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1952-12-08 第15回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公 聴 会 昭和二十七年十二月八日(月曜日)    午前十時三十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩沢 忠恭君    理事            左藤 義詮君            高橋進太郎君            森 八三一君            内村 清次君            山下 義信君            駒井 藤平君    委員            石原幹市郎君            川村 松助君            楠瀬 常猪君            郡  祐一君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            平林 太一君            小野  哲君            加藤 正人君            片柳 眞吉君            新谷寅三郎君            田村 文吉君            溝口 三郎君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            三輪 貞治君            松永 義雄君            山田 節男君            鈴木 強平君            西田 隆男君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            千田  正君   委員外議員            高田なほ子君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   公述人    茨城県知事   友末 洋治君    一ツ橋大学教授 井藤 半彌君    日本官公庁労働    組合協議会議長 岡  三郎君    日本綿糸布輸出    組合連合会理事    長       鈴木 重光君    毎日新聞社論説    委員      平岡 敏男君    日本中小企業    団体連盟会長  豊田 雅孝君   —————————————   本日の会議に付した事件○昭和二十七年度一般会計予算補正  (第一号)(内閣送付)○昭和二十七年度特別会計予算補正  (特第一号)(内閣送付)○昭和二十七年度政府関係機関予算補  正(機第一号)(内閣送付)   —————————————
  2. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今から予算委員会を開会いたします。  本日は公聴会であります。公聴会に御出席下さいました公述人のかたがたにおかれましては、御多用中にかかわらず、わざわざ御出席下すつたことを厚くお礼を申上げます。公述人公述時間は約二十分であります。これに対する質疑は約十分間の予定でありますから、さよう御了承を願います。では、これから公聴会を始めます。順次御陳述をお願いいたします。先ず茨城県知事友末洋治君。
  3. 友末洋治

    公述人友末洋治君) 今回国会に提案相成つておりまする補正予算案のうち、地方財政に関しまするものにつき、府県側所見を申述べ御参考に供したいと存じます。  本年度におきまする府県財政につきましては、政府が当初予算において決定されました地方財政計画に甚だしい不合理がありますばかりでなく、その後におきまする新法令の施行、国の新たなる施策実施等が相当多数に上つております関係から、大巾な赤字が予想されましたので、全国知事会におきましては、各府県別に厳密な調査行つて参つたのでございます。  その結果約六百億円の赤字が推計せられ、これを地方財政平衡交付金及び起債を増額されますることによつて補填して頂きまするよう、政府に対しましてしばしば強い要望を続けますると共に、特に地方実情政府の不合理見解とを具体的に指摘いたしまして、飽くまでも適正な措置が講ぜられまするよう懸命な努力をいたしておるところでございます。  然るにもかかわらず、今回政府決定せられました地方財政補正案におきましては、市町村分を含めまして僅かに三百二十億円の財源措置がなされたに過ぎません。府県分はこれを二百五十三億円に圧縮されているのであります。この少額を以ていたしましては、到底予定公共事業実施も、給与ベース改訂も、又国の新たな施策実施等財源不足によつて不可能に陥ることは明らかでございます。これをこのままに放置するにおきましては、政府義務不履行ということによつて地方財政は破壊される虞れがありますので、私ども府県財政の実相と合理的な見解とに基いて、政府が今後速かに今回の補正案を修正せられ、以て地方行政運営に支障なからしめられるよう引続き努力を払つているところでございます。  次に地方財政補正に関連し、政府と私どもとがその所見を異にいたしまする要点を申上げたいと存じます。  先づ第一は、府県税収入見積に関しまして甚だしい見解相違があることでございます。即ち政府府県税自然減収を一月から実施されまする入場税及び遊興飲食税の税率の半減を除きまして、僅かに八億円程度に見積られているのでございますが、私どもは次の理由によりまして相当大幅な自然減収目下のところ推計といたしましては百七十億円程度自然減収が生ずるものと考えているのでございます。  即ち政府が当初計画決定せられておりまするその計画に基きまする府県税収総額は千三百五億円でございます。これは昨年度決算千二百四億円の実績からみまして、甚だしくその見積りが初めから過大であつたと考えておるのでございます。これにつきましては今年度当初から知事会議においてしばしば論議が繰返されてておるところでございます。更に経済界の不況は御承知通り通産省の発表によりましても、全産業の利益が二割六分前期に比して少くなつておるという明瞭な統計も出ておる状況でございます。昨年度決算に比しまして……。従いまして入場税遊興飲食税は相当各府県とも下廻つて来るというふうな実情に相成つておるのでございまするが、これに対して今回の補正案におきましては、入場税におきまして昨年度決算からみますると二割二分の増収になる。或いは遊興飲食税におきましては五割八分、六割近くの大幅な増収ができるはずだという計算をいたされておるのでございます。かようなことは諸般の情勢から考えまして実際増収は不可能であるというふうに考えざるを得ない状況でございます。  次に個人事業税及び特別所得税におきまする基礎控除制度採用等、これらはすべて税法の改正実施済みに相成つておるのでございまするが、これに基きまする減収だけ取上げて考えましても十億円を超えることが明らかになつておるのでございます。更に繊維工業製紙パルプ工業、窯業、海運業等事業不振に伴つて法人事業税におきまして相当の減収が見込れざるを得ないのでございます。かかる悪条件が山積いたしておりまするのにもかかわらず、府県税自然減収というものを故意に過小見積りされました政府不当措置は、今後の事実が明らかにこれを立証することと考えておる次第でございます。  第二に、税外収入につきましても約三十四億円、市町村を含めますると約五十億円、これの増収を見込まれておるのでございますが、而もこれらは使用料及び手数料において当初計画よりも約三割方増収することを期待されているのでございます。然るに法の規定によつて徴収できますところの使用料手数料等につきましては、ことごとくその最高額が明示されておりまするがため、その改正が行われない限りこれが増収を見込むことは不可能であり、又高等学校授業料のごときは国立大学授業料と従来比較してきめられておるのでございます。そこで恐らく国立大学授業料国家予算におきましてはその引上げ計画されておらないだろうと思いまするが、かような状況でございまするので、現在額以上にこれらを引上げますることは、実際不合理と考えておるのでございます。その他の使用料手数料等はその額も極めて少く、たとえ今後府県条例改正を行なつて単価引上げましても、すでに年度半ばを過ぎた今日幾ばくの増収も期待できないと考えておるのでございます。で、かかる実情より考えて、今回政府の見込まれておりまする使用料手数料等税外収入増収三十四億円は何を根拠とされましたか、甚だ了解に苦しんでおるところでございます。  なお御承知通り終戦経済統制から経済状況は自由の段階に入つて参りまして、各種の検査手数料等はなくなつてつておるのでございまして、これらの税外収入使用料手数料等は漸次地方におきましては縮小されるというのが自然の傾向に相成つておるのは明瞭なるところの事実でございます。  以上のごとく府県財政歳入の面におきまして実情を無視した極端な水膨れを押付けられますることは、毎年毎年に繰返されまする政府常套手段でございまして、常に地方財政をして不安と混乱とに陥れておりまするところの根本原因一つでございます。  第三は、これが最も従来からの大きな問題でございまするが、府県公務員給与費につきまして、根本的な見解相違があることでございます。昨年度におきましてもやはり補正予算の問題がやかましい問題に相成つたのでございまするが、この予算案編成の際、政府は突如として府県公務員給与国家公務員に比較いたしまして、一般職員におきまして四百六十二円、教職員におきまして三百七十五円、これだけ高いということを示されたのでございまするが、その当時これが如何に調査されましたかその方法等も明確を欠くばかりでなく、国家公務員実態給与につきましては、未だ調査が行われておりませんために、この大きな問題は今後両者実態給与共同組織によつて厳密に調査し、相互にこれを確認する必要があるということを強く要請し続けておるのでございまするが、その切実な要請政府の容れられまするところとならず、相互調査未了のまま今日まで未解決重要案件となつておるのでございます。  然るにもかかわらず、政府決定の本年度当初の地方財政計画におきましては、給与費におきまして前申上げました四百六十二円、三百七十五円、これをそれぞれ引下げられまして措置されておるのでございまするが、これは明らかに政府の一方的な不当措置と考えざるを得ないところでございます。従つて今回の補正におきましては、これを正当に先ず引戻し、それがために要しまするところの六十七億円を追加補正されるべきものであつたのでございまするが、政府におきましては、その後府県職員給与につきまして改めて再調査を行なつた結果、一般職員におきましては三百四十八円、教職員におきましては三百四十九円、かように高いことにおきめになりまして、前の決定を変更され、これを以て当初計画との差額でありまするところの九億円を措置され、而うして飽くまでもこの不合理引下げを強行されようとしておるのでございます。  更に今回行わんといたしまするところの二割増のベース改訂についても、この不当な引下げ基準とされまして財源措置が取られておるのでございます。未だ国家公務員実態給与が明示されず、且つ又地方公務員給与というものが国家公務員に準ずるという現行制度の建前上、今回の二割増のベース改訂地方公務員に限りましてこれを引下げて行うことを政府が期待されますることは、実行不可能なことを地方に期待されるのでございまして、かかる不合理財源措置は、府県職員公務員約九十万人をして到底納得せしめることができないところでございます。よつて今回のベース改訂は、従来通り現実基礎として国家公務員に準じてこれを実施せざるを得ない性質のものと考えておるのでございます。さようにいたしまするというと、最近国家公務員号俸案というものが発表されましたが、これを基礎として府県職員の切替えを考えて見まするというと約八十六億円、更にこれ以上に不足する市町村を含めまするというと百六十二億円程度に相成るかと思うのでございます。更に教員につきましていろいろと計算をして見まするというと、二割ではないのでございまして、二割四分或いは二割五分程度にこの切替えの結果は財源を要することに相成るだろう、かように考えておるのでございます。そういたしまするというと、更に教員だけについて四%の財源不足を結果において生ずるということになろうかと考えます。更に人事院勧告基礎にして考えまするというと、その上府県職員におきましては約七十億を要し、市町村を含めまするというと百億円以上の財源措置をこの上必要とする状況でございます。私どもは、政府がこの重要問題解決ために虚心坦懐、国家公務員給与実態を速かに調査されまして、これを公表されることを強く要望しておりますると共に、不当切下げ分は何は措いても先ずこれを実施して頂き、そうがために要しまするところの未措置分として五十八億円は追加補正されますることが当然のことと考えておる次第でございます。なお補正案決定後におきまして、政府に対して人事院から勧告いたされました地方公務員勤務地手当に関しまするところの格上げ及び新規地域指定に基きまするところの給与費増額が、今回の補正案に包含されておりまするかどうか甚だ不明確でございます。私ども給与費に当てられておりまするところの費用及び人事院勧告が、政府決定せられました補正案後におきまして勧告がなされておりまするところの時期的関係から考慮いたしまして、これには、この補正案には、新らしい勤務地手当に要しまするところの財源は包含されておらないというふうに考えまするので、これ又今後追加補正さるべき性質のものと存じます。  第四に、昨年度府県財政補正後におきまして赤字が出たのでございまするが、これは年度末に繋ぎ融資四十億円、市町村を含めますると八十億円、これを以て一応の跡始末をして頂いたのでございまするが、それの対象となりました財政需要というものは、当然今回の補正案に織込まれなければならない性質のものでございまして、これをすべて削除し、何ら考慮されておりませんことは、不当の措置と考えざるを得ない次第でございます。  第五に、今回のベース改訂に関連いたしまして、今後地方財政におきましてその混乱を未然に防止いたしまする上から急速に措置を要すべき問題は、義務教育職員給与費を如何に取扱つて参るかということでございます。現行制度によりますれば、義務教育職員給与に対しまするところの権限は、市町村教育委員会に属しております。府県はその費用負担の責に任ずることになつておるのでございます。で行政財政とがその主体を異にいたしますることは曽つてない奇現象でございまして、これは義務教育実施の上から申しましても、又府県財政運営の上から申しましても、極めて憂慮すべき事態が発生する虞れがあるのでございます。この両者調整は、目下政府でお考えになつておりますることは、府県条例或いは行政措置によつて何とかしてもらいたいという御注文でございまするが、これをその程度措置いたしますることは、両方の問題を適正にやつて参りまする上に万全を期することは到底できません。そこで速やかに財政混乱だけは一つ生じないというための、法的な臨時特例を設けられる必要があるものと考えているのでございます。  以上申上げましたごとく、今年度におきまするところの府県財政は、曽つて見ない大幅な赤字が推定せられまするのにもかかわらず、今回政府決定せられました地方財政補正案は、歳入の面におきまして一方的な過大な見積りをされております。又歳出の面におきましては、給与費に関しまするところの前段申上げました極めて不当な引下げ、又行政整理、これは御承知通り当初財政計画におきましては五%の行政整理予定せられまして、その五%を給与費から引いて計上されておつたのでございまするが、この行政整理地方に対して実行するのだという御指示はまた一度も参つておりません。そこで教職員につきましては、行政整理をやらないから五彩引下げたものはもとに返すという措置が講ぜられております。併し一般職員につきましては、相変らず五%の減は頬被りになつておりまして、そのままでございます。そういたしまするというと、一般職員約八千人というものは、今後財源措置の上におきましては、行政整理地方に強要されるのでございまするが、これ又不当な強要と考えざるを得ません。更に旅費物件費等の極端な節約市町村を含めまするというと約六十億円という大きな額を節約しろというふうに要請をせられているのでございます。この中で一番大きな額を占めまするのは、教員の一人当り旅費四千円の問題でございます。文部省といたしましては一人当り五千円をしばしば要請せられているのでございまするが、地方といたしましては大体一人当り四千円程度を、一カ年の旅費として計上いたしているのでございまするが、年度半ばを過ぎました今日、僅かな教員の四千人の一カ年の旅費を更に三%も四%も切り詰めるということは、到底でき得ることではございません。従いまして、これら歳出の面におきましていろいろと工夫されておりまするところの政府計画は、地方にとりましては極めて不合理なものばかりでございまして、実行性の乏しい不健全な要素を含んでいると考えざるを得ないのでございます。かかる事態は年年歳々繰返されておりまするのでございまするが、その根本的な原因現行地方税財政制度欠陥があるのでございます。即ち現行府県財政は、地方税主体としまして遊興飲食税入場税でございます。これらは大都市中心の税でございまして、普遍税ではございません。地方にとりまして不均衡の甚だしい税ばかりでございます。その総額地方府県財政需要のわずか二六%程度しかこの税で賄い得ない状況でございます。この財源不足と、それから不均衡調整をいたしまするがために、シヤウプ勧告によりますところの地方財政平衡交付金制度が設けられたのでございまして、府県税以上の平衡交付金をまするが、これが又相当大きな額にな以てせざるを得ないというふうな状況でございます。而もこの平衡交付金はなかな算定がむずかしいのでございまして、年々歳々増額がむずかしい関係から地方財政が非常に困難に相成つているのでございます。かような府県歳入歳出、これを現行制度で中央が一手におきめになるという制度そのものに根本的な欠陥がありますほか、一方国の委任事務事業というのは年々歳々増大増大を重ねますばかりでございます。而もこの実施に必要といたしますところの財源は切り詰められまして、到底適正な費用措置されません。さような結果に基きまして、常に地方財政というものは不安定な状況におかれているのでございます。又地方自治の確立の上から考えましても、現行地方税政制度を抜本的に解決されなければこの事態の解消はできない、かように考えているところでございます。国会におかれましては、当面におきますところのこの苦しい地方財政危機打開につきましては、もとよりその由つて来りますところの原因につきましても、しかと御賢察を頂きまして、これが応急の措置並びに根本的な解決に関しまして格段の御高配を賜わりますよう切にお願いを申上げまして、意見の開陳を終る次第でございます。
  4. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 公述人に対する質疑ありませんか。
  5. 山田節男

    山田節男君 これは大体今茨城県知事の言われたことは、知事会議等で問題になつておる結論がそういうふうに言われたと思うのでありますが、これは我々今後補正予算審議の過程において政府責任者を呼んでいろいろ今述べられた点を質したいと思つておりますが、その最近の知事会議結論と申しますか、こういつたような今日の地方税或いは財政制度の根本的な欠陥に対して政府当局にいろいろと申込をされておると思いますが、極く最近にこの地方財政の非常な逼迫、困難な状況について申出されて政府当局はどういつたようなことを知事さんのほうに申しておりますか、どういう言明をしておりますか、極く簡単でよろしいですからお聞きしたいと思います。
  6. 友末洋治

    公述人友末洋治君) しばしば政府に申入をいたしておりますが、政府とされましては今回の補正案決定いたしました基準に今後著しい変更をせざるを得ないという事実がはつきりすれば考慮せざるを得ないだろうという程度の、極めて微温的な又はつきりしない回答でございます。そこで各府県といたしましては、一番問題は給与の問題でございますが、年年を控えましてペース・アップ決定いたさなければならん、又年末賞与というものも出さなければならん、その財源の見通がつきませんので予算編成をしかねて四苦八苦をいたしておるのであります。そこでこの十一日に全国知事会議を開きまして、そうして政府が一応決定されましたベースアップ基準として、又これに対しまするところの財源措置基礎といたしまして、具体的に各地方地方にどれだけの赤字を生ずるかということを持寄つて、更に政府にも又国会にもいろいろ御配慮を願いたいということで進んでおる状況でございます。
  7. 山田節男

    山田節男君 もう一点伺いますが、過日北陸の三県ばかりの県の財政状態を見たわけでございますが、今おつしやつたように各県とも非常に赤字になつておる。どうしても収支を合わすと、出て来る赤字を少くせんがため公共事業費として県が割前として出さなければならないものを繰越す、こういうような形式でやつておられるのが共通のように私は見ておりましたが、これは結局将来への支払を、財政上のバランスを作るために将来に送ると、これは止むを得ない措置だと思いますが、こういう措置がこれは私は政府当局から聞いてもわかると思いますが、それによつていわゆるごまかすと言つてはなんですが、窮余の措置として、成るべく赤字を少くせんがために取つた今回の各県の補正予算ですね、今回の全部の予算と申しますか、来年の三月三十一日までに運用される予算において、そういう無理をしてバランスを取りつつもなお出て来る各県の赤字というものは、全国総額ですね、これは、今あなたにお分りになりませんか。知事会議等で報告されたことはありませんか。
  8. 友末洋治

    公述人友末洋治君) 知事会といたしましては目下のところ最終的な措置をいたしまする段階でないのでございます。政府の採られましたところの案そのものに、不合理と不当がございまするので、あくまでもそれを一つ是正して頂く、更に地方節約しなければならん問題は、従来からも懸命に努力払つて節約をいたしておりまするので、そこで最終の年度末出ますところの赤字をどう措置しいたしまするかということは、今日の問題でないのでございます。今日の問題は、補正案におきますところの不当を一つ速かに何らかの方法で是正をして頂く、その見通しがつきましてから更に府県におきますところの予算編成予算調整という段階に相成つて来るかと考えております。
  9. 内村清次

    内村清次君 公述人のほうでは、現在の赤字が約六百億であると、こういうような公述をおつしやつた。併し昨年でございましたか、昨年は約五百五十億というようなことも聞いております。問題は赤字に対する政府が査定いたしております、又予算として出しておりますが、今回は二百億出しておるようですが、そういうような政府決定によつて、この赤字というものはこれは府県主張からいたしますると、これはもう事実解消しません。私たちが調査に各県に参りまして、府県歳入及び歳出状態を検討いたしてみましても、府県側主張自体は現地においても確かに赤字があるように認めます。ところが問題は国会においてもこれは例年のことであるし、衆参にも地方制度地方財政その他を取扱つておりまするところの常任委員会があつて、ここでも検討しておる。ところがやはり年度末になると、或いは又予算の当初の編成時期になりますと、府県側からこういうような大きな平衡交付金に対するところの増額の要求というものは毎年やはりある。何かこれは根本的な欠陥があると思う。これは地方財政委員会答申関係、それから又大蔵省それから自治庁あたりの三者の意見を総合いたしましても、やはりこれもそこに意見の相違というものがある。ここで直接あなたがた地方行政を担当しておられるかたがたが、とにかく決定したところのこの予算に対しては、やはり一年間はこれで何とかやつていらつしやる。そういたしますると、先ず直ちに私たちが考えまして、税制の改革をせなくてはならないということの結論も、これはやはり根本的な問題としては考えまするが、その前にこの平衡交付金制度というものが、これはやはり是認するお考えであるかどうか。同時に又起債の許可ということも、やはり中央政府においてこれはすべき問題であるかという二つの問題に対する御意見と、それから今一つは先ほども言われましたように、この飲食税のほうでは、実は六割近くの増を政府のほうでは考えておるのだと、こういうようなこともおつしやつておるし、入場税においてもやはり二割以上の増額があるべきだというようなことも考えておるのだ、こういうようなことが、こういう時期におきましていつも問題になつて来るのでございますが、そういうことは内部的な折衝の上について、もう少し明確に関係当局において了解し合うような方法がなされておらないかどうか、その点に対する御努力というものがどういうふうな関係になつておるか、その点につきまして、どうか公述を願いたいと思います。
  10. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 時間の関係上簡単に願います。
  11. 友末洋治

    公述人友末洋治君) 私どものほうもできるだけ厳密な調査をいたしまして、当局とできるだけこの数字が合えばいいというので努力はいたしておりますけれども、なかなかそこまでは参つておらないのが現実でございます。大体今日の地方財政というものは、年年当初におきまして政府が一方的にこの歳入歳出をきめまするところの地方財政計画決定されるのでございます。これが私どものほうとしては無理だ、県もそれぞれたくさんございまするし、情勢も違います。市町村を含めますると一万に近いものでございます。さようなたくさんの地方自治団体の重要問題でありまするところの財政計画を、政府が一方的に計画されるというところに無理が起つておる。そこで年度半ばになつてこの計画を変更せざるを得ない。何とかなつておるだろうというふうにお考えになるのでございまするが、地方といたしまして一番日々放つておけないことは給与費とそれから民生に関しまするところの費用でございます。又更に公共事業、単独事業も或る程度やらなければならんのでございまするが、かような状況を続けて参りまするというと、殆んど府県費用というものは、職員費等に大部分が参りまして、地方々々で必要といたしまするところの公共事業、単独事業は殆んどできないようなことになる虞れがあるように考えております。そこで先ほど根本的な御質問でありまする平衡交付金制度及び起債というものに対してどんな考えを持つておるかという御質問でございまするが、今後の地方税財政制度をどういたしまするかということは、極めて重要な問題でございまして、知事会といたしましても、その具体案を目下検討をいたしております。まだ最終的な結論が出ておりません。でき得ますれば、地方々々の税で以て五、六割以上の財政需要というものは賄えるというこの体系に持つて行きませんというと、自治体の性格から考えましてもどうかというふうに思つております。ただ如何なる税制を設けましても、各府県均衡のとれまするところの税制はなかなか困難でございます。従いまして、その均衡調整いたしまするところの財政調整制度というものは、或いは平衡交付金で参りまするか、或いは曽つてありましたところの配付税の思想で参りまするか、いろいろ問題はございましようが、府県間の不均衡アンバランス調整いたしまするということは、是非考えて参らなければならんと思います。なお年々臨時的に必要といたしまするところの各種事業に要しますところの起債、これも現在のごとくそうむずかしいことでなくして、もつと或る程度弾力性を持つた起債制度に変更されますることを実は期待いたしております。いずれ近く具体案がきまることと思つております。    〔内村清次君発言の許可を求む〕
  12. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) もう時間が大分過ぎておりますが……。
  13. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 一つだけ。今御説明を聞くところによると、府県税収入見積りが過大であるというお話ですが、国家のほうでは、政府のほうでは、国民所得が相当殖える。四兆八千億から五兆三千億に殖える。この殖えるのは勤労所得だけでなくて、業種所得、その中における農業のほうも相当殖えるというような考え方をとつておりますので、昨年度に比較して収入が殖えるとすれば入場税遊興飲食税もそれに応じて殖えると見ていいのじやないか。その場合に不況だから殖えないのだというお話ですが、それならば、この国民所得に対応した県民所得の二十七年度を、二十六年度との比較においてどういうふうに算定をしておられるのか。  それからもう一つは、遊興飲食税の点ですが、これは私たちが地方の中小都市その他を歩いての実感では、捕捉率が非常に悪いのじやないか、三分の一なり四分の一もとつておられないのじやないか、こういうところに対する努力をもう少しやられたらもつととれて然るべきはずであるにかかわらず、こういうところは非常にルーズになつておる、その点。更にこの法人事業税も相当減収であるとおつしやつておるけれども、国家は少くとも法人税この当初予算見積り通りにとれる。従つてそれは二十六年度より殖えるというふうに考えておるかと思うのですが、それならば、それに応じて地方法人事業税でもそんなに減収ということをお考えになる必要はないのじやないか。それらの点をどういうふうにお考えになるか。
  14. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 簡単に願います。
  15. 友末洋治

    公述人友末洋治君) 税の面におきましては、中央におきましてはこれだけ理論的に机上でとれるとおつしやるのでございますが、地方としては現実を基礎にして考えた場合におきまして、予定した政府のお考えになつておる程度にはとれないという見込なんでございます。併し税収問題は常に今後の事業が証明いたしまするので、現段階におきましては水掛論になるところもあるのでございます。ただ現在の府県税というものは、国民所得というものとの関連が極めて薄いのでございます。農業事業税、農業所得税というものを県ではとつておりません。なお源泉所得税等はべース・アツプがされまするというと、国家は自然増収が殖えるのでございますが、給与改訂によりまして府県では殖えるものは何一つないのでございます。さような税そのものにも弾力性がない。なお又遊興飲食税入場税等は東京、大阪等におきましては相当のものがとれるのでございますが、多くの農村県におきましては、現状と実績というものは下廻りつつあるというのが状況でございます。なお遊興飲食税につきましてはお説の通り把握が非常に困難でございます。できるだけ努力をいたしまして、課税対象を適正に把握いたしまして、その増収を図りたいというので、最高限度の努力をしながら、なおむずかしい点がありまするところを一つ御了承願いたいと思います。
  16. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 ちよつと簡単に一つ
  17. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) ちよつと申上げますが、ほかの井藤、岡両氏が十二時までに是非済ましたいというようなお話でございますが、この問題につきましては非常に重要ですから、多々御質疑があると思いますが、一つ次の公述人のほうに移りたいと思いますが。
  18. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 一分間でいいのです。これは非常に重大なことですから。
  19. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) あとにしたらどのですか。
  20. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 非常に重要なことですから。一つだけ。
  21. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) では簡単にして下さい。
  22. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 府県公務員給与費について、根本的な見解相違があることをお述べになつた。これは非常に重大なことだろうと思うのです。そこで結局政府が、府県公務員国家公務員との間に、具体的の数字は言いませんが、とにかく一般職、教職員について差があるということをば昨年から突如として発表して、それに基いての計算をいたしておるわけですね。それに対抗する数字が果して知事会議のほうで、そんなに違つていないのだ、これは調査方法がこういうふうであつて、杜撰だというように御指摘になるような知事会議の数字というものは、国家公務員とのそういう違いがないのだ、これだけの差がある、むしろこれだけ少いのだというような数字がありましたならば、今でなくても結構ですから、知事会議でそういう数字があれば、あとで参考のために示して頂きたいと思います。
  23. 友末洋治

    公述人友末洋治君) 私どものほうでは国家公務員実態給与調査が実はできません。そこで正確な資料は持つておりません。地方自治庁は府県におりまするところの国家公務員の一部、職業安定の仕事その他を取扱つております地方事務官等について御調査になりましたものは持つておられると思います。知事会としては持つておりません。
  24. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 次に一橋大学教授井藤半彌君。
  25. 井藤半彌

    公述人井藤半彌君) 一橋大学、商科大学教授井藤半彌でございます。御命令によりまして、昭和二十七年度補正予算につきまして意見を公述さして頂きます。  次の三つの点をあらかじめお断りしておきます。第一点は、補正予算だけを切り離して問題にすることは不適当と思いますので、今年の春国会を通過いたしました本予算と総合して検討さして頂きます。それが第一点。それから第二点は、今日私が申上げますことは、或る意味において大ざつぱなことでございますので、本年度予算を問題にいたしますと同時に、過去の年度のものと比較したいということであります。それが第二点。それから第三点は、予算というものは種々の角度から問題にできるのでありますが、私は経済を中心に見たいと思います。経済を中心にいたしまして予算の計数の分析をやりたいと思います。従つて私の申します結論が偏経済的、経済に偏しておるきらいがあるということは、公述人自身が大いに自覚しておるところであります。この三つであります。  先ず歳出歳入に分けて意見を述べますが、先ず歳出について申します。歳出について研究すべきことは、申すまでもなく歳出の数量が、即ち全額が妥当であるかどうかということ、それからもう一つは、内容がどうか、この二つの問題であります。先ず数量の問題でございますが、昭和二十七年度予算は、この春通過いたしましたのは御案内の通り八千五百二十七億、今年度補正予算が七百九十八億、合計いたしまして九千三百二十五億であります。これ以外に地方費が七千四百億余りございますが、これはやや問題が異つておるようであります。そこで九千三百二十五億円という一般計の数字が一体多いものかどうか、これにつきましていろいろ検討する方法がございますが、国の経済力を現わすものといたしまして、国民所得をとるということが一番普通のやり方でございます。そこでこの普通のやり方に従いまして、一般会計の計数を国民所得で割算いたしますと幾らになるかと申しますと、これは極めて簡単なもので、昭和二十七年度、即ち今年度は一七%でございます。それから去年は、二十六年度は同じく一七%でございます。それから二十五年度はやや多くて一八%であります。それから二十四年度は更に多くて二三%であります。昭和十年はどうであつたかと申しますと一六%であります。そこで昭和二十七年度一七%というものは、二十四年度からずつと傾向を見ますと、二十四年度は二三%、二十五年度は一八%、二十六年度は一七%、二十七年度は一七%とだんだん減つて来ておる傾向を示しております。ところが国家の予算は減つて来ておるのでありますが、御案内の通り地方財政が膨脹の傾向があるのでございます。そこで私は、国家財政地方財政とを通算した計算をやつて見ました。それは国家財政の一般会計と地方財政の一般会計とを合計いたしまして、その間の金銭の出入を差引いたものでございます。勿論これは私が初めてやつたもではなくて、これにつきましては今年の四月に大蔵省が出しております財政金融統計月報、あれの四月号に、大蔵省調査部の試算、試みの計算でありますが、試算が出ております。それに私が修正を加えまして、そうして国家及び地方における一般会計の統計を計算いたしました。そういたしますと、これはちよつとあやしい計算でございまするので、その点お許し願いたいのでありますが、昭和二十七年度は合計幾らになるかと申しますと、一兆三千七百億円になるのでございます。そこで一兆三千七百億円を今年の国民所得五兆三千億目で割算いたしますと幾らという答えが出るかというと、二六%という答えが出るのであります。同様に二十六年度は幾らかと申しますと二三%、二十五年度は二五%それから二十四年度は三〇%であります。  そこで一般会計と国民所得との割合、即ち中央政府の、国家の一般会計と国民所得との割合を見ますと、さき申上げましたように、二十四年度を最高といたしまして、漸減の傾向を示しております。ところが国家及び地方団体の統計を見ますと、二十七年度は二六%でありまして、二十六年度の二三%、二十五年度の二五%よりもむしろ比率が大きいという点に御注意を願いたいと思うのでございます。来年度は更にこの両方とも膨脹する見込みがありますので、この点は更に多くなるだろうと思うのでございます。そこで問題はこの数量が多いからいいとも悪いとも言えないのでございまして、結局その国家の金がいいことに使われているかどうか、経済という立場から見ていい方面に使われているかどうか。いい方面に使われていれば、むしろ殖えるほうがいいのであります。  そこで次の問題は歳出の内容であります。歳出の種類ございます。これから国の一般会計の歳出経済という立場から分析してみたいと思います。これは経済という立場から、而も学校教授が分析いたしましたので、極めて大まかなものでございます。で私のこれから申しますことにつきましては、大まかなことであるのみならず、大分こういう分類に伴う無理があるということは私自身大いに自覚しておるのでございますが、併し大まかでも何か分類でもしなければ見当がつきません。予算の数字をずつと見ただけでは、これは見当がつきませんので、経済という立場から日本のこの国家の歳出を次の五つの部類に分けたのであります。でこの分け方は私数年前からやつております。それによつて今度又新たな資料によつて計算し直したのであります。どういうふうに分けますかというと、先ず一番は終戦及び講和関係費、それから二番が移転的……住所移転なんかと申しますトランスフアー、移転的経費、それから三番は補助費及び扶助費、それから四番が経済助長費、五番が一般行政費、こういうふうにまあ分類してみたのであります。  ところでそのおのおのについて金額、内容の説明をいたしますと、終戦及び講和関係費でございますが、そこの内容は何かと申しますと、国防支出金であるとか、安全保障に関する諸経費であるとか、或いは平和回復善後処理費、こういうものを合計いたしまして、終戦及び講和関係費といたしました。又合計が勿論補正予算を含めてでございますが、昭和二十七年度は一千四百二十億円でございまして、全体の一五%を占めております。でこの経費は申すまでもなく、経済という立場から見ますと、国の、国民経済の再生産に貢献するところ絶無とは申しませんけれども、貢献するところの少い経費であるということは言うまでもないところであります。  それから二番が移転的経費であります。これは先ず内容を先に申上げますと、移転的経費に私が配属せしめましたものは国債費、それから年金、恩給費、それから地方財政費、それから租税払戻金、それから老齢旧軍人等の特別給与費、まあこういうものを私は移転的経費と名付けたのであります。この移転的経費は申すまでもなく購買力を国家から国家以外のものに移転するだけのものでありまして、積極的に行政施設をやる経費でないのであります。勿論地方財政費をこれに付加えますことにつきましては、いろいろ異論はございます。地方財政というものを国家の延長と解釈いたしますと、これを移転的経費に加えることは問題があるのでありますが、ここでは仮に中央政府の国庫を中心に見たのであります。そこでその移転的経費が合計幾らかと申しますと、二千百二億でございまして、全体の二三を占めておるのであります。でこれもどちらかと言いますと、極めて消極的な作用の経費というものであります。  それから今度は三番目の補助費及び扶助費であります。この内容は次のような経費をこの中に含めました。それは物価安定費、それから社会及び労働に関する経費、これを補助費及び扶助費と名付けます。その合計が八百五十四億円でありまして、全体の九%を占めておるのであります。この補助費及び扶助費、これは移転的経費に非常に似た性質のものであります。ですが、やや性質の違いますところは、国債費や年金、恩給なんかの移転的経費は、これはもらつた人が自由に使えるのでありますが、補助費及び扶助費は移転的経費の色彩は強いのでありますが、使い途が限定されておるという点が、移転的経費と違うのであります。これが八百五十四億でありまして、全体の九%でございます。  そこで以上申しました終戦及び講和関係費、移転的経費、補助費及び扶助費、これは私は決して無駄な経費とは申しません。或る意味においては必要な経費でありますが、経済という立場から見ますと、極めて作用がネガテイヴな、消極的な経費と思いますので、私はこれを名付けまして消極的経費と名付けたいのであります。この消極的経費が今申しました一、二、三、三つでありますが、これを合計いたしますと、四千三百七十六億円でございまして、全体の四七、一般会計総額の四七%を占めておるのであります。  それから今度は四番の経済助長費であります。経済を助長する経費、その中味は産業振興に関する経費、産業振興費、それから公共土木事業、その他の国土保全開発の経費、それから出資金及び投資金、こういうものは経済助長に直接使われるものでありまして、これを仮に経済助長費と名付けております。これが合計二千六百三十九億円でございまして、全体の二八%を占めておるのであります。  その次が五番の一般行政費、この一般行政費はそれ以外の経費を集計したものでございまして、これは国の積極的活動に関する経費であります。それが合計いたしますと二千三百十億円でございまして、全体の二五%になるのでございます。  そこで四番の経済助長費と五番の一般行政費、これは国の殊にまあ経済を中心に見ますと、積極的な行政活動に関する経費でございますので、これを積極的、ポジティブな、積極的経費と名付けたいと思うのであります。この積極的経費を合計いたしますと、四千九百四十九億でございまして全体の五三%になるのであります。  以上申しましたことをまあ簡単に申しますと、今年の経費のうち四七%が消極的経費で、積極的経費が五三%となるのであります。ところがお断りしておきたいのは、問題の例の保安庁、海上保安庁の経費、これを貴様はどちらに入れたかという問題でありますが、私はこの両者の経費六百三十五億、これは全体の約七%でありますが、これを一般行政費に仮に入れました。そこでこれを一般行政費に入れるのがいいのかどうか、これは大問題でありまして、一般行政費に入れるとなると、広い意味の国内治安維持に関する経費という建前です。ところが、これが防衛支出金、安全保障に関する諸費に準ずるものとなると、これは当然一番の終戦及び講和関係費に入れなければならないのであります。そこでこれを終戦及び講和関係費のほうに入れますと、そうすると。パーセンテージが狂つて参りまして、消極的経費が五四%、それに対して積極的経費が四六%となるのであります。即ち五四%対四六%になるのであります。そこでこれを過失の年度と比較いたしますと、昭和二十六年度以前と比較いたしますと、二十七年度は非常に消極的経費が多いのであります。実数を申しますと、これは消極的経費だけを申します、ということは残りが積極的経費になりますから、そこで消極的経費だけを見ますと、二十七年度の消極的経費が今言つたような計算で五四%、これは海上保安庁を消極的へ入れたからで、消極的経費が五四%、ところが二十六年度は消極的経費が僅かに四一%でありました。去年は四一%、昭和二十五年度は五八%、昭和二十四年度は五五%であります。昭和年度はどうだつたかと申しますと、昭和十年は消極経費が七二%でございました。これは申すまでもなく、当時軍事費が多くて、軍事費が四七%を占めておるという関係があるのであります。要するにこれから我々が観察できますことは、二十六年度が消極的経費だけを中心にして問題にいたしますと、積極的経費がその逆でありますので、二十六年度の四一%を底といたしまして、最低といたしまして、二十七年度は左四%に殖えて来ておる、即ち消極的経費が増加の傾向にあるのであります。殊に来年は更に次のような事情で消極的経費の割合が殖えるのではないかと予想されます。例えばこれはまだきまつておりませんが、軍人恩給の問題、或いは賠償金の問題、アメリカのガリオア、イロアの返済の問題、或いは若し保安隊を拡充するとなると、又これが殖える見込であります。そこで以上申しました国家の経費の分析でありますが、これを総合して申しますと、先ず国家の経費の数量という点から申しますと、この地方団体をも含めて計算いたしますと、二十六年度が最低でございました。去年が最低でありまして、今年は少し殖えております。それから種類です。これは国家の一般会計の経費でありますが、経費の種類について見ますと、消極的経費は二十六年度が最小で、消極的経費の割合は、二十六年度が一番低いのでありまして、二十七年度から殖える傾向があるのであります。これは結局何を物語るかと申しますと、申すまでもなく日本の政治経済が二十七年度から性質が変りつつある、変質が始つておるということを物語るものでありまして、これが予算に反映しておるものだと思うのであります。  以上は歳出でありますが、今度は歳入の問題について極めて簡単に申上げます。これも問題になりますのは、歳入の数量と種類との両方であります。歳入と申しましても、そのうちの大部分が税金であります。これは専売益金即ちたばこその他の専売益金を含めまして歳入のうちの八千百五十八億、即ち八七%は広い意味の税金であります。それから地方税が二千九百三十四億、合計いたしますと税金が一兆一千九十二億となつております。そこで地方税を含めてでありますが、一兆一千九十二億というものが国民経済に対して、どのようなまあ重要性を持つておるか、これはまあ普通行うのは租税を国民所得で割る計算です。その計算の数字だけを簡単に申しますと、二十七年度は二一%、二十六年度は同じく二一%、二十五年度は同じく二一%、二十四年度はこれはシヤウプが来た前年の、シヤウプの税制改革の前年でありますが、二十四年度は二七%、昭和十年は一四%となつておるのであります。そこで二十四年度の二七%を最高といたしまして、二十五年、二十六年、二十七年は皆二一%で減つております。併しながら昭和十年の一四%に比べてなお重いということは申すまでもないことであります。ところが租税を国民所得で割るという計算は、便利なことでありますけれども、当てにならんということは多くの人の言う通り、そこで当てにならんのでありますが、もう少しこれを当てになる、より真相に近い数字が出ないものだろうか、そこで私は一両年前から租税を国民所得で割るという計算方法をせないで、租税負担能力の最大限、負担能力で割るという計算をやつております。私がここで申します負担能力と申しますのは、国民所得からエンゲル係数を基礎として食糧費の部分が幾らかということを計算いたします。仮に食糧費を以て最小生活費を表わすものと仮定いたしまして、それでこの国民所得から食糧費を差引いたもの、即ち自由所得、これを以て負担能力を示すものと仮定いたしまして、租税を負担能力を以て割算したのであります。この数字のほうがより真相に近いのでありますが、そういたしますと、昭和二十七年度は四三%であります。二十六年度は四六%、二十五年度は五〇%、昭和二十四年度は六二%、それから昭和年度は一九%になつております。そこでこの計算を見ますと、租税の国民所得に対する割合に比べて、国民負担は減つておることになります。なぜこうなつたかというと、エンゲル係数が減つておるからであります。併しながら昭和二十七年度は四三%でありまして、昭和十年の一九%に比べますと、まだかなり重いということは、勿論言えるのであります。そこでこれは総額でありますが、今度は租税の内容であります。これについてまあ直接税と間接税の比率なんかでは一応の見当はつくのであります。そこでまあ昭和二十七年度は直接税は五七%、間接税はその残りで四三%、これは国税だけでありますが、直接税のほうが多いのでありますが、併しながら直接税はまあ大体金持が負担する、それから間接税は金持も貧乏人も負担して大衆課税の色彩が強いと教科書的には申しますけれども、これは私が絶えずいろいろな機会に申上げておることでありますが、現在我が日本では直接税と申しましても、大衆課税の色彩が非常に強いということであります。例えばこれは推算でございますが、昭和二十七年度の所得税の申告納税の予想でありますが、これを見ますと、申告納税だけでありますが、申告納税だけを見ますと、納税人員合計が三百十七万人、そのうち所得三十万円、これは基礎控除その他をやらない以前のもので、三十万円以下のものが九二%を占めております。それから申告の所得額を見ますと、合計が八千二百九十一億円のうち三十万円以下のものが七四%を占めております。それから給与所得でありますが、これは勤労控除以前のものでありますが、それは納税人員が合計八百六十三万人のうち、三十万円以下のものが九七%、大部分がこれであります。それから給与所得で税金のかかるものは、合計いたしますと一兆六千四百七十億円、そのうち三十万円以下のものが八八%であります。そこでまあ三十万円と申しましても、御案内の通り昭和十年頃に比べますと、物価が約三百五十倍、日銀卸売物価指数を使いますと、三百五十倍になつておりますので、三十万円と申しましても、事変前の価値に直しますと僅かに八百六十円であります。ところが御案内の通り、当時事変前におきましては、第三種所得税が千二百円が免税点であつたのでありまするので、現在は所得税というような典型的な直接税も事実は大衆課税になつておるという点を数字によつて証明できると思うのであります。そこで今度政府は、直接税につきまして減税をやるごとになりました。これは私は結構な措置だと思います。併しながら低額所得については、これ以上の減税がましいということは申すまでもないことであります。ところが減税は誰しも賛成だが、その財源をどうするか。財源を考えない減税論はこれは意味をなしません。それでこれにつきまして、一部の人たちは高額所得の税率が今五五%でありますが、あれをもつと引上げようという説をなす人がございますのですが、今申しました計数でおわかりのように、高額所得の税率を引上げましても、その部分の所得階層は、金額が少いのでありますので、殆ど代り財源にはなりません。そうすると結局はどうすべきかというと、経費を節約する、国家の経費、殊に消極的経費を節約する以外に途はないのであります。併しながら今度の減税によりまして、確かに負担減になるということは事実であります。併しながら一方におきましては米価、米の値段の値上りもあり、運賃の値上りもあり、これは即ち生計費を増加せしめることになります。差引き計算すると、一部の人の計算では負担減少、国民負担減少ということになるのでありますが、この場合には、こういう措置が米価や運賃以外に、ほかの物価に値上りが波及せないということが前提になつておるのでありますが、この前提が果して実行されるかどうかは問題があるのだと思います。それからもう一つ、減税によつて一部の人は確かに負担は低くなりますけれども、併し免税点以下の連中はやはり生計が苦しくなることは言うまでもないことであります。  以上申しましたことを簡単に縮めて申しますと、昭和二十七年度予算の特徴は、一口に言えば次の一点にあるのであります。それはどうかというと、消極的経費が多いということ、而もその財源は大衆課税である。大衆課税によつて消極的経費を賄う、これは二十七年度予算の特徴である、これは補正予算を含めたものでありますが、特色であろうと思うのであります。二十八年度はどうかと申しますと、今申しましたような事情で形勢は必ずしもいいほうに向うとは言えないのであります。  これを以て私の公述を終ります。
  26. 岩沢忠恭

  27. 岡三郎

    公述人(岡三郎君) 只今紹介にあずかりました官公労議長の岡であります。  私は今二十七年度補正予算について意見を申述べるわけでありますが、先ず最初に国の予算なり税金の行方というものをもつと一般国民が理解し、身近なものとして協力する方途を講ずべきであろうと、こう考えるわけであります。それは余りにも予算というものが国民にかけ離れておるものであつて、どうつているのかさつぱりわからない、こういつたような状態の中で耐乏生活というものを強いられても納得できないからであります。財政や租税について常時教育啓蒙を行うことを通じて、国民の政治的な意識或いは経済安定に対する考え方、生活の立直しが初めてできるものと思うし、この公聴会についても相当重点を置いてもらいたい。更にこの公聴会と別個に、政府なり或いは国会が、予算編成過程において、予算がきまつてからではなくして予算編成過程において、公約との関連を考慮しつつ、国民輿論の批判に問うのが至当ではないかと思います。それは血の通つた予算編成によつてこそ国民の協力がかち得られるものと信じます。現状では余りにもかけ離れているような状態になつているのじやないか、こう考えるわけであります。  補正予算についての意見でありますが、最初に総括的問題について申上げ、次に重点的に内容に触れて行きたいと思います。政府の説明によれば、すでに国民生活は安定期に入つたとして、均衡財政が軌道に乗つて成功しつつあるごとく前提が置かれておりますが、一般国民、特に勤労者、中小企業者等を含めて日々の生活に苦慮しております。事業不振に心根を消耗しつつあります。重税と失業と倒産、自殺一歩手前で血みどろの闘いを続けていると言つても過言でない状態を度外視しているのではないかと思われます。従つて今次補正予算を見ても、腰だめの再軍備予算は国民の前に目隠しをしておいて、生活保障や生活安定のための積極的施策はどこにも見られない。もともと税金を大衆から取り過ぎるようにしておきながら、それを目当てに不生産的で而も対立激化の方向にある国際情勢の中で、戦争へ巻き込まれる危険性の強い再軍備計画に汲々としている状態です。日本国民はサンフランシスコ講和条約以来、独立ではなくアメリカヘの隷属であり、平和回復ではなく再軍備計画促進に強い危険を感じ、六百余の軍事基地周辺に起る民族頽廃の姿、治外法権下の屈辱等と共に、吉田秘密外交によつてもたらされる日本の将来に対する不満と憤りを持つているのでございます。独立したと言いふらされるが、累次に亘つて起る駐留軍の犯罪とその処置の失敗、外交のまずさ、軍需生産と特需に依存し過ぎた日本産業が、繊維産業を初め平和産業が主たる中小企業への圧迫、アメリカ経済一辺倒の貿易経済政策が、中国アジア等の有利な貿易の途を塞ぎ、国民生活水準の停滞となつて現れ、四十万の完全失業者を初め五百万に近い潜在失業者、二百万に上る被生活保護者、五百万の戦災者、遺家族、年々多数に上る自殺及び一家心中等、実に重大な社会問題を抱えておりながら、国民の再軍備反対、生活安定をの叫びをよそに、無計画、無能な財政措置を棚に上げて、民経済は安定した、財政均衡であるとは何ことであろうか。私は吉田内閣の民主主義政策とは、政府財政のみ黒字であつて、国民が塗炭の苦しみにおかれ、資本蓄積にのみ急で、国民生活破壊の現象の代名詞でもあると思われます。私は甚だ以て誠に了解に苦しんでおります。いま少し国民輿論の上に立つて生活安定、平和擁護のために政策の重点を置いて財政措置をすべきではないかと考えます。  更に政府補正予算編成の方針の中で、特に国民の納得しがたいところは、繰越し予算は使わないという点であります。即ち前年度は千七百億に上る自然増収を持ち、今年において千二十八億又自然増収でありまして、その上前年度繰越金は四百六十億もあります。インベントリー・フアイナンスはやめたし、安全保障費は五百億も余つているし、平和回復処理費、連合国財産保障費等もそれぞれ多額の剰余金を温存している。あれやこれや主なるものを拾い上げただけでも、二千億に上る財源を隠しておるとしか考えられません。租税収入約六千三百八十億円より更に五百億以上も膨らまして六千八百五十億とし、健かに七百九十八億の補正額にとどめ、公務員給与を二〇%上げたからと言つて、米価、運賃、地代、家賃の値上げを行なつているのであります。これは余りにも国民を愚弄し、大衆収奪が度を過ぎておつて、国民の赤字生活の上に政府の黒字財政があぐらをかき、その余勢を駆つて再軍備に進むのではないか、特に私は以上の点について注意を喚起しておきたいと思います。  次に内容の重点を申上げますと、政府の言い分によれば、今度の補正予算では、財政収支の均衡を図りつつ、租税負担の軽減、公務員給与改訂地方財政平衡交付金増額、米価の値上げに伴う措置財政投資、公共事業費増額等が主なるものとされていますが、これらは総じて実情に即せず、科学的根拠に乏しい、いわば無計画な、そして自由党の党利党略と陳情戦術に妥協したものであると言えましよう。  以下重要な項目について我々の組替え要求と批判を交えつつ具体的に意見を述べます。  歳出のほうにおいては、先ず第一に公務員給与の改善でありまするが、私が責任者としている官公労の給与の問題に言及しまするというと、公務員としての職務を十分に遂行し、健康にして文化的最低限度の生活維持のために必要な十八歳最低八千円、一万六千円べースの要求を掲げ、政府人事院はもとより、国会の各政党にも働きかけて参つておりますし、あれほど凄惨な長期ストを以て闘つている炭労、電産を初め、総評傘下四百万の民主的労働者は、すべての労働者に最低八千円を保障せよと、最低賃金制確立を要求しているわけでありまするが、この要求は、現在の賃金に比べまして、徒歩の代りに自転車通勤ができる程度の要求であります。マーケツト・バスケツト方式について、日経連その他がとやかく申しておりまするが、これは不当な高い賃金の要求ではないのであります。曽つて共産党の諸君が申述べたところの最低賃金制とは内容を異にしておりまして、つまり適正価格による完全配給というその政治的要求ではなくして、飽くまでも生活給、苦しい生活を最低限度保障して行くというところの給与なんでございます。最低賃金法は、欧米は勿論、世界ですでに二十数カ国も実施しているのでありまして、政府が封建的企業経営の上に低賃金政策を強行し、日経連が賃金切下げと労働強化を強要するところにこそ、現在の労働争議の問題点があると考えます。労働秩序、労使の平和的解決策を破るものは、今日電産、炭労、三越その他あらゆる具体例に見られるごとくに、経営者であり、その糸を引く政府の政策にあることを指摘したい。日本の労働者を今後永久にチープ、レーバーと労働強化、封建的雇用関係に繋ぎとめておこうとする考え方こそ、日本国憲法下、そうして労働基準法の施行下では成り立たないのであります。然るに政府は、我々にとつて不満足な人事院勧告、或いは公企業体においても仲裁裁定を遵守せずして、公務員等の窮乏せる生活実態を無視し僅かに二〇%のベース・アツプを行い、年末手当においても、隷属的、卑屈的な善良公務員を作り、職階制と労働強化を基礎付ける勤勉手当を創設して、期末手当の〇・五カ月と合せて行おうとしておるのであります。これに要する財源として、国家公務員に百二十八億、地方公務員に二百七十五億が充てられておるが、この中に給与引上げに伴う税のはね返り二割程度計算に入れるならば、国家公務員の場合、実質的には約八十億程度地方公務員では二百億程度に過ぎないのであります。これらは政府みずからが法を無視し、余りにも公務員の要求をないがしろにしたやり方であつて、我々は組織を挙げて実力行使をかけても政府の不当な措置と闘わざるを得ないところまで追込まれて来ておるのであります。今仮に政府人事院勧告実施するとしても、国家公務員分は二百五十億、税のはね返りを引けば二百億程度であります。一万六千円ベースを要求通りに本年一月から実施の場合でも、純粋増加額は六百五十億程度であり、年末手当二カ月分においても百九十億程度でよいのであります。税金は広く一般国民から取上げたものでありますから、これは民間労働者の生活安定にも使うこととし、最低賃金制と社会保障制度を審議会の勧告の線で実施するといたしましても、三千億程度出せば十分であつて、再軍備的支出をやめて、年次計画を以てすればこれも不可能ではないと言うことができるのであります。これに関連して国鉄、専売、電通等の公共企業体関係の場合でも、それらの従業員が要求しておるように、調停或いは裁定の完全実施を行うとしても、国鉄に百二十億、電通には四十億程度一般会計から繰入れればよいのであつて、他は企業利益で消化できるのであります。特にこの際国鉄については、非常に政府は、或いは政党は、熱意を持つておるやに聞えますけれども、電通に対しては、その調停ができたのにもかかわらず、組合がその調停を呑んでおるのにもかかわらず、二割という一方的な措置に出ておることは、公労法の精神を全く無視しておるということを強調しておきます。更に国鉄裁定十一月分からで、年末手当〇・五カ月分として、運賃を一月から一〇%引上げよう、こういう計画は、無謀な野放し的値上げ政策に出ておるのではないかと疑われます。特に公務員給与がきまらない前に、ガスの値上げ、その他を閣議できめるということにおいては、言語道断であります。我々は運賃値上げを行わず、特に三等や通学定期の値上げを抑えて初めて公共性が出て来て、政府の社会政策のうま味があるのであろうかと思います。これに対して直ちに一般国民に転嫁することは、反対であります。  次に地方財政の問題についてでありまするが、知事会では赤字六百億、市町村では四百億、合せて一千億に上ると言われ、自治庁においても五百二十億は地方財政赤字であると言つておるのに対して、補正予算においては、結局平衡交付金二百億、起債百二十億、合計三百二十億にとどまつております。これがために、地方公務員給与は平均三百四十八円、公立学校の職員は三百四十九円と切下が行われようとしているのでありまして、現在すでに半数近くの県で昇給昇格さえ行われておらない。私のいる神奈川においても今昇給昇格の闘争中、四月昇給、九月昇給が放置されております。全国的にみて半数以上が定期の昇給昇格ができていない。こういう状態にあるのに対して、政府が切下措置を行うということは何としても納得できないのでございます。若しもこの平衡交付金によるならば、地方公務員はさなきだに低い国家公務員並の二〇%ベース・アツプさえも危いのであります。知事会議でも強く主張していますように、地方における事業不振による租税収入の減少、物価高、義務支出の増大等は、大きく地方財政を圧迫しているのであります。そこで私は特に平衡交付金増額について、賢明なる議員諸公に特段にこの修正についてお願いしておきたいと考えます。  以上二項は主として給与、年末手当について申上げたのでありますが、政府みずからが人事院勧告、仲裁裁定さえも無視するようでは、国民に法秩序を守れと言うことはできないでありましよう。新政策の骨子と言われている、吉田内閣が常に言うところの道義の高揚も完全な空念仏に終らざるを得ないと存じます。  次に米値値上の問題でありまするが、今度の予算の中で最も政府の無計画振りを発揮したのが米価問題であります。当初農林省案で十キロ六百七十円くらいに対して、大蔵省が六百九十円を主張しました。自由党の選挙目当の生産者価格を行当り七千五百円に引上げた分を、すべて一般消費者に転嫁しようとしたのでありますが、両者の中間をとつた六百八十円は絶対反対です。結局我々は現行六百二十円に据置いてもらいたい。そのために一般会計から百十四億繰入れ、更に輸入食糧の値上り補填分として百十億、合せて二百二十四億を言うのでありまするが、これは第一に米価審議会の決定を無視して国民生活を圧迫するものであります。ここでは我々の言おうとするところは、六百二十円より六百八十円に引上げたところの六十円という分、この分を更に政府負担にしてもらいたい、こういうふうな要求であります。更に私はこの際米価の二重価格制の問題について各種の論議がありまするが、今次の補正予算においては、米価の二重価格制はやむを得ない、こういうふうに存じております。なおこれと同時に、国内における食糧増産を図つて、闇ルートで流れているところの食糧を完全に捕捉して、米産諸国と友好関係を結んで不当に高く売付けられているところの外米、この食糧の値下げについて特段な配慮を要望したいのであります。  次に財政資金による出資、投資の点でありまするが、これが真に行詰つている中小企業を救つて、農漁村の経済建直しに役立つことを望むと同時に、労災保険、健康保険の拡大、国民健康保険の助成、保険医療二割国庫負担等を取りあえず重点として社会保障制度にも大いに力を入れてもらいたい。この際ついでに申上げておきまするが、本補正予算案に、走りとして現われているところの老齢軍人に対する年末慰労金一億八千万円、そして軍人恩給の復活によつて年度八百億円を要すると言われておりまするが、再軍備のために特定の旧軍人だけを特に優遇することには反対であります。まして軍人、軍隊がおらない現在の日本において、職階に応じた軍人恩給という考え方には全く反対であります。社会保障制度の一環として、一元的に国民年金制度の制定こそが急務であろうと存じます。更に附加えたいことは、国民住宅中でも、勤労者住宅確保のためにいま一層積極的な措置を望みたい、公務員をも含めた勤労者住宅建設促進のための立法化をも要求するものであります。  第五に公共事業の点でありまするが、現今一般に言われていることは、政府の災害対策は応急的なことのみで、根本的に災害防止の積極策がなく、莫大な公金を地中や海水の中に捨てるような結果になつています。この点いま一層科学的基礎調査と対策を基本的に立て、良心的優秀技術を持つ業者に請負わせるように綱紀を粛正してもらいたいのであります。特に一般公共事業補正は今回十六億にとどまつていますが、文部省も切実に要求し、教育関係者、市町村当局も切望してやまないところの六三建築の〇・七坪の応急基準は、本年中に二十六万九千坪、小、中のこれは不足分でありますが、二十六万九千坪の国庫負担の四十五億円、屋内体操場、これは寒いところの屋内体操場でございまするが、今回三億の補正でありまするが、今年は二十八万坪建築し、三カ年計画でやるとして三十八億円、すでに建築基準法で使用禁止されている老朽危険校舎、嵐に吹き飛びそうな危い校舎四十万坪の補修建築のために六十七億程度、産業教育振興の施設費として二百十六億等、文教施設費の復活又は増額を強く望んでおきたいのであります。  次に歳入面と関連ある減税の問題でありまするが、今回は当初の財政計画に比べまして、十月まで租税等の自然増収分が七百二億あるから、二百三十億だけで払戻そうというのでありまするが、七百二億の内訳が示すように、源泉所得税で六百六十億、酒税で七十一億、砂糖消費税で五十九億、商品税で三十三億と、大衆課税が軒並増加しているのに対しまして、法人税や申告所得税のほうは逆に二百三十億以上も不足しているのであります。そこで今度の増収見込として、これは取過ぎた文でありまするが、全部払戻してもいいのに、先に申しましたように僅かその三分の一を、而も減税という名目で調整しようとしているのでありますが、初めにも指摘しました通りに、政府は余りにも取上げ過ぎ、残し過ぎるのであります。だから今度の減税案であるところの基礎控除を五万円から六万円にし、扶養控除を一人だけ千五百円多くしても、勤労控除一万五千円引上げたところで、先ず第一に、減税の対象にならん下級生活者の上にも米価値上、運賃、家賃は響きまして、年収七万円から八万円の人は却つて税率を五%上げられているのであります。最高の税率は外国においても九五%程度と言われておりまするが、日本がこれに比較して五五%に抑えてあり、アメリカよりも三〇%も少くしてあります。自然増収の蔭に血の涙が伴つているのでありまして、如何に勤労大衆の上に税金が重くのしかかつているかということをはつきり認めてもらわなくてはならんと考えます。源泉徴収一一〇%と申告徴収七〇%の間には余りにも開きがあり過ぎるのではないでしようか。戦前月収百円以下の者には所得税がかからなかつた。その割合からいたしまするならば、当時より三百倍率の経済スケールでは、月収三万円以下には源泉課税しないでよいはずであります。  結論といたしまして、国民生活を圧迫する再軍備予算には反対でありまして、日本国民に健康にして文化的な生活を保障するための政策が重点になるように予算の組替えについて強く要望するものでありまして、勤労者の賃金を上げ、公務員給与の引上を妥当に行うことは、決して消費にとどまらないので、日本の中小企業に購売力増加として潤つて来るのでありまして、私どもの税金を再軍備のためにではなく、国民生活向上のために使うことができるのであります。各党派並びに議員各位の善処をお願いいたしまして、以上日本の勤労階級を代表し、官公労の議長としての公述を終りたいと思います。
  28. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) それでは井藤、岡両公述人に対する質疑はありませんか……。なければ、午前中の公聴会はこれを以て終ります。暫時休憩いたします。午後は一時半から開会いたします。    午後零時二十三分休憩    —————・—————    午後二時一分開会
  29. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) これより午前に引続き公聴会を開きます。  先ず日本綿糸布輸出組合連合会理事鈴木重光君。
  30. 鈴木重光

    公述人鈴木重光君) 私は只今御紹介を得ました鈴木でございます。私は昭和二十七年度補正予算に対しまして意見を述べるに当りまして、先ず私の立場上綿糸布輸出業界の実情と問題点とを明らかにしておきたいと思います。そしてその観点から国家予算をどういう工合に見るか、これについての卑見を申上げたいと思う次第でございます。  皆様もすでに御承知通り、現在の我が国輸出貿易は不振の一語に尽きる状態でありまして、中でも綿糸布輸出業界の苦境は誠に憂慮すべき状態におかれているのでございます。依然として昨年に引続く世界景気の後退や、ポンド地域各国の直接間接の輸入制限措置の強化等に伴つて世界市場は一段と狭隘化しておる等々、国際通商競争の激烈さに加えまして、我が国自体の施政と申しますか、政策の宜しきを得なかつたこと等々からますますその困難性を加えて来ておるのでございます。今年の輸出は昨年の三割減にまで落ちることが予想されておりまして、この調子では来年又必ずしも楽観を許さないという状態であります。本年の政府計画は約十二億ヤード、これを基盤にして国民所得、財政計画等々が立てられておるのでございますが、この実状では恐らく八億以上は期待できないだろうということになるのでございます。又この輸出不振というものは他方におきまして国内市場を、圧迫いたしまして、折からの綿花価格の下落と共に国内相場は崩落の一途をたどりまして、安定するところを知らず、これに災いされまして高い糸を買付けましたところの織布業界の経営は極度に不良化して市況悪化に拍車をかけたのであります。昨年の輸出キヤンセルの問題やそれに伴う恐慌、或いはゴムその他の新三品の輸入値下りによつて大きな痛手を受けた貿易業界は立直る暇もなく、今又輸出の不振によりまして織布業界からのしわ寄せを受け、二進も三進も立行かぬような状態に追込まれているのであります。我々は終戦以来今日ほど困難な事態に逢着したことはないのであります。ことにおきまして我我は関係方面にも実情を申上げて強力なる貿易政策の実施を要望している次第でありますが、今問題点を具体的に申しますと、大きく分けて市況対策と輸出振興対策との二つになろうかと存じます。市況対策について申しますれば需給の調節と関連産業の強化であります。このうちの需給の調整は要するに輸出が順調に伸張するということができれば割合簡単に片付くのであり、何と申しても輸出の振興が第一でありますが、現状においては輸出価格の吊上げにならぬ程度に生産の操業短縮が必要であろうと存じますが、世界各国が輸入を抑えておりまする状態を頭に置かなければならんのでございます。それと共に需給調整を通じて常に価格の安定を図るため、この際長期的機関として商品担保金融機関というものを考えなければならないのでございます。関連産業の強化と申しますと、その中心は先に述べましたところの織布業者の問題でございます。輸出業者は大概糸商を兼営いたしておりまする関係上、その機屋さんの苦しさというものが撥ね返つて参りまして、その糸商即ち貿易商の経営を圧迫しておるのでございます。その金額は只今のところ百億を下らないと推察されます。当面の解決策として特別緊急融資によりまして切抜けるという以外に手はないのでありますが、長期的には機屋さんの調整組合というふうなものを作らせて、そうして機屋さん自体の操業の安定化と融資の途を講じてやる必要があろうと存じます。  次に輸出振興策でありますが、これ又大きく対内的と対外的の二つに分けて考えられます。対内的には先ず第一に貿易商社自体を強化することであります。現在の商社の実態は多額の棚上債務に支えられて経営を辛うじて維持している状態であり、輸出取引上起るべき些細の事柄にも直ぐ参り、甚だ弾力性を欠いているのであります。このためには先ず第一に経営を圧迫している棚上債務の金利負担の大幅軽減が先決問題であり、その他税制上の考慮がどうしても必要と思われます。更に綿糸布輸出の対外競争力を強化する。このためには生産並びに流通コストの引下げが問題となつて参ります。これがためにはこれ又金融、税制、為替等々現行制度の改善に俟つところが多いのであります。現に為替の面におきまして為替の売買手数料の引下につきまして政府当局において今や御検討中でありますが、是非ともこれは合理的の線まで引下げて頂かなければならんと考えるのでございます。  その他輸出信用保険の担保危険範囲を拡大すると共に、料率を引下げるということにいたしまして利用度を増加し、輸出取引の安全を図ることが必要であります。  対外市場の対策として先ず考えられることは、綿糸布の主要市場が協定貿易地域であり、これらバイラテラルな協定の行詰りにあるということであります。これはどうしても政府当局においては相当肚を据えて頂かなければならんと思います。この種の協定はその本質から見て輸出入の均衡を図るのが目的である以上、具体的に輸出市場を確保し、輸出量の増大を図るためには相手国の物資を輸入しなければならないのであります。例えば御承知通り、パキスタンとの貿易におきましても綿糸布その他機械類等々を出しますのには、どうしても先方の綿花を大量に買つてやることが必要であります。これには資力の乏しい民間業界のみでは到底タイムリーに大量の買付けを行うことは不可能でありますから、時により政府による時宜を得た買付けが必要であります。  又輸入物資に乏しい国に対しては単純均衡を目標とし、その年々のバランスを図つて行く、これをやかましく言うことはみずから縮小均衡たらざるを得ない、これがためには協定の長期化或いは決済方式の変更等積極的な解決策が考慮されねばならないのであります。多角的決済方式が確立されない限りこれらの解決が輸出振興の根本的な課題としていつまでも残るのであります。  以上を以ちまして概略綿糸布輸出業界におけるところの問題点を申上げたのでありますが、かかる観点に立ちまして昭和二十七年度予算並びに今般の補正予算を拝見いたしたのでありますが、結論を先に申しますと、私は甚だ心淋しいものを感ぜざるを得ないのであります。我々の注意を惹きますのは、僅かに本予算において輸出信用保険への十億の支出があるのみであります。それから補正予算におきましては中小企業に対しまして商工中金の貸付限度二十億の支出があるだけでございます。前にも申しました通り輸出信用保険の利用度を高め、輸出取引の安全性を確保して、以て輸出の振興を積極的に図るためには商業危険をも広くカバーすると共に、料率を大巾に引下げことが絶対に必要であります。世界各国ともこの種の施策が行われておるのでございます。そのためには現在のごとく徒らに独立採算制を堅持するのでは、利用度の少い有名無実の中途半端なものにしかならないのではないかと思います。殊に綿糸布のごとく薄口銭を建前とする輸出におきましては、現状では全くこの制度の利用価値に乏しいと申上げざるを得ないのでございます。又中小企業に対する二十億の財政支出は、現実的に織布業者の苦境緩和というものに結び付けて考える場合には、金額的にも余りにも小さいもののように考えられるのでございます、ということになりますと、私はこの昭和二十七年度予算を通じて輸出業界の立場から、ただ失望をのみ味わねばならんのであります。この予算に対する私のせめてもの夢を述べさせて頂くならば、まず第一に緊急物資輸入基金を七千五百万円なぞという桁外れの少額に止めず、これを大巾に引上げて、いわゆる緊急物資というものの意味をうんと拡大解釈して頂きまして、協定貿易を実行する必要上、輸入しなければならない物資が相当多くなりますので、その面に近いところまでこれを拡大して頂きまして、その貿易の促進のために利用したいということでございます。更に生糸に糸価安定特別会計、プラント輸出に輸出入銀行等がありますように、綿糸布輸出についても価格の安定や特別金融機関に関しまして何らかの財政的配慮があつて然るべきではないかと存ずるのでございます。このことは私が当初申上げました当業界の問題点からも又生糸並びにプラントもの輸出の特殊事情と比較いたしましても、我が国輸出の三割を占めて、これが消長は国家経済の休戚にも関する、綿糸布輸出業界は当然これを主張する資格が、あるのではないかと思うのでございます。  私は以上述べましたごとく昭和二十七年度予算に対しましては、政府の輸出振興に対する積極的な意図は、これを財政面から見ますれば全く皆無に近く、甚だしく失望を感ずる次第でございます。  私が最後に申上げたいことは、現在の貿易業界の問題点というものは、内外のどの問題を捉えて見ましても、我我民間輸出入業界の努力のみではどうにもならぬ線に突き当つてしまうのでありまして、これらはすべてが何らかの形で国家的な背景の下に根本的な解決がなされなければならないという実態であるのでございます。このことは今日すでに西欧諸国においても強く見られる傾向であります。私は先般英国で開かれました国際綿業会談に出席いたしました序に各国を一巡して参りまして、欧洲諸国の貿易政策が信念と覚悟と申しますか、立派な計画性を持つた貿易振興の一線に確立推進されつつある現状を見まして、我が国のそれが徒らにその日送りの状態にあるのを悲しむものでございます。政府が今にして貿易振興を至上国是として徹底した一貫性のある総合政策を強力に展開するのでなければ、我が国貿易業界は世界市場からますます後退せざるを得ないのではないかと思うのでございます。私は国会並びに政府当局の皆様方が、一刻も早く輸出振興につきまして財政面から十分の御協力を給わるようお願いいたしまして、私の公述を終りたいと思います。
  31. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 公述人に対する質疑はございませんか。
  32. 左藤義詮

    左藤義詮君 只今貿易不振の一つ原因として商社が非常に金利の負担で苦しんでおる、こういうお話がありましたが、金利の負担で苦しんでおることはあらゆる業界皆そうでありますが、特に非常な金高を扱います貿易商社として、金利でどういうふうに苦しんでおられるか、その実情と、それから為替の問題がございましたが、為替等についても何かの御意見がございましたら一つ伺いたいと思います。
  33. 鈴木重光

    公述人鈴木重光君) 昨年春の輸入三品の暴落、この痛手、これがいわゆる棚上げ債務という形で銀行からの借入れになつておるのでございまするが、これに対する金利、その他日常の運営面の借入資金に対する金利、これは非常に大きなものでございまして、我々ども調査によりますると、主なる貿易商約二十社について調査したのでございまするが、間接経費、つまり日常運営ための経費、是が非でも要る経費つまり人件費、家賃、旅費、通信費等々、それから金利、これらをいわゆる間接経費と申しますが、二十社平均いたしますと六〇%くらいが金利になつておるのでございます。この中には七〇%以上が金利になつておる会社もございます。これはだんだんその率が殖えて行く。借金が殖える一方でありまするから、情容赦もなく金利が殖える。一方従業員は減らす、或いは給料の二割減俸等々から間接経費の片つ方の率は減るのであります。だから率がますます偏るという実情で、誠に非常な苦しみであるわけでございます。これにつきまして、どうも解決の途がない、やはり根本的に当局でお考え願い、銀行さんも商売でありまするからまけるわけにも行かんでしよう。日本銀行さん或いは大蔵省が相当の根本的考えをいたさなければならない点でありますが、ここに困ることがもう一つあるのでございまするが、いわゆる歩積みという言葉があるのでございまするが、百万円の手形を割引きに行く、割引きしてやろう、その代りそれに対してお前のところは三割預金をしろ、相当優良な会社でも一、二%は下らないようでありますが、極く例外は歩積みをしなくとも貸してもらえる会社もあるようでありますが、その歩積みというものは三%、百万円の三%で三万円、又次に三%で三万円、これは絶対手を着けさせないのでございます。そこで最近大阪で破産を発表した会社、僅か二十数万の手形の不渡り、一方銀行預金は千何百万円あるのであります。これは手が着かん、これに手を着けて行くということは自分がもうどうにもならん、つまり自分が破産状態であるということを表明することになりますので、歩積みの金は手が着かん。これはもとより当座預金か何かの形でしようから大した利子は付かないが、借りるほうは情容赦もなく利息が付くという実情なんでありまして、こういうことは全国的に行われていると私は考えるのでありまするが、表向きは自由意思による預金でありまするから問題はないのでありますが、これをどういう工合に片付けるか、そういうことは非常な悪習慣だと思います。一昨年あたり預金奨励、非常に貯蓄の奨励の線に沿つて発生したもののようでありまするが、今や非常にこれは弊害をなしておるようであります。これらも一つ皆様におかれましてもお心の一端に留められまして御研究願いたいと思うのであります。  なお只今お話のありました為替手数料は、これは今大蔵、通産両当局で御研究中でありまして、政府への集中手数料及び銀行の取扱手数料、これは遠からず下げて頂けると思います。これはGHQがありましたときに、いわゆる集中制度で発足しまして当然要つたものでありますが、当時十五億の貿易を予定して計算されたものが今は四十億輸出入であるのでありまするが、四十億ドルの取引ができても十五億ドルを基準にした手数料を取つている、ここに数字的の間違いがある。或いは政府にのみ今でも集中していない銀行には、ドルも為替銀行に与えてあるにもかかわらず、集中手数料が皆それに課せられておるというふうに聞いているのであります。私は詳しいことは存じませんが、今折角当局で御検討中でありますから、これは引下げて頂けると思いますが、日本貿易業界といたしましては、これは一年やはり数億円のはつきり不当支出になつておりまするので、これらも一日も早く善処を要望する事柄なのでございます。
  34. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 別に質疑がなければ、次に毎日新聞社論説委員平岡敏男君にお願いいたします。
  35. 平岡敏男

    公述人(平岡敏男君) 本年度補正予算につきまして見解を申上げます。  本年度補正予算案につきましては、大体において従来の財政金融政策、特に本年度当初予算の性格を受継いだものでありまして、その限りにおきましては一応無難とは言えるのでありますが、つまり無難であるかのような外見を呈しておるのでありますが、この一年間におきまする国際的、国内的経済事情の変化と睨み合せて考えました場合には幾つかの点において物足りないところがあると言わなければなりません。丁度それはこの補正予算案との関連の下に国民が強い関心を示しておりまするところの内閣のいわゆる新政策即ち重要施策要綱についても、それを見ただけでは一体どこに重点があるのか、又各施策を具体化するためにどの程度の積極性を政府が持つているのが、一向にはつきりしないような感じを受けるのでありまして、それと同じような物足りなさ、食い足りなさというものを感じるのであります。向井大蔵大臣は新聞記者団との会見の際に、新政策の五本の大きな柱のうちで、経済基盤の拡充発展に重点を置くと語つておるのであります。果してそれを額面通り受取つていいのかどうか、私どもまだはつきりいたさんのでありますが、若しも大蔵大臣の申される通りといたしまするならば、補正予算案そのものの中におきましても、又大蔵大臣の財政演説におきましても、何ほどかの積極的な意図が現われておらなければならないはずであります。ところがこの一年間におきまする経済事情の移り変りの中で、特に注目すべきものといたしましては輸出貿易の不振、それからいわゆる特需の内容が変化しておる点を挙げなければなりません。特需の内容の変化と申しますのは、従来の朝鮮特需と違いまして、駐留軍の発注が完成兵器を中心として移り変つて来ておる点であります。又これは特に本年の問題ではありませんが、石炭や鉄鋼などの基礎物資の価格が依然として国際水準に比べまして割高であります。又金融機関の貸出金利も従来と同様に割高であります。独立後の日本の経済自立を達成しまするためには、国際収支の面におきまして輸出貿易の拡大を推進しなければなりません。そしてそれと共に極力特需によるドル収入に対する依存度を引下げて行く必要があるのであります。更に日本の経済の根本的な弱さを象徴しているとも言えまする基礎物資や金利の割高を是正して行かなければならないのであります。勿論そういうことはそのよつて来るところが深く且つ遠いのでありますから、容易なことで目的を達成することはむずかしいと思われます。併し政府財政金融政策の上にそういうことをやろうという意図が強く現われていなければならないと思います。即ちそれを単に口先だけでなくて、予算面においても何らかの片鱗が示されておらなければならないと存じます。それを具体化するため一つ方法といたしましては、従来も実行して来ておることでありますが、財政投資を積極的に行うということなんでありますが、資金運用部や見返資金関係の資金繰りというものは、非常に窮屈になつて来ておるのであります。従つて政府が実際に新政策に掲げております経済基盤の拡充発展を促進しようと考えまするならば、資本蓄積強化のための税制改革という問題を一応別にいたしまするならば、過表の蓄積などを含めました財政余力、これを積極的に活用する以外に方法は見当らないのであります。問題はそういうことと、それから向井大蔵大臣のいわゆる健全財政均衡財政との関係なのでありますが、大蔵大臣の言いますように、均衡財政というものを年度間における一般、特別両会計を総合した収支の均衡というように規定いたしまするならば、財政投資の積極化は到底期待できないのであります。勿論財政余力を放出いたしまして活用するということは、インフレーシヨンと無関係ではないのでありますから、通貨価値や現行為替レートの維持と、そういう問題と睨み合せて考えて行かなければならんことはこれは申すまでもありません。併しそれには国際経済事情との関連の下に国内経済事情をはつきりと分析しまして一応の見通しを立てることが肝要であります。仮に極力自由経済を建前でやつて行くことはいたしましても、漫然と出たとこ勝負で財布の紐を弛めたり締めたりするということではいけないのであります。そういう点になりますと、私は財政演説や予算に盛られた政府の方針というものが頗る心細い感じをせざるを得ません。同様のことは特需の変化につきまして、政府がどう対処するかという点についても現われております。アメリカ駐留軍の発注内容が従来の朝鮮特需と違いまして、火薬や火器などの完成兵器に変つて来ておりまして、それに伴う経済界におきましては、防衛生産の問題が大きく取上げられつつあるのであります。防衛生産は、当面は兵器生産企業におきます余剰遊休設備の利用とか、外貨獲得などの面から言いまして現在の不景気を打開する方法一つとして産業界の関心を集めておるのであります。併し日本の経済自立達成を目安としました場合に、防衛生産にどういう位置を与えるか、或いは輸出産業との関係をどう按配するかにつきましては、或る程度明確なる方針が立つていなければならないと思います。ところが財政演説におきましても、又予算の面におきましても、この問題の取扱について政府は全然触れておらないのであります。それはつまり大事な問題に関しまして故意に頬かむりをしておるとしか受取れないのであります。開発銀行などの融資によりまして、兵器産業の復興ということが実際は行われるかも知れません、又そういうことによりまして、一応兵器産業の復興という事実が、既成の事実が出ました後に、若しも駐留軍の発注というものが減少する、或いは中止されました暁に、どうなるかということを考えますると、つまり復興した兵器産業を維持するために、再軍備を表表面にはつきりと打出して行かなければならないというようなことがないと限らないのであります。それは順序が全く逆でありまして、又そのため混乱を生ずる面白からぬ結果さえ心配されるのであります。又今後の財政規模をどう持つて行くかという関係から申しましても、この防衛生産の点において、政府は無関心ではおれないものと私は考えます。勿論このような問題は、二十八年度予算編成に際しまして、成る程度考慮されるかも知れないのでありますが、補正予算案におきまして、その方向がはつきりと示されていないために、補正予算案が如何にも抜術的なやりくりだけに終始しておるという印象を拭い去ることが、できないのであります。  次に一般会計の補正予算案の内容について申上げます。第一に補正額七百九十七億円を加えました九千三百二十五億円という規模は、年度間の均衡予算としては、一応限度に達しておると考えられます。勿論このほかに二百二十数億円の前年度剰余金もありますし、又明年度におきましては、安全保障諸費というものがなくなるということも考えられるのでありますが、併し政府経済規模を拡大するために、タイムリーな、積極的な政策をとつて行かなければ、国民所得の増大ということは今後望めないでありましよう。又そういたすといたしますれば、明年度には租税の自然増収というものが期待できません。勿論増税は望ましくないのでありますから、明年度財源としましては、二十六年度の剰余金と今年度限りで浮いて来ると思われる安全保障諸費の五百六十億円を如何に有効に使うかということにあると思います。このことはこの補正予算そのものが私たちに対して一番強く訴えている点であろうと思いますが、政府の言うように本当に国民が防衛に値いするだけの生活を国の内部に作り上げることが大事であるといたしますならば、これらの財源を国民生活の安定と経済基盤の拡充発展に振り向けるべきであろう。これは明年度予算案に対する注文にもなるのでありますが、政府の政策や方針や補正予算案を検討した場合に、おのずから出て来る結論であると思います。  第二に、補正予算案歳出を見ますると、総選挙の際の大小もろもろの公約を実行して行く必要から来ているのかとも考えられるのでありますが、概して総花的な傾向が見受けられます。この点は、一般会計九十億円、資金運用部資金二十億円、合せて百十億円の財政投資についても言えるのであります。中小企業金融対策は、言うまでもなく重要でありまするし、その点から申しますれば、そのため財政投資を計上したことは誠に結構でありますが、現在の中小企業金融事情から見まするならば、住宅金融公庫の三十億円を除きました八十億円を細かく四つの機関に割り振つたということは、如何にも見た目をつくらうために皿数だけを揃えた安直な料理のような感がいたすのであります。例えば、国民金融公庫と商工中央金庫とでは、融資先も違うのでありましようし、当事者の見解もいろいろありましようが、七十億円程度の金をわざわざ両機関に分けて全国に流さなければならんものか疑問であると考えます。言うまでもなく、財政支出は、できるだけ効率的に使用されることが最も望ましいのであります。これは一般論ではありますが、そういう意味から言いますならば、中央政府から流れる金が、細かく分けられてしまつて、そうして地方の末端に辿りついたときには、中途半端な事務費として消えてしまうとか、或いは本来の目的を達成するには余りにも些細なものになつてしまうというようなことは絶対に避けなければなりません。私は必ずしも直接そういう実態を調べたわけではないのでありますが、そういう不満や不平は、当事者の側におきましても、第三者の方面におきましても、決して少くないのであります。結局におきましては、行政を複雑にさせるだけの効果しか持たないような財政支出は厳重に避けるべきだろうと思います。なお、それとはやや性質は違うかも知れないのでありますが、老齢軍人等特別給与費として計上されておる一億六千万円が歳出予算重要経費の最後の項目に麗麗しく出ていることも割り切れない感じを受けるのであります。九千三百億余円の総予算額に比較いたしまするならば、その金額は誠に僅少でありまして、歳末の餅代にでも使うという政府の方針でございましようが、老齢軍人に対し一律二千円は誠に文字通りの総花主義の現われであります。幾らでも出せばそれだけ相手が喜ぶだろうという非効率的な支出のモデルであるような気がいたすのであります。  第三に、所得税の減税は大体適当だろうと思うのでありますが、当初予算において源泉所得税の収入を低く見積つております。これは半ば公然たる事実と言つてもいいのでありますが、そういうように、低く見積つてつて、一旦政府が吸い上げておいて、その一部を又還元するという自然増収方式というものは、私どもの目からは、あたかも財政技術のからくりを見せつけられるようなものであると感じます。勿論明年度はこういうやり方はやろうと思つてもできないだろうと思いますが、決していいことではないと思うのであります。吸い上げた税は結局一部は減税という形で返すということになるでありましようが、民間企業におきましては、資金関係において受ける影響というものはかなりあると思われるのであります。  第四に、食糧管理特別会計の赤字百十四億円の繰入は、これは差当つて止むを得ない措置と思うのであります。併し、米の生産者価格を引上げた以上、消費者価格にそれが波及するのを一般会計からの繰入によつて防ぐという行き方をとるよりも、公務員などの給与ベース人事院勧告の線にもつと近付けるとか、或いは明年一月からの減税を繰上げて実施するとか、そういうような措置をとることがむしろ適当であると思われます。減税や給与べースの引上げとは関係のない低所得者にとりましては、米価の引上げは強く響くのでありまするから、特に生活困窮者等に対しましては、状況によつては生活保護法の適用条件を考慮するということも考えていいのではないかと思われます。又、今日大企業と中小企業とにおきましては、従業員の雇用条件、特に給与の面におきまして相当大きい開きが生じておるのでありまするから、中小企業等の従業員にとりましては、米価の引げ等は確かに痛いことだろうと思うのであります。一口に中小企業と申しましても、業種、業態、経理内容等は千差万別ではありましようが、大企業と比較しました場合、一般的に言い得ることは、金融面において極めて不利な条件に置かれる。特に大企業の犠牲になつておる場合が少くないと思われます。従つて、そのために高利の金を借りざるを得ないようなことになつており、金利負担の強い圧迫を受けておるのであります。政府が中小企業金融対策におきましてもつと実のある措置をとることができますならば、中小企業の経営内容はもつと楽なものになるでありましようし、雇用条件も改善されるに違いないと思うのであります。消費者米価はできれば据かれるのがいいのでありますが、政策の方向としては、二重価格制よりも減税や雇用条件の改善、特に中小企業の雇用条件の改善に向けるほうがいいと私は思います。又輸入食糧価格調整補給金百十億円の計上は、外米の輸入価格が当初の見込より上つたということが理由とされておるのでありまして、これ又止むを得ない措置であるとは考えられるのでありますが、外米の買付の技術的な方法におきまして、果して遺憾なき措置がとられたであろうかどうかということを懸念されるのであります。貿易商社が弱体濫立しておることなど、そのほかいろいろの通商上の条件が悪いために、輸出におきましては、出血や不当なクレームで損をしておると同じように、輸入におきましては、相手から足許を見透されて、高いものを買わされるとか、こちらから進んで買いあおるというような結果をもたらしていないであろうかという点を心配するのであります。外米の価格が需給事情によつて変るのはいたし方ないといたしましても、買付技術に特段の工夫を加えることが望ましいと思います。  最後に地方財政平衡交付金増額二百億円、並びに資金運用部による地方債百二十億円の引受限度の増大について申上げます。政府地方団体の赤字を三百二十億円と抑えて右のような予算措置を講じたと言つておるのでありますが、地方団体側では、全国都道府県赤字を六百億円、市町村赤字を三百九十八億円予想しておるのであります。どうしてこういう開きが出て来るかと言いますみと、表面の理由として挙げられておるのは、地方公務員給与ベースとか、税収の見積りとか、行政合理化の余地等におきまして、政府地方団体との間に食い違いがある点などが挙げられておるのであります。地方団体の財政実情はいろいろさまざまでありましようが、こういう基礎的な前提につきまして、政府地方団体の間に開きがあるということは私どもとしては容易に納得できないのであります。毎年予算編成期になりますると、平衡交付金地方債の増額をめぐつて大蔵省、自治庁、地方団体の三者の間で政治的折衝が行われ、近年はそれが年中行事と化しておるのであります。これが各省の予算折衝でありまするならば、予算が認められなければそれだけ仕事をしないというだけで済むのでありますが、地方団体の場合は、そのため赤字となるというだけに問題は深刻であります。併し基礎的な事実につきまして共通の認識が得られないで、政治力の関係で交付金等がきめられるということは不合理なことであると思います。基礎的な事実につきまして、共通の前提を持ち、その上で地方自治の精神をそこなわずに、地方行政財政制度を改革することを考える必要があると存じます。以上でございます。
  36. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今の公述に対する質疑はありませんか。なければ次に日本中小企業団体連盟会長豊田雅孝君にお願いいたします。
  37. 豊田雅孝

    公述人(豊田雅孝君) 現在中小企業は申上げるまでもなく生活必需産業といたしまして、又輸出産業といたしまして、更に又大企業の下請乃至関連産業といたしまして、我が国の産業構造上極めて重要な立場にあるのでありますが、将来のことを考えてみましても、人口が過剰であり又資源の不足でありまする我が国といたしましては、基礎産業或いは重化学工業を主軸といたしまする大企業のみでは決して国民大衆の生業を保障することはできないと考えるのでありまして、更に農村人口を見まする場合に、現在すでに飽和点に速しておる点等から考え合せますると、いよいよ以て中小企業の振興は、産業政策といたしましても、又人口問題の対策といたしましても、絶対この際重要性を特に認められなければならんと考える次第でありまして、かような点から見ますると、中小企業対策も最近は或る程度取上げられておりまするが、私どもの見まするところでは、これは彌縫策の程度でありまして、只今申しまするように、我が国の現在将来を通ずる産業政策、或いは人口問題から考えてみますると、もつと根本的に国策として大きく取上げるという再出発をする必要があるというふうに考える次第であります。  中小企業には中小企業としての特殊の事情があるのでありまするので、これを大企業とは切離して中小企業の独自の立場から施策を研究し、又立案しこれを予算化する必要があるというふうに考える次第でありまして、さような考え方からいたしますると、中小企業庁の予算を見ましても、中小企業者を中心といたしまする事業所得税の僅か一%そこそこであるというよな点でありまするとか、或いは今日組合は全国二万七千あるわけでありまするが、それに対しまする組合の共同設備補助金というものは僅々二億円でありまして、一組合当りにいたしますると僅かに八千円弱であるというような点等から見ますると、従来の中小企業対策というものは只今申しまするごとく全く彌縫的だという感を深うするのであります。  かくいたしまして、現在の中小企業の実情を見ますると、繊維製品を中心といたしまする輸出品の問題であります。又これが最も中小企業に多くしわ寄せをせられておるのでありまするが、更に又大企業から下請に対しまする未払の蓄積悪化の状態でありまするとか、かような点等が相寄り相まちまして、最近はいよいよ深刻な状態になつて来ておることは周知の事実でありまして、不渡手形等も中小企業に最も多く出て来ておるというような点は、これを立証いたしておるというふうに考える次第であります。そこへもつて来て、電産ストがああいう状態でありまするので、いよいよ中小企業は首つりの足を引張られておるというような状態に追込まれて来ておるのであります。  さような点から先ず以て一番やかましく言われるのは金融の問題でありますが、この金融の面につきまして、今回国民金融公庫に対しまして三億円の追加出資、又資金運用部から二億円の貸付がせられるということに相成つておるようであります。更に又商工組合中央金庫に対しましては、二十億の貸付が一般会計から行われるということに相成つてはおるのでありまするが、只今申上げまする中小企業の現在将来を通ずる重要性、又現下の不況の深刻から見ますると、余りにそれは過少であるというふうに考えざるを得ないのでありまして、この際大巾の増額があつて然るべきだというふうに考えられる次第であります。商工中金の場合をとつて考えてみますると、商工組合中央金庫は只今政府の預託金五十三億を受けておるのでありますが、この預託金は不安定な資金でありまして、長期の資金としてこれを活用することはできんということになつておるのでありまして、この点を考え合せますると、いよいよ以て二十億程度のこの際の貸付で如何に今後なつて行くかということを考えさせられるのであります。恐らくこれは将来政府出資に振替えられまして、只今の二十倍の債券を発行するということに相成るのかと思うのでありますが、少くともさような場合にはこれを低利に引受けて行くということを是非とも考えなければならんと思うのであります。  現在中小企業界におきましては、資金の量の多からんことを切望いたしておりまするが、それを以ては問題は解決しがたい。要するに低利の資金をこの際放出するということが最も必要になつて来ておるのでありまして、さような面におきまして、将来資金運用部資金で商工債券を引受けるというような場合におきましては、是非とも従来のような金利でもつて、思い切つて安い金利でこれを引受けるということが必要だと痛感する次第であります。場合によりましては資金運用部資金を直接商工組合中央金庫等に貸出す道を開きまして、現在これは法律によつて禁止せられておるのでありまするが、これを直接貸出の道を開くことによりまして、低利の資金放出を容易ならしめるというふうな方向に持つて行かなくちやならんというふうに考える次第であります。尤も資金運用部資金の放出につきましては、さなきだにこれが足らんということをよく言われるようでありましたけれども、現在見ますると、郵便貯金或いは簡易保険で約千億円あるのでありますが、これは申すまでもなく庶民階級或いは中小企業界から吸上げられたものでありまして、これはやはり庶民或いは中小企業界に還元せられるべきだと考えるのでありす。これが電源開発等へ振向けられるということにつきましては疑問を私どもは持つのでありまして、電源開発もとよりこれは重要でありまして、是非ともやらなくちやならんのでありまするが、その資金を庶民なり或いは中小企業界から引上げた零細資金によつて賄わねばならんかどうかということについて、十分なる御検討を望ましいと思うのであります。それと同時に、只今申上げましたように、将来資金運用部資金の放出につきましては、是非とも低利にこれを放出するような行き方を御検討願いたいということを重ねて申上げる次第であります。  次いで問題になりまするのは税の問題でありまして、これは先ほど申しました通り、大企業と中小企業を同じ行き方で律しておるというところに多分の問題があると思うのでありまして、私どもはでき得ることならば、日本の商工業の九九・八五%を占めておりまする中小企業のためには、又その中小企業は極めて特殊な事情を持つておるという点を勘案いたしますると、別個の中小企業の税法を設けられても然るべきじやないか。又さような行き方によつて初めて中小企業の特殊事情に即応する税の取立ができるのじやないかというふうに考えるのでありますが、若しこれが困難であるといたしまするならば、少くとも以下申上げまするような諸点について御研究が願いたいと存ずる次第であります。  第一点は所得税関係でありまするが、御承知のごとく中小企業の而も下のほうになりますると、勤労者と同様に労働の報酬としての利益が多いのでありまして、資本自体から来る利益よりも勤労による利益というもののほうが多い面があるのであります。従いまして勤労者に対して勤労控除というものが認められている以上は、中小企業の特に下層の層に対しましてはこの勤労控除に似たような特殊の控除が認められて然るべきではないかという点が一つであります。  もう一つは年額五十万円未満程度の所得のものに対しましては資本蓄積を可能ならしめる程度に是非とも税率の一層の軽減が望しいという点であります。  法人税につきまして申しますると、中小企業関係の会社例えば百万円程度の資本金の会社に対しましても、大企業の十億、二十億の資本金を要しておりまする会社と同一の税率で取るというところに非常に問題があると思うのでありまして、かような面からいたしまして法人の年所得五百万円未満の中小法人に対しましては税率を三五%程度引下げる、これによりましてやはりかような中小会社の自己資本の蓄積を可能ならしめるという方向に向けてもらいたいというふうに考える次第であります。  それと同時に中小の会社になりますると言うまでもなく資本は少いのでありまして、すぐその利益は資本額をオーバーするのでありまするが、そのオーバーいたしましたるものに対しまして直ちに特別の課税を重課せられるということは非常に中小企業を圧迫しておるのでありまして、従いまして資本金額をこえる場合におきましても一定の比率の範囲内におきましてはこれらに対して税を軽減する、免除するというような行き方を考える必要があるというふうに思うのであります。かようにいたしまして、要するに中小企業の殊特性を尊重いたしまして、そうして中小企業にも資本の蓄積を可能ならしめるという方向に是非向けて頂きたいというふうに考えるものであります。  その次は労働基準法の問題でありまして、これが又大企業と中小企業とが同じような一つの法律によつて律せられておる。そこに問題を生じて来ておるのでありまして、具体的に申しますると、四、五人の従業員を擁しておるような家内工業に対しましても、三万、四万の従業員を擁しておる八幡製鉄所のごときに対しましても同一の労働基準法を以てこれに臨んでいるというところに非常なる中小企業の圧迫が出て来るのであります。従いましてこれ又私どもは中小企業独自の労働基準法の制定が望ましいのでありまするけれども、これが不可能であるということならば少くともこの程度に緩和はせられるべきだというふうに考えるのであります。それは農林、水産業におきましては御承知通り労働時間、又休憩、休日に関する規定はすでに適用が除外されておるのであります。中小企業の一部は農林、水産業等殆んど変りないような労働関係、或いは季節的な関係等が深いのでありまして、さような農林、水産業に匹敵するような特殊の事情にありまする中小企業に対しましては、少くとも労働基準法の一部緩和が絶対必要だ。具体的に申しますると、労働時間、休憩、休日に関する規定の適用除外程度は必要だというふうに考える次第であります。  更にもう一つの問題は大企業の下請関連中小企業に対しまする未払の問題であります。これは新聞紙上等でもすでに問題になつたのでありますが、最近はその支払振りというものは更に悪くなつて来ておるのでありまして、製品を納入いたしましてから半年後に代金を受取るというようなことは普通で、それ以上に或いは一年がかりなるというような状態であります。この面からいたしまして中小企業はいやおうなしに一面闇金融に依存せざるを得ないというような問題が出て来ておるのであります。従いまして私どもはこの大企業に対しまして中小企業の下請に支払うべき金につきましては、いわゆるひもつき融資をやつてもらいたいということであります。これによりまして相当只今申します未払問題も緩和せられるかと思うのでありますが、併しこの程度ではまだまだ安心はできんのでありまして、それと相並んで一つの斡旋調停機関の設置を中央地方に亘つてつてもらいたいということを陳情をし又建議もしておるわけであります。具体的に申しますと中央及び各都道府県一つ委員会的な斜旋調停機関を設けよというのでありまして、これについては関係の金融機関と関係の官庁或いは関係団体の代表者等が一緒になりまして、その委員会に未払をたくさん抱かされております中小企業から匿名でもいいから申告をしたならばこれを受付けて、而うして名前を表に現わさんで関係の親会社と折衝をいたしまして支払を促進、解決して行こうというのであります。と申しまするのは、中小企業は大企業からひとたびにらまれますると、もうあとの仕事ができなくなる、従つてその名前を出すということを非常にいやがりまして、かような点を考えますると、名前を出さなくちちやいかんような制度でありますれば法律を作つても、或いは如何なる制度を作つても結局活用せられないということになるのであります。従つて只今申しまするように名前を隠し、又隠したままの恰好で解決の付いて行くような措置が必要だ、それには只今申しまするような斡旋調停機関を中央と地方に設けて行くということを是非とも早く実現したいというふうに考えておるのであります。どうかこれの予算化等につきまして今後特に御考慮を願いたいと存ずる次第であります。  更に考えさせられますことは中小企業者自身のほうにおきましても相当思い切つてこの際考えて行かなければならん点が多々あると考えるのであります。要するに中小企業者みずからがやはり中小企業合理化の線を歩んで行くということを具体的に実行する必要があるのでありますが、その行き方というものは結局専門店、或いは専門工場になるという、いわゆるこの専門化の問題と、いわゆる協同組合を作つて行く組織化の問題とこの二つになるわけでありまして、この専門化と組織化の線であくまで中小企業を合理化し、そうしてその線に沿つて資金も出し、又そのため施策も重点的に行なつて行くという、この方針を政府として明らかに示す必要があると思うのであります。あるときにはこれが明らかになり、あるときには強くなり、ところが或るときにはこれが弱くなるというようなことではこの厖大なる中小企業の行く道が明らかでないということになるのでありまして、かような面におきましては、只今申します専門化と組織化の線をはつきり政府においても明示し、又これに対する予算等も具体化して行くということが必要だと考えるのであります。従つてさような面におきましては政府のみならず指導団体の強化ということも最も肝要なことだと考えられるのでありまして、業界からやかましく言われております組合の中央団体の法制化等も至急に急がれたいというように癒えるのでありまして、同時にこれに対する政府、国庫からの補助金についても具体化をお願いいたしたいと存ずる次第であります。従来戦前におきましてはかような団体に対しましては五十万円の補助金が出ておつたのであります。只今の貨幣の価値に換算いたしますならば恐らく一億円以上にも相成ると思うのでありますが、戦前においてすらかような補助金が出ておつたのですから、かような点から見ましても、中小企業の対策というものは戦前よりも却つて今日後退しておるということになるのであります。そこで現在及び将来を通じての中小企業の重要性は言うまでもなく、現下の深刻な状態から見まして、今後以上申述べましたような諸点につきまして、予算化等につきまして特にお願いを申上げますと存ずる次第であります。  これを以ちまして公述を終ります。
  38. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 只今の公述に対する御質問はありませんか。
  39. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今のお話で中小企業者に対する租税負担が非常に重いというようなお話を承わつたのですが、大企業その他に対比して租税負担が重いというような点はよくわかるのですが、私いつもちよつとよくわからないのは、国民所得に対比する租税負担の問題なのですが、国民所得は御承知通り二十七年度は五兆三千ということになつて、そのうちに勤労所得が二兆四千、個人業種所得が二兆三千ということになつております。そうすると、これで見ると勤労所得と個人業種所得は大体殆んど同額になつておる。ところが税のほうを見ますと、これは源泉と申告とがその両方に完全に照応するものかどうかというところにいろいろな議論はあると思いますが、大ざつぱに言つて源泉は勤労所得に、申告は個人業種所得に照応するとすれば、租税のほうから見ると、この源泉所得は千七百六十一億で、申告は八百三十九億ということになつて、殆んどその源泉の半分ぐらいしか税収が考えられていないというようなことになるのですが、ただこれだけの数字から見ると個人業種所得は、少くとも勤労所得に比べれば負担が非常に軽い、逆に言えば個人業種に比べれば勤労所得の負担は更にひどいのだというようなことになるようなんですが、そこいらの感じはどうなんでしようか。
  40. 豊田雅孝

    公述人(豊田雅孝君) さような意見を持つておられるかたもあるやに私も聞くのでありまするけれども、これは個人企業を見ました場合に、御承知のごとく青色申告をやらされておるのでありますが、これが非常に複雑多岐でありますために、実行しようにも実行ができないという面があるのでありまして、この面から私は実体が明らかになつておらんのじやないかというふうに考える次第でありまして、今日青色申告をするかしないかという迷いを持つておる層等から直接聞くところによりますと、例えば年額所得二十万円未満くらいのところになりますると全然赤字になつている。青色申告をしても全くナンセンスだというようなところまで来ておるのであります。これはいわゆるガラス張り経営を主張いたします業者を中心としまする研究会等におきまして真剣なる声になつておるのでありまして、只今申しまする二十万円、先ほど申しました年額所得五十万円以下くらいなところは非常な苦難にあるというふうに考える次第でありまして、中小企業者といいましても、それはピンからきりまであるわけでありますが、特に下層の中小企業者は、勤労者よりも非常に税の面におきまして、又一般の家計におきましても、困難なる状態にあるというふうに考えている次第であります。
  41. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 よく勤労者的な性格の中に企業者は、勤労控除その他勤労所得と同じような措置を考えろというようなお話をよく承わるのですが、勤労所得者的な性格の中小企業者とそうでないものとは、何か技術的に分けられるもんでしようか、どうでしようか。
  42. 豊田雅孝

    公述人(豊田雅孝君) これにつきましては、いわゆる家内工業の中でも従業員を外部から入れておらんもの、仮に形の上では従業員となつておりましても、いわゆる家族専従者というような者だけを使つておりまする層は、もう全く勤労それ自体だというように考えられるのでありまして、これは統計的にもはつきり出て来るし、又形式的に一つ基準を設けることも容易だというように考える次第でございます。
  43. 高田なほ子

    委員外議員高田なほ子君) 労働基準法の適用の枠の問題についてお話があつたと思うのでございますが、これは労働時間、休日というものの返上問題についてはかなり問題が残るような気がするわけであります。ただ私がお尋ねしたいことは、中小企業に従事している女子従業員というものはどういつたような率を占めておるか。又あなたがお考えになる労働時間、休日というようなものを枠を拡げる、こういうお考えの場合に女子従業者に対するお考え方はどという考え方を持つていらつしやるのかお伺いいたします。
  44. 豊田雅孝

    公述人(豊田雅孝君) 労働時間及び休憩、休日に関する規定の適用除外の問題は、お尋ねのごとく女子従業員及び未青年従業員の問題になつて来るわけでありまして、この点につきましては、先ほども申上げましたる通り、農林水産業は非常に季節的に繁閑がある、又その労働環境もそれほど激しい状態でもないといつたようなことから、あれが適用除外になつていると考えのでありますが、中小企業関係におきましても、極く小人数の従業員を使用しておるというようなものにつきましては、その環境等も家庭的な雰囲気の中でやるというような面がありまして、激しい機械作業というようなものとは非常に違う面がある中小企業が相当あるわけであります。更に又中小企業といたしましては、例えばクリスマス関係の輸出品の製造、或いは船積等になりますると期間の関係がありまするので、ちよつとの時間の相違からキヤンセルをせられるというようなことが出て来る関係もあるのでありまして、さような季節的にやかましい産業になつて来るというようなものは、これは農林水産業の季節をやかましく言うのと余り変らない面があるのでありまして、そういう面におきまして農林水産業と大体似たような労働環境にある場合、更に又農林水産業と似たようなふうに季節関係があつて、是非ともその季節をうまく切抜けて行かなければ商売にならんというような面等につきまして、特殊な場合に或いは認可制等によりましてその具体的事情を勘案して、只今申上げますような労働時間或いは休憩、休日に関する規定の適用除外を考えるというような弾力的な運用の途が開かれていいのじやないかというふうに考える次第であります。
  45. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 別にありませんか。ないならばこれを以て本日の公聴会を終了いたします。  次に参考人選定についてお諮りいたしたいと思いますが、地方財政につきまして参考意見を聞くために本日は府県代表が参つたのでありまするから、なお市町村団体から二名の参考人を選定することについて御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 岩沢忠恭

    委員長岩沢忠恭君) 御異議はないと認めます。その人選は委員長に御一任を願います。  なお参考までに申上げておきますが、この参考人は明日から開かれまする第四小委員会で便宜意見を聴取する予定であります。  本日はこれを以て散会いたします。    午後三時十一分散会