○
政府委員(
河野通一君) 私から
金融問題について若干御
説明申上げたいと思います。事柄の性質上
補正予算そのものから若干ずれるかと思いますが、あらかじめ御了承頂きたいと思います。先ずお
手許に
資料として
金融情勢
資料、その他詳しいものは銀行局年報を差上げてありますから、
数字につきましてはそれを御覧願いたいと思います。
先ず当面の
金融のうち、通貨の情勢について概略を申上げてみたいと思います。総合的の指標としての通貨の発行の推移でありますが、最近の発行高は四千六百二十億、昨年の同期の
数字は四千二百二十億、約四百億の増発ということに
なつております。昨年と本年と大体同じ日を比較して見ますと、おしなべて四百億乃至五百億
程度の通貨の
ベースが上つておるというふうに見られます。物価は御承知のように卸売物価で見ますと大体横這いの状態でありますが、現金に比較的密着しておるCPI等におきましては若干のアップをしております。それから生産が御承知のように大体六乃至七ポイント上つております。国民所得の増勢等から見ますならば、この
程度の通貨の増発は大体安定した推移を辿つておると私どもは見ておる次第であります。
次に、日本銀行の貸出の状況について申上げてみたいと思います。日本銀行の貸出は今年の五月以降国庫の引揚超過ということによりまして貸出は相当
増加いたして参りました。四月末は二千九十億ばかりでありましたものが、九月末におきましては二千九百六十億という
数字に
なつておるわけであります。約七百七十五億
程度の
増加ということに
なつております。然るに十月以降国庫の収支か支払超過と申しますか、撒布超過に転じて参りますに応じまして、市中に対する日銀の信用は相当減少して参りました。最近までに約八百数十億を減じまして、最近の
数字は二千九十億
程度という
数字に
なつておるわけであります。
今申上げましたのは日銀の一般貸出でありますが、その他に日銀でやつております外国為替貸付という制度があります。これは昨年の十一月に旧制度を或る
程度改正いたしました。その結果だんだん減つて参
つたのであります。本年に入りましてから外貨を有効に活用しようという政策の一環といたしまして、別口外貨貸付制度ということを拡充いたしまして、これに応じまして日本銀行の外国為替貸付勘定というものは又逐次殖えて参つております。昨年の十月末におきましては四百七十億
程度というものが本年の四月におきましては六百十九億、ここまで参つております。それが最近の
数字では九百億余りという
数字に
増加いたして参つております。その日本銀行の一般貸付と外円為替貸付と両方合せて見てみますと、日銀の信用は本年の三月末におきましては三千二百四十三億、それが最近の
数字では二千九百億、約三千億という
数字に
なつて参つております。大体正常化の方向に逐次進んでおるものと私どもは見ておるわけであります。一方
金融機関の預貯金の状況でありますが、経済が逐次安定いたして参りまするにつれまして、
金融機関の預貯金の
増加は好調六推移をいたしております。本年の四月から九月までの全国の
金融機関の一般預金の
増加額は四千七百四十三億円、昨年の同期に比較いたしまして約一八〇%
程度に
なつております。別の言葉で申上げますれば、八割
程度の
増加を見ておるということであります。なお預金につきまして、最近における著しい特徴は、定期的と申しますか、安定した預金が逐次殖えて参つた。戦前におきましては御承知のように大体総預金のうちの半分ぐらいが定期的乃至は安定的な預金であ
つたのでありますが、戦後におきまする不安定な時期におきましては、通貨の見通し等にからみまして非常に定期的の預金が減つて参りまして、
昭和二十三年頃を取つて見ますと大体一四・五彩
程度が定期的預金であ
つたのでありますが、最近の
数字を取りますと九月末におきまして約四〇%
程度まで回復をいたして参つております。だんだん安定した預貯金というものが殖えて参りますことは、
金融というものが逐次落着いて参つて来ておる一つの証左であろうというふうに考えます。
金融機関の貸出でありますが、貸出もこの預金の
増加と相照応いたしまして相当
増加をいたしております。この
増加の原因等はいろいろございますが、少くとも概括的と申しますか、一般的に見まするならば、一部に非常に信用が萎縮しているという声があるのでありますが、一般的に見ますればそう著しい萎縮という傾向は、少くとも数学的には現われていないということが言えると思うのであります。次に預金と貸出との比率の問題であります。これは先ほどの問題にも関連いたすのでありますが、いわゆるオーバー・ローン等の問題でよく論じられる問題であります。昨年の初め頃から本年の初め頃にかけまして預金に対する貸出の比率は、大体一〇〇%
程度以上一一〇%
程度までの間を動いてお
つたのであります。本年の春以降これが九〇%台に落ちて参つております。最近の
数字では約九月末におきまして九四%、これは期末でありまして、若干
数字に必ずしも正常な状態でないという点もありますが、十月末におきまして九七形という
数字に相成つておるわけであります。だんだんこれらの点につきましても正常な状態に近づきつつある。完全に正常に
なつたとは申せませんが、正常な状態に近づきつつあるということが看取できるのであります。
次に起債の市場の状況であります。これも証券市場の活況は御承知の
通りでありますが、
金融機関によつて主として消化をいたされておりまする起債、社債及び
金融債でありますが、これの消化状況も非常に改善されて参つております。一例を申上げてみますると、本年の八月から十月まで最近の三カ月の社債及び
金融債の消化状況は三百六十五億円に
なつております。これが昨年の八月から十月まで三カ月をとつて見ますると、二百五十三億という
数字でありまして、この間に顕著な消化の状況の改善が見られておるわけであります。又他方コール市物につきましても、一時は御案内のように大体コール市場の
資金は六、七十億
程度であ
つたのであります。本年に入りましてから百億
程度をだんだん維持して参りましたものが、最近では大体百五、六十億から七、八十億コール市場の
資金が潤沢に相成つて参つております。これに応じましてコールのレートも相当下落の傾向を辿つておる次第であります。
以上申上げましたように、大体論といたしましては
金融情勢は先ず先ず大過のない推移を辿つておるように思うのであります。ただ世界的な経済情勢の影響を受けまして、輸出が
計画通り進まないとか、そういつたふうな問題等のはね返りで、或る種の企業におきましては相当
金融問題についていろいろ問題があることは御承知の
通りであります。又中小企業等におきまする
金融問題についても決して野放しで楽観をしていていいという状態でないことも、これは当然のことであります。これらの点につきましても
金融におきましてできるだけ私ども弾力的に対処をいたして参りたい。それと共に産業の合理化、近代化を図り、又国際通商
関係を改善して行くという努力、これらと相待ちまして、これがための
金融上の裏付けについて遺憾のないように処して参りたい所存でおるわけであります。
次に、これから年末に掛けての
金融の見通しでありますが、年末通貨の大体血はどの
程度になるかと申しますと、現在までの推移等から、大体年末におきましての発行局は五千六百億円台で越年をすることに相成るかと思います。御承知の
通り通貨の発行高の一番高いのは年末ではないのでありまして、大体三十日頃に出て来るわけでありますが、このピークが恐らく六千億若干超える
程度ではないかというふうに見ております。これから年末に掛けまして先ほどもお話がありましたように相当供米代金その他の
関係で国庫の支出が相当
伸びて参ります見通しであります。それらの
関係から一般的には相当
資金というものが国庫のルートを通して出て参るように見受けられますが、特定の部門におきましては、やはり中小企業等は必ずしもこれらの通貨の回流が十分に滲透しない面等につきましては、私どもとしては年末に掛けて今後の推移を見まして、弾力的な措置を講じて参らなければならんと考えております。なお今度の
補正予算案に計上されておりまする
国民金融公庫、或いは商工中金、それらに対する
資金が
国会の
予算の通過によりまして支出できるようになりますれば、成るべく早期にこれらを放出して参りたい、又
開発銀行が見返
資金から引継ぎました中小
金融に対する
資金につきましても、年末に掛けてできるだけ早期にこれを放出するようにいたして参りたい。かように考えておる次第であります。
次に、
金融政策と申しますか
金融行政と申しますか、そういつたものの考え方について簡単に触れてみたいと思います。
第一の問題は財政と
金融とを通じて総合的な
資金の需給の調節を図つて行きたい、これは従来からそういう見地に立つてやつて参
つたのでありますが、今後一層そういう立場をはつきりして総合的に見て行きたいというような考え方に立つております。この立場から過去に蓄積されました財政
資金と最近の経済情勢を勘案いたしまして、この際
計画的に放出活用いたして行くという措置が執られて参つておるのであります。その一例は先ほども他の
政府委員から話がありましたように、
資金運用部による三百六十億円の
金融債の引受け、当初考えておりませんでしたのですがを、行うことによつて過去の蓄積
資金をできるだけ経済情勢に合うように
計画的に放出活用して行くという措置を、その見地から考えております。又他の例では先ほども話がありましたように、
指定預金の措置、これは御案内のように時期的な国庫の収支の凸凹を調整する、商工
金融への影響を緩和するという意味で、
指定預金の制度を行
なつて参つておるのであります。現在この
金融が約四百六十億円
程度に上つておるわけであります。こういう制度の活用によりまして、財政と
金融とを通ずる総合的な
資金の調節を図つて参りたいという見地から努力をいたしておる次第であります。
第二の点は、民間の資本蓄積と申しますか、我々の立場から言いますと、狭い意味で資本蓄積と申してもいいのでありますが、そういつたことを更に促進して参らなければならんということ、この点も御案内のように生産の指数は
昭和十年前後の、いわゆる基準
年度と言われております当時に比較いたしまして、すでに一〇〇%を超えておることは御案内の
通りであります。国民所得におきましても、当時の基準
年度に比較いたしまして、実質的な価値に換算いたしまして、すでに当時の
水準を超えておるというところまで参つておるのであります。ただ預貯金その他の
資金で以て現わされる蓄積の状況は、基準
年度に比較いたしまして、勿論これは実質価値に換算いたしての話でありますが、僅かに四〇%に過ぎないというふうな現状に相成つておるわけであります。これらの点から見ましても、日本経済いろいろな困難な点がありますが、一番弱い点は資本の
不足ということが一番弱い点ではないかと私どもは考えておるわけであります。今後資本の蓄積を更に一層促進するために、或いは税制の面において、その他の点におきまして折角一段の努力をいたして参らなければならんというふうに私どもは考えておる次第でございます。
次に、財政による産業投資の促進であります。今申上げましたような資本蓄積を進めても、なお且つ一般の民間の
金融によつて賄い切れない重要なる何と申しますか、投資を要する面がまだ残るわけであります。これらの面に対しましては、財政の許す限りこれらに対する産業投資を促進して参らなければならん。今般の
補正予算につきましても、先ほど他の
政府委員からお話がありましたように、
国民金融公庫、
住宅公庫、それからその他に対する産業投資
資金が計上いたされておるわけであります。勿論十分とは申し得ないのでありますが、財政の許す限りこういう方面への投資の源資を確保するように今後とも努力をいたさなければならんと考えております。
次に、
金融機関の
融資活動でありますが、今申上げました資本蓄積を促進すること、財政
資金の投下ということの二つのことについて努力をいたしましても、なお且つ
資金が十分に余るということは当面考えられないと思います。蓄積された資本の使用と申しますか、これを最も効率的に使つて行くという配慮がどうしても必要であります。従来からそういう
方針で進めて参
つたのでありますが、今後とも不急である、或いは不要である
資金の放出はできるだけ制約をして、重点的な重要な
資金の確保に事を欠かないように今後ともやつて参りたいと考えております。前々司会におい通過いたしました、長期信用銀行の制度が来月から発足することになりました。この制度等を活用することによりまして長期
資金に対する
金融の梗塞をできるだけ緩和して参りたい、これらの
金融機関の活動に私どもは非常に大きな期待を持つて今後やつて参りたいと考えておる次第であります。
次に、
金利の問題について若干申上げて置きたいと思います。
金融政策につきましては、従来から
金融機関の経理の許します限りにおいてできるだけ
金利コストと申しますかコストを引下げる、殊に
金利負担の軽減を図り、公正な国際競争力に耐え得るように企業を仕向けて行くというために、経理の許す限りにおいてできるだけ
金利を引下げ、貸出
金利を引下げる方向に努力をいたして参
つたのであります。
金利に対する考え方は戦後相当変遷を来たしております。当初はインフレーシヨンのさ中でありまして、非常に貸出
金利が高く、従いましてこの貸出
金利を下げるということに努力を向けられたのであります。その後経済が漸次正常の状況に向つて参りますに応じまして、資本の蓄積を促進するという観点から預金の
金利の
引上げということを行
なつて参
つたのであります。最近まで数回に亘つて預金
利子の
引上げを行
なつて参
つたのでありますが、更に最近の情勢を見ますると、経理の余裕のある限り預金の
利子の
引上げにこれを当てるのがいいか、或いは貸出
金利の引下げに当てるのがいいか、この考え方につきましては、この際としてはむしろ貸出
金利の引下げに当てるべきであろうという考え方に立つておるのであります。去る十月に輸出入銀行及び
開発銀行の
金利の引下げを行な
つたのであります。それに伴いまして
政府の
指定預金の
金利も、これも相当
程度引下げました。又一般の銀行の貸出
金利を一率一厘の引下げを行な
つたのであります。今後におきましても
金利全般についての体系的整備を図りながら、企業の
金利負担をできるだけ軽くするように具体的に今後の
金利政策を考えて参りたいということで、全般の経済情勢を睨み合せながら現在検討を加えておる段階であります。
次に、
金融制度の整備の問題であります。この点につきましては平和条約の発効後
金融制度、経済全体の体制の整備ということの一環として、その根幹を成す
金融制度につきましてこれが整備を図つて参らなければならんということで、いろいろな構想の下に検討を加えて参つておるのであります。前前
国会におきましては先ほど申上げましたような長期信用銀行の制度、或いは貸付信託の制度等の創設をいたしたのであります。今後中小企業
金融の制度につきまして、いろいろと更に今後の実情に合うような制度の整備について検討を加えて、又農林
金融の制度、漁業
金融等につきましても、制度の整備について考えて参りたいと考えております。又最近の貿易の状況その他から見まして、貿易
金融の疏通を図り、且つ外貨
資金の有効的な、効率的な活用ということに資しますために、外国為替銀行の強化育成の方途を講じて参りたい。これがために具体的な構想を現在検討中であります。まだ結論に到達いたしておりませんので、これらの問題につきまして結論を得次第又皆様がたの御審議をお願い申上げたいと考えておる次第であります。
非常に雑然と申上げましたが、最近の
金融問題について私どもの考えておりますところを御
説明申上げた次第であります。