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1952-12-24 第15回国会 参議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十四日(水曜 日)    午前十一時十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡部  常君    理事            長谷山行毅君            伊藤  修君            鬼丸 義齊君    委員            小野 義夫君            加藤 武徳君            中山 福藏君            宮城タマヨ君            齋  武雄君   衆議院議員            田嶋 好文君            松岡 松平君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君   政府委員    法制局次長   林  修三君    法制局第二部長 野木 新一君    法務政務次官  押谷 富三君    法務大臣官房経    理部長     天野 武一君    法務大臣官房調    査課長     位野木益雄君    法務省矯正局長 中尾 文策君    法務省保護局長 斎藤 三郎君    法務省入国管理    局長      鈴木  一君    外務大臣官房長 大江  晃君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  眞道君   法制局側    法 制 局 長 奧野 健一君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       小木 貞一君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局第一課長)  桑原 正憲君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局長)     鈴木 忠一君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局給与課長)  守田  直君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局経理    局長)     岸上 康夫君   —————————————   本日の会議に付した事件検察官俸給等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○裁判官報酬等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出衆議  院送付) ○検察裁判及び行刑の運営等に関する  調査の件  (出入国管理令の施行に関する件) ○派遣議員報告平和条約第十一条による刑の執行及  び赦免等に関する法律の一部を改正  する法律案衆議院提出)   —————————————
  2. 岡部常

    委員長岡部常君) これより委員会を開きます。  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、以上二案を便宜一括して議題に供します。本日より本審議に入りますが、昨日伊藤委員より質問の御留保がありましたから、伊藤君の御発言を願います。
  3. 伊藤修

    伊藤修君 昨日質問申上げました事項について質問要項も差上げておりますから、それに基いて一つ政府に詳細な御答弁願つておきたいと思います。
  4. 天野武一

    政府委員天野武一君) 本日伊藤委員より頂戴いたしました質問要項につきましては、本来ならば大蔵省政府委員がお答えするのが本当かと存じますが、便宜私からお答えいたします。  一つ附帯決議中における公務員給与改善についてどうするつもりかというのでございまして、公務員範囲でありますとか、給与改善実行方法、或いは給与改善財源について細かくお尋ねになつております。公務員範囲は文字通り受取りますると、国家公務員地方公務員すべての公務員を含む範囲だろうとかように存じますが、これを実際に実行に移して給与改善するということになりますと、まあ財源の面は立法を要するかどうかの面等によつておのずから範囲につきましては制限が出て来ることになろうと存ずるのであります。そこで今大蔵省当局として考えており、各省にまだはつきりした態度を示しておりませんが、我々が折衝しておりまする範囲では、給与改善方法期末手当とか勤勉手当とかによるものは立法を要しますので、時期的に間に合わない。又それだけの財源各省ともないのではないか。差当り考えられる給与改善実行方法超過勤務手当支給ということではなかろうかということで、超過勤務手当支給ということで出ておるのであります。それをO・二五ヵ月分というような新聞では報道されておりますが、大蔵省当局はまだO・二五を出すというようなことは言うておりませんです。まあすべて考えられる財源超過勤務手当をもらう職員で割ると、大体一人当りO・二五くらいになるのではなかろうかという程度現状でございます。それから給与改善をいたしますると、お尋ねのように財源科目の流用或いは他の財源節約、それから又第二次補正予算方法等もあるわけでございますが、政府としましては第二次補正予算を組むつもりはございませんので、我々事務当局に対しましては専ら超過勤務手当を出す財源がどのくらいあるかということを検討し合つておるわけでございます。それから更にお尋ねの点に、超過勤務手当予算を振向けるとすれば、第四四半期分超過勤務手当を以てこれを充当するほかはないじやなかろうか。そうすると次の点が疑問になるということで、第四四半期超過勤務手当をどうするか、それから一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案にありますところの例の特別調整というものも、これは超過勤務手当財源を使うのであるから、第四四半期分超過勤務手当予算を今度の給与改善に充てると、例の特別調整ということができなくなりやしないかという御尤もなお尋ねがあるのであります。この点につきましては、只今申しましたように、超過勤務手当はそれだけでは第四四半期財源しかございませんので、それを繰上げて、その一部を使いまして、あとは節約をどういうふうにするか、他の科目節約をどうするか、或いは又科目で年末に余りました財源をこのような第四四半期分超過勤務手当のほうに廻すか、そういう財源的な検討もできた上でなければ、はつきりしたことを申上げかねる点なのでございます。  それからなおお尋ねの中に、超過勤務手当予算以外の予算を流用して給与改善に充てるとすれば、全国家公務員に対して平等の給与改善を行うべきであるというのがございます。これは私ども誠にそうあるべきであろうと考えております。法務省は勿論、最高裁判所もそういうようにお考えだろうと思いますが、裁判官或いは検察官その他にもございますが、超過勤務手当制のない職員につきましては、超過勤務手当の形では給与改善ができませんので、他の方法によつて平等に給与改善を行うべきであろうということは我々の念願でございますが、今の現状では財源的な面、それからもう一つ只今申したような超過勤務手当以外の場合には立法を要するという問題がここに残つておりまするので、実現する話までには運んでおらないのでございます。  それから最後のお尋ねに、公務員超過勤務手当予算は大体本俸、扶養手当勤務地手当合計額の一二%程度であつて、現実の支給額は一二%程度であると説明されている。従つて超過勤務しない者に超過勤務手当を支払うことになり明かに違法であつて、かような政府措置を承認することはできないのみならず、この方法では超過勤務制度のない公務員に対しては給与改善を行うことができないことになり、附帯決議趣旨に反し不公平極まる、仮に政府のこの措置を承認するとしても、財源は全く別個の財源であり、超過勤務には関係のない性質のものであるから、超過勤務制度のない公務員に対しても支給し得る措置を講ずべきであるとございまして、この点は法務省立場或いは最高裁判所立場としましては誠にその通りであると申さなければならんと思うのであります。繰返して申上げますと、あと問題は今超過勤務手当以外の手当を出すということに立法措置を要するということと、それから超過勤務手当一般職員に出すだけで財源が残らないのではなかろうかという二つの問題がございまして、又大蔵省当局もはつきりした態度を見せないでおる、非常に漠としたことをお答えするほかはないということに相成るのであります。これで御了承を願いたいと存じます。
  5. 伊藤修

    伊藤修君 どうも只今の御説明だけでは納得しかねるです。これ以上この点を追及してみますると、到底この法案が通過する見込みが立たなくなりますから、そういたしますと、全国の司法関係のかたがたの年越しもできなくなつてしまう虞れもあつて、私は後日に問題を又留保しておきまして、今の御説明で納得した意味じやないのですが、これを以て一応了承しておきましよう。ただ併し法務大臣代理として押谷政務次官の責任あるお言葉伺つておきたいのです。と申上げることは、政府の少くとも国会に対して約束いたしました、又それに対して了承を与えておるところ附帯決議に対して、趣旨を飽くまで本年の年末においてこれを何らかの名義において実現されることに努力せられる意思があるかどうか。従つてそれによつて受くるところのものは一般職員のみならず、判検事諸君に対してもこの趣旨をすべて実現されるよう努力せられる意思があるかどうか、この点を一つ伺つておきたい。
  6. 押谷富三

    政府委員押谷富三君) 只今伊藤委員のお言葉の御趣旨に副いまして、政府一般公務員と同様の給与裁判官並びに検察官等に対してするために最善努力をいたしますことをこの機会に申上げて答弁に代えたいと思います。
  7. 岡部常

    委員長岡部常君) 他に御質問のかたはございませんか。
  8. 中山福藏

    中山福藏君 只今政務次官努力をするとおつしやつたが、その期限をどういう期限までに努力の効果を現わすという明白な一つ決心をお聞かせ願いたい。それはできませんか。
  9. 押谷富三

    政府委員押谷富三君) 申すまでもなく年末給与の問題でありますから、おのずからこの年末に間に合うような処置をとらなければなりませんから、最も短い期間の間に実現をするために努力をいたします。
  10. 中山福藏

    中山福藏君 その短いという期間一つぼんやりでもいいですからお聞かせ願えることはできませんか。
  11. 押谷富三

    政府委員押谷富三君) 今明日に財源努力して折衝いたしたいと思つております。単に法務関係のみならず、他の各省ともそれぞれの立場から大蔵当局折衝をしなければならん、努力をいたしておりますが、私も今明中に何らかのいい結果を得たいと考えまして、最善努力をいたします。
  12. 伊藤修

    伊藤修君 今の政務次官のお言葉大臣のお言葉として伺つておきますから、さよう御承知願いたいと思います。
  13. 岡部常

    委員長岡部常君) 他に御発言もありませんければ質疑は終局したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 岡部常

    委員長岡部常君) 御異議ないものと認めます。これより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。……御発言もなければ討論は終局したものと認めて差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 岡部常

    委員長岡部常君) 便宜一括して両案を議題に供します。両案に御賛成のおかた御挙手を願います。    〔賛成者挙手
  16. 岡部常

    委員長岡部常君) 全会一致と認めます。よつて本案全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。  例によりまして委員長報告等は御一任をお願いいたしたいと思います。御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 岡部常

    委員長岡部常君) 例によりまして賛成のかたの御署名を願います。   多数意見者署名     伊藤  修  小野 義夫     加藤 武徳  中山 福藏     長谷山行毅  宮城タマヨ     鬼丸 義齊   ━━━━━━━━━━━━━
  18. 岡部常

    委員長岡部常君) 次に、去る十二日に行われましたる伊藤委員出入国管理令関係の御質問に対しまして、政府答弁を留保いたしてありましたが、その部分につきまして入国管理局長発言を許可いたします。
  19. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 先般伊藤委員から大村収容所におきまして朝鮮の人たちを相当長期亘つて収容いたしておりますことにつきまして、その根拠その他につきまして御質疑がございましたが、これに対しまして、十分なる御回答を申上げかねた点もございますので今回併せまして申上げたいと存じます。  大村収容所におきます収容には二つの種類がございますことは前回も申上げました通りでございますが、その一つ出入国管理令第三十九条以下によります収容令書によるものであります。その他の一つは、第五十二条五項によります退去強制令書によつて国外へ退去いたしますまで身柄をとどめておく二つでございます。第一の収容は、いわゆる審査のための収容でございますので、退去強制令書によつて手続の遅くなるというようなために不当な迷惑をかけてはならないという意味収容期間を三十日以内ということに定めておる。更に止むを得ない場合には理由がありますれば三十日を限つて延長することができるということになつております。第二の収容は、外国人として国内にとどまることを許さない旨の国の決定に基いて送還可能の時期まで国内法によつて収容をするものでございますので、収容期間制限されていないのでございます。従つて長期亘つて収容の状態が続きますことは、人道上穏当、不穏当という問題は起り得るのでございますが、手続に欠陥のない限り、違法という問題は起きないものと解釈いたしておるのでございます。いわゆる普通犯出入国管理令違反者である外国人退去強制処分に付しまして、且つ退去強制されるまで収容しておきますことは、国際法上その国の主権の作用として承認されているところでありまして、世界各国でも行われている慣行でございます。又他方或る国の法規に基いて、退去強制されたその種の自国民をその属する国が引取る義務があることはこれ又国際法上確立されている原則でございます。大村に現在収容されております韓国人について、これらの者はすべて我が国の国法を犯しました者で管理令の第二十四条或いは旧外国人登録令第十六条の適用を受けまして、退去強制処分に付されたものでございます。昭和二十七年四月二十八日までは、韓国側もこの種の韓国人受取つておつたのでございますが、四月二十九日以後何ら理由なくして密入国者以外の者の引取りを拒否するに至つたことは先般申上げたところでございますが、一体我が国において退去強制処分を受けた外国人韓国人のみに限定されているわけではないのでありますが、韓国を除くすべての国は現在までに勿論我が国から退去強制された自国民引取つているのでございますが、このような見地からいたしましても、韓国引取拒否が如何に国際慣行に背馳しているかということは明白でございます。韓国側国際慣行を無視いたしまして、そのために日本政府普通犯罪出入国管理令違反などを犯した韓国人韓国へ送還することができないので、送還可能の日まで彼らを収容しているというのが、現状でございます。併しながら十年、二十年、こういう長期亘つて勿論収容する意図のないことは明らかでありまして、日本といたしましては絶えず韓国側の注意を喚起いたしまして、一日も早くこれらの退去強制された韓国人国際法原則国際慣行従つて引取るように反省を促して参つている次第でございます。従いまして現在大村にいる韓国人収容しておりますことは、国際法上、又国際慣行上から申しましても又国内法見地からいたしましても当然の措置考えている次第でございます。
  20. 伊藤修

    伊藤修君 只今の御説明によりますと、国際法上灘法でないならば、そういう慣行が行われているのだから、もう差支えないのだというような御趣旨の御答弁でありましたが、御説明でありましたが、私の申上げることは、今度の事態韓国において従来とり行われているところ国際法上の慣行に従わずしてみだりに自国の国民の送還を拒否したということになると、これは我々としても誠に遺憾に堪えないところであつて李承晩の頑冥さに驚かざるを得ないのであります。そういう点につきましては、今後の折衝に待つて速かに解決して頂くことは当然のことでありまして、だからと言つて即ち国際慣行があるからと言つて行政手続ですね。行政手続でみだりに人間の持つところの、本来持つところ基本人権を制約していいという考え方は是認できないと、こういうのです。かかる場合に基本人権の保障に関しましては各国国内法においてそれぞれ適当にこれが処分されていることはこれは申すまでもないのであります。民主国家としては当然そうあるべきことは今日の社会通念であります。ひとり行政措置においてはその制約を受けずして、行政上必要なためには自由に、人の自由進退を拘束して差支えないという考え方、これは私は行政官としては、そういう観念を払拭して頂きたいと思うのです。この入国管理令によつて基本的に三十日と言い、若しその間に処理ができなければもう三十日延ばすことができるという原則は、そうした意味も勿論取入れられていることは当然のことであります。ただそれによつて賄えない場合があり得ることを想像して、法務総裁の認可ですか。許可ですか。同意ですか。とにかくその長の責任ある人の了承の下になお適当な処置をとるために拘束するというようなことがあり得るということはこの立法から想像できますが、だからと言つてそれを無期限に、無制限にいつまでも置くという考え方は、これはよろしくないと思います。それであなたたち考え方行政措置ならなんでもできるんだというお考え方が外務省に流れているのじやないかと思う。それに対して関心を持つていないのじやないかと思う。それを私は指摘するのです。根本的にそういうお考え方が、国際慣行があるから、それをいつまでも放り込んでおいてかまわないのだというお考えがあるのか。そうでない基本的には飽くまでも基本人権は保障するが、事情止むを得ないからこうしているんだというお考え方が、その点を根本的な思想を伺つておきたいと思います。
  21. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 只今のお話しの通り我々所管をいたしております関係官といたしましては、どこまでも人権を尊重して参りたいという意味合で、現在の収容をしておりますのはほんに止むを得ないという立場に立ちまして、いろいろ人権保護の点につきましては遺憾のないように処置をいたして参るつもりでございます。なお長期亘つて何年も収容しなければならんというような事態にならないように、外交その他の点につきましては十分常時連絡をしつつ、解決に努めているわけでございますが、そういうような最悪の場合に至りました場合には、勿論我々といたしましても単に法規に書いてあるということだけでいつまでも収容しておくというようなことは根本的に考え改めるという事態も将来起きないことはないというふうに考えております。
  22. 伊藤修

    伊藤修君 そうしたお考え方があるといたしますれば、当面の、今の問題といたしましてこれが折衝なさつて相当長年月かからなければ解決しないという見込みが立つた場合においては、何らか法的措置を講じないと、私はこのまま身柄を拘束しておくということはできないと思うのです。そういう点について何かお考えを持つていらつしやいますか。
  23. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 現在具体的にどうということは只今考えておりませんが、今伊藤委員のお示しになりましたような点について、そういう点についても考えなければならんということは考えております。
  24. 伊藤修

    伊藤修君 これはひとり私は国内だけの問題でなく、対外的におきましても、日本は何らの法的根拠を持たずして、みだりにいつまでも他国人収容しているんだという、いわゆる日本国民民主国家となつても未だ基本人権に対するところ観念が薄弱である。乏しいというような非難を受けるように至りますれば、これこそ又外交上由由しい問題だと思います。だからその点は余りに久しきに亘つて、これが対外的な問題にまで発展せんとも限りません。又そういうことを殊更利用しようとするグループもあるのですから、今からしてあなたたちにおいても、そう問題が久しきに亘るというようなことが想像された場合においては、速かに国内的に法的措置をおとりになるように私はこの際望んでおきます。
  25. 岡部常

    委員長岡部常君) 私からも一つお伺いいたしたい。前回の御答弁の中に名前ははつきりわかりませんが、何か審査会を設けておられるように承わりましたが、あの審査会構成をその際伺つたところでは、部内局部課の課員などで構成しているかのように伺いましたが、その通りでありますか。
  26. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 只今お尋ねは、審査につきまして三段階ありまして、最終段階におきまして、異議の申立の裁決大臣自由裁量行為決定をされるわけでありますが、その下調べといたしまして裁決委員会を、これを法的にはそういう条文はございませんが、運用の上から公正を期します意味裁決委員会という名前部内委員会を作つております。その構成局長を座長にしまして、各課長全員集つてその審査をいたすことにしております。
  27. 岡部常

    委員長岡部常君) それは法的には根拠はございませんか。
  28. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 法的には自由裁量行為でございまして、特に委員会を設けてやるという規定はございません。
  29. 岡部常

    委員長岡部常君) 今後においてその委員会構成に他の部面のかたを入れるとか、民間のかたを入れるとか、そういうふうなお考えはございませんか。
  30. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 他の部面の人を入れますことは、民間の人を入れますことは、只今考えておりませんが、必ずしも入国管理局課長だけでなくとも、ほかに適当な人があれば入れても差支えないという考え方は持つております。
  31. 岡部常

    委員長岡部常君) 他に御質疑がございませんければこれを以て休憩いたしますが、その前に、八月伊藤、一松、宮城の三委員刑事訴訟法改正、及び売春問題調査のため、長崎福岡及び大分の各県に出張いたしましたが、その御報告を求ます。
  32. 伊藤修

    伊藤修君 只今委員長御指摘になりました各委員によりまして、長崎大分福岡の三県に亘りまして、我々三名において、各その地方におけるところ司法その他の関係者の御集合を願つて刑事訴訟法改正の要点について、つぶさに御意見伺つて改正に対するところ資料を得た次第であります。加えまして長崎、佐世保におけるところ売春事情についても、業者並びに従業員等から親しく実情を伺い、大分においても、又別府においてもそうした面の実情調査いたしまして、これらの立法処置に対するところ参考資料を得て参りました。  これらの点についても、詳細な事項につきましては別にこしらえてございます報告書に基いて御承知を願いたいと思います。以上。
  33. 岡部常

    委員長岡部常君) それでは次に、去る十一月中旬行いました第六海上保安本部職員汚職事件の摘発に関し、検察及び自治警察当局のとつた措置についての議員派遣報告を願います。
  34. 加藤武徳

    加藤武徳君 私も先般呉市、広島市に国政調査に参りましたが、その概要を簡単に御報告をいしますると、呉の第六管区本部中心に海上保安庁に関する汚職事件が表面化しまして、本年の六月頃から、呉の市警検察庁側対立があるやに聞き及んだのであります。この対立が如何なるものであるか、又捜査手続に関してその当否、又その当時の世上の疑惑の真否を調査いたしまするために、十一月の十七日、呉市警側及び広島地検呉支部側、翌十八日、検事正ほか一検事よりそれぞれ事情を聴取いたしたのでありまするが、事件は相当大規模であり、且つ一部はすでに公判に付され、一部はなお捜査中なので、検察警察両者の間に意見の相違のない部分は、極めて概略の調査を行なつて、主として元の第六管区本部長吉田氏に関する油絵事件とか、徳山スクラツプ事件、これを中心調査いたしたのでありますが、その結果判明いたしました事実や、得た結論につきましては、詳細な調査報告書を作成いたしておりまするので、これに譲りたい、このように考えます。簡単に御報告いたします。
  35. 岡部常

    委員長岡部常君) これを以て休憩いたします。午後は一時に再開いたします。    午前十一時四十九分休憩    —————・—————    午後四時四分開会
  36. 岡部常

    委員長岡部常君) 只今より委員会を開きます。  平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律の一部を改正する法律案が、本日衆議院において発議され、只今委員会に予備付託されましたので、本件を緊急上程いたしまして、御審議願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 岡部常

    委員長岡部常君) 御異議ないものと認めます。先ず本案について、提案者衆議院法務委員長の御説明を聴取いたします。
  38. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 只今議題となりました「平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律の一部を改正する法律案」につき、提案理由及び改正の要旨を説明申上げます。  改正の第一点は、仮出所の適格性を得るための期間を短縮しようとするものであります。御承知のように、平和条約第十一条によりますと、いわゆる戦犯者に対する仮出所は、日本国の勧告と関係国の決定とによつて行われることになつております。この条約に則り「平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律」が制定されておるのでありますが、この法律第十六条によりますと、仮出所の適格性、即ち日本国の勧告及び関係国の決定を考慮されるに必要な最少限度の条件を取得するためには、刑期四十五年未満の者については刑期の三分の一、刑期四十五年以上の者又は刑期が終身にわたる者については十五年の期間を経過しなければならないことになつております。かくして、現在までに在所者八百四名中、この適格性を得て仮出所の勧告を終了した者は三百九十六名であり、その他の者がその適格性を得るには、なお相当の期間を要する実状にあるのであります。一面、無期その他長期刑の者を、今、釈放いたしましても、平和を紊すような危険性は毫も感ぜられないのでありますが、他面、戦犯者は幽囚すでに七年有余に及び、その留守家族の生活も惨憺たるものであります。従つて、現在、日本国民つて戦犯者の釈放を熱望しており、又この熱望に応え、御承知のように、衆、参両議院におきましても、すでに、「戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議」がなされた次第であります。  然るに、現行法の下においては、仮出所の適格性を得るに至らない者は、その手続として、先ず、減刑を勧告し、その承認があつた後仮出所の適格性を有するに至つて始めて仮出所の勧告を行わなければならないので、その間相当の期間を要するのであります。よつて今後の外交折衝によつて、その期間の短縮に関し、関係国の同意があるならば、必ずしも現行の期間によることなく仮出所に関する手続を進め得るようにいたしたのであります。  改正の第二点は、一時出所に関するものであります。現行法によれば、一時出所の条件は第二十四条第一項各号に定められた極めて限られたものでありますが、実状より見て、父母、妻子のみに限らず、親代りの兄姉、内縁の妻等の危篤、死亡の場合、又、震災、風水害、火災等の場合のほかにも本人が出向かなければ処理し得ない事情が発生し、一時出所の許可をなす必要が生ずるので、この条件を緩和するための改正であります。  又一時出所の期間も、五日以内とする現行法においては、複雑な問題を処理し切れないような場合がありますので、これを十五日に改め、更に必要があれば十五日間の延長ができるように改正しよとするのであります。  以上が今回の改正案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたします。
  39. 岡部常

    委員長岡部常君) これより質疑に入ります。御質問のおありのかたは御発言願います。
  40. 中山福藏

    中山福藏君 ちよつとお尋ねしておくのですが、この平和条約に基いて、刑の執行及び赦免等に関する法律というものがまあできておるという関係に立つておるのですが、これは何ですか、平和条約はそのままにしておいて、この法律だけを改正して行くという趣旨ですか。
  41. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) これは御承知下さいますように、平和条約の規定によりまして、先般処理規程が生れております。その平和条約十一条によりまして作られたものが、今回の平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律ということになつております。この法律で、今日日本政府においてはいろいろと戦犯者に対する処置、運営をいたしておるわけでありますが、その運営をする法律の一部を条約に触れないで改正しようとするのが今回の趣旨でございます。
  42. 伊藤修

    伊藤修君 先ず第一にお伺いいたしたいのは、この平和条約の第十一条の仮出所させる権限は「各事件について刑を課した一又は二以上の政府決定」これは、ここまでは相手国のことですね、「及び日本国の勧告に基く場合の外、」とこうなつている。これは後段が日本国の権限になつていると思いますが、この後段の権限に基いて本法が制定せられておることは御承知の通りでありまするが、従つて勧告権というものはこの平和条約によつて我々に与えられ、獲得しておるものと考える。勧告に至る条件というものは独立国たる日本国内法において自由にこの条件を規定することができると私は確信する。ただ問題はそれが結果において相手方に受入れられるかどうか、釈放という決定がなされることに役立つかどうかということは別問題として、勧告をなすに至る条件というものは相手方の同意は要らないと思うのですが……。又独立国たる日本が相手方の御意見伺つて国内法を制定しなくちやならないという理由はないと思うのですが、この点に対する見解は如何ですか。
  43. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 我々衆議院法務委員会といたしましても同意見であります。
  44. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますれば、この改正案によつて改正しようという十六条ですかね、十六条に記載するところの第一及び第二は当然法律によつてこれを改正しても差支えないのじやないでしようか。
  45. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 当然法律において改正しても差支えないと考えております。
  46. 伊藤修

    伊藤修君 然るに改正案によりますれば、何故にこれを政令事項に委ねたのですか、この点をお伺いしたい。
  47. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) これが今度の改正の一番私たちは重点だと考えておつたわけであります。その前に衆議院の法務委員会の意向をお伝えする必要があるのでありますが、衆議院の法務委員会といたしましては、伊藤委員のお説の通り今私がお答えいたしました通り、その線に沿いましていろいろ法案の審議並びに立案に当つて参りました。ただここで考えなければならんと思いますことは、日本国内法によつて制定することはこれはお説の通り自由でありますが、やはり今仰せになりましたように、十一条の前段があるわけでありまして、これは相手国の意思日本意思が合致しなければ生れない問題であります、相手方の意思をどの線において一致させるかということが、法の効果を発揮いたしますには相手方の意思をどの線において日本意思に一致せしめるかということが結局必要になつて参るのでありまして、その点から考えますときはやはりこれは法律でぴしやつときめてしまうよりも、むしろ政令に委ね、日本政府その他正当なる機関を通じて相手方の意思も十分付度検討いたして見まして或る程度の一致を見たときこれが政令を以て規定するのが最も効果的ではないか、こう考えまして政令に委ねたようなわけであります。
  48. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの苦心のほどは察せられるのです。併しあなたも弁護士であられ、法律生活を多年していらつしやいますから御承知のことだと存じます。又日本の国会のあり方においてもすでに十分御承知のことと存じます。少くとも今日の国会は立法事項に関する限りにおいては、国会みずからその責任の衝に当らざるを得ない、決してこれを行政官庁に委ねて我々はその責任を免かれるというあり方はなしてならんということは第一国会以来貫かれた精神だろうと思うのです。従つて曾て戸籍法の改正の場合、僅かの手数料の改正に対してすらこれを政令に委ねることなく立法事項として当時修正しておるような沿革に徴しましても、以来我々のとつて来た態度は必ず立法事項は国会みずから法律によつて定めるという態度を持して来ておることは御承知の通りですが、然るにこの場合におきまして十六条に記載されておる事項は少くとも刑期を左右するところの問題であります。或いはこの刑期という言葉が当らんといたしますれば、人身を拘束する期間を左右するものであつて、刑法の二十八条、九条、三十条に相当するものであることは御承知の通りです。而もこの十六条は刑法の二十八条そのままに相当するものであります。日本国内法においてすらかような問題に対しましては立法事項の尤たるものとして刑法典に掲げられておるにもかかわらず、ここにこの法律ではこの問題を政令に委ねるというお考え方に対しては納得できないのですが、この点に対して先ずお伺いしたい。
  49. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 御趣旨の点は先ほども申上げましたように御尤もでございまして、私たちもそうありたいものだと今日まで努めて参りました。ただこの法律というものが日本国内において実施し、日本政府意思のみにおいて目的を達せられる法律でありますればいいのでありますが、それとは多少趣きを異にいたしております。やはり国際というその観念を入れなければ解決できない問題でありますときは、これを国内立法を以て強いることがその効果を発揮する基になるか、そうでなくしてやはり国際的な問題である以上は、相手方の意思も先ず汲入れてこれを処理するようにする立法が適当である。ここにこの問題解決の分岐点があろうと私たち考えたのであります。従いましてその観念に立ちましていろいろ政府当局の意見も承わつたのでありますが、今日の場合この立法はやはり相手国の意思を汲入れるべき態度において処理できるような立法をするのが適当と考えまして、この立法をいたしたようなわけでございます。
  50. 伊藤修

    伊藤修君 私の質問に対してはただ縷々と事情をお述べになつておられるわけである。立法論としてそういうことが正しいのかどうか、目的のためには手段を選ばないというお考え方ですか。それでは国会みずからが立法権を放棄していいというおえ方ですか、それをお伺いしたい。
  51. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 何回も申上げておりまするように、私たち立法権を維持する、立法権の権威のためにというところに立脚しながら今日までもやつて参りました。今日でもそれを侵そうとか、みずから放棄しようとかいういまわしい観念は毛頭持つておりません。ただ立法権は立法するだけでは意味がないのでありまして、その立法したものが効果を発揮しなければ意味はありません。政令に委ねるのもこれも立法であります。立法の一部が政令であろうと我々が考えますとき、法律を以て規定するか、政令を以て規定するかは技術の問題になるのではないかと考えますときに、私たちは技術面においてこれを考えた次第でございます。
  52. 伊藤修

    伊藤修君 今の田嶋君の説はちよつと法律家としては私は納得できません。委ねることが立法であれば、技術の濫用である。政令によつて定めても差支えないという考え方だつたら、これは由々しい問題です。私たちの言う立法ということは、目的の内容を法律によつて規制することが立法であつて、それを抱括的に委任してしまつて、委任することが立法だから内容も立法だと、即ち法律だというお考え方は私は納得できないです。そんなことをしたら刑法において、すべて政令に委ねて、刑法の各条項は政府に任しますと書いても差支えないじやありませんか。さような飛躍した理論では納得できません。それは御訂正願いたい。法律家としてはちよつと私はお考え違いじやないかと思う。
  53. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 立法は我我の持つものでありまして、十分確保して行きたいと考えておる点に変りはございません。ただ政令に任すということが絶対許されないということなら、これは話は別でございますが、立法例によりまして政令に任さなければならない場合もあるのでございます。これもやはり考えれば立法一つではありませんか。
  54. 伊藤修

    伊藤修君 それはいけません。それは政令に委ねて賄うということは便宜に違いないです。併し今日政令によつて委ねて任すということは、少くともルールに関するとか、手続に関する行政的な事務処理に関する事項については政令に任せ得るという観念が一貫して貫かれておるのです。少くとも人の基本人権を左右するような事項に対して政令に委ねるということは私は見ていないと思うのです。この際は便宜だから、こうしなければ相手国の思惑もあるという、目的のために手段を選ばないという方法をおとりになつたが、立法技術上として私はもつと考え方法があり得たと思うのですが……。
  55. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 現在の段階におきましては、これを以て最も適当な方法衆議委員会においては認めたわけでございます。
  56. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、今後においては、目的のためには、すべてそうした憲法において定められるところ基本人権に間する各事項行政処置に委ねて差支えないと、政令に委ねて差支えないというお考えをおとりになるわけですか。この法律だけは特に止むを得ないというお考えですか、どちらですか。
  57. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 私たち基本人権その他の問題にかかわらず、政令に委ねることは最小限度にいたしたいと、止むを得ないときにいたしたいとこう考えて進んでおるものでございまして、本件の場合は、これは特殊な立法考えていい場合じやないかと考えますときに、あながちカテゴリーに入れることが、それが立法の目的を貫くことになるか、その一つの枠を外してやつてもやることが本当の効果を発揮することになるという、私はやはり技術的な問題になつて来るのが国際立法というものの一つのカテゴリーじやないかと考えておるものでございます。その意味におきましてこれを最も適当だと考えていたしたいのであります。今後基本的人権を一切政令に任すというような観念は毛頭持つておりません。そうしたことは十分尊重して行きたいと思います。なおこれがこうすることによつて利益になるかならんかと、国民に対して利益を与えるか、損失を与えるかというような問題も考慮いたしますときに、私たちはこうすることが人権を守り、日本の現在の国民輿論と申しますか、感情と申しますか、そうした立場に立つた戦犯者の人権を護る最もいい方法になるのではないか、侵害にならないで護る方法になるのじやないかと、こう考え立法いたしたようなわけでございます。
  58. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの考え方は便宜の目的を主にしてお考えになつて立法論を無視していらつしやるのです。私はそういうあり方はとるべきじやないと思うのです。飽くまで我々は立法技術的において先ず考えなくちやならんと思うのです。目的のためにはそうした基本観念を曲げても差支えないと、それが国民に利益になるのだからというお考え方は、それは私はとるべきじやないと思う。国民に利益、不利益になるかならんかは、その受けるものによつて定まることであつて、いやしくも基本人権に影響を及ぼすような事項は、即ち立法事項である、これは憲法の示すところであります。これをゆるがせにして各行政官庁にこれを委ねて、政令によつてこれを羈束しようという考え方は、延いて日本の全立法体系を紊すものであると思う。私はこの衆議院のお考えになつておるところ趣旨には全面的に賛成です。ただこれによつてこうしたことをも政令に委ね得るという考え方がここに現われて参りますと、今後各種立法をなされる場合においてこういうことが頻々として行われたならば、日本立法体系というものは崩れてしまうのです。この点を憂えるから今御指摘申上げるわけです。先ほども御答弁中に相手国があるから、外交交渉の点を考うるならば、どうしてもこうしなければならんというお考え方、それは御尤もです。併し条約の第十一条の先ほど御指摘いたしました日本国の取得しておる勧告権というものは、これは独立国として、当然今日我々の自由意思によつて定められるのです。だからこの条件を緩和するということが、日本国民の独自の考え方によつて定めても差支えないと思うのです。それが相手国に響きが多いか少いかということは、次の段階において、外交交渉によつて賄うべき筋合いのものであると思います。例えば一年の期間経過によつて仮釈放の条件ができると極端に日本法律で定める場合において、あえて決定権を持つ相手方において、さような甘い考え方日本国民がおるということに対しては承服しがたいとして、これの勧告を拒否するということはあり得るでしよう。そうした極端な考え方でない以上は、今日の世界の情勢から考え合せまして、又アメリカその他の各国が、アジアにおける日本国民の地位というものを考え日本国民の少くとも同意を得ておらなくてはならない、日本国民の協力を得なければ、アジアの平和は保ち得ない。延いて以て世界の平和を保ち得ないということは、彼ら自身が十分認識しておる今日の国際情勢下において、何を好んで我々が卑屈な態度をとる必要があるのです。極端な、彼らの常識に悖るような条件を我々が国内立法でする場合は、そういうそしりを受けても止むを得ない。併し少くとも我が刑法典で定めるがごとき条件、例えば十六条のこの第一号の場合はそれと相応しております。併し第二号の場合は、国内法にいうところの無期の場合若しくは死刑に相当する場合に相当するのですが、これまでの日本国民法律生活においては、曾つて経験していない四十年とか五十年とかいうような長期であるから、これは当然国内法にこれを照応いたしますれば、無期懲役に相応するものとして考え、これを刑法の二十八条の第二号のいわゆる無期の場合に相当するものとすると考えて、十年に引下げるということは当然彼らに主張して、教えて差支ないことです。それとも政令に委ねまして、一年、二年とか、或いは半年で釈放するというような政令を定めるというお考えがあれば、これは別です。そうでないならば、全世界の人々に向つて容易に納得し得るような常識的なものであれば、正々堂々として国民がこう期待するということを国内立法の上に表現して、何も私は差支えないと思う。それが相手方との外交交渉の上に差障りがあるもとのは考えられない。さような卑屈な考え方を持つこと自体が、今日まで戦犯の問題に対する処理ができないという政府の軟弱な態度から出て来るものです。いやしくも衆議院のかたがたがこの問題に対し取組んで御協力をなさるという以上は、進んでそれまでの強い信念を国民の名において表現すべきものであると思う。それが相手方の感情を害する程度のものであるならば、それは止むを得ません。併しそれは避くべきでありましよう。そうでなく、当然我々の法律生活の上において認め得られる程度のものであるならば、あえて立法体系、立法技術と「うものを破壊してまで、ここに政令に委ねるという便宜法をおとりになる必要はないと思う。私はこの場合において堂々と第十六条の第三号ですか、有期懲役に相当するところの二十年以下のものは、刑期四分の一、或いはそれ以上のもの、四十五年なんと言わなくてもいい、それ以上のものは四十五年ですか、長期に亘るものは、十年にするとか、或いは七年にするとかいうことを端的に表現しても差支えないと思うのです。従つて政令で定める場合においても、そういうような傾向に行かれると思うのです。何も私はかような政令に委ねるというような、頬かむり式で逃げてしまうということは、我我国会としてとるベき態度ではない、かように思うのですが、重ねてその点に対する所信を伺います。
  59. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) お説一々御尤もでございまして、衆議院側といたしましても、そうしたことに対しては強い熱望を持つておつたものであります。立案に当りましても、法律で極力これを制定するべく立案いたしまして、衆議院では五分の一ぐらいという希望を以て法案を作つたこともございました。併し内外の情勢を判断して見ますのに、やはり日本国内において立法を以てそうした意思決定をするよりも、相手方の意思をその線に副うように、五分の一くらいに副うように解決できるように進めて行くことが、最もこの場合戦犯者を救済する早道ではないか、こう考えましたために、第一案を撤回して、本案を作つたような次第でございます。お説は一々御尤もでございますが、本日の戦犯者に対する国内世論等を考えますとき、無理な立法と言われる節もあると思いますが、あえて無理な立法をしてでも戦犯者を救わなければならないというところまで、感情が発展しているのではないかということを考え、こうしたお気には召さないかも知れませんが、立法いたしたようなわけであります。
  60. 伊藤修

    伊藤修君 然らばその外交折衝の上においてそうすることが一番望ましいのだとおつしやつても、そういう御説明を仮に私が是認いたしましても、少くとも政令においてはその基準を定めなくちやならんでしよう。政令に定めずして、行政官の任意なる交渉の下に、これが十六条が変更できるというお考え方ですか。そうでないでしよう。少くとも政令によつてその条件ははつきり明記せられるべき筋合いのものだろうと思うのです。そういたしませんければ、大切な人身拘束に関するところ期間を定めておることを容易に変更できるというあり方は、恐らくおとりにならんと思うが、この点どうでしようか。
  61. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 勿論政令で定めるわけでありまして、私たち趣旨といたしましては、政令に定めるということは、結局外交折衝をやつて、相手方の意思をよく酌んで、そうしてその見通しがついたときに政令を作つて行く。だからこの政令は発布と同時にはできないと思います。相当期間を要して作つてもらわなければならんはずであります。そう考え政府にもこれを注文をいたし、政府もかくするという確約の下にこの法律案ができたような次第であります。
  62. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、一体この条約第十一条に対する勧告権に対しましては、のちのちまでも勧告に対する条件が、相手方の同意若しくは示唆、或いは了承というものを得なければならんという外交交渉においてそういう負担を負うておるのですか。政府のどなたか責任ある人の答弁を願いたい。
  63. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 政府から説明したほうがいいと思いますが、私たちといたしましては、こちらが勧告する場合は自由だと考えております。ただその勧告が無理になつてはいけない。無理をしないで実を取るという立場において、やはり立法考えます場合には、現在の段階においてはそれが適当ではないか。併し或る一定の期間を過ぎて、なお且つ向うがその勧告に対して耳をかさないというような場合には、又今日の立法の行き方は、おのずから行き方を異にした立法を私たち考えなければならん、こう考えておるような次第であります。今日の段階においては、これは一番まあ政府の言うことを信じてやつたほうがいいのじやないか、こういう気持ちで立法いたしたようなわけであります。
  64. 伊藤修

    伊藤修君 政府の言うところの筋というものを伺うのです。そういう条件がついておるのかということを伺うのです。そうしなくてはならん、いわゆる相手方の御意見を伺わない以上は、その期間の明示ができないという日本の屈辱的なあり方、少くとも与えられた権利に対してそうした屈辱的なあり方をしなければならんという何らかの制約がついておるかということを聞いておる。
  65. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 立法に当りましては、政府からそういうことは全然聞いておりません。政府はむしろこの問題を円満に解決する方法として意見を述べたものと考えております。
  66. 伊藤修

    伊藤修君 円満に解決するという意見を述べるに当つては、述べるところの沿革があるはずです。根拠があるはずです。それを伺いたい。
  67. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 私のほうは別にこれに対して政府からその根拠等を聞いておりませんが、ただこれも一つの便宜的な処理問題ではないかと、こう考えております。実を取るという便宜的な処理問題ではないかと考えております。条約に拘束されるとか何とかいうことはないと深く信じております。
  68. 伊藤修

    伊藤修君 私はその点に対する政府の責任ある御答弁を伺いたい。
  69. 大江晃

    政府委員(大江晃君) 政府といたしまして、政令或いは法律を出す前に関係各国といろいろ折衝する、そのときに相手の国のいろいろな考え方を入れるという、そういう条件なんかはついていないというふうに考えておるのであります。ただ関係法律関係各国に通報して、一応了承を求めると一いうことをやつておりました建前上、これに関連のありまする改正法令というものは、やはり一応通報する、そうして了承を求めるという建前をとつております。
  70. 伊藤修

    伊藤修君 今の説明では、私の質問にはお答えしていらつしやらないのですが、そういう責任があるのか。そういう慣例になつておるのですか。そういう約束があるわけですか。そうしなくてはならんというのですか、どういうのですか。
  71. 大江晃

    政府委員(大江晃君) そういう約束は何もございません。ただ事の性質上、最初にこの法律をきめましたときに、関係各国に事後に通報しております。今後も同じような措置をとりたい、こういう考えであります。
  72. 伊藤修

    伊藤修君 最初にこの法律を制定した当時通報するということは当り前です。それは四月二十八日以前にこの法律はできておるのですから、当時においては、関係各国了承、示唆というものがなければ、日本国家として何ともならない事情であつた、それは当然のことです。この法律を制定して以後、独立国家となつた今日においてもなお且つそうした責任があるのかどうかということを聞いておるのです。
  73. 大江晃

    政府委員(大江晃君) 責任はございません。
  74. 伊藤修

    伊藤修君 責任がなければ何のためにするのです。何の理由があつてするのですか。
  75. 大江晃

    政府委員(大江晃君) 先ほど衆議院の委員のかたから御説明がありました通り諸般の情勢上へこの戦犯の処理をスムースにいたしますためには、やはり関係各国とのそういう折衝がやはり必要だと政府は認めたからであります。
  76. 伊藤修

    伊藤修君 折衝が必要である、これはもう申すまでもないことです。一方的にはできないのですから……、我々は勧告以外には持つていないのですから……。それには実行を容易ならしあるために相手方の同意を要するのは、条約の明文上明らかであります。併し勧告をする動機、勧告をする遠因若しくは原因ですよ。これは日本国民の考うるところ従つてなし得るのではないかと、こう申上げるのです。それが相手方の同意を得られないような非常識な遠因、原因、理由というものに我々が結びつけてはならんと思うのです。少くとも可能な状態のものを我々が制定するにどうして憚らなければならんか、こういうことをお聞きしたいのです。あなたの御答弁を伺いたい。
  77. 大江晃

    政府委員(大江晃君) そういうことを相手方の同意を得なければならんというふうに申上げておるのではないのでございまして、法令を作りました際に、これを通報するということを申上げておるのであります。
  78. 伊藤修

    伊藤修君 通報するということは、独立国家となつても、なお且つ国内法を作る場合において一々通報しなければならんのですかと、こう聞いておるのです。
  79. 大江晃

    政府委員(大江晃君) その義務はないのであります。そういう義務は何らございません。いたさなくてもよろしいのでありますが、やはりこういう問題をスムースに解決するためにこれが必要ではないかと考えております。
  80. 伊藤修

    伊藤修君 そうすれば日本国民考えておることを相手方に通知すれば足るのではないのですか。而もその内容を相手方の感情を害しない程度においてこちらが考慮勘案いたしまして決定したものをそれを通報すればいいんじやないですか。相手方の了承、同意を得てきめなければならんということではないじやないですか。
  81. 大江晃

    政府委員(大江晃君) 相手方の同意、了解がなければその法令に定つておることを実行できないというわけではございません。それはやはりそれを基本としてレコメンデーシヨン、勧告をどんどんやつて差支えないのでありまするが、その際に相手国がその勧告を受入れないという場合もあり得るわけであります。
  82. 伊藤修

    伊藤修君 どうも相手方の思惑だけを非常に考えられて、こちらの考え方、少くとも日本国民が期待しておるような国民感情というものを端的に相手方に表現して、これに同意を求めようという積極性に乏しいですね、日本の、あなたがたの考え方は……。却つてあの欧米人の態度のように思うことを率直に述べるほうが好感を持たれると私は感じておるのです。こうあろう、あああろうというような諛ねるような形というものは、今日の外交の上にはとるべきではないと思うのです。それは無理難題、或いはほしいままな、相手方を納得させないような横車的なものを出すならともかくとして、少くと竜常識的において考えられるような程度のものや、而も日本国内の既存の立法例においても見られる程度のものを相手方に示して、以て我々はこうしたものの釈放をお願いしたい、こう申上げることにそう遠慮する必要はないと思うのですが、如何ですか。
  83. 大江晃

    政府委員(大江晃君) 法令の基準その他につきまして当然常識的にかくあるベきであるということを堂々と申上げることは御説の通りでありまして、その点政府も誠に同感なんであります。ただこの戦犯の一般の外交交渉と申しまするか、折衝におきまして我々が感じますのは、関係各国中にはまだまだ日本の戦犯問題に対して非常な敏感な国々が多いわけでございまして、これらに対して我々は政府といたしましては率直に国民の感情なりいろいろな問題を話して参つたのでありまするが、ただそういう折衝の結果から判断いたしますと、まだまだなかなか微妙なものがある。ただ思うことを言つただけで事が簡単に済むというような問題ではないように実は考えておる次第でございます。そういう意味でなるべく事をスムースに持つて行くためには、やはり或る程度先方の了解なりその他を得なければならんというふうに感じまして、そういうふうな方針で進んでおるわけでございます。
  84. 伊藤修

    伊藤修君 これはあなたの御言葉の全体を総合いたしましても、この国内法立場として私は納得できる程度のものであるならば、その条件を法律の上に明記しても私は差支えないと思うのです。これが国民意思である。こういうふうだからどうか一つ考慮してもらいたいというように事後において御折衝願うということも一つのあり方じやないか。国民を背景にして外交交渉をなさるということも強い一つの効果的な行き方じやないかと思うのです。国民のほうの声を抑えて、あなたがただけが矢面に立つていろいろなことを交渉になるより却つて効果的ではないかと思うのですが、そういうようなお考え方になられないですか。そうすればこういう政令に委ねるというような卑屈な態度に出る、或いは立法技術の上から言つても好ましくない形態をとらずして、堂々とここに刑期の四分の一、或いは曾つて衆議院がお考えになつておつたような五分の一という表現もよいでしよう。それに異議は私はありません。又四十年以上の者に対して十年若しくは八年と、こうすることにも異議はないと思うのです。そういうふうになさつて、それを裏付けにして交渉なさるという手もあると思うのですが、それでどうしてもいけないというならば、私はこれは法律を作ることがけしからんとは恐らく向うは言わないと思うし、又そういう内政干渉はできないと私は考えるのですが、国民全体がそう考えておるというものをけしからんと言つてことごとく彼らが否定できる今日立場にあるかどうか。これらの点を考え合せますれば、私はむしろそうして行かれるほうが所期の目的を達する唯一のよい方法じやないかと思いますが、如何ですか。
  85. 大江晃

    政府委員(大江晃君) 国民のそういう大きな希望、熱意をバツクとして堂堂と折衝をせよとおつしやるのでありますが、御尤もでありまして、これも一つの行き方だと思うのであります。ただこの戦犯問題に関しましては先ほども申上げました通り国民の世論なり、そういう動きというものは関係各国にも相当伝つておるわけでございます。ただこれが政治的の力と申しまするか、そういう方向で相手国に当るという印象を与えますると、これは相手国といたしましてもなかなかやりにくいというような面もあるわけでございまして、時に応じてお説のように国民の世論というものをバツクにして強く話をするということは常に政府もいたしておるわけでございますが、こういう法律問題になりますると、又なかなかデリケートな点もあるわけでございまして、こういう問題につきましてはやはり事務的に内々の了承と申しまするか一通報その他によるやり方のほうが却つて事がうまく運ぶんじやないか、こういうふうに考えている次第であります。
  86. 伊藤修

    伊藤修君 どうもあなたたちのそういう内々に了承を受けるというような、そういう態度自体が今日の戦犯各位の不満を買つているゆえんじやないかと思います。又国民の期待に反するのじやないかと思います。私は曾つてこの法律を制定する場合に、一般的釈放の規定をなぜ明示しないかといつて強く政府に指摘したのです。その際この原案を改正するということは当時はGHQがおるためにできないというので、政令のほうにおいてそういうような趣旨をかなえた表現をしようというところにおいて了承をいたしましたのですが、今日国民感情から行きますれば、そうした根本的な法文に明記されておれば、堂々と政府はそれによつて一般勧告ができるんじやないでしようか。そうした点はやはり法律を作る場合において常に将来を考えてやるべきではありませんか。この改正案全体を通じまして如何にも日本国民の感情が戦犯に対して寛容な気持であるということが如実に表現されているのです。あなたの今のお言葉からすれば、これ自体が相手方の気にさわるということになるのです。併しこれは国民感情の全的なものでなくその一部にほかならないのだと我々は言いたいのです。そこまで気がねする必要は私はないと思うのですよ。  それから次に御提案者にお伺いいたしますが、この問題はあとで法制局長の一つ説明を求めたいと思います。これを委員長にお願いしておきます。  次に改正案の第二十四条に「その他特別な事情があるとき。」こういうのがあります。「その他特別な事情があるとき。」とは、今提案理由説明の中でも、父母兄弟ではないけれども父母にひとしいような人、或いは災害その他こういうふうに御指摘になつておりますが、こういうような事情は政令において定めるというつもりでいわゆる事務的な事項ですか、或いは誰の認定に基くのですか、これは「その他特別な事情」というものは誰がどういうような範疇においてこれを定めようとするのですか。
  87. 松岡松平

    衆議院議員(松岡松平君) お答えいたします。その点につきましては政令にゆだねる意図ではないのでありまして、結局これは具体的な事例に基きまして拘禁しておりますところ審査会がこれをきめるのであります。特別の事情であるかどうかを審査会がきめる。でそう考えた根本の趣旨は成るベく幅を広く持つて行きたいという考えがありますので、政令にはゆだねる意思はございません。
  88. 伊藤修

    伊藤修君 審査会でこれを審査の対象とすることはもう法文上明らかなのです。ただその審査会が特別な事情というものに対する判断をなす基準というものは、審査会に全的に委任してしまうのか、あらかじめここに提案理由に掲げているような基準を取られるのか、どの範囲においてそれを定めようとするのか。上げてどんなことでも特別な事情だと言つてきめられるのか、審査会の御意向にすべて任かしてしまうというのか。その点を伺うのです。
  89. 松岡松平

    衆議院議員(松岡松平君) お答えいたします。結局この審査会といたしましても現在の収容されている人たちの何といいますか、強い欲求なり希望なり並びにその家族それらを取巻く周囲の人たちの欲求が強い。そう一いう欲求の中にいるわけでありまして、その中で判断する結果でありますから受刑者を大いに擁護するということに相成りまして、決して御心配になるような結果を導くものではないと思います。
  90. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) 今の新らしく設けました第四号の特別な事情を政令か、或いは何かできめるか、或いは審査会にまかせるかというお話でございますが、これは審査会にまかして、審査会でこういうことを相当弾力性を以て判断して処置してもらいたい、こういう趣旨でございます。
  91. 伊藤修

    伊藤修君 趣旨はよくわかりました。然らばその範囲はどの程度まで特別の事情にこれを応用するつもりか、それをお伺いします。
  92. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) この範囲の問題でございますが、これは一々の場合を実は考えてみたのでありますが、併しこれを一々具体的に挙げますと、非常に又限定され弾力性のないものになつてしまいますので、大体私どもが考えていますのは今申上げましたような身分の問題も拡げて考える、或いは農繁期等にも帰れるようにしたい、又巣鴨に御承知のように現在八百名ばかりおりますが、これらの約三分の一は実は孤独者、親類縁者のないようなものがございます。こういうものになりますと、これらは父母、配偶者というようなものも子供もございませんので、この恩典を受ける機会もないということになりますが、こういうものもこの弾力性のある規定によりまして要するに審査会で、その戦犯者の身分について特にそういう特別な事情が要するに一号、二号、三号等に或る意味では準じて考えられるような特別な事情があるという良識ある判断がされる場合には、その判断に従つてこの一時出所をやつて頂く、こういう趣旨でございます。
  93. 伊藤修

    伊藤修君 小木君のお答えによりますと、二十四条の一号乃至三号に準ずるような事情のある場合にというふうに解釈せられるごとき御答弁ですが。
  94. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) お答えを申上げます。準じてと申しましたのは、ただそのまま準じてという意味ではございませんので、例えば今申しましたように、孤独者でありましても、将来これは出まして、殊にB、C級に多い、若い人たちに多いと思いますが、これはどうしても家事の整理をしなければならん、或いは将来結婚しなければならんような事情もございますが、そういう場合にはこれは一号、二号、三号に準じて、どのくらいで準じてというわけではございません、その中に盛られている意味趣旨というのはこれに準じて特別の事情ある者としてこれを一時出所の恩典にあずからせたい、こういう気持を申上げた次第であります。
  95. 伊藤修

    伊藤修君 これは私は何故お尋ねするかというとこれがこの法律の大きな生命になると思うんです。この提案理由には、「震災、風水害、火災等」とこう挙げておるでしよう。これはすでにこの三号において規定しておることです。提案理由において改めて特段に御説明になるまでもないことだ、だからお聞きしておるのです。これは特別の事情じやないのですから、特別の事情というものがどこまで考えられておるのかというのです。
  96. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) これは提案理由が少し舌足らずだつたかも知れませんが、よく読んで行けばその意味もおわかり願えるかと思いますが、こういう趣旨でございます。御指摘のように「震災、風水害、火災等の場合の他にも」とこういうわけで「他にも」というところに特に意味を持たしたので、文章が実は甚だ……。
  97. 伊藤修

    伊藤修君 だから私は「他にも」ということを聞いておるのです。何を他にも予想しておるか。法律を作る場合においては少くとも予想して法律を作るべきであつて、何を予想して他にもと書いたのかと、それを聞いておるのです。
  98. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) それは先ほど申しましたように、この中の提案理由にも書いてございますが、叔父、叔母、親代りになる者、兄姉、或いは農繁期の問題、或いは家事整理とかいうことを実は考えておるものでございます。
  99. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、そこまで考えられると、農繁期、家事整理、これは特別の事情じやないですね。農民生活の当然の予想されるあり方なんです。そうすると、会社に勤めておる、今日は出勤しなくちやならん、家庭の中で年末でこれだけ品物を作らなくちや年越ができないとかあえて農繁期と区別できないでしよう。そうすると、すべてそれが入るというお考え方か、それも特別の事情として考えておるのか。そうすると、もうことごとくということになるのですね。私はどちらでもよろしいのですよ、ただ明らかにしておきたいのです。農繁期を特別の事情にお取上げになるならば、職工であるとか家庭工業をやつておるというものは、年末は特別の事情になつて来るのです、盆暮は必ず特別の事情になる。そうぜんと瀬越しができないです。それはひとしく取入れですからね。
  100. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) これは卒直に申しますと、現行法ではこの一号、二号、三号というので非常に窮屈になつておりますので、できるだけ戦犯者の留守家族、或いは又本人の将来の生活のことも考えられますので、人道的な立場からできるだけ広く弾力性のある法律によりまして仮出所の恩典に浴せしめたいと、こういう趣旨でございます。
  101. 伊藤修

    伊藤修君 目的はよくわかつているのですよ。あなたたちの気持はよくわかるのです。法律を作る以上は、聞かれた場合にどういう説明をせんければならんかということになるのです。いわんや、これを取扱う人はどこまで取扱つてよいかということを、少くとも国会において論議を戦わしておかないとよりどころがなくなるのです。だからあなたに立法者としての意見をお伺いしているのです。どこまで予想してこういう表現を用いたかということをお伺いしておるのです。趣旨はよくわかつているのです。できるだけ現在の在所者を広くこうした恩典に浴せしめようというお考え方に対しては我々も敬意を表する。併し法律を作る以上は、これを扱う人もこれに服する人もいろいろ立場がある。すべての人がそれをわからなくちやならない。
  102. 岡部常

    委員長岡部常君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  103. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記を始めて下さい。
  104. 伊藤修

    伊藤修君 今までの小木専門員の御説ではどうも「特別な事情」という法律用語をお使いになるだけの特別な事情はないのですね。それは普通の事情です。だから「特別な」という文字は要らんことになつてしまう。まあさように広く解釈されることは結構です。併し何かこれに対してはやはり基準というものがあるべき筋合のものではないか、かように考えます。あなたの言うような御説明にあるような事情がいわゆる「特別な事情」ということになりますれば、およそ法律の特別な事情というものの解釈とは非常な懸隔があると私は考えるのです。  次に五日を十五日にしたことは、これはよろしいでしよう。この十五日にいたしましたことを再延長できると書いてありますが、再々延長ができるかどうか。
  105. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) これはできるということでございます。
  106. 伊藤修

    伊藤修君 この法文の解釈で再々延長できると解釈できますか。
  107. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) これは起訴前の勾留期間等によくある例でございますが、通じて何日というようなものではございませんので、そういう趣旨から含みを持つたようなことにもなりますが、できる、こういうことになります。
  108. 伊藤修

    伊藤修君 勾留期間延長の場合において、「通じて」と書いてありますが、十日間を延長することができる、こう書いて、それが再々延長できるという解釈をとつたら大変なことになりますから、この法律だけで目的を達成するためにこの法律をなんでもいいから作つてしまうというお考え方だから、私はお聞きしている。こうした観念が次のほかの法律に影響して来る。あなたのような解釈がほかの法律を作るときにとられて、再々延長ができるからといつて勾留をどんどん再々延長されたらたまつたものじやありません。それを心配するからお尋ねするのです。
  109. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) これは実は先ほどのお話になりました戦犯者について、国民の非常に重大な基本人権にも関係しますが、一時出所につきましては日本がその決定権を持つておりますということが一つと、もう一つ法律でほかの場合にこういうことをやる悪例になりはせんかというお話だと思いますが、この法律でこれは成るべく長い期間亘つてできるように弾力性のあるものを作つておつたのでありますが、ほかの法律でそういうことが、例えば勾留の例を今お出しになりましたですが、勾留の例のような場合には人の自由を拘束する、勿論これは私どもは絶対にできない、そういう非常に基本人権にそれこそ真正面から関係することでございますから、そういう表現もあいまいなことであつてはいかんと思いますし、これはできるだけ弾力性を持つて委員会が良識に従つてこの運営をやつて頂きたい、そういうふうな趣旨からこういう規定を設けたのでございます。
  110. 伊藤修

    伊藤修君 御苦心のほどはよくわかりますが、この法律を通じて考えるときにおいては先の「その他特別な事情があるとき。」ということと、今の十五日延長ということと、並びに第三点には、これを再延長できる、而もその解釈は再々延長、再四延長もできるという解釈をおとりになるということになると、この三つを総合いたしまして結局は一時出所の名の下に永久出所、仮釈放をするというお考え方に到達するのではないかと思いますが、果してそうしたことが法律技術だけで我々が賄つたと、こう考えておるが、相手方がそれを受入れるかどうか。先ほど外務省の人が言うたような点に逢着するのではないでしようか。
  111. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) これはいささか理窟になるのでございますが、一時出所の点は御承知のようにこれは向うの勧告決定というものでもございませんで、日本政府の限りにおいてやられると思いますから、その点の心配はないのじやないかと思います。
  112. 伊藤修

    伊藤修君 その点の心配がないということはおかしいのじやないですか。さつきあなたは通告をして同意を求めると言つておつたのじやないですか。これを又通告をしなければならん、向うでもばかじやないからこれを見ればこの意味が奈辺にあるかということはすぐわかる。してみますると、趣旨は非常に結構ですよ。相手方をだましたりと考えておつても相手はだまされない。日本人の考え方はこういうようにこすい考えを持つのだというふうに受取られやしないかということを心配するのです。
  113. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) そういうお話の点も誠に御尤もと思いますが、若しそれをやりませんと、例えば危篤の状態が、これで若し、十五日と四項におきます延長期間十五日で併せて三十日、これだけにいたしますと、これは危篤の状態が続いたり、或いは危篤ということで帰つておる間に又死亡するというようなことの場合に、これでは賄えない場合も出て参りまするので、そういうことも考慮の上で再々延長と申しますか、そういうことも実は考えたのであります。
  114. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたはここで思いつきの答弁だ。この法律がそもそもできたときの相手国の考え方というものは二十四条の後段の但書にはつきり出ておるのですが、同一事項について殆んど一時出所は許さないという強い意思が指示されていた。それを今度は削つてそうしてここに十五日という幅を持たせる、これは結構ですが、それを再延長される、これも結構でしよう。それをなお拡大解釈して再三延長、再四延長というところまで持つて行くということは果して納得されるかどうか。むしろこの点のほうが相手方の感情をそこねるものではないか。先ほど外務省の人のお話から行きますれば、却つてこのほうが向うの忌諱に触れやしませんか。それともこれを再々延長いたしませんで一時戻つて又改めて特別の事情のある場合には許すというならこれは私は説明もできると思いますが、再四、再五、再六と、こういうように行つて無限に続けば、結局は一時出所ということが仮釈放という目的を達成することになり、さような理窟は相手国としても当然相当な立法者がおるのですからわかるのです。だましているのと思つてこちらが得々としているのは却つてこれはけつをまくられる虞れがありますよ。
  115. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) 勿論論理的に私が御説明いたしましたようにいたしますと、伊藤委員の御説明通り、今までのように無期限にどんどん延びる、こういう結論にはなりますが、四項にもあります通り、延長する期間の点につきましては、これは前項の規定を受けまして法務省令の定めるところということがございまして、その点の運用については、この法務省令で適当な方法を講じてもらいたい、こういうふうに思つておるわけであります。危篤なんかの場合でも全然延ばすことができないということになつては誠に気の毒な状態も起りますので、そういうことを特殊な場合も考えてそれが行けるようにというわけでこれを書いたわけであります。  それからこれに関連しまして、二十四条の一項の但書が実は削除になつているのでございますが、これも先ほどお話がございましたように、現行法では例えば父が危篤になつてそれで一遍五日帰つた、ところが帰つて小康を得たようだというので又巣鴨に入所して来たところが十日か二十日のうちに死んだ。こういたしますと現行法では危篤から死亡と、死亡ということで出るわけには行かないようにしばつてある。こういうことは誠に非人道的な私は問題じやないかと思います。従いまして、こういう但書の削除の点も考慮して、実は第四号というようなものを設けた次第であります。
  116. 伊藤修

    伊藤修君 趣旨はよくわかるのです。又但書の削除も結構です。併し少くとも四号に規定するような表現によつて再三、再四というふうな解釈をとるということは、ちよつと誤りじやないかと思うのですね。で、それを省令によつて賄うというに至つては、私は立法者として如何ですかね、法律のほうで賄えないものを省令のほうで賄うというのは、省令のほうでそれを明記するというなら、こちらでもつてはつきり明記すべきです。だからそういう解釈では相手方には却つてよくないのじやないでしようか。無期限に出してしまう、十五日を題目にしてしまうのではなくして無期限に出してしまうというのと少しも変らない。それでもつて相手方の御気嫌がとれるかどうか。
  117. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) 誠に不十分な説明でございますが、論理的には無期限になりますが、特別な事情というものを先ほどいろいろ二、三の例をとつて説明いたしましたが、そういう場合があつたとき、そういう事情が続くとき、一つの制約はこれは受けなけれなばらんと思いますから、無期限に野放図に出してしまうという趣旨では勿論ないのでございます。
  118. 伊藤修

    伊藤修君 その基本たるところの特別の事情というものが、すでに御説明の全趣旨を総合いたしましても、広くあらゆる場合をとり入れようというので、こういう表現を用いたのだとおつしやつているのだから、してみますと、それと兼ね合せましてこの解釈が無期限に論理的になる以上は、結局永久に釈放すると同様の結果を招来するのじやないか。それが相手方に納得できるかどうかということを聞いているのです。先ほどの御趣旨によりますと、相手方の態度解釈というものに対して非常に御遠慮がちの政府であらせられるのだから、そういうおかたがこういうものを出して論理的に向うに推し進められた場合にはどうなるかということを心配の余り、私はお尋ねするのです。  もう一つついでにお尋ねしておきますが、第三号のその特別な事情を生ずる書類というのはあるのですか。農繁期だという書類がどこにあるのです。それはどういう書類を出させるおつもりか。書類によつてまあ危篤の場合とか病気の場合とかいうなら診断書を書けばわかるでしようが、家庭整理をするとか事実をとらえて特別の事情ということにおいて全部を賄うという立法者のお考え方です。してみますれば、こうした条件をつけて書類というものをここで以てつけて、そこに一つの制約をつけるということは、この立法考え方がここにおいて押えが一つできてしまうということになりやしませんか。全趣旨が貫かれていないのです今のお考え方なら。
  119. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) 今仰せになりました農繁期或いは家事整理というような問題を考えてみましても、これは農繁期も地方によつてそれぞれ違うでしようし、そうして一地方におきましても大体の期間は同じでありますけれども、その当該戦犯者のうちの例えば田植をするというようなことは、その部落、その村等からすればこれはおのずからそういうことは証明して頂けるのじやないかと思いますし、それから家事整理のような場合につきましても、その戦犯者の郷土の村長とか或いは部落の人とか、こういう人たち等の証明といいますか、そういうものを出すこともできやせんかと思います。勿論危篤或いは死亡というような場合、これは医師の証明或いは市町村長の証明或いは部落の人たちの証明というようなことも考えられますので、そういう書類で一応の判断ができる、こういうふうに考える次第であります。
  120. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、この四号に規定するところの特別の事情を証明するというのは証明の程度でいいというわけですか。
  121. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) 厳格の意味で、訴訟法などの疏明とか証明というような場合の証明に入るのか、疏明に入るのかということではなくつて、先ほど説明いたしましたような書類が出て参りますならば、それによつてその事情が判断されるということができる程度のものであればいい、こういうふうに考えております。
  122. 伊藤修

    伊藤修君 だから私のお尋ねするのは、ここに特別な事情を証する書類と、こうあるからその証することは証明の程度で足るのかと、こう聞いているのです。
  123. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) これは訴訟法とちよつと違いますので。
  124. 伊藤修

    伊藤修君 訴訟法と違うことはわかつているのですよ。それの性質を聞いているのです。
  125. 小木貞一

    衆議院専門員(小木貞一君) 私は訴訟の場合の疏明の程度で足るのじやないかと思います。
  126. 伊藤修

    伊藤修君 程度という言葉を使つているのですが、それじやこの際参議院の法制局長の奥野氏の一つ説明をお伺いいたしたい。この十六条の「第一項の期間は、政令の定めるところにより」という表現について、第十六条はあたかも刑法の二十八条に相応するものである、こうした人身を拘束するものについての期間を定めるに当つて法律によらなくてはならんと考える。それを政令にゆだねても差支ないかどうか。又差支ないとすれば、およそ基本人権に対する事項について政令にゆだねるというあり方が正しいかどうか。私の見解は、こうしたことはまさに立法事項であり、国会において当然これが審議の対象となり、国会においてその意思を明確に法文の上に現わすべきものである。刑法においては特段に二十八条を設けておることから勘案いたしましても、こうした事項を政令にゆだねるということは立法形態としては非常な異例な措置だと思うのですが、あなたが法律家として一つどういう御見解をとられるかお伺いしたいと思います。
  127. 奧野健一

    法制局長(奧野健一君) お答えいたします。今回の十六条第三項に「第一項の期間は、政令の定めるところにより、これを短縮することができる。」とありますが、第一項におきましてはお説のように法律を以つて明確に刑期の三分の一或いは十五年というのを以て仮出所の適格性を規定いたしておるにもかかわらず、第三項で第一項の期間は一切政令で短縮することができるというふうに規定いたしますことは、これは普通の法律の体裁としては甚だおかしいので、十六条一項一号、二号で明白にはつきり法律で規定したものを政令でこれを極端に短縮ができるというのであれば、むしろこの法律の規定を正面から三項で政令によつて崩すということを規定しておるのとまあただ形式的に見ますとそういうふうになりまして、これは立法体裁としては甚だおかしいのではないかというふうに一応考えます。ですからまあ、而も政令でこういうふうに短縮するというのは個々的にやるのではなくて、政令という一般的な規定でやるということになりますと、法律ではつきり十六条一項一号、二号できめておきながらここで又同じく抽象的に政令で短縮するという二とは矛盾するように思われます。個個の特別の事情があつた場合において個々の処分で或る最低の限度をきめて、その範囲内において個々の特別の事情のある場合においては短縮ができるというのであればわかるように思いますが、こういうふうに両方法律では明白にきめておきながら政令で殆ど骨抜きのようになるというふうな立法のやり方は、余り面白くないと思いますが、ただこれは政令で短縮できないかというと、これは人の自由を拘束するのを少くするのでありますから、政令でやることはこの場合に違法というのではないと思います。政令で長くすることは違法と思いますが、自由の拘束を少くするものである限りにおいては政令で短縮するということそれ自身を違法とは考えません。併し今度の十六条の三項のように、一項ではつきり規格をきめておきながら、政令で自由に、まあ自由であるかどうか政令の内容によつてわかりませんが、政令で一般的に短縮できるというのは非常に矛盾するような感じを持つております。
  128. 伊藤修

    伊藤修君 それでは内閣の法制局の人が出ていらつしやるようです、林君の一つ意見を伺いたいと思います。
  129. 林修三

    政府委員(林修三君) これは今奥野法制局長からお話がございました通りに、基本的人権等に関することは法律を以て規定すべき原則であることはこれはもう当然のことだろうと存ずるわけでございます。併し一面から申しまして立法事項は絶対に政令に委任できないかというと、これは御承知の通りに或る特定の事項を限り特定の場合を限つて政令に委任するということも今までなかつたわけではないと思います。特に今回の場合のように拘束する期間を短くするという限りにおきましては、今奥野参議院法制局長からお話がありましたように必ずしも不適当とは言い切れないのではないかと存ずるわけでございます。特にこの場合の事情考えますと、これは先ほど外務省からもお話があつたように、やはり連合国側の意向を或る程度確めて、この要請自身は勿論何の拘束も日本側としては勧告にはないはずでございますが、この勧告が実現できるような方法で、やはり連合国側の意向を或る程度確めた上で、こちらが勧告をする場合を或る程度きめると、そういう意味におきましてはやはりこれは時々刻々におきまして、或いは国会開会中においてでなくて閉会中において向う側の意向が或る程度確められるというような場合もございましようし、そういうことを考えれば或る程度臨機応変にこういう政令を出して、こういう拘禁者の自由を成るべく早くとつてやるほうに向える道を開いておくということは必ずしも不適当なことではなかろうとかように考えております。
  130. 伊藤修

    伊藤修君 じや林君にお伺いしますが、この法律政府のほうで起案されたのですか。
  131. 林修三

    政府委員(林修三君) いやそうではございませんで、これは衆議院の委員会のほうで御起案になつたものと存じます。ただ事前におきましてこの骨子につきまして法務省当局から御相談を受けた事実はあると存じますけれども、勿論我々が御相談を受けた通りの形でこれは出ておるわけではございません。
  132. 伊藤修

    伊藤修君 だから形式は衆議院の法務委員会が御起案になつたことになつておりまするが、実質は政府において或る程度の原案の原案をお作りになつて、そうして議員の名を借りて御提出になつているのでございますか。
  133. 林修三

    政府委員(林修三君) その点の事情は実は私よく存じません。法務省のほうと或いは議院の委員会のほうでどういう御交渉があつたか存じないわけでございますが、ずつと前にこれのまあ原案の原案というようなものを見せられたことはございます。それと只今衆議院のほうで御提出になつたものとは一応の直接の関連はないものではないかと存じております。
  134. 伊藤修

    伊藤修君 だから一応はあなたのほうで目をお通しになつた事実は今のお言葉によつても推察できるのですが、その隙において今御説明なつたように一応法律で以て政令にゆだねることができる、何となればそれは相手方と交渉して交渉の結果を政令で現わすのだから、たまたま国会が開かれていないような場合においてはこれは遅れるから云々というような御説明も付加えておるわけです。そういたしますれば結局政令を作るにいたしましたところが、相手方の意思がはつきりするまでは釈放することはできやしないのです。勧告することもできやしないのです。この法律の狙うところの効果というものは、それが明確になつて政令でできるまでは結局はできないのじやないですか。
  135. 林修三

    政府委員(林修三君) これは政令と申しますか、要するに厳密な条約の解釈から申しますれば、日本側なら勧告をし、これに基いて連合国側がこれに対してこの釈放を決定いたしませんければ、できないわけでございます。この十六条の規定は一応この仮出所の適格条件ということで、日本側といたしましても、こういう場合には伺う側に仮出所の要請をするということを、或る程度現わしたものであろうと思うわけでございます。そういう意味におきましては、この政令がきまりそれに基いて日本側が要請をし、向う側がその決定をしませんければ、実際の仮出所はできないというのはお説の通りだと思います。ただそこで申上げますと、結局先ほど外務省のほうからも御説明がございました通りに、やはりその相手国の事情によつて個別的にいろいろな問題もございましようと思う点がありまして、或る程度個別的に、例えばこの政令の条件を変えるようなことも場合によつて考えられるのじやなかろうか。法律によつて或る条件を向う側にぶつけると申しますか、ぶつけるわけではございませんがそういうことをはつきり書くよりも、むしろ個別的に折衝して大体向う側もそれで呑みましよう、それで実際の仮出所の決定をしてくれそうだと、こういうような条件を大体見きわめをつけて政令を出したほうがスムースに行く、こういうことがあるのではなかろうか。この特別の場合の事情としては、そういうことが考えられるのではなかろうかと想像しておるわけであります。
  136. 伊藤修

    伊藤修君 だからあなたの御説明を通じて了承し得ることは、結局はこの法律を作りましても、今直ぐにそれを勧告することができないのじやないですかと聞いているのです。政令ができない限りは勧告はできないのじやないかと聞いているのです。
  137. 林修三

    政府委員(林修三君) 勿論この新らしく入りました法に基きまして、勧告はやはりこの政令ができなければできない。従前の十六条一項一号、二号は、これは或る程度できなくても勿論できるわけでございますが、これを更に条件を緩和したような勧告は、この政令が出なければできないということはおつしやる通りでございます。
  138. 伊藤修

    伊藤修君 内閣法制局のほうでは、奥野氏のおつしやつたような表現ではなく、個々の実情を勘案して、そうして勧告ができるというような表現にこの法律を書き改めたほうが却つて実用的じやないのですか。又効果的でもあるし直ぐそれが役に立つのじやないですか。
  139. 林修三

    政府委員(林修三君) 個別的にまあ還元して参りますれば、最後の条件としては、連合国側の同意を得たというようなことを書くことも一つの或いは方法とも考えられますが、それもこの私どもの考え方といたしましては、勿論この法文上に書くというような考えもございまして、やはり或る程度その連合国側の意向もたしかめれば或る程度の基準はできるのじやなかろうか、そういうところから基準もできるのではないか。それは勿論国によつて違う、或いは時期によつても違い得る、そういう意味におきまして、法律ではつきり書くよりはやはり政令で或る程度円滑に運営ができるほうがより最もいいのでありまして、この程度考えたわけでございます。
  140. 伊藤修

    伊藤修君 私は何もこの法文の上に相手方の同意を得たというような卑屈な言葉で表現するということを申上げるのではないのです。そうではなく、勧告権はこちらにあるのだから勧告権が容易に発動し得るような、而も相手方の干渉を受けないように個別的なそうした勧告ができるというような表現を用いて、直ちにこの法律がこのまま動き得るような構成に表現を変えたらどうか。先ほど奥野氏が指摘されたような表現にしてはどうか。そういうことを考えないかどうかということをお尋ねしているのです。
  141. 林修三

    政府委員(林修三君) 今おつしやつたような趣旨で参りますれば、これは法文の技術といたしましては、特別の事情がある場合において、前項各号に当らない場合でも勧告してもよろしい要請適格条件のものがある、こういうような表現になるかと存ぜられたのであります。それはやはり一応の考えといたしましては、そういう考え方は勿論成り立ち得ると考えますけれども、先ほど外務省からお話がありましたような考え方を敷衍して考えれば、やはり日本側の条件として或る程度向う側の納得した条件が明示されたほうがよりいいのではなかろうか、こういうふうな意見考えられる。そういう意味でこういう表現も成り立ち得るのじやなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。
  142. 伊藤修

    伊藤修君 もう一点、あまり長くなりますから。一体内閣の法制局は、この法律は渉外関係を持つておりますから相手方の御気嫌をうかがうということもあり得るかも知れませんが、その他の一体現在日本にある国内法で、相手方の御意思を伺わなければ改廃できない法律があるのですか。
  143. 林修三

    政府委員(林修三君) 私どもも、それは実は相手方と申しますか、普通の場合にはそういうことはないはずであります。ただこれは御承知の必要があると思いますが、国際条約がそういうふうになつておりますような法律は、例えばこういうふうなものにつきましては国際条約が変らない限りは国内法も変らない。こういうものはあると存じますけれども、今おつしやいましたような意味のものは現在ちよつと私の記憶には残つておりません。
  144. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 ちよつと私斎藤さんに伺うのですが、今巣鴨の在所者であつて、この規定に基いて刑期三分の一を経過して釈放の適格者となつている者はどのくらいありますか。
  145. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 来年の一月末になりましてもまだ十六条一項一号、二号で適格性を有しないというような長期又は無期の刑期の人は四百十六名ございます。
  146. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 四百十六名ですね。そこで今適格者となつている者は幾らありますか。
  147. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 昨日現在で適格性を有している人が四百二名になつております。
  148. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 今適格者が四百二名ですか。
  149. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 四百二名でございます。
  150. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 提案理由の中には三百九十六名となつております。ああこれは勧告を終了した者ですか。
  151. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) 勧告が済んだ者が三百九十六名でございます。
  152. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 三百九十大名は勧告が済んだ者、それで適格者というのが四百二名ある。
  153. 斎藤三郎

    政府委員(斎藤三郎君) そうでございます。
  154. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そこで提案者に伺いますが、現在の刑期三分の一を経過した者であつて適格者にして、而も現在四百二名なお残つているというのですが、承わるとその中で三百九十六名はすでに仮出所の勧告を終了しているにかかわらず今なお出所することができない。出所することができないということになつておりますにもかかわらず、更に刑期三分の一をもう少し緩和して行こうということについては、何か本年の七月に法律二百三号ができてまだ日ならざる今日において、更にこれを改正してこれを緩和する規定を新らしく作るということについては、何かのヒントを得ておるものがあるのですか。何か変つた状況がそこに現われてそれからこういう法律の提案ということになつたのですか、期せずしてこの法案を作つただけであるかどうか。
  155. 松岡松平

    衆議院議員(松岡松平君) お答えいたします。それは中におる人たちの空気及びまあ世論の反映を受けて来たわけであります。
  156. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記をとめて下さい。    午後五時五十一分速記中止    —————・—————    午後六時十五分速記開始
  157. 岡部常

    委員長岡部常君) それでは速記を始めて下さい。この程度で休憩いたします。    午後六時十六分休憩    —————・—————    午後八時三十三分開会
  158. 岡部常

    委員長岡部常君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引続き平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律の一部改正案を議題に供します。御質疑のあるかたは御発言願います。
  159. 伊藤修

    伊藤修君 休憩前において各改正点について質疑を行いました結果、提案者の御意思のほどはよく付度できるのでありますが、一方技術上において我我としては納得しがたい点が多々あるのであります。且つこの改正案を制定した結果これが対外的に及ぼす影響等、そういう点を考うるときにおいては、にわかにこれに対して全面的に同意しがたい点が出て来るのであつて、参議院に席を有する我々としまして、又私といたしましても立法技術的に見ますれば、これがどうしても修正をなして法律体系を整えるということが正しいあり方だと、かように存じます。少くとも第一点の改正点に対しましてはまさに立法技術の面において前例を見ない、或いは国家総動員法の中にそうした悪例があつたように洩れ承わつておりますが、それ以外におきましては到底さよう再立法体系というものは認められがたいと思うのです。この点に対しましては、立法府にある我々としてこうした案をよきものとして同意したということは忍びがたい。この点につきましては提案者たる田嶋委員長におきましてこれを絶対前例としない、且つその点に対しましては立法体系においても疑義もあり、不体裁な点もあるということを率直にお認め願つて、将来におきましてはこうした体系をとらざることを一つ責任を持つて答弁をお願いいたしたいと思うのです。  それから第二の点は、「特別な事情」というこの表現方法につきましては、少くとも一号及び二号と相比較いたしまして、且つ、本文の「特に必要あると認める」という主観的の表現と相待ちまして、今度の改正の客観的表現等を睨み合した場合において、そこに少くともその制約というものが大幅にこれが緩和されるという点が窺われるのであります。このことは第三の改正点の十五日の期間を認め、而もその十五日間は再延長とか、又これを文理解釈上再々延長、再四延長が認められるという事項と相待ちまして、この法律の一時出所というものが無際限に出されるという理論的な解釈が生まれ出ずるのです。そのことは延いて以て本法の意図するところの精神というものが或いは諸外国に誤解される虞れがあり得ると思います。これは少くとも運用の面において我々はそうした諸外国を欺瞞するものではない、正しい運用をして以て国民の期待に副わしむるというような解釈をとり、又運用においては十分留意するべきものではなかろうかと思います。この点に対する田嶋委員長の御言明も伺つておきたいと思うのです。  なお、最後に一言衆議院の各位にお願いしておきたいことは、我々第一国会から衆議院において立案される議員立法というもののあり方について、少くともお互いに立法府に携わるものといたしましては、これらの法案立案に際しては事前に何らかのお打合せをお願いいたして、両方が十分に了承の下によき法律を作り上げるということに御考慮を賜りたいと思います。かように会期切迫、会期切迫は語弊がありますが少くとも休会に入らんとする余す時間少き折柄に、何ら法案の内容をも我々に提示することなく、この乏しい時間にかくも重要な法律、而もそれが対外的に及ぼす影響等を考慮するときにおいて、この法律に対するところの取扱について非常な苦難な地位に参議院を追込むという結果に至るのであります。かようなあり方は私は立法府の協力という意味から申しましても非常に好ましくない態度ではないかと思います。爾後におきましても勿論でありますが、どうかこういう点に対しまして今後かようなことがあり得ないように少くとも皆さまにおいてお考えあらせられる法案がおありになる場合においては、事前においてよく我々の委員長のほうへ御連絡賜わりまして、皆さまの意図せられるところのものをお示し願つて御協力を申上げるというような方途にいでられんことをこの際特に御注意申上げて、我々の希望を申上げておきたいと思います。この点に対しましても将来の取扱いについて一つ田嶋委員長の責任ある御答弁をお願いいたしておきたいと思います。
  160. 田嶋好文

    衆議院議員(田嶋好文君) 只今の三つの御質問に対しましてお答えいたします。三つともそれぞれ誠に御尤もなお説でございまして、衆議院法務委員会といたしましても考える点が多々あると思います。第一の点につきましては、先ほど私も申上げましたようにお説のごとく衆議院法務委員会も進みたいと念願して参つて来たのでございますが、さつき申上げましたように、一つのまあ体系を崩すことになるかも知れませんが、国際情勢下における法案という制約がありますためにこうした誠に申訳がない体系を崩すような法案になつたわけでございます。これは決してこの法案を以て先例とし以後こうしたことをしようという考えに出発しているのではないのでありまして、この法案を以て最初とし最後とするはらでありますことは、委員長の私のみならず法務委員会全体がその気持でありますことを御了承願いたいと思います。これは十分委員諸君にも意のあるところをお伝えいたしまして、以後こうした法案を再び出さぬことに十分なる注意と努力をいたすつもりでございます。  第二の点でございますが、この点は御尤もなお説でございまして、対外的に響は大きいと思います。委員会におきましてもこれを以て全面的な釈放を敢行したと同一の結果を生もうというような悪意のあるものではないのでありまして、ただ今日の一時出所の規定を以てしては余りにもきつ過ぎる。又社会情勢にもマツチすることにならない、世論のこうして向上している時代、世論に遅れて行く、こういう立場から社会世論にむくいて行くべく、又社会の情勢にマツチすべくこの法案を出したという趣旨でありますことを御了察願いたいと思います。法務省法務省令を以て規定することになつておりますが、これは十分その趣旨を体してやつて行けるものだと私たち考えているのでございます。どうかその点も御了解を願いたいと思います。  最後の連絡の点でございますが、これは前々から私たち考えている点でございまして、特に重要なる法案に当りましては十分なる連絡をとつて行く覚悟でございましたし、今日の法案の立案に当りましても、私自体といたしましてそうした観念の下に出発いたしまして万遺漏なきを期したのでありますが、不幸にいたしまして今日になつてみますと誠に不行届な点が多分にあつたことを認めざるを得ないのでありますが、併し決して真意は参議院を無視するところにないのでございまして、参議院を尊重するところにあるのでございますからこの点も悪しからず御了承願つて、今後かかることのないように十分注意をいたして行くことを御了解願いたいと思います。  今度の法案がこうしたことになりました理由は、この法案の性質それ自体が物語つておりますように、突然この会期を控えて出さなければならないというような事情が生れまして手落の点が生れたように私たち考えているわけであります。今後は決してこの法案を先例として手落の生れることのないように努めますことを重ねてお誓い申上げます次第であります。
  161. 押谷富三

    政府委員押谷富三君) 只今伊藤委員の御発言中、一時出所の問題につきましてこの機会に政府考え方を申上げたいと思います。  政府におきまして戦犯者に対する関係について重点的に考えておりますことは、巣鴨の戦犯者は一日も早く関係国の同意を得まして釈放をいたしたいということと、又一面外国におります戦犯者の速かなる内地送還を切望いたしているのでありますが、この二点から考えまして、その影響するところ考えまするときに、みだりに一時出所の期間を延長すべきではないと考えられるのでありますが、併し真にその必要ある場合においては再度延長することも又止むを得ないと考えております。
  162. 岡部常

    委員長岡部常君) 他に御質疑がございませんければ質疑は終了したものと認めて、これより討論採決に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 岡部常

    委員長岡部常君) 御異議ないものと認めます。これより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明かにしてお述べを願います。
  164. 中山福藏

    中山福藏君 私はこの法案に賛成するものであります。その理由を四つの要望を附して一つ申述べたいと思います。  第一に、私ども只今提案者並びに伊藤鬼丸委員からいろいろと質疑応答があられました点から推しまして、本来いわば感情的に申しますと、大体卑俗な言葉でいわゆるせつちん詰という言葉がありますが、それと同じような立場に私共は立たされているような気持が私はするのです。戦犯者並びにその背後に控えておりまするところの家族並び縁者関繁らいろいろと考えまして、この場合はそういうふうな感情を抜きにして一真にこれらの人々の立場に立つて冷静に判断して、これがたといそういうせつちん詰に会つても、やはりこの問題というものは一応参議院の立場としては処理しておかなければならん、大所高所からこれを善処しなければならんと考えて、私はこれに賛意を第一に表するのであります。  第二の点を申上げておきたいと思うのですが、大体仮出所の事情の発生その期間、こういうふうな問題並びに宣誓仮出所後のその期間を再度延長するかどうかという問題、この二つの点が改正案の骨子になつておるように思いますが、私は大体根本対策というものを戦犯については一応考慮しなければならんのではないかと思います。こういうふうな臨時対策だけではなくして、もう少し法律家としては根本的なこれは考えを持つべきではないかと私はふだんから戦犯については考えておる一人であります。従つてこういうふうな対外的な関係を含んでおる問題をお出しになるとすれば、もう一歩進んでなぜ根本対策というものをお考えにならないのか。これはその内容は私考えておりまするけれども現在は時間がありませんから申上げません。いわばこれは枝葉末節の点です。この改正案はただ対外的な関係を有するという点において重大意義があるわけなんです。どうせ根本対策を立てましてもやはり対外的な関係というものは消えるものじやない。だから一応こういうものをお作りになるのだつたらばもう少し突込んだ御研究が必要じやなかつたか、こう考える。こういう点を一つ十分御研究を煩わしておきたいと思うのです。  それからこれは外務省とも関係があるようですが、この改正法律案というものが通りましたら、これはもう至急に外交折衝一つつて頂きたい。なぜかというと、これは戦犯の実態というものが今度プリントになつてたちに配付されておるのでありますが、あれを見るとアメリカの占領軍から日本の官憲に戦犯の取扱というものが引渡されてのちも、この釈放の手続というものがそのまま放置されておるということを書いてあるのです。引継ぐと同時にそういうふうな手続というものは十分もう少し敏速に私は御詮議なさるのが当然じやないかと思うのです。この法律を作りましてもそれと同じような結果になるとすれば何の役にも立たぬわけです。だから一つそういう点も提案者としては十分外務省並びに法務省と御折衝になつて、この法律を作つてこういうかいがあつたといううれしい顔をお互いに一つ見たいと私は考えておるのであります。これは特にお願い申上げておきます。まあそういうふうな四つの点のうちの一つだけはもう伊藤さんからもお述べになりましたから述べません。  以上三つの要望をいたしまして賛意を私は表するものであります。
  165. 岡部常

    委員長岡部常君) 他に御発言もありませんければ討論は終局したものと認めますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 岡部常

    委員長岡部常君) 然らば直ちに採決に移ります。本案を原案通り可決することに賛成のかたの御挙手を願います。    〔賛成者挙手
  167. 岡部常

    委員長岡部常君) 全員賛成と認めます。よつて本案全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお例によりまして委員長報告等は御一任願いたいと思いますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 岡部常

    委員長岡部常君) 異議ないものと認めます。  例によりまして賛成者の御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     伊藤  修  鬼丸 義齊     齋  武雄  中山 福藏     加藤 武徳  長谷山行毅
  169. 岡部常

    委員長岡部常君) これを以て散会いたします。    午後八時五十三分散会    —————・—————