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西田隆男君 そこで
石炭行政をどうするかという基本的な問題に移
つて行くわけですね。
大手筋二十二社だけの
出炭で
日本の
石炭を賄うのだ、だからこれに国家
資金を注入するのだ、そうして
中小炭鉱をつぶしてもいいのだというのならいいが、
中小炭鉱をやはり生かして行くのだということになれば、いわゆる国が援助、助成する
意味において
大手筋と
中小炭鉱との間に
自然条件の差異というものがあるでしよう。あればあるほどこの二つのものに差等をつけてはならないという原則をはつきりつけてもらわんといかん。同じように指導、援助、助成をや
つてもなおできないという場合は、これは池田前
通産大臣でなくても止むを得ないという結論が出るかも知れませんが、或いは最初から差等をつけて行くということは、一つ
小笠原通産大臣が
通産省におられる間は慎んで頂きたいと思います。
それからもう一つ、
生産原価の面で世間
一般に知らされていない問題についてお伺いしたい。今の
日本の
石炭の
生産原価は
通産省で調べておわかりだろうと思いますが、二十七年度の上期の調査を私持
つておりますが、これによりますと非常に大きなパーセントの炭価の
値下は、どんな施設をや
つても当分は不可能ではないかと私には思われるのです。私が調べましたものによりますと、
大手十八社の二十七年度上期の
平均炭価ですが四千六百五十円にな
つております。この内訳を見ますと物品費が千百五十円、これは木材が二百四十円、金属が三百三十円、火薬が八十円、電気用品が八十円、工具機具が百九十円、その他が二百三十円、こういう
内容にな
つております。それから労務費が二千二百三十円、
経費というのが千百円、この
内容を見ますと減価償却費がトン当り三百八十円、
電力料が二百四十円、修繕費百五十円、租税公課が九十円、鉱害賠償費が七十円、その他百七十円、こういうふうに分れ、その他支払利子が百十円、
一般産業と比較して高いか安いか知りませんが、本社費が六十円、これが
石炭の現在の山元オン・レールの
生産原価にな
つておるようです。そこで労務費は急速にこれを下げるということは
出炭能率が急速に上らない限り不可能です。そうしますと、これは現に
経費の節減の余地が当分はできないという結論になるわけです。物品費の内訳を見ましても木材の値段が下らん限り木材費の二百四十円というのは下らん。
鉄鋼の値段が下らんとしますならば金属の三百三十円というものは下らない。火薬も勿論八十円より下げ得ない。こういうふうに見て参りますならば、これも今
通産大臣が
説明されたようなことでは物品費の
内容の何割という
値下げは
ちよつと困難のように
考えられるのです。次に
経費の問題に移りまして、
電力料金が下らんために
電力料は下りません。修繕料、租税公課、鉱害賠償、これも勿論下げる余地がありません。減価償却費の三百八十円が適当かどうかという問題なんですが、これは四百九十億というものをかけて
竪坑の
開発をやれば恐らく減価償却費はもつとふえることが
考えられる、恐らく支払利子がその一部軽減されるだけで、あなたの言われるように
値下をすることは不可能になります。物品費その他の若干の
値下を
考えても、又本社費を切詰めてみてもこれは
幾らか下るという
程度で、
大臣の言われるような莫大な
生産原価を下げるということは
考えられんわけです。而も市場に出ております
石炭は、運賃、荷役その他の諸掛りがかか
つております。これはそれらの値段が下らん限り絶対に下りません。従
つて石炭企業として
生産原価を切詰め得るものは、物品費千百五十円と
経費の千百円、それから金利の百十円の若干で二千三、四百円、この全部の
経費のうちから
幾ら下げるかという問題ですが、仮に
大臣が言われたように市場の販売
価格が非常に高い、だから三割下げるというふうに言
つておられますが、大阪市場着六千五、六百円しておりますが、その三割、千九百五十円の
値下など到底でき得るものでないことは言うまでもないことです。今言う
通り労銀を引いてしまうと大したものではない、二千三、四百円のうちから、市場販売の仮に本年度六千五百円のうちの一割下げるとしても六百五十円、三割下げると千九百五十円です。二千三百円のうちから千九百五十円は下りません。そうするとべらぼうに能率が挙げられなければならない。生産能率を挙げるということが可能であるか、
竪坑の
開発等で仮に可能であれば、それはできるかも知れない。そうすれば結局
大手筋と
中小炭鉱の
石炭の
生産原価のバランスがべらぼうに壊れてしまうということになります。そうすると
政府としては当然
弱小炭鉱への
措置をどうするかという問題をも併せ
考えられないと、
石炭鉱業に対する
政府の補助、援助、指導の本当の
精神が活かされないという結論になる。こういう点ももう少し
通産省としてはお
考えに
なつた上で
石炭に対する
政府の対策をおきめにならないと
弱小炭鉱はつぶれてしまうという結果に陥る。従
つて日本の
石炭の生産を
大手筋炭鉱だけに依存することの如何に危険であるかということは過去においてすでに実験済みのはずであります。若しこの際
石炭対策を誤るなら又
石炭危機が叫ばれるようなことになりかねないのです。
通産大臣の基本的な
考え方を一つ。