○
政府委員(
久下勝次君)
保險局長でございますが、お
手許にお配りしておりまする
昭和二十八
年度厚生省所管予算要求調でございます。それの第九枚目に
保險局という見出しがございます。
一般会計から御
説明申上げます。
最初の
社会保險行政の
統括運営に必要な
経費が本
年度に比較いたしまして
相当な
増額要求に相成
つております。これは勿論
ベース・アツプ等の
関係もあるのでございますが、この中で特に申上げたいと思いますることは、これは本省及び
地方を通じまして
社会保險業務を担当しております
職員の
費用が主でございます。これに、つきまして来
年度私
ども新規に
考えておりまする
項目は、先ず
一つは
社会保險審査委員会というものを、新たに設けたいという
考え方でございます。これは御
承知の道け、現在法律に基きまする
社会保險審査会というのがございまして、労使並びに
公益の各代表の
委員が入
つて、
保險給付に関しまする不服の
審査をいたしておるのであります。いろいろ
仕事をいたしておられるかたがたにお願いしておりまするので、その
関係上、
会議を開く回数が思う
通り頻繁に開けないのでございます。従いまして年々激増して参りまする
不服申立の
審査事務が今日非常に遅れておりまして、被
保險者に非常な不便をかけている
実情でございますので、来
年度は
特別職の
審査委員会を設けまして、五人の
委員に、これに若干の
事務職員を配置いだしまして、
審査委員会というものを新たに設けて行きたいという
要求をいたしておるのでございます。そのほかに
地方には各
府県に御案内の
通り保險課に
審査官一名ずつ配置してございます。これが第一次
審査機関としてや
つておりますが、特に
大都市を抱えております
府県に非常に多忙を加えております。少数ではございまするが、これを増員して参りたいという
考え方が
一つでございます。それからもう
一つの新らしい
項目は、社会
保險の現場の
仕事は申すまでもなく、現金の取扱い等をいたしておりますので、私
どもとしても極力全力を挙げて、現在
指導、監査等いたしておるのでありまするが、これにつきましてやはり常時業務運営の監査をいたしまする監査官
制度を設けたいというような
項目が入
つております。そういう
意味合いにおきまして、
特別職五名、
一般職十四名の
新規増員の
要求をいたしておるのでございます。これだけをこの
項目については申し加えておきます。その次に社会
保險事業の
統轄運営に必要な
経費、これは社会
保險審議会或いは先ほど申上げました
指導、監査をいたしまするための
費用などを計上したもので、特に御
説明申上げる必要はないかと存じます。
それからその次に、社会
保險診療報酬
事務及び支拂基金の監督に必要な
経費でございます。中身は、社会
保險診療報酬支拂基金という
制度がございます。これの監督でございますとか、或いは社会
保險医療協議会の運営に必要な
経費であります。支拂方式の
調査は、本
年度岡山県においてすでに実施をいたしたのであります。来
年度も引続き他の
地方において一、二や
つて行きたいという
計画もございます。それの
費用を一括して計上したものでございます。それからその次の、健康
保險の運営並びに
調査企画に必要な
経費、その中身は、健康
保險組合の監査に必要な
経費と、健康
保險組合の
事務担当者の報酬に必要な
経費、これを計上してあるものでございます。
それからその次に社会
保險数理
事務に必要な
経費は、これは現在数理課というのがございまして、いろいろ社会
保險の統計
資料を作り、又連絡をいたしておりますので、それの
費用に計上してあるのでございます。それからその次の国民健康
保險に必要な
経費として挙げてございまするのは、国民健康
保險の
指導をいたしております。国民健康
保險の
事務運営に必要な
経費でございまして、このところは取立てて申すようなことはございません。
会議費でございますとか、旅費でありますとか、器具というようなものが人づておるわけでございます。
次の社会
保險審査に必要な
経費は
最初に申上げました
社会保險審査委員会というものを設けますので、この
事務運営の
費用でありまして、例えば証人を喚問いたしますための旅費でありますとか、或いは
委員の人が
調査に出掛けます旅費でありますとか、そういうようなものがこの中に入
つておるのでございます。勿論これは
地方の
審査官の
事務運営もこの
項目で取扱うことに相成
つております。全体としては
相当ふくれた
予算に相成づておるわけでございます。
その次の社会
保險の国庫
負担金に必要な
経費、これは
金額が
相当大きく
なつております。
昭和二十八
年度の
要求は百十一億一千四百五十八万四千円に
なつておりますが、これが大きくふくれておりますのは、健康
保險並びに船員
保險に対します
医療給付費の国庫
負担を計上してあるからでございます。
政府管掌健康
保險分だけで五十一億ほどの
予算に
なつております。他の
費用を加えまして、その部分だけが大部分を占めております。そのほかに健康
保險、船員
保險及び年金
保險に対します
事務費の国庫
負担がございます。これが今
年度は被
保險者一人当り百三十七円五十銭に相成
つておりますが、来
年度はいろいろの
費用の増嵩を見まして被
保險者一人当り二百八十九円四十八銭という單価になるような状況に相成
つておるわけであります。そういうもので
事務費補助と
医療費国庫
負担分が殆んど大部分を占めまして、そのほかに
結核施設の
補助が加わ
つておるわけでございます。
ついでに
結核の
施設関係を申上げておきたいと思いますが、厚生省全般の
結核施設の整備の方針に従いまして、社会
保險におきましても先ず
政府管掌健康
保險で、来
年度は一千七百ベツドにしたい、それから健康
保險組合に
補助をいたしまして二千百ベツド、合計三千八百ベツド、そのほかに船員
保險で二百ペツド、合計四千ペツドを社会
保險としても
結核ベツド増設の一翼をか
つて整備をしたいという
考えで
要求をしておるのであります。
それからその次の健康
保險組合
補助に必要な
経費、これは大きなものはやはり
医療給付費の国庫
負担二割分でございます。そのほかに
事務費が本
年度は
政府管掌の被
保險者一人当り百三十七円五十銭を組合被
保險者総数にかけまして決定しておるのでございます。来
年度は二百八十九円四十八銭に單価を上げまして、
事務費のほうも全額
補助をするというような建前で入れておるのでございます。先ほど申しました
結核ベツドの、二千百べツドの
補助分もこの中に計上され工おるのであります。
最後は国民健康
保險助成に必要な
経費でございます。これは先ず第一は主な
項目だけを申上げますると、
事務費の全額
補助がございます。本
年度は被
保險者一人当り五十三円の
要求をいたして
予算がきま
つておるのでございますが、来
年度はべース・アツプ等も考慮いたしまして、被
保險者一人当り七十二円五銭になる
計算になりまするので、これに被
保險者総数二千九百三十万ほどになるものと予想いたしまして、
予算の
要求に
なつておるわけでございます。第二は
医療給付費に対する国庫
負担でございます。これは例年の
通り、二割の国庫
負担をしてもらいたいということを
要求しておるのでございます。この
金額が約四十六億を
ちよつと超えております。それから保健婦に対する
補助は、従来から認められておるのでありまするが、これも人員が増しまするし、又一人当りの單価も二千九百円を三千九百円ぐらいに殖やしまして、総数五千八百九十九人を
設置できるように
予算要求をいたしたいという
計算に
なつております。それからもう
一つは、本
年度すでに御案内の振興奨励
交付金という
制度で、
保險料の徴収のいいところに奨励金を出しまして、そうして国民健康
保險制度の運営の強化を図りたいというものでございます。本
年度は四億でございましたが、来
年度はこれを増しまして十二億円余の
要求をいたしております。この
内容は、本
年度は徴収割合七割を超えたものに対しまして、その七割を超える
金額に対する一定割合だけを
交付するように
なつてお
つたのでございます。これでは非常に條件がきつうございまするし、又七割以内の徴収をしておるものにも全然奨励金が参らないということにもなりますので、それらの点の條件を緩和いたすことにしまして、十二億円の
要求をいたしたのでございます。次は再建整備
貸付金の
要求でございますが、この中に十五億円余の
金額が入れられておるのでございます。これもすでに法律の御審議を前
国会でお願いをいたしたのでございますが、御案内の
通り條件が非常に窮屈でございまして、而も一番難点は二十六
年度末にありました
赤字の半額だけを
貸付けるということに
なつておりまして、
あとの半額は
保險者が自分で調達しなければならない。而も
貸付金の
交付を受けたときに直ちにこれを半分を調達して医者に拂わなければならないというような建前に
なつておりましたので、條件がきつうございするので、なかなか借りる申請が出て来ないのが現状でございます。そこで私
どもの来
年度の
考えといたしましては、
貸付額にいたしましても先ず八割ぐらいは貸してもらいたい、同時に又
赤字につきましても、本
年度相変らず
赤字が増す様子でございまして、只今の見込では二十七
年度末に三十一億円の
赤字になるということでありまするし、二十七
年度末までの
赤字を解消をするようにしてもらいたいという新たな
要求を出して、その
金額来
年度分十五億に相成るのでございます。そのほかに申上げたいことは、災害を受けました国民
保險の
医療機関がございますが、これの復興が今まで
補助金がなか
つたのでございます。今度は是非
項目を別にしてこれを認めてもらいたいというので出したのでありまするが、同時に災害
関係では
貸付金を
要求いたしております。本
年度鳥取の大火災で鳥取市が国民健康
保險をや
つておるのでございますが、必然的に
保險料の減免をいたさなければなりません。一方国民
保險をやめる意思はないというようなことで、何とか助成の途を講じて欲しいという熱心な
お話がありまして、財務当局と話合をいたしまして五百万円足らずの、四百五十万円ほどの金が、大体低利
資金で
貸付けてもらえるようなことに
なつたのであります。来
年度はそれに倣いまして、正式に
予算の上に
貸付金制度を認めてもらいたい。災害のための
貸付金制度を認めてもらいたいというようなことを
要求してございます。それから大事なことを申し落しましたが、直営診療所
施設は御
承知の
通り、ずつとここ数年四億円ずつ認められておりますが、これの
増額の御要望も強いのでありまして、来
年度は十億、二倍半の
要求をいたしておる次第でございます。以上が国民健康
保險助成に必要な
経費の主な合計でございます。
それから
特別会計のことを
ちよつと申上げておきたいと思いまするが、同じ
資料の十五頁、極く大体のことで、御
質問がございましたら
あとお答えをさして頂きたいと思いますが、先ず健康
保險の問題でありまするが、只今私
どものほうで
計画をいたしておりまするのは、既定の健康
保險事業を遂行するだけでなしに、来
年度は新たに先ず適用範囲の拡張をして見たいという
考えをしております。現在強制適用の時外にありまするもののうち、例を挙げて見ますと、土木建築、
医療看護、教育、研究、社会福祉等々の
事業が現在強制適用に
なつておらないのであります。これらの
事業にも適用を拡げることにしまして、その数が私
どもの推算では五十一万七千人ほどになる
予定でございます。こうした五十万を超えまする範囲中の人々に、健康
保險を適用して参るようにしたいということが、第一でございます。それから第二は現在健康
保險の
給付は、二年間で打切られることに
なつております。すでに国家公務員共済
保險におきましては、
結核に対して一二年間の
給付が実施されておるような
実情でございますので、
給付期間の延長が、各方面の御要望でもありますので、来
年度は是非一年延長をしまして、三年の
給付を実現したいという
考え方で、
予算も
要求してあるのでございます。これが
特別会計のうちの健康勘定の、今年と変
つておる主な点でございます。なお又被
保險者も、今
年度の
要求は四百十万ほどで
要求しておりますが、このまま推移いたしましても、四百三十六万人くら」いの被
保險者になる
予定でございます、その分も加えまして、従
つて政府管掌健康
保險は、私
どもの
計画の
通り承認をされるといたしますると、
新規適用を含めまして、来
年度中頃には四百八十万を超える被
保險者の数になるという
計算でございます。そんな
関係から、そのほかにも標準報酬の自然の上りな
どもありまして、総額におきまして御覧の
通り、本
年度は二百九十億でや
つておりましたのが、来
年度は三百二十億というふうに、
予算がふくれ上ることに
なつておるわけでございます。
次は年金勘定の分で申上げたいと思うのでありますが、年金
制度につきましては、まだ御
説明の機会もございませんでしたけれ
ども、私
どもとしては年金
制度の全面的な改正を
考えておるのでございます。これは終戦後のインフレ
対策として、応急措置がとられたままに今日
なつておりまして、これは早晩改正をしなけれがならないということは、当時から言われてお
つたのであります。そういうことが
一つと、それからもう
一つは、来年末に坑内夫に対する養老年金の支給が、改正される運びに
なつております。現在の
制度のまま放
つて置きますと、これらの坑内夫に対して、年額千二百円の年金しか支給できないということに
なつておるのであります、即ち月百円というような殆んど問題にならない年金を支給しなければならないような
制度に
なつております。それらのことも
考え併せまして、この機会に、来
年度の養老年金受給者の発生をもう控えておりますので、是非改正をしたいということで今案を練
つて、いろいろ各方面と折衝いたしているのでございます。
予算はそれらのことを考慮に入れまして
要求をいたしているのでございます。これは改正の
内容をかいつまんで申上げますと、第一は、健康
保險で申上げましたと同じような裏腹の
制度でもありますので、適用範囲を拡充いたしたいということが
一つございます。又標準報酬が現在最高八千円で抑えてありますので、給與の実態に合いまするように、現在の案では、私
どもの腹案では三万六千円に上げるということにいたしてございます。最低は二千円に
なつておりますが、これを三千円に上げる。結局標準報酬は最低三千円、最高三万六千円という線にまで持
つて行きたいというのが
一つの腹案でございます。それから年金の
給付にいたしましても、細かい点は省略いたしますが、例えば養老年金について一例を申上げますると、先ず
給付開始年齢が現在五十五歳でございますが、これを六十歳に延ばして見たらどうだろう。坑内夫の五十歳を五十五歳にする、女子も五十歳を五十五歳にする。それから
給付の
金額につきましては定額制と標準報酬比例制と町方加味して見たいというような
考え方を以ちまして、
一つの例で申上げますと、一万円の平均標準報酬の人に対しましては、養老年金が二十カ年の満期としまして三が六千円出るような建前にして見たいという
考えでございます。そのほかにこれに伴いまして、
障害年金或いは遺族年金等も同様な改正をしたいという
考えでございますが、ただ脱退手当金はこの改正の機会に廃止したらどうだろうかという
考えを持
つているのでございます。いずれにいたしましてもそういうような大まかなことだけでは、了解を頂けないと思いますが、大筋だけそういうようなことで、全体の
計算をして見まして、同時に国庫
負担も現在坑内夫に対して
給付金二割、それから、
一般労務者に対しましては一割の
給付費の
負担があることに
なつております。これも一律に国庫
負担二割に上げてもらいたいという
要求をいたしたわけでございます。これらのことを
考えました数字がここに出ておりますのでございまして、差当り来
年度におきましては、年金受給者も少ないのでありますので、実際の
給付金額は実質的には
相当の上廻りを示しますし、又国庫
負担もその
意味で上るはずでありますが、実際は年金受給者が三千人程度に予想されますので、
予算としては国庫
負担は年金
関係で二億程度にとどまるはずでございます。二億程度
増額するにとどまるはずでございます。
業務勘定におきましては、特別申上げることもございませんが、先ず、
一つ申上げたいことは、先ほど来申上げておりますように、厚生年金及び健康
保險を通じまて、
政府管掌
関係の社会
保險の被
保險者数が
相当増加して参ります。これに伸いまして、
事務担当者の増員が必要でございます。一応
要求としては千五百三十人ほどの
事務職員の増員を
要求しているのでございます。そのほかに
結核ベツドを今年は九百五十床でございましたものを、千七百床に殖やすというようなものも入
つております。そういうのが主な要素でありまして、
金額は
相当にふくれているわけでございます。
それから船員
保險につきましては、以上申上げました健康
保險と年金
保險との改正に伴
つたことを同様に船員
保險においても行いたいという
考え方でありますので、特段にこの部分については申上げることもございません。大体極く大ざつぱの御
説明で恐縮でございましたけれ
ども、私のほうからの
説明を終りたいと思います。