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1952-12-22 第15回国会 参議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十二日(月曜 日)    午後一時三十二分開会   ━━━━━━━━━━━━━  出席者は左の通り。    委員長     徳川 頼貞君    理事            伊達源一郎君            大隈 信幸君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            高良 とみ君            曾祢  益君            有馬 英二君            大山 郁夫君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    法制局長官   佐藤 達夫君    保安政務次官  岡田 五郎君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    外務政務次官  中村 幸八君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   参考人    琉球立法院議員 平良 辰雄君   ━━━━━━━━━━━━━   本日の会議に付した事件沖繩教育日本復帰促進に関する陳  情(第一九〇号) ○操業漁船沖繩近海諸島寄港に関す  る陳情(第二三一号) ○日本国アメリカ合衆国との間の船  舶貸借協定の締結について承認を求  めるの件(内閣送付)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) それでは只今より外務委員会を開会いたします。  先ず沖縄関係陳情審査の必要上、本日参考人として御出頭を願いました琉球立法院議員平良辰雄君に発言を求めます。
  3. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 本日この委員会に出ましで発言する機会を得ましたことを非常に喜んでおります。お礼申上げます。  私が今から申上げたいのは日本に早く沖縄復帰させてもらいたいというような希望を持つてお話を申上げるので、その内容は無論沖縄現状についても触れるのでありますが、極く大ざつぱに申上げたいと思います。それで大かた二十四、五分の程度だと思いますが、あと皆さんの御質問があればお答えしたいと存じます。  沖縄は曾ては独立して日本本土との関係におきましてはあいまいな地位に置かれていたこともありましたが、これは同じ大和民族でありながら地理的関係からそういつたようなことになつたもので、本土においても藩があり、藩主が割拠していたことと大した変りはないと我々は思つておるのであります。明治維新に際しまして本土では藩を廃して県を置き中央政府が確立されましたが、琉球明治五年統合され琉球藩を置かれましたが、明治十二年には藩を廃して沖縄県となり、ここで完全に他の府県と同様に日本の一地方となつたのであります。爾来今日まで七十有余年もはや日本国民として渾然融和し、国民としての権利も義務も平等であり、個人的にも地方的にも何の差別もなく日本国民としての矜持を持つて来たのであります。日本国民のすべてが必勝念願していたごとく、私たちも必勝の信念を以て沖縄作戦に際しましては防衛軍と共に戦い、そのために戦死した老若男女の数は十五万に及んでいるのであります。併しこの戦争犠牲なつ住民も祖国を恨んで死んだような人は一人もおりません。然るに戦争の結果は母国から切離され、国際的孤児といつたようなあいまいな地位に置かれるということは我々としては誠に忍びがたいものがあるのであります。今次大戦沖縄戦におきましては、四十七万の非戦闘員中十五万人の死者を出し、あらゆる財産は潰滅し、文字通り焼土と化した沖縄ではありますが、どうやら今日の復興を見るようになりましたのはアメリカ援助によるものでありますので、住民反米感情は持つていないのでありますが、母国からは何ら顧みられず、殊に戦争犠牲者やその遺族に対して何の手当もしてくれず、ほつたらかしにされたので、つくづく淋しい思いをさせられたのであります。併しながら、これも母国から分離されたためであつてみれば、敗戦国民の悲劇として諦めるよりほかはなかつたのであります。それはそれとしまして、我々はどこまでも愛国の念を捨てず、日本人としての矜持を持ち続けて来ておるのであります。私ども米国が施す恩恵よりも母国に強く抱かれて離れたくないのであります。どうぞ冷たい母にならないで下さいと訴えるのであります。この離れたくないということは単に民族的感情ばかりからではなく、経済的にも、文化的にも一環としての繋りを持つことが我々の永遠に生きる道であると我我は固く信じておるのであります。一昨年十一月には大島沖縄、宮古、八重山の各群島公選による群島知事及び群島議会ができまして自治の曙光を見て喜んだのでありますが、今年三月末には早くもこれは廃止されまして、琉球中央政府が発足し、これに統合されたのであります。ところがこの政府立法院公選によつてできましたが、肝心の行政主席米国政府の任命になつており、立法院権限も極めて薄弱なものでありますので、目下主席選挙促進立法院権限拡大に努力を続けている現状であります。母国復帰陳情は、群島議会におきましても決議されたのでありますが、立法院におきましても戦後二回に亘り決議されております。決議文は簡明でありますので一応朗読いたします。先ず本年四月二十九日の分を朗読いたします。これは決議文であります。  対日平和条約第三条によつて琉球はなお日本の一部であると我々は信じております。併しながら実際に政治的に切り離されていることは我々住民の苦痛とするところであります。米国国際平和政策に対しては日本はこれを支持し、これに協力しており、琉球も又同様でありますが、我々琉球住民としては自由愛好日本国民として米国に協力することが望ましく又そうすることが民族的のあり方、だと信じております。何とぞ住民のこの意思を理解せられ一日も早く日本復帰を実現せられるよう熱願する次第であります。右琉球政府立法院決議により請願いたします。  以上が決議文で、これが宛先アメリカ合衆国大統領琉球列島米国民政府長官吉田内閣総理大臣になつております。  次に本年十月二十日の決議文を朗読いたします。    琉球即時完全母国復帰請願   首題に関して本年四月二十九日本院決議によつて日米両国に対し請願いたしておきましたが、日米両国は本院の願望に応え奄美大島日米両国協定によつて近く復帰させるとの日本外務省の発表に接し喜びに堪えないのであります。この方針を即時具体化せられ沖永良部輿論等分離することなく旧鹿児島県大島郡を一体として母国復帰せしむると同時に旧沖縄県の復帰も実現せられるとともに更に進んで日琉全国民世論に即応して対日平和条約第三条の権利放棄又は第三条の廃棄による琉球即時完全母国復帰の実現を熱願する次第であります。  以上が決議文で、これが宛先米国大統領琉球列島米国民政府長官及び副長官米国上下両院議長、駐日米国大使、対日平和条約調印国日本内閣総理大臣外務大臣両院議長になつておりますが、遺憾ながらこの決議文は正式には届けられていないはずであります。外部への公文書はすべて民政府を通じてでなければ出せないことになつておりますが、この文書は米民政府としては取次ぐことができないということでありましたからであります。以上の決議文によりまして我々の熱願が反米感情から出たものではなく、早く元通りの姿に返してもらいたいという念願であることがはつきりしておると思います。現地立法院では政党政派を超越して全会一致決議したものでありますので、本国会におきましても政党政派を超越してこの問題の早急解決に当つて頂きたいとお願いする次第であります。米国軍事基地沖縄ばかりにあるわけでもなく、本邦にもあるのでありまするから、強いて沖縄を政治的に切離す必要がないと思われるし、現地住民意思に反してまでこのような措置を長く続けるとするならば国際正義も何もあつたものでないと言いたくなるのが我々の偽らざる心情であります。  なおここで復帰問題に対する現地米政府の態度を申上げておきたいと思います。昭和二十七年四月一日琉球政府立法院開院式における琉球諸島米国民政府長官リツジウエー大将琉球住民に対するメツセージの中には次のようなことが謳われております。「平和条約の条項により琉球諸島日本から政治的に当分の間引続き分離される。併しながら政治的な分離は伝統的な文化的及び経済的の紐帯の断絶を招来するものではなく、その反対に単に軍事的に安全保障のための欠くべからざる必要だけにつき拘束を受けるもので、琉球日本との間の旅行、通信、通商上のすべての不必要な制限を除くのが米国民政府政策である。」と、こう言つております。この声明によりますれば、軍事的以外は日本との繋りを認めようという趣旨でありますので、むしろ領土権を持つている日本政府が積極的に働きかければ条約の枠内において単に日米政府協定によつて軍事的以外の行政権復帰は可能であると私どもは見ておるのであります。どうぞこの点を考慮に入れて逐次行政権の回復を図つて頂きたい。お願いする次第であります。  次は教育問題について少しく述べさせて頂きます。今次大戦におきましては学校や校具失つたばかりではなく、多数の教育関係戦没者を出しております。その総数は六千余人に上り、その内訳は教職員約七百人児童約四千人生徒約一千五百人になつております。校舎校具の不完備と教員資質低下等のため、戦前に比較し教育程度は著しく低下しております。現在の校舎は約六割はかや葺の掘立小屋で、雨戸もなく見るに忍びないみじめなものであります。毎年水害も襲つて来る、暴風のためその都度吹き飛ばされ、大騒ぎをしておる有様で、校舎早期復旧は全住民の熱烈な要望となつております。なお教育問題で我々が重要視しておるのは、教育行政分離に関してであります。住民国籍日本にあると言つても、教育行政分離するならば精神的に国籍分離したのと同様である。教育行政分離により国民感情国民的活動に面白くない影響を与えるものとして憂慮されております。特に教育行政を早急に復帰せしめるよう格段の考慮お願いいたします。  次に財政経済の問題につきその現況を申上げます。アメリカの本年度内における琉球に対する援助資金ガリオア資金でありますが、これは一千一、二百万ドル程度になつておるようであります。ドル資金によつて米その他の食糧品及び肥料等を輸入し、これを一般に配給し、この配給代金琉球におけるB円で回収されまして見返資金となり、琉球復興に使われることになつております。琉球政府の、琉球政府と申しますと、琉球住民政府でありまして、米国民政府と混同しないようにお願いいたします。琉球政府の本年度予算は十四億余円になつておりますが、このうち三億五千万円は見返資金からの補助金になつております。本年度の見返資金は十億円内外になるはずでありますが、この補助金を差引いた残りの見返資金は、一部は復興資金として復興金融金庫に廻され、一部は米民政府が直接使用しております。復興資金は現在までの累計が十億円に上つております。各種産業復興住宅復興は主としてこの資金の利用によつて促進するようになつておりますが、産業復興戦前の三〇%にも達しない有様であり、住宅復興も未だに永久建物戦前の八万一千棟に対して僅か一万五千棟の程度であります。なお一面予算による復興費も見返資金からの補助金がだんだん減らされておりますので、今後に期待することも困難で、校舎建築のごときは、本年度予算の執行を見たあとにおきましてもなお五〇%の復興にも達し得ない現状で、この調子で行きますならば、校舎建築のごときは全部の復興を見るまでにはあと十年もかかる計算になり、財政上も極めて困難な立場に置かれているのであります。併し私どもはいつまでもアメリカ援助に縋ろうとは思つておりません。むしろ当然の権利として母国政府に訴えて復興促進したいのであります。戦前沖縄は砂糖、泡盛、蔬菜或いは生牛等本土に移出しまして、米は、主として台湾から、その他の諸物資は殆んど本土から移入していたのでありますが、常に移入超過になつていて総額の約二割程度外国移民県外出稼者からの送金によつて移出入のバランスを保つていたのであります。ところが現在はどうなつておるかと申しますと、これら戦前移出産業復興は、前にも申しました通り、遅々として進まず、漸く戦前の三〇%程度でありますが、移入のほうは援助物資、即ちガリオア物資は別としまして、本土からの移入戦前変りがない。むしろ戦前を凌ぐ状況にあるのであります。然らばこのアンバランスの移出入決済はどうしてなされているかと申しますれば、軍労務者、即ち軍に使用されておる労務者によつて獲得されたドル賃金であります、によつて埋め合わしているのであります。現在軍労務者は五、六万人に達しておるようで、この労務者ドル賃金は極めて低い、低廉でありますが、それでも毎月百万ドル以上のドルが入つて来ているようであります。このドル商業資金として積まれ、貿易の決済使用されておりますが、移入物資は殆んど消費物資で、生産資材移入が極めて少いので、現在この商業資金は余つて二千万ドル近く溜つているような現状であります。かように沖縄は豊富にドルを持ち、消費生活のための商業は極めて盛んでありますが、生産業は沈滞して振わず、全く畸形的な経済状態にあるのであります。みずからの産業を持たず、労銀稼ぎによつて経済を維持するということは、一時はよいようなものの永遠の策では決してあり得ないと信ずるのであります。いつまでも自主的経済を持ち得ず、従属的経済にあまんじていては遂に自主性を持ち得ない民族になり下るのではないかと心配しておるのであります。  なお住民経済生活に直接の影響を及ぼす重要問題として、最近軍使用地の問題が持ち上つております。それは現在軍が使用している土地地代は一方的にきめられ、民間における時価よりも著しく低廉で、これでは困るということと、いま一つは、今後軍の使用に供するための強制立退きは反対である、強いて立退きをさせるならば、相当な賠償をしてもらいたいというのであります。この問題については住民からも悲痛な陳情があります。立法院におきましても、住民生活権を脅すものとして、決議を以てその善処方を要望しておる現状であります。  以上概略申上げましたが、これで私の話は終りたいと思います。あと質問がありましたら、又幾らでも御答弁さして頂きたいと存じます。有難うございました。
  4. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 只今平良君の話されたことにつきまして御質疑がありましたらお願いします。
  5. 曾禰益

    曾祢益君 只今琉球の、沖縄立法院議員平良さん、而も沖縄で非常に有力な社会大衆党委員長をしておられる平良さんからの非常に注目すべき沖縄事情の御説明があつたのですが、なお若干の点につきまして御質問をしたいと思います。この軍使用地の問題ですが、これは我が日本としては平和条約が効力を発生して以来、勿論行政協定等によつて引続き或いは地域或いは施設をアメリカ軍に提供することは、これは国としての約束にはなつておりまするが、併し国民占領軍という、いわゆる強権的な関係はなくなつたわけですね。従つてまあ現実にはいろいろ本土でも問題はございます。ございますが、併しこれを強権的にアメリカ軍が一方的にその地代をきめるとか、或いは軍のほうが強制立退きをやらせるというようなことはもうあり得ないわけなんですが、只今お話ですと、沖縄事情としては、従来の使用地は依然として強権的に一方的に占領軍がきめてしまう。更に新たな使用地についてもそういつたような強権的な方法がとられておる、こういうふうに伺つたのですが、その点はこの琉球政府、殊に立法院としてはどういうふうに考えておられるのですか。もう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  6. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) この点は立法院で非常に問題になつております。大体占領当時において接収して、そうして使用したのはこれは当然で、我々としては何とも言わない。けれども講和条約発効後更に強制立退きをするということは法の根拠はない、立法院としては法の根拠は我々はない、どこに法の根拠があるかということを質問しております。それで法の根拠向うとしては占領当時の極東司令部からの司令が法の根拠だというふうにまあ示されておりますが、立法院としてはこれに対して満足はしておりません。いずれこれは今後の問題として又立法院との折衝がなされるはずであります。それから講和条約発効前の土地に対しては地代を払うということを向うが明言しております。これは地代を払つて頂ければ何も我々は返せということは言つておりません。だが併しながら地代の問題については、先ほども申上げました通り低いし、一方的でありますので、それで又もつれておる。現在実際はまだ折衝中ではつきりしていない現状でございます。
  7. 曾禰益

    曾祢益君 次にそれに関連いたしまして、住民占領軍との間の民事並びに刑事の係争事件等についてはどういう法律関係になつておるか、これを一つ説明願いたいと思います。
  8. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 大体民裁判は民の裁判所でやることになつております。軍関係裁判軍事裁判所でやることになつておりますが、民裁判におきましても更にそれを再審査したり或いは取消したり、判決を直したりすることができるように、米民政府のほうが最後の決定権は持つておるような現状であります。
  9. 曾禰益

    曾祢益君 それはまあ平和条約第三条の後段による司法権アメリカが行使しておるというような関係だろうと思うのですが、それは沖縄人相互間における事件でも、つまりアメリカ軍人等が関与していない事件でもやはり最終的にアメリカのほうがそれを監督するということになつているのですか。
  10. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) それはそうなつております。大体実際問題としては民だけの裁判は民がやつて殆んどその通りになつておりますが、併しそれを変えるという権能も向うは持つております。現実の問題はそういうところはありません。
  11. 曾禰益

    曾祢益君 そこでまあ結局一番大きな問題は、先ほどのお話にもありましたように、すでに立法院でも二度決議をされているわけなんですが、この平和条約第三条を廃棄するか、それでなければ平和条約第三条の後段権利、つまり立法、司法行政のすべて若しくは一部の権限アメリカが行う、これの権利を放棄しろということを言つておられると思いますが、アメリカが第三条の後段で持つている権利を行使しないで、そうして条約はそのままにしておいても結局日本との話合いによつて日本がこれを行使するようにせよ、それが一番実際的な狙いのようにちよつと伺つたのですが、その点は非常に核心だと思うので、いま少し詳細に御説明を願いたいと思います。
  12. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 我々は国際情勢関係アメリカは当分はどうしてもこういうような状態におきたいというのでありまするので、無論条約の第三条を撤廃してやるということは最終の念願でありますけれども、その前にアメリカ自体が第三条の権利を放棄するということも可能である、これは各調印国に何も了解を求める……了解を求める必要はあるかも知れませんけれども、法文上向う権利であるという以上はこれを捨ててしまえばいい、そういうこともやつて頂きたい。それから行政権の一部或いは全部ということになつておりますので、その一部はそのまま日本にとめておいて、軍事上必要な分だけを保留するというような行き方をしてもらいたい、これは実に手取り早くできる。我々は日本政府がもう少し積極的にアメリカ折衝すれば、アメリカとしても先ほど申上げました通り何もいじめようとはしていないのでありますから、その行政協定によつて、逐次早く行政権が返されるのじやないか、それを熱烈に要望しておるのでありまして、一例としては先ず教育の問題からやつて頂ぎたい。君たちは日本国民だ、こういうことは向うは知つております。又我々はみんなそう思つて今年から日の丸の旗を正月の元旦には全部各戸に掲げることになつております。それも許されております。そう言いながら国民教育分離するということはまるでおかしいのじやないかというような気持もありますので、この教育の問題についてはもう少しこちらのほうが押して行けば向う可能性があると、我々はまあ希望的、楽観的な観測をしておるわけであります。
  13. 曾禰益

    曾祢益君 只今復帰に関する立法院決議全会一致である、こういうお話つたのですが、まあ我々内地の者としては、結局は全会一致決議なつたにしても、やはりその底流が、アンダー・カレントがあるのだろうと思うのです。従つて立法院に現われた空気或いはその政党とか各団体の空気が、只今決議に現われたような何と言いますか、非常に熾烈な中にも非常に現実的な方向をとつておられると思うのですが、それに一致するまでにやはり中には、これは想像ですが、アメリカの下におつたほうがいいような意見も或る人は持つておるのじやないか、又中には逆にそんなふうの、今の決議程度の生ぬるいものじやいけないので、もつとはつきりアメリカから分離するのだというようなもつと強いほうの意見もあるのじやないかというふうに思われるのですが、この決議を正式にお伝えになつた人に伺うのはちよつとどうかと思いますが、沖縄のそういつたような島民の心理とか、或いは政情等についてもう少し裏話をして頂きたいと思います。
  14. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) これは裏話もありますから一向して差支えないと思います。沖縄には今民主党という政党社会大衆党人民党という三つの政党があります。その前には、群島政府の時代には沖縄には共和党というものがありました。その共和党というのは独立論者であります。ところがそれは議会にどれだけの議席を占めていたかというと二十名のうち二人が共和党でありました。あとは皆復帰賛成者でありました。群島議会でも先ほど申上げました通り決議したのであります。それが今度は世論がもう猛烈になりまして、全住民が沸き立つて絶対に日本復帰で行かなければいけないという強い世論が喚起して来ましたので、この共和党は解散しました。解散してその後今度は、今現政府与党であるところの民主党というのが最近できたのであります。その前は民主党というのはなかつた。最近この民主党というのができました。ところがこの民主党も一番真先に日本復帰を叫んだのは私の政党社会大衆党人民党とであります。人民党は現在は議席は二人しかおりませんけれども、社大党が十一名、それから今の与党が十八名、こういうふうになつております。それで議会の分野はそういうふうになつておりますが、現在において、最初の決議までは反対もありました、けれども第二回目においては完全に皆一致したのであります。これはもう従来の考え方はもう捨てる、我々は皆大同団結して日本に帰ろうという気持に全部がなつた、それで決議をしたのでありますが、その決議の表現においてもやはり各政党の性格はあるわけであります。これは最も先端を行く人民党は、まあ向うでは人民党が一番左翼であります。それから社大党がまあ中間みたいなもので、それから民主党がまあ保守党といつたような恰好になつております。それで民主党は成るべく柔かく行く、それで人民党は強く、その中に立つているのが我々の社大党であつて理想現実とを一緒に、理想ばかり言つて現実を知らぬということはいけない。又余り現実ばかりに捉われては困ると、だから我々は目標は三条撤廃権利放棄ということにおいても、現実の問題としては一角々々切崩してやるという実質的の復帰も考えなければいかんというので、ああいうような決議案になつたので、あの決議案が生まれるまでには相当議論があつたのであります。これは我々としましては何も思想的の問題じやない、日本復帰するのは思想ではない、政党関係も入れない。だから単に日本復帰するのであるから、それをまあ左翼系に見られるとか或いは右翼系に見られるとか、そういうことは困る、だからこの問題については全部党派抜きにしてかかつて行こうと、こういうふうな考え方であります。
  15. 團伊能

    ○團伊能君 甚だ実際にわかり切つたことかも知れませんが、杜撰なことを伺いますが、曾称君の御質問に連関いたしまして、講和条約第三条のお話もありましたので、現在信託統治下にある琉球米国との関係につきましてどういう法的根拠になつておるか、我々はつきりわからないところがあります。日本占領下にありまして、戦後独立した後でも、これは直ちに琉球が入れるとも思わないのですが、ちよつとその大綱のところを伺いたいと思います。
  16. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 今琉球は信託統治にはなつておりません。講和条約発効前はまあ占領行政でありました。その後講和条約発効されまして、第三条によりますというと、ただアメリカは国際連合にアメリカを唯一の施政権者とする信託統治を提案すると、この提案することを日本政府は同意してもらいたい、同意すると、我々が信託統治を国連に提案することを日本は同意するということになつております。それでそれができるまでは立法、司法行政の一部又は全部はアメリカ権利を持つと、こういうことになつております。現在はその後段の信託統治は、提案する前の段階に今ありまして、信託統治にもなつていない変なものになつておるわけですね。それで現在は立法、司法行政を個々に握るというだけで、一部又は全部となつておりまするが、そこには日米の協定によつてこれだけは日本に返す、これだけは残すというような協定ができる余地があるようになつております。
  17. 團伊能

    ○團伊能君 それから次に最近この大島郡を返すということを外務省から発表がございました。その発表のまあ正確性といいますか、信憑性はまだ我々もはつきりいたしませんが、その交渉もまあ多少現実化しておるかどうか存じませんが、若しそれが、返すということは必ずしも大島郡を返すという意味でなく、緯度線をもつと下げるというような意味に我々は承知しております。奄美大島まで入れても、輿論島その他までは延びないように聞いておりますが、その辺のことをちよつと……。
  18. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) これはあの決議文には外務省の発表というふうに書いてありますが、その後外務省の公式に発表してないという、又新聞や何かに取消しも出たようなことも載つてつたのであります。これはまだ本当に具体化して日米の協定をしてないそうであります。併しながら我々は新聞に少しでも何とかそういう話が出ればもう飛びついて来て、それが直相であるかどうか、何であるか、そんなことにおかまいなしにどんどん自分たちの有利なような考え方で決議をしておるようなわけで、これは外務省としては迷惑であるかも知れませんけれども、そういうようなわけでありました。それから沖縄奄美大島との関係は、奄美大島は現在のところは軍事基地はありません。それで沖縄が大部分持つておりますので、そういう点から申しまして奄美大島は前には鹿児島県の一部である、こういうふうな点から向うのほうとしては何も軍事基地もないから早く返すんだろうという希望的な観測をしておるわけであります。我々としては何も沖縄大島ばかり帰して我々は帰らんでもいいという気持はないのでありまして、立法院決議もその点において大島も返す、併しながら大島ばかり返してもらつては困る、何も軍事基地関係だけならば日本内地においても同じだから一緒に返してもらいたい、こういうような考え方でございます。
  19. 團伊能

    ○團伊能君 この問題では従来琉球群島その他から復帰陳情においでになつているかたもしばしばお目にかかつております。又その中に奄美大島を中心にした別の団体があつて別に動いていられて、こちらも両方陳情を受けて両方の陳情政府に送つて促進はしておりますが、その間に奄美大島のかたがたに聞けばまあ我々だけ返すのは先だというお話もあつてちよつと取扱に困つているところもございますが、いずれにしても先ほど平良さんのお話にありましたような、極めて熱烈なる祖国に帰りたいという気持が充満しておる住民のかたがたのその気持が非常によく我々にもわかつておりますが、これは御承知のような状態にありますので、一概にも行かず、結局本国も又決して冷たき母となるというような気持はない。私どもは帰つて頂きたいことに対してはやはり同じ熱烈たる気持を持つておりますので、これらの両方の共同操作といいますか、非常な何かもう少し渾然一致した動きがあり、日本政府も又本気にその気になつて一緒に御協力して行つてその道を見出すということのほかはないと思いますが、その時期も来たるものと私ども確信いたしておりますが、現在の国際情勢から推しまして、この状態日本がこれをアメリカに働きかけることによつて容易にこれは返すということがなかなか困難な情勢にあることは御承知の通りだと思いますが、日本政府をしてもつとこの問題を本当の同胞感の上に立つて促進して行くということの方向はなお我々も忠告いたしたいと思つております。  なおそのほかに一、二点伺いたいことは、先ほど教育お話もありました。これは最近に大島十島の一部が日本に返つて来ました。その大島、喜界ヶ島のこれらの状態を見て、アメリカは相当民生に対して責任を持つという声明はしておりながら、教育施設のごときは非常に貧困なものでありまして、殊に台風にさらされた家で柱だけ立つているといつたような状態もよく我々もその十島群の返還された地方から相当聞きました。又教員が非常に足りないということになつております。琉球本島その他において、ちよつと教育上のことで伺いたいのは、今日の教育方針として日本でやつておりますものと相当に変化しておりますかと思いますが、その日本と変つているところですね。或いは米国の指示その他で変更している教育内容がわかりましたら二、三伺いたい。
  20. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) これは教育は、今教科書は全部日本のものをずつと使つております。それでアメリカ教育方針をこれは是非こうでなければならないというような指示はいたしておりません。それでこれは我々のほうで是非こうしたい、日本の制度にどうせ帰るのだからというので、六・三・三の制度もやつておりますし、今現在としてはすべての制度を現在日本で行われている通りにやろう、ただ特殊の理由のあるものだけは変えてもいいけれども立法院としてそれを、例えば教育委員会の制度であるとかいうようなものについても、これは非常に教育委員会制度は非難があります。この点についてはアメリカと相当我々とは意見を異にしております。余りに教育委員会アメリカ式で、理想的で現実に即さないということで、我々は反対であり、立法院としては近くこれは改正するはずであります。その教育委員会制度について意見が対立しただけであとはそう変りはないのであります。立法院の方針といたしましては、例えば労働法規とかいうようなものも殆んど日本のものを丸呑みしており、日本が直つたときには我々も直そうというような形で、全部が現在の本土の制度に倣つて行こうというので、丁度大学がありますが、琉球大学というのがありますが、これにはアメリカのミシガン大学から講師をつれて来て講義をしておりますが、これも結構だけれども、それは通訳を通しての講義で聞くよりも直接日本の学者の講義を聞いたほうがいい、是非日本からも教授を、九州大学あたりから来てもらつて教育をしてもらいたいということで、これも承認されまして、大体そういうふうな、それもよかろうということになつております。
  21. 團伊能

    ○團伊能君 それで現在は日本から大学の教授を招聘することは了解できておりますか。
  22. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) はあ。
  23. 團伊能

    ○團伊能君 なおもう一点伺いたいのは、十島群その他の関係からいろいろ調査いたしましたところによりまして、医療施設が非常に不十分である、殊に無医村というようなものが非常に多く、或る島におきましては産婆もいないというような状態でございましたが、これは本島或いはその他人口の多い所と離島とは非常な違いがありましようけれども、一体この点について今の情勢はどういう形になつておりますか。
  24. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 医療施設の関係は、アメリカは非常に衛生を重視しておりますので、衛生関係については戦前より以上に力を用いております。ただ医者が戦争関係で、これは本土でも同じかも知れませんけれども、医者の数が少くて非常に最初困つたのであります。困りまして薬局生みたいな、少しでも医療のほうの知識のある者は臨時に免許を与えてやつたこともありますが、最近はどんどん本土から帰つて来たり、又学生を派遣してやつたりして、まあ医療の関係は現在は戦前の状況と大した変りはないのであります。戦前におきましても無医村、医者のない所がありましたが、それは公費で以て医者を補助してやつてつたのでありますが、現在は公費じやなくて全部中央政府から補助して医療の機関を置いてあるわけであります。そういう関係については何も今戦前よりは悪くはございません。
  25. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ほかにございませんか。
  26. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 ちよつと、一問だけ。さつき立法院の勢力の分布をお伺いしたのでありますが、ちよつと私注意をそらしておりましたので、誠に済みませんが、もう一度御説明願います。いろいろな大衆党とか民主党人民党の分布ですな。
  27. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 今民主党が十八名、社会大衆党が十一名、人民党が二名という分布になつております。
  28. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 それでその各党派が代表している政治的立場とかいつたようなものですな、それはどういうふうな工合になつておりますか。
  29. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 先ほどもちよつと申上げましたが、一番最初から政党として沖縄で生まれたのは人民党が最初であります。その後群島知事の選挙の際に私が打つて出ましたので、その際に社会大衆党というものを作つたりであります。その後極く最近になりまして、まだ数カ月にしかなりませんが、現在の政府与党として民主党というのが生まれて来ました。現在はその三つの政党になつているのであります。その性格が先ほども申上げました通り与党が保守党といつたような形、それから人民党左翼の色彩が強い、それから社会党が中間的な政党、このように現在なつております。
  30. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 現在の政府とおつしやるのはどういう、アメリカの行政府といつたようなものですか。その法律関係はよく知らないのですが、現在の政府与党というのは民主党ですな、その現在の政府というのはどういうものを指しておるのですか。
  31. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) これは今琉球政府というのがあります。この琉球政府アメリカ米国民政府とは違います。琉球政府には権限を、琉球行政を自主的にやらせるというアメリカの考え方で立法院を選挙させて立法機関を作つた。ところがこの首席、向うでは三権分立の形をとつておりますが、それで立法院は選挙でできまして、ところが行政首席というのは任命されております。この任命は追つて選挙する、公選するまで一時任命しておくということになつております。
  32. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 どこから任命しておるのですか。
  33. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) これはアメリカ民政府から任命しております。これは任命しておりますけれども、いずれはこれは選挙する、それまで任命しておくということになつておるのです。そういうわけで、琉球政府というのができております。その政府与党と野党がある。琉球政府を対象として野党、与党があるわけです。ところがアメリカ民政府を対象とするならば全部が野党ということになるわけでございますが、その与党、野党はそういう関係であります。
  34. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 さつき信託統治にはまだなつておらないというお話であつたが、殆んど、半分ほどは事実上、法律上はできていなくても。民政府というのがそれだけの、ちよつと日本政府のやるべき仕事をやつておるような恰好になるのですか、事実上は。だから信託統治にかなり近付いたような恰好になつておるわけですな、事実上。法律上はなつていなくても……。
  35. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) これは事実はもつと進んでおるのです。今までは講和条約はない場合は一つ占領行政占領政治でありましたが、ところが講和条約発効したらば、一応講和条約によつて何か形を変えて行つた恰好にならなければいけませんけれども講和条約発効前の占領行政がそのまま継続しているような状態でございます。そのままです、ちつとも変りません。
  36. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 それからちよつと例の各政党を代表する立場ということに関連してでありますが、共産党というふうなものはないわけですか。
  37. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 共産党というものはありません。人民党と言いましても何もそう共産主義的な綱領を掲げてはおりません。
  38. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 それで学校の教育に関連してでありますが、以前日本でイールス声明というのがあつて、イールスという教授がアメリカ政府から派遣されて大学を説き廻つて、いわゆる思想統一というようなことを日本でやつてつたのでありますが、沖縄においていわゆる思想統一とかそれに似よつたような実際上の行動をとつておるか、その点御説明願いたいと思います。
  39. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) 思想の、今アメリカとしましては実際問題としまして、沖縄からこちらの本土のほうに旅行するのは非常に簡単にしてあります。簡単にできる、届けを出せば一週間ですぐでぎる。ところがこちらから向うに行くのはなかなか簡単に行かない。これは共産主義の防遏の意味らしいのです。そういう程度にはやつておりますが、別段共産党があちらにおる、実際に共産党はおるわけではないので、おれは共産党だと表明している人はおりません。ただ左翼系であるというくらいの程度でありまして、併しながら向うとしては共産党がここへ入つて来るんじやないかというような心配はしておりますが、そうかといつてどういうような手を打つているとか、学校でどうするとかいつたような具体的なものはありませんで、ただ輸出入関係で少し考えておるようであります。
  40. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 もう一つ言論、集会、結社とか、特に言論と集会ですね、それに関する取締というものはどういう工合になつて、どの程度でどのくらいきついかということも一つ説明願いたいと思います。
  41. 平良辰雄

    参考人平良辰雄君) これは言論、集会、結社、それは自由であります。別にそう干渉しません。
  42. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 ああそうですが。ありがとうございました。
  43. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ほかに御質疑はございませんか。御質疑がなければこの問題についての質疑は終つたものと認めます。  大臣は三時過ぎでないとこちらのほうに参りませんということでございますから、暫らく休憩をいたします。    午後二時三十三分休憩    ―――――・―――――    午後三時四十分開会
  44. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 只今から外務委員会を開会いたします。  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定の締結について承認を求めるの件を議題に供します。御質疑のあるかたはお願いいたします。
  45. 團伊能

    ○團伊能君 本協定に相当明記されてございますが、なお一応大臣から御説明頂きたいと思います。極めて実際的な問題になりますが、この船舶の中には三条にございます通り、能率的な状態にするために米軍の費用を以て造船所で修理をいたしております船もあるように聞きますが、修理して完全な能率的な状態になつてこれは日本に引渡されることとなると私は認識しております。この船舶がこのたび日本に引渡されましたことは、即ちこの船舶の使用の目的がおのずから異なつて参りますわけです。この船舶が米国海軍に属しておりましたときの、運送船の護衛その他の施設の中で、おのずから不要なものもあり、又警備船としては当然備えなければならないものもあるように現地で視察して参りましたが、この船舶の現状を変更をする、或いは艤装を一時変更し、これを返しますときにはもとの状態にいたすとしても、日本使用している間、使用目的に副わしめるような現状変更ということは可能でございますか、一つ承わりたい、如何でございますか。
  46. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) それは御承知の通り、船舶引渡しを受けたときの状態において今度返すときには返還する、これを日本意思によりまして、現状を変更することは不可能となつております。このままの状態で使う。
  47. 團伊能

    ○團伊能君 そういたしますと、この船の実際におきまして、殊にフリゲート・パトロールは飛行機の襲撃及び潜航艇の襲撃に対処して、対抗する武装を持つておりますが、これは専らその二つに対する武装にとどまつております。多くの場合警備船といたしましては、それらは特殊な場合以外は殆んど必要がなく、殊に近海の海賊船或いはそういう公海を荒すような船舶に対して砲撃するということも、非常に弱い機関銃を主といたしておりますので、高射砲、機関銃でありますので、この船を使用するということにおきまして、警備船として使用することは相当の無駄があり、大事なポイントに欠陥がある、殊に警備船の場合には、水難救済とか、沈没船を助けるとかいうことも非常に多いと思われますので、救命施設などもこれに加えることも全然できない、これをこのままにしておかなければならないものだという大臣の御説明でございますが、こういう条件はこの協定には以前から考えられなかつたのでございますか。
  48. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 只今の御質問至極御尤もと存じます。それで私は考えますことは、この船は必ずしも警備隊の使用すべき警備用の船舶としては適当なものではないと私は考えております。本当なればこれに適するような船を造ることが望ましいことであります。何分にも国家財政上、又時間的に申しましても、かような船舶を建造するときは相当日数がかかるのであります。現在の状態といたしましては、御承知の通り日本の海岸線約八千浬から九千浬が空白状態になつている。一日も早くこれを警備しなくてはならない。幸いアメリカの好意によりまして、これらの船を貸渡してやろうということになりましたので、これを借入れて、差当り沿岸の警備、海難の救助には支障がないということになりました。そうしてこの船は受取つた通り状態において返すことになつております。これは原則であります。まあアメリカの同意を得れば内部の施設は改造もできるわけになつているのであります。併し根本原則としては、どこまでも引渡しを受けた通り現状のままで返すということになつております。
  49. 團伊能

    ○團伊能君 なおこの船舶は必ずしも船齢は古くはございませんけれども戦争中、殊にアメリカ戦争末期の急造船であるというところは方々に窺われまして、殊にこれはソ連に長く貸与されておりました船であります。その機関のようなものも決して非常に優れたものでございませんので、これが損害を受けたとか或いは衝突したとかいうような損害でなく、常時運航して行く上に相当な修理を常に加えて行くことが必要であり、殊に機関部においてはそういうことを考えますが、それは日本において適宜これを行なつても差支えないと思いますが、それらについての、又この運航する当然の費用、即ちいささか不完全な船を動かすために機関その他の特別な費用というものは、やはり予算の中にお考えになつておるのですか。
  50. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) それらの点については予算に計上したいと考えております。
  51. 團伊能

    ○團伊能君 次にこの船舶の警備に当ります保安庁として、どういう点までの航海範囲をお考えになつております。従来の保安庁の船舶は、占領下におきましては行動半径が決定しており、殊にその碇泊地から、小さい船舶でございますと五十マイル半径の所より出てはならないというような規則がございましたが、今日はそれが皆なくなつておりますので、これがやはり公海というものは自由に運航することは支障ないとお考えでございましようか。
  52. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 仰せの通りであります。必要ある場合におきましては相当の海上までは行動いたしております。
  53. 團伊能

    ○團伊能君 そういたしますと、これが今日不法拿捕とか、或いは日本の漁業でも非常に公海を害するドン漁業のようなもの、ハツパ漁業のようなものを管理するとか、或いは今日漁業の、国内の各県で漁区をきめておりますが、その間にいろいろな入会と申しますか、争議がございますが、そういうもののためにいろいろ了解を得て公海まで出て行くということを考えますときに、今日まだ甚だ一方的な宣言として、我々としては認めておりません朝鮮水道等に一方的に引かれている李承晩ラインの中に起つた日本船の保護その他のために李承晩ラインの中に入ることは差支えないとお考えでございましようか。これは併せて外務大臣に伺います。
  54. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは法律的には無論差支えないわけであります。実際問題としては殊更に韓国との問題に妙な紛争が起ることは避けるべきが至当と考えますから、実際の取扱においてはどういたしますか、これは水産庁、保安庁或いは外務省、協議をいたして実際の措置は適当に将来考慮して行こうと考えております。
  55. 團伊能

    ○團伊能君 そうすると只今は法律的な意味は持たないけれども、外務省といたしましては、或る程度一方的な宣言でありますけれども、李承晩ライン、マツカーサー・ラインに引継いで一つの公海における、漠然たるものながら一つの朝鮮の権益を持つところの水域とお考えで、実際的にはそういう工合にお取扱になつているというわけですか。
  56. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 実際的にもそういう取扱をいたしておりません。おりませんが、例えばハボマイ、シコタンは日本の当然の領土である、こう言つておりますけれども、今ソ連でそれを占拠している。法律上当然ならばこれは日本国民が行つて当然ソ連人を追払つて自分の仕事をすべきであるかも知れませんけれども、それは今いたしておらない。併しこれは何もソ連の占拠を実際上にも認めているわけじやないと同様に李承晩ラインというものも実際上にも、法律上にも認めるわけではない。ただ実際上の取扱として、今すぐどうするかという問題になつて来ると思います。
  57. 團伊能

    ○團伊能君 この水域は勿論漁獲の範囲を示したものでございますので、海上における安全とは別個の問題と存じますが、今外務大臣の御説明のように、実際上の問題として現在においては日本の漁船が立入れないような状態になつておりますこと、それが合理的に改善されることを一日も待つものでありまして、殊にこれは日本の領海にまで接近していて、対馬の北端、朝鮮海狭に面したサイドは殆んど一、ニマイルで出漁できないような不合理な水域が設定されていること、これはマツカーサー、ライン自身が誤つた線を引いて、漁区の線の一部が対馬の北を上陸して、陸に上つていたようなこともあり、後にこれが修正されましてニマイルぐらいの沖を廻す弧をえがいて許されている。又同様なことが北にもあつたと記憶いたします。こういう不合理な状態がそのまま李承晩ラインによつて引継がれ、少くとも一つの実績のようになりつつある。これは日本の漁民から考えて非常な不幸なことであり、又その中では拿捕されることが、韓国から見ればその李承晩ラインに入つた漁船は当然の権利で拿捕するというような一つの通念ができつつあることを非常に憂うるものでございます。  なお次に続きましてもう一点だけ伺つておきたいのは、去る九月の六日か七日でございましたか、国連軍は新たにこの李承晩テインに沿つて防衛水域なるものを朝鮮の周囲に設定いたしておりますが、この水域は国連軍の設定したものであり、若しも海上における不安がある場合これらの保安庁の船が防衛水域に入ることについては、すでに何らかの了解と申しますか、御処置が、お話合いがありましたものですか。この防衛水域なるものは日本に十分これが認識すべく説明は一応されておりますが、その点のいきさつを一つ説明願いたいと思います。
  58. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 防衛水域を設定する前には外務省とアメリカ大使館との間に、これは国連軍のユニタイド・コンミユ二オンという立場で話をしたのでありますが、いろいろ非公式に話合いが行われました。併し話合いは、まあ率直に言えば、話合いがついてできたというわけじやないので、向うのほうでどうしてもこれは軍事上必要だというので、日本側としては承服できない点がありましたけれども、結局設定をしたということになります。この実際の線は御説明の必要ないと思いますし、向うに新聞等に出ておりますから。李承晩ラインより大分中に入つておりますが、その目的は、例えば初めのあの捕虜の騒ぎ以来、集団的に大勢の捕虜を一カ所に置く方針をとらないで、各島々に捕虜を分散しております。そのために北鮮側からの連絡があつたり、或いは武器の密輸があつたり、或いは各種の情報が交換されたり、或いは捕虜を逃亡させるような手段が行われたり、いろいろのことがあるようであります。そのためばかりじやありますまいが、その他にも北鮮との間の武器の取引をとめるというようなこともありましようが、軍事上の必要で要するに設定されたわけであります。我々のほうとしては国連軍が軍事上に必要とするものをどうこうというわけではありませんけれども、あの海域では非常にたくさんの漁夫が働いておつて、そうして非常に多くの漁獲があつて来たのでありますから、漁業の妨げをできるだけしないようにしてもらいたいということが我々のほうの強い要請であります。先方では結局二つの点をこちらに申しているので、それは一つは、この防衛水域というものはできるだけ一時的のものにする。必要がなくなつたら早く解消する。それからもう一つは、関係国の産業等に不測の困難を来たさないようにできるだけ考慮する、こういうことであります。我々としても未だに話合いを続けておるのでありますが、早くこれをなくなすか、或いは仮にあつたとしても、日本の漁業が妨げられないように考えてもらう、こういう趣旨を話しておるのであります。
  59. 團伊能

    ○團伊能君 この防衛水域につきましてなお一つ、私もはつきり存じませんけれども、新聞等において発表されたところによりますと、鬱陵島の南にある日本領の竹島が、従来マツカーサー・ラインでは日本の中にありましたけれども、このたび線が少し南に下つて、竹島が防衛水域の中に入つたと認めるのですが、そうでございますか。
  60. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はそれは違うと思いますが、更によく地図によつて確めてから御返事いたします。
  61. 團伊能

    ○團伊能君 若しもこのたびの警備船が、従来の保安庁の船と違つて、相当の長期運航が可能であり、漁場における保安その他を管理いたすということになれば、我が国領土である竹島も勿論この中に入り、その水域までは及んで進むかと思いますが、そうするとこれが当然公海を運航していることになりますが、この竹島の附近は今日大した島がございませんけれども、漁民から言うと、避難港になり、風よけ、船だまりになり、又磯付漁業として多少の漁獲もあり、日露戦争のときには、望楼を造つて海軍がここにいたこともあり、今日甚だ国土狭小なる日本となりましたときには、一つの漁業的基地として考えざるを得ないのでありますが、その辺の運航は防衛水域にいずれにしても非常に接すると思いますが、この点についてなお調べて頂きたい。若しも竹島が私の認識が誤まりかも知れませんが、防衛水域の中にありとすれば、日本の領土の一部は、すでに国連軍の防衛水域内に日本の領土があるわけであります。これらに対する日本の主権の行使という点からも考えさせられる問題だろうと思いますが、これは私の地図も甚だあれですが、新聞にはそういう工合に記載されてございましたから、御質問いたしたわけでありますが、なお次回において、お取調の上御返事を願いたいと思います。私の質問はこれで終ります。
  62. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 ちよつと外務大臣にお伺いいたしますが、フリゲート艦は初め十隻となつてつたが、条約締結間際になつて十八隻に増加されて、それを日本の希望によつてというふうに言われておりますけれどもアメリカ議会における問答から見ますと、海軍の当局は、日本はまだ希望していないけれども貸すのだという話合いの後に、いずれ近々希望するだろうから貸すことにするのだというような答弁がありますが、事実はどうなのでありますか。向うで十隻よりも十八隻借りてくれというたのでありますか。日本から更に八隻の追加を申出たのでありますか。その点の経緯をお話し願いたい。
  63. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはいろいろ前に下話をいたしておりまして、十隻ならば何とかできそうであるという見込がつきましたので、十隻の借入を申込んだわけであります。ところがフリゲートの船にしましても、いろいろの国から要求がありまして、早く借りなければ、よその国に借りられてしまうという状況なのであります。そこでアメリカのほうでいろいろ日本の沿岸警備の状況を見まして、十隻では結局足りない、従つてこの際思い切つて殖やしておいたほうがいい、若し十隻としておけば、残つた船もほかの各国に行つてしまうというので、向うで気をきかしてと言いますか、そういう意味で十八隻にしてくれたのであります。そこで大統領の権限では、そこまで行くということになれば、それだけの船をとにかくよそに貸さずにリザーブしておく、日本で借りる借りないは将来の問題でありますが、とにかく向うでは十八隻をリザーブしておく、こういうことになるわけであります。
  64. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 保安庁長官ちよつとお尋ねしますが、この船を借りる受入態勢ができるものか、海軍式でできるのか、或いは艦長というようなものを置き、その下にいろいろの階級の職員がいるだろうと思いますが、それは海軍の方式を以てやられるか。と申しますのは、これの借入の話が出たときから、海軍の軍人で相当の研究ができているようにも聞いておりますが、どういう方法で受入れられるのか、受入れられたあと、その態勢というものは今後警備艦に長くそれが用いられる態勢をお作りになつているかどうか、その点を伺いたい。
  65. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) これは我我といたしましては、新たに警備隊が発足するのであります。一つの新たな構想の下に一つ創設したいという気持から、いわゆる昔の海軍のようなものは勿論我々は考えていない。純軍隊式ではいかん。さればと言つて、これまでのようないわゆる警備船のようなものでなく、そこに我々として非常に考えさせられざるを得ない点があります。着々それらの点について今考えを進め、実地に訓練しておる状態であります。もとよりこの警備隊員には旧海軍に属しておつた人もあります。併し全く海軍に関係のない人もあります。そこでこの新たな警備隊員に対して、どういう精神的支柱を持つて行くかということでありまするが、それらの点については、我々は真に日本の国内の治安を維持する、殊に海上の警備というものはとにかく日本国においては必要欠くべからざるものであるという自覚と責任を十分持たせて、これを立派に運用させたいと、今折角考慮中であります。階級の点については必ずしも旧海軍のような制度には則つておりません。これらの点につきましては議員各位の御意見もありましたら率直に私は承わりたいと考えております。
  66. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 只今の御説明でよくわかりましたが、それならその乗員及び警備隊の階級的組織を承わりたいと思います。
  67. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 保安庁法第三十条の三項に規定してあります。「警備官の階級は、警備監、警備監補、一等警備正、二等警備正、三等警備正、一等警備士、二等警備士、三等警備士、一等警備士補、二等警備士補、三等警備士補、警査長、一等警査、二等警査及び三等警査」、こういう工合にするということを法律が規定しております。
  68. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 それから次に承わりたいのは、今アメリカが引渡さんとしている、修理をしておる、先ほど團委員からお尋ねになつたのですが、アメリカは大分経費をかけておるはずですが、その日本に貸すために修理をし、今しつつある経費の大よその見積りは幾らくらいでしようか、修理費の。
  69. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) アメリカで使つた費用ですか。
  70. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 日本へ借すためにこつちへ廻して来て修理しておる……。
  71. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 日本に引渡すためにアメリカで使いました修理費は合計二千百三十万ドルです。
  72. 曾禰益

    曾祢益君 保安庁長官に伺いたいのですが、只今伊達委員の御質問にもちよつと触れられた点ですが、結局この海上警備隊というものの任務ですね、これはまあ保安庁のほうにもあるようですが、特に政府説明資料等にある、例えば沿岸警備という、これは提案理由の説明の中にも日本の沿岸警備に当てるため、というように書いてありますが、一体沿岸警備というのはどういうものであるか、只今長官の御答弁の中には海上警備という言葉を使つておられますが、別に挙足をとるわけじやないけれども、沿岸警備と海上警備は随分違うと思うのです。海上警備という非常に広いものになる、一体そういう点について政府の基本的な御方針について、これが一体どういうものであるか、それが結局今度のアメリカから借りる特殊の船ですね、これの軍事的性能武装その他と非常に大きな関連を持つて来ると思うのです。でありまするから先ず沿岸警備という意味、或いは海上警備という意味乃至は海上警備隊のやらなければならない仕事ですね、例えば海上の人命の安全とか、そういうことはわかつている、これは当然のことでしようが、それ以外にどういつたような仕事をするのか、これがはつきりしないから、いわゆるこれが新らしい海軍であるとか、或いはそうでないとかいう議論のこれは根本になるわけです。政府の御説明はまあこれから伺うわけですけれども、今までの衆議院における質疑応答等を通じて見て、決して明確になつていない。ただ単にこれは戦力ではないのだ、これは軍艦じやない、そんな形式論ばかりやつて、一体政府の一等の、当面の責任者であられる木村さん自身が一体どういうものにするのか、どういう事業が具体的に必要なのか、例えば魚雷が浮游しておるやつを引揚げる、これは誰が見ても戦争行為でもないと思うんですね。どうもそこから先の沿岸警備という言葉の内容が、相当外国で言う例えばアメリカあたりで言うコースト・ガードというと、そこにはつきりといわゆる一部の海軍の任務の分担だということになる。何とおつしやろうとも国際的にはつきりしておる。そこまではつきりやろうというなら、又そこではつきりそういう方針を立てるべきで、そこをはつきりしないでおいて、特定の武装を持つた、特定の性能を持つたものを借りて来ようというから、そこに当然に疑義が起るのは当り前なんです。これを明確に御答弁願うことが、これは国民の前に非常に必要だと思いますので、まあ前置きは長くなりましたが、基本方針を伺います。
  73. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。誠に御尤もと思います。そこで、この保安庁の警備隊の任務は、要するに陸上における警察と保安隊のような関係であります。第一に事態が起れば保安庁がこれをやります。そこで海上保安庁で処置のできないような非常事態の起るような場合についてこれは行動するのであります。主としていわゆる集団的な密輸入の取締だとか、或いは海賊行為だとか、或いは漁民の保護、その他海難の救助に当らせることを主たる任務とするのであります。
  74. 曾禰益

    曾祢益君 まあ陸上における警察と保安隊の関係と似ておると言われたんですが、これも実はわからない点なんですが、余り論議の対象を拡げないで、一般的な、通常の海上保安庁の仕事で手に余るような、例えば海賊行為ですか、それから集団的な密輸入、或いは漁民の保護というようなことを言われましたが、そういうために一体どういう程度の設備を持つた船とか、或いは訓練が必要だとお考えになつているか。どうも今のは例示的であつて、いわゆる非常事態というものがどの程度の、あなたの言葉を以てすれば、恐らく地上における内乱、大規模の内乱、騒擾というようなものに相当するようなものの一例として三つばかり挙げられたと思うのですが、海上でそういうことが想像できますか。
  75. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) もとより現段階においてはどこそこにどういう事態があつたということは申せませんが、今後の国際情勢その他国内情勢を判断する上におきまして、相当の私は密輸船がこれはあるべきものと予想してよかろうと思うわけでありますが、先刻も予算委員会で私は言つたのでありますが、日本で外国の教唆、扇動による大騒擾事件、大叛乱事件というような場合には、やはり相当な武器が外国から輸入されるべきものと我々は多少考えなければいかんと考えております。そのほかにいろいろな集団的の内地においての内乱、陸上における暴動行為というようなものもないとは限りません。又漁民の保護においても、御承知の通り相当数の拿捕問題も起つている際でありますから、我々といたしましては、国内の平和と治安を守るために相当な覚悟と又準備を必要とすると考えるのであります。
  76. 曾禰益

    曾祢益君 これはいろいろな場合があろうということは一応わかりますが、一体そういつたような外からすつかり指導して援助をして、そうして何か日本の内乱のために武器なり人を送り出す、而も大規模にやるというような場合には、それは恐らく単なる密輸というようなものの概念を完全に突破したもつと大きなものであつて、これは一種の国際的な侵略行為、武力侵略、それを戦争と名付けるかどうかはこれはいろいろ定義の問題がありましようが、そういうようなものにも備える、こういう御意向であるか、そこを明確にして頂かないと、ただ単なる今まで日本に対する人なり貨物の密輸というようなものとは格段の相違のある大規模の一種の武装侵略だ、これは正式の軍隊の侵略でないにしても、そういうようなものにも対抗するということがその任務であるかどうか、これをはつきりして頂けば、おのずと然らばどういう措置が必要かということになつて来る。そこを明確にしないで、そうして、やれ多少大規模な密輸だとか、海賊行為、或いは漁船の保護、漁船の保護の議論も実はもう少し伺いたいのですがあとで伺いますが、若し日本の漁船が先ほど来の團君のお話のように李承晩ライン或いはその他の北洋漁業区域等において拿捕されることを保護しようとするのなら、これは武力衝突を覚悟の任務だということになる。そういう意味の漁船の保護のために相当な武装を持つた警備隊をお作りになるというお考えであるか、これも明らかにして頂かなければならない。即ち海上と陸上とは私が申上げるまでもなくその国際性において非常に違います。従つてさつきの沿岸ということが厳密に言えば領水内だけでやるのか、海上警備なんと、ちよつと恐ろしい言葉が出て来たのですが、どうしてもそこに国際的な問題を含んでいるから、相手方が私的団体であろうが、公的団体なら勿論これは非常な危険な国際問題ですが、私的団体であつてもいわゆる領水を離れて公海なんかで活動する場合には明白なる相当大きな国際問題になると思いますが、そういつたような規模のことをお考えになつているのか。そこまではやるけれども、それは飽くまで軍備じやないのだ、こういう御説明なのか、これをもう少しはつきりして頂きたい。
  77. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。只今お話のような大々的の日本に対して軍隊を送る程度に至らざるとも、軍需品を密輸入するというようなことに対して保安庁の警備隊がこんな微力ではいかんと私は考えております。そういう場合にはもつと高度な装備を要する船が必要であるのではないか、我々はただそれまでの程度に至らんまでも相当の密輸入のことを考えなければならん、従いましてさような観点から、かような船でもアメリカから借受けて警備の任務につかせることが現段階において妥当と考えている次第であります。直接侵略に対抗するものとしてはかようなものは私は役に立たんものであると考えている次第であります。そうして漁民の保護問題につきましては、もとより不法な行動に対しては我々は看過することはできませんが、さればと言つて、これを国際紛争の原因にするということは毛頭考えていないのであります。できるだけさようなことは避けるべきであります。具体的に申しましてもこれは外国の不法な行為に対しては、こちらから相当にこれを護つて行けば警告にもなりましようし、その状態のことは或いは写真に撮り惑いは通報をして、いろいろな手段を以て漁民の避難に当らせるというようなことも考えられるのであります。我々といたしましてはこれを以て国際紛争の種を播くようなことは十分に警戒しなければならん、こう考える次第であります。
  78. 曾禰益

    曾祢益君 みだりに好んで国際紛争の種を刺戟する意向でないということは一応了承しますが、何しろ相手も武装している。こつちもこの程度の武装をすれば三インチ砲も持つているし、それから対空のあれも持つている、潜水艦に対する攻撃武器を持つており、向うの武装の程度如何は知りませんが、これは非常な危険な状態が起る可能性を否定はできないと思うのです。如何に政府の考えがどうであつても、こういうものが危険地域にあつて本当に保護しようと思えばこれは武装衝突が起る可能性は私は否定できないと思うのですが、それは余り大きな問題じやなくて、どうも私の質問に対するお答えとしては相当大規模な軍需品の密輸等もあろうし、そういう場合には今までの海上警備隊が持つていたような船では到底対処できない、従つて今度のフリゲート艦だとか、或いは上陸支援艇みたいな程度の相当な高度の武装が必要だ、こういうお考えのように思うのです。そうするとその沿岸警備ということは向うが例えば軍艦でないというような場合には沿岸に対してやつて来るような武装船に対抗する軍艦の程度にならないものならば、それに対抗する相当な武力的な防衛手段を必要とする、こういうお考えですか。
  79. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 必ずしも武力的な防衛手段とは考えておりません。これを使うということは、これはよくよくの場合であります。これらが警備船として行動いたしますれば、おのずから相手方においても十分な警戒を私はするだろうと思います。
  80. 曾禰益

    曾祢益君 それはすべての武装というものが何も使うのが目的でないことは、これは剣道の達人のあなたの心境から言えば当然のことであろうけれども、併しその使わないということが、使わないて済めばよいという一種のこれはまあ安全保障的な意味で武力というものはあるので、使うのが目的ではないという哲学的な議論を別にすれば、それだけの武力を持つており、そうして不幸にしてそういう事態が起れば、これはやはり武力を持つている範囲内においてでも戦うということが当然の任務になつて来るのではないか。そのときになると、いやそれは平和的な手段、或いは何と言いましようか、未然に防止することが目的なんだというのでは、それは最後の瞬間において議論を逃げていることなんで、いざそういう場面が起ればやはりこれは武力の衝突を覚悟の一つの国家の施設なんだということをはつきり肯定するのが本当じやないですか、そこをそらされるのはちよつとおかしいと思います。
  81. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私は何もそらせるわけじやありません。併し一体こういういわゆる武器は持つてつても、これは容易に使うべきものではないのであります。これは最後の段階であります。これは相手も恐らくこういうものに対しては軽々に対抗することはなかろうと私は考えております。これによつて漁民なんかがどのくらい後楯になつて我々を保護してくれるのだという大きな一つの安心感があるのではなかろうか、すべて武はこれは用いざるをよしとするのでありまして、我々はこのフリゲート艦を持つたからといつて、直ちに武力を使うということは考えていないのであります。どこまでも漁民の後楯となつて我々はお前たちを保護してやるのだというふうな、その安心感が大きな私は役をするものであろうと、こう考えております。
  82. 曾禰益

    曾祢益君 それはすべての武装というものが、それを持つことが相手を警戒させ、或いは我が方を保護する、安心感を与えるということと、持つことによつて相手を刺戟し、我がほうにも心配を与えるという、両方の面があると思うのですが、これは少し哲学論争のようになるから、その点は暫らくおいて、これは要するに近代的な仮に軍艦としての機能は大したものでないかも知れないけれども、或る種の相当なやはり武力であることは、これは肯定しなければならないと思うのです。そうしてみると、仮にそういうことが日本に必要だとしても、それは一体憲法から見て、そういうものが憲法の禁ずる戦力にならないということは、これははつきり証明できますか。
  83. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私はもうその戦力問題についてはたびたび論議しておるのであります。
  84. 曾禰益

    曾祢益君 私はまだ聞いていない。
  85. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) いわゆる憲法第九条第二項の戦力というものは、かようなものではないと考えております。いわゆる陸海空軍その他の戦力、大きな組織された一つの総合的武力であります。この船が戦力などとは我々は毛頭考えておりません。又憲法第九条第二項の戦力に該当しないということは、恐らくいずれの面から見ても私は至当な議論であろうと、こう考えております。
  86. 曾禰益

    曾祢益君 私は国内の治安上も、軍隊のない日本がピストルだけ持つた警察隊だけで済ませて、一切のその他のものは全部丸裸になれというような議論をしておるものではございません。ですけれども、一方において政府が自分だけの解釈で、陸海空軍その他一切のウオー・ポテンシヤルと明文に書いてあるのに、いやこれは自分の考えておるところの近代兵力には該当しないのだから憲法第九条には反しないのだという一方的な解釈で行こうということでは、これは国民を納得させません。従つて現実日本の現段階において、例えば沿岸警備はこのくらいのいわゆる危険の可能性がある、従つてここまでのことに対応するいわゆる警察的な、飽くまで警察的な武力というものは必要なんだということを、これを本当にまじめに国民に紹介することをしないで、いやおれは第九条の戦力というものはもう極めて近代的な総合的な大戦力と認めるのだから、自分の考えに合致しない程度の武力は、或いは武器というものは、戦力ではないのだと、この説明だけで行こうというのは、これは幾ら保安庁長官何遍御説明なつたか知りませんけれども、これはあなただけが納得しておるので、国民は納得しません。そういう高圧的なことでなくて、私が申上げておるのは、現状に鑑みて、沿岸警備にどのくらいの危険があり、従つてそれに対応するのにはどのくらいのものが常識的に考えた憲法の範囲を逸脱しないものとして必要だということを、それを提案者である政府がはつきりと証明されることが私は必要なのではないかと、こういう意味で申上げておるのです。そこでまあその議論は、私はどうも今の御説明は全然納得できないのですが、今度は少し観点を変えまして、少し詳細な議論になりますが、ところでこのフリゲート艦なり上陸支援艇というものが、然らば只今保安庁長官の言われたような任務に適応し、或いはそれを逸脱しない程度の武装を持つておるのか、これらの武装の性能ということからこれを少し検討してみたいと思います。  先ずアメリカ議会の記録を読みますると、その前にアメリカの意図は相当はつきりと、日本がいわゆる安全保障条約従つて漸次自衛の責任を持つと、それに対してデイザイアブルな好ましい刺戟を与えるということがこの武装船を日本に貸与するところの大きな動機になつておるということは、これははつきり書いてあるのですね。従つて、それは勿論日本の自衛に関する責任といえばピンからキリまでございましよう。併しこれは追及して行けば、何という言葉を使おうと、いわゆる日本が自衛権を持つということまで見越して、そうしてそれの第一歩であり、それに刺戟を与えるのだということがこの武装船を日本に貸与する目的だということがはつきり書いてある。それに対する政府の御見解はどうなんですか。
  87. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私も曾称君と同意見でありまして、日本は自衛力を否定されておるわけでもありません。どこまでも日本は独立国として自衛力は持つておると考えております。ただその自衛力は戦力に至つてはいけない。戦力に至らざる自衛力は日本は独立国家として当然持つてよかろうと私は信じております。この点においては恐らく御同感であろうと思います。そこでこの借りた船をいわゆる自衛力の一部として借りたのかどうかということになるのでありますが、申すまでもなく、自衛ということについては私は広義な武力の概念であると考えております。日本の経済力を発展させることも自衛力の発展でありましよう。警察力を増加することも自衛力の一つの発展でありましようし、広義に解すればすべて日本の国力を発展させることはいわゆる自衛力の増加である。併し狭義においてはいわゆる何と申しましようか、防衛力、これに結びつくのであります。外国の不当なる侵入に対して日本を防ぐ、これがいわゆる自衛力、これも狭義に考えれば尤もなことであります。然らばこのフリゲート艦を借りることが日本の防備態勢について必要止むを得ざる措置として借りたのかどうか、こういうことから考えて見ますると、アメリカにおいては成るほど或いはそういう観念は持つてつたかもわかりません。持つてつたでしよう。併し私が保安庁長官として借りるのは決してさような目的ではないのであります。どこまでも私は日本の警備力、内地の治安確保のために必要止むを得ざるものとして借受けたのであります。申すまでもなく私は常に言つておるのでありますが、日本独自の考え方としては日本の国情に適合するような適格な船を準備したい、併し日本の今の財政状態その他の観点から考えてみてもそれは容易ならんことである、幸いアメリカからこの船を貸してやろうということでありまするから、臨時の措置といたしまして有難くこれを借受けるということになつたのであります。私保安庁長官として、これの使用目的はどこまでも今申しました通り、或いは漁船の保護、或いは海難救助、或いは密輸船の取締、いわゆる海上保安庁の任務の第二義的のものとしてこれを使用したいということを念願しておるのであります。
  88. 曾禰益

    曾祢益君 少し話が初めのほうはそれていたと思うのですが、私は勿論自衛権を否定しておりませんし、自衛力というものもいろいろ基本的に考えなければならないと思つております。併し今の政府のやつておられるいわゆる自衛力は持つべきだという議論で勝手に憲法の禁止した戦力というものを、いやこれは戦力ではないないと言つて自衛の名において勝手に憲法のなし崩しみたいな自衛力漸増計画には我々は反対なんです。そこで今私の質問に対する長官のお答えはこういうふうに了承したのですが、成るほど少くとも日本政府言つておるような戦力と自衛力が別なもので、自衛力はどんどんやつてもいいのだ、そういうふうな非常に観念的なものの見方をしているが、アメリカはそんなことはお構いなしであるから、これはつまりはつきり言えば、再軍備に対する好ましい一つの刺戟としてよこしたかも知れん、そういう意図もあろう、併しいずれにしても受取る側としてはそういうつもりじやないので、飽くまでもいわゆる保安庁の第二の任務という意味の沿岸警備というような任務に限つてこれを使用するのだ、従つてアメリカの意図の如何にかかわらず、これは再軍備ではないのだ、それへの第一歩ではないのだ、こういう趣旨の御答弁であつたと思いますが、大体それで正確ですか。
  89. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) さようであります。
  90. 曾禰益

    曾祢益君 そこで両方の意思が合致してないことを確認の上での議論なんですが、併しそれにしても一体この武装船の性能とか目的というものはこれはやはりつきまとうので、例えばアメリカのほうの説明によると、このフリゲート艦というのはただ単なるコースト・パトロールだけではなくして、いわゆるエスコート、護送用にも向いておるということも言つている。それからもう一つは上陸支援艇のほうは、これはいわゆる近接した火力の援助、これをクローズ・イン・フアイア・サポートに最も適している。決して遠くまで行つてこつちが上陸するというようなときではないかも知れんが、少くとも近接した距離の上陸作戦のときにそばにおつて、これを火力として援助するのに適している。そういつたようなものは、どうも今のフリゲートの性能の全部ではないでしよう。それは私も認めているのですが、どうも相当攻撃的な性能を持つておることは、これは否定できない。つまりフリゲート艦の特色は一種の護送船である。沿岸警備ではない。これはあなたの言われるところの海上警備の、日本の船なんかを、船団なんかを護送するときにも使える、これはもうどう考えても非常に海軍的な能力、或いは機能ではないかと思うので、それから一方の何とかL・Sとかいう上陸支援艇と訳しておるやつは、確かにこれは遠くまで持つてつて上陸作戦には向かないらしい、近距離から乗つてつてとつ走る、近接した地域から火力で援助するというのが、むしろ特性だ。そうした危険な攻撃的性質の私は護送船だと思う。これは正直にとらなければならん。それにもかかわらず保安庁長官は非常に平和的な意図であられる。こういう武装を持つけれども、これは勿論使わないのが目的であるし、仮に使うにしても、武器の密輸とか、或いは漁船の保護とかに使うのだ。そうするとあなたの考えておられる目的に余り即応しない、より攻撃的なものをなぜわざわざ借りて来るのだ。これは御指摘のように恐らく保安庁長官もお考えの、今もおつしやつたし、ほかの場合にも言われたそうですが、財政その他が許すならばもつとあなたのお考えにぴつたり合うような性能のものを作りたいのだ、併しそれは実際できない、幸いアメリカから貸してもいいというような意見もある、それで多少性能は違うけれども借りるのだ、併しこれは決して紐付ではないのだ、何もこれは再軍備への第一歩ではない、又アメリカの海軍の下請的の軍事的な仕事をするのではない、飽くまでも日本から見れば必要な沿岸警備をやる、こういうお考えなんですが、そういうことは、私は考えて、もらつて来るものとの内容的な食い違いから言つて非常に無理なんじやないか。即ちどつちかに無理があるので、あなたはやはり逐次海軍のこれを卵にしようというお考えがあるのではないとおつしやつておるけれども、あると見るのが……アメリカの海軍の機能の日本の下請的なものを両方の都合によつてやるというふうに世人は見る嫌いがあると思うのですが、それをもつと明白にそうでないということを御説明できますか。
  91. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 我々は決してアメリカの紐付ではないのであります。アメリカからさようなことを私は言われたことも何もありません。独自の見解の下に私はこの船を使うことの権限を任されておるのであります。そうしてこういう船が今性能の点を仰せになりましたけれども、一部にかような性能……大砲などを積んでおるといたしましても、実は私はこういうものは本当に役に立たんと申しちや甚だアメリカに相済まんから言いませんが、戦争なんかにはこんなものは役に立たんと真に考えております。而して私は常に言うのでありまするが、一体再軍備とか、戦争とかをする準備であれば、こんなものでは役に立たんのであります。申すまでもなくもつと総合した立派な編成をし得る総合的な艦種が必要であります。フリゲート艦十八隻、LSSL五十隻、こんなことで以て日本の海軍の創設を考えておるなんというのはとんでもないことと私は考えております。やるならもつと気のきいたことをやらなければ駄目であります。どこまでも我々はこれは保安庁本来の目的のために使用することを考えておるのであります。
  92. 曾禰益

    曾祢益君 非常にまあやるならば大規模に近代的のものをおやりになるというお考えのようで、非常にその大規模なお考えは伺つたわけですが、併しこれはやはりなし崩しでやる方法もあるのです。いわんや実際問題としてアメリカ海軍あつての……、それとの何らかの意味で共同的な動作をやるということから始まるというようなことが、現段階における再軍備論としては非常に可能性が多いと、これは普通の常識のある人は見ておるから、そういう何か紐付でやるのではないかと疑えるわけです。それで私の質問に対しては武装の点から行つて、ただこういうものは近代武器じやないのだから、戦力でないのだからかまわん、やるのならもつと大掛りにやるのだと言われたけれども、そういう基本的な考えを今伺つておるのではなくて、而もあなたがたはそういうことはやらないのだと、やるなら大規模にやるのだけれども、今はおれはやらないと言つておるのですが、これはもう議論しても始まらないと思うけれども……、つまりやはり武装と、あなたがたが考えておられる任務との間の食い違いというものは確かにあると思うのです。先ほど言つたような護送なんかには全然使うつもりはないと、或いは近接せる火器の援助というようなものに使うのではないのだ、併しそういう機能を持つておる軍艦ですか、武装船をどうも密輸の取締に使うというのは、ちよつとどうも性能から考えて納得に困難なんですが、それならそれでまだほかにももつと適したものがあるのではないかというふうに考えますが、もう一遍武装の点から見て果してあなたがたの考えておられる使用目的に適当した武装であるとお考えであるかどうか。
  93. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私はこれは保安庁の保安警備隊の使用目的に必ずしも適当なものとは考えておりません。これはもう私は考えておりません。もつと気のきいた本当に警備隊に適切なる船を造るべきであると考えております。ただ止むを得ず、これはしばしば申しまするように、財政的見地から、或いは時間的見地からこれは日本で造ることを許しません。従いまして差当りアメリカの好意によりましてこれを借りたのでありまして、この武装の点でありまするが、これはもとより今の曾祢君の仰せになりましたように、アメリカでは上陸支援艇なり、或いは哨戒艇として使つてつたことは事実であります。併しすでに戦時中に造られて、今は殆んど旧式で近代の戦争には私は役に立たんものと考えております。役に立たんものでも軍艦は軍艦である、これを再軍備の一部にする意思があるのじやないかと、これは一つの御議論でありまするけれども、我々といたしましてはどこまでもこれは警備隊本来の目的に使用することを確信して疑わないのであります。
  94. 曾禰益

    曾祢益君 もう一点伺いたいのですが、アメリカのほうではやはり議会のほうの記録を見れば、率直に言つてこれは日本人のクルーを使つて、乗組員を使つて日本の費用でやらしたほうが安上りということが、これはもうどこの国でもそうでしようけれども向う議会の人としてはそういう費用の点から率直に政府もそういう説明をしておる、参考人として……。議会もそのつもりで、いわば今までアメリカの海軍が安保条約によつて日本及び日本の周辺の安全保障に、それは一種のまああなたに言わせれば警察行動もあるだろうけれども、多く原始的でその一部の仕事をこの船を日本に貸すことによつて安上りにしようということは、アメリカが意図しておる或る種の、それは沿岸警備と言つてもいいかも知れない、これを日本側に貸したから日本側がやつてくれるという期待の上にこれを貸しておると、少くともアメリカ当局はコングレス或いはセネートにおいてそういう説明をしておるわけです。これは向うの法律をパスするときの国会との政治関係だからこつちは知らないのだと言えばそれまでかも知れませんけれども、私は何も日本のやることはすべてアメリカの傭兵的だというプロパカンダだと言つておるのではない。何らか日本の沿岸警備ということは、アメリカ海軍がやるべきことを日本が肩替りするのだという向うは期待を持つておるし、それを政府としては一体どうお考えになつておるのか。具体的に警邏隊というようなものの行動することは、安保、行政協定等によつてアメリカとの話合いによつて、何か総合されて活動するということであるのかないのかということを説明して頂きたい。
  95. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) アメリカ議会でどういうことが問題になつたかは私は十分承知いたしません。少くとも日本でこれを借受けまして、そうして保安庁の警備隊に所属した以上は、断じてアメリカのかような上陸の支援というようなことはいたしません。どうぞ御信用下さい。
  96. 曾禰益

    曾祢益君 ちよつと最後……、アメリカの何ですか、上陸の支援……。
  97. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 上陸の支援、援助をするようなことですね、そういうようなことはいたしません。
  98. 曾禰益

    曾祢益君 只今長官が言われたのは、そのアメリカの軍隊がどこかで作戦行動をする、そのときにこれを使うのだ、そういうところに使わせるものじやない、こういう御発言ですか。
  99. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) そうです。
  100. 曾禰益

    曾祢益君 これは了承いたしました。当然そうでなければならん。私はそれを伺つておるのではなくて、日本の、あなたがお考えになつて日本の沿岸の警備を日本としてやらなければならん運命にある。それをやるに当つて、このアメリカ議会の応酬等から見て、アメリカと一体に、総合一環として引受けてやるというようなものであるかどうか。外に使うということは拒否する、これは当然のことで問題にならないことだと思います。その点はいい。
  101. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) その船は日本側独自な立場において、独自の考えの下に行動するのであります。
  102. 曾禰益

    曾祢益君 この問題は私も実はちよつと外国に行つてつたり何かして、よく初めから心しておらなかつたのですが、新聞等に伝えられたところ、これは最も私は大きく見て、大体においてそういう事実があればこそ、報道陣が特に報道しておるのですが、どうも政府の始めからの方針が、非常にぐらぐらしておる。悪く言えば、この協定というものを議会にかけると非常にいわゆる戦力である、ないという議論が起るので、これを何とか国会にかけまい、闇から闇に、保安庁長官の部下の名前で簡単に受取つておこうじやないかという企てがあつたやに伝えられている。結論として、そういうことは勿論政府としてはこれは一部の言うところであて、政府の最高当局がそういう非民主的なお考えはなかつた。結論として国会に堂々と出すことになつたが、と同時に財政的に見てやはり予算以外で国庫の負担になるのをこれを国会に出さないというようなことはますますできないという結果、まあ外務省としては渋々やはり協定を作つて国会に臨んだのだということを聞いているのですが、保安庁長官は初めからこれは協定を作つて堂々と国会に出すことが本当だとお考えになつておりましたか、伺いたい。
  103. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私はもとより国会の審議を経るものと考えておりました。
  104. 曾禰益

    曾祢益君 外務大臣はこの協定についてどういうふうにお考えになつておりますか。
  105. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはアメリカ側ではすでに国会の法律で大統領に権限を任されているのですから、国会に出す必要がないわけです。そこで保安庁の係のほうから言えば、早く船を借受けて使いたいというので、アメリカはもう必要はないのだからこちらも財政負担がなければいいじやないかという議論はあつた、国会に出さなくてもいいということは。併し木村長官その他のお考えで結局これは日本としては国会に出すべきだ、こういうことになつて協定を作つたのです。私もそのほうが筋道が通つていると考えます。
  106. 曾禰益

    曾祢益君 最後に、最近の事件ですが、事件と言つちやおかしいのですが、発展ですが、政府は初めの案では要するに船舶安全法、船舶職員法、電波法、これを適用除外しているところの保安庁法の一般条項をそのままで行こうというのが原案であつた。ところが衆議院における外務委員会空気に鑑みて、初めの説明を変えて、そうして保安庁法の一部改正をするということになつた。そうしてこれも随分変な話なんですが、そういつたような一部改正をすればこれは船舶と認めてもいいというような議論が起つたらしく、何だか非常に変なふうになつて衆議院のほうも通過したようですが、この保安庁法の一部改正の問題についてこれは御説明つたのですか、委員長これございましたか、委員会において。
  107. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) まだなかつた。内閣委員会にかかつております。
  108. 曾禰益

    曾祢益君 それでは関連事項として政府当局の御説明を伺つて私の質問を一応終りたいと思います。
  109. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 便宜法制局長官からこれを説明いたします。
  110. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 簡単に御説明申上げます。この問題の起りは、今御指摘になりましたように、保安庁法の中で船舶安全法と船舶職員法その他の関係もありますけれども、主としてそれらの法律を警備隊の船には適用したいと書いてある、そこに問題があるのであります。この起りました質問の趣旨は、これは二つの法律は国際条約がその裏にあるのじやないか、法律を排除しておる、排除するということは結局その裏にある国際条約までも排除してしまつたことになるんじやないか、そうすると憲法で条約を尊重せよと書いてある、その憲法の条文に違反する、だから保安庁法はその点から言つて憲法違反だ、それからそれじや国際条約を排除しないという議論も立つ、そうすると例えば海上の人命安全に関する条約を見ると軍艦は除外される、併しそれ以外のものは一応適用があるように見える、そうするとこの警備隊の船は軍艦だと言わないと適用を免れないんじやないかというような、非常に巧妙なと申しますか、御議論が出まして、政府としてそれに対してお答えしたわけなんですが、政府の考え方は、曾祢さんは勿論御承知のことなんですけれども、国内法を仮に排除しても条約まで排除することにならないことはこれはわかり切つておる。なぜ国内法を排除したかというと、この船舶安全法などは今の海上人命安全条約などの条約で要求しているところよりもずつと上廻つた、それにプラスした日本独自の制限をたくさん加えておるわけなんです。そういう意味で国の船であり、且つは特殊の任務に対処するものであるからしてそれを適用する必要はないというわけで保安庁法でそれを適用除外しただけであつて、決して条約までも除外する趣旨でないことはこれはもう誰が見ても明瞭でございましよう。当然に法律は排除されても条約は被つて来ますということなんです。それでその条約で今の軍艦云々という話が当時最初に出ましたけれども、これは恐らく一応の誤解だろうと思いまして、これは説明すれば簡単にわかることなんで、海上安全条約というものは主として国際航海に従事する船に適用あると書いてある。今度の警備隊の船は勿論先ほど話が出ましたように沿岸警備であつて、国際航海に従事しませんから、そのほうからむしろ外れてしまう。ところが海上人命安全条約の中にも国際航海に従事しないものに適用のある条文もあるのです。航海の安全についての規定がある。そういうものは勿論これは適用になります。条約は勿論当然に適用になりますということであつたわけです。それが要点なんです。それからまあ附加えて申しますが、安全条約の中に、条約を実施するために、適用を保障するために国内的の法律、政令、命令、規則並びにあらゆる措置をとれという条文があるわけです。そうすると今度そのほうからかかつて来られまして、じや国内法律を作れと書いてあるじやないか、国内法律がなくなるわけじやないかという御議論がもう一つそこに加わつて来たわけです。我々としてはこれも一般の常識だろうと思いますけれども、これは国際条約というものがおのおのその関係国によつて国内法制の体系は違うのですから、或る国においては法律を要するという国があるかも知れない、或る国においては規則を以て足りる国があるかも知れない、或いは訓令を以てし、或いは訓令をも要しないというおのおの法制上の立場が違うわけですから、日本の場合においてはこれは今申しましたように国際法は即ち国内法であるという原則は御承知のように新憲法になつてから一層はつきりしたということで、従来の憲法学者の本には皆書いてある。従いましてその関係から言いましても条約は即ち国内法として保安庁関係においてはそれを遵守する心がまえでおるわけですから、そのほうの問題もない。なお今のような立法せよというような条文を持つておる国際条約の例は、新憲法になつてからもたしか二つございます。それらについても国内立法をしておりません。そうして関係国でありますか、或いは国際事務局でありますかに対して、日本としては憲法九十八条の第二項の規定があるからあえて立法措置はとりませんよということを堂々と相手側のほうへ報告をしてそれで済んでおるわけです。そういう関係で、理論上の問題としてはこれはそういうことがはつきり言えるわけです。併し今のようにいろいろ御覧になる人が直ちに了解できないような複雑な問題も超るわけです。この際国内立法のほうを整備して全然そういう問題が起る余地をなくしてしまうという立法措置をすることも、これは又一方から見て決して悪いことではないわけです。従いまして与党のほうからそういう法律案をお出しになつてこれも又成立したわけであります。ただそういうようないきさつになつております。
  111. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私自身の質問あとにしますが、取りあえず先ほどの曾祢委員と木村長官の質疑応答に関連しまして一つの点だけお尋ねしたいと思います。先ほど曾祢委員からアメリカ議会においての政府側の本件に対する説明振りを引用しての質問がありました。前のほうの部分ですが、安保条約の前文に書いてあるいわゆる自衛力の漸増について日本がみずから責任を負うことを期待するというところをおさえて来て、それとの関連においてこれに関する法律案を提出する一つ根拠にして説明をしている。それに対しまして木村長官アメリカ側ではそうであつても、日本側としては決してそうじやないという御趣旨のお答えがあつたように拝承いたしました。そこで私がお尋ねしたいのは外務大臣にお尋ねしたいのですが、外務大臣も先ほどの木村長官のお考えと同じであるかどうかを一つお尋ねしたいと思います。
  112. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 早く言えばその通りであります。つまりアメリカ側としても国会においてはいろいろ説明をいたすことがありましよう。そしてその説明がどういう理由でどういう動機でなされたかというようなことについては外国の議会の中に立入つていろいろ言うことは私は差控えたいと思いますが、まあそれは別としまして、少くとも日本に関する限りはこの協定が承認されればこの協定に掲げてある義務を負うということになるのであつて、それ以外のものはないわけであります。又事実この協定に書いてある以外のような、何と言いますか、紐が付いているというような内輪話があるというようなことはないのであります。従つて日本に関する限りは今の木村長官の言われたようにこの協定できめられたことをする、きめられた義務を負う。それ以上のことは何にもない、こう思います。
  113. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 外務大臣に対する私の質問はただこの木村大臣がおつしやつたことと同じかどうかだけを私お尋ねしたので、御答弁の中にはそれ以外のこともあつたのですが、それ以外のことは今問題にしているわけじやない。私実はこういうことをお尋ねしますのは、非常にこれは外交上からしても重大なことと思つて私は聞いておつたからお尋ねしたわけなんです。アメリカ側がこう説明しているが、日本側はそうじやないとおつしやる。私は実は質問の趣旨を明らかにするために、私の見解をちよつと申上げますというと、このアメリカ側で説明しているところをよく精密に見るというと、この安保条約の前文の中の文句を引用しておる。その文句はどういうことであるかというと、「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」と、こう書いてある。それを見まするというと、これをよく精密に捉えて見ますというと、日本側でとつておられるところの今の方針と私は何ら矛盾するところはないと思います。又そう解釈するほうが極めて自然でもあり、又外交上からしても私は非常にいいのじやないかと、それは決して単に外交的の考慮からだけじやない、自然の解釈として調和する余地が十分あるのだ、それだからそれをアメリカ側で言つておるのはそうであつて日本側としてはそうじやないのだという必要は私は一つもないと思います。その点多少説明振りを修正なさるおつもりはないのか、今ここですぐでなくてもいいけれども御考慮願いたい。
  114. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 今御注意がありましたが、私の言わんとするところもまあそこでありまして、アメリカ側の意図は私は知りませんと先ほど申しました。そこで御承知の通り安保条約においては日本の自衛力の漸増を期待するとあつて要請されたわけじやありません。期待する……。
  115. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 勿論再軍備とは書いてない。限定してない……。
  116. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 自衛力の漸増はこれは日本でもやらなければならないと考えておる。曾祢委員に対しても、日本は決して自衛力を放棄したわけでもなんでもないのです。自衛力というのは、要するに日本の治安を維持することも一つのこれは自衛力なんでありまして、間接侵略に対しての力を増すこともこれは自衛力の増加であります。その意味においてこの保安庁の警備隊と称するものが日本の治安を維持して行く、殊に海上保安庁でできない高度の警備に従事する、いわゆる間接侵略の場合においてはこれは行動するのであります。その意味においていわゆる自衛力の漸増ということも言えるだろう、私はそのつもりで言つたのであります。その意味においてこれを使うので、決して再軍備というような意図を持つておるわけじやない、又紐付でもなんでもないという趣旨であります。
  117. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) ほかに御質疑がなければ暫時休憩に入ります。    午後五時十八分休憩    〔休憩後開会に至らなかつた