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1953-02-28 第15回国会 衆議院 労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十八日(土曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 田中伊三次君    理事 持永 義夫君 理事 千葉 三郎君    理事 前田 種男君 理事 青野 武一君       麻生太賀吉君    宇都宮徳馬君       大平 正芳君    倉石 忠雄君       迫水 久常君    中  助松君       石田 一松君    菅  太郎君       森山 欽司君    春日 一幸君       菊川 忠雄君    山口丈太郎君       山花 秀雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 戸塚九一郎君  出席政府委員         労働政務次官  福田  一君         労働事務官         (労政局長)  齋藤 邦吉君  委員外出席者         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 二月二十八日  委員小坂善太郎君辞任につき、その補欠として  加藤精三君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月二十七日  日本国有鉄道労働組合員不当処分に関する請  願外三件(原茂君紹介)(第三一五六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律案内閣提出第八八号)     —————————————
  2. 田中伊三次

    田中委員長 これより労働委員会を開きます。  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案内閣提出第八八号)を議題といたしまして市会に引続いて質疑を進めるごとにいたします。本日は犬養法務大臣小笠原通産大臣出席をするはずでございましたが、予算委員会の都合上、本日は出席をいたしかねますから、御質疑はこの両大臣の分を除いて御留保の上で御質問を願いたいと存じます。まず森山君。
  3. 森山欽司

    森山委員 昨日倉石委員質疑に対し、政府本法制定理由といたしまして昨年の電産、炭労両・ストの結果であるというようなことを言われたのであります。そこで昨年の電産、炭労の二大スト性格をどういうふうに見ているかということを、昨日官房長官に尋ねましたところ、官房長官は、これは経済ストである、こういう答弁でありました。ところが労働政務次官は、そうじやない、経済ストであると同時に政治スト性格も持つておるということを言われた。御両者の間に食い違いがあつたのでありますが、官房長官は急いで席を立たれましたので、それを追究しないままに、きようの委員会になりました。そこであらためて労働大臣に対して、昨年の二大スト性格をいかに見ておるか、伺いたいと思います。
  4. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 昨日、お答えをどういうふうに申し上げたか、まだ私は正確に聞いてはおりませんが、大体経済ストであつたことは、これは間違いないのですが、その中に政治的の意味がうかがわれるという程度には私も考えております。
  5. 森山欽司

    森山委員 経済ストがやはり主あつつた、そうして政治的な目的がうかがわれる、こういうことでございますか、もう一度会念を押しておきます。
  6. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 さようであります。
  7. 森山欽司

    森山委員 それでは政治的目的がうかがわれるというのは、どんな目的だとあなた方は理解しておられますか。
  8. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 私の考えておりましたところでは、政治的の意味がきわめて明確に現われておるとまでは申しませんが、他のストとも連繋を仕組むような気持で、政治的な意味が私どもから見てもうかがわれる節があつたという程度考えておるのであります。これが明らかに政治的のストであつたとまでは私は考えておりません。
  9. 森山欽司

    森山委員 他のストとの関連があつたから政治ストであるのか。あるいは他のストとの関連において政治的目的がうかがわれるとするならば、それは一体どういう政治的な目的をあなた方はうかがつたのであるか、伺いたい。
  10. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 どういう目的という点に至つては、私の方ではただそういうふうに政治的の意味を持つているとうかがわれるというだけでありまして、別にこれこれの目的を持つてつたと、はつきり判断をしているわけではございません。
  11. 森山欽司

    森山委員 政府労働組合に対する見方はつきりする意味におきまして、私は必要だと思いますので、くどいようでありますが、政治的な意味というものの内容をもう少しこの際鮮明になさつたらいかがかと思います。すでに吉田内閣はこの国会施政方針演説において、岡崎外務大臣中立論議に対して相当明確な態度を示しております。ああいうような態度と同じような考え方から行けば、今日の労働組合行き方に対する明確な批判もできるであろうし、またただいま議題となつておる政治目的とは何ぞや、あるいは政治的意味とは何ぞやというように追究された場合に、何だか漠然としたぼやつとしたようなお答えしかできないことはおかしいと思いますが、この際ひとつ大臣から政治的意味内容について、御説明をお願いいたしたい。
  12. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 総評立場から参りますれば、給与の関係における争議あるいは電気石炭における争議、そういうものと一連のつながりを特つておる。あるいは政府そのものに対する何らかの考え方もあつたでありましようし、また総評系統政治に関する力をはつきり現わそうとした点もあつたでございましよう。そういう意味で私は政治的の意味がうかがわれると申し上げたのであります。
  13. 森山欽司

    森山委員 総評関係の力をはつきり見せようとする向きがあつたから政治的な動きとおつしやるのですか。
  14. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 大体そういうふうなことであります。
  15. 森山欽司

    森山委員 労働組合がその労働運動といたしましてその力を見せようとすることは、私は何らさしつかえないと思う。しかるに総評がその力を見せようとしたことが政治的である、あるいはいけないとおつしやるならば、どこがいけないのだか、もう少しその辺をはつきり伺いたい。
  16. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 もちろん労働運動としての意味もありましようし、他の意味もそこに私は推察できるという意味で申し上げたのであります。
  17. 森山欽司

    森山委員 他の意味とはどういう意味であるか、伺いたい。
  18. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 明確に私が、こういうことを意図しておつたというところまで推測いたして申し上げたくないのであります。この辺で御了承願いたいと思います。
  19. 森山欽司

    森山委員 一国の労働行政をあずかる労働大臣として、その立場をきわめてはつきり出して、私はさしつかえないと思うのであります。申したくないのか、申すだけ勉強していないのか、どちらかひとつはつきりしていただきたい。
  20. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 もし私が勉強が足りぬと御推定いただければ、それでもやむを得ないと思います。
  21. 森山欽司

    森山委員 私は勉強が足りないのではないと思います。あなたはよく勉強しておられると思うのでありまして、その点でもう少し誠意ある、たとえば外交方針演説における岡崎外務大臣のごときはつきりした線をなぜあなたはこの際言うことができないのか。
  22. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 私はやはり勉強が足りませんから、明確には申し上げ得るようなところまで参つておらないわけであります。
  23. 森山欽司

    森山委員 労働大臣は、驚くべきことに、私は勉強が足りないから答えられない、こう言うのですが、一体そういう大臣に、この労働間融に対する質疑をしていいのかどうか、いささか私は疑念を感ずるのであります。一体委員長は、今の労働大臣お答えで満足するかどうか、ひとつあなたの一所見を伺いたい。
  24. 田中伊三次

    田中委員長 森山君に申し上げますが、労働大にはお聞きの通り、劈頭申しましたように、推測をしておるといろ程度でありまして、具体的にこういう動きがあると認定する秘度にまでは行つていないとこういうのでありますから、具体的にどうだ、こうだと質問をなさつても、答えができないのがほんとうではないか、こう考えますから、労働大臣質疑は次の項目に関してしていただきたいと思います。
  25. 森山欽司

    森山委員 それでは角度をかえて御質問申し上げます。電産、炭労ズトを契機として、これに対する総評指導に対して全繊維等単産から批判が下されました。どういう批判があつたか、そしてそれに対してあなたはどういうお感じを持つたか伺いたい。これも勉強していないから答えられないというのでは困るのでありまして、これは厳然たる事実であります。また、わが国の労働運動史上、見のがすことができない動きであります。
  26. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 全繊その他の四組合総評行き方について批判を下したということは、私も承つております。それは大体の骨子は、全般の争議を通して見て、これは労働争議行為として行き過ぎであるというふうな見方から、今後の労働組合運動はああいうやり方でないやり方で行くのがほんとうだというふうな意味のように承知いたしております。それで私は全繊その他の組合と私と同じ慮見だという意味で申し上げるのではありませんが、昨年の争議行き方行き過ぎであるという点は私もさように考えております。しかし全山繊がその他にどういうふうな意図を持つておるかということにつきましては、私はそこまでは立ち入りたくないと考えております。
  27. 森山欽司

    森山委員 それではこれらの四単産批判あるいはそれによつて結成された民労連では、すでに電産の一部、大きな意味電気産業労働組合の一部で、昨年の電気ストについて次のような批判はつきり言つておる。すなわち、総評幹部並びにこれにつながる左派幹部闘争意図は、平和四原則の上に立つて軍事予算を粉砕し、植民地化軍事基地化産業戦時体制化のコースを打破することなくして、低賃金を破ることができないという考え方が強い影響を与えており、名目は経済闘争であつても、実質的には権力闘争であり、このことが非現実的な貸金要求、団交の軽視、見境なきストの連打となつて現われたのであるという批判を、電気産業の中ですらしておる組合もあるのであります。私は、先般のスト政治的な意味があるということを大臣も承認されたので、政治的な意味内容伺つたところが、曖昧模糊としておる。その曖昧模糊としておる理由ほ、私は勉強していないから答えられない、こう言つているのだが、現に広い意味電気産業組合の中においては、こういう批判が現に現われておる。こういう批判については、あなたはどうお考えになつているか。
  28. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいまも申し上げましたように、昨年のスト行き過ぎであつた考えておるということは、私、申し上げましたが、組合内部意見のいろいろの違いだとか、あるいは総評の中の違い方ということについては私は深く立ち入つて申し上げたくない、かように申し上げたわけであります。
  29. 森山欽司

    森山委員 そうすると今度のいわゆるスト制限法立法の趣旨は、経済闘争行き過ぎたからということであつて政治的意図があつたという意味ではないのでありますか。
  30. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 経済闘争政治的意図ということは別といたしましても、その行為そのものについては行き過ぎを感じたので—ことに大体今度規制をしようといたしますところは、従来の違法性あり、あるいは妥当を欠くと思われた限度のものでありまして、これを明らかに規定することがこの際必要である、かように考えた。こういう意味提案したのでありす。
  31. 森山欽司

    森山委員 だから、私のお伺いしたのは、もちろんその行為行き過ぎだという批判か世の多くの支持を受けておるということは知つておる。しかしながら、そういうような行き過ぎが通る裏には、組合闘争方針といろものがあるのではないか。そういう闘争方針について、政府態度というものはやはりはつきり立つていなければならぬ。単に現象的なこれがよい悪いということだけでは、これは根本的解決にはならない。やはりそういう行為が出て来る裏には、組合行動方針というものがある。そういう方針に対して、政府の腹ははつきりきまつておるのかどうか、どういう見方をしておるのかを聞いておる。大臣は不勉強答えられないというのでは、どうにもなりませんが、言葉をかえていうならば、あなた、方の政策というものは、ここにたるがあつて、しかもそのたるは古いたるであります。中の酒もろくな酒が入つておらないが、穴があいておるのでさつとふたをする。しかしすでに腐つておるから、またこちらに穴があく、そこをまたふさいで行くというような、きわめてその場限りの政策であるということを自分の答弁において告白しておる。いかがですか。
  32. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 あるいは考え方によりましては、もう少し広く、ただいまお話の中にありましたように、その闘争方針というものを対象にして考える必要もあるのかもしれませんが、私どもが今度考えたのは、なお今後の行き方自制と良識を期待いたしたいという意味で、現に昨年行われたるストライキに現われた、最も国民に害を及ぼす点を規制いたしたい、こういう意味で今回の提案をいたしたのであります。お話の中にありましたように、全体的な闘争方針そのものに対してただちに規制を加えるというようなことは、まだ考えていないのであります。
  33. 森山欽司

    森山委員 私は全体的な闘争方針規制を加えるという意味がわかりません。しかし、少くともこういう法律をつくる根拠には、組合指導方針というものがあり、この指導方針性格というものがある。こういう性格に対してわれわれはどう考えて行くかという基本的な考え方がなければならぬ。そういう基本的な考え方の上に立つてこの法律が制定されておるのではなかろうかと思つて伺つたのでありますが、先ほど来の、大臣の御答弁によると、遺憾ながらそういう基本的思想は何もない。現象的、目先の問題としてのとめる、とめないというようなことでは、きわめて恣意的じやないか。もしそうだとすれば、何か根本的な考え方があつて、その考え方の上に立つて、これはいいのだ、これは悪いのだということが出て来なければならぬじやないか、こう思つておる。だから、私は労働組合行き方についての大臣の御所見を承つたのですが、どうもはつきりしない。こういう問題は、非常に重要問題だと思うので、大臣も、私は不勉強だから知らないとか、そういうことを言われないで、もう少し率直にあなた方の思想的立場をこの際鮮明にすることが必要ではないでようか。また現在の労働運動に対するあなた方の立場を明確にすることが必要なのではないでしようか。あなたは不勉強だから知らないと言うが、自由党はテイス・インテリが多い。大臣もそうかもしれません、あるいはそうじやないかもしれないけれども、しかしともかく、私は不勉強で知らないから答弁ができぬということでなくして、現に組合内部の方からこういうふうに明確な批判が起きつつあるときに、政府態度が実に荘漠として、何を言つておるかわからない。無知表明であるか、不誠意の表明であります。そういうことでは困るので、やはり大臣はそういう考え方基本を明確に示していただくことが、私は必要であると思います。
  34. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいまも申し上げたつもりでありますが、根本的と申しましようか、現在の総評等行き方について、はつきりした線で何かの方策を講じたらどうかという意味もお含みのようでありましたが……。
  35. 森山欽司

    森山委員 そういうことはない、私は何もサゼッションしたのではない、政府認識態度批判をさつきから聞いておるのです。私の方から何をしてくれとか、何らの提案も含んでおりません。
  36. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 そういう意味を含みました御質問かと思いました、こう申し上げたのでありますが、その意味については、先ほども申し上げたように、私どもは現在において行き過ぎであると考えるところがありましても、なるべく自主、自制、良識ある行き方でやつてもらうことを期待しておるのであつて、すべてがよろしいと認めておる意味ではありませんが、なるべくこちらから押えない行き方で、その組合が健全にに発達して行くということを望んでおるのであります。ただ昨年の争議状況から見て、この点だけはさしおきがたいという点だけを今回の案として規制案を出したのであります。こういうように申し上げたつもりでおります。
  37. 森山欽司

    森山委員 どうも議論がいつも同じところをまわつているので恐縮でありますが、昨年のストの結果の思わしくない事態に対して、今回の立法がなされたという点は、私どもは決してわからないことはない。しかし、それでは昨年のストがなぜ起きたかということです。ストが特つている性格、たとえば経済スト的性格もあるでありましようし、批判するごとき政治スト性格もあるであろう。そうして政治的スト性格があるとすれば、どういう性格を持つていると政府認識しておるか。そうしてある種の性格内容を持つておるならば、これに対してどういう態度をとるのであるかということをはつきりさせることが必要ではないか。これはさしつかえないと思うのであります。現に外交演説で、岡崎外務大臣は本会議場において、はつきり中立論と対立したのです。内閣の一方においては明確に線を打出しておきながら、労働行政でなぜ出さない。あなた方は無思想じやないと思う、やはり思想はあるのです。そういう思想というのを、こういう委員会の席上で率直に吐露されるということは、今’後の審議の土において必要じやないか、それが常道じやないかと思う。それを重ねてひとつお伺いいたしたいのであります。
  38. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 私が申し上げると、また自然繰返すようになつて、お言葉にそむくようになるかもしれません。何か昨日政務次官が申し上げたことがきつかけのようでありますので、政務次官から、もう一度その意味でここで言つていただくことにいたします。
  39. 福田一

    福田政府委員 森山委員の御質問は、昨年のスト経済ストであると同時に、政治的スト性格を帯びておるものと考える、これに一対して政府はいかなる措置をとらんとしておるのか、その根本を述べてみよ、こういう御意見だと考えるのでありますが、政府としましては、この政治的な意味を含んでおつたことは認めますけれども、しかしながら、これらについては、現在のところにおいては、今の治安関係法律その他の法律をもつて取締れば、十分対処し得ると考えておるのであります。従つて経済面関係において、今回のこの法律によつて規制しよう、こういう考えでございます。しかしながらこの問題を放置していいと考えておるのではないのでありまして、治安、特に政治的関係スト動きを見た上で、また善処すべきものであるとは考えておりますが、現在のところにおいて、たとえばそういうものを全部取締るというような対象の法案、あるいは何らかのそういう法律的措置を講ずる必要があるとまでは断定をいたしておらないわけでございます。
  40. 森山欽司

    森山委員 今のあなたのお答えは私の聞かんとすることといささか違うのでありまして、要するに昨年電産、炭労の二大ストが起きた。この二つのストによつて現実国民被害を受けた。その被害を今後起らないようにするために—官房長官予防的措置という言葉を使われましたが、起らないようにするために今回の立法をなされたといこうのであります。そこでその二大ストというものをどういうような性格を持つておるかということを私は伺つておる。そうすると、繰返すようでありますが、官房長官経済ストだと言つた。そこであなたはそばにおられて、いや政治的性格もあるのだと言われて、二人の間の意見が食い違つた。そこでそれを追究しようと思つたが、官房長官予算総会に急がれると言われたのできように延ばした。それでは政治的性格とはどんな性格なんだと、私は先ほど戸塚労働大臣に伺つておるのですが、一向要領を得ない。その政治的性格内容を伺いたい。そして現に労働組合内部にも四単産、さらに引継いた民労連の結成というような形、またこれらの組合に現に加入はしておらないけれども、たとえば中部電力労働組合本部あたり声明書その他一連動きが、すでに電気産業内部に起りつつある。そして現実総評並びにこの指導によるところの電産の従来の行き方は、これこれの政策を持つてつて行き過ぎであるということを内部的に今批判しておる状況なんです。そういうときに、政府は一体従来のスト性格をどういうふうにこれを把握し、どういうふうに批判をしておるか、さらには、現に組合内に起りつつあるところのこれらの批判に対して、どういう態度をとるのかということを伺つておるのだが、一向はつきりした態度が出て来ません。組合内部批判組合内部の問題だからわしは知らぬ、それはいいかもしれません。しかしながら総評指導するところのこれにつながるいわゆる左派幹部の電産あるいは炭労動き、これらの動きについて、今の吉田内閣は確固たる考え方を持つておらない。認識並びに批判というものがない。ただ目前のこういう悪いことが起きたからこれはとめるのだ。いい、悪いの兼準というものは確かにあるわけです。公共福祉とかいう憲法論ではなくして、もう少し政治的な香りのあるところの批判的見地があるわけです。この吉田内閣労働政策基本的、政治的性格を私は伺つておるのだが、労働大臣ほお答えにならない。お答えにならない理由は、私は知らないからだという。無知表明しておる。こういう大臣日本労働政策はまかせられないと思う。私ははなはだ不満であります。少くもこれは労働委員会に対する侮辱です。もし日本国会というものをまじめに考え委員会審議というものを真剣に考えるならば、ただいまのごとき労働大臣の御答弁というものは、日本の将来にとつて私はためにならないと思う。もう少しこれは明確な認識と明確な批判というものを、この際言われてもいいのではないか。だから、私は一例として先ほど申し上げたのです。本会議における外交演説岡崎外務大臣は、いい、悪いは別として、一個の立場はつきり表明した。ああいう立場をなぜあなた方は表明できないのか。労働大臣勉強していないなら、政務次官がかはつてお答えください。
  41. 福田一

    福田政府委員 ただいま、私の答弁からこの問題が出ておることが明瞭になりましたので、実はまことに恐縮でございます。昨日森山さんの御質問がございましたときに、最初の御質問に対して、私が質問の趣意が明瞭でなかつたために、経済闘争であるということを申し上げたのでありますが、その後私は、これに政治的な闘争が加味されておるのだということを、実はお答えをいたしたのであります。その最初の私の答弁に対して官房長官が、一応政務次官の言うことに同意をすると言われたわけでありますけれども、その意味は、最初この問題の起きたときは純然たる経済闘争であつたけれども、その後共産党あるいはその他の思想関係のものも入り、また一部においては、当時の政治情勢からいたしまして、吉田内閣をこの争議によつて倒閣しようという動きも加わつてつたことは事実でありますが、争議全体を把握いたしますれば、やはりその最高潮に達したときにおいても、七割ないし八割の中心のものはやはり経済闘争であつた。それに二割ぐらいのそういうような政治的性格が加わつてつたと私たちは把握しておつた。そこで私は、その意味において政治的意図が含まれておるということが追加いたしたわけであります。そこで、今度はそれに対する対策というお考えでございますが、この経済闘争の面におきましては、もちろん労働者団結権というものは十分これを認めなければならないことは、われわれもこれを了承いたしておるのでありますけれども公共福祉を擁護するという建前からいえば、このような規制法律を出して、何がいけないかということを明瞭にいたしたいというのがこの法律であり、一方この政治的な両における政治スト的な性格につきましては、これを取締るといつても、政治ストのうちにはいろいろある。たとえば、共産党でありましたならば、これは政府を転覆するばかりでなく、日本社会秩序を乱そうというような考えがあるのでありますが、これは破防法その他のものがございます。またその他の、単に内閣を転覆するというような意味だけに使われたものであるとすれば、これはまたほかに逸脱した行為があれば、現在の法律で一応取締り得ると考えております。そこでそういうような意味にこのストというものが使われてはいけないのだということについては、私は同感はいたしますけれども、もしそれを取締るような法規をつくつた考えますと、それは要するにストの行動というか、労働者の権利も、また良識のある、まじめな意味経済ストをやつておる人までも、非常に制限してしまう。そういうストの権利までも制限するということになつて、かえつて行過ぎになるのではないか。むしろ組合の良識に基いて、組合指導者の良識にまつて、そしてまた社会の批判のもとに組合が健全に発展して行くように願うのであります。スト自体は、経営者と労働者がお互いによく話合つた上で問題が解決されて行くというふうにして、労資関係を調整して行くのが一番いい方法である。このように考えておりますので、その見地から、ただいま申しました経済面関係であつて、しかも国民に非常な影響を与えた面だけを取上げまして、そうして今回の法律を出した、こういう気持でございます。
  42. 森山欽司

    森山委員 政務次官の御答弁は、私が伺おうとする点については、遺憾ながらお答えになつておらないのであります。私は先ほど来申し上げておるように、昨年のこの二大ストといわれた電産、炭労ストが、政治ストといわれ、また政治的意味を持つておるというならば、その政治ストとか政治的意味を持つておるといわれるその内容は何であるかということを伺つておる。それと吉田内閣基本政策、すなわち外交問題に対する態度等との関連がどいうふうになつているか、伺いたいと思つてつたのであります。これについては、たとえば労働大臣は首を傾けられたから申し上げますが、電産内部ではこう批判した。平和四原則の上に立つて軍事予産”を粉砕し、植民地化軍事基地化産業戦時体制化のコースを打破することなくして、低賃金を破ることはできないという考え方が強い影響を与えており、名目は経済闘争であつても、実質的には権力闘争であり、このことが非現実的な賞金要求、団交の軽視、見境なきストの連打となつて現われたのである、という批判内部でもしておるのです。ですから組合内部でも起りつつあるような一つの批判、それと通ずるようなつつこんだ批判、それは吉田内閣基本政策と触れるものであると思うのです。こういうようなことをお考えになつてそういう問題にぶつかつておるのかと思つたところが、そうではなくて、ただ国民が困つたから、その困つた面だけをその場しのぎに押えて行くという点以上、私は何ものも先ほどの御返事によつて受取ることができない。従つて吉田内閣労働政策というものは思想がない、無思想であります。これは大臣政務次官といえどもお認めにならざるを得ないと思う。なぜならば、それについてのあなた方の一片の御返事さえ、ここにおいて承つておらないのでありますから、御両者とも御異議はないと思うのでありますが、いかがでありますか。
  43. 田中伊三次

    田中委員長 委員長から政府側に申し上げますが、この質問は非常に大事な質問だと委員長は思う。同じごとを何度も言つてつては、この特急で審議をしなければならぬときに困るので、私から申し上げますが、この御質問の趣旨は、何度も言うておられるように、ストのよつてたるところの内容ストを起した意図というものについて、政治的なものがあるのか、経済的なものがあるのか、それがわかつておるのか、こういう趣旨なのです。そういうことは、わからぬのならわからぬ、わかつておるなら、こういう意図があるものと推定されると、責任をもつて推定の内容が言えるものなら言うがよし、言えないものなら言えないでよし、時間がかかるから、その点をはつきりお答えください。
  44. 福田一

    福田政府委員 森山さんの御質問に対しましては、組合内部にそういう批判があつたり、また争議を起す意図においてそういうものが若干加わつてつたかどうかということについては、これはわれわれ政府の側、またたとえば党としても、自由党とかなんとかいうものから見て、こういうことがあるとい、うように人の意思をはつきり把握することはできないだろうと思います。これはお認め願えると思う。従つてそういうことも研究をいたしておかなければならない。その原因並びにそれによつて起る現象というものをはつきり把握するということは必要と思います。われわれとしてもそれは努めておりますけれども、しかしそのことと、われわれがそういうものの上に立つての国策全体から見た労働政策を持つておらない、こういうふうに断定されましても、ちよつとこれは議論になるかもしれませんけれども、わからないといいますか、そういう面があると思います。私たちとしての労働政策としては、労資双方がお互いに納得して—その納得の意味の中には、世界情勢も含まれましようし、日本の経済情勢も含まれ、また日本政治問題も含まれた上で、労使双方が納得して、そうして協調的な態度でやつて行かれるのが一番いいのだという建前に基いて、労使関係を調整して行きたいという方針を持つておるわけでございます。でありますから、政治的な性格が一部ありといたしましても、それについては十分研究はいたしておくべきであるが、その問題を取上げてここで何らかの対策を考えるまでにはまだ至つておらない、こういう認識を持つておるわけであります。
  45. 森山欽司

    森山委員 委員長は今の答弁で何かおわかりになりましたか。私は不幸にして頭が悪くて、今の答弁ではちつともわからない。依然として、これは政治的ストという性格、これに対しての認識批判というものについて、何らお答えがなかつたように私は考えておるのであります。その点は委員長どうでしよう。
  46. 田中伊三次

    田中委員長 森山君に申し上げます。これは私がいろいろお答えすべき筋合いのものではありませんが、やはり委員長は、質疑応答の内用は一定の整理をする非常に大事な仕事がありますので、その点から申し上げますと、争議行為というものは、現実ストという行為があつたのだ、その行為はいかなる意図によつて行われたかということによつて争議行為というものの性格はきまるわけです。政治的意図があれば、政治的な性格を持つわけです。経済的意図があれば、経済的な性格を持つわけです。そこで意図いかんという問題になつておりますが、一応意図は、そういうことはつかめるけれども、画然と申し上げるに至るようにキヤッチできない。言葉はありませんが、争議行為がなかなか巧妙をきわめておるので、なかなかその意図はつかめるものじやない、ここにおいて意図はどういうものだということは言えない、こう言つておる。それ以上は追究をされても時間がかかるのみだと思う。それから政府答えは、言葉はたいへんもじもじしておるが、要ははつきりしておると思う。わからないというのです。ほのめかしておるが、わからないというのですから、角度をかえて御質疑を願います。
  47. 森山欽司

    森山委員 私は労働省の事務官僚の方々の御返事なら、今の程度で何ら異序はなかつたのであります。しかし、戸塚労働大臣福田政務次官も、ともに衆議院議員であり、政治家であるので、政治的感覚はお持ちであろうと思つたし、一定の党派的立場をお持ちになり、しかも政府の責任あるお立場に立つておられる以上、政治的な御見解を伺うことができると思つたのであります。遺憾ながら、不幸にしてそれができないのであります。委員長のお言葉もありますから、この問題についての私の今回の質問は、一応これでやめておきますけれども、ただこの私の質疑を通じて、私だけでなく、自由党の諸君、あるいは他の社会党の諸君等も、おそらく自由党の労働政策基本には思想がないのではないか、無思想ではないか、勉強してないのではないか。先ほど労働大臣は、私はよく勉強してないのでわからないと言われたが、まことにこれは寒心すべき労働政策の担当者であると私は思うのであります。私は野党の立場から、あなた方を単に罵倒すれば済むというのではないのであります。日本労働政策にもう少し何か中心になる骨がほしい。そうして、やることももう少し抜本的なものでなければならぬ、もつと網羅的なものでなければならぬ。場当りの性格をここにはつきり出しております。しかしこのことはあとにも関連いたしますから、一応打切ります。  そこで、もう一つだけあらためてお伺いしておきますが、そういうような政治内容はもちろんですが、政治的なストが起きた場合、たとえばこの法案に対する反対ストというのが、もし電産、炭労で起きた場合には、政府はどういう御措置をとられるつもりであるか、お伺いいたしたい。なお仮定の問題にはお答えできないということは、ひとつやめていただきたい。もつと誠意を持つてこの問題は考えなければいけない。
  48. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 やめていただきたいと仰せられましたが、やはりそれ以上にはお答えはできないと思います。
  49. 森山欽司

    森山委員 仮定の問題に対しては答えられないといいましても、きようは炭労の大会の二日目であります。きのうどういう議論が出たか、私は不幸にして聞いておりません。きようも大いに議論されることでありましよう。あるいは従来のごとく電産、炭労の両組合とも何ら反省をせず、さらに従来の方針を進めるということになりますか、あるいは内部に自己批判が起きて、しかもこれが大衆的に成長する萌芽が見られるかもわかりませんが、しかし既定方針で行つて、何らかのスト行為が起きた場合—これは従来の一般に出ておる線であります。これは決して単なる仮定の問題じやない、電産、炭労の現在の幹部の既定方針です。このままでさらに抗議ストというようなものが起きた場合、労働省はどうされるか。さらに政治スト一般について規制するとすれば、それに対してどういうお考えを持つておるか、承りたい。労働大臣、これは仮定の問題じやありませんよ。抗議スト的な動きをやるということを言つておりますから、これは何ら仮定の問題じやないと思う。自分が答えられないと、仮定の問題だからとかなんとかいろいろ理由をつける。先ほどは不勉強だからといつて、私が伺つておることについてお答えにならない。今度は仮定の問題だと言う。これは理由にならない。国会委員会は協力してこの問題を来月の十日までに上げるように努力するということを申しておるのですから、その間ほおかむりで過すというのでは、私は政治的良心がないと思う。お答えを願いたい。
  50. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいま申し上げましたのは、仮定の問題はどういうふうな形で起きるかわからぬので、お答えできないと申し上げたのですが、これが政治ストでありますれば、正当な争議行為というような考えで見るわけに参りません。自然労働法上の保護が与えられないような場合があるかもしれません。起きた形によつて考えなければならぬと思います。
  51. 森山欽司

    森山委員 政治ストの場合には労働法上の保護が与えられない、起きた現実の態様において考えなければならぬとおつしやるのですが、前から大部分のことは違法だということを政府は言つておられた。きのうの答弁を伺いますと、この法案自体も確認的意味を持つて、創設的意味を持つことは少いと思う。そういう観点から見ると、将来の進み方によつては、政治スト取締法というものをやるというようなお考えもあるわけでありますか。
  52. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 またおしかりを受けるかもしれませんが、事態の進み方によつて考えて参らなければならぬと思います。
  53. 森山欽司

    森山委員 今の答弁は、私は不満でありますが、時間の関係もありますから、次の問題に移りたいと思います。  今回の立法手続について、非常に非難がある。特に電産例では次のようなことを言つておる。「立法、手続について慎重審議することなく、形式的公聴会をもつてただちに国会に上程せんとしている。と言つておるのです。またこれはすでに上程したのであります。そういうような電産側の非難、これはもちろん取締られる側でありますから、非難するのは当然でありますけれども、やはりこの非難の中には聞くべきしものがあると思う。従来の労働立法については、政府は大部分の場合、何らかの形の審議会—これはそのとき必要ならそのとき、あるいは常設的な機関によつてつておるようであります。ところが今回のものについては、それをやらないのです。案をつくつておいて、そして、公聴会というもので卒然としてやつたわけです。これは従来の立法と比べますと、私は非常に問題があると思うのです。政府は一体どういうお考えを持つておるか。私は率直に申し上げまして、電産の従来の指導については、決してこれに賛意を表するものじやない。けれども、それらの諸君が今日世の中に発表するところの抗議の中に聞くべきものがおれば聞かなければならないと思う。そういう観点から見ると、立法手続について慎重審議することなく、形式的公聴会を持つて、ただちに国会に上程したということについては、私は理由があると思います。そこで政府のこれに対する御見解を承りたい。
  54. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 従来の立法その他の場合に、審議会を設けて、労使あるいは公益代表というような各方面の権威の意見を聞いた、こういうやり方があつたことは承知いたしております。しかしながら、このたびの案はそうした労使の間の調整についての複雑な問題ではありませんので、きわめて簡明な問題でありますし、ことに昨年の経験から、第三者つまり国民被害の大きいこと、また将来についても脅威あることを主眼といたしまして立案いたしたのでありますので、特に公聴会を開いて各方面の代表的の意見を聞くことが最も必要である、かように考えて公聴会を開いたのであります。そういう煮味で、審議会は開かずに公聴会だけにいたしたのであります。
  55. 森山欽司

    森山委員 これは従来の例からすれば異例であるということは、大臣お認めになりますか。
  56. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 異例というよりは、むしろ法律内容によつて考えたと申し上げた方がよいのではないかと思います。
  57. 森山欽司

    森山委員 異例というよりは法律内容だと言われるのですが、なるほどこれは一般国民関係があることは間違いない。しかし労使双方にとつても重大な関係があるのです。従つて、当面最も影響するのは電産じやないかと思います。これらの諸君が、慎重審議することなくと言うことは、理由があるんじやないですか。一体なぜ政府は、従来のような労働慣行、と言つては語弊がありますが、今までやられて来たやり方をとらないで、ただちに法案をつくつて、そうして形式的公聴会を持つて—一行の三分の一直したくらいですから、これはまつたく形式的公聴会といつていい。そして国会に上程した。一体そういうような従来の方式をとるだけのひまがなかつたのかどうか、伺いたい。
  58. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ひまがなかつたからとらなかつたのではなくて、法の内容が労使の調整に関する点でなくて、審議会を開くには及ばない、かように考えたのであります。
  59. 森山欽司

    森山委員 労使の調整の問題でないとおつしやるけれども、なるほど国民一般大衆にも関係があるが、労使にも重大関係がある。これを法務府がおやりになるとか、ほかのところが治安立法としておやりになるならば、別のやり方があるかもしれない。労働省が労働問題としてお取上げになつた。それならば、なぜ従来のような方法をおとりにならなかつたかと聞いている。
  60. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 たびたび繰返すようで恐れ入りますが、公聴会には労使の代表皆入つてもらつて公述を願つたのであります。  なお、先ほど私申し足りなかつた点もありますが、従来数回法律の改正はありましたが、審議会を開いた場合と、公聴会のみでやつた場合と、前例は両方あるようであります。
  61. 森山欽司

    森山委員 次の質問に移りたいと思います。この法案が電気事業及び石炭鉱業に限つた点は、立法の形式として、労働立法というものを見ておつた人間からしますと、何かはだざわりが悪いのです。非常に奇異の感じを私は受けるのでありますが、一体こういう外国の立法例があるのかどうか。それからわが国においては、この種の問題についての判例はどうなつておるか、伺いたいと思います。
  62. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 外国の立法例というお尋ねでございますが、イギリスに共謀法及び財産保護法というのがあるわけであります。これはガスと水道の問題に規定しております。さらにまた一九一九年になりますと、電気だけについての争議権を禁止いたしております法律もあると承知いたしております。従いまして、イギリスにおきましては、やはり問題の起つたときに、その都度その事象を対象として立法をしているのではないだろうか、かように存じておる次第でございます。  それから判例と解釈のお尋ねでございますが、争議行為の解釈につきましては、最高裁の判決におきまして、労務、不提供のみに争議行為というものは限るべきものである、こういう判例がございます。そうした判例もあり、従来の公共事業令においても、労務不提供以上の積極的な行為行為を含むいわゆるスイッチ・オフというものは、違法なる争議行為である、こういう解釈をいたしておるわけであります。なお保安の問題につきましては、現行労調法三十六条並びに組合法第一条第二項の規定に基きまして、今日でも違法なるものと解釈し、数次にわたつて政府声明等も出されたいきさつがあるわけでございます。
  63. 森山欽司

    森山委員 伺うと、外国の立法というようなお話ですが、最初のイギリスのコンスピラシーの法律は、一八七五年、明治八年です。その次の法律は、一九一九年、大正八年です。今年は昭和何年か、ひとつお伺いいたしたい。—お伺いしなくても、これは昭和二十八年であろうかと思う。明治八年といいますと、その当時生れた人はここに一人もいない。今から何年前ですか、約百年近く前の法律を、イギリスでやつたからといつて二十世紀も後半に入つたわが国において、その法律に例があるなんというようなことは、私はおかしいと思う。あるいはまた、日本労働運動は明治八年クラスであるという御見解を政府がお持ちになつているかどうか、ひとつその辺も伺わなければならない。一九一九年すなわら大正八年—わが国の労働運動は、世界の大勢からいえば、大正八年くらいである、そういう御見解で行つているのかどうか。外国の立法例としてこの二つをあげられたが、一体そんな感じで考えておられるのかどうか。イギリスにおける当時の経済情勢と、今日の日本の経済情勢は一体同じかどうか。大分違うんじやないか。時代的に大きなずれがあるばかりでなく、かかる法律のできた背景も違うであろうし、また法律内容も今回の法律と趣を異にしているだろうと思う。そういう問題についての御見解を承わりたい。  いま一つ、判例によりますと、従来大体違法とされておつたようです。あらためてここに一体書く必要があるかどうか、そういう点についても御見解を承りたい。
  64. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 この法律ができたのが、一つは一八七五年であり、一つは一九一九年でありますが、この法律がその後なくなつたとは承知いたしておりませんので、現在でも生きておる法律だと私は承知いたしております。従いまして、日本労働組合運動が大正八年程度だという意味ではございません。この法律がそのときできて、現在でも生きておる法律であるということを申し上げたいわけでございます。それから判例等の問題、あるいは解釈等の問題は、私どもはスイッチ・オフ等は違法である、保安要員の引揚げも違法である、こういう解釈を下し、政府声明を出したこともあるのでありますが、先ほど来いろいろお話のありましたように、昨年の電産、炭労の経験にかんがみまして、この点だけは法律上明文をもつて明らかにしておくことが、公共福祉を守るために必要ではないだろうか、こういう観点からこの法律案提案になつたものと承知いたしております。
  65. 森山欽司

    森山委員 今の斎藤局長のお話でわかる通り、判例ですでに線は区切られておる。これをことさら立法されたわけですから、与党である倉石委員から、政府態度は軽率である、拙的なやり方であるときめつけられるのも、私は無理のないところであろうと思うのであります。  外国の立法例、判例等についての質問はこれで打切りまして、次に、きのう倉石委員政府に対する質疑によつて政府は必要があれば他の産業もやるぞというような御答弁をされた。それがけさのほとんど大部分の新聞に出ておるのであります。ところで、きのう私は官房長官に対してこういうような質問をした。もし電産、炭労の両組合が、もうこの種のストはやらないという平和宣言を発する、あるいはこういうことはやらないということを団体協約に入れるというようなことになつたら、政府はこういう法律をひつこめる意思があるかと聞いたが、答弁しない。一方においては、他の産業にも必要があればやるぞということを言つておきながら、これらの産業もやらないということがはつきりすれば、こういう法案はひつこめてもいいのだということを、なぜ言い切れないのか。ただ押える方ばかりに重点を置いている。こういう法律はなきに越したことはないのであります。これは政府も前々から言つておると思う。両産業がやらないという確固たる担保があれば、やらなくても済むのじやないか。電産、炭労の両組合といえども、やらないというはつきりした担保さえあれば、こういう法案は、政府は出さなくてもよろしいし、将来これはやめてもよろしいというだけの意思表示がなぜできないのか。この際政府の御見解を承りたいと思います。
  66. 福田一

    福田政府委員 昨日の答弁関連い出たしますので、私からちよつとお答えを申し上げますが、私たちは、ほかの公益事業についてこれをやる意思があるということを申し上げておらないことは、速記録を見ていただいてもわかる通りでございます。申し上げましたことは、組合の良識に基いて、昨秋行われましたような、非常に国民の生活をを脅威するような争議は起らないことを期待をいたしておる。しかし現実に起つた場合にはどうなるかということになつたならば、そのときにはその情勢を見た上でまた考慮する、こういうことを申し上げておるのであります。でありますから、新聞ではどういうふうにお書きになつておられるかしりませんけれども、私たちは将来の事態が起きたのを見て研究をするということを申し上げておるのでありまして、決して他産業にもそういう意図を持つておるということを、明らかに申したわけではございません。
  67. 森山欽司

    森山委員 それではけさの各新聞に出ておるところは、少し表現がどぎついということになるのですか。
  68. 福田一

    福田政府委員 さように了承いたしております。
  69. 森山欽司

    森山委員 それではあらためて伺いますが、炭労、電産の両組合が、何らかの形においてかかる争議行為に出ざることの担保があつた場合、政府は現在これをただちにひつこめるか、あるいは将来においてかかる法案をなくするというようなことを、そのときの情勢を見て研究するお気持があるかどうか、ひとつ伺いたい。
  70. 福田一

    福田政府委員 その御質問の通り、そのときの情勢を見て研究するつもりはございます。
  71. 森山欽司

    森山委員 そうすると、将来他の産業が加わることがあるかもしれないし、あるいは必要があれば、それと同じような程度においてこの法律を改廃することについて同じような熱意を持つておるというふうに了承してよろしゆうございますか。
  72. 福田一

    福田政府委員 先ほど申し上げた通りを繰返すのでございますけれども、そのときの情勢に応じて研究するつもりであります。その起り方いかんによりますから、そこのところは含んでお考えを願います。
  73. 森山欽司

    森山委員 そういたしますと、今炭労の大会を、やつておるのです。私はこういうような法律を出される場合に—労働組合というものは非常に四角四面なものでありまして、一面において大会というような最高機関の議決が非常に大きくものを言つて来るわけであります。もとより大会の議決をなすまでには、従来の組合指導者は活発な情宣活動をやる。その上での大会ですから、大体出て来る線は、最初から一つの既定の線に近いものが出て来るわけであります。しがしそれにいたしましても、前回の炭労、電産の両ストに対するところのはつきりした批判というものは、炭労の大会と電産の大会によつて組合員の大衆討議によつて結論が出て来るのではないか。今のところ、電産の内部あたりにはいろいろな批判があるようであります。炭労も、きのうあたり見ると大分ごたごたしておるようでありますが、そういうような結論を見てからこういうような法律を出された方が、政府立場としては慎重だつたということがいえるのではないでしようか、いかがです。
  74. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいまのお話の中で、目下炭労なり電産なりの組合内部において、いろいろな意見があるということは、私どもにもよくわかりますが、私どもは昨年の争議状況を見、あるいはその後の組合の—これは直接でないからわかりませんが、動き等をも考えて、現在のところでは、やはり規制を明らかにすることが、現在の社会情勢から最も適当である、こういうふうに判断をいたしたわけであります。ことに内容は、しばしば申し上げますように、従来すでに違法なり、あるいは不当なりと考えられておつた内容を盛つたものでありまして—また一つの考え方としては、もちろん他の組合についてもあることでありますから、そういう内容のものでも放任しておいて、自粛によつて起らないことが最も望ましいのでありますけれども、昨年からの情勢から考えては、この際この程度規制を加える必要があるというふうに考えておるのでございます。
  75. 森山欽司

    森山委員 確認的な質疑でございますが、要するにその種の産業平和を担保するに足るだけの兆候が見られない、こういう御認識でございますね。
  76. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 ただいままでのところは、その通りと存じます。
  77. 森山欽司

    森山委員 それでは次の質疑に移りますが、この両産業に限つたわけです。ところが第三条を見ますと、保安施設ということになりますから、事業により特殊性は多少違いますけれども、金属鉱山などは類似の場合がかなり出て来るように思うのですが、金属鉱山は入れてない。それは去年のストの体験にかんがみて言うのであつて、そのこと自体は私は異存はないのでありますが、何か電気石炭の一つの産業が、あもいうようなストが起きたから、この二つだけとめて行くというようなやり方、この中に吉田内閣労働政策性格を端的に表わしてはいないかと思う。きわめて場当りであるということです。とにかく根本的なものをつかないで、その場その場の手を打つておるというような性格がごこに現われておる。わが改進党は今までの自由党の労働政策をどういうように批判しておるかと申しますと、要するに「自由党内閣の無計画な自由経済政策と極めて古典的な労働感覚による、無為にして彌縫的な労働施策に基くものである」というふうに、従来の労働問題の原因の一因をあげておるのです。「彌縫的な労働施策」というのは当時何となく書いたのであるが、今度はまつたく彌縫的という感じがする。彌縫というのは、ほころびたところをつくろうのです。炭労、電産というほころびができたから、この二つをつくろつた。あとまた自分の責任もあつて、穴があいたらそこもつくろうだろう、こういうような感じを持つのですが、いかがでしようか。
  78. 福田一

    福田政府委員 大分森山さんに頭が悪いと言われるのですけれども、頭の悪いのが答弁してはおわかりにくいかもしれないが、やはり物事を直して行く場合に、一種の破損が起きたような場合に、一部もちよつとここのところを直しておいていいという場合もあるしそれを直すなら、いつそ大改造をやつてしまつたらいいという考えもあるでしようし、そこは政治をやつておる者の認識において、その責任においてやつております。ひとつそういう意味において……。(笑声)
  79. 森山欽司

    森山委員 これは笑い、ことじやなくて、現在日本をどう考えるかということです。講和条約が昨年の四月二十八日に発効たのですが、日本の自立経済態勢の確立ということは、目下の急務であります。労働政策においても、根本的施策を考えなければならない。もちろん労働政策自体は、それだけでは独立した労働政策ではないでありましよう。国の経済政策の全体との有機的関連においてものを考えなければならないことは事実であります。しかし独立後のわが国の労働問題というものを考えるときに、政府がこれに根本的に立ち向つて考えておるかどうかということになると、おそらく昨年の労働法改正の次に出て来た問題、すなわち実際的にはこれは独立後最初立法だといつてさしつかえない。この立法が電産、炭労に対する今回のスト制限法となつて現われた、こういうことは非常に私は情なく思う。まつたく彌縫的な、破れたところを単につくろうにすぎない。もつと日本の講和発効後における労働関係基本的に考え直さなければならぬ。そのためには、労使あるいは消費者その他の公益代表を網羅して、わが国の労働問題を抜本的かつ科学的に検討する。労働関係審議会というものをこの際政府考えて、労働問題に本格的に立ち向う考えはないか、伺つておきたい。先般本会議で、労働大臣は何かはつきりしない御返事があつたのですが、彌縫的でないということなら、この際本腰に取組むようなことをお考え願えないか。そういう点、もう少しはつきりした御意見を伺いたい、本会議と違いますから……。
  80. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 彌縫的というお話でありましたが、考え方はむしろ彌縫的というよりは、なるべく抑圧等のことはしたくないのが本旨なのです。であるけれども、この問題だけはさしおきがたいというので、この二つが昨年の実績によつて考えられたのであります。ただ順々にほころびるのをまつてつて行くというのではないのであります。なるべくならばこれさえも出さずに、労使の関係が自粛、良識で行つておればけつこうだ。それがあまりに対国民被害が大きい。ごとに重要な産業でありますので、この実績を見てこの点だけは……、こういうふうなつもりで立案いたしたのであります。本旨としては、だんだん規制して行こうという方に向うのではなくて、なるべくそうしたくないという方が本来の考え方だ、かように御子無いただきたいのであります。  なお、この基本的な考え方について、労使、公益の三者を集めた審議会でもつくつて根本的な労働対策を、あるいは組合対策を考えて行くということにつきましては、しごくごもつともな御意見と存じておりますし、なお今度のこの案が、私自身も法律としてあまりかつこうのよくないものであるということは、重々承知いたしております。また法律をつくる意味ではなくて、労使の関係について、日本の労働対策をどういうふうに持つて行くかということについては、ここでほんとう考えて行かなければならぬときであるとも考えておりますので、ただいまお話の、法律でどうこうというのでなくても、政策としてあるいは日本政治としてほんとうに進むべき道を……という点でこの審議会をつくることがいいのではないか。そしてどういうふうな行き方がいいかということについては、なお研究をしてみたい、かように本会議でもお答えを申し上げたつもりであります。
  81. 森山欽司

    森山委員 私の先ほど来の質問は、非常に好意ある質問なんであります。今麻生さんが言われましたように、自由党内閣が続く過程においてであります。もう間もなくあなた方はおしまいかもしれませんから、われわれの内閣になつてからやるプログラムもここでいささか公開しておかなければなりません。またその折は、あなた方の御協調を願わなければならぬ。そういう意味で、私はわが党の重光内閣労働政策の一端をここに公開しながら、好意ある質問を行いつつあるのであるということを御了解願いたいと思います。  きのうも私の質問ですが、私の言い方も少しまずかつたしするのでありますが、この法案が公共福祉を擁護するということは、よくわかるのでありますけれども公共福祉ということについて、電気のある事業場の一部のストということは起こらないものですかどうですか、伺いたい。
  82. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 電気事業の一部の停電ストという意味かと思いますが、私は一部のものも起り得ると思います。しかしながら、昨日もお答えがありましたように、かりに一部のものでありましても、瞬間にして相当広範囲なものに及び、さらにそれがまた直接とは申しませんが、ときによつては全国的に波及するおそれのあるものでもある。こういう電気事業の特殊性ということから考えて、公共福祉に反するものである、かように考えておるのであります。
  83. 森山欽司

    森山委員 公共福祉というのは、国民一般というふうなことを考えておるのではないでしようか。国民の一部分、きわめて小部分が影響を受ける停電ストもあり得るだろうと思う。そういうものも公共福祉ということになると公共福祉というのは非常に都合のいい概念にならないかと思うのですが、どうでしよう。
  84. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 昨日も官房長官、からお答えになりましたように、部分に対する全体という考え方で私どももおります。従いまして、先ほど御指摘のような、ちつぽけなというのでありますか、小さな発電所の一時発電停止というものがあつた場合にも、私は相当これは広範囲なものに及ぶと考えております。またこういうふうな、かりにそれが小範囲でありましても、ときにはやはり全送電系統というものに影響が及んで来るものだと私は考えております。これがやはり電気事業そのものから来る特殊性である、かように考えております。従いまして私どもといたしましては、公共福祉という概念を非常に広く広げるといつたような意味合いのものではなくして、最小限度の一般社会におけるそういう損害なり被害というものを除いて、一般社会の福利を増進せしめて行くのだ、こういう考え方から全般的に及び得るものであるならば、これもまた公共福祉に反するものだ、かように考えておるわけであります。
  85. 森山欽司

    森山委員 どうも今のお話を承つておると、全般的に波及するおそれがあるから、たということは、一体どういうわけですか。全般的に波及するおそれがない場合はどうするか。全般的に波及するおそれかない、きわめて地方的なる部分的なる停電スト、これも公共福祉に反するからといつてとめるということになると、従来の公共福祉というものの定義と、いささか食い違つては来ないかということです。そうすると、公共福祉というものは非常に融通無礙のものになつてしまうと思うが、どうですか。
  86. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 融通無礙には私ども考えておりませんので、結局目的と手段の相違がそこにあると思うのであります。ある一部のものに限定しよう、こういう目的でありましても、そうした行為によりまして、やはり全送電系統に影響を及ぼす、これはあり得る、かように考えておるものでございます。
  87. 森山欽司

    森山委員 そういうことがあり得るからといつて、そういうおそれがない場合だつてあり得ると思います。そういうおそれがない場合にストが禁止される。大体争議行為というものが、何らかの形において第三者に迷惑をかけることは、これは当然なんです。もし何らかの形における第三者の迷惑を全然認めないということならば、これはもうストは禁止しなければならない。ところが、きわめて軽微な、地方的な停電ストに対してとられるということになると、公共福祉という今回の立法の精神が立たなくなる。あなたはその場合、電気産業の特殊性としてこれが全般に波及するおそれがあるとおつしやるけれども、それはどうかと思うのです。電気産業の場合において、電気性格として—これはまた問題が多少違うかもしれませんけれども、たとえばある給電所なら給電所、変電所なら変電所、あるいは発電所なら発電所が職場放棄したところで、すぐよそから電気の融通がきくでしよう。そうすれば、何も全体には関係ないんですね。全体に関係がなくても、今度は法律関係するんでしよう。公共福祉がどこにありますか、お答え願いたい。
  88. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 先ほども申し上げましたように、一発電所の発電停止でありましても、ときには全送電系統に影響を及ぼす、これは私はあり得ると思います。かりにそれかないとした場合のいわゆる停電行為というものが、当事者と第三者との損害の均衡というものがそれでとれるかどうか、これは私は問題だと思います。かりに小部分でありましても、労使双方の受ける損害と第三者の受ける損害の間の均衡というものは、はなはだしく不均衡なものがあると私ども考えております。従つて目的と手段あるいは当事者と第三者の損害の不均衡というものを考えれば、私は公共福祉に反するものだ、かように考えます。
  89. 森山欽司

    森山委員 今の斎藤局長のお話は非常におかしい。地方的な停電ストがあつたとする。ところが電力は融通ができるのでしよう。地方的な小さな発電所のストは、ほとんど全体に対して影響がないと思います。その発電所の担当の地域としても、きわめて地方的な停電ストで終るかもしれないし、あるいは他から融通して来れば何でもないことになる。公共福祉というものをそれほどまでに高く掲げて行つたら、そういうものの通ずるところはスト禁止ということになるのです。これは重要な問題だから労働大臣に承りたい。
  90. 福田一

    福田政府委員 私たちは、電気の問題につきましては、公共事業令並びに電気ガス臨時措置に関する法律を見ていただいてもわかるように、公益事業として国民の日常生活になくてはならぬものであります。こういう観点から特に電気が重要であり、公益事業であることはおわかりになると思います。そういう意味で不当なスィッチ・オフをするというようなことによつて停電を起すということの違法であるということは、公益事業である以上は、そういうようにちやんと規定がしてある。そういう意味合いにおいて、これはもうすでに違法なものであるというふうにわれわれは考えております。ところが、今の御質問によりますと、そういう部分的なものは全般的に影響を及ぼさないということになりますと、これは電気の特殊性で及ぼす場合も、及ぼさない場合もあるでしよう。しかし電気の特殊性からいつて国民生活に非常に重大な関係を持つ食糧と同じような重要度を持つものは、どうしても正常な場合には供給しなければならないものだということから、公益事業に指定して、そういうことをしてはいけないということになつておりまして、その問題になりますと、前の公共事業会であるとか、あるいは電気ガス臨時措置法自体をもう一度検討して、これの改正まで考えて行かなければならない、こういうことに帰着するのではないかと思うのでありまして、お説のように一部分だけのストをやつた場合には、そう大した影響はないじやないかという考えもありますが、一部分ずつでも、全国でやると、かなり影響がある。その一部分の断定をどういうふうに下したならば、はたして国民に迷惑をかけないかということを考えて行きますと、やはり電気ガス臨時措置法にあるような制限的な措置をとらざるを得なくなると思います。これが電気の特殊性であり、公益事業に指定した意味であろうと思います。こういう意味で私たちは公共福祉を擁護するためには、一方においてやつてはいけないという意味はつきりさせたわけであります。
  91. 森山欽司

    森山委員 従来の例によると、スイッチ・オフは違法である、ウォーク・アウトは適法と認められていた。しかも憲法によれば労働の基本権を保障している。今回の法律にもありますように、公共福祉関係のないような事態を、今回の法律で縛るということは憲法違反ではありませんか。
  92. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 スイッチ・オフは御承知のように公共事業令で違法であります。それから職場放棄の問題でございます。これは主として給電指令所の職場放棄の問題でございますが、こうした行為というものは、スィッチ・オフによる停電と同じ効果を生ずるものであり、さらにまた、従来はこういう行為は、労使双方に与える損害よりも第三者に損害を与えるような職場放棄というものは、適当な争議行為とは私ども考えていなかつたわけであります。むしろ適当でない争議行為だと考えておつたわけであります。それがさらに昨年の、電産の争議によつて国民は非常に苦い経験を受け、それによつて社会通念上やはりこういう争議行為は適当ではない、不適当な争議行為であるという考えになつて来たと思つております。こういう社会通念に基いて、いわゆる公共福祉争議権の調和をはかつて、この不適当であるという争議行為を法文上においても明定化して行こうという考え方になつているわけでございます。
  93. 森山欽司

    森山委員 そういたしますと、あなたのお話お話でわかるのだが、公共福祉関係ない場合があり得るでしよう。その場合にも、今度の法雄で縛られてしまう、これは憲法違反ではないか。憲法で労働者団結権、団体行動権等を認めているのですが、憲法で保障する労働権の侵害にならないか。公共福祉関係のない場合があり得る。これでは公共福祉関係があろうとなかろうと、二条でもつてウォーク・アウトできない。ウォーク・アウトやつたつて公共福祉関係のない場合がある。これをどうするか聞くのです。これはきわめて少数の人かもれないけれども、やはり憲法の大原則に対する例外的措置でもあるのですから、例外的措置はできるだけ狭く解釈すべきである。救われる者は一人でも多く救いたい。憲法をかえれば別です。しかし、公共福祉を擁護するというこの法律案をしさいに検討して行くと、公共福祉に何ら関係のない被害者が現われて来る。これがこの法案の穴になつていないかどうか、この際労働大臣の御意見をお願いします。
  94. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 公共福祉関係ない場合ということが、ちよつと私にははつきりしないのでありますが、先ほどから斎藤局長から申し上げておりますように、今回規制しようとするところは、従来当然違法とされたもの、ないしは先ほどお話にありました給電指令所の職場放棄のごときは、むしろそれ以上の危険を伴うものであると考えられます。すべてが違法であつたもの、あるいは妥当性を欠くという範囲にとどめたものでありまして、そういう観点から規制をするという建前をとつておるのでありますから、その点は御了承を得たいと思います。
  95. 森山欽司

    森山委員 どうもわからないのです。昨年のような電産ストの場合はよくわかるのですが、しかし部分的なストがあつて、ある場合に影響がない、影響が非常に軽微である。たとえば現実に停電なんという事態は起らない、あるいは起きたところできわめて地方的な影響しかないというようなものがあり得るだろうということを伺つてみると、あり得ると、こういうのです。そういうものまで公共福祉というのか。今までの公共福祉というのは、もつと大きなものだつたのじやないのかということです。今までの公共福祉というわくの中に一体入るのですか、それを伺つておる。
  96. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 先ほど私が申し上げましたように、森山委員十分御承知の通り、電気というものは生産、消費に一瞬にして響いて行くものでありまして、そうした停電行為というものによつて、一部分でかりにその場合現実にとまつておりましても、まず一瞬にして広範囲に響くものであると私ども考えております。そこがすなわち電気事業の特殊性だと私ども考えております。一瞬にして広範囲に及び得るものであるならは—現実またそういうことがあり得ますので、そういうところをとめることは適当じやない、かように考えております。
  97. 森山欽司

    森山委員 私まだ非常に不満ですけれども関連質問の御希望もあるからきようはこれで質問を打切りますが、質問をあとに留保させてください。そして石田委員倉石委員から関連があるそうですから……。
  98. 田中伊三次

    田中委員長 関連質問はやらないことを原則とするという打合せをいたしましたが、短かい範囲でどうぞ……。
  99. 石田一松

    ○石田(一)委員 関連してちよつと労働大臣にお伺いしたいのですが、公共福祉を擁護するというこの法律の甘的で、経営者の利益をも合せて擁護することにならないか。要するに、公共福祉を守る前に経営者、資本家の利益を守らなければ、公共福祉は守れないことになる。その点についてはどうお考えか、この点であります。要するに、労働者争議を制限することによつて、資本家側の低賃金に押えつけるという一つの利益が出て来るというようなこと等で、私は公共福祉を守る前に守られるのが資本家、経営者の利益で、その後に公共福祉が守られる、こう思うのですが、この点はいかがですか。
  100. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 具体的に申しますと、今回法案にいたしまして組合争議行為方法規制いたす内容が、経営者の方を守るためにというふうには私ども考えておりません。経営者の方は、むしろ停電などありましても、第三者の受ける被害と比べて、経営者の被害はそう多いもののようには考えておらない。たびたび繰返すようでありますけれども、第三者の被害なり脅威なりを守るということが目的でありまして、対経営者の関係において組合争議行為規制する、こういうふうには全然考えておらないのであります。
  101. 石田一松

    ○石田(一)委員 質問の要点を大臣はぼかして答弁なさつておられる。私の言うのは、ももろん政府としては経営者を擁護しようとか、利益を守ろうとかいうお気持でこの法案を提出なさつたのではないということはよくわかるのです。よくわかりますが、実際に出された法案自体が法律となつて実施されるあかつきには、ただいま電気の例をおとりになりましたが、第三条の鉱山保安法に関係するところのストの制限、これによつては、少くとも一般大衆がこうむる、いわゆる公共福祉を守ろうとする前に、鉱山を所有しておるところの資本家の利益が擁護されなければ、公共福祉は守られない、私はこういうふうに考えるのですが、結局そういう目的ではなくても、その結果としては資本家、経営者の利益を守り、労働者の権利というものを少しでも剥奪制限する、こういうようになりはせぬか。
  102. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 炭鉱の例がお示しでありましたが、炭鉱につきましては、保安業務を守らなければならぬということは、すでに今まで鉱山保安法できまつておるのでありまして、それではそれほどはつきりしておるものをなぜ今回かように出したかという御疑念が起きることはごもつともでございますが、実は昨年の争議の際に、最後にあたつて保安要員の引揚げということを炭労側で決議をいたしました。すでにそういうことは違反であるものをなお行おうとする—これは私の言い過ぎになるかもしれませんが、保安要員を、かりに従来の例で大体炭鉱の平均で見ますと、二割くらいの保安要員がある。これをさらに一割に減ずるとか、それでも保安業務は守れるという行き方もある。その辺の解釈とか認定がむずかしくなるような場合もありはせぬか。そういう意味で、この保安業務に関する行き方はつきりときめることがこの際必要である。従来ならば、そういうところまでは当然組合側としても自粛して行かないだろうというふうに考えられておつたことが、非常にあいまいになつて来ておるので、その点を明らかにしておくことが必要であるという意味で、今回の第三条が加わつておるのでありまして、それがために、従来と比較して、特に資本家をというよりも、むしろ国なり、社会を守るという意味は多分にありますけれども、資本家を守るという意味は、この案においてはない。(「結果はそうなつている。」と呼ぶ者あり)ただ国を守るというその結果、また資本家も守られる、国民も守られる、みな守られることになるんじやないか。
  103. 石田一松

    ○石田(一)委員 私は資本家が守られるということだけ聞いておけばいい。
  104. 倉石忠雄

    倉石委員 簡単でありますが、どうも私は同僚諸君の御質問政府当局の御答弁を承つておりまして、ぴんと来ないのであります、昨日の私お尋ねに対して、今度単独立法されたこの法律案というものの内容は、すでに規定されておる既成の法律、たとえば労働関係調整法、公共事業令、鉱山保安法などによつても違法であるのだ。しかしながら、それかいろいろな凝義が生じたりなんかして紛争を生じたから、ここにまた新しく確認規定というような意味でやつたのだというようなことでございましたが、その通りでございますね。政府委員にお尋ねいたしますが、それならば、森山君のお尋ねの一部分である、公益に何らの関係のないストというようなものも、小さな部分的な電気産業の労働争議などについてはあり得るのではないか。しかしそれも、公益に対してたくさん有害であるかどうかということは別にして、とにかく既存の法律によつて規制されておる事柄は、その事柄が直接公益に関係あろうとなかろうと、これは違法であるのではないか。それを違法であるとかないとか、公益に関係があるとかないとかいうことを質疑応答をされているのを私は拝聴いたしておりまして、きのうからの政府当局の意思が明確に表示されていないように思う。その点さえはつきりしておれば、そのような議論は起きて来ない。労働大臣もしばしば新しく規制されるということをおつしやいますが、これは規制ではないので、すでに既存の法律によつても違法であるけれども、今度は確認規定を出したのだ、こういうことでありますから、その点をあくまでも明確にして答弁を願わないと、われわれは判断に苦しむ。どうぞ政府委員はその点を明確にしておいていただきたい。
  105. 戸塚九一郎

    戸塚国務大臣 お話のごとく、今まですでに法律によつて禁止された、あるいは違法であると思われたところが大体でありますけれども、今度正確に見て行きますと、たとえば今まで停車スト、電源ストは違法と考えられておつたのですが、給電司令所の職場放棄の問題はむしろあいまいであつたかもしれぬ。こんなことは当然のことだと考えられておつたのが実情ではないかと私は思う。そういう点に疑念があるといけないというので、今度はその分も含めて第三条に規定したわけでありまして、要するに違法と考えられておつたものをこの際明定した、かように考えられてけつこうではないかと思います。
  106. 田中伊三次

    田中委員長 次会は明後二日午前十時より開会するこことし、本日はこの程度で散会をいたします。     午後零時四十四分散会