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1952-12-02 第15回国会 衆議院 労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二日(火曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 田中伊三次君    理事 吉武 惠市君 理事 前田 種男君    理事 青野 武一君       麻生太賀吉君    伊能繁次郎君       今松 治郎君    大平 正芳君       松山 義雄君    持永 義夫君       菅  太郎君    森山 欽司君       春日 一幸君    菊川 忠雄君       矢尾喜三郎君    山口丈太郎君       山花 秀雄君    石野 久男君  出席国務大臣         労 働 大 臣 戸塚九一郎君  出席政府委員         労働政務次官  福田  一君  委員外出席者         参  考  人         (中央労働委員         会会長)    中山伊知郎君         参  考  人         (電気事業連合         会事務局長)  平井寛一郎君         参  考  人         (日本電気産業         労働組合中央執         行委員長)   藤田  進君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員長)     田中  章君         参  考  人         (日本石炭鉱業         連盟専務理事) 早川  勝君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 浜口金一郎君     ――――――――――――― 十一月二十九日  委員山花秀雄辞任につき、その補欠として田  中稔男君が議長指名委員に選任された。 十二月一日  委員田中稔男辞任につき、その補欠として山  花秀雄君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月一日  看護婦既得権者衛生管理者免許付与に関する  請願鈴木茂三郎紹介)(第二九六号)  失業対策事業日雇労務者の救済に関する請願(  白浜仁吉紹介)(第三〇二号) の審査を本委員会に付託された。 同月二日  労働基準法に国の援助義務を規定したことに伴  う措置に関する陳情書  (第五七八号)  電産、炭労争議早期解決に関する陳情書  (第五七九号)  電産争議早期解決に関する陳情書外一件  (第五八〇号)  同(  第五八一号)  同  (第五八二号)  同  (第五八三号)  同  (第五八四号)  電産スト防止立法に関する陳情書  (第五八五号)  日雇労働者失業対策に関する陳情書  (第五八六号)  札幌市に北海道労災病院設置に関する陳情書  (第五八七  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員追加選任  電産及び炭労争議に関する件     ―――――――――――――
  2. 田中伊三次

    田中委員長 ただいまより労働委員会を開会いたします。  この際委員長よりお諮りをいたしますが、けい肺病対策小委員会の小委員の数を一名追加選任いたしたいと存じます。そこで小委員の氏名は委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中伊三次

    田中委員長 御異議なしと認めます。それではけい肺病対策小委員会の小委員石野久男君を指名いたします。     —————————————
  4. 田中伊三次

    田中委員長 本日はこれから電産及び炭労争議に関する件について、調査を進めて参りたいと存じます。申すまでもなく、この問題は、国民経済ないし国民生活に重大なる影響を及ぼしつつある問題であると存じまして、この調査を進める次第でございますから、ここに御列席の参考人におかれましては、どうか腹蔵なく御意見をお述べになりますように、委員長からお願いを申し上げます。  なお参考人に申し上げますが、せつかくお越しをいただいて時間の制限をいたしまして恐縮に存じますが、大体三、四十分内外で御意見を承ることができれば、まことにけつこうでございます。  それでは電産及び炭労争議に関する件を議題として、参考人の御意見を承ることにいたします。まず中央労働委員会会長中山伊知郎君。
  5. 中山伊知郎

    中山参考人 中央労働委員会会長甲山伊知郎であります。委員長の御指名によりまして、これから二つ争議についての所感を申し上げたいと存じます。  まず第一に電産の争議でございますが、経過は皆さんが十分に御承知とも思いますので、ごく簡単に筋道だけを申し上げます。  電産の争議は、すでに本年の四月にベース・アツプについての調停申請がなされておるのでございます。それで調停委員会の成立したのが五月でございますが、それからあと数箇月かかりまして、九月四日に調停案が提示されました。その調停案内容は、一口に申しますと、賃金基準賃金として平均月額一万五千四百円、そうしてその賃金を実施するためには、一口に申しまして労働条件合理化する、これが骨子であります。  もつともその一万五千四百円の金額査定いたします場合に、いろいろ会社経理状態などを調べますと、御承知のように電気会社が九つの会社に分離独立しておりますので、その各個の会社経理内容は決してひとしくありません。豊水にせよ、渇水にせよ、それによつて受ける影響は、各会社によつて非常に違います。従つて、あるいは経理の都合上、この金額ベースとしてとることができない会社があることを予想いたしまして、調停案の第七項には、もしこの金額経理上どうしても実施できない場合には、これを両者協議の上別途の金額にきめてもよろしい、こういう条件一つつけてあるのであります。  繰返して申し上げますと、調停案内容は、ある条件つきではありますが、統一の一万五千四百円の賃金ベースとすること、及びそれに伴つて、もちろん経理上の問題もありますし、その他の問題もありますので、電気事業労働者労働条件という点については、これを合理化して行くということが内容でございます。  労働条件合理化内容は、たとえば基準外が、その当時全国平均で一箇年通じまして二七%出ております。これをせめてその一割ぐらいは縮減することができるだろう。これも労働条件合理化の一項目であります。それからその他小さい項目ではありますけれども、たとえば休日、休暇の問題、これが他の社会水準よりは電産の場合は多いのであります。そういう多い休日、休暇是正するとか、あるいはいろいろなその他の小さい問題において、今までたびたび問題になつておりました労働条件合理化を、この際実施してはどうかということが含まれております。  そのうちの非常に重要な項目は、電産の場合にはあとからも御説明する機会があると思いますが、実働七時間、但し土曜半休、これが労働時間の規定でございます。実働七時間、土曜半休、これを一週間の労働時間といたしますと、三十八時間半になります。この労働時間自体の長さということも問題でありますけれども、さしあたつて一番問題になりますのは、一体土曜半休で三交代制というものがはたして合理的に実施されるか、こういう問題であります。土曜半休で八時間の三交代制、このことは、言葉をかえて申しますと、二週間に三日休みがとれるということです。一週間に半休がつく勘定でありますから、二週間に三日休みがとれてもよろしい。それは十分に予備要員があつて、三交代をしながら二週間に三日の休みを確保して行くことができれば、よろしいのでありますけれども、人員にそう余裕がありませんから、どうしても同一の人がその三交代制の中に入つて仕事をすることになります。このことは、言葉をかえて申しますと、普通の会社や工場で三交代制のしかれておるときには、その三交代制勤務をしておつて時間外がつくというようなことは、ないのであります。ところが、電産の場合におきましては、三交代制がそういう事情でありますので、三交代制で一日よけい働くことになる人は、全部休日勤務の時間外がつくのであります。これは非常に不合理である、何とかしてこの三交代制と土曜半休という制度を是正することはできないか。これも労働条件是正の重要な一項目であつたのであります。  これを要約しますと、九月四日に出ました調停案趣旨は、賃金は約二割のベース・アップ、一万五千四百円を基礎とする、そうして労働条件はこれに伴つて是正する、これだけが内容のおもなるものであります。  ところが、それに対して労働者側からは、ただちに拒否の回答がございました。これもついでに申し上げておきますが、調停案が出て、今まで組合が受けたことは、一ぺんもありませんでした。全部今までの記録は拒否であります。その拒否返答も、われわれが約五箇月と申しますか——実際には四箇月ぐらいでありますが、四箇月を費して六人の調停委員——これは労、使、公益、各二人でありますが、熱心に検討した結果が、わずか一時間のうちに拒否されておるのであります。こういう事情は、こういう問題を考える場合の基礎的な問題として、ひとつお考えを願いたいと私は思う。しかし、われわれは、別に拒否されたから憤慨して、そのあとをめちやくちやにするという気持は持つておりません。そのあと会社の方も条件付拒否をして参りました。  われわれはそれ以後情勢を見守つてつたのでありますが、ストライキが出て参りますし、どうしてもそのままにほつておくわけには行かないというのであつせんに入りました。ところがこのあつせんに入る過程においてまた問題が起つた。それは会社の方では、今度の条件を検討して行くためには、自分たちばらばら交渉に応じて行きたい、全体としてこれを統一的に、今までのように受けておくわけには行かない。会社独立しておるのだから、独立会社の責任においてこれをやつて行くためには、どうしてもそのような意味ばらばら交渉に応じなくてはならない。ところが組合の方は、もともと統一交渉で始まつた問題を、この段階に至つて会社ばらばらで応ずるというのは何事であるか、われわれはどうしても統一賃金統一交渉という建前でなければ交渉に応ずることはできないということで、妙なところなのですが、調停案拒否した後に、交渉に入る前に、非常にめんどうな問題が起つたのであります。この問題を打開するために、私は、そう両者交渉形式の問題を言わないでも、内容に入れば自然に交渉形式の問題も解けるのではないか、だから、しばらく交渉形式の問題をたな上げにして交渉に入つてはどうか、こういう勧告をいたしました。なかなか聞かなかつたのでありますけれども労働大臣からの同様の趣旨勧告もあり、遂に両者はそれぞれ条件を出して、そうしてこの交渉に応ずることになりました。  この条件は、まず組合側の方は、統一交渉統一資金であること。第二は、調停案基礎にして交渉には応ずるが、しかし調停案はそのままではだめだ。第三は、情勢に応じて、解決のために今までのものよりももつと折れた具体案を出そう。第四番目には、労働協約及び退職金も同時に解決したい、こういう四つの条件を出しました。これはわれわれの勧告に応じて、調停案基礎にして中身から話に入ろう、このことは了承するが、しかし統一資金統一交渉という決定的なものは譲れない。それから調停案金額などではのまない、こういう主張を繰返しているわけであります。会社側条件は、これに対応してあつせんが続けられる場合にはストライキはやめてほしい。これはお互いに迷惑するのだから、あつせんが始まる以上はストライキを続けることは無意味であるということが第一。第二は、経理格差があるので、どうしても統一賃金は受けられない、格差賃金ということを建前にして交渉に応じたい。それから経営合理化、特にその中の重要な問題は労働条件合理化でありますが、これをぜひ実行したい、そうしなければ会社はほんとうの会社としての存立を続けて行くことはできない。この三つの条件がもし認められるならば、われわれもひとつ交渉に応じましよう、これが会社返答であります。  ここでお考えを願いたいのは、会社組合も、このあつせん過程において、なおかつ根本的な主張は譲つていない。私ども勧告に応じて、調停案内容基礎にして話合おうじやないかと言つたのでありますが、遂にいろいろな情勢に押されて、そのような勧告を受けることになり、先月の十五日にいよいよあつせんに入ることになつたのであります。そのあつせんに入る直前に至るまで、いな、あつせんに入つてからも、会社組合ともに、その元の主張骨子においては完全に守つたままで入つて来ているのであります。これが今度のあつせんを難行せしめた非常にむずかしい条件であつたのであります。われわれはこういう中であつせんを続けざるを得なかつたわけであります。その中で、十五日から始まつて以来二十六日まで約十二日の間、ほとんど毎日毎晩午前二時、ころまでかかりまして、両者の間を私どもであつせんし続けて参りましたが、どうしても両者主張にある幅があつて、とうていそのままでこれを妥結せしめることができないような状態になりました。私どもは、もはやその状態に立ち至りましたならば、これを単にわれわれの手に預かつているよりも、むしろ社会全体の批判の前に投げ出すのが一つの行き方と考えましたので、遂にあつせんの案をつくりまして、これを両者に提示するに至つたのであります。  あつせん案骨子は御承知通りでありますけれども賃金は一社を除いて——これは四国であります——一万五千四百円のベースにそろえる、これが第一点。他面労働条件は相当強く是正して行く、こういう二つの方針をその中にうたつたのであります。  まず第一に、あつせん案において四国をなぜ除外したかと申しますと、私ども経理はよくわかりません相当注意をして見ておりますけれども会社で出される経理公益事業局が認定されているところの経理、それから公の計理士が入つて査定をされているあの経理、それをわれわれが、たとえば修繕費はどうだ、これは十分使つているか使つていないか、石炭費はどうなつておるかということは、ある程度くらいは聞くことはできますけれども、その全体に対して、われわれがこれは正しい、これは聞違いであるというような認定を下すことはできないのであります。できるだけのことはいたしました。結局において四国が特殊の事態にあることを認めざるを得なかつたのであります。この証明は私どもにとつて二つございます。一つは他の電力会社が全部増資をしておりますのに、四国だけは増資計画を今もつて発表していない。北海道のように経理上では四国とあまり違わないと思われるように悪く見えておりました会社でも、一対一の増資計画を発表しておりました。しかし四国はそれをしていない。第二点は四国の場合には、他の会社違つてこの暮れのボーナス前期の決算の中から落していない。他の会社は、大体もう暮れのボーナスの支出を一応予想しまして、全額ではありませんけれども、そのある。パーセンテージ、あるいは六〇%あるいは七〇%というものを、前期経理で落しておるのです。ところが四国はそれを落していない。このような事実は、他の経理数字と相まつて四国が特殊の地位にあるということを、われわれは認定せざるを得なかつたので、それで調停案の第七項を適用しまして、これはあるいは経理上一万五千四百円という並び数字——これも註を申し上げますけれども、一万五千四百円というのは、全国平均であります。地域差は当然ついております。ですから、その同じ一万五千四百円は、たとえば大阪の関西の会社に適用しますと、これが一万六千二百円になります。同じ一万五千四百円を四国地域に適用しますと、平均は実際は一万四千七百円になるのであります。そういう地域差はございますが、それは別な話であります。とにかく一万五千四百円という平均金額をのむことはむずかしいかもしれない、従つて、この点はさらに会社組合協議をして、そしてその協議も、できるならば平和的に、ストライキなしに協議をして、適正な金額におちつけてもらいたい。もしその場合に、会社が奮発して、ひとつほかの会社と同じ並びに行こうというならば、われわれはこれを決して否定するものでもないから、ひとつ両者協議にこれをまかそうじやないか。しかし、その両者協議がととのわないというだけで、ストライキが長引いたり、全国的な争議が依然として続くというのでは困りますので、それは平和的に預かろう、こういうようなことで、賃金の点を解決いたしました。  労働条件の点については、実は調停案の説明のときには、四十二時間という時間の延長で行く必要はないと私は思つておりました。そうしなくても、十分に労働条件是正はできるのじやないかと思つてつたのでございますが、さてやつてみますと、今申しました三交代制で土曜半休というこの不合理是正する道は、ほとんど四十二時間という時間延長以外にはないのであります。たとえば、実際にそういう職場で働いている人と、それから事務的な労働をしている人と区別しまして、片方は七時間で土曜半休で、一方は全部七時間でフルの一週間の労働だ、こういう体制で行けるならいいのでありますけれども、御承知のように、電産の組合従業員であつてそういう区別をすることは、実際問題としてほとんど今日不可能であります。従つて、私はこの四十二時間という決定をいたします場合に、組合側にも会社側にも聞きました。組合側にも二度以上聞いております。何とか三交代制のあの不合理是正して、一般的なこういう時間延長に持つて行かない道はないかどうか、腹案があるなら知らしてほしいということを、たびたび言つておるのでありますけれども、これは両方とも返答がない。やむを得ず、私は、思い切つて四十二時間という時間延長の案を採用したのであります。この点について、あるいは調停案の線とは違うじやないかという議論があるかもしれません。実は内部でそのような議論が私どもに出ておるのであります。けれども労働時間を中心とするあの是正なくして、労働条件合理化というのはほとんど行われがたいのじやないか。ことに電気事業という公益事業——公務員は四十四時間です——なぜ三十八時間半でなければならないか、私はこの理由がわからない。アメリカのごとき非常に優秀な生活程度を持つている、そして賃金も高いあの国においてすら、電気事業労働時間は一週間四十一時間であります。これを三十八時間半という現在の形に固定しなければならぬ理由はないと私は思いましたので、労働条件合理化については、四十二時間というものをこの際思い切つて採用したらどうか、そうしてその他の条件はこれに合せて是正するというような案を書いたのであります。しかしながら、この四十二時間というのも、賃金は十月一日からさかのぼつて払うのでありますけれども、これをそんなに早くするわけには参りませんので、一月以降というような形にして発表したわけであります。この点については、あるいはすでに問題があつたと思いますし、なお今後も問題になると思いますので、特にここでつけ加えて説明しておいたのでございますが、調停案の線を、その意味においては私どもは今日まで守つて来ておると思います。その点についてもし御不審がございましたら、あの九月四日に出ました調停案と、十一月二十六日に出ましたあつせん案とを、ひとつ御比較を願いたい。  そこで問題は、そういうことをして何か労働側に非常に不利益なものを与えるのではないか、経営者側に屈服したのではないかというようなことを言われるのでありますけれども、それは場合によつて労働者側拒否するような条件も出ましようし、場合によつて経営者拒否するような条件も出ましよう。これは両者がこういうかたい主張で争つている場合にはやむを得ない事態であります。だから私は、結果から見て、労働者側が二時間もたたぬうちにもうこれを拒否しておるので、それは労働者側に非常な酷な条件を出したのではないかというような判断は、ひとつ十分に慎重に御考慮を願いたいと思うのであります。どつちか拒否したから、そつちの方には不利益——不利益つたには相違はありますまいが、他の不利益がどの程度であるかということは、内容を見て判断をしていただきたいのであります。その点について私は、あらためて初めから、調停案は簡単な文章でありますから、その文章をごらんになつていただけば、われわれがいかにあの基本的な線を守つて、このあつせんに乗り出しておるかということを御承知くださると思うのであります。  私は、こういう公益事業争議においては、結局において第三者の公平な見解というものがもつと尊重されなければならないと、常に主張しておりますし、そう確信しております。たとえば、これは新聞の悪口を言うようで、はなはだ相済まぬのでありますけれども、今度の争議が大きくなりました場合に、新聞が何を問題にしておるかといいますと、組合側主張会社側主張とを対立させて問題にしておる。そうしてその間に苦労してでき上つた調停案内容については、批評もしなければ報道も非常に少い。こういう状態は、およそ労働問題は力と力でもつて解決するので、公平な第三者判断というものをいれない考え方ではないかと思う。もしそのような考え方で行きますならば、特に公益事業のような場合、あるいはあとでお話いたします石炭の場合も同様でありますけれども、そういう問題の解決は非常に混乱して行くだろうと思うのであります。もしわれわれのこの六、七年間の労働問題に対する経験が生かされて行きますならば、いろいろな問題がありましたけれども、その中の合理的な線というものだけは、ひとつお互いに尊重してこれを守つて行くようにしなければならないと思うのであります。  話をもどしまして、しからばあつせん案の中でわれわれの苦労をした点はどこにあるかということを申し上げますと、このあつせん案の中で、二つの点を非常に重要に考えて、これはある意味において組合労働運動を守るために、それをとつたつもりでおります。それは何かと申しますと、統一賃金統一交渉、特にあと統一交渉という問題であります。この問題は、あつせん案には、第四項にきわめて簡単に、労働協約調停案通りとするという一行が書いてあるので、あるいは見のがされる点であると思いますが、この調停案というのは、賃金に対する調停案ではなくて、それよりさかのぼつて、前に出された労働協約に対する調停案であります。そうして、その内容はもうここで省略いたしますが、その骨子は何かといいますと、それは、電産というあの統一組合電経会議というあの統一的な会社の連合体とが、それぞれ労働協約の当事者となつて、そうしてお互い交渉を持つ主体ということを確認しておるわけであります。そういう意味におきまして、私はあの調停案通りとする決定によつて会社があつせんに入ることさえも躊躇したあの個別交渉というアイデアを、実は拒否しておるのであります。このことは、会社にとつては相当文句のあるところでありましよう。独立会社だ、しかも独立経理だ、それがなぜ独立交渉を持つていけないかと言われるでありましようけれども電気事業というのは、なるほど経営は別々であるかもしれませんが、労働者は一体の労働者である。そして今まで一緒に来た電気会社が、これからもいろいろな問題で政府交渉するときには、どうせ一つでやるでしようが、事労働問題に関する限りにおいて、ばらばら交渉しなければならぬという理由はない。その統一交渉の中で、もし必要があれば、異なる労働条件、異なる賃金主張し得るでしよう。ですから、そういうことにかかわらず、交渉形式というものは統一でもつて行きたい。これは私は経営者の抵抗を排除して守つたつもりであります。これは後に経営者がこの案を承諾して参りましたので、そのことを経営者は認めたものと断ぜざるを得ません。しかし、あつせんの最後の段階に至るまで、経営者は私にその言質を与えていなかつたのであります。このことは賃金問題が燃えておる現実でございますので、あるいは一般には非常に薄い印象しか与えないのではないかと思いますけれども、もしこの点をはずしますと、これは労働運動の史上では、大きな逆転が生ずる、こう私は確信しておりますので、組合のあの統一的な運動と、会社もこれに対して統一的に一つ交渉の相手方として当つたらよろしい、この点だけを大きく確保したつもりでおります。  そうしますと、その統一交渉の裏側は、統一賃金ということになるのでありますが、この統一賃金も、曲りなりではありますけれども、私は確保したと思つております。御承知のように、あつせんの中途段階において、五つの会社が一万五千四百円以下のばらばら賃金を出して参りました。こんなことでは話はとてもできないから、ともかく一五四〇〇という共通の数字をのみなさいということを言つて、やつと最後の段階では一つのわくをはずして経営者側を納得せしめるという段階に持つてつたのであります。  ところで、最後に残つたの労働条件の問題です。その労働条件の問題で、今度同じような交渉を逆に組合側にやりました。われわれはこの五年の間、たびたび電気の争議について調停案を書いて参りました、あつせんもいたして参りました。そのときに常にうたつていたことは、これは歴史的事業でありますから、いつでもお調べになればわかるのでありますけれども、あるいは前文であるいは本文の中で、こういう電気事業というものは労働条件合理化、企業の合理化をしつかりやつて国民の期待にこたえて行かなければならないということをうたつておりました。実は残念ながらそのような条件合理化が今日まで空文に近くなりつつあつたのであります。私はこの点においては、労働委員会自体も反省しなければならない問題があつたというように考えておりましたし、この際調停案趣旨延長して、そうしてこのような条件をつけるのは決して無理ではない、こう思いましたので、今度は労働組合側の非常にいやがる条件をこの中に盛り込むことになつたのであります。  一言に申しますれば、このあつせん案組合のために、労働運動者としての基本的な線は守る。そして賃金の値上げも認める。——これは二割上つております。このあとにお話します炭労の場合とは全然条件が違います。炭労は横すべりという条件で、今もんでおるのであります。すなわちベースは上げないということでもんでおるのでありまして、電産の場合とは事情が非常に違うのであります。二割のベース・アップを認めましたこの金額について、あるいは皆さんに御異論があるかもしれません。時間当り賃金は日本一の高さを持つておるので、この点については問題があると思う。しかし、私は日本全体の賃金水準から見て、公益事業ではありますけれども電気事業労働者賃金においてある格差を持つということは、いいのじやなかろうか。それによつて生産能率が上つて電気事業というような公益事業がもつともつとよくなるということは、日本のためになることではないか、こう考えますので、賃金については、よく言われるのでありますけれども、あるいは少し甘いかもしれませんが、それを私は認めております。むしろ社会の批判をまちたいと思つております。けれども、逆にそのような賃金をとり、日本一の時間当り賃金をとつて、そうしてこの重要な公益事業をやつて行く日本の電気労働者が、三十八時間半という異常に低い労働時間を守らなければならないだろうかと考えますと、そうしなくてもよろしい、こういう観点に立つてあのようなあつせん案に到達したわけであります。不幸にして、このことがあつせんの障害となり、組合側からは拒否され、また会社側からは、ようやくいろいろな希望条件付の受諾を得ているという状態でありまして、あつせんが行き詰まつているような状態に星ます。しかし、これはもともと両当事者の問題であり、調停といい、あつせんといい、もともとは自主的な交渉の中である一つの段階でありますので、私自身は、これでもつて問題の解決が投げられているとは決して思いません。今後は、ここまで押して来て整理された問題を基礎にして、両当事者がこの問題を良識的に打開して行つていただきたい。そうしてそれをサポートして行くものは私は輿論であろうと思うのであります。  これは次の炭労の問題にも関連いたしますので、ここで緊急調整の問題に触れておきたいと思うのでありますが、緊急調整ということは、これはもうやむを得ない場合に出ることでございますけれども、このことがあつても、今の問題が必ず解けるという確信があるかどうか、これはわかりません。なるほど、五十日間ストライキはやまりましよう。けれども、そのあとで同じ問題が残つて行く可能性が非常に多い。むしろ、今日争議が長引いておりますのは、なるほど進駐軍がいなくなつたということがございます。進駐軍がいなくなつて、何か押す力がなくなつたということで、中労委はそういう意識でやつたことは決してございませんけれども、しかし一般的にいえば、とらがいなくなつたきつねだということになるでありましよう。それもございますけれども、しかし、一つの原因は、むしろ緊急調整というものの存在がストライキを長引かせているのじやなかろうかという点も考えられるのであります。なぜかと申しますと、今までは、たとえばストライキをやつた、このストライキが一体どこまで行つたら合法的で、それを越えたら非常に困るということを判断するのは、それぞれ当事者でありまして、組合が自分で判断しなければならぬ、会社が自分で判断しなければならぬ問題であつたのであります。ところが、緊急調整という制度ができますと、ストライキをどんどんやつて行く。もしこれが国民経済に現実かつ緊迫的な危急の状態をもたらすという判断がおりたら、そのときは緊急調整になるだろう。緊急調整は政府判断すべき問題に押し上げてしまつて、それまではいくらストライキをやつても、一応はわれわれは国民経済を危殆に陥れるのでないという言い訳ができるようなかつこうになつてしまつておる。そうではないのでありますけれども、法律の制度の上では、何かそういう余裕がそこに生れたように見える。このようなことになりますと、緊急調整をここで行いましても、場合によつては行わざるを得ないでしようが、それによつてただちに問題が解けるとは思わない。やはりこの問題を全体として処理して行くのは、両当事者及び社会一般の良識にまつより以外には方法がないのじやないか。そして、私はそれは見込みのないことではないと今日でも考えておるという事態でございます。  時間をたいへんそちらの方にとりましたので、あと炭労のことを簡単に申し上げたいと思いますが、炭労の問題は、われわれといたしましては、調停もあつせんもまだやつておりません。ただ十一月十五日に、貯炭の状態が非常に問題になつて来た。最初ストライキに入りますときの貯炭の状況は、山元に二百万トン、消費者の手元に四百二、三十万トン、大体六百万トンないし六百五十万トンくらいの貯炭があると言われておりました。従つてそのときには、一月ぐらいのストライキは、貯炭状態から見れば、あまり問題ではなかろう、こういうふうに予想されておつたのであります。また事実ストライキに入りましてからも、山元の貯炭は案外減つておりません。これは保安要員というような形で炭を掘つておりますし、その他のいろいろな状況もあつて、思いのほか減つていなかつたのであります。これは一つ数字でございますか、九月三十日と十月三十日と一箇月間の貯炭を比べてみますと、貯炭の減少がわずかに五十万トンであつた、こういうことが伝えられております。けれども、もう十月も過ぎ、十一月に入つて、十五日にもなつて参りますと、そろそろ特殊用炭が減少して参りました。特殊用炭のうちで、特に外国にその補給を依頼するようなものはいいのでありますが、内地炭の中でしよつちゆうそれをルートとしてもらつてつたような炭が減つて参りますと、ガスの問題が出て来る。ガスの問題がほとんど予想的に出て来る状態、これが九月十五日ごろの状態でございました。そのときにはガスの問題のほかに、わずかに個人の燃料炭の騰貴ということぐらいが伝えられておつたのでありますが、しかしわれわれは全体の情勢考えまして、これを両当事者のあの少しも進捗しない交渉——この交渉の経過も、もう御承知でございましようから申し上げませんが、組合側は要求として現在の坑内外の賃金の、一口に言つて約二倍の金額を要求している。そうしてこれに対して会社側は九月一日に連盟として返事をいたしまして、賃金は横すべり、逆にノルマは引上げるという実質的な賃下げ案を出して対抗している。そのまま交渉が打切られて、ずつとストライキに入つておるというのが実態なのであります。そのような状態が進展しないものをそのまま放置することはできないというので、両当事者を呼びまして、その事情を聞いたのであります。ところが、そのときの状態では、まだ両当事者とも、これは組合もそうでありますが、特に会社は別に中労委が介入してほしくない、われわれの方で十分にこれを解決して行く自信があるし、組合側もこれに応ずると言つていた、いましばらくその様子を見てもらいたい、こういう話でございました。組合側の方も、事情聴取ということに応ずるけれども、さてあつせんということであると、われわれは応ずるか応じないか、まだ十分に機関に諮つてないからお答えはできない、こういう返事でございました。事情判断しますと、私どもはなお会社組合の自主的な交渉にまかせる余地が十分にあるというふうに考えましたものですから、その意味においてこれは中労委がむりやりに、たとえば職権あつせんというような形で介入すべき問題ではない、こういう判断をし、事情聴取は両当事者に対する解決促進のいわば役割を果したものというふうに考えて、あつせんに出ることを一応控えたわけであります。それ以後今日までちようど半月の期間が経過したのであります。しかし自主交渉的なものは二十四日に始まりましたが、遂に今日まで妥結に至りません。そうして、昨夜は遂にこれ以上の交渉ベース・アップという条件がいれられない限りとうてい応ずることはできないという、いわば断絶の通告が炭労側から連盟側になされたという事情であります。  この問題は電産の場合と違いまして、賃金の絶対額においても相違があります。大体今坑内外の平均が一万二千五百円くらいでございましようか、特に坑外夫の方は基準外を合せてようやく一万円というところでございましよう。坑内はもう少し高くて一万四千円ぐらいになりましようか、そういう点で、その絶対額も炭労の場合には非常に低い。その上に、ノルマの点でも、だんだん能率は増進されておりますけれども、毎年々々ノルマの改訂と賃金の改訂とが併行していることに対して、組合側は相当の不満を持つている。この低い賃金が、しかも現在の状態においても一銭も上つていない、上る見込みがない。電産の場合には、組合側調停案に対していろいろ不満は言つておりますけれども、しかし一万二千四百円、あるいは、現実には八百円くらいであります。一万二千八百円くらいの現実の基準賃金から、一万五千四百円までの基準賃金の騰貴、これは一割九分五厘でありますが、一割九分五厘くらいの騰貴は調停案によつて確保されているのであります。こういう場合の闘争と、炭労の場合の賃上げゼロという条件のもとで闘争している場合とは、非常に事情が違うのであります。これは、経営状態とか、その他いろいろのことがありますけれども、少くとも経営者の方で、今日までこの解決を延ばした責任の一半は負わなくてはならないのじやないか。私の方でも、この事態が緊迫して参りますれば、これを黙過することはできないので、中央労働委員会という機関の一つの職務として、どうしてもある行動を起さねばなるまいと今考えておるところでございます。  炭労の問題については、今お断りしましたように、調停もあつせんもまだ行つておりません従つて、具体的の事情については、むしろ当事者にゆだねられた段階であると思いますので、私の方では、これ以上のことを申し上げることを差控えたいと思います。  一応これで御報告を終りまして、あと御質問がありましたら、応じたいと思います。
  6. 田中伊三次

    田中委員長 それでは中山参考人に対する質疑の通告がありますから、通告順によつて質疑を許します。森山君。
  7. 森山欽司

    ○森山委員 ごく簡単にお伺いいたしたいと思います。電産については、労働委員会は非常に御苦心の態にあるようで、なお炭労についても、重大な御関心を持つておられる。これらの争議、特に電産につきましては、政府の答弁を聞いておりますと、通産当局の発言としましては、これについて緊急調整の発動を考慮しておるかのごとき新聞報道が出ております。労働省といたしましては、そこまではつきりしたことは申しておらないのでありますが、この際中山会長にお伺いしておきたいことは、これらの争議行為によりましてこれらの業務が停止されるとき、国民経済の運行を著しく阻害し、または国民の日常生活を著しく危うくするおそれがある段階に今日なつておるかどうかということについての率直な御意見を、この際お伺いしておきたい。と申しますことは、何も緊急調整を具体的に発動すべきか発動すべからざるかということではなくして、今申し上げましたように、当該業務が停止されるとき、国民経済の運行を著しく阻害し、または国民の日常生活を著しく危くするおそれがあると思われるかどうかという点について、御答弁を願いたいと思います。
  8. 中山伊知郎

    中山参考人 お答えいたします。この問題は、正確に申しますと、政府判断すべき問題でありまして、緊急調整の請求者は総理大臣になつております。私どもの方は、それに対して意見を申し上げるということになつております。  私、一つだけ申し上げますが、電気と石炭を比べますと、炭労の場合の方が、国民生活に重大な脅威を与えているという点においては、一歩進んでおるのではないか。この点だけを申し上げまして、これでお許しを願いたいと思います。
  9. 森山欽司

    ○森山委員 中山さんのおつしやるまでもなく、緊急調整は内閣総理大臣が行うことで、中央労働委員会意見を聞くという程度であろうかと思います。だから、私は緊急調整のことをこの際お伺いしようとしておるのではないのであつて、これらの業務が停止されることによつて国民経済の運行を著しく阻害し、または国民の日常生活を著しく危うくするおそれがあるかどうかということを、私はお伺いしておるのであります。緊急調整を発動すべきか発動すべからざるか、また中央労働委員会として、発動する場合の意見を聞かれた際の御返事をこの際伺うというのではない。私は、国民生活あるいは国民経済というものに対して、これらの争議の進行状態の現段階というものが、はたしてそれを危うくするようなおそれがあるものになつておるかどうかということを聞いているのです。緊急調整ということを一応切り離して、あなたの御意見を伺いたいのであります。
  10. 中山伊知郎

    中山参考人 御質問の趣旨を誤りとつたつもりではないのでありまして、まさにその点をお答えしたと思うのであります。つまり、私の申し上げておるのは、私どももその点について一個の見解を持つております。持つておりますが、政府が言われる前にわれわれが言いますことは、これは現在の段階では非常にむずかしいものですから控えたのでございます。けれども、私が一般的に申しますれば、二つ争議は、ともにおそれがあると考えております。それだけを申し上げておきます。ただ程度の問題やその他の問題は、政府の御判断の問題でございます。
  11. 田中伊三次

    田中委員長 労働大臣も来ておりますから、参考人には今の発言の内容に関連して、大事なことだけを願います。
  12. 森山欽司

    ○森山委員 いま一つ、炭労につきましては、調停、あつせんともにやつておらないというお話でございます。自主交渉だけで今日の段階に至つておるが、今後ある程度のこととおつしやつた言葉の表現は忘れましたけれども、おやりになるようなお話でございますが、どういうような御構想だか、もう少しお伺いできないものでしようか。
  13. 中山伊知郎

    中山参考人 炭労につきましては、私どもは率直にお答えいたしますが、ここ一両日のうちにある行動をとりたいと思つております。——それでもつてよろしゆうございましようか。
  14. 森山欽司

    ○森山委員 炭労につきまして、私は労使双方の現状から見ましても、なおかつ大きく国民経済全体から見ましても、非常に危惧すべき段階に至つておると思うのでございます。中央労働委員会として、これに何らかの処置をとられることは、むろんけつこうなことであると思つておりますが、もしおさしつかえがあればやむを得ませんが、もう少し具体的にお伺いできたら……。もしおさしつかえがおありでございましたら、よろしゆうございます。
  15. 田中伊三次

    田中委員長 前田君。
  16. 前田種男

    ○前田(種)委員 中山会長に二、三の点を簡単にお聞きしたいと思います。要領のいい、非常に内容を明確に御説明を願つたので、大体はわかりましたが、結論的に私のお尋ねしたいことは、あつせん案骨子になつておりますところの統一賃金と時間の延長であります。統一賃金の方は、今も組合の主体性を確保する意味で、相当苦心されたという御説明であつたから、組合側も、いろいろ意見はあつても大体了承できる案だと思います。問題は、時間の延長の問題で、これがもつと団交か、あるいはここまで深刻にならないとき、すなおに考えるならば、いろいろ組合もこういう問題でもつと冷静に考える時間があつたかもわかりませんが、ここまで深刻な争議をやつて、その結論が時間の延長をさせられたということは、組合の幹部としては、組織の下部に対して申訳がないという、一番苦しいところに追い詰められて来ていると私は見ているのです。この追い詰められて来ているところをなおかつ忍んでも、第一の統一賃金の点で、とるべきものがとれたんだから満足できるんじやないか、簡単にいえばそういう案になつておると思います。だから、深刻な争議に追い詰められて時間の延長を認めざるを得ないというあつせん案内容に対して、組合側としては、忍び得ないというところに追い詰められている。ここが一番問題になつているのじやないか。あるいは会社側も、のめないところをのんだということになりますが、そういう争議の実態、今日の組合の実情、幹部のいろいろな苦心等から考えて、ここが一番問題の点だと思つて、ここに何とかする余地があるかどうか。  もう一つは、今質問もございまして、それに対して答弁されましたが、電産の場合、一応あつせん案を示されまして、あとは輿論の動向にゆだねるということですが、国内の実情は、輿論の動向を待つてというような悠長のことは言うておれないところに来ていると思います。両争議とも、今日当事者の方は別といたしまして、国家的に見まするならば、産業上、国民生活上、治安上、各方面から見まして、ゆゆしき状態になつておりますから、もう一度何とか努力をしてみる余地があるかどうか。炭労の点につきましては、一両日のうちにというお答えがございましたから、それ以上はお尋ねしませんが、電産の場合も、もう一度何とか努力する余地が——今日の段階では、さらに尽されてしかるべきではないかと思いますが、その点に対する中山会長の心境あるいは見通しを伺いたい。  それから第三には、この争議とは別でございますが、現行の労調法その他労働組合法、法的に現行法によつては、いろいろな点で欠陥、不十分な点があるから、こういう国民生活影響を及ぼすところの重要な公益事業に対しましては、法的内容を改正する必要があるかどうかという点について、中労委の会長として、現行法に対するものの考え方をあわせてお尋ねしておきたいと思います。
  17. 中山伊知郎

    中山参考人 お答えいたします。第一の点、まことに御指摘の通りでございまして、その点は私も同感でございます。労働時間の問題に追い詰められた場合に、組合としては、どうしてもそこをいわば基礎として抵抗せざるを得ないということになると思います。しかしそのことを、どう言いましようか、ある非常に熱している時期をはずしてお考えになれば、私どもは相当客観的に妥当な線を出しておるし、そして実は静かなときに話をすることは、今までの経験では絶対にできない問題であります。それでやむを得ずそういうことになつたのでありますけれども、しかしこれがあるからといつて争議の全体がこのまま暗礁に乗り上げて、未解決のままに終るとは思つておりません。そこで、どういう打開の道があるか。これは第二の御質問に関連するわけでありますが、一つは、先ほど申しましたように、このあつせん案基礎にして、なおかつ労使双方の直接的な歩み寄りは可能であると私は考えております。あるいはあつせん案自体がその場合にじやまになりますならば、われわれはそのあつせん案ついて考慮いたしましよう。それはけつこうだと思います。ただ私どもの方から、あのあつせん案はどうもうまく行かなかつたからやり直しましよう。——これは習慣としても実際の効果としても、絶対にいけないのです。つまり調停案なりあつせん案というものは、一ぺん出したら、やはりそれを守つて行く習慣をつけません——そのかわり出す方は責任があるわけであります。そして社会の批判を仰いでいるわけでありますが、出したものをいろいろな抵抗によつてかえて行くという習慣をこちらからつくることは、非常にいけない。だから、当事者がその問題をいろいろな条件と一緒にお考えになつて、善処されることは少しもさしつかえない。その意味において、私は一段の努力をいたしますけれども、他に努力される分野もあるだろう、このように考えております。  それから第三の問題につきましては、これは大きな労働法規の改正問題になるので、今は軽卒に発言はできないのでございますが、これこそ今度の争議のような経験を通じて、国民の全体、ことに議会において十分お考えになるべき問題だと、このように思います。そのときには、私どもの方でも十分にこの跡始末の終りましたときには、ひとつ意見を申し上げたいと思います。
  18. 田中伊三次

    田中委員長 次は青野君。
  19. 青野武一

    ○青野委員 中山さんにひとつお尋ねしておきたいと思います。電産の問題については、あと参考人の方のお話があつてからお尋ねしたいと思いますが、特に今懇切に御意見がございました炭労の問題について、お尋ねしてみたいと思います。私どもはすでに五十日近い争議が続けられております組合の内部も、また鉱業連盟の内部のことは詳しくは存じません。しかし、中労委がいろいろ労働問題を扱つております例から申しましても、現行賃金の横すべりでは、炭労争議は、私は労働大臣勧告をしても、たとえば中労委の方が誠心誠意いろいろの方面に御努力をくださいましても、この線を鉱業連盟が堅持する限り、私は解決は至難ではないかと思う。三井鉱山などは、私最近の資料を見てみますると、創業以来非常なもうけをやつております。銀行にしても、鉄鋼にしても、紡績にしても、それぞれの統計を見てみますると、相当もうけておるところもありますが、苦しい中から平均二割程度調停案も出ておるし、あるいは国鉄にいたしましても、全専売にいたしましても、全電通の調停案にいたしましても、大体そこら見当をつけているときに、ひとり炭労の争議だけが、経営者側が現行賃金の横すべりで、五千円程度の貸付金でこの争議解決しようとすることが、争議を意識的に長引かせているのではないかと私には考えられる。従つてベース・アップという交渉をとりのけての団交というものは、私はあり得ないと思う。私ども社会党の立場から、全面的に日本炭鉱労働組合の諸君の利益側に立つて常に動いて来たのでありますが、経営者側のこの冷酷無情、無理解な態度が取除かれぬ限りは、この問題の解決は至難である。しかも貯炭は、御存じの通り心細い状態にあると考えております。すでに東京都内は、夜間はずつと家庭の不自由が続いております。ガスはごらんの通り切られております。電気もその通りでございますが、そういう点から労組側に責任があるか、経営者側に責任があるかというと、私どもは露骨に言つて、鉱業連盟側の責任だと思う。現行賃金を支払つて、莫大な利潤をあげておいて、現行賃金横すべりなどということは、常識では考えられぬと思う。そこで衆議院の労働委員会におきましても、あるいは参議院の労働委員会におきましても、相当の線が出て参ると思いますが、今森山君の御質問によりますると、中山さんは一両日中に何らかの動きをなさるような御意見でございまして、私どもは、その点は非常に心強く存じておるのでございますが、私どもの期待するところは、よし鉱業連盟が拒否しても、四十七、八日間も、奥歯をかんで暗い生活の中で争議を続けて来て、自己の生活権を防衛するために、このとうとい犠牲を払つた炭労の諸君が受諾するような内容をもつて、御調停をしていただきたい、こういうことを考えているのでございますが、この労働委員会で大体の見当のつくところをお示し願えれば、私ども非常に幸いだと思います。
  20. 中山伊知郎

    中山参考人 御意見は、私どもも同感できる点がたくさんございます。しかし、あつせんという問題は、非常に微妙な問題でありまして、こういう形で持つてつて、応じなければ応じないまでだという形では、いけないのであります。従いまして私どもがあつせんに入ります心構えは、昨日の通告で今断絶しておる団交を、何とかして早急に再開させる、これを第一の目標に進めて参りたいと思います。その場合に、おそらく今のべースーアツプの問題も当然含まれて来るでありましよう。けれども、それをどれだけのベース・アップを前提として応じろというような話は、実際問題としてはできませんので、私どもとしては団交を開始するお世話役をし、その中でおのずから問題解決の曙光をつかんで行きたいと考えております。  これ以上お話することは、私は——どもの腹づもりとしてはございますけれども、どうも適当でないと思いますので、お許しを願いたいと思います。
  21. 田中伊三次

  22. 石野久男

    石野委員 中山会長にお尋ねいたします。ただいまいろいろとあつせんに当りましたしさいな事情のお話をされたわけでありますが、今度の争議は、炭労や電産の争議とその他の産業の争議と、みな関連しておる問題として把握されなければいけないように思いま参す。従つて、このたびの争議あつせんみ労に立たれております会長にお尋ねいたしたいことは、たとえば電産の争議の問題を取上げまして、今度のあつせん案の三つの条件、特に労働条件の改善をなされようとするならば、どうしても三交代で、土曜半休という不合理是正しなければいけないということをおつしやられておるわけであります。私は、この問題を直接に取上げる前に、その前提として、ひとつ会長にお尋ねしておきたいのは、今回の争議の基本的な問題が、今日の日本の経営者団体の中において見られております一つ考え方の中にあると思うのでございます。それは、日本の今日置かれております世界経済の一環としてのあり方の中にあります。もちろんこれは国内における産業構造の問題もありますし、あるいは貿易関係の問題等もありまして、経営者が資本蓄積のために意図する方向というものは、至大なものがあると思います。そういうことが、争議を非常に混乱に陥れておるのでありまして、実際には、労働者の要求そのものは、決して不当なものではないとわれわれは考えるのであります。こういうような観点に立つての私の考え方が、今会長さんの御意向を聞きますと、大体妥当なように私は受取れたのでございますが、会長はそういう基本的な問題についてどういうふうに考えておられるか、まずこの点を先にお伺いしたいと思います。
  23. 中山伊知郎

    中山参考人 どうも非常に大きな問題で、お答えになるかどうかわかりませんが、私は今日の状態のもとでは、経営者の意図の中で、労働運動に対して非常に有害だと考えられる一つの面があると思つております。その面は、大きな組織を割つて、個別的な昔のコンパニーに持つて行こうというような傾向だと思うのです。この点は、具体的にいつて非常に重要な問題と思いますので、私どもは実はその点に相当のウエートを置いて考えております。しかし、全体の争議が、ある統一した、たとえば日米経済協力に対する反対運動であるとか、そういうような政治的な意味では私は考えておりません。そういう意味でなしに、やはりこれは経済闘争として考えるべき問題だと、現段階においても私は考えております。従いまして、その中に現われておりますいろいろな労働組合運動に対する有害な企図というものは防ぐのは、労働委員会の使命だと思うのであります。しかし、逆に労働条件にせよ、賃金にせよ、実はそのこと自体は、しよつちゆうかわる問題なのでありまして、基本的な態度が重要なのか、それともそのときどきの条件が重要なのか。それは切り離せない問題ではありましようけれども、おのずからウエートがあると思います。  そうして、もう一つつけ加えて申しますと、私のお答えはそれで尽ぎておると思いますけれども組合の要求は妥当だとおつしやいましたが、私は電産の二万五十五円という要求は不当だと考えておりますから、調停案にはそれをとつておりません。その理由調停案の説明に十分尽きておりますから、ここでは繰返しません
  24. 石野久男

    石野委員 こまかい問題については、まだあと電産等の参考人の公述もありますので、そのあとにいたしますが、ただいまも電産の要求が不当であるということが言われました。そのことについては、先ほどの公述の中に、三交代で土曜半休不合理性ということが、しばしば繰返されたわけでございます。私どもから見ますと、電産が闘い取つております時間給が——闘い取つているということは、あるいは会長にはおもしろくないかどうか知りませんけれども、とにかくその賃金が、かりに全国一の高水準であつたとしましても、それがその産業の持つ重要性からいたしまして、先ほど公述人は、むしろそれを高めてやるように努力することが日本の産業のためにいいのだ、こういうようにおつしやつています。そういうことを一応言われておりますのに、片方では、三交代で土曜半休ということはどうも不合理であるというふうに言われております。このことの根本をなすものは、それは人員が不足だということから来ておるのだと私は思います。従つて解決の方策は、むしろ、やはり経営者側において人員を増加すれば、その不合理性はなくなるはずである。しかし、それが先ほどの公述の中にも全然言われていなかつた。私はその人員増加が直接経営者経理内容にどういうように響くかということは、今まだはつきりしませんが、しかし私の類推するところでは、この三交代不合理だということを是正するための人員増加が、そう大きく会社経理の上に影響して来るとは思われないのであります。しかもそれは、その賃金ベース・アップの許容される経理内容等から見ましても、そのことは類推されるように思うのです。その点について会長はどういうふうな見解をとつておられるか、承つておきたい。
  25. 中山伊知郎

    中山参考人 人員増加の問題は、この五年間の争議過程でたびたび問題になつておりますので、その問題についての考え方も、われわれとしては、経営の立場と労働の立場と両方考えて、今まで調整をとつて来たつもりでおります。無理な人員整理は、むしろチエツクしております。たとえば今度も基準外の節約とか、あるいは労働時間の延長によつてただちに生ずるような解雇、配置転換は、これは認めないということをはつきりうたつておりますので、そういう点では、私どもは正当な雇用関係を維持するために努力しているつもりであります。ただ、たびたび私は申したのでありますが、今おつしやいました土曜半休、三交代という制度、この制度は日本においてはほかにないのです。そういう制度を工場でとつておられるところはございません。なぜないかと申しますと、それは要員の関係もございますけれども、もともとその制度自体がはなはだ不合理なことなんです。それですから、私はやむを得ず四十二時間としましたが、もし名案がありましたら、つまり、土曜半休、三交代という制度の矛盾を、一般的に四十二時間に延長しなくて是正する道がありましたら、今でもお聞きいたします。これは私どものところではないのですが、しかしそれをごくふうになつて、こういう手段があるのだから、何も一般的に四十二時間にしなくてもいい、こういう意見がありましたら、今でも即刻私はお聞きします。そうしてその点においてあつせん案を修正することに決してやぶさかではありません
  26. 石野久男

    石野委員 案があつたら今でも聞きたいという話ですが、これはこまかくなりますから別として、いま一つ、会長の意見は、その置かれておる立場からいたしましても、非常に重要でありますので、聞いておきたいのでありますが、それは、今人員増加の問題についての電産の問題だけに考えられたような話でありまするが、しかし今の経済界におきまする労使の関係からいたしますと、経営者の団体の意向は、主として人員を極力削つてしまいまして、実質的には非常に労働者の超過労働というものが各地に出ておるのであります。そしてその問題はいろいろな形で、たとえば臨時工の問題等の形になつて現われて来ておるわけでございます。この形が、電産の今度のいわゆる土曜半休の問題、あるいは四十二時間の問題等とのからみ合いにおいてまた考えられなければならないというように、われわれは考えるのであります。そういう意味合いからいたしますと、経営者側が、極力人員をつめて行こうという考え方をすでにとられておる声明がありまして以来、ずつと行われていることでありますが、これは、やはり労働者の立場に立つてわれわれ考える場合には、どうしてもこれを打破しなければならない。そのことは先ほどの統一交渉等の問題にも、からみ合せとなつて来るのであります。そういう意味合いで、今日置かれておる労使の関係における労働者の背負わされている労働の量、言いかえれば、ノルマルな問題であります。この問題について、会長はどういう見解で全般的に見ておられるか、この際ひとつお聞かせ願いたいのであります。
  27. 中山伊知郎

    中山参考人 この問題につきましても、われわれはすでに他の事件についての調停なりあつせんなりで、その態度を示しておると思います。たとえば、ただいま御指摘になりました臨時工の問題でありますが、私どもの方針としては、臨時工の問題はできるだけ正常な雇用員にするようにということをモットーとして、それができる限りにおいては是正しております。実は電産の場合についても、非常にたくさんの臨時雇いがあつたのでありますけれども、これもたびたびの労働協約の改訂その他を通じて、相当多数の人が本職に身分をかえております。その他の会社の場合につきましても、たとえば、これは食料品製造工業の例でございますが、夏期になりますと、半分ぐらいが臨時工であります。そういう季節的な変動でやむを得ざるものを除いては、できるだけ本格的な従業員に直すようにという勧告をしておりますし、私どもはその点については現在のような、人員を正式には最小限度にとどめ、あとは全部臨時工で間に合せて行くというような制度を是認してはおりません。その点については、経営者側に相当強い反省を求め、またそれがあつせんなり調停になる場合においては、明文的にそれを主張しているつもりでございます。  それから人員整理自体の問題は、単に人員という点で考えられる問題ではなくて、現在置かれている経済情勢全体を考えなければならないので、その点から参りますと、戦後にふくれ上つた労働雇用の状態が、あらゆる業種においてそのまま維持されるのが正当であるかどうかということは、これは考え直す必要があると思います。もうそういう整理は一応ドツジ・ラインで全部済んだとおつしやるかもしれませんが、済んだ場合もありましようし、済まない場合もありましよう。これは具体的、個別的に研究するよりほかにはしかたがない問題だと思います。
  28. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 中山会長にお尋ねします。この労働時間の画一的な問題ですが、何か名案があつたらということです。なるほど聞いてみますと、部分的には是正すべきものもあるだろうと思います。けれども、それを全般的な基本に持つて行くということについては、組合も強く反対をいたしておる。いわゆるあの勧告されておる意味は、全般的な基準についてされているのか、それとも部分的にそういう不合理是正するためにやつておられるのか、どちらかこれをはつきりしてもらいたいと思います。
  29. 中山伊知郎

    中山参考人 あのあつせん案趣旨は、全般的な意味であります。これはもう言葉がはつきりしておりますし、それを私どもの方で何か条件をつけたりなんかいだしません。ただ問題の解決のために、これを部分的な改革案にするくふうをされるとか、そのことのために両者がさらに交渉を持たれることは、私はちつとも拒否しておりません。もともと出て来た理由というのが、そういうところにあつたということを、打割つてお話したわけでございます。
  30. 田中伊三次

    田中委員長 菊川忠雄君。
  31. 菊川忠雄

    ○菊川委員 私も準備してありますから、できるだけ簡単に質問して、簡単にお答え願つてけつこうであります。この電気と炭鉱のストライキについて、自主的な交渉を基本として進めたい、そして中央労働委員会は、その間にあつて公正な判断によつて対処される、これは独立後の労働運動のあり方として非常にけつこうなことで、私はその線でこの争議解決されることを強く希望しておるのであります。その点で、今までの御説明の中の緊急調整との関連でありますが、中山さんの従来の御主張は、労調法改正のときにも、緊急調整ということについては強く反対しておられたのであります。その御方針は今もおありのことと伺つて、私了承したわけであります。そしてこの二つ争議の進行にあたつて、ことに電産争議においては、中労委としては最初から公正な線を出されて、いわゆる一本勝負という御方針で、社会の批判も仰ぎながらこの線でまとめて行こうと努力しておられる。ところが、事態がこうなつて参りますと、一方には緊急調整といういろいろの条件も出て来ると考えている人もございます。中山さんの今のお話の中でも、やはり国民経済生活に重大な影響を及ぼしている段階にあるということを御認識のようであります。そういたしますと、今度の争議で私どもが一番注目いたしますのは、中央労働委員会が、せつかくこの独立後の大事な争議に吹いて、自主的な交渉を中心としてこれを解決しようという一本の線をお出しになろうとしておられると思いますが、その場合に、緊急調整ということを期待しておられるのか、それとも中労委としては、どういう場合にも緊急調整は避けるべきものであるという御方針でやつておられるのか、この御方針だけは伺えないかと思います。
  32. 中山伊知郎

    中山参考人 私が緊急調整に反対いたしましたのは、それはちようど参議院の公聴会でございましたか、どうもそれをやつて完全に解決する自信が持てない、どうせほんとうの制度をつくるならば、強制仲裁というところに行かなければならないのじやないか。そ中れでなければ、むしろ現状のままの方がいいのじやないかということを申し上げました。しかし、その立場に立つて私は今緊急調整の問題を取扱つているのではございません。すでにそういう制度ができました以上は、われわれはその制度のもとで態度を決定するのは当然だと思つております。ですから政府の方から緊急調整についての意見を問われました場合には、われわれはそういう過去の因縁を捨て、現状を見て、あの制度の中でそれをほんとうに生かしてやれるかどうか、事態がそこまで来ているかどうかということを判断してお答えするつもりでございます。これは会長一個の意見ではございませんで、総会の意見を聞いて答申することになつておりますから、そのように措置をいたします。ただ現在の状態ですぐ緊急調整に入ることがいいか悪いか、この点は政府の問題でありますから、また越権になつてはなはだ相済まないのでありますけれども、私は現在の状態では、なお若干中労委あるいは一般両当事者においてやるべき余地があるのじやないかと考えていることだけを申し上げます。
  33. 菊川忠雄

    ○菊川委員 そういたしますと、たとえば電産争議のことは別といたしまして、炭鉱のストのごときは、どこの国のストライキを見ましても、また今後日本においてもそうでありましようが、当然貯炭量といつたようなものが、ストライキの圧力が経営者に与える影響を占めるところの一つの要素であります。でありますから、今回の炭鉱ストライキにおいては、一月以上ストライキが続かなければ、経営者にも社会にも現実の圧力にならないということは、最初から既定の事実であります。ようやく今日そういう事態が遺憾ながら現われて来た。従つて炭鉱ストライキは、鉄道とか電気というような、とまればその日からすぐ国民が困るというものとは違うのであります。私どもから見れば、ストライキの特殊性と申しますか、本質からいえば、これからが炭鉱の労働者諸君が、一箇月以上かかつて注いで来た犠牲がいよいよ団体交渉に生きて来る時期だと思います。つまり言いかえれば、炭鉱の経営者は貯炭を頼りにしてあぐらをかいている。また国民も貯炭があつたがゆえに直接にこの問題に対して批判しなかつた。これがようやく一箇月以上のストライキの結果軌道に乗つて来た。このように産業なり国民生活にある程度重大な影響が及んで来るというときでなければ、一箇月以上のストライキのほんとうの犠牲が生きて来ない。でありますから、中労委が、国民経済に重大な影響を持つて来ている段階にあるというのみの認識をもつて政府側の累加急調整の意見一つ条件であるとお考えでありますれば、一考を要するのではないかと思います。今まで炭鉱の経営者が、単に横すべり的な賃金、あるいは実質的な賃金の引下げをもつて臨んでおつた、われわれか誓えば、非常に無謀な態度に対して、ようやく反省の時期になつて来ているという際でありますから、単に産業と国民生活に重大な影響をもたらしたから、そこで緊急調整的な動きが始まるということになるべき性質のものではない。この点についての考え方を伺いたい。
  34. 中山伊知郎

    中山参考人 ただいまの御意見は、特にストライキのあり方という点でお教え願つたので、その点私どもも非常に考えさせられる問題を持つていると率直に私は申し上げたいと思います。ただその問題全体に対するお答えとしては、どうも的をはずれるかもしれませんが、私どもの方から緊急調整を政府にお願いすることはいたしません。これだけを申し上げます。
  35. 菊川忠雄

    ○菊川委員 そこで、中央労働委員会が、電産の争議については社会の批判を仰ぐという方針に転換されて参つております。これはけつこうでありますが、それについて三つほどお尋ねいたします。一つは、電気産業の資本家の方は、この調停案あるいはあつせん案における賃金ベースを認める裏づけとして、将来ほんとうに電気料金の引上げということを考えているか、いないか、そういうことを中労委はお聞きになつたかどうか。  もう一つは、巷間、特に日経連などの文書を見ると、電産争議は何年でも続けられるという無謀な文書を流しております。われわれの手元にも来おります。そこで、中労委では、はたして組合側がそれほど自分の給料なり収入において犠牲を伴わない程度の軽いもので争議をやつているとお考えになつているか、あわせて会社側は一体どれほどの損失を受けているのか。これについて中労委は会社組合との争議の継続に伴つて、どれほどの損失を毎日なり、あるいはある期間において払つておるとお認めになるか。日経連の言うがごとく、一体電産の従業員の諸君は、国民のみをいじめて、その犠牲において自分たちは大した賃金の損失を受けずしてやつておる争議とお認めになるか。この点は、当然社会に訴える中労委の立場としても、何らかの機会に明瞭になさるべきものだと考えますので、この機会にお考えがありましたらお伺いしたいと思います。  それからいま一つは、問題の中心が一週四十二時間制に切りかえるという点であります。こういう制度が一企業において、従来行われなかつたことについての現実の不合理ということはともかくとして、こういうふうな問題は今日起つたものではないのであります。従つて、一度は経営者がこれを認めておるのであります。けれども、その後これについて経営者組合との間にこれの改訂のためにどれほどの努力をして来たのか。ただこの際に組合側から要求があつたから、この機会に交換にこういうものを突如として出したものであるのか。従つて、こういう問題は、今度の争議の際にさしかえ的に決定すべきものではなくて、今後ある期間を置いて労使双方が研究をして、実情に即して解決して行くというのが、本来筋合いのものであると私は考えております。そういう点について、御見解を承りたいと思います。
  36. 中山伊知郎

    中山参考人 第一の料金値上げの問題でありますが、私どもはこの調停案、あつせん案によつて、料金値上げになるとは絶対に考えておりません。それから会社側も、少くとも今日私どもの接しておる範囲におきましては——これはいろいろな方面を当られただろうと思いますけれども、そういう交渉は知りません——電気料金の値上げができるものとは絶対に思つておらないと私は考えております。会社はどう考えておりますか、そこは知りませんが、私どもの見た限りにおいては、その点は少しも電気料金の値上げに問題を持つてつておりません。実は、この点については中労委の方が悪いのでありまして——もつとも悪いといいますか、あるいは誤解を起すもとがむしろ中労委にあつたかと思うのでありますが、最初の調停案のときには、われわれは電気料金は安過ぎる、だから料金改訂をやつて賃金を上げなさいといつて調停案を出したこともあります。その後賃金三原則がありまして、そんなものは出せなくなりました。しかし出た結果を見ますと、どうも料金値上げになつた場合が多い。これは認めざるを得ないと思います。それで今度の中労委の調停案も、何か裏にそんなものを持つているのではないかということを言われるのでありますが、われわれは持つておりません。ただ一点だけ申し上げますと、それは雪気事業の各地域の料金決定の場合、初めから、たとえば四国がその料金で甫成り立たないような料金になつておるとか、あるいはある地域が非常に苦しい料金になつておる、そういう問題はお考え直すことが、むしろ政府当局、あるいは電気事業の衝に当つておられる公益事業局として当然ではないか、こういうことは申しております。これは私は今でもそう思つております。けれども、電気料金の値上げによつてこの賃金改訂が行われるということは、絶対に考えておりませんし、会社側考えておりません。そのことをはつきり申し上げます。  第二は、組合会社の出血ぶりはどうであるかということでありますが、組合会社も、それぞれ損害を受けておると思います。従つて無出血で昔のようにストライキの続けられるような状態であるとは思つておりません。けれども、他の場合と多少違うということは、事実であります。たとえば、今問題になつておる炭労の場合と比べますと、確かに電産の場合は、電源地帯の電源ストが行われた場合は、そのストライキをやる人は少数で、他の人は出ても電気が来ないというだけで、賃金はまるまるもらつおる、こういう場合があるのでありますから他の場合とは違うでしよう。それから会社の場合も、普通ならば商品でありますから、引合わなかつたならば料金を払わなくてもいいのでありますが、これも公益事業でありますから、料金徴集の規定があつて、そう簡単には不払いということもできないような状態になつておる。その点でも会社は他の商売と違つて、若干有利な地位にあることは事実です。組合会社双方の利益の点があつて、普通ならばもつと両者ストライキによつて損害を受けるはずのものが受けていない、こういう事実はございます。けれども、だから両方ともちつとも損害なしに、無出血と幾らでもストライキが続けられる、そんな状態であるとは決して思つておりません。若干の推定もありますが、この推定の金額を申し上げるのは非常に不正確になりますから、ここでは差控えたいと思います。  第三の点の四十二時間という問題は、決して今日突然出た問題ではございません。ずいぶん長い間、会社はあらゆる賃金改訂の場合、あらゆる協約改訂の場合にこれを出しております。たとえば、今度の協約の改訂にも、はつきり四十二時間という制度を出しておりますし、前々から問題になつております職階級の制度というようなものを考える場合にも、四十二時間制度を出しております。これはおそらく私の記憶の誤りでない限り、四、五年来の問題であります。もともと今の制度がどうしてできたかといいますと、これは終戦直後のあの労働協約でできたので、ある意味においては組合の力でございます。一面組合の力でございますが、一面天から降つて来たものでございます。そういう意味があるので、これはいろいろその点について問題があろうと思いますけれども、決して突然出たものでないということだけを申し上げておきます。  最後に、この点に関連して一言私どもの方で申し上げたいのですけれども、どうも皆さんは、たとえば四十二時間の問題を中心にして御議論なさつておる場合にも、非常にあつせん的に問題をお考えになつておる、中労委以上にあつせん的にお考えになつておるので、この事態をどう納めるかということについて非常に直接の御関心を持つておられるのでありますが、その点になりますと、私はいささか理論的に考え過ぎておる、この点をひとつ御承認願いたいと思います。
  37. 田中伊三次

  38. 山花秀雄

    山花委員 時間もございませんので、一つだけお尋ねいたします。中山会長がこの争議についてたいへん努力を払つておられることは、われわれとしても敬意を表しておるのであります。電産の争議は、国民の輿論というものが相当影響して来ると思うのでございますが、ただいまの説明中に、賃金の問題に関して、日本二局い時間給であるという、中労委の会長として、これは相当権威ある一つの言動になつて来ると思うのであります。私どもはそう考えておりませんが、確信を持つて日本一高い時間給であるとお考えになつておるかどうか。
  39. 中山伊知郎

    中山参考人 その通りでございます。労働省の毎月勤労統計の資料をごらんくだされば、時間当り賃金が最高であるということは、おわかりになると思います。
  40. 山花秀雄

    山花委員 私ども労働組合に関係しておりますので、自分の組織関係の時間給はよく心得ております。六時間半の労働時間になつておると思うのでありますが、上りましたところで一万五千四百円のベースだ。これは基準内賃金だと思うのであります。もつと高い労働賃金は、実例を示せと言えば幾らでも示す余地がございます。いやしくも中労委の会長が、日本一高い時間給だということになりますと、この争議に相当悪い大きな影響を及ぼすと考えております。もし理論的にこの問題を対決して行くというのでございましたならば、私は資料を整えて論争したいと思います。今日は、説明を聞いて、それに質問をするというだけでございますから、確信を持つてそうおつしやられるというお答えであれば、あとでこの問題は私もどの範囲で論議して行きたいと思います。
  41. 田中伊三次

    田中委員長 春日君。
  42. 春日一幸

    ○春日委員 私はこの十一月に示されました中労委のあつせん案についてお聞きしたいのであります。会長はただいま公益事業に対する第三者批判の合理性を、このあつせん案の中に非常に強調されておるのでありますが、私はその合理性、不合理性について、どうも了解できない点が一つあるのでございます。それはすなわち、このあつせん案骨子をなすものは、いわゆる統工交渉統一賃金という問題であり、組合の要求があつせん案において、やや実現されておる。そこで他の一つは、労働条件を修正するというこのことにかかるのでございます。これを具体的に申しますと、二週間に三日の休日がある。従つて、その一日は結局休日賃金という形の特別手当を受ける、この不合理性がこの機会に修正さるべきである、こういうところに所論があるように伺うのでございます。そこでこの第二査項目がいかに修正されるかという問題の内容をなすものは、結局組合員にとつては、実質賃金の増減という問題にかかるのでございますが、さすればこれは結局あつせんベースの中に、その考え方のものが含まれて来なければならない、かく推定されるのでございます。会長はこのあつせん案を提示しつつ、この第二項目が修正されることを期待されておるように伺つたのでございますが、そうであるとすれば、その期待の中において裁定されたこの一万五千四百円ベースというものは、これは当然組合が譲歩した場合における損失の補償がここに考慮されておらなければならぬと思うのでございます。すでに会長は、電気産業というような公益事業、しかも電気技術という特殊の技能者に対する賃金は、一般基準よりも相当周くあつてもよいであろうという御認定の上に立つておるのであります。そうすれば、既応の電産賃金の一万二千八百円というのは、この第二項目において勧告をされておるところの、いわゆる二週間に三日休み得るというその条件の上にきめられておる一万二千八百円なのでございますから、従つて、現在全官公労その他国鉄あるいは全専売等の仲裁、勧告、裁定、すべてのものが現行基準の二〇%アップを基準としておりますこの場合、かりに会長が、第二項目における組合の譲歩を期待されつつ、このあつせんベースを御裁定になつたといたしますれば、これは二〇%プラス・アルフアのものでなければならぬと考えるのでございます。しかるところ、一万二千八百円に対する一万五千四百円は、二〇%を割るのみならず、この第二項目を、組合がかりに合理性を是認して譲歩したような場合における、それに対する補償が何ら考慮されていないと思うのでございます。従いまして、そのあつせん案は、あなたの言われる合理性が強調されるという点において、なおかつここにいささか不合理のものを含むのではないかと考えるのでございますが、これに対してわれわれはいかに了解すればよろしいか、ちよつとお伺いいたします。
  43. 中山伊知郎

    中山参考人 二つの問題を一緒にお答えさせていただきます。先ほど山花さんは調査すると言われましたが、私の方でもその資料だけをはつきり申し上げておきます。これは労働省の毎勤でありまして、その中には基準内外を含んでおります。このことをはつきり御認識の上で、御調査願いたいと思います。  それから、ただいまの御質問でございますが、まことに論理的にはその通りでありまして、私はその点について、先ほど出しました調停案が、その趣旨において、特に労働条件是正という問題まるまる含め、ます場合においては、ある程度のマイナスであることを認めざるを得ません。そういう問題も含めて、最後にある妥結点がおそらくこのあとに予想される場合には、今おつしやつた点を考慮されてしかるべきだと思つております。しかしこのあつせん案が、もし不幸にして両者から、どうしても妥結せずに、けられた場合には、その問題の解決を、私は両当事者におまかせしていいのではないか、こう思つております。私ども趣旨は、その意味において、最初の調停案のその金額を、少くとも金額の面でまず守つてもらう。そうしてその上であと解決をやつてもらうということが本旨なんであります。
  44. 春日一幸

    ○春日委員 会長はこのあつせん案はきわめて第三者的に合理的なものであるということを非常に強調されております。しかして電産がこのあつせん案を提示されてから、二時間足らずしてけつてしまつたということで、これは組合のあり方に対して、全然慎重な考慮をしないでけつたというふうに承りましたので、私は特にこの問題を強調したいと思うのでありますが、明らかに現行ベースよりも譲歩しなければならないようなあつせん案を提示されれば、組合はその責任と権威において、これをすみやかにけらなければならないという結果になるのでございます。従いまして中山会長は、一万五千四百円のあつせんベースは、団体交渉において相当増額されてもしかるべきであり、それはなおかつ合理性を有するものであるというお考えをお持ちであるならば、やはりそういうようなことをいろいろな機会に明らかにされておかなければならぬ、かく考えるのでございます。その点はただいま明らかにされたことをもつて了承するものであります。
  45. 中山伊知郎

    中山参考人 そのように了承されますと、少し困るのでありますが、私はそういう問題は将来の問題である、こう思つております。一言だけ申し上げますが、このようなあつせん案に到達することが、われわれの努力の極限であつたということだけを申し上げて、あとはひとつおまかせをいたします。
  46. 森山欽司

    ○森山委員 補足的に、なおきわめて大ざつぱなことを伺いたいと思います。先ほど私の質疑に対して中山会長は、両者とも緊急調整の要件を満たすが、積極的に労働委員会の方から、緊急調整の発動を要請することはないというお話であります。それはもとより法規の建前から申しましても、従来の中山さんの御意見から申しましても、そうあるべきだと思いますが、これは菊川さんの御質問に対するお答えかもしれませんが、なお緊急調整の発動について余地を残して、いるというような御発言があつたと思います。その余地を残すというのをきわめて具体的に伺いたい。  次に、二番目の問題でありますが、争議解決について、われわれはあくまでも中央労働委員会が中心となつてこの際の御処理を願うことが最善であると考えております。しかし、本労働委員会の各派の委員といたしましても、両争議のすみやかなる解決を希望し、本委員会としてのある種の態度の決定、たとえばある種の勧告というものすら今日考慮されておるのでありますが、そういうようなわれわれの心構えに役立たせる意味において、労使双方に対して、会長は率直にどういうような見方をしておられるか。すなわち、紛争の解決に対して、労働者側、使用者側ともに、従来の解決にあたりまして、一体どういうお感じを持つておられるか。たとえばわれわれが労働者側から聞くところは、炭労の経営者というのはまことに頑迷固隔であるというような悪態を聞くのであります。それからまた中山さんが先般「明窓」という雑誌に最近の労働問題について書かれております。これは化学工業会館か何かにおける講演の速記でありますが、わが国の労働運動の指導者の政治感覚は明治三十年代であるというようなことをおつしやつています。とにかくもし解決するとすれば、ある種の政治的解決ということにならざるを得ないのではないかと思うのであります。そういうようなことを中山さんが書かれておる。もとよりこの電産、炭労の両争議の指導者たちをさして言つておられるのではないでありましようけれども、中労委の会長として、労働者側並びに使用者側が、争議解決に対して根本的にどういうような心構えでおるかということについて、率直な御見解を承りたい。
  47. 中山伊知郎

    中山参考人 緊急調整への余地という意味は、どういう意味かというお尋ねでございますが、これは私の方でできるだけのことをそれまでにやる、こういう意味でありますから、そのように御承知願います。
  48. 森山欽司

    ○森山委員 まだやれるということですか。
  49. 中山伊知郎

    中山参考人 そうです。第二の点は、労使双方についてどういう感覚を持つておるかということでございますが、これも率直に申し上げますと、労働者の方も、会社の方も、まことにわがままである、私はかように考えます。
  50. 田中伊三次

    田中委員長 次に、電気事業連合会事務局長平井寛一郎君にお願いいたします。  ちよつと平井さんに申し上げます。お招きしておいて時間の制限をして申訳ありませんが、今までの経過についてはすつかり状況がわかつておりますので、時間の都合により十分か十五分くらいの範囲内で、現段階の問題として、その解決の見通し等を中心にしてお話願いたいと思います。
  51. 平井寛一郎

    ○平井参考人 経過につきましては、すでにお話があつたそうでありますので、一応経過の御説明は省略させていただきまして、今回のストライキ、賃上げ争議に関します会社側の見解を簡単に申し上げてみたいと思うのであります。今回の賃上げに関しましての会社側の基本的な考え方は、大体四つの点からお話ができるのじやないかと思うのであります。その第一の点は、会社といたしましては、電産の現行賃金は他の産業に比べて決して安くないという点を見ておるのでございます。電産の現行貸金は、先ほどお話がありましたように、基準賃金は一万二千八百円でありますが、総賃金収入においては大体月一万六千七千円見当になつておるのであります。この全産業の平均に対する割合は、相当高いのであります。また五百人以上の大口工場に比べましても、かなり上まわつた数字にあるのであります。一時間当りの実働賃金を見ましても、一般産業のたとえば五百人以上の工場の平均が七十四円でありますのに対して、現行は九十六円以上の水準になつておるのであります。従いまして、私どもとしては、電産の現行賃金は他産業に比べて決して安くない。よつて、その見解においてこの問題も見ざるを得ない一つの制約があるのであります。組合の方はいわゆるマーケット・バスケットの理論をもつて二万円以上の要求をして参つたのでありますが、これは今までのような、物価が上つたからそれに応じて従来の生活水準を保てるようにしてくれという要求とはかわつておりまして、健康にして文化的な生淋が営まれるようにしてくれという理論なのであります。これは組合員の心境としてはよくわかるのでありますが、やはりわれわれ国民経済の現状からいたしますと、これは今、少し取扱いにくいのじやないかと考えておる次第であります。  第二の点は、賃上げが企業経理のわく内で考えざるを得ないという制約がある点であります。すなわち、不用意にいたしますと、ただちにこれが電気料金の値上げを招来するというようなおそれもありますので、これをわれわれは極力避けたいという考えを持たざるを得ない立場にあるのであります。御承知のように電気料金は、政府の厳重な監督下に置かれておりまして、聴聞会その他の、手続を経て、政府の認可によつて決定されておるのであります。現行電気料金の原価の中には、賃金として支払わるべき限度の現行賃金しか計上されておらないのであります。もし組合の要求をいれるといたしますと、年に二百億円という大きな支払い増加となるのでありまして、こうしたものは企業経理のわく内ではとうてい吸収し得ないのであります。従いまして、もし組合の要求をいれますならば、その大部分をば結局は電気料金の値上げに持つて行かざるを得ないという形になるのでありまして、会社としては極力これを避けたいと考えておる次第であります。  また組合の方では、今年の夏が珍しく豊水でありましたので、この豊水による会社の収入増をば非常に大きく申しておるのでありますが、電気事業経理は、短期間の一時的現象をもつて判断することはきわめて危険でありまして、冬季渇水期を考えに入れました年間の収支の均衡の上に立つて論ぜざるを得ないのであります。ことに豊渇水による収支の増減は、その大部分をば法令の定めるところによつて強制積立てさせられておつて、この積立金をば、賃金その他に流用することはできないような制度のもとになつておるのであります。従いまして上期豊水であつて若干の利益があつたけれども、これをただちに恒久的な今後の賃上げの原資として考えることはできないという点があるのであります。  また会社は、電源開発の資金調達の一方策として、上期の期末に、終戦後初めての一割五分という株式配当を実施しようとしているのでありまするし、またさらにそのあと引続いて増資計画も持つているのでありますが、もしこういうような点で配当をなくしてしまうなどという形になると、資金は集まりません。従いまして、現在すでに九電力会社だけでも二百万キロワットに近い水力、火力の建設工事をやつておるのでありますが、それらの工事も、へたをするとやれなくなるという不安に追い込まれる次第であります。私どもが、この企業経理のわくをはずしてまでも、どうしても賃金引上げの要求に応じ得ないという主張を持つている理由は、ここにある次第であります。  第三の点は、電産の労働条件は、他産業の水準に比べて相当に甘いという点であります。と申しますのは、たとえば電産の所定労働時間は、現在週三十八時間半になつているのでありますが、一般産業の水準は四十三時間以上になつておりまするし、現在では四十二時間に足らないような会社は、国内には非常にまれにしかないのであります。そのほかいろいろと他の労働条件につきましても、説明は省略いたしますが、日本の現在の社会の水準から見ますと、相当に甘い水準にあるのであります。今回の賃上げに応ずる条件といたしまして、会社組合に対して、労働時間その他の労働条件社会水準化及び職階制の実施等を強く要望して、その実施に伴つて問題の解決をはかりたいということを主張しております理由も、ここにあるのであります。  第四に申し上げたい点は、電力会社は、昨年の五月再編成をいたしました。従いまして、爾来独立採算制となつておりますので、企業経理の実態に準じ格差ができている点であります。御承知のように、電産は全国で単一の組合組織を持つておるのでありますが、会社の方は、再編成後は従来のような自発という機構を通じてのプール計算をすることができなくなりまして、おのおの独立採算制をやつているのであります。従つて、その経理内容は、必ずしも一律でなくなつておる。今回の問題に関連しまして、会社が全国的な統一賃金をうのみにすることがきわめて困難であるというのが実情でありまして、組合に対して、各社別賃金、各社別交渉ということを主張いたしましたいきさつについても、そういうところにもとがあるわけであります。  もう少し補足いたしますと、九月の調停案の出る前の調停過程におきましても、当初賃上げの要求が出ましたのは、去年の暮れに問題が解決して現在の賃金がきまつて、すでに六割の値上げの要求がこの四月に出たことに端を発しておるのであります。大体その後における物価もおおむね横ばいでありますし、先ほど申しましたように、賃金水準その他から見ても、必ずしも他産業に比べて悪いとはいえないような事情にありますので、当初は賃上げの要求に応じかねるという建前をとつたのでありますが、その後組合が調停を申請し、調停段階に入りましたときには、労働条件社会水準化を実施するならば九百五十円までは出してよろしいという主張をし、また調停案が出たあとにおいて——両当事者かこれをけつたあとにも、団体交渉においてはそれを出したのでありますが、どうしても問題がまとまらないで争議が順次ひどくなりましたので、そういう段階で処理しますのには、それぞれの会社が企業経理の許す限度において、できるだけ組合の要求に近づくようにしようということになりますと、それぞれの経理のわくが違つておりますので、やむを得ず問題を解決するために企業別に賃金をきめ、またそういう意味において企業別の交渉をしたいという主張をした次第なのであります。  こういうふうな会社側の見解の上に立ちまして問題に臨んでおるのでありますけれども、この十一月の十四日以降、再び中山会長からのごあつせんによりまして団体交渉に入つたのであります。この交渉は前後八回にわたつて中山先生に非常に御苦労の多いごあつせんを願つたのでありますが、この二十六日に至つて遂に中山会長からのあつせん案の御提示を受けるに至つたのであります。このあつせん案骨子は、前回の調停案基礎として——その前回の調停案当時においては、ただ労使双方の良識ある協議という形にまかされていた諸内容を、非常に明確に具体化されたという点がかわつておるのでありますが、このあつせん案では、労働条件社会水準化の点については、概して会社側主張がいれられておるのであります。しかしそれでも、賃金の改訂は十月一日からであるが、四十三時間の実施時期は一月一日からにするというふうにして、われわれとしてはそういう面においても非常に原資的に苦しいのでありますし、その他の労働条件についても、なお十分でない点があつたのでありますが、ともかく労働条件社会水準化ということについては、おおむね会社側主張に近い内容であつたのであります。しかし、一面において統一賃金労働協約というような面においては、おおむね組合側主張がいれられておるのであります。先生の言葉をかりますと、いわゆる双方刺し違えというような形においてあつせん案が出された次第であります。このあつせん案が出た直後に、組合の方はさらにこれをも拒否いたしておりまして、そして今日なおストを続けておる次第であります。会社側としても、このあつせん案というものは、やはり会社側の従来の主張から申しますと、経営格差から来るところの格差賃金、それから労働条件合理化というような点については、まだ会社側主張とは非常に隔たりがありまして、大きな不満と不安の面があるのでありますけれども、今次の争議が何分国民経済の運行並びに需用家各位の日常生活に与えます影響の深刻な点を考慮いたしまして、二十八日の晩に至り、遂にこのあつせん案を受諾することを決意した次第であります。  会社としては、組合の方でも何とか公益事業に従事する者の立場から、もう一度考えていただくことを期待しておるのでありまして、それによつてこの争議行為が終息することを念願しておる次第であります。
  52. 田中伊三次

    田中委員長 それでは一応個々に御発言に対して質疑をしていただきます。森山君。
  53. 森山欽司

    ○森山委員 平井さんにお伺いいたします。今回の電産の要求は、マーケツト・バスケツトの方式によつて出されておる。このマーケツト・バスケツトで出された要求は、電産だけでなくして、他産業も同じようにやつておる。その性格についてどうお考えになるか、御見解を伺います。
  54. 平井寛一郎

    ○平井参考人 いわゆる健康にして文化的な生活の営めるような、あるいは戦前の楽しかつた生活水準を維持したいという組合員の気持は、私もよくわかります。しかしながら、日本の経済の現状という面から見ますと、これを今実施することには多分の無理があると考えております。
  55. 森山欽司

    ○森山委員 実施することが容易であるとか、むずかしいとかいうのでなく、私の伺いたいのは、マーケツト・バスケツトの方式で賃金の値上げを各産業こぞつてと申しますか、いろいろやつておるわけでありますが、その面についての政治的性格をどう見るか、あなた方はどういう見解で見ておられるか。
  56. 平井寛一郎

    ○平井参考人 これはやはり現実の問題は、国民経済の問題でありますので、私どもとしましてはマーケツト・バスケツトの理論——理論というよりはその現実の計数となつておりますところの内容を見ましたときに、とうていこれは日本の経済の現状では無理であると考えております。
  57. 森山欽司

    ○森山委員 あなたに聞くのは不適当かもしれないのですけれども、あなた方が見て無理な要求をマーケツト・バスケツトの形で組合は出しておる。そういう無理な要求を各産業こぞつて出して来る。そういう組合側の動きを、あなた方はどう見るかということを伺いたいのです。
  58. 平井寛一郎

    ○平井参考人 どう見るかというのは、どういう意味でございますか。
  59. 森山欽司

    ○森山委員 賃上げの方式が従来のCPSからマーケツト・バスケツトに転換した。これを方式的に指導している総評あたりの発言によれば、総資本に対するところの云々というような表現を用いております。あなた方は、その総資本の一部なのである。で、そういう動きをどう見ておられるか。あなた方ができない、こんなことは無理じやないかと言うようなことを、とにかく組合は言つて来るでしよう。それを一体どう見るか。いわば、あなた方から見れば難題をふつかけて来る、——私は難題であるとは思つておりませんが、そういう今の組合の動きをどう見ているか、それを聞いておるのです。
  60. 平井寛一郎

    ○平井参考人 私は外国、たとえばイギリスの最近の労働運動の動き等の話も聞いておるのでありますが、限られた国民経済のわく内で、たとえば労働者の要求だけが、まず何ものにも優先するということを、不用意にやりますならば、一国の経済は成り立たないと思うのであります。今年の秋の労働攻勢は、期せずしてマーケツト・バスケツトの理論の上に展開されていることは確かな事実であります。これはどういういきさつか、私は存じませんが、世間の話によりますと、総評の方からいろいろとそういう構想を立てて、その線に各組合の方が同調しておられるということはわかるのでありますが、もし不用意にそういうふうな構想、たとえば何でも潤沢に物を使えるという構想ができると考えるのであるならば、日本の経済は私は成り立たないと思うのであります。国の経済は、やはり労働と資本との均衡のある形における調整がなされて、初めて健全に発達するものではないかと思うのでありまして、労働条件のみをよくするということは、資本の蓄積もとめますし、また(「資本家だけもうけるのはどうだ。」と呼ぶ者あり)——資本家だけとは決して言つているのではありません国民経済というのは、そういう形で発展するものだと思うのであります。たとえば、小さなわれわれの産業だけについて考えてみましても、それではマーケツト・バスケツトの理論がよいものだとして、その計数をかりにのんだとしても、これは当然最後的には電気料金の値上げという形ではね返るのでありますから、生産と消費との関連を無視しての案は、われわれとしては、産業の発展を通じて国が伸びるという形から見てどうしても困難ではないかと考えております。
  61. 森山欽司

    ○森山委員 もう一度だけお尋ねいたしますが、電気事業者の立場からすれば、これはできないのだというあなた方の結論は、私もわかる。あなた方が絶対できないということを、ともかく言つて乗る組合側の要求、しかも電気産業だけでなく、全産業的にそういう動きがある。それはお聞きになつておるでしようが、そうとすれば、それをあなたはどういうふうにお考えになるかということを私は聞いておるのですが、あなたは電気事業連合会の事務局長で、非常に事務的な御答弁しかできないとすれば、もうこれ以上はお聞きしないことにいたしましよう。  もう一つお伺いいたしますが、企業経営のわく内ではなかなかできないと非常にごもつともな点も多々あると思いますが、電気会社の考課表等を見ますと、重役が並び大名のようにずつと並んでいるのです。一体電機産業自体の内部がトツプ・ヘビーの構成ですが、ああいうことも企業合理化の一翼として、賃金の方であなた方が毅然たる態度をおとりになりますなら、会社経営自体についても、毅然たる態度をおとりになるというお心持でやつておられるのか、それを承つてみたいと思います。
  62. 平井寛一郎

    ○平井参考人 ただいま御質問の点は、申し上げるまでもなく、会社経営合理化は、あらゆる面において実施いたします。今、電気産業の場合に役員の数がトツプ・へビーであるかもわからぬというような御発言があつたと思うのでありますが、私どもは決してそうとは思つておりません。現在における各社の役員の数は、非常に少いのであります。またごく少数の現業役員をもつて運営をいたしておるのであります。また賞与その他についても、非常に遠慮した扱いをいたしております。これは一般の公共の産業等の実例からごらんになりますれば、たとえば今期末の決算の上における数字等がいかに緊縮したものであるかということが、よくおわかりになると思います。
  63. 森山欽司

    ○森山委員 もう一問だけお伺いしたいのは、スト行為によつて国民の受けておる迷惑というものは、事実であろうと私は思います。それに対してスト自体を禁止するわけではないが、スト行為に出る際には、その方法等にある程度の制約を設けたらどうかという意見があるのでありますが、そういうことについて、あなたはどう考えておられますか。
  64. 平井寛一郎

    ○平井参考人 現在電産の方でとつておりまるスト行為には、いろいろな争議手段を持つております。たとえば電源ストとか、あるいは停電スト、職場放棄など、これは非常に特殊な変化の多い争議手段を用いておるのでありますが、そのうち特に電源ストとか停電ストと申しますものは、争議の面当事者の間にもなかなか大事でありまして、痛手はあるわけでありますが、一般の国民大衆のこうむる損害が、それに比べて非常に大きいのであります。従つて、こうした争議手段というものが、ここに長く用いられるということになりますと、私どもは自然国民への御迷惑というものに対して、非常に恐縮するものでありますので、その面からすると、何とかして早く妥結をしなければならない。——妥結ならばよいのでありますが、従来の占領下における例年のいきさつというものは、悪くいえば安易な妥結に追い込まれておるような事情にあつたのであります。安易に妥結をすれば、また電気料金の値上げとか、電源開発の資金が集まらなくなるというところに追い込まれる。われわれとしましては、この産業の経営の立場において、そういう公益的な視野からする、長い目から見た大きな制約があると同時に、当面の事態も早く解決しなければならぬという二つの制約間において、非常に苦慮するのであります。こういうふうに当事者双方よりは国民大衆に非常に迷惑のかかるような争議手段について、最近いろいろ巷間において、そういう争議は抑制したらどうか、あるいは禁止したらどうかという声のある点については、大いなる関心を持つて、私どもは特に研究をいたしております。
  65. 森山欽司

    ○森山委員 最近非常に停電が多いものですから、一般の消費者の方で、電燈会社から料金をとりに来ても、払わぬという運動があります。われわれはどうしても払わぬといつてがんばつたら、会社はどうしますか。そういうときについての心構えを承りたい。
  66. 平井寛一郎

    ○平井参考人 非常にむずかしい問題であります。この争議行為は、現在においては法の許した形の中で行われておるのでありまするし、組合としては、おそらくそれに対して弁償の罪はないと申すでありましよう。会社でも、そういう点から申しますと、当然それは困る立場にあるわけでございまして、料金の不払い運動が起ることは、私どもとしては何とかそういうことのないようにと強く念願いたしておりますので、こういう面に対しては、できるだけ国民の皆様によく御了解をいただくことによつて善処したいと考えております。
  67. 田中伊三次

    田中委員長 前田君。
  68. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は経営者側を代表して平井事務局長がここにおいでになつて事情を述べられたその態度を、はなはだ遺憾と思います。今の経過報告の中に、最終的には二十八日にあつせん案をのんだ。のんだ理由として、国民経済に及ぼす影響等を十分に考慮して、のめないところをのんだという経過的な一応のあいさつはございましたが、私はこれだけ国民生活並びに国家産業に及ぼしておる影響考えますならば、この衝に当つておる経営者側として、この国会を通じて、少くとも国民に対しての陳謝の意が十分尽されてしかるべきだと考えます。私はその点に対して、経営者側を代表する平井さんの態度を、はなはだ遺憾と思います。といいますことは、停電ならば新聞を通じて公告するということで、会社側は事足れりとしておられるかしりませんが、及ぼす影響というものは、はかり知れないものがあると思うのです。これは売られたけんかであるからやむを得ないという態度であるかもしれませんが、今回の問題にしましても、大半の責任は会社側も負わなければならないと思います。少くとも労働問題の取扱い、いろいろな労使関係のやり方としましても、もつと会社側もくふうして、こうした問題を起さず、そうして一般産業、国家に迷惑をかけずに済むようなことのために、もつと真剣なる態度をとつてもらいたい。あるいは業者の方としては、とつておると言われますが、われわれが見るところでは、もつと手を尽してやるべき方法があると思います。今、最後に森山委員から、もし不払いをした場合はどうするかという質問がありましたが、現にやむを得ない事情で不払いをし、あるいは遅滞をした場合は、スイツチを切つてしまつて、とめるのです。そこまで酷なやり方を個々の会社はやつております。しかるにもかかわらず、こういう問題で毎日とめようと、何百万円の迷惑をかけようと、これは、不可抗力だからやむを得ないということだけでは、私は済まないと思います。この問題に対する基本的な考え方、今後一体こういう問題が起らぬためには、会社側はどうするかという考え方について、まとまつた意見があれば、この際承つておきたいと思います。  それから先ほど、要するに企業経営のわく内では、労働組合の要求には応じられない。これはひいては料金値上げになる。しかも料金値上げは厳重な政府監督のもとにあるから、なかなか上げられないと言われましたが、あつせん案をのむという返事をされました。あつせん案をのむ、その範囲内においては、企業経営のわく内で十分やれるということであるのかどうかお聞きしたい。それから問題がいかに解決するかということは別といたしまして、近いうちに必ず料金値上げの問題が問題になるかどうか、あるいはそういうことはないという経営者側の見解であるかどうかという点を、この際お聞きしておきたいと思います。
  69. 平井寛一郎

    ○平井参考人 ただいまは私に非常に大事な御注意をいただきまして、まことにありがとうございます。電気事業者といたしましては、今回の争議がこういうふうに非常に長引いておりますので、その意味において、国民の皆様に非常に御迷惑をかけております点については、まことに遺憾に感じておる次第であります。この機会に、その点につきましていろいろ御迷惑をかけましたことに対しましては、深くおわびを申し上げる次第であります。  それから次の、今回のあつせん案を受諾するについては、電気料金の値上りにならないということの確信があるかというお話であつたのでありますが、この点につきましては、今回のあつせん案に対しましての私どもの気持としましては、まだその内容その他について不確定な点もありまするし、幾多まだ不安の点は残つておるのであります。しかしながら、その不安の点のはつきりするまで問題に対してまとめる方向へ出ないというのでは、どうしても困難でありまするので、その辺の点は今後の努力によつて、たとえば経営合理化をもつと徹底的にやるとか、また労働条件その他の社会水準化についても、一刻も早くこれを実現するとか、そうしたいろいろな努力をすることによつて、何とかしてこの経営のわく内で乗り切りたい、またぜひ乗り切らなければならないという気持の上に立つて事態を収拾するために、思い切つてこのあつせん案を受諾した、こういう気持なのでございます。従いましてわれわれとしましては、今回の賃上げをもつて、ただちにそれを電気料金にはね返らせないようにという気持において、その努力の決意の上に立つてこれを受諾した、こういうふうに申し上げたいと思つております。
  70. 田中伊三次

    田中委員長 それでは青野君。
  71. 青野武一

    ○青野委員 私が平井さんにお尋ねいたしたいと思いますことは、私ども社会党の立場から、他産業に比べて、電産の労働者の諸君が多少いい点は認めます。けれども、この長い争議を通じて、私どもはみずから労働者としての生活権の防衛闘争と考えて、有形、無形にわれわれは応援の立場に立つておるのですが、お尋ねしたいと思いますことは、今森山君も質問しておりましたが、特需産業に送電をしておるのを大体七割と記憶しております。電源ストが行われても、特需産業、特に朝鮮の戦争に必要な近代戦争兵器部分品等をつくつておる工場、会社に、依然として七割の送電を経営者の手によつて継続をして行つた。そこに二割の電源ストとして、中小企業者や一般需用者に対して、停電による迷惑が引続き行われて来た。こういうことは一体だれの責任になるのか、これを私は第一点として承りたいと思います。
  72. 平井寛一郎

    ○平井参考人 御質問の趣旨によりますると、大口工場の方へは制限をしないようにして、一般の中小企業あるいは家庭需用の方に非常な制限をかけたというふうなお話であつたのでありますが、実際に電源ストがやられまして、電源が足りなくなりました場合の扱いをするのについては、会社としては非常に苦慮するのでありまして、できるだけ公平を期する意味において各社とも扱つておるのであります。それで、たとえば北陸であるとか北海道とかいうような地域になりますと、総需用に占める大口需用の割合が非情に大きいのであります。従いまして、北陸などでは、特に二割五分というようなひどい制限にならない程度の、また水の状態のいい限りにおいては、できるだけ大口工場だけの供給制限をお願いすることによつて、おおむね切り抜け得るのであります。ところが、東京、大阪というふうな、ああいう大都市を持つておりますところにおきましては、需用構成が、そういう大口工場よりは、中小工場、一般の家庭需用というものの占める割合が非常に大きいのでありまして、とうてい大口工場の調節だけでは乗り切れないようになるのであります。特に大都市地域には、交通機関あるいは水道、ガスその他のような、どうしても民生安定上同列に扱いかねる産業があるのでありまして、従いましてそういうふうなところからは——たとえば鉄道なんかでも、電力の供給を減しまするには、相当前からお話をして、そうしてダイヤをかえてもらうという形になるのでありますが、なかなかその量を減らすことに困難があるのであります。こういうことから、そういう切り抜けがたい需用が相当の割合を占めておりまする関係上、その他の面で一般大口工場と中小及び一般家庭需用との間の数量的の比率は、おおむね均等させるような形において時間的に供給を制限し、あるいは減少をお願いするというようないろいろな方法をとつて切り抜けておるのでありまして、計数的にその内容を見ますると、決して片寄つた扱いをしているというわけではないのであります。その点は御了承をいただきたいと思うのであります。
  73. 青野武一

    ○青野委員 あとに質問者もありますから、私はまた別の機会にお尋ねしたいと思いますが、もう一つお尋ねいたしたいと思いますことは、なるほど御説明では、一時間賃金においては一般が七十四円、電産は九十六円——それが正確なものであるかどうかは知りませんが、その比率から行けば確かにうなづける点もございます。しかし、今私がお尋ねをいたしましたように、この争議がこれだけ長引いて、十一月の二十八日に至つて中労委のあつせん案をのんだのであるが、十一月二十八日にあつせん案をのむようならば、何のためにこんなに争議を引延ばして来たか。その重大なる原因、理由はどこにあるかと申しますと、やはり大きな力が加わつて、いやおうなしに送電しなければならないところには、経営者の手によつてどんどん送電をして行き、文句を言うても、一般の消費者のうちあるいは中小企業あたりに対しては、容赦なく停電をして行つて、それがあたかも争議を続けておる電産の労働組合がやつておるような宣伝が、全国的に巧妙に行われて来た。電産労組が争議をするから、われわれは停電を食らつて生活上非常に困つておるのだという印象が全国的に流れ、そういうところにつけ込んで、外国の勢力と結んだ日経連、電力会社の諸君が、自分たちは一箇月十万円の給料で、十万円の交際費を使つて、必要以上の理事の頭をそろえて、そうして全国的に九分割反対の線を押し切つて今のような電力会社をつくつて、しかも企業別の賃金交渉を頭からかざして、最後になつて調停案をのむようならば、もつと誠意を持つて労働組合交渉すれば、私どもは相当早期に解決がついていたはずだと思う。これだけ一般の人々に迷惑をかけて、結局停電による電気料金というものを、会社側は不当に徴収されておると思う。今の規定はどうなつておるか知りませんが、この停電によつて不当徴収した金は、全国的に見れば一体どれくらいになつているか。その金額は一体どうするつもりか、割もどすのかあるいは社会事業あたりに電力会社は寄付でもする考えがあるか。そういうふうに一方的に会社側がかつてな停電を今まで断行して来て、そうして労働組合の責任であるかのごとく言つて、迷惑をかけておいて、過大な徴収金をとつてそのままあたりまえであるというような態度は、将来も私は許されるはずはないと思う。この点について、この衆議院の労働委員会は、衆議院本会議の縮図である。これは本会議にかわるべき重大な委員会でありますから、そういう点は迷惑をかけた人々から不当過大に徴収した全国的金額はどのくらいあるか、その金は一体どうするつもりか、この二点を私は明らかにしておいてもらいたい。
  74. 平井寛一郎

    ○平井参考人 いろいろな形で、実は停電あるいは電力制限をいたしておるのでありますが、自然送りません場合には、それだけやはり会社の方でいただきまする金も減るのであります。これにはいろいろの供給規定等もありますので、その線で処理いたしておるのであります。不当にもうけるとか、そういうふうな気持は毛頭ないのであります。むしろ迷惑をかけることは非常に恐縮に思つておるのでありまして、そういうことのないことを念願いたしておるのでありますが、現実に減りましたものを、今、不当に幾らというふうなお話がございましたか、そういうことで、たとえば大口需用家の場合にしましても、あるいは小口の工場にいたしましても、おおむねメートルはついておりますので、その送らない分は送電量が減つた形になつておるのでございます。ただいまおつしやつたようには考えておらない次第であります。
  75. 春日一幸

    ○春日委員 平井さんは、ただいま組合の要求がいれられないという条件一つに、企業経理上余剰財源がないということを言つておられるわけであります。そこで組合は、財源を指摘しその矛盾をついておるわけだが、それに対する抗弁として、経営者の方は、かりに豊水期であつても、冬季の渇水期でも、平均支出であることを考えよということであります。それはそれといたしまして、その電源開発の資金を、一般商業規模において募集するためには、どうしても一五%の株主に対する配当を確保しなければならぬ、こういう一項があるわけでございます。先般電力料金が値上げされる場合においても、やはり株主に一五%の配当をしようと思えば、六割三分何厘というああいう値上げをせなければならぬ、こういうことでございます。今日の経理はどうあろうとも、支出・収入ということを全然考慮なしに、まず資本家に対して一・五%の配当を第一番に考えられるというこの経営方針に対して、反省される余地はないか、このことを私はお伺いしたいと思うのでございます。  そもそも電気事業というものは、営利会社とは違つて、まさしく公益事業である。こういうような工場から考えますとき、なるほど電源開発資金を拡充することのためには、一般商業規模におけるところのものと互角に行く必要のために、そういう配当の措置を講ずる必要もあるでありましようが、現在電源開発の資金の内容を分析をいたしますと、見返り資金とか、あるいは預金部資金とか、国家的性格を帯びて、おる資金が大半でございます。あるいは地方におきましては、地方公共団体の出資を要請するとか、あるいは大企業に対して、すなわち電気を利用することによつて多額の利潤を上げておる会社に対して、はね返り式賦課をしまして、そういうような方式によつて、いわゆる計画経済的な方式によつて、電源開発資金が現在まかなわれておることは実情でございます。しかるに、経理がどうあろうとも、一五%の株主に対する配当だけは天引きをしておかなければならぬというこの考え方は、新しい株主を募集するという美名に隠れて、既存の株主を擁護するという資本主義偏向の大陰謀に属する経営のやり方だと断ぜざるを得ないのでございます。そこで実際問題として、現在電気が全然流れていない状態で、国をあげて喧々ごうごうの声が巻き起つておるというようなときに、なおかつ財源はあることはあるのだが、この金は一五%株主に配当しなければならないので、組合諸君の言うことは聞けないのだ、こんなばかげたことは言つていないで、一五%も何もかも許す限りはこれを掘り出して、組合の諸君の強い要請を一つでも二つでも逐次かなえることによつて妥結への道を講ぜられることが、経営者として、当然のやり方である。しかも、それが公益事業としての経営の基本的な理念でなければならぬと思うが、これに対して平井さんはどう考えておられるか。
  76. 平井寛一郎

    ○平井参考人 ただいまの御発言を聞いておりますと、私の陳述のいたし方かまずかつたためではないかと思うのでありますが、一五%の配当を優先的に確保するという前提で問題を処理するかのようにお聞き取りになつたかと思いまするので、決してそういう考えは持つておらないということを、はつきり申し上げておきたいと思います。その上に立つていろいろご説明申し上げたいと思うのであります。なるほど、御承知のように、大体電気事業は、終戦後の七年以上の間に、従来二期通算して一年分だけしか配当しておらない。前期も前々期も配当いたしておりません。今期といいますか、今年の上期は、初めて一割五分の配当をおおむねなし得るところに至つたのでありますが、それではやはり来期一割五分の配当をするということは、やつてみなければわからないことであります。あるいはもう少し減ることもないとも言いかねないと思うのであります。そういう点は考えておるのでありまして決して優先的にそれをとつて云々とは考えておらないのであります。電気料金の決定されます場合には、現行の電気料金の中には、やはり一割五分の配当をすることは原価に入つておりますし、同時にまた、原価の点から賃金を支払えるようになつております。現状はどうかと申しますと、実際に電産の方にいろいろと払つております賃金は、その料金の中に織り込んであります金額よりも、相当に上まわつた金額を払つております。これはいろいろな臨時給与その他の形で出ておるのでありますが、実際には原価に織り込んだ以上の賃金を払つております。配当の方はどうかと申しますと、たとえば今年の上期は、おおむね八月ごろには増資があるものとして、その一割五分程度が料金の原価に入つておるのでありますが、今まだようやくその増資にかかつている程度でありまして、むしろ遅れている。こういうふうでありますので、私どもは、現在織り込まれている賃金を犠牲にしてまで配当しようということは考えておらない。今回の賃上げ要求に対しても、資金の許す限り原価より上まわつた支払いをしながら、さらにもう少し出せるべきものは出して行きたいということは考えております。同時に、これは公益事業でありますが、また私企業としての経営の責任を持たされておりますし、また資金は、なるほど相当政府の方から御援助をいただいておりますものの、過半数は市中金融その他の自己調達の方法によらざるを得ない。再編成以前の姿を見ますと、たとえば一昨年ごろまでは、年間のこういう電源拡充資金の使い得た額は、百億円から二百億円程度にしかなつていなかつたのが、今日の状態で見ますと、昨年度すでに五百億円程度使つております。今年度は、九百億円以上の金を使う計画で今工事を進めておりまして、先ほどもちよつと御説明申し上げましたように、現在おおむね二百万キロワット近い工事が進められておるのであります。こういうふうな現在の工事を続けるだけでも、来年度はさらに相当の金がいるのでありますし、また来年度は新規着工地点の培養もしなければならぬ。そうしますと、政府方面からいろいろな御援助があるものの、自己調達を相当大幅にやる立場上、全然配当しないという形に持つて行くことも、やはり経営の将来のためにいたしかねる事情にあるのでありまして、賃金の問題と配当の問題とについては、決して片寄つた考えは持つていないのであつて、やはり適当な調和のある形において善処しなければならないと考えているということを申し上げておきます。
  77. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 主要点を五つばかり御質問申し上げたいと思います。  今度の賃金要求については、マーケツト・バスケツト方式で要求をする。これは労働組合が文化的な平和的な生活を営むために、その給与水準を上げて行くのは当然のことであつて会社も戦前よりは、その経営においては現在の事態に即応するような体制をもつて経営をし水準を上げて行く。であるからして経営単位の一つとしての会社が、そういう近代的な生活を営むのであるならば、労働者もその経営の体制に即応し得る生活を要求することは当然だと思うのです。そういう点で、会社がマーケツト・バスケツト方式を頭から否定する態度をとつておることが、紛糾のまず第一番の原因だと思うのですが、こういう考え方会社ではほんとうに否定する腹であるのか。  第二点としては、中山会長も言明されていたが、労働条件の改善は数年も前からの主張であるということでありました。それほど長い間会社組合との間において、この労働条件の問題について話合いを進めておるのであるならば、この際賃金問題を解決する場合に、これだけ長い間かかつても話合いのできない問題を、なぜひつかけてこのときに一挙に解決しようとするのか。それは自分のためには利益であるかもわからないが、今日のような状態においては、四年も五年もかかつて解決できないものを、このときに解決することは、だれが見てもできない相談である。なぜそれをひつかけてこういう困難な事態に追い込む意図を持つておるのか。この点についてはつきりと態度を示していただきたいと思う。そうでないとわれわれ損害をこうむつておる中小企業家や需用家は承知しないだろうと思います。  第三点としては、口を開くと公益事業公益事業ということで、公益性を主張されておる。それだけ公益性を重んじておいでになるというのであるならば、今平井局長の御言明では、メーターをつけておるところは、送電をしなければメーターがとまるのであるから、料金はもらつていない、こういうふうなことでありますが、そういう薄つぺらなもので公益というものをあなた方はお考えになつておるのか。停電で家庭は仕事ができない、あるいは事業ができない。それに対する実質的な補償が必要になつて来る。そこに公益性というものが主張されてしかるべきである。経営者はそこまで配慮することが当然の責任である。にもかかわらず、そういつたことは一行言明しないで、単にこの賃金問題を解決する過程において、組合社会に対して、いたずらに公益性なるものを利用しておる。そうとしかわれわれには考えられない。こういう点についての根本的な責任観念はどうか。  次に、会社格差を言つております。経営格差があるのでありますならば、今日の経営面における会社それ自体を、当然合理的な運営のできる体制に置くべきではないか。しかるに、経営一つをとつて見ましても、われわれの目から見れば、非常にむだな重役陣を置かれておるようである。こういうふうに、経営者自身が経営に当る場合において、いたずらにそういうところに不要なしかも厖大な経費をつぎ込んでおるが、先ほど申したように今日労働者の近代的な経営に対する対応策として、生活水準向上をはかつて、安定した形において行おうとするこの要求と比べて、一体どういうふうに自己反省をしようとするのか。  次には、今後この問題をいかに処理して行こうとするか。今日のような状態で、深刻な社会的な損害を与えておるが、よしんばここでストライキ解決したとしても、この損害に対して、あなた方はどういう償いをして行こうとするのか。  次に、今申しましたように、四年間五年間かかつても、労働条件という問題はそう簡単に話合いのできるものでないことを認めておきながら、なお固執して、今日労働条件と、当面しておるところの賃金問題とをあくまでもひつかけて主張して行こうとするのか、あるいは組合統一賃金交渉に対して、あくまでも否定的態度をとつて行こうとするのか、この点を明確にしてもらいたい。
  78. 平井寛一郎

    ○平井参考人 大分御質問がございましたので、あるいは誤つて御返事するかもしれませんが、会社はマーケツト・バスケツト方式を否定するかどうかという御質問でございましたが、これは先ほどほかの委員の方の御発言に対して御返事申し上げましたと同じような考え方を持つておるのでありまして、現段階においてこれを実施することは、日本の国民経済の現状としては不適当であると考えておる、こう申し上げる次第であります。  第二点といたしまして、労働条件を、なぜ今回に限つて絶対だというふうにして、かちとろうというのかという御発言でございましたが、なるほど今日まで私ども労働条件社会水準化は、何回となく資金改訂問題のあるごとに持ち出したのであります。中労委といたしましては、やはりこれを社会水準化するようにという意味で、当事者同士の協定にまかすという形でお扱いをいただいたのでありますが、その結果は、結局労働条件だけを切り離して話をいたしました過去の経験から見まして、実際にはどうしても解決ができなかつたのであります。私ども考えといたしましては、この点は同時解決の方法をとらなければ、問題はどうしても解決できないと考えておるのであります。御承知のように現行料金の中には、それだけの賃金をのむだけの経理上のゆとりも十分にない。そういう中で若干でも組合の要求の線に前進するといたしますれば、その機会に労働条件もあわせて是正していただきたいということを言わざるを得ないのであります。また公益事業と言うと、お叱りを受けるかもしれませんが、現実に賃金とかその他の諸経費とかが、電気料金という形になつて国民の皆様の負担になる、そういうふうな形の中において問題を自主的に解決するためには、ほかにそうした例のまれなほどに労働条件の甘いものをそのままにして、また賃金の水準も他産業に比べで相当高い水準にあるのに、ただ金額だけを上げるということは、公益事業を預かる経営者の立場として限度がある。そういう点から今回二割の賃上げのあつせんが出ておるわけであります。そうした中において、従来は結果的に空文化されたような形で実績の上らなかつたものを、今回は組合の方でも、これはむしろ公益事業に従事するという気持において譲歩していただきたい、またそれを通じてわれわれも若干の原資を出すということで解決して行きたい、こういう気持からこの案を強く希望する次第なのであります。  それから経営格差が云々というお話でございましたが、それぞれの地盤におきましての需用構成とか、あるいはまた豊渇水の影響、あるいは水力、火力の組合せの違いとか、あるいは人件費の占める割合が各社によつて違つておるとか、いろいろな事情がありますので、実際に事業を経営して参りますと、いろいろと格差が出ざるをえないのであります。しかしながら、その間にあつて、いずれの会社も、できるだけ経営合理化をすることによつて労働条件の方もできるだけよくし、また同時に、その他の経営面も、経費の節約をして行くというような努力を続けておるのでありまして、何もせずにおつて、重役賞与ばかりとつておるというようなことは、決してないのであります。特に電気産業は、一般の公共産業と違いまして、きわめて低い利潤率の中で安定した経営をせざるを得ない使命の上に立つておりますので、そういう点につきましては、おつしやるまでもなく、できるだけの努力をしておるのであります。従業員の犠牲において会社が楽をしておるというような面は、決してないように努めておる次第でございますので、御了解を願いたいと思います。  ストの損害をどう責任を持つかという御発言があつたのでありますが、私どもとしましては、こういうストライキ影響のために、いろいろと国民の皆様に御迷惑をかけておることにつきましては、会社としても当然その責任は感じておるのでありますが、同時にまた、これは組合との間の紛争の上に立つて、こういう問題が起つておるのでありまして、問題を一刻も早く解決するということが、その面の問題としての唯一のわれわれの努力の道だと思つております。こういう損害を受けた金額を、どういうふうにして弁償するかという御質問ではないかと思うのでございますが、これは国のいろいろな法律の定めに従いまして、弁償すべきものは当然いたしておりますし、またそういう形になつておらないものもありますので、どうもこれは私どもといたしましては、道義的には特に責任を感じておりますが、何もかもそういうふうに損害がゼロになるまで会社が補償するというような扱いもできかねると考えております。  最後の御質問は、最初の労働条件の改訂云々のときのお答えの中に含まれておりますので、重複を避ける意味で省略させていただきます。
  79. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は今の答弁では、納得が行かないのですが、新聞の報ずるところによりますと、料金の不払い同盟などが発展すれば、送電を停止するということで、これだけ迷惑をかけておきながら、会社はその運動に対して抗議的というよりも、むしろ抵抗的な言辞を弄しておる。一体それでは、公益性と今言われたのですが、その公益性に対してどういう責任を感じておるのですか。さらに今日では、先ほどから指摘されたように、配当も復活でき、しかもその配当一割五分以上に厖大な利益を本年度は上げておる。これは天候、自然が相手でありますから、従つてそれを安定化することは困難な事情にあるということは、承知はするけれども、しかしながら、一昨年のような異常渇水のときだけをたてにとつて、統計上に見ます平年の状態を無視して、賃金を押えるためにそれを誇大に利用している傾きがあるのではないか。こういう天然自然を相手にします事業にあつては、やはり平年——十年なら十年の平均状態基礎に、ものを論じなければならぬ。そういう点で、これは異常な状態のみを誇張して討議しようとするのか。あるいはそういう悪い解釈をとらなくても、善意な解釈をとるとしても、結局そういうことで、なるたけ有利な解決をするということを腹の底に持つ、そういうところから出ておるのではないか。  さらに、今の答弁によつては満足できないのでありますが、実際に自主的に自分で解決しようという熱意があれば、どんなことでも解決する方法はあると私は思う。何らかの他力本願によつてこの問題を解決しよう、有利に導こうという意図があるのではないか。これらの点が明確になつていないので、さらに伺つておきたい。
  80. 平井寛一郎

    ○平井参考人 送電停止問題につきましては、会社としては、不可抗力によるものと、そうでない当然会社の直接の責任において法律上負担すべきものとの区別において、ものを処理せざるを得ないと考えておるのであります。不払い同盟等の運動が起りますことは、私どもとしては非常に遺憾なことと考えておるのでありまして、できるだけよき御理解をもつてそういうことのないようにお願いする次第であります。  それから、会社が非常に厖大な利益を隠して、異常渇水のときを基礎にして言葉を言い曲げるのではないかという御懸念のあるような御発言がございましたが、元来電気料金は、その決定をいたします場合に、御承知のように、水の出方等は十箇年——これは過去の最も全国的な統計を同一のベースにおいてとり得る最も長い期間でありますが、その十箇年間の毎月の平均出水量を基礎にして計算をされておるのであります。ところが、電気は、ある意味において水商売と申しますか、豊水のときもあるし、また渇水のときもあるのでありまして、平年並の水が出るというふうには都合よく行かないのであります。しかしながら、電気料金としては、その十箇年の平均で原価をはじき、長年の間においてはその平均の出るように、ちようどバランスがとれるようにしてとつておるのでありますから、渇水の年度になれば当然赤字が出ますし、豊水の年度になればそれ相当の分は余裕が出るのは確かであります。しかしながら、余裕が出たからといつて、すぐそれを他の消費の方へ、たとえば賃金だとか配当の方へ不用意にまわすとすれば、電気事業公益性を持つておるにかかわらず、配当があつたりなかつたり常ならずということになります。電気事業は、一般産業よりごく低い利潤率をもつて押えておるかわりに、渇水のときのために、渇水準備金制度という法律上の制度をつくることによつて、かつてに処分できないようにして、豊水であつた場合にはそれを積み立てて、その積立金をくずすのは、予想より以上に渇水したときに出た赤字を補填する意味においてのみくずさせるような制度になつておるのでありまして、渇水の年度をベースにして会社がものを考えておるということは決してございません。むしろその点は十箇年間の平均をとつて料金原価自身がはじかれておりますし、そういう形において季節的な変動は調節しながら、利用者に御迷惑のかからないような、安定した経営の線をとつておるということで、御了解いただきたいと思うのであります。  それから、他力本願で解決の熱意がないのではないかというお尋ねでございましたが、当事者としては、一刻も早く解決いたしたいという熱意をもつて問題を処理しております。ただ、そうは申しますものの、それでは解決のためには、当面の解決だけはかればよいかというと、やはりわれわれとしては、あとの問題をどう処理するかということを考えざるを得ない。そういう制約下においてものを処理いたします関係上、たとえば、それがただちに電気料金の値上げをお願いする形になつたり、あるいは開発資金に困つて政府が苦しいのにそれ以上の資金をお願いする、といつても、今の経営からそうたくさんできないのでありますが、そういう形で、開発がとまることのないように、一つの制約を持ちながら、その間で善処して自主的に解決せざるを得ない、そういう見地において、一刻も早く解決いたしたいと考えておる次第であります。
  81. 石野久男

    石野委員 二、三の点をお尋ねいたします。平井さんのただいまの公述をお聞きしておりますと、労働者側の要求が非常に無理であるということだけに聞きとれるように思う。国民経済の実情からいつて、それがなかなか認められないんだというお話であります。しかし、私はここでこういう問題を論議する前に——今ではもう死んだ子供の年を数えるようなことになるかもしれませんが、やはり日本の電気事業が九つにわかれたときの事情をもう一ぺん振り返つてみて、あなた方がその当時言われたことと今のことと比較して、私の質問にお答えをしていただきたいと思うのです。当時皆さんは、日発が一つだとどうもまずい、九つにわけた方が……。
  82. 田中伊三次

    田中委員長 石野君に申し上げます。一般論はあとにして……。
  83. 石野久男

    石野委員 これから入るのですから、それだけちよつと——とにかく豊富低廉な電気を差上げたいから、九つにしろというわけだつたのです。当時国民諸君は、それをまともに受けたわけなんです。しかし私たちは、そういうことはできないと言つたわけでございます。その後新しい九つの電気会社ができてからは、組合側の要求することは、常に国民経済がどうだとか、公益事業がどうだとかいつて、はばまれて行つておるわけであります。私たちの立場から言うというよりも、むしろ第三者的な立場から考えてみましても、九つの会社が豊富低廉な電気の供給をすると国民に約束したことが、全然ふみにじられているということを、ここでもう一ぺん振り返つてみなければいけない。逆に、九つの会社の上にいろいろと、会長の問題がどうだとか、重役の問題がどうだとか、おまけに電気料金の値上げの問題までが出て来たわけであります。こういう問題を国民諸君が忘れて、今日の電産の争議を見ますると、いかにも電産が悪いようになる。あなた方の説明を聞きますと、すべて電産の無理から来ているんだ、こういうことになつて来るようでございます。今ここで私がお尋ねしておきたいことは、九つの電気会社があるということが、日本の電気事業、特に電力開発の点からいつて、まずいのじやないか。あなた方が、実際に九つの電気会社を持つようになつてから後と、日発でやつた当時のことを考えて、むしろ電力開発の新しい機構ができたことなんかを考えると、やはりあれがまずかつたのじやないか、あなた方電気事業の当局者としては、元の日発に帰つた方がいいのじやないか。この問題をひとつここで聞いておきたい。  次に、皆さんの方から、労働条件が他産業より甘いということを盛んに言われた。時間が長くなりますから、端的にお尋ねしますが、電産の現在持つておる労働条件を、他の産業のところまで引下げるという意味なのかどうか。これはあとでまた御返事によつて、もう一ぺん御質問申し上げたいと思います。そのことをお聞きしておきたい。  それから第三の問題でございますが、しばしば不払いの問題について、御答弁があるわけでございます。この問題は、やはり重要な問題であるので、ひとつ聞いておきたい。国民のよき理解のもとにということを言つておりますが、実際は、需用家の面からいえば、電力の供給がなければ、それに対して料金を払うというようなむちやなことがあつては困るのであります。だから、不払いの問題が起きて来るのは、経済の建前上、当然われわれとしては認めてやらなければならない問題であると思う。具体的に不払いの問題が出て来たときに、あなた方はどういう処置をとられるか、この三つの点をお聞きしたい。
  84. 平井寛一郎

    ○平井参考人 最初の、日発のときの方がよくて、再編成後が悪いかどうかという点の御発言があつたのでありますが、なるほど再編成途上において問題が起りまして以来、これは相当長い期間国民の間でいろいろ論議せられたのでありますが、結果において再編成されたのであります。その現実の上に立つて、現在では、その当時に比べてどうかとおつしやいますが、これはいろいろの見地から問題について申し上げますと、時間がかかりますが、ただこういうことだけは御判断が願えるのじやないかと思います。終戦後の五年間に、日本でできました水力及び火力の新増設工事が、戦前の一箇年分の工事もなし得なかつた状態であつたことと、再編成後のこの一年余りの間に、今日においてでもすでに二百万キロワット近い工事をやつておりますということとは、これは再編成云々の功績のみではないと思います。しかしながら、そういう面もあるという意味で、功罪の問題は、ひとつ別の問題にしていただきたいと思う次第であります。  それから、労働条件を他産業並に下げる意図であるかどうかという御質問でありますが、組合といたしましては、できるだけよき労働条件において十分の収入を得ることが念願であることはよくわかるのであります。しかしながら、会社といたしましてものを考えます場合には、やはり公益事業のわく、公益事業の性格の中においてものを処理する場合に、たとえば賃上げの要求をするときに、原資その他の面から見て、他産業に類例のない非常によい労働条件をそのままにしておくことによつて問題を処理するのでは、どうしても処理しかねる面もありますので、今回はどうしても同時解決したいという熱意を持つておるのであります。またそれは、特に電気産業であるがゆえに優遇されてよいとも言えない、そういう面からのつながりにおいて考えておる次第であります。  不払い云々の問題でありますが、不払い運動の起りますことは、まことに私どもとしては遺憾であり、そういうことのないように、早くその原因をなくしたいと思つておるのであります。事実上起つたときにどうするかとおつしやいますが、私どもとしては非常に遺憾であり、不払いは困るということだけを申し上げます。
  85. 石野久男

    石野委員 一番最初の九分割以後における云々という問題については、問題が非常に大きいですから、ここでは論じません。ただ一つだけ、九分割後において二百万キロワットの事業が進んでいるのは、あたかも九分割の成果のように言われるが、そうじやない。これはむしろ日本の置かれておる国際的な事情のもとにおいて、特に要請される再軍備のための必要から来ておるんだということだけを、私ははつきり申しておきます。  それから第二の、労働条件を他産業並にしたいということを巧みに言つておるけれども、結局は労働条件の低下になつている。しかも他産業と比較して云々といいますが、電産自体がそれを十分のみ得るような内容を持つているものを、無理に他の産業まで持つて行く必要はないと考えるので、それをもう一ぺん簡単でいいから、お聞きしておきます。  それから第三番目に、不払いの問題は、あなたはよく理解してもらうようにということを言つておりますけれども、実際需用家の立場から、すでにその運動が起きている。だから、この問題はやはりはつきりと、あなたの方の態度を明白にしておいてもらわなければならない。ことにわれわれは、その意見を聞いておかないと、国会としてそういう問題を審議することができない。そういう立場から聞いているので、決してあなたを非難しようとか、どうとかいうのではない。今日の公述の意味は、あなた方の意図をはつきり伺つておきたいという意味ですから、はつきりお答え願いたいと思います。
  86. 平井寛一郎

    ○平井参考人 労働条件を切り下げるというふうな御表現でありますが、たとえば三十八時間半を四十二時間にすると、なるほどそれだけは切下げという形になつておることは事実であります。しかし、それでもなお、日本の産業の水準よりはよいと私は心得ております。やはり賃金の値上げをする。そういう面の問題を解決するのに、公益事業であるというので、一般の産業から切り離して、今のような条件を当然享受すべきであるとは、私は考え得ないということを申し上げておきます。  それから不払いの問題は非常に重要でありますが、起りました場合につきましては、われわれとしても、どういたすべきか、実はまつたく苦慮しておりまして、ここでどうするということはまだ御答弁いたしかねる次第であります。
  87. 田中伊三次

    田中委員長 どうも御苦労さんでした。  次は、日本電気産業労働組合中央執行委員長の藤田進君。  藤田君にお願いを申し上げますが、大体十分か、最高十五分の範囲内で御意見をお述べください。経過はよくわかつておりますから、問題点だけについて御発言を願います。
  88. 藤田進

    ○藤田参考人 電産の委員長藤田でございます。時間の制約もございますので、簡単に申し上げたいと思います。  まず結論を申し上げますと、今次中央労働委員会のあつせん者、中山先生からお出し願いましたあつせん案について、組合はこれをのむことができない、受諾することができないという点を中心に申し上げてみたいと思います。  今度組合で要求いたしましたのは、マーケツト・バスケツトの方式に準拠して、それぞれ物量とその単価をかけ合せて、二万五十五円というものであります。しかしながら、すでに半年を越え、七箇月を越えたこの紛争議に相なつて、さらに調停、あつせんという場を経て参りましたので、これが紛争議を一刻も早く円満に解決するという建前から、当初要求いたしました内容は、将来にわたつてこれを主張し、実現するといたしましても、とりあえず私ども解決のための具体的最終案を、中労委あつせん者の手元にも出したのであります。すなわち調停案によりますと、十月以降の賃金が一万五千四百円、こういうことに相なつております。さらに問題になつております基準外合理化、これは、今度あつせん案に出て参りました勤務時間を四十二時間に延長するということは、調停案にはなかつたのであります。すなわち、基準外賃金は、基準賃金に対して平均二五%を限度に圧縮するという調定案が出ているということは、四十二時間に時間延長いたしますと、かような数字ではないのであります。二十二、数パーセントになるので、この問題は調停案にうたわれるべき性格のものではないのであります。  ところが、その後あつせんに乗り出すことになりまして、両者に対してまず前提条件として示されたのが、この調停案基礎にあつせんを進める。この条件を双方が了解してあつせんに入つて行くということになりました。組合は、この中労委のあつせんの、調停案基礎に進める用意ありとして、ただちに回答をいたしたのであります。会社側においては、調停案基礎にするのか——そのことはむろん統一交渉内容といたしております。これらに対してどういう態度で臨んでいるか。最終的にわれわれ考えて毫、今日まだ不明確のままでありますが、結局調停案基礎にしていない。そのことはやはり統一交渉を否定しておる、こういうことが結果的に言えるのであります。すなわち会社の方では、あつせんの段階において、七箇月も前に主張していたもろもろの労働条件を切り下げるという案を持ち出して参りました。要求当初には出て来なかつた切下げの条件すら加えられて参りました。これから見ても、明らかに調停案基礎にしていない。しかし中山先生のたつての要請もありまして、問題を解決するためには、そういうことにあまり触れないで、統一交渉統一賃金、ことに統一交渉などにあまり触れないで、それはおれの胸のうちに納めておくからまかせてもらいたいということでありましたので、一応そのように、統一交渉などこの調停案基礎にした最も中心的な問題は中山先生に託して、あつせんを進めて参りました。  その結果あつせん案が出て参つたのでありますが、要するに刺し違えをしたのだということが言われております。組合がAを主張した。Bの主張会社がした。AとBを刺し違えて、一つ組合に譲る、一つ会社に譲つた。こういう刺し違えのような印象を受けていると思うのですが、そうではなくて、AもBも二つとも会社が非常に強く主張いたしました。統一賃金ではない、労働条件は切り下げる、このA、Bについていずれも会社が強く主張して、このために会社の要求がどつちもあつせん案に入れられたということです。刺し違えでもなんでもない。だからこそ、調停案について頑強な抵抗を示して拒否いたしておりましたさしもの会社も、あつせん案が出るに及んでこれを全面的に受諾した。こういう点から見ても、刺し違えでないということは明確だと思います。  私どもが受入れられない最も中心的なものは、統一賃金と称していて統一賃金ではない。今度のあつせん案を見ていただけばわかるように、まず四国についていえば、賃金はきまつておりません。一万五千四百円ではむろんないし、しからば幾らかといえば、ストライキもやめて、両者平和的に交渉しろ、幾らになるかはその上できまるのだ、場合によつては中労委であつせんしよう、四国はこういう不明確のままに残されている。さらに九州、中国、北陸、北海道、これらについては、越年を控えて、越年資金その他は他社より少くなる。つまりそれらを削つて本賃の方に入れよう、こういうことであつて、これでは統一賃金の実質を備えていない。これはまず会社の言い分通り四国の宮川社長もがんばつておりましたが、ずるずるとごねて横車を押した者が勝つたということに帰着いたします。  さらに労働条件の問題です。かつての電気産業は、今日に比較いたしますと、経営内容も非常に悪かつた。その状態下において、両者協議のもとに了解点に達して獲得いたしました労働条件、これを今日の段階で切り下げて行く。これを会社の、あるいはあつせん案の言う通りにいたしますと、千四百三十四円の切下げになります。その他、合理化をするというのがあつせん案でありますので、これらをずつと含めて参りますと、合計三千円の切下げになるのであります。一万五千四百円のあつせん案——四国その他については実質上下つておりますが、かりに最もいいところの会社をとつてみましても、一万五千四百円平均であります。これから三千円引いて参りますと一万二千四百円。現行賃金は、会社は先ほど一万二千八百円だといつておりますが、一万二千九百円だと思います。これと比べて参りますと、幾ら下るかということは明らかであります。  さらに、日本一の、きび団子ではない、労働条件だといわれておりますが、これは前金によつて出したと中山会長が言われていることが、本日はしなくも私は公式な席上で初めて聞きました。中央労働委員会の事務局が監修いたしております「中央労働時報」の二百十九号に、電産四月以降賃金の調停というものがあります。この七ページを見ますと、最後に電産の項がありまして、労働時間百七十四・五時間、これは六月であります。それから他の会社、鉱業、製造業、紙、パルプ、石油、石炭、ガラスあるいは第一次金属、たくさん書いてありますが、これらを見ますと、百八十七時間だとか、二百時間だとか、あるいは百七十一時間とか書いてあるのです。ところが、電産の場合を見ると百七十四・五時間そこで、非常に時間が短かい、従つて一時間当りの賃金が九十六七円、こういうふうに書かれているが、そもそも百七十四五時間という基礎数字に誤りがあるのです。この誤りが訂正されないと、なるほどそういうことがいえるので、これは私どもの計算をいたしますと百九十五時間です。従つて、時間賃率は八十六円五十六銭です。他の二百時間あるいは百九十五時間、二百一時間、これらに比較いたしますと、時間賃率においてもこれは高いどころか、まず中等位であります。他産業は九十円四十銭とか、九十円二十銭とか、九十円九十銭あるいは九十三円六十銭というふうな時間賃率を占めております。ですから、先ほど中山先生の言われた点は、基礎数字に誤りがあると私は思つております。  さらに、そもそも電産の要求そのものが不当かどうかの問題で、不当だというふうに言われたとか聞いておりますが、これは調停案提示の際に完全速記をとつておりますので、今日非常に役に立つのであります。これに対して、組合は要求内容が不当だとは言つてないのですが、はたして不当なのかどうか。調停案で一万五千四百円と出しているが、そもそも要求が不当がなのか。調停の過程において、とうふが何丁、いや、しようゆが何合、これをやつたときには、これとして不当なものはなかつたのであります。会社の方で指摘されたのは、とうふがどうも一丁当りの単価が高いとか、米のやみ値段が都城ではもつと安いはずだとかいう程度で、それならば訂正しても二万円を下るものではなかつた。ところが、一万五千四百円という調停案が出て来たというので、意外に思つてそのように聞いたところ、中山会長は、食える賃金、文化的な生活を営めるだけの賃金内容を要求するのは当然でありますから、不当とは申せませんということを言われているのであります。ともあれ、私どもは、まず調停案基礎にあつせんを進めた以上、この信義にもとることはしたくないということで、まことに過去歴史にない譲り方をいたしました。すなわち基準外を二五%に切り詰めようということであります。だからわれわれは、さらに基準外を切り詰めて参りましよう、少くしましよう、そしてその五%の基準外を一万五千四百円に加えてください、会社の手元では痛くもかゆくもないのだからということで、一万六千二百円にいたしましよう。税込みです、高級幹部の方も含まれている賃金です。こういうことをまずいたしました。それから、調停案の線であるならば、当然四十二時間という——このコツプを百円とするならばわれわれは百円では売れません。私ども労働力を持つております。一万二千八百円税込みでは売れない。そこで五%の基準外をわれわれ努力して減すから、一万五千四百円の調停案にそれだけ加えてもらいたいということを出したところ、会社の方では、それではこの百円で売れないコツプであれば、組合が三〇%増しの百三十円とする。そうすれば会社の方では、三箇持つて来ればこれは百二十円に買つてやろうということで、もともと言つている百円よりも、もつと単価を下げようという形に出て来ているのであります。しかもそれがそのままあつせん案に出て来ているのでありまして、これがどうしてものめないということであります。  さらに若干の例を申し上げたいのでありますが、時間がないので非常に残念でございます。今日中央労働委員会自体が手をかけて調停案を出したものの中に、決して日本一の賃金ではない——調停案一万五千四百円だが、すでにある産業においては、中央労働委員会自体の一万八千円の調停案が昨年出ております。さらに今年ある地労委において、三万何がしのあつせんがなされ、解決を見ております。これはともかくとして、現在時間賃率にいたしまして、まず電気事業について、現行は一時間当り七十八円二十銭、これに対して、いろいろな産業、無数にありますので、全部はちよつと申し上げられませんが、かりに鉱業方面をとつてみると、古河鉱業が百五十八円三十七銭、鉱業関係で他にもありますが、製薬について申し上げると、大日本製薬が六十四円二十銭、あるいは本州製紙九十三円七十二銭、あるいは東京海上について見れば百五円六十八銭、日本石油百二十四円七十五銭というふうに、資料を調べていただけば決して高いものではありません。こういう点について私どもは、今申し上げている一万五千四百円は、すでに出されている専売その他の裁定を、電気事業の人的な構成——勤務年数で十年余つておりますし、さらに家族構成につきましても、一般が一・六八人に対して電産は二・四三人、あるいは男女の比率——紡績などは比較的ベースが低いが、これは婦人労働者が非常に多数を持つております。年齢も低い。電気事業におきましては、男子と女子の割合は、男子が九二・三%、九割二分余を占めている状態です。こういう状態にあつて、今私どもが申し上げている一万五千四百円を基礎にして、しかもこれを全者におしなべて、電気料金は統一賃金をきめているのです。しかも今度の賃金をまかなうための原資は、全体の金額に対して、総原資に対してわずか四%の増になるのであります。ところが上期を見ましても、全体で売上げ増収が一二%あります。さらに石炭の消費量が予定よりも非常に下まわつております。これが上期でも約六十億、年間を通じてわれわれは百五十億浮いて来ると思つております。さらに渇水準備金などで、一応積み立てられてどうにもならないといつているが、これが確かに四十数億積み立てられております。四国自身が、経理が悪いからどうしても統一的に払えないといつておりますが、われわれはさように経理を把握いたしておりません。そもそも組合員が基礎をつくつて経理をずつと持つて、最終的な締めくくりをしているのでありますから、一番最後に社長さんクラスでちよろちよろつと数字をかえたならばいざ知らず、われわれ組合員自身が経理内容を逐一集計してやつているのでありますから、かなり詳しく知つているのであります。かつて日発には三十六億の含み資産があつて問題になりました。決算じりを見るととんとん、あるいは赤字。これがはしなくも三十六億という、まつたくえたいの知れない含み資産として処理されている。これは未払いの処理がなされています。このようなことが絶対ないとは私は保証できないと思います。四国について見ても、一億一千数百万円の未払い処理がなされております。このことはあつせんの段階にも指摘いたしておりますが、これだけでも五千万円の食い違いをわれわれは見出しております。こういう状態でありますので、要するに中央労働委員会において調停案基礎に、しかも従来この調停案をかえたことのないあの中央労働委員会がじやんじやん砂利を入れて来ると、あつせん案という形でわあつと会社ののめるようなものを出して、調停案よりも離れたものが出て来るということについては、私どもはどうしてものむことができない。同時に、四十二時間の延長というものが、決して日本一でもなければ、各産業においても通常にあり得るのであります。現在その資料によつて証明ができるのであります。  このような状態下にありますので、私どもはまず統一賃金——統一賃金だといわれているが、あつせん統一賃金でない、これは統一賃金にしてもらいたい。さらにこの際ノルマをふやして実質賃金が下つて来るというものはのめない。従つて労働条件の低下ということはどうしても譲ることができない。こういう二つの点が重要な点になつております。この上に立つて一日も早く本問題を解決したいということで、私どもは部内から非常な批判を受け、あるいは友誼団体からも非常に腰が弱いと言われているけれども解決するためには譲るべきものは譲つて解決をするということを私どもは態度として今日持つているのでございます。  いろいろ申し上げたい点があるのでありますが、時間がありませんので御質問によつて明らかにしたいと思います。
  89. 田中伊三次

    田中委員長 それでは森山君。——ひとつできるだけ簡単に……。
  90. 森山欽司

    ○森山委員 藤田さんのお話を伺いますと、先ほど電気事業連合会の平井さんがおつしやつた点を一々調べて、巧妙に駁論しておられます。しかし、それは組合の立場に立つての御発言であつたと思いますが、今私どもの立場からは、一体どちらのおつしやることがほんとうであるかは判断に苦しむ。むしろ、藤田さんも信用しておられるでありましようが、中労委の中山会長の御意見のところにわれわれは一番妥当な線があるような感じが、実はいたすのでございます。そこで、この際お伺いしたいのでありますが、今回の紛争のきつかけになりました賃金要求の基礎として、マーケツト・バスケツトという方式を用いておるのであります。これは総評系の組合が全体としてやつておるのでありますが、きようそれについて——読売新聞の下の方に「編集手帖」という記事がある。それによると、なかなかおもしろいのですが、たとえばマーケツト・バスケツトによる蛋白の要求、全銀連によると蛋白九六・五グラム、それから炭労は九二・五、電産は八五・二五、全国セメントが九二・八五、私鉄九三・二五ということになつておる。人事院では八一・五グラムが妥当だという数字を出しているが、バスケツトに牛馬肉をこのようにして入れて行くと、日本の組合労働者だけで牛馬肉の全部を食い尽してしまつて、農民や中小商工業者には牛馬肉は全然まわらないという計算が出て来るというのであります。そうすると、あなた方のマーケツト・バスケツトで行くと、組合労働者だけは肉を食つていい、ほかの者は食わなくてもいい、そういうお考えなのかどうか、ひとつこの際承つておきたい。
  91. 田中伊三次

    田中委員長 藤田君、答えは簡単明瞭に、結論だけにしてください。説明はいりません
  92. 藤田進

    ○藤田参考人 その記事内容について、私はイエス、ノーは申し上げられないと思います。それは検討する余地があろうと思います。私どもの要求しているマーケツト・バスケツトの中に肉が幾ら入つておるかということは、お調べ願えばわかると思います。結論としては、労働者のみならず——日本では労働者がほとんど多数ですが、やはり国民全体が乏しきをわけ合つて、そして均等な生活内容を営んで行くというのが建前で、今度もそれでやつているわけです。
  93. 森山欽司

    ○森山委員 私が今蛋白の例をとつたのは、非常に譬喩的に言つたのですが、組合がマーケツト・バスケツトの通りつて参りますと、国民経済のわくをはみ出すかもしれぬという点は、蛋白の一例を見てもわかるのじやないか。これは人事院の計算によつたのですが、そういうマーケツト・バスケツト方式で賃金要求をするあなた方の心理は、どういうところにあるのか。組合労働者だけが食えばいいのだ、ほかの者のことは知らないのだ、そういう気持でやつているのかどうか。あなた方はマーケツト・バスケツトでやるが、あなた方のほかに中小商工業者や農民もある。一体そういう人たちに対してどういう考えを持つているか。全国民的な視野からのあなた方のお考ええを伺いたいのであります。
  94. 藤田進

    ○藤田参考人 私どもの端的なわかりやすいお答えといたしましては、すでに労働省がこの六月に出した資料を見ていただいてもわかるように、一般産業の資本蓄積という面と、一般国民生活水準、ことに勤労者、労働者生活水準の復興状況に大きなアンバランスがあります。そこでわれわれは労働者として、まず戦前の生活、昭和九—十一年を基準にいたしますと——決してその当時が楽な、しかもぜいたくな生活ではないと思いますが、せめてその程度生活には復活したい、こういう点がねらいであります。今度われわれが出した最後案は、およそそれにはほど遠いものでありますけれども、まず当初の考え方としては戦前の生活水準に引きもどしたい。農村と都市労働者についての生活水準の復活は、御承知のように違うはずです。しかし勤労者は戦前の約七二%の生活水準になつている、こういう状態だと思うのですが、これを復活させたい、こういうことであります。これに対する経営者、産業陣営としては、資本の蓄積がなされている。電気事業についてもすでに四倍の増資になり、無償交付もなされ、一割五分の配当もなされ、四十数億の金が積まれる。こういう状態でありますから、戦前の生活ができるようにということは、決して他の一般労働者に対して悪い影響を与えるものではなく、しかもそのことが他の全体の労働者国民に対して生活水準を上げて行く、世界水準までは行かないとしても、日本全体の中における均衡差を縮減して行くことにおいては、大きく与えるものがあろうというふうに考えております。
  95. 森山欽司

    ○森山委員 私がお伺いしたいのは、あなた方がマーケツト・バスケツト方式によつて要求された二万円ちよつとという額は、全銀連その他の額に比べれば、比較的穏当な額ではあろうと私は思います。しかし大体マーケツト・バスケツトによつて出て来るところの金額が違うというのは、はなはだおかしなことなんですが、たとえば鉄鋼がその方式でやりますと、平均賃金七万円、全銀連が十万円という数字を出しておる。あなた方のは二万円ちよつとだが、その点では確かに私は合理的だと思う。大体マーケツト・バスケツトが正確なものであるならば、一体銀行の連中が七万円くれというのにあなた方が二万円くれという、そういうばかな数字が出て来るはずはないと思いますが、とにかくそういう差が出ております。ですから、あなた方の具体的な二万何円というものについては、私は妥当であるとか不当であるとかいう判断はこの際しばらくおくとしても、そういうマーケツト・バスケツト方式によつてあなた方が強く主張されるということになりますと、結局今言つた牛馬肉の例でもわかるように、肉は組織労働者以外の手には渡らないというのと同じような現象が出て来るのじやないか、日本経済のわく外にはみ出すことになるのではないか。あなた方はそういう心配を持つて賃金問題に立ち向つておるのかどうかということをお伺いしたい。
  96. 藤田進

    ○藤田参考人 マーケツト・バスケツト方式で要求すれば、一箇所で要求案でつくれば、どこの労働者にも当てはまるというふうにお考えになれば聞違いです。マーケツト・バスケツトというのは、買物かごを持つて市場に行つてつて来る。それを一箇月にずつと累計いたしますと幾らだ。それには家族構成もあるでしよう、消費単位もいろいろあるでしよう、いろいろな要素が含まれているし、また買う品物について各産業の特殊事情もあるでしようから、結論としては金額もいろいろかわつて来ると思うのです。労働者だけが肉を食つて他に与えないというふうにこだわつておられるようですが、これは肉だけで蛋白や脂肪をとるという意味を含んでおりません。むしろ労掛者が今まで食つていないものを、もつとこつちによこしてもらいたいというのが実体じやないかと思うのです。
  97. 森山欽司

    ○森山委員 マーケツト・バスケツトによつて七万円とか、あるいは二万円とか、あまりにも大きな差が出て来ておる。それはともかくとしまして、停電ストに対して一般国民が非常な迷惑と反感を持つておると思うのでありますが、これについてどういうお考えを持つておられますか。さらに、今回の電産の闘争に対して、本来共同闘争すべきであり、また機関紙等を通じては、共同闘争、あるいは電産の仲間を救えというような、非常にりつぱなスローガンを掲げられておるにかかわらず、私どもが見るところでは、あなた方に対する同情はあまり厚くないように思う。またあなた方の内部に、電源ストの指令に対して、明らかにこれを拒否しておるところの下部があることは事実でありますが、そういうような停電ストとか、電源ストとかいうものに対して、ストの最高責任者として、あ場なたはどういうような御所感を持つておられますか、伺いたいと思います。
  98. 藤田進

    ○藤田参考人 私どもは、やはり平和的に問題を解決したい。ストライキのない状態においての円満解決を腹から望んでおります。であればこそ、五月以来、ただちにストライキに入ることなく、中央労働委員会にも調停の申請をし、長い間団体交渉に持ち込み、最近では団体交渉をこちらから持ち込んでも、相手は交渉しないといつて、遂に会場から逃げ去るのを、また追つかけて行つて交渉を持つというようなことまでやつて、要するに半歳を越えて来たのであります。ところが、今度の場合に特徴的に出て来ていると思う点は、ストライキそのものを楽しんでやつているかのごとき印象を、経営者が与えているという点です。それはどういううことかと言いますと、ストライキが激化するように激化するように、相手が態度を硬化し、さらにだんだん悪条件をくつつけて来る。どうしても組合としては、単なる交渉では解決できないというあきらめをつけさせる方向にやつて来た。そして一たびストライキになりますと——これはやはり日本の民主主義的な精神的革命が、まだまだなされていないと思うのでありますが、要するに、ストライキをやれば、ストライキをしている団体がとにもかくにも悪いのだ。ストライキが悪いのだ、これが犯罪だ、こういう考え方が一部には若干残つていると思います。この雰囲気をかり立てて、相当な資本を注入して悪宣伝をする。そのためには、今朝あるいは昨夜の朝日新聞などを見ていただけばわかるように、かりに東京電力の例をとつてみますと、わずか一割五分か二割の電源ストがなされているにかかわらず、七三%を占める大口と、二七%程度の小口という需用の構成であるのに、一般の家庭やら、中小企業やらの電気を切つて、皆さん電産のストライキでかように迷惑をかけているのだ、電産が悪いのだと、こういう点をクローズ・アツプしている。そこで私どもは今度は——従来もそうでありましたが、いよいよ会社がさようなことをやるならば、われわれは他の職場において、ただちに職場放棄をして、ストライキに入るということで、最悪の事態をわれわれは予想し、会社に通告いたしました。その結果、ごらんの通り、すでに一般の家庭やら中小企業を打ち切るぞと言つていた今朝あるいは今夜にかけてのものは、切らないことになりました。すべて会社が操作いたしておりますので、自由になろことであります。そうして輿論の悪化をあおていた。こういう点からいたしますと、確かに今日の状態において、ストライキそのものは電気事業に携つている、いわゆる電産の組合が最も悪いのだ、これのみが悪いのだという感じを受けていると思うのであります。これについては、さような一般的な家庭あるいは中小企業の皆さん、いわゆる大衆には迷惑をかけない、どういう手段を講じてでも迷惑をかけないという方針を確立して、今後の解決を急ぎたいと思つております。  さらに、共同闘争の問題でありますが、これは、なるほど今の委員の方の感覚からすれば、みんながうしろからひつぱつているというふうにお考えだと思われるのでありますが、私どもは、決してさようには思つておりません。われわれ電産や炭労がストライキになつている実態を、ほんとうに心から支持してくれて、この敗北は日本全体の労働者の敗北であるというところから、非常に広汎な支援を受けております。日経連に対しては、確かに、支援どころか、今度こそ経営者の大きなバツク・ボーンとなつて立ち向つて、みえていることも承知しております。でありますから、少くとも組織労働者階層においては、双手をあげて精神的にも物質的にも、われわれの今度の苦しい資本攻勢に対する闘いに、あらゆる支援をしてくれているというふうに考えております。  電源スト等に対する下部の拒否の問題、これは私は次のように考えているのであります。今度の紛争議を、まず両者が歩み寄つて解決をする。経営者は、こういうところに基本を置かないで、駐留軍はあるけれども、占領軍がいなくなつたこういう状態において、一挙に戦前の姿に押しやつてしまおう、こういう思想が流れておるばかりでなく、具体的な計画の中に織り込まれて来ております。その一環として、まず地方交渉にゆだねる。中山会長の言をかりても、調停の段階においても、統一交渉をくずすならば、電産の組合の分裂であるから、これは確保して行かなければならぬということを言われております。第三者もこう言われております。これに対して、地方交渉、電産組織を分断したところの交渉体系に持つて行こう、それによつて統一的な組合活動を分断しよう。これの一環として、まず組合の分裂工作が行われております。今度不当労働行為として提訴いたしておりますけれども、具体的な事実をもつて、私どもはこの不当労働行為に並行して闘いを進めております。多額の金を出して、非組合員、会社の御用分子を引連れて、組合を分裂させようという動きが、確かに中部の一角に出ております。中部一万八千の組合員の中で、現在五百名ないし千名といわれておりますけれどもストライキを長引かせ、そうしてストライキにあかせることによつて、さらにその御用組合、第二組合を増大して行こうという動きが出て来ております。これに対して、他の一万八千の組合員は、そういうものがあろうとも、敢然とストライキに突入したい、こういう気持でおります。逆に、ストライキをやめてはならないという要請もありますけれども、当該中部に対しては、中部本部も、そういう資本をバツクにしたところの切りくずし工作、信義にもとるこのやり方に対しては、中部当該各級機関は、その切りくずしに対して、われわれの基盤をくずしては何にもならないから、それに対してまず第一の手段として対抗しなければならぬ。こういうことで、あえてわれわれの中央指令によるストライキ、これをそのまま実施しなくてもよろしい、まず組織を確立することが第一であるという面から、そういうふうにいたしておるのであります。決して他の意図があつてストライキ拒否しているというものではない。これをまことしやかにさように宣伝されているので、一部には、電産の指令に対して快しとせず、これを拒否しているという解釈もあろうかと思いますが、実態はそうではございません
  99. 田中伊三次

    田中委員長 森山君、どうですか。あとたくさんの質疑があるのですが……。
  100. 森山欽司

    ○森山委員 では、簡単にお伺いします。ストの手段として、停電とか、あるいは中小企業とか、大産業に対する送電停止というようなことがありますが、今後あなた方が手段としてお用いになろうという方向は、大体どの程度までのところで一般並びに産業に対する打撃をとどめて行きたいとお思いになりますか。第三者に対する被害をどの程度に防ぎながら、いかなる手段によつてストライキを決行するのか、この点を少しはつきり聞かしていただきたいと思います。
  101. 藤田進

    ○藤田参考人 ストライキは、ストライキのために計画いたしておりません会社の出方と相対的な関連がありますので、将来にわたつて、これをやり、次にはこれ、何月何日はこれというふうには組んでおりません。すべて会社の出方、その情勢に対応するやり方であります。ただ基本方針としては、大衆に迷惑のかかるようなストライキは、これを回避したいという方針は、今後とつて行きたいと思つております。
  102. 森山欽司

    ○森山委員 今、国会の内部には、そういう一般大衆に対して迷惑を与えるストについて、ある程度の制約を設ける行き方を考えなければならぬという動きがございます。もちろんその動きは、スト権に対して、これを剥奪するとかなんとかいう考え方ではない、両当事者以外の、一般大衆に対するところの迷惑を少しでも少くしなければならないという意図のもとに、そういう動きがあるのでありますが、労働組合としては、そういう動きに対して、どういうお考えを持つておるか、御所感を伺いたい。
  103. 藤田進

    ○藤田参考人 内容が不明確でありますので、考えを申し上げがたいのでありますが、これは各国の事例でも示すところであり、二百数十年の歴史の上に打立てられた——単なる歴史でなく、法制史上をながめてみても明らかなように、単なるストライキの禁止とか、そういうことでもつて、決して争議行為なるものは納まるものではない。それよりも、公正なる労使間の安定、公正なる輿論のカにより、そして両者がその輿論にこたえるべく、良心を持つて問題を解決する、これなくしては解決ができないものであるというふうに考えております。単に立法をもつて争議行為に対して不当な制限を加えるということは、今の状態下において、時代逆行であると考えております。
  104. 田中伊三次

  105. 山花秀雄

    山花委員 先ほど、中労委の会長が、電産の賃金は日本一高いという確信を持つた説明がございました。私は、そうは考えておりませんが、組合責任者はどう考えておるかということを、質問しようと思つたのでありますが、ただいま組合の責任者の方からも、この問題について、われわれの考えておるような説明が十分なされましたので、あえて質問する必要がなくなりましたが、一点お尋ねしたいのは、基準外賃金の五%繰入れの線が確立されるならば、このストライキは妥協してもいい、解決してもいい、この五%繰入れは、会社経理に左右されない、こういう説明でございました。これは会社当局の方に聞けば、またそれに対する反論があつて、問題がよりよく明らかになると思うのですが、これを本給繰入れをすることによつて、退職手当その他の点で、会社側の支出がいささか大きくなるという懸念があるのではないかというふうにも考えられるのです。会社の方から答えてもらえばより明瞭になると思いますが、どちらからでもけつこうであります。
  106. 藤田進

    ○藤田参考人 私どもは、基準外が多くあるということは、決して喜んでいないのであります。現在基準外——もつとわかりやすく言えば時間外の問題でありますが、時間外をしないというストライキをやりますと、電気はとまるのであります。今度も、時間外をやらないというのは、あたりまえの話で、時間外を争議行為としてやらないのは、受けると思うのですが、電気がとまるのでやめております。この間ちよつと一部だけやつてみたところ、東京においても電気がとまりました。それだけ人が足りない。人が足りないのは、年間自然減耗があるからであります。停年退職、自己都合等で、昨年が約三千人余り、今年も約三千人減つております。補充しないのです。かりに五千人自然減耗があつても、二千人補充すれば、三千人補充されないのであります。しかも、逆に反比例して、発電所、変電所等、職場は年々増大いたしております。こういう状態でありますから、基準外などという問題は、人を入れれば解決つくはずであります。これを無視して、基準外が高い、その基準外も本格賃金の中に織り込んで一万なんぼだといわれる点は、非常に心外であります。基準外をやらないようにしてもらいたいというのも、一つ主張になつているのであります。そこで五%の問題でありますが、これは五%あるいはそれ以上に切り詰めたいということでありますから、会社の手元には響かないというふうに考えております。  その他関連する退職金等々でありますが、これは全体の人件費に対しては、非常に微々たるものであります。しかも、全体の人件費の割合を申し上げてみますと、終戦後、昭和二十四年でありましたか、中央労働委員会の会長、当時やはり調停委員長の中山先生でありましたが、電気事業はあまり材料がいらない。水と石炭、それに人件費、これらが大きなウエートである。しかし雨の方は、ただで降つてくれますから金はいらない。設備は一回つくつておけば相当長年使える。人件費は、他の中小全業その他と比べてみて総収入に対して五割が限度だということを、調停案の中にりつぱに書かれたことがあるのです。会社経理が古しいんだから、君たちもこらえよ、会社経理がよくなれば、またそのときには上げて行くんだ。一ぺんに上げるのは無理だ、段階々々——ステツプ・バイ・ステツプという英語があるそうですが、そういう形で説得されてやつて来た。今度は内容が非常によろしい。それはどうかというと、人件費が、総収入の五〇%はおろか、現行賃金で言うと、一八・八%くらいになつている。わずか二割を欠いているのです。今度の調停案にあるこの一万五千四百円を入れても、二二・五%にしかならない。こういうささいなものになつているのでありまして、今申されました退職金その他のはね返りというものは、基準外でもわれわれ始末をいたしますし、同時に、かりに若干出たとしても、これは附帯人件費というか、実に計算に入れるべきほどのものではないというふうに考えております。
  107. 田中伊三次

  108. 石野久男

    石野委員 一点だけお伺いいたしておきたいと思います。先ほど平井さんからお話を聞きましたのと、今藤田さんからお聞きするのとでは、いろいろな点において食い違いがある。だから、こういうふうに長引いて来ているのだと思います。そこで、今藤田さんがおつしやいましたように、賃金は総収入のわずか二二・五%、新しい調停でも、そういうような低い賃金であるのだと言われておるにもかかわらず、片方、平井さんの方から言わせると、そういうことをやつたら、とてもとても電気産業の電源開発などというものは、とんでもないことだというお話があつたわけでございまして、私、藤田さんあたりのその問題に対する考え方をひとつ聞いておきたいのでありますが、電気産業で、もし今度の調停の賃金などが通り、あるいはまた労働条件をそういうふうに低下させなければ、どうしても電源開発とかなんとかいうしなくてもよろしい、まず組織を確立することが第一であるという面から、そういうふうにいたしておるのであります。決して他の意図があつてストライキ拒否しているというものではない。これをまことしやかにさように宣伝されているので、一部には、電産の指令に対して快しとせず、これを拒否しているという解釈もあろうかと思いますが、実態はそうではございません
  109. 田中伊三次

    田中委員長 森山君、どうですか。あとたくさんの質疑があるのですが……。
  110. 森山欽司

    ○森山委員 では、簡単にお伺いします。ストの手段として、停電とか、あるいは中小企業とか、大産業に対する送電停止というようなことがありますが、今後あなた方が手段としてお用いになろうという方向は、大体どの程度までのところで一般並びに産業に対する打撃をとどめて行きたいとお思いになりますか。第三者に対する被害をどの程度に防ぎながら、いかなる手段によつてストライキを決行するのか、この点を少しはつきり聞かしていただきたいと思います。
  111. 藤田進

    ○藤田参考人 ストライキは、ストライキのために計画いたしておりません会社の出方と相対的な関連がありますので、将来にわたつて、これをやり、次にはこれ、何月何日はこれというふうには組んでおりません。すべて会社の出方、その情勢に対応するやり方であります。ただ基本方針としては、大衆に迷惑のかかるようなストライキは、これを回避したいという方針は、今後とつて行きたいと思つております。
  112. 森山欽司

    ○森山委員 今、国会の内部には、そういう一般大衆に対して迷惑を与えるストについて、ある程度の制約を設ける行き方を考えなければならぬという動きがございます。もちろんその動きは、スト権に対して、これを剥奪するとかなんとかいう考え方ではない、両当事者以外の、一般大衆に対するところの迷惑を少しでも少くしなければならないという意図のもとに、そういう動きがあるのでありますが、労働組合としては、そういう動きに対して、どういうお考えを持つておるか、御所感を伺いたい。
  113. 藤田進

    ○藤田参考人 内容が不明確でありますので、考えを申し上げがたいのでありますが、これは各国の事例でも示すところであり、二百数十年の歴史の上に打立てられた——単なる歴史でなく、法制史上をながめてみても明らかなように、単なるストライキの禁止とか、そういうことでもつて、決して争議行為なるものは納まるものではない。それよりも、公正なる労使間の安定、公正なる輿論のカにより、そして両者がその輿論にこたえるべく、良心を持つて問題を解決する、これなくしては解決ができないものであるというふうに考えております。単に立法をもつて争議行為に対して不当な制限を加えるということは、今の状態下において、時代逆行であると考えております。
  114. 田中伊三次

  115. 山花秀雄

    山花委員 先ほど、中労委の会長が、電産の賃金は日本一高いという確信を持つた説明がございました。私は、そうは考えておりませんが、組合責任者はどう考えておるかということを、質問しようと思つたのでありますが、ただいま組合の責任者の方からも、この問題について、われわれの考えておるような説明が十分なされましたので、あえて質問する必要がなくなりましたが、一点お尋ねしたいのは、基準外賃金の五%繰入れの線が確立されるならば、このストライキは妥協してもいい、解決してもいい、この五%繰入れは、会社経理に左右されない、こういう説明でございました。これは会社当局の方に聞けば、またそれに対する反論があつて、問題がよりよく明らかになると思うのですが、これを本給繰入れをすることによつて、退職手当その他の点で、会社側の支出がいささか大きくなるという懸念があるのではないかというふうにも考えられるのです。会社の方から答えてもらえばより明瞭になると思いますが、どちらからでもけつこうであります。
  116. 藤田進

    ○藤田参考人 私どもは、基準外が多くあるということは、決して喜んでいないのであります。現在基準外——もつとわかりやすく言えば時間外の問題でありますが、時間外をしないというストライキをやりますと、電気はとまるのであります。今度も、時間外をやらないというのは、あたりまえの話で、時間外を争議行為としてやらないのは、受けると思うのですが、電気がとまるのでやめております。この間ちよつと一部だけやつてみたところ、東京においても電気がとまりました。それだけ人が足りない。人が足りないのは、年間自然減耗があるからであります。停年退職、自己都合等で、昨年が約三千人余り、今年も約三千人減つております。補充しないのです。かりに五千人自然減耗があつても、二千人補充すれば、三千人補充されないのであります。しかも、逆に反比例して、発電所、変電所等、職場は年々増大いたしております。こういう状態でありますから、基準外などという問題は、人を入れれば解決つくはずであります。これを無視して、基準外が高い、その基準外も本格賃金の中に織り込んで一万なんぼだといわれる点は、非常に心外であります。基準外をやらないようにしてもらいたいというのも、一つ主張になつているのであります。そこで五%の問題でありますが、これは五%あるいはそれ以上に切り詰めたいということでありますから、会社の手元には響かないというふうに考えております。  その他関連する退職金等々でありますが、これは全体の人件費に対しては、非常に微々たるものであります。しかも、全体の人件費の割合を申し上げてみますと、終戦後、昭和二十四年でありましたか、中央労働委員会の会長、当時やはり調停委員長の中山先生でありましたが、電気事業はあまり材料がいらない。水と石炭、それに人件費、これらが大きなウエートである。しかし雨の方は、ただで降つてくれますから金はいらない。設備は一回つくつておけば相当長年使える。人件費は、他の中小全業その他と比べてみて総収入に対して五割が限度だということを、調停案の中にりつぱに書かれたことがあるのです。会社経理が古しいんだから、君たちもこらえよ、会社経理がよくなれば、またそのときには上げて行くんだ。一ぺんに上げるのは無理だ、段階々々——ステツプ・バイ・ステツプという英語があるそうですが、そういう形で説得されてやつて来た。今度は内容が非常によろしい。それはどうかというと、人件費が、総収入の五〇%はおろか、現行賃金で言うと、一八・八%くらいになつている。わずか二割を欠いているのです。今度の調停案にあるこの一万五千四百円を入れても、二二・五%にしかならない。こういうささいなものになつているのでありまして、今申されました退職金その他のはね返りというものは、基準外でもわれわれ始末をいたしますし、同時に、かりに若干出たとしても、これは附帯人件費というか、実に計算に入れるべきほどのものではないというふうに考えております。
  117. 田中伊三次

  118. 石野久男

    石野委員 一点だけお伺いいたしておきたいと思います。先ほど平井さんからお話を聞きましたのと、今藤田さんからお聞きするのとでは、いろいろな点において食い違いがある。だから、こういうふうに長引いて来ているのだと思います。そこで、今藤田さんがおつしやいましたように、賃金は総収入のわずか二二・五%、新しい調停でも、そういうような低い賃金であるのだと言われておるにもかかわらず、片方、平井さんの方から言わせると、そういうことをやつたら、とてもとても電気産業の電源開発などというものは、とんでもないことだというお話があつたわけでございまして、私、藤田さんあたりのその問題に対する考え方をひとつ聞いておきたいのでありますが、電気産業で、もし今度の調停の賃金などが通り、あるいはまた労働条件をそういうふうに低下させなければ、どうしても電源開発とかなんとかいうものはできないであろうかどうか。皆さんの立場から、それをどういうふうに見ておられるかということを、簡単でよろしゆうございますから、お聞かせ願いたい。
  119. 藤田進

    ○藤田参考人 要するに、今の電気経理から申しますと、わずか二二%程度の人件費をまかなつても、さらに五十億になんなんとする金を積み立ててるという状況でありますから、われわれ電気料金が上るとも思わないし、また上げるべきでないと思つております。そうなつて参りますと、やはり経営者としては、もうかつた金は、つまりさいふの口はあけたくない、締め込んでおきたいというのが人情だと思います。そこに問題がかかつているので、逆にいろいろなりくつがくつつけられるのですが、電源開発は、一般の利潤をそのまま電源開発の設備資金に充てるようにはなつていないはずです。一般の経費は、やはり電気料金の中でまかなわなければならぬけれども、他の開発の設備資金というものは、設備勘定によつてまかなうべきである。現在すでに電源開発会社が別にできておりまして、これがとうとうとやられるそうでありますが、こういう問題もあるでしよう。さらに民間資本の集まり——今度一割五分の利益配当、こんなものは、なされたつて問題にならないと、私どもは思うのです。そんなけちなことを言いません。あの配当——今度四倍にぱつと水増しして一割五分ですから、相当大きいのです。六十数億になりますが、こういうものを払わずにこつちへくれ、そんなけちなことを言わなくても、こつちにあるものですから出さなくてけつこうです。そうすれば、どんどん電気事業に対する社債なり何なり、あるいは株式に対する——株式だつて今御承知のように、五百円の株が八百円もしている状態です。こういう状態ですから、決して資金が集まらないという心配はないと思つております。根本的にはやはり電気事業が現在——これはこの国会でも十分考えていただきたい点でありますけれども、電力料金の政策が失敗し、電力行政も失敗をし、これをわれわれ労働者だけにおつかぶせて来ようとする点は、また了解ができないのであります。要するに、現在四国において、あるいは東京電力において、電力料金の差を比べてみてもわかるし、ストライキをやれば困る、それほど公益性の高い品物であると言われているのにかかわらず、米と比較してもわかるように、きわめて大きなアンバランスがある。九州でもこういう状態です。こういうことがあつてはいけないと思う。従つて電気事業形態そのものは、本質的に、日本の狭い国においては根本的に解決されなければならぬ。このことがなされなければ、十分なる開発もできないでしよう。各社がお互いに裁判所に持つてつて、おれの水利権だ、おれのものだといつて内輪げんかをしていたのでは、自分のところでは雨が降つて貯水池に水があるが、片方では石炭をたかなければならない、こういうことではいけないと思つています。従つて、電源開発に今度の解決が何ら響くものではない。何なら数字的に申し上げてもけつこうです。
  120. 田中伊三次

  121. 田中章

    田中参考人 炭労の田中であります。時間の関係もございますので、要点を申し上げまして後刻質疑でなお私ども考えておりますことを明確にしたいと思います。  現状を認識していただくために、今までの炭鉱賃金は大体どういう経過をたどつて今日に至つたかという概況を御説明申し上げて、御参考にしていただきたいと思うのであります。具体的な数字を並べるのは避けますが、御承知のように、昭和二十一年から二十三年に至る三年間の炭鉱ベースは、地下産業という特殊な状態が十分考慮されまして、官公労、あるいはまた一般の民間産業の給与に比べまして大体二割上まわつてつたのであります。これが二十四年に至りまして、ほぼ官公労並びに一般産業並になりまして、今日昨年秋締結いたしました協定におきましては、大体逆に一般産業並びに公務員に比較いたしまして、二割下まわつておるのであります。これが現在の炭鉱ベースであります。その数字をちよつと申し上げます。この数字組合数字を使いますと、またあとで早川さんの方から、それは組合の一方的な数字であるという異議が出ましては、皆さんの判断もしにくかろうと思いますので、相手方の連盟の資料そのままをここに参考として申し上げます。三月からずつと出ておりますが、今年八月における坑外夫のベースは、基準ベースで実績収入が七千二百三十八円、それから基準外賃金が三千七百二十四円、計一万九百六十二円というベースに相なつております。この実績べースの基準になつております標準べースは、御存じかと思いますが、一日三百四十円の二十五がけ、公休を除く二十五日の八千五百円というベースによつて、これらの実績が出て参つたわけであります。しかも、この八千五百円というべースは、他産業や官公労と違いまして、成人男子だけのベースであります。つまり婦人とかあるいはまた十八才未満の労務者の賃金は、別途協議の形で、これよりさらに低い標準で協定されております。このことは、もちろん炭鉱産業という特殊な状態によりまして、婦人や年少労務者を坑内の作業に従事させることはできないという特殊の状態もありますけれども、これらがこの基準ベースの適用範囲には入つておらぬ。従つて一般産業並にこれを基準ベース判断いたしますと、八千五百円の基準ベースが七千五百円に相なるのであります。こういう現行の状態で、一般の基幹産業並びに公務員の現行ベースと比べてみた場合に、炭鉱労務者の賃金が今どういう状態に置かれているかということは、この数字できわめて簡明に御判断願えると思います。従つてわれわれとしては、従来も主張して参つたことでありますけれども、要するに、炭鉱という特殊な悪い作業環境の中で働く労働者が一般並にもらえないというのはおかしいじやないか、そういう考え方もありますし、同時にまた、他産業の労働者も、はたしてそれでもつてほんとうに次の労働力を維持でき、また家庭的に見ても、ある程度の文化水準を保つた賃金ベースであるかどうかという点にも疑義を感じ、これらのいろいろ書点の欠陥を総合的に判断いたしまして、今回の賃金ベースの要求と相なつたわけであります。  そこで、私ども交渉過程は、冒頭に中山会長からも若干お話があつたように承つておりますので、詳細に申し上げることは避けますが、とにかく八月の中ごろから交渉を始めまして、十月十日に至るまで十数回の交渉、あるいは小委員会その他の形で進めて参つたわけでありますが、結果的に出て参りましたのは、名目的な賃金は現状通り払うが、その裏づけになりております標準作業量——これは一〇〇%上昇した分の八〇%を、さらにこの賃金の表づけになつております標準作業量につけ加えてくれ、こういう連盟の意見か表明されたわけであります。そうしますと、その一〇〇%上昇した分の八〇%というものを金額的に逆算いたしますと、大体一六%から二〇%の現行賃金の引下げという形に実質的にはなるのであります。これらの状態もありますが、要するに連盟の考え方の本質を流れておるものは、この際一気に労働者のみの犠牲による炭鉱の合理化というものを強行しようとしたところに、根本的な意図があるわけであります。しかし、この問題はさておいて、結果的に労働組合がこれに対して了解できるかどうかということにつきましては、われわれはとうていこれに対して了解することはできない。そういうことで、私どもは十三日、十四日の四十八時間の警告ストライキを経て、十七日から今日に至る四十九日間連続の無期限ストライキを続行しておるわけでありますが、結果的には、われわれただわれわれの求めておる賃金水準の目標をとるということにあるわけでありますけれども、資金が豊富にありましていろいろな独占資本とつながりりある大口産業は、これらの事態を予知いたしまして、十分石炭の確保ができた、買おうと思つても買うことのできない中小企業や一般の消費者の皆ん方に対して、現在非常に大きな打撃を与えておるという結果に相なつております。先月半ばの調査によりましても、あるいはけさの朝日新聞調査によつても、すでに発生炉炭その他の大口需要者の石炭でさえ相当値上りを示しており、かつまた一般は、今までより千円よけい出しても石炭が買えなという状態になつております。このことは、先ほど申しましたように、もちろん組合の本旨とするところではありませんけれども、結果的に最もわれわれの立場に近い中小企業や一般の国民の皆さんに対し、非常に大きな影響を与えることに相なつたことにつきましては、当事者といたしまして、非常に遺憾に思つておる次第であります。  そこで、この要求を出します場合に、われわれは盛んに最近論議されておりますマーケツト・バスケツト方式を採用いたしたわけでありますが、このマーケツト・バスケツトが正しいか正しくないかという論議は、これは決して抽象論では当てはまらない。と申しますことは、マーケツト・バスケツトを組合が本質的に取上げなければならなかつたこと自体は、間接的に言うならば、従来の総理府統計局でやつておりまするCPS、CPIそのものに信頼が置けなくなつたということに相なるのであります。このCPSの内容についても問題がありますけれども、そのCPSの本質的な要素は、今までの賃金を何ぼもらつて、それをどういうふうに何ぼ使つたかというデータを表わしたものにすぎません経営者が自分の企業をあらゆる面で改善して、できるだけ利潤を上げようとするのと同じく、労働者自身もまた、われわれの生活を常によくしようと思うのは当然であります。従つて、われわれの求める統計というものは、常に漸進的なものであり、しかも欲求が含まれておるものでなければならぬ。今まで、晩のおかずに魚が半きれであつたから、いつでも半きれでいいということはない。やはり子供にはよけい食べさせたいし、自分自身も体力を十分つちかうために、今まで半きれ食べていたものを三分の一きれにするとか、あるいは一尾にするとかいう欲求は、生きている者として当然持つている希望であり、人間の本能であります。従つて、従来とられておりましたCPSの総理府統計局の資料をわれわれが参考にしておつたことは、これにはこの欲求というものは加味されていない。しかし戦後ようやく解放と同時に認められた労働組合自体には、これに対抗し得る調査機関というものが何らなかつた。われわれもまた、一体どんな方法で自分の賃金の要求の基礎になるべき数字を求めるかという判断ができなかつた。われわれは長い期間を通じて、組織網、調査網を一応確立することができる段階に今日なつておるのではないか、こういうことで、われわれはあらゆる角度から自分の持ついろいろな機能を動員いたしまして、現状においてわれわれ労働者が、それぞれの企業において、一日のカロリーはどれだけのものがなければならぬか、そのカロリーをとるためには、どういう品目をどれだけ食べなければならぬかということを、具体的に数字に表わしたのがこのマーケツト・バスケツト方式でありまして、マーケツト・バスケツト方式というものは、頭の上にあるものではない。炭鉱労働者は一日に魚が一きれいり、おしんこが半分いる、飯が何ぼいるという数字を目具体的に積み重ねたのがマーケツト・バスケツト方式であるから、もし経営人あるいは第三者が批判するならば、具体的内容に入つて米の一合が多いとか、あるいは魚一尾が多いとかいう論議をして結論を出さないことには、このマーケツト・バスケツト方式そのものが間違つているということには全然相ならぬのであります。これは、言葉をかえて申しますならば、お前はカール・マルクスの共産主義の本を読んだから共産主義者だと言うのと同じであります。こういう抽象論は、その本質を解決するには何ら役に立たないのであります。私はそういうふうに判断しているわけであります。そういう観点から、従来総理府統計局がつくつておりますCPSは、つまり過去を表わしたもので、今まで、たとえば私、田中という人間が先月は一万円の給料をもらつた、その金から魚を何ぼ買つた、米を何ぼというふうに表わしたデータというものは、一応の参考にはなりますが、人聞欲求がある限り、いつまでもそれでいいということはないい。結局われわれの持つ資料で、われわれは一日こういうものがいるのだという数字をあげたのがマーケツト・バスケツト方式である。労働省の相当の地位にある人が、最近国会において政治闘争であると、非常に無責任なことを言うているのを聞いておりますが、これは日経連の言うことをそのまま請売りしているのでありまして、労働省というサービス機関の地位にある者の言として、私どもはまことに遺憾であるというふうに考えておるのであります。そういう観点から、われわれはこのマーケツト・バスケツト方式というものを採用したのであります。従つて、マーケツト・バスケツト方式によつて起きて来る数字というものは、これは絶対的なものではない。各産業において、それは異なつた形で出るでありましよう。なぜ出るかというと、石炭産業に働いている者は、当然その仕事の状態からいつて、ほかの産業の労働者よりも肉をよけい食べなければならぬとか、あるいは三番方を終つて家内が夜おそくまで起きている関係上、どうしてもそれに要するカロリーとして何が何ぼいる。そういう仕事の状態に応じて求める嗜好物が違つて来るから、当然このフアクターが違つて来るのは間違いありません。そのフアクターの開きが大きいとか小さいとかいう問題については、各組合調査機関の能力の問題その他がありまして、若干の相違はあろうと思いますが、本質的には、私どもはそういうふうに理解をいたしております。  そこで、私どもは今日まで五十日に近いストライキをやつて参りましたが、この特異性は、何ぼ賃金が上つてそれをさらに何パーセント上げてくれという闘争でなくして、現在の賃金の一六%を切り下げようとするものに対して抵抗して闘つて来たのが、今日までのストライキであります。それがようやく二十八日に至りまして、賃金は一応現行通りにやろうじやないかということで振出しにもどつたのであります。しかしどこの産業を見ましても、あるいは公務員を見ましても、現在の賃金ベースそのままでよろしいということで、労使ともに納得しているところはないのであります。この点を見ましても、いかに石炭企業の経営者というものが反動的であり、しかも飽くなき利潤追求の前には、自分の使つている労働者に対して、いかほどの愛情を持つておるかということを、結論的には明らかに示しているものにほかならないと判断するものであります。従つてこれは当然組合の納得するところではない。そういう観点から今日まで闘つてつたわけであります。  要するに能率の問題にいたしましても、経営者は、機械化によつて非常に能率が上つている、従つて石炭の増産は労働者の努力ではないのだどいうことを言つておりますが、しかし皆さんがもし必要でありますれば調査団等を編成して現地をごらんになればよくおわかりのことと思いますが、日本の炭鉱の機械化が一体どれほど進んでいるか。たまたま最近巷間問題にいたしましてもカッペ採炭の問題にいたしましても、これはただ単にアメリカのあの身長が六尺もあり、体重が二十貫近いそういう人たちが使う標準のカッペを持つて来て、それをそのまま日本の石炭産業の坑内に当てはめている。ところが、五尺何寸、十五貫あるかなしの日本人の体質をもつてしては、容易に使いきれない。そういうことでこれによる被害者というものは、非常に莫大な数字をもつて災害率の上昇をたどつているのであります。これは最近三井鉱山が招いて調査をいたしましたドイツの炭鉱技術者も、その点を明確に指摘しておるのであります。その程度が見るべき程度でありまして、一体そのほかの機械がどれだけ入つているか。これは皆さんが現に見られれば、私が今申しましたことを十分御納得いただけることであろうと思いますが、ほとんど見るべきものがありません。ただ最近に至りましてようやくアメリカあるいはイギリス、西独、イタリアの模倣をいたしまして、現在の大部分の斜坑を竪坑に切りかえております。これは十年後には日本の炭鉱の機械化ということについて相当役に立つと思いますが、現在まつたく特定の大きな資本の一部で試みに採用されておる一つの現象にすぎない。そういうことで、これは全般的な問題あるいは大多数の問題とは決してなつておらない。こういうことからいつて、私どもはただ単に機械化によつて能率が上つたんだろうという連盟の主張については、納得ができないのであります。  特に石炭産業という立場で申し上げたいことは、先ほど申しましたように、基準ベースが、現在実質賃金——今までもらつております賃金が七千二百八十三円、基準外賃金が三千七百二十四円、これを合せて一万円ということに総額は相なつておりますが、この三千七百二十四円という金額をとるために、毎日全国平均一時間四十二分の残業をやつておる。そうしますと、基本的に労働法では八時間労働というものが保障されておりながら、炭鉱労働者は九時間四十二分働かなければ一万円の金がとれないということであります。坑内夫にいたしましても、一番重労働者である採炭夫の一日平均残業時間が一時間五十分であります。そうして初めて現在の採炭夫の賃金というものが維持されておる。こういう形を考えますと、この炭鉱ベースの現在の水準というものがいかに低いかということを、私どもは十分皆様に納得していただけると思うわけであります。さらには地下産業という特殊な状態から申しまして、災害率の点におきましても、またこれはあらゆる産業に比べて大であります。御承知のように、年間を通じて二万人の人間が死んだり傷ついたりして行つておるのであります。私が今こうしてしやべつているうちでも、とにかく全国で毎日二人は死んでしまつておる。月平均六十人は必ず仕事で倒れて行つておる。もちろんその家族はその日から路頭に迷つておる、こういう状態は私はおそらく他の産業には見られないと思う。月六十人の死者を出し、その何倍に値する負傷者を出しておる産業というものは、日本にはない。こういう悪条件下にある炭鉱、さらには地下産業という特殊な状態から、いわゆる労働年限が——承知のように、一般の労働者労働年限というものは、大体概念的に三十年と言われておりますが、炭鉱の場合には、地下で働くという特殊な形から、珪肺病などという職業病もあり、さらにまたそれによつて非常に身体に障害を受ける率も多く、衰弱の度合いも年齢よりも早いのでありまして、通常炭鉱の労働年限はよくて二十年というふうに言われております。これもまた炭鉱の状態としては、他の産業に比べまして、将来の問題を考えた場合には、一つの非常に大きな要素として考えなければならぬ。こういう悪条件下にある炭鉱が、先ほど説明しましたような形に置かれておる。これを打開しようとする私どもの今の闘いが、政治関争であるとか、むちやな闘争で為るとかいうふうには、組合側としては絶対に考えておりません従つて、昨日も連盟に通告いたしましたが、もちろん先ほど申しましたように、マーケツト・バスケツト方式による要求でありますから、当然その内容において魚の一尾は多過ぎるから半分は削るとか、おしんこの二きれが多いから一きれにしようという話合いを持たれるでしようが、その理由がわれわれに納得できれば、その点はあくまでもマーケツト・バスケツトによつてこの争議というものをかちとらなければストライキをやめないのだということには、相ならぬだろうと思います。従つてどもとして、現段階においては、一応連盟がこの考え方を捨てる、つまり日本の現在概念的になつておるベース・アツプの数字を一応示すという前提がなければ、交渉に応ずることはとうていできない。すでに皆さんも御承知のように、来年一月から汽車賃が上る、米代も上る、それにつれて必然にあらゆる物価が上つて行きましよう。従つて、もしわれわれが現下の苦しい状態で連盟の言うことを承知したならば、それはさらに現在の賃金は実際的に切下げになるという逆な現象が出て参りますので、この点はとうてい組合側の納得するところとなりませんし、皆さんもこの点については十分御理解が行けると思います。  以上、概括的に申し上げましたが、そういうことで私どもは闘つております。とにもかくにも、本来争議というものは、自主的な解決によつて解決すべきが本質であり、しかもわれわれは、その中で十分対外的に与える影響というものも考慮しなければならぬのでありますが、そのことについては私どもといたしましても十分な配慮を加えて来たつもりですが、結果的には連盟の非常な傲慢不遜な態度によつて、今日までこの争議解決するところとならず、最高機関である国会の本委員会におきましても、皆さん方の御心痛を煩わすという結果に相なりましたことにつきましては、非常に遺憾に思つております。今後におきましても、組合といたしましても、もちろん争議解決については、万全の努力を惜しまないつもりでありますが、各位におかれましても、現在の低い、非常に苦しい炭鉱の実態というものを十分御理解くださいまして、何分の御支持をお願いいたしたいと思う次第であります。
  122. 田中伊三次

    田中委員長 この際皆さんに御了解いただきたいのですが、田中君は中執委員長として非常に大事な要件が三時三十分にございます。それで十分ぐらいしか時間がございませんが、質問は森山君と青野君と石野君でございますので、御三君で十分内外ということになります。申訳ありませんが、三時三十分が来ると、この分に関しては質疑を打切ることにいたしたいと思います。  森山君。
  123. 森山欽司

    ○森山委員 新聞報道によると、昨日炭労は非常事態宣言というものを発したそうでありますが、その内容を承りたい。  次に、炭労はその要求を貫徹するために、非常に奮闘しておられると思うのでありますが、一部常磐等の脱落を見ております。そういう常磐等の動き、並びにこれらの現段階における各組合員の状況等について承りたい。
  124. 田中章

    田中参考人 非常事態宣言の内容は、事態解決するという努力と第三者への打撃というものを考えて、われわれは二十四日の申入れを受諾して、幹事団の設置にも賛成し、代表会議にも賛成し、団交を再開することにも賛成して来た。しかし連盟から提案されているものは一貫してかわらない。むしろその機関を通じて第三者の批判の目をごまかすということにしか事態を利用しておらぬ。そういうことであつては何にもならない、ここで一段と連盟の猛省を促す以外に道はない。ほかの産業もそうでありますが、ストライキをやることによつて、一銭ももらつておらぬのでありますから、当然二箇月近いストライキによつて、われわれの生活は破綻に瀕している。この破綻に瀕した状態の中でわれわれはあくまでもわれわれの努力で経営者の資産を守らなければならぬという義務はない。場合によつては保安要員の全面的な撤収もやむを得ない、こういう意味を含めた非常宣言の内容であります。  それから第二点の、脱落組合状態と、それに対する影響並び組合員の状態という質問であります。これは電産にもその他の産業にも現われておりますが、経営者は、とにかくこの際労使関係における主導権を完全に握らなければいかぬということで、本質的には、彼らは組織の壊滅をこの賃金の問題解決と併行して考えてやつている。別を申し上げますと、常磐などはまだ組織的な問題がありますが、九州の嘉穂等におきましては、一部の組合幹部を抱き込んで、無理やり力で調印させて、組合会社との間にはこういう調印ができたから、もう炭労の力には拘束されない。従つて、あしたからただちに働けということで、会社が盛んにマイクで宣伝を始めた。ところが、そこの組合員が組合の幹部に真相を聞こうと思つても、その幹部は力によつて経営者に車でどこかへ運び去られて、いない。こういう状態で、それではこれは会社側の一方的な宣伝だろう、承服することができないと反対したところが、今度は、働かないならば、われわれはどこからか人を雇つて来て、働かせるという。そしてそこらのごろつきか組夫を雇つて坑内に入れようとする。これは当然スト破りだというので、組合員はそれに対してピケを張つた。ところが、彼らは軍歌を歌いながらピケ隊に向つて突進して来る。こういうふうにして、ごろつきを雇つて、中央で正式にわれわれが嘉穂、三井、三菱などの十七社を集めて、統一交渉をやろうということで、団体交渉が再開されているにかかわらず、一方ではそういうことをやつている。これは完全に組織の撹乱である。組織の壊滅的な分裂を意図している。常磐の問題も、その端的な一つの現われであるというふうに私は見ておるのであります。従つて、このことについて組合員は動揺しておりません。ただ憂慮すべきは、前段階において先ほど申し上げましたように、五十数日にわたつてストライキが実行され、組合員の生活は非常に危殆に瀕しています。この状態がさらに経営者の反省なくして打開されない限り、どういう事態が起きても組合としては責任を負うことができない、こういうことはこの際率直に申し上げざるを得ません
  125. 森山欽司

    ○森山委員 今お話を伺いまして、長い闘争で炭労の組合員諸君が非常に疲れておられるであろうと思うのであります。われわれはそういう組合員諸君一人々々の立場については、同情を禁じ得ないものがあるのでありますが、ただ炭労が出した非常事態宣言の中には、保安要員の自由を留保するというようなことが入つている。要するに組合主張が通らなければ、職場が荒廃してもやむを得ないというがごとき結論を出すについては、私はいかがかと思われるのでありますが、一体あなた方は今度はそこまでやるつもりなのかどうか。またそういうことによつて、おそらく鉱山保安法その他について、これは法律違反の問題が生じるのではないかと思いますが、いかがでしようか。
  126. 田中章

    田中参考人 本質的には、私どもはそういう決意があるということを今表明した。従つて、今後の情勢とにらみ合せて、それをいつ断行するかしないかということは、また別な問題として私ども考えております。両者の努力によつて、できる限りそういう事態には追い込みたくないというのが、組合側の偽らざる心情であります。しかし、そういうことで坑内を壊滅的にと言われますが、私ども生活は壊滅的でないか、このことと比例をして考えていただかないと、この問題はぴんと来ないと思います。なお、法律的な問題としては、労調法の三十六条があり、鉱山保安法の問題がありますが、鉱山保安法は私どもは次のように解釈しております。企業を守らなければならぬという趣旨で鉱山保安法ができたのではない、この精神は、あくまでもその事業所に働いている人の安全ということを主体にしたものである。それは全文にわたつて貫かれている。その中で主要坑道、主要通気という問題の関連性が出ておりますが、政治的にこれをどう処理するかは、今後の戦術の問題ですから申し上げるわけに行きませんけれども、労調法三十六条においては、あくまでも人命保護の趣旨がその主体になつておりますので、法律的には問題にならないと考えております。法律の解釈としては、両者いろいろあることでありましようが、本質的にはやはり先ほど申し上げましたように、できる限りの努力によつて、あるいは経営者の反省によつてこの事態は避けたい、しかし、さらにこれ以上経営者がこの炭労の切なる要求に対して一片の良心も示さないという状態が来れば、炭労中闘が指令を出さなくても、下部においてそういう状態は起り得るであろう。そのことについて中闘は責任を負うことができない、こういう意味で先ほど申し上げたのです。
  127. 田中伊三次

    田中委員長 青野君。
  128. 青野武一

    ○青野委員 私は田中さんに一点だけお尋ねしておきます。炭労の問題について、中山中労委会長にお尋ねし、私どもは多少そこにいろいろな含みのある言葉を聞いて、大体了承した点もあるのであります。私も自分の居住区域が筑豊炭田でありますので、争議の実態、炭労関係者諸君の生活がどういうことになつておるかということを、最近親しく見て帰つた者でありますから、お話の要点はよく了解することができる。しかし幾たびか団交も開かれましたし、あるいは団交が長い間杜絶しておりましたが、十一月二十八日になつて現行賃金の横すべり案が経営者側から出された。そして標準作業量の引上げをやるという。これに対し五十日近い争議を続けて、事実上炭労の諸君、特に家庭を引締めている奥さん方、家族の人たちが文字通り奥歯をかんで血の出るような苦しい生活に耐え忍んでいる。しかも今度の争議の特徴として、むしろ家庭の主婦が争議の中心になつているという一つの現象には、私ども敬服する一人でございますが、ここまで来て現行賃金の横すべり案を鉱業連盟が出して来ることによつて、この問題が解決するとは私ども考えておりません。国鉄の裁定にしても、全電通の調停案にしても、全専売の調停案にいたしましても、電産の争議にしましても、常識的に考えて大体の線が出て来ているときに、炭労の争議だけどうして現行賃金の横すべりで押えつけて行かれるか。これは明らかに日経連を中心にする労働組合組織いわゆる秋の闘争突破口である。電産と炭労をいかなる犠牲を払つてもぶつつぶせという目標で来ていることが、こんなに争議を長引かせたと思います。願わくは、私は経営者を代表する人の方から、参考人としていいろいろお話を承つてから、田中さんのお話を聞きたかつたのでありますが、こういう程度では、当事者双方がいくら団交を持つても、解決しないのじやないか。結果から見れば、おそらくこの争議をより以上長引かせて行こうという一つの陰謀の現われではないかと思いますが、標準作業量の問題、現行横すべり、賃金すえ置き等についても、第三者労働争議ベース・アツプの問題を中心にして強力にその調整をはかる、あるいはその間にいろいろ手を打たれるということで、私は解決が近づくのじやないかと思います。当事者双方が団交を中心にして解決が近いうちにつくかどうかということについて、炭労の委員長としてその見通しを伺いたい。この労働委員会も、私ども労働者側の利益を守るために、委員長に頼んで開いてもらつたのでありますが、横すべり、賃金すえ置きなどという単なる争議解決ということでなく、いろいろの争議の実態を見て、もつと誠意を示して鉱業連盟も解決に努力すべきであると考えている、こういう立場からの質問なのであります。
  129. 田中章

    田中参考人 直接交渉でやつた場合に、どれだけの見通しを持つているかということと、第三機関の問題でありますが、中央労働委員会という組織は、公的なものでありまして、組合側あるいは経営者側が動いてくれとか、動けとか、こうせい、ああせいとかいう指示をするような立場にないというふうに、私どもは本質的に解釈しております。従つて、公的な機関は公的な機関なりで輿論やその他客観的情勢に基いて行動されるのは自由なわけでありまして、この点については、われわれはどうする、こうするという考え方はないことを、先月十五日に中山会長に呼ばれたときも申し上げております。  それから、直接交渉の見通しについて言えということでありますが、向うの考え方は、簡単に言うと、金を何ぼ出すということではない、下から切りくずしてぶつつぶす、これをぶつつぶせば日本の労働運動は少しおとなしくなるだろう、少しは経営者の言う通りになるだろうということであつて、それが今までの慣例にない行動になつて現われて来た。今までは、どういう案であつても、一応組合の要求書が出ると、それに対してこういうところは間違つておりませんか、こういうところは納得できますという形で批判をして、それから団体交渉のすべり出しをやつた。ところが今度は、要求書を出したら、あなた方の考え方は聞く必要はない、あなた方の要求書も検討する必要はない、わが方の考え方はこれだといつて、第二回の交渉ですぱつと出して来た。だから、本質的に言うと、文句を言うな、おれの方の言う通りにならなければだめだということなんです。だから、この考え方がかわらないと、交渉は何回やつても同じであると思う。労働組合というものが許されている以上、やはり資本構成は資本力と労働力との均衡の立場で構成されて行かなければならない。こういう原則がはつきりそこで考えられないと、その考え方の切りかえが行われなければ、私は団体交渉を持つても相当かかるであろうという見通しを持つておりまする
  130. 田中伊三次

    田中委員長 それでは時間が参りましたから、これで田中君の分は打切ります。  次は、日本石炭鉱業連盟の専務理事早川勝君。  早川君に申し上げますが、たいへん長くお待たせをして、時間がなくて恐縮ですが、大体十分か十五分で、問題点だけについて御意見をお述べ願います。経過はよくわかつております。
  131. 早川勝

    ○早川参考人 石炭連盟の早川でございます。何よりも先に、長いストライキのために、大勢の消費者国民各位に御迷惑と御心配をかけておりますことを申訳なく思つております。委員長から問題点を述べよとのことでありますので、要点のみをまず申し上げます。  炭労と経営者側の連盟との争点は、いろいろございましたが、そのうち主要なるものは二点でございました。第一点は、倍額賃上げを要求しております賃金の額についてであります。第二点は、炭鉱の復興過程における能率給の賃率の合理的改正の問題でございます。この二点でございましてほかにはございません。  第一点の賃金の額につきましては、交渉過程におきまして、組合側はいわゆるマーケツト・バスケツトの理論で、増給を要求して参りました。このバスケツト理論は、御案内の通り、理論生計費の一種でありまして、その根底において重大なる矛盾があるのでございます。その点を、経営者側交渉委員から痛烈につつ込みました。この点につきましては、炭労側も主張そのものを持続することが困難になり、これでもうやめたということに相なつたわけであります。すなわち炭労側の賃上げにつきましては、実際上も理論上も、その主張する根拠を失つたのでございます。  第二点の、標準作業量と申します能率のベースのことでございますが、これは私どもの方の主張でございます。御存じのように、炭鉱は終戦後の荒廃を、各位の御支援によりまして、復興の過程にありまして上り坂にあります。従つて年々その能率は一割程度以上回復しつつある過程にございます。たとえて申しますと、ここからこちらの場所に品物を運びますのに、初めは大八車であつた。ところが、設備やあるいは道路を改善いたしまして、それを三輪オートバイにかえた、さらにこれをトラックにかえたというふうにしまして、仕事が早くでき、楽にできるということを、長い間の企業努力によつて続けて参つたのでございます。従つて、仕事をする、させる、両方の立場からみまして、従前通り賃金のレートでは不当でございます。従つて、これは適時、すなわち協定を改訂するたびに合理的に是正する根拠は、十分あるのでございます。またこれなくしては、炭鉱経営の中心問題たる生産能率の向上と、これによる生産費引下げに役立たないわけであります。せつかく莫大な設備資金を投入しながら、そういう状態に放任できませんので、この点はどうしても、改善すべきものである、合理的に是正すべきであるということをを、根本的に持つております。いまなおその信念を持つております。  しかし、この点につきまして、労働者側の立場から申しますれば、一応主張する点はございました。今までこれだけの仕事をしておつた、ところが仕事は楽になつたが、仕事の分量がふえた。こういうわけで今までのコスト当りの賃金の額を減すということになりますれば、それは賃金の切下げだ。現実に同じ程度の仕事をしておれば収入が減るではないか、この意味で賃下げ要求だ、こういう主張組合側はしておつたのであります。しかし、その点につきましては、適時実情を説明し、またその正しい理論を説明したのでありますが、遂にこの点いれるところとならず、これで決裂してしまいました。  そこで実力行使の段階に入つたのでございます。実力行使の段階を四十日経過いたしまして、最後に私ども、すでに炭労側からもお話があつたと思いますが、先月の二十四日に至りまして、これ以上闘争を続けることは双方に不幸であり、従つて両方でどちらからともなく、交渉を再開する方法を考えようということで、そのために一つの事務折衝を持ち、交渉の再開及び交渉の再開とともに、両方の組織の正式代表として幹事会を組織したのであります。そういう仕掛ができました上で交渉を持ちまして、早期解決の努力をいたしました。連盟側は譲歩案を出しました。その譲歩案は、もちろん今の能率ベースの問題を譲歩したのであります。それも組合としていれるところとならず、遂に最後に、この際は能率を引上げることはやめようということになり、すつかりわれわれの主張を撤去したのであります。従つて組合側としましては、賃上げの実際上の主張の根拠を失い、私どもとしましては正当であるという主張を放棄いたしまして、ここに相討ちの状態と相なつたのでございます。  そこで、その中で一体どういうふうに事態を収拾するかという観点から、連盟側は貸金として五千円の金を出した。今後の生産あるいは出勤、そういつたものと関連して適当なる条件協議しようじやないか、こういうことをお話しました。両方が代表者会談を持ちまして、その点についても細目話合いをしたのでありますが、突如として昨日になりまして——二十四日以来の両方のせつぱ詰まつた空気を緩和しながら、問題の解決のために努力をしておりました状態を打切りまして、昨日になりまして再び賃上げ、ベース・アツプの要求を持ち出して来たのであります。そしてその要求に応ずる案を出さない以上、団体交渉を持たない。しかも両者の間で紳士的に協定いたしました幹事会も開かないという申出に接したのであります。当方としては、緊急に対策を講じました結果、組合側はどういう事情がその中に伏在し、どういう動きがその中にありましたかは存じませんが、そういう急変する場合におきましては、私どもは、もはやこれ以上問題の解決に対して力を入れることについて非常に失望をしたわけであります。  そこで不可解千万なる先方の態度に対しまして、私どもとしては、すでに出しております最終案は、絶対に譲れない最後のものであるということを通告いたしました。なお組合側といたしましては、保安要員を場合によつては引揚げてしまう、こういう意味内容の通告をあわせて寄せて参りました。この通告の根本に流れております思想は、実は産業破壊でございますので、そういう行動に事実上出たときには、断固処分することを当方から申し入れましたのが現況でございます。  つけ加えまして、炭鉱の特殊性と炭鉱の労働事情について、一言申し上げたいと思います。こういう状態にあります基盤としまして、炭鉱の特殊性は、先ほども触れて申し上げましたが、終戦後非常な努力をしつつ立ち上りつつある過程にあるということでございます。しかしながら、数量は終戦後のほぼ二倍になり、能率も二倍近くになつたのでございます。しかし、いまだわれわれとして、痛切に感じております点は、高炭価の問題であります。この主要原因は、外国の能率に比較しまして、日本の炭鉱の能率が低いという点に、おもな原因があろうと存じます。すなわち英国、西独の一人当りの坑夫の掘ります石炭に対しまして、日本のそれは三分の一程度でございます。坑内の諸条件等は、ほとんど日本のそれとかわりはございません。日本におきましても、戦前ないし戦時中は、一人の人間がおよそ一トンを堀りました。現在の能率よりも倍以上になつていた時期もあるのでございます。この点につきまして、私どもはまだ改善を重ねて行く考えでございますが、すべての経営上の観点は、常に生産能率の向上、従つて生産費の軽減ということに、力を入れなければ相ならぬというので、私どもの今回の賃金交渉にあたつての主たる考え方も、そこにきざしておるのでございます。  なお、炭鉱の労働賃金のことについてでありますが、これにつきましては、労働省が作成いたしております毎月勤労統計によりますれば、一般産業や製造工業よりも、月収におきまして上まわつております。私どもは、炭鉱の実情から申しまして、他産業に比して低くないと考えております。またこれを坑外夫のみの給与について比較をいたしましても、現在闘争過程にあります大手十六社の坑外成人の平均給与を見ますれば、これまた金属鉱山その他に比較して遜色はないのでございます。しかも一般地上産業におぎますよりも、炭鉱の労働者に対しましては、炭労でさえ月額千六百五十円の実物給与が、賃金のほかにあることを認めております。私どもの計算におきましては、約二千五百円以上の実物的あるいは間接的給与があることを証明できるわけでございます。従つてどもは、物価が横ばいであります現在、炭鉱労働者生活の実態も考え合せながら、しかも経営上あくまで早く復興いたしまして、日本の全体の産業に寄与せねばならぬという使命から考えましても、この炭労側の要求には応じられないのでございます。昨年十一月、中労委におきまして、大手八社の争議関係が取扱われたことがございます。そのときには二割ないし三割近い引上げを見たのでございます。そのときの根拠は、実にCPIが一四%上つておる、炭鉱の利益は上期から下期に対して、約倍の増益を見込まれる。他産業、一般産業に比較して、月額千七百円低い。この条件のもとに、昨年の決定を見たわけでございます。本年はCPIは横すべり以下でございます。会社の利益は増加よりも下向きでございます。しかも他産業よりは上まわつております。私どもは決して無理なことを言つておるのではございません。私は炭労の要求がむちやであるといわざるを得ないのでございます。  以上一応の御説明を終ります。
  132. 田中伊三次

    田中委員長 それでは早川君に対する質疑を許します。森山君。
  133. 森山欽司

    ○森山委員 炭労が昨日、保安要員について今後行動の自由を留保するという非常事態宣言を発しましたが、もしこれを実行に移すとすれば、重大なる段階になります。すでに組合員は、数十日に及ぶストで、経済的にも疲労困困憊しておる。このままに推移いたしますと、貯炭の問題等で、わが国の産業に重大なる影響を及ぼすことは、いまさら私が早川さんに申し上げるまでもないことであります。今回のストの中心問題である賃金額とか、能率給の問題についての経営者側の御意見を承つておりますと、ごもつともに聞えますし、労働者側のお話を聞くと、それもまたまことにごもつともに聞える。いずれにしましても、両者主張がある程度にらみ合いのまま今日に至つておるのでありますが、それによつて困るのは何かというと、日本経済ということになるわけです。先ほどの早川さんのお話ですと、二十四日ですかに出した連盟の案を、一歩も引けないというふうなお話でございます。先ほど中労委の中山会長の御意見ですと、炭労争議については調停、あつせんともにやつておらない。それから、ここ二、三日中に何らかの手段に出たいと、非常に抽象的でありましたが、お話がございました。労働問題といたしまして、緊急調整という問題がございますが、これらの手段によつて事柄を処理することは、できる限りわれわれは避けなければならないと思いますし、また論理的に考えましても、それではたして納まるかどうか多少問題が残ると思います。     〔委員長退席、吉武委員長代理着席〕 そこで、もし中労委が何らかの手段をとつた場合におきまして、そうして先ほど早川さんが言われた、一歩も譲れないという線をかりに中労委が越える場合においては、大局的見地から、そういうような問題についての中労委の動きに対して——私は内容は存じませんが、お応じになるお心構えがあるかどうか。非常に抽象的でございますが、今日の段階において中労委が動くとすれば、それは経営者側に対しても、そうむちやなことは言わないのではないかと思いますが、そのお心構えを承りたいと思います。
  134. 早川勝

    ○早川参考人 中労委の問題につきましては、私初めて耳にいたしたのでございますが、過去何べんか炭鉱の労働問題について、中労委のごやつかいになつた経験があるのでございます。ただ、中労委が問題をしずめようというだけのことでお扱いになつたような経験がございます。今度の場合におきましては、まだ仮定のことでございますので、それがどんな線であるとか、こんな線であるとかいうこともわからないわけでございますけれども、私ども考えとしましては、ただ単に両方の間で何か顔を立ててしずめる、こういうふうな安易なお考えでございますれば、私どもとしてはお受けできないと思います。ほんとうに石炭産業の実態をよく認識していただきまして、その線に沿つた一つ考えであれば、それは内容を見た上で、またそのときに考えなくてはならぬものだと考えております。今までの経験によりますと、どうも私どもとしては納得できない線が多かつたし、またそのために時間がなおかかつた、こういう経験を持つております。
  135. 森山欽司

    ○森山委員 先ほど中山会長は、電産にいたしましても、炭労にいたしましても、緊急調整発動の要件は備えておるということを言明しておられた。しかし、まだ発動するまでにやるべきことがある。おそらくそのやるべきことの一つ二つか存じませんが、あるのではなかろうかと私も思うのでございます。もしそれらの線にしてうまく行かない場合においては、不幸にして今回の両ストのいずれかに緊急調整を発動するというようなことが起るかもしれません。緊急調整は伝家の宝刀としてできたばかりですから、抜きたくない。吉武さんが盛んにつくれつくれとおつしやいましたが、吉武さん御自身も、伝家の宝刀をできるだけ抜きたくないというお話でしたし、われわれ労働委員は、おそらく与野党を通じて、そういう事態に追い込みたくないと思うのであります。そういう意味において、中山会長は緊急調整発動の要件は備えておるが、しかしながら、まだやるべき余地があり、炭労についてはある程度のことを考えておる、こう言われたのであります。それが労働法上の調整とか、あつせんとか、そういうことにはいろいろと手続が必要でございますから、どういうことになるか私は存じませんが、ともかく何らかの勧告なり何なりがあつた場合には、そういう最悪——もうすでに、経営者側から見れば、どういうお考えをお持ちになるか知りませんけれども、最後まで深追いされることによつて——深追いという言葉はあるいは語弊があるかもしれませんけれども、ともかく労働者側が非常に疲れておるということは事実です。そうして最後には何をやり出すかわからないという情勢にあるいは今後進むでしよう。現在がそうだという見方の人もあるかもしれない。現在はそうじやないが、おそらく将来はそういうことになるかもしれない。そういう場合を、今われわれは目の前に控えておる。経営者側は、先ほどお話があつたように、この際あの一線は譲れないといつてがんばつてはいけないのじやないか。もし何ら、かのアクシヨンがあ場つた場合には、一応それを受けて立つというお心構えをお持ちかどうか。内容によつては聞いてやつてもよいが、内容によつては聞かない。もちろんそうでありましようが、ともかく事態解決のためには、少くとも経営者側としては、その主張にとらわれることなく——これも程度問題でございますが、それらを受入れられる心横えがあるかどうか。実は先般中山会長は、同じくこの席で労使双方ともわからず屋が多いということを申しておられました。私は早川さんは決してそんなわからず屋ではないと思います。物のわかつた方かどうか、ある程度予想される今後の動きについての早川さんのお心構えをお聞かせ願いたい。もちろんあなたのうしろには麻生さんとか、こういうお金持ちがおるということはよくわかつておりますけれども、ともかく率直な——先ほど田中委員長場の発言の中に、私は誠意のあるものをくみとることができました。いわば一種の血の叫びというものを聞き取ることができたと思います。それと同じようなものをあなたから受取ることができないものかというのが、私の質問であります。
  136. 早川勝

    ○早川参考人 御親切なお言葉で恐縮でございます。ただ私どもが現在立つております立場から申しましてですが、国民の皆様の御迷惑、また炭鉱労働者生活の現状についても、非常に心を痛めておるのは事実でございます。しかし組合の指導部の現存私どもに対していどんで来ております実力行使及び闘争は、いわば私どもに対して踏んだりけつたりの立場でございます。ほんとうならば、団体交渉によつて物事を解決しようというときには、足を踏んでいるその足をのけて、初めて解決しようというのが、私はけんかでいうルールであると考えておるのでありますが、足を踏んだまま、あるいは首を絞めたまま話をせいということでございます。それは大衆組織というものの特徴からいつてやむを得ないだろう、それは私どもとしては要求にも条件にもいたしません、自主的に戦術問題は判断されることと思いました。しかし、それはいいのですが、その状態の中におきまして、私どもが譲歩譲歩を重ねた現在、またぞろ今度は自分たち主張に乗つて来なければ、団交はもちろん、幹事会もやらないという踏んだりけつたりの立場に私どもは立たされておるわけでございます。私ども考えております線は、決して不合理でもなければ、私どもは天下に表明し得るものだと信じております。従つて、ただいま第三者のお方の問題がございましたけれども、それが一つの職権によつて動かれる場合には、私ども拒否する考えは毛頭ございません。またできないことでございます。また親切なお話があれば、それもお伺いはいたします。しかし、内容につきましては、私はこの場合はちよつと言明することはいたしかねるので、あしからずお許し願いとうございます。
  137. 吉武恵市

    ○吉武委員長代理 青野武一君。
  138. 青野武一

    ○青野委員 私は早川さんにお尋ねしたいと思います。今田中君に、参考人としていろいろなお話があつたあとで一点だけお尋したのですが、実は順序として早川さんの方が先にいろいろなお立場を御発表してくれてからの方がよかつたということも申し上げたのでございますが、私は目分の居住区域が炭鉱地帯でございますので、どちらかと申しますと、今度の争議も、ずつと前からの争議も多少関係を持つております。ただこの段階に来て、二十八日になつて、現行賃金の横すべりで解決がつくだろうか。もう五十日に近い争議で、あなたの方も非常な打撃でしよう。これに書いてありますように、大手十七社だけでも一日に三億円からの損害、もちろん労働賃金も一日一億円の損害。まあ鉱業連盟の方は直接に生活には脅威を感じないでしようが、炭労関係の諸君の家族を含めて、五十日も一銭も収入がないということは、生活上どんな悲惨な状態かということは、私もこの目で見て来たのです。ここまで来て、現行賃金のすえ置き、現行横すべりでこの問題は解決はしない。そういう行き方でかりに妥結した場合、むしろ裏返しにすると、炭労組織は崩壊するのではないか。今までの争議に、私は鈴木正文氏が労働大臣をしておるときも、炭労争議が総司令部によつて禁止されて、政府がそれに多少介入いたしたときも質問をした経験を持つておりますが、今までの争議は、炭労と鉱業連盟の交渉は、持ち込んで来る案そのものについて、これはどうしても経理上のめない、ここは少し無理じやないか、この程度のことはひとつ聞こうというように、ひざをつき合せて話が進められて来たのが、今度の炭労争議に関する限りは、連盟側がまるきり内容の検討はされなかつたという陳述が、先ほど田中委員長からあつた。それでは、頭から解決のつくはずがありません。これは今森山君も言つておりましたし、私も質問したのですが、中労委の中山会長が、一両日うちに何らかの手を打ちたいという御見解を抽象的に表明された。しかし、中労委の会長として動かれても、今あなたがここで御言明になられたように、賃金は上げないのだ、最後まで闘うのだ、今の線は一歩もひつ込めないのだということでは、この問題の解決はできない。そのまま、どつちが先に倒れるか知りません。私の知つておる大きな炭鉱でも、十二月一ぱい完全に持ちこたえる炭鉱は三つか四つある。相当大きいところでは持ちこたえる炭鉱もあるかもしれないが、そのときの日本の基幹産業は、はたして石炭のたくわえがあるか。常磐や日鉱だけで掘つているものは、知れたものです。常磐で日産五千九百トン、多少よけい掘つてはおるでしよう。日鉱は合せても知れたもの。一日十五万六千トンという大手十七社がやつておりますし、五十日間というものずつと貯炭場が少くなつて行くときに、一方的に感情的な対立によつて、かりに中労委が動いても、今出しておる連盟の線は一歩も引けないと、こういう公開の席上、しかも衆議院の労働委員会で言明になられれば、これでは解決の方法がない。その結果労働組合が勝つか、連盟が勝つか、それは将来の問題ですが、そのときの日本の産業に与える打撃は、一体だれが責任を持つか。できた問題を誠意をもつて解決できないはずはないと私は思う、そういうことを考えております。今、森山君の質問したことと重複するような内容も多少ありますが、何らか第三者の動きが、公的に行われた場合には、問題解決のために、日本産業の将来のために、やはり多少そこに考え方が改まつて来なければ、妥結の方法がないのではないか。その点について、もう少しつつ込んだお気持を聞いておきたい。
  139. 早川勝

    ○早川参考人 先ほど炭鉱の労働者生活が非常に困難になつているということについて、御指摘になりましたが、私もそう思います。それは一、二の炭鉱では、まだ闘争力があるというところがあるかもしれませんが、私どもは実際に従業員のことをいつも考えておるのでありますから、その点は知つております。ただ、少し言葉が不穏当であるかと思いますけれども、このストライキそのものは、両方がぶつかつたと言いますか、実は炭労側が実力行使でぶつけて来たのであります。この実力行使というものについてのルールは、両方が経済上の損害その他を忍び合つて、歯を食いしばつてがまんするのが、実力行使のルールだと思うのです。でありますだけに、こういうものは軽々に発動すべきことでないということは、私どもは痛切に感じておるのであります。組合側もそうだろうと思いますが、実際に体験してみないと、それがわからないのでございましようか、そういうふうにしかけられて来たわけであります。  なお、内容の検討について不十分であつたようなお話もございました。毎年世間を騒がしまして申訳ないのですが、本年は例年よりも多く、十回の団交をやりまして、内容につきましてもともとと渡り合つたのでありますが、こういう次第と相なつたわけであります。しかしお話のように、一般産業需要家、消費者の皆さんに御迷惑をかけておることは、まことに相済まぬという気持が起るのでありまして、先月二十四日から、双方の間で局面打開の打合せが始まつたわけでありますが、私先ほど申し上げましたように、現在立たされております立場は、何だか向う側の戦術の上に乗せられておるような気さえいたします。それは私の印象の間違いかもしれませんが、団交もやらなければ、幹事会もやらないという立場をとられておりましては、私どものやることのできるのは、炭労側がほんとうに実態を認識して、こちらともう一ぺん前のように打合会でもやれるようにして、衝突しておる壁は壁として、それ以外のところで何か解決方法はないものか、こういうことを話し合うのが本筋だと思うのであります。  賃金が横すべりでは長いストライキをやつたのにひどいではないかというお話もございましたが、これもさいぜんのルールから申しますれば、長くなろうが、短かくて終ろうが、それは指導者の考え一つにかかつて、おるのでありまして、まとまるべき賃金自体は、その所、その時の客観的な妥当な線できまるのがほんとうだと思つております。損害があれば、それは両損、共損であろうかと思つております。  第三者の動きにつきまして、重ねてお尋ねがございましたけれども、私どもは、収拾については熱意を持つております。けれども、私どものほんとうの立場の御理解がないとなれば、たとえ第三者の方でお話があつても、これはすぐさまそれでよいというわけには行きません。どういうお話がありますか、よく伺つてからにいたしたいと考えております。
  140. 青野武一

    ○青野委員 重ねてお尋ねをいたします。私は誤解があつてはなりませんからあらためて申し上げます。     〔吉武委員長代理退席、田中委員長着席〕 炭労の争議が長引いた、五十日近くなつたから、炭労関係の労働組合の諸君はもとより、家族の人が生活に困つておる。だから、早く片づけたらどうかという質問じやない。これは炭労二十七万の諸君が、家族をかかえて、民間産業と比べても、今炭労の委員長の陳述によりますと、昭和二十一年、二年、三年の三年間は他産業に比べて、大体炭労の諸君の給料は二割ほど高かつた、二十四年になつて大体他産業と比べて平均した、現在は二割下まわつておる、決して不当な要求ではない。こういう主張を聞いたのでございますが、早川さんの御意見と炭労の田中委員長の御意見は、どうも真正面から対立しておる内容がたくさんあるように思います。いずれが是か非かということは、今日は論じませんが、とにかく相当食い違つておる点がございます。私は炭労の争議は、結局どこまで戦力が続くか続かないかということ別といたしまして、日本の産業の将来のためを考えると、電産と並行して行われる炭労の争議は、これはまた別な角度から見て悲壮な争議である。その結果が、労使いずれが傷つき倒れても、日本の産業に与える石炭の役割は非常に重大である。それを考えれば、かりに今日円満に一定の線で妥結しても、ひどいところは坑内の修理、切羽の修理等にやはり四十日ぐらいかかるところがある。早目に修理ができて、予定通りの採炭ができるようになりましても、やはり十五日や二十日はかかると思います。ずつと追い込めて行つて、そうして話が大体ここいらという線でまとまるときに、いらぬ対立が二十日間も続いた。その間、幸い日鉱と常磐だけが掘つても、あと石炭の空白時代が、日本の産業に大きな打撃を与えるということを、私どもは十分考慮に入れて、われわれ各党の代表者が話し合つて、本日電産、炭労、労使双方四名の方と中山会長においでを願つて、それぞれの立場からの御意見を聞いて、何とかしてこの問題解決のために、国会、労働委員会が中心になつて善処したい。直接関係するのではありません、傍観的態度は許されない段階に来たというところに、この労働委員会が開かれた理由がある。そこで、連盟の内部にもいろいろ対立もありましよう。いろいろな問題のあることを、私も存じ上げております。ここではつきり割切つて線を出されると、調停、あつせん、あるいは第三者が介入する方法がなくなる。そこでやはり大きい立場、国家的立場から日本の産業の将来を考えて、そして問題解決の何らかの打開の方法が見出されなければならない。私は実はこういうことで御質問をしたわけでありまして、炭労の争議が長引いておるから、何とか早く解決をつけろというのが質問の論拠ではなかつたのであります。この点はひとつ誤解のないようにしておいていただきたいと思います。  私どもは、この点について、党としていろいろな動きをしておるのでございますが、とにかく他産業に比べても、御配付になりました日本石炭鉱業連盟のビラを見ますと、うなずける点もございますけれども、一方を聞いて、一方をまた聞いてみましても、相当対立する点もあるようでございますので、とにかく電産にしても、国鉄、専売、全電通その他私鉄等の年末の賃金の問題、あるいは貸付金、全国的に行われております争議及び争議の形態をとつております賃上げ闘争というものを常識的に見ましても、炭労の争議について、連盟側が現行賃金そのまま横すべりで解決をするという点は、多少私は無理ではないかと考えます。私は特に衆議院の労働委員の一人として、連盟側の代表者としての早川さんに、その点について大きい立場から善処してもらいたいということを希望して、ほかに発言者もありますからお譲りをいたします。
  141. 田中伊三次

    田中委員長 山口君。
  142. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 私は、早川さんから、この問題の解決について、たとい第三者勧告があつても、自分の意に満たないものであるならば、それは曲げるわけには参らぬ、こういう言明があつたと思います。そうだとすると、今わが党の青野委員が申しますように、一体解決の道がないのであるか、それをどう思われるかということが第一点。  もう一つは、あなたのお話によりますと、私は言葉じりをつかまえてどうこう言うことは、この問題の解決にはならないと思いますが、しかし炭労の委員長の言明と対比いたしますと、きわめて冷たい強硬な態度のように見えます。自分の会社主張がいれられなければ容認するわけには行かない、こういうことでございますが、今、単に炭鉱だけではなしに、日本の産業のほとんどの組合が、やはり賃上げの要求をしておる。従つて、これはひとり炭鉱会社の問題だけではなしに、一般的な動きとして賃上げというものがある。それに対して、あなた方炭鉱の経営者は、一体どういう考えを持つておられるのか。  さらに第三点としては、これはやはり石炭という基幹産業であります関係上、単に石炭経営者が、労働組合との意見が対立しておるから、石炭が出なくともそれは自分の経営であるのだからというようなことでは、済まされないのであります。日本の全産業の問題として、これは重要な問題である。にもかかわらず、そういうふうなことを一体どういうふうに考えて処理されようとするのか。  さらに労務管理について、新たなものを基本的にはどう考えておられるのか。今日は何と申しましても、労働組合経営者双方のいわゆる二つの組織の健全な発展というものが、産業の民主的な発展の基礎となるのである。一体、その基礎に対して、炭鉱の経営者の諸君はどういうふうに考えておられるか。あなたの言明からいたしますと、単に対立のための対立というふうにわれわれは受けおります。これはわれわれ国民の代表としての議員もとして、どうも納得ができないのであります。この点私は、国民の前にあなたの決意を納得の行くように明らかにしてもらいたいと思います。そうでないと、私はどうもうまく行かぬのじやないかと思います。  以上まず質問いたします。
  143. 早川勝

    ○早川参考人 ただいまお話の一番初めは、自説を曲げない態度では、さつぱり話が進まぬのじやないかという意味でお話があつたと存じますが、自説と言つても、私ども我利々々の立場で言つておるのではないのであります。これが日本の経済全般のために一番正しくて最良だと思えばこそ、今までこの大損害もあえて忍んで、ここまでふんばつておるのでございまして、ただ自分の利益、自分の立場だけでないということを、ひとつ御了解願いたいと思います。それをほんとうにどうしたらよいかということにつきましては、やはり具体的な問題が起つてからのことだろうと思つております。  それから、一般に賃上げが行われておるのに、横すべりはひどいではないかというような意味のお尋ねでありましたが、私どもは、炭鉱労働者を特に低い賃金に押しつけようというような考えでおるわけではございません。昨年の賃上げ等につきましても、そういうふうにすることが、ほかの産業とのつり合い上必要であるというので、非常な犠牲を払つてそれを受入れてやつてつたわけでございます。今回は、ほかの産業との関連も見まして、私どもは自信を持つて、しかも組合指導部の要求が何ら根拠のないものであるということが確認されましたので、私ども主張しているのでございます。そして他の産業でも、なるほど賃上げの要求はありますが、ある産業、ある業種につきましては、たとえば公務員、国鉄等につきましては、基本的には一般産業が上つたのに対して、それにさや寄せをしているという建前に行つているものと存じます。それから、ただ何とはなしに戦闘的な組合があつて、それに打負けて、そのための賃上げでやむを得ないというものもございまして、いろいろ雑多でございますので、世間に賃上げがあるからといつて、こちらも賃上げをするというふうにはいたしかねると思うのでございます。何か私が非常に冷たいような言い方をするというお話でございましたけれども、実は私は、ほんとうは労働者のことを非常に思つておるつもりでございます。ただ何もかも甘やかすばかりが能ではないのであつて、最後の労務管理についての基本観念のお尋ねにも、お答えいたしたいと思つておりますが、私はこれで労働者の身の上、労働者の将来ということは、考えつつやつているつもりでございます。なお、この問題については、全産業の問題である。まことにその通りでございます。全産業に重大な影響を与えつつある問題でございますので、私はその点におきましては、慎重に考えまして、現に去る二十四日以降両方の間で幹事会を持つて、団交を開くように手配いたしました。また経営維持上忍ぶべからざる重大支障となるべき標準作業量問題につきましても、譲歩いたしましたのは、全産業のためにこれ以上争議を続けてはいけないという観点に立つてでございますので、その点ひとつ御了解を得たいと思います。  なお最後に労務管理のことにつきまして、お前はどう考えているかというお尋ねでございます。私は基本的には、産業というものの運営は、経営者労働者の努力の間から、出て来るものだと思つております。その労働者が、今までの労働者と違います点は、組織されている点だと思います。従つて、私はこの組織労働者、言いかえれば、労働組合を対等に考え、それを尊重して行くという立場は、基本的に忘れておりません。私は炭労の組織そのものを尊重して相手として、お互いに強くなることが、日本の新しい進歩の形式でないかとさえ思つております。今度のことにつきましては、他の産業に、あるいは一般国民にたいへん迷惑をかけておりますので、実に申訳ないことでございますが、労使関係の対立によるところの相互切瑳の点から言いましたならば、私、この場合に申し上げるのは不穏当でございますけれども組合も強くなり、経営者も強くなるという試練を受けておるものと思つております。なお、産業上における労働者の管理につきましては、また科学的な方法につきましての考え方もございますけれども、一番基本的な点についてお答え申し上げました。
  144. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 もう一、二点お尋ねしたいと思います。最初に組合の要求に対しては徹底的に反駁したところ、組合の方から反論がなかつたということで、あたかも凱旋将軍が勝ち誇つたというような態度のように私は思います。およそ賃金の論議においては、CPSを使う、あるいはCPIを使う、あるいはマーケツト・バスケツト方式を使う。これは今のところ、単に労働組合としては、賃金を多くもらわなければやつて行けないのだという現実の上に立つた一つ主張形式にしかすぎない。そのことのみにこだわらず、実際に解決するためには、事のいかんを問わず、やはり幾らか賃上げをするというような社会の態勢になつていれば、当然それを受入れて考慮さるべき問題だろうと思う。それを考慮しないで、自分の説を曲げないということになれば、組合の方でも、やはりこれだけのものは曲げられないということになると私は思う。そこに少しも譲歩の色が見えないことを遺憾に思う。そういう点を、どういうふうにお考えになつておるか。  それから、やはりこういう労働問題の解決につきましては、労使双方が熱意を持つて、自主的に解決をするという誠意がなければならないと私は思う。聞きますると、早川さんも労働問題についでは相当経験者であり、権威者でありますが、私も長年経験をいたしておる者であります。ただ問題は、そういう形式の問題ではなくて、常に労使間における問題は、実質的な問題だと思う。その場合に、今日のような状態であなたが発言されることは、あなた自身でなくて、経営者意見としてお話をされておるものだと思います。そういたしますと、炭鉱の経営者の皆さんは、ほんとうに時代の認識に欠けており、しかも実質的な実質面の管理について欠けておるというふうに私は思うのであります。そういうふうに私が思うこと自体、国民全部の人もそう思う。いかにしてこれを納得させるかについては、あなたの言明ではどうしても納得しないだろうと思う。今主張されておることは、明らかになつておりますけれども、それでは行けないとすれば、あなた方はどういう努力をして実質的に問題を解決するか。ただ理論だけではおなかもふくれませんし、解決もできない。実質的にどういうふうにして解決をして行く方針を持つか。あからさまに国会に対して言明をしてもらうことが、国民を納得させることだと思う。また他産業の経営者を納得させることができると思う。一体どう思つておられるか。
  145. 早川勝

    ○早川参考人 炭労の要求の理論をたたいたことについて、御批評がございまして恐縮でございますが、別に勝ち誇つたわけではございません。理論闘争の段階において、理論的にこれを論破いたしまして、その反論がなかつたということでございます。先方の理論というものはくつつけたものではないかというお話でございますけれども、それにしても、現行賃金の倍額を要求して、それでストライキをぶつているということは、あまりに失当でないかと思うのでございます。まじめな要求とは受取れないと思うのでございます。  それから、経営者の方はさつぱり実情を容認せぬということではいけない、実際に賃上げの必要があつてそういう声があるのだから聞いてやれ、そういう考えはないかというお尋ねでございましたが、私どもは、昨年実はその立場をとつて、二割以上の引上げを容認したのでございます。実質的にはそういう事態がございますれば、私どもは十分考えて今までもやつて来ました。そういう立場をとつておりますので、御了解願いたいと思います。
  146. 田中伊三次

  147. 石野久男

    石野委員 早川さんにお尋ねいたします。どうも立場が違うと、お互いに非常に違うものだということを、はつきりきようは聞かされるわけですが、田中さんの話と早川さんの話は非常に対蹠的になつております。早川さんのお話では、今日の事態の見方について、とにかくどんなことがあろうと、おれたちの言い分が通らない限りは、てこでも動かないのだという印象を受けるわけであります。先刻中山会長は、招致されたときに、今日の事態において、もし緊急調整の問題が起る場合はどうだという森山さんの質問に対して、今日の事態ではそういう事態は起るとは考えないが、ただそういうような度合いの点からいえば、電産よりもむしろ炭労の方にそういう要請されるような度合いが濃いのではないかということを言つてつたように思います。その程度にまで今日の炭労ストが日本の経済界に及ぼす影響が大きいというふうに、中山会長は見ておられるのではないかと思います。従つて労働委員会が、今日この問題をなるべく早くお互いに満足の行くようなその解決をはかつてやるように労をとろうという場合に、早川さんの今言つておられるように、おれの言うことを聞かなければ動かぬとか、われわれの立場に対してほんとうの理解がない場合には動かぬというようなことを言つたり、あるいはまた今度の交渉においても、何だか先方の戦術の上に乗せられているような感じがしているという話を聞いておりますと、どうもストそのものに対して連盟側では、今のところ解決などは考えていないというふうに受取れるのでありますが、その点はどうかということを、ひとつお伺いしておきます。  それからまた田中さんは、ようやくにして振出しにもどつたのだ、ストが今日まで行われたことは、その振出しにもどるまでの間の行為であつた、本質的なストはこれからで、これからわれわれの要求の闘いが出て来るのだというようなことを先ほど言われた。あなたが今供述されたことと対蹠的なのは当然だと思います。なぜならば、あなたのおつしやるところでは、とてもとても賃金なんか上げられるものではないのだという御意見であつたからです。従つて炭労側が、昨日非常事態宣言などもし、これから先、ほんとうの意味の闘いをしようとして来ているときに、あなたの方では、そんなことはもつてのほかだというようなことで、依然として、やはりけつて行くという態度をここではつきりなされているように承知しますが、そういうふうに受取つてよろしいかどうか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。  それからあと一つだけお聞きしておきたいのですが、どうも炭労の組合員はそうではないけれども、幹部の連中が、われわれを踏んだりけつたりの態度で経営者に当つているということを言われたのであります。そのことは、要するに、ストをやつておるからいけないのだということの意味なんだろうというふうに私は聞いておりますが、ストをやめろということを意味したか、どうですか。ストをやめてとにかく交渉に入れ、こういう意味つたのですか、どうですか。そこがちよつとわからなかつたのですが、聞かせていただきたい。
  148. 早川勝

    ○早川参考人 最後の点でございますが、ストをやめろという意味ではございません。これは組合がやめるかやめないかは、自主的にきめることであります。しかし、ストライキの圧力中に交渉を持つて、そしてその圧力を受けながら私どもは譲歩して、ほんとうに誠意をもつて二十四日以来昨日までその解決に努力したところを、すぽつとまたまたけられて、今振出しにもどるというお話があつたそうですけれども、振出しではなく、大譲歩したところで、また圧力をかけられておるという現状でございます。しかし、自主的解決のための努力というものは、先ほど山口さんもおつしやいましたように、私は捨てないでやつて行くつもりでおります。  それから、もう一つの点でございますが、先ほども申しましたように、労使関係、企業内、当該産業内の問題だけでやつて行く段階もございます。そしてまたそれでけつこう片づいたり、すつたもんだすることもあるだろうと思うのでありますが、今御指摘のように、私ども石炭関係者の立つております立場は、ほんとうに全産業に非常に大きな影響を与えておるという認識は、私は深く持つております。従つて、先ほど冒頭に申し上げましたように、経営上重大な支障になることをもあえて忍びまして、標準作業量という経営改善のための金看板をおろしてしまつたのであります。これはすなわち二番目のお尋ねに関係があるのでございますが、振出しにもどつたのではなくして、そこまで私どもはおりてしまつたということなのでございます。これをひとつ御了解願いたいと思います。
  149. 田中伊三次

    田中委員長 それでは早川さん御苦労さまでございました。  これで参考人に対する質疑は終了いたしました。  それではこのままでちよつと休憩いたします。     午後四時三十四分休憩      ————◇—————     午後四時三十七分開議
  150. 田中伊三次

    田中委員長 休憩前に引続き労働委員会を再開いたします。  この際委員長より諸君にお諮りいたします。電産、炭労争議に関する件でございますが、諸君御承知通り、この二つ争議は、国民経済及び国民生活にとつてまことに重大な影響を及ぼしつつあるものと考えられますので、当委員会は、この際政府並びに労使双方に対して、争議の急速なる解決を促すための決議を行いたいと思います。  まずその案文を読みます。    電産、炭労争議に関する決議案  電産、炭労両争議はわが国産業の根幹にふれる大争議であり、特に国民経済及び一般国民生活に与える影響は極めて甚大である。依つて委員会は両争議の速かなる解決を期するため、労使双方に対して解決の促進を要望し、政府はこれがあつせんに積極的に努力することを要望するものである。   右決議する。  この決議案を全会一致をもつて労働委員会の決議といたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  151. 田中伊三次

    田中委員長 御異議なしと認めます。それでは、電産、炭労争議に関する決議案は、委員会の決議とすることに決しました。  その取扱いにつきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。
  152. 田中伊三次

    田中委員長 なお連合審査会の件でありますが、おまかせをいただいておりましたように、人事、運輸両委員長と御相談の結果、明後四日午前十時から当第十二委員室において連合審査会を開くことにいたします。  次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時三十九分散会