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1953-01-31 第15回国会 参議院 本会議 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年一月三十一日(土曜日)    午前十時十八分開議     —————————————  議事日程 第十八号   昭和二十八年一月三十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     —————————————
  2. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。(第二日)  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。カニエ邦彦君。    〔カニエ邦彦登壇拍手〕    〔「選挙演説だ、しつかりやれ」と呼ぶ者あり〕
  4. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、昨日行われました政府施政方針演説に対し、若干お尋ねしたいと思うのであります。  先ず劈頭にお尋ねいたさなければならないのは、相次ぐ自由党内部内紛の故に内外の信望を失墜した吉田内閣は、この際いさぎよく総辞職をして、罪を国民大衆の前に謝すべきだと信ずるのでありますが、吉田総理にしてその責任を痛感しておられるかどうかを先ず伺いたいのであります。  即ち、前回の総選挙に当つて自由党が多数の議席を失つたにもかかわらず辛うじて第一党たり得たのは、政治安定勢力を期待する国民のかそけき願望によつただけで、自由党政策が支持されたのでないことは、当時の新聞報道が明らかにするところであります。然るに第四次吉田内閣組閣以来、自由党内紛に次ぐ内紛、醜を世界にさらし、まさに崩壊の前夜にあります。(「その通り」と呼ぶ者あり)自由党が自壊することは我々の何ら関知せぬことで、むしろ日本民主政治前進のためには喜びたいと思うのであります。(拍手ただ自由党内紛国政が妨げられ、日本政治に対する世界信頼を失いつつある現状は、断じて、黙視し得ません。(「その通り」と呼ぶ者あり)よろしく吉田内閣は総辞職して、総理はその責任を明らかにずべきであると思うのでありますが、吉田総理所信、果して如何でありましようか。お伺いをいたしたいのであります。(「答弁の要なし」と呼ぶ者あり)  次に、アメリカ大統領アイゼンハワーが就任されたについて、今後の国際情勢に処すべき日本国際的地位乃至立場について、吉田総理はどのような見通しと方針を持つておられるかどうか。この際、明確にして頂きたいのであります。アイゼンハワー外交政策が推し進められるとすれば、日本防衛力強化が要請され、国民大衆防衛費の重圧に苦しめられ、日本の軍事的対米隷従関係が知らず知らずの間にでき上る結果になることを国民大衆は深く憂えておるのであります。この際、吉田総理は、進んでみずからの所信を明らかにされる必要があると考えるのであります。  我が日本社会党は、平和憲法を堅持する我が国の安全も、国際平和も、究極においては国連集団保障によつて確保するほかはないと信ずる以上、その速かなる実現を期さなければならないと考えるのであります。然るに昨年の国連理事会において日本国連加盟が議題に供せられたとき、不幸にしてソ連邦の拒否権行使によつて阻止されたのであります。政府はこの点に関し如何なる考え対策を準備しておられるか。総理大臣所信を質したいのであります。  防衛問題、即ち再軍備の問題とからんだ憲法改正の問題については、議会の度ごとに論議が闘わされ、今日では国民の全部が吉田政府防衛対策は明らかに違憲であると言つておるのに、吉田政府だけが、再軍備はいたしません、憲法違反ではございませんと、うそぶいておるのであります。ところが、鎧の上に羽織つた衣が破れたのでありましようか。政府憲法改正のための国民投票方法研究に着手されたと伝えられております。果してその通りであるかどうか。詭弁もいい加減にして、この際、率直に吉田総理の明確な答弁を願いたいのであります。  次に二十八年度予算についてお伺いいたします。二十八年度予算案は、独立後最初の一般予算であつて我が国今後の進路を決定する極めて重大なる意義を持つものとして内外の注目を浴びていることは、今更言うまでもありません。然るにこの予算案を見ると、内外の諸情勢に対処すべき明確なる方針を持たないばかりか、自壊一歩手前にある自由党現状をそのまま反映しておる寄木細工の無方針無性格な盲目予算と言わざるを得ないのであります。強いて言えば、参議院選挙を目当てとした、公約実行に名を借りる自由党総花的消費予算であつて国政党利党略の具に供せんとする言語道断なるものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)事実、この予算を担当された大蔵大臣でさえ自信がないと言つて匙を投げておるのであります。このようにしてでき上つた二十八年度予算案は、当然の結果として、これまでの健全財政方針を一擲して、公々然たるインフレ方針をとつたことをはつきり知らなくてはなりません。私はかかる予算案国会に臆面もなく提出されたことに対し激しい憤りを感ずるものであります。以下国民大衆と共に、断じてゆるがせにできない諸点に関し政府お尋ねする次第であります。関係大臣の明確なる答弁を求める次第であります。  先ず第一に、私は公債発行はこれを全額削除すべきだと考えるのでありますが、吉田総理向井大蔵大臣のお考えはどうか、お伺いしたいのであります。即ち、政府貯蓄公債の内容についてはいろいろと言いわけをされておるのでありますが、これが結局において赤字公債になつてしまい、さなきだに窮乏にあえぐ一般勤労大衆生活を根こそぎ崩壊してしまうことは、太陽が東から上り、自由党勤労大衆の党ではないこと以上に明らかなことであります。(笑声拍手)今度の予算案国民大衆生活犠牲にするばかりでなく、未だ再建途上にある日本経済の重大なる危機を招来する赤字公債発行しなければならない羽目に立ち至つたのは、防衛費中心とする不生産的歳出厖大なる国費を費す上に、歳出全体に亘る放漫さ、それに加えて、参議院選挙を当て込んだ自由党公約総花的盛り込みという党略の具に供されたためと断ぜざるを得ないのであります。而もその上に財源を洗い浚い使い果してしまつておる。今後補正予算を必要とするときには一体どうする気か。公債の増発か。或いは政府の一番恐れておられるところの蓄積資金の食い潰しか。増税によつて国民大衆を搾り取るのか。それ以外に施すべき方法が全くない。こういうことになると思うのであります。私は、今こそ厖大なる防衛費中心とする不生産的歳出並びに放漫極まる歳出の全体に亘つて大整理を行い、国民を欺く総花的編成を排し、重点的政策による均衡財政方針を堅持すべきであると考えるものであります。政府はこの点についてどのようにお考えであるか。吉田総理並びに向井大蔵大臣の御答弁を願いたいのであります。  次に私は、防衛関係費中、約九百億円に上ると称される前年度繰越分は、これを減税社会保障等民生安定費に振り向けるべきだと思うのであります。吉田内閣は、一昨年ダレス・吉田会談の際における口約、及び安全保障条約締結の折衝にひそむいわゆる秘密外交による再軍備の確約を国民の前にごまかし続けて来て以来、実に一年有半、吉田内閣自衛力漸増計画が推し進められつつあることは、吉田総理自由党諸君を除く世界人類のひとしく認めるところであります。前年度繰越金九百億円を加えて実に二千三百五十億円になんなんとする防衛費を以て、なおも再軍備にあらずというような、ホゲタを叩くに至つては、吉田総理もいよいよお年の加減で少々左巻きになつたものとしか思われないのであります。(笑声)更に、吉田内閣秘密外交による日米安全保障条約並びに行政協定は、今日もなお国民誰一人として納得する者がないと思うのであります。このようなものに六百二十億円もの防衛支出金がなぜ必要なのか、理解に苦しむものであります。六百二十億円もの経費を分担してまで、日本国民として米軍の駐留を望んでいる者がありましようか。国民の良識と誇りからして断じて承服しがたい。かかる費用は当然全額削除さるべきだと考えるのであります。以上の点につき、政府の明確なる御答弁を願いたいのであります。  次に、歳出面におけるところの吉田政府濫費について質したいのであります。由来、予算編成に当つては、政府は非常に熱心にお手盛りをするのでありますが、折角とつたお手盛り予算を実際に使う場合には極めてルーズで、吉田政府国費濫費至つては言語に絶するものがあるのであります。試みに会計検査院批難をいたしました報告書によりますれば、その批難件数は、二十三年吉田内閣組閣以来二十六年に至る四年間に三千六百七十一件の多きに達し、その批難金額は驚くなかれ三千五百七十五億八千九百二十八万九千三百四十円に及んでいるのであります。(笑声)この数字は、会計検査院の弱体のため、拔取検査によるものであつて、勿論これは氷山の一角と言うべく、実際その全部について検査を行えば、その批難金額はこれの約三倍、一兆億円を突破する驚くべき金額となるのであります。まさしく百鬼夜行、腐敗堕落、その極に達した蒋介石政権の末期を髣髴たらしめるものがあるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)かく吉田内閣は、外敵に対しては二千五百億円の防衛費によつて万里の長城を築こうとするが、内部腐敗堕落によつて生ずる内敵、即ち白蟻による崩壊如何にして防ごうとするのか。(拍手)血の出る思いで納税した国民大衆に対して何と言つてお詫びをするつもりか。かくのごとき傾向は一にかかつて吉田内閣綱紀弛緩に基くものと言うべく、この一点だけからも吉田内閣責任を追及せざるを得ないのであります。若し政府にして、收入を確保し、支出の節約を図り、経費を効果的に使用し、事業を能率的に運営し、物件を経済的に管理処分すれば、年間優に一千億円の経費が節し得られるのであります。かくては国民の国家に対する信頼は地を払い、世は乱れ、人倫は遂に地を払うこと必定であります。吉田総理は、この内閣になつてから汚職涜職が少くなつた綱記の粛正の実が挙つていると言われるが、嘘もそこそこにしてもらいたいのであります。(笑声会計検査院批難件数だけでも吉田内閣になつてから一躍二倍になり、而も累年増加傾向にあるこの事実を何と弁解されるか。誠に頭隠して尻隠さずとは現内閣のためにこしらえた言葉だと思うのであります。(拍手)現に、本院の決算委員会は勿論、たつた年に一度開かれる総決算の本会議にも、吉田総理は言うまでもなく、責任の衝に当る各大臣ですら、ただの一遍だつてこの席に出席したことがないではございませんか。決算を無視する、ひいては国費を使うことを何とも思つていない、そういうやり方をするから、汚職に次ぐ汚職涜職に次ぐ涜職で、曾つて見ないような汚職涜職時代が現出するに至つたと申しても一言の申し開きもできないではないか。以上挙げましたような綱紀弛緩国費濫費に対し、吉田内閣は過去四年間如何なる措置を講じたことがあるか。我々は寡聞にしてそれを知らないのであります。又今後如何なる対策をとろうとするのか。あれば承わりたいのであります。(拍手)具体的には会計法規に違反する行為発生防止方策を持つているかどうか。公務員不正行為防止方策如何批難事項防止のために処分の適正且つ厳正を図る意思はないかどうか。更に、今日の会計検査院を拡充し、会計検査厳正化を図る意思はないかどうかを承わりたいのであります。  以上、私は本予算案根本についてお尋ねしたのでありますが、このような厖大極まるインフレ予算であるにもかかわらず、防衛費政府濫費によつて産業の発展、貿易の振興等、経済安定のための諸施策国民生活安定のための諸施策が殆んど犠牲にされてしまつたことは、誠に遺憾に堪えないところであります。その主なる点について所管大臣所見を伺いたいのであります。  第一に労働者最低賃金制政府は制度化する意思がないかということを承わりたいのであります。最低賃金制については、審議委員会が設けられて、種々研究が重ねられているやに承わつておりますが、私見によりますれば、最低賃金基準は、少くとも労働協約を有する企業対象として、食える賃金労働者労働力生産を確保し保障し得られる点においてきめらるべきであつて、それ以下の中小企業にあつては、その線を基準として社会保障対象としてきめらるべきものと考えるのでありますが、政府所見果して如何労働大臣の見解を承わりたいのであります。  第二に公務員給与ベースに関してでありますが、昨年十二月、一般職職員給与法審議に当り、本院において、政府提案俸給額人事院勧告すら容れられぬ不当に低いものである点を追及し、俸給表にそれぞれ備考を設けて、これらの俸給表は暫定的なものであつて、成るべく速かに合理的に改訂を加えることとし、これが両院一致の議決を見て法律として国会意思表示があつたのであります。これは言うまでもなく、勧告自体生計費の実態にそぐわない、食つて行けない給与であるのに、それすら下廻る政府案に対しての考慮を求めておるのであります。これに対し、政府としても恐らく何らかの措置をとるべく考慮が払われておると察せられるのでありますが、具体的に予算編成に当りどのように考慮を払われておるか。大蔵大臣に承わりたいのであります。  第三に米の生産者価格についてお尋ねをいたしたい。政府は、同じような意味におきまして米価審議会決定を無視して、生産費にも足りない価格を一方的に農民に押し付けておるのであります。こんなことでどうして食糧の増産を図ることができるのか。せめても審議会決定通りに引上げ、一方、二重価格制を採用して消費者負担軽減する措置を講ずべきだと考えるものでありますが、政府所見について農林大臣にお伺いするものであります。  第四に国民生活安定方策についてでありますが、今回の予算案は、前にも述べましたるごとく、再軍備予算であると同時に露骨極まる大資本擁護予算である半面、勤労大衆の利益は完全に無視されておると言わなくてはなりません。政府減税を大幅に宣伝しておるけれども、これ又自由党得意の税法上の減税である。而も実際には、米価鉄道運賃の値上、地方住民税の引上等によつて大衆収奪はどんどんとやつて行く。政府減税の恩典に浴するのはひとり大資本家ばかりである。これでは又自殺者と強盗を大量生産すること必然であります。我が党は、そこで月収二万円以下の免税を中心とする根本的税制改革即時断行を要求したのでありますが、このことについて政府如何よう考えておられるか。所見を承わりたいのであります。  次に、政府中小企業対策についてお尋ねをいたしたいのであります。中小商工業者に死ねと言つたあの勇ましい大臣はおやめになつたけれども、現内閣中小企業対策には依然として何ら見るべきもののないことを遺憾に思うのであります。私は、真の中小企業対策は、我が国産業政策の重要な部分であると同時に、ゆるがせにできない社会政策である、経済問題であると同時に重大なる政治問題であると信ずるものであります。何となれば、我が国における中小企業とは、企業と言うべく余りにも生活に密着した生業であります。生きて行くためのなりわいであり、而もその我が国産業の中に有する地位は重要であり、これに従事する人人は我が国総人口の二〇%を占めておるのであるからであります。中小商工業者として食つて行けないということは、首をくくるか、それとも生活保護対象になるかの、まさしくぎりぎりの線であるということを知らなくてはなりません。それにもかかわらず、政府は彼らに重税を課して搾り取る以外に何一つ対策らしいものを講じていない。政府当局は或いは中小企業金融措置を講じたと言われるかも知れない。けれども、本当にこの金が借りられたのは中小のうちでも中以上の部分の極く少数であります。このたび向井蔵相が声を大にして宣伝をしておられる中小企業金融公庫にしても同様の結果になることを恐れるものであります。問題は中小のうちの小企業、即ち零細企業にあるのであります。この対策をどうされるかということを承わりたいのであります。  次に、中小企業金融公庫についてお尋ねをいたしたい。現在中小企業金融については商工中金があり、長い間の経験を通して随分仕事をしておるが、これを拡充せずに別のものをこしらえる理由は何か。商工中金組合金融であるからだというなら金庫法を改正したらいいではないか。組合金融個人金融、それが一本にやられて初めて運営の妙がある。よろしく金庫法を改正し、商工中金一本でやられるように考え直されてはどうであるか。わざわざ別のものをこしらえるのは、協同組合法対象にもならぬ、中小企業のうちでも大業者だけを考えておられる魂胆でなかろうかと思うのであります。中小企業者も、そのようなダシにされては堪らないのではないかと思うのであります。以上の点について政府の御答弁を願いたいのであります。  次に、社会保障制度確立のための費用失業対策費は、予算総額の僅か六分の一弱にしか過ぎません。これは吉田内閣の暴政により、今後ますます深まり行く大衆窮乏失業者群の増大に伴い、社会不安は決して解決し得られないのであります。この際、社会連帯基本的理念に立脚した社会保障制度確立失業対策の完璧のために、社会保障制度審議会勧告を即時実施せられる御意思はないかどうかを承わりたいのであります。  最後に、政府は以上のような大衆犠牲による大資本家本位政治を強行しようとする以上、生きるための最後基本的人権を主張する勤労大衆の反撃を受けることを覚悟しなければならないのであります。これを予想してか、政府は労働三法の改悪を更に拡げ、一部スト権の禁止をもくろんでいるのであります。義務教育費国庫負担の美名の下に、政府教育反動的画一化を企み、或いは教職員の民主的労組断圧の具に供しようとしている。我々はかかる一連の断圧政策を糾弾せざるを得ないのであります。こういう政治やり方は、例を世界の歴史に求めるならば、西の暴君ネロに、東は殷の紂王に吉田総理を比すべきでありましよう。  以上の諸点に関し政府所信はつきりとさせて頂きたいのであります。私は国民の前に政府がその所信を明確にされんことを切望して降壇するものであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  自由党内紛について私の責任をということでございますが、いわゆる自由党内紛なるものが幹事長選挙であるならば、昨日無事終了いたしました。(拍手、「おめでとう」と呼ぶ者あり)又、政党内において内紛と言われるが、内紛は、議論内紛と言われるならば、これは当然であります。政党政治である以上は党内において議論はますます盛んなるがいいのであります。(拍手)その議論たびごとにこれを内紛言つて総裁なり或いは委員長なりが責任をとられるということならば、一々総裁委員長は交替しなければならぬことになるのであります。これは余りに不自由なことであると私は考える。(「そうなつてもいいよ」と呼ぶ者あり)  次に、新大統領の就任後、アメリカ外交はどうなるかというお尋ねでありますが、これは大統領演説にも明らかになつております通り自由諸国との間の団結協力をますます強固にしたい、こういうことであり、従つて日本としては自由諸国との間に協力関係に入りたい、互いに協力して世界の自由を守りたいという、この方針に変りないのでありますから、新大統領外交政策には日本としては協力いたしたいと考えます。但し、そのために日本に再軍備を強いるとか、或いは世界戦争ではありますまいが、よその国にまで兵隊を出せなどというような注文があろうとは、私は考えられません。日本憲法においては軍備を持つことを禁じられておるのでありますから、憲法にないようなことを要求せられ、又これを受諾するがごときことは、独立国としていたしがたいのであります。(「憲法にないことをやつているじやないか」と呼ぶ者あり)  国連加入については、これは昨日外務大臣演説の中に詳細述べておりますから、これに譲ります。  再軍備について、或いは軍備について、ダレス氏と私との間に密約があるというお話でありますが、これは本人の私が申します。断じてないのであります。(拍手従つて軍備を強要せられることもなし、国民が知らず知らずの間に軍備をするといたすならば、これはむしろ政府責任ではなくて、立法諸機関、即ち国会がだまされたというようなことは、現に私はそういうことのあり得べからざることを信ずるのであります。諸君におかれて十分政府施策について監視せられたならば、国民が知らない間に軍備ができ上るというようなことは断じてないはずであります。(拍手、「やつているじやないか」と呼ぶ者あり)  次に防衛費でありますが、防衛費は今年は減らしております。又保安隊は十一万の隊員の数を殖やさないことに決しております。従つて防衛費は減らしております。  次に国費等濫費せられるとか涜職があるというようなことでありますが、そのために会計検査院があつて、そして濫費慎しみ若しくは汚職を監督いたしております。その結果、政府に対してこういう事件があると言つて、こういうものが国費濫費である。或いは汚職である。政府は法に従つて断然処置いたします。今日まで問題になつておりません。又政府としては、国費使い方については、各機関各省において十分注意をいたすように、しばしば私といたしましても、又閣議においても、各省大臣注意を促しており、各省大臣もその省々において予算使い方については厳重なる監督をいたしているのであります。  次に国民投票法ですが、法案は、これは憲法改正の用意ではないかというようなお尋ねでありますが、憲法改正はする必要がないと考えておりますから、憲法改正は只今考えておりません。ただ国民投票法案なるものについては、事務当局事務当局として研究いたしているだけであります。  その他の問題については主管大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣向井忠晴登壇拍手
  6. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) お答えをいたします。  特別減税公債につきましては、昨日の財政演説で申上げました通り、公募可能な程度にとどめているのであつて民間資金を吸収して有効な産業投資に充てる、そういうものでございますから、それによつてインフレになる懸念はない。又その発行を取りやめるつもりはございません。(「なぜ反対したのだ」と呼ぶ者あり)  次に、今回の昭和二十八年度予算には、今日において見込み得る要素はすべて織込み済みでありまして、年間を通ずる計画でございますから、予算補正の必要はないと存じております。(「いつでも言つている」と呼ぶ者あり)  次に、防衛費のことにつきましては、総理大臣からも御返事がございましたが、我が国独立国として行くために、治安の確保及び防衛のために最小限の必要な経費は要りますけれども、この種の経費において本年度に比べましては三百五十億円を減少し、その減少分経済力の増強と民生の安定に振向けている次第であります。(「保安庁費が殖えているぞ」と呼ぶ者あり)  公務員給与につきましては、昨年末の給与改訂ベースによつて予算編成いたしております。(「変えろと書いてあるじやないか」と呼ぶ者あり)  今回の税制改正に当りましては、所得税軽減、特に低額所得者負担軽減に重点を置いておりますので、米価運賃等の値上りの生計費に及ぼす影響は、この減税によつて十分カバーできているので、実質的にも軽減になつております。(「実情をよく見て下さい」と呼ぶ者あり)  以上私の御返事いたすことはこれだけであります。(拍手)    〔国務大臣戸塚九一郎登壇拍手
  7. 戸塚九一郎

    国務大臣戸塚九一郎君) 最低賃金制につきましては、お話のごとく、目下、労、使、公益三者の代表によつて構成されておりまする中央賃金審議会に、その制度化について審議を煩わしておるのであります。この審議会の答申を待つて、これが制度化についてはなお一層検討いたしたいと考えております。  それから失業対策につきましては、失業対策審議会の具申した御意見につきましては、政府はこれを十分尊重いたしておるつもりでありまして、就労者の賃金は昨年一応その引上げをいたしました。又来年度おいては月間の就労日数或いは資材費等について改善を行うことにいたしております。来年度の失業対策事業費は本年度予算額八十億の約二割増、九十五億円を計上いたして提出してあります。なお日雇労働者に対する健康保険制度の創設に関する法案も提案される運びになつておりまするし、又主要な都市においてこれらの者に対して福祉施設を設置することといたしておるのであります。(「そんなのはごまかしだよ」「全部出しなさい」と呼ぶ者あり)  それからスト禁止というのでありましたが、政府といたしましては、昨冬の電産、炭労の争議が、国民経済及び国民生活に非常に大きな損害と脅威を与えたことに鑑みまして、公共の福祉を擁護するための最小限の措置を講じたいと考えておるものであります。(「賃金はどうするんだ」と呼ぶ者あり)    〔議長退席、副議長着席〕 広範囲に亘つて争議行為の制限を意図するものでは、ございません。なお内容については目下準備中でございます。(拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇拍手〕    〔「今度幹事長にしてやるぞ」「やめるのか、農林大臣を」と呼ぶ者あり〕
  8. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) 食糧増産のために米の生産者価格を増したらどうかというお尋ねでございますが、単に食糧の増産は価格のみでは満足な結果が得られないのであります。さような意味から言いまして、現在のところ二重価格制を採用する意思を持つておりません。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇拍手
  9. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 中小企業に対する金融について、運営上、中以上のものに傾いて零細企業に対して差別設けておるではないか、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)かようなお話がございましたが、さような差別待遇をいたしておりません。特に次の二点についてはその金融の円滑化を図つております。その一つは国民金融公庫等の強化による零細企業に対する金融の円滑化でありまして、それらに対する金額の増額等はよく御承知の通りであります。その二は、中小企業者の相互金融機関に対しまする信用金庫、相互銀行等の、従来中小企業金融に主力を注いで来たものを強力に活用することによつて、又信用保証協会及び中小企業信用保険制度の充実等によりまして、零細企業への金融の円滑化を図ることにいたしております。  中小企業金融のために新たに公庫を作る理由如何とのお話もございましたが、御承知のごとく商工中金は協同組合の金融機関としての性格を持つておりまするが、中小企業者の中には未組織のものも相当多い、又設備並びに長期運転資金を中金では供給し得ない現状にありまするので、これらに対する金融の円滑を図るがために、こういつた制度を設けて財政資金を投入することとした次第であります。なお公庫を設けました場合といえども、商工中金を通ずる組合金融の円滑を図り、協同組合の育成強化を促進する方針に何ら変りはございません。(拍手)    〔国務大臣山縣勝見君登壇拍手
  10. 山縣勝見

    国務大臣(山縣勝見君) お答え申上げます。  社会保障制度審議会の答申を全面的に直ちに政府は採用するかというお尋ねでございまするが、憲法の条章に基いて審議会は二回に亘つて答申をいたしておるのであります。これらを直ちに採用いたしますることにつきましては、たびたび申上げましたが国家財政との関係もございます。これは只今カニエ君のお話のように、本年度の予算編成に当りましても憤りを感ぜられるくらい困難な予算編成であつたのであります。その中で今回審議会の答申にあります先ず社会保険の面でありまするが、社会保険の面におきましては、皆さんの要望もありまするし、国会の要望もありまして、多年困難でありました国民健康保険に対しまする給付に対する国庫負担を実現いたしたのであります。なお又健康保険の範囲の拡大をいたしますとかその他の措置をとりましたのであります。  なお第二の国庫扶助の点でありまするが、この点につきましては今回保護の基準を七千二百円から八千円に引上げたのであります。なお対象人員も現に二百万を突破いたしたのであります。  なお第三の公衆衛生の点、なお又医療の点でありますが、これは審議会の答申しております十九万床に対しましては五カ年計画で着々準備を進めておるのであります。本年度予算におきましては一万床の予算を要求いたしておるのであります。なお又多年これも実現をいたしませんでしたアフターケアの措置も今度とることになつたのであります。なお又審議会では十万人単位で一保健所を設置することを要望いたしておりますが、これも実現をいたしております。  なお第四の社会福祉の面でありますが、これ又前国会において各位の御提案によつて画期的な母子対策の法律が通過いたしまして、本年度の予算におきましては、母子対策費、児童対策費は画期的な増額をいたしておるのでありますから、着々国家財政の調和を図りまして政府は最善の努力を図りたいと考えておるのであります。    〔カニエ邦彦君発言の許可を求む〕
  11. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 何ですか。
  12. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 再質問。
  13. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 三分残つております。どうぞその範囲において。    〔カニエ邦彦登壇拍手
  14. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 只今のこの総理大臣の御答弁に対しまして、私のお伺いしておるのは自由党内紛責任言つておるのではございません。私は自由党内紛のために閣僚がいわゆるごたごたいたしまして、国政に大きな重大な渋滞を来たしておることのその責任政府に対して問うておるのであります。(拍手)重ねて明確な御答弁を願いたいと思います。  それから大蔵大臣に対しましては、大蔵大臣貯蓄公債発行国民の余力において賄えるというお話でありましたが、恐らく今の一体国民大衆の中で、中小企業なのか、或いは又勤労層であるのか、農民層であるのか、一体どの層にそのようないわゆる自己の資金を長期間政府に貸すだけの金があるのか、あり余つておるのか、その点について非常に私は不可解に堪えぬのであります。私は今のいわゆる国の内部の状態から見まして、中小企業は行詰り、農村は殆んど百姓一揆の一歩手前まで追い詰められている現状において、果してどこにあるのか、あるとすればこの点にあるのだということを一つ御明確にお答えを願いたいと思います。以上。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  先ほど申した私の答弁で尽きておると考えますが、先ほど申した通り、いわゆる内紛なるものは、昨日挙党一致、何らの議論なくして大会においてきまつたのであります。若し内紛国民に悪い影響を生じたとするならば、昨日の大会がより以上国民に安定感を与えたろうと思います。(笑声)又内紛は、先ほど申した通り議論であります。(拍手政党内において議論があるのは当然であります。議論があるからと言つて、それを直ちに内紛と言うなら、内紛ますます可なりと私考えます。(拍手)    〔国務大臣向井忠晴登壇拍手
  16. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 只今の御質問にお答えいたしますが、特別減税公債というものが主でございますが、これは只今おつしやつたような、大衆からというのではないのでございますが、(「それなら誰から、そこのところをはつきり言つてみい、はつきり言えんだろう」と呼ぶ者あり)減税という意味で、税を返す……、そういう相手が買いに来るのを目がけておるのでございますが、(「どこに減税するのだ」「誰に減税するのだ、はつきりせい」と呼ぶ者あり)それは、そのことは、国民の貯蓄というものが只今までに、昨日も申上げましたが、非常に殖えておる、それを、(「誰が貯金をしたのだ」と呼ぶ者あり)それを以て、もつと勉強してもらつて貯蓄をして、そうしてそれで公債を買つてもらおう、そういう趣旨でございます。(「何だ、わけがわからない」と呼ぶ者あり、笑声拍手)     —————————————
  17. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 岡本愛祐君。    〔岡太愛祐君登壇拍手
  18. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私は緑風会の第一陣としまして、吉田内閣総理大臣並びに関係各大臣に対し、現下重要の諸問題につき質問をいたしたいと存じます。  我が国は昨年四月独立を回復し、自主独往、国際社会に乗り出して参つたのでありますが、独立後、国際情勢も国内事情も依然として多難を極めているのであります。即ち、朝鮮事変の妥結はいつ成るとも見込が立たず、民主主義国家群と共産主義国家群との対立は更に激化するものと存ぜられます。封じ込め政策から押し戻し政策に積極化せんとするアイゼンハワー大統領外交政策は、ソ連及びその衛星国を刺戟して、国内の浄化結束のため血の粛清工作によつて鋭く対立し、両陣営間に、原子爆弾、水素爆弾その他の新鋭武器の集積競争が果てしなく続く現状であり、両勢力の衝突地帯に置かれている日本の環境は誠に容易ならざるものがあるのであります。更に国内的には、四つの小島に八千五百万人の大人口を擁し、資源も少く、国民の生きる途は、主として輸入原料等による工業と輸出貿易に依存せざるを得ない我が国において、重要産業のストライキは続出し、暴力革命の企ても跡を絶たない状況にあります。ただ国民の自覚と結束と不断の努力とが、この外交政治、経済上の苦況を切り抜けて、真の独立を完成するのでありますが、この施策中心であるべき吉田自由党内閣は、果してこの重責に堪え得る実力と責任感を持つておられるのであるか。私は甚だ憂慮に堪えないのであります。  吉田総理大臣は先に本会議場において、独立後最初の総選挙に当り、国民の大多数が再び自由党を支持し、四たび国政を担当せられたことを誇りとせられ、これ全く国民の大多数が従来の自由党内閣施策を是認したものとし、この絶対多数の勢力を基礎としてますます政局安定に努めたいと言明せられたのであります。然るに政府与党たる自由党内部においては当初から内紛を生じ、とどまるところを知らない現状であるのは、甚だ遺憾であります。これでは、吉田首相が自由党の絶対多数誇示し、その基礎によつて政局の安定を図らんとする考え方が根底から覆えされるのであつて、只今首相の答弁もありましたが、自由党を支持した国民の期待を裏切ることが多大であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  自由党内紛によつて吉田総理大臣が政局担当の自信を失い、総辞職されるのであればとにかく、党内不統一による内紛処理を真の原因として再び衆議院の解散を試みんとするのであれば、非立憲も甚だしいと言わざるを得ないのであります。解散は衆議院議員の死命を制するものであり、濫用すべきものではないのは勿論であります。憲法第七条は首相に対し無制限の衆議院解散権を認めたものではなく、国政遂行上止むを得ないときにのみ限定さるべきであり民主主義に反する解散は到底許されないのであります。かかる場合に際会して、首相は果して解散を断行する法律的政治的な根拠がありとせられるのであるか、承わりたいのであります。或いは吉田首相は、義務教育費全額国庫負担、基幹産業のストライキ制限、警察法改正、中央行政機構、地方制度の根本的改革、その他論議が多くて容易に成立を期待し得ない重要法案を積極的に国会に提案して、野党と民同派等の反対を喚び起し、それを理由として再び解散する口実を作らんとしているとも言われていたのでありますが、かくのごとくでは徒らに政権に恋々として民主政治を破壊するものと言われても仕方がないのであります。首相の率直なる御所信お尋ねいたします。(「緑風会はどういう態度をとるかな」と呼ぶ者あり)  吉田総理大臣は、昨日、「独立日本としては、自由諸国との提携、なかんずく対米親善関係を一段と緊密にし、力を国連協力にいたし、以て世界平和に貢献いたしたい」と言つておられるのであります。概括的な方針としては私は賛成であります。岡崎外相の述べられたことく、独立回復後の我が国の進路として共産主義国家群の陳営に参加する手はもとよりないのであります。又、私も、民主共産両陣営のいずれにも参加せず、中立の立場をとる方針にも反対であります。中立国となつても、しばしば強国間の戦争によつて踏みにじられる例が多いのであり、日本自身も日ソ不可侵条約をソ連自身によつて公然と蹂躪されたにがい経験を持つております。而も日本の戦略的要衝たる地位と水準の高い工業力は、両陣営のどちらからも最も重要視され、両陣営の衝突の際は日本は天王山的地位を占めるものでありますから、中立を保つことは至難であります。又、日本の中立は、孤立を意味し、平和攻勢に出でるソ連戦術の各個撃破の好対象であります。中立を固持し、一旦侵略を受けて後悔しても取返しがつかないのであります。故に我が国としては、志を同じうする民主主義国家群に参加し、やがては国連に参加して、共に世界の平和と安全に寄与する方針をとるほかはないと信ずるものであります。併しこのことは、我が国が民主主義陣営の東方における最前線に立つことを意味し、甚だしく困難な地位に立つのでありますが、これはすでに一昨年締結した平和条約と日米安全保障条約とによつて、(「戦争条約だろう」と呼ぶ者あり)日本の進路を決定したものであり、覚悟はすでにできているのであります。或いはソ連と中共が、中ソ友好同盟により、第三次世界大戦の危険を冒して早期決戦に出で、人民解放を名目として、民主陣営の最前線たる日本に侵入を企てる虞れがあるかも知れません。最近、外電は、ソ連が北シベリア、樺太等における空軍基地の整備を終え、北海道ではしばしば領空侵犯が行われていると報じ、一月二十七日、ダレス国務長官は、「ソ連機の北海道上空侵犯は共産主義の日本に対する脅威の一部を示すものであり、若しソ連及び中共が偉大な工業力を持つ日本をその統制下に置くならば、彼らはそれを利用して強大にアジア人を武装させるであろう。若しこのことが起れば、我々にとつて極めて不幸なことになる」と述べ、日本を民主主義陣営の反共国として強化しようとする強い決意を示しているのであります。(「再軍備論か」と呼ぶ者あり)而して一月十三日、米駐留軍側の要請により、政府は我が領空の侵犯に関してソ連と解せられる某国の不法行為について声明を発し、今後なお繰返す場合は必要と認める有効適切な手段をとる旨警告を発したのでありますが、武力を持たぬ我が国として、領空侵犯に対する自衛の措置を駐留米軍に期待するほかないのが現状であります。米軍の駐留する間は米軍が外敵を防衛してくれますが、米軍が永久に日本にとどまることは我が国も迷惑であり、日米安全保障条約についてみても不可能であります。而も国内の暴力革命は、外国軍が人民解放の名目の下に侵入すると同時に起ることが常識とされております。(「質問をしろ、質問はどうした」と呼ぶ者あり)我々国民はこの重大な情勢を深く認識し、国民一致の努力と政府の適切な施策とによつて独立国としての実力を国民経済力の上に置いて、又同時に自衛面において急速に高めて行く必要があると信じます。(「いよいよ出たね」「再軍備賛成論者」と呼ぶ者あり)私は、国民生活水準を高めつつ、成るべく速かに自衛戦力を培養し保持する方策をとり、その自衛戦力が外敵の侵入を半月乃至一カ月防衛し得る程度に至れば、米軍の退去を求めるべきであると思います。(「ほう」と呼ぶ者あり)その程度の防衛力を保持するときは、連合国の来援と相待つて国防の目的が達し得るのであります。吉田首相並びに木村保安庁長官は、これらの点につき如何に認識され、如何に対処されるか、お伺いいたしたい。  去る一月二十日、アイゼンハワー大統領は九原則を内外に宣明し、その中に、戦争を避け、侵略撃破の力を発展せしめることを第一の仕事とすると言い、又国連の枠内で地域的安全保障の体制を強化すると言い、又、国連を言葉の上だけではなく実際の勢力に作り上げるべく努力すると言つているのであります。ダレス新国務長官は、先に、「日米、米比等の三安全保障条約よりも、もつと大きな統一と力を築き上げ、もつと適切な安全保障機構を作り上げる方向に進むべきである」と述べているのであります。吉田総理大臣は、アイゼンハワー大統領とダレス国務長官の就任に関し、日米関係の将来にも新らしい希望を感ぜしめるものであると述べられましたが、やがて米国新共和党政府日本に自衛戦力の造成を強く要望することは、この情勢下から考えても明らかであると存じます。政府は従来のその都度外交でなく、この際、毅然たる根本方針を立てるべきであります。(「御催促ですか」と呼ぶ者あり)  更に、我が国が国際連合に加入すれば、その集団安全保障方式に従わなければならないのが当然の帰結であります。即ち、我が国が侵略を受けたときは他国の援助を受け、他国が侵略を受けたときは我が国が助けねばならないのであります。西太平洋において自衛の最も潜在力のある国の一つは我が国であり、その実力のある我が国だけが国連内にあつて外国を救助する義務を免かれることは、共同責任の上で不可能であると存じます。我が国は先に国連への加入を申入れたのであり、それは不幸にしてソ連の拒否権の発動となり、失敗に帰したのでありますが、国連加入を申し出る以上は、究極は集団保障方式に加わるのであり、ひいて我が国も他国を助け得る戦力を蓄えねばならない結論になるのであります。  吉田総理大臣は、従来しばしば「再軍備をしない。現在の状態が続く限りは軍備はしない。従つて憲法改正の必要はない。いつから再軍備を始めるかという時期については考えていない」と答えられるのを例といたしますが、恐らく総理大臣の意味は、従前日本が保有していた他国を侵略するに足るような軍備は再びしないという意味であると付度されるのであり、自衛のための戦力は、日本国民経済力の充実を待ち、生活水準を維持し得る限度において成るべく速かにこれを培養し、保持し、これを以て他国が侵略せられたときは支援し、集団保障の責を全うすべきであると考えておられるものと思うのでありますが、如何ですか。(「この前の催促か」と呼ぶ者あり、笑声)集団防衛日本責任についての総理大臣及び外務大臣の真意は果して如何であるか、お伺いいたします。(「柳の下にどじようか」と呼ぶ者あり)現に木村保安庁長官は、一月十八日、西宮市において、日本防衛は諸外国との集団防衛に依存しなくてはならぬ旨を語つておられるのであります。  総理大臣は、第十三回国会予算委員会において私の質問に対し、(「そうでした」と呼ぶ者あり)初めは自衛のためには戦力を持つことを憲法は禁じてない旨の答弁をされたのであります。後にこれを訂正して、「たとえ自衛のためでも戦力を持つことはいわゆる再軍備であつて、この場合には憲法の改正を要するということを私はここに改めて断定する」と答弁せられたのであります。現在でもその通り考えておられるのか、お伺いをいたします。総理大臣は、再軍備即ち他国を侵略し得るごとき従来の軍備はしないが、自衛のため、集団安全保障のための戦力は早晩保持するのであり、これは現在憲法上禁じているから、戦力を持つに際しては、国民投票により憲法を改正する措置を要すると考えておられるか。明確な御答弁を承わりたい。最近の総理大臣の御答弁を詳細に検討してみますると、この点を再確認しておく必要があるのであります。  吉田首相は又、先に、「フリゲート艦を持ち、又はヘリコプターを持つことは、パトロール用のものであるから戦力ではない。これを以て直ちに軍隊と申すことはできない」と言われ、岡崎外務大臣は、「軍備というものは相対的のものであり、従来軍隊であつても、今同じものが軍隊とは言えない。又他国が軍隊として持つていると同様のものを日本が持てば軍隊となるかというと、必ずしもそうではない」と補足しておられるのでありますが、これは非常な重大な答弁であります。憲法第九条第二項に言う「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」という重大な条項が、国民大多数の常識に反して、政府の一方的解釈で、殊に相対的というような言葉で左右されるのであるならば、これより危険なこはないのであります。  木村国務大臣は従来戦力を定義して、「戦争を有効適切に遂行し得る装備と編成を持つ力」であるとし、「日本の治安確保のために自衛力は持つてよろしいが、戦力に近づくべきようなものは成るべく日本は差控えるべきものである」と答弁されているのであります。然らば、自衛力がどの程度に達すれば「戦争を有効適切に遂行し得る装備と編成を持つ力」になるかは、一般国民の常識的判断に待つべきものであると思うのであります。政府国民の大多数の常識に反して、その都度、言を左右にし、勝手に断定を下し得ないものと信ずるのであります。  総理大臣は又「国力の回復に伴つて自衛力の漸増を図るべきであるが、現在の段階は専ら物心両面における国力の充実に努力を傾くべき時期である」と言われるのであります。而して二十八年度予算案においても保安庁経費八百三十億円を投じ、保安隊、海上警備隊の増強に充当し、即ちその程度において自衛力は増強されるのであります。そこで、自衛力の増強を続けるときは、遂に戦力に到達するのは当然であります。自衛力漸増の名の下に国民の目を塞いで、着々と戦力を作り上げつつあるという印象を国民に与えるのでは、断じて不可であります。最近、木村保安庁長官に同行して保安隊を視察に現地に出かけて行つた新聞記者がありますが、その新聞記者は、姫路の特科連隊の榴弾砲、高射機関砲、車両等の装備を見て、これだけでも明らかに砲兵部隊であるとし、「保安隊は軍隊にあらずと断定する図太い感覚を持つ政治家の神経を疑い、国会答弁における詭弁の苦しさを再認識した」と書いているのであります。総理大臣は先ほど軍備をしておるのでないことは国会が認めていると言われたのでありますが、かくのごとく自衛力を増加して参れば戦力にたり、国会も認めなくなるのであります。政府は戦力となる前に速かに憲法を改正して、自衛戦力を保持することの可否を国民投票に問うべき段階にすでに立ち至つていると私は信ずるのであります。  吉田内閣総理大臣は第十三回国会予算委員会において私の問いに答えて、日本経済力がこれを許し、又外界の事情がこれを許すに至れば、戦力を持つことを考えざるを得ないのであるが、その場合には憲法従つて国民投票に聞き、憲法改正をするが、差当り未だその時期に至らない。併しその時期に至れば成るべく速かにやるということも承知いたします」と答えておられます。而してすでにその時期が来たのではないか。かくしてこそ政府は民主憲法を遵守し、政府に対する国民信頼を繋ぐゆえんであり、ひいては優秀な青年が進んで国の防衛に挺身し、自衛力の面目を一新し得るものと信ずるのであります。  なお、ここに附言いたしておきたいことは、米国が新政権に交替したこの際、吉田総理大臣アイゼンハワー大統領に対し、先に私が首相に提言したごとく、米空軍が原子爆弾攻撃の基地として日本の領土を使用することを拒絶する旨の断固たる申入れをいれをされることが絶対に必要であると存じます。アイゼンハワー大統領が朝鮮事変の解決促進のため日本を原子爆弾の基地として使用するときは、外敵も又報復的に基地附近に対して原子爆弾攻撃を行う正当の理由を生ずるからであります。総理大臣所信お尋ねいたします。又、米軍我が国を基地として満州又は支那本土を爆撃することがあるときは、必ず事前に我が方に協議するよう確約すべきであります。この点については、日米行政協定締結の際、米国側と協議済みであると岡崎外務大臣は曾つて私に答えておられますが、果して然りであるか、確認いたしておきます。  我々は原子爆弾攻撃をこうむり、原子爆弾の恐るべき被害を身を以て体験している唯一の国民として、自衛につき万全の用意を整えつつも、民主、共産両陣営の冷たい戦争が第三次世界大戦に発展し、原子爆弾戦に突入して、日本国民が、否、世界人類が破滅に立ち至らないよう、最大の努力をなすべきであります。(「針のめどを通るより困難だ」と呼ぶ者あり)  次に国内治安の現況と政府の治安対策等についてお尋ねいたします。先に総理大臣は、「国内における一部破壊分子による暴力主義的活動は、近時表面的にはややその影を潜めておるかに見えるが、その基本的な企図には毫も変化はない。国際情勢との関係を保ちつつ、将来一層周到且つ巧妙な方法によつて自由社界を崩壊せしめんとする行動に出る危険性は依然として頗る大である」と述べておられるのであります。一月十五日発行日本週報は、日共の第二十二中委軍事報告書なるものを掲載し、その報告書には、「武装闘争の正当性を主張し、反動勢力の暴力と闘う力を労働者農民の中に組織し、これを基礎に国民の自由な政治活動を保障する遊撃隊の行動を展開することが必要である」と言い、「武装は正義の手段である。武器の製造、獲得、管理を行え。公然たる武装活動の時期は近い。今日の段階は武装闘争の準備期である。国民総抵抗の闘争を徹底的に強化すべき時期である」と説いているのであります。果してかかる危険な情勢が現実的に存在するのでありますか。若し日本週報に載せる報告書が真実なりとすれば、日共の行為は破壊活動防止法第四条にいう「暴力主義的破壊活動」に該当するに至るのではないか。犬養法務大臣の詳細なる御説明とお答えをお願いいたします。  国内治安維持の第一線は警察力であります。吉田総理大臣は昨日の演説において、「占領中の施策中、行過ぎの感あるものに対して、この際これを是正するのは当然の措置である」として、その一として現行警察制度の改革を取上げ、国警、自警の区別は往々にして両者の連絡を欠き、警察目的の達成に不便を来たすから、その欠陥を是正し、旧弊を戒めると共に、能率的な警察制度を確立する。」と述べられましたが、具体的に如何なる構想を得られたか、お答えを得たい。最近、国家公安委員及び都道府県公安委員の連合会においては、市町村の自治体警察制度を廃止して警察を一木とし、その単位を都道府県ごととする。公安委員会は、中央、地方の二本建として、主として中央公安委員会は行政管理を、地方公安委員会は運営管理をなし、経費は大部分を国家負担とし、一部を都道府県の負担とする等を議決したようであり、犬養法務大臣も同意見であると新聞紙は報じておりますが、果してそうでありますか。すでに全国市長会、自治体警察側では、この改正に絶対反対を表明しておるのであります。私は、警察法制定の当時から、民主警察の創設、中央集権的国家警察の廃棄の根本方針には賛成でありましたが、併し自治警察が果して犯罪検挙の面において又治安維持の上において適する制度であるかどうかを疑つていたのであります。人口十万以下の市町村の自治体警察は廃止して、国家警察に統合すべきであるということを提唱したのであります。一昨年国会から派遣されて、米国各州を視察し、その警察制度、殊に市町村自治体警察を調査いたしましたる際、ニユーヨーク州シラキユース大学のスベンサー・パロツト博士は、「米国においても小自治体警察はうまく運営されていない、小自治体は米国にあつても完全な警察を維持することは困難であつて、連邦警察、州警察の援助を借りて漸くその職務をやつているに過ぎない、小自治体警察の犯罪の捜査検挙の機能は零である、現在我々が不備であると思う制度を日本に強制したことは絶対に不可であつた」と率直に話してくれたのであります。又ニユーヨーク州のローソン警視は、「政治と警察を混同しては大変である、党派の利益を図るものに警察を持たせることほど危険なものはない、米国では遺憾ながら政治と警察とが混雑している」(「日本は」と呼ぶ者あり)「日本がこれを分離することができれば、米国の警察より数歩前進したものとなる」と忠言してくれました。米国の自治体警察が必ずしも民主警察の実を挙げているのではないのであり、そこにも無知と堕落があるのを知つたのであります。私は、新憲法下の警察は飽くまで民主化の線に沿い、警察国家の弊害を除去するに努めると共に、如何によくこれを能率化するかを警察法改正の眼目とせられたいと思うのであります。警察制度改正に際し、これらの点につき如何考えられるか。吉田首相及び犬養法相の御抱負を伺いたい。  次に、地方自治の確立と地方制度の改革について吉田首相の信念をお尋ねしたい。民主政治の基盤は地方自治の確立にあります。それ故に、憲法は特に地方自治の章を設けて地方自治の原則を掲げ、国民に地方自治を保障しているのであります。即ち、憲法の定める地方自治の原則は、憲法根本原則である国民主権に基く民主的体制を地方行政の部面に取入れると共に、これによつて国の民主的政治体制の基礎を培養せんとするものであります。その原則の一つに、地方公共団体の長は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙する」。とあるのであります。吉田自由党内閣の従来の施政の状況を見るに、この地方自治の確立について他の政務よりは関心が薄いのではないかと疑わざるを得ないのであります。すでに政府乃至自由党は、都道府県知事の公選を廃止して政府の任命制とすることを唱道し、人心を動揺せしめたのであります。而して政府は第十三回国会において、その手始めとして、東京都の区長の公選制を改めて都知事の任命制をとらんとしたのでありますが、国会の修正により、区議会が知事の同意を得てこれを選任する制度となつたのであります。吉田首相は昨日、地方制度については、「中央地方の有機的関係を密にすることを主旨とし、目下地方制度調査会に諮問中であり、その答申を待つて改正を待つて改正を実施するつもりである」と述べられたのでありますが、都道府県知事については、その公選制を改め、政府の任命制とすることを、中央地方の有機的関係を密にする上において望ましいと考えられるのであるか、お伺いいたします。而して知事の公選制廃止は、即ち現在憲法上の地方公共団体である都道府県の性格を根本的に改め、憲法上の地方公共団体でなくするよう法律の改正を要するのであり、そうでなければ前に述べた憲法の定める地方自治の原則に反することとなるのでありまして、容易ならざる問題であります。吉田総理大臣はこの法理を御認識の上お答えをお願いいたします。  又、先にシヤウプ使節団の勧告に基いて設置した地方行政調査委員会議は、地方自治を基底とする市町村、都道府県及び国、相互間の事務の配分の調整等に関する計画につき調査立案するため、衆智を集めて検討し、一年余の日子を費して結論を得、同会議設置法に基き、行政事務再配分に関する勧告内閣を経由して国会勧告して参りました。同設置法第四条には「内閣は、前条の計画に関する法律案の国会提出に関しては、会議勧告を尊重しなければならない。」と義務ずけているのであります。ところが、その後、政府はややもすればこの勧告を無視し、これを尊重するの実を示さないのであります。今回政府勧告の趣旨に反して、突如義務教育費の全額国庫負担方針決定して、義務教育を地方公共団体の事務から国家事務に変更し、教員を市町村公務員から国家公務員に変更せんとしているのであります。而も政府は、地方制度を根本的に再検討するため、各界代表を網羅して設けた地方制度調査会の意見を聞く以前に義務教育費全額国庫負担方針決定したのであり、調査会が反対の答申をしても、それを参考意見とするにとどめて、その方針を変更しないというのであります。而も調査会が責任担当大臣として岡野文部大臣の出席を求めたにもかかわらず、同大臣は言を左右にして出席しなかつたのであります。地方行政調査委員会議勧告や地方制度調査会の答申を無視し、地方行政事務の連関性を考慮することなしに地方自治の重大問題を決せんとする政府は、果して地方自治を確立し民主政治を徹底する熱意を有せられるや否や、疑わざるを得ません。(「その通り」と呼ぶ者あり)地方自治に対する吉田首相の信念をお尋ねするゆえんであります。  なお、義務教育費の全額国庫負担に関し、吉田首相、岡野文部大臣向井大蔵大臣、本多国務大臣及び緒方官房長官に次の諸点お尋ねいたします。  一、政府は、地方行政調査委員会議勧告をどの程度尊重するか。又地方制度調査会を諮問機関としてどの程度尊重するか。  二、同会議勧告には、「中学校及び小学校の教育に関する事務は市町村の責任とし、その経費は市町村の負担とする」とあるのを、政府は全面的に否定し、義務教育を国家事務とし、教職員を国家公務員とし、教員の給与を全額国庫負担とせんとするその根拠はどこにあるか。昨日吉田首相は、道義の高揚は究極において教育の作振に待つのほかなしとされ、今回の施策により義務教育の面目の一新を信ずるものであると述べられた点は、誠に重大な言明であります。地方自治体が義務教育を担当しては教育の作振はなく、道義の高揚はないと言うに等しいのであります。吉田総理大臣、岡野文部大臣の詳細な弁明を求めるゆえんであります。  三、義務教育に従事する教員給を全額国庫負担とすることは、何故必然的に教員を国家公務員に変更する根拠となるのであるか。義務教育に要する経費は教員給だけではないのでありまして、校舎その他の施設等は地方公共団体の支弁に属するのであります。この変更は、専ら日教組の選挙運動を封じて、その国会進出を阻まんとする自由党の苦肉の策であるとの非難がありますが、果してそうであるか、お尋ねいたします。  四、大蔵当局は二十八年度予算案原案において、当初地方財政平衡交付金の総額を千七百二十億と計上したのであるが、自由党が突如義務教育費の全額国庫負担方針を決したため俄かに変更して、提出予算にはこれを八百倍とし、差引九百二十億円を義務教育費として計上したのであります。それが果して妥当であるかどうか甚だ疑問でありまして、現に自治庁当局は大いにこれに抗議したのであります。向井大蔵大臣は昨日、「地方財政については今後地方制度全般の問題と関連して根本的に検討を要すると認められるので、地方制度調査会等の審議を待つて急速にこれが改善を図りたい」と述べられましたが、差当り義務教育費の全額国庫負担により、東京都、大阪府等、従来平衡交付金の配付を受けないものも義務教育費の全額を受け、又愛知、兵庫、福岡等の六府県のごとく、従来の交付金よりも多額の義務教育費の額を受けるものを生ずるのでありまして、その合計額は相当多額に上りますが、そのため財政窮乏にあえぐ他の府県及び市町村が受ける平衡交付金額が当初の予定よりも減少することはないかどうか。私は減少するのじやないかと思うのであります。若し減少するとすれば、従来とも平衡交付金の増額を熱望し来たつた府県市町村に不利を与えるのでありまして、甚だ不都合であります。この点を篤と御説明を願いたいと思います。  五、右による超過金額の財源はどこに求めるのであるか。遊興飲食税及び入場税を都道府県より取上げて国税とするときは、都道府県税源は何を代償とするか。又暫定措置としてこれら富裕な都府県には国庫から支出しないと報ぜられておりますが、どうなさる御方針であるか承わりたい。  六、以上のごとき複雑で且つ困難な措置を伴う義務教育費の全額国庫負相を、自治庁及び大蔵省側の反対を顧みず、何故に地方制度調査会の答申を待たずして突如閣議で決定したか。    〔副議長退席、議長着席〕  七、岡野文部大臣が地方自治庁長官であつた当時には、現行の義務教育費半額国庫負担の問題に対してすら必ずしも賛成せられなかつたのであります。それは地方行政委員会に席を置く私のよく知つているところであります。然るに文部大臣となられるや、身を翻えして全額国庫負担を率先推進せられるというのは不可解であります。その政治的信念をお伺いいたします。  以上を以て私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  第一のお尋ねは、自由党内紛によつて解散をするのではないかというようなお尋ねでありますが、これはいたしません。考えてもおりません。  又自衛戦力についていろいろ御議論がありましたが、やがて自衛戦力の必要があるであろう、殊に新米国政府から自衛戦力の要求が出て来るであろう、又国連加入の場合は同様な要求が出はしないかというようなお尋ねでありますが、現在のところは、政府としては自衛戦力ということは考えておりません。現在の保安隊等を以て、治安の維持、又安全保障条約によつて日本独立安全は完全に保護せられると考えるのであります。自衛戦力といえども、これは憲法改正を要するということは、この前申した通りであります。従つて今日自衛戦力のために憲法を改正するというような考えはございません。が、自衛戦力といわゆる戦力との違い如何ということは、これはしばしば論議せられた通りでありまして、更にここで私が繰返すことはいたしませんが、いずれ所管大臣からこれに対して明瞭なお答えがあるであろうと思います。  日本を原子爆弾の基地とするな。——御尤もであります。併しながら、何らこういう問題ができておらないときに、政府として米国にこのために交渉をするというようなことはいささか不穏当と考えますから、いたしません。(「ずるいぞ」と呼ぶ者あり)  警察法の改正、これは只今研究いたしております。いずれ成案を得ましたら国会の協賛を得るために提出いたすことになります。  地方自治と地方制度、これは御意見の通り民主政治確立の基本でありまして、この点については政府も十分留意いたしております。又慎重に研究を続けております。研究の結果、成案を得次第、国会の協賛を得るために提出いたす考えであります。  義務教育費については所管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  20. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 自衛戦力を保有すべきではないかというお尋ねでありますが、只今総理から答弁した通り、私も同様に考えております。現在の諸情勢から判断いたしまして、先ず国内の治安と秩序を保持する保安隊と警備隊の内容、先ず以てこれを充実することが必要であると考えております。而うして、憲法を改正して戦力を保持するというような段階には今至つていないと私は考えております。申すまでもなく、憲法第九条第二項に規定されました戦力とは、私もしばしば申上げた通り、いわゆる近代戦争を有効適切に遂行し得る編成と装備を持つた総合戦力であります。現在の保安隊、警備隊は、かような編成装備は持つておりません。従いまして、この戦力には到底至らないものである。ただ内地の治安と平和を確保するに足りるだけの装備と内容を充実すべきことは、これは我々今の段階において最も必要なことと考えて、その点において一段と努力をいたしたいと、こう考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣犬養健君登壇拍手
  21. 犬養健

    国務大臣(犬養健君) お答えいたします。  最初に、日本共産党の第二十二回中央委員会で討議決定されました文書のことについての御質問でございますが、如何にもその委員会におきまして「武装闘争の思想と行動の統一のために」という文書が作られたように思われます。その内容が内乱の必要性とか正当性とかいう問題を主張しているもののようでございます。これが直ちに破防法第四条に違反するかどうかは、ここに盛られました原則論がどのくらい現実の計画とか行動と結び付くか、この点についてそれ以来慎重に調査をいたしておりますことを御報告申上げたいと存じます。  もう一つは警察法の改正でございますが、只今これは総理大臣が申されましたように、企画をいたしております。今お述べになりましたように、成るほど国家公安委員会から意見書が出まして、私も実は二日間に亘つてこれらの多くの人と会いまして意見を交換いたしました。自公連のほうのかたは今週中に面会を申込んでおられまして、これも十分時間を割いてお互いにこの重要問題を研究いたしたいと思つております。仰せのような反対論は文書では届いておりますが、昨日も五大都市の代表の方々とお目にかかりまして、少しも摩擦の起ることなく和気靄靄と議論をしていることを申上げたいと存じます。又岡本氏の蘊畜と御体験については非常に参考になりました。ただ、今の国の内外の保安状態に処して警察組織を能率化する、これは非常に大事なことでありますが、これだけに頭を熱中させますと、国民の警察という気持から離れやすいという危険がありますので、この点は十分私は気を付けたいと存じます。又警察の能率化に伴いまして、警察官自身も謙虚な気持になつて、みずからの力に抑制を加える、これが必要と存じまして、この処置も考えておりますが、具体的には立案したときに御審議を願いたいと思います。(拍手、「その精神で大いにやれ」「法務総裁の言や誠によし」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岡野清豪君登壇拍手
  22. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 私の所管に関する点につきましてお答え申上げます。  義務教育は国の責任でやるべきものでございます。でございますから、私は義務教育を拡充するということは国家が責任を持つてやるべきものと、こう考えております。  第二の点の教員の給与を全額負担するのはどうかというお話がございますが、私の考えといたしましては、国の責任でやるべき義務教育であるから、憲法二十六条に言つておる無償という意味を、ただ、月謝をただにするということばかりに限らず、もつともつと財政の許す限り国家がその面倒を見て行きたい、こういう意味から、教員の給料、又教材費、又他にたくさん今度できましたが、そういうものも拡充して行く、こういう意味において私は今回の措置をしたわけです。  もう一つ最後に、政治節操の問題から、昨年岡野が半額国庫負担に反対しながら、文部大臣になつたらすぐ全額に変つたじやないかと、これは甚だ心外千万でございます。昨年の五月二十六日の速記録を御覧下さればはつきりおわかりと思う。昨年、半額国庫負担の問題が議会において大変な論戦がありました。その当時、第三次吉田内閣の閣僚といたしまして、半額国庫負担は不徹底であるから賛成はできないけれども、全額国庫負担なら即座に賛成するということを言明しております。そうして吉田内閣はかわりましたけれども続いております。そうして文部大臣になりました以上は、自分の所管事務でございますから、自分の理想を打ち立てて行くのがこれは政治家の最も大事なことだと思います。(拍手、「偉いものだな」「君に文教政策わかるか」「日本教育の破壊者」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  23. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 地方制度の改革につきましては、地方制度調査会に地方制度の全般について御諮問を申上げているのでございますが、只今御指摘の府県等の性格について政府はどう考えるかという問題でございますが、これは総理の施政演説にもございました通り、今日国家の行政を中央地方を通じて全般的に見ましたときに、いま少しく中央と地方とを密にする、有機関係を密にするということの必要を感ずるのでございます。併しそれを如何なる方法によつて緊密化するかということにつきましては、地方制度調査会の御審議を待つて政府方針をきめたい考えでございます。  更に平衡交付金と義務教育費国庫負担額との分離の問題でございますが、これは御承知の通り平衡交付金算定の基礎になつておりまする基準財政需要額の算定を基礎といたしまして分離いたしておりまするので、このために地方財政が特に圧迫を受けるというようなことはないのでございます。    〔拍手、「ノーノー」「頗るでたらめじやないか」「無責任だぞ」「自治庁長官落第だ」と呼ぶ者あり〕    〔国務大臣緒方竹虎君登壇拍手
  24. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 私に対する御質疑は、義務教育費全額国庫負担の問題と地方制度調査会の関連についての点であろうかと存じまするが、これはあたかも地方制度調査会が開会中でありましたので、これに対しまして委員各位の個々の意見をお尋ねするということで諮問したわけではなかつたのであります。この点につきましては、別に不都合を生じていないことと存じております。(拍手)    〔国務大臣向井忠晴登壇拍手
  25. 向井忠晴

    国務大臣向井忠晴君) 義務教育費の全額国庫負担は、差当り地方税制の根本的改正がありまするまでは定員定額といたしまして、且つ富裕団体への交付は調整する考えでございます。当初の平衡交付金一千七百二十億円は一応現状を基礎として算定したのでございますが、当該全額を平衡交付金より分離しまして、平衡交付金八百億円、義務教育費九百二十億円とした次第でございます。地方制度調査会の結論等を待ちまして、地方税制の根本的改正を行なつて、早急に完全実施を図りたいと存じております。(拍手)     —————————————
  26. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 金子洋文君。    〔金子洋文君登壇拍手
  27. 金子洋文

    ○金子洋文君 私は日本社会党第四控室を代表しまして、政府施策に対して質問をいたしたいと存じます。  先ず第一にお尋ねしたいことは国際情勢に関する問題でございますが、御承知のように私は皆さんの御推薦を受けて第七回ユネスコ総会に出席し、パリに約四十日間滞在いたしました。その間各界の人々からヨーロツパにおける政情に関していろいろ見聞したのでございますが、朝鮮動乱が起りました当時の最高潮の不安状態に比べますと、戦争の危機が幾分遠のいたという安心感を抱いているように見受けられました。その結果、アメリカの反対にかかわらず、英国やフランスの軍備拡張計画が緩慢となり、削減の方向を辿つていることは、皆さんも御承知の通りでございます。その理由として、ソ連に対する警告的な軍備拡張が一応目的を達したのだと見る人もございます。又ソ連が早期の決戦を諦めて長期作戦に切替えたためであるという説もございます。この両説の正否は暫くおくとしまして、朝鮮動乱が波瀾曲折を経て休戦に入るに至つて、それまで疑惑と恐怖に惑わされていたヨーロツパの批判の眼が次第に冷静を取戻し、事態を誤まりなく見るようになつたことが大きな原因であると思います。  アメリカの評判は、フランスでも、イギリスでも、ドイツでも、よくありません。我々日本人はマツカーサー元帥から十二歳の子供扱いにされたのでありますが、現在ヨーロツパ各国において珍らしく一致している考え方は、アメリカは「大人の子供」であるということであります。それ故、アメリカ外交は若くて粗雑であり、その上、衝動的であり、時には金を貸している関係もあつて高圧的であるとさえ言われています。その結果、今日ヨーロツパでは、国際危機に対するアメリカの判断は独善的、であつたという非難さえ起つているのであります。アメリカがこれまでとつて来た外交政策、即ちソ連に対する封じ込め政策の立案者はケナン駐ソ前大使と言われていますが、この政策の実行に対してケナン氏は五つの原則を挙げております。その第一に、自由国は強力でなければならないということを挙げているのは当然でありますが、五原則のうちで最も示唆に富んでいるくだりは、結束を強調して「恐怖と不安の念を起させてはならない」と戒めている点でございます。即ち、「仮りに国家に反逆を企てる者が一人いて、これが見付からないとしても、他のすべての国民が互いに信頼の絆で結ばれているような社会は、恐怖と不安を起させてもたつた一人の反逆者を捕えるという社会よりは、邊かに強固なものである」と言つていることであります。然るに、若くして粗雑であり、その上、衝動的であるアメリカ外交は、朝鮮動乱に刺戟されて、ケナン氏の戒めとは反対に、世界に恐怖と不安を巻き起すことに成功したことは、周知の通りでございます。恐怖が革命の生みの親であり、権力政治の根底をなすものであり、人々を盲目にすることは、「現代革命の考察」においてロハルド・ラスキがすでに教えるところでありますが、アメリカ外交が朝鮮動乱の刺戟を受けて必要以上に恐怖と不安をかきたて、世界をして軍備拡張に駆り立てたそしりは免れないと思います。封じ込め政策を立案したケナン氏は明哲な外交官と思いますが、ソ連からボイコツトをくらつたことによつてもわかりますように、金持のお坊ちやん育ちであると言わねばなりません。金持であるために、自国の経済が政治と遊離しがちであることも手伝つて、貧しい国の政治と経済が密着していることが理解できません。それ故に、その対外政策アメリカの内政に比べると、クラシツクで、反動的であり、時には粗雑と衝動をむき出しにして、ヒステリツクになつたり、高圧的に押し付けようとするのであります。  武力の差によつて平和を守ろうとする封じ込め外交には三つの欠点がございます。その第一は、軍備拡張競争をして戦争を防ぎ得た例は近代史において見られないということであります。反対に、軍備拡張競争は、第一次世界大戦、第二次世界大戦を誘発した要因の一つとなつております。第二の欠点は、そのために世界中が貧乏になるということであります。その最もよい例はフランスでありますが、御承知のようにフランスはインドシナで戦争をやつております。その費用が一日十二三億フランを要すると聞きました。そういう関係もありまして、昨年の国家予算は軍事費の一〇%六を加えて三兆七千億フランでありました。そのために赤字が一兆四千億フラン、その赤字を主として農民の税金によつて賄おうとしたのでありますから、農民党の反撃をくらつてビドー内閣が瓦解せざるを得なかつたのであります。この窮乏はひとりフランスばかりではありません。英国然り、アジア然り、日本もその例に漏れないのであります。第三の欠点は、武力を以て平和を守ろうとする結果、自由国とは相反するスペインのフアシズムと結んだり、西欧の植民地政策を支持する行動に出ていることであります。その結果、長い間、西欧の植民地政策に苦しんで来たアジアにおいても、アフリカにおいても、アメリカ外交政策が不評を買うことは当然と申さねばなりません。  従いまして封じ込めの外交政策は、平和維持と世界の安全に役立つよりも、戦争を誘発する危険性を多分に内包していることを指摘しなければなりません。吉田内閣外交政策はこのアメリカ外交政策に同調していることは今更言うまでもございません。同調というよりは、アメリカ外交政策の実態を見究めないで、向米一辺倒にかたよつた媚態と追従の外交に終始していると申すべきでしよう。その結果、粗雑で衝動的な傾向を一層募らせ、日本の内政に干渉するばかりか、貿易にまで容喙する発言をマーフイ大使に許す結果を見ているのであります。こういうアメリカ外交政策総理はどうお考えになつているのか。又吉田内閣はこうしたアメリカ外交政策にあくまで盲従して行く考えであるのか。先ずこの点をお尋ねいたしたいと存じます。  吉田総理は、過日の参議院本会議において、我が党の羽生三七君の世界情勢に関する質問に対して、「羽生君のお話だと今にも戦争が起るようでありますが、不幸にして英米その他の当局はそうは言つておらないのであります。アイゼンハワアー元帥にしても、或いはアチソン国務長官にしても、近くはイーデン外務大臣にしても、シユーマン外務大臣にしても、戦争の危険は日に日に遠ざかりつつあると言つておるのであります。私はこの議論を信用するものであります。」こう答えて、「国民のために矯激な議論はしないほうがよい」と反論いたしております。私も前段において、朝鮮動乱が起つた当時に比べると、ヨーロツパでは戦争に対する危機感が遠ざかつていることを申上げました。併しこのことはアメリカ大統領選挙がきまらない前の情勢でありまして、共和党が勝つた後のヨーロツパの政局はハリの冬の天候のように曇りがちとなつたことは多くの人々から聞き伝えたことであります。勿論アメリカの政変によつて戦争が俄かに起るとは思いませんが、ヨーロツパは暫くおいて、アジアの危機が深まつたことは、何人も感知したことと思います。そのことは、一月二十七日行われたダレス国務長官の演説からも看取されることだと思います。御承知のように、ダレス長官は民主党の外交政策に不満を述べて、強硬政策、即ちロール・バツク政策を唱えております。これをアジアに適用する場合は、アジアはアジア人に戦わせるということであり、日本に一層の軍備拡張を強要することであり、進んで満州を爆撃し、日本軍を朝鮮その他の戦域に送り込む危険さえもあるのではないかと杞憂されます。昨日の演説において総理と外相は、ダレス氏が国務長官になつたことを、アジアの平和にとつて喜びに堪えないと、異口同音に述べていますが、若しもこれが本音であるとするならば、人間に対する理解と外交的観測が零に等しいと申さなければなりません。(「その通りだ」「全くだ」「戦争屋は誰だ」と呼ぶ者あり)ダレス氏は吉田総理を翻弄して、屈辱的な講和と行政協定日本に押し付け、憲法を無視して再軍備を強要した立役者であります。(「そうだよ」と呼ぶ者あり)この立役者は、演劇的に申しますならば、忠臣蔵の吉良上野介を思わせる性格を備えておると申しても失礼に当らないのでありましよう。(「ヒトラーを作つたのは誰だ」と呼ぶ者あり)従いまして、国務長官としてのダレス氏の登場は、アジアの禍いとなるかも知れないが、平和と安全の維持に役立たないことは、同氏の演説が端的にそれを示しておると思います。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)一体、日本の北辺に如何なる危険がひそんでおるというのでありますか。その語気が伝えるニユアンスは、明日にも共産軍が北海道を占拠するような恐怖と不安を伝えておるのであります。若しソ連機が北海道の上空を侵したことを以てかような言辞を弄したとするならば、日本人に恐怖と不安を与えておいて一層軍備を拡張させようとする、不敵な謀略的言辞と申さねばなりません。(拍手)  そこで総理お尋ねしたいことは、ダレスのロール・、バツク政策によつて国連軍が満州を爆撃する危険がありや否や。若し爆撃するような不測の禍いが起つた場合、全土アメリカの基地化している日本は報復爆撃を受けることは当然と思うが、その場合、政府において対策がありや否や。国民が最も不安に思つていることでありますから、明確にお答えを願いたいと思います。これが第一点。  第二点は、日本保安隊が、実戦を見学するという目的で、パスポートを得ることなしに朝鮮に渡るようなことがなきや否や。併せてお答え願いたい。  昨日行われた岡崎外務大臣外交方針を聞きまして、私が第一に奇怪に思つたことは、中立はあり得ないという日本共産党の主張に同感の意を表していることであります。(笑声日本共産党がそういうことを表明したかどうかは私は存じませんが、若し外相の言うことが間違いないとするならば、日本共産党は、スターリンの言うところの共産主義と資本主義が共存できる」という言明に反するものであり、ストツクホルムやウインナで世界の平和会議を開くことも無意味と思います。(「少しおかしいですね」と呼ぶ者あり)ソ連が真に平和を望むならば、ソ連にも付かない、アメリカにも付かない、中立的な第三勢力を喜んで迎うべきであつて、中立はあり得ないということは、スターリンの言明に反し、平和会議の虚偽的性格を暴露するものと言わねばなりません。これらのことを十分考慮することなく、日本共産党の中立否定に同感することは、外務大臣として不見識も甚だしいものと言わねばなりません。(笑声、「答弁]と呼ぶ者あり)第二に興味深く思つたことは、外相の言動が、アメリカの出先機関にふさわしく、粗雑と衝動性を露呈して、恐怖と不安をかき立てようとした点でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)それは、半面東条内閣時代において、白か黒かを国民に強要し、戦争挑発を企らんだ言動を思わせるものがあつたことを、甚だ遺憾と申さねばなりません。(拍手)戦争危機の現実的条件は米ソの対立にあることは言うまでもございませんが、この対立の責任はソ連の革命方式にあるのみではございません。その侵略的性格を誇大に宣伝して恐怖と不安を募らせたアメリカ外交政策がその一半を負わなければならないことは、先ほども申した通りであります。戦争危機の現実的条件はこれのみではございません。西欧の植民地政策もその一つであり、帝国主義的侵略による世界の経済的不均衡、即ちアジアの貧困やアフリカの貧困も挙げなければなりません。これらの現実的な条件の克服なくして世界の平和の維持と安全を期することはできないのでございます。而してこれらの諸条件を克服するには、向ソ一辺倒や向米一辺倒ではできないのでありまして、いずれにも付かない中立的第三勢力の抬頭を促進しなければなりません。  岡崎外相の言明によると、これらの中立的第三勢力が世界に存在しないような印象を与えましたが、詭弁も甚だしいと申さねばなりません。今年初頭、ビルマのラングーンで開かれたアジア社会党大会において、インド、ビルマ、インドネシアの三国は、その発言において、明かに中立的立場を表明いたしておるのであります。かような第三勢力は、英国においても、フランスやドイツにおいても、力強く抬頭しておるのでありまして、最も興味の深いのは、ソ連と国境を隣りにするフインランドも、スエーデン、ノールウェーも、北大西洋条約に参加することを拒否して、中立的立場を堅持していることであります。然らばこれらソ連に隣接する国々が何ほどの軍備を持つておるかと申すならば、フインランドは陸軍三万四千人、海軍四千五百人に過ぎません。スエーデンは常備軍六万、ノールウエ一は平時の常備軍がなく、毎年二万二千人の青年を召集訓練しているのみであります。アメリカはノールウエーとデンマークに軍事基地の貸与を求めたのでありますが、両国ともこれを拒絶している実状を我々は大いに学ぶべきだと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり)若しソ連が一部の人々が宣伝するように侵略の常習犯であるならば、軍備の乏しいこれら北欧の国々を侵冠占有することは朝飯前の仕事と申しても過言でないでありましよう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)小国がその安全保障のために大国に頼ることの危険は、フインランドの実例がよくそれを教えております。ドイツの懐柔と威圧に屈して軍事同盟を結んだ結果、フインランドは、第一次、第二次世界大戦でも敗れて、国土さえ失つておるのであります。この苦い経験がフインランドをして北大西洋条約に参加することを拒絶させたのであります。これに反して、スエーデンは飽くまで中立を守つた結果、今日の繁栄をみているのであります。私はここで、実存作家として有名なフランスの小説家サルトルが、フランスが一時ドイツに占拠された時レジスタン運動に参加した経験から、日本に寄せた友情のこもつた戒告を、皆さんにお伝えしたいと存じます。「中立政策は戦争を避けるためになされるものだ。国防にとつて現実的な条件、即ち侵略者に対抗する大多数の日本人に必要な精神統一ができる。日本の弱さの真の原因は、非武装にあるのでなく、その心情のうちにある。即ち外国に、もたれかかろうとする心情、アメリカに対する追従であり、国内の腐敗である。中立政策はこれに反対するものだ」、かように申しておるのであります。これに反して岡崎外務大臣演説は、アメリカの出先機関にふさわしく粗雑であり、衝動的であり、中立を嘲つて戦争を誘発するに等しい危険千万な発言と言わねばなりません。(拍手)以上に対する外相の所見を伺いたいと存じます。  再軍備に対する質疑応答は、今日においてはもはや愚問愚答の繰返しに過ぎない段階にあると思います。    〔議長退席、副議長着席〕  にもかかわらず、それが未だに繰返されるのは、衣の袖から鎧がしばしば覗かれるためであります。このことは、キヤメラ班にコツプを投げ付けるほどに一徹短慮、よく言うと正直な総理の性格のなす業でありまして、再軍備はいたしませんという唇の乾かぬうちに、保安隊の幹部に、諸君は新国軍の土台であると言つたり、国民の愛国心が高まつて軍備を必要としたときにこそ再軍備すべきだなどと揚言するために、未だに愚問愚答が絶えません。今日見るところの保安隊は「おたまじやくし」ではなく、蛙であります。もはや保安隊でなく、海軍であり、陸軍であります。このことは、総理が何と言おうと、保安隊の各員がそれを肯定することによつて明らかであり、国民ひとしく軍隊と見ているのであるから、再軍備の質疑応答はもはや愚問愚答と言わざるを得ないのであります。だが再軍備問題は、現実に再軍備を進めていながら再軍備をしないという、憲法を無視して顧みない憲法違反と、国民を愚弄して憚らない倫理の蹂躪と、世界を滿着して恥じない国際信義の背反にその所在を替えたと見るべきでありましよう。このことは、国際信義に背いて国連を脱退し、フアシズムと手を結んで侵略戦争に国民を駆り立てた諸方情報局総裁時代を彷佛させるものがあるのであります。(拍手)かように日本を虚構の泥沼に埋没させつつあるその発端は、講和条約の締結であり、それと不可分の行政協定であることは言うまでもございません。総理は、自由党大会の演説会で、国会の反対を受けても行政整理を断行すると、国会無視の言辞を吐きながら、二つの条約については、国会が多数を以て承認したのであるから非難を受ける理由はないなどと嘯いているのであります。(笑声)  二つの条約を結んで総理が第一に国民を欺いたことは、これらの二つの条約が和解と信頼によつて結ばれ、それによつて日本は占領から解放されて独立国家となるということでありました。我々は、共産党諸君の言うように、日本現状アメリカの植民地とは思いませんが、アメリカの従属国であることは明らかな事実でありまして、(「どこが違うのだ」と呼ぶ者あり)国民一人として完全な独立国家と思う者はなかろうと思います。(「区別はどこにあるのだ」と呼ぶ者あり)その最もよい例は、行政協定によつて、歴史に類例を見ない軍属、家族を加えた治外法権を認めたことであります。アメリカ裁判の実態が如何なるものであるかは、東京都西多摩郡T村の小学校の教員川北豊子の事件によつても明らかであります。その真相は昨年の十一月号の雑誌「文芸春秋」に暴行裁判秘録として詳しく載つているので省略しますが、一人の女教員が白昼ジープに乗つて来た二人の米軍に強姦された事件であります。その裁判の結果はどうなつたかというと、強姦した二人の米兵が無罪となり、彼女は抹殺されたということであります。行政協定による治外法権は、かような無残な哀史を幾ページとなく残して、読む人の涙によつて濡らされるでありましよう。  第二に、総理国民を欺いた例証は、軍事基地は絶対に提供しないと言いながら、六百十三の基地や施設をアメリカに与えたことであります。発表された当時の文章では、駐留軍に提供する施設区域と謳つておいて、無期限三百一、一時三百十二となつております。軍港や飛行基地は軍事基地ではないのでありましようか。施設、区域と巧みに逃げて国民の目を欺こうとしておりますが、軍港や飛行基地が軍事基地でないと言う者があつたとするならば、精神異常者と見て松沢に送り込んでも差支えなかろうと思います。(拍手総理が次々と嘘を言うので、閣僚諸君もそれにならつて嘘をつきます。(笑声)戦車を特車と呼んだり、フリゲート艦を船舶と呼んで詰問されると、以前は何であろうとも、日本では船舶として使うからでありますと、岡崎外務大臣は、しやあしやあした顔つきで答えているのであります。若し船舶に使うのであるならば、フリゲート艦なぞ借りないで、船舶を借りて来るのが当然でありましよう。中には正直な閣僚もおつて、ジエツト機や原子爆弾を持つていても、それを使わなければ戦力ではないなどと名答弁をいたすので、虚構のメツキが一遍に剥げてしまうのであります。  第三に総理国民を欺きつつあるのは、言うまでもなく再軍備であります。昨年予算委員会で予算を通じて再軍備が論じられたとき、国民所得を五兆三百億円とするならば、防衛費は僅かにその三・五%に過ぎない。こんな僅かな防衛費で再軍備はできるものではないと数字を挙げて否定しましたが、これも数字の魔術を借りて国民を欺いた一例でございます。英仏の防衛費一〇%六に比べると、日本の三%五の数字は一見少いように思われますが、その国々の生活水準を無視しての比較では当を得ないことは言うまでもございません。日本人一人当りの平均所得は、一九五一年には、年およそ五万六千円でございましたが、英国人は二十四万円でありますから、日本人所得の四倍となつております。従いまして、軍事費の負担が同じく一割としましても、英国人に比べて日本人が深刻な打撃を受けるのは当然でありましよう。又主食の面から考えてみても、日本における当時のエンゲル系数が五五%を上下していたのに対して、米英では三〇%から三五%程度であります。日本人の所得はアメリカ人の十分の一、英人の四分の一以下であり、その上、所得の半分以上食費に食い込まれる現状を思うならば、先のような放言はできないはずであつて、数字の魔術を借りてまで再軍備を糊塗しようとした一例と見るべきでありましよう。  もはや政府如何に強弁しようとも、保安隊は陸軍であり、海軍であります。かように国民を欺き、倫理を蹂躪しておきながら、教育の刷新を図り、国民道義の高揚を図ろうとしても、国全体が虚構の泥沼に埋没しつつある現状において、到底なし得るものではございません。この欺瞞によつて国際信義を失いつつある例証は、「日本の再軍備は妊娠何カ月の状態にある」云々の国際的な冷笑と、通商や、賠償交渉や、日本の軍国主義の再現を恐れる言動にも現われていると言えましよう。ビルマの商談が失敗したのもそのためであり、インドネシアとの賠償交渉が決裂したのも日本の誠実に疑いを持つためで、再軍備しながら再軍備しないと偽わるので、一層日本の軍国主義の再現を恐れるゆえんであります。  今や吉田内閣は、第四の虚構を国民に押付けようと、虎視眈々準備を重ねているようであります。即ち、アメリカに忠誠を示して、平和憲法を改正し、憚るところなく軍備を拡張しようとする狙いであります。今回の予算を表面だけで見るならば、前年と比べて防衛費は幾分減少を見せていますが、軍事道路や飛行基地周辺道路の新設、港湾設備の新設、輸送貨車の新造等々の隠れている防衛費、前年度の防衛費の剰余金や軍人恩給等を加えますならば、三千億円に上るであろうと患われます。従つて、今回の予算憲法改正を意図するところの軍事的性格を多分に持つものと言わねばなりません。更に政府が今回の国会に提案しようとしている警察制度の改革や労働法の改悪、義務教育費の全額国庫負担等の一連の法案も、基本的人権を抑圧し、反動的な倫理を国民に押し付けて、憲法改正を有利に導こうとする魂胆であることは明らかであります。  今や吉田内閣は、自由党の見苦しい内紛を反映して、いよいよ末梢的症状を呈するに至りました。それは、国民を欺き、虚構を重ねたためであり、恐怖におびえて政治的諸関係の現実に対して盲目になりつつあるからであります。私は、平和憲法改正に絶対反対すると同時に、吉田内閣の退陣を求めて、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  米国政府の新外交についていろいろ議論がなされましたが、私は米国の新外交について批判を加えるものではありませんが、併しあなたの御意見については不幸にして同意することができないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)米国新政府の趣旨とするところは、世界自由国家の自由独立を守るということにあるので、戦争を誘発することを目的といたしておるのではないのであります。又その主義に盲従するのではないのであります。日本独立を守り、日本の安全を守るために、その外国の、米国政府の自由、世界自由国家の自由を守らんとするその政策には協調せざるを得ないのであります。あえて盲従するのではないのである。日本の……(「日本の農民は軍事基地として自分たちの農地を取られておるではないか」と呼ぶ者あり)聞き給え、日本の利害から考えてみまして、私は日本独自の外交をいたすものであつて、決して盲従をいたすものではないのであります。共産党のようにロシアの政策に盲従はいたしません。(拍手)又、軍備拡張或いは満州進撃を要望……脅迫せられておると言いましたか、とにかく日本政府は、やがて軍備の拡張及び満州進撃を強要せられるであろうと言われたように了解いたしますが、いずれにしましても、かかる強要には日本政府は応ずる義務はございません。又基地々々と言われますが、この基地は、御指摘の基地は日米安全保障条約による施設の提供であります。又、保安隊を朝鮮に出動せしめるか——これはしばしば申した通り出動いたしません。出動させません。(「反動の主たるものではないか」と呼ぶ者あり)又、保安隊は陸軍なり、海軍なりと言われておりますが、これはあなたのお説はお説として、政府の見るところ、政府のとつておるところは、保安隊保安隊であります。陸軍にあらず、海軍にあらず、空軍にあらず。  頻りに私が嘘をつく、自由党、我が閣僚も嘘をつくと言われますが、私は、嘘はあなたのほうに余計ありはしないかと思うのであります。(拍手)例えば一例を申せば、日本軍備と軍事基地と、生活水準或いは日本国民国民収入と言いますか、それに対する歳出を比べて云々と批評せられて、これは軍備なりと言われますが、私は、軍備の目的とするところは、国の独立を守り、主権を守ることにあるのであつて生活水準を基礎として計算を立つべきものではないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)日本生活水準が低いから軍備はできない、この水準を、現在の水準において、いわゆる軍備というような厖大経費負担する国力はないということを申すが故に、軍備はいたさないと申しておるのであります。これを軍備と言わるるのは、これは国民を迷わすものと私は断言いたします。(「答弁明快」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  29. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私が昨日中立問題について考えを述べましたのは、これは決して共産党の教えによつたものでもなければ、共産党の考えに従つたものでもないのであります。国際情勢を慎重に分析した結果、その見通しを述べたのであります。これが金子君のお気に入らなくても、これは事実だから私はいたし方ないと考えております。(「色眼鏡で見るからいかん」と呼ぶ者あり)なお、中立々々と言つて、一概に議論をなさいますが、この言葉にとらわれないで、やはり内容について検討しなければならないと考えます。例えば只今スエーデンの例をお引きになりて、スエーデンは中立じやないか、こういうお話でございました。戦争中にスエーデンは中立を守つたのでありますが、あの当時の記録を御覧になればわかりますように、スエーデンはあらゆる努力をして自国の軍備を拡張いたしまして、ドイツ軍が若し中立を破つて侵入すれば武力を以てそれを撃退する強い決意を現わしたのであります。その武力が、丁度ドイツ軍が各方面に使いましたので、スエーデンに廻す力よりも強かつたために、これは中立を守り得たのであります。これは事実の示すところであります。只今ここで議論をしておりますのは、中立はするけれども、そのために武力で以て日本の中立を守れ、こういう議論は一つもないのでありまして、中立政策によつて防備をしないで国の安全を守れという議論でありますから、スエーデンの例をお引きになつても、それはそのまま日本の国には当てはまらないのであります。  なお、その他の点はしばしば申述べておりますが、ただ一点、行政協定について言及されましたから、国民の誤解を招かないように一言だけ申しておきます。それは、例えば軍人やその家族、軍属、家族等までを加えて、世界のどこにも例のないような裁判管轄権を米軍に許しておるではないかということでありますが、(「フイリピン以下ではないか」と呼ぶ者あり)これは事実を御覧になればわかります。例えばイギリスの実情を御覧になれば、軍人や軍属、家族の裁判権を認めていないかどうか、事実を御覧願いたいと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手
  30. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 国務大臣演説に対する質疑はなおございますが、これを次会に譲り、本日はこれにて延会したいと存じますが、御異議ございませんか。    「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。次会は明後日午前十時より開会いたします。議事日程決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 國務大臣演説に関する件(第二日)