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1952-12-11 第15回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十一日(木曜日)    午後一時五十四分開会   ━━━━━━━━━━━━━  出席者は左の通り。    委員長     徳川 頼貞君    理事      伊達源一郎君    委員            杉原 荒太君            石黒 忠篤君            高良 とみ君            岡田 宗司君            曾祢  益君            有馬 英二君            大山 郁夫君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    外務政務次官  中村 幸八君    外務省條約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   ━━━━━━━━━━━━━   本日の会議に付した事件鹿地亘事件に関する件   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) それでは本日は前回に引続き一般外交方針に関する質疑を続行いたしたいと存じます。  今ここに国警長官齋藤長官がおられますので、若しそのほうに御質疑がございましたらお願いいたします。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 齋藤長官にお伺いいたしますが、一昨日の外務委員会におきましても、いわゆる鹿地事件の問題をいろいろ論議して参つたのであります。私は昨日の衆議院法務委員会における鹿地君、その他の人の証言等新聞でまあ拝見したわけですが、それについて国警長官のほうに若干お伺いしたいと思うのですが、国警長官のほうではあの鹿地君なり或いはそのほかの証人証言をどの程度に信憑性があるとお認めになるか。又一方におきまして、アメリカ軍のほうのスポークスマンは、短期間の拘禁をしただけであつてあと調べてもおらなければ拘禁もしておらない、こういう声明を出しておる。非常な食い違いがあるわけですが、国警長官はその職掌柄、あの鹿地君らの議会における証言信憑性をどう御覧になるか、それを先ずお伺いしたい。
  4. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) お答えを申上げます。鹿地氏の失踪に関係して、最近或いは声明、或いは手記というようなものが出ておる。殊に国会において証言があつて、この信憑性をどう思うか、というお尋ねだと思いますが、私の極く最近の、只今考え方といたしましては、少くとも昨年末に、アメリカ側において逮捕或いは拘束をされていたということは事実であろうと考えております。いつからその拘束を受けたのであるか、この点につきましては、まだもう少し我々側といたましても調査をいたさなければならないと考えております。警察側におきましても、鹿地氏なり或いは山田某氏に面会を求め、或いは出頭願つて、更に実情伺つて国警側もその裏付もやる必要がある、かように考えております。いつの期間から自由の身になられたか、この点につきましては、まだここではつきり申上げるだけの調査は行届いておりません。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 国警長官アメリカ軍のほうのスポークスマン声明と、それから鹿地君の証言との一致した点、つまりアメリカ軍認めた点だけをお認めになり、あとのほうはこれは信憑性がまだあるとは思わん、そういうことですか。
  6. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) あるとは思わんというのでなしに、あるのかないのか、もう少し調べて見ないとどちらとも言えない。あるとも言えないし、ないとも思えない、かような次第であります。
  7. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、議会における証言というものに対しては、あなたはこれは決して信憑性があるというふうには断言できない、こういうふうにお考えになつておりますか。
  8. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私のほうの捜査側といたしましては、いわゆる鹿地氏が不法に監禁されておつた、而も独立後続けられておつたということでありまするならば、やはり不法監禁犯罪が成立いたします。これが日本人であると、或いは国籍又その身分によつて扱いは違いまするが、これをはつきりと固めなければなりませんので、さような意味から申しまして、私はまだ十分でないと申上げたのでありますが、普通の常識から申しますならば議会のあの証言が若し偽りであれば、偽証罪に問われるわけでありまするから、従つて一応は事実であるということは常識でございましようが、警察の取調或いは検察という見方から申しますれば、我々の心証を得るだけの裏付を更にしなければならないのだ。さような意味で申上げたのでございます。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 警察のほうとしてはまあ裏付を必要とする。あの事件明るみに出まして、相当センセーシヨンを起しましてから、かなりの日がたつた。その間に警察は何か捜査上ですね、行動を起しなお且つそれについてですね、何らかの結果を得られておるかどうか、それをお伺いしたい。
  10. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 鹿地氏の失踪の届と申しまするか、行方不明であるから捜査をしてもらいたいという捜査願が郵便を以て藤沢市警に出ましたのが今年の十一月の十二日であります。藤沢市警におきましては若干日その近辺を捜査をいたした模様でありまするが、手掛りがありませんので、国警援助を要請したと申しまするか、更に国警から全国連絡をし、捜査をしてもらいたいという申出がありましたので、それによりまして全国に手配をいたし、自警、国警それぞれ連絡をとりながら捜査をいたしておつたのでありまするが、何分その捜査願が出ましてから後におきましても、鹿地氏の奥さんの言われることも極めてあいまい模糊として、いわゆる怪文書の内容のことについて尋ねましても、余り御存じがないような口振りであつて、我々といたしましては手掛りを得るのに非常に困難をいたしたので、従いまして本人の従前の交友関係戦争中或いは戦後におけるどういうような行動をされたか、家庭の事情はどうであるかというようなことを調べまして、それらから何らかの手掛りを得たいということで、いろいろと調査を進めておりました。そのところにいわゆる山田某氏手記を基とした新聞記事が出まして、これについて新聞によりますると鹿地さんの奥さん御存じだということを語られておりましたので、更に奥さん或いは山田さんに確めたいと思つておるときに、鹿地さんが現われたという段階になつておるのでございます。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 まだ国警では鹿地氏その他のまあ証人についてお調べになつておらないようだが、まあ鹿地氏が出る前に山田という人が現われて、とにかく六月の中旬くらいまでのことはまあ幾らか明るみに出た。それでそれに基きましてその山田証言の跡を裏付するというようなことはおやりになつたかどうか。それから又鹿地氏が現われてからまあ都内の某所におつて、ジープで連れて来られて外苑附近で降ろした。それから本日の新聞を見ますと最後の拘禁場所ですね、あの家の写真なんぞも出ておりますが、そういうことはもうすでにお調べになつておるのですか。
  12. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 山田氏について実情を聞きたい、同時に鹿地氏の奥さんについても実情を聞きたいと思つているところに、鹿地さんが現われたという報告鹿地さんの奥さんからありましたので、直接鹿地氏に会つて話を聞くのが最も近道である。鹿地氏から話を聞こうというので警視庁から鹿地さんに再三求めておつたのであります。今日までまだその段階には至つておりません。即ち鹿地さんの方から話をする、しようということにはなつていないのであります。併し昨日議会における証言もありましたので、恐らく警視庁はその証言に基いて傍証を固めにかかつていると存じまするが、今日まだその報告を受けておりません。その個所はそれぞれの警視庁管内警視庁、或いは茅ケ崎の市警、或いは藤沢市警に跨がつておりますので、これらの市警がよく連絡を保ち、国警はその連絡調整を図るということで捜査を進めようという態勢になつております。まだ傍証の結果は報告を受けておりません。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあいわゆる拘禁をされておつた場合がU・S・ハウス、いずれもU・S・ハウス行政協定にいわゆる区域及び施設に入るとしますというと、その中に起つた犯罪等に対して日本捜査権も何もない、そういうことですか。
  14. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) U・S・ハウス内部については捜査権はないと考えております。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから又U・S・ハウス内部でいろいろ犯罪を犯した外国人に対して日本司法権が及ばない、そういうことになると、あなたがた捜査というものは勢いたちまち壁にぶつからなければならない。その壁にぶつかるために真相を把握できないということも或いは起るかも知れない。これに対してどういうお考えでお進みになるか。
  16. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) アメリカ側検察当局の完全なる協力が得られるものと考えております。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今お話ですと、アメリカ検察当局の完全なる了解というか、援助協力、それが得られる、そういうことになりますと、これはアメリカ検察当局がU・S・ハウス内部その他を調べて、あなたがたのほうに報告をする意味協力であるか、それともアメリカ側検察当局と一緒になつてU・S・ハウスその他の、或いは人の捜査をして参るという意味協力であるか。その点はどつちですか。
  18. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) その点はまだどちらとも私ここで申上げることはできません。ハウス内容によりましていろいろ協力方法があると考えております。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうするとまだ得られるであろうという推定であつて、事実そこまで進んでおらない。あなたがたのほうの希望観測である。こう見ていいでしようか。
  20. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 現場警視庁は昨日の国会証言から、或いは今日から始めているかとも思いますが、その報告を受けておりません。それらは全部現場のほうで取計らつております。まだその報告を受けておりません。只今といたしましては、今までの経験から鑑みまして、この場合も完全なる協力が得られるであろうということを私は申上げておるに過ぎません。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、国警長官として、或いはもつと大きく言えば政府として、アメリカ検察当局とこの捜査について何ら特別な折衝をしておらない、ただ従来の例に従つてやると、これだけですか。
  22. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 特別な折衝をしなければ困難にぶつかるということにはまだなつておりませんので、只今申しまするように、これから日本側警察捜査にかかろうというところでありまするから、そう初めから上のほうで折衝しなくても、現場でうまく協力ができれば、それで済むことだと私は考えております。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 単なる犯罪の場合と相当違う。とにかくアメリカの軍、而も軍のある機関、例えばCICとか、或いはG2とかいうような名前が出て来ておりますが、そういうものの関係しておる事件、従いまして、例えば兵士の単純なる強盗とか、或いは傷害とか、そういうものとは大分性質が違う。それを国警長官がただ今までと同じように、現場のほうだけで協力がしてもらえるだろうと、そんな一体甘い考えでこの大きな事件調査ができるなどとは私は考えられない。その点をそう甘くお考えになつておるのですか。
  24. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私はアメリカ検察当局をどこまでも現在では信じてよろしいと、かように考えております。若し困難にぶつかれば、そのときに、或いは警視庁ならば警視総監、或いはそれを代表して私、更に外交交渉による必要があれば外務大臣をお願いする場合が起るかも知れませんが、現在といたしましてはさようなことは予測する必要はなかろうと存じております。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 大分御自信のあるようなお話ですが、私ちよつと外務大臣にお伺いしたい。外務大臣は、これの捜査がそういうふうに極めて簡単に行くと、そういうふうにお考えでしようか、それとも外交折衝ないしにこの事件アメリカ側のほうのいろいろな事態について調べ得ると、そういうふうに外務大臣も確信を持つておられますか。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは例えば形式的には合同委員会等で話をする場合もあり得るかも知れないと思いますが、実質的には国警長官の言われる通りだろうと思います。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはどうもこれ以上やつても水掛論にりますから、この問題はやめておきますが、次にやはり国警長官にお伺いしたいのですが、まあ国警長官CICや或いはG2などもいろいろ占領中においても接触があつた。でCICの対日本人活動、或いはG2の対日本人活動日本国内における諜報活動等について、これは細かい内容はあなたも御承知にならないだろうと思いますが、CICなりG2なりが大体大まかに国内においてどういう仕事をしておつたかということは御存じだと思いますが、それを一つ国警長官立場から御説明願います。
  28. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私はアメリカCICアメリカ軍保全のために必要な情報を収集しておる機関だと、かように考えております。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 G2のほうは……。
  30. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私は余り詳しいことは知らないのですが、CICG2の一部ではないかと、かように考えております。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 CICG2の一部ですか。
  32. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) さようでございます。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 G2につきましては、マツカーサー元帥在職時代に、有名なウイルビー少将がおりまして、これが大将でいろいろやつてつたようであります。例の尾崎秀實事件のこともG2のほうですつかり、これはまああとのことでありますが、調べ上げて、そうしてウイルビー氏がアメリカでその調査に基いて何か尾崎事件についての本を出版されておる。こういうふうに、かなりそういう面の活動をしておつたようであります。恐らくG2労働運動だの、或いは社会運動に関係している人たちだの何かのいろいろ調査をやつてつたということは、あなたのほうでも御存じないはずはなかろうし、又CICにいたしましても、単にアメリカ軍の何か安全のためにアメリカ軍当局の軍だけのこととして活動をしていたのではない、日本人に対する活動というものがあつたように私は考える。それは各地CICが、つまりまだ各県にCICがあつた時代におきましても、例えば労働組合指導者にいたしましても、自由党はどうか知りませんけれども、社会党の人たちにいたしましても、CIC出頭を求められて、いろいろと考え方、或いは行動、或いは経歴というものを詳しく調査されておる。私もそういうことがあつた。そういたしますと、これは軍の安全のための活動の一部とあなたのほうで言つてしまえばそれきりですけれども、併し我々のほうから言うと、占領時代とはいえ余り気持のよいものではなかつた。そういう事実があつたということを齋藤国警長官御存じですか。
  34. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私は具体的に誰がどうという事実は存じませんが、究極目的は軍の安全、保全、作戦の場合にやはり軍の機密の保全ということを究極目的として調査をせられておつたものだと考えます。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 究極目的はと言われるが、私が言つておるのは、そういうふうな日本人人たちCIC出頭を命ぜられて、思想だの運動だの経歴だのを調べられたという事実が、個人個人は別ですよ、その名を言えと言うのではない、そういう事実があつたということをあなたは承知しておられたかどうかということなんです。
  36. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) それは承知をいたしております。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、これは相当思想的な問題までCIC活動しておつたということを御承認になつたことと思いますが、まあ本年の四月二十八日に占領政策が解かれ、そうして日本独立が回復した。で、CICはだんだん縮小しておりますけれども、まだ看板をかけておるところもあるような状態ですし、実際にはアメリカ軍の必要から各地にそれぞれあるのだと私は思うが、それらがやはり占領中に今あなたのお認めになつたよう活動をしておつたのが、占領後においてもなお続けてやつておられるとお思いですか。それともそういうことは全然なくなつたというふうにお考えになりますか。
  38. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 占領終了後、日本独立後は、CIC活動範囲も著しく狭められたと私は考えております、個々に日本人を呼んでいろいろのことを調査をするということも、恐らく私はないだろうと思います。私は聞いておりません。なくなつたのじやなかろうかと考えております。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は、数は少くなつたろうと思いますけれども、やはりそういう事態が跡を絶つていない、こういうふうに考えるのであります。これはこちらに高良さんもおられるので、恐らく高良さんなどは体験されておるのじやないかと思うのだが、ないとあなたは断定できますか。
  40. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私は耳にしておりませんと申上げましたので、ないという断定はいたしておりもせん。若しあつた場合には……、あつたのを私は耳にしていないのかも知れませんが、独立後私はそういうことを耳にしておりません。或いはあるかも知れませんが、恐らくあつてもそれが非常に狭まつておるだろう、かように考えます。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 ないというのが、耳にしていないということになつたので、大分意味が変つて来ましたが、まあ耳にしてない……。事実聞いても、たくさんあるのですから、ないとはあなたは断定してない……。恐らくこれは若干あるというのが事実だと思うのですが、若しそういうものがあつたとした場合に、そういう事実に対して、あなたは、これはまあ仕方がないものだ、或いは又これは行政協定認められた範囲のものだ、こういうふうにお考えになりましようか。
  42. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私は行政協定範囲内で認められたことかどうかは存じませんが、CICというものの存在は、これは軍の一部として当然必要なものでありますから、CICの……、行政協定の中に当然含まれておるとかように考えまするし、その場合、日本人に何か質問をするという場合に、本人の同意を得て質問する、質問に答えるということは、これは日本国民に何らの義務を負わするものでもなく、又権利拘束するものでもありませんから、何ら問題にすべき点はないというように考えます。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、国警長官は、CICが、今日日本国内において或る政治活動をしている人々の、その政治的信條なり、或いは又その人の行動なり、そういうものに対していろいろ調査したりなんぞすることは、あえて差支えない、こう断定されたと解釈してよろしいのですか。
  44. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 日本の憲法、法律で保障されているものを犯されない、自発的に情報を提供するという場合は、私は警察立場として、検察立場から考えまして、何ら支障がないと考えます。いろいろな調査個人もいろいろされるのでありますから、これを或る権限を以てやる、或いは保障された権利を犯してやるということになれば、これは問題になると考えております。自由意思によつて互いに問答されますことは、我々警察立場からは何ら言うべきことではない、かように考えます。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはCIC活動範囲の問題ですが、今言われた、自発的に云々ということを言われたのですけれども、私は少くとも外国軍機関が、その駐屯している国々の例えば政治家なり、或いは労働運動をしておる人なりについて、いろいろと質問したり、或いはその政治的信條について聞いたり、報告を求めたりするということがすでに一つ干渉である、こう思うのですが、そういう事実は私は実はもうやめてもらいたい、こう考えております。併しあなたの言われたことになると、それはどうも仕方がない、それはまあお認めになつておるような考え方です。こういうようなことをこの鹿地事件があつた後において続けられるということになれば、日本国民としては非常に暗い気持にならざるを得ない。而も国家警察機関一つの長であるあなたがそういうことを言われたとすれば、国民はそれは非常に不安の念に駆られるわけです。あなたの言は、私は納得できない。法務大臣はこのCICの、今言つたよう活動独立後も行われているとした場合に、そこまでCICがまだやつているということに対して、どういうふうにお考えになりますか。
  46. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 私はそう詳しいものでありませんが、考えを申上げますならば、アメリカ軍の駐屯するということを條約で認めております以上、その軍の安全とか、自衛とか、その他必要事項調べるということを一つもやつてはいかんというようなことはないと思います。結局これはモラルの問題でありまして、アメリカは今日本友好国でありますから、友好国の軍隊がやたらに日本人思想をどうだこうだと調べて歩くということは、国際徳義の問題になるのではないか、こう思います。私はさように考えております。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 私もアメリカ軍が駐屯……、條約で認められている以上、CICはその軍の安全の問題についての活動をするということについては、これは仕方がない問題だと思いますけれども、併し今ここにおるCICは、たとえ縮小したとは言え、占領中と同じように、個人政治的信條までいろいろと質問をしたり、或いはそれを調査したりするということは、これはけしからんことだ、まあモラルの問題にせよ、何にせよ、これは一つの大きな政治問題だ、そして日本国民の自由に対する侵害であろう、干渉であろう。で、私はこういう事態が若し事実ありとするならば、この機会に政府はやはり向うに交渉をして、こういうことはやめてもらうようにしてもらわなければならんと思いますが、この点は法務大臣なり、外務大臣なりはどうお考えになりますか。
  48. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私も前に法務大臣等が述べられたのと同じことで、実は普通に考えれば、いろいろなことを聞いたつて差支えないと思うのです。その代りこつちも返事をしようと、しまいとそれは差支えないわけです。別に問題にするほどはないと思いますけれども、占領ということの事実が続いておつて、それからこういう独立状態になつたのですから、一般人々はまだCICというものを何か恐いもののように思つているかも知れない。返事をしなけりや悪いのじやないかという気もする人もあるかも知れませんから、そういうことは今後よく注意させて、誤解を与えないようにしたほうがいいと思いますので、この点は十分適当な措置をしたほうがいい、こう今思つております。但しこれは私今差当りの意見でありまして、別に政府とか、何とかいうわけじやありませんけれども、まあ常識的にそう考えます。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 ここに大山さんもおいでになるのですが、大山さんは、もう独立後におきましても、そういうようなことを、そういうような目に会つておるそうであります。私はこれは幾つも例があると思いますが、まあ大山さんがそれを受けられたことになつておりますから、そのときの事情を述べて頂きまして、そうして一つ法務大臣なり外務大臣なりのほうでも、そういうようなCICの少々私どもには受取りかねる活動について、やはり向うに対して注意なり或いは交渉なりをして頂きたいと思います。
  50. 大山郁夫

    大山郁夫君 私は私自身経験を言うつもりでも何でもなかつたので、鹿地君の場合とはかなりケースが違うので、そういう用意もして来ておりませんでした。それでデータとか或いは細かい点において多少間違いがないとも限らないけれども、併しながら大体大筋は間違いないところを言つて御参考に供したいと思います。私自身いつも考えるのは、私自身鹿地君と同じような目に会わなかつたのは、もう日本へ帰るときから私は決して単独で行動しなかつた。というのは、なぜかと言えば、私は日本帝国主義戦争反対だといつてずつと以前労農党で活躍しておつたし、アメリカ行つてもその態度はずつと変えなかつたし、ですから太平洋戦争が始まつてから唯一の……、敵国外人の一人として、而も政府に何を言われても少しも命令を聞かなかつた。そうして日本帝国主義戦争反対しておつたのだからアメリカでもやはり同じ反対でした。又日本でそう悪いならアメリカにしても同じなのだから、だからかなり自分の身辺に相当にそういう点で非常に多くの不便を持つてつたわけで、それで又逆な場合は向うのいわゆる独占資本の誘惑の手も相当に来たけれどもそれを皆払つてしまつた。そういう関係で日本に帰つて相当にえらい経験を持つだろうと覚悟はしておつたのであります。そうして、だが、併し日本でやはり日本の植民地化に対して戦わなくちやならないという気持があつたので……、私はでも手術を受けて帰ることができなかつたのだけれども、早く帰つて、帰るときが来たのだから帰つて昔の闘争を続けたい、そういうようようなこともあつたし、又それ以上に丁度船がマリン・スワロー号で、一九四七年十月十日にサンフランシスコを出て日本に十月二十三日に着いたかと思いますが、船が着く前にたしか読売新聞つたが、日本国民に告げる言葉を言つてくれと言いましたから私は何か書きました。あとで自分は何がしかの反動政府と闘つておる気持を余りはつきり言い過ぎたら横浜に上陸できないで突つ返される危険があると思つたから、そういうことがあつたから当然警戒しなければならない。新聞記者諸君にやはりその気持はうんと伝えたので相当に警戒しなければならないし、あのときは家族の者と歩くか秘書を連れて歩くか、もうずつと変らんのであつたのでありますが、一遍だけ一人だで歩けいたときに事件が起つたのであります。丁度秘書もいなかつたので……、それから戸塚署のほうからアメリカの憲兵本部へちよつと来てくれというから、何か私に聞きたいことでもあるのかと思つて、おまけに真昼間だつたから、大抵は警戒を怠らなかつたのですが、警戒を怠つたので、すぐ車に乗つて……、その目比谷の憲兵本部というのでありますか、看板にはプロヴオースト・コートと書いてありました、私はそこにおる人の服装で少尉か中尉か大尉かわからなかつたけれども、そのときは名前を覚えておりましたが、今は名前を忘れたが、その大尉がユー・アー・アンダー・アレストと言つた。私は非常に抗議した。一体何だと言つたら、あなたは総司令部が吉田政府と議してこれこれのことをしておる……、そういうふうな馬鹿なことを言いやしないと私は心にそう思つていても、そんなことはない、ここに証拠がある。何かというと丁度その前に、私は一九四九年の十月の末だと思います。データは間違つておかも知れないが一九四九年十月の末、その少し前に、同じ月の少し前に中国研究所の講演会に行つて私は講演をしたときに、このときにポツダム宣言を見て、ポツダム宣言のたしか十二項かそこらに外国軍の撤退の條項があるので、つまりポツダム宣言にいろいろなことを、軍国主義をやつけてしまうとか或いは日本の非軍事化をするとか又日本を民主化するとか、それから日本の産業の存在を許すとか或いは原料の入手を許すとか或いは外国貿易、国際貿易への参加を許すとか、いろいろなことが書いてあつて、最後に、以上の目的が完成されたならば占領軍が撤退するとあるから、その占領軍の撤退ということに対して、我々は勿論外国の兵隊が日本にいて日本独立なんというようなことはあり得るなんて考えてないから、少し先廻りだつたけれども、まあ外国軍の撤退というようなこういう基礎があつてできるのだし、そのためにも又日本の民主化が必要だ、そういう趣旨の私は演説をしたのを覚えておりますが、ちよつとその演説の筆記だというのを見せられましたが、とんでもない筆記なんです。一体警視庁の一人の巡査がやつたという、それを連れて来いと要求した。そうしたならばこつちの面子も立ててみせる。その人は困つてしまつておりましたが、ともかく身柄を警視庁に引渡すといつて、それから私自身もそういうような大尉くらいのものを相手にしたところで埓があかないから、警察庁のほうに行つて警視庁の誰かを連行して、そうして警視庁の渉外課に行つたわけでありますが、それで私自身の所在がわからんというようなことを非常に心配させたらいけないから、最初の機会に電話を借りるということにして、そうして家族との連絡をとつたり又私の知つておる幾人かの弁護士とも連絡をとつたので、それで外部との連絡がやつとついたわけなんだつたのであります。そうしてやはりあそこの監房に入れられて抑留されて、そうして丁度健康を害しておるので、非常に家からいろいろな毛布とか何とか取寄せて、それで老体を保護するつもりだつたけれども、警視庁のほうは許さない。向うの備付品でなければいけない、どういうわけだつたか……。けれども警視庁の私に対する待遇はそう悪くなかつたので、良くもなかつたけれども、何も叱言を言うことも何もなかつたのですけれども、併し私は非常に重大な問題だと思つて、明くる日渉外課の真ん中に日本の弁護士四人ほど来てもらいまして、これは軍事裁判にかけるという肚らしいが、軍事裁判ならばトルーマン大統領がアメリカの憲法のコマングー、チーフだから放つて置けないだろうと言つて、多分そこに持つて行ける方法があるだろうと思つて、私が協議をしておつた。逮捕されたときに……。それからそれともう一つは、戸塚の警察署員が来た、警察協力したのか、それとも総司令部の命令でよんどころなくしたのか、非常にわからなかつたから……、よんどころないとしても日本人に対してくだらない、殆んど問題ないことをしておるのだから、常識考えて……、私が総司令部を何か危険に導くなんということをする気遣いはないし、過去においてそういう経歴はないし、過表の経歴が合法党でかなり政府反対もして来て、軍部に対しても生死を賭して闘つたけれども、四つに組んで正攻法で闘つて来たので、気持からいつて警視庁が私以上に私のことを知つておると思うのですが、なぜその前に抗議もしなかつたかということが非常に疑問になつていたわけでありますが、それは全然別問題として、ともかく私は飽くまで闘うつもりでいたところ、丁度初めて引つ張つて行かれたその翌日の午後の夕方に近い頃、出ていいということになりました。併し同時に又弁護士もいろいろな事情を聞いてもらいに行つたのでありますが、向うのほうの言うことには、何か人に対して一つの疑いというか、つまり占領政策違反の罰に問われるような行為をしたということの疑いなんであろうと思う。その疑いがあつたので、その疑いが晴れたわけじやないけれども、あの人はともかく世間に信用がある人だということを聞いたから、それを斟酌して出てもらうのだと言うて、この答弁はどうも私は腑に落ちない。そんな馬鹿な、常識考えられない考え方というのはないのだから、多分謹慎しておれということだろうというふうに聞いたのだが、私は、アメリカは謹慎なんかしたら余計馬鹿にしてしまうという考えがあつたものだから、何とかこれは正しい立場に立つておるものは何も恐れないことを示さなくちやならぬと思つてつた。丁度それから四、五日たつてから日比谷で国際平和デーというのがあつて、大衆や労働者、勤労大衆がうんと集まつた。そこへそういうときは必ずMPが取巻きに来ておるので、私はそこで医者も又とめたのだけれども聞かないで、そこへ行つて、まあそのときには殆んどもう自分としてはそれまでにない大気焔を上げて来たので、それまでにもたびたび、まあたびたびでもないが、数度面倒くさい経験を持つてつて、一番初め、話が又昔に帰りますが、上陸して間もなく日比谷の国民大会の歓迎会に臨んで演説した。それが多分元になつたのだと思うのでありますが、間もなく放送をしようとしたら、何を放送するか書いて見せろというから、私の言おうと思つていることを書いて出したら、これだけのものを削つちまえ、丁度放送する当日です。そうしたら、削つた意味をなさなくなるからここのところを削らないで入れろと言つたらば、検閲する人がそれを、私にはパスしていいか、パスしていけないかということを判断する権限がないのだというので、そんなことをしてそれだけ抜いて演説したら意味は通じやしない、だから放送しないと言つてつたら、今度は向うのほうから放送してくれということになつて、ただ言葉だけ変えてくれということなんで、それじや趣旨は変えないから言葉だけ変えるというので、やりました。それからその後又いろいろ各地で演説しましたが、演説するといろいろそれに対してかなりいやがらせを向うからやつて来たのです。例えばいつか一番初め何か東武鉄道の労働者の何かの会で私は演説をしました。その中で原爆の話をして、米国の残虐性の話をしておつたのだが、それが気に障つたとみえて、向うのやはり憲兵が幾らか人を連れてやつて来て、あなたは原爆の話をしたそうだが、何のことを言つたか知らせてくれと言うから、それで私は大体極く簡単に害いてやつたら、私が旅行しておるうちにやつて来て、これじやいけない、もつと詳しく書けと言うので、私がいない、留守だというのにその日それをやれということを言つて、家内が非常に抗議したので、できないことはできないと言つたので、それならば帰つたらば明くる日か明後日か行くというので私はもう詳しく自分の演説した通りに演説を嘘を一つでも混ぜると却つて余計面倒くさいというので、正しいことをするものは恐れないという考えで嘘一つ入れないで言つてつたらば、そういうことはなくなつたけれども、だけどもやはり演説のほうでいやがらせは相当にあつた。それからもう一つは、それよりも私にとつて非常に精神的な圧迫を加えたのはあの検閲制度で、プレス・コードによつたのか何か知らないけれども、もうそれは殆どそのときの書いたものが削られて意味をなさない馬鹿なものになつてしまう。一番ひどい例は丁度これは一九四八年一月号の中央公論に載せる座談会、私の相手は野坂參三君と長谷川如是閑、この三人で座談会をやつたのですが、そうしてその当時の時事問題に関していろんな意見を言つたのだが、大抵こちらの意見を雑誌に出すのだから相当警戒をしながら言つたのだけれども、削除をしちやつてわからない。印刷しておりまして十頁或いはそれ以上の長いものが二、三枚になつてしまつて、そうなつたら全く馬鹿が馬鹿な話をしておるような調子に雑誌に出てしまうというようなことになつて、これは一番ひどい例でありましたが、これは併しそれに似よつたことはもうずつと毎月あつたわけなんで、最後に私の逮捕の問題になつたわけで、私はそれで自分は総司令部がきらいなことを知つているのだから、それに対して苦情は言わないけれども、だけどもそういうことは他に幾つも例があり得る。それから私の場合はともかく私は外部との連絡を早くとつてしまつたから、だから、ずつと前にそういう経験を幾つも持つているので、昔のアメリカ経験日本経験、個々の経験に鑑みてそれをやりましたから、自分が絶えず外部と連絡をとつたからあれ以上にならなかつたのだというふうに考えておりますが、そんなことは非常にあり得る。それからもう一つは軍事裁判のこと、それから……、ともかく併しあり得ると思つたからこれは何とかしなくちやいけない。従つて当時私がなし得るのはさつき言つた演説会に行つてうんと自分の立場を主張して来たこと、もう一つは中央公論に丁度私は小さい原稿をやつたのでいろんなことを書いた最後に、一体占領政策違反と言つておるが、あのポツダム宣言の精神を離れて占領政策があり得るか、私はあのときの事情をすつかり知つておるが、そんなことがあるはずがないのに、事実それがあるのだから、そういうような非理があるのだから、それ以上どんな非理があり得るかも知れないということで、ほかにもそういう例があり得ると自分は考えた。そうして私の場合はそういうので、それからあのときに警視庁のほうでもやはりじつと見ておいでになつたのだから、あのときに当局はどういう考えを持つておられたかということは私のほうから伺いたい。  まあ私の言うことは大体これで尽きると思うのです。    〔委員長退席、理事伊達源一郎委員長席に着く〕
  51. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 お尋ねしたいのですが、先ほど同僚岡田委員からいろいろ御質問がありましたが、この問題は、この鹿地亘君の問題は、国民の全部がその政治的立場如何にかかわらず、又議会の内外を問わず、ひとしく奇怪千万に思つておると共に、これが真相の究明及びそのこれに対する正しい善後措置については重大な関心を持つておるところだと考えます。今まで発表されております鹿地君の声明書なるものや、又鹿地君が衆議院においてなされておる証言、それからアメリカ軍において声明を出しておりますところ、これらを総合し比較対照して見ましたるときに、その間一致しない部分が極めて多いのでありまするけれども、ただここに極めて明瞭なことは、鹿地君が当初米軍によつて逮捕拘禁されたという事実、この点は米軍自身認めておるところであります。それから又鹿地君がこの七日まで帰宅しなかつたということもこれは事実であります。ここで私がお尋ねしたいと思いますることは、米軍が鹿地君を当初逮捕拘禁したという事実は認めておるのでありまするから、この事実について私お尋ねしたいと思うのであります。米軍が逮捕拘禁するというからには、少くとも米軍側としては相当の理由というものがなくちやならんことだと思う。それから更にもう一つ鹿地君の声明書を見まするというと、米軍側によつて自白を強要されたということであります。強要されたかどうかの点はわかりませんが、そのいわゆる自白なるものの内容如何、この二つは実質的にはかなり関連することと思いまするので、私は先ず米軍側において逮捕拘禁した理由になつたその事情、それからいわゆる自供、自白なるものの内容について、政府側において何らか知るところがあるかどうか、当時米軍側からその点について進絡を受けておつたかどうか、或いはその後において何らかの方法によつてその事情を知ることができたかどうか、知つておるとすれば、その内容如何、この点をお尋ねいたします。
  52. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 只今のお尋ねは、鹿地君が逮捕せられた理由、これは米軍がすでに発表しておるところによつて逮捕されたという事実のあることは向うも認めておるわけであるから、その理由を知らないかと、又鹿地君がその間において自白を強要されたと言つておるが、何を自白したか知らないかというお尋ねだと存じますが、この事柄は私のほうで目下取調中の事件に関係をいたしまするので、成るべく申上げたくないのでありまするが、併し一面重要な事柄であると存じますから、取調に関係のない範囲で申上げたいと存じます。  大ざつぱに申上げますると、これは鹿地氏が某国の諜報網の有力なる諜報員の一員を成していたという疑いであります。目下私のほうで現に、    〔理事伊達源一郎君退席、委員長着席〕 取調中の事件と直接関係を持つて来る公算が濃厚でありまするので、私のほうといたしましても、折角そのほうの取調を急いでおりまするが、只今のお尋ねに対しましては先ずその程度申上げておきます。
  53. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次にお尋ねしたいと思いますことは、何といつても先ず本人の……、こういう場合普通の常識といたしましても、強要と否とにかかわらず、本人自身の自供ということが非常に重要な点だと思うわけでありますが、その点について、併しその自供なるものについても、自供それ自体が本人の自供だという証明が非常に大事な点で、そういう点についてこれは本人の自供だと証明されるようなことを、心証を持つておられるかどうか、その辺のところを一つ……。
  54. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 本人の自供が事実であるかどうかということにつきましては、只今取調中の被疑者の取調に関連いたしまして、自然に明白になつて来ることと存じますが、米軍側において自供をいたしたかどうかということにつきましては、私のほうに持つております資料は、鹿地氏がその事柄を認めた自署があるのであります。その書類を見ますると、私の考えでは何でもなく鹿地氏がみずから書かれた文書であることをはつきり認めることができると思います。その内容は果して事実であるかどうか、只今取調中の事件に関連をいたしまして、証拠を固めて行きたいと、かように考えております。
  55. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 只今調べておられる事件というのは、それが何らかの関連性を持つものらしい。今取調中ということでありますから、私余りその取調に支障を来たすようなことはお尋ねしたくもありませんが、併し少くともその取調の対象になつておる人物の氏名や住所だとか、職業、要するにこの取調の対象になつておる人のアイデンテイテイー、そういうものに関してここで漏らされるわけに行かないか。その点……。
  56. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 取調に差支えない範囲で申上げたいと存じますが、本人日本人でありまして、只今正式の逮捕令状によつて逮捕され、すでに家宅捜索もいたした男であります。本人に終戦後ソ連に抑留をされて、そこで高度の諜報技術を教わり、無電操作の方法を会得いたしまして、帰つて後に、日本国内に帰還してから後に、或る諜報網に直接連絡をし、無電を海外に向けて打つてつたという容疑が濃厚であります。本人の姓名の発表は暫らく差控えさせて頂きたいと存じますが、東京の郊外に居住をてしいた人間でございます。
  57. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いろいろ今取調中の事件に関連もしている。或いは今後鹿地氏応対しても、当局として進んでその実情を取調べられるような意思があるかどうか、その辺のところをお尋ねいたします。
  58. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) これも捜査に関係いたしますので、余り詳しく申上げられないと存じますが、少くとも現在逮捕いたしておりまする人間に関連をいたしまして、証人として出頭を願わなければならん時期が来ると思います。被疑者として再逮捕の必要があるかどうか、只今はまだ申上げる段階ではありません。
  59. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に外務大臣にお尋ねしたいのですが、この事件の真相が究明されて来れば自然アメリカ側との関係においても、いろいろとこれらの善後措置について問題が或いは起つて来るかと想像される。然るにこういう事件というものは極めて厳格に、それ自身のメリツトによつて解決方法が処理されなければならんことで、これがいわゆる政治的考慮だとかというようなことで、正しい解決が曲げられては絶対にいかん。これは日本側としても当然の要求でもありまするし、又日米の友好関係保持という大局の上からしても是非そうなくちやならんことだと思う。そういう点について外務大臣はしつかりした、はつきりした方針を今持つておられることだと思う。その辺のことについて率直にお話願いたい。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お話通りでありまして、こういう問題はうやむやにいたすべきではないのであります。又これを正しく取扱うことが、却つて日米の間に何らの疑惑も残さずに、国民も了解するようになることと思いますからして、私としては十分な措置を講ずるつもりでおります。先方にもその趣旨で話しております。ただ何分にも只今のところでは真相が的確につかめておりません、従つて只今のところは先方も調査の材料を欲しがつて誠意を持つて調査することに努力しておるようでありますから、例えば鹿地氏の証言であるとか、その他ほかの証人証言であるとか、手記であるとか、何でも材料になり得るものはすべて先方に届けまして、これによつて先方にも材料があり得るはずだと思いますけれども、調査を要求して、調査の結果は、若し鹿地自身証言の殆んど大部分が事実であれば、これはアメリカ側に対しても十分な申入をいたすことは当然であります。まだ今のところは調査を至急進めて行かなければならん段階でありますので、この点を先方にも強く要求いたしまして、速かに先方の調査の結果を知らすように、又それも全貌がはつきりしてから知らすというのでなくして、一部分でもわかつたものがあれば、その都度知らして来るように申入れております。
  61. 曾禰益

    ○曾祢益君 法務大臣にちよつと伺いたいのですが、昨日本会議に岡田君の御質問に対してのお答えの中で、どうも失踪して一年もしてから、而も書面で細君から捜査願を出しておる、ちよつと普通に考えると非常に変だ、いろいろ複雑な事情もあるらしいので、藤沢署のほうでも突つこんで調べるようなわけに行かなかつた。こういつたような趣旨の御答弁があつたと思うのですが、昨日の衆議院の法務委員会のこれは鹿地君の証言つたと思いますが、拘禁されてから、早速とにかくまあ心配するなという手紙が、向うがデクテートしたらしいものが、出たということを言つております。それからその後も一、二回出たようなことを言つております。更に又山田なる人物を介して始終連絡があつたのじやないか、そういたしますると、これは実は不思議でも何でもないので、どこかに安全に保護されておつたといつたようほ恰好にもとれるのですが、そういつたような、この律件のいわゆる長い拘禁状態の特異性というようなものを法務大臣は如何にお考えになるか。或いは法務大臣としては、そういう、何と言いますか、警察的なことについては専門的でなかつたら、国警長官は一体こういう、いわゆる失踪事件というものは、非常におかしなものだというふうにお考えにならないかどうか、それを伺いたい。
  62. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 曾祢委員の御指摘の通りでありまして、私率直に申上げますならば、鹿地氏の衆議院法務委員会証言は真実でございましよう。併し真実が、こう山の峰から峰へと飛んでおるような気がする。その間の谷に当る真実というものがときどき抜けておるように思つております。御承知のように、今御指摘のように、家庭に連絡があつたのでありますが。初め失踪捜査願いのときには、そういう話がなく、ただ書面で言つて来られた。どうも家族の人情として、私どもの知つておる家族の愛情とはちよつと控え目なんだ。調べ方もその点に重点を置いて調べておつたわけなんです。又昨日の内山完造氏の証言の中でも、藤沢市警に届けたことを妻君から聞いて、しまつた、却つて身の危険が殖えたと思つたというような陳述がありますが、どうも事情が複雑である。又心にもない告白をした、心にもないということがどういうことを意味するか。又最初逮捕せられたとき、人に売られたという話があつたそうです。人に売られたというのは一体どういう事実であるか。そういうことからだんだん捜査を進めて参りまして、只今国警長官の述べましたように、他の取調中の事件と結ばれがついて来ておるわけでございますが、併し事が非常に重大でありますから、この調査の結果は非常に慎重にしたい、何か国警方面に不利だから早くスタンド・プレイをして反証を挙げるというようなそういう気持でなく、本当に真実というものを冷静に公平に調べたいということで、今取調べをしておるのであります。御指摘のように、腑に落ちない点が少なからずあることは事実でございます。
  63. 高良とみ

    高良とみ君 この問題はこんなふうに、アメリカの問題と日本占領前後の問題にからんで、先ほどどなたか、敗戦後そういう話は聞いたことはないとおつしやつたのは、きつと講和発効後という意味だろうと思うのでありますが、それに持つて来て今度はそういう鹿地氏の問題が出て来た。ところがそれを齋藤長官の言われるように、これが直ちに又他の国との結び付きとなつたことを思いまして、私ども戦争中又戦争前にそういうことは随分聞いたということを思い出さざるを得ないのです。少し平和主義とか或いは何かするとすぐこれはアメリカへ無電を打つておるだろうとか、随分取調べられた人があることを今思うのでありますが、こういうことは誠に重大なことでありまして、今日本の置かれている立場からしましても、こういうことで方方刺戟することが極力ないようにしなければ外務委員の任務が果せないのじやないかと思う。そこで齋藤長官が閣議か或いは法務大臣と御相談の上御発表になりました、そのソ連へ無電を打つていたという人のケースはもう確認したケースであり、まあ逮捕状は出たでありましようが、それはもう明らかに証明のついた犯罪事件であるが故にかくのごとくおつしやつたんでありましようか、或いはただ容疑者であるからその参考人として鹿地氏に出てもらうかも知れないというふうに言われたんでありましよう。その点を伺いたいのです。
  64. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 相当確実な証拠に基いて私は申上げておるのであります。単なる風聞とか或いは投書とか、他から聞いたということでやつておるのではございません。その点だけは申上げておきます。
  65. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、それだけ責任を持つてはつきりおつしやるのでありますると、そのケースはすでに起訴になり、そして判決の段階に来ておるものであるというふうに了承してよろしいでありましようか。
  66. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 先ほども申上げました通り只今取調中でありまするから、従つてこれがどういう犯罪になるか、又起訴されるものであるか、その犯罪内容によるわけでありまして、只今申上げましたまでの点につきましては確実なる物的証拠も押収をいたしておるということになつております。
  67. 高良とみ

    高良とみ君 物的要素が押収されておつても、それは別にどつちのほうにどういうことをしていたというふうなことはこれは国民の人権を保護される立場におられる長官としてはその人の人身保護、犯罪の確定ということに十分責任をお持ちになると思うのでありますが、そうなりますると、この場合それを直ちに今のケースとを結び付けて来られるところに、私失礼でなければ、非常に国際関係上おもしろくない……そのなぜこれを結び付けなければならないかということを感ずるのでありますが、それが明らかなケースでない、而も片一方がまだ真相がわからないうちに直ちに片一方に結び付けてしまうということについて法務大臣は何とお考えになつておられるか。そういうことは法務大臣の御承知の上で御発表をおさせになつたのかどうか伺いたいのであります。
  68. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 高良さんにお答え申上げます。これは私としましては、むしろ慎重を期して、国警長官に余り今ははつきりここで申上げることをむしろ控えてもらつておる。その意味は、当人は非常にはつきり言つておる、併しはつきり言つていることを直ちに鬼の首をとつたみたようにしていいかどうかという抑制のほうを今力を入れておるのであります。当人の言つておることが本当ならば鹿地君が当人の顔を見られたならば知らん人だとは言えない関係にあると思います。併しそういうことはよほどよく調べてから……、高良さんの御指摘のように人権にもかかります、国交にも関係ございますので、実は長官は非常に詳しく知つておるわけです、知つておりますが、むしろ当人鹿地君の人権のために控えておるものと、さように御承知願いたいと思います。
  69. 高良とみ

    高良とみ君 それは尤もなことでありましようし、又両方とものケースが国民共に挙げて心配しております場合に、世の中には精神病患者というものがあるし、又そういう特別なこともいろいろそれこそある。まあそれは刑が確定してしまつておることならば、責任ある地位の人が言われるのも尤もでありましまうが、今人権週間だから言うわけじやありませんが、特に人権の上からいつて、まあ何をしたか知りませんが、そんなにどつちのほうへも無電で知らせるほどの軍備が進んだわけでもなし、まあ何と言いましようか、実に日本としてはそういうことは不幸なことだと思いますが、岡崎外務大臣は何とお思いになるのですか。そういうことは末端の国民もよく見なければならん面でありますが、それ以上に行政当局にあられるかたは国際関係を考慮されて両方を刺戟しないように、又日本国民の誠意のあるところを、国民の中に間違もありましようが、それによつていい加減神経過敏な両方を刺戟しないということについて何とお考えでありましようか、大臣にお伺いいたしたい。
  70. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実は私は国警長官の言われるようなことの内容を知りませんものですから、何とも只今聞いたような話で実はびつくりしておるような、そういえば何となく陳述した証言の中にはどうも腑に落ちない点もあると今更気が付いたようなわけでして、どうも何とも今申上げようがありません。
  71. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 蛇足とは存じますが、念のために申上げたいと思います。高良さんの心配よくわかります。どういうことを意味しておるのかよくわかります。この事件を大げさに扱いまして外国との国交に変化を来たす、そういうことは極力謹んで事を処置いたしたいと存じております。
  72. 高良とみ

    高良とみ君 それこそそういう御発表になるときこそ祕密会議でもしていいのでありまして、小さな数字なんかのことでなく……、その御考慮が齋藤長官になかつたということについて、長官は今後もそういうふうな戦前のような国民の感情を片一方に、或いは片一方をそんなふうに持つて行くという責任に対して何と考えておるか伺いたいのです。
  73. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私は只今鹿地氏の自供をしたという内容はどういうことがあるであろうか、どういうことによつて最初逮捕されたのであろうかというお尋ねがありましたので、これも国民ひとしく心配していることだと存じます。鹿地さんはみずからのお口からも言われることであろうと存じましたが、それに関連する限りのことをお尋ねに応じて申上げたのです。併しそれもできるだけ最小限度に申上げました。他の人間につきましては氏名も発表いたしておりません。只今高良さんのおつしやいますことにつきましては私も十分注意いたして行く所存でございます。
  74. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、齋藤長官は、鹿地さんがこれをまあ、これは鹿地さんのことで、このことは私どもの良識からすれば、逮捕した側がよく慎重調査の上岡崎大臣に答えられるとか、或いは国際関係ですから、その筋を通してこういう理由で逮捕したのだと言われるなら又わかるのでありますが、そうすると齋藤長官鹿地氏が逮捕された理由をもうすでに御存じつたかのように聞えるのですが、そういうわけであつたかということ、即ちアメリカ軍の或る機関が発表する前、又鹿地氏が自白する前になおここに結び付けられたということは私どもの長官に対する質問が余り図星に当り過ぎたのかも知れないのですけれども、併しそれについてそんなふうにも聞えるのですが、そうですか。つまり警視庁としては鹿地氏がああいう逮捕された理由はそこにあるだろうというのですか、そうだろうということを自分のほうだけで結び付けておるというのでありますか。これはアメリカに対しても非常な関係のあることですから、ちよつと……。
  75. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 先ほども申上げましたように、その御容疑がありますので、現在取調中の事件に関連をして知つておる、かようなわけであります。
  76. 高良とみ

    高良とみ君 関連をして知つておるというのはその点で鹿地氏が出頭したならばこの証人として出てもらおうという意味で期待しておられたという意味と了承してよろしいのですか。
  77. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) さようではございません。どういうわけで知つておるかとおつしやいまするから今取調中の事件内容が直接関連をしておるが故に、私はその内容を知つておりますと申上げたのございます。
  78. 高良とみ

    高良とみ君 そうすると内容も知つておりますということは鹿地氏が逮捕されたことの理由の内容を知つておられるというのでありますか。
  79. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) それが逮捕せられた内容である。アメリカ側が発表いたしました昨年末において取調べたことがあると言われたその内容であると……。
  80. 高良とみ

    高良とみ君 そういう断言をここでなすつたわけでしようか知らん。
  81. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) さようでございます。
  82. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、それであるということが言われるんでしたら逮捕された当時もう連絡があつたと了承してよろしいのですか。
  83. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) それは鹿地氏が出て来られましてから後に知つたのであります。
  84. 高良とみ

    高良とみ君 いつ頃……出て来られたというすぐ一日か二日前のことだと思うのですが、そのときに知つて、それはそうだつたと気が付いたと言われるだけであつて、これを本人に聞き、アメリカ軍当局にためされたわけではないということをおつしやいますか。
  85. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 昨日そのことを知つたのであります。
  86. 高良とみ

    高良とみ君 まあ誠にさしでがましいことですが、それ以上私は御職権でありますから内政干渉いたしませんが、できるだけ一つ慎重にやつて頂きたい。我々日本国民は両方の人権を尊重したいし、アメリカの権限も、こちらが十分向うのなさんとすることも知つてもらいたいし、又警察当局の責任もやつてもらいたいと思いますが、非常に神経過敏な問題でありますからどうぞ是非一つ国際関係になることはその関係方面の筋を通して御考慮願いたいということが、これがたとえどの国であつても、私ども心配しておることはそのことなんでありまして、今後いろいろな国の人がここに入つて来て、独立国としては南米もチエツコもユーゴーもやつて来るでしよう。そうした場合事々にそういう問題が起り得ると思いますが、非常に心配するところでありまして、そういう希望をもう一つ御考慮願えないかどうか、外務委員といたしまして、ただ警察警察のことをしさえすれば、それは仮に容疑中であつても発表してもいいのか、それが国会に対する義務なんだというようにお考えにならないように御考慮願えるかどうか伺いたいのであります。
  87. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 十分考慮いたしたいと思つております。さような意味から申しまして、どの国ということも申上げておりません。今後も十分この点は慎重に考えまして処置をして行きたいと考えております。
  88. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 念のために高良さんに申上げますが、この問題は純然たる刑法上の問題として扱いまして、それに政治色を加えるというようなことは極力慎しまねばならんと存じております。政治色が加わるかどうかということは主として私の責任でございまして、十分気を付けて扱いたいと思います。この心持は心から持つておりますことを御了承願いたいと思います。
  89. 高良とみ

    高良とみ君 法務大臣からそういうお話があつて了承いたしますが、それは申すまでもなく日本が片面講和をしており、又いわば戦争状態と言われる国々を周りにたくさん持つております関係上、少しの国の名前が出ることにおいてもその国の人たちがどんなに過敏になるかということを思いまして、これは法務大臣の責任であるばかりでなく、国全体の責任の問題であり、内閣の責任でもあると思いますから、こういうことが若しできるならば、新聞等には十分注意を加えて発表して頂かないと、純刑事問題であつても、それは国際問題であると私ども考えておりますから、その点とくと御自重願いたいと希望する次第であります。
  90. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今国警長官の言われました一つ事件ですが、その事件が何ですか、鹿地君は捕まる前から、つまり昨年の十一月二十五日以前に起つた犯罪事実に基いて捜査し、更に逮捕なんかされた事件なんですか。
  91. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 余り申上げますとどうかと思いますので……、以前から今日まで続いております。
  92. 岡田宗司

    岡田宗司君 その逮捕されたのはまあ鹿地君との関連があるようにあなたは言われたし、その関連は昨日知らされたようでありますが、そういたしますと、その逮捕された人というのは、何かこの事件アメリカの軍当局のほうにわかつて、そうしてあなたがたのほうにこれを逮捕しろということで来て逮捕した事件ですか。例えば独立以前にそういうことで逮捕したのですか。
  93. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 当初は無関係な事件でございます。
  94. 岡田宗司

    岡田宗司君 当初は無関係という事件である、そういたしますと、その逮捕は独立後に起つたものでありますか。
  95. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) さようでございます。
  96. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、その無関係な事件で、そうしてあと鹿地君の名前が出て来た、こういうことになる。ところが今のお話ですというと、鹿地君はその事件に関連して、つまり昨年の十一月幾日に捕われたということになりますと、その事件アメリカ側に捕われたということは、アメリカ側は昨年のうちにすでに知つておる。日本側がそれを知らされもしなかつたし、又全然別個のケースとしてこれを取扱つた、こういうとですか。
  97. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) さようでございます。
  98. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、少し私はあなたの言うのが腑に落ちない。つまり向う側が早くこれはそういう事件を知つてつたかも知れない。ところがこちら側は、鹿地君が証拠があるとか或いは何かがあるということは、これはあなたがたが捕えてからそういうことがわかつた。而も鹿地君はその間はあなたがたのほうには何ら連絡のないところにおつた。それで結局昨日初めてその関係があるということがわかつた、こういうことになるのですか。
  99. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私が申しましたのは鹿地氏の自供書というものを昨日私が見た、これだけ申上げておきます。
  100. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと鹿地氏の自供害なるものは鹿地君が捕えられてからアメリカのほうで以て作らしたと、そうしてそれをアメリカのほうでは持つてつたと、そうして昨日それをあなたがたのほうに提供した、こういうことですか。
  101. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 昨日私が受取つたという事実だけを申上げます。
  102. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、その受取つたものがただ偶然あなたのやつてつた事件と関連があつたので、新らしい角度から鹿地事件を見直すということになるのですか。
  103. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 前から言われておりますが、鹿地氏の不法拘禁の問題というものは、この事件があつたから別に角度が変るということはございません。
  104. 岡田宗司

    岡田宗司君 その鹿地君のまあ捕まりました理由並びにその自白書なるものが昨日来たと、それまではあなたがたのほうではいま一方の事件には鹿地君が関係があつたか、なかつたかは御存知なかつたのですか。
  105. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) このほうの別個の事件もそう以前からではないので、極く最近に私のほうで調査を始めた事件なのであります。
  106. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますというと、その新らしく調査した事件には、鹿地君ということが出ておらなかつたのですか。
  107. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 取調中の何はあんまり申上げますと、只今御注意もありましたので取調べのほうから別個に出て参つたということを申上げているのです。この程度で御了承願いたいと思います。
  108. 岡田宗司

    岡田宗司君 今鹿地君の不法拘禁の問題はまあこれは別の角度から見るのであつて、それを事実とは直接関連はしない。そういう角度を変えない。こういうお話つたわけですが、これはまさしく別個の問題であると思いますが、そこでまあ私がお伺いしたいのですが、この鹿地君が拘禁されたことにつきましては、これはまああなたがたのほうにも何ら通知も連絡もなかつたかどうですか。
  109. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) なんの通知も連絡もございません。
  110. 岡田宗司

    岡田宗司君 占領時代においてまあいろいろアメリカ軍のほうで以て取調べ事件もありましようし、又単純なる犯罪もあつたし、それで政令三百二十五号違反みたいなこともあつた。そういうアメリカ軍関係のいろいろな犯罪とか、そういうものは単にもう捕える場合にアメリカのほうで直接手を下して捕えて、そうして日本側に全然通知をしなかつたというような事例はほかにもありましたか。
  111. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 普通の刑事事件は多くは日本側協力して取調べるという場合が多うございましたから自然通知がありました。併し向う側だけで独自に調べるという場合には通知がなかつた事件もあつたかと思います。
  112. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、鹿地君の事件というのは占領時代においも非常に特別な例であつた、そう解釈してよろしうございますか。
  113. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 少くとも私のほうは全然知らず、私のほうの協力をするということもなしというわけでありまするから他の一般の刑事事件に比べますと特別なものであつたと申上げることができると存じます。
  114. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと非常に特別なケースであつて、そうして特別なケースであるがために以上のような問題が起り、当然占領が解かれたならば釈放されるなり、或いは又あなたのほうに通知をしてもらつて、これを引渡すのが大体普通だろうと思うんですが、それはなくて、少くとも十二月八日まで押えられておつた。押え方はいろいろありますが、押えられておつたということも又非常に特別な事例であつて、そうしてこれが両国間の特別なケースとして問題になるという種類のものであるということはあなたもお認めになるわけですな。
  115. 斎藤昇

    政府委員斎藤昇君) 私自身の見解といたしましては、少くも独立後は引続いて実際に監禁をされておつたということであるならば、これは私は違法である。日本の法律を犯し、行政協定にも実は反しておると、かように考えます。従つて日本独立後果して本人の承諾なしにどこかに実力を以つて監禁されていたかどうか、これが重大な問題であろうと考えます。
  116. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 他に御質疑はございませんか。  以上御質疑がなければ、一般外交方針に関する御質疑は一応打切ることにいたしまして、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) それでは一般外交方針に関する質疑はこれを以つて打切りといたしまして、懇談の形で今後の運営について御協議をいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  119. 徳川頼貞

    委員長徳川頼貞君) 速記を始めて下さい。それでは今日はこれを以つて散会いたします。    午後三時四十二分散会