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1953-03-10 第15回国会 参議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十日(火曜日)    午後一時五十分開会   ━━━━━━━━━━━━━  出席者は左の通り。    委員長     徳川 頼貞君    理事            伊達源一郎君            大隈 信幸君    委員            杉原 荒太君            平林 太一君            石黒 忠篤君            曾祢  益君            有馬 英二君            大山 郁夫君   政府委員    外務事務官    (外務大臣官房    審議室勤務)  中村  茂君    外務省条約局長 下田 武三君    特許庁長官   長村 貞一君    運輸省航空局長 荒木茂久二君   事務局側    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   ━━━━━━━━━━━━━   本日の会議に付した事件連合委員会開会の件 ○千九百十一年六月二日にワシントン  で、千九百二十五年十一月六日にヘ  ーグで、及び千九百三十四年六月二  日にロンドンで修正された貨物の原  産地虚偽表示防止に関する千八百  九十一年四月十四日のマドリツド協  定への加入について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付) ○航空業務に関する日本国とグレート  ・ブリテン及び北部アイルランド連  合王国との間の協定の締結について  承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (一般外交方針に関する件)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) それでは只今から外務委員会開会いたします。  昨日労働委員会におきまして、職業安定組織の構成に関する条約(第八十八号)の批准について承認を求めるの件、工業及び商業における労働監督に関する条約(第八十一号)の批准について承認を求めるの件、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約(第九十八号)の批准について承認を求めるの件、以上三件につきまして連合委員会を開くことを決定いたしました。本件の取扱いについて如何いたしましようか。連合するのに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 別に御異議もないようでありまするから、労働委員会労働関係条約について連合委員会を開くことにいたします。なお日取等については委員長労働委員長ときめることにいたします。   ━━━━━━━━━━━━━
  4. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 次に、マドリツド協定についての承認を求める件について、本協定内容について政府説明を求めます。
  5. 下田武三

    政府委員下田武三君) それでは簡単にマドリツド協定内容につきまして御説明申上げたいと存じます。  その提案の理由は、先般政務次官より御説明申上げました通りでございまして、我が国は平和条約附属宣言でこの条約加入いたします意思を表明しておりますので、又その加入平和発効後一年以内にこれを行うということになつておりますので、本国会に御承認をお願いいたしました次第でございます。この協定内容は極めて簡単でございまして、一口で申しますと、不正競争防止という問題を原産地虚偽表示の点で押えようというだけのことでございます。つまり本当にそこで産出或いは製造されたものでもないにもかかわらず、そこで製造されたと偽つて申しまして、それによつて正当なその土地の原産商品と不正に競争的な地位に立つということを防ぐということにこの条約の主眼があるわけでございます。この条約フランスポルトガル等ヨーロツパ諸国が、工業所有権保護に関しまする一般条約保護では不満足であるといたしまして、この特別の協定を提唱いたしましたことから起つておるのでございます。フランスポルトガル等が重大な利害関係を持つておりますのは、御承知のように、シヤンパンでございますとか、ポルトガルのポルトーでございますとか、シヤンパンはこれは地名でございまするが、よその国でシヤンパンと称する偽の酒が売られて来るといたしますと、フランスの純正のシヤンパン製造業者は非常に不利益を受けると、そういう不正な競争禁止をするというところから、沿革的にはこの条約が起つておるわけでございます。  各条の具体的内容につきましては、追つて逐条的の御審議の際に申上げますが、どういう方法によつて原産地虚偽表示防止するかという点になりますと、先ずそういう生産物が入つて参りますときに、輸入の際に差押えてしまうということが第一の防禦手段だと思います。それから輸入の際に税関差押える建前でございまするが、それ以外に、或いは密輸でありますとか、或いは国内でそういう虚偽表示がされるという場合もございますので、その際にもそういうことが行われたことによつて差押えてしまうという第二の手段が講ぜられております。なお、国によりましては、そういう輸入の際或いは国内差押えるという措置国内法規定してない国がございます。そういう場合には訴権裁判所に訴え出る権利或いはその他の国内法救済手段虚偽表示の附いている商品に対して損害をこうむるものから取るということを許す、そういう三段構えになつております。その他詳しいことは後ほど説明申上げることといたしまして、私ども注目すべき点は、原産地虚偽表示商品或いは製造品そのものに附けることを禁止するほかに、この条約では商業用通信の中にそういう類似の行為が行われることを禁止するという規定がございます。レストランに参りまして、ワインリスト日本にはそう使われておりませんが、よその国にはレストランドに参りますと、どういう酒を飲むかというので、必ずワインリストというものがございます。そのワインリストを初めとしまして、看板でありますとか、広告でありますとか、送り状、そういうようなものに商業用通信書類の中に、やはり生産物原産地について、人々を欺くような記載をしてはいかん、そういう規定を設けてございます。でございますから、虚偽表示のあつたもの自体に対する防衛措置と、それから商品そのものではございませんが、そういうワインリスト等商業用通信、それに人々を欺く虞れのある表示を附けることも同時に禁止すると、大体そういう大きく分けまして二段構え措置について虚偽原産地表示を防ぐというのがこの協定の主たる狙いになつております。なお細かい点につきましては、逐条審議の際に御説明申上げたいと存じます。
  6. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 質疑に入ります前に一言申上げておきますが、外務大臣が大体二時半頃には出席することになつておりまするので、その頃まで本条約質疑を行い、若し時間が残るようでございましたら、日英防空協定についての説明並びに質疑に入りたいと存じます。  それでは只今マドリツド協定についての質疑のあるかたは、順次御発言を願います。
  7. 杉原荒太

    杉原荒太君 各条の説明を先にやつて下さい、主なる点について……。
  8. 下田武三

    政府委員下田武三君) 逐条の御説明を簡単に申上げます。  御配付いたしております説明書に極く簡単な逐条説明がございまするが、第一条は、先ほど申しました貨物承認そのものに対する防護措置規定しております。第一条の第一項で輸入の際に差押えるということを規定しております。ここで「直接又は間接表示している虚偽表示」ということになつておりまするが、直接と申しますのは、シヤンパンで作られた酒でないのにシヤンパンと偽りの表示をする、間接と申しますのは、オランダ産のチーズでもないのに、風車のマークを付けて、如何にもオランダ産のように欺くデザインをする、そういうような場合でございます。それらの虚偽表示がある場合には輸入の際に先ず差抑えるということを第一段に規定しておる次第であります。第二段は、先ほど申しました輸入貨物ではないが、国内にすでにある産品虚偽表示をした、そういうもの、それから「搬入された国」とございますが、これはまあ輸入でなくて搬入されるという場合は、まあ密貿易ぐらいしか考えられませんが、とにかく外国から持込まれた商品にそういう虚偽表示があつた場合も同様に差押えるということを規定しております。その次に輸入禁止規定しております。国によりましては、輸入の際に差押えるという権限国内官庁が持つていない国がございます。そういう場合には差押えなくてもいいけれども輸入禁止を行わなくてはいけないという規定でございます。この第一条の一、二、三項で三段構え規定をいたしておりまするが、そのいずれの措置国内法上認められておりません国もございます。その場合においては、その国の法令が同様の場合に国民に保障する訴権或いは救済手段を認めるという規定でございます。更に原産地虚偽表示防止を保障するための特別の制裁規定を設けていない国がございますならば、商標又は商号に関する国内法相当規定基ずく制裁適用するというように、全部で五段構えで、あらゆる国々法制によつて如何なる差異がありましても、漏れのないように措置がとれるような規定を第一条で設けております。  第二条は、差押手続規定しております。差押は誰がやるかと申しますと、税関がこれを行う。税関は但し差押を行う場合には差押を通報いたさなければならないということになつております。又国によりましては、検察官その他の権限のある官憲に対しても差押を請求することができるようにいたしております。第二条第二項は、この条約の大きな例外でございまするが、商品が単に或る国を通過する場合には、たとえ原産地虚偽表示が行われておる商品でも差押えなくてもいいという通過の場合の例外規定を定めております。  次の第三条は、販売人の氏名又は住所を付けるということに関する規定でございますが、これは原産地虚偽表示そのものではございません。シヤンパンの酒を輸入して、そこにこれはこれこれのものが売つておると言つて販売人名前を書いたり、或いは販売人住所を書いたりすることはこの条約禁止はしない。併し禁止はしないが、その販売人名前住所を書くことによつて本当原産地について誤まりを起すような表示をしてはいかんという規定でございます。でございまするから、販売人が自分の名前住所を付けるというためには、原産地虚偽表示とならないように十分の説明的な他の意思表示を付けなければならないということでございます。第三条の二は、先ほど申上げました商品そのものに対する原産地虚偽表示でございませんで、ワインリストシヤンパン広告、送状その他の商業用通信の中に、人々原産地について誤まらせるような記載をすることを禁止した規定でございます。  第四条は、各国裁判所としての関係でございますが、各国裁判所は、どんな名称が、その名称はもうすでに知れ渡つた名称だから、この知れ渡つた名称をつけても、これは原産地虚偽表示として本協定適用を受けるものでないのだという、名称通有性範囲決定することにつきまして、各国裁判所が自由に決定し得るということを書きまして、その例外として、「但し、ぶどう生産物原産地地方的名称」については自由な決定をなし得ないということを但書で断わつているのであります。つまりシヤンパンでございますとか、そういう「ぶどう」から作つた生産物、これについてはこれは広く知れ渡つているのだから、原産地虚偽表示にならないというような決定裁判所がしてはいかんという規定でございます。これはフランスポルトガルの「ぶどう酒生産国利益が非常にこの規定で擁護されているわけでありまするが、これは先ほど御説明いたしました本条約の沿革が、元来それらの国々利益に基く主張からできたというところから、こういう規定が入つたものと存ずるのであります。  第五条以下は形式的の規定でございまして、工業所有権保護に関する同盟条約締約国で、この協定に入つていないものが加入する場合の手続をきめているのであります。その他日本には関係のないことでありまするが、同盟条約植民地への適用或いはこの十六条の二と申しますのは、条約植民地への適用、第十七条の二というのは廃棄条項を引用しているのでありまして、それぞれの形式的条項をこの条約で引用しているわけであります。  第六条は批准条項以下の形式的規定でございますので、取り立てて御説明申上げる点もございません。簡単でございますが、以上を以ちまして一応の内容の御説明を終ります。
  9. 杉原荒太

    杉原荒太君 最初、この条約内容じやなくして、こういう原産地虚偽表示の問題についての現在の日本における実情を聞きたいんだが、ここで禁止されておるような事犯というものがどれくらい一体あるのか、その辺の実情を聞きたい。
  10. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 私から……。この協定内容につきましては、只今条約局長のお話の通りでございまするが、実は不正競争防止につきましては、御承知のように不正競争防止法がすでにございまして、これによりまして一般的の不正競争取締つておるわけでございます。これと比べまして、特に今回の協定加入に当りまして、国内法制としてどういう措置が更に追加して必要であるかと申しますると、只今説明のございました協定のうちの三条の二に関しまする部分、つまり原産地虚偽表示に関しまする表示範囲、今までは商品でありまするとか、或いはその広告原産地虚偽表示をする場合を取締つておるわけでございます。それにとどまらず、更に先ほどの例にありましたワインリスト或いはその他の取引関係書類にまで、これを表示することを取締る、この点について更に不正競争防止法改正いたしまして取締りを行う必要が一つ出て来たわけでございます。今一つは、四条の但書の「ぶどう生産物につきまして、普通名称になつておりまするようなものでありましても「ぶどう生産物に限りまして特にこれが原産地について一般の誤認、混同を起さないような表示を加えなければ、これを使うことができんという厳格な取締りを必要とすることになるわけであります。この二つの点から考えまして、只今の御質問の現在の商慣行と申しますか、一般の業界にどういうような影響を及ぼすであろうかという点を考えますると、問題は主として「ぶどう生産物、いわゆる「ぶどう酒類でございます、ポートワインシヤンパン、コニヤツクというような名前を付けました「ぶどう」酒と申しまするか、洋酒が日本でも相当生産され、販売されておるわけでございまするが、現在行われておるところを見ますると、大体部分的には何々シヤンパンとか、ポートワインという字が付いておりまするが、そのほかに日本でできておるんだということがはつきりいたしまするような表示が合せて付いて生産され、販売されておりまするので、その点から考えまするならば、特に現在国内で行われておりまするものが、これによりまして多くの問題を起すということは実際上先ずないであろうと私どもはかように考えておるわけであります。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 ちよつと関連して……。今の最後の点はそれで確かにいいんですか。例えば赤玉ポートワインと、こう書いて、そこでポートワインというやつは確かに日本ではできない、本当ならいけないことになるわけですね、併しあなたが今最後に言われた点において、これは赤玉ポートワインといつたつて、どうせ日本字で書いてあるし、日本製が余りに明白だから、この条約加入してもそういう商標禁止しなくとも条約違反にならない、或いは条約違反になるかならないかという法律論と関連はするけれども、例えばフランスあたりから抗議を受けることがない、従つて今のままでいい、こういう意味ですか。
  12. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) この条約関係で申しますると、今例に赤玉ポートワインというような例が上りましたが、ポートワインという言葉だけを使いますると、これは工合が悪い、そういうようなポートワインシヤンパンというような表示がございましても、それに加えまして真正原産地につきましての表示がありまする場合には、それらを引つくるめて考えまして、差支えないという解釈なつたわけでございます。従いまして、そういう見地から考えますると、現実日本で行われておりまする各種の「ぶどう酒類は、一部には或いはポートワインというような字もございまするが、そのほかにこれに日本製であるということをはつきり示すに足るような表示がございますので、それらを併せまして、現在問題を起さんだろう、こういうふうに考えているわけであります。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 私の聞きましたのは、それはどれほどの有効的な解釈か、つまり日本政府の公的な解釈か、又それが日本政府だけそう思つてつても、この条約に反するいろいろな慣例等から見て、その議論でやつて行けるのか行けないのか、問題が起りやしないかという点がある。一方的な解釈じや駄目ですからね、その点はどうなんです。
  14. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御指摘の点は、この条約締約国間で最も問題になつている点でございまして、スイス公使館を通じまして公権的の解釈を聞きました結果、やはり各国の、例えばイギリスでも真正原産国を脇に記入してあれば、ポート或いはポートワインという字句が使つてありましても構わないという解釈をとつております。
  15. 曾禰益

    曾祢益君 それはフランスの事例を持つて来るならフランスでしよう、フランスがそれでも満足するのですか。ポートワインイギリスのほうも関係あるけれどもね。
  16. 下田武三

    政府委員下田武三君) イギリスのみならず、スイス、イタリー、そういう国々もみんなそういう解釈加入して、その点は不一致はないようです。
  17. 曾禰益

    曾祢益君 三ツ矢シヤンペンというのはどうですか。
  18. 下田武三

    政府委員下田武三君) 三ツ矢シヤンペンで、脇に日本国或いは甲州産というような、そういう地名はつきり断わつております場合は差支えありません、そういうふうに解釈をしております。
  19. 杉原荒太

    杉原荒太君 この協定承認することと国内法改正関係さつきもちよつと触れられたけれども、そこのところをもう少しはつきりもう一遍一つ説明願いたい。
  20. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) この協定承認に関しまする国内法改正は、先ほど申しましたように、不正競争防止法中一部改正法律案としまして今国会に提案してございます。只今衆議院通産委員会の御審議をお願いしているのでございます。
  21. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうすると、措置としてはそれでよろしい、わかりますがね、つまりそれらの国内法改正が成立することが条件になりますね。それだから、この正式の承認の時期等もそれとやはり関係を持つて来るわけですね。このほうだけが先に行つてしまうというわけに行かないでしよう。
  22. 下田武三

    政府委員下田武三君) 国内法との関係は全く仰せ通りでございます。併しながら、対外的には平和条約発効後遅くも一年以内と、今度の四月二十八日までに加入することを約束しておりますので、政府当局といたしましては、その関係国内法令も同時にこの国会で御審議の上御承認頂くことを切望しているわけであります。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 大体条約加入と、只今条約加入に伴う義務履行としての不正競争防止法案改正して取締つてですね、現実に今わかつておる程度の日本で作られておる商品なんかで影響を受けるものは非常に多いか少ないか。今多少その一、二の例は出ましたけれども、ほかにも考えられる打撃といいますか、影響を受ける、この点を説明して頂きたい。  それから今一つ日本側からみても、何かそういつた原産地の不正を、商取引防止させることによつて日本側が受ける利益というものはどういうものであるか、外国側にそういう日本原産地を悪用したような例があるか、この点お伺いしたい。
  24. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) この協定加入に即応しましての不正競争防止法の現在の改正法律案が成立いたしたといたしまして、それによりまする取締対象は、主としてこれは「ぶどう酒関係でございますが、これにつきまして、現在のところ私どものほうでも、現在行われておりまするものについて、知り得る限り調べてみましたところが、若干問題になるであろうと思われるものは一つ二つはございますけれども、大部分は現在行われておる通りで差支えなく行きますと思います。若干問題になりまするものも、レツテルの表示その他を然るべく修正いたしまするならば問題は避けられると思つております。従つて全体といたしまして、大きな影響は与えないかと、かように存じております。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 もう一つのは……。
  26. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御質問の後段でございまするが、外国が逆に日本原産でない、外国原産日本産品として我がほうの利益侵害したという実例もございませんし、又そういうことで問題になつたことも外務省としては聞いておりません。又将来も外国側でそういう悪用をするということも絶対ないとは申上げませんけれども、そう外国側でその実益を感じないのではないか、このように観測しております。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 これは私は実際実例を知つておるわけじやないんですが例えば外国言つても、この条約加盟国範囲にもよりましようが、例えばアジアの地域等においては、例えば富士山をシンボルにしたような商標を使うなんということはあり得るのじやないですか。西ヨーロツパ対象にすれば余りそういうことはないが、曾つてそういうことはあつたんじやないか、どうなんですか。
  28. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御指摘商標権侵害はあるようでございます、特にテキスタイル製品で、国の名前を挙げるのは憚かりますが、仰せのように東南アジアの地域日本商標権侵害しておるという実例はございます。それにつきましては、すでに適切な措置をとつております。又日本商標権戦時中どうなつておるか、大部分の国は商標権をそのまま保護しておるのでございます。ただ戦時中多少日本商標侵害があつたということは事実のようでございまして、それに対しましては、それぞれの政府に折衝いたしまして、是正の措置を今講じております。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 特定の商標でなくても、例えば富士山を書くとか、或いは芸者の絵を入れるといつたら、これは原産地関係の問題が生じないですか、その点はどうですか。
  30. 下田武三

    政府委員下田武三君) ヨーロツパ芸者印の「さけ」罐というのがございます。みましたら、北欧方面でやはり日本品でございましたのを発見したのです。若しオランダならオランダが、芸者印といつて芸者富士山の絵を書いて、而も真実な原産地を書かないというときには、やはりこの協定違反の問題が生じると思います。
  31. 杉原荒太

    杉原荒太君 この協定によると、どういう名称がこの協定適用から除外例をなすかという、裁判所決定するということになつておるのだが、その決定方法はどういう方法によつてやるのか、日本裁判所についての法制建前からすると、ちよつとこれはおかしいように思うのだが、それはどういうふうにここを、決定の仕方をどういうふうに考えておられるか、解釈しておられるか。
  32. 下田武三

    政府委員下田武三君) 結局裁判所がこの名称通有性を調べます場合には、各国国内法従つて決定するわけでございますが、各国国内法必ずしも明確な基準を示しておりません。従いまして多分にその場合には条理或いは正義、公平というような見地裁判所多分に取入れて決定を下すほかない、そういう結果になると思います。
  33. 杉原荒太

    杉原荒太君 私が聞いているのは、日本裁判所に関する裁判所行為に対する法制建前からすると、具体的に一つ訴訟事件があつて、そうして具体的に個々の事件に対する個別的な判断しか裁判所はできない建前になつている、一般的にこういうものだというような決定は、規則等一般的にきめるということはできない立場になつていると思う。だから個々別々のものをケース・バイ・ケースによつてきめることになつている。それとこれとの関係はどうなんですか。
  34. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) お答え申上げます。国内法制上の関係といたしましては、この条約に即応しまして、先ほど申しました例えば不正競争防止法というものはあるわけでございまして、これの違反と申しまするか、要するに不正競争防止法に関する個々の具体的の裁判事件としまして裁判所の判決が現われて来る、それが即ちここに申しまする裁判所決定ということになりますので、一般的に事前に裁判所で、かくかくのものはこれはいかんというような決定をするのではないと、こういうように考えております。
  35. 杉原荒太

    杉原荒太君 これは日本法制建前はそう行かざるを得ないと思うが、併し協定の第四条の規定の仕方は、本旨とするところは、もう少し一般的な規則で、それをあらかじめきめてしまつておくということを本旨としているのじやないですか、日本のような場合には裁判所できめるのだというのか、日本の場合に当てはめるというと困るわけなんで、よその国では、僕はよその国の法律は調べてないけれども、こういうものについて日本裁判所も、この頃は以前と違つて内部のことについては規則制定権というものが只今認められているわけだが、そういうふうによその国ではこういうものの適用についての規則制定権があつて、そういうことを前提としてこの規定ができているのじやないか、実益が日本の場合にはこの規定については少いように思う。
  36. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) この条約の文字の書き方から申しますると、只今指摘のようなちよつと恰好にも見えるのでありますが、本旨としまするところは、やはりこれを、例えば日本につきましては、日本国内法の定めるところによつて裁判所がきめる、即ち個々の具体的な案件として問題になつたときに裁判所が判決等の形においてこれをきめる。これで条約上も差支えないと、かように考えております。
  37. 杉原荒太

    杉原荒太君 それなら特別のこの規定をおく実益というものが非常に没却されるように私は思う。裁判所はそれで一つの他の事件に対する覊束力は持たないのだから、一つの裁判できめたからといつて……。
  38. 長村貞一

    政府委員長村貞一君) 私の申しましたような意味から申しますると、或いは極めて普通の原則と言いますか、当り前なことになつてしまうわけでありまするが、この条約第四条と申しまするのは、やはりまあ当り前なことということになるかも知れませんが、結局そういうことになるのでありまして、その趣旨の通りであろうと実は思つております。
  39. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ほかに御質疑はございませんか……。ほかに御質疑がなければ、この件についての御質疑は終つたものと認めます。   ━━━━━━━━━━━━━
  40. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 続いて日英航空協定についての内容について政府説明を求めます。
  41. 下田武三

    政府委員下田武三君) この日英航空協定は、先般御承認を得ました日米航空協定と殆んど同一でございます。又成るべく日米航空協定と変らないようなものにいたしたいと思いまして、英国側と折衝いたしまして、非常に内容においても形式的においても近いものにいたしますことに成功いたしたのでございます。それでこれを全部逐条的に御説明いたしますと長くなりますから、先に御承認を得ました日米航空協定と違う点を御説明申上げたいと存ずるのでございます。  先ず前の日米航空協定にありまして今度の航空協定にない規定がございます。これは日米航空協定におきましては、日米いずれかの国で発給した耐空証明書等は、相手国でそのまま承認するという規定がございます。これは日英では必要ないとして落したのでありまするが、それはシカゴ条約でそういう耐空証明書等の相互互認を規定しておりますので、而も日米航空協定、日英航空協定ともに第一条においてシカゴ条約規定適用し得るものは適用するということを約束しておりますので、もう新たに航空協定として取上げても実績がないということで日英では落しました。同様の理由で相手国の航空に関する国内法制は遵守しなきやならないという規定が日米にございましたが、これもシカゴ条約でカバーされておる問題で日英には落しました。もう一つの差異は、今度の協定で申しますと第十一条になつておりまする運賃の決定方法でございます。今度の協定ではIATAと申しますか、IATAという国際機関がございますが、その機関で承認を得て決定された運賃はそのまま守るということに規定しておりまするが、日米の場合にはアメリカの国内法上の関係からして、国際機関が承認或いは決定したという運賃をそのままアメリカで採用するということができないそうでありまして、一応アメリカの民間航空委員会がその決定をできるだけ守らせるように措置するという規定を設けたのでありまするから、日英航空協定におきましては、国際機関できめた運賃はそのまま遵守するということをはつきりきめております。その点が相異いたしております。  それから先ほど申上げましたのは、日米にありまして日英にない規定でございまするが、逆に今度の日英にありまして日米にはなかつた規定がございます。それは今度の協定の第十二条の統計表をお互いに提供しようという規定でございます。これはアメリカのときには、そんな統計表まで一々出すことはアメリカですでに痛感しておることだけれども、その煩に堪えぬ、実行不可能な規定だということからアメリカはそういう協定を設けることに反対でございました。日英間のほうではやはり統計数字をお互いに知らせ合うということを約束しまして第十二条を設けました。  もう一つ小さな問題でございまするが、附表に書いてあります路線の変更でございます。これは両方とも双方の航空主管官庁がきめるということになつておりまするが、日米の場合には片方の締約国が自国の飛行機の路線を一方的に変えて、そうして通知すればいいということになつておりまするが、日英の場合には一方的の変更は認めないというように規定いたしました。これは今度の第十五条に謳つてあります。  それから最後にこれは形式的な問題でございまするが、アメリカとの場合は、米国側はこれは上院の承認を得ないでいい、エキユゼクテイヴ・アグリーメントだということで批准条項を設けませんでした。おのおのの国内法上の手続を経て承認する、その承認をお互いに通報したときに効力を発生するという規定にいたしましたが、日英航空協定は、十九条でやはり両方とも批准するという批准条項を設けました。  大体只今申上げました点が日英、日米との相違点でありまして、その他は日米航空協定と同じでございます。
  42. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 御質疑がございましたらお願いいたします。
  43. 曾禰益

    曾祢益君 この交換公文の沖縄の問題も日米とちよつと違うのじやないですか。
  44. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御指摘のように交換公文は大分違います。日米の場合には沖縄に関する説明を踏襲いたしましてフツト・ノートを附けまして、これをきめるに際して両国は平和条約第三条の規定を遵守する、忘れておるのではないという念のための註を設けましたが、今度は一歩進めまして、交換公文で日本が沖縄に対する残存主権を主張する場合にはその主張は行なつてもいいのだということを積極的に向う側に認めさすことに成功いたしました。その点は申し落しましたが、附属文書ではございまするが、大きな点だと存じております。
  45. 曾禰益

    曾祢益君 今の御説明だと、非常に平和条約第三条に認められたというところのいわゆる残存主権というものが積極的に確認されたようにとれるのですが、詳しい目附は覚えておりませんが、政府のそういうような説明振りに対してイギリスの議会か何かで質問か何かあつて、それをやや否定的な、いわゆる政府の見解か何かが新聞で伝えられていたと思います。その間の経緯について御説明願いたいと思います。
  46. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 速記を止めて……。    〔速記中止〕
  47. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 速記を始めて……。
  48. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) 日本航空株式会社法案は国会に提案して只今審議を仰いでおる次第でありまして、この法律が通りまして成立いたしますと、国際航空は原則としてそこでやる、こういうことになるわけでございまして、今差当り行きますものはアメリカ、サンフランシスコまでを先ずやる、こういうことにいたしております。で、次に西のほうに向つて出て行く、こういうことになるわけでございますが、御存じのように今イギリスとの協定はできましたけれども、その途中の話合がまだ付かないところがございます。又実際の準備も飛行機の入手等もそう簡単に参りませんので、成るべく早く開始いたしたい、まあできれば本年度内中にでも行きたいという希望は持つておりますけれども、実際には恐らく本年度内にロンドンまで飛んで行けるということにはなりかねるのではないか、こう考えます。
  49. 杉原荒太

    杉原荒太君 本年度内というのは……。
  50. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) 間違えました。来年度内でございます。
  51. 杉原荒太

    杉原荒太君 会計の年度で言つておるのだね。
  52. 曾禰益

    曾祢益君 会計年度か歴年かどつちか。
  53. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) 来年の四月までの意味です。
  54. 杉原荒太

    杉原荒太君 それからもう一つ念のために聞いておきたいのだが、この協定に言うグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国の領域というものは、その範囲は、つまりこの協定適用を受ける地域的な範囲をどう見ておるか。
  55. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ちよつと速記を止めて……。    〔速記中止〕
  56. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 速記を始めて……。
  57. 下田武三

    政府委員下田武三君) この協定のいう適用される地域範囲でございますが、第二条第一項の(C)に、「国に関して「領域」とは、その国の主権、宗主権、保護又は信託統治の下にある陸地及びこれに隣接する領水をいう。」という規定がございまして、本国のみならず植民地等にも及ぶわけでございます。従いましてイギリスとしては、例えば香港、シンガポール等もこの規定適用を受ける地域にカヴアーされるわけであります。
  58. 杉原荒太

    杉原荒太君 それだからさつき航空局長の言つた香港とか、例えばシンガポールあたりまでの何は、来年一ぼいにはできないというふうに見ておられるわけですか。
  59. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) そういう意味でございましたら、できるところまで行くということで、できればカラチぐらいまでは来年度中に是非開始して行きたいものだというふうに考えております。
  60. 杉原荒太

    杉原荒太君 いやしくも協定を結ぶ場合には、一方平和条約による制約はあるけれども、その時期などもかなり近いところに日本側も実施するのだということがなければ、こういうことはおかしいと思つて聞いたわけなんだ。
  61. 曾禰益

    曾祢益君 大体大ざつぱに四つの線を考えているようですね。つまり東京から西廻りでロンドン、ヨーロツパへ行く線、それから東京から東廻りでアメリカ大陸を通つてロンドン、ヨーロツパへ行く線、それから東京から結局大陸のほうに行つてシンガポールに行つて、それからジヤカルタへ帰つて来るもの、それからもう一つは、東京から香港に行く線、それでもう少し明確に、例えば今のあなたの説明は第一の線、ヨーロツパ線、西廻りについてはパキスタンくらいまで行きたいということを言つておられる。当然にそれは香港くらいまではどの線を通るにしても、今年中にやつてしまうという計画なんですか、どうかということが一点。それからもう一つは、三の線は、これは主としてイギリスの都合もあるし、シンガポールを基点とした日本に来る線なんでしよう。こちらから見ると、シンガポールへ行つて、又ジヤカルタのほうの南のほうに帰つて来る、こういう弧を描く線をなぜ作るのか、恐らく航空局の考えとしては、日本から台湾、フイリピンからインドネシアに行く線、こういう廻る線を考えて、西廻りに行こう、円周の半分として考えているのかどうか、そこら辺の計画をもう少しよく聞きたいのですが。
  62. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) 第一の問題でございますが、西廻りとしましては、香港ぐらいまでは来年度中に必ず行ける、こう行き得る、こう考えております。
  63. 曾禰益

    曾祢益君 来年度中ということになりますと……。
  64. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) 来年度中と言いますと、来年の四月まで……。
  65. 曾禰益

    曾祢益君 三月末まででございますね。
  66. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) 三月中に……。それから二番目の問題でございますが、これは実は三番目の線はここ止りではなくして、濠洲まで実は伸ばしたいという希望を持つて交渉して頂いたわけでございますが、これにつきましては、シンガポールから先に行くことにつきましては異常な反対がございまして、やつとジヤカルタまでの話合いがついたということで、こういうふうになつたわけであります。
  67. 曾禰益

    曾祢益君 濠洲まで出す計画もいいけれども、一体濠洲、シンガポールを起点として、向うへ行くならば話はわかるけれども、東京を起点として、こう廻つて、そうして濠洲へ行く線というものはどういうわけですか。そのくらいならこつちからもつと、東京からフイリピンに行つて、それからインドネシアに行つて、あれに行くのが本当なんじやないか。
  68. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) 地理的に言いますと、そういうことでございますけれども、やはりお客さん、荷物の筋から行きますと、このほうが……、商売の見地から言いますと、このほうがよかろう、こう考えるのでございます。
  69. 曾禰益

    曾祢益君 それは勿論シンガポールから濠洲向けのやつを日本の線ができて、取つて行くことは異存はないのだけれども本当ならば、それは日本からシンガポールに行く線と、シンガポールからインドネシアを通つて濠洲に行く線と、日本からインドネシアに行く線と、三つの別々の線じやないですか。こう廻つて濠洲へ行く線なんかおよそ意味をなさない。
  70. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) そういう線も考えられるわけでございますけれども、そうしますと、フイリピンを通つて、途中ジヤカルタかどこかに寄りまして、それから濠洲に行く、こういう線になるわけでございまして、それは直接イギリス関係がございませんので、入つてないわけでございます。
  71. 曾禰益

    曾祢益君 私はそんなことを聞いてないので、航空局の日本の国際航空計画を聞いているのです。それは日本からどうせインドネシアに行く線を考えているのでしよう。だから濠洲に行く線は、勿論日本からインドネシアに行つて濠洲に行くのじやなくて、これがジヤカルタあたりで一緒になる。今度濠洲に行く線というのは、シンガポールからイギリスの線、クアンタスの線が競争して、そうしてシンガポールからインドネシアを通つて濠洲へ行く線を別に考える、こういうことになるのじやないですか。
  72. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) そのシンガポールへ行つて、それから濠洲へ伸びるということは話がつかなかつたわけなんでございまして、だから遺憾ながらそのラインはできないわけでございますから、濠洲へ行く場合を考えますと、やはりフイリピンを通つてジヤカルタを通つて濠洲へ行く、こういう線にならざるを得ないと思うのでございます。
  73. 杉原荒太

    杉原荒太君 国際航空をやる日本側の主体についていろいろ問題があるようだが、これに対しては今その再編成についても問題があるようだが、どういう方針をとつておられ、それがいつ頃には決定するような模様かということ。それからもう一つは、この日本国内航空をやるのに外国側の資本の入つたところが参加してやるというような問題があるようだが、それに対して政府のほうではどういう方針を以て臨んでおられるか。それを聞きたい。
  74. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) 第一の点は、国際線は御存じのように非常に猛烈なる競争でございますので、これが二社出る、三社出るというようなことでは、到底事業の継続は困難だと思いますので、全部を集中して一社で強力なものにして出て行くのが適当であろうという考え方でございます。それで国際線の経営のために政府出資十億円を予算に計上して今御審議を仰いでおるわけでございますが、その国際線と、それから国内の幹線は飛行機の相互融通性、人員の融通性というような面から考えまして、幹線はこの国際線と一本でやることがよろしかろうという結論を得まして、そういうのもをやる会社といたしまして、政府出資十億円を入れまして日本航空株式会社を特別法人としておりますために、只今日本航空株式会社法を国会に提案して御審議を仰いでおる次第であります。第二番目の点でございますが、御指摘のような会社の申請が現在出て来ております。併しそれにつきましては、まだ他の申請とも一括して処理するつもりでございますが、結論を得ておりません。併し日本国内航空が何と言いますか、実質的に日本人によつて支配されないような、即ち自主性のないようなものが日本国内航空を営むという体制の起きないように、この点は十分考慮して、最後決定をされることになると思います。
  75. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ほかに御質疑はございませんか……。ほかに御質疑がなければ、この件についての質疑は終つたものと認めます。  今すぐ大臣が参りますので暫らくお待ちを願います。ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  76. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 速記を始めて下さい。  それでは只今より大臣が出席されましたから、外務大臣に対する質疑のあるかたは御発言を願います。
  77. 平林太一

    ○平林太一君 第一に外務大臣にお伺いしたいことは、現在の日本外交の経済外交についてどのような推進を今図られておるか、さだめしこれは大臣は非常な御努力を以てこれに当られておることを承知いたすのでありますが、それについても具体的に全般的な事柄に対して御説明を煩わしたい。それから第二には、将来に対する外務大臣のこの経済外交に対する構想、今日なお未解決な経済面の諸般の事柄に対する構想というものを懐抱せられておることと承知いたすのでありますが、その点をできるだけ詳細にこの機会に先ず第一に承わりたいと思います。
  78. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ず御質問の第二の点から申上げたほうがわかりいいと思うのであります。つまり現在並びに将来どういうふうな方向で行くかということになると思います。先ず第一にやりたいことは、諸外国との間に通商航海条約を締結するということであります。これがなくては実際上本式な動き方はできないのであります。先ずこれをやりたい。そしてその大きな枠の中で今度は個々の問題について、おのおのの土地によつて違うのでありますが、具体的の方針を実行して行きたい。例えば東南アジア方面におきましては資原の開発というようなことがありましよう。南アメリカのほうには別に移民というような問題もありましよう。それから一般的に言えば、ポンドはどういうふうに使うか、ドルはどういうふうに使うか、輸入はどちらの方面に求め、輸出はどちらの方面に向くべきかという、要するに貿易量の増大という見地からも考えられましよう。要するに狙いは貿易量の増大ということが主眼であつて、それに合うようないろいろの方針を実行して行くということになるわけであります。今現在どういうことをその方針の下にやつておるかと言いますれば、もう御承知のように通商航海条約については、中立国等にはもうすでにできておるのもありまするし、元の条約を一部分有効にしようというような話もあります。そのほかに新らしく作るものとしては、今日米通商航海条約を作つております。これももう不日意見が一致するだろうと期待しております。ポンド圏の問題については、日英支払協定において、貿易量を相当大きくする意味でポンドの使用をもつと余計やる、そうして輸入量をポンド地域からのものを殖やそう、こういう計画でこれも話合いをいたしております。これも相当進捗しております。  それから各地に通商使節団というような、名前はいろいろありますが、そういう種類のものを出して具体的に通商に関する取極め等を行いたいと思いまして、只今つておりますのは、アラブ地域、つまり中東地域、イラン、イラク、シリア、レバノン、トルコ、ああいう方面、これに郵船会社の社長の淺尾新甫君を団長とする使節団を出しております。それからキユーバを中心としてドミニカであるとか、あちらのほうのカリブ海から中米地方については、伊藤忠兵衛君を団長とする使節団を出しております。それから、まだこれは行つておりませんが、もうじき南米、主としてアルゼンチン等の通商条約の締結交渉その他南米との通商打開のために人を派遣する予定にいたしております。又それに関連して中南米の公館長会議と言いますか、大使や公使や総領事等を集めまして、今月中に会議を開いて、各地域連絡して貿易量の増大を図るような計画を立てたいと思つております。まあこういうふうで、今後も使節団等はどんどん必要に応じて出しますが、只今すでに二つ出しておるし、まだもう一つ行く予定になつておる。  それからこれは直接通商条約等とは関係ないけれども、東南アジアの数国対しては、賠償の実施ということがやはり実際上これと至大な関係があるわけでありますが、フイリピンとの話合いは、御承知のように割合に円滑に進みつつあります。沈船の調査が終りましたので、今度は沈船の引揚げをやろうという、この引揚げに関する協定只今交渉しておりますが、これはでき上りますれば、フイリピン側は政府限りでできますが、日本側国会承認を経る手続をとらなければなりません。そのほかの国々についても、例えばインドネシアとか、ビルマ、そういうような国々についても、賠償の問題は間接には通商促進に役立つと思います。この方面との話合いもいたしております。  移民につきましては、これも直接は関係がないと言えるのでありますが、いろいろ間接的には通商の拡大にも役に立つのでありまして、このため外務省としては、今般小規模ながら海外移住局という局を新たに設けて、専門的に専心この問題を取扱おうというつもりでやつております。
  79. 平林太一

    ○平林太一君 当面の外相のいたされておりまする事実を只今承わりまして、これは非常に心強い限りでありますが、要するにこれらの事柄につきましては、一つ一つそれが完全に又迅速に実現することに対しまして一段の力を致されたいということを第一に希望いたしておきます。それにつきまして具体的に只今その促進をいたされねばならんと思いますることは、関税貿易の一般協定、ガツトの加入に対する事柄であります。このことは日本の経済の世界市場におきまする、世界市場の拡大を目指す、そういう競争の上におきまして、今日この協定に参加いたしていないということは、甚だしい打撃を受けておることの最大の原因なんであります。従いましてこのことは日本商品に対して差別的な関税を課しておるという実情指摘して差支えないと思います。それでありまするから、殊に日本といたしましては極めて重要視しておりまする南及び東南アジアの広大な地域におきまして差別的な待遇がこれは課せられておるというのが事実であります。特に我が国の綿製品の実情につきまして一九五二年、昨年の統計を見まするというと、同年度における日本の輸出総額は十億二千五百万ドルである。そのうち鉄鋼製品は二億九千百万ドルで第一位であります。併しながら綿製品は二億四千四百万ドルでありまして、第一位の鉄鋼製品に肉迫しておる、こういう実情であります。然るに今日英国におきましては、明年度の英国の綿製品の生産というものは倍額にこれを増大して、南及び東南アジアに対する貿易の計画がこれは進められておる、こういう実情でありますが、我が国といたしましては、我が対外貿易の上におきまして極めてこの南及び東南アジアは重視しなければならない実情に置かれておることは間違いないことであります。それでありまするから、もはや講和条約の効力が発効して、丁度四月二十八日も間近に迫ろうといたしておりますが、決してこの間短しといたしません。発効後長日月を費やしました今日、なおこの協定がいたされていないということは甚だ遺憾に堪えない次第でありまするが、この協定に対しまして外務大臣は如何なる今日措置をおとりになつておられるか、この点を伺いたい。
  80. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) ガツトにつきましては、なかなか今まで反対が多くて行き悩んでおつたのでありますが、先般の会期間委員会と言うのですか、においての審議に当つては、外務省側も今度は各地に在外公館等がありますので、関係諸国の理解を得るに便利でありましたために、関係諸国で非常に日本側の立場を支持してくれた向きが多くありましたために、加入の見通しはついたわけであります。加入するについては、各国との間に関税の協定を結ばなければならん。これが前提条件であります。そこでこれを各国との間に一括してやるか、個別にやるかという問題はまだ残つておりますが、大体今年の夏頃から秋にかけてこれが交渉が行われ、それが終りますると加入ということになる見込であります。
  81. 平林太一

    ○平林太一君 このことは大体英仏関係等の現実関係のありますることも深く考慮されるのでありまするから、これに対しまする推進につきましては、今後積極的に出ずるにあらざれば、只今この委員会におきまして大体加入することに見込はついたと言われておりますが、決してこれは楽観を許さるべきものではないと思います。でありまするから、これに対しましては一日も速かにこれが許されることに対しましてあらゆる方面から措置一つおとりになられますることを強くこの際要請をいたしておきます。    〔委員長退席、理事大隈信幸君委員長席に着く〕  第二に、米国に対しまする外資導入の問題であります。外務大臣もとよりそういう方向をとられておることをよく了承いたしますが、殊に吉田首相が事外交に触れられまするごとに、第一に挙げられることは、外資導入であるということを強くしばしばの機会におきまして主張せられておるのでありまするが、この外資導入の実情に対しまして、甚だかけ声だけ大きくして実際が伴つていないということを非常に不思議に思つております。米国の実情のもつと中に入りまして、又米国自体も日本に対しまして、ダレス氏が近く来日せられるというようなことについても、先般ヨーロツパに行かれたその結果を想察いたしましても、日本に対してどういう用件で来るかということは大体想像ができ得られるのでありますが、それについても日本の総合的国力の充実というものが完全に行われていなければ、単に特定なる軍事上の備えというものだけでは、これは用をなさないのである。国力全体が充実しなければ、今日再軍備というようなことがしばしば世論になつておりまするが、若し日本のためにそういうものが必要であるならばやろうということは予算委員会において吉田総理が答弁せられておるのでありますが、それと同様の意味におきまして、再軍備ということよりも遥かに優先して今日政府として措置しなければならないことは、総合せる我が国力の完全なる充実ということにあります。そういうことは、取りも直さずこの経済外交というものに期待し、経済外交がその成功を収めて行くということ以外に何ものもないのでございますから、この点米国との関係につきましては、米国からいたす外貨導入という問題につきましては、もつと具体的に、又もつと活発迅速にこれが我が国の全体の国力に反映をして行かなければならないものと承知いたすのであります。これに対しまして、外務大臣はいわゆる経済外交の第一に挙げられていいと申しても差支えない外資導入に対しましては、今日どういうような処置によりましてこれが具体的に現われることをいたされておるかということについて承わりたいと思います。
  82. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 外資導入等についても、これは勿論外務大臣としての仕事もいろいろありまするが、実質的の、こういう事業に対してこういう外資をということになりますと、これは経済審議庁なり、通産省なり、或いはその他の実際の仕事をしておる省の管轄になるわけであります。一般的に言いますると、要するに外貨が足りない場合に外資導入ということが実際必要になるのでありまするから、今日本実情では、よその国に比較しまして、貿易量から見て外貨の保有高は相当高い。そうして例えば発電所を作るにしても、セメントも国内でできるし、労力も国内でできるし、鉄類も国内でできるということでありまするから、なかなか一々の、事業について大きな外資が入つて来るということは手間がかかると思います。これは関係省でいろいろ具体的な計画、これに基いてどの程度のものが必要であるか。これについては、米国政府にも話をいたしまするし、国際銀行のほうへも話をいたしておりますので、漸次好転して来ることを考えております。
  83. 平林太一

    ○平林太一君 只今外務大臣に私の望んでおりまする経済外交に対する大臣の現在いたされておる処置、或いは推進というものについてお尋ねしておると話がやや細かくなつて来るのでありますが、私のお尋ねいたしておることは、外務省のいわゆる対米経済外交、こういうものに対しましてもつと遥かに雄渾な構想、気宇を持つて当られたいということを望んでおるのであります。そういう事態は今日これはひとり日本だけではありません。殊に日米の経済関係につきましては、米国自身が過去の戦争によつて、戦争の当然の結果としてそういう事態が出たのでありまするが、我が日本のごときはあらゆるものが破壊された。その破壊したのは米国でありまするから、そうして今日におきましてはその米国と我が日本と彼我相協力して破壊せられた世界の平和を築こうというのでありますから、又我が日本はそれをいたしておるのでありまするから、この際米国がむしろ、世俗に申しますれば、これは端的な話でありますが、あり余るところの金とドル、こういうものをどういうものに使おうかということにむしろ困つておるのが実情ではないか。こういう場合におきまして米国は進んで、単なる経済援助でありますとか、或いは外資を、自国の主権を援助するとかというようなものでなくして、いわゆる自由諸国、特に日本に対しましては、そういうものをむしろ政治的には或る程度無償で与えるというぐらいの、これは私は米国に切望せざるを得ません。今日の日米の関係、そうして世界の関係、こういうものが世の中にまだ払拭されない限りは、共産主義国家の勝利をいわゆる宣伝せしめ、自信せしめ、謳歌せしめるという結果になることを忖度せざるを私は得ないのであります。そうでありまするから、私はそういう面におきまして、もつと我が日本のいわゆる経済外交というものは、全日本の今後の経済の復興を通じての平和に対する非常な使命を果すという上におきまして、もつと果敢にこれを、日米の間はそういう角度からした経済上の深い関係が生じて来なければならないものと思います。併し、それは私はむしろ米国の意図しておるところではないかと思うのであります。そういう点について、外務大臣の恐らく高遠な構想が、理想が岡崎外交の中に潜在しておるものと、又、そういうことを期待してやみません。でありますから、その点の角度に立ちまして、見地に立ちまして、この対米経済外交に対しますことを深く推進をせられたいということをこの際望むのでありますが、そういう見解の下に、大臣は只今どういうような御措置をいたすべきであるか、又そういう方向を今とりつつあるかということが必ずおありのことと思いますから、その点を一つ重要なポイントといたしましてお尋ねをいたしたいのであります。
  84. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 雄渾な構想と言われても困るのでありますが、経済の問題でありますから、どうしても地についた計画に基かなければ実際上の話はできないのであります。又、無償で何かもらつて来るというようなお話でありまするが、政府の考え方は、今までも日本外国から乞食のように何かただでもらつて来たことはないのだから、対日援助でも債務と心得ると言つておるくらいでありますから、むしろ借りて来る場合、外資を導入するような場合でも、ちやんと必要な対価を払い、米国側にも利益があるような構想の下に導入を図るというのが、政府としては考えておる筋道でありまして、その方向で今各省とも相談をいたしまして、いろいろの案を計画し、立法せんといたしておるのであります。
  85. 平林太一

    ○平林太一君 只今私のお尋ねいたすことを、大臣非常に謙譲の態度でお答えになつたので、御答弁がそれたようでありまするが、    〔理事大隈信幸君退席、委員長着席〕 無償で向うから来るということを欲望しておるというようなものではありません。これは私は、米国が今日立つておりまするところの世界情勢下におきまして、いわゆるドルと金というものを、とにかく我々から申しますれば無限に包蔵しておる。それを米国自体が出し惜しみをいたしまして、そうして出し惜しみながら米国の繁栄を願い、世界の平和をいたそうということでは、これは今日米国が意図しておりまする、又自由国家がそのために協力しておるこの世界の平和に相逆行する結果になるのではないか。だからその点を、私はよく米国の当事者に対しまして、日本の外交といたしましては、最も血の繋がりがあります日本がよくそういうことに対します話合い、或いは反省を求めるというようなことをいたしまして、そうしてこの米国が将来孤立しないで、如何に米国といえども、孤立いたしますれば、今日のような状況で米国が自分のみを庇いながら世界の平和を打建てようということでするならば、将来は米国は世界の中から孤立して、それが経済的には困窮に陥り、軍事的には滅亡に陥るであろうということを深く憂えるものであります。その憂えるということは、いわゆる米国がそういうふうになつて行くということを憂えると同時に、世界の自由諸国の前途に対して甚だ憂慮に堪えざるものがあるのでありますから、そういうことを本日申上げるのであります。でありますから、それを一つ肚に置いて、そうしてこの日米の経済外交というものを進められたいということを、言甚だ足らざるものがあるのでありまするが、私の至誠といたしましては、そういうことを申上げるのでありまするから、そういう点を一応申上げておきたいと思います。これに対しましては、別に御答弁を煩わすことを私のほうから差控えてよいと思います。  委員長、私のほうは一応これだけにいたします。まだ二三ありますが、他の委員のかたもあると思いますから、又あとにいたします。
  86. 杉原荒太

    杉原荒太君 外務大臣にお尋ねしたいのですが、この間の委員会で、私が現在の日本とソ連との関係、殊にそれの法的状態と、それから日本の外交権の行使といいますか、外交権と言つては少し語弊があるかも知れんが、要するにソ連と何らかの接触をとるということとの関係を私はお聞きをした。私の聞いたポイントは、もう今までもすでにこの委員会等でも政府のほうから見解を明らかにされておる日本とソ連との間の法的状態それ自体ではない、私の質問は。それに対して条約局長から、今の日本とソ連との関係からするというと、ソ連と何らかの折衝をする、折衝といいますか、もつと細かい問題でありますが、要するにソ連と何らかの意思表示をするとか、或いは何らかのそれに対して措置をとるという場合に、それは第三国を通じなければいけないのであると、直接には不可能なんだと、それは法律上の関係からすればそうなんだと、政治上の考慮からすればそれは必ずしも不可能ではないが、法律上の関係からするとそれは不可能だと、そういう趣旨の答弁があつたのです。その点について外務大臣はこれをどういうふうに考えておられるか、外務大臣一つお考えをお聞きしたい。
  87. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) どうも私今のだけでは非常に、これは何か条約、或いは法律関係であつてはつきり御質問の趣旨がわかりませんが、要するにおつしやつておるところは、外務省ではソ連と直接の話合いは、法律上はできないが、政治上はやつてもよいのだというのが、そうでなくて、法律上はできるのだけれども、政治上やらないのだという御意見のように思えるのですが、これはどういうことか、もう少し細かく伺わないとよくわからないのですが、条約局長がおりますから、もう少し条約局で研究したところを一つ説明さしてみたいと思います。
  88. 下田武三

    政府委員下田武三君) 先日の御質問で、なおよく外務省として研究しておくようにというお言葉がございまして、外務省といたしまして研究いたしました。現在の日ソ関係如何という点につきましては、御意見と何ら食い違うところはないのでありますが、然らばこの休戦状態にある日ソ間で交渉をすることが法律上不可能であつて、政治的には可能であるのか。或いは逆に法律上は可能であるけれども、政治的考慮からしないのであるかという点でございまするが、いろいろの全般的の見地から見ますと、成るほどソ連以外にも、例えばフイリピン、インドネシア等、これは技術的にはやはり休戦関係にあるわけであります。にもかかわらず、フイリピンの場合には、我がほうは在外事務所を置き、先方は我がほうにやはりミツシヨンを寄越した。インドネシアにも総領事を置いている。そういう事例から申しますとと、休戦状態と、そういう不確然は国交の関係ということとは必ずしもこれは矛盾しない。言葉を換えて言いますと、法律上はいわゆる可能なのではないか、そう結論いたしましたほうが現実の事態に合つておると存ずるのであります。ただ問題は、日ソ間に然らばフイリピンやインドネシアとの関係を設定することが適当であるかどうかという問題になりますと、これは完全に政治問題になる。又極く当初の段階におきましては、これはやはり慣例によりますと、第三国を経由するとかいう経路の問題はございますが、法律上の観念としましては、休戦関係にある国家間においてもそういう部分的な交渉を持つということは法律上には可能である。併しながら、そういう関係を作るかどうかということは専ら政治的の考慮から決定すべき問題だ、そういうように存じますので、前の御説明甚だ不十分でございましたので、ここに再び事務当局の見解を申上げたいと存じます。
  89. 杉原荒太

    杉原荒太君 今のでしたら、私がこの間言つた意見と同じで、私はそれだからこの間あなたが言つておられたのは逆だと言つたのですが、そういう意見なら私納得できる。外務大臣も同じような御意見ですか。
  90. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私も今聞いている範囲ではそう思えますが、何かまだもう少し考えて見るものがあるような気がするのです。併し突然のことで余りよく考えておりませんが、何か外務省の初めの意見という、法律上は別だが政治上はできるのだという今のお話の逆のほうですね、どうも私は同じものを、言い方がこつちから言つているのと、あつちから言つているのとの差のような気がするのですが、今のお話については、私はどつちからでも言えるような気がするから、今の説明でも勿論いいわけで、私はむしろ素直に言えば、今の線が本当じやないかと思うのです。
  91. 杉原荒太

    杉原荒太君 言い方の違いという、どつちでも言えるというふうなのは、私は非常に理解しにくいので、極めて私は明白なことではないかと思う。そこのところは外務大臣としてはつきりしておかれたほうがいいと思う。私が今日質問する趣旨は、その点をはつきりさせる点にあつた。これがどつちにでも解釈できる。解釈できるかも知れんというのは、一体どういうところを根拠にしていられるのか、私にどうも理解ができない。外務大臣の御意見を聞きたい。
  92. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) どうもいろいろなケースをもつと考えてみないとわからない思うのですが、いろいろな場合があつて、要するに法律上できないのだという理窟をつけて断わるような場合もあり得ると思うのです。それから法律上できるのだという理窟をつけてやる場合もあり得るのだと思うのです。併しどうももう少し私は実際のケースを考えてみないと、ここではつきり申上げるだけ研究が積んでおりません。ちよつと聞いたところでは、先ほど申したように、今条約局長が言われた、杉原君がおつしやつているのが素直な解釈のように思いますが。
  93. 杉原荒太

    杉原荒太君 それは各場合を考えなければならんというのは、政治上の考慮からすればいろいろあると思うのです。併し、法律上の見解というのは、各場合々々によつて異なるのではないので、それだからこそ法律上の見解でもあるのですから。その点は併し、そうおつしやれば、無理に今日おつしやいとは言えませんけれども、その点は、各個々の場合について違うというようなことは、政治上のこととしてはあり得るが、法律上の、国際法上の見解としては、そういうことがあつてはこれは法律上の見解ではないのだから、その辺のところはもう少し一つ明確にして頂きたいと思うのです。
  94. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) いや、こういうものは実際上多数説と少数説とあつて、多くの場合に両論があり得ると思うのです。
  95. 杉原荒太

    杉原荒太君 どういう根拠ですか。その根拠を一つ伺いたい。
  96. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私は一般的に言つているので、あなたの言うように、法律上の見解は常に一つだということにはならないと思う。
  97. 杉原荒太

    杉原荒太君 それだから、その根拠を示して頂きたい。
  98. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) だからそれは今は感じであつて、研究してみなければわかりませんが、いずれこういうものは少数説、多数説があるのだから、多くの場合は二つの説が成り立ち得るのじやないかと思うのです。法律上も常に一つの見解できちんときまつているというふうに、私はこれはまあ一般的な問題ですが、事実なつていないように思うのです。
  99. 杉原荒太

    杉原荒太君 条約局長にお尋ねしますが、法律問題の如何によつては確かにそうですよ。併しこの問題について、一体少数説というような考えが成り立ち得ると思いますか。あるとすれば、一体どういうところが根拠になると思いますか。それは問題によりけりですよ。今私の提起しているような問題について、一体そういうことがあり得るのかどうか。
  100. 下田武三

    政府委員下田武三君) 最初にお断りいたしたいのでありますが、先般のあれは、私の重点の置き方がこういう点にあつたわけであります。部分的の関係を設定するその径路の一番初めの糸口でございますね、糸口は、今までの慣例によれば第三国を経由する。その問題を私この前一番重点を置いて考えまして、あたかも杉原議員のお考えと正反対であるかのように新聞等に解釈されましたが、実は問題の取上げ個所の重点の置き方が違つたわけであります。結局、休戦関係にある国がどういうようにして交渉を持つに至つたかという過去の先例並びに現在の例を見まして、無難な概括論を申上げたのが、先ほどの点でございます。従いまして、法律問題といたしましても、開始し得る交渉の内容においておのずから変つて来ると思うのです。例えば、いきなり通商航海条約のようなノーマルな関係をやろうといつても、これは休戦、つまり戦争関係が終止していないという法律上の当然の制約を受けるわけですから、どうしても再開する交渉の内容において、大前提である戦争関係の継続というものの制約を受けるということになると思うのです。
  101. 杉原荒太

    杉原荒太君 この間あなたの言われた点にも、これは事実上の問題、慣例としてはこれはいろいろあつて一致していない。現にあなたの言われたような例もあるし、それから現に最もわかりやすい例を言えば、日本とアメリカとの関係を考えてみたらわかるのですよ。今度の場合に、これが一体どういうふうに第三国を通じているかいないか明白でしよう。それは併じ事実上の関係であり、政治的の考慮の関係ですよ。
  102. 下田武三

    政府委員下田武三君) この前も申しましたように、現に戦争をやつている敵国でも直接交渉するということはあり得ることでありまして、お話の日米間の関係日本としてはスイス、並びにスエーデンを経由するという手段、併し同時にマニラのマツカーサー司令部とラジオの交渉もしたというようなこともございますので、これは敵対関係にあるから絶対に交渉できないということは、これは法律上は言えないと思います。如何なる措置をとるかということは、これは専ら法律問題でなくて政治問題であるという点を私はつきり申上げます。
  103. 杉原荒太

    杉原荒太君 それならいい。もう一つ外務大臣がこの間の国会の再開される際の外交方針演説の中に、こういうことを言つておられるのです。「共産主義の浸透戦術により、或いは直接の武力行使により、結局、力を以て圧服され、全く自由を失う人々のあるのを見るのは、誠に忍びないことであります。」と、こういうふうに言つておられる。これは気持はわからんことはないのですが、外務大臣の演説について、外交上の用語としては非常にこれは私強い、あの時議場において聞いておつて感じたのですが、丁度今アメリカで問題になつております例の今度のアイク・ダレスの新積極外交の一部として、重要なる内容として取上げられておるいわゆる巻返し政策の中の重要な内容として取上げられておる共産圏の国民を解放することを希望する、これは私は外交政策としては非常に強い、これは私が思うだけじやなく、アメリカの国内ですら、御承知のようにケンナあたりのソ連通の人は、この政策は極めて危険な政策だという批評をしております。又イギリスなどでもこれに対する、これの行き過ぎに対して非常に警戒して、そうしてこれに対して向うが又、こつちがそういうふうに強いならば報復の措置もとるかも知れない。報復が報復を生んでやがては戦争の危機を増大するというような非常な警戒にある。これは私は本当にまじめに米ソの関係、或いは世界の平和の関係を見て、私は非常に重大な関係があると思う。そういう点を頭に置いて言うのですが、外務大臣の言われた御趣旨は誤解のないようにして置くのが非常に必要だろうと思うのですが、外務大臣、こういう点についてどういうような趣旨で以て言われたのか、ちよつと。
  104. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは、殊に東亜における事態を見ましても、例えば北鮮であるとか、インドシナの一部であるとかいう状況を見ますると、その国民が欲すると欲せざるとにかかわらず、力を以て一定の方向に伺わされているのが事実でありますから、その国民の中には非常にこれは辛いことであると考えている人が多いだろうと思います。現にその証拠と言つてはおかしいですが、北鮮なり、或いは中国からもあるようでありますが、方々に、要するに共産地域から逃れて来る人が非常に多いのは事実であります。従つて私はそういう状態にある人々に対しては、非常にこれは気の毒な事実である、こう考えてそこにあるようなことを述べたわけであります。  そこで今度は、それじやどういう手段をとつてそういうことの起らないようにするかということについては、私はそれに対して巻返しとか何とか、そういうことは全然言つておらないので、ただ現状が気の毒であるということと、それからそういうことにできるだけならないようにするためには、自由主義国家の結束を強くして、これ以上かかる事態が起らないように努力すべきである、こう思つて今度は民主主義国家の協力の必要なことを述べたわけであります。大体以上の趣旨で実は演説をしたわけであります。
  105. 杉原荒太

    杉原荒太君 それではいま一点だけお尋ねしたいのですが、今までたびたびこれはほかのところでも、国会でも問題になつておるのですけれども外務大臣のお考えをお尋ねしたいのですが、例の対日援助資金の処理問題ですが、これについての事務的なことじやなしに、これの処理方針についてどういうふうなことを考えられているか、大きな方針のところを。
  106. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ず前提として、これを債務と考えるかどうかという問題がありますが、これは我々は債務と心得ておる。そこで今度は処理方針になるのですが、債務と心得ておるならば、今後において額がきまらなければならんわけです。額をきめるためには資料を揃えて、今のところは実はアメリカ側には十分の資料がある。日本側には十分の資料が揃つておらないのです。その理由は、終戦直後のごときは、物をもらえば助かるというような非常に緊急な状況であつたために、品物を受取つてこれを配給することに急で、その量とか、額とかいうものが十分こちらに資料として残つていない場合があるのであります。それから実際配給した品物にしましても、それが悪くなつてつたり、壊れておつたり、腐つてつたりしたようなものをどの程度はつきり調べて取除いたかという点も、必ずしも実はまだ自信がないのでありますが、日本側の持つている資料が十分整備できれば、その場合に改めて先方の資料と突合せて正確なる日本側の受けた品物の量なり、額なりがはつきりするわけであります。相互にその額なり量なりがはつきりした場合に、今度はそれを国力に応じ、又アメリカ側の考え方も参照して、どれだけ払うか、又どういう方法で払うかということをきめて、そこで債務の額がはつきりきまる、こう考えております。
  107. 杉原荒太

    杉原荒太君 政府が、正式の予算委員会等に対する書面による答弁を見ましても、今の外務大臣のおつしやつているところでも、債務と心得ておると言われる点は、恐らく私は、これは将来債務となるものと心得ておる、こういう意味だろうと思うのです。まだ債務じやないのを債務と心得るわけには行かない。恐らくそういう意味だろうと思う。その点只今別に言わない。私の今主としてお聞きしたい点は、ドイツあたりにおけるこの問題の処理の方針と言いますか、処理の仕方についてなどみまして、そういうことを頭において私質問しているのですけれども、今後いわゆる日本の何と言いますか、自衛力の漸増といいますか、そういうものとの関係という点、どういうふうに……。
  108. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 先ず、その前にお断りしておかなければなりませんのは、債務と心得ておると言つておるのは、これは対日援助と言われるもののうち、分量は非常に多いのですが、分類から言えば一つ部分であるガリオアを専ら対象にしておる。その他にイロアであるとか、或いは報奨物資であるとか、払下げ物資であるとか、いろいろな種類のものがあります。その極く少額ではありますが、或る種類のものは、すでに債務であるということは承認しておるのもあります。で、債務として実はもうすでに支払のほうに入つているものもあるわけであります。従つてその対日援助費の全体が将来債務となるものじやなくて、債務であるけれども、まだ額が決定していないという種類のものもあるのであります。それからドイツの場合その他イタリーの場合とかいろいろあります。そういう点もいろいろ考慮しておりまするが、私の今の見込では、何かの理由で仮に再軍備をするというようなことになつた場合には、その費用はかなり要るでありましよう。そこで、そうすればいろいろな点からこれは捻出しなければならんという問題になつて来ますから、この問題も一つの考慮に値いする問題にはなりましよう。或いは防衛支出金というような問題も一つの考慮の対象になりましようが、この問題が何かよく言われるように、再軍備の引換えになるのだというようなことは私はないと思います。
  109. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) それでは今日はこの程度で散会いたします。    午後四時十三分散会