具体的に実際に話合つてみないとわかりませんのですが、先般日本の商社の代表者なども行きまして大体先方の考えていることの外貌はつかまえておりますので、それを基礎にいたしましてあらかじめこちらで打合せをいたしまして、先方の具体的提案があつた場合には、これに早く応じ得るような準備をいたしております。只今のところ額とか量とかというものはちよつとまだ申上げかねるのであります。
  94. 鈴木強平

    鈴木強平君 各委員からいろいろ問題になつておりますが、日韓の問題でございまするが、日本朝鮮との現在の国交回復に大きな支障となつておるようなものは何であるか。これは首相からの答弁を要求します。
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はこの間李承晩大統領に会つて、両国の親善関係を進めたいという話合いをいたしておるのであります。これは抽象論であります。具体的にどうということではありませんが原則として日韓の関係は更に地理的に近いというのみならず、古来いろいろな交通があり、又経済、政治についても朝鮮における影響はすぐ日本に影響するものであるからといつて話合つたのでありますが現在の交渉状態については外務大臣からお答えいたします。
  96. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今まだ停頓いたしておりますが、この前交渉がうまく行きませんでした一番大きな問題は、やはり一般に言われておりますように請求権の問題と、そして今問題になつております。李承晩ライン、その漁業の状況、こういう点が主なる問題でございますが、まだその他にも二、三小さい点ではいろいろ意見のまだ完全に一致しないというのはあります。
  97. 鈴木強平

    鈴木強平君 両国の間に支障となつておりまする請求権の問題、或いは李承晩ラインの問題などにつきましても、政府はお忙がしいだろうけれども、一日も早くこれらの解決に御努力されるように希望いたします。  朝鮮におきましては先月の十五日に通貨の改革をいたしました。御存じのやうにレートを百分の一に下げましたが、今日韓国の六十円は米国の一ドルというような換算率にレートはきまつたのでございまするが、従つて封鎖されて以来、朝鮮の国内の経済情勢は決して楽観を許さない状態でございます。我々は隣国といたしましても又朝鮮が現在事変の中にある、これらの事変を対岸の火災視しているわけには参らんと思うのであります。併しながら今度の通貨の改革をいたしました最大の原因は、国内の物資を米軍に売つて取り得べき金が八千五百万ドルもある。この金が入つて来れば産業の改革もできる。又、国民生活の安定もできるということになつておりますが、漸くこれは米軍との間に話合いができたように聞いております。従いましてこの八千五百万ドルのうち、少くとも二千万ドルは近いうちに食糧となり、或いは肥料となることを朝鮮側は非常に要望していると思うのであります。又国内の産業の回復なりに当りましても、機械やいろいろの設備を一日も早く手に入れなければならない過程におかれているのでございますが、政府といたしましは、さような協定はできないでおつても、事実朝鮮日本との貿易も進んでいるように聞いております。それはどのような方法で援助されますかお伺いいたしたい。
  98. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 朝鮮との間には、援助と申しては少しおかしいのでありますが、いろいろ向うで入手する物資がありますので、これは一部においては貿易でありまするし、同時には一種の国連軍の努力に援助する、つまり国連軍の後方を安定せしめるという意味で必要と考えますので、まだ正式な協定はできておりませんけれども、常に往来をいたしまして物資の供給はいたしております。支払は向うから交換に物資を送ることもありましようし、又ドル等による支払もあるのであります。
  99. 鈴木強平

    鈴木強平君 朝鮮側といたしましては、さような通貨の改革をいたしました関係から、裏付けをいたします物資が早急に国内に入らないと、あたかも蒋介石が本土におられるときに、何回かの通貨改革をいたしましたがいつも失敗いたしました。いわゆる物動計画が立たないために、ついに台湾に引揚げざるを得ないようになつた次第でありますが、この朝鮮の困難な経済事情に対しまして、若し日本政府が対岸の火災視していると、或いは経済的な波潤を来さないとも限らないと思うのであります。まだ国交は回復しておりませんけれども、曾つてGHQ時代にGHQと取結んでおりましたところの通商条約に匹敵するもので相当に物資の交流はしておるはずでございますが、そうした物資を取急いで先方では要求しておるように聞いておりますが、さようなことは日本政府側にはまだお話が十分徹底しておらないのでございましようか、重ねてお尋ねいたします。
  100. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは我々の方でもよく承知しております。でいろいろ実際問題として話合をいたしております。その中には例えばどちらの船を使うかというような問題も含まれておるようでありまするが、日本側としては朝鮮側の必要とする物資は正当の対価で以て成るべく十分に供給する、こういうつもりでやつております。
  101. 鈴木強平

    鈴木強平君 この機会に私は過般の国会朝鮮の市民の方々の御不幸をお慰めするという考えから、朝鮮市民に対しまする緊急援助事業資金というようなものを国会で五万ドル、千八百万円を満場一致通したように考えておりますが、大邦丸事件があり、日韓の感情の余りよくない際におきまして、かような前年の予算で決定したものをどのように施行しておられまするか、お尋ねいたします。
  102. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 朝鮮市民の緊急救済計画というものは国連で立てたものでありまして、国際連合の計画に従つて行うものでありまするが、これはもう純然たる人道的な事業でありまして、何ら政治的にも或いはそのほかの事件にも関係のないことであります。大邦丸事件等はありましても、これと朝鮮一般の国民の救済とを混同すべきものでないと考えております。従いまして最近にはすでに如何なるものを醵出すべきかという物資の細目についても打合せが完了いたしておりまして、この会計年度内に綿製品であるとか医薬品であるとか、こういうものの買付を終つて朝鮮市民に対し、まあ軽少ではありまするが、この救済物資を渡すように今具体的に進めております。
  103. 鈴木強平

    鈴木強平君 昨日の本会議におきましても、いわゆる米国よりの援助物資につきまして、果してこれは我々の方の債務であるかどうであるかという議論があつたのでございまするが、この際日韓両国の国交を回復する上におきましても、感情を融和する点におきましても、今米国に返済すべきものがあるならば、我々はこれをもつて朝鮮側に援助の形をとりたいと思つております。かような点につきましては政府はどのようにお考えになつておりますか、重ねてお尋ねいたします。
  104. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと御質問の意味がはつきりいたさないのでありますが、朝鮮に対する救済等は、これは国連の趣旨に従いまして、日本財政等の許す範囲で勿論ありまするが、従つて軽少ではありますが、できるだけのことはいたす、こういうつもりでおりますが、例えばアメリカ日本との関係のことをこれを朝鮮側に移し替えるというようなことは、これはちよつと困難じやないかと思つております。
  105. 鈴木強平

    鈴木強平君 同僚委員からも何回か御質疑があつたように思つておりますが、最近日々の新聞は政情の不安定を伝えております。又新聞の経済面を見まするならば、有力なる資本閥の会社が小さな会社の株の買占をしております。株の買占、乗つとり策をやつております。国内の政治的な情勢におきましても、或いは経済情勢におきましても、決して楽観を許さない情勢にありまするが、この際私は同じように敗戦国となつた国、いわゆるドイツ或いはイタリアのような国がどのようにして現在立上つておられるか、その国の政治の情勢はどのようになつておりまするか、その問題につきまして首相からの御答弁を要求します。
  106. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ドイツやイタリアの政治的な情勢と申しますと、なかなかむずかしくて長くお答しなければなりませんが、イタリアにおきましては共産党もなかなか有力でありまするが、只今のガスペリ内閣というのは一九四五年つまり昭和二十年からできておりまして、その間初めは連立内閣でありしたが、昭和二十二年に共産党を排除しまして現在のガスペリ内閣まで七年間継続いたしております。これは只今はキリスト教民主党と共和党との連立でありまするが、依然として強力に続いております。但し共産党の力もなかなか強いのでありまするが、ガスペリ首相はよくこれに戦つてずつと勝利を占めております。ドイツのほうは今まだ完全に独立という形にはなつておりませんが、いろいろの党派がありまするが、共産党の力は非常に弱いようであります。ただ欧洲総合等の問題をめぐりまして国内の政党の意見は必ずしも一致しておらないのであります。経済的に見ますると、ドイツの方はかなり産業の回復、貿易の回復等がうまく行つておるようであります。イタリーのほうは、如何せん、資源に非常に乏しいものでありますから、まだ前途になかなか困難があるようでありまするが、ガスペリ首相の統率の下にかなりうまく、乏しい資源でありまするが運営されて来て、大分国運は回復して来ておる、こう考えております。
  107. 鈴木強平

    鈴木強平君 私の聞きたいところはちよつと違つておるのですが、首相によくお聞きを願つておいて首相からの御答弁を願いたいと思います。今日西ドイツがその貿易政策におきましても、又国内の政治の安定においても、日本よりずつと優れておる。又イタリアにおいても同様であろうと思うのであります。一体我々が戦争に負けて武力をなげうつて、何のよりどころがあつて今後我々は立つて行くか。敗戦国であるイタリア或いはドイツなどは、武力のない国柄といたしましてただ愛情に生きるより途がない。その愛情とは宗教的なつながりを持つ愛情である。従つて只今外相のお話があつた通り、終戦後大きく宗教問題が取上げられて来ております。そうしてドイツのごときもキリスト教民主連盟、イタリアはキリスト教民主党、さように宗教を頭にかざしてそうして国民の盛り上る意欲を引つ張つて来ております。負けた日本といたしましても、少くとも一つくらいの宗教的政党が置かるべきだろうと思う。今日国内が政治的にも倫理性を欠いておる。政党においても経済団体におきましても、労せずして株を買占めて会社をとつてしまつておる。同じ政党の中においても規律を守らなくても何ら非難を受けない。かような情勢であつては国内の発展は期し得られないと思うのでございます。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、笑声)従つて吉田首相は施政の上に宗教というものをどのようにお考えになつておられるか。宗教という言葉が過ぎるならば、愛情、父母子弟の愛情、隣人愛、社会愛、国家愛、かような意味におきまする政治との繋りについてお尋ねいたします。
  108. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。今宗教的の政党ができてもいいじやないかとか、若しくは宗教が国政に反映してもいいじやないか、私はお説はよくわかります。又至極御尤もだと思います。ただ問題は日本の新憲法におきましては、国政と宗教というものは全く分離しておることは憲法二十条に書いてある通りでございます。でございますから、我々といたしましても、やはり国民の精神のよりどころとしては、宗教の信念が国民に浸透していいと思いますけれども、政治にこれを反映さすということにつきましては少し問題があろうかと思います。でございますから、政党として宗教団体ができましても、併しその宗教団体が一つの政党になり、その政党が国政をとるということになりますというと、あからさまにその特色を施政の上に及ぼすということは、憲法上許されないことであると思います。併しお説はよく我々として考えまして、国民精神の作興をしなければならんと、こう考えております。
  109. 鈴木強平

    鈴木強平君 どうもお答えが私といたしましては納得できません。ドイツにおきましてもいわゆるドイツ連邦共和国と言えば、一九四九年に新たに憲法を制定されまして、その憲法制定のときにも、キリスト教民主連盟、或いはキリスト教社会連盟、この二つの宗教団体は憲法の中に政教の一致を唱えておりましたが、これらは反対に合つてできなかつた。できなかつたけれども、今日、四九年の憲法制定以来、アデナウアー博士はそのキリスト教の教説を以て政治の綱領とし、経済政策としてやつて来ております。而も文部大臣から、私が愛情を説くに当つて、これは政治に混淆できないというようなお話であつては、非常に残念に思う。従つて別に私は西ドイツを先進国と見るわけではありませんけれども我々のために一つ参考となると思うので、ドイツのキリスト教民主連盟がどのような綱領を持つているか、ここで披露したいと思います。同党の綱領は「キリスト教的世界観が准物的世界観に取つて代らなければならない。キリスト教倫理の諸原則が唯物主義の諸原則に取つて代らなければならない。キリスト教倫理の諸原則が個人の権利と義務、経済生活、社会生活、文明及び国家相互の関係に広く行きわたらなければならない。キリスト教的世界観だけが、個人の権利、尊厳及び自由を保障し、そうして国家の構造にだけでなく、個人生活にも、国民生活にも浸透して行く、真の民主主義を保障するものであると謳つている」現にかような考えかたは、我々の考えている民主主義の裏付といたしましては、深い理念と信念に基いた精神的裏付があることを、我々は銘記しなくてはならんと思うのであります。同時にその経済政策はどうであろうか。アーレン地区におきまして出ましたアーレン綱領はかように言つております。「資本主義的経済機構は、ドイツ人の重大利益を正当に取扱うに適切なものではない。政治上、経済上及び社会上の崩壊があつた後においては、新秩序が根本から建設されなければならない。ドイツ産業の新構造というものは、私的資本主義の絶対支配の時代はすでに過ぎたという原則の上に打ち立てなければならない。併し我々は、私的資本主義に代つて、個人の政治的自由及び社会的自由に対して一層脅威を与える国家資本主義には絶対に反対しなければならない、」かように謳つております。而もこの党をリードするところのエルハルド博士は、併しながらキリスト教民主同盟経済に関する一切の強制的方式乃至計画的方式には絶対に反対しなければならないと言つております。丁度日本の国柄と同じでございますが、かような宗教的裏付があるからこそ、ドイツの産業経済の中にも、今政府が出しているところのスト規制法、かような法律を出さずに済む、又教育者に関しましても、義務教育を委されているところの小中学の教員につきましても、政府が心配してかような法律を出さなくてもいいというような精神的裏付があると思います。私はかような点から吉田首相が強い信念を持つて、別に宗教を自由党の上に掲げろというのじやない。さような宗教の倫理性を掲げて行かなければならないと思うのであります。首相の心境をお伺いします。
  110. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。お説尤もでございますが、(「首相の答弁を求めている。」「文部大臣の心境なんか聞いていない」と呼ぶ者あり)日本の新憲法下におきましては、こういうふうになつております。即ち読んでみますと、第二十条でございますが、『信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と、こう書いてあります。それから同時に、第三項に、「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と書いてある。この条文によりまして、国政というものと宗教は完全に分離されているわけであります。併しお説はもうその通りでございます。それでは日本の倫理教育は何によつてやるかと申しますれば、この憲法の全部、と同時に教育基本法というものがございまして、教育基本法は戦後における昔の教育勅語に代るべきものだというふうな意味においてできているのでございまして、その憲法並びに教育基本法に挙げてありますところの内容を主としまして、倫理教育を今後やつて行きたいと、こう考えております。
  111. 鈴木強平

    鈴木強平君 総理の心境を聞いたのに、代つて岡野さんが、ただ単に心境でなくして、御説明でございますので、これは納得しがたいと思うのであります。私はこの際になぜそのような敗戦国のイタリーや西ドイツのことを論ずるか。最近の世上のうるさい最中において、老齢である吉田総理が、而も第四次内閣、六カ年間も政局を担当せられて日夜奮闘せられておるが、同じ負けた国でありまするがイタリーのガスペリはすでに第七次内閣を作つている。而も第一次、第二次と非常に共産党に苦労して、遂に第七次内閣となりまして、一九四八年に解散をいたした際におきましては、そのキリスト教の党員から三百五名の多数の代議士を出している。そうして共和党の十名と合体をいたしまして、三百十五名を以て五百五十余名の議席の議員の中に絶対多数を以て落ちついてお仕事をなさつた。又西ドイツにおきましては、一九四九年の憲法改正以来、アデナウワー博士は七十六歳のお年を召して、そうして今日まで揺ぎない体制を作つておる。三つの大きな負けた国が、おのおの長い間政局を担当せられておるところの首相であられる。そうして、負けた国から立上りを苦労なさつております。併しながら日本におきましては、最近ややもすると現在の吉田内閣につきましてはいろいろの批判が聞えておる。本委員会におきましても、二、三の議員から衆議院におきまするところの舌禍問題を取上げて、首相のお考えはどうかというようなお尋ねがある。私に言わしめるならば、総理の衆議院におけるところの失言のごときは、もつとよく私は吉田首相の肚がわかつて国民としては嬉しいと思つております。(笑声)なぜなら、我々国会議員といえども、いつも国民と喜怒哀楽を共にしたい。苦楽を共にしたい。怒りたいときに怒つて、泣きたいときに泣ける、ここに人間吉田あり方があると思う。(笑声)一つの失言をしたからといつて、その失言を謝つたものを、鬼の首でも取つたように朝な夕なこれに論難を加え、新聞紙は興味中心にこれを報道しておる。我々は高い倫理性から見て、甚だ不満に思うものである。さような三つの国を比べてみまして、吉田首相はおのおの他の首相と違つた考え方を持つて政局を担当しておられると思いますが、かような現在の大局におきまして、たとえてみまするならば、自分の与党である自由党におきましては、かような倫理性に欠けておるが、これすらも直せないというのであるか。或いは世間が、すでに老齢に達しておる年寄りの冷水の間違いがあつたということで、いささかでも自己の信念に揺ぎを来たしているのではないかと……。我々は数日来の総理の如何にもさばさばしたさつぱりした顔を見て安心しておるけれども、首相が答弁に立たないことにつきましては不満の感を持つておる。そういう意味においてどうか遠慮のない腹を割つた答弁を願いたいと思います。
  112. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今文部大臣から私に代つて答弁がありましたが、私は全然同感であります。ただ一言私から附け加えておきたいことは、ドイツ等におきましては、宗教と政治が長年の、これは人種の関係もありましようし、又歴史の関係もありましようが、政治と宗教、或いは各種の組織が非常に深く結び付いておる。これはドイツ特有の状態であります。イタリーはさほどとは思いませんけれども、ドイツにおいては、宗教革命その他以来、宗教と政治が非常によく結び付いております。融け合つておるというか、結び付いておるので、その状態を直ちに日本にすることはできませんが、然らば宗教は要らないか、これは宗教は要らないばかりじやない。日本には又日本のおのずからの宗教があり、又宗教の結び付きがありますが、直ちにドイツの事例を以て日本に律するということは、少し無理かと私は考えます。
  113. 鈴木強平

    鈴木強平君 この間、私は東京で、大雪が降つた日に朝早く起きて街を歩いてみた。前年の雪のときには、なかなか隣近所は起きなかつたが、今度の雪のときには、女中さんやお嬢さんや奥さんまで起きて、隣りの家の前まできれいに雪をかいて道直しをやつた。私はこのお正月、明治神宮に参拝した。その道は如何にもきれいであつて、東京都民の一割の六十万のかたがたがあの寒空に午前零時から朝方まで参拝しておる。又宮中の参賀には、東京都民の六%の方々が参つておられた。地方を見ても、漸く御社仏閣が立直つて参りました。首相の言うように、ドイツだけが宗教が盛んで、日本は宗教が余り盛んでないというようなお話は、なかなか我々は納得できない。而もドイツやイタリーがなぜにあのように、特にドイツの場合のごときは、自分の党派は百三十九名しか持つておらない。自由民主党は五十二名しかない。ドイツ党は十七名しかない。合せて二百八名で、四百四の議席に六名の多数を持つて五年間もやつて来ておる。かように考えまするときに、その裏付は、国内に大きな、何回も負けたドイツといたしましては、一致して立上らなければならないという気慨があると思うのでございます。漸くにいたしまして、国の津々浦々を見ましても、若い者から、女性から、正しさを認識して倫理性を高く掲げて来ております。  我々はこういう際に、日本の文教というものにつきまして一つ目を向けてみたいと思います。先ほど岡野文相からいろいろ憲法上の解釈がございましたが、歴代吉田内閣は文相には党外から持つて来ておる。言い換えますならば、日本の文教政策は、たとえ如何なる政党が組織いたしましても、国是として残しておきたい、国是として一つ方法を立てて行きたい、従つて党外から相当なかたを引つ張つて来たと思います。今回は岡野さんが文部大臣となつておられますが、恐らく岡野さんは、吉田内閣におきまするところの、或いは自由党といたしましても、第一級の人物である(笑声)というような観点から推されて、その位置に入つたと思うのであります。併しながら、今回の義務教育学校職員法のあれを見ましても、なかなか納得のできない点があるのであります。  先ず文教に対しまするところの予算でございますが、日本の倫理性を確立し、日本の将来を保証するところの若人を生む文教政策におきましての予算は、この数年来少しも殖えておらない。他の予算と殖える率は大した差がない。少くとも岡野文相がなつた以上、閣内においても有力であるからこそなつたのだと思う。政治の倫理性を確立する上におきましても、或いは経済の上におきまするところの規律を確立するにいたしましても、何といたしましても文教に待たなくちやならん。かように考えまするときに、岡野文相は今度の文部省の予算で満足しておられるかどうか、先ずお尋ねいたします。
  114. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。文部省の予算が余り来年度殖えておらんというお説でございますが、無論私どもといたしましても、十分なる満足すべき予算とは考えておりません。それは戦後の文教政策が非常に大転換をしまして、又新らしい制度が、地方財政、国家財政の非常に窮屈なときにできましたので、身に余る完備したところの制度になつております。これを年々充実して行くということになつおりおますが、来年度予算におきましては、総体的に見まして、前年度より実質上七十億くらい殖えております。併し、先ほども申上げましたように、これを以て十分とは申しませんが、先ず私どもが考えておりますところの文教政策を実施して行くのには大体やつて行けるのではないかと、こう考えております。なお今後とも、文教は国の大本でございますから、これに対して行きまして、片時も早く只今のよい制度を完備して行きたいと考えております。
  115. 鈴木強平

    鈴木強平君 今回提出されております義務教育学校職員法、この法律の中に、地方公務員であつた教職員は国家公務員になるのだと、いわゆる優遇されることになるのだと政府言つております。私もこの説には賛成いたします。我々は日夜かように働いておるときに、自分の子弟は学校の先生に任せなければならない。家に帰るときには疲れて帰るので、決して子供のために自分のよい教育はできないのであります。従いまして、少くとも基礎教育である小中学の先生方におきましては、最もすぐれたかたがその位置につかなかつたならば、大変なことになるであろうと思います。併しながら今日の情勢におきましては、小中学の先生というものは大体なりたければなれる、就職を希望すればなれる情勢でございます。御存じのように、日本の一流の会社に入るのには、先ず学校のうちで百人の中で何人というような成績で…、学校に入り、学校を出て参りますると、就職するときには百人のうちで何人ということにならなければ、いい産業会社には入れない。その産業会社に入つて僅かに物を売り、銀行の窓口でお札の勘定をするに過ぎない。最も大事な第二の国民を任せる日本の小中学の教育を担当する先生方の就職の節の目は余りにも荒ぽい、大き過ぎる。さような観点に立ちまして、私は現在の小中学の先生方の考え方が、まずみずからの生活権を要求しておる、未完成の人間がその位置についておる、かようなことであつてどうしていい教育ができるかと考えるのであります。そういう見地から、先ず文部省の予算の中の、教養費はどのように出しておるか、これを一つ検討してみたいと思います。  先ず教職員の資格講習費、教職員の教養費として予算にのつておりまするものは、今年度は二千三百十三万円に過ぎません。前年度より八百十九万円を減少しております。若し先生を六十万といたしますならば、一冊の本も買えない。これが現在の教養の実費があるのでございます。或いは私の予算の見方が間違つておるか、文相の教養費に関するところの御意見を承わりたいと思います。
  116. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 細かい教字でございますから、政府委員から御説明させます。
  117. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 代つてお答えいたします。御承知のように、免許制度の下におきまする、教職員の再教育十年計画を先般から進行いたしておりまして、明年度はその六カ年目にあたつております。すでにその計画によりまする予定の計画以上に、従来実施いたしておるようなわけであります。御指摘のような点につきましては十分文部省どいたしまして留意いたしております。
  118. 鈴木強平

    鈴木強平君 その予算額……。
  119. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 只今御指摘のがその額でございます。そのほか教職員の優秀な者を大学その他において、いわゆる内地研究的に、研究せしめる費用が、科学研究費の一部等を充当いたして実施いたしております。
  120. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 鈴木君大分時間が……。
  121. 鈴木強平

    鈴木強平君 いやまだ時間は過ぎていない。この法律案の中に第六章に謳つてありますが、六章の中の第十四条「教職員は、その職責を遂行するため、絶えず研究と修養に努めなければならない。」又第十五条には「校長及び教員には、研修を受ける機会が与えられなければならない」と、明らかに条文にも謳つておる。先ほどの御答弁の中にもありましたが、恐らくそれは各地方の先生が中央に参りまして、国立大学の中に入つて、そうして勉強する。再資格を取るための費用であろうと思いますが、その費用の予算に一億七千万計上いたしてありますけれども一人につきますならば、僅かに年額三百円余に過ぎない。かような予算を以てして、どうして小中学の基本的な教育ができるかということであります。今も法文の条を読みましたが、常に学校の先生は研究と、自己の修養にいそしまなければならない。従つて学校の先生は単なる労働者ではない。学校から帰つて、家に来て遊んでばかりはいられない。帰つたならば帰つたなりに本を読まなければならない。又頭のよくない生徒を家庭でなく、自分の家に呼んで教えもしなければならない。かような天職とも言うべき職を持つている先生に対しまして、文部省の予算といたしましては私は到頭納得ができない。かように再資格の予算の一億七千万を容れたところで、一人に対しまするものは平均三百五十円に過ぎない。この間、この本予算委員会にも出て参りましたが、建設委員会では、ガソリン税を目的税として取ればいいと……、今までバス業者のかたがたから減税してくれという申出が再三ございましたけれども、建設委員会ではガソリン税を目的税として道路の補修に使うということになりましたら、ぴつたりその減税の陳情は止んでしまつた。誠に宜なるかなであろうと思います。ガソリン税を払う者が、自分の車が走る道路を直すなら我慢もしようが、まだ教養の低い日本におきましては、かような税の取り方も一つだろうと思います。この際文部省といたしましても、すでに米国の各州におきましては、教育税と銘を打つて目的税を取つている州がたくさんにございます。今更我々は予算の中で特に総額的な教育税の目的税を要求するものではありませんけれども、普遍税としての教育税、言い換えますならば、各戸の戸主が年間千円なり、二千円の教育税を負担いたしまして、そうして小中学の義務教育をされているところの教員の方々の勉強をするところの家、子弟を教えるところの家、そして読みたいときには学校、役場から勝手に本を買えるような面倒を見て行かなかつたならば、決して単に法律で地方公務員から国家公務員に変えただけではできないと思うのでございますが、さような大きな政治的な行き方につきまして、文相の心境をお尋ねいたします。
  122. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) お話のように、教育税というような考え方もないではないのでございまするけれども、今日の地方、中央を通じまする税制の組織の上におきまして、従来も平衡交付金制度を以て確保することにおいて遺憾のありました点を顧みまして、今日の義務教育職員法関係の財源措置をいたしたわけでありまして、その方法によりまして、御指摘のような教育に関しまする財源を確保いたす考えでおるわけでございます。
  123. 鈴木強平

    鈴木強平君 この際、もう一つお尋ねいたしますが、文部省の方に……。まあ給食の問題でございます。これは実に重大な問題でありまするけれども、何か取り忘れて、閣議等では論議されていないように思います。なぜなれば、敗戦以来、我々は援助資金によつて五百五十万の児童に給食いたして参りました。然るに、昨日も問題になりましたように、援助資金債務であつたとするならば、政府の言う通り、終戦以来毎年百億乃至百二十億の金を出して来た。然るに援助資金がとまつたと同時に、一昨年政府は別に予算を組んで、九十億を組んだ。去年はこれを我々の要望に反して二十五億に減らして、今年は十七億に減らした。私は高く政治治性の貧困さを唱えておりますが、その前にこれは、我々国民は社会的意識を高めなければならない。社会的意識を高めることは、言い換えますならば、常に他と共に友達となり、社会人となり、同一の行動をすることによつて自己が練磨され、自己の責任をとることができるであろうと思うのでございます。学校の小さな方々が、親の貧乏あり、金持あり、その場合に、何らの不平等感を感じないで、そうして給食がとれる。食べたい盛りの小、中学校の小供達に、僅かな予算でできるものを取上げてしまう。毎年々々減らしている。かような文教政策が世にあろうか。敗けた日本といたしまして、何をおいても早く……、日本の再建が果せるでございましようか。そう考えますならば、この給食の問題は殊に重大であると思います。何が故に前年よりも予算をお減らしになつたか。又場合によつては減らしたけれども、これは応急のことで止むを得なかつた、従つてその十七億の金は、この第一四半期四、五、六の三カ月の間に使つてあとの補正を要求するのだということであれば、又私は納得したいと思う。岡野文相からこれについての御答弁を要求します。
  124. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。学校給食は御説のごとく来年度は十七億になつております。併しながら二十七年度、即ち今年度には十四億しか実は使えなかつたのでございます。併しそれでは余り少いというので、とにかく十七億予算を農林省の予算で取つております。私どもといたしましては、この学校給食というものは、御説の通りに食生活の改善とか又貧富の差なくいたいけなき子供が同じところで同じものを食べて卑屈感を起さない、又偏食を避けるという意味におきましていい制度だと思いますから、今後ますますこれを拡充し大きくして行きたい、こう考えております。
  125. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちよつとお伺いいたしますが、二十七億の予算をなぜ十四億しか使わなかつたかということが一点。  それから、今年度二十六億の予算が十七億に減らされたことによつて、父兄の負担はどのようになるか、この二点を伺いたい。
  126. 近藤直人

    政府委員(近藤直人君) お答えいたします。二十七年度の給食費の予算は、当初食管特別会計におきまして二十四億を目途といたしまして発足したのでございますが、現実に食管特別会計に一般会計から繰入れました額は十四億に止まつたのでございます。実際に給食いたしました人員からいたしまして、さようなことになつたわけでございます。そういたしまして、昭和二十八年度は先ほどお話がございましたように、農林省の食生活改善費におきまして十六億五千万、これが食管特別会計に対して一般会計から繰入れる額でございます。そのほか給食に用いまする脱脂ミルクの輸入代金の利子補給金といたしまして、これはやはり農林省の食生活改善利子補給金の項に五千六百万を計上されたのでございます。実際な一億程度要るわけでございますが、昭和二十七年度の利子補給金が実際にそれだけ要りませんので、約四千五百万繰越しになる関係上、二十七年度の予算には五千六百万を計上されたわけでございます。従いまして昭和二十七年度に比較いたしまして、昭和二十八年度は総額十七億二十七年度は十四億でございますので、その間約三億程度の増額になつております。
  127. 鈴木強平

    鈴木強平君 まだ私といたしましては法務大臣、農林大臣に質問を残しているのですが、時間になりまして、他の迷惑になりますので、これを以て打切ります。
  128. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 昨日私は網紀粛正問題に関して質問をいたしたのであります。そのときに田子新農林大臣に対しまして質問したのでありますが、あいにく出席されていなかつた。今日は出席されておりますから御答弁を求めるのであります。  それは農林大臣になられまして、国有林野、又その上に生えておる国有林野の財、こういうものの払下げをなさることになつた。ところが、これはややもすると献金の金になるのであります。つまり網紀粛正に反するようなことが政府当局によつて行われるのであります。そういうことにこれまで疑惑があると言つて世の中の噂になつておるのであります。そういうことが今後あつては困る。今までそういう疑惑が本当であるとすれば、新農林大臣はそれをすつかり清算をなすつて頂かなければいけない、これが一つであります。  もう一つは田子氏は、私は私の先輩として人格について尊敬いたしておるのでありますが、その就任の弁に、これは新聞で見たのでありますが、国有林野の地元への無償交付というようなことも考えておるというお言葉が新聞に出ておりました。それはどういうことを意味しておるのであるか。無償で国有林野を地元へやつてしまう、あなたの選挙区である岩手県では前から八万町歩よこせというようなことを要求しておるのであります。それに迎合されたのではないか。それじや困るのであります。私は田子氏の人格を疑うのじやありませんが、そういうことでは国有林野が滅茶苦茶になつてしまう。そういうことを意味しておるのかどうか。或いは弱小町村について、その助成をするために基本財産として国有林野の一部を無償交付するということならば話がわかります。どういうことを意味していらつしやるのか、それを伺うのであります。  それから、なお、犬養法務大臣もおみえになつておりますが、昨日は出席がなかつた。それで総理大臣に対して質問をいたしたのでありますが、犬養氏がおられなかつたからお答えがなかつた。その質問の要点は治安の問題について、右翼の動向が心配される。それで二月の十七日の朝日新聞でも、再軍備の波に乗つて右翼団体がテロ的な行為がある、そういう虞れがあるということを書いておるのであります。その点はどういうふうになつておるか。又、最も、本国会においての重要法案というべき警察溝の改正法案が出された。これは民主化線に沿つて、そうして能率化するのだという表看板が掲げられておる。ところが民主化の線というのはどういう点であるか。総理大臣は、それは地方の公安委員会というものを保存しておるのが民主化の線に沿つておるのだという御答弁がありました。私はそれはそうじやない。表看板はそうなつておるけれども、それは骨抜きになつておるということを質問したのであります。それに対してお答えがなかつた。あなたがおられなかつたから、お答えがなかつたのであります。それについて御答弁を願いたい。
  129. 田子一民

    国務大臣(田子一民君) 岡本委員の御質問にお答えいたします。昨日は丁度参議院の農林委員会におきまして法律案の説明中に御質問がありましたので、この席におりませんでしたことは誠に申訳けないことに考えます。  御質問の点は二点あるようでございます。一点は国有林野の払下げ問題、それには或いは綱紀粛正というようなことにそむく場合もあるかと思うが、これについてどう思うかと、こういうように承りましたが、これはひとり林野の払下げ問題に関しませず、いやしくも官吏といたしまして、その道に間違つたことがありますれば、行政上の適当なる措置を講じますることは勿論、又その他法規等に背反しますれば、それによつて処分されると思います。私としては官界の粛正ということに必要がありとすればどこまでもこれに力を用いたい考えでございます。  第二点は国有林野の無償払下の問題を言われたが、それは国有林野を無茶苦茶にするじやないかというお話であります。その中に私が国有林を無償で払下げるようにお話になりましたが、恐らくこれは新聞の記事によつたものと思うのであります。私の趣意は、認証式を終えましてすぐ新聞記者諸君数十名に取囲まれまして、新大臣、何か考えを以て進むのか、いわゆる抱負経論というものは何かということをお尋ねになりました。その際私の答えとしまして、すでに昭和二十八年度の予算は今審議中であるが、恐らくこれは確定するものであろう、而して農林行政の近来の立法例を見ますと、すべてアメリカ流によつて、行政措置に関する問題もすべて法律で規定しておる。一方には予算によつて縛られ、一方においては法律によつて縛ばられておる、この行政をやる上において私は法律を無視する、予算に背反して仕事をする、いわゆる抱負経論を行うということはできない。例えば私は今農村の問題として農漁山村のいわゆる二男三男問題は非常な大きな問題と考えておりますけれども、これに新しく農家を経営させるとするならば、例えば国有林の不要存置になつておるものでこれを無償で交付するようなことも一つ、減税も一つ、又長い間政府がかような農村に対して補助をするということも一つであるけれども、今日としてはこの法律改正も又予算措置もできないから、なかなかそう簡単には行かないが云々と申したのでございます。その中のいわゆる二男三男の政策だけを、私の胸中にある政策だけを、行いがたいという前提はすべてお省きになりまして、御報告を頂いたと思うのでありますが、併しこれは一つのヒントであります。これは必ずしもできない問題ではありません。法律の改正を行い、財政の裏付もありまするならば、私は将来日本で取上げて然るべき問題だと思いますが、即刻これをどうこうするということはできないということを申上げたわけでありますから御了解を願いたいと思います。
  130. 鈴木強平

    鈴木強平君 関連質問……。岡本議員からのお話もございました国有林野がどうように払下げられるか、只今農林大臣から御説明がございましたが、大体私この間調べて見ましたところでは、国有林野整備臨時措置法によりまして二十八年度までには七万三千町歩が払下げられるような予定になつております。その金額は十七億になんなんとしております。ここで私は考えなければならないと思うのです。田畑につきましては耕作者が農地の解放によつてこれを頂きまして自作農となりました。併しながら山村僻村の人々は山火事があればこれをとめ、山崩れがあれば砂防工事をやり、そうしてなお植林に駆り立てられて裏山の黒いのを見て喜んでおる。富んでいる間に植林が育ちますと、金のある林業者、資本家がやつて来てこたを入札又は払下げてしまう。ここに大きな不公平があろうかと思うのでありますが、平地におきましては一旦農地解放で収得いたしました田畑を耕してこれによつて生活の基盤がございます。山間僻地におきましては、山を切れば林道は奥へ延び、そうして水が出て家が流される。
  131. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 簡単に願います。
  132. 鈴木強平

    鈴木強平君 かような立場におかれまする山間の人々といたしましては、現在国有林が七百七十万町歩もございますが、これに関係している町村は三千町村ございます。その人々は異口回音に、できますなら田畑と同じように自分たちにその国有林を管理さしてほしい、払下げとまでは考えないが、管理をさしてほしい、その中の植林伐採はこれを一応任せてほしい、農村の二男三男の対策もそこにあると言つておりますが、こうした問題は一両年では解決できませんけれども、大きな構想といたしまして、この際農相のお考えを伺つておきたいのであります。
  133. 田子一民

    国務大臣(田子一民君) お答えいたします。これは相当困難が伴う問題と思います。又重要な問題と思う。従つて研究の余地をお与え下さることを望みます。
  134. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 岡本委員お答えいたします。昨日衆議院の委員会答弁中でございまして、折角の御質疑に答弁ができなかつたことを遺憾に存じております。  御質疑は二つございまして、先ず第一に右翼団体に対する我々の措置を御説明申上げたいと思います。御承知のように法務省の外局の公安調査庁におきまして、左翼団体と同様に右翼団体に対する調査をやつております。但しこの右翼団体と申しますのは、政治目的を持つた破壊的な団体をいうのでありまして、いわゆる最近の広島に起りましたような暴力団は入れてございません。公安調査庁が調査の対象にいたしております右翼団体は約七百五十ございます。七百五十を少し超えているのでございます。左翼的な団体との相違は、相互の横の連関性が割に薄うございまして、従つて同時多発的な事件というものは今のところ予想せられないのであります。併し個人のテロ行為の可能性ということについて私どもは現在相当緊張した関心を抱いております。こういう団体の台頭は、何と申しますか、再軍備の噂とかそういう民族意識の高揚ということにつれて万般御承知のように近時なかなか盛んになつて来ておりまして、不祥事が起らないとも限りませんので、十分に緊張して調査を続けていることを御報告申上げたいと思います。  次に警察法の改正についてこの民主的な面、地方自治的な面が骨抜きになつているじやないか、こういう御質問でありまして、この御心配に対しては十分今後とも委員会で御意見を伺い、又私どもの考えも上げたいと思うのでありますが、総理大臣お答えになりましたように、特に府県の警察というものは国家的な治安事案を除きましては、大体ああいものは地方の自治生活に融け込んで行なわれているのが一番いいのでありまして、私どもそういう方針をとつているわけでございます。問題は広く各府県に国家的な事案について広い眼と一種の勘を持つている警察長を広く人材を求める意味で、都道府県の公安委員会の意見を聞くだけの点について岡本委員は大変御心配なのじやないかと思うのでありますが、併しあの法案をお読み願つて、或いは御了解願えたかと思うのでありますが、国家的な事案を除きましては、すべて都道府県の公安委員会の運営に万般任せているのでありまして、この公安委員会は知事が道府県の議会に諮つて任命している人間であります。任命する、そういうふうになつておりますけれども、公安委員会は始終警察長及び警察官の点数といいますか、考課を記しまして大臣及び国家公安監理会に届出ておりますし、又このたびは特にえばる警官ができるのではないかという心配を持つておりますので、その心配に対して応えるのが政治家の責任と思いして、罷免懲戒の勧告権を持たしたわけでございます。そういうふうで一方国家の治安職務というものが無暗に拡がつてはこれは又弊害がございますので、はつきり法文に書きまして、みずから制限を受ける、こういう態度に出ておるのでございますが、その法文に書きました、列記した職務も若し漠然としているじやないかという御心配がありましたならば、委員会において更に細かく申上げたい、みずから喜んで制約を受けたいと考えている次第でございます。
  135. 千田正

    ○千田正君 時間が大分過ぎておりますけれども、私がお答えを願いたいのは総理大臣並びに農林大臣でありますが、総理大臣にはどれぐらいの時間をここに割いておられますか、先ずお伺いしておきたい。それによつて私は質問いたしたいと思います。
  136. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 先ず千田君に申上げますが、総理大臣に対する質疑を先にやつて下さい。
  137. 千田正

    ○千田正君 勿論そうします。
  138. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) どんどん進めて下さい。
  139. 千田正

    ○千田正君 簡単にお尋ねいたします。冒頭に昨日同僚議員の質問の中に、新聞記事に対する責任は持たない、こういうことがあつたのであります。これは非常に私は官房長官のお答えを伺つて重大な問題があると私は考えるのであります。今日起つておる世界的問題は、勿論スターリン危篤或いは死亡に関するところの重大な影響に対して各国がこれを問題として取上げられておる問題、更に我が国の国内においては、御承知の通りの政界の不安定、政治の不安定、吉田内閣が第四次内閣を組織して、この三月の末に至つて或いは解散するのではないだろうか、或いは総辞職するのではないだろうか、国民は非常にこの問題を重大視しておるのであります。こういう際に政府は一応政府態度声明する、或いは所信を国民に向つて伝える、こういう場合の機関は何かと言いますれば、御承知の通り新聞であり或いはラジオであります。私は官報だけが政府がとるところの広報機関ではないと考えておる。いやしくも一国の首相或いは首相を代理するところのスポークスマンとしての官房長官である緒方さんが、昨日のお言葉を伺いますというと、新聞記事には責任が持てない、これは吉田首相もしばしば議場で申されることでありまするが、成るほどいろいろな新聞記事はあります。併しながら公的な正式な会見において、新聞記者団と会見して政府の所信を発表した場合においては、私はこれは一つ政府の言明であり声明であり、国民に対するところの広報であると私は考える。これを以て私は新聞記者は嫌いだから新聞記者の書いたことはもう信じない、こういうことは私は言えないと思う。且つ又政府のスポークスマンとしての緒方官房長官は、我々の敬愛するところのいわゆるジヤーナリストから今日に築き上げられた円満なる人格のかたが、新聞記事は信用できない、我々はそれに対してはらの責任を持たないというようなことを仰せられるということは、私は新聞記者そのものを侮辱しておるのか、或いは新聞記事そのものに対しては何らの信憑性はない、今後吉田内閣の発表というものは、我々国民はそれを信ずることはできない、政府も信じない、こういう態度で出られるのかどうか、その辺をはつきりしてもらわんというと、今後の政府のいわゆる声明なり言明なり、いやしくも官房長官として一国の政府を代表して、総理大臣の代りに新聞社を通じて国民に言明するものであるとするならば、それは当然我々は信用しなければならないと思うのです。この点は甚だ昨日のお答えによつて我々は重大な問題があると思つておりますので、こういう点について吉田首相は、新聞記事が、いやしくも政府の官房長官或いは吉田首相が正式ないわゆる新聞記者団との会合で発表した場合には、これは政府の見解であると了承してよろしいかどうかという点につきまして吉田首相にお答え願いたい、と同時に官房長官の昨日仰せられた言葉は、果してあなたの真意であるかどうか、この点をお伺いいたしたいのであります。
  140. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。私は、私が政府のスポークス・マンとして言明又は声明いたしましたことに対しましては全幅の責任を持ちます。ただ新聞に私の談話等が出る場合に必ずしも私の意味した通りに出ていない場合がある。特に私が非公式にただ新聞記者と懇談をしておる際に出た話等を多少新聞記者の諸君が主観を交えて書いた記事は、往々にして私の真意が伝わつていないものがあるのであります。昨日原君からの御質問であつたと思いますが、私が衆議院の解散について申したという記事、これは別に私が公式に積極的に申した話でないので、記者会見の際に質問に応じて私が言うたことでありますので、その記事の表現、特に表現につきまして私は全部責任を持つことができないという意味を申上げたので、昨日のことははつきり覚えておりませんが、新聞記事一切について責任を持たないというようにお聞き取りでありましたら、必ずしも責任が持てないということを申上げたほうが適当ではないかと思います。政府は公式に私が政府のスポークス・マンとして発表いたしたこと、私が又国会で申しましたことにつきましては勿論全幅の責任を持ちます。
  141. 千田正

    ○千田正君 昨日のお答えと大分修正されたようでありまして、いわゆる官房長官のお話は、自分の言うたことが正しく記載されておればいい、そういう場合でない場合は十分な責任は負えない、かようにお答えのようでありますが、昨日は新聞記事においては、記載された記事においては信用は、我々は信頼は持てないというふうに我々は聞いておるのであります。これ以上追及いたしましても新聞がざいませんので、ただ吉田首相からも只今の官房長官のおつしやられた、いわゆる新聞記事の発表は官房長官は責任を負えんという点においては吉田首相も責任は負えんと言われると思いますが、その点はどうですか。
  142. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 官房長官の説明通りであります。
  143. 千田正

    ○千田正君 本論に入りまして、自由党の公約でもあり、第四次吉田内閣の新政策の一つとして掲げておるところの食糧増産対策、恐らく今日大砲かパンかという言葉は単なる陳腐な言葉ではありません。兵器の代りに食糧を押えられた場合においては、これは又国が亡びるのであります。でありまするから、この食糧対策は一国のいわゆる重大なる政策でなければならない。それでこのたびの吉田内閣の発表は、五カ年計画二千九百九十億というものを見込んでおる。二千九百九十億というものを五カ年間でやつて行く、而もそれによるというと、人口が年々増加して来るとか、又工場であるとか或いは進駐軍、いわゆる駐留軍その他によつてつぶされた土地の減収がいわゆる一千七百万石になる。こういうものを補給して、なお且つ余りある政策をやろうというので農林省が要求したのがいわゆる今度の五カ年計画の二千九百九十億、併しながら大蔵省の査定においては、これが圧縮されて僅かに二百八十億、こういう状況であります。これでは一体どうしたならば日本の生活ができるか。而もこの購入資金は、八億二千万ドルに至るところのいわゆる特需景気のものであります。或いはいわゆる駐留軍の諸君から出た、日本で言うところの俗称パンパンと称するところの醜業婦から入つた金であり、或いは日本の国内で駐留軍の労務者として働いたところの一億五千万ドルに及ぶところの労賃、こういうものが、いわゆる貿易のバランスが十分でないから、こういう金が食糧を購入する資金として廻つているのである。こういうわけで、増産対策の一環がちつとも農林の行政の上には反映して来ない。而も食糧は不足である。そうして且つ又その食糧を買付けるためには正常なる貿易収入にあらずして、いわゆる特需景気であるとか、或いは売淫によるところの残念ながら醜業婦の収益である。血の滲むような労働者のかち得た労賃、こういうものを集計したものによつて我々国民食糧を賄つて行かなければならないとするならば、何という悲惨ないわゆる独立日本であり文化国家でありましよう。この点につきまして私は吉田首相にお伺いするのでありますが、もう少しはつきりした貿易に対するところの対策を立ててもらいたい。そうして国内におけるところの人口の増加、増産対策、こういう面に対して、吉田内閣が曾つての組閣するに当り或いは選挙に当つて国民に公約をされたものを実現して頂きたい。この面において果して吉田首相においては、そういう国民に公約した問題に対して実行する自信があるかどうか、一応お伺いして、各大臣の説明を求めるものであります。
  144. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の現在の食糧事情は今御指摘の通りでありますが、併しこれはかくのごとき状態にあるのは日本ばかりではないのであります。イギリス又然り、その他の国も又然りであります。仕合せに特需等で賄つている問に将来の計をなすべきものと考えますので、そこで食糧五カ年計画とかいうようなことをいたしておるのであります。いずれにしても、貿易のバランスは取られなければなりませんが、その貿易のバランスが取れない場合においては、結局貿易振興という策に出ずるより仕方がない。その貿易なるものが今日十分でない。お話の通りに、最近においては貿易が世界的に縮小しております。これは単に日本だけの問題ではなくして、世界の問題であり、又イギリスその他の大問題となつておるので、そこでイギリス等はアメリカに対して関税の引上げ、そういうようなことはやめてもらいたい、貿易の世界的量は殖やしてもらいたいという要求をいたしておるのであります。食糧問題もその一つでありますが、これは世界的の問題であり、世界的に解決し、世界の協力を以て食糧の増産を考えておることもその一つであり、又内においてはこれに対応して貿易の振興なり或いは又食糧増産計画を立てるなりして内外応じてこの問題の克服に当るべきであると、こう私は考えておるのであります。細かいことは農林大臣から答弁いたします。
  145. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 貿易にも関係がありまするから、一言私からもお答えを申上げて置きます。  只今総理から話がございましたごとく、日本としてはこの特需のある間に日本貿易振興図をらなければならん。今ちよつと御指摘になつたように、七億数千万ドル今日特需があるのでございまするが、この特需等はまだ当分続くと思いまするが、併し永久に続くものではございませんから、速かに正常なる貿易へ、日本の国際収支の黒字になるようにと、こういう点から各種の貿易対策を進めておることはたびたび申上げましたから御承知のことと存ずるのでございます。食糧は大体五カ年計画の下に千七百五十余万石の食糧を増産することにいたしまして、今御指摘になつたような、この国際貸借の不均衡と同時に、又高い食糧を買いまするがために数百億の財政支出等をいたしておりまするので、さようなことを防ぎたい、かように考えて今の食糧増産五カ年計画ができておる次第でございます。但し予算等の関係もございまするので、本年度の分は御指摘になつておるように多少少くなつておりまするが、これは五カ年間には十分この目的を果しまするように政府としては最善の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。さつきお話がありましたように食糧は不足しておる、人間は殖えておる、この状況の下におきまして日本がとるべき政策といたしますれば、何と申しましても、一つは輸出の振興であり、一つはできる限りそういつた消費面における輸入の節約であり、他は国内での産業の振興であり、又同時にイギリス等でとりましたような工合に、国民ができるだけ耐乏生活に耐え得るようなことをやつて参らなければならんと思いまして、そういつた総合施策の下にいろいな施策を進めて参つておるような次第でございます。
  146. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 日本産業特需によつて当然培わなければいかんということだが、スターリンが死んだような状態から、将来の世界的軍拡の歩み等が反映して、全世界とも株式は大暴落しており、日本はやはりこうした防衛生産に頼つて今日まで相当の各種産業が培われて来ておるのだが、今大臣の言われるように、特需を基本としてやるということは非常に危くなつて来たのではないか、そういう点についてお考えはどうかということが一点。  それからもう一つは、高い外米を買うために数百億の外貨を使つておるということは誠に憂慮すべきことでありますが、一体あの石湿り黄変米などのようなおいしくない外米を一升百四、五十円で買つたりするよりは、現在闇に流れておる米が七百万石以上と推定されておる、一般の民間人は一千万石も闇に流れておると言つているくらいであるから、あの外米七百万石買うために数百億の金を使うならば、日本の農家から一升百二三十円で買えば優に七百万石ぐらいのものは……、もう少し多く買える。それだけ国民に配給すれば、政府も外貨を外へ流すことなくして、日本の農村もそれをもらえる。こういうふうな一石二鳥の方途がとられるのであるが、これは通産大臣ばかりではない、大蔵大臣にも農林大臣にも関連することでありまするが、これは如何でありますか、これはこういう方法をやる勇気はありませんか、お尋ねいたしたい。
  147. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原三九郎君) 特需につきましては岩木さんも御承知のごとく、昭和二十七年度でいわゆる品物のものが大体一億九千万ドルぐらい、役務で受取つたものが一億二千万ドルぐらい、大体三億一千万ドルぐらいでありまして、あとはいろいろのものを合せましての国際収支は七億八千万ドルぐらいに昭和二十七年度は達するのでございますが、さようになつております。それではそれが今後スターリン・ロシア首相の死によつて減るのではないか、国際情勢の変化によつて多少そういうことも予期せられんこともないと思いまするが、只今のところこのアジア方面における駐留軍と、或いは又日本におきまする駐留軍との関係から見ますると、私どもは差向きそういうものはそう……、むしろ二十八年度は二十七年度より若干殖えるであろうというふうに見込んでおつたのでありまして、非常に世界的の変革が来れば別でありまするが、さもなければそう減るものではあるまい。(岩木哲夫君「もう変革が来ているのだよ」と呼ぶ。)こういうふうに私どもは見ておる。但しよく申しまする通りその間に日本の何としてもコストを引下げて国際競争力を持たせたいというので、いろいろま諸施策を進めておるのでありまするが、さような考えの下に進んでおります。  なお食糧につきましてのお話は、これはちよつと私の所管外でございまするが、まあ私どもといたしましては、只今外米の高いのは主としてこれは米の少いところで、なかんずく米は、米食をする人間が多いのに米の産額が少くなつたところへ、日本が競争的に買入れまするからああいう高い値段になつておるのでありまして、仮にこれを小麦等で見ますると、小麦などはむしろああいう値段は示しておりません。国際的にむしろ安くなつておるというような事情でございまするから、これはやはり日本の五カ年計画を一方で進めて参ると共に、やはり日本人の食生活の改善等と相待つて参りますれば、相当な解決方法が立つのじやないか。但し国内でそれではそういう価格で買つたとか、まあ現在は御承知のごとく一万五百円でございましたか、自由価格で買入れることになつておりまして、その分が相当出ておりまして、どうも併し外米の予算でまで買うかどうか、このことにつきましては所管外でございまするからお答え申上げかねますが、ただ私の思つたところを卒直に申上げた次第でございます。
  148. 田子一民

    国務大臣(田子一民君) お答えいたします。  只今のは相当重要なフアクターをコンビネーシヨンするので、ちよつとお答えできないと思いますので政府委員答弁してもらいます。(岩木哲夫君「それでは駄目だ」と呼ぶ)
  149. 千田正

    ○千田正君 この予算委員会の各委員の申合せは、総理大臣に対する総括質問である。(「その通り」と呼ぶ者あり)総理大臣がおらなければ、私が質問してもその答えを頂く相手がいないので、私は質問できません。併しながら、相手がいなくても当該大臣がおるからやつたらいいだろうという点でありまするが、ただ一点だけ厚生大臣に聞きまして私は今日の質問は保留いたします。それでよろしうございましようか、お諮り願いたい。
  150. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) ようございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) それではどうぞ。
  152. 千田正

    ○千田正君 それでは厚生大臣に。今日は総理大臣がおいでになりませんから、特に引揚問題につきましてお伺いいたします。  それはこのたび中共地区から帰還する我々の同胞に対するところの受入れ態勢は無論万全であるということをしばしば本会議並びに各委員会において厚生大臣はお説明になつておられますが、そのうちで特に私は甚だ疑問に考えられるのは、このたくさん引揚げて来るうちで学令児童、或いは学校に進もうとするところの青年こうした人たちに対するところの態勢は私は全然ないと言つてよろしい、かように考えるのであります。先般文部省にその答えを求めたところが、文部省は僅かに社会教育の費用で百万円を二十八年度の予算に取つておる、百万円は何のための百万円かと聞いたところが、それは舞鶴に上陸した際に青少年に対するところの、或いは国内の教育に対するところのリクリエーシヨンに使うところの一つの宣伝費用だ、何方と帰つて来るところの我々の国民に対して文部省の熱意のないのにも誠に驚かざるを得ないのでありまするが、然らば厚生省においてはこうした児童の教育費用、或いは進学を目指すところの育英資金というようなものは何か紐付きではつきりしたものをちやんと用意してあるか、こういう点になると一つ予算の面には出ておらない、この点をはつきりしないと、もう間もなく今月の末には我々の同胞が帰つて来る、この育英或いは教育という問題に対して文部大臣並びに厚生大臣はどういうような受入態勢をとつておられるか、明快なお答えを頂きたいと思うのであります。
  153. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答えを申上げます。主として文部大臣の所管と考えまするが、その前に申上げたいと考えます。  今回特別に中共地区からの帰還者に対する援護費といたしましては、修学資金という名目では予算に計上いたしておりませんが、帰還の際には帰還手当を出します。なお又更生資金も出します。併し更生資金はこれは修学資金でないというように仰せられるかも知れませんが、別に本年度予算には修学資金として母子福祉資金貸付法の中で五百円乃至二千円の修学資金を貸与するということになつており、これらによつて只今御質問の修学資金に当てたいと思いますが、なお今後これらの資金につきまして遺憾の点がございますれば考慮したいと思います。これらは主として文部大臣の所管でありますから、文部大臣からお答えいたします。
  154. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答えいたします。成るほど百万円しか実は予算を取つてございません。ただ併し引揚げて参りましたときに引揚げて国許に帰るまでの間に日本の内情をよく知らせるとか、又はどういうところで世話をするということになりまして、そうしてその宣伝とか刷り物とかいうものを刷るためにできておるわけです。教育は大体におきまして我々といたしまして学齢に相当の学校へ世話をして入れる、こういうことにして、地方公共団体ともよく相談いたまして、早く学校へ入つて頂くというようなお世話を申上げる次第であります。
  155. 千田正

    ○千田正君 ただお世話をするというだけでは我々は甚だ遺憾だと思うのであります。今何方と帰つて来ところの同胞に対する文部省の予算はただの百万円、一体どれだけに当るでありましようか。而もそれは一つのレクリエーシヨンだ、定着地に帰るまでの車中の教育である。こういうことでは折角帰つて来た人たちが日本国民としての教育を受けようとする熱意に対する何らの態勢が整つておらない。たびたび首相は道義の高揚を叫んでおられますが、恐らくこういう人たちが帰つて来て、自分の祖国で安心して日本国民としての教育を受けようとする念願に対して、文教の府であるところの文部省は何らのこれに対して対処すべき方策がない。帰つておのおのの県なり市に行つて、そこで入れてもらえというようなことであつては、私は今後のこうした問題に対しては甚だ不満であります。こういうことで本当に我々が同胞を迎えるゆえんであるかどうかということを、私は道義の高揚を叫ぶところの、而もその実際なる教育を施すところの文教の府であるところの文部大臣からもう一度はつきり私は伺いたい。育英資金も十分ではない今日、十分でないところへ持つて来て更に新らしく入つて来る人たちに対して、紐付で優先的に取扱うような育英資金の一体そうした予算の組替えの方法があるかどうか、或いは大蔵省に対して予備金支出その他によつて何かしらこうした手当をやつて日本の祖国を踏んだこれからの、次のゼネレイシヨンを背負つて立つところの我々の同胞に対して温い手を伸べるところの施策があるかどうかという点を、もう一度はつきり文部大臣からお答えを願いたいと思うのであります。
  156. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。  引揚げて来られた方が舞鶴へお着きになります。そうして舞鶴へお着きになりまして、その子弟のかたが日本の国情がよくわかるようにという意味におきまして、そこでいろいろ我々といたしまして刷り物とか何とかいうものを差上げる。そうして日本の国の事情を知つて頂く。それからあとは各地方地方にお帰りになつて、学校へ入る人がございますれば学校へ入つて頂く、学校へ入つて頂きました以上は、今度は大きな一般教育の面から国と地方公共団体とが共同してやることでございますから、これはほかの費用で出るはずでございます。私どもといたしましては、引揚げた人の困つておる人にどうするかということは、これは厚生省のほうで生活保護の関係でいろいろ考えておるはずでございます。ただ我々として受入れましたときに、殊に教育部門におきまして日本の知識を一般に知らせて差し上げる、そうしますれば、百万円で大抵事は足りる、こう考えております。
  157. 千田正

    ○千田正君 どうも文部省と厚生省で帰国者を厄介者扱いのような考え方ですね、私はそうだとするならば、厚生省においては生活保護或いはその他において、その費用のほかにそうした学齢児童であるとか、或いは育英資金というものを見込んで将来の方策を立てておかなければならない。ところが現在は帰つて来て郷里に帰つて、そうして一応の一月や二月のことは食つて行けるだろうが、その後の問題は生活保護の面で見て行こう、生活保護の面のうちに果して教育費というものに充当すべきものはどれだけあるかということに対しては何らの説明を得ておらない。こういうことで我々が今度来るところの帰国する人たちに対して、どういうふうに日本国民が温い手を以て迎えるか。およそ吉田政府において本当の道義の高揚を叫ぶならば、先ず第一にこういう問題から片付けて行かなければならない問題だと思うのでありますが、厚生大臣としては生活保護の面において教育費を見て行かれるかどうか、この点をはつきりお答え願いたいと思います。
  158. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答え申上げます。  生活保護の中に教育扶助が基準の中にありまするが、併し多く生活困難にをられるような方はいわゆる未亡人でありまするとか、未亡人世帯であろうと思いまするので、先般母子福祉法を制定いたして、そうしてその点は只今申上げた通り大体五百円乃至二千円の毎月の教育就学資金を出しておるのであります。大体これらの諸般の法律或いは施策によつて、当面これらのお方に対して乏しいとは考えまするが、これらの人々が就学される途を講じて行きたいと考えておるのであります。
  159. 千田正

    ○千田正君 文部省としても厚生省としましても、この問題については一貫したはつきりした対策がないようであります。でありまするから、私は間もなく帰つて来てから、相当の人数に対するところの正確なる資料も整いましようが、特にこの点は留意されまして、新たなる予算考えて頂くことを私は要望して、今日はこの問題に対しては質問を一応留保しまして、新たなる総理大臣に対する、或いは各関係大臣に対する質問をいたします。
  160. 岩間正男

    ○岩間正男君 今日の委員会の審議経過を見ますると、やはり総理の出席が時間的に非常に少い。朝すでに制限されまして、何か今日は皇后のお祝いであるというので時間が一時間半も実はとられておる。(「理事会で了承した」と呼ぶ者あり)それが午後のほうに大きくしわ寄せされておる。そうして最後のほうは十分なる審議を尽すことがなくて途中で退席されておる。こういうことになつては、最初組んだところの予定というものは非常にこれは齟齬を来たすと思います。こういう点からもつと出席をはつきり督励して、十分なる審議ができるような態勢をとるということが当委員会の審議にとつては必要だと思います。従つてこの点についてはつきり明日からこの態勢をとられることを私は要望したいと思いますが、この点は委員長如何ですか。
  161. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 承知いたしました。その点につきましてはいずれ明日の理事会において……。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 なおよく土曜日になるというと、総理は大磯のほうに帰られる今まで習慣を持つていられる。そういう点から明日の審議が十分に可能であるかどうかということについては事前に打合せをして欲しいということを要望として付加えておきます。
  163. 曾禰益

    ○曾祢益君 千田君の質問に関連してですが、中共地区からの引揚問題についての受入態勢が十分になければならんことは千田君が言われた通りで、誠に同感であります。この問題については実は日本と中共との間は正式な国交関係にないのであります。この重大な受入問題及びこういう問題については非常に不正規なルートによる話合いでやらなければならない。併しそれも人道問題でありまするから止むを得ない、かように考えるのでありまするが、最近新聞の伝えるところによると、我が日本側の代表機関と中共政府当局との間の交渉を見ておりますると、果して政府はこれらの代表機関に政府の当然やるべき任務を十分に遂行させるだけの監督なり何かなし得るのかどうか、又これは政府としてこれらの機関のやつたことに対して責任をとり得る地位にあるのかどうか、これについて非常に疑わざるを得ないような状態のように思うのであります。従いまして、この際はつきりと政府はいわゆる三機関に対する政府事務の委託をしたのであるかどうか。それからその結果に対しては政府としては責任を国内的にも国際的にも負うだけの準備があるかどうか、この点に関しまして、総理、外務大臣、厚生大臣並びに法務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  164. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 引揚に行きました代表に対しては、政府としてこういうこれこれのことを交渉してもらいたいということは書き物にしてはつきりいたしております。併し交渉のことですから、それが必ずしもその通りになるとは限らないわけであります。そこで交渉の結果については、先方もこれは政府を代表しておるものでなくて、赤十字を中心にした人たちであるということでありまするから、お互いにその政府承認を得てからこれは有効になるものであるということにはつきりいたしております。併しながら実際の問題になりますると、こう言うと言葉は悪いかも知れませんが、とにかく向うに何方という人がおるのでありますから、我々としてはこれを引揚げてこちらに連れて来たいというのが偽わらざる事情でありまするので、多少の無理があつてもできるだけ先方の考えに応じてこの帰還を早くしたい、こういうことになりまするから、今までも必ずしも満足な結果は出ておらない、政府から見れば……。併しながらこの程度なら止むを得んというので今まで来たのであります。最近でも例えば先方は、これはどこの場合でもやるような乗客の名簿を渡さないというのでありまするから、船へ乗るときは一体誰か、どういう人か、これが一体本当の日本人かどうかも大げさに言えばわからない、とにかく乗せて来る者をどんどん乗せざるを得ない、こちらへ帰つて来てこれが本当に帰る資格のある日本人、若しくはそれの関係者、つまり妻であるとか子供であるとかいうような種類の人であるか、純然たるこれは外国人かわからないので、舞鶴へ来て調べてみて、純然たる外国人であるから送り帰すべきであると思つても逆送還は認めないというようなことで、非常にこれは満足すべき状態とは考えられないのであります。併しながら先方もこれは日本国民を帰そうというまじめな考えであろうという前提から、向うの言い分もいろいろあるんでありましようから、とにかく能う限り先方の言い分を聞いて第一回はやつてみる、第一回が非常にまずい結果になれば、これは又考え直さなければなりませんんが、我々が心配しておるほどのことはなくうまく行くかも知れないのであります。ただ実績を見ずに徒らに疑いの目を以てすることも適当でないと思いまするから、政府として応じ得る限りのことは応じまして、第一回の船の帰つて来るのを待つてみる、そうしてそれがうまく行くことを只今のところは希望しておるような事情であります。
  165. 曾禰益

    ○曾祢益君 只今のお話によると、勿論交渉のことでありますし、事我がほうとしては人道問題であるから隠忍持重を要することでもありまするが、だから従つて希望通りに行かない点もあろう、それは仕方がない、併しながら先方との交渉の結果協定みたいなものができた場合に、これが両方の政府承認の上に或る私的団体が協定しても、結果においてはこれは政府を拘束するものになるのではないか、その点が心配されるわけです。従いまして、隠忍持重は当然であるけれども、その結果については政府は明確な責任を負う地位にあるのでありまして、例えば今外務大臣の言われたように一回はやつてみる、その結果註文を変えるというようなことになると、却つて急を要するこの引揚問題に支障を来すのではないか、隠忍持重は当然でありまするが、併しながら最初の約束の際こそこれは非常に大切なのであつて、重大な、果して今度帰つて来る諸君だけが全部だというような約束をした場合には、政府はそれに責任をとり得るのかどうか。  それから今岡崎外務大臣の挙げられたような、いわゆる日本側から見ると引揚民と認められない者が混入するようなことは恐らく私はないと思いまするが、そういう場合に一応国外に退去してもらうということについて向うと何ら話合いができていない、この状態でいいのか、而も共同コミユニケというものも、政府の訓令に反した行動を畑中政春君がやつたらしいのですが、そういう場合に引続き今後ともいわゆる三機関、そのうちいわゆるやや公的な性質を持つておるものは日本赤十字社だけだと思う、あとの二つの機関はそれだけの公的な責任を国内的に持ち得ない、ただ中共との関係において、それは中共とのこの問題については斡旋役をやつてもらつたというに過ぎないのでありまするが、そういう代表の諸君がこの引揚船全体を通じて、乗船して官憲的な行為をやることに対して、政府は第一回を見てから考えるというようなまだるつこいことでいいのか、この重大な国家的な問題についてさような私的機関のやつたことについて政府責任を負い得るのかどうか、この点について明確なる御答弁を頂きたいと思います。
  166. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今曾祢君のおつしやることは一々御君もであります。私もその通り考えております。ただ新聞でも御承知のようにこちら側としていろいろの註文を最後の日に追つかけて出したわけで、それは例えば三団体の代表は船に乗る必要はないと考えるというようなことやら、或いは乗客名簿のことやら、或いは逆送還のことやら、いろいろ出したのでありますが、それは一行の出発前に向うに着いたと間違いなく考えておりますけれども、先方と向うで共同コミユニケなるものを作り上げて、それ以上の交渉をせずに出発したと認められる節があるのです。従つて実は実際問題にしてはどうにもこれ以上交渉方法はないという現状であります。そこでその中には今指摘のように赤十字社の代表もおりまするから、そう妙なことになつていないだろうと信じておりますけれども、これが実情は一行が帰つてみないとわからないのであります。まだ我々の方でも今あの共同コミユニケなるものに従つてあの通りに実行すると必ずしもきめておるわけではないのであります。只今いろいろの場合を研究中でありますが、極く何と言いますか、概念的にいえば、可能な範囲で無理があつても我慢して船を出してやつてみよう、こういう気持であらゆる問題を検討しておるわけであります。併しながら今申した通り政府はあれを責任を以て呑込めるかどうか、まだ疑問の節もあると考えております。もう暫くまだ船の出るにはちよつと時間がありますから、船のほうの準備はどんどんいたしておりまするが、最終の決定はもう少し研究してみたい、こう考えております。
  167. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 本日はこれを以て散会いたします。    午後四時三十八分散会