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1952-12-04 第15回国会 衆議院 労働委員会人事委員会運輸委員会連合審査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月四日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員   労働委員会    委員長 田中伊三次君    理事 吉武 惠市君 理事 山村新治郎君    理事 石田 一松君 理事 前田 種男君    理事 青野 武一君       伊能繁次郎君    今松 治郎君       大平 正芳君    倉石 忠雄君       中  助松君    松山 義雄君       持永 義夫君    森   清君       菅  太郎君    森山 欽司君       春日 一幸君    矢尾喜三郎君       山口丈太郎君    山花 秀雄君       石野 久男君   人事委員会    理事 植木庚子郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 受田 新吉君 理事 森 三樹二君       松野 孝一君    池田 禎治君       三宅 正一君    加賀田 進君       館  俊三君   運輸委員会    委員長 逢澤  寛君    理事 尾崎 末吉君 理事 關谷 勝利君    理事 佐伯 宗義君 理事 田原 春次君    理事 正木  清君       佐々木秀世君    玉置 信一君       徳安 實藏君    中野 武雄君       永田 良吉君    松岡 俊三君       山崎 岩男君    臼井 莊一君       吉川 大介君    熊本 虎三君       楯 兼次郎君    松原喜之次君       武知 勇記君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         日本国有鉄道参         与         (職員局長)  吾孫子 豊君         参  考  人         (国鉄労働組合         中央執行委員         長)      大和 与一君         参  考  人         (日本国有鉄道         機関車労働組合         中央執行委員         長)      瀬戸 敏夫君         参  考  人         (公共企業体等         仲裁委員会委員         長)      今井 一男君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、  議決第一号)     —————————————
  2. 田中伊三次

    田中委員長 ただいまより前会に引続いて労働委員会人事委員会運輸委員会連合審査会を開催いたします。  本日は参考人皆さんは御多忙中わざわざ御出席をいただきまして、まことに感謝にたえません。お礼を申し上げます。  これより公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件(内閣提出議決第一号)を議題として、参考人各位の御意見を求めることにいたします。  あらかじめ参考人各位お願いをしておきますが、わざわざお招きをして時間に制限などを申し上げて、はなはだ恐縮でございますが、大体十五分以内で御意見を承りたいと存じます。経過の概要は、各委員がみなよくわかつておりますから、問題点を中心として、大体十五分以内で御発言を願いたいと存じます。  それではまず国鉄労働組合中央執行委員長大和与一君。
  3. 大和与一

    大和参考人 ただいま御紹介をいだたきました国鉄労働組合中央執行委最長大和であります。ただいま委員長さんからお話がありましたように、時間をたいへん制約されますので、準備としてはいろいろなものを持つて参りましたが、要約してお話を申し上げたいと思います。従つて、こまかい数字については、御質問がありましたときに、私なり、あるいは専門の者も来ておりますので、明確にお答えをすることにして、今回の裁定をめぐる取扱い方について、筋道についてはよく御理解をいただいておるわけではありますが、まだ閣議決定の線があのようでは、四十万、組合員がどうしても納得ができない、こういう悲痛な叫びで、連日本部に電話なり、あるいは直接上京して私たち叱咤激励をしておる。こういう状態でもありますので、ぜひとも御再考いただきたい、こういうふうに考えまして、お話を申し上げたいと思うのであります。  私は学生時代に支那の有名な碩学である張之浩宰相論を読んだことがあります。頭が悪いからほとんど忘れましたが、大体、相に相たるの器というものは政治を正しくやらなければいかぬ、政治を正しくやるには人心を収撹しなければならぬ、人心を収撹するためには、万民の心を心とした政治でなければいかぬ、こういうようなことが書いてあつたように記憶しております。皆さん国民の選良として国会においでになりまして、今申し上げたような全国民的立場、全日本労働者に対する十二分なる御理解があつて、初めて国会議員としての職責を完全に遂行し得ると私は信じ、皆さんに対する絶大なる御期待とともに、お願いを申し上げる次第であります。  昭和二十二年のいわゆる二・一ゼネストに対しては、中止の勧告が出ましたが、あのゼネラル・ストライキを契機として、日本労働運動にも民主的な労働運動が起つたのでありまして、国鉄労働組合におきましても、一部間違つた左翼主義者組合運動を、みずからの手で排除して、現在国鉄労働組合は、健全な民主的な労働組合と自負するに至つておるわけであります。当時マッカーサー元帥最高司令官でありましたが、かのマッカーサー・レターによつて昭和二十三年末の国会で、公共企業体等労働関係法が、ほとんど私たちがよく知らない間に一夜忽然として生れたともいえるのであります。それは、今に至つて憲法でも、アメリカ指令通りにやつたのだから、ほんとう日本憲法ではないかもしれぬというような御議論がある世の中でありますから、いわんや公共企業体等労働関係法は、まさにアメリカの直輸入であつて、これはよく今からお考えいただきましても、日本国鉄なり専売なりの実情に沿わない点が多多あるのではないかということも、御了解いただけるのじやないかと思うのであります。いわんや、本年の五月日本独立をした。こういうふうに世界の主要国において認められておりますが、こうなりますと、私たちは実際の、今までの間違つた法律であるならば、それはできるだけ直してもらう、こういうふうな考え方をしておるわけであります。私たちは、憲法の二十八条にある罷業権を奪われた、そのかわりに仲裁委員会裁定の制度ができた。そうなりますと、完全に独立した日本の国において、仲裁委員会裁定最高最終決定機関である、こういうふうに考えて間違いないと思います。ドイツにおいても、すでに仲裁委員会裁定に伴う国家予算措置は必ず講ぜられております。諸外国においての例を見ても、仲裁委員会裁定が、労働紛議を解決する上に常に一応の決定打として、それによつてすべて紛議は一応解決されて行く、こういうふうな状態になつておると聞いております。しかるに日本だけが、仲裁委員会裁定が出ても、あるいは十六条、三十五条の問題とか、あるいは今までであれば、フアイナンスの問題であるとか、こういうことをいろいろ言われて、いまだかつて実行されたことはないのであります。過去二回にわたつて仲裁委員会裁定が行われましたが、いずれもなまはんかな、いいかげんな決定であつた。こういうふうに私たちは残念に考えておる次第であります。  時間がございませんので非常に残念でありますが、今回私たち要求をしておること、これは明確に申し上げますと、補正予算は次のように訂正増額していただきたい。  一、裁定第一項 ベースは、完全実施立場から、十一月を八月実施とすべきである。このために三十二億の増加を必要とする。  二、裁定第二項 特殊勤務手当は、裁定趣旨に従い、二千九百二十円ベースのときを基礎として改訂するためには四・六億を必要とするが、閣議決定ではわずか七千五百万円。これでは必要額の六分の一に満たないので、三億八千五百万円の増加お願いをする。  三、裁定第三項 石炭代寒冷地給については、炭価トソ当り人事院勧告の六千七百円を、補正予算では六千百円に計算しているので、この不足額一億三千万円をお願いをしたい。  四、裁定第四項 年末手当については、新ベースの〇・七五箇月分、一万五十円しか組んでないが、民間では最低二箇月であるので、組合側要求一・七箇月分は決して高くないと思われる、むしろつつましい要求であるので、この差約五十七億は補正されてしかるべきであると思われます。当局要求した一・二箇月としても、二十七億円を不足するわけであります。  五、裁定履行伴つての当然の支出は、超勤手当休職者給を含めて十二億四千万円しか補正されてないが、ベース引上げに伴う当然の増加十億、休職者給与引上げ二億二千万円、退職手当一億四千万円、死傷手当六千万円、共済交付金——これは掛金値上げに伴う当局負担金でありますが、九億等、合計二十四億。  六、以上合計をしまして、裁定完全実施のためには、今回どうしても補正を約百五億円程度増額していただかなければ、われわれは納得ができない。ぜひお願いをしたい。こういうふうに考えておる次第であります。  それで、財源捻出の問題になりますが、これは何と申しましても、一般会計からの繰入れ、こういうことに重点を置いてお願いせざるを得ないのであります。団体交渉仲裁委員会裁定通り、連日のように持たれますが、当局は、国会行つて相談をしてくれ、団体交渉ではきまらない。国会あるいは委員会、あるいは政党方面お願いに行くと、それは団体交渉できめろというのだから、平重盛の忠孝両全の道ではないけれども、組合は一体どつちに行つてほんとうの話をし、だれがきめてくれるんだ、こういうふうに私たちはたいへん戸惑つておるということも事実であろうかと思います。それで、財源捻出については、どうしても一般会計からの繰入れ—今五十億お借りをしておるわけでありますけれども、なおどうしてもこれをふやしていただく、このお骨折りを願うほかにないのではないか、こういうふうに考えます。  それでは、一般会計財源については、一体どんなものがあるか。一つは二十六年度の決算の残が四百八十億くらいあるのではないか、こういうふうに組合としては考えられます。二には、駐留軍宿舎移転費の余裕、これは三百七十億ぐらいあるのではないか、こういうふうにも考えられます。三つには、インヴエントリー・フアイナンス本年度予算残の見通し、これが約三百億ぐらいあるのではないか、合計千百五十億、このうちから何とかひとつ皆様のお骨折りによつてわれわれの裁定が完全に実行できるようにお願いをしたい、こういうふうに考えておるわけであります。  また国鉄の内部には、たとえば公安官というのが三千名できております。これなんかは組合の方から、国鉄でおまわりさんを雇つてくれというようなことを言つたことは一ぺんもありませんが、知らぬ間にピストルを持つておる。こういうのはごめんをこうむりたいから、まあせいぜい荷物を監視する、そういうふうな必要のある場合には五百名ぐらい残して、あとはひとつ警察の方に渡してもらつてはどうか、こういう気持もないではありません。そういうふうにしますと、約五億ぐらい浮ぶだろう。あるいは鉄道で高架線の下とか、あちこちにいろいろ土地その他を貸しておりますが、その使用料がたいへん安い。一平米百五十円とか二百円とか、まるでただみたいな値段だ。これはもう少し時価に相当する値段にひとつ引上げてやつたらどうか、これで約十億ぐらい出るのではなかろうか。あるいは死蔵品退蔵品というふうな品物もございますから、これはうまく整理をすれば六十億ぐらい出るのではないか。大体財源捻出のねらいとしては、こういうふうなことを考えておるわけであります。しかしながら、実際問題として経営の方面にはあまり当局はタッチさせませんので、具体的にこまかい数字を出せと言われると、組合としてはなかなかそこまでは現状を把握していない。むしろ当局の方にお尋ねをいただいてお願いをしたい、こういうふうに考えておるわけであります。  それで、私たちとしまして最後のお願い宏りますが、われわれは公務員と比べてそれでは一体どうか。二千九百二十円のときには明らかに公務員よりもわれわれは少しよかつた。それがだんだんとベースつても、手当その他はみんなすえ置きになつて、上つていない。こういうふうなことを考えますと、現在では二千九百二十円において認められたその差はたいへん縮まつて、ほとんど差がない。しかも私たち仕事は、御承知のように、これはだれが何と申しましても、いわゆる一般公務員の方々がデスク・プランでお仕事をなさつているのと違つて徹夜勤務を一晩三十円でやつている状態であつて、しかも身の危険を感じながら、夜昼ぶつ通し仕事をしている。これが実情でありまして、この点は申し上げなくてもよくおわかりをいただけると思いますが、公務員が低くていいのではなくて、もう一つたちのこの特殊な労働状態をよくお考えいただいて、ぜひともお骨折りいただきたい、こういうふうに考える次第であります。  それから国鉄労働組合は健全な組合だから、何を言つたつていいだろう、こういうふうなけしからぬことを言う人も、ないでもないのでありますが、われわれは、もちろん民主主義を守るため、憲法を守るために、今まで占領下にある実情も認識をして、譲るべきものは譲り、また組合員実益を高めるためには、ある程度名分を譲つて実益のために闘つて来た、こういう形をとつて来たと思うのであります。しかしながら、今回仲裁裁定が二回にわたつて蹂躪せられ、しかもまた独立した日本において、最高最終決定機関であると政府みずから認めた仲裁委員会裁定を踏みにじるならば、いかに国鉄労働組合員が正直であり、ばか正直であつても、これはどうしても承知ができない、こういうふうなことになろうかと思います。ひんぴんとして四十万組合員が連日のように何百名となく本部に押しかけて陳情する姿、あるいは家族の者が涙を流して私たちに訴えることは、どうしても裁定実施していただきたい、こういうことを切々として訴えおるわけであります。われわれはあくまでも裁定は八月から必ず実施していただく。これは絶対の原則とし、しかも一。七箇月の要求は、決して私たちは過重だと思つておりませんので、その点も十二分にお考えをいただいて、私たち要求正当性のゆえに、あえて皆様に再三再四の御再考をいただきたい。願わくば運輸労働委員会満場一致で、国鉄裁定については完全実施するという態度の御決定をいただきたいと思うのであります。われわれは裁定完全実施——あるいは十一月に一万三千四百円でも、裁定完全実施ではないかというふうな、とんでもない御意見もあるようでありますが、これでは全然話にならぬのであつて、八月完全実施、しかも年末手当については一・七、そういうことを十二分にひとつ御理解をいただいて、今後ともぜひ御協力をいただきたい思うのであります。  やや長くなりましたが、与えられた時間が短かいので、はなはだ簡単でございますけれども、以上をもちまして、国鉄労働組合の提案の趣旨を明確に説明させていただき、あわせて皆様の御理解をいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  4. 田中伊三次

  5. 瀬戸敏夫

    瀬戸参考人 機関車労働組合中央執行委員長瀬戸でございます。  先に、機関車労働組合歴史がまだ浅いので、この機関車労働組合紹介をさせていただきます。  機関車労働組合は、去る昭和二十三年の七月に職場離脱がございました。当時、機関区は一番国鉄重要部門であつたので、共産党がこれに目をつけましてわれわれの同僚を職場から離脱させた、この経緯から、われわれは自己の勢はわれわれ機関区の力で守ろう、機関区人で守ろう、こういうことで、機関車労働組合をつくろうという第一歩の気構えをした次第でございます。さらに、戦後の労働運動が、ややともすると、当時の社会情勢インフレ経済でございましたので、賃金の問題に関しましては、長い国鉄の八十年の歴史もくつがえる、これではたいへんな現象になる。要するに、働く者はやはり正当な賃金がほしい、このような内容機関車労働組合が発足した次第でございます。  さらに機関車労働組合賃金考え方といたしましては、われわれは職階制を是認いたしまして職階給、要するに自己仕事の質と量と責任、これによつてわれわれの賃金要求したい。さように考えて発足しておる次第でございます。  そこで結論を申し上げますと、今回の政府案で大体百六億九千万円、今回の仲裁裁定は十一月から、また年末手当は〇・七五だというような御意見が出ておりますが、われわれの要求金額は二百十九億九千万円ほしい。これに対する細部の内容は、先ほど大和委員長からも申されましたので省略さしていただきますが、とにかく二百十九億の予算をお考え願いたいと思う次第でございます。  そこで機関車労働組合が、しからば本年の当初における調停には、どのような考えで、いかなる賃金を出したかと申しますと、昭和二十五年の八千二百五十円ベースのときからの換算で、われわれは先ほど申し上げました職務の質と量、あるいは生産性という面から、一万八千九百円を要求いたし、さらに当時年末手当といたしましては一月一万一千百二十円という要求で出したのでございます。これは大体現行の一万一千円の一月分に相当する金額でございます。しかしながら今回の仲裁裁定は、当然本年四月から実施されなくてはならないものを、とにかく支払い能力がないので、仲裁委員長は、その間しんぼうしてくれというようなことで、われわれの給与というものは八日以降にせよ。このしんぼうしなければならない期間の金額を換算しますと約〇・八箇月になりますが、これを両組合が調整いたしまして、とにかく調整金額は一万七千百円、それから一・七箇月、こういうことでございます。そこで仲裁裁定といたしましては、八月以降一万三千四百円、こういうことに相なつておりますので、われわれといたしましては一万三千四百円は八月からぜひ実施してほしい。さらに年末手当におきましては、先ほど申し上げた通り年度当初の金額が約一箇月でございましたのに、四月から七月分までの仲裁裁定の差額を足しますと、これが、一・七箇月と相なりますので、われわれの要求は正当であると考えておる次第でございます。  そこで私たち考えといたしましては、政治というものは公平であると信じておる次第でございます。ところが、今回の政府のお考えでは、公共企業体なるがゆえに、お前たち国民犠牲になれというように、われわれは解釈できる次第でございます。公共企業体国民犠牲にならなくてはならないとすると、このようなことは申し上げなくてもおわかりだと思いますが、また全体主義がはびこつて来るのではないかというようにも、われわれにはとれる次第でございます。そのような考え方をわれわれ与えないように、ぜひこの点をとくとお考えお願いしたいと思う次第でございます。  そこで、仲裁裁定に関しましては、先ほど申し上げましたように、機関車労働組合としては、一万八千九百円を要求しておつた。しかし国鉄の諸般の情勢から見まして、一万三千四百円でお前たちはしんぼうせよ、こう申されましたので、これはまことに不満でございますが、法治国家のわれわれといたしましては、何としてもこの仲裁裁定を尊重しなければ相ならぬ、これが独立日本労働運動第一歩ではないか、このような考え方のもとに、一万三千四百円を不満ながら八月以降実施という線で、われわれは了承した次第でございます。このような内容からいたしまして、われわれ労使間におきましても一万三千四百円を八月以降実施することに関しましては、双方に異存なく、これを尊重したという意見で今日まで団体交渉して参つた次第です。そこでわれわれといたしましては、公労法第十六条の精神から、この国会におきましても、当然仲裁委員会裁定は尊重されると、かたく信じて疑わない次第でございます。そういう観点で参つておりますので、ぜひこの仲裁裁定を尊重されて、国民に対しても法律の正しさというものをはつきり認識させていただきたいと思つております。  次に、すでに仲裁裁定をめぐりましては、昨日も公社側団体交渉をいたしましたが、何分公社支払い能力その他団体交渉内容から見まして、はなはだ残念でございますが、本問題が政府及び国会に移つておる、われわれはさように考えておる次第であります。そこで今回の仲裁裁定のいろいろな内容は、すでに御承知だと思いますが、われわれの業務成績というものが非常に軽く見られている。この業務成績というものから遊離された公共企業体というものはない。また公共企業体というものは、アメリカの例をとりましても、一般労働者賃金よりも上まわつておる。これを日本だけがなぜ下まわらなければならないか。この点も、独立日本の現在の立場から見まして、ぜひあわせてお考えを願いたいと思つている次第でございます。  さらに、今次の仲裁裁定昭和二十五年にさかのぼつて考えますと、当時支払い能力がないために、八千二百円べースをおきめになるときの内容は八千五百円であつたが、八千二百円とされた。特にそのときの条件としては、新規採川は押えよう、あるいは扶養家族増加に対する金額は数百円にはなるけれども、これも考えない。かような内容で八千二百円をおきめになつたのでございます。そこであまり支払い能力がないないという現実は、すでに皆さんも御承知だと思いますが、先般の桜木町のあの重大事故は、われわれから言わしむれば、当然夜間作業列車に何ら関係のないときにあの工事をすれば、かかる重大事故を起さなかつたのを、超過勤務手当が制限されておりましたので、列車のあいまにやつた。これがあの重大事故を起しておるのであります。こういうことを考えますと、あまり国鉄支払い能力を制限しますれば、それが作業の面に出ましてかかる重大事故を起すと、われわれは考えている次第であります。  さらに、今次の仲裁裁定考えてみますと、過去三年間の企業に対する努力と人員減少、これが昭和二十五年のときには四十八万一千名でございましたが、昭和二十六年は四十七万三千名、さらに昭和二十七年の四月現在では四十六万六千九百名と、人員面において減少をしている次第であります。業務量増加も、すでに公社の方の資料でおわかりだと思つておりますし、また生産性の向上ということもおわかりの点だと思つております。事実賃金をおきめになる場合には、われわれの最初に申し上げました通り職階給という面から見ましても、職務給の面から見ましても、当然これらの因子は考えていただかなくてはならないと思つておりましたところが、これらの面が今回の仲裁裁定には考えられないで、二十六年の賃金をそのまま物価の高騰によつて引伸ばした。このような今回の裁定は、われわれの生活の最小限度のものであると、われわれは考えているのでございます。  さらに遺憾なことは、物件費人件費を食つてしまう、この点は、今回の裁定では、私たちは重大な問題ではないかと思つております。要するに、これは軍閥当時に、人よりも物が重要であると考えたその考え方が、まだ改まつていないのではないかと思いますので、ぜひ物よりも人というようにお考えを改めていただきたいと思つております。  さらに、先ほど公務員給与について触れられましたが、公務員給与がお上りになるとは、決して妨げるものではありませんが、われわれの作業公務員作業の実態の違いを考えていただきたい。昭和十七年から昭和二十六年の平均をとりますと、現場で働いておるるわれわれの同僚の一日の死亡率の平均は一、二二であります。これは業務上の死亡でございます。さらに負傷者は一日平均三十八人出ております。これらの例から見ましても、一般公務員国鉄の従業員の仕事の質と量は、おのずから違うのであります。こういう面で、先般運輸大臣も、大体公務員と同一には考えていないというような御意見がございましたが、ぜひ国鉄作業の実態が違うということだけは、私は認識していただきたいと思つております。  さらに、機関車労働組合といたしましては、先ほど申し上げました通り仲裁裁定というものは完全に実施されるものであるとの認識を持つております。われわれの職務は、赤の信号を黄色であると解釈ができない職責を持つていると思いますので、ぜひ赤の信号は赤としてはつきりさせていただきたいと思つております。かかる意味におきまして仲裁裁定はわれわれは実施されると確信しておりますので、この線によつて御協力願い、ぜひそのように裁定実施していただきたいと思つております。機関車労働組合といたしましては、とにかく建設的な御意見に関しましては政府及び国会に協力するという考えでございますので、この点もあわせてお考え願いたいと思つております。最後に、われわれといたしましては、仲裁裁定は八月から完全実施をしていただき、さらに年末手当といたしましては、先ほど申し上げましたように、本年当初の要求額は約一箇月でありますが、仲裁裁定が八月となりましたので、その間の差額が〇・七箇月となります。これを合せて一・七箇月の要求をぜひ貫徹させていただきたいと思つております。  さらに、資金の問題でございますが、組合がどこから資金を出せと言うことは、はなはだ越権でございますので、申し上げませんが、とにかく国鉄賃金一般労働賃金とどのような比率であるか、その点もよくお考え願い、さらに国鉄をまかなう今までの財政状態から考えまして、工事費というものは財政資金としてまかなつていただいた面を、わずかな収入でまかなえということは、とくと国会においてお考えを願いたいと思います。国鉄の健全財政をわれわれは願わなければならない。ややともすると国鉄総裁が馭者になつて、われわれが馬車馬になつてしまう。これではわれわれはその日かせぎの馬車馬同様で、きようの仕事が非常に多いから、せめて水一ぱい飲ませてくれと言つても、総裁は一文も金が出ないと言う現状では、われわれ従業員としては、何としても情ない状態である。この面もあわせてお考えを願いたいと存じます。まだいろいろ申し上げたいこともございますけれども、以上をもちまして、簡単でございますが、意見にかえたいと思います。
  6. 田中伊三次

    田中委員長 それでは次に、仲裁委員会委員長の今井君が御発言になる予定でありましたが、十一時三十分ごろでないと御出席がございません。それまでの間、ただいまの大和瀬戸委員長に対する質疑をやりたいと存じます。まず森三樹二君。
  7. 森三樹二

    ○森(三)委員 大和委員長の方にちよつとお伺いいたします。私どもはあなた方の御意見通り、少くとも仲裁裁定実施すべきだという観点から連目闘つておるわけでありますが、あなた方の仲裁裁定実施ということにつきましては、大体これでやむを得ない線だということにお聞きしておつたのですが、これによつてほんとうに生活の実態がまかなわれ得るかどうかという疑問を、十分われわれは持つおるわけなんです。その点についてちよつと述べていただきたい。
  8. 大和与一

    大和参考人 仲裁裁定が完全に実施されても、なおかつ生活ができないかという御質問ですが、私たちは今回の仲裁委員会裁定は、裁定内容にもはつきり書いてありますが、これは不十分である。しかしながら、仲裁委員長としてはいろいろと実際に国会その他の見通しなども考えて、この程度ならばまず裁定実施してもらえるんではないか、こういうようなお気持は明確に書いてあります。その内容を一応了としまして、私たちはまずこの裁定を完全に実施してもらうことによつて、十分に生活の保障はできないかもしれぬ、しかしながら、まず第一段階として委員会仲裁裁定が出たのだから、これを完全に実施してもらう以外にない。そうしてこれによつてわれわれは一生懸命生活を建て直し、なお足りない分はまたお願いをするというふうな形で行くわけであります。
  9. 森三樹二

    ○森(三)委員 ただいまの御説明によつて仲裁裁定実施されても、なおかつ生活の充足には足りないのだという点も、よくわかるわけでありますが、現在の実情において超過勤務手当関係などのようになつているか。それからあなた方の方では、この要求がいれられない場合は、超過勤務拒否というような問題も出ているようでありますが、その点についてお尋ねします。
  10. 大和与一

    大和参考人 超過勤務については、私たち十二分にいただいていると思われません。形の上では、実際に超過勤務はもらつておるというかつこうになつているわけでありますけれども、実際現場においては、なかなかそうは行つていない。たいてい、やりましても、まずまずというのが実情であります。むしろ後半の問題が大きいと思いますが、超過勤務を拒否するというふうな考え方を持つているのではないかと申されますけれども、それをあるいはやるかもしれません。しかしながら、それよりも大事なことは、仲裁裁定が完全に実施されるかどうか、それによつて四十万の全組合員ほんとうに正しく法律を守るか守らないかということであつて、超過勤務を拒否するということは、法律に違反していないという考え方で、私たちは闘いをしていると考えております。
  11. 森三樹二

    ○森(三)委員 そうすると、超過勤務を拒否すること自体は法律に何ら違反しないのだという建前でおられる、こういうふうに解釈していいのですか。
  12. 大和与一

    大和参考人 はい。
  13. 森三樹二

    ○森(三)委員 それから給与の問題につきまして、地域給は、国家公務員の場合は、地域によつて一級、二級、三級とかいうようにわかれて、差があるのであります。国鉄皆さん方の給与において、この地域給という問題があるのですが、これについてはどのようにお考えになつておりますか。
  14. 大和与一

    大和参考人 給与のことは、副委員長が来ておりまして、私よりもよく知つているのですけれども、私のわかる程度でお答えいたしますと、地域給は、国鉄自体が自主的にきめてやつているわけであります。
  15. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は大体以上でよろしいです。
  16. 田中伊三次

    田中委員長 それでは次に熊本虎三君。
  17. 熊本虎三

    ○熊本委員 先ほど御説明がございましたけれども、時間の関係上大急ぎにやられまして、説明の中で少し聞き漏らしたものがございますから、二、三御質問申し上げたいと思います。  予算措置に関して数字をあげられましたが、その項目と数字とが明確に聞き取れなかつた点がございますから、これをもう一度御説明願いたい。  その次に部内節減に関して言及されましたが、これもよく聞き取れなくてたとえば公安官の移譲によつてどの程度の減額ができるかというような話がありましたその次の二点が、よくわかつておりません。これをまずお尋ねいたしたい乏思います。
  18. 大和与一

    大和参考人 公安官の廃止による捻出公安官は戦後日本経済の特殊現象によつて生じたのであるが、これが国鉄における必要性はなく、政府の必要によつたものであり、全額政府負担と見ることができる。しかし国鉄においても、まだまだ列車内、構内の盗難なども、わずかではあるがあるので、国鉄の経費で見るのはおおむね二〇%を存置すると考えた。昭和二十七年度中公安費は六億二千万円、職員数は二千五百八十二人。五百名を残すとし、給与被服一人当り二万円の乗率を考えて計算しますと、これによつて大体五億の剰余となる。べース・アップをした場合にはさらに増加することは当然である、こういうのであります。  それから高架線下用地及びその他鉄道用地の使用料改訂に伴う財源。これもこまかくありますが、この用地は現在種々批判が生じているところであり、不当に安価な使用料となつている。これを一般民間並に改訂することによつて生ずる剰余を給与に転用することは可能である。東京、大阪管内の高架線下を考えると、東京管内で一平方メートル二百円、大阪では百三十円。これを千円に考えてみると、大体八億五千万円ぐらいになるのではないか。全国的にはなお用地が残つでいると思われますし、契約期が本年度末であるから、来年度から可能である。なお全国における鉄道用地の使用料についても、同様な問題があるので、実施した場合は相当な額になる。なおこまかいことば数字がございますから、後ほど差上げます。それから死蔵品、過蔵品の処理による余剰。昭和二十六年度の資材の死過蔵品は、次のようになつており、価格は昭和二十六年度平均によるこまかい数字がございますから、これもあとで差上げるといたしまして、この結果はおおむね百五億が生ずると考えられる。この中で六〇%が普遍的に生ずる部分とすれば約六十三億円になります。この額は総資材の予算に対して四・八五%に当る。本年も同様なことが言えるのであるから、死過蔵品を労使双方がなくすることによつて、やむを得ない四〇%を除いて六十三億円ぐらいは余るのではないかと考えております。  それから第一項の組合の主張、基本ベース八月から、金額は八十八億六千万円。第二項、特殊勤務手当、これについて組合は四億六千万円お願いする。第三項の石炭代寒冷地手当、これについては五億三千万円お願いする。裁定第四項年末手当、これについては一・七箇月分百一億七千万円、裁定履行に伴う支出、超過勤務については裁定のみで十億四千万円、休職者給に二億二千万円、退職手当その他を含めて十一億三千万円、これは超過勤務、休職者その他を含めて二十三億九千万円、合計二百二十四億一千万円、こういうことであります。
  19. 熊本虎三

    ○熊本委員 私のお尋ねいたしましたのは、そのことではなくて、これが一般会計から支出されなければならない、それに対するあなた方の二、三、項目あげられました項目について、金額をもう一ぺんお伺いしたい。資料を持つて来なかつたものですから……。
  20. 大和与一

    大和参考人 失礼いたしました。財源捻出について、一般会計からどういうふうな目安があるかというお話でございますね。一は、二十六年度決算の残四百八十億、二つは、駐留軍宿舎移転費の余裕三百七十億。三には、インベントリー・フアイナンス今年度予算残の見通し三百億、合計千五百五十億、こういうふうに私たちとしては一応考えられるのであります。
  21. 熊本虎三

    ○熊本委員 大体総括的に申し上げますれば、先ほど御説明のように、裁定案の完全実施ということについては、私どももそうありたいと考えて努力をしてみたいと考えておるわけでございますが、その中で二、三お尋ねいたしたいことは、たとえば公安官の問題について、これも直接経営には関係がない、必要性がないというお言葉のようでございますけれども、もしもこれは支出移管をやりますれば、当然所管移管となりまして警察業務にこれがかわるということを前提としなければならないと思うのであります。そういう場合に、直接国鉄の任務の所管外ではあるかもしれませんが、しかし現在公安官がやつておるようなことを警察業務に移管してしまつて、それで現在の目的を達成するのには、執行上、運営上いろいろな支障がありはしないかと考えますが、所管の移管と歳出移管の関係については、どういうふうにお考えになつておるか、参考までにお伺いいたします。
  22. 大和与一

    大和参考人 ただちに全廃をするとか、どつかへ持つて行くということは、あるいは困難かもしれません。私たちとりあえずの考えとしては、予算項目をかえていただく、運輸省で持つてもらう、あるいは一般会計で持つてもらう、こういうことをとりあえずやつていただくことが必要ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  23. 田中伊三次

    田中委員長 熊本さん、ちよつとお待ちください。ただいま今井仲裁委員長が参りましたから……。それではちよつと質疑を打切つておきまして公共企業体等仲裁委員会委員長今井一男君。  今井君にちよつと申し上げますが、せつかくお招きをして時間の制限などをして申訳が、ございませんが、大体十五分ぐらいの範囲内で、問題点について御意見を承りたいと思います。
  24. 今井一男

    ○今井参考人 最初に一言お耳に入れておいた方がよかろうと考えます点は、仲裁委員会の仲裁に対する立場でございます。一部新聞雑誌等で、われわれも御意見を拝聴しておるのでありますが、要するに労使問題というものは、すべて自主的解決が原則でございまして、これに対しまして、権力的に当事者の意思にかかわらないで押しつけるという形は、最も避けなければならぬ点であることは申し上げるまでもございません。しかしながら、公労法でございまして、やむを得ずこれを両当事者の意思にかかわらず拘束いたしますものが仲裁裁定でございます。従いまして、われわれの立場は、あくまで一つ企業体におきましての労使の紛争を解決するという見地が、その主体となつております。すなわち、一般賃金委員会で、賃金はかくあるべきだ、こういつたような立場から議論をいたす考え方はとつておりません。従いまして、労使の意見が妥決しました部分、一致しました部分につきましては、われわれは何らの意見示さない。ただ、両者の意見が食い違つた場合に、その食い違つた点を何とかいたしまして調整する。むろん調整の立場は、一般の良識なり、あるいは輿論なりというものを中心にしてものを考えて行くつもりでありますし、また極力公平なる第三者の立場に立ちまして、独立独歩で判断をして参ります。あくまで労使の意見を、合せるように努力して行くということが、基本的な考え方でございます。  裁定の中にも書いておいたのでありますが、そういつた見地で考えますと、少くとも一つ国鉄という企業体におきましての賃金問題でございまして、従いまして、現在わが国の各産業、各企業において見られますように、時と場合によりましては、賃金が割高になる場合もありますれば、割安になる場合もございます。これは現在の経済機構におきまして、企業というものが責任をとつて運営をいたします以上は、これは避けられない現象であると思います。昨年あたりも、ある産業では年末に十万円ももらつたという話がありましたが、そういつたことも、決して非難するには当らない場合があろうと思うのであります。しかしながら、これが一般の民間の産業でなく、公共企業体という特殊性に立ちます以上は、やはりそこに民間の企業体と違つた制約を受けるであろう。すなわち、かりに国鉄が非常な支払い能力が出、経理に余裕ができたといたしましても、おのずからなるそこには頭の出る上の方の限度がある。その限度が幾らであるかということは、きわめてむずかしい問題でありましようが、これは私はあり得ると思います。同時に、反対に下の方の限度もあり得る。上の方の限度はあるが、下はすべて押えるということでは、バランスはとれますまい。従いましてその点をどの程度に時と場合によつて企業の能力に応じまして、組合員の諸君にがまんしてもらうか、あるいはこれより上は、あるいは下はどこで切るか、こういつた点が、われわれといたしまして一番苦慮いたします点でございます。算出額につきましては、比較的に簡単な方法をとつたのでございますが——第一次裁定以来、これで四回目に相なりますが、最初から、国鉄につきましては、企業の経理能力に非常な圧迫を受けております関係から、従来の裁定にはつきり示されておりますように、やむを得ず割安的な賃金をきめて参つたことは、今までの裁定の理由書にもはつきりうたつてあるところでありまして、それがそのまま延長された形で、今回の裁定と相なつております。しかし、われわれといたしましては、これが公共企業体の性質を考慮いたしましても、おそらく最低線であるといつた角度におきまして出したものでありますことは、この裁定の理由書にも、相当に述べてあるつもりでございます。問題は、国鉄の経理能力がいかにも乏しい。事実当初の予算では、ほとんど大部分の点におきましてこの金が出せないという点で、われわれも国鉄の経理能力というものを、ある程度ひつくり返したのでありますが、しかし、ここで見落してならぬことは、この裁定にもございますように、わが国の国鉄の輸送量は、戦前に比べまして非常にふえておる。少くとも旅客においては三倍以上、貨物も二倍近くふえております。国鉄の職員の数が非常に多いということが叫ばれておるのであります。確かに戦前に比べまして人数は相当大きくふえておりますけれども、そういつた仕事の量を考えますと、またもう一つは、国鉄作業そのものが、機械力にたよれない、こういつた人力本位の、すなわち一般製造工業におきまして労働生産性が上るという考え方と同じようなそろばんが持てない、こういつたような特殊性をしんしやくいたしますと、さらにただいまもお話が出たようでありますが、その後におきましての基準法関係、その他のいろいろな人員増を考慮いたしますと、とにかく生産性として戦前に比べておおむね見劣りはしない線にはバツクしておる。そういつた点並びに労働時間におきましても、一般公務員よりも、おおむね一割近く長い負担をしておる。さらに日夜をわかたず約四、五万の人間は、国鉄という作業の性質上、一分間も汽車をとめるわけに参りませんので、常に夜中に起きて働かなければならぬという形になつておる。また作業の性質上、毎日平均一人ずつの犠牲者を出す。また年末年始におきましても、全然休暇が与えられない。そういつたようないろいろな要素もあるのであります。またさらに昭和二十四年以来の約三割の減員、その減員が個人々々にとりましても、相当労働量を増加させておりますけれども、その面にはわれわれはおおむね触れませんでした。触れるだけの経理能力の余裕がない意味におきまして、その点はがまんしてもらうという建前で、この賃金は出したものでございます。  しかし、国鉄の経理の悪い原因は、大部分は物件費関係でありまして、物件費がおよそ七百倍になつておるのに対して人件費は三百倍程度にしかなつておらない。特に戦争によりましての非常な酷使、復旧、復興の遅延からいたしまして、実質的に考えますと、収入の約半分はそういつた面に充てられまして、結局わずかに半分で実際の直接の運転をしなければならないような形になつておる。これは一に賃金を国策的な見地によりまして抑えた結果であります。もちろんこの国鉄の運賃のような、わが国の産業に非常に重要な影響を及ぼすものに対しまして、これを非常に低く押えることは必要なことであろうと考えますが、しかし国策的な意味におきまして、そういつたような押え方をいたしますと、何らかの形でやはり国民がこれを見てやるという形がなければならないであろう。これは少し脱線になるかもしれませんが、たとえば自動車の運送でありますれば、それを使いまする路盤というものは、原則として自動車の乗客の負担にならぬ。また船の交通でありますれば、水路の標式からあるいは波止場というものまで、一切別の資金によつてまかなわれます。ところが国鉄だけは、かりに災害がありましても、たとえば昨年でありましたか、軽井沢の近所の熊ノ平の犠牲のような事故がございましても、かりにあの山くずれが山林の治水の間違いで起つたものといたしましても、その犠牲は全部国鉄の経理でカバーする、こういつた仕組みになつております。また国鉄が私鉄のようにいろいろ営利事業を兼常いたしまして、それによりまして利益を生む、こういつたことも原則的に許されておりません。また東海道線等の非常にもうかる鉄道だけを経営するならば、もちろん経理はきわめて余裕がございましようが、特別な国家の使命を帯びております以上、不採算の線につきましても、それ相当の仕事をしなければならぬ。一方運賃は、戦前に比べまして、今までのあらゆる物価の中では、おそらく一番低いのではないか。今回の値上げ案が出ますまでは、旅客においては百九倍、貨物においては百五十倍、こういつた線をとつておりますことは、他の料金あるいは物価に比べまして、非常に低いことは事実であります。たとえば、定期の料金等につきましても、そういつた国策的な非常な割引率の増大が戦後において行われておるのであります。その結果、同じく国鉄事業の運尚をその使命とする組合員の諸君にも、もちろんできるだけのがんばりなり、さらに今後の努力なりを要請する必要はございましようが、それにいたしましても、おのずからなる限度というものがあろうという考え方におきまして、われわれといたしましては、相当議論を重ねた結果、こういつた結論と相なつた次第であります。ただ、われわれの立場は、国鉄の経理は、一応は分析いたしましたけれども、しからばいかにしてこの点をカバーすべきかという問題につきましては、別に結論を持つておるわけではございません。それは、たとえば値上げの方法も一つの方法でございましようし、また一般会計が直接見てやるということも一つの方法でございましようが、特にまた現在の酷使による施設を復旧復興いたしますための投資は、その利益は大部分が後年の乗客利用者に均霑するのでありますから、これを現在の利用者に持たせることは非常に疑問がありはしないか。その意味におきまして、国鉄の施設の復旧復興を急ぐことが国としてきわめて重要でありますならば、この面において資金的な援助は、他の民間企業との権衡からも、相当考えられてよろしい点ではなかろうかというふうな点を痛感いたしたものであります。  時間も参つたようでありますから、御審議の上に何らかの御参考になろうかと思う点だけを、かいつまんで申し上げた次第であります。
  25. 田中伊三次

    田中委員長 この際ちよつと申し上げますが、成蹊大学教授の野田信夫君は、御都合により本日は出席がございません。そこで参考人としてただいままでに御発言をいただきました主君の御発言に関して、順次質疑をやつて参りたいと思います。(「総裁はどうした」と呼ぶ者あり)——総裁はお見えになつておりますけれども、総裁はもう再々発言をせられておりますから、質疑に入ることにいたしたいと思います。  それではまず熊本君、今の残りを簡単にやつてください。熊本虎三君。
  26. 熊本虎三

    ○熊本委員 それでは、もう一つお尋ねしておきたいのであります。これは自己資金の関係になろうかと思いますが、先ほど用地使用料の問題等が指摘されました。これはたくさんあろうかと存じます。いずれは直接関係者から参考資料等を集めましてなお研究してみたい、かように考えます。そこで一つお尋ねしたいことは、ガード下使用等の関係におきましては、現在弘済会が一手でこれをやつておるというような話を開くのでありますけれども、これらに関する改訂等の問題に関して、直接国鉄との利害関係において改善の余地があるかないか、その必要があるかないかについて、何か委員長から御意見を拝聴したいと思います。
  27. 大和与一

    大和参考人 その点はむしろ当局にお聞きをいただいた方がいいと思うのでありますが、今までは組合としてはタッチをしておりません。それからまたガード下の点は、弘済会が一手でということではないのでありまして、退職者を優遇するというふうな程度の考えがあるやに聞いておる程度でございます。
  28. 熊本虎三

    ○熊本委員 なおお尋ねいたしたいことは、国鉄の業績が、他の産業と比較して非常に上昇率が高いということは、この前組合側の資料に基いて、たとえば私が官房長官や、運輸大臣、国鉄総裁の三者にお尋ねいたしましたときにも、そのまま肯定されておるわけであります。ただ問題は、その能率上昇というものが、人の努力にまつところが大きいのか、あるいはその他の客観情勢伴つてそれだけの上昇になつておるのか、帰するところの功績といいますか、その成績上昇の最大努力の拠点はどこにあるのか。私がお尋ねいたしますことは、ややもすれば戦争前等に比べて、国鉄従業員の数が倍加しておるということで、そのために国鉄従業員諸君の努力の点について、いろいろと批評がましいことが言われておるわけであります。能率の上昇率に比べますと、問題ではないと思いますけれども、その上昇に伴います努力成果の比重点をお尋ねしておくことは最も必要であろうかと存じます。荒廃いたしました国鉄の保守改善は、何回か当局者が言つておりますように、これはできておらぬ。しかし、上昇率は非常な勢いをもつてつている。こういうことになりますれば、私の考えをもつてすれば、おおむねこれは国鉄従業員諸君の血の出るような努力の結果が、ここに集約されておるというふうに考えておるわけですが、これらの点をそういうふうに解釈していいかどうかを尋ねておきたいと思います。
  29. 大和与一

    大和参考人 ただいまの御質問は、まことにその通りであると思います。私たち国鉄職員の立場から言えば、必ずしも十全の最大の能率を上げておるとは申し上げかねるかもしれませんけれども、しかしそれよりも、いみじくも今仲裁委員長がおつしやつたように、この仲裁裁定は最善のものであると確信して裁定しているというお話がありました。あるいはその他のことにつきましても、すべてが運賃にしわ寄せするというようなかつこうになつているのではないか、あるいは労働基準法も完全に守られていない、最低生活も保障されていないではないか、こういう中において人間として最善の努力をしているけれども、なかなか私たの思うようには行かない、こういうことだと思います。従つて、初めの言葉とちぐはぐになりますが、われわれ従業員としては最善の努力をしている。しかし、その他の面があまりにも不十分なために、なかなか国鉄が産業の大宗として十分な役割を果し得ないのではないか、こういうふうに御回答申し上げます。
  30. 瀬戸敏夫

    瀬戸参考人 ただいまの熊本さんの御意見に関連して、ぜひ一つつていただきたいことを申し上げたいと思います。それは国鉄従業員が多いのではないか、このような御意見に関して、ひとつ専門的に申し上げてみたいと思つております。  確かに現在は四十四万四千人でございますが、戦前には基準法が適用されておりませんでしたので、基準法の実施に伴うものが七万人、連合軍関係の人が一万一千人、公安官関係が三千人、自動車輸送の増加に伴う増員が九千人でございまして、さらに志免の炭鉱の五千人が入りまして、合計九万八千人というものは、戦前の姿から戦後の新しい姿にかわつた増員でございます。そうしますと、四十四万四千人から九万八千人を引きました三十四万六千人が戦前の作業の実態から生れる人員でございます。そうすると、戦前が二十二万八千人と言つておられますので、約十一万八千人多いのではないか、このような御意見に相なると思いますが、この面に関しましては、私たちとしてはかようなことを考えている次第でございます。要するに輸送の量は、戦前の姿から見ますと、旅客においては三四二%、三・四倍になつている、さらに貨物は一九〇%でございますから、一・九倍になつている。結局客扱いの多いのと、貨物の多いのは、現在の国鉄の設備では当然人員がふえて来る。何としてもこの面を機械化して客扱いを便利にするとか、貨物の扱いを便利にするとかいうことは、まだ国鉄の機械化はそこまで行つていない。どうしてその面が出て来たかというと、機関車労働組合の運転関係から申し上げますと、ロング・ランの運転を機関車がし始めた。要するに戦前の姿においては、大体機関車というものは一仕業が百五十キロからせいぜい二百キロしか走れなかつたものを、戦後は五百キロ、この程度を一つ機関車が休むことなく乗継ぎ乗継ぎで運転をしておる。こういう面で非常に能率的な機関車の使用ができる。さらに機関車自体が最近では電気機関車のEL58が活躍し始めた、さらにD52、C57が活躍し始めた。先般の八十周年記念のときの機関車と御比較願えば、ただちにわかるのでありますが、明治初年の新橋、横浜間を走つた機関車の乗務員は、わずかに機関士と機関助手の二人であつた。さらに先般あそこに陳列されていた「義経」にしても「静」にしても、やはり二人の乗務員であつた。これを牽引力から比較しますと、結論的にはわずかに二百五十トンあるいは百五十トン程度の機関車でも、乗務員は二人であつた。最近は千三百トン、千五百トンを牽引するという事態が出て来た。そうすると運転関係の従事員に関しては、乗務員の例をあげてみても仕事の量がふえて、電気、蒸気合して五千四百四十余両でございますが、機関車がふえれば、その乗務員というものは二人ずつふえますけれども、決してその定員というものはふえていない。  さらに検修関係ではどうかと申しますと、大づかみに申し上げまして、機関区の技工というものは、皆さんも御承知通り、浅川へ運転するところのお召列車の八六〇〇の機関車でございますが、これは機関区の技工が一人で一台を見るのが定員でございます。これは国鉄の定員の査定基準でございますので、決して戦前も戦後も動いていない。むしろ現在は走行キロの関係を入れましたので、少し辛くなつておる。こういう面を見ますと、機関区のきよう入つた技工も、三十年の技工をチャンポンで、一人が一台をどうしても修理しなければならぬ。さらに検査掛りを見ますと、大型のC51というお召の機関車を例にとつて申し上げますと、あの機関車を検査掛りは自分の責任で一日に二台を検査する。戦前の検査掛りも戦後の検査掛りも、いろいろその時期において技能には差があると思いますけれども、とにかく鉄道の定員といたしましてはC51の機関車の検査掛りというものは二台見なければならない。こういうわけでございますので、運転関係には遺憾ながら定員がふえた、あるいは現在員がふえたというお言葉は適用されないのではないか。  そこで、ふえた面は、国鉄の機械化が遅れたために、旅客が多くなり、貨物が多くなり、戦災復旧ができていないために、どうしても必要以上の人間がそこに出て来る。こういうことで、決して現在の要員というものは今井仲裁委員長が言われた通り、多くはないとわれわれは考えておる次第であります。
  31. 熊本虎三

    ○熊本委員 私は国鉄総裁のお答えを願う点について、前もつて希望がございます。それは、先ほど国鉄の代表者からは、非常に遠慮がちな答弁があつたと思います。特に人員の問題等につきましても遠慮がちな答弁のように、しろうとである私は考えます。そこで帰するところは、今日の他の産業に比較する国鉄の能率上昇の問題に関する最大の努力の点は、やはり人にありという結論になろうかと思う。人の努力がすなわち今日の成果をあげて、この困難なる設備の中でやつておるというふうに私どもは解釈したい。私、専門家でございませんから、いろいろ熱心な御説明を得ましたけれども、一々の局部的説明についてはつきりのみ込むことができませんが、総合的に総裁から率直なる、ただいまの説明に対するお考え方を求めたい、かように考えます。
  32. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 お答え申し上げます。定員の問題というようなものは、いろいろな見方がございますので、いろいろ議論があろうかと思いますけれども、私どもが大きな腰だめで今まで考えて参りましたのは——ただいまの機関車の乗務員の問題、いろいろなものがございますが、それらのものをひつくるめて、どういう考え方で今までやつて来ておるかと申しますと、輸送量の増加が毎年若干ずつあるわけですが、その増加率の大体半分ぐらいの率で、やはり人間もふやして行かなければならぬというふうに考えて来たのが、鉄道のやり方であつたと思います。今日でも、およそそういうことで私はにらんでおります。そういたしますと、昭和十一年が二十二万八千人、約二十三万人でございますので——輸送量の増加は、先ほど来話がありましたように、三倍あるいは二倍というふうになつておりますから、旅客も貨物も平均して二倍であると考えましても、この二十二万八千人が倍になる、四十五万何がしにならなければならぬということに結論づけられるのではないかと思います。ところが、それはやはり半分では少し多過ぎるということで、これをかりに三分の一にしましても、六割とか七割というものがふえて行かなくてはならぬ。そうすると昔のままの姿でも三十五、六万から三十八万ぐらいの人間が必要である。いわんや先ほど来申しましたように、労働基準法あるいは修理工場その他いろいろの特殊な事情が戦後においてはございますので、やはり十万ぐらいの人は、昔よりもむしろふえるのが当然であつて、今日の姿は決して人員の多いものではないというふうに私は確信いたしております。
  33. 熊本虎三

    ○熊本委員 なおお尋ねいたしますが、物件費人件費との比率が、だんだんと逆転して来ておるという御説明がございました。それは数字の上でも資料でわかつておりますが、ただ私お尋ねいたしたいことは、しからば、国鉄に類似するというほどの私鉄はございませんけれども、おおむね軌道輸送を中心とする私鉄等における物件費並びに人件費の比率等について、比較対照するような資料がございましたら、ごく簡単に一、二をあげて御説明をたまわりたいと存じます。
  34. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 これはちようどいい資料がなかなか見つからぬのじやないかと思われます。と申しますことは、私鉄は大部分電車でございます。従いまして、動力の点が非常に違つております。国鉄は、おおむねが石炭でございますから、その間の関係がじやまをしてうまい比較になるようなものは、なかなか手に入りがたいのではないかと思います。
  35. 熊本虎三

    ○熊本委員 私ばかり時間を拝借して恐縮に存じますが、今井委員長にお尋ねを申し上げます。先ほどの御説明の中で、国鉄の施設増設、改修等の経費をやはり一般経費の中から捻出されようとすることは、これは性質上無理であるということが一点、さらにそれが運賃値上げ等によつてカバーされることは、国鉄将来の一般性から考えまして、現在の利用者の受益に基く負担ということとあわせて将来の利便、すなわち将来の受益者への多くの利益があるわけでありますから、従つてこれも運賃値上げ等によつてのみカバーするという考え方は間違つておるというお説のように伺つたわけでありますが、その通りであるかどうか、一応お答え願いたいと思います。
  36. 今井一男

    ○今井参考人 われわれ仲裁委員会立場といたしましては、当事者の争いになつております賃金額等につきましては、これはわれわれの立場上コンクリートな結論を出しておるのでありますが、あとこの経理をいかにして埋めるかという問題は、もちろん先ほど申し上げました一つ企業の紛争として解決いたします立場上、むろん経理能力は十分掘り下げをしなければならぬことはわかつておるのでありますが、いかにしてカバーするかということこそ、国会の御審議にまつべき問題でありまして、われわれとして、決定的な意見はこの中にも書いてございませんが、ただ今泉並びに福井委員と三人で議論しました結果としましては、先ほど申し上げましたような点が出ておるのであります。すなわち、運賃がいかにも安い。他の物価に比べて安いことは間違いありません。従つて、これを上げることも十分考えてよかろうということを私申し上げました。しかしながら、他の大局的な見地からして、それを上げてはいけない、こういうお立場考えられる。その場合には、またこれだけほかの方でいろいろと制約をつけておる立場上、考える道があるのではないか。それは一般会計からある程度国費で見るという立場もございましようし、さらにまた、先ほど申し上げました将来の受益者の負担にまつ、こういつた考え方もあろう。現に裁定にございますように修繕と償却によりまして五二%、すなわち過半の金をその面に投じさせられておるのであります。それで復旧や復興をもつと繰延べてよろしいということならば、運賃値上げも必要としないかもしれません。それもまた国民の代表である国会がおきめになることだろうと思うのでありますが、そういつた角度をやはり国民の要請として入れるならば、今申し上げた、後年の受益者が負担するという考え方は、十分取入れてよろしい考え方ではなかろうか。現に私鉄のやつております償却並に考えますれば、国鉄の償却はおよそ半分ぐらいにまで減じてもよろしいという見方もございます。しかし、それは単なる一つの見方でありまして、国鉄の酷使によりまして老廃しました施設を、もつと早く戦前の姿にもどさなければならぬ、こういう見当であれば、今の償却高、修繕高が多いとは決して言えないかもしれません。私どもは、実は多いとか少いとかいう議論はしたわけでは、ございませんが、必要であればそういうことも考えられる、こういう意味であります。
  37. 熊本虎三

    ○熊本委員 せつかくこういう会合を開くのに、運輸大臣が参考人意見を聞かないというべらぼうな無責任な話はないと思う。一体運輸大臣は本日の公聴会を何と心得ておるのか。——大臣の出席要求します。
  38. 田中伊三次

    田中委員長 ちよつとお待ちください。後刻処置をします。   石田君。
  39. 石田一松

    ○石田(一)委員 私はただいまそれぞれの当事者から御意見をお聞きしたのですが、それに関連して、今朝あたりの新聞を見ますと、この裁定の第四項にいうところの手当の問題で、国鉄当局は、すでに閣議か何かで予算のわくが出た、それだから三千円以上を支給することが困難である。また組合側としては、そんなものは受付けられないというので、決裂ではないけれども、話が進められなくて、ものわかれになつて、五回か六回かすでに交渉になつておる。私はおそらく新聞が事実を伝えておるという前提のもとにお尋ねするのです。これは国鉄総裁にお尋ねしますが、政府あるいは国鉄は、この仲裁裁定を尊重するとおつしやつている。尊重なさるのであつたならば、私はこれをどんなに割引して考えても、公労法の十六条の予算上、資金上のあの「予算」というのは、国会の審議及び議決を経たもの、これが予算であるはずで、まだ審議過程にあるにもかかわらず、要するに国鉄当局の責任者である総裁が、閣議で予算のわくが一応きまつているから、三千円以上の手当は出せないとおつしやることは、まるつきり仲裁裁定というもの、公労法の精神がわかつておらず、それを無視しておるのではないか、私はこういうふうに考える。そこでお聞きしたいのですが、総裁は予算上、資金上の「予算」というのは、まだ国会で審議可決決定していないところの過程にある、今予算委員会にかかつておるところの、一応政府が出したあの案そのものが、公労法にいうところの予算上、資金上というあの「予算」なのかどうなのか。そういうお考え団体交渉をしておるか、この点をこの際はつきり御答弁を願つておきたい。
  40. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 お説の通りでございまして、ただいまのところでは、現在二十七年の当初においてきめられました予算以外には予算はございません。おつしやる通りであります。従いまして十六条云々という問題は起るはずはないのでありますが、しかし時期がだんだん切迫して参つておりますので、予備交渉的ないろいろな話合いをしておる程度のものでございまして、理論的にはおつしやる通りであります。
  41. 石田一松

    ○石田(一)委員 そういたしますと、総裁が三千円以上は出せないとおつしやるところの根拠は、いわば一応閣議の線できまつた今出されておる補正予算案の内容からして御返答になつたことと、私はこう推察するのです。そこで、ここで一応お聞きしておきたいことは、これから団交できめらるべきものを、予算委員会あるいは国会が自由に口をはさむのではないのですが、大きなわくとして、あるそれ以上のものが出る、こういうことがあつた場合には、当然今総裁が三千円以上できないのだとおつしやつておるところの根拠自体がくずれるのですから、もちろんこれは当然裁定の線に沿うように努力されるだろうと思うのですが、これは間違いありませんか。
  42. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 予算決定がありましてから、その間の問題は明確になることは、言うを待たないことであります。
  43. 石田一松

    ○石田(一)委員 私は総裁の今のお答えでは、ちよつとおかしいと思うのです。というのは、そうすると総裁はこの仲裁裁定を尊重するとおつしやつていながら、予算裁定が完全に実施されるような予算が組まれることに努力していらつしやるのではなくて、この仲裁裁定が完全に実施されないような予算上の措置がとられた後になつて予算がこれだからできないと言おうと思つてつていらつしやる。これは国鉄当局としては、ちよつと違うのじやないか。この段階においてあなたが誠意を示して、むしろ政府を督励し、あるいは従業員のために親となり兄となつて極力奔走して、そうして今三千円とお答えになつておるこのわくが、たとい五千円でも、あるいは国鉄要求する額そつくりとまでは行かないでも、一・二とか一・三というものがとれるように努力なすつて、それでその努力も水泡に帰した、国会側でもこれに下まわつた決定があつた場合には、予算上こういうわくがあるから団交には応ぜられないということは言えますが、今の段階では、予備交渉ということを言われたので、ちよつと了解がつくのですが、この三千円の線なんかをお出しになることは早い、もう少し努力してもらわなければ困ると思います。われわれの方も、ある考え方を持つてつてはおりますが、国鉄当局自体としても、政府に対してそういう努力をなさる必要が当然の義務としてある、こういうふうに思いますが、いかがですか。     〔田中委員長退席、山村委員長代理着席〕
  44. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 補正予算が出されるまでの間に、政府には相当お願い申し上げたのであります。ところが、遺憾ながら今閣議決定になつたわくの中に納まつたわけですけれども、しかし実情に応じてできるだけ、幾分なりとも多くやりたいという心持は持つております。けれども、そのわくを大幅に広げるということは、やはり非常にむずかしいのじやないか。ことに御注意を願わなければならないのは、ただいま石炭のストで、その方面においても収入が激つて来ております。列車をまた間引かなければならないというようなことで、非常に暗澹たる状況にありますので、心配しておるようなわけであります。三千円というのは、ただ単にそういうような金の計算の仕方もあるというだけのことでありまして決してそれでなければならないというようなことを、今考えておるわけではございません。
  45. 石田一松

    ○石田(一)委員 そこで今井委員長にちよつとお伺いしたいのですが、あの裁定と四項のいわゆる団交によるという点です。もちろんこれは何も決定されたものをとやかく言うのではありませんが、この点どうも仲裁委員会裁定というのにしては——裁定をなさるのは、さつきもおつしやつた通りに、両当事者の意見がどうしても合わないので、それを合せる意味で裁定をした、こうおつしやつていて、それでこういう「年末手当は、理由に示す趣旨に従い、両当事者の団体交渉によつて決める。」ということになりますと——団体交渉でまとまらなかつたから、調停委会員あるいは仲裁委員会に持ち出したものを、また仲裁裁定で団交にこれをゆだねるということになりますと、逆もどりしたような気持がするのでありますが、これはどういうお気持なのか、この点をちよつと伺つておきたいと思います。
  46. 今井一男

    ○今井参考人 お考え申し上げます。年末手当に対する考え方でありますが、両当事者ともに、その年度の業績もある程度勘案いたしますとか、あるいは一般の民間における年末手当の実態がどうあるかということを見定めるとか、その他いろいろな要素がございますので、この裁定を行いました七月に十二月のことまで予想するということは危険だと思います。かえつて実態に沿わない面が出ますので、そこで一応年末手当に対する大まかな考え方だけを理由書の中に書きまして、その趣旨で両方で話し合つてきめてほしい。もしきまらない場合には、仲裁委員会はいつでも金額をおきめする用意があるというようなことで、それがより実情に即するゆえんであるというわけで努力をし、三人で協議の結果、こういう裁定になつたわけであります。
  47. 石田一松

    ○石田(一)委員 たいへん私いいお話を聞いたのですが、国鉄裁総どうでしよう、今日でもあらためて団交をお聞きになつて、最後的に団交がまとまらないということにしてもらつて、そしてあらためてさつそく仲裁委員会とも——いろいろお忙しいことだろうと思いますけれども、その用意があるのですから、その用意の線で年末手当の額を出してもらう。それでこれを実施するということでおやりになつたらいかがですか、そういうお気持はございませんか。
  48. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 りくつはその通りでございますけれども、何分年末が差迫つているので、実はこの席を拝借しまして皆さんに、非常に御審議が重なつて御多端だと存じますけれども、なるべく早い時期にきめていただきたいと存じます。一方予算の方の関係もございます。さらに予算にひつかかつて運賃法の改正がございます。その三者がからみ合つているのでございまして、非常に御迷惑だと存じますが、どうか従業員諸君のために御勉強願いたいと思つているようなわけでございます。さらにこの裁定を持ち帰つていろいろやることになつて来たら、どうも私としては忍びないところであります。
  49. 石田一松

    ○石田(一)委員 ちつともそんなことはない。今のわくである三千円だけやつておいて、それ以上になりますのはきまつているから、それをはつきりきめてもらうのです。それはちつとも困りはしません。今の予算だけきめておいて、あなたが考えていらつしやる三千円だけを先にやつて、あとから仲裁委員会がきめたものを尊重すればいい。足らなければ追加すればいいのです。そんなものは少々遅れても多い方がいいですから。そういう意味で私は申し上げておるのです。総裁が閣議で一応きまつた補正予算を十六条の予算とみなして、団体交渉においてもはつきりした線をお出しにならない、ここに何か割切れないものを私は感じておる。私たちも努力いたしますが、これは早くしなければならぬことはわかつておりますので、総裁の方でも、他の争議の関係等で、実情はいろいろ察しますけれども、これは先ほど来言われた委員長お話を聞いても、この裁定の線が最低だとおつしやつております。この点をぜひ考慮の上、相当の努力を当局側にしてもらわなければならぬと考えます。  これで私の質問は打切ります。
  50. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 春日君。
  51. 春日一幸

    ○春日委員 ちよつと伺いますが、憲法二十八条の団結権、それから行動の自由権というものは、結局公企労法においても、この仲裁委員会の行う裁定の中に横すべりして、その権利がそのまま維持されているものでなければならないと考えるのでございます。従いまして、三十五条に、これは最終的な決定である、両方が無条件に従わなければならぬということがあるのでございまして、これは一般労働組合ならば、不当労働行為に写るいろいろな争議の裁定を行う場合において労働委員会決定ですら行政裁判を起すことができることが留保されております。ところが、公企労法においては権限の留保がされていない、最終的にこれに従わなければならぬということで、すなわち仲裁委員会の中に、国民はこの法律を通じて一切の権限を付託しているわけなので、最高裁判所の判決と同じような権威を、この裁定は持つておると思うのでございます。そこで労働組合は遵法精神からこれに聴従しておられるのだが、一方政府は、その但書の条項に従つて、第十六条を採用してこれを否認しようという態度に出ているわけであります。本日国会に対してその承認を求めるの議案が提示されておりますが、十六条の取扱いのやり方が、政府によつて間違われていないかと考えますので、この点を今井委員長にお伺いしたいと思うのでございます。すなわち、十六条は政府を拘束するものではないということをうたつておりますけれども、もとより、これは言うまでもなく、新しい財源を必要とする場合は、国会の承認を求めなければならないので、そのことは当然のことをうたつているわけでございます。従つて新しい助源を必要とする仲裁が行われたときにおきましては、むしろこの第二項に従つて国会にその所要財源の承認を求める、このことがうたつてあるのが十六条でございます。すなわち承認を求むべき手続規定が十六条であろうと思う。ところが政府は、それを逆に拘束するものではないということを、いわば希望的に拒否の方向へとこれを解釈いたしまして、いわゆる不承認の承認を求めて来ておるのだが、このことは結局、当然予算に対しては国会が権限を持つておるのだから、その権限を持つているものに承認を求めるという態度はおかしい。すなわち三十五条の規定による最終的決定に対する正常なる政府の態度がいかにあるべきかというと、所要財源を第二項によつて承認を求めるというのが正常なあり方であつて、不承認を求めるということは、この第十六条において何ら規定されていないと思う。これに対して、今井さんは、こういう政府の不承認を求めて来る態度が、公企労法の精神からいつてどういうものであるかということを、ひとつ御見解を承りたいと思うのでございます。  それから私は、労働組合の責任者にお伺いしたいのでございますが、これが最終的決定である。政府はこれに対して、第十六条に従つてこういうふうな承認あるいは不承認を求めるところの権限が留保されておるのだが、労働組合の諸君は、労働者の団結の自由、その表現の自由、これが公企労法によつて横すべりされている。しかもその決定がもしも認められないときには、憲法二十八条の労働者の権利は全面的に蹂躪されるわけであります。従つて三十五条は公企労法の生命をなすものだが、これが根本的に蹂躪された場合において、その公企労組に対する何らの救済が行われるところがない。一方的に否認された、しかも法律を蹂躪して否認された場合において、諸君はどういうふうな態度によつてその労働者の基本的労働権を守つて行かれるのであるか、それに対する御所信を承りたいと思います。  それから長崎総裁にお伺いをいたしたいことは、この仲裁は二、三、四項にわたつては、今後の団交にまつと言われている。従つてこの裁定は、この裁定の申請者に対して仲裁が行われたのであるが、現実にはこれは国民に対して、すなわち国家に対してこの仲裁が行われていると、われわれはこの法律の建前から了承しなければならぬ。従つて、われわれは所要財源を審議する建前においてその資料を必要とするのであるが、今二、三、四、項にわたつては団交にゆだねられているので、従つてその団交の結果をまたなければ、われわれは当然その職務である予算を審議する、すなわちこの仲裁委員会決定に対する所要財源を審議するという審議権を行使することができない。そこで、すべからく二、三、四については、ただいま石田さんも触れられたように、とにかくあなた方の団交の決定がすみやかにここに要請されているわけであります。この仲裁が行われて以来、すでに二箇月近くもかかつたかと思うのでありますが、われわれ国会が審議のデータとして最も必要とする二、三、四に対する何らかの団交の決定というものが提示されなければ、われわれは国会においてこの裁定を審議する義務を果すことができない。これに対して一体どういうふうにお考えになつておるかということをお伺いしたいのでございます。
  52. 今井一男

    ○今井参考人 われわれ仲裁委纂の公労法に対する見解が、法律的に申しまして、はたしてどれだけの権威のあるものかは問題でありましよう。われわれも関係者として、この問題については幾たびか議論をかわしましたけれども、こまかな点になりますと、大分見解がわかれました。今まで出て来た仲裁委員は、十何人も変更しておりまして、私かわりまして全部の人の意見までも御紹介する余裕もございません。大体の線は一致しておりますけれども、こまかい点になりますと、かわつて参ります。ですから、申し上げることは、一人の委員としての意見になろうかと思います。  この裁定は、労働協約にかわるものでありますから、この当事者は、結局国鉄国鉄組合という団体、この二つの当事者だけを拘束することは、法律上議論の余地はないと思う。従いまして第三者には別にかかわりのないものであります。政府国鉄との関係は、監督権の関係はございましても、国鉄が一個の法人格として政府から離れて一つの人格者であります以上、国鉄を拘束するということ自身は、必ずしも政府を拘束することにならない。その意味から、法律にああいう文句がうたわれましたことは当然過ぎるほど当然である、かように私どもは法律的には考えるのであります。しかしながら、これを立法の趣旨並びに道義的な面から考えますれば、これはむしろ私の個人的な解釈になるかと思いますが、大体公労法ができました最大の動機は、例の二十三年七月のマ書簡であります。マ書簡がなぜあのとき出されたかということを考えてみますと、結局におきまして、当時の労働攻勢というものが、ほとんど政府相手の倒閣運動に終始し、一切を政府団体交渉によつてきめよう。極端な例といたしましては、予算団体交渉によつてきめる、税法も団体交渉によつてきめる、こういつた主張まで一部の諸君ははつきりと言明したくらいであります。こういつた公務員関係団体交渉政府が直接やりますと、結局において予算の問題等に言及せざるを得ないことになることは、理の当然でございます。従つて、それでは日本労働運動の健全な発達上おもしろくない、かように司令部の方では考えまして、そこで国鉄、専売というものを公務員から切り離しまして、別に法人格のある公共企業体をつくつて、その公共企業体組合との団体交渉によりまして、その結果がまとまらぬ場合は、仲裁で拘束する。その結果、結局予算関係ある場合は国会の御審議にゆだねよう、こういつた趣旨によつて政府はほとんどいわばお取次ぎ的な役割に立たせられた。そういつたことによつて労働運動政治運動との関連性を断ち切ろう、こういつた意図が、少くとも当時の総司令部の意図であつたと私は想像するのです。もしその趣旨通りに解釈いたしますれば、あの拘束されないという文句は、お取次ぎ役的な意味合いに立つことが、少くとも立法当時の精神に沿うものであると思います。ところが、この八月に公労法が若干改正されまして、「事由を附し」という文句が入りましたので、私の見解は若干かわらざるを得なくなつて参りましたけれども、実際の扱い方は、特に予算というものは国会決定権を持つておられる以上、その点は国会の御審議を経ることが順序だと考えるのであります。  もう一つ、ついででありますから、出過ぎたことかもしれませんが、私ども仲裁委員会立場から申し上げたいことは、少くとも賃金が高いから、あるいは安いから、従つてこれは尊重する、尊重しないというふうな態度——これは世間に一部はあるようでございます。政府の中にも一部そういつた意見があることを風聞でも聞くのでありますが、これはおもしろくないと思う。仲裁裁定というものは、もしもこれが最終的なものという前提に立つ以上は、調停案でありますとか、あるいは人事院勧告でありますとかいうような、のむとかのまないとかいう判断を許すものではない。ただそれを予算的にどう処置するか、こういつた問題は国会に残された問題であります、国会で十分御審議を願わなければならぬ。少くとも高いから、安いからということではなくて、予算的、企業的な見地から御審議いただければ、一番公労法の趣旨に沿うゆえんではないか、こう日ごろ思つておるのであります。
  53. 春日一幸

    ○春日委員 それで仲裁委員会は、むろん経理能力、それから社会情勢、いろいろなものを勘案して、十二分に科学的に、実際的に御検討願つた結果、この仲裁案というものが裁定されたと思うわけであります。従つて国家はあなた方に全権を付託しているのであつて、そのことはもうとやかく論議の余地はないと思います。そこで事由を附してというわけは、財政は困難であるとかどうとかいう実情を述べることはさしつかえないと思うが、不承認という、承認を求めるの案件としてこれを提出することは、十六条の規定に違反する行為であると私は考えるが、この点をひとつ明確に御答弁を願いたい。
  54. 今井一男

    ○今井参考人 先ほど申し上げました通り法律論と法の精神と申しますか、そこはやはり別に考えられるべきものではなかろうかと思います。従いまして、政府がこれにつきましてどういつた行為をおとりになりましても、当事者外に立つという公労法の建前から言いますれば、政府というものは法律違反にはならない。しかしながら、公労法をつくつた動機から申せば、問題があろうということは、はつきり申し上げられます。
  55. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 それでは午後一時半まで休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十六分開議
  56. 田中伊三次

    田中委員長 それでは休憩前に引続いて会議を開きます。  そこで休憩前の春日君の質疑に関連して石野君。
  57. 石野久男

    ○石野委員 先ほどの石田委員及び春日委員の質問に関連しまして、一つお聞きしたいのであります。ただいまは国鉄の総裁が参つておりませんので、総裁にも同時にお聞きしたいことなんでございますが、裁定の第四項の問題については、先ほど今井仲裁委員会委員長から、このお話がありましてこれをこういうふうに裁定する事情は一応承つたわけであります。しかし、今日私たちの問題になるのは、当事者の団体交渉によつてきめるということが、その後どういうふうに進捗しておるかということなのであります。先般連合審査にあたりまして、国鉄総裁が、この問題については、すでに補正予算として組まれておるわく内で十分にできる意味のことを申し述べられたと私記憶しております。このことは、第四項の規定との間に、非常に矛盾が生じて来るということを、私は先般も指摘したのでございますが、今日といえども、それは非常に重大であります。従つて、この機会に私は国鉄総裁にそのことについていま一度趣意をお聞きすると同時に、その後の当事者間の団体交渉はどういうふうに進捗しているかということについて、国鉄労働組合委員長機関車労組の委員長のお二方から、第四項に関する事項についての事情だけを一応簡単にお聞きして、あと国鉄総裁からも、はつきりそのことを御答弁いただきたいと思います。
  58. 大和与一

    大和参考人 先に、春日さんから御質問があつた公労法第十六条に政府が違反した場合には、組合はどういう決意を持つておるか、こういうような御質問に対してお答えいたしたいと思います。この問題については、しよせん国会においてきめらるべきである、こういうふうに考えますし、理論的解釈においては、公益先行の原則ということもあるが、われわれとしては憲法第二十八条に立ち返つて、基本的労働者の権利を守るためにストライキ権はわれわれに与えられたものである。こういう観点に立つてわれわれは留保する。従つて、そのことによつて生ずる四十万組合員の団結あるいはそれによる紛議がありましても、中央闘争委員長として責任は負えない、こういう段階にあることを言明します。  第二点の団体交渉はその後行われておるか、どういうようなかつこうであるか、こういう御質問でありますが、それに対しては、今お話がありましたように、総裁言明が何日か前にあつたとか聞きます。このわく内でやれるとかやれぬとか、そのためか昨日までの団体交渉では、当局は公労法の閣議決定のわくに一応固執しておるかつこうである。私の言つておるのは、理論的に明確なものは仲裁委員会裁定だけであつて、閣議の決定も仮説である、あるいは今後きまるべき労働委員会予算委員会決定も仮説である、本会議の決定だけが最終的な決定である、こういうぐあいに団体交渉でも言つておりますが、現在でも先ほど国鉄総裁がおつしやつたようなお話が、当局の交渉委員には徹底していないといううらみがあるやに思いますから、その点ひとつ御親切に当局の方に教えていただきたいと思います。
  59. 瀬戸敏夫

    瀬戸参考人 機関車労働組合瀬戸でございます。先ほどの春日委員の御質問の第一点に対して結論を申し上げます。機関車労働組合の綱領としては、輸送を通して国家の興隆をはかるというのでございますが、とにかく今井仲裁委員長の言にもありました通り、さらにまた、ただいまの大和委員長の言もこれあり、われわれも憲法二十八条の基本的な問題にかかるのではないかと思います。そこでわれわれの考えておる一例を申し上げますと、先ほどの御質問にもありました通りに、三十六条協定で超勤拒否という問題が論議されましたが、この一面を簡単に申し上げましても、われわれが出先において三十六条協定を即完全実施したならば、これは重大な段階に相なるだろう。なぜならば、線路は行きも帰りも一本でございますので、わずかに一つ列車がそのような事態を起しても、これは国鉄列車に影響するという重大な要素を持つておるわけです。しかしわれわれとしては、本委員会各位の良識と、また組合としても国民に対する考え方もこれあり、このような仲裁裁定完全実施されない場合には、国民にその信を訴え、堂々とこれを行う、このような考えでございます。  さらに、団体交渉がその後どうなつておるかというお話でございますが、これは前後六回行いましたが、とにかく政府の先般出されました百六億九千三百万円のわく内で一切を解決しようというようなお考えで、本日まで一歩も進んでおりません。先般国鉄総裁が委員会で言明されたというようなことを聞いておりますが、とにかく現在のわくでまかなえるということは、毫もできないのではないかと思いますので、その点ぜひひとつわくを拡大するようにお骨折りを願いたいと思う次第であります。
  60. 田中伊三次

    田中委員長 国鉄総裁は間もなく参ります。参りましたらまた発言を許します。  正木君。
  61. 正木清

    ○正木委員 国鉄総裁に対する質問は、お見えになりませんから、留保しておきまして、仲裁委員会委員長の今井さんに、裁定を下した理由書を根拠にして、お伺いいたしたいと思うのでございます。  まずお伺いの第一点でございますが、このたびの裁定委員会が下しました裁定は、いわゆる最低の裁定であろというところに基本の精神があるようでございます。その裁定賃金を、本来ならば本年の四月に遡及してしかるべきものではあるが、国鉄の支払いの能力がかようかくかくであるから、八月から実施するのだというこの裁定の下し方に対する委員会としての基本的なお考えを、御発表を願いたいと思います。
  62. 今井一男

    ○今井参考人 御指摘の通り、今回の賃金紛争は、三月以降から続いておるのでありまして、従つて、四月に遡及するという見方も十分成り立ち得る。しかしながら、本年度は新たに夏季手当というものをもらつた。それだけでは、むろん差引計算にはなりませんが、それである程度のことはカバーできる。またかたがた今おつしやつておりましたように、国鉄の支払いの能力等にもかんがみまして、八月といたした次第であります。
  63. 正木清

    ○正木委員 そこで重ねてお尋ねをいたさなければならないのですが、これからお尋ねいたします点については、ひとつ御親切に御答弁を願いたい。と申し上げますことは、私どもが与えられた権利を完全に行使するために、重大な関連があるからでございます。この裁定の理由書の二十三ページを見ますと、私の従来の知識から得ましたわくの中におきましては、元来国が経営いたしておりました国鉄の事業に対する部分のうちで、総称して工事経費は財政資金からほとんど出されておつたと私は記憶いたしておるのであります。従つて、本来からいうと、この工事経費というものは財政資金から出されておりまして、運輸収入、言いかえるならば常業収入の中に大わくに食い込まなかつたところに、従来国鉄としての本来の経営方針の基本があつたのではないか、こういうふうに考えておるのでございますが、裁定委員会は、この点についてどのように御調査を願つたか。もし御調査を願つたとするならば、従来の関連と、今日裁定を下すに至つた——工事経費が運輸収入、言いかえるならば営業収入の中にどれくらいの割合で食い込んでおるか、この点御答弁を願います。
  64. 今井一男

    ○今井参考人 御承知のように、戦前におきまして国鉄の経理が常態でありました時代におきましては、原則として自己の収益、及び一部は国債によりましてこれをまかなつて来たものでありますが、戦後は、昭和二十四年に公社になりますまでは、すべて——すべてと言つては少し言い過ぎですが、原則として財政資金で工事費はまかなつて参りました。それが公社となりまして、独立採算の建前がとられるとともに、一部は営業収入から、一部は政府出資——これは主として預金部出資でございますが、そういつたものでまかなわれるという原則が立てられたのであります。但しその数字は、年によつて相当比率は違つております。本年度の当初予算によりますと、そのうちの四分の三が営業収入の中から支払われて、四分の一が借入れの方からまかなわれておる。昨年は大体六対四ぐらいで、自己資金でまかなわれる予算の方が少かつたのでありますが、本年度はそういつた形に相なつております。本年度の当初予算によりますと、三百何億でございますから、従つて営業収入の一五%以上のものが工事経費に充てられておる、こういうことになります。
  65. 正木清

    ○正木委員 次に二十四ページの前段から四行目でございますが「国鉄の資産は、再評価すれば一兆八十一億円」云々。私ここに非常に議論のわかれる余地があるのではないか。従つて裁定委員会としても、十分この点については御調査御研究をくださつたのではないかと思いますので、お伺いをいたすのでございますが、要するに今日の経済を基本として、今日の一切の物価を基本として割り出すところのこの数字が、学問の上から見て、理論的に妥当であるかどうか、いわゆる再評価資産に対する理論的な根拠というものを、裁定委員会としては妥当として認めておるのかどうか。もし妥当であるとするならば、この国鉄の打出しまする償却額、これが理論的に妥当性を持つて来るのでございまするが、もしこの打出し方にあやまちありとすれば、ここに私は大きな議論が残される余地があると思います。この点に対する裁定委員会としてのお考えを御答弁願います。
  66. 今井一男

    ○今井参考人 その点は理由の七の末端にございますように、私どもが調べました範囲内では、国鉄では、ただいまいわゆる限度いつぱいの償却を行いつつあるのであります。これは必要であるか必要でないかは、見るところによつて非常に違うと思いますが、もしそれを他の一般産業並のレベルに引下げたならば、そこに百五十億円ぐらいの開きは出て来ると思います。また私鉄がやつております——これはいいか悪いかわかりませんが、そういつたものを基準にいたしますれば、二百億ぐらいの余裕が出て来る、こういう計算は一応組み立てて見たことは事実でございます。
  67. 正木清

    ○正木委員 その点で今井さんに重ねてお伺いしたいのですが、いろいろの議論の余地はあるであろうけれども、私は常識論上からいつた場合——この点をよくお聞きを願いたいのですが、常識論からいつた場合、私はやはり一般会社の資産再評価というものが基準になると同時に、国鉄というものを会社の基準で考えた場合には、国鉄と類似する関連産業の資産再評価の基準というものを、やはり無視できないのではないか。ということになれば、やはり常識から言うならば、一般私鉄の再評価額というものが、当然常識上基準になつてしかるべきだ。しかし、これはあとで長崎さんにお伺いしなければならないのですが、国鉄一般私鉄と特別に異なつた特殊の理由があればいざ知らず、そうでない限り、常識からいつて、最悪の場合でも一般会社が行つておるところの資産再評価である八・一というものを基礎にしても、ここで私は二十八年度以降のことはいざ知らず、さしあたつて年度内の従業員の待遇改善その他のことをも一挙に解決し得る財源が、ここだけからでも出て来るように私には考えられる。これは非常に抽象的でありますが、今井さんがおつしやつたように百数十億の金がここから出て来ると思うのですが、重ねて私今井さんから、理論的に、あなたが仲裁をただ発表しただけではなくてやはり学問の基礎の上に立つて、理論の基礎の上に立つての御答弁を伺つておきたいと思います。
  68. 今井一男

    ○今井参考人 私ども会計学の専門家でございませんので、やはり常識以上のお答えはできないのでございますが、私どもの検討いたしましたところによりますれば、今申し上げた通りであります。ただ、これが国民が要請しておるところの国鉄の姿なり、施設の戦前復帰といつたような観点からいたしますれば、また別の議論が出て来るかもしれません。しかし、少くともこういう考え方は成り立ち得るという意味で、理由書にも書いたのであります。要するに、そういつたわれわれの常識的見地からいたしまして、ここで四百十億という当初予算の工事費がもし多少でも動きますと、それによりましてあるいは修繕費もこれと関連して考えるべき問題になつて参ると思います。これは修繕費は五百五十億ばかりだが、そういつたものとの間に余裕が出ないものかどうか、こういつた点は確かに検討の余地はあると考えておりますけれども、そこまでこまかに一つの建物、一つの車両について検討する余裕は遺憾ながら持ち合せなかつたのでありますが、金額いかんによつては、従来の決算状況等から考えましても、たとえば二十六年度におきましては五百億以上の修繕費を予定して、結局決算においてはそれが五十億ばかり減つて決算になつているという点。しかし五十億減つたものが、はたして国鉄の運営に対してどれだけの支障を与えたかといつたことを検討する必要はあるのですけれども、そこまで私ども余裕がございませんでした。そういう数字から参酌いたしまして、こういつたことから寸肇も動きがとれないという感じは、われわれとしては受取れなかつたことは事実でございます。
  69. 正木清

    ○正木委員 重ねてお尋ねするわけですが、国鉄の使命であります公共性という基本理念の上に立てば、今後国鉄の一切の経理が、許される最大限のもとにおいて経営の安全性をはかることは議論の余地がないと思います。従つてまた経費の内容をでき得る限り修繕費、工事費に打込むことも、議論としては成り立ちますが、従来の国鉄の歩んで来た歴史内容を見てみても、それから現在置かれている国鉄の経理の内容等から勘案いたしましても、こういう経費は、少くとも二分の一程度は当然借入金によつてまかなう性質のものではないか、しかも国鉄が帳簿を現在の価格に直した再評価の点で非常に無理がある帳簿を直しておいて、しかも借入金をしないで一切を営業収入から入れるところに、現実に国鉄としてのいろいろの摩擦が出て来るのではないか。常識論から言うと、今井さんが御指摘になりましたように、長崎総裁が明確にこの委員会で御答弁くださつているように、他の産業から比較してみて、従業員の数において逆に低く、能率においては二倍ないし三倍の能率を上げておいて、しかも賃金においては日鉄法が規定しているところの、その規定の中間より裁定委員会裁定の下し方が低いという、この矛盾は一体どこから来ているかといえば、私は本質は修繕費と工事費から出て来ておる、こう見ておるのです。従つて裁定委員会——雇い主側も従業員側も、裁定のつくられたこの法律を遵法するという精神の上に立つ限り、裁定委員会としては、こういう点にもう少し権威のある裁定の打出し方をすべきではないか。同じ理由書でもそういう打出し方をすべきではないかと思いますが、この点に対する御答弁をお願いいたします。
  70. 今井一男

    ○今井参考人 理由書にもある程度触れておきましたように、要するに運賃は国策の立場から他に類例のないほど非常に低く押えておる。一方国民の要望によりまして、御指摘のように千億近い修繕費と工事費を負担している。実際申しまして営業収入の半分以上を支出している。そこに問題の種があることは、こちらからよけないことを一言もつけ加える余地もないほどであります。ただわれわれとして、しからば工事費を幾らにして、あるいはまた運賃を幾ら上げて借入れを幾らにして、こういうことまできめますことは、仲裁委員会としては出過ぎたことだ。しかし、とにかくそういつた面において相当に問題がある、こういつたことだけを指摘して、これがもし私どもの申し上げる他の産業なり、あるいはまた国策的な特殊な要請があるならば、それを別の角度で見てやるという形がとられたならば、少くともわれわれの裁定いたしました賃金問題は解決できる、こういう立場で理由を書いたのであります。
  71. 正木清

    ○正木委員 総裁の長崎さんにちよつとお尋ねいたします。今あなたがお聞きの通りの一問一答を今井さんとやつたわけですが——これは私の常識の勘どころでお尋ねしてはどうかと思うのですが、あなたのところでは、償却というものはこういう形でなされているのではございませんか、この点を私は明確にお聞きしておきたいのです。この帳簿価格を現在の価格に引直しておいて、これから出る理論的な数字を基礎にしてこれだけは帳簿の上では償却費だ。これが三百億になつておりますか、五百億になつておりますか、まず相当なものでございます。この償却費というものは、たとえばレールであるならば、それを新品にかえるという、こういう性質のもとにこれが流用されているのではないかというような気がいたしますが、修繕ではなくて次から次と新らしいものに更新して行く。おそらくこれは日本の私の会社からいえば、どこへ行つたつて、そういうことのないような急速な勢いで資本の蓄積がそういう形でなされているように私は考えられてなりませんが、この点について忌憚のない率直な御答弁を願つておきます。
  72. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 工事費あるいは償却の費用、修繕費等が多いか少いかということについては、それはなるほど収入のデータ、収入との比率とかなんとかいうことで、私はいろいろ議論はあると思うのであります。そこで観点をかえまして、戦前あたり一体レールを年間どのくらい使つてつたか、まくら木はどのくらい使われておつたか、セメントはどのくらい使われておつたかというようなことと、現在の状態とをちよつとお話して御参考に供します。数字は省略しますが、鋼材——レールも入つております。昭和十一年を一〇〇といたしますと二十六年は七四であります。いかに使つておらぬかがわかるわけであります。レールは昭和十一年を一〇〇といたしますと二十六年は七九です。まくら木は昭和十一年を一〇〇として二十六年が七六、セメントは昭和十一年が一〇〇で二十六年は四五、二十五年が五七というような状態でございます。従いまして、戦前と比較して、金の面で収入との比率その他からにらみますと、いかにもバランスがとれていないなうに存ぜられるかもしれませんが、そういう使つている資材の面から見ますと、まだまだ足りないのではないか。そこでローカル線その他においても、十分なる御満足の行くような戦前の国鉄の姿になつていないということになると私は思います。その計算をどうするかというようなことはいろいろ議論があると思いますが、しかし、実態はこの通りでございます。御了承願います。
  73. 正木清

    ○正木委員 総裁の御答弁は、私の質問からややそれた形ですが、私のお伺いしたのは、そういうお伺いの仕方ではなかつたのでございます。ということは、あなたの御議論からいたしますと、やはり国鉄の公共性と企業体という二分論の上に立つてその本質を一体どう理論づけるかというところから出発しなければ、あなたの御議論は成り立たないのではないかと私は思う。一方には、運賃は国民経済を基盤にするから上げてはまかりならぬぞ、これが大体の輿論だと思うのです。また一面には、徹底的なサービスをやり、新線もつくろうというのが、今国鉄に与えられた全体の空気ではなかろうかと思うのであります。それでおつて国は財政資金を国鉄要求する何分の一すらも投入してはくれない。借入金も思うようには許してくれない。くれないからこそ、あなたのその数字が初めてそこで出て来るのですが、その数字を私は聞いておるのではなくて現実に社会通念上、原価償却というものはどうあるべきものかということを、あなたはお伺いしておるのです。
  74. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 この問題につきましても、私鉄の比率によるのがいいのか、一般会社の倍数によるのがいいのか、いろいろな議論があると思います。但し、私鉄の方は、何と申しましても国鉄よりは列車が軽い頻繁度も地方へ行くと少い。都会附近でありますと電化してありますから非常に違う。いろいろな面で私鉄の三・五倍というものをそのままとつていいのか、あるいは一般会社の八・一というものをとつていいのかということには非常に疑問があると思います。ことに戦争中並びに戦後におきまして、非常な荒廃を見た今日において、とりかえの費用については、財政資金を出していただければ非常にけつこうですが、出さないからといつてほつとくわけには行かない、これが一番大事なことです。どうしてもほつとけない。そこで、まずでき得る限り安全な鉄道の保持ということが必要になつて参りますから、その点において私は普通の会社と申しますが、あるいは私鉄というものとは、よほど趣きを異にしておるのではないかと思います。
  75. 正木清

    ○正木委員 もう一点だけ総裁にお尋ねしますが、あなたのおつしやられるように、なつてはおけないのだ、これはごもつともなんです。だからといつて政府は財政資金を投入してはくれない、借入金も思うように許してはくれない。ほつてはおけない、ほつてはおけないから、先ほどから今井委員長と私の間で議論が展開された。この本来の原価償却という理論の建前の上から行けば、不自然な、非常に無理をした予箕措置を講じて、そしてこのほつてはおけない面に重点的に金をつつ込んでおる、これが現実の国鉄の経理の姿です。そのさや寄せば、一体どこに来ておるかというと、あなた以下四十数万人の人々の上に、全部これがさや寄せして来ているのです。これは国鉄裁定委員会が出しましたこの理由書、それからあなたの本委員会運輸委員会等における御答弁の内容を見ても、今の国鉄従業員というものがいかに勤勉であり、いかに生命をかけながら国家の安全と経済向上のために努力しているかということがよくわかる。そのさや寄せが全部こちらへこう来ておるということは、私は総裁たるものはやはり腹をきめておく必要があるのではないか。この点が明確になりませんと、国鉄の経理というものは、いつまで経つても明確にされないのではないか。私は、ここでは修繕費には触れませんけれども、一つの例を取上げてもさようである。従つて、総裁はやはり財政資金投入のため、大蔵大臣に強硬なる進言をすべきであるし、従つて、借入金等においても、今の帳簿価格を基礎にして——帳簿価格とは、現在の価格に直つた帳簿価格なんですから、あなたのところは、私の会社等に見られない特殊な形なんですから、そういう上から見ても、私の結論を申し上げると、二十八年度以降はいざしらず、今度に関する限りは、財政的予算的な処置というものは、あなたが腹をきめればさほど困難でなく一挙に解決し得るというように考えております。御答弁はいりません。  最後に簡潔にお尋ねをいたします。先ほど同僚議員の石野君等からも御質問がございましたから、簡単にいたしますが、新聞等で見ますと、団交が非常に難航して進まないように聞きますし、石田君の質問に対して総裁は、年末手当三千円の金額で団交がものわかれになつたことは思つていない、三千円の金額については、一応の話として申したものだというように私には聞えました。そこでお伺いしたい点は、団交に対する総裁の心構えなのであります。この裁定が下された精神、この精神を十分心に置いて、言葉をかえて言うならば、この裁定の下された精神を心にとめて、誠意をもつて団交を進めておられるのかどうか、この点をまずお伺いしておきます。
  76. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 その点は非常に微妙なことになるのですが、先ほどは石田さんでありましたか、一体予算もきまらぬのにそういう何千円とかなんだとかいう話をするのはおかしいじやないか、そういうものは今から言つてはいけないと思うというお話もあつたのですが、そういう議論はともかくとして、とにかくこの押し詰まつた暮れには一日も早く何とかめどをつけて行かなければならぬと思います。ですから、まあおよそのところでいろいろな話をしておるわけであります。三千円というのは、どういうところから出て来たのですか、ちよつと私にもわからぬのですが、そういう話をしておる向きもあるようです。しかしそういう何千円とかいうことでなく、どんな方向で、どういう形で納めて行くか、早く納めて手を握ろう、妥結の方向に行こうということで、いろいろ話合いをしておる点もあります。  それから、なお念のために申しておきます。二項、三項、四項ですが、二項、三項等については、一応すでに団交をやりまして解決したものもございます。ただ一番最後の四項が一番大きな問題です。これがどういうことになるか、そこに重点を置いて話をしておるような次第でありまして、決してほつておるわけでもなく、何千円というようなことにこだわつておるのではありません。
  77. 正木清

    ○正木委員 国鉄労組の大和委員長に二点ほどお伺いしたいのですが、今総裁の答弁、あなたもお聞きになつたと思うのです。けさの新聞であつたか、ラジオであつたか、何かあなたの方は団交が非常に難航を来して、当局に誠意がないので超過勤務を拒否したというようなことを聞いたような気がするのです。この団交のものわかれになつたその根拠が、今の総裁の御答弁との間に、何か大きな食い違いがあるのかどうか。なぜ私がそういう質問をするかというと、機関車労働組合委員長も、あなたも、公労法の精神を十分遵法した上に立つて、自分たちは誠心と誠意をもつて円満解決のために努力されておるということを、この正式な委員会で言われておる。その精神を実は私ども非常に感激して聞いておるわけです。従つて、この仲裁委員会裁定を下し、団交等においても、本来からいうと両者の間で円満に進まなければならないはずのものが、なぜそういう形になつたか。簡潔でよろしゆうございますから、御答弁を願いたい。
  78. 大和与一

    大和参考人 十三時半に再開をきつちりとするということでお伺いをしましたが、汽車の親方の総裁がおいでにならないで、私の大事な発言を聞いていないから、こういうことが起るわけであります。先ほども申し上げましたように、総裁が何日か前のある委員会で、この額で大体何とかなるのではないか、こういうようなことを御発言になつたために、ここにおられる委員の方も、そういう御解釈をされておる方がおられる。それで団体交渉の実態は、総裁はおいでになりませんけれども、副総裁あるいはほかの方がおいでになつて交渉しましたが、あるいはそのわくにとらわれておるのではないかという感じがします。基本的に団体交渉権はいかなる場合においても否認されない、これは明確であるけれども、裁定が出て、そうして実際に閣議がきまつたら、やはり一応それが問題になります。無視はしない、こういう言葉はいいけれども、もう少しこまかく言うと、やはり手みやげを持つていなければならない。手みやげにはトランクに入るものもあれば手さげに入るものもある。大きくても小さくても、そのみやげを持つてあるいは手ぶらでもいいから、全国職員のためにもう一層の努力、最善の努力をする、こういうことを誓われぬかということを、たたみかけてお伺いしたけれども、それに対して明確な御答弁がない、こういうことであつたわけであります。もし、きようの総裁が食言することがなかつたならば、あすからの団交はもつとうまく行くだろう、こういうふうに期待して、もう一度総裁にお伺いをしたいと思います。
  79. 正木清

    ○正木委員 今大和委員長の御答弁で、大分この団交の現在の様子がわかつたのですが、やはり大和委員長の答弁の中にありましたように、国鉄公社としても誠意のある団交をお進めになる御意思が十分あるかどうか、最後に総裁にこの点だけをお聞きしておきます。
  80. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 その点は、もとより何ら異議のあるものではありません。誠意をもつて団交いたします。
  81. 石野久男

    ○石野委員 ただいま正木委員からもお話がありましたが、先ほど総裁が来ない前に、石田委員の質問に関連して質問をしました。それに対して問題点である第四項の団体交渉はどういうふうになつておるかということを承つた労働組合の諸君の御意見からいたしますと、どうも先般連合審査のときに総裁が発言した百六億何がしの予算のわくの中で総裁ができると言つたことが問題になつて、ほとんどそのわくより出ていない事情が、実際の団交の実態であるということであつたわけであります。ここに問題がある。これはこの前のときにも、とくと問題にしたのであるが、仲裁裁定では第四項で、団交によつてきめると書いてある。政府は百六億の予算をこの問題に対してあてがつておる。ここにおいて、あなたはこれをどういうふうに扱うかということが、重大な問題となつて来るのである。委員会としても、その点の考え方が非常に重大になつて来るわけです。総裁は百六億で何とかまかなえると言つた。そうなつて来ると、団体交渉のわくというものはきまつており、仲裁裁定の意味が全然消えてしまつておることになると存じます。これでは、われわれは審議のしようも何もなくなつて来る。ここであらためてはつきりお聞きしておきたいのですが、ただいま正木委員から国鉄予算案の問題について、少くとも総裁の自主的な立場を標榜しておる意味が、その内容の中に十分に含まれておるということを察知するのであります。従つて総裁は、自分の経営をやつて行くにあたつて、今現に起きておるところのこの重大な問題を処理する腹構えとして、政府がこう言つておるから、そのわく以上には絶対にできないという考え方があるとすれば、事態は非常に重大な問題になると思います。先ほどの大和委員長あるいは瀬戸委員長の言葉を借りるならば、スト権はあくまでもわれわれは留保するということを言つておるのであります。事態がうまく行かない場合には、これは非常に重大であります。そういうことをわれわれが考えて行つた場合に、総裁がまだ団体交渉もしないうちから、政府がお手盛りで出して来る百六億のわくですべてをまかなうのだということこそが、実に越権な言い方ではなかろうか、もしそういうような考え方を持つておるとすれば、われわれとして審議する価値がなくなつてしまう。同時にまた、労働組合の諸君としても、団体交渉の意味が全然なくなつて来るのであつて、不誠意これにきわまるものはない、こういうふうに私たちは思います。従つて、私はここで総裁にはつきり聞いておきたい。政府が出しておる国鉄予算の百六億九千三百九十何万というこの補正予算のわくの中ですべてを切り盛りするという腹構えで合日あなたがおるかどうか、これは私たちの審議上重大な問題であるので、この点だけひとつはつきり聞かしていただきたい。
  82. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 これはなかなかむずかしい問題でありまして、かけひきをするわけでも何でもないのですが、やはり国鉄の運営にあたりましては、人というものが非常に重要な要素を占めるものでありますから、その働いておられる方々の満足というものを求めなくちやならぬ、それにはそのわくというのを大きくしてもらいたいということは常に考えておるわけなのであります。従いまして、私としては、でき得る限りその運用によつて若干なりとも多く多くというふうに考えております。
  83. 熊本虎三

    ○熊本委員 ちよつと議事進行に関して……。先ほどからいろいろと骨子に触れた質疑が行われておりますが、しかしながら、私考えますのに、国鉄総裁は、あまりにも人がよくて、もう閣議できまつてしまえば、これに従がわなければならないような、そつちの方にばかり忠実性が強いのであります。閣議において予算を切り盛りする場合、その席には国鉄総裁はおいでにならないのだからして、運輸大臣並びに大蔵大臣等がここに来て、ここで真剣に闘わされる質疑応答を聞かなければならぬ。そのために私は運輸大臣等の出席があつてからと考えておつたのでありますが、このことはすでに他の委員からもるる述べられております。しかし、これ以上国鉄総裁に何べん言つたところで、国鉄総裁が命を投げ出して政府と闘い、とつてみせるというようなことは、おそらく言えないだろうと思います。だから、そのかんじんかなめの職責にある者を呼び出して、そうしてその上で、先ほど来非常に重要な議論が闘わされておりますので、この点を運輸大臣、大蔵大臣に聞いてもらわなければならない。従つて委員長はさつそくその手続をとつていただきたいと思います。
  84. 田中伊三次

    田中委員長 ただいま熊本君からのお話がありましたので、ちよつと私から申し上げますが、本日は大体裁定の案を中心として参考人の御意見を伺う。参考人の御意見が済んで、参考人の御意見に関連をして意味のわからないところがあるとか、あるいはその意味のわからないところに関連をして重要な事柄をお聞きになるとかいうような限度にとどめませんと、運輸委員会本来の聞くべきこと、労働委員会本来の聞くべきこと、人事委員会本来の聞くべきことに関連をして政府委員を呼んで一々これを聞いておりましては、とうてい本日はやれない。そこであらためて皆さんとも運営に関してよく相談をして、聞くべきことは政府委員なり大臣を呼んで徹底的に究明することにいたします。本日に関しては、どうかひとつ参考人の御発言に関連をする限度にとどめていただくことにして——参考人は相当にお忙しい時間を午後まで引延ばしてお待ちを願つている事情でありますから、これらの事柄もよくお考えいただいて、今日は委員長の言うことに従つてください。  山口君、関連をして簡単に願います。
  85. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は委員長に申しますが、なるほど今日は参考人意見にとどめるということでありますが、こういつた場合には、参考人意見にやはり理事者側の意見が求められて来る。ここは単に委員長の申される範囲にとどめておいてよい性質の場合と、それから時期の問題として、それが許されない場合とがあるのであります。そこで私は熊本君の言われることが最も妥当だと思う。従つてわれわれとしては、今後そういつた裁定問題やその他の問題を取扱う場合においても、われわれが要求しなくても、理事者側でつとめてこれに出席して、関連に対する質疑には答えるという誠意をわれわれに示してもらいたいということを要求しておきます。  それから関連質問として、私は今の総裁の言明から二、三質問してみたいと思います。総裁は、今のお話でありますと、私鉄などの地方鉄道国鉄との間の相違は、列車の軽重、いわゆる車体の重い軽い、あるいは往来密度等が他の地方鉄道に比べて比較にならない密度を持つておる。こういうことから保守修繕費がかさんで来るというお答えがあつたが、そういう感覚で行きますと、なるほど国鉄は一小部分的な面では、非常に列車密度も往来密度も多いことは私は認めますが、しかし地方鉄道すなわち私鉄というものは、運行しておるその地区々々の範囲においては、国鉄よりもはるかに列車往来密度は多いと考える。従つて国鉄の保守修繕費が、私鉄の往来密度から考えて、それよりも上に行くとはどうしても思えない。一体それはどういう調査に基いてなされているか。  それからもう一つは、国鉄、私鉄の従業員数であります。これはキロ当りにいたしますと、たとえば関西におきましても阪神、京阪神、あるいは近鉄、南海、京阪等の五大電鉄及び都内十電鉄に比べますと、キロ当りの従業員数は、国鉄の方がはるかに少くて優位な状態にあると私は思う。にもかかわらず、私鉄よりも従業員数においてもキロ当り多く従事しているように言われておりますが、それは一体どこに根拠を置いて、どういう記録においてそれが証明されるのか。次には、キロ当りの収入と人件費の割合でありますが、これについても、私は私鉄の方がはるかにキロ当り人件費は、国鉄人件費に対して、よけいにいつていると考える。一体総裁はそういう点をよく勘案されておるか。さらに私鉄と国鉄との経営におきましても、たとえば税金の面を一つつて見ましても、国鉄と私鉄との間における税金負担というものは全然違つている。こういうふうな面を今日全体的にながめて、国鉄の収入に対する人件費と、私鉄の収入に対する人件費とのその差です。負担の差違、これははるかに国鉄の方が楽である。一体総裁は、どういう考えでそれを運営しておるか、これについても重大であるから聞いておきたい。以上お答えいただきたいと思います。
  86. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私鉄と国鉄との比較論になるのでありますが、今おあげになりました関西方面の五大電鉄というようなものは、これはまさにりつぱなものであります。しかし、全体の私鉄というものと国鉄とを比べてみまして、一番大きな相違は何であるかと申しますと、今お述べになりました五大電鉄のごときは、ことにそうですが、ああいうところは貨物を扱つていない。お客さんだけであります。そこが非常に違つております。それから、そのほかの私鉄等におきましては、貨物をやつていない関係上、機関車の重いものもいらなければ、長大な列車も走らないというような点がある。それを一々どこが違うかということを詳しく言うことになりましたら、ここで私が簡単に常識的に申し述べることは、少し慎重を欠きますから、いずれ調べて、資料を差上げてもよいのでありますが、そういう次第であります。  それから先ほども申しましたが、私鉄は大体電車が多い。国鉄の方は、石炭列車が多いというようなことで、動力費の点などからいつても、石炭のために非常に負担が大きいというよな関係がありまして、どうも人件費のような問題にしましても、とり方がいろいろありまして、どういうふうにすれば一番正確な比較になるかということもむずかしい問題であります。およその点をつかまえておるのでありまして、その点から申しますと、今あなたがお述べになりました関西方面の電鉄などは、待遇はよほどよいようであります。
  87. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は私鉄と国鉄との対比をして今総裁に質問したのですが、その根本は、やはり国鉄の運営内容、運営構想のいかんということに結論はなるわけであります。でありますから、その運営構想について、最終的に簡単に結論だけをお尋ねしておきたいと思います。  それからこの裁定は、根本的な問題でありますが、これは仲裁委員会が慎重に審議をして、この裁定ならば現在の状態においても実施し得るという建前に立つて国鉄勧告されているものであります。それを政府に取次ぐ場合に、総裁はどういう取次をされたか、その点をもう一度明確にし、さらに裁定実施した場合、総裁は、今の公社の形式から申しまして、この経理内容で十分まかない得るという確信をお持ちになるか、その点をお伺いいたします。
  88. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 御承知のように、裁定は、裁定を受けました両当事者を絶対に拘束するのでございます。従いまして、第一項につきましては、基準ベース一万三千四百円の八月より実施ということで予算要求しております。その他のものにつきましては、これは団交を経てみなければ本来はわからぬものであります。しかし年度当初の予算の範囲でやれる程度のものは、先ほども申しましたが、団交をやつて二、三片づいたものもございます。その他のものにつきましても、ことに第四項の点は非常に微妙なのですが、時間が切迫して、そうしてどうしても今度の補正予算でちようだいしないと、私のところは全然財源がないものですから、それで人事院勧告その他のことを参酌しましてそして要求したのでございますが、今日のような削減を受けておるのであります。
  89. 田中伊三次

    田中委員長 それでは臼井君。
  90. 臼井莊一

    ○臼井委員 この国鉄裁定の問題につきましては、労働組合の方でも、相当に綿密な資料をわれわれの方に出していただいておりますし、結局この問題の解決は、資金に国鉄として余裕があるかどうか、またその金をどういうふうにして生み出すかということになるわけであります。従つて、この問題の解決のためには、非常な政治力によつて解決しなくちやならない。そうなりますと、結局大蔵大臣、運輸大臣等の誠意、また努力によつて解決できる問題だろうと考える。従つてこれは、公共企業体としての国鉄運営と、いわゆる独立採算制をとつているというそこに非常な矛盾があつて、そのしわ寄せが結局従業員の給与の問題に及んでおる、こういうことになるわけであります。そこで、その間のいろいろなこまかいことはいずれ運輸委員会において大臣にお伺いしたいと考えますが、本日は一、二の点で今井委員長さんにお尋ねするのであります。  この裁定を下されたときに、経理の面についても相当御研究になつて裁定を下されたので、この八月からのベースとしてきめられた一五三千四百円、これは八月から実施しても支払い能力ありということできめられたように考えますし、またただいま国鉄総裁のお話でも、一応当初予算によつてこれだけはあるように聞いたように覚えておるのでありますが、はたしてそうであるかどうかという問題と、もう一つは、そうであるならば、それを切り離して、なぜその八月実施だけを実行に移して、そうしてあとの二項以下四項にわたる問題について、これを団交によつてその後折衝しなかつたか。またそれができるのにやらなかつたのか、あるいは何らかの事情で全部ひつくるめてこれを目下団交の一つの材料として、八月から実施するか十一月から実施するかという問題についてやつているのであるかどうかということを、まず今井委員長にお尋ねし、それから総裁からもちよつとそのことについてお伺いしたいと考えております。
  91. 今井一男

    ○今井参考人 この裁定を下すときに、支払い能力をどの程度考えたかという御質問のように拝聴したのであります。支払い能力という言葉の意味でございますが、御承知通り国鉄国会から予算のわくをいただいております。そのわく以上には、一銭といえども原則として出すことができない。その意味からは、これは不可能でございます。しかしながら、われわれは国鉄を一個の企業体として考えまして、他のいろいろな事業との比較検討並びに労働者労働条件等からいたしまして、国鉄の経理状態が現在非常なかたわになつている。このかたわになつていることを少々ひねれば、これは十分まかない得る、こういう再度におきましてある程度経理能力を分析して、こういつた裁定を下したのであります。  なお二項以下をなぜ団交に譲つたかという御趣旨のように拝聴したのでありますが、冒頭に私御説明申し上げましたように、仲裁のような、両当事者の意にかかわらず、この線でという式の労働問題の解決は、私は一番まずい方法だと思います。また一番納得のされにくいもので、納得されないで解決された問題は、後々まで勤労意欲にも影響いたしますし、労使間の平和を保てません。そこでわれわれといたしましては、そういつた角度から考えました結果、特殊勤務手当並びに寒冷地給、石炭手当等につきましては、趣旨をわれわれの方で示しておきましたので、この線によつて両者の話合いで解決できる、こういう見通しを立てたのであります。その方が、より実情に即すると考えたわけであります。四の年末手当につきましては、午前中に石田委員にお答え申し上げましたように、年末手当を幾らであるときめることは、まだ適当でない。従つてわれわれの方は、年末手当のある程度の考え方をお示しいたしまして、それによつて両者で団体交渉を願う。いずれの場合におきましても、団体交渉で万が一話がまとまらない場合には、いつでもお越しくだされば、こちらとしては具体的な線はお示しします、こういう建前で裁定は出したのであります。
  92. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 第一項の問題は、全然財源がございませんで、これは実行能力が予算の上でなかつたわけです。  それから先ほど申し上げました二項、三項につきましては、年度当初に御協賛をいただきました予算の範囲で、わずかばかりの金でできるものもありましたから、これはやつております。四項は暮れごろ近くならなければ、今、今井委員長からお話がございましたが、どのくらいになるかということはわからず、またこの間国会の解散あるいは内閣が新しくできるといういろいろな事情で延び延びになつておりまして、だんだん追い詰められて来て暮れにさしかかつてしまつた、こういうことでございます。
  93. 臼井莊一

    ○臼井委員 それは私さつき伺つて勘違いしていたようです。八月から実施すべき金があると考えておつたのが間違いでありました。  そこで冒頭にちよつと申し上げましたように、公共企業体として、法規によつて争議権を奪つておる。これは条文にも示されておるように、罷業が起きて汽車がとまると、経済界あるいは人心の上においても非常に影響が大きいということで、これを禁止しておるというわけでありましようが、また一方新線の建設とか、あるいはまた先ほどからお話を伺つておりますように、料金の点でも非常に制限をして、安い運賃にしてある。これもまた公共の点からでありまして、その点経営の面において独立採算ということが非常に困難になつて来るわけでありますが、国鉄の総裁として大臣によくその点を説明して、何とか資金を得る、すなわち一時これを政府資金で借り入れておいて、爾後において適当な方法で返すなり、あるいは振りかえるなりするような方法ができないものであろうかどうか。     〔委員長退席、山村委員長代理着席〕 金がないと言うけれども、現在電産あるいは炭労のストなどのように、もしこれがストが行われたとしたならば、収入の面においても非常な減収を来す。単に他人に迷惑を及ぼすということでなく、収入の面においても相当の打撃を受けるわけでありますので、そういう点を考えるならば、何とか経営費でひねり出させるような方法を講ずべきである。  さらにまた現在問題になつておりますように、炭労のストによつて、年末に差迫つて鉄道の非常な削減をやる、これによつて相当な減収を来す、こういうことになれば、この金はどこからか何とか埋め合せるのじやないか。そういうふうに絶対に必要に迫られたということになれば、何かそこに埋め合せの方法を考えるのじやないか。そこで裁定を下されて、何としてでもこれをやらなければならぬ。労働者の一番の、武器といつては語弊がありましようが、運動の方法としてのスト権を奪われている。そういうことも考え合せ、さらに、企業の経営のへたということでなく、むしろ公共性によるいろいろな制限によつての根本的な経営の困難がある。そういう点から考えれば、政府の資金においてこれを補うことは当然である。本日、大臣がおいでになれば、この点も伺つてみたいと考えておつたのですが、こういう点について、総裁は、もちろん国鉄従業員の一番先頭に立つておられる方でありますから、お考えがあると思いますが、はたしてどういう程度の熱心な交渉をされ、各大臣がどういうふうにお考えになつてつたか、もし伺うことができればけつこうだと思います。
  94. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 今回のこの問題にかかわらず、前々私就任当時から、国鉄の財政及び施設の状態から考えまして、何とか資金を得て急速にりつぱな国鉄にかえて行きたいというように考えまして、いろいろお話をし、御了解を得たのですが、幸いにして近ごろは大分皆さんの御同情を得るようになつたように考えます。それで今年なども、これはつぶれてしまつた案ですから、よけいなことでありますが、実は一部は借金によつて、これを十年間借金をして、二十年間で返すというような案を立てまして、それらもみな寄せ集めて、大体三割の値上げで行けば、元利の支払いも完全にできて行くということで、三割の値上げ案をつくつてみたのですが、これが物価その他の問題から、今度はそういう大幅の値上げはせぬということでありました。大臣にお話しまして、そう言われたのでは困るのですから、どうかその欠陥だけは財政資金あるいは鉄道債券の発行なりによつて救済ができるように、ひとつお話おきを願いたい——これは閣議の内容ですから、私には一向わからぬのですけれども、その点はよく話したと思います。ことに今度の補正予算案についても、ごらん願えばすぐおわかりですが、実は常業費に赤字が出て参りまして、三十億の借金をいたしております。五十億くらい借りたいといつたのですが、もうそんなに金はないからということで、三十億に減らされたのです。そういう次第で、とても一割の値上げや増資ではまかない切れませんから、その穴はどうしてくれるのだということで、実は営業費のようなものを借金でやるということ自体に無理があるのではないかと思いますが、もうこの際緊急やむを得ませんから、とにかく三十億の融通資金を大蔵大臣にお世話願つたような次第であります。
  95. 臼井莊一

    ○臼井委員 私はその点についていろいろ伺いたいのですが、大体きようの目的がいろいろ団交のことを連合審査で伺うことになつておりますから、この程度で終ることにいたします。
  96. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 次に楯君。
  97. 楯兼次郎

    ○楯委員 ただいま臼井委員からお話があつたように、あの考え方で行けば、裁定問題はただちに解決してしまうと思います。この間から本会議においても、労働大臣あるいは大蔵大臣は、炭労、電産のストに対しては、中労委の調停でしたい、こういうことを言つておるわけであります。ところが、おそらく国鉄が争議を始めたならば、それ以上の現実的な事態の動きを見るであろう、こう想像されます。国鉄は争議権がないかわりに、仲裁委員会がある。その一歩下つた国鉄の取扱いについては、裁定を少しも尊重しておらない。こういうような考え方では、私は政府労働問題の解決にはならないと思います。きようは各大臣がおられませんのでまたの機会に譲りまして、今、総裁は、一生懸命に各大臣に対して予算のわくをもらうように努力しておる、こういうことを言われましたが、三十億の借入れでは解決をしないわけです。補正予算でまだ百五億の裁定実施するのに金額が足りない。それ以上の金額をいかにして生み出すかということについて、われわれはいろいろ意見を申し上げて、御意見を承つておるわけです。裁定実施のために、さらに一層御尽力を願いたいと思います。  次に、今井仲裁委員長に対しまして、私しろうとでありますので、きわめて不可解な点がありますので、二、三お伺いをしたいと思います。それはわれわれ国会に参りまして、政府が提案されました仲裁の裁定議決に関する件の内容でありますが、ちようどわれわれ国会仲裁委員会と見ておるような提案が行われておるわけであります。私はこの裁定に対して、政府が相当な根拠を持つた案件として上程をされなくてはならない、かように考えておるのでありますが、簡単に申し上げますと、国会の議員諸君、どうにでもいいようにしていただきたい、こういう提案の仕方がされておるわけであります。従つて、われわれが仲裁委員会の役目をしなければならないという感じがするわけですが、その点について、政府の議案内容をごらんになつて、今井さんはどういうふうにお考えになつておりますか、この点について、ひとつ御返事をいただきたいと思います。
  98. 今井一男

    ○今井参考人 私実は正確に政府の議案内容を見ておりませんので、正確なお答えはいたしかねると思いますけれども、けさほども春日委員からお話がございましたが、少くとも私の解釈によりますれば、仲裁裁定は、裁定そのものとしてそこで具体的な法律効果を現わすものでありますから、これを変更するということは、裁判所といえども許されない。もちろん政府ないし国会といえども、財産権に対しまして憲法の保障があります以上、これを一面から動かすわけには行かない。しかしながら、国鉄予算が、憲法上の予算ではございませんけれども、日鉄法によりましてやはり国会議決を経ることになつております以上、予算関係する分につきましては、国会がおきめになる以外は手がないと考えるわけであります。その間、政府がどうするのが法の趣旨にかなうかという問題になりますが、私どもの議論した結論によりますと、やはり政府はそのまま国会にお取次になるのが、法の精神に沿うゆえんだと思うのであります。仲裁委員会と同じようなことをやるのではないかというお話でありますが、仲裁委員会賃金が高いとか安いとかいうことは、国会裁定そのものとして議論していただくのは、私は場として適当ではないのではないかと思います。もちろん国権の最高機関でありますから、別の角度におきまして、仲裁委員会のあり方を批判されることはございましようけれども、個々の裁定そのものに一ついて、これは少し安いとか高いとかいうことは、これは人事院の勧告とか、調停案と全然趣を異にいたしまして、そこで確定したものであります。確定したものでも、予算のわくがなければ払えないわけですから、予算のわくを広げるべきか広げるべからざるかということは、やはり国会のおきめになるべきものだと、法律の文句からいつても私は考える。ただここで公労法以上におかしなことは、私常識で考えれば、その部分だけを国会に提案すればよかろうと思う。ところが今の法律では、どうも裁定そのものを国会におかけになるというように読まざるを得ないような文句になつている。そこで御質問のような非常に妙な事態が生ずる、いわばこの点は公労法の不備ではないかと考えます。
  99. 楯兼次郎

    ○楯委員 もう一つ私が不可解に思つておる点があるわけです。それは、過日来政府裁定を尊重するということを盛んにいつておるわけであります。ところが、一歩下つて、金がないということは一応認めたといたしましても、裁定ほんとうに尊重しておるなら、第一項の八月から実施しろということが前提条件でなければならないと私たち考えておる。ところが、政府は第一項を十一月からの実施にして、なお第二項以下の団体交渉を無視しておる。二つの不尊重の精神がここに現われて来ておるのですが、この点について、今井さん、どういうふうにお考えになられますか、ひとつお答え願いたい。
  100. 今井一男

    ○今井参考人 申し上げました通り予算の能力の見地から、国会が御審議をいただくこと、また予算の提案権が政府にありますので、政府予算についてのある程度の考慮をいたすこと、これは当然のことかもしれませんが、そういう予算上の、わくをふやすことが適当であるかどうかという角度から審議されるのではなくて、すなわち国鉄企業の経営その他から見まして、あるいは運賃政策でありますとか、復旧復興の促進とかいつた角度から見られまして、いかような予算案になろうと、あるいはいかような国会議決になろうと、われわれとしてかれこれ申し上ぐべき筋のものではないと考えるのであります。しかしながら、これが高いから、これを何月からやるのはどうも適当でないからという角度からやられたのでは、裁定趣旨を尊重したことにはならないのではないか、こういう感じを持つのであります。
  101. 楯兼次郎

    ○楯委員 次は、先ほどの論議を聞いておりまして、第二項以下は団体交渉によつてやるという今井さんの意図は、よくわかりました。ということは、八月十三日でありますか、相当以前に出されたので、年末の団体交渉による金額のわくをきめることができないという意図で出されたとおつしやつた。この点については、われわれよく了承いたすわけですが、その御親切が、今日においてはあだとなつておると思います。非常に御尽力をされました仲裁委員長に対して、こういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、そういう裁定を出されたのが、今日紛争の種になつておると思います。先日専売の裁定が出されたわけでありますが、専売の裁定はきわめて明白に、金額はあげませんけれども、ほとんど想像されますところの金額をうたつてある条項がはつきり出ておるわけです。ところが、国鉄裁定の第二項以下には、そのことが書いてない。ここが紛争の種になつておると思うのでありまして、ここを何とかしてわれわれ解決をしなければならぬと思つておるわけです、先ほど来、総裁のお話では、団体交渉をやつてはおるけれども、なかなか解決がつかない。またどなたか委員お話があつて仲裁委員会に年末手当については、再度仲裁を申請したならばどうだろうか、こういうような御質問があつたのでありますが、そのとき総裁は、そんなことをやつてつたのではとても間に合わない、こういうふうにおつしやるわけであります。ところが、今井さんは、私は腹があるので、まあ適当な時期とでも申しましようか、そういう段階に至つたときには指示を与える、そういうことを先ほどの答弁でお答えになつておるわけであります。ごこに私は、総裁と今井さんとの間に非常な考え方の相違を見るわけであります。これでは、この年末手当は解決をされないと思いますが、この点について、総裁はどういうような腹で、どういう場合に実行をして行くつもりであるか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  102. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私は何べんも申し上げましたように、早く円満に妥結をして行きたい。しかし、今、楯さんのお話も、ございましたから、仲裁に持つて行くかどうかということも、とくと考えてみます。
  103. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは今井さんは、年末も迫つて来たので、時期的な問題があると思いますが、最後に行わんとする指示というものは、所定の手続をふんだ、いわゆる日にちのかかる指示であるのか、あるいは即意即妙に打たれるところの指示を考えておられるのか、今井さんひとつ御回答をお願いしたい。
  104. 今井一男

    ○今井参考人 御承知通り仲裁委員会は三人でやりますので、ことにこういつた際における年末手当の指示のようなことは前例もございませんので、はたしてどのくらいの時間でやれるかということは、私三人を代表して、今ここで責任をもつては申し上げられませんけれども、少くとも常識的に考えまして、われわれ仲裁委員会考え方は、決して科学的に真実を求めるというよりも、労働紛争のすみやかなる解決の方を主に考えるべきものだと常々感じております。そのために、仲裁裁定は三十日以内で出せ、こういう法律上の制限もございます。また、われわれわずか三人、しかも事務局も十数人ほどの職員でやつております。皆様に御満足のいただけるものが出せるか出せないかは、自信はないのでありますけれども、少くとも常識的に考えまして、そういう御要求がありましたならば、おそらく他の同僚委員の諸君も、必ず時間的に間に合うように、まずくても早く出す、こういつたことに同調を願えるのじやないか、かように感じております。
  105. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、次に総裁にちよつと御質問いたします。私は、十四日だつたと思いますが、この前の連合審査会において、裁定の権威について労働大臣にお伺いしたことがあります。そのときに、賀来政府委員つたと思いますが、裁定は当事者を拘束をするところの労働協約と一つである、こういうことを言われたわけであります。ところが、私の知る範囲においては、裁定が出されたら当然労働協約と同一の効果がありますので、組合要求によつて団交によつて賃金に関する協定が進展をして行かなければならないと私は考えておるわけでありますが、当時労働組合は総裁に対して、この仲裁に基くところの賃金の協定に対する団交を要請し、なお総裁がこれに応じられたかどうかということを、ひとつお答え願いたいと思います。
  106. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 それでは私からお答えいたします。その問題につきましては、団体交渉に応じたわけでございますが、交渉の結果、そういうような協定はいたさないということにいたしました。
  107. 楯兼次郎

    ○楯委員 先ほどちよつと言い漏らしましたが、ひとつ組合委員長にも伺いたいと思います。
  108. 大和与一

    大和参考人 団体交渉には応じた、しかし賃金協約については応じない、こういうわけであります。
  109. 楯兼次郎

    ○楯委員 掘り下げて いろいろお聞きすることも何ですから、このくらいでやめておきますが、どうもわれわれの聞くところでは、やはり政府補正予算の組み方、あるいは予算のわくに縛られて、当局組合要求に、形式的には応じた場合があるかもしれませんが、何ら積極的に応じておらないように考えられるわけであります。先ほど来、各委員がいろいろ御質問いたしましたように、ひとつ総裁は白紙の立場に立つて政府に拘束をされないように、組合要求に応じ、妥当なる結論を出していただきたいことを切に要望いたしておきます。  それから最後にお伺いしたいことは、労働協約と同じ効果があるとするならば、もしこの裁定実施をされなかつた場合に、総裁としてその債務は残るものであるかどうかという点を、お聞きしたいと思います。
  110. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 これには前例もあるのでございますが、国会の御承認があつた限度におきまして、債務の履行ができるのでございまして、国会の御承認のない部分につきましては、債務はなくなるというような前の解釈であつたように記憶しております。
  111. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は今の御答弁では、ちよつと不可解に感じるわけです。そういたしますと、労働協約と同一の効果がある。自己資金によつてこれをまかなう場合には、文句なしに実施をされて行くわけであります。ところが、自己資金以外に支出を要する点について、今日問題が起きておる。従つて、まあ時期の限度もあると思いますが、近い将来において当然支払い得る能力ができて参りました場合には、この裁定というものの残部について支払つて行かなくてはならない、このように私は考えるのでありますが、総裁の個人的な意見でもよろしゆうございますから、ひとつお答え願いたいと思います。
  112. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 その問題については、前例があるように私は聞いておりますが、なかなかむずかしい法律論になるようですから、もう少し研究させていただきます。
  113. 楯兼次郎

    ○楯委員 最後にもう一つ。それでは裁定が出されてから以後、この裁定について、総裁は、運輸大臣並びに関係大臣に対して、いかなる案をもつてどのような交渉をされたかという点を、はつきりとここでひとつお答えを願いたいと思います。
  114. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 先ほども申し上げましたように、第一項につきましては八月から一万三千四百円ベース、そういうことで要求してございます。
  115. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 次に、発言順序によりまして池田君に発言を許します。池田君。
  116. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 私は今井委員長にお尋ねをしたいと思います。あなたは先ほどきわめて謙虚なお答えをいたされて、事務局も小さいし、必ずしも科学的であり得ないかもしれぬということをおつしやつたのですが、私も実は二年間ほど九州で国鉄の調停委員をいたしておりました。小さな案件といえども、われわれはあらゆる叡知をしぼつて結論を出すのであります。従つて、あなた方がこの裁定をなさるには、あらゆる角度から御検討をなさつたことと思い、むしろ私は敬意を表しておるのでありますが、その決定が無視されるような状態にあるということを思うときに、仲裁委員会として、あるいは委員長個人の立場でもけつこうですが、もしこういうものが無視されるということになりますならば、あなた方はこれに対して仲裁委員会の必要を感ずるやいなや。ただ公労法によつてこういうものが設立されている、そういう機関が法によつてつくられておるにもかかわらず、それが無視されるということになるならば、そういうものを存続する意思ありやいなや。たとえば、法的には残るとしても、個人的には、そういうものは意義がないというのか。実は昨年の十二月、九州の門司鉄道管理局の管内において、超過勤務の問題が調停委員会に提出されたのであります。われわれはこれに対して一つの調停案を出して勧告をしたのでありますが、双方がこれを拒否したのであります。そのときに、局としては予算措置がないからということであつたので、われわれはこれに対しまして、先に予算をとれるような、そういう方式をひとつ本省にも上申をしておやりなさいということを勧告した。それさえも拒否された。それでは、そういう上申もできないようなひどい状態であるか。あの軍国主義はなやかな時代、軍人といえどもやはり上申の道はあつた国鉄ではそれがないのかという結論になりまして、われわれ委員は総辞職するということを決議したことがある。それで、実は当局からも重ねて、その問題は待つてもらいたいということがあつて、一旦勧告は出されたけれども、これを後に保留してもらつて、またさらに審議し直して撤回したということがある。これは調停委員会でありますが、あなたは仲裁委員会委員長として、また個人の見解でもけつこうですから、こういうものが無視された場合に、存続の必要を認められるかどうか。またあなた自身は、そういうことをどういうふうにお考えになるか、その点を伺いたい。
  117. 今井一男

    ○今井参考人 先ほど申し上げましたごとく、これが裁判か何かでありますれば、少くとも判決を下すもの自身が得心の行くまで掘り下げたものがやれるわけでありますが、労働問題の性質上、われわれとして、そこまでやれるだけの機構もなければ、時間的余裕もございません。しかし、内容は乏しくとも、こういうふうな形になりました以上は、関係者として、それが無視されて喜ぶという人はおそらく一人もあるまいと思う。少くとも法律の建前として、また公労法というものが憲法二十八条との関連においてこしらえられた以上、その点は池田委員のお察しの通りであります。
  118. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 公労法の欠陥があるとすれば、公労法をすみやかに改正するようにしなければならぬ。また日鉄法によつて縛られておる、予算措置におきまして自由でないというなら、日鉄法改正の必要があると思います。そこで、日鉄法改正の意思が、長崎総裁はおありであるかどうか、あるいは公労法において今井委員長はどういう点に改正の急務を感じておられるか、その点を伺いたい。
  119. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 日鉄法におきましては、最近電電公社法律ができましたので、それにならつて、あるいはそれよりも一歩進めたような案を、できれば来るべき国会において御審議願いたいと思つて、今せつかく考究中でございます。
  120. 今井一男

    ○今井参考人 われわれは公労法によつて置かれた一つ機関をお預かりしおるだけのものでありますので、われわれが公労法をいかに改正すべきかといつたようなことを申し上げるのは、非常に僭越でありまして、これはむしろ政府当局なり、あるいは国会等で御審議いただくものと思います。しかし、衝に当つて参りますと、いろいろ不都合な点を感ずることは事実であります。これは前にもたびたび申し上げたところでありますが、問題になります十六条のみならず、私ども特に感じますことは、団体交渉らしい団体交渉がちつとも行われないということであります。公労法第一条によりますと、団体交渉の慣行をつくつて、それによつて一切の問題は平和的に自治的に解決して行くようにという建前になつておりますものが——国鉄もそうでありますが、自分の方はどんなことがあつてもこの線までは出さなければ仕事は責任を持てない、あるいはどんなに金が余つても、公共企業体の建前上これ以上出すことは不当であるという最高最低の幅ぐらいはひとつ示してほしい。それを労働者側の意見と組み合せて、堀り下げてわれわれは両者が納得し得る点を発見したい。ところが何にもおつしやらない。今度の国鉄裁定につきましても、その点の憤懣は理由書の中に若干ぶつつけてございますが、そういつた点は私ども、もし改正の機会がございましたならば、お考え願いたいと思います。
  121. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 最後に国鉄総裁にお尋ねしたいのですが、この裁定案を完全に実施しなければ、国鉄の動脈は自分は思う存分に動かすことはできないとお考えになるか。それとも、そういうことをせずとも動くというふうにお考えになつておるか。この裁定案を実行しなければ、どうしてもできぬとお考えになるならば、あなたは職を賭しても、政府に対して予算措置要求する権利が当然あると思う。やらなければとまる、きわめて簡単なことにみな見ておるけれども、もし国鉄の動脈がとまつたら、どうなるか。公労法によつてつておるが、今日公労法は踏みにじられておるときに、組合の諸君が非合法に出れば、それはけしからぬことであるが、法が守られぬという状態ならば、そういう危険な思想が誘致されることをわれわれは憂える。われわれはそういう事態のなからぬことを願うがゆえに——失礼ですが、あなた一個の職責のごときは、私の問うところではありません。総裁は、これをしてくれなければ、自分はできぬというくらいの熱意と決意をお持ちになつておるかどうか。またそれをするならば、国会議員たる者もまた、国会の審議を通じて御協力する道は幾らでもあると思う。かように思つておりますが、あなたの御心境を伺いたい。
  122. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 これは前々申し上げておりますように、私の信念としましては、従業員諸君が満足して喜んで働くようにしたいという念願は強いのであります。従いまして今度の裁定問題につきましては、両当事者がこれを遵奉する義務があるのでありますから、当然その点について強い要望をいたしたのであります。しかしながら、政府におかれましては、運賃その他の問題、あるいは財政の内容その他を見まして、今日のような予算削減をしたということは、これは私のきわめて遺憾とするところであります。
  123. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 次に発言の順序によりまして、人事委員の館俊三君。
  124. 館俊三

    ○館委員 まず第一に今井さんにお尋ねしたいことは、こういうことです。人事委員会における人事院総裁に対する質問の中で、人事院総裁はベースをきめられる際には国の予算を勘案しておきめになるのかどうか、簡略な言い方をすれば、そういう質問をしたのです。ところが、人事院総裁のおつしやるのには、私はこのベースが適当であるということで勧告をしておるのである。政府予算そのものについては問題外として、これが適正賃金であるということで勧告をしておるのである、こういうふうに言われたように私は了解しております。そこで、私も調停委員としての経験から判断するのですが、人事院総裁はそうであるかもしれぬけれども、少くとも調停委員なり仲裁委員が、その職責においてベース考える場合には、政府予算なり、あるいはその企業体の予算を考慮して、そうして最も当局者が出しやすい案をきめて、残念ながら適正賃金ではないけれども、少し頭を下げて企業当局にもいれやすい、政府もいれやすいという立場の考慮を十分にして、さらにその考慮の上に立つて国鉄内の予算も研究し、政府の全体的な財政をも考慮して調停案を出し、あるいは仲裁案を出す気持で私はやつておりました。従つて、さつき今井さんのおつしやつたように、一日に一人以上死んで行く、あるいは負傷者がこれだけ出るというようなこと、労働条件がきわめて悪いというようなことも、この賃金要求のところに特別に加味して行きたいと思つたけれども、これは今井さんのお言葉にもあつたように、とにかく国鉄企業予算の弱さから、そこまで含めることができないけれども、今の一万三千四百円でしたか、それを要求しておるのだということまでおつしやておる。これをいかにして国鉄をしてのましめるか、そこにわれわれも非常に苦心を払つた経験があるのであります。人事院総裁のように、政府予算を構わずに適正賃金を出されたのとは、わけが違うのであります。そういう立場から、今井さんとしては、国鉄企業内容から予算の取り方、あるいは政府の繰入金その他についての御考慮があつたのではないか。そういう点について、さつきお返事があつたようですけれども、もう一ぺんお聞きしてみたいと思います。
  125. 今井一男

    ○今井参考人 最初に申しました通り、われわれの立場は、あくまで国鉄企業における賃金問題の解決ということであります。従いまして、国鉄そのものの財産運営状況、経理状況ということは、でき得る限りの資料を分析いたしまして調査いたしました。そして予算的にはこういつたわくははまつているが、しかしながら必要な物件費は、たとえば汽車を出すときには、いかに高くても石炭がいるのと同じように、必要な限度の人件費はどうしても出さなければならない。この必要限度というものを目安にしたものが、この賃金のつもりでございます。従いまして、国鉄企業の経理につきましても、不十分ながらも、時間の許す限り、資料の許す限りは検討したつもりであります。しかし、政府予算全体でありますとか、国民経済全体でありますとか、そうこまかいところまでは入つておりません。しかし、常識的な範囲内では、頭のすみつこにはございました。
  126. 館俊三

    ○館委員 そこで、今、国鉄予算の内部については十分御検討になつたというお話なんですが、そういう御検討の上に立つて、どういうところに予算の出道があるか、あるいはこれをどうしたらいいかということについての、多少か相当の——あるいは多少といつては失礼かもしれませんが、相当な御判断があつたと思うのでありますが、その仲裁委員会における御判断について承りたい。
  127. 今井一男

    ○今井参考人 若干は合理化なり、あるいは今の不用資産、その他の活用等、そういつた面によつて生み出せる面も絶無ではないと私どもは思いましたが、しかしながら、今の予算のわくでは、われわれの裁定はそれだけでは解決つかない。つかない原因は、本日朝から皆さんが御議論せられておりますように、運賃が国策によつて非常に低められている。しかも運賃収入の半分以上の金を、事実上修繕と工事経費に向けなければならぬような建前になつている。従来は、全部そういつたものを政府資金なり、あるいは借入金なりによつてまかなつてつたが、最近はこれを大部分運輸収入によつてまかなつている。こういつたことに問題点があるわけでありまして、ただそれを具体的にどこから幾ら、こういつたことまでわれわれが案をつくることは、いささか僭越であるという意味で、いろいろな意見は理由書に書いておきましたけれども、具体的なところまでは押さなかつたわけであります。しかし、国鉄の一兆という財産から申し、また以前は運輸収入の一〇%か一二%しか修繕と工事経費に向けなかつたものが、今年は四十何パーセントというものが出ている。こういう経理状態は、何としても企業の形として問題ではないか。従つて、運賃をあくまで低く押えようというこれが国策であるならば、やはりその面において何らか別の手を考えなければならない。工事経費をふやすことがあくまで国民の要請であるならば、またこれも同じく別の見地から何らかの考慮を払う必要がある。その考慮の払い方としては、借入金でありますとか政府資金でありますとか、いろいろなことをわれわれとしては書いておきました。
  128. 館俊三

    ○館委員 そこで今、今井さんのお言葉の中で、現在提示されている裁定案による賃金というものは、必要欠くべからざる賃金をお出しになつたのであつて国鉄職員に対しては、もう少しいろいろの条件を勘案して、多くの賃金要求すべきであるけれども、それが国鉄の経理を勘案した結果、やむを得ないことなんだが、しかしどうしても必要欠くべからざる限度であるということをおつしやつておられる。そういうことであつて、しかも国鉄予算を調べてみると、運賃収入の半分をすでに修繕費その他建設費にまわされておられる。あるいはそれ以上まわしておられるということになりますと、ベース・アップをしていない現在の賃金というものは、ほとんど国鉄労働者だけを犠牲にして、国鉄の再建をはかつておるという形にしか、今井さんも考えておられるのではないかと私は思う。政府機関であるところの仲裁委員会が、それだけの考慮の上で出しておる裁定案に対して、政府がこれを納得しないということは、実に不都合だと考えております。それから、前の方が質問されておりました公労法の欠陥と申しますか、そういうものも、その点で考慮されるのでありますが、そういうふうに運賃政策の面を見ても、運賃が非常に押えられておるというようなこと、それも国策のために押えられておる。そして全部労働者が背負つておるという形になるのであります。そういうことは、労働者諸君が十分わかつておる。わかつておるがゆえに、必要の最小限度賃金を獲得するために、いろいろな方法をとろうとするのは無理からぬこと、ことに公労法その他のことについて、政府が遵法しないという形が出ておる。それにもかかわらず、すなおにこれで四回の裁定の履行を待つておる。非常にしんぼう強いことなんですが、しんぼうの尾が切れるようなことがあると、私は非常に困つた問題が起ると思うのです。今日、国会の周囲にいろいろな運動方法でやつて来ておる。人事院勧告のときにも、すわり込みが非常に激化して来たという話までも聞いておるのであります。今、政府が少しばかりの出費を惜しんだために、労働行政の上においても、あるいは国鉄の経営の支柱である従業員の立場においても、そういうことが起るということは、一文惜しみの百文知らずだ。これは政府に教えることですが、私はそう考える。これについて、総裁にお聞きしたいと思つておりますが、私が当時申しましたことは、総裁それ自身が、日鉄法の関係で、能動的に働く範囲というものはきわめて少い。私はその当時加賀山さんと話して笑つたのですが、検事さんと同じじやないか、またこういう問題については、一度委員会として公聴会を聞いたときの公述人であつた中山さんの話をかすかに記憶しておるのでありますが、公労法によつて国鉄の職員は自主的に動く力、ストライキ権を奪われておる。相手の当事者である総裁それ自身は、日鉄法によつて当初きめられた予算以外の支出はできない。そういう状態を中山伊知郎さんは、両方ともが、いわゆる当事者能力を失つておるという批評をされたのは、まさしくその通りであります。もし両方ともが当事者能力を失つておるとするならば、当事者能力を持つような公企法の改正をしなくてはならぬと同時に、国鉄組合としても、四回も忍んで来たのでありますから、ここで当事者能力を発揮するような事態が生じないとも限らぬのであります。そういうときに失われる国の損失、国鉄の損失というものに比べたら、今の八月からの完全実施、あるいは年末手当の問題、これは微々たる出費であると私は考える。国鉄総裁にその当時お聞きしたことを、もう一ぺん私お聞きしたいのですが、総裁のこの仲裁裁定を受諾された後に動き得る最大限度というのは、どういうことであるかということを、重ねて総裁にお伺いしたい。総裁は、努力されると言うのだが、どういう具体的な状態で努力されるのか。たとえば、仲裁は判決でありますから、その判決は総裁としてはどうしても受取らなければいかぬ。受取つて、受取りつぱなしなのか、予算をそれに沿つてこしらえられて、それをある方向へ持つて行かれるのかどうか。そういう具体的なことについて、総裁としてのどういう可能な範囲があるのか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  129. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 館さんのお話通りでございまして、まことにごもつともではありますが、一方においては、自由な、しかも能率のいい運営をやれ、そうして独立採算の線を厳守して行け、こういうことでありますが、一方国鉄法第一条には、公共の福祉を増進せよということが書いてあります。形式的と申しますか、実質的と申しますか、経営のやり方については、予算というわくで厳重にこれを縛る。まことに仰せの通りでありまして、そのごく小さなサークルの中で、こまねずみのようにぐるぐるまわつておるのが、私の状態であろうと思います。一歩もさく外へ出ることはできません。まことに遺憾でございますが、そういう状態でございます。運賃は、御承知通り国会の御協賛を経なければならぬ。これは非常に重大な問題でありますから、国会の御監督を受けることも当然であろうと思います。しかしながら、この点についても、とかく国会の会期その他は、政治的な問題でそれを定めるのでありまして経済的な問題のために国会が開かれるということは少い。われわれの方の運賃のようなものは、去年も私は痛感したのでありますが、石炭が上つたとか、いろいろなものが上つたので、運賃を上げなければならぬ。それを十月からやろうと思つてつたのが、いろいろな関係で十一月に遅れまして、その間に四十億という大穴が明いてしまつた。この穴は永久に埋まらない。そんなことで、いろいろ考えてみますと、非常にきゆうくつです。  そこで、本題に入りますと、今度の裁定について、どういう処置をしたのか。これは前々から申し上げたような次第で、裁定というものは両当事者を拘束することは当然でありますから、私どもとしては、八月より一万三千四百円の基準ベースにしてください。その不足分を政府に向つて要求したわけであります。
  130. 館俊三

    ○館委員 八月から実施をしてくれろという要求をなさる時分に、総裁は、自分の経理内容においてそれを出すような予算的なしたくをされておつしやつておるのでありますか。そういうことでなく、ただこれをのまなければならぬ法律的な立場に追い込まれておるから、それを単によろしく頼むということを運輸大臣に言われておるのか。運輸大臣に部内の予算的措置をつけてお話になつておるのかどうか。
  131. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 財源はありませんから、ないと申しておるのであります。
  132. 田原春次

    ○田原委員 関連して……。総裁は、日鉄法の改正をやろうと思つておる。そうしてそれは相当進歩的なもので、再びこういうごたごたのないようにしたいという考えがあるようでありまして、これはまことにわれわれも賛成でありますから、至急に日鉄法改正の案を出すべきであると思いますが、しかし、問題は、議会等はチャンスがあることであつて、ただ漠然と何となしにこの点を議会に出すということよりか、今度の問題を契機として、どうしても日鉄法を改正しなければならぬように、政府並びに内外に知らせる必要があると思う。そのためには、総裁は今度のこの問題について、次のような態度をとれないかということです。それは、しばしば総裁の答弁にありますように、第一項については八月に実施をするという決意を示された。それで困つておる。それから第四項の一・七歳末手当の問題ですが、これも団体協約でのむ。あなたとしては承諾するわけです。承諾して、これを政府にぶつつける。日鉄法の改正なき今日においてはそれはできぬから、従つて第二補正予算を組むべし、こういうことをあなたが突きつけることが、私は日鉄法を改正するいい機会だと思う。ある意味において、今回のこの裁定問題が、現行日鉄法の最後のものであると思いますから、従つてそれは少し大きく構えて——団体交渉はなすべしという裁定があつて、すでにそれをやつておるのですから、従つて内容について政府財源のことなんかあまり心配せずに、あなたとしては組合側要求をのんで出します。出すと、それは大きな政治問題になります。そうすると、政府部内は、大蔵大臣なんていうものはしろうとで、力も弱いし、第一自由党の中は、ごたごたしております。鳩山派あり、吉田派あり。吉田派が賛成すれば、必ず鳩山派は反対します。これに野党が同調する。私は鳩山派には相当正義硬骨の士のあることを信じておる。従つて、これが合流すれば、この三つの委員会は通過します。そうして本会議においても通ります。このことによつて、私は一挙に、さすがは長崎さんであるという感謝を、全国の組合員大衆は持つと思います。今のようにごたごたして、同じことをぐるぐる質問しておつてもしようがない。今聞いておると、意思はあるようだけれども、規定がないからやれない、あなたに誠意はあるけれども、踏み出せぬということでありますから、ひとつ大胆に踏み出してもらいたい。こういうことを私は考えますが、あなたにその決意があるかどうかを承りたい。
  133. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 田原さんのただいまの御意見、非常に感銘深く承りました。御意見として十分尊重して考えてみたいと思います。
  134. 田原春次

    ○田原委員 組合の幹部の御両氏にお尋ねしておきます。今総裁は非常な決意をされましたので、おそらくただちに今日から団交を通すと思いますから、団交の再開を迫りまして、その線でやつていただくような決意があなた方にもあるかどうか承りたい。
  135. 大和与一

    大和参考人 お説の通り、総裁の言明を確信いたしまして、団体交渉をただちに軌道に乗せて、全力をあげて所期の目的を達するように努力しますから、皆さんにおいても全面的な御協力をいただきたいと思います。
  136. 館俊三

    ○館委員 総裁は、さつき金がないからどうもしようがないということで、運輸大臣にお話なさつたそうでありますが、金がないというのは、全部がないということで御返事になつたのですか。それとも、これくらいの分だけは何とかできるのだが、それ以上はできないというような申し方の、ないという意味ですか。総裁は十分に努力しておられるということを、前々聞いております。その努力が、単に大臣のところへ行つて——これは仲裁の裁定をいただいて、総裁自身がそれに縛られてしまつた、その総裁の立場をどうしてくれるかという場合に、私どもでは全然金がないからやつてくれ、まかせるというものの言い方ですか。これこれの経理内容はあるのだ、しかしそれ以上はないという、ないという言い方もある。どちらをなさつたかどうか。いつも、どの総裁でもおつしやることは、十分なる努力を払うというお話をしておられるし、神経を病んでいらつしやることもわかるのですが、その行動範囲というか、どこまでそれが伸びるのかということを、さつきもお聞きしておるのですが、そうでなければ総裁の誠意は私たち理解することができない。与えられた予算の範囲内でやつておればいいのだというわけのものではない。総裁は朝からお話があつた通り、四十万ないし五十万近い国鉄の職員を背景に背負つておられるのですから、相当の度胸あるきめ方で運輸大臣に交渉されておるかどうか、そういうことを重ねてお聞きしたい。
  137. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 補正予算要求当時の情勢は、石炭費の値上りその他で、いろいろと経営の合理化をいたしましたが、それがほとんど全部石炭の値上りに食われてしまつたということで、自分の手持ちの資金というものがほとんどない。やむを得ないから、これを借金によるか、運賃値上げによつてまかなつて行くか、いずれかの方法しかないという結論であつたのであります。しかしながら、私の見解によりますと、こういう給与などというものは、私は借金でまかなつて行く性質のものではないと思います。そこで、先ほど来いろいろ申し上げましたけれども、保守復元ということなどについても、今後大いにやつて行かなければならぬ問題がございましたので、三割値上げということを提議しまして、そうしてそれによつて八月から一万三千四百円ベースを実行して行こう、こういう案を実は御相談したわけであります。
  138. 館俊三

    ○館委員 八月から一万三千四百円を実行なさろうとする場合に、政府から繰入れてもらう借入金といいますか、そういうものを幾らとお考えになつていらつしやいますか。
  139. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 当初は借金でやるべきものでないと考えておりましたから、運賃値上げによつてまかなうつもりでおりました。ところが、それが物価の面その他から見まして一割の増収ということになりましたので、今年度においてはあと一、二、三と正月から増収をはかりましても、三箇月しかございませんから、そこに大きな穴がある。それで借金は大体二、三十億ということに落ちついたわけであります。
  140. 館俊三

    ○館委員 あとに質問者もおられますから、簡単に伺つて打切りたいと思います。今、これから団体交渉をうんとおやりになるお気持になつたんですが、その際に、この前もお話が出たのですが、いろいろの問題で政府予算でわくをはめておる。ことにこの問題について、第二項以下については、団体交渉を拘束はしないということで、いろいろの議論がとりかわされた。それにもかかわらず、今ここで団体交渉を強力に再開するということをおつしやつたのですが、そういうふうにやつていただきたいと私は考えます。それで、もう一つそれにつけ加えて確認しておきたいことは、団体交渉が妥結した場合に、一つの協約の形ができる。その協約の形ができた場合には、総裁はそれに対してどういう御手段をとられるか。やはりさつきのように、金がないからということで終るのであるかどうかということを、お聞きしておきたい。
  141. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 そういうことのないように努力したいのですが、万一そういうことになれば、やはりいろいろな予算措置をとらなければならぬことになると思います。
  142. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 次に通告順によりまして青野武一君。
  143. 青野武一

    ○青野委員 今井さんに一点だけお伺いしたいのですが、予算委員会とかけ持ちをしておりましたので、質問者の御質問を全部聞いておりませんので、重複するところがあるかもわかりませんが、国鉄裁定については第一回から労働委員をしておりますので、今井さんと同じく内容は大体わかつております。今井さんは委員長として、実際に裁定が完全に実施されないことに対して、裁定の権威と公労法の精神に立脚して、大体政府の行き方、国鉄公社の行き方について——おそらくそういう質問があつたと思いますが、この際はつきりした御見解を話していただきたい。これは言い訳をすれば切りがありません。国鉄仲裁裁定が出るたびに、いつでも予算上、資金上支出不可能である。ところが、今、田原君が言つておりましたように、議会勢力の分野が非常に接近しております今日、かりに議会でわずかな差で仲裁裁定国会の審議において最後に決定せられたときに、やはり金がないで通されるつもりか。これは国鉄総裁の御意見を聞いて痛切に感じたのでございますが、少くとも責任を持つて仲裁委員長を勤めておられます今井さんは、先ほどからいろいろ質問に対しての御答弁を聞いておりますと、相当御不満もありますし、また理由書の中では、相当それをぶちまけておいたというお話も聞いておりますが、このような行き方が常にとられておりますならば、たとえば年末手当の問題にいたしましても、これは団体交渉できめるという裁定が四項に出ている。ところが、政府国鉄運輸省も、団交を開かないままに、そのまま陰で話し合つて、〇・七五を補正予算に組む。これは明らかに国鉄四十四万労働組合員諸君の団体交渉権の否認になるのです。争議権を奪つておいて、そうして当事者双方を拘束する公労法の三十一条が生きておりながら、常に予算上、資金上を口実にして、いつでも問題を紛糾させるのが政府であり、当事者の諸君である。私は今度の仲裁裁定ぐらいは、占領下を離れているのだから、一ぺん完全に実施したらどうか。それは熱意と勇気なんです。誠意をもつてやれば実現できないことはない。国会で、かりに少数の差でもいい、きまつたらどうなる。大体決定をされたときには、金がないでは許されない、何とかして完全実施の線に沿わなければならぬ。こういう点について、今井委員長はたびたび国鉄裁定について御努力をしていただき、また日夜御苦心をなさつて貴重な裁定の資料をそろえられた点につきましては、私ども心から敬意を表するものでございますが、こういう行き方で常にやられておりまして、問題が解決いたしませんと、勢い争議権を剥奪した国鉄労組の諸君は、生きんがために、自分の生活権を防衛せんがためには、どういうことをするかわからぬ。生きるためには手段を選ばないような方法をかりにとつたとしても、今後国鉄の総裁なり、政府当局の責任だと思う。もちろん、私は国会の審議権、決議権を侵害する意味でお話しているのではございませんが、争議権のかわりに仲裁制度というものが設けられている以上は、仲裁委員会の手によつて決定をされた裁定は、これを完全に、いかなる犠牲を払つても、どんな財政的苦しみがあつても、これを実施して行くということが問題解決のかぎである。この点について、ほんとう考えられております当の責任者である今井委員長のこれらに対する御見解を承り、それから国鉄総裁に対して一、二点お伺いしたいと思います。
  144. 今井一男

    ○今井参考人 先ほども人事委員の池田委員からそれに似たようなお話があつたのでありますが、とにかく関係者といたしまして、だれでも自分の出した結果が実現されないということは、いかに裁定そのものがつたなくても、われわれとしては不満であります。特に私どもとして考えますことは、賃金というものは、科学的には割切れない。これがそろばんで、もし何百何十何円何十何銭というただ一つの答えが完全に得られるものでありますならば、私は世の中に労働問題もなければ、共産党という問題もないんじやないか。(「それは少しおかしいぞ」と呼ぶ者あり、笑声)これはやはりいろいろの答えが出得る。いろいろの答えが出得るがゆえに、結局において最後はそういう仲裁のような手続を民主化したことによつて、それでがまんしてもらう、こういつた意味で私は仲裁委ができたのではないか、こう解釈しております。これは私のかつてな解釈ですから、お気に入らなければ、ごかんべん願いますが、そういう意味で、私どもの出した数字が御批判を受ければ、いろいろ御批判も受けます。その点、私は否定いたしません。高いという人もあるし、安いという人もあるし、そこをそういつた角度において御納得を願うというのが、こういう制度を置いたゆえんじやないかと思います。従いまして、私は、この賃金は高いからこれだけしかのめないとか、この賃金は安いからこれだけみなのむとか、こういつた角度では、少くとも調停案ではなく、人事院勧告でない、法律的効力を持つ仲裁制度においてはごめんをこうむりたい。もちろん予算的な角度から御議論なされることは、われわれの出しやばる幕ではございませんから、別問題でしようが、とにかくそういう角度で見られることは、仲裁制度を置いたゆえんにそむくのではないか、こういうように感じます。  なお、これは青野委員の御質問の中にはなかつたのでありますが、本日いろいろ皆さんからお話を伺つた中で、私もいつか申し上げようと思つて申し上げなかつた点を、一点だけ申し上げておこうと思いますが、第一次の国鉄及び専売の裁定のころまでは、すなわち昭和二十四年までは給与総額という予算総則のわくがございませんでしたので、物件費に余裕がありますと、この物件費の余裕を給与にまわすということは、国会の承認がなくてもやれたのであります。ところが二十五年度からは、予算総則に一箇条入りましてこれができなくなりました。一々国会の御承認がいる。国鉄についても、そのほか現業官庁についても、従来特別会計時代にはそういつたものはありませんでした。それが公共企業体になつて、かえつてそういうわくができたということは、少くとも総裁あるいはその他の経営者を信用しないことだと思います。人によつて、あるいは物件費をよけい使う人もありましようし、また人によつては使わない。そういつたことにおいてこそ、その経営者に自由な腕を振わせて、国会が与えた事業計画を実施させる、あるいは益金を確保させる、何億何千万人、トン、キロを遂行させるということはぜひ必要ですがその中の経営の幅というものは、そういつたことによつて簡単に生れると思います。しかも、当初にはなかつたわくが、実は現在入つておる。これなどは、もし国会でお直しになれば、簡単にお直しになれる。幸いに青野委員予算委員のようでありますから、私は御参考までに、よけいなことですが、一言申し上げておきます。
  145. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 青野君にちよつと申し上げますが、参考人の方は時間がありますから、要点をまたなるべく重複しないように願います。
  146. 青野武一

    ○青野委員 もう一つお尋ねしたいことは、これは直接今井委員長の責任ではありませんが、だれかの質問に対して御答弁をなさつておられたのを聞きますと、たとえば、年末手当が団交でどうしても妥結しないときは、仲裁委員会としては一応一定の線を持つておるというようなお話があつたように聞いております。争議権を剥奪して、仲裁裁定が出てもこれを実施しない、それが今までの例でありましたが、今度は仲裁委員会裁定のうち、御承知通り二項、三項、四項というものは、団体交渉によつて決定せい、その四項の年末手当至つては、団体交渉をしない前から、政府なり公社の首脳部が〇・七五という一つの線をつくつて、これが補正予算化されておる。これが本会議なり委員会で問題になつたのでございます。これは、ただいま申しましたように、私どもの立場では、明らかに国鉄労組に対する団体交渉権の否認である。こういう問題の生れて来ることを今井さんは予期して、それは七月ごろから十二月ごろまでの見通しが困難であつたから、団体交渉ということに裁定をしました、こういうお話は了解できますけれども、この団体交渉によつて年末手当決定せよという裁定が、結局国鉄公社政府をして、国鉄労組の団体交渉権否認という問題を生んで来た。こういうことが、将来の仲裁委員会一つの例になつて来れば、やぶをつついてへびが出るというたとえになりますが、この点についてのお考えをもう一つお尋ねしておきたい。
  147. 今井一男

    ○今井参考人 私も、この四項がおつしやるような形に、結果的になつたことにつきましては、非常に遺憾に思うのでございます。われわれといたしましては、具体的に幾らという案は、今でも持つておるわけでございませんけれども、しかしながら、両者のうち一方からでも、どうも話の見込みがつかぬ、何とかしてくれ、こういつた、口頭の注文でけつこうでありますが、御注文がありましたならば、これは動く用意を常々持つてつたのであります。ただ青野委員のような専門の立場からごらんになると、それでは模様が怪しくなつたらお前たち打出のたらいいじやないかといつたような御見解があるかもしれないが、そこは意見の相違があるかもしれない。われわれとして、仲裁のように、当事者の意思を越えまして強制するようなものは、これはやはり最小限度でなくてはならぬと思う。先へ立つて右へひつぱろう、左へひつぱろうということはよくない、なるべくひつ込んでいるがよろしい。少くとも一方でけつこうですから、意思表示がない限りは動くべからず、これがあつせんや調停なら、私はよろしいと思いますが、職権仲裁的なことは極力避けるべきだ、このわれわれの基本的な考え方から今まで見送つたためにこんなことになりまして、この点御心配をかけてまことに遺憾に存じます。
  148. 青野武一

    ○青野委員 今井委員長が、本日の午前十一時三十分から御陳述になりました中に、紛争の解決は自主的でなければならぬ、権力主義は極力排除せなければならぬといつたようなお話がありました。私は、去る七日の本会議でも申し上げたのでございますが、国鉄の諸君が、わずかに一万三千四百円の仲裁裁定に甘んじて満足しておるとは考えておりません。民間産業におけるところの賃上げ闘争、近くは電産、炭労あるいは全専売、人事院の勧告等に比較いたしましても、国民の税金によつて給料をもらつておる人と違いまして、みずから四十余万の諸君が、一日に四万ないしは五万の人が夜も眠らずに鉄道業務に携わつておる、非常に危険である、からだを苦しめておる。しかも予算総則とか給与総額に縛られて、言いたいことも言えない。自分の生活を守るためにストライキをやらんとしても、それが許されない。これはマッカーサーの占領政策の遺物で、今必要のないものでありますが、今、議会の多数党と政府は、これを廃案にしないのでございます。このような立場に立つて、しかも戦前に比べて旅客運賃において百九倍、貨物において百五十倍の上昇率、これは今井さんも言つておりました。このようにみずからひたいに汗し、あぶらを流して働いて、しかも、よその産業や人事院勧告等に比べまして、一万三千四百円というベース・アップが出て来たものに対して、これを満足はしないが承認をしたということは、仲裁制度を認め、公労法の精神を尊重しておるためである。どこから持つて来ても、どんな角度から科学的に検討しても、これは裁定通り八月一日から完全に実施すべき問題である、私はそう考える。その点について、しかも年末手当の問題について、国鉄総裁は運輸大臣を通じ、あるいは大蔵大臣に対してこういうことが先月の二十八日のこの労働委員会で問題になる前に、〇・七五という年末手当がこの補正予算に編成せられる前に、誠意と勇気をもつて御交渉になつたかどうか。私は、おそらくあなたは、投げやりで熱意がなかつたと判断しておるのですが、そのような動きを具体的にどうされたか。私は、たしか二十八日のときと思いますが、あなたに質問を申し上げたときに、大体〇・七五くらいで解決がつくでしようといつたような御答弁を聞いたように思う。それでは国鉄の諸君は承諾をしません、この問題は解決をしません。年末手当について、予算編成前に団体交渉を当然しなければならぬ。しかもはつきり閣議で決定する前には、それぞれの関係省に対して、大臣に対しても十分具体的な、熱意のある折衝が行われておらなければならぬはずですが、〇・七五が予算に編成される前に国鉄労組とどうして団体交渉をお開きにならなかつたか、この点をひとつお尋ねしておきたい。
  149. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 先ほど来たびたび申し上げましたが、第一項の問題については、はつきりいたしておりますから、八月から一万三千四百円ということで予算要求いたしておつたのであります。それから第二項以下の問題につきましては、もとよりお話通り、最初に団交をやつてきめて行くのがほんとうだと思います。しかしながら、非常に時日が切迫しておりまして、御承知のような今度の国会の会期その他から見まして、なかなかそういういとまもなく、結局から手でもつてこの期末に臨むわけにも行きませんから、当時出ておりました人事院勧告その他の諸点を参酌しまして、適当な額を要求してあつたのでありますが、それがやはり不幸にして〇・七五に削減されたというのが実際の事情であります。
  150. 青野武一

    ○青野委員 それではあなたは団体交渉を誠意をもつて開くと、ほかの委員にお答えになつておられましたが、ただちに国鉄労組と団体交渉をいたしまして、この年末手当の線がどこで出て来るかわかりません。要求は一・七——私どもは大体社会党の一人といたしまして、一・七、当然と考えております。しかし、政党によつては、あるいはまちまちの数字が出るかわかりません。しかし、そういう点についても、今の補正予算の〇・七五にとらわれずに、誠意をもつていろいろな事情を勘案して、国鉄労組の諸君のために、最高の責任者が最後の誠意をもつて努力をしてもらいたい。そうなさる御意思があるか。  これで私の質問を終りたいと思います。
  151. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私のところの予算の編成につきましては、やはり運輸大臣が私の監督官庁であります。従いまして、政治的な面で、裏面的にはいろいろ動くことはできますけれども、表だつてはやはり運輸大臣を通じてやらなければなりませんので、これは運輸大臣を通して十分閣議等でお語いただいております。
  152. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 春日君。
  153. 春日一幸

    ○春日委員 私どもは、公労法が廃止されない限り、やはりこの規定従つて議案の審査を進めて行かなければならぬわけであります。そこで、私どもが、今議案を審議する上において、非常に困つておる問題は、われわれはいわゆる仲裁裁定に基いて、必要なる予算措置を講ずる義務が、公労法十六条によつて定められておるわけなのであります。ところが、その裁定は、第一項目が具体的に指定されておるだけで、二、三、四については、これが団交にゆだねられておるわけです。しかるところ、その団体交渉たるや、公社側に結局予算がないので、どうにもしようがないというような状況下にあるといたしますれば、すなわち、公社側は団交をする能力を持つていないと断ぜざるを得ない。そこで、今井さんにお伺いしたいことは、あなたが八月この仲裁案を裁定されますときに、公社側がこのような団体交渉能力を欠いておることをあらかじめ想定されてこの裁定をされたとは、私は考えないわけです。当然二、三、四項目にわたつて、具体的な団交が行われて、そうしてその結果は、漸を追うて具体的な数字となつて、十六条に基くところの予算措置となつて来るであろうと考えられたことと思うのです。ところが本日総裁は、したいと思うけれども財源がない、政府に極力要請したのだが、その結果は妥結に至らなくて遺憾に思うと言われた。こういう状況でありますれば、これでは団交の能力を喪失しておると判定せざるを得ない。さすれば、特に私どもは委員長お願いしたい。われわれは、この二、三、四項目について必要とするところの財源が、一体幾ばくのものであるかということを知ることができないわけです。われわれは結局三十五条と十六条の関係において、必要とするところの具体的な数字を示されなければ、審議権を行使することができないわけです。そこであなたにお伺いしたいことは、こういう状況下において仲裁委員会は二、三、四項目について指示されるような意思はないかどうか。またわれわれがそういう指示を受けることなくして、いかにしてこの裁定案に基くところの予算審議をすることができるかどうか、この点をひとつあなたの立場からお伺いいたしたい。  他の一点は、あなたが経理能力をあらかじめ想定しつつこの裁定を下されたということでありますが、そこで、国鉄法に基き、いわゆる損失を生じたる場合においては一般会計から交付することができるという条項があるわけです。従いまして、今や労働組合要求をいれようとすれば、本年度においてはこれは損失ということになるわけであつて、今やこの損失を補填するために第四十一条の二の条項は活用さるべきときであると考える。従つて一般会計よりここへ相当額が繰入れられることによつて、労使双方の要請することが調整されて、すなわち円満なる国鉄運営の完璧が期し得ると私は思うわけです。そこで今までもいろいろ論議がございましたが、公社側は現実にこの事業が公共事業であつて常利事業ではない。従つて、そういう公共事業の性格にのつとつて、当然一般会計からの繰入れを四十一条の二の規定従つて要請する建前にあると思うが、なぜそういう方面に対する要請をされなかつたか、この二点をお伺いしたいのでございます。
  154. 今井一男

    ○今井参考人 前に申し上げたと思うのですが、二項、三項につきましては、私は金額は比較的簡単にきまり得ると思います。これはあるいは金額だけの問題になつていましたら、われわれ口を出さなくても、両方の専門家が数時間顔を合せれば、そう大差ない数字が出るのではないかと思います。四については、非常に幅がございます。これにつきましては、われわれは、もし一方から正式に、両当事者の意見が一致しないから指示がほしいという意思表示が委員会に対してなされますならば、委員会としては、いつでも動く用意はしております。
  155. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 ただいまの四十一条の二の交付金の問題、これは大体正式に予算がきまつたのは、非常に最近ばたばたと行つたのですが、実は事務的折衝は、裁定が出た当時からいろいろ大蔵省の事務当局と私の方の事務当局と話合いをしておつたわけです。その際に交付金の問題も出ましたし、借入金の問題も出ましたし、みやげの問題も出ましたし、いろいろやつた結果、今日のような状況になつたわけであります。
  156. 春日一幸

    ○春日委員 そこで、今井委員長に重ねてお伺いをいたしておきます。ここに政府から議案が提出されておりますが、これは予算上支出することが困難であると思われる、こういうことで来ておるわけであります。従つて、われわれはこれを補正すればいいわけだが、どれだけ補正する必要があるかということは、われわれは知らされていない。そのことは団交にまつ。団交の結果はいまだ示されていない。団交たるや一方は団交能力を喪失しておられる状態にある。そこで私が申し上げることは、今、国会がこういうことを具体的に審議する事態に立ち至つておるときに、一方が団交能力を喪失しておる状態にあれば、今やあなたがこれに対して一定の指示を行うことによつて、示された数字によつて三十五条を尊重しつつこの予算措置を講じなければならぬ、こういう段階にあるわけなんです。従つて政府は幾ら出したらよいか適当にきめて、ただいま館君が指摘した通りに、必要にして十分な措置を講ずるのだから、それを決定してもらいたいというような議案の提出の仕方になつておるから、われわれが幾らこれを必要として予算的措置を講ずればよいかということに当面しておるわけです。従つて当面するその数字は、やはり仲裁委員会によつて示されなければ、その基礎、基準というものがないわけであります。この点をどういうふうに考えておられるか、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  157. 今井一男

    ○今井参考人 前に申し上げた通り、両当事者の間のけんかをさばくというのが、われわれの建前でありますので、但し個々の問題は団体交渉できまるだろうということは一応考えましたけれども、きまらないことももちろん含んでございます。ですから、当事者の一方から正式に当委員会の意思表示の要求がございますれば、なるべくすみやかに各委員に督促いたしまして数字を出せる用意をいたしたいと思います。
  158. 石野久男

    ○石野委員 今井仲裁委員会委員長はお急ぎのようでありますので、一つだけ聞いておきたいと思います。これはもう再三にわたつて皆さんからお聞きしたことでございますが、何といいましてもこの第四項の規定の仕方は、今日となりますと、やはり非常に問題を混乱させる状態になつておると思います。先ほど、こういう状態にあるときに、もし総裁の方からの話合いでもあれば、もう一ぺん委員との間で、団体交渉によつてきめる前に、年末手当等についての何か考えをしてみたいというような御意思があるようなことを言われたように私は記憶するのですが、そういうふうに言われたのであるかどうか、もう一ぺん委員長の御意見を聞いておきたいと思います。
  159. 今井一男

    ○今井参考人 この理由書の第一の六の末行にありますように、年末手当については「その確定は両者の団体交渉に委ねることとし、必要に応じ、本委員会より指示することとした。」こうきつぱり約束してあります。
  160. 石野久男

    ○石野委員 総裁にお尋ねいたします。今度の問題については、双方ともやはり誠意をもつてこの問題の中に立ち入つておるように理解しておるのでありますが、先ほど今井さんからもお話がありましたように、裁定問題について、今井さんは遺憾の意を表明しておられたと思うのであります。その中に、とにかく当局の方では、この裁定についての最高最低の線が那辺にあるかということも示されないでおるということは、どうも問題をぼやかすものである、こういうふうに言つておるわけであります。私ども先ほどから何べんも話を聞いておりますと、やはり総裁は、その要点について、どうもぼやかしておるように思うのであります。従つて、今回の裁定についての基本的な考え方において、総裁はこの裁定を妥当なものと見られるかどうか。一応、政府との関係はともかくとして、総理者として経営を握つておられるあなたとして、今日のこの紛争を解決するにあたつては、この裁定の線が妥当なものであるというふうに考えておられるかどうかということを、もう一度はつきり聞かせていただきたいと思います。
  161. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 石野先生のお話は、第一項の点でございますか。
  162. 石野久男

    ○石野委員 それは裁定全体を言うのでございます。
  163. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 裁定については、当事者といたしまして批判の余地なしと思うのでございます。
  164. 石野久男

    ○石野委員 わかりました。そういうお考えであることと、いま一つ関連してお聞きしたいのでありますが、国鉄労働組合の諸君が、その生活の実態、労働条件等の諸事情から要求書を出しております。その要求書については、あなたの方では、それは妥当と認めるけれども、経理上等の事情でなかなかやれない、こういうふうに理解してもよろしいのでございますか。
  165. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 当時の情勢においては、そうでありました。
  166. 石野久男

    ○石野委員 そういうふうな総裁の意見でありますと、総裁の経営内における立場からいたしましては、できるだけそれを実施するように努めるべきが、今日の国鉄を将来にわたつて発展させる道であるとわれわれとしては考えられるわけであります。特に本日この争議の問題を委員会として取上げるにあたつては、そういう問題の当事者としての総裁の意見が、裁定実施してやるように、あるいは要求に対してなるべくかなえてやるようにという意思があるかということが重大でありますので、ひとつ聞かせていただきたいのであります。
  167. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 組合の御要求になつておるものそれ自体の当否は別といたしまして、とにかく私として国鉄財政の許す限りにおいて、できるだけのことはしてあげたいと思つております。遺憾ながらただ今日の情勢は、非常に今憂慮しているのですが、御承知のように炭労ストライキのために列車は削限される、石炭の納入は減るというようなことでございまして、およその腹つもりでも、ここに二十億ぐらいの開きが出て来るのではないかと考えて、非常に心配しておる次第であります。
  168. 石野久男

    ○石野委員 仲裁案が実施されない場合、どういう事態が起きて来るかということについて、やはり私どもとして考えなくてはいけない。公労法が実施されておる建前上、労働組合の諸君は、憲法二十八条における権利においても制約されるいろいろな場面が出ているわけでございます。従つて組合の諸君としては、公労法が実施され、特に仲裁規定ができましてからは、できるだけ遵法の精神に燃えて、いろいろな要求を押えながら、その裁定に従うような意思表示をして参つたと私たち理解しておるのであります。ところが、過去二回、三回にわたりまして、それがいつも労働組合員の意図に反して、いろいろな意味で踏みにじられて来た。こういう場合に、組合の諸君は、これでは困る、これではとてもやつて行けないという考え方から、この裁定がそういうふうに実施されないならば、おれたちは何もがまんしてまで遵法闘争している必要はないではないかという考え方を持つようになつて来るのは、自然の理だと私は理解するけれども、総裁はそれをどういうふうに考えますか。
  169. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 私も人情論として、さようであろうと思います。
  170. 石野久男

    ○石野委員 もしそういうふうな事態になつて参りましたときに、国鉄労働組合要求にかかわる争議事項の結末としては、たとえば今日の場合、政府はすでに仲裁裁定では第一項、第二項、第三項をずつと通じまして、仲裁裁定規定している範囲を逸脱した予算を組んでおります。従つてその予算の結果としては、労働組合の諸君にすべての犠牲が集中される結果になつて来ているようにわれわれは理解するけれども、そういうような理解の仕方を、総裁はどういうふうに考えますか。
  171. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 先ほどからたびたび申し上げましたが、なるほど理論的に申しますと、これはまず第二項、第三項、第四項については団体交渉をやつて、それが妥結されなかつたならば委員会の指示を受けて金額がきまり、それから補正予算を出す、こういう段取りが一番正しい道であろうということはわかります。但し、二項、三項等については、先ほど来申し上げましたが、現在補正を受けない予算のうちでもやり得るものがありますから、それらは団体交渉をやつて片づけたものもございます。ただ四項については、金額が非常に問題になるわけでございます。従つて、やはり団体交渉で先にきめるのがほんとうですが、暮れに迫つてそういうことをやつてつたのではたいへんなことになると思いますので、しかも全然自分のふところに主もなしに相手と話をしたところで、はなはだ迷惑なことと思いまして、そこに非常に矛盾がございますけれども、一応私は先ほど来申し上げましたように、当時人事院の勧告その他も出ておりましたから、それらの点をもにらみ合せまして、まあまあこの辺ならということで要求いたしましたけれども、その結果は〇・七五というところに押しつけられたというのが実際の状況であります。
  172. 石野久男

    ○石野委員 大体総裁は、よく腹にわかつていながら、どうもむちやなことを言つているように私は思うのであります。とにかくここで一番問題になるのは、先般来国鉄要求にかかわる問題として、資金をどういうふうにするかということについての総裁の腹構えと、それからいま一つは、今日のこの問題について総裁が労働組合に対してどういう考え方を持つておるかという腹と、それから一方では、政府との関係をどういうふうに考えるかというところをはつきりさせなければいけないのだと思います。先ほど田原委員からお話がありましたときに、総裁は、はつきりこれからは誠意をもつて予算のわく等はあまり考えないでひとつ団交をしようということを約束されたので、これは私けつこうなことだと思つております。これはひとつ、なるべくそういうふうにしてもらいたい。その問題についてはそれ以上質問しません。  ここで一つ聞いておきたいことは、国鉄の経理についてこれから後の資金調達についての総裁の腹構えをはつきり聞かせておいてもらわないと、われわれがこの問題を審議するにあたつても、非常に問題が混乱するわけであります。従つて、従来の資金調達の面については、りくつは抜きにいたしましても、ドツジ・ライン以来非常にあなた方の経理について自主的な経理の面を制約されていると思うのでございます。あなたは、そういう政治的ないろいろなわくと、それから今日のこの国鉄の窮迫している事態とを考えましてどういうふうな根本的な考えを持つておられるか、それを今ここでひと一つはつきり聞かせていただきたい。
  173. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 これはもう石野先生にはたびたび申し上げたかと思いますし、また今後の機会においても十分詳しく御相談申し上げて、お力を借りなければならぬ問題と思つております。御承知のように、非常な窮迫状態でありまして、資金がない。それが借入金であろうが、政府の出資金であろうが、あるいは収益であろうが何であろうが、とにかくいずれにしても資金がなくて、いろいろな施設の復興、復旧が遅れている。また従業員諸君の福利施設にいたしましても、非常に遅れているという状況でありますので、この資金の調達という面については、ぜひとも私は今後いろいろまたお知恵を拝借したいと思います。今までの情勢におきましては、営業収入から営業費を引いた残りの金と、それから修繕費はもちろん常業費の中で使いますが、わずか年々百億程度の借入金というようなことでありまして、これではなかなか復興、復旧は容易にできないと私は思います。今後におきましても、借入れの道について考慮をして行きたい。今度の補正予算等の場合におきましても、明らかに穴があく予算に査定をしておられたので、これでは困るからということで借入金が出たわけであります。来年度につきましても、われわれの計画で、その補正予算の御相談を願つている際に、石井運輸大臣を通じまして、来年度においては相当の金額を出資なりあるいは資金運用部資金から出していただきたいということを申しました。その理由といたしましては、いろいろあると私は思います。ここで一々りくつみたいなことを言つてもしようがないのです。これも考え方なんですけれども、定期のようなものま、非常に安い運賃で運ばれている。これは社会政策的な面から、はたしてそういう弱体なものを国鉄は今日でもなお負担しなければならぬかどうか。だから、やはり社会政策的な意味において、国家がわれわれに補償してくれてもよさそうではないかという気がいたします。そんな問題がいろいろございますが、またとくと御相談申し上げてお知恵を拝借したいと思います。
  174. 青野武一

    ○青野委員 国鉄総裁は、経理上の問題として四十億の借金がどうにもならぬ、払えない、こういう御答弁でありました。私は、これは先ほどお尋ねしたいと思つておりましたが、ちようど関連しましたのでお尋ねしておきます。  それは連合軍に占領せられてからのことであります。昭和二十年八月十五日に終戦になりました直後から、一応日本の占領政策が連合軍によつて決定せられ、そして四月二十八日に平和条約が発効いたしましてから、今日アメリカの駐留軍との間に、どういう契約で武器の輸送——朝鮮戦争に必要ないろいろなものを送つておる。人間を送る。そういう点について、どのような程度の協定をされているか。それが経理の面にどういう差額が出て来るか。日本人の場合と、旅客運賃にしても貨物運賃にしても、それと同じであるかどうか。  それから今まで常に国鉄の諸君に裁定が出るたびに、それが完全実施されなかつた一つの大きな原因として、占領軍、いわば連合軍の朝鮮戦争が一昨年の六月二十五日に始まるまでの年別による燃料、修繕費、人件費、新設費等について、たとえば日本人を乗せたらどれだけの収益があつたが、相手が連合国軍だからしかたがないといつたとれない金がどの程度に出て来ておつたか。それから朝鮮動乱が始まつて、特にその点についてどういう統計ができておるか。これは経理の面で非常に大きな問題である。占領せられているときの状態と、独立した四月二十九日からこつち、どういう内容を持つてつて、それが国鉄公社の経理面にどう響いているか。これは石炭の問題にしても、人件費の問題にしても、大きな問題だと思います。その点をでき得る限り詳しく御説明を願いたい。
  175. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 動乱前といいますか、講和条約締結前の問題はともかくとしまして、講和条約が締結されまして行政協定ができる前だと思いましたが、その間に向うの方と話ができまして、ごらんのようにRTOですか、ああいうものもだんだん姿を消して参りました。それからなわを引いておるのも姿を消して来た。あるいは「専用車」と入つたマークがなくなつて来たとかいうことで、向うは非常に紳士的にこちらと対等の地位で契約をしようというので、今はお客さんの運賃も貨物の運賃も、内地のわれわれと同じようであります。
  176. 青野武一

    ○青野委員 四月二十八日からこつちのやつはそれでわかりましたが、それ以前に国鉄の経理に——国鉄公社ができてからでいいです。国鉄公社が生れてから——私にはつきり言わせますと、朝鮮動乱に関係している十六箇国は、厳密にこれを分析すると連合軍とは言われない。日本を占領しておつたが連合軍であつて、朝鮮で戦争をするのだつたら、日本でどうぞ御自由にしてください、軍事基地をつくつてくださいということを頼んだこともなければ、われわれ国会決定したこともないし、国民もない、向うさんがかつてにやつているのだ。これは連合軍といつても数が違う。日本を占領しておつたのは十三箇国、朝鮮で戦争しているのは十六箇国で、三つ多い。それがかつて日本に来て日本の国有鉄道を使つている。その経理の面で、日本人からとる貨物運賃、旅客運賃に比べてどれくらいな損失を受けたかを聞きたい。これがやはりこの裁定の将来の問題に対しても、今までそういう問題が含まつてつたから四十億の金が払えない状態に立ち至るのではないかと思う。遠慮せずにこの内容を発表してもらいたいと思います。
  177. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 いずれこまかい数字お話するようにいたしますが、私の聞いているところでは——私は去年の八月に参つた者ですからよくわからぬですが、これは損をしているばかりは言えないようです。全然ただで使わせろと言つたのではないのであつて、やはり料金をもらつているのです。それと今とつている料金とを比較してごらんに入れたら、おわかりになるかもしれませんが、あれは今までは貸切りでやつてつたのです。
  178. 石野久男

    ○石野委員 今青野君から質問されておる点は、非常に重大な問題であります。これはまたあとでいろいろもつとつつ込んだ話を聞かないと、そのままではどうも理解できない。私には一問しか許されておりませんので、総裁にお聞きしておきたい。これから団体交渉をやられるについて、特に先ほどお話がありましたように〇・七五というものが予算でわくがきまつて、できないということがはつきりしたのですが、もしそういうことをやると、こういうことになると思う。裁定の第四項では「年末手当は、理由に示す趣旨に従い、両当事者の団体交渉によつて決める」ということが、はつきり出ておるわけです。ところが、一つのわくをはめられると、これはもう団体交渉の能力があなたにないということになつて来る。従つて労働組合側としては、団体交渉の能力がない当局を乗り越えて、その能力を持つておるであろうと思われる政府または国会等に、当然交渉して来なければならないという事態が出て来るのであります。これは非常に重大だと思う。われわれはそういうことのないことを希望しますが、もし先般来のようなことがあるといけないので、この点は総裁にはつきり聞いておきたい。もしそういうようなわくがはめられると、労働組合の諸君は当然その交渉の相手を、当局を乗り越えたところに求めないと話がつかないということになるから、日本の経済状態、諸般の状態とにらみ合せて、今よりも一層困難な事態が来る。それを承知しておるかどうかということを、総裁にはつきり聞いておきたい。
  179. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 そういうことになるとすれば、裁定委の指示ということが、その前に現われて来るだろうと思います。そういうことさえもないように、できるだけ円満に妥結を見たい、こういうような私の考え方であります。それから、そのわく——わくという問題は、どこまで行つてもついて来る。さつき申し上げたように、これはやつておいてから予算要求するなら、そういう問題はございませんけれども、今のところやむを得ないことであつたということで、御了承を願いたいと思います。
  180. 正木清

    ○正木委員 総裁に簡潔に一点だけ聞いておきますが、国の経営から公社に移りましたときの資産負債の引継ぎでございます。電信電話公社の方は、負債だけはたな上げにして、資産価値を政府の全額出資というようになつておりますが、国鉄公社の場合、この点がどうなつておるか。やはり電信電話と同じように負債はたな上げして、資産だけが公社の方に引継がれたのか、負債もそれと並行して引継がれたのか。引継がれておるとすれば、その当時の貸借対照表に基く金額はどのような形で現われておるか、その一点だけをお伺いしておきます。
  181. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 これは私今の会計の体系がかわりましたから、わからないのですが、貸借対照表を見ますと、昭和二十四年度へ資本金が四十九億、引当金が十八億、長期負債、借入金として七百十六億という金が載つております。その他に短期負債が九十六億。
  182. 正木清

    ○正木委員 こまかいことは運輸委員会であなたと詳細にそろばんを入れるつもりです。そこで連合審査会として経理の問題になつて来ますと、電信電話公社法では負債はたな上げ、資産だけを公社に引継ぐ、国有鉄道の方は、あなたの答弁の数字はどうもおかしいと思うのだが、負債も同時に引継がれておる。そのほかにあなたの心境を一点お伺いしておかなければなりませんことは、経営全体の運用にあたつて国鉄法それ自体が、電信電話公社法等から見れば、非常に遅れたものである。昨日の運輸委員会において、運輸省は進歩的な電信電話公社法よりさらに進歩的な改正案を来国会に出すと、私の質問にはつきり答弁されたのですが、あなた自身が責任者として運用しておつて、どういう点にどういうような不自由な点があるか、その不自由の点から来る資金調達その他の点について、あなたの御心境を承つておきます。
  183. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 さつきほかの方の御質問に答えたのですが、日鉄法は改正の意思あり、来回会にぜひ出したいと思つておるということを申し上げておいたのでございます。
  184. 青野武一

    ○青野委員 さつきの国鉄総裁の私に対する御答弁は、まるつきり見当はずれで、雲をつかむようでさつぱりわかりません。それでさつきの質問に対しまして、朝鮮動乱以後と平和条約発効以前と以後とにわけた統計を労働委員会に出していただきたい。それから山口委員が先ほど質問いたしました内容に触れますが、関西の五社、九州の西鉄、関東十社の従業員一人当りの収入、キロ当り従業員の数、キロ当りの収入、これと国鉄と比較して、本会議でこの問題が決定する以前に、資料としてほしいと思います。できれば二十五名の労働委員にこれを御配付願いたい。これは希望というよりも、御要求申し上げておきます。
  185. 山村新治郎

    ○山村委員長代理 本日は、参考人各位におかれましては、御多忙中にかかわらず、長時間にわたりまして腹蔵なき御意見の開陳を願いまして、まことにありがとうございました。  それではこれにて本連合審査会を打切りまして散会いたします。     午後四時四十七分散会