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政府委員(
川田三郎君)
只今提案になりました
日本国に駐留する
アメリカ合衆国軍隊の
行為による
特別損失の
補償に関する
法律案につきまして、その
提案の
理由を御
説明申上げます。
日本国と
アメリカ合衆国との間の
安全保障条約に基きまして、
日本国及びその附近に配備されております
アメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍によりまして、防潜網、
水中聴音器その他の
水中工作物を設置され、又はその
維持を行な
つておりましたために起こる
各種事業への
損害、或いは又
防風林、
防風施設、又は
防砂施設の除去乃至
損壊等が行われました場合に、
各種の
事業に
損害が生じました際、これを従来は
補償する法制がございませんでした。そのために
各地からその
被害に対する
補償の
要求があ
つたわけでありますが、
政府といたしましては、その
措置に窮した次第であります。
従つて今回この
法案を
提案することによりまして、公布を見ました暁には、従来適法に
農業、林業、
漁業を行な
つておりましたものに対しまして、
法律上定められた
アメリカ軍の
行為を
原因とする
損害につきましては、
接収関係の契約の有無、又は
漁業でありますならば、
漁業制限関係の地区の
指定がございませんでも、その
損失を
補償することができるようにしよう。こういう
措置をいたしましたのが、今回この
法案を
提案いたしました
理由でございます。
その
内容につきまして成るべく簡略に一応の御
説明を申上げます。この
法律によりまして、
損失の
対象となります
原因と、その
被害を受ける
事業とが
法律上限定されております。その
被害の
原因となりますものにつきましては、第一条の一号、二号とございまして、一号は防潜網その他の
水中工作物を軍が設置するか、又はその
維持をしておるために起こる、これが
原因たる
行為とされております。第二号といたしましては、
防風施設又は
防砂施設がありましたものを、軍が除去し或いは損壊しました場合、そういう
行為を
原因として起
つた損害、又第三号といたしまして、今後の事態に即しまして、政令でその
原因たる
行為を取上げまして、政令に定められた
行為によ
つて損害が起
つた場合にこれを
補償の
対象とする。
次は、
補償を受け得る
事業でございますが、これは
法律上は第一条の本文に、従来適法に
農業、林業、
漁業を営んでお
つた者ということが明らかにされております。そのほか「又は政令で定めるその他の
事業を営んでいた者」、これも事態の推移に従いまして政令でその
事業の範囲を農林
漁業以外にも拡張して行くことができる、こういう法の建前にな
つております。
その
損失とはどういうものであるかと申しますと、こうして法令上規定されました
事業の経営上の
損失、これが
補償の
対象となることでございます。
その他は手続規定が法文の中に出ておりまして、全くこれは現在行な
つております
漁業制限の
補償と同じ手続規定になりまして、簡略に申上げますならば、都道府県知事を通じまして
損害を受けました者が
補償申請をする。都道府県知事はこれを内閣総理大臣に送付する。内閣総理大臣は遅滞なくこの
損害の有無を
調査いたしまして、
補償額を決定して知事を経由して申請者に通知をする。この通知額に対しまして、異議がございます場合は、第三条に規定してございますが、不服の申立をいたしまして、それによ
つて内閣総理大臣はその日から三十日以内にこの異議に対する決定をし、通知をしなければならないということにな
つております。又その他接収不動産に対しまする
農地の
補償、
漁業制限地域における
漁業の
補償、こういうふうに現在駐留軍
関係につきましてはその他の
法律によりまして
損害賠償の途が開けておるものがございます。それらの法制によ
つて損害賠償が行われるものについては、この種の
損害でありましても、既存の
法律によ
つて救済できるものは、この
法律は適用しないということが第一条の二項に規定してございます。
概略この
法案を
提案いたしました動機並びに法の建前といたしまする原則を申上げた次第でございますが、その他この
法案といたしましては、附則において当然施行期日をこの公布の日からということに
提案してございます。又これに伴いまして、調達庁設置法の改正を行う必要があるわけであります。これはその事務を調達庁の如何なる部が所管するかということになりますので、この点は附則の第二項によりまして、
調達庁不動産部が所管するという趣旨で、調達庁設置法の八条がそれに当るので、八条に六号を加えた次第であります。
その他は、この
補償をいたします際の
補償額等につきましても、ただ単に官庁側の決定だけでこれの結論をつけるということでは不十分でございますので、地方調達不動産
審議会の議にこれをかけまして、その答申によ
つて調達局長がその
損害額を決定する、こういう組織を作ります
関係上不動産
審議会に対しましても所要の改正を加える必要がございますので、その
関係が附則の末尾のほうに現われております。地方不動産
審議会の改正につきましてはこれは政令事項でございますので、政令にその所管を謳うように現在準備中でございますが、中央不動産
審議会は直接
損害額の算定には関与いたしませんけれども、これに対する
基準等を定めますのは、中央不動産
審議会の
関係になるのが相当と
考えましたので、この
法案の附則の中に中央不動産
審議会の権限事項を追加いたしまして掲げてございます。
以上が細部に亙りました点の
説明でございました。この
法案が一日も早く
通りまして、従来駐留軍
関係、又曾
つての占領軍
関係で
政府といたしまして、国民の
被害はお察ししながらも、法の建前からその
補償が行えなか
つたというものを、少しでもこれを十分に洩れるところなくや
つて行けることができるようにという念願でございます。ただこの
法案は当然にその
措置の結果といたしまして
予算を伴うことになりますので、現在
法律案に盛られております
防風林関係、防潜網
関係につきましては、
予算上善処するという各省間の用意もございますが、政令で定めることにつきましての範囲は、今後の
財政上乃至事態の緩急度によりまして各省間の
協議を十分に遂げて、事実に即応した規定をいたしたいと存じております。一応
説明をこれで終らせて頂きます。