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1952-12-23 第15回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十三日(火曜 日)    午後一時四十九分開会   ━━━━━━━━━━━━━  出席者は左の通り。    委員長     竹下 豐次君    理事            上原 正吉君            松原 一彦君    委員            中川 幸平君            河井 彌八君            村上 義一君            椿  繁夫君            成瀬 幡治君            上條 愛一君            栗栖 赳夫君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安政務次官  岡田 五郎君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    調達庁次長   堀井 啓治君    調達庁不動産部    長       川田 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   説明員    大蔵省主計局主    計官      村上幸太郎君   ━━━━━━━━━━━━━   本日の会議に付した事件保安庁法の一部を改正する法律案衆議院提出)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 只今から内閣委員会を開会いたします。  保安庁法の一部を改正する法律案を議題にいたします。先般衆議院側から提案理由説明を承わつたのでありまするが、この際法案内容について説明をお願いいたします。
  3. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 本改正案提出議員のかたから一通り説明がございましたので、私からやや詳細に申上げたいと存じます。  保安庁法におきましては、第八十七条及び第八十八条におきまして船舶安全法及び船舶職員法並びに電波法の一部の適用を排除しておつたのでございます。保安庁といたしましては、この船舶安全法及び電波法の一部につきましては、条約と比較いたしまして、やや厳格に条約以外のことも規定してあつたために、これを全部保安庁関係の船に適用いたしますると、保安庁船舶が特殊の任務を持つおりますために不適当であると認めて適用を排除しておつたのでございます。第八十七条のほうの今回の修正船舶安全法に関するものでございまして、船舶安全法基礎でありまする人命安全に関する条約のうちの第五章の規定保安庁法の、保安庁の船に適用があるのではないか、即ちこの条約のうちで大部分の規定国際航海に従事する船舶のみに適用があるというふうになつておりますが、第五章の航行の安全の条項だけは全部の船舶、即ち国際航海に従事するもののみでなく、沿岸航海だけに従事する船舶につきましても適用があるわけでございます。従いましてこの第五章につきまして保安庁の船にも適用があるのではないかと、従つてこの適用までも除外したことは条約に違反するのではないかという御質疑が出まして、私どもといたしましては、この条約は、政府に対しまして、その政府に属する国の船舶に遵守を命ずる措置を講ずる義務政府に負わしておるわけでございます。従いまして保安庁船舶は、保安庁独自の訓令又は規則によりましてこの条約を直接遵守する規定を設けるというふうに解釈いたしておつたのでございます。この第五章の規定と申しますると、内容は危険の通報或いは気象の業務、或いは遭難信号濫用防止遭難通報というような、主として元来保安庁の船が本来の任務といたしておりまする仕事でございます。従いまして、この点におきまして船舶安全法規定を排除いたしておりましても警備隊の船といたしましては当然条約を守るべき筋合いであつたわけでございます。併しながらこの法律全部を一応適用除外をいたしておりまするので、法律上どうであろうかという疑義委員のかたがたから生じまして、今回の議員提出法案によりまして、この除外をしない、即ち第五章の規定については同じように保安庁の船に適用するのだという改正の案が出ておるわけでございます。私どもといたしましても、この疑義を明快にいたしますために、この改正をお願いいたしましたらば適当であると存ずるのでございます。  船舶職員法のほうにつきましては、これは条約関係でございませんで、このもとになつておりまする国際電気通信条約規定は、その基礎に更に商船に乗組む船長及び職員に対する職務上の最低要件に関する条約というのがありまして、この条約は商業に従事しない政府船舶には適用せられないというようになつておりまして、直接条約とは関係がないのでございます。  なお電波法につきましては、保安庁法はこのうちの無線局の免許並びに無線従事者に関する規定だけを除外いたしたのでございますが、これは警備隊保安庁使用いたしまする移動無線局については、この電波法規定してある事項をそのまま適用いたしますると、職務の性質上から申しまして不適当なところが生じまするので除外をいたしておつたのでございます。併しながらこの点につきましても同様法律上やかましく申しますると疑義がないでもないと存ぜられまするので今回の御改正の案が出ておりまして、この点につきましても保安庁において規則を設けるということになつたわけでございます。  なお八十七条の規定につきまして、改正の中の「第二十七条の規定」と申しまするのは海上衝突予防規定でございまして、警備隊使用いたします船舶の堪航性及び人命の安全を確保するため必要な技術上の基準及び配員の基準を設けるということでございます。この規定につきましてもやはり一般船舶とやや警備隊の船は違いますので、これにつきましても特別な規定を設けるつもりでございます。  大体以上の通りであります。
  4. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 御質問願います。
  5. 上條愛一

    上條愛一君 この保安庁法の一部を改正する法律案について第一に御質問したいのは、フリゲート艦及び上陸用支援艇軍艦でないというお考えの下にこの一部改正をしようというのですか、軍艦軍艦だけれども、その軍艦の本来の任務に従事するのではない、単に警備という仕事に従事させるのであるから軍艦でなくて船舶だと、こういうお考えですか、その辺のことを一つ
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) このアメリカから借受けまするフリゲート及びLS、いずれも日本では船舶として使用しますということで、軍艦としてではないのでございます。
  7. 上條愛一

    上條愛一君 船舶として使用しようということはわかるのですが、このフリゲート艦そのもの軍艦でないという考えですか。それは軍艦ではあるけれども、ただその使用船舶仕事としての使用をする、こういう意味ですか。その辺のことがはつきりしないのですが。
  8. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) このフリゲート及びLSは、アメリカにおいて哨戒艇及び上陸支援艇として使つてつたことは事実であります。併しながら日本においてはこれは純然たる海岸警備用船舶として使用するのであります。ここで御質問の趣旨は、要するに軍艦船舶との差違如何ということに掘下げられた御質問だと私はこう考えます。そこでおよそ軍艦と申しまするのは、第一要件といたしまして、これは軍事に使うべきものである。次にそこから出発いたしまして、形式上軍艦であれば、いわゆるこれに乗組む者は軍人である。而して国際法軍艦としての一つ取扱いを受ける。不可侵であります治外法権というようなものを持つておる。更に形式的に言いますと、軍艦旗を掲げてそれを一般船舶と区別するということになつております。で、これらの要素を全く本件の船舶は持つていないということになります。全然軍艦としての取扱は受けないということであります。
  9. 上條愛一

    上條愛一君 そうすると、もう一度念を押してお尋ねしたいのですが、我我考え方では、フリゲート艦も見せて頂きましたのですが、要するに船というものは軍艦か、まあ船舶と申しますか、貨物か客船か或いは漁船か、船には種類があると思う。そうするとフリゲート艦のごときものは、これはどのように見てもこれは軍艦だと私どもは認定するわけであります。軍艦軍艦だけれども日本へ持つて来ては軍艦としての使用はしない、船舶としての使用をするのだと、こういう意味ならば我々わかるのですけれども、あのフリゲート艦軍艦でないという御議論であれば、私どもどうもちよつと納得が行かんのですが、それは軍艦であつても戦の用に使わない場合もあり得ると思う。そのことはわかるのですが、日本では軍艦としての使用はしないということであればわかるのですけれども、あれは軍艦でないという御意見ならば、ちよつと我々は納得できないのですが、その辺のことをもう一度明白にお願いいたします。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私今申しました軍艦軍艦でないという定義は、今申上げた通りでございます、おわかりのように……。そこでこれは日露戦争当時のことで或いは御存じであるかも知れませんが、曾つて船舶であつた信濃丸あたりでも、これは軍において徴用いたしまして、そうしてこれに乗組ませるのは軍人であり、軍艦旗を掲げて、ここにはつきり国際法上これを軍艦としての取扱いを受ける、不可侵治外法権を持つておるのであります。それで普通の船舶といえどもこれは軍艦になるのでありますし、曾つて軍艦たりしものも船舶となる。私この前もほかの委員会で申上げたのですが、私が実際乗つた船であります。台湾航路使つておる台南丸という船、これはグラスゴーで造られた曾つて駆逐艦であります。これは勿論大砲を積んでおりません。おりませんけれども曾つて軍艦として使つたものが商船として、一般に使われた実例もあるのであります。そこで軍艦軍艦にあらざることの区別は先ほど申した通りであります。
  11. 上條愛一

    上條愛一君 今木村長官のおつしやるように、これはまあ軍艦として使用しない、船舶として使用すると、これはそれで了承いたしまして、それでは私ども疑点とするところは、船舶として例えば海上治安維持に当る、或いは漁船保護或いは密貿易密入国等警備に当らせる、こういうのでありまするが、保安庁設置のときにも私はその点について疑点を持つてつたのですが、それならば本当に治安維持海上治安維持を主とするというのであれば、横須賀、佐世保、舞鶴というような軍港に、特殊の所において訓練をしておる、こういうことよりも、むしろ日本四面海であつて、九つの警備保安上の港があるわけです。それならばそういう所に配置して、そして漁船保護或いは密貿易のような場合に出動するということが実際的である。然るにそれをなさずして、借入れた十八隻と五十隻は一定場所において、平素においては訓練だけしておる、こういうことは果して妥当であるかどうかということが一つ疑点である。  それから第二には一体漁船保護にいたしましても、或いは海上治安確保立場から申しますれば、外国から侵入された場合にこれは無抵抗で行くか、或いはその場合に海上治安確保のために活動するかということが問題になつて来ると思うのであります。この二点についてお伺いいたしたい。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 横須賀舞鶴、これへ設置いたしましたのは、要するにこれの補給場所であります。相当訓練を要しまするし、その他いろいろの関係で、又従来の設備もありますから、それを利用拡充いたしまして、補給するに便利だからであります。これを各所にいろいろと設けたらいいじやないかということは御尤もであります。これは一定の所に固定させるものではありません。ほかにもこれに準じました小規模の一つの何と申しましようか、補給所のようなものを設けてそこに出入させる、そこにおいて又一定訓練をさせることになつておる次第でございます。  それから第二点においての問題でありまするが、もとより私らは独立国家なつた以上は相当警備力を持つことは必要であることは同感であります。他国の不当な侵入に対して備えるということは当然であります。併し只今情勢から申しまして、さような大規模なことは到底財政上許すことのできない立場に置かれている。それは今後の問題として取扱うべきものと私はこう考えております。
  13. 上條愛一

    上條愛一君 私は今の質問をするのは、長官のおつしやるように、船舶であつても場合によつて軍艦としての戦力に利用することがあるということと同様に、本来が軍艦であつたものですからして、これを船舶として使用いたしましても、場合によつてはこれを明らかに軍艦として用うる場合があり得るじやないか、あり得るというのみならず、そういうことを予想してやはり訓練しておるんではないかと、こういうふうに我々は感ずるのですが、この点はどうなんですか。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この船はもう御覧になつておわかりでありましようが、アメリカにおいても単純な哨戒艇或いは支援艇として造られたものです。いわゆる武装力の点におきましても行動能力におきましても極めて微々たるものであります。我々の、曾つて日本海軍の持つてつた軍艦とはおよそかけ離れておる、極めて微弱なものでありまして、こんなものは、私は仮に不当に外国から侵入を受けた場合においても、これを使用して防ぎ得るというようなことは到底私は不可能と考えておろます。ただただ沿岸警備に使うのにはまあ差支えない程度のものと私は信じておるのであります。私個人といたしましては、もとより日本のこの長い海岸線警備するについてはもつと適切な船を一日も早く造つて配置することが望ましいことであろうと考えております。併し目下の財政状態から鑑みまして、さようなことは到底許すことができませんし、又一面から、これを造るにいたしましても相当の時日を要するのであります。一刻も早く我々はこの空白になつております海岸警備をしなければならん。幸いアメリカから非常に好意ある取計らいとしてこれだけの船を貸してやろうと、こう言われましたから、喜んでこれを借りる次第であります。
  15. 上條愛一

    上條愛一君 なおもう一点御質問したいのですが、本当に長官のおつしやるように海上治安確保のことのみを中心として船を借入れるという場合であれば、もう少し実際に役立つような船を借入れる場合でも借入れるべきじやないか。然るに海上治安維持のためにはあのような船でほそう役立たんのみならず、誰が見ても軍艦だと……アメリカにおいて戦争に非常に役立つものか役立たんかということは別問題として、戦争のために造られたところの軍艦上陸支援艇にしても、上陸ということはすでに戦争であります。戦のために使うものであります。それを支援するというのでありまするから、これも戦争用に造られたことだけは間違いない。そのような誤解と申しますか、正解と申しまするか、そのような軍艦を、何が故に軍艦と認めらるべきものを借入れて、もつと日本が本当に現在海上治安維持のために必要だという船を借りなかつたかということについて一つお話を願いたい。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今の御意見は御尤もと考えます。併しこれは相手方があることであります。我々といたしましては、それは海岸警備について最も適切な船は日本で造り、造れなければアメリカからお借りする、したいのであります。これがさようには参りません、相手方のあることであります。アメリカにおいて不要になつておる、これらの船を貸してやろう、こういうのでありまするから、これを借りることになつた次第であります。
  17. 上條愛一

    上條愛一君 私はこれ以上は意見になりますから申上げませんが、今長官の御説明によりましても、どうも軍艦であるのを軍艦でないとして、船舶として使用するというふうにするがためだ、この保安庁の一部を改正するというふうにしか私どもは認められんのですが、これはまあ意見になりまするから一応質問を打切ります。
  18. 松原一彦

    松原一彦君 念のために伺つておきますが、これは今後まだ御拡充になる御予定かどうか、御拡充になるならばその段階国防力漸増としての段階か、或いは単なる沿岸警備効力を、今言われたように、上條君はこんなものじや大した効力じやないという話でしたが、それを是認せられての長官のお言葉もあつたし……、より充実した沿岸警備の態勢をとるとすれば、どういう将来御計画をお持ちであるか、その限界等も承われるならば承わつておきたいと思います。
  19. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今後の拡充計画についてはまだはつきりした計画を立てておりません。差当りこのPF十八隻とLSSL五十隻、都合六十八隻を借受けまして、これで取りあえずやつて行きたい。海岸警備につきましてはこれらの船だけでは私は足りんと考えております。御承知のように日本海岸線は、私は、八千キロと申しておりますが、公式には九千キロであります。とにかくアメリカに次いでの長い海岸線を持つておるのであります。昨日も私が外務委員会で申上げたのでありますが、戦前は勿論、戦時中におきましても、日本では相当海岸警備船を持つてつたのであります。不幸にいたしまして終戦になりまして、この間が全く空白状態になつております。従いまして或いは御承知でありましようが、密輸入者なんかも実におびただしい数になつております。漁船拿捕事件も随分な数になつております。密輸入船も横行しておるようなことであります。従いましてこれらに対処いたしますのには、私は差当り六十八隻を以て先ず処置をして行きたいと考えておりまするが、これでは十分とは考えておりません。なおこの船は貸借期間は五カ年、更に引続いて五カ年借りるならば併せて十年でありますが、相当これは老朽船でありまするから、その間において或いは又補充もしなければならんかと考えております。只今のところではさような拡充計画というようなものはまだ立てておらんつもりであります。
  20. 松原一彦

    松原一彦君 この問題に関しての審議は随分長いことかかつておりますので、私どもには感慨無量のものが実はあるのです。併し結論として改進党はこれを承認することにしましたので、今更女々しいことは申上げませんですが、併しこのいきさつを考えますと、外務大臣最初日本から交渉したのじやないということであつた。この席上でのお答えは……。閣議にかけたこともない。単なる船舶を私的に借りるのであるというようなお話があり、その後大橋国務大臣からは、船舶として借りるものは閣議にかけたという修正があり、更にその当時我々は十隻と聞いておつたのが十八隻となつたので、これを追及をしました結果は、いや十隻であつて十八隻じやない。増加する見込はない。そういう計画も持たない。こういうことであつた、一々私は速記録を引用いたしませんけれども、殊に十八隻にするというと、乗組員も三千何百人増加しなければならんし、そう予算も持つておらん。増加するところの計画はないということであつたのが、いつの間にか十八隻になつてしまつた。従来この問題はずつと押して来ますと、どうも政府の言わるることがいろいろ違つて来ておる。それで私どもの印象としましては、まだまだ今後どんなに違うかわからんといつたような気持を持つ、事実は……。結局は有効にこれを使おうとすれば、軍艦旗を掲げた軽巡洋艦があるべきはずのものなんだと私は思う。併しこれは憲法下において許されない。私は軍備論者でありません。従つて私もそれを希望するのじやありませんけれども現実情勢から沿岸警備をし、漁船等拿捕に備えるというのならば、実効のあることを要求せられる限りにおいてそういうような御計画があつていいのじやないかとも思われます。今長官は五年間借りて、更に五年延ばすから十年間、その間には漸増計画はないと御明言できましようかどうでしようか。今のお話はどうもそう取れたのでありますが本当に御計画はないのですかどうですか。それならば私は相当議論があるだろうと思うのです。もう一遍確めておきますからお答え願いたいと思います。
  21. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は先ほど申上げたのは差当りこれらの船で以て処置して行きたいと、併し情勢如何によりましては増さなくちやならんかも知れませんし、又我々といたしましては一日も早くこれに適切なる船を処置したいと、こう考えておる次第であります。私の申上げましたのは、只今のところこの十八隻を以て処置して行きたいと、こう考えております。
  22. 松原一彦

    松原一彦君 この問題がいろいろ割切れない各種の議論を生んでおりますことは御承知通りでありますが、上條君が質問した通りに、軍艦であつてもこれをば船舶として借入れ得る私は条件があると思う。それは武装解除をすれば船舶であります。商船と言えども武装すれば信濃丸のごとき軍艦になるのであります。軍艦船舶かの境は、武装の有無にかかつておると思うのです。従つて武装する以上は、武器を持つ以上はこれは軍艦であります。たとえ商船であろうと軍艦となる、軍艦として使用する以上は軍艦となるのでありますが、それは憲法で許されないというのが我々の今日までの根本的主張であつたのでありますけれども、今日武装したままで船舶として借入れるという一つ特例が開かれるのであります。この特例が一旦開かれますというと三インチ砲は五インチ砲になる、六インチ砲になり、十二インチ砲にならないことも保しがたいものがある。これは日本の国民が現憲法に服従しなければならない義務を持つ限りにおいて、私はどうしても許されないという根本的な疑惑を持つのであります。今日それは申しません。もう私は申す段階通り過ぎておりますから申しませんが、今の十隻が十八隻になつ実例に徴しましても、これからの吉田さんの、首相の言われます断片から類推しても、事実はどういうふうに曲言せられましようとも国防力漸増であります。漸増基礎がここに備わつて行くのでありますから、私は船舶に積まれたる武器と申しますか、これがだんだんと拡充せられて行くであろうことを想像するものであります。政府が今日まで私どものこの委員会で御説明になつてつたものを振返つてみて、どうも腑に落ちないものが夥しくあります。今も長官は当分の間に合わせと言われたのでありまするから、やがてこれが大きく拡充せられる時期も遠からざるものじやないかということを私は想像しまして、頗る腑に落ちないものを増加する感が深い。これだけを申上げておきます。
  23. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 ちよつと私も腑に落ちませんから……。何でこう十ぱいだとこの前のときに盛んに主張されたのが十八ぱいになつてしまつたのか、そこらあたりの経過を一応御説明願いたいと思います。
  24. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは成るほど初めは十ぱいということだつたのです。併しアメリカのほうで好意ある処置によりまして、アメリカの八十二回国会におきまして、今年の七月八日と記憶しております。これで十八ぱいだけ一つ日本に貸すことを認めてやろうじやないかという一つのアクトが出まして、そうして大統領の承認を得たわけであります。前には十艘という話があつたことは確かであります。あとで追加されたのであります。
  25. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私はアメリカがどうしようと、日本の自主的な問題であるから、日本がどうしてそれを呑まなければならなくなつたかという、その説明が……。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカの要請というわけじやありません。アメリカで十八ぱい貸してやろうというのでありますから、日本ではこれは借りることは至当だろうと思つて十八ぱいを貸してもらうことになつたのであります。アメリカからは強いて日本に貸してやろうという、使えというわけではありません。これは私は今はつきり申上げておきます。今年の四月二十四日付の書簡で、こちらから要請したのであります。「海上保安庁の保有する船舶では、九千マイルに達するわが国の海岸線警備するのには、全く不十分であるので、米国政府に対し、海上保安庁任務遂行に適当な船舶貸与方を要請し、貸与されるべき船舶については、最小限として十隻のパトロール・フリゲート及び五十隻の上陸支援艇を希望する。」と、こう言つております。初めは十隻であつたのであります。
  27. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 長官、それはちよつと子供だましみたいな話だと思いますがね、ということは予算もきめ、定員もきめて、十ぱいでやるという一つのコースは決定しておつたと思うのです。それがどうしてそんな決定して国会に諮つたものがひつくり返るというのは、どうも納得行かないですね。そんな話ではおかしいと思うのです。人を馬鹿にしたような話だと思うのです。
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 決して国会を馬鹿にしておるわけではありません。当時の経緯は私は知りませんが、とにかく更に八隻を追加して貸してやろうと申しまするので、これはアメリカの好意に応えて使うことが、日本のあらゆる観点から見てこれは妥当だとこういうふうに考えたのであります。
  29. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 この四月二十四日付の書簡では、これは私は何ばいということは書いてないと思うのです。十ぱいが妥当だというお話を承つたのは、私たちは少くとも七月、当時の国会で政府に十ぱいということを伺つてつたのです。それが主観的に或いは客観的に情勢の変化があつたと、これを十ぱいということにして何もかも政府は出して、今度これを何かしなければならなくなつた理由というものが私はあると思うのです。それを聞いておるのです。
  30. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の聞き及んでおるのは、初めアメリカは十ぱい貸してやるというような話合いから、日本政府でも十ぱいということになつたようでありますが、併しその後になりまして、アメリカでは更に八はい貸してやろうということになつたので、十八はいを借りるということが現下の情勢においてよかろうという次第であつたのであります。
  31. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、日本情勢として十ぱいが妥当だと結論を出されて折衝をされた。そしたらアメリカが親切に十八ぱい貸してやると言つた。それだから十八ぱい借りましたと、こういう説明なんですね。これではどうも私は納得ができないと思うのですね。皆さんもそうだと思いますね。どういうんですかね、そういう説明はあるんですか。それで日本はどうこうという……。
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この前には十ぱいとはつきりその当時の何でなかつたので、少くとも十ぱいということをアメリカに言つてつたのであります。それですからアメリカでは十八はいそれじや貸してやろう。アメリカに対しては少くとも十ぱいと、こういうことであります。
  33. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 いや、そうじやないですよ。私たちは十ぱいで、十八はいとアメリカのほうから情報も出ておるんだし、新聞発表にも十八はいとなつておるのだが、政府はこれを殖やす用意があるのかどうかということに対して質したことに対して、あの当時の速記録を見ればわかりますが、決して十八ぱいには殖やさん。アメリカがどうしようと、日本は十ぱいしかお借りしませんと言つて、この当時の政府の人は全部答弁された。そうでなければそれは納得できませんよ。
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はその当時の事情は知りませんが、大橋君が恐らくは今年は十ぱいというようなことを申したんじやないでしようか。とにかくまあアメリカから十八隻貸してやろうという意味でありますから、どうぞこれを借受けることに御承諾を願いたいのです。
  35. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ当時の責任者である大橋さんもお代りになつてしまつた。だからまあ責任はないのだと、で木村さんはわしや知らんのだと……、これでは私は一貫した何もなくて非常に迷惑である。知らんとは申せませんよ。これは一ぱい引掛つたようなものですよ。  それからもう一つ文句と言つちや何だけれども、腑に落ちない点は、四月二十四日付の吉田書簡ですね。それは私はよくわかりませんが、これは吉田さん勝手に閣議にも何にも、外務省にも何にも連絡なしに、自分でお書きになつて自分でこそつとお出しになつたものか、こういうような手紙を出したということが、大体において閣議において提出されて、秘密閣議などにおいて了承されておるものですか、その点どうですか。
  36. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まさにこの点は外務省を通じて、正式の手続に基いてやつておるのでありまして、吉田首相自身において何しておるのではないということを私は了承しております。
  37. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうなると、私はあのときの記憶があるのですが、岡崎外務大臣は、あのとき何も知らんと断言されております。幸い今お見えになります村上前運輸大臣は知つておられると思いますが、そうでないと言う、岡崎さんとの間に食違いがあるのです。一遍私は岡崎国務大臣においでを願いまして、その間の事情を弁明を一つしてもらう必要があると思う。そうでないとこれは国会議員を侮辱した話だと思う。私は一つ委員長において岡崎外務大臣の出席を取計らつてもらつて、この間の事情をもう一つ説明し直してもらわなければならない。一つ委員長にお諮りを願いたいと思います。
  38. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) ちよつと速記をとめて下さい。    午後二時三十五分速記中止    —————・—————    午後二時五十二分速記開始
  39. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 速記を始めて下さい。
  40. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 予算的措置を説明してもらわないと、ちよつと船が殖えているし、どういういきさつで大橋さんが言われ、木村長官が今話されるということは、これは別問題にしても、その点をはつきりしないと、この法律というものを通すわけにいかんことになる。これは大蔵省かどつかから一つ説明をして頂かないといかんのじやないかと思います。これは今日でなくとも、いつの機会でもよろしうございます。船も殖えておりますから、はつきりして置いたほうがいいと思います。
  41. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) ちよつと速記をとめて下さい。    午後二時五十四分速記中止    —————・—————    午後四時七分速記開始
  42. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) それじや速記を始めて下さい。
  43. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 一つ念を押して置きたいのですが、お尋ねする趣意は、この保安庁のほうでは予算はこういうつもりだとお話になつておるのに、大蔵省のほうで、いやこういうわけだというので、あとで割れまして困つた例が調達庁関係でもあるものですから、やはり簡単にお尋ねする代りに簡単に答えて頂けばいいのです。つまりまあ軍艦か船かということを私は何も申しません。併しこの船舶が殖えて来る、現にこの前の議会の御説明通り殖えて来ております。それに対する定員、これとこの予算、こういう関係はどうなるかを保安庁と大蔵省、両当局にお尋ねいたしたいと思います。
  44. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 六十八隻が全部こちらに条約の御承認を得て貸与になりまするものは、先ほど大臣からも申上げました通り来年度に入りますものですから、実際上の人員の増加或いは予算措置等は来年度に計上方をお願いしておる次第でございます。従いまして一月の国会に定員の増加と、一般予算の中に入ります経費の計上ということをお願いすることになると思います。
  45. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 今現在は予算に幾隻分がついておるか、それをはつきりして頂きたいと思います。
  46. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 現在はPFが十隻分とLSSL、小さいほうが五十隻分で計上しております。
  47. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうするとこれは更にお殖やしになるということになるわけですか、来年度においては。
  48. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 八隻分につきましては、条約の御承認を得ますれば増加するつもりでございます。
  49. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうすると今の五十隻分については二十七年度の本予算と、それから今度追加予算ないようですが、追加予算その他から割出しができることになつておりますのでしようが、大蔵省のほうはどうなんですか。
  50. 村上幸太郎

    説明員村上幸太郎君) 五十隻分ではなくて、六十隻分でございますが、LSSL五十隻とPF十隻分、六十隻分については二十七年度の本予算において全部予算がついております。
  51. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 今両方の説明がこういうふうに食い違つているのですがね。こちらは五十隻分とおつしやるし、一方は六十隻分とおつしやる、どつちなんですか。
  52. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 私申上げましたのは、PF十隻と、LSSL、小さいほう五十隻、合計六十隻です。
  53. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 それではこれでよろしうございます。
  54. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 暫らく休憩いたします。    午後四時十二分休憩    —————・—————    午後六時五分開会
  55. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) これから開会いたします。
  56. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣にまあ心境と申しますかね。そういうようなことでちよつとお伺いするわけですが、実はフリゲート艦を借りるか借りないかにおいて、まあ御承知のように内閣委員会においていろいろやりまし場合、あなたの答弁或いは運輸大臣の答弁、或いは当時の大橋国務大臣、或いは木村法務総裁などが出てお見えになつたときにやつたことを今思い出して、あのときのことでお尋ねしたいわけです。まああの以後に明らかになつたことは、四月二十四日に吉田書簡が出されておつた、それを私は大臣は知つておいでになつておるか。私も若干どこで起案され、それがどう行つてどう通つたかというようなことを機会を得まして窺い知ることができたわけですが、当時大臣としては立場上或いは知らなければならなかつたかも知れないけれども、私はやはり頬かぶりで知らん顔をして過して来てというよりも、むしろ我々に対してごまかしと言つちやいけないかも知れないけれども、ひたかくしにしておられたのだか、この際あの当時の状況を一応御説明願いまして、私のほうから要求するというのは非常におかしいけれども一つすつきりした形で一応御説明を承わりたい。
  57. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 大分前のお話でしたけれども、突然そんなことを聞かれても記憶をそう呼び起すわけに行かないのですが、当時は私は国務大臣で、主として行政協定とか平和条約成立前後の処理の問題に相当多忙でやつておりまして、正直なところ、この問題の手紙がどういうふうに書かれたとか、いつ出たかというようなことはどうも私はそのとき知らなかつたように思います。記憶にないのですが、又知らなければならん問題でもなかつたと思います。
  58. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、あなたはこれを全然知らずにおられたということは、大臣の何といいますか、あなたのほうに全然無関係で事が運ばれておつたことになるわけですか。
  59. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私もどうも記憶が非常にはつきりしませんけれども、おぼろげにそういうことが大橋君や何かでいろいろ研究して、どうだろうかというようなことがあつた思つておりますけれども、手紙がいつ出たとか、そういう手紙を出すとかいうようなことについては、どうも私は知らなかつたと思います。
  60. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは私がですね。聞いたのが間違つているかも知れませんですけれども、とにかく運輸省において起案して、そうしてそれを持つて外務省が折衝されたというふうに私たちは聞いておるわけです。それをなたが覚えがないとかどうだと言われるのは、私には納得が行かないわけです。
  61. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) ちよつとお断りしておきますが、私は外務大臣ではなかつたのです。そのときは外務大臣は別にあるので、その外務大臣が、平和条約効力発生の前後であつて非常に多忙であるからして、その一部の仕事を分担してやることにしておつた従つて外務省の仕事は何もかも私が知らなければならんということじやなくして、外務大臣からこれとこれをやつてくれというような依頼を受けた仕事をしておつた従つてその問題は私のほうには通つて来なかつたような気がいたします。大分前のことですから、非常にはつきり記憶はいたしておりませんけれども、どうもそ思うのでございます。
  62. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私はあなたが当然国務大臣の一員として閣議にはおられたと思います。ですからそれを知らなくても、おぼろげに聞いたとおつしやるなら、閣議で聞いたということになるかと思います。あとのことは、今の行政協定やそちらのほうには十分の力を尽しておつたけれども外務大臣としての職責じやないからそういうことは知らんと、こうおつしやるならば私もそれは一つの筋だと思います。ですからそういう態度ならそれは私もそれでいいと思うのです。
  63. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) どうも私は今突然で記憶をなかなか呼び起せませんけれども、どうもそういうふうじやなかつたかと思います。
  64. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは実際私もあなたが今言つたように、どうも古い話で記憶を云々だと、こうおつしやるのですから、誠にこれは責任のないことをお聞きすることになるわけです。実際あの当時のこの論議の的になりましたのは、日本政府が自主的にこうしたものを借りるのか、アメリカからそうしたものを押付けられてやるのかどうかという点と、それからもう一つは、この十八ぱいか十ぱいかというところに問題があつたわけです。で、十ぱいか十八ぱいかの問題については、これは私はあなたにお尋ねしなくても、十ぱいが十八ぱいであつたということについては、これは私はつい最近に問題になつたのじやないかと考えております。これは想像ですから私にはわかりませんけれど、その経過ではなくて、あの船を借りるか借りないか、そういうものの折衝過程というものが、私たちが実は質問をし、いろいろとあれこれともんだ問題であると私は記憶しております。それについてあなたは今言つた通り知らぬ存ぜぬというわけじやないですけれども、こうおつしやるなら、私は責任あるお答えを聞くわけには参りませんから、ここでまあ質問を打切りたいと思います。
  65. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 速記をとめて。    午後六時十二分速記中止    —————・—————    午後六時五十分速記開始
  66. 竹下豐次

    委員長竹下豐次君) 速記を始めて下さい。  それでは本日はこれで散会いたします。    午後六時五十一分散会