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1953-02-27 第15回国会 参議院 本会議 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十七日(金曜日)    午前十時四十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十七号   昭和二十八年二月二十七日    午前十時開議  第一 酒税法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。    〔藤原道子発言の許可を求む〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 藤原道子君。
  5. 藤原道子

    藤原道子君 私はこの際、駐留軍軍人子女及び警察官に対する暴行事件売春行為対策に関する緊急質問動議を提出いたします。
  6. 相馬助治

    相馬助治君 私は只今藤原道子君の動議に賛成いたします。
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 藤原君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。藤原道子君。    〔藤原道子登壇拍手〕〔「しつかりやれ、落ちついて」と呼ぶ者あり〕
  9. 藤原道子

    藤原道子君 私はこの際、駐留軍軍人子女及び警察官に対する暴行事件売春行為対策に関する件につきまして御質問申上げたいと存じます。吉田総理初め各所管大臣より責任ある御答弁をお伺いいたしたいと存じます。  政府は、総理を初めといたしまして、事ごと道義高揚をやかましく主張されておりまするが、一体道義頽廃の根源はどこにありとお考えでありましようか。各地における青少年の特に性犯罪学童桃色遊戯等の取調べの際、彼らは係官に対して、アメリカ兵真似をしたことがなぜ悪いかと反問し、大人の世界に精一杯の抗議をいたしておるのであります。自由の国、民主主義の国、野蕃国日本を指導し、併せて日本の安全を守るために駐留していてくれるのだと教えられ、信じている彼らのこの言葉を、総理を初め大臣方は何とお聞きになるでございましよう。次代の責任を負うてくれる大切な青少年を蝕みつつある不幸な原因を取去ることこそが、先ず絶対に大事なことではないかと存ずるのでございます。悪夢のような戦争によつて占領下の苦しい生活への移行も、吉田政府の言うところの信頼と和解と友愛の講和条約の締結となり、昭和二十七年四月二十八日、いよいよ日本独立国なつたのでございます。ところが、安全保障条約による行政協定によつて日本の全土は端から端まで米軍駐留基地と相成り、これら基地中心といたしまして、国民の想像も付かないところの歓楽街は出現する。経済的貧困から、戦争傷手から、生活を破壊され、或いは米軍擬装恋愛結婚予約不履行等から、乙女の純情を裏切られたり、これらによつて自暴自棄となつて転落した、かわいそうな娘たち、これを食いものにするボスの出現等、全く風紀の紊乱は極度に達しております。勤勉を世界に誇つた青年たちも、基地附近におきましては、勤労意欲頽廃となり、性病はその若い肉体を蝕み、学童は学ぶべき学校さえも失うというような実情にあります。  それから、米軍暴行事件は、昨年十二月まで独立後八カ月間におきまして千八百七十八件を数え、なお泣き寝入りになつておりまする件数は厖大な数であろうと想像されております。宮城県某基地附近におきましては、夜中にキヤンプから飛出して来た米兵が、民家の一軒々々を、女はいないか、女はいないかと、戸を叩いて叫び起すとか、いつやつて来るかとの不安は、男子所用の外出さえもできず、日夜不安に駆られているという事例さえあります。これが一体独立国と言えるでしようか。紳士国を以て任ずる米国民のなすべき所業でありましようか。過日衆議院におきまして我が党の長谷川保氏が沼津事件中心質問されましたとき、政府は、実情を調査し、厳重に抗議をすると言明され、又、米兵の他の頻発したる事件等につきましては、その都度、行政協定によつて処罰されているとの言明でありましたが、私はこの際、これらの暴行事件が如何に取扱われたか、議会を通じて国民の前に曲かにすることを要求いたします。このことは、米軍裁判権があることによつて、どうせ闇から闇へ葬られているのであろうと、最近とみに米軍に対して不信的に反米的に傾きつつある日本国民に、その公平なる処置が示されることこそ、米軍にとつても、その信頼を高め、且つ日米友好に役立つものと信ずるが故にお伺いいたすのであります。即ち、今日まで何件が起訴され、如何なる判決をされたかを明かにされたいのであります。昨年の西多摩における女教師に対する米軍兵士二名の強姦事件判決は、日本側から見まするとき、明かに強姦であるにもかかわらず、凶器を以て脅迫しなかつたとか、或いは又相手方に傷を付けなかつたとか、脣を許したではないかとか、暴力で大男の米兵が口を蔽うたことが明かであるにもかかわらず、これらの理由によりまして和姦と見ての無罪の判決でございました。これらについては、アメリカの習慣から罰するのではなく、又敗戦国女性だからというわけでもなかろうが、日本国民感情を無視し、教師としての立場から、日本女性として必死の勇気を以て抗議したことに対し、明らかに勝者の横車のような感じのする判決に対しましては、何らかの申入れをすること等はできないものでございましようか。独立国らしい道が少しは認められなければ、今後もしばしば問題が起り、その都度日本の民心が米国を離れるのではなかろうかと案じられるのであります。この危険多き弱い女性立場を思いますとき、特にお伺いいたすのでございます。なお、警官が逮捕に際しまして万一発砲したとき、不幸にして射殺等の事態が起りました場合、この責任はどうなるかを、この際、明かにしておきたいと存じます。  曾つてアメリカは、第一次欧州大戦のとき、三百万の青年を動員いたしました。国内におきましては五マイル・ゾーン、十マイル・ゾーンを設定し、五マイル以内には酒場を置かない、十マイル以内には売笑婦を許さないという規定を設けまして、この際、逮捕されました私娼は一万五千名に上つたと言われております。かくて米軍は、その母の手から託されました青年を、その家庭を離れている間、決して墮落させない方針で、彼らを預かつて来たのでございます。更に、彼らが仏国の戦線に向いましたとき、フランス当局米軍司令官に向いまして、貴軍は幾ばくの女子を必要とせらるるかとの問に対しまして、事、米軍に限りその必要なしと言明し、終始それで一貫しております。私は、米軍日本進駐に対し、この尊い母に代つて青年の純潔と健康と堕落から青年守つた米軍をこそ、信頼し、期待していたのであります。併しこの期待はみごとに裏切られました。基地附近の百鬼夜行の有様は、学童の勉学する所まで荒され、幼児さえ米兵行為真似をして遊ぶ状態は、ひとり日本の母を悲しませるのみならず、遠く我が子の上を思うアメリカの妻が、母たちが、若しこの実情を知りましたならば、その歎きと、当局に対する不信と憤りは、どのような結果を招くでありましようか。それとも、アメリカ婦人尊重正義人道とは、アメリカ国内だけであつて、ヨーロツパではそれは紳士道を守るが、アジアの国々においては、その国内法を無視し、何をしてもよい、軍紀も何も通用しないことになつているので、ございましようか。(「それが植民地ですよ」と呼ぶ者あり)婦人解放立場からも、外国事情に明るい外務大臣に特にお伺いいたしたいのでございます。  一九五二年七月二十四日の朝日新聞は、オハラ米国上院議員ラヴエツト国防長官に対し、日本陸軍要員対象とする売春行為が盛んに行われ、これを米憲兵が傍観している旨の日本苦情文を提出して実情調査を要求したのでございます。陸軍当局は七月二十三日、オハラ議員に対し、次のような回答をいたしております。  一、日本売春は数百年来行われており、政府はこれを黙認しておる。  一、若干の地方を除いて、日本取締法規売春禁止よりは性病予防を目的としておる。  一、米軍当局においては売春を行つたり又はこれに関係ある日本人取締管轄権はない。  と言明いたしておるのでございます。売春国である旨を世界に向つて闡明されたのでありますが、日本政府はこれに対して何らか抗議されたかを伺いたいのでございます。  なお、アメリカ国内においてかかる答弁をしておる米軍当局が、日本において真に何らの介入をしていないのでございましようか。昭和二十七年六月二十八日附で第二十四歩兵師団司令官ジヨージ・Wスマイズ少将宮城県知事に対し、昭和二十七年八月十二日附で第三十四連隊司令部司令官グレン・A・フアリス大佐静岡県知事に対しまして、売春問題に対し性病責任を一方的に日本側に押付け、その対策の強化を双方協議の上で樹立することを指示し、なお、その手紙の中におきまして、極東軍最高司令官クラーク大将及び第二十四歩兵師団司令官スミス将軍が、深く個人的関心を寄せ、積極的処置を示唆いたしておる旨を伝え、「師団予防医民事部代表県渉外部公衆衛生予防各課長、国警代表等が集まつて調査的会合を持ち、積極的手段によつて」云々と、その手紙はなお最後におきまして、本件に対して最大の援助を信じてくれと結んでおるのでございます。これが単なる個人的手紙で、果して強制力を持たないで、自由なものかどうかは、言うまでもなく明かなことでありまして、その結果、驚くべき方針がとられて国内法規は無残にも無視されて打ち破られておるのでございます。即ち、接客婦売春常習者に対しましては、二色の、白色と青色の写真貼付の「健康の栞」という売春パスポートが発行されまして……(実物を示す)このようなパスポートが発行されておるのでございます。(「誰が出したのだ」と呼ぶ者あり)或いは又、米軍の協力の結果、このようなパスポートが発行され、而もその業者の家の軒下におきましては、こういう英文と和文による「健康の家」なるものの表示が貼付され、而もそれには、性病検診が終つておる旨、A子、B子等女性の名前が明示されておりますることは、明かに人権蹂躙であり、国内法無視と言わざるを得ないのでございまするが、(「その通り」と呼ぶ者あり)これらに対しまして、或いは行政協定等によつて何らかの申合せをされたのか、(「閣僚諸公よく聞け」と呼ぶ者あり)これらにつきまして、米軍当局地方長官協議で行われておることに対し、政府は如何に考え処置をされるかを伺いたいのでございます。それとも表面に現われていない秘密協定でもあるのか、はつきりした御答弁が伺いたいと思います。殊に、行政協定事項ならば、検診等に要する莫大な費用の点でも助かるのでございますが、表面我れ関せず、裏面において弱い者をいじめるようなこれらのやり方は、実に非道と言うべく、たださえ不足の県財政はいよいよ苦しく、基地のある地方自治体の苦しみは実に大なるものがあるのであります。米国は他国においてもかかる行為をされているのでしようか。米国会答弁では、日本売春国であり、我れ関せずと声明し、而もフランス進駐当時の態度と併せ考えるとき、日本に対しての侮辱として実に堪えがたい。これでも植民地でないと言い切れるのでございましようか。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手日本にも関係法規はあるはずでございます。七つの法規がある。都道府県古町村の四十一の条例があります。これら日本法律は、如何に守られ、如何に適用されておるかを、はつきり伺わなければなりません。  今日、独立日本といたしまして、その独立と安全を守るために駐留しておるはずの米軍が一日八件以上の暴行事件を起し、なお漸増の傾向である、検察当局は言つておるのでございます。国内法規を無視して、基地設定で、農地海岸等の接収、生活権は脅かされ、学校病院もその所在を無視され、学童の勉学も病者の療養もできず、時に病院演習用の弾丸が飛び込んだり、多くは生活難自暴自棄から転落し、米兵獣慾の餌食となる哀れな日本娘は、その上、混血児を抱えて一層転落の途を辿つておるのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)日本娘が病毒をうつすという抗議を受けることを聞くが、一体佐世保菌というがごとき従来日本に絶対なかつた病菌は、どこの誰がどこから運んでくれたのでございましようか。かかる世相において、道義高揚修身科の復活など生やさしいことで実現するほど甘いものではないと信ずるが、大臣の御所見は如何でございますか。青年、子供を、家庭の純潔を守るために、政府は如何なる売春対策を実行される用意ありや。それから、国連加入が問題となつているとき、若し加入したとして、第二百六十四回国連総会決定事項に対しどのように対処されるか。米兵に対する売春問題はどう解決されるかを伺いたいのでございます。  我々が日本の娘と青年の上を案ずると同じように、アメリカの母も又遠く息子の上を気遣つていることと思う。アメリカ軍当局は、仏国進駐のときと同様、真に青年を母に代つて守るべく軍紀の励行を望みたい。どうしてもそれができないならば、日本女性をこれ以上蹂躙することなく、この際、本国から対象となるべき必要数女性を呼び寄せて、自国の女性によつて性解決をされるよう切に要望したいのであります。(拍手敗戦国とは言え、独立国女性をいつまでも「おもちや」にしていては、紳士の国の体面にもかかわることでございましよう。外相のこれに対する御所見を伺いたいと存じます。  一面、日本におきまして女性転落原因も多くあるが、生活難自暴自棄が特に多いと思う。女子労働者の低賃金、手内職に対する中間搾取による余りにも過少な収入等々も挙げられると思いますが、転落婦人保護更生施設と併せ、これについて労働問題等も十分考えられなければならないと思いますが、労働大臣は如何にお考えでございましようか。  なお、米軍基地保安隊用地として、狭隘な領土が、食糧難の耕地が有無を言わさず取上げられているとき、前述の司令官の命令と見る手紙によつて生れた協議会対策要綱中には、県の部局長は申すに及ばず、教育長県会議員、又国会議会までが顧問として名を連ね、業者のために土地斡旋業者の誘致に協力する旨等規定され、歓楽街設置業者家屋建築のために、農業委員会の議も経ずに耕地はどんどん潰され、供出米の割当に対しましては闇米を買つて納めているという実情でございますが、これらに対して農林大臣は如何なる見解の下に如何なる処置をとられているかを伺いたい。  以上の点につき適切なる対策を今にしてとらざる限り、国民はますます萎縮するか、又は自暴自棄となり、いよいよ道義はすたれ、必然的に反米的にならざるを得ないと思う。日本法律は厳然として日本人の手で守る。アメリカは又、言うごとく民主主義の国、自由の国として、世界人権宣言を実践されてこそ、真に世界平和は実現されると信ずるものでございます。  私は、以上、心からこれを念じつつ、責任ある御答弁を期待いたしまして質問を終りたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎登壇拍手
  10. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) 藤原さんから熱心な御質問がございましたが、駐留軍暴行に関しましては、政府といたしましても誠に遺憾、言語道断のことと考えております。(「それだけじや済まんぞ」「どうするか」と呼ぶ者あり)この具体的なことに関しましてはそれぞれ主管大臣から御答弁申上げたほうが意を尽せると思いますから、そのほうに譲ります。(「全体の態度をどうする」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  11. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えをいたします。  米国におきましては、駐留軍基地から五マイルとか十マイルの範囲内に酒場その他を置かないという規定がありますようですが、日本国内においては勿論日本法律のみが施行されるのでありますから、かかる米国法律が適用されないのは自然であります。従いまして、米国の議院におきまして米陸軍当局には、売春行なつたり又これに関係する日本人取締る権限がないと言うのは、これは当然であります。但し米軍におきましては、その所属する将兵等に対しては、一定の地域に立入りを禁止したり、或いは一定の家に入ることを禁止することは、これ又できるのでありまして、現に各所においてさようなことは行われております。又、逆に日本側町当局等から、この町に全部立入り禁止されては町の繁栄にもかかわるから、一部は結構であるが、全部の立入りは禁止しないようにしてくれというような要請さえある実情であります。従いまして、日本側は勿論でありますが、駐留軍側行政協定の第十六条によりまして日本法律を尊重することは当然であります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)又駐留軍司令部におきましても十分にこの…には意を用いて、しばしば訓令等を出しておりまするし、将兵乱暴等につきましては常に厳重に処罰をいたしております。(「しているのか」「していないから殖えるのだ」と呼ぶ者あり)  なお、売春等取締につきましては行政協定には何ら規定はありません。これは一に、先方先方将兵に対して取締をするのであり、日本側日本側法令等に基いて取締をするわけであります。(「どこが独立だ」と呼ぶ者り)なお、いろいろの事件に対しまして日本側として満足せぬような措置がりました場合には、勿論申入れをいたし、これを是正するようにやつて行きたいと思つております。    〔「それをしていないじやないか」「満足しているのか」「どう思つているのだ」「満足か」「女をそのようにいい加減なことをしてはいけませんよ」と呼ぶ者あり〕    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  12. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 山崎さんにお答え申上げます。(「違うじやないか」「藤原さんですよ」と呼ぶ者あり)  日本側といたしましては、アメリカ兵限つて日本人犯罪者と区別しておることはございません。(「良心を以て答えて下さいよ」と呼ぶ者あり)先ほど沼津事件或いはその他の事件お話がございましたが、そのときも特にアメリカ兵であるからといつて遠慮をしないように言つてあります。中には、勇敢に先方に立ち向いまして捕縛して感謝状をもらつている者もあるのでございます。御指摘の沼津事件におきましても、警官は殴打されましたけれども、直ちにそれを捕えまして、再び捕えまして、一人逃げましたが、目下厳重な捜査をしているというわけでありまして、決して区別をするという観念を持たしておりません。これは言明をいたすことができると思います。又外務大臣からお話がありましたように、アメリカ兵といえども、日本法律に違反したときは、その故を以てアメリカ軍事裁判を受けるのであります。その受けた結果は、合同委員会を通じて外務省にいろいろ報告をして参つておるのでございます。その結果は、ずつと眺めておりますと、日本人が予期しているよりも重くする方針をとつております。  それから、売春行為取締でございますが、これは性病予防という観点だけではやつておりません。御承知のように、刑法や昭和二十二年勅令第九号或いは軽犯罪法、或いは児童福祉法等、いろいろな角度から取締をしておるのでございます。これについてもアメリカ兵に対して例外措置を講じてはならんという方針でやつております。(「健康パスポートはどうするのですか」「文化大臣しつかりしろ」と呼ぶ者あり)  それから、この売春取締の将来の政策でございますが、これはただ犯罪取締るというばかりでなく、これは藤原さんも御承知通りでございますが、広く厚生施設或いは社会福祉のテンポなどと睨み合せてしなければならんので、目下この点は私ども寒心に堪えませんので、関係当局と準備中でございます。(拍手)    〔国務大臣山縣勝見登壇拍手
  13. 山縣勝見

    国務大臣山縣勝見君) お答えを申上げます。  第一点の検診カードに対しての御質問でございましたが、売春行為なり或いは性病等に関しましては、政府は、只今他大臣からもお話のありました通り、何とかしてかような社会悪社会から除去いたしたいという努力は続けて参つたのであります。但し御承知通り性病予防の点から申しましても、風紀の点から申しましても、まだ万全でないことは、これは政府も認めておるのであります。今後ともその努力は続けたいと思いますが、殊に、この駐留軍基地におきまする検診カードにつきましては、厚生省といたしては、これは禁止いたしておる。昭和二十一年以来数回に亘つて都道府県に対して注意を出しております。殊に最近に至つて性病予防或いは伝染病予防全国会議を開きまして、これらの点についても万全を期しており、殊に昨年の十月以来、これらの問題につきましては、外務省中心にして何らかの策を講じたいと思つて協議をいたして参りましたが、最近、合同委員会の下に小委員会を設けて、この問題の解決に当りたいと考えております。  第二点の、いわゆる佐世保菌でありますが、これは只今お話では、日本曾つてない菌が今回駐留軍によつてもたらされたというお話でございましたが、さようでございません。医学上これは日本にも存在いたしたものである。ただ、学術上の認定において、いわゆる駐留軍はこれを軟性下疳と見、日本側においては軟性下疳と認めておりませんので、いわゆる従来の性病範囲に入れるかどうかの認定相違があつたわけであります。但し、認定相違はありますが、只今では性病対策をとつております。生理学上、性病と見るかどうかにつきましては、むしろ学術上の見解相違はありますが、対策はとつております。  第三の、いわゆる性病予防対策でありますが、これは委員会等においても藤原さんにしばしばお話申上げておるのでありますから、詳細は省略いたしますが、先ず以てこれらの性病患者早期発見に努める。いわゆる強制検問診断等により、患者早期発見に努めて早期の医療に尽し、なお又、併せて、低額治療低廉治療をやつて行きたいと思いまして、昭和二十七年度においては一億三千万円、昭和二十八年度においては一億八百万円の予算を計上して、これらの対策を講じております。  第四の、これらの転落婦人に対する援護の問題でありますが、これらに対しましては、只今十七カ所の婦人福祉施設全国に持つて、或いは授産、或いは生活補導、或いは職業補導職業斡旋、これらに努めております。なお、昭和二十八年度の目標といたしましては、大体九百九十人ぐらいを対象といたしまして三千三百万円の予算で以てこれらの対策を講じたいと思つております。  最後お尋ねの、国連加入に際してこれらの売春禁止に対してどういう考え方であるかというお尋ねでありますが、これは恐らく一九四九年の十二月に国連が承認いたしました人身売買及び売春によつて利益を得るものに対する禁止条約であろうと思いますが、これは、この前いつか予算会議においても御答弁を申上げましたが、これは売春そのもの禁止する条約でございませんので、これに加入いたす、いたさぬによつて売春そのもの取締るということには相成らんと思いますけれども、先ほど申上げました通り売春そのもの社会悪でありますから、先ほど犬養大臣お話通り公衆衛生或いは風紀、治安、その他いろいろの点から、総合的に政府としては万全の方策を講じて行きたいと、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇拍手
  14. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) お答えいたします。  農地は非常に大事でありますので、駐留軍用地に関しましてもこれは慎重に取扱つておるわけであります。只今までに合同委員会において要求されたものは大体十五万町歩でありまするが、そのうち約十万町歩がまだ協議が調わないようなわけでございまして私たちといたしましては、成るべく農地を潰さないで、その他の土地で利用を願うようにいたしておるようなわけであります。又、万止むを得ず農地を使用する場合におきましては、これは農民に与える影響が大きいのでございまして、その被害を極力少くするために、私たちの間において要綱を制定いたしまして要綱に基いて処理をいたしておるようなわけであります。(「吉田総理によく話しておけ」と呼ぶ者あり)      —————・—————    〔松浦清一君発言の許可を求む〕
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 松浦清一君。
  16. 松浦清一

    ○松浦清一君 私はこの際、済州島沖における日本人射殺事件に関する緊急質問動議を提出いたします。
  17. 椿繁夫

    ○椿繁夫君 只今の松浦君の動議に賛成をいたします。
  18. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 松浦君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。松浦清一君。    〔松浦清一君登壇拍手
  20. 松浦清一

    ○松浦清一君 私は、本年二月の四日に朝鮮の済州島沖で起りました日本人の漁船船員の射殺事件に関する緊急質問を行いたいと存じます。この事件の概要を申上げますと、二月の四日の八時十分から八時二十分頃に、農林漁区二百八十三区、北緯三十三度三十一分、東経百二十五度五十一分の、これは済州島西方約二十マイルの地点でございますが、この地点で、福岡市にありまする大邦漁業株式会社所有の第一大邦丸、第二大邦丸の両船が操業をいたしておりました際に、韓国漁船の昌運号という船が近づいて参りまして、どうも今までその附近における漁業をやつておりまする際に、しばしば勧告の漁船等と一緒になることがございましたので、同様、漁業に来ておる船だと、こう考えておりました。ところが、約五十メーターばかりの距離にこの昌運号が近づいて参りまして、日本の言葉で、魚はとれるかというようなことを話しかけて参りましたので、別に気にもとめないで、そのまま操業を続けておりましたところが、だんだんその船が二十メートルばかりの距離に近づいて参りまして八時二十分頃に突然その船から発砲を受けまして約五十発ばかりの発砲であつたそうでありますが、あとで調べたところによりますと、十一発の弾丸が第一大邦丸の船橋に命中しておることが判明をいたしたわけであります。その際に、第一大邦丸の漁撈長でありました瀬戸重次郎という人が後頭部左側から貫通銃創を受けまして死亡した事件でございます。問題は、五十数トンの二隻の漁船がこの地点において操業中に、韓国の船から射撃を受けて一人の漁撈長が死んだ。人命も甚だ貴重でございますが、この問題を契機として、現在我が国と韓国との間に、この起つた事実に対する調査の開きがございまして、事実の開きがございまして、非常に大きな国交上の障害になつているということであります。昨年の一月二十八日に韓国の李承晩大統領が、御承知の海洋主権宣言という、俗称李承晩ラインと称されているものを設定をいたしまして、一方的に、国際法上認められない朝鮮の領海と向う側から呼称される一つのラインを設定をして、その中には外国の漁船が入つて漁業をやることを許さないということを李承晩大統領が公表をいたしたわけであります。当時私どもは、この問題を取上げましてここにおられる岡崎外務大臣に対しましても、この厖大な一方的な海洋主権の宣言を韓国の大統領が行なつたことに対して、日本政府はどのような考えと、その不法であることを是正せしめる方法を講ずるのかということをお伺い申上げましたところが、あれは韓国の都合で大統領が公表したものであつて、我々の見解通り国際法上認められないこの種のラインは、速かに韓国側において解消されることを希望するが、若しそれがされないとしても、その線内において日本の漁船が操業することは差支えない、こういうことを言明をされておつたわけであります。この点だけならば、まだよかつたのでありますが、同昨年の九月二十七日に至りまして国連軍の司令官でありまするクラーク大将から、又、この李承晩ラインよりもちよつと範囲は狭いのでございますけれども、防衛水域を設定したという通告を日本側が受けましてから、いよいよ東支那海、黄海方面、朝鮮沖等において操業をいたしておりました多くの日本漁船が、その安全を保障されつつこの海域において操業することが不可能になつて来た。これは困つたことだというので、しばしばその防衛水域内においても、この防衛水域設定の目的というものが、巨済島あたりから、共産主義国の方面から国連軍作戦の妨害になるような諜報が行われたり、或いは密輸が行われたりしているということを防止するためにこの防衛水域を設定したというのが目的だそうでありますから、二の種の目的を持つておらないということが明瞭になつておる日本の漁船の操業は、この防衛水域内においても許されてよいはずではないかという見解を持ちまして、同様、政府もその見解に基いて国連軍或いは韓国に対して交渉を進めておつたようであります。殊に、防衛水域内に入つて操業する日本の漁船は、日本の船であるという標識、即ち日の丸を船橋の両側に書いて、日本漁船であるという証明書を持つて行けばやつても差支えないという政府言明を得て、この第一大邦丸、第二大邦丸はこの区域において操業しておつたわけであります。  さてその問題が起つてから、日本政府は、韓国側の昌運号のやり口に対して、韓国政府に対して口上書を以てこれを抗議しておる。而もその起つた地点が、私どもは、水産・外務・法務合同委員会を二十三日に開きまして、この船長などを証人として喚問して、その当時の事実を調べたわけでありますが、済州島の翰林面というところから十九マイル隔つた地点であつたと、日本側の保安庁の調べでもそうなつておりますし、船員の証言するところによつても、そうなつているにかかわらず、先に新聞で御了承の通り、金公使の声明によりますと、朝鮮の領海、即ち一マイルくらいの地点において操業しておつて、船のほうでは魚がとれるかと言つて心やすく近づいたので安心しておつたというのに、金公使の声明によれば、停船を命じたにかかわらず、それに応ぜずして逃亡しようとしたので発砲したのである、こういうふうに言つて、なお、更にその声明の結論としては、日本は、朝鮮が共産国に対してこれだけ熾烈な戦いをしているにもかかわらず、そのために日本は却つて金儲けをしておるのではないかというようなことまで言つておるのです。この点については、私どもは二十四日に我が党の同僚諸君と一緒に金公使を訪ねて厳重に抗議をいたしましたが、そういう見解の開きから今日この問題が非常に難関に逢着したと言いますか、むずかしい問題になつておる。そこで私は、時間の関係もありますから、今日までの経過に鑑みて、政府質問をしたいことや要望をいたしたいことがございます。  その一点は、基本的に言えば、こうした事件が起るのは、日韓会談というものが停滞をして、漁業問題のみならず、友邦韓国と日本との間に当然取結ばれなければならん外交上の条約が未だにできておらないためであるが、この条約ができていないということは、どういうところに原因があるかということであります。これは外務大臣に伺いたいのでありますが、曾つて李承晩大統領が日本に来られた際に吉田総理と会談をされた。その会談の内容は私は知る由もございませんが、新聞の報道するところによりますと、これを契機として日韓会談が再開せられ、これが好転される兆が見えて来たというとが、新聞によつて報道されておつたにもかかわらず、その後ただ一回の日韓会談も持たれたという話を私どもは聞きません。一体吉田総理と李承晩大統領のこの会談によつて日韓会談再開の話合いができたのか。若しできたとするならば、どのような経過において今日まで進んで来ておるかという点を外務大臣に伺いたい、又友邦韓国と日本との関係がこの問題のために非常に悪化をいたしまして日韓会談再開の妨げになるということは、私ども欲しません。併しながら、この問題について双方の見解の開きがだんだんひどくなつて参りますと、我々の望まない結果が招来しないとも限らない。具体的に申上げますと、今月二十三日の水産・法務・外務合同委員会において、これからの日本漁船の安全な操業を守るにはどうするのかという委員の質問に対して、岡田保安庁政務次官は、簡潔に申上げますと、フリゲート艦でも使つてこれを守つて行くのだということをおつしやつた。続いて一昨日でありましたか、増原次長は、明かに向うの船が日本の漁船に対して危害を加えた際には、これを防衛するためにフリゲート艦を動員するのだということを声明しておられる。韓国の船が日本の漁船の安全に対して危害を加える際に、これを防衛するということは、そうして日本の漁船の操業の安全を守るということは、我々の欲するところでありますが、若し向うが発砲してこれに応戦して日本のフリゲート艦が発砲した、これは艦でなく船舶だそうでありますけれども、発砲したというようなことが起つたら、事態がどのような結果になるかということは、これは私が外務大臣や保安庁長官にお尋ねするまでもなく、事態は国民の希望する反対の方向に悪く発展することが我々は予想されるのです。従つて我々は、向こうが機関銃やその他の小銃で日本の漁船を射撃をして来たときに、武器を以てするに武器を以てこれを防衛してほしいということを我々は希望するのじやない。そういうことの起る前に、その結果起るべき重大な問題の悪化を憂慮するが故に、さようなことをしてその安全を守るというよりも、この際、この事件を契機として起りつつあるこの両国間の不安の状態を一掃して今まで曾つて振わなかつたほどの全精力を傾倒して、外交交渉の方法においてこの問題を解決して、而も将来再びかかる事件が起らないようにやつて欲しいということが我々の念願なんであります。(拍手)それに対して岡崎外相はどのようにお考えになるかということを私は明確に承わつておきたい。  木村保安庁長官に伺いますが、岡田保安庁政務次官、増原次長等が声明している通り、若しそのような事態が起つた場合には、銃撃に対しては、やはり砲を以て、武器を以てこれに応戦しよう、防衛しよう、こういうことを真剣にお考えになつているのかどうかということを伺いたい。  廣川農林大臣に伺いますが、この事件が起りましてから、東支那海、朝鮮沖等における日本の漁業が、今まででも非常に不安定な状態にありましたが、一層不安定、危険な状態になつて、もはや操業ができないのではないかというような状態になつておりますが、将来最もこの問題のよき解決と並行してでなければならんと思いますが、日本の重要な漁場でありまする以西底曳漁業を、どのようにしてその安全を守り、保障して行くというお考えを持つておられるかということを伺いたいと思います。  結論的に申上げますと、どうかこの問題を契機として日韓の親善関係が悪化しないように、各関係大臣の最大至善の努力を払われたいということを希望いたしまして、時間でありますから私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  21. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えをいたします。  只今の御質問の御趣旨には私は全面的に賛成であります。少しく申上げますると、従来日韓間の会談がうまく行きませんでしたのは、主として例の請求権の問題と、この李承晩ラインの問題についての意見が根本的に相違しておつたからであります。併し先般李承晩大統領が見えましたときに我々話をいたしましたが、その結論は、要するに、共産陣営のこちら側で日本と韓国が至急に話合いをして、国交を円滑にする必要ありということの原則を、お互いに了解し合つたのでありまして、その後の空気は、日韓会談再開にだんだん近ずいて来たと考えておりました矢先に、このような事件が起りまして、誠に残念であります。併しながら私は、しばしば申しておる通り、この問題はこの問題として、ちやんとした解決を要することは勿論でありまするけれども、この問題あるが故に根本的な日韓会談が阻害されるようなことのないようにいたしたいと、固く決心をしております。又そういう意味で努力をいたしております。更に、すでに日韓会談の問題につきましては、李承晩大統領が来られて以来も、外務省と、ここにおりまする金公使との間には、数回会見をいたしまして、その下ごしらえをいたしておるのであります。又この事件につきましては、只今お話がありましたように、朝鮮側の声明等が新聞に出ておりまして、これが相互の見解をだんだん開き大きくしまして話が非常にむずかしくなるようなことは面白くないというお話でありましたが、私もその通りだと考えております。で、実は政府側では御指摘のように二回に亘り先方申入れをいたしておりまするが、まだ韓国側からはこれに対する回答が来ておらないのであります。その間に新聞等にいろいろのことが伝えられておりまするが、私は、政府に対する正式な回答があつた上で、これに対する意見を述べるのが適当であり、新聞等に伝えられておりますものは、或いは非常に強硬であるような場合もあり、或いはそうでない場合もありますので、これを一々とらえて意見を述べて却つて相互の見解の開きが大きくなることは好ましくないと思いますので、その点は慎しんでおります。  なお、今後の問題としまして、私どもも、この日韓両国の間に漁船の保護とか漁船の取締ということで不祥事件が起るというようなことは、これはまさしく共産陣営側の狙つておるところでありまして、かかることを起すべきでないのは当然であります。従いまして我々としましては、この問題の解決やら今後の操業の安全を図る上におきましては、随分困難な事情がたくさんあることは承知しておりまするが、忍耐強く外交交渉によりましてこの解決に十分なる努力をする考えでおります。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  22. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  大邦丸事件については誠に遺憾に存じます。元来、漁船の保護につきましては、第一次的に海上保委庁の警備船がこの責任をとることになつておるのであります。申すまでもなく保安庁の警備隊は、海上における人命財産の保護並びに治安の維持について緊急止むを得ざる場合に初めて出動することになつておるのであります。従いまして、本件のような事態が発生いたしましても直ちにこれを出動させるようなことにはならない慎重に考慮して、海上保安庁の警備船では到底対処することができないような事態が発生した場合に、初めて出動することになつておるのであります。将来かような事件の発生いたしました場合においても、あわてふためいてフリゲート艦なんかを出動させるようなことはいたしません。又万一不幸にして相手給が発砲したような場合においても、あらゆる手だてを以てこれの阻止に努めます。昔から、武士は容易に刀を抜くべきものではない、刀を抜く者はこれは卑怯な者とされておるのであります。我が警備隊といたしましても軽々にさような発砲をさせるようなことはいたしません。十分考慮いたしまして対処するつもりであります。(拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇拍手
  23. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) お答えいたします。  この問題は誠に不祥な問題でございまして我が国にとつて大事な漁場であることは御承知通りであります。この漁場の妨害されることは日本の経済に及ぼす影響が非常に大きいのであります。でありまするから、我々といたしましては、外務大臣を助け、又海上保安庁とも相談いたし、そうして円満に漁業ができるような状態にいたしたいと考えますが、この事件によつて妨害され、或いは又今後操業に支障を来たさないように、でき得る限り努力をいたしたいと思います。(拍手)      —————・—————
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、酒税法案、日程第二、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)、  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事伊藤保平君。    〔伊藤保平君登壇拍手
  26. 伊藤保平

    ○伊藤保平君 只今議題となりました酒税法案酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。  先ず酒税法案について申上げまするが、本案は、今次税制改正の一環として、酒税負担の実情に鑑みまして、    〔議長退席、副議長着席〕  酒税税率の引下げを行いますると共に、併せて、現行の酒税法を最近の情勢に即応せしめるため、全文改正を行おうとするものであります。御承知のごとく、酒税の税率及び酒類の価格は今なお相当高きに過ぎておりまして、消費者の税負担を軽減せしめるためにも、又酒類密造を防止する意味においても、この際、酒類の価格を引下げることが望ましいものと思われますので、今回特に大衆的酒類に重点を置いて二割乃至三割程度の引下げを行おうとするものであります。又酒類の大部分が自由販売酒であり、且つ税率も相当引下げられることとなりますし、現行の基本税と加算税の区分を存置する必要がなくなるものと思われますので、この際一本の税率に統合しようとするものであります。更に、酒税を滞納した場合においては利子税を合せて徴収することとし、又酒税の保全を図るため新たに証紙制度を採用することとするほか、製造免許、監督等に関しまして所要の規定を整備しようとするものであります。なお本法の実施期日は、花見季節における特殊な需給関係を考慮し、来る三月一日を予定いたしているものであります。  以上が本案内容の概要でありまするが、本案は衆議院において修正議決されております。修正の要旨を申上げますると、第一点は配給酒の制度を当分の間存置させること。第三点は指定卸売業者に対する加算税の制度を今後二年間存続せしめること。第三点は、免許の取消要件中、国税若しくは地方税の滞納処分を受けた場合とありますのを、酒税に係る滞納処分の場合に限ること。第四点は、雑酒二級中、いわゆる発ぽう酒の税率を向う一ケ年間を限り一石につき一万一千二百五十円と、雑酒二級の税率よりも更に一割程度低い税率を適用することといたしております。  次に、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案について申上げます。  本案は、酒税法の全文改正に伴い、酒税の国税収入に占める地位に鑑みまして、今回、酒税の保全と酒類の取引の安定を図る見地より、酒類製造業者等が組合を組織し、酒類の自主的な需給調整を行うことができることといたしますと共に、酒税の保全のため必要な場合には、政府が酒類製造業者等に対し必要な措置を講ずることができることといたそうとするものであります。本案内容の大要を申上げますと、第一に、酒類製造業者又は販売業者は、大蔵大臣の認可を受け、原則として税務署の管轄区域をその地区として、酒類の種類別、卸売小売別に、それぞれ法人格を有する酒造組合又は酒販組合を組織することができることを規定いたそうとするものであります。第二に、組合は、政府の行う酒税の保全措置に協力するほか、酒類の需給が均衡を失したことにより、酒類の代金の回収が遅れる等のため、酒税の納付が困難となり、又は困難となる虞れがあると認められる場合は、組合員に対し、酒類の製造石数、販売石数或いは価格に関する規制等を行うことができることを規定いたそうとするものであります。なお、この規定の実施につきましては、慎重を期する意味においてあらかじめ公正取引委員会の同意を得て、大蔵大臣が認可することといたしております。第三に、単位組合は都道府県ごとに連合会を、連合会は更に中央会を組織することができることとし、概ね単位組合の事業に準じて、その総合調整等を行うことを規定いたそうとするものであります。更に、本法の実施期日は、酒税法の改正と同様、来る三月一日から施行する予定になつております。なお、本案は衆議院においで修正議決されたものでありまして、その要旨は、業界の現状並びに将来に鑑みまして、組合の円滑なる運営を期する見地より、組合が特別議決を要する第三十八条の規定中において石数を加味し、特に定款で定められた場合には、石数の三分の一以上の議決を要することとすることができるようにいたしております。  両案の審議に当つては熱心なる質疑応答が交わされたのでありますが、その詳細は速記録により御承知願いたいと存じます。  かくて質疑を終結し、討論に入り、伊藤委員より、「今回の減税措置には賛意を表するが、酒類別に均衡を欠く点が見られること、又供給過剰となることが懸念されること、及び業者のマージンの引下げが多きに過ぐるため、延いては酒税の保全を困難ならしめること等が考えられるから、当局の適切なる善処を要望する」との希望を附して、両案に対し賛成意見を述べ、堀木委員より、「社会政策的な見地に立つて行われた今回の減税措置は一応妥当と思うが、現今の食糧事情に鑑み、酒税収入本位より脱却して、日本経済の総合的観点に立脚した方針を樹立すべきである」との希望を附して、両案に対する賛成意見が述べられ、菊川委員より、「勤労大衆の生活を豊かにすることについては異論はないが、飲酒の及ぼす悪影響若しくは食糧事情を考慮すれば、その調整に当つて慎重を期すべきであり、又免許制度にかかわる不正行為についても十分監視すべきである。このほか労務者に対して安い価格の酒を提供し得る専用施設を設置すべきである」等の意見を附して、両案に対する賛成意見が述べられ、次いで黒田委員より、「酒税法案については更に一層の税率の引下げを要望する。酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案については、指定販売業者に対する加算税の制度の存続期間は一カ年で十分その目的を達成し得るものと確信するが、将来卸売業者との調整は慎重に配慮されたい」との希望を附して、両案に対する賛成意見が述べられ、次いで松永委員より、「税率の引下げは今後も実施すべきであり、又日本経済の現状においては、酒造の造石を図るよりは米麦の増産による食糧の確保を先決問題として解決すべきであると考えるが、一応希望を附して両案に賛成する」との意見が述べられました。  討論を終り、両案についでそれぞれ採決の結果、全会一致を以て衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  右御報告申上げます。(拍手
  27. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  28. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決されました。      —————・—————
  29. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 内閣から、昨日、警察法案が本院に予備審査のため送付せられました。本案につきましては、特に本会議において内閣よりその趣旨説明を聴取する必要がある旨の議院運営委員会の決定でございました。この際、本案につき国務大臣の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。犬養国務大臣。    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  31. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 今回提出いたしました警察法案につきまして、その提案の理由及びその要点を御説明いたします。  現在の警察制度は、占領下の初期におきまして、警察民主化の方策として急激に改革が行われた結果生れたものでありまして、確かに従前の警察に見られなかつた民主的な美点を有してはおりますが、他面において現下の我が国の実情に適しない部分のあるのは否めない事実であります。即ち、現在の制度は国家地方警察と自治体警察の二本建となつており、その組織はおのおの管轄区域を異にしておりますが、前者は国家的性格に過ぎて自治的要素を欠如し、後者は完全自治に過ぎて国家的性格を欠如し、両者それぞれ長短を兼ね有しているのであります。故に、忌憚なく申せば、この制度自身が警察本来の性格と運営にとつて必ずしも適合せざるものを内蔵している次第であります。且つ、これまでも、自治体警察においても、国家地方警察においても、相互間の連絡調整のためにはおのおのよく努めて参つたのではありますが、何と申しても、その管轄区域の相違より生ずる盲点の存在は、世人のすでに指摘するところでありました。且つ中小自治体警察は、その単位が小さきに失し、ために効率的運営に欠くところのあつたことも、これ又認めざるを得なかつたのであります。更に、国の治安の責任の所在につきましては、現制度下においては極めて不明確でありまして、この点に関する限り、現下の警察組織は、かの民主主義の所産である責任内閣制度の精神から見て徹底せざるものがあるのであります。それ故、これらの点につきましては、現行制度実施後、過去五カ年有余の間にも、数度に亘つて警察法の一部改正が行われたのでありますが、その後における我が国の治安情勢は、これらの弱点を内蔵する警察制度の根本的改正が要請せられるに至つているのでありまして政府におきましては、過般来、慎重に検討を重ねました結果、民主警察の美点を保持しつつ、上述の不備を是正し、以て治安の確保と行政責任の明確化を図るため、ここにこの法律案を提出し、御審議を願う次第であります。(「ちつとも保持されていないぞ」と呼ぶ者あり)  この法律案の主なる点を申上げますと次の通りであります。  即ち、第一には、警察による治安確保についての政府責任を明かにするため、国務大臣を以て充つるところの警察長官を置きましたが、この長官の権限がともすれば過大に陥らぬよう、その所掌する職務はこれを法律に明記して制限を加えたのみならず、長官の責務は、飽くまで不偏不党、且つ公平中正を旨とすべきことを規定して、仮にも政治警察の弊害の生ぜざるよう、厳格なる保障の措置を講じたのであります。且つ他方において現在の国家公安委員会に代るところの国家公安監理会は、警察が時の政治的勢力に左右せらるる事のなきよう、常時、監視助言の機関としてその職責を果すこととなつております。  第二には、先ほど申述べました自治体警察、国家地方警察の二本建の弊を除去し、両者それぞれの組織に内包する欠陥を是正せんがために、国家地方警察、自治体警察は、共にこれを廃止して、新たに都道府県単位の都道府県警察を設け、これによつて、従来に比して一層効率的な民主警察の運営を図ることといたしました。なお、この場合、人口七十万以上の大都市については、それが実質上、府県と同様の規模を有しております点に鑑みまして、若しもこれらの市が希望いたします場合には、都道府県警察と同一の性格を有する市警察を置き得る途を開いたのであります。  第三に、都道府県警察については、その民主的な運営を保障するため、その管理を都道府県公安委員会に委ねましたが、一方、公安委員は常時警察長の考課を記してこれを中央に具申し、且つ警察長並びに警察官に対して罷免懲戒の勧告権を有することとなつたのであります。(「人事院の勧告をどうした」と呼ぶ者あり)且つこの公安委員の構成には変更を加えて、地方自治の機関との連繋を一層緊密にしましたが、警察署等の設置その他、都道府県警察に関する地方的事項は、挙げてこれを都道府県条例に委ねるものといたしました。而してその職員の大多数は地方公務員とし、警察に要する経費は、国家的な警察事務を除いてすべて都道府県の負担とする等、能う限り自治体警察の特徴と美点とを具備せしむることといたしました。この精神よりいたしまして、個々の犯罪捜査の指揮のごときは、中央の警察庁はこれを都道府県警察の職務に一切を委ねるべきものでありまして、政府は今般この点につき特に其の意の存するところを明かに示したのであります。  以上の諸点が改正案の骨子でありますが、この制度が実施される結果となりますれば、警察官の数において約一割三分程度を減少し、而も機構の単一化によつて、従前に比して遥かに効率を挙ぐべきことは論を待ちません。(「誰の警察だ」と呼ぶ者あり)なお、この改正が実施されます場合には、国家地方警察、自治体警察ともに、その職員の身分に変更を生ずる結果となりますが、この場合にも努めて新らしい警察機構への受入れを円滑にし、俸給その他の給与、恩給等についても、特に従来の自治体警察の職員であつた者の既得の立場を尊重し、少しでも不利益な結果を招来せぬよう、万全の配慮を払う所存であります。(「それは本当ですか」と呼ぶ者あり)而して、従来の国家地方警察、市町村の自治体警察がその用に供しておりました財産、物品等につきましても、このたびの切替に伴う円滑な処理が行われて新らしい都道府県警察の仕事に支障を来たすことのないよう十分の措置を講ずる考えであります。  而して本法案は、幸いに成立いたしました暁は、十月一日を目途として施行の日を政令で定めたいと存じますが、上述のごとく円満なる引継ぎの万全を期したるため、二十八年度中は、都道府県警察に要する経費は、従前通りの負担区分に従つて、即ち、従前の国家地方警察の組織に属するものについては国が、市町村警察の組織に属するものについては市町村が、従前通り支弁することとし、二十八年度中は、この法律施行によつて、国、都道府県、府町村間に負担の変更を来たさないことといたしたのであります。  以上、本法律案提出の理由及びその内容の概要を申上げた次第であります。何とぞ御審議あらんことをお願いする次第であります。(拍手
  32. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 只今国務大臣の趣旨説明に対し質疑の通告がございますが、議事の都合により午後一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時四十六分開議
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  警察法案の趣旨説明に対する質疑を行います。順次発言を許します。吉川末次郎君。    〔吉川末次郎君登壇拍手
  34. 吉川末次郎

    ○吉川末次郎君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、警察法案に対する若干の質問政府に試みたいと思うのでありまするが、先ず第一に吉田内閣総理大臣お尋ねいたしたいと思うのであります。  吉田総理大臣は、先にその施政方針演説におきまして、現行警察法の改正を約束され、今その法案の御提出を見たのでありますが、この法案を見まして先ず第一に私たちに痛感させられますことは、それが余りにも多く戦前の警察制度への復帰であるということでございます。政府及び総理は、或いは旧弊の復活は戒めるとか、或いは民主警察の美点はこれを保持しつつとか、頻りに言つておいでになるのでありまするが、私の見るところ、これは単なる口先ばかりのお体裁をお作りになつているのでありまして、その実際は極めて露骨な旧警察制度への復元にほかならないことをば感じさせられるのであります。即ち、例えて申しますれば、今回のこの法案に盛られておりまする言葉の中で、警察庁長官という言葉をば昔の内務大臣に、次長とありまするのをば警保局長に、道府県警察長とありまするのは道府県の警察部長に読み替えるといたしましよう。そのことだけをいたしましても、完全にそのまま、内務大臣を頂点といたしまして全国に一糸乱れざるところの統制の網を張りめぐらしておりました戦争前の旧日本の警察制度の復活であるということは、極めて明かであるかと思うのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)この旧制度につきまして、曾つてマッカーサー元帥は言つておるのであります。「一般大衆の統制外に立つ行政長官を長とする、高度に中央集権化された警察官僚制を設置し、これを維持することは、日本の封建的過去においてそうであつたごとく、近代全体主義的独裁制の顕著な特徴である。」又「戦前十ヶ年間における日本軍閥の最も強大なる武器は、中央政府都道府県庁をも含めて行使した思想警察及び憲兵隊に対する絶対的な権力であつた。」併し「民主的社会において公安の維持を司る警察力というものは、究極において、上から課せられた人民に対する抑圧的統制をもつてしてはその最大限の力を発揮し得るものでなく、却つて、人民の公僕として、また人民に直接責任を負うという関係において始めて無限の力を得る」ものであると、殆んど完膚なきまでに痛烈にマツカーサー元帥は旧日本の警察制度をば批判し、その短所、欠陥を余すところなく指摘しているのであります。あえて、何も、マッカーサー元帥の言うところであるからと言つて、これに盲従する必要はありませんが、この日本の旧警察制度に対する元帥の批判というものは、誠に正鵠を得ているというこの一事だけにつきましては、私はマッカーサー元帥の言を尊重したいと考えているものであります。そのように、旧日本の警察制度というものは、いわば札付きの悪制度であると考えているのでありまするが、これを今、政府は、今日に至つて復活しようという意図において行われている。そこで私は吉田内閣総理大臣にお伺いいたしたいのでありまするが、あなたの信頼せられておつたところの、このマツカーサー元帥の日本の警察制度に対する批判について、吉田内閣総理大臣はどのようにお考えになつているか。又その指摘せられたところの古き日本の警察制度の欠陥というものは、この法案の中に再び繰返されているとお考えにならないかどうかということに対する御答弁を先ず承わりたいのであります。    〔議長退席、副議長着席〕  第二に、吉田内閣総理大臣に更にお伺いいたしたいことは、この我々の前に提出されたる改正法案におきまして、現行警察法の前文というものが削除廃棄されておるということであります。前文は、言うまでもなく、それが付されておりまするところの法律の全体的の精神をば現わしたものであると思うのでありまするが、なぜ、あの前文を廃棄し、又ここに新らしく法案を出されるならば、それに代るところの前文を付さなかつたのであるか。そこで私は吉田総理にお伺いいたしたいことは、このように現行警察法の前文を全く排除せられたということは、その前文にこのようなことが書かれておる。それは皆様御承知のことであると思いまするが、即ち「国民のために人間の自由の理想を保障する日本国憲法の精神に従い、又、地方自治の真義を推進する観点から、国会は、秩序を維持し、法令の執行を強化し、個人と社会責任の自覚を通じて人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。」現行警察法の日本憲法と結び付いたところの民主的な精神というものが、ここに遺憾なく私は短かい文章の中に現わされておると思うのであります。このようなこの前文を、この改正案において全く廃棄せられたのは、この前文の意味をば否認せられたものと解釈してよいかどうか。或いは又この前文のどこの点がこれを削除せなければならないほど悪い所があるという見解においで行われたのであるかどうかという、この前文廃棄の理由を、吉田内閣総理大臣から、私はお答えが願いたいと思うのであります。次に、私は、今申上げた質問の内容と関連いたしまして、主務大臣でありまする犬養法務大臣に御質問いたしたいと思うのでありまするが、犬養さんの言葉といたしまして本年二月十四日の読売新聞の記事の中に引用されておるところによりまするというと、犬養さんの言といたしまして、「この改正で、戦後築かれた英米法の考え方が再びドイツ法の能率本位に帰ろうとしている」と言つておられるのであります。(「官僚国家だよ」と呼ぶ者あり)とかく、敗戦後のいろいろなこの民主的な改革をば、保守主義者は、これは行過ぎである、これを是正するのであるというような言葉を吐くのでありまするが、それらの人は、私の見るところでは、新らしい憲法の精神を理解するところの能力がない。そうして過去の憲法、明治憲法、それは我々は法律学生の時代において不磨の大典であると、極めて有難い御宣託を付して教えられたのでありまするけれども、その実、それは滅び去つたところのドイツ連邦国の主盟国であるプロイセン王国の憲法を伊藤公が教えられて、これを翻訳して、いわゆる日本帝国憲法といたしたに過ぎないものであるということは、日本法律学生はこれは多く教えられないのでありまするけれども、世界列国の憲法学者や政治学者が、つとに熟知いたしておることであります。(「いつも同じことだ、少し変つたことを言いなさい」と呼ぶ者あり)そこで、私は犬養さんにお尋ねいたしたいのでありまするが、英米風の警察制度をば、やめて、ドイツ法のこの能率本位の警察制度をこの法案によつて打ち立てると言うておられるのでありまするが、実際におけるところの新憲法以前の日本法律制度その他一切の文物というものは、明治憲法と結び付いたところの考え方によつて、すべて亡国プロイセンをば模範として作られて来たものであるのであります。その犬養さんの言われるところのドイツ風の警察制度というのは、いつの時代のドイツを指して犬養さんは言つておいでになるか。第一次欧州大戦前のカイゼル・ウイルヘルム二世時代のドイツ警察を指していらつしやるのか。或いはそれよりも古く、伊藤公や山県公がドイツに留学いたしました時代の十九世紀のドイツを指していらつしやつたか。或いは第一次欧州大戦によつて国破れたるところのこのワイマール憲法下のドイツの警察制度を指していらつしやるのか。或いは又、フアシスト、ヒットラー治下のナチスの警察制度を指していらつしやるのか。ただ漫然と、ドイツと日本人が言つておりまするときには、その考え方において、その制度文物において、多くは明治憲法と結び付いたところの、普仏戦争に勝ち、普墺戦争に勝つて、勢力隆々として、而もその背後においては、資本主義の発達において列国よりも遅れて、極めて多くの封建的な性質を遺存いたしておりましたところのあの古きドイツ、第一次欧州大戦前のドイツに七十年の間、明治憲法と結び付いて、日本人は何事もドイツに学べと教えられて来たところの仕きたり的な観念から、その亡国ドイツ、軍国主義ドイツの制度文物一切のものを頭の中にしみ込まされて、これが何か固有の日本的なものであるかのような錯覚に陥つている人が極めて多く、特に自由党を中心とするような保守派や封建主義者に極めて多いということを我々は知らなければならんのであります。(拍手)いつの時代を指されるのであるか、いつのドイツの警察制度を指されるのであるか、お答えを願いたい。そこで、若し犬養さんが、今日のドイツ、東ドイツと西ドイツに分れておりまするが、東ドイツはこれは別といたしまして西ドイツの警察制度というものをば若し指していらつしやるならば、私は指していらつしやらない、そういうことをお知りにならないと思うのでありまするが、(笑声)国会の立法考査局の専門員でありまする土屋正三君という、日本の警察行政についてのこれは一流の専門家であります、この人が、最近の「警察研究」というところの専門の雑誌に四回に亘つて連載いたしておりまするところの「西独の警察」というところの論文紹介を見ますると、今日の第二次欧州大戦後の西ドイツの警察制度というものは、犬養さんの言うところの、英米風の、自由主義的な、民主主義的な、自治体警察を中心といたしました現行日本の警察制度と殆んど同じところの警察制度が行われておるのであります。(「一遍読んで来い」と呼ぶ者あり)これをどう犬養さんはお考えになつておるのかどうか。この土屋君の、日本一流の警察行政の専門家の西独の警察についての紹介をまだお読みにならないならば、御一読願いたい。私はそれを申上げておきたい。御答弁を願いたいと思うのであります。  又これはむしろデテールの問題に亘るのでありまするが、主務大臣でありまするからお尋ねしたいと思いますが、この法案の中に皇宮警察のことを規定いたしておられます。もとより皇宮警察云々ということの極めて簡単なる文句は現行警察制度の中にあるのでありまするが、いろいろと具体的なその内容について新らしいことが今度の法律案の中に規定されておるのであります。皇宮護衛官、或いはそれがための学校であるというような、いろいろの詳細なる皇宮警察に対するところの規定が新たにここに加えられておるのでありまするが、特にこのような規定を設けるところの必要がどこから来るのであるかということについて一つ主務大臣から御答弁を願いたいと思うのであります。  もう一つ主務大臣お尋ねいたしたいことは、本法案の第一条には、前に申しましたように、申訳的に「民主的理念を基調とする」というようなことが書いてありまするが、第二十二条の法案の条文を見ますると、警察庁長官の権限が公正に行使されているかどうかを監視して、長官に対して必要と認める勧告助言を行うというものとして、国家公安委員に代る国家公安監理会というものが設けられることになつておりますることは、先ほどの犬養法相の提案理由説明の中にもあつたところであります。ところが、この法案の第二十八条を見ますると、この国家公安委員会に代る公安監理会の実際上の事務を行いまするもの、いわば事務局であります、そのものは、警察庁長官官房においてこれを行うということになつておるのであります。従つて、この公安監理会の事務局員というものは、警察庁長官であるところの国務大臣と併せて、この条文に現われていまするように、監視的な役割をしなければならないところの国家公安監理会との二つに、一つの機関、一つの人間が両属いたすことになるのであります。このようにいたしまして、どうして国家公安監理会の独立的な監視的な立場を保持することができるでありましようか。そこに、政府が今度の警察制度の改正は決して非民主的なものではないということを言つておることが、全く私が申しまするように、その事実において副わない口先ばかりのものであるということが、完全に露呈されておると思うのでありまするが、これについての御答弁を得たいと思うのであります。  なお主務大臣お尋ねいたしておきたいことは、これは先ほど申しましたように、事実上、現行法の廃棄であります。その初まりの所に、これは「全部を改正する。」ということが書いてありまするが、全部を改正するものでありまするならば、その例は日本の憲法等にも見られまするが、ああした改正の仕方というものは、私はむしろ立法形式としては変則なものであると思うのであります。このように、全然違つた新らしいところの警察法をここに提案されたのでありまするから、それならば、ただ新警察法案というものは、こういうものであるということを、だんだんと書き流して来まして、初まりにこの法案にありまするように「全部を改正する。」というようなことを言わないで、最後の所に持つてつて「現行警察法はこれを廃棄する。」というような形に表白をおしになることが、立法形式上、私はいいのじやないかと思うのでありますが、これは大したことではないかも知れませんけれども、そこに私は又政府のごまかし的な心理があると思いまするので、御答弁を願いたいと思うのであります。  犬養さんに対する質問委員会で更にいろいろ申上げる機会があると思いますので、自治庁長官である本多さんに今度はお伺いをいたしたいと思うのであります。時間が余りありませんから、ちよつと個条書き的に簡単に申上げてみたいと思うのでありますが、この重大なるところの警察制度の改革をするに当りまして、現在、地方行政制度の全般的な再検討をするために、地方制度調査会というものが法律に基いて設置されて、今日も首相官邸においてその会議が行われておるのであります。丁度今の時間でありまするから、私も委員の一人として行かなければならんのでありまするが、この演壇に立つておりまするために行くことができませんが、日本地方行政制度全般の再検討をするということのために、各方面の権威者を集めて折角作り上げておるこの地方制度調査会というものに、この重大なる地方行政制度の一環であるところの警察法の改正というものをば、なぜその会議の議にお付しにならないのか。その議に付して、その議決を経た後において、若し警察法の改正案を国会にお出しになるならば、然る後においてこれを行われるということが常識的でなければならんと思うのでありまするが、なぜそんなに急いで、なぜその折角の地方制度調査会を無視して急速この杜撰なるところの反動的な警察法の改正案を政府が出されたのであるか。その理由を本多自治庁長官から私は承わりたいと思うのであります。(「総理に聞け」と呼ぶ者あり)  第二は、本法案の第五十一条を見まするというと、大都市、それは人口七十万以上の大都市、即ち五大都市を指していると思うのでありますが、その五大都市においての警察行政を主管いたしまするところの警視以上の高級の警察官、これを国家公務員といたしまして、国費支弁によつてこれを補い、これを配置するということが規定されているのであります。私は日本の市政の歴史の上におきまして、府県におきましては、知事或いは部長その他の上級の府県の役人というものが官吏であつた時代もありまするけれども、市役所の市政に従事いたしまするところの公務員が、吏員が、国によつて支弁されるところの官吏であつた例を不幸にして私は知らないのであります。本多長官は久しく東京市会議員をせられ、東京府会議員をせられて、東京の市政にも参加せられたのでありますが、こういうような前例をここに新らしく作るということは、都市の持つているところの自治権を明らかに侵害するものであると私は考えますが、それに対する御所見を承わりたいと思うのであります。  又その次に、同条には、五大都市をば実質上一つの県とみなすというところの法文が入つておりますが、これは官治的な特別市制をこれらの五大都市に行わんとせられるところの前提と世間には解釈されているのでありますが、果してその通りであるかどうかということについての御答弁が願いたいのであります。以上のことにつきまして、本多さんの御答弁が得たいと思うのであります。  最後に、木村保安庁長官にお尋ねいたしておきたいと思うのでありますが、本警察法案は、犬養さんの提案理由説明によりますというと、我が国治安情勢がこれを提出せしめたところの一つの動機であるように御説明があつたのであります。現下日本の治安維持というものが、現行警察法を以てしては不十分であるというところの、この御提案の理由と解釈いたすのでありまするが、それに関連いたしまして、私は、木村さんが御指導になつているところの保安隊、警備隊、それは何のためにあるものであるかということを、私はこの議場において木村さんから明かにして頂きたいと思うのであります。保安隊は戦争をするためにある軍隊なのか、或いは現在の警察力を以てしては保つことのできないところの国内治安保持の、いわゆる先の名でありまする警察予備隊的なもの、ナシヨナル・ポリス・リザーブと言われておつたところの、その警察の補充的な予備力としてあるのか、軍隊として或いは置かれているのかということに対する明白なる御答弁が、これに関達して私はここで得たいと思うのであります。軍隊でなく、保安隊が戦争をするものでなくして警察予備隊的なものであるといたしましたならば、自治体行政の権力的な中枢力でありまする、即ち警察力の民主的な行政管理と運営とが自治体居住民によつて行われるということの方向に居住民を育成して行くということが、日本民主主義の発展のために基本的に必要なことでありまするが、ただその初期の時代において、今日頻りに自治体警察に対して与えられているところの不当なるところの非難である、それが完全になお十分に行われておらんといたしましたならば、その行われていないというところの説を暫らく肯定する立場をとりまするならば、そういう遺憾な点があつたならば、よろしくその欠陥を補充するために、私はこの予備隊というものを考えられなければならん。そうした不十分な、警察民主化の不徹底な、遺憾な点があるならば、これを本当に居住民それ自身によつて民主的に警察を運営することの方向にリードするということこそが、真に民主主義的な見地に立てるところの現下日本の政治家の職責でなければならんと思うが、かかる以上申したことに対しまして、警察力の補充として保安隊が考えられなければならんということと関連いたしまして、この警察法改正に対する木村保安庁長官の御答弁を得たいと思うのであります。  詳しいことは時間がありましたならば再質問するかも知れませんが、更に詳しくいろいろな詳細な点につきましては、これを付議されるところの地方行政委員会において更に御質問する機会があるだろうと思いますので、私の質問は一応これで打切ることといたしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  35. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  旧警察制度に対するマッカーサー元帥の意見については、私はここに批評を差し控えます。併しながら、警察法の改正の目的とするところは、旧警察制度に復帰したいとかいうような考えから出たのではないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)然らば、現警察法と申すか、現在の警察法の前文を削除したのはどういうわけかと言われますが、その削除したゆえんは、その趣意は新警察法の中に取入れてあるのであります。即ち、民主主義、自治主義は、飽くまでもその原則を尊重すると共に、同時に、警察制度を最も能率的に、又責任の所在を明かにして、現在の事態の治安状態に対応する適当な改正を加えたいという趣意から、警察法の改正を企図しているわけであります。これは法案を御覧になれば自然わかることでありまして、現在、警察に自治体警察或いは国家地方警察がありまして、その二本建の機構そのものの上に欠陥があつて、而して能率的でない。現在の治安状況に対応するのには、これを改正する必要を認めて提案いたしたのであります。詳細は主管大臣からお答えをいたします。(拍手、「答弁にならんぞ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  36. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答えいたします。  先ず第一に、英米風的な警察でなくドイツ風的な警察に戻すと言つたようではないか、こういう御質問でございますが、これは間違いでございまして、事のいきさつを御説明申上げます。これは丁度警察法について論議がいろいろ国会の中でありましたときに、或る人は、公安委員会というものはどうせ要らないのじやないかというような話が出ましたので、そのときに、ドイツ風的な考えから言うと、多数の人が話合う委員会というものがどうも頭にぴんと来ないようだけれども、このうまみというものは自分は是非残したい、それは、ドイツの学問をした人から見れば英米的だと言うかも知れないが、公安委員会のうまみ、いわゆるけむつたい後見役という役目は、自分は相当高く買つているんだ、こういう話を新聞の人にしたことがあるのでございます。そういう間違いでございます。で、お話のように、ドイツ的な考え、つまり余り能率ということにだけ頭を集中させますと、つい、それが吉川議員の御心配のような警察国家というようなものになりますから、その抑制機関として、公安委員会というものは依然として残して、そうして罷免懲戒の勧告権まで持たせるということが、けむたい存在の確立になる。こういう考えを私は持つている次第でございます。  それから、その次の皇宮警察のことでございますが、これは、このたびの制度によつて急に大きくしたり、大げさにしたりするのではないのでございまして現行警察法第四条にも国家公安委員会の管理事項として規定されておりまして、国家公安委員会の規則として皇宮警察基本規程というものがあるのでございます。これをただ今度あの欄に移し替えただけのことでございますから、さよう御承知を願いたいと思います。  それから国家公安監理会の事務局が警察庁にあるのはどういうわけだと、こういうことでございますが、これは、ほんの庶務、通知をしたり書類を配つたりする庶務的なことでございまして、権限的なことは扱つておりません。且つ国家公安監理会は警察庁に所属するのではないのでありまして、総理大臣の所轄になつているのであります。つまりその意味は警察長官と対等の地位に置くという意味でありまして、独立して警察長官に対して監視又は勧告助言を行う機関にしておるのでありまして、ただ、事務局で庶務のことを扱わせるという意味でありますから、これも御了承を願いたいと思います。  次に、全部改正したじやないか——本法案は現行制度の美点を保持して不適当な所を改めようというのでありまして、成るほど全部改正の形式をとりましたが、現行警察法の民主的な精神は、今申上げたように、これはやはり尊重して残したいとするものでありましてその意味で新警察法の樹立という考え方を持つていないのでありまして、全部改正の場合、最近はすべてこの方式をとつておりまして全部改正の場合には新刑事訴訟法もこの形式をとつておるのでございます。さよう御了承を願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  37. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 吉川君にお答えいたします。  保安隊は、保安庁法第四条、第六十一条に明記してあるごとく、普通警察力を以てしては到底処置のできない非常事態に対処するために設けられたものであります。従いまして、普通の警察と保安隊と両々相待つて日本国内の平和と秩序を保つて行くものと、我々はこう考えているのであります。(拍手)    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  38. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 御質問の第一は、なぜ地方制度調査会に警察制度の改正案を諮問しなかつたかという、こういう御意見であつたと承わつておりまするが、これは只今所管大臣から述べられました通り、治安確保の万全を期する見地から、この法案を早く制定する必要があつたという事情でございます。但し地方制度調査会につきましては、誠に短かい時間ではありましたけれども、開会中でございましたので、委員各位の個々の意見は相当お伺いいたしまして、参考といたした次第でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)全く案件の緊急性によることでございまして、この改正が実施されましても、地方制度調査会はこれに拘束されることなく、更に総合的な見地から妥当な御答申を頂けることと考えております。(拍手)  次に、五大市が自治警察を今日持つておるのでございますが、これが府県単位と同列の警察ということになれば、そこの警察に国家公務員が配属されるという……、ちよつと違いましたか……そういう関係で自治の侵害になりやしないかという趣旨だつたと思います。成るほど都市の警察ではございますけれども、今度の制度によりますと、府県と並列の警察でございまして、府県の場合にも同じことになると思います。今回国家公務員を配属いたしますのは、今回の警察の性格によることでございまして、これは今回の警察制度が、自治警を廃し、国家地方警察を廃し、中央との連絡も密にし、更に又地方分権の趣旨にも即するような性格を持たせております点から出て来るものでございまして、こういう制度をとりましても、今日の制度に何ら違反するところはないと考えております。(「始末に困つてこじ付けたんだろう」と呼ぶ者あり)  更にもう一点は、初め五大都市に府県並列の警察制度を認めることは、特別市制の考えと同じではないかという趣旨の御質問であつたと承わつておりますが、御承知通り五大都市は、今日市部のみで立派に自治警察をやつているのでございます。この現在市部で警察を担当しているというこの沿革と、更に五大市に今回認められまする……府県警察と人口その他の規模において同程度以上のものでございますので、その市において議決をして希望するならば、ここに府県並列の警察を作ることは適当だろうと考えたのでございます。特別市制の問題と比較してどう違うかと申しますと、特別市制について論ぜられました通り、府県の中にある大都市のみが独立いたしますと、財源調整ということに非常に困難になるのでございますが、警察行政のみに限定して現在も市は市でやつているというものをそのまま実行するという場合、その財源調整の困難性というものは、特別市制の場合とは非常な差異があると考えるのでございます。(拍手)     —————————————
  39. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 中山福藏君。    〔中山福藏君登壇拍手
  40. 中山福藏

    ○中山福藏君 私は只今上程されております警察法改正法律案につきまして、二、三の疑点を質しておきたいと思うのであります。  第一点は、総理から御答弁をお願いいたします。大体、国家というものが時と共に伸びて行きまするならば、伸びるに従つて新らしい着物が必要であると思うのであります。いわゆる国家は、「たけのこ」が育つように、竹の皮は時代と共に剥げ去つて新らしい姿を現わして来るが、国家の成長も又これと同じでありまして、大陸法或いは英米式というような警察制度であろうがなかろうが、どういう着物が日本に一番適しているかということが、政治家として最も考えなければならん重要な点だと私は思つております。こういう見地から私の議論進めて行きたいと思うのでありますが、旧憲法時代におきましては何が一番私ども国民の迷惑となつたかというと、官僚の横暴ということであつたのであります。中央集権的な官僚の横暴というものがどれくらい民衆の生活に大影響を及ぼしたかということは、あえてこの壇上において喋々することを要しないのであります。即ち、旧憲法時代には内務省という役所がございまして内務大臣の下に警保局長があり、警視総監があり、地方の警察部長があつて、各地における警察署、派出所、すべて内務大臣の命令一下自由自在にこれを動かしておつたのであります。この大きな力というものは、七百年の間、精神的に奴隷生活をいたしておりました日本の人間を弾圧するには、持つて来いの道具であつたのであります。その虚に乗じて行われたのがいわゆる人種蹂躪の姿、この官僚の勢力に便乗した軍部というものが遂に今日の痛ましい日本の姿を招来したということは、これ又私がかれこれ申上げる必要はないのであります。従つて、この法律案を立派な法律に仕上げるには、過去というもの、民族性というものに十分な探りを入れて、これを検討してみる必要があるのじやないか。日本国民性というのは、只今申しましたように、お上には頭が上らんという習性を持つておる。その弱点に付け込んで強力な指導権というものが確立されるならば恐るべき結果が生ずるということは、歴史を読んだら誰でもこれはわかることだ。この痛ましい過去の事実に鑑みて、今日新憲法の下に私どもが憲法第十一条に保障されたる基本的人権の確立を図らんとするならば、又おのずから警察制度というものもこの線に沿つて来なければならん。(「その通り」と呼ぶ者あり)今回この改正案が議会を通過いたしまするというと、内閣総理大臣の下には誠に恐るべき三つの大権力というものが備つて来るのであります。その一つは、いわゆる保安庁長官というものが総理大臣の指揮命令一下如何なることでも、できる立場にある。又法務大臣の下に検察庁というものが自由自在に動かせるのであります。このたび警察庁長官というものができましたならば、次長、警視総監は勿論、地方の警察部長、これ又同じく指揮系統というものが整然としてでき上つて来るのであります。従来内務省を通じて、例えば選挙のような場合に、国務大臣たる警察庁長官の所属する党の代議士をたくさん選出せんとする場合には、過去においては選挙の神様といつたような人間が現われて来たのである。そういう姿を現わすことは易々たるものであると私は思う。元は内務大臣がこの衝に当つておりましたが、今回若し国務大臣であります警察庁長官が現われて、政府の意を体して日本国中のこの恐るべき警察力というものを十分発揮いたしまするならば、日本国民が如何ばかり迷惑するであろうということは、これ又私がここで贅言を費す必要はないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  結論として私お伺いしたいのは、この日本国民性というものをどういうふうに考えられておるか。新らしい憲法の下におきましては、いわゆる民主化というものを徹底せしむるために、地方分権の確立或いは民主化の徹底という方向が現在の警察法に盛り込まれて、そうして今日に至つておるのであります。すでに五年ばかり経過しておりまするが、成るほど能率の上には相当の欠陥がありましよう。責任の明確化の上には或いは不明の点もございましよう。併しながら、私、考えまするには、日本国民性、日本人国民性というものを十分味わつておりながら、吉田内閣総理大臣はそういうことはしないとおつしやるかも知れませんが、内閣がいつまでも続くとは思いません。そのあとに来る内閣というものが、吉田首相のような民主的と申しますと大変言い過ぎかも知れませんが、吉田首相がどういうことをお考えになつておるか知れませんが、将来、日本というものに対して、日本民族に対して警察権がどういうふうに動いて来るかということは、ただ現在の内閣の時だけをお考えになつては困るのであります。将来この警察法というものに便乗して、日本国民というものを虐げる内閣ができるのじやないか。これに対して如何なる安全となる防壁を作つておくかということが、いやしくも法律を作る者の当然考えなければならん重要な点だと思うのであります。この点についてどういうふうなお考えを持つておられるか、お伺いしておきたいのであります。殊に、旧憲法時代におきましては、天皇に対して各大臣独立して輔弼の責に任じておりました。新憲法下においては、憲法第六十八条によつて、各国務大臣の任免権というのは総理大臣が持つておる、かるが故に、総理大臣の動き方一つで自分の首が飛ぶのじやないかという人間の浅ましさが、総理大臣の御意思に媚びへつらうような国務大臣を作らぬとも限らない。(「七十以上飛んだ」と呼ぶ者あり)そういう次第でありますから、旧憲法時代より以上に、現在の新憲法下におきましては、あの敗戦の種を蒔いた一つの警察法のもたらした結果からお考え下さいまして、十分この点に対して如何なる処置をとるかということを、この壇上において御説明願いたいのであります。これは吉田総理大臣に対するお尋ねでございます。(「あなたは原案に反対しなければ首尾が通らないよ」と呼ぶ者あり)  第二点は、これから所管大臣にお伺いするのであります。政府が今回提出した警察改正法案は誠に腑に落ちない点があるということは只今申した通りであります。そこで犬養法務大臣お尋ねいたしますが、この法律案に盛られている中央機構並びに組織、地方警察制度の組織並びに機構から見て、これは単なる警察法の一部改正ではなく、全く新らしい警察法がここにでき上つておるように思うのでありますが、(「勿論そうだよ」と呼ぶ者あり)あなたはこの法律案を単なる一部の改正だとお考えになつておられるでしようか。私は、これだけの改正案を出しておいて、これが民主化だと、民主的な美点を保持しつつ、この上に日本の警察制度を打出して行くのだとおつしやいますけれども、これは絶対に私は民主化ということにはなつていないと思うのです。(「オフコース」と呼ぶ者あり)但しあなたが、この法律の改正をやつても、俺はこういうふうに人権を擁護する方針を持つておるという国民の満足する方針をお現わしになるならば、これは又格別であります。併しこの改正案では出て来ますまい。この点をあなたにお伺いしたい。この改正案では、中央機構、地方機構というものが改正された。例えば国家公安委員会の代りに国家公安監理会、こういうようなもの、或いは都道府県会安委員会というものをお作りになつてこれが如何にも民主的であるかのようにお考えになつておるかも知れませんが、その行政管理……地方の公安委員会の行政管理というようなものは今度どうなつたか。それはですよ、この改正法律案の行政管理というものは、形式上は一応肯けるようにできていても、その内容は全然中身をさらわれて、次長、都道府県警察部長は勿論、警視以上の警察官も長官の手にいつて任命できるようになつておる又運営管理のほうにおいてどうなつておるかというと、警備或いは教養、連絡、通信事務を中心に、列挙事項というようなものは、これは皆警察庁長官がやるようになつて、名は美しいけれども、内容というものは全部中央に吸収されてしまつているのであります。国家公安監理会のごときはどういうものであるか。ただこれを長官の管掌する事務の監視助言をなし得るだけのことである。先だつて斎藤長官という者が、吉田第二次内閣のときでありましたか、罷免されようとして、国家公安委員会というものがこれを阻止した。いわゆる政府を離れて独立した立場にある場合において、初めて国民の前に公正さというものの批判を受入れた警察というものができ上る。私はそう考えるのであります。単に助言をする、監視するというような国家公安監理会というようなものは一体何の役に立つものであろうか。若し国家公安監理会というものが同意をしなければ、換言すれば必須条件として当該警察官の任免は関係ができなければ、この監理会は無用の長物と化する虞れがあるのであります。政府は、この改正案が民主的な美点を保持すると、独善的にきめ込んでいるかも知れませんが、併しながらこのままでは到底民主主義の美点を保持するということにはなるまいと考える。どうかこういう点について明快なる御答弁を私は煩わしたいのであります。  時間の関係上、私がこれからお聞きすることを申上げますからお書取りを願いたい。万一ですよ、これが通過するということになりまするならば、先だつて河野主計局長と大蔵大臣の意見というものが食い違つて地方制度調査会にもかけずに倉皇としてお出しになつたこの改正案について予算の裏付けがないということが、衆議院において相当論議がされておつたようでありますが、二十八年度予算には、義務教育学校職員法においては九百二十億円という一応の振替方法も付いているようであるが、あの国家地方警察費二百二十億については、二十八年度予算の組替をやるのか、はた又、河野主計局長の言う通り形式上の補正をするのか。今度できる警察法の予算裏付けの内容は一体どうなつておるか、只今申した通り二百二十億という国家地方警察費というものがありましたが、これが廃止せられると、この金はどうなつて行くのか。河野主計局長の言うように形式的な補正をやるのか、或いは又これは予算の内容を組替えるのか、予算を組替えるのか。こういうことについてこれ又はつきり御答弁を願いたい。  それから、市町村警察用の財産、物品というものが国に移るということになりますると、これら物資の所有権が無償で国のほうに移転するということになる。一体、財産権、所有権というものは、憲法が保障しておる大事なこれは宝であります。この宝が法律一本で自由自在に動かせるというのならば、これは憲法の精神というものは湾曲されてしまうのであります。こういう点について政府はどうお考えになつておるか。それから、自警国警を廃してこれらを都道府県の警察に警察官の組替をやりますときに、御承知通り現に両者間の給与というものは非常に違つております。先だつて私は政府のかたからお聞きしたのでありますが、巡査において二千円程度、又署長級で一万二千円くらい違つておるというお話でありますが、この鞍替えをした場合に、この間の差額、この落差というものに対して、どういう手をお打ちになるか。そのお打ちになる手の打ち方次第では、そこに精神的に不平不満が現われて来て、上げも下げもならぬ状態になるのではないか、これに対して、十カ年を限つて一定の補償金を与えようというようなことを考えておられるらしいが、この点をどうお捌きになるのか。それとも一時金の贈与になるのか、或いは退職金、恩給というものについてはどういうふうに動いて行くのか、こういう点も十分この際御答弁を願いたい。  それから、もう一つお尋ねしておきますが、これは新聞にも出ておりますが、本改正案では五大都市に特別の警察制度を布くことができるようになつている。成るほどこれは新聞が憲法の第九十五条に反するのじやないかというようなことを謳つておるが、私どもも、これは、やはり住民投票によつて一応はこの問題を解決すべきものじやないかと思つておる。然るにもかかわらず、こういうところに考慮を払わずに、行き当りばつたりにかかる法律案をこの議会に出しておられる。私はこういう点を非常に遺憾に考えるのでありますが、冒頭に申しました総理大臣に対しまする質問から推しても、これは本当に国家国民のためを思つて出した法案か、或いは行き当りばつたりに、あちらこちら吹田市のような所に暴動が起きると困るから、能率が非常に上らぬとおつしやつて、早急に出されたものかどうか。昨年私は法務委員会において木村長官に対して、自警、国警というものは将来一本になされる必要はないか、吹田事件というのが、縄張り問題、昔のごろつきの繩張りのようなことを考えて、これから先はお前さんの区域だ、これからこちらは俺の区域だと言つて連絡がとれずに、あの吹田の火炎びん事件というものがかくのごとく世間に宣伝される種をまいた、それを例に取りまして木村長官にお尋ねしたことがある。当時までは、政府にはそういう考えはないとおつしやつておつた。然るに今日慌てふためいてこういうふうないわゆる新憲法時代と旧憲法時代の国民考え方を少しもおくみ取りにならずに、十分の調査もなさずに本案をお出しになつた、その根本の理由を是非お聞かせを願いたい。私は政府を攻撃するためにこの質問をするのじやない。  話が少し横道に入りますけれども、先般元東大教授の矢部貞治君が「近衛文麿」という上下二巻の書物を発刊しました。皆さんも恐らくお読みになつたことと考えます。あの下巻の五頁の三行目に、近衛文麿をアメリカに遣わして、ルーズヴエルト大統領と直接談判をして、戦争を始めないようにやつたらどうだという質問を私がしたことが書いてある。これに対して時の外務大臣有田八郎氏は私の意見を拒絶したために、到頭私の主張は反古になつたが、先般元駐日アメリカ大使グルーが若しあの時に近衛がアメリカに来ておつたならば、或いは太平洋戦争は起らなんだかも知れんということを言つておる。それを矢部貞治君が書いておる。一人の議員の言葉ではあるけれども、私どもは国家を憂うる余りこの質問をするのであります。この点に鑑み、見識においては内閣の諸公あえて偉いとは言えない、私は……。お互い各議員は、自分の力によつて国家を盛り立てるのだという自負心を持つて質問をすることが、肝要と信ずる。この意味においてこの質問をするのであります。時間がありますれば再質問しますが、先ずこういう点についてお答えを願いたい。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  41. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。  御意見によれば、如何にも政治に対して国民の性格が弱いように受取られますが、私はそうは考えないのであります。過去の古い昔は別といたしましても、最近において、例えば、戦前において、軍の勢力が盛んであつた時にも、かなりこれに対する輿論の反撃はあつたのであります。又その輿論の反撃が遂に終戦になり、今日に至つたものと考えるので、政権に対する国民性格は決して弱いものとは考えないのであります。私は、この点については、日本国民の性格に対してもう少し慎重にお考えを願いたいと思うのであります。若し不都合な政治をし、若しくはいわゆる民主主義に反するような政治を行い、若しくは施策を行いましたならば、今日、日本国民の輿論は、これに対して相当強い反抗をなすということを私は確信いたすのであります。故に、日本国民の性格について政治に対する弱さと言いますか、脆弱性を、余りに御信用になることは如何かと私は考えるのであります。一応お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  42. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 中山さんにお答えをいたします。  先ず最初に、このたび警察組織の改革をあえてした理由を申上げたいと思います。これは中山議員よりも御指摘になりましたように、治安の諸情勢を考えた結果が第一であります。成るほど国際間の戦争の危機というものは幸いに遠のいておりますけれども、併し国内の諸情勢の底に流れている底流を見ますると……やはり大体警察というものは都道府県の自治体に任せてよいものでありまして、交通取締にしても軽犯罪にしても、これは府県の仕事にすべきものなのでございますが、そのほかに中山議員の御指摘になりましたような県勢に対処するには、どうしてもこの日本の国の今の時代の警察というものは若干の国家的性格を要請されているのでございます。これを考えた次第でございます。で、今の警察制度のままではどうもいけないという声は、輿論として私どもは久しく受取つていたのでございます。いろいろ掘り下げて見ますと、今の国警も自警もなかなかよくやつているのであります。自警が駄目だから今度こうするというような考えは毛頭持つておりません。両方よくやつておりますが、如何せん、制度の欠陥がそこに、ございまして例えば国警と自警の管轄区域の相異なるところから生ずる一種の盲点というものは、これはもう世間のよく知つているところでございます。こういう点を改めたい。併し中央の警察庁の職務というものは法律に列記して、それ以外に、はみ出ない。はみ出したら違法であるというふうな形をとりまして、    〔副議長退席、議長着席〕  その部分は府県に任せたいという考えを持つたのであります。それはなぜかと申しますと、先刻御注意のありましたように、その内閣の考え一つでいろいろの警察の仕事が全国に行われるということでは、これは大変なことになるという考えの下に、中央警察庁の仕事を法律に列記してその制限を与えたのであります。かてて加えて、御承知のように、この法律に従うすべての警察官は、不偏不党、公平中正を旨としなければならないという宣誓をさせているのであります。そういう点を一つ御了承願いたいと思います。  又先ほどお話のありましたように、民主警察の実体というものは、警察の運営について民主的な保障があるかないか、又自治警察との結び付きがどのくらいにあるかというところが、これは大切なところでございますが、今度の改正案におきましては、今申上げたように、中央においては警察庁長官に対する監視助言機関としての国家公安監理会、地方においては、都道府県警察の管理機関として、これは管理機関になるのでございますが、公安委員会が設けられておりまして、これらの公安委員会は警察庁に警察官に関する考課を常時具申いたしますし、その罷免、懲戒の勧告権を持つのでありまして、決してただ聞く機関になるとは私どもは考えていないのであります。又都道府県警察についても、できる限り地方公共団体の中に融け込んで、その自治を尊重する配慮が行われておるわけでございます。更に国の権限も、警察全体について指揮監督するつもりはないのでありまして、今申上げたように、国の治安確保を中心として、必要最小限度に限つて法律に明記しておるのでありまして、昔の警察国家に復帰するというような考えは持つておりませんし、又そんなことがあつては大変だと考えておる次第でございます。  今、通信のお話がございましたが、これは通信というものは府県相互間に通信するだけではどうも十分でありませんので、中央から国全体を眺めた情勢を通信する、或いは北海道から言つて来た情勢について、必要があれば九州に又それを通信するというわけで、通信機関というものはどうしても中央で事務的に持つ必要があるという考えを持つた次第でございます。  この全文改正についてのお話がございましたが、これは先ほど吉川議員に対してお答えした通り、元の旧法の精神を汲んでおりますので、全文改正ではございますが、新警察法というふうな考えを持たずに書いたのでありまして、先ほど申上げましたように、最近の全文改正のやり方は全部この方式になつておる次第でございます。  それから、さつき国家公安監理会というものは意見を聞かれるだけで一向これは何にもならないじやないか、こういう御意見でございます。私もこの点はいろいろ考えてみたのでございますが、併し国家公安監理会というものは総理大臣に所轄せられまして、これは警察庁長官と同等の、対等の資格を持つておるのでありますし、意見を聞かれつ放しで、勝手なことを警察庁長官がいたしますならば、事柄によつては連袂総辞職ということもありましよう。そうなれば、これは参議院においても衆議院においても大問題になりまして、結局政治的には制肘を受ける。飽くまでも煙たい後見役として成り立ち得る。まして、この国家公安監理会の委員の中には一党一派の人で多く占められないように制限してありまして、現在国家公安委員会の中にも、私どもと政治的立場の全く異なる、併し非常に立派なかたがおられまして、こういう方々の存在というものは事実上無視ができません。その作用を私どもは相当重視しておる次第でございます。  次に、この予算について、この法案の裏付けに関して御質疑がございましたが、御承知のように昭和二十八年度においては費用分担の区分は従前のままといたしましたから、予算については変更を加える必要がないのでございます。なぜそんなことをしたか、こういうことになりますと、第一には、制度改正による急激な混乱を避けて、市町村とよく話合つた上で処置をしたい。法律できめたから、すぐやつてしまうというのじやなくて、話合いをしてやつて行きたい。第二には、都道府県、市町村の間に跨がる地方財政の調整を必要といたしますので、そのためにはなお暫らく慎重に検討する期間を置くほうがやはり妥当であると考えた次第でございます。  それから、この警察法改正案は憲法第二十九条に違反するものではないかという御質問でございました。これは市町村の財産の無償譲渡についての御質問であろうと思うのでありますが、この市町村の財産の無償譲渡については、その財産が警察行政のために必要な行政財産でありまして、一般の私有財産とは別個に考えるべきものであります故に、この補償ということは必ずしも必要とは考えていないのでございます。併しその譲渡に当りましては、その当該市町村に不必要なもののみを譲渡させることといたしまして、且つ必要とか不必要とかいうことは当該市町村に判断をさせるのであります。第二には、不必要と認められたものについても、譲渡すべき旨の市町村議会の議決を行わせる等、普通の譲渡手続によらしめておるのであります。第三には、その譲渡について争いが起りましたら、その争いに関して内閣総理大臣の裁定があつた場合にも、これになお且つ不服であるならば、その当該市町村は一般の司法手続をとることを当然としておるのでありまして、これらのことから申しまして私は憲法違反とは考えていないのでございます。  次に、只今の国警、自警間の給与の不均衡をどうするか——これが私は実は一番大問題だろうと思うのであります。いろいろの倫理的なものも誠に大問題ではございますが、実際、警官の職に当つている人にとつては抽象的な組織よりもこれが大問題だと考えていることは、中山議員と私は同感であるのでございます。お説のように、自治体警察のうち大都市の警察吏員の給与は、国警や小さい自治体警察に比べて相当高くなつておる、お話通りでございます。で、これが新らしい府県警察の職員となつたときに、給与の問題を公平に解決するということは、今度の改正に当つて只今申上げたように最もこれは配慮しなければならない問題と考えております。今回の改正によつて道府県の警察職員となる者のうち、警視以上の階級にある職員は国家公務員として給与は国費の支弁となります。それ以外の職員は地方公務員としてすべて都道府県においてその給与を決定して、これを負担するわけでございます。後者即ち言い換えますならば警部以下大部分の警察職員については、その給与の基準は昭和二十九年度からはそれぞれの都道府県の条例によつて定められることとなりますので、各都道府県がどんな給与基準を以て行くかどうかということは、今からちよつと予測はいたしかねるのでございます。その際、従来の警察の給与の水準よりできるだけ低下しないように各都道府県間の調整を図ると共に、府県に対する財政上の保障を十分配慮いたしたいと考えております。次に、前のほう即ち警視以上の職員については、一般職の国家公務員として国から給与を支給されることになるのでございますが、この場合において、著しく給与の低下を来たし、又同一府県間においては上の階級の者が下の階級の者よりも却つて給与が低くなるようなことが、放つておくと、あるのでございますが、そんなことがあれば誠に面白からぬ影響がございますので、さようなことがないように十分只今から準備をいたしておる次第でございます。今申上げましたように配慮を加えても、なお従来の給与より著しく給与の低下を来たす者に対しましては、その減額の程度に応じて、先ほどちよつとお話に触れられましたように、一時金を支給するなどの案も考えておりまして、この点を実は一番今慎重に研究いたしている次第でございます。  なお、本法が施行されましても、昭和二十八年度中は経過的に従前通り予算措置がとられて、経費の支出は従来のままとなつて参りますので、二十八年度は警察官の身分は変つてもその給与は従前と変りはないのでございます。この点、御了承を願いたいと思います。(拍手)    〔中山福藏君発言の許可を求む〕
  43. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山君。
  44. 中山福藏

    ○中山福藏君 自席より発言のお許しを願います。簡単でございますから……
  45. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) よろしうございます。
  46. 中山福藏

    ○中山福藏君 只今政府の御説明を承わりましたが、犬養法相に私はお願いするのですけれども、私が総理大臣お尋ねした意を体して、刹那的にすべてのものをやつて頂きたくない。あなたのお父さんは大局からいつも物をお考えなつた人です。あなたは、今聞いておりますと、非常に刹那的に限局せられて時間的に本件をお考えになつておるように私は思う。勿論あなたはまだ年は若いのですから十分に御研究を願いまして、年寄りも満足さして頂きたい。さようにお願いして、他は委員会に譲りたいと思います。     —————————————
  47. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中田吉雄君。    〔中田吉雄君登壇拍手
  48. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は日本社会党を代表し、警察法に対しまして吉田総理並びに関係者大臣質問せんとするものである。  先ず第一に占領政策是正の基準は何であるかということをお伺いいたしたいのであります。吉田総理はその施政演説におきまして、占領政策の行過ぎの是正を内閣の重要なる施策とされまして今議題となりました警察法もその一環として取上げられたものであります。思えば、我が国が昭和二十年九月一日ミズーリ艦上で降伏文書に調印いたしまして、アメリカの軍事占領の下に置かれましたことは、まさに民族的な受難でありました。この間にとられました占領政策は真に徹底且つ広汎なものであり、我が国の実情に適しないもののあつたことも又事実であります。今ここに平和条約発効後これらの諸政策に検討を加えますることは、十分理由の存することと言わなくてはなりません。占領初期の政策を一貫して流れますものは、明治二十七八年より我が国が十年、ことに戦争政策をとらざるを得なかつたところの我が国の国家構造の根本に触れまして、これを改革し、好戦的、非民主的な性格を拭い去りまして平和国家を建設することであり、新憲法、新学制、労働立法、自治法及び警察法等は、その目的の下に生れたものであります。占領後期においては、米ソの対立が激しくなるにつれまして、特にソ連封じ込み政策が採用されまして以来は、非軍事化と民主化の政策は次第に後退し、一切がアメリカ世界戦略に従属されまして、特に講和、安保両条約並びに行政協定によつてアメリカ戦争政策はその極点に達したわけであります。我々は占領初期の対日政策とその後期のいずれに、より多くの価値を認めるべきでございましようか。この点につきまして加州大学のスカラビーノ教授は、「アメリカの対日政策が民主的非武装から逆コースと再軍備に変り、従来この政策を受け容れた自由党をアメリカは支持して来たが、この対日政策は今や抜きがたい障害に直面して来た。従つてアメリカは依然として民主化と平和憲法の建前を貫くべきであり、それには余りにも遠ざけて来た日本社会党の政策を対日政策として取上げる以外には、アメリカの対日政策の窮境を打開する方策はない」と言つております。我々は、占領政策行過ぎ是正の基準は、民族の独立、平和の維持、民主主義擁護等に置くべきでありまして、かかる観点から、現行警察法の底を流れますところの基本精神は強くこれを支持すべきであると存じますが、吉田総理におかれましては、何を一体基準といたして行過ぎの是正をなされますのであるか、お伺いいたしたいのでございます。  第二に私は、何故かくも徹底いたしました警察法の制定を必要とするかという、その理由をお伺いいたします。今回の法案を見ますると、その骨子は、専任の大臣を置き、全国の警察を一手に握りまして中央集権化すること、警察の執行機関であつた公安委員会を諮問委員会とすること、自治体警察を廃止いたしまして、事実上、国警に一本化することであります。これは、中央集権的な内務省警察を解体し、自治体警察中心に再編成し、その民主化のために公安委員会制度の上に立つた現行警察法の根本的な否定であります。この法案は、後に述べますように、警察国家と称せられました往年の警察よりかも遙かに中央集権的であります。これは行過ぎの是正ではなしに、非常事態或いは準戦時体制を予想せずしては考えられない警察制度の改正でございます。(「誇張々々」「その通りだ」と呼ぶ者あり)この二月十八日のワシントン特電によりますと、ダレス長官は議会におきまして、日本の再軍備を促進する措置を立案していると称し、記者団の会見におきましても、大規模な保安隊を作ることは吉田内閣と完全に意見の一致を見ていると語つております。かかる計画を実現いたしますためには、憲法の改正が必要でありましよう。又アメリカの要請に応じまして保安隊を海外に出しますためには、強力な独裁的な権限と、その手足であるところの警察を必要とすることは明かであります。かかる計画実現のためではないかと、国民に深刻な不安を与えておりますが、吉田内閣総理大臣のこれに対する御所見を承わりたいと存じます。  次に、政府は効率的な警察制度を作るのが改正目的の一つであると言つておりますが、今回の改正で一体どれほど経費の節減ができ、組織の簡素化ができるでありましようか。警察組織を見ますると、警察庁、地方警備局、道府県警察本部、地区警察部、警察署及び駐在所或いは派出所と、六段階に分れまして、全く屋上屋を架することになつております。これは、旧内務省警察においてさえ、地方警備局、地区警察のごときはなかつたものであります。この改革は、国警の言いなり放題になつて、その失地回復を認めたものであると言わなくてはなりません。政党内閣が警察官僚の下請となつてできたところのこの警察法案というものは、議会政治に対する最大の侮辱と言わなくてはなりません。国警、自治警二本建の場合でありますならば、いざ知らず、地方警備局、地区警察等は、専門家の意見を質しましても、全く有害無益な存在であると思いますが、これに対する御所見を承わりたいと存じます。更に、新定員と現定員との関係、将来実際はどれだけの経費の節減ができるか、お伺いいたしたいのであります。  第三に、政府は、警察法の改正に際し、一体如何なる警察が理想のタイプといたしましてそれを目指しておるのであるか。およそ現在の民主国家におきましては、如何なる警察制度をとりましようとも絶対守らなくてはなりません二つの原則があります。それは警察権の強力な地方分権と委員会制度であります。然るに、今回提案によるところの警察庁長官、次長、道府県本部長等は、全く旧内務省制度そのままであります。更に、これを現行警察法の国警と比較いたしてみますならば、国家地方警察本部長官を警察庁次長に、管区本部長を地方警備局長に、府県警察隊長を府県本部長と、国警中心に再編成されたことは、今や一点疑いがないところであります。これは警察の完全なる中央集権化であり警察権力の地方分権なる民主警察の第一原理の否認の上に立つています。  次に、政府提案は、人事権を持ち、又執行機関といたしまして行政管理権を持つた国家公安委員会を、国家公安監理会と改組いたしまして、人事権を剥奪いたしています。又道府県警察本部長の任免権を警察庁長官の下に取上げ、国家公安監理会と同様に、都道府県公安委員会を一種の諮問機関といたしまして無力化しておるわけであります。「道府県公安委員会は、長官並びに国家公安監理会に対し、常時道府県警察本部長の考課を具状し、又罷免の勧告をなすことができる」と規定いたしていますが、何の意味がありましようか。それは人事院の勧告を一度も実施したことのない吉田内閣を見れば明らかであります。米価審議会地方制度調査会等の答申は何一つ取上げられていない現政府の下で、諮問機関がどんな運命を迫るかということは実証済みであります。元来、警察は民衆のものであり、民衆の中になくてはなりません。エブリマン・イズ・ポリスマン、すべての人は警察官であります。併し、誰もが警察官となつて警察行政をやることはできませんから、私たちは公安委員を選んで、私たちに代つてつてもらうというのが、警察民主化の第二の基本原理であります。人事権を握らない公安委員会は全く無意味であります。政府が警察庁長官の下に一手に人事権を握りながら、諮問機関といたしまして実質の伴わない国家公安監理会や道府県公安委員会を残しましたものは、中央集権化に対する非難をカモフラージュするところの、悪質ではありますが見えすいた計画と言わなくてはなりません。  およそ現在世界におきましては三つの警察のタイプがあります。その一つは中央政府が警察を強力に統制いたしますところの欧州大陸型、ドイツ、イタリア、並びに戦前日本が採用しましたそれであります。第二はイギリス型のものであつて地方自治の上に築かれ、自治をそこなわない限度内において政府の統制を加えたものであります。その第三は、完全なる地方分権制をとれるものであり、アメリカの制度がその典型であります。敗戦後とられました警察法は、地方分権がなお徹底いたしませんでしたが、アメリカの制度を目指しておることは明かであります。今、警察法改正に際しまして、私たち一体如何なる態度をとるべきでしよう。かつ勿論我々も、アメリカによつてもたらされました人口五千以上の市街地的な町村に一様に自治体警察を置くという、極端な地方分権は、近代警察の能率化に多くの障害があることを否定するものではございません。併しこのことは、多くの長所を持ち、且つすでに血となり肉となつた現行警察法を一挙に放擲いたしまして、大陸型の旧内務省警察に復帰せんとするごときことは、決して聡明なる国民のとるべき立場ではないと思います。警察法改正に際しましては、警察の地方分権と、行過ぎのない範囲内での中央の干与の下に置かれた、世界一と称せられますところのイギリスの警察制度は十分考うべきであると思うが、政府は、地方分権か、中央集権か、はた又その調和の上に立たんとするのであるか。如何なる警察制度を理想のタイプとして目指しておられるのであるか。法務大臣にお伺いいたしたいと思います。  又、国家公安監理会、道府県公安委員会が人事権を持ち、コントロールを加える権限を与えずしては、民主警察は全きを得ないと思いますが、この点についての御所見も承わりたいと思います。  更に法務大臣に、若し警察の民主化と能率化とが矛盾した場合においては、そのいずれをとるべきであるかという見解をお伺いいたしたいと思います。花井卓蔵先生は、百人の犯人を逃してもいいから、ただ一人の無実の人を罪人にしてはならない、これが警察官の金科玉条であると言つておられますが、民主化と能率化が矛盾した場合には、そのいずれをとるべきであると思われますか、お伺いいたしたいと存じます。  第四に、改正案による都道府県警察は、一体如何なる種類の警察であるか。即ち、従来の観念によるところの自治体警察であるか、或いは国家警察の地方組織であるか、この点を明らかにされたい。道府県警察を自治体警察と言わずして単に地方警察と言つているのは、極めて含みのあることで、実際は国家警察であるが、それを地方警察という名称でごまかすためのものでないかと思われるが、地方警察というごときあいまいな言葉を避け、国家地方警察か、或いは地方自治体警察か、はつきりするほうがいいと思うが、この点、御所見を承わりたいと思います。特に警察問題と対決いたします際には、府県警察の性格を明確にすることが最も大切であると存じます。  更に、警視以上を国家公務員、それ以下は地方公務員法の定めるところによるというごとき、同一行政組織内に二種類の公務員を持ち込む方式は、旧内務省時代における、警視は奏任官とし、内務大臣が府県勤務を命じ、巡査、巡査部長は待遇官吏として知事又は警視総監が任命するというところの旧警察の人事制度をそのまま持ち込んだものであります。同一系統内で水と油のようなものを混淆することは、組織上の多くの混乱を来たすと思うが、かかる公務員制度の適否に関しまして浅井人事院総裁の御所見を承わりたい。このようなちやんぽんの組織というものは自由党内閣独特の発明であると思うが、民主国家においてかような竹に木をついだような公務員制度の体系をとつている所があるか、お示しを願いたい。  更に又、現在警視以上の警察職員は、国警で千五百六十七人、自警で八百七十二人、合計二千四百三十九人で、これが残余の十三万の警察職員の上に君臨するということになります。これは誤まれる国家至上主義への道を開くものであり、又地方公務員に対する最大の侮辱であると思うが、本多自 治庁長官の御所見を承わりたいと存じます。  更に第五に、警察行政と地方自治との関連に関しまする若干の質問をいたしたいと存じます。先ず、法と秩序の維持は、地方自治固有の事務であるか、それとも国家的事務であるかということであります。イギリスにおきましては、地方公共の秩序の維持は、地方自治団体の固有の事務であり、それは県や市の独立の機関によつて行われなければならないというのが、イギリスの揺ぎのない鉄則であります。警察についての中央官庁を置こうとするところのあらゆる試みというものは、英国人の立憲的な権利に対する侵害であるとして、断固これを拒否しているわけであります。この点は、犬養大臣の説明と真つ向から対立するところの見解であります。而も、考えでみなくてはなりません点は、イギリスの警察は世界一であります。この点を先ずお伺いいたしたい。  更に、これを我が国の犯罪現象の実証的な研究に見ましても昭和二十五年、二十六年、二十七年と三カ年間に、司法犯罪は四百二十六万四千八百四十三件の犯罪が発生いたしています。そうのち自治体警察の区域に七割四分、国警地区内にたつた二割六分の犯罪が発生しているのに過ぎません。而もそれぞれ一〇〇%に近い検挙率を示しまして、自治体警察の警察能力がいささかも劣つていないことを、大量観察は如実に示しています。更に又、終戦以来、東京都公安条例事件、三鷹事件、平事件、メーデー騒擾事件、早大事件等、世間の耳目を聳動いたしました、警察法改正の口実に使われるところの代表的な十七の事件を見ましても、松川事件一つだけが国警の範囲内に起きたものであつて、あと全部が自治体警察の範囲で起き、且つ十分自治体警察はこれをこなしているわけであります。即ち、犯罪の統計学的な研究は、犯罪現象というものは全くローカルなものである、地方的なものである、而も政府が絶えず言うように決して同時に多発的に起るものではないということを示しているわけであります。即ち、これは、我が国においても、治安の維持が地方自治にふさわしいものであり、且つその能力を備えているということを、最も雄弁に物語つているものであります。而もこれが国警に対しましては一人当り二十九万円の経費が出されているにもかかわらず、自治体警察に対しては、昭和二十七年に十七万二千円の平衡交付金しか出されていない困難な中に挙げられた成績であります。然るに今回警察力を強力に中央集権化いたしますことは、治安現象の現実に即しません。且つ重大なる地方自治の侵犯であると考えますが、本多国務大臣のこれに対する御所見をお伺いいたしたいと存じます。なお、都市警察は警察の中心であり且つ華であります。従つて、再編成に当つては国警を廃止いたしまして自警に一本化し、自警はこれを都市自治体警察とその残余の府県区域の自治体警察にするのが、諸外国の例に徹しても最も妥当であると思いますが、府県一本にし、ただ僅かに七十万以上の市だけに限定いたしまして警察を置き得るとした理由をお伺いいたします。  更に、平衡交付金を受けずして自治体警察を維持せるものが、町村で十九、市では六大都市を除きまして七十一の多きに及んでいます。これらのものは、昭和二十八年度限りとはいえ、今回警察を取上げられた上、経費だけの負担をさせられることは、極めて不合理であり、且つ治安維持上、重大なる悪影響を及ぼすものと考えます。これに対する法務大臣所見を伺いたいし、又このことは少くとも地方財政法第十条の四の立法精神に違反するものであると考えますが、本多長官の所見を伺いたいと存じます。  次に、最後に警察の政党化の防止についてお伺いいたしたいと思います。元来、警察は社会全体のために作られたものでありまして、決して、政府のために、又一党一派のために作られたものではないのであります。政党政治の政争が警察の中に入らないようにいたしまして、警察の政治に対しまする中立性を保つということが最も大切なことであります。然るに今回の政府提案は、責任内閣制の美名の下に、政党出身の総理大臣が任命する警察庁長官が主要な人事を一手に握るわけであります。若し皆さん、仮に反対党の知事の所に政府腹心の道府県警察本部長を配置いたしまして、鵜の目鷹の目で監視されたといたしますならば、政府与党の知事以外には一日として存続することはできません。選挙取締でも同様であります。これは反対党だけではなしに党内野党派に対しましても同じ筆法で取締ができます。これは真に戦慄すべきことであります。反対党の存在を許すところの民主主義の否定であり、一党専制への道を開くものであると言わなくてはなりません。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)更に、この制度は警察職員の腐敗と堕落をもたらします。警察と政党幹部の間に利益の交換が起ります。警察で昇給昇任しようといたします者は腐敗した政治と結び付かなくてはなりません。この点は、現在吉田内閣に対する国民の支持率がサンフランシスコ会議を頂点といたしまして今や急速に低下しておる点を思い合せますと、極めて重大であります。過般の総選挙におきまして政党別の違反検挙人員を見ますと、総数二万二千五百八十二人のうち、自由党は一万二千七百二人と群を抜き圧倒的多数を占め、岡崎、戸塚両大臣を初め、責任者で逃亡せる者が極めて多数であり、このような状態で辛うじて過半数を占めたわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)自由党をして自信に動揺を来たさしめ、従つて今国会に提出されましたところの重要法案というものは、選挙対策に関連いたさないものは一つもありません。そのため警察権力を集中いたしまして来たるべき総選挙に、曾つてありましたような一大干渉が行われるのではないかという疑惑をどうすることもできないわけであります。(「その通り]と呼ぶ者あり)このような事態に対処いたしますためには、我々は、警察法の総則にある「警察の活動は不偏不党且つ公平中正を旨とする」というような一片の訓示規定を以ていたしましては、如何ともすることができないわけであります。何よりも、政党出身の大臣を排除し、且つ公安委員会が内閣から独立いたさなくては、警察の政党化を組織上防止できないと存じますが、犬養法務大臣のこれに対する御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  49. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  このたびの警察法の改正は、その現警察組織の行過ぎた点についてこれを是正して、現在の実情に必要に応ずるように改正をしたい、而も民主主義は飽くまでも堅持して、そうして同時に現下の必要とする警察治安の確保に努めたいという考えであるということは、これまで申した通りであります。これは全く政府が現在の国情から現在の必要に照らして考案いたしたものであつて、外国の要人或いは外国政府の要請等によつて改正を考えたものではないのであります。外国の如何なる政治家が如何なることを言われても、これに対してはこの改正案は何らの関係はないのであります。(「民主警察がなくなるじやないか」と呼ぶ者あり、(拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  50. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 中田さんにお答えいたします。少し筆記が間に合わなかつた点で落ちたことがありましたら御注意を願います。  全国の警察を一手に握つて中央集権をやるのではないか、こういう御心配でございます。私どもはそういう気は全然持つておりません。中央警察庁の仕事は、先ほども申上げましたように、今度の法律案の第六条で明らかに制限をしておるのであります。この制限を踏み越えましたならばこれは世の非難を受けることは当然でございます。又地方の府県公安委員会は、運営方針、運営の万端を扱つておるのでありまして、これは府県警察の責任者となつておるのであります。而も先ほどお話のありましたように、中央の大臣の腹心などの警察長が来ますならば、懲戒罷免の勧告ができるのであります。ところが、これを何といいますか、何とも気にしないで残つたらそれきりじやないかというような御意見もありましたが、一警察長が地方警察の中に入つて懲戒罷免の勧告を受けたということになりますれば、私は一警察長くらいの地位の者は、いたたまれない、こういうふうに考えておるものでございます。  それから、今度のような改正をして効率化と称しておるけれども、どんなふうに冗費が省け、人が省けるのか、こういう御質問でございます。御承知のように、現在国警、自警を合せて十三万二千おりますが、十一万五千に減少する、大体一割三、四分の減少というふうに見込んでおります。経費は四五十億倹約できる、こういうふうな予定でおるのでございます。  それから、次には地方警備局とか地区警察部なんというものは屋上屋ではないかというお考えでございます。これは先ほどほかのかたからの御質問もありまして、アメリカの警察はもう完全自治ではないかということでございましたが、御承知のように、アメリカにもFBIという国家警察があるのでございまして、これは一応参考にする木として考えてみた時期もあるのでございます。併し、FBIの日本に不向きなのは、非常に金がかかりまして、経費が嵩むので、これは中田さんのさつきの御質疑の趣旨にも反する結果になります。第二には、これは先ほど中山議員の御指摘もありましたが、日本民族の性質というものを冷静に私は見る必要があるのでありまして、日本人には幾多の美点がありますが、欠点かり申しますと、同じような仕事、似たような仕事を二つの違つた命令系統でやる場合が一番日本人に不向きなんでありましてこの意味においてFBI的な警察は、大事件があつたときに、地方の自治警察の範囲に乗込んで行つてごたごたが起らないということは日本では一番保証ができない。言い換えれば、そういう場合に仕事の管轄争いか起るというふうに考えます。(「中央集権だ」と呼ぶ者あり)然らばどうしたらいいかということになりますと、能う限り今申上げたような府県の公安委員会責任者となつて府県の自治警察をやるが、国家的な性格を持つた仕事というものが現在の警察にはどうしても含まれておるので、言わばその掛け稿の仕事として警察本部長と若干の警視が府県に一緒に住む、こういう考えを持つた次第でございます。  それから地方警備局は、それに関連して御説明いたしますならば、これは従来管区本部と言つておりました、これには如何にも行政事務の重複したところがあつたのでありまして、今度は、国家全体の警備の問題と、無線設備のステーシヨンということにいたしたのであります。どうしてこういうことをするのか——これは少し一、二分頂いて御説明をしたいと思います。中田さんのお話ですと、同時多発の事件というものは起るはずがないどいう御意見でございましたが、遺憾ながら私どもは、破壊主義的暴力活動の方面のいろいろな方針を読んでおりますと、同時多発の危険がないと保証できない。而もそれは現在の国警と自警の管轄区域の相違から来る盲点に対して眼が注がれておるというふうに考えておるのであります。従つて、同時多発の場合、中央から或る県に向つて、君の隣りの県が騒いでおるからそつちに行けと言つた坊合、その隣の県も自分の県がかわいいから、こつちも危険がありますので、ここで頑張りたいという場合、誰が判断するか、中央から一々判断する前に、その地方色を呑み込んでおる警備局の人が即刻判断して、こつちから応援に行くという判断をして、そうして中央に報告する、こういう仲だち機関がどうしても同時多発の場合に必要だという考えを持つた次第でございます。もう一つ、地区警察部でございますが、これは現在の市警本部そのままなんでありまして、一つの都市の中に二つ三つ四つというような警察署のある場合、この統轄連絡のため今やつておる通りのことをただ受け継いだ次第でございます。  諮問機関に公安監理会がなるのでは無力で駄目ではないかというお話でございましたが、これは先ほど縷々申上げたように、決して棚上げ機関になるのではなく、なかなかけむたい後見役になり得る、こういうふうに考えておる次第でございます。  又能率化と民主化の調和というお話で、これは誠に私、御尤もと思います。亡くなられた花井博士のお話で、百人の罪人を挙げるよりも一人の無実の者を作るなというようなことは、これは府県警察に一切を只今任せる意味で、そういう警察でありたいと思つておるのであります。ただそれだけでは済まない。アメリカはFBIを持つように、国家的性格というものがどうしても警察に必要でありますので、さればこそ、先刻も申上げたような組織にいたした次第でございます。それでは、国警でもなく、自警でもなく、府県警察というのはごまかしではないかというお話でありますが、これは国警が勝つて国警に吸収したとか、自警が勝つて自警に吸収したという考えを持ちたくないのでありまして、新らしい一切の蒔き直しの府県警察……但し現在の日本の事情によつて、国家的要素を持つた仕事だけ法律に明記して中央の警察庁から連絡する。併し、それは何でもやつてよいというのではないのであつて法律に明記する、こういう意味を持つておるのであります。(「あいのこ警察か、何警察だ」「やかましいよ」と呼ぶ者あり)  それから最後に、警察の政党化の防止、これは私ども心から考えておる次第でございます。(「そんなことを言つても駄目だ」と呼ぶ者あり)そのために、あのように本法案の随所に、不偏不党、公平中正とか、そういうことをはつきり書きまして、而もこれを宣誓事項としておる次第でございます。警察を使わなければ選挙に勝てないような政党は、それは放つておいても必ず滅びるものであると考えて、おるのであります。(「今までの関係大臣はそんな答弁はしないぞ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  51. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 私に対する御質問の中に、府県の機関に国家公務員を配属せしめることは非常な混乱を招きはしないかというお尋ねでございましたが、これは誠にこの警察制度の根本精神を理解してもらつて納得してもらわなければならないと思つております。この国家公務員を配属いたしまする理由については、最前から担当の法務大臣から申上げておりました通りに、この府県警察の性格の然らしむるところでありまして、こうした場合に国家公務員を配属するということは、その性格にふさわしいことであり、又何ら今日の法律に違反するものではないと考えております。  次に、七十万以上の市に、その市の議決によつて府県警察と並列する警察を認めたのは、何を基準にしたのかという意味のお話があつたのでございますが、これは、人口七十万以上と申しますのは大体府県の規模に匹敵するというところと、もう一つは、今日まで市部は市部で独自の自治警察を経営して来た経験と申しますか、沿革も考えて、この辺のところが妥当であろうということで基準を定めた次第でございます。  更に財政の問題についても言及されたのでございますが、財政につきましては、二十八年度それぞれ従来の通うりの負担とするということになつております。従つて、自治警を持つておりました市町村が府県警察と性格が変りましたのに、その警察の費用を持つのは不自然ではないかというお考えは御力もでありますけれども、財源措置といたしましては、それぞれその都市の税収入と平衡交付金を以て賄われることになつておりまするし、平衡交付金の行かない所は独自の税収入を以て必要費は賄われることになつておりますので、性格は変りましたけれども、暫定措置として従来の通りの負担にして置くことは、新たに負担を増加することにはなりませんので、差支えはないと考えております。(「おかしい」と呼ぶ者あり)  更に地方財政法の第四条の規定について違反しはしないかというお話でありましたが、四条の規定は、寄附の強制割当を禁止するという意味の規定であると考えておりますが、今回の府県の警察費の負担、更に自治警を持つておりましたところの市町村が来年度限り暫定措置として負担いたしますことは、法律に基く負担でございますから、同条には関係ないじやないかと考えております(拍手)    〔政府委員浅井清君登壇拍手
  52. 浅井清

    政府委員(浅井清君) お答えを申上げます。  このたび提案されました警察制度と公務員制度との関係についてのお尋ねでございましたが、第一に、公務員の組織といたしまして国家公務員と地方公務員とが混合いたしておりますることは、御指摘のごとく異例であると思つております。外国の実例につきましてはここに報告する資料を持ちませんが、若し実例ありといたしましても、同様に例外的なものでないかと思つております。併し現行制度上こういう混合が全くないわけではございません。即ち、地方自治法附則第八条の職員は出家公務員でございまするために、都道府県庁におきましては地方公務員と出家公務員とが混合いたしておるというような、例外ではございまするが実例がございます。  第二に、警視以上が国家公務員でございまするために、国家公務員が地方公務員に君臨する云々の御論議がございましたが、成るほど国家公務員が地方公務員を指揮監督いたし、又は地方公務員が国家公務員を指揮監督することは異例でございます。併しながら、現行法上かような例が全然ないとは申されないのでございまして、只今申上げました地方自治法附則第八条の職員は、国家公務員でありながら都道府県知事の指揮監督を受けておるというような実例も、例外ながらあるのでございます。  そこで問題は、結局何故にかかる異例の制度が必要であるかという点に帰するのでございまするが、これは人事院といたしましては所管外のことでございまするので、所管大臣よりお答えになりました通りでございます。(拍手、「その通り」「事実の説明を求めておるのじやないのだ」と呼ぶ者あり)     —————————————
  53. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩木哲夫君。    〔岩木折夫君登壇拍手
  54. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 私は改進党を代表しまして、只今政府が説明されました警察法案に対して、総理大臣及び関係諸大臣質問いたしたいと思うのでございます。成るべき重複を避けたいと思いまするが、どうしても重要と思われる点は多少関連して申上げることを御勘弁願いたい。  第一に吉田総理大臣お尋ねいたしたいのは、この法案を作成しようという趣旨動機については、先ほど来の質疑におきましても了得ができないのでございます。そこで、昭和二十二年の九月にマッカーサー元帥から、警察権力を政府より分離すべき通達があつたのは、即ち新憲法の趣旨に則つて、新憲法を日本永遠の骨格となすべきことにその理想を置いてせられたことは申すまでもありません。従つて我々は、この新らしい憲法が、日本の民主化、地方分権、或いは地方自治の特に人権尊重の具体的な地方関係といたしましての確立上、この警察制度の民主化は、新憲法の守り神としてあらねばならんのでございますが、ところが、今、平和独立なつた早々にして、これを根底から覆えして、新憲法の守り神である民主化、地方自治の本旨を曲壊せんとするようなこの警察法の改正を考えることは、即ち、日本の性格、日本の骨格を変えるものでありますと共に、吉田内閣は、日本の民主化、日本民主主義を唱える資格がないと私は断言して憚らぬ。こうして日本の民主化を根底から覆えすに至るその根底につきましては、先ほど来の質疑におきましても甚だ明かでないことは、現下の治安の諸情勢に鑑みて、或いは本多大臣地方制度調査会にかけるいとまがないと、かように申しておるが、地方制度調査会は昨日も本日も、たつた今も開会中であります。然らば、それほど、いとまがないというほど現在の治安諸情勢は急迫しておるのかどうか。先に申上げました日本の骨格を変えんとする基本的な総理大臣のそのお考えと、併せて、現下の治安諸情勢に鑑みて早急にやらなければならんという現下の治安情勢とは何を言つておるか、どんなことを指しているのか、具体的にお示しを願いたい。それほど重要であるというならば、今回の二十八年度予算で防衛予算を何故大幅削減をしたのか、或いは警察官を十三万五千から十一万五千に減少せんとするのか、極めて矛盾も甚だしい。この点をお尋ねいたしたいのが第一点。  それから更に、改正せんとする意図のうちで、斎藤長官その他関係大臣が、「吹田、広島事件等実情に鑑み」ということを先般来、国会のいろいろの場合に述べられておりますが、御承知のごとく、吹田事件は、判断、思惑の間違いであつて、これは現在の警察制度の欠陥によることではない。その判断と思惑違いによつて生じたことであります。又かかる事態の起るような政治状態を長年生み出した吉田内閣の施政にこれが原因すること著大であると言わなくてはならない。広島事件におきましても、国連協定が未だ結ばれないということの結果による不祥なる事件でありまして、これ又政府の施策の怠慢と言わなくてはならないことに原因するのであります。私は、要するに、政府がかようなことをやろうとする趣旨は、申すまでもなく、自由党の三木総務会長が旅先で語つておるごとく、吉田内閣はもう退陣が余儀なく間近に迫つておるということに際して、来たるべき参議院選挙或いは近き将来に起るべき衆議院選挙に対する政治警察、選挙干渉警察をやらなくては、崩れかからんとする吉田内閣の支え棒ができないということで、急に慌ててこの警察法の改訂をもくろんだものと我我は見るのであるが、総理大臣はこれろに対してどのようなお考えも持つておるかどうか。又、警察力の官僚化、権力集中化を排除すると申しておるが、これは石橋湛山氏が曾つて大阪で発表されましたごとく、アメリカのかいらい政権である、或いは吉田内閣は民主化の癌であると、自分の所属している自由党を痛罵しておる。私はこの警察法の改訂によつて、これらのことと結び付いて、吉田内閣がやがて余儀なくされる再軍備に対する徴兵制度の思惑に処して、この警察法の改訂をもくろんでおるのではないかということを、特にお聞きしたいのであります。  それから第三点は、現在、政府は治安対策といたしまして、警察権の掌握はもとより、陸海空の保安隊の指揮統帥権、先に破防法によりまする公安調査庁の掌握指揮、又今回のこの中央集権的な警察権の掌握を遂げんといたしておるが、一体、この四つの国の治安に関する機関の性格、性能、使命というものは、この際明らかにしてもらわなくてはならない。今回の警察法は、これ又、先の砂防法或いは警察予備隊等と同様に、国の治安確保に任ずる旨を強調しておるのでありますが、国の治安に関する機関がこう三つも並んでは、どれが主になるのか、どれが従になるのかわからんが、要するに、警察が今回の制度において国の治安の中心になるというような気持を起さしめることは、地方警備局を今回特に設置しておる、且つ又これに相当警備指揮権を与えておるという実情から見ますれば、又破防法は日共活動等に特に対処するというあの議会答弁実情等から見て、今回の警察制度のその趣旨から鑑みて、この保安隊はそれでは戒厳令下又は外敵の侵入に対抗する戦闘行為を意味する行動をとるのが保安隊の使命であるか。さすれば、これは即ちいわゆる軍隊であるという判断にほかならないと思うのでありますが、これらの実情について総理大臣見解を承わりたいのであります。  第四点といたしましては、今日全国の輿論機関はどこを探してもこの警察法反対に対する猛烈な議論が展開されておることは、満天下の事実であります。国家公安委員会はもとより、自治警察及び自治会連又は知事会、全国市長会、その他、その議会の各団体挙げて今回の警察法に反対をいたしておる。この輿論の実情に相呼応して、政府が何故こんな法案を、現下の治安状態というものの実情も明かにせずしてこれを強行せんとすることは、これ即ち、日本の民主化をみずから蹂躙し、日本の民主化を破壊して、その上にあぐらをかこうという吉田政権の延長策に過ぎないと私は思うのでありますが、これらに対する総理大臣の御見解を明かにしてもらいたい。この点は先に中田議員も質問されましたが、一体、占領政策の行過ぎというものは、どういう基準で、どんなものをどうしようというのか。日本の民主化を著しく破砕しても時の政権の延長を図るようなことをやればよいというのか。一体、占領政策の是正の方針、基準というものを明かにせずして、行き当りばつたりにこうした法案を出すということでは、日本の新らしい憲法の真髄というものが、骨格というものが那辺にあるか。私はその憲法を疑わすような印象を国民に与える虞れがある。この際この点を明かにしてもらいたいのであります。  次に、法務大臣、自治庁長官にお尋ねいたしたいことは、憲法第九十二条には「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」とありまして、これを言い換えますれば、地方公共団体の組織及び運営に関する事項を法律で定める場合には、必ず地方自治の本旨に基いてなされなければならんことを具体的に示しておるのであります。つまり、地方自治の本旨に基くことは、この場合においては立法に対する制限的な要件であるわけであります。そこで、この地方自治の本旨とは、憲法九十四条において明かなるごとく、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律範囲内で条例を制定することができる」と明記しておるのであります。然らばこの行政を執行する権能とは何かと申しますと、地方自治法の第二条第三項第一号に示しておるごとく、「地方公共の秩序を維持し、」とあるのでありまして、この事項はこの行政執行権能の重要なる部門であります。而してその秩序維持の方法とは、近代的な民主機構を持つ警察及びその運営によつて地方公共の秩序を維持し、住民の安全を保持することでありまして、これは憲法の保証する市町村自治体固有の権能であります。尤も第九十四条では、その末文におきまして、条例制定権限につき、法律範囲内では制限をなし得ることがありますが、基本的な地方公共団体の固有の権能を破砕しておることではありません。従つて現行警察法におきましては、人事権が警察長の専権になつておることでさえ、先に申上げました地方自治の理論に一貫性を欠くものとさえ思われるのでありますが、今回の改正法が、公共団体の行政執行権能の主要部分であります市町村の警察及びその運営権を、単なる法律の改正によつて剥奪せんとするがごときは、明かに憲法に違反しておるのでありまして、これは吉田内閣を取締る上に新たに又警察が必要というわけになるのであります。要するに、かかる非立憲的な暴挙によつて憲法違反の行為をあえて多数の力でつかみ取ろうとしても、それは無効であると我々は思うのでありますが、両大臣のこれらに対する見解は如何でありますか、お伺いいたしたいのであります。  次に、この警察法によりまする権限の執行上につきましては、国民の不安を除くために、或いは今大臣が述べられたるごとく、不偏不党とするとか、或いはちやんと規定をしておるとか、かように申しておるのでありまするが、それは恐らくこの項目はある「国の利害に係り、又は国内全般に関係若しくは影響のある事案」、又警察行政における統一保持云々とあることを意味しておるのでありますが、こうしたことは底なしであつて、どこがどの点までの線を引き得るものか、どういうそのときの感覚、感じで、行政上でどの程度までこれが伸べられるかわからない。こういつたような、あらゆる国と地方自治に関連するすべての行政上の一切を含めて、治安上に籍口して、時の政党内閣が自由に如何ようなこともなし得る仕組になつておる点は、誠に由々しきことであります。殊に地方におきましては、地方公務員の上位にあるがごとき印象を与える国家公務員の警察官地方におりまして、地方制度、地方自治、地方財政その他いろいろ独善的な行為に出ることは、過去の事例におきましても、又現在の実情から見ましても、十分判断し得ることであります。恐らく、政府は今の大臣の述べられましたるごとく、かようなことは絶対あり得ない、又かようなことをするような内閣は自然に潰れると申しますが、然らば現在国家公安委員会の下部機構でありまする国家警察本部が、この公安委員会の規則に或いは逸脱していろいろの越権と覚しき行為をしておる事実を政府は何と見るか。例えば国の公安委員会が今回の警察法は反対だと言つておるのに、この下部機構である警察本部がこの政府の案を支持し、或いは起案し、或いはこれを吹聴するという現在の状態などは、まさに、この国家公安委員会という現在の組織でありながら、それの下部機構の官吏たるものがこういう行為をするという虞れを見られるような行動があるという事例に徴しましても、将来これは安心のできないことであると思われるのであります。道府県公安委員会委員に、副知事のない所は他の一般公務員の職員を任命せんといたしておるが、これは地方一般職員の規定に相反するものであると思われますが、如何であるか、御回答を願いたい。  次に、向井大蔵、本多自治庁両大臣お尋ねいたしたいことは、本年度予算におきまして、国警に要する費用は二百二十億で、このうち国警職員の給料は約百三十六億で、残りは装備費となつておりますが、今回自治警察を府県単位の国家警察に包摂するといたしますれば、この従来の自治警察におつた警視以上の人々の給与の予算は、国のどこからどういうふうにして出すのか。当然平衡交付金の増額か、別途補助金を計上せねばならんと思いまするが、もとよりそれに基いて二十八年度予算は組替えなくてはならんと思うのでありますが、如何でありますか。政府は或いは、これは従来警察を持つていた地方自治体に持たしめるということを今も本多大臣が言つておるが、これは、地方財政法第十二条によりまして地方自治体は国家地方警察の費用を負担してはならないと明記しておるのであります。これをあえて持たしめようということはまさに憲法違反であります。又警視以下の地方公務員に対する給与につきましても、その身分が地方公務員であつても、その指揮、運営、任命権が実質上ことごとく国のものであるといつたような状態に対し、果して地方自治体がどうして財政負担をなし得ると思われまするか。これは政府の単なる希望に過ぎないのであつて、現在各地方自治体は今回の警察法に反対運動をいたしておる実情から見て、これらの地方財政の支出は、到底地方議会の承認を得ることは絶望と見なくてはならないのでありますが、こうした場合に、大蔵大臣地方自治庁大臣は如何なる方法を講ぜんとするのか、お尋ねいたしたいのであります。  又現在の警察職員は、国警自警合せて十三万二千なにがしでありますが、このうち警視以上の者は僅か二千四百三十九名で全体の二%、残りの九八%が地方が負担せねばならない地方公務員となるのでありますが、併しこれらの負担せなければならない地方自治体の警察も、或いはそれらに対する任命権も、実質上の指揮権も、運営権も何もないのでありますが、この財政上の負担に協力せよと仮に政府法律で示したところで、先ほど申上げましたように、実質上これは協力し得ない実情が眼前に展開しておるのではないか。これらに対して政府はどのような強権措置をやろうというのであるか。  又次に、今回この警察制度の結果、二十年以上勤務している全警察官、自治体におきます警察官は五千五百名に及ぶのであります。今回の制度によりまして給料がそれより低下する虞れがある、或いは配置転換がある、或いは人員整理がある、かような実情、その他この際退職することによつて退職金が国家警察になる場合より有利であるという実情等から、或いは十五年以上二十年勤務の優秀な警察官は相当退職をする気配が濃厚であることは、政府もすでにわかつておることと思うのであります。若し然りとするならば、これらの退職金が仮に一人四五十万平均といたしましても、二十数億の金が要りますが、この退職金は一体地方自治体が負担せなければならないのかどうか。警察は取上げられた、警察は国のものになつたのに、やめる警察官に対して、地方自治体がこの財政上困難な、而も平衡交付金を従来もらつておらない所などもたくさんある地方自治体が、これらの退職金をどのような方法で支出するか。若し支出できないというならば、それは国が補助するというのかどうか。これは極めて重要なことであります。これらの諸点をこの際明らかにしてもらいたいと思うのであります。その他これらの給与の凸凹の問題など地方財政上に関連する問題がたくさんありますが、これは追つて委員会に譲ります。  以上述べました諸点につきまして明快なる答弁を煩わしたいのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  55. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。  新警察法案についてはしばしばその改正の趣意について主管大臣その他から申述べましたが、要するに、現在の事情に適応した、而も能率的であり、民主的の警察組織に改めたいというところにあるのであります。これがために日本民主主義の性格を変更するとは私は毛頭考えないのであります。然らばかくのごとき警察法を急に提出するに至つた客観情勢如何、これは主管大臣からお答えいたします。  又この新警察法によつて政府は選挙干渉をする気がまえがあるというようなお話でありますが、そんな気がまえは断じてないのであります。又再軍備と関係あるがごとく言われますが、私は再軍備はいたさないと繰返し申しておるのであります。  その他は主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  56. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 岩木さんにお答えをいたします。  先ず最初に、緊急を要する客観情勢とは如何、こういう御質問で、これは総理大臣に対する御質問でございましたが、只今総理大臣お話によりまして私から代つてお答えをいたします。それは先ほど中田議員にもお答えを申上げたのでありますが、成るほど国際間の戦争気がまえというものは、誠に幸いにも遠のきました。併し国内の底に流れておる底流を見ますると、やはり我々の職務として同時多発の事件を予想する気がまえだけはしておかなければ、国民に対して責務を果せないと考えておるのであります。(「生活を安定しろ」と呼ぶ者あり)而もその同時多発の事件が若し起るとすれば、先ほど申上げましたごとく、現在の国警、自警の管轄区域の相違より生ずる盲点に注目せられるように私どもはえておりまして、それに対処する一つの組織の改革だけは急いでやつておきたい。若しそれが無駄になれば、誠に国民にとつて幸いである。こういう考え方でおるのでございます。  それでは、十三万二千の者を十一万五千に減らすのは矛盾ではないか、こういう御質問でございましたが、これは組織が一本化しますことによつて自然重複が省ける、こういうことでありまして、むやみに削つてしまうという考えではございません。而もその中には、警察官の仕事はなかなか辛い仕事と見えまして、自然に放置しても年年五六千人の退職者がありますが、これは補充しないというような形でも行ける。繰返して申上げますが、重複を避けることによつて自然にこういうふうに減員ができる、こういう考え方でおるのでございます。  それから、御指摘の北海道とか、広島とか、吹田の事件は、これは警察制度の欠陥ではなくて、むしろ運用の面に原因があるのではないか、こういうお考えのようでございます。私も、今の自治警が悪いというふうに考えておりません。非常によくやつておると思います。併し、一つの制度を運用するには、おのずから限度がありまして、政府は過去の五ヵ年間の実績に照らしまして、その運用に限度があるという二とを考えまして、運用の底にある上ころの制度の改革に手を付けようとしたのでございます。今申上げましたように、二種類の警察の管轄区域に自然生ずる盲点というものは、これは自治警の罪ではございません。これは制度の罪である。運用を以てしては如何ともすべからざる部分であるというふうに考えておるのでございます。(「その通り」「官僚の無能力だよ」と呼ぶ者あり)  それから、改正案については、国家公安委員会その他で反対しておる。それに対して国警長官は賛成して、そうして国会に提出されておるのはどういうわけか。国警長官というものは公安委員会の下に付くものではないかという御質問でございます。今回の法律案は、これは内閣の責任において提案したものでございまして、国家公安委員会とか、国警本部からの提案でないことはすでに御承知通りでございます。従つて仮に御質問のような現象がありましても、これは内閣の責任と存じております。且つ附加えて申上げますならば、この立案事務に国警本部職員が携わつていることは事実でございますが、そのことは国家公安委員も何の不満もなく当然のことと考えておりまとて、私どもも、実は絶えず国家公安委員の方々の意見も聞きながら、これを進めて参つて来たわけでございます。(「反対しているじやないか、公安委員は」と呼ぶ者あり)  それから、第六条に規定している警察の任務をいろいろ制限してあるというけれども、読んでみると漠然として、これは殆んど無制限と同じではないかという御質問でございますが、これは岩木さんもお触れになりましたように、委員会で若し御質問がありましたならば、一々詳しくその任務の内容を申しまして、国警当局みずからが喜んで制約を受ける、こういう考えでおります。決して無制限な制約をしているのではないと存じております。(拍手)    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  57. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 地方自治法の第二条第二項の地方公共団体の事務として、同条第三項におきまして、地方の公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全を保持するという事項を掲げております。これはこの通りでございますが、これにつきましては、もとよりほかの法律を以て規定することができるのでありまして、現に今日まで、この地方の事務を国家地方警察でやつていたのも、その実例でございます。警察法におきまして、警察の事務が一面において国家的性質が強いのに鑑みまして、今回その治安確保の責任を明らかにする制度の改正をやりまして何ら差支えないと考えております。  更に二十八年度のこの財政措置につきましては、従前の通りとなつております。従つて地方の負担関係に移動がないわけでありますが、若し万一、これを機会にたくさんの退職者を出した場合の退職金をどうするかということでございますが、これは財政措置といたしましても、平常の場合を予定して財政措置を講じております。二十八年度は、大体において現員現給で勤めることができるのでございますから、平常の場合を越えて著しく退職者を見るということはないものと考えております。  又地方が今回の警察制度の負担の法律上の責任を守らないときにはどうするかという御説があつたのでございますが、警察制度の改正によりまして、地方の負担には変りなく、治安の確保は向上することと存じますので、必ず理解されて、この法律が改正されましたならば、法律通じ守つてもらえるものと期待いたしておる次第でございます。それには十分理解を得るように努力いたしたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣向井忠晴君登壇拍手
  58. 向井忠晴

    国務大臣(向井忠晴君) お答えいたします。  昭和二十八年度は、経過的に従前通りの経費を負担いたしますから、即ち国警系統の者については国が負担し、自治警の系統の者については都及び市町村が負担することにたります。このようなことは、大きな制度の改革のときには暫定的に必要なものであつて昭和二十三年の警察法の改正のときも同様の措置をとつたのであります。従つて今年度は負担の移動ができないことになりますから、自治警系統の者については、都及び市町村が負担することとなり、今年度においては、これがため特別の措置を要しないのでございます。明年度は負担関係が変りますから、これに即応した財政措置を講ずることと存じます。警察費の負担につきまして、地方財政法第十二条は、原則的には、地方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費については、これを負担せしめない薙前でありますが、同条第一項にも規定するごとく、法律又は政令で特例を設けることは差支えないものと考えます。  なお、今回の警察法附則第二十四項は、経過的な措置でありますので、同条に違反しないことはもとより、同条の趣旨にも反しないと考えます。都道府県警察は、都道府県の機関でありますから、その機関に従事する警部以下の費用を都道府県の負担することは、何ら差支えないものと考えております。(拍手)     —————————————
  59. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  60. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして只今問題となつておりまする警察法案に対しまして、以下述ぶるような若干の質疑をいたしたいと思うのであります。  先ず第一に、警察のあり方について、首相並びに法務大臣の御意見を伺いたいのであります。警察の行う職務は、その性質から申しまして、強力な権力を持つものであるということは止むを得ないところかも知れません。併しながらそのために、その本来の使命であるところの個人の自由権を抑圧しがちであるということは、これまで我我をしばしば経験して来たところであります。従つて警察をそのような抑圧的な機関から救済するためにはどうしたならばいいか、本当の警察というものはどういう姿のものでなければならないかということを考えてみまするに、これには先ず第一に、制度としては民主的な警察を確立するということ。そうしてこれを公正に運用する。この制度並びにその運用に関しましては特段の努力が払われなければならないと思うのであります。ところで、警察の民主的な制度というのはどういうことであるか。これは一口に申しますならば、警察権力の集中を避けるということ、中央集権化を飽くまで避けるということが、その実際の姿でなければなりません。それから公正な運用というのはどういうのか。これは住民の意思が何らかの形においてその運用に反映するということ、これが公正な運用を期するところの原則ではないかと考えられるのであります。  そこで、日本の警察でありますが、戦前の警察は、御承知のようにその制度自体が極めて非民主的であつた。いや、制度が非民主的であつたというばかりでなく、むしろ日本の民主化を阻害する一大障害であつたということは、すでに御承知通りだと思う。特に権力の集中が甚だしく、例の内務大臣が警察権を掌握し、単に刑事警察或いは保護警察の範囲ばかりではなくて、政治警察の範囲にまで警察権を行使して、幾多の忌わしい事件を惹き起していることは、これ又すでに御承知通りだろうと思うのであります。一般の人々は、警察と言えば、権力を以て威圧するものだという感じを持つておつたことは、これは何人も否定することができないだろうと思う。そこで戦争後警察が解体されまして、いわゆる国家地方警察、それから自治体警察、こう二本建になり、その運用の面につきましてもそれぞれ公安委員会が設けられまして、これが警察を管理するということになつたのであります。これは制度の上から申しましても、その運用の面から申しましても、極めて適切な措置であつたと申さなければなりません。然るに今回政府は、占領下時代の行過ぎを是正するという名目のもとに、この二本建の警察を一本建にする。而もそればかりではない、過度の権力集中をこれに行おうとしておる。これは戦前の警察以上に中央集権化したものであり、曾つての警察国家の再現であると申さなければなりません。人は馬を水辺に曳いて行くことはできるが、併し馬に水を飲ませることができないということが言われております。権力によつて抑圧することはできるかも知れません。併し権力は畢竟力であります。物理的な力であり、人を信頼せしむるものではありません。否、権力に頼るものは、結局においては力によつて破られることも知らなければなりません。今回の警察制度の改正は、力を以て人民を信伏せしめようとする極めて反動的な改正であると申さなければならんのであります。この点に関しまして首相並びに法務大臣の警察のあり方ということについて明快な御答弁をお願いしたいのであります。  第二にお尋ねいたしたいのは、只今申しました警察権力の集中に関する問題であります。私は先ほど、戦前にもない警察国家の再現であると申しました。戦前では内務大臣が警察行政の責任者でありました。そのもとに警保局長が置かれ、これが全国の警察を指図をいたしておつたのであります。ところが今回の改正によりまするというと、警察庁の長官は国務大臣である。曾つての内務大臣と等しい地位に置かれておる。而もこの警察庁長官は次長以下警視総監も警察本部長もすべてその人事権を握るのであります。而もこの警察庁長官の地位は、前の内務大臣に比べますると更に直接的に警察官の指揮監督を行うことができるようになつておる。内務大臣は、成るほど警察官を指揮監督しておつた。併し府県の警察官については、知事の指揮監督のもとに立たざるを得なかつた。ところが今度の警察庁長官は、一切の警察官の指揮監督を行うことができるのであります。これは警察庁長官と内務大臣との比較でありますが、更にその現在の警察庁長官の置かれている地位を考えまするというと、終局においては内閣総理大臣の権限というものが非常に強化されて来るということを注意しなければなりません。内務大臣は戦前におきましては天皇輔弼の機関であります。総理大臣といえども、その任免を自由に行うことができなかつたのであります。ところが新憲法におけるところの行政の最高責任者は内閣総理大臣であります。内閣総理大臣は各大臣に対しまして任免の権限を持つております。自由に、如何ようにも大臣の任免ができるのであります。而もこの内閣総理大臣は保安庁長官を通じて保安隊を持つております。法務大臣を通じて検察権を持つております。今又警察庁長官を通じまして全国十一万五千の警察隊をその指揮監督の下に置くことができるのであります。軍隊と警察とそれから検察、この三つをその一手に握ることのできる内閣総理大臣の地位は、独裁君主にも等しいものではないかと思うのであります。(「吉田大元帥」と呼ぶ者あり)従つて警察権力の集中は、終局においては独裁を招来するところの危険があるのではないかということを恐れるのであります。この点に関しまして内閣総理大臣並びに法務大臣の御所見を伺いたいのであります。  更に第三にお尋ねいたしたいのは、自治警廃止の根拠についてであります。自治警は極めて非能率的である。而も自治警は情実を伴いがちである。だからして自治警を廃止するのだという政府側の説明であります。併しながら非能率的である、或いは情実がそこに絡まつておるということは、今日一切の制度に見られるところの現象であります。弊害であります。この弊害は是非とも除かなければなりませんが、ひとり自治警にのみ見られるところの現象であると申すことはできないのであります。更に又政府の説明によるというと、内乱、騒擾などに際して、自治警は極めて力が弱い。或いは国警と自治警とのグレンツ・ゲビートにおけるところの盲点がしばしば利用され危険がある。こういうことを申しておるのであります。併しながら内乱や騒擾などの問題について考える場合には、私どもは内乱や騒擾が何故起るかというところに思いをひそめなければなりません。内乱や騒擾が起るような事態を社会にそのまま放任しながら、そうしてこれに対してあたかも内乱や騒擾を行う者が、我々にとつて不倶戴天の敵であるかのごとくに、これを取締るということにのみ急であつては、本当の社会秩序というものを守ることはできないのであります。自治警がそれに対して極めて力が弱い、非力であるというならば、これに対して今日の自治警の幾つかを共同行動に出でしめるということも考えられるのではないかと思うのであります。それから自治警は余りにも住民に気兼ねをしておる、十分な警察機能を発揮することができないということも、恐らく政府側の提案理由の一つになつておるかせ知れません。だが、住民に気兼ねするほうが、中央の鼻息を窺つて、そうして政治的に行動するよりは、まだ増しではないかと思うのであります。自治警廃止に伴うところの財産の処理や、或いは又警察官の給与の問題等については、すでに同僚諸君によつて述べられましたから、私はあえてこの点には触れることを省いておきます。  最後に、警察官の質的低下に関する問題についてお尋ねいたしたいのであります。警察官は、先ほど申しましたように個人の自由権を保護する任務を持つておるものであります。ところがその警察官がしばしば人民の自由権を保護するどころか、人民に対して暴行を加えるということが報ぜられておるのであります。保護に任ずべきところの責務を持つところの警察官が人々に対して暴行を加えるに至つては、全く言語道断と申さなければなるまいと思います。更に又研修の機関の問題であります。警察法の中にも、研修に関しまして警察大学校が設けられるとか、その他の研修機関の定めがあります。併しながら、幾らこういう機関を設けたところで、果して警察官の質的向上というものを我々は望むことができるであろうか。むしろ依然として同じお巡りさんが人民を弾圧するという姿だけが我々に映るのではないかということを私は恐れるのであります。警察官の質的向上を如何にして図ることができるかという点について、法務大臣の御答弁をお願いしたいのであります。  私は最後に、結びといたしまして、西ヨーロッパの諸国がフアシズムに移行したあの過程をここで想い起すのであります。イタリアが一九二二年、ドイツが一九三三年、フアシズムに移行いたしました。イタリアの場合もドイツの場合も、そのフアシズムに移行し、政権が完全に独裁下に置かれるに至つたあの過程においては、先ず人民の自由を奪い、次いで労働組合の活動を制限する。更に教育の自由、学問の自由、思想の自由というものを制限する。そうして国家機構の集中を図るという過程がとられておるのであります。日本においても、昨年来個人の自由権を制限するための破防法が制定され、更に又今回は労働組合の活動を制限するために、電産、炭労のスト制限法案が提出されておる。或いは又教育の自由、学問の自由を制限するために義務教育学校職員法案が上程されている。国家機構の集中のためには今回の警察法案が上程されておる。こういう、誠に西ヨーロツパのフアシズムの過程そのものと似通つた過程を今日辿つているのではないかということを恐れるのであります。  これらの点に関しまして法務大臣どのように考えていられるか、御答弁をお願いしたいのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  61. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。  警察法の改正の趣旨については、しばしば申しましたが、畢竟するのに能率的な民主的な警察組織によつて治安の確立を図るのであります。お話のような、警察組織によつて基本人権を無視するとか、或いは国民を圧迫するというような考えは、政府としては夢想もいたさないことであります。詳細は主管大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  62. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 堀議員にお答えをいたします。  お話のように警察の職務というものは、本質的にしつかりしていなければだめだ、併しそれが行過ぎるのが非常にまずいと、これは御同感であります。そこで、しつかりしなければならないが、権力の集中にならない方法はどうかということが、本改正においても私どもの責任中心であると思います。これは何度も申上げるようでございますが、結局、国民の代表である公安監理会と公安委員会が煙たい後見役になるよりほかにないと考えております。(「隠居じやないのか」と呼ぶ者あり)隠居とは思つておりません。意見の相違でございます。  そこで警察権力の集中化ということでございますが、中央の命令というものは、府県公安委員会、つまり府県の警察の主人である府県公安委員会のところで中断されるのでありまして、昨晩も衆議院の分科会においては、一体、警察庁長官の命令は、府県に行つて府県公安委員会のところで切れるのじやないか、そんなあいまいなことでいいのかという逆のお叱りを受けたような次第でございます。私も威張る警察は嫌いであります。温かい感じの警察が好きであります。併し国民は同時に火炎びん的な事件をどうにもできない警察を嫌つておるのであります。(拍手)この改正を望んでおるのでございます。(「自治警に対する侮辱だぞ、それは」「簡単々々」「火炎びんなんか簡単に処理できるよ」と呼ぶ者あり)  そこで警察庁長官が次長を勝手に任免するというお話でございますが、これは私ども慎重に考えた次第でありまして、無条件ではございません。国家公安監理会の意見を聞くのでありますが、意見を聞いてそのままではないかという御心配もあろうかと思いますが只今の国家公安委員会にしましても、全く私どもと政治的立場の違う、而も私は個人として非常に立派だと尊敬しておる人がおりまして、これらの人が、なまなかな不当な人事に賛成するものとは思いません。且つ先ほど申上げましたように、不当な人事をすれば、連袂辞職ということも絶対自由なのでありましで、そういうことになりますならば、これは大きい政治問題になつて、必ずやそのような不当な人事を行う内閣というものは国民に嫌われると信じておるのでございます。(「嫌われているよ」と呼ぶ者あり)  それから警察庁の任務が極めて無限大のような御心配でございますが、この点はやはり国民に心配をかけてはいけないと思いまして第六条に明記したのでございますが、先ほども岩木議員のお話のように、どうもぼんやりしておるということでございますならば、委員会におきまして細かくその内容を説明いたしまして、政府当局みずからがその言明に束縛されるようにいたしたいと思います。自治警察が非能率で情実にからまつておるというのは、お話通り自治警察ばかりではございません。それは管轄区域が狭いので、そうなるのでございますから、このたびは府県単位の警察にいたしまして、広い天地が求められるようにいたした次第でございます。併し、それでは自治警察でいいではないか、こういう御議論に行かれると思うのでありますが、そこは意見の相違ということになると思うのでございますが、(笑声)アメリカのようなところでもFBIという国家的警察を持つておる。その意味において国家的性格を持つ警察への架け橋として府県的連絡のものを持つ。こういう考えなつた次第でございます。  警察官暴行をどうするか。こういうことでございますが、これもたびたび申上げる次第でございますが、府県公安委員会は任免、懲戒の勧告権を持つておりましてこれを自由に発動さしてもらいたいと思います。  警察官の行過ぎについて、いろいろな考えがないか、措置の方法がないかというお話でございますが、私は国警担当の大臣として現に、情においては忍びませんが、そういう警察官の行過ぎについては、刑事訴訟法の改正等の方面を以て只今立案をしておりましてこれは今国会に御審議願いたいと思つております。(拍手)     —————————————
  63. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 須藤五郎君。    〔須藤五郎君登壇拍手
  64. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 本日は重要法案が審議されるというので、病気を押して総理が御出席になつているにもかかわらず、与党初め同僚議員諸君の——(「共産党はどうした」と呼ぶ者あり)共産党はここに三分の一ちやんと立つておる——出席のないことは甚だ遺憾だと思います。前置きはこれだけにしましよう。  私は日本共産党を代表して只今提出された警察法案に対し数点の質問をいたしたいと思います。  第一に、この新警察法は、戦前にもその比を見ないほど強力な中央集権的警察制度を意図するものであり、破防法実施のための手足である警察力を強化し、フアッシヨ体制の最後の総仕上げであると断ぜざるを得ないのであります。全国の警察権が国務大臣たる警察庁長官に掌握される結果、総理大臣は、右手に保安庁長官を通じて十万余の保安隊を握り、左手に十万余の警察隊を提げ、更に法務大臣を通じて一切の検察権を掌握し、実に恐るべき独裁者的権力を持つに至る。これは全くの臨戦体制を作るものであります。先般来戦争の危険はないと繰返し答弁している総理は、なぜかくも性急にかかる重大な法律案の国会通過を焦る必要があるのか。それは、日本政府みずからが戦争を誘発するがごとき冒険的計画を持つているが故にかかる非常事態に備えた警察法改正をあえてしなければならないのではないか。国民は今や不安の念に駆られている。総理は明快に答弁をする責任があると思います(「答弁無用」と呼ぶ者あり)  第二に、今回の警察法案を読んでみると、警察が極めて軍隊的色彩を持つていることが明かであります。すべての組織、規定が国家非常事態を前提として組まれている。五つの地方警備局の区分及び北海道の方面隊組織は、明かにアメリカ駐留軍及び保安隊の配置に照応し、駐留軍司令官の指揮下に命令一下動員できる体制であり、これはすでに泥棒を捕えるための警察ではないと言うべきであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)政府は、国民の強い反対の前に今すぐ再軍備ができないので、この改正法案によつて保安隊を事実上一挙に二倍に増強し、これによつて一方ではアメリカ政府当面の再軍備要求に応え、これと引換えに、軍事援助、経済援助を引出す醜い取引を池田君にやらせ、他方では国民に対し再軍備はやらないとごまかす魂胆ではないか。これは保安隊の朝鮮出兵が要請されたとき、その留守師団の役割を警察にやらせようとの意図ではないのか。木村保安庁長官の答弁を求めたいと思います。  第三に、私はアメリカ駐留軍及び在日のアメリカ警察機関との関係について質したいと思います。前述のごとく、政府は国家非常事態に際し安全保障条約に基いて、全日本の警察力を命令一下、駐留軍司令官の指揮下に入れるように、自治体警察と国家地方警察を一本化し、その際、障害となるかも知れないところの公安委員会地方議会の警察権への介入を排除しようとしていることは明かであります。従つて政府は、この改正は、占領制度の行過ぎ是正なりと称し、八年に亘るアメリカの占領制度に対する国民の忿懣を利用して国民の賛成を求めようとしているが、事実は全く逆であります。政府は、安保条約のみでなく、行政協定第二十三条に基き、この警察法の改正をアメリカ政府より強要されているのではないか。行政協定第二十三条には、「日本政府は、その領域においてアメリカ軍の安全を確保するため必要な立法やその他の措置をとることに同意する」とあります。現に問題となつている鹿地事件においては、アメリカ警察機関に対し国警長官が関与し、又中国やソ同盟より帰つた同胞の呼出しに対しても協力しているのは、何によるか。表面独立したと言い、占領制度を是正すると言いながら、実は講和、安保両条約行政協定に縛られて、日本国民の基本的人権を根本から侵すがごとき虞れある今回の警察法改正を行わんとするのを見ても、占領制度はむしろ講和後において吉田内閣の手で強化されていると言うべきでありましよう。若し日本政府独自の立法なりとすれば、与党たる自由党内にさえ多くの反対があり、自由党員の知事、市長が絶対反対を唱えているこの法案を、内閣の運命を賭けてまで、なぜあわてて通さなければならないのか。  第四に、このようにアメリカのための下請警察を作るために、政府国民の大反対にもかかわらずこの改正案をあえて国会に上程した。第一条で「民主的理念を基調とする効率的な警察の組織を定める」と言つているが、国民の中でこれを信用する者が一体何人いるだろうか。過去において、又現在においても、警察が行なつている孜々の弾圧の事実、暴虐なる蛮行を、国民は知つております。民主的理念は単なる形容詞に過ぎず、残るのはただ効率的な警察の組織、即ち効率的に国民を弾圧するための警察であります。  昨日、大分県別府から一通の手紙が届きました。開いて見ると、別府市警で朝鮮人の一輪タク業者が拷問に会つて無断にも虐殺されたという事件に関する請願でありましてこれは、つい数日前の二十日の出来事であります。二十一日、輪タク業者金君の身柄釈放の通知を受けて友人が別府市警に行くと、思いがけなくも同君の冷たい死体を渡されたというのであります。詳しいことは略しますが、九大の北条博士が解剖の結果、ここに解剖の写真もありますが、「死体の背中一面に無数の打撲傷があり、頭脳内には外傷なくして多量の内出血あり、これが致命傷だ」と博士も証明しているとあります。事実とするならば、これは曾つて小林多喜二を虐殺したのと同様の状態であります。警察当局は金君の過失による死亡であると強弁して責任を回避しておるので、大分県の各政党、公安委員会、人権擁護委員会などで取上げて、政府責任を追及しておると述べ、かくのごとき暴虐な警察の権力を更に強めるような警察法の改正をぜひ国会で阻止して欲しいと請願して来ているのであります。  国民の各階級階層の生活擁護、平和擁護、独立のための運務に対し、警察が弾圧を事としている事実は余りにも多く、ここに枚挙し切れないのでありますが、私はここにただ最近起つた二、三の事実を挙げるにとどめます。国鉄初め多くの労働組合には、絶えず私服警官が入りびたつて、会社の労務課、職場防衛隊と連絡しながら、組合活動家の調査を行なつており、日本レイヨン京都工場では女子寄宿舎に警官が泊り込んでいる事実さえあります。又昨年十月、京都西陣の自由労組の組合員に対し、暴力団約三十名が、戦争に反対するやつをやつつけろと襲いかかつて十改名に傷を負わせたとき、制服、私服の警官七名は、暴力団を阻止せず、むしろこれに加担して暴行を働いている。農民に対しても、昨年九月、淡路島湊町における山林管理組合の多数農民の逮捕、十月には山梨県曙村において、警察が警防団を唆かした結果、山林開放の団体交渉の帰途、一農民が撲殺された事件など、現在の警察は、明かに一部特権階級の警察と化しております、メーデーの不法発砲事件は、最近の公判廷で検事が発言に窮しているのでも明かなごとく、全く警察の意識的挑発であつたのであります。思想弾圧については、雑誌「平和」「世界」の読者を警官が調査している事実について、我が党の兼岩君が質問したのに対し、法務大臣はその事実なしと返答して来たが、(「その通り」と呼ぶ者あり)岩手県東磐井郡千厩町の南門文庫という書店の名まで明かになつているのであります。善良な国民を不遇のやから扱いにする吉田首相が一切の警察権を掌握する政府の手で、改正警察法が民主的理念を基調として運営されるとは誰も考えも及ばぬことであります。果して民主的理念を基調として運営できるという保証がどこにありましよう。全く笑うべき寝言に過ぎないのであります。かくのごとき弾圧を事とする警察権の強化を企図しながら、この改正法案には、警察官の行過ぎや人権蹂躪に関して国民を救済する規定を何ら盛つていないのであります。政府は別に警察官適格審査会を設ける立法を考慮していると言うであろうが、問題は末端の一警官や一警察署長の行過ぎを処罰することではない。メーデー事件の場合のように、警察権を一手に掌握する警察庁長官に重大な過ちがあつた場合、これを如何にするか。かかる規定を一条も持たないような本改正法案は審議するに値いしないと考えるが、法務大臣はこれに対し如何なる対策を持つておられるか、伺いたいと思います。  警察は本来、国民の利益を守り、その生命財産を守ることがその使命でありますが、現在の警察は、この本来の使命から逸脱し、国民にとつては逆の存在となりつつあります。最高検察庁の調べによりましても、外国兵の犯罪件数は昨年の八月から十一月までの三カ月間に三百二十一件に上り、同年四月から八月までの五カ月間の百七十余件に比べて二倍以上に増加し、最近も沼津市において驚くべき外国兵の婦人暴行事件が起つたことは、先ほど同僚藤原議員の緊急質問通りであります。政府日本国民の生命財産を守ることこそ力をいたすべきであるにもかかわらず、かかる方面の対策を怠り、外国に媚を売り、国民生活擁護、平和独立の要求を押え付け、外国のために日本戦争に引込むための準備として警察法改正を行わんとしております。かかる暴挙は、全国民を敵に廻す措置を政府みずからがとつていることであり、そのため却つて国民の反抗は高まり、政府は更に警察力を強化して国民を弾圧せざるを得なくなるでありましよう。独裁者の道がどんなものであるかは総理もよく知つているはずではないか。我が党は、かかる警察国家、暗黒政治の再現に反対し、真に国民に奉仕し、国民に対し責任を負う警察制度を主張するものであります。  一、全住民の直接投票によつて選出された公安委員による警察官の任免と警察の運用。二、公安委員を初め、警察官に対する住民のリコール制、罷免権。三、右に基き政治的色彩を一掃した自治体警察。四、警官の武器携帯廃止。五、警察官の数を徹底的に減少し、地方財政の負担を軽減する。六、警察官にも労働組合の組織を認めること。  中国在留邦人帰国援助の代表の一人、内山完造氏の北京からの通信によれば、中国の警官は棒ぎれ一つ持つていないということである。真に国民のための善政が行われる所には弾圧のための武装警官隊は要らないのであります。総理は、我が党の主張する警察制度の改正に賛成し、これを採用する勇気があるか。十万の軍隊と十万の武装警官に守られなくては、枕を高くして眠れず、お気の毒ながら所労に所労を重ねることは、(拍手)吉田内閣の秕政ここに極まれりと言わざるを得ないのであります。これは国民大衆の声のみではない。吉田内閣の税政に対する反対の声は自由党の内部にも充満しているではないか。吉田内閣は速かに罪を国民の前に謝し、退陣すべきであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇拍手
  65. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  私への御質問は、すでにこの前の私の答弁で御了承を願いたいと思います。  附加えて申しますが、吉田内閣は退陣いたしません。(笑声、拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  66. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  保安隊が朝鮮に出動するようなことは断じてないということは、しばしばここから申上げた通りであります。    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  67. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答えを申上げます。  大体、前の質疑の方々にお答えをいたしたのでありますが、ただ一点、北海道は、そんな特別の意味はないのでありまして、御承知のように普通の県を数個集めたような広範囲に亘りますので、普通の県の広さに合せて方面本部を五つ作つたのであります。併しこの警察の主人は国民の代表である北海道公安委員会でございます。  引揚同胞の思想を調査する、それに警官を協力させるということは、私の方針でございません。先日参議院の委員会で、そういう御質問がありましたので、直ちにそういうことの万々ないよう指令をいたしました。別府の事件というのは、早速責任を持つて調べたいと思います。特定の雑誌の購読者に対して思想調査をする、これは私の方針でございませんが、本日すでに本屋の名前もわかりましたから、早速これは調査の指令を出しております。先日御質問がありましたときに、あの当日、公安調査庁の要員を集めまして、そういうことは方針でないことを再確認いたしております。  警察庁長官が不埓なことをしたらどうするか——これは国家公安監理会が監視助言の機関として、ただでは置かない所存でございます。  沼津の問題は今朝申上げましたが、三名の外国兵士のうち、日本警察は早速二名を捕まえまして、一名捜査中でありまして、決して怯むというようなことはいたさせません。警察官の労働組合ということは、どうも賛成しかねる次第でございます。(拍手
  68. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。  次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時八分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、駐留軍軍人子女及び警察官に対する暴行事件売春行為対策に関する緊急質問  一、済州島沖における日本人射殺事件に関する緊急質問  一、日程第一 酒税法案  一、日程第二 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律案  一、警察法案(趣旨説明)