○天野
政府委員 法務省所管、
昭和二十八年度一般
会計予定経費の
概要について申し上げます。
昭和二十八年度
法務省所管の
予定経費要求額は、百八十八億六千百十八万三千円でございまして、前年度の
予算額の百七十七億六千九百六十七万五千円に比較いたしますると、十億九千百五十万八千円の
増加でございます。この
増加のおもな部分は、昨年の補正
予算に計上されました給与ベースの改訂に伴う
人件費によ
つて占められておりまして、
人件費は九十六億八千百八十五万八千円でございますから、総
予算額の五割強にあた
つております。このほか使途別に分類いたしますと、
旅費が十億九千百六十九万八千円、物件費が六十三億四千二百六十六万円、施設費は
事務費及び予定施設整備費を除きまして九億八千三百三十二万円、補助費、委託費三億六千四百一万一千一円、その他三億九千七百六十三万六千円ということに
なつております。
予算定員について申しますと、前年度末の、四万四千八百五十七人に比べまして、四万五千三百七十四人、すなはち五百十七人の増員でございます。これは一方におきまして大臣官房で十人、それから矯正
職員で九十三人を減じますとともに、他方におきまして保護観察所の保護観察官で九十三人、それから入国監理の
関係で入国警備官等五百二十七人の増員を認められたことによる差引の結果でございます。その他一般的な問題といたしまして、
予定経費に対しまして極力節減の方針がとられておることは申すまでもございません。たとえばさきの補正
予算におきまして
旅費の一割、
庁費の五分を節約したのでございましたが、それは大体におきましてそのまま踏襲されてありますし、そうでないものも財政規模の圧縮から全面的に調整をされております。従いまして実質的に見ますと、交通費の値上りとか、
通信費等の改訂等により、
予算の運用は依然としてきゆうくつなものであることは免れないと存ずるものであります。そこで法務省の
予算は、その所管
事務の性質上、前年度に引続き恒常的な
経費ともいうべきものがすべてであるとい
つてよいと存じます。すなわち特別の政策による新規事業というような種類の
行政事務はほとんどないわけでございます。もろろん前年度に行われました
衆議院議員選挙
関係の検察は、二十八年度
予算においては予定されておりませんし、また昨年七月一斉に行われました住民登録の初度的な
事務は、本年度にはあり得ないわけでありますから、
予算上も当然落ちておりますが、ここで特に前年度と異なるものとして特色のあるものを列挙して御
説明いたしたいと存じます。
その一つは参議院
議員通常選挙のことであります。この選挙につきまして厳正適切な検察を行うというために、本省、それから検察庁を通じまして四千百三万四千円の
予算が計上されております。これは一応事
件数を二十五年度の参議院
議員選挙の際の一万八千五百六十八件の八割と押えまして、一万五千人につきまして前回同様の単価を乗じて検察費を出し、これに行政費や超過勤務
手当を加えたものであります。
次に成人であります刑の
執行猶予者に対しまして保護観察制度を実施することにつきましては、短期自由刑の弊害を除いて、かつ再犯を防止するために、施策として本来研究が重ねられ、法制
審議会におきましても採用議決されたのでありますが、いよいよ本年七月からその実施に着手することになりました、そのために所要の
関係法律の
改正に手をつけますとともに、保護観察所におきまして被観察者の補導援護等に必要な観察
旅費、補導諸費、更生保護委託費の
経費等一千三十五万三千円を計上いたしました。
次に、世上注目されております巣鴨刑務所の
関係では、平和条約第十一条によります刑の
執行及び赦免等に関する
法律の規定に基きまして、巣鴨刑務所在所者の仮出所、赦免、減刑等の
審査及び
関係各国への勧告を行いますために、在所者の環境の
調査、また勧告用の各種
調査資料の作成等が必要でございますので、その
経費百九万一千円を見ております。
次に法務局
関係といたしましては、従来出張所いわゆる登記所の
職員に対して
予算上超過勤務
手当が認められておりませんでしたが、ようやく二十七年度におきまして、六大都市の出張所
職員に限
つて一箇月五時間分を認められましたが、二十八年度におきましては、出張所
職員全員に対しまして一箇日四・六時間平均の超過勤務
手当が認められたのであります。
金額で申し上げますれば九百三十七万三千円にとどまるのでありますが、多年の望みが達成されたわけでありまして、私どもとしては、その意味で特徴的なものであると見ております。
それから刑務所、拘置所、少年刑務所、少年院及び少年鑑別所における収容所者の収容に必要な
経費並びに刑務作業に必要な
経費は、前年度の五十億二千七百四十一万円から四十八億七千八百四十万六千円に
減少いたしました。その内訳につきましては、前年度と対比いたしますと、刑務所の収容費は、前年度三十二億三千六十九万三千円でありましたが、今年はこれから九千四百二十三万円
減少いたしました。少年院の収容費は、前年度の四億九千九百六十五万五千円に比較いたしますと、三千七百三十一万八千円の増となります。それから少年鑑別所収容費は、前年度一億四千三百六十九万二千円に対し一千四十万八千円の増であります。刑務作業費は、前年度十一億五千三百三十七万円に対しまして一億二百五十万円の減と
なつております。これは刑務所収容費につきまして、収容
人員を前年度の十万人に対し九万二千人と見込みまして、食糧費等の単価の値上りにもかかわらず総額におきまして
減少することと
なつたのであります。なお少年院及び少年鑑別所の収容
人員は、前年度と同じようにそれぞれ一万二千人、三千人と見込みまして、そのために必要な食糧費、被服費、炊事用燃料費、医療費及び教化費または鑑別費が計上されてございます。費につきましては、前年度における作業用器具の整備及び二十八年度における収容
人員の
減少のため総額において
減少いたしましたが、作業収入は、作業費の
減少にかかわらず収入歩合の
増加等によりまして、前年度より若干の収入増を見込んだ結果、前年度の十八億三百十七万に対し十八億九千九百五十六万四千円、すなわち九千六百三十九万四千円の増と
なつております。
前年度の当初
予算に外務省所管に計上されておりました入国管理
事務関係のものは、本年度におきまして
法務省所管に計上されております。冒頭に入国警備官の増員五百二十七名と申し上げたことによ
つても明らかなことと存じます。入国管理
関係の
事務は、本年度におきまして大いに補強することが考えられております。たとえば昨年五月一日から本年一月末までにおける大村収容所の収容者総数は、朝鮮人を主といたしまして二千二百六十七名、この期間の朝鮮人送還者数は、自費出国一名を入れまして千九百八十七名、そのうち逆送還された者が第八次送還の際の百二十五名を入れまして現在百二十八名と
なつておるのに対しまして、大村収容所の収容能力はせいぜい七百名どまりであるために、今後の強制送還や収容措置の強化促進に伴いまして、はなはだしい不足を来すのでありますので、さきの補正
予算による第二大村収容所を目下建設中であります。他方これらの施設の収容所のために必要な食糧費、炊事用燃料費または医療費等及び被退去強制者の送還のための用船料等につきまして、前年度に対し七千百三十一万八千円増の二十億一千四百万円を計上いたしました。
それから昨年度途中から発足いたしました公安
調査庁につきましては、
職員の
増加を行いませんでしたが、
旅費、研修費、物的施設整備費の面におきまして六強化することになりまして、前年度より二億九千五百十三万円増の、六億八千三百五十六万五千円がその
経費と
なつております。
施設費
関係は、前年度に引続きまして、所管諸施設の新営、移転、整備、
買収等を行うために、十億四百一万七千円を計上してあります。しかしこれは前年度より七千百四十四万円の減額でございまして、特に
裁判所の施設
予算に比較いたしまして、わずかでございますが、例によ
つて彼此相互間の均衡を
維持するために苦心をするつもりであります。もつとも建設省所管の施設費の中に法務本省、それから法務局の
関係、公安
調査庁及び入国管理局
関係を合せまして二億二千二百八十一万八千円が計上されておりますから、これを加えますと十二億二千六百八十三万五千円でありますが、それでも前年度と比較いたしまして二千七百四十万九千円の減でございます。
その他こまかいことがございますが、省略いたします。
以上
法務省所管の歳出
予定経費について申し述べたわけでございます。