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政府委員(岡田秀男君) 私どもがこの
法案を作成いたしました
考え方なり、又
法案の内容の中心をなしまするところを概略御説明申上げたいと存ずるのであります。
先ずこの
法案の第一の狙いといたしますところは、我が国の
経済の根幹をなしておりますところの中小企業振興のために、どうしても設備資金乃至これに伴いますところの長期運転資金等、長期であ
つて安定しておりまして、且つかなり低利な資金を供給するということが非常に大切なことである。非常に急いでこれをやらねばならないという点が第一の狙いでございまして、この公庫を設立いたしますことによりまして、
一般会計乃至資金運用部、或いは産業投資特別会計、或いは開発銀行が持
つておりますところの債券等をこの公庫に取り纏めまして、これより一括いたしまして、これらの金をいろいろの特徴を持
つておりますところの既存の
金融機関の機能を活用いたしまして、この公庫から金を中小企業者に流して行こうというのが第一の狙いであります。従いましてこの公庫のあり方といたしましては、先ず原則といたしまして、自分で貸付業務をみずからやらないということが
一つであります。その結果、この公庫の人間数は五十七人という極く少数の職員を以てスタートをいたすのであります。
法律上から申しますれば、この公庫が中小企業者に金を貸し、債権者は公庫であり、債務者は中小企業者でございまするけれども、その中小企業者が申込みをしますのは、既存の中小企業
関係の
金融機関、具体的に申しますれば、商工中金でありますとか、
一般銀行であるとか、相互銀行、信用金庫、信用組合等の既存の
金融機関を通じて申込みをして頂く、これらの
金融機関が公庫の代理機関の役をいたしまして、申込んで参りましたものを審査し、そうして自分で貸すか、貸さんかの決定をいたしまして、公庫に連絡する場合と、或いは決定は自分ではいたしませんで、決定を公庫に持込んで参ります場合と二色ございますが、要は公庫の役目は、大きなビルディングの屋上にありますところのタンクの作用をなすもので、そうしてこのタンクからいろいろのパイプを通じまして、それぞれの蛇口に水が流れるというのと同様の仕組かと
考えておるのであります。そうしてこの公庫の代理を勤めますところの
金融機関が金を貸す場合、いわゆる公庫は
金融機関に預託という形で、あらかじめ資金を貸しておくというのではありませんで、この
金融機関が大体
法律できめますところの中小企業者に金を貸すということが
はつきりいたしました上で、公庫が金を流すということになりますので、例えば
一般銀行等を通じまして、公庫の金が流れます場合におきましても、いわゆる横流れ等の心配はないかと
思つておるのであります。
それから公庫におきましては、先ずさような
意味がございまするが、中小企業者に必要な長期資金を流すことを目的といたしまして公庫ができる。そうしてこの公庫の金を受け得る中小企業者の
範囲は、資本金額、又は出資総額が一千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人、商業、又はサービス業におきましては三十人、鉱業を主たる業とするものについては千人以下の会社又は個人、そうして政令で定めるところの事業、これは現在の信用保険に定めております事業と大体同じものでございまするが、その特定の事業を行うものというものを主といたしておるのであります。従いまして従来開発銀行が見返資金から中小企業に貸出しておりまする場合におきます中小企業者の
範囲と余り違わないのであります。ここで中小企業者の
範囲におきまして多少問題がありましたのは、医療
関係の法人をどう扱うかということにつきまして、厚生省方面から若干の問題はあ
つたのでありまするが、結局三百人以下の従業員を持
つておりまする法人でありますれば、中小医療法人といたしまして、この公庫の対象になることにいたしておるのであります。
それから公庫が運用をいたしまする資金の額でございまするが、これは二十八年度の予算で組んでおりまする
一般会計からの出資金が三十五億円、それから二十七年度の補正予算におきまして
一般会計から商工中金に貸しました金を公庫の出資に振替えましたものが二十億円、これで五十五億円の出資金に相成るわけであります。それから資金運用部から五十億円を借りまして、これで合計百五億円、金額的に
はつきりいたしておりますのは百五億円でございまするが、そのほかに開発銀行が持
つておりまする債権で今度産業投資特別会計に振替るものがあるのでありまして、その産業投資特別会計に更に新しくできまする公庫に出資として出て参りまする債権が約二十四、五億円
考えられるのであります。それからその次といたしましては、開発銀行が昨年の暮から業務を開始いたしましたいわゆる見返資金の中小企業向貸出をいたしました債権でありますとか、或いは開発銀行が先に停止をいたしました復興
金融金庫から中小企業者に出しましたところの債権、こういうふうな開発銀行のふところにありまするところの、過去の債権がこの公庫への貸付として出て来ることに相成
つておるのでありまするが、この
範囲につきましては、今なお
整理中でございます。それで公庫の出資金乃至貸付金に関しまする、つまり公庫の資金のことを申上げたのであります。これらの資金のうち
先ほど来申しました貸付金から来年度どのくらいの回収金があるかということを
考えて見ますと、おおむね十五、六億円乃至二十億円あるかと、これはまだ若干開発銀行からこの公庫へ出て参ります債権の額によりまして回収金の額も違いまするので、
はつきりはいたしませんけれども、まあ十五億円程度に抑えて見ますれば大過ないかと思うのでありますが、そういたしますると、この公庫が来年度動かしまする資金は、出資金が五十五億円のうち、二十億はすでに中金に貸してございまするから、その二十億円を差引きますと、三十五億円であり、借入金の五十億を加えまして八十五億円、それに今の回収金の十五億円を加えますと、おおむね百億程度の金を二十八年度にこの公庫で動かせるということが現状のところでございます。
それから役職員といたしましては、
先ほども申したのでありまするが、総裁一人、理事四人以内、監事二人以内、そうしてそういう任命であるとか任期等は他の公庫と大体同様でございます。
それから貸付の条件は設備資金乃至長期運転資金、これは設備資金だけに限定いたしますところの従来の開発銀行の方式は多少窮屈過ぎやしないかと思うのでありまするが、そこで設備資金及びこれに伴いまして、必要を生じて参りますところの長期運転資金というものにこの公庫の金を使いたい、何しろ百億程度のものでございまするから、運転資金単独の貸出をするというのには資金が足らないかと思うのであります。
従つて設備資金及びそれに関連するところの運転資金ということにいたしたい、かように
考えております。貸付金額は一企業者当り貸付累計一千万円、協同組合又は調整組合におきましては三千万円以下、利率は年一割余を大体の標準といたしまして、償還期限は一年据置の最長五年ということにいたしたいのであります。
それからこの業務の、
先ほどちよつと触れたのでありまするが、
金融機関に公庫が業務の委託をするという場合の委託の方法でございます。
第一は、
金融機関が受付から審査、その他全部この金を幾らどういう期間で貸すかということまで
金融機関が全部きめます。それを公庫に連絡して来るという場合、この場合におきましては、その仕事を請負
つておりますところの
金融機関は公庫に対しまして八〇%の支払保証、いざという場合には八割の支払を公庫に対して保証する、その代り手数料といたしまして公庫は
金融機関に四分五厘を差上げる。
それから第二の方式といたしましては、受付から審査等、前の方式と同棲でございまするが、貸出の最後の決宗を公庫に持込んで参る場合であります。この場合におきましては
金融機関はいざという場合三割支払保証をいたしまして、手数料は三分ということに相成るのであります。そしてこの中小企業
金融公庫法と並行いたしまして、目下議会に提案いたしておりますところの中小企業の信用保険法の一部
改正の
法案が出してあるのでございまするが、今度の
改正によりまして、これらの保証債務も信用保険の対象にいたすことにいたしまして、そしてこの業務運転が、中小企業者が一層借りやすくするという方式をと
つておるのであります。
なおこの
法案に関連いたしまして、世上いろいろの
議論奪われたのでございまするが、一番大きな
意味で、この公庫に疑問を持
つた意見が出ましたのは、この公庫の設立によりまして、協同組合を大いに助長、育成して行こうという従来の
政府の方針が歪められるのではないかというふうな反対
意見乃至疑問があ
つたのでございます。主としてその出所は中小企業団体連盟を中心とするものでありました。私どもその後いろいろと膝を突合わしまして
議論をいたしました結果、双方に落度があり、我々が当然十分納得して頂いておくようにしなければならなか
つたことが向うに徹底しておりませんで、誤解に基く不要な御心配をなさ
つてお
つたような点もございまするし、いろいろのことがあ
つたのでありますが、だんだん御理解を頂いて、最近におきましては公庫に反対するということではなく、公庫の運用と協同組合の維持育成乃至その協同組合に対する
金融を唯一無二の使命としておりますところの商工中金が弱ま
つて行くようなことのないように運用してもらいたいという、運用上の希望に要約されることと相成
つたのであります。その点につきましては、私どもといたしましても、何ら異存のあるところではございませんし、協同組合を維持育成して行くという方針に対しましては、今年度の予算におきましても、それ相応の別途予算もと
つておるような次第でございます。この公庫の運用に当りましても、商工中金というものが自己の使命を達成して行くに困るようなことのないように、十分の留意をいたして参るということにつきましては、
大蔵省銀行局方面とも
意見の一致を見ておるところでございまして、そういう
趣旨で一時公庫にかなり強い反対が出ておりましたことも、大体話合が付いた
段階に参りましたことを非常に喜んでおりますと共に、
ちよつと附加えて申上げた次第であります。概略申上げました。