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1952-12-22 第15回国会 参議院 外務委員会 第10号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十七年十二月二十二日(月曜 日) 午後一時三十二分開会
━━━━━━━━━━━━━
出席者
は左の
通り
。
委員長
徳川
頼貞
君 理事
伊達源一郎
君 大隈 信幸君
委員
杉原
荒太
君 團 伊能君 平林 太一君
高良
とみ君 曾祢 益君 有馬 英二君 大山 郁夫君 国務大臣 外 務 大 臣 岡崎 勝男君 国 務 大 臣
木村篤太郎
君
政府委員
法制局長官
佐藤 達夫君
保安政務次官
岡田 五郎君
保安庁長官官房
長
上村健太郎
君
外務政務次官
中村 幸八君
外務省条約局長
下田 武三君
事務局側
常任委員会専門
員
久保田貫一郎
君
参考人
琉球立法院議員
平良
辰雄
君
━━━━━━━━━━━━━
本日の会議に付した
事件
○
沖繩教育
の
日本復帰促進
に関する陳 情(第一九〇号) ○
操業漁船
の
沖繩近海諸島寄港
に関す る
陳情
(第二三一号) ○
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の船
舶貸借協定
の締結について承認を求 めるの件(
内閣送付
)
━━━━━━━━━━━━━
徳川頼貞
1
○
委員長
(
徳川頼貞
君) それでは
只今
より
外務委員会
を開会いたします。 先ず
沖縄関係
の
陳情審査
の必要上、本日
参考人
として御出頭を願いました
琉球立法院議員平良辰雄
君に発言を求めます。
平良辰雄
2
○
参考人
(
平良辰雄
君) 本日この
委員会
に出ましで発言する機会を得ましたことを非常に喜んでおります。お礼申上げます。 私が今から申上げたいのは
日本
に早く
沖縄
を
復帰
させてもらいたいというような希望を持
つて
お話
を申上げるので、その内容は無論
沖縄
の
現状
についても触れるのでありますが、極く大ざつぱに申上げたいと思います。それで
大かた
二十四、五分の
程度
だと思いますが、
あと皆さん
の御
質問
があればお答えしたいと存じます。
沖縄
は曾ては独立して
日本本土
との
関係
におきましてはあいまいな
地位
に置かれていたこともありましたが、これは同じ
大和民族
でありながら
地理的関係
からそうい
つた
ようなことに
なつ
たもので、
本土
においても藩があり、藩主が割拠していたことと大した
変り
はないと我々は
思つて
おるのであります。
明治
維新に際しまして
本土
では藩を廃して県を置き
中央政府
が確立されましたが、
琉球
は
明治
五年統合され
琉球藩
を置かれましたが、
明治
十二年には藩を廃して
沖縄
県となり、ここで完全に他の府県と同様に
日本
の一地方とな
つたの
であります。爾来今日まで七十
有余年
もはや
日本国民
として渾然融和し、
国民
としての
権利
も義務も平等であり、個人的にも地方的にも何の差別もなく
日本国民
としての
矜持
を持
つて
来たのであります。
日本国民
のすべてが
必勝
を
念願
していたごとく、私たちも
必勝
の信念を以て
沖縄作戦
に際しましては
防衛軍
と共に戦い、そのために戦死した老若男女の数は十五万に及んでいるのであります。併しこの
戦争
の
犠牲
に
なつ
た
住民
も祖国を恨んで死んだような人は一人もおりません。然るに
戦争
の結果は
母国
から切離され、
国際的孤児
とい
つた
ようなあいまいな
地位
に置かれるということは我々としては誠に忍びがたいものがあるのであります。今次
大戦
の
沖縄戦
におきましては、四十七万の非
戦闘員
中十五万人の死者を出し、あらゆる財産は潰滅し、文字
通り
焼土
と化した
沖縄
ではありますが、どうやら今日の
復興
を見るようになりましたのは
アメリカ
の
援助
によるものでありますので、
住民
は
反米感情
は持
つて
いないのでありますが、
母国
からは何ら顧みられず、殊に
戦争犠牲者
やその遺族に対して何の手当もしてくれず、ほ
つた
らかしにされたので、つくづく淋しい思いをさせられたのであります。併しながら、これも
母国
から
分離
されたためであ
つて
みれば、
敗戦国民
の悲劇として諦めるよりほかはなか
つたの
であります。それはそれとしまして、我々はどこまでも愛国の念を捨てず、
日本
人としての
矜持
を持ち続けて来ておるのであります。私
ども
は
米国
が施す恩恵よりも
母国
に強く抱かれて離れたくないのであります。どうぞ冷たい母にならないで下さいと訴えるのであります。この離れたくないということは単に
民族的感情
ばかりからではなく、経済的にも、文化的にも一環としての繋りを持つことが我々の
永遠
に生きる道であると
我我
は固く信じておるのであります。一昨年十一月には
大島
、
沖縄
、宮古、八重山の各
群島
に
公選
による
群島知事
及び
群島議会
ができまして自治の曙光を見て喜んだのでありますが、今年三月末には早くもこれは廃止されまして、
琉球中央政府
が発足し、これに統合されたのであります。ところがこの
政府
は
立法院
は
公選
によ
つて
できましたが、肝心の
行政主席
は
米国政府
の任命にな
つて
おり、
立法院
の
権限
も極めて薄弱なものでありますので、
目下主席選挙
の
促進
と
立法院
の
権限拡大
に努力を続けている
現状
であります。
母国復帰
の
陳情
は、
群島議会
におきましても
決議
されたのでありますが、
立法院
におきましても戦後二回に亘り
決議
されております。
決議文
は簡明でありますので一応朗読いたします。先ず本年四月二十九日の分を朗読いたします。これは
決議文
であります。 対
日平和条約
第三条によ
つて琉球
はなお
日本
の一部であると我々は信じております。併しながら実際に政治的に切り離されていることは我々
住民
の苦痛とするところであります。
米国
の
国際平和政策
に対しては
日本
はこれを支持し、これに協力しており、
琉球
も又同様でありますが、我々
琉球住民
としては
自由愛好
の
日本国民
として
米国
に協力することが望ましく又そうすることが
民族
的のあり方、だと信じております。何とぞ
住民
のこの
意思
を理解せられ一日も早く
日本復帰
を実現せられるよう熱願する次第であります。
右琉球政府立法院
の
決議
により請願いたします。 以上が
決議文
で、これが
宛先
は
アメリカ合衆国大統領
、
琉球列島米国民政府長官
、
吉田内閣総理大臣
にな
つて
おります。 次に本年十月二十日の
決議文
を朗読いたします。
琉球
の
即時
、
完全母国復帰請願
首題に関して本年四月二十九
日本院決議
によ
つて日米両国
に対し請願いたしておきましたが、
日米両国
は本院の願望に応え
奄美大島
を
日米両国
の
協定
によ
つて
近く
復帰
させるとの
日本外務省
の発表に接し喜びに堪えないのであります。この方針を
即時
具体化せられ
沖永良部輿論等
を
分離
することなく旧鹿児島県
大島
郡を一体として
母国
に
復帰
せしむると同時に旧
沖縄
県の
復帰
も実現せられるとともに更に進んで
日琉全国民
の
世論
に即応して対
日平和条約
第三条の
権利放棄
又は第三条の廃棄による
琉球
の
即時完全母国復帰
の実現を熱願する次第であります。 以上が
決議文
で、これが
宛先
は
米国大統領
、
琉球列島米国民政府長官
及び副
長官
、
米国上下両院議長
、駐
日米国大使
、対
日平和条約調印国
、
日本
の
内閣総理大臣
、
外務大臣
、
両院議長
にな
つて
おりますが、遺憾ながらこの
決議文
は正式には届けられていないはずであります。外部への公文書はすべて
民政府
を通じてでなければ出せないことにな
つて
おりますが、この文書は
米民政府
としては取次ぐことができないということでありましたからであります。以上の
決議文
によりまして我々の熱願が
反米感情
から出たものではなく、早く元
通り
の姿に返してもらいたいという
念願
であることがはつきりしておると思います。
現地立法院
では
政党政派
を超越して
全会一致
で
決議
したものでありますので、本国会におきましても
政党政派
を超越してこの問題の
早急解決
に当
つて
頂きたいとお願いする次第であります。
米国
の
軍事基地
は
沖縄
ばかりにあるわけでもなく、本邦にもあるのでありまするから、強いて
沖縄
を政治的に切離す必要がないと思われるし、
現地住民
の
意思
に反してまでこのような措置を長く続けるとするならば
国際正義
も何もあ
つた
ものでないと言いたくなるのが我々の偽らざる心情であります。 なおここで
復帰
問題に対する
現地米政府
の態度を申上げておきたいと思います。
昭和
二十七年四月一日
琉球政府立法院開院式
における
琉球諸島米国民政府長官リツジウエー大将
の
琉球住民
に対するメツセージの中には次のようなことが謳われております。「
平和条約
の条項により
琉球諸島
は
日本
から政治的に当分の間引続き
分離
される。併しながら政治的な
分離
は伝統的な文化的及び経済的の紐帯の断絶を招来するものではなく、その
反対
に単に
軍事
的に
安全保障
のための欠くべからざる必要だけにつき拘束を受けるもので、
琉球
と
日本
との間の旅行、通信、通商上のすべての不必要な制限を除くのが
米国民政府
の
政策
である。」と、こう
言つて
おります。この声明によりますれば、
軍事
的以外は
日本
との繋りを認めようという趣旨でありますので、むしろ
領土権
を持
つて
いる
日本政府
が積極的に働きかければ
条約
の枠内において単に
日米政府
の
協定
によ
つて
、
軍事
的以外の
行政権
の
復帰
は可能であると私
ども
は見ておるのであります。どうぞこの点を考慮に入れて逐次
行政権
の回復を図
つて
頂きたい。お願いする次第であります。 次は
教育
問題について少しく述べさせて頂きます。今次
大戦
におきましては学校や
校具
を
失つた
ばかりではなく、多数の
教育関係戦没者
を出しております。その総数は六千余人に上り、その内訳は教職員約七百人児童約四千人生徒約一千五百人にな
つて
おります。
校舎
、
校具
の不完備と
教員資質
の
低下等
のため、
戦前
に比較し
教育程度
は著しく低下しております。現在の
校舎
は約六割はかや葺の掘
立小屋
で、雨戸もなく見るに忍びないみじめなものであります。毎年水害も襲
つて
来る、暴風のためその都度吹き飛ばされ、大騒ぎをしておる
有様
で、
校舎
の
早期復旧
は全
住民
の熱烈な要望とな
つて
おります。なお
教育
問題で我々が重要視しておるのは、
教育行政
の
分離
に関してであります。
住民
の
国籍
は
日本
にあると
言つて
も、
教育行政
を
分離
するならば精神的に
国籍
を
分離
したのと同様である。
教育行政
の
分離
により
国民感情
、
国民的活動
に面白くない
影響
を与えるものとして憂慮されております。特に
教育行政
を早急に
復帰
せしめるよう格段の考慮お願いいたします。 次に
財政経済
の問題につきその現況を申上げます。
アメリカ
の本
年度
内における
琉球
に対する
援助資金
、
ガリオア資金
でありますが、これは一千一、二百万
ドル
の
程度
にな
つて
おるようであります。
ドル資金
によ
つて米
その他の
食糧品
及び
肥料等
を輸入し、これを一般に配給し、この
配給代金
は
琉球
における
B円
で回収されまして見返
資金
となり、
琉球
の
復興
に使われることにな
つて
おります。
琉球政府
の、
琉球政府
と申しますと、
琉球住民
の
政府
でありまして、
米国民政府
と混同しないようにお願いいたします。
琉球政府
の本
年度予算
は十四億余円にな
つて
おりますが、このうち三億五千万円は見返
資金
からの
補助金
にな
つて
おります。本
年度
の見返
資金
は十億円内外になるはずでありますが、この
補助金
を差引いた残りの見返
資金
は、一部は
復興資金
として
復興金融金庫
に廻され、一部は
米民政府
が直接
使用
しております。
復興資金
は現在までの累計が十億円に上
つて
おります。
各種産業
の
復興
や
住宅
の
復興
は主としてこの
資金
の利用によ
つて
促進
するようにな
つて
おりますが、
産業
の
復興
は
戦前
の三〇%にも達しない
有様
であり、
住宅
の
復興
も未だに
永久建物
は
戦前
の八万一千棟に対して僅か一万五千棟の
程度
であります。なお一面
予算
による
復興費
も見返
資金
からの
補助金
がだんだん減らされておりますので、今後に期待することも困難で、
校舎建築
のごときは、本
年度予算
の執行を見た
あと
におきましてもなお五〇%の
復興
にも達し得ない
現状
で、この調子で行きますならば、
校舎建築
のごときは全部の
復興
を見るまでには
あと
十年もかかる計算になり、
財政
上も極めて困難な立場に置かれているのであります。併し私
ども
はいつまでも
アメリカ
の
援助
に縋ろうとは
思つて
おりません。むしろ当然の
権利
として
母国政府
に訴えて
復興
を
促進
したいのであります。
戦前
の
沖縄
は砂糖、泡盛、蔬菜或いは生
牛等
を
本土
に移出しまして、米は、主として台湾から、その他の諸
物資
は殆んど
本土
から
移入
していたのでありますが、常に
移入超過
にな
つて
いて総額の約二割
程度
は
外国移民
や
県外出稼者
からの送金によ
つて移出入
のバランスを保
つて
いたのであります。ところが現在はどうな
つて
おるかと申しますと、これら
戦前
の
移出産業
の
復興
は、前にも申しました
通り
、遅々として進まず、漸く
戦前
の三〇%
程度
でありますが、
移入
のほうは
援助物資
、即ち
ガリオア物資
は別としまして、
本土
からの
移入
は
戦前
と
変り
がない。むしろ
戦前
を凌ぐ状況にあるのであります。然らばこのアンバランスの
移出入
の
決済
はどうしてなされているかと申しますれば、
軍労務者
、即ち軍に
使用
されておる
労務者
によ
つて
獲得された
ドル
、
賃金
であります、によ
つて
埋め合わしているのであります。現在
軍労務者
は五、六万人に達しておるようで、この
労務者
の
ドル賃金
は極めて低い、低廉でありますが、それでも毎月百万
ドル
以上の
ドル
が入
つて
来ているようであります。この
ドル
は
商業資金
として積まれ、貿易の
決済
に
使用
されておりますが、
移入物資
は殆んど
消費物資
で、
生産資材
の
移入
が極めて少いので、現在この
商業資金
は余
つて
二千万
ドル
近く溜
つて
いるような
現状
であります。かように
沖縄
は豊富に
ドル
を持ち、
消費生活
のための
商業
は極めて盛んでありますが、
生産業
は沈滞して振わず、全く畸形的な
経済状態
にあるのであります。みずからの
産業
を持たず、
労銀稼ぎ
によ
つて経済
を維持するということは、一時はよいようなものの
永遠
の策では決してあり得ないと信ずるのであります。いつまでも
自主的経済
を持ち得ず、
従属的経済
にあまんじていては遂に
自主性
を持ち得ない
民族
になり下るのではないかと心配しておるのであります。 なお
住民
の
経済生活
に直接の
影響
を及ぼす重要問題として、最近
軍使用地
の問題が持ち上
つて
おります。それは現在軍が
使用
している
土地
の
地代
は一方的にきめられ、民間における時価よりも著しく低廉で、これでは困るということと、いま
一つ
は、今後軍の
使用
に供するための強制立退きは
反対
である、強いて立退きをさせるならば、相当な賠償をしてもらいたいというのであります。この問題については
住民
からも悲痛な
陳情
があります。
立法院
におきましても、
住民
の
生活権
を脅すものとして、
決議
を以てその
善処方
を要望しておる
現状
であります。 以上概略申上げましたが、これで私の話は終りたいと思います。
あと
御
質問
がありましたら、又幾らでも御答弁さして頂きたいと存じます。有難うございました。
徳川頼貞
3
○
委員長
(
徳川頼貞
君)
只今
の
平良
君の話されたことにつきまして御質疑がありましたらお願いします。
曾禰益
4
○
曾祢益
君
只今琉球
の、
沖縄
の
立法院議員
の
平良
さん、而も
沖縄
で非常に有力な
社会大衆党
の
委員長
をしておられる
平良
さんからの非常に注目すべき
沖縄事情
の御
説明
があ
つたの
ですが、なお若干の点につきまして御
質問
をしたいと思います。この
軍使用地
の問題ですが、これは我が
日本
としては
平和条約
が効力を発生して以来、勿論
行政協定等
によ
つて
引続き或いは地域或いは施設を
アメリカ軍
に提供することは、これは国としての約束にはな
つて
おりまするが、併し
国民
対
占領軍
という、いわゆる強権的な
関係
はなく
なつ
たわけですね。
従つて
まあ
現実
にはいろいろ
本土
でも問題はございます。ございますが、併しこれを強権的に
アメリカ軍
が一方的にその
地代
をきめるとか、或いは軍のほうが強制立退きをやらせるというようなことはもうあり得ないわけなんですが、
只今
の
お話
ですと、
沖縄
の
事情
としては、従来の
使用地
は依然として強権的に一方的に
占領軍
がきめてしまう。更に新たな
使用地
についてもそうい
つた
ような強権的な方法がとられておる、こういうふうに
伺つたの
ですが、その点はこの
琉球政府
、殊に
立法院
としてはどういうふうに考えておられるのですか。もう少し詳しく御
説明
願いたいと思います。
平良辰雄
5
○
参考人
(
平良辰雄
君) この点は
立法院
で非常に問題にな
つて
おります。大体
占領
当時において接収して、そうして
使用
したのはこれは当然で、我々としては何とも言わない。けれ
ども
講和条約
の
発効
後更に強制立退きをするということは法の
根拠
はない、
立法院
としては法の
根拠
は我々はない、どこに法の
根拠
があるかということを
質問
しております。それで法の
根拠
は
向う
としては
占領
当時の
極東司令部
からの
司令
が法の
根拠
だというふうにまあ示されておりますが、
立法院
としてはこれに対して満足はしておりません。いずれこれは今後の問題として又
立法院
との
折衝
がなされるはずであります。それから
講和条約発効
前の
土地
に対しては
地代
を払うということを
向う
が明言しております。これは
地代
を払
つて
頂ければ何も我々は返せということは
言つて
おりません。だが併しながら
地代
の問題については、先ほ
ども
申上げました
通り
低いし、一方的でありますので、それで又もつれておる。現在実際はまだ
折衝
中ではつきりしていない
現状
でございます。
曾禰益
6
○
曾祢益
君 次にそれに関連いたしまして、
住民
と
占領軍
との間の民事並びに刑事の
係争事件等
についてはどういう
法律関係
にな
つて
おるか、これを
一つ
御
説明
願いたいと思います。
平良辰雄
7
○
参考人
(
平良辰雄
君) 大体
民裁判
は民の
裁判所
でやることにな
つて
おります。
軍関係
の
裁判
は
軍事
の
裁判所
でやることにな
つて
おりますが、
民裁判
におきましても更にそれを再審査したり或いは取消したり、判決を直したりすることができるように、
米民政府
のほうが最後の
決定権
は持
つて
おるような
現状
であります。
曾禰益
8
○
曾祢益
君 それはまあ
平和条約
第三条の
後段
による
司法権
を
アメリカ
が行使しておるというような
関係
だろうと思うのですが、それは
沖縄
の
人相互
間における
事件
でも、つまり
アメリカ
の
軍人等
が関与していない
事件
でもやはり最終的に
アメリカ
のほうがそれを監督するということにな
つて
いるのですか。
平良辰雄
9
○
参考人
(
平良辰雄
君) それはそうな
つて
おります。大体実際問題としては民だけの
裁判
は民がや
つて
殆んどその
通り
にな
つて
おりますが、併しそれを変えるという権能も
向う
は持
つて
おります。
現実
の問題はそういうところはありません。
曾禰益
10
○
曾祢益
君 そこでまあ結局一番大きな問題は、先ほどの
お話
にもありましたように、すでに
立法院
でも二度
決議
をされているわけなんですが、この
平和条約
第三条を廃棄するか、それでなければ
平和条約
第三条の
後段
の
権利
、つまり立法、
司法
、
行政
のすべて若しくは一部の
権限
を
アメリカ
が行う、これの
権利
を放棄しろということを
言つて
おられると思いますが、
アメリカ
が第三条の
後段
で持
つて
いる
権利
を行使しないで、そうして
条約
はそのままにしておいても結局
日本
との話合いによ
つて日本
がこれを行使するようにせよ、それが一番実際的な狙いのように
ちよ
つと
伺つたの
ですが、その点は非常に核心だと思うので、いま少し詳細に御
説明
を願いたいと思います。
平良辰雄
11
○
参考人
(
平良辰雄
君) 我々は
国際情勢
の
関係
で
アメリカ
は当分はどうしてもこういうような
状態
におきたいというのでありまするので、無論
条約
の第三条を撤廃してやるということは最終の
念願
でありますけれ
ども
、その前に
アメリカ自体
が第三条の
権利
を放棄するということも可能である、これは各
調印国
に何も
了解
を求める……
了解
を求める必要はあるかも知れませんけれ
ども
、法文上
向う
の
権利
であるという以上はこれを捨ててしまえばいい、そういうこともや
つて
頂きたい。それから
行政権
の一部或いは全部ということにな
つて
おりますので、その一部はそのまま
日本
にとめておいて、
軍事
上必要な分だけを保留するというような行き方をしてもらいたい、これは実に手取り早くできる。我々は
日本政府
がもう少し積極的に
アメリカ
と
折衝
すれば、
アメリカ
としても先ほど申上げました
通り
何もいじめようとはしていないのでありますから、その
行政協定
によ
つて
、逐次早く
行政権
が返されるのじやないか、それを熱烈に要望しておるのでありまして、一例としては先ず
教育
の問題からや
つて
頂ぎたい
。君たちは
日本
の
国民
だ、こういうことは
向う
は知
つて
おります。又我々はみんなそう
思つて
今年から日の丸の旗を正月の元旦には全部各戸に掲げることにな
つて
おります。それも許されております。そう言いながら
国民教育
を
分離
するということはまるでおかしいのじやないかというような
気持
もありますので、この
教育
の問題についてはもう少しこちらのほうが押して行けば
向う
は
可能性
があると、我々はまあ希望的、楽観的な観測をしておるわけであります。
曾禰益
12
○
曾祢益
君
只今
の
復帰
に関する
立法院
の
決議
は
全会一致
である、こういう
お話
だ
つたの
ですが、まあ我々内地の者としては、結局は
全会一致
の
決議
に
なつ
たにしても、やはりその底流が、アンダー・カレントがあるのだろうと思うのです。
従つて立法院
に現われた
空気
或いはその
政党
とか各団体の
空気
が、
只今決議
に現われたような何と言いますか、非常に熾烈な中にも非常に
現実
的な方向をと
つて
おられると思うのですが、それに一致するまでにやはり中には、これは想像ですが、
アメリカ
の下にお
つた
ほうがいいような
意見
も或る人は持
つて
おるのじやないか、又中には逆にそんなふうの、今の
決議程度
の生ぬるいものじやいけないので、もつとはつきり
アメリカ
から
分離
するのだというようなもつと強いほうの
意見
もあるのじやないかというふうに思われるのですが、この
決議
を正式にお伝えにな
つた人
に伺うのは
ちよ
つとどうかと思いますが、
沖縄
のそうい
つた
ような島民の心理とか、或いは
政情等
についてもう少し
裏話
をして頂きたいと思います。
平良辰雄
13
○
参考人
(
平良辰雄
君) これは
裏話
もありますから一向して差支えないと思います。
沖縄
には今
民主党
という
政党
と
社会大衆党
、
人民党
という三つの
政党
があります。その前には、
群島政府
の時代には
沖縄
には
共和党
というものがありました。その
共和党
というのは
独立論者
であります。ところがそれは
議会
にどれだけの
議席
を占めていたかというと二十名のうち二人が
共和党
でありました。
あと
は皆
復帰賛成者
でありました。
群島議会
でも先ほど申上げました
通り
決議
したのであります。それが今度は
世論
がもう猛烈になりまして、全
住民
が沸き立
つて
絶対に
日本復帰
で行かなければいけないという強い
世論
が喚起して来ましたので、この
共和党
は解散しました。解散してその後今度は、今現
政府
の
与党
であるところの
民主党
というのが最近できたのであります。その前は
民主党
というのはなか
つた
。最近この
民主党
というのができました。ところがこの
民主党
も一番真先に
日本復帰
を叫んだのは私の
政党
、
社会大衆党
と
人民党
とであります。
人民党
は現在は
議席
は二人しかおりませんけれ
ども
、社大党が十一名、それから今の
与党
が十八名、こういうふうにな
つて
おります。それで
議会
の分野はそういうふうにな
つて
おりますが、現在において、最初の
決議
までは
反対
もありました、けれ
ども
第二回目においては完全に皆一致したのであります。これはもう従来の考え方はもう捨てる、我々は皆大同団結して
日本
に帰ろうという
気持
に全部が
なつ
た、それで
決議
をしたのでありますが、その
決議
の表現においてもやはり各
政党
の性格はあるわけであります。これは最も先端を行く
人民党
は、まあ
向う
では
人民党
が一番
左翼
であります。それから社大党がまあ中間みたいなもので、それから
民主党
がまあ保守党とい
つた
ような恰好にな
つて
おります。それで
民主党
は成るべく柔かく行く、それで
人民党
は強く、その中に立
つて
いるのが我々の社大党であ
つて
、
理想
と
現実
とを一緒に、
理想
ばかり
言つて現実
を知らぬということはいけない。又余り
現実
ばかりに捉われては困ると、だから我々は目標は
三条撤廃
・
権利放棄
ということにおいても、
現実
の問題としては一角々々切崩してやるという実質的の
復帰
も考えなければいかんというので、ああいうような
決議案
にな
つたの
で、あの
決議案
が生まれるまでには相当議論があ
つたの
であります。これは我々としましては何も思想的の問題じやない、
日本
に
復帰
するのは思想ではない、
政党
の
関係
も入れない。だから単に
日本
に
復帰
するのであるから、それをまあ
左翼系
に見られるとか或いは右翼系に見られるとか、そういうことは困る、だからこの問題については全部党派抜きにしてかか
つて
行こうと、こういうふうな考え方であります。
團伊能
14
○團伊能君 甚だ実際にわかり切
つた
ことかも知れませんが、杜撰なことを伺いますが、曾称君の御
質問
に連関いたしまして、
講和条約
第三条の
お話
もありましたので、現在信託統治下にある
琉球
と
米国
との
関係
につきましてどういう法的
根拠
にな
つて
おるか、我々はつきりわからないところがあります。
日本
が
占領
下にありまして、戦後独立した後でも、これは直ちに
琉球
が入れるとも思わないのですが、
ちよ
つとその大綱のところを伺いたいと思います。
平良辰雄
15
○
参考人
(
平良辰雄
君) 今
琉球
は信託統治にはな
つて
おりません。
講和条約
が
発効
前はまあ
占領
行政
でありました。その後
講和条約
が
発効
されまして、第三条によりますというと、ただ
アメリカ
は国際連合に
アメリカ
を唯一の施政権者とする信託統治を提案すると、この提案することを
日本政府
は同意してもらいたい、同意すると、我々が信託統治を国連に提案することを
日本
は同意するということにな
つて
おります。それでそれができるまでは立法、
司法
、
行政
の一部又は全部は
アメリカ
が
権利
を持つと、こういうことにな
つて
おります。現在はその
後段
の信託統治は、提案する前の段階に今ありまして、信託統治にもな
つて
いない変なものにな
つて
おるわけですね。それで現在は立法、
司法
、
行政
を個々に握るというだけで、一部又は全部とな
つて
おりまするが、そこには日米の
協定
によ
つて
これだけは
日本
に返す、これだけは残すというような
協定
ができる余地があるようにな
つて
おります。
團伊能
16
○團伊能君 それから次に最近この
大島
郡を返すということを外務省から発表がございました。その発表のまあ正確性といいますか、信憑性はまだ我々もはつきりいたしませんが、その交渉もまあ多少
現実
化しておるかどうか存じませんが、若しそれが、返すということは必ずしも
大島
郡を返すという意味でなく、緯度線をもつと下げるというような意味に我々は承知しております。
奄美大島
まで入れても、輿論島その他までは延びないように聞いておりますが、その辺のことを
ちよ
つと……。
平良辰雄
17
○
参考人
(
平良辰雄
君) これはあの
決議文
には外務省の発表というふうに書いてありますが、その後外務省の公式に発表してないという、又新聞や何かに取消しも出たようなことも載
つて
お
つたの
であります。これはまだ本当に具体化して日米の
協定
をしてないそうであります。併しながら我々は新聞に少しでも何とかそういう話が出ればもう飛びついて来て、それが直相であるかどうか、何であるか、そんなことにおかまいなしにどんどん自分たちの有利なような考え方で
決議
をしておるようなわけで、これは外務省としては迷惑であるかも知れませんけれ
ども
、そういうようなわけでありました。それから
沖縄
と
奄美大島
との
関係
は、
奄美大島
は現在のところは
軍事基地
はありません。それで
沖縄
が大部分持
つて
おりますので、そういう点から申しまして
奄美大島
は前には鹿児島県の一部である、こういうふうな点から
向う
のほうとしては何も
軍事基地
もないから早く返すんだろうという希望的な観測をしておるわけであります。我々としては何も
沖縄
は
大島
ばかり帰して我々は帰らんでもいいという
気持
はないのでありまして、
立法院
の
決議
もその点において
大島
も返す、併しながら
大島
ばかり返してもら
つて
は困る、何も
軍事基地
の
関係
だけならば
日本
内地においても同じだから一緒に返してもらいたい、こういうような考え方でございます。
團伊能
18
○團伊能君 この問題では従来
琉球
群島
その他から
復帰
の
陳情
においでにな
つて
いるかたもしばしばお目にかか
つて
おります。又その中に
奄美大島
を中心にした別の団体があ
つて
別に動いていられて、こちらも両方
陳情
を受けて両方の
陳情
も
政府
に送
つて
促進
はしておりますが、その間に
奄美大島
のかたがたに聞けばまあ我々だけ返すのは先だという
お話
もあ
つて
、
ちよ
つと取扱に困
つて
いるところもございますが、いずれにしても先ほど
平良
さんの
お話
にありましたような、極めて熱烈なる祖国に帰りたいという
気持
が充満しておる
住民
のかたがたのその
気持
が非常によく我々にもわか
つて
おりますが、これは御承知のような
状態
にありますので、一概にも行かず、結局本国も又決して冷たき母となるというような
気持
はない。私
ども
は帰
つて
頂きたいことに対してはやはり同じ熱烈たる
気持
を持
つて
おりますので、これらの両方の共同操作といいますか、非常な何かもう少し渾然一致した動きがあり、
日本政府
も又本気にその気にな
つて
一緒に御協力して行
つて
その道を見出すということのほかはないと思いますが、その時期も来たるものと私
ども
確信いたしておりますが、現在の
国際情勢
から推しまして、この
状態
の
日本
がこれを
アメリカ
に働きかけることによ
つて
容易にこれは返すということがなかなか困難な情勢にあることは御承知の
通り
だと思いますが、
日本政府
をしてもつとこの問題を本当の同胞感の上に立
つて
促進
して行くということの方向はなお我々も忠告いたしたいと
思つて
おります。 なおそのほかに一、二点伺いたいことは、先ほど
教育
の
お話
もありました。これは最近に
大島
十島の一部が
日本
に返
つて
来ました。その
大島
、喜界ヶ島のこれらの
状態
を見て、
アメリカ
は相当民生に対して責任を持つという声明はしておりながら、
教育
施設のごときは非常に貧困なものでありまして、殊に台風にさらされた家で柱だけ立
つて
いるとい
つた
ような
状態
もよく我々もその十島群の返還された地方から相当聞きました。又教員が非常に足りないということにな
つて
おります。
琉球
本島その他において、
ちよ
つと
教育
上のことで伺いたいのは、今日の
教育
方針として
日本
でや
つて
おりますものと相当に変化しておりますかと思いますが、その
日本
と変
つて
いるところですね。或いは
米国
の指示その他で変更している
教育
内容がわかりましたら二、三伺いたい。
平良辰雄
19
○
参考人
(
平良辰雄
君) これは
教育
は、今教科書は全部
日本
のものをずつと使
つて
おります。それで
アメリカ
が
教育
方針をこれは是非こうでなければならないというような指示はいたしておりません。それでこれは我々のほうで是非こうしたい、
日本
の制度にどうせ帰るのだからというので、六・三・三の制度もや
つて
おりますし、今現在としてはすべての制度を現在
日本
で行われている
通り
にやろう、ただ特殊の理由のあるものだけは変えてもいいけれ
ども
、
立法院
としてそれを、例えば
教育
委員会
の制度であるとかいうようなものについても、これは非常に
教育
委員会
制度は非難があります。この点については
アメリカ
と相当我々とは
意見
を異にしております。余りに
教育
委員会
は
アメリカ
式で、
理想
的で
現実
に即さないということで、我々は
反対
であり、
立法院
としては近くこれは改正するはずであります。その
教育
委員会
制度について
意見
が対立しただけで
あと
はそう
変り
はないのであります。
立法院
の方針といたしましては、例えば労働法規とかいうようなものも殆んど
日本
のものを丸呑みしており、
日本
が直
つた
ときには我々も直そうというような形で、全部が現在の
本土
の制度に倣
つて
行こうというので、丁度大学がありますが、
琉球
大学というのがありますが、これには
アメリカ
のミシガン大学から講師をつれて来て講義をしておりますが、これも結構だけれ
ども
、それは通訳を通しての講義で聞くよりも直接
日本
の学者の講義を聞いたほうがいい、是非
日本
からも教授を、九州大学あたりから来てもら
つて
教育
をしてもらいたいということで、これも承認されまして、大体そういうふうな、それもよかろうということにな
つて
おります。
團伊能
20
○團伊能君 それで現在は
日本
から大学の教授を招聘することは
了解
できておりますか。
平良辰雄
21
○
参考人
(
平良辰雄
君) はあ。
團伊能
22
○團伊能君 なおもう一点伺いたいのは、十島群その他の
関係
からいろいろ調査いたしましたところによりまして、医療施設が非常に不十分である、殊に無医村というようなものが非常に多く、或る島におきましては産婆もいないというような
状態
でございましたが、これは本島或いはその他人口の多い所と離島とは非常な違いがありましようけれ
ども
、一体この点について今の情勢はどういう形にな
つて
おりますか。
平良辰雄
23
○
参考人
(
平良辰雄
君) 医療施設の
関係
は、
アメリカ
は非常に衛生を重視しておりますので、衛生
関係
については
戦前
より以上に力を用いております。ただ医者が
戦争
の
関係
で、これは
本土
でも同じかも知れませんけれ
ども
、医者の数が少くて非常に最初困
つたの
であります。困りまして薬局生みたいな、少しでも医療のほうの知識のある者は臨時に免許を与えてや
つた
こともありますが、最近はどんどん
本土
から帰
つて
来たり、又学生を派遣してや
つた
りして、まあ医療の
関係
は現在は
戦前
の状況と大した
変り
はないのであります。
戦前
におきましても無医村、医者のない所がありましたが、それは公費で以て医者を補助してや
つて
お
つたの
でありますが、現在は公費じやなくて全部
中央政府
から補助して医療の機関を置いてあるわけであります。そういう
関係
については何も今
戦前
よりは悪くはございません。
徳川頼貞
24
○
委員長
(
徳川頼貞
君) ほかにございませんか。
大山郁夫
25
○大山郁夫君
ちよ
つと、一問だけ。さつき
立法院
の勢力の分布をお伺いしたのでありますが、
ちよ
つと私注意をそらしておりましたので、誠に済みませんが、もう一度御
説明
願います。いろいろな大衆党とか
民主党
、
人民党
の分布ですな。
平良辰雄
26
○
参考人
(
平良辰雄
君) 今
民主党
が十八名、
社会大衆党
が十一名、
人民党
が二名という分布にな
つて
おります。
大山郁夫
27
○大山郁夫君 それでその各党派が代表している政治的立場とかい
つた
ようなものですな、それはどういうふうな工合にな
つて
おりますか。
平良辰雄
28
○
参考人
(
平良辰雄
君) 先ほ
ども
ちよ
つと申上げましたが、一番最初から
政党
として
沖縄
で生まれたのは
人民党
が最初であります。その後
群島知事
の選挙の際に私が打
つて
出ましたので、その際に
社会大衆党
というものを作
つた
りであります。その後極く最近になりまして、まだ数カ月にしかなりませんが、現在の
政府
の
与党
として
民主党
というのが生まれて来ました。現在はその三つの
政党
にな
つて
いるのであります。その性格が先ほ
ども
申上げました
通り
、
与党
が保守党とい
つた
ような形、それから
人民党
が
左翼
の色彩が強い、それから社会党が中間的な
政党
、このように現在な
つて
おります。
大山郁夫
29
○大山郁夫君 現在の
政府
とおつしやるのはどういう、
アメリカ
の行
政府
とい
つた
ようなものですか。その
法律関係
はよく知らないのですが、現在の
政府
の
与党
というのは
民主党
ですな、その現在の
政府
というのはどういうものを指しておるのですか。
平良辰雄
30
○
参考人
(
平良辰雄
君) これは今
琉球政府
というのがあります。この
琉球政府
は
アメリカ
の
米国民政府
とは違います。
琉球政府
には
権限
を、
琉球
の
行政
を自主的にやらせるという
アメリカ
の考え方で
立法院
を選挙させて立法機関を作
つた
。ところがこの首席、
向う
では三権分立の形をと
つて
おりますが、それで
立法院
は選挙でできまして、ところが
行政
首席というのは任命されております。この任命は追
つて
選挙する、
公選
するまで一時任命しておくということにな
つて
おります。
大山郁夫
31
○大山郁夫君 どこから任命しておるのですか。
平良辰雄
32
○
参考人
(
平良辰雄
君) これは
アメリカ
民政府
から任命しております。これは任命しておりますけれ
ども
、いずれはこれは選挙する、それまで任命しておくということにな
つて
おるのです。そういうわけで、
琉球政府
というのができております。その
政府
に
与党
と野党がある。
琉球政府
を対象として野党、
与党
があるわけです。ところが
アメリカ
の
民政府
を対象とするならば全部が野党ということになるわけでございますが、その
与党
、野党はそういう
関係
であります。
大山郁夫
33
○大山郁夫君 さつき信託統治にはまだな
つて
おらないという
お話
であ
つた
が、殆んど、半分ほどは事実上、法律上はできていなくても。
民政府
というのがそれだけの、
ちよ
つと
日本政府
のやるべき仕事をや
つて
おるような恰好になるのですか、事実上は。だから信託統治にかなり近付いたような恰好にな
つて
おるわけですな、事実上。法律上はな
つて
いなくても……。
平良辰雄
34
○
参考人
(
平良辰雄
君) これは事実はもつと進んでおるのです。今までは
講和条約
はない場合は
一つ
の
占領
行政
で
占領
政治でありましたが、ところが
講和条約
を
発効
したらば、一応
講和条約
によ
つて
何か形を変えて行
つた
恰好にならなければいけませんけれ
ども
、
講和条約発効
前の
占領
行政
がそのまま継続しているような
状態
でございます。そのままです、ちつとも
変り
ません。
大山郁夫
35
○大山郁夫君 それから
ちよ
つと例の各
政党
を代表する立場ということに関連してでありますが、共産党というふうなものはないわけですか。
平良辰雄
36
○
参考人
(
平良辰雄
君) 共産党というものはありません。
人民党
と言いましても何もそう共産主義的な綱領を掲げてはおりません。
大山郁夫
37
○大山郁夫君 それで学校の
教育
に関連してでありますが、以前
日本
でイールス声明というのがあ
つて
、イールスという教授が
アメリカ
の
政府
から派遣されて大学を説き廻
つて
、いわゆる思想統一というようなことを
日本
でや
つて
お
つたの
でありますが、
沖縄
においていわゆる思想統一とかそれに似よ
つた
ような実際上の行動をと
つて
おるか、その点御
説明
願いたいと思います。
平良辰雄
38
○
参考人
(
平良辰雄
君) 思想の、今
アメリカ
としましては実際問題としまして、
沖縄
からこちらの
本土
のほうに旅行するのは非常に簡単にしてあります。簡単にできる、届けを出せば一週間ですぐでぎる。ところがこちらから
向う
に行くのはなかなか簡単に行かない。これは共産主義の防遏の意味らしいのです。そういう
程度
にはや
つて
おりますが、別段共産党があちらにおる、実際に共産党はおるわけではないので、おれは共産党だと表明している人はおりません。ただ
左翼系
であるというくらいの
程度
でありまして、併しながら
向う
としては共産党がここへ入
つて
来るんじやないかというような心配はしておりますが、そうかとい
つて
どういうような手を打
つて
いるとか、学校でどうするとかい
つた
ような具体的なものはありませんで、ただ輸出入
関係
で少し考えておるようであります。
大山郁夫
39
○大山郁夫君 もう
一つ
言論、集会、結社とか、特に言論と集会ですね、それに関する取締というものはどういう工合にな
つて
、どの
程度
でどのくらいきついかということも
一つ
御
説明
願いたいと思います。
平良辰雄
40
○
参考人
(
平良辰雄
君) これは言論、集会、結社、それは自由であります。別にそう干渉しません。
大山郁夫
41
○大山郁夫君 ああそうですが。ありがとうございました。
徳川頼貞
42
○
委員長
(
徳川頼貞
君) ほかに御質疑はございませんか。御質疑がなければこの問題についての質疑は終
つた
ものと認めます。 大臣は三時過ぎでないとこちらのほうに参りませんということでございますから、暫らく休憩をいたします。 午後二時三十三分休憩 ―――――・――――― 午後三時四十分開会
徳川頼貞
43
○
委員長
(
徳川頼貞
君)
只今
から
外務委員会
を開会いたします。
日本国
と
アメリカ合衆国
との間の船
舶貸借協定
の締結について承認を求めるの件を議題に供します。御質疑のあるかたはお願いいたします。
團伊能
44
○團伊能君 本
協定
に相当明記されてございますが、なお一応大臣から御
説明
頂きたいと思います。極めて実際的な問題になりますが、この船舶の中には三条にございます
通り
、能率的な
状態
にするために米軍の費用を以て造船所で修理をいたしております船もあるように聞きますが、修理して完全な能率的な
状態
にな
つて
これは
日本
に引渡されることとなると私は認識しております。この船舶がこのたび
日本
に引渡されましたことは、即ちこの船舶の
使用
の目的がおのずから異な
つて
参りますわけです。この船舶が
米国
海軍に属しておりましたときの、運送船の護衛その他の施設の中で、おのずから不要なものもあり、又警備船としては当然備えなければならないものもあるように現地で視察して参りましたが、この船舶の
現状
を変更をする、或いは艤装を一時変更し、これを返しますときにはもとの
状態
にいたすとしても、
日本
が
使用
している間、
使用
目的に副わしめるような
現状
変更ということは可能でございますか、
一つ
承わりたい、如何でございますか。
木村篤太郎
45
○国務大臣(
木村篤太郎
君) それは御承知の
通り
、船舶引渡しを受けたときの
状態
において今度返すときには返還する、これを
日本
の
意思
によりまして、
現状
を変更することは不可能とな
つて
おります。このままの
状態
で使う。
團伊能
46
○團伊能君 そういたしますと、この船の実際におきまして、殊にフリゲート・パトロールは飛行機の襲撃及び潜航艇の襲撃に対処して、対抗する武装を持
つて
おりますが、これは専らその二つに対する武装にとどま
つて
おります。多くの場合警備船といたしましては、それらは特殊な場合以外は殆んど必要がなく、殊に近海の海賊船或いはそういう公海を荒すような船舶に対して砲撃するということも、非常に弱い機関銃を主といたしておりますので、高射砲、機関銃でありますので、この船を
使用
するということにおきまして、警備船として
使用
することは相当の無駄があり、大事なポイントに欠陥がある、殊に警備船の場合には、水難救済とか、沈没船を助けるとかいうことも非常に多いと思われますので、救命施設な
ども
これに加えることも全然できない、これをこのままにしておかなければならないものだという大臣の御
説明
でございますが、こういう条件はこの
協定
には以前から考えられなか
つたの
でございますか。
木村篤太郎
47
○国務大臣(
木村篤太郎
君)
只今
の御
質問
至極御尤もと存じます。それで私は考えますことは、この船は必ずしも警備隊の
使用
すべき警備用の船舶としては適当なものではないと私は考えております。本当なればこれに適するような船を造ることが望ましいことであります。何分にも国家
財政
上、又時間的に申しましても、かような船舶を建造するときは相当日数がかかるのであります。現在の
状態
といたしましては、御承知の
通り
日本
の海岸線約八千浬から九千浬が空白
状態
にな
つて
いる。一日も早くこれを警備しなくてはならない。幸い
アメリカ
の好意によりまして、これらの船を貸渡してやろうということになりましたので、これを借入れて、差当り沿岸の警備、海難の救助には支障がないということになりました。そうしてこの船は受取
つた
通り
の
状態
において返すことにな
つて
おります。これは原則であります。まあ
アメリカ
の同意を得れば内部の施設は改造もできるわけにな
つて
いるのであります。併し根本原則としては、どこまでも引渡しを受けた
通り
の
現状
のままで返すということにな
つて
おります。
團伊能
48
○團伊能君 なおこの船舶は必ずしも船齢は古くはございませんけれ
ども
、
戦争
中、殊に
アメリカ
の
戦争
末期の急造船であるというところは方々に窺われまして、殊にこれはソ連に長く貸与されておりました船であります。その機関のようなものも決して非常に優れたものでございませんので、これが損害を受けたとか或いは衝突したとかいうような損害でなく、常時運航して行く上に相当な修理を常に加えて行くことが必要であり、殊に機関部においてはそういうことを考えますが、それは
日本
において適宜これを行な
つて
も差支えないと思いますが、それらについての、又この運航する当然の費用、即ちいささか不完全な船を動かすために機関その他の特別な費用というものは、やはり
予算
の中にお考えにな
つて
おるのですか。
木村篤太郎
49
○国務大臣(
木村篤太郎
君) それらの点については
予算
に計上したいと考えております。
團伊能
50
○團伊能君 次にこの船舶の警備に当ります保安庁として、どういう点までの航海範囲をお考えにな
つて
おります。従来の保安庁の船舶は、
占領
下におきましては行動半径が決定しており、殊にその碇泊地から、小さい船舶でございますと五十マイル半径の所より出てはならないというような規則がございましたが、今日はそれが皆なくな
つて
おりますので、これがやはり公海というものは自由に運航することは支障ないとお考えでございましようか。
木村篤太郎
51
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 仰せの
通り
であります。必要ある場合におきましては相当の海上までは行動いたしております。
團伊能
52
○團伊能君 そういたしますと、これが今日不法拿捕とか、或いは
日本
の漁業でも非常に公海を害するドン漁業のようなもの、ハツパ漁業のようなものを管理するとか、或いは今日漁業の、国内の各県で漁区をきめておりますが、その間にいろいろな入会と申しますか、争議がございますが、そういうもののためにいろいろ
了解
を得て公海まで出て行くということを考えますときに、今日まだ甚だ一方的な宣言として、我々としては認めておりません朝鮮水道等に一方的に引かれている李承晩ラインの中に起
つた
日本
船の保護その他のために李承晩ラインの中に入ることは差支えないとお考えでございましようか。これは併せて
外務大臣
に伺います。
岡崎勝男
53
○国務大臣(岡崎勝男君) これは法律的には無論差支えないわけであります。実際問題としては殊更に韓国との問題に妙な紛争が起ることは避けるべきが至当と考えますから、実際の取扱においてはどういたしますか、これは水産庁、保安庁或いは外務省、協議をいたして実際の措置は適当に将来考慮して行こうと考えております。
團伊能
54
○團伊能君 そうすると
只今
は法律的な意味は持たないけれ
ども
、外務省といたしましては、或る
程度
一方的な宣言でありますけれ
ども
、李承晩ライン、マツカーサー・ラインに引継いで
一つ
の公海における、漠然たるものながら
一つ
の朝鮮の権益を持つところの水域とお考えで、実際的にはそういう工合にお取扱にな
つて
いるというわけですか。
岡崎勝男
55
○国務大臣(岡崎勝男君) 実際的にもそういう取扱をいたしておりません。おりませんが、例えばハボマイ、シコタンは
日本
の当然の領土である、こう
言つて
おりますけれ
ども
、今ソ連でそれを占拠している。法律上当然ならばこれは
日本
の
国民
が行
つて
当然ソ連人を追払
つて
自分の仕事をすべきであるかも知れませんけれ
ども
、それは今いたしておらない。併しこれは何もソ連の占拠を実際上にも認めているわけじやないと同様に李承晩ラインというものも実際上にも、法律上にも認めるわけではない。ただ実際上の取扱として、今すぐどうするかという問題にな
つて
来ると思います。
團伊能
56
○團伊能君 この水域は勿論漁獲の範囲を示したものでございますので、海上における安全とは別個の問題と存じますが、今
外務大臣
の御
説明
のように、実際上の問題として現在においては
日本
の漁船が立入れないような
状態
にな
つて
おりますこと、それが合理的に改善されることを一日も待つものでありまして、殊にこれは
日本
の領海にまで接近していて、対馬の北端、朝鮮海狭に面したサイドは殆んど一、ニマイルで出漁できないような不合理な水域が設定されていること、これはマツカーサー、ライン自身が誤
つた
線を引いて、漁区の線の一部が対馬の北を上陸して、陸に上
つて
いたようなこともあり、後にこれが修正されましてニマイルぐらいの沖を廻す弧をえがいて許されている。又同様なことが北にもあ
つた
と記憶いたします。こういう不合理な
状態
がそのまま李承晩ラインによ
つて
引継がれ、少くとも
一つ
の実績のようになりつつある。これは
日本
の漁民から考えて非常な不幸なことであり、又その中では拿捕されることが、韓国から見ればその李承晩ラインに入
つた
漁船は当然の
権利
で拿捕するというような
一つ
の通念ができつつあることを非常に憂うるものでございます。 なお次に続きましてもう一点だけ伺
つて
おきたいのは、去る九月の六日か七日でございましたか、国連軍は新たにこの李承晩テインに沿
つて
防衛水域なるものを朝鮮の周囲に設定いたしておりますが、この水域は国連軍の設定したものであり、若しも海上における不安がある場合これらの保安庁の船が防衛水域に入ることについては、すでに何らかの
了解
と申しますか、御処置が、
お話
合いがありましたものですか。この防衛水域なるものは
日本
に十分これが認識すべく
説明
は一応されておりますが、その点のいきさつを
一つ
御
説明
願いたいと思います。
岡崎勝男
57
○国務大臣(岡崎勝男君) 防衛水域を設定する前には外務省と
アメリカ
大使館との間に、これは国連軍のユニタイド・コンミユ二オンという立場で話をしたのでありますが、いろいろ非公式に話合いが行われました。併し話合いは、まあ率直に言えば、話合いがついてできたというわけじやないので、
向う
のほうでどうしてもこれは
軍事
上必要だというので、
日本
側としては承服できない点がありましたけれ
ども
、結局設定をしたということになります。この実際の線は御
説明
の必要ないと思いますし、
向う
に新聞等に出ておりますから。李承晩ラインより大分中に入
つて
おりますが、その目的は、例えば初めのあの捕虜の騒ぎ以来、集団的に大勢の捕虜を一カ所に置く方針をとらないで、各島々に捕虜を分散しております。そのために北鮮側からの連絡があ
つた
り、或いは武器の密輸があ
つた
り、或いは各種の情報が交換されたり、或いは捕虜を逃亡させるような手段が行われたり、いろいろのことがあるようであります。そのためばかりじやありますまいが、その他にも北鮮との間の武器の取引をとめるというようなこともありましようが、
軍事
上の必要で要するに設定されたわけであります。我々のほうとしては国連軍が
軍事
上に必要とするものをどうこうというわけではありませんけれ
ども
、あの海域では非常にたくさんの漁夫が働いてお
つて
、そうして非常に多くの漁獲があ
つて
来たのでありますから、漁業の妨げをできるだけしないようにしてもらいたいということが我々のほうの強い要請であります。先方では結局二つの点をこちらに申しているので、それは
一つ
は、この防衛水域というものはできるだけ一時的のものにする。必要がなく
なつ
たら早く解消する。それからもう
一つ
は、
関係
国の
産業
等に不測の困難を来たさないようにできるだけ考慮する、こういうことであります。我々としても未だに話合いを続けておるのでありますが、早くこれをなくなすか、或いは仮にあ
つた
としても、
日本
の漁業が妨げられないように考えてもらう、こういう趣旨を話しておるのであります。
團伊能
58
○團伊能君 この防衛水域につきましてなお
一つ
、私もはつきり存じませんけれ
ども
、新聞等において発表されたところによりますと、鬱陵島の南にある
日本
領の竹島が、従来マツカーサー・ラインでは
日本
の中にありましたけれ
ども
、このたび線が少し南に下
つて
、竹島が防衛水域の中に入
つた
と認めるのですが、そうでございますか。
岡崎勝男
59
○国務大臣(岡崎勝男君) 私はそれは違うと思いますが、更によく地図によ
つて
確めてから御返事いたします。
團伊能
60
○團伊能君 若しもこのたびの警備船が、従来の保安庁の船と違
つて
、相当の長期運航が可能であり、漁場における保安その他を管理いたすということになれば、我が国領土である竹島も勿論この中に入り、その水域までは及んで進むかと思いますが、そうするとこれが当然公海を運航していることになりますが、この竹島の附近は今日大した島がございませんけれ
ども
、漁民から言うと、避難港になり、風よけ、船だまりになり、又磯付漁業として多少の漁獲もあり、日露
戦争
のときには、望楼を造
つて
海軍がここにいたこともあり、今日甚だ国土狭小なる
日本
となりましたときには、
一つ
の漁業的基地として考えざるを得ないのでありますが、その辺の運航は防衛水域にいずれにしても非常に接すると思いますが、この点についてなお調べて頂きたい。若しも竹島が私の認識が誤まりかも知れませんが、防衛水域の中にありとすれば、
日本
の領土の一部は、すでに国連軍の防衛水域内に
日本
の領土があるわけであります。これらに対する
日本
の主権の行使という点からも考えさせられる問題だろうと思いますが、これは私の地図も甚だあれですが、新聞にはそういう工合に記載されてございましたから、御
質問
いたしたわけでありますが、なお次回において、お取調の上御返事を願いたいと思います。私の
質問
はこれで終ります。
伊達源一郎
61
○
伊達源一郎
君
ちよ
つと
外務大臣
にお伺いいたしますが、フリゲート艦は初め十隻とな
つて
お
つた
が、
条約
締結間際にな
つて
十八隻に増加されて、それを
日本
の希望によ
つて
というふうに言われておりますけれ
ども
、
アメリカ
の
議会
における問答から見ますと、海軍の当局は、
日本
はまだ希望していないけれ
ども
貸すのだという話合いの後に、いずれ近々希望するだろうから貸すことにするのだというような答弁がありますが、事実はどうなのでありますか。
向う
で十隻よりも十八隻借りてくれというたのでありますか。
日本
から更に八隻の追加を申出たのでありますか。その点の経緯を
お話
し願いたい。
岡崎勝男
62
○国務大臣(岡崎勝男君) これはいろいろ前に下話をいたしておりまして、十隻ならば何とかできそうであるという見込がつきましたので、十隻の借入を申込んだわけであります。ところがフリゲートの船にしましても、いろいろの国から要求がありまして、早く借りなければ、よその国に借りられてしまうという状況なのであります。そこで
アメリカ
のほうでいろいろ
日本
の沿岸警備の状況を見まして、十隻では結局足りない、
従つて
この際思い切
つて
殖やしておいたほうがいい、若し十隻としておけば、残
つた
船もほかの各国に行
つて
しまうというので、
向う
で気をきかしてと言いますか、そういう意味で十八隻にしてくれたのであります。そこで大統領の
権限
では、そこまで行くということになれば、それだけの船をとにかくよそに貸さずにリザーブしておく、
日本
で借りる借りないは将来の問題でありますが、とにかく
向う
では十八隻をリザーブしておく、こういうことになるわけであります。
伊達源一郎
63
○
伊達源一郎
君 保安庁
長官
に
ちよ
つとお尋ねしますが、この船を借りる受入態勢ができるものか、海軍式でできるのか、或いは艦長というようなものを置き、その下にいろいろの階級の職員がいるだろうと思いますが、それは海軍の方式を以てやられるか。と申しますのは、これの借入の話が出たときから、海軍の軍人で相当の研究ができているようにも聞いておりますが、どういう方法で受入れられるのか、受入れられた
あと
、その態勢というものは今後警備艦に長くそれが用いられる態勢をお作りにな
つて
いるかどうか、その点を伺いたい。
木村篤太郎
64
○国務大臣(
木村篤太郎
君) これは
我我
といたしましては、新たに警備隊が発足するのであります。
一つ
の新たな構想の下に
一つ
創設したいという
気持
から、いわゆる昔の海軍のようなものは勿論我々は考えていない。純軍隊式ではいかん。さればと
言つて
、これまでのようないわゆる警備船のようなものでなく、そこに我々として非常に考えさせられざるを得ない点があります。着々それらの点について今考えを進め、実地に訓練しておる
状態
であります。もとよりこの警備隊員には旧海軍に属してお
つた人
もあります。併し全く海軍に
関係
のない人もあります。そこでこの新たな警備隊員に対して、どういう精神的支柱を持
つて
行くかということでありまするが、それらの点については、我々は真に
日本
の国内の治安を維持する、殊に海上の警備というものはとにかく
日本国
においては必要欠くべからざるものであるという自覚と責任を十分持たせて、これを立派に運用させたいと、今折角考慮中であります。階級の点については必ずしも旧海軍のような制度には則
つて
おりません。これらの点につきましては議員各位の御
意見
もありましたら率直に私は承わりたいと考えております。
伊達源一郎
65
○
伊達源一郎
君
只今
の御
説明
でよくわかりましたが、それならその乗員及び警備隊の階級的組織を承わりたいと思います。
木村篤太郎
66
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 保安庁法第三十条の三項に規定してあります。「警備官の階級は、警備監、警備監補、一等警備正、二等警備正、三等警備正、一等警備士、二等警備士、三等警備士、一等警備士補、二等警備士補、三等警備士補、警査長、一等警査、二等警査及び三等警査」、こういう工合にするということを法律が規定しております。
伊達源一郎
67
○
伊達源一郎
君 それから次に承わりたいのは、今
アメリカ
が引渡さんとしている、修理をしておる、先ほど團
委員
からお尋ねにな
つたの
ですが、
アメリカ
は大分経費をかけておるはずですが、その
日本
に貸すために修理をし、今しつつある経費の大よその見積りは幾らくらいでしようか、修理費の。
木村篤太郎
68
○国務大臣(
木村篤太郎
君)
アメリカ
で使
つた
費用ですか。
伊達源一郎
69
○
伊達源一郎
君
日本
へ借すためにこつちへ廻して来て修理しておる……。
木村篤太郎
70
○国務大臣(
木村篤太郎
君)
日本
に引渡すために
アメリカ
で使いました修理費は合計二千百三十万
ドル
です。
曾禰益
71
○
曾祢益
君 保安庁
長官
に伺いたいのですが、
只今
伊達
委員
の御
質問
にも
ちよ
つと触れられた点ですが、結局この海上警備隊というものの任務ですね、これはまあ保安庁のほうにもあるようですが、特に
政府
の
説明
資料等にある、例えば沿岸警備という、これは提案理由の
説明
の中にも
日本
の沿岸警備に当てるため、というように書いてありますが、一体沿岸警備というのはどういうものであるか、
只今
長官
の御答弁の中には海上警備という言葉を使
つて
おられますが、別に挙足をとるわけじやないけれ
ども
、沿岸警備と海上警備は随分違うと思うのです。海上警備という非常に広いものになる、一体そういう点について
政府
の基本的な御方針について、これが一体どういうものであるか、それが結局今度の
アメリカ
から借りる特殊の船ですね、これの
軍事
的性能武装その他と非常に大きな関連を持
つて
来ると思うのです。でありまするから先ず沿岸警備という意味、或いは海上警備という意味乃至は海上警備隊のやらなければならない仕事ですね、例えば海上の人命の安全とか、そういうことはわか
つて
いる、これは当然のことでしようが、それ以外にどうい
つた
ような仕事をするのか、これがはつきりしないから、いわゆるこれが新らしい海軍であるとか、或いはそうでないとかいう議論のこれは根本になるわけです。
政府
の御
説明
はまあこれから伺うわけですけれ
ども
、今までの衆議院における質疑応答等を通じて見て、決して明確にな
つて
いない。ただ単にこれは戦力ではないのだ、これは軍艦じやない、そんな形式論ばかりや
つて
、一体
政府
の一等の、当面の責任者であられる木村さん自身が一体どういうものにするのか、どういう事業が具体的に必要なのか、例えば魚雷が浮游しておるやつを引揚げる、これは誰が見ても
戦争
行為でもないと思うんですね。どうもそこから先の沿岸警備という言葉の内容が、相当外国で言う例えば
アメリカ
あたりで言うコースト・ガードというと、そこにはつきりといわゆる一部の海軍の任務の分担だということになる。何とおつしやろうとも国際的にはつきりしておる。そこまではつきりやろうというなら、又そこではつきりそういう方針を立てるべきで、そこをはつきりしないでおいて、特定の武装を持
つた
、特定の性能を持
つた
ものを借りて来ようというから、そこに当然に疑義が起るのは当り前なんです。これを明確に御答弁願うことが、これは
国民
の前に非常に必要だと思いますので、まあ前置きは長くなりましたが、基本方針を伺います。
木村篤太郎
72
○国務大臣(
木村篤太郎
君) お答えいたします。誠に御尤もと思います。そこで、この保安庁の警備隊の任務は、要するに陸上における警察と保安隊のような
関係
であります。第一に事態が起れば保安庁がこれをやります。そこで海上保安庁で処置のできないような非常事態の起るような場合についてこれは行動するのであります。主としていわゆる集団的な密輸入の取締だとか、或いは海賊行為だとか、或いは漁民の保護、その他海難の救助に当らせることを主たる任務とするのであります。
曾禰益
73
○
曾祢益
君 まあ陸上における警察と保安隊の
関係
と似ておると言われたんですが、これも実はわからない点なんですが、余り論議の対象を拡げないで、一般的な、通常の海上保安庁の仕事で手に余るような、例えば海賊行為ですか、それから集団的な密輸入、或いは漁民の保護というようなことを言われましたが、そういうために一体どういう
程度
の設備を持
つた
船とか、或いは訓練が必要だとお考えにな
つて
いるか。どうも今のは例示的であ
つて
、いわゆる非常事態というものがどの
程度
の、あなたの言葉を以てすれば、恐らく地上における内乱、大規模の内乱、騒擾というようなものに相当するようなものの一例として三つばかり挙げられたと思うのですが、海上でそういうことが想像できますか。
木村篤太郎
74
○国務大臣(
木村篤太郎
君) もとより現段階においてはどこそこにどういう事態があ
つた
ということは申せませんが、今後の
国際情勢
その他国内情勢を判断する上におきまして、相当の私は密輸船がこれはあるべきものと予想してよかろうと思うわけでありますが、先刻も
予算
委員会
で私は言
つたの
でありますが、
日本
で外国の教唆、扇動による大騒擾
事件
、大叛乱
事件
というような場合には、やはり相当な武器が外国から輸入されるべきものと我々は多少考えなければいかんと考えております。そのほかにいろいろな集団的の内地においての内乱、陸上における暴動行為というようなものもないとは限りません。又漁民の保護においても、御承知の
通り
相当数の拿捕問題も起
つて
いる際でありますから、我々といたしましては、国内の平和と治安を守るために相当な覚悟と又準備を必要とすると考えるのであります。
曾禰益
75
○
曾祢益
君 これはいろいろな場合があろうということは一応わかりますが、一体そうい
つた
ような外からすつかり指導して
援助
をして、そうして何か
日本
の内乱のために武器なり人を送り出す、而も大規模にやるというような場合には、それは恐らく単なる密輸というようなものの概念を完全に突破したもつと大きなものであ
つて
、これは一種の国際的な侵略行為、武力侵略、それを
戦争
と名付けるかどうかはこれはいろいろ定義の問題がありましようが、そういうようなものにも備える、こういう御意向であるか、そこを明確にして頂かないと、ただ単なる今まで
日本
に対する人なり貨物の密輸というようなものとは格段の相違のある大規模の一種の武装侵略だ、これは正式の軍隊の侵略でないにしても、そういうようなものにも対抗するということがその任務であるかどうか、これをはつきりして頂けば、おのずと然らばどういう措置が必要かということにな
つて
来る。そこを明確にしないで、そうして、やれ多少大規模な密輸だとか、海賊行為、或いは漁船の保護、漁船の保護の議論も実はもう少し伺いたいのですが
あと
で伺いますが、若し
日本
の漁船が先ほど来の團君の
お話
のように李承晩ライン或いはその他の北洋漁業区域等において拿捕されることを保護しようとするのなら、これは武力衝突を覚悟の任務だということになる。そういう意味の漁船の保護のために相当な武装を持
つた
警備隊をお作りになるというお考えであるか、これも明らかにして頂かなければならない。即ち海上と陸上とは私が申上げるまでもなくその国際性において非常に違います。
従つて
さつきの沿岸ということが厳密に言えば領水内だけでやるのか、海上警備なんと、
ちよ
つと恐ろしい言葉が出て来たのですが、どうしてもそこに国際的な問題を含んでいるから、相手方が私的団体であろうが、公的団体なら勿論これは非常な危険な国際問題ですが、私的団体であ
つて
もいわゆる領水を離れて公海なんかで活動する場合には明白なる相当大きな国際問題になると思いますが、そうい
つた
ような規模のことをお考えにな
つて
いるのか。そこまではやるけれ
ども
、それは飽くまで軍備じやないのだ、こういう御
説明
なのか、これをもう少しはつきりして頂きたい。
木村篤太郎
76
○国務大臣(
木村篤太郎
君) お答えいたします。
只今
お話
のような大々的の
日本
に対して軍隊を送る
程度
に至らざるとも、軍需品を密輸入するというようなことに対して保安庁の警備隊がこんな微力ではいかんと私は考えております。そういう場合にはもつと高度な装備を要する船が必要であるのではないか、我々はただそれまでの
程度
に至らんまでも相当の密輸入のことを考えなければならん、従いましてさような観点から、かような船でも
アメリカ
から借受けて警備の任務につかせることが現段階において妥当と考えている次第であります。直接侵略に対抗するものとしてはかようなものは私は役に立たんものであると考えている次第であります。そうして漁民の保護問題につきましては、もとより不法な行動に対しては我々は看過することはできませんが、さればと
言つて
、これを国際紛争の原因にするということは毛頭考えていないのであります。できるだけさようなことは避けるべきであります。具体的に申しましてもこれは外国の不法な行為に対しては、こちらから相当にこれを護
つて
行けば警告にもなりましようし、その
状態
のことは或いは写真に撮り惑いは通報をして、いろいろな手段を以て漁民の避難に当らせるというようなことも考えられるのであります。我々といたしましてはこれを以て国際紛争の種を播くようなことは十分に警戒しなければならん、こう考える次第であります。
曾禰益
77
○
曾祢益
君 みだりに好んで国際紛争の種を刺戟する意向でないということは一応了承しますが、何しろ相手も武装している。こつちもこの
程度
の武装をすれば三インチ砲も持
つて
いるし、それから対空のあれも持
つて
いる、潜水艦に対する攻撃武器を持
つて
おり、
向う
の武装の
程度
如何は知りませんが、これは非常な危険な
状態
が起る
可能性
を否定はできないと思うのです。如何に
政府
の考えがどうであ
つて
も、こういうものが危険地域にあ
つて
本当に保護しようと思えばこれは武装衝突が起る
可能性
は私は否定できないと思うのですが、それは余り大きな問題じやなくて、どうも私の
質問
に対するお答えとしては相当大規模な軍需品の密輸等もあろうし、そういう場合には今までの海上警備隊が持
つて
いたような船では到底対処できない、
従つて
今度のフリゲート艦だとか、或いは上陸支援艇みたいな
程度
の相当な高度の武装が必要だ、こういうお考えのように思うのです。そうするとその沿岸警備ということは
向う
が例えば軍艦でないというような場合には沿岸に対してや
つて
来るような武装船に対抗する軍艦の
程度
にならないものならば、それに対抗する相当な武力的な防衛手段を必要とする、こういうお考えですか。
木村篤太郎
78
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 必ずしも武力的な防衛手段とは考えておりません。これを使うということは、これはよくよくの場合であります。これらが警備船として行動いたしますれば、おのずから相手方においても十分な警戒を私はするだろうと思います。
曾禰益
79
○
曾祢益
君 それはすべての武装というものが何も使うのが目的でないことは、これは剣道の達人のあなたの心境から言えば当然のことであろうけれ
ども
、併しその使わないということが、使わないて済めばよいという一種のこれはまあ
安全保障
的な意味で武力というものはあるので、使うのが目的ではないという哲学的な議論を別にすれば、それだけの武力を持
つて
おり、そうして不幸にしてそういう事態が起れば、これはやはり武力を持
つて
いる範囲内においてでも戦うということが当然の任務にな
つて
来るのではないか。そのときになると、いやそれは平和的な手段、或いは何と言いましようか、未然に防止することが目的なんだというのでは、それは最後の瞬間において議論を逃げていることなんで、いざそういう場面が起ればやはりこれは武力の衝突を覚悟の
一つ
の国家の施設なんだということをはつきり肯定するのが本当じやないですか、そこをそらされるのは
ちよ
つとおかしいと思います。
木村篤太郎
80
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 私は何もそらせるわけじやありません。併し一体こういういわゆる武器は持
つて
お
つて
も、これは容易に使うべきものではないのであります。これは最後の段階であります。これは相手も恐らくこういうものに対しては軽々に対抗することはなかろうと私は考えております。これによ
つて
漁民なんかがどのくらい後楯にな
つて
我々を保護してくれるのだという大きな
一つ
の安心感があるのではなかろうか、すべて武はこれは用いざるをよしとするのでありまして、我々はこのフリゲート艦を持
つた
からとい
つて
、直ちに武力を使うということは考えていないのであります。どこまでも漁民の後楯とな
つて
我々はお前たちを保護してやるのだというふうな、その安心感が大きな私は役をするものであろうと、こう考えております。
曾禰益
81
○
曾祢益
君 それはすべての武装というものが、それを持つことが相手を警戒させ、或いは我が方を保護する、安心感を与えるということと、持つことによ
つて
相手を刺戟し、我がほうにも心配を与えるという、両方の面があると思うのですが、これは少し哲学論争のようになるから、その点は暫らくおいて、これは要するに近代的な仮に軍艦としての機能は大したものでないかも知れないけれ
ども
、或る種の相当なやはり武力であることは、これは肯定しなければならないと思うのです。そうしてみると、仮にそういうことが
日本
に必要だとしても、それは一体憲法から見て、そういうものが憲法の禁ずる戦力にならないということは、これははつきり証明できますか。
木村篤太郎
82
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 私はもうその戦力問題についてはたびたび論議しておるのであります。
曾禰益
83
○
曾祢益
君 私はまだ聞いていない。
木村篤太郎
84
○国務大臣(
木村篤太郎
君) いわゆる憲法第九条第二項の戦力というものは、かようなものではないと考えております。いわゆる陸海空軍その他の戦力、大きな組織された
一つ
の総合的武力であります。この船が戦力などとは我々は毛頭考えておりません。又憲法第九条第二項の戦力に該当しないということは、恐らくいずれの面から見ても私は至当な議論であろうと、こう考えております。
曾禰益
85
○
曾祢益
君 私は国内の治安上も、軍隊のない
日本
がピストルだけ持
つた
警察隊だけで済ませて、一切のその他のものは全部丸裸になれというような議論をしておるものではございません。ですけれ
ども
、一方において
政府
が自分だけの解釈で、陸海空軍その他一切のウオー・ポテンシヤルと明文に書いてあるのに、いやこれは自分の考えておるところの近代兵力には該当しないのだから憲法第九条には反しないのだという一方的な解釈で行こうということでは、これは
国民
を納得させません。
従つて
、
現実
の
日本
の現段階において、例えば沿岸警備はこのくらいのいわゆる危険の
可能性
がある、
従つて
ここまでのことに対応するいわゆる警察的な、飽くまで警察的な武力というものは必要なんだということを、これを本当にまじめに
国民
に紹介することをしないで、いやおれは第九条の戦力というものはもう極めて近代的な総合的な
大戦
力と認めるのだから、自分の考えに合致しない
程度
の武力は、或いは武器というものは、戦力ではないのだと、この
説明
だけで行こうというのは、これは幾ら保安庁
長官
何遍御
説明
に
なつ
たか知りませんけれ
ども
、これはあなただけが納得しておるので、
国民
は納得しません。そういう高圧的なことでなくて、私が申上げておるのは、
現状
に鑑みて、沿岸警備にどのくらいの危険があり、
従つて
それに対応するのにはどのくらいのものが常識的に考えた憲法の範囲を逸脱しないものとして必要だということを、それを提案者である
政府
がはつきりと証明されることが私は必要なのではないかと、こういう意味で申上げておるのです。そこでまあその議論は、私はどうも今の御
説明
は全然納得できないのですが、今度は少し観点を変えまして、少し詳細な議論になりますが、ところでこのフリゲート艦なり上陸支援艇というものが、然らば
只今
保安庁
長官
の言われたような任務に適応し、或いはそれを逸脱しない
程度
の武装を持
つて
おるのか、これらの武装の性能ということからこれを少し検討してみたいと思います。 先ず
アメリカ
の
議会
の記録を読みますると、その前に
アメリカ
の意図は相当はつきりと、
日本
がいわゆる
安全保障
条約
に
従つて
漸次自衛の責任を持つと、それに対してデイザイアブルな好ましい刺戟を与えるということがこの武装船を
日本
に貸与するところの大きな動機にな
つて
おるということは、これははつきり書いてあるのですね。
従つて
、それは勿論
日本
の自衛に関する責任といえばピンからキリまでございましよう。併しこれは追及して行けば、何という言葉を使おうと、いわゆる
日本
が自衛権を持つということまで見越して、そうしてそれの第一歩であり、それに刺戟を与えるのだということがこの武装船を
日本
に貸与する目的だということがはつきり書いてある。それに対する
政府
の御見解はどうなんですか。
木村篤太郎
86
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 私も曾称君と同
意見
でありまして、
日本
は自衛力を否定されておるわけでもありません。どこまでも
日本
は独立国として自衛力は持
つて
おると考えております。ただその自衛力は戦力に至
つて
はいけない。戦力に至らざる自衛力は
日本
は独立国家として当然持
つて
よかろうと私は信じております。この点においては恐らく御同感であろうと思います。そこでこの借りた船をいわゆる自衛力の一部として借りたのかどうかということになるのでありますが、申すまでもなく、自衛ということについては私は広義な武力の概念であると考えております。
日本
の経済力を発展させることも自衛力の発展でありましよう。警察力を増加することも自衛力の
一つ
の発展でありましようし、広義に解すればすべて
日本
の国力を発展させることはいわゆる自衛力の増加である。併し狭義においてはいわゆる何と申しましようか、防衛力、これに結びつくのであります。外国の不当なる侵入に対して
日本
を防ぐ、これがいわゆる自衛力、これも狭義に考えれば尤もなことであります。然らばこのフリゲート艦を借りることが
日本
の防備態勢について必要止むを得ざる措置として借りたのかどうか、こういうことから考えて見ますると、
アメリカ
においては成るほど或いはそういう観念は持
つて
お
つた
かもわかりません。持
つて
お
つた
でしよう。併し私が保安庁
長官
として借りるのは決してさような目的ではないのであります。どこまでも私は
日本
の警備力、内地の治安確保のために必要止むを得ざるものとして借受けたのであります。申すまでもなく私は常に
言つて
おるのでありますが、
日本
独自の考え方としては
日本
の国情に適合するような適格な船を準備したい、併し
日本
の今の
財政
状態
その他の観点から考えてみてもそれは容易ならんことである、幸い
アメリカ
からこの船を貸してやろうということでありまするから、臨時の措置といたしまして有難くこれを借受けるということにな
つたの
であります。私保安庁
長官
として、これの
使用
目的はどこまでも今申しました
通り
、或いは漁船の保護、或いは海難救助、或いは密輸船の取締、いわゆる海上保安庁の任務の第二義的のものとしてこれを
使用
したいということを
念願
しておるのであります。
曾禰益
87
○
曾祢益
君 少し話が初めのほうはそれていたと思うのですが、私は勿論自衛権を否定しておりませんし、自衛力というものもいろいろ基本的に考えなければならないと
思つて
おります。併し今の
政府
のや
つて
おられるいわゆる自衛力は持つべきだという議論で勝手に憲法の禁止した戦力というものを、いやこれは戦力ではないないと
言つて
自衛の名において勝手に憲法のなし崩しみたいな自衛力漸増計画には我々は
反対
なんです。そこで今私の
質問
に対する
長官
のお答えはこういうふうに了承したのですが、成るほど少くとも
日本
の
政府
が
言つて
おるような戦力と自衛力が別なもので、自衛力はどんどんや
つて
もいいのだ、そういうふうな非常に観念的なものの見方をしているが、
アメリカ
はそんなことはお構いなしであるから、これはつまりはつきり言えば、再軍備に対する好ましい
一つ
の刺戟としてよこしたかも知れん、そういう意図もあろう、併しいずれにしても受取る側としてはそういうつもりじやないので、飽くまでもいわゆる保安庁の第二の任務という意味の沿岸警備というような任務に限
つて
これを
使用
するのだ、
従つて
アメリカ
の意図の如何にかかわらず、これは再軍備ではないのだ、それへの第一歩ではないのだ、こういう趣旨の御答弁であ
つた
と思いますが、大体それで正確ですか。
木村篤太郎
88
○国務大臣(
木村篤太郎
君) さようであります。
曾禰益
89
○
曾祢益
君 そこで両方の
意思
が合致してないことを確認の上での議論なんですが、併しそれにしても一体この武装船の性能とか目的というものはこれはやはりつきまとうので、例えば
アメリカ
のほうの
説明
によると、このフリゲート艦というのはただ単なるコースト・パトロールだけではなくして、いわゆるエスコート、護送用にも向いておるということも
言つて
いる。それからもう
一つ
は上陸支援艇のほうは、これはいわゆる近接した火力の
援助
、これをクローズ・イン・フアイア・サポートに最も適している。決して遠くまで行
つて
こつちが上陸するというようなときではないかも知れんが、少くとも近接した距離の上陸作戦のときにそばにお
つて
、これを火力として
援助
するのに適している。そうい
つた
ようなものは、どうも今のフリゲートの性能の全部ではないでしよう。それは私も認めているのですが、どうも相当攻撃的な性能を持
つて
おることは、これは否定できない。つまりフリゲート艦の特色は一種の護送船である。沿岸警備ではない。これはあなたの言われるところの海上警備の、
日本
の船なんかを、船団なんかを護送するときにも使える、これはもうどう考えても非常に海軍的な能力、或いは機能ではないかと思うので、それから一方の何とかL・Sとかいう上陸支援艇と訳しておるやつは、確かにこれは遠くまで持
つて
行
つて
上陸作戦には向かないらしい、近距離から乗
つて
行
つて
とつ走る、近接した地域から火力で
援助
するというのが、むしろ特性だ。そうした危険な攻撃的性質の私は護送船だと思う。これは正直にとらなければならん。それにもかかわらず保安庁
長官
は非常に平和的な意図であられる。こういう武装を持つけれ
ども
、これは勿論使わないのが目的であるし、仮に使うにしても、武器の密輸とか、或いは漁船の保護とかに使うのだ。そうするとあなたの考えておられる目的に余り即応しない、より攻撃的なものをなぜわざわざ借りて来るのだ。これは御指摘のように恐らく保安庁
長官
もお考えの、今もおつしや
つた
し、ほかの場合にも言われたそうですが、
財政
その他が許すならばもつとあなたのお考えにぴ
つた
り合うような性能のものを作りたいのだ、併しそれは実際できない、幸い
アメリカ
から貸してもいいというような
意見
もある、それで多少性能は違うけれ
ども
借りるのだ、併しこれは決して紐付ではないのだ、何もこれは再軍備への第一歩ではない、又
アメリカ
の海軍の下請的の
軍事
的な仕事をするのではない、飽くまでも
日本
から見れば必要な沿岸警備をやる、こういうお考えなんですが、そういうことは、私は考えて、もら
つて
来るものとの内容的な食い違いから
言つて
非常に無理なんじやないか。即ちどつちかに無理があるので、あなたはやはり逐次海軍のこれを卵にしようというお考えがあるのではないとおつしや
つて
おるけれ
ども
、あると見るのが……
アメリカ
の海軍の機能の
日本
の下請的なものを両方の都合によ
つて
やるというふうに世人は見る嫌いがあると思うのですが、それをもつと明白にそうでないということを御
説明
できますか。
木村篤太郎
90
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 我々は決して
アメリカ
の紐付ではないのであります。
アメリカ
からさようなことを私は言われたことも何もありません。独自の見解の下に私はこの船を使うことの
権限
を任されておるのであります。そうしてこういう船が今性能の点を仰せになりましたけれ
ども
、一部にかような性能……大砲などを積んでおるといたしましても、実は私はこういうものは本当に役に立たんと申しちや甚だ
アメリカ
に相済まんから言いませんが、
戦争
なんかにはこんなものは役に立たんと真に考えております。而して私は常に言うのでありまするが、一体再軍備とか、
戦争
とかをする準備であれば、こんなものでは役に立たんのであります。申すまでもなくもつと総合した立派な編成をし得る総合的な艦種が必要であります。フリゲート艦十八隻、LSSL五十隻、こんなことで以て
日本
の海軍の創設を考えておるなんというのはとんでもないことと私は考えております。やるならもつと気のきいたことをやらなければ駄目であります。どこまでも我々はこれは保安庁本来の目的のために
使用
することを考えておるのであります。
曾禰益
91
○
曾祢益
君 非常にまあやるならば大規模に近代的のものをおやりになるというお考えのようで、非常にその大規模なお考えは伺
つた
わけですが、併しこれはやはりなし崩しでやる方法もあるのです。いわんや実際問題として
アメリカ
海軍あ
つて
の……、それとの何らかの意味で共同的な動作をやるということから始まるというようなことが、現段階における再軍備論としては非常に
可能性
が多いと、これは普通の常識のある人は見ておるから、そういう何か紐付でやるのではないかと疑えるわけです。それで私の
質問
に対しては武装の点から行
つて
、ただこういうものは近代武器じやないのだから、戦力でないのだからかまわん、やるのならもつと大掛りにやるのだと言われたけれ
ども
、そういう基本的な考えを今伺
つて
おるのではなくて、而もあなたがたはそういうことはやらないのだと、やるなら大規模にやるのだけれ
ども
、今はおれはやらないと
言つて
おるのですが、これはもう議論しても始まらないと思うけれ
ども
……、つまりやはり武装と、あなたがたが考えておられる任務との間の食い違いというものは確かにあると思うのです。先ほど言
つた
ような護送なんかには全然使うつもりはないと、或いは近接せる火器の
援助
というようなものに使うのではないのだ、併しそういう機能を持
つて
おる軍艦ですか、武装船をどうも密輸の取締に使うというのは、
ちよ
つとどうも性能から考えて納得に困難なんですが、それならそれでまだほかにももつと適したものがあるのではないかというふうに考えますが、もう一遍武装の点から見て果してあなたがたの考えておられる
使用
目的に適当した武装であるとお考えであるかどうか。
木村篤太郎
92
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 私はこれは保安庁の保安警備隊の
使用
目的に必ずしも適当なものとは考えておりません。これはもう私は考えておりません。もつと気のきいた本当に警備隊に適切なる船を造るべきであると考えております。ただ止むを得ず、これはしばしば申しまするように、
財政
的見地から、或いは時間的見地からこれは
日本
で造ることを許しません。従いまして差当り
アメリカ
の好意によりましてこれを借りたのでありまして、この武装の点でありまするが、これはもとより今の曾祢君の仰せになりましたように、
アメリカ
では上陸支援艇なり、或いは哨戒艇として使
つて
お
つた
ことは事実であります。併しすでに戦時中に造られて、今は殆んど旧式で近代の
戦争
には私は役に立たんものと考えております。役に立たんものでも軍艦は軍艦である、これを再軍備の一部にする
意思
があるのじやないかと、これは
一つ
の御議論でありまするけれ
ども
、我々といたしましてはどこまでもこれは警備隊本来の目的に
使用
することを確信して疑わないのであります。
曾禰益
93
○
曾祢益
君 もう一点伺いたいのですが、
アメリカ
のほうではやはり
議会
のほうの記録を見れば、率直に
言つて
これは
日本
人のクルーを使
つて
、乗組員を使
つて日本
の費用でやらしたほうが安上りということが、これはもうどこの国でもそうでしようけれ
ども
、
向う
の
議会
の人としてはそういう費用の点から率直に
政府
もそういう
説明
をしておる、
参考人
として……。
議会
もそのつもりで、いわば今まで
アメリカ
の海軍が安保
条約
によ
つて日本
及び
日本
の周辺の
安全保障
に、それは一種のまああなたに言わせれば警察行動もあるだろうけれ
ども
、多く原始的でその一部の仕事をこの船を
日本
に貸すことによ
つて
安上りにしようということは、
アメリカ
が意図しておる或る種の、それは沿岸警備と
言つて
もいいかも知れない、これを
日本
側に貸したから
日本
側がや
つて
くれるという期待の上にこれを貸しておると、少くとも
アメリカ
当局はコングレス或いはセネートにおいてそういう
説明
をしておるわけです。これは
向う
の法律をパスするときの国会との政治
関係
だからこつちは知らないのだと言えばそれまでかも知れませんけれ
ども
、私は何も
日本
のやることはすべて
アメリカ
の傭兵的だというプロパカンダだと
言つて
おるのではない。何らか
日本
の沿岸警備ということは、
アメリカ
海軍がやるべきことを
日本
が肩替りするのだという
向う
は期待を持
つて
おるし、それを
政府
としては一体どうお考えにな
つて
おるのか。具体的に警邏隊というようなものの行動することは、安保、
行政協定等
によ
つて
アメリカ
との話合いによ
つて
、何か総合されて活動するということであるのかないのかということを
説明
して頂きたい。
木村篤太郎
94
○国務大臣(
木村篤太郎
君)
アメリカ
の
議会
でどういうことが問題に
なつ
たかは私は十分承知いたしません。少くとも
日本
でこれを借受けまして、そうして保安庁の警備隊に所属した以上は、断じて
アメリカ
のかような上陸の支援というようなことはいたしません。どうぞ御信用下さい。
曾禰益
95
○
曾祢益
君
ちよ
つと最後……、
アメリカ
の何ですか、上陸の支援……。
木村篤太郎
96
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 上陸の支援、
援助
をするようなことですね、そういうようなことはいたしません。
曾禰益
97
○
曾祢益
君
只今
長官
が言われたのは、その
アメリカ
の軍隊がどこかで作戦行動をする、そのときにこれを使うのだ、そういうところに使わせるものじやない、こういう御発言ですか。
木村篤太郎
98
○国務大臣(
木村篤太郎
君) そうです。
曾禰益
99
○
曾祢益
君 これは了承いたしました。当然そうでなければならん。私はそれを伺
つて
おるのではなくて、
日本
の、あなたがお考えにな
つて
、
日本
の沿岸の警備を
日本
としてやらなければならん運命にある。それをやるに当
つて
、この
アメリカ
の
議会
の応酬等から見て、
アメリカ
と一体に、総合一環として引受けてやるというようなものであるかどうか。外に使うということは拒否する、これは当然のことで問題にならないことだと思います。その点はいい。
木村篤太郎
100
○国務大臣(
木村篤太郎
君) その船は
日本
側独自な立場において、独自の考えの下に行動するのであります。
曾禰益
101
○
曾祢益
君 この問題は私も実は
ちよ
つと外国に行
つて
お
つた
り何かして、よく初めから心しておらなか
つたの
ですが、新聞等に伝えられたところ、これは最も私は大きく見て、大体においてそういう事実があればこそ、報道陣が特に報道しておるのですが、どうも
政府
の始めからの方針が、非常にぐらぐらしておる。悪く言えば、この
協定
というものを
議会
にかけると非常にいわゆる戦力である、ないという議論が起るので、これを何とか国会にかけまい、闇から闇に、保安庁
長官
の部下の名前で簡単に受取
つて
おこうじやないかという企てがあ
つた
やに伝えられている。結論として、そういうことは勿論
政府
としてはこれは一部の言うところであて、
政府
の最高当局がそういう非民主的なお考えはなか
つた
。結論として国会に堂々と出すことに
なつ
たが、と同時に
財政
的に見てやはり
予算
以外で国庫の負担になるのをこれを国会に出さないというようなことはますますできないという結果、まあ外務省としては渋々やはり
協定
を作
つて
国会に臨んだのだということを聞いているのですが、保安庁
長官
は初めからこれは
協定
を作
つて
堂々と国会に出すことが本当だとお考えにな
つて
おりましたか、伺いたい。
木村篤太郎
102
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 私はもとより国会の審議を経るものと考えておりました。
曾禰益
103
○
曾祢益
君
外務大臣
はこの
協定
についてどういうふうにお考えにな
つて
おりますか。
岡崎勝男
104
○国務大臣(岡崎勝男君) これは
アメリカ
側ではすでに国会の法律で大統領に
権限
を任されているのですから、国会に出す必要がないわけです。そこで保安庁の係のほうから言えば、早く船を借受けて使いたいというので、
アメリカ
はもう必要はないのだからこちらも
財政
負担がなければいいじやないかという議論はあ
つた
、国会に出さなくてもいいということは。併し木村
長官
その他のお考えで結局これは
日本
としては国会に出すべきだ、こういうことにな
つて
協定
を作
つたの
です。私もそのほうが筋道が通
つて
いると考えます。
曾禰益
105
○
曾祢益
君 最後に、最近の
事件
ですが、
事件
と言つちやおかしいのですが、発展ですが、
政府
は初めの案では要するに船舶安全法、船舶職員法、電波法、これを適用除外しているところの保安庁法の一般条項をそのままで行こうというのが原案であ
つた
。ところが衆議院における
外務委員会
の
空気
に鑑みて、初めの
説明
を変えて、そうして保安庁法の一部改正をするということに
なつ
た。そうしてこれも随分変な話なんですが、そうい
つた
ような一部改正をすればこれは船舶と認めてもいいというような議論が起
つた
らしく、何だか非常に変なふうにな
つて
衆議院のほうも通過したようですが、この保安庁法の一部改正の問題についてこれは御
説明
あ
つたの
ですか、
委員長
これございましたか、
委員会
において。
徳川頼貞
106
○
委員長
(
徳川頼貞
君) まだなか
つた
。内閣
委員会
にかか
つて
おります。
曾禰益
107
○
曾祢益
君 それでは関連事項として
政府
当局の御
説明
を伺
つて
私の
質問
を一応終りたいと思います。
木村篤太郎
108
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 便宜
法制局長官
からこれを
説明
いたします。
佐藤達夫
109
○
政府委員
(佐藤達夫君) 簡単に御
説明
申上げます。この問題の起りは、今御指摘になりましたように、保安庁法の中で船舶安全法と船舶職員法その他の
関係
もありますけれ
ども
、主としてそれらの法律を警備隊の船には適用したいと書いてある、そこに問題があるのであります。この起りました
質問
の趣旨は、これは二つの法律は国際
条約
がその裏にあるのじやないか、法律を排除しておる、排除するということは結局その裏にある国際
条約
までも排除してしま
つた
ことになるんじやないか、そうすると憲法で
条約
を尊重せよと書いてある、その憲法の条文に違反する、だから保安庁法はその点から
言つて
憲法違反だ、それからそれじや国際
条約
を排除しないという議論も立つ、そうすると例えば海上の人命安全に関する
条約
を見ると軍艦は除外される、併しそれ以外のものは一応適用があるように見える、そうするとこの警備隊の船は軍艦だと言わないと適用を免れないんじやないかというような、非常に巧妙なと申しますか、御議論が出まして、
政府
としてそれに対してお答えしたわけなんですが、
政府
の考え方は、曾祢さんは勿論御承知のことなんですけれ
ども
、国内法を仮に排除しても
条約
まで排除することにならないことはこれはわかり切
つて
おる。なぜ国内法を排除したかというと、この船舶安全法などは今の海上人命安全
条約
などの
条約
で要求しているところよりもずつと上廻
つた
、それにプラスした
日本
独自の制限をたくさん加えておるわけなんです。そういう意味で国の船であり、且つは特殊の任務に対処するものであるからしてそれを適用する必要はないというわけで保安庁法でそれを適用除外しただけであ
つて
、決して
条約
までも除外する趣旨でないことはこれはもう誰が見ても明瞭でございましよう。当然に法律は排除されても
条約
は被
つて
来ますということなんです。それでその
条約
で今の軍艦云々という話が当時最初に出ましたけれ
ども
、これは恐らく一応の誤解だろうと思いまして、これは
説明
すれば簡単にわかることなんで、海上安全
条約
というものは主として国際航海に従事する船に適用あると書いてある。今度の警備隊の船は勿論先ほど話が出ましたように沿岸警備であ
つて
、国際航海に従事しませんから、そのほうからむしろ外れてしまう。ところが海上人命安全
条約
の中にも国際航海に従事しないものに適用のある条文もあるのです。航海の安全についての規定がある。そういうものは勿論これは適用になります。
条約
は勿論当然に適用になりますということであ
つた
わけです。それが要点なんです。それからまあ附加えて申しますが、安全
条約
の中に、
条約
を実施するために、適用を保障するために国内的の法律、政令、命令、規則並びにあらゆる措置をとれという条文があるわけです。そうすると今度そのほうからかか
つて
来られまして、じや国内法律を作れと書いてあるじやないか、国内法律がなくなるわけじやないかという御議論がもう
一つ
そこに加わ
つて
来たわけです。我々としてはこれも一般の常識だろうと思いますけれ
ども
、これは国際
条約
というものがおのおのその
関係
国によ
つて
国内法制の体系は違うのですから、或る国においては法律を要するという国があるかも知れない、或る国においては規則を以て足りる国があるかも知れない、或いは訓令を以てし、或いは訓令をも要しないというおのおの法制上の立場が違うわけですから、
日本
の場合においてはこれは今申しましたように国際法は即ち国内法であるという原則は御承知のように新憲法にな
つて
から一層はつきりしたということで、従来の憲法学者の本には皆書いてある。従いましてその
関係
から言いましても
条約
は即ち国内法として保安庁
関係
においてはそれを遵守する心がまえでおるわけですから、そのほうの問題もない。なお今のような立法せよというような条文を持
つて
おる国際
条約
の例は、新憲法にな
つて
からもたしか二つございます。それらについても国内立法をしておりません。そうして
関係
国でありますか、或いは国際事務局でありますかに対して、
日本
としては憲法九十八条の第二項の規定があるからあえて立法措置はとりませんよということを堂々と相手側のほうへ報告をしてそれで済んでおるわけです。そういう
関係
で、理論上の問題としてはこれはそういうことがはつきり言えるわけです。併し今のようにいろいろ御覧になる人が直ちに
了解
できないような複雑な問題も超るわけです。この際国内立法のほうを整備して全然そういう問題が起る余地をなくしてしまうという立法措置をすることも、これは又一方から見て決して悪いことではないわけです。従いまして
与党
のほうからそういう法律案をお出しにな
つて
これも又成立したわけであります。ただそういうようないきさつにな
つて
おります。
杉原荒太
110
○杉原
荒太
君 私自身の
質問
は
あと
にしますが、取りあえず先ほどの曾祢
委員
と木村
長官
の質疑応答に関連しまして
一つ
の点だけお尋ねしたいと思います。先ほど曾祢
委員
から
アメリカ
の
議会
においての
政府
側の本件に対する
説明
振りを引用しての
質問
がありました。前のほうの部分ですが、安保
条約
の前文に書いてあるいわゆる自衛力の漸増について
日本
がみずから責任を負うことを期待するというところをおさえて来て、それとの関連においてこれに関する法律案を提出する
一つ
の
根拠
にして
説明
をしている。それに対しまして木村
長官
は
アメリカ
側ではそうであ
つて
も、
日本
側としては決してそうじやないという御趣旨のお答えがあ
つた
ように拝承いたしました。そこで私がお尋ねしたいのは
外務大臣
にお尋ねしたいのですが、
外務大臣
も先ほどの木村
長官
のお考えと同じであるかどうかを
一つ
お尋ねしたいと思います。
岡崎勝男
111
○国務大臣(岡崎勝男君) 早く言えばその
通り
であります。つまり
アメリカ
側としても国会においてはいろいろ
説明
をいたすことがありましよう。そしてその
説明
がどういう理由でどういう動機でなされたかというようなことについては外国の
議会
の中に立入
つて
いろいろ言うことは私は差控えたいと思いますが、まあそれは別としまして、少くとも
日本
に関する限りはこの
協定
が承認されればこの
協定
に掲げてある義務を負うということになるのであ
つて
、それ以外のものはないわけであります。又事実この
協定
に書いてある以外のような、何と言いますか、紐が付いているというような内輪話があるというようなことはないのであります。従
つて日本
に関する限りは今の木村
長官
の言われたようにこの
協定
できめられたことをする、きめられた義務を負う。それ以上のことは何にもない、こう思います。
杉原荒太
112
○杉原
荒太
君
外務大臣
に対する私の
質問
はただこの木村大臣がおつしや
つた
ことと同じかどうかだけを私お尋ねしたので、御答弁の中にはそれ以外のこともあ
つたの
ですが、それ以外のことは今問題にしているわけじやない。私実はこういうことをお尋ねしますのは、非常にこれは外交上からしても重大なことと
思つて
私は聞いてお
つた
からお尋ねしたわけなんです。
アメリカ
側がこう
説明
しているが、
日本
側はそうじやないとおつしやる。私は実は
質問
の趣旨を明らかにするために、私の見解を
ちよ
つと申上げますというと、この
アメリカ
側で
説明
しているところをよく精密に見るというと、この安保
条約
の前文の中の文句を引用しておる。その文句はどういうことであるかというと、「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」と、こう書いてある。それを見まするというと、これをよく精密に捉えて見ますというと、
日本
側でと
つて
おられるところの今の方針と私は何ら矛盾するところはないと思います。又そう解釈するほうが極めて自然でもあり、又外交上からしても私は非常にいいのじやないかと、それは決して単に外交的の考慮からだけじやない、自然の解釈として調和する余地が十分あるのだ、それだからそれを
アメリカ
側で
言つて
おるのはそうであ
つて
も
日本
側としてはそうじやないのだという必要は私は
一つ
もないと思います。その点多少
説明
振りを修正なさるおつもりはないのか、今ここですぐでなくてもいいけれ
ども
御考慮願いたい。
木村篤太郎
113
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 今御注意がありましたが、私の言わんとするところもまあそこでありまして、
アメリカ
側の意図は私は知りませんと先ほど申しました。そこで御承知の
通り
安保
条約
においては
日本
の自衛力の漸増を期待するとあ
つて
要請されたわけじやありません。期待する……。
杉原荒太
114
○杉原
荒太
君 勿論再軍備とは書いてない。限定してない……。
木村篤太郎
115
○国務大臣(
木村篤太郎
君) 自衛力の漸増はこれは
日本
でもやらなければならないと考えておる。曾祢
委員
に対しても、
日本
は決して自衛力を放棄したわけでもなんでもないのです。自衛力というのは、要するに
日本
の治安を維持することも
一つ
のこれは自衛力なんでありまして、間接侵略に対しての力を増すこともこれは自衛力の増加であります。その意味においてこの保安庁の警備隊と称するものが
日本
の治安を維持して行く、殊に海上保安庁でできない高度の警備に従事する、いわゆる間接侵略の場合においてはこれは行動するのであります。その意味においていわゆる自衛力の漸増ということも言えるだろう、私はそのつもりで言
つたの
であります。その意味においてこれを使うので、決して再軍備というような意図を持
つて
おるわけじやない、又紐付でもなんでもないという趣旨であります。
徳川頼貞
116
○
委員長
(
徳川頼貞
君) ほかに御質疑がなければ暫時休憩に入ります。 午後五時十八分休憩 〔休憩後開会に至らなか
つた
〕