運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-02-26 第15回国会 参議院 本会議 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十六日(木曜日)    午前十時三十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十六号   昭和二十八年二月二十六日    午前十時開議  第一 電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案趣旨説明)(前会の続)  第二 医師会歯科医師会及び日本医療団解散等に関する法律の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第三 海岸砂地地帯農業振興臨時措置法案衆議院提出)(委員長報告)  第四 三陸沿岸縦貫鉄道完遂促進に関する請願委員長報告)  第五 小本線鉄道延長工事施行に関する請願委員長報告)  第六 猪谷駅、神岡町間鉄道敷設促進に関する請願委員長報告)  第七 大畑鉄道敷設促進に関する請願委員長報告)  第八 遠信鉄道敷設に関する請願委員長報告)  第九 只見線鉄道敷設工事促進に関する請願(三件)(委員長報告)  第一〇 野岩羽線鉄道敷設促進に関する請願委員長報告)  第一一 赤穂線鉄道敷設促進に関する請願委員長報告)  第一二 橋場線鉄道復活に関する請願委員長報告)  第一三 三陸鉄道石柳新線に関する請願委員長報告)  第一四 直江津、越後湯沢両駅間鉄道敷設促進に関する請願(二件)(委員長報告)  第一五 青森漁港臨港鉄道敷設に関する請願委員長報告)  第一六 青森港中央ふ頭臨港鉄道整備に関する請願委員長報告)  第一七 釧勝線鉄道敷設に関する請願委員長報告)  第一八 国鉄新線敷設に関する請願委員長報告)  第一九 越美北線鉄道敷設計画に関する請願委員長報告)  第二〇 大宮仙台駅間鉄道電化促進に関する請願委員長報告)  第二一 鉄道嘱託医往診用バス復活に関する請願委員長報告)  第二二 長崎県若宮島燈台しよく光増加に関する請願委員長報告)  第二三 八丈島大越ケ鼻燈台等設置請願委員長報告)  第二四 秋田県に測候所設置請願委員長報告)  第二五 大間港国営修築工事促進に関する請願委員長報告)  第二六 小名浜港修築工事促進に関する請願委員長報告)  第二七 静岡県下田港の避難港工事促進に関する請願委員長報告)  第二八 岡山県味野改修工事施行に関する請願委員長報告)  第二九 水難救済に関する法律制定請願委員長報告)  第三〇 三陸沿岸縦貫鉄道完遂促進に関する陳情委員長報告)  第三一 大宮仙台駅間鉄道電化促進に関する陳情委員長報告)  第三二 東北、北海道両地方に気象官署増設陳情委員長報告)  第三三 港湾等整備費国庫補助増額等に関する陳情委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案趣旨説明)(前会の続)。  昨日に引続き、原虎一君の質疑に対する答弁を求めます。    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  4. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 昨日の原議員お尋ねに対してお答えを申上げます。  その第一は、今回の法案が、基本的労働権剥奪するものではないかという御趣旨のように承わりました。本法案電気及び石炭の両事業における争議行為正当性を逸脱する程度のものについて規定をいたしたものでありまして、正当なる争議権制約するとか、或いはこれを否認するとかいうものではなく、決して基本的労働権剥奪ではないと考えております。(「口の先だけじやないか」と呼ぶ者あり)政府といたしましては、労働組合が正当な限度においてその団結の力によつて労働条件維持向上図つて経済の発展と民生の安定に資して参りますことは、もとより期待しておるところでございます。なお、お言葉のうちに憲法違反というようなお言葉がございましたが、憲法違反にはならないと考えております。  次に、権利剥奪して労使均衡が破れるものではないかというお尋ねでございます。電気事業につきましては、本法案第二条に規定するところは、只今も申上げますように、本来正当ならざる行為乃至は昨年の実績に鑑みまして、社会世論の上で非とされる行為について、争議行為としてこれを行い得ざることを明らかにしたものででありまして、何ら不当なる争議権抑圧ではないのであります。而も本条によつて規制を受ける労働者の数は、全電気労働者の中では極く少数でございます。他の大多数のスト争議行為について何ら制約を及ぼすところがありません。而も第二条違反行為以外にも、電気事業労働者はほかに使用者に対抗するに十分なる争議手段を有していると考えるのであります。(「有していないじやないか」と呼ぶ者あり)従つて法案によつて労使均衡が破れるようなことはないものと考えております。次に、公益事業の他の産業に順次及ぼすのかというような意味お尋ねででございました。これについては昨日官房長官からもお答えを申上げたと存じますが、要するに今回の案は、今申上げましたように最小限にとどめたのでありまして、その他のやや同種のものにつきましても、これは労使双方の良識と自制とに待つ、従つて自主的の交渉によつてすべてが調整せられることを期待いたしておるのでございます。  次に、中労委の問題について、その活動がにぶい、或いは権限を強化してはどうかというお話でございました。御承知のように争議の斡旋、調停或いは仲裁という労使関係調整につきましては、労働委員会が非常な努力を尽しまして、早急且つ円満な解決図つておるのは御承知通りでございます。お説のごとく労使関係の安定のために労働委員会の働きが十分に発揮されますことは勿論望ましいところでありまして、私どもも従来できるだけの努力をいたして参つたつもりでありまするが、今後とも御意見趣旨に従いまして、労働委員会活動のますます活発になりますように、真剣に努力をいたしたいと考えております。  最後に、抑圧するよりはむしろ争議の発生せんように積極策を講ずべきである、従つてこの法案を撤回する意思はないかというお説でございました。本法案只今も申上げましたように、従来の経験及び現在の社会実情に鑑みまして、必要止むを得ない程度措置であると考えますので、この法案を撤回する意思は持つておりません。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  5. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 生産協力策として、労働者の人格と権利とを尊重し、その協力を求むべきであるとの仰せにつきましては全く御同感でございまして、通産省におきましても、労働対策には重大な関係もございまするし、又重大な関心を持つている次第でございます。労務管理組織の改善、職場訓練の徹底、能率的合理的賃金制度の採用、分業と協業との効果的結合雇用構成適正化生産性向上等を促進するために適切な施策を行う必要があると存じ、これらの施策をば円滑に又効果的に行うためには、同時に労働環境を整備し、職場教育を徹底することが必要であると考えております。これらの労働対策につきましては、通産省においては主管省たる労働省とも緊密に連絡いたしまして、所管産業に属する各企業に対し適切な指導と助長とを行う所存でございます。(「適切な答弁だな」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  6. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 原さんにお答えいたします。  昨日の御質問趣旨は、この法律案憲法第二十八条に違反しておるのではないかという御趣旨のように承わりました。厳密に申上げますれば、これは法制局長官から答弁いたすことが妥当かとも思いますが、本案を作ります準備期間におきまして、私の役所も時々連絡相談を受けましたので、私からもお答え申上げます。この法律案は、御承知のように電気事業石炭事業公共的な重要性に鑑みまして、争議権公益との調和を図つて公共福祉に必要な規定最小限度に作るものでございまして、成るほどお話のように、憲法第二十八条には勤労者の団結する権利を保障する規定はございますけれども、他面におきまして、御承知のように憲法第十二条に記されておりますように、憲法に保障された国民の自由と権利は常に公共福祉のためにこれを利用する責任を記しておりますので、この点から見まして、憲法違反ではないというふうに考えておる次第でございます。(拍手)    〔原虎一君発言の許可を求む〕
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 何ですか。
  8. 原虎一

    原虎一君 再質問をいたします。
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 原虎一君。    〔原虎一登壇拍手
  10. 原虎一

    原虎一君 官房長官お答えは別に私は要求いたしておりませんが、総理に代つてという意味だろうと思いますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)私は飽くまで総理の御答弁を求めるものであります。(「副総理だ」と呼ぶ者あり)と申しますのは、労働問題を決定いたしますときには、一番大切な問題は、基本的な考えでありまして、昨日も質問で申しましたように、総理労働者資本家従属物であるという基本的考えによつて労働政策を律しますならば、如何なる法律を作りましても、労使の問題の円滑なる関係は生じて参りません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)労働者産業協力者として、その観念の下に労働政策を行いますならば、今日のごとき、本法案のごときものを作らなくても、当然争議は悪化して来るものではないのであります。(拍手)この理念を総理にお聞きしたいために、昨日来総理出席を促しておるのでありますが、御出席がないのであります。(「明日来るから明日聞いたらいい」と呼ぶ者あり)改めて総理は、本演壇がら国民に納得できるように御答弁願いたい。  それから労働大臣の御答弁は、形式的には、労使の力の均衡は壊れていないと言われますけれども電力事業におきまして、罷業権は認めましても、停電は許さんということになりますれば、その罷業権は先ほども申しましたように骨のない「たこ」のごときものであります。資本家が一番恐れるのは、停電されるということが一番こわいから、この法律総理側近が、資本家になつておりますところ電気産業資本家共が、これを吉田内閣をして作らしめておるのであります。それを狙つているときに、労働組合が昨秋ストライキをやりましたから、国民感情をうまく捉えて、吉田内閣停電ストを禁止しようとする底意が見えておるではありませんか。この停電せしめる権利というものがなくして、資本家に、(「資本家じやない、消費者だよ」と呼ぶ者あり)資本家側に対するところ労働者の力というものが真に発揮できるでありましようか。(「そんな権利はないのだよ」「国民に迷惑をかける権利はない」と呼ぶ者あり)罷業権というものは、これを行使いたしますならば、社会影響を与えることは当然であります。でありますから、その社会に与えるところ影響が重大であるからと言つて直ちにこれを法によつて禁止すべきものでなくして、そういうことが起らないような(「禁止されるような争議をするものじやない」と呼ぶ者あり)国政が行われ、又そういうことが、問題が起らないような調停機関充実が行われ、それでもなお且つ起きるならば、これを労働裁判に付する、或いは仲裁裁判に付するという段階を経られて、初めて憲法第二十八条の罷業権利というものが保障されるのでありまして、ただ国民感情が、停電ストなどというものに対して非常に反感を持つているから、これを叩いて直ちに禁止する法律を作れば、それで事足りるというお考え間違つてはいませんかとお伺いしているわけであります。(「そうだ、間違つているぞ」と呼ぶ者あり)そこで労働問題としまして重大なるポイントであります。(「ポイントははつきりしているのだよ」と呼ぶ者あり)  それから犬養法務大臣の御答弁は、(「二十分きりないのだぞ」「明快であつた」と呼ぶ者あり)憲法第二十八条の違反ではないと、御答弁によれば違反でないような御答弁でありますけれども、法の精神から言いますならば、当然二十八条によつて与えられたるところ罷業権というものを、公共福祉のために剥奪しなければならぬ場合におきましては、その二十八条の権限というものが最大限に認められるところ法律作つてこそ、作るところ精神があつてこそ、この二十八条の精神を尊重したことになるのであります。それが即ち労基法であります。いわゆる公労法の精神がそこにあるのであります。ところがこの法案は、それ以上に剥奪しつ放しにしておくという問題、(「剥奪じやないのだ」と呼ぶ者あり)他に罷業権を持たしておると言いますけれども電気産業の場合におけるところ罷業権というものは、停電も当然行う、これも罷業権の中に含むのであります。その一部を剥奪しまして、事務ストライキ或いは集金ストライキというものが、如何に弱きものであつて資本家に対する経済的な反省を求める、資本家反省を求めるところの力とはなり得ないと申上げているのでありまして、この点犬養法務大臣の御答弁は、余りに皮相的な意見、(「もつと勉強しろ」と呼ぶ者あり)うわつつらな御答弁であります。  以上再質問申上げまして、(「答弁の必要はない」と呼ぶ者あり)いずれ委員会等におきましては、詳細に質問をする機会があろうと思いまするが、再質問の時間がないために、この程度にして打切りたいと存じます。ただ最後に、小笠原大臣の御答弁は、誠に当を得た立派な御答弁でありますけれども、残念ながら吉田内閣はこれを実行してないというところに、大きな問題があるということをお考え願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  11. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 停電ストが、資本家に最も大きな打撃を与えるものであるという御説でございましたが、私どもは、資本家よりは第三者たる国民が最も被害を大きく受けるのであつて経営者はさほどこの停電ストによつて感ずるものではないというふうに考えております。なお提案理由にもよく御説明申上げたつもりでありまするが、(「そういつたことに対して政府責任を感じないか」と呼ぶ者あり)今回の規制は、従来違法性のあると考えられた程度停電スト並びにこれと同様に最も妥当性を欠くものであると社会通念考えられる程度のものを併せ規制いたしたのでありまして、決して只今お話のように大きく抑圧弾圧をするという考えのものではないということを(「その通り」と呼ぶ者あり)御了承頂きたいと思います。(拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  12. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答えいたします。これはますます法制意見的になりまして、実は厳格に申上げますと、法務省の範囲でないのでありますが、再質問に対してお答えをいたすことにいたします。  成るほど先ほど申上げましたように、憲法第二十八条には、労働者の団結する権利団体行動権利を保障しておりますが、その権利は、同じ憲法の中で、但しこれこれの枠があるのだよということを書いているのでありまして、それが十二条に当るのでございます。従つてその十二条は、結局国民に自由と権利憲法によつて与えてあるけれども、その国民の自由と権利は、常に公共福祉のためにこれを利用する責任が同時にあるという制約を与えているものと解釈いたしておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  13. 佐藤尚武

    ○(佐藤尚武君) 早川愼一君。    〔早川愼一君登壇拍手
  14. 早川愼一

    早川愼一君 私は緑風会を代表いたしまして、およそ三つの点について総理大臣法務大臣並びに労働大臣の御所見をお伺いいたしたいと思うのであります。  先ず第一に、去る一月三十日の体会明けの今国会におきまして、総理大臣施政方針を明らかにされましたが、そのうちで、独立日本として占領中の行過ぎの感のあるものに対しましては、この際これを是正するのは国の自立性のための当然の措置である。こういうふうに言われておられたのであります。そうしてそれに引続いて、教育振興のために義務教育費全額国庫負担、或いは教職員を国家公務員に変更すること、又国の治安確保のためには警察制度を根本的に改革をすること、それと並んで今回提案されておりますところ電気事業並びに石炭鉱業スト制限をするというようなことを述べられておるのであります。(「すべてこれ逆コース」と呼ぶ者あり)ところが私どもからこれを見ますると、果して今回提案されたものが、いわゆる占領政策の行過ぎを是正するものとは受取れないのであります。成るほど昨年の冬の電気産業スト、或いは又石炭ストは、その規模におきましても又長期に亘る点におきましても、我が国においても空前のものでありますと共に、外国にもその例がなかつたのであります。これによつて国民経済国民生活の上に非常な大きな打撃を受けたのでありますが、これは決して占領政策の行過ぎの結果こういうものが超きたのではないのであります。むしろ公益事業争議の行過ぎであり、或いは戦後、労使間の紛争の行過ぎである。いわゆる占領政策の行過ぎを是正する一環としてこういうものが提示されておるということは、これは非常に我々といたしまして看板に偽りがある、看板と内容が非常に異なつておるように感ずるのであります。    〔議長退席、副議長着席〕  申すまでもなく、独立後の日本にとりましては、一番要望されておることは、この貧弱な国内資源を開発して活用し、産業を隆盛に赴かして、貿易によつて収支均衡を図る。こういう段階にあるのであります。又こういう際において国民相互が無益な抗争によつてエネルギーを消耗し合うということよりは、これを合理的に調整して国民全体の生産を増大させる。これが最も急務中の急務であると私は思います。  一体労使間の紛争でなぜこういうふうに解決が困難になつておるか。これは一つには、現在、まま経済闘争というものがそういう名を借りた政治闘争争議の中に巻き込まれるから、従つて労使間において問題が解決ができないのであります。この点を我々は十分見なければならんと思うのであります。(「政治の貧困からだ」と呼ぶ者あり)即ち経済現状を無視し、或いは企業の採算を度外視した要求が出た場合、又それが同時に強力な組合のおのおのによりまして互いに内部的に連繋し、政府政策を阻止したり、或いはこれを、或る政策を強要するというような目的のために争議が起つた場合には、これは到底労使間において問題を解決することはできないのであります。(「政府憲法を守らんからですよ」「資本家が一番それをやつているじやないか」と呼ぶ者あり)又こういうような傾向が多くなると共に、現在の労働組合法の内部におきましても、多分に考えさせられる点があるのであります。御承知のように、労働組合法の第五条の八には、「同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代表議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しない」、こういうことになつておるのでありまするが、現在の労働組合慣行におきましては、執行部はあらかじめ白紙委任状をもらつて、(「違う違う」と呼ぶ者あり)如何なる経緯、又如何なる段階においてストライキに突入するかどうかということの事情につきましては、一般組合員は関知しないのであります。(「もう少し勉強をしろ」「そんなことがあ るか」「そんなことをだまつて聞かれるか」と呼ぶ者あり)これはあたかも戦前において軍部の勢いに屈した帝国議会が、(「労働組合の大会に行つて御覧なさいよ」と呼ぶ者あり)白紙委任状を提示して(「認識不足だ」と呼ぶ者あり)とうとう軍部の強要によりまして、戦争に突入したと同様の実情であるのであります。(拍手)かかる慣行こそは、(「株主総会とは違いますよ」と呼ぶ者あり)十分我々として果してこれが……、政府組合問題について、組合の、組合法のいろいろなことについて、(「争議を語る資格はないぞ」と呼ぶ者あり)介入したり或いは干渉したりすることは、これは厳に慎まなければなりません。併しながら法の精神は、同盟罷業をやるときは、少くとも各組合員の総意が結集しなければならん。然るに現状においては、果してそういうことが行われておるか。(「行われておる」と呼ぶ者あり)いや、そういうことは形式的に言うならば、あたかも曾つて軍部白紙委任状によつて、(「おかしいよ」と呼ぶ者あり)戦争に突入したと何ら異なることはないのです。(拍手)こういう慣行に対しましては、組合規約を……、(「そんな認識ではものを語る資格がないよ」「引込め」と呼ぶ者あり)いや君は黙つていたまえ、私は経験者なんだ。(笑声、「とんでもない経験者だ」「笑うべき経験者だ」と呼ぶ者あり)もつと切実な問題であるべきはずである。でありますから、労働組合規約の中にこういうふうな規定を設けてあつても、実際に実施されることが、(「もう政府答弁は必要ないな」と呼ぶ者あり)白紙委任状のようなものを以てストライキに突入するような、こういうような結果になつていること我々はもつともつと深く掘り下げて、如何に現状を救うべきかということをお考えになる必要があるのじやないかと思うのであります。(「誰が考えるのだ」「知らないにもほどがある」と呼ぶ者あり)又世界経済の関連におきまして、日本貿易振興させ国力充実させなければならんことは、これはもはや言を待たないのでありますが、現行労働基準法が果してこれらのことについて、(「ちよつとあやしくなつて来た」と呼ぶ者あり)我が国力充実に対して、如何なる制限があるか、    〔「一つくらい聞きなさい」「まだ一つ質問していないぞ」と呼ぶ者あり)もつと研究いたしますならば、現在の日本の国情以上のものが、或いは国力以上の労働基準法の定めがあると私ども考えておるのであります。(「生理休暇はやめなさいと言うのだろう」「基準以上に設けているじやないか」と呼ぶ者あり)これらのことは、単に一、二の例を挙げたに過ぎないのでありますが、今回のこの提案だけが決して占領政策或いは占領における行進きを是正する政府の意図では、私どもはない。もつと真剣に、労働関係におきまして現在の労働関係立法が、果して行過ぎであるかどうかというようなことについて、政府施政方針が、若し占領中の行過ぎを是正するというのであるならば、この今回の提案を以てしては足りないと、こう考えるのでありますが、(笑声政府所見をお伺いしたいと思うのであります。(「料理屋だけ繁昌するよ」と呼ぶ者あり、笑声)  第二に、第十三国会におきまして労働関係調整法が改正せられて、その三十五条に緊急調整なる一項が加えられたのであります。当時労働大臣説明では、緊急調整ゼネストというような非常事態に対処する法律である。こういうことを説明せられておつたのであります。併しこれは本来から言いますならば、治安立法として制定せらるべきものであると我々は考えておつたのでありますが、どうしてこれが労働立法一環として、一項として織込まれるようになつたのか。この点について我々は今日振返つてみて一考せざるを得ないのでありす。そもそもこの平和が発効して日本独立国家となつて(「平和が発効したら大変だ」と呼ぶ者あり、笑声)いわゆる占領軍の当局の従来社会治安に対するところの権威を何らかの形で日本政府が継承しなければ、治安維持のために不安であるという考え方、例えば二・一ゼネストの際のマツカーサー・メモのような一種の治安立法が必要である。(「その通り」と呼ぶ者あり)こういうことを考えておつたのであります。又世人もそれを認めておつたのであります。ところが何故にか、当時これを緊急調整なる姿に変形しましてゼネストに対処する、いわゆる治安立法をとりやめにいたされたのである。これはあの当時、破防法というような法律を通されることに非常に熱心であつたために、遂にその挙に出られなかつたのかと思うのでありますが、(「質問は何だ」と呼ぶ者あり)これは私は今日の状況においてもゼネスト禁止のような治安立法が必要である。ゼネストというようなものを労働法関係において解決しようとしても、それは困難である。現に昨年の冬の電産スト、或いは炭労スト、こういうような問題につきまして、政府はみずから作つた法律に対して十分なる自信もなく、(「そんな意見なんか聞いていないよ」と呼ぶ者あり)又その実効についても頗る懐疑的であつた。そのために余計な長い期間を要したという事実を我々は身を以て体験したのであります。私はこういうような状態から見ますならば、政府としても、この際緊急調整の問題について、果して今後の治安としてこれでよいかどうか一考を要すると思いますが、法務大臣としては、この際治安立法としてのゼネスト禁止法について何らかのお考えがあるかどうかをお伺いしたいのであります。(「反動じやないか」「緑風会の意向か、それは」「それは代表質問か」と呼ぶ者あり)  第三に、労働大臣にお伺いしたいのでありますが、一体この法律は、石炭産業について炭鉱保安要員を引揚げるということを禁止しておるのであります。これは勿論昨年冬のいわゆる苦い経験から、こういう措置をとられたのであろうと思いますが、この争議によつてこうむつた国の影響、又国民生活に及ぼした損害、又、のみならずこの争議に参加した炭鉱労働組合一般組合員の悲惨なる状況、特に我々は考えなきやならんのは、或る組合員の家族は自殺した者もあるというような状況であります。これらの状況から、今回こういうような処置をとられて、又今年も果して昨年くらいの争議行為或いは損害を、国民としては甘受しなければならないのかどうか、この点が、私どもとしてまだ問題は解決されていない。緊急調整によつてこの争議解決されたとは私信じないのであります。これは政府でも、緊急調整の発動の結果炭労ストが止まつたとは見ておられないと思うのであります。果して然りとすれば、本年も我々は、あのような国の全体の産業を麻痺させ、国民生活影響を及ぼすようなストライキの結果を甘受しなければならんのか。この点にいて労働大臣は如何なる御自信があるかを一つお尋ねしたいのであります。一体今日の緊急調整が、この制度が初めて国会の問題になりました時にも、私どもはこういうような制度が殖えるたびに長期化する虞れがあるということは、十分申上げたつもりでありましたが、果してその通りで、緊急調整というような新らしい制度のために、却つて争議を長期化したという結論をいたさざるを得ないのであります。この点について労働大臣所見をお伺いしたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  15. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  昨冬行われました電産、炭労の両ストは、幸いにして最後段階に至りまして収拾されましたけれども、その国民経済国民生活に与えました脅威と損害は相当大きなものがありました。その結果政府といたしましては、この苦い経験に鑑みまして、国家経済国民生活及び労使関係現状に顧みて、この種ストライキ影響を成るべく少くいたしたいため、争議権公益の調和を図るよう争議行為方法について必要な措置を講ぜんとするものであります。終戦後、我が国の労働組合が非常な発達を遂げましたことは誠に喜ばしいところでありますが、一面、組合運動殊に争議行為の行過ぎが往々にして見られたことは甚だ遺憾でありまして、政府といたしましては、我が国経済社会実情に鑑み、争議行為の行過ぎにつきましては、この際、これを是正すべきであるという考えでありまして、今回の法案につきましても、その見地から慎重に検討を加えた結果、ここに提案をいたしたような次第であります。  なお、緊急調整の効果につきまして御質問がありましたが、政府といたしましては昨年の争議に際しましては、法の予期いたしました十分の効果を挙げ得たように考えております。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  16. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 昨年の炭労の争議の被害が非常に大きかつたが、今度の法案では保安要員の引揚げについてきめただけであつて、昨年のような被害が又起きる可能性がそのまま残されておる、これについて、あれでいいのかという意味お尋ねと拝聴いたしました。(「大きな声で言つて下さい」と呼ぶ者あり)昨年の炭鉱組合員の被害の結果が非常に悲惨な実情があるというようなことも、私、承わつておるのでありまして、誠に遺憾に存じておるのでございます。ただ本法案が目的といたしましたところは、昨年の経験に鑑みて、保安要員の行為が著しく法域を逸しており、且つ復帰すべき職場を失うような結果にもなるというようなことを考えまして、これが争議権の目的を逸脱しておるものである。これは勿論従来もさように法規できまつてつたのでありまするが、ややもすればその間にいろいろ疑問があるように言われる向きもありましたので、この点をむしろはつきりして、争議権公益の調和を図る最小限においてという意味で、これを明らかに定めるつもりでございます。併し只今お話のありましたように、なお国民の受ける被害が非常に残るという点については、こういう御意見がだんだんあることも承知いたしておりまするが、成るべくならばかような規制は最小限にしておいて、先にも申上げましたように、労使双方の良識と自制とによつて、成るべく自主的に解決をさるることを希望いたしまして、この程度に止めて置いた次第でございます。  なお、緊急調整の制度について御意見がございましたが、これはお話にありましたように、第十三国会で制定せられたものでございます。昨年の争議に初めてこの制度が活用せられたわけでありまするが、なおこれについてもいろいろの御意見があることも承知いたしておりまするが、今暫くこの実績を、活用の実情を見た上で更に考えて参るべきではないかというので、このままにいたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  17. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答をいたします。  法務省といたしましては、現在の情勢では、いわゆるゼネストなるものも労働法規の枠の中において解決し得るものと考えております。且つ只今労働大臣の言われましたように、できるだけ労使双方の良識において協議する、反省するという習慣を尊重いたしたいと考えております。従つてゼネストを今直ちに治安の面から全面的に禁止するというような立法は、現段階では必要がない、こういう考えを持つているのでございます。ただ一言附加えますならば、争議行為の合法性のぎりぎりの限度を明らかにするために、今回の法律案を提出いたした次第でございます。(拍手)     —————————————
  18. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  19. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私は日本社会党第四控室を代表して、憲法が保障しておる勤労者団体行動権、争議権を奪わんとするこの電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案につき、吉田総理小笠原通産大臣及び戸塚労働大臣関係大臣に質問するものであります。  先ず第一に、政府を代表する吉田総理憲法に対する根本的な考え方を伺いたいのであります。憲法第九十九条によれば、「天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と謳われて、国務大臣及び国会議員憲法を尊重し擁護する義務を規定しております。然るにこの憲法公布に副署し、尊重擁護すべき者の筆頭にある総理は、今国会において現憲法占領中に作られたものであるから、実情に適しないものがあるとして、その改正をほのめかしております。吉田総理は、憲法第九十九条に基いて憲法を尊重し擁護する決意を有するのか、はた又現行憲法に不満を有し、改正をしようとするのであるかどうか承わりたいのであります。現行憲法制定当時、第九条の「その他の戦力」の中には、潜在戦力、武器の生産も含まれていたことは明らかであります。然るに、最近における吉田総理及び政府の解釈を以てすれば、この憲法第九条を現に破壊しつつあるのであります。北海道開発法の一部改正法の制定を以て、北海道住民の投票を行わずしてこの法律を作り、憲法第九十五条を蹂躙して参つたのであります。更に昨年破防法を制定して、この法律と同様公共福祉概念を指導理念として言論、集会、出版、結社の自由、その他民主主義の根本である基本的人権を剥奪し得ることとしたのであります。今又吉田政府は、この電気事業及び石炭鉱業における争議行為規制に関する法律によつて憲法第二十八条が規定する労働者団体行動権、争議権公共福祉概念によつて剥奪しようといたしておるのであります。ワンマンと称せられる吉田総理の行動も、合理的、合法的、合憲的でないならば、それは独裁的となり、フアツシヨとなるでありましよう。打ち立てようとする実質憲法憲法的慣習と関連して、憲法を尊重し擁護しなければならない吉田総理の決意をここで承わりたいのであります。この両三年のごとく、次々に憲法を破壊し、民主主義の基礎をなす基本的人権を剥奪して参りますならば、国会を焼いてフアツシヨ支配を確立したドイツ・ナチスの政権が日本において再現することを恐れないのであろうか。この参議院を含めて新憲法による国会が、かくのごとく次々に憲法違反法律を作ることに協力して参りますならば、東条内閣の下において国家総動員法以下、憲法をも否定した法律を作ることに協力をした翼賛議会を再現して、新憲法全体が破壊せられてしまうことを恐れるのでありますが、(「話が大袈裟だよ」と呼ぶ者あり)潜在戦力など考えていなかつたとか、公共福祉のためには基本的人権をも奪い得るなど、心にもないことを答弁せず、総理及び担当大臣の良心と愛国心とに従つて公共福祉を名としてスト権を奪うこの争議行為規制法案憲法違反であると、この壇上から断固言明する勇気はないかどうか、あえて質問をするのであります。(「憲法をもつと研究しろ」と呼ぶ者あり)  昨年暮の電気事業及び炭鉱のストライキは、電産、炭労が起したものと国民は思い込まされております。(「その通り」と呼ぶ者あり)事実は争議を長引かせたのは、資本家とこれに協力した政府であります。或る有力な中央労働委員は十一月半ば、電気産業経営者は従来物わかりのいい経営者考えて来たが、今度の争議は、電力経営者の背後にある大きな力が働いておる、停電ストをやらせているのは電力経営者の背後にある(「そんな詭弁は通らん」と呼ぶ者あり)その大きなもので、彼らが停電ストをやらせて、(「共産党だ、それは」と呼ぶ者あり)停電スト禁止法を作らせようとしているのが電産の諸君にはわからんのであろうかと語つております。これは客観的な中央労働委員の発言であります。炭鉱争議を指導したものは、炭労ではなくして(「共産党だ」と呼ぶ者あり)日経連でございます。政府が、貯炭がある、七百万トンの貯炭があるから大丈夫だと言つておる間に、汽車が削減され、ガスが制限されて参つたのであります。停電責任が電産にあつたのではなく電力会社にあつたのだということは、今や明らかな事実でありますが、列車削減もガスの制限も、石炭があるにかかわらず国鉄公社、ガス会社によつて長く強行せられましたように、等しくスト責任労働組合に転嫁せんかための吉田政府と日経連の政治的謀略であつたことは、今や明らかな事実であります。そしてこの争議を通じて狙われた政府と日経連の最大の目標は、労働組合国民からの遊離と、組合の切崩しでありました。(「国会を侮辱するのか」と呼ぶ者あり)電産に対する企業別交渉による組合の分断と職制による第二組合の結成促進が、これを雄弁に物語つております。標準作業量の引上等賃金切下げ案は、争議を長引かせんがための資本家側からする戦術であり、組合の切崩しと第二組合の結成の狙いは、常磐地方に、嘉穂鉱業に、その他到る所に現われました。政府は警察、検察庁を通じてこれに協力したのであります。(拍手)物価、生計費の上昇に伴う合理的な賃金引上による解決ではなく、刑罰を以て争議を弾圧しようといたしまして、それは賃金引上は止むを得まいと言明した北炭の常務を首切つた戦前派の社長に代表される石炭鉱業連盟の社長会議の態度と通じております。この政府の態度を先ず表明したものは、昨年十一月八日の本院における犬養法務大臣の威力業務妨害罪に対する答弁であります。それは電産争議について、高知、新潟に現われ、炭労争議については、福岡の嘉穂鉱業に現われました。これを最も端的に現わしておりますのは、最高検の神山課長の我が党野溝書記長以下に対する答弁であります。新潟、高知の電産ピケに、威力業務妨害罪を適用し起訴した事実に対する党、電産の抗議と取消要求に、神山検事は次のように答えております。スクラムを組んで発電所内に入ることを阻止したり、又運転を阻止することは、威力業務妨害罪である。スクラムはピケの範囲を超えたもので、これを破るには暴力を伴わねばならない。従つてスクラムは違法だ、停電ストに関する東京高裁の判決は間違いだと思う。係員のミスのために、あれは見過してしまつたのだと答えております。確定判決の意義を否定するような検事が、最高検の課長を勤め、勇敢なる検事とたたえられたのでありますから、末端の若手検事や警察がスト破りに登場するのは当然でありましようが、これが法治国家と言えるでありましようか。(「法治国家だぞ」と呼ぶ者あり)通産省鉱山保安局長は、昨年十月三十一日、「争議中における採炭切羽維持について」という通牒を発して、争議中においても坑内外保安の確保のための切羽の進行、即ち採炭のためにも所要の監督を行い、或いは鉱山保安法第二十五条による命令を発し得ることといたしております。これらの争議の切崩しと、弾圧方策が、この争議行為規制法の内容であります。戸塚労働大臣や労働省は、誰に頼まれてこの法律を作つたか、第一に承わりたい。  通産省はこの種法律が必要だからと労働省に申し入れてくれと、労働省側から頼まれたと伝えられておりますが、通産大臣はそういう事実を知つておるのかどうか。労働省が通産省に申入れを希望したということは、通産省以外の何者かから要請されたという逆の証拠でありますが、労働大臣を推薦したと称せられる石炭業の社長と電力会社の社長を兼ねる側近から要請されたのかどうか。保安要員の引揚決定だけで輿論は震憾したと労働省は言つておるが、保安要員の引揚は現実には行われなかつた。保安要員の引揚戦術が、六十日に近い苦しい争議最後にとられた戦術であつたことは、労働省が何人よりもよく知つております。五十日以上も争議を長引かせ、而もなお賃金横滑りを主張し、保安要員引揚の戦術に追込んだ資本家側責任はなぜ全く問わないのか。公聴会は従来の労使公益代表のほか、今回は特に消費者代表を加え、而も東京、大阪の公述人は、法案賛成者を故意に選んで、立法促進のための輿論指導を企てたことは明白であります。日本の主権者は八千四百万の国民であつて、日経連でも政府政府の役人でもございません。国民の基本的権利剥奪するに、ただこれだけの経緯と理由と手続で許されると労働大臣考えておられるのか、これが質問の第二点であります。  労働大臣お尋ねする第三点は、労働関係調整ではなく、禁止し非合法を宣言する合法的、合憲的な根拠は何かということであります。国家公務員スト権を国家公務員法、公企労法で奪つた。あの根拠になつたものは二・一スト当時のマ書簡でありました。占領下であり、憲法以上の権限が最高司令官にあつたとして、当時国民は泣いてこれに従つたのでありますが、而もなお人事院勧告、調停仲裁の制度を作つてスト権の代りといたしました。スト禁止の合法的、合憲的根拠は示されなかつたけれども関係労使関係として理解され、主張と利害が調和される方法が残されました。緊急調整によるストライキの停止される法的根拠は薄弱でありますが、調停手続はなお残つております。この争議行為規制法によれば、停電スト、電源スト、給電所の職場放棄、保安要員の引揚げが非合法として労働関係法規以外に置かれ、刑罰法、一般民事法の適用を受けることとなつております。この法により、労働関係でないと宣言される法的な根拠、憲法的な根拠を承わりたいのであります。  第四点は、争議行為規制の範囲であります。斎藤労政局長によれば、電産には事務スト、集金スト、検針ストが残ると言いましたが、電力を発電し、これを送電するのが電気事業労働者の本来の労働であります。その電力労働者から発電スト、送電ストを奪つたら、本来の電気労働として禁止されない何が残つておるのか承わりたいのであります。鉱山保安局長名の通牒から、保安要員の範囲を考えると、採炭夫も保安要員になるし、通気、運搬、選炭等の施設も重要施設の中に入ることとなりましようが、第一次的には誰がこの解釈をするのか。昨年の炭鉱争議の際の経験のように、何が保安要員であるかということを経営者が第一次的に解釈するとするならば、すべての施設が重要施設に含まれ、炭鉱の作業労働者が全部保安要員となるでありましよう。私の質問に労政局長は、その範囲は団体交渉できまるのであろうと答えましたが、非合法と宣言せられ、刑罰法の適用を受ける人間と行為の範囲が、団体交渉できまるなどとは、強行法規には存在し得ぬはずであるが、労働大臣所見を承わりたいのであります。  最後お尋ねしたいのは、政府及び労働大臣は、争議はなぜ起ると考えておるかということであります。イギリスやドイツなどでは、戦後極めて稀にしか争議は起つていないと聞いておりますが、それはこれら西欧の諸国の労働者の生活水準が低くないからであります。労使対等に交渉して、物価、生計費の上昇につれて賃金が動かし得るからであります。最後方法である争議行為に訴えずとも、要求が実現するからであります。ドイツに現在曾つてのような経営協議会法があるか否か不敏にして知らんのでありますが、経営協議会が制度として普遍的に確立し、労使対等に経営に参加しておると聞いております。日本争議は、労働組合を無視して賃金を釘付けにしたり、合理化の負担を労働者にのみ負わせようとするからであることは衆目に明らかなところであります。(「違うよ」と呼ぶ者あり)昨年の争議の長期化の原因が、組合切崩しを狙つた資本家の態度にあつたことは前に述べました。政府資本家の番犬でなく、資本家の利益と意見とのみを聞くだけでなく、この規制法を撤回して、労働組合法労働基準法の底を流れている労使対等の関係を樹立する考えはないか承わりたい。現在の政府の任務は、労働者を含め国民の生活水準を一刻も早く戦前の水準に復活することであります。労働者の組織を破壊し、労働者を抑えつけて賃金切下げを行うことではありません。低賃金と資本の有機的構成の低さ、粗悪品のダンピング、これらは曾つての帝国主義の道でありまして、政府は自由党の政治資金の提供者の言いつけを忠実に聞いて、曾つての失敗の道を歩もうとするのでありましようか。政府は民主主義を守る最大の力である労働組合を弾圧し、御用組合とその全国的組織を助けつつ、組合の指導者の投獄と、組合の産報化を企図し、再軍備と戦争への道を準備するのでありましようか。そこには廃墟と化した国土と国民の滅亡が待つているのでありましよう。今我々が指向すべき道は、貧富の差の拡大、財閥の復活と労働者の貧困ではなくして、その緩和でなければなりません。労働者の犠牲にのみよる合理化ではなく、資本の有機的構成の高度化による生産と技術の向上でなければなりません。アメリカ一辺倒の政治経済ではなく、中国を含むアジア諸国との経済的交流による自主中立の経済、外交政策の樹立が急がれなければなりません。争議行為規制や禁止でなく、最低賃金を保障する最低賃金法の制定と社会保障制度の完備でありますが、総理及び労働大臣はどう考えているか、承わりたいのであります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  20. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  政府憲法の条章を忠実に遵守いたしておりまして、破防法その他御指摘の法律につきましても、国会において慎重審議の結果成立した法律を誠実に執行しておるのでありまして、決して憲法違反乃至は独裁云々の御批判は、全く当らないものと考えます。(「その通り」と呼ぶ者あり)又本法案憲法違反の慮れがあるということにつきましては、先ほど法務大臣からお答えした通りであります。  次に、公共福祉という理由で、基本的人権を侵害するのは憲法違反ではないかという御意見でありまするが、本法案争議権公益の調和を図るため必要の最小限度措置を定め、公共福祉と調和を期するものでありまして、公共福祉の名の下に憲法の保障する基本的人権を侵害するものでは決してないのであります。  以上お答え申上げます。(拍手、「自由党は石炭協会から一千万円もらつているぞ」「それは労働組合だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手〕    〔副議長退席議長着席
  21. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お答え申上げます。  憲法違反の問題については、只今お答えがありましたから、私から申上げません。今回の法案を立案したのは、何か労働省なり私が、誰かから頼まれたかというお話でございますが、労働省としては、昨年の苦い経験に鑑みて、国民の輿論に顧み、本法案を立法いたしたのでありまして、決して誰に頼まれたわけでもございません。それから今回の提案について手続が不十分であるという意味は、公聴会を開いただけで、その他の審議会等のことがなかつたのではないかという意味かとも思いますが、たびたび申上げますように、極めて簡明な問題でありまして、特に国民の声というものを聞く必要があるというふうに考えて公聴会を開いたのであります。なお公聴会につきましては、いろいろ御意見もあつたようでありますが、人選その他を御覧頂けば、決して政府が不公平なことをやつたとは考えられないと存じます。それから保安業務の範囲についてでありますが、保安業務の範囲は、鉱山保安法、石炭鉱山保安規則、保安規程、保安管理者の指示によつて判然といたすものと考えております。なおその間にあつて実際上の取扱については、労使双方の話合いがあることは運用上極めて望ましいことだと、かように考えるのでございます。  最後に、社会保障その他のことについてのお話がありましたが、これはしばしば御意見を承わつておるところでありまして、各方面の意見を聞いて、十分に検討いたしたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  22. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) お尋ねの保安局長の通牒は、争議の最中に人命の保護並びに重大災害防止のために、労使双方の良識により保安確保に遺憾なからしむる処置を地方鉱山保安監督部長に指示したものでございまして、鉱山保安法により本来監督部長に属する保安命令の発動につきましても、特に事前に本省に打合せをすべき旨を指示し、慎重を期したような次第でございます。この方針は現在においても変りはございませんが、本法案というものは、従来から解釈上違法とせられておつた争議手段制限しようとするものでございまするから、保安局長の通牒と直接の関連はないと考えます。但し本法案につきまして、通産省といたしましては、従来から解釈上違法とせられていたものを、解釈上疑問の余地を残さぬために明文化したにとどまるものでございまするから、世論にも鑑みまして、通産省として極めて当然な措置であると考えておる次第でございます。(拍子)     —————————————
  23. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 深川タマヱ君。    〔深川タマヱ君登壇拍手
  24. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 改進党の深川タマヱでございます。  昨年末の電産並びに炭労ストに懲りた政府が、その苦痛を身を以て体験した国民大衆の輿論の支持を得て、かかる不祥事の再発を防止せんとする法律制定の挙に出たことは、一応常識的であると言われるかも存じません。併し労働者の闘争手段のみを弾圧いたし、経営者側には何らの反省を促す手段を講じなかつたことは片手落で、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)従前の争議が、労働者の横暴のみに基くがごとき解釈でございまして、到底労働者側を納得せしむるものではないだろうと存じます。よろしく労働者の代表者を経営協議会に参加させるなり、その他公平なる処置を講ずることが、この際絶対に必要であると存じますが故に、この点につき、総理大臣並びに労働大臣の御所見が伺いたいものでございます。  更に過日電産並びに炭労のかたがたの御意見を伺いましたが、たとえこの法案が通過いたしましても、石炭採掘拒否、停電その他従前に近い損害を国民経営者側に負わせる争議方法は幾らもあり、又するかも知れんと申しております。して見ますと、たとえこの法律案が通過いたしましても、相変らず国民の不安は除かれないと存じます。政府はかかる事情を一体御調査になつておられるのでございましようか。政治は永遠の哲学であると同時に目前の切り盛りであると言われます。永遠性もなければ目前の切り盛りもできないこうしたものよりは、もつと別個の方法考えなければならないのではないでしようか。私は、元来、ストということが労働者の基本人権であるという物の考え方には少からず疑惑を持つものでございます。(「賛成」と呼ぶ者あり)なぜならば、ストは、言葉を換えれば、労使双方がその労働条件につき意見が対立いたしましたときには、直接当事者同士の精力争いにより根比べによつて目的を貫徹せんとするものでございますので、いわば力ずくで物事を解決するのでございますから、一種の暴力思想に通ずるものではないかと考えます。(笑声)更に一方において、このストにより、争議の当事者以外の第三者である国民大衆が甚だしく利益が侵害せられるに至りましては、余りにも明瞭な暴力であると考えます。勿論、歴史的には、産業革命にうん醸され、後、マルクスによつてこれが基礎付けがされ、フランスのサンジカリズムを経てますます激化された思想であるといたしますと、時間的には成るほど近世の産物でございます。併しその旬蔵せる思想はまさに国家形成以前のもので、利害相反する多数国民の利益を公平に調整せんとする国家が成立いたしまして以来は、およそ争議解決の手段といたしましては、ストはすでに時代錯誤ではないかと考えます。(笑声労働裁判所、又は只今のごとき労働委員会でもよいから、提訴した双方の言い分を十二分に聴取し、斡旋し、さて然る後、最後にその裁決には当然強制権を持たすべきではないかと考えます。勿論、交渉の段階におきましてはストに突入するのではないというのでなければ、社会の秩序を維持し、国民の損害を防止することはできないと考えますが、これに対する首相並びに所管大臣の御意見が伺いたいのでございます。  なお又、緊急調整措置もございますが、今回のごとく、それまでにストの時間が長引くといたしますと、国家国民の損害は測り知るべからざるものがございます。石炭が出なければ輸入を必要といたし、たとえ輸入石炭のカロリーが高くて、割高には付かないといたしましても、今日外貨の濫費は許されないことでございます。又停電により中小商工業者の倒産が続出いたしたり、一般家庭の憂欝と不便は申すまでもなく、医療、精密工業、夜学校等、およそ電気を頼りの職場の打撃は甚大なるものがございます。而もその結果どこへ訴えて行こうようもなく、ただ御災難でということに終るといたしますと、全く戦争中焼夷弾や原子爆弾に見舞われたと何ら選ぶところなく、この上もなき暴力であり、且つこの上もなき政治の貧困であると言わねばなりません。これをしてもなお且つ労働者の基本人権であり正しき民主主義争議のあり方であるとは、私はどうしても考えることができないのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  さて、そこで、いよいよ仲裁裁判に強制権を持たすということになりますと、一体労働者の賃金はその標準をどこに置くべきかという問題が起つて参ります。物を生産いたしますと、尋常の場には若干の余剰価値の生れることは当然でございます。さて、そのとき、労働者資本家、国家の三者が、この利潤を如何に分配するかということは、その時の国情と、各政党の主義、綱領、政策によつて、おのずから相違がございましよう。日本労働者は、多くの争議の場合そのスローガンに、働けるだけ食わせろということを掲げるところを見ますと、利潤は如何に多くとも、労働者は労働の再生産費のみを与えられればよいという極めて謙譲な態度とも受取れます。経営者も又、縮小は困るが、多少でも拡張再生産でさえあれば辛抱できるらしく、又国家も、労使双方のふところに零細なる資本を分散して蓄責させ、思い思いに国家公有の資本を無統制に使用させるよりは、半ば強制的に租税で納めさせ、資本を集中して、国民全体のため、最も急ぐ方面に効果的に使用する方法を講ぜんとするがごとくにも見えます。併し、かかる方法のときには、当然労働者には、一定年齢に達すれば労働年金を支給したり、その他、労働者福祉を増進せしむる広汎なる社会保障が必要になつて参ります。又別の方法にいたしましては、労働者のふところに零細なる民間資本を蓄積させ、年を取ると共に、小さい投資家にしたり、その他老後の安定をみずからの計画でなさせるという方法もございましよう。政府はこれらの問題につきまして、今日の日本といたしましては、労働者の賃金は如何あることが最も適当とお考えになるのでありますか。経済審議庁長官並びに労働大臣の御所見を伺いたいのでございます。  併し強制調停権を持たすといたしましても、それは飽くまでも争議を起したときのことでございます。而も今日のごとく、仲裁の場合、両方の言い分の中間に落ちつくといたしますと、労働者は常に繰返し繰返し争議を起して、提訴していなければ、それだけ損をするということになり、随分気の疲れることであり、社会も又そのために絶えず不穏の空気に脅かされなければなりません。そこで私は、百尺竿頭更に一歩を進め、せめて公益事業だけでも、今日の官公吏のごとく、みずから争議を起さずとも人事院のごときもので保護され、物価の勝貴の場合、経営の利潤の許す範囲で直動的に何がしかの賃金を増加するように、力ある勧告が経営者にされるようにいたして、働く者は安心してこの保護機関に任せ、信用しておられるという制度にいたしますなれば、労使双方のためにも、一般国民大衆のためにも、いいのではないかと考えますが、如何なものでございましよう。このことは労働組合側にも諮つて見ましたけれども、歓迎されるようでございますので、一つ政府でも御考慮をお願いいたしたいのでございます。  昨年末のストは、国際的関連性も、さまで強くなく、長引くスト経済的にも精神的にも労働者は疲れていたと見えまして、緊急調整はむしろ時の氏神のように歓迎された由に聞いておりますが、将来若し国際的背景を持つ政治ストが意外に根強く、且つ緊急調整令を出しましてもこれに応ぜず、依然ストを継続して、国民大衆の福祉が著しく阻害されるときありといたしますれば、政府は如何なる手段によつてその職場を守らんとされるか。戦前、フランスの鉄道従業員のストのとき、時の大臣は、徴兵令に基き、スト中の従業員を召集令状によつて召集し、軍律の下にその現場を管理させたことがございますが、今日の日本では徴兵もなく、多人数のストが国法の命に従わぬときには、すでにそれは労働争議段階を逸脱し、内乱とみなして、警察予備隊でも繰出すのかも存じませんが、よし、それにいたしましても、技術の熟練を要する職場はなかなか管理も困難だろうと存じますが、若しさような場合ありといたしますれば、一体、政府は、秩序を維持し国民の利益を防衛するために如何なる方法をとらんとなさいますのか。保安庁長官並びに法務大臣の御意見が伺いたいのでございます。  念のためお尋ねいたしておきますことは、憲法第十二条は厳然として今なお効果を有しております。このたびの法規を新たに作らなくとも、あれによつて国民福祉が脅かされますときには、その行為は違法とみなして刑罰処置がとられるわけでございますのを、更にこれを明文化して、注意を喚起するため、保安要員の引上げや送電停止を違法として禁止いたしましたが、このことにより、ややともしますと、この禁止規定以外の争議行為は、たとえ国民福祉を害するものであつても違法ではないかのごとき錯覚を国民に起させるのではないかと存じます。禁止規定以外のものであつても、やはり国民福祉を著しく害する行為は依然として違法であつて憲法第十二条により取締られるものであることを再確認して置かれることがこの際必要ではないかと存じます。  最後に、取締るばかりが日本の労働運動を正しく育成するものではございません。漸く労働者側におきましても、社会福祉と自己の争議行為調整を図らんとする自覚した民主主義労働運動が自発的に起されつつございますことは、日本労働者の名誉のために慶賀すべきことでございますが、それ故にこそ私どもの政党でも、労働者の体面を重んじ、かかる禁止規定なくとも絶対に民主主義を逸脱いたした争議行為が行われないように労組の成長を奨励いたしますため、今回の法規は、二、三年間の期限附暫定法規にしたいという配慮も行われておりますが、政府におかれましては、折角頭を出した労働者のこの民主的芽生えを伸ばしますために何らかの方策をお考えでございましようか。  以上数項目に亘りまして総理大臣並びに各所管大臣の詳細なる御説明が伺いたいのであります。私の質問はこれで終りでございます。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  25. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答え申上げます。  今回の提案が不当に労働者側のみを圧迫するものじやないかというお話でありまするが、政府といたしましては、これは決して労働者側を不当に圧迫するものではない。(「具体的に言え」と呼ぶ者あり)労使の間に公正を欠くものではないと考えております。全く、昨冬の炭労、電産のスト経験に鑑みまして、先ほど来、申上げまするように、公益争議権の調和を図りつつ最小限度スト制限するという趣旨にほかならないのでございます。その点、御了承を願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  26. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お答え申上げます。  お尋ねの点について順序が多少間違うかも知れませんが、あらかじめ御了承頂きます。  労働者の利益をむしろ人事院のごときもので代弁させるような方法はどうか、或いは暴力についての考え方を承わつたのでありましたが、やはり政府といたしましては、この労使間の問題というものについては、労使双方の、しばしば申上げるようでありますが、自主的な努力に委ねることが何としても第一義である、かように考えておるのでございます。従つて争議行為を全面的に禁止することは、やはり避くべきである、かように考えております。但し争議行為による国民大衆の脅威、損害をできるだけ避けて行きたいというのは当然でありまして、争議行為全般を以て暴力主義的なものだというふうには考えておらないのであります。従つて労使の良識と健全な慣行の成熟を待つてこれを促進させること、これが政府として努力する基本的の態度でございます。その上で公益擁護のために必要最小限度措置のみを定める、規制するという考えを持つておるのでございます。  次に、賃金をだんだんよくして、これによつて資本蓄積に向うようにという御意見でございます。今日の日本労働者の賃金につきましては、勿論これで十分だというような考えを持つているのではありません。これは、戦後の日本経済実情等、複雑な要素をも考慮しなければならないのでありまして、戦後の労働者の貸金が逐次向上を見ているということも見逃せないことではありますが、なお今後も十分この賃金問題については考えて参らなければならんと存じます。今日の経済の上に資本蓄積が国としても極めて大切であるということも申上げるまでもないことでありまするが、労働者の生活を犠牲にしてよいというものでもないと考えるのであります。政府としても、労働者の実質賃金がだんだん上るようになり、能率の増進を図つて、それで資本の蓄積が行われるということに向つて行くことが誠に望ましいことであるというふうに考えております。  今日の段階では国際的な背景を持つ大仕掛な政治ストの懸念はどうかという意味のようなお話でございました。これは或いは他の大臣からもお答え申上げると思いますが、直ちに大規模な政治ストが今国際的な背景で行われるようなことは、現在の労働組合実情から考えましても万々あるまいと考えております。  それから、やはりこれに引続いて、緊急調整の決定に従わないで、多数の労働者国民の利益を大きくそこなうという場合についての御懸念がございました。政府といたしましては、緊急調整の発動があつて、なおこれを無視して、労働者が国家国民に損害を与える争議行為を続けるというようなことは、昨年の経験から見ましても万々あるまいと存じております。日本労働者がそのような違法行為を万一犯したらどうするかというようなことは、今あらかじめ予想して云々すべきではないと考えるのでございます。  それから、この法案が通過しても、同じ程度の損害を国民経営者に与える合法的な争議手段があると思うが、これについてはどうかということでございました。政府といたしましては、労働争議に関しては、徒らに法を以て抑制、規律を図るというよりは、労使の良識と健全な慣行の成熟に待つ、只今申上げた通り考えを持つておるのでありまして、従つて今回の法案につきましても、当面現実に必要なるものという限度におい措置をとられたのでであります。従つて政府としましては、本法と労調法の緊急調整とによつて一応公共福祉が擁護せられるだろう。その余は労使の良識と知性とによつて、これ以外に国民に堪うべからざる争議行為が行われる場合のないことを切に期待をいたしておるのであります。  それから、お話の中に、従来の争議がとかく調停実情労働者の要求の中間に落ちつくことが多いので、繰返されるような懸念があるというような意味お話がございました。これは確かに一面を穿つておる御意見だと存じますが、労働者が賃金の引上げを要求すれば直ちにストライキに入るという性質のものではないのでございまして、むしろ大多数の場合には、その組合において、争議行為に至るまでもなく、団体交渉その他の労使の話合いによつて、円満に適正なる賃金が実現されておるのが実情でございます。従つて、賃金を上げるためには必ずストライキが行われる、延いては日本貿易に悪影響を及ぼすというようなことは、特にそれほどの御懸念には及ばないのではないか、かように考えます。政府としましても、団体交渉の円滑化によつて争議に至るまでもなく、労使が話合いが付き、相協力して経済興隆に邁進するように進むことに努力いたし、又これを期待いたしておるのでございます。  最後に、今後の民主的労働運動の助長の方策についての御意見でございました。労働組合運動の成長というようなことにつきましては、政府としては、基本的には労働者自身が自主的に努力すべきことであつて政府がみだりにこれに干渉或いは介入することは慎むべきものであると考えておるのであります。ただ、労働運動が民主的に成長するということについては、政府といたしましても重大な関心は常に持つておるものでございまして、これがために必要に応じて協力を惜しむものではございません。(拍手)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  27. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 賃金についてのお尋ねでございましたが、私どもも現在の賃金を以て決して十分とは思つておりません。又事業がだんだん発展しまして、繁栄して、できるだけ賃金の上昇を希望するのでございます。そのうち公益事業につきましてのお話でございまして、経営上利潤のあつた場合には、少し自動的に賃金を上げることにしたらどうかというお話がございました。これについては、良識ある経営者は、余計儲かりました場合には、大体配当といいますか、何といいますか、ボーナス等、余計出しておるのが実情でございまするが、但しその自動的にそうしたらいいかどうかという、制度的の問題につきましては、更に一つ検討してみたいと存じます。なお、お尋ねがございましたので、御参考にちよつと申上げておきますが、二十七年の月平均の経済審議庁で調べた指数は、ちよつと御参考までに申上げておきますが、一般製造業において、二十七年を一〇〇といたしますると、石炭は一一一、電気は一五二、こういうふうに指数がなりますけれども石炭電気のほうの労働者のほうは、扶養家族の数とか平均年齢なども、製造業に比べますと比較的高い関係にありますので、この数字そのものは申せませんが、併し一般製造業に比べますと幾らか高いということは事実であると存じます。更に、それでは二十六年に比べてどうかということを申上げますと、二十六年を一〇〇といたしますると、製造業、石炭電気、いずれも一〇〇といたしますると、二十七年は丁度製造業では一一五、一割五分上つております。石炭のほうでは二一、二割一分上つております。電気のほうでは一二八、二割八分上つておるのであります。更に、実質賃金の関係は、それでは製造業はどうなるかと申しますると、昭和九—十年を一〇〇といたしますると、一般製造工業の実質賃金は、二十七年におきましては、上期が九五、下期が一一〇、平均一〇二でございます。従つてまあ基準年度の水準までは回復しておるのでございますが、但しこれは税込みになつておりますので、その税の関係だけは別に、この税法等も変つておりますので、これは考慮しておりません。税込みになつておる指数はさように相成つておるということを御報告申上げておきます。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  28. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 深川さんにお答えいたします。  保安隊は、非常事態が発生して治安の維持上特に必要なる場合に初めて行動する部隊であります。従いまして、不幸にしてストが暴動化して、国家治安上普通の警察では到底対処することができないような場合に、初めて行動に移ります。それ以外に怪々しく行動すべきものではないと私は考えております。(拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  29. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 深川さんにお答えを申し上げます。  私に対する第一の御質問の御趣旨は、多数労働者緊急調整に従わないで、且つ国民福祉を大きくそこなうときに、政府はどんな手段で職場を守ろうとするかというふうに伺つたのであります。我が国の労働者が、法規を無視して緊急調整に従わず、一般社会の感情も無視して、国民福祉を大きくそこなうような労働争議に出るというような、そういう非常識はしないと考えております。昨年の電産や石炭争議に際しましても、中労委の努力というものに対して、私ども社会も大きく評価しておるのでありますが、結局あのときは国民感情というものが公平な審判者になつて労働者もこれの国民感情に従つたように思つております。私はそういう作用というものを大きく今もなお評価しておるのでありますが、併し、若しも御心配のような行為労働者が出る場合は、それは明かに不当の争議行為でございますから、そのときは刑罰法令に触れるものは明確に取締る考えでおります。  もう一つは、今日の段階において国際的背景を持つた大仕掛な政治ストというものの懸念があるかどうか。——これは労働大臣からもお答えなつたと思いますが、勿論、政府におきましては絶えず国際情勢を注目はいたしておりますが、只今日本労働組合の性質をよく検討いたしまして、そういう懸念は今のところないという判断をいたしております次第でございます。(拍手)     —————————————
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大山郁夫君。    〔大山郁夫君登壇拍手
  31. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 議長並びに議場の皆様、私は第一クラブの同僚の了解を得て、ここに電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案について幾らか質問したいと思つておるものであります。  いろいろこの法案を読んで行きますというと、非常に疑問がたくさん出るので、非常に演説が長くなりそうになつたので、ちよつとメモを書いて来たので、メモを読むことにします。このメモの中には丁寧な言葉を使つておらない、何々でありますという代りに何々であるといつたような、ぞんざいな、ぶつきらぼうな言葉を使つておりますが、併しその点は御了解願いたい。そうして多少スピードを出すかも知れませんから、その点も又御了解を願いたいと思います。時間を節約するために早速始めます。  この法律案には、電気及び石炭産業の特殊性ということが強調されておるが、その特殊性というものは一体何を意味するのであるか。この法律案は、特に、電気石炭産業公共性を帯びているという点に触れているが、併しそれは今日の資本主義生産の下に行われているすべての産業に共通している性質ではないか。そこには、程度の差こそあれ、今日大規模経営の下に置かれている産業公共性の一面を持つていないものはない。従つて、この一点から、電気石炭産業の特殊性を論ずることはできないはずだ。それ故に、特に、電気石炭の両産業だけを選出して、それに従事する労働者だけをこのような特別立法の下に置くということは間違いである。そういうことをするのは、徒らに他の諸産業に従事する労働者に、この次は自分たちの番ではないかということを思わせるだけで、更に大きな不安を抱かせる結果になるものである。それとも、政府はそういうことをすることによつて、何らかの特別の具体的効果を狙つておるのであるか。この点、質問したい。  二、提案理由説明の中には、停電ストとか電源ストとかについて、労働者資本家がそれによつてこうむる損害が、一般需用者が受ける損害に比して遥かに少いと説かれてある。このことは、よし、それが電気事業における争議の特殊性と見られ得るにしても、その前提から、どうして労働者だけの基本的権利剥奪する法律、実質上スト禁止法とも言うべきこうした法律を作ることが必要だという結論が引出されるのであるか。こういう結論は、ただ労働者を敵と見るという前提の下においてのみできるものと思うがどうか。この点、御答弁願いたい。  三、提案理由説明の中には、公共福祉の擁護ということの上に重点が置かれているが、この場合、公共福祉というのは一体何を意味するのであるか。或る知名の法学者は、この法律案の中で公共福祉言つているものは、実は公共の便益というものを指しているのだ、こう言つているが、成るほどそういう一面もあるが、併し我々から見れば、この場合公共福祉言つてあるのは、ただそれだけではなくして、資本家の財産権をも意味しておるものと思われる。即ち、この法律案は、公共福祉の擁護の名において資本家の財産権か擁護し、その目的のために、日本憲法第二十八条にある労働者の団結権、団体交渉権、その他の団体行動をする権利を、更に世界人権宣言第二十三条に保障してある労働者の公正且つ有利なる労働条件を得る権利を奪つたり蹂躙しようとしたりしているものである。これは資本家の財産権を労働者争議権の上に置くものであり、断じて公共福祉に合致しているものではない。提案理由説明には、電気及び石炭産業国民経済国民生活に対する重要性を持つておることを言つている。これは確かにその通りだ。この点は昨冬の電産、炭労ストを通して十分に立証された。だが、この前提から生ずる当然の結論は、国民経済及び国民生活に対してそれほど重要性を持つておる産業に従事している労働者の基本的権利は、これを完全に尊重して間然するところなきまでに擁護することこそが、社会の秩序のためにもなり、又吉田内閣が何よりも愛好しているところの道義の高揚にもなり、従つて公共福祉を擁護するゆえんにもなると思うが、どうであるか。  四、次に私は、この法律案第二条に出て来る「電気の正常な供給」という言葉意味について質問したい。この言葉意味を確かめることは、この法律案全体の本質を把握するために絶対に必要だと考えるので質問するのであるが、併し、私の質問の要点をはつきりせしめるために、私は先ず、私がこの法律案の底に伏せられている意義だと考えておるものをあるがままに述べて、それに対する政府の見解を聞かなければならぬ。率直に言つて、私は、この法律案を通じて、アメリカの独占資本、アメリカの帝国主義の日本を自由に支配するための政策なり操作なりを、そして、それに対する日本政府の反応或いは盲従の姿を、まざまざと見ることができるのである。我々がアメリカの独占資本とかアメリカの帝国主義とかと言うとき、我々は直ちに、最近、社会理論研究の分野において、いわゆる現代資本主義の基本的経済法則として押し出されているところ一つの新らしい学説を思い出さないではおられない。この新らしい学説の一人の代表的主張者の言うところによれば、こういうことになる。「今日の資本主義社会において支配的地位を占めている独占資本が追求しているものは、もはや単純なる利潤でなく、平均利潤でもなく、又平均利潤をちよつと上廻る程度の超過利潤でもなく、これは実に最大利潤そのものなのである。独占資本はかくのごとく最大限の利潤を獲得しなければならないという必要に迫られて、植民地やその他の後進国を隷属させ、系統的に略奪し、幾多の独立国を従属国にし、現代資本主義巨頭連にとつて最大限の利潤を挙げるためのよい商売である新戦争をたくらみ、最後世界経済を支配しようと企てるなどの冒険的工作をやつているのだ」と、大体こういうことが言われている。ここで、こういう説明を読んでいると、次々の目の前には、自然と、全世界、全アジア、全日本の上におけるアメリカの独占資本の縦横無尽の活躍をまざまざと見ることができるのである。日本経済が完全にアメリカの経済に従倒せしめられて来たこととか、或いは二本の全土がアメリカの軍事基地にせられて来たこととか、日本の再軍備がアメリカの帝国主義の指揮の下に絶体絶命のものになつて来ているように見えること等々々。こういうことは、すべて皆、現代資本主義の基本的法則の作用の現われとしてのアメリカの独占資本の働きの実例として理解することができ、更に、アメリカ独占資本の軍事的冒険工作の一例は、我々はこれを我々の目と鼻の先の朝鮮の戦乱の上に見ている。そうして、朝鮮戦乱が始められてから(「簡単々々」と呼ぶ者あり)このかた、日本産業の上に行われて来た企業合理化が、朝鮮における国連軍の戦争を安価に而も能率的に遂行することができるような目的で行われるようになつて来た。それは、いわゆる出血受注の下に行われている特需関係の工業が日本産業の上において重大な地位を占めるようになつて来ていることでわかる。我々の前に置かれているこの法律案は、こうした観点から検討しなければならないものである。少くとも、こうした観点から見れば、この法律案の誘導的原因となつた昨冬の電産、炭労ストの真の原因がどこにあつたかがわかるような気がする。……それでは……(「五分ある」と呼ぶ者あり)それでは端的に最後ところに入ります。  そこで問題は、この法律案第二条に帰つて来るが、ここで電気産業に関して「争議行為として、電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」が禁じてある。その条文は、争議行為によつて停電を惹き起すことを禁じているものであり、一見あたかもそれが公平に労使双方に適用せらるべきものであるとせられておるように見える。なぜなら資本家も工場閉鎖によつて停電を惹き起す手を持つているからである。けれども、この法律案法律なつた暁には、資本家は、もはやそんな手を使う必要がなくなるから、結局この条文は事実上労働者だけに適用せられるように作られている。提案理由説明を読んでいると、労働者が行う電源ストとか停電ストなどの行動だけが強調されておる。その辺を読んでおるというと、我々は第二条に謳つておる「電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」に責任があるのは、ただ電源スト停電ストなどをやる労働者だけだというような印象を受けるが、併し事実は果してその通りであろうか。今、電気の正常な供給の停止というような言葉を離れて、単に停電という事実だけを見れば、まだそれ以外にも原因がある。しばしば渇水とか天候不良というようなものまでが停電責任者として数えられておる。だが、一般家庭や中小企業の工場などで見られる停電の場合には、まだそれ以外にも大きな原因がある。それはアメリカの駐留軍や軍事基地や軍需工業関係の工場に法外に多量の電力が供給されておるということである。この点に関して、私が得た統計数字によれば、日本全国において駐留軍や軍事基地や軍需工場関係の工場に供給せられておる電力量は、総量の七〇%乃至七三%に上つておると言われておる。なおこれに関連して電気料金に関する数字も又挙げられなければならぬ。即ち私が得た数字によれば、電力の原価は一キロワット時当り四円五十八銭であるが、米軍並びに特需関係の工場に対しては、この原価を遥かに割つて、行政協定できめられた一キロワットただの五十五銭のレートが保証されており、米軍家族に対しては一キロワット時一円前後で供給されておる。これに反して一般家庭や中小企業工場には一キロワット時当り八円乃至十六円のレートで供給されておる。最後に掲げられたこれらの数字は、最初に掲げた数字よりも遥かに複雑な事情を物語つている。即ち、それは先ず第一に、平和な生活をしておる家庭や平和産業に従事しておる中小企業の工場などは、軍隊や百パーセント軍事的性格を持つ特需関係の工場よりは遥かに高い料金で電気の供給を受けているにかかわらず、最も多く停電の厄にかからされているのは、最も高い料金を払わされている一般家庭や中小企業工場であり、それから次に、支配階級は、中小企業家とストをやつている労働者の間に極力、離間策、分裂政策を行おうとしておるが、併し実際のことを言えば、彼らこそ、この停電を中心として見れば、共同の罹災者であり、共同の犠牲者なのである。労働者は実際しばしば電源スト停電ストを行なつたが、併し新聞紙によると、彼らは大抵の場合、主として大口工場を彼らの停電……  それでは最後に一言だけ言わして頂きます。この第二条にある「電気の正常な供給」ということが何であるとすべきかということは、結局立場の異なるに従つて異なつて来る。即ちこの戦争を支持し、再軍備を主張しておるところの、そういう立場の者から見れば、電気の正常なる供給というのは、そういう軍需工業とか或いは外国軍隊に供給することが、これが電気の正常なる供給ということになるのであつて、反対に、平和を支持し、そうして再軍備に反対して、飽くまで、戦争を防止しようとしている者の立場から見れば、その反対である。この条文のこの「電気の正常な供給」という言葉は、前者に属して後者に属するものでないというふうに我々は考えられるが、政府の解釈はどうなのであるか。この点をお伺いして私の質問を打切ることにいたします。(拍手
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今の大山君の御演説の中で、大山君がメモを朗読する云々と言われたのでありますが、議長としては、本院規則第百三条の規定関係としては、いわゆる文書を朗読することではなくして、発言の参考としてメモを使用されたものと認めております。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)大山君の御発言の次第もありましたので、この点、念のため申上げておきます。(「名議長だ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  33. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 大山さん御質問はかなり専門のことが含まれておりまするので、主管大臣からお答えを申上げることにいたします。    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  34. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お答えを申上げます。  この法案に言う特殊性ということについてのお尋ねでございますが、電気事業及び石炭鉱業の特殊性とは、勿論その公共性をも含むものでありますが、これら事業における公共性とは他の公共的諸産業の中でも特別なものがあります。いわゆる基礎産業中の基幹産業であります。  更に電気については、高度の独占性……代替性が殆んど全くない。又生産と消費が直結して、生産の停止は即ち直ちに消費の停止を来たす。而もその争議行為が僅少の人の僅かな操作を以て需用者に至大の影響を与える。労使争議当事者の損失に比して、第三者たる需用者の損失が比較を絶して莫大なものがある等のことがあります。石炭については、すべての産業の基礎をなすものであると共に、又地下労働の特殊性から、保安業務は一刻も停止を許さないものがあること等のことがあります。従つて法案規制の対象が他の公共的諸産業に直ちに拡大されるというようなことにはならないと存じます。殊に政府は、この法案を提出いたしましたのも、昨年の実績に鑑みてかようにいたした。他の同種、或いは推測できる、予想できるような場合については、特にこれを加えないで、労使双方の当事者の良識ある自主的の解決に任して行くことが本筋である、かように考えていることはしばしば申上げた通りであります。  次に公共福祉についてのお話でございましたが、これは日本憲法第十二条、第十三条に明記されている通りであります。(「守つていないじやないか」と呼ぶ者あり)その内容は、争議権について言えば、それが他の国民の諸権利と調和的に行使されるべきものと考えるのでありまして、本法案は、すでに述べたことく争議権公益との調和をもたらすものであり、而も労働者使用者に対して対等の立場を維持するための争議手段は十分に残されているのでありまして、争議権を財産権の下に置いているというようなことは毛頭ないのであります。従つて法案は決して憲法二十八条に違反するものでもない、かように考えているのでございます。  それから電気の正常な供給についての意味でいろいろの御意見がございました。ここに言う正常な供給というのは、不当に一般消費者等を圧迫して軍需産業に優先取扱をするものではないのであります。むしろ一般消費者に対する争議行為による電力停廃の圧迫をできるだけ少くしようとすることが、本法案の主たる狙いとなつておるのであります。従つて戦争経済云々というようなことは本法案とは何ら関係がないと思います。(拍手
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  36. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、只今議題となつておりまする電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案に関しまして以下述べる二、三の点について質問を申上げたいと思うのであります。  先ず第一に、この両事業における争議行為方法規制に関する法律案提案の理由としては、国民経済国民生活に対する重大な脅威、損害を与える、そういうようなストは、公共福祉の立場からこれを禁止するということが提案の理由になつておるのであります。この国民経済或いは国民生活に対して重大な脅威、損害を与えるという点について、先ず労働大臣所見を伺いたいのでありまするが、少くともストライキ労働者の地位を確保し生活を守るための手段として法律上認められておるとするならば、そのストによつて何らかの損害や脅威或いはその他の影響を受けるということは避けられないのであります。又事実争議にはそのような力が若しもないとしたならば、労働者は果して資本家に対して十分対抗し得ることができるかどうかということが疑問になつて来ると思うのであります。その意味から申しまして、ストライキが何らかの国民生活なり国民経済なりに重大な影響を与えるということは避けられないと思う。従つてストが何らかの損害や影響を与えるということに対して労働大臣はどのように考えるかということが、その中の一点であります。  次に、重大な影響或いは重大なる損害を与える、こう言つております。その重大という内容の問題についてであります。これを認定するのは恐らく労働大臣或いは労働官僚でありましようが、行政官が任意にこれが重大であると認定いたしましても、果してそれが客観的に重大であるかどうかということになりますると、大きな疑問が出て来ざるを得ないのであります。これがその二点であります。  それから第三点として、この国民経済なり国民生活に重大な損害を与えるということは、労働大臣お話になりましたように、昨年の秋の両事業におけるストライキがその重大なる契機になつていると思うのでありまするが、ところで、このストについてでありますが、このストは二カ月前後に亘つて、昨年の秋から年末にかけて闘争は続けられたのでありまするが、なぜあのように長期化したか、なぜあのように労働者資本家に対して闘わなければならなかつたか。恐らく労働者の気持からみるならば、一日も早く自分たちの要求が貫徹されて、そうして産業の平和をとり戻すというところに、労働者の気持があつただろうと思う。ところが不幸にしてあのような長期化をみた。なぜか。私は思うに、資本家側、特に日経連を動員しての資本家側の総勢が労働者に対して強引なる対抗手段を講じ、或いは組合の分裂工作を行い、或いは労働強化と労働低賃金を労働者に飽くまでも遂行しようとするその意図が一つと、もう一つ政府のこれに対する無策があのような長期化を来たしたものだと思うのですが、それを政府の側においては、あの二つのストライキの長期化したのは全く労働者側の責任であるというような意向を持つておられるようであるが、果してそう考えていいものかどうか。これらの点について私は先ず労働大臣お尋ねしたいのであります。  次に、提案理由の目的とされているところ公共福祉の問題であります。公共福祉につきましては、私はこの議場において、これまでもしばしば、首相なり、或いは当時の法務総裁なり、担当の諸大臣に対して質問を重ねて参つているのでありまするが、未だに明確なる回答を得ておらないのであります。而も明確なる回答を得られないばかりか、政府においてはしばしば公共福祉という名前に籍口しまして、一方的に資本家擁護の政策を遂行しようとしているのであります。公共福祉という言葉は、周知のように近代の革命の産物でありますヴアージニアの権利宣言、或いはアメリカの独立宣言なり、或いはそれに続くフランスの人種宣言によつて、或いは一般の幸福とか、或いは共同の利害とか、いろいろの言葉を以て述べられて参つたのであります。いずれもその意味するところは、多少の二ユアンスはあるにしましても、同じものを持つと思うのでありまするが、この公共福祉という言葉意味を、私は首相並びに法務大臣お尋ねしたいのであります。公共とは何であるか。言うまでもなく一部少数の者に対抗する否定的契機を含んでいると思いますが、果して公共とは何を意味するか。それから第二番目には、公共福祉と基本的人権の関係についてお話を承わりたいと思うのであります。只今労働大臣から、公共福祉と基本的人権、特に憲法十二条、十三条を引用してのお話がありました。果して基本的人権と公共福祉というものはどういう関係にあるか。憲法上はこの二つの言葉のアンチノミーの形態において提出されております。憲法では、基本的人権は侵すことのできない永久の権利である、このように規定してあります。地方、憲法十二条並びに十三条によりますというと、公共福祉に反してはならない、こういう制約が付いているのであります。基本的人権と公共福祉というものは一体どのような関係にあるのか。侵すことのできない権利に対して、公共福祉というものはどのように解釈さるべきものであるか。この点について責任のある答弁を首相並びに法務大臣にお伺いしたいのであります。  更に、この法案の問題に入りますが、法案によりまするというと、スト調整というよりも、むしろスト制限スト弾圧ということを狙いとしているのではないかということについて労働大臣お尋ねしたいのであります。先ずその問題の一つとしまして、労働立法の目的は何にあるか。これは提案理由説明の中にも労使双方の自主的な解決が望ましいのだということが謳つてありまするが、労働立法の目的は言うまでもなく、弱い労働者を保護する、強力な資本家に対抗し、労働力だけに頼らなければならない労働者権利を守つてやるのが労働立法の目的であります。ところが本法案を見まするというと、私どもは果してそのような労働者を保護するという態度がこの法案の中に現われているかどうかということについて疑問とせざるを得ないのであります。而も政府の昨今の政策なりその態度なりを見まするというと、緊急調整規定いたしました。政府スト介入を認めておるのであります。更に今回は、その緊急調整から一歩進みまして、スト制限しよう、——これは言うまでもなく労働者を信頼しない。労働者は、例の吉田さんの言葉ではありままんが、不逞の徒だというような考え方がその根本に横たわつている。労働者ストライキはこれは社会の悪である、こういう考え方が根本的に横たわつているのではないか。そのためにこれに対して制限をする、或いはこれに臨むに弾圧を以てするという仙結果にならざるを得ないと思うのであります。併しながら強力な弾圧によつて果してスト解決できるでありましようか。恐らく私は逆の効果ではないかということを憂えざるを得ないのであります。むしろ、労働者の労働の意欲を高めるというためには、労働者の生活を確保し、労働者権利を守ることによつてのみそれが可能になるのではないか。その意味においては、これは吉田法晴君が尋ねておりましたが、労働者の経営参加というようなことをこの際むしろ積極的に考えるべきではないかと思うのであります。ドイツのワイマール憲法が御承知のように経済会議の規定を設けております。その規定に従いまして、重要なる産業においては労働者の経営参加がワイマール憲法時代において認められておる。最近のドイツの法律においても、やはり同じように、特定の産業においては経営参加の方法をとろうとしております。イギリスは石炭業を数年前に国有化いたしました。それ以後労働者の経営参加を認めております。このことが、吉田君の指摘するように、労働者の賃金が比較的高いという事情と相待つて、最近イギリスにおいてもドイツにおいても労働者ストライキが少くなつた。併し少くなつているのでありまして、このために全然なくなつたとは申すことができません。現にイギリスにおいても、ドイツにおいても、ストライキ的な空気が炭鉱労働者の中に只今盛り上つている事情にあることは、もうすでに外国の事情に親しい人ならば何人も認めることができるのであります。併しそれはともかくといたしまして、労働者の生活を守り、労働者権利を擁護するという建前において、何らかの積極的な、例えば経営参加といつたようなことがとらるべきではないだろうかということを私は考えるのであります。これに対しまする労働大臣所見を伺いたいのであります。  それから本法案ストライキそのものの弾圧だということを申上げなければなりません。この提案理由説明によりまするというと、これはストそのものを弾圧するのではなくて、スト方法規制に関する法律である。法文の正式の名前も争議行為方法規制に関する法律案、このように出ております。伴しながら、事実はストそのものの弾圧であります。今、大山議員が第二条の正常なる電気の供給に関する行為についての説明をされたのでありますが、あの説明の中からもわかる通り、乃至はこの法文を十分に読むならば、「その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」ということが附加されておるのでありまして、こうなりまするというと、電気産業に従事する労働者は、単に停電スト或いは電源ストばかりでなく、その他のストも殆んど不可能になるのではないかということが考えられるのであります。単に争議行為方法に関する規制だけではなくて、争議行為そのものの制限になるものと我々は感ぜざるを得ないのであります。この点について労働大臣はどのように考えられておるか、この点お尋ねしたいのであります。  最後に、私は、このようなただ僅かに三カ条によるところ電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案というようなものを出しておりまするが、労働相は、どうして労調法の改正によらないで、このような単行法によろうとしたのであるかその理由を伺いたいのであります。  今日のこの法案は、労働者の生活を極度に窮迫化し、その権利制限し、曾つての産報法案であります。フアツシヨ化の法案であります。ドイツの国民労働戦線を作るための法律の内容と全くその揆を一にするものと言わなければなりません。本法案は、資本家を擁護し、一切の犠牲を労働者にしわ寄せするところの反動化の法案であります。我々は、このような法案は、結局において日本のフアッシヨ化、反動化をもたらす最も基礎的なものの一つになるということを憂えるのであります。  私は以上の質問を、労働大臣法務大臣に対しましていたしまして、これを以て終ることにいたします。    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  37. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えを申し上げます。  公共福祉ということは一体どういうことを意味するかというお尋ねであります。これは憲法第十二条及び第十三条に規定されておりまする通りでありまして、部分に対する全般の福祉であると申してよいかと思います。争議権について申しまするならば、争議行為が、国民の他の権利社会公共の秩序等と調和を保つて行われることが、公共福祉にかなうゆえんであると考えるのであります。従いまして、争議行為は常に公共福祉に反しないように行わるべきものであり、万一争議行為がこれを逸脱するようなことがありますれば、公共福祉の立場から制約をこうむることになるのは当然であると考えます。又労働者のいわゆる労働権が適正に行使されるときは、それが同時に公共福祉の増進になるのが憲法趣旨とするところであると考える次第であります。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  38. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お答え申上げます。  ストライキによれば多かれ少なかれ損害はあるものだというお説でございました。勿論さような点もございましようが、要するに損害は程度の問題と考えて行かなければならないものと存じます。  なお、重大なるという意味について御意見がございました。数字で今は直ちにはつきりと申上げかねますが、昨年の実績を見ましても、重大なる損害、脅威を与えたことは、もう明かかところであると思うのであります。  それから昨年のストライキが長期化したのは、日経連の策動と、或いは政府の無策のいたすところという御意見でございます。これは長期化したにはいろいろ理由があると思います。労使双方に主張が強かつたこと、又その間の交渉によつて遂に長引いたということは、又遺憾なことではありました。併しその間に日経連が策動したということは私は存じません。又政府が無策であるということは、これは御批判に任せる以外に何ともしようがございすせん。  それから今度の法案が非常に抑圧的であるという、一方を抑圧するものであるということでございましたが、先ほど来しばしば申上げておる通りでありまするし、又、本法案の内容をよく御覧頂けば十分おわかりを頂けるのではないか、かように考えるのでございます。  それから、むしろ積極的に経営参加等の方法をとつてはどうか、これもしばしば伺う御意見でございます。直ちに外国と同じようにということは如何かと思いますが、我が国においても国情と睨み合せつつ研究をいたして参りたいと考えるのであります。今度の立案を労調法の改正によらずして単独立法にした——労調法はどちらかと申せば労使の間の調整の問題でありまするので、わざと避けて、今日は昨年の実績に鑑みて、争議方法のむしろ内容の一部を規制するという意味でかように提案をいたした次第でございます。(拍手)    〔国務大臣犬養健登壇拍手
  39. 犬養健

    国務大臣犬養健君) お答えいたします。  この憲法の解釈とか法制意見は、実は法務府が法務省になりまして、法制局のほうに移つたのでございますが、法制局長官もおりませんし、折角のお名指しでございますから、便宜上、私から答弁を申上げます。  公共福祉ということをどういうふうに解釈するか——これは結局、平たく言えば、社会一般の人を中心として考えた場合の幸福、利益というようなことに、私は解釈いたしております。そこで、成るほど、先ほど御指摘の憲法第二十八条には、勤労者の団結の権利団体行動権利を保障している規定がありまして、これは働く人の生きて行くための基本的な人権と結ばれた観念だと存じます。(「やつておらんじやないか」と呼ぶ者あり)併し我々共同生活をしている者といたしましては、それには一定の条件を要しますので、さればこそ憲法第十二条に記されてあるように、憲法に保障された国民の自由と権利は、常に公共福祉のためにこれを利用する責任があるというのは、その意味と私は解釈いたしておるのであります。(「やつておらんじやないか、政府は」と呼ぶ者あり)又憲法第十三条に、「すべて国民は、個人として尊重される。」これが堀さんの御指摘になる基本的人権に関係があると思いますが、そうして生命、自由、幸福の追求に関する国民権利は、併し公共福祉に反しない限り最大の尊重を受ける。(「公共とは何だ」と呼ぶ者あり)ここに両方の制約関係があると私は解釈いたしているのであります。(拍手
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 兼岩傳一君。    〔兼岩傳一君登壇
  41. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して、スト禁止法案について質問をいたします。  政府は、本法案公共福祉を守るためのものだと説明しておるが、一体、政府の言う公共とは誰を指すのか、先ず第一にこの点について吉田首相の明快なる答弁を求めるものであります。街を御覧なさい。現在、一日二時間、一週二回の昼間停電国民は大変な損害を受けておる。家庭ではアイロンもかけられず、電熱器も使えず、中小企業家は仕事にならないため、一層ひどい金詰りに陥つて、倒産の危機にさらされておる。この電力危機は一体どこから来ているでしようか。今、日本では年間四百十八億KWHの電力が生産され、これは戦前の最大の電力量を更に二割も上廻る電力量ではありませんか。こんな大量の電力が生産されながら今日の電力事情は、国民の全く理解できんところです。政府は口を開けば渇水であるとごまかしておる。併し米軍関係や軍需工場を御覧なさい。これらに対しては、市民の損害をよそにして、思い放題の電気が流されております。その分量は驚くなかれ電力総生産量の七割に及んでおります。例えば昭和電工への送電を一日切れば、これで東京全部が明るくなるのです。而もこの昭和電工たるや、この一社だけで関東地方の電力の一割以上を使つて硫安を作つておりますが、不届きなことに、その硫安を東南アジアに一叺六百六十円で投売りをしております。そうしてその損失を補うために、日本の農民に対して八百八十円という高値で売つておるではありませんか。この不合理を総理や通産大臣は日本国民に何と説明されるでしようか。(「聞かんぼうがいいぞ」と呼ぶ者あり)  殊に重大な点は、昨年の電産ストの際に、政府資本家団体がどういうやり方をし、何と宣伝したかです。会社側は、軍需会社への送電を確保しながら、市民向けの電気だけを切らせて、市民の生活を暗くさせ、あたかも電産労組が公共福祉を害したかのごとく騒ぎ立てたではありませんか。(「謀略だよ」と呼ぶ者あり)今、渇水期になつても、米軍関係や軍需工場をとめようとしないで、平和産業や市民だけに迷惑をかけながら何一つ謝まらない。口を拭つて知らん顔をしておるのみか、公共福祉などと都合のいい理屈を付けて、電産労働組合からスト権利剥奪しようとしておる。而も、先に大山郁夫先生の指摘されたように、これらの米軍関係や軍需工場は、日米行政協定の取極によつて、一キロワツト時の原価三円五十銭のものを催か五十五銭で買つておる。これに反し、肝心の日本側の中小企業や市民には八円から十六円という驚くべき高値で売つておる。これによつて会社は一割五分という高率の利益配当ができ、大々的に電源開発を進めておる。例えば東電は、東京の月島で二十万キロワツトという東洋一の大火力発電所を建設しているではありませんか。それのみか、外資導入のために更に三割の電気料金の値上げをもくろんでおる。そうして労働者に小しては首切りと労働強化を押付けております。例えば朝鮮戦争前に一人の電産の集金係の一カ月の料金票千二百枚の責任が、今ではその七割増しの二千枚になつているではありませんか。  私は吉田首相に質したい。政府が国の宝と宣伝しておる電力は、私が以上指摘したように決して日本人の国の宝にはなつておらんではありませんか。政府は電力の七割までをただ同様の値段で米軍と軍需工場に使わせ、日本の市民には高い電気料を、日本の農民には高い硫安を、電産労働者には低賃金と労働強化を押付けておる。そうして、この国辱的な経営を安穏に続けるために労働者ストライキを禁止しようとしておるのが今回の法律案なんです。従つて政府の守ろうとしている公共福祉は、日本人の平和な生活の福祉ではなくて、アメリカ帝国主義者の福祉、アジア侵略戦争福祉、その日本における少数の召使ども福祉であることは、今や明かな事実ではありませんか。これに対して吉田首相、小笠原通産大臣の明快な答弁を求めます。  第二は、石炭産業の問題であります。今、日本石炭は電力と同じように、国内ではトン二十ドルのものを、米軍関係や軍需工場及び朝鮮戦線には元値を切つてトン当り十六ドルの値段でどんどん持つて行かれ、激しく増産が要請されております。そのため、朝鮮戦争以来、目に見えて労働強化がなされました。三年前、一カ年四千五百万トンの採炭量が、翌年には四千八百万トン、そうして次には五千万トン、今年は六千万トンに殖やされております。これに反して賃金は一向に殖えないのみか、昨年十月一日の総選挙で自由党が過半数を取つたその日に、鉱業連盟は炭鉱労働組合に対して二〇%の賃金切下案を示して来た。即ち資本家は、同一の賃金で労働強化によつて二〇%の増産をやろうとしたのです。(「違う違う」と呼ぶ者あり)そうしてこの増産が、朝鮮戦線に、より安い石炭を、より大量に提供しようとしたものであつたことは明かでありませんか。  では、この当時の炭鉱労働者の模様はどうだつたか。一例を挙げてみると、この当時もうすでに労働者は坑内でゆつくり昼飯を食べるだけの時間がありませんでした。このため、妻は夫の弁当箱に入れる魚の骨を一本々々取つて詰めなければならなかつた。そうしないと、夫が魚の骨を喉に突き刺す危険があつたのです。(笑声、「笑い事でない」と呼ぶ者あり)この妻は曾つて父が太平洋戦争のためにこのようなひどい労働強化をやらされて死んで行つたことを忘れることができません。そうして今又、夫がそれと同じような目に会つている。これはただごとではない。米国と吉田政府が大戦争を企らんでいるに相違ない。労働者の家族たちは、「父ちやんを殺すな」と叫び、妻は夫と共に、母は息子と共に起ち上り、こうして日本の労働運動史上曾てない二カ月余に亘る炭労の大ストライキが起つたのです。週に十五時間を超える超過勤務で苦しんでいた電産労働者も、これと共に蹶起しました。この電産、炭労の闘いを中心に、自動車、私鉄、国鉄、金属の労働者及び基地労働者など、およそ日本の組織された労働者はすべて起ち上り、曾ての二・一ストを凌ぐ大闘争に発展しました。ここで危殆に瀕したのは誰でしよう。それは戦争のための、アメリカのための公共福祉ではなかつたでしようか。だから狼狽した米政府が、例えば石炭に換算して二百万トンに相当する重油の輸入を押し付けてストライキを切り崩そうとしたではありませんか。又、このストライキで守られたものは何でしようか。それは平和のための、日本独立のための公共福祉ではなかつたでしようか。だから全世界の労働者が支持し、中国をはじめ世界労連加盟の組合は勿論、アメリカのAFLの炭鉱労働組合からさえも一万ドルの見舞金が送られているではありませんか。こうして、職階制賃金の打破、食える賃金を寄こせで立上つたこのストライキが、全国民の生活を困苦のどん底に落しておるアメリカと吉田政府戦争政策と真つ向から対立したのは当然であります。このストライキの先頭に立つて闘つた炭労、電産の労働者こそ、吉田政府と自由党がアメリカに売渡した日本独立を闘い取るための、真に愛国的な行動であつたのであります。  私は吉田首相に求める。あなた方売国政府は、労働者の愛国的な大ストライキの闘いが恐ろしくて今回スト禁止法案を提出したということを、隠さず率直に認められてはどうか。若し吉田首相の胸に一片の政治的良心が残つておるというなら、そうすべきです。若しそうでないというなら、その理由を日本国民の納得の行くように説明してもらいをい。而も政府は、この法案の第三条で、保安施設を守るためにストライキを禁止するのだ、保安要員の引上げは不法行為であると強弁をしております。一体、日本の炭鉱に、厳格な意味から見て、本当に労働者の生命を守る保安施設があるというのでしようか。そして労働者の不注意を責めている。私はこの点について戸塚労働大臣説明を求めたいのであります。炭鉱労働者は、保安施設らしいものの何もない職場で怪我をして、毎日三百人が片輪になり、毎日平均二人が死んでいるではありませんか。その一番皮肉な例が最近九州の三池炭鉱で起きています。そこで会社が事故なしデーを祝つてどんちやん騒ぎの最中に、一人の労働者が炭車に挟まれて死んだのです。ソヴイニトのドンバス炭鉱を御覧なさい。そこでは、労働者にとつて一番苦しい、一番危険な採炭作業を機械化することに成功しております。炭鉱労働者と、技術者と、政府協力によつて、輝かしい採炭コンバインが発明されたのです。そして今やそれは全ソヴイエトの炭鉱に普及されています。これこそが本当の保安施設です。飽くなき利潤の追求のためには平気で国を売つて戦争をやるやからには夢にも考えられぬことなんです。これは決して科学技術の問題ではなくて、まさに政治の問題です。今、日本の炭鉱は、会社の特別訓練を経た職場防衛隊が保安要員となつて、発電所、通風機、ポンプ、切羽などを固めています。これは、労働組合がみずからの手で保安施設を改善し、これを守ることを防ぐために、鉱山の拠点を資本家自身の手で固め、貴重な石炭資源と、労働者の血と汗を戦争政策の犠牲にしているのです。私は戸塚労相及び木村保安庁長官に対し、この第三条の真の狙いを明かにされることを求めたい。これは戦争に反対する労働組合の一切の行動を弾圧するために武装権力を差向けるための規定でしよう。現に昨年の十二月、九州高松炭鉱で緊急調整の発動後に、なお独自の要求を掲げてストライキを続けていたところ政府は武装警官を差し向けて山を占拠し、棚を張りめぐらして、労働者を山から追い出したではありませんか。政府は将来ストライキの規模に応じて、保安隊を、或いは米駐留軍を出動させること、これがこの法律案提出の政府の真の狙いであることは明瞭です。然りとすればこの法律案は、以上によつて明かに、ポ宣言、憲法違反し、基本的人権を蹂躙し、民主主義の原則に逆行するものであり、従つて法律として無効であります。  今アメリカにおいてアイク政権が成立し、朝鮮の戦争を全アジアに拡大しようとする陰謀が着々進められ、ダレス国務長官が吉田首相に再軍備の拡大を強要し、そのため池田前通産相が渡米すると伝えられている矢先に、この法律案が提出せられたことは、決して偶然ではありません。先に輸送、通信の労働者からスト権を奪い、今、電気石炭等、動力部門からスト権を奪い、やがて私鉄、鉄鋼、造船に及ぼうとしているのは明かです。これこそが再軍備でなくて何でしよう。なぜならば、この体制を作り上げれば、あとは、憲法の改正も、徴兵制度の施行も、天皇制の強化も、そして全国民を米帝国主義者の企てている大戦争に投入することも、ずつと容易になるからであります。なぜならば、日本独立と平和を守る民族の中心部隊たる労働組合ストライキ闘争が弱まるからであります。曾て中国侵略のいわゆる支那事変が開始され、労働組合が産報化されて、ストライキ権利を失つたとき、あの憎むべき太平洋戦争が起されたことを想い起すべきであります。併し今日の日本労働者階級は、曾つての過ちを二度と犯すものではありません。今や日本労働者は、アメリカと吉田政府戦争政策のための低賃金、首切り、労働強化に反対して、春季大闘争に起ち上りつつあります。そして実力を以て政府の意図を粉砕しようとしています。私は日本共産党を代表して、全労働者階級をはじめ、平和を愛する全国民と共に、このような悪法の即時撤回を要求して、吉田総理大臣以下の誠意ある答弁を求める次第であります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  42. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。  御批判は自由でありまするが、(「批判じやない、事実だ」と呼ぶ者あり)政府は、総理大臣の施設演説にも申しましたように、占領政策の是正を政策一つの基調といたしまして、専ら日本独立性を高める意味において政策を行なつておるのでありまして、独立自主性を高める意味におきまして政策を進めているのでありまして、外国の顔色を見て政策をきめるということは絶対にやつておりません。(「えらいものですね」と呼ぶ者あり)今の御批評は、「他人、心あり、我これを忖度す」という言葉お答えするより以外にないのであります。(「そんなことじや答弁にならん」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣小笠原九郎登壇拍手
  43. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 朝鮮向けの石炭についてお話がありましたが、これは各炭鉱が競争入札をしたのでありまして、政府の指示ではございません。なお、増産計画について、今昭和二十七年度は六千万トンとかのお話がありましたが、二十三年三千三百万トン、二十四年三千八百万トン、二十五年三千八百五十万トン、二十六年四千三百万トン、二十七年四千四百万トンでありまして、何ら六千万トン等の増産を強要しておる事実はございません。なお、労働強化の事実も少しもございません。八時間労働でございます。(「怪我人や死人はどうです」と呼ぶ者あり)  それから電気のことでございまするが、家庭用、商業用、電鉄、ガス等の公共用としての電力需用が総需用の三割に及んでおるのでありまして、ほかの産業部門、如何に軍需関係を広く解釈いたしましても、そんなに七〇%に達する事実はございません。(「何割ですか」と呼ぶ者あり)特に又軍需工場に対しまして特別な取扱をいたしておる事実はございません。(「何割か答えなさい」「何割だ」と呼ぶ者あり、拍手、「ソ連は間違つているんだろう」「本当の腹から答えなさい」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  44. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) お答え申上げます。  炭鉱の保安施設なしというお説には従いかねます。(「ぼそぼそ言つたつてわからんよ」「何がない」と呼ぶ者あり)炭鉱の保安施設がないというお話がありましたから、その説には従いかねますと申上げたんです。  政府は、本法案の制定によつて、(「あんな、ちやちなものは保安施設と言えないよ」と呼ぶ者あり)その後、武装警官、保安隊或いは米軍が云々というお話がありましたが、本法案争議行為に警察や保安隊を介入させる法律案ではありません。又そういう意図も毛頭持つておりません。(「何を介入させます」と呼ぶ者あり)  次に、本法案に引続いては、私鉄、日通、鉄鋼等の制限をするのではないかというお話でございました。これはしばしば申上げましたように、さような考えは持つておりません。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  45. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  先ほど深川委員に対して答弁いたしました通り、保安隊は決して軽々しく出動はいたしません。(「重々しく出動するのか」と呼ぶ者あり、笑声)要するに、ストが暴動化して、国家の治安が乱れて普通の警察力を以てしては到底これに対処することができない場合、初めて保安隊が出動するのであります。(「それでは同じことじやないか」「彼は一番正直だよ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔兼岩傳一君「議長、再質問」と述ぶ、「時間ない」「一分間残つているんだ」「最後の一声を聞け」と呼ぶ者あり〕
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 兼岩傳一君。    〔兼岩傳一君登壇
  47. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 木村保安庁長官は割に正直な答弁をされて、出動させるんだと言つておられるし、それから通産大臣に至りますと、同割ということを、僕が七割と指摘したことは間違いである、そうして自分は何割であるという主張が何にもありません。(「非常識だから答えようがないんだよ」と呼ぶ者あり)これは、けしからんと思う。  それから、私は今、緒方官房長官が答え放しで席を外されたことに対して、非常な、彼自身の言葉を以て言えば、非常な批判の目を向けたい。そこで私は、こういう代用品に答えてもらわなくてもよろしいから、明日総理大臣じきじきに答えてもらいたい。(「必要なし」と呼ぶ者あり)それは、私が質問いたしましたのは、何ら批判ではなく、現実の事実を指しておる。私は、全部事実に則つて、今日の電力の危機というものの実態が(「デマだよ」「でたらめを言うな」「ちやんと調査してあるんだよ」と呼ぶ者あり)アメリカ及び戦争一辺倒に使われておるところに一切の禍根があるということを指摘した。そうして値段が三円五十銭のものを五十五銭で投売りしているじやないか。農民の肥料は、しわ寄せられて、うんと高くなつているではないか。(「六千万トンどうした」「大デマ」と呼ぶ者あり)このような政治を、吉田総理大臣はこのようなやり方を……(「大デマ言うな」と呼ぶ者あり)電力が国の宝である、或いは公共福祉を守るためだなどと言つているが、そういうことは全然なつていないじやないか。この事実を如何に政治責任を以て答えるかということを私は要求したのであります。従いまして私はこの只今の吉田総理の代理の緒方官房長官答弁は、全然答弁になつておりませんので、私の逐一総理大臣に対して質疑いたしました点は、明日全部答えて頂きたいということを要求いたしまして、私の再質問を終ります。(「自分の質問が無責任なんだ」「答弁終り」と呼ぶ者あり)  議長総理大臣は答えていません。そうして再質問に対しても、いません。それですから、私の質問の全部に対して、吉田茂は明確に答えるということを私は議長に要求いたします。(「明日答弁必要なし」と呼ぶ者あり)そのための議長じやないか。(「必要なし」「諸方もいないじやないか」「質問終つたら坐れ」と呼ぶ者あり)
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  49. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、医師会歯科医師会及び日本医療団解散等に関する法律の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。  先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長藤森眞治君。    〔藤森眞治君登壇拍手
  50. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 只今議題となりました、医師会歯科医師会及び日本医療団解散等に関する法律の一部を改正する法律案の厚生委員会におきまする審議の経過並びにその結果について御報告申上げます。  先ず、本案は衆議院亘四郎議員外二十九議員よりの提案でありますが、二月十六日の厚生委員会におきまして、亘議員から次のように提案理由が述べられました。  日本医療団昭和十七年二月二十五日、法律第七十号、国民医療法によつて設立せられた特殊法人でありまして、医療の内容の向上と、その普及を図ることを目的として、医療体系の整備に当つて来たのでありますが、終戦後、厚生省の医療行政上の必要から、自発的に昭和二十二年十月三十一日法律第百二十八号を以て解散したのであります。医療団が解散した当時におきましては、医療施設の経営上多額の欠損を生じて、赤字経営ながらの清算でありましたので、その清算の見通しとしては残余財産の生ずることなどは予想せられなかつたのでありますが、併し、その後、清算は順調に進捗中でありまして、現在の見通しとしては約六億余円の残余財産を生ずることがほぼ確実となつたのであります。然るに、現行解散法第十八条によりますと、この残余財産は国庫に帰属することになつているのであります。そこで医療団の清算は自己清算の建前をとつているのでありまして医療団がその財産を似て債務を完済できない場合には、何ら国家の保証がなく、清算人に破産宣告の請求義務を負わしめているのであります。従つて、剰余が生じた場合にのみ国庫に帰属せしめることは不合理であります。又一面、この残余財産は医療団所有の施設を処分した結果生じたものであり、且つ医療団施設は、元来、その重要性にもかかわらず、内容が甚だしく不完全なものが多かつたのであります。併しながら、清算上止むなくそのまま移譲した実情でありますので、この残余財産は、特別の場合のほかは、原則として、当然これら医療団から移譲した医療施設の整備のために使用すべきものであると存ずるのであります。なお、医療団所有施設の移譲を受けたものは、国のほかは大部分地方公共団体でありますのみならず、事業面からいつても、医療団解散後、医療施設の普及と整備を図る事業を医療団に代つて遂行しているものは、国のみならず地方公共団体も又相当部分を担当しているのであります。従つて、各地方公共団体からは、残余財産を医療機関の整備のために使用せよとの熾烈な要望があつたのであります。以上のような次第であつてみますれば、現行法の規定は明らかに不適当であると考えられるのであります。医療の普及を目的として事業をいたして来ました日本医療団の清算によつて生じた剰余金は、当然これと同じ目的のために使用すべきものでありまして、以上のような事情を考え合せますときは、そうした措置をとることが一層適当と考えられるのであります。以上の理由によりまして、この残余財産を日本医療団から譲渡された医療機関等の整備のために処分できることといたし、以て我が国医療の普及に資したいと考えた次第であります。(「国に返さなくちやいかんじやないか」)と呼ぶ者あり)以上が提案理由の概要であります。(「特殊団体に返すべき筋合いのものじやない」と呼ぶ者あり)  二月十七日の厚生委員会におきましては、提案者並びに清算人、厚生省当局に対しまして、各議員より熱心な質疑がなされたのであります。質疑応答の詳細な内容は速記録により御覧を願いたいと存じます。かくて質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以て本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました次第でございます。  以上御報告申上げます。(拍手
  51. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  52. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      —————・—————
  53. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第三、海岸砂地地帯農業振興臨時措置法案衆議院提出)を議題といたします。  先ず委員長の報告を求めます。農林委員会理事瀧井治三郎君。    〔瀧井治三郎君登壇拍手
  54. 瀧井治三郎

    ○瀧井治三郎君 只今議題となりました衆議院議員野原正勝君外九十九名の提出にかかる海岸砂地地帯農業振興臨時措置法案について、農林委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。  四面海に囲まれている我が国では、約四万キロに亘る海岸線に沿つて、随所に海岸砂地地帯が拡がつており、その面積は約十五万町歩余に達すると言われております。これら海岸砂地地帯は、おおむね潮風又は飛砂による災害が甚だしく、又農業生産力が劣つております。この地帯の農業並びに住民の生活に多大な災害を及ぼしておりますので、国の財政及び金融の両方面からの援助によつて、これが災害の防止及び農業生産の基礎条件の整備に関する事業を速かに且つ総合的に実施して、かかる地帯の保全と農業生産力の向上を図り、以て農業経営の安定と農民生活の改善を期待せんとするのが本法案の目的とされております。  而してその内容は、すでに制定されております積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法その他一連の特殊地帯立法とほぼその軌を一にするものでありまして、即ち、農林大臣による海岸砂地地帯の指定、都道府県知事及び農林大臣によつて定められる海岸砂地地帯の農業振興計画の内容策定及びこれが実施、かかる農業振興計画を実施するために必要な経費及び資金に対する政府措置、並びに農業振興計画による事業を行う者に対する国有財産の無償貸付又は譲与、海岸砂地地帯農業振興対策審議会の設置、組織及び権限等について規定し、昭和三十五年三月三十一日を以て失効する限時法となつております。  委員会におきましては、提出者代表及び政府当局から、提案の理由、法律案の内容、海岸砂地の分布状況、かかる地帯の農業生産力及びこれが向上の可能性、国の投資の期待領及び事業経済効果、この種地帯に関する既往における国の施策等、関係する諸般の参考事項の説明を聴取し、続いて質疑に入り、防災林植栽の有効な実行方法及び防災林の保護管理、既往におけるこの種特殊地帯立法の実施に関する政府措置、及び本法成立後におけるこれが実施についての政府の決意、農業振興計画の実施方法、特殊地帯立法における特殊性の意義、農業振興計画実施の総合化、本法を臨時立法とするか恒久立法とするか、又臨時立法とする場合、有効期間の当否、各種のこの種特殊地帯立法に関する政府の見解、及びこれが取扱上軽重を付すべきか等、その運用上の措置等、諸般の事項について質されたのでありまして、これが詳細は会議録に譲ることをお許し願いたいのであります。  かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、三橋委員から、「本法の運用に関して必要なる経費の予算的裏付に遺憾なからしめること、防潮及び防災林の保護育成、特に駐留軍のためにする伐採の防止に万全を期すること、特殊地帯立法については、経済的観点のみならず、社会政策的意義についても十分な考慮を払うこと、砂地における合理的農業経営に関する研究に努めること、及び特殊地帯の本質に鑑み、前例にかかわることなく補助率の引上げ等、助成を濃厚に行うこと」等の趣旨の希望を附して賛成があり、続いて岡村委員から、「地元農民の負担の増加を避け、事業実施に必要なる経費を確保し、法の運用に遺憾なからしめ、その目的を完遂し、該当地帯における本法に対する期待を裏切るごとなく実現するよう」希望を附して賛成がありました。かくして討論を終り、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  55. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  56. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。      —————・—————
  57. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第四より第二十九までの請願及び日程第三十より第三十三までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。運輸委員長小泉秀吉君。    〔小泉秀吉君登壇拍手
  59. 小泉秀吉

    ○小泉秀吉君 只今上程になりました日程第四から第二十九までの請願及び第三十から第三十三までの陳情につきまして、運輸委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  日程第四より第十七までの請願及び第三十の陳情は、いずれも鉄道敷設促進に関するものでありまして、このうち赤穂線につきましては播州赤穂—西大寺附近間、只見線につきましては、会津宮下—川口間、野岩羽線につきましては荒海—滝之原間は、すでに昭和二十七年度予算により工事中であり、又三陸縦貫鉄道については気仙沼—津谷間が近く着工の予定になつております。小本線、猪谷駅—神岡町間、大畑線、遠信線及び橋場線は、いずれも鉄道敷設法の予定線或いは建設線に該当するものであります。又、釧勝線は、昭和二十八年二月十八日鉄道建設審議会会長より、鉄道敷設法の別表に追加するを妥当と認め、運輸大臣に答申された線であります。委員会におきましては、慎重に審議いたしました結果、いずれも、天然資源の開発、産業振興経済文化の向上、民生の安定、鉄道網の完成等の見地より、なお更に直江津—越後湯沢間については、信越線と上越線を結ぶ短絡線の意味におきまして、三陸鉄道石巻—柳津間については、仙石線が国鉄となつた現在、再考の余地があるものとしてそれそぞれ願意を妥当と認めました。  日程第十八の国鉄新線建設に関する請願は、国鉄の新線建設が相次いで行われる最近の事情に鑑みまして、私鉄のこうむる影響には甚大なるものがあるとなし、新線建設については緊要且つ妥当なものに限り、又新線に直接関連を持つ私鉄会社の意向を十分勘酌して、路線の選定、着手の時期、関係私鉄への補償等について適切なる措置を講じてほしいという趣旨であります。委員会におきましては慎重に検討を加え審議しました結果、願意を妥当と認めました。  日程第十九の越美北線鉄道敷設計画に関する請願は、国鉄建設線越美線は、福井市から大野町を経て現在の越美南線に結ぶものであります。そのうち、福井市—朝日間は昭和二十七年度予算で着工すべき線には入つております。従つてこれが建設に当つては、現に福井—大野間に私鉄がありますため、国策的見地に立つて慎重に考慮の上措置し、万一、本計画を実施するときは、私鉄の打撃に対し補償の途を十分考慮してほしいという趣旨であります。委員会におきましては慎重に審議いたしました結果、国鉄の工事の施行については私鉄の存在を十分考慮に入れ、私鉄との調整又は補償について善処すべきであるとして、願意を妥当と認めました。  日程第二十及び第三十一は、大宮仙台両氏間の電化促進に関するものでありまして委員会におきましては、輸送力の増強、石炭消費の節約等の見地から願意を妥当と認めました。  日程第二十一は鉄道嘱託医の往診用バスの復活に関するものでありましてその要旨は、往診等の場合において従業員の負担を軽減するため、バスを発行してほしいというのであります。委員会におきましては慎重審議の結果、願意を妥当と認めました。  日程第二十二から第二十四まで及び第三十二は航路標識の設置又は気象官署の設置に関する要望でありまして、船舶の航行の安全又は気象災害防止の点から、委員会におきましては、いずれも願意を妥当と認めました。  日程第二十五から第二十八までは、大間港、小名浜港、下田港及び味野港の港湾修築整備に関するもので、日程第三十三は港湾等整備費国庫補助増額等に関するものであります。又日程第二十九は水難救済に関する法律制定請願でありましてその趣旨は海難事故に際して、一般人が水難救助作業を行なつた場合における人的及び物的損害について立法措置を講ぜられたいというのであります。委員会におきましては、審議の結果、その重要性に鑑み、いずれも願意を妥当と認めました。  以上委員会におきましては、日程第四から第二十八までの請願及び第三十から第三十三までの陳情は、いずれも議院の会議に付するを要し、内閣に送付するを要するものと決定し、日程第二十九は、議院の会議に付するを要し、内閣に送付するを要せざるものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  60. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情委員長報告通り採択し、日程第二十九の請願のほかは内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  61. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情は全会一致を以て採択し、日程第二十九の請願のほかは内閣に送付することに決定いたしました。  本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十七分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案趣旨説明)(前回の続)  一、日程第二 医師会歯科医師会及び日本医療団解散等に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第三 海岸砂地地帯農業振興臨時措置法案  一、日程第四乃至第二十九の請願  一、日程第三十乃至第三十三の陳情