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政府委員(
渡辺喜久造君) お手許に二十八年度の
税制改正の要綱という資料がお配りしてございます。一応これによりまして今度の
税制改正の全貌を御
説明申上げまして、それからあと別途各税についての詳細につきましては又別の機会に順次御
説明申上げて行きたいと思います。
〔
委員長退席理事伊藤保平君
委員長席に着く〕
要綱の七頁を御覧願いますと、各税の一
収入予算額表というのがついてございますが、これによりますとD欄に七千八十億という数字がございます。これが今度の二十八年度の
政府の予算に計上してございます
租税及び
印紙収入の額でございます。これは前年度に対比いたしますと、一番最後の欄にございますように二百二十七億の増収にな
つております。併し
現行法による
収入見込額八千九十億円に比べますと千九億円の
減収、但しこの中には六十七億、国債による
減収分が含まれておりますので、これを差引きますと九百四十二億という
減収になります。これが
税制改正による
減収でございますが、それによります大体の
税制改正の全貌というものを御
説明申上げたいと思います。
最初の一頁から御覧願いたいと思いますが、今度の
税制改正は何と申しましても全体といたしましては、さきに成立をみました
臨時特例法の
平常化というのが中心を成しております。もう一つお手許に
租税及び
印紙収入の
説明という書類がお配りしてあると思いますが、この三頁に各
事項別の総
収入の額が詳しく載
つてございます。これを御覧願いましても全体の千九億の中で
特例法の
平常化による分が
所得税において八百三十七億、大
部分がこれに当
つているわけでございます。その他におきましては
相続税の
負担の
軽減、それから
酒税の
税率引下げ、それからあとは
負担の調整、
課税の
簡素化、資本の蓄積のための
措置ということが全体の狙いにな
つております。
それで先ず
所得税でございますが、そこの一に書いてございますことは、全部
特例法のまあ延長といつたような考え方でございます。即ち
基礎控除を五万円から六万円に上げる、
扶養控除におきまして最初の一人の二万円を三万五千円に上げる、
勤労控除の
最高限度を四万五千円に上げる、
社会保険料を
控除する、
税率を百分の十五の
税率を作る、これはいずれもその趣旨でございます。ただ
一つ特例法以外の問題は、三百万円超に百分の六十、五百万円超に百分の六十五という
税率が盛られております。これは別途行おうと思
つております
富裕税の廃止に見合いましてこういう
措置を行おう、なおこれによる増収の見込は
説明の三頁のほうにございますが、一応八億円見積
つてございます。それから
生命保険料の一
控除を四千円から八千円に上げる、これ以下は
特例法にないことでございます。四千円から八千円に上げる。それから
医療費控除でございますが、現在は
医療費は
所得の一割を超える場合において
控除をする、
控除の
限度は十万円、これでは適用してみましてもなかなか十分の効果がないようでございますので、
所得税の五分を超える場合におきましては、
医療費控除を認めると同時に
控除額を十五万円にすれば、適用する数がずつと殖えて来ると思
つております。
それから四は青色申告の問題ですが、この場合にいわゆる
専従者控除という制度があることは御承知だと思います。現行の五万円は
基礎控除の額と合せてございますが、そこで今度
基礎控除の上る機会におきましてこれを六万円に上げたい、それから同時に適用される人の範囲でございますが、現在は高等学校十八才以上というのを、十五才以上と中学校卒業程度を頭におきまして拡げて行こうと思
つております。
なおこれに関連しまして青色申告の制度の
簡素化ということも別途
法律事項ではございませんが検討しております。
退職所得につきましては現在十五万円を差引きましてそして残りを半額にして
税率を適用するということをや
つておりますが、今度はその
控除額を二十万円に上げたい。あとの制度は同じでございます。
それから
有価証券の
譲渡所得に対する
所得税の
課税でございますが、いろいろの議論の末、これは今度廃止したい。
それから
山林所得、不動産の
譲渡所得等の一時的
所得につきましては、いろいろ複雑な制度にな
つておりますので、これの
簡素化と
負担の
軽減を図ることを考えております。いずれも後刻又別の機会に詳しく申上げますが、大体の考え方としましては、
山林所得は現在変動
所得として扱
つております。あのシヤウプの勧告による変動
所得という扱いは非常に複雑な点もございますので、もつと単純化しましていわゆる五分五乗、百万円
所得がありますと、五分した二十万円に
税率をかける、それを五倍にした五分五乗の制度に変えよう、他の
所得と合算した上での五分五乗ということを考えております。
なお
山林所得につきましては、現在十万円
控除することにな
つておりますが、これを十五万円に
引上げようと考えております。その他第三次再評価の関係で或る程度の
負担の
軽減も考えられると思います。
それから
措置法の問題といたしましては、現在の
課税の場合に財産税当時の価格がはつきりしないのでいろいろ
課税上の紛議がある、分りにくいという問題もありますので、概算経費のような観念で、いわば標準率的のものを使うことができるということも考えてみたいと思
つております。これはいずれも
措置法において考えております。
それから不動産の
譲渡所得につきましては半額
課税ということを考えております。なお
控除額は現在
山林所得、
譲渡所得、一時
所得全部合せまして十五万円でありますが、今度の案では
山林所得は
山林所得だけで十五万円、それから不動産
所得、一時
所得その二つを合せて十五万円ということを考えております。
なお預貯金利子等に対する源泉選択の率でありますが、現行は五十にな
つておりますが、いろいろの議論がございますし、
最高税率を上げる際であるからむしろ上げるべきではないかという議論と、貯蓄奨励という考え方からむしろ下げるべきではないかという考え方もあるのですが、いろいろ勘案しました末、四十という
税率に考えております。以上が
所得税につきまして中心的な問題でございます。
次に
法人税でございます。
法人税につきましては第一が
企業合理化促進法及び
租税特別措置法に基く
特別償却を認める範囲を拡張する。合理化
促進法におきましては
所得の年、半額の特別
控除を認める、
租税特別措置法におきましては三年間五割増しの
特別償却を認めるということにな
つておりますが、業種、機械等を指定しておりますその範囲等を拡げようという考え方であります。
貸
倒準備金でございますが、これは期末の売掛の金額に対しまして例えば卸小売ですと千分の十とか、それから製造業、金融業でございますと千分の七とか、或いはその他ですと千分の五という率をかけた場合の金額と
所得の二割に相当する金額、いずれか小さいほうを積立ててよろしいということにな
つておるのでありますが、この千分の十に当るものを今度千分の二十に
引上げよう。それから千分の七に当
つておりますものを千分の十に
引上げよう、千分の五を千分の七に
引上げようということを考えております。
価格変動準備金でございますが、これにつきましては新らしく考えておりますのは国債を対象に入れようということと、もう一つ現在四期に分けまして四分の一ずつ積立てて行
つてよろしいというのを、その制限を外してしまおうということを考えております。三でございますが、貿易商社につきまして、五年を限りまして
輸出契約取消準備金制度と、
海外支店設置費の
特別償却、取消準備金のほうは大体貸
倒準備金と同じようにその期における契約高の千分の幾つという数字と利益の何割という数字のいずれか少いほうを積立ててよろしいということを考えております。それで輸出契約の取消等によりまして損が出ましたら、それからそれを払
つて行
つてもらう。支店の設置費のほうでございますが、これにつきましては、合理化法と大体同じような線で、最初の年に半額の
特別償却を認めて行きたい。ただ家屋のようなものになりますと、そのまま半額を認めるのはちよつと無理でありますので、これは
措置法並みに三年間五割増しくらいの償却を認めたらどうかと考えております。以上はいずれも
法人税法のほうには出て参りません。一と二はこれは政令の問題にな
つております。三は特別
措置法の
改正のときに御審議を願いたいと思
つております。で、税法に出て参りますのは四と五でございます。四の問題はいろいろ御議論があるわけでございますが、考え方といたしましては、
資本蓄積のためにまあ随分税法上いろいろな
措置をや
つている。従いましてそれの
措置と裏腹のような意味におきまして、こういうことを考えたらどうかというのが
交際費、機密費の一定額以上の分については、二分の一を損金にしないという考え方でございます。で、内容につきましては、詳しくいずれ御
説明申上げたいと思
つておりますが、考え方といたしましては、大体飲み食いの金を中心にしましてそれと年末、年始、中元等の贈答費関係の金を中心にこの定義をきめた次第であります。なお
限度はなかなかむずかしい問題でございますが、資本金或いは利益金額、それから取引金額、こういつたものが一つの基準にと
つていいのじやないか、業種別に或る程度区分を作る必要もあるじやないかということを考えて、今折角資料を集めております。それから五でございますが、これは個人の
有価証券の
譲渡所得税を
課税することはいたしますが、それの連関でございますが、
法人が解散した場合の解散の分配金に対する
課税、或いは合併の場合の従来みなす配当といつたような
課税の問題でございます。
譲渡所得税に当る分については
課税しませんが、配当に相当する分はやはり
課税して行くべきじやないか。それで昔清算
所得という制度でそれをや
つておりまして、
譲渡所得は
課税しておりませんでしたが、その昔に帰りまして、
法人のところで清算
所得を
課税をして行くということをしたらいいがというのがこの五の考え方でございます。
それから第三に
富裕税でございますが、
富裕税は
昭和二十八年分から廃止しよう、これによる
減収は一応十八億と見積
つております。
それから
相続税でございますが、
相続税は従来のやつは、いわば累積
課税制度と呼んでおりますが、人の一生を通じましてその
相続或いは贈与によ
つて取得したものを積み重ねて行
つて、三十万円になるまでは
課税にならん、三十万円超したら
課税になるという制度でございましたが、これは
税務署のほうの仕事の上から行きましても、納税者のほうから言いましても、それがいささか理論倒れで、ちよつと実行がむずかしいようでございます。それでこれをやめまして、
相続につきましては
相続の都度、贈与についてはその一年間分を合算して
相続税又は
贈与税を
課税して行きたい、ただ昔や
つておりましたような遺産税の考え方ではございませんで、どこまでも
取得者に対する
課税というふうに考えて行くつもりでございます。従いまして遺産が一千万円でございましても、昔の
相続税ですと、その一千万円に
税率を掛けて税額を出して、五人のかたが均分
相続すれば、それを五分の一づつ納付するということにな
つておりますが、今度の考え方では一千万円の財産を五人のかたが二百万円ずつ均分で
相続されますと、それぞれ二百万円ずつの
相続税として
課税する、
税率の適用関係から行きましても、ずつと低い
税率が適用されるということになるわけであります。なお
基礎控除は三十万円から五十万円に上げる、それから
贈与税につきましては、従来は一緒にな
つておりましたので、三十万円の
控除が一本ございまして、別に十万円の
控除を作ろう。なお均分
課税で
取得者課税でございますから、先ほどの例についてちよつと考えてみますと、遺産
課税の場合ですと、一千万円の金額に対して五十万円が一回しか引かれませんが、現在のやり方ですと、二百万円ずつ均分
相続すれば、五人のかたにそれぞれ五万円の
控除が行くということになるわけであります。
税率の無理が相当緩和されるものと思
つております。それから
死亡保険金及び
退職金に対する
控除、これは現在二十万円にな
つておりますが、これは三十万円に
引上げよう。御承知のように生前に
退職金をもらわれますと、
退職所得として
所得税の
課税になります。在職中に亡くなられたかたが、死後遺族のかたに
退職金が渡りますと、ここに言う
相続税の問題になるわけであります。それから
税率につきましては最高一億円超七十、この
税率はそのままにしておきますが、下のほうは大体五ずつ
引下げる。大分
相続税の
税率が高いように思われますので、五づつ
引下げた
税率といたしております。なお
贈与税につきましては、これは何回にも分割して贈与する、それによ
つて贈与税の
負担軽減を図るといつたようなこともありますものですから、多少
税率を
引上げておくというのが
贈与税の一般的な常識にな
つておりますが、今回それに倣いましてこの法は大体
現行税率の程度の
税率にしております。なお延納を認める範囲の問題でございますが、現在は金銭を以て納付することが困難な場合に延納を認めるということにな
つておりますが、今度は多少考え方を変えまして
相続税の額が一万円を超えた場合におきましては、延納を認める。原則としては五年、それから不動産、立木等が
相続財産の半額以上ですと十年、但し一回に納付する金額は一万円を超えないということを考えております。最終回は特別で、従
つて三万五千円の税額でございますと、三年間一万円ずつお払いにな
つて、四年目に五千円払
つて頂く。それから十万円でございますれば、二万円ずつ五年間に払
つて頂く、こういうふうな考え方に
相続税ができております。なお
贈与税につきましては、これは多少事情が違いますので、現在と同じように金銭を以て納付することができない場合に五年乃至十年の延納を認めるということにな
つております。
次は酒でございます。酒につきましては、二割乃至三割
税率を
引下げるということを考えております。併し全体の
収入は密造酒の駆逐等によりまして大体現行程度に近いところに数字を計上してございます。これによりまして小売価額は一応清酒で言えば四百四十五円、合成清酒で言えば三百三十円、焼酎は三百円、ビールは百五円というふうに下げるものと一応そこに書いてございますが、実はこの数字はその後いろいろ検討しております。相当生産者それから卸し、小売のマージンの減がこの中に入
つておるわけでありますが、マージン、生産者コストの切下げにつきましていろいろ数字を検討して参りますと、この数字が多少動きはせんかということを今考えております。但し五円以上は動くことはめつたにあるまいというふうに考えております。御了承願いたいと思います。なお酒の
税率引下げにつきましては、丁度花見酒の季節にもなりますし、四月一日にこれが実施ということになりますと、非常に取引の関係で困難もありますし、業者のかたも迷惑なさいますので、何とかして三月一日からこれを実施するようにいたしたいというふうに原案ができております。それから二の
基本税と
加算税の問題でございますが、この
加算税の制度はこれは御承知のように
配給酒が大
部分で、
自由販売酒に
加算税ができまして
自由販売酒だけ高く売ろうというので始つた制度でございます。最近は御承知のように、
配給酒が非常に少くな
つて、大
部分が
自由販売酒になつたということが一つと、それから
税率が大分下
つて参りまして、今度の引下のごときも、若し
加算税だけについてその引下を適用しますと、もう
加算税は殆んど残らんというようなものもございます。そこでこういう制度はこの際やめてしまつたらどうか、但しこれに結び付きます
配給酒の制度、
指定販売業者の制度でございますが、これはいろいろ事情もございますので、とにかく一年間はこれは残しておくという考え方でございます。
それから砂糖消費税については、分蜜白糖、再製糖に対する
税率を二割上げたい。鹿児島県、高知県等でできます樽入黒糖、樽入白下糖のごときは、これは四百円の
税率を変えるつもりはございません。
それから物品税につきましては、貴石、貴金属製品等につきましては、製造
課税を小売
課税に改めて、昔これは小売
課税でや
つていたものでございまして、製造
課税に直しましたが、大分無理な点もございますので、これを小売
課税に改めたい。なお
財源としまして一応二十億ほど用意してございますが、これ長
つていろいろな
負担の調整を行いたいということを考えております。
それから
有価証券取引税、これは昔の
有価証券移転税のような税金をこの際作りたい。
税率としましては、業者が売る場合には、売渡人に
課税するつもりでありまして、素人の売る場合には千分の二、業者の売る場合につきましては、ここには一応千分の一の程度にな
つておりますが、現在考えておりますのは、万分の八という
税率で
提案したらどうかと考えております。大体歳入見積もそれでできております。
それから第三次再評価でございますが、第一次、第二次の再評価につきまして、第一次、第二次再評価を行いましたが、第二次再評価は、いわば第一次再評価の基準日も、再評価
限度も同じでございまして、第一次再評価をやり得なかつた人に、期間の延長の利益を与えたわけでございますが、第三次再評価は多少性質が違いまして基準日も最近の二十八年一月一日にし、再評価
限度も新らしい物価の変動を考えまして
引上げよう。それでこれを会社等が行う時期でございますが、余り期間を短かくしますと、第一次のあとで、第二次をしなければならなかつたようなことも考えられますので、とい
つて余り長くなりますのもいろいろ支障がございますから、二年間に一回限り任意に行うということに考えております。なお再評価の税の問題にはいろいろ御議論もありますが、結局従来と同じように百分の六の
税率で
課税したいというのが、この考え方でございます。
それから減税国債の問題でございますが、これは今度三百億を
限度としまして、投資特別
会計の
資金のために発行するもので、ございましてその税の関係だけがここに載
つてございますが、
法人について御
説明すると一番わかりがいいと思いますが、
法人が百万円購入すると、その半分の五十万円分が、いわば損金に算入される。それだけ税金がかからん。
税率が四十二でございますから、百万円に対して二十一万円だけ税金がかからん。税金が安くなるわけであります。それと見合いまして個人の場合は四分の一、百万円を買われますと、二十五万円というものを
軽減したい。なお
軽減を受けることの購入額につきましては、
法人については
所得の百分の四十、それから個人の場合は税金の百分の二十と一応の
限度をおくことにな
つております。なお利率は四分、償還期限は三年据置きでありまして、四年五年と均分償還ということが考えられているようでございます。個人においては、利廻りが一割二分五厘ですが、
法人が一割五厘というような計算になるわけでございます。
その他としましては、
登録税について
収入印紙の不正使用を防止するため、
登録税法について必要な
改正を行いたい。
それから間接税については、現在
利子税はと
つておりませんが、やはりほかの税との均衡もありまして、
利子税をとるようにしたい。尤も担保の提供がありまして、延ばしている期間はこの
利子税はとるつもりはございません。
それから今度
酒税法の全文
改正で、現在の
酒税法の五十二条の規定はやめることにな
つておりますが、それなどを見合いまして
酒類団体業法といつたようなものを作りまして、
組合の設置、それから
組合の自治による生産の統制、価格の統制を行うことができるといつたようなことを考えておるわけでありまして、そのために
酒税の
保全及び
酒類業組合等に関する
法律を別途
提案しているわけでございます。
その他税法の規定につきまして、いろいろ細かい問題ではありますが、かなり重要な問題としていろいろ議論されている問題もありますが、それらのことにつきましては、別途それぞれの税につきまして御
説明申上げる機会に詳しく御
説明申上げたいと思います。
以上が大体今回考えられております
税制改正の概略的なものであります。