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委員外議員(
河井彌八君)
只今議題となりました
請願二件、
陳情二件につきまして
説明を申上げます。更に
委員会の適切なる御決定をお願いいたします。
ここに挙げてあります
請願、
陳情は私これは紹介いたしておりませんが、
請願、
陳情皆同一のものでございます。で、これは何と言いますか、昔の遠州灘と申しまして、伊豆の、下田の先から、一方は志摩の国、鳥羽の国を結付けまする一線の海岸、その丁度真中頃にこの
射場を設けようという場所がある。この土地は元来大きな砂丘地帯でありまして、以前はこの耕地から海岸まで幅の広い所は二キロあります。そうして相当大きな砂丘が起伏しておる所であります。ところがだんだんこの農耕地が必要になりまするので、それは漸次開墾いたして参りまして、今日ではその幅が大体五、六百メートル程度の所にまで狭ま
つております。それで大東亜戦争のときには、
日本で造
つた砲弾或いは大砲などの性能を試験するためにその砂丘地を利用いたしまして、およそ二万メートル、若しくはそれ以上の土地が
射場として使用せられた、大東亜戦争が終りましてそれらの土地はそれぞれ農民に開放せられまして、そうして現にたくさんの農民が農業をいたしておるのみならず、相当多くの
入植者がありまして、やはり農耕に従事しておるのであります。
そこで今回の問題は、
駐留軍が
日本で造
つたところの砲弾或いは大砲、主として砲弾のようでありますが、それの性能を試験するために又同じ場所を使用しよう、こういうことにな
つておる事柄であります。これが以前のごとく誰もいないということでありまするならば、まだ土地の住民もよほど考慮したであろうと思いますけれども、実際は
只今も申上げましたように、たくさんの移住民が入
つており、そうして農耕も発達しておりますので、さような処置に出られては全く農村の破壊であるということから非常な
反対の運動を起したのであります。その
反対の意思表示を国会に出して参りましたのがこの
請願と
陳情であります。
請願の一部は、その所在の町村の住民の
請願であります。それからもう一つの
請願は、これは県議会が県を代表いたしての
請願であります。それで今度のその使用する
内容は、大体延長二万メートル、それから幅が二千メートルぐらいにな
つております。ところが、その二万メートルの使用はどういうことになるかと申しますと、
只今も申しましたように農業の妨げをする、或いは農村が破壊をせられるということばかりでありませんで、
漁業に非常に妨害になるのであります。というのは、その延長二万メートルの或る部分に何と言いますか、岩礁がありまして、これは魚の集まる場所なんです。その場所への交通が、
漁民の出て行ことが遮断せられるという虞れがある。
それからもう一つ附加えて申したいのは、その
射場の東となる二万メートルの少し先でありますが、そこに現在運輸省で以て御前崎の避難港という、かなりこれは大きな築港をしております。ところが、若し射程が少しでも伸びますれば、その避難港が使われないというようなことも起るのでありまして、それらのことを総合いたしまして、この際、ここに
射場を設置されるということは甚だ迷惑なことであるというので、これは所在の町村ばかりでありませんで、県全体がこれに対して
反対の意思表示をいたしておるのであります。幸いにしてその運動等は非合法にはなりませんのでありましたが、とにかく若しこのことを強行でもされるというような場合になりましたならば、随分これは恐るべき悪い結果を生じたであろうということを
考えられるのであります。で、
只今承わりまするところでは、大体御前崎のこの
射場というものは、使用しないということにな
つているようでありまするから、すでに或る意味におきましては
請願及び
陳情の趣旨が貫徹していると
考えられまするのであります。併し、若し他の都合でどこかへこういう
射場を設けなければならんという話でありましたら、若し他の都合で又再びここに
射場を置くということがありまするならば、これは甚だ不当なことになるということを
考えておりまするから、どうぞこの
請願及び
陳情は採択せられまするようにお願いいたしたいというのであります。
附加えて申上げますか、私は石川県の内灘でありますか、あれは現地に行
つてはみませんが、その附近を通過して詳しく
承知しております。それからもう一つ候補地に挙げられておりますところの愛知県の伊良湖、半島の突つぱなにあります伊良湖の
射場も、これは実地に見ております。愛知県の伊良湖及び
静岡県の遠江
射場なんという所は、何と言いますか非常に土地の利用が進歩いたしておりまして、以前は砂丘地帯であるから、何も農業に
関係ないではないかというような見方もあ
つたかも知れませんけれども、今日はさようではないのでありまして、この砂丘地帯を利用いたしまして、一種の熱帯農業とでも言うべき早く言いますれば、速成栽培のごときものが非常な普及発達をいたしております。私は数日前伊良湖に行
つておりまして、大体農家が三戸に一戸くらいは温室を持
つております。その生産力というものは大変なものであります。というような場所に
射場を置くというようなことになりまするならば、これは大変なことになると思います。それから遠江の遠州灘に面しておるこの
射場の場所につきましても、これから熱帯農業の研究地が置かれようとしておるのでありまして、これによ
つて非常な農業の発達が期せられるというようなことにな
つております。
それでは
日本にどこがあるかと申しますると、これは私ども彼これ言うべきものではありません。併しアメリカを
考えますと、砂漠まであります。随分適当な場所が、原子爆弾の実験までや
つておるような厖大な所がありますが、まきかあすこへ持
つて行くわけには行かんでありましようが、
併しこの遠江
射場のごときものは、実際あれを選定しようとした当局のその常識を疑わざるを得ないというようなふうな
考えを持
つております。更に私どもが
調査いたしましたところによりますると、
駐留軍が
外務省に持
つて来た
要求の趣旨と、それから
農林省の農地局がここに当てて来たのとは大きな食い違いがあるということを私は認めておるのでございます。併しその点まで入
つて自分は彼これは申しませんけれども、どうぞ
委員会とされましては、この
請願及び
陳情をば採択せられまして、国会の意思がどこにあるかということを
はつきりと決定しで頂きたいということをお願いいたしておきます。