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1952-12-24 第15回国会 参議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十四日(水曜 日)    午前十時五十七分開会   ━━━━━━━━━━━━━  出席者は左の通り。    委員長     徳川 頼貞君    理事            伊達源一郎君            大隈 信幸君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            石黒 忠篤君            岡田 宗司君            曾祢  益君            有馬 英二君            須藤 五郎君   国務大臣    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    保安政務次官  岡田 五郎君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    外務政務次官  中村 幸八君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   ━━━━━━━━━━━━━   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の船  舶貸借協定締結について承認を求  めるの件(衆議院送付内閣提出)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) では只今から外務委員会を開会いたします。  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定締結について承認を求めるの件を議題に供します。  質疑は前回を以て打切りといたしましたので、直ちに討論に入ります。御意見のあるかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、本協定反対するものであります。  その第一の理由は、本協定によつてアメリカから日本に貸与されるこの協定に言われておる船舶なるものは、決して単なる船舶ではないのでして、アメリカの法律にも明示されておりますように明らかに軍艦であります。又私どもが横須賀に参りまして視察してみたところでも明らかに軍艦である、こう言えるのであります。これを単に船舶なりとしてこの協定を結んだということは、これは政府が今日保安隊を設けて、これを漸次日本陸上兵力に育て上げて行こうとやつておるのを飽くまでも自衛力の漸増である、これは決して軍隊でないと言つておるのと揆を同じうするのであります。要するに憲法第九条における日本戦力を保持しないということをごまかして軍備をやるための逃げ口上としか思えないのであります。こういう点からいたしまして、この協定憲法違反するものである、こう考えまして反対するのであります。  第二に、この船舶を借りる目的か那辺にあるかということを考えてみましたときに、これは決して単なる沿岸警備のためとは言えないものがあると思われるのであります。普通の密輸出入や或いは密入国の取締り、或いは又漁船の保護というような極く普通の沿岸警備海上警察的の任務というものは現に海上保安庁がこれを担当してやつていて、それぞれ船を持つているのであります。本来のそういう任務でありますならば、この機構を拡充し、その船体を強化して行けばいい。別に海上警備隊を設け、これを保安庁のもとに置き、そうしてアメリカ日本にこれらの艦船を貸しまして、そうしてこれで海上警備隊の訓練をするということは、結局アメリカ戦略目的従つて日本を再軍備させ、その再軍備の一部として日本にこれから海軍を作ろうとするその計画の現われと断定せざるを得ないのであります。かようなものをしますこと自体が私はやはり憲法の第九条に違反するものである、こう考える次第であります。この二つの理由によりまして、本協定承認に対しましては反対をするものでございます。
  4. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 私は、日米の間に船舶貸与協定ができた、それを承認することに賛成するものであります。今日本沿岸警備が非常に手薄い。沿岸におきましては密輸入とか、密入国とか、海賊とか、漁船の危険とか、いろいろなことがありまして、沿岸警備の力を非常に増強せなければならん極めて急を要する立場にあるのであります。そういうときに、丁度アメリカにそれほど必要としない艦艇があり、日本が非常に要求しているところへ話が始まりまして、こういう協定が結ばれ、たくさんの金がなければ建造することのできないものを容易に借り得るということは、私は今の日本状態において非常に結構なことであると思うものであります。これを海軍芽生えであるとか、再軍備端緒であるとかいうように解せらるるということも御尤もなことでありますけれども、それはその借りたものを運用する当局考え一つによつてどうでもなることであります。多くの時間を費して保安当局の、又外務当局のかたがたの意見を聞いたのでありますが、軍備ということを強化する考えはないのである、専らこれは沿岸警備の用に立てるという目的であるということ、及びアメリカ議会における記録を見てみましても、日本沿岸警備を助ける意味で貸すのであることははつきりしているのでありまして、私はそういうことは別にいたしまして、日本の今の急を要する場合に極めて適当なことであると考えるものであります。そしてこのことが安全保障条約精神及びサンフランシスコ会議精神に沿うたものでありますことを強く感ずるものであります。そういう意味におきまして賛成するのでありますが、ただここに当局に向つて要望しますことは、今軍備再建ということが日本国民の神経に最も鋭敏な働きをかけているときでありますから、これが海軍芽生えであるとか、再軍備端緒であるとかいうような事実を国民の前に与えないように、又世界にそれを与えないように十分慎重に考えられて、主なる目的と申しますか、全目的沿岸警備ということに傾けて行かれることがこの際非常な必要なことと考えますので、切にそのことを希望いたしまして、私の賛成理由を申上げます。
  5. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、この船舶協定法案に対しまして絶対反対意思を表示したいと存じます。詳しくは本会議討論の中で申述べたいと思いますから、只今は簡単に反対意思表示をするにとどめたいと存じますが、如何に政府がこれは再軍備でないということを申しましても、それは三百代言的な言葉としか私たちには受取れないのであります。只今軍艦旗を掲げなくても、あの船に一旦軍艦旗が掲げられれば、忽ちにそれは日本軍艦に代る性能を持つた船であり、船舶軍艦と区別するのはその船の性能によつて区別するので、ただ旗によつて区別すべき性質のものではないと思います。何と申しましても只今のフリゲート艦は軍艦性能を持つた船である以上、私たちはこれを日本の再軍備の第一歩と断定せざるを得ませんので、憲法違反の点からもこの法案には断じて賛成することができません。なお、いろいろな点に関しまして、私の質問に対しまして、佐藤法制局長官などは面白い理窟をこじつけて申しておりますが、あの昨日の質疑の中に述べられた佐藤長官の凧の例を以て話されたあれこそ、全くこの日本の再軍備アメリカの手によつて操られているということを暴露したものであると思うのであります。凧の糸の元をアメリカが握つておる、日本はその途中に手を触れさしてもらつているだけだと、こう申しましたが、手を触れているのではありません。アメリカの意図によつて日本の手が縛られている。これこそ全く私たちが常に言ういわゆる紐付だという、紐付の再軍備だ、日本の自主的な再軍備ではない。それは再軍備である上にアメリカ紐付の再軍備だと私たちは断ぜざるを得ませんので、この点からも強く反対を表明したいと存じます。
  6. 團伊能

    團伊能君 私は、この法案に自由党を代表して賛成するものであります。先ほど伊達君から縷々お話もございましたが、本委員会は従来三年に亘りまして、千島、北海道、或いは南海の島までつぶさに辺境の研究をいたし、そうして密入国密輸入、或いは漁船拿捕、或いは海上に横行しておりました海賊、或いは漁船出漁区域等につきまして研究を続けて来たのであります。それからいたしましても、海上における治安というものが四面環海日本におきまして非常に忘れられておりまして、今日治安問題は陸上に集中し、非常に広い海面というものが忘れられておりまして、従来の海上保安庁監視船のごときも、その行動半径を繋いでも日本の周囲をカバーし得ない。そこに海上保安庁監視船が行けないブランクな場所がたくさんあるのであります。そればかりでなく、その舟艇海上が荒れた場合には全く航海できないというような貧弱極まる船でありまして、これはかくきめられたのでありまして、これだけの船舶を曽つてつておりました国として情ない状態の船であります。併しながら今日におきまして、これらの海上警備を完成する船を備えるということが日本の財政的にも至急にこれが間に合わない非常に苦しい状態にありまして、従来密入国等の問題が非常にかまびすしいにかかわらず、これに対する警備の方法は捨てられていたのであります。この非常な欠陥に対して、このたびアメリカからパトロール・フリゲートその他の舟艇を貸与されたということは、我我として非常に適宜な処置であり、又日本として非常に感謝すべき協定であると考えます。勿論私どもといたしては、これは一時の日本の現状において止むを得ざる処置であり、日本が独立いたしました今日、日本みずからこの目的に副うべき完全な船を造るのが当然であり、これができないで米国海軍舟艇を借りましたために、いろいろ再軍備の前提であるとか、或いはこれが軍艦であるとかいうような問題を引き起し、国民に一種の誤解を招いておるのであります。併しこの誤解の因は、日本自身警備船を造るときが来ればこれはことごとく解消するものであると考えます。又これらの舟艇は成るほど米国海軍に属した船でありますが、併し今日これをつぶさに研究いたしましても、決して今日の海戦において有効なる船でもなく、又攻撃力も持たない船でありまして、この船が造られました目的は、よそから攻撃して来る空襲に対し対空高射砲の若干を備え、又潜航艇の潜入に対して爆雷を投下する機能を持つているに過ぎないのであります。砲といたしましては、高射砲の最大の口径が三インチというのでありますから、到底今日の海戦に適するものでないのであります。元々こういう防禦的な海防艦でありまして、まあアメリカから船艦貸与を受けるとすれば、この辺が日本沿岸警備に最も適しておる船であるかと思います。今日米国においてはこれが海軍軍艦として用いられていたかも知れませんが、併しこれを借りた以上、この古い軍艦を借りたからといつて、我が国がこれを軍艦として使用することは考えられないのでありまして、我々の使用目的がそこに明瞭に確立しておりますれば、旧軍艦を借りて来ても、それは決して軍事的な意味を含まないことは明らかであります。これらの舟艇目的がしばしば再軍備と絡んで世に伝わつておりますが、そういうことは我々として到底この貧弱なる船において考えられないのでありまして、今日実際の戦闘世界考えられる戦争常識といたしましても、ジエツト飛行機は音速を超そうとしておるような非常な科学的な発展の中に、あたかもこれは大きさといい、装備といい、曽つて明治二十七、八年の際東洋の海域を押えていた鎮遠、定遠と極めて似た大きさの船でありまして、併し鎮遠、定遠のほうが更に大きな砲を持つておりましたから、これよりも戦闘力を持つていたのであります。これを効果ある軍艦考えることは、もはやそこに五十年以上の錯覚、時代錯誤があるように考えます。  なお、私はこれを賛成いたすにつきまして、この協定ができ得べくんば更に一歩を進めて、この船舶の上における設備その他を、本船を変更しない範囲におきまして多少変更を許してもらいたい、今日海難救済等目的を持つ救命艇その他の設備を備え、我々の借りている間だけでもいい、我々の目的に完全に副うように表面の艤装を変えるように、米国政府と交渉されることを政府に要望しながら、私の賛成演説といたします次第であります。
  7. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、この議案に対しまして反対意思を表明するものであります。以下簡単に理由を申述べたいと思います。  先ず第一に、私たちはこの協定案そのものだけを切り離して論議することは適当でないと考えます。この問題は言うまでもなく、すでに法令としては我々の反対にかかわらず通つておりました保安庁法案、この中に現われた海上警備隊、この性格に対する我々の反対に論拠を置くものでありますが、一層これを一般的に申上げるならば、政府のいわゆる自衛力創設、この方針の極めて不明確なことと、而もそのことが政府が一方的に憲法第九条の規定しておる明確なる実際の戦力の否定にもかかわらず、一方的な判断によるこれは戦力にあらずということで、どんどんどんどんとやみの再軍備をやつておる、こういうことの重大な疑惑、又憲法に対する違反と、この点に基本的な問題を置かなければならないと存ずるのであります。成るほど我々はこの議案に直接関連ありまするところの、いわゆる日本沿岸警備ということについてもこれを何ら構わないというような無責任な態度をとるものではございません。併し政府の説明によるところの沿岸警備というものは非常に不明確でありまして、それが非常に大きな武力衝突をもあえてするような性格のものであるということが考えられるのでございます。そういたしますると、それをやつて行くのに如何なる程度のいわゆる武装船がいるか、こういう問題になつて来るのでありまするが、本件の対象になつておりまするこのアメリカ軍艦は、もとよりこれだけを以て近代戦を遂行するような武装力を持つておらないことは、これは明白であります。併しながら、さればと言つてそれが軍艦でない、戦力でない、殊に戦力でないと言いながら、武装を認めながらそれは軍艦じやない、こういつたような欺瞞的な態度で終始している。このやり方に対しては、我々としては到底賛成できないのであります。現実にアメリカ議会において明らかにされた通り、この武装船は少くとも政府みずから認めているように、政府が現在考えていると称せられる沿岸警備には必要のないような相当な攻撃的な武器を持つたものでございます。従つて政府みずからが今考えている沿岸警備に必要な武装船としても決して的確でないということを言つておられるにおいては、誠に論理が一貫しないこと甚しいと言わなければなりません。更に又この本件が果して政府がしばしば力説される通り、ただ単なる日本の自主的な立場からの沿岸警備ということだけが真の動機であつて、そうして協定が結ばれたとは常識的に考えられない、それはアメリカ議会討論等を通じましてもその点は明確ではないか、或る種の安保條約及び行政協定に基くところのアメリカ海軍日本当局とのいわば行政的の作業の一部を肩替りするという性格がむしろ基本ではないか、而もその点を明確に国民に打ち出すところなくして、これは日本は飽くまで自主的に沿岸警備のためにやるのだというような議論を進めておられるということは、到底我々として正直に納得できないのであります。かような観点、関係もございまして、政府のこの貸与協定に関連する、或いは貸与交渉に関連する政策というものは誠に一貫性を欠いている。初めは恐らくこれを保安隊武器貸与と同様に私的に、プライベートな貸借契約ぐらいでやろうとして、これを外交交渉の正面に出さないと共に、協定も作らない、かような態度で来られたことは、これは明白であります。併しそれだけではいかない、予算外の負担を伴うとか、いろいろな観点から、結局最後の段階になつてこれを正式の外交交渉に移し、そうしてこれを協定として国会承認を求めるという態度に切替えられたことは、これは従来の経緯に徴して明らかだと思います。私はかような、これ又欺瞞的というか、国会に対する権威尊重に欠けたやり方に対して、到底この協定賛成することはこれはできないと考えるのであります。  以上諸般の観点から、この協定に対しては、日本社会党第二控室は明確なる反対意思を表明するものであります。
  8. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 他に御発言はございませんか……他に御意見がなければ討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 御異議ないものと認めます。  それではこれより採決に入ります。日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定締結について承認を求めるの件を原案通り承認することに御賛成のかたの御起立を願います。    〔賛成者起立
  10. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 多数と認めます。よつて本件承認すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長報告の内容は、あらかじめ多数意見者承認を経なければならないことになつておりますが、これは慣例によりまして委員長にお任せを願いたいと存じます。それから本件を可とされたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     伊達源一郎  大隈 信幸     杉原 荒太  團  伊能     平林 太一  石黒 忠篤     有馬 英二委員長徳川頼貞君) 御署名漏れはございませんか。  御署名洩れはないと認めます。  それではこれで散会いたします。    午前十一時三十一分散会