○岩木哲夫君 私は改進党を
代表しまして、
只今動議の
議題とな
つております電源スト対策に関する
緊急質問をいたしたいと存じます。
先ず
吉田首相にお尋ねいたしたい点は、この毎年行事のごとく又繰りひろげられましたこの電産ストは、日を逐うて激甚を極め、今や一大社会不安の様相を呈するに至つたことは、誠に遺憾至極でありまして、もはや
国民の誰一人としてこれを放任するわけには行かないのであります。そこで私は事態をここまで追い込んで来た労使双方に対しても、いささか所見を述べたいのでありますが、それより先に
政府の怠慢と無方策によ
つて、一層この争議が悪化拡大したことの
責任について、特に(「それだけでよろしい」と呼ぶ者あり)
総理大臣にお尋ねいたしたいのであります。(「それが問題だ」と呼ぶ者あり)それは、この国家産業の根幹であり、
国民生活の中心である電気事業等の運営管理をなすべき公共事業令の
効力がすでに去る十月二十四日で切れることのわかり切
つているにかかわりませず、政は迂閥にもこれに対する何らの対策をも講ぜず、ただ漫然と無為無策のままに放任していた結果によりまして、この争議の悪化性が一層激甚深刻を極めて来たことは、まぎれもない事実であります。電産争議は常習的に毎年繰返されていることでもありまするし、又、毎国会におきましても常にこの問題で論議が重ねられているのでありまするから、
政府はこの公共事業令失効を見越して、第十三国会でも、又第四次
吉田首班指名後におきましても、この前法令失効に伴う爾後の対策は当然講ずべきであるのにかかわらず、これを忘失しておりましたのか、先般我が党北村政調会長らが
政府に忠告したことによ
つて、初めてあわてて気付いて、急に間に合せの俄か作りの臨時措置法案を最近の国会に提出されましたが、時すでに遅く、争議はこの虚を衝いていよいよ拡大、難さを加増して参
つているのであります。而もなおこの法案の審議並びに
成案は、いつの日か見通しすら付かない今日の
状態におきまして、この空白を衝いて活溌、悪化して来たこの争議の様相は、これを政治的争議行動と見るの余儀なきは別物にいたしましても、かくのごとく長期に亘る失態のブランクを生ぜしめて、この虚に乗せられたその失敗、手落ちと
責任は、まさに
吉田内閣の当然負わなければならない重大問題でありまして、これによ
つてこうむる国家
国民の非常なる損害、
犠牲に対しまして、
総理は一体如何なる
責任と対策を持
つておられるのであるかどうか、明確に
お答えを願いたいのであります。
次に私は、この
我が国産業復興の基盤たるこのような公益事業体に対しまする労働争議行為のあり方に対し、
政府は如何なる基本的
態度をとらんとするのであるか、又この争議の前提となるべき
賃金政策に対して如何なる
方針を持
つているのかを、重ねて
吉田総理並びに池田通産、戸塚労相にお尋ねいたしたいのであります。それは、電気事業は特に首相も期待しておるごとく、外資導入の狙いどころでありまして、
我が国の電源電力は国家産業の大動脉であり、又
国民ひとしく享受すべき天与の一大資源でありまして、その企業体がたとえ営利私企業であると否とを問わず、又その
従事員がただ単なる労務者たると否とを問わず、その経営運行者全体が一丸とな
つて国家社会に貢献をし、公共の福祉に副うべき義務があると考えるのでありまして、これがために国家はあらゆる特典便益を与えてこれを庇護育成しているのでありますが、然るに経営者のほうでは、この今回の争議に対しまして漫然たる経営支払能力主義をかざして、その負担増加が生じた場合、それを需要者の料金値上げによ
つてカバーして、これを他に転嫁するがごときの安きにつかんとするこの
態度、殆んど企業合理化、能率増進、冗費節約等に思いを忠実に致さないというごときは、我々の最も
忌避するところでありますが、又さりとて一方労務者側におきましても、他の一般
国民生活の実態を無視して、自分らのみが先ず文化
生活賃金獲得の原則に立
つて、この主張を固持し、遂にその自己の尊い職場を抛ち、職責を抛ち、特権手段を発動して送電ストを断行し、この間、国家産業と
国民生活を暗黒不安に陥れて、甚大なる損害を与えつつあるこのあり方は、
国民の全く遺憾に堪えないところであります。又特に我々が遺憾とするところは、今回の争議指導体が、日頃穏健労組として我々の最も信頼しておつた総評が、その一部の左翼的陣営や、又外部の左派的バツクによ
つて、根強く、而も政治的色彩濃厚に争議を展開しているこの事態は、
我が国独立後の健全なる労働運動のあり方として、将来又総評のためにも誠に惜しむものでありますが、
経営者側においても、労組側におきましても、共にこの際その
態度を
改善して、この不安
状態を一日も早く収拾せぬ限り、
国民はことごとく、この争議に対し非常な反感と憎悪を抱くに至るであろうことを警告せんとするものでありますが、(「自由党に頼まれたな」と呼ぶ者あり)一方又
政府におきましても、この
国民の苦しみを荏苒放任して、成行き任せ的無為無策の冷淡なる
態度は、
国民と共に大いに不満とするところでありまして、一体、当該主管大臣である池田通産、戸塚労相は何かしておるのであるか、その存在を疑わしめるものがあるのでありまして、如何なる一体
解決策をとらんとするのであるか。この際明確に答弁を求めたいのであります。
その次は、先に
政府は米価審議会を棚上げして、米価決定に従来のパリテイ方式を一擲して、突如、廣川、池中両相の直取引によりまして政治米価を
選挙対策用にでつち上げて、
国民経済と物価
賃金政策に重大なる悪例、暗影を投じたのでありますが、然るに今ここに電産が従来の
賃金測定の方式を変えて、いわゆるマーケツト・、バスケツト方式による新たなる
賃金原則を打立てんとしているのでありますが、
政府は先のこの政治米価決定の先例に鑑み、一体このマーケット・バスケツト方式に対しまして如何なる考えと見解を有しておるのであるかどうか。これは今回の争議
解決と特来の
賃金経済の」におきましても重大なる問題とな
つて来るわけでありまするが故に、特に答弁を求めたいのであります。ただ我々の考えは、この電産の要求たる物量方式の基礎によるカロリー二四四〇、蛋白八五・二による、その文化
生活総所経費の合計を要求していることは、現実の貧困なる
日本経済全般と
国民の耐乏
生活の実態から見て、余りにもそ実情に副わない点が多いのでありまして、見方によりますれば、一種の欲望
賃金の上に立
つての考え方であると見られるのでありまして、大いに研究を要するものでありますが、(「駄目だ」と呼ぶ者あり)これが通らないから、多数の
国民生活の
犠牲不安が如何ようにあろうとも、あえてストを
強行するというやり方は、穏健なる社会連帯の
国民協同の精神といたしましイは、いささか
批判の
対象にならざるを得ないのであります。(「岩木君、何カロリーだ」と呼ぶ者あり)併しなが我々は、国全般の経済
状態が上昇しすれば、この建て方の要求を理想とするのにあえてやぶさかではありませんが、要するに現段階の
日本の現状から見て、且つは殊に中小企業、農民多数のこの悲痛なる最低
生活の実情から見まして、相当考慮さるべきであると思うのでありまして、近時の労働争議の
賃金要求が、他の
国民生活全般を顧慮することなく、
団体交渉による階級的利益を獲得せんとする傾向にあることは、全般的
国民感情から見て冷静なる
批判を要するのであります。戸塚労相は、この労働争議に対処する方策と
賃金政策の基本的な
態度について明確な方策を立て、この争議
解決に積極的に活躍すべきであると思いますが、どうであるか。殊にこの中労委の調停に対する
政府の
態度、見解を明らかにしてもらいたいのであります。
次にもう一点戸塚労相にお尋ねいたしたいことは、一応中労委の調停案が出されておるのでありますから、現下の諸
事情より推して労使双方とも互譲の精神を以て早急に
解決に努力すべきでありますが、ただ労組側は事実困難な全国統一交渉と全国統一
賃金要求を固持している点であります。併し我々は、労組側として、
曾つての全国、企業一本時代の場合もあり、又組織力の全国的強化の念願もその立場上まんざら理解ができないわけではないのでありますが、古今の争議は飽くまでも経済条件の
改善闘争が根本であるべきでありまして、これを現在全国九つの私企業体に分れておのおのその立地経済条件の異なるいわゆる経営格差のあるものに対し、全国一律一体の統一方式を執拗にとらんとすることは、経済闘争の本旨を越えた理不尽な政治的闘争の色彩を露呈いたしておると見られるべきでありまして、我々の又了承に苦しむところであります。即ち、現に東京、大阪のごときは中労委の調停案に近寄りやすい経済
状態と
態度を持
つているのに対し、東北、北陸、四国の電力会社のごときは、容易に賃上げ要求に応じ得る支払い能力が及びも付かない困難な経営
内容を持
つているものに対してまで、全国同様の統一交渉、統一貸金を強要せんとするそれ自体は、到底このままでは
解決促進の善意ある
態度とは言いがたいのでありまして、殊にその賃上げのはね返りが又電力料金の再引上げに転嫁きれるということに思いをいたしますれば、さなきだに経済
状態弱体地区の東北、北陸、四国
地方の
労働賃金と電力料金のみが著しくはね上
つて、これが又
地方産業と
国民生活全般の上に重大なる影響を及ぼすであろうことは想像に難くないことでありまして、この実情から見て、労相当局も
経営者側の誠意を求めて、相互の実情に合致した現地ごとにおける
地方別交渉、
地方別
賃金の折衝妥結に努力すべきであると信ずるのでありますが、戸塚労相はこれらに対し如何なる対策と所見を有しておられるかを明らかにして、この際、争議
解決にもつと真剣に取り組むべきでありまして、手を拱いて成り行きを待つがごときは卑怯な
態度でありまして、まさに
責任回避と言わざるを得ないのであります。(「その
通り」「まだか」と呼ぶ者あり)
次に池田通産大臣に追加いたしてお尋ねいたしたいことは、今回の争議が
政府の失態、怠慢によ
つて、いつ
解決するかわからないのであるが、いずれにいたしましても、現在切断ストを受けておりまする大口需用者はもとより、中小企業、農民或いは
国民全般の
生活に及ぼす被害、損害は甚大なるものと言わなければなりません。一体この争議によ
つてこうむりましたる損害は誰が負うのか。経営者が負うのか、労組側が負うのか、はた又
政府が負うのか。その
責任の所在を明らかにしてもらいたい。更にもう一点は、仮に中労委の調停に妥結が付くといたしましても、電力料金の引上げは余儀ないことと報ぜられておりますが、
政府はこの場合この料金引上げは余儀ないこととして認める肚であるかどうか。併せてこの
賃金問題と料金問題とをどう考えておられるかの所見を承わりたいのであります。
最後に犬養法相にお尋ねいたしたいことは、今後のスト行為の成り行き次第によ
つて全面的に更に悪化の虞れなしとはしないが、例えば昨日の亀戸変電所等におきまするがごとく、経営者が自衛運転を敢行してスイッチを入れましても、又それを労組側が切断するがごとき行為は、
公共企業体の性格上当然刑法の適用があると考えられますが、法務大臣の御所見は如何。明確に
お答え願いたいのであります。
以上をもちまして私の
質問といたします。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕