○
政府委員(
慶松一郎君)
麻薬取締法案の大要につきまして御
説明いたします。
この
麻薬取締法案を
提案いたします
理由は、これはすでに
提案の
理由の際に申上げましたと同様に、
麻薬取締の
実施は終戦以来殊に厳重にや
つておるのでございますが、その
経験をだんだん積ん参りますと、いろいろな点で
改正すべき点がございます。即ち
麻薬取扱者の免許の種類を
調整しなくてはなりませんし、又その
取締に関しまする
事務の一部を
都道府県知事に委任いたしたいと存ずるのであります。又今日でも
麻薬取扱者の
帳簿等の記載は非常に厳重でございますが、それを適当に軽減すること等のために従来の
法律を廃止いたしまして、ここに新たに
麻薬取締法を制定したいと存ずるのであります。
今回の
法律はこれは八章七十五条から成
つております。相当厖大なものでございますが、大体従来の
法律とは大して違
つておりません。その要点でございますが、先ずこの
法律は、
麻薬が
医療及び
学術研究以外の用途に使用されることによりまして、そして起
つて参りますところの
保健衛生上の危害を防止いたしますために、その
輸入とか或いは
輸出、
製造、
製剤、譲渡、或いは譲受、或いはその
所持等につきまして必要な
取締をいたすことを
目的といたしております。これが第一条に書いてございますが、次はこの
法律におきまして取扱う必要がありまするところの
麻薬を具体的に列挙いたしまして定義したのであります。そうして千分の十以下のコデイン、或いはジヒドロコゲイン又はこれらの塩類を含んでおりますものは
家庭麻薬といたしまして、
麻薬の範囲から除外したのであります。これは従来はこれらのものも
麻薬の範疇に入
つておつたのでございますが、これを除外いたしたのでございます。これらは即ち第二条の中に記されておるところでございます。又次は
麻薬を一取扱いますものを次の十一種のものにいたしたわけでございます。即ち
麻薬輸入業者、或いは
麻薬輸出業者、
麻薬製造業者、
麻薬製剤業者、
家庭麻薬製造業者、
麻薬元
卸売業者、
麻薬卸売業者、
麻薬小売業者、
麻薬施用者、
麻薬管理者及び
麻薬研究者の十一としたのでございます。そうして、これに対しまして一定の資格要件の下に、
麻薬輸入業者から
麻薬元
卸売業者までの
麻薬取扱者の免許は
厚生大臣が与え、その他の
麻薬取扱者の免許につきましては、これは
都道府県知事が業務所ごとに行うことにいたしまして、免許を行
なつたときは、当該
麻薬取扱者に対しまして免許証を交付することといたしたのであります。これが即ち二条から四条までの
規定でございます。
次に免許の有効期間は、免許の日からその年の十二月三十一日までといたしまして、その他免許の失効事由、或いは免許の失効又は死亡、解散の場合におきまする届出、免許証の取扱い、或いは免許手数料に関しまする事項を定めたのでございまして、これは五条から十一条に及んでおります
手続の
規定でございます。
次は
麻薬に関しまする禁止行為でありまして、即ち
麻薬研究者が研究のために行う場合を除きまして、ジアセチルモルヒネ即ちヘロインでございますが、ジアセチルモルヒネ、或いはその塩類又はこれらのいずれかを含有いたしまする
麻薬につきましては、その
輸入、
輸出、
製造、
所持等一切の取扱を禁止し、又
麻薬原料植物の採培を禁止したことであります。
麻薬原料植物とは阿片を作りますところの「けし」或いはコカ、コカインを取りますコカでございます。
次は
麻薬の
輸入につきましての
規定でございまして、
麻薬輸入業者でなければ
麻薬を
輸入してはならないことにな
つております。
麻薬輸入業者が
麻薬を
輸入する場合の
手続を定めたのでございます。これは十三条から十六条に及んでおります。
次は
麻薬の
輸出でございまして、
麻薬の
輸出業者でなければ
麻薬の
輸出をしてはならないこと、そうしてそれに関しての
手続を定めております。これは十七条から十九条に及んでおります。
次は
麻薬の
製造に関しまして
規定をしたのでございまして、
麻薬製造業者でなければ
麻薬を
製造してはならないことにな
つております。これが二十条乃至二十一条でございます。
次が
麻薬の
製剤、即ち原料の
麻薬を使いまして、いろいろな薬を作ることでございます。これに関しては
麻薬製造業者又は
麻薬製剤業者でなければ
麻薬を
製剤してはならないことにいたしておるのでございます。これが即ち二十二条乃至二十三条でございます。それから、
麻薬製造業者、或いは
麻薬製剤業者、又は
家庭麻薬の
製造業者でなければ
麻薬を作
つてはならないということでございまして、これらの者が
家庭麻薬を
製造いたします場合の
手続を定めてございます。
家庭麻薬と申しますものは、
先ほど申しましたところの咳止めに使いますコデイン或いはジヒドロコデインを千分の十以下含んでいる薬のことでございます。
次は
麻薬の譲渡しについて
規定いたしておるのでございまして、
麻薬に関しまする営業者でなければ
麻薬を譲渡してはならないことといたしまして、その譲渡しの相手方を定めまして、
麻薬の流通を規制いたしておるのであります。二十四条、二十五条でございます。
次は
麻薬の譲受けに関してでございますが、
麻薬の営業者、又は
麻薬の
診療施設の開設者又は
麻薬の研究施設の設置者でなければ
麻薬を譲受けてはならないことといたしておるのでございます。
次は
麻薬を実際に施用する、即ち患者に使うことについてでございまして、
麻薬施用者でなければ
麻薬を施用したり、若しくは施用のために渡したり、又は
麻薬を記載した処方箋を交付してはならないことといたしておるのでございまして、又
麻薬施用者は疾病の
治療の
目的以外にこれらの行為をしてはならない、こういうことを
規定いたしたのでございます。
次は
麻薬の所持につきましての
規定でございまして、
麻薬取扱者、或いは
麻薬の
診療施設の開設者、又は
麻薬の研究施設の設置者でなければ
麻薬を所持してはならないことといたしております。
次は
麻薬を廃棄することに関してでありまして、これは新しい
規定でございますが、
麻薬を廃棄し
ようとするときは
厚生大臣の許可を受けなければならないことにな
つております。
次は
麻薬を譲渡しましたり譲受けいたしまする際に如何なる
手続を要するか、即ちその際に譲受証、譲渡証を必要とする。更に
麻薬につきましては、一々
政府発行の証紙によります封緘がされていなければならない。或いは容器とか或いは被包に記載すべき事項を
規定いたしたのでございます。
次は三十六条におきまして、
麻薬の免許が失効した場合の
措置を
規定いたしております。
次は三十七条乃至四十条におきまして、
麻薬取扱者が帳簿を備えてそこに記載しなくてはならないことが
規定されております。併しながら
先ほども申しました
ように、帳簿の記載が従来に比べまして非常に簡略化されております。これは
麻薬を売つたり買つたり或いは作つたりするいわゆる営業者におきましても簡単にな
つております。例えば従来は売先の相手方等を詳しく書かなくてはならないことにな
つておりましたが、それがなくなりましたし、又
診療に関しまして使われます
麻薬につきましては非常に簡単な記載で間に合う、こういうことにいたしたのであります。その施用に関する記録といたしましては、従来は非常に詳しい記載を別の帳簿にしなくてはなりませんでしたが、今回の
法律におきましては
診療録、或いは
診療簿に記載して置けばよろしい、或いは又薬局等で調剤いたしました場合にはその処方箋を取
つて置けばよろしい、こういうことにな
つているのであります。
次は届出であります。即ち
麻薬を売つたり買つたり、或いは作つたりいたしました際にはこれを届出しなくてはなりません。この届出に基きまして、更に
政府ではこれを国際連合に報告をいたしているのでありますが、従来は届出を毎月やらしておつたのでございますが、今回は四半期ごとに改めまして、そうしてその
内容につきましても従来よりもかなり簡略化いたした次第でございます。
次は
麻薬小売業者と申します、即ちこれは薬局でございます。又施用者即ち
麻薬を使いますお医者さん、歯科医師或いは獣医師等の
政府に対しまする届出でございますが、これは年一回、従来の
法律でも年一回でございますが、この届出の事項は非常に簡略化いたしました。従来は一々容器の数とか容器の容量等をも届出なくてはなりませんでしたが、そういつたことを極く簡略にいたしまして、届出の義務につきましても非常に楽に
なつた次第でございます。
次は五十一条乃至五十二条におきまして、免許の取消等の行政処分につきまして
規定いたしております。これは従来とも同じでございますが、併しながらこの免許の取消等の行政処分をいたそうとする場合には聴聞をしなくてはならない。これは大体今日の殆んどの
法律におきまする行政処分につきまして
規定されているところでございまして、それを今回新たに入れた次第でございます。
次は五十三条におきましては、
厚生大臣又は
都道府県知事は必要ありと認めた場合には
麻薬取扱者から必要な報告を徴収することができる。その他
麻薬取締官若くは
麻薬取締員その他の吏員に業務所に立入
つて検査とか或いは
質問、或いは見本品の収去等を行わせることができる
ようにいたしておる次第でございます。
次は、これが新らしいところでございまして、即ち五十四条乃至五十八条におきまして、厚生省に百五十名以内の
麻薬取締官を置きまして、都道府県には都道府県全部を通じまして百名以内の
麻薬取締員を置きまして、
麻薬に関して刑事訴訟法の
規定によりまする司法警察員としての職務を行わせることにいたしまして、その犯罪の捜査等に関しまして必要な
手続事項を定めたのでございます。従来は厚生省に二百五十名以内の
麻薬取締官を置きまして、それを都道府県に駐在させまして、全部国が直接この
取締をや
つておつたのでございますが、併しながら、
提案理由の
説明にもございました
ように、大体地方におきまして
麻薬を取扱う人々、即ち
麻薬の販売或いは
製造をやつたりする人々、或いは施用者でありまするところのお医者さん、その他の人々の
麻薬に関しまする認識が十分にな
つて参りますと共に、それらに対しまする犯罪は、犯罪と申しますか、違反という
ようなものが少くな
つて参りましたが、一方大都会地、或いは港湾等におきまする
麻薬の犯罪がより一層巧妙化いたしまして、これらに対しましては中央の
麻薬取締官に
取締の主力を注がしめ、地方におきましては、主として
麻薬取扱者に対しまする
取締或いは指導、或いは行政的な
事務等を行わしめる、こういう意味からいたしまして、且つ又
政府に持
つておりまする行政
事務を成るべく地方に委任する、こういう意味からこの
ような
規定を今回設けた次第でございます。
次は費用の分担の点でございますが、それが五十九条に書いてございまして、都道府県はこの
法律に基きまして、
都道府県知事が行いまするところの免許その他
麻薬の
取締に要しまする費用を支弁しなくちやならないことにいたしました。国は
麻薬取締員に要しまする、即ち地方に置いてございます
麻薬取締員に要しまする費用の全部を
負担しなくちやならない、こういうことにな
つております。
以上がこの
法律の大要でございまして、雑則が多少と、それから六十四条乃至七十五条によりまする罰則と、附則といたしまして経過
規定が置いてある次第でございます。この
法律は本国会を通過いたしますれば、本年の四月一日から施行いたしたいと存じておる次第でございます。
以上簡単でございますが、大体につきまして御
説明いたした次第であります。
次は
大麻取締法につきまして御
説明いたしたいと思います。
大麻取締法に関しましては、その一部を
改正するのでございますが、
改正いたしまする主な
理由は、これも
提案理由にすでに
説明されたところでございますが、大麻に関しまする
取締を緩和いたしまして、且つその
取締に関しまする
事務を
都道府県知事に委任することがこの
改正の
理由でございます。即ち簡素化いたしました点は、
一つは大麻草、これは大麻草という草がございますが、その種子及び製品を大麻
取締の対象外にいたしましたこと。それから大麻の研究者が
厚生大臣の許可を受けたときは、大麻を
輸入したり又は
輸出することができる
ようにいたしましたことと、それから大麻の栽培に関しまして、従来はこれは
厚生大臣でございましたが、それを地方の
都道府県知事にいたしたことでございまして、且つ大麻を譲り渡しましたり、又譲り受けたりいたします際に証紙を必要としたのでございますが、そういうことを廃止いたしました。それから
厚生大臣又は
都道府県知事は、必要があると認めるときは、
取締官又は
取締員その他の吏員に大麻に
関係ある場所に立入、検査その他収去等を行わせることができる
ようにいたしましたことと、今
一つ大きな
改正の点は、従来は大麻草の栽培につきましては、栽培の区域と、それから栽培面積とを
厚生大臣と農林
大臣とがこれを定めておつたのでございますが、それを廃止いたしました。
従つて大麻を栽培することは、区域或いは栽培面積に関しましては何ら規制がなく
なつた次第でございます。
なお、一部には大麻の
取締なるものを廃止したらどうかという説が相当ございます。併しながらこれに関しましては、やはり国際的な規制もございまするし、又日本の大麻が果していわゆる世界的に言われまするところの大麻と同じ
ような成分を持
つているかどうかということに疑問があるのでございますが、併しこれに関しまして、今日まで農林省その他が東大あたりに依頼いたしまして研究いたしました結果では、やはりこの日本の大麻草にも麻酔成分がございまして、又一方駐留軍の兵士等はこの大麻草でたばこを作りまして、アメリカのものよりも工合がいいということを言
つていること等も聞いております。従いまして、その意味におきまして、現在では大麻の
取締はやはり法制化しておくことが必要である。か
よう存じている次第でございます。以上でございます。