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1952-12-09 第15回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月九日(火曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中川 以良君    理事            大矢半次郎君            伊藤 保平君            菊川 孝夫君    委員            岡崎 真一君            西川甚五郎君            平沼彌太郎君            小林 政夫君            森 八三一君            松永 義雄君            菊田 七平君            堀木 鎌三君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   参考人    一橋大学経済学    部長      井藤 半弥君    日本中小企業団    体連盟理事   山田 正作君    日本租税研究協    会副会長    松隈 秀雄君    化学産業労働組    合書記     高島喜久男君    全国物品税撤廃    期成同盟中央執    行委員     蛇石 清士君    全但商工業振興    協議会代表   長  六郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○金融並びに租税一般に関する調査の  件  (税制改正に関する件)   —————————————
  2. 中川以良

    委員長中川以良君) それではこれより委員会を開会いたします。  先ず参考人のおかたに一言御挨拶を申上げます。本日はわざわざ御出席を賜わりまして誠に有難うございました。厚く御礼を申上げます。当委員会におきましては昭和二十八年度分所得税臨時特例等に関する法律案を目下審議中でございますが、この機会国税全般に亘りまして御意見を承わりまして、租税制度及び徴税方法等改善に資したいと存じまするので、何とぞ率直な御意見の御開陳をお願いいたします。又委員からの質疑に対しましてもお答えをお願いしたいと存ずる次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは一橋大学経済学部長井藤半弥君。
  3. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) 一橋大学東京商科大学教授井藤半弥でございます。御命令によりまして今度の国会で御審議中の昭和二十八年度分所得税臨時特例等に関する法律案並びに一般国税に関する問題点について意見を述べさせて頂きたいと思います。  具体問題に入ります前に、これはいつもお招きにあずかりますたびに同じようなことを申すようでございますが、日本税制の背景になつておる一般的な問題を申上げます。実はこれは昨日参議院予算委員会公聴会で申上げたことでございまして、その点今から約五分間ほど同じようなことを申しますが、これは関連がございますので、どうぞお許しを願いたいと存じます。そこでこれはきまり切つたことでございますが、一応申上げませんとあとが続きませんので申上げさせて頂きますが、先ず税金の問題でございますが、先ず総額種類に分けて申上げます。総額は御案内通りたばこなど専売公社の益金を含めまして、国税は九千三百二十五億円、これに地方税二千九百三十四億円を加算いたしますと、日本税金は国家及び地方を通算いたしまして、一兆一千九十二億円になるのであります。例によりまして、租税国民所得で割算いたしますと、二十七年度は二一%であり、二十六年度も同じく二一%であり、二十五年度も同じく二一%でございます。シヤウプ勧告の以前の二十四年度が二七%でありまして、これを最高としてずつと二一%という軽減を示しております。日華事変以前の昭和十年度におきましては一四%であります。現在の二一%は昭和十年度の一四%に比べますれば重いということは言うまでもないと存じます。それから租税国民所得で割るという計算が一応の目安になるものでございますけれども、これによつて国民負担を計ることは不適切である、或いは余りにも粗野である、ナイーブであるということは多くのかたが言われておる通りであります。それで実はこれは前回の公聴会でも申上げましたことでありますが、もう少し真相に近い数字といたしまして、租税国民所得で割るということをせないで、租税負担能力で割る、こうするほうがより真相に近い。この負担能力をどうして計算するか、これもなかなかむずかしいのでありますが、数学で表わすとなると、一番安直なやさしい方法は、国民所得から最少生活費部分を引いた残り、即ち自由所得をとります。つまり国民所得から最少生活費を引いた自由所得、これを分母に置きまして、分子租税を置く、この方法であります。そこで最少生活費計算方法は、これはなかなかむずかしいので、エンゲル係数を使いまして食糧費を以て最少生活費を代用いたします。そこで国民所得から食糧費を引いたもの、即ち自由所得を一本とり、それから租税分子に置いてその割合を求める、これは私絶えずやつておることでございます。今度新たな資料でこの計算を改めたわけであります。それによりますと、昭和二十七年度は四三%で、昭和二十六年度は四六%、昭和二十五年度は五〇%、それから昭和二十四年度は七二%であります。昭和十年度は一九%であります。そこでさつき租税国民所得で割算いたしました場合には、二十七年度、二十六年度、二十五年度、ともに二一%でございましたが、今のあと計算租税負担能力で割る計算をいたしますと、二十五年度から二十七年度にかけて僅かながら減税をされておるということになるのであります。併しながら戦争前の昭和十年の一九%に比べると、なお重いということは言うまでもないことであります。  そこでこれは一般数字の問題でありますが、それでは種類内容はどうか、内容につきましてこれもまあいつもやることでございますが、直接税と間接税に分けます。これを新らしい計算にし直しますと、国税について申しますと、昭和二十七年度は、直接税が全体の五七%、間接税が四三%であります。まあ普通大ざつばに申しまして、直接税は累進税がかかつております関係上、金持が、富者が負担する。それから間接税は貧乏人も金持も同じく負担するのであり、従つて大衆課税と言われておりますが、現在の日本におきましては直接税と申しましても実は大衆課税であるのであります。これも同じ方法を使うのでございますが、数字を改めまして、なぜ直接税が大衆課税になつておるかということを新たな数字によつて申しますと、この数字は実はこの委員会事務局から頂きました数字基礎とした一番新らしい数字でございます。この昭和二十七年度の所得税申告納税、これは基礎控除家族控除などをする以前の数字でございますが、昭和二十七年度所得税申告納税の予定を見ますと、合計三百十七万人であります。このうち三十万円以下のものが九二%でございます。それから所得額は合計いたしまして八千二百九十一億円でありますが、そのうち三十万円以下のものが七四%になつておるのでございます。それから給与所得でございますが、やはり二十七年度、勿論推算でございますが、これは勤労控除をやる前のものでございますが、給与所得について申しますと、納税人員が八百六十三万人、このうち一年三十万円以下のものが九七%、殆んど大部分でございます。それから所得金額で申しますと、給与所得納税者所得額は合計いたしまして一兆六千四百七十億円でございますが、このうち三十万円以下のものが八八%でございます。そこで三十万円と申しましても、戦争前の価値に換算いたしますと、八百六十円であります。どうして換算したかと申しますと、日銀の卸売物価指数で申しますと、戦争前の昭和十年頃に比べますと三百五十倍に物価は騰貴しております。そこで三十万円を三百五十で割りますと八百六十円、戦争前の価値に直しますと八百六十円の連中が所得税の大部分負担しておる。戦争前の個人所得税、即ち第三種所得税免税点が千二百円であつたという事実と対照いたしますと、現在の所得税はこれは誰が見ても大衆課税と言わざるを得ないと思うのであります。だから現在日本におきましては直接税は金持負担する、間接税大衆負担するということは意味をなさんのでございまして、直接税も大部分大衆負担する。即ち大衆課税であります。これがまあ日本の現状でございます。  そこでそういう立場で今度は今日の問題に入るのでございますが、今度の所得税臨時特例等に関する法律案を眺めますと、これは確かにいい方向に向つておる。それは理想的とは勿論申しませんけれども、方向としてはいい方向に向つておると思うのでございます。言うまでもなく今度は基礎控除引上扶養控除引上、それから新たに社会保険料控除をやりました。それから税率の調整をやりました。それから、これはこの前の国会のこの公聴会のときにも申上げた次第でございますが、勤労控除最高限が三万円であつたのを今度は四万五千円と五割上げました。こういう一連の措置は確かにいい方向に向つておるのでございまして、とにかく日本では一番税金について問題になつているのは、所得税のうちの低額所得に関する課税、これが一番問題になつている。それの負担を軽くしようと努力したということは、これは一応私はいい方向に向つているということはすなおに認めざるを得ない事実だと思うのであります。而もこの間に物価の騰貴は殆んどございません。今年の一月と現有と比べますとCPI、消費者物価指数を見ますと、余り変化がないのでございまして、これは大体実質的な減税と見ていいと思うのであります。ただ少しあら探しをやらせて頂きます。今度のほうもやはりあらはないわけではない。少し揚げ足取り的な小さな問題を言うのでございますけれども、小さな問題でもやはり無視することはできないと思います。  一つの問題になりますのは、税率でございますが、税率は大体下つておりますけれども、七万円と八万円の間が二〇%から二五%にこれは形の上では確かに引上げになつております。従つて七万円を超して八万円までの一万円の部分につきましては、即ち五%の引上げでございますので、この部分は五百円の増税になつておるのであります。ところが二万円以下のものは従来二〇%であつたものが今度は一五%に引下げられておりますので、この二万円の部分は要するに五%ずつ減税になつておりますので、そこで五百円を増税して一千円を減税しておるのでございますので、差引きいたしますとあらゆる人々について減税になつておるということは勿論言えるのであります。併しながらより望ましいことはどうかと言えば、七万円と八万円の間、これをやはり二〇%のままに残して置けば、更によかつたのではないかと思うのであります。こんなことは勿論政府当局も御存じでありますが、察するに、この部分は非常に納税者が多いのでございまして、この階層で五%を多く取るということは、これは収入という点から言うならば、私はまだ計算いたしておりませんが、数百万円の収入に影響するのでございまして、そういう点でこういう措置がとられたのではないかと思います。併しまあこれを考慮いたしましても、とにかくあらゆる所得階層のものにつきまして実質的に減税になつておるということは言えるのであります。  それからもう一つ、これも小さなあら探しでありますが、考え方として私は問題にしたいのは、今度の臨時特例、これは確かに臨時特例でありますが、これは来年のこの次の国会できつと臨時ではなくて成規制度に繰入れられるのだと思いますので申上げたいと思いますが、所得税についてこういうふうな減税措置とつたところがそれに対応して退職所得について何ら措置がとられないということは片手落ちではなかろうか。と申しますことは、退職所得については確かに去年でございましたか、相当思い切つた改正がございました。私はあれは改善だと思つております。そこであの退職所得につきましては改正後の現行制度は十五万円を基礎控除といたしまして、そうして残り部分に対して所得税税率をかけて独立して課税する。問題は十五万円の基礎控除を今度の改正でもなぜ据置きにしたか、これは問題になるのじやないかと思います。そこでこの十五万円という数字はどうして出たかという問題でございますが、これは税法にそんな根拠は書いてございませんが、これが問題となりましたときに一般に言われておりましたことは、退職所得というものは退職者の老後の生活費であるというような特殊な意味を持つておるのだ。そうだからして十五万円というものは当時の基礎控除五万円の三年分という意味でございまして、三年間くらいの基礎控除をやつてやるほうがよかろう、そこでこの十五万円という数字が出たのでございます。そこで今度は十五万円は、六万円に上つたのでございますから、その考えから申しますと退職所得基礎控除は当然十八万円に上げなければならないのじやないだろうか、まあこういうふうに考えております。  それ以外に、青色申告書を提出するものにつきまして専従者に一人について五万円引くとか言つて、これもやはりそれに関連して問題なのであります。私はここで申上げたいのはこういうことなのでございまして、この所得税その他税制改革いたす場合に、このパーセンテージできまつておるものは一応無視してもいいのでございますが、金額控除をやる場合に、或る部分だけ金額控除し、他の部分金額控除考えないということは均衡を失するのじやないか。その適例といたしまして、この退職所得十五万円の据置きをここで問題にしたのでございます。要するに、まあこれは少し話が細まかでございますが、一種の揚げ足取り的でございますが、やはりこういうところに問題があるのだと思います。要するに今度の臨時特例などに関する法律案は、理想的とは申しませんけれども、改善の跡は認められるのであります。併しながら、戦争前なんかに比べては勿論まだまだこの方面は減税して頂きたいということは言うまでもないことであります。  それで、これから後の租税に関する一般方針でございますが、これは結局次のようなことが望ましいのじやないかと思つております。それは今度も大分減税になりましたけれども、なおこの低額所得部分を更に減税にする。まあ減税にするのは非常に結構なことでございますが、財源をどうするかという問題でございます。それで、或る人はまあ勇壮なことを申しまして、高額所得税税率を高めよ、英国は九十何%だと言つておりますが、これは制度としてはいいのでございますが、先に申しました数字からいたしまして、九五%にいたしましても、その所得階層所得高が極めて少いのでございますので、低額所得者減税をカバーすることは到底できないのでございます。それで結局はどういうことになるかと申しますと、低額所得税減税するということになりますれば、やはり財政の規模を縮小するということ、これ以外に途はないんではないかと思うのでございます。そういう意味でこの所得税金額が減りますので、直接税、間接税比率から申しますと、間接税のほうにやや重点が移るということは止むを得んことであります。そこで私はこの機会に特に大きな声で申上げたいことは、私はこの間接税を重くしようというのじやございません。現在ある間接税を更に増徴しようというのじやなくて、直接税を減らして頂きたい。そうすることによつて直接税と間接税比率から言うと、間接税が重くなるという外観を呈するだけであります。この場合に私は、それでは貴様は理論として間接税中心主義をとるものかとおつしやいますと、そうじやございません。私は余りに偏理論的かどうかは知りませんが、やはり租税というものは直接税を中心にしなければならない、これは当然のことであります。私はやはりできるだけ直接税中心主義に移すことが理論上望ましいと思うのでございますが、現在の日本実情から言うと、もう少し低額所得税改正することがいいのじやないかと思います。こういう観点で、結論から言うと、私の考えでは或る意味において間接税中心主義とも言えますが、ただ似て非なるものはこういうことでございます。これはやはり間接税中心主義とも言われておりますが、それは法人税などを減税にして、その代り物品税を重くしようとか或いは取引高税を復活せよとかいう議論があるのでございますが、私はこういう議論には絶対に反対したいのでございます。私は一般論として法人は勿論困つております。これはもう事実として認めますけれども、ほかの困つておる程度と比べまして法人の困り方が少いのでありまして、やはり法人税減税して間接税を増徴するということは、これは日本実情から申しましても、間接税一般論から申しましてもよくないものと思います。近頃資本蓄積などをして法人税を軽減しようという意見が非常に有力でありますが、私はこれに反対なのであります。勿論この租税というものは本来資本主義的なものでございます。これは社会主義的なものでも何でもありません。従つて資本主義経済において資本蓄積が行われることは当然のことでございますが、限度があるのであります。現在の日本租税制度を眺めましても、とかく大産業が結果として優遇されておるのであります。これは私まだ細かく検討いたしませんけれども、法人税所得税減税又は免税に関する規定を見ましても、或いは租税特別措置法において臨時償却その他を見ましても、どうも結果から行きますと、大産業のほうが優遇されておるのじやないか。そこで私は大産業も必要だし、租税というものは資本主義的でございますけれども、併しながらやはりほかの勤労者であるとか中小商工業が困つておる際でございますので、ただ資本蓄積を名として法人税減税しようという意見は、一般論として私は法人税は完全だとは申しませんが、一般論として問題になると思うのであります。  それでこの際個々の租税につきまして問題点のあるところを極めて簡単に申上げさして頂きます。先ず一つの問題は、所得税最高率、現在は五五%でございますが、あの所得税最高率引上げてその代り富裕税を廃止せよという議論であります。これは方々にそういう話が出ております。その根拠とするところは、財産の評価が困難である。これが一番有力な議論であります。私は結論から申しますと、この案に反対するのであります。と申しますのは皆さんにこういうことを申上げるのはどうかと思うのでありますが、富裕税というものはいわゆる名目的の財産税でございます。所得税補完税役割りを現在日本で果しておるのでございます。御案内通りこの所得税補完税といたしましては、明治から大正、昭和十四年まで収益税というのがありました。ところが昭和十五年あの画期的な改革によりまして収益税所得税になり、その代り所得税補完税といたしまして分類所得税というのが新設されました。ところが昭和二十二年にアメリカの勧告によりまして分類所得税がやめになつて総合所得税一本になつたのであります。即ち所得税におきましては、補完税がなくなつたのであります。そこで何とかしてやはり補完税を設けるとなると、やはり富裕税、つまり名目的財産税を設ける必要があるのでございまして、これは日本の国内においても多くの人がこれを主張したのでございますが、実行できないで、結局シヤウプ勧告によつてこれが実現されて、昭和二十五年から復活したのであります。これについてはいろいろ歴史があるんでございまして、租税の実質から申しますと、僅か十一億です。それは富裕税収入言つても十一億で、そう大騒ぎする問題ではございませんけれども、租税体系という点から申しますと、これは余り軽視することができない問題だと思うのでございます。私は名目的財産税は、国税において所得税補完税がないのですから、これはどうしても必要であるということ、その趣旨は極めて簡単でございまして、財産の取得に重く税金をかける。それから同じ所得を把握する場合におきましても、違つた角度から税源捕捉をする、所得とは違つた財産所有という角度から税源捕捉をいたしますと、一方で逃げた所得も捕えられるということであります。それから又この富裕税をかけて置くことによりまして、財産の変動に伴つて何か所得に移動があることもわかりますし、或いは相続税をかける場合の準備にもなると思うのであります。それはまあ富裕税廃止問題は財政といたしましては、僅か十一億円という小さな問題でございますが、社会、人心に及ぼす影響とか、或いは租税体系とかそういう点から申しますと、やはり事務上の不便は忍んでも、何とかこれを育てるようにやつて頂きたいと思うのであります。それが所得税最高率引上げ富裕税廃止に関する問題であります。  次に富裕税所得税の両者に関係した問題を申上げます。御案内通り現在の制度シヤウプ勧告による。そこでこの法人税基礎になつておる法人擬制説法人フイクシヨンという法人擬制説によつていることは、これは皆さん案内通りでございます。要するに、法人が金を儲けましても、結局法人に出資しておる個人が、配当その他の方法で金をもらう個人にまとめて課税するというのがシヤウプ勧告根本的考えであります。これは昭和二十五年度シヤウプ勧告によりまして税制改革をやりましたときには、これが割合に忠実に守られたのでありますが、それから後この方針は全面的じやなくて、一部は壊われつつあります。どういう点で壊われましたかというと、先ず一番大きな点は次の二つの点でございまして、一つは会社の社内留保積立金累積高に対して二%の課税をやつておりましたが、昭和二十六年度からこの課税をやめました。それからやはり昭和二十六年度から市町村民税として法人所得割を新たに創設いたしましたが、これはこの内容から見ますと、やはり法人擬制説では説明が付かないのでありまして、法人実在説根拠とするものでございます。こういうふうにしてシヤウプ勧告基礎となる法人擬制説に立脚いたします租税制度というものはすでに壊われつつあるのであります。それは日本では徹底して法人実在説的な考えをとつておるかというと、そういう考えもとつておらないで、どうも理論的にすつきりしないのであります。そこで一応このシヤウプ式法人擬制説的な課税方法がいいということを前提として日本税制を見ますと、これは結論を申しますると、私はシヤウプ勧告法人擬制説はいいと思つておりませんが、併し一応この日本租税制度の基本となつておりますこの法人擬制説的なシヤウプ勧告考え前提として見てみましても、現在の法人課税及び法人税所得税との関係においてどこに欠陥があるかということは、この前の当大蔵委員会公聴会で私たしか謄写版を刷つて参りまして皆さんに御説明した点でございます。同じことを詳しく言うのはどうかと思いますのであのとき申しました結論だけを簡単に申しますと、現在日本では法人所得法人税をかけると、それから配当した場合にも個人所得税をかける、二重だ。この二重課税を回避いたしますために、法人個人配当いたしましたこの配当金の五%を個人所得税から控除いたしまして二重課税を緩和しておるのであります。ところがこの制度をとりますと、個人所得税を納めないような低額所得者はこの二五%控除の恩典に浴することができないのであります。そのために現在の日本租説制度におきましては法人税及び個人税を通算して考えますと、逆進税、下のところのほうが却つて税率が高くなるというような逆進税というような反社会的作用があるということは数字でこの前詳しく申上げたところでございます。これはたしかこのシヤウプ勧告立場前提といたしましてもこれは矛盾するのでありまして、私はこれは若しシヤウプ勧告的な法人擬制説だけを前提にするのでございましたら、これは何とか変えなくちやならない。その対策としてこの前こういうことを申上げたのです。それはこの配当控除率、現在二五%の配当控除率個人所得税累進税率最低率と同一とするか、それ以下とするか、具体的に申しますと、この配当控除率は二五%、今度の改正によりまして累進税率の課税事は一五%になりました。そこで配当控除率を一五%にするか、それ以下にするか、そうすれば今言つたような反社会的な作用はなくなるのであります。それが一つ、それからもう一つの対策は、英国式の立場をとりまして、法人税として払つたものをあとから払戻をする、こういうことをやれば、これは日本の欠陥もなくなるのであります。但しこれはシヤウプ勧告がいいという前提でございます。  その次にやはりそれに関連した問題でございますが、やはり法人税所得税等に関連した問題でございます。それは株式譲渡所得課税問題であります。株式譲渡所得課税問題、これはシヤウプ使節団のあの団長のシヤウプ並びにシヤウプ門下のビツクレーというものの考え基礎とするのでございまして、これは必ずしもアメリカの通説ではございません。このシヤウプ、ビツクレーの考え方は、これは皆さん案内通り株式の譲渡利得が生じた場合は、これはそれを勿論計算して個人所得税の中に加えて総合課税の中に入れてそうして課税しようというのであります。若しなぜそれがシヤウプやビツクレーがそういうことを主張するかというと、これは総合課税の中に移しませんと、株式の売買によつて配当金課税を免れようとする脱税が起るからだというのであります。ところがシヤウプ、ビツクレーの彼らの書物の中に更に歩を進めましてこの株式の売買、現実に株式の先買がなかつたときでもときどき時価を評価してこの譲渡利得、これは勿論紙の上の譲渡利得でございますが、その譲渡利得を計算して課税しようということを言つておりますが、勿論日本ではこういうことはやつておりませんが、売買のないときでも、ときどき三年とか或いはその他死んだときにこの時価を評価してそれからその間の利得を計算する。そうしてこれに個人所得税をかけようと言つておるのであります。殊にビツクレーという人は若いアメリカの教授で、日本にも参りましたが、このビツクレーはキユミユラテヴ・アヴアリジ・メソツド、変な英語で申しまして恐縮ですが、キユミユラテヴ・アヴアリジ・メソツド、累積平均法というものを唱えて参りまして、これは実に複雑なものでありまして、このビツクレーという男は非常に理論家でありまして実際はできやしないのですが、アヴアリジ・メソツドというようなものを唱えているのであります。とにかく日本のような制度はこのシヤウプ、ビツクレーのようなものを基礎としておるということを申上げたいのであります。ところがこれにつきましてはアメリカにおきましても必ずしも賛成者があるわけじやございません。殊に現実化されておらないアンリアライズド・インカムを課税の対策にするということは、これもこの前の公聴会のときに申上げさして頂いたと思いますが、アメリカにおきましてもアンリアライズド・インカムを課税の対象にするということにつきましては疑義があるようであります。それはさておきまして日本ではそういうことがないのでありますが、そういうようにこの株式譲渡利得というものを非常に重要視するのでございまして、これはシヤウプにおける法人税及び所得税について言えば、扇の要め、少し言い過ぎかも知れませんが、扇の要めに近いような地位を占めておるのであります。そこで私は批判したいのでありますが、この制度はアメリカにはいいのだ、だが我が日本では少し合わないということは、御案内通りアメリカにおきましては証券制度が非常に発達しておりますし、証券の登録制度も進んでおります。それが日本ではこれがなかなかうまく行かないということは多くの人が言われておるところであります。そこでアメリカの統計を見ますと、株式その他の譲渡所得、これは株式だけじやございません。一般譲渡所得課税の税収入を見ますと、これは非常に多いのでございまして、一九二六年から一九四〇年までの約十五年間のこの譲渡所得から上つた個人所得税収入個人所得税収入の一五%を占めておるのでございます。殊にこれは特殊の事情があつたらしいのでございますが、一九二八年のごときは個人所得税収入の約半額がキヤピタル・ゲイン、これは株式だけじやございません。有価証券の売買、不動産の売買があつたのでございます。一九二八年のごときは個人所得税の約半分がキヤピタル・ゲイン、即ち譲渡所得からの収入となつておるのであります。我が日本はどうか、これはなかなか脱税が多いので捕捉がむずかしいのでございますが、昭和二十五年の申告納税の統計を見ますと、そのうち譲渡所得は僅かに二十億でございまして、これは税金ではございません、所得金額でございますが、申告納税所得のうち、昭和二十五年度は譲渡所得が僅かに二十億でございまして、全体の千分の三ということであります。でありますから我が日本におきましてはアメリJと国情が違います。アメリカで意味のある制度をシヤウプ、ビツクレーが日本へ持つて来たということ、これは私は日本の国情という点から言えば相当問題があるのじやないかと思うのであります。申すまでもなく、これはシヤウプ式法人擬制説前提としての話でございます。そこでそれの代案として我が日本で有力なのがこの株式譲渡利得を個人所得税に総合することをやめて、その代りに有価証券移転税をかけようという説でございます。併しながらシヤウプ、ビツクレー的の考えから見ますと、この有価証券移転税は理論的にはよくない。何となればこれは累進税を適用することができない。従つて譲渡利得とそれ以外の所得との間に税負担の不均衡が生ずるのであります。併しながらこれは飽くまでも法人擬制説前提としての話でございまして、法人実在説立場をとれば、これは有価証券移転税というものは、又これの正当性は基礎付けできるのでございます。  今度は次の問題に入りますが、やはり法人税所得税の問題でございますが、それはこの一両年というか、むしろ半年ほど前から我が日本ではこういうことが盛んに言われております。それは法人税所得計算をする場合に、社債などの借入金の利子を経費として控除されておる、ところが株式配当控除しないのだ。従つて利子は控除して株式配当控除しない、これは片手落ちだから株式配当についても控除せよという説であります。これはアメリカにおきましてもイクイテブ、フイナンシングはこれは株式によつて資金を賄うのでございますが、イクイテブ・フイナンシングと、ボンド・オフ・フイナンシングは、これはアメリカでも問題になつております。それから立法例を見ますと、株式配当金を引いた立法例があるのでございます。これはすでに第一次世界大戦以前にドイツのプロシアの所得税法におきまして、払込株金の三・五%を利子に準ずるものとして控除したものがあるのでございます。現在西ドイツでどうなつておるか私調べてみたのでありますが、そんな細かいことを書いた書物は見つからないのでわからないのでありますが、第一次大戦のプロシアではこういうことをやつておりました。そこでこういう理論が近頃法人側から出ておりまして、株式配当金は利子に準じて勿論全額引けとは言えないでしよう。三%、四%引けという説であります。併しこれは私は申上げたいことは、法人実在説をとればこれは意味があると思うのでございます。と言うことは法人個人を離れた独自の存在と解釈すれば、社債を発行してそうして資金を調達する或いは株式発行資金を調達する。会社はやはり株主の立場から申しましても、株を買うか、社債を買うか、公債を買うか、どれが儲かるかということを中心に見ておるのであります。従いまして法人実在説をとれば、この説は意味があるのでございますが、シヤウプ勧告法人擬制説前提にいたしますと、この説は私は成り立たない、現状維持でいいということであります。ということは法人擬制説をとれば、会社の純益は結局は個人の純益となるのであります。いわば法人税というものは個人所得税の前払いということになつて来るのでございますので、控除すべき理由は極めて乏しくなるのでございます。要するにこの法人課税問題というのは、これは末梢的な側面だけとれば、理論的に言うと矛盾が出て来るのであります。私は現在日本において行われておる法人擬制説考えが果して正しいかどうか、再検討をやらなければ理論的に解決ができないと思います。  これに対して井藤貴様はどういう考えを持つておるか、これにつきましては前回にも申上げましたが、結論だけ申上げます。それは私はどうも中間的な立場をとるのであります。私の中間的な立場実情に副うと思うのでございますが、それは大法人につきまして、大法人とは、株主の人数が多くて資本金が多くて、資本の構成が複雑で、株主の移動が多いというようなこういう大法人につきましては、これは実在説をとるほうがいいと思うのであります。何千人もいる大株主を擬制説扱いすることはいけないのであります。大法人については実在説をとつて前提としてそれに対応して擬制説をとるべきで、従つて二重課税も当然でございますし、その他いろいろのことが問題でございます。それから小法人でございますが、これは形は法人でございますけれども、実質は個人経営に準じたものでございますので、これについては私は擬制説をとるほうがよかろう。従つて二重課税は成るべく廃止するようにしよう、更に具体的に言うならば、組合の課税と同じような取扱いをしよう。更に具体的に申しますと、配当金で留保したものもこれは配当されたものと仮定して課税する。こういうように組合課税を双方についてやるほうがいいのじやないか。現に五人や六人の親族会社などは法人税の形をとれば、税金が安くなるから法人税の形をとるのでございまして、実質は個人税と同じであります。それで組合についてはやはりそういうような擬制説的な課税をやつておるのでありますが、それに準じた扱いをすればいいのじやないかと思います。ただ問題は大法人と小法人と大体この限界線をどこに引くかというようなことになると、なかなか面倒でございまして、私は学校教授なんかの空論では困るのでありますが、考えとしてはこういう点も問題になるのじやないかと思います。現にこれは前例がないわけではございません。一八六一年のアメリカ連邦最初の所得税におきましては、こういう課税方法をやつておりました。それから現在オーストラリヤ及びニユージランドにおいて大法人も小法人も皆プライベートの、個人の小法人につきましてこういう法人組合課税をやつておるということであります。私はこのオーストラリア、ニユージランドのこの制度を調べたいといろいろ本を調べましたがわかりませんが、そういうことを言われております。要するにそういうような立場法人税個人所得税との関係を整理するほうがいいのじやないかと考えるのでございます。  次は相続税の問題であります。御案内通り相続税のかけ方に二種ございまして、一つは遺産税、英語で申せばエステイト・デイウテイ・タツクス、これは英国やアメリカで行われておるのでございます。それから遺産取得税でございまして、英語で申しますとインヘリタンス・タツクス、それで遺産税は御案内通り誰か死ぬと合計して累進税をかけますし、遺産所得をもらつたほうを中心にかけます。これの大きな欠点は何回も何回も生前贈与することによりまして、この遺産税又は遺産取得税を脱税することができる。それを防ぐためにアメリカ、英国その他の所ではギフト・タツクス、贈与税というものをかけまして生前贈与を防ごうとしておるのであります。ところが贈与税をかけましても、贈与税につきまして又基礎控除がありますので、回数を何人にも何人も分けて贈与した場合については税金が安くなるのであります。そこでアメリカその他の学界におきましては、この贈与税とそれから今言つた広い意味相続税を統合しろ、そうして一生を通じて一回しか基礎控除をしないようにしよう、こういう試みが出ておるのであります。これにつきまして二つの傾向がございまして、一つは一八四〇年アルトナンが唱えました説でございます。これはアメリカのアルトナン、これはどういうことかと申しますと、アルトナンのやり方はエステイト・デイウテイー、遺産税を基礎といたしまして、例えば井藤なら井藤が生前自分の友達にでも妻子でも贈与いたします。そのときには贈与税を取るのでありますが、いよいよ井藤が死にましたときにそれを遺産の中へ加えて、そうして基礎控除を一回にして、それから総合して課税して、利子計算や何かやつて過去のものを引け、即ち遺産税でまとめようというのがアルトナンの考えであります。それからもう一つ考えは、遺産取得税でまとめようとするもの、即ち今度もらつたほうを中心にまとめようとするのが現在日本で行われているサクセツシヨンス・タツクスというのであります。これは初めて言いましたのは一九四六年ラデイツクというアメリカの、学者ではなさそうでありますが、ラデイックというアメリカ人がアメリカの租税協会でこの説を唱えました。これはこの内容は現在日本制度が即ちそれでございます。御案内通りこれは世界最初の試みでございます。これはとにかくもらつたほうでまとめて、そうして一生を通じて現在の説は三十万円を基礎控除して、あと残りは死んでから累進課税をかけよう。ところがこの制度を実施して見たところが、次のような欠陥が起ると言われているのであります。それは親父が死んでも分割して相続するようにすれば、結局得だというので虚偽の分割をする。そうして相続したものとして脱税を図るということがあるというのであります。これは如何にも尤もでございまして、これは日本現行制度ではサクセツシヨン・タツクスに限らずこれは遺産税、インヘビタント・タツクスということの欠点であります。ところが現行の日本制度はもらう、取得する個人中心にまとめて、人を中心にまとめまして一生を通じて三十万円まで引くのでございますので、これは富が個人に集中することを防ぐという点において大いなる長所があるのであります。ところが遺産税の場合はこの遺産をまとめてかけますので、死んだ人が過去において払うべかりし金を清算するという意味はあるのでございます。ところが日本の現行のような遺産取得税的な制度におきましては、もらうほうを中心として個人に富が集中することを防ぐということになつております。両方とも一長一短があるのでございますが、私はやはり富が個人に集中することを防ぐという現行制度考え方のほうがいいと思うのであります。併しながら現行制度には今言つたような欠点があります。そこで面倒くさいのでございますけれども、理論的に両者を防ぐにはどうしたらいいか。それは両方かければいいということであります。この二つ、アルトマン式のものとラデイツク式のものと両方かければいい。勿論税率やその他については訂正を要しますけれども、両方かければいい。現にこれはちよつと、相続税だけでございまして贈与税は入つておりませんけれども、英国で一九四九年に相続税改正をやりまして、現在ではエステート・デユウテイ一本でございますが、それ以前におきましては遺産税と遺産取得税が並びかけられておつたのでございます。一九四九年の改正前は遺産税としてエステート・デユウテイ、動産取得税としてリガスイー・デユウテイ、不動産取得税としてサクセツシヨン・デイユウテイがかかつておりました。それからそれ以外の国におきましても二本立ての相続税という制度があつたのであります。理論的に申しますとアルトマンの考えとラデイツクの考えと二つ併用すれば、今言つたような欠点がなくなるのであります。併しながらそれは煩に失します。そうだとすれば私は折角やりかけたのでございますので、現在の日本制度をやはり継続して行くほかないのじやないかと考えております。併しながら現行の制度につきましては次の欠点がある。これはこの前申しましたが、それをもう一度繰返します。それは現在の日本相続税、即ち英語でいうサクセツシヨン・タツクスの欠点は、一生を通じて三十万円まで引いて残り税金をかけようというのでございますので、貨幣価値の変動を無視しておるという点であります。即ち貨幣価値が変らないということを前提にするのであります。従つて貨幣の価値に変化があれば価値の違つたものを合計するということになる。これは不合理であります。而もその結果は、基礎控除を二回受けるというような変なことが起つて来るのであります。例えば数字を仮想して申しますと、去年までは日本ではこの相続税基礎控除は十五万円でした。ところが今年の春の国会でこの基礎控除は三十万円に引上げられたのであります。ところが十五万円の基礎控除を認めたのは昭和二十五年の春でございますので、今年の春と昭和二十五年の春との間に物価は、消費者物価指数で申しまして約三割騰貴しておるのであります。そうするとどういうことになるかというと、仮に一度十五万円、この前の制度で一生を通じて十五万円免税になるのでございます。そこで十五万円の基礎控除を受けたものは、形からいうと十五万円の基礎控除を受けておる。今度はそれが三十万円に引上げられたので、更にもう十五万円基礎控除を受けることができることとなつたのであります。ところが二年前の十五万円というものは、物価の三割騰貴を計算に入れますと、十九万五千円になるのであります。即ちこの人は、二年前に十五万の基礎控除を受けたものは、現在の価値からいえば十九万五千円の基礎控除を受けたことになつておるのであります。だからして理窟から申しますと、三十万円から十九万五千円を引いた残りの十万五千円、これだけを引くべきであるにもかかわらず、依然として三十万円引く、即ち十五万円認めるということになると、この人は四万五千円だけ余分の基礎控除を受けることになるのであります。これは一例でございます。こういうふうにサクセツシヨン・タツクスというものは、貨幣の価値の変動を無視しておるということ、これが大きな欠点であります。ところがラデイツクはアメリカの租税協会に一九四六年に出ていますが、一九四六年の研究報告で、私はその報告をよく調べましたが、貨幣価値の変動については一言も触れておりません。これはアメリからしい考えでございまして、三十年の間に物価がやつと倍になつたような国なんでございますので、そうだから全然触れておりませんが、日本のような変動の激しい国では、これはやはり貨幣価値の修正によつてこれを余計すぐれたものにすることが必要ではないかと思うのであります。  最後に物品税の軽減論でありますが、私は一般論といたしましてはこれは反対であります。ということはあらゆる面を本当に軽減することはできない。勿論軽減するに越したことはございませんけれども、やはりそれよりは所得税の低い部分を軽減する、そういう意味において物品税は原則として、又個々の問題については軽減すべきものもあるでしようが、一般論として物品税を軽減することには反対であります。それから取引高税を復活するという議論も、これも申すまでもなく反対であります。先ず低額所得税について軽減して頂きたい。  要するに現在の日本制度は、シヤウプ勧告基礎としてやつたのでございますが、二年有余の間歳月が経過いたしましていろいろ矛盾たことが行われております。このようにシヤウプ勧告法人擬制説前提として極めて精緻なものでございますが、これは率直に見まして日本の国情に確かに合わないところがあるのでございます。我々はもう一度税制を再検討する場合には、税制のみならず、その背後にある法人格その他を念頭に置いて再検討する必要があるのではないかと思うのであります。ただ無理論的な税制改革というものは、これは又破綻をいたしますので、やはり一般理論と関連せしめて租税の問題を問題にする必要があると思うのでございます。  これを以て私の意見開陳を終らせて頂きます。
  4. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。  それでは御質疑をお願いいたします。
  5. 小林政夫

    ○小林政夫君 先生のお話で、大衆課税だということでございましたが、成るほど所得の面から見ると、おつしやる通りです。現在の三十万円というものは昔の八百六十円の所得だということで、非常に低額者に多く税がかかつておるという意味においては大衆課税でありますが、納税者の数で見てみますと、私の計算したところによると、八千五百万の国民のうちで納税者の扶養人員は一応税を納めておると計算をして四千五百万は税を納めておらないということになるわけであります。そこで実際に納税者の扶養人員を納税者に含めてのいわゆる納税層というものは三千九百五十五万人くらいになつて納めております。そうすると必ずしも税を納めておるほうは、国民の所得階層からいうと上位のものであるということで、そういう納税者を対象として考えると、大衆課税とも言えないじやないか。むしろ税を軽減することによつてそういつた所得税を納めておる階層は或る程度物価騰貴等を救われるけれども、そういつた四千五百万というような半数以上の階層は税すら納められない階層であるということで、言葉がどうかと思いますが、そういう意味から言えば必ずしも大衆課税とは言えないということを考えるのですが、その点はどうお考えになりますか。
  6. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) 実は今御質問の問題は昨日予算の公聴会で私は意見開陳をいたしました。簡単に申しますと、減税において利益をこうむるのは確かに今おつしやいました通り税金を納めるという結構な身分、貧乏のうちにもまだ結構な身分で、納めないものは今度は例えば運賃の値上げとか、米価の消費価格の引上げによつて困る、而もこういうような基礎的なものの価格引上げをやりますと、ほかの物価騰貴にも波及する危険がございまして、それで納税者税金を納める結構な身分の人だけについて問題にしても果して負担軽減になるかどうかは問題だ。それのみならずいわんや御指摘になりましたような場合に確かに負担軽減にはならなくて問題になるのです。但し私が問題にしておりますことは、現在日本国税地方税を通じまして一兆の金が要るということを前提にしておるのでございまして、それでこの国を挙げて日本は今度の戦争によつて貧乏になつた、これは事実であります。だからしてこの貧乏が、金持がという比較のものでございまして……、これは確かにそうでございます、今まで申上げたような意味でございますが。併しながら所得税を果してこの三十万円以下の連中も、これを一つ比較から言えばましですけれども、併し戦争前の状態から言うならばこれは免税階級なんで、確かにこれは苦しいことは客観的な事実であります。だからその分を負けるんだつたら負ける必要があるのじやないか、そういう意味であります。
  7. 小林政夫

    ○小林政夫君 それから法人税の件ですが、いろいろ学説的御高説を拝聴して非常に参考になつたのでありますが、現実に先生も御指摘になつておりましたが、大法人は価格変動準備金とか、或いは退職給与引当金であるとか、或いは企業合理化促進法による特別償却或いは租税臨時措置法による特別償却などで、三五%を四二%の税率引上げになつてもまだそういつた別の方面から減税措置を受けておるわけです。それは何も大法人に限つたことはない、中小企業所得法人にも適用されるんだけれども、これは大蔵省当局に対して資料を要求しておりますが、どうも実際には、いわゆる大法人だけがそういつた恩典を浴しておるというようなことで、中小企業所得法人のほうは三五%から七%税率が上つて四二%になつて、而もそういつた軽減の恩典には浴さないものが大部分である。又業種にもよりますが、おおむね大企業がよくて中小企業は不振であるというような点から考えて、又米英等において法人税基礎控除という少額所得法人に対する基礎控除法人に関するやつの基礎控除制度もあるようでありますが、少額所得法人に対する税率の軽減又はそういつた免税点を設けるというようなことについてはどういうふうにお考えになりますか。
  8. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) 今のお説御尤もでございますが、それも私の案は御案内通り法人について税率を低くするのも一つでございます。併し私の根本的の考え方はさつきも申上げましたように大法人につきましては擬制説的に考える。そして今の問題の小法人につきましては、これはさつき申上げました組合擬制の方法をとりまして、法律的性格は法人でございましても、これは個人経営と同じものにみなす、こういう方面で私は改善するほうがいいんじやないかと考えるのでございます。
  9. 小林政夫

    ○小林政夫君 具体的に言うと、法人税を中小企業所得法人については返すということですね、法人税を一応個人所得税の源泉徴収、まあ先取りと考えあとで返してやるという、具体的な措置としては……。
  10. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) 返すのも一つのやり方であります。あとから全部返す、これは英国式で源泉徴収法でウイズホールデイング・メソードでしてこれを大法人でやつております。私考えますのも、返すのも一つ方法でございます。私考えます小法人というやつは、企業形態としては法律上の性格は法人でございますけれども、実質は個人経営と同じことです。そして儲けがありました場合、丁度匿名組合、組合と同じように配当した場合は勿論のこと、配当しなくても社内留保したものでも、その持分に応じて配当されたとみなして課税すると、こういうことでございます。それですから返さなくて個人所得税の中に入れる、こういう点でございます。併し技術的の、テクニツクの問題といたしまして今あなたのおつしやいました意味で、一応法人税をかけておいて、あとから全然かけないものとして清算すると、これは一つのやり方だと思いますが結果は同じことになります。
  11. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今遅れて参りましたので、或いは恐らくお触れになつたか知れませんが、今の直接税と間接税割合についてどういうような御見解を持つておられるでしようか、その点を一つ
  12. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) 実はその問題について私触れましたですがもう一度申上げます。
  13. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それじや簡単に願います。
  14. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) いや簡単です。簡単にやります。直接税、間接税の問題につきましては、実はこの公聴会の前回のときに申上げたのでございますが、日本の大蔵省の分け方はよくないと思います。実はどこがよくないかということは租税研究協会でも指摘いたしましたし、一橋大学の機関雑誌の一橋論叢の一月号に約二十五頁の詳しい論文を書きまして、大蔵省の分け方がどうも論理上はつきりしないということを私指摘いたしました。それを詳しくは御覧願いたいと思いますが、そんなことを言つてもしようがないが、そこで一応私も法人の直接税、間接税とは何かという問題ですね、これにつきましてまあこれは教員臭いことを申上げまして恐縮でございますが、やかましく言いますと十数種解釈がある、厳密に言えば二十以上あります。結論として申上げますと、私はこういう解釈をとるのが一番いいのじやないか、ということは直接税間接税の分類1はやはり何かの目的に使うので、目的に応じて違うのです。井藤はどういう目的で使うか、井藤のみならず政治家の皆さんにおかれても主としてどういう目的に使うか、直接税は大体金持ちが負担する、間接税というものは、大体貧乏人も金持ちも負担をする、そういう建前になつております。そこで直接税を間接税にいたしまして転換を予想されておるかどうかということも、基準としては区別するということが一つ考えでございますけれども、私はそういたしますと、いわゆる直接消費税、遊興飲食税や入場税、電気ガス税は直接税になる、これは理論的に変だ、私が現在考えておりますことはこういうことです。財源又は税源、それは財産高又は所得高でありますが、財産高、所得高を直接の課税標準としてかける税金が直接税、それから財産所得の存在を間接に推定せしめるものを標準としてかけるのが間接税、そういう解釈をとつております。そういう解釈をとりますと、この大蔵省の案では直接税、間接税その他のものとなつておりますが、その他のものは全部間接税に入るのであります。そこで皆さんのお手許にございます資料によつて私も計算したのでございますが、昭和二十七年度は補正予算も両方合計いたしまして直接税が五七%、間接税はそういつたような計算で四三%になるのであります。そこで直接税は一般論として金持ちが負担する、間接税は貧乏人も金持ちも負担する、大衆課税と申しますか、現在日本におきましては直接税の中核をなすものは所得税でありますが、所得税所得階層別を見ますと、申告納税並びに給与所得に関する推算について、昭和二十七年度について申しますと、三十万円以下のものが大部分を占めております。その数字はさつき申しましたので省きますが、そういたしますと、直接税は金持ちが負担する、間接税は貧乏人も負担すると申しますけれども、現在日本におきましては直接税も大部分大衆課税間接税大衆課税と、こういうことになつております。これは日本の今度の戦争によりまして、所得の富の分配関係が平等に近くなつて、而も金持のほうに平等にはならないで、国民皆貧ということで、貧乏のほうに平等になつたためにこういうことになつたのであります。従つて現在日本では直接税、間接税の区別は昔のような或いは現在英米において行われておるような意味を持つておらんというように考えております。
  15. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今の井藤さんのお話で、株式の譲渡所得税ですがね、まあ申告納税の譲渡所得で二十億ぐらいだと、今お話がありましたけれども、最近の株式市場はまあ我々素人目にも夕刊を見ましても相当譲渡をせられておるようで、いずれの値上りを見て見ましても去年の今頃と今年は約二倍から三倍ぐらいになつておるのでありますが、それが二十億ぐらいの申告だと、今年は多少殖えるかも知れませんが、殖えたといつて大して期待はできない。二十億が三十億ぐらいになるのが精一ぱいだと思いますが、従つてこれは抜け穴がある、公然たる脱税があるということで、これは素人論で、抽象論かも知れませんが、考えられると思いますが、これはそこに何か穴があるんじやないか、もつと捕捉するなら捕捉する、廃止するなら廃止するで徹底したほうがいいと思いますが、一つこの点についてどこに穴があるか……。
  16. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) 私がさつき申しました二十億というのは、昭和二十五年度の申告納税で、そこで私見ましたところが二十億出ましたのです。それから今おつしやるように確かに殖えております。それからもう一つはこの前の前の国会ですが、譲渡所得について一年を通算して免税になりました。これはこの前の前の第十三回国会で修正になりました。そうするとそれはやはり表面へ出て来ないのでございます。十万円というところは我々の妻なんかがこつそり投資したり、そんなやつは十万円以下ですからまじめに届けましてもこれも馬鹿にならんのでございますけれども、そういうことをやつておりますのですが、これをシヤウプ、ヴイツクレー的な考えからいたしますと、例えばアメリカのことを前提としますと、これを十分に把握しなければならないが、アメリカのことは余り詳しくわからないのでございますけれども、株式書換え制度は非常に簡単に行くそうでございます。それがうまく行くために非常にたくさんの利益を上げておるのでございます。我が日本では株式の強制書換がむずかしい、それで私は多少何があるのではないか、多少これを換えられると面倒くさいということで不当に困難が誇張されておる向きがあるんじやないかと私邪推するのでございますけれども、そういう邪推は除きましても日本では株式の強制書換ということはなかなかむずかしい、これは私は実情だと思います。それはアメリカの状態にはない。そういたしますと、さつき申上げました有価証券移転税をその代りにかけるということが問題になるのです。但しその場合にはやはり法人税もさつき申上げましたような改正をするということを前提にしなければ理論的に一貫をしないじやないかということを申上げたわけでございます。
  17. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いろいろお尋ねしたいことがたくさんあるのですけれども、もうたくさん時間もないのですからもう一点だけお伺いします。最後に地方税とこの国税の今の徴収方式でございますが、これについて納税者側からするならば、例えば地方団体がそれぞれ調べ又国が調べて非常に複雑で、納めるほうは一本だ、ところが徴収するほうは三本立てになつて取られるので、どうも非常に複雑というのか煩瑣に堪えないという声が大部やかましいのですが、これらについても大分再検討しなけりやあならん段階に来ておるんじやないかと思うのですが、この点について井藤先生はどういう御解釈を持つておられますか。外国の例等につきましてやはりこういうふうに三本立てになつておるのか、この点をお伺いいたします。
  18. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) このシヤウプ勧告というものが地方税につきまして附加税を廃止いたしました。もう時間もございませんので、私いろいろなところで書いたり言つたりしておりますので何でございますが、私はそうきれいにまとめる必要がないのじやないか、附加税が一つや二つあつたからといつて地方自治に反するとは私は思つておりません。私はほかのものについても申しておるのでありますが、それだから今もおつしやいましたように附加税を私は一つや二つ復活してもいいと思つております。ですが、やはり地方自治的に税金をかけるとなりますと、やはり三つの政治団体が違つた査定をやるということはこれは或る程度止むを得ん側面もあるんじやないかと思うのでありますが、ただ日本の、殊に貧困町村などで例えば固定資産税の評価などをやつておりますが、うまくできておるかどうか、これは現実問題として問題がございます。それで、私は府県でやれという何を持つております。例えば固定資産税につきまして、これは今御説の通り確かに再検討の意味がございますが、併し三つの団体が別々に調査することはいけないとか、煩に堪えないと言い切ることが私はやはり問題があるんじやないかと思うのでありますが、ただシヤウプ式余りきれいに分け過ぎることはどうかと考えておるのであります。
  19. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 シヤウプ勧告に基いて法人税法を今のようにしておりますが、その後にいろいろな改正があつて理論的にはよほど乱れて来ておるのはお説の通りでありますが、ただ、先ほどからの御説明を伺つていても、譲渡所得税を廃止する、これに代つて有価証券移転税を起すということは法人擬制説をとれば理論的にもわかるが、現在のところはどうかというお話がありましたが、私はこれは有価証券移転税を創設することは、別に法人擬制説をとろうが法人実在説をとろうがどちらでも行けることで、又有価証券の譲渡所得税を廃止するからその代りに有価証券移転税を設定するということは、法人の本質に対してどちらの説をとつても、もうとても説明ができないことじやなかろうかと考えますが、その点は如何ですか。
  20. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) 結局私前に申しましたことを繰返すことになるのでございますが、譲渡所得を把握して、そうしてそれを個人で総合してかける、これが有価証券移転税を設けないで個人で総合してかけるということが現在の建前で、そういう点から申しますと、法人というものを実在的なものに考えないで、結局法人税というものは、個人所得税の前払いなんだから、そうだからして結局譲渡所得につきましても、個人でまとめてかけることは、やはり擬制説が前提になつておるんじやないか、それでそういう点を前提にいたしますと、有価証券の譲渡利得につきましても、当然個人の総合課税の中に移して、累進税をかけなければ理論的にすつきりしない。ところが有価証券移転税は、御案内通りこれは累進税をかけることができない。どうしてもこれは異例になりますので、そういたしますと、やはりこれは個人法人との間の関係を切断する、そういう考えを私は前提にしなければ、理論的に一貫しないのじやないかと、こう考えるのであります。
  21. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私は法人実在説をとつても、法人擬制説をとつても、有価証券移転そのものに課税するということはいずれの説をとつても、課税し得る。これを前提にすればどうか。流通税に対しての態度をきめればどちらにでもなることで、これは何も譲渡所得税そのものとは密接な関係は全然ないのじやないか。併し先生の御説によれば、何かそこに非常に密接な関係があるかのようで法人擬制説をとれば、有価証券移転税は設定ができないのだというように聞えるのでありますが、その点は如何でしよう。
  22. 井藤半弥

    参考人井藤半弥君) 又同じことを繰返すのですが、今の大矢さんの御説では、有価証券譲渡所得税をやめてそれから有価証券移転税をかけて、有価証券移転税を譲渡所得の代替税にする場合と並行にする場合と二つありますね、それで私は代替税にする場合を考えておるのであります。並行にするとなると、今おつしやるように流通税になりまして、不動産売買について登録税がかかるのと同じであります。そういたしますと税率も極めて低いものにしなければならない、そう考えるのであります。代替税にするとなると、法人の本質との関連が出て来る、こういうふうに考えております。
  23. 中川以良

    委員長中川以良君) それではほかに御質疑ございませんか、それでは井藤先生のお話はこれで打ち切りといたします。先生有難うございました。  それでは次に、日本中小企業団体連盟理事山田正作君より中小企業の立場より見られましたところの税制に関する御意見を承りたいと思います。
  24. 山田正作

    参考人(山田正作君) 中小企業団体連盟の意見につきましては、先般各位のお手許に要望書を提出してございますので、その補足を簡単に申上げて御説明を申上げたいと思います。多少数字の点につきましては間違いがあるかも知れませんが、概括的には関係ないことでございますので、さよう御承知願います。  現在の日本税制は、御承知の通り所得税中心主義でありまして、この所得税が全税額の三五%を占めている極めて重要な税金であることはもう私から申上げるまでもないと思います。そこでこの税金を納める元である国民所得の方面から考えますというと、昭和二十一年個人所得所得の六三%九でありまして、二十六年には四一%となつております。勤労所得昭和二十一年三一%四を最低として、現在は四四・七%と相成つております。勤労所得が上りましたことは、これは当然物価の騰貴と関連しまして、又、インフレに従いまして当然こういうことになつておりますが、個人所得が二十一年から二十三年に亘りまして、日本の回復期に一番余計な比例を示しているということは、これは戦後大企業が殆んど壊滅しまして、又財閥の解体によりまして、財産家は殆んどなくなりまして、殆んど国民所得の大部分が中小企業者であり、又税金を納めたのも、資本蓄積したのも、中小企業者であつたということをはつきり示しておるということを考えるのでございます。当時御承知の通り納税の長者番付では、名古屋の漬物屋とか福井の織物屋さんとか横浜の家具屋さん、とこういう者が日本の一番の長者番付に載つてつたのであります。ところが今日の長者番付を一昨日か昨日かの議会でお話を伺いますと、炭鉱業者が殆んど六人くらいが上にずらりと並んでおる。こういうふうに資産家も中小企業者の犠牲によりまして、全然ひつくり返つてしまいまして、だんだんと中小企業者が没落しておるということをここに明示しているのじやないかと考えるのでございます。殊に農家の経済を考えますと、農家は御承知の通り、約六百万戸あると思いますが、そのうちで税金を納めているのは僅かに百二十八万戸、一年当りの納税額を見ますというと、営業所得におきまして、一年当り五万五千円でありますが、農家は僅かに九千八百円である。これは誠に由々しき大問題でありまして、農家がこういうふうにだんだんと没落して行く、農家は日本の中産階級であつて、最も大切な階層であると私どもは考えます。これが税金が納められないようなだんだんと零細農家になるということは、誠に国家の将来のために由々しき大事であると私は考えるのでございます。こういう意味におきまして、私は農家に対しても、決して税金を上げろというのではございません。税金を納められるような農家に育て上げて頂きたいというのが、私の希望でございます。この意味におきまして、今後税制に関しましては十分御検討を願いたいと存じます。  そこで考えられますことは、然らば如何にしてこの農家を救い、又中小企業者を救うかということになりますというと、結局税金の軽減ということになりますが、今日の状態で果して税金の軽減ができるかどうだか、そこで私どもは場合によりましてはどこまでも均衡財政を守らなくちやならんが、均衡財政の理想に憧れて、そうして農民、中小企業者を潰していいか、こういうことを私は考えなければならんと思います。大企業育成、基礎産業を育てる、或いは経済産業、誠に結構なことでございますが、併しそれらを救う前に、資本蓄積をするのは中小企業者と農民であります。御承知の通り郵便貯金でも、銀行の預金でも、大部分は中小企業者によつて蓄積されたのであります。でありますからして、中小企業者、農民なくして大企業或いは経済産業ということは砂上の楼閣である、こういうことをやるということは、極めて国家的に大事なことでありますが、同時にこれらの階層に対して育て上げるということを十分考えて頂きたいということを希望いたす次第であります。  法人税に関しまして申上げますならば、現在の法人税の二十六年度を見ますというと、二百万円以上の資本金の法人の予算は一千億でありまして、それでこれが四百億の増収で一千四百億と相成つております。二百万円以下の中小法人では予算が四百四十何億かでありまして、納入されたものは二百十億であります。即ち人員において二百万円以下の小法人が九三%で、税額では僅かに二二・五%に過ぎません。そこで私はこの大法人につきましては、決して税金を上げろということは申しませんが、先ほど小林委員からもお話のように、いろいろな優待法がございますが、この優待措置が中小法人には恵まれておりませんから、これは仮に一〇%減税いたしましても、僅か三十億か四十億かの金額に過ぎないのであります。どうか二十七万五千の中小法人減税をして、そうして資本蓄積に協力するような態勢を整えて頂きたいということを切望する次第でございます。  その他先般私ども中小企業連盟の全国会長会議におきまして、ここに皆さんに提出しましたような意見書を出したのでございますが、この点只今御説明申上げるまでもなく、時間もすでに経過いたしておりますから、これを十分御検討下さいまして、中小企業者のために最善の方途を講ぜられんことを切にお願いいたしまして、私の話を終ります。
  25. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。御質疑がございましたらお願いいたします。  特別御質疑もないようでございますから、それでは山田正作さんのお話をこれで打切ります。有難うございました。  それでは暫らく休憩をいたしまして、午後一時より再開をいたします。    午後零時十一分休憩    —————・—————    午後一時三十八分開会
  26. 中川以良

    委員長中川以良君) 休憩前に引続きまして開会をいたします。  只今より日本租税研究協会副会長松隈秀雄君より税制に関する一般につきましての御意見を承わりたいと思います。松隈君。
  27. 松隈秀雄

    参考人(松隈秀雄君) 私は日本租税研究協会の副会長をいたしておりまするので、仕事の立場からいたしまして各種団体の租税制度改正に関する意見、又学者の税制改正に関する意見等を徴する機会を持つておりまするので、今日は私個人としての意見を申上げまするよりは、私どもの協会といたしまして、集めました資料によりまして、どういう税制改正意見が如何なる根拠に基いて行われておるかということを、御紹介申上げまして参考にして頂きたいと思うわけであります。今日申上げますることは、民生安定の見地からする税制改正意見はどういうものがあるか、それから資本蓄積、企業を堅実化ならしめる見地からは、どういう議論が行われておるか、更に税制を簡素化し、徴税費用を少くするというような見地においては、どういう議論があるか、最後に間接税の代表でありまする酒税の改正についての要望事項としては、どういうことが言われておるか、大体大分けにして、こういうような点を説明申上げたいと思つております。  民生安定の見地からいたしまする税制改正は、何と言つて所得税の軽減が第一位であります。所得税につきましては、シヤウプ税制勧告後、昭和二十五年度以降毎年減税が行われております。その中には、税法上の減税であつて、実質減税ではないというような意見もありまするけれども、とにかく基礎控除扶養控除勤労控除引上げられ、税率についても緩和を見つつありますることは事実でありまして、更にこの議会にも二十七年度の補正予算に関連いたしまして、基礎控除を五万円から六万円に引上げる、扶養控除は第一人者を二万円から三万五千円に引上げる、勤労控除最高限度を三万円から四万五千円に引上げる、税率も二万円以下は特に百分の二十を百分の十五にするということにいたしておりまするし、更に社会保険料所得額から控除するというような提案がなされておりまするので、その結果によりまするというと、給与所得者を一例にとつてみると、夫婦に子供三人、即ち扶養家族が四人ある者についてみまするというと、今まで十四万七千五十九円の年所得者以下が免税でありましたが、今回の改正によりまして、同じものは十八万三千五百九十九円までの年所得の場合には所得税がかからんという程度に改正されておりますので、多々ますます弁ずるという主義から行きますれば、なお今回の改正でも十分とは言えないのでありまするが、機会あるごとに所得税が軽減されつつありますることは、大体において今日の財政状況と睨み合わせれば満足せざるを得ないのではないかという意見に落ちついておるようであります。  次に資本蓄積、企業の堅実化の見地からいたしまする税制改正意見といたしましては、第一に法人税が問題になるわけであります。法人税につきましては、先に税率を三五%から二割引上げて四二%にしたのでありまするが、その当時は朝鮮事変の影響を受けまして、法人の収益状況が極めて良好でありましたので、経済諸団体も余り声を大にしてこれには反対をいたさなかつたのでありまするが、その後、朝鮮事変は休戦協定の段階に入りまして、事変による好景気が終熄して参りますると共に、そのことが経済界に反映いたしまして、昨年の下期以降景気が漸次後退いたしまして、本年上期は更に業積が悪化するというような状態で、平均二割程度の収益減になつておる。従つて先に税率を四二%へと約二割引上げ前提条件は、一年を経ずして失われておるのであるから、できれば四二%に引上げ税率を三五%に戻して欲しいということを唱える向きが多いのであります。殊に日本産業は遺憾ながら健全状態にあるとは言えないのでありまして、一例を減価償却の状況にとつてみましても、二十六年下期の全産業の純売上高に対しまする減価償却費の割合は僅かに二・二二%であります。昭和十一年上期をとつてみまするというと、全産業の平均の同じ数字は六・三五%ということになつておりまするから、減価償却効率というものは戦前の三分の一というような状態になつております。これはつまり資本を食い潰して納税をしておるというような、誠に危険な状態にあるわけでありまするからして、どうしてもこの法人負担を軽減して、法人資本蓄積を増大ならしめないというと、順調の間はいいけれども、一朝、不況に立ち向いまするというと、優良産業のように思われている事業でも崩壊を非常に早める。いわんや中小等の脆弱企業においては非常にあぶない綱渡りをしておるというような状況にあることを、特に留意して欲しいという向きが非常に多いのであります。ただ今日日本法人税税率四二%というものは、これを英米等外国の法人税税率に比べまするというと、決して高いとは言えないのであります。そこで賠償等、対外関係もありまするので、法人税の表面税率四二%を引下げることが、どうしても困難であるというならば、実質的に法人負担を軽減して、法人資本蓄積を一層可能ならしめ、そうして基礎を堅実にする方法考える必要があるのではないか、こういう論が出て参るわけであります。その論旨の第一といたしましては、償却額の拡大であります。これにつきましては、租税特別措置法及び企業合理化促進法によりまして、特別償却が認められておるのでありまするが、その特別償却を更に一層拡大する必要がある。殊に企業合理化促進法は折角議会を通過して実施を見たのでありまするが、その施行に当りまして、政令にきめましたところの適用を受ける業種別或いは機械的の制限が非常に窮屈でありまするために、実際に恩典を受ける割合が少いという不平が相当多いのでありまして、これは法律改正事項ではなく、政令改正事項であるから、是非早急に改正をして、特別償却の適用範囲を拡大してほしいという希望が強いのであります。更にできれば、一般償却についても、固定資産耐用年数を延長して、もう少し償却額を殖やしてもらいたいという意見が強いのであります。ここに問題になりまするのは、更に第三次の再評価を実施するかどうかという問題でありまして、業界の有力な意見といたしましては、第一次、第二次再評価は、いずれも不十分である。全産業を平均いたしまして、再評価限度額の六九%程度の評価しかされておらん。これでは資本食い潰しの是正が不十分である。そこで是非第三次の再評価の機会を与えてほしいというわけであります。第三次再評価につきましては、基準を二十八年の一月一日現在といたしまして、先の再評価の時期から比べまするというと、物価指数によつて見ましても、平均五割以上物価が上つておりますから、限度額を更に五割程度引上げて、そうして第三次再評価については、再評価をなし得る期間を従来のごとく短い期間に限らず、或る程度期間を、長めにいたしまして、企業をして現在並びに或る程度将来の収益の見通しを立てて、再評価を更になし得る機会を与えてほしいということが言われておるわけであります。  それから各種積立金又は引当金制度改正を要望する向きが非常に多いのであります。現在ありまする準備金と引当金の制度といたしましては、御承知の通り価格変動準備金、貸倒準備金、退職手当引当金、これらはいずれも利益のうちから積立てましても、法人税を課さないことになつておるのでありますが、これらについても不十分な点がある。例えば価格変動準備金のごときものは、価格の下落期に積立てて、上昇期に崩すということになつてつて、実益が乏しい。価格の上昇期に或る程度積立を認めてもらつて、下落したときにそれから補填ができるように改正してほしいということを言つております。貸倒準備金制度についても、限度が窮屈過ぎるから、限度を引上げてほしいという意見があるのであります。そのほかに新らしく準備金乃至積立金を設けてほしいという意見が相当あるのでありまして、その例を拾つて見まするというと、例えば貿易商社につきましては、海外支店開設準備金を積立てることを認めてほしい。これは是非貿易商社が海外に発展するためには、海外に支店を置かなければならないのであるけれども、その準備をするのは、税を納めた後の金ではなかなか時期を失するから、海外支店開設準備金を利益のうちから積立てて、その分については免税にしてほしいということを言つております。それから輸出入契約保証準備金、輸出入契約については大量のキヤンセルに会う虞れがある。それから輸出入品については法外なクレームを受けて困つておるからして、輸出入契約が成立したということによつて、直ちに利益があるものとして課税を受けるということになると、あとで損害が発生したときに、そのときは利益がないからといつて税金を引いてくれるとしても、前に納めた税金が長い目で見れば納め過ぎになるというような恰好になるので、輸出入契約保証準備金というものを積立てさせてくれという要求であります。それから石炭鉱業については、災害補償準備金、或いは鉱害、鉱山の害ですが、鉱害賠償準備金というようなものを積立ててほしい。それから造船業については、保証工事引当金を積立てることを認めてほしい。これは造船業が、船が落成して引渡した後においても、できが悪ければ一定期間は保証的に工事をしてやらなければならない。そうすると、でき上つただけで利益として課税されては困るという意味であります。同様の意味において建設業におきましては、建物構築物瑕疵担保引当金、これは瑕疵担保があれば、やはり手直しを要するので、そういうものに引当てるための準備金を置いてほしい。更に積極的な意見になりまするというと、設備拡張準備資金というものを置いてほしい。先ほど申上げましたように、減価償却を拡大するということも必要であるけれども、現在の日本産業における諸機械というものは、戦争中並びに戦後、取替、新設が十分行われておりません関係上、非常に機械が古くなつてしまつておる。そんなことでは国際競争に伍して行けない。従つてそういう古い機械を減価償却を拡大するごとに再評価して、償却額を膨らましても、結局新らしい機械に置き替えなければならない。ところが新らしい機械を買うのには非常に金が要るので、あらかじめ新らしい機械に置き替えるために、利益金の一定割合を設備資金として税を免ぜられて積立てておかなければ、新らしい機械への転換ができない。そんなことではやはり産業として発展できんからというわけであります。かように準備金、積立金を積立てて、それに課税をしないということになつて参ることになると、これはかなり法人税のほうに影響があるわけであります。併しそこで一部の論者は、そういろいろな法人税の実質負担を軽減する措置を講ずるのはいいけれども、法人税がうんと減るということでは、政府も財政上呑み込むわけに行かんではないか、こういう意見も出るわけでありますが、それに対しては、やはりこの際資本蓄積、企業の堅実化を図るということは、是非日本としてはやらなければならんことであるから、財源を求めるためには、行財政の徹底的な整理によつて何とか財源を生み出すようにしなければならないというわけであります。更に一部の論者は、今言つた諸種の制度を設けても、現在の法人の収益状況からするというと、そう一々どの恩典にもあずかるというようなことはできにくいからして、減税額は予想するほど大きくない。それから又これは減税というけれども、全く税を失つてしまうのではなくて、税金の一時の繰延べである。殊に償却の拡大といつたような場合あたりは、差当り償却を大きく認めて、税金が減るようであるけれども、これは将来は税を減らす余地がなくなるのであるから、今とるか、少しあとでとるかだけの差である。それで、日本産業としては、長い将来よりもここ数年に基礎を固めるということが最も必要なのであつて、ここ数年を徒らに送つて資本蓄積を怠り、機械の新設、拡張を怠るということでは、悔を百年のあとに残す。そういう必要なことが十分はつきりわかつておるならば、それによつて或る程度財源が減るという場合においては、一時公債で穴埋めをしても、これは全くの赤字公債とは違い、将来は法人を育てて、その法人が十分の収益を上げて、租税を納めるまでの一時のつなぎの公債であれば、或る意味での建設的意味のある公債であつて、赤字公債と同視すべきものでないからして、減税額はさほど大きくなく、而もじきにその回復がつくと思うが、それでもなおその措置を講ずることによつて財政が一時つじつまが合わんというならば、その部分は公債で支弁するということがあつても止むを得ないのではないか。かように説いております。  それから個人蓄積の増大に関しましては、預貯金の源泉選択の税率が高過ぎるから、これを引下げるというような意見、それから株式譲渡所得については、その実体が把握されておらず、税収入も極めて少いから、これは廃止したほうがいい。止むを得ずんば代り財源として有価証券移転税を起しても仕方がない。こういうような意見が出ております。  更にそのほか経済同友会あたりの意見といたしましては、資本構成是正積立金を積立てるとか、或いは増資を容易ならしめる措置として、配当の一割、今後の増資株については一割以内の配当は金利と同じように損金に見てやるというような考え方、それから未発行の自己株式保有制度を認めて、株式で配当がもらえるようにというような私案もありまするけれども、これらはいずれ他の方面に相当違つた意見がございまするし、果して直ちに執行し得るかどうかということは疑問に存じております。  それから税制簡素化、徴税費の縮小に関連して申上げるわけでありますが、地方税の問題といたしましては、各種団体の意見、それから又日本租税研究協会及び商工会議所におきまして、アンケートを発したその結果を集積いたしてみますと、業種別によつていろいろな意見は分れまするが、最大公約数として意見の一致したところをとつてみまするというと、ちよつといろいろの映像はあるけれども、それを重ね写真にして一つの映像というものを浮び出させてみますると、附加価値税について反対であるからして、これは廃止すべきものである。それから一部に考えられておる事業税の外形標準として附加価値税の加算方式を導入いたしまして、純益のほかに支払賃金、地代、家賃、権利というような外形標準を加えて課税することも反対だ。なぜかというと、それは反対で、廃止すべき附加価値税を事業税の改正と称して一部取入れておるからだ。附加価値税は理論的には一つの税体系として成立つのであるけれども、附加価値税が行われる前提としては、企業が通常の経営をし、通常の利益を上げておるということが前提でなければならないけれども、日本の現在の経済界の状況は遺憾ながら事業が通常経営をし、通常の収益を上げておるという状態になつておらん。そのときに課税標準を変更することによつて企業に負担の大変動を与えるというようなことは避くべきである。こういう結論であると思うのであります。そうして事業税については、地方団体が独立の徴税機関によつて調査をするということは徴税機構の重複である。納税者としても国の徴税機関と地方団体の徴税機関から二度調査を受けることは非常に煩雑であるからして、国税課税標準をそのまま採用する方式か、或いは附加税方式に代えてほしいというのが、大多数の意見を集約した結果として考えられております。  それから固定資産税につきましては、償却資産に対する課税が評価が困難であると、それから財源の偏在しておるの点から、できればこれを廃止してほしい、廃止が困難であるとすれば、これは市町村の財源から府県に移して、一部を府県がとる、一部を市町村に交付するほうが適切である。こういう意見が多いようであります。  時間も経ちましたから、最後に酒税の改正の点についての各団体の要望事項を申上げますると、酒税につきましては、先に議会に陳情書を提出してありまする通り、酒税の税率の平均三割を引下げてほしいという要望と、なおそれに附加えて密造酒を撲滅する目的を以ちまして大衆的酒税を大幅に引下げてほしいという要望が強いのであります。酒類につきましては税率を引下げますというと、その引下率以上に消費が増大しておりますることは、従前の酒税率引下げの際の経過に見ましても、数学的に明らかにされておるところであります。従いまして酒税率を引下げましても消費が増大いたしまするから、酒税総額には大した影響がないと、こういうふうに認められるのであります。嗜好品といたしましては酒とたばことよく申しまするが、たばこのほうは戦前の消費を上廻つておるのでありまするが、酒類につきましては、実際の消費数量と課税面に現れましたところの正規の酒類の消費とに、相当の開きがあることは事実であります。密造酒の推定は困難でありまするが、戦前におきましては、日本人は平均一人当り少いときで一年間に八升、多いときには一斗二升酒類を消費しております。その平均をとつて一斗といたしますると、今日人口が八千三百万人でありますから、八百三十万石の酒類が消費されてなければならんと、こういうことになるわけであります。それもその酒の呑み方が非常に減つたとかいうならば別でありまするけれども、今日都会を見、地方を見ましても、酒の消費が著しく減つて、酔つている人が少いとは言えないのであります。ところが課税基礎になつておりまする酒類の消費高は、各種酒類を合せまして、昭和二十七年度の予算の基礎なついておる消費高が約五百万石、そうするというと、三百万石程度の密造酒があると、こういうことが一応推算されるわけでありまして、酒税税率を引下げますれば、その酒価がそれだけ安くなります。酒価が安くなれば危険を冒して密造をしたり、或いは密造酒を買つて呑むということが減りまするからして、密造酒類のほうに食い込んで参りまするからして、先ほど申上げましたように酒税率引下げによつて、正規の酒類の消費が増す、従つて課税面には相当の増税をもたらすからして、減税率だけ税収が減るというようなことがないのは勿論、大体において税収入は変らないと、こう見るわけであります。密造は各種の観点から憎むべきことは勿論でありますが、販売業者が密造酒に誘惑されて密造酒を扱うというようなことは、一つは密造酒は闇から闇に買入れて売つてしまうものですから、その店の扱い数量としては表に出て来ない。そうするというと、営業の課税におきましても、密造酒を仕入れて、密造酒を売つた分は課税標準には出て来ない。これは一つの販売業者が、つい悪いとは知りながら、密造酒を買入れて、それを売るということでありまして、密造酒は間接税を国に対して納めないで、脱税しているばかりでなく、それを扱う業者に直接税の部分についても課税漏れを来たしておると、こういうことでありますので、是非公平な課税を実施する建前からいたしまして、密造酒を撲滅する。これがためには取締も必要でありますけれども、経済現象ということは法律で規定して取締るというだけでは実効が十分に上らないのでありまして、やはり価格政策を加味しつつ買いやすいようにして、同時に取締を厳にするということが必要であると思うのであります。  なお酒の税につきましては、税率引下げのほかに改正の要望が二、三あるのでありまして、例えば亡失免税の規定が、現在のところでは倉出税になつておりますので、倉内において、つまり製造場内において亡失の事故があつた場合には、この酒類に対しては酒税を徴収いたしませんけれども、一旦倉を出してから途中において、消費者が消費する以前において亡失した場合においては、免税の恩典がないのであります。ところが列車事故があつたとか、或いは船が遭難したというような場合には、はつきり亡失の事実がわかる、その証明も取れる場合もあるのでありますが、そういう場合でさえ、現在は倉を出たあとの酒については、政府は税金を免除しないのでありますが、酒税は申すまでもなく、消費税でありますから、消費されない場合に、而もはつきり証明が付いて脱税の虞れなしという場合においては、これは免税の途を講ずべきではないかと思つております。  それからこれは細かいことでありますが、担保が、保税担保の場合と延納担保の場合と範囲が違つておりまして、延納担保の場合には、火災保険の付した建物等をとるということになつておりませんが、そういう点は成るべく担保を拡大いたしまして、これを銀行保証によつて担保に充てておるというようなことになると、それだけ、保証料だけ酒造家は余計に負担をするということになりますから、そういう点を改正してほしいということを言つております。  それから戦前は、酒造組合法というものがあつたのでありますが、この法律が廃止されておりますが、できれば酒類業団体法というような酒類製造者並びに販売者を規律する一つの団体法を作つて、必要があれば業界の混乱を阻止できるというような規定で以て、先に通過いたしました中小企業の安定を図る法律案に似たような規定を持つ団体法を作つてほしいと、こういう要望もある次第であります。  大体私に与えられた時間が参りましたので、私の説明はこれで終りまして、あと御質問が若しあつたらお答えすることにいたします。
  28. 中川以良

    委員長中川以良君) 御質疑をお願いいたします。
  29. 小林政夫

    ○小林政夫君 どなたにも同じことを聞くので気がひけますが、法人税の件ですが、対外関係があつて、今の四二%という税率を引下げることでむずかしいとすれば、という前提で、いろいろ特別控除の要望をお話になつたわけでございますが、どうもここにこういつたすでに現在ある価格変動準備金であるとか、退職手当引当金だとか、貸倒準備金、企業合理化促進法による特別償却或いは租税特別措置法についても、成るほどそれによつて法人税の軽減になることは確かでありますが、併しそれは業界全体から見るならば、一部の法人に限られているということで、而も或る程度収益の上つた大法人のみに均霑するのであつて、不況法人は均霑しないという点もあるわけであります。そこでむしろ収益状態は悪いけれども、国家としては相当考えなければならん産業法人もあるわけでありまして、そういうような法人負担を軽減するというような意味においても、法人税率というものを一律に四二%としておくことが如何なものであるか。特に少額所得法人については、大法人と同じような税率であるということは、私としては望ましくない、こう考えるのでありますが、松隈さんの御意見を……。
  30. 松隈秀雄

    参考人(松隈秀雄君) 法人税につきましては、お話のように、この前三五%から四二%に引上げた際においては、朝鮮事変の影響を受けて収益状況のよくなつ法人が相当顕著に現われたから、止むを得ず承認をしたというような恰好になつている。併しその当時においてさえ、すでに十分な利益を上げるというような廻り合せになつていない法人、それから大体において収益力の低い中小法人は、大法人並びに高収益法人のお付き合をさせられたのであつて、誠にお気の毒であるから、この際四二%を三五%に引下げろ、こういう意見は各種団体間においても相当強いことは御説の通りであります。経団連は、そう申してはなんですが、少し大きな団体が勢力を占めておりまするので、その点少しぼやけておりますが、商工会議所なんかになりますと、中小法人を区別してくれという意見が相当出ているようであります。ただ租税研究協会といたしましては、御承知の通り法人税が今日千九百億ほどでございますので、三五%に下げるということになるというと、四百億近い減収が出るが、果してそれだけの財源が許されるものであるかどうか。財源さえあれば、もう法人税は上げたのがむしろ酷であるのであるから、而して上げたときの事情が解消して、元に戻つているのだから、引下げるということには賛成である、こういうことになつているわけでありますが、ただ諸外国、殊に英米等は法人税税率が最近引上げられておりまするし、新らしく超過所得税も設けるというような意気込みもありますので、その方面を顧慮すれば、日本は賠償も払わないで、そうして法人税は引下げるということをやるというのでは、なかなか賠償の交渉なり或いは外債の交渉なりにおいて困難ではないかということも考えるとすれば、当面税率は据置いて、極力、理由のつく限り、企業の内部留保を多くするということによつて、実質負担を減らすということが如何であるか、こういう意見が出ているわけであります。併しそれも御指摘の通り利益のたくさんある法人こそ、各種名目を設けて準備金なり、積立金を積立てて恩典に与り得るのであつて、利益の少いものは何ともいたし方がないということになりますれば、御説御尤なんであります。そうすれば、結局元に戻つて、やはり何とか行財政の整理によつて財源を生み出すということ以外に、協会としても意見の出しようがない、こういうことであります。
  31. 小林政夫

    ○小林政夫君 まあ諸外国が相当法人について税率を上げておるということは事実ですが、併しまあ国民所得の額から言つても、アメリカと日本と比較しても、税率は同じであつても、これはもう当然問題にならないし、又そういうような米英においてすら、少額所得法人については免税点がありますですね。そういうようなことから考えても、どうも一律な税率は如何かと思うわけでございますが、まあ対外関係についての考慮については、多少お説のように考えなければならん点もあるでしようけれども、併し今の日本の、先ほども井藤先生から国民皆貧になつたという言葉がありましたが、そういうような点から考えて、非常に国富の減つた、消耗した日本の現状においてということを前提としての折衝をすれば、必ずしも諸外国の納得を得られないこともないのじやないかという気がする。それとまあ現行税制において、今の所得税を納めておるのが、八千五百万として四千五百万人は所得税を納めておらない。この納税者一人についての扶養人員を含めての数字が三千九百五十万人くらいになつておるわけであります。源泉所得税と申告所得税とを入れましてですね。そうすると納税しておらないのは四千五百万人からある。そこで所得税のほうの基礎控除或いは扶養控除税率引上げて、まあ税負担を軽くするということも、多々ますます弁ずではありますが、今の段階、この五万円を六万円に引上げ、一人の扶養控除を三万五千円にするというようなところからいつて、この次に減税をやるとした場合に、所得税税率を下げるか或いは少額所得法人税率を下げたほうがいいか、そういう点についてのお考えは如何ですか。
  32. 松隈秀雄

    参考人(松隈秀雄君) 民生の安定という見地からすれば、所得税減税に重点を置くべきである。それから資本蓄積、そうして企業を大いに発展せしめるという見地からは、多少、差当りは民生の安定を犠牲にしても、法人税の軽減に重きを置くべきである、こういうことは常に議論されておるところでありまして、どちらに重点を置くかは、そのときの国民経済の情勢ということによつて判断するほかないと思うのであります。最近までは所得税を軽減するということに重点を置いて政府が施策して参りましたが、今度は法人税の軽減を図るという必要が相当強く感ぜられるようでありますので、お説に対しては共感であると思つております。
  33. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかに御質疑ございませんか。それでは松隈参考人から承わりまするのは、これを以て打切ります。誠に有難うございました。  引続き化学産業労働組合書記高島喜久男君より、労働組合側といたしましての税制に関する御所見を伺いたいと存じます。高島君。
  34. 高島喜久男

    参考人高島喜久男君) 私は税制改革一般について、その技術的な問題に触れることではなくして、本質的な問題について四点だけ意見を申上げたいと考えます。  その四点と言いますのは、第一点は税制、特に所得税について考えます場合には、我々が今日如何なる所得を得、如何なる生活をしておるかという実態の認識を前提としなければならないのでありますが、この国民の所得と生活の実態に関する認識において、我々はこの税制改革案を提出しておられる政府の認識と違う点があるのではないかと考えます。で、その点を第一に明らかにしなければならないのではないかと思います。  第二にはそういうふうに国民の所得と生活の実態に関する認識において意見が違つておりますことから来るのでありますが、我々は今日提出せられておる税制改革案、殊に所得税改正案につきましては、これが仮に善意に出ずるものとしても、その内容は我々の必要とすることを満していない。我々の要望することを満していない。甚しく不満であるということを言わなければならないと考えます。  第三に我々は今回の税制改革案が決して善意に出ずるものではないと考えます。で、これは甚しく悪意に満ちた、国民に対する悪意に満ちた案であると考えております。そのことを申上げなければならないと思います。  第四に、そしてそのような悪意に満ちた改革案が今日なぜ提出せられたかということについての、我々の意見を申上げなければならないと思います。  第一に今日の国民の所得と生活についての認識と概念でありますが、この点について我々は政府が今まで発表しておりますすべての数字は、非常に欺瞞に満ちたものだと考えております。なぜかと申しますと、一つの例を挙げて申上げますが、我々は所得が如何に多かろうと少かろうと、生活が如何に富んでいようと貧しかろうと、食べるものの量については、そんなに多くの差を付けることができないのであります。従つて例えば主食の消費量というようなものについては、今日戦前の水準に回復しておるのは、これは当然であります。で、そういうものと、その他のものとを込みにして、我々の生活、我々の消費生活が戦前に比べて何%にまで回復したというようなことを言うのは、これは甚しい欺瞞である。例えば主食の消費量が戦前の水準に回復しておるとしても、我々の衣料品の消費量は戦前の五〇%より回復していない。こういう事実が存在するのであります。そういうことを考慮しますと、今日我々の生活水準或いは消費水準、消費生活の水準が戦前の何%に回復したということについての政府の発表は、甚しい欺瞞を持つておると考える。で、更にもう一つ例を挙げて申しますと、我々は生活水準を考慮いたしますのに、エンゲル係数というものを使うのでありますが、これはベルギーのエンゲルという学者が古い時代に、一八〇〇年代に出した理論をそのままとつておりますが、簡単に申しますと、生活費のうちで、飲食費の占める比重が多ければ多いほど、生活水準の低さを示すし、飲食費以外のもののために使う比重が多ければ多いほど、生活水準の高さを示すというのであります。ところが今日我々の生活費の支出の中で、飲食費以外、例えば住居費であるとか、交通費であるとか、光熱費であるとか、電気、ガス料であるとか、そういつたもののための支出が非常に大きな金額になつておる。そしてそれは非常に増加しておる。毎年増加して来ておる。こういう実情にあります。従つて主食、飲食費のための比重が比較的低くなつたと仮にしても、それに代るものとしての支出が衣服費であるとか、文化費であるとか、或いは嗜好費であるとか、娯楽費であるとか、教育費であるとか、そういつた点に向わずして、住居費であるとか光熱費であるとかいうような面に、今日向つておるとすれば、これは生活水準が向上したことを決して示すものではありません。このようなことを無視して、エンゲル係数が幾つである、幾らばかりであるということによつて、今日の生活水準を示そうとする、そして生活水準が向上したことを示そうとすることは、これも又欺瞞であると、私どもは考えるのであります。而もこのエンゲル係数について、これは後ほどもう一度触れなければなりませんが、エンゲル係数については、都市に居住する低額所得者と高額所得者との間においては、非常に大きな開きがあるのであります。このことは例えばもとの経済安定本部あたりの発表している数字の上にも現われているのであります。更に衣料品については、例えば消費が戦前の五〇%にまで回復していると先ほど申しましたが、衣料品のうちで、回復率の最も高いのは、例えば絹織物である、例えば純毛織物である、このような事実があるのでありますが、このような事実がある場合に、この衣料品の消費率の五〇%ということは、決して国民の過半数に対して当嵌まるものではないのであります。国民の過半数における衣料品の消費率は、それよりも又低い水準にあると言わなければなりません。このように我々は今日の生活水準について、この一般に言われております或いは政府あたりで発表しておられます数字とは、別の、全然違つた考え方をしなければならないし、そういう認識を基礎にして、ものを考えなければならないのではないかと考えております。政府の発表しております消費者実態調査、C・P・Sと呼ばれるものですが、それによりますと、今日家計が赤字になるか黒字になるかの限界点は一万五千九百九十九円、つまり一万六千円がその限界点となつております。今日の賃金はどれだけであるかと申しますと、労働省の調査しております平均賃金が月額一万四千二百十八円であります。つまり我我は、平均賃金を今日獲得いたしましても、なお家計は赤字になるということを政府の統計が示しているのであります。更にこの一万四千二百十八円というのは、実ヘこれは職員や重役をも含む数字でありまして、純粋に労働者の家族ではなくて、労働者の世帯主の毎月の定収入は一万三千五百九十七円であります。約二千円以上、二千五百円程度の赤字を今日政府統計みずからが認めておられるのであります。先ほど私は家計の赤字となる限界点が一万六千円であると申しましたが、これは家庭の実収入による赤字となる点であります。若しも世帯主の定額収入のみによつて家計が赤字となる点を挙げますと、これは実に四万円の月収を得る世帯主でなければ、家計を支えることはできないのであります。今日定額収入によつて、世帯主の収入によつて、つまり一万六千円以下の家計収入によつて生活しておりますものは、政府の調査によりますと三三%あります。つまり国民の三三%が赤字の生活をしているということになつております。我々は今日の賃金水準及び所得の水準についてこのような認識をしているのであります。更に第三に申上げなければならないことは、我々は今までこれを一般的な平均の数字として申上げましたが、今日の最も大きい特徴は、国民の所得の上と下とが非常に大きく開いている。日を追うて年を追うて、これが開いて来ておるということであります。今日我々は最低賃金を如何なる労働者にも八千円を保障するという要求を掲げておるのでありますが、八千円以下の所得を得ている労働者の数がどれだけあるかと申しますと、今日税制改革に関する、ここで何か意見を申述べるための参考としてお渡し下さつた資料によりましても、八千円以下の所得である者が五七・三三%ございます。つまりここにお渡し下すつた資料によりましても、八千円以下の所得を持つている、給与生活者のうちの八千円以下の所得の者が五七・三三%ございます。それから又我々の計算によりますと、日本の総労働力は政府の計算では二千六百万人でありますが、そのうち実に千五百五十万人、二千六百万人のうち千五再五十万人が八千円以下の所得であります。このような八千円以下の所得のものが今日どのような生活をしておるかということについて、これは我々の調査ではなくて、実は東洋経済新報という経済雑誌社が調査したことを申上げますと、例えば最近一年間の間に八千円以下の所得を持つておりますものの生活費のうちで、支出しております金額は、実は住居費については四割殖えておる。それから光熱費については二割三分殖えておる。更に負担に至つては一二三%、十三割も殖えておる。そうしてこれらの金額の支出が殖えたがために、例えばたばこその他の支出は三割一分も減少させられておる。こういう実情が、これはやはり政府の消費者実態調査を基礎として東洋経済新報が書いております。先ほど私は衣料品について、例えば衣料品の消費水準のうちで回復したものが、絹織物或いは純毛織物の回復率が非常に高いのだということを申上げましたが、これらのことも又我々の生活の内容が上下によつて如何に大きく開いて来たかということを物語るものと考えます。更に最近貯蓄が殖えた、貯金が殖えたということが非常に多く言われておりますけれども、この銀行預金の増加のうちで、どのような預金が増加しておるかということを考えますと、同じように又我々は生活水準の上下の開きが非常に拡大していることを知らされるのであります。この東洋経済新報の同じ記事は、我々のうちで二万八千円以上の所得のものの生活が如何に豊かになつているかということを傍ら示しております。これについての数字は省略いたしますが、このように所得階層の分化は非常に拡大しつつあるのであります。例えば公務員をとつてみますと、給料の上下の差は御承知のように二十三年の六月に九・八倍でございました。二十四年一月には十四・三倍になつております。同じ十月には十三・九倍になつております。今回の人事院の勧告によりますと、これが十七・五倍になつております。これは公務員の給料は上下の差が如何に日を追うて拡大して来たかということを示すものでありますが、これと同じ現象はあらゆる民間産業においても大企業においては軒並みに生じておるのであります。例えばこれは中央労働委員会その他の調査によりますと、大企業におきます賃金の上下の差は六乃至八倍になつておりますし、それから一番に差のひどい、差の大きいところでは十一乃至十四倍というふうに賃金の上下の差が拡大して来ております。そうしてこれは一定の企業、一つの企業の中における賃金の差でありますが、賃金の差は実は大企業と小企業との間ノおいても非常に大きく拡大しておるのであります。二十五年度上半期においては、五百人以上の工場の賃金を百とすれば三十人から百人までの工場の賃金は七十一であつたものが、本年の七月にはこの七十一が五十五にまで下つておる。このように大企業、中企業或いは小企業との間の賃金の開きは、これも又日を追つて拡大しているのであります。  次に申上げなければならないのは、先きに申しましたように、八千円以下のものの生活がここ一年の間にたばこその他に対する支出を三一%も節約しなければならなくなつたというほどに悪化しているという、このこと自身が示すように、生活水準は全体としても低下している。国民の過半数に取つて見れば、これは低下しているのだということを申上げなければなりません。我々はこのようなふうに今日の我々の所得と生活との実態について認識しているのであります。こういうことを前提におきまして、今回の税制改革、特に所得税及び間接税その他に関する、いわゆる所得税減税、それから間接税の増税でありますが、こういうことを一つ考えますと、私どもは今日必要なことは、先ず第一に必要なることは、この低額所得者を如何に考えるか。如何に扱うかということであると思います。第二に考えることは、この高額所得者を如何に扱うか、如何に考えるかということであると思います。でそのために必要なことは、第一には賃金の最低水準を引上げること、即ち最低賃金制の立案であり、更に失業保険を含む社会保障制度の拡大が第一に必要なことだと思います。第二に殊に低所得層を対象として、国民の消費生活を如何に充実するかということでなければならないと思います。このために物価の引下げというようなことが是非必要になるのじやないかと思います。第三には累進税所得税及び法人税の累進率の引上げが必要なのではないかと考えますが、現実に今日行われております税制改革内容を見ますと、税収の増加しておりますものは、実はこれは間接税と、所得税であつて、そうして法人税については全然考慮せられておらない。そうして又一方において、例えば米であるとか、運賃であるとか、その他の物価引上げが考慮せられている。このことが所得階層別によつて及ぼす影響が如何に異なるものであり、如何に大きいものであるかということは、先ほど申しましたように、低所得層にとつては、ここ一年の間に住居費であるとか、光熱費であるとか、交通費であるとか、そういつたものの支出の増加のためにたばこの消費が三割一分も節約されているということによつて示されたのであります。今日、米の値上り、或いは運賃の値上りが国民生活にどれだけ影響を与えるかという数字がかたわら発表され、ここに私どもの手許に頂いたわけでありますが、このようなことを平均の数字を以て示されることは全く無意味であると私は考えます。これは国民の所得階層別によつてその影響を考えられなければならず、その場合に、二万円以上或いは二万八千円以上の所得者にとつての影響は、これは極めて小さく、殆んど問題にならん、ネグリジブルなものであると考えますが、併しながら低所得者層にとつては、これは重大な影響を与えるわけであります。私どもはこういうふうに今日の税制改革、殊に所得税減税が仮に善意に出ずるものとしても、それは甚しく問題の本質に触れない、非常に要点を逸らした、我々にとつて不満なものであるということを申上げなければならないのであります。  第三に更に我々は進んで今日の減税が実は税制改革が私は非常に悪意に出ずるものだということを申上げなければなりません。で、お渡し下さつたこの税制改革、特に所得税に関する数字基礎にして申上げますと、一人当りの給与所得は、二一・二%増加することになつております。二十六年度に対して一五・五%増とあつて、この意味は私どもにはちよつと理解しかねるのですが、いずれにしても一五%乃至二〇%一人当りの給与所得が増加することになつております。果してこれだけの給与増加が、資本家側において労働組合に対して認められることであるかどうか。現に炭労が、石炭労働者が今日賃金値上げを要求しているのでありますが、中央労働委員会がこれに対して許容しております、認めております引上率は七%であります。十五%乃至二一%に比べまして七%は実に二倍乃至三倍の開きを持つているのであります。このような賃金値上げが無条件に予想せられて、この所得計算がなされているのであるかどうか、私共は非常に疑問に感ずるのです。このことは、例えば公務員の給与引上げについて考えればわかるわけでございますが、給与引上げについて百二十八億の歳出の増加を見込んでおられますが、これに対してそれが更に税金となつてはね返つて政府の収入となりますものが九十五億であります。百二十八億賃金、給与を引上げて、そうして九十五億五千八百万円を税金として取上げる、そういう計算がここに行なわれているのであります。更に経済審議庁の発表しております見通しによりますと、我々の勤労所得は二十六年度に比べて二十七年度は約八%上り、二十七年度に比べて二十八年度は実に一%より増加しておりません。それにも拘わらず、この税制改革の案によりますと、実に厖大な自然増収と称せられるものが計算せられているのであります。このようなことを私共は如何に理解していいのか、実に判断に苦しむ次第であります。更に例えば申告所得税について申して見ますと、この申告所得税につきましては、これは実は税制改革でもなく、又減税でもない。これは一口に言えば、所得が減つて来たということをそのまま現わしたのに過ぎないのでありますが、ここで以て私共は非常に疑問に感じますのは、例えば貸倒れ準備、価格の値下りの準備が何故大企業において存在し、個人商店において存在しないのであるか。大企業の場合は平時から貸倒れの準備をし、価格の値下りの準備をする必要があるが、個人経営の商店においてはこれらの事柄が将来起るだろうということについて準備する必要がないのであるかどうかということを疑問に思うものであります。
  35. 中川以良

    委員長中川以良君) 高島参考人にちよつと御注意申上げますが、時間も大分超過して来まして後の方もおいでになりますので、一つ結論をお急ぎ願います。
  36. 高島喜久男

    参考人高島喜久男君) もう終ります。このようなことについて私共は非常に疑問に思うわけです。結局これはまあ言葉を略して端的に申上げますると、中小商工業者は価格の値下りや、貸倒れのために死んでもいいということを、そのまま法律の形でここに現わされたものであると考えます。  ところで第四にこのような欺瞞、私共はこれは欺瞞であると思いますが、このような悪意に満ちた欺瞞、これが何故行なわれたかということについて一言だけ申上げなければなりませんが、それはこれと同じことが実は昨年の未補正予算の提出された際にも又行なわれておつたということです。そのときもやはり同じように、若干の所得税減税と、そしてそれを上廻る自然増収と、そして又若干の中小企業対策費の支出と、そしてそれを上廻るところの法人に対す減税と、更にそれを上廻るところの警察予備隊費の予算の増加が行なわれておつたのであります。今日これと同じことが今年の年末においても又行なわれている。そうして昨年においては年末そのようなことが行なわれた、その翌年の本予算において実に厖大な再軍備費が計上せられた今日、我々は明年早々に提出せられる本予算において、再び厖大な再軍備費が同じように提出されるのではないかと考えるのです。大体時間も超通したそうですから、この程度にしておきます。
  37. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難とうございました。御質疑ございませんでしようか……よろしゆうございますか。それでは高島参考人からのお話はこれで打切ります。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  38. 中川以良

    委員長中川以良君) 速記を始めて。それでは引続きまして、全国物品税撤廃期成同盟の中央執行委員蛇石清士君より、主として物品税の問題に関しまして御所見を承わりたいと存じます。
  39. 蛇石清士

    参考人(蛇石清士君) 御許しを得まして物品税法撤廃請願の趣旨並びに理由につきまして簡単に申上げたいと思います。  物品税法は消費規正と購買力の抑制とを目途として、物資の濫費を抑え、これを戦力の増強に当てるために特に創設せられた、いわば戦時立法であります。従いまして現在のごとき自由経済下におきましては、全くその存在の意義を失つているにもかかわらず、僅か七十三品目の商品が、あたかも戦争の申し子のような姿で、未だに残存され、すでに関係当局も、その存続については矛盾と不合理を感じつつも、未だに取残されているのであります。  次に本法の矛盾、不公平、不合理な点について具体的な説明を申上げますれば、消費税本来のあり方から離れまして、徴税の便宜上源泉を狙つて徴収せんとするために、消費税が生産者立替税となつているがごとき現況であります。従いましてときには税法上二重課税を余儀なくせられる場合もあり、又統制経済下にあらざる今日、物価の変動によりまして、消費者に税の完全転嫁を不可能とするものであります。  次に公平ならざる税法の理由といたしましては、千数百種の品目の商品中、僅かに七十三品目が類型的に課税せられ、その商品目内の特徴を全然考慮していないで、個々の場合常識的に考えられない不合理、不公平を残置しているのであります。例えば何万円、何十万円というような羽織或いは丸帯のごときは消費税が課税せられないのでありまして、僅かに実用的な数百円の子供用の襟巻き、防寒毛皮製品などには消費税を課税しているのであります。これは全く不公平であります。  次に中小企業育成助長方策と矛盾する点があります。中小企業の救済等に関しまする諸般の法案が審議実施せられておりまするが、今日ひとり物品税のみが顧みられずそのまま取残されて、中小企業の振興を阻む大きな障害となつておるの状態であります。即ち末端消費者に転嫁さるべきものでありまするけれども、事実はそうではありません。実際問題としては、メーカーは品代金のほかに、税金の立替払を余儀なくされているのでありまして、現今のごとき金融至難を極むる時代においては、税金攻勢と金融の面において困難を感ずる中小企業者をして、ますます苦境に追い込んでおるの状態であります。故に中小企業者の育成助長救済の第一に数えらるべきことは、物品税の撤廃こそ急務と考えるのであります。  次に輸出振興策に対しまして矛盾ありという具体的な説明といたしましては、私の承知しておるところでは、物品税法が存在するために、行政協定第十五条が創設されたのであります。この約束によりまして、アメリカ側は納税品、つまり世界的水準市価以上のものを購入せねばならなくなつたのみならず、無税を以て購入せんといたしますれば、手続が頗る煩瑣で、一昨日七日の日本経済新聞に書いておりましたように、日米行政協定によつてCPOが日本の商品の買付を敬遠したのであります。この数字は的確とは申されませんが、通産省の特殊貿易班でお調べ願えれば的確なものがわかると思いますが、我々の推定では、貿易外収入として、CPOの年間購買力は約七千万ドル、うち物品税課税対象品が約半額の三千万ドル乃至三千五百万ドルの実績があつたのであります。ところがこの行政協定成立後、CPOの課税品購買が殆どその後を絶つたのであります。即ち外貨の収入が百億円以上乃至百二十五億円減となつたのであります。この数字日本全体の経済から見ましたらば僅少の数字でございましようが、国民から吸い上げる僅かの物品税のために、この百二十億前後の外貨収入が失われているのであります。貿易振興も貿易伸張も忘れられた感を深くいたします。一昨日のやはり七日の日経でお読みになつた先生がたもいらつしやると思いますが、カメラ並びに毛皮等を見ましても、カメラは直接ドイツから輸入され、毛皮に至りましては、物品税法施行の陰に隠れて、香港の中国商人がCPOの日本品購入中止の間隙を狙いまして、今現に輸入納入しつつある事情であります。かくのごとく我々業者は物品税法があるために思わざる外国商人の圧迫さえ眼前に受けつつある状態であります。  私ども業者は納税の義務を果たす観念において決して人後に落ちるものではありません。ただその課税が飽くまでも適正であり、且つ納得の行く妥当な、而も低率にして納税しやすい税金方法を心から念願するものであります。国法である以上、物品税法も又国会において改廃の権限をお持ちのことであります。正直者が馬鹿をみて罪人を作り出すことを誘引する虞れのある、この種不合理な税法は速かに撤廃すべきであると思うのであります。  二十六年度の物品税額は百六十億、これに自然増収を見込んで百九十六億かが二十七年度の補正予算に計上されたということを洩れ承つているのでありまするが、八千億以上一兆に上る予算から、約二百億の物品税は僅かに二%、或いは二%半であります。而もこれを徴収する人件費事務費等々相当の経費を必要とするはずであります。今これを廃止して代り財源を他に求められることは、国会にこれを廃止する御決意と大蔵省御当局の御英断と御熱意があれば絶対不可能とは申されまいと存ずるのであります。大蔵省当局におかれても物品税の不合理の点に留意せられて、これが改廃について相当研究せられているやに聞き及んでいるのであります。私ども業者は国会議員の諸先生の良識に訴え、大蔵省当局ともよろしく御折衝の上、速かに物品税廃止実現を期するために、超党派的観点に立たれて、全国業者心からの希望を達成せられんことを切望懇願する次第であります。  以上を以ちまして私の発言を終ります。言葉が前後いたしましてお聞き苦しかつたろうと拝察いたしまするが、何とぞよろしく御判断をお願いいたします。なお賢明なる先生がたの前で失礼な言辞も多々あつたことと存じますが、これも熱心の余りとお許しを賜わらんことをお願いいたします。
  40. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。御質疑ありませんか。
  41. 小林政夫

    ○小林政夫君 今あなたのほうでやつておられる全廃の御趣旨を承わつたのでありまするが、直接税を軽減して間接税に多少重みをかけて行こうというような全体の今日本税制の趨勢から見て、全廃ということのいろいろお説を承わつたのですが、むずかしい方向ではないかと思うのですが、あなたがたのほうでお考えになつて物品税のの中でこれとこれとは特に中小企業を圧迫するとか、或いは輸出の阻害になるとかいうような品種別の御研究はなさつておりませんですか。
  42. 蛇石清士

    参考人(蛇石清士君) 間接税を重くとつて直接税を軽くするという御方針だということはかねがね私どもも承わつておりましたけれども、同じその間接税の中でもこの物品税は私ども業者が多年これによつて苦しんで参つた税金でありまして、例えば銀座街頭にあつた戦後二十三、四軒を数えた小売店がここ七年間に僅かに五軒か六軒に減つてしまつたと、或いはその量によりましては小さな本当にここでお話するのも恥かしいような零細ないわゆる職人階級、これもやはり物を作り出す以上メーカーでございましようが、而も素養の低い、程度の低い、そういうかたがたまでこの物品税を払つておるような始末でありまして、僅かに手続が間違つたり、御承知の通り物品税の手続は非常に免税を受けようとするには煩瑣な、普通の商店を経営しておるかたならばどうかこうかやれまするが、そうでない者にはとてもむずかしい規則がいろいろございますので、そういうような手続上の不備などから罪人扱いをされたというような事実もあるのでありまして、私ども物品税の不合理であり悪税であるというような観念には長い間支配されて来たものでありますから、どうしてもこの物品税を一応撤廃して頂きたい、こういうのが我々の念願なのでございますが、今御指摘のようにそれではどの業種がどういうような障害を受けておるかということになりますと、只今残つておりまする七十三種のうちこれはだまつてつても政府がとつて頂けるようなものが二、三種あるやに伺つておりまするが、大体は奢侈的な物だから残すのだと、こういうふうに私どもは伺つておるのでありますが、現在では奢侈というようなものは殆んどないのでありまして、それはその品物によつて一部ありましようが、例えば先ほど申上げましたような羽織、丸帯のような一本何十万円というようなものが奢侈でありましてそれが無税であつて、一方僅かな物が有税になつておるということは矛盾も甚だしいのでありまして、私どもはこの物品税の撤廃ということについて長年その目的貫徹のために国会へも陳情し、或いはこうしてお伺いしておるわけでありまするが、その各品種についての障害ということよりも、今この物品税は各我々の全国一丸となつてつておりまする七十三種の業者に全部悩みの種となつておるということを一つ御賢察願いたいと思うのであります。
  43. 中川以良

    委員長中川以良君) ちよつと私からお伺いしたいのですが、先ほど駐留軍に納めまする物に対して物品税免税になるが、その手続が非常に煩瑣なためにこれの買付を中止したというお話があつたのですが、御指摘のように先般経済新聞かで拝見をしたのですが、例えば写真機のごとき日本のメーカーで非常に最近は優秀なものもでき、又輸出もし、CPOあたりに相当納めておつたと、これが突如としてこの手続の煩瑣のために中止になつて、ドイツ製品がどんどん流れて来るというようなお話でありまするが、これは手続が非常に煩瑣だというのはどういう点なのでしようか。
  44. 蛇石清士

    参考人(蛇石清士君) アメリカ側が手続をむずかしくやつておるような形があるのでございます。これは私は写真機のほうはよく内容を存じませんが、同じケースで写真機のほうは御承知の通り四割、我々のほうの扱つておる一部の物は五割、僅かに一割しか違いがありませんので、殆んど同じケースでございますので、我々のほうの毛皮の例を引いて申上げても写真機のことと同様なのでございますが。
  45. 中川以良

    委員長中川以良君) 最近毛皮も免税になるのですが、CPOの手続というものをいやがるのでしようが、そうすると、例えば今お話の香港から無税で入るというのはその手続がなくて入るのですか。
  46. 蛇石清士

    参考人(蛇石清士君) そうです。これは私ども全く驚いたのです。この四、五日の出来事なんです。支那人にそんな我々の商売を侵されておるとは気が付かなかつたのです。現在までそれがジヤパニーズ・ミンクと言つて日本の品物を染めたミンクだと言つてつておるのです。私は現物を確認いたしませんので果して日本の品物か支那の品物かわかりませんが、支那にもそれに類似のものがあります。併しその納めた品物を見た人から聞きますと相当良品であるように聞いておりますから或いは日本の品物かもわかりません。そうすると五割の値段の間で踊れるわけです。日本から持つて行くときは輸出は御承知の通り無税ですから、それから香港で加工して又日本へ持つて来てこれをCPOに納めるときに又無税です。両方とも無税で出たり入つたりしておりますから、そこに二三割の開きがあれば彼らはもう立派に商売が成り立つ。ですから現行の五〇%の物品税では無理があると思うのです。
  47. 中川以良

    委員長中川以良君) この物品税の撤廃の問題は我々も相当真剣に研究しなければならんと思いますが、その撤廃なり調整なりの実施されるまでの間に、何か手続の煩瑣なる面を改善するという妙案はないのでしようか。
  48. 蛇石清士

    参考人(蛇石清士君) これは行政協定十五条でさえも、この物品税法があるためにアメリカ側とあの契約をしたのだ、あの十五条が創設されたのだと私は伺つておりますので、よほど大蔵当局は物品税というものを固守されて、あの行政協定に当つてもやはり外務省のほうにもそういう申入をなされたのだと思います。これは手続が面倒と一口に言いますけれども、大蔵省が最後に税金免税にするところまではつきり確認させるというのには大変なのでございます。ということは、一例を申上げますと沖縄とかウエーキ島とかその他米軍の駐留しておる所にどんどん品物を買つて小さく送るのでございます。そうすると、向うが何ヵ月後かに受取つたという書類をこつちのほうに持つて来て、そうして日本の税関なり税務署なりにそれを提示しなければ無税ということにならないらしいのです。それはただ手続の煩瑣というばかりでなしに、時間から、それから果してそれを日本政府に確認させるまでの行為ができるかどうかということを恐れておるらしいのです。そうしてやはり毛唐は自分たちの責任を考えておりまして、そんなむずかしいものならそれではやめようと頭からやつてしまつて買うことを中止したのであります。
  49. 中川以良

    委員長中川以良君) よくわかりました。なお私ども大蔵当局に対しましてよく実情を調査しまして検討いたしたいと思います。ほかにありませんか……。それでは蛇石参考人のお話を承わりますることはこれで打切ります。引続きまして全但商工業振興協議会代表の長六郎君より、地方におきまするところの商工業者のお立場よりいたしまして税制に関する御所見を承わりたいと存じます。
  50. 長六郎

    参考人(長六郎君) 今御紹介願いました通り、遠く但馬のいなかからはせ参じて参つたのであります。只今世論では池田通産相が中小企業者が非常に困つて窮地に押込められてもそれはいたし方がないというようなことを申されたということによつて地方におきすまる中小企業者もこれには非常に大きなシヨツクを与えられておりますときに当りまして、大蔵委員会におきましては、私のようないなか者の中小企業者の税に関する声を本当に聞いてやろうというような親心を示して頂きましたことは、私一個人の喜びでなくて地方、中央におきますところの中小企業者の全く喜びに堪えないわけでありまして、この点厚くお礼を申上げたいと思うのであります。  さて私は寒冷多湿地帯におきますところのそこに営業しております中小企業者の代表といたしまして、国税に対する意見を申上げたいと思うのであります。先ず第一に、寒冷多湿地帯に営業するところの中小企業者の所得税に対しましては、特別なるところの控除を設けて頂く必要があるのじやないか、こういうことを申上げたいのであります。それで、それでは一体なぜその必要があるのかと申上げますと、先ず第一に、寒冷多湿地帯と申上げますと全く気候が非常に惑うございまして、一ヵ年のうち四ヵ月以上は雪にとざされ又雨が非常に多い。そういうような地方におきますところの我々中小企業者は農業者、漁業者、或いは労働者の収入の如何によつて我々の営業を左右されることは勿論であります。今申上げますように、寒冷多湿地帯におきますところの労働日数はかような情勢で実に少いのでありまして、農業におきましても単作地帯でありまして一毛作しかできないのであります。或いは又労働者におきましてもその通り実に雨、雪、そういうような情勢で働く日が非常に少い。又漁業者におきましてもその通りであります。でありますからして収入が少い、収入が少ければそこに営業しているところの我々中小企業者に対する全く購買力は低調である、こういうことになるのであります。  そのほか又ここにもやはり官公職に勤めておるかたがたの俸給生活者も相当あるのでありますが、これらのかたがたも一般都会のほうが生活費が高い、いなかは生活費が非常に安くつく、こういうような見当から、それらの俸給者の地域給におきましてもいなかは非常に安いのであります。それを現実はどうであろうかと申上げますと、生活費が非常に安い地帯におきましてもこの地域給が非常に高い所もある。然るに私どものような但馬地方におきましても生活費は非常に安いのじやないのです。米はやはり一升が闇では百三、四十円もいたしております、そういうような状況で生活費が非常に高いのにもかかわらず、官公職におけるところの俸給生活者の地域給は誠にお話にならんほど安いのであります。ですからして学校の校長だとか先生だとか、或いはそういう官公職に勤めておる人はそういういなかには来たがらないのでありますが、なぜかと言いますとそれらの人は生活のほうの余裕がない。で来ないのでありますが、そういう官公職に勤めておる人々の生活の余裕がないということは、それらのかたのやはり購買力が少いのであります。で、いわんやどちらの面から申上げましても、この寒冷多湿地帯におきまするところの営業者は、購買力がお話にならないほど低調である、こういうことが一つの理由であります。  そのほかもう一つの理由はどういうことかと申上げますと、マージンが非常に少いのであります。で、我々の地方の仕入先は主に京阪神方面であります。この遠い京阪神から私どものいなかに品物を買人れますと、やはりそれには箱代であるとか、運賃だとか、或いは手紙一本ではゆかないからわざわざそこまで行つて、いろいろな自分の着物も買わなきやならんということになりますと、自然に旅費もかさんで来るのであります。そうしてみますと一般私ども小売業者は、卸売値段から小売値段のマージンは普通二割から三割しかないのであります。二割から三割しかないそのマージンのうちから運賃、或いは旅費、或いは箱代、そういつたものを差引きますと、実に我々のマージンは誠に少いということがうなずけるだろうと思うのであります。  でそのほかの理由といたしましては資金の回転率が誠に低調であります。でどういうことかと申上げますと、都会におきましては問屋が朝も昼からも一日に三回くらい注文取りに参りまして、そうして品物ができれば昼からすぐ持つて来るという情勢でありますからして、各種目における品の数というものは極く僅かで商売ができる。つまり小資本で営業ができる。併しながら私どものような仕入地帯から遠く離れておる者におきましては、一品目におきましても相当の数を仕入れなければならない。そうしてみますと、そこに人資本を持たなければ営業ができない、こういう状態であります。そうしてみますとそこに回転率が非常に悪いから、自然そこに資本におけるところのマージンが、更に又一般考えておられるようなほど利益がないということになるのであります。  以上のように、この私ども単作地帯におきます特殊なる事情は、今申上げたようなわけでございまするが、これを裏付けるために、一体それではどういうような情勢において所得税が決定されているかということを御参考までに申上げてみたいと思うのであります。一例を挙げますれば但馬地方におきまするところの二十三年から二十五年まで三ヵ年に亘りまするところの全体の所得税の税額の決定から、京阪神方面のその二十三年、二十五年、三ヵ年の所得決定額との比較の差を申上げてみますと、仮に京阪神方面の二十三年の所得決定額を一としますれば、二十三年、二十四年、二十五年、三ヵ年後の二十五年におきましては、この上つた率は、二十三年々一とするならば二十五年は一・二五、こういうような数字になつております。然るに但馬地方におきますところの結果は、二十三年を一としますならば二十五年は一・九六、ざつと倍にまで上つておるのであります。これを平たく申上げますならば京阪神方面のこの所得税の上り方というものは、この上るところの線が誠にもう徐々に上りつつありまするが、併しながら但馬地方におきますところの上つた率は実に急角度を以て上昇している例を考えましてもおわかりだろうと思うのであります。更に又これを例を挙げてみますならば、一日の売上金額から所得決定額がどういうふうな工合になつているかと申上げますと、この但馬地方におきますところの一日一千円以下の売上をなしているものの所得決定額は四万円から八万円くらいの間で決定されております。然るに京阪神方面、或いは又鳥取県下地方に参りますと、千円以下の売上業者は三万円から五万円の間に決定を受けているようであります。次に一日千円以上二千円以下の売上をしているものは、但馬地方におきましては八万円から二十万円の決定を受けています。然るに一方におきましては六万円から十八万円の間に決定を受けています。又二千円以上三千円以下の売上の場合は二十万円乃至三十万円の但馬地方で決定を受けていますが、一方では十四万円から二十五万円の決定を受けている。三千円以上四千円以下の売上のものは、但馬地方では二十五万円から四十万円の間で決定を受けています。然るに京阪神方面では二十万から三十五万円の間の決定を受けている。又四千円以上五千円以下になりますと、但馬地方では三十五万円から四十五万円、又一方では三十万円から四十万円、五千円以上六千円以下の売上のものは、但馬地方では三十八万円から五十万円の決定を受けている。然るに京阪神方面では三十二万円から四十五万円、六千円以上七千円以下のものに対しましては、四十五万円から六十万円の決定を受けているが、他の地方におきましては三十五万円から五十万円の程度で決定を受けている。かくのごとく決して寒冷多湿地帯だからといえども、かくのごとき売上と所得決定額におきましては、何らその間におきましては、むしろ過重なるところの決定を受けているような情勢であります。で、以上もつと詳しく申上げたいのでございまするが、時間が非常にお急ぎのようでございますので大体の数字はこのくらいにいたしておきます。  次に私どもは寒冬多温地帯ばかりじやなしに、一般中小企業者としての国税に対する御希望を申上げてみますと、青色申告について申上げたいと思います。地方におきましても青色申告制度をいろいろな角度から御奨励になつているのでありまするが、併しながら一向にこの青色申告制度を利用するものが非常に少い、なぜ一体この青色申告制度のような制度一般がやらないかということは、これには非常に考えさせられるべきものがあるんじやないかと思うのであります。で、どういう点かと申上げますならば、青色申告にいろいろ詳しく本当のことを書きますならば、現在のこの税制におきましては、我々商工業者における税制は誠に遺憾ながら生活ができない。本当のことを記入するならば全く食えない。食えないから何とかごまかしてそうしてそれで子供を養い、或いは生活するところの費用を生み出したい、こんなふうな感じから実際の記帳ができない。記帳ができないから税務署からやつて来ましてもそこにいろいろなお前のところはこういうものを取つているのだが、付けていないじやないかというような一つの実証を挙げられると忽ち答えができないというような情勢でありまして、この青色申告制度ができておりながらも、それの実行のできない大きな理由はここに税制のつまり欠陥がある。中小企業者に対しての生活の安定を根本的に考えてもらうならば、我我中小商工業者は決してこの実際の数字を挙げることについてやぶさかじやないのでありまして、併しながらそれができないところには非常に大きなこうした悩みがあると、そういうことを幾らここで申上げてみましても、一旦国会で以て法律できめられている以上やむを得ませんが、できるならば青色申告に対する意欲をもう少し国民に持たすべきである。そういうようにごたごたを言う前に、先ず青色申告をやる者に対しては一割乃至或いは何かの特典を与える。こういうことであるならば私は青色申告の意欲が国民にもでき、又この中小企業者も進んでこの青色申告をやるのじやないかというように考えるのであります。現状のような状態であるならば、我々中小企業者は遺憾ながらこの言色申告制度を実際に本当にやるということの意思にはならないと思うのであります。どうかこの青色申告の制度につきましては、是非何かの特典によつて国民に意欲を与えさして、つまり中小企業者の意欲を与えさして頂く二とであると思うのであります。  次にお願いしたいことは納税貯蓄組合の育成強化であります。最初納税組合の育成の場合は、たしか三十人以下の組合員がある場合には帳簿代とかそういうふうなものに千円の補助を与える。こういうようなことであつたのが、本年に至りまして皆様のいろいろな研究の結果相当大幅な助成金が出されるようになつているのでありまするが、私はまだ更に納税貯蓄組合の育成強化を一層強化して頂きたい。いま現在与えられている百分の一の助成金はむしろ百分の二まで上げて行く必要があるのじやないかと考えるのであります。で、それはどういうことかと申上げますならば、他の地方におきましては私どもの小さないなかの税務署でも、大阪財務局の中でも徴税成績が実に優良であるということによつて賞を与えられた。九四%から九六%の徴税成績を示している優良なるところの納税者の人たちのいる地方でありますが、少くともこのいなかの末端における小さな商工会のような団体をやつていますこの会費の負担に悩んでいるのでありますが、幸いにこうした納税貯蓄組合の育成強化ということが少し強くやられるならば、私はいなかの小さな商工会は、これによつてうまく運営しながら、納得した税金を進んで喜んで納税組合によつて納税成績を一層に上げることができるのじやないか。こんなふうに考えますので納税貯蓄組合の育成強化をこの際お願いしたいと思うのであります。  次に申上げたいのはこのたび所得税改正によりまして、扶養控除及び基礎控除が相当大巾に引上げられる、その一面を考えましたならば誠に結構なことではありますが、併しながら私どもは基礎控除及び扶養控除引上げられるよりも、同じ国民である以上少額所得者にも低率なるところの所得税率をかけるべきが原則じやないかと思うのであります。そうしてもう少しこの所得税税率を下げるべきであると私は考えるのであります。それで扶養控除及び基礎控除を上げてもらうということは、これは国民の最低生活を国家は保障するという憲法の下で、そういうようないろいろな点をお考えになるかも知れませんが、私ども中小企業者の面から考えますればむしろ私はそれよりも税率を下げて頂く、そうしてこの少額所得者も国家に対するところの費用は低額なる所得税によつて同じく負担を持つということが、これは当然のように思うのであります。  次に私は異議申請の問題について申上げたいと思います。納得の行かない場合には異議申請をせよと誠に結構な制度が設けられておるにかかわらず、納得ができないで異議申請をした場合に一体どういう結果が今日では起きておるかということを静かに考えてみて頂きたい。異議申請をする者に対しては或いはいろいろな機関が設けられておりまするが、その機関にいろいろ訴えてみましても、或いは悪質者の例を言うのじやありませんが、悪質じやなくて本当に国民として納税の意識のある者でも異議申請をする場合には相当疑惑の目を以て、そうしてあらゆるつまり疑いの目を以てやられる、恥辱を与えられるというような相当な圧迫感を今日与えられている実情を我々は考えたいのであります。でありますから異議申請を若しした者に対しては何か保障の方法考えて頂きまして、そうして我々国民が納得するところの納税制度にして頂きたい、これを私は痛切に思うのであります。  次にお願いしたいことは、午前中いろいろな先生からのお話があつたように、少額所得法人税の軽減であります。今日の法人税は百万円或いは一千万円、そういう多額な法人所得を上げるところの法人も、僅か百万円以下を上げるところの法人も同じ四二%の税率をかけるということは、これは全く残酷だと思うのであります。どうか私どもはこの四二%を点といたしまして、そうして少額所得法人者に対しましては、逓減的な課税によつてもつと楽な方法考えて頂きたい。これには或いは悪質者があつてこれを利用する点もあるかも知れませんが、私は少くとも現在の少額所得着の法人税に対しましては、これは一般の中小企業者の法人の声といたしまして痛切にこの点をお願いしたいと思います。  本日は国税のことでありまして地方税のことを申上げることはどうかと思いますが、併しながら関連を持つておりますので一言申上げたいと思います。地方税におきまして今日事業税が課せられております。この税制改革シヤウプ勧告案が出る前におきまして、営業税が悪税であるということにおきましては、山間僻地におきますところの我々寒冷多湿地帯における中小企業者が、市町村税におきまする営業税附加税及び営業税が如何に悪税であるかということを或いはデータを以て示しましたならば、町村税の主なるものは営業税附加税であつたのであります。そうしますと、町村において要しますところの費用は中小企業者が負担しているのであつて、人口の三分の一しかないところの中小企業者が負担して、他の三分の二の農業者及び漁業者は町村の税収入に何ら関係してない、僅かしか持たないというこの実情から推しまして営業税の撤廃を懇請しましたところ、これは成るほど営業税は商工業者に対しては廃止しようということによつてシヤウプ勧告案は営業税の撤廃をなして、その替り財源として附加価値税の制度がきめられたのであります。然るにこの附加価値税なるものが、どういう理由か知りませんがとにかく附加価値税に欠陥があるものとみえまして、その替り財源として事業税がかけられたのでありますが、今日の事業税は全く前の営業税と何ら変るところはなく、日本税制の根本をなすところの地方税におけるところの営業税が悪税だからといつて撤廃しておきながら、なお更にそれと同じ事業税が今日も課せられつつあるということは、私はどういう理由があるにせよ、速かにこれは何らかの方法によつて処置付けて頂きたいと思う。もつと言い換えますならば、地方税、県税におきましては、他の或いは所得税附加税にするか或るいはいろいろな面において新しい税法をお考え下さいまして、営業税が悪税だから撤廃したということが真実であるならば、速かに将来附加価値税の悪いところを改正して附加価値税を復活するか、何とかこの問題を速かに解決して頂きたいと思うのであります。  大体私の申上げたい希望は挙げて申上げたのでありまするが、誠にいろいろ泣言ばかりを申上げてお恥かしい次第でありまするが、私ども商工業者は残念ながら政治力を持つておりません。又残念ながら我々商工業者はいろいろな業種目の団体の寄合いなるが故に統一したことができないのであります。それ故に私ども商工業者が今日この時代におきましても我々の子供を安心して教育をすることができず、又我々の生活がかくほどまでに逼迫しておるということは私は実に遺憾千万であると思うのであります。所得税におきましても政府は申告制度を布き、或いは異議申請の途を開かれておりながら、私ども中小企業者が納得した納税によつて安定した生活が今日行われていないということは実に残念だと思うのであります。私ども中小企業者といえども日本国民として税を払わなければならないということぐらいはよくわかつております。今日の現状を考えてみますならば、労働者つまり下層と上層との差が余りに開き過ぎています。その中間層におる我々中小企業者が今日のようなみじめな状態におかれるとするならば、日本の将来は実に憂慮に堪えないものがあると思うのであります。私どもいなかの税務署に参りまして、そうして税の問題でいろいろお話をいたしましても、その税務署の人たちはどういうことを言つていますか。君たちが選んだところの選良の代議士なり或いは議員諸君が定められたところの国策、制度を我々は忠実に実行しておるのである、その制度がいけないのならばよろしく君たちはその選良を選挙する場合になぜそれを叫ばないのかと常に言つておるのであります。誠に私の申上げますことは失礼な言葉を縷々申上げましたが、現在ほど中小企業者が生活に悩み苦しんでおる時代はないと思うのであります。どうか先ほど申しました我々の希望、又この所得税におきまするところの改正点におきましても、或いは我々のような寒冷多湿地帯における業者に対するころの所得税に関する処置も速かに一つ御決定下さいまして、我々業者の救済に当つて頂きたいことを私は深くお願いする次第であります。甚だ乱暴なことを申上げて済みませんでしたが私の思うところは以上の通りであります。
  51. 中川以良

    委員長中川以良君) 有難うございました。御質疑ございませんか。大矢君。
  52. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 只今寒冷多湿地帯の中小商工業者の納税上の苦しみ各方面に亘つて詳細御説明下さいました。私ども非常に参考になりましたが、この際特にお伺い申上げたいのは、あなたの但馬地方中小商工業者と京阪神の中小商工業者におきまして月の収入金額、これを単位にして考えましても納税の負担は但馬地方は非常に重い、こういうお話でありましたが、一方今は昔と違つて申告納税になつておりまして、そして税務行政の最近の情勢からいたしますれば大体申告を是認しておる、こういうふうになつておるのです。数年前のように更正決定が大部分を占めるというようにはなつていないようであります。そこで但馬地方においてはこの申告是認の程度はどのくらいになつておりますか。それから更正決定を受けるのはどの程度になつておるか、最近の情勢をちよつと。
  53. 長六郎

    参考人(長六郎君) 私過去八ヵ年間商工業者の会長を勤めておりまして、あの税制の非常に所得税の大変動の際にも私それに当つて来た一人でありまするが、田舎で更正決定を受けるということは一つのつまり何といいますか恥であるような感じに立つておるのです、皆が。ですからして、一人も更正決定を受ける者がないようにしたいという一つの願望を持つておるのであります。先ほど申上げましたように徴税成績なり或いはいろいろの点の成績が大阪財務局でも優秀であるということを言はれたのは、我々の地方におきまする納税観念が今申上げましたように更正決定を受けることは非常に恥である、ですからして涙を呑んでもその税務署の意見従つて行くというようなつまり工合になつておりますので、丁度先年でございましたか、二十四年度だつたか五年度だつたかはつきり覚えませんが、そのときに更正決定を異議申請をした者が六人あつたのであります。そうしてその中で二人は非常に強硬な意見によりまして、たしか所得税異議の申請の相談所が和田山にあつたかと思いますが、そこに行つたところが非常に有望で自分の異議申請が通るやうに見えたのでありまするが、最後に相談所のかたがたがやはり税務署出身の古い人たちであつたために、一方の納税者意見を立てれば税務署に悪い、税務署の意見を立てれば納税者に大変悪いというような板狭みにあつたような状態で、泣き泣きあらゆる欠点を見出されてそうして遂に更正決定の最後まで戦いながら、それで税務署の言う通りに承服してしまつたという実例が二十四年度にあるわけであります。それを見ましても異議申請をしても駄目だ、もう税務署の言う通りになつてしまうのだというような圧迫感を持つております。昨年度におきましては異議申請者が一人もないように納めてしまつたようなわけであります。いなかというところは今申しますように非常にそういつた義理固いと言いますか、どんなに苦しくても或いは差押を受けるとか、更生決定を受けるとかいうことは一つの恥のように思つておる次第であります。そういうような気持がやはり結果しておるのじやないか、こういうふうに思つておるのです。
  54. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 今のお話は非常に示唆に富むものと私は考えまして、私も実は自分の郷里のほうの農村の税務行政の実際の運営を見まして、人情の純朴な関係で従順な所はむしろ他の地方に比して非常に過酷な扱いを受けておる実例を最近も二、三見まして、今までのお話を伺いまして非常に胸打たれる点があつたのであります。私はこれは私どもが立法府にあつて法律をこしらえておるだけでは到底納税者の皆々様の御期待に副うわけに行かん。実際の税務の運営に当りましてもつと適正を期さなければならん、むしろ今後は主力をそこに注がなければならんと、こう考えております。これらの点はひとり私の郷里或いは但馬地方ばかりでなく全国に亘つていろいろ問題があるかと存じまして、今後もそれらの点につきまして十分に調査をして適正を期したい、こういうふうに考えます。
  55. 中川以良

    委員長中川以良君) ほかにありませんか……。本日は多数参考人のかたがたより長時間に亘つて尊き御所見を承りまして、私ども法案審議上非常にいい参考意見をお聞かせ願つたと存じましてここに重ねて厚く御礼申上げます。誠に有難うございました。次回は明日午後一時からといたします。本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十六分散会    —————・—————