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1953-03-02 第15回国会 衆議院 労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月二日(月曜日)     午前十時四十四分開議     —————————————  出席委員    委員長 田中伊三次君    理事 持永 義夫君 理事 山村新治郎君    理事 千葉 三郎君 理事 前田 種男君       麻生太賀吉君    宇都宮徳馬君       大平 正芳君    倉石 忠雄君       迫水 久常君    吉武 惠市君       菅  太郎君    森山 欽司君       菊川 忠雄君    矢尾喜三郎君       山口丈太郎君    館  俊三君       石野 久男君  出席国務大臣         労 働 大 臣 戸塚九一郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      中島 征帆君         労働政務次官  福田  一君         労働事務官         (労働局長)  齋藤 邦吉君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局調整課         長)      町田 幹夫君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 三月二日  委員館俊三君辞任につき、その補欠として石野  久男君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月二十八日  日本国有鉄道労働組合員不当処分に関する請  願(山花秀雄君外二名紹介)(第三二九三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員の選任  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律案内閣提出第八八号)     —————————————
  2. 田中伊三次

    ○田中委員長 これより労働委員会を開きます。  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案内閣提出第八八号)を議題といたします。前会に引続いて質疑を継続いたします。森山君。     〔田中委員長退席山村委員長代理着席
  3. 森山欽司

    森山委員 この前の委員会で、公共福祉ということに関連して問題があつたのであります。日曜日が一日間にあつて労働省当局も御勉強になつたと思うので、この公共福祉ということについて、前回問題となりました点について、この際労働省当局の御見解を鮮明にしていただきたいと思います。
  4. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 小さな発電所争議行為が、公共福祉に反するようになるかどうかという御趣旨のお尋ねがあつたわけでありますが、先日も申し上げましたように、電気特殊性、すなわち電気の生産と消費とは一連のものであり、瞬間的な一小発電所停電でありましても、その業務を停止いたすということになりますれば、その影響が相当広範囲に及ぶことは明白なことであり、全送電系統にも及ぶものであるという特殊的な性格を持つていること並びに、由来そうした争議行為というものが、争議当事者である労使双方のこうむる損害に比較いたしまして、第三者のこうむる精神的物質的被害は特に大きいものであるという、法益均衡観点からいたしまして、争議権公共福祉調和をはかるという観点に立ちますならば、これはやはり公共福祉に反するものである、かよう考えておるものでございます。
  5. 森山欽司

    森山委員 そうすると、小さな発電所ストについては、電気事業特殊性法益均衡二つの見地から、これが公共福祉に反すると言われるのですが、何か判例がありますか。
  6. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 争議権限界を明らかにいたした判例といたしましては、停電行為についての判例ではございませんが、争議権公共福祉との調整をはかるべきものであるという点についての判例がございます。その箇所の要点だけを申し上げますと「憲法勤労者に対して団結権団体交渉権、その他の団体行動権を保障すると共に、すべての国民に対して平等権自由権財産権等基本的人権を保障しているのであつて是等諸々基本的人権労働者争議権の無制限な行使の前に悉く排除されることを認めているのでもなく、後者が前者に対して絶対的優位を有することを認めているのでもない。寧ろこれ等諸々一般的基本的人権労働者の権利との調和をこそ期待しているのであつて、この調和を破らないことが、即ち争議権正当性限界である。」こうした趣旨判例が出ておるわけでございます。
  7. 森山欽司

    森山委員 その判例一般論を述べてあるのであつて電気事業特殊性には何ら触れていないわけですね。要するに法益均衡の原則を、判例立場から一般的に宣明しただけというふうに承ります。そういたしますと、この電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律、この法律内容は、従来解釈上または政府立場からこれを違法であると認定したもののほかに、違法ではないが不当であると認定したものも含んでおる。また従来は不当であるともいわなかつたものでも、この中には含まれているというふうに考えてよろしいかどうか、承りたい。
  8. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 この法律規制いたしております内容のものは、先般来申し上げておりますように、違法なる争議行為考えておつたもの及び社会通念上非とされるもの、この不当なるものを対象といたしておるのでありまして、私どもといたしましては、従来違法でない、不当でないものを新たに規制ようという考え方は持つておらないわけでございます。
  9. 森山欽司

    森山委員 そうすると、従来違法であるという解釈であつたもの一これはいいですが、違法ではない、従つて法律処罰は受けないけれども、不当であるという程度のものは入つておるわけですな、その意味においてこの法律は単なる宣言的な法律ではなくして、創設的な意味も持つているというふうに考えてよろしゆうございますか。
  10. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 創設的という、意味合いにもよるかと思つておりますが、私どもの根本的な考え方といたしましては、純粋な法理論的に違法なるもの、これは間違いなく明文化でございます。社会通念上不当なるものを、違法なるものと明文化するという意味合いの問題につきましては、創設という意味にもよると思いますが、社会通念上不当なものというものを、そつくりそのまま違法たものということが創設的であるかあるいは社会通念上正当なるものをこの法律によつて違法なものとするというならば、これは創設ということになろうかと思いますが、創設という意味合いによつて、多少その点が違うかと、かよう考えています。
  11. 森山欽司

    森山委員 これは創設的な定義というようなことを、いまさら下す必要はないわけです。大体法に違反した場合に、処罰を受けるとかあるいは法の保護を受けないということが今問題になつておる。従来の不当なる行為というだけでは、これは法の保護を受けないとか、あるいは処罰を受けるとかいうことはないわけです。今度はこの法律によつて法保護を受けない、あるいは処罰を受けるということになれば、これは明らかに創設的だといつていいのじやないか。これは法の論理からいつて当然のことだと私は思う。従つて、この法律案は、単純なる宣言的な意味のみではなくして、創設的な意味も含んでおるのだということをお認めになるかお認めにならないか。
  12. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 さよう意味でありますならば、この法律創設的なものでは全然ございません。すなわち違法なるもの並びに現行法上におきましても組合法第一条第二項によつて社会通念上不当なるものと考えておるものを対象といたしておりますので、創設的なものでは全然ございません。
  13. 森山欽司

    森山委員 組合法第一条第二項の「正当」という言葉をうまく使われてしまいましたので、ちよつと私も論議がやりにくくなるのですが、しかしどうですか、そうするとこれは純然たる宣言的なものであつて、新たなものは含まないと考えてよろしいのですか。私は従来不当なものだというふうに考えておつた社会通念上不当だというのは、この労働組合法第一条第二項の正当、不当の観念と、社会通念上の正当、不当の観念とは、大体同じなんでしよう
  14. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私ども考え方といたしましては、社会通念上、いわゆる労働組合法第一条第二項によりまして正当ならざるものと考えておつたものを具体的に明文化し、これを確認しようという考え方でございます。
  15. 森山欽司

    森山委員 もう一度伺いますが、間違いないですかな。労働組合法第一条第二項の「刑法第三十五条の規定は、労働組合団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。」この「正当なもの」というのは、それは社会通念上正当だ、そういうことでございますか、間違いないですか。
  16. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私ども考え方といたしましては、組合法第一条第二項によります「正当なもの」というのは、結局において社会通念上正当であるか、正当でないかという観点に立つて判断せらるべきものでありまして、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、社会通念上正当ならざる争議行為を確認しよう、こういう考え方でございます。
  17. 森山欽司

    森山委員 そういたしますと、先ほどの小規模発電所スト、これは従来から正当でないというお考えであつたわけですか。
  18. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほどの小規模停電ということでございますが、小規模でありましても、スイッチ・オフ等行為は、従来ともこれは私どもは違法というふうに考えておりました。なお小規模職場放棄の問題になるわけでありますが、それは私どもの方といたしましては、従来はそういう給電指令所職場放棄よう行為は適当な行為でない、こういうふうに私ども考えておりました。しかし昨年の電産の経験にかんがみまして、これはもう社会通念上適当でないというどころじやなくて、社会通念上正当ならざる行為である、こういう解釈を下すのが筋じやないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  19. 森山欽司

    森山委員 これは昨年の電産ストというような大きな規模の場合は、そう考えるのもやむを得ないと思うが、昨年の形でないような、ごく小規模ストまで——要するに昨年というような特殊の事情におけるところの問題としては、そういう考え方もあるいは成り立ち得るかもしれないけれども、平常に場合において、そういう小規模なものまでこれは正当でないというふうにお考えなのですか、労働省は……。
  20. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 私ども考え方といたしましては、先ほど申し上げましたように、小規模な場合でありましても、全般的に響くもので、法益均衡考え方からいたしまして、当然私は社会通念上適当でない、特に御承知のよう電気という瞬間的に広い範囲に及ぶという特殊なる性格を持つている以上、私はやはりそういうものでも正当ならざる争議行為である、かよう考えるわけでございます。
  21. 山村新治郎

  22. 森山欽司

    森山委員 もう一度この点を伺いたいのですが、従来は小規模な、たとえば給電指令所職場放棄というようなことは、これは労働組合法第一条第二項における正当なものである。これは不当なものであるというよう考え方は持つておらなかつたと思うのです。それが昨年の電産ストの際にああいう大規模な形において行われたことから、これはまことにいけないということになつたということは、わからぬこともない。しかし、一般論として今回法律規制されるということになると、昨年のような大規模な電産ストの場合には、それは言えるかもしれないけれども、この法律は昨年のような大規模ストの場合だけではない、小規模な場合においてもこれは適用されるのであります。そうすると、昨年のよう事情のもとにおいて、労働省はこれは社会通念上正当ではないと言つたかもしれないけれども、昨年のごとき事情がない場合における局部的なストに対して、これが正当ではないということは、これは新しいものをここへ加えたことにならないかということを私は申し上げておるのです。
  23. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、そうした行為社会通念上正当ならざる行為ということをしみじみ体験させられましたのは、昨年の電産争議の結果だと、かよう考えております。そうした体験を受けてみますと、小規模という範囲にもよりますけれども、かりに小規模ということでありましても、給電指令所というものの認識その他を考えてみますれば、電気の瞬間性と申しますか、瞬間的に広範囲に及ぶという考え方から、当然これは公共福祉に反した正当ならざる争議行為であるというふうに考えがかわつて来ているのではないか、かよう考えておる次第でございます。すなわちそうしたスイッチ・オフ、職場放棄によりまして、瞬間的にまた全国に及ばないという保証もできるものでもございません。瞬間的に広範囲に及ぶということでありますならば、小規模であろうが、やはり芦、れは正当ならざる争議行為である、こう私は考えがかわつて来ておるのが当然ではなかろうか、かよう考えております。
  24. 森山欽司

    森山委員 この論争は、続けてもなかなか終りませんから、この程度で打切りますが、そうすると、ともかく従来違法または不当だと思われたことを、ただこの法律で書いただけであつて、ことさら書いても書かなくても同じことだ、こういうことと了承してよろしゆうございますか。
  25. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 書いても書かぬでもという意味ではございませんので、昨年の体験にかんがみましてやはりこの際国民公共福祉擁護観点から、従来違法なるものを具体的に明文化し、さらにまたそれを確認しておきたい、こういう考え方でございまして、書いても書かぬでもという問題ではないと考えております。
  26. 森山欽司

    森山委員 要するに、ぼくの伺いたいことは、この法律がなくても、この法律にかかるよう行為は違法であり、あるいは労働法保護を受けないという性質行為が、この法律の中に盛られておるのだというふうに考えてよろしゆうございますか。
  27. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 さように存じております。
  28. 森山欽司

    森山委員 そういうことであるならば、何もこういう法律がなくてもいいのだという議論も宣言的な意味とか、確認的な意味とか、だめを押すとか、念を押すとかいう性質以外には、何もことさらにいらないのだ、こういうことになるのですね。
  29. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 その点につきましては、確認する意味だと申し上げたので、そういうふうにお話になるかもしれませんが、従来においても、ややもすればその間に疑義があり、明確を敏く議論等もありまして、この際明確にしておくことが必要である、こういう気持であります。
  30. 森山欽司

    森山委員 しかし、そういう明確にしておく必要があるのは、昨年電産、炭労の二つストがあつたから、特にはつきりしておきたいということでございましようね。
  31. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 さようでございます。
  32. 森山欽司

    森山委員 だから、そういう必要がなくなれば、こういう法律はいらないわけでございますね。
  33. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 従来の考え方で、当然正当でないようなものについて、ほとんど議論もない、争議行為としても行われないという状態であれば、今あなたのおつしやる通りでもいいかもしれません。しかし、昨年の例をとりましても、従来正当ならざるものと考えられておるようなことについて、それを断行するとかというふうな議論もあつたのであります。その点を明確にしておく必要がある、こういうふうに考えております。
  34. 森山欽司

    森山委員 これはこの間の問題と重複いたしますが、重複してまたお尋ねしたいのです。だから、労働組合がこういう種類の行為はやらぬということを、はつきり立場を鮮明にした場合は、こういう法律はいらないのじやないですか。
  35. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 これは一昨日も、たしか政務次官からもその点についてお答えを申し上げてあつたと思いますが、鮮明にするということがどの程度のものでありますか、その状態にもよらなければならぬと思います。
  36. 森山欽司

    森山委員 社会通念から見て方式等はいろいろあると思いますが、もしそういうことが鮮明にされるような事態があれば、これはいらないものである。要するに平和覚書なら平和宣言を発して、われわれはこの種のストは今後やらぬというふうなことが起り得るとするならば——、またそういう動きは現に組合内部批判として起りつつあるわけですが、今日ただちにそういうものが成り立ち得るかどうかは別問題といたしまして、そういう状態になれば、いらないということは言えるでしような。
  37. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 それは言い得るとは思います。言い得るとは思いますが、その状態がはたしてほんとうかどうかという点について、われわれとしてはまた考えてみなければならぬと思います。
  38. 森山欽司

    森山委員 労働大臣は、そういう状態の来ることを希望するかどうか、またそういう状態が来るために努力するかどうか、伺いたい。
  39. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 希望もいたしますし、努力もいたしたいと存じます。現に今回の提案が最小限にとどめてあつて、同じよう性質については特に加えて規制をしないという私ども気持からも、お察しが願えると思うのであります。
  40. 森山欽司

    森山委員 しからば、先ほど来のお話から承りますと、この法律恒久立法ような形になつておるのでありますが、情勢のいかんによつては、将来に対するわれわれの努力と、将来に対するわれわれの見通しと、そういうものによつては、これを臨時立法とするということについて、どういう御見解を持つておられるか。
  41. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 それは必ずしも恒久的にということを考えないでいいかもしれませんが、今の考え方で現に違法であるもの、あるいは違法性あるものを明確に規定しようということでありますので、ずつと労使の間の気持が健全化するといいますか、そういう社会通念を土台にして考えよう状態ができて来れば、あるいは法というものも何もなくても、悪いことはしないというふうになればけつこうなんでありますから、そういう意味では、また考えられるときがあるかもしれません。
  42. 森山欽司

    森山委員 そういうよう状態を来させるよう努力する、あるいは来るように希望するということ、また労働組合内部におけるそういう自己反省が成長することを醸成するよう意味において、臨時立法とするということをその期限が三年であるか五年であるかは別問題として考えることは、労働政策としては一つの考え方ではないかど思うのですが、労働大臣の御所見を承りたい。
  43. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 政策としては、そういう考え方もあり得ると思います。しかし、ただいまも申し上げましたように、そういう社会常識というものがほんとうにはつきりして来るかどうかということは、見通しは十分につきません。で今回の提案は、そういう臨時という気持でなく提案したような次第であります。
  44. 森山欽司

    森山委員 将来の見通しはつかぬとおつしやいますが、そういうことをいわゆる臨時立法にするということについて、労働大臣ぱどういうふうにお考えになつておるか。今回の提案はそういう立場からお出しになつたけれども、もしわれわれが臨時立法にしたらどうかという意見を出した場合百において、労働大臣はどうお考えになりますか。
  45. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 それはひとつそのときのことにしていただきたいと思います。
  46. 森山欽司

    森山委員 よく慎重御検討をお願いいたしたいと思います。  次に、この今回の法律を読みますと「電気事業事業主又は電気事業に従事する者」あるいは「石炭鉱業事業主又は石炭鉱業に従事する者」とあつて経営者労働者いずれも規制しておるようでありますが、この法案の実効性というものは、大体において労働者対象になつておる。経営者が自分で事業場を閉鎖するとか、ロック・アウトをやるということは、まず私どもはない現象であろう、争議行為としてはあり得ない現象であろうと思うのであります。そういたしますと、大体これは労働者の方を締めつける方に重点が置かれておる。特に電気事業なんかの場合については、そういうよう感じを持つのでありますが、私ども感じについて、労働大臣はどういう所感を持つておられるか。現にきよう新聞によりますと、中山中労委会長は、この法律憲法違反であるという談話を九州において発表しておられる。きわめて一方的に労働者を締めるのではないかという意見があるわけなんです。この点について御意見を承りたい。
  47. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 どうも先般来繰返し申し上げておるように、一方的に締めるのではなくて悪いと認められることを明らかにするという気持であります。なお、ただいまお話が出ました中山会長談話新聞記事に出ておつた。これは私もきよう読みました。しかし、はたして会長がどういう談話をなされましたかその点については明確でありません。あの中にも、いろいろにとれるよう意味もあつたように記憶しております。
  48. 森山欽司

    森山委員 電気事業について、確かに一方について電産の労働組合がかつて停電ストとか電源ストをやつて一般民衆が非常にこれに対して憤懣の意を持つておる。この反面において、事情はいかにあろうと、渇水停電というので電気を切られておる。これに対する経営者に対する国民不満もはなはだ大きい。しかも、今回の法律によりますと、労働者の方についてはそういう問題を締めておるけれども経営者の問題については、依然として従来の公共事業令によつて、これをただ従来の方式においてやつておる。国民不満ははなはだ私は大きいと思うのであります。しかも労使関係観点から見ると、少くも今回の停電ストとか、あるいは電源ストの禁止ということによつて、従来電産がとり来つた争議方法の、形式的には何分の一でありましようけれども、実質的には相当重要な部分が剥奪されるといつても私はさしつかえないと思う。そうなつた場合において、実質的観点からいえば、もう少し経営者に対する何らかの制約が必要なのではないかと思うのでありますが、労働大臣労働大臣たる立場及び国務大臣たる立場から、現在の電気事業について、特に経営者に対するところの考え方が今までの通りであつていいと思つておられるかどうか、ここに何らかの改善を加えなければならないかどうかということについての御見解を承りたい。   (山村委員長代理退席持永委員長代理着席
  49. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 経営者に対する考え方 あるいはまたしばしば渇水停電があるということはまことに遺憾なことであります。これについては少しでも電力を豊富にするという方途で、政府としても臨んでおるのであります。繰返して申し上げるようでありますが、経営者に対する監督上のことにつきましては、後ほど通産省の方からまた御説明をいただきたいと思います。これと争議行為による場合とは全然問題が違うじやないか。経営者の方をそのままにしてという意味では私はないと思う。さつきも申し上げましたように、これが争議行為方法について規制をしておるのでありまして、特に両方に対して兼ね合いを考えるというような問題とは、少し違うと私は考えております。
  50. 森山欽司

    森山委員 それは私はおかしいと思うのであります。一体電産の従来とり来つた戦術の中で、電源スト停電スというもの一その争議行為方法のいい悪いは一応別問題といたしまして、争議行為としての実質的ウエートはどの程度のものであつたか、非常に重要なものであつたか、あるいはほとんどネグリジブルのものであつたか、他の争議方法とのウエートの問題でどういう御見解を持つておられるか承りたい。
  51. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 同じことを繰返すようになつて恐れ入りますが、私ども考え方では、今その行為そのものがいけないのだというので、規制ようとしておるのでありまして、これが経営者に対してどういうふうな影響があるかということは、この際問題にする関係ではないと思うのでありますが、しいて経営者について申しますれば、こうした行為による被害は、国民が受けるのが非常に大きいのであつて経営者はさほどな被害を受けるものではない。停電スト等によりまして、いかにも世間が暗くなるというような場合には、何か非常に大きく響くようでありますが、それは響くのは国民の間であつて経営者はさほどな被害を受けるものではない、こういうふうに私は考えております。
  52. 森山欽司

    森山委員 そういうお考え労働大臣から出るのは、非常におかしいと思う。今日の労働法を読みますと、公益事業というものについては、立法の立て方がいささか違つておるわけです。御承知の通り、公益事業については、調停の場合の手続とか、あるいはまた緊急調整の場合とか、大体争議行為自体は一般大衆に対して迷惑を与えるということを前提としているから、そういう違つた法の建前になつているのです。たとえば労調法第八条の第一号にある運輸事業——私鉄がストをやれば電車をとめる。電車をとめるということが前提となつておればこそ、これは公益事業としてあるのであつて電車をとめなければ、何もこれは公益事業に指定する必要はない。それからまた電気事業も労調法第八条の第三号に書いてある。やはりこれは電気がとまることが前提となつて労調法の建前ができているのではないか。それなればこそ公共事業としての取扱いになつているように思うのであります。ところが、その電気をとめちやいかぬのだということになつた以上、やはり労働者に対する片手落ち的な性格を持つて来るということは、労働大臣は従来の労働法の立て方からして当然お認めにならなければいけないのではないか。私鉄で電車をとめるというスト行為を、かりに全然除いたら、一体公衆の日常生活に欠くことができないという定義のほかに、特別の取扱いを労働法上するだけの意味が出て来るでしようか、労働大臣の御見解はどうでしようか。
  53. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 私鉄の問題に触れますと、また争議行為内容についていろいろ考えられる点があろうと思います。私どもは今回そうした方面には広げて考えて行かないというふうに考えておるのであります。  なお、繰返すようでありますが、この規則の内容は、違法ないしは不当なものであるということを確認する意味でありまして、特に正当に与えられているものを拒否するというのではないのでありますから、自然経営者との関係において、バランスの問題は起きないというよう考えておるのであります。
  54. 森山欽司

    森山委員 労調法第八条第一号に運輸事業、第三号に電気事業がある。こういうところを見ますと、公益事業というものは、電車をとめたり、電気をとめたりすれば、第三者に迷惑がかかつて来ればこそ、公益事業については労調法でも特別な取扱いをしている。ところが、その迷惑がかかるよう方法をとめてしまうということになる。たとえば小規模電気ストがとめられるということになれば、一般民衆にどういう迷惑がかかるか、ほとんど迷惑はかからない。他の産業と迷惑がかかる点は同じで、特に労調法で取上げられるだけの意味になつて来ないであろうと思うのであります。そういたしますと、従来の労働法の立て方と今回の法律との間において、ただこれだけでもつてのむとすれば、その間に労働法考え方からしてギヤッブが出て来るのではないか。労調法の建前からいえば、当然電気事業について停電ストとか、電源ストというものがある程度範囲内において起り得るということを予想しておつたと思う。それであればこそ、労働法上別個の取扱いをできるだけするようにしてあるのであろうと考えるのであります。ところが、一般公衆の日常生活に欠くことができない、直接関係があるような事項は、何もやつちやいかぬということになりますと、特別に法律を置いておく意味さえなさなくなつて来るわけであります。一方これを静かに虚心坦懐に考えてみて、そういう行為が諸般の観点からよくないんだということになつて、とめて来るということになりますれば、これは確かに労働者側にとつて不利である。労働者側の憲法に保障された団結権団体行動権に対して、重大な制約が加わつたのだという事案をお認めにならないのか、これはいかがでしよう
  55. 福田一

    ○福田政府委員 法律上の問題は、齋藤政府委員から答弁してもらうことにいたしますが、ただいまのお話は、ずつと伺つておりますと、電気の小規模ストなどをやつても、大衆に迷惑が及ばないじやないか、こういう御見解ように承つたのでありますけれども、しかし実際には、電気というものは、御承知のように今二割も足りない。野放しにすれば四割も足りないよう状態であります。しかも非常な渇水の時期になりますと、小さい発電所がちよつとやめただけでも、電圧が下り、その電圧が下ることによつて、第三者の機械に影響を及ぼす。あるいは視力をそこねる場合も起り得るし、しかもストックができないので、一瞬にしてそういうことが起きて来るという状況になります。そういう消費と生産が一時に起つておるという電気特殊性から見まして小規模の分であるから影響がないとは、私はいえないと思う。電気の特性から見て発電所はどこをとめた場合でも、非常に大きな影響がある、こういうふうに私たちは考えているわけであります。  なお、他の問題については齋藤政府委員から説明いたします。
  56. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 森山委員のお尋ねは、このよう法律が通れば、労調法第八条の公益事業の範囲の中から、電気事業を除く必要があるのじやないかという趣旨のお尋ねであつたかと存じますが、私が申し上げるまでもなく、労調法第八条は、公衆の日常生活に欠くことのできない事業を指定しておるわけでありまして、この電気事業が、公衆の日常生活に欠くことのできないものという事業の性質からこうできておるものでありまして、こうした条文があつたからと申しまして、スィツチ・オフのよう停電行為が従来とも正当であるという解釈をとつたことはございません。また第八条の中には、医療という事業もございますが、実際上すぐ人命の危険を生ずることでありますので、今ただちにストライキをやるというようなことはないと田』いますけれども、やはり一応公衆の日常生活に欠くことのできない事業であるとして指定されておるわけでありまして、停電行為がなくなつた場合に、そのほかの争議行為が全部禁止せられて、こういう労調法で定めるよう趣旨の規定がいらないということであれば、また別でございますが、いずれにせよ、間接的には国民の日常生活に影響を及ぼす争議行為というものが必ず残ると私は考えております。もちろん直接的なものはなくなると思いますが、間接的には公衆の日常生活に影響を及ぼす、こういう観点から、私はかりにこの法案が通りましても、労調法第八条の関係から申しますれば、そういじらぬでもよいのではないかと考えております。
  57. 森山欽司

    森山委員 技術的な問題を二、三お伺いいたします。この法律の第二条の「その他電気の正常な供給に直接障害を生ぜしめる行為」というのは、どういう限界をお考えになつているか、御説明願います。
  58. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 「その他電気の正常な供給に直接に障害を生ぜしめる行為」この内容でございますが、給電指令所職場放棄並びに野放し送電、大体この二つがこの範囲に入ると考えております。
  59. 森山欽司

    森山委員 そうすると、この二条は、電源スト停電スト、それから今言つた二つ、こういうことになるのですか。大体主たる行為を列挙すると、要するに一条、二条でもつて電産の労働者がやつちやいかぬ行為は、項目別にすると大体幾つくらい考えているのですか。その他の正常な行為として二つをあげられたのですが、大体それで尽きるのですか、ふえるのですか。
  60. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 第三条に規定いたしておりますのは、電気の正常な供給を停止する行為という中に、スイッチを切るような積極的な停止、制限をする行為が入るわけでございます。従つて電源ストにおきまする職場放棄は、「その他電気の正常な供給に直接障害を生ぜしめる行為」に入るわけでありますので、通俗的に申しますれば、電源スト停電スト給電指令所職場放棄、緊急保守要員の職場放棄、これが大体二条でとめられる争議行為でございます。
  61. 森山欽司

    森山委員 私は、そのほか経営者に対する関係で、経営協議会の問題とか利潤分配の問題等について、労働省並びに通産省から意見を聞きたいのでありますが、他の方の質疑もあるようでありますから、ひとまずこれをもつて、いずれかの機会に留保しておきます。
  62. 持永義夫

    持永委員長代理 菊川委員
  63. 菊川忠雄

    ○菊川委員 私はこの法案を見まして、かつまた委員会に配付されました大臣の提案理由の説明を検討してみまして、いまさらこの法案を提出する理由が、きわめて薄弱であると考えておるのであります。従つて、こういうような法案を御提出になつても、結局において政府、あるいはまたこういう争議で迷惑をされ、不安を感じておる国民の各層において予期しておるような効果が伴わず、むしろこれは逆効果を生む悪法である、こういう考えを持つておるのであります。そういう私の考えを中心として、これから具体的にひとつお尋ねしてみたいと思うのであります。一つは、ここに提案理由としてたくさんの理由をあげておられますが、これが政府でお考えの理由の全部であるのか、あるいはなお、ほかに重大な理由があるかを、あらかじめお尋ねしておきたいと思います。
  64. 福田一

    ○福田政府委員 大筋におきましては、これ以外にございません。
  65. 菊川忠雄

    ○菊川委員 この法案を今急に御提出になつたのは、一つは、昨年の暮れにおけるあの二つの大きな争議によつて国民が非常に迷惑をした。しかもそれに対して政府当局は、事前にもあるいは争議中にも、積極的にこれを解決するための努力を払わなかつたのみならず、われわれからいえば無為無策に送つてつた。そういうことからいたしまして、政府は内心非常に責任を感じておられる、こう考えるのであります。そういう点から、この結末を今国会において一応つけるために、自分の無為無策は隠蔽して、そうして一部労働組合の誤つた幹部の指導にその全責任を転嫁して欺瞞しようとしておるという点に、理由の大きなものが伏在しはしないか。いま一つは、迫つておりますところの参議院選挙にあたつて国民の通俗的なこういう不満、反感に便乗して政府の無為無策を隠蔽するとともに、選挙に有利な宣伝をしたい、こういうことが伏在しはしないか、こういうふうにも考えるのでありますが、そういうお考えは毛頭ないかどうかを、私はきわめて率直にお尋ねしておきます。
  66. 福田一

    ○福田政府委員 そういうよう考えは毛頭ないつもりでございます。
  67. 菊川忠雄

    ○菊川委員 それでは、以下理由についてお尋ねいたしますが、この提案の説明理由を検討いたしますと、幾つかの理由が列挙されております。そこで第一には、昨冬行われた電気事業及び石炭鉱業の両ストライキは、非常に大規模なものであつた。そうしてこの労働争議国民経済と国民の日常生活に与えた脅威と損害は実に甚大なものがあつた。こういうことが理由の第一項として出ておるのでありますが、これはこの法案を提出するところの理由として正当とお認めになるかどうか、このことをお尋ねいたします。
  68. 福田一

    ○福田政府委員 私たちとしましては、昨冬のようストライキがございましたことによつて社会的に見ても、こういう法案を提出すべき義務を生じておる、こういう考えから出しております。
  69. 菊川忠雄

    ○菊川委員 昨年の国会において労調法の改正が行われて、緊急調整が取入れられておるのでありますが、一体あの緊急調整を、提案理由として説明される場合には、国民経済と国民の日常生活に脅威と大きな損害を与えるおそれのある場合が問題になつておるのであります。従つて、これだけの項目であれば、この法案を出す理由にはならないはずであります。これだけの項目であれば、むしろ労調法の改正の問題として取扱うのが適当であると考えます。しかも緊急調整は、先般の争議においても、炭鉱に対して一回だけ発動され、しかもこれが実際の効力を発生せずして争議が解決しております。でありますから、この理由が一体理由であるのかどうか、もう一ぺんお尋ねしたいのであります。
  70. 福田一

    ○福田政府委員 緊急調整につきましては、お説の通りでございまして、お説のよう事情において発動するわけでございますが(今回の法案におきまして、電気と石炭における問題は、すでに違法のものであり、不適当のものを規制するわけでありまして、電気の場合においては、緊急調整の出る前においても、その違法並びに不当な行為によつて国民が非常な迷惑を受けておるわけであります。そういうことが疑義がありますので、ここで明らかにするわけでございます。なおまた石炭の場合におきましては、社会不安を醸成する保安要員を引揚げて鉱山を壊滅に帰するようなことが起り得るという気持を持たせること自体から起る大きな社会不安というものを考えますと、ここでこの規定を明らかにしておく必要がある、かよう考えるわけであります。
  71. 菊川忠雄

    ○菊川委員 ただいまのお答えは、かえつて私の質問に対して逆に肯定をされたことにもとれるのです。というのは、石炭と電気の場合においてこういう事態が心配されるからというのでありますから、これはむしろ両争議の経過と結果からこの法案を思いつかれた。むしろ石炭と電気のあの両争議のああいう経過と結果さえなかつたならば、こういう理由をいまさらつけ加える必要もなかつたことを肯定されておる節もあるのでございます。この両争議が非常に大規模なものであつたことが理由とされている。しかるに、先ほど来の森山君に対する御答弁では、この両争議については、たとい小規模のものであつても、やはり事前に争議行為規制する必要があるという御説明をしておられるので、この点は大規模なものであつたということがきわめて無意味な字句になるのであるが、この点はどうですか。
  72. 福田一

    ○福田政府委員 この法案提案の一つの原因は、昨冬のストライキにあることは事実でありますけれども、しかしこれを出すといたしまして、いかように規定をするかということになりますれば、電気の場合においては、小さなものであつても全般に影響を与えるという認識に立ちまして、この法案を出しておるのであります。
  73. 菊川忠雄

    ○菊川委員 従つて、この点につきましては、大規模なものであつて、しかも国民経済と日常生活に不安と脅威を与えるということが主たる理由でなくて、これはあとからつけ加えられた一つの言葉のあやである。これだけのことならばほかの産業にもございますし、現行の労働立法の範囲内においてやれることである。またやらないのは政府の無為無策であるというよう解釈するのでありますが、そのことは討論の際に譲ります。  そこで第二の理由といたしまして、これは理由よりは言い訳のように書いてあるのでありますが、労使関係の事柄は、法をもつて抑制規律することはでぎるだけ避けて、労使の良識と健全な慣行の成熟にゆだねることが望ましいということを政府認めておられるのであります。しかしながら、当面の緊急問題に対しては必要な施策を怠ることは許されないということが理由になつておるのでありますが、一体当面必要な施策ということは何を意味するのかということを、念のためにお伺いしておきます。
  74. 福田一

    ○福田政府委員 この二項に盛つておりまする気持は、われわれとしては、労使関係の問題は労使双方が納得ずくで、すべてうまく仕事をやつて行くのが一番いい考え方である、こういう意味でうまく運用されることを希望しておるということを明らかにしております。しかしそういうことであるからといつてその間に争議が起きました場合においていろいろな問題が起きてこれは去年のことは単なる一つの例であつて、今後においてもまたそういう重大な問題が起きて来た場合には、また考えなければならないでしよう。要するに法律というものは、社会生活と常に離れて存在をすべきものでないので、その社会生活を規正して行く上で新たな事象が起れば、それに対処して適当な措置をとるということは当然である、こういう意味を書いておるものと御了解願いたいのであります。
  75. 菊川忠雄

    ○菊川委員 私はここで一般的なことをお尋ねしておるのではないのであつて、この法案についての問題をお尋ねしておるのでありますから、どうかそういうどこかの学生に講義するようなことは、政府委員としてお慎しみを願いたいと思います。  そこで労使の良識と健全な慣行の成熟というのでありますが、これは面接的に具体的にお尋ねします。一体昨年のあの長期にわたる電気争議が起る前に、われわれは労働大臣に対しても、また通産省当局、特に電気石炭の関係の当局に対しましても、監督官庁の立場において当然今からこの争議の早期解決の用意をすべきであるということを、数次申入れをいたしたのであります。ところが、たとえば電気事業について申しますならば、当時関係局長にもお目にかかりましたし、またその席上には公益事業局の局長も来ておられましたが、聞いてみると、組合側が出しておるところのあのペース・アップの要求が、どの程度電気事業の現状において受入れる可能性のあるものであるかということについては、われわれはまだ何ら資料も持たず研究もしていないというような、きわめて無関心冷淡なお話であつたのであります。しからば、そういうふうなことはいつまでに調査ができるのか、そうしていつごろになればそういう資料が提出されるのかということをお伺いいたしましたら、決算期が九月であるし、まだその決算の結果がわれわれの手元には来ないから、なかなか調査もできないということであつたのであります。しかし、決算期も過ぎて争議は年末までかかつたのでありますけれども、当局並びに公益事業局からは、監督官庁の責任において、この争議は企業の公益性の立場からどうあるべきであるという直接の意見の開陳は耳にいたしましても、そういう資料は提出がなかつたのであります。一体こういうことは、労使の良識と健全な慣行ということから考えて、政府はどうお考えになるか、このことをお尋ねいたします。
  76. 福田一

    ○福田政府委員 前段の御質問に対しましては、通産省側から御答弁願つた方がいいかと考えますが、労使の良識と健全な慣行の成熱ということは、要するに、ふだんから労使双方がいろいろな面について折衝を保ち、そうして理解を持つて料金並びに賃金の問題その他経営の問題についてもお互いに仲よくして行く、こういうよう意味と御解釈を願うようなことになります。実はもつとそういうことを申し上げた方がいいかも存じませんが、そうなりますと、先ほども仰せがありましたように、すでに菊川さんはそういう言葉の内容もおわかりになつておられるので、私がお答えするのはかえつて失礼になると思いますので、申し上げないわけであります。
  77. 菊川忠雄

    ○菊川委員 それでは、これはまだこの間かわられたばかりの福田君では、おわかりにならぬと思いますし、ちようどここには通産省公益事業局中島ざんがお見えでありますから、当時の経過について私の質問についてお答え願いたいと思います。
  78. 中島征帆

    中島政府委員 私も実は公益事業局長に就任いたしましたのはことしでありますので、当時の経過は詳しく存じませんが、ただ私が聞いております範囲内におきましては、当時の賃上げ問題に関しまして、電力会社の方でどの程度の余力があるかということについては、これは実績を見なければわからぬということで、ただいまお話ようなお答えをしたのじやないかと思います。通産省としてわかつておりますことは、実績が出ましたあとで、どの程度余裕があるかということになるのでありますが、実際上の料金の査定をいたします場合には、賃上げということを前提としないで計算いたしております。従つて、当時の通産省の方針としては、賃金問題がかりに値上げということで解決されても、料金の値上げはしない、こういう方針で話を進めておつたように聞いております。従つてあとどれだけ上げるかということは、当時の地方業者の企業努力がどの程度吸収し得るかという見通しにかかつておりましたので、その方向でもつて通産省としてもこの争議の成行きを見守つた、こう思つております。
  79. 菊川忠雄

    ○菊川委員 それではこの点についてはいずれ通産大臣がお見えになつた際に質問することにして保留いたしておきます。しかし、今の御答弁について、労働省の方にお尋ねしたい。一体こういう公益的な、あるいは産業に大きな影響のある争議が起つた場合に、労働省は単なる労使の交渉関係として、それで解決できるとお考えになつておるか、このことをお尋ねいたします。というのは、労働大臣は御退席になつておられますが、先ほど労働大臣のお答えの中には、労働問題は労使の間の問題であつて、そのことが経営者に、あるいは経営にどういうふうに影響があるかということは、われわれの関心を持たないところであるというふうな答弁をされたのであります。これはおそらく言葉が足りないために、そういうふうになつておると思いますが、本心がそうであれば、非常に大きな誤解を生ずる問題である。この際弁明の機会を与えますから、どうぞ正確に御答弁願いたい。
  80. 福田一

    ○福田政府委員 もちろん労働大臣は、労働大臣としても国務大臣としても、こういう電気とかその他の公益事業における大規模争議が起きたとき、また起らない事前におきましても、電気事業あるいは石炭事業というようなあり方については、それぞれの一つの考えを持つて大きくこれをリードして行くべきものであるということについては、同感でございます。しかし、先ほど労働大臣の言われました意味は、別の質問に対するものでありまして、そういうような制限を加えた場合に、労働者のみを制限して、経営者の方に対しては何らの制限を加えないということになるのはおかしいじやないかというお話に対して、本来違法のものあるいは不当のものを、この法律によつて明らかにいたしたのでありまして、こういう意味合いにおいて、経営者の面のことを考えないでも不均衡は起きないであろう、こういう意味の答弁をいたしたと私は考えておるわけでございます。われわれといたしましては、もちろん電気の場合あるいは石炭の場合その他の場合におきましても、社会の大問題につきましては、いろいろな関連性を持つという意味合いにおいて大いに注意を払い、またその問題が、たとえば争議ということになれば、こういうものがうまく解決するように、また将来これが法的措置でなくても解決し得るよう方法考えられるとすれば、そういう問題は多いに研究をいたしておくべきものである、かよう考えております。
  81. 菊川忠雄

    ○菊川委員 労働問題が常に合理的に解決されるためには、労働組合が健全でなければならぬ、これはもう常識であります。政府も言つておられます。しかし、健全な労働組合というのは、やはり企業が健全でなければ育つものではございません。家が乱れていていくら孝子が出ましても、それは特例でありまして、そういう状態は健全な状態ではないのであります。健全な労働組合を育てて行くためには、政府が、単に労働問題は労働者の問題だ、従つて労働省でやればよろしいんだというふうに考え、あるいはストライキをやる労働者は不遇のやからであるとか、あるいはまた総理大臣がかつての機会において言われたように、労働争議は日本においてはぜいたくな事柄だとか、こういう考えを持つてつては、これは育つものではないのであります。従つて、そういう点において、企業の健全化あるいは企業の民主化ということについて、労働省はこういう大きな争議を事前に防止し、あるいはやむを得ず、起つた場合においては、関係各省とどういう連絡協議をしておられるか。あるいは中労委という機関が動く場合には、労働省関係各省のいろいろの協力のもとに動いてしかるべきと思いますが、一体今までどういうふうにしておられるか、このことを具体的にお答え願いたいのであります。なお通産政務次官もおられますが、電産、炭鉱のあれだけの大きな争議があつた際に、通産当局は中労委に対し、労働省を通じてか、あるいは直接にか、早期解決のための何らかの協力をされたか。されたとすれば、具体的なそういう事例をお示し願いたいのであります。
  82. 小平久雄

    小平政府委員 電産、炭労両ストの場合におきまする通産省のとつた態度についてのお尋ねでありますが、通産省といたしましては、電力の関係におきましては、これが産業への影響という観点から、この影響を調査いたしました。また炭労スト関係におきましては、もちろんこれについても他の産業への影響という点も考慮しなければなりませんが、同時に鉱山保安法の主管という立場におきまして、炭鉱の保安の関係から善処しておつたわけであります。争議そのものにつきましては、御承知の通りこれは通産省の所管ではないのであります。従つて直接この争議の収拾等に介入するというようなことは、むしろ極力避けなければならない立場に置かれておりますので、進んで介入することはやらなかつたわけであります。以上の通りでありますので——もちろん産業への影響あるいは炭鉱の保安の関係という点につきましては、最大の注意を払つてつたわけであります。この点に関する限り、各省の大臣等と打合せをいたしたことはもちろんであります。     〔持永委員長代理退席、山村委員長代理着席
  83. 福田一

    ○福田政府委員 ただいまの菊川さんの御質問は、健全な企業をつくらなければ、組合の健全な発達もあり得ない、そういう意味合いにおいて関連性があるのではないか、これを労働省としてどう見ておるか、またどういう注意を払つて来たか、こういうお話だと思うのでございます。しかし、そういう観点から考えてみまして、われわれが、労働省として直接に企業のあり方についての問題までも研究するということになりますと、これはやはりそれぞれの立場々々があるのでございますから、今後もそれぞれそういう意味において研究をいたすべきであると思うのであります。具体的にどういうことをしたかということになりますれば、企業のあり方というものが、たとえば電力会社においては九分割されて今のような企業のあり方で、しかも電産においてはどういう賃金をとつており、今度のベース・アップはどのくらいの要求をされており、ほかとの比較はどうなつておるかというような問題は、いろいろ研究はいたしおりました。また石炭の場合についても同様でありまして、石炭鉱業における労働者の賃金が必ずしも高いものではないというような問題、そういうことも一応調査はいたしておりましたけれども、それでは労働省としてどういう法的根拠によつてどういう手を打つべきかということになりますと、先ほど労働大臣が言われたように、現在の企業のあり方において、労資双方が協調してもらうよりしかたがない。将来の問題としては政府全体として研究して行く、こういう行き方以外には、私たちのとつた措置はございません。
  84. 菊川忠雄

    ○菊川委員 どうも具体的な御答弁がないようで遺憾であります。私のお尋ねするのは、そんな一般的なことを次官にお尋ねはしないのです。そういうことを質問する場合には、総理大臣か通産大臣か、あるいは労働大臣か、責任ある人に聞くのであります。私がお尋ねするのは、この間の両争議について、今言つたような賃金が安いか高いかというようなことだけでなしに、少くともこれが最初言われておるように、公益的な性質を持つておる争議であり、しかも国民経済、国民の日常生活に大きな影響を及ぼす争議である以上は、政府はその解決について何らかの方針と信念を持つてやらなければならぬ。かといつて政府が面接こ解決に乗り出すべきではない。それには中労委という機関がある、自主的な解決をはかるべきでありましよう従つてそういう立場から、労働者に対しては労働省がやるかもしれませんが、労働省以外に、やはりそれぞれの監督官庁があるのでありますから、そういう官庁も全力を尽して当らなければならない。今伺つておりますと、結局そういうこともあまりおやりにならない。従つて争議は、自由的解決という名のもとに、政府は実は無為無策、無能に終つたということになるのであります。こういう点について、具体的にいろいろおやりになつた事例が実はない、しなかつたということであります。それで一体、するのがいいのか悪いのかという御見解であれば、おそらくするのが悪いとはおつしやらないでしよう。中労委を通じていろいろ資料を提供して政府の意向を表明するということは、国民の利益を代表するものとして当然であります。それをやらないところに政府の怠慢と無能があるのであります。従つてここに書いてあるところのことは、結局これは単なる抽象的なことであつて、理由にはなつていない、こういうことを私は申し上げたいのであります。しかしながら、これをいくら追究しても、ないものはないのでありますから、これ以上の質問はこの項目についてはいたしません。  そこで、その理由の第三としては、政府電気事業及び石炭鉱業特殊性及び重要性並びに労使関係の現状にかんがみて、争議権と公益の調和をはかり、もつて公共福祉を擁護するためにこの法案を出しておる、こういうのでありますが、ここで問題になりますのは、労使関係の現状の問題と、争議権公共福祉の問題をあげておられるとわれわれは見るのであります。そこで第一にお尋ねしたいのは、争議権公共福祉ということについて、一体これがこの法案の提出の理由として正当性があるかどうかという点であります。このことは、すでに今まで倉石君あるいは森山君などの御質問で、しばしば政府も答弁をされておるのでありますから、そのことを私は重複してお尋ねはいたしませんが、政府の御答弁の中で大きな疑問を残しておる点は、緒方官房長官は、公共福祉労働者の基本権というものは、全体と部分の関係であるという御説明をなざつた、そしてまた労働省当局もその御説明を繰返しておられるのであります。従つて、この点については、今後の労働行政なり労働立法というものについて、少くとも見のがすことのできない一つの理論的な大きな問題である、私はこう考えるのであります。この観点から二、三点御質問いたしたいと思うのであります。  一体憲法における民主主義の建前に立つてつておるところの公共福祉という言葉、従来しばしばいわれるところの全体主義的な言葉として使われる全体と部分という場合の全体を意味するものとお考えなのかどうか。これはいささか議論めきますが、きわめて軽々しく使われて、いろいろの弊害をもたらすおそれもあるので、お尋ねいたします。
  85. 福田一

    ○福田政府委員 われわれは全体と部分の関係解釈しておりますが、公共福祉というものの内容についての議論は、憲法制定のときにも、まだほんとうに明らかにされないで終つたことは、御承知の通りであります。社会共同生活の幸福というよう解釈をしてみましても、どうもそれでは本質に触れて来ない。そこで結局全体と部分の関係において物を考えるということになりますが、これは必ずしも全体主義というよう気持をもつて申し上げたわけではございません。
  86. 菊川忠雄

    ○菊川委員 あいまいでございますが、それではこういう点をお尋ねいたします。これは講釈めいて恐縮でございますが、民主主義のもとにおいては、すべての国民の一人々々がその自由を尊重される。従つて多数の意見で少数の意見が否決される場合においても、その否決された少数者に対しては、最後の一人の少数者といえどもそれが納得されるということが、民主主義の特長であり、優位な点であります。従つて、ただ単に多数のもとに、少数者は納得しなくてもこれに服従しなければならないというのが全体主義であります。でありますから、そこに民主主義の歴史的における優越性があると思います。従つて公共福祉という場合においても、一人々々の労働者の基本権、労働組合における基本権が十分に尊重され、擁護されておる。しかも、他の国民のそれぞれの階層における自由もまた尊重され、擁護されておる。こういう形において、その調和をはかるところに出て来るものが公共福祉でなければならない。しかるに、今日の労働行政なり労働立法においては、労働基本権というものが憲法にはうたわれているが、事実はたして民主主義の名にふさわしく擁護されているかどうかということが問題であります。このことを十分に検討しないで、ただ単に多少の行き過ぎがあつたからというので、公共福祉という名をもつてこれを一方的に押えつけるということは、一体これは本来の公共福祉考えるかどうか、ここに私どものいう全体主義への変形がある、こう考えるのでありますが、こういう点について一体お考えになつたことがあるのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  87. 福田一

    ○福田政府委員 菊川さんの御説明というか、御質問でございますが、民主主義というのは、あなたのおつしやるよう意味において民主主義が実現できるかどうか、また民主主義というものはそういうものであるかどうかということについて、もう一ぺん詳しい御説明を願いたい。
  88. 菊川忠雄

    ○菊川委員 それはまた個人的に一ぺん御教授するとして(笑声)要するに、今までにお考えにならなかつたということであります。従つて、ここに私のいう公共福祉という名のもとに、自由党政府労働政策が実は全体主義に変形しつつある。私どもはこういう非常に大きな危険があるということを今現実に発見して、実は不安におびえているのであります。たとえば、それでは国家公務員法は、確かに公共福祉のもとに制定され、そして公務員の基本権を労働二法から除外し、制限し、政治的な活動の自由も奪いました。その結果が、はたして公共福祉の建前のごとく、現在の国家公務員の諸君の一人々々が納得するような国家公務員法であるとお考えになるかどうか、このことを私はお伺いいたします。
  89. 福田一

    ○福田政府委員 御説明がないから、もう一回お伺いいたします。(「おかしいじやないか、答えていいじやないか」と呼ぶ者あり)それからでなければお答えができないのであります。会議において多数の者の意見をもつてきまつた場合において少数の意見は尊重されなければ、ならない。議論をすることは、してもよろしい、しかしきまつた上でも、それに従わないでいいのだ、こういうお考えであつたといたしますならば、私は政治はできないと思う。納得させなければいけないのだ、納得しなかつた場合において、その反対した人は自由を持つて自分の思う通りのことができるということになつては、私は政治はできないだろうと思う。いずれにいたしましても、私どもは、多数の者がこういう議決をし、多数の者の意見がそういう方向であつて、きまつたという場合になりますれば、これに対しては、多数の利益がそこにあるという意味合いにおいて、全体と部分の関係が生じて来るものである、かよう考えております。ただ一人、あるいは一つの団体というものが、権力をもつて圧迫的に言論を封圧してやるようなやり方、これが全体主義である。自由に発言を許し、自由に会議に出席せしめて、意見を述べて、その上で皆が議決をした場合においては、それに従つて行くというやり方でなければ、私は民主主義というものの運営のあり方もないと思うのでありまして、こういう意味合いで私ども公共福祉というものを解釈いたしておる。この意味合いにおいて、憲法における争議権と、いわゆる公共福祉というものとは、やはり調和をはかつて行かなければならない、かよう考えておるわけであります。国家公務員法の場合におきましても同様でございまして、国家公務員のうちには、賛成をされておる方も、反対をされておる方もあるでございましよう。しかし選挙によつて選ばれたわれわれ代議士が、議会で、自由な討議によつて、これを正当であると決定いたしましたならば、やはりこれに従つていただく以外に政治のあり方はないと考えております。
  90. 菊川忠雄

    ○菊川委員 こういう貴重な時間に、大学の一年生を相手にするような講義を聞くのはいやであります。今、福田政務次官の言われたのは、要するに会議の運営という平面的な面における民主主義であります。議論は大いにするべし、これは言論の自由であります。きまつたことについては、多数の意見に従う、これはアメリカさんの教えた民主主義の会議の運営であります。その通りであります。これは満点を差上げます。しかしそのことのみが民主主義ではございません。一つの社会において、あるいは国家においては、やはり少数者といえども、その人々の自由が満足される、あるいはそれが制限を受ける場合に納得するという状態において、その社会が成り立ち、公共福祉が成り立つのでございます。でありますから、その場合において、納得し得ないものに対して、公共福祉の名のもとにのみこれを押えつけるということは、全体主義の危険があるのであります。でありますから、きまつたことに従わないということになります。  そこで、お尋ねするのは、国家公務員法を公共福祉政府はおきめになつた。おきめになつた結果はどうであるかということをお尋ねする。不満な者もあり、賛成の者もある、そういう抽象的なことをお尋ねするのではない。なるほど人事院の勧告はある。そうしてそれがあるから、団体交渉も制限され、いわんやストライキはやらぬでよろしい、こういうことになつております。しかしながら、人事院の勧告が、いつの場合においてか尊重されたことがあるかどうか。こういう結果は何であるかというと、公共福祉という名のもとにつくられたこの法律によつて、大多数の公務員の諸君の政治的自由、あるいは労働基本権を奪う結果になる。早くいえば弾圧法規であります。結果においては、これは全体主義の単に一変形にすぎないということになつておるのであります。こういう公共福祉について、全体と部分という軽率な考え方がそういう間違いを犯しておる。それに気がついておるかどうか。気がついていなければ、いないよう考え方をいたします。気がついていれば、いるよう考え方をいたします。
  91. 福田一

    ○福田政府委員 いつも抽象論でしかられるのでありますが、国家公務員の場合におきましては、われわれは人事院の勧告を極力尊重するという建前で臨んで来ております。しかし結果において、そういうことが具体的に実現しておらないではないか、そういう部面があるではないか、これは公務員に対して非常な不満を与え、また間違つたやり方である。あなたはそういうようなお考えで申されるのでありますが、こういうことについては、私は研究をし、また議論をし合うということは、非常にいいことだと思うのであります。それだから絶対にこの制度はかえないという、こういう考えではないのであります。そういう意味合いにおいて、一ぺんきめたならば、それはもうかえないというよう法律というものはあり得るわけはないのであります。現実の問題として、尊重はしてもできない、できないから、そういうことにして来たけれども、何とかそれをでかすくふうをしなければならない。またそういう法律制度を考えようということでありますれば、われわれは決して反対をしておるのではないのであります。
  92. 菊川忠雄

    ○菊川委員 その議論は打切りますが、結局納得できない点が多いのであります。これに関連して、先ほど森山君の質問に対して、労政局長の御答弁があつたのでありますが、団体交渉に際して、労使が対等の立場に立つてやるということでなければ、公共福祉は守れないのだ、こういう御答弁であつたのです。もちろん具体的な内容がございました。電産のストなどございましたが、そのことはしばらくおいて、一体公共福祉労使の対等な団体交渉立場というものが、関係ありと考えておるかどうか、そのことをお尋ねいたしたい。
  93. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 御承知のように、現行組合法におきましては、団体交渉権憲法その他によつて認められておるわけでありますが、その気持というものは、労使対等の立場に立つて労働条件の向上をはかるという意味から、労使対等というものが問題になつて来るのだ、かよう考えております。労使対等ということが、一つの法秩序として確定いたすということになりますれば、それもまた公共福祉というものになる、かよう考えております。
  94. 菊川忠雄

    ○菊川委員 それでは具体的にお尋ねしますが、たとえば電産の場合には——これはあとで具体的にもつとお尋ねしますけれども、直接争議に参加して職場放棄する人間が、全体の電産関係労働者の中のわずか二〇%足らずである。従つて、僅少の犠牲でもつて争議がやれる、こういうことは不合理だということが後にございます。このことはあとで別にお尋ねいたします。そこで、そういう形で、有利な団体交渉立場に立ち得る労働組合もあります。あるいはまた造船に例をとれば、いよいよ日のきまつた進水を予定して突貫工事をやる場合は、日限が切迫しておりますから、それは時期的に有利な条件を持つております。そういうことは、公共福祉立場から考えてよろしくないから、そういう争議のやり方は規制すべきである。こういう立論が出るとお考えになるかどうか、このことをお尋ねします。これはきわめて重大な問題でありまして、この法案ができて後に、あるいはだんだんとほかの公益産業にも及ぼすことも、今はやらないが、必ずしも否定をしておられないのが政府立場であります。従つてこの場合に公共福祉と、そうしてそういう労使対等ということが関連して考えられますならば、この次には今申しましたような、一例でございまするが、造船産業においては、進水の前には団体交渉ストライキもやつてはならないということを言うかもしれません。そういう点について、どうお考えになるか。  なお、ついでに申しますが、そういうことを労使対等の条件とお考えになるならば、炭鉱においては、十一月に入つて、十二月、一月、二月に団体交渉を始めて、ストライキに入るとすると、これは石炭事情から申しまして、組合側は有利な立場になります。そういう時期のストライキも、労使対等の原則に反するとお考えになるか。闘いはそのときどきの時期を選ぶことが、一つの要件であります。労使対等というものはそういう簡単な言葉できまるものじやございません。そういうことをどう考えるか。  それから、なおそれに関連して、たとえば、先般の炭鉱争議におきましては、炭鉱の経営者諸君がわれわれに言つておりましたように、二十日間ぐらいなら、ストライキをやつてもらつてけつこうだ、七百万トンの貯炭が消化されるからよろしい、しかし四十日を越しては困る。そういたしますと、貯炭の上にあぐらをかいて、冬季の需要増大期においての炭価値上げを計算に入れまして、そうして団体交渉に対して強腰に当るということも、労使対等の条件に影響する重大な要件でありますが、こういうことは一体どうお考えになつておるか。あるいは電気産業におきましても、渇水によつて停電をし休電をするということで、電気会社が直接国民から批判を受ける。しかし電産のストによつてごまかすことができれば、これはけつこうだという考えも、従来のストライキにあつたのであります。一体こういうふうなやり方は労使対等の要件でありますが、こういう複雑な要件を持つておるところの労使対等というものについて、これが公共福祉関係があるか。どういう見解で一体こういう立法に当られたか。将来また公共福祉を保ちたいと思つて、労働争議方法規制するということをやられては、かなわないのであります。反動的であります。資本家擁護であります。こういう点について、どういう見解を持つておられるか。先ほどの説明は取消す気持があるのかないのか。これは文書には載つていないことでございますから、取消されても一向さしつかえないが、ひとつ御再考を願つて御返事をお聞きしたい。
  95. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、雷産ストライキにおきまして停電スト電源スト職場放棄、こういつた問題につきましては、これに従事しておる人数も全体のうちで僅かということも申し上げておりますが、根本的な法律的な考え方から申しますれば、こうした争議方法によつて労働者の失う賃金並びに使用者の失う料金というふうな損害と、第三者の受ける損害とがあまりにも均衡を失しておる、こういうことが根本であるのでありまして、電気労働者にとりまして、これ以外の争議行為というものは全然なくなるというのであるならば、労使の対等というものがくずれて来ると思いますけれども、第三者にのみ迷惑をかける争議方法、しかも労使双方同じようにそう大して痛くない方法、それによつて労使の対等がくずれるということは私はないと思います。むしろ労使双方にとつて痛い争議方法が、その他にも十分あるように私承つておりまして、やはり労使双方お互いの痛い点をつき合つてやる、これがやはり争議行為としては最も適当なものであろうかと考えております。従いまして私どもといたしましては、この停電ストというものができないからというて、労使双方の均等というものはくずれるものではない、かよう考えておるものでございます。  なお、そのほか御質問の中にありましたその他の産業についても、公共福祉擁護のために広げるのではないか、こういうお尋ねでありますが、これにつきましては、当初から私ども否定的に答弁をいたしておるわけであります。
  96. 菊川忠雄

    ○菊川委員 私はその点については、あらためて御質問いたします。なおほかに質問保留しております通産大臣、労働大臣も、あわぜて御出席を願つた上で午後質問をいたしたい。その点を保留しておきます。  なお、今までは大体ストについてお尋ねしたのでありますが、私、今までのことは、実は理由になつておらないと思うので、お尋ねしたのでありますが、伺いましてもどうも理由になつておらないので、私の考えは変更できないのであります。結局電気、炭鉱における両争議の結果からこの法案が出たということに集約されるように私考えますので、従つて争議の経過と、そうしてその間におけるところのいろいろな事情について、午後具体的に御質問したいと思つております。これは具体的な質問になりますから、十分御用意をお願いしておきます。
  97. 山村新治郎

    山村委員長代理 この際お諮りいたしますが、去る二月二十七日委員石野久男君が一旦委員を辞任されましたので、ただいまけい肺病対策小委員に欠員を生じております。つきましては小委員の補欠選任を行わねばなりませんが、これは委員長において先例通り指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 山村新治郎

    山村委員長代理 御異議なしと認めます。それでは石野久男君をけい肺病対策小委員に指名いたします。  午後二時まで休憩いたします。     午後零時二十五分休憩     —————————————     〔休憩後は開会に至らなかつた