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1952-12-19 第15回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十九日(金曜日)    午前十時三十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩沢 忠恭君    理事            左藤 義詮君            高橋進太郎君            森 八三一君            内村 清次君            山下 義信君            駒井 藤平君            岩木 哲夫君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            泉山 三六君           池田宇右衞門君            石原幹市郎君            石川 榮一君            大矢半次郎君            川村 松助君            郡  祐一君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            平林 太一君            山本 米治君            石黒 忠篤君            小野  哲君            片柳 眞吉君            加藤 正人君            西郷吉之助君            新谷寅三郎君            堀越 儀郎君            溝口 三郎君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            高田なほ子君            羽生 三七君            波多野 鼎君            松永 義雄君            山田 節男君            吉川末次郎君            鈴木 強平君            西田 隆男君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  吉田  茂君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    大 蔵 大 臣 向井 忠晴君    文 部 大 臣 岡野 清豪君    厚 生 大 臣 山縣 勝見君    通商産業大臣 小笠原三九郎君    運 輸 大 臣 石井光次郎君    建 設 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 緒方 竹虎君    国 務 大 臣 木村篤太郎君    国 務 大 臣 本多 市郎君  政府委員    内閣官房長官 菅野 義丸君    法制局長官   佐藤 達夫君    法制局次長   林  修三君    法制局第一部長 高辻 正己君    自治庁財務部長 武岡 憲一君    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁保安局長 山田  誠君    保安庁経理局長 窪谷 直光君    経済審議庁次長 平井冨三郎君    経済審議庁調整    部長      岩武 照彦君    外務政務次官  中村 幸八君    外務大臣官房長 大江  晃君    外務事務官    (外務大臣官房    審議室勤務)  中村  茂君    大蔵大臣官房長 森永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    厚生大臣官房会    計課長     大宰 博邦君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    農林政務次官  松浦 東介君    農林省農業改良    局長      清井  正君    食糧庁長官   東畑 四郎君    通商産業大臣官    房長      永山 時雄君    通商産業省企画    局長      中野 哲夫君    労働政務次官  福田  一君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十七年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十七年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和二十七年度政府関係機関予算補  正(機第二号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今より予算委員会を開会いたします。  本日は昨日に引続き質疑を続行いたします。佐多君。
  3. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私は総理に先ず第一に、現在の日本国民生活水準をどういうふうにお考えになつておるか。この国民生活水準をどういうふうに変えよう、どういうふうにしようとお考えになつておるかという点をお聞きしたいのであります。と申しますのは、総理施政方針演説で、国民生活の安定、国民生活水準というような問題は日本経済復興の基盤であるから、いろいろ配慮をめぐらしておるのだというようなお話をなさつたし、或いは又その他の諸大臣国民生活の安定は非常に重要に考えているということは、繰返しお述べになつておるところであります。然るにかかわらず、政府が発表しておられるところの資料によりますと、日本国民生活水準は大体戦前水準に比べて漸く八八%に過ぎないということになつておる。殊にこれは割合生活水準が高くなつている農村のものまでひつくるめての平均数字でありますが、都会だけを考えて見ると漸く七〇%の程度に過ぎない、非常に低い生活水準であるということが言えると思うのであります。戦後いろいろな施策がなされ、従つて生産指数生産水準相当高いところにまで回復をした。よく言われておりますように、二十七年度平均にしますと大体一三六、一四〇近くにまで行つていることになつておりますが、そういうふうに生産のほうは非常に回復をした。殊に資本のほうは資本蓄積が少い少いと言われながらも非常な資本蓄積が行われておる。労働生産性も特にこの一両年は非常に殖えて二倍以上にもなつている。利益率のごときは戦前に類を見なかつたくらいは非常に高い利益率になつておる。資本蓄積も非常に少い少いと言われながら、この日本の貧しい国民総生産から見れば非常に多くのものが資本に転化されておる。資本形成率政府の発表された資料によりましても、二十五年度が一五%であるとか、或いは二十六年度は二二%であるとか、非常な高率の資本形成率を示しております。これは戦前日本に見なかつたくらいの資本形成率であり、諸外国に比べてもイギリスやフランスは勿論、アメリカに比べても遥かに高い資本形成率である。普通最近でもヨーロツパ或いはアメリカでは資本形成率はほぼ国民総生産の一〇%だと言われておると思うのですが、それに比べて日本では二〇%以上だというようなことになつておる。こういうふうに資本に関する限りは、非常な復興なり戦前以上の実績をあげながら、その半面において国民生活水準は依然として戦前水準に戻らない。日本生活水準戦前水準がすでに非常に低いということで世界的に有名であつたのでありますが、その非常に低かつた生活水準に比べてすらなお且つ回復をしていないという状態であります。これらのことを考えますと、現在の政府国民生活水準という問題に対して殆んど配慮をしていない。口先ではいろいろおつしやるけれども、何ら配慮がなされていないことの非常にいい証左ではないかと思うのであります。殊に今年、最近になりますといろいろな方面で国民耐乏論その他が再び持ち上つて来ております。それは丁度日本軍国主義に強硬に移行されようとした直前と同じような空気で国民耐乏論が呼ばれ始めておる。こういう事態において一体総理大臣日本国民生活水準をどういうふうに認識しておられるのでありますか。更にこれを引上げるということをはつきりとお考えになつておるのかどうか、引上げるとすればどういう形で引上げるということをお考えになつておるのか、それらの点について御説明を願いたい。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 生活水準引上げについては政府はしばしばその趣意は発表しておるにもかかわらず、実績が上らんじやないかという御質問趣意と思いますが、併し数字は知りませんが、常識から考えて見て、日本の現在の生活水準戦前以下に下つたとも私は言えない。これは常識から言うのであります。感じから言うのであります。数字は別であります。数字はなお検討いたしますが、まあ都会は別として、地方において、地方を旅行して見ましても生活水準が少くとも下つたとは言えないと思います。我々の希望する通りつてはおらないかも知れませんが、併し農家の、我々の見るところは限られた一部でありますが、我々の見たところだけでも例えば高知県あたりの状況を見ましても、生活水準は少くとも下つたとは言えない、又向上しつつあるとも考えられるのであります。その農家の例えばラジオの機会であるとか、或いは又刈入機その他そういう機械を見ましても、我々が曾つて見なかつた機械器具がある。電灯もついておる。電力も使つておる。考えて見て、常識感じから申すと必ずしも下つてはおらないと思います。向上しつつあると思います。併しながらこれは向上する上にも向上せしむべきものであつて、現在の状態で満足すべきものではないと思うことは誰も一致する意見であろうと思いますが、然らばどうするか、これは施策としては減税をするとか、或いは厚生施設をするとか、或いは又一般産業を奨励することによつて一般生産力が高まることによつてそれが生活水準の向上ということになつて行くので、結論はそうなるであろうと思います。一般政策施策法制、若しくは産業政策実績を上げることによつて自然国民生活水準が上る。又上るように努むべきものだと思います。
  5. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 総理数字は別として感じからすれば生活水準相当つているじやないかというようなお話でございましたし、その例として農村をお挙げになりましたが、確かにおつしやる通り農村では政府数字によれば、戦前水準を二十六年度からすでに突破をしているという計算になつております。これは従つて数字的にも総理のおつしやる通りだと思いますが、だからこそ余計に問題になるのは、そういう一方に戦前水準を若干突破したような数字があるにかかわらず、国民全体の総平均としての生活水準戦前水準よりもまだ一割以上下つているということが問題で、このことは都会においては先ほど申しましたように七〇%であるとか七五%に過ぎない生活水準状態である。だから高いほうが一方にあるにかかわらず、国民平均としては九〇%に足らないというような実情であるので、ここに非常な問題があるのじやないかと思うのです。或いは総理はこれまでたびたび減税その他の措置をやつて、そのために生活水準も全体として上つているじやないか、感じとしては上つているじやないかとおつしやるのですが、卒然とした感じはそういうふうにお受けになるかも知れないが、それは総理の触れられる周囲がそうであるだけであつて数字はつきり示しているのはそういうことは示していない。殊に過去において相当いろいろな施策をやられたにかかわらず、例えば昭和二十六年度が八六で、二十七年度が八八で、二十八年度は八九になるというような数字になつておりますが、そうだとすれば何ら生活水準引上げがなされないで、依然として停頓をしているという実情であるので、こういう点から言つて何ら施策がなされていないということを申上げるのでありますが、それらの点を総理はどういうふうにお考えになつているのか、改めて御説明願いたい。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私のお答えは以上で尽きておると思います。併しながら数字については私は今数字を持つておりませんから、主管大臣からお答えさせます。今呼びにやりました。
  7. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それではそれは次の問題として、今総理はつきりと日本国民生活水準は更に引上げなければならないということをお答えなつたと思うのでありますが、大蔵大臣はその就任の当初において、日本は非常にむずかしい事態に当面をしておるのだから、国民耐乏しなければならんという第一声を発せられたと記憶いたしておるのでありまするが、大蔵大臣国民生活水準をどうお考えになつており、どういうふうにしようとしておられるのか、改めてはつきりお答えを願いたい。
  8. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 耐乏生活ということは私は言いましたか言いませんかわかりませんが、(笑声)金を無駄に使うなということを自分でも考えておりますし、皆さんにもお奨めしておるつもりであります。そこで生活水準を上げるということと耐乏生活とは、まあ耐乏と私は申したか申さないか、或いは新聞のかたくらいには申したかもわかりません。そこで耐乏という言葉を生活水準を下げろという意味で私は言いませんでした。併し無駄な金を使わないということは必ずしも生活水準を下げるということじやないと思います。必要な金を使つて、そうして生活水準は上つて行くということは必ずあり得る、その点は今の御質問返事にはなつていると思うのですが、併し初めに総理にお聞きになりました、何でしたか軍国主義なんというのでしたか、そういう金を集めてほかの方向に使うのではないかというふうなお考えがあるようですが、私は今の職に就きます前からも、又今の職に就きましてからも、日本軍国主義になんぞなることは大嫌いで、私はそんなことになれば無論仕事はよしますし、世の中から離れた人間になりたいぐらいに思つている、職務上から言いましても軍国主義の助けにするために国民耐乏生活をするがいいなんということは考えておりません。  それからもう一つ申上げておきますが、先だつてアメリカ銀行家日本に金を貸してくれるかも知れないという人にたびたび会いましたが、会うたびにあなたの国は余ほど不思議な国でよく働く人ということはわかつた、それから相当に秩序を重んずるし、約束を重んずる国民だが、どうも金の使い方がしまりがないと思うということをはつきり言つておりました。それでどうも図星を指されたようで私はたじたじとなりましたけれども、まあみんな戦争後の反動で以て少しは楽がしたいので金を使うようになつたのかも知れないが、とにかく借りた金は返すから安心してくれという返事をしておいた次第で、そういう次第で外国人が見ましても、今の日本一般生活というものが割合に甘いのだというように見ておるようであります。
  9. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 只今の問題は私も世界銀行の副総裁のガーナーに会つたときにいろいろ問題になりましたが、ガーナー言つておるのは、非常に日本では資本が足りない足りないと言つておるけれども、蓄積相当なされておるのじやないか、ということはビルその他が非常に立派になつておるじやないか、それからレストランその他は実に立派だということを言つておりました。或いは更に自動車も非常に立派だということを頻りに言つておる。それにもかかわらず一方には非常な生活水準のみじめな者がある。これが自分には不思議でわからないのだということを言つておりましたが、これこそ図星だと思うのです。それが私がさつきからお尋ねしておるように、政治がそのことをないがしろにしておるから、こういうけつたい状態ができておるのじやないかということを申上げておる次第でありますが、その点は更に別な機会に譲りまして、更にもう一点、総理にお尋ねいたしたいのでありますが、総理国民生活水準引上げなければならないということをはつきりおつしやつておる。そうであるならば、一体総理公務員給与の問題をどういうふうにお考えになつておるか。公務員給与の問題については、いろいろ繰返し議論がなされております。一応の御説明は聞きました。併しならが一体総理公務員給与という問題を本当に真面目に内容をお考えなつたことがあるのかどうか。この点が私にはどうも了解が行きません。人事院勧告をしているところの公務員給与ベースは御承知の通り一万三千五百十五円ということになつております。これは十八歳の独身者をとれば四千七百円で生活をしろということになつております。四千七百円で生活ができるかどうかということを一つよくお考えを願いたい。それは地域給のあります東京に換算をいたしますと、五千三百七十円ということになります。一月五千三百七十円の生活と申しますと、この計算にもはつきり出ておりますように、一日の食糧費は八十六円三十二銭ということになつております。私たちがこの食堂でちらしを一つ食べても八十五円かかるのであります。公務員諸君はあのちらしの三分の一ほどを一食に食べろということを言つておることを意味しておる、そういう内容なんです。或いは被服費は一月六百三十円だということになつております。被服費の六百三十円と申しますと、非常に粗末なワイシヤツを一枚買えば一カ月の被服費は飛んでしまう。綿メリヤスの上か下かを一枚買つてもすでに被服費は飛んでしまう。従つて、そのほかの洋服の月賦も払えなければ、或いは靴下の一枚も買えない。洗濯代のごときは絶対に払えないというのが実情であります。或いは又住居費は一月四百八十円ということになつております。四百八十円という住居費が何を意味するかということを一つ総理は篤とお考えを願いたい。裏長屋日当りの悪い部屋でも一畳が五百円取られるというのが現在の実情であります。部屋らしい部屋でないところで一畳五百円取られるというのが現在の実情であります。そのときに、公務員諸君には四百八十円の住居費で済ませろということは、その裏長屋日当りの悪い一畳の部屋も与えられないということを意味しておるのですが、こういう内容を持つたものが人事院勧告ベースなんです。そういうことをお考えになつて、先のお話国民生活水準引上げなければならないということ等を相対比して、総理はどういうふうにお考えになつておるか、本当に公務員給与引上げる、少くとも人事院勧告までは引上げなければ今の程度生活すらできないのだということを真剣にお考えなつたことがあるのかどうか、その点をお尋ねをしたいと思うのであります。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 公務員給与については、しばしば申すように、引上げることに努力しておるのみならず、現に引上げております。私が内閣を組織して以来二、三回、少くとも二回は引上げております。でありますから、引上げることに努力はいたしておりますが、併しながら、一方に国の財政考えなければならず、国の財政が許すならば、無論人事院勧告程度、或いはそれ以上にも引上げたいと思いますが、併しながら日本の現在の財政状況から申せば、直ちに勧告通りにいたすこともできない。無論この勧告は尊重いたしますけれども、国全体の財政全面から考えてみて、直ちにその勧告通りにいたすことができないというのが政府結論であります。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 よく政府財政全般の立場から考えて、それができないのだと、財源がないからできないのだということをお話になりますが、本当に政府が肚をきめて、国民生活水準引上げが、従つて公務員諸君給与ベース引上げが、最も重大な最緊急に措置をしなければならん問題だというふうにお考えになるならば、決してできないことはないじやないか、よく財源がないということをおつしやいますけれども、今まで財源がない、財源がないということで予算措置されて、その結果がこの間も政府で発表されたように、特別会計その他には二千億を超える財政蓄積ができておるという実情でございます。或いは又これを単に今年だけの問題にしましても、財源がない、財源がないとおつしやるかたわらにおいては、非常にたつぷりした財源をとつておられる費目がたくさんある。昨日もちよつと問題に触れられましたが、例えば前年度剰余金の使用の問題もございます。或いは警察予備隊の費用、これは後ほど更に内容的に質問をしたいと思いますが、これのごときは、今年の予算は五百七十億、それに去年の繰越が百五十二億、両方合せて七百二十九億もありますが、それで、使つておるのは二百二十九億、五百億も余つておる。成るほどそれはすでに使途がきまつておるか、これから何とか使うつもりにしておるとかというようなことを言つておられるけれども、ただこれから使うつもりだというだけであつて、実際には使われない金であつて、これ又来年度に繰越されるというような余裕のものであります。安全保障諸費、或いは平和回復善後処理費等々についても何百億という金がだぶついておる。こういうふうに、この面については非常に余裕のある財源のとり方をしておられて、今申上げたような、非常に惨めな生活状態に置かれておる公務員諸君生活の問題になると、財源措置ができないからということを繰返しておられるのは、政府において何ら国民生活を顧慮しておられないということを意味するのじやないか、この点について改めて御答弁を願いたい。
  12. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) お答えいたします。先ほどおつしやいました剰余金ということは、昨日も御返事をいたしましたが、前年度剰余金をその年に使つてしまわずに、その次の次年度予算に組むということが財政法上きまつておることでございまして、これは動かしがたいことでございます。それからその他の費目についていろいろお挙げになりましたが、これは残つておるはずだとおつしやいますけれども、皆使途がきまつておりまして、それぞれ使つてしまうものでございます。それをしまつて置いてだぶついておるということではございません。公務員のかたがたの待遇をよくするということは、我々人間として望むところでございますし、それのでき得る限りのことは今までもいたしたつもりであります。又今後いたしますつもりでございます。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今大蔵大臣は残つておることはないので、年度中に使うてしまうのだということをお話になりましたが、確かに使つておしまいになるのか、或いは来年度相当繰越して来年度にお使いになるのか、その点をもう一遍はつきりして置いて頂きたい。
  14. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 実際に支出しますことについては、只今どの口がどうなるということはわかりませんが、使うことに契約をいたしますとか、或いは引当てが起るということは今予知できることなんであります。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 では次の問題に移ります。政府のこれまでの説明によりますと、保安隊であるとか警備隊であるとかいうようなものは国内治安維持のための部隊であるというふうなお話でありました。そうだとするならば、国内にあれだけの部隊を置き、あれだけの装備をされるのは、一体国内においてどういう危険が、どういう備えなければならない危機的な状態があるというふうにお考えになつて備えをされているのか、この点を一つお伺いしたいと思うのです。特に総理大臣は、繰返し御説明をなさつたように、第三次世界大戦危機は緩和された、遠退きつつあるということを御説明なつた。私もこれは総理のお見通し通りだと思うのです。それならば、こういう世界危機の緩和に関連をして、日本危機状況をどういうふうにお考えになるのか、どういう状態があると考えられるから今のような装備をした部隊を置いておかれるのか、その点を先ず総理にお尋ねしたい。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この一、二年来の状態を見ましても、或いは火炎びんが飛ぶとか、或いは又地方において騒動が起るとか、現にストライキが起るとか、或いはそのストライキ発展模様によつて石炭鉱山も荒廃に帰するという始終危険があつて、独立後間もないことでもあり、又世界情勢が仮に第三次戦争が起らないとしても、冷たい平和とか冷たい戦争とかいうような事態は存しないとは私は言わないのであります。ただ、戦争の危険が遠退きつつあると外国政治家或いは政治当局者が言いますから、世界全体の情勢はまあそうなつておるのであろうと思う。併しながら、日本国内はどうであるかと言えば、絶えず外界の刺戟を受けるそのたびごとに動揺を生ずる。日本国内状態と申しますか、治安状態は必ずしも安心ができない状態におります。一例を申せば、或いは朝鮮人の暴動もあります。或いは又共産党の刺戟によるストライキその他の問題が起つております。独立後更に生活が安定し、社会秩序が確立し、共産党がなくなりましたならば、(笑声)私は社会の反省と共に日本治安回復すると思いますが、今日は動揺の状態にありますからして、すべての事態に備えなければならないために相当の苦慮をいたさなければならないものと存じております。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 お聞きしているのは、そういう一般的な意味において何だか危いような気がするから備えをしておかなければならんというような問題でなくて、アメリカにおいても或いはイギリスやフランスにおいても、現在の軍備拡充計画をやる場合には、相手側のいろいろな軍備の状態なり或いは侵略の状況なり、そういうものを具体的に想定をして、それに対応するものとしての軍備拡充計画を計画的に遂行をしていると思うのであります。日本は軍備でないとおつしやるから、あえて軍備とは申しませんが、日本日本として現在のような保安隊なり警備隊を準備される以上は、それに対応するものとしての暴動なり動乱なりというようなものをもつと具体的にお考えになつて、これこれのこういう状況が具体的にあり、こういうものに対応するものとして今問題が考えられているんだというようなことが具体的に示されなければならないと思うのでありますが、その点をもつと具体的に御答弁を願いたい。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 便宜私からお答えをいたします。具体的にどういう叛乱の危険があるとか、どういう大騒擾の危険があるとか示したらどうかということであります。我々といたしましては一般的にいろいろの観点から判断して、これを処置して行く必要があるのじやないか。これを具体的に申しますると、五月一日のメーデー事件或いは大阪の吹田における騒擾事件、或いは名古屋の大須における騒擾事件、これらは御承知の通り相当な擾乱と私らは考えておるのであります。幸いに事なきを得ましたのでありますが、これらと関連いたしまして、只今のいろいろな情勢から判断して、内地の平和と治安を確保するためにはどうしてもこれに相当すべき備えだけはしておかなければならん。殊に国際情勢から判断いたしまして、いわゆる外国の使嗾或いは教唆による大動乱事件が起らんとも限りませんので、これにつきまして、我々といたしましてはでき得る限り内地の民心の安定を確保すべく用意しなければならんと、こう考えます。
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今お述べになつた五月一日のメーデー事件であつたか、吹田の事件であつたか等々の事件をお考えになつてつたならば、これらの事件に対応するものとして、今の大袈裟な保安隊なり警備隊なりというものは毛頭必要はないと思うのですが、これは更に議論になりますから後ほどに譲りますが、それならば、今のそういうふうな擾乱或いは暴動に備えるために、そういうものの治安を維持するために必要な部隊員、或いは装備というようなものをば、どういうふうにお考えになつているか、具体的にお示しを願います。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通り、これらの点に関しては、いわゆる保安庁法において大体の人員がきめられておるのであります。即ちこの保安庁法ができました理由は、今私の申上げまする通り国内の平和と秩序を維持し、人命財産を擁護するために特別の必要ある場合に行動すべく組織された部隊であります。で、これに対する人員といたしましては十一万、海上の警備隊は約九千七百ばかりであります。これが只今内地の平和と治安を維持するに相当すべきものとして議会の御承認を得て実施しておる次第であります。
  21. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その十一万の保安隊、特に各管区隊の装備状況はどうなつているのか、具体的にこれをお示し願いたい。
  22. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 装備の点につきましては遺憾ながら日本の所有のものを使つておりません。これは御承知の通り日本ではまだできていないのであります。幸いにアメリカの好意によりまして、各部隊ごとに部隊の保管者から、日本のいわゆる監督をしておるそれらの指揮者に対して使用貸借の形で借りておる次第であります。
  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そのアメリカからどういう使用貸借になつておるかという点は、更に後ほど聞きますが、その前に各管区隊ごとの装備状況を原則的にどういうものとして装備をさせようとしておられるか、その点を詳しく御説明願いたい。
  24. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは各地に部隊長が、その情勢判断によりまして、必要なりとするものを、その土地の駐屯いたしております米軍の保管者からこれを借り受けておるのであります。
  25. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちつとも装備状況の答弁にならないと思うのですが、私が特にこの問題を問題にするのは、先ほど申しましたように、保安隊の経費というのは非常にたくさん残つている。而もそれは物件費なり設備費として非常にたくさん残つている。その予算の使用の状況とも関連をするから、一体原則的に各管区隊なるものは、どういう装備をやろうとしておられるのかということをお示し願いたいというのであります。それが又果してそういうものが、さつきおつしやつたような擾乱なり、さつきおつしやつたような騒動に対応する装備として必要なのかどうかという問題にもなるので、この点も詳しく原則的な問題でいいから御説明を願いたいと言つている次第であります。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通り、この十一万の保安隊員、或いは九千余の警備隊、これを組織いたしまするについては、これは武器ということよりか、むしろいろいろな設備に費用がかかるのであります。申すまでもなく、北海道のあの僻陬の地におきまして、相当保安隊がおります。これらの隊員に対して、適切なる住居その他一般の設備するのにはなかなか容易ならんこれは費用がかかるのであります。これも止むを得ないと考えております。武器の点につきましては、今申上げまする通りに、アメリカの好意によりまして、これを無償で使用しておるのでありまするから、国家の予算上は決してその負担はかかつていないわけであります。かような次第であります。
  27. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもその装備状況はつきりしないのですが、市井に出ているものによれば、例えば管区隊の火力は普通科の三個連隊「これで五十七ミリのバズーカ砲を八十一門、七十五ミリのバズーカ砲を三十六門、六十ミリの迫撃砲を八十一門、八十一ミリの重砲を三十六門、その他重軽機多数に小銃、こういうことに火力はなつていると伝えられる。或いは又特科隊、特科連隊にすれば、百五ミリの榴弾砲を五十四門、百五十五ミリの榴弾砲を十八門、自走高射機関銃を二十四門、こういうものを火力として装備をするということに言われ、或いは又戦車として普通科、三個連隊を以て六十六台を作り、或いは偵察中隊として九台のものを持つというようなことが言われる。車両にすれば二トンのトラツクを七十九両を持ち、一トン以下を二百三十一両持つというような装備状況が伝えられているのですが、従つて私たちがいつもわからないのは、原則として管区隊の装備状況は一体どういうものとお考えになつているのか、市井のこういうものでいろいろその点何かとか、そんなことはないだろうとか、いろいろ議論がごつちやになつているから国民が迷つているので、その点をもう少しはつきり具体的にお示しを願いたいということを言つているのでありますが、その点をもう少し具体的に御説明願いたい。
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは各部隊長の判断によりまして、その訓練とか、或いは今申上げます通りの騒擾、反乱が起り、或いは外国の教唆、扇動によつて起るかも知れないような情勢を判断いたしましてきめるわけであります。これは原則的にどの部隊にはどれだけのものを持たせるのか、或いはどの管区においてはどれだけのものを持たせるのか、昔のいわゆる軍隊式のものではないのであります。そのときどきの情勢判断によつて、必要なことを各部隊長の判断によつてやる次第であります。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもその点は違うようでありますが、各管区隊の実情その他から見て、一つの原則的な基準があつてつておられると思うのですが、この点は時間の関係がありますから、更に別な機会にもう少し具体的に質疑をいたしたいと思います。  もう一つ総理にお尋ねしたいことは、昨日日本の今後の経済状況をどう持つて行くかということについて、総理は一体総合的な長期計画を策定するお考えがあるかどうかという質問があつたのに対して、これまでもそういうものは困難であつたし、必要はないとして言つて来たのだが、今後もそういうものは殆んど困難であり、必要はないと思うというような御答弁であつたと思うのですが、併しながらすでにガーナーその他にもお出しになつたように、国際収支の長期見通しというふうなものはお考えになつているのであるか、或いは又食糧増産五カ年計画というようなものもすでにできている、更に電源開発の部門についても計画ができている、或いは船腹の増強計画というようなものも計画ができている、そういう個々のいろいろな重要な部面については、すでに長期計画ができているので、それらが一番不足しているところは、総合的に一体どういう相互関連において、従つてそれらの個々の政策をどういう順位で、どういうウエイトで運んで行くかという政府の意思決定がなされていない。而もこの政策の目標をどこに置くかというようなことが、政治的にもはつきりしていないために、これが政策にならないで、単なる見通し作業になつているというところに、日本の経済が混迷している原因があると思うのですが、すでにイギリスでも或いはフランスでも、或いはアメリカでも、相当長期に亘る総合的な計画を立てて着々とやつているのでありますから、日本でもそういう意味においては、絶対にそういう長期に亘る総合的な計画が必要であると思うのでありますが、この期に及んでも、なお総理はその計画が必要がないというお考えであるのかどうか。その点を一つお聞きしたい。  それと関連をいたしまして、総理は昨日食生活の改善が非常に必要だということをおつしやつている。私たちも日本生活水準が非常に低いために、肉であるとか、牛乳であるとか、卵を余りに食べなさ過ぎる、そういう意味において食生活を改善しなければならないことは総理と全く同じ意見でありますが、併しそのことが一体総理がおつしやつているように、米食率を減らすのだ、そしてパン食に更に移行するのだというふうにお考えになつているのならば、一体アメリカからの、或いは外国からの穀物輸入を減らして、成るべく国内の自給度を高めようという現在の政府考え方と、今総理のおつしやつた生活の改善の方向と、どういうふうにあんばいをせしめられるか、ここらに大きな食違いができて参ると思うのですが、これも政府はつきりした長期総合計画がないからこういうことになるのじやないか。更にはもう一つ、一体現在日本アメリカからの援助なしに一応経済を運営いたしております。併しその内容はよく総理が御承知の通りに、特需であるとか駐留軍の国内消費によつてドルの赤を埋めているという状態で、その限りにおいては非常に不確定なものに依存をしているという状況でありますが、総理は一体この状態をどういうふうに改めようとお考えになつているかどうか。或いは日米経済協力等々の名の下にこういう関係は当然であり、更に持続するのだ、或いはより深め、より拡めて行くのだというお考えなのか。それであつてはいつまでも日本の自立経済が確立をしないから、やつぱりそうではなくて、そういうものを減少して行つて、正常貿易の形で自立経済を打ち立てて行くという方向をおとりになろうとしているのか、その方向に関連してもはつきりした御所信を承わりたいと思います。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) よく総合計画とか、五カ年計画とかいうことを言われますが、これを立てることがいいか、立てないほうがいいか、全然無用とは言いませんが、五カ年計画を立てて、そうして政府がそれで行くのだと言つてつてみても、世界情勢は日日変るのでありますから、五カ年計画を以て金科玉条として、それで国民がそれによつて誤解を生じてもこれはいけないと思います。これはその年々、少くとも来年度一年ぐらいを目安にして行くべきものであつて、或いは世界情勢国内情勢にしても一定不変のものであるならば計画も必要でありましようが、むしろ一定不変の総合計画というようなものをこしらえるのは、いろゆるフアツシヨ経済というか、共産主義経済というか、これは行過ぎることが往々ありますから私は長期計画というものはむやみに立てるべきものじやない。併しながら一、二年の経済情勢等を、国民生活等を通じていわゆる見通しと申しますか、或る前提の下に、予想の下に立てて行く、いずれにしても見通し、或いは予想の下に立てるものであります。実はあやふやなものだと私は思うのであります。それが必ずその計画通りに行われると国民考えるならば、とんでもない間違いであります。現に貿易にしても、これだけ今年は増進するであろうと思つても、或いは米国における軍需計画が遅れたとか、或いはどこの国においてどうだとかいうようなことのために、始終貿易計画にしても殖えたり減つたりいたすのであります。これを、このいろいろな不安、不定の条件を中に入れて考えないということはとんでもないことであるのでありますから、私は長期計画には賛成しないのであります。併しながら、然らば何もないかといえば何もないことはございません。現に経済審議庁においても計画を立て、又農林省においても計画を立て、或いは通産省においても計画を立てております。併しながら、その計画が一定不変のものと考えるべきでなくして、四囲の状況に応じてこれを変更して行くことがいわゆる政治であろうと思います。只今生活のことについてお話がありましたが、日本国民の食糧というものは如何にしても確保すべきものである、又現在の貿易状況は食糧の輸入のために貿易のバランスが甚だ悪くなつておる、食糧のために五億も払つておるという状態、この状態を改めなければならんと思います。然らばどう改めるか、これは卵を食えとか、牛肉を食えとかいうことも一つの方法でありましよう。あらゆる方法を考え、而も米麦のみの主食、これに依存して他を顧みないというようなことはいけないということを申すだけの話であります。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 自立政策はどうですか。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 所管大臣からお願いいたします。
  33. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 自立は勿論必要でございまして、そのためにこそさつき申しましたような、耐乏という言葉がいけなければ倹約、或いは無駄を省くということにして、金を使うもいいが、いい物を作つて外国に出す、そのほかには輸出入貿易の片寄るのを防ぐ途はないのであります。その方面に全力を注いで行くという考えでおります。
  34. 高田なほ子

    高田なほ子君 道義の高揚について御質問申上げます。道義の高揚については国民全般として何ら異議を差挾むべき性格のものでないのでございます。昨日来道義高揚の問題について二、三のかたから種々御質問があつたのでございますが、これは道義高揚の内容の問題についていろいろと割切れない面があるから、こういう問題が出て来るのではないかと考えられるのでございます。先ず私がお伺い申したい点は、道義の高揚ということが、昨日首相の御答弁にありますように、独立国として列国の仲間入りをするためには当然高い道義が要請されなければならない。現下の道義頽廃に対しては当然これに対する対策を講じなければならない、このような誠に素直な御答弁でございました。併し私は単にこれのみでなくして、両条約が締結せられ、外国金融資本の支配が強くなると同時に、朝鮮動乱後における我が国の国防生産、この国防生産の強化によりまして、日本の産業機構は非常に軍需的な色彩を帯びて来ているようでございます。即ち日本の置かれておる今日の国際的な立場、この立場の変革によつて当然国内体制の変革が要請されなければならないと思うのでございますが、この戦後の国内体制の変革、この要請に基くところの道義の高揚ではないかというような疑問を持つておるわけであります。若し首相の仰せのごとく道義高揚が常時行わなければならないとするならば、なぜ占領下であるといえども、このような道義の廃頽を来さざる以前に政府はもつとアピールしなかつたか、こういう疑問が生じて来るわけでございます。どうぞ本国会において道義の高揚が大きく叫ばれました理由について、簡明、明確な御答弁を先ず伺いたいと思うのであります。
  35. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 道義の高揚を叫ばなければならんということは、これは誠に遺憾なことでありますが、これは敗戦という国が未だ曾つて経験したことのないシヨツクを受けて、このシヨツク、或いはこれにより思想上に一種の空白状態ができたというようなことが道義を頽廃せしめた原因であろうかと思います。併しこのままにうつちやつておくことはできません。又国民生活回復と共に道義はこの終戦後年々高揚しつつあると私は考えるのでありますが、併し高揚といつても高い教養を持つことが大事であるのでありまして、これ以上道義を高めてはいけないという、そういう限界は無論ないはずであります。高ければ高いほど国としての品位も高まり、又国民生活も安定いたすのでありますから、いやが上にも高からしめざるを得ないものと思うのであります。
  36. 高田なほ子

    高田なほ子君 私も道義頽廃の原因が敗戦後の精神的な空白状態にあるということについては全く同感でございます。国民的な緊張を失うところに社会の混乱があるということになるとすれば、敗戦後封建的な国家権力が崩壊すると同時に、いわゆるその国家権力の中に生まれて来た道徳、いわゆる古い道義の型そのものがこれは崩壊されるのが当然であつて、この崩壊された後に、政府は当然精神の支えとなるべきものを打立てなければならないと、このように考えるわけでございますが、この精神の空白、或いは思想の空白と申したほうが正しいと思いますが、この思想の空白を支えるところの中心的な課題は何かということについてお尋ねをしたいと思います。
  37. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつと御質問趣意が私において捕捉ができないのでありますが、御質問趣意は、何をしたらば一番道義を高揚せしむるかというお尋ねでありますか……お尋ねの趣意は、如何にしたならば、道義を高揚せしめ得るかというお尋ねでありますか。
  38. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちよつとそれじや補足いたします。今まで戦前における国民の精神を支えたものは、これは八紘一宇という一つの目標であつたと思うのであります。この八紘一宇という一つの精神、この目標が国民の一切の日常の言動の基準となり、勿論教育方針の基準となり、そうしてこの下に教育勅語といつたようなもので、即ち国民の思想のあるべき姿をここに統一されていた、これがなくなつたあとの問題です。
  39. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これはそのときどきの国情とか或いは社会状況によつていろいろ議論の仕方があろうと思いますが、過去は別といたしまして、現在においては、日本の国家及びび社会と申すか、国民が一に考えなければならんことは、民主主義で国家を守るということ、或いは国民生活を安定して行くということが今日においては最も重要に感じ、これを又道義の基礎にすべきものではないかと私は思います。即ち社会生活が道義の高揚によつて安定をし、又これによつて祖国愛ができ、国民がお互いにその生活を楽しみ得るというのには、やはり国民の徳義が高揚されなければならず、即ち文化が高くなり、又道義を重んずる相当の徳育が進むとかいうようなことがなければ、社会生活或いは祖国愛はできないと思います。即ちこの日本のような立派な国を守り、或いは国民を守り、この社会を擁護して、お互いに相協力して社会生活を安定ならしめ、又向上せしむるということを基調といたしますならば、自然道義の高揚ということになり、又道義の高揚がなければ社会生活の安定はできない。一国の文化生活も向上できるはずはないと思います。故に現在のおきましては、過去はともかくとして、現在においては民主主義の発達、民主主義によつて国民がこの日本の国を、或いはこの社会を相共に共に守りたい、そうしてよくするというためには、お互いに自由は尊重する、権利ばかり主張して義務は怠るというようなことがなく、楽しい一国ができ、又楽しい一国を守るという気持になり、それによつて道義は自然高揚するということになると私は考えます。
  40. 高田なほ子

    高田なほ子君 戦後の精神的な支えの中心は民主主義国家の建設である、このような御答弁でございます。こういう基調の上に立つた首相の御発言の中にあつた祖国愛という問題について、私は民主主義国家における愛国心という問題については私も非常に疑義を持つておるのであります。申上げるまでもなく、愛国心それ自体は善であります。又愛国心を唱導しようとする人の思想の中にある愛国心そのものも又善であると思います。愛国心それ自体は、政治的なものでもなければ、当然経済的なものでもないわけであります。その人自身の国についてのこれは大きな感情であろうと思います。だが併しこの感情が人為的に成る方向に持つて行こうとされた場合に、このよい感情は一つの意思に発展する可能性を持つておるわけであります。この意思の発展過程において教育という問題が大きな役割を占めるのでありますが、過去の日本の教育においては、この発展の過程において偽りの歴史を指導し、偽りの政治を指導し、偽りの経済を指導し、あるべき真実の愛国心というものを邪悪の一つの攻撃体制という方向に持つてつたということは、今日私どものひとしく反省をしているところです。吉田首相は、祖国愛、昔はいざ知らず、現在はということを言われましたが、現在はやはり過去の連続である。現在又将来の連続であります場合に、現在言われておるところのこの愛国心というものと教育との関連性というものは非常に大きいのでありますが、言うところの……、特に木村保安庁長官が一昨日か、木村個人でも祖国を守るという大変な張切り方を示されたのであります。明かにこれは国民的型の愛国心であり、民主主義の社会における愛国心とはいささかその趣きを異にしていると思うのです。この愛国教育の民主主義社会における課題は何かという問題について首相並びに文部大臣の御答弁を煩わしたいと思います。
  41. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。どうも道義の高揚とか愛国心とかということが、言葉がそのままに使われておるものでございますから、いろいろ誤解とか何とか起きるわけでございます。思想といたしまして、御承知の通りに新憲法ができまして後というものは、政治形態が百八十度の転回を示したわけです。君主政治から民主政治に変つた。ここでこの思想というものが転回をしておりながら、言葉というものはやはり今まで使われたものが変つていない。即ち漢字思想が入りましたときには、漢字を以て思想が入つて来た。でございますから、今回こういうような百八十度の転回をしました場合には、やはり民主主義の言葉が新しく入つて来ればいいのですけれども、そういうわけには参りません。それで道義の高揚とか愛国心とかいうことを申上げますと、もとの封建思想時代、又君主専制時代のそういうような道義とか愛国心ということに変るわけでございます。  そこで私どもが考えております道義の高揚、又愛国心と申しますことは、結局新日本憲法、それに次いでできましたところの教育基本法、こういうようなものを楯にとりまして、これを根幹として、如何なるものが道義であり如何なるものが愛国心であるか、こういうことをきめて行きたい、こう考えております。でございますからいろいろこの言葉によつて誤解の起ることは甚だ残念でございますが、言葉が変りませんためにこういうことになつている次第であります。私ども考えておりますことは、新憲法に言う、世界の平和に寄与する国家を建設して、そうして我々は個人々々を尊重して、平和を保ち、その平和を世界に推し進めて行く、そうして世界の平和に寄与する、こういうような民主主義思想を確立する、こういう意味におきまして、私は愛国心はあつて然るべきだと思う。  そこで私はあなたが御婦人でいらつしやるから特に訴えたいことは、和ということは私は愛と感じております。と申しますことは、教育勅語は廃止されましたけれども、「夫婦相和し」という言葉がございます。あのときに……、民主主義になりましても、夫婦が憎悪したり喧嘩していいものじやない、これはやはり夫婦はお互いに相和し合わなければならないのでございますから、平和ということは愛するということ、自己を愛すると同時に人も愛する、こういう意味からやつて行きたいと思います。愛が本当に徹底すれば平和はもたらされるものであります。よく申すことでございますが、御承知の通りに母性愛というものは非常な広大無辺なものでございます。よく私の母が申しましたことでございますが、盗みする子はかわいくて縄打つ人は憎らしい、これほどの母性愛が女にはあるのでございます。そういうような愛というものが徹底したならば、世の中は非常に平和に行くと思います。でございますから、その意味におきまして、我々は民主主義新憲法並びにそれによつてできました教育基本法の趣旨を尊重いたしまして、それに合つたところのいわゆる愛国心、道義の高揚、こういうことを我々は主張しておる次第でございます。
  42. 高田なほ子

    高田なほ子君 誠に御懇切な御回答を頂きまして有難く感ずるわけでございます。御趣旨のほどは十分にわかりました。  私ここで最後に御質問申上げたいことは、平和憲法の趣旨を守り、そして教育基本法に示されたところのこの精神を守つて行こうとする、今日の全国の先生がたに対して、むしろ憲法違反をするような立場に立つ再軍備主義者、或いは和の中に個人の尊厳を守ろうとする立場をとつている教育基本法の立場に反対の立場の者がたくさん今出て来まして、これらを守つて行こうとする先生がたに有形無形の圧力が加わると共に、それ自体善であるところの愛国心を人為的に、一つの国家的の意思にまで持つて行こうとするような危険性を持つておる人為的なやり方、即ち明確に言うと、外務省の役人のかたがたが地方に出掛けられて再軍備論を強調されているというがごときは、明らかに憲法の趣旨に反すると共に、公務員の業務の限界を越えておるものだと思うが、こういう人為的な方向によつて平和憲法の趣旨が守られないということについては、私は心からなる遺憾な点を発見するのですが、これに対する文相のお考えなり、又総理の御見解なりを、これは御両者の御見解をお聞きしたい。  それから、もう時間がありませんから続けて御質問申上げたいのでありますが、文相は今個人の尊厳を基調とする民主主義、これが精神の支柱であると答弁された。私はこの御答弁に対して満腔の敬意を払うものでございます。だが併し今日用意されておるところの青年学級、これは明らかに六・三・三・四制の体系外に出たところの全体のコミニユテイの中における青年教育機関であろうと思う。この全体のコミニユテイの中における青年の教育方針、即ち青年学級法における構想、これらの指導方針というものをここに明確にして頂きたい。更にこれに関連して産業開発青年隊なるものが農林省関係からの提出として法案化されるやに聞き及んでおるのでありますが、全体の社会の青年の教育というものは、国家の将来の運命にかかる実に高価な仕事であると信ずるので、どうぞこの新学制、体系外における青年学級の中で青年を如何に指導するか、産業開発青年隊との関連性も加えて明確に御答弁を願いたいと思うのでございます。
  43. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。政府の役人が地方へ出まして再軍備をいろいろ主張しておるとか何とかいうようなお話でございますが、私はまだそういうことをよく存じません。これは恐らく何かの誤解じやないかと思います。十分それは調査いたしまして、教育上の立場からも私は異論を唱えたいと思います。  それから農林省あたりか何か考えておる青年隊とか何とかいうことは一向存じません。私は日本の教育といたしまして一番大事なことは、やはり六・三・三・四の学制による教育ももとよりやつて行きたいと存じますが、これは当然やらなければならんことにいたしますが、併しまだ二十五歳までの青年のうちで、そうして高等学校とか大学へ入つておりませんで、本当に勤労をしておるところの人が約千二、三百万人おるはずでございます。こういうような人たちは非常に向学心に燃えておりますけれども、学習の機会を与えられておりません。そういう人に学習の機会を与え、そうして国民として又尊重されるような人柄になつて頂きたいという社会教育の方面にも力を尽して行きたい、これにつきましてはいずれ私は皆さんがたに御審議願いまして、青年学級を如何にして教育制度として行くかということを、案を今考えつつありますから、いずれこれは皆さんがたに御審議願うことと存じますが、重ねて申しますが、農林省とか外務省とかそういう方面でいわゆる昔に戻つて何か国家主義のような訓練でもするとか、又そういう方向に進んで行くとかいうことは一向ないと私は断言して差支えないと、こう存じますから、御承知おきを願います。
  44. 高田なほ子

    高田なほ子君 終りましたが、ちよつと最後に確めておきたいことですが、公務員が特定の政党の政策を支持し或いは反対するといつたようなことは、岡野さんは御存じないのでありますが、私どもは地方に参りまして幾多の例を知つておるのです。若しこれが事実であるとするならば、一体どういうお扱いをなさるおつもりなのかそれを伺いたい。  もう一つ、大変に確固たる平和主義に徹されたお答えを伺つて嬉しく思いますが、若し仮に、西欧陣営が最近新しい軍国主義的な方向に行つておるし、日本が安保条約を締結しました結果、当然やはりこの軍国主義的な傾向の中に協力しないという確認はどこにもないわけでございますが、そういう状態なつたときでも、これは飽くまで平和主義に徹され、個人の人権を重んじ、今日の平和憲法を守つて行こうとされるのか、この点についてどうぞもう一度明確に確認しておきたいので、お答えを願いたいと思います。
  45. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。若し国家全体の奉仕者であるところの公務員がそういうようなことがございますならば、十分取調べまして、処断するにやぶさかでございません。  それからもう一つの問題は何でございましたか……。
  46. 高田なほ子

    高田なほ子君 講和、安保条約の締結……。
  47. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) わかりました。平和憲法が厳然として存在しておるのでありますから、その新憲法の精神をどこまでもつき通して、どこまでも忠実に守つて行くという政府の所信を申上げます。
  48. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 委員長に伺いたいのですが、総理大臣はお忙しいということですが、私の所要時間はおいでを願えるのですか。
  49. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) できるだけ簡単にお願いします。
  50. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 無論簡単にお伺いします。と同時に、もう三日間に亘つての審議でございますから、大体重要な問題は一通りつたかと思うのであります。(「亘つていません」と呼ぶ者あり)まあいろいろ御意見はあると思いますが、私実は三日間じつと考えておりますと、総理大臣……他の委員が部分的にはお触れになりましたが、特に私のような見解に対して総理はどうお考えになつておるかということをお聞きいたしておきたいと思う一点があるのです。  実は独立前後の日本状態を眺めておりますと、いろいろな国民の流れがある。一つは長い間の占領政策に馴らされたと申しますか、自主的な考え方を非常に失つておる。そうして飽くまでも隷属的で、他人依存的だということで以て現在に処して行こうという流れが一つあります。と同時に、独立前後から日本に起つて参りました占領政策に対する一つの反撥と申しますか、無論占領政策についていろいろな批判はあることは当然だと思いますが、ともかくも占領政策に対する反撥から、更に二つの流れが出て来ておる。一つは非常に復古的であつて、狭隘な民族意識というものに立つて物事を処理して参ろうというような傾向もある。と同時に狭隘な民族精神が、何と申しますか、共産主義的な思想、勢力というものと結附きまして、民族意識を非常にあふつておるというふうな傾向も見られる。その中に、実際この敗戦後の日本の民族の創痍をいやして、そうして国際的な責任と義務を感じ、新らしい日本の独立を完成して行こうということは、私はなかなかむつかしいことである、こういうふうに考えられるのであります。一昨日でありましたか、ドーマン氏が毎日新聞紙上を借りて、日本人に特に注意をいたしました考え方、それは愛国心だとか誠実であるとか、公共の善のために犠牲を忍ぶとか、権利に対する責任と義務の観念というふうなものが非常に足りなくなつて来ておるのではなかろうかということを言つておるのであります。又最近外国から来た者が、ひとしく反米思想が非常に強烈であるということに驚いている者もある。私は今のような姿が決して日本の本当の独立を完成させるゆえんでもなければ外国の信頼を繋ぐゆえんでもないというふうに考えるのでありますが、総理はこれについてどういうお考えをお持ちになつていらつしやいましようか。と同時に、このことはやはり政治にどこか欠陥があつたに相違ない。少くとも政治のあり方について勘案して参らなければならんじやなかろうか、こういうふうに考えられるのであります。占領中は事実占領政策の中にあつたのでありまするから、総理はしばしば政治の衝に当られましたが、併しながらやはり占領下というものであつたことは事実である。併し独立いたしましてからは特に、特にです。これはお互いの責任において日本政治をやつて行かなければならん。そうして独立を完成して行かなければならないのであつて政治の衝に当つておられる総理としてはこの点を御痛感になつておられることだとは思いますが、当然のことと思いますが、一言総理の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  51. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、一概に占領政策言つても、これは相当の変化があります。終戦当時の米軍と言いますか、総司令部の気持と、それから占領が進むに従つて、最後と言いますか、最後、時期的に考えてみるといろいろ変化があります。先ず初め占領軍が日本に到着した場合には、日本という国はひどい国であつて、平和を害する国だ、又個人の自由を尊ばない国である、国家主義であり、軍国主義である、平和の敵であるとまで考えて、その国家の存在、組織が世界の平和に合致するように、或いは民主主義に立て直さなければいけないという固い信念を持つて占領政策実施に当つた人も確かにあると思うのであります。併し日本に在留するに従つて、必ずしもそうではないのだ、又そういう考え日本の国家組織、社会組織を破壊するということは、結局東洋の平和を維持するゆえんでないというふうに考えて、従つていわゆる占領政策なるものは相当変化を来しております。併しこれを通じて見て、一概に申せば、日本を敵国として考え、この国を破壊し去ろうという考えは一部の人にあつたとしましても、占領政策全体として、通観してみれば、日本の独立、日本の自立を助けるという気持で一貫しておることは確かであります。そこで、併しながらそれにしても日本の国情に適合しない、或いは占領政策を出した当時においては適当な施策であつたかも知れませんが、事情の変化と共に、そのときにおいて適当な施策が、必ずしもその後において適当でなかつたというようなこともあります。そこで、独立前後から、講和条約が発効をする前後から、一応政府としては委員会を設けて、どの施策は改めなければならんか、現在の状況に照らし、又日本の独立と自立にふさわしい法令、組織は、残すべきものは残し、改むべきものは改めたいと考えて政令諮問委員会、ちよつと名前は忘れましたが、何とか委員会を作つて、そうして各方面の権威者と思う人に研究を頼んだのであります。日本の自立、独立後の今日、従来の法制にして若し改むべきものがあれば、又日本の国情に適応しないようなものがあれば、これは改めて行きたい。これは仮に改めても、事情は変化いたしますからして、一定不変のものであるべきでないことは当然でありますが、いずれにしても日本の自立、独立にふさわしい法令なり制度なりを設けて参りたいという考えであります。
  52. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私はそれで特に総理の考慮を煩わしたい問題があるのであります。この三日間の委員会におきまして、たびたび出た問題が再軍備という問題でありますと同時に、これに関連しての国民生活の問題、この問題でありまするが、率直に申しまして、この問題は国会で言われておるのみならず、世間においてもよく言われておる問題である。  私はここで実は総理と、再軍備と戦力問題はもう一切いたしません。それはもうよくわかつておるのでありますが、ただ私自身の観点は違つておりまするが、それは別の機会に譲りまして、本年度予算におきまして自衛力、この自衛力だけは、これはもう吉田内閣として再軍備はいたされないのでありますが、自衛力だけは当然吉田内閣政策として、現に本年度の、二十七年度予算において総額の二一%を占めておる、国民所得の三・七%を占めておるような予算を計上されておるのであります。でありまするから、私は事実に立つての問題だけを究明したいと思うのでありますが、そしてこの問題が非常に大きな予算上の地位を占めるだけに、この自衛力が如何なる性格のものであるかということを闡明され、そうして将来これがどういうふうに発展するかと……、昨日までのお話では、差当り二十八年度には人間は増さないというふうなお話であり、そして木村保安庁長官から質の向上を図るという方針は明らかになつておりますが、併しながらその金額は、先ほど佐多委員から言われましたように、実に防衛関係の経費で一千億以上のものが現に使用されないで繰越されようとしておるのであります。で大蔵大臣はいつも、これは使用目的がきまつて、来年に繰越すのだから削減できないと言われるのだが、実は大蔵大臣が各省の予算を査定されるときには、そんな額を持つたつて今年使えるかどうかと言つて、各省の予算を削るのが一番根本的の考え方なんです。殊に貧乏な日本ではそれくらい慎重に予算を編成されておると同時に、一方におきましては確かに経済界の前途は、これは小笠原長官も大体肯定されておるようであります。大蔵大臣も肯定されると同時に、総理自身も国際情勢から見まして、楽観を許さないことは言われておる。又我々がしばしば指摘いたしましたように、減税はたびたび行われましたが、国民負担は決して軽くなつていない。現に大蔵省がお出しになつた、今度の税を軽減されると同時に出された統計においても、国税においても、少し昨年度よりは上つて来ておる。地方税を合せれば更に上つておるというふうな情勢でありますが、私はそれをとやかくここで批判をいたそうとはしません、佐多委員から詳しくお話がありましたからいたしません。ただこういう問題については、総理は自衛力の問題も国民の盛り上る力と共に醸成して参りたい、又国民生活の向上も期したいというお考えであることはよくわかるのであります。併しこの問題もさて考えて見ますと、今になつて木村保安庁長官佐多君の質問に対しまして、十一万人の必要が如何にあるかという合理性を答弁されても、これは国民から見ればもうわかつておる。初めマツカーサーの書簡において七万人ができ上り、次に安保条約を締結をするときに十一万になつた。日本人が日本人の考え方でこれだけの金が要るのだ、そうしてこれを押して行かなければならないのだという問題でなしに、よそからの慫慂によつて事実ができました。併し私は何もアメリカからの要請があつたものが悪いと言つて削るというふうな考え方は持つておりません。併し自主的に日本人自身が日本ではこうあるべきだという上に立つて、更にアメリカの要請があれば、それと睨み合してやつて行くならばいいのでありますが、根底から実は日本人の考え方が入つていないということだけは明らかだと思うのであります。而もこれが全体の予算から見ても考えなければならんというふうになりますと、どうも国民の間に疑いを抱くような問題になつて来る。で先ほど総理が政令諮問委員会のお話をなすつた総理自身は名前をお忘れになつたようですが、私はよく覚えております。併しこの問題は独立前だけでなしに、独立後も私はいよいよ以てこういうふうないろいろな知識、経験者を集めておる、官民の力を集めて委員をお作りになる、独立後の日本にふさわしいものをお作りになるやり方は必要だと思うのでありますが、独立前におやりになりましたのは、不幸にして破防法の問題と労働三法の改正、警察法の改正等になつて現われて、余り大きな変革をいたしておりません。そういう意味で私は、総理が何事も重要な問題について国民の意向がわかり、それに伴う意識が盛り上るようになつてからとおつしやいますが、併しながら、まあ政府自身がたくましき政策を樹立されて、そうして広く国民の批判を受けるというやり方に出られましたならば、むしろ国民の議論もそこに集約され、そうして帰趨もおのずからきまつて参るのじやなかろうか。先ほど総理は、独立後の諸制度については再検討されると言われましたが、そういう点で私は実は諸制度についてはすべてのもの、昨日小野君の質問に対しまして、憲法の問題は、個個の具体的な問題から考えてみようというお話でありますが、私は全部諸法令について民主主義的な平和主義的な見地をとりつつ諸制度を改正し、諸法令を改正する。又条約等につきましても、占領中において行われた条約について、独立後改めて国際情勢その他と無論睨み合わす必要はありますが、見直すようなお気持はないでしようか。  更に積極的にむしろ……、総理佐多君の質問に答えられまして、何か統制経済をきちつとやつて行くのじやないか、戦争中の統制経済を予想したような経済の総合計画というものをお考えになつていられるようでありますが、今申上げました防衛力の問題と経済自立の問題もやはりどうしても考えなくちやなるまい。又政局の安定について総理大臣はどういうふうにお考えになつておるか、これらの点についての御意見を伺いたいと思います。
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政令諮問委員会の答申は、政府においてこれを基礎にしてなお研究を継続いたしております。決して打切つておるわけではございません。今のお話のような条約、法律、その他独立後における一切の、これは最高といいますとおかしいのですが、国家の大綱に関するような政策、或いは制度というようなものの再検討をする機関をおいてはどうかということは、私は甚だ賛成である。政府においても考慮するのみならず、いたしたいと考えております。  政局安定、これは自由党で参ります。(笑声)
  54. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 無論自由党でおやりになつて結構なんでありますが、と申しますのは、特に私がこの問題を取上げましたのは、吉田内閣の閣僚の中に、自分が閣僚になつたのは新党を作るのだというようなことを放言する、民主主義の政治のあり方を知らない閣僚がいられると思いますから、特にお聞きいたしましたのでありますから、どうぞそのおつもりで……。  なお時間がありませんから、財政の問題については次の機会にいたしまして、ただ私は総理大臣にたつた一言だけお聞きしたい。この委員会を通じてもおわかりであるように、あれもやりたいこれもやりたいと言つて各省がいろいろな案を作り、議院がいろいろ言つておりますが、なかなか大蔵大臣としては、何らかのここに新しい構想がなければ又予算が編成しにくいことは、これはもう数字の検討のおきらいな総理大臣でもおわかりだと思いますが、何らかそこに持つておられますか。  もう一つその点で、余り漠然としておりますから一言だけ申上げます。これは非常に世間で言われておる言葉で、私いやな言葉ですが、つまり池田君は貯蓄公債主義であつて、石橋君は生産公債主義であつたのですが、それらについて首相はこれに新しい財政政策一つの基準を求めようとしておられるかどうか、こういう問題を一つお聞きいたしたい。
  55. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 従来予算の分け取りと言いますか、予算を作る場合に各省が主張をして譲らない結果、重点的でなくして、分散的といいますか、自然非能率的な結果を生ずるということは、これは私も認めております。そこで又政府がこの点に重点をおくとしましても、国民がこれを了解して、それに協力しなければ実現はむずかしいと思います。例えば電源の開発の問題も必要なりと、こう政府考えても、国民がこれに協力し、若しくは関係会社がこれに協力しなければ……、何十年も前にとつた水利権を主張して、そしてその権利を持つてはおるが、併しながら電源開発をしないというような会社もあるのでありますから、そういうような協力は、なかなか利益問題になると国家予算という名前だけでは協力はいたさないのであります。これは必要である、この点は速かに実現すべきであるという理解があつて、これに協力して初めて、殊に民主主義の今日においてはそういう国民の了解が必要であるので、その点から申しても、今お話のような機関ができて、最高機関というとおかしいのでありますが、一種の権威者を集めて、その向き向きの権威者を集めて、そこにおいて審議する。例えば水力電気が重要であると政府考えて、その重要なることを政府は主張し、又民間もこれに対して反対なら反対と、甲論乙駁の間に国民自身が問題の性質を理解することができて、又その理解において自然結論が出るということにすることが、民主主義政治のあり方と思います。それで先ほどちよつと申述べましたが、最高機関というとおかしいですが、権威者を集めて、そしてそこに問題を付議する、そしてその機関においてこれは重大である、政府予算を重点的にこの問題に使うべきであるということが論議せられ、又これに対して国民の批評もあるであろうが、国民の批評の赴くところに従つて政府が取上げるということによつて、初めて重点的に能率的に国費を使うという結果になると思います。でありますから先ほどお話の機関は是非設けたいと考えております。
  56. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 時間がありませんからもう一点だけですが、特に総理に聞きたいのは労働政策であります。総理が今度の内閣をお作りになつて政策を発表されたのでありますが、労働問題は不幸にしてない。それから私は総理が今度の電産、炭労のストを通じて、労働者が如何に日本の産業復興と結附き、国民生活の安定と結附いておるかということは十分お考えになつておると思うのであります。総理総理大臣になられましてから、産業資本家とか或いは金融資本家等、経営者の陣営のかたとは日本産業復興のあり方についてお話合いがあつたということをしばしば新聞紙上で見ております。真に日本経済を復興することの容易ならざることはおわかりになつておるはずであるが、何故労働組合の指導者その他と懇談をなすつて日本の産業を如何に持つて行くかということが今日までありませんことは、何故であるかということ一つお聞きいたします。  時間がないようでありますから、ついでにもう一つここで総理大臣のおられるところで特に発言したいと思いますのは、実はこの予算委員会で同僚岡田君から緊急調整発動後労働組合の、炭労従事員諸君は斡旋案を呑んだ、経営者はまだ呑まないじやないか、政府はこれについて勧奨をすればいいじやないかという発言があつたのに対しまして、緒方官房長官からそのように取運ぶ趣旨が申述べられたのであります。私はこれは重大な問題だと思うのであります。緊急調整発動後、権力が労働問題に介入することは、これは労使双方ともに対して政府は慎重であらねばならん。これが所を変えまして、経営者が呑んで労働組合が蹴つた場合にもやはりこういう処置をおとりになるだろうか、私は今度の労働争議に関しましては、終戦後労働問題を扱つて来ましたものとして、緊急調整を発動するのは政府であります。併し発動後労使双方に政府がともかくも働きかけることは慎重でなければならない。政府は炭労につきまして、斡旋案ができましたときに、経営者が呑んだあとで、労働大臣が組合側を呼んで斡旋案を尊重してもらいたいということを言われたようでありますが、私はこれは時期を誤つておると思う。斡旋案が出たときに経営者側もこれを呑まないと言つて非常に憤慨しておる、組合側も憤慨しておるときに、労使双方に政府が公益を守る立場及び日本産業の将来のためにこれをするのならばいいのでありますが、一方が呑んでから、呑まない一方にだけなさるというふうなやり方は、およそ労働問題を私は心得ないかたのやり方だと、こう思うのでありますが、以上二点について総理大臣及び緒方官房長官からの御答弁を願います。
  57. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私が多く資本家に会つて、そうして労組のほうには会わないというようなことはよろしくないという御注意かと思いますが、新聞に出る名前が、私が会つた人もあれば、会わない人までも出ております。新聞は余り御信用にならないことを希望いたします。(笑声)  労働問題は誠にこれは日本だけの問題ではない、世界を通じて今後ますますむずかしい問題になろうと思いますから、私も勉強いたしております。併しながら誰に会つた、この人に会つておる、あの人にも会つておるということは特に申上げませんが、決して関心を持たないわけでなく、又資本家だけに会つておるわけでもございませんから、どうぞ御了承を願います。  第二の問題については官房長官から御答弁いたします。
  58. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 堀木さんの御意見でありますが、今回の炭労、電産、両方のストの進行中におきまして、政府は成るべく早くこのスト妥結に導きたいという考えから、双方に対しましてしばしば歩み寄りの勧告を行なつております。で今度炭労ストに対しまして緊急調整を出しました後に、今御指摘のように一方ではこれを呑んで一方で呑まなかつた、その経緯におきまして、政府といたしましては時期が時期であり、成るべく早くこれを妥結させたいという気持から、中労委の会長の意見を求めましたところ、政府でも斡旋して欲しいという意見がありましたので、併し政府といたしましては、なお権力を背景にいたしまして、一方が受諾し一方がまだ途中にある場合に、それに勧奨いたしますことは、この勧奨は勧めるほうですが、圧迫の虞れがあると考えましたので、直接には斡旋をいたしませず、経営者側とたやすく話のできる方面を通しまして勧奨をいたしたのでありまして、政府といたしましては、別に労働問題の処理の限界を超えておるとは考えておりません。
  59. 岩沢忠恭

    委員畏(岩沢忠恭君) もう時間がないから……。
  60. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 あと一言……。私は政府は飽くまでも権制介入については慎重を期せられたい、と同時に今おつしやつたことは、本来中央労働委員会が自分の職分としてやるべきである。中央労働委員会を中心にして、そうしてお運びになることを特にお願いをして、私はこれで質問を終ります。
  61. 平林太一

    ○平林太一君 刻下我が国の非常に憂えなければ相成らないと承知いたしまする事柄に対しまして総理に質疑をいたすのでありますが、特に海外との交渉中に属する諸案件であります。私はここに十項目を用意いたしまして総理の御所懐を承わりたいと存じて参つたのでありますが、総理の御都合によりまして時間がないことを甚だ遺憾といたしますが故に、特にさようなうちにおきまして、最もこれは今日の国家の外交の上におきまして重要と認めるもの四つだけを取上げまして一つ御所懐を承わりたいと存じます。つきましてはどうぞ総理におかれましては、定めし御多端のこと恐察に余りある次第でありますが、願わくは二、三十分間の御猶予を賜りますることができまするならば、大変国家のため幸慶これに過ぎざるものと思います。  第一に申上げたいと思いますことは、国連軍との協定についてであります。外国軍隊は条約発効後六十日以内に日本より撤退することに相伐つておることは申すまでもありません。然るに現に朝鮮事変の推移は前途甚だ遼遠と申すべきでありましよう。若しそれすでにして国連軍駐留に対する協定を今日に至るも成立しあたわざりしことは如何なる理由に基くか、この際明瞭に承わりたいのであります。現に神戸における水兵事件、東京における英濠軍兵士の犯罪事件等、顕著なる事件に対し、今日今更裁判権の云々を論議するがごときことは、独立国家の国辱これに過ぐるものなしと断ぜざるを得ない。巷間伝うるところによりますれば、英連邦国連軍当局が日米行政協定を引例して、あえて協定成立を遅延せしめつつあるやに承知いたす節々があるのでありますが、私はこの態度、この意思というものは、誠に卑法拙劣なりとあえて申さざるを得ない。よくいう火事場において物を稼ぐと同様の、類似の行為と申すべきであります。反省を求めて止まざるものであります。政府は特にこの際先方に深く教え、深く納得を求めて、即ち我が民族の誇るべき伝統でありますが、郷に入れば郷に従えの理解を深く垂示し、教示すべきであります。誠に共感禁じ得がたきことは、現に北大西洋条約方式を条文草案としてこれを示しておる事実であります。外務大臣岡崎勝男君、今日まで種々これに対する御心労を払われたことに対しましては深くこれを多とするものでありまするが、以上申上げました極めて世界共通なるこの理由に基きまして、今日はもはや自他かれこれ迷つておる時期でありません。この際一挙に交渉を妥結、断行すべきであることを岡崎君に進言いたすものであります。この際吉田内閣総理大臣の本問題に対する見識、御所懐を明らかにいたされたいのであります。これが第一であります。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 国連協定については世上多少の誤解があるように私は見受けるのであります。確かに国連側も又日本側も無理なことを申して喧嘩をいたしておるわけではないのでありますが、併しながら国連のほうは多数国であります。なかなか簡単に国連側において議論が結論に達しない場合もあります。又日本において話が済んでも、或いは本国政府に問合せるというようなことがあつて、そう簡単に、日米交渉のように簡単に参らない筋もあるために停頓しておるように見えますが、話はそう不愉快な空気で進んでおるのではないのであります。主とするところは国際の慣例なんかに帰するように私は考えるのであります。国際の慣例、或いは国際の原則、必ずしもよその国に軍隊が駐屯する或いは駐留するということは、これは最近の事態でありまして、戦さ後において初めて生じた問題であります。従つて国際法の原則、或いは慣例等についても区々たるものがありますから、お互に主張をすると折合わないということもあります。それで世間の伝え聞くところの、又日本側が主張しておるところは、私は無理だと思います。それは刑事裁判権の問題にしても、主権の問題にしても、これは時代によつて観念は違うのであります。例えば昔の観念から申せば、外国の軍隊を日本国に、或いは国内に駐留を認めることさえも、これはあり得べからざることであつたのでありますが、今日はあたかも普通のような状態になつておるというようなわけで、主権という観念も刑事裁判権の観念も、相当、時の必要に応じ、時の変化によつてつておるのであります。新聞等において主張する主権或いは刑事裁判権の問題などは、多少現在の国際通念とは違つて行過ぎておるように思います。そういうような詳細なことは外務大臣から説明をいたしますが、私の感じは今申すようなことであります。
  63. 平林太一

    ○平林太一君 次にお尋ねいたしたいと存じますことは、深く総理に敬意を表しまして、四つのうちの一つだけ省きまして、三つだけにしまして、いわゆるこれとあともう一つであります。(笑声)  対ソ関係の打開についてであります。このことを私が申上げますことは、どうぞ誤解のないように総理に前以てお断りを申しておきたいと思います。それは思い起しますれば、明治時代の我が国の外交、当時を回顧するのでありまするが、いわゆる温故知新と申しますか、先般も若き皇太子殿下の立太子のときに、特にこれをお述べになりましたようで、私は誠に感慨深い次第であります。そこで当時我が明治外交の経路を静かに考えて見まするというと、いわゆる日露戦争前、明治三十四年と記憶いたしますが、日本が日清戦争に勝ちまして、いよいよ世界の列強に伍せんとしたその際に、我が国は世界のいずれの国の外交の相手国を求めるかという場合に、いわゆるロシアをとるべきか、英米をとるべきかという二つなんでありまするが、閣議において議論が分かれたようでありますが、そのときに、当時の桂総理大臣、これに外務大臣としての小村壽太郎、両者の意見が一致いたしまして、英米を先ずとるべしということに相成つた。これに対して当時伊藤博文はロシアをとるべしということを言つて相対立いたしたのでありますが、当時明治天皇の裁断によりまして、英米をとるということに相成つて、日英攻守同盟が直ちに結ばれた。更に日米の諸条約が締結された。併しこうした中に当年のいわゆる我が政府の要路は、その半面において、ロシアに対しては、切々たる、この取運びに、至情をいたしたということであります。現に伊藤博文はそのために明治四十一年か二年と記憶いたしますが、ロシアに使いせんといたして、ハルピン駅頭の兇手に倒れたことは今なお我々の感慨新たなるところであります。のちに桂太郎は明治四十五年にロシアに使いせんとして、たまたま明治天皇の崩御によつて、ソ満国境から帰られたというようなことを回顧するのであります。そういうことを私は前提といたしまして、この際申します。ソ連は平和条約に調印せず、中共を支援して我が国を敵国視しております。又我が国の国連加盟を阻止して、恬としてこれを顧みない。これはソ連の世界政策の一環と思うのでありますが、併し我が国においては隣接国であり、その動向は我が国の存立に重大影響があることを私は承知せざるを得ません。この問題をどう打開するか。国連の安全保障にのみ依存することを以て、あえて世界の平和に我が国が貢献し得ると言い得るかどうか。国内問題としての思想対策もこの際必要と思うが、総理は如何ようにお考えなされておるか。国民の対共産党思想啓蒙、啓発等の積極的な、積極策をお考えに相成つておられるかどうか。決して私はこの問題に対して偏した考えは持ちません。ただ国家の前途を憂るところの至情より何もありません。どうぞそういうことを御了承を賜りまして、御答弁を煩わしたいと存じます。
  64. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) ちよつとお尋ねをしますが、ソ連との関係はどうするかというお尋ねでありますか。
  65. 平林太一

    ○平林太一君 今お話を申上げた通りであります。(笑声)
  66. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それでソ連との関係をどうするかということについてお答えをすればいいわけですか。
  67. 平林太一

    ○平林太一君 どうぞ。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の立場は講和条約においても明瞭になつております通り、国連により、又自由国家群と行動を共にして行く、世界の平和を保つて行く、この基調はすでに定つておるのであります。併しながらそのためにソ連と戦さをしようということではないのでありますが、併しながらソ連の現在の立場、日本に対する立場から申すと、必ずしも、直ちに日ソの関係を打開するという、仮に日本がその気持になつても、ソ連のほうがこれを承諾するかどうか。いろいろな第一、懸案もございます。又用地の問題、国土の問題もあります。その他思想問題、いろいろありますが、思想問題は別といたしても、ソ連から申せば、支那との間に日本を仮想敵国として条約を作つておるというような事態で、仮に日本がイデオロギーは別として、ソヴイエイトとの関係、殊に日本と隣接の国であるソヴイエイトとの関係を打開したい、打開し得れば結構でありますが、相手国がこれを受付けるかどうか。これは更に事態の変化といいますか、時が経つて、そして両方で反省する。両方というよりは、むしろ日本はソヴイエイト連邦の出方次第によつて考えていいと思いますけれども、併しながらこれは相手かたの、相手がある話であつて、ソ連が何と考えるか、ソ連の政策上何と考えるかということもありましようし、外交は一国の希望だけでは目的を達するわけに行きませんが、併し、ただ一つここに我我がはつきり申したいのは、善隣の外交は維持したいと思つておるのであります。今日において敵対関係があつても、国と国との関係は永久に敵対関係が存在するはずもありませんし、同時に平和関係が存立するわけもないので、国と国との関係は変化いたしますから、今日敵国、或いは日本を想像上の敵国と考えても、或いは考え直して友邦と相手方が考えるかも知れませんから、今日どうと言つて、それが明日も同じだとは考える必要はない。又日本としては善隣の関係は飽くまでも維持することが、日本の存立の上から申しても、経済上その他から申しても、立派なことでありますから、決して固執はいたしませんが、併し現在の状態においては、ソヴイエトの行動を打開するということはむずかしいことである。努めはいたしますが、努める方法は実はないのであります。お答えをいたします。
  69. 平林太一

    ○平林太一君 最後に極めて簡単に申上げたいと思います。  綱紀粛正の問題であります。綱紀粛正の問題の中心となりますものは、古往今来、皆その揆を一にいたしておりますことは申すまでもありません。いわゆる大なる政治的の権力、或いは権威と申しますか、これが、特にこれも私は温故知新の意味におきまして、既往のことを念頭に置いて申上げたいと思うのであります。その力を恃んで政治を自己の用に供し、甚だしきに至つて政治の公正を損ない、或いは国家に害毒を与うるということに考えるのであります。綱紀の紊乱であります。そこで、そうした結果、いわゆるその結果が、国家の機関及びその行動にこの情弊が浸潤いたすということを申さざるを得ません。当時政党内閣華やかなりと称しました大正の中葉、原内閣を中心とする政党内閣であります。当時こういう言葉を私は記憶いたしております。政権長きに亘るところ、党弊、情弊発散して、堆積して、毒素排出の作用を起し、以て自壊作用を露呈して、国家を危うからしめる、その当時の感慨誠に深い次第であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は、こういうことを今日極めて白紙の立場において申上げるのでありまするが、さて、そういうことを思うにつけましても、私は吉田内閣総理大臣に、私議員の一人として率直に申しますれば、総理大臣吉田茂君の過去の経歴というものは、誠に公正であります。過去の経歴がそれを物語つております。そうでありまするが故に、第三次吉田内閣において三年有半、前後を通算いたしますれば四年有余の間、この間、一点のかようなことなく今日に参りましたことは、恐らく将来我が吉田内閣の首班たる吉田総理大臣の、この清潔、廉潔というものが、後世の我が日本の憲政史上に非常な清らかなものを残すであろう、こういうことを私は思うのであります。(「笑止千万」と呼ぶ者あり)そうでありまするが故に、この際あえて申上げるのであります。どうかこの清志を全うされて、光彩陸離たらしめたいという心情を以て、この際申すのでありまするが、今日世間ややもいたしますれば、口さがなきいわゆる東京人、京わらべと申しますか、昔の言葉に、いわゆる人の口には戸は立てられないという昔の諺もあるのでありまするが、そうした中に、近来噂の中に現われて参りましたものは、私はそのことを真にこういうことが正しく清潔なものであると信ずるのでありますから、これを申述べるのでありますが、只見川の水利権の問題、第二には四日市海軍燃料廠の処分問題、これは当然私はこの綱紀粛正に対して赫々たる成果を挙げられたる内閣総理大臣吉田茂君のこの治政下におきましては、照々として天下にその明らかなる、他にその例を見ないと思うのであります。(「もつとはつきり言え」と呼ぶ者あり)この機会におきまして、どうぞこの両問題に対しまして、只見川の水利権問題、四日市海軍燃料廠問題の真相に対しまして、詳細なる、この際全国民に公表をいたされることが極めて私は必要と思うのであります。総理の御所懐を承わり、併せて所管大臣のこれに対する御答弁を煩わしたい。通商産業大臣小笠原三九郎君御出席になるや否や、私は聊か目が悪いのでわかりませんが、(笑声)本日おいでになりまするならば、これを明らかにされたい。おいでにならなければ、後日の当委員会におきましてこれを詳細に御説明あらんことを要望いたす次第であります。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の承知しておるところでは、只見川の問題については、つまり水利権の問題については訴訟になつておるそうであります。訴訟の結果において、事態は明白になろうと思います。それから四日市の燃料廠の問題、これは従来払下げの希望もあり、払下げをしたほうがいいという議論があり、それから官有物払下委員会か何かありまして、そこの問題になつてつたのであります。併しながら、いろいろ噂が出ますから、一応払下げはしない、官有物払下げはやめるということで、問題が解決いたしたはずであります。ただ通産省において、一応前通産大臣高橋君が、この払下げ問題は長く問題になつて、高橋君以前の通産大臣が決定せずに、高橋君のときに又決定せずにそのままにするということは無責任と思うから、自分としては結論を出したい、結論を出さるるがいい。それは払下げるという確か結論つたと思いましたが、併しながら噂がいろいろ飛び、又運動も生じておりましたから、政府としては払下げは一時しないということで問題は解決しておるはずであります。その間に何らのスキヤンダルも何もございません。又政府としてはスキヤンダルは断じてこれは行わせないのは勿論でありますが、若しそういう問題が起れば、断然法規に従つて処断いたします。
  71. 平林太一

    ○平林太一君 御答弁を伺いまして誠に御同慶に堪えない次第であります。(笑声)
  72. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 先ほどの堀木委員質問に対する総理の御答弁に関連いたしまして、この際一言だけ確かめて置きたいと思いますのでお伺いいたしたいと思うのでありますが、総理の堀木委員に対する御答弁のうちに、水力電気の開発について一電力会社が非常に古い水利権の開発の許可を得ておつたということを云々というところのお話があつたのでありますが、それは只今平林委員も御発言になりました、いわゆる世上いろんな風評が飛んでおりまする只見川の水力電気開発に関する問題を意味されたのではないかと、実は推測いたしたのでありますが、同問題につきましては真相は私は存じません。併しながら世上専ら噂されておりまするところによりまするというと、総理がそれを意味されたのでありまするならば、その許可権を曾つて得ておりましたところの会社は、即ち東京電力株式会社でありまして、その既得権を侵して、福島県の知事と、そうして吉田首相の側近者と伝えられておりまする東北電力会社の社長である白洲次郎君並びに自由党の某幹部との間に談合が行われて、そうした既得権を侵害して、白洲君が社長でありまするところの東北電力会社に福島県の知事からその水利権を、或いは電力開発に関するところの東京電力会社が持つておる既得権をば侵して、更に新たなる許可をば福島県知事がした。その時に、世上の噂によりまするというと、二億円の金が自由党の選挙資金或いは政治資金として、その某幹部の手を通じて流れておるということが専ら噂されておるのでありますが、その事の真相は別といたしまして、首相が先ほどの堀木委員に対するところの答弁において言われました電力会社というのは、即ち東京電力会社を意味し、そして今申しましたところの只見川の電力会社との間におけるところの関係の事件を意味してお言いになつたのであるかどうかということを、この際確かめておきたいと思うのであります。御答弁を得たいと思います。
  73. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申したのは、只見川もその一例でありますが、水利権の問題は各所において問題になつておりますからして指摘したのであります。今二億円云々の問題は、裁判で決定がありましようから、決定を待つて御覧願いたい。
  74. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これにて総理に対する総括質問を終了いたしました。  暫時休憩をいたします。    午後零時五十四分休憩    —————・—————    午後二時十八分開会
  75. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今より会議を再開いたします。只今から一般質問に移りたいと思います。
  76. 羽生三七

    ○羽生三七君 大蔵大臣に簡単な問題で一点だけお伺いいたします。それはこの当初予算並びに補正予算を含めてのこの予算編成の技術上の問題でありますが、例えば安全保障費関係、或いは保安庁関係等の費用が非常に莫大な支出未済額として今日残つておることは御承知の通りであります。もとよりこれは明年三月までに一応の使用計画があると思いますので、今これを不要額或いは残額として論議することは適当でないと思いますからそのことには触れません。併し明年三月までに一応の使用計画があるにいたしましても、予算編成の技術上からいつて大体四半期ごとの使用計画というものは一応策定をされておるのであります。それだのに二十六年度からこの警察予備隊関係の費用が、本年度の保安庁関係費用として相当多額な剰余金が残され、更に又二十七年の十二月現在において五百二十億くらいな残高がある、こういうことは非常に予算編成上疑問に思うのであります。これは非常なずさんな予算編成のやり方であるし、曾つての臨時軍事費がこういうやり方をしたと思うのであります。それと同じようである。それだからもとより警察予備隊、いま現在の保安隊等の人員の関係とか庁舎の関係等で必ずしも予定通り進行しなかつたという事実は或る程度私たちわかりますけれども、こういう形で予算編成が行われることが適当とお考えになるのかどうか、この点を大蔵大臣にお伺いしたい。
  77. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) その点につきましては、政府委員から御説明さしたいと思います。
  78. 河野一之

    政府委員(河野一之君) お答え申上げます。年度予算の編成をいたします際におきましては勿論一定の計画を立ててやつておるのであります。羽生さんのおつしやるように各四半期ごとに組んでいるということはないのでありまして、支払の計画、契約の計画等を四半期ごとにみております。ただそういう建前で契約の計画を立てましても、これはたしか保安隊のほうの政府委員から御説明があつたと思いますが、いろいろな事情で、例えば特殊な企画を要するものがございますので一応試策をいたしてそれから注文を発するといつたようなこと、それから三万五千人分の増員の分の装備がなかなか決定いたしませんので、そういう関係で発注が遅れたというようなことになつておるわけでありまして、大体その計画を了しましたので急速に残額の契約ができ、又支出ができるというふうに考えております。
  79. 羽生三七

    ○羽生三七君 今の主計局長の御答弁は技術的な問題でありますが、他の各省の予算の編成と別ですね。保安庁とか安全保障処理費とかそういう関係については別に四半期ごとの計画も何も要らない、通念で大まかに予算を組んでおいて要るときに勝手に使えばいいと、余れば余つただけだと、こういうことを大蔵省はお認めになるのですか、大蔵大臣から伺いたい。
  80. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 私はいい加減にやつて行けばいいという考えは決して持ちません。それで今後予算を立てます場合にはよく前もつて見当のつくように予算措置をして行きたいと、そう存じます。今までのことにつきましては只今主計局長の御説明いたしました通りであります。
  81. 羽生三七

    ○羽生三七君 大蔵大臣御自身も決して今の私が申上げた点に関する予算の編成方針がいいとはお考えにならんと思いますので、これは今後十分御留意を願いたいと思います。農林大臣は今日は参りませんか。
  82. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 農林大臣は病気ですが、政務次官は見えております。
  83. 羽生三七

    ○羽生三七君 農林大臣がお出にならないのだとすると、まあ政務次官にちよつとお尋ねいたします。それは最近農林省で一部に澱粉の買上政策その他農産物価格に対して一部いわゆる価格支持政策をとつておるわけであります。これは澱粉買上ということは私例に申上げただけで、あのやり方がいいか悪いかということは問題でありますが、価格支持政策をとられておるわけであります。一面において食糧の統制を外すというわけでもないでしようが、超過供出後の自由販売というものを認められて、まあどつちかというならば自由党本来の政策として食糧の統制の撤廃気がまえで施策をされておることは御存じの通りであります。そういう場合において、一面において価格支持政策というものに政策の重点を移行されようとするのか、これは意識しているのか、無意識的におやりになつているのか知りませんが、とにかくアメリカのブラナン・プランにあるようにプライス・サポートというのに政策の重点をおかれようとするのか、これは統制撤廃ということを前提として、漸次価格支持政策の方向に持つて行かれようとするのか、その点をちよつとお伺いしたい。
  84. 松浦東介

    政府委員(松浦東介君) 只今の御質問でありますが、お話のように重要農産物価格の支持政策は漸次これは拡大いたして行かなければならない、かように考えております。
  85. 羽生三七

    ○羽生三七君 それと関連してもう一つお伺いしたいことは、恐らく農林省あたりで省議で本日あたりも論議の対象になつているのじやないかと思うのであります。これは漸進政策の問題にも関連するのでありますけれども、例えばこの輸入関税でとうもろこしとか或いはこうりやんというものが関税を今までは免ぜられておる。これを今度は復活すべきか、或いは従来通り免税で行くべきかということが議論の分れ道になつているのですが、こういう場合に国内農産物の保護という立場に立てば課税が適当である、併し他の面からは免税が望ましいということで、両者二つの意見に分れているわけでありますが、一体今後どちらに、重点をおかれようとしているのか、この問題を一つ
  86. 松浦東介

    政府委員(松浦東介君) これは国内のいわゆる農業の保護政策という見地から考えまして、国内の重要農産物の価格を維持すると、そういう方面の強い考えでやつて参りたいと思います。
  87. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) もういいですか、あと留保しますか。
  88. 羽生三七

    ○羽生三七君 農林大臣が来た場合にあとお伺いします。質問を留保さして頂きます。
  89. 内村清次

    ○内村清次君 大蔵大臣一つ。私は先ず冒頭にこの国鉄の財政の自主権確立の問題について御質問をしたいのですが、今回の補正予算によりまして国鉄の二十七年度の補正がなされたのでございますが、今回は御承知のごとく職員の給与の問題について国鉄関係においては仲裁の裁定がなされた。又国鉄といたしましても、新線建設の問題は、依然といたしまして国論の動向でもありますし、審議会の決定によつて予定はされておりましたが未決定になつてつたところの新線の敷設が決定をする。又電化の問題にいたしましても、やはり継続的な国鉄を一連といたしました、東京及び姫路間の電化、東北の電化、こういうような直接継続的な電化の経費支出を伴うような関係で、今回は重要な部内的な例えば船舶或いは車両の新造や或いは保安設備拡充やその他線路の補修、そういうような部内的にも重要でございまするが、そういう計上せられた経費を削減をしてそうして補正というものがなさております。こういうような状況で国鉄の財政ということは、すでに国鉄の白書でも発表してありますように、終戦以来のまだ懸案となつておるところの未完成的な補修費関係の分を含めますると約千八百億にも上つておるというような現状です。これで国民の要請に応えるところの増送、サービスの拡充、こういう問題を考えて行かなくちやならん。それに政府のほうでは特別会計といたしまして当初にこの予算が決定をいたしまして、そうしてその予算内におきましても極めて私たちは無理な予算が決定せられるばかりでなくして、同時に只今申しましたように補正の際におきましても、殆んどそういうような資本的な財源を必要とするために、これを補給するのに運用部資金だとかいうようなことで糊塗されておるようでございます。こういうような状態では到底国民の要請する、又日本の経済が発展をして行くところの動脈の繁栄ということは私はほど遠い問題であうろと思う。でここにおきまして大蔵大臣は、これは勿論国有でございまするからして、国といたしまして国有の鉄道の予算関係を面倒をみるということは当然でありましようし、併しながら公共企業体というその一つの公共性のある、而も又民間にならつたようなこういうようなあいのこ的な公共企業体に移行いたしました以上は、独立採算だけでこれをやつて行けというようなこういう予算形態の立て方ということでは、私はこの企業を伸ばして行くことは非常に困難ではないか、こういうふうに考えておるわけでございまするが、これにつきまして大蔵大臣におきましてはそのネツクとなつておりまする予算総則の問題を改正をするという考え方があるかどうかということが第一点です。この点につきまして先ず。
  90. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 全体的に考えまして鉄道が非常に苦しいということは、私は就任以来たつた二カ月でございますが感じております。それでこれをどうすればいいかということになりますと、今御質問のようなことになると存じます。これにつきましては私は今こうするということの返事はできかねます。併し荒廃した線路なり或いは設備なりを改善するということには十分に力を入れて行くがいい。それができませんと今おつしやる通り国の体で言えば動脈が硬化してしまつたようなものでして非常に危険があると思いますが、その点は了承いたしましたが、新線の開発については又別の問題で先ず復旧なり改善なりを先にして行きたい、そう考えております。
  91. 内村清次

    ○内村清次君 予算総則の問題につきましてはあとで研究するというようなお話でございますが、この問題の要点は私がはつきりいたしておきたいことは、今回の給与の問題でも当然これは発生する問題でありまして、そういうような関係からいたしまして、この予算総則において当初にすでに給与額というものの総額が織込んであるわけです。そこで今回の補正におきましてそれが又百六億の増額をされた。このこと自体に対しましても私たちは、この増額分の予算が出ましたときにおいて、すでに裁定に対するところの団体交渉を拘束しておる問題であるというようなことも申しましたが、基本的な問題といたしましてはやはり企業体に移行いたしまして、そうして労働条件や給与の改善というものが仲裁々定によつて平和的に解決をして最終的な即ち判決を下して、これに両当事者は拘束をされて行くというような形が生まれておりまするからして、こういうように給与総額というものは予算総則において決定をするというようなことでなくして、そうしてその当然起つて来るところの罷業権をとられました仲裁制度によつて政府はこれに応じたところの給与額というものを決定をして行く。こういうような形に持つて行かれないと、先ほども申しましたように、国鉄の予算全体が只今つたように独立採算ができないような形に追込んである予算のとり方でありまするからして、なおそのしわというのがすべて給与の問題にしわ寄せされてしまつている。そうしてその金額を補うために借入金の問題とか或いは運賃の値上というような国民の要望しないような問題が起つて来るのでございまするからして、この問題の即ち基準点をよく一つ大蔵大臣は認識してこの改正を早急にして頂きたい。で、これはただ単に国鉄ばかりの問題じやないのでございまして、やはり電通省の問題であもありましようし、或いは専売の問題でもありましようし、それから公務員関係の問題でもございます。このいわゆる予算総則の九条、十一条の改正をやつてもらいたいということはもう強い要望でありまするからして、その点はよく一つ御記憶をお願いしておきたい。それから先ほど申しましたように新線建設は、成るたけこの際一つ内容の充実に努めて、やつてもらいたくないというような心持のようでございますが、併しこれは審議会にも現われましたように要望というものは非常はひどい。特にこの審議会は政府与党でありまするところの自由党の人が会長になつておられる。やはり審議会委員にもその勢力の比率を以て委員のかたがたもやはり与党のかたがたがたくさん入つておられる。そうして内容におきましても、今回の決定十九線にいたしましても無理やりに、又国民の要請からいたしましたならば、少しどちらかと申しますと不公平な地域に対するところの新線の決定というものがなされておるようでございますが、そういうようなことでとにかく二百有余の無決定線が、独立後になりましてから特にやはり国民の要望からいたしましたならば熾烈でございます。熾烈であるという点はこれは否むことはできません。そういうような関係でこの新線建設を放つておいていいかというとそうはいかんと思う。やはりこれはやつて行かないといけない。併し新線建設の重要な点は、今後の自立経済を打立てる上についての国内資源の開発というものと、勿論文化と結び付き、或いは僻地との文化の交流や又利便問題と結び付いておるところの国家的見地の国民要望でありまするからして、これを放置するわけにはいかない、やつて行かなくちやならん。行かなくちやならんがこれが損益勘定の中からそうして計上されて行きまするところに非常に国鉄の収入面において無理があるわけです。だからしてこれはいわゆる別途の方法でその新線の建設を考えて行く、国民の要望を達成して行くという考え方で、鉄道債券の発行によつて解決をして頂いて、そうして他は独立採算面からして線路或いは機関車や客車の修繕、或いはたくさんでないところの新造の計画、たくさんはこれは又要請によりましてこれも又鉄道債券や或いは資金運用部資金の貸付によつて解決をして行くと、こういうような財政の建て方を大蔵大臣はどういうふうに考えておられるか。私たちはそれが非常に適切な方法であろうと思うのですが、大蔵大臣はどう考えておられるか、お伺いしたい。
  92. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 新線の建設は成るたけまあ多く金の要らないようにしたいという考えを申上げましたが、この間の補正予算でも不満足ながら新線が手が着けられるような方面に向つていると思つております。今後とても新線は一切やらないなどとは申しませんが、併し鉄道の自分計算からいたしましても限りある金で改善のほうもやりたい、新線もやりたいとなりますと負担が過大になる、あなたのおつしやいました通り。そこで借金をするという点につきましては、やはり大きく見ました財政の見地から程度がございますのでそれはお任せを願つて、これから運輸大臣と私とで以て新年度予算あたりでは十分正しい途で以てその程度をきめて行く、そういうことにお任せを願いたいと思います。
  93. 内村清次

    ○内村清次君 そういたしますと、鉄道債券を発行するところの意思はあるということだけは確認していいわけでございますね。これは新線の問題もありましようし、或いは電化の問題の資金関係にも必要でありましようし、そういうような将来収入が入るような問題で是非やらなくてはならないというような問題に対しては借金政策もいたし方がないと、いわゆる鉄道債券を発行して行くというようなお心持はあるということだけは確認してよろしうございますね。
  94. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 鉄道債券を発行すというふうに狭く御解釈願いませんで、財政資金を投ずるとかその他運転資金或いは設備資金につて国が心配をするという程度でもつて御了解を願つて置きます。
  95. 内村清次

    ○内村清次君 これは私が申しましたのは、勿現今まで資金部の資金を借りておりました。今回も十五億新線関係には予算が計上されておるようでございます。併し私たちは、借入金に対しましてもやはり鉄道の資本的なこういう無理があります以上は、短期で返せというようなことではなかなか困難ではないか、やはり長期の資金が当然急には収入が上つて来ませんからして必要だと私は思つておりますが、そういう意味ならばむしろ鉄道債券のほうを出して、そうして国民の要請に応ずるようなことも又一つの方法ではないか。こういうふうな考え方でございまして、すべてを任せるということは勿論これは大蔵大臣がすべてを握つていらつしやるのですから、どういうふうな計画をなされて行くかはその結果において私たちはこれを検討いたして行きますが、併し二十八年度におきましては当然これは大きな問題となつて来るでしよう。まだ電化も御承知のごとく希望はたくさんあります。特に又最近のような輸送状態におきましては国民の要請を十分満しているとは考えられません。だからしてローカル線のサービスの改善にいたしましても、運行状態の増発にいたしましても、或いは又特に電化ができない今日においてはヂーゼルの運転にいたしましても、非常に地方の要請は強いのですが、そういう面に対してはやはり資金関係で今できない状態にある。だからしてこれに対するところの大蔵大臣といたしましては鉄道債券の発行もやむなしと、こういうお考え方があるかどうかということを私は聞いておるわけです。
  96. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今私は鉄道債券を発行するのもやむを得ないというふうには考えておりません。
  97. 内村清次

    ○内村清次君 そういたしますと、日本国有鉄道法、これは御承知と存じますが、この法律の中にそれが明確に書いてあるのですな。いわゆる鉄道債券の発行は大蔵大臣とは勿論相談があるのですが、その主管大臣は運輸大臣ということにはつきり出してあるのですね。運輸大臣が認めさえしたならば鉄道は鉄道債券を発行していいことになる。勿論これは運輸大臣の認可権がありますがやはりこれを国が責を持つて行く上については大蔵大臣と相談があるはずでございます。だからしてその元を握つていられるところの大蔵大臣が法律に書いてあるものをしないというようなことはどういう理由でされないか、その理由を明かにして頂きたい。何かこれはあるのでしよう。
  98. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 別に何かあるのではございませんで、公債はなるたけ出したくない。出しまするとどうせ今おつしやる通り建設公債なんというものは手間のとれるもので公債のうちでは償還までに一番長くかかるというものと考えなくちやならないわけです。そういう方法によらずに、できるだけの方法を尽して然る後に考えてよろしい、そういうふうに考えております。
  99. 内村清次

    ○内村清次君 只今の御答弁ではどうもまだ納得が行かないものであつて、債券を出すと一体経済はどうなつて行くか。国のすなわち財政方針というものが崩れて来るかどうかという問題を実は具体的に聞きたいわけです。それでないと、それよりほかに国鉄財政を生かす途はないじやないか、それで私は言いたいのですよ。すなわちこの国鉄が停車場の施設の問題にいたしましても或いは動力車の問題にいたしましても、戦災でこうむつたところの鉄道の被害というものは全財産の三分の一ですよ、三分の一以上です。そういうような被害を国家全体として受けた。鉄道もその三分の一の財産をみんな戦災でやられてしまつた。これを鉄道のいわゆる企業の独立採算でやれということは無理でしよう。だからしてあなたのほうでそれは借入金をやつてもいいじやないか、まあこういうようなことを言われておりますが、むしろ私たちから言わせたならば、国家のすなわち財政から回復するとこういう資金関係については一般会計から繰入れてもらいたい。赤字補填はしてもらいたい。これは交付金はやるということもはつきり法律に書いてあるのですよ。これをやつてもらいたい。而も特に今回のようなすでに予算の総則において給与ベースというものがきめられてしまつて、而もそのときは朝鮮動乱がああいうような日本経済に及ぼす状態というものはもう見えておる。もう見えておつて、当事者間においては、賃金問題においてもう昨年の二月からこの問題を提起しておる。争議の発生というものは今年の二月からですよ。こういうような即ち状態で放置されておる。そういうような当然ベース・アツプというものは物価に比例してそうして上つて行かなくてはならん要素というものがあるにかかわらず、予算総則で縛られてしまつている。そうするとこのしわ寄せというものは、やはり何か政府は手を打つて行かなくちやならん。手を打つて行くならば今回は運賃値上で四十二億ほどカバーしておられるようでありまするが、こういうただ単なる問題でも鉄道は稼ぎに稼いでも収入が足りないという状態になつておるような、この動力車、客貨車の状態、それから線路の状態或いは人員の状態、こういう内部的な要素が充されておらない状態に放置しておるということは、やはりこの戦災関係も大いに復興に影響しておるのでありましよう。或いは又無理やりに新線もしなくちやならんということも影響しておるでしよう。或いは又電化をしなくちやならんということも影響しておるでありましよう。こういうような問題がありまするから、でありまするからしてこれを補うには、やつぱり国家が国有鉄道であるからして一般会計から出してやる。利益があつたときにはもらつているのですから、国鉄の特別会計から一般会計に戦前相当繰入れておるのですから、収益があつたときには一般会計に繰入れる、ないときにはこういう国鉄の苦境を救つてやるというようなことも法律の中には書いてあるのですよ。書いてある。それをやらずにおいてそうして又鉄道債券もいやだ、どういうためにいやか。これは均衡財政をこわすからいやか。一体均衡をこわすというのならば、一体何億程度つたならばこわすか、こわさないか。そういうところをあなたがおつしやらないと納得行かない。これは重要な問題ですから、まだ大蔵大臣も民間におられましたときの鉄道給与に対するところの見方もありましようが、政府大蔵大臣としてこの国鉄のあり方をよく一つ認識してもらうような気持で行つて頂きたいと私は思います。
  100. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 先だつて中からいろいろの委員会であなたのおつしやいます以上に鉄道の苦境について聞かされました。私は大分よくわかりました。で十分にわかつたと申上げると又うそになりますから、よくわかつたというくらいのことを申上げておきます。  それで幾ら公債が出るとインフレーシヨンになるかというふうなことは、これは机上の議論はできますが本当には見当はつきませんが、国として公債を出さないで行きたいという心持はおわかりになつて下さると思うのです。仮りに金を借りるとしますれば、建設公債、鉄道公債で借りなくても別の方法もあるでしようし、この建設公債をやるということにきめろということは、私は今そういたしますという御返事はできませんが、まあ簡単な言葉で申せば鉄道を救つて行くということは、私は日本として一番大事なことではないかというふうに考えておりますので、運輸大臣とはよく相談をいたしまして、これは口先でだけでなくできるだけの善処をいたすつもりでおります。
  101. 内村清次

    ○内村清次君 で只今の御答弁によりまして、運輸大臣とよく御相談して頂きたいのですが、運輸大臣は直接な責任者でございますからして、その建設公債或いは又国鉄の問題につきましてはよく明るいかただと私は存じます。そこで御相談をなさいまする前提として、この法律の条項にありますることだけは、これははつきり一つ銘記してもらいたいと思うのですね、法律にあるのですから。これを大蔵大臣がやらないというようなお言葉では、どうも納得いかないということを申しておきます。  それから先ほど私はこの予算総則の問題で申上げましたが、まあ今回のその問題が他の公社にも現われておるのですね。で私も今回の補正予算の小委員長になりまして、第二小委員会では各委員のかたがたが熱心に取上げられた問題ですが、電々公社の問題ですが、発足は御承知の通りに法律で今年度出ましたからして、この給与の関係はまだ調停案の通りです。そこで政府のほうではやはり公務員並にこれを二〇%上げて解決をして行こう、こういう御態度のようです。それでは折角発足いたしましたこの電々公社というものが、能率的に今後発展をして行くというようなことが憂慮されるというのが、各委員考え方であつたのです。だからしてこれを是非調停案そのままで一つ認めてもらいたいというような意向でございますが、これがだんだんと今日になつて集約して参つておりますると、大蔵省のほうで非常にきつい態度をとつておられるというようなことです。それで補正の額としては僅かに十一億八千九百万円乃至九億五千万円ですね、これだけの増額をして、そうしてこの裁定に至らないところの、又やはり他の公社の職員と一様にこの新年を迎えて行くというような重要な時期に対しましての解決の方法ですね、これが僅かに九億五千万円というような状態になつて来ておると言つております。勿論これは組合の要求といたしましては四十億ばかりでございまするが、これでもまだ妥結しておらん。これに大蔵省のほうは非常にきつい態度をとつておられる。これも予算の流用がつきさえすれば財源はあるというのです。これが予算総則で皆流用禁止をされておる。だから私は予算総則は一つ何とか考えてもらいたいのです。この公社の問題も十一億八千九百万円乃至九億五千万円で妥結をするのであるからして、この問題につきましては大蔵大臣は最大の努力をして頂きたいと思うのですが、どうお考えでございましようか。
  102. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の点は最大の努力をいたしておりますでございます。
  103. 内村清次

    ○内村清次君 これはまあ信頼いたします。(笑声)是非一つこれくらいなことは大蔵大臣ができないはずはないと思いますからして、これは本当にこの公社の法案というものは進んでおりますよ、これはまだ完全とは言われませんけれども、幾らか国鉄の公社法よりも進んでおるようです。それでそのためにやはりこれを作つたところの国会議員のかたがたも、非常な熱意を持つて公社の将来を考えておるのですから、これには応えるようにして頂かんと、やはりこの公務員並の二〇%でこれを縛つておくというならば、今後は前垂れがけになつたところの公社の能力というものは、私は非常に落ちはしないかと心配をいたしますからこの点一つお願いいたします。  それからこれは所管大臣といたしましてはどなたがお関係になるかなかなかわからない問題でございますが、併し大蔵大臣にも勿論これは関係があります。それは工業用水の問題ですが、大蔵大臣は来年度予算においては生産面の増強ということを言つておられる。これは私たち予算委員といたしまして、地方に出て参りましてそうして調査をいたしましたが、地帯の非常なこれは要望でありまするからして、私はそれを先ず頭に残して来まして、全体的なこの工業の発展を考えまするときにおいて、これは一番大きな問題のようです。ところがこの工場立地につきましての必要条件といたしましては、何としても用水の問題を欠くわけには行きません。ところがこの用水の、工業用水の問題に対するところの所管の、主管の省が一体どの省になつておるか、これが明確でないわけです。通産省といたしましては、これは工業関係においては直接な関係がありましよう。上水道関係は厚生省が受け持つておるようです。それから農村の利水の問題につきましては農林省が持つておるようです。そういうような関係で、この所管の省が明確でない。建設省は、工事関係はこれはまあ建設省として具体的に考えているだろう。そういうようなことで、この工業用水に対するところの主管の省がわからないのですが、現実はこれは非常に重要でありまして、東京、大阪も然りでございますが、私たちが調査いたしましたところの四日市あたりでは、すでに地盤が八十ミリも沈下しておるというようなことで、この地下水の汲み上げが競争的になりまして、そうして地盤が沈下して行く。この災害は一般民衆にも及ぼしておる状態です。こういう問題を早く解決しなくちやならない。特に大阪、四日市その他福岡にいたしましても、こういうような工業地帯といたしましてこれに対する起債を考えて、そうして起債さえ承認が得られたならば十分とこの問題はその都市の財政によつて考えて行くと、こういうような強い要望もあつておるのですが、これに対しまして主管省は一体どこであるか、これに対しましての起債関係は特別に考えられてあるか、日本の工業関係の進展の上から考えてあるかということにつきましてお尋ねいたしたいと思います。
  104. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 工業用水は通産省の所管でございますから、私より一応お答え申上げます。工業用水の確保及び排水の合理的処置が産業立地の基礎条件であり、極めて重要な問題であることは、仰せの通りであります。又工業用水の不足及びこれに伴いまする今のお示しになつておるような地盤沈下とか水層落というような点がございまして、これらの点に悩んでおる地帯のあることもお示しの通りであります。現在は国土総合開発法によりまして各地域の総合開発計画が進められておりまするが、その内容をなしておる各施設の建設は、それぞれ道路法或いは港湾法、河川法、土地改良法等の単独法規によることとなつておりまして、公共性において一般の道路、水道等に劣るとでも申しまするか、従つてそういう工業用水専用水道、鉱工業専用道路、水道用地、こういつたものについては実は根拠法規が明確でございません。従つてその運用上遺憾の点が多いことはお話通りであると存じまするが、通商産業省といたしましては工業立地条件の整備改善という観点から、関係各省とも連絡をとつております。只今お話なつたような起債その他については、大蔵省方面とも連絡をとりつつ相当な処置をやつております。なおこの根拠法規について何か特別法の制定も必要とするかと考えられますので、今各省とも打合せ中でございます。
  105. 内村清次

    ○内村清次君 大蔵大臣一つ起債の問題……。
  106. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 起債の点につきましても、只今のように地方債もなかなか手の廻らないところが多いのですし、それから今通産相からもおつしやられたように、国土開発の立地で行きますか、工業としての通商産業省との管轄で行きますか、そういう点がはつきりしないので、どこと相談をしていいかという点もまだきまつておりませんけれども、できますならば、起債でもしてそういう仕事をやつて行きたいと思います。只今のところではまだ具体的にそれができないのが残念でございます。
  107. 内村清次

    ○内村清次君 これは先だつて、この工業用水につきましては、建設省のほうで要綱というのを発表しているのを新聞で私見ました。それで建設省がやつているのだな、そうしますと通産省はどういうお考えかと、こう思つておりましたが、只今通産大臣自分の所管だ。私これは相当な財界、それから産業人とも会いましたのですが、誰もこれは明確になつておりませんね。これははつきり関係法規を整備して行きまして、大蔵大臣が先ほど言われた、生産関係には最も必要であろうと思いますから、その点は一つ一貫した政府の方策として考えてやつて頂きたいということを私は要望しておきます。  それから運輸大臣にちよつとお尋ねいたしますが、今回の国鉄の裁定関係は、今日国鉄の当事者におきまして妥結をしたようであります。私たちはどうしてもまだ腑に落ちませんことは、大蔵大臣は、今回の閣議の御決定の指導者といたしまして、これを一般公務員と一緒に十一月から決定をするというようなお考えがある。そういたしまして、これは政府のほうとの、野党とのほうの連絡もあろうと存じますが、衆議院の裁定に対しまするところの附帯条件に関しましても、公務員と均衡をとらしむ、即ち裁定第四項に対しては公務員と均衡をとらす、こういうような決議がなされておるようであります。そこで私は裁定自体というものはどうしてもまだ当事者を拘束するものである、三十五条において拘束するものであつて、その賃金問題というものは裁定を以て最終的な判決でございまするので、この判決によつて私はこの意思を国会自体は尊重する、政府はこれを承認の形として出して来る、国会に出して来るというような筋道というものが打立てられなくては、企業体になつたゆえんのものがわかりませんが、企業の労働関係というものはいつまで経つても先ほど申しましたように解決しない、こういうふうに私たちは考えるのです。それが依然として裁定の権威というものに対して政府考え方がどうも普遍的な考え方をしておられるようでございまして、むしろこれであつたならば私は公労法というものをこれはなくしてもらいたい。そうして直接国家の公務員といたしましての筋道として還元してもらつて、そうして賃金問題というものは政府と直接交渉するというような形に私はしてもらいたい、こういうようなことさえも考えるのですが、運輸大臣といたしましては事裁定に対するお考え方ですね、この権威上のお考え方を国鉄の企業から考えてどう考えておられるかということを私はここで最終的に質問いたしたいと思います。
  108. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 裁定は御承知のように公労法三十五条によりまして、原則的には最終的のものであることは御承知の通りであります。併し予算上の措置ができない場合に、例外的にこれを国会に持出しまして皆さん方の御審議を願うのであります。これは私提案のときにもちよつと緊急質問を受けまして申上げましたように、これは政府は承認してもらいたいのか、不承認してもらいたいのか、一向わからんじやないかというお尋ねであつたのでございます。ところが規定そのものがまた妙な規定である。事由を附して国会に出せということでありますから、予算がないから一つ皆さん然るべくお願いいたしますというので、政府はそれに意見をつけては法の精神にもとるというふうに、法だけで言うとそう思われるのであります。これは誠に妙な規定でもありますが、規定から見ればその通り解釈しなければならん問題であります。で、出しまして審議の途中において政府の意見を聞かれますれば、私が持つている意見がないではない。持つているのだから審議の途中においてお尋ねがあれば申すということでお話合いをいたしているわけでありますが、最後のこういうものはないほうがいいじやないかというお説、そういう声も私ときどき聞かされるのでありますが、私はこれはあつたほうが本筋だと思います。裁定が、国鉄裁定だけでもこれで三回目であります。又お言葉のようにこれを全部政府がそのまま結構だと言つてないのではありますが、基本給だけにつきましては三回とも尤もであるというのでそのまま呑んでおります。ただ施行の時期が残念でありまするが、八月が十一月になつた。これは財政上の理由によつて御辛抱願うより仕方がないということになつておるのでありまするが、私は日本の国の財政がだんだん国の発展と共に少しずつでもよくなり、そうして裁定というものが完全にこのまま呑れるというような状態になることを期待しておるのでありまして、そういうふうなために我々は国そのものの発展のために努力すべきである。又この裁定を尊重するという心持を飽くまで持つてつて、私どもは国鉄その他関係の人たちのこの問題が起つた場合の解決に資して行きたい、こう思つております。
  109. 内村清次

    ○内村清次君 今の運輸大臣のお考え方ではちよつと、私気にかかることがございますが、それは国の財政がよくなつたならば、裁定を尊重する、あの裁定に従つて行く、こういうようなお話でございますが、これは公社の財政がよくならなくちやいかない。それでこれはやはり公務員であつたならば勿論すべてを一般会計の予算から出しておりますが、公社の財政がそれに耐えるような財政であつたならば、当然これは解決する問題であろうかと私は思うのです。で、この公社の財政をよくするにはどうするかという問題は、先ほど大蔵大臣に私はよくお願いしたわけです。ああいうふうな方法を是非とつて頂きたい。そして国鉄の自主権、財政自主権というものをもう少し考えて頂きたいということを申したわけです。  そこで今回の問題で私が最後に、裁定問題だけでは最後にお尋ねしたいと申しましたのは、国鉄の総裁は裁定は神聖にして侵すべからざるものであるから従つて行く。この裁定によつて今後金を、足らないことは事実であるから、政府のほうで一つ面倒を見てもらおう、こういうことを最初から答弁して来た。それを政府のほうでは公務員並みの十一月でないとできないと、こういうようなことになつて参りますると、私たちはここに不可解な点がある。法の尊厳というものが実行されないという不可解な点があるのです。独立企業になつて公共性のあるところの、国家の血は流れておりまするけれども、やはり独立採算でやらせたところの企業体であるとしたならば、賃金問題では仲裁委員会に任せていいじやないか。それを又政府は、これは調停委員会で一遍しぼられるでありましよう。それから仲裁委員会でしぼられるでありましよう。そうして最終判決したのを国会でしぼられる。政府でしぼられて行くし、国会でしぼられて行く、こういうような賃金の決定というものはどこにあるかと私は思うのです。こういうようなことで法律は出して、そしてちよつと動き方が悪いと、これは公労法の十七条或いは又十八条によつて処断をする、退職処分にすると、こういうような一方的においては法律を守らずして、一方においてはその条文を厳守して、そうして職員の首を切つて行くというような考え方というものは、私は而も憲法に保障されたところの団体行動の権利というものをこれで縛つてしまつて、束縛しておいて、そういうようなやり方というものは私は片手落ちではないか。これでは企業の能率というものは全然上つて行かないということを私は言いたいのです。この点を総裁さえもこれに従つて行こうというようなことを、運輸大臣はこれで縛つて行こうというようなことでよろしいかどうかということに対してのお答えをお願いしたかつたのですが、これにはどうもお答えがないのでありますが、それでは関連質問をちよつといたします。  それは事柄が違いますが、海の問題に入りますが、前半の答弁も一つお願いいたしまして、今回の二十八年度におけるこの造船計画といたしまして、現在の外航船に対するところの利子補給の問題は今法律として取扱われておるようでありますが、この計画は一応運輸省のほうにおきましては、資金を付けたところの計画というものがなされておるはずだと私は思うのです。造船計画に対しましては、これは従事いたしますところのかたがたは勿論でございますが、現在の鉄鋼価格の上つておるところの状態におきまして、又特にこの造船関係が今後の大蔵大臣が言われましたように貿易と密接な関係のあるようないわゆる船腹の増強という関係からいたしましても緊急な問題であろうと思うのですが、これに対した資金関係の伴つた計画、本当に正味の計画というものはどういうふうに立てておられるか、これを一つお伺いしたいと思います。
  110. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 来年度の問題ですね、二十八年度の。
  111. 内村清次

    ○内村清次君 そうです。
  112. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) これは今予算を組んでいるところでありますが、私どもの考えといたしましては、来年度も三十万トンの外航船を新造さしたいと思つております。これに伴つて貨物船は約今のところの七割から八割ぐらいなものを財政資金で出すというようなことを考えておりますので、総計いたしますと二百六、七十億ぐらい財政資金を用意しなくてはならない、こう思つております。これによりまして所要の目的を達する。そのほか市中銀行のほうから借ります。そうしてそれは利子補給のほうで、今度法案が出ております利子補給によつて財政資金として市中銀行の利子との差は出してもらうということでやつております。
  113. 内村清次

    ○内村清次君 大蔵大臣にお尋ねしたいすですが、この鉄鋼及び又特殊鋼の鋼板の価格というものが、これは外国の比ではないんです、高い。それで船価の状態というものが高騰することは当然でございまするが、鉄鋼に対するところの補給金ですね、これはお考えになつておるかどうか、その点一つ……。
  114. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 鉄鋼類の高いために、船舶の原価が高くなるという事実はあるようでございます。それでこれは鉄鋼の代金の一部を補助してやつて安く上るようにするということは、話は簡単でございますが、製鉄会社の算盤を我々は覗いて見るということは甚だよろしくないんですが、ああいうところでまけてくれたらどうかというふうなことも考えております。それから外国の船を日本の造船所で注文を受けて、そのうちに鉄鋼の値段を政府が助けてやつて、まあ言わば船の輸出になるんですが、これは明らかに輸出を政府が補助したというふうな形になりますので、手放しにそういうことはやらないほうがいいというふうに考えます。同時に鉄鋼を安く手に入れるようにして、造船業が値段が引合うようにして行こうというのは、やはりその事業を甘やかすというふうな形になりまして、すぐにそれをやつて行くという性質のものでないように存じます。今のところでは鉄鋼の値段に補助を与えて造船を促進して行こうということは考えないほうがいいと、私は考えております。
  115. 内村清次

    ○内村清次君 次に運輸大臣と、それから通産大臣も関係するかと思いますが、外航船関係の政府の計画に対しましてはわかりました。そこで問題は内航船の問題ですが、これは第七次船の場合から政府の一貫した態度であつたと思いまするが、この企業を整備して行くという形におきまして、相当ドツクを持つたところの造船所が倒れて行つておるんです。これは勿論中共貿易その他との関連性もあろうかと思いますが、又東南アジアとの貿易関係とも関連性があると思いますが、内航船の船舶に対しまするところの助成政策というものは欠如しておるように見えます。そのために非常に中小的な造船所及び又これに関連するところの一般企業というものが非常に衰微しておるような状態です。外航船に対しましては利子の補給も法律で出て参りまするとしても、一体そういうような内航船関係に対する助成政策というものが、ここに打立ててあるかどうかということにつきましての御答弁を願いたいと思います。
  116. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) お答えいたします。内航船が非常に老朽なものがたくさんあつて、使う上にどうにも役立たないというようなものが、大分たくさんあるようであります。これは前にも一度スクラツプにする問題等もあつたようでありますが、この頃になりまして古いものを、或いはどれだけかの数量をスクラツプにして壊してしまう、そしてあとに能率のいい船をこしらえるというような方向に進んだほうが、今の国内の内航船の仕事もよくなり、延いては外航船にもいい影響を与え、造船のうちにおいても助かるというようなことで、内航船の成る数量をスクラツプにするために政府で買上げてもらいたいという案があります。これは只今研究をいたしておるのでありますが、この話がまとまりますれば、一つの内航船に対する明るいまあそれだけで全部とは申しませんが一つの途ができるのではないか、割合に金のかからないで実行できる方法ではないかというふうに思つております。もう少し研究をいたしまして予算の面において関係局とも相談して行きたいと思つております。
  117. 内村清次

    ○内村清次君 私はこの公務員給与関係につきましてまだ相当質問を保留しておきます。これは明日是非一つ大蔵大臣におきましては約束通りに附帯決議の内容を提示して頂きましてその節に質問をするということで保留をいたしまして次の人に譲ります。
  118. 加藤正人

    ○加藤正人君 現在将来を通じて日本の最も緊要な国策であるところの貿易対策に関しまして、以下大蔵大臣、通産大臣、外務大臣の所見を伺いたいと思います。  貿易問題につきましては歴代の担当大臣が申合せたように、その重要性を口にしておりながらその政策は極めて微温的であり、又糊塗的であつたことは今更これを例示するまでもなく、あまねく周知の事実であると思うのであります。併し新内閣におきましては、幸いというか、或いは事態の深刻さがおのずからそうさせたのかわかりませんが、とにかく貿易問題を相当重要視し、真剣にこれと取組もうとしておる態度が窺われることは多とするところであります。特に通産当局においては、財界の年来の要望であつた貿易商社の強化、外貨の長期低利貸付、或いは税制面よりする資本蓄積等を率直に取入れようとする熱意は十分にこれを認め得るのであります。併し最近中南米、及び東南アジア市場へ著しく進出を遂げ、我が国の大きな脅威となつております西ドイツが、実に思い切つた輸出振興政策をとつている。その意気込みを思いますというと、まだまだ日本のそれは物足らないものが感ぜられるのであります。これは畢竟、貿易については全く僥倖とも言うべき特需によつて今日まで賄われ、又国防についても日米安全保障条約に守られて、表面的にせよ、現在の経済力を以てしては再軍備に堪えずと、のんびりかまえておられる。いわゆる物心両面の安易感が大きく禍いしているためでありまして、現在世界の経済を支えている軍備の拡張が一応その目標を達した暁に見舞われるであろうところの本格的な反動期、不況期がここ数年を出ずして我々の上に襲いかかつて来るであろうという厳しい事実をあえて正視せず、その結果今から最悪の事態に対する用意をなすべきことを怠つているのではないかと憂えられるのであります。若し二年後、三年後にそのような事態が起れば、日本経済は果してどうなりますか。そのようなことを考えますと、私は寒心に堪えないものがあり、今こそ最悪の事態に備え、そのようなときにおいても正常な貿易によつて十分国を建て得る態勢を整えるべきである。そのためには貿易政策をピラミツドの頂点として、あらゆる経済政策をこれに順応せしめるごとき、いわゆる貿易立国の真の姿に徹しなければならない。この意味におきまして現在最も喫緊を要する諸点について伺いたいのであります。  まず大蔵大臣に、資本蓄積について伺いたいと思う。政府は我が国の産業構造を重化学工業を中心とする高度なものに改めるため、その基盤として電源開発を中心とする資源の開発を新政策において大きく取上げている。勿論このことはそれ自体として大変結構なことであります。併しかかる長期な大規模な計画を推進して行くためには、まず足下を固めておくことが先決であると思うのであります。即ちちよつとした景気の変動においても絶えずぐらぐらするような経済基盤の上に立つて、このような長期な計画を遂行するということは極めて冒険であるといわねばなりません。そして我が国の経済の日々の糧を稼いでいる産業の実態はどうでありますか。資本蓄積は極めて乏しく、経営の基盤又極めて脆弱であることは万人の指摘するところでありまして、而も本格的な不況は遠からず来るものと予想しておかねばならない情勢であります。このようなことを考えますると、産業構造の高度化も考え方としては大きに結構でありまするが、その前においてなしおくべきことを忘れてはいないだろうかと思うのであります。言うまでもなく、これは資本蓄積の急務を指摘しているのでありまして、これがために政府においても税制を改正して種々の形における社内保留を促進せしめるよう格段の意を用いているのでありますが、それだけでは決して十分とは申しがたい。その大本をなす法人税の減税を断行すべきであると私は思うのであります。勿論減税は直ちに国家の財政に影響するところが大きいのであるが、要はこの問題を第一義的に考えるかどうかということにかかつていると思うのであります。石ころの多い道を歩くときには足下を見ず、目標ばかり見つめて進むというと、躓いて大怪我をしないかということであります。大蔵大臣のこの点についての所懐を先ず第一に伺いたいと思うのであります。
  119. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 民間資本蓄積につきましては、常にこれに資するよう努力しておりますが、私の考えを申上げます前に、資本蓄積については民間のかたがたも十分に注意をして頂きだい。或る業態では一時の盛況にかられて設備を非常に大きくし、或いは配当を高率にして、そうして資本蓄積のできないようになつている業態もあるように私は存じております。これをしないでは政府が幾ら骨を折つても意味をなさないだろうと存じます。明年度の税制改正に当りましても一層資本蓄積を促進する措置をとりたいと考えております。それはいろいろ方法はございますが、今はまだ申上げる時期じやございません。法人税の税率につきましては、その引下げの要求が強いので、これは当り前でございますが、その税収に及ぼす影響が重大でありますので、差当り実施は困難と存じますが、第三次再評価を行うことにしまして、又現在設けています特別償却制度を拡張しますと共に、各種準備金制度等につきましてはその合理化を図りたいと考えています。それによりまして法人税は幾分か軽減されるようになるだろうと存じております。
  120. 加藤正人

    ○加藤正人君 民間に要望されましたが、これはもとよりの話であります。稼動設備を無暗に拡張されたというようなお話は、或いは私は紡績業者でありますから、紡績業のことを言つておられるのかとも思いますが、これもいい機会に前高橋通産大臣に申上げたのでありますが、前の商工行政に落度があつた、ああいう厖大な数に及ぶような会社を作ることを政策にとられた結果がああなつたのでありまして、この点について若しもそういうことでもるならばもう少しよく御研究願いたいと思います。それから法人の配当が高いということでありますが、今日この再評価をいたしましてもまだ資本の小さい会社が非常に多い。それがために配当率が大きく見えるのでありまして、決してこれは過当な利益があると一概に解釈するということは、これは大蔵大臣らしくもないと私は思います。  次に設備の近代化について伺いたいのであります。我が国の商品は現在最も国際物価に比べますと相当割高でありまして、これが輸出不振の大きな原因をなしているのであります。今後買手市場がもつと厳しくなつて参りますと、到底国際競争に堪えなくなることは明らかであります。設備の近代化は喫緊の急務であります。現在合理化を促進する方策といたしましては、合理化促進法による特別償却と、更に外貨の低利貸付による方法が考えられているのであります。合理化促進法は極く限られた小範囲であり、問題外といたしまして、外貨の貸付でよく初期の効果を収め得るでありましようか。やはりこれと並行いたしまして合理化促進法を全面的に拡大いたしまして、程度の如何を問わず、およそ設備の近代化というのに役立つようなことは、すべて特別償却を認めるくらいな積極性が必要ではないかと思うのであります。大蔵大臣も特別償却制度の拡大の必要は認めておられるようでありまするが、その構想はどの程度のものでありますか。又合理化の促進は極めて喫緊なものであるので、特別償却を全面的に拡大するにいたしましても、西ドイツにおいて実施せられておるように、二年なり、三年なりを限つて実施するようにしたならば大きな効果が期待し得るのではあるまいかと思うのであります。勿論これも歳入面に影響する問題でありまするが、真に自立経済を達成する上におきまして、第一義的に必要なことであり、その上でこれに順応せしむべき性質のものであろうと存じまするが、如何にお考えでありますか、この点も伺いたいと思います。
  121. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の御質問の点につきましては、程度只今のところ研究中でございまして、これはほかの通産省とか、或いはその他の省とも連絡の必要なことでございますし、私としてはつきり申上げることはできません。
  122. 加藤正人

    ○加藤正人君 では続いて伺います。通産省におきましては、貿易振興の上の大きな問題といたしまして、貿易商社の強化を重点的に考慮されまして、その方法として現在の商社の短期負債を長期負債に肩替りし、すつきりした形で再出発せしめるということを考えており、我々といたしましてこれは遅きに失した嫌いがあるが、誠に当を得たものであると考えるのであります。ところが過日通産事務当局にその構想を質問いたしましたところ、まだ十分大蔵当局との話合いができていないようであるというのであります。そこで大蔵大臣の見解を伺うのでありまするが、大蔵大臣といたしましては、この通産当局の考え方をどう考えられますか、若し御賛成であるとするならば如何なる構想によつてこれを実施せられるというお考えでありますか、その点をお伺いいたします。
  123. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) この問題につきましては、通産省から私はまだ話を聞いておりません。併しながら新聞で見ましても、又世上の話を聞きましても、貿易商社を不況から救うということは日本の貿易振興のために必要なことで、その一番先に出るものは貿易商社の借金を早く返さなくてもいい方法をとつてやるということが一番早手廻しであると存じますが、これは貿易商社はそれぞれ違つた内容を持つております。又損の仕方もなぜ損をしたかわからないものがありますし、それでこれを一様に短期負債を長期負債に直すというふうなことは私はとるべき途でないと存じます。それぞれ商社の内容及びそれの償還力の測定というふうなことをいたしまして、又それぞれ借りた先は銀行もありましようし、或いはところによつては製造家もあるでしようし、そういうところとよく懇談を重ね、そうしてその上でどの程度のものを長期金融に直すのがいいかというふうなことを考えてもらいまして、その上で御相談を受けるということが至当だろうと考えております。
  124. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 その点は昨日私が総理大臣にちよつと質問で触れたのでありますが、その金額は五、六十億と一部に報ぜられておる。貿易商社が貿易金融上損をしておるということは、これはよくわかつておるし、これは今加藤さんのお説の通り何とかせねばいかないということであります。けれども一体こうした貿易商社が損をしたというのは、自分の商業上の見込違いということなんでありまして、その見込違いによつて損をしたというのは、自分がいろいろの高いものを仕入れて、或いはその他キヤンセルなどの点もありましようけれども、こうした莫大なものを長期化せしめて殆んど棚上げ的にしようというようなことについては多少の問題があるのじやないか。趣旨は結構であるが、その金額、やり方については相当問題もありますし、それほどやるならば中小企業に対するやはり長期化と、或いはもつと中小企業に対する助成費、社会福祉政策に対するもつと助成費を増額すべきものであつて、これらが自由党の資本主義経済の典型的なやり方である、こういうことなどはかなり注目すべきことであるのであつて、若しそれをやるならば中小企業その他に対しても適当な措置が講じられなければならん。大貿易商社がやることにつきましては、今大蔵大臣がことごとく内容が違つて一律一体には行かないと言われましたが、もとよりその通りのものがあるかも知れない。いかがわしいものが、この点に政治的にいろいろ工作が成功するというようなことがあつてはならんと思うので、この問題は特に慎重にやつてもらいたいということを伺いたいと思うのですが、その点について大蔵大臣の所信を伺いたい。
  125. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の御質問は甚だ私にとつては意を得た御質問で至極御尤もであります。それでただ貿易商社が損をしたということの中には、自分の博打で損をしたのも勿論ありますが、或る場合に世界の軍拡というふうなことで、原料品が不足をする、その不足は目に見えておるから早く物を買つておかなければいけないというふうな示唆があつたために、あわてて買つて、それが後になつて値が下つて損をしたというのも確かにあるように私は思います。それなどは自分の射倖心或いは投機的な考えから起つた損でなく、むしろ国のために考えてやつたという点を相当含んでおるのもあるのです。無論それは損の言訳に言うのもありますが、事実私はそういうのがあると思うのですが、併しそんなことを言つても仕方がないので、やはり仕事のやり方及び損失の起つた性質なんというものをよく検討して、そうして考えて行けばいいのであります。これは政治的に取扱われてはとてもたまらない問題ですから、私は慎重に研究しまして措置をして行きたい。それからほかの産業との連関というふうなことは無論考えなければならないので、軽卒にできることとは思つておりません。
  126. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 貿易商社の問題、非常に重要な問題を取上げられまして、私も一言大蔵大臣に聞いておきたい点があります。これは言うまでもないことでありますが、資本主義経済において自己責任においてすべて仕事はやつております。今自由党内閣が自由主義経済という建前で政治をやつて参る。商社が儲けるときもあるし、損をするときもある。そうして儲けたときにおいてはいわゆる社用族なんというのがはびこつて、そうして社会に害毒を流して、損をすればやかましく政府に迫つて来る、私はこういうことについてもつと政府はつきりした方針を立てた政治をやつて頂かなきやならんと思うのであります。で、一昨日も私は総理質問いたしましたが、そういう問題よりももつと重大な問題がたくさんある。で、大蔵大臣が今蘊蓄を傾けて加藤委員と論争されました。私も聞いておつて非常に興味が深かつた。併し私どもの立場から言うと、そういう問題はそう大きな問題じやないと思う。利益したときの場合はどうするのです。ただ税金を納めるだけの話なんです。そうして損したときには、そういつてやかましく言う、私はこういう点については大蔵大臣を信頼しまして、もつと広い目を以て社会の一番恵まれない人たちのために政治をやるという見地から、この貿易商社の問題などは、そう大きな問題として取上げないようにして頂きたいと思います。(「その通り」〔三井物産大蔵大臣なつたらいかんぞ」と呼ぶ者あり)
  127. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今三井物産大蔵大臣とおつしやいましたが、そういうことはこの席でおつしやつて頂きたくないと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは私に対して少しお言葉が過ぎやしないかと思います。如何でしよう。
  128. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 私はそんなことを申しませんよ。三井物産大蔵大臣なんて言わないのだから、私の質問に対して御答弁を願いたい。(「彌次には取合わないほうがいい」と呼ぶ者あり)
  129. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の御質問に対しては私も同感でございまして、それから私は今の貿易商社から強くそういうことを頼まれた覚えもございませんし、それから又今おつしやる通りに非常に重大なものと思つて取扱う考えはございません。
  130. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほど大蔵大臣は、軍需資材で非常に緊急に輸入をしなければ世界的に不足になるようなものがあつて、これは政府の勧奨によつて輸入したものであるから、これらは若干見てやらなければならないかも知れないということをおつしやいましたが、これは絶対にそういうお考えを出されないようにお願いをしたいのです。と申上げますのは、私から御説明するまでもなく、政府はすでにそのことをありと考えて、緊要物資輸入基金なり、特別基金を作つて、若しどうしても必要なものがあるならば政府の責任においてこれをやるということで、すでに二十五億の資金を措置して、これを何回転かして、百億或いはそれ以上の物資が買えるということで措置をいたしたのでありますから、政府がやらなければならないことは、これで尽きていると思いますので、それ以上政府が勧奨したからとか、ただ勧めたからとかいうことによつて、それで非常な損失が出たから、それを何とか考えてやりたいというようなことは絶対にお考えにならないように、切にこれは希望したいと思いますが、どうお考えですか。
  131. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 私は政府が注文して損をしたという意味には申上げません。示唆があつたということを申上げたのです。それでそれによつて損があつたのだから、それを補填してやるがいいという意味も私は申しておりませんで、ただ儲けようと思つて見込みを違つて損をしたと、それは少々かわいそうだという意味のことを申上げたので、それを補填しようということは考えておりません。
  132. 加藤正人

    ○加藤正人君 どうもえらい話題を繰拡げてしまいました。(笑声)併し私はこの貿易商社の強化と申しましても、中小企業のほうは、どうでもいいというわけでもない、窮民の救済というような方面もどうでもいいというわけでもないのでありまして、今、日本は経済目立をしなくちやならん、これはどうしても貿易を国策としてやらなければならんというからには、この第一線に立つて貿易を推進して行く商社を強化するよりほかに手段はない。その商社というのは、その商社は闇をやつて儲かつたときは儲け、損したときはそういう泣きごとを言う、そういう同社を私は対象としておるのではないのであります。まじめな取引をしておるものを言うのでありまして、そういう先入主から或る特定のものに限つて私が申しておるようにとられては甚だ迷惑をいたす次第であります。どうぞ公正な立場から国の前途を思つて勇躍しておる商社があることでありますから、これらの商社に対して、かような方法をとつて頂きたいと、こう私は念願しておるわけであります。  次に貯蓄公債について申上げたいのでありまするが、財政演説におきまして蔵相は、今後の財政経済政策の基本として一つの通貨安定、為替レートの堅持を明らかにすると共に、時宜に応じて弾力性のある運営をなすべき旨の含みのある発言をなされたのでありまするが、このような考え方には我々も基本的に同感であります。事実現在の不況を克服するため、従来のいわゆるドツジ政策の修正を要望する声は澎湃として起り、今や国民的な要望ともなりつつあるのでありまして、このために政府におきましても、財政投資の拡大を通じて当直の不況に対処せんとしておることは今回の補正予算案にも明らかでありまするが、この当面の不況対策と基本政策とは果してうまく調整できるかどうか疑問なしとしないのであります。勿論私どもは当面の不況対策と言つても、決してインフレ政策を意味するものとは思いません。せいぜい従来の超均衡の政策から超の字を削除する程度のものに違いないと思うのであります。併しここで注意しなければならないことは、この超という字を削除する程度のものでも、なお且つ基本政策に背馳しないかということであります。即ち貿易によつて国を立てる我が国としてとるべき基本政策は、蔵相の指摘したように、通貨の安定、レートの堅持でなければならず、この意味におきまして、我が国の物価を国際水準の線に安定させることが過去数年間に亘るドツジ政策の目標であつたのであります。そうして過去数年に亘る超均衡の政策を以てしても、我が国の物価は遂に国際水準にまで引下げることができず、従つて為替レートも現在なおその実勢より二割程度割高になつておるのであります。その結果、特にプラント物を初めとする我が国の輸出貿易が不振を極める一つの大きな原因となつていることは周知の通りであります。而も今や我々は当面の不況打開のため超という字を削除することを余儀なくされておるのであります。このことは少くとも物価高是正のための従来の努力の一つを棚上げすることを意味するのでありまして、残された他の一つの手段である企業の合理化も、現に通産省か検討しておるように、鉄鋼、石炭等の基礎産業のそれが数年を要するばがりでなく、実に莫大なる資金を必要とし、誠に容易ならんことでありまして、その上我々の前途には当然予想されねばならない防衛費の増加、賠償支払の具体化、或いは軍人恩給の復活等々、均衡財政そのものをも危殆に瀕せしむような多くの要素を孕んでおることを思いますれば、国際水準の線で物価を安定せしめんとする基本的な政策と、不況打開のために要請せられておる当面の政策とは、果して調整が可能であるかどうか甚だ危惧に堪えないのであります。これは現在の日本経済の持つ最も本質的な悩みにほがなりません。大蔵大臣の御苦心の存するところではあるが、このような観点から現在問題になつておる貯蓄公債の問題を考えますれば、それは明らかに均衡財政の破綻の端緒をなす虞れが多いと言わなければならんと思うのであります。貯蓄公債に対しては、民間、特に金融機関からの批判が強く、その論点としては、民間資金の圧迫、金利体系の混乱、租税の負担両平の原則に反する等の諸点が挙げられておりますし、又大蔵事務当局内部におきましても異論があるように伝えられておるのでありまするが、このような技術的な問題は暫らくおきまして、先に言つた観点から、公債政策に関する見解を伺いたいのであります。先ほど建設公債は考えないというようなお話がありましたが、なおこの点を伺いたい。新聞紙上に伝えるところによりますれば、大蔵当局においては本問題についてはなお検討中であるとのことでありますが、それは公債発行を前提として、発行条件或いは発行額等、技術的な問題について検討を加えておるのでありましようか、どうでありますか、この点について大蔵大臣の御説明を願いたいと思うのであります。
  133. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 国の財政の収支を均衡にしようということは私の理想というふうに申上げいいんですが、併しなかなか理想が行われないで、それに弾力あるというふうなことになつて参りまして、非常に不本意に思いますが、併しながら根本を崩さない程度の弾力は国のために不健全なものではないというふうに考えております。それに関連しまして公債の政策はどうかとおつしやるのですが、公債の政策は私は避けたい。これは止むを得なければ起ることでしようが、今その必要はまだないと思つております。従つて貯蓄公債ということもいろいろ新聞にも出ましたり、大蔵省当局でどうとかいうお話がありますが、そういうこととは離れまして、私はやりたくないと考えておる。従つて今御質問の条件等を考えておるかということでございますが、それを考えておるのではございませんで、起さずに済むなら起さずに済ましたいと考えておる次第でございます。
  134. 加藤正人

    ○加藤正人君 違う公債でありますが、今日の産業経済の紙面に、建設公債で財政資金の負担を補う、自由党政務調査会で立案して、大蔵省ではこの公債発行を認めることに内定したというような記事がありますが、この真相についてちよつと伺いたいと思います。
  135. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) これは新聞のことは私は知りませんというのが本当でございまして、実際私は知りませんが、併しそれは全く事実のないことと私は承知しておりますから、そのおつもりで願います。
  136. 加藤正人

    ○加藤正人君 わかりました。それでは次は大蔵大臣と通産大臣にお伺いしますが、プラント用の鋼材に対して補給金を出すかどうか、先ほどは何か出さんというようなお話もあつたようでありまするが、或いはそれが政策としていいものかどうかというような問題は私は今更触れないのであります。もはやこのような原則論を闘わすような段階ではないからであります。併しこれが相当以前からの問題であり、それが未だに政府として結論を出されていないところに問題があるのであります。といつても、何もこれは新任の大蔵大臣、通産大臣を非難せんとするものではないのでありまして、私の寡聞を以ていたしましても、一年越しのこの問題が未だに論議の対象となつておることそれ自体が論議されるべきことであろうと思うのであります。私は本質問の冒頭におきまして、従来の政府施策は甚だ微温的であるということを申しましたが、それと同時に施策の時宜を甚だ失し勝ちであつたということも合せて指摘したいと思うのであります。微温的であるということは、輸出政策を例にとりますれば、優先外貨の制度にいたしましても、或いは輸出信用保険の制度にいたしましても、政策そのものとしては、各国と比較して見て一応の形はできておるのであります。併しながら、この優先外貨にしても、西ドイツにおいては最高四〇が認められておるに対して、我が国では最高一〇%、特殊の場合は一五%までしか認められていないような事実を見ましても、如何に不徹底なものであるかがわかるのであります。又施策が極めて時宜を失し勝ちであつたということも、例えば一昨年期限付手形制度を実施して大いに輸入を促進せんとしたときに見られたように、日銀、外為委員会、大蔵省の三者のセクシヨナリズムカラ、最も大切な二カ月を空費し、その結果物価の最も高い時期にこれを実施し、大いに輸出を促進したとたんに、国際的物価の急落に会つて昨年春の大混乱を惹起する原因を政府みずから作つた事実を以てして明らかであると私は思うのであります。かかる事実を考えまするならば、政府としては一日も早く問題の結論を見出すべきであると思うのであります。鉄鋼のコスト引下げのために三カ年計画、八百億円の巨費を投じて現に実施中の鉄鋼産業の合理化が、たとえ予定通り年度において完了するといたしましても、国際価格への鞘寄せが前途遼遠であるとすれば、いつまでも徒らに原則論に拘泥すべきではない。特に問題がプラントものである。一つの取引が将来に連なる性質を持つものでありますから、徒らに原則論に貴重なる時を空費しておる間に、将来に亘つて、市場を喪失する結果になりはせんかということも虞れるものであります。この意味において、通産大臣がなお検討中であるというのは、如何なる点において検討を加えておられるのであるか、例えば補給金の要否、要るか要らんかという物の見通しか、或いは財源についてであるか、或いは補給金制そのものの政策としていいか悪いかということであるか、又大蔵大臣が衆議院の答弁において、はつきりと補給金は考慮の余地がないと言つておるのは如何なる見解に基くものでありますか。ところが今日の新聞を見ると、日銀総裁は、輸出振興のために合理化もさることながら、鉄鋼、石炭等には補金給が必要であるというようなことを言つておる。それは所管が大蔵省である。日銀総裁の言うことは何も注意する必要はないと言うかも知れませんが、新聞紙上で堂々と伝えられておるこの点についても、国内の意見が甚だ一致しない、かようなことが日本の貿易対策がいつも生温くて国内の語論が一致しない。それに対して競争に立つておるイギリス、西ドイツのごときは着々として国策の樹立に邁進しておる、誠に私はこれを見てさびしい感じがするのであります。どうぞこの点について、大蔵大臣、通産大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。又本問題の解決につきまして、補給金的な方法もありますし、或いは又外国の安い鋼材そのものを輸入する方法もある。そこでこのような二つの考え方を推し進めて、今後の我が国の産業貿易政策の根本問題、即ち自給自足経済の観点から有利な輸入を抑えてでも或る程度国内産業の保護政策をとるべきか、或いは反対に完全な公益主義に徹底すべきかという大問題であるのでありますが、通産大臣として、その点について御抱負があれば参考のために伺いたいと思うのであります。
  137. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 加藤さんの御質疑にお答えいたします。鉄鋼補給金の問題につきましては、直接鉄鋼に対しまして補給金を支出することも一応考えられませんではございませんけれども、いろいろこれに伴う弊害もございまするし、根本的には東南アジア地域の開発等によりまする原料条件を改善するとか、或いは只今お話のありましたいわゆる目下進行中の合理化三カ年計画による設備の近代化などの推進に努めまして、価格の引下げを実現いたしたいと考えておる次第でございまするが、そういうふうであり、又政府としてもいろいろ金融上の優遇措置などをとつておるのでございまするが、併しそういつた効果がすぐにこれは現われるとも考えられませんので、そこで当面の問題としまして、お話のありましたプラント輸出等を振興するために、この輸出用の機械類を含めて重要機械の一部を成しておる鉄鋼、一小部分でありますが、そういつたものについてだけ補給金を支出することも一応考えられないではございませんので、財政上の負担がどうであろうか、或いは又西ヨーロツパ諸国との他の振合等、諸般の事情をも考慮して、この点から、実は検討中と過日来申上げておる次第でございます。併し何と申しましても、鉄鋼というものは各産業の基礎資材でありまするので、何とかこれからできる製品を優遇する措置がとり得ればと思いまして、今の鉄鋼全面ではございませんが、ほんの一部の輸出のプラントなどの原料、その一部について実行に移し得るかどうか、こういうものは財政上の負担等もございますので、目下大蔵当局等にもお話を申上げて研究をいたしておる次第でございます。もう一つ最後のお尋ねの点は……。
  138. 加藤正人

    ○加藤正人君 つまり国策として、自給自足の経済観点から有利な輸入を抑えてでも或る程度国内難業の保護政策をとるか、或いは反対に完全な公益主義に徹底するかどうかという大方針です。
  139. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) わかりました。これは私どもは日本経済の自立は心から念願するところでありまして、すべての施策はそれに向つて進められて行くべきであると思うのでありまするが、併しよその輸入を阻止することによつてのみ日本の産業の自立を図りますることは、目下の国際情勢では多少他に及ぼす影響等も考えられまするので、根本といたしましては、この自立経済を確立するということに置きまして、あとの個々の問題につきましては、やはりそのときのよろしきに従つて行く以外に途はないのではないか。併し、例えばよそが保護政策をとつておる場合に、保護政策と申しましても関税のような問題でありますが、そういつたようなときには、日本も同様な措置をとり得ることは、これは当然でございまして、そういつたことはいたしますが、日本だけが特別な、例えば関税の障壁を築いてどうこうするということは、現下の国際情勢ではこれは許されませんので、やはり根本は飽くまで自立経済に置きまするければも、やはり国際情勢とも睨み合せて、これを処理して行くほかなかろうかと考えておる次第でございます。
  140. 加藤正人

    ○加藤正人君 申上げたいことはたくさんありますけれども、時間があと五分しかありませんので、その次に参ります。決済条件の緩和につきまして大蔵大臣に伺います。プラントものの輸出が不振を極めておる原因の一つといたしまして、我が国の決済条件が他国から見ると非常に厳格に過ぎるという点が指摘されるのであります。即ち我が商社は依然として信用状建を固執いたしておりますのに対して、西ドイツ等は殆んど長期間の延べ払いの条件で取引を行なつておるようであります。これは言うまでもなく、我が国の輸出入銀行の融資条件が厳格に過ぎるためでありまして、従つて民間からは、融資期間を現行の最長三年、特別の場合は五年というのから、最長十年、特別の場合は十五年の程度に改めること、合弁出資等による海外投資に対する融資できる途を開くこと等の要望があるのであります。聞くところによりますれば、大蔵事務当局でも大した異存はなく、輸出入銀行においても現在弾力性のある運用を図つておるということでありまするが、これらは隣は掛け売をやつておるというのに、こちらは依然として現金売を固執しておるという、その結果売れ行きが極めて悪くなつておるというのも同様でありますから、できるだけ早く輸出入銀行法を改正すべきであると思いまするが、果してその御用意がありますか。今日の新聞、日本経済新聞によりますと、東南アジアとの提携推進という題下に、投融資の途開くということで、甚だ我々の要望しておるようなことが書いてある。これは経済審議庁で案を立てておるのでありまして、そうしてその適用の対象などの改正方針をきめて、通産大蔵両省に申入れをしたというのでありまして、通産、大蔵が果してこれを取入れるかどうかはわからんのでありまするが、甚だよいことを言つております。こういうことが実行されることを我々は望んでおるのでありまするが、かような点について大蔵大臣に伺いたいと思います。
  141. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 出入銀行法は、或る点を改正するのがよいと存じまして、只今研究しております。ただ御参考に申上げますが、西ドイツはどうですか存じませんが、日本は売込先の状態が十分わかつていないために、十年もかかるような掛け売をしまして、却つて金が来ないようなことがあるといけませんから、これは仕事をする人がやはり十分に御研究にならないといけないというふうに思つております。それから只今の経済審議庁が云々ということは、私も聞いておりませんし……、経済審議庁に進言をしたということですね。それはまだ審議庁の長官も私も聞いてはおりませんが、聞きましたら考えることにいたします。
  142. 加藤正人

    ○加藤正人君 もう少し新聞を毎朝御覧になるようにお願いいたしたいと思います。
  143. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 加藤さんに審議庁長官としてお答えしますが、そういう案を考えておるということは聞きましたが、まだ正式に審議庁で決定したものでもございませんし、又審議庁から私のほうの通産省へも何ら正式な申入れはございません。恐らく事務当局で、こういう案があるということが漏れて出たのではないかと思うのでありまして、まだ正式決定を見たものではございません。
  144. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 硫安に関しまして質問をしたいと存じます。硫安が只今出血輸出をしなければならんといつたような状態になつております。一部分は非常な損失を忍んでも外国へ出した。そんな値段が国内の消費者に供給する値段と単価において三百円も違つておるというようなことで、業者自体も非常に大きな問題に遭遇しておると思いますが、それと同時に多数の農民が春の肥料の仕入れを控えまして大きな問題に直面しておると思うのであります。こういう問題を解決するのには、根本においてどうしても硫安の生産費が真にぎりぎりのところで幾らかという問題に帰着すると思うのであります。で、我々の同僚が予算委員会といたしまして生産費の資料の要求をされたようであります。私はそれを私にも頂きたいということを申入れたのでありまするが、私に配付されたものについては生産費の資料が欠けておるのです。これは御調査ができないのでありましようか知りませんが、少くとも各社別、できれば各工場別の生産費が伺いたい、如何でございますか。
  145. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。昭和二十五年八月以後、御承知のように肥料の統制を撤廃いたしまして、公定価格も廃止されておりまするので、自然法令によりまして各社の経理監査とか、或いは原価の報告等をやつておりませんので、従つて各工場別に原価計算をお示しすることは現在の段階では困難なことでございます。併しながら本肥料年度から実行して参つておりまする需要者と供給者両者の間で協議をいたしてきめておりまするあの安定帯価格というものは……。
  146. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 それは承知しております。
  147. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) おおむね妥当だと、かように考えておるのでありますが、私お話申上げておきました通り、公定価格が撤廃になつておりまして、私ども法令的にこれを調査する権限等を持合せておりません。又各工場別にそれぞれ生産費が違いますことも、これは石黒さん御承知の通りでありまして、従つて資料がないことは誠に遺憾といたします。
  148. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 そうしますと、御配付はなかつたのでありますか。
  149. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 配付いたさないと私存じております。
  150. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 肥料の統制が撤廃になり、公定価格がなくなつたことも承知をしております。法令によつて何ら調べる御権限のないことも承知をしております。併しながら、そういう状態であるからというて、この大きな問題を前にして所管省がこの点について手を加えられないことは私は甚だ遺憾だと思います。私自体のことを申上げて甚だ相済みませんが、たしか昭和六年だと思いますが、世界的に硫安のダンピングが日本に襲来したことがあるのであります。そのときに日本の硫安業者は、このダンピングを防止するにあらずんば日本の硫安業は潰滅に瀕するのだ、こう強く申しまして、そうして輸入の制限、禁止の制度の省令の発布を要望したのであります。事柄は法律事項であるにかかわらず、これを省令で出そうということになつて、そうして商工省がその法令を発しようとしたことがあるのでありますが、果してダンピングに対して、第一にダンピングだかダンピングでないかという問題、及びそれに対して制限をしなければ潰れるか潰れないかという問題を多数の農民に了解させるのには、その生産費がどうであるから、その結果が潰れる、潰れることは国としても避くべきことでもあり、農業者に対しても非常な将来の痛手になるからということで、理解をさせるために、各社の生産費を出してもらわなければ、これに応ずることはできんということを申したときに、各社は進んでこれを公表してくれたのであります。そのときには、これを徴する法令は何もございません。それ以来法令はなかつたけれども、各社の生産費というものはほぼ報告をされておりまして、それが肥料の統制を必要とする時代になりまして、更に明確なものが得られ、各社の間においても非常な公共の考えを以ちまして、技術上の融通というものもやり、材料の融通というものもやるというところに進んだのであります。それが統制が解けて、統制法規の制定のない前の時代よりも又一層各社が勝手にやるということになりましたことは、一面まだ統制を解くということのできない、統制を必要としておる日本の米穀の生産に対しまして、農民の負うておるところの不自由さというものに対しまして、当然政府は統制を解かれたのは止むを得ませんが、解かれても、この点に関しては十分の御監督がなくちやならんことだと思うのであります。所管大臣のお考えは如何でございますか。
  151. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 只今以前の実例を示してのお話で誠に御尤もに存じます。ただ私が今申しましたのは、現在そういうものを持つておりませんので、さように正直に申上げたのでございますが、併し今の肥料行政を行う上において、各社が進んでこれを出してくれまするならば、肥料行政を円滑に行い得る基礎にはなると考えまするので、一つ私ども勧奨いたして見まして、その材料が揃いましたら御覧を願うことにいたしたいと存じます
  152. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 農林大臣がおいでになりませんようですから政務次官に伺います。政務次官はどうぞ只今の問答を御記憶頂いて農林大臣にお伝えを願いたいと思います。これは目前にあります大きな問題でありまして、これを農民に納得させるのには、その点をよほど御注意にならんといかないと、こう思います。それからついでに松浦次官に伺うのでありますが、衆議院のほうに「つぐみ」そのほか二種の小鳥の狩猟を許すとの法律案が出ておるということを聞いております。これに関しましては、事は非常に小さいようでありますけれども、私は軽視しないのであります。これらの小禽類が多数至るところに、人間の行けないようなところまで行つて害虫を啄んでくれることが、どれだけ日本の多数の農民のために手伝つてくれていることかわからん。これは農業薬剤なんか撒いたつてできない所までやつてくれておるのであります。この小禽類の農業上の害虫駆除の上においての効能があるか、或いは農産物を啄んで害があるかという問題に関しましては、相当の国費をかけて十数年前に調べているのであります。その結果は「つぐみ」だけに対しましても、各地方の各時期において、胃袋を千何百か調べているのであります。その結果利益があることははつきりわかつている。併し従来の網業者の目的の一つであつたということのために、暫らくの間順次にこれを禁ずることにいたそうということで来ておつたのが、占領治下において、そういうことは甚だ科学的の見地からいたして禁止すべきことであるから、速かにやめたらよかろうということで、かすみ網業の禁止ということになつたのであります。そういういい結果、アメリカの持つて来てくれたことのうちではいいことだと私は思つている。そういうことをもうその後数年も経つているのでありますから、業者は絶えている。法上絶えているべきはずであります。「つぐみ」をとつておるという業者は…、にもかかわらず、この際そういうことをやられるということは、これほど非科学的不合理なことはない。これに関しましていろいろ選挙問題があるなどということを巷間言つておりますが、私はそれは信じたくありません。ありませんが、私はそういうことについて非常に詳しい科学的な調べをした結果、そういう方針でおるということを御承知のない自由党員がこの法律案を出されたのじやないか、こう好意を以て私は解釈しておる。廣川大臣はこれに対しまして、過般この問題があつたときに、そういうものは断じて通さんということを言つておられましたが、それが手許から漏れて法律で提案されているということは、私は昨日も総理大臣に申上げましたが、もう少し規律ある御行動を願いたい、こう思うのであります。これは決して許すべきものでないということを私は確信を持つておりますが、政務次官は如何にお考えになりますか。
  153. 松浦東介

    政府委員(松浦東介君) 肥料問題につきましては御趣旨了承いたしました。又只今「つぐみ」問題であろうと思いますが、これは一部いろいろ問題のある点でございまして、今お説のように「つぐみ」などは農作物には殆んど被害を与えず、逆に害虫捉えるというような意味で効用のほうが大である。これを禁止することが国民生活にも何ら関係ないことであるので、現在は御承知のように狩猟鳥から除外をいたしているようなわけでございますが、私もはつきり記憶はいたしておりませんが、前の国会で何かこの問題についての公聴会を開くべしというような決議があつたように記憶をいたしているのでありますが、最近又議員提出で今お説のような法案が提出をせられていることもこれ又事実でございます。でありまするから、この問題につきましては、今お話のように科学的な調査の品物があるわけでございまするから、そういうような具体的な調査表を提出した上で、或いは公聴会等を開きまして、国民の良識ある判断に待つて善処する以外にないと私はかように考えております。(「撤回させりやいいじやないか」と呼ぶ者あり)
  154. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 石黒さんもういいですか……。では波多野さん。
  155. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今の「つぐみ」の問題は政府はどうしますか。(「撤回」と呼ぶ者あり)
  156. 松浦東介

    政府委員(松浦東介君) 撤回というようなお話もございまするが、併し私個人として撤回を命ずるという権限を持つておりませんし、一応話合いはしてみてもよろしうございますが、それほどの権限は持つておりません。(「陳腐陳腐」)と呼ぶ者あり)
  157. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 自由党の政務調査会に行つて討議なさつたほうが私はいいと思います。それを注文いたしておきます。  次に大蔵大臣に一、二お尋ねしておきたいのですが、先ほどの御答弁の中に、固定資産の第三次評価を認めるというお話があつた。曾つて数日前の新聞にも大蔵大臣の談として、今の株の価値が上つて来ているのは、株が少いからだ、早く第三次評価をやつて株を殖やしたほうがいいという御意見が出ておつたと思いますが、それと関連して第三次評価をなさるおつもりのようでありますが、その際に例の評価益税の問題をこれはどういうふうにお考えになつておいでになりますか、今までの再評価の場合、この評価益税の問題にかかわつて再評価をきめて行つているというのが相当つたようでありますが、今度はどういうふうに評価益税の問題をお考えになるか、それを先ず伺いたいと思います。
  158. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) お答えいたします。今の御質問の評価益税ということは一応御尤もでございまして、今考えているのでございますが、そのときどきにとつてしまつたために、今度それをなくなすということが、権衡上どうであるか、私は迷つている次第でございます。
  159. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 第一、第二のときはおとりになりましたが、第三次の場合はどうなさるかということです。ちよつと均衡の問題はどうですか。
  160. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) とると、前の人がとられたので、やはりそれは前の人が気の毒だつたということは確かにあると思いますが、今後の問題は必しも原則なんということはあり得ないだろうと思いますが、よく検討しまして、そうして善処いたします。
  161. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 世間でよく噂しているので、私は尋ねておきたいのですが、今度の第三次評価は、評価益税をおとりにならんという御方針のようだということを言つておるから、ですから確めているのであります。そういう噂を流布するのは、この前の評価の場合には評価益税をおとりになつたために評価を渋つたのがある。今度は大蔵大臣のお考えのように株数を殖やすことが目的なんだから、今度は評価益税をとらないで第三次評価をなされるという噂があるわけなんであります。
  162. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 私はそれはとらないようにしようということを人に言つたこともございませんし、私まだ考えてもいないのであります。実際まだきまつておりませんから、その辺で御勘弁を願いたいと思います。
  163. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それから昨日総理大臣にお尋ねいたしました件でありますが、補正予算案についての附帯決議を履行される場合に、あれは賃金ベースの引上の問題が中心でありますが、要生活保護者に対しては何らかの措置をおとりになるかということを聞きましたときに、大蔵大臣と相談してこれは御返事するということであつたので、その御返事を承わりたいと思うわけなんであります。実はこれは、特にこの問題を取上げますのは、補正予算に関して政府措置に納得できない点があるからであります。それは消費者米価を一割引上げた、これは事実でありますが、消費者米価を一割引上げた。併しこの一割米価引上げの負担は国民にかからない。なぜならば一方において減税をやるから、減税によつてこれは吸収してしまう、できるのだ、だから消費者米価を上げても国民には迷惑をかけておらないという説明があるわけなんです。ところが税金を納めない人は勿論のことでありますが、特に要生活保護者という人たちは、五人家族が恐らく八千円見当じやないかと思いますが、それくらいの生活保護費をもらつてやつと生きておる人たち、この人たちにとりまして消費者米価一割引上げということは、相当大きな影響を持つと思う。特にこういう人たちのいわゆるエンゲル係数は高いのでありますから、米価の一割引上げということは非常にこたえる。そういう人たちに対して何らかの措置をとるかということを一週間ばかり前に大蔵委員会で政府委員に聞きましたところ、財政上の措置をとるということを答弁いたしました。併し私は補正予算書を見ておりましても、そういう財政上の措置をとつて生活保護費の増額をするというような手はないじやないか、そういう方法は講じられ得ないじやないかという疑問を持つておりまして、その点を質しましたところ、答弁は政府の方であとに留保しております。そこでこの間総理大臣に聞いたわけなんですが、何かお考えになつておいでになりますか、どうですか。
  164. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) その点につきましては、政府委員から御返事を申上げます。
  165. 河野一之

    政府委員(河野一之君) お答え申上げます。消費者米価の引上げに伴いまして、生活保護費の単価を引上げなければならんと思つております。そういつたことについて厚生省といろいろ相談いたしておりますが、その関係の経費を補正予算に計上いたしませんでしたのは、最近の生活保護の実情から、既定予算で大体賄える、これは最近の実績では毎月の要保護人員が減つて来ておりますので、特に増額をする必要はないと、こう考えたからであります。
  166. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 既定予算が多少余るから、米価引上げによる影響に応じて保護費を増額する、幾ら増額しますか。
  167. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 現在六大都市で五人世帯に七千二百円だつたと思うのでありますが、これはたしか七月からそういたしたかと思いますが、そのときにほかのほうの光熱、電気、水道というようなものもやはり入れて改訂したのであります。今度の米価引上げで多少引上げをいたさなければならんかと思つております。具体的にいろいろ細かい係数の問題でありまするので、目下厚生省と相談をいたしておる段階であります。それから予算のことを申上げましたのは、現在の生活保護費の予算相当余ると申しますか、要保護人員が減つておりますので、その引上げを見込みましても、たしか引上げて一億円だつたと思いますが、その既定の予算を減額することなしにその範囲で賄えるという見込が立ちましたので、特に増額いたさなかつた次第であります。
  168. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 生活保護費が余り、要保護者が減つて行くというのは、私には理解できない。つまり一般的に見まして、労働雇用量というものはだんだん減つて行きつつある。失業者も殖えて行きつつある。そういうときに要保護者が減るということは、どうも常識的に考えてわからない。これらは地方財政の問題と関連しているのじやないですか。窓口業務を扱つておる地方当局が、財政上の窮迫のために要保護者に支給しないというような事情があるのじやないですか。
  169. 河野一之

    政府委員(河野一之君) これは毎年予算を組みますときに、最近の状況を見まして、まあ電熱対比等の増加率を見まして積算するわけでありますが、最近の状況は、減るというのは、どうも多少言い過ぎでありますが、当初見込みましたほどに保護人員が殖えておりませんので、当初の積算の基礎になつた人員からしまして、たとえ単価が多少上つてもやつて行ける、こういう考え方であります。
  170. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 私は地方財政との関連の問題が根抵にあるということを信ずるのですが、そういう点は又あとで質問します。できるだけ早く厚生省と打合して、生活保護費単価をどれだけ上げるかということの報告をこの委員会でして頂きたいと思います。  それから次に今も問題になりましたが、価格補給金の問題について政府の方針を一つ聞いておきたいと思いますのは、先ほど農林政務次官は、農林省の方針としては、農業の保護政策の線に立つて強く政策を進めて行くのだということを述べておりました。貿易の面におきまして保護政策をとる……。政府が一貫して保護政策の方針であれば、貿易の面においても保護政策をとるというために、従来から問題になつておる価格補給金というものがここで一応考えられるのが当然じやないかと私は思つておりますが、農林省と通産省とが方針が違う。通産省は自由競争で行く、こちらは保護政策で行くというような二重の相反する政策、方針を持つておいでになると私は思う。で、価格補給金の問題についての基本方針、額をどうするかということじやございません。恐らくこれを復活するという方針の下に御研究中であろうと思いますが、如何でございましようか。
  171. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えします。この価格補給金の問題は、影響するところがなかなか大きいし、又財政措置等の問題もありますので、成るべく産業自体がこれを解決するように持つて参りたいというので、或いは租税の面或いは金融の面或は合理化の面或いは近代化の面、その他各種のことを推進いたして参つておることは過日来申上げました通りでありますが、併し若しどうしても或る程度の補給をしなければ西独その他の輸出と相対立することができないというような場合につきましては、これは特別な考慮を払わなければならんであろうと思います。けれども私どもがここに補給政策をとるとか、とらんとか、こういうことでなくして、そのときの実情に即して日本の貿易の進展を阻害しないように持つて参ることが必要であろうと考えておる次第でございます。
  172. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうも小笠原さんの答弁を聞いておると、外交方針と同じなんで、ケース・バイ・ケース、場当り政策なんです。それでは私は日本の産業発展ということはできないと思うのです。やはり政府一つの基本的な方針というものを、各産業部面について統一的な方針を示して行かれないと、実際仕事をしておる人たちはついて行けないじやないか。どんな政策が出て来るかわからない。その場きりのやり方をするぞと言われたのでは、これは大変なことですよ、まあ恐らく大蔵当局との間の話合いがつかないので、補給金の問題についてはまだはつきりしたことが、方針がお立ちにならんと思いますが、大蔵大臣は大体補給金反対の側のようですが、如何ですか。
  173. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 御質問通りでございます。
  174. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今聞えなかつたのですが、もう少し大きい声で……。
  175. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) あなたのおつしやいます通り補給金のほうには私は余り賛成ができない。
  176. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 実は通産省側と大蔵省側とそういうふうに意見の対立がある。通産省側が補給金の問題に関して言葉を渋つて、ケース・バイ・ケースで行くというようなことを言わざるを得ない。向井さんのほうは方針がはつきりきまつておる。補給金は反対だという方針にきまつておるのだが、通産省側は反対だという方針がきまらないから、ケース・バイ・ケースというようなことで言葉を濁してしまう。そういうことでなく、政府全体としての行き方に遺憾な点があると思います。私はこの際、大蔵大臣と通産大臣との間でよくもう一遍考え直して頂いて、統一的な方針をこの問題について打出して頂いきたいということを要望いたしておきます。  それから大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、先ほども問題になりました貯蓄公債の問題であります。これもお出しにならん、貯蓄公債は出さない方針だと言われますが、世間でもやはりこの点につきましていろいろの揣慣臆測が出る。その端摩臆測が出るのには根拠があると私は思うのであると私は思うのです。それは来年度予算の編成に当りまして、恐らく国費の支出は相当大きくなる。賠償の問題もあれば、外貨債返済の問題もある。防衛力漸増の問題も出て来ましようし、いろいろ支出面が非常に大きくなる。而も一方においては大蔵大臣考えておられるように、一般会計予算を一兆億円以内にとどめたいという御希望がある。その一兆以内では今申上げたようないろいろな国費は賄い得ないとすると、結局一般会計の中から財政投資面を分離しなければならない。財政投資に当てる資金は租税収入その他のものでなくて、やはり貯蓄公債といつたような、或いは免税公債という言葉も出ておるようですが、そういうもので賄つて財政投資面だけを特別会計に移すということで、一般会計のほうを一兆億円以内にとどめるというよりほかに手はないのじやないか。誰が考えてもそうじやないか。従つて貯蓄公債を出すだろうという臆測、推測が出て来るのは当然なんです。そこで私はこの間からも当委員会において問題になつておりましたが、来年度の大体の骨格予算をお示し下されば、そうすれば貯蓄公債を出さないという大蔵大臣の主張を世間が成るほどと受取ると思うのです。これを隠しておいでになると、いつまでも貯蓄公債を出すだろうという流説が出るのです。そうしてインフレーシヨンだ、だから株を買え、こういつたようなことになつて来る。私はこの問題に関連して来年度の骨格予算について一応御説明を、今日でなくてもいいですが、大体御説明になつて、あなたの主張しておられる貯蓄公債を出さなくてもこの通りつて行けるということを国民に納得させて頂きたいと思うのでありますが、如何でございますか。
  177. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 御尤もでございますので、せいぜい早く来年度予算を編み上げまして、御報告いたすつもりであります。
  178. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうも御尤もと言われると実は困るのですが、できるだけ早く一つ出して頂きたいと思います。  通産大臣にお伺いしますが、旧軍工廠の払下げの問題、これは尤も池田通産大臣の頃から方針が大分変つたようであります。高橋通産大臣の頃には払下げの方針をとつておられたと思いますが、これをやめてしまつて、そうして昔の軍工廠というものは、これは国有民営の形で運営して行くのだ、活用して行くのだということが、方針としてきまつたように伺いますが、それは確かなんですか。
  179. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 軍工廠の問題は実は影響をするところも相当ございまするし、且つ私が就任後日が浅いので、全然只今のところは白紙の状態に置いております。特に四日市の燃料廠は差当りそう急ぐ何らの事情もございませんので、もう少しよく事情を見極めた上でこの問題を処理しても少しも遅くない、かように考えておるのであります。なお火薬廠等の問題につきましては、例えば他に両然共願がないというような分で、これをやつて差支えないものは、割合に早くこれを実行してもよいと思つておるのでありますが、利害関係者が錯綜しておるような分につきましては、これを公正に取扱う必要もありまするし、又日本の現在の自衛力漸増、そういうような面等も又勘案しなければなりませんので、それらとよく睨み合せた上で公平な処置をとりたい、かように考えておる次第でまありす。
  180. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 つい二、三年前まではいわゆる国有財産の払下げということを非常に政府は急いだのであります。払下げのために、払下げを受ける人に相当大きな便宜を与えるような法律も二、三作つたように記憶いたしております。払下げを急いだ。これが突如として払下げを急がないということに、大きな転換が起つたわけであります。そこで今通産大臣説明を聞きますと、共願があるようなものは、利害関係が錯綜しておつて、どちらにも払下げるわけに行かんから払下げないという理由で払下げないものもあるようですが、もう一つ、防衛力漸増の問題にからまつて払下げないという意味もあるように承わつたのですが、共願があるから払下げないということは少しおかしいのじやないか、払下げをやめるということはおかしいのじやないか。やはり国家的な見地から見て、共願者のうち誰に払下げるのが一番妥当かということは政府が判断すべきであつて、その判断ができないというのはおかしい。だから私から言えば、払下げをやめるというのは、共願があるからというのじやなくて、防衛力漸増の問題に関連して、払下げるのは妥当でないという意味で払下げをおやめになるということじやないかと思いますが、如何でしようか。
  181. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) これはちよつと申上げた意味が悪かつたかも知れません。いわゆる特需等に対する問題も相当考慮しなければなりません。又これを最も差当りは強く考慮しなければなりません。それから今申上げたように、もう判断してもよいじやないかと言われまするが、これは私は率直に申しますると、就任後日が浅いので、までこの工場についてどれがどうこうというような判断を下すところまで参つておりません。これを下す時期が参りますれば、私はこれを公正に取扱うつもりでありまして、そのときが来ますれば、これを必ず断行いたします。
  182. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうしますと、軍工廠の払下げをやるという方針を依然として堅持しておられると理解してよろしいのですか。
  183. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) この問題は払下げをするか、それとも国有民営で行くか、或いは又国のものを出して、そうしてよその出資を入れたような形で行くか、こういう問題がいろいろ残されておると思います。従いましてそれらの問題も併せて考える必要があろうと思われるので、今お尋ねがそうであつたから、払下げ云々うということで答えたのであります。根本問題そのものについても私はまだ検討中でございます。
  184. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そのことを特に私がやかましくお聞きしておるのは、従来終戦以来の歴代の内閣、特に吉田内閣になりましてから、急いで払下げを早くやろう、払下げを早くやろううとい趣旨で法律案をたくさん出され、国会がこれを承認した。急いで払下げをしようという方針が転換したかどうかということをお伺いしておるわけであります。
  185. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 根本問題につきましては、只今申上げた通りで、今まできまつたものが、今まで考えられたことが全部白紙に戻されておることは、政府の声明通りであります。従いまして私が今後私の責任でどう処理して参るかということにつきましては、いろいろなことを考えなければなりません。その考えるまだ時間がございませんので、その時間を得たときには、これは払下げるべきものであると思いますれば払下げます。今申上げた通り、これは政府が実物出資をして、他に株主を得て、一種の半官半民のような形で行くのが妥当でありますれば、そのような形をとります。或いは又いろいろな、これらに対するやり方もそのほかにたくさんあるかと思いますが、例えば全然、いわゆる国有民営の形で行くか、半民営の形で行くか、それとも全部払下げてしまうか、いろいろな形があります。これらいろいろの形を併せ考えて、何が一番日本実情に適当かという結論を得ますれば、私の責任においてこれを処理いたしたいと考えております。
  186. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それでは従来、吉田内閣が払下げを急いで来たという方針は、これはもう御破算になつた。そうして今後払下げをやるかやらないかということは、今後政府のほうで方針を決定する。こう承わつておいてよいわけですか。
  187. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) さようでございます。
  188. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それではもう一つだけ……。昨日通産大臣が当委員会で、来年の下半期には貿易は相当漸増するであろう、増加するであろうというようなことを言つておられましたが、これはどういう根拠に基いておりましようか。
  189. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 日本の貿易が現在沈滞期にあることは御承知の通りでございますが、政府といたしましても、全力を挙げて貿易の振興に努めている次第でありまして、アメリカにおきましても、来年一月の政権交替後には世界の通商貿易量の拡大に努めて行くという考えになつていることは、これはお聞き及びの通りで、その点が期待されまするし、又英連邦諸国との関係におきましても、ポンドの実勢がだんだん強まるに伴いまして、輸入制限措置の緩和なども期待できんではございませんようにも思われます。又日米通商航海条約或いは日米支払協定その他各国との通商協定もだんだんと進んで参つておりまするので、貿易の不振もまあ現在及び来年二、三月頃までが殆んど底ではないかと私ども考えている次第でありまして、これらのいろいろな点から見まして、明年下期あたりにはこれらの我々が現在尽しつつある国際情勢の変化と、我々が貿易についてとりつつある諸般の政策がだんだんと効果を現わして来て、貿易量の拡大の方向に向い得るのではないか、かような意味で、来年下期からは幾らかよくなるであろうという意味を申上げた次第であります。
  190. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 まだありますけれども、今日は少し遅くなりましたから、ここでちよつと中断いたします。
  191. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 本日はこれにて散会いたします。明日は十時から……。    午後五時四分散会