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1952-12-23 第15回国会 参議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十三日(火曜 日)    午後三時四分開会   ━━━━━━━━━━━━━   委員の異動 本日委員岩傳一君辞任につき、その 補欠として須藤五郎君を議長において 指名した。   ━━━━━━━━━━━━━  出席者は左の通り。    委員長     徳川 頼貞君    理事            伊達源一郎君            大隈 信幸君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            石黒 忠篤君            高良 とみ君            岡田 宗司君            曾祢  益君            有馬 英二君            大山 郁夫君            須藤 五郎君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    調達庁不動産部    長       川田 三郎君    保安政務次官  岡田 五郎君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁装備局長 中村  卓君    外務政務次官  中村 幸八君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省条約局長 下田 武三君   ━━━━━━━━━━━━━   本日の会議に付した事件日本国アメリカ合衆国との間の船  舶貸借協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) それでは只今より委員会を開会いたします。 日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定締結について承認を求めるの件についての質疑を続行いたします。御質疑のかたは御発言願います。
  3. 平林太一

    平林太一君 外務大臣来ておられますか。
  4. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 外務大臣は今すぐ参られます。
  5. 平林太一

    平林太一君 それでは保安庁長官に、外務大臣出席になつておられませんが、両大臣質疑をいたします。  第一にお尋ねをいたしたいことは、只今我々の手許にありまする資料三通であります。それを正式に申上げますれば、米国上院会議録、一九五二年七月三日木曜、海軍船舶日本貸与の件が一部であります。第二部は、船舶貸与法案ハウス・レポート第八千二百二十二号、聴聞会議事録「一九五二年六月十七日下院軍事委員会。第三部は、第八十二議会公法第四百六十七号、第二会期第五百九十一章H・R第八千二百二十二号。この三種の会議録内容をつぶさに精読熟知いたすに当りまして、私自身といたしまして誠に感慨の禁じ得がたいものがあるのでありますが、詳細を申上げることを避けますが、両大臣はこの三通を御熟読に相成られたるや否や、第一に承わりたいのであります。
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 率直に申上げますると、私はさほど熟読はしておりません。
  7. 平林太一

    平林太一君 熟読をしておらないと大臣はおつしやるのでありますが、私はこれをよく熟読いたしたのでありまするが、といたしますと、どうも私のほうが両大臣よりこのことに関しては大先輩であるということに相成るのでありまするが、誠に感慨深く思います。(笑声)どうか一つこれは決してむずかしい顔をして申上げるのでありませんので、どうかこれは一つ早急に御熟読を頂かなければ相成らない事柄と深く信ずるのであります。この内容を見ますと、非常に我が国自主外交というものが全く追随迎合外交である、そして常に事件起り、懸案生ずるごとに、行き当りばつたりの一時外交をしているということを深く感得せざるを得ません。外務大臣が御出席になつておりませんが、この点はどうか木村国務大臣から関係せる事柄といたしまして……。
  8. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 外務大臣が参られました。
  9. 平林太一

    平林太一君 只今岡崎外務大臣が御出席になりましたので甚だ重複をするのでありまするが、木村国務大臣は御熟読なすつておらないということでありまするが、岡崎外相に対しましてこのことをお尋ねいたしたいと思います。岡崎外務大臣お尋ねしたいと思いますことは、これは二重に、甚だあれでありますが、極めて重要でありますから申上げます。只今我々の手許に配付をされておりまする米国上下両院会議録、それから船舶貸与法案に対するハウス・リポートの聴聞会議録、この三通の内容外務大臣はよく御熟読承知はこれは当然のことであると思うのでありますが、よくお読み下さつたかどうかということを岡崎外相お尋ねいたしたいと思います。
  10. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 読んでおります。
  11. 平林太一

    平林太一君 誠に結構なことであります。それでこれをお読みになられまして、この協定内容に対する米国側の意図、意思というものに対しまして大臣はどういうふうにお考えになつておられまするか、これを率直に承わりたいのであります。
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いずれの国におきましても国会等においてはいろいろ説明をいたすようでありますが、それは政党として、或いは政府のほうとしてその状況に応じ種々の説明をいたす場合があるわけでありますが、私はアメリカ議会においていろいろの質問があつたりし、説明があるたりしたことは承知しておりますが、それについてとかくの意思を言うことは差控えたいと思うのであります。で、我々の考えておりますことはこの只今審議されつつある協定に基きまして、日本側はその協定に基いた趣旨で船舶を借入れるのであります。又その協定に基いての義務負担するわけでありまして、それ以上のことは別段何もないのでありまするから、その意味でこのアメリカ国会でいろいろ議論がありました点については批評を差控えたいと考えるのであります。
  13. 平林太一

    平林太一君 外務大臣といたしましては態度、御答弁といたしましては誠にさようにあり得ることであると存ずるのでありますが、この内容を検討いたしてひしひしと胸にこたえますことは、我が国独立国になりまして、対等地位におきまして自主外交というものをこれから進めて行かなければならない。そういう際におきましてあたかも顕著たる日本が非自主外交の状態にあるということを私は深く遺憾に思うのであります。同時にこれは遺憾に思うことは、決して岡崎外交に対しまして何か非難するとか、或いは足らざるところを責めるということではありません。この日本外交というものは漸く独立国となつて、これから新らしい外交の発足をいたさなければならないのでありまするから、どうかこの自主的な外交、いずれの国の外交というものを見ましても我を滅して他に与うるということはこれはいたしておりません。現実におきまして常に我を守りつつ他をも守るということが私は外交の真髄であると思うのであります。この協定の、これらの資料の中に示されておりまする発言内容は特に国会だけでありません、いわゆるアメリカ政府軍事関係国防省関係それらの関係者発言内容を見ましても如何にも我が国を隷属した、依然として対等地位に置かない、弱小国として取扱つておるという観が誠に内容に示されておるのであります。それでありまするから、こういうことの協定に対しましては、別個協定書に、船舶貸借協定内容というものが私は相当にこれは変つていなければならない、変つたいわゆる字句、変つた内容がせめてもこれは出ておらなければならなかつたということを甚だ遺憾に思うものでありますが、私はこれ以上申上げることを避けますが、どうか私岡崎外交というものに対しまして是非有終の美をなさしめたい、そうしてそれが我が日本独立表裏相ともに実現するゆえんであるのでありまするから深く深く期待をかけておるのであります事件が起り、困難が生ずることにいわゆる場当り的な行き当りばつたりの外交というものがこの内容を見ましてもそういうものが非常に感知されるのでありますから、どうかその点に対しましては速かに基本的な、我が国外交はこの方向であるということを先ず国民に知らしめるということ、それからこの方向であるということをあえて私は海外の諸国に闡明せられるという確固不動外交方針というものを確立いたしまして、そうしてこの一線が日本の最低限のいわゆる外交に対する基本的な一線であるということを速かにこれは確立する必要があると思うのであります。いずれの国でも私はそういうものを内外に闡明し、そうしてその外交方針というものを国民に示しておるのでありまするから、まだ独立後日なお浅くして諸般の外交諸懸案が堆積しておりますから、定めしその点について手が廻りかねる点も察するのでありますが、外務大臣といたしましては、その点を速かに一つ樹立せられたい。そういうものは今日何ら示されておりません。でありますからこういうものに対しましては、どうか感情を一擲いたしまして、私は特にそのとを申上げるのでありますが、この点に対しまして、外務大臣の所懐を承わりたいと思います。
  14. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私の外交方針はこの間外交演説で述べた通りでありまして、決して方針なくしてやつておるわけじやないのであります。私としてはちやんとした方針の下に出て来る問題をその方針に従つて処理しておるわけでありまして、この法案につきましても同じことでありまして、その間に別に方針なくして、これを借入れるわけでも何でもないのであります。併しお話の次第はよく了解いたしますから、今後とも誤解のないようにできるだけ努めるようにいたします。
  15. 平林太一

    平林太一君 この間、なんでお触れになつたと申しておりますが、それは私から申しますれば極めて抽象的なものでありまして、いわゆる我が国海外に対する基本的なものはとれである、外交の基本的なものはこれであるということをお述べになつておらないのであります。又内容もそうであるのであります。今お話通り、そのときどきに起る問題を、そのときどきに処理して行くのだというのでありまするが、これは私はむしろ大きな外交に対しまして甚だ遺憾なことではないかと思います。そのときその場合によつて、それを処理して行けばいいということは一要するにそれは常にそのとき、そのときどきに彼に追われて我屈するということになることは極めて顕著であります。でありますから私はそういうことを申上げておきまするが、これも誤解のないよう外務大臣におきましては御了承を賜わりまして、鋭意このことに対することに力をいたされるようにこの際申上げておく次第であります。  この協定に対しまして二つ私は質したいと思いますが、第一はこの船舶を借受けることによつて、従来米国負担しておりましたところの、いわゆる日米安全保障条約に基く日本のこの海上警備に対する費用負担というものを、いわゆる我がほうに肩代りさせるものである。又肩代りされるものではないかということでありますが、私の見るところによりまする、そういうふうに考えられるのであります。非常に我が国財政極めて黙視しがたい今日の国民負担の増大というものが、ややもすればその圧力によつて、折角の独立も崩壊をせなければならないのではないかというように憂えざるを得ない。我が国民の国家にいたすところの財政能力、そういうことを考えまするときに、このことが非常に胸にこたえるのでありまするが、その点の大臣の御所見を承わりたいと思います。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。日本国独立国家なつた母上は、日本がみずからの手によつて我が国の治安を維持し、秩序を保持して行くのが当然の自治であります。この借受けました船舶は、日本海上秩序を維持して行こうというのでありますから、これは当然その費用日本負担すべきものである。如何に国家財政が窮迫しておるといえどもです、この海上警備し、秩序を保持して行くのには止むを得ない事柄であろうと私は考えております。
  17. 平林太一

    平林太一君 木村国務大臣の御答弁ぱ業柄さもありなんことと私も一応了承するのでありますが、私のお尋ねいたしておりますることは、いわゆる日米安保条約に対する米国側義務、そうしてそのせなければならない、而もそれを今日において、いずれこの安保条約なるものはそのとき、又その時期が参りますればこれを撤廃されまして、そうして今大臣お話通り我が国の自衛、防衛ということが我が国みずからの手によつてせなければならないことは当然であります。併しそれはこの条約に伴う一切の行為というものは、今日継続されております。そういう際におきましては、やはり我が国がその力のでぎるまではできるだけこの安保条約を我がほうも忠実に守る、又米国側も忠実に守るという意味におきまして、今御答弁内容を承わつておるのでありまするが、これらの問題もあえてときを急いでさよう負担我が国が肩代りするということは、必要以上にさようなことをしなくてもよろしい。条約に伴いましては、行政協定等によりまして示されておる通り我が国といたしましては、実は独立国といたしましては堪えがたいところの一画には、それによるまあいわゆる恩恵も受けておりますが、文堪えがたい屈辱も一面にはあるということも御承知に相成つて私は然るべきだと思います。この安保条約が続けられまする限りにおきましては。そうでありますから、そういう我がほうの負担なり、又我がほうのそういう堪えがたい事態もあるのでありますから、この経費等の点につきましては、私は先走つてようなことをお考えにならなくてもよろしい。併し今御答弁を伺いまして、まあそういうことも私は一応了承するのでありまするが……。でありますから、第一は今申上げた通り経費我が国がこれによつて肩代りをあえて、みずからこれはしたのである。又先方から、米国側から言えば、これをさしたのであるといううことに私は承知いたすのでありますが、さよう承知いたすべきものと考えていいかどうか。私はそう思いますが、両大臣のこれに対するはつきりいたしました言明を承わりたいのであります。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この海上警備隊任務は今申上げた通りであります。これは何もアメリカ側がやるべきやつを日本がそれをやるわけではないであります。日本側で当然やるべき事柄をやるのであります。決して安保条約とは関係ないと私は思つております。
  19. 平林太一

    平林太一君 今木村大臣からお話がありましたが、これは木村大臣先刻やはりこの会議録三通を読んでおらないと……、誠に正直であります。それだから今のような私は御答弁が出るのだと思います。この場合に対しまして、私は何か批評がましいことを申上げることは差控えたいと思いますが、この内容を見れば、今の答弁が当つていないことがよくわかるのであります。先方では、先ず第一にアメリカが、この日本貸与によつて、この経費をこれによつて節減するのだということをはつきりこの内容に示しておるのであります。でありますからその点よく一つ、これ以上申上げませんが、私は一つの感覚としてそういうことを頭の中に入れておきたいということをこれは申しておるのであります。  それから第二にお尋ねしたいことは、この協定によつて我がほうがこの船舶を借受けることによりまして、従来日本、いわゆる海上警備に当つておりましたところのアメリカ青年が、いわゆるこの協定によつて我が日本青年に振替えられるものであるということであります。これをやはりこの内容を見ますというと、先方はこういうことを言つておるのであります。それだからこれはいわゆるこの協定によつてそうなるのだ、こう言つておりますのか、この点は外務大臣木村国務大臣、如何でありましようか。日本海上警備のためにアメリカ青年がこれにいわゆる今日まで当つてつた、それをこの協定によつて日本青年に振替えるのである、こういうのであります。これをこの内容の中にその政府を代表する、それから或いは国会を代表する両者の意見が一致してこれは示されております。それに対しましては両大臣如何ようにこれを御答弁なされるか承わりたいのであります。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はアメリカ上院でどのように論ぜられましようとも、今申上げたように、そのことは日本の海岸の警備に使うのであります。アメリカ青年に代つてこの船を動かし、或いは警備に当らせるべきものとは全然考えておりません。
  21. 平林太一

    平林太一君 只今の御答弁も、当局といたしましては誠に無理からんことと思いますが、私は国会にありまするもののその立場におきまして、これをさようアメリカ側意思がなくても、我がほうといたしましては、そういう義務を拒否しておつたのでありますが、而も先方はそういうことを顕著に会議の中に現わしまして、それだからこれを貸せるんだ、こう言つておるのであります。でありますから、この二つの点を私はこの協定内容というものが、そういうものが基本となつてこれが出ておるということをこの際あれいたしまして、そうして今後のいわゆる朝鮮事変を中心とするところの今後の我が日本米国との関係というようなものに対しまして、大きな一つの示唆がここに与えられたように思うのであります。そういうことを非常に深く感ずるのであります。でありますから、それらの細かな内容に対しまして、これを一々この三通の資料を私は読みまして、私の立場といたしましては、これ以上申上げることを苦衷切々として、自由党にあります。そういう立場におきましても、これは常識というものがありますから申上げられないのでありますが、どうかこれは十分にこれらの内容をお酌みになりまして、今後我が国の行くべき方向誤りなきことを是非しなければならない。そうして我が国方向誤りなきことを期せることが、又米国誤りなからしむることであります。若し今日我が日本米国の言うのみになつて行くということは、私は米国を誤らしめるゆえんになるのではないか。これに関連いたすのでありますが、一昨日もこれは英国態度というものが米国に示されております。英国米国朝鮮に対する攻勢に反対だ、こう言つております。こういう態度を我が日本もどうか……、が我日本のいわゆる対米外交と申しますか、そういうものの上に私は一つ大きなものを把握いたしまして、そうして我れ誤らず、又彼誤らしめざる措置をとつて行くことが、いわゆる今後の我が国が世界の平和に、二度と繰返してならないところの悲惨な敗戦をいたしたせめてものこれが報いられて行くゆえんじやないか、こういうことを思うのであります。御承知通り簡単でありますから申上げますが、チヤーチル首相は明年の一月アイゼンハワー新大統領と会見する只今構想を持つて進められておるのでありますが、そういう際に今日こういうように示されておると思うのであります。朝鮮事変に対しまして、第一はイギリス朝鮮戦線で更に地域を占領するような如何なる試みにも反対である。第二はイギリスは対中共封鎖には反対である。第三はイギリスはヤール、鴨緑江北方爆撃には反対である。これらの諸点はこれまでもイギリス側が主張して来たところだが、イギリス高級将校はこの見解について次のように言明した。イギリスは板門店の休戦会談が今後再開されるとは見ていない。併し三十九度線から遠くない朝鮮のくびれた線への進撃も余り得にはならないだろう。私はヴアン・フリート大将が言うほどこの作戦共産軍の大兵力を阻止し、又殺戮することはできないと思う。又この作戦のためには厖大な兵站、兵力空輸能力海軍力を必要とするだろう。中共封鎖にしても、彼らは裏口からソヴイエトの援助を得ることができるから結局無駄骨に終ることになりそうだ。又満州爆撃ソヴイエトを会然と朝鮮動乱に参加させることになるかも知れない。国府軍朝鮮に送ることは、中国の内戦を大陸から朝鮮に移し、その内戦に他の国連軍が巻き込まれることになるだろう。イギリスがあえて提議したいのは、国連軍が現在の前線陣地を維持することである。国連軍はこれ以上土地を得るよりも、むしろ敵を悩ませるために活動的な第一線を持続すべきである。このよう考えからイギリスの希望は動乱を引延ばして先細りに終らせることにある。こういうのであります。誠に私は日本自主外交というものに大きな頂門の一針として大いに考えなければならないことだと思います。勿論イギリスとの立場我が国との立場は違います。併しながら違うということは、イギリス以上に我が国のこの朝鮮の問題に対する影響というものは、要するに遥かに甚大でありますことは申すまでもないのであります。そうでありますから、どうぞ今後のこれらの協定に、今日ここに現われました協定には、私は大体賛成をいたすものでありますが、こういうことに対しましては、もつと慎重に一つこれは取扱わなければならない事柄であるということを申上げるのでありますが、こういうことをこの協定を通じまして考えられるのでありまするが、この際これに関連をいたしまして最後にお尋ねをいたしたいと思いますことは、以上私の申上げましたことに対しての両大臣一つ考えを承わりたい。  それから朝鮮事変に対する態度に対しまして、岡崎国務大臣はいわゆる外交上の見地に立たれましてどのような今日心境でおられるか。それからどのよう方向我が国が臨むべきものであるかということをお尋ねをいたしたいと思います。この御答弁に対しましては、私からあえてあと質疑はいたしませんので、そのこともあらかじめお含み願いまして御答弁を頂きたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 朝鮮の問題につ要しては、いろいろ事情があるようであります。これに参加している国々の中にも意見はいろいろあるようであります。イギリスのほうの意見も今おつしやつたようなのも出ておりますが、又他のほうにはそうでない意見も出ておるようであります。我々も速かに朝鮮休戦と言いますか、或いは停戦と言いますか、行われることを希望しておりますけれども、これもなかなかむずかしいようであります。そこでどういうふうにしたらこの問題が一番早く解決するかということは、現にアメリカ当局においてもいろいろ苦慮しておるようですが、結論はまだ出て来ておらないようであります。私をして言わしむれば、これが何かの拍子で大きな戦争のきつかけにならないように当然しなければなりません。イギリスもそれを心配しているのでありましようが、それ以外の点で休戦問題ということになりますと、これはいろいろ意見もありいたしまして、私がここでこうしたほうがいいというよう意見を申述べるまだ段階になつていないようでございます。引続いて注意をいたしておるような次第であります。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ず吉田書簡についてお伺いいたします。吉田書簡では海上保安隊任務遂行に適当な若干の合衆国の船舶貸与してもらいたい、で十隻のフリゲート、八隻の上陸用支援艇、こういうことであります。ところがアメリカ側から十八隻貸与するということでございます。これはあとから八隻追加なされたのでありますか、追加の要求をされたのでありますか。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日本のほうから言いますと、実はかなり多くの船がなければ九千マイルに近い沿岸を警備することは困難だと考えられておりまして、ずつと前から海上保安庁では船を国内で造つて警備用に充てるという方針でいろいろ研究をしておつたようであります。ところがなかなか当時は造船所も一ぱいでありまして、又それでなくても経費が非常にかかりまするので、予算も十分にそれには間に合わないためにできずにおつたのでありますが、その問いろいろ先方と話をしておりますると、今使わないこういう船があつて借りることも可能であろうという話でありましたので、そこで吉田書簡が出たわけであります。その当時は十隻のフリゲートということになつておりましたが、実はこれらの船も各国で非常に希望しておる向きがあるようでありまして、従つて日本側としてももつと多くの船が要るのであるけれども、十隻ぐらいなら可能だろうと思つて十隻と書いたのでありまするが、アメリカ側としては日本側が欲するならほかに廻わす前に十八隻だけはリザーヴして置こう、いずれ人員等の整備ができればもつと船が必要になるのは当然だからということでこれは十八隻になつたと了解しております。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 この十八隻になりました件につきましてアメリカ下院軍事委員会の聴聞会の議事録によりますというと、ジユラムという委員が、「日本の要求が十隻であるのに、十八隻貸与せんとする理由を」。これに対しまして国防省のエンライト大佐が、「十八隻貸与の権限を附与せんとするのであります。これは日本の要求にかなうものであります。」ジユラム委員は、「いやいや、要求十隻に対し案には十八隻と謳つてありますね。」エンライト、「さようでございます。」そうすると別のウインステツドという委員が、「いつも要求以上渡している。」こう言つてまあそこで切れておるのでありますけれども、どうもこれで見るというと、向うでも十八隻なぜ貸すかということについて、いずれ国防省には理由があるようでありましようけれども、国会では答えておらない。恐らく私はこれを見まして、ただ単に余つておるからほかへ廻すのにお前のほうに先へ貸してやろうというわけではなくて、つまりアメリカ側日本に貸すについてはもつと深い根拠があるのではないか。例えばアメリカ側が現在の日本海上警備隊なるものを育てて行くと、これはまあ日本で自分で船ができない以上はアメリカが貸してくれなければならんが、一定の計画があつてその計画に基いて十八隻ということになつたのではないか、こう推定されるのでありますが、アメリカ側において日本に十八隻貸与えることについて何か日本政府海上警備の、軍事的と言うと悪いから技術的という言葉で現わしますが、技術的な理由があつて十八隻になつたのかどうか、それで又向う側のほうから十八隻が日本海上警備に先ず第一段階として必要であるということを示して来たのかどうか。これは当時の保安庁長官ではありませんけれども、木村さんにお尋ねしたい。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは私の聞き及んでおるところによりますると、別にアメリカ側日本に対して強いて十八隻を使えという要請があつたわけでもないようであります。又日本側といたしましては、初めは十隻ぐらいは貸してもらえるという予想であつたのであります。御承知通り、今岡崎外務大臣から申されましたように、日本の長い海岸線を警備するにとつては相当の船舶を要する。たまたまアメリカのほうで更に八隻を貸してやろうということになりますると、これは借受けておくことが日本の現下の情勢において最も妥当であると考えてこれを借受けるということになつた、こう考えております。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも、国家国家との間の話合いといいますか、としてはえらい漫然たるもので、私には納得できないのであります。それは、それではあとに又改めて聞くことにいたしまして、この書簡でありますが、書簡が発せられましたのが一九五二年の四月の二十四日になつております。講和条約の効力の発生が四月の二十八日であります。本来ならば当然講和条約の効力発生後において独立国家としてこういうよう外交上の問題は取扱わなければならんはずのものと思います。何を急いで二十四日にこういうものを出したか、私は恐らく占領軍がまだ日本におつて、そうしてリツジウエイ大将が連合国軍最高司令官としてとどまつておるうちのほうがすべてが運びいい、こういうようなことから二十四日に、条約の効力の発生をあと四日に控えてこういうものを出したのではないか。更にもうちよつと深く突つこんで考えますれば、これは占領軍当局日本政府との話合いで、早くやれ、こういうことで占領治下にこういう形式でやつたのではないか。こう思うのですが、当時は岡崎さんは官房長官であつたからよく御存じであつたと思うのですが、なぜ講和条約の効力の発生前に急いでこういう書簡を出して艦船の貸与を求められたか、お伺いしたい。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは前から御説明しておると承知しておりますが、ずつと前からの話であります。ところがなかな先方でも貸与ができるかどうか疑わしい状況であつて、長い間かかつたのでありますが、このときでも十隻借りられるのか、或いはもう少し余計借りられるのかも実ははつきりいたさなかつたので、こちらの手紙も十隻とは書いてないのであります。最少限度十隻、ミニマムという字を使つてあるのであります。原則としては海上保安庁の使用に適するよう米国の船を貸してもらいたい。これが原則的な話で、こつちとしては最少限度十隻のフリゲートと五十隻のLSSLがあれば結構であるということで、決して十隻に限つておらないのであります。今御質問の点は長い聞こういう話をして来まして、丁度このときにここでこれならば大丈夫だということになりましたので、機を逸せずやつたわけであります。独立とかいうようなこともいろいろ日は二十八日に大体わかつてつたと思いますが、併しもう当時は実際の我々の気持は独立したと同じような恰好で、ただ形式的にはまだそうなつておらないのであるだけであつて、もう調印して以来というものは、つまりサンフランシスコ会議以後というものはだんだんもう占領するというよう考えが違つて来て、先方もそう、もうすぐ独立するのだからというようなことで来ておりまして、この四月の二十八日という日が非常な形式的にはこれはもうまさしく画然たる区別がありますけれども、実質的には非常に区別がないような状況でありましたので、まあ二十四日にはおかしいじやないかという御質問も御尤もでありますけれども、その当時のいきさつから考えれば、別段私は不思議はなかつたものと思つております。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 木村さんにお伺いいたします。海上保安庁というのが一九四八年の五月に開庁された。この海上保安庁におきましては、まあこの書簡にもありますように、適当な警邏船隊を創設するということになりまして、小さな船を以て海上警備に当つていると、これは大体従来の水上警察に当るような仕事をしておつた。その船も極めて小型であるし、とにかくそういうようなのがあつた。それをだんだんに拡張して参りまして、七百トン級の船も造る、或いは四百五十トン級の船も造るようになつて、これは相当な船になつて来た。それでも足りない。九千浬あるの、だから到底それを守り切れないのだということはよくわかります。なぜそれならこの海上保安庁の機構を拡充して、その勢力を拡充しないのか。別に保安庁の下に海上警備隊というものを置いて、そうしてアメリカから軍艦を借りて、それに充てるようにしたのか。私は僻目かも知れませんが、前者は警察と同じようなものだ、後者は警察予備隊若しくは陸上で言えば保安隊に当るものだ。つまりアメリカ側日本の海軍を創設しなければならないという計画の下に、まあ向うの言うエンブリオーネービイというようなことで一つ育てて行こうじやないかというふうにして作つたように思われた。これは私の見方なんです。あなたは否定されるにきまつておるのですから何ですが、そういうことでできたんじやないかと、こう思う、そこでまあお伺いしたいのですが、木村さんのほうのお考えでは、海上保安庁と今度の警察予備隊との任務の相違、それから今後海上警備隊はどうして行くのか、あの船はどこに属させるのか、今のままにして置くのか、これをお伺いしたい。
  30. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 海上保安庁の任務と保安庁警備隊任務とは全然差異がありません。これは保安庁法を御覧下されば極めて明瞭なことでありまして、只今岡田さんの仰せになつたように、いわゆる陸上の警察と保安隊と、海上保安庁と警備隊と、こういう関係にあります。いわゆる陸では警察力の足らざる、つまり非常事態の生じたときには保安隊が出動し、又保安庁の船では賄い切れないような非常事態が生じた場合に対処すべく海上警備隊というのができているような次第であります。おのずからその任務は異なつておるのであります。これは何も海軍の創設とかいうようなことをもくろんでやつておるというものではありません。なおこの海上海上保安庁と警備隊との将来の関係はどうするのかということでありまするが、私は一個の試案は持つておりまするが、そこで述べることを差控えたいと、こう考えております。おのおのその任務は異なつておるのでありまするから、差当り現状のままで行くことは差支えないのではなかろうかと、こう考えておる次第であります。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、海上保安庁並びにその下にある船隊というものは、いわば陸上の警察に当るものであるから、それは現在はそのままにして置く。それから保安庁の中にある警備隊というものは、これは陸上における保安隊と同じよう任務を持つものであるから、これは別個の存在として育つて行くと、こういうふうにとれる。これでまあ私は私なりに海上警備隊の任務というものはよくわかつたのでありますが、今までの御説明によりますというと、やれ船が拿捕されそうになるから出て行つてこれは取締るのだとか、或いは又海上の密輸出入を取締るのだとか、こういうふうなことを言つておられた。だからそうなれば海上保安庁を拡充すればいいじやないかという議論が成立つのであります。今あなたの言われましたように、保安庁法に基くものだとすればこれは保安隊と同じよう意味になる。あなたのほうでは否定しておるけれども、これは保安隊がだんだん成長して行つておたまじやくしに足が生えるようにこの警備隊にもだんだんに足が生えて蛙になる。こう私は見て行きたい。それでその点はそれでいいといたしまして、次に船の貸借の問題、このまあ向うの軍艦、フリゲート艦と上陸用援護舟艇は、これは向う側では法律ができまして、それに基いて日本側貸与える。ところが保安隊の武器のほうは特別な法律がない。そして日本日本側に貸すのはそれぞれの部隊から貸されるものである。国と国との間の契約がないということは、もう昨日あなたが予算委員会で述べられた。これは成るほど協定は結んでおらんのでありますが、やはり保安隊に貸してくれますところの武器も、あれはアメリカの国有財産であります。部隊長が勝手に、任意に貸すべきものではない。日本側との協定はなくても、国と国との間の協定はできなくても、アメリカがこれを貸すにつきましては、その根拠となるべきアメリカの法律というものがなければならない。アメリカは何の法律に基いて日本側にこの武器を貸しておるのか、例えば武器貸与法というような法律があつて、それに基いて保安隊に武器を貸したのか、これをお伺いしたい。
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 別にアメリカにおいての法律的根拠に基いてやつておるわけではありません。今の武器貸与法というようなものに根拠を置くわけであります。アメリカのいわゆる極東軍の武器保管をしておる、そういうところから日本の現地のものに対して直接貸与の形をとつておるのであります。この間において別に条件とか何とかというものは何もない次第であります。現実のいわゆる使用貸借としてこれを借りておるわけであります。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 現実の使用貸借ということになつておるといたしましても、これはやはり極東軍の総司令官なり、何なりが、それを他国の保安隊なり何なりに貸与えられる権限が与えられておる。それにまあ基いておるのかどうか、何かやはりそういう根拠がなければ、漫然とどうも貸してくれるとは思わんが、その点はどうですか。
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) もとよりさようでありまして、アメリカの軍司令官がすべて権限を持つておることと私は了承いたします。その権限を持つておる者から更に委任を受けまして、日本の現実の部隊においてこれを借受けるということになつておるように了承いたしております。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカが貸しました艦艇のほうは、これは借受けまして五年間の後には、とにかく原状のようにして返さなければならない、こういうことになつております。保安隊の武器のほうは、これは何も条件が付いていないように聞いておりますが、例えば艦隊のほうにおきましては、何かの事故で沈没した場合に、損害賠償をしなければならない。高射砲とか。バズーカ、或いは軽戦車というような場合には、これが演習中何かの事故を起しまして、破損して使えなくなつたというような場合には、これは全然補償しないでいい、又それがぶち壊れました場合に、日本側で数量が足りなくなつたならば、それはどんどんと向うであとから補充をしてくれるものかどうか、それをお伺いいたしたい。
  36. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) さような場合において、補償の条件も何もございません。壊したことについて、あとから補充するというようなことは考えておりませんし、又向うもさようには考えていないようであります。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にこの海上警備隊が船を借りてこれをまあ運転する場合に、無論油なんかも買うわけであります。砲弾も例えば実弾射撃等の演習もやらなければならん、そういう場合の砲弾、或いは不時に備えて置いておく砲弾、こういうものは日本でお買求めになるのか、それともアメリカから支給されるものか。
  38. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 借りるときに、その船に貯蔵をされたものは、日本で無償で取扱いをするのであります。それを使い果した後において使おうとするのであつたならば、日本で調達しなければならないのであります。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 その砲弾を日本で調達する場合には、これは日本の、例えば砲弾を製造する会社にその注文をして作るのか、それともアメリカのほうにこういう砲弾があるのを買求めるのか、どちらですか。
  40. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今のところはまだそこまで考えておりません。現在貯蔵しておるものは一つも使つていないのであります。そこまでのことはまだ考えておりません。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 まさか二年分も三年分もくつつけてくれたわけじやないと思うのです。恐らく船の中にあるものの話であろうと、先ほどから聞いておるとそういうふうに受取れるのですが、二十八年の予算も組まれた。そして保安庁の予算のうちにはそういうことを考えていなかつたはずだ、恐らく保安庁のほうから大蔵省へ要求しておるうちには、そういうものも含まれておるのじやないかと私は思いますが、若しそうでなかつたとしたら、これは全く保安庁長官の怠慢だと思うのですが保安庁長官は二十八年度の予算において、日本側で購入する砲弾等の消耗するものの予算を請求しておるかどうか。
  42. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 二十八年度におきましては、大体今の貯蔵したもので足りると考えておるのであります。これは更に調査をいたしまして、適当な処置を考えたいと思つております。只今のところでは貯蔵分で足りると思つております。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 陸上の武器につきましても同じようなこと、これはもう借りましてから相当長い日数がたつております。従いまして向うからくれたものだけじや足りない。やはり何かの方法で調達が遅れておりますが、それは如何なる方法で調達するのですか。
  44. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 政府委員から……。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 今大臣お話だと、海上警備隊のほうは砲弾なんかは今年中は買わないでも済むだろう、従つて二十八年度予算にそれは大蔵省に要求していない、こう言つている。それがまあ本当かどうか、事務局のほうではつきり答えて頂きたい。それからもう一つは保安隊のほうはもう長い間存在しておつて、そうして大分砲弾なんかも実弾射撃なんかで使つている。そのほうも初めアメリカからもらつたものに対する補充は日本の国内で調達するように注文しているかどうか。それからそれは二十八年度の予算として請求しておるかどうか。
  46. 岡田五郎

    政府委員岡田五郎君) 先ず保安隊の演習用に使いまする実弾射撃の弾の補充、こういう問題につきましてお答え申上げます。大体現在では最初引渡しを受けましたときに受けました弾で十分間に合つているのであるが、不足した場合には一応向うとの約束では、向うから補充してもらう。こういう一応約束になつておるのであります。もう一つは二十八年度予算においてこれを見込んでいるかどうかという問題でありますが、二十八年度予算においては大体或る程度のストツクを見込みまして一応要求をしているわけであります。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 二十八年度予算においては保安隊で使う、消耗する砲弾等についてはこれは請求してある、大蔵省に請求してあると、こういうお話です。そうしますと、これは日本製のものであるか、それともアメリカ製のものを輸入されようというのか、どちらですか。アメリカ製のものをお買いになるというつもりか、日本で製造したものをお買いになるつもりか。
  48. 岡田五郎

    政府委員岡田五郎君) 大体見込んでおりますものは保安隊の空砲と演習用の砲弾をそれぞれ十億円程度要求しているのであります。大体今の考え方では一応日本製、そういう一応の考え方で進んでいるのであります。    〔委員長退席、理事伊達源一郎委員長席に着く〕
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 木村保安庁長官はかねがねどうも日本の保安隊なり海上警備隊というものは、武器がアメリカから借りたものでは魂が入らない、やはり日本製でなければ駄目だというような御意見を持つておられるように聞いておりますが、その通りでありますか。
  50. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はかねがね申します通り、できる限りにおいてはやはり日本で造つたものをやりたいということは今も考えは変りません。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと保安庁長官日本において武器を製造する、そうしてその武器を保安隊なり或いは海上警備隊なり、或いは今後できるであろうと予想される航空隊に使わしたい、まあこういう考えつた。ところが昨日の予算委員会における通産大臣答弁は、武器等製造法案は今出しておる、併し日本側のは造らん、アメリカのは……、アメリカとは言わないですが、日本側のは造らんのだ、特需用だと、こうはつきり言つておる。そうしますと、これはあなたの希望が達せられないことになります。又一部の保安隊の武器を今二十八年度の予算で請求されておるということとも矛盾しておる。併し実際は日本で以て造らす、こういうおつもりで、例えば二十八年度の予算で以てそういうものを造らす以上、これはもう試作なんかやらせておるのじやないですか。その点お聞きしたい。
  52. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これははつきり申上げます。私の理想論であります。恐らく岡田委員も御同感下さることと思います。できるなら、持たせるなら、日本で造つた武器を持たしてやりたい。併し現状においては止むを得ません。止むを得ないからアメリカの援助を受けてかような始末になつておるのであります。そこでさような試作をやつているかという御質問でございますが、断じてさような試作はやつておりません。これははつきり申上げます。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に保安庁の予算について伺いたいのですが、保安庁の予算は昨年度からの繰越が幾ら本年度中に使い切れない金がある、今のところ相当な未使用額がある、現在における保安庁の二十七年度予算の未使用額はどのくらいになつておりますか。
  54. 中村卓

    政府委員中村卓君) 本年度の全部の予算は、本年度本来の予算が五百十七億ございます。それから昨年度からの繰越予算が百五十一億ございまして、合計して七百二十九億ばかりになつております。そのうち十一月三十日現在におきまして支出負担行為が済みました額が二百八十億ございます。従いまして残額といたしましては、四百四十九億ばかり残つておるということになつております。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 一体もう四分の三年たつておるのに、この当初予算五百十七億で四百四十九億の未使用額というものは非常に多い。これは一体保安庁では本年度の予算を大蔵省に要求されるときは非常に山をかけてされたのでありますか、それとも何か特に理由があつて大きく取らなければならん、それが途中で以て果せないでこういうふうに残つたのか、その点をお伺いしたい。
  56. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は岡田委員の今の仰せは御尤もだと思います。そこで私も十分にその点を調べたのであります。そういたしますると、大体予算のうちの使用が進捗していないのは、機材費と設備費なんです。そこでこの機材費について申しますと、大部分が車輌と土木機械、通信機、その規格が相当高度なものなんです。そこで規格を決定したり、又仕様書の調整等には非常な慎重な態度を持つて進まなければならん、でたらめなことはできないのであります。そのうち相当部分につきましては、所要量全部の発注に先立ちまして、先ず試作品を造る。試作させ、そうして性能を確認して不備なものについては、これを又改善させるという処置を講じました。なかなかその間に手数がかかるのであります。そういう関係で非常な慎重を期したために相当その発注が遅れているのであります。なお又本年度前半期におきましては、この調達に従事いたしますものの人員が非常に不足しました。もう一つは御承知通り保安庁というものは、警察予備隊から発足したのてありまするが、伝統のない役所でありまして、なかなか庁員なんかの訓練も、他の役所のように行届いておりません。これらの点から鑑みまして、相当な事務の渋滞があつたことは事実であります。併しながら最近におきましては、人員も充足いたしまするし、又一面において事務のほうも練達して参りましたので、相当に成績を挙げておる次第でありますから、今後はさようなことはないと考えております。次に設備費につきましては、これは御承知通り十一万の隊員がおりますから、その配置計画の決定とか、土地の選定、入手に相当な日時を要したのであります。従いましてこれらの点から残念ながら実際の金額が使えなかつたということでありまするが、現在におきましては、だんだんこれらの点が改善いたして参りまして、大体本年度末におきまして、予算の全額は消化する状態になつておる次第であります。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今のお見通しですと、あと三カ月で四百四十九億、総予算の約五%これを使い切る、そんなことは私はできつこないと思う。これは大臣がそうお認めになつているけれども、事務当局では一体年度末までに幾ら使つて、そうして来年度に幾ら繰越されるかというこのちよつとお見通しをはつきりさせて頂きたい。ここで四百四十九億どかつとばら撒くなんということは、これは事実不可能なんです。それこそ又、そんなことをすれば、インフレーシヨンにもなるので、まさか保安隊インフレーシヨンという馬鹿な話もないのですから、ここのところをもうちよつと事務当局で少し詳しく、どのくらいの予算の使い残りが年度末にできるか、これをお伺いしたい。これは来年度の保安庁の予算との関連もありますから、これをはつきりさせておいて頂きたいと思います。
  58. 中村卓

    政府委員中村卓君) 先ほど申上げました四百四十九億と申しますのは、十一月末現在の残高でございます。のうち人件費その他が相当ございまして、いわゆる機材費と申しますものは、只今のところの資料でございますと、保安隊の関係は約二百八十九億というふうになつております。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 残つておるのがですか。
  60. 中村卓

    政府委員中村卓君) 警備隊の数字はちよつと持つておりませんが、これは船舶条約関係が遅れましたので、その関係の燃料費とか修繕費とかそういうものが大体十億見当余つておるかと思つております。従いまして只今の御質問の主たる内容になりますものは、この二百八十九億だと思うのでありますが、これにつきましては只今先ほどから長官からもいろいろ申上げたように、人員の整備と宿舎の作製とかそういうことを非常に急いでおりまして、おおむね年内には契約ができる見通しでございます。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 契約ができるということと、残つておるということとは非常に違うので、契約はどんな大きな契約だつて、千億だつて、二千億だつてできるのだが、事実上繰越しになるのはどれくらいですか。
  62. 中村卓

    政府委員中村卓君) その点は只今のところ一生懸命督促をしておるのでございまして、まだ具体的にどれほどと申上げる段階に至つておりません。
  63. 岡田宗司

    岡田宗司君 保安庁では来年度の予算額として大蔵省に九百億請求しておると聞いておるのですが、それは本当ですか。
  64. 中村卓

    政府委員中村卓君) はあ大体そのくらい要求してございます。
  65. 岡田宗司

    岡田宗司君 本年五百十七億、そして百五十億の昨年度からの繰越があつて七百二十九億、これが本年使い切れなくて四百四十九億、年度末までにまあ契約ができるかできないかわからない、大分残る、そうしますとまあ九百億を要するにはいろいろ根拠もありましようけれども、又今年も同じようなことを繰返されるのじやないか、そうして結局保安隊費用、或いは警備隊費用としてたくさんのものを分捕つて置いておくということになりはしないか、或いに又九百億なんてそのまま大蔵省に認められるとは思いませんけれども、そういうことになつて来たら、この日本財政が窮迫しております折に、こういうような無鉄砲な、見込違いのするような予算をどんどん保安庁が要求するということは、再軍備問題も今やかましい折から随分私は不謹慎な話ではないかと思う。来年度予算の要求を大まかな内訳をお聞きしたい。
  66. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その前にちよつと私から……。誠に御尤もと思います。私はそれで、だんだん何いたしますると、北海道あたりの宿舎なんかこれはどんどん早く建ててやるべきだつたろうと私は考えるのです。予算は取つてあるのです。ところが御承知通り僻陬の地であるにかかわらず、なかなか適当な場所に適当な土地を入手するということは困難な事情になつております。又請負の関係あたりでも相当慎重にやらなければならんのでありまして、あの方面における部隊員の宿舎というものは未だに完備していない、これは早急に我々はやつてやりたいと考えております。又各所のいわゆるキヤンプでありまするが、これは御覧下さいますれば明瞭でありまするが、極めて不備なところで今宿泊しております。これも予算を取つておるのであります。まださような建築の進まないところもある。これらについては私は早急に何とか改善して善処したい、私はこう考えておる次第であります。
  67. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 来年度大体大蔵省にお願いいたしました金額の総額は約九百億でございますが、そのうち主なるものといたしましては、各保安庁の施設の整備に要する費用、例えて申しますると、保安庁の庁舎、これは現在商船大学を借りておりますが、これを建築する費用でありますとか、或いは保安大学の研修所、技術研修所、そういうものの建築費を約五十億くらい要求しております。そのほかに、これは大蔵省で承認を得られないのじやないかと思うのでございますが、各種の編成装備品、これにつきまして日本語で何といいますかちよつとわかりませんのですが、リプレース・ストツクと申しまして、例えば燃料について見ますると、これをニカ月分或いは三カ月分をストツクするというような要求が非常に大きく出ております。金額といたしましてはこれだけで恐らく百億を超えておると思います。それから保安庁におきましては例えば病院でございますとか、或いは被服、糧食、燃料等の補給の事務を掌つております補給廠、こういうものが整備できておりませんので、病院の建築におきまして約三、四十億、補給廠の建設費といたしまして約五、六十億、或いはその他保安隊の幹部を養成いたしまする幹部学校、或いは業務学校、そういうような学校の施設がやはり十何億か出ております。そのほかに大きな費用といたしましては保安隊が現在演習場、訓練場等を全然持つておりませんのでこの計画を約百数十億出しております。この金額が大きくなりましたのは大蔵省にお願いいたします場合に、一応演習場、訓練場というものは理想的に整備いたしまするとこれだけの金がかかるのだということの目安をつけます上において理想的の計画をお願いをしておるわけでございます。こういうよう費用が昨年度と比べまして附加して来ておりまして、総額約九百億の予算を出しておる次第でございます。
  68. 岡田宗司

    岡田宗司君 これだけ合してまあ大体三百五十億くらいですね。これは新規要求ですね。
  69. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) さようでございます。
  70. 岡田宗司

    岡田宗司君 従来の予算から見ますというと、非常に厖大なものになる、使い残りもたくさんあるということになつて来るのですが、一体この九百億というのは本年度の使い残りと合わすと相当な額になるのですが、これは非常な弾力性を持たしてやつて来年度においてアメリカ側のほうからの要求でもあつて、保安隊の人員を殖やすとか、或いは向うさんが又軍艦を貸してくれて警備隊を殖やすとか、或いは又飛行機をたくさん貸してくれて航空隊を作るとか、そういうよう費用がこのうちに含まれておるというのではないのですか。
  71. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私からその点ははつきり申上げておきましようアメリカからさような示唆を受けておりませんし、又我々としては差当りのところ人員を殖やそういうという気持はありません。御承知通り保安庁法におきましても定員がはつきりきめられております。それから闇の人間というものを作ることはできないのであります。その点においては断じてさようなことはあり得ない、こう考え、又すべきものではありません。ただ御承知通り海上警備隊のほうがこれは八隻殖えますると、その乗組員の定員が殖えまするから、来春の国会においてもその定員についての御審議を願いたいと、こう考えております。
  72. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、差当りは保安庁法に規定されてある十一万、こういうわけですね。
  73. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうです。
  74. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうして海上警備隊のほうは八隻殖えますから、それだけ人員が殖える。航空隊のほうはアメリカから百二十機の飛行機を貸してくれるということになるそうですが、そのほうの人員、これはどういうふうになつておりますか。
  75. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点についての人員の増加をやりますると、やはり法律の改正をしなければなりません。只今のところでは、若しもそういうことになりますると、十一万の中から何とか充足しなければならんと考えております。併し飛行機のことについてはまだ確定したことは何もありません。
  76. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、差当りは十一万で、若し航空隊ができるとすれば、そのうちからということになるが、或いは二十八年度において、いろいろな諸般の情勢からもつと殖やすような場合も起らんとも限らん、特に航空隊の場合にはそういう問題が起ることも予想されるのですが、そういうことになりましようか。
  77. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まだはつきりしたことは申す段階に至つておりません。
  78. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、現在のところでは保安隊に十一万、海上警備隊があの程度ということですが、保安庁長官が間接侵略の問題を非常に強調されており、そうして何も日本の中の共産党の暴動或いは小さな警察で取締れるようなものを問題にしているのではない、保安隊なり、海上警備隊なりというものは外から使嗾されて、外から武器でも密輸入してやるような大きな験擾事件を目標にしておる、こういうわけですが、それを仮に承認するとしまして、木村さんは現在の外の情勢を睨み合せて、一体保安隊が十一万或いは海上警備隊が現在の状況で足りるとお考えですか、或いは外から使嗾するとが何とかというものが航空機を持つて来るということも起るわけですが、今考えられておるような程度で足りるとお考えですが。若しそれだけでは不十分とすれば、やはり何年間にそれをどれだけにしなければならんという御計画があるはずです。その御計画がございましたら、大綱でもいいからお示し願いたい。
  79. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今の情勢判断から申しますると、この程度でよかろうかと考えております。併し御承知通り、国内情勢なり国際情勢の変転というものは測り知るべからざるものがあるのであります。これは先のことは私は的確に申上げることはできません。又何年先にどういう計画をすべきであるかということについては、私は今のところその計画は持合せがないということをはつきり正直に申上げます。
  80. 岡田宗司

    岡田宗司君 或いは木村さんはそうお考えなつおるかも知れませんが、大体アメリカ側の申し分によりますれば、アメリカの陸上軍を日本から引上げるためにも日本の自衛力を漸増させなければならんと言つておりますし、それから又その点から見れば、アメリカ軍にリプレースさるべき日本の自衛力なるものの量というものを更に増大させなければならんことは明瞭です。恐らくこれはアメリカのほうではそう考えておるだろう。又海上警備隊にいたしましても、航空隊にいたしましてもそうであろう。そういうことについてアメリカ側のほうから日本政府に何らかの形でお話があつたことはないのですか。これは新聞紙上によく伝えられておるところですが、アメリカ側からそういうことについて話があつたことはないのですか。
  81. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私に対してはありません。
  82. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしますが、この法案通りまして、そしてそれに基いてアメリカの艦艇が日本に引渡犬れる。引渡されたときからアメリカの国旗が下げられて日本の国旗が掲げられる、そうなりましたときに、この船舶なるものは勿論あなたの言ですと軍艦でなくなるわけですけれども、所有者はアメリカである。そしてアメリカはこれは軍艦として貸しておる。日本側は借りたとたんにこれは船舶として取扱う。そうすると、このフリゲート艦というものが、アメリカでは軍艦、日本では船舶というのですね、これは二重人格じやない、二重船格を持つておるということになるのですか。
  83. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は二重人格と考えておりません。これは日本で使うのでありますから、日本考え方何如によつてこれは処置すべきであります。日本で借受けて、現に日本で保管して使用しておるのでありますから、アメリカ意思は何とあろうとも、私は警備隊の用います一種の船舶であると考えております。
  84. 岡田宗司

    岡田宗司君 フリゲート艦並びに上陸用援護舟艇はこれはアメリカの艦艇のリストから削られるのですか。
  85. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカでは廃艦の手続きをするようであります。
  86. 岡田宗司

    岡田宗司君 廃艦しますと、今度原状のままで返すということになると、廃艦が軍艦に復活するのですか。
  87. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それはアメリカの国内における処置であります。我々の関知すべきことではないのであります。
  88. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも私今の保安庁長官の言われたことははつきり納得できないのですが、アメリカではちやんと所有船舶と書いてある。条約の中に所有者はアメリカとはつきり書いてある。廃艦して単なる船舶にして日本引渡すのではないように私には思える。そういうことは何にもこれに記されていない。そうしますと、どうも私は二重人格を持つもののように思わあるのです。アメリカは軍艦として貸した。だからネーヴイル・ヴエツセル書いてある。ちやんとこれはアメリカ側の速記録を読みましても、アメリカ側法案を見ましても、廃艦にしてから貸すとは書いてない。そうすると、どうもあなたの言うことは受取れないので、やはりこれは向う側が軍艦として貸す、軍艦として保有しておる。併しあなたのほうではまあ工合が悪いから船舶とする、こういうことをしたつて依然として借りた船は二重人格を持ついておるもののように私には思える。あなたは思えないといつて、結局水掛論ですから、これ以上私はどうのこうの申上げません。  次にお伺いしたいのは、フリゲート艦十八隻或いは上陸援護舟艇の五十隻では到底日本の海岸を警備するに足りないというふうに、これはこの軍艦を借りることに賛成しようが、反対ようが認められると思われるのですけれども、そういう場合に更に何かもつと大型の軍艦、巡洋艦程度のものを借りるとかいうようなことはお考えになつておらないのですか。
  89. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 全然考えておりません。日本の海岸の警備についてはおよそ限度があります。そんな巡洋艦や大きなものを借りても役に立たないのであります。経費ばかりかかつて人員も要りますから、さようなことは全然考えておりません。
  90. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、本日の新聞でございましたか、保安庁でヘリコプターを買込む、こういう記事が出ておる。何かアメリカ側のほうの斡旋で買込むということでありましたが、その事実はどういうことでございますか。
  91. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 実は私はあの新聞の記事を見て驚いたのであります。私は何にも覚えがございません。私はどの委員会で申しましたか、我々も将来としてはヘリコプターを持ちたいということは申しました。明らかに申しました。又現に私もヘリコプターを持ちたいと思つております。併しこれは確定したわけでも何でもないのであります。私は実は今日の読売新聞の記事を見て驚いた次第であります。
  92. 岡田宗司

    岡田宗司君 この船舶貸借協定が効力を発生いたしまして日本側に引渡される、その場合に、これは日本の国旗が掲げられて、そうして日本側で完全に使用することができるようになるのでありますが、現在ではまあアメリカの国旗を掲げてアメリカ船舶のままでおるが、それで日本の乗組員が訓練をされておる、今はアメリカの将校の下に訓練をされておるのですか。
  93. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカの将校は多少そこに乗組んで日本の船員にいろいろの示唆を与え教育に従事しておることは事実であります。
  94. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは引渡しが終えましたら全然やめられるのか、それとも引渡後も引続き同様な状態でアメリカの将校が残つて訓練をするのか、その点をお伺いしたい。
  95. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大体においてもうすでに艦内の様子もわかり、教育も受け、取扱いの方針も覚えましたので、今後アメリカの軍人が乗組んでこれに示唆を与え、教育するようなことはありません。
  96. 岡田宗司

    岡田宗司君 保安隊のほうにはまだ大分残つておる、で、過日のお話ですと、三月末までに大体引揚げてもらつてというようお話でしたが、現在保安隊におりますところの顧問団というものは、保安隊というのは保安庁全体です、保安庁全体におりますところのアメリカの軍事顧問団というものは何名くらいおられるのですか。
  97. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 保安庁の本庁においては何人もおりません。各キヤンプごとには個々の顧問としてその所によつて数は違いまするけれども、現在は非常に少くなつてつて、全体の数といたしまして約六百名ばかりおります。これはだんだん減少をいたしまして、特に必要でない限りは来年三月或いは或る部分については八月に引揚げる予定になつておる次第でございます。
  98. 岡田宗司

    岡田宗司君 六百名の軍事顧問団がおるといたしまして、これは如何なる法律的根拠に基いておるのか、それから又その軍事顧問団の俸給等は日本側において払つておるのかどうか。その軍事顧問団の権能と言いますか、とにかくどういうよう任務というか、権能を持つておるか、そういうことをちよつとお聞かせ願いたい。
  99. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは俸給等は全然日本側で払つておりません。アメリカの好意でございます。ただ助言をするということになつておりますので、雇用契約も何もないわけであります。
  100. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは日本側からいてもらうように頼んだのですか、それとも向う側が占領時代から引続きそのまま居座つて訓練してやるという態度でおるのですか、それはどつちですか。
  101. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは主として日本側のほうでアメリカから武器を借りております。その操作或いは訓練の点において昔の軍隊式と余ほど趣きを異にしております。日本のほうで全部慣れるまで、我々としてはそういうことの示唆を与え、助言を与えてもらうということが好ましいと思つてつてもらつておるのであります。
  102. 岡田宗司

    岡田宗司君 アメリカ軍とそれから日本の保安隊との共同訓練という問題が事実上行われておる。共同演習と申しますか、これはその場合には大体アメリカ側の指揮下におかれておるということを聞いておりますが、常に今おかれておる保安隊のアメリカ軍との共同の演習等はそういう形で行われておるのでしようか。
  103. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 岡田委員がそれはどこからお聞きになり、又御覧になつたかも知れませんが、アメリカと共同訓練をしておるということは事実ないはずであります。ありません。
  104. 岡田宗司

    岡田宗司君 相馬ケ原において行われておるのではありませんか。
  105. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) あれは共同訓練ではなしに、アメリカ軍の顧問団が来て、その操作を教えに来ただけであります。共同訓練とは全然趣きを異にいたしております。
  106. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に岡崎外相にお伺いしたいのですが、岡崎外相はこの協定の成立後において、日本側から見ますれば、五カ年間経てばこの船を引渡す。更に五年間又これを更新することができるというふうな協定になつております。この五カ年間でこれを返すということになるとすれば、これはその間にですね、日本側のほうでこれに類するものを造つて、これに置き替えるということでなければ海上警備が実際できなくなつてしまいますが、そういうことを向う側と何かお話合いになつて、この五カ年間ということをきめられたのですか。つまり日本側でこれに同等の力、或いはそれ以上の力を製造して持つ、だから五カ年間の間だけ借してやろうということでこの話合いを成立さしたのか。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今からはつきり計画はできますまいが、保安庁長官もおつしやつておられるように、できれば日本側でこの沿岸警備の目的のために、特に船を造りたいということでありますから、一応五カ年間で切つてみて、そのときの情勢で、こんな船がたくさん要らないといような事態がないとも限らん、或いはもつと要るという事態があり得るわけでありますが、そのときの情勢によつて更に考えるわけでありますが、一応この船の寿命もありますから、一応五カ年間で切つて、使つてみてどういうふうであるか、一応そこに区切りを付けてみようという単純な考えであります。
  108. 岡田宗司

    岡田宗司君 今の外務大臣お話でも五カ年間に或いは更新された十カ年間の間に、まあ必要がなくなればいい、又船の年齢の問題もあるからというお話のほかに、やはり置き替えて、日本側でできるかということも暗々裡に予定されておるように思う、この点についてはアメリカ側との話合は何にもなかつたのかどうか。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ側とは別に話合はありません。併しこの船を借りる前には、政府としては数はもつと多かつたと思いますが、一時この船を造ろうという計画までやつてつたと思います。政府と言いますか、保安庁ではそれは予算その他の関係で実現はできなかつた従つて日本側でこういうものをできれば造りたいという気持は変らずあると考えております。
  110. 岡田宗司

    岡田宗司君 では私はこれで終ります。
  111. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ちよつと申上げますが、外務大臣は五時から予算のほうに行くように請求されておりますので、五時まではここにおいでのはずでございます。それから五時半から六時までは内閣委員会のほうへ行かれますので六時にはこつちへ帰られます。それから木村長官は五時二十分までここにおられまして、それからちよつと他に行かれて、六時十分ぐらい前にはこつちへ帰られる、こういうことになつておりますので、さよう承知おきを願います。
  112. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は同僚の兼岩君が病気で倒れてしまいましたので、本日代りに出て参りまして、私たちの尋ねたい数点を伺いたいと思つて参りましたが、これまで委員会に出ておりませんでしたので、各委員の質問と重複する点もあるかもわかりませんが、その点はお許しを願いたいと存じます。大体もう岡田君が相当御質問下さいましたので、私たちの質問する点も非常に少くなつたように思うのでありますが、数点だけ質問さして頂きたいと思います。この協定自体が私たちは憲法に違反する。これはこれまでたびたび皆さんから言われている点だと思うのでありますが、なぜならば私たちは私自身が外国旅行をいたしましたときに、大国とか、いわゆる第三国の海軍を見ましたときに、大体その海軍の姿というものは、今日日本が借りているフリーゲート艦、この船で構成するような、その船程度のものを第三国では海軍と見ておつたと思うのです。そういう状態が今日日本に現われるわけなんですが、それをなお木村長官は軍備でないということを言つておられますが、どこからそういうことがはつきり言えるのか、その根拠をもう一度伺つておきたいと思います。
  113. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この船はもうしばしば申上げます通り日本の海岸の警備と人命財産の救助のために使うことを目的とするのであります。およそ軍備と申しまするのは、戦争の目的を以てする軍事力であります。これを軍備と申します。ここで根本的にその目的が違つておるのであります。而してこの船は只今仰せになりましたように、アメリカにおいては一種の軍事力の行使のために使つてつたことはあるのでありますが、併し日本へこれを借り受けた以上は普通の船舶として、ただこれは日本の平和維持のために使うのでありますから、毫も憲法違反になるという理由はないと我々は考えております。
  114. 須藤五郎

    須藤五郎君 私も坐つて質問させて頂きますから、長官もどうぞ坐つたままでお答え願つて結構です。  それでは、今の長官のお話ですと、軍備は戦争を目的とするものだ、すると、侵略戦争を目的とするもので軍備だというふうにお考えになるのでございましようか。
  115. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) もとより軍備というのは、今申上げましたように、戦争を予定し、戦争を目的として備えるべき一つの軍事力であると解釈しております。
  116. 須藤五郎

    須藤五郎君 それではもう一度伺いますが、今改進党は再軍備を云々しておりますし、自由党といえども、財源が許すならば再軍備はしたいと申しておりますが、それは戦争を目的とするために、いわゆる侵略を目的とするためにあなたたちは再軍備をしようというふうに考えられるのですか。
  117. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いや、そうとは考えないのです。いわゆる軍備に備えることもいわゆる軍事力なのでありますから……。
  118. 須藤五郎

    須藤五郎君 軍備というものは戦争を目的とするものだということをあなたはお答えになつていらつしやいますから、その軍備を作ろうというのは、即ち戦争を目的とするのかという質問ですから、はつきりその点をしておきたい。戦争を目的とするのでなかつたならば再軍備は必要でないということになると思うのです。
  119. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは根本から申しましよう。御承知よう日本の憲法第九条には、戦力を保持してはならんということがある、そして同条には、国際紛争解決のためには武力の威赫だとか、武力の行使をしてはならん、国際戦争をしてはならん、こう書いてあります。これは主としていわゆる侵略戦争を目的とすることを禁止したわけであります。ただそれ以外の日本のいわゆる自衛と申しましようか、一種の日本を護るべき力は保持してはならんということにはなつておりませんから、改進党あたりの申されていわゆる自衛力ということは、これは私は考え方によつて憲法違反でないと考えております。併しながら憲法第九条二項によりまして、戦力を保持してはならない、陸海空軍その他の戦力を持つちやいかんと考えております。いやしくもかような力を持つ以上は、これは侵略の目的のためであろうと、なかろうと、自衛のためであろうと、それは持つちやいかん、こういうことになつておるのでありますから、その間おのずから限界があるのであります。
  120. 須藤五郎

    須藤五郎君 あの日本の憲法が再軍備をしないということを言つておることは、戦争をしないという前提の下に再軍備をしないと思うのです。戦争をしないというのがあの主眼だと思うのです。再軍備をしないというのが主眼じやないと思うのです。私はそういうふうに理解しております。ところがあなたは、再軍備をすることは、軍備というものは戦争を目的とするものだ、こういうふうにおつしやいますが、そこで私は将来自由党は財源が許せば再軍備をするということは、戦争をしようという目的がそこに起つて来るのだ、そこに附随して来るんじやないかと言つておるのです。
  121. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは自由党なんかの言うのは二つあるわけです。一つは憲法を改正していわゆる戦力保持の禁止規定を、これを削除しようということが一つであります。もう一つは、それまでに至らなくても日本のいわゆる自衛力保持のために軍備を持とう、自衛力の保持のために、自衛のための戦力、その戦力というのは語弊がありまするが、自衛のための一種の力ですね。
  122. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ちよつと須藤君に申上げますが、実は木村長官は今予算のほうから是非出てもらいたいという要求が今来ておるのでありまするが。
  123. 須藤五郎

    須藤五郎君 五時二十分までじやないのですか。
  124. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 法制局長官がおられますから。
  125. 須藤五郎

    須藤五郎君 いや、あなたから伺いたいのだがな。
  126. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 六時十分前には帰られるそうですから、それから……。
  127. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは私の質問は長官が帰られるまで保留して、帰られたらすぐ私に質問させて頂くということで保留してよろしうございます。
  128. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 承知いたしました。
  129. 須藤五郎

    須藤五郎君 外務大臣はもう帰られるのですか。
  130. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 六時までです。
  131. 須藤五郎

    須藤五郎君 外務大臣が帰られるまで保留しておきます。帰られたらすぐ私に質問さして頂きたいと思います。
  132. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 承知いたしました。速記をとめて。    〔速記中止〕
  133. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 速記を始めて下さい。
  134. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いわゆる接収解除の問題についてお尋ねしたい。先ず法律問題をお尋ねして、次に事実関係のほうに移りたいと思います。  先ず第一点は、いわゆる解除ということは法律的に見てどういう性質のものであり、又どういう効果を持つものであるかという点をお尋ねしたい。
  135. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) いわゆる解除と申しますのは、現在においては駐留軍が、過去におきましては連合国軍が、日本政府に対しまして接収又は、現在は提供と申しておりますが、提供の解除をするという意味でございます。法律的に申しますと、第三者のためにする契約に対して、その第三者がもうその契約を存続する必要がないという意思表示をいたします。
  136. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ずつと私続けてやりますからお許し願いたい。  そのいわゆる第三者というのは。
  137. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 当事者は日本政府と所有者でございます。
  138. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それは何の当事者でありますか。
  139. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 不動産の賃貸借契約の当事者であります。それで接収をしまして、軍はその契約に対しる第三者になります。
  140. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その賃貸借の関係からすれば第三者だが、先ずその点はあとで又お尋ねするけれども、私の聞いているのは、先ず第一点の解除するものの性質、これを裏を言えば接収ということと裏腹をなすだろうと思うので、先ずそこから聞いて行きたい。
  141. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 説明の順序としまして、つまり接収の性質から申しますと、接収は日本政府に対する不動産を提供せよという要求でございます。現在は調達命令の形をとつて……。
  142. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私は現在の関係でないことに限つてお答え願つたらいいのですから。
  143. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 接収は調達の要求をする命令でございます。解除はその命令の効果を消滅せしむる軍の日本政府に対する意思表示であります。
  144. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうすれば、そのいわゆる解除によつて現実に今まで使つてつたものの地位はどうなるのですか。その関係はどういう法律効果が発生しますか。
  145. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 今まで使つておりましたというのを……、ちよつとお伺いしたいのですが、どんな意味ですか。
  146. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 つまり今までというのは、いわゆる接収家屋に住んでおつた外国側の……。
  147. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 外国側の連合国軍の要員は、例を申して恐縮ですが、丁度政府の公務員宿舎に入つておる公務員の立場と同様です。そういう関係になります。
  148. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうするというと、その解除によつて連合国の要員はそれを使用する権利はそこで消滅するのですか。
  149. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 消滅いたします。
  150. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それからその次にお尋ねしたいのは、今のに関連して来るのですが、賃貸借の関係になつて来ると、当事者は家屋の所有者と日本政府、これを官庁の方面から言えばどこですか、調達庁ですか。
  151. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 厳格に申しますと、調達局の支出負担行為担当官である不動産部長が契約の当事者であります。
  152. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 契約の当事者である。そうすると、解除されれば、その賃貸借の契約関係というのは法律上消滅する手続をとるわけですね。
  153. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) さようであります。解除になつたということで、一定の期間、これは一カ月という予告期間があるということになつておりますので、その一カ月を経るという場合が原則でありまして、それ以後は日本政府の支出負担行為担当官はその契約を継続して行く権限がなくなるわけです。
  154. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうすれば、今度は解除をされた、そうして賃貸借契約も消滅したというか、硝滅といつてはちよつと正確じやないのだろうが、賃貸借契約が終了すると言いますか、そうするというと、元の家屋の所有者というものは、当然に返還を受ける権利が具体的にそこに発生しますね。
  155. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 御説のように契約の終了を約定してございます。従つて解除になりました後、これを返還をするという意思表示をこちらからいたしまして、いつの時期に解除する、その時が契約の終期になります。その契約の終期が到来いたしました場合には、その物件を返還する義務政府に生じます。
  156. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それは僕はちよつと理解しにくいのだが、法律的に見て……。返還するという意思表示をすることによつてというより、返還の義務が発生するのじやないのですか。
  157. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 物権契約的に考えますと、契約の終期によりまして返還する義務が発生します。これはお説の通りです。で、今返還をするという意思表示は、法律行為といたしまして考えた場合は、物件の引渡しの意思表示と考えられます。
  158. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それはわかる。併しとにかく返還の義務は発生しますね。
  159. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 発生いたします。
  160. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうしてその返還義務者は誰ですか。
  161. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 当事者たる調達局の不動産部長ということになりますが、つまり日本政府という意味になります。法律効果は日本政府に及びます。
  162. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それからこの返還するということは別の、法律用語でない普通の用語で言えば、家を明渡すということによつて、その義務が、先ず少くともその主なる部分が履行されますね。その明渡し義務も当然返還義務の中に入つていますね。
  163. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 通常の場合、殆んどの場合は明渡し義務が入るわけでありますが、私は御質問のうちに何か異例のものがある場合でも、明渡し得る場合がある。
  164. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いや、私の言うのは、そういう場合というより、私が少し法律問題を正確に言おうとして、そう言つているのだから、その明渡し義務のほかに、例えば損害補償の問題とか何とかというものが発生することがあり得るから言つておるだけのことで、そのほかの附帯的ないろいろのそれに関連する義務が発生することがあるから、そういつているのです。それからそういうことを考慮に入れないで言うならば、つまり明渡し義務が発生しますね。
  165. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 発生いたします。
  166. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 発生しますね。そうしてその明渡し義務者というのは、これは誰ですか。
  167. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 国でありまして、その執行機関は不動産部長であります。
  168. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それでは次に事実関係を交えて聞きたいのですが、今までの法律問題の点は、むしろ私当然なことだと思う。併しいわゆる接収の関係というのは、実際問題として非常にいろいろ複雑になつているようだから、私特に念を押しますが、私それでその法律上の関係は了承しますが、これは外務省のほうからも答えてもらいたいのだけれども、以前のいわゆる連合国の要員の中で、アメリカの軍関係以外のものが接収によつて住んでおつたところが、解除されたにかかわらず、まだ明渡がなされていないという事例がありますか。
  169. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 実はこの問題は、外務省は御存じの通り国際協力局が担当いたしておりますので、私から御返事申上げるのはどうかと思うのですが、たまたま多少知つておりますから、来たついでに御返事をいたしますと、一、二そういう事例が残念ながらあると思います。
  170. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それはどこですか、あなたの知つておられるのは……。
  171. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) ノールウエー公使の官邸がその一つの例だと思つております。
  172. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは勿論川田さんは御存じですね。
  173. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) ノールウエー公使の官邸というのをはつきり存じてはおりませんでしたが、そういう事例のあることは存じております。
  174. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これは併しもう一つさつきの法律上の観点に入つて来るのですが、これが解除されて、而も改めて家屋の所有者との間に賃貸借の契約が更新されるなり、或いは改めて作られるなりしない以上、当然にこれは返還さるべきであり、又明渡さるべきものですね。そうして而もそういう義務を履行すべき責任というものは、先ほど明らかになつたように具体的には調達庁のほうにある。
  175. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) お説の通り、そういうかたがおりました場合出て頂いて、完全な形で履行するのは調達局側の義務と存じます。
  176. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 義務責任ですね。そうすると先ほど言われたノールウエーの公使の問題があるということだが、これはどう処理されておるのか。
  177. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 二つの処理方法を考えております。先ず一つは、そのノールウエー公使に対しまして、普通の民事契約によつて、その所有者が賃貸借を実際に入られた日から結ぶ、もう一つ外交上の交渉によりまして、ノールウエーのかたに一日も早くそこを出て頂くということを調達庁本庁から外務本省に対して要請をしております。
  178. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 本人が、所有者が今の二つの場合で、これを契約を更新するなり、新らしい契約をしないという意思の場合、これは明渡すのは当然のことですね。
  179. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) さようでありまして、本人、つまり所有者がそのノールウエー公使館と契約を結びたくないという場合には、明渡しをして頂くより仕方がないが、実際問題といたしまして、普通の家屋の賃貸借契約におきましても、いわゆる不当賃借というような状況になつた場合に、或る期間はそのままその状態が維持される状況でありまするので、若しこういう際に次善の策といたしまして、所有者に満足に近い心境になつて頂くためには、その使用料をお払いをする。それは先ほど基礎的法律の限界で申上げましたように、もう支出負担行為担当官といたしましては、賃貸借契約を結ぶ権限が失われておりまするから、民法的に申しますれば、履行不能に対する損害賠償の形で、現在閣議の要綱によりましても三カ月以内の管理費を払うという規定がございます。これを特殊、異例の事例といたしまして、実際に明渡さない期間、管理費を払う。即ち内容は従来の借上料を払つて行く、こういう措置にいたしております。
  180. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうすると、このノールウエーの公使館に対するこの明渡しの履行についての直接その任に当るべき担当の責任者というのは誰ですか。
  181. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 当面の責任者は契約を結びました不動産部長であります。併しそれは国を代表しておる関係で、これに対しましては調達庁本庁の不動産部長が外務省への折衝に当り、又損害賠償を要求いたされました場合は法務省が所掌の当事者になるのであります。
  182. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務省を通じてやつておられるのですか。
  183. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 現実の立退き要求は外務省を通じてやつております。
  184. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その立退き要求書は出しておられるのですか。
  185. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 判明いたしましたケースにつきまして……。
  186. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今のノールウエー公使館の場合は。
  187. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) ノールウエーは、甚だあれでございますが、私はつきり今ここで覚えておらないのでありますが、全部そういうケースにつきましては外務省のほうに公文書を以て連絡をいたしております。なお立退き要求方を要請しております。
  188. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務省のほうでその提出の意見を……。
  189. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 只今の不動産部長のほうからお手紙を頂いておりますかどうか、これは事務的にいたしております。国協のほうだけ確めて参りましたので、遺憾ながら御返事ができませんが、ただノールウエーの公使館との実際上の交渉は、国協の依頼により欧米四課が当つておりますから、事実上の問題としてノールウエー公使館にはこの交渉を続けております。事実問題といたしまして、勿論早く明渡すことが大事であると考えているのですが、ただ如何せん家屋払底の折から、なかなか向こうも適当な地に移るということができないわけであります。二、三ほかにも事例がありましたが、ケースはたまたま外務省も口を開きまして、遅くではございましたけれども、最近までに片付いた例が一、二あるわけであります。従つてノールウエーの問題もできれば持主との間に賃貸契約を、若しできない場合においても適当な時機に適当な住宅を探して移すように、これは単にノールウエーだけの問題でなく、家主と外務省も協力して探しているわけであります。遺憾ながら現在まで、この問題につきましての話合いというものの解決ができません。今後ともこの努力は続けるつもりでありますが、現在の状態といたしましては、こちらも随時催促並びに家探しの協力をしているというのが現状でございます。
  190. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ノールウエーの場合は、家屋の所有者は新らしく契約を作るとか、或いは更新するとかいう意思があるのですか。
  191. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 持主のほうにはその意思はないようであります。
  192. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 なければ当然にこれは、つまり向うは明渡さなければならない性質のものですね。
  193. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) さよう承知しております。
  194. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そのことを調達庁のほうから要請というふうに言われたが、これはどういう意味ですか。これはむしろ何でしよう、権利の放棄でしよう、お願いする事柄ではないでしよう事柄は。
  195. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) お願いするのは調達庁本庁から外務省に対してのお願いです。これは官庁間でお願いの形に……。
  196. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それはそうです。
  197. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 相手が外国人でありますために、そういう形をとつておるのでありまして、仮に日本人が入つてつたといたしますれば、これは法律上執行手続を……。
  198. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それはそうではないでしよう。あなたのほうでは、このノールウエーの公使に対しては要求を、ちやんと意思表示を権利の行使としてされて、或いは文書で、恐らく文書でやつておられると思うが、外務省を通じてそれをされて、それを基にして外務省が折衝しておる、こういうことではないのですか。
  199. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) その点は政府部内に協定がございまして、そういう外国人に対しましては、調達局乃至調達庁が直接に交渉をすることなく、外務省において行うという協定に基きましてやつておるわけです。官庁間の協議ができておりまして……。
  200. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 協議ができておつて、その内容は……。
  201. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 外国人に対しては外務省を通じて行うということになつております。
  202. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 通じて行うが、それに対しては先ず明渡しの権利者たる調達庁のほうで、その外国人に対して、今の場合はノールウエーの公使に対して明渡せという要求をしておるわけでしよう
  203. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 実際はその場で口頭では明渡せという意味のことは要求しております。けれども今のような手続が一つきまつております関係上、文書を以て……。
  204. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 きまつておるといつてはおかしいじやないですか。
  205. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 外国人に対する一つの渉外関係になるのでございます。
  206. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 渉外関係と言つたつて、こういうことは渉外関係はわかり切つておるが、渉外関係……。
  207. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) そういうやり方が悪いということにつきましては……。
  208. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いや、おかしいじやないですか、権利の行使として、当然の要求をあなたのほうは向うに意思表示をせねばならんでしようが、それについて外務省が斡旋をするというならこれはわかるが、これらの履行について一応法律上の履行は当然すべきことじやないですか。それをしなかつたら、向う側では法律的に要求されるかどうかはつきりせんじやないですか。
  209. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 法律的に要求することをまだいたしておりません。
  210. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 なぜしないのですか。
  211. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) それはしないということが果して……。
  212. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 おかしいね、それは。
  213. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 適当であるかどうかにつきましては……。
  214. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 適当も何も、あなたは、それがために国家として損害賠償まで払わなければならんようなことになつてつて、せねばならんかどうかが明らかじやないなんて、そんなばかなことはないじやないですか。
  215. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) それは現在在日しております外国人に対します一つ政府の扱い方として、いきなり……。
  216. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 要求はせんというのですか。
  217. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 要求はせんということになつておるのであります。
  218. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ほう、おかしいね、外務省どうなんですか。それなら向うは返しはしませんよ。
  219. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 只今特別調達庁のほうからお答えがございましたので、実際上調達庁のほうから外務省にどういう要求がどういう形で出ているかということは、よく特調のほうを調べまして御返答申上げますが、私どもが実際上ノールウ工ーの公使と交渉しております立場から申上げますと、特別調達庁の意思があつたかどうかは別といたしまして、法律上当然に日本の持主は明渡しを要求する権利があり、明渡しをしてもらうのだということはノールウエー側に通じてございます。ただ一般の場合と多少違いますのは、ノールウエーの公使は外交官の身分をここに持つております関係上外務省といたしましては、本件を法律問題に取上げることなく、でき得べくんば円満なる解決を見たい。新らしいところを探すなり、或いは持主にもう一回考え直して欲しいということで交渉を重ねて来ましたが、これも大分むずかしいように思います。ただこの問題は杉原委員十分御承知ように、押し詰めて行きますと、一国に駐在する外交官を訴訟の相手方として問題にできるかという問題にかかつて来ますので、外務省といたしましては、できるだけ穏便に、円満に、友好裡に解決に導きたいというので折角努力中であります。
  220. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その見込みはどうです。
  221. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 恐らく多少の時日はかかりましようが、全然見込みがないとは言えないと思います。
  222. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それはいわゆる渉外関係であり、そして外交官であるからこそ、却つてこういう問題は公正に処理するということが必要なんですよ。却つて向う側としてもそうすべきですよ。又そうするようにこつちは努力すべきですよ。
  223. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 御説の通りでございます。私どもノールウエーに対しては、ほかの問題と違つて、我々はこの問題を調達庁の立場もあり、持主の立場もあるのだから、穏便に取扱うということは、決してそのまま居坐つてくれということではないのであります。一日も早く解決して頂くということのほうが国交関係から見ても大きく言えば大きい。その点十分認識して一つ行動して頂きたいということをノールウエー側にも申し入れております。ノールウエーの公使は恐らく事情は十分御承知だと思います。ただ如何せん、先ほどから申上げましたように、現実の事実として適当なる家が今のところまだ見付からないというのが現在の情勢で、ただこれは多少時日はかかりましようが、何とか解決の方法を見出し得るのじやないかとも考えておりますが、その点まだ現在においては遺憾ながら満足なる解決が得られないというのが現状であります。
  224. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 この調達庁のほうでは、はつきりとノールウエーの公使に出しては、お前のほうは権利がない、これはもう消滅した、明渡せという法律上の意思表示は、これは当然その措置はとるべきだと私は思いますね。
  225. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 只今お聞きしました通りの趣旨によつて、今後は外務当局とも研究してみるつもりでございます。研究というよりは、そういう措置がとれるのかどうかということにつて、まあ解釈上はとれないとは申せないのですが。
  226. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 とれないじやない。とらねばならんじやないですか。
  227. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 外国人の扱い方の問題として、総理府と外務省の間で協議をしまして、成るべく趣旨に副うようにいたしたい。
  228. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 成るべくじやないですよ当然とるべきですよ。とれぬはずがないですよ。向うとしては、あなたは要求しておつても、法律的に要求されておるかどうかわかりませんよ。そうでなかつたら、その基礎だけは作つて行かないと、さつき言われた外務省の何んだが、私はその解決はなかなかむずかしいという。
  229. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 私どもも法律的に要求して、我々の意思を、国の意思をはつきりさせることが必要だとは存じますが、あとはそれを調達庁の段階でやるか、外務省の段階でやるか、一つの渉外事項としてやるかという点がその研究問題なんです。
  230. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そのあとの問題はこれは研究してもいいが、併しいずれにしても、国の意思表示を、はつきりと法律的の意思表示をすべきですよ。その点に研究をせねばならんなんということはあり得ないことだと思う。
  231. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) さようでありまして、つまりやり方を研究するわけであります。基礎の観念は別に研究の余地はないと思います。
  232. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ちよつと速記を止めて下さい。    午後五時四十七分速記中止   ━━━━━━━━━━━━━    午後六時十五分速記開始    〔委員長退席、理事伊達源一郎委員長席に着く〕
  233. 伊達源一郎

    ○理事(伊達源一郎君) 速記を始めて……。
  234. 須藤五郎

    須藤五郎君 先ほど質問の半ばで長官に退場されたので、質問が変なことになつてしまつたと思うのですが、どこまでどういう話になつていましたか、私も憶えていませんから、改めて形を変えて御質問申上げたいと思います。私はこれは私的な話合で、公的な席上での話でありませんのですが、自由党の責任ある前閣僚と私的な話合の席上、実際のところあなたたちは再軍備をいつやろうと思つているのだと、又いつできるのだと言つて私は質問したことがあるのです。そうしたらその前閣僚は、来年はできないだろう、併しここ二、三年の間にはそういうことになるのではないかという意見を漏らされました。名前はそういうことですから申しませんが、そういう意見を伺いましたので、自由党はここ二、三年の間にそういう方向に進もうとしているのではないかとうふうに私は解釈したわけなんですが、その点木村長官はどういうふうな考えを持つていらつしやるか、お伺いしたいと存じます。
  235. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そこで再軍備の問題でありまするが、再軍備というのは要するに憲法第九条第二項の戦力を持つということに私はなると考えます。そういたしますると、どうしても憲法改正の手続をとらなければ戦力の保持はできません。従いまして、この面からも相当考えざるを得ない。果して国民が再軍備をする、いわゆる戦力保持のあの禁止規定を変更するという、いわゆる国民の意向というものは果してそこまで来るかどうか、これが第一の問題であろうと私は考えておるのであります。それともう一つ具体的の例としては、いわゆる再軍備をいたすについては相当の国費を使わなければならん。従つて財政的の面において果して日本の国情はこれを許すや否や、これを検討してみなければならん。で、再軍備というものは、そうやすやすとできる問題では私はなかろうと、こう考えております。
  236. 須藤五郎

    須藤五郎君 この終戦直前、日本は無傷の軍隊を大体百万持つていたと思います。関東軍を……。而も無条件降伏をしなければならないような状態であつた。今度憲法を改革して、そうして財政が許すと言いますが、その許す範囲もどうせ知れたものだろうと思いますが、果して終戦直前だけの兵力日本が持つことができるかどうか、再軍備をやつた場合ですね。恐らくこれは幾ら長官が頑張つてみたところで、再軍備をやつてみたところで、大したものは持てないにきまつておる。而も、そういう再軍備をやつてどこと戦うおつもりなのか、ソヴイエトの兵隊と戦うつもりか、中共兵と戦うつもりか、どこと戦うおつもりなのか、どこを見ても終戦前のソヴイエトよりも、中共よりも、全部数段の飛躍をしてうんと強い国になつておるわけです。而も終戦当時にも及ばないよう兵力日本国民の苦労を押付けてまでどこに作る必要があるか、作つてみて何の役に立つか、而もそういう詰らない再軍備をしようというよう方向に努力をして行こうということは実にばかげたことではないかと思うのですが、その点どういうふうにお考えになるか。
  237. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は今直ちに再軍備をするというよう考えは持つていないのであります。そう今あなたの言われるように、日本はどこの国と戦うために再軍備をするかというようなことは、これは私といたしましては毛頭考えておりません。又世間伝うるいわゆる再軍備論者は、ソヴイエトと戦うとか、或いは中共と戦う、乃至はアメリカと戦うというような、そんな意図を持つておるものでは私はないと考える。ただ日本のいわゆる国土防衛と申しましようか、仮に他国から不当の侵入を受けた場合に対して、これを防衛するだけのいわゆる武力は独立国家として持たなくちやならんという、その建前からいわゆる再軍備論者は再軍備論を言うものと私は想像しております。
  238. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは他国から侵略を受けたときに戦うだけの、守るだけの軍備を持とうという気持すらも私にはおかしく思えるのです。それじやどこの国が日本に来るかまさか、英国やフランスや、又タイ国のような小つちやな国が日本に来るというふうにも考えられない。いわゆる仮想敵国というものは日本の周辺にあるソヴイエト、中国或いはアメリカ、これが日本の将来の仮想敵国に恐らく持つていらつしやるのだろうと思うのですが、その国にどんな兵力を作つて対抗できるか、どういう兵力を持つてその侵略を、若しも例えば侵略して来た場合にそういうことが可能であるか。それを可能であるというふうに考えられる点に私は問題があると思うのです。その可能なよう兵力日本として作れるのか。そうして又私は今日フリゲート艦を借りていろいろな名目で保安隊を作つたりすることによつて、そういう方向に持つていらつしやろうとしておるが、果してそういうことができるのか。これは空中の楼閣でばかげたことじやないか。そんなばかげたことに来年は九百億の金を使おうとしておる。これをなぜ国民の中に放り出さないか。どうも私たちは、ここであなたたちと私たちの意見の分れ路になつて来ると思うのですが、なおそういうことを確信を持つてつていらつしやるのですか。
  239. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は今審議を願つておる船舶貸借の問題にしても、決してそういうことを考えておるわけじやありません。これは一に日本の海岸の警備と人命保護のために使うべくやつておるわけであります。
  240. 須藤五郎

    須藤五郎君 その日本警備と自衛のためにということがすでに私はおかしいのじやないかと思うのです。どこのために、どこから来るものを防ごうとするのか。若しも来るならば、本当にもう匹敵のできないものが来るにきまつている。それに自衛とか何とかいう名を以てこの貴重な国費を使つていることが実にばかげていやしないか。
  241. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛じやありません。人命保護のためにやつているわけであります。御承知通り保安庁法には明らかに警備隊海上警備と人命の保護のために行動するということになつております。自衛のためは又別に考えるべき問題だろうと私は考えております。
  242. 須藤五郎

    須藤五郎君 これはぐるぐる廻りすることになるかわかりませんが、この間フリゲート艦を見に行つた或る議員が、フリゲート艦は足の生えたおたまじやくしだとも言いましたし、これは明らかにアメリカでは、英文を見ますと、パトロール・タイプ・フリゲートという名前が付いておりましたね。やはり向うでは軍艦として扱つておられる。これが日本に来ると船舶として扱つてしまう。どうもおかしいのですが、日本の政治にはこういうごまかし、インチキが随分あると思う。一つ食糧の面を見ましても、学童に与えておる脱脂ミルクのあの箱の表紙にはフオア・アニマル、動物の飼料と書いてある。いずれそれが日本に来るといつの間にやら人間の食糧に変つて来る。アメリカでは沖縄をアメリカの領土であると言つておる。日本では日本の主権のある領土であると言つておる。どうも逆のことばかり言つて、随分でたらめ、ごまかしがあると思うのですが、この点国士を以て任じておられる木村長官はどういうことを考えていらつしやるのですか、こういうことでいいのですか。
  243. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今フリゲートのことが問題になりましたが、成るほどフリゲートアメリカでは上陸支援艇とか、何と言いましようか、哨戒艇というような言葉を使つてつたことは事実であります。併し御承知通りこの船はもうすでに十年前に造られた極めて旧式な船でありまして、これが近代の戦争に役立つとは我々は毫も考えておりません。見て来られたかたが何と感ずるか知れませんが、我々の目から見れば実に旧式な船でありまして、かようの船でも、これは日本の海岸の警備、人命の擁護に使えば使える。従つてアメリカの好意によつてこれを貸してやるというのであれば、その目的に従つてこれを用いるという建前をとつておるのであります。これをいわゆる戦力に導くというよう考えは毛頭もない、又事実上こんなものは戦力を構成すべき一要素である資格はないものと考えております。
  244. 須藤五郎

    須藤五郎君 今海岸の人命救助ということを伺いましたが、フリゲート艦が出動して人命救助に当るという場合はどういう場合でございましようか。
  245. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはいろいろの場合を想定できると思う。或いは漁民が遭難した場合にもありましようし、或いは密輸入船その他海賊船に襲撃されたというような場合がないとも限らん。そういうような場合においてはやはり行動をするのが当然であろうと考えております。
  246. 須藤五郎

    須藤五郎君 先ほどフリゲート艦にアメリカ軍人が顧問として乗つておるいとうことをおつしやいましたが、この顧問はどういう契約で乗つておるわけですか。
  247. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは何も契約はありません。ただこの船を引渡しを受けますると、日本の管理下におかれて、日本のいわゆる乗組員がこれをすべて運航することになるのであります。従いまして、それまでの間において相当技術の修習をしなければならない。そこでアメリカの好意によりまして、その修習のための一つの助言者として彼らがいろいろ世話してくれることになつておりまして、これは特別の契約も何もあるわけではありません。
  248. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると、契約がないといつ幾日に引揚げるということも従つて契約がないわけですか。そうすると、いつまでおられても向うがうんと言わない、引揚げることを承認するまでおられても、日本から引揚げてくれということはできないのですか。
  249. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうではありません。これは日本が引渡しを受ければ日本の管理下に属するのでありまして、日本でも必要なしと思えば、それはその人たちは船から離れて行くわけであります。又事実上において引渡しを受けたと同時に日本の乗組員によつてすべてこれを運航する今計画をしておる次第であります。
  250. 須藤五郎

    須藤五郎君 私が今その契約の問題を申上げたのは、それではそういうことがどの契約によつてなされるのか、そういうことが何ら取極められていなければ、向うが、お前のほうがそう思つたつて自分はまだ十分修得していないと思つて居座られた日には、どこへ持つてつてつてくれと言うことができるのでありますか。
  251. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それはすべて私の権限に属することであります。
  252. 須藤五郎

    須藤五郎君 それはまだ十分ではありませんが、余りこだわらんでおきましよう。それからその次に伺いたいのは、保安庁法において海上保安隊船舶安全法の適用から除外しておりましたですね、衆議院で問題になつて出て来たようでありまするが、これを最初除外した理由、それはどこにありますか。
  253. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 昨日も曾祢委員からお尋ねがありまして、一応お答えしてあるのでありますが、要するにこの二つの、と申しますか、船舶安全法というものと、そのうしろにある海上の人命及び安全に関する条約という二つのものが関係するわけであります。これはもとより海上人命条約を受けてできておる船舶安全法という航海法でありますけれども、実はこの航海法の内容は人命安全条約の要求しているところよりも上廻つたと申しますか、それ以外の日本独自の必要性のあるところというわけで条約にプラスした国内規定がたくさん入つておるわけです。それで御承知ようにこの船は勿論日本政府の船で、民間の船とも違いますのでございますが、又その仕事の性質から言つて一々その細かい拘束を受ける必要はありませんから、国内法の適用を除外したというだけでありまして、国際条約のほうまでも除外したわけではないのであります。
  254. 須藤五郎

    須藤五郎君 じや、このフリゲート艦の、そのほかに政府のほうにはいろいろあると思うのですが、その適用から除外してあるのですか、現在……。
  255. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 保安庁法関係で除外しておるだけだと思います。
  256. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たち、どうも政府考えていた点が衆議院でつつかれてあわててこういうことになつて来たんじやないかと思われる節があるのですが、政府は最初これは軍艦とやはり考えて、除外すべきだという観点から最初除外してやろうといつたのじやないですか。こういうことを伺つても無駄とは思いますが……。
  257. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) いや決して無駄ではありません。昨日も実はその点に触れて御説明したのですが、軍艦であるかどうかということは、今の人命安全条約とは全然関係のないことなんです。最初の御質問はそういう形で衆議院の予算委員会で起りましたけれども、これは条約を御覧になれば、何ら軍艦であるから適用が除外されるとかそういうことではなくて、安全条約というものの中に規定してある総則的のところでこの国際航海、一つの国とよその国との間を往復するようなそういう国際航海に従事する船舶についてのみ適用するというのが大原則になつているわけです。ただ例外的にこの国際航海に従事しない船でも適用がある個所が条約の中にもございますけれども、大体は国際航海云々でないいわゆる沿岸航海のものは条約の適用を受けないことになつておりますからして、軍艦であると否とを論ずるまでもなく、この警備隊の船は沿岸の警備のための船でありますから、最初からその条約に乗つて来ないのです。ただ一箇条その条約の中に沿岸の航海のものにも適用のある個所があるのです。それは当然適用になりますとこう申上げたのです。    〔理事伊達源一郎君退席、委員長着席〕
  258. 須藤五郎

    須藤五郎君 時間もありませんので、少し急ぎますが、第四点は、政府は先にこれを単なる日米間の契約としてやろうとして、条約の形で国会承認を求めるのを避けようとしていたのではないかという私たち疑念があるのですが、この契約としてやろうとした原因はどこにあるのですか。
  259. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは十三回国会で参議院の内閣委員会で御説明したことがありましたのですが、この船の貸し借り関係というものの性質を法律的に洗つてみますと、これは調達契約は、会社の船を借りる場合とよその国の船を借りる場合とその法律的の性質は同じなんです。従いましてこの理論から申しますと調達契約として、例えばアメリカの国に日本の大使館を置くという場合に、アメリカの国有地を大使館の敷地に借りたいという場合があります。それと性質は同じことなんです。その場合に一々条約を以て結ばねばならんという原則は全然ありません。従いましてそういう面から申しますと、事柄そのものの実質は調達契約的なものであつて条約たる形にはむしろ適しないものじやないかという純粋の考え方がそこに一つあるわけなんです。それが先ず根本なんです。ところがその契約の内容如何によりましては、財政法その他の関係から国庫の債務を将来に亘つて負担するような個所が入つて来るかも知れない、そういう場合においては勿論国会の御審議を得なければならんことなので、そういう点を勘案総合いたしまして今回条約の御審議を仰ぐということになつておるのだと思います。
  260. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうしますと、今現在保安隊が持つておるカービン銃、大砲、戦車、ロケツトなどとの関係はどういうことになるのですか。若しもこのフリゲート艦を条約の形で、契約じやなしに条約の形にするならば、当然こういう戦車やロケツト砲などもそういうふうにしなければいけない性質じやないですか。
  261. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 現在実際上使わせてもらつておると言つておりますが、私は例えて見れば凧の糸を持主がちやんと糸を握つておる、そのちよつと手前の所でちよつと握らしてくれという形で凧をいじくつておるような形が今の形なんです。まだこれは貸借の関係までは進んで行つておらん……。
  262. 須藤五郎

    須藤五郎君 フリゲート艦が。
  263. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) フリゲート艦じやありませんよ、陸上のやつです。
  264. 須藤五郎

    須藤五郎君 じや借りてもいない、どういう状態ですか、私にはわからないのですが。
  265. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは事実上の貸借関係と言つて一向差支えありませんので、決して法律的な貸借関係というようなそういう正式なものじやございません。
  266. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は法律家じやないからそういう変な言葉で言われるとどうも納得が行かないが、もう少し一般の日本人のわかるような常識的な言葉で一つ説明して下さいませんか。カーピン銃、戦車は現在保安隊が使つている。これはアメリカから借りているのか、買うたのか、盗んで来たのか何なのか。
  267. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それで少し私は恥かしかつたのでありますけれども、凧の例を挙げまして、凧の糸は向うさんが握つておられる、そのちよつと先のほうでこつちがいじらしてもらつているのだというのが一番適切なたとえじやないかと私は思つておるのでございますが。(笑声)
  268. 須藤五郎

    須藤五郎君 それではもう何ですね、一部始終握つているのは向うさんで、凧を上げているのも向うさんだ。日本の保安隊は糸をさわらしてもらつているだけで、保安隊の意思というものは何も働いていないということになつていいのですか。
  269. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは凧の糸の先のほうを握つておるのでありますから、右にやろうと左にやろうとそれはできるわけです。
  270. 須藤五郎

    須藤五郎君 そんな馬鹿げた話ないですよ。凧の根元のほうをアメリカが握つておる、先のほうを日本が握つておるのだ、左に動かし右に動かし、自由だ。それじや凧のいわゆる指導権というのはどこにあるのですか。指導権と言いますか、凧を動かす権力はどこが持つているのですか。
  271. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは、凧の話で大変恐縮でございますけれども、例えて申しますれば私はまさにその通りなんで、根元は飽くまでも向うさんが持つている、自分のものとして。而も全然手放しで貸してくれるのじやないのです、糸巻のほうは握つておるわけです。糸巻の所までこちらへ移してくれればいいのですが。
  272. 須藤五郎

    須藤五郎君 だから私たちが常に言つているのです。そんな状態の日本の保安隊なんですか、それこそ植民地の保安隊ですよ。植民地というのはそういうものなんです。もとを向うが持つておる。権力は向うが持つておる。そうしてさわらしてもらつておるのです。そうしてさわることによつて自国の人民を弾圧しようなんてこんな馬鹿げたことないじやないですか。それが植民地の形なんですよ。
  273. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私から申上げておきます。これはまさしく借りたものに相違ありません。所有権は向うにあるのであります。(「それじや話が違うじやないですか」と呼ぶ者あり)ただ日本で使つておるのは、いわゆる向うの保管者の承諾によつて日本がこれを事実上使用しておるのです。事実上使用する以上は、その使用は日本意思に基いて使用する。今のような植民地的とか何とかいうこととは全然違うのであります。
  274. 須藤五郎

    須藤五郎君 木村長官は借りていると言い、佐藤さんは借りていると言わない。これはどうなんですか。
  275. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは言葉の綾であります。私の借りているというのは、法律的に言えば佐藤長官の言われるまさにその通りであります。併し通常の言葉によればこれは借りているのであります。
  276. 須藤五郎

    須藤五郎君 どうも弁護士さんと法律専門のお二人に音楽家の私が法律論を闘わして見ても、法律論においては勝目はないのですが、(笑声)この話は一般の日本人が聞いた場合どういう感じを持つか、これは私に味方しますよ。そういうことを私は申上げてこれは打切ります。  先ほども平林さんがおつしやつたように、このアメリカ議会の速記録を読みますと、このフリゲート艦を日本に貸しているのは、どうも日本の利益のためにやつているのじやない、アメリカ負担の肩替りを日本にさすためだ、そういうふうにしか私たちも解釈できないのですが、而もこの日本が十隻貸してくれと言つているのに、十八隻向うで用意されて、そして或る人の、ここにありますが、ウインステツドという委員は、いつも要求以上に貸しているというような言葉で表現されていますが、これはなかなか意味深長だと思うのですが、いつも日本アメリカに利益を肩替りされるために、日本が実質的に要求するよりも、或いは要求しないにもかかわらず、アメリカから押付けられているのじやないかという疑念を私たちは持つのです。こういう点はつきりと……。
  277. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) はつきり申上げまするが、アメリカから決して押付けられておるわけではありません。又、アメリカの指示によつてようなものを使おうとするのでは毛頭ございません。ただ八隻殖えたというのは、これは方々から借りる希望は非常に当時多かつたようであります。そこでアメリカとしては、日本では少くとも十隻以上を貸して欲しいということであるが、いろいろの情勢から見て、ほかから希望者があるので、お前のほうでもう少し借りる希望があるのなら、もう八隻貸してやろうがどうだということでありまするので、この八隻を借りたわけであります。
  278. 須藤五郎

    須藤五郎君 それでは将来もつと借りる意思があるのか、もうこの八隻で打切るお考えか、その点もはつきり……。
  279. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今のところでは、これ以上借りる意思はありません。
  280. 須藤五郎

    須藤五郎君 アメリカではやはり海軍大佐のエンライトが発言しているのによりますと、フリゲート艦十隻は三百五十ドルを投じて修理中、上陸支援艇五十隻は、千五百ドルで修理中というふうに言われておりますが、この支援艇の性格についても私は伺いたい。日本が攻めて行くのでなければ、上陸用舟艇のごときものを日本が借りて、どこの島に上るのだということが一点、而もこれまでいろいろな食料品なんかでもアメリカは随分如何わしいものを日本に売り付けている。ところが今度軍艦を貸すとなると、必要以上に熱意を持つて日本に押付けがましいことまでもしかねないような状態だ。これだけの金をかけてやつている。そういう点で私はこれはどうしても日本の利益を守るということよりも、むしろアメリカ負担を肩替りさすための一つの手段として、押付けて来ているのじやないか、こういうふうに思います。木村さんが本当の正直な、腹割つた答弁がして欲しいのです。
  281. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 上陸支援艇でありまして、上陸用の船でありません。大きな上陸部隊を運ぶ船ではないのであります。その上陸をする船を海岸におつて援護する、その目的で造られた船であります。決してたくさんの人を運び得る船でないということをはつきり申上げておきます。
  282. 須藤五郎

    須藤五郎君 今度日本に貸してくれる船を、向うでは坐つたあひるというような名前をつけてあるほどのぼろ軍艦ですが、これは今申しましたように多額の金をかけてアメリカで修理して、そうしてこつちに持つて来て、そうして貸してもらつた船が若しも沈没した場合、破損した場合はもとの通りに直して返すということですね、沈没してしまつた場合は、新らしく新造して返すということなんですか。
  283. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは契約の第六条に明白に書いてあるのでありますが、そういう場合には双方で公正且つ妥当な方法、手続で解決しようというようになつているのであります。我々の了解ではさような場合には殆んど名目的の賠償でいいのじやなかろうかと考えております。
  284. 須藤五郎

    須藤五郎君 それもこちらの考えで、向うの意思というものははつきりわかつていないと理解していいのですか。
  285. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この条文を只今お読みいたします。これによつて明白であります。「船舶が滅失したか、又は本条に従つて全損であると宣言された場合には、船舶借受者は、」、これは日本側であります。「そのため、各損失に対して公正且つ妥当な賠償であると船舶借受所有者が合意した額及び条件で、船舶所有者に補償することに同意する。」とこう書いてあります。これは公正且つ妥当な賠償であると当事者双方で合意した額であります。双方でこれは幾らの額に当るかということを協議いたします。而もその支出条件が又双方で以て協議してきめようという趣旨であります。
  286. 須藤五郎

    須藤五郎君 この附属書Bによつて日本は今後どんな軍艦でもこれから国会承認なしに借りることができるというような、白紙委任状の形になつておると思うのですが、その点御説明を願います。
  287. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはアメリカ国会できめられ、且つ本年の七月八日に大統領が承認した法律によつて明かに船の数はきめられておりますから、それ以上の数は協定の中に入らないのであります。
  288. 須藤五郎

    須藤五郎君 従つて政府フリゲート艦以外の船ですね、それはもう如何なる船といえども絶対借りないという決意があるわけですか。
  289. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今のところではさようであります。このPFですな、フリゲート十八隻とLS、上陸用支援艇五十隻、合計六十八隻、この以上は今のところ借りる意思はありません。
  290. 須藤五郎

    須藤五郎君 この附属書Bによつて、どんな船でも借り得るということが可能になるのではないかと思うわけですが。
  291. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) さようではありません。
  292. 須藤五郎

    須藤五郎君 さようでない……。私はあと二点ほど伺いたいと思うのでありますが、この船舶協定とはちよつと話がそれるかもわかりませんが、関係はあるものですが、今朝のNHKの放送に依りますれば、北京放送の報道として、中国の赤十字から、日本の赤十字と日中友交協会と平和委員会とにそれぞれ電報を打ち、五名の代表と二名の工作員を合議し、名簿を送れと言つていると言つておるのですが、これに対して政府意見を伺いたい。
  293. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その放送は私も承知しております。そこで我々の考えでは、引揚というものは国費を相当多額に使うものでありまするから、原則としては政府の代表がこの交渉に当るのが当然だと考えます。それから第二には、若し民間の団体が加わるとすれば、その団体は従来引揚問題に特に努力をしておつた団体であるべきであつて、その以外の団体ではおかしいと思います。併しながらこれからいろいろ先方と連絡して見なければわかりませんが、これは原則であつて、余りにそういう点を主張するがため引揚が遅れてしまうということは、政府意思でもありませんからして、引揚を早く行うということで、できるだけ先方の意向にも合うような措置を講じたいと思つております。
  294. 須藤五郎

    須藤五郎君 従来引揚に熱心であつた団体、それはたくさんあると思うのでありますが、或る団体などによりますとこれは非常な反中国的な説を立てて、在留邦人の数の上においても中国は三万と発表しているのに、いや、三万じやない、もつといるはずだ、五万、六万いるはずだ、けしからんというような言いがかりをつけておる。又ソヴイエトに対しましてもいつまでたつても三十何万という数が減つていないような状態、そういう立場でいわゆる反ソ、反共的な立場で引揚問題を扱つている団体もあるやに聞いておりますが、政府のほうではその団体こそが政府意思に合つた最も熱心な、引揚問題を熱心にやつている団体だというふうに認定なさるのか。熱心だというその観点はどこにおいておられるか、その点を伺いたい。
  295. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは国民一同がよく認識しておる問題でありまして、こういう引揚問題について理窟を言うわけではありませんが、反ソ、反共はいかんとかいいとかそういうことを言われるのは甚だ迷惑でありまして、これはイデオロギー等に関係のない、先方に抑留されたり徴用されたりしている人が帰りたいというのを帰してやるというのですから、その間においては何にも問題がなく、ただそれにどれだけの船が行くか、食糧はどこに持つて行くか、どこに船を出せばよろしいか、こういうのを果せばいいのであつて、それ以上の必要は私はないと思うのであります。従つて元来言えぱ政府の者が行つてその話をして、それじや政府の船をここに廻そうと言えばそれで済むわけでありまするが、先方からはそうじやなくて民間団体の代表者というふうに言つて来ておりますから、好んで政府の代表でなければいかんと主張して引揚ができなくなるというようなことは好ましくないから、その間はできるだけ先方の意向に合うような方法を講じたい、こう思つておるわけであります。
  296. 須藤五郎

    須藤五郎君 私たちの考えではイデオロギーに捉われているのは今日の政府であつて、私たちは何らそういうふうなものに捉われて議論はしていないのです。北京に平和会議が開かれれは、平和を愛する人はイデオロギーを超越して参加すべきだと私たちは言つている。ところが政府はそれに行くことは好ましくない。これらを政府がイデオロギーにかかわつておやりになつているのです。今度の問題でも、若しも政府がそういう立場をとつていなかつたら当然政府に問題が持ちかけられて来るわけです。而も日本政府は不幸にして、民主的な政府というふうに世界各国から信頼を持たれていないという点に、不幸にしてですね、赤十字やいろいろな民間団体に来ている。これは全く政府として信を国際的に失つていることだと私は思うのです。それにもかかわらず、あなたはイデオロギーに捉われていることは好ましくないということは全く私はおかしい。こちらからお返ししたい言葉だと思うのですが、あなたが本当にイデオロギーに捉われたくないというならば、私たちも本当に賛成してあなたとは手を握りたいような気持ですから、僕は今後はこういう問題に関しては、イデオロギーを超越して本当の人道的な立場から政府当局も対策を立てられることを、私は強く要望するものであります。ですから今後は、各民主団体に向うから呼びかけが来ているならば、どうぞ一日も早く民主団体の代表者を中国に送つて、一日も早く我々の同胞を日本に帰してもらうように取計らわれることを私は政府に要望するものであります。  なお十二月二十日のエコノミストによりますと、今年十月香港総領事と一緒の飛行機で啓明交易公社の専務取締役香川駿一郎氏が香港に行つてそれから北京に入つた。そうしてこの啓明交易公社は中国の公社と合弁で勃海湾で漁業をやることになつた。このように平和的な話合いで漁業も貿易も進められるように私たちはしたいと思うのでありますが、政府はどういうふうに考えていらつしやいますか。飽くまでもこの不合理な漁業問題でいろいろなかかわりを残して、それで拿捕船が出るような不幸な状態を招く、その拿捕船が出るのはけしからんと言つてフリゲート艦に大砲を積んで行つて、それをいわゆる木村長官の言葉で言えば防衛と言いますか、しようという。こういう非常手段をとろうと今後なさるのか、この点をはつきり伺いたい。巴商事の桜井君でも今度行つて平和裡に話をして、三十万ポンドの取引をちやんとして来られたが、これは大きな日本に対する経済的なプラスだと思うのですが、こういう平和な話合いによつてすべてを解決しようとする努力をなさるのか。飽くまでも鎧冑を着たような状態でやろうとなさるのか。今の話によりますとイデオロギーを超越してやつて行きたいというあなたのお話ですが、すべてそういう態度で今後臨まれようとするのか、この点はつきり御答弁願いたいと思います。
  297. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 中共との貿易は何もとめているわけでもなくして、行けるものはやらしております。だから何にも平和的に珍らしく話ができたわけでも何でもないので、従来ともやれるものをやつおるのであります。漁業につきましては公海においての漁業は、これは何も普通の協定以外は、どこでもどの国でも自由なんであります。本来ちつとも差支えないわけであります。従つてそこで拿捕されるということはけしからんというのは当り前の話であります。併し拿捕されなければなお結構でありますけれども、要するに我々のほうは公海における自由ということは強く主張しております。
  298. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたが今中共貿易だつて自由にやるように努力しているとおつしやいますが、私たちにはその努力の跡が見えないのですよ。日本と中国の貿易が非常な不幸な状態に押付けられておりながら、アメリカは、英国は、すべて香港経由かいろいろな形でどんどんと貿易をやつている。殆んど日本だけが抑え付けられておるのです。日本がどんどんと発展して行くことを、アメリカ英国はただ抑えようとしているに過ぎないのであります。そのアメリカの意向を受けて積極的に中国と貿易しようとすることをあなたはしようとしていない。そこに問題があるのであります。あなたが本当に自由に貿易しようという気持を持つているならば、なぜ貿易の使節だつてどんどん出すようになさらないのですか。今から日本人がそういうことを、中国に対して渡航を願出た場合、あなたは積極的に旅券を下附してどんどん日本と中国の貿易が開かれるように積極的にやろうとなさいますか。そうなさるならば私は非常にうれしいのです。
  299. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) イギリスについてはとかくの噂がありまするが、アメリカにつきましては、中国と貿易を、公然にも或いはひそかにもやつているという証拠は一つもありません。私は全然やつていないと思います。なお旅券の問題につきましては、元来根本的に言いまして、私は中国の只今のやり方というものは、引揚問題を前にしてこんなことを言うのは好ましくありませんが、質問されましたから止むを得ず言うのですが、例えば北京放送で日本の国内の撹乱を目指すような放送を始終やつていることは、甚だ好ましくないと思つております。又中ソ同盟条約にしても同様に考えております。幸い引揚の問題については、今度帰してくれるというのですから、これは非常に結構でありますが、今までは甚だ不満であつた。従いまして私は旅券を出すということは、日本政府がその国民の保護と便宜供与を他国に依頼する、公式のこれは証明書であります。私は中共政府の今までの、少くとも引揚問題以外のやり方については甚だ本意でない、面白くないと考えておつたのであります。従つていわゆる無言の抗議をしておつたようなつもりでこちらはいるのであります。従つて旅券を出して政府が正式に、いろいろの人間の保護や便宜供与を頼むというようなことはいたしたくないのであります。貿易につきましては朝鮮の事変が継続する限りは、少くとも中共側に対する戦力の増強になるような措置は講じたくないと思いますから、戦略物資については輸出の制限をいたしておる次第であります。併し戦略物資でないものについてはこれは差支えないということにいたしておる。これについてはいろいろな方法で従来もやつておりますが、今後もその範囲の貿易はできることになりますが、これはそう非常に大きなものでないことは御説明するまでもないのであります。旅券をすぐ出すかと言われれば、私はこの引揚の問題についてはこれは必要があれば、出したくない気持は原則的にはありまするが、そんなことを言つておられんから出して先方と話合いのできるようにいたしたいと考えておりますが、貿易については未だ一般的に旅券を出す気持にはなつておりません。
  300. 須藤五郎

    須藤五郎君 それはもう根本的に私は考えが誤つていられるように思うのです。第一、今度の大戦において日本がどこに一番被害をかけた、迷惑をかけたかというと、これは中国です。その日本の侵略戦争によつて最も迷惑をかけた中国に対して日本が何ら反省していないという点があると思うのです。これは非常に非東洋的な考え方だと思うのです。若しも総理なうあんたなんか本当の東洋人としての気持を持つているならば、先ず中国に対して礼を厚くして、辞を低くして私は講和条約を結ぶべきだと思う。それを少しも以前と変つた気持がない。反省していない。そうして中国を袖にして海を遠く離れたアメリカの言うことばかり聞いている。そこに中国やアジアのむしろ無言の抗議が私はあるのだと思つているのです。あなたは無言の抗議を誤解していると言うけれども、むしろ中国こそ日本に対して無言の抗議をしている。而もその無言の抗議を乗り越えて日本に温い手を差し延べようとしても、それをあなたたちはぼかしている。ぼかしているのはあなたたちです。だからあなたたちのほうへは招請状も何も来ない、民間に来るというような結果になるので、これは全く政府当局考えを根本的に変えて、東洋の道義の立場に立ち帰らない以上は、私は日本と中国が本当に仲よくして行くことはできないと思う。これは非常に不幸だと思うのです。だからその点大いに政府が反省して、中国と積極的にこちらも手を差し延べて円滑な外交関係に入ることを私は切に希望するものであります。私の質問は終ります。
  301. 石黒忠篤

    ○石黒忠篤君 私簡単に質問を申上げたいと思います。私は予算委員会朝鮮のことを総理に質問申上げたことでありますが、今日南朝鮮政府とこちらとの交渉が停頓してしまつている。これは速かに交渉の再開が行くように願いたいと思います。あちらがその気がなければやれないと言いう状態でなく、もつと進んでおやりになることを希望するのでありますが、それにはこちらとして非常に御用意が要ろうと思う。甚だ申上げにくいことではありますが、外務省には朝鮮の実情に関して詳しくお知りのかたがその陣容内におられないと私は思う。これは無理もないことでありまして、朝鮮が外国という関係でなかつたものですから、外務省にそのほうの知識経験のあるかたのおられないことは止むを得ないと思う。併しながら日本としましては、長い間朝鮮関係が密であります。随分朝鮮人のために図つた民間の人もおる又民政に当つた人もいる。これからの人は占領当初におきましては好ましからざる人物として遠去けられておつたのでありまするけれども、もはや日本独立を回復いたしまして最も密接な隣国といたして、これに対しまする使節は非常に緻密に外務省で御用意頂かなければならんことになつたのですから、そういう人たちの広く知識を求められまして、そうして現政府日本に対する考えの如何にかかわらず、人民間の好意ある国交を厚くするように、正式の国交ができない間におきましてもいろいろ準側として一応御着手の御努力を頂きたいということを私は衷心から希望いたします。  それと同時に一つ今日質問をいたして見たいと思いますことは、朝鮮に最も近接している、僅か三時間でここに行ける、平和の時代におきましては夜出て朝物を売つてつて来ていたという対馬のことであります。ここに数千の朝鮮の人々が長い以前から住居しておりまして、そうして山の中で最も多くは炭焼きをやつているのであります。対馬の薪炭というものは、貧弱なあそこの経済としては相当大きな部分を占めている島外に出る産物であります。又海岸には漁業をやつている朝鮮人の人たちもいるのであります。これらの人たちが夜釣りに出る、又は山の中で生活をしているというようなことは、今日我が国として非常に警戒を要する密入国、密輸の問題に対して非常に大きな便宜を与えておるのであります。私は本年の夏に対馬にわざわざ参りまして詳細に視察をして参つたのでありまするが、この問題は非常に注意をしなければならんことで、こういうことが両国の間の悪い感情を起すようなことがあつてはいけないので、相当にこれについては警備をしなければいかんと、こう思うのであります。今回のフリゲート艦のごときは、これが軍備であるかどうであるかという問題もありましようが、政府はこれを以て沿岸警備のために必要である、人命救助以外のフリゲート艦の大きな使命は、恐らく密入国、密輸の問題の警戒にあるのだろうと私は考えるのであります。それの最もしばしばある、多少の変遷はありましても、地理上一番便利の所が、又前から朝鮮人の住んでいるということが、先ほど申上げましたような事情の土地であります。そこに今回のフリゲートというようなものを配置されまして、そうして一番近接している外国との国交をよく正しくするためにそこに当てられるということは、殊に八隻余計に参つたフリゲードのごときは、有効なる使い方があるならばということがついておるといつたよう関係から申しましても、最もここに当てべきものだと考えるのでありますが、木村長官はこの対馬の問題に対して如何なようなお考えを持つておられるか。今回のこの条約国会承認をするということになつた上におきましての配置等に関しまして、この点を重視されるかどうか、その点を伺つておきたいと思います。
  302. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今の御意見は至極御尤もだと考えるのであります。従来から北朝鮮に通ずる対馬の方面において相当の事故も起しておるやに聞いておるのであります。今後この警備艦の配置につきましても、対馬を十分考慮の上において処置したい、こう考えております。
  303. 有馬英二

    ○有馬英二君 私はやはり木村長官にお伺いしたいのでありますが、只今石黒委員から対馬の問題についてお話がありましたが、私は特に北海道、根室近傍或いは宗谷海峡の近辺、そういう所で従来漁船がソ連の監視船から相当多数拿捕されておる。この点は従来、勿論漁夫でありまするからして非常に濃霧のために公海外に出て行く、或いは領海以外に出て行くところを拿捕されるということがあつたかも知れんと思いまするけれども、我が方に適当な警備船がなかつたということが、私はその原因の大なるものではなかつたかと思つてつたのであります。一体政府の出された資料によりましても、警備船艇は九十三隻しかない。それに今度のフリゲート艦とそれから上陸支援艇を加えましても、幾らの船でもないわけでありますが、それの配備の状態はどういう工合になつておりますか、それを一つお聞かせ願いたいと思います。フリゲートその他についてはこれからの計画でありますが、従来の警備船の配備はどういう工合になつておりますか。どの地方にどういう工合であるかというようなことをお聞かせ願いたいと思います。
  304. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今事務当局のほうからお答えいたさせます。
  305. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 条約の御承認を得ましたならばこれを二つの船隊群に分けまして、第一船隊群はPE十三隻を以て編成し、第二船隊群はPF一隻及びLSSL二十四隻、この二つの船隊群は日本我が国の沿岸を警備いたしますが、この残りは横須賀と舞鶴ニカ所に集結しまして、訓練或いは待機というような姿勢をとる予定でおります。
  306. 有馬英二

    ○有馬英二君 只今お伺いいたしましたが、それで我が国の平常の警備につくときは十分であるでありましようか。或いは何か非常事態においてはもつと増強しなければならんというようなことになるのでありましようか。その点……。
  307. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 差当りの問題といたしましては、先ずこれらの船で以て沿岸の警備と人命の救助その他救助に当らせたいと考えております。併し何分にも日本の海岸線は九千海里にも及んでおりますので、最近になかなか事故も多数発生しておるような状態でありまするから、将来におきましては私は相当の、本当に警備に適切なる船を配置しなければならんかと考えておる次第であります。併し今のところどれくらい増すかということについての具体的の計画はまだ立つておらない次第であります。
  308. 有馬英二

    ○有馬英二君 御承知ように、根室に参りますというと、国後島が根室湾の中に深く入つておりまして、日本の領海と向うの領海とがもう殆んど交わつておるような状態であつて、絶えず漁夫がソ連の巡羅船でありましようか、監視船に脅かされて濃霧でもありますというと直ちに進路を誤まるのでありましようが、拿捕されるというようなことがもう絶えずあるのでありますが、そういうような点から考えまするというと、常に警備に当つておる警備船が非常に日本では少いというようなことを私どもは現地の人から常に聞かされておるのであります。こういうようなことから考えましても、今回のフリゲート艦並びに上陸用舟艇も勿論上陸用ばかりでなしに、警備船の一つとしてお使いになるのだろうと私は思うのですが、できる限りそういう方面に多数に使われて漁船の保護をされるように私は要望するのであります。そういう点についてどういうお考えを持つておりますか。
  309. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 誠に御尤もな御意見でありまして、ただここでちよつと申上げたいのは、このLSSLは上陸用の船ではありません。上陸支援艇でありまして、決して上陸するために使うような船ではないのでありまして、私といたしましてはこれらの船は本当は海岸の警備には適切な船とは考えておりません。相当年数も経ておりまするし、船それ自体が沿岸の警備の目的のために造られたものでありませんから、将来は警備に適切な船を財政の許す限り造りまして、万遺憾なきを期したい、こう考えておる次第であります。
  310. 有馬英二

    ○有馬英二君 余り局所的なことをお伺いするようでありますが、海上公安局は九つのうち北海道には一つしかない、小樽に。これは甚だどうも北海道警備の点から考えましても足りないと私は思う。御承知ように北海道はまあソ連と相接しておると称して差支えがないようで、最も我が国の北端の警備の必要な所であるにかかわらず、海上保安局が一つしかないということは私は物足りないと思う。そういう点から考えましても、この警備船の配置は勿論のこと、なお、根本的な海上保安局の設置についても、更に一段の御考慮をお願いいたしたいと考えております。  少しく先ほどお話がありましたことでもう一、二お尋ねいたしたいことがあるのでありますが、来年度の保安庁の予算に、病院費として三十乃至四十億を計上しておられるというようお話を聞きましたが、どういう所にどのくらいの病院を、どのくらいにお建てになるのでありましようか。もう保安庁ができてから五年にもなるにかかわらず、今までは予備隊でありましたが、警察隊でありますか、衛生事情が極めて悪く、これはほかからも常に当局に指摘をされたはずであります。多数の病人が出ておるにかかわらず、適切な病院を設けておらない。そしてその病人を最寄りの公立病院若しくは大学病院へ委ねておるというような、甚だ不完全極まることであります。速かに政府は適切な病院を作つて人的消耗を防ぐように図られたいと私は思うのです。現今一ヵ年に保安隊の人員消耗はどのくらいになつておりましようか。
  311. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今のお言葉は誠に御尤もで、申訳ありません。従来一つの病院もないのであります。我々といたして約十二万の大事な子弟を預つておりまして、これに病院施設を持つていなかつたということは誠に遺憾至極だと思います。早急に適切な病院施設を作りまして万遺憾なきようにしたいと、こう考えておる次第であります。今の病院の計画、病人のことにつきましては事務当局から報告をさせます。
  312. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 病院の計画につきまして大蔵省に予算をお願いしておりますのは、中央病院としまして東京に新設いたしたい。そのほかに現在は地区の病院といたしましては、針尾に仮設の病院がありますのと、福山に若干ありますのと、そのほかは全然ございませんで、地方の病院に診療を委託してお願いしておるだけでございますが、予算要求をいたしておりますのは、福山、針尾の増設をいたしますと同時に札幌、伊丹、福岡等につきまして、それぞれ約一ヵ所四百床ぐらいの病院の予算をお願いしております。なお、そのほかに各駐屯ごとに、これもやはり一ヵ所百床程度ぐらいの病院を新設いたしたいと考えまして、予算をお願いしておる次第でございます。
  313. 有馬英二

    ○有馬英二君 その病院は大体いつ頃完成いたしましようか。逐次完成されるであろうと思いますが、大体の見通しを伺いたい。
  314. 上村健太郎

    政府委員上村健太郎君) 実はまだ来年度予算にお願いをしておるところでございまして、大蔵省におきましても私どもとの内交渉では病院の新設ということは必要であろうということを認めて頂いております。来年度予算に或る程度の新設費の計上をして頂けるのではないかと思つております。予算が国会承認を得ますれば、早急建設いたしまして、来年度中に設備いたしたいと、こう考えております。
  315. 高良とみ

    高良とみ君 二、三の点を木村長官にお尋ねいたしたいのですが、先ほど予算をお使いになれなかつた理由として、いろいろ御説明がございましたが、長官のお考えでは、日本の軍需産業ですか、大砲を作つたりする能力が長官の希望されるほどの軍備、これだけの予算を消化して行くそれだけの工場の施設、世界が非常に進んだ後において、それを持つておるとお考えになりましようか、或いはそこから何とかして行かなければ軍備はできないというようにお考えになりましようか。
  316. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その保安庁のなには私は軍備じやないと考えておるのであります。そこで差当りの問題といたしましては、さつき問題になりました演習用の銃砲弾、これをどうするかという問題であります。これは日本の現在の設備におきましても間に合うと考えております。
  317. 高良とみ

    高良とみ君 そして端的に申しますれば、日本が長官の言われるような武装をした船、これは軍備でないとおつしやいますが、そういうもので御満足の行くような沿岸警備の船を造つて行くことと、この平和産業を作つて行く能力とか両立し得るとお考えになるかどうか、その点を伺いたい。
  318. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 軍需産業の点でありまするが、御承知通り只今は特需として砲弾の受注は相当あるように聞いております。併しながら大砲だとか或いは機関銃だとかいうような、さような武器について、日本においてはまだこれを生産しておる工場はないと私は存じておるのであります。従いまして日本の平和産業との兼ね合でありまするが、決して平和産業を阻害するような現状ではないと私は確信いたしております。
  319. 高良とみ

    高良とみ君 将来この小さな島に多数の人口が住んで行くために、殊に世界各国に貿易を以て生きて行くために、平和産業と軍需、特需の種類のもの及び保安庁の要求されるようなものを作つて両立して行くお見通しをお持ちでありましようか。或いはやはり軍需産業を、特需であつても主として、そうしてこの平和産業は従たるべしとお考えになりますか、もう一度……。
  320. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はどこまでも日本の将来の産業のあり方として平和産業で進むべきであろうと考えております。この特需関係は、これは一時的なもので、いつまでも続くと予定することはできません。私はこれは変態的なものと考えておるのであります。そして只今高良さんの仰せになりました日本の保安隊で使う武器のことをお話になりましたが、我々の目から見れば、こういうものは極めて私は大したものではない、仮に日本で造るにいたしましても大したものではないと考えております。
  321. 高良とみ

    高良とみ君 そうすると、大したものじやない、又非常に不満足な船舶を今回借用されるわけでありますが、こういうものを幾らこしらえても、先ほど他の委員からお話のありました通り、満足の行く沿岸警備が全部できないで、而も各地にいろいろ問題を残して来るということになれば、むしろこれは外交の貧弱であるとお思いになりませんか。それともどういうことがあつても、一つ独立国というものはこの程度或いはやはり沿岸において無論警備をして行くものとお考えか、その点。
  322. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は日本でこれを造り得るなればこれは本当に望ましいことと考えておることはしばしば申した通りであります。併し何分にも日本国家財政は許しません。止むを得ずアメリカの好意によつてこの船は借りたいのであります。この船では私は満足はいたしてはいないのでありますが、現下の情勢においては、この船を十分に利用いたしまして日本の海岸の警備と人命の救助に当らせたいと、こう考えております。
  323. 高良とみ

    高良とみ君 岡崎大臣に同時に伺つて恐縮でありますが、吉田内閣は道義を高揚すると言われておるのでありますが、今回の条約を拝見いたしますると、アメリカは貸すときにはどういう意思で貸したかそれはわからん。併し少しでも条件を附けられないようにして、そして沿岸防備のみならずその他の用途にも使う、或いは引揚にも行くかも知れないというお話も他の委員会であつたようでありますが、そういうことがアメリカ国会の趣旨、それに対して今後もそういうふうな一種の、いや、そのときの話とあととは違うというような趣旨の回答をなされるものでありましようか。先ほど木村長官もアメリカがどう考えているかわからんけれども、こちらの考えで使うというようなことでありましたが、これについて道義外交ということについてどうお考えになりますか、岡崎大臣に伺いたい。
  324. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お話ですが、外交というのはお互いに信用しなければできないことであります。一時嘘をついた、いい加減なことを言つたのでは、うまく行つたと思うのはこれは非常な間違いで、常に正直でなければ相手方も信用しませんから、勿論相手方を信用させるために正直を装うのではなくて、正直なやり方をしなければ外交は長続きしないのであります。従つて道義外交というような特にそういう文句を使うのはおかしいので、外交というものは常に道義的なものでなければならないのであつて、それでなければ外交ではないのであります。
  325. 高良とみ

    高良とみ君 外務大臣は中国の放送が日本に間接侵略を常に放送しておるというふうにおつしやつたと思いますが、その点が一つと、もう一つは、中ソ同盟条約はすでに蒋介石が政権をとつておりました時代からのものでありまして、戦争状態が起つたときには共に防衛するということを主張しておつたものでありますが、それでも今日でも依然としてこれは日本を敵とする侵略的なものとお考えになるか。即ち日本が戦争状態を、或いは侵略をすると向うに言われた場合には、こちらはそうだからこれを疑つて行くというふうに聞えることがあるものですから、大変失礼でありますが、これが誤解ではないか知らんと思いまするので、御説明願いたいと思います。
  326. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 中ソ明盟条約は非常に簡単な条約でありますから、今ここに持ち合せをしておりませんが、二条でしたか何かに、将来日本が第三国と組んで中国を侵略するような場合には、両国が協力してこれに当るという趣旨が書いてある。普通外交界においては、これは日本が侵略するような場合にはこれに当るとこう書いてあるのですが、これはいわゆる日本を仮想敵国にするという意味に従来とられております。又そういう必要がなければ何も日本を取立てて書き上げる理由もないと思います。そこで中ソ同盟条約は私は日本を仮想敵国の一つ考えておると見るよりいたし方ないと思います。
  327. 高良とみ

    高良とみ君 その点は意見に亘りますから控えますが、併し蒋介石時代から日本の侵略で脅えた中国が、あの当時日本アメリカの占領下にあり、そしてそのときに日本の軍国主義をやめてもらつて、そして国民政府時代の考えからも、やはりそれと共に戦争と侵略があつた場合にはやるといつたことをそういうふうに御解釈になるということは、一応そういう御解釈であるということは了承いたします。そして第二の間接侵略ということは、只今ような直接侵略の対象として日本をやはり重く考えているとお考えになりますか。間接侵略を更に中ソは考えているのか、或いは間接侵略をするのであると考えておられるか、両方あるとお考えになるか、一方であるとお考えになるか御説明願いたい。
  328. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は間接侵略であるかないかということは言つたことがありませんけれども、北京放送などをお聞きになれば、これが日本に対して如何なる意図を持つておるか、少くとも放送自体から感じられる放送の内容は随分ひどいものです。これは到底普通の国と国との間では考えられないような放送をいたしておる、これは甚だひどいことだと私は考えています。
  329. 高良とみ

    高良とみ君 その点はそのままいずれ後のことにいたしまして、現在日本の周りにありまする中国或いは朝鮮、南朝鮮もソ連も、そういう国々からの日本に対する問題が非常に多くて、そのために船の拿捕が多いとか、或いはフイリピンもなかなか日本との友好をしないとかいうことから考えましても、もつと日本が積極的に戦争をしない、憲法を守つて行くのだということがはつきりしましたならば、こういうつまり外交方面がもつと自由に行きましたならば、そういうケースが外れるのではないかと考えられるのですが、これは私どもの希望観測であつて、如何に日本が平和の徹底した行為をいたしましても、やはりそういうふうになるとお考えになるか。即ち外交の自由をもつと持つ御希望があるかないかという点を伺いたい。
  330. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は外交は今のところ何ら不自由は感じていない、つまりどこからも制限をされているようなことはないと信じておりますが、おつしやるように各国で日本を或いは日本国民を信頼すれば信頼するほどいろいろの話合いは円滑に行くのはこれは当然であります。従いまして我々も、例えば貿易においては通商条約を結ぶ、或いは賠償を片付けるとか、或いは文化の交流をやるとか、その他いろいろの方面で相互の理解を深めることがこれが国交回復の第一の前提条件である、こういう考え外交演説におきましてもその種のことを述べております。
  331. 高良とみ

    高良とみ君 これは条文に関しまするが、アメリカ議会での討論の中に日本に「ドーネート」という言葉が使われている。ウインステツトという人が申し、「結局日本に最後は与えるのだ」ということをべイツという人も言つておりますが、事実上与えるのだと言つております。結局五年なり延長して十年の後に日本に与えるという意思が、そういう約束がおありになるか。或いは更にもう一つ伺いたいのは、日本にこれを貸すときに、何か日本の軍備力を漸増するために、アンダースタンデイング、密約というまででなくても、何かそういう意思がおありになるか、その二つを伺いたい。
  332. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはよくアメリカ国会質疑の中にあるようでありまして、初めは貸すと言ておいて、しまいにはやつてしまうのじやないかという疑いを議員のほうではよく差挟むようであります、質疑の中では。それに対する政府側の答弁は別にないようでありますが、これは協定に書いてありますように、又政府の提案理由にもありますように……、失礼しました。これはキヤプテン・エンライトという人でありますが、ノー・サー・ウイ・ハブ・ナツトと言つて断わつております。いずれにいたしましても、この提案理由によりましても、日本との協定によつても、期限が切つてつて、そのあとでサブスタンシヤリーにセイム・コンデイシヨンで返す、こういうことになつてつて、その点は間違いございません。なお何かそのアンダースタンデイングがあるかというお話でありますが、これは保安庁長官からお答えがありましたように、全然この協定以外のアンダースタンデイングというものは何もございません。
  333. 高良とみ

    高良とみ君 併しこの一般の公聴会の委員長は、日本にそれを貸して、そうして与えるのではないかと言つたときに、オフ・コースと言つております。そうでなければ、我々が日本を防衛するところのフル・レスポンシビリテイーをとらなければならないと言つておるのでありますが、そういう点であとでは……、海軍のキヤプテンはそのままにしますけれども、チエアマン、つまり政治家方面はオフ・コースという了解を持つてつたのではないか、その点をもう少し伺いたい。
  334. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はアメリカ国会の討議をどうというふうに、いろいろここで批評するのは差控えたいと思いますが、とにかくアメリカ政府日本政府の代表の間で協定に調印しておるのであります。この協定の中に五年、若しくは更に五年、そのあとではサブスタンシヤリーにセイム・コンデイシヨンで返す、こう書いてあるのでありますから、これよりも正確な記録というものはないはずだと考えております。
  335. 高良とみ

    高良とみ君 わかりました。保安庁長官に伺いたいのですが、長官は勿論、この今日の進んだ原子砲及びロケツト砲は、これを電波誘導によりまして、遥かなる方面からこれを誘導できるという、最近の英国等の実験を御存じだと思うのでありまするが、そういう時代でありまするときに、なお今のような小さなものでは不安であるから、もつとしつかりした船を造りたいとおつしやるところからいたしましても、世界はそういう力には力を持つて来るというよう考え方はもうとらないのだということ、そういうことについては、これは今の船舶借用の問題とは違いまするが、徹底的に長官は、如何に日本の富ができましても、或いは軍需産業が盛んになりましても、そういう時代に軍備と言いますか、戦備というものを持たないということに対して、ちよつと御決意を伺いたい。
  336. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は元来が軍備全廃論者なんです。世界の各国が全部武器を放棄して、平和な社会を作り上げることを念願いたしております。その一人であります。各国が如何ようにあろうとも、日本では是非ともこの平和な社会を先がけて作りたいということを念願しております。今原子砲とか何とかいうお話が出ましたが、そんなものができたから、それに対応するようなものを日本でも作るとかいうよう考えは毛頭ありません。ただはつきり申上げておきまするのは、この船は海岸の警備と人命の救護のために使うのでありますよ。これをはつきり認識して頂きたい。今日本の海岸線はどうなつておるか、この現状を如何にすべきか、思いをめぐらしますれば、我々はこれくらいのものを以て日本の漁民を保護し、又密輸船を取締り、密入国者を取締るということは緊急の急務なり、こう考えてやつておる次第であります。
  337. 高良とみ

    高良とみ君 更に追及してお伺いするのは恐縮でありまするが、従つて長官には、憲法を改正してこの自衛力程度の戦力を持つことをお考えになつておらないと了承してよろしうございますか。
  338. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は勿論、首相も言つておる通り只今は再軍備をするという考えは毛頭ないのであります。
  339. 高良とみ

    高良とみ君 只今はと言われたところが、ちよつとどうにも私ども了承しにくいところなんでありますが、こういう貧しい日本において、一千億の予算を保安隊にとり、なお五百億に余るものを使いきらずにおられるときに、片つ方には一家心中をし、多数の中小企業者等も年末を越せないでおるのでありまするが、こういうようななし崩し的な、そろそろとやつて、そうして世界の情勢は悪くなるときまつておるとさえも言えるような場合に、只今はとおつしやいますると、ちよつと情勢が悪くなれば、憲法も改正しよう、そうして九条ものけてしまおう、そうして一つの、どちらからでも寄らば斬るぞというような戦力を、よその国からでももらつて、借りてするかも知れないという可能性を国民は心配しておるのであります。その点を一つ只今はでなしに、私の生きておる間は憲法を改正して兵力を持たない、戦力を持たない、自衛力を持たないということを伺わないと、本当の愛国者でいらつしやるかどうか、私にはわからないのであります。失礼でありますが。
  340. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 再軍備するかしないかは、私の意思によつて決定するわけじやありません。私の意思で決定すれば、私は自分の意思によつてこれは何とか処置いたしたい。憲法を改正して再軍備するかしないかは、国民意思であります。
  341. 高良とみ

    高良とみ君 併しながらこれは今吉田内閣がその局にあるのでありまして、今後四年間その局にあられると考える場合に、曾つて吉田首相は野坂氏の質問に答えて、自衛力は即ち戦力である、だからこれを持つことは今回の憲法に対して違反であると言われて、これを拒否なすつたのでありまするが、この立場からいたしましても、自衛力であるところの戦力は持たないということをお守りになるのが閣僚の義務ではないかと、こう考えるのでありますが、これは日本国民がこの次の憲法改正のときに、しるしか何かつけて、そうしていつの間にかそういう不安をつのらされた結果、自衛力即ち憲法違反でないというよう考えを持つて来るようなつたときに、長官は個人として、そういうことは日本の幸福であるか、不幸であるか、どちらにお考えになりますか。
  342. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通り日本の憲法では戦力を持つことは禁止されておるのであります。戦力に至る程度の再軍備をしようと思えば、先ず以て憲法を改正しなくちやなりません。憲法を改正するかどうかということは、今申上げました通り国民意思によつて決定されるべきものであります。政府意思によつて顧慮されるべきものではないのであります。それは国民の判断に任せるべきであると私は考えております。国民意思が再軍備しなくちやならん、従つて憲法を改正すべきだということになれば、国会においてもこれを御承認になることであろう、私はこう考えております。
  343. 高良とみ

    高良とみ君 私は先ほどの御説明によつて、今回のものは沿岸警備のみであると了承したのでありまするが、それに間違いはないかということをもう一遍確かめたいのであります。それは遠くまでお出しになる、或いは海賊船を追つて海外にもお出になる可能性があると思われますが、如何でありますか。
  344. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは保安庁法によつてはつきり規定されておるのであります。警備隊は海岸の警備と人命の保護を目的とするために設置されたものであります。その範囲内においてこれは行動すべきであります。その限度は明記されておると思います。
  345. 高良とみ

    高良とみ君 この間の委員会で、大規模の擾乱があると考える、数十万坪の土地もそのために演習に必要であるというお言葉があつたのでありまして、この意味が私にはどうしてもわからないのであります。これは船ではないのでありますが、国内においても未だ大規模の騒擾があるとお考えになつて、それでバズーカ砲や、或いは海岸からのほうの高射砲というものを御用意になつておるのかどうか伺いたい。
  346. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申すまでもなく国内、或いは国際情勢は変転極まりないのであります。朝鮮事変といい、或いはインド支那の事件といい、或いは前のスペイン反乱事件といい、これは我々は予想することはできません。併しながらこの最近に起りましたいろいろな事情から考えまして万一のような場合があるときの準備を我々はして、国民に安心感を与え、そうして一朝事あるときにこれを制圧して平和な日本国を取戻すということを不断から心がけることが必要であろうと考えております。その意味において保安隊も設置されたのであります。その設置目的に副うて相当の訓練をする必要があるので、演習地などを持つことになつたわけであります。
  347. 高良とみ

    高良とみ君 その場合はもうまさに戦争中であり、非常事態かと思うのでありまするが、私個人としては、これはアメリカの有権者等の意思も了承いたしまして、反対でありますけれども、そういう場合にはアメリカの安全保障条約というものがあるのでありまして、やはりそこに、これを行使する、しないにかかわらず一つの国際的な約束があるのであります。そうしますと、今の保安庁長官お話でありますると、今日実際にそういう事態が起つておらないけれども、アメリカが持つておる程度の日本の防備に到達するまで、日本が万一に備えて平素から徐除に漸増的兵力と言いますか、武装力を増して行くということは明らかにわかつているように思うのでありますが、如何でございますか。
  348. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうではございません。日本に対する直接侵略に対しては安全保障条約によりアメリカ軍はこれを守つてくれておるのでありますが、併し日本独立国家たる以上は、日本の内地の治安ぐらいはみずからの手によつてこれを守つて行かなくてはならん。これまでアメリカに依存するということはとんでもないことだと私は考えております。日本はみずからの手によつてみずからを守つて行き、日本の内地の平和を維持することは当然であろうと私は考えております。その意味においてこの保安隊が我我は必要なものと考えております。
  349. 高良とみ

    高良とみ君 私ども母親の立場からいたしまして、そういう大規模な擾乱があり得るというふうなお見通しを伺い、又その場合には同胞相殺し合う、そうしなければ日本の治安が守れないということを伺うことは、そういうその原因に対して非常に遺憾に思うものであります。で、それは国際情勢というようなものがありますが、私の了承するところでは、それが間接侵略の現われであるとおつしやるのでございましようけれども、そう行かないために国民がもつと腹に信念を持つて、そうして自分の国を自分で治めるような愛国心を持つと申しまするか、そして当局にありまするものは警察力を持つて、これで十分に治めて行けるものと、私どもは国民同志でありまするからそう思うのでありまするが、その場合にバズーカ砲が出て来たり、高射砲が出て来たりすることの、その本にある一つの防衛哲学と言いますか、即ち虞れなきを施すというのが本当の日本精神だと思う、東洋精神だと思うのでありますが、こうあるかも知れないからこういうものがある、あああるかも知れないからこういう武器を備えるということで、これを無限に恐れて来れば枯尾花も幽霊に見えるのであります。それは先ほど岡崎さんの北京放送に対する解釈もありましたが、もつと虞れなきを施すような方策をおとりになるこそ根本的な国内の保安の根本であるように思いますが、長官如何でいらつしやいますか。
  350. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は昔から言つておるんです。武は用いざるを以てよしとする。併しながらこの一つの力によつて人心の安定を得て、そうしてさようなことの至らないようにするということが本来の目的であります。私は同胞相殺し合うということはこんな悲惨なことはないと思つております。朝鮮のごときは実に悲惨であります。さようなことがあつてはならん。それへ至らざるように我々はするんじやないですか、万一そんなことが起つたらどうなるか、無限の我々は力としてこれを利用したいと考えております。決してかようなものを行動に移すべきことは考えておりません。
  351. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、最後に一、二お伺いしますが、日本アメリカの軍艦を借り、この装備を用いてそうして沿岸を警備して行き、或いは少しく海賊等をも追つて行くこと、即ち国民の或る方面においては武力に依頼して保護してもらわなければならない、警察の力だけでは足りないんだからということになつて来た場合に、これが古今に通じ、又は諸外国、アジア諸国に通じてもこれと同等の形において軍力ではない、戦力ではない、又日本は武装しているんではないということが言えるとお思いになるか、勿論アジアには武力を持つておる国がたくさんございますが、その点がとかく誤解を招きやすいということも、又この私ども共に憂うべきだと思うのであります。如何でありますか。
  352. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 少し船についての知識のある人であれば、只今御審議願つておりまするこの船は、これが他国の侵略のために用いられるような船とは考えられないのであります。こういう老朽艦で、而も速力の低い船、これを戦争目的に使うなんということは夢にも考えられないと私は考えております。併しながらこの船は必ずしも私は沿岸警備に適格な船とは考えておりません。本当ならばもう少し適格な船を造るべきであろう、こう思われるのであります。併し日本の現今の政財政態においてはそういうことは又不可能です。止むを得ず、と申しては甚だアメリカに対して相すみませんが、アメリカの好意を受けてこの船を使うということは最も現時の情勢より考えて妥当なことと考えております。
  353. 高良とみ

    高良とみ君 それならばどこまでもこれは、フリゲート艦であるということは警察力である、そうしてこれが増強をして行つてもいわゆる自衛力にはならない、こういうふうに解釈してよろしうございますか、それとも戦力になり得る、自衛力と同類のものである、こう考えてよろしうございますか。
  354. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはまさしく警察力であります。
  355. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますると如何に日本の富が殖え、金ができ、工場が殖えて来ても、これ以上の装備はなさらないと、こうお答えできますか、その点。
  356. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の在任中はこの船で十分にやれると考えております。情勢の変化のない限りにおいては海岸用の警備はこれでやれると考えております。
  357. 高良とみ

    高良とみ君 岡崎国務大臣にもう一つ伺いたい。最後でありまするが、日本がああいう片面講和をいたしました結果、日本アメリカの軍によつて警備されておることがその範囲であるならばこれは了承することがありましても、現に朝鮮においてああいう戦闘が行われ、その基地が日本であるということによつて多くの国が不安を感じ、又それについて日本の再軍備ということを濠洲初めニユージーランド、或いはフイリピンその他の国さへも心配しておるということに関しましては、国民の要望する外交は、そういうふうでなく、真に日本の平和的意図を表わした外交をして、こういう誤解されやすいことに対しては、はつきりと憲法の趣旨その他を書き表わされることができないものでありましようか、この点をお伺いしたいのです。
  358. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 濠洲、ニユージーランド、フイリピンその他の国々で当初誤解があつたのはこれは事実だと思いますが、現在においてさよう誤解があるとは考えておりません、これは終戦以来、特に講和発効後政府としてもいろいろその間の事情を説明したためかも知れません。或いは向うでだんだんよくわかつて来たためかもわかりませんが、いずれにしても只今よう誤解を持つておるとは到底信じられません。
  359. 高良とみ

    高良とみ君 それは政府同志はそうかも知れませんけれども、民間には随分人心の機微なものがあるのであります。先日外相の説明に、朝鮮に対しましても朝鮮の領土全体に関しては自分たちはどういう爆撃があろうとも、これに対しては別にどうも心配はしておらんという御言葉があつたのであります。即ち三十八度線でも、九度線でも、鴨緑江沿岸であつても、朝鮮全土は李承晩政権の統治するところとお考えになつておるのでありますか、その点を伺いたい。
  360. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは必ずしもそうはならないかも知れませんけれども、国連の協定によつて選挙をやることになつております。その選挙の結果生れたのが、今の韓国政府であります。ただその選挙は朝鮮全土に行うべきはずであつた。ところが三十八度線以北に対しては国連軍の監視委員を入れることを拒絶して選挙を行わなかつた結果、事実上は三十八度線以南で選挙が行われたのでありますので、建前は、あの政府は本来ならば全部の選挙を行なつてできた政府であるべきであります。
  361. 高良とみ

    高良とみ君 大体希望といたしましては、どうか国民が希つておりまする平和の道についていま一段と生きた、そして警備を多く増さないで行けるよう外交を御展開になることを希望する。又朝鮮の問題についても日本の憲法を今更に世界に謳つて、こういう国で建つて、おるということを謳う、又称えてそうして曾つて同胞であつた朝鮮人に対して一日も早く一人でも殺戮の減ることを希うというような、そういう高度の自主外交というようなものを希うのであります。  これは細かいことでございまするけれども、木村長官にお伺いしておきたいのは、このアメリカから借りました船は、これは外国名が全部ついておるのでありますが、日本が使います間はこの名前等は変える御意思がおありになるか、この際お伺いします。
  362. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本名を全部つけるつもりであります。
  363. 高良とみ

    高良とみ君 一応了承いたしました。
  364. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  365. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) それじや速記願います。
  366. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 時間もだんだん経つて来ましたし、極く簡単にお尋ねしておきたいと思います。  先ず第一に木村長官にお尋ねいたします。昨日曾祢君から一番初めに尋ねられたことと非常に似通つておるわけであります。曾祢君はどういう言葉を使われたかはつまり覚えておりませんが、たしか海上警備対策の基本方針如何というふうなことじやなかつたかと思います。私も実はそういう点を中心にして問題を考えておるわけなんですが、併しもう少し問題の範囲を拡げまして、海上警備のほか具体的に言いますと保安隊の任務といいますか、そういうことと合せて、つまり警備隊及び保安隊両方合せてそれを中心にしての日本の今後の防衛対策といいますか、言葉は非常にむずかしいと思いますけれども、仮りに私防衛対策と申します。それの最も重点として考えておられる、重点も幾つかあるかも知れませんが、その序列において一番大事な点だと見られる点、これを法律の文句じやなく、これを実際に、実際面というものとそれを睨み合して考えて見たときに、どういうような点を重要度においても一番重要なことだということでこの対策を考えておられるか、その点をお伺いしたい。
  367. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私といたしましてはこの保安隊なり警備隊なりの最も重点的の作用をなすのはどこまでも内地の平和と秩序維持、これであります。然らばその内地の平和と秩序を如何なる面においてこれを考えるかというと、普通の刑事事件も内地の平和維持、これは主として普通の警察力によつてこれをやる、併し一たび大きな擾乱、或いは叛乱というような事態ができまして、普通の警察力では、以てすることのできない場合において初めてこの保安隊、警備隊が直ちに行動に移るわけであります。我々といたしましてもこの線に沿つて、できるだけこの力によつて内地の平和と秩序だけは保存して行きたいと、こう考えております。
  368. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 もう少し、今の御答弁の中に当然含まれておりますけれども、私の特にはつきりお尋ねしたい点は、質問の趣旨をもう少し申上げるために、私の一応見ておりますところを申上げますと、いわゆる間接侵略、これが非常に日本としては重大な問題です。今後の極めて重大な問題だ。世界の現実の情勢、今後いろいろ見て、日本の防衛問題を考えて行くとき極めて重大な問題だと、そうして今日の段階においては、日本は少くとも間接侵略に対する防衛対策だけはしつかりしたものを自分で持たなければいかん。そうしてこれはいわゆる間接侵略に対する備えであるか、そこからして、私初めてこれが直接侵略に対する備えではない、直接侵略に対する備えならば、明らかにこれは軍隊に違いない。併し間接侵略に対する備えである。その限度もそこからして、装備或いは訓練等もそこからいろいろなことが出て来るのではないか。それで以て初めて国民にもこれがいわゆる再軍備じやないのだということが実質的に説明或いは理解してもらうことができるのじやなかろうか。そういうふうに実は私は考えておるのです。そういう点についてこれをただ言葉の上で今までたびたび政府側では答弁しておられます。この戦力とは近代戦を遂行するに足る相互的な力、こういうようなことは成るほどこれはそういうことも言えましようけれども、こういうことは実際問題には、これは非常にアカデミツクなものであつて、実際政治の解決には少しも役に立たんのでもつと間接侵略の危険性というものの実相をもつと明らかにして、これに対する備えとしてこれはやるのだというよう説明の仕方、これは単なる説明というより実際の事実がそうだというところから行つたほうが、又それでも政治的立場等によつて、それに対して又いろいろこれに対処する方法などについては、見解の相違になりましようけれども、そのほうが私はいいのじやないか。そこのところをはつきり打出すことが私は大事じやないかと思う。又そういうことが本協定の基本を、これに対する賛否をなにする場合には大事じやないかと思うからお尋ねしているわけです。
  369. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) まさにお説の通りであります。私も極めて同感であります。昨日も外務委員会ではなかつたかどうか、予算委員会でありませんでしたでしようか、記憶はちよつとなくなつたのでありますが、同じような御質問がありました。私はその際にこれは外国の教唆、扇動による大擾乱或いは反乱といういわゆる非常事態に備えるべき目的を以て設置されたものであるということをはつきり申上げた次第であります。ただ普通の警察力では到底これを鎮圧し能わざるような非常事態の場合にこれは行動すると、こういうことを考えておるのであります。
  370. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に外務大臣に二、三お尋ねしたいと思うのですけれども、先ず第一番には安保条約と今度の協定との関係お尋ねしたいと思います。その関係と申しますのは、狭い意味の法律的の関係だけじやありません。又我々の問題にする点は、法律的の点だけではありません。それだからもう少し広い何と言いますか純粋な法律的の関係だけじやなく、政治的の関係と言つてはちよつと適当じやないかも知れませんが、要するにその関係をちよつとお尋ねしたいと思います。
  371. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつと御質問が漠然としてよくわからないのですが、アメリカ国会の議事録に安保条約など引いてありますが、その意味でしようか。
  372. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そういうこととも関係を持つてきます。
  373. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はこう考えておるのです。まあアメリカの議事録等の問答は、こちらで特にそれがあるからこういうふうに解釈しなければならんとかというような必要はないと思つておりますが、併しこのアメリカ側考え方として先方立場に立つて見ますると、安全保障条約によつてアメリカ日本及び日本の周辺に適当なる部隊を駐留させるわけであります。これは海軍も空軍も陸軍もありましようが、そうする以上は海上におきましても駐留する。陸海空軍の安全を保持するためには必要の措置をとるのはこれは当然であると思います。それが沿岸であつてもやはり先方としては軍の安全のためには必要なる措置を講ずるわけであります。ところが沿岸につきましては日本政府としては日本の国の沿岸警備という建前からやはり警備をやらなければならない。従つて全然違う意味での警備が或る場合には重なることがある。目的が違いますから警備も従つてオーバー・ラツプする場合があり得るのであります。併しながら若し日本側で非常に完全な、これは仮定でありますが、完全な沿岸警備をやつて何にも心配がないとすれば、それだけは実質上アメリカ側は手を省いてもいいわけだと思います。そういう意味でこのフリゲート艦を貸せばそれだけ日本側に沿岸警備の力が殖えて、それだけ又アメリカとしては軍の安全のための必要な警備がその程度は減ると、まあこれは算術みたいに行きますまいが、という説明じやないかと思つております。それで例えば自衛力の漸増、これはいろいろな意味でむずかしいことでありますが、その点も言及してありまするが、これは日本側の解釈としては沿岸警備であり、これを何という表現でやつていいのかはつきりしませんが、要するに今杉原君の言われたような国内及び沿岸における騒擾等を防ぎ、十分予防して間接侵略の起らないようにするための一つの手段、そういう意味日本側考えておる。そこで間接侵略ということにつきましても、これは勿論日本側で十分なる措置を講じ、日本の力で以てこれに当るべきは当然でありまするが、安保条約にもこの点に言及して、第一条に「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて」云云という文句がありますが、従つて安保条約と間接侵略に対する日本警備力というものも関連を持つわけであります。そういう意味協定安保条約とは関連があると思います。
  374. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の御説明大体私も了承しましたが、午前中に木村長官が両者関係ないとおつしやつたのは恐らく純法律的の意味かと思います。別に矛盾なく私今聞くことができました。これはアメリカ国会二つの点を挙げてこの両者の関係を説いておることは、私これはすなおに見て極めて重要な点を指摘していることだと思います。そうして又狭い意味の法律的の解釈からしますと、いろいろ批評もできますけれども、もつとものことを実質的に考えて行くならば、あの通り関係がやはり当然私予想されたことだと思う。つまり両者の関係安保条約によつてでき上つた日米の一種の集団防衛の関係が更にこれによつて或る部分インプリメンテーシヨンがなされておるという関係に私あるものだと、こう解釈するのです。今外務大臣のおつしやつた趣旨も言い表し方は別だけれども、そういう点をお認めになつてのことだと思いますが、そう解釈してよろしうございますか。
  375. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まあこれは正確に、私は言葉はどうかわかりませんが、やはりこれは安保条約に実質上は関連があるということを例を挙げて申上げたのであります。そういう意味であればお言葉の通りだと思います。
  376. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の点に多少関連しますから、附随的に私一点だけ触れておきたいのですが、今まで政府側で説明された本案を国会に提出する理由の説明が私はどうも納得行かない。先ほど法制局長官もその点を説明されました。法制局長官としては御尤もだと思います。法律上の見解を聞かれたら恐らく私だつてああいうふうに一応答えるだろうと思うのですが、併し問題は、私はこの問題の今外務大臣も認められたような、非常なこれは重要な関係にある日本の防衛政策乃至アメリカとの協同的な一種の防衛関係というふうな、そういう点に非常に重大な関係を持つている。従つて勿論日本自身の防衛政策のこれは非常に重要な点だが、同時にこれはアメリカ関係を持つている。そういう意味においてこれは外交上も極めて重大問題である。私はそういうところがむしろ国会の、国民承認を得てやらなちくやならんことの理由であると思う。そういう点どういうふうな、最初たしかこれを国会に提出された場合の説明などには、そこを極めて法律技術的な、余りに法律技術的な理由だけ言われたんだけれども、それでは私はどうも納得できない。その点外務大臣どういうふうな御所見ですか。
  377. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実はどうもその提案理由の説明というものは私もしばしば納得しかねるような点もあるのですが、非常にマンネリズムに陥つちやつていて、簡単であつて十分意を尽してない点もあるのでありますが、これもそうおつしやればその点もあると思うのです。併しまあこれは非常に、法律家が書いたのかも知れませんが、まあ提案理由の説明としては或いは法案説明ですからこういうことになるのかも知れません。そのあと質疑でそのほかの点がはつきりするのかも知れませんが、我々の考えていることは杉原君の御意見と実質的には変りが余りないんだと思います。
  378. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次の問題を。先ほどどなたからかも質問がありましたが、これはこの協定内容に入りますが、協定の中に将来船舶所有者と船舶借受者との合意により、この協定に添付される表に掲げる船舶というのが入つているわけですが、これは先ほどどなたから御質問になつたとき、まだ、私は問題点がまだ十分に明らかにされていない点があると、こう思つたのです。この協定の書き方からしますと、これは今後アメリカから借りる船舶、そのいわゆる船舶というのは、これはベツセルでありますから、恐らく何でも含まれ得る余地のある文句だと思いますが、そうしてこれはこれによつてこの協定承認すれば、それの法律的の効果の一つとして、今後は国会承認を経ずして軍艦をも含む如何なる船舶をも借り得る法律上は可能なことにここで、なると思う。その点どういうふうに解釈しておられるか。
  379. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは協定と同時に委員会等で御説明をします。或いは委員長の本会議に対する報告等に明らかにされる点は、なるほど協定自体の法律的な解釈から言えばこれに含まれておらないでありましようけれども、これは協定と同じように強い意味を持つものと考えます。で、我々の御説明は、フリゲート十八隻、上陸支援艇五十隻、これ以上のものは借りないのであつて、この範囲内で借りる。それではなぜそう書かないのかと言われますと、実はこの議事録にもありますように、先方でもこれは日本が有効に使えるという保証と言つちやおかしいですが、そういう見込みがなければ貸す意思がないというあとの八隻につきましてはことでありますから、限度は十八隻と五十隻、これ以上のものは借りませんし、これ以外の種類の船も借りない。併しこの範囲内でどれだけ借りるかというのは、これは海上警備隊のほうの必要もありましようし、アメリカのほうの余力の問題もありましようから、両方の合意によつてきまるのでありますが、範囲はそれ以内、それ以外の船を借りるということは考えられないし、又そういう場合が仮に将来ありとすれば、又こういう協定を作らなければ借りられないと、こう政府は解釈しております。
  380. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その点がこの協定ではつきりしていなかつたものだからお尋ねしたわけで、今の外務大臣の御説明は非常に重要な点だと思います。アメリカ側で法律を作つてつた範囲で、アメリカ側としては今一応そうなつておりますが、この協定のほうの関係を見ますと、アメリカが更に国内法の措置を変えてやつたアメリカ側としては又できるわけなんで、その点この協定は明確を私は欠いておると思う、書き方が。  それから第七条のところに秘密保持のことがありますが、「日本国政府の職員又は委託を受けた者以外のいかなる者にも」これこれのことは漏らしてはならないということが先ずあるのですが、この日本国政府というのは、その範囲はどういうふうに考えているのでしようか。これは英語ではガバメントですか。
  381. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ガバメントであります。
  382. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうすると、これは国会は含まないのですか。私はアメリカの用語としてはガバメントというのは非常に広い意味に解される場合がむしろ多いのだが、ここの日本国政府というのはどういう意味ですか。
  383. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは普通日本国政府という場合に、もう御説明するまでもなく、イグゼクテイブ・カバメントと三権を含んだガバメントと両方あると思います。例えばポツダム宣言受諾の当時の先方の返事は、三権を含んたものをジヤパニーズ・ガバメントと、こう言つております。この場合もそう考えられると思いまするが、併し若しそう考えられない場合におきましても、ここにはたしか「委託を受けた者」という字がありますので、この点は差支えないと思つております。
  384. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 つまりこういう秘密事項は国会には漏らすことができないところの、協定によつて縛られるかどうかの点を私は聞いておるわけなんです。
  385. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは国会とかいうこと、これはアメリカ側では実は法律がありまして、そうして何と言いますか、軍機保護法みたいなものがありまして、この秘密事項につきましては四つの段階に分れておるわけであります。トツプ・シークレツト、シークレツト、ゴンフイデンシヤルと、いろいろなものがありまして、トツプ・シークレツトはこれこれの範囲のものでなければ漏らしちやいかん。シークレツトなら、このくらいの範囲までは漏らしていいというようなことがあるのです。実は先方の希望としては、日本にもそういう法律のような措置をとつてもらいたいという希望もあるのでありますが、こちらでは今のところその措置まではどうかと考えて、まだ何もやつておりません。が、要するに向う側にこういう段階があるので、仮に日本側にそういう段階がないにしても、向うのほうの、これは武器であり、或いはいろいろの機密の装置がありとすれば、向うの事実上のその段階に応ずるような機密の保持を日本政府でもやつてもらいたい、こういう趣旨であります。従つて国会に漏らすとか、漏らさんとかいうことでなくして、日本政府一般に対して、例えば非常に責任のないところに相当高度の秘密を漏らすようなことはしてもらいたくないという実質的の話合いであります。
  386. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一般の者にやたらに機密を漏らしちやならんことは、これは当然だと思いますが、政府自身がこの協定を結ぶ結果、法的効果の一つとして、国会から要求があつて説明できんというところまで拘束するものじやないということをはつきり。
  387. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは国会の審議というものが普通公開でありますから、そういう場合には或る種の機密事項は言えないけれども、秘密会なら言えるというような場合があるかも知れない。併しながら、国会議員にまで隠さなきやならんほどの機密はないと思います。
  388. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 要するにこの協定によつては拘束されないわけですか。
  389. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 少くとも秘密会議であれば差支えないと思います。
  390. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それならいいのです。更にそのあとのほうに、秘密保持のための取扱区分はアメリカ合衆国政府の標準慣行に従つて行うことが義務になつておるのですが、このいわゆる標準慣行というのは内容ははつきりわかつておりますか。
  391. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはわかつております。これは今申しましたように、一番高度の機密はトツプ・シークレツト、それからシークレツト、コンフイデンシヤル、それからクラシフアイド、この四つになつておりまして、これについては、その事項に応じて、これはこの程度までの範囲で知らしてよろしいというような区分が、例えば今度借りるフリゲートならフリゲートの各部分についてあるわけであります。全部ではございませんけれども、一部に実質的に。その部分に従つてこちら側もアメリカ側の機密保持に協力する、こういう約束であります。
  392. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いや、わかりました。
  393. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 別に御発言もなければ、質疑はこれにて終局するのに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  394. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 御異議ないと認めます。質疑はこれにて終局と決定いたします。
  395. 大隈信幸

    ○大隈信幸君 外務大臣以外の政府委員のかたは、どうぞお引取頂いて結構でございますから。大変遅くなつて恐縮なのでございますが、ほんの一点だけ外務大臣、折角いらつしやいますから、伺つておきたいのです。  これは日本への留学生の問題についてでございますが、問題は要するに、戦前において、中国から非常に留学生が日本にたくさん来ておりましたけれども、果して彼らは中国に帰つてから、常に親日的行動をとつていたかどうかという点は、非常に疑問だと思うのです。むしろ却つて反日運動のほうに日本から帰つた留学生が走つてしまつた傾向が非常にあると思うのです。その原因を考えてみると、非常に日本における外国からの留学生の受入態勢というものは十分でなかつたという憾みが非常にあつたと思うのでございますが、最近においてはアジアの諸国から、日本への留学希望が非常に多いと思うのでございますが、今後大いに来る者はこれを迎えるべきでございましようけれども、政府のほうに受入態勢がないと、折角来た人が又再びアジアの国元へ帰つて日本に対する感謝よりもむしろ逆に非常に不愉快な気持を持つて帰りますと、折角岡崎外相の言われるところの善隣友好外交というものが非常に毀されて行くという気がするのです。今後外相として、そういうアジアの諸国からの留学生の受入態勢をどういうふうになさるか、それを具体的に来年度の予算において相当御考慮なさる御意思があるかどうか、その点を伺つておきたいと思うのですが。
  396. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これについてはもうすでに、只今約六十名ほどのインドネシアからの留学生の話もあります。その他にもいろいろ話があります。そこで差当りは、予備費より出すより仕方がないが、来年度の予算には相当の額を計上するつもりでありまして、只今大蔵省と折衝いたしております。その結果がどうなりますかまだわかりませんが、外務省としては相当の予算を計上して折衝いたしている次第でございます。
  397. 大隈信幸

    ○大隈信幸君 今のは大臣の御答弁で結構でございますが、なお一層、この問題は決して軽い問題じやないと思いますので、十分一つ頑張つて頂いて受入態勢の整備を是非お願いいたしたいと希望いたしておきます。有難うございます。
  398. 高良とみ

    高良とみ君 今の大隈委員お話にありましたけれども、やはりよく分析する必要があると思うのです。日本に留学しておりました学生が反日になつたというのは、日本人全体に対して反感を持つているんじやなくて、非常に懐しみを持つているものも世界各国にあるのですが、日本の侵略的な或いは軍国的な、或いは非常に偏意的な、まあ殊に憲兵隊なんかに対して反感を持つていたと思うのであります。併しその中でもそれを突き貫いても日本人民の或いは日本国民の文化と好意に対しては感謝を持つている人たちが多いのであります。随分苦難の中に今日留学生もたくさん暮らしておりまするが、それらの中でもそういう感情は今日でもはつきりわかつてつて日本人の持つている苦難をもよく了承して戦後も来ているのでありまするから、ただ単に反感というふうなことは私はどこででも見なかつたわけであります。で、この点外務大臣に一応伺つておきたいことは、中華民国でない国から来た留学生及び華僑の要望によつて、それらの人の登録は中国人として御登録になつたということを聞きますが、この通り間違いはありませんでしようか。
  399. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私も正確に記憶しておりません。実は出入国管理庁でやつておるのでありまして、これは只今法務省に属しておりまして、正確にここでお答えすることはできません。私の了解は、当時外務省にありましたときの私の了解はそうであります。どちらということでなしに、中国でよろしい、こういうことに了解しておりました。
  400. 高良とみ

    高良とみ君 そのことは大変に望ましいことだと思うのであります。やはりその人たちが自分の国にはこういう形容詞でやつてもらいたいというときに、やはりそれは一応外国人でありまするから、その点はそうして頂いたほうが日本外交にとつてはプラスであると私どもひそかに喜んでいるのでありまするが、どうぞそのように今後とも各国人がいろいろ来る、北鮮、南鮮等もありましようが、朝鮮人というようなものもあるかも知れませんし、そんな点で一つ緩大なアジアの苦悶そのものを一つ了承して処置願うことを希望いたします。
  401. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 次回は明二十四日午前十時に開会いたして本件の討論、採決をいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時四十分散会