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1953-03-10 第15回国会 衆議院 労働委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十日(火曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 田中伊三次君    理事 持永 義夫君 理事 倉石 忠雄君    理事 千葉 三郎君 理事 前田 種男君    理事 青野 武一君       麻生太賀吉君    今松 治郎君       宇都宮徳馬君    大平 正芳君      甲斐文治郎君    迫水 久常君       重政 誠之君    塚原 俊郎君       中  助松君    中峠 國夫君       丹羽喬四郎君    明禮輝三郎君       森   清君    吉武 惠市君       菅  太郎君    松浦周太郎君       森山 欽司君    春日 一幸君       菊川 忠雄君    矢尾喜三郎君       山口丈太郎君    山花 秀雄君       石野 久男君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      中島 征帆君         労働政務次官  福田  一君         労働事務官         (労政局長)  齋藤 邦吉君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    大島  靖君  委員外出席者         議     員 島上善五郎君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 三月十日  委員麻生太賀吉君、石田博英君、宇都宮徳馬君、  森清君、山村治郎君及び多賀谷真稔辞任に  つき、その補欠として中峠國夫君、今松治郎君、  甲斐文治郎君、塚原俊郎君、丹羽喬四郎君及  び山口丈太郎君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員塚原俊郎辞任につき、その補欠として森  清君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森清辞任につき、その補欠として明禮輝  三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  理事山村治郎君の補欠として倉石忠雄君が理  事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律案内閣提出第八八号)     —————————————
  2. 田中伊三次

    田中委員長 これより労働委員会を開きます。  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案内閣提出第八八号)を議題といたします。昨日に引続いて質疑を継続いたします。  それからこの際皆さんに申し上げますが、間もなく副総理が参ります。それからここに佐藤法制局長官法務府からは岡原刑事局長、これだけが労働省開係以外に出席をいたしております。  それでは質疑を継続いたします。山口丈太郎君。
  3. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それではただいま議題となつておりまする電気事業及び石炭鉱業における争業行為の方法規制に関する法律案について、まず第一に政府考え方から御質問申し上げたいと思います。  労働大臣及び法務大臣質問をいたしたいのですが、今までの労働法規によりますと、経営権労働権、これを平等の形の精神法律というものができておつたと思うのですが、この法律が施行されますと、まず経営者所有権が優先をいたしまして、そうして労働権というものが従になる形になつて、従来からの立法精神というものが変更されて、重大な修正が加えられるというふうに考えまするので、まず立法精神について、ひとつ法務大臣並びに労働大臣からお答えいただきたいと思います。立法精神について法務大臣並びに労働大臣からお答えをいただきたいと思います。
  4. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 この点につきましては、先来しばしばお答え申し上げておるのでありますが、今回の法案による規制は、従来の考え方で違法であつたもの、あるいはまた妥当性を欠いておるものについて方法規制をいたすのでありまして、いわば従来の考えを明確にするというものであつて対等原則を破壊するものとは考えておらないのでございます。
  5. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 政府対等原則をくずさないというふうに、いつも答弁されておりますが、実質的には、たとえば保安要員等におきましては、採炭等政府のおつしやるいわゆる正常な業務坑内で行われていてこそ、やはり人命財産というものは安全が保たれると思うのです。ところが、今度はそういう採炭等作業が行われていない、いわば坑内においては正常の人数を確保していないような危険なところに、保安要員だけは入つて保安作業をしなければならぬ。しかもそのときの労働給与条件というものが、労働者の拒否する条件下にある。その拒否する労働条件下において、なおかつ業務命令等によつてその私有財産保護しなければならぬといたしますと、これは人命よりも所有権の方が第一義的な考え方に置かれて来ると思います。そうなりますと、重大な人命保護基本権が逸脱することになると思うのですが、労働大臣はどういうふうにお考えになつておるか、その見解を承りたいと思います。
  6. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいまお話保安施設保護は、従来とても当然に維持せられなければならぬように規定せられておるものでありまして、これは重要な国家資源を破壊するようなことになることはいけないという趣旨でできておることは、申し上げるまでもないのであります。ただ、昨日もお話が出ましたが、従来の規定疑義があるやに考える向きがあるという点を考慮して、この際明確にいたしたというにすぎないものであります。
  7. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 この際そういう点に疑義があるから明確にしたとおつしやいますけれども、それでは人命財産保護の観点と、単なる物質的財産保護というものとを、一体この法律にどういうふうに明確にされておるのか。私はこの法律から行きますと、何ものにもかえがたい人命というものが従に置かれ、結果的に見ますと物質面保護が主に置かれておる。すなわち物の所有権のみが大きく保護され、結果的に人命というものが第二義的になるのであります。基本的人権の問題として、憲法ではいかなる場合においても人命は第一義的に保護されなければならぬが、それが喪失されるということは重大な問題だと思います。はたしてこの法によつて、それらの危険を伴う人命保護されるか。  それから、さらに第二点としては、そのときの条件というものが、労働者の拒否する条件に置かれておる。そういたしますと、その拒否する条件のままで業務命令を出すということは、これまた憲法には強制労働をさせてはならないとうたわれておりますが、それが結果的に見て強制労働性質を帯びることになります。この二点について見解を承ります。
  8. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先般たびたび申し上げておりますように、保安業務の種類は、人に対する危害鉱物資源保護鉱山施設の荒廃、鉱害、この四つがあるわけであります。直接人命関係いたしますのは、先ほど申し上げました人に対する危害保安一つのものであります。それから鉱害は、御承知のように第三者に迷惑をかけるというおそれのあるものであります。問題は資源施設でございますが、これは御承知のように、先般来申し上げておりますように、かりに私有財産でありましても、それは国家の貴重な資源であり、争議が済みましても、資源が滅失し、あるいは施設が荒廃するということになりますれば、争議後復帰する職場を失わしめるということになる性質のものでありまして、すなわち法益均衡を著しく失するのだという面から、この点だけはもうすでに政府は違法であると解釈しておるのでありまして、私有財産を頭に入れての保護ではないわけでございます。その点をひとつ御了承おき願いたいと思います。  それから、こういうふうな保安の問題が違法であるということになりますれば、労働者は自己の拒否する条件で働かなければならないので、それは強制労働になりはせぬかという趣旨お尋ねでございましたが、こうした保安業務に必要な人として働く人々は、御承知のようにすでにきまつた雇用条件のもとに働く人々でございますので、従いまして強制労働などという性質のものでは全然ないと私どもは信じております。
  9. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は今の局長答弁は、きわめて一方的であると思う。もちろん労働者が働く場合におきましては、雇用契約に基いて働いているのは当然の話である。しかし、その雇用契約によつては働くことができないから改善してくれと要求するのが労働組合の要求です。そうして一方において、労働組合はそれが聞いてもらえないから、それじや労務を提供することを拒否するというのがストライキなんです。これは御承知通りです。そういたしますと、その労働条件では労務を提供しないという状態に置かれているのに、その改善されない労働条件のままで、業務命令によつて労働提供が拒否できない状態に置かれるということは、明らかに強制労働意味するものであると考えるのですが、さらにもう一度その見解を聞かせていただきたい。
  10. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 争議でございますから、労働条件について意見が一致しないで紛争中の場合であります。その場合には、もちろん雇用契約内容とするその条件が、将来変更されるかもしれませんけれども、まだ確定はしていないわけでございます。労働者の側から言わせれば、それではいかぬと申しましても、経営者と話がついていない条件であります。従つてその場合には、すでにきまつている労働条件のもとに働いておることになるわけでありますので、強制労働などとは、全然考えておりません。
  11. 田中伊三次

    田中委員長 山口君にちよつと申し上げますが、官房長官法制局長官がおりますから、あとは留保しておいて、その方の質疑を先にお願いします。
  12. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そういう答弁でありますが、それじや、このきめた条件というものを期限が切れて破棄する状態にあるとすれば、一体どうするのですか。今まで契約して来たが、しかしそ、の期限が付されておるとすれば、その期限が切れて破棄する状態に置かれている。たとえば三月の十日をもつて今までの給与関係契約が切れておる、あるいは労働協約において無協約状態にある、こういうふうな場合においては、いつでも従来の契約は破棄される状態に置かれていなければならない。そうして拒否の状態にあるものを、さらに業務命令によつてやるということは、経営者の一方的な措置といわなければならぬ。それがはたして強制労働にならないかどうか。もう一度法務当局その施すべての方々から見解を明らかにしておいていただかないと、将来この法律を適用した場合にたいへんなトラブルになると思いますので、その見解はぜひとも各関係者から明確にしておいてもらいたい。
  13. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 協約がなくなりました場合の点でございますが、その場合でも、団体協約が失効いたしましても雇用契約残つて、それに基く賃金等が支払われるわけでありますので、強制労働にはならないと思います。雇用契約を破棄するということになりますれば、退職ということになりますので、問題にならない、かように存じております。
  14. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 もう一度法制局の方で見解を明らかにしておいていただきたい。私は今の答弁では満足できない。
  15. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 別に私はつけ加えることはないと思います。ただいま局長から答えた通りだと考えております。
  16. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それでは、私は憲法の十四条に対して、非常に重大な問題を含んで参ると思うのです。憲法十四条では、すべて国民は法のもとに平等でなければならぬ。しかるに労働者がきわめて不満足な形で労働契約を拒否すべき状態にある。そういう場合に、ただ目的公共福祉だと言いますけれども——これはあとでまた論議いたしますが、その名をもつて経営権所有権の一方的な保護のために下される命令というものは、はたして憲法にいう、国民はすべて法の前に平等ということを実際に行われるものであるかどうか。
  17. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 抽象的なお尋ねでございますけれども、大体憲法の十四条と二十八条との関係につきましては、私の今まで考えておりますところでは、十四条の原則がただいま御指摘の通りに平等の原則で貫いておるわけですが、二十八条の方は、むしろ平等の原則で貫くというと、先ほど最初のお言葉にもありましたように、使用者側経済的な力と労働者側経済的な力とは、客観的にバランスがとれておらないのだから、むしろ労働者側の力の方に足し前をつけてやろうというのが二十八条であろうと思います。従いまして、平等の原則からいえば、足し前をつけるのがむしろおかしいというのでございますけれども憲法がもつと大きなところから二十八条で足し前をつけていると考えるべきであろうと存じますから、直接十四条の問題に深入りして考える必要はない事柄ではないだろうかというふうに考えているわけであります。
  18. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは、立法をして、いずれにしても基本権に該当するものを制約しようとするのでありますから、今の答弁からいたしますと、この法律をつくる場合は、きわめて不用意法律をつくられていると思うのです。しからば憲法十八条によりますと「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。」と規定されている。経営者という、経済的あるいは物質的にきわめて強い、優位な地位に置かれている者に対する、労働者という経済的、物質的、生活的にきわめて弱い人々、これらの人々を平等の原則に置こうとする規定から出ているものが十四条であり、十八条であり、三十八条であると私は考えている。今の御答弁からいたしますと、これらがすべてあまり重きを置かれない結果になります。しかも危険な状態に置かれた労働者が、身命を賭してもその財産保護しなければならぬ。しかもそれが公共福祉のゆえであるといたしますと、これは実際には公共福祉ではなくて、私有財産権に対しての保護だけが優先的になつて、重大な基本権侵害のおそれが生じて来ると考えるのですが、どうでしよう。
  19. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 どうも根本問題になつて来ますと、結局先ほど述べた通りに、たとえば労働者の世界の中において、ある労働者とある労働者というような間に不平等の問題が起れば、これは十四条の問題になりましよう。しかし、今の問題は、使用者側労働者側との平等の問題になるわけです。そうしますと、憲法原則からいえば、二十八条のような一種の特権——という言葉がいいか悪いかわかりませんが、特権労働者側に与えるというのは、十四条の精神からいえば、ちよつとはずれていることになるわけですが、しかしさつき触れましたように、使用者側労働者側の力の経済的アンバランスということから、憲法二十八条は、むしろ労働者の方に不平等に有利な特権を与えているという考え方であろうと思いますから、十四条の問題をつかまえての御論議は、ちよつとどうかという気がしているのであります。
  20. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今言われたのは、十四条と二十八条の関係だけを言われましたが、私はそれよりも十八条を重く見ている。十八条には「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」となつている。そうすると、この労働条件は気に入らないから組合ストライキをやろうというのでありますから、保安要員にしろ、発電に従事する者にせよ、すべてそのときの条件が気に入らない、不満だ。そういたしますと、その意に反しているにもかかわらず、会社が強制的に業務命令を出して、その労働者を拘束するということは、十八条の重大なる違反じやないでしようか。
  21. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 十八条についてさらにお言葉でありますから、お答え申し上げますが、十八条には、奴隷的拘束と、それから苦役と二つあるわけです。われわれの考えておりますところでは、奴隷的拘束というのは、苦役以上にはげしいものを言つているので、問題にならないと思いますが、この苦役の問題につきましては、ここに「犯罪に因る処罰の場合を除いては」と例示がありますように、犯罪による刑罰、懲役、そういうものに匹敵するような、全然根底から人格を無視したような強制を加えることを、これは禁止しているのでありまして、ただいまの具体的な実例として考えられます使用者労働者関係におきましては、これは労働者の方がやめたいという考えでその雇用関係から脱退しようということになれば、それは自由に脱退できるわけでありますから、十八条の問題にはならないと考えているわけであります。
  22. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それは無謀な考えだと思う。なぜなら、あなたは部分的に一人や二人やめた場合をさしておられるかもしれない。いわゆる池田通産大臣じやないが、一人や二人なら死んでもいい、こう言つているのと同じことで、部分的なそういうものをさしておられるかもしれないが、それでは鉱山全部のものが雇用契約を脱退するということになつたらどうなる。それをも拘束するということになるんじやありませんか。それは自由の意思に反することになると思う。
  23. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私はただ冷静に憲法十八条の意味を申し上げておるのでありまして、それからいろいろ政治的に議論を御発展なさるのは、これはまた私の受持ちの分野ではないわけであります。十八条そのものの問題としては、全然その人の自由の意思によつて、その苦役あるいは奴隷的拘束から免れ得ないような、そういう根本から人格を無視したような拘束関係強制関係というものを憲法は禁止しておるというふうに申し上げるほかはございません。
  24. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこで私は官房長官お尋ねいたしますが、まずこの基本的な問題について、官房長官は、やはり閣議においても、すべての問題に触れて関係をしておられると思いますので、閣内で一体どういう用意のものにこの法律を出されたのか。こういう基本的な考え方についての統一があつたと思いますから、それについて、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  25. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 どういう用意のもとにこういう法案考えたかという意味が、私よくわかりませんが、政府といたしましては、昨冬の電産、炭労のストが、きわめて長期、大規模なものでありましたので、これに対して公共福祉を擁護することを考えまして、労働権公益との調和を何とか政府立場から考えるべきであるということが、この法案に現われて参つたような次第でございます。
  26. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは重要な問題でございますから、私はさらに官房長官お答えを要求するのですが、片一方の法人または個人私企業では、利潤を自由に追求できる、すなわち公共福祉保護と、今申しましたような法人もしくは個人所有権保護との調和を、官房長官は一体どういうふうにお考えになつておるか、これをひとつ伺つておきたいと思います。
  27. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府は税制その他の面におきまして、公共福祉立場私企業の間の調整をはかつております。
  28. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それは私はきわめて満足のできない答弁だと思うのですけれども、これに関連質問があるようでございますから、委員長から春日一幸君を指名していただいて、そのあとに私は続けます。
  29. 田中伊三次

    田中委員長 それでは緒方官房長官に対する関連質問を順次いたします。千葉三郎君。
  30. 千葉三郎

    千葉委員 緒方さんにちよつとお尋ねしたいのですけれども、この法案をやはり労働法規とお考えになつておるのでしようか。われわれには治安法規というふうにしか見えないのです。この間労働大臣が説明されるにあたつて、本法案労使関係調整とは別個に、もつぱら公益擁護の見地から、争議行為正当性の範囲を明らかにする、こう言われておるのであつて労働者の福利とかそういうことはちつともない。これはどうしても労働法規というよりも、治安法規という以外に解釈のしようがないと思いますが、国務相はどういうふうにお考えでありましようか、その点を確認しておきたいと思います。
  31. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政務といたしましては、これはどこまでも労働法規考えて、その精神のもとに立案したものでございます。
  32. 千葉三郎

    千葉委員 そういたしますと、このところにおかしな問題が起つて来るのです。労働省設置法の第三条で、「労働省は、労働者福祉職業確保とを図り、もつて経済興隆国民生活の安定とに寄与するために、」という前提があります。この前提からは、この条文ずれてしまう。ですから、この中で一体労働省が、これを管轄するとすれば、どういう権限で管轄するのか、これは矛盾して来るわけです。これに対して政府はどういうお考えでありますか。
  33. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府といたしましては、労働争議ができるだけ正しい形を逸脱しないように、従いましてこの法案によりまして、今まで争議行為して不当であるとされておつたものを、この際さらにそれを明らかにいたしまして、労働争議正常性をなるべく確かめて行きたいという気持で立案したのであります。労働争議を通じまして、労働者の利害というものを十分に考慮したつもりでございます。
  34. 千葉三郎

    千葉委員 今の御答弁ですが、この第三条を改正しないと、今のおつしやることが当てはまらないと思います。この三条は労働者福祉職業確保をはかり、そうして経済興隆国民生活の安定というのがその目的になつておる。この第三条の第一、第二、第三というところを見ましても、それは労働組合に関することはあるけれども労働争議に関することが今日は抜けておるわけです。労働省で扱うのには、どういう条文によつて扱うのか、ちよつと法的根拠がないのではないか。それをはつきりしておかないと、将来問題が起ると思います。ですから、この点だけは緒方さんでなくてもよろしゆうございますから、はつきりお答え願いたい。
  35. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 御承知のように、第三条で申し上げますれば、経済興隆とか、国民生活の安定といつたようなことにも関係もありますし、列挙されております事務で申しますならば、「労働組合に関する」——この「関する」という内容に入ると私は存じております。現行労調法並びに組合法におきましても、組合法第一条第二項においては、正当ならざる争議行為というものは法の保護を受けないという規定をしておるわけであります。さらにまた労調法三十六条にもそうした規定があるわけでありまして、法律に基いていわゆる違法なる争議行為というものを明定し、確認しようというわけでありますから、当然第三条の所管事項の中に入ると、かように存じております。
  36. 千葉三郎

    千葉委員 その御答弁は、満足することはできないけれども、これは緒方さんだけに限ることですから、これは打切つて、後日の時間にお尋ねいたします。  もう一つだけお尋ねいたしたいと思いますが、この法案におきましては、労働者を取締らないのだというようなことをいつても、結局はそういうことになる。そこで、どうしても将来は資本家側規制して行かなければならぬ。たとえば、過般の石炭にしても、また電産の方にいたしましても、経営者側においても、やはりある程度政治的意図はあつたのです。ですから、そういうような点から考えまして、両方から規制して行かなくてはいかぬ。ことに、私ども考えますと、たとえば国際情勢からいつても、これは将来毛沢東の地位が上つて来れば、朝鮮事変もあるいは解決というようなことになるかもしれぬ。そのときには特需、新特需という問題も影をひそめて、日本の経済自立ということは相当困難になつて来るのですが、そういうような点から考えましても、もう少し大きな線を出して、あるいは経営者側にも経理の公開を迫るとか、あるいは利潤の分配、また経営協議会というぐらいな手は打つてもいいのではないか、そうしてこれは労使協調して日本の産業の建直しをするという、いわば産業安定法というようなものを臨時的につくる必要があると思うのです。それは今ごたこたしておるこの内閣に、将来の考えをお聞きするのは、あるいはむだかとも存じますけれども、どうぞそれはひとつ率直にお願いしたい。この点はどういう考えでおられるか、ひとつ副総理としての緒方さんにお尋ねいたします。
  37. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 先般本法案が衆議院の本会議にかかりましたときに、三人ばかりの質問者の御質問の中にも、この労働争議に関しまして、あるいは西ドイツで現にやつておりまする方法のような例もあげられ、何らか違つた角度から検討すべきではないかという御意見が、ほとんど同じような形で述べられましたのも、今千葉君からお話なつたようなことを示唆しておつたのではないかと思いまするが、政府といたしましても、この労使の問題につきましては、やはり一度違つた角度から検討してみるということが必要でないか、そういうことを十分に研究してみたいと思つております。
  38. 千葉三郎

    千葉委員 なおいろいろ御質問したい点もありますけれども、ほかにたくさんあるようでありますから、緒方さんに対する質問はこれで打切ります。
  39. 田中伊三次

    田中委員長 次は前田君。
  40. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は山口委員関連質問じやないのです。私は私として官房長官質問したいのでございまして、関連質問でありませんから、山口委員質問の済んだ後に、午前中でいけなければ、午後もう一度副総理に出席していただきたいと思います。
  41. 田中伊三次

  42. 春日一幸

    春日委員 関連して。ただいま山口君の質問に対しまして、憲法第十八条の関連事項といたしまして、これは決して奴隷的拘束をしいるものではない。具体的にいえば、やめたければやめる自由が保障されている、こういうことでございます。そこでお伺いしたいのでありまするが、この法律の第二条によりますと、電気の供給に障害を与える事項、これが禁止条項に入つておるのでございます。従つて、発送電に関係するところの従業員が、こういうストライキもできないような職種はあじけないから、ではもうやめようかといつて辞表を提出する。かような場合においては、これは本法には全然関係なく労働法の保護が受けれるものであるか、この点を伺いたいと思います。
  43. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 雇用契約の解除につきましては、労働基準法でありましたか、その他の法制によつて、おやりになることは自由であると思います。
  44. 春日一幸

    春日委員 さすれば、もう一点突き進んでお伺いしたいのでありますが、たとえば電気事業の従業員の中で、実は公聴会におきまして、本法の適用を受ける者は、補修要員をも含めて、大体においてその半数になんなんとするものである、こういうふうに関係労働組合の代表者が言つておりましたが、そうすれば、みんなが、つまらない商売だ、こんな商売はいやだからほかの商売にかわろうというので、同時的にみんながやめてしまう。もつとほかに自由な世界を求め、職業を求めようじやないかというので、みんなが誘い合わす行為、すなわちその奴隷的苦役から脱却せんとするその行為というものは、第二条に抵触するか、抵触しないか、この点を明らかにされたいと思うのであります。
  45. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 第二条は、御承知のように争議行為として行う場合でありまして、通常の場合におきましてやめるということでありますならば、この第二条と関係のない事項だと考えております。  それから、先ほど来、苦役的であるとたびたびのお話でございますが、法律的には、苦役と申しますときには、退職の自由のない強制労働をいうものであるという解釈でございますので、私ども強制苦役というような考えは全然持つておりません。
  46. 田中伊三次

    田中委員長 春日君、緒方官房長官に対する質問をしてください。
  47. 春日一幸

    春日委員 それでは緒方官房長官に伺いますが、さすればこの法律によつてもたらす影響の動向であります。労働者には基本的人権が与えられている、団結の自由、行動の自由、表現の自由が与えられている。ところが、電気産業労働者にはその基本的労働権が現実問題として剥奪された形になる。そうすると、みんながこういうつまらない仕事はやめようじやないか、こういうことで同時的に、任意的に辞表をともに提出しようという運動が必ず起ると思います。また基本的労働権をたつとぶ労働者は、そういう暴力を受けて黙視するはずはないと思う。従いまして発電関係、送電関係労働者が、こぞつてそういうような自分の意思に反する、労働基本権を蹂躙されるところの職場にとどまることを潔しとしないで、任意的、同時的に相こぞつて職場を脱却しよう、避難しようという善意の行動が起きた場合、これは当然退職するの自由、こういう立場において労働法の保護を受けれるものであるかどうか。これは退職金その他にも関係がありますので、緒方官房長官からこの点について御答弁を伺い、なおまた、このよつてもたらされるところの産業経済及び国民生活に与える影響等について、副総理はどのようにお考えになつているか、この機会に見解を明らかにお示し願いたい。
  48. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私はそういう場合は起り得ないと思つておりますが、なお詳細にわたりましては、政府委員から答弁をいたします。
  49. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私どもは、さような事態が起ることを期待いたしておりませんし、現在のところ定期的なものだとも考えておりません。この法律によつて争議行為規制されますのは、すでに違法なるもののみを明記しようというだけにすぎないのでありましてさようなことは期待いたしておりません。
  50. 春日一幸

    春日委員 もし起つたら、それは労働法の保護は当然受けれるものと考えてさしつかえありませんか。
  51. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほど来申し上げますように、仮定のことについては何とも申し上げられません。
  52. 春日一幸

    春日委員 仮定のことと言われますが、法律はあらゆる場合のことを想定しているのであつて、人を殺した場合には殺人犯として起訴するとか、すべてのことを想定して、法律をきめているものである。たとえば、電気事業労働者に対しては争議権が剥奪されるのだから、そういう屈辱的労働に従業することを潔しとしないで、ほかの商売を選ぼうといつて、みんながやめる場合がある。たとえば炭労のごときは、すでに大会において抗議ストを決議しているではないか。これと同じようなことが、電産問題についても同時的、任意的に起つた場合は——これは仮定の問題ではなく、必然的な問題として考えなければならぬ場合があろうと思います。当然それに対しては、退職の自由が保障されるという場合において、これは関係労働法の保護は受けられるかどうか、このことはやはり承つておかなければならぬのでありましてこの点はひとつ責任者から明確にお答え願いたい。
  53. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 争議手段といたしまして総辞職といいますか、そういう手段をとるといたしますれば、違法な争議行為でありますので、法上の保護はないものと考えております。
  54. 春日一幸

    春日委員 争議行為でなくて起つた場合、つまりもうやめるのだからというので……。
  55. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 さようなことにつきましては、私ども想定もいたしておりませんので、現実問題として起りましたときに、その具体的な事案について適当に考慮したいと存じます。
  56. 春日一幸

    春日委員 それでは、これはあとにしまして、官房長官にお伺いをいたしますが、三月十日の読売新聞に、参議院の予算委員会の質疑応答が、次のごとくに報道されておるのでございます。それは民主クラブの西田隆男氏が、「去る一月緒方官房長官ら二、三閣僚が料亭で石炭業者と要談したことをたねに緒方攻撃をはじめた。副総理がところもあろうに料亭で業者と懇談するとは、吉田首相の一枚看板道義こうように泥をぬるようなものだと攻めたてた。西田氏「この会合はあなたの主催か」官房長官「私の名でよんだ」「この会合の支払いはすんだか」「まだ請求されていません」「廿一万九千なにがし円かの勘定はすでにあるところから払われていますぞ」「それは承知していません……」こういうような質疑応答が交えられておるのであります。このことは非常に重要な問題でございまして、実は私どもは昨日法務大臣にも質問したことでございますが、たとえばあの十二月の上旬から中旬にかけて、私どもは、この両争議のよつてもたらす影響の甚大さから見て、官房長官にも党の代表が屡次にわたつてお目にかかり、労働大臣にも、総理にもお目にかかつて、これは国民経済にも、国民生活にも大きな損失を与える問題であるので、諸外国の例にならつてたとえばルーズヴエルトが鉄鋼争議にみずから調停を買つて出たように、副総理みずからその問題の中に入られて、調停あつせんをなさるべきではないか、こういうふうにお勧めを申し上げましたが、その当時の副総理の御答弁は、いずれにしても労働争議は労使双方が円満に話し合つて妥結点に到達することが望ましい。第三者がいたずらに介入すべきではない、こういうことで、その争議が見送られておつたのでございます。当然われわれはいろいろ心配しておりました緊急調整も、その儀に及ばずということで、発動を見ることなくてあの争議が終息したことは、副総理も御承知通りでございます。しかるところ、一箇月足らずで、今回唐突としてここにストを禁止するという法令が出て来たのでございますが、私どもはこういう推移の裏には、かつて炭管事件におきまして、一部議員と業者との間にあの醜類が伏在して、数億にわたる贈収賄が行われて、あの炭管が葬り去られたということを、私は記憶に新たにいたしております。そこで私どもが案ずることは、当時争議が行われていたさ中においても、これは労使双方の円満な話合いというようなことで、政府はこれを見送つた。ところがそれは、争議を野放しにしておいて、そうして一方国民の反感を募らせて、その反感の上に立つて、折を見はからつてストを根本的に根絶するスト禁法を出すべきだということが、その当時から政府の頭の中に考えられ、さらにその時期と手段と方法を選ぶことのために、協議がこういうような料亭、待合において政府の責任者と業者との間においてなされたのではないか。こういうことがもつぱら巷間伝えられておるのでございまして、関係労働者はもとより、国民の一部に政府が不信を買つておる一つ条件になつておるのでございます。従つて、私はこういう機会に、そういうような会合を、争議さ中においてわれわれ野党が特に懇請したにもかかわらず、争議には介入すべきものではないといつてこれをしりぞけられておりました副総理が、どうして料亭において特に炭鉱業者と会合をされ、しかも二十数万にわたる飲食をされたのであるか。すなわちその会合において議せられた内容は何であつたか。そのことについて、私はこの機会につまびらかにお尋ねいたしたいと思うのでございます。
  57. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 そういうふうにものものしく言われますと、何か非常に悪いようなことをしたように聞えますが、決してそういうことではないのであります。これは御承知のように、今、日本の炭価が非常に高い。アメリカの東海岸から船で持つて来る石炭よりもなお高いというようなことで、炭価をいかにして引下げるかということが問題になつておりますので、その問題について、かねて政府で検討しておつたのでありますが、その際業者の方からも、コストを引下げる方法としては政府に少し事情も申し述べたいという希望が出て参りました。それで私は業者の饗応を受けることはおもしろくないので、特に私の名前で、また私の支払いで——まだ支払つておりませんけれども、私の支払いで、その会合を催そうということを考えました。また通産大臣を中心といたしまする政府関係のある主要な閣僚、それから石炭のいわゆる大手筋、中小企業者も一緒に会つて、忌憚のない意見の交換をしたのであります。かなり活発な議論をいたしました。それがたまたま料理屋でやつたということが——場所は必ずしも料理屋でなくてもよかつたと思います。別のところもあろうにと言われますけれども、料理屋で飯を食うことは、昨今の世間では少しも珍しいことではないので、その間に、私が今から顧みて何ら非難を受けるべき点はないと考えております。そうしてその意見を交換いたしました結果は、相当政府の参考にもなつた点があつたのであります。
  58. 春日一幸

    春日委員 それではお伺いいたしますが、これは緒方副総理の名前で招集されている。これに相違ないわけでございまして、さすれば当然緒方副総理が饗応を受けた、買収されたというような疑いをなくするためにも、その費用は当然緒方副総理がお支払いにならなければならない性質のものだと思う。しかるところ、これによりますと、それは第三者によつてすでに支払いがなされている、こういうことでございます。このことは、ただいまの副総理の御答弁と全然食い違つておるのであつて、招集の名前は貸したけれども、実質はその炭鉱業者が支払つているということは、これは何としても解せないことであろうと思いまするし、このことは国民が納得し得ないことであろうと思う。  さらにまた一月は、この関係法案政府の腹中において立案されておつたときであります。従いましてこのスト禁法についても、その会合において何らかの話合いがあつたということは、これは会合の常識から考え合せて当然想定できることでございます。従いまして一方的にそういうような懇談が料亭においてなされていいものであるかどうか。またその金銭の支払いについて、こういうような状態を副総理はこのまま放擲しておかれるということについての道義的責任、さらにもう一つ伺いたいことは、電産労働者なり、あるいは炭鉱労働者の代表が、いろいろ今後の労働運動について副総理の御高見を拝聴したい、こういうことであなたに願い出た場合は、やはりあなたの名前によつて、そういうような料亭で懇談をしていただくことができるかどうか。このこともひとつ今後のために伺つておきたいと思います。
  59. 田中伊三次

    田中委員長 緒方官房長官に、委員長からちよつと希望を申し上げますが、今の質疑の中で重要な点がございますから、この御会合に相なりましたその当時、政府の腹中に今審議しておりますこの法案が腹案として練られておつた、そういう奇怪な事実があるかどうか、その点をひとつお答え願います。
  60. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 その点は、私特にはつきり御答弁しようと思つてつたのでありますが、当日の会合は、先ほど申し上げましたように、炭価の引下げということを中心にし、意見の交換をいたしましたので、私の記憶いたしまする限り、そういう問題には全然触れておりません。
  61. 春日一幸

    春日委員 出席者の名前をちよつとお漏らし願いたい、副総理として公の招集でございますので……。
  62. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 はつきりしておりませんので——必要であればあとでお知らせしてもよろしゆうございますが、業者が非常に多いので覚えておりません。
  63. 田中伊三次

    田中委員長 委員長からちよつと春日君に申し上げますが、本件は本法案関係のないことでございます。関連のあることについては今の答弁で明らかになつたわけでございますから、あとは方角をかえて質問をしていただきたいと思います。
  64. 春日一幸

    春日委員 その会合に労働省関係の責任者は入つておられましたかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  65. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 労働大臣出席しておりました。
  66. 春日一幸

    春日委員 いよいよ疑いは濃くなりました。(笑声)  それではこの問題は午後さらに継続することにいたしまして、他の観点から伺います。このスト禁法は、結局憲法第十八条による奴隷的拘束でありまして、非人道的な苦役である。こういう立場において基本的人権労働基本権の剥奪であるのでありまして、公共福祉がかかる法律の囹圄の中に労働者を閉塞する形において保障されるベきものであるかどうかという、この一点でございます。そのような非人道的な方法によつて、あるいは現在の憲法労働三法の立場においてきわめて妥当を欠く操作によりまして保障されたところの公共福祉なるものは、これはむしろ汚れたる福祉であるのであつて、私ども国民は、そのような福祉を断じて欲してはいないと思うのでございます。個人基本的人権公共福祉を調節するためのものが、すなわち今山口君が指摘した憲法十八条でございます。その意に反して苦役に服せられることはない、こうあるのであります。従いまして、私どもは、公共福祉は大いに考えなければならないが、そのことの名をかりて基本的人権ないしは基本的労働権、こういうものを剥奪するとか侵害するとかいうことは、厳に愼まなければならない。しかも、政府がそういうようなことをやらないようにというので、特に政府によるそういう行為、すなわちこの憲法に違反するところの法律あるいは政令を排除するということが、この憲法の冒頭宣言の中に、明確に国民の誓いとして誓われておる。しかして日本における電気産業、炭鉱事業というものは、これは基幹産業であります。これに従事する者は国家の支柱である。こういうような諸君の自由を言うことによつて、なおかつ公共福祉が要求されるものであるかどうか、この点についてひとつ文化人としての緒方先生の、政府関係のない公正な御意見を承りたいと思うのであります。
  67. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 労働権に関する基本人権というものは、どこまでも尊重して参りたいという考えは、少しもかわりはないのでありますが、去年の大きな二つのストの影響、それの社会に及ぼしました損害と脅威というようなものから考えまして、政府立場としては、できればこういうことが繰返されないように、いわゆる公益労働権との調和をはかりたいという以外に、特に労働者に対して、どうという考えは全然ありません。最小限度において何か公益擁護のために労働争議規制する方法はないか。これもすでに現行の法規にあるのでありますが、それの少し明確を欠いておつた点をさらに明確にしようという、最小限の規制の行き方なのでございます。
  68. 春日一幸

    春日委員 そのような理念で物事が処理されて参りますと、たとえば輸送業者において、貨物の輸送がとまれば公共福祉に損失を与える、あるいは鉄工業において溶鉱炉の火がとまれば公共福祉の損失というようなことで、少くとも労働価値のある労働で、公共福祉につながりを持たない労働はない。そういうような考え方で行けば、ただいまは二つの事業に対しての制限でありますけれども、後日この理念が他の産業に及ぼされるおそれは非常に多大であります。かくなつて参りますれば、公共福祉の名のもとにこの労働基本権が蹂躙されて、すなわち憲法の背骨である労働基本権が全面的に否定される日は、そんなに遠い日ではないと私は思うのであります。従つて、私どもはこの政府の態度は断じて了承することはできないのでありますが、いずれにいたしましても、私は山口君の関連に立つたので、私の本質問はいずれ後にいたすことにいたしまして、山口君に譲ります。
  69. 前田種男

    ○前田(種)委員 議事進行について……。委員長は本件に関係がないと言われますが、本件に重要な関係がある。というのは、この法案を提出するかしないかということは、昨年末の争議が済んだ後の正月の休みを中心にして、内閣で十分検討された案件です。しかもさきの会合というものは、多分一月下旬だと私は聞いておりますが、あらためて官房長官から何日にやつたということを明確にお答えを願いたいと思います。しかもその席には労働大臣出席しておつたという官房長官の今のお言葉から申しましても、その会合で具体的にお話なつたか、ならなかつたかという点につきましては、ああいう会合でありますから、そう申し上げませんが、少くともこの問題が重要な案件の一つであつたということは明らかです。この問題が一つと、外国炭の輸入の問題が必ず出て参ります。それからもう一つは炭価の引下げの問題、炭鉱業者にとつては一番重要なこの三つの案件がおそらく中心になつてこういう会合がなされたと私は考えます。しかも官房長官の主催でやられた場合に、何十人出席されたか知りませんが、二十数万円の支払いをするということは、度を過ぎた会合だということがいえる。少くとも普通の会合ならば、四、五十人会合されましても、どんなに、ぜいたくにされても、そうなるはずはありません。しかしいろいろな点からいつても、一晩の会合に二十数万円の支払いをする、しかも官房長官は自分が支払いをすると言われておりますが、もう実際はすでに支払い済みになつておるという点から見ましても、昨日春日委員法務大臣にいろいろ質問いたしました中に、この法案をめぐつていろいろな動きがある、この動きがまた再びいろいろな問題になりはしないかということを懸念してこの法案の審議をやつているやさきに、こういう問題が出て来ておりますから、この問題は内閣としても明確にしなければならぬ。ああいう会合をちよつとやつたのだから、それは常識的に、普通のつき合い程度の会合だとおつしやるかわかりませんが、こういう重要な案件が、内閣の中でどういうように意思をきめるかという大事なときの前後であります。それが正式な会合で出た出ないにかかわらず、この重要な問題が、いろいろな関係においてその間にあつたということをわれわれが想像すること、われわれが疑うということが無理か。疑われるような会合をあえて官房長官が持つたという、この内容を、むしろ国民に対して明確にすべきだと思います。
  70. 田中伊三次

    田中委員長 明確に願わないと、あと幾らも続きますから、明確に願いたいと思います。それは本法案関係があるかないかということ、それを中心にしてお答え願います。
  71. 前田種男

    ○前田(種)委員 委員長がそういうことを指示する必要はない。
  72. 田中伊三次

    田中委員長 前田君に申し上げますが、委員長は議事の整理をする責任がございます。委員長の最も重大な責任であります。官房長官からお答えをいたします。     〔発言する者あり〕
  73. 田中伊三次

    田中委員長 お静かに願います。——お静かに願います。
  74. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 御想像は自由でありますが、私は責任をもつてはつきり申し上げます。この法案についての問題は、全然話をしませんでした。
  75. 前田種男

    ○前田(種)委員 今、官房長官は、この法案について全然話をしなかつたと言うが、しからば労働大臣は何のために同席させたのですか。労働大臣を同席させた理由が一体どこにあるのかということと、もう一つは、具体的にこの案件は正式な会合においては話題にならなかつたといつても、こういう重大な内容を持つこの法律をきめるという大事なときの会合でございますから、おそらくそういうものが以心伝心、いろいろな点で話があつたということは、われわれは想像ができるのです。それを形式ばつて、そういう話は出なかつたと言われても、そうですかといつてわれわれが了承できますか。
  76. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 了承できるかと言われましても、私はそれ以上にお答えのしようがないのです。事実その話はしなかつたのです。  それから労働大臣出席しましたのは、出炭の能率をよくするために、仕事に関係のある者をみな呼んだのです。
  77. 前田種男

    ○前田(種)委員 労働大臣出席されたことは、出炭の能率その他の点等に言及されたといいますならば、昨年暮れのあのなまなましい大争議の跡始末を一体どうするかということが、話題にならないはずはありません。私はそういう問題で、各方面の疑惑を招くようなことをあえてしたという点が、今の官房長官お答えだけでこれをぬぐい去つて、きれいさつぱりすることができますか、私はできないと思います。
  78. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私はできると思います。
  79. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は、この問題は、さらに相談いたしまして追究したいと思いますので、山口委員質問が継続されますならば、そのあとに私はあらためて官房長官にお伺いします。
  80. 田中伊三次

    田中委員長 次に山口君。
  81. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 指名されましたが、私は、この関連質問は、わざわざ春日一幸君を指名をして、関連質問をしてもらうように委員長にとりはからいをお願いしたのです。その春日一幸君がまだ発言がある。私は春日一幸君の質疑が終了しておるという確認をいたしておりません。委員長は、議事進行上春日君に再び発言を許してもらいたいと思います。
  82. 田中伊三次

    田中委員長 それでは春日君、もう一度。
  83. 春日一幸

    春日委員 ただいま前田さんの質問によつて明らかにされましたことは、炭価の調節という名前で持たれたその会合の中に、労働大臣が入つておられたということ、しかも労働大臣は、能率を増すことのための諸般の事情を話し合つたということ、そのことは、当然本日採決されんとしておるこのスト禁法に関連しておるということは、明白な問題であります。私は五大法案といわれておる法案一つが、そのような待合、料亭において、しかも業者との懇談が、影響力があるかないかということは、重大問題でございますので、私どもは党に帰つて、その関係責任者と本問題に関する検討を加えねばなりません。従いまして、事の重大性にかんがみまして、ここでひとつ休憩いたされまして、各党における協議の結果をまつて、この問題を取扱いたいと思います。従つて、暫時休憩されたいという動議を提出いたします。
  84. 田中伊三次

    田中委員長 ちようど腹のすいたところでございますから、ここで休憩をいたします。午後は一時三十分より正確に開きます。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後三時一分開議
  85. 田中伊三次

    田中委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本会議で重要議案が進行中でございますから、午後五時まで休憩をいたします。     午後三時二分休憩      ————◇—————     午後六時八分開議
  86. 田中伊三次

    田中委員長 それでは休憩前に引続いて会議を開きます。  この際お諮りをいたします。理事山村治郎君が本日委員辞任せられましたので、ただいま理事が一名欠員となつております。この際理事補欠選任を行わなければなりませんが、これは先例によりまして、委員長より指名をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 田中伊三次

    田中委員長 御異議なしと認めて、さようにいたします。  それでは本委員会の理事倉石忠雄君を指名いたします。     —————————————
  88. 田中伊三次

    田中委員長 それでは引続いて質疑を継続することにいたします。  ちよつとこの際お諮りをいたしますが、島上善五郎君より、委員外の発言の許可を求められております。ごく簡単に、これを許すことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 田中伊三次

    田中委員長 御異議なしと認めて、さようにはからいます。島上善五郎君。
  90. 島上善五郎

    島上善五郎君 委員外として発言を許していただきましたので、委員諸君の質問とダブらないと思われる点についてのみ、御質問申し上げたいと存じます。  それは、この法律の制定は、国内的には憲法二十八条の労働者の基本的な権利を侵す疑いあるものとして、重大視されておりますが、同時にこのことに関しては、国際的にも非常に大きな注意を呼び起しておると思われるのであります。と申しますのは、昨年緊急調整なる労働関係調整法の改正を行いました際にも、各国の労働団体、特に政府が好んで用いられるところの、いわゆる自由諸国の民主的な労働組合の集団である国際自由労連及びアメリカの労働組合等からも、昨年、労働法規改悪であるとして非常な反対の声があり、政府に対しても再三にわたつてその申入れがあつたはずでございます。そこで、もし今次法律の制定を行わんといたしますならば、すでに国際的に問題となつておりますので、私は日本の国際的な信用を失う。つまり戦後やつとまだ日本の民主々義の芽がはえたばかりのものを刈り取つて、再び戦争前のような反民主的な、軍国主義的な方向に逆行するのではないかという疑いを持たれて、それがひいては国際的な信用に大きな悪い影響を及ぼすおそれがあると私は考えておるのであります。こういう点を政府においては考えておられるかどうかを第一にお伺いいたします。
  91. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 労働法規につきましては、私ども国際的影響につきましては、非常に慎重に考慮いたしておるわけでございます。昨年国際自由労連からそうした抗議の文書の来ましたことは、私ども承知いたしておりますが、昨年の六月開かれましたILOの総会に、前次官の寺本さんが参りまして、直接向うの幹部の方ともお話をされ、種々国内の事情を話しましたところ、氷解せられたということを承つておるわけでございます。  なお、この法律案の問題につきましては、従来の法制におきましても違法なるものとされ、社会通念上不当とされておるものを、明文によつて確認し、明らかにしようという程度のものでありまして、その観点に立つて争議権の行使と公共福祉との調和をはかるものであると考えておりますので、国際的な影響は、私はないものと考えておる次第でございます。
  92. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お答え申し上げますが、国内問題としては、憲法違反ではないかという御説でございますが、この点については、先般来しばしば申し上げておりますように、私ども憲法違反には決してならないと考えておるのであります。なお、国際問題としては、ただいまも斎藤次官からお答え申し上げましたが、私もこれによつて国際的信用に関係あるものとは考えておりません。
  93. 島上善五郎

    島上善五郎君 それでは斎藤次官にお伺いいたします。昨年ILOの総会で、寺本前次官が参りました際に、国際的な労働関係方面の了解を得たということですが、この点については、私どもの聞き及んでいるところとは大分違います。そのようなことはないはずだと思いますが、まあそれはそれといたしまして、一昨年斎藤さんが、当時職安局長としてILOの第三十四回総会に政府代表で出席いたしました際に、日本の再加入を申請しました。その再加入申請の際に、すでに国内では労働法規を改正する、あるいは改悪するという動きがありましてこれがILOにおいて大分問題とされて、日本再加入の問題を審議するセレクシヨン・コミテイー——選考委員会の小委員会の秘密会議において、政府代表であつた当時の斎藤職安局長に対して、日本において労働者の団結権及び団体行動権を十分に保障しておるかどうか、またこれに制約を加えるような改悪をするという情報が伝わつておるが、政府にそのような考えがあるかどうかということについて、たしか相当つつ込んだ質問があつたはずでございますが、政府はその間にどのような言明をし、約束をして参つたかを承りたいと存じます。
  94. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいまのお尋ねの点につきましては、ILO再加入に対する国会の御承認をお願いいたしましたときにも、すでに申し上げてあつたのでありますが、セレクシヨン・コミテイーにおきまして種々詳細なる質問を受けたのであります。すなわち、団結権は保障されておるか。日本の憲法はこれを保障しておるということを申し上げております。なおその際に、改悪というお尋ねでありましたが、これにつきましては、労働法規の問題ではなくして、基準法の問題について質問があつたと私承知いたしております。当時国内におきまして、基準法の改正の問題が新聞紙上に相当出ておりまして、それが向うに出ておりましたので、新聞紙上に基準法を改悪するかのごとく伝えられておるが、いかが考えておるかという質問つたと存じております。その際、政府におきましては、目下のところ考えてはいないと承知をしておる、そういう答弁を私はいたしたと思つております。
  95. 島上善五郎

    島上善五郎君 そのセレクシヨン・コミテイーの小委員会は秘密会であつて、それへ出たのは斎藤次官であり、かつその秘密会の記録が発表されておりませんので、水かけ論になるかもしれませんが、憲法二十八条に、労働者の団結権及び団体交渉権その他団体行動をする権利を日本は十分に保障しておる。現在保障しておるし、この保障に対しては、今後いささかの制約も変更も加える考えはないということをはつきりと約束をして、それを各国の労使代表が信頼して、日本の再加入を許したということを、私どもはイギリスの労働代表その他の人々から聞いておるのです。しかし、秘密会であつて、それに出たのは斎藤次官一人でありますから、そうでないと言われれば、これはいたし方がありませんけれども、国際的な信義に関する問題だと思う。もしそのような答弁をいたしておるとしますれば、当然今年のILOの総会あたりで、こういう新たな労働基本権を制約する法律の制定を、われわれの反対を押し切つて強行しますれば、当然今度の国際労働機構の総会で問題となるものと私ども考えておる。その場合に、政府はこれに対して国際信義にそむくものでないとお考えになつておるかどうか、その点を答弁していただきたい。
  96. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 団結権のお尋ねでございますが、誤解があるといけませんので、私もう少しはつきり申し上げておきますが、セレクシヨン・コミテイーにおきまして質問を受けましてたのは、団結権は日本憲法において保障されておるか、まずこういうお尋ねがありまして、私は、その通りと答え、その次に出ました質問は、国家公務員についてこうした権利が制限を受けておるが、憲法違反でないと考えるかという質問に対しまして、私は憲法第十五条は、すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではないという観点に立つて、第二十八条の制限を受けることは憲法違反でないと私は答えております。  従いまして、その点はそのことで了承願いたいと思いますが、今回の法律案は、先ほども申し上げましたように、争議権を否認するものではなくして、争議権の発動として行われております一つの行為方法につきまして、従来違法なり、不当とされておるものを明文化するものでありますので、私どもといたしましては、十分説明を申し上げますれば、私は問題はなかろう、かように存じております。
  97. 島上善五郎

    島上善五郎君 斎藤君は、故意か、あるいはそうでないかもしりませんが、団結権ということだけを答えたように言つておりますが、労働省の発行したこの報告書の中にも、憲法二十八条において労働者の団結権及び団体交渉権その他団体行動をする権利が十分に保障されておるという答弁をしたことを記録しておりまするし、他国の労使の委員は、この規定に特に重要性を置くべきことを強調したと言われます。団結権は、団体交渉権が伴わなければ意味がありませんし、また団体交渉権には、団体行動をする権利、自由が伴わなければ意味がないということは、これは言うまでもないことであります。そこで、私は関連して質問いたしたいのですが、当然政府はこのILOの機構に再復帰するということは、ILOの憲章並びに条約を尊重するという意味において復帰を申し出られ、それから今国会にもその条約の幾つかを批准するように提案されていると思いますが、ILOの条約に対して、これを尊重するという精神は、今日においても、今後においても、国際的に約束した通りかわりがないかどうかということを、お伺いしたいと思います。
  98. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 今回団結権その他に関して、批准の御承認をいただくように提案をいたしておるようなわけでございます。ILOについては、さような御心配のないようにいたしたいと考えております。
  99. 島上善五郎

    島上善五郎君 もう一つお伺いしたいのですが、ILOで三十二回総会において採択された条約九十八号、団結しかつ団体的に交渉する権利の原則の適用に関する条約の批准を求めて、政府から今国会へ提案しておりますが、その前の年すなわち三十一回の総会において採択された、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約というのが、条約の第八十七号にあります。これはむしろ政府が今度出されました団結しかつ団体的に交渉する権利の原則の適用に関する条約の基本ともなるべき重要性を持つている条約だと思うのです。しかるに、その基本ともなるべき重要なものを、どういうわけか今度の国会へ提案していない。その提案しない理由をひとつお伺いいたしたいし、それから今申しました結社の自由及び団結権の擁護に関する条約の中には、労働者の団結は完全なる自由のもとに、かつその運営並びに運動方法——運動方法というのは行動を含めた広い範囲ですが——運動方法を定めその計画を立案する権利を持つておる。また公の機関はこの労働者の権利を制限したり、この権利の合法的な行使を妨げるようないかなる干渉をもしてはならないという条項がございます。政府は、今度はこの条約を出しておりませんけれども、もしこの条約の精神を尊重するといたしますれば、今度出された法律は、明らかに従来合法的であるとして認められた労働者労働基本権を制限し、あるいはその行使を妨げるということで抵触すると思うのです。これに抵触するから、わざとこの条約を提案しなかつたのではないかという疑いさえ持たれる。このなぜ提案しなかつたかという理由と、それから今私が読み上げた点が、今度政府が出された法律と抵触すると私ども解釈いたしますが、はたして抵触しないかどうかお伺いいたします。
  100. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 島上議員も御承知のように、ILOにおきまして採択されております条約は、実は数十に上つておるわけでございます。その中で、私どもILOの当局とも打合せておりましたが、最も基本的なものは今回お願いをいたしておりまする三つの問題であるのであります。従いまして、数十の条約を一度に批准するというわけに参りませんので、まず基本的なものを三つということで実はこの三つだけを急いだわけであります。従いまして、特にただいまお述べになりました条約案を延ばそうという意図ではなくして、事務的にこの三つの基本的なものを、まずさしあたり急いで御承認をお願いしよう、こういうことを考えたわけであります。なおお述べになりました条約につきましては、翻訳の一応の草稿はできておりますが、まだ正確なる最終的な翻訳は、実は事務的にも完了いたしておりません。私どもといたしましてはただいまお述べになりましたこの規定は、自由なる団結の規定でありまして、すなわち結社の自由の問題でありますので、私は今回の法律案とはさして関係がない問題と存じております。
  101. 島上善五郎

    島上善五郎君 いろいろ見解の相違もありますが、私は今言つた結社の自由及び団結権の擁護に関する条約、この前年度にきめられた条約こそ、最も大事な基本的なものであると思います。それに対する見解が違うと申されればいたし方がありませんが、それを出さずに、末節的の条約を基本的なものとして解釈しておることは、私は政府の条約に対する、何というか、考え方の違いをはなはだ遺憾に思います。当然今年のILO総会において、日本の労働者の基本的権利を制約する法律の制定は、大きな問題とされるであろうし、そのことが、日本の国際的信用を失墜することになることを私は非常に不安に存じます。こういう点、政府は十分この法律制定に対しても考えてほしかつたと思います。そういう点はいまさら申し上げてもしかたがないと思いますが、国際的水準に日本の労働条件が達するということを、ILOに復帰したからには常に考えて行かなければならぬ、かように考えます。これは質問というよりも私の意見でありますが、これをもつて委員外質問でありますから、私の質問は終ります。
  102. 田中伊三次

    田中委員長 きようは大事な時期ですから、各党、順次質問を許します。自由党からは質問の通告はございません。改進党からもございませんので、社会党の右の前田君。
  103. 前田種男

    ○前田(種)委員 私も多くの質問をしようとは思いません。官房長官出席を午前中から要求しておりますが、いまだに出席しませんので、特に労働大臣に大事な点についてお尋ねをいたします。  まず第一点は、たびたび各委員から質問があつて答弁がございましたが、明確でございません。現行法規によつて、今日規制しようとしますところの単行法の内容に盛られておるものについては、ある程度違法行為だということを言われております。ただ、この違法行為だということに対して、違法行為でないという意見が出るために、現行法では不備であるから単行法が必要だと、努めて答弁しておられますが、もし現行法にはつきりした違法行為だという自信がありますならば、この線を貫くということが、政府立場であろうと私は思います。さらに政府自身が疑義があると認めるならば、その疑義のある点を修正するという手続をすべきだ。現行法では疑義があるけれども、そのまま伏せておいて死文化するというようなやり方をやつて、そうしてこういう単行法を出して来るというところに、この法規の提出の仕方に対して、いろいろ論議がなされるのです。私は繰返して申し上げますが、御承知のように労働三法を修正しようとする場合は、まして政府が提案しようとする場合は、それぞれの審議会の議を経て提案することになつております。そういう手続をせずに、あわただしい中に単行法を出して来て、かんじんな労働法規の基本といわれるところの権利を規制しようという点に、根本的な問題がひそんでおりますので、まずその点に対して、重ねて明確に大臣からお答え願いたいと思います。
  104. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 違法ないしは不当なるものについて明確化するということは、今までたびたび申し上げた通りでありますが、これに対して疑義があるという意味で、昨年の争議の際におきましても、炭労では保安要員の引揚げをやるというふうな指令を出す、また電産では給電指令所の職場放棄をするというような指令を出すような状態でありました。また国内においても、学者などにはいろいろな意見を言われる人もありますが、そういう点を明確にすることが最も必要ではないか、かような意味で今回提案をいたしたのであります。  なお審議会を設けてやるのが例であるというお話でございましたが、従来も公聴会だけで改正をいたしたこともございまするし、審議会を開いてやつた場合も、両方前例はあるのでございます。なお今回の法案は、特に審議会を開くようなことでなくて、もうきわめて簡単明瞭なことと考えまして、特に公聴会を開いてそれぞれの人の意見を求むることが、この際最も適当な方法ではないか、かように考えて公聴会を開いてやつたのでございます。
  105. 前田種男

    ○前田(種)委員 今の大臣のお答えでございますが、どうしても、私は納得が行かぬのです。特に今度はこういう簡単な法規であるから、そういう手数を省いてやつた——労働三法を修正しようという場合は、労働法規審議会の議を経てというような労働省内の大体の規定があります。それを無視してやつたというところに、ここに問題があるわけです。あえてこれをやろうという点で、私が重ねて質問いたします理由は、それほど労働三法は普通の法律——法律には甲乙はございません。しかし労働者の権利保護の観点に立つては、労働三法は守らなくてはならないというところの重要なる方針が打立てられておるはずです。その法律をいらおうとする場合は、それほど手数をかけて愼重にやらなければならぬという大体の慣例なり、そういう規定になつておるはずです。それを書きおろしのこうした法律でそういう基本的な労働三法を大きく制約しようという場合に、こういう出し方でやられますと、今後いろいろな問題に対しまして制約するという法規が、一条の条文によつて出て来るということになり、非常な危険性が伴います。そういう危険性を防止する意味においても、愼重な取扱いをせなくてはならないということになつておるのです。ここに十分な手を尽していないというのが第一点の問題であります。  それから、さらにもう一つお尋ねしたいことは、これは戸塚大臣にお尋ねすることが当を得ておるかどうかわかりませんが、前の吉武労働大臣が、昨年の労働法規の改正のために非常に努力されて、われわれがあれだけ反対したにもかかわらず改正されたのです。その改正された説明のうち、審議の経過を見て参りますと、もろもろの争議、いろいろな問題に対処するためには、ああいう法律の改正をせなければならない。あの法律の改正によつて、初めてもろもろの争議に対して対処することができる、自信を持つてやれます。そうして緊急調整その他の項目等を設けられて、そういう争議を予想してああいう法律の改正がなされたのです。しかるに、昨冬の争議は、あれだけ努力して議会の問題になつた改正案をやつたにもかかわらず、遅々としてその法規の適用をしようということをせずに、そうして暮れ押し詰まるまで政府は決意がなされなかつた。その決意がなされなかつた裏には、緊急調整を発動してもらつたら困るという使用者側の強い意向が伝わつて政府は決意するに至らなかつたということになつております。そういたしますなら、あれほど騒がして労働法規の改正をやつたことが、結果からいいますならば、あの法律が昨年のような争議の場合は、何にもならないという結果になつて、その法規もだめだから、新しいこういう法規をつくらなければならぬということになつたといつても過言ではないと思います。こうした考え方について、労働大臣見解を明確にしてもらいたいと思います。
  106. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 労働三法の改正に審議会云々のお話は、先ほども申し上げた通りでありまして、また政府が今回の提案をいたしますには、十分愼重に考えて検討いたしたものであることを申し上げます。  それから次に、昨年の改正で緊急調整その他をやつた。そして緊急調整を非常に遅らしたというお話でありますが、私どもは努めて労使の関係が当事者の間で解決せられることを望んでおりました。のみならず、緊急調整にはそれぞれの条件を備えなければならぬので、きわめて愼重にこの点を考慮しておつた次第であります。  なおこの遅れたと申しますか、おそくなつたと言つていいかどうかわかりませんが、これは使用者の意向によつてというお話でありましたが、さようなことは全然ございません。また緊急調整の制度がだめであるから今度の法案を出した、こういう意味でもないのでありまして、緊急調整はまた緊急調整の役目があり、今回の法案はまた別の意味で相補う意味の役目が果されるものと、かように考えます。
  107. 前田種男

    ○前田(種)委員 労働大臣はかわられましたが、労働大臣としての答弁は一貫されなくちやならぬと私は思います。内閣が同一でございますから……。昨年の審議過程におきましては、あの程度の改正がなされますならば、もろもろの争議行為労使関係に対処することができるとの確信を持つて、吉武前労働大臣は説明しておられるのです。しかもそうした方針の上に立つて、あれだけ輿論の反対があつたにもかかわらず、押し切つてやられたことが、わずか二つの争議の実績で、結果的にはだめだつた。だから、あらためてこういう法律をつくらなければならぬということになつたわけです。もしこういうことで行きますならば、今後また争議が起きれば、また新しい法律をつくらなければならぬということになると思います。私は、できた事件に対して、それを追うてこういう法律をつくるというよりも、むしろそういう事件がないように、一体労使関係をどうするかという点が大事な問題だと考えます。法をもつてはたして正常な労使関係が樹立されるかというと、私は樹立されないと思います。かえつて反発いたします。その点を私は心配するのです。だから、この点は大事なところでございますから、もう一度大臣のお答えを承つておきたいと思います。
  108. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 昨年の改正によつて、もろもろの争議を解決するというように当時は考えられたことだと思いますが、昨年、暮れの争議を実際に見て、これでは何とか処置しなければならぬというふうに考えたのは、またそれ自体の理由があつたのであります。おそらく吉武君が続いておられても、やはりさように考えられたのではないかと私は考えます。それよりも労使の関係をもつと調整する方法について考えたらよかろうというお話がありましたが、この点はまことにごもつともで、私も努めてそういう面について今後とも研究いたし、適当な方法をとつて参るように努力したいと思うのであります。
  109. 前田種男

    ○前田(種)委員 先ほど斎藤労働次官は、争議権の否認ではなくして、一部の制限だと言われたのです。私たちは、この法規は、あくまでも二つの事業に対して大きな制限であり、否認にひとしいものだと認めます。というのは、実際的に争議行為というものは、この法規によつて大きく制約されますから、残されたものというのはほんの微々たるものであり、結局ふんじばりはしないが、座敷牢に入れて、そうして座敷牢の中では自由に行動せよ、外には出たらいかぬというのと同様であると私は考えます。罷業権は労働三法で認めておりますが、この単行法によつて、電気と石炭の面においては実質的には争議権が認められないということになるというのは、この第三条の「鉱山の重要な施設」ということになると、必ずしも坑内の問題ばかりでなくして、この条項がかわつて行政官が解釈いたしますならば、鉱山の重要なる施設ということを理由として、多くの炭鉱の問題についてこの法規が適用されるということになつて参ります。さような抽象的な文章によつて制限することは、非常な危険だということになつて参るわけです。そうした意味におけるところの、こういう法規を出して参りますところの吉田内閣の今日のもろもろの情勢というものは、一体国際的にどういう批判をされておるかという点に、私たちはもつと目を開かなくてはならぬと思います。私はここで一番大事な問題は、国際労働機関、あるいは世界自由労連、あるいは国連の理事会その他の、いわゆる自由国家群といわれますところの各国の間においても、独立後の日本の行き方——あるいはこればかりではございません。警察法の問題にいたしましても、全体の動きに対して相当猜疑心を持つて疑いの目を持つて日本が民主化されるかどうかという点について、日本にとつては相当悪い観点から見ておると私は考えます。そういう点から見た場合に、かようなことをまたやりますことによつて、なおさら日本が、やはり昔の日本にもどるんじやないかという点を、強く世界的に印象づける結果になつて、結果的にはマイナスになる面がたくさんあるということを私は心配いたします。こういう点に対して政府見解を明らかにしてもらいたいというのが第一点。  それから独立後のほんとうの日本の労働組合運動のあり方というものを、一体吉田内閣はどう考えているか。この点は、私は労働大臣よりも、総理大臣に実は聞きたかつたのです。せめて副総理にでもこの点を明らかに答弁していただきたいと思いますことは、私はこれは一番大事な問題だと思います。一つのできごとを追うて行くといようなやり方では、えてして失敗が重なります。一つのできごとを十分経験にするということは大事なことでございますが、それを追うて行くというよりも、もつと大所、高所から日本の労働相合運動がどうあるべきかという点について、もつと真剣に考えて対処しなくてはならぬと考えます。こういう点について、もつと広い高い立場から、ひとつ政府を代表してお答えをいただきたいと思います。
  110. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 争議権の否認であるというお話でありましたが、この点については、今までも繰返し申し上げておりますように、私どもは従来違法ないしは妥当とせられざるものについて、その方法規制をするという考えでございまして、決して争議権の否認になろうとは考えておりません。  なお、国際関係について、外国から疑いの目をもつて見られるではないかというお話でありましたが、日本の現在の社会情勢というものをよく説明すれば、十分理解を得られるものと考えております。  なお、独立後の労働運動について、どういう行き方をするか。これは民主的、建設的、健全なる組合の発達、発展を祈る、こう申し上げる以外に私はないと思います。
  111. 前田種男

    ○前田(種)委員 今度のようなこうした拙策を、政府があえてやりますことは、かえつて日本の民主的な労働組合運動の発達を阻害するという見解を持つております。これは見解の相違でありますから、これ以上申し上げません。  最後に、私は大臣にお尋ねしたいことは、この法規は、この二つの事業以外には拡張しないかどうかという点を、もう一度重ねてお答え願いたいと思います。あるいは情勢が変化すれば、あるいはまた時期がかわれば、そういうことになるかもわからないというような考え方をされるかもわかりませんが、少くとも吉田内閣として、今日この単行法を出されましたが、あくまで単行法はこの二つの事業に局限するという考え方が、あるいは時期が来れば情勢上やむを得ないというような含みが政府にあるのかどうかという点を重ねてお尋ねして、私の質問を終ります。
  112. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 これもたびたび申し上げてあるのでありますが、私どは同じような種類のものを同じような方法規制するという考えは持つておりません。特に電気と石炭について、昨年の実績にかんがみて、これだけは今の情勢ではどうしても規制するのはやむを得ないという考えに至つたのであります。またその他の類似な事業等につきましては、努めて本来の行き方である当事者双方の自主的な解決にまつて、自主的に解決せられること、あるいは中労委の調停あつせん等によつて解決せられることを期待いたしているのでありまして、今から次にどうしようというような考えは、絶対に持つておりません。
  113. 田中伊三次

    田中委員長 山口丈太郎君。——山口君に申し上げますが、お待ちかねの犬養法務大臣岡原刑事局長、それから通産関係では中島公益事業局——電気関係であります。それから小平政務次官、これだけが出席いたしております。     〔「緒方官房長官はどうしておりますか」と呼ぶ者あり〕
  114. 田中伊三次

    田中委員長 今、通告しております。
  115. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は今までの審議において、いつも申し述べておりますように、関係大臣が非常に出席されておりません。やはりじつくりと、こういう問題については関係大臣に答弁を求めて、忌憚のない意見の交換をして、こういう特殊なものでありますから、従つてもう少し修正すべき点は、ただ単に面子にこだわるようなことをしないで、実際的に適用にあたつて万全なる方法で行けるようにしたい、こういう私は私なりに良心的な考えで各大臣に御出席をお願いしているわけなんです。ですから、私は国会議員といたしまして、やはり責任のある者は政治家としても大臣であります。従つて事務を担当しておられる事務官の方々に答弁をしていただきましても、私は政治としての責任を持つわけには参らぬ、かように思うわけでありますから、広く一般国民には——これは事務官の方には気の毒かもわかりませんが、単なる事務官の答弁をもつて満足するということでありますならば、私は官僚政治の最たるものと言わなければならぬと思います。でありますから、そこにお互いに政治家としての責任上大臣の答弁を求めているわけでありますから、ひとつそういう意味委員長もよろしくこれをとりはからつていただきたいということをまず要望いたします。  それから、法務大臣にさつそくお尋ねいたしますが、これは法務大臣見解をお伺いいたしたいのであります。今までの法律なり、また労働法は、御承知のように不正な、いわゆる行き過ぎたようなことがありますならば、これは裁判所なり、しかるべきその機関が一つの慣習をつくり、いわゆる判例をつくつて、その判例によつて運営するというのが慣習法の趣旨だと存じます。その慣習法をなぜ主張するかと申しますと、こういう労働組合法というような特別の団体を扱う場合においては、そのときの政権の意のままに従わせようということになりますと、非常に片寄つたことになるわけでありまして、それは民主的な団体を育成することにならないというのが、この法律のでき上つたときの基本理念であつたと私は考えます。地方におきまして公聴会を開きまして、私もそのときの公述人として出ましたときにも、そういう精神を承つておるわけであります。それでそういうところから発してこの労働組合関係法はできたのでありますが、それがだんだんとこうい規制法にかわつて行くといたしますと、将来この法を運営するにあたりましてどういう弊害が生じて来るかは、これは非常に憂慮されるものがあると思いますが、法務大臣のこの規制法と慣習法との将来にわたりまする所見を承りたい、かように考えます。
  116. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。法務大臣として本法案関係いたしておりますのは、労働争議における公共福祉というものの解釈、従つてそれを裏を返して、違法行為の解釈で関係しておるのでありまして、今お尋ねのような法制的な意見というものは、前に法務府に法制意見局がありましたが、これは法制局として内閣に返してしまつたのであります。もう私の方にはないのです。この間憲法についてお答え申し上げましたが、関連事項として多少礼儀の意味で、ほんとうは私の範囲でないのでありますが、一、二回お相伴をしたのであります。今のお尋ねは、こうお答えすると、まことに失礼なようで恐縮でありますが、純然たる法制の意見は、法制局長官お尋ねくださればなおけつこうと存じます。
  117. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それでは今の問題を法制局お尋ねしたい。法制局関係だれかおりませんか。——それじや実際問題として話にならない。  それから、これはさらに法務大臣お尋ねいたします。あるいはこれは労働大臣でもけつこうですが、労働法によりますと、労働組合労働組合の要求、目的を達成するために行う行為でありましても、正当なるものについては免責規定があるわけであります。そういたしますと、あなた方が主張されますように、昨年の停電ストや保安要員の引揚げというものは、今日こうして報復的にこういう法律によつて規制しなければならないというような事態にありますならば、なぜそのときに、この正当性の限界についてはつきりとした解釈を政府は下さなかつたのであるか。あとになつてこういうふうな報復的と思われるような法律をもつて労働組合に対処するというようなことは、私は政治家としてきわめて非良心的なことだと思いますが、その見解法務大臣労働大臣の両方からお伺いしたい。
  118. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 今回の法案が報復的の意味を持つているようなお話でありましたが、これもたびたびお答え申し上げておつたと思いますが、決して報復というような意味を持つておるものではございません。昨年の実績にかんがみて、将来かようなことがあることが望ましくないということで、従来もそれは違法なり、不当なりとされておつたことを明確にいたのでございます。なお詳しくは政府委員から……。
  119. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 違法であるならば、なぜ政府はそれを徹底せしめなかつたかといつたような御趣旨だと思いますが、申し上げるまでもなく、石炭保安要員の引揚げにつきましては、政府は声明をもつてこれを警告いたしたのにもかかわりませず、準備指令を出したというようなこういう事態でございます。停電につきましても、従来私どもはさように考えておるのでございます。
  120. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そうすれば停電の措置についても同じことがいえると思うのです。けれども、実際問題としてあれを調べてみますと、保安要員の引揚げられたところは一箇所もございません。また緊急を要する場合においては、発電所の発電用炭は出しておる。あの記録を見ますと、ほとんど全部完全に一塊の石炭も出さずに停止しているという炭鉱はございません。また停電におきましても、著しく公安あるいは保安を阻害するような停電は電産は行つておりません。そういたしますと、政府はそういう現実を見て緊急調整なり何なり、あるいはまた裁判所がこの慣習法を運営するにあたつて、私は政府も、また裁判所も実に無能であつた、こういうように考えるわけです。政府がしつかりとしたこの慣習法を運用する適切な方法をとつておりさえいたしますならば、それは決してこういうものをつくる必要はないと私は思う。現行労調法三十六条によりましても、きわめて明確なことであろうと考えるわけです。おのれの名誉を隠蔽して、そうしてこういう法律によつてますますこの慣習法の性格をかえて規制法に持つて行こうというのは、私はどうもふに落ちないことなんです。一体その見解はどういうふうに考えておられるのか、もう少しはつきりしていただきたい。
  121. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 労働省に関する部分につきましてお答え申し上げますが、保安要員の引揚げは、現実には行われませんでしたけれども、準備指令を発したことによりまして、国民生活において精神的に実に甚大なる脅威を受けたことは御承知通りであります。停電のスイツチ・オフにつきましては、従来とも違法なる争議行為であるという解釈を持つてつたのでありますが、不幸にして昨年のように長期に行われた、かように私ども存じておるわけでございます。
  122. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 たいへん都合よく、体よく逃げられますけれども、あのときの問題として、経営者側の方でも、実は緊急調整を発動されては困る。緊急調整をやりますと、やはりあの当時、その結果として今度は経営者が、無条件にとは言いませんけれども、ほとんど道義的にも従わなければならぬようないわゆる調整案が提示されるわけです。それを回避するために、経営者の方では緊急調整というものを非常にいやがつておるこういう事実もあるわけなんです。そこで政府もそういうふうなことを乗り切つて、そうしてこの緊急調整を行うこともしなければ、あるいはまたこれに対する争議解決の方法として、事務的にもあるいは実際的にも、積極的な活動というものをしないで、ただ裏面で経営者とこそこそ話をしておるにすぎない、かような状態であることを私は目撃しておる。これは労働大臣は相当苦心されたようでありますけれども、しかし、それが単に労働大臣としてみずからそういうことを表面に出さないでやつていても、これはわれわれの承知することのできない問題です。一体そういうことをしないでおいて、そうしてこういう方法をとるというのは、いかにあなた方がどんなりつぱな言葉をもつてども答弁をされましても、これは報復手段といわざるを得ない。一体それをどういうふうに具体的になさつたか、私は説明を願いたい。
  123. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 緊急調整の問題につきましては、先ほども前田委員お答えを申し上げた通りでありまして、それぞれ要件も備わらなければならないし、またこういうことをみだりに発令すべきものでない、努めて当事者間あるいは中労委の調停あつせんによつて解決することを望んでおりましたので、事態の推移を愼重に見守つてつたと申し上げておるのであります。  なお、お言葉の中にありました経営者と連絡をしたとか、それから経営者に頼まれたとかいうようなことは、絶対にございません。
  124. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、経営者に、労働大臣が頼まれなさつたとは思つておりませんし、また頼まれても、労働大臣は一方的にそういうことをやつて解決しようとするような非良心的な考えを持つた人でないことは、私はよく信頼しておるのです。けれども、実際の運用について——この慣習法によりますところの争議解決の実際の運用について、どういう御見解をもつて今まで処理されたか、あるいは法務省あたりでは、どういう実際上の慣習法をつくつて労働秩序を保つて行こうとおつしやるのか。労使間の秩序を保つて行こうというのが、この法律趣旨なんです。一体どういう考えでこの法を実際に運営して来られたか、法務大臣の御見解を承つておきたいと思います。
  125. 犬養健

    犬養国務大臣 これは先刻の御質問にも答えることになると思いますが、山口さんは、判例というものを非常に尊重してお考えになつております。確かに一つ考え方でございまして、私もあまりものは知りませんが、これは英法的な考え方であります。しかし、判例だけでものの解釈をつけて行くというわけにも行きません。とうに御承知と思いますが、イギリスにおいても、最近は立法措置において解釈を確立するということをやつているのであります。私どももその通りでありまして、判例だけを重んじて——判例も重んじなければなりません。コモンロー的な考えからいうと、判例を重んじなければなりませんが、このたびのように政治責任において、立法措置によつて違法行為のわくをきめるということは、私は必要であると考えて賛同をいたした次第でございます。但し、心持としましては、先日も申し上げましたように、できるだけ労使双方の協議と反省ということが一番大切であつて、ここにおられる戸塚労働大臣も、その点を非常に重点を置いておられたのでありますが、法務省としてもそれが賛成でありまして、あくまでも中労委のあつせんによる解決ということを、今後も尊重をして行きたいと考えております。これは違法行為のぎりぎりの最小限度のわくだ、こう考えておりまして、この点、スイツチ・オフと保安要員の引揚げをとめたら、争議というものはもう大部分なくなるという考えを私持つておらないのでありまして、昨年の実例によりましても、保安要員の引揚げに至るまで、相当社会の輿論を動かすだけの争議行為があつて、十分に勤労者諸君の意思表示というものは達せられている、こういうふうに考えている次第でございます。
  126. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 争議行為としてスイツチ・オフを非常に各大臣ともに重要視されて、そのことだけを言明されております。けれども、この法律で見ますと、単にスイツチをオフする、スイツチ・オフということだけが規制されているようには考えられない、そういたしますると、今の言明から行きますと、スイツチをオフすることがいけないのであつて、もとの発電所の機能を停止するということは、それじやこの法律に触れないのかどうか。ひとつはつきりしておいていただきませんと、非常に混乱を起すと思います。法務大臣から……。
  127. 犬養健

    犬養国務大臣 これはせつかくの御質問でございますが、今度の立法の解釈そのものについては、法務省は遠慮しております。これはひとつ労働省に聞いていただきたいと思います。
  128. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 スイツチ・オフのみならず、電源ストあるいは給電所の放棄というようなものも妥当を欠く、行き過ぎであるという点については、同様に考えておるのであります。
  129. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それでは、今度は事務的にひとつ次官にお尋ねします。今の労働大臣答弁によりますと、これは技術上の問題ですが「その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」——その他正常なる供給に障害を生ぜしめるということになりますと、これは全部の従業員に及ぶ、こういうことになると思う。たとえば事務ストライキしたといたしましても、やはりその事務は、給料を支払うとか、そういうふうなことを停止するといたしましても、やはり従業員が働いていて給料をもらわなければ働けなくなるのは当然な話だ。そういたしますと、それから障害を生じて来れば、これは給料をもらえなければ労働者は働きませんから、そうなれば、正常なる電気事業に対する間接的な影響はたちまち生じて来るわけですが、立法技術上、事務当局はどういうふうにお考えになつておるか。
  130. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 「その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」は、電圧サイクルを低下するとか、あるいは給電指令所の職場放棄といつたふうなことで、電気の供給そのものに直接に障害を与えるという行為を規制いたしておるのでありましてそういう料金ストといつたふうな、なるほど電気の供給には影響がありましても、直接的でない、すなわち間接の影響を与えるものは除外されております。一言で申しますと、第二条で規制されておりますものは、いわゆるスイツチ・オフ、それから給電指令所の職場放棄、そういつたふうな直接電気の供給に障害な生ぜしめる、こういう行為をいうわけでございます。
  131. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はきわめて重大な問題だと思います。今の場合、直接にその職場の者が職場を放棄をしなくとも、いわゆるそれに関連する事務が一切とまつてしまつて、そうして間接的ではありますけれども、その職場に影響を来して来て、そういう職場の人々が職場放棄をやむなくする、こういうふうな場合には、それでは一体責任の所在というものをどう考えておられるか。
  132. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 第一条は、全労働者に関する問題ではございませんので、電気の正常なる供給に直接に関係のある者のみでございます。すなわち先ほどから申し上げておりますように、事務スト等は間接の障害を及ぼすものでありますので、第二条の範囲外の問題でございます。
  133. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はそれはきわめてあぶない見解に立つことになると思います。私はさきに労働大臣質問をいたしました。それに関連をいたしまして、もう一度質問をしたいのですが、実は資料を要求いたしておきました戸畑発電所の問題でございます。これは今申しまするように、炭労にいたしましても、電産にいたしましても、公安に重要な障害を来すとか、あるいは緊急用炭がいるとか、こういつた場合には、各炭鉱あるいは電産におきましても、ほんとはストライキ的な性格にはならないことを忍びつつも、やはり送電も実施し、あるいは出炭も実施いたしておるわけであります。しかるにかかわらず、この佐賀においては、組合員が検束をされるような騒ぎが生じたり、あるいはまた戸畑発電所におきましては、組合がせつかく夕方のピーク時を避けて、混乱を防止するために職場復帰を指令しているにもかかわらず、こういう資料によりますと、きわめて会社の逃げ口上によつて、ロツク・アウトを合理化しているように報告されております。こういうふうなことでありますと、私は、むしろ労働組合が自分の生活権を守るために要求しているものを、あの当時盛んに、いわゆるマ・バ方式そのものが政治的見解にあるとか、あるいは政治的目的を持つておるとか、悪宣伝をいたしておりましたが、労働組合がそういう要求をすることは当然のことであつて、やはり自分の生活向上を願うためには、その要求の形式のいかんを問わず、その底に流れるものは当然自分の生活改善にあるということを、昨年も指摘しておいたわけであります。労働組合が正常に職場に復帰しようとするのを拒否したり、あるいはまた自分の生活権を守ろうとするのに検察庁が動いたり、かようなことをして、労働組合を一方的に弾圧し、もしくは不当な形においてこれを経営者が拒否し、そうしてそれに何らの立法措置も加えられない。そうして今日、労働組合が昨年ああいうことをやつたために、こういう法律をつくつたのだということになりますならば、きわめて悪質なというと語弊があるかもわかりませんが、報復的なものと断せざるを得ないわけであります。一体政府は、経営者に対しては、どういう措置をとつて規制しようとされているか。これは関係大臣として十分鮮明な態度を私は望みたいので、御答弁をいただきたい。
  134. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 戸畑の件につきましては、もう資料を差上げてあるそうでありますが、組合側で言うことと、経営者ないしは県庁で言うことと、多少食い違いがあるのであります。その点について明確にはいたしませんが、決してロツク・アウトというような意味でやつたとは、私ども考えておりません。中央の指令が来なかつたので、経営者の方では明確に中止せられたかどうかわからない状態であつたので、遠慮をしてもらうという態度をとつたようであります。しかし、それから二時間半ほどたつてから事情がわかりまして、組合側を入れるように話したそうでありますが、このときは入らなくて、遂に五時に至つて初めて入つた。それで経営者の方では、その二時間半の分の賃金を支払つておるように報告を受けております。その間に、ああいう際でありましたので、多少の行き違いはあつたかもしれませんが、決して悪意を持つてつたようには考えておりません。
  135. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 悪意を持つてつたとは考えられないようだという答弁のように承つたのですが、労働大臣からは、いつも良心的に御答弁いただいておるので、私もそれを悪意というように労働大臣を追究する気持はございません。しかし、経営者側の方では、十分な悪意があつたものと私は考えます。いずれにいたしましても、組合がそういう意図をもつて職場復帰を指令して会社に申し入れておる。しかるにそれを会社側が、たとい二時間でも五時間でも職場復帰をさせない。理由は自衛発電をやるということでロツク・アウトしたという報告が、私のところには参つております。そうなりますと、いわゆる公共福祉というものを、経営者の方ではこの規制法をつくるための大きな特種として、社会にも盛んに宣伝をいたしております。一分間たりといえども、こういうような措置を経営者側がとつていて、大きく公共福祉の問題を取上げる資格があるかどうか、私は疑うわけであります。政府はこういつたものについては重視されて調査をし、不当なところがあれば、経営者に対しても断固としてしかるべき措置をとられるのが、公平なあり方だと考えておる。ただこの資料によりますと、経営者の一方的な資料でありますから、なるほど大臣がおつしやるように、これは食い違いがあると思います。それに対して政府は責任上存じておられたといたしますならば、その真相について調査をすることが必要だと私は思うが、そういうことがなされないでいるのか、具体的に調査をされたことがあるかどうか、あるいはまた将来にわたつて、この実際を調査してしかるべき措置をとろうという考えがあるかどうか、この点をお伺いいたします。
  136. 大島靖

    ○大島政府委員 戸畑発電所の争議につきましては、私どもの方で調査いたしましたところによりますと、十七日に電産本部の指令によつてストライキに入りまして、十八日に組合側はスト中止の指令を出したのであります。ただその際に、会社側では自衛運転を本社の指示によつてつておりましたので、従つてそれを受入れて職場復帰せしめるために、本社と連絡するまで待つてもらいたいということを申し入れまして、本社との連絡がつきました。同時に、組合側におきましても、全面的なスト中止の指令が参りまして、職場復帰が午後五時に至つて行われたわけであります。その間交代補充要員と職場復帰いたします組合員が、この交代をスムースにやりますために、この間の時間を所要したものである、かように私どもの調査によつては判明しております。さよう御了承願います。
  137. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そこまで明らかになつておれば、組合が全面的にストライキを中止するように指令しておるか、していないか。こういう形式的なものでこれだけの五時間にわたる停電が生じたと思うが、単にそういう形式的なものでひつぱるなら、これは適当な言葉を私は知りませんが、きわめて惜しいといいますか、無謀なといいますか、そういつた措置だと思う。少くとも公共福祉を品にされる以上は、形式がどうであろうと、ただ戸畑発電所だけであつたといたしましても、そのところに従業しております組合員、たといその一小部分でありましても、当然会社はそれを即刻受入れて、そうして公共福祉に報いるべきが私は至当だと思う。しかるにそういう措置をとらないで、あたかも野原に羊を追うような調子で、ただ形式論に終つて、こういう十一万キロにも及ぶ停電が行われていたとするならば、私はこれに対しては重大な責任を、負わなければならぬと思う。この問題については、政府はもう少し政治責任として調査をし、しかるべき措置をとられるのが、公平な立場から考えて私は当然であろうと思う。しかるにそういうことが一切とられていないとするならば、法の前にはいかなる国民も公平であるべきだといいながら、それをつかさどりますところの政府並びに政治というものは、きわめて暗黒なものといわなければならぬと思う。これについて、将来組合と会社の間を調査して、そうして公共福祉に反しない態度をとろうという決心を政府はお持ちかどうか、もう一度明確に私は承りたい。
  138. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 この戸畑の発電所の問題は、スト中止のときに自衛発電をやつておりました関係上、その際にみだりな紛争を起させないといつたふうな意図もあつたのでなかろうかと考えておるのでございまして、この問題につきましては、やはりロツク・アウトになるかどうかということが問題だつたと思つておりますが、二、三時間であり、しかも事業主がすでに賃金を払つておるということでもあり、スト中止後の事態を静かに収めるというふうな意味でなされたものであつて、私はそう悪意があつたものとは考えておりません。しかし、将来また労働省におきまして、労働関係立場から申し上げることが必要だということになりますれば、いたしますけれども、この問題は、そう悪意のある問題ではなく、スト中止後の切りかえを円滑に行わせるための措置ではなかつたのだろうかと私は考えております。
  139. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今のは重大です。あなたはわずかに二時間、三時間とおつしやつた。ところが、この法律ではそのわずか一少部分の、わかずに百キロや二百キロを発電するような発電所でも、これはたとい一時間でもとめたらいかぬというのでしよう。しかるに、経営者の方は二時間、三時間とめても、それはわずかで済むのですか。そういう見解でこの法律をつくられたのですか、はつきりしてください。
  140. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私の申し上げましたのは、スト中止の際に、発電所の方におきましては自衛運転をやつてつたわけでございます。そこを私は申し上げておるのでございます。
  141. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今の言葉で行くと、ただ単にそういう自衛発電とかなんとかいうことで形式的に行つておれば、経営者が実質的にこれだけ大きな迷惑をかけても、それは何ら問われることなくして、労働組合が一地区で、わずかに百キロや二百キロの発電をしているところで、自分の生活を守るために一時間、二時間停電してもこの法律にひつかかるとすれば、それはもつてのほかではありませんか。一体それを労働大臣はどういうふうにお考えになりますか。私は釈然としない。
  142. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいま斎藤政府委員が申し上げたのは、そういうふうな意味で申し上げたとは私考えておりません。(「結果的にそうなるじやないか」と呼ぶ者あり)あるいは言いまわし方で、そういうふうにお聞きとりになられたかとも思いますが、そういう意味で申し上げたとは考えておりません。
  143. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今の労働大臣お答えは、答弁になつていない。もう少し明確にしてください。
  144. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただその問題の救済方法としては、もう少し事情がはつきりしなければわかりませんが、あるいは通産省の方で監督上下都合な行為があつたとすれば、その方で処置をいたすでありましよう。また組合側で会社の出方が下都合だということであれば、また組合側としても争う道が開かれているように私は承知いたしております。     〔「議事進行」「議事進行」と呼ぶ者あり〕
  145. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ごの問題はもう少し明確にしたいと思いますが、議事進行ですから、保留しまして、前田君の議事進行を取上げてください。
  146. 田中伊三次

    田中委員長 政府委員答弁ありますか。
  147. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 以上申し上げました通りでございます。
  148. 田中伊三次

    田中委員長 山口君、質問ありませんか。
  149. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 まだまだありますよ。あるけれども……。     〔前田(種)委員「議事進行」と呼ぶ〕
  150. 田中伊三次

    田中委員長 では前田君。
  151. 前田種男

    ○前田(種)委員 私はこの委員会が円満に進行する意味において、動議を提出したいと思います。  きよう午後の本会議に引続いてのこの、委員会でございまして、もうすでに七時半近くになつております。皆さんそれぞれ空腹です。だから、二十分間に限つて、休憩して、食事をして、そして委員会を続行していただきたいと思う。いろいろ希望はありますが、自由党さんのいろいろな事情があつて、どうしても今晩これを続行したいという希望でございますから、争つてもと思つておりましたが、その希望をいれるといたしましても、二十分間休憩して、そのかわりにいろいろ質問する時間等も調節して、できるだけこの委員会を円滑に運ぶようにして行きたいと思いますので、ぜひ委員長の手元でそういうとりはからいをしていただきたいと思います。
  152. 田中伊三次

    田中委員長 ただいまの前田君の動議はまことにごもつともと存じまして、実はあらかじめ自由党の理事といろいろと打合せをいたしましたが、どうも休憩をすることに賛成してくれません。しかしせつかくの動議でございますから、この動議を動議として扱います。  ただいまのただちに休憩をしようという動議に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  153. 田中伊三次

    田中委員長 起立十一名。  念のために、この動議に反対の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  154. 田中伊三次

    田中委員長 起立十一名。  これは同数でございますから、長は、動議を採択いたしませんで、動議を否と決しまして、継続いたします。     〔「議事進行」と呼び、その他発言する者多し〕
  155. 田中伊三次

    田中委員長 山口君、続行してください。
  156. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は二十分やそこらの休憩の動議が、採決によつてきめられなければならぬというような情ない、ちつぽけな政治家じやいけないと思う。ですから、ばらばらと行くのじやなくて、順序整然と、きちつとやることはやつて、そして休憩をする、質疑もする、関係大臣も良心的に出る、こういうふうに秩序を立ててしかるべきだと私は思う。もう一度委員長考え直されたらどうですか。
  157. 田中伊三次

    田中委員長 もうしばらく継続している間に考えることにいたします。
  158. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 では継続いたします。  さらに私は労働大臣にお伺いするのですが、今労働大臣は、この重要な問題について通産省と連絡をとつて、そして十分に検討して行くということでありますが、それは通産省の基礎産業に対する監督の面からだと思います。そこで法務大臣はこれはどういうふうにお考えになりますか。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  159. 田中伊三次

    田中委員長 お静かに願います。
  160. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただちに検察庁でも、長崎のように発動して来る、こういう直接行為がただちにとられるわけであります。労働組合に対しましては、昨日も言いましたように、長崎の方では直接行動がすぐとられる。ところが、経営者にこういう違法なことがあつた場合には一向に問題にされないし、その真相の調査もされない。こういうことになりますと、ますますもつて私は政治の片手落ちといわなければならぬと思います。法務大臣としてこれをどういうふうにお考えになりますか、ひとつ見解を承りたい。
  161. 犬養健

    犬養国務大臣 長崎の事件というのは、まだ具体的に存じませんが、ほかの事案におきましても、私の方は経営者側の態度も始終調べております。東京で起りましたあるスト事件でも、経営者側の方の態度が平生よくないと考えた場合がありまして、その場合はスト行為を不起訴にしております。そういう態度で臨んでおるつもりでございます。公共福祉というものは、経営者側も守るべきものだと思つております。
  162. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今の法務大臣の御答弁は、非常に良心的だと存じますが、これはやはり組合も納得いたしますように、組合の実際にとりました措置、指令等もよく資料として調査をしていただいて、それをこの委員会の方にも出していただきたい。これは法務委員会の問題としても、十分に調べてもらいたいと思つておりますから、至急に出していただきたい。こういう経営者側だけの資料では何にもなりません。従つて、これは組合が出しております実質的な資料をそろえて検討していただきたい。そうして経営者側にもこういうものについての不当な措置があるといたしますならば、当然それは経営者もその責任を問われなければならぬと思いますから、その措置をとつていただくようにお願いいたします。  それから、さらに質問を続けて行き事。今までいろいろと質問をいたしましたが、これは次官にお尋ねします。実際問題として、あなた方はこういう法律をつくらなければ、組合ストライキに対する規制はできないという見解に立つておられるようであります。また法務大臣答弁からいたしますと、裁判所の判例のみをもつてすべてのものを律し、規制して行くことはできないので、その解釈は明確にすべきだという御説でありました。私もその点について、それを全部否定するものではありません。やはり実際、法を運用してみて、そうしてその判例などを勘案して、順次その法を整備して行くというやり方が慣習法の特徴でありますから、その点については、私も十分心得ておるはずであります。けれども、今度のこの法に示されておりまする内容のように、公共福祉の名のもとに云々をして、こういう労働法に関する基本権を剥奪するようなことは、たとい一小部分でありましても行う必要はなくて、労働関係の諸法規によつて十分に私は秩序を保つて行くことができると思います。一体この法の運用について、今まで労働省はどういう見解労働争議に対処していたのか。これは斎藤次官が長らく労働省におられるのですから、その点を事務的にお答え願いたいと思います。
  163. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私どもといたしましては、争議行為方法につきましては、組合の良識によりまして行われることが最も適当である、かように考えて来ておつたわけであります。しかるに昨冬の電産、炭労の苦い経験によりまして、この点だけは先ほど来申し上げております、ように、組合側等におきましても多少疑義を抱く向きもあるやに承りましたので、この際はつきりいたしておくことが必要であろう、かように存じております。
  164. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 さらに質問をいたしますが、そういうことになりますと、この部分だけということでございますけれども、その部分というものは経営全体から申すとこれは部分かもわかりませんが、その部分に当ります、たとえば保安要員労働組合をつくつた場合、あるいは発電作業に従事しておる者のみが労働組合を持つている場合、こういう場合には、その労働組合は公務員と同じように全然罷業権は行われない。これは一体どういうふうにお考えになりますか。これはやはりもとの憲法にもどるわけでございますけれども、そういうことを考えなくても、常識的に考えまして、やはり労働組合基本権に対する大いなる支障ということになると私は思うのであります。こ、ういう経営者の一方的な保護に奉仕するようなことになりますと、これは組合としての存在価値がないことになると私は思うのです。あなた方は、こういう組合の存在そのものをお認めになるのかどうか、その精神をお伺いしたい。
  165. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 この法律は、たびたび申し上げておりますように、その組合をどうしようといつたふうな意図は全然持ち合せておりません。すなわちこうした争議行為方法が違法であるということを確認し、規制しようというだけだと私存じております。
  166. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それは何べんも聞いておることでありますけれども、この法を施行することによつて、’実質的に結果的にそうなつて来る。そうなると、何かそこに労働者というものに対して、多少経営者に対抗するような一つの道が設けられていなければ、対等ということは言えないと思う。対等原則というものを、それではどういうぐあいにお考えになつておるか。
  167. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私どもは、常に電気事業なり石炭鉱業に従事する労働者全部を頭に入れながら考えておるのであります。そうした立場に立ちますと、今日これ以外に有力適切な争議行為というものはある、すなわち労使の力関係対等性というものはある、かように考えておるものであります。たびたび申し上げております通り、こうした停電というスト行為は、労使双方よりも第三者のみに迷惑をかけるものである、すなわち公共福祉を害するものであると考えてこの法を出したのであります。     〔「会社の停電はどうするか」と呼び、その他発言する者あり〕
  168. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そうなりますと、同僚諸君が申しますように、会社の停電はどうするかということになつて来るわけです。公共福祉ということばかりをあなた方は言われますが、実際は言いのがれです。公共福祉に対する具体的な説明、具体的な見解というものは、われわれの前にちつとも明らかにされておらない。やはり労使対等立場に立つて正しい行為を行うことが、労働組合の主眼であるということを、私は十二分に主張しておるのですから、決して経営者側を責めようとも、あるいはどうしようとも、公共福祉をあなた方のようにどうだこうだということは考えていない。われわれの方が公共福祉についてはもつと強く考えておるのですから、そういう誤解をまず解いて、すなおに考えた場合に、あなたの言葉じりを追究するわけではありませんけれども、それじやこれらの諸君が労使対等立場に立つてどういう対抗手段をとることができるか、具体的に言つてみなさい。
  169. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、電気事業に従事する労働者を対象といたしまして、その中でこうした行為だけを争議方法として違法であるということを申し上げておるにすぎないわけであります。
  170. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 この行為に該当する労働者は、一体どういう対抗手段を持つかということを言つておる。
  171. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 第二条の電気の正常な供給に直接従事いたしまするそうした者は、いわゆる争議行為というものはできない、私はかように考えております。
  172. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 そういたしますと、労使対等立場になつていないということは明らかでしよう。たとえば保安要員であるとか、発電の作業に従事する者は、経営者に対抗する手段としてのストライキ権を行使することができない。そうすると、これらの諸君に対しては、ただ単なるストライキ方法規制するということにはならない、これらの人々基本権を剥奪していることになるわけです。当然これらの人々に、たといそれが一小部分の従業員であつたといたしましても、これらの人々に対して経営者に対抗する手段を取上げるのであるならば、当然これらの人々を救済すべき措置を考えなければ、法律というものは公平を期することができない、それをあなたはどう考えておるかということを尋ねておるのであつて、電気産業労働組合を言つているのではない、部分をさしておる。たとえば、私がこの法律によつてストライキ権を行使することができない、ところが私の労働条件はだんだん切り下げられ得る、またわれわれが要求をしても、経営者に言うことをきいてもらうことができない、だから職場へ就労いたしませんとやれば、これはいけないといつてこの法律規制しよう、こういうわけでしよう。そうすると一方的に私だけが——あなたもその身になつてこらんなさい、あなたなり私なりの当事者だけがこういうことに規制されて、経営者はこの規制された人々に対して、何らこれに対抗する手段も与えなけ君ば、あるいは救済する措置も講じない、こういうとになる。一体それをどう考えるかということであります。
  173. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 たびたび申し上げておりますように、電気の供給に直接従事する者につきましては、こういう争議行為ができないわけでございまして、そのことにつきましては、従来すでに違法であるとされて来ておるものであります。すなわち第三条の保安要員の問題にいたしましても、労調法三十六条においてすでに違法であるとされておるものであります。すなわち現行労調法三十六条におきましても、保安保持の事務に従事する者につきましては、そうした行為は禁ぜられておるわけでございまして、それにつきましては何ら救済措置というものはない。すなわち公共福祉争議権の調整をはかるために、現行法においてもすでに設けられておるわけだ、かように存じております。
  174. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それならば、こんな法律をつくらなくても、なぜ現行法によつて適切な運営をするという責任を政府は明らかにしないのです。論旨が合わぬじやないか。
  175. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 その点については、たびたび申し上げてありますように、適法であり不当であると考えておりましても、これに対して疑義をさしはさむ向きもありまするので、これを明確化しよう、こういうだけであります。
  176. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 一体それじやどういう疑義があつて、この法律が施行できないのですか。
  177. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 例を保安要員の引揚げに関して申し上げますれば、昨冬の炭労争議にあたりまして、政府においては保安要員の引揚げは違法であると声明を出したのにもかかわりませず、適法であると考えられたのでありましようか、その準備指令を出した、この現実の問題、それが私どもの頭にあるわけでございます。
  178. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 準備指令を出しても、実際行為が伴わなければ、法というものは適用しないのです。そうでしよう。私が他の第三者を殺してやろうと考えておつても、殺すという行為そのものをやらなければ、法律では罰せられないでしよう、それと同じことですよ。準備指令を出しても、それは単に準備であつて、それを実際に行つたかどうかということも、これは問題になるでしよう。ところが、実際にはそれを行つていないですよ。これはあなた、実際問題としてそこへ来たときにはこの法律でちやんとできるのですから。そうすると、あなた方は法の運用というものの頭がないことになる。一体それはどうなるのです、私はどうもわからぬ。この法律を提出するにあたつて、仮想をもつては現実を律することはできないということは、先般からあなた方も何べんも何べんも答弁したのでしよう。しかるに、あなた方の言をもつてすれば、仮想することによつて労働者基本権をとつてしまおうというのである。少しもあなた方は論旨が一貫していない。それというのは、今申しますように、これらの人々に対する救済措置が講ぜられていない、きわめてあいまいなことになつてしまう。それはものを軽く見ておられるからだ、そうでしよう。これは単に意見の相違でも何でもありません。あなた方はそういう軽い考えをもつて労働組合の権利を左右しようとすることは、きわめて冒険的だと思う。欧州各国における先進国の労働法を見ましても、今日のような労働法になるまでには、血の雨を降らせている、これはよく御承知通りなんです。でありますから、そういう簡単な、労働行政というものをなさると、ますます労働組合があなた方の考えていられるよりも、なおもつといわゆる潜在的な行為によつてつて来ますところの破壊行為というものは、これは一片の法律などではとめることはできなくなると私は思う。正常な組合運動をしようとする場合におきましても、そういうような片手落ちの法律では、実際に労働秩序を維持することはできないから、私は真剣に答弁を要求しておるのです。しかるに、今までの答弁は、まつたくもつて論旨が一貫していないじやないですか。さような論旨の一定しないことでこの法律を制定するということは、私はきわめて冒険だと思う。あなた方は、数を頼めば何でもできる、こういうふうに思つていらつしやるかもしれませんけれども、私はさような軽率なことで、この労働組合運動というもの、あるいは労使間の問題を規制することはできないと思う。あなたは一体どういうように考えられるか、責任大臣もどういうように考えられるかをひとつ明らかにしてもらいたい。私は前途を憂うるがゆえに言うのです。
  179. 福田一

    ○福田政府委員 山口委員の熱意のある御質問でございまして、ただいま私たちが軽率にこの法案を提出したのではないか、あるいは労働組合を圧迫する意味でやつておるのではないかというような意味での御質問のように承ります。しかしながら、私たちもやはり国のために、また社会のために政治をやらなければならないと思つてつておるものでありましてこの意味では私は見解の相違に相なるだろうと思います。またあなたが仰せられますところのこの問題は、しばしば大臣からも答弁をいたしておりますけれども、すでに他の法律によつて違法であるということになつておるものが疑義を生じておりますから、これを明らかにいたそうというのが本旨であります。そういうことについて例をあげよとおつしやられれば、いろいろその例はございます。たとえば昨冬の争議におきましても、すでにこれは違法でない、だから全部引揚げてもよろしいのであるというようなことを組合側の人が言つておられた。またその争議が済んだ後においても、保安要員の引揚げについては、適当な、もう少しうまい方法考えようではないかというようなことを相談されたということが、新聞紙上その他によつても証明されております。従いまして、こういうような疑義があるから、この疑義を明かにしなければならないというのがわれわれの考えでございます。これを要するに、私たちといたしましては、山口委員と同様、やはり国のためにこれは必要である、決して、法を軽んずるものではない、またみだりに法をもてあそぼうというような意味で本法案を提出しておるのではないのであります。どうか誠意をお認め願いたいのであります。
  180. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はそんな大ぶろしきで包まれようとは思つておりません。きわめて簡明率直に申し上げておるわけです。これは両大臣がお見えになつておるのですから、両大臣の誠意ある御答弁をお願いしたいと思います。そんなまわりくどい大きなことは一向に要求しておらぬ。だれも国を思えばこそであります。ですから、何も国を誤るようなことは言つていないはずです、福田次官の答弁をもつてすれば、私の言つておることは、国を誤らせるようなことになるではありませんか。そんな答弁はないと思う、意見の相違ではありませんよ。相違があるなら相違があるで、私ははつきりするのですから、やはり答弁答弁としてやつてもらわなければ、意見の相違があるかないかわからないでしよう。だから私は言つておるのです、両大臣から御答弁をお願いいたします。
  181. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいまのお尋ねの件につきましては、私先ほどもどなたかに詳細お答えいたしたつもりでありましたので、また同じことを繰返すことになると思うのでありますが、疑義がある、それを明確化したいというふうに申し上げたのでありまして、疑義があるということは、学者間にもそういうことを言う方がありますし、またただいま政務次官も申し上げましたように、昨冬準備指令を出しておる。また給電指令所の放棄のことも電産関係では言うておりました。そういうことがありましたので、まだそういうふうに考える向きがだんだんあるようでは、政府としては心配である。そこで、もう少し明確にこれを規定して規制をすることが必要だ、かように考えた次第でございます。
  182. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 心配々々と言われますけれども、心配というものは、これをやつても、決して私は心配がとれるとは思わないのです。こういうふうな規制法とかなんとか言いますけれども、実際には組合に対しての大きな影響を持つものなんです。そういたしますと、この法律によつて、共産党の諸君がとつつかまらないように、ますます地下に入つて組合の正常な運営をかく乱する行為も行われて来ると思う。そういうことを私は憂えるわけです。ですから、十分に質疑をしておかなければならぬし、今心配々々と言われますが、そういうふうにして悪質になると——労働者の新議員が何だというようにおしかりのところもあるかと思いますけれども、私はここで大胆率直に申しまして、そういうふうなことになりますと、民主的に発展しようとする労働組合が、さらにその民主的な発展を阻害されて来て、結果においては、労使間の正常な秩序を維持することも不可能になりはしないか。これの方がさらに大きい心配になるのではないか、かように私は考えるわけです。法務大臣は、社会秩序の根源をなす法務省を担当しておられるのでありますから、ひとつ法務大臣からこれに対してお答えをいただきたいと思います。
  183. 犬養健

    犬養国務大臣 繰返し申し上げるようでありますが、電産、炭労のストについての違法行為の範囲というものは、労働省と意見を同じくして同意した次第でございます。
  184. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はまだまだ得心が行かないのです。この法律で行きますと、一番矛盾点は、今言うように、これらの部分的な、規制される人々が、何らの救済措置も受けていないということなんです。そこに私の非常に不満とするところがあるので、こういうものについて一体どういう措置を考えられておるかということを明確にしていただきたいというのが本旨です。ところが今までのところでは、一向にそれが明確にならないで、ただ抽象的なお言葉だけしか責任ある方々から受取れない。ですから、私は非常に遺憾に思うわけなんです。やはりこの法律をつくるための質疑応答というものは、将来法律を実際に施行する場合の大きな参考になると私は思う。裁判所の裁判の事例にいたしましても、この答弁内容というものは、大きな参考になつて、実際の運用がされると思うのです。ですから、決して事務の方々を軽率に考えておるわけでもありませんけれども、政治の問題は政治の問題として、やはり選出されて来ている議員同僚がお互いに質疑を重ねて、その態度を明確にしておくことが政治的良心だと考えるから、私は大臣の答弁を要求しているわけです。そういう意味から行きますと、今申しましたように、片一方は規制するけれども、片一方は規制しないで、わずかこの三箇条によつて行われている。しかも戦前のように、経営者はどんなことをいたしましても、これはあまり処罰されていることはありません。たとえば、私は二十年間も電鉄におりましたが、実際には踏切番をつけるのが普通なんです。ちやんと法律には踏切番をつけろということになつている。ところが踏切番をつけないで、そうして電車と自動車が衝突をした場合には経営者の方は少しも責任は問われないけれども、私は数回も検事局へひつぱられるというような事態もあつた。こういう不公平なことであつてはならないと思うのです。これは犬養法務大臣もよく御承知いただけると思う。ところが、今申しますように、戸畑の発電所においてもそういう事例があるとするならば、たといこれが一時間でありましても、当然経営者もその責任をやはり負うべきである。しかも、これが公共福祉ということを大きく掲げられております以上は、たといそれが三十分でありましても、公共福祉に反した行為であることに間違いはないのですから、そうなりますと、それらのものが問題にならないで、報復的とも考えられるこの法案が出て、そうして大きく労働組合規制して行くということにつきましては、私は片手落ちでないかと考えているのです。その見解についてどうかということをお尋ねしても、何か公共福祉でごまかされて、はつきりとした答弁にはなつていないと思う。この点について、公共福祉とは何ぞや。経営者の行うことについては少しも規制はないが、労働組合の行う行為に対してのみ公共福祉が問題になるといたしますならば、私は大きな誤りであろうと考えます。その点についてどうかということを私は御質問いたします。
  185. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 これもたびたびお答え申し上げておつたと思いますが、今回の法案は、従来違法とされ、ないしは妥当を欠く、つまり争議行為としては行き過ぎである点を規制しようとするのが趣旨であつて、そういう性質のものでありますから、これがために対等原則を害するものではない、かように私ども考えておるのでございます。  なお、戸畑のことがまた出ましたが、これは先ほども申し上げましたように、私どもは、一応向うを調べた報告に基いて、先ほどお答えをを申し上げておつたのであります。なお、さらにもう少し真相を明確にいたしまして、私どもの方で処置すべきか、あるいは組合で河らかの救済の方法があるか、あるいはまた通産省の監督の立場から監督すべきことがあるかというようなことについては、いま少し時日をかしていただいて、もう少し明確にいたしたい、かように考えておるのであります。
  186. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 明確にしたいということでありますから、私は戸畑の問題についてはこれ以上追究を避けますけれども、しかしいずれの場合にも、経営者だからどういうことをしても大目に見ておけ、しかし労働組合だから、こういう規制法によつてでも労働組合の活動に干渉して行くというような態度は、これは私はよほど考えていただきたいと思う。それでないと、労働組合の健全な発展を願い、労使間の関係を正常化しようとする努力を、根底からくつがえすことになるというふうに私は考えますから、そういう点については、よほど注意すべきでありますし、この法案はそういう点ではきわめて注意を怠つているというふうにも考えるわけです。しかもこれが類似産業におきましても、たくさんの鉱山関係もあるわけでありますけれども、炭労をとつてこういうことをやる、あるいは昨年の電気産業の労働組合争議にかんがみて——こういう言葉になりますと、これはやはり報復的な手段というふうに考えるよりほかに方法がなくなるわけです。この点は、それならそれで、もつと国民の前に納得の行くように、組合にも将来の組合を運営するのに納得の行くような態度を明確にして、説明書なり何なりを付して出し得るような用意政府にあるかどうか、事務官の方でお答えを願いたいと思います。
  187. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、昨冬の電産、炭労の争議の経験に基きまして、こうした違法、不当なる争議行為方法規制しようというのでありまして、その他の産業につきましては、組合の良識と健全なる慣行の成熟をまつて行くべきものである、かように存じておる次第であります。
  188. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 官房長官がお見えになつておりませんので、どうも私は質問ができないのです。官房長官はお見えになりませんか。
  189. 田中伊三次

    田中委員長 今呼んでおります。
  190. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 いつまでたつても見えませんから、話にならないのです。私はこの措置については、通産大臣に質問を保留いたしておきます。それから官房長官の御意見と、それから先日見解を述べられました労働大臣並びに法務大臣の、この法案を制定するにあたつてお答えで、多少食い違いがあ  私はさらに、これは事務当局にお尋ねいたしますが、私の手元に出ております資料では、先ほど申しましたように、炭労にいたしましても、電産にいたしましても、なるほどストライキよりまして、その争議のために社会的に損害をかけていることを否定するものではございません。しかし、これはその炭労並びに電産におきましても、先ほど申しましたように、保安電力の送電作業等は、きわめて良心的に行つていたと考えます。また炭労におきましても、緊急用炭の出炭には事欠かさないように、各炭鉱ともその出炭量を明らかにして、私の手元に送付して来ております。これはこういう法律を出して規制までしようというように思い詰められるのでありますならば、一体労働組合のこういつたしさいな良心的な行動の部分についてまで調査されたかどうか、その調査に基いておられるのかどうか、この点をひとつ伺つておきたい。
  191. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 たびたび申し上げてありますように、今回の法律案は、昨年のストライキの体験に基きまして、公共福祉を擁護する一般国民に迷惑をかけることを除去するという以外に、何も考えていないわけでございます。
  192. 田中伊三次

    田中委員長 山口君、ちよつとお待ちください。  八時三十分まで休憩をいたしまして、八時三十分に正確にやります。  休憩をいたします。     午後八時五分休憩      ————◇—————     午後八時四十一分開議
  193. 田中伊三次

    田中委員長 それでは休憩前に引続いて会議を開きます。  山口君。
  194. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は、それは皆さんの意見もわかりますけれども、しかしやはり明らかにすべきものは明らかにしておかなければならぬのです。だから私は(「簡単に願います。」と呼ぶ者あり)簡単に願いますと言つたつて、私は私の考えるところはただしておかなければならぬのです。(「簡単にやれ」と呼ぶ者あり)簡単にやるかやらないか、向うの出方次第です。——それではさらに質疑を続行いたします。  休憩前の質疑応答の中で強調されましたことは、単にこの規制を、方法規制、こういうことで終始されておりました。しかもその規制をするに至つた根本は、やはり公共福祉ということに重点を置いておるのだ、こういうことでございます。私は、それでは公共福祉労働権、これの平等な保護についてどうかということについて質問をいたしたところ、それに対しては、きわめて不明確な答弁しか出ていない。ですから、私はもう少しその点を明確にしてもらわなければならぬ、こういうふうに思つておるのです。さらに、皆さんは簡単に簡単にと言われますけれども、私もきわめて簡単にしたいと思う。こんなことをいつまでもしやべつておりたくはありません。議事の妨害をしようとは思つておりません。しかしわれわれとしては、どういうことを考えるかと申しますと、さきに官房長官は、こうふうな弊害の事実が起きて来れば、次々にこういう問題を考えなければならぬ、こういうふうな言明をされたわけなんです。そうだとすると、次に金属鉱山がやれば、また金属鉱山もこういうもので規制するということになるでしようし、私は幾らでも問題ができて来ると思う。ですから、今の場合労働大臣は、それについて、官房長官の言明がそのまま閣内において確認されて、次々へと——こういうものを類似産業に発展さして一気にこれをやるということは、労働問題に対して非常な衝撃を与えるから、きわめて衝撃を与えない程度で、順次こういうものを出して規制して行こう、こういう考えでおられるのではないかというふうにも私はうかがうわけですが、官房長官お答えに対して、労働大臣はどういうお考えで将来の労働組合規制をして行こうとされておるか、その点について、もう一度御答弁をしていただきたい。そうでないと、関係労働組合は安心しないということになりますから、将来に対する労働組合運動というものはきわめて困難になつて参ります。
  195. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 官房長官がどういうふうな言葉お答え申し上げましたか、私承知いたしませんが、先ほど前田君のお尋ねにもお答え申し上げました通り、類似産業と申しますか、そういうふうな類推した考え方で順次規制をするとか禁止するとかいうことは考えておらないのであります。今回の法案のうちの電気と石炭については、昨年の実績にかんがみて、やむを得ずという気持で、この規制案を提案いたしておるのであります。他の類似産業その他につきましては、たびたび申し上げますように労使間当事者の良識と自省にまつて、当事者の間で話合いができることを期待いたしております。今後もまた組合のそうした意味での健全な発達、またそうした意味での慣行の熟成することを期待いたしております。政府としては、ただいま申し上げるような期待を持つて参りたいと思うのでありまして、類似産業について考えるということは、今のところ絶対にいたさないつもりでおります。ただ官房長官が申し上げたのは、あるいはそういう同じく世間の批判を受けるような事態の生じた場合には、やむを得ず考えなければならぬかもしれないというような意味で申し上げたのじやないかと思いますが、これはその事態に応じてみなければわかりませんので、現在の方針としては、先ほど前田君の質問お答え申し上げた通り、絶対にそういうことは考えたくないというふうに思つております。
  196. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それではもう一言お伺いしますが、今度の炭労にしましても、あるいは電産のストにしましても、従来からだんだんと裁判所などでも問題が取上げられまして、たとえば卑近な例で申しますと、たしか川崎だと思いますが、その付近の裁判所で、逐次こういうストライキに対しましては判例が出ておるようであります。その判例をどういうふうに見ておられるか、これは事務当局でなければわからぬと思いますから、事務官の方から御答弁を願います。
  197. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 ただいまお尋ねの川崎の問題でございますが、これは裁判所で停電行為が正当なる争議行為である、こういつたような判決があつた事件のことだと存じます。これにつきましては、たびたび申し上げおりますように、スイツチ・オフによる争議行為は、正当ならざるものと、私ども考えておつたのであります。検察当局もそうした考えであつたわけでございますが、そういうふうな点について疑義がございますので、今回これを明らかにしよう、こういうふうな考え方でございます。
  198. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 あの裁判の判例で行きますと、必ずしも停電が違法であるということにはなつていない、こういうふうに思うのです。そういたしますと、ここで重大なことは、その判例に基いてそれを正当化しようとは考えていないのですけれども、ここで真剣に私は考えなければならないことは、こういう規制法をつくつて規制するということになりますと、労働組合の実は実際の運営に当つた人でなければ、理解してもらえないと思うのですけれども労働組合がこういう法律従つて大きな壁をつくられますと、自主的に、良心的ないわゆる内部の統制を行おうとしても、非常に困難になつて参ります。のみならず、その困難を乗り越えるような無理な要求をして来ることもまた事実なのであります。これは経営者の方もよく考えてもらわなければならぬ問題でありますが、そういうふうになりますと、これはこの規制法を乗り越えてもやらなければならぬ、こういうふうなはめに追い込まれるわけであります。労働組合は絶えず自己反省をしまして一時行き過ぎた行為があるといたしましても、それはみずから組合員の手で、そういう自分が決定したことに対して、実際に行つたことの上で行き過ぎがあつたといたしますと、それはやはり大きな内部反省によつて、健全化の道を絶えずたどつて行くわけであります。ところが、こういうものが出て参りますと、それはそののりを越えた反省というものをしないで、批判はこののりを越えたもののみを非難するということになりますから、ついよけい今までよりも強い考えで非合法約なことに追いやる危険があるのであります。そういうような点について、一体事務局の方ではどういうふうにお考えになるか。また将来労働運動を政治的に見て、労働大臣はどういうふうにお考えになりますか。事務局の方が先になりまして失礼でありますが、ひとつ両方からお答えを願いたい。
  199. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 規制を乗り越えるように追い込みはしないかというお説でありますが、私は逆に、そういうところまで行かないように、反省と申しますか、自制をしていただく方を期待しておるのであります。なお、その余は政府委員から答弁いたさせます。
  200. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 この法律は御承知のように、違法だと考えておりましても、多少疑義もある向きもありますので、これを明確にしようというのでございます。私どもは、たびたび申し上げてありますように、組合争議行為方法等につきましては、やはり組合の、法律従つて、良識に従つて行かれることを、私どもは期待いたしておりますので、この規制を乗り越えて非合法になるというようなことは期待いたしておりません。
  201. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はそういうことを言つておるのではなくて、そういう規制によつて、その規制のわく内において反省されるというお考えがないんですよ。もしこういう規制をしたら、その規制を乗り越えてやつた、その部分についてのみさらに強く批判をして飛躍をするという考え方です。こういうことになると、非常に困る、通り一ぺんの法律ではできなくなります。これは労働行政上から見ても、非常に困難なことになりますから、そういう点についての政治的な見通しというようなものを、やはりはつきり持つておかなければならぬ。ですから、もちろんあなた方もおつしやるようにこの規制されたわく内においてなされるべきであるというのが私の趣旨なんですけれども、実際にそういうふうに行かない場合があるかもしれない。また、しれないといえば仮定だとあなた方逃げられるかもわからないけれども、しかし、それはほんとうはそう逃げてばかりいられない現実の問題が私は起きて来ることを憂える。ですから、将来の労働行政としてどういうふうにお考えになるか、こういうふうに私は質問しておるのです。
  202. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほど来申し上げてありますように、私どもといたしましては、組合が良識によつて行動せられることを期待いたしております。
  203. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは今までの質問からみまして、もちろん組合の良識に従つてすべての問題が解決されるとするならば、何も法律はいりません。しかし、そういうことができないところに、一つの基準を示すものであるというふうに考える。ところが、これは基準の問題ではなくて、基準を飛躍している問題である、こういうふうに思います。そうなりますと、基準を乗り越えるということになれば、その法律自体が、政治的に見ましても、きわめてまずいものになると考えますから、その事態を憂えて質問をしているのでありますけれども、今までの質問から見ますと、きわめて要領を得ておりません。そうなりますと、この法律を出したのは、きわめて不用意に急いで通り一ぺんの施政演説の裏づけとして出された。しかも、それは昨年来の炭労、電産のストに対する報復的な措置として出されたとしか考えられない、こういうことになると思いますので、非常に遺憾だというふうに考えます。  それから、もう一つお伺いしたいのは、この法の根本を流れておりますものは、公共福祉ということを非常に強調されているわけですが、しかし、それでは一体公共福祉というものを考える場合に、公共福祉私企業における利潤の追求、こういうものに対して、どうお考えになるか。一方においては利潤の追求は自由にするということになりますならば、公共福祉に対しても大きな障害を来して来ると思いますが、この点についての見解を承りたい。
  204. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 前段のこうした基準をつくりましても、それを乗り越えるおそれがあるのではないか、こういうお尋ねでございますが、これにつきましては、現行法においても違法、不当であると考えておりますものを明文化するにすぎないのでありまして、私どもといたしましては、組合の方々がその良識に従つてこの基準を守つていただけるものと期待をいたしている次第でございます。  私企業利潤追求の問題がございましたが、第三条の問題は、それとは全然別個の問題である、かように考えております。すなわち争議が済みまして復帰しようといたしましても、復帰する職場を失わしめるような、そういう破壊的な行為、いわゆる法益の不均衡を中心といたしまして第三条ができているのでございまして、私企業利潤追求の問題とは全然別個の問題である、かように存じている次第でございます。
  205. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私企業利潤追求を放任して、そうして公共福祉は論じられないと思います。しかもその対象たるべき労働組合規制されるのは、公共福祉ということを主題に置いて、そうして方法規制するといつて基本権を剥奪する、こういう結果になる。それはきわめて一方的な規制になると思います。そういうことが高じて来ますと、経営者はどういうことをやつても決して罰せられることにはならない。そうして組合は一方的に押えられて、自分の基本権を犠牲にして——基本権を犠牲にするということは、自分の生活を犠牲にして、そうしてその経営者利潤に実は服さねばならぬという結果になると思うのですが、いかがでしよう。
  206. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 経営者利潤が程度の問題でありましようが、これに対しては、また別の方面から政府の施策は講ぜらるべきものであつて、ただ私どもとして考えるところは、経営者をそのままにしておいて、組合の方だけを規制するという考えではないということは、先ほどからたびたび繰返し申し上げている通りであります。
  207. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 議事も急がれるようでありますから、別に議事の妨害をする考えでもありませんし、そういう点を明確にしてもらいために、いろいろ質問をしているわけであります。けれども、今の労働大臣の説明では、きわめて不満足である。なぜかと申しますと、今申しますように、この出方というものが、やはり公共福祉という大きな観点に立つてこの規制をなさり、しかもその趣旨は単なるストライキ方法規制だといつて、片方では非常に大きく社会にクローズ・アツプしておきながら、一方においては、労働者基本権が剥奪されようとするのに、その基本権を非常に過小評価しておられる。これでは大体この法律案を出す場合の考え方というものが、きわめて私はバランスのとれない考え方に立つておるというふうに考えるのですが、これで常な法律案として、政治的にもきわめて公喜平なものとお考えになるかどうか、労働大臣にひとつお伺いしたいと思います。
  208. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 この点につきましては、もうすでにたびたびお答え申し上げております通りで、私どもは一方を決して不公平にというような考えは毛頭持つておらないのでありまして、特に組合をあるいは労働者を押えるというふうには考えておらないのでございます。
  209. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 しからばこの一方的な利潤の追求に対しても、公共福祉をお考えになるならば、たといそれがドイツのような考えで、経理の公開がなされなくても——ちよつと大臣待つてください。
  210. 田中伊三次

    田中委員長 労働大臣、手洗いに参ります。政務次官がおりますから、どうぞ。
  211. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 それじや私は政務次官でもけつこうですが……。(笑声)しかしほんとうに皆さん方、それで非常に労働組合々押える法で、いい法になるのですから、笑いごとかもしれませんけれども、しかしわれわれとしては、やはりそうはいかぬのですよ。これはやはりそのことが経営者側にも大きな影響を持つものでありますから私は言うておるのです。ですから、こういうふうに公共福祉ということを強く、大きく社会にクローズ・アップされるのですから、それならば公共福祉にそむくような経営内容をしておるのじやないか。こういうようなことは、せめて社会に発表しなくとも、政府においてこれが監督をして、公共福祉にふさわしい経営経営者にも行わせて行くということが私は公平じやないかと思うのですが、そういう点について、ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  212. 福田一

    ○福田政府委員 ただいまの御質問は、御趣旨はよくわかるのでありますが、第二条の電気の問題になりますと、もう少し具体的に大臣の説明を補足しますれば、電気の問題は、たとえば利益の配当その他の問題については、ちやんと認可事項になつておりまして、この点はあなたもよくおわかりになつておられるだろうと思います。通産省において、ちやんとやつております。石炭の問題でありますが、石炭の問題におきましても、炭価をつり上げて非常にもうけておるというような場合においては、ここに通産政務次官も見えておりますけれども、やはり通産行政において適当なる措置をとるようにいたしておるのでありまして、幾らでももうけていい、そして資本家は幾らでも金もうけすればいいというような態度では、われわれは臨んでおるわけではございません。
  213. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 もう一点。そういうふうに、きわめて適切な答弁をされましたけれども、実際には、電気産業においても、無償株なるものを発行したり、あるいは石炭鉱業においても——私は労働組合に要求しておつたのですが、まだ資料は間に合つておりませんが、相当高額な配当をしたり、ただ配当だとか、そういうものを表面に見るだけでは、これは問題にならない。実際にその会社に収納された利益といのをどういうふうに使つておるかも問題になる。たとえば、利益の中から傍系会社に投資して、子会社をつくつて、さらに企業を大きくして行く、こういうふうなものはいわゆる擬制資本とでも申しますか、そういうふうなことになりますと、表面はそう利潤の配当をしていなくても、私は無限の利益を襲断することになると思う。そういうものに対する政府規制は、当然しなければ、公共福祉に私は反すると思うのですが、そういう面の措置を考えられておるかどうか。
  214. 福田一

    ○福田政府委員 電力企業の無償株の問題がございましたが、これは電源開発その他の問題にも関連いたし、また他の産業との均衡の問題もございまして、電力会社が無償株を抱き合わせて増資をしておることは事実でございますけれども、これは私は、あなたのおつしやるような公共福祉を大きく阻害しておるものだとは考えておりません。それから今の石炭の問題につきまして、ほかに第二会社をつくるとか、そういうようないろいろな問題が起つた場合にどうするかということでございますが、これは個々の問題が起きたときに、通産行政として適当に私は考えて行くべき問題だと、かように考えておるわけでございます。
  215. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はまだまだ質問としてはいろいろあるわけですけれども、これはあとに討論に譲ることにいたしまして次に譲ります。
  216. 田中伊三次

    田中委員長 それでは、ちよつと速記はとめて……。     〔速記中止〕
  217. 田中伊三次

    田中委員長 速記をお願いします。
  218. 菊川忠雄

    ○菊川委員 健康のぐあいの悪い大臣に、御難渋をかけて申訳ございません。今まで相当長い時間いろいろと質疑応答があつたのでありますが、私、最初からいろいろと重大な点として御質問申し上げた事柄について、その後同僚の再三再四の質問に対する政府側の御答弁がございましたけれども、いまなおこういう点について十分でないと思われる点がありますので、数点について逐次お尋ねをしたいと思います。  この法案の提出説明にあたりまして、またその後の答弁を通じまして、たとえば緒方官房長官は、電気、石炭その他の重要な産業について、これを国民的な立場からいろいろの規制を加える、そうして産業平和ということのために、何らかの寄与のできるようなことについて考慮したいという程度の答弁があつたのであります。ところが、通産大臣の御答弁の中には、そういう問題については、考慮する必要はあるかもしれないが、具体的には考えていないという答弁であつたのであります。その中に、例といたしまして、経営協議会というがごときものも、いろいろとまだ研究の余地のある問題で、政府はこのことについてやるということを容易には言えないというふうな程度の答弁であつたのであります。ところが労働大臣あるいは政府委員は、そういう問題につきましても、必要であれば考慮はしなければならないという程度の答弁であつたのであります。従つて、いずれの場合におきましても、今日までのところ、こういうような法案を提案はされましたが、しかし提案をする前に、政府にはこの電気産業あるいは石炭鉱業においてすら、一方においてそういう産業平和のために、こういう重要企業について経営上のいろいろな公益的な立場あるいは公共的な立場から監督し、あるいはもつと公正に運営するというふうな方式について、何ら具体的な研究も準備もないということが明瞭になつたと思うのであります。そこでこういう点について、今までの答弁ではその程度以上には伺つていないのでありますが、これで間違いがないかどうかということをお尋ねいたしたく。その意味は、できればこういう法案を必要とするような労働争議が起らないことを、だれしも希望すると思うのであります。ところが、争議は産業平和の正常な姿において起る一つの病気でありまして、従つて、その母体であるところの企業経営が健全でなければならぬ。それが今日単なる営利生産にまかされ、あるいは株主の利益本位にまかされ、しかもこれについては何ら規制を加へない。このことが一方におきましてこういう問題を生む一つの原因であることは言うまでもないのでありますが、そういう面において、何ら産業業平和の裏打ちをする根本的な施策なくして、この法案用意されておるのだという点に、多大の疑問を抱かざるを得ないのであります。この点、はたして政府は何か具体的な用意があるかどうか。もう一ぺんこれを重ねて、この法案の最後的なわれわれの考えをまとめるためにはお尋ねをいたす次第であります。たとえば、問答によりますれば、政府法案を出して、しかも委員会においてその不備をつかれますならば、急遽一両日のうちにも何らかのそれに裏打ちをするところの政策、あるいは施策をする用意をされて発表するのでありますか。またそれだけの調査あるいは企画の能力を日本政府は持つておるはずであります。ところが、この法案が提出されて、本会議以来この問題が数次指摘されておるにもかかわらず、研究中である、あるいはそういう点については、考える必要があれば考えますという程度で、すでに二週間以上も経過しておりますが、それほどにこの問題については、政府は重要性を感じないのかどうか。こういう点がありますので、第一点としてこの点をお尋ねいたします。
  219. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 産業平和ないしは企業経営に関して、経営協議とか、あるいは参加とかいうようなことについて、先般来官房長官も、ただいまお話のごとくお答え申し上げたと思います。私どもも今後こういう点については、大いに考えなければならぬし、まただんだんそういうふうな時期が来たのではないかというふうに考えておるのでありますが、ただお話のごとく、規制法案を出すのに裏打ちとして、ただちにこれを考えるというようには考えておらなかつたのでございます。
  220. 菊川忠雄

    ○菊川委員 今の問題について関連してお尋ねしますが、私どもの手元には、改進党の附帯決議なるものが回付されております。それは  一、政府電気事業については、当事者一方の申請による仲裁制度を別途考慮し、之に必要な中労委の強化をはかること  二、政府電気事業法の制定に当り、消費者の立場を尊重し、電気の正常なる供給を確保するため、経営面に対しても適当なる規制を考慮すること  三、政府労働問題を根本的且つ科学的に検討するため、労使及び公益代表者よりなる労働問題審議会を設置すること 以上三項目の附帯決議が回付されております。ただいま御答弁になりましたように、この問題についていろいろの完全な施策を用意するのに、あるいは時間がかかるかと思いますが、この附帯決議にあるがごとき内容のものは、これは今までの質疑応答を通じて、政府答弁をされておつたところの趣旨と反するものではないとわれわれは了解するのでありますが、この附帯決議については、本案をいよいよ討議に移した場合において、政府はどういうお考えであるか、このことをお尋ねいたします。
  221. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 まだこれは附帯決議がどういうふうになりますか、私わかりませんが、ここにあげられてありますようなことは、いずれも今後研究をいたして善処して参らねばならぬ問題であると考えております。
  222. 菊川忠雄

    ○菊川委員 次に、それではお尋ねしますが、この法案がいろいろの理由をあげておられますけれども、要するに昨年の二つの争議が長期化して、その結果ああいう事態に立ち至つたということから、その措置としてここに生れておることは言うまでもないのであります。また政府もしばしばさように説明し、答弁しておられます。ところが、言うまでもなく労働争議は、労使双方ともに、だれもこれを好んでやるものはございませんし、いわんやできれば短期に、早期に解決をしたいのであります。これが長期化するに至つたのは、それぞれ当時の事情があつたからであります。従つて、長期化しなければならなかつたという点につきましては、当然こういう公益的な、あるいは公共的な性質を持つておる産業の争議においては、早期解決について政府は臨機応変、適宜な処置をとらなければならなかつたのであります。しかるに、多くの質問の際に指摘されましたように、またわれわれが争議の発端当初から政府に対して要請し、警告いたしました事実にかんがみましても、政府は事実この争議に対しましては、ほとんど野放しであつたといつてもさしつかえないのであります。しかも、その理由といたしましては、争議は本来、労使双方自主的に解決するものであるから、この内容に立ち至つて政府が触れるべき筋のものでない、これに当るべき機関として中労委があるから、その中労委を信じ、中労委に協力するということでやつたのだ、こういうことであつたのであります。しかもそのうちには、単に労使双方が労働条件の問題で折れ合わないから、それに政府が、どちらをとれというタツチができないからだという、そういう正当な理由からの自主的解決に対しては、政府がみだりにくちばしを入れないという部面のみではないのであります。たとえば保安要員の引揚げをやるという事態がだんだんと起つて参りまして、準備指令を出す。その前にはいろいろと石炭連盟と炭労の間にあつて、文書によるところのやりとりがあつた、そうして最後にそれが行き詰まつて保安要員引揚げの準備指令を出さざるを得なくなつたのだ、そういうな、これは単なる労使双方の間の労働条件に関する立場の相違でなくて、争議行為の問題であります。従つて争議行為が適正妥当であるかどうかということにつきましては、政府はこれは非合法として警告したことでありますならば、事態そこに至らない前に、文書の取引によつて石炭連盟と炭労が意見の相違上交渉しておる際に、当然鉱山保安局その他からいたしまして、これにタツチすべきであつたのであります。結局におきましては野放しの争議行為にまかせて、政府はこれを傍観しておつたのであります。こういうようなことから見まして、争議が長期化し、悪化をいたしたのであつて、言いかえますならば、政府は今になつてみれば、この両争議が行き過ぎであつたから、こういう規制をする必要があると言われておりますけれども、本来長期化し、悪化せしめた原因の中には、政府自身がこれを野放しに無為無策でほうつておいたことが大きな原因である。政府はみずから反省すべきところの責任については一言半句も触れずして、ただ単にこの争議の行き過ぎをここに規制されるということにとれるのでありますが、その点について、政府は一体この争議の過程にかんがみて、何らかの反省の事実ありやなしや、この点をお尋ねいたします。
  223. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 争議が長期化したことは、政府が野放しにしておいたからであるというふうな意味のお言葉でありましたが、毎々申し上げますように、労使の間のことは努めて自主的な解決を望み、あるいはさもないときに、中労委の調停あつせんに期待しておる。中労委の活動がしよいように、政府としてもできるだけのことをいたしておる。こういうことでありまして、もし政府で行い得ることでありますれば、たとえば先般の場合でも、ときに勧告をいたしましたり、また懇談もいたしましたりしておつたのであります。もちろんそれが不十分であるという御批判は、これはやむを得ませんが、私どもとしては、みだりには介入せず、つとめて労使の間で解決がつくように、こういう態度で、もし政府があまり出しやばつて行けば、またきつと出過ぎたぞという御批判をいただくに違いないと思うのでありますが、その点については相当に苦心を重ねて対処して参つたつもりでおるのでございます。
  224. 菊川忠雄

    ○菊川委員 それに関連しまして、たとえば炭労のストライキにおける保安要員の引揚げのごときは、保安要員引揚げの準備指令を出す前に、数次の石炭連盟との交渉があつた。そのときに、問題は、それぞれの山の現実の事情においての保安要員の数その他の話合いでありますからして、当然組合側を立ち会わしてしかるべきであると考えておりましたけれども、連盟側はこれを拒否したことによつて問題が悪化したことは事実であります。そういうふうな場合に、何らか政府が第三者的な立場においてこれの適正な判断をするということがあれば、あの準備指令はあるいは出さずに済んだかと思います。従つて、そういう必要なる瞬間において必要なる措置をとるということは、当然政府の責任でなければならない。これをとらなかつたところに保安要員の引揚げの準備指令が出ておるのであります。その結果を今ここに法案として規制をしようということになつておりますが、はたしてそういう点について政府は手落ちがあつたとお認めにならないかどうか、その点をお尋ねいたします。
  225. 福田一

    ○福田政府委員 私からお答えをいたします。(菊川委員「いや、大臣に聞いておるのだ」と呼ぶ)私からお答えをいたしまして、大臣からまたお答えをいたします。菊川さんの御質問でありますが、あの場合、争議の最中でありして、もし万一私たちがそういうことに介入をいたしまして、そういうものを入れたらいいではないかというようなことを言つたといたしましたら、今度は経営者の方から非常に圧迫をしたというような問題が出て来てこの委員会で大いに問題が起きたことは明らかでございまして、要するに私たちは、争議中におきましてはその争議の中に介入することはなるべく避けたい、避けて行くべきものである、これが正しいあり方だ、こう思つてつてつたわけでございます。しかし、これが法律違反であるとかなんとかいうような明瞭な事態がありますならば、当然われわれとしても介入すべきでありますが、争議の手段、争議方法論としていろいろ行われております問題にまで政府が介入するということは行き過ぎであるから、そこまではやらないようにしたい、こういうつもりで対処して参つたつもりでございます。
  226. 菊川忠雄

    ○菊川委員 今の福田政務次官のお新は、この前に伺つておりましたし、それでは実は答弁になつていない。私から言わしむれば、そういう考えのもとにやつたから準備指令を出すようになつたのだからして、それは単になすべきことをなさなかつたことについての自己弁護であり、それがわれわれから見ると、結局怠慢であるということになると思うのであります。この点は再三繰返しましても、おそらく認識の相違がまだあると思いますし、時間の関係上お伺いいたしません。  そこで次にお尋ねしたいのは、結局電産と炭労の両組合に対して、また将来もこういうことをやりかねないということからしての御不満からこういう法案が出ておる、こうとれるのでありますが、そういたしますれば、明らかにこれはこの二つの産業における労働組合に対する政府当局の不信任を意味しておるところの法案であるというふうわれわれはとるのであります。ところが組合の幹部は、あるいは批判が足りないかもしれませんが、その後組合組織全体を通じて全国的に起つておるところの動きをごらんになりますならば、大衆を含めての組合の動きは、決してそれを無批判に承諾をしておるわけではないのであります。こういう点は一体労働当局は認めておるのかいないのか。これを認めずしてこういう法案を今後のために出すといたしますれば、やはりこれは労働組合に対するところの不信の意思表示でないかというふうにわれわれはとるのでありますが、この点についてお尋ねいたします。  なおこれに関連いたしまして、改進党では本法案を臨時措置の立法ということにして名前をかえるべきであるということを提案しておるのであります。従つてまた臨時立法でありますからして、これには三年間の期限を付すということを提案しておられるのでありますが、これは要するにその根拠は、将来またこういう心配があるかもしれぬからして、しばらくこれをおくという善意にもとれるのであります。従つてそこに現われるものは、現在のこの二つの労働組合があれだけの大きな争議をやり、教訓を生み、そして大衆までも含めての組織といたしましては大きな自己批判をしておるとわれわれは見るのでありますけれども、この事実に対しても、なお二つの組合に対して信頼が置けないという現われであると思うのでありますが、こういう点についての政府の両組合に対するところのお考えを伺いたいのであります。  なお、あわせて今の改進党の提案になるところの臨時措置の立法としてこれを修正すること、そしてこれに三年間の猶予の期間を付すること、これについて政府はお認めになる御意思であるかどうか、この点をお尋ねいたします。
  227. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 政府が怠慢であつたという御批判でございましたが、これは御批判にまかせるよりほか、しかたがありません。  それから何かこの修正の問題でありますが、それは御審議におまかせしてあるのでありまして、その上のことに考えます。
  228. 倉石忠雄

    倉石委員 本案に対する質疑はこれにて終局せられんことを望みます。     〔「賛成」「反対」と呼ぶ者あり〕
  229. 田中伊三次

    田中委員長 ただいまの倉石君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕     〔「そんなばかなことはないよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  230. 田中伊三次

    田中委員長 起立十二名。  なお念のため反対の諸君の御起立を望みます。     〔反対者起立〕
  231. 田中伊三次

    田中委員長 起立十二名。可否同数でありますので、委員長は国会法第五十条により可と決します。(春日委員委員長、議事進行」と呼ぶ)  なおただいままでに委員長の手元まで千葉三郎君外三名より本案に対する修正案が提出されております。この際提出者より趣旨説明を求めます。菅太郎君。     〔春日委員委員長議事進行をどうして許さぬか」と呼ぶ〕
  232. 田中伊三次

    田中委員長 適当なときに許します。お静かに願います。——菅君。
  233. 菅太郎

    ○菅委員 本案に対して、私は改進党を代表いたしまして、以下に述べまする修正案を提案いたすものであります。  まず案文を朗読いたします。    電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案に対する修正案  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案の一部を次のように修正する。  附側を附側第一項とし、同項の次に次の二項を加える。  2 政府は、この法律施行の日から起算して三年を経過したときは、その経過後二十日以内に、もしその経過した日から起算して二十日を経過した日に国会閉会中の場合は国会召集後十日以内に、この法律を存続させるかどうかについて、国会の議決を求めなければならない。この場合において、この法律を存続させない旨の議決があつたとき、又は当該国会の会期中にこの法律を存続させる旨の議決がなかつたときは、その日の経過した日から、この法律は、その効力を失う。  3 前項の規定によりこの法律がその効力を失つたときは、政府は、速やかにその旨を公布しなければならない。  以下提案の趣旨を簡潔に御説明いたします。  この中心の私どもの主張は、本立法を臨時措置法たらしめようとするところにあるのであります。大体三つの立場からこの主張をいたすのであります。  第一は、労働運動の大勢を洞察いたしまして、賢明なる労働対策の基本方針を立てるという立場から、この主張をいたすものであります。そもそも労使関係は、経営者の方面におきまする賢明にして公正なる経営方針の確立と、労働者の方面におきまする健全にして良識ある労働運動の成長とを基礎といたしまして、労使双方の自由にして、自主的な相互交渉によつて、適宜調整せらるべきことを基本の原則といたすのは、民主主義の建前から当然であります。かくのごとき民主主義的方法が慣行として成熟し、次第に慣習的制度に固定化して行くことを理想とすることは申し上げるまでもありません。この間に、法の強制力による抑圧規制というがごときことは、できるだけ避ける、また国家公共機関等の干渉、関与をできるだけ避けるということが望ましいことであります。このことは、今回の提案にあたりまして、政府当局もはつきり認めておるのでありまして、提案理由説明の中で労働大臣はこう言つております。「労使関係の事項につきましては、法をもつてこれを抑制規律するよりは、労使の良識と健全な慣行の成熟にまつことが望ましいことは言うまでもないことであります」、こう述べて、また大臣の言葉をもつてしますれば、明らかに以上述べましたことを基本原則と称しておるのであります。もとよりこれは当然なことでありまして、いかなる情勢のもとにおきましても、この原則を尊重することは、これは大切なことと存ずるのであります。ただ残念ながら眼前の現実を見まするというと、労使双方ともに、この原則に述べられましたようなその線に沿うような姿勢にまだなつておらぬのでありまして、当面の情勢に対処する必要からは、必ずしもこの基本原則により得ないことを、まことにやむを得ないことと存ずるのであります。ことに電産、炭労両組合の実績を見ますると、その感を深くするものがあるのであります。この両組合は、いわゆる左翼的色彩が強く、政治的偏向を脱し切れないところが多々あるのであります。現に昨秋行われましたこの電産、炭労の両争議は、如実にこの実態を露呈しておりまして、政治的ストライキの色彩を濃厚に持つておりました。あるいはこの争議をもつて総資本に対決するものであるとなし、あるいは日本の植民地化反対、再軍備反対闘争の一環としてこれをなすことを呼号する、あるいは内閣打倒にこれを結びつけるといつたようなことは疑いをいれぬところであります。またその方法としても、いわゆる電源スト、停電スト等を頻繁に行いまして、消費者大衆の生活に少からぬ損害を与え、炭鉱保安要員の引揚げを指令して、国民経済の運行を脅かしたような事実があつたわけであります。幸いに輿論の力によりまして、また調停機関の奔走によりまして、最後には緊急調整の発動によつて災いが比較的拡大せられないうちに終つたのでありましたけれども、現実に公共福祉を侵害し、また現実に公共福祉を脅威したことは争えないのであります。しかもその後、この両争議に対しましては痛烈な輿論の批判が加えられまして、また両組合の内部においても、深刻な内部批判が行われつつあるにもかかわりませず、両組合の幹部は、今日なお公に反省の実を示しておりません。両争議における指導方針を是認して、今後においても、必要に応じては停電スト、保安要に員の引揚げを行うことを辞しないというふうな態度を見せておるのであります。いわんや公共福祉を阻害し、脅威し、国民大衆に迷惑をかけ、国民経済に大きな損害を与えたことに対して、謙虚なる陳謝の意を表するという態度においてまだ十分なるものがないのであります。公聴会におきまするこれら諸君の態度から見ましても、このことはいえるのであります。まさにかくのごときは、健全なる労働運動の或を逸脱しておるものと断定せざるを得ないのであります。かくのごとき不健全な行き過ぎに対しましては、当面の緊急の対策を講じまして公共福祉を守り、国民経済の安定を確保することが必要であり、またかくすることが、消費者、需要者大衆を中心とする国民諸君の切実なる要望にこたえるゆえんであると信ずるのであります。このゆえにこそ、われわれは応急臨時の措置としては、本件のごとき争議行為の法的規制をも是認せざるを得ない悲しむべき立場にあるわけであります。しかしそれはあくまで現在の労働運動の行き過ぎに対する応急の過渡的の措置でありまして、労働対策の基本原則ではないのであります。労働対策の基本原則は、さきに申しましたようにあくまで労働組合の真の民主化、その政治的偏向の是正、労働運動の良識ある健全なる発展に重点を置きまして、労働運動が内部より盛り上つて自主的に健全化し、停電ストとか保安要員の引揚げなどのごときは、労働争議の常則としては考え得ないというがごとき状態を実現して、法律による争議の制限のごときは不必要であり、かつ不適当であるというがごとき労働運動の態勢をつくり出すことが、労働対策の根本でなければならぬと考えるのであります。しかしてかくのごとき労働運動を健全化するという見通しは、今日の情勢においても全然ないではないのでありまして、現に先日の両争議以来、総評の内部におきましても、なかんずくこの両組合の内部におきましても、深刻なる反省批判が行われつつあるのでありまして、組合の民主化、政治的偏向の排斥の線に沿うて、真剣なる努力の現われつつあるのを見るのであります。ことに電産におきましてはこの動きが顕著でありまして、次第に組合内の大勢を動かさんとしており、無反省なる中央幹部陣営に対する反撃の情勢をすら、かもしつつあるのであります。この際政府労働対策にしてよろしきを得ますならば、また政党の組合に対する影響力、輿論の指導力が正しく働くならば、この形勢を有効に助長することが可能でありまして、かりに若干の年月をかしまするならば、この領域における労働運動の健全化に相当の効果をあげ得ることをも期待し得るのであります。以上のごとき態勢を期待いたしまして、これを促進する賢明なる労働対策の樹立を主張する立場に立つわれわれといたしましては、今述べました労使関係調整の基本原則に沿いまして、本案のごとき争議方法の制限は、かかる労働運動の健全化実現を見るまでの過渡的立法とすることを適当と考えるものであります。  またこれをいささか角度をかえて論じますれば、労働組合の内部にあつて組合民主化のため、労働運動健全化のために奮闘しつつありまする健全なる勢力を、激励助長する意味から言いましても、かかる法的の制限は応急的なものであつて組合運動の正常化に伴つて廃止せられるべきものであるという期待を持たしめる方が、労働対策上賢明であることは言うをまたないのであります。またこれが急進的であつて、がんこ無反省な組合最高幹部、あるいは総評首脳部に対しても、ある程度の影響力を与える機縁となり得ることも考えられるのでありまして、かれこれ相まちまして、この領域における労働運動の健全化に拍車をかけることになるならば、さらに意義深いことと考えるのでありまして、この意味におきまして、私どもは本法を臨時立法たらしめることを強調したいのであります。  第二は、法律の体系の上から、本法を臨時措置法としたいと主張するものであります。本立法は、労使関係の公正なる調整を本来の目的とするというよりも、公共福祉を擁護することを本旨として、その立場から争議方法を制限することを趣旨としておるのでありまして、このことは政府側においてもはつきりと言明をしているところであります。二月十四日における労働省主催の公聴会におきましても、政府当局の述べておるところを見ますると「今回におきましては、労使関係調整に関する法規につきましては、将来もつと経験を積み、その結果考慮すべきものがあるならば考慮することといたしまして、さしあたりの問題といたしましては、一般労使関係法律には手をつけることなく、公共福祉擁護の観点のみに立つて争議行為のある種の手段につきまして必要な制限を加えることが必要であろう、かように考えた次第でございます。すなわちこの法律案要綱なるものは、労働組合法あるいは労働関係調整法の改正を意図するものではないのでありまして、純粋に国民的な立場に立つて公共福祉擁護のためのみの争議行為方法についての制限を企図しようとする単独立法としてこれを考える必要があるのではないだろうか、かように存じておる次第でございます。」と政府当局は述べておるのであります。すなわち本法は、労働関係調整法というのでなくて、公益保護法の系列に属するものとして立案されておるのであるし、また本質上しかるべきことを考えるのであります。  まず第三条の炭鉱保安関係の条項について申しますならば、これは本来工場、事業場における保安を維持するという、いわば職場保安法の系列に属するものであります。しかして現に鉱山保安法において、この種の行為は明白に違法とせられておるところであり、また労調法三十六条におきましても、この種の争議行為は禁止せられておるところでありまして本法案の第三条は、かかる違法行為をこの際特に違法として宣言するだけの意味しか持つていないのであります。かくのごとき宣言的規定は、昨秋における両組合争議の経験にかんがみて、また現在の炭労及び総評のあり方等から考えまして、当分かかる状態に対応する必要上、これを過渡的に容認上得るにとどまるものであると考えます。将来炭労のあり方が健全化するに伴いまして、当然かくのごとき宣言的規定は不要の存在となり、当然廃止せらるべきことが予見せられるのであります。従つて、かくのごとき第三条の規定は、本質上これを臨時規定として処理すべきものと信ずるのであります。  次に、第一条に規定します電気事業における争議方法の制限も、これも明らかに公益保護の法系に属するものであることは明白であります。従つて、本来は公益事業法において規定せらるべき性質のものであります。しかして公益事業法の見地からしますると、公益保護のために、電気の正常なる供給を停止する行為等は、ひとり争議行為としてこれを禁止するのみでなく、従つて実際はもつぱら労働者ストライキを制限するというのみでなく、経営者側経営上の理由により、正当なる事由もなくして電気の供給を停止をするというがごとき行為をも、禁止ないしは制限をすることが必要であると信ずるのであります。従来、年中行事のごとく行われております渇水等の停電につきましても、何らか適当なる規則を加えることが必要ではないかと信ずるのであります。本質的にいえば、かくのごときは会社経営業務運営の怠慢無能ないし非合理性から出て来ることでありまして、これを野放しに看過することは、公共福祉を擁護する上からとうてい許されないところであるのであります。経営者側は真剣なくふう努力を傾けて、かくのごとき不当なる電力供給の停止を防遏することに努めねばならぬと思うのであります。やむを得ざる事由によつて渇水停電をなす場合にも、あらかじめ消費者代表も交えました経営協議会と申しまするか、あるいは公益代表者会議というがごときものの、こういう代表組織にかけまして、その承認を得るか、あるいは事後に承認を求めることを必要とするような、かくのごとき何らかの規制の制度を設けまして、これに反してゆえなく停電をするがごとき経営者の横暴に対しては、厳にこれを禁止する、その違反はこれを厳重に処罰する法制を、整える必要があろうかと存ずるのであります。かくして公益保護の見地より、正常なる電気の供給を確保するという制度は、労使双方に対して均等に制限を加え、負担を課すべきでありまして、またひとり争議行為規制にとどまるのでなく、事業経営の全般にわたつて、かくのごとき措置を講ずべきものと信ずるのであります。この意味から申しまして、かくのごとき本格的な立法措置が、公益事業法の体系において整備されるに至りますまでの過渡的措置とすることが、本立法の本質に最も合致するものであると信ずるものであります。いずれにいたしましても、わが国現下の法律の体系から見ましてまた今後の立法の大勢から洞察をいたしまして、本法案のごときはまつたく当面の事態に対処する一時的の便法であります。当面をつくろう、いわばこうやく張りにすぎぬのであります。今後における本格的な立法の進行に伴いまして、しかるべくあるいは廃止せられ、あるいは他の法律に吸収せらるべき性質のものと認めねばならないのであります。これが本法案を臨時措置とすべしと主張する第二の理由であります。  最後に第三に、いま一つつけ加えまするならば、本法案は、この審議の過程において明らかにせられましたことく、幾多の点において疑義が存するのであります。また明らかなる欠点も露呈をいたしておるのであります。なかんずく争議方法規制によつて労働権に重大なる制限を加えておきながら、これを救済して労使の交渉力の均衡を保持するという考慮が払われていないのであります。ことに電気事業については、争議方法の大半を事実上労働者から剥奪しておきながら、これを補うために、たとえば当事者一方の申請による仲裁制度のごとき、当然考慮すべき問題についても、何らの対策を講じていないのであります。また公共福祉を擁護するために、さきに申しました通り、電気の正常なる供給を確保する必要があるというならば、それは単に争議方法規制によつて、事実上労働権を制限するというのでなくて、経営方面に対しても適当なる規制を加える必要があることは前述の通りであります。これらの点について何らの配慮も払われていないということは、まつたく不均衡、不公正のそしりを免れないのであります。あるいは資本家擁護の非難を受ける余地があるとも言い得ると思うのであります。また本案のごときは外国の立法例においても、まことにその例は少いのでありまして、いろいろな意味から申しまして、きわめて疑義多く欠点に満ちた法案だと断定せざるを得ないのであります。ただ、前に申しましたように、眼前の当面の事実に対処するために、われわれはここに本来労働対策上好ましからず、賢明ならずとは認めながらも、当面の対処上やむを得ずこれをのんで行くのでありますから、かくのごとき立場におきまして、最も強く本法を臨時的措置法とすることを主張するものであります。各位の御賛成を得たいと思う次第であります。  以上修正案の趣旨を申上げます。
  234. 田中伊三次

    田中委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終りました。  これより電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案内閣提出第八八号)本案並びに本案に対する千藥三郎君外五名提出のただいまの修正案を一括いたしまして討論に付します。討論は通告順によつてこれを許します。まず自由党持永君。
  235. 持永義夫

    ○持永委員 私は自由党を代表しまして、ただいま議題となつております電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法の規正に関する法律案について、改進党の修正されました政府案に対して賛成の意を表するものであります。  本法案は、提案理由の説明にもありましたように、まつたく昨冬行われました電気産業及び石炭鉱業における争議にかんがみて、臨時かつ応急の対策として、真にやむを得ず立案されたものでありまして、いわゆる占領行政の行過ぎの是正というようなことではないということは、労働大臣の説明並びに委員会における審査の過程においても明らかにされているところであります。申すまでもなく電気事業及び石炭産業は、国民経済国民の日常生活に欠くことのできない公共性質を有する重要にして、かつ特殊の性格を持つている産業でありまして、たとえば電気事業におきましてスイツチを積極的に切る行為とか、あるいは鉱山保安法に規定する保安業務を放棄し、溢水とか落盤とか、あるいは自然発火、有害ガスの充満を生ぜしめ、その結果人命に被害を及ぼしたり、石炭資源を滅失したり、あるいは炭坑の破壊を招いたりすることは、正当な争議の限界を逸脱しているものでありますことは、従来から考慮されていたところであります。もとより労働組合運動の健全なる発展を期待し、特に労使関係につきましては、法をもつてこれを抑制、禁止することはでき得ると思うのでありますが、これを避けて労使の自主的交渉による解決にゆだねる、すなわち労使の良識と健全なる慣行の成熟にゆだねるということが望ましいと考えることは、わが党の一貫した信念であります。しかしながら昨冬行われました両産業の労働争議の経緯及びその後の事情にかんがみまして、この点をさらに明らかに法律に定め、このような宣言的規定を設けて誤解の余地をなくしますことは、公益擁護のためにきわめて必要かつ適切なる措置であると考えるのであります。この法律案は、憲法によつて保障されておりまする労働者の団結権を剥奪するものではないのでありまして、ただ争議権と公益調和をはかつたものであります。それで私はこの改進党の提案によつて修正せられました政府案に賛成の意を表するものであります。
  236. 田中伊三次

    田中委員長 森山君。
  237. 森山欽司

    ○森山委員 改進党を代表いたしまして、わが党提案の修正案を含めて、本案に賛成するものであります。  昨年末の炭労、電産ストに見られました政治闘争主義的な傾向は、さきにわが党費委員の指摘した通りでありまして、この両ストが国民一般大衆に与えましたところの世人の憤満、これが与えた損害による輿論の反発は、いまさら私が申し上げる必要もないと思うのであります。本法案の成立は単にこれを労働者の責めにのみ帰すべきものではなくして、一面自由党吉田内閣のきわめて古典的な労働感覚、無為無策な労働施策の悲しむべき結果であることも、また忘れてはならないと思うのであります。また、かかる法律が遂に成立するということは、わが国の労働問題の立場からは、まことに不幸なる次第であります。しかしながら、消費者国民大衆を尊重するわが党の立場からは、現段階においては、まことにやむを得ないものとして認めざるを得ないことを、まことに遺憾とするものであります。但し、本法案の立案の経過、すなわちこの法案が唐突に立案せられたのでありますけれども、これらのかくのごとき形のストが、将来再び起るかどうかということについては、単に目前の事象にとらわれることなく、両組合の内部の今後の行き方に対して、深い洞察を加えなければならない。言葉をかえて申しまするならば、民主的労働運動というものが、これらの両組合の中に大衆的に成長しつつあるという現実を考えまするならば、われわれは今日の段階において、この法案をこのままにうのみにすることはできないのであります。  さらにわが国の労働法体系、労働法秩序、そうしてその秩序のよつて立つところの労働法の原理は、申すまでもなくこれは労働権の原理であり、労働者保護の原理であり、さらにまた団体自治の原理であります。こういうようなわが国の労働法秩序の中から見ますならば、かくのごとき立法は、まことに特異な形式でありまして、特に世界においてかくのごとき立法は、その類を見ないものであります。従つてわが党は、さきに菅委員の説明いたしましたごとき修正案を提出いたしたのでありますが、さらにこの際われわれは次のごとき附帯決議を提出するものであります。  附帯決議を読み上げます。    附帯決議  一、政府電気事業については、当事者一方の申請による仲裁制度を別途考慮し、之に必要な中労委の強化を図ること  二、政府電気事業法の制定に当り、消費者の立場を尊重し、電気の正常なる供給を確保するため、経営面に対しても適当なる規制を考慮すること  三、政府労働問題を根本的且つ科学的に検討するため、労使及び公益代表者よりなる労働問題審議会を設置すること、以上であります。  これについて御説明申し上げます。第一項につきましては、今回の立法を見ますと、電気事業関係につきましては、政府はそのすべてが違法あるいは不当であるものを確認する、あるいは宣言する性質を持つにすぎないというのでありますけれども、たとえば職場放棄のごときは、従来の学説判例においても、これを違法ないし不当とするということについては、大いなる疑義が存在することは、これは与党の諸君といえども認めざるを得ないのであります。しかも、かかることをすることによつて、明らかに争議方法の制限のみならず、場合によつて憲法の保障するところの争議権に触れるというような疑念すら招来するのでありまして、これを単にこの法律のまま通すということは、私どもとしてはまことに残念なのであります。従つて政府労働者側の申請によつて仲裁を求めて来たとき、これを仲裁にかけることを別途考慮すべきであるとわれわれは信ずるのであります。そしてかかる仲裁を行うに足るだけの十分な権限、機能を持つた中央労働委員会をつくるために、これが強化策をはからなければならないことは、申すまでもないところであります。政府はかかる根本的問題について何ら顧慮を払われずに、本法案の提出をされましたことにつきましては、まことに遺憾にたえざる次第であります。  第二に、今回の法案は、電気事業につきましては、一見経営者及び労働者の両者を制約するがごとく見えて、その実労働者側に大きなる制約を与えるのでありますが、今回の法案を成立させるための輿論の背景の根本は、停電ストあるいは電源ストというものによつて国民が迷惑をしたというこの一事であります。このような観点から考えまするならば、停電スト、電源ストのみならず、最近まで引続きました渇水停電に対しても、国民が大きなる憤満を持つているということは、私は疑いをいれないと思うのであります。かかる点について政府はいかなる措置をとつておるか、おそらく私は何らの措置もとつておらないと思うのであります。そして私どもの附帯決議は、そういう際において、電気事業において消費者の声を反映するだけの何らかの方式を考慮すべきであるということを、この際申し上げたいと思うのであります。さらに私どもは一歩進めて、電気事業におけるところの労使関係の安定のために経営協議会とか、利潤分配とか、そういつたことを真剣に考えなければならない段階に来ておるのではないかということを、第二項において申し上げておる次第であります。  第三番目は、先ほど申し上げましたように、吉田自由党内閣の労働政策、そしてその基本たる労働感覚は、きわめて古典的であります。労働施策は無為無策であります。私はかかる意味において、自由党内閣の労働政策をこの際根本的に改めてもらわなければならぬ。こういうような法律をつくつても、わが国の労使関係は決して安定するものではない。しかし、事は単に今や余命幾ばくもないところの吉田自由党内閣に関する問題ではない、これはわが国全体の識者のひとしく憂慮するところでございますので、かつてイギリスにおけるところのロイヤル・コミテイーの役割と同じような役割を果すべく、労働問題を根本的かつ科学的に検討するために、労使及び公益代表者よりなる労働問題審議会を設置することを私どもは要望いたしたいのであります。そしてわれわれは、単にかかる労働問題審議会を設置するだけで足りるのではないのでありまして、将来自立生産態勢確立のためには、労使双方を規制する総合的な労働関係安定臨時措置法というがごときものを目標としなければならないと信ずるのであります。  かかる観点から、われわれは本修正案を含めました本法案に対して賛成するとともに、ここに附帯決議を提出して、私の討論を終る次第であります。
  238. 田中伊三次

  239. 春日一幸

    春日委員 私は日本社会党を代表いたしまして、政府提案にかかります電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案に対しまして反対の意を表し、さらにまた改進党提案にかかる電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案に対する修正案に対しまして、これまた反対の意を表せんとするものであります。以下その趣旨の弁明をいたします。  わが国は、一九四五年八月十五日でありましたが、あの厳粛なるポツダム宣言を受諾したのでありまするが、政府はあの日の深い感銘とその決意を、すでにしてここに忘れ去ろうとしているのではないかと思われるのであります。実に百八十万の戦死者をささげ、二百数十万戸の家々をやかれ、三百万を越える戦傷不具者を出したところのあの第二次世界大戦こそは、そのポツダム宣三百の第四項に示されてありまするごとく、すなわち無分別なる打算により日本帝国を滅亡のふちに陥れたものは、わがままな軍国主義的助言者の誤てる指導によるものであると指摘されてあつたのでありまするが、あの血涙の日の感銘は、今や逐次薄れようとしているのではないかと思われるのであります。しかして、私どもはかかる理解のもとに、平和的民主国家の建設をかたく決意したのでありまして、かくてわが国経国の不滅の鉄則として日本国憲法が作成されたのであります。この憲法は、ただ単に政治的な論議や学問知識の切望によつてつくり上げられたものではないのでありまして、実に民族の血肉、霊魂のいけにえが祖国と民族の福祉を祈つてもたらされたものであるところに、何人も侵すべからざるとうとさのあることを私どもは忘れては相ならぬと思うのであります。さればこそ私らの憲法はその冒頭賞宣言におきまして、特に次のごとき事項につきまして為政者と国民に宣言をいたしまして、それを厳しく強調いたしておるのでございます。すなわち憲法の冒頭宣言を朗読いたします。「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」と誓われておるのであります。さらに言及いたしまして、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭」——ここであります。「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」最後に「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を、達成することを誓ふ。」——かくのごとく憲法の冒頭宣言は、為政者と国民の心構えを中外に宣明いたしておるのでございます。この冒頭宣言の中で特に私どもが重視しなければ相なりませんことは、まず「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」さらにまた「われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」しかして「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しよう、」これを明らかにいたしまして、かくてその結語が「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」と、悲壮にして不退転の民族の誓いがここに宣言されておるのであります。かくてこの憲法精神に基きまして、日本国において、日本の労働者がいかなる地位に立ち、またいかに処遇さるべきかは、すなわち憲法第二十八条において明確に規定されておるところであります。これを朗読いたします。すなわち憲法第二十八条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」これが憲法第二十八条において明確に規定されておるところの労働者労働基本権であるのであります。これに準拠いたしまして、労働関係法令がつくられておるのであります。労働関係法令、すなわち労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、これらの労働基本法こそは、その淵源をポツダム宣言に発しておるのでありまして、かつは日本の労働者が、みずから百八十万の仲間のしかばねと引きかえに与えられたものであるということは、何人もこれを否定することは許されないのであります。しかるに、今次ここに上程されましたスト禁止法は、まさしく労働基本権の背骨を折らんとするものであるのでありまして、かくのごときは労働者奴隷的拘束をしいるものである。(「簡単々々」と呼ぶ者あり)簡単とは何だ。われわれは日本の労働者五百万のために、最も森厳な演説を行つているのである。これを簡単とは何事であるか。まことに失礼千万である。——今雑音が入りましたので、重要な点を特に繰返して申し上げます。  すなわち、この労働三法こそは、日本の労働者が実に百八十万のしかばねと引きかえにこれがもたらされたものであるというところに、格別の尊厳さが込められておるものであるということを、とくと認めてもらわなければ困るのである。今次ここに上程されましたスト禁止法は、まさしく労働基本権の背骨を折らんとするものでありまして、かくのごときは労働者奴隷的拘束をしいるものである。これは、日本国憲法第十八条を朗読いたしますと、第十八条には「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」こういうことがここに明確に規定されておるのでありまするが、このことはすなわち、この憲法精神に違反をして、そして民主的日本再建の本義を滅却するところの暴挙であるのでありまして、かくのごときはわが党の断じて承認し得ないところであります。  本法案立法を必要とするその理由につきまして、政府はその提案理由の趣旨弁明の中において、これは電産、炭労ストが国民経済国民生活に甚大なる損害を与えたからと言つておるのでありますが、かかる公共の損失を防止する道を、ただ一方的に労働者の側を圧迫する方向に求めるがごときは、政策として幼稚拙劣というか、しからざれば労働組合法第一条の労使対等の均衡を破つて、資本家を利せしめんとする陰謀と断ぜざるを得ないのであります。  この機会に、労働組合法第一条がいかに労使の関係規制しておるかということを、ここに念のために申し述べてみたいと思うのであります。すなわち労働組合法は、昭和二十年——まあ、それはそれといたしまして、第一章総則の第一条の中に「この法律は、労働者使用者との交渉において対等立場に立つことを促進することにより労働者地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者労働者との関係規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。」とあるのでありまして、すなわち、労働組合法のこの目的は、労働者使用者との交渉において対等立場に立つことを保障することにあるのであります。  およそストライキには、やむにやまれざる原因があるのでありまして、ストを行わずしては解決し得ないという余儀なき事情に基くものであるのでありまするが、もし政府公共福祉のためにそのストライキを防止せんとするのであるならば、政府はまずその経営の本体に触れて、およそストライキの起き得ないような経営と管理の方式を確立すべきものである。現に西ドイツにおきましては、この理念に立つて、主たる基礎産業の経営管理方式は、労働者資本家側、さらに需要家を加えて構成される経営協議会制度によつてこの問題の解決がはかられておることを、政府ははたして御承知であられるでありましようか。かつて石炭業者は、巨億の贈賄によつて国家管理が解かれました。さらにまた電気事業は九つの私的企業に分断せられまして、いつしか営利事業になり下つてしまつたのでありますが、この二大基礎産業が、いずれも吉田総理の側近として天下に隠れもない白洲次郎氏あるいは麻生太賀吉氏寺によつて領導されておるということは、本日ここに関係労働者のみの罷業権を剥奪する反動立法がここに突如として出現したことと思い合せて、一体国民はこれを何と感ずるでありましようか。これをかりに当らざる誹議といたしましても、一国の責任を負う者は、かかる国民感情の存在をこそ重視して、あまねく国内外の事例を探つて、いやしくもこの種の疑点の介在の余地をなからしめるため万全の条理を尽すべきは、当然の責任であろうと思うのであります。  私がここに特に納得し得ないことは、現在このような法律を緊急かつ唐突に立法せなければならぬ理由が、一体どこにあるかというこのことであります。およそ電業ストにおいて、そのスト行為が、国家経済の運行を妨げ、国定生活を著しく危うくするというのでありまするならば、政府労調法第三十五条の二に基いて——これはかかる場合における緊急調整規定がなされておるのでありますが、これを朗読をいたします。これは第四章の二、緊急調整、第三十五条の二、「内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるため、又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために、争議行為により当該業務が停止されるときは国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危くする虞があると認める事件について、その虞が現実に存するときに限り、緊急調整の決定をすることができる。」さらに続きまして「内閣総理大臣は、前項の決定をしようとするときは、あらかじめ中央労働委員会(船員法の適用を受ける船員に関しては、船員中央労働委員会。以下同じ。)の意見を聞かなければならない。」とあるのでございます。さらに、この規定は「内閣総理大臣は、緊急調整の決定をしたときは、直ちに、理由を附してその旨を公表するとともに、中央労働委員会及び関係当事者に通知しなければならない。」ということが規定されておるのであります。かくのごとくにいたしまして、電業ストにおいて、そのスト行為が国家経済の運行を妨げ、国民生活を著しく危うくするというのでありますならば、この第三十五条の二の規定に基いて緊急調整が発動できるのでありまして、しかしてその争議行為をただちに停止せしめることは、困難ではないと思うのであります。この公共福祉は、かくのごとく確保される方途がすでに立法されておるのである。  また炭鉱保安要員の引揚げについてでありますが、鉱山保安法のすでに規制するところであるのでございまして、これは新しく立法の必要を認められないものであるのであります。もし法律疑義があるといたしましたならば、すべからく政府は、その違反者を告発をいたしまして、裁判の判決により、地方裁判所でその判決が不服であるならば高等裁判所に、高等裁判所の判決が不服でありますならば、さらにまた最高裁判所へこれを上告いたしまして、その判決によつてその疑義を……(「裁判というものはそういうことになるのか」と呼び、その他発言する者あり)最高裁判所が上告を棄却いたしまするならば、これは下級裁判所の判決が確定するのでありますが、しかしながら、上級裁判所がその控訴あるいは上告を棄却いたしません場合においては、さらに上級裁判所の判決がやはり国の機関の決定となるべきものであろうと考えるのでございます。従いまして、裁判の判決によつてその疑義を解明すべきものであるのでありまして、それなくして、法律の上にさらに必要を越えた無用の法律を累積することは、法律の権威を保つゆえんではないと確信するのであります。(「時間の制限をしろ」と呼び、その他発言する者あり)——発言中であります。  われわれは、昨年の電産争議において、その八十数日にわたる争議期間を通じまして、政府ははなはだしく傍観的態度に出、何ら争議解決のために積極的行動に出ず、さらにまたその最終的段階においてすら、これをその成行きのままに放任していたことを、この機会に特に重視せなければならぬと思うのであります。われわれは、当時屡次にわたりまして、労働大臣あるいは緒方官房長官、時に吉田茂総理大臣に対しまして、争議の重大性にかんがみ、われらもまた国民経済の危局、国民生活の損害を指摘いたしまして、諸外国の例にならい、政府みずからこの争議解決のためにあつせんに乗り出すべき旨強く主張したのでありますが、その節政府答弁は、労働争議は労使双方当事者による円満なる解決こそが望ましいと言明いたされまして、拱手してその推移するところにゆだねられ、実に緊急調整の発動すら行われなかつたのでありまして、今ここに飛躍して、ストを禁止する法律を提案するがごときは、まことに首尾一貫せざるもはなはだしきものであつて、かかる政府の態度こそは、厳重に糾弾されなければならないと思うのであります。しかしながら、私はこの機会にさらに眼光紙背に徹するけい眼を見開いて、ものの本体をつかみとらなければならぬと思うのでございます。  先日来、本委員会におきまする質疑応答を通じまして、なおつまびらかにされていない問題が幾多あるのでございますけれども、特にその一つをここに指摘いたしますならば、当時電産ストによる被害状況を政府はいかに見、これをいかに社会に発表しておつたかということについてであります。私は本日ここに資料といたしまして、十二月十三日付労働省労政局資料なるもの、それはタイトルといたしまして、「電産ストによる被害状況」となつておりますが、これにその被害状況が詳細にわたつて報告されておるのでございます。これをひとつつまびらかにいたします。すなわち、産業別の影響、鉄鋼関係保安電力は一応確保されているが、圧延部門において若干の減少を見たほか」——若干であります。「若干の減少を見たほか、地区により全く保安電力までに抑制された工場もあり、鋳鍛造溶解部門に対する影響が目立つている。特殊な注文生産の場合は納期遅延もあるが(主として特殊鋼)鋼材全般の需給には支障ない模様」すなわち鉄鋼関係に関しまする電産ストによる被害状況は、鋼材全般の需給には支障がないということが、この労働省資料によつて明確に示されておるのであります。  さらにまた金属工業に関する電産ストによる被害状況でありますが、軽圧伸銅につきましては「電圧低下が著しく溶解時間が長くなり生産は七〇——八〇%となり、特需、輸出向を優先的に取扱つているため内需は著しく遅れている。」とあります。しかしながらこれは二〇%程度の減少を示しておるのでございまして致命的打撃を与えた記録はここには示されてはいないのであります。  さらにまた鉱山製錬に対する電産ストによる被害状況でありますが、これは「休電日の振替、操業計画の変更等により生産に及ぼした影響は僅少である。」、すなわち鉱山関係に対する電産ストによる被害状況は、生産に及ぼした影響は僅少であるというのでございます。政府が指摘するがごとく、これは国家経済国民生活考えかくのごとく労働基本権を剥奪してまでストを禁止しなければならないというような緊急性も重大性もここには何ら示されてはいないのであります。  さらにまた造船事業関係に対する電産ストによる被害状況でありますが、これは「最低保安量は確保されたので、設備及び製品の保安に与えた影響はないが、電気炉の操業中、操業計画の振替その他により生産に与えた影響は製作納期が長いため不明である。」すなわち造船関係に与えたこのストの被害は、これは保安に与えた影響もない、あるいは設備並びに生産に与えた影響もないということがここにうたわれておるのであります。  さらにまた機械関係に関するこの電産ストによる被害状況でありますが「機械部門は、一般に工程が長く且つ分化しているので、一部における作業遅延が製品完成には相当大きく響き、特殊な注文生産、殊に特需などについては、納期の遅延から若干問題を生じている。しかし全般的に見て、いまだ大きな支障を与えていないものと認められる。」すなわちこの機械関係は、電産ストによつて何ら大した被害は受けていないということが、この労働省労政局資料によつて明確に打出されておるのでございます。あるいはまた化学肥料関係についてでありまするが、「肥料工場は、平時においても電気の需給状況により、従来も一定時間を限つて抑制されることがあるが、ストの影響としては、十月中は概ね計画に対し三〇%程度の減産と推定され、しかも硫安の工場在庫は、現在約四〇万トン(生産量で二箇月分)あり、」すなわち在庫がきわめて豊富であるから、従いまして、「製品の需給には支障ないものと認められる。」すなわち電力、鉄、石炭、化学肥料に関しましては、製品の需給には支障ないものと認められるということが、ここに明確に資料として示されておるのでございます。  あるいはまたソーダ関係についてでありますが、これは「スト当日における使用電力量は、平日のそれに比し約一〇%減となつており」わずかに一割減でありまして「その結果スト当日は、平日生産量に比し平均一二—一三%方減産を見ているが、この程度ならばスト以外の日に回復可能と認められ、また製品の工場在庫も九月末現在一万六千トン(平常月産量約二万トン)あつたので」すなわちここにありましては——(「そんな討論があるか」と呼び、その他発言する者多し)「ソーダ全般の需給には殆んど影響はないものと思われる。」塩酸、さらし粉、これらに対しましては、電産ストによる被害状況は若干の問題を生じてはいるが、しかしその被害状況は、労働省資料によりますと、大した影響はないということがここに明確に示されておるのでございます。  すなわち、電産ストが国家経済国民生活に甚大なる被害を与えたものであるならば、政府はそのときみずから乗り出して——つてルーズヴエルト大統領がアメリカにおけるあの大炭鉱争議において、みずから争議の渦中に飛び入り、労使双方の中に介在して、あの争議の収束のために鋭意努力したというあの事例を私どもは指摘いたしまして緒方出旦房長官あるいはまた労働大臣がみずから争議解決のために善処されんことを要望したのでございましたが、あたかも時を同じくして、これは大したものではないという証拠といたしまして、かくのごとき資料が示されておるのでございます。  さらにまた薬品関係についてでありまするが、すなわち「特別大口工場においては、休日、休憩時間の振替により、操業、生産には殆んど影響を受けていないが、中小企業には相当の影響を与えている」ということでありまするけれども、薬品関係におきましては、操業、生産にはほとんど影響を受けていないということがここに示されておるのであります。あるいは製氷冷凍関係についてでありますが、これはまた重要な基礎産業でありますが、これに対しましては、ほとんど専用線があるから影響は僅少である。専用線のないものは停電により温度上昇による溶解あるいは品質の低下のおそれがあり、衛生上の問題を起してはいるが、被害はこれまた僅少であるということがここにうたわれております……。
  240. 田中伊三次

    田中委員長 春日君にちよつと注意をいたしますが、その文書を朗読して討論と筋の違うことを討論されないで、討論の本筋に向つて討論をしてください。     〔「討論をしておるじやないか、ふざけるな」と呼ぶ者あり〕
  241. 田中伊三次

    田中委員長 静かに……。
  242. 春日一幸

    春日委員 かくのごとくにして……。
  243. 倉石忠雄

    倉石委員 動議を提出いたします。本案の討論はこれにて打切られんことを望みます。
  244. 田中伊三次

    田中委員長 ただいまの動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔春日委員発言を継続し、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕     〔賛成者起立〕
  245. 田中伊三次

    田中委員長 起立多数……(発言する者多く、聴取不能)  これより採決に入ります。千葉三郎君外五名提出の修正案について採決をいたします。     〔春日委員なお発言を継続、その他発言する者あり〕
  246. 田中伊三次

    田中委員長 本修正案に賛成の諸君は起立を願います。     〔賛成者起立〕
  247. 田中伊三次

    田中委員長 起立多数。よつて本修正案は可決せられました。  次に修正部分を除く政府原案について採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  248. 田中伊三次

    田中委員長 起立多数。よつて本案は修正議決すべきものと決しました。     〔春日委員なおも発言を継続、その他発言する者あり〕
  249. 田中伊三次

    田中委員長 次に森山欽司君提出の附帯決議について採決をいたします。本附帯決議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  250. 田中伊三次

    田中委員長 起立少数。よつて本附帯決議は否決せられました。  なお本案に関する委員会の報告書作成についてお諮りをいたします。これは委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  251. 田中伊三次

    田中委員長 異議がなければさように決定いたします。  本日はこれにて散会をいたします。     午後十一時五分散会