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1953-02-26 第15回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十六日(木曜日)     午前十一時九分開議  出席分科員   主査 尾崎 末吉君       相川 勝六君    淺利 三朗君       加藤常太郎君    高見 三郎君       貫井 清憲君    森 幸太郎君       竹山祐太郎君    早川  崇君       熊本 虎三君    杉山元治郎君       吉川 兼光君  出席国務大臣         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣        経済審議庁長官 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         経済審議政務次         官       小川 平二君         総理府事務官         (経済審議庁次         長)      平井富三郎君         総理府事務官         (経済審議庁総         務部長)    西原 直廉君         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    岩武 照彦君         総理府事務官         (経済審議庁計         画部長)    佐々木義武君         総理府事務官         (経済審議庁調         査部長)    須賀 賢二君         大蔵事務官         (主計局次長) 石原 周夫君         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 伍良君         農林事務官         (農業改良局         長)      塩見友之助君         農林事務官         (蚕糸局長)  寺内 祥一君         食糧庁長官   東畑 四郎君         林野庁長官   柴田  栄君         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (大臣官房長) 石原 武夫君         通商産業事務官         (企業局長)  中野 哲夫君         運輸事務官         (船舶局長)  甘利 昴一君         運輸事務官         (港湾局長)  黒田 靜夫君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      植田 純一君         郵政事務官         (経理局長)  中村 俊一君         郵 政 技 官         (電気通信監理         官)      庄司 新治君         建設政務次官  三池  信君         建設事務官         (道路局長)  富樫 凱一君  分科員外出席者         農林事務官         (農地局総務課         長)      正井 保之君         通商産業事務官        (通商局次長)  松尾泰一郎君         日本国有鉄道         参     事         (営業局旅客課         長)      高倉 一雄君         予算委員会専門         員       園山 芳造君     ————————————— 二月二十六日  分科員野澤清人君、鈴木正吾君及び平野力三君  辞任につき、その補欠として加藤常太郎君、竹  山祐太郎君及び杉山元治郎君が委員長指名で  分科員に選任された。 同日  分科員竹山祐太郎君及び杉山元治郎辞任につ  き、その補欠として鈴木正吾君及び熊本虎三君  が委員長指名分科員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算経済審議庁、農  林省通商産業省、運輸省郵政省及び建設省  所管  昭和二十八年度特別会計予算農林省通商産  業省運輸省郵政省及び建設省所管  昭和二十八年度政府関係機関予算通商産業  省、運輸省郵政省及び建設省所管     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  ただいまより昨日留保いたしました一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管についての質疑を継続いたします。森幸太郎君。
  3. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 きのうあらかたの質問終つたのでありますが、残念ながら主管大臣が御欠席でありましたので、言い足らぬ点もありましたが、昨日申し上げましたことを速記録を通じまして、よくお考え直しを願いたい点もあるのであります。きようは御出席になりましたので、一つ二つ私の意見を申し上げて御意見を伺いたいと思うのであります。  農林省予算食糧増産に対して、相当の御計画を立てておられたのでありますが、今日提案されました予算では、決して満足な程度とは考えられないのであります。さらに農林省としましては、五箇年計画を十箇年計画として考え直すというふうな案をお持ちになつておるようでありますが、これは日本の地勢の上から申しましても、原始産業である以上、予定通り以上の成績が上つて来ないという一つの大きな悩みがあるのであります。また財政面から申しましても、当初計画いたしました事柄が、その年次の予算編成の上において、計画通りに割当ができないというような場合も、現に本年のごとく、決してないとは言えないのであります。それでありますから、食糧増産ということに対しては、最も慎重な立場において、計画をお進め願いたいのであります。しかるに現在農林省は、功を急ぐという意味か、未完成のまま発表されることが多いのであります。現にこれは廣川農林大臣のお考えであつたか、南方諸国のかわつた稲を栽培する、非常に収量も多く、強靱性があるからというようなことが世に伝わりまして、ずいぶん種もみの収集に努力した向きもあるのでございます。せつかくやつてみたところがうまくない、あるいは予期通り成績が上らぬので、まことに失望した向きもあつたよりであります。これは稲のその土地に対する特異性と申しますか、よそから狩つて来ても、そう簡単にその土地に落ちつくものではないのであります。日本内地における稲穂におきましては、大体同一の性格になつておりますから、北海道のものを九州へ移しましても、中国のものを関東に移しましても、成績が上る、場合によつては非常にいい成績を上げるのでありますが、とうも外国稲穂をそのまま持つて来ましても、なかなかうまく行かない、仏はアメリカの最もいい品種とされる舶の種をとつて参りまして、昨年、一昨年と二箇年栽培をさしてみたのであります。非常にいい品種でありまして、アメリカではこれが最もいい種類だと言うておる稲すら、こちらへ持つて来ますと成績が上らない。こういうことでありますから、たまたま出征しておつた兵隊が、向うの強靱性のある稲を見て、これでは風があるところにつくつてもよかろう、病虫害にも強いと思つて、たまたま一年、わずかなものをやつた場合に、相当成績上つたからといつて、これを普及するということはまことに危険であります。どかこういう面につきましては、農林省農事試験場等において十分なる研究をしまして、確信を持つて普及してもらうというふうにしていただきたいのであります。しかし稲というものは年に一回が原則でありますから、試験を一年に何回も繰返すことができな遺憾がありますが、どうかひとつ慎重な態度をもつて指導していただきたことを、特にお願いするのでありま  つきましては、本年度の予算に二毛三作田奨励があります。これは理論上今まで一回しかとれなかつた水稲を二回つくり、そうしてなおかつ裏作をやる二毛三作田奨励が企図されております。これについて農業改良局としましては、確信をお持ちになつておるか。幸いにそれができましても、農家経営上引合うのか引合わないのか、そういう点まで十分検討を加えて発表されない場合においては、せつかくやつてみたが、収支相償わないということになります。また現に四国地方の稲の二毛作のできるところにおきましても、収支計算からいえば決して利益ではありません。労力の点、あるいは肥料の点から考えましても、一毛作田と比較しまして、これはそう有利ではない。労力を非常に要し、収量も下つておる。こういうことでありまするが、本年から二毛三作田計画されたについて、はたしてりつぱな確信を持つてお進みになるつもりか、この点をひとつ承りたいと思います。
  4. 塩見友之助

    塩見政府委員 ただいまの森さんの御質問にお答えいたします。ただいまお話になりましたのは、西南暖地等水田生産力増強費三千七百万円の問題と思います。それにつきましては、あの地帯で早植の稲が、台風の関係もありますし、それから湿田の関係もありますし、あの地帯全般というわけではなく、農業経営上も、それをやることによつて有利になり得るという地帯相当あるように考えられておりますので、試験的に、そういう希望を持つております農家に、早植の方の施設奨励いたしまして、それで進めて参りたいというふうな点を考えておるわけでございます。もちろんこれは、ただいまお話のありました通りに、農家経営上も、増産上もすべていい成績が出るという確信を、今ただちに持つておるわけではございません。大体試験的の考え方をもつてつております。早植と早取りにつきましては、品種的に確信を持つております。また反当収量からいつても、一作の場合とほとんど同様に今までの成績は上げられております。二毛三作というような点につきましては、これは相当大きな革新でございまして、まだ問題がありますので、続いて研究をしながら進めて参りたい、こう考えておるわけでございます。  それから御注意のありました、南方外国の稲をただちに取入れるというような点については、これは十分われわれの方としても、御注意の点を考えながら進めて参りたいと思つております。私どもいろいろ前から研究しておりますると、西南地帯の稲につきましては、日本の大体近畿地方にあつた明治時代品種というふうなものを中心にして品種改良をやつておりまして、私の承知しておりますところでは、九州あたりにありました稲としては、九州八号というのが一つだけ交配候補に選ばれて、そのほかにあまり選ばれたものはない。大体近畿あたりのを西南に持つて来ておるという傾向にあります。台湾蓬莱米を見ましても、支那等で中支にあれだけうるち米の多いところを見ましても——うるち米などにつきましては、宋の時代仏印から入れて、それが成功してあれだけ稲作が伸びておる。八月以降の水害を救うというような形で発展しておるわけでありまして、そういう意味から見ますと、西南地方における品種敬良においては、今までは幅が狭く、日本の中の稲だけでやつておられたという点があるわけでありまして、もう少しほかの品種を入れて——今御注意のありましたように、ただちにそれが成功するということは考えられませんが、そういう点につきましては、十分試験研究を続けながら、こういう西南暖地方の早植早取り、できますれば二毛三作というふうな形まで進められるかどうかというような点は、慎重に研究しながら進めて参りたいと考えております。
  5. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 稲の品種改良がなかなか短時日でできるものではないことは、お話通りでありますが、台湾蓬莱米をつくるについても、いかに日本技術面において苦心したかということは、御承知通りであります。今農家としては、どうかして風水害に対抗し、あるいは病虫害にも強く、収量を増したいという念願に満ちているのでありますから、たまたま何か目新しき方策が発表されると、それに一生懸命になつて来る。この二毛三作地帯も、まだ試験の範囲を出ません。これはまだまだ試験研究の余地があろうと私は思うのでありますが、新聞等で見ますると、二毛三作田をつくると、いかにも日本食糧問題を解決するような宣伝をされる。そうすると、十分研究のない農家はそれに走つてしまう。こちらの指導の面において、しつかりした方針を持つておるならばうまく誘導できますけれども、そうしないと、いたずらに失望落胆せしむることになつてしまうと思うのであります。どうかこういうことは慎重の上にも慎重を期して研究をしてもらいたい。また新圏等に発表される場合においても、これは一つ試験である、決してまだ奨励立場ではないということをはつきりせられなければ、農民を迷わしめることが非常に多いと考えますから、今後十分に御注意を願いたいと思うのであります。  次に、農林大臣がおいでになつておりますから……。昨日もちよつと申し上げたのでありますが、畜産の上においてその用途に非常に研究が進んでおります。私の滋賀県では御承知通り大臣も召し上つたと思いますが、近江牛というのは日本一の牛なのであります。これは兵庫県から牛を買つて来て、私の方で肥育して東京へ送つている。情ないことに神戸牛ということになつておりますけれども、これは私どもの独特の技術によつて仕上げた肉牛であります。ところが技術者が、あるいは農家が専念して肥育して来ましたものを、どういう肉の状態であつたかということを、自分屠殺することを許されないために知ることができない。きのう申したのを繰返すようでありますけれども、内務省衛生取締りという立場から、屠殺場監督内務省にあり、それが今は厚生省へ移管されておるわけであります。これは本来からいえば、衛生上でありますから、その処置について警察官が立ち会わなければならぬ。ところが立ち会う警察官はこういう方面にまつたく無知であり、ただ人的衛生の上から考えて、さしつかえないという判を押すだけでありますから、せつかく努力しました肥育の状態を現実に知ることができない。これはまことに残念なことでありまして、また酪農振興の上から申しましても非常な障害になつておると思うのであります。この問題は厚生省もどうとかこうとかいつてなかなか譲ろうとしない。しかしこれはあくまでも今日の食糧問題解決の上からいいましても、肉牛奨励その他豚でも同じことでありますが、奨励の上において農林省せつかく努力されているのでありますから、こういう点については厚生省とよく協調をされまして——これは農林省厚生省の問題ではありません、内閣の責任でありまするから、お前の領分だ、おれの領分だというようないざこざのあるはずがない。どうかひとつこの問題についての善処を要求するわけでありますが、農林大臣はどの程度に決心されておりますか、ひとつ承りたいと思います。
  6. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 先ほどの質問で、農業改良局長からお答えいたしておりましたが、この米の二期作についてのお話でございますが、これは今まで篤農家等がだんだんと実験をいたし、特に愛媛県あたりが非常に力を入れてやつ剤おることであり、またごの螟虫駆除て等もりつぱなものができて来ておるような状態でありますので、農家経営にどう影響を及ぼすかということは、まだ確たるものはつかめないのでありますが、とにかく暴風地帯をこれによつて救うことができ、あるいはまた農家経済によい影響が及ぼされる傾向が大分見られると思いますので、これは試験的にぜひ進めてみたい、こう考えております。  それから畜産関係でありますが、これは御指摘の通りに、屠殺の方は別の方でやつておりまして非常に不便でありますので——この間も森さんであつたか、他の方からでしたか、厚生大臣質問がありました場合に、厚生大臣法律改正の用意を持つておるということを予算委員会で言明いたしておりますので、われわれ農林省としても案を具して厚生省と折衝をいたしまして、今までのように一つのルートによつて、大事に育てました、しかも農家経済に非常に影響を及ぼします畜産の販路について、非常な障害になつておりますこの問題を解決するように努力いたしたいと思います。
  7. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 大いに努力するというお話要心いたしました。われわれもその実現に及ばずながら努力いたしたいと考えております。  なおこの二毛三作地帯については、大いに奨励するというお話でありましたが、これは繰返すようでありますが、そのやり方なり利害関係をよく説明して奨励していただかぬことには、非常に失敗するのであります。農家というものはその問題に一心にぶつかつてしまいますから、すべての総合的な考えを持たぬ場合が多いのであります。現に寒冷単作地帯保温苗代奨励されて、非常にいい成績をあげておるのでありますが、これもまたその指導の欠陥と申しますか、不注意から、種をまく量を減らさいで、従来通り、一坪当り二合とか三合とかまいておる。ところが今まではすずめがつつついたり小鳥がつつついたりして、三合まいたものが二合五勺になるというような自然の間引きができておつた。ところが保温苗代で紙をかぶせるから、三合なら三合、二合五勺なら二合五勺まいたものが全部はえてしまつて、苗が非常に弱くなる。これはせつかく奨励したのがかえつて軟弱の稲を育て上げたということになるのでありまして、これは一つの例でありますが、そういうことをよく農家にわかるようにしていただかなければならない。ボルドーなどというよい薬剤が発見されましたが、その使用法も十分徹底していない。茎のできるまでの幼い時代においては効果がありますが、少々稲が強くなつて、一尺、二尺茎が伸びて来ると、ボルドー効果は非常に少い。だからボルドーもだめだ、あるいはやりそごなつてけがをしたとか、死んだとかいう問題が起つて来る。そうするとせつかくよい薬剤でありましても、そういうために普及が遅れてしまう。これはよくあることなのであります。石灰窒素が初めてできたときに、その使用を誤つて石灰窒素は稲を枯らしてしまうものだ、こういうものはやつてはいけないというので、せつかくよい石灰窒素肥料が一時流行したけれども、普及しなかつたこともあります。こういう点に細心の注意払つて、すべての指導をしていただきたい。ことに二毛三作田というようなことは、まだまだ私は研究時代だと思いますから、あまり宣伝しないように——農林省宣伝が上手でありますが、あまり宣伝をはでにしないように、実直にひとつ指導奨励することをお願いするのであります。  もう一つ、幸い農林大臣がおられるから、私は特に今後に対してお願いいたしておきたいことは、近年ダム設置が盛んであります。まことに日本現状としてはダムで水源をうまく利用するということは必要でありますが、河川は内水面漁業として相当利用されておるところであります。必ずダム設置には魚梯というものをつくらなければならない。そうして魚が自由に遡上するような施設をしなければこれは許可すべきものではないのであります。魚梯をこさえたからといつて貯水量に重大な関係を与えるというようなものではないのであります。ただ魚梯を合理的にすることについては、工事費が多少かさむ点はありますが、これは大した問題ではないのであります。従来工業面企業者はこういう原始産業についてはまつたく無知であり、無関心であり、無とんちやくであります。漁師が困ろうが、百姓が困ろうが、自分さえよければよいというような企業者考え方が間々あるのであります。その結果日本にはたくさんのダムができておりますけれども、河川において魚が遡上するような魚梯というものは一つもないといつてよいほど、乱暴になつているのであります。これは大臣も御承知でありましようが、われわれもダムを見ましたときに、実に情ない。こういうようにして一つ原始産業を圧迫するようなことまで国がさせるような乱暴な工事をやつておるのであります。現在において魚梯の不完全なものはこれを訂正せしめる、今後のダム設置の場合においては必ず農林省水産庁責任をそれらの者に持たして、そして完全なる魚梯をつくるように、ひとつ十分なる監視と指導をしていただきたいことをお願いしておくわけであります。  なおこれに関連したような問題でありますけれども、近代化学工業の発達しましたために、ことに日本化学工業は水を利用するのが大方であります。従つてその利用した水は必ず廃液として出るのでありますが、この廃液が悪いために、沿岸漁業が非常な損害をこうむつておる。また河川飲料水を失い、魚を失うという実例が枚挙にいとまがないほどであります。この問題は水質汚濁防止法制定というような問題も今起つておるのでありますが、こういう問題は決して化学工業を圧迫するものではないのであつて、誠心誠意やればやれるのであります。これも先ほども申しましたことと同様に、やれるのをやらない、こういう現状であります。昨日も通産省政府委員にこの問題をやかましく言いまして、今後そういうふうな化学工業を起す場合においては、どういう薬品を使い、どういう廃液を出す、その廃液状態等を調査する準備をさせるように、また注意をするように要求しておいたのでありますが、これは農林省自体もあまりこういう問題については無関心であられるように思うのであります。きのうも水産庁関係の方々も、目下研究中であり、具体的にこうするということはできていないけれども、今ただちにというわけには行かないが、今後十分研究をして、水質汚濁防止のために善処するというお話でありましたが、どうか農林大臣は特に頭にとどめておかれまして、今案すく起らんとする化学工業の発展を、これはじやまをするものではないのでありますから、この化学工場のそういう施設に対して、一段のお骨折りをお願いいたしたいと思います。
  8. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この内水面魚族の保護ということは非常に大事なことでありまして、これについて魚梯の問題を取上げられておりますが、われわれ  といたしましてもまつたく同感であります。また工場設置されまして、それから廃液等が流出いたしまして、そのために内水面魚族を害することも、われわれとしては非常に遺憾に考えておるのでありまして、かつても本院において、河川汚濁防止法という名の法律ができかかつたことがありますが、これも途中で消えたようなわけであります。しかし内水面魚族をどうしてもわれわれは保護して行きたいと思いますので、十分これを検討いたし、各省とお話合いをいたしまして、そのようにいたしたいと思います。
  9. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 きのうも蚕糸局長が見えておりまして、意見だけは申し上げておいたのでありますが、農林省食糧増産をまず第一に考えておられるのでありますが、食糧増産ということは、結局日本人が自分の必要な食糧を完全にとつて行くということにほかならないのであります。しかし現在の食糧事情は、私が申し上げるまでもなく、外国から買わなければいけないという状態であります。外国から買うということになれば、いわゆる金を払わなければならぬ、外国に金を払うということになれば、外国からほしいものはそれだけ買えない、そしてあとは何もなくなつてしまうということでありますから、日本が今後経済上独立をしようと思えば、できるだけそういう消費財外国から買わないようにする。それと同じ意味において、外国のドルをよけいとるということを考えなければなりません。それには日本には新興繊維もありますが、申し上げるまでもなく、戦前戦後を通じて、この蚕糸類生糸、絹織物が百パーセント外貨の獲得率を持つ重要な産業であります。ところが農林省蚕糸局というものができておりますけれども、まことにその内容が貧弱であり、内容の貧弱であるか貧弱でないかは別といたしまして、蚕糸類外国に売るということについての努力が足らぬと私は思う。生糸最高最低の値段をきめて、価格の安定はいたしましたけれども、まだまだ生糸は売れます。内地需要のみならず、外国に売れる、売れるのだけれども、宣伝がへただ。通産省予算で見ると、二千万円ですか、広告のビラ代にも足らないような予算を組んでおる。そうして得々としてはおらぬかしらぬが、宣伝事終れりというような考えを持つておる。こんなことで日本の主要産業外国宣伝できはしません。だからもつとこの蚕糸業は外貨獲得の重要な役割を持つものだという意味で、農林省はこの蚕糸業に対しての仕事を、もつと真剣にやらすようにお骨折りを願いたいと思うのであります。今最高価格が二十五万五千円くらいに売れておりますが、為替の関係もありますけれども、外国に売るについては、どうも内地で売るのよりは安い、それだから内地へ流れてしまう。せつかく外国に売つて外貨獲得をしなければならぬものが、内地の消費をそそつておるというようなことでは、まことにその目的が完全なルートに乗つておらぬと思うのであります。できるだけ外国生糸を売るようにしなければならぬ。それには為替関係で内地に売つているものに、ドルに対する差額の補助をしたらどつかということを、われわれは考えるのでありますが、それは今日の場合予算に載つておりません。できておりません。これはまことに残念であります。それについて話が同じような問題になつておるのでありますが、今日の蚕品種、蚕の種類でありますが、これは非常に向上して参りました。また繭から糸をとる機械も、自動繰糸機等、実にりつぱな機械ができて参り、機械がりつぱであればあるほど、原料である繭の完全なものをつくらなければならぬ。繭の完全なものをつくるについて、しかもむずかしい品種によつてつくるのでありますから、ここに技術指導ということを最も十分にやらなければならぬ。ところが政府のこの蚕業技術員に対しての考え方は、農業改良普及員と違つて、これを自主的にやらしておるのであります。これの幾分の助成を——二分の一ですか三分の一ですか、助成しておるのでありますが、これはわずか二千六百人か七百人くらいしか見ておらない。事実は五千人くらいおる。五千四百人おる。これを知つていて見のがして射る。五千何百人の技術員がおるにもかかわらず、予算においては二千六百人分しかやらぬ。こういうことを知つて知らぬ顔をして技術員を奨励しておる。これはまことに遺憾なことでありますが、今人をふやすのでない、現におるのです。現におるのだから、おる者に対しては、公平な考え方によつて助成してもいいのではないかと私は思うのであります。この点について農林大臣は、よくわかるけれども、今さらこれをふやすことはできぬとか何とかおつしやるだろうと思うが、将来においてこの蚕糸業の重大性をもつと内閣全体が考えてもらいたいと私は思うのですが、農林大臣はどうお考えになつておりますか。
  10. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 日本の現在の正常貿易で、われわれが消費する食糧を買い切れないということは、もう識者のひとしく心配いたしておるところでありまして、辛うじて特需によつてわれわれは食いつなぎをしておるというのが実情であります。そこでこの内地の純粋の生産品で、原材料を外国に求めないもので手取り早く外貨をとるというのは、やはりこの生糸にあるのであります。それで生糸蚕糸局関係のことについてあまり冷淡じやないかというおしかりのようでありますが、まつたくこれはしかられても、現状のところいたし方のないぐらいにやつておるようなわけであります。ただ宣伝費等については、このほかの産業に対しましては助成をしないという建前であつたのでありますが、今度は宣伝費を二千万円、少い額ではありますが、出すと同時に、業者からも一億のものを出して宣伝に努めよう、こういうようなわけであります。また特にこれは製糸工場技術も非常に進歩いたしまして、これは自動繰糸機が御存じのようにあの通りりつぱな機械ができ、しかも蚕糸の改良というようなものが非常によくなつておることは御指摘の通りであります。ただ改良普及員についてのお話でありますが、これはまつたくわれわれの政治力の足りない結果、金がとれないのでありますが、事実は森さんの御指摘の通りに五千名近い人に実際に働いてもらつておるようなわけでありますので、これは何とかいたさなければならぬと考えております。  それから内閣がこれを認識しなければならぬということでありますが、内閣はもちろんでありますので、この間森さんが予算委員会において質問いたされた内容そのままをとりまして、全国民にこれを認識してもらうようにラジオをもつてあなたの言葉もそのまま私も放送いたしておるようなわけであります。
  11. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 貫井清憲君。
  12. 貫井清憲

    ○貫井委員 林野庁長官に今後の木材の需給の状況につきましての見通しを伺つておきたいと思うのでありますが、わが国の六八%が林野の占める面積だと言われておりますが、最近の濫伐に次ぐ濫伐の結果、林産資源は非常に枯渇して参つておるのであります。毎年の伐採量が標準伐採量をはるかに突破いたしまして、伐採面積は造林面積の一倍半にも達しておる。これに造林を要する林地が現在二百五十万町歩を越えておると聞いておるのでありますが、このままで推移いたしますと、日本の山は今後数十年を出でずして、すべて裸になつてしまうという計算になります。森林が先年来の災害によりまして、あの厖大な荒廃の事実を見て参りまして、これが復旧対策に常に御苦心を願つているとは存じますが、森林がわが国の天然資源のうちでは最も大きな資産になつております。今後治山治水が日本再建の基本をなすものであるというときに、国民にもう少し造林意欲を盛り上げるような方法がなければならぬと思います。いろいろ愛林運動も展開はされておりますが、その効果がまことに少いように考えております。山を治めること、これにつきましての今後の治山政策といいますか、もう少し徹底した方法をおとりになる考えを持つてもらいたい。需給の状況につきましては、ただいまの伐採量をもつていたしましては、一般の需要に充当するわけには参らぬように存じておりますが、森林法の規制等で今後の伐採は極度に制限されております。需要は戦災のあと、あるいは今後人口のふえるに従つて住宅なりその他用材の需要が非常にふえて参つておるのでありますが、これに対する蓄積は現在をもつていたしましてはまかない切れない、かような見方がされますときに、これの需給の見通しをまずもつてお伺いしたいと思います。
  13. 柴田栄

    ○柴田政府委員 お答えいたします。ただいまの御指摘の通りわが国の林野は現状におきましては戦争以来の切り過ぎによりまして、相当蓄積量も減少いたしており、ちようど現在のわが国の林野二千五百万余町歩に対して戦前の蓄積は約六十六億石余になつておりましたが、戦争以来の切り過ぎで約一割ほど食い込んでいるという状況にあるのでありますが、御承知通りこの取扱いは成長量を伐採し、あわせて成長量を増加しつつ増産して行くということが、最も安全な関係になりますのに、蓄積を一割余も食い込んでいるというところに非常に危険な状態に追い込まれているわけであります。しかも一方木材、薪炭等の需給の状況を見て参りますと、昭和二十四年ごろまでは大体年間八千数百万石でありましたのが、二十七年度におきましては最小有効需要九千八百万石程度を要するということでありますが、わが国の林力からいたしますと、とうていこの量は供給し得ないのでありまして、蓄積と山の状態からいたしまして、伐採可能な林齢に達しておりますもの、それから伐採可能の林齢に近いもの等を合せまして、ようやく六千三百万石程度というのが、一応危険のない伐採量ということになるのでありますが、さらに造林を促進いたしまして、成長量を増加するという面からいたしまして、約二〇%程度の伐採増加はやむを得ないということで、許可数量の最大限度を決定いたしております。さらに現在蓄積が相当減少はいたしておりますが、林道その他の施設がないために、鉄道のつかない奥地の天然林が約二百八十万町歩ほどございまして、これに包蔵いたしております蓄積が十四億石程度を持つておりますので、極力これに林道を入れまして、天然林の開発をいたすと同時に、さらに成長量を増すために造林を促進し、あるいは手入れを加えるというような措置も講じなければならぬ、かように考えてこれに協力いたしておるのであります。戦争以来蓄積の六億石減少という状況は、二十六年度末において、伐採いたしまして造林を要するところで手遅れになつておりましたところが、約百四万町歩残つているわけであります。二十七年度にある程度これを解消いたしまして、二十七年度末には現在切つてすぐ補植いたしますものは補植いたしまして、さらに手遅れのところを極力造林することにいたしまして——なお八十八万町歩ばかり手遅れ地があるわけであります。これらを速急旧に復するために造林費の増額を願つておるわけであります。一方山に蓄積が減少いたしました結果、崩壊その他の原因ともなりまして、現在におきましては、山地において崩壊いたしておりまするところが約二十九万余町歩、さらに崩壊に瀕しておりまするところが二十三万町歩余にもわたつておりますので、災害を極力減少するために、治山事業として一応山を治めませんと、下流に対しまする非常に大きな公共的な被害、あるいは経済的な被害を及ぼすということで、これまた予算の増額をお願いいたしまして、年次計画によつて進めておる次第であります。かような現状にありますので、有効需要一億石に近い木材の需要は、今後といえども減少するということはなかなか困難でありますので、これをいかにして補つて行くかということは、私どもの最も苦慮するところでありまして、一面においては最小限の需要はどうしても供給しなければならないという関係上、一方においては外材の輸入を極力はかりたいということで努力いたしております。わが国において最も深刻に需給の逼迫いたしておりますのは、針葉樹の関係でございまして、潤葉樹の方面において輸出が振興いたしますれば、ある程度これを振りかえて針葉樹を入れるという方法はありますが、現在のわが国の建築様式その他からいたしまして、なかなか振りかえが困難な状況にあります。これの輸入は二十七年度におきましても、米材等を主体といたしまして七十万石程度を期待いたしておつたのでありまするが、価格の関係等によりまして、五十万石程度より輸入が見られないのではないか、かように考えておる次第でございます。これらを考えますると、今後の対策といたしましては、最小限度切らなければならないものは、森林計画に基いて、極力利用可能な山を切つていただいて、幼齢林の伐採を押える、造林可能のところに極力造林地をふやしていただく、一方潤葉樹を極力針葉樹に振りかえて使つていただくということで、利用の面に関しましては、通産省との関係が非常に多いのでありますから、通産省ともいろいろ連絡をいたしまして、たとえば包装材料のごとく年間千三百万石以上も要しまする大需要に関しましては、使用の節約のためにダンボール事業の急速な促進をお願いいたしております。さらに坑木等一千二百万石程度も必要といたしまする需要に対しましては、できるだけ鉄柱カッペ等への切りかえをお願いする、あるいは耐久力を増すために防腐をお勧めし、一面建築方面で従来針葉樹を使つておりましたところを潤葉樹に振りかえを願うというように、利用の合理化促進という面で、何とか融通をいたして、ここ当分続けて参らなければならぬと思つておりますが、この補給には、何と申しましても全体の山の成長量を増すために、植林を極力進めなければならぬということで、現在造林地は全国で約五百五十万町歩ございますが、可能なところは全部針葉樹の造林に振りかえる計画にいたしまして、七百八十万町歩程度まで造林地を持つということによつて、今後の逼迫した木材、薪炭需要に充てたいという考え計画を進めております。
  14. 貫井清憲

    ○貫井委員 内地材の不足の補充といたしまして、外材の輸入が一部計画されておりますことを伺いましたが、最近新聞等で伝えられます日米共同の開発計画によるアラスカ方面の木材ないしパルプ資源開発は、その後どう進んでおりますか。これは内地の林業に深刻な影響を与えるものだと考えておりますので、輸入計画等もし見通しがつきましたならば伺いたいと思います。
  15. 柴田栄

    ○柴田政府委員 現在までの経過を申し上げさしていただきたいと思います。  ただ申しましたように、針葉樹の需給が特に逼迫いたしておりますのに、アラスカ地区は針葉樹の蓄積がわが国の十数倍もあり、しかも未利用のところが大部分であるということで、さきに司令部のありました当時から天然資源関係より、日本で活用をしたらどうだという話がありまして、われわれも大きな関心を持つておりました。ちようど昨年の八月でしたか、第一回の正式の交渉を始めました結果、実はアラスカの法規の関係上非常にむずかしい問題がありまして、当初はなかなかわれわれの期待するようなところまで参らぬということでありましたが、向うの条件を充足することによつて、しかもなおある程度日本の木材需給にプラスし得るというような見通しを立てまして、それぞれの関係、たとえば製材事業の関係あるいはパルプ事業の関係、あるいは私どもの方の林産課長も一緒に参つておりますが、役所の関係等で実地の開発計画の調査に昨年の十二月二十八日出発いたしまして調査を進めておりまして、明日帰国する予定でありますが、中間の報告を聞いてみますと、一つには、丸太を日本に入れることが一切認められないという条件は依然として解決せられておりません。それから向うに工場設置して、加工して入れるということが条件になつておりますが、その際日本から労務その他の人を入れることも一切認められないという非常にむずかしい条件で、アメリカの法人ということで、工場設置その他が進められるということになるような報告が参つております。第一着手といたしましては製材いたしまして入れるということで、それだけは一応原則的な承諾を得ておりますが、向うの希望は、さらにパルプ事業、あるいはこれに附帯いたしまするハード・ボードの事業等も総合した施設をもつて事業をすべきであるというような意見が非常に強いということを言うて参つておりますので、はたしてどの程度日本が進出したら、日本の木材の需給の関係にもプラスし得るかということは、調査団が帰つてからの相談になるのではないか、かように考えております。
  16. 貫井清憲

    ○貫井委員 外材の持つ影響は非常にデリケートであります。ただいま南方材のラワン等の輸入も相当量入つておると思います。内地針葉樹林の枯渇からこれもやむを得ない措置だとは存じまするが、内地林業を保護育成をしなければならぬときでありまするので、これらの輸入は相当慎重に考えていただきたい。現在の内地林業がごく疲弊と申しますか、森林状態は口の数年来の濫伐に次ぐ濫伐、荒廃のあとを受けまして、これを今後造林いたしますために、ただいま各森林関係者には相当な苦痛が多いと思います。今ここで外材の圧迫を受けるというようなことは、せつかく保護助成をいたしますその趣旨にもとる結果にもなろうと思いますので、これらは慎重を期していただくことを特にお願いしておきたいと思います。  災害の防除につきましては、いろいろ造林の仕事をこれまで御苦心を払つてもらつておりますのですが、なおかつ林業が少くも五十年、七十年というきわめて迂遠な低収益を目標にいたしております仕事の関係から、思いながらなかなか復旧と申しますか、これができずにおりますので、これが今後の補助政策をやつていただきますと同時に、今までの森林課税あるいは山林所得に対する課税の面においてかなり矛盾が多い。年々国税におきましての所得税あるいは相続税、富裕税、また地方税における伐採勉における木材の引取税、ないしは固定資産税等、この森林法によるいろいろな制約を受けております。この間にはほとんど国家の権力によつて強制されて造林をしで参らぬければならぬ。しかも収益を得るには一代、二代かけてから収益が来る。そのときの課税でかなりの困難をいたしますので、普段の育成の経費さえまかなうのに骨の折れるところの森林課税については、特別な考慮を払われたい。これは大蔵省の関係かもしれませんが、将来保護政策をやりますのに、いろいろ矛盾を調整していただくことをお考え願いたい。  今後の燃料政策は見通しが非常に暗いのだと思います。これは石炭が減産をされる、あるいはガス、電気が非常に使用者に不便をもたらしておりますような現況から見まして、薪炭の需要というものは非常に重要なものであり、しかも最近の伐採量が非常に多かつたために手近の、輸送の便利のいいところはおそらく裸になつてしまう。今後に期待するものは、結局奥地の未開発林がその対象にならなければならぬと思いますが、これが今後の消費者に対する関係はかなり深刻なものがあると思う。今の森林法の規定するところによりますと、これは地域的にあるいは事情はかわると存じますが、普通の自然林の場合には、少くも二十年、三十年とたたなければこれを伐採することが許可されておりません。しかもその森林法の活動をいたします前には、少くとも十年以上の樹齢の薪炭林が、ほとんど見られないというような現況ではないかと思います。そこでこの空白をいかにして補充をいたしますか、これは結局奥地の未開発林にたよるよりほかないのであります。これらの開発についての積極的な施策がぜひ必要だと考えます。これに対する現在の御方針がどんなふうになつておりますか伺つておきたいと思います。
  17. 柴田栄

    ○柴田政府委員 お説の通り用材林のみならず、特に薪炭林に関しましては従来非常に手近なところを略奪して参つたという関係上、手近かにおいて非常に急速に山が荒れておりまするので、その薪炭の供給に関しましても極力奥地関係の開発を進めなければならぬということで、林道計画におきましても特に奥地林の開発には力をいたしまして、先ほど申し上げました二百八十万町歩余に及びまする奥地林のうち、さしあたり百十八万町歩に対しまして急速に林道を入れまして、これが開発を進めて用材、薪炭の需給の調整にあてるという考え計画をいたしております。さらに薪炭林の略奪的な取扱いを技術的な取扱いによつて是正することによりまして、今後の成長を助成し、あわせて樹種の改良によつて、かなりの高い樹種を生産されることによりまして、量を質に振りかえることに関しましても、指導面において急速な改善を加えたいということで、特に力を入れてもらつておる次第であります。
  18. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいま貫井君から燃料政策についてお話がありましたが、これに関連してお尋ね申し上げます。日本の燃料が薪炭に依存しておるという関係から、この需要が供給とマッチしないということは現実の事実であります。この問題については燃料政策の上において、もう少し考慮を払う必要がありはせぬか、先年林業議員懇話会の際においても、私はこのことを農林当局に申し上げておつたのですが、日本における亜炭の量は非常に多いのであります。これは戦時中においては石炭にかわるために相当発掘されましたが、最近においてはほとんど亜炭の発掘は採算がとれないで、至るところ事業を休止しております。でありますから、もし燃料政策の上において亜炭の利用をもう少しお考えになれば、薪炭林の計画は変更を加えてもいいじやないか、現在の亜炭の利用を見れば、あのままではほとんど需要家が好まないのであります。もし何か燃焼装置の上において、ストーブの改良とかあるいはその他の方法において、そういう研究を進め、これを簡単に利用し得る道を考えて、これを普及せしめる、あるいはまたこれによつてコークスをつくつて、そして東京都内における木炭にかわるにこのコークスをもつてすることになれば、相当埋蔵量のある亜炭によつて日本の燃料というものはセーブされる。こういうふうに思うのであります。もしこれによつてその利用度を的確につかんで相当量将来の供給があるとするならば、この薪炭林を切りかえて、これを建築資材なりあるいはその他パルプの原料になるような樹種にかえるということになれば、外国から輸入するところのパルプの量も減つて来る。こういう大きな国策的な見地から見れば、この亜炭の利用ということを相当に考慮すべきじやないか、これについては通産省においても試験装置をしておられるということでありますが、この亜炭の利用により日本の燃料の切りかえをすることについて、農林、通産両当局においてどの程度の御研究を進められ、またこれに対してどういう構想を持つておるか、農林、通産当局からこの点についてお示しを願いたいと思います。
  19. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 亜炭の埋蔵量は相当ございまして、その亜炭の効用については特にフランス、ロシヤ等が発達いたしておるようであります。そこで私たちの所管内にありまして特に問題になつておりますのは、北海道の泥炭地帯における泥炭並びに亜炭でありますが、これをドイツ式によりまして、一つの固型体に再製する方法と、それからまたフランス式にやる方法とがあるようであります。これは日本では多分三鱗の会社でありましたか、これを実際に使用できるように今やつておるようであります。われわれといたしましては、農地の中にこれがありますると、農地を非常に阻害いたしまするので、これを燃料に向けると同時に、薪炭にもたよつておりまする燃料を、これに転換した方がよろしいと考えておるのでありますが、まだ実際にこれに国家資本を入れてやるまでには至つておりません。
  20. 小平久雄

    ○小平政府委員 亜炭の利用につきましては、通産省といたしましても、できるだけの努力をいたしておるわけでありますが、御承知のように最近におきましては、亜炭の質も大分よくなつて参りまして、石炭の代用というか、亜炭で間に合うところは大分これを使つてつているようであります。特にそのためには亜炭につきましても、選炭等も奨励いたし、あるいはさらにこれをクリケットにいたしまして活用する方針を進めている次第でございまして、こういうことによりまして、今後亜炭の利用度あるいはその活用される面も、逐次広がつて参ることと思いますが、なお一層の努力をいたす覚悟でおります。
  21. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいま農林大臣の御説明によつて、北海道の泥炭等が例にあげられました。これは戦時中においても草炭として相当研究されたようですが、戦争後はその研究も中止され、亜炭の利用も今の御説明によりますと石炭にかわるような目的において研究されておるようでありますが、むしろこれは家庭燃料の面において利用するという点に主眼を置けば、日本の燃料政策も解決に近づくと思うのです。これに対して通産農林両当局において、日本の燃料政策の重要問題として、亜炭の利用ということにもう少し研究を進め、またその普及の方法を講ぜられることに最喜の努力を願いたい。これは私の先年来の主張でありますが、政府の処置が遅々として進まない、何か仙台に亜炭の研究所を設けるとかいうことも聞いておりますが、その成績もまだどうなつておるか聞いておらない。東北地方においては亜炭が至るところに埋蔵されておる。しかもこれは耕地とは関係はない山の底にあるのですから、これを利用することによつて、年々不足を生ずる薪炭の需要に応ずる処置を講ずることが、一番大切ではないかということを感ずるのであります。  ついででありますからもう少し申し上げたいのですが、日本の建築資材としての針葉林の利用は、今日の住宅建設なり日本の各種の建築にずいぶん働いておりますが、これはおのずから限度がありまして、日本の建築様式を日本に豊富にある石灰石の利用によるセメントなり、あるいは火山灰なりによつているくなブロックをつくる等によつて耐火建築を奨励することが、木材利用の方面を幾らか補うのでないか。こういうことによつて年々の火災の防止もできるのでありまして、日本の国策として考えるならば、どうしても建築の面においても永久的に考えなければならないという点があると思うのであります。そういう点からいたしまして、私は燃料の問題あるいは建築の問題、こういうことは農林関係、建築関係あるいは通産関係、これらの人人の知識を総合して、日本の国策として何か調査会でも設けて取上げるというお考えがあるかないか、その必要をお認めになつておるかどうか、その点をお伺いいたします。
  22. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 御指摘の燃料、特に家庭燃料でありますが、家庭燃料と日本の住宅についての関連問題は、これは関係各省が取上げて、まつ先に検討しなければならぬ問題であると承知いたしております。農林省といたしましては、生活改善課を置きまして、家庭のかまどの改善から出発いたして、そして非常に莫大な数量になつている木材の燃料としての消費の節約をすることに努力いたしております。また北海道等における農家の建築等につきましても、それを耐火建築に仕向けるようにすると同時に、また開墾地に入つて参ります方々に対しても、そういうような方途を考え研究いたしております。それから先ほどのフリクツトの話ですが、亜炭を再製いたしまして、これを燃料とすることにつきましても、すでに仙台にある古河の工場に対しては、開銀を通じて融資をいたし、山形にこれと同様な工場ができかかつておりますので、農林省としては力を注いでおるようなわけであります。
  23. 高見三郎

    ○高見委員 大臣に最初に伺いたいと思つておりましたが、時間の都合がありますから官房長にお願いをいたしておきます。農林予算全体で人件費とそれから事務費及び行政費、補助費、農林省が直轄しておやりになりますところの事業費、この全体の予算の数字を、パーセンテージも加えてお示し願いたいと思います。それと同時に、来年度において農林省で増員されます——これは公務員のみではございませんが、増員される数の御予定があるだろうと思いますから、これをひとつ、あとで書面でけつこうでございますから、お示しをいただきたいと思います。  農林大臣に伺いたいと思いますことは、予算の説明を見ますと、まことに盛りだくさんの予算であります。私は大臣が農政を推進されます上において、ことに食糧増産の緊急措置を五箇年計画でおやりになろうとしていた、ところが予算関係でこれを十年に延ばされた、これは国の財政の問題もありますから、万やむを得ないといたしましても、はなはだ残念に存じておるのでありますが、食糧政策と申しましても、食糧増産の対策というものは、私は農林省予算を見ていると、あまり盛りだくさんで、帯に短かし、たすきに長しという言葉がありますが、実はたすきにも短かいような予算ばかりが並んでおる、ほんとうに食糧増産の眼目というものは、そう数多くあるものではないという感じが私はいたしておる。日本の現在の農業技術の範囲で今後食糧増産し得る問題は、土地は限られている土地でありますし、あまり大きなことを考えてもできないことである、残る問題は、土地改良の問題と、多年の化学肥料によつて収奪されております耕土の培養をはかつて行くこと以外にはないのじやないか。これに重点を置く以外に、今のところ農業政策は具体的には成り立たないじやないか。同時に、先ほど森先生から御質問がありましたが、私は里山を利用する樹木農業への転換、樹芸農業と申しますか、これ以外に日本食糧増産の道はないはずであるのに、予算の項目の多いことにおいては農林予算ほど盲めつぽう項目の多い予算はないのであります。これはこの際農林大臣は思い切つて整理されて、ほんとうに大事なものの用にあてがわれる御意思があるかないか、これをまず伺つておきたい。  養蚕の問題なども、私は養蚕が利益になるとか利益にならぬとかいう問題よりは、これは日本民族の民族的な、宿命的な産業だと思つております。それだけに、政府がもつと本格的に取上げなければならない問題なんであります。これも里山に桑苗を植えるという場合に、養蚕対策というよりは、むしろ森林対策という見地で、造林の補助というような形ででも取上げられる御意思はないかということを伺つておきたいと思うのであります。  時間がありませんから、項目別に何もかも一ぺんに言つてしまいますが、土地改良の問題が私は最も大事な問題だと思うのであります。この土地改良の問題に関連して特にお考えをいただきたいと思いますことは、日本の農地というものは、農地法によりまして、農民の手に返つたのでありますけれども、しかしながら返つた農地は担保力を持たない農地であります。売買の対象にならない農地であります。いわばくわやすきをもらつただけのことであります。そこでこの農地の維持管理ということが問題になつて来るのであります。農地の維持管理については、これを農民の負担に持つて行くということ自体が政策上無理じやないか、現在の農地というものは、民有の形における国営の農地である考えていいじやないか、ことに食糧の統制が行われている限りにおいては、その考えられるのであります。従つて土地改良等に要します経費の中で、公共団体は別でありますが、地元の個人負担の分だけは、少くとも政策として除外されるという考え方をおとりになる必要があるじやないか、これに対する御所見を伺いたいと思います。  それから関連になりますが、山林行政の中で、外材輸入の必要であるという点につきましては私も認めますが、ただ潤葉樹の内地価格に非常に大きな影響を及ぼすような、たとえばラワンの輸入等については、慎重にお考えになる必要があるじやないか。ことに昨年のラワン材輸入に伴います木材価格は、端的に申し上げて、実は投機的な価格であつて、内地材を非常に圧迫しているという事実から考えますと、この点は特にお考えをいただきたい。  税金の問題が出ましたが、私は原則として農民の税金を免除することによつて、あるいは安くすることによつて農業政策が行われるという基本的なお考えは捨ててもらいたいという感じを持つております。今日日本国民の四三%を占めております農民が、税金をとらぬごとによつて救われているという被救済階級であつてはならぬ。むしろ進んで農民が税金を納めることのできる農業経営経済的価値の向上をお考えにならなければならぬものである。百姓はもうかりさえすれば、税金を納めることをぐずぐず言うものではないのであります。実は納めようにも納められないように農産物価を押えておられるところに、百姓が税金を納め得られない原因があるのであります。むしろ百姓が喜んで、進んで税金を納め得る道を開いてやるためには、何といたしましても、農産物価を安定させてやらなければならぬ。この問題をまず考えて、税金ぐらいで百姓をごまかすという考え方はやめてもらいたいと思うのでありますが、これに対して農林大臣はいかようなお考えをお持ちになつているか。しかしながらこの中でただ一つ山林課税につきましては、また別の問題であります。私は税制という建前から論議すべきものではなくして、林業行政の見地から申しますると、五十年かかつてつくり出す山、この山の利まわりを調べてみますと、大体三分か、三分五厘にしかまわつておりません。このくらい損な企業はないのであります。富裕税が今度ははずされましたからけつこうでありますが、今までは富裕税までとつてつた。私は奈良の県庁に勤めておつたことがありますが、奈良の県庁におります間に、奈良のおもなる林業者について聞いてみますと、大体先祖伝来の山というものを持つております者は四〇%程度で、あとの六〇%はどうした山かといいますと、大体十年生、十五年生で持ちきれなくなつて、造林業者が売り飛ばしたものを買い取つたものであります。この一事から見ましても、山林課税というものに非常に無理がある。これは林野庁長官としては、林業行政の見地から大蔵省と積極的な御交渉を願わなければならぬと思いますが、どれだけの御決意をもつて臨んでおられるか、以上の数点について大臣なり林野庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  24. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農林省予算が種々雑多で非常に多い、こういうお話でありますが、これは多いはずでありまして、また多くなければならぬのであります。単に農林省食糧増産のみをやるところではないのでありまして、農民の生活の安定もあわせてやらなければならぬのであります。しかもまた特殊物産と申しましようか、特産課で扱つておりますが、かりにたとえて言うと、オリーブであるとか、あるいははつかであるとか、種々雑多のものを扱つておるのであります。その種々雑多のものが一体となつて、総合されて日本食糧となるわけであります。人口から申しましても、日本の人口の半分は農村にあるのでありまして、この方々の生活を守ると同時に、向上させて行かなければならぬのであります。単に食糧増産で申しますと、土地の改良、あるいはまた開墾、あるいは化学肥料によつていためつけられた土地を直して、新たに増産ができるようにするというような、簡単に言いますと、大体そこになるのであります。またこれをやるにつけても、やはりいろいろな機関が必要なわけでありますので、予算がたくさんの費目にわかれておると思います。それから土地の中でも農地の問題がありましたが、農地を維持して行く上においても、やはり一般市中銀行の金融の対象にならないのでありますから、農林省でこれを長期に払つてもらうようにして、金を貸すことも考えなければならぬのであります。  また土地が狭いから、山に樹木農業と申しましようか、そういうふうに行くのがほんとうだといいますけれども、しかしまだ未利用の傾斜地等があつて、農地に十分適する土地があり、特にそれを牧野として畜産を進める道もあるのであります。ただ静岡県等に発達して来ておる混用樹林でありますが、果樹と普通の木を段階式に植えて混用して行く行き方、こういつたようなことも農業の今後の一つの行き方ではあると思いますが、それのみでなく、やはり土地はもう少し切り開いて、農業の基本である耕地を広めて行くようにいたしたいと思うのであります。  それからまた蚕糸のことについては、先ほども申し上げたように、あるいは見ようによつては宿命的な産業と言われてもさしつかえないのでありますが、これはほんとうに今まで研究を積んで来たのでありますから、助長するようにいたしたいと思うのであります。  そういうように、いろいろ考えて参り、特に生活の向上のためにいろいろな課、あるいはまた局があるのであります。  それからまた輸入材の防遇等についても、林野庁では決して日本の林業を圧迫するようなことで輸入はやつていないのでありまして、ただ急場の、里山を切り尽して、奥山までももう切り尽さんとする現状においては、幼齢林が育つまである程度のものを入れて行くというような考えでなければならぬと思うのであります。  農林省予算をもつと集約して、重点的に土地改良や何かに入れて行つたらどうかというお話でありますが、われわれもそういう考えで、来年度は非常に予算が少いのでありますから、重点的に土地改良に入れて、そうしてなるべく早く効果が上るようにいたしたいと思つております。
  25. 柴田栄

    ○柴田政府委員 ただいま御指摘の山林課税に関しましては、御説の通り、私どもといたしましては、一方におい山林行政といたしまして、極力山の造林を促進しなければならぬといいながら、実はきわめて低収利の産業でございまして、このままでは安定して林業をお続け願うことが困難な情勢にありますので、大蔵当局とも随時連絡をいたしまして、今般の税制改正におきましても、所得税におきまする基礎控除あるいは評価の関係等を相当程度改正を願うように話を進めておる次第でありますが、一方相続税に関しまして、これまた実は御指摘の通り、われわれからいたしますと、非常に不都合があるのでありまして、場合によりますと、一代の造林地で三回も相続税の対象になるというような場合もあり得るのでありますから、第一段階といたしましては、課税標準を切り下げていただくということをいたしておりますが、さらに今後折衝を続けて、事情を御了解願つて強力に進めたいと思いますのは、適正伐齢級以下の的確な評価の困難な、しかも利用時期の非常に後代にわたるものに関しましては、評価の対象外にしていただくということも、その実現をはかりたいと現在考えておる次第であります。
  26. 貫井清憲

    ○貫井委員 私は農林大臣に、今後の日本農業が、現下の食糧事情等から見まして、輸入食糧に依存しております現在の自給度計画、これはこの際根本的に改めて、今までの米麦中心の主穀農業から一大飛躍発展をした畜産主体農業の主畜営農に転換をいたします勇気がありますかどうか、これを伺いたいと存じます。  日本の現在の農地におきましては、あるいは土地改良あるいは耕種改善、あらゆる施策を講じましても、これには一定の限界点があろうと存じます。しかも年々ふえて参ります人口をまかなつて参りますためには、これは現在の原始的な農業経営では、将来これをまかない得る見通しはない、かように考えます。そこで主畜営農の三箇年計画畜産三箇年計画と申しますか、これが現在どの程度に進行しておりますか、それもあわせて伺いたい。今後の日本の食生活を根本的に改めて——戦争以来米食率はよほどかわつて参りまして、粉食にかわるいい機会を持つてつたのでございます。そこで今後酪農をもう少し重点的に推進する方法をお考え願いたい。現在の牛乳の生産高は、最近の農林省の発表というか、新聞で見ますと、月二十八万石を越える、一箇年三百万石を越える生産にはなつて来ておるようですが、これを少くとも国民食糧として各家庭に十分主食扱いをさせていただくような方法を講じてもらいたい。現在の牛乳価格は非常に高いと申しますが、これはその処理方法について相当研究がなされなければならないんだと思います。われわれ生産農家は、現在の市販のものの価格の三分の一にも足りない価格で、原乳の供出をしておるのであります。アメリカでは処理費用は少くも一五%以内で上げて、八五%は原乳代です。ところが日本では少くも六〇%ないし五五%が処理費であり、生産農家の手取りは四〇%ないし四五%にしかならない。こういうように非常な無理がある。外国輸入食糧の価格調整をいたしますために、三百二十億円の予算が織り込まれておりますが、これがもし国民主食のうちに牛乳を加えていただきますならば、今の外国輸入食糧は数年ならずして解消することができると存じます。生産農家がかりに一日三合の牛乳を自家用にいたしますると、これの栄養価は米一合三勺に当り、一年を通じまして約五斗近くの米食が軽減されるのであります。かりに全国民が一日三合の牛乳をとる、米換算一合三勺が牛乳でまかない得られるといたしますれば、四千万石の牛乳を必要とするのであります。四千万石の牛乳を生産いたしますためには、現在の乳牛が二百万頭になれば可能であります。しかも現在の日本農家のうち八反ないし一町歩の農家が、その一反歩を自給飼料の生産に充当いたしますれば、濃厚飼料を買わずとも十分まかない得る。輪作の方法を用いますれば、反歩からは緑肥は少くも五千貫ないし七千貫を収穫することは易々たるものだと思います。これはふすまに換算いたしますと、六、七十俵の生産価値を持つております。これを乳牛の飼料に充てまする場合には、輸入飼料の必要はない。しかもこの牛乳生産をいたしますと同時に、先刻も問題になりましたように、世界で一番高い金肥を使つており、その金肥の使用の結果耕土が非常に衰頽をしておりますが、一頭の乳牛は一年に少くも三千貫ないし五千貫の厩肥を生産しており、結局一町歩の農家であつても三百貫ないし五百貫の有機質の肥料土地に還元される、これによつて先ほどお話の耕土の培養は十分まかない得る。しかもこの牛乳をもし主食に代用するとすれば、現在の生産原乳の価格を押えましても、農民は喜んで採算できる計算になろうと思います。年間三百万トン以上の外国食糧を仰ぎ、しかもこれに千数百億円の金を払い、また現在三百二十億のこれが操作に必要な価格調整費を充て込んだといたしますれば、二百万頭の乳牛をかりに購入いたします場合に、これの助成をいたしまして、十万円を購入費用といたしましても二千億円であります。これの二割でも三割でも助成する心組みがありますれば、この乳牛の導入は易々たる仕事でないかと思います。日本農法をここで根本的に改革すると同時に、食糧問題を解決する唯一のかぎが、この乳牛増殖にありと私は確信をしておるのであります。今後の日本人の保健衛生の見地からも、体位の向上からも、食生活はここで根本的に切りかえる絶好の機会である。いわゆる瑞穂国で内地生産に十分たよれる場合はよいが、現在のように内外の情勢がきわめて緊迫しており、外国食糧に依存することの危険なことを痛感するときに、農民の方々に一大奮発をさせるいいチャンスと考えます。ぜひ今の外国食糧輸入費もしくは価格調整費、それらの一部をさいて——市販の牛乳の現在の価格は調整の必要がむろんありましようし、また牛乳処理には産地あるいは遠距離の場所では濃縮あるいはヨーグルト、加糖練乳等いろいろこれに架する設備は、国においても十分やり得る仕事だと思います。これらの畜産を主体として、日本の今後の食糧政策をここで転換をし、日本農法を一変させる方策をお取上げくださる勇気がありますかどうか、農林大臣に伺いたい。
  27. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農林省考えている考えとまつたく同様なお考えを持つていていただけるので、われわれとしては非常に力強いのであります。通産省の人たちがここにもありますが、単に輸出々々といつてはおりますが、現在の実情から見て十年以上遅れた技術と、原材料を外国から買つて高いコストの生産をいたしておる現在において輸出のみによつて国是を立てるということは間違つておることは、万人が指摘いたしておるのであります。しかも幼稚な技術と高い生産コストによつてできた品物を、ある一定の度まで日本の内地消費によつて保護して、ほんとうに世界の競争場裡に出て行くまでは、日本の農民を主体とした日本内地においてこれを守つて行かなければならぬと私は考えておるのであります。現在四億ドル以上の外貨を払い、しかも価格調整金を三百億以上使つて食糧を入れておるのでありますが、ただいまもおつしやいましたように、これを食生活の改善をして転換をして行くということは非常に大事なことであります。そこで農林省は生活改善課を通し、あるいは食生活改善を主体とする学校給食等を考えて、子供のうちから粉食に転換すると同時に、乳製品等にたよることに仕向けて行こうと思つておるのであります。外国の本を見ると、牛は移動する倉庫という言葉があるのでありますが、われわれにはそういう感じ、牛を見るとよだれが出るという感じはまだ出ないのでありますが、そこまで行かなければいけないのじやないかと私は考えるのであります。特に日本におきましては、肥料製造会社の手先におどらされて金肥の使い過ぎをして、ほとんど日本土地が荒れ果てて参つておるのであります。これは農林省としても土壌保全のために、一定度の肥料以上は使つてならないというような法律をつくらなければならぬまでに、現在立ち至つておると思うのであります。そのようなときに特に酪農に転換して土壌を富まして行く。この農地の土はわれわれ時代のみの土じやないのでありまして、われわれの子孫へ長く伝えて行かなければならぬ大事な土地でありまするので、酪農に転換いたして土壌の保全をいたすことが大事であります。さような見地から、農林省はこの乳牛を入れることを非常に奨励いたしております。現在大体三十万頭近くおるのでありますが、これを百万頭にふやして行きたい。こう考えておるのであります。ただ日本人の一つの潔癖で、牛を入れる場合に非常に純粋種をとおとぶのであります。これが島国根性のいいところでもあるし、また悪いところでもあるのでしようが、純粋種をとおとぶのであります。だからホルスタインならホルスタインを入れますと、その純粋種をいつまでも保全いたしておく習癖があるようであります。それよりも雑種でもよろしいのでありまするから、農耕にも適し、しかもある一定の乳がとれて、その家族だけでも乳を飲める程度になつても大きな利益でありまして、しかもなお最も使役に耐え得るジャージー種を来年度は予算において入れるようにいたしておる次第であります。そういうようにいたしまして、今までわれわれが米麦のみにたよつたことをどうしても転換して、他に求めなければ将来の日本として非常に寒心にたえないのであります。また乳製品処理についてのお話でありましたが、まつたく御説の通りでありまして、現在大体市価一合十五円程度のものでありましようが、これは生産者が四円五十銭ないし五円で売つておるのでありまして、その開きが十円以上もあるということは、どうしても直さなければならぬと私は考えております。あなたの御指摘のように、ほんとうに金肥亡国であります。化学肥料を使うことが国を滅ぼす元になるのでありまして、これを酪農に転換すると同時に、乳製品を通じて食糧の転換をすることに努力いたしたいと思います。
  28. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 吉川兼光君。
  29. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 先刻来の質疑応答に現われました大臣の御答弁を聞いておりますと、たいへん農民のことを心配しておられるようで、その点は私どもも政界の先輩としての大臣に敬意を払うのにやぶさかでないのであります。政界におきましては大臣はたぬきとして隠れもない存在でありますが、それが愛称であつて、どういうことを意味しておるかということは、それぞれ解釈する人によつて違うでありましようが、農林大臣として農民に対するこれからの大臣のお仕事は、いわゆる政界におけるたぬきとしての存在の大臣であつてもらいたくない。これを私はまず最初に申し入れておきまして、それから御答弁をお願い申し上げます。いろいろ申し上げたいことがりますが、私のあとに先輩の杉山さんから農林関係は非常に詳しくお尋ねするようになつておりますから、できるだけ私はかいつまんでお尋ね申し上げます。従つて順序等は重要性の順序によるわけではないのでありますからそういうふうにおとり願いたいのであります。  まず肥料問題についてでありますが、先般の予算委員会でありましたか、同僚甲野君の肥料問題に対する質疑に対して、大臣は質疑の要旨はまことにもつともであるから、肥料価格の軽減に対して自分は努力をする、こういうことを御答弁をされたようでありますが、あの質疑応答の後において肥料価格の低廉化に対して、どういう御努力をされたかということを、ちよつとお伺いしておきます。
  30. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 たぬきというのは自分自身をだます、きつねは人をだますそうでありまして、たぬきは決して実害がないそうであります。  肥料お話でありますが、これは平野君からだんだんのお話があり、また農業界の一般の大きな問題でありましたので、通産大臣と私が肥料審議会の委員長をつとめた一万田君と介して、硫安協会の会長である藤山君と話し合いました結果、最高価格八百九十五円、中値六十円、最低八百二十五円という安定帯の協定を見たわけであります。昨日あたり何か硫安協会から最高価格八百九十五円で取引をするというようなことを流しておるようであります。しかしわれわれといたしましては、あの安定帯の価格の大体中値ころで取引ができるのではないか、またそう全購連の人たちと話し合えるものと信じておるのでありますが、まだそこまでは行つてないようであります。
  31. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 肥料の安定帯価格につきましては、われわれ農民の立場から申しますと、非常な異論があるのでありまして、私は安定帯価格をここで認めるという意味ではございませんけれども、けさの新聞にも出ておるようでありますが、また今の大臣の答弁にもあつたようでございますが、安定帯価格の上限の方で硫安業者が協定をして、しかも全購連等との昨日の折衝もきわめて強硬な態度であつて、一歩も譲らないというところでものわかれになつたということが、報道されておるのでありますが、これに対して大臣は、春肥は今もお話がありましたように、せめて安定帯の中値くらいのところでやるべきであつて、上限でこれをやつたということははなはだ不満である。これは新聞の記事でありますが、これは独禁法違反になると思うので、今それを調査中とかいうふうに出ておるようでありますが、私どももその点は大臣と所見をまつたく同じゆうするのであります。肥料資本家特に硫安業者がこういう上限の価格で、これを押しつけて独禁法違反も平気でやろうとする態度に対して、大臣はどういうふうな対策を持つておられるか。新聞で伝えますようにこれを独禁法にひつかけるだけの農民に対する誠意と勇気ありやいなやということを、ここではつきりとお答弁をお伺いしたいと思います。
  32. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これは今事務で公取の方と折衝さしておるのでありますが、折衝の結果を見て、わかりますればわれわれとしてでき得る範囲内におけることはしたいと思います。けさも全購連のある一部の方々と会つたのでありますが、全購連は農民の名において肥料を買い入れるのであるから、腰を強く持つてもらいたいというこれをお話いたしておいた次第であります。
  33. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 肥料問題はこの程度にいたしておきましよう。  次に食糧増産五箇年計画——十箇年になつたとも言われておりますが、この問題についてごく大ざつぱなことを私からお伺い申し上げて、詳しいことは杉山委員にお願いいたしますが、この食糧増産五箇年計画の中で、われわれの計算といいますか、資料によりますると、人口増加の速度と食糧増産の速度に、歩調の合わない点があると思川うのでありますが、この点はどういうふうに関係者の方では思つておられるか、その点をちよつと伺つておきたい。
  34. 正井保之

    ○正井説明員 人口問題の速度と食糧増産の速度というお話でございますが、人口の増加及びそれに伴つて需要の増がございますが、この数量は大体百四十万から百五十万石程度、これから先毎年ふえるわけであります。これに対しまして増産計画では、耕種改善と土地の改良あるいは農地拡張でございますが、それによりまして、来年度二百五十万石ふえるということでございまして、人口増に伴う需要量をオーバーして、なおその他、農地の壊廃でありますとか、あるいは施設の老朽化に伴いまして減産がございますので、そういつたものをカバーして行くという線で計画いたしております。
  35. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 食糧増産計画はいろいろ伝えられておりまするが、私予算委員会には途中から出たので、あるいは委員会ですでに御答弁のあつたことかもしれませんが、今政府が確実に実施し得る年度計画は、何年くらいでやれる計画であるか、それをもう一度お聞かせ願いたい。
  36. 正井保之

    ○正井説明員 土地の拡張改良、これは灌漑排水あるいは開墾、干拓等がおもでございますが、それによりまして、ただいま計画いたしております数量は、二十八年度の事業によります増産が百三十万、以後三十年、三十一年、三十二年が、それぞれ二百四十万、二百九十六万、三百八万ということで、農地の拡張改良によりまして五箇年間の増産量が一千百七万石、このほかに耕種の改善によりますものがございます。
  37. 塩見友之助

    塩見政府委員 耕種改善による増産は、ただいま五箇年間分だけつくつております。昭和二十八年度が百二十五万五千石、昭和二十九年度が百二十四万六千石、それから昭和三十年度になりますと、現在ある計画では約六十五万二千石でございます。それから三十一年が六十五万九千石、三十二年が七十五万五千石というふうな形になつておりまして、総計四百五十六万八千石というところを計画しております。なおこれは現在確実に実施し得ると見込まれるような、また予算化しておりまする部分だけを計上しておるわけで、二年、三年後になりますれば、また他に土壌の改良その他適切な手を打てば、さらに増収を期待し得るものと予想できるわけでございますが、現在大体確実に見込まれますものを申し上げたわけでございます。
  38. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 森さんから急げという御注文がありますので、大いに急ぎますが、食糧輸入関係の方に承つてみたい。大臣ならさらにけつこうですが、例のビルマから来ておりまする黄変米は、向うの方では鶏や豚がもつぱら食つているそうですが、日本ではやはり国民がこれを食うのじやないかと思うのですが、これは全体どのくらい滞貨しておるのか。なおこれから先の輸入計画の中にも、この種の米が入つて来るのかどうか、そういう点をできるだけ詳しくお伺いしたい。
  39. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 黄変米の関係でございますが、現在政府が手持のもので、要するに危険性のあるものが一万二千七十一トンございます。これが全部黄変米と断定するのはちよつと早いのでございますが、その危険性のあるものを、麻袋になつておりますが、隔離いたしまして、よりわけておるのであります。所在場所は門司、名古屋、清水港、芝浦の四箇所であります。これは全部ビルマから参りました、四万トンの、政府対政府できめましたもののうちであります。このほかに別にいわゆる黄変米はございません。もちろん外米でございますので、若干質が悪かつたり、あるいは色がかわつていましたり、臭かつたりするというようなものが、遺憾ながらあるのでございます。いわゆる病毒の危険性のあるものは、このほかにはございません。今後そういうものはビルマから来ないと思います。現在隔離しておりますのは、以上の通りであります。
  40. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 四万トンのうちで一万二千トンといいますと、三割に近いものとなりますが、これをどういうふうに処置しようとしておりますか、それを伺いたいと思います。
  41. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 これは再搗精といたしまして、よりわけいたしまして、なるたけ政府として損失を出さず、しかも有利に——若干時間はかかりますけれども再搗精いたしまして、みそ用、蒸溜酒用、工業アルコール用、この三つに分類いたしたいという意図をもちまして、今いろいろ現物を当つておるわけであります。今までの情報では、比較的悪いものが少くて、みそ用等に処分できるものが多いものではないかという予想でございます。みそ用に参ります場合は、値段もそう値引く必要はないのであります。かりにアルコールだけに売ります場合に、この前申し上げたのでありますが、二億七千万円程度の損失であります。それは最悪の場合でございます。それ以下で済むのではないかというので、目下現物を検討中でございます。
  42. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 それからこれは記録にとめておく関係から、この一万二千七十一トンの輸入金額はどのくらいか御説明願います。
  43. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 これは物によつて非常に違いますので、はつきりしたデータを持つておりませんが、ドメスティック・シフという補給金の基礎になつている数字で申し上でますと、正確な数字は一トン当り五万二千九百九十円ということになりますので、六億三千九百六十四万円というように考えておる次第であります。
  44. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 それから次はこの予算の説明の中にもございますが、これとも関連があると思いますけれども、駐留軍の必要によりまして、日米合同委員会でございましたか、施設区域として、方々に農地でありますとかその他のものを指定して来るようでありますが、現在それは全国で何箇所ぐらいになつておるのであるか。それを農地、開拓地、海岸といいますか、漁区等を入れまして、大体の数字を伺いたいと思います。その面積、それに対する関係農民あるいは農家の戸数程度でもよろしいですが、漁民等の点も伺いたい。もし急に間に合わなければ後ほどでもよろしいのですが、おおよそわかる程度だけでも伺いまして、次の質問に入りたいと思います。
  45. 正井保之

    ○正井説明員 ただいま手元にございませんので、数字、箇所数等、後ほど提出いたしたいと思います。
  46. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 それではその中で、これも後ほどになつてもけつこうでございますが、一つ私どもの関係の深いところで相当影響するところの大きい問題がありますから、具体的な事例として、ひとつつておきたいのです。それは千葉県の東葛飾郡の田中村と流山町にまたがりまする旧飛行場というのでありますが、たしか二、三百町歩であつたと思います。相当の開拓民が入つておるのでありますが、ここがその施設区域に入りまして、先般来開拓農民の反対にかまわず、どんどんと仕事が始められておるのであります。農民の方では大騒ぎになりまして、農林省はもとより、外務省の国際協力局あたりにも盛んに陳情いたしておりますし、国会にもしばしば見えておるのでありますが、どこへ参りましてもはつきりした計画がわかつておらないのであります。この地域における施設区域としての使用計画でございますね。どういうふうに使用されることになつておるのかということをお聞きしたい。
  47. 正井保之

    ○正井説明員 まことに申訳ございませんが、具体的な計画を私よく聞いておりませんので……。
  48. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 しかしそれは役所に帰ればわかるでしよう。
  49. 正井保之

    ○正井説明員 それはわかります。
  50. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 それではなるべく早くそれをお願いしておきます。  次に、これはまた食糧庁と関係のあることですが、澱粉の買上げであります。今日千葉県、茨城県、鹿児島県等はいも澱粉を特産物として多量に生産する地域でございますが、昨年はこの地域におきまして、一昨年はいもの値段が割合高く売れたのでありますが、しまいごろになりまして澱粉の値段が下つたというので、澱粉業者が金を払わなくて、また大問題を起したのであります。それが昨年になりましてから、私どもも大分農林省にお伺いしたのでありますけれども、御存じのように澱粉の買上げが行われたのであります。これはあくまでも農民の次の生産性を高めるための澱粉買上げ、いもの値段つり上げのための買上げのように、農民側は解釈しておつたのでありますが、実際はこの政府の買上げの恩恵に沿したのは、澱粉業者だけでありまして、農民は結局澱粉業者からたたかれまして、しかも生いものことでありますから、いつまでも売らぬでがんばつておりますと腐敗をするので、結局昨年の澱粉買上げというのは、農民の方には、ほとんど利益をもたらさないという結果になつたのでありますが、これから先の澱粉買上げの御計画と、その澱粉買上げから生ずるところの生産者の利益をどういうふうに考えておられるか、これをお伺いしたいのであります。
  51. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 澱粉買上げ問題につきまして、率直に経過を申し上げたいと思います。昨年実は澱粉の買上げ方針がきまりましたのは、すでに端境期を過ぎたときであります。そのとき政府が買入れ値段を発表いたしましたところが、非常に奏効をいたしまして、政府は一トンも現物を買わずに、澱粉価格つり上げの結果を見たのでございます。むしろ上り過ぎまして、これを下げることをどうしたらいいか非常に苦心をしたのであります。本年もやはり同じ問題が起つたのでありますが、これはいも作農家のためでありますので、いもの価格安定が中心であります。昨年の例が、相当の滞貨があるという話であつたにもかかわらず、実は政府は一トンも買わなくて済んだわけでありますので、予算折衝等におきましても、割合に低い買上げ数量を計上いたしたのであります。これは農林省責任でありますが、大蔵省に折衝いたしまして、そのまま数量を認められまして、補正予算に組んでおつたのであります。われわれといたしましても、その当時はその程度予算を持つておれば、いもの価格安定になるであろう、こういう確信を持つてつてつたところが、本年はばれいしよにつきましてはこれが的確に奏効いたしまして、北海道におけるばれいしよ、ばれいしよ澱粉等は、われわれの考え通りに行つたのでありますが、かんしよは、われわれが考えました以上に実は豊作でありまして、ことに九州地区等が非常に豊作であり、必然的に澱粉の生産も非常に増加いたしまして、われわれの持つております予算では、非常に足りない結果になつて来たのであります。ところが本年は米の出まわりが予想以上に早かつた等の関係で、食管会計が非常に苦しくなつて参りまして、無制限買上げということを考えておつたのでありますけれども、金詰りのために、われわれとしましてはやむなく——四月以降に予算相当計上して持つておりますので、その間のつなぎといたしまして、全販連あるいは工業組合の連合会等にお頼みいたしまして、至急四月以後政府が買うからというので、今金融的措置でこの間のつなぎを考えておる次第であります。ただ農家がこれを幾らで売り、幾らで澱粉をつくつたかということになりますと、農業協同組合等でありますれば、バツクペイ等の問題もあります委託販売でありまして、これははつきりしておりますが、営業者の場合でありますと、そこは的確につかみにくいのであります。今後制度としてこういうものを考えます場合におきましては、的確にこれが原料作農家に参るような条件をつけて加工品を買わざるを得ない。こういうふうに考えまして、その制度化をいたします場合における措置については、目下いろいろ検討しております。今日のところは、制度でなしにやつておりますので、その間の措置が若干欠陥があるのでございます。われわれとしましては、目的はかんしよ、ばれいしよそのものの価格安定でありますので、そのもの自体を買うことが、管理上なかなかむづかしいので、やむを得ず加工品を買い上げてその効果をねらつておるのであります。その趣旨はあくまでも尊重いたしましてやつて参りたいと考えております。
  52. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 東畑さんの御説明、私の質問の御答弁としては大体筋が通つておるようでありますが、大体二毛作農家への政府の施策の浸透といいますることは、これは相当骨の折れることであると思いますから、農民の意見等もできるだけお聞きくださつて、今後はそれが具体的に浸透するように、ぜひひとつお進め願いたい、これをお願い申し上げておきます。なお私は信用基金問題とか、あるいは農業共済基金のこと、あるいは税金等ではいろいろ申し上げたいことがありますけれども、そういう点は杉山先生にやつていただきましよう。  そこで最後に一つお尋ねしたいのでありますが、これはどうも計画が途中で引つ込んだようにも思いますけれども、例の農業センターの問題であります。石黒さんかだれかが計画しておつたと思うのですが、あれはただいまどういう状態になつておりますか、おわかりでしたら伺いたいと思います。
  53. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これは農民団体の方の計画でございまして、日本の首府である東京に農業のセンターくらいを持たぬことはどうも残念だということで、農業団体自体が発案しておるのでありまして、これは私の聞いたところでは引つ込んでいないようであります。農民連の方々が発案いたしまして、法律を出すというように聞いております。
  54. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 引つ込んでないとすればこれは大問題であります。この前私何かで——ちよつとその出典を明らかにしませんが、何かに書いてある中から読んだところによりますと、何でもあれは渋谷の何とかいうところに、たいへん大きな計画でありまして、農民の二戸当りの負担金が二十円とか三十円とかいうふうに出ておりました。さらに農業団体が、県単位でありますとか町村単位でありますとか、あるいは全国単位でありますとか、そういうところでそれぞれの負担金を計上して、たしかあれは五億円くらいな金額ではなかつたかと思うのでございますが、そういう金を今の農業関係団体あるいは個人から集めまして、そういう農業センターを——農業センター自体の計画は私も決して反対ではありませんが、農家経済事情からいいまして、それほどそれが焦眉の問題であるのか。特にそういう計画農林省当局は何ら、といいますか関心はあるでしようが、計画を持たずして傍観して、農家の負担が重くなつて、そういうものができて来るのもかまわないという態度を持つておられるのかどうか。その点をお伺いしておきたいと思います。
  55. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 私の聞いておつたところでは、わら一把ずつ持ち寄つてやりたいということでありますが、その他の金品をどうするということは私聞いておりません。
  56. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 それならもう一ぺんこれを明らかにしてから申し上げたいと思いますが、今大臣はそういう御認識でありますならば、私どもの認識と違いますから、私のところに入つておることを申し上げたいと思いますが、大体この計画では、農家一戸当り二十円くらい、それで一億円集めるというのであります。それに今度は町村段階の農業団体、農協などが千円、それから県段階になりまして五千円、全国段階で一万円、こういうようなことで集まる金が二億円とか何億とか言つてつたと思うのであります。それは何でも、土地代などはまだそれに含んでおらない。そういうものを入れまして、今私が申し上げました五億円という数字が出ておつたと思うのでありますが、わら一把というような、そういう簡単なる計画ではないようでありますから、ひとつもう一度御認識を改める意味で、お調べおき願えればたいへんけつこうだと思います。大体私はお尋ねしたいことは、そういうところで終るわけでありますが、大臣は先刻どなたかの質問に対して、農林省予算がいろいろ複雑多岐にわたつておるのは、農民の生活を防衛するのに必要だからというたいへんけつこうなお話を伺つたのであります。実はわれわれの関知する範囲におきましては、農民の生活は日増しに圧迫されまして、大臣のお考えとは逆の方向に向いておる面が少くないのであります。ただいま申しました今の施設区域の問題等におきましても、まことに不当としか思われない補償のもとに、農民の離作が強要されておる面がありますし、さらにまたたとえばゴルフ場のようなものが、随所にによきよきと現われて参りまして、盛んに農地をゴルフ場化することが特に東京の近辺、ことに私らの方の千葉県などにはたくさんそれが出て来まして、これもかつて平野君から具体的に一、二の箇所をあげて大臣質問して、大臣からはゴルフ場になるのは反対であるという御答弁を聞いておりますが、大臣のそういう反対の御答弁のいかんにかかわらず、千葉県等におきましては、また新たにそういう土地が出て来ておるのでありますから、これは具体的な問題を持つて直接に陳情等に上りたいと思つておりますから、ぜひひとつ大臣のこの前の言明を裏切らないように、変更なさらないようにがんばつていただきたい。以上はなはだ簡単でありますが、私の質問はこれで終ります。
  57. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 時間が大分経過いたしましたので、午前の議事はこの程度にとどめて、午後二時三十分から再開することとし、残余の質疑を継続することにいたします。  これにて休憩いたします。     午後一時二十七分休憩      ————◇—————     午後二時五十四分開議
  58. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 休憩前に引続き会議を開きます。  農林省所管についての質疑を継続いたします。杉山元治郎君。
  59. 杉山元治郎

    ○杉山委員 他の同僚議員がすでにお聞きになつた点が多々あるかもわかりませんが、多少重複する点がございましても、お許しを願つて質問をいたしたいと存じます。私の質問は、まず第一に食糧問題を中心にして、それに関連して、林野庁、水産庁、そのほか蚕糸局等についても、少しくお伺いいたしたい、こういうように存じておるのであります。  政府が二十八米穀年度の需給推算と称しまして新聞に発表いたしたものを見ますと、こういうようになつております。二十八米穀年度の供給総量は四千二百六十四万五千石、需要量は三千四百六十六万六千六百石、十一月一日の持越高は七百九十七万八千石、こういうように需給推算がなつておるということになつておりますが、この新聞の発表の通り需給推算が行くものでございましようか。
  60. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 その通りであります。
  61. 杉山元治郎

    ○杉山委員 この供給量の中で、内地米は二千七百五十万石となつておりますが、昨年は風水害がなくて順調に行つていると思いますが、はたしてこの量が入つておりましようか。最近の供出総額はどれほどに相なつておりましようか
  62. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 ただいまお話の需給推算の中には、一応二千七百五十万石となつておりますが、最近の数字で見ますと、大体そのくらいになつております。多少これよりもふえることを希望いたしております。
  63. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今年末にどれだけ入るかということをはつきり知らしていただきたい。
  64. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 二月二十日現在で二千六百八十四万石という数字になつております。
  65. 杉山元治郎

    ○杉山委員 次にお伺いしたいのは、外米が六百八十五万六百石と書いてありますが、これは多分輸入の予定数量だと思いますが、はたしてこの数量が入るかどうか、その見通しを伺いたいことと、もう一つは、この外米六百八十五万石と書いてあるものは、米に換算しておるのであつて、麦も含んでおるのだと思いますが、米の量、麦の量は、予算の説明書に書いてあります二十八年度に米は百一万七千トン、麦は五十九万九千トン、小麦が百三十方五千トンとなつておりますが、大体こういう数字で入るという見通しで、この予算説明書は書いてございましようか。
  66. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 ただいま杉山先生がお読みになりました数字は、玄米換算という数字になつておると思います。われわれが補給金その他で持つおりますのは原石でありますので、米は白米で入りますから、いつも精米で申し、上げておるところに数字的の若干の誤差がでございます。精米で申し上げますと、二十八米穀年度では百一万トン、二十八会計年度では九十六万トンという計画をいたしておるのでありますが、米穀需給推算ではいつもこれを玄米に直しますので、若干数字が計画以上に多くなつております。これは麦を含んでおりません。いわゆる純粋の外米だけでありまして、過去の経緯等から見まして、この程度のものは入り得るのではないかというふうに考えております。
  67. 杉山元治郎

    ○杉山委員 この外米はおもにどこの国から入るのでありますか。またその国々から入る大体の見込数量が立つておりますならばお聞かせいただきたいと思います。
  68. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 外米のうちには純粋の内地米と同じものと、長細い外米とございます。純粋の内地米と同じものというのは、現在においては内地米価格と同じ値段で払下げしておるのでありますが、これが参りますのはアメリカのうちのカリフォルニア、それからイタリア、スペイン、ウルグアイ、台湾、ブラジル、こういうところから参るのでありまして、今まで到着いたしておりますものが、四月から十月までに十七万トンございます。なお三月までに約十一万三千トンくらいの到着計画でありまして、四月以後来年の三月までには三十七万トン程度計画をいたしております。国別のことはわかつておるのでありますが、いつもこれを申し上げますと国際相場をつり上げるという非難がございますので、正式の委員会では省略をいたしたいと存じます。なお外米等につきましても、アメリカの南部地区、それからタイ、ビルマ、パキスタンという国から参るのであります。十月までに到着いたしておりますものが三十二万六千トン、それからその後本年の三月までに到着する予定のものが四十万九千トン、来年度中に参りますものが、四月から三月まででありますが、五十五万トン程度を予定しております。これも国別の内訳はちよつとかんべんをしていただきたいと思います。なおそのほかにタイ等におきましては、どうしても取引上、ブロークンといいますか、砕米を買わざるを得ないのであります。これが米穀年度でいいますと三万二千トン、会計年度で申し上げまして四万トン程度が砕米でございます。以上のものが、ただいま持つております輸入計画でございます。
  69. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今輸入国別のお話がございましたが、以前には非常に大量に日本に入りました仏印が、あまりお話の中になかつたようですが、現在は仏印からは少しも入らないのでございましようか。
  70. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 過去におきまして、終戦後は五千トン程度入れた年もあるのでありますが、その後は遺憾ながら仏印からはほとんど参りません。
  71. 杉山元治郎

    ○杉山委員 予算説明書を見ますと、その価格については米は二十七年度と同様にトン当り二百十三ドルとなつておりますが、大麦、小麦は二十七年度よりもかえつて二十八年度は安いようになつております。たとえば大麦は、二十七年度は九十五ドルであつたが、ことしは九十二ドルと予定しておるようでありますし、小麦は九十七ドルが、ことしは九十四ドルと予定しておるようでありますが、こういうように昨年よりも安い値段で大麦、小麦を買い入れることができるのでございましようか。
  72. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 ただいま杉山先生の申されました数字は、厳密に申し上げますと、小麦が九十三ドル半、大麦が九十一ドル四ということになつております。本年はアメリカ、カナダ、アルゼンチン、濠州、いずれも実は非常な豊作でございまして、従来アルゼンチン濠州等も輸出力がなかつたのが、実は輸出力が非常に出て参つたのであります。国際的な相場も非常に下りぎみでございまして、この程度の価格で平均的に入ることは容易ではないかというふうに考えております。ただ小麦の中には小麦協定のものを一応入れておりまして、これが大体八十ドル程度を予定しておるのであります。目下これは七月以後改訂になるのでありまして、それの経緯によりまして若干狂つて来ると思いますが、平均的に申し上げますると、百五十七万トンの予定のうちの五十万トンが、ただいまのところ小麦のわくであります。そう大きな狂いは出て来ないのじやないかというように考えております。
  73. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今国際小麦協定から買う量は五十万トンで、百五十万トンのうちの三分の一くらいになると思いますが、確関するところによりますと、国際小麦協定はいわゆる改訂期になつておるのでありまして、従来のようにだんだん十セント下つてつたと申しますか、四年目の最後になりまして、一ブツシエルードル二十セントでございましたが、最後にそういう最低相場を今年は維持できない。新聞などを見ましても、おそらく国際小麦協定を改訂して相当高くしてくれ、こういう要求があるように思いますので、もしそういうことになりますならば、先ほど申したような価格では入らないのではないか、私はむしろ大麦、小麦が高くなるのではないか、こういう心配をしておりましたので、お聞きしたのであります。その点もう一度国際小麦協定の関係と今年の小麦価格の下つた点との矛盾はないかということを、一応お知らせ願いたいと思うのであります。
  74. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 国際小麦協定の問題は今進行中でございますが、今まで参りましたのは一ドル八十セントの最高価格のものでございます。安い価格では事実動いておらないのであります。一ドル八十セントがどの程度になるかということは、ただいままだはつきりいたしません。交渉継続中の模様であります。ただ小麦補給金十九億の内訳を申しますと、はつきりするのでありますが、一応予算書では八十ドルと出ておりますのは二十五万トン、そのほかのものはアメリカ、カナダ等につきましては九十六ドルないし九十四ドル、アルゼンチンにつきましては百五ドル程度のシフ価格と見まして、それで補給金の基礎を算定いたしておりますので、小麦協定等がどうかわりましても、そう大きな狂いはないのではないかというふうに実は考えておる次第であります。
  75. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今の一プツシエルードル八十セントで買つてつたというと、やはり協定価格の最高価格でお買いになつてつたのでありましようか、ずつと一ドル五十セントからだんだん下つて来て、一ドル二十セントにまでなる協定であつたと思うのであります。そういうふうに年々下つて行く安い価格でいわゆる協定に入りましても買えなかつたのでありましようか。ずつと最高価格の一ドル八十セントで買つてつたのでありましようか。
  76. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 小麦協定におきましては最低価格で買う場合、生産国が最低価格で引取れという場合に初めてそれが発効いたしまして、買手の方から売つてくれという場合は、その最高価格で売るということになつておりまして国際市価というものは最高価格よりは高くなつておりましたために、いつも最高価格でそれが動いておりました。最低価格は実際上は形式的な価格であるというのが今までの経過であります。
  77. 杉山元治郎

    ○杉山委員 その問題はそれくらいにしておきまして、先に同僚吉川君もちよつと触れ、また他の同僚議員諸君も、本会議及びこの分科会でも触れたかとも思いますが、さきの黄変米の問題であります。これは新聞などによりますと、日本の総領事館に米の検査官が行つておる、こういうように書かれておりますが、はたしてほんとうにこの米の検査官がおいでになるのでしようか、あるいは何人、米の検査に行つておるかという、この点をまずお示し願いたいと思います。
  78. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 新聞に、検査官が行つておると書いてありますが、実は検査官というものはまだ行つておりません。農林省の職員で、今外務省の身柄になつております事務官が一人、外務省の職員として実は駐在をいたしておりまして、そういう関係の仕事をやつております。検査官というものはおりません。ただ引取検査を現実にいたしますのは、政府の代行をいたしております三商社の立会人であるというのが現実であります。
  79. 杉山元治郎

    ○杉山委員 私はそこに一つの大き生間違いがあるのではないか、こういうように考えるのでありまして、もし一人でも二人でも行つておりましたならば、それで相当効果があると思いましたが、行つておりましても、いわゆる出先の商社というものに、うつかりすると、何と申しますか、抱き込まれるという危険性があると思うのであります。私も戦前仏印、タイの米の産地を見に参りましてシヨロンあたりでいろいろと米を買い入れている模様も見ました。こういう模様を見ますときに、よほど出先の役人がしつかりしておらないと、悪い商人のために巻き込まれるのじやないか、こういうことを非常に心配したことがあるのでございます。今度のことはそういうことでないかもわかりませんが、今度は役人がおらないので、ただ出先の買付商人にまかしておる、こういうことになりますと、非常な安いものを買うという考え方自分たちのもうけを多くするというような考え方があつて、今度のような黄変米が入つて来る、こういうことになつたのじやないか、こういう考え方を持つておりますが、こういうような点について今後、せつかく高い金を出して買いました米を、一粒たりともそういうことにしましては相済まぬと思いますので、これに対して今後どういうような対策をとつて行くか。商社にしましても、いろいろ私どもの聞いているのでも、うわさがある商社があると思うのでありまして、そういうような商社に対しましても、政府は断固としてメスを入れて行く考えがあるのかどうか、こういう点についても一応お伺いをしておきたいと思うのであります。
  80. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 黄変米を取扱つております商社は三社でございまして、農林省派遣の外務省駐在員も一人実はおりまして、十分監督はいたしておつたのでありますが、こういう事態が生じましたので、今さかのぼりまして、四万トンのわくがとれましてから以後、どういうことをやつてどうしたかという実態の、まず厳密なあとづけを外務省を通じてお願いをいたしております。その上でこれはひとつ善処対策も立てなければいかぬ、こういうふうに思つております。ただ本年は、雨季を過ぎてからの米を買うことは非常に危険であつたのでありますが、遺憾ながら端境期を控えまして、非常に米が不足いたしましたために、相当無理をして買つたのは、政府においてもこれはある意味において失敗であつたと思います。  その間、検査に手ぬかりがあつたかどうかということでございますが、われわれといたしましてもビルマには黄変米が生ずることの危険性を重々感じまして、螢光燈等で照射すれば大体これがわかる、こういうことで実は機械等も送りましてやらしておつたのであります。その間の事情、ことにGGのものは安く入りますから、どうしてもGGの政府貿易をやるということで折衝しておりまして、雨季を過ぎて実は割当が参つたために、端境期を控えて急いで買つたという事情にございます。そういう経緯等ももう少し現地につきまして十分調べまして、いずれまた厳密な調査の結果を報告することに相なるかと思います。今後こういうことを再び繰返さないように、われわれとしても実行可能性のあるものをいろいろやりますとともに、ビルマ政府に対しましても、外務省を通じていろいろ折衝をいたしつつあるのであります。もう少し事実なり責任問題を解明いたしまして、また御報告申し上げたい、こういうように考えております。
  81. 杉山元治郎

    ○杉山委員 どこに原因があつたか。雨季に買い入れたために湿気が多くてあるいは黄変した、こういうことも考えられますので、今後買入れの時期を考慮いたしますとともに、先ほど申しましたように、政府の方では単に総領事館の役人の一人を、しかも専門家でない方を検査官にするということでなしに、大切な金を出すのでありますから、こういうことのためにはほんとうによく米の性質を知つた検査官を一人なり二人なりぜひ送つてほしいと思うのでありますが、今後そういうことについてどういうお考えを持つておるか。これは大きな食糧問題の一つでありますので、ぜひ大臣にもその点を考慮していただきたいと思うのであります。なおこれはビルマ米だけに起つた問題でありますけれども、他の購入する国々においても、今後どういうことが起らないとも限らないと思いますので、買入れの際にはすこぶる厳重にこれはしていただかなければならぬと思います。私仏印あたりを見ましてもやはり一等米は非常にいい。けれども日本に送りますときには、いわゆる等級を停るために、わざわざいい米の中に砕け米などを入れておる事実も見ておるのであります。こういういらぬことをしなくても、砕け米は砕け米として出し、いいものはいいものとして入れたらいいと思いますけれども、商社にまかせておきますと、そういうことをいたしておる事実なども見ておつたのであります。そういう意味において、ぜひ米の買入については政府のしつかりした検査官を送つていただきたいと思いますが、今後大量買付をする国に送る考えがあるかどうか伺つておきたい。
  82. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これは農林省におきましてもまだ定員の問題が解決いたしませんが、外務省と相談して、現在のような事態が起つておるときでありますから、特に強く主張いたしまして、そういうふうにいたしたいと思います。
  83. 杉山元治郎

    ○杉山委員 黄変米の問題はそれくらいにしておきまして、次に食糧増産の問題をお伺いしたいと思うのであります。政府は近く食糧自給促進法案を御提出になるようでありますが、政府の食糧増産の骨子は、大体農地の拡張、土地の改良、耕種改善、こういう三本建になつておるようであります。もちろんこれも必要だと思いますが、私はまず最初に政府のこの三本建の問題から伺つて参りたいと思います。先ほども伺いますと農地を拡張して参ると申しますが、御承知のように現在残されておる土地と申しまするものは、これは非常に椿薄なところが、ないしは非常に不便なところならばよいところがある、こういう、いずれから見ましても生産条件の悪いところが残つておると思うのであります。ただこういうところにこういう土地があるから入植せよというような、従来の開拓民を入れる入れ方では、これは土地は多少開拓されるが、またそれが元にもどつてしまう、たいへん大切な金を入れながら、非常に不経済なことをやつておるのを見ておるのであります。こういうわけで非常に悪い残された地面を開拓するときに、個人々々にまかすことをしないで、まず第一にそういうような場所は政府が国営開墾のようなことをやつて、そして開拓したいという希望者を農業労働者なり何かに入れて、そして、熟練させつ土地相当よくなつた時分に、これならば個人に渡してもよい、こういう場合にあるいは個々に渡してもいいが、少くとも相当の農業生産が上るまで国家がこれに投資をし、保護して行く、こういう開墾でなければならないと思いますが、今の土地拡張の模様を見てみますと、そういう点が一向見えない。もちろんこれは干拓の方ではおやりになつておるようでありますけれども、陸地面の農地の拡張ではそういうことが非常に少いように思います。この点についてひとつ大臣の御所見を伺いたいと思います。
  84. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 今度の食糧増産促進法におきましても、やはり計画的に長期的な投資をしなければならぬと考えておりまするので、ただいま御指摘のような方向でやつて行くのが、ほんとうだろうと思います。
  85. 杉山元治郎

    ○杉山委員 終戦後いろいろと開拓民を入れたと思しますか、戦後開拓地に入れた農民が、どれだけ居すわつてちやんと今日まで農業を続けておるか、私ども見ておりますのには、大半が倒産をしておるように見受けるのであります。そういうように開拓地に入つた者が現在まで農業を続けているところの数はどれくらいか、また倒産した者の数はどれくらいか、あるいはパーセンテージでもけつこうでありますから、一応それを知らしていただけば幸いだと思います。
  86. 正井保之

    ○正井説明員 お答え申し上げます。お話にございましたように、終戦直後の緊急開拓の際には、入植すべき土地の選択あるいは入植してからの営農の計画、こういつた点で必ずしも十分な準備がなされておりませんでした。また海外から引揚げられた方あるいは戦災で職を失つた方、こういう方々が入植した関係もありまして、相当に入植しましたけれども、なれない仕事と無計画に入つたために、脱落する傾向がございました。その現象は大体終戦以来今日までに入植しました戸数が約二十万戸であります。そのうち脱落しました者が六万戸近くあります。相当の率に上つております。これを年度別に見ますと、大体二十年、二十一年がほとんどでございまして、その後は逐次安定して参つております。入植地の選定にいたしましても、適地調査を厳重にいたしますし、また入植されました方につきましては、基本的な営農資金を貸付ける、最近には特に三箇年間の基本的な営農資金のほかに、中期の資金等も提供することにいたしまして、家畜の導入、特に大家畜が開拓地では必要でございますが、そういつた家畜の確保とか、なおさらに現在農業手形等も、開拓地に入られた農家の方はなかなか利用ができませんので、肥料が大部分を占めておりますが、そういつた購入資金のための短期資金、これを開拓信用協会を設けまして現在やつておりますが、こういつた融資の面等もあわせて施行いたしておりますので、だんだんと安定して参つております。あるいは家畜の保有の度合いとか、あるいは農業機械導入等の面でも、既存の農家に比べまして非常に生産量も接近しておる。機械なり家畜等におきましては、むしろ凌駕しておる部面もあるような次第でありまして、逐次計画的に実行され、また経営も安定しつつあるという状況であります。
  87. 杉山元治郎

    ○杉山委員 開拓の入植者が一時逃亡したけれども、最近は安定しておるということを伺いまして、非常に喜ばしいことだと思うのでありますが、まだ今日でも逃亡するものがあるのではないか。先ほどもお話なつたように、入植地の状況を十分に調査しないでやつた人に、多くの逃亡者を出しておると思う。たとえば飲料水のないようなところへずいぶん入れておる実例も見ております。これはもう人間はもちろんのこと、家畜を飼うにいたしましても飲料水のないところには入植ができないにかかわらず、今日まではこの府県にはこれだけ割当てるということをやつているためか、そういうことになつておる。今後はそういう問題について十分御配慮になつておるとは存じますが、農地の拡張は、せつかく国費を使つてやる仕事でございますので、ぜひ今後はむだにならないように十分の調査と、またそういうことの万全の処置をとつていただきたいと思うのであります。  そこで前に入植した開拓民の方で、今特に要望しておりますことは、開拓地の基本的施設を早くしてほしいという要望が強いのであります。たとえば道路をつけてほしい。道路がないために生産物も運べない。また買入れる物資も非常に不便を感じて高価になつておる。また先ほど申したように水のごときもずいぶん不便なところがまだあるわけでありまして、早く水道の施設をしてもらいたい。こういうことは、開拓地に参りますと始終訴えられることであります。政府の方では農地拡張とともに、既設の開拓地の基本的な施設に対してどういうように考え、また二十八年度においてはどういう施設をするようになつておるか、そういう点を、もしわかりますならばお示しいただきたいと思うのであります。
  88. 正井保之

    ○正井説明員 ただいまお話のように飲料水に困つておるところもございます。また道路あるいは電気施設等も非常に不自由をしておる状況でありまして私どもといたしましては、いずれも一斉に拡充して参りたいと考えたのですが、道路につきましては前年度に比べて少額ではございますが増額が認められております。なお飲料水についてもできるだけ取上げてもらうべく折衝いたしましたが、実は電気の施設と若干競合いたしまして、来年度におきましては電気の施設の方をむしろ重点的に、予算額で申しまして約倍程度予算を計上することになつたわけでありますが、飲料水の重要性も非常にございますし、これはまた融資等の面でも十分に考慮して行かなければならないというふうに考えております。
  89. 杉山元治郎

    ○杉山委員 農地の拡張は非常にけつこうですが、今まで見ますると、ただ土地はできた、しかしある者はこれをまた元へもとして草原にした、また土地はできておるけれども、残念ながらそこからあまり生産が上らないということで、政府の方で計画している収穫量は上らない、いわゆる机上プランに終らせている点が今まであつたので、今後はこの増産計画が、従来のようにまたこれをやり直しするというような机上プランに終らないように、ほんとうに耕地拡張なら耕地拡張から、はつきりとその生産が上る、こういうように十分の注意関心を持つていただいて、指導などもやつていただきたいと思うのであります。私は農地拡張の点については一応これでやめておきますが、土地改良の問題であります。土地改良の問題は、いろいろ増産法にも示されているように、灌漑、排水あるいは客土いろいろそれぞれの問題は書かれております。そういうもの、もちろんけつこうであります。しかし先に木臣もお話になり、貫井さんの質問にお答えになつてつたようでありますが、日本はどうしてみても金肥を使わなければならない。いわゆる雨が多くて肥料の有効成分を流すし、また日本の作物である米麦が非常に肥料々多く要するというわけで、どうしてもたくさんの肥料を施さなければならないということになつておるが、それを最も簡単な金肥に頼ろうとする傾向が今日は濃い。そこで酸性土壌の日本が二層酸性土壌化されて行く。このために肥料はやつて行くが、土地がだんだん悪変して行くのが今日の実情ではないかと思いまして、灌漑、排水、客土その他いろいろけつこうでありますが、どうしてみましても、私どもはまず第一に金肥の問題をもう少し考えなければ、せつかく土地改良をやりましても、いわゆる底抜けになつて行くおそれがないとしないと思うのであります。そこで御承知のように、金肥は地方の維持にはなりますが、増進にはならぬ。やつた肥料が吸収されて、残りが全部その年度内に流れてしまつて、その土地をこやさないということで、年々肥料を入れて行かなければならぬと存じますが、しかし先ほどもお話になりました堆肥、厩肥、これはその年度内に約三分の一しか肥料分として吸収されません。三分の二は残つて約三年にして吸収されるという状態でありますから、堆肥、厩肥を年々入れて参りますならば土地はだんだんとこえて行く、いわゆる地方が維持されて行く、こういうことに相なりますので、土地改良の方法については、堆肥あるいは厩肥をもう少しよけいにやるという奨励をして行かなければ、一方において土地改良のいろいろなわざをいたしましても、それは片手落ちになるのではないか、こうゆう考え方を持つておるのですが、この点についての御所見を伺つておきたいと思うのであります。
  90. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 お話通りでありまして、われわれとしましては畜産十箇年計画を立ててやつておりますし、さらに特に先ほどお触れになりました開拓地等につきましては、従来とは面目を一新しまして、公共事業費の開拓関係予算の中に酸土改良、いわゆる強酸性の土地が未墾地に残つておるのが非常に多い、あるいは燐酸欠乏土壌が多い、そういうところには、特に一挙に開拓と同時に、たとえば炭カル三百貫を反当に入れる、それの補助をしております。その後はお話のように推厩肥を入れて、金肥とまぜて効果を上げるようにやつております。なお従来の既耕地の秋落ち水田、それから酸性土壌地帯につきましても、土性の急速の改良は炭カルでありますとか、含鉄資材でやりますけれども、あとはどうしても有機質によつて土壌の生産力を維持して行く以外にはないと思つております。その最も大きい手段といたしましては、家畜の導入ということを中心にして考えております。
  91. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今お話畜産十箇年計画を立てられますことは、非常にけつこうなことで、先ほども申した通り、ぜひこれを間違いなく遂行していただきたいのでありますが、畜産の増殖とともに並行してその飼料でありますところの堆肥、厩肥というものを完全に利用する方法を考えていただかなければならないと思うのであります。私どもの同志である横尾惣三郎君がずいぶん以前からこの問題について、大臣初め政府方にもお願いが出ていると思うのでありますが、今日ある農家の中で畜舎の床を改良しているお百姓さんが約百二十万戸ある。しかしまだ畜舎の床を改良しておらない人が二百五十万戸ある。また推肥小屋の床を完全にブロックで固めている百姓さんは、約三十万戸あるのでありますが、残りの五十万戸というものがまだできておらない、こういうことを申しておるのであります。私は始終田舎をまわつてみまして、これはこの数字以上にあるのではないかということを考えるのでありますが、厩舎の床は田舎に行つて見ますと、掘つただけでその底に敷わらを入れて牛馬を入れている。だから糞は敷わらの上に残りますけれども、糞よりももつと有効成分の多い尿の力は全部と申していいほど地に吸い込まれている。こういう日本農家には大切な窒素肥料を持つ尿を全部流しているということは、農業経営の上においても非常なあやまちでありますし、これでは肥料を多く使わねばならぬということになりますので、畜産増産計画と並行して牛小屋、馬小屋の厩舎及び畜舎の床を完全にコンクリートにして、一滴の尿といえどもこれをとる。そうしてこれを使うということにして行かなければならぬと思うのでありますが、そういうことのために必要なものがまだできておらない農家が二百五十万戸もある。堆肥のごときもほとんど土間の上が多い。しかも土間もけつこうでありますが、屋根もない。ただ野天に積んでおるというお百姓さんが多い。せつかくいい成分を持つ推肥、厩舎を積んでおりましても、雨ざらしになり、日ざらしになつて、重要な部分は大半飛んでしまう。それを使うということに相なつている点が多いと思うのでありまして、どうしても土地改良に堆肥、厩肥が必要だということならば、この点をよく政府の方も主張して、ぜひこれを完成するようにしていただきたいと思うのでありますが、最近の補正予算に少しばかり頭が出たようでありますが、御承知のようにあれだけの金では一村に一つもできないという状態にありますから、なおこれを強く今後推していただきたいことと、あるいは補正予算でも出ます場合には、努力するという決意をもつたなさるか、その点をひとつ大臣より伺いたいのであります。
  92. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 御指摘の点はまつたく同感でございます。横尾君からもたびたび御意見をお聞きいたしておりますし、なおまた横尾君の道場にも行つて実際に拝見もいたしておるのであります。御指摘のように、去年は、少くはあつたのでありますが、サイロと唯肥場をつくる費用を出したのでございますが、あんなことでは問題にならないのでございまして、私は、どんな家でもやはりサイロをつくることが大事である、また厩舎の床をコンクリートで固めることは、衛生上から行きましても、あるいはまた肥料の上からいつても大事なことだと思います。それからまた堆肥場でないところへ、しかも野天積みにしているということでは、実にもつたいない話だと思つておるわけでありまして、補正予算等の場合には、必ずそういうものを入れるように努力いたしたいと思います。
  93. 杉山元治郎

    ○杉山委員 政府の食糧増産の目標は、大体米麦を中心にするというお話でありますが、これは食糧増産ですから当然かと思いますし、また日本の国は瑞穂の国で米麦を中心として参りましたから、そういう点もよくわかるのであります。しかし御承知のように、米麦農業は、日本にいい特長を持つておりますと同時に、一面において非常に欠点を持つておる。すなわち日本農家をして一面窮乏に陥れ、あるいはいろいろ発展の途上において障害をなしている点がある。たとえて申しますと、米麦は一年生草本である。いわゆる草でありますから、非常に弱い。しかも日本は水稲の関係で、雨を非常に必要としますけれども、ちようど花の咲く時期に二百十日になつて毎年どこか台風に当てられて非常な災害をこうむるのであります。麦は麦で、ちようど収穫期に、日本の南部の方に参りますと梅雨になりまして、せつかく刈り入れたものまで芽を出してしまうということで、年々相当の災害をこうむつております。これは米麦農業の一つの大きな欠点である。農民は天災のために痛められ、従つて共済保険等もやつていただいているのでありますが、このように弱い点もありますので、私はまず米麦農業の欠点を申し上げて、あとで伺いたいのであります。  第二は、先ほど申し上げた禾本科植物でありますので、肥料の吸収率が非常に多い。従つて他の作物をつくるよりも非常に多い肥料を必要とする。しかし耕地が少いから輪作農業はできない。やむを得ず連作をする。連作をするから一層肥料を吸収して、土地をやらせて行く、こういう結果になつていると思うのであります。そういうように、他の作物に比して非常に肥料を多く要し、日本農家経営肥料の負担を重からしめている一つの欠点を持つている。第三に、米麦農業は栄養の点で偏在をしている。いわゆる澱粉が大部分を占めているものであります。すなわち脂肪、蛋白質の不足な、澱粉過多の食糧でからだを養つて行かなければならない結果、従量的な食物をとらなければ栄養が足りないから、どうしても多く食糧をとる。こういう結果になつて日本人は胃拡張を起す。いわゆるからだに必要以上に多くの量をとつて栄養をつけるという点もあると思いますので、脂肪、蛋白質の給源がありますならば、これほどの米麦はなくても済むのではないか。あるいはそういうものがありますならば、輸入食糧も少くして行けるという点があるのではないか。こういうような栄養的な偏在がある。もう一つは、農業経営の上において労働が偏在する。忙しいときは忙がしいが、ひまなときはひまだ。ちようど麦を刈つたあと田植をしなければならぬ、稲を刈つたあと麦をまきつけなければならぬというように、農繁期と称するものが重なつて来る。他の期間は割合に閑散である。こういうことが農業経営の上においても非常な傷害をなしておる。まだまだあると思いますが、こういうことが米麦農業の欠点である。この欠点を是正して行かなければ——しかしこれは全部捨てろという意味ではありません。大切な農業でありますから、これはやらなければなりませんが、この欠点を十分に認めて指導して行かなければいけないのではないか。また食糧増産の上においても、そういう点を考慮に入れなければならぬのではないか、こういう考え方を持つておりますが、米麦農業はこういう欠点を持つておるのだから、これを是正しなければならぬという点について、大臣の御意見を伺えればけつこうだと思います。
  94. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 それはただいまお話通りでございます。気候の点といい、あるいはまた米麦の取入れ時期における労働力の問題といい、また食糧としてこれをとる場合に、澱粉を主体とする従量的な食糧にたよらなければならないという、あらゆる点からいつて、そういう点は私も同感でございます。
  95. 杉山元治郎

    ○杉山委員 大臣も同感ということでありますが、最初申し上げましたように一年生の草本でありますので、台風あるいは梅雨の場合、そのほか病虫害等天災的な被害が非常に多いと思うのであります。説明書によりますと、農業保険費の問題がありまして、これは風水害、病虫害等によつて受ける損失を補填するのだ、こういうことが書かれてありますが、これは金額だけでございますので、ひとつ米麦の天災による年々の被害の数、その反別及び石数を示したものがございますならば示していただきたいことと、また病虫害等の被害数量をお示しいただければ幸いだと思います。
  96. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 この算定はなかなかむずかしいのであります。たとえば耕地の壊廃等につきましては、相当にはつきり出て来るのであります。病虫害あるいは風水害等につきましての見積りは簡単でありませんが、共済保険等の基礎になつている数字はありますので、あとでお知らせいたしたいと思います。
  97. 杉山元治郎

    ○杉山委員 お示しのように、いろいろと算定にむずかしい点がございましようけれども、農業共済保険では、はつきりこれを算定いたしておりますので、大体その数量はわかると思います。後刻でけつこうですから、それをお知らせいただきたいと思います。私がこのことを聞きますのは、ほかではないのであつて、さきに吉川委員が人口速度と食糧増産の度合いがどうなつているかと聞いたときの数字では、約百万石だけふえている、こういうことになつておるのでありますけれども、もし今申したような天災が百万石あるならば、これはその点をマイナスにしてしまうわけでありまして、せつかくの増産計画という問題も画餅に帰することに相なりますので、そういうような被害の基礎というものを一応知つておいて、その土台の上に増産計画を立てていた、だくのがよいことじやないか、こういうことを私は考えましたので、災害の点をお伺いしたのであります。  もう一つ災害の点で、先ほど貫井さんがお話になつておりました畜産の問題、それからどなたでしたか、樹木農業をやらなければならないというようなお話がございましたが、私が先ほど申したように、天災にかかりやすい農業を行つておる日本は、この天災に強い抵抗力を持つているものとしては、稲あるいは麦よりは樹木の方が強うございますし、また家畜の方が一層強い。こういうような点からいたしまして、先ほど申したように、日本の米麦農業の欠点を是正するという立場からいつても、どうしても樹木農業及び家畜というものを日本農家に導入して行くことにしなければならない、こういうように考えておるのであります。この点については大臣も多分御同感だと思うのでありますが、一応この点についての御所見を伺いたいと思います。
  98. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これはまつたくその通りでございます。特に天災の多いところはなおさらでございますが、東北地方のように半年雪に埋もれるようなところにおきましては、特に家畜に働いてもらうことが、農家経営の上からいつても大事なことであると思うのであります。それから樹木農業を尊重しなければいかぬということも、これもまた全国を歩いてみましても、そういう形態が徳川時代から残つておるのであります。宮崎県あたりに参りますと、非常に広い面積にわたつて、さざんかの林をつくつてみたり、あるいはまた、つばきの森林をつくつてみたり、くるみの木を大量に植えたり、徳川時代からそういうようなことが行われておるので、これをもう少し計画的にやつたらいいんじやないかと考えるのであります。先ほども申し上げたように、静岡県等で行われておる果樹と雑木との混用林ですか、ああいつたようなものも、これからは取上げる段階になつておるのではないかと考えております。
  99. 杉山元治郎

    ○杉山委員 大臣は樹木農業について非常に関心を持たれているということを、平生から聞いて非常に敬意を表しておるのでありますが、実は私どもが三十年前からこれを唱えて今日に来たのでありますが、ようやく農林省の方においてもおわかりいただいて、林野庁では、ことしの提出原案の場合に、くるみあるいはペカン、そういう特殊林産物の苗木を植える者に補助をするというような費用を盛られておつたように見たのでありますが、しかし予算案を見ますと、遺憾ながらそういうものは影も形もなくなつておるようでありますが、これは一体どういうことですか。大臣の押しが足らなくて、平生から御好意を持つているそのことが消えてしまつたのでございましようか。その点を聞かしていただきたいことと、今度は残念ながら盛られておらなかつたが、今後予算の補正でもする場合には、もう一押し押していただいて、そういうものの実現をしてくださるか。こういうことについて、技術部面は政府委員でもけつこうですが、最後の点は大臣の御意見を伺つておきたいと思うのであります。
  100. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 私どもの押しの足らなかつたことは、端的に申し上げるのですが、しかしこれはどういうものか大蔵省の役人はわからぬです。実は明治三十何年かに小豆島に入つているあのオリーブの木ですが、あれが今九州から瀬戸内海を通つて、今年は愛知県に入ります。それからまた伊豆半島の南端から房州まで来るのでありますが、これも今までやつた金は多分五十万か百万のほんとうに小さな金だつたと思います。それがそのくらいの伝播力を持つのであります。またヒッコリーを植えるにしても、あるいはペカンを植えるにしても、くるみを植えるにしても、ちよつとした誘い水で非常に効果が上るのでありますが、どういうものか大蔵省の役人がこういうことをなかなか理解してくれないのですが、今度は理解させたいと思います。
  101. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今度はぜひひとつ実現するように御努力願いたいのです。さういうように大臣は樹木農業について、いろいろと御心配くださいますが、林野庁のいろいろの点を見ますと、松やすぎ、一般の樹木の栽植の方面については、これは本職であるかしれませんが、非常に熱心であります。しかしどうも樹木農業の点に熱意が足りないのではないかという感じがするのであります。その点について林野庁の御意見を伺つておきたいということと、なおまだ植林すべきところがたくさんある。たとえば残された八十八万町歩もあるという土地のうちには、今申しまするような樹木農業になるところの、くるみなりペカンなり、あるいはそのほかのくりなり、いろいろとそういう食用的な樹木が多々あると思いますので、そういう点について、栽培可能地はいろいろ考えておるかどうかという点についても、一応伺いたいと存じます。
  102. 柴田栄

    ○柴田政府委員 ただいまの特用樹種の増植に関しまする国家の補助の問題は、私どもも、特に山つきの農村の手取り早い土地利用として、その現金収入等による山村農家経済状態の向上のために、ぜひとも進めたいということで強く要望いたしまして、大臣からも非常に強くこれを要請するようにというお話で、実は最後までがんばつてつたのでありますが、一般の林野の状態が非常に遅れております関係上、それらの経費の不足がはなはだしいために、まだそこまで手が及ばぬというような状況が見られてしまつたのでありますが、決して私どもこの問題を等閑視いたしておるつもりはないのでありまして、今後もさらに続けてこれが実現のために努力させていただくつもりでおりますから、御了承願いたいと思います。
  103. 杉山元治郎

    ○杉山委員 努力してくださるということで私も安心はいたしますが、私は三十年来唱えて来て、中には私どもの言をそのまま信じてやつていただいて、たとえば岡山県の阿哲郡の島田という青年は、くるみを三十本ばかり植え、その下にわずかばかりのしいたけをやることによつて、その人は不幸にして脊髄カリエスになつておりますけれども、一家が安全に暮している。こういうことで、私どもはくるみを植えることを恩給の木だと申して、百姓は今恩給をもらつておらぬけれども、くるみの木を植えておけば、恩給をもらつたのと同じことだから植えておけ、こういうことを申し、島田青年の実例などを申して今日まで来ておるのでありますが、そういうように、これは一度植えれば、何本も植えるものでもなく、肥料もそれほどいりませんし、収穫もまた落ちて来るものを拾つて行くというような程度で、実に楽なものでありますので、私はこういう樹木農業をもつとく推奨して行かなければならぬと考えておる。そしてまた、先ほども申したように、天災にかかる点も少うございますし、また栄養価も非常に豊富な栄養価を持つておりますので、米麦農業を補つて、是正する一つの方法として樹木農業が非常にいい。そこで先ほどお話の八十八万町歩ある土地の中に、くるみ等の植えられる可能性のあるところはどれほどあるであろうか、そういう御調査ができておるか、どうか。  なお総合開発の場合に、先ほどお話のように、治山治水の問題で植林をして行かなければならぬ。その植林の場所はもちろん松、杉を植えて行かなければならぬところも多々あると思います。御承知アメリカのTVAのごときも、あの山の方はくるみなどを植えておるような場所もあるようであります。日本もやはり総合開発の一環として、植林をやつて行きますときに、用材も必要でありますが、しかしくるみも用材になることは御承知通りでありますので、ぜひそういうものも林野庁では一応計画の中に入れて、見ていただければありがたいと思うのでありますが、そういう点についての御所見を承つておきたいと思います。
  104. 柴田栄

    ○柴田政府委員 先刻申し上げました手遅れになつております八十八万町歩というのは、大体用材林の立つておりましたところで、伐採いたしまして、ただちに植栽をすべきところで残されておるところであります。それらに関しても、ただいま御説の通り、里近くの地味のいいところには、ある程度植えかえができるところがあるかと存じておりますが、私どもが特用樹種の増植を特にはかりたいのは、山村の農家近くの不収穫のままに放置された林野で、これを特用樹種増植の対象といたしたいということで計画をいたしておりますので、大体八十八万町歩の林業計画対象以外に求めるのを本則として、実は考えておる次第であります。
  105. 杉山元治郎

    ○杉山委員 これは従来のいい用材地でございますればやむを得ませんが、そうでない里近くのやや肥えたそうした樹木農業に適する地面も相当あるだろうと思いますので、今後御調査の上、できるだけそういうものを栽植していただくように御指導を願います。  私どもはこの樹木農業のことを立体農業と呼んでおるのであります。それは米麦農業の平面農業に対しての言葉であります。樹木は上に伸びて立体的になる。こういうことで収穫も立体にとれるという一面もございますが、このほかにそうした樹木の下に下草が生えますので、この下草を利用して家畜を飼う。そういうわけで、樹木農業というものは、単に樹木だけをやるんだということを考えてもらつては困るのであります。私の申しております樹木農業は、そういう果実をとる果木農業、いわゆるトリー・クロップスの仕事とともに、一面においてその下に家畜を飼養して行く、こういうことを兼ねて行く上下の農業、こういう意味で立体農業をやつて行くということを考えておるのであります。そういう計画で進みますならば、日本の国土は狭いけれども、私は食糧自給の問題もあえて困難でないのではないか。それは御承知のように、著者の名前は忘れましたが、食糧資源論を書きました人があります。世界で最も耕地の少く、人口の稠密しておる地中海のコルシカ島が、非常に豊富な農家生活をしておるのではないか。これは要するに、さき申したような立体農業をやつておるからだということを書いておるのであります。私どもはその著書を読んで以来、先ほど申したように、三十数年宣伝し、今日まで来つておるのであります。こういうようなわけで、政府も食糧増産とともに、この点に気づいていただいたことを私どもは感謝するのですが、一層今後、先ほど申したように努力して、実現に邁進していただきたいと思います。これは要望であります。  そこでもう一つ林野庁にお伺いいたしたいことは、先ほど申した家畜の飼料の問題です。今日は食糧、家畜五箇年計画といたしても、高い飼料を買わなければならないというよううなことで、飼料需給安定法なども本国会に提案されて参つたのであります。私どもは家畜の飼料の一つとして、山野にあります胡桃科、いわゆるどんぐり類、こういうものは相当あるはずなんだから、こういうものをやはり家畜の飼料に使うようにしたらどうか、こういうことを前からも申して来ておつたのでありますが、一体胡桃科の分布状態、またその分布状態から見て、どれほど実がとれるかというようなことについての御研究ができておるなら、一応示していただけばたいへん幸いだと思うのでございます。
  106. 柴田栄

    ○柴田政府委員 胡桃科の樹種の分布の状態は大体わかつておりますが、従来飼料にお使いになつておらなかつたようなものの飼料化というような問題が、私どもにはまだ明確になつておりませんので、実は収穫量等を現在まだはつきりつかんでおらない状況にあります。
  107. 杉山元治郎

    ○杉山委員 それははなはだ遺憾でありますので、ぜひ今後いろいろの手を動員して、分布状況がわかりますとともに、そういうような天然資源をただむだにしてしまうことは惜しいので、山村あたりにおきまして、ひまなとき——ちようどあの秋の落ちますとき、ちよつと忙しいときもありますが、少し時期をずらしますならば拾えると思いますので、そういうものを利用して家畜を飼うということにしてもらいますならば、先ほど申した家畜の増産の上においても、また飼料の問題においても解決して行くのではないか、こう考えておりますので、そのことも一応要望いたしておきます。
  108. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 非常にためになる御意見でございますが、私も実はどんぐりで豚を飼つた経験がございます。非常によく豚が太ります。そうしてまた小学校のちようど休みに子供に頼んで採集したのですが、非常に集まるものです。その分布状況を調べて、そうしてその土地にどういうものを入れていいかというようなこともやらしたいと思います。
  109. 杉山元治郎

    ○杉山委員 大臣は経験を持つておるというお話でたいへんありがたいのですが、外国でもどんぐりで飼つた豚の肉は一番優秀だ、こういう折紙がつけられておるくらいでありますから、そういうふうな天然資源があつて、これでりつぱな畜産をやつて行くことができるなら、非常にありがたいと思う次第であります。  そこで畜産関係してでありますが、この間私の知つておる者がアメリカに行つて来ました話によると、向うでは飼料の問題については技術が非常に進歩しており、非常によく解決がついておる。たとえて言うならば、クローバーも従来のようにそのまま栽植してやつてつたのではいけない。そこで御承知のように、薬剤のコルヒチンを使つて染色体の倍率を変化してやつて行く。そうすると、非常にクローバーが大きくなる。単に収量がふえるばかりじやなしに、よい飼料をとることができる。日本のように畦畔は少いのでありますけれども、畦畔のようなところでも全部牧草地にしておる。こういうことも報告しておつたのであります。日本は御承知のように段々畑で畦畔が多いのでありますが、この畦畔あるいは河川敷、こういうようなところを改良いたしますならば、先ほどお話の飼料の問題も一面解決できるのじやないかと思つておるのですが、こういう点について農林省はどういうような御指導をなさつておるのでございますか、一応伺つておきます。
  110. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 それは御説の通りでありまして、この河川敷等も最初は大分建設省等において意見もあつたようでありますが、近ごろは理解を願つて河川敷を利用した酪農が大分伸びて参りました。それから牧野の改良につきましても一生懸命努力をいたしております。ただ私たち遺憾に思うことは、わらが非常によい牧草であるという観念が、あまりに手近なものでありますから、これがなくなつておるようであります。外国から入つて来たクローバーなり、その他の牧草がすぐれておるというように考えられるようでありますが、河川敷等にある、名はちよつと忘れましたが、たくさん密集している荳科植物でございますが、あれなんかも非常に人が推奨いたしております。また日本の山にあるくず、それからはぎ、こういつたものが非常にすぐれた牧草であるということを外国人が認めておるのであります。特にサイロに切り込むような場合には、わらをこまかく刻んで、それにいもづるなり、生の草なりを入れると、ちようど手ごろの飼料ができるのを自分自身で体験して知つております。そういうようにして、あなたの御指摘のように農林省指導しております。
  111. 杉山元治郎

    ○杉山委員 飼料の指導にいろいろと御奔走くださるということでありまして、また大臣のお言葉のうちに、野生の飼料のうちで最も有効なものはくずだとありましたが、その通りでございまして、アメリカ人は進駐以来わざわざ日本のくずを山野をわたつて調査している。しかるに地元のお互いはくずに対して無関心である。これは山林の方面のじやまをする点もございますが、従来のように野放しにするからじやまをするのでありまして、傾斜面の士が崩壊するような場所に株で植えて、年に三回、四回刈り取りますならば、それほど長く伸びません。従つてじやまをいたしません。なおかつそういうように時々刈り取りまするので、非常にやわらかい、窒素に富んだ飼料がとれるのでありまして、今までの経験から申しますと、株植えにするならば、少くとも反当り二千貫以上の収穫が上る、こういうことに相なつておりまするので、飼料問題を考えますならば、先ほど申した立体農業あるいは畜産増産計画、こういうような問題とともに、日本は高い飼料を買うておるのでありますから、こういう問題についていろいろと御研究つて土地の浸蝕作用をとめて行くとともに、一面飼料の増産をする、こういうことをお考えいただきたいと思うのであります。なお畜産増産には、どうしても先ほどのお話のように飼料の問題を解決せなければ、畜産の問題はこの狭い国ではいかないと思いますので、一反歩を使つて一頭を飼うというのもけつこうな一つの方法でありますが、副業的にやつて、それとともに、今まで考えられておらない地面をうまく活用して飼料をとる、こういう方法をお考えいただきますとともに、なおいろいろと食糧増産の中には技術の点に農林省は大いに力こぶを入れなければならない。日本の米のごときも、大体飽和点にまで来ているとある人が申すのでありますけれども、現実に今年の朝日賞にもあつたように六石もとつている人がある。こういうことを見ますと、これは先ほど私は申さなかつたけれども、いわゆる健苗と、耕土の改良と、多肥、それに加えるに技術、こういう面であつたと思うのでありまして、だから忠実に技術を受入れた百姓ならば、まだ今日でも一割や一割五分の増産はあえて不可能でないのではないか、こういうふうに考えておりますので、ここで農林省食糧増産のためには技術指導に十分力こぶを入れていただかなければならぬと思いますが、そのために農事改良普及員を置かれておりますけれども、今の程度ではとうてい十分な指導はできないのであります。ほんとうに百姓を指導すると申しますのには、同じようにやはりどろ田の中に入つて始終手をとるように指導して行かなければ、ほんとうの技術指導はできない。二箇村に一人、三箇村に一人というような状態では、これは頭の指導はあるいはできるかもしれません。ただ青年たちの指導はある部分できますけれども、ほんとうに農業に従事している人の指導にはならぬと思うのでありまして、この点についてなお農業技術員を増加する意図を持つておいでなさるかどうか。また今の報酬ではどうも足りない、これでは農業技術員になり手がない、こういうような状態ですから、いいものはどんどん出て行つてしまう。そうでない一と言うとどうも語弊かありますが、そういう人が残るということになつて技術指導が十分に行かぬというような点があるようにも私どもは見受けるのでありまして、私はここで大臣にもう少し技術指導のために技術員をふやすこと、また技術員の報酬の点についても、どういうようにお考えになつているかということを一応伺つておきたいと思うのであります。
  112. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 実に掘り下げた御意見でございまして、最初の家畜の飼料の解決のお華も、これはわれわれもその通り考えているのですが、そして実際にいわゆる自然を利用して粗飼料を完全に解決して行きますと、輸入を非常に防ぐことができるのであります。こういうことをわれわれは強く大蔵省に話すのでありますが、大蔵省はこういうことはなかなかわかつてくれないのであります。わからせなくちやならぬと思つて努力はいたしておりますが、なかなかわからないのであります。またただいまの改良普及員ですか、これも御指摘の通り非常に必要な人たちであります。しかもこの間も大会をやつて、一体われわれを何と心得ているのかという叫びをいたしておりましたが、実際に給料の点から見ましても、また担当区域から見ましても、これはむりであります。これを優遇するようにわれわれも努力をいたし、またこれをふやして食糧増産して輸入を防ぐようにするのが、ほんとうに日本の国をやつて行く手段であると思うのでありますけれども、いつでも国の予算で制約を受けて苦しんでおるのでありますが、そのように努力をいたしたいと考えます。
  113. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今後ぜひ技術指導の点に十分の力こぶを入れていただきたいと思います。今もお話がございましたが、飼料でも、技術によつて粗飼料が濃厚飼料になるのであります。私の選挙区の中に小野という養鶏家がございますが、この人が百五十羽飼つて——大臣も養鶏家だそうでありますが、年産平均して七割を産卵せしめる、こういう実にえらい養鶏家でありまして、そういうわけで卵代だけで年三十数万円をあげておるのであります。それでこのお百姓さんは、鶏を百五十羽飼つておれば、都会地近くですけれども、安定している。この人はバタリー式のものですから、畳一枚敷のところに十五羽、十枚敷のわずかな表面積で百五十羽を飼つて、卵だけで年産三十数万円をあげている。それならば、それだけ卵を生ましているのだから、よい飼料を使つているかと聞いてみますと、雑草が七割、濃厚飼料は三割ということであります。こういう飼料を使つて、しかも七割の卵を生ましておる。それにはもちろんさつき申しましたような科学的な技術も入つております。たとえばその飼料をいつて、それを煮て、それに酵母を入れます。そうしますと、セルローズが溶けて可溶性になりますととも空気中の窒素が入つて来るということで、粗飼料が濃厚飼料に転じて来る。こういう点で、雑草を使つているのでありますけれども、非常によい飼料を使つたと同じ結果になつております。事実そういうように技術によつて非常に有効な農家経営をやつており、また養鶏一つ農家を立てておるという実例を示しておるのであります。私はそういう意味で、こういう面を実際に百姓に指導することができるならば、日本農家ももつともつと経済的に伸びて行くのではないか。こういう意味でほんとうにこういうことを指導できるような、よい普及員をぜひ置いていただきたいということを、要望として申し上げておきます。  私は最後に、蚕糸局の方がお見えになつておりますから、ひとつつておきたい思います。いろいろ新聞などを拝見いたしますと、養蚕の拡張計画とか、将来に対しまする制度をいろいろとおとりになるように新聞などでも見ましたが、蚕糸の振興計画というものの大体の構想、また将来の蚕糸業に対してどういう見通しをもつてそういう振興計画を立てておるのかということを、まず先に伺つておきたいと思うのであります。
  114. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 ただいま農林省で行つております蚕糸業振興計画と申しますのは、昭和二十六年度から三十年までの蚕糸業振興五箇年計画というものをやつておりまして、五箇年計画の目標といたしましては、産繭額を三千三百万貫、生糸に直しまして三十万俵という目標でございますが、その進行状況を申し上げますと、昭和二十七年におきまして、すでに二千七百五十四万五千貫をつくつております。二十八年の予想は、まず三千万貫は達成する。毎年大体一割は増産になりますので、三千三百万貫を二十九年に実現できると思います。従いまして、三十年に完成いたします予想でありました五箇年計画が、一年早まりまして、二十九年には三千三百万貫、生糸三十万俵の生産は可能だろうと思います。しからばこのできました三十方俵の生糸がどういうふうに需要されておるかと申しますと、二十五年にこの五箇年計画を立てました当時の計画といたしましては、三十年におきまして、三十万俵の生糸のうち十五万俵が内需に向い、十五万俵が輸出という計画を立てておつたのであります。ところが、最近昨年ごろから非常に内需がぶえて参りまして、二十七年の十二月末の統計によりますと、すでに内需にまわりました生糸が十九万俵でございます。輸出の方は、二十七年の輸出が七万俵でございます。そこで三十万俵のうち、今後二十万俵は内需に向い、十万俵を輸出しようという計画でございます。それが可能であるかどうかということを申し上げますと、戦前のわが国の蚕糸業の情勢が、大体七十万俵が生産されまして、そのうち五十万俵輸出いたしました。内需が大体二十万俵でございました。従いまして、終戦後も昨年で戦前の内需の状況にまで回復いたしております。次に五十万俵の輸出のうちの四十万俵がアメリカの女の人の絹の靴下であります。あと十万俵がアメリカ、ヨーロツパにおける衣料の方に使われておりました。かりにナイロンに生糸が負けて絹の靴下が落ちたといたしましても、なお十万俵の輸出が可能であると考えまして、ただいまわれわれが行つております五箇年計画完成のあかつきは、内需二十万俵、輸出十万俵ということは楽に消化できると考えております。しからば今後の第二次の五箇年計画——三十年以後の計画をどうするかということになりますと、これは将来輸出の振興をはかることを考えて参らなければならぬと考えております。
  115. 杉山元治郎

    ○杉山委員 精細な計画を御発表いただきまして感謝する次第でありますが、私がこのことを伺いましたのは、蚕糸業の将来について危惧の念を持つておるので伺つておるのであります。実は私が今言いますように、私の知人がアメリカに行きまして、百貨店という百貨店を歩いてみて、売手に絹織物についているくと聞いて、どういう関心を持つておるかということ調べてみましたところが、売手に聞いたうち七〇%までは、お気の毒ですけれども、絹織物はもう時代遅れであります。こういう説明であつたのです。あとの三〇%は、一向存じません。こういう答えであつたという話なのです。もしそういうようにアメリカの一流百貨店と称すべきところの売手、第一線に働いておる者が、絹の問題は、これは時代遅れだというようなことを宣伝されて、それで一体日本の絹物が将来発展して行くか。こういうことを私は聞きまして、日本の蚕糸業は現在はおかげさまで非常にいい。また国内需要もあつて、養蚕家も非常にいいようでありますけれども、これはただ自分たちの範囲内だけを見ておつて、外の事夏わからないために、またばたつと行き詰まるようなことがあつてはならないし、そういうような問題については、政府の方では見通しをつけて御指導をなさつておると思いますけれども、私どもはやはりそういうようなことを聞くにつけて、政府の御意向も聞いてみたい。また政府の方は、自分の仕事になると、自分のことだから一生懸命にやらなければならぬというので、大いに拡張計画をやる。従来こういう弊害があつたと思うのでありまして、そうしてちようど拡張した時分にばたつと悪い時期に遭遇した。こういうことがありますので、将来の見通しはどうだろうかという意味でお伺いしたわけであります。  なおその友人が報告しておりますのに、アメリカを歩いてみて、木綿のワイシャツを着ておつたのは自分一人であつた。各国の人五十人ばかりと一緒に各地を歩いたのですが、ほとんど全部がナイロンのワイシャツであつた。木綿と絹と違いますけれども、そういうような状態で、なぜそういうようにナイロンのワイシャツだけ多くの人が着おるのだろうか。だんだん歩いておるうちにそのことがわかつて来た。アメリカのようにきれいなカラーを維持して行こうと思うと、どうしても洗濯代に日本金で月に一万円かかる。洗濯代に一万円かかつてはたいへんだが、しかたがない。アメリカではエチケットとしてきれいにしていなければならぬ。だんだん見ていると、一緒に歩いた人たちは、宿屋へ着くと、ナイロンのワイシャツをちやんと自分で洗う。そうすると簡単にあかが落ちて、ナイロンは六時間で優にかわきますから、朝出るときにはプレスをしなくても、ちやんとしわが伸びておつて、きれいなワイシヤツを着て行ける。自分は木綿のワイシャツを着て行つたが、不便でもあり、高くついた。ナイロンのワイシャツを買つてみると、いかにも木綿のワイシャツより二倍高いけれども、三倍持つ。そうすると持ちだけでも一倍の利益になる。こういうことで、アメリカにおいては、木綿というものはだんだん追いやられておる。そこでテキサスのような畑作地でも、今年は一割五分も畑作地を減らすということをしておる。こういうことでアメリカ産業革命が起る。前の産業革命はエンジンから来る産業革命であつたが、今度はそういう原料から産業革命が来る。もし日本で紡績業をやつてつても、かんじんの綿をつくるアメリカで綿をつくらないということになれば何の役にも立たないし、つくつても今のように高価なものにつくことになれば、これを使用せぬことになるということをアメリカにおる友人が報告して来ておるのであります。絹のワイシャツを着る人は少いから問題でありませんけれども、こういうことで今日の化学繊維に押されて行くという心配はないのか。あるいは御承知のようにナイロンよりもつと強いオーロンが四時間でかわくということなのであるから、今度はナイロンよりオーロンに移つて行こうという状態であります。こういうように日進月歩の化学繊維が、いわゆる年百年中つくれる化学工業としてやつて行くものと、われわれ天然相手にやつて行く絹糸、こういうものの競争が非常に困難になつて来る、こういう問題を考えておかなければならないのではないか、こういう暗示をアメリカにおる友人は知らして来ております。私はアメリカの事情はよく存じませんが、アメリカにおる友人がそういう通知をして来ましたので、一応政府当局の蚕糸業に当つておる方々の将来の見通しを伺いたい、こういうことで伺つたわけでありまして、なおそういう問題についてよく御承知の点がございましたならば、御教示いただければ幸いだと思うわけであります。
  116. 寺内祥一

    ○寺内政府委員 ただいまのお話、まことにごもつともでありまして、われわれも非常に憂慮いたしておるのでありますが、ただただいまアメリカ生糸が出ませんで、お話になりましたようなデパートの女の人たらが生糸のことを知らないということは、非常に数量が少いという点があると思います。御承知のようにただいま値段が上つておりまして、国内における二十四万円の絹糸価格、これは一ぱいでありますが、これをアメリカに持つて参りますと一ポンドにつきまして五ドル四十五セントという繭の相場が出ておるわけであります。これは戦前はニドル十セントが二十セントで、その当時の人絹の値段が七十八セント、大体人絹の三倍程度つたのでございます。ところが人絹は戦後も依然として七十八セントくらいであるのに対して、ただいま申しましたように生糸が五ドル四十五セントもしておるというような点がある。従つて下級階級のものにまわらぬという点が一つございますので、われわれといたしましては、できるだけ養蚕の方も製糸の方も生産費を合理化いたしまして、生糸の値段を安くするというふうにいたしたいと考えております。現にアメリカのその方面の取扱いの有力なる商社からも、四ドル以下に下ればアメリカでも年に六万俵の消費はあるのだから、それを下げてくれという要望があつたのであります。  それからもの一つ生糸技術的な点であります。御承知通り生糸の一番の欠点は、あれが日に当りますと黄色くかわります。これを黄褐変と申しておりますが、これを防止いたしますために樹脂加工をするということを、今蚕業試験場その他有力な商社で研究いたしておりまして、これが大体目鼻がつきましたので、この方法がとれますと、生糸がああいう黄色くかわるという点がなくなりますし、なお非常に品賀が強くなるということが見通しがついております。  もう一つは、最近アメリカにおきましていろんな人造繊維、化学繊維ができておりましたが、これの混織ということが非常にはやつております。ナイロンと絹との混織とか、デイクロンと絹との混織ということが、大分はやつてつたそうであります。これはナイロンとかデイクロンという化学繊維で満足できないので、そこにある程度絹の味を入れて行く。一方において絹だけでは非常に高いところを、ナイロンなりデイクロンというような化学繊維を入れて価格を安くする、こういう傾向が出て来たことは、非常にわれわれも有望視いたしておるのであります。これが将来伸びるようになりますと、化学繊維の増産と対応して、絹の方の利用も出て来るということに、一つの期待をただいま持つておるわけであります。
  117. 杉山元治郎

    ○杉山委員 蚕糸問題はそのくらいにいたしておきまして、ちよつとさつき落しました食糧増産の問題で、もの一点伺つておきたいと思うのであります。  食糧増産にはさつき申しましたように健苗、耕土の改良、多肥、技術の改善、こういうものもございますとともに、もう一つやはり百姓さんに奨励援助をして行くという点、もう一つはやはり生産費に償うところの価格維持、この問題がなければ増産ができないと思いますので、私ども先般の米の価格の問題の際に、非常に残念に思いました二とは、補正予算の場合に労働者諸君のベース引上げの際には、人事院勧告を政府はおのみになる。そうして一万二千八百円というベースをおのみになつたにもかかわらず、米価審議会の勧告である一万円米価というものを受入れにならないで、七千五百円にせられた。七千五百円にいたしますならば、お百姓さんの働いた労働日当というものは、日雇い労働者にも及ばない価格にしかなつておらない。こういうように思いますので、私どもは一般の労働者の方の平均ベース並にお百姓さんの、少くとも働いた日の日当はならなければならない、こういうように考えておるのですが、何ゆえにお百姓さんの日当だけがそういうように安くてもいい、町の労働者諸君の方は一万二千八百円にならなければならないのか。私は人権は同様であると思いますし、また大切な食糧増産をしておるお百姓であれば、やはり相当平等に見て行かなければならぬと思うが、こういうように賃金のところにおいて差別がつけられておるのでありますが、こういう問題に対して一体農林省ないし大臣はどうお考えになつておりましようか。
  118. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 ただいまの米価のお話でございますが、農林省はパリテイ計算をやつておりますので、現実労賃の問題は具体的には生計用品という形で反映をして来るのであります。生産費計算ももちろんいたしております。その間生産費をどう評価するかという問題が、一番大きな問題でありまして、農林省でやつております生産費調査における雇用労賃は、生産費調査をいたします農家の現実の雇用労賃をとつておりますので、事実は非常に低くなつておるのであります。結果といたしまして生産費計算のものとパリテイと比較いたしますと、ただいまのところはパリテイが非常に高く出ておるという結果でございます。  今の御質問であります、何ゆえに都市の平均労銀程度を見ないか、こういうお話でございますが、七千五百円というものの結果としてこれを考えますと、たとえば昨年の産米における生産費調査でございますが、二十六年産米におきまして、生産農家では石当り百四時間ということになつております。これをかりに七千五百円にいたしました場合に、農村の労賃と都市の労賃とやはり地域差がありますので、これは指導連も言つております八割程度にいたしました場合に、かりに七千五百円という米価にいたしましても、そう二百五十円とか三百円というような、都市の雇用労賃のような安い労銀には私はならないというように考えております。ましてそれに、平均でございますが、奨励金がつきますと八千八十七円というように実はなります。かりに八千八十七円の米価である、こういたしました場合に、百四時間という石当りの家族労賃を評価いたしますと、結果といたしましてパリテイ計算の米価は都市の平均の労銀というものと、地域差を考えれば、そう大きな隔絶はないのじやないかというように考えております。ただどういう労賃を評価するかという問題は、何か客観的なものがいるのでありまして、目下政府としましてもこの客観的な労賃の評価をどうするかという問題について、次の麦価決定までに、何らかの結論を得たいというので、各専門の学者にお願いをいたしまして、よい評価方法を考えております。結果といたしましては、本年の米価もそう都市の労銀と比べまして、はなはだしく不均衡であるということは考えていない次第でございます。
  119. 杉山元治郎

    ○杉山委員 食糧庁長官が米の生産費に対して農民の労銀はあまり安くないというお話でございましたけれども、われわれの計算から言うと、どうも安い。やはりニコヨンにも及ばない、こういう考え方を持つているし、単に考えるだけではなしに、われわれの計算からすればそういうことに相なつて来るのでありますが、政府も単なるパリティだけではいけないので、いわゆるこれにアルフアーをつけておるということは、どうしてみてもやはり生産費にさや寄せして行かなければいかぬ。百姓さんも何ぼ増産せえ、増産せえとしりをたたいてみても、やはり自分の生産費に合わなければ、まあ国のことであるし、食糧のことであるし、増産はするけれども、増産意欲が十分起つて来ないと思うのでありまして、これは高く買つてくれとは申しませんけれども、生産費に満てるだけの費用であるならば、農民は欣然として増産に邁進してくれると思う。私どもは今の米価ではほんとうに百姓さんを満足さすに足る米価であると思つておりません。それは今申し上げましたようなわけで、労働賃金一つを見ても非常に低い、こういうことでこれは計算のしようによつてどんなにもウエートが出ますから、もうここでは議論をいたしません。私は生産費に満てるように政府が考えてくれない限りは、食糧増産ということをいかに御奨励になつても、これでは十分ではない。増産をほんとうに切望されるならば、百姓さんの期待に沿う価格で、米麦ばかりではない、多くの農産物も買い上げてくださるという態度に出ていただかなければならぬ、こういうように考えておりますので、ぜひひとつ生産費にこの点をお考えくださることと、それからいま一つつておきたいと思いまするのは、先ほど吉川君が税金の問題を申しておりましたが、食糧増産自給促進の案を見ますると、この案では土地改良に要した費用は、今度は所得の税のうちからこれを控除する、こういうようなことが書かれておるようでありますが、この案が出ますと、やはりそういうことに相なりますのか、われわれはこの法案が通過することを望みますが、もしないという場合には単独でも——こというような土地改良費は今までは認めてくれなかつたが、これははつきりと所得税はかからないという態度をとつてほしいと思うのですが、その点はいかがでございましようか。
  120. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 ただいまのお話の点は案でございまして、これから政府部内で大蔵省と交渉します。この実現をはかりたいのでありますが、現在までは、千円までのところは事実上組合の負担金は経費で落しておりますので、それ以上に増加した場合がこの法律で落ちる、こういうことになるのであります。
  121. 杉山元治郎

    ○杉山委員 もう一点伺いたいことは、開墾、干拓または裏作に投入した場合に、耕作開始の年及び翌年から開墾及び干拓地では五年間、裏作開始は三年間所得税を免除するということに相なつておりますが、前の古い開墾干拓を見れば、いわゆる干拓はくわ下年限五十年はあつたと思う。また普通の干拓はくわ下年限三十年まで租税を免除しておつたと思います。もつとも裏作開始の問題は、あるいは三年くらいから収穫が上つて来ているのですから、これはいいかもしれませんけれども、干拓の方はいい場所もありましようが、普通の開墾の場合、五箇年でそういう税の対象になるほど生産が上げられるか、これは先ほど開拓の問題でちよつと触れましたように、現にやつたものが五年たつても、ほとんど生産可能というほどのものが上つておらぬようでありますが、こういう実績から見たら、これは少し短か過ぎやしないかという感じがいたしますので、この点も政府はやはりこれでもいいのだ、これなら確かに正当であるという考え方を持つているのか、あるいは大蔵省はそういう考えを持つかもわからぬが、農業の専門家はこういうことで百姓が有利になりはしないということはわかりますので、一応お伺いいたしたいのであります。
  122. 渡部伍良

    ○渡部政府委員 お話の案では開墾の年及びその翌年からということになつておりますが、大体開墾では農地局の調査では六年を経過をすれば、もう七年目から熟田になるという調べが出ておりますので、そういう案を考えているのであります。なおよく検討を加えたいと思います。
  123. 杉山元治郎

    ○杉山委員 私の質問はこれで終ります。
  124. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 竹山祐太郎君。
  125. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私の伺いたいのは、ごく簡単におもな二、三のことを伺うだけでございまして、今度の予算で一番問題になつたところの食糧増産に関する予算は、いわゆる事務当局のつくつた当初の予算とは、非常に隔たりがあるということをいろいろな場合にやかましく言われておられる。この点は日ごろ腕前のいい農林大臣のお手並としては、少々われわれも期待に反したわけであります。従つているいろいろどくどしく申しませんが、今度の食糧増産、ことに土地改良を含む直接の費用に関しては、これで御満足になつたとは、いくら何でも言われないだろうと思う。そこで計画の変更等も行つて参りましようが、問題は食糧増産促進法なるものは、この予算と不可分の関係において御提出になるお考えであるかどうか、それをまず伺いたい。
  126. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 やはり現実が伴わなければ、からになりますので、食糧増産の促進法は出すつもりであります。しかし長い目で見て、またわれわれのような政治力のない者ばかり農林省に来るわけではないのでありますから、その時期においてまた補正されて、大きくとることもあると思いますが、とにかく今のところは現在のところを基礎として考えて参りたいと思つております。
  127. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 さようでありますならば、私は端的に伺つておきますが、今度出される法律というものは、今度の予算を前提にしてつくられるのではなくて、当初考えられた食糧増産計画というものに自信がおありであつたならば、その計画を達成するために必要な法律を出されるということでありますから、今回の予算額は今農林大臣率直に認めて、人柄でまことに好感が持てますけれども、国家財政上、刻下の食糧生産の計画としては必要であるが、その予算額が思うようにとれなかつたということであつて、これはいわゆる財政規模から食糧増産計画というものが変更をされるのではなくて、あくまで国家自立のために必要なる食糧増産計画というものは、農林省の信念としてこれを貫かれるということが法律の背景をなすものと、われわれは考えておる。従つて今年度の予算額というものはきわめて不満足な予算であるが、その不満足な予算はこの食糧増産計画のスタートのごく一部分をなすものであるという考え方で行くとするならば、今年の予算というものは、いわゆる事務的な予算として、金額から計画が修正をされたり、あるいはこれを引延ばされたりするような、いわゆる薄く延ばされたりするようなことがあるならば、われわれとしては政府の態度を疑わざるを得ない。従つて今後出て来る法律案の審議にあたつても、その点がきわめて重大な問題になると思います。農林大臣は少くとも当初立てられた計画は国家の存立上必要なものである、その前提に立つて法律案を出されるのだから、今度の予算はその一部分をなすものであるという信念がおありであるかどうか、もう一度念のために伺つておきます。
  128. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 先ほども申し上げたのですが、現在のような幼稚な技術と原材料を外国に仰いでやつておる日本の工業とをもつてして、そうして輸出したその金によつて食糧を買うというようなことは、平時の場合どうしても私は考えられないのです。これは現在特需というような一つの麻薬でやつと運転いたしておるのですが、これが平時の貿易状態を今後ながめてみて、どうしても食糧というものは自給しなければならぬというので、農林省は十箇年間に四千万石どうしても増産しなければならぬというのが民族自立の上に立つた信念でございます。そうしてこの信念を本年通せなかつたことは、これは国家財政上においてやむを得ないのでありますが、十箇年間に四千万石ふやして行くということは農林省としての方針でありまして、この方針を十箇年間にどう織り込んで行くかということであります。その方針を途中において変更したり何かしないように、一つの長期的な計画的な案を持つて行くということが、一番大事だと考えておりまするので、今年の額は少くてもこの法律は出して、要するに日本食糧増産の基本方針は、こうであるということをはつきりしたいと私は思つております。
  129. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私は廣川農林大臣が終戦後において、ほんとうに確固たる独立後の日本食糧増産計画を立てられたということに対しては、非常に敬意を表するものであります。従つてこの計画が世間に伝えられるがごとく、予算が半分になつたからということで計画をやり直したり、修正をしたりというような印象を世間に与えておることがありとするならば、非常に私は遺憾であります。そういうことで、農林省は何か机の上で数字をどうにでも直せるような印象が、実は今度の予算が半分しか通らなかつた原因の最大なるものであると思います。それはあくまで農民と農林官僚との間のやりとりではなくして、国民全体に向つてこの食糧増産計画が信念的に貫かれていないという印象を起すところに、この予算が通らなかつた、またいわゆる輿論の強い支持を得られなかつた根本があると思います。さような意味において私か農林大臣に期待するところは、一旦立てた計画は信念を持つてあくまでこれを貫くということであつてもらいたいと思います。さような意味において、計画をいろいろ変更されることは断じていけない。あくまでこの計画で進んで行きたいものと私は希望いたします。同時にきようは森さんもおいででありますが、占領下の食糧生産については、いい面もあつたけれども悪い面もあつたアメリカの注文で、農民の非常に希望しておつたところの団体営というものが削られてしまつた。これは森さんにも大分責任がおありでありまするが、現与党としてはあくまで独立予算においては回復をすべきであろうと思う。その一例をあげるまでもなく、その他の補助事業に対しても、世間には何かこれは農村に振舞いでもしているような印象を与えておりますが、今杉山氏の質問を通じても、今論ぜられたことく、米価あるいは麦価というものを、農民の納得をしない価格に押えておる今の制度のもとにおいて、農民に今の状態で資本蓄積をなし、自由な土地改良等がやれるはずがない。これを肥料のごとくつつぱなしていくらでも高くしてくれるならば、まだ補助率等も低くて補助事業等もで、きるけれども、それを押えておいて、そうして農民には三割か四割で恩恵的に施しをすれば、百姓は頭を下げるものなりと考えている政府の官僚があるとするならば非常な間違いであります。その点は今日の独立後の政治において、補助金はもつたいないから切つてしまうとか、あるいはこれは自分でやれというようなことが政府の一部においてかりに考えられておるとするならば、私は独立当初の予算において是正をしなければならぬと思う。従つてこの食糧増産が今の段階において、また今の政府の考えのように、米価がいくら高くなろうともつつぱなすのだという、そのときになつて来れば議論はかわりますけれども、今の段階において食糧増産に対する補助事業というものは、私は何ら農民に対する恩恵的な仕事ではないと思う。従つて土地改良その他に対する補助率等も今までのような金がないから、三割や四割で打切るというような考え方は、考え方が全然間違つておる。だから金がないから薄く延ばすというような考え方でなしに、あくまで今度は団体営を回復したように補助率等も占領下でいろいろ制約を受けておつたときとは違つて、ほんとうに農民がこれならばできるという農林省の自信のある補助率に回復すべきであると思いますが、農林大臣のお考えをひとつつておきたいと思います。
  130. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 何か農林省予算が放慢であるように言われるのは非常に残念でございますが、先ほども私が申し上げたんですが、農林省の基本方針としては、食糧増産と農民生活の安定という二大眼目があるのでありまして、その食糧増産ということならば、予算もごくつましく、あるいはまた系統的に立て得ると思うのであります。しかし農民生活の安定ということを考えますと、小さな予算であつても、それが潤滑油となつて非常に大きな効果を現わすものがよくあるのであります。またその補助事業にいたしましてもその通りでありまして、真に増反をし、あるいはまた開墾をするような場合を例にとつてみましても、少しの誘い水で大きく効果が上ることがあり、あるいはまた現在のように米価をある一程度に権力をもつて押えておるような場合には、特に農民の生産意欲を別の方から刺激して行く、そういう意味からいたしまして、アメリカの占領時代にはこれは一種の企業と見ておつたのでありまして、そこに大きなわれわれとの考えが違うところがあるのでありますが、これはやはり元のように復活いたしまして補助すべきものはし、また増産してもらうものはしてもらう、こういうようにしなければならぬと思います。
  131. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私はまだ促進法の最後案というものを何も知りませんが、出される以上は、今農林大臣の信念としてお考えのような、これだけしか金がないのだからという大蔵大臣の提案をされた予算を、農林省が最も使いいいように、食糧増産効果が上るような方向に、思い切つて、その法律でもつて自由に使えるような法律に私はつくるべきだと思う。そういうお考えがおありかどうか。
  132. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 まだ案は固まつておりませんが、そこまで思い切つてやれるかどうかは、私自身疑問に思つております。
  133. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私がなぜそのことを伺うかは、森さんばかり引合いに出して恐縮ですけれども、団体営をつくつたときの問題も、予算委員会農林省と大蔵省とに対してだんだん議論をして行くと、両方で水かけ論をしておる。食糧増産を必要だと思いながらも、りくつをいろいろこね合う間に、結局は必要なものが行えないということになつて来る。これは何も私は農林省の味方をして大蔵省をやつつける考えでおるのではありませんけれども、その辺は、財源が十分に必要なだけ提供されて、やり方の問題が議論されるならばいいけれども、半分しかない金を、ああこう、こまかくいじくりまわされたのでは、なおさら効果がなくなつてしまうと思う。従つてこの際、団体営の問題、あるいは道路や小用排水その他の補助率等についても、農林大臣はそこまではとおつしやるけれども、私は何もめちやくちやにやれと言うのではなくて、農林省が必要と考えられるやり方を国会が民主的にきめた以上は、大蔵省もあまりそういうことには口を出さないような考え方がおありかどうか。大蔵大臣はおいでではないが、農林大臣と同時に大蔵省のお考えを伺つておきたいと思います。
  134. 石原周夫

    石原(周)政府委員 公共事業費、食糧増産などの経費に対しまする補助率は、その当該事業費あるいは工事費の持つておりまする公共性と申しまするか、たとえば灌漑排水にいたしましても、大規模の灌漑排水の場合、あるいは小規模の場合、あるいは団体営というように、おのおのそれらの事業のもたらします利益が及ぶ幅、一品に申しますと公共性ということが言えるかと思うのであります。あるいは災害を受けたものの復旧であるとか、あるいはそうでない普通のものであるとかいうようなことで、おのおの補助率の間には一つのバランスがあるのでございまして、お話のように、できるだけ補助の率を厚くいたしますことが、当該事業を円滑に行いまする上によろしいことは申すまでもないのであります。国の金を出しまする際には、おのずから事柄の筋道を立てる必要がございますので、具体的な個々の場合につきまして、従来とも農林省と相談をいたしておるのでありますが、今後も引続き相談をいたして行くつもりでおりますが、大体におきまして、現在とつておりますところの補助率も、そういうような相談の結果、いろいろなバランスの問題を考えてでき上つておりますので、大体適当なところじやないかというように考えております。
  135. 早川崇

    ○早川委員 関連して。ちようど竹山さんが食糧自給のお話をなされましたので、廣川さんにお聞きしたいのですが、終戦以来二千億円に近い食糧増産費が国費として投下されたということは事実でありますが、私は農業の専門家じやない、それによつて何ら食糧増産の実が上つておらない。豊作の場合には八千万石、凶作の場合には六千万石、私の野党生活を通じてそれ以上の数字を実は耳にしていなかつた。むろん農地の災害その他いろいろな点で減産になつた面もございましようが、これほど非生産的な国費の支出というものはかなり問題ではないだろうか。その原因なりその他を綿密に御検討をなされたか、農林大臣の御答弁を願いたいと思います。
  136. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 しろうとからいつでもそういう質問を受けるのでありますが、これは農地がどのようにつぶれて行くかということも非常に大きな問題なのであります。工場なり住宅なり道路なり、こういう方面に非常につぶれて参ります。これをカバーしなくちやならぬということ、それからまた輸入食糧を見て行きましても、そう大して輸入がふえていないということも、ひとつ御検討願いたいと思います。そして毎年人口がふえて行く。これに食わせて行くことも考えなければならぬのであります。またこの統計の方が、非常にまだ経験が浅いものですから、実際に実態をつかんで行つているかどうかということを人に言われるのですが、われわれは信じおります。私は非常に増産できておると思つているのですが、実際に投資したものが、何時何十分から何時何十分までの間にこれだけ増産なつたということが、そのまま時間的にきちつと出ないのでありまして、二、三年かかつて初めて効率がはつきりできるところもありますし、干拓地のように肥料もやらずにその年からただちにできるところもあるのであります。これはこうして私がやつて積み重ねて行くことが、もう少したちましたならば、あなたの杞憂が多分杞憂であつたということになると、私は確信いたしております。
  137. 早川崇

    ○早川委員 しろうとの大臣にしろうとの私が言うのは、これはおかめ八目で、かえつて真理をついているかもしれません。今のお話の二千億円出したが、耕地が宅地になつたりいろいろしたというのであれば、その関係は将来も続く問題である。従つて先般竹山君のお話なされた食糧自給の農林省案は、五年、五年で四千万石になつております。これは結果において何にも輸入食糧の軽減にならないで、今までの繰返しになるのではないか。そういう論理になることを私はおそれるのでありますが、どうでございましようか。
  138. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 国営開墾等の例をとつてみれば一番早くわかるのですか、大体これも四年、五年、六年、十年という長い間、予算をちびちび入れているものですから、効果が上つていないのです。それがだんだん時間がたつに従つて効果が上つて来るのでありまして、今すぐどういう効果ということはなかなか骨であります。ただこの十箇年間に四千万石をふやす、増産をするというのも、やはりつぶれ地のことも考えてやつておるのであります。ずつと前からの計算で行くと、非常に多いつぶれ地であつたのでありますが、近ごろになりまして農林省が非常にやかましく言い出して来てから、大分つぶれ地は減つております。
  139. 早川崇

    ○早川委員 私はこの問題に関連して、行政管理庁で調べたことがある。それによると会計検査院に一番ひつかかる率が多い。少くとも四分の一はひつかかる。そういう国費のむだ使いをしているのが、ほかならぬあなたの農林省の中の農地局なんです。そういうことを私は考えるがゆえに、農林省予算はむだ使いが多くて、目的に反する、会計検査に合わないようなことに使つているのではないか。さらに私の調査によると、会計検査院にひつかかるのがすでに四分の一ある。さらにその四分の一を上まわる半分は、農林省のお立てになつ計画通りに行つておらない。ここに問題がある。農業は原始産業でもあり、インダストリーのように計画的にずつと行かないかもしれないが、あまりにずさんである。私はむしろ農林省責任をただしたい。二千億も金をかけて、いろいろな関係増産されなかつたのは、宅地とか災害とかいうようないろいろなことじやない。もつと本質的には、農林省考えているやり方自体に、不正があり、不合理があり、濫費があるということを私は申しておる。この点を委員会を通じて、明確に示さなければならないと思うので、農林大臣の御所見を私は聞きたいと思う。
  140. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 会計検査院から指摘されておることは事実です。これは昨日も決算委員会で問題になつたのでありますが、大体それを見ておりますと、災害復旧が多いようであります。災害復旧はどさくさのまぎわにやるものでありますから、どうしてもそうなるのではないかと思います。それからその他のことで不正をし、特に印旛沼等の工事のように不正をした者は全部処分をいたし、そうしてまた設計等についても再検討をいたしております。それからまた長良川の工事のごときは、局長まで実は責任をとつてもらうようにいたしておりまして内部においても十分検討いたしておりますが、なお今後とも注意をして行きたいと思います。
  141. 早川崇

    ○早川委員 今後もどんどん処分するということでけつこうです。私は幸いに農林大臣がおられますから、農業政策に対する問題で、基本的に農林大臣の御再考を求めたい問題がある。それは農業団体再編成のあの案なども見ましたが、これなんか正直に言うと、どうでもいいことです。これを騒ぎ立てるのが実はおかしいのです。私は根本においては、アメリカの自由企業の理念に立つた農業政策がわが国に押しつけられた。アメリカにおいては御承知のように、普通の市中銀行が何千万ドルも農家に貸すのです。ところが日本においては、そういう自由企業、資本主義経営の余地はほとんどない。にもかかわらず、協同組合のいろいろな施策にいたしましても、すべてアメリカ式というか、むしろ日本の弱化というか、そういう悪意の意図はないとしても、これをそのまま輸入したところに非常に農民の弱いところがある。私は協同組合にしても何にしても、過去の農業会なり何なりに返れとは言わないけれども、少くともデンマーク式の協同社会主義的な面によつて、国家の資金あるいは農業自体の強制管理という点まで徹底して、ほかの産業に代行して行くという基本的な農業組織の再編成をして、農民の経済的、政治的力を育成して行く以外に根本において道はない。占領治下の農業施策が根本的に日本の特殊性に合わないという確信を私は持つておるのですが、そういつた面において、農林省も寄り寄り深い検討を進めておられると聞くが、何らかの根本的なそういうお考えをお持ちになつておるか、この機会に私はお聞きしたいと思います。
  142. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 御指摘の通りに、かなり実態に合わない施策を押しつけられたことは事実であります。それでそれが今度の団体再編成等にも見られるのでありますが、やはりこれが日本化して行く一つの過程であると私は思います。単に農林省側から押しつけたものでなく、農林団体において長い間もんでおつた問題なのでありまして、アメリカから押しつけられたものが、だんだん日本的になりつつある一つの過程であろうと思います。それをわれわれが中に入りまして、なるべくうまく系純立てて行くというようにしたのであります。また先ほども竹山氏から言われたように、補助政策などということは、ほとんどアメリカにおいては見られないのでありますけれども、日本において、特に農村に対しては市中銀行が一切連絡がないのであります。そういうような点を考えて施策を立てて行かなければなりませんので、これをどうしても真の日本式の農業に行くように、だんだんと直して行かなければならぬと考えております。
  143. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 今早川君のような疑問を持つ人が世間に大分多いのです。私が前段で申したように、要するに終戦後、ことに占領下で思うようにならなかつたということと、補助政策というものが、そのときくの予算措置だけでやつて来ておるものだから継続性を持たないし、予算の都合で途中でいいかげんになつてしまうということが、経済効果を非常に薄くしておる最大の原因だと思います。この点に関して、廣川農林大臣法律的な根拠を持つて計画を立てて行こうとする今回の切りかえに対しては、私は一応敬意を表すると言つたのはその意味であります。従つてそうである以上は、これは単なる補助政策という観念でなしに、あくまで法律に基いて立てられた計画に対しては、財政当局も協力をして、今までの非とするところは非として、あくまでも効率を高くするように進まれんことを、私は農林、大蔵両当局にこの際率直に希望を申し上げて、この問題は打切ります。  次に私の伺つておきたいのは麦の問題であります。これはごく簡単に申し上げますが、土地改良その他の問題の裏づけをなすのには、何としても米の増産だけでは日本食糧政策はやつて行けない。どうしても耕地を二期作、三期作に利用しなければやつて行けない。その意味において世界に類例のない強度の土地改良の必要が起つているんだから、これは何もアメリカなどのまねをする必要はない。日本が最高の方法で行かなければならぬ。それの一番の焦点が私は麦だと思う。日本食糧政策の基本的な考え方として、今農林省は一体麦の増産奨励するのかしないのかということに、私は疑問を持つて来ておる。この前の肥料のときにも申したように、かつて終戦前には一粒も輸入しなかつた日本が、最近は米に匹敵するほど輸入をして、それでもつて食糧政策を維持して行こうとしておる。こういう考え方は非常にイージー・ゴーイングな考え方である。それではだめなので、あくまで麦の国内増産には、米以上の努力をするということでなければ、日本食糧政策は維持できつこないと思う。それには価格政策及びこれを裏づけするところの土地改良をやらなければ増産はできない。ところが今の考え方を見ておると、どんどん濠州のえさを輸入したり、世界中のえさを日本食糧として輸入して平気でおられる。そういうように今の食糧政策にはつきりした筋金が入つていないので、何かできるものでごまかして行こうとする結果になつて来るから、一方の食糧増産計画に対する力も弱くなつて来る。何でも買えるものならば買つて行けばいいじやないかという考え方があるとは思いませんけれども、その辺に対する基本的な考え方を、大臣及び食糧庁長官に伺つておきたい。
  144. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 日本食糧問題で米と麦はまつたく大事なものでありまして、麦を減産するのをただ見ておるという考えではなく、麦を増産させたいと考えておるわけであります。また特に土地改良等をやることは、裏作に麦を導入するためでありまして、また最初に菜種がふえたことを非常に指摘される方があるのでありますが、裏作を最初に導入するのには、やはり菜種から入れて行つた方が非常に手取り早いものでありますから、さようにしているわけでありまして、だんだん土地改良が進んでおちついて行くに従つて麦も増産されて行くと思うのであります。それはついては価格の点も問題になるのでありますが、価格の点は食糧庁長官から話してもらいます。
  145. 東畑四郎

    ○東畑政府委員 麦価につきしまては、昨年食糧管理法を提出いたしましたときに議会で御修正になりました、二十五、二十六年を基準とはたしまするパリティ価格を下らざるものという以外に、再生産確保を旨としてこれを立てておるということになつております。新しい麦価決定につきましてては、実はまだ申し上げる段階には参つおらないのであります。われわれは議会で御修正になりました法案の算定の趣旨にのつとりまして、目下検討を加えおりてます。同じ麦価につきましても、小麦と大麦、裸麦とは若干形態も違いますし、内容も違つて来るのであります。従来大麦、裸麦等につきまして、若干価格計算ににおいても実態に沿わない点もあります。本年はその点を再検討しまして、麦の増産に遺憾なきを期したい、かように考えております。
  146. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 その点に関して私とは根本的に考え方がおそらく違うと思いますが、要するに今の麦価については対米比率を六十に下げてしまつておることが増産のできない根本なんです。われわれが二重価格を言う一番大事なねらいは、麦だと私は思つている。麦は少くともかつての八十二まで対米比率を上げることによつて生産が維持できると思うし、消費者に対しては米の圧迫を少くするために、なるべく安くやらなければ食えやしないのですから、そういう意味が二重価格の一番焦点でると私残は思う。しかしこの点は今の政府と見解を異にしておりますから、これ以上の議論は申しませんが、その点をしつかりせねとだめだと私は思います。  まだたくさんありますが、全部省略して、一つだけ農林大臣にお考えおき願いたい問題であるし、そておきたいの、金融の問題であります。特に土地担保金融の問題であります。農業に関する長期資金については、農中、今度農林漁業金庫等もできましたか、これは共同のしかも長期金融であります。中小企業にやかましく言われるような農家に対する金融というものは今日は考えられていない。しかも農地改革の裏打ちとしての土地担保力を喪失した今日において、一番農村が困つておるのは農家の金融であります。これは協同組合の力ではいかんともすることができない。これは政府の責任だと私は思う。現内閣とは言いませんが、農地改革をやつた政府の責任でありますから、占領政策による土地改革の裏づけとして、何としても土地担保金融の制度をつくらなければ、農村は行き詰まつてしまう。それには今の自作農の資金では、とうてい満足が行きませんから、これに対してもつと大きな構想でお考えになつておられるかどうか、それをひとつつておきたいと思います。
  147. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これも占領中に大分交渉をしたことがあるのでありまして、当時はどうしても許されなかつたので、そのあとこれをどうするかということを検討いたしておりますが、御指摘のように市中銀行が追随しない農地でありますので、これはどうしても政府の責任土地担保の金融機関をつくらなければならぬと思つております。
  148. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 この問題は、ちようど通産大臣とお二人おそろいですから、省の関係は別のようですけれども、関連しておりますから、これ一つだけを両大臣に伺つておきたい。それは電源開発に対する補償の問題であります。今政府の取上げておる大問題である電源開発の問題は、私が申し上げるまでもなまく、従前は電気会社と農民であり、山村民である地元の関係で、政府はタッチをしなかつた。また戦争中に軍が戦争の必要のためにやつた場合は、めちやくちやなことをやつている。これは今から批判してみてもどうにもしようがない。しかし今日電源開発の法律のもとに、国家がその必要を痛感してやられる以上は、これは昔のように切捨てごめんであるはずはない、そのためにいろいろの審議会その他の制度もつくつておられるのであります。民主政治の今日において、過去のような例を繰返すのでは、政府が国策として取上げておる電源開発は、国民の恨みの的になつてしまう。従つてこの点については、今までの例なんというものは一擲して、ほんとうに民主的な電源開発即国家の総合開発計画として、今まで鳴りもの入りで騒いで来たそのことを、実際にその関係民に納得させるためには、あくまで従来の例のない完全な補償をして行かなければならぬと思う。ところが、世に伝えられるところによりますと、農林省の補償計画要綱なるものと、通産省の補償計画要綱なるものとは非常な隔たりがある。通産省は商売柄、金で片づけてしまおうという考え方であるようでありますが、電源開発に関係する山村の、民度の低いというか、政治的にも経済的にも恵まれない地帯の人たちに対して、簡単に金で片づけてしまおうという考え方は、私は非常にいけない考え方だと思う。その点について両省の見解を異にしておるということでありますが、よちうどいい機会でありますから、ひとつこの電源開発に対する補償に関して両大臣の御見解を伺つておきたい。
  149. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 電源開発についての補償問題は従来は非常に不十分なので、このごろ一定の基準をつくるべしという要望が高まつて参りまして、目下経済審議庁を中心として、これをいろいろ調整をしておるのであります。通産省の方もまだ事務的に案が出たくらいでありまして、実は私はまだその案を見ておりません。これは率直に申し上げます。農林大臣はごらんになつておるか知りませんが、おそらく事務的にまだ折衝中のところであろうと思われます。それから経審の方につきましても、どういう案が出そろつているか、それをどう調整をつけようかという報告を私は受けておりません。正直に申し上げますが、私も新聞で知つて、これは困つたものだな、何とか適当な調節点を見つけて、そうして電源開発を急速にやらなければならぬ。特に竹山さんの方の天龍のダムは、補償の事情等もありまして(笑声)できるだけのこの問題を急がなければな、らぬと実は考えている次第でありますが、まだ事務的にまとまつた案にまで到達いたしておりません。私も実は農林大臣ともそういうことは御協議申し上げたいと思つておりますが、まだ御協議申し上げるところまで進んでおりません。率直に申し上げておきます。
  150. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 農地補償については、農林省の方では、すでに駐留軍の補償の先例があるのでありまして、それを基礎として折衝いたしておる最中でございますが、理解ある小笠原君でありますから、多分農林省の言うことを聞いてくれると思つております。
  151. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 両大臣のことですから、私は十分に信頼をいたしております。ただ世間にそういうふうに伝えられている。ありそうなことでもあります。そこで私は一応希望的意見を伺つておのきたいのは、今お話ように、やかましいから規則をつくるということは、一応順序としてはけつこうであります。ところが、これをどういう方法でおつくりになるか、役所が独自的におきめになつてしまつて、きめたのだから、しようがない、これでいや応なしに行くのだということになりますと、そこにまた問題がある。従つてこれをきめるについても、役人だけの考え方は、それぞれの立場ではよいけれどもども、できるだけ民主的にこれをきめておかれるということが、将来問題を解決する上においていい。私らも責任を大いて分担して、お話のように促進に努力をしておるのですが、きまらぬものだから弱つておる。そこでこれについても、伝えられるところによると、電源開発調整審議会にこの要綱を出されておきめになるようにも伝えられておる。私はそれに反対をするのじやありません。しかし法制上から言いますと、電源開発の審議会はまつたく専門家だけの審議会であります。これと、これを中心とする国土総合開発審議会というものがある。これには両院の議員も入つておるし、民主的な審議会であります。私の感じから言いますと、そうしろというのじやありませんけれども、電源開発の審議会できめられたというのは、これは電源開発をやろうとする人たちのきめることであつて、被害者の側の立場の人は、実を言うと、構成上発言力はありません。そういうところでかつてにきめられた案でもつて、これは政府の方針だから、きまつた以上はこれで行くんだという行き方は、決して私はうまい方法ではないと思う。そこで私は、それで全部完全とは言えますまいけれども、国会等においても十分論議を尽されることが必要だと思いますが、少くとも国土総合開発審議会においては、この一部分をなす電源開発の問題は、当然審議をさせるのが本来だと私は考えますが、これに対してお考えを伺つておきます。
  152. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 電源開発調整審議会にかけるかどうかということも、今実は研究しておるのでありますが、お話になりました国土総合開発審議会にかけるか、これは御承知のように地方から計画が出て来ましたものを中央でやるごとになつておりまして、従つて少し急ぐ問題には間に合いかねるのじやないかというようなうらみがあるように存じます。しかし御意見の点はよくわかりますから、そういうことを織り込みまして、電源開発をやるにつけても、とにかく無理なことをやつては、とても地元の協力が得られるものではございませんので、この点は十分注意して善処いたしたいと思います。
  153. 竹山祐太郎

    ○竹山委員 私は今のお話の国土総合開発審議会というものは、地方から出て来た計画をやられるのだという考え方は、役人的な解釈であつて、いやしくも国がつくつた総合開発審議会というものは国土の総合開発を議するところなんですから、これをやるのが私は本来だと思う。そういうところで妙に手を抜かれて急いできめられると、現地の問題を一層ややこしいものにするおそれを持つておりますからい私も関連をしておるだけに、この点は御注文を申し上げて、私の質問は終ります。
  154. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 これにて農林省所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  155. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 次に一般会計予算経済審議庁所管及び通商産業所管特別会計予算通産省所管を一括して、昨日延期いたしました質疑を継続いたします。早川崇君
  156. 早川崇

    ○早川委員 ちようど農林大臣もおられるので、予算委員会の一般質問において不徹底であつた点を通じまして、若干御質問をしたいと思います。  私が農林大臣にお残り願つたのは、最初に日本産業構造の問題について、あなたに確信を持つていただきたいと思うので残つていただいたのであります。  私は最初にイギリスのオブザーヴアー紙に、リシンキング・オブ・アワ・フューチャー——われらの前途を再考察するというのが昨年の暮れに出まして、非常に日本の将来の経済再建を考える場合を有益なものでありますが、その線に沿つて質問いたしたいと思います。要点を簡単に申しますと、世界の経済は今後こういうことになつて行くということで、第一は人口の増加に食糧が及ばない。第二は原料の供給よりも製造工業の発達の方が早い。これが今後の世界経済の基本的な動向である、こういう観点に立つておるのであります。その線に沿つて現在イギリスは、今までの経済構造あるいは貿易政策を、根本的に考え直さなければならぬという観点から論じておるのであります。私はこれはわが日本の今後の経済構造のみならず、日本の大きい経済政策を考える場合に、どうしても閣僚諸公ははつきりした考えをもつて進んでいただかなければならないと思うのです。先ほど廣川さんは食糧増産ということは、日本の輸入を減らすために信念をもつてつておる。これはまことにけつこうであります。ところが残念ながらほかの閣僚、大蔵大臣、そういう人たちが物事の本質を理解しないために、わずかに要求額の半額程度にとどまつた。ここに問題がある。これは私をして言わしむれば、農業だけの問題ではありません。食糧の値段が、国内の米価よりもはるかに上まわつて、今後長期的に見ますと、人口の増加に追いつかないために、ますます騰貴の傾向に進んでおる。そうなりますと、これは食糧の輸入を減らすという問題よりも、もつと大きくは一切の日本の輸出産業、貿易産業の発展を規制するものである。それがコストになつて高くなつて行くのである。さらに私は通産大臣に申したいのだが、今までの通産行政というものは、輸出振興第一主義で、しかも最も悪いことは、繊維中心のそれである。ところが御承知のように、後進国であるインドは、知らぬ間に日本を追い越してしまつた従つて今後の日本の国策の根本は、この世界の人口の速度に及ばない食糧の値段の騰貴と、原料に反比例して製造工業が伸びて行く、従つて原料高という、この二つをにらんで根本策を立てなければならぬ段階に来ておる。私はそういう意味で、幸い通産大臣農林大臣がお残りであるから、こういつた日本経済構造に対してどう考えておられるか。私はまず通産大臣からお聞きして、さらに廣川さんには、食糧増産に対してもう一つの信念を、国際経済全体の視野から持つていただいて、根本的に日本経済構造を、それこそリシンキングしてもらいたいと思うのであります。     〔主査退席、淺利主査代理着席〕 こういつた問題に対して、イギリスは国民所得の三分の一が貿易に依存しておる。日本は幸いまだ一一%である。こういう絶好の機会において、まず経済政策の根本を考え直さなければならぬ。私はまず通産大臣から、そういつた問題についてお答えを願いたいと思うのであります。
  157. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 早川さんの御指摘になりました点はきわめて重大でございまして、実は私どもも日本の将来の経済をどう持つて行くか。また産業構造等をどう持つて行くかということは、日夜苦心をしておるのであります。それで今早川さんがお読みになつた本は、あなたの方の芦田君からいただきまして、読んで非常に示唆に富んでおる点をたくさん発見いたしました。それで先般も予算委員会で御答弁申し上げたのでありますが、私といたしましては、日本がこの少い面積のところに多大の人口を擁しておるという事実から、どういうふうに日本を持つて行くかということをまず考えなければならぬ。それにはどうしてもまず日本が一方では輸出を増加さす、一方では輸入を減少さす、こういうことと、一方では国の中でできるだけ国内産業を興して、国の中でまかなえるものを多くして行かなければならない、この三つが実は重点になるのではいか、こう私は申し上げたわけであります。しからば日本では輸出産業をどうするかと申しますと、現在日本では原料を入れまして、そうして加工してこれを出しておるものが一番多いので、今御指摘になりました繊維類は——生糸は例外でありますが、生糸を除きましては大体そう申してよろしいと思います。ところが綿などたくさん入れて輸出すると、ちようど早川さん御指摘になつたように、インドその他の後進国でだんだん繊維工業が興つて参りまして、だんだんと開拓する余地が少くなつて来ております。もつとも精巧なよい品物を出しますれば、これは相当余地があると思いますが、そういうような状況でございますから、私どもは日本は現在のところはまだ繊維工業は相当出て行くから、これはできるだけ助長はする。しかし結局はだんだん草化学工業というものにかえて行くという方策をとつて行かなければならぬだろう。それにはやはり日本の商品の比較的売れやすいと見られる東南アジアであるとか、中南米地方を目ざして、その方面で開拓して行くべきではあるまいか。それにはいわゆるコストの切下げ等が必要であるからというので、早川さんにたびたび申し上げたように、いわゆる基幹産業に対するあらゆるコスト切下げ方の努力をいたしておるのであります。まだ十分なことには行きませんが、すべてその方向に向つて進めておるのであります。  そこで輸出はだんだんと需要の多いものをよけいにつくつて出すようにしなければなりませんが、だんだん輸出面というものが狭くなつて来るのじやないか。輸出市場はずつと先に行くほど狭くなつて行くのじやないか。狭くなつて行くとすると、輸入したものへ加工して輸出するという建前でなく、できるだけ国内のものを使つて輸出するというようなこと、あるいは加工精度の高いものをつくつて行く。従つて同じ繊維品なら、できるだけ化学繊維のようなものをよけいつくることによつてつて行く。こういうことが比較的入れるものが少くて出すものが多くなつていいのではないか、かように考えておつて、特に繊維品のうちでは、従来の綿紡績偏重よりは、化学繊維の方に今後重きを置くべきではないか。但しこれは繊維についてだけ申すのです。あとは重化学工業方面につきましても、いろいろそういつた考え方から割出して行くべきではなかろうかと考えておる次第でございます。  それから輸入の方を何とかして減さなければならない。その最初に来るものがいわゆる食糧なんです。日本はとにかく年に三百五十万トンも食糧を入れなければならぬ。価格にしてもおそらく、ときによりましようが、相当大きな金額で、国際貸借のうちほとんど四割くらいが、今食糧になつておるのじやないか。この輸入をできるだけ少くしなければならぬ。それには国内で自給度を高めて行くということにならなければなるまい。従いまして、農林省に私も一月ほどおりましたが、いわゆる五箇年計画というものを強力に推進して行くということが、ぜひ必要である。同時に、日本は米だけでまかなつて行こうとすると無理である。どうしてもやはり麦というものも、もう少しよけいやらなければならない。それから占領政策で一時増産をとめられたのですが、かんしよ、ばれいしよというものを、もう少し増産する。これは割合に土地が貧弱でも栽培法によつてよけいとれますから、今の米麦中心ばかりでなく、そういうことによつてつて行く。同時に少し気長なようですが、日本人の食生活の改善方をはかつて、何でも飯を食うなら米だといつたような考え方をかえて行く方に持つて行かなければならぬ。そうして日本食糧を入れる限度を最小限にとどめたい。できるなら入れないでやつて行きたい。それで現在のところ足らぬのは二割かそこらのところでありますから、麦、かんしよまでまぜれば、それまで入れなくていいと思います。従つてそういつた点について、まず食糧の輸入を削減するためには、少し計画は大きいようでも、いわゆる増産五箇年計画はぜひ実行したい。それと並行して食生活の改善等をはかつて、輸入をだんだんと少くして参りたい、こういうふうに実は考えております。  それからまたもう一つの、今申し上げた国内産業の開発につきましては、これは日本は何としても努力しなければいかぬと思います。この点について今まで施策に足らぬところがあるように考えますので、やはり国内産業をもう少し発達さす。特にただいま申し上げました、これがよいときには輸出産業にかわつて行くものについては特別な配慮がいるのではないか。そういつたことを一つの大きな見通しとして、私としては今の政策を進めております。従つて私は、このごろ貿易々々と言われるものですから、輸出貿易の振興ということを最初に掲げておりますが、同時にただいま申しました輸入を減少さす。そうして国内産業を振興さす。国内の食糧その他まだ未開発の資源を非常に開発する、こういうことはぜひとも必要だと思います。けれども何といつても終局において大きい目で見てみると、足らぬところがたくさんある。それにはやはり国民が、イギリス人と同じような心持で、耐乏生活に耐える。耐乏生活というと語弊があるかもしれませんが、国民の覚悟ももう少しいるのではないか。言葉が少し過ぎるかもしれませんが、あまり待合や料理屋が繁昌しておるような、資本の効率化に遺憾な点があるような時代は、私はどうもほんとうじやない、こういうふうに実は考えておる次第でございます。
  158. 早川崇

    ○早川委員 大体小笠原さんの考え方、けつこうです。廣川さんお忙しいでしようが、どうぞひとつ「リシンキング・オプ・アワー・フユーチヤー」をお読みいただいて、これを読まれたならば、食糧増産計画のときに、もつとあなたはがんばれる。これは食糧だけの問題ではない。少しおそきに失しましたが、ぜひお読みになつていただきたい。食糧輸入というものは輸入だけの問題ではない。もつと大きい問題を含んでおるということを強く御確信を願いたい。われわれそういう点では協力を惜しまないのであります。  さてそれでは経済審議長庁官並びに通産大臣としての小笠原さんを中心に、以下少しこまかい面になろうと思いますが御質問したいと思います。  第一は貿易問題に関連するのですが、輸出第一主義という考え方一つのタブーになつてしまつた。これは非常な誤りだ、かように思います。なぜなれば輸出するということは、日本の物資が向うへ流れて行くということであり、これが妥当な輸出奨励であればけつこうでございますが、あまりにも輸出々々ということを考え過ぎたために、国民生活を充実するというための輸出ではなくて、輸出のための輸出ということで弊害を出して来ているのが、最近の実情ではなかろうか。その一例を申しますと、たとえば砂糖にいたしましても、台湾から砂糖をとるということは、キューバの砂糖から比べると非常に高い。ところが台湾へ雑貨を売りたいというような、輸出第一主義といいますか、あまりにも輸出にこだわり過ぎるために、せつかく安いキューバの砂糖を日本に入れないで、台湾砂糖ということで、それが同時に物価が値上りしてインフレーションの原因になつておる。さらにもう一つの実例は、この機会にこの委員会を通じて明らかにすべきであるが、あまりにも輸出を急いだために、インドネシア貿易において六千万ドルというものがこげついてしまつた。これも非常な通商局の不手ぎわであろうと思うが、こういつた面から少し話を進めて行きたいと思うので、まず輸出第一主義の行き過ぎと、インドネシアとのあの問題はどうなりましたか、そういつた点をお伺いしたいと思います。
  159. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 輸出第一主義は、現在のところ日本がどうしても——最近こそああいつた特需その他のもので、国際貸借が黒字になつておりますが、以前において日本が入り用なものを入れるのに、ドルが不足であつたというようなことがどうしても手伝いまして、従いまして輸出第一主義になりがちになつたのでありますが、これは相当考えるべき点であると思つております。  なおインドネシアの六千万ドルの問題は話合いがつきまして、数字は私今ちよつとここに記憶しておりませんが、きちんと向うからどれだけもどすどいう契約ができました。何月何日でぎたか、及びどういうふうな内容かということは、私ここで記憶いたしておりませんが、できております。通商局次長がおりますから、通商局次長からお話申し上げます。
  160. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 実は私もここへ資料を持つて参りませんので、ちよつと正確には申し上げかねるのでありますが、六千万ドル貸越しました分については五年間でございましたか、金利をとりまして、一定の償還計画従つて返してもらう、こういうことになつております。
  161. 早川崇

    ○早川委員 資料をお持ちにならないということは非常に困るので、それではだれが責任者でありますか。通商局長でも呼んでいただきたいと思う。というのは、さらにその協定においてスィツチ・コミッションを八%とりきめしておる、こういうことは、専門家に聞くと、ちよつと国際通商貿易にはないことだそうであります。そういう点において国民が案外知らないところで非常なエラーをしておる。さらに五箇年間の償還ということでありますが、引続きこの利子も八%のスイッチ・コミッションの式で行くのか、それではまたごげつくのではないか。私は五年間で返る見込みはないと思う。だからこういうものの問題はどうでございましようか。私はスイッチ・コミッションなんかもつてのほかだと思うのだが、通産大臣はどういうふうにお考えになりますか、その点もひとつお聞きいたしたいと思うのです。
  162. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 実は私よく承知いたしておりません。従つて次長から答弁をさせます。
  163. 早川崇

    ○早川委員 責任者を呼んでください。わからないと困る。
  164. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 通商局の次長であります、一応わかつておると思いますのでお答えいたします。スイッチ・コミッションの問題は、別段協定でとりきめておるという性格のものではございません。がしかし今御指摘のように、スイッチ貿易につきましては、八%のコミッションを一応支払うという了解で参つておりますが、大部分は現在貸越しになつております六千万ドルを処理する手段ではございませんで、現行貿易計画でありまする輸出六千万ドル、それから輸入四千万ドル、その差額の二千万ドルのうち、約五百万ドルは先方が米ドル・キヤツシユをもつて一応支払う、あとの千五百万ドルは、要するにドル圏物資をインドネシアのアカウントを通して買う、その千五百万ドルの部分につきまして、何といいますか、為替のコンヴアートの手数料として八%を一応もらいたい、こういうことでそういう了解になつておるのであります。この八%が高い安いという議論もあるのでありますが、取引の実態から見まして現在一律に八%にきめていること号が、幸われわれとしては問題があるのではないかという感じであります。商品によりましては、逆に一割なり、あるいはそれ以上になつても問題はない商品もありますし、あるいはまた五、六%方レートが低い方が望ましい商品もありまして、商品によつてややレートの差があるべきかと考えますが、今御指摘のように現在の貿易計画の輸出入のアンバランスの一部の差額処理の方法として、そういうスイツチ・トレードのレートとして八%を一応支払うという了解になつて進んでおるわけであります。
  165. 早川崇

    ○早川委員 債務の一割を免除したということはほんとうですか、そういうことを聞いておりますが。
  166. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 そういうことはございません。
  167. 早川崇

    ○早川委員 スイッチ・コミツシヨンを八%日本が提供するということは、またしても日本が焦げつかすことを前提とした措置でありまして、もう少し独立国になつたのだから、輸出第一主義という幻影をこの際捨てて、もつと根本的な考え方をもつて臨まれなければ、今後においても大きな話題を残すと思う。この問題の処理は通産大臣か、外務大臣か知らないですが、責任問題になろうというような問題でありますから、もし大臣が御存じないならば、よくお調べになつていただいて、納得する御回答をあらためて得たいと思うのでございます。  次にちようど貿易問題になりましたから、ポンド対策において、通産省、あるいは元の安本、外務省ひつくるめての話でありますが、これは非常な失敗であつたと思うのです。失敗という意味は、何らの定見も持たないで日英の支払協定を結んだ、これまた日本が何でもかんでも輸出をしたいという要望によるもので、最近はイギリスの輸入制限がありまして、今度はポンドが不足になり、あわてふためいてオープン・アカウント勘定のポンド払いも見込むという醜態を、あえてしているのでありますが、このポンド対策に対する考え方なり、確固たる見通しなりをお伺いいたしたいと思います。
  168. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ポンドの貿易関係につきましては、お話通りのような事情がありまして、私どもはなはだ遺憾といたしております。昨年来ポンドが非常にたまりまして、ポンドが多量にありましたために、できるだけポンド地域からの輸入に努めました結果といたしまして、たしか二億三千万ポンドほど日方の方へ輸入超過の形になつたかと存じます。それだけポンドが減少いたしたと思います。従いまして一月の末にはかつて多量にありましたポンドが七千万ポンドというぐあいに減少いたしております。そういうようなことは、私どもも前からの政策でございますけれども、もう少しポンド地域に対するきちんとした考え方を持つて臨まなければいかぬというので、このごろこれに対する対策について立案をしているというと、少し遅れるようでありますが、とりあえずの対策を立てまして、早川さん御承知のように昨年の暮れ、日英支払協定の方は一箇年延期してございますが、本年の一月、向うから人が来まして、日本の方の貿易の改善方について相談をいたしたのであります。最近向うの方も本国へ帰る人などがありまして、それらがいろいろ表を持つてつて本国とも相談をいたしております。まだはつきりした結論は出ませんが、今のところ一億六、七千万ポンドのところは、大体日本の方の輸出は認められるであろうというふうに考えられているのでありますが、何しろ率直に申し上げまして、日本経済の底が浅いのには、実はちよつと驚いたのです。私どももこれは以前から考えているところでありましたけれども、これではいかぬと私どもも考えております。従いまして今ポンドに対しましては十分対策にあやまちなきよう、その他今後またポンドがふえたからといつて、またポンドが入つたからといつて、すぐに対策をかえるようなことをやりたくない、かように考えておる次第であります。
  169. 早川崇

    ○早川委員 今ポンドが七千万ポンドになつたのを非常に悲観しておられますが、私の記憶するところでは、日英支払い協定その他のときには、ポンドは最低三千万ポンド、大体五千万ポンドあればよろしいというような基礎に立つて、イギリス側もそれを妥当と認めての交渉だつたと私は記憶しております。ただいま通産大臣は七千万ポンドになつたといつて大あわてでありますが、私はどういう根拠で七千万ポンドになると非常に少いのか、その点疑側に思うので、最初の最低三千万ポンド、大体常識的に五千万ポンドあればよろしいという過去の見解との大きい長い違いを感ずるのですが、その点はりえ方をおかえになつたのか。別に責りる意味ではありません、少し奇異に思じますのでお尋ねいたします。
  170. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 以前のことは実は私よく知らないのでございますが、私が入りましてからはどうしても五千万ポンドがいろいろな操作にいる。五千万ポンドあることが必要だ。それは若干減つた場合も行けましようか、平常五千万ポンドということを言われておつたのであります。それで七千万ポンドになつたからといつて、別に周章狼狽しておるわけではございませんが、しかしこういう勢いで行きますると、せつかくドルの方面から入れようとしました、ドルから入つてつたものをポンど地域にかえて、今いろいろ努力しておりますその努力が効果がなくなつて来る。また今度はドルの方へもどつて行かなければならぬということになつてはたいへんであるから、その点で実は早くもう少しポンドをふやしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  171. 早川崇

    ○早川委員 占領治下におりましたので、通商局が非常なウイーク・ポイントであります。小笠原通産大臣はこのポンド対策一つをもつてしても、インドネシア貿易をもつてしても、われわれから見ますと無方針で、周章狼狽しておつて策なし。従つて今度はポンドの隷属下に置かれるような大騒ぎをしておるということにおいて、通産相として深く反省すべき点があるのではなかろうか。同時に自動承認制をやつてつたのを、今度はまたあわてて制限措置をする、こういう為替管理方式というものを、官僚はよくやりたがるのでありますけれども、これは日米通商協定なんかの理念からいいますと、むしろ違反するものではないか。そういう為替管理的な輸入管理、さらに輸出までいろいろ官僚がとやかく言いますけれども、どうせ管理しておつても、実際輸入して来るものははたして日本の再建に役立つものであるかどうか。特に石炭なんかは私はどんどん入れればいいと思う。ところが日本の石炭業者の政治力が強いのでしよう、こういうものも国内産業圧迫という観点で非常に躊躇せられておる。縦坑開発けつこう。しかし安い外炭を買い入れてばかりいるということは、業者の単価引下げの刺激になることは明らかなのです。こういう点において、私は管理方式というものに対して非常な疑問を持つので、特に自動承認制の問題に至つて特にこの感を深くするのでありますが、これは日米通商協定その他と矛盾する考え方であり、根本的に考え直さなければならぬと私は思うが、どうでございまなようか、ひとつお聞きいたしたいと思います。
  172. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私も大体さように考えて今いろいろやつておるのでございますが、今までのいきさつについて松尾次長からでも御説明申し上げると、あるいはよくおわかりが願えるのではないかと存じます。
  173. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 今の輸入管理方式の一つとしまして、かなりの商品につきまして自動承認制をとつておるわけでありますが、実はこれは今お話しありましたが、ぎこちない各個別の商品別の割当その他の弊害を避けようということで、いわば為替管理ということをある程度やらなければならないとした場合に、最も円滑な自由な方法だとして自動承認制をとつておるわけであります。今御指摘の点少し了解しかねる点島つたのでありますが、そもそも為替管理というものは一定の外貨を最も能率的、計画的に使おうということから発足しておるわけでありまして、外貨面の不足がない限りは完全な輸入の自由ができるわけでありますが、現在のところアメリカとか、あるいはカナダという国を除きましては、どの国でも輸入の為替管理ということはいたしておるわけであります。従つて日本も当然ドルといい、あるいはポンドといい、あるいはオープン・アカントの面をとつてみましても、外貨上為替管理はどうしてもいたさなければならぬと思われますし、その場合に今の自動承認制どいうものは、われわれといたしましてはやはり個別の商品別のやり方よりは円滑なやり方であつて、その意味においてはやはり自由通商への及ばずながらの一つの努力ではなかろうかというふうに考えて今やつておるわけであります。
  174. 早川崇

    ○早川委員 ポンドが不足に陥つたので、大あわてにあわてて自動承認制と停止した。また再開いたしたが、前よりは縮小して再開したという無方針でやられるならば、これはなきに等しいということを私は言つておるので、全面的に為替管理を廃止するということを私は必ずしも要求していません。但しただいま次長が言われたように、外貨の有効な活用という面を主張されましたが、これも一般質問でも私は論じたのでありますが、ただいま申し上げましたこの外貨の活用という面においては、これまた吉田内閣の一枚看板でありながら、私は非常に疑問を持つておるのです。という意味は、御承知のように七億ドル程度の外貨が遊んでおる。さらにその上に外貨導入をはかりたい、こういう要望を帯びて池田さんは渡米されるそうでありますが、こういう矛盾したことを政府がとつておられる。これは前の外為委員長の木内君がエコノミストで論理的に論じられたのを、私は正月に読んだのでありますが、日本は外貨の活用というものを怠つて、外貨を必要としないような状態に置きながら、外資導入ということを言つておるのはおかしいじやないかということを論じておるが、私はまつたく同感なんです。さらに最近はこういう矛盾した政策に拍車をかけるようなことをなさつておられる。先般予算委員会において、わが党の北村前政策委員長が外資導入、外資導入と言つておりながら、外国の貿易業者にまで外貨を貸しておるじやないか、こういう矛盾を突かれております。そういう面において外貨の有効活用を次長は言われましたが、一体どういうふうに有効に使われるのか、外資が入らぬような使い方をやり、経済政策をやつてどうして外資が入るのか、私はこの前の予算委員会で時間がありませんので、通産大臣から明確な御答弁を聞かないままに終つたのでありますが、事が関連いたしましたので、この点をはつきひとつ御方針を示していただきたいと思います。
  175. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 外資は現在のところドルの方は六億二、三千万ドルあるかと思いますが、ときによつてかわります。そのうち三億ドルくらいは平常どうしても必要なんでございまして、三億ドルくらいは使いようによつて利用し得るものであります。従つてこれの利用方については、外貨の日本に入れまするものの必要性から見て、この割当をやることにいたしており、そしてまたオープン・アカウント地域に対しても、向うからの輸入に対する分について外貨の割当をしてやるというような措置はとつております。但し利用の点について遺憾な点があるという御指摘の点は、私ももう少し利用の幅があるのじやないかと、実は率直に考えておるわけであります。但しそれが外資導入の妨げになるということは、私にはまだちよつと理解いたしかねるのでございます。また先ごろ予算総会で北村さんが言われた事柄は、実情を私はまだ知りません、どういう事柄かということを今調べてもらつておるのですが、もし仰せのようなことがあれば、はなはだ遺憾に考えております。外貨のことと外資のこととちよつと違うのでございますが、外貨は現在のところといたしましては、一時ちよつとよけいありますけれども、これがずつとそのまま持つて行けるものでもございません。従つてできるだけ外資の導入に努めたい。また外資の導入をいたしますのには、国の中で外資を導入し得るような処置がいろいろとられておることが必要である、かように実は考えておる次第でございます。過日私が予算総会で、両方合せまして大体二百億とちよつと今まで入つておるということを申し上げましたが、なお最近向うの輸出入銀行等から、火力発電に対する分は、いわば一種の外資と申しますか、投資になつて入るようなことも相当具体的に進んでおりまして、そういう類も現在懸案になつておるのが二百件以上ございますから、別にこの点が外資導入の妨げになつておるとは実は存じておらないのでございます。しかしなお妨げがあるものがありますれば、これは趣旨と非常に違うわけですから、これを取除くように努力いたします。
  176. 早川崇

    ○早川委員 池田君が渡米する、そして特に電源開発用に三億ドルくらい要求したい、こういう事実はございますか。もうすでに御相談を受けて、電源開発に三億ドル程度を入れたい、そういうふうに新聞に出ているのですが……。
  177. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 最初お話をしましたのが三億一千何百万ドルかでございました。ところが向うで、この間ちよつと早川さんに申し上げたかと思いますが、今まで二十四箇国に対して十五億ドルしか出していないのだ、日本でそういうことを言われてもというお話がございましたので、さらにこのごろ順位をつけまして、たとえば天龍とか、そういつたような開発を急ぐものからやりまして、一億数千万ドルのものが出て参りました。この方は急ぐがと言つておりますが、しかしまだ池田氏が行かれるかどうかも、実ははつきり承知いたしておりません。この間私が率直に申し上げておいたのですが、電源開発はちよつと軌道に乗つておるのですが、しかし金額の点は軌道に乗つておりません。こちらの考え方と向うの考え方と非常に差があるので——これは見込みですから違うかもしれませんが、初年度三億五千万ドルというところが、実は向うが考えておる点ではないかと思つているのですが、これは向うでも相当具体的な調査が進んでおりますから——私は池田君が行かれるかどうかも承知いたしておりません、そんな話も聞いておりますけれども、もし池田君が行かれるとすれば、もう少し正確な打合せをしまして、頼むようになるかどうかわかりませんが、かりに頼むようになりますれば、正確な資料に基いて、向うにさらにあらためて説明してもらおうかと考えております。
  178. 早川崇

    ○早川委員 経済審議庁政府委員でけつこうですが、大体日本の総合五箇年計画というものを前にお立てになつたが、一体日本にどの程度の外貨——外資導入なり、あるいは融資でも同じこことだが、これが年々必要なのか。さらにその最高の限度はどの程度なのかといつた計画があつたら聞かせていただきたい。ただ八億ドルいる、あるいは十億ドルいるということがガーナーに話して笑いものになつた経緯にかんがみて、日本経済の総合計画からいつて、どの程度の外資導入なり、あるいは外銀からの融資が必要なのか。私は私自身で考え方を持つておりますが、経済審議庁としては、外資問題に対してどういう考えを持つておられるのか、この機会にお聞きしたい。ただ外資がほしいく、たくさんあればあるほどよろしいという考え方は、かえつて外資が入らない根本原因になつておりますから、その点をひとつお聞かせ願えば幸いかと思います。
  179. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 ただいまの御質問非常にむずかしい点でございます。先般世界銀行に各省から要求いたしましたものが、総額八億ドルないし九億ドルに達しているわけでありますが、これは今後の日本の国内における資金の調達能力に比べて、これだけほしいというものではございませんで、各省が計画しております重要な事業につきまして、各省それぞれの立場からの計画に対する所要資金を基礎にした要求でございます。従いまして経済審議庁でいろいろこれを個々の事業ということではなく、今後の日本産業日本経済の発展のために、あるいは電源開発あるいは農業開発、あるいは国鉄の電化の問題、あるいは石炭、鉄鋼の価格引下げのための合理化所要資金というようなものを推計いたしまして、それに対する国内の資金調達能力、すなわちこの問題は国民所得がどの程度増して行くか、国民所得のうちからどの程度の資金が、投資の方に向け得るかという算定にかかるわけでございます。従つてまた問題は、今後の生産あるいは輸出その他の経済循環が、どの程度のテンポで拡大して参るか、こういうことが前提として判定されなければならぬのでありますが、たとえば五年後の日本経済の循環がどの程度の姿になるか、国際収支がどうなるかということにつきましては、なかなか判定がむずかしいわけであります。従いまして現在生産が大体一四〇でありますが、それが二割五分増して一一七〇程度になり、輸出の規模が現在の単価の基準におきまして約十五億ドル程度の規模になるという一応の想定をいたしました場合に、これは計算のしようでいろいろ出るわけでありますが、一応三億ドル程度の資金を必要とするのではないかという結論に達した結果、日本といたしましては電源開発を第一順位に持つて参りたい。たまたま電源開発の所要資金その他からはじきますと、三億ドル程度の所要資金を外資に依存することが適当である、こういう結論になりましたので、経済審議庁長官が先ほど申し上げました三億一千万ドルの数字が出たわけでございます。
  180. 早川崇

    ○早川委員 そうなれば、外資導入もけつこうだが、外銀が非常に低金利で大体二億ドル程度貸そうという申入れがありました。こういうものをお借りになつて、外貨活用の面において操作して行くというお考えはございませんか。
  181. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 外銀の二億ドルという話はちよつと私聞いておりませんが、こちらで外資を導入いたします事業の予定が、電源開発にしろ、農業開発にしろ、特に低金利を、必要といたしますし、できますれば、開発銀行から借りることが一番適当じやないか、かように考えております。
  182. 早川崇

    ○早川委員 この問題は、こまかくなりますから触れませんが、私は貿易政策とからんで、ひとつ政府に再考を促したいのは、今までの常識では、今は特需があるが、これはいつなくなるかわからない、そこで外貨を七億ドルなり八億ドルなり黙つてためておくという一つの誤つたドグマがあるのです。これは非常な誤つたドグマであつて、私をして言わしむれば、世界の景気の見通しから出発して、この問題を考えなければならない。どういうことかといいますと、西欧諸国は昭和三十一年を目標に若干のコストの切下げをいたしましたが、昭和三十一年の再軍備完成を目途に、それぞれ戦力をどんどん増強して行つている日本もこれに伴つて、それに照応した応分の民主主義防衛の防衛軍をつくらなければならない。これははつきりしている。そこで問題は、そういう再軍備の完成時期とにらんで、そこに好景気が不況に転ずる見通しを大体経済専門家は持つております。従つて、そういう場合に備えて、この際ここ三、四年においてそういう事態になつても、なおかつ現在の貿易をある程度維持し得るような態勢を今からつくらなければならない。従つて、それにはどうするかということになりますと、この際外貨が減つても、それを全部見合うわけにいかないが、輸入のわくを大幅に広める。そのかわり三億ドルなら三億ドルに見合う一千億円に近いものを金融疏通をはかつて、片一方で輸入をある程度緩和いたしまして、インフレになることを防いで行く、こういうことによつて、三十一年以後の状態に備えて、それまでに基幹産業のコストの切下げなり、あるいは食糧自給もそうでありますが、そういうことをする踏切りが必要な段階ではなかろうか。ところが占領治下ドツジ・ラインというものを押しつけられ過ぎたために、そういう踏切りがつかない。同時に、日本の金融にしても、資材にしても、外貨にしても、びくびくもので、まあまあという安易な消極策に終始しているというところに、日本のここ数年後の見通しに対する非常な誤りを犯す原因があるのではないか。というわけは、終戦後私はずつと野党におりましたが、内閣のやつていることを見ますと、その当時において、私は今日あるを予見しておつた。ドイツなりあるいはイギリスへ行きまして、特にドイツなんかは、消費物資を切り詰めて資金統制もやり、コストも切り下げて、計画経済によつて輸出の態勢を備えておつた日本アメリカの占領治下の援助によつて、そういう備えをちつともしておらない。政府は自由放任の経済政策である。資金統制はない。いろいろな消費物資、バラックなり、ピルなり、あるいはキャバレーなり、そういうものはドイツよりもはるかに殷賑をきわめた。ところがところが、資本の蓄積とかいう面に資金がまわらないで、消費一本に行つたのが、今日ドイツの硫安が台湾まで攻めて来た原因だ。経済政策なり、金融政策、外貨政策というものは、一年なり半年では大きい差がつきません。しかし経済政策の大きい流れというものはドイツと日本とは違つている。その結果、五年後にこういう結果になつて来た。そのときにあわてているわけです。第二次世界大戦において、日本が戦争に敗れたと同じ意味において、経済戦争においてわれ敗れたりとの感が私は深い。台湾までドイツの硫安に荒されたというこの状態をながめたときに、私は国民の一人として日本はどうなるのかと思う。さらに年々百万から百二十万の人口がふえて行つている。ところが政府はこういつたものに対する綜合政策を持たない。特需は長く続かぬから、外貨はただ遊ばせておく、特需がなくなるおそれがあるから、それと見合つた金融の疏通もやらない、こうなりますと、昭和三十一年をピークにするそれ以後の不況によつて、それこそ今よりももつとひどい貿易不振、産業のパニツクが来ることは、私は政府に列したことはございませんけれども、過去のにがい経験をもつて、批判者の立場でそのことを警告しておつた。今日このささやかな予算分科会において、こういう警告を発しなければならないことを遺憾に思うが、こういう事態の来ることは、少しでも経済の勉強をしている者はわかるのであります。  従つて、私の申し上げたいのは、特需がなくなることをおそれて外貨だけ持つているのでなくて、もつと根本的に、特需が減つてそういう不況の来るまでは、それの備えをするために、思い切つて外貨が減つてよろしい。そして減つて来ても、その事態に備える計画経済によるコストの切下げの努力なり、産業開発の努力を真剣にすれば、そのときこそ外資が入つて来る。このジレンマと大胆に対決しようとされる政府の施策がない。私はこの点において非常に遺憾に思うのだが、今までのそういつた外資導入なり、外貨問題、貿易問題、さらに国内の資金の疏通の問題、景気の見通しの問題、こういう広汎な問題に対してこそ、経済審議庁長官は大きい立場でにらんでおらなければならない。私はこの機会に小笠原さんなり、あるいは政府委員の補足的なこの問題に対する御回答を得たいと思うのであります。
  183. 平井富三郎

    ○平井(富)政府委員 この点は、先般の経済審議庁長官経済演説の中においても、特に申し上げてあるのでございまして、特需収入がここ数年間継続する間に、従来蓄積した資金その他を活用いたしまして、日本産業規模を強化拡充して参るという線に沿つて、来年度の予算問題なり、あるいは今後の資金対策等に対処して参りたいというように考えているわけであります。本年度の財政資金からの産業投資の額も、約三千億円を超えているような状況であります。しこうして過去の蓄積資金及び国債等を合せまして約一千億円程度——これも一種の過去の蓄積資金を使つているわけであります、あるいは手持ちの国債を払うとか、あるいは繰越額を減して産業資金にまわして行くとかいうことて国債を合せて約一千億円程度の資金を放出しているわけであります。そういうふうな方法によりまして、できるだけ重要産業の合理化、コストの低下ということをねらつて行くことが、当面の対策であるというように考えている次第であります。
  184. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 早川さんの御意見まことにごもつともな点があつて、私は傾聴いたしました。但し私どもとしては、当面なすべきことをとにかくやらなければならぬ。しかし当面やるにも若干の見通しを要しますから、たとえて申しますと、鉄鋼なら鉄鋼をどれだけ下げるかということで、鉄鋼の合理化三箇年計画が行われており、これが一体金をどれくらいかけたかと申しますと、これまでに六百二十億円かけております。さらに本年入れますので、約九百億円をちよつと越すかと思いますが、それで行きますと、まずほかの事情に一切かかわりなしとして、二十八年度の末においては、銑鉄が四%くらい、それから鋼板その他一五%くらいから、鋼管になりますと三〇%くらい値下りして参ることになつております。しかしもとになるのは石炭でありますから、石炭の値下げをやろう、石炭は御承知のように、五箇年間で四百九十億円の縦坑資金を投じまして、縦坑開発をやつておる。電源は本年だけでも千五百数十億円の開発資金を出してやつておる。合計しまして財政資金その他による分が、さつき平井次長も申した通り、三千億円出るのでありまして、そういうように先のめどをつけていろいろやつております。石炭もだんだんと炭価引下げの目的を達しておるように私は信じております。さつき早川さんからおしかりのようなお言葉があつたのでありますが、もつと外炭を入れたらいいじやないか、これは一つ計画がありまして、一挙にたとえばここに百万トン入れるということをいたしますと、これは需要者の関係もありますが、同時にすぐ船賃等が上つて来るのであります。そういう問題もありますので、本年度は大体三百万トン以上を入れる計画を立てております。従いまして需給関係から見ますと、国内で約五千万トン出ましよう。そうすると、私はこの間から申しておる通り、年内にはどうしても一割か一割五分は必ず下る、これだけのことは私は確信しております。それで船腹その他のことも勘案いたしまして、本年は昨年より増加しまして、三百万トン、あるいは三百二、三十万トンになるかもしれませんが、これだけ入れる計画を本年度としては持つております。そういうようなぐあいで、いろいろ合理化による値下げ方を実ははかつております。電源は百二十万キロワツト二十八年度はふえましよう。そういたしますと、電力の供給によりまして、またものがかわつて参ります。そういうようなことで一応やつておりますが、今早川さんが言われたことで、外貨利用について、もう少しくふうすべきではないかということにつきましては、実は早川さんが言われたように、従来あまりそういう外貨は持つたことがないのです。でありますから、多少利用に遺憾の点があつたのではないかと思います。しかし現在のような状況が出て参りますれば、私はこの間申した通り、二十八年度は国際貸借から見て、今のところは若干黒字であります。それから二十九年も今の模様で行きますれば黒字になると存じております。従いまして黒字になるならば、この外貨の利用がなお一、二年できるわけですから、この間だけでもも少し国策的にこれを利用するごとに努めるように、大蔵大臣にも話してみたいと存じております。
  185. 早川崇

    ○早川委員 私の意見に賛成ばかりされまして恐縮でありますが、この問題について締めくくりをいたしますと、入超を恐れるなということです。出超ということは日本のものが向うへ流れることなんです。これはインフレーシヨンの大きい原因にもなるわけであります。七億ドルも外貨があるのであるから、入超になることを恐れないで、必要物資はどんどん入れるとともに、生活必需物資でもいいから入れる。ことに安いものが入れば、日本のインフレの要因をそれだけ押えることになる。それと並行して輸入をふやして、それをインフレ減殺の力にして、少し金融を緩和しろ、特に日本の再建に必要なもの——これはコストの切下げだけとは申しません。電源開発もたいへんお進みのようだけれども、ここに平井君なり佐々木君なりおりますが、われわれが四、五年前にお聞きしたようには進んでおらないのです。計画から見ると非常に縮小したものである。それは一にかかつて金融なり資金の面で縮小されたためと私は思う。先ほどの食糧増産またしかり。従つて必要なものをどんどん入れるとともに、インフレを殺す輸入の力を利用して金融面における積極政策をとれ、それによつて三一年以後の不況に備えて、日本の国内生産力を確立しろ。私は石橋さんの言うように、インフレが起つても何でもやれということを申しておりません。石橋さんは外貨問題に対してはほとんど無関心であつて、ただインフレーションじやない、積極政策だと言われるだけでございますから、私はにわかに石橋さんの積極政策を支持するものではないが、しかしわれわれの言う計画経済によつて、必要な国内産業にはどんどん出して行く。インフレになつちやいかぬから、このせつかくの手持ち外貨七億ドルという裏づけをインフレ減殺の力にしておやりさないということを、この問題の締めくくりとして申し上げる。これはわれわれが政府をとつておればむろんやる政策でありますが、現政府においてもよほど真剣にお取組みになつて、要は日本経済再建のことを願うものでありますから、この機会に小笠原さんの御決心を私は要請いたしたい、かように思うものであります。  まだ経済政策全般についてずつとやりたいのでありますが、私は緊急な要務がありますから、二、三点具体的な問題だけをお聞きして質問を終りたいと思います。一つは、小笠原さんにお聞きしたいんだが、目印の合弁会社が中止になつた。本日の新聞によると、ゴアの方が非常に有望になつて来ておる、こういう記事を見たのですが、鉄鉱石の原料問題等はどういうように進んでおりますか、詳しくおわかりでしたらお聞きいたしたい。
  186. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 日印合弁製鉄会社の方はお聞き及びの通り、高碕氏が向うへ行かれて相当話を進め、また開発銀行等もこの計画に対して五千万ドルほど金を出してもいいというところまで話が進んでおつたのであります。ところが今年になりまして、たしか二月四日かと思いますが、突然向うの方から、もうこれ以上話を進める意向がないということを言つて参りました。どうもその事情がわかりかねておりますので、先般高碕氏がネール首相にあてて、どういうわけでそうなつたか、とにかく向うの次官などが承認して仮調印したものですから、どうしてそうなつたかということを聞き合しておるようでありますが、インドの方から別に何にも言つて参りません。またアメリカ側の方も開発について何にも言つておりません。ただ一部の人の申すには、このごろ一部には親英的な思想がみなぎつておる。これは自分たちが独立してやつてみて、やはりイギリス人が資本的にやつてくれておることに対する感じと見えて、親英的な空気が今までになく強いそうです。従つてそういうようなことが一つの原因になつておるのではあるまいか、そういうことを最近インドから帰つて来た人から聞き及んだのであります。  ゴアの方は製鉄三社が向うに行くことになつておりまして、すでに五億円か金を出しておるわけです。さらにこれをもう少し日本の方へ持つて来るために軌道に乗せよう、大体本年数十万トン持つて来たいということで、話を進めに行きました。向うの方へ積み出すところの設備その他に対して、相当金を必要としますそうで、これはすでに積出しにかかつておりますが、一ぺん積み出してしまうと割合に費用はかからぬということでございまして、そういう設備をするためにどういうことをやるかということで、近く向うへ人が行くことになつております。これは一応の契約は向うのものといたしておるのでありまして、鉱石も若干来ておりますが、まだ試験的の程度でございます。ゴアというのは小さいところだけれども、全部にわたつて鉄鉱石だといつてもいいほどで、品質は六十何パーセントというすぐれた品質のものだから、これは非常に有望だということを申しておりました。いずれ近く参りますから、もう少し具体化するかと考えております。
  187. 早川崇

    ○早川委員 最後に通産省関係予算全般についてお聞きしたのですが、通産省当初要求の技術組合補助、それから航空機工業の試験設置、これらの要求が全額削除されております。こういう問題に対してどういうお考えか経緯をお聞かせ願いたい。
  188. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 そのうち航空機の問題は私よく承知しております、これは時期尚早という考え方でありまして、それならもう一年待とうかということで実はおるわけであります。一年待つことは私どもにも相当犠牲だと思いましたけれども、今の予算金額との関係もありまして、やむを得ず承知いたしました。その他のことは事務的に折衝いたしましたけれども、どうも向うで聞いてくれないので、ほかの方でいろいろ聞いてもらわなければならぬものもあつたので、遺憾ながらその予算措置はとれなかつたことはまことに遺憾に思つております。
  189. 淺利三朗

    ○淺利主査代理 熊本虎三君。
  190. 熊本虎三

    熊本委員 ただいま大所高所から、日本産業政策やあるいは外資、外貨の問題についてお話がございましたが、私は国内問題特に中小企業対策について御質問を申し上げたいと思うのであります。これもおそらくはいろいろの委員会において質問されたことと存じます。ただ通産大臣は現下の日本産業構造の中で特に中小企業は重要な役割を果しておる、従つてこれが振興については十分なる考慮を払つておるという御説明がございました。前の池田さんは、中小企業なんかつぶれてもよろしいという御説のようでありましたが、今度はそうではなくて、大いに心して、もつて日本産業開発に資しようとされる現小笠原大臣のこれに対する、たとえば金融対策あるいは設備の改良、それらの問題についての大網をまず御説明願いたい、かように存じます。
  191. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 中小企業対策は、私どもとしては租税対策、金融対策及びそれ自体の強化対策、こういうふうに三つにわかれるかと存じます。租税の方はできるだけ勤労所得者の考えを入れてやつてもらうようにということで、今度青色申告の分について、十五才まででしたかの者までも減免してもらうことにいたしております。そのほかにも、これは一般的な措置ではありますが——相当つて行きますが、なお今後設備その他のものについて、またあらためて何か相談したいとも考えております。現在のところはそんな程度で、これはきわめて不十分であります。  それから金融対策につきましては、御承知のように、今度新たに中小企業金融公庫をつくることにいたしました。これが資金はと申しますと、百二十八億円をもつてスタートいたします。そのうち五十五億円を出資といたしまして、資金運用部からの金が五十億とか、商工中金の返す分のこちらにまわつて来るものその他を合せて合計百二十八億円をもつて中小企業金融公庫はスタートすることに相なります。これで今まで欠けておつた中小企業者の設備の改善あるいは合理化等に要する長期資金をまかなうことができようと考えておる次第でございます。なお長期資金、設備資金ばかりでなくて、これに伴つて運転資金もいりますから、長期の運転資金もあわせて供給しよう、こういう考え方であります。大体利息は一割くらいで、期限は五箇年以内くらいのところで、そういうふうなことをいたしたいと考えております。  商工中金のことは、これは今も中心となつてこれがやつておるのでありまして、商工組合金融の中枢機関としてぜひこれは強化に努めたいと実は考えておるのであります。  それから商工中金に現在行つておる二十億円は、その後引続きそのまま預けてもらうことにしております。これらについても商工債券が大体二十倍あります、その分がまだ相当余力がありますので、こういうものを若干資金運用部等に引受けてもらつて、資金が足らぬ場合はこれを補つて行きたい。もつとも今のところ商工中金はそう資金不足の状況ではございません。けれどもこれはぜひ組合のために強化いたしたい。それからもう一つは、国民金融公庫、この方は零細な人々に対する分としては、これは本年も一般会計から三十億円補正予算で出ておりますし、また資金運用部から二十億円か出ております。なお本年度もさらに資金運用部から二十億円出し、一般会計から三十億円出す、合計五十億円出すことになりますので、こういつたことでこれを強化して零細な方面の人に向けて行きたい。  それから中小企業信用保険制度がございます。これについては保険金額の率をふやせという要望が非常にある、現在たしか九割くらいにしろという話があるのでありますが、これは実際九割にすればそれで貸し出すかどうかということになると、なかなかそこの点に問題があるのでありまして、この点は政府補償の問題ともからんでおりますので、現在のところ金額をふやす、こういうようなことだけをしておるわけです。金融機関に対して百四十四億円、それから信用保証協会に対して二百四十億円、こういうのは中小企業の信用保険制度というのでやつておるのであります。  それから最近議会からの御注意等もありまして、また業者の要望もありまして、下請賃金の支払いが延びておつて困るということを言われましたので、これの支払いの延びないように、下請企業の支払い方促進について十分な措置をとる、民間大企業と結びついているく仕事すると芝は、最初からそういう約束をさせてやることにいたしておるのであります。  そういつたのが大体の金融措置であります。そのほかで申しますと、今申し上げた一番根本の問題でありますが、中小企業は、それ自身の力が足らぬ点がございますから、どうしても組織化して行かなければならない。どうしても協同組合化というものを進めて参らなければならぬ。協同組合は今日までに二万八千できております。数をふやすばかりが目的ではございませんが、もつと奨励して数もふやして参りたり、そして組合員に対してはいろいろ指導を徹底して参りたい、かように考えております。組合については、共同施設に対して、わずかでありますが、政府の補助金を二十八年度も二億円出すことになつております。このほか府県がこれに出します。府県によつては、中央から来ておる百万円に、自分の方で四千万円を出して五千万円にしておるところもございますので、二億円ではありますが、共同施設効果相当あるように考えております。そのほか中小企業の合理化対策を進めなければならぬ。それには工場、機械その他を診断する必要等がございまして、工場につきまして約九千、商店につきまして約四万を診断いたしまして、その結果を今集めておりますが、それに基いて今後対策を立てて参りたい、これが包括的に申しました一般の対策でございます。
  192. 熊本虎三

    熊本委員 ただいまお答えがございましたが、その中で、中小企業の税制問題につきまして、大臣は十五歳までは基礎控除の中へ入れるということを言われましたが、私は十八歳であつたのをことしは十五歳に下げられたと記憶しております。私の勘違いですかどうか、その点をもう一回お願いしたい。
  193. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 熊本さんの仰せの通り、十八歳を十五歳にしました。それだけ控除が受けられるわけですから、税金としては少くなるわけであります。十八歳が十五歳になりましたのは、それだけのものを控除してくれることになりましたので、違うことに相なります。
  194. 熊本虎三

    熊本委員 ただいまのお説で、非常に中小企業に意を使つていただいておることが一応うかがわれるわけであります。  そこでさらに進んでお尋ねいたしたいことは、私どもの資料が古いのですが、ごく最近の日本産業の中で、たとえば二百名以下の使用工場、事業場の施設、それからこれらの弱小企業によつて生産される、日本の全生産の指数から来る比率、それに伴う金融関係の動向、これをお聞かせ願いたい、かように思います。
  195. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 詳しく存じない点がたくさんありますが、ただ概括的に知つておる点だけ申し上げまして、足らぬ点は、資料がありますれば政府委員から御答弁申し上げることにいたします。  私の大体承知しておるところでは、中小企業と申しますものは、工場でもつて四十七万、それから商店で百四十五万ぐらいと記憶しております。でありますから、従業者の数で申しますと一千万人近くあるのではないかと思われます。それでは商品としてどれだけの分量をつくり、また扱つておるかということになりますと、この割合は私どもはつきりいたしませんが、相当な部分を占めておることだけは間違いない事実だと存じます。特に阪神地方に参りますと、おもなものは中小企業が基礎になつております。そういう実例等から見ましても、相当なものを占めておると思いますが、パーセンテージで何ぼを占めておるかということについては、生産においてもちよつとわかりませんし、販売しておる方でもちよつと私にはわかりかねます。  それから金融について申しますと、日本の今の総貸出高が、各金融機関その他を通じて二兆三千億円くらいあるかと存じます。そのうち、中小のいわ「ゆる企業者が借りている金は八千三百億円くらいあるかと記憶いたしております。ごく大ざつぱに考えますと、三割見当のところに来ているのではないかと思います。これは御承知のようにいろいろな金融機関にわかれおりますが、そのうち一番大きい部分を占めておりますのが地方の普通銀行、その次には相互銀行、信用組合、それから今申し上げました商工中金とか、あるいは国民金融公庫もございますが、一番大きいのは地方の普通銀行であります。
  196. 熊本虎三

    熊本委員 ただいまの御答弁は大体当つておるかと存じます。資料が古いのでございますが、私どもの昨年度の調査によりますと、銀行融資の残高が一兆八千百億、それによつて中小企業の受けたものが四千四百億という数字になつておりまして、二四・四%という数字を拾つております。今仰せのような全金融機関を合せますと、二兆三千六百九十七億円という数字が上つておりまして、そのうちで中小企業の融資を受けたものが七千百六十一億という数字が、昨年六月現在で上つております。から、先ほどの大臣のお答えは大体において間違いはないと存じます。  ところでお尋ねをいたしたいことは、先ほど私の指摘いたしました、たとえば二百名以下の事業場によつて生産される生産高の比率、これについては大臣は明確でないとおつしやいましたが、これは総理庁の統計によつて二十六年度を見ますと、人員においては九九・八%というのでありますから、これはおおむねオールと言つても間違いない。その生産高から行きますと、全生産高の六二・九%になつているという統計を出しております。こういう点から考えてみまして、約六三彦の生産力を有する中小企業が、金融面から行きますと、銀行においてはわずかに二四・四%、一般金融、相互的なものから見ましても三〇%にすぎない。こういう一つの金融政策面から見ましても、今日の中小企業がいかに困難であるかは想像にかたくないのであります。いろいろの角度から中小企業の振興のために、大いに努力は願つているようでありますけれども、今あげました数字等から見まして、現在の通商産業省で持つておられる金融対策等は、私は残念ながら九牛の一毛にひとしいような微弱なものといつても過言でないと思う。日本産業総合開発のためには、おおむね人は大きい方ばかりを見まして——、これらはもちろん基幹産業でありますから、当然ではありますけれども、直接明日から生産を左右するこういう企業に対する金融等の処置については、もう少し根本的な対策を立てていただきたい、かように考えるわけでありますが、はたしてその御意思があるがどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  197. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 できるだけのことはいたしたいと考えて、実は御承知でございましようが、今度の中小企業金融公庫をつくる前にも、特別会計で二百億出してもらいたいということを、いろいろ頼んだのでありますが、どうもそこまで運びかねて、ようやくただいま申しましたような公庫ができ上つた次第であります。今後は大いに皆さん方の政治力を借りて、ぜひもつと中小企業のためにやりたいものだと考えております。
  198. 熊本虎三

    熊本委員 努力にもかかわらず、二百億のものもいれられなかつたということで、まことに現内閣の中小企業対策の冷淡なることを表現するものと存じます。そこで問題は、単に政府の財政計画の面からのみ一挙にこれをカバーして行こうとすることは、なかなか困難ではないかと存じますが、しかし現在の弱小企業がいかに困難であるかは、あらためて私が申し上げるまでもございません。大臣もすでに御了承のことと存じます。すなわち下請工場に対する賃金等の処置も、幾らかお考えのようでございます。現状の中小企業は、すでに下請のときに、少くとも一割ないし二割の利益をはねられておるわけでありまして、現在のように金融問題が逼迫して参りますると、その上に手形支払いによりまして、短かくて三箇月、はなはだしきは四箇月の手形をもつて清算しておる。こうなりますと、弱小企業は金融に道がないのでありますから、遂にそれを非常なる高利、はなはだしきに至つては二十銭、三十銭というような高利をもつて、これを割つておるという現状であります。でありますから、真に日本産業開発の基盤である中小企業の対策をしようとするならば、現在のごとくすでに工賃において頭をはねられ、金融措置においてさらに利ざやをとられるという、かようなことであつては、往復びんたと同じでとうてい中小企業の安定あるいは発展というものはあり得ないと存じます。従つてこの点に関する限り、せつかく理解ある小笠原通産大臣の任期中に、抜本的な中小企業対策というものをお立て願いたい、かようにお願いをいたしておきたいと存じます。  なおそれに関連いたしましてお伺いをいたしておきたいことは、私も大蔵省の金利調整委員を三年ばかりやつておりまして、いわゆる金融業者がいかに独善的であり、彼らの利益の前には、国家経済もなければ、日本産業開発もない、こういうことをつぶさに見て参りました。金利が産業にどう影響するかという問題は非常に重大でありますが、しかしながら、現在における中小企業は、多少の金利の値上げよりか、もつと円滑なる金融、いわゆる融資方面の緩和ということが重大であろうと考えまして、私は数回にわたる銀行業者の利子値上げにも、涙をのんで賛成して参つたのでありますが、一たびドツジ・プランが要請されて、これが実施されるということに相なりますると、いち早く日本産業の行先を考えまして、ことごとくが門戸をとざしてしまう。そうして預り余裕は、これをみずから融資するということを避けて、興業銀行の方へ肩がわりをする、末端の損失は興業銀行等に肩わがりすることによつて、みずからは逃げようとするの暴挙をあえてしたことは、これは断じて忘れることができない。従つて私そのときに、金融機関の金利の問題は、営利会社であるがために経営面から来るものであるからと思つて、涙をのんで上げて来た金利に対して、そういう利害損失というみずからの利益のために、日本産業を破壊することをも顧みないということであるならば、金利は半分にしろということで、大いにたんかを切つてつたこともございますが、現在の金融機関はことごとくがその通りであります。あとで運輸省の問題にも触れまするが、昨年末から問題になつておりますどころの、日本で一番求めておる造船計画等につきましても、彼らのつけまする条件というものは、まことに暴挙にひとしい。かくして第八次造船計画も、いまだその緒についておらない。明年度のおそらく三十万トン計画も、かくのごとき金融機関の専横をもつてしては、国家の大なる犠牲によるこれが推奨といえども、おそらく完全に遂行することはできないであろうと想像がつくわけであります。     〔淺利主査代理退席、尾崎(末)主査着席〕 従つてその意味から考えて、これは当然の直接の関係は大蔵省にありまするが、しかしながら、いわゆる産業経済の建前から来る通産大臣への質問でございますが、すなわち金融の社会化、言いかえますならば、金融機関の国家管理というような方向にこれを持つて行くことによつて、こういうようなものが緩和され、有効なる融資がつくであろうと想像するのでございまして、そのことは英国においても如実にその事例が行われておる。従つてこういうことについてお考えおきを願いたいと思うのでありますが、その点どういうお考えであるかを、念のためお尋ねいたしておきたいと思います。
  199. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 いろいろ適切な御意見を承りまして、まことに御同感に存じます。私どもも実は中小金融について今の金利は少し高過ぎると考えておりますので、先般日銀の政策委員会の方へ、今の日本の金利は高過ぎるからといつて、金利の問題等も相談したような次第でございます。なお資金をもう少し潤沢にすることにつきましては、本年はこうでございまするが、だんだんとこれを増加して参つて、御期待に沿いたいと考えております。
  200. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 熊本君に申し上げますが、通産大臣はお約束があつてもう時間がありませんので、なるべく簡潔にお願いいたします。
  201. 熊本虎三

    熊本委員 そういう事情であれば恐縮ですから、最後に一つだけ伺つておきましよう。  それでは次にアルコール専売に関する官営の製造工場があるわけでございますが、これに対しまして、昨年度二箇所を民間に払い下げております。本年度の予算におきましても、二工場くらいを民間に払い下げるという前提のもとに——それがどの工場をとうするということにはなつておらないようでございますが、払い下げるという建前で本年度の予算が組まれておる、こういうふうに聞くわけでありますが、はたしてそれは事実であるかどうか。
  202. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 お話通りでございまして、本年も二工場を払い下げることにいたしております。但しどこを払い下げるかはまだきまつておりません。これは省議等を聞きまして、そうして慎重に払下げ場所をきめ、また価格等につきましては、従来とかくのことをかれこれ言われますので、さようなことのないよう、万遺憾なく処置したいと考えております。
  203. 熊本虎三

    熊本委員 そうしますと、通産省及び大蔵省は、アルコールは専売にするけれども、官営の製造工場はこれを廃止して民間に全面的に払い下げるという御方針でしようか。どうでしようか。
  204. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 ずつと前からの閣議決定がございますそうで、逐次払い下げることになつております。ことしは二工場を払い下げるのでありますが、人間で申しますと、全体で三百六十人だけ減ることになります。そのうちアルコール関係だけですと、二百三十人だけ減ります。
  205. 熊本虎三

    熊本委員 小さいことですが、二百三十名といわれますと、予算面に二百三十名程度が現われておるから、実施期は年度末といわれると、十月だと思います。そうすると、予算面に二百三十名かが出ておりますことは、十月に実施するという建前から来る予算を見まするならば、もつとふえるかと思うのですが……。
  206. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは予算の方では、四月から半年の間は人に関係ないことになつております。半年たちますと、これだけ減員するごとに相なつております。四月から十月までは予算措置はとつてございます。
  207. 熊本虎三

    熊本委員 申そうしますと、小さいことですけれども念のために聞いておきますが、二百三十名というのは、私の見た予算面では、一箇年間の人件費の中から二百三十名分が減つておるかに見受けたのです。そうなつて参りますと、実施期が延びますから、従つて員数がふえるのではないかと私は解釈したのですが、その点はいかがですか。
  208. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 それは予算が、ただいま申し上げた通り、六箇月だけになつておるそうでございます。
  209. 熊本虎三

    熊本委員 それでは次にお尋ねいたしますが、現在官営工場でつくつておりますアルコールの一トンの価格及び民間から買い上げておる一トンの価格、これは幾らになつておりましようか。
  210. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 政府委員から答弁いたしますが、私も承知いたしておりません。だれか資料がありますか。——資料がないそうです。
  211. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 熊本君に御相談ですが、資料はあとから差上げてよろしいですか。
  212. 熊本虎三

    熊本委員 あとからいただきますが、私の聞いてるところを申上げましよう。官営工場による一トンの価格が十万とちよつと、それから民間から買い上げるものが十三万程度に相なつておるはずであります。民間企業から買い上げるものは、営利企業でありますから、おのずからそれだけの利潤等を勘案されたものと考えます。そうしますと、官営工場においてすでに原価において二、三万の開きがあるにもかかわらず、これをどういうわけで民間に払い下げなければならないか。もし民間に払い下げた場合、原料は同じでありますから、これを合成酒あるいはしようちゆう等に切りかえることは、易々たることです。これがもしそういう飲料面の酒精にかわりますと、さらにその価格の比率は、トン当り七万ないしは八万の開きになる。こうなつた場合に、官営の製造工場を持たずして、そうして専売だ専売だと言うておりましても、とうていこれに唯々として応ずるかいなやは、はなはだ疑問でなくてはならない。それにもかかわらず、あえて現在の方針を打破つて民間に払い下げる理由は一体どこにあるのか。
  213. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私が承知しておるところでは、実はアルコールを始めましたのは戦時中の要請でアルコールを始めたわけで、大体アルコールというものは民営の工場へ持つて行きたいというのであります。従つてそういうことから前に閣議決定がありまして、爾来毎年二工場ぐらいずつを払い下げておる。昨年も二工場、本年も二工場払い下げるという予定になつておるように承知いたしております。しかし熊本さんの、なるべく国営、官営の方がいいじやないかというお話のお心持はよくわかるのでございます。
  214. 熊本虎三

    熊本委員 私は経営関係には関係がございません。労組関係では全食の会長をやつております。民間に払い下げてもらうということは、直接私の関係している労組面から行けば、あるいはいいことになるかもしれないと思います。しかしそういうことより別に、一旦国営工場として、たといその生産高が半分にしろ、あるいは四割にしろ、一つのモデルケースがあつて、そこから生産価格というものが現実に模範的に示されるところに、こういう問題は処理がつくと私は考える。かつて酒が足りない時代において、政府買上げのアルコールをつくることを非常に民間が拒んだ。収益がないから労働工賃は上げられないといつて拒絶しておつた時代がある。そういうことを考え合せますと、やはり一度官営としてやつたものを、特別の事情がない限り、これを払い下げるということは、私は将来のために非常な災いになるのではないかという考え方を持つております。しかし閣議でそういうふうに決定になつておることを、いかに手腕家であり、重要ポストにおられる小笠原大臣といえども、ここでそれではそうしますとはお答えできぬかと思いますが、これは早急にもう一ぺん調査されて、そうして閣議にかけていただいて、われわれの考え方と皆さんの考え方との上に、こういう点に食い違いがあるから、あくまで現在の閣議決定の通りに押し通すとおつしやるかどうか。この点十分御検討願いたい。私からお願いいたしたいことは、やはり製造工場はそのまま本年も払い下げることなく、存置してもらいたい。こういう希望を申し上げておきまして、時間がなければしかたがありませんから、あとは打切ります。
  215. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 これにて経済審議庁及び通商産業所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  216. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 次に予算三案中、運輸省所管についての質疑に入ります。貫井清憲君。
  217. 貫井清憲

    ○貫井委員 私は運輸省関係につきまして、現在国有鉄道と私鉄の相互乗入れは、話合いがついて行われておるように承知しておるのでありますが、特別な季節的な乗入れを別にいたしまして、現在の鉄道建設費等非常にかさんでおりますときに、従来ごく閑散なローカル線に私鉄の乗入れ等の便宜をはかれますかどうか。その点をひとつ伺いたいと思うのであります。鉄道はいわゆる交通の大動脈としてその使命を果しながら、私鉄の線路に国鉄から乗り入れる例は幾多あるように承知しておるのであります。同じ大都市郊外の連絡線でありながら、私鉄が、一日に数回しか通らぬような国鉄の線路にもし乗入れの希望がありました場合、これを相互乗入れの形で利用をさせていただけますと、地方の産業あるいは交通文化の上に非常に益するところが多いと考えますが、これは当業者の要求によりましてはこの便宜をはかつていただけるかどうか、運輸省の御方針を伺いたいと思います。
  218. 植田純一

    ○植田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、なるほどそういう私鉄と国鉄との相互の乗入れによりまして地方の利便が増大するという場合におきましては、そういうことを考えなければならぬ、考えた方がいいのではないか、かように考えます。ただ実際問題におきましては、いわゆる保安度と申しまするか、乗入れする車両の性能、あるいはまた乗入れする国鉄の線路の容量、そういうようないろいろの条件がございますので、そういう面について具体的に検討する必要があろうかと存じます。実際の事例といたしましては、私も全国的なことは存じませんが、承知いたしております範囲におきましても、熊本付近で私鉄の車が国鉄に乗入れしておる事例を存じております。従いまして具体的な場合につきまして、先ほど申しましたいろいろの観点から検討すべき問題ではないか、かように考えておる次第でございます。
  219. 貫井清憲

    ○貫井委員 鉄道と同様なバスの運行にあたりましても、現在大都市を中心にしてやはり異なる系統のものが相互乗入れをやりまして、これによつて関係地方の旅客の便宜には非常高まつておりますが、同様な意味におきまして、今後交通の交流をさせていただくことをぜひお願いしたい。地方にはそういう事例がたくさんあろうと存じます。また国鉄の路線の状況、あるいは社線の車両その他の状況等、これはその条件が具備いたしましたものから取扱つていただくことでけつこうだと存じまするが、今後の交通事情等を十分に御考慮願いたい。私は希望を申し上げて質問を終ります。
  220. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 たいへん時間がおそくなつたようでありますから、問題をごく限局いたしまして御答弁をいただきたいと思います。  まず大臣にお伺いしておきたいと思いますことは、ほのかに聞くところによりますと、運輸省建設省通産省の間で、鉱工業地帯とでもいいますか、こういうところの整備促進をはかるための法律案を用意しておるというふうなことを聞いております。これは今度の国会に提出するところまで各省間の準備ができておるかどうか。おわかりの程度でよろしいですから、お答えを願いたいと思います。
  221. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 お答えいたします。運輸省建設省通産省の間に事務的の折衝を終りまして、今法制局の議にかかつております。今度の議会に提出し得るやいなやは、ちよつとその境目にあるような状態でございます。
  222. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 提出になるかどうかの境目にあるということでありますが、法律案には多少の予算が伴うのでございますか。そういうのは全然伴わない内容のものでしようか。ちよつとお伺いいたします。
  223. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  224. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 予算につきましては目下折衝中でございますが、でき得べくんば地方債の方の特別融資のひもつき優先充当ということで折衝をいたしておる段階でございます。
  225. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 そこでそれに関連して、私から注文の意味も含めた質問をいたしておきたいと思いますのは、ただいまその法案が各省の間の打合せが済んで法制局にまわつておるということは、内容を見ないと賛否をここで明らかにするわけには参りませんけれども、そういう御構想につきましては、まことに賛成をするものであります。むしろ私はおそきに過ぎたのではないかという気もしておるのでございまして、戦後のわが国の経済自立をはかるためには、日本経済の特質でありまする外国依存の加工工業という性質から申しましても、当然そういう鉱工業地帯の整備ということは焦眉の問題でなければならぬと考えておるのであります。それについてお尋ねいたしたいことは、これもうわさ程度に聞いておるので、はつきりしたものは私たちつかんでおりませんが、何でも三省間の事務折衝の間に現われました工業地帯の候補地が三、四十箇所日本であがつておるというのでありますが、その中で東京に最も近い、近ごろ京葉工業地帯という言葉によつて呼ばれております。これはすなわち京浜に対する京葉工業地帯と申しまして、東京湾の京浜の反対側を意味しておるのであります。この京葉工業地帯であります千葉県は、わが国におきましても海岸線の最も長い地方でありますが、これは半島でありますがために、いろいろな面におきまして従来うとんぜられておる傾向が少くないのであります。しかしすでに京浜地方における工業地帯としての発展が、ある限界点に達した今日の情勢におきましては、京葉工業地帯といいますのは、たとえば最も必要なる工業用水の関係から申しましても、その上に利根川が流れておりまして、むしろ水量が多過ぎて年々氾濫するために、農林省建設省関係等におきまして、治水工事が何十億円という金を費して行われておるくらいでありますし、さらにまた工業地帯に必要なる都市計画から申しましても、東京都のこの無制限に膨脹して参ります都市のあふれを引入れておりますのが千葉県でありまして、ほとんど東京に接近しております市川市のごときは、東京人のねぐらになつておるういうような状態でありますし、また御念の入つたことには東京都の墓地のごときも、千葉県の松戸の中に大きな地域でこれを占めておるというような状況であつて、都市計画関係から申しましても、また労働力の関係から申しましても、さらにまた誘致すべき産業の種類等から考えてみましても、京葉工業地帯といいますのは、今三省の間で計画が立案されたという中におきましても、ウエイトが最も大きいのではないかと考えております。この京葉工業地帯というものに対する、その三省案の中における論議のウエイトと申しますか、どういうふうなところで論ぜられておつたかということを、さしつかえなければお聞かせ願いたいと思います。
  226. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 京葉工業地帯の重要さは、今吉川君のお話と同様に私どもも思うております。この審議の道程においていかにそれが重く扱われたかという点、これは実際に当りました政府委員から御説明申し上げます。
  227. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 京葉工業地帯は、わが国におきまする臨海工業地帯の適地の一つとして最も有望なものでございまして、現に千葉港を中心にしたしまして、川崎製鉄が工業港を建設いたしておりまして、目下その建設の最盛期にあるような現状でございまして、これに臨接いたしておりまする荒川から千葉へかけての海岸一帯は遠浅であり、臨海工業地帯としては非常に適地でございます。なおこれに関連いたしまして、やはり何と申しましても工業用水の問題、先ほどお話のありますたように利根川なりあるいは印旛、手賀沼等からの工業用水を調整して来る必要もありますし、また運輸交通の点もあわせて総合的に都市計画ととに合理化いたさねばならないのでありまして、かような点につきまして、いかなる産業が適当であるかというような見地から通産省も入りまして、建設、運輸、通産の三省においてそれらの適地につきまして検討いたしておるような次第でございます。
  228. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 大体満足すべきものに近い御答弁として敬意を表します。  きようは港湾関係のことを私は主としてお聞きしておきたいと思いますが、港湾に関する政府の扱い方が、どうも私かな見ますと物足りないような気がいたします。たとえば公共事業費の中における河川と道路と港湾の予算の比率を見ましても、河川は二三%、道路は一二%、しかるに港湾はわずかに五%にすぎないのであります。このあとで建設省関係のときに私はまた道路関係質問を持つておりますが、河川と道路といいますのは、これは建設省でありまして、港湾は運輸省であることはおわかりの通りであります。たまたま従来建設大臣には佐藤榮作であるとか増田甲子七であるとかいうような、自由党内における有力なボスが大臣になつて予算のぶんどりのときなんかは大いにねばつて、この今年の当初予算の際には佐藤建設大臣廣川農林大臣なんというのは大蔵省の愛知なんかに恐喝に近いことをやつて相当ねばつてつたということは、新聞であまねく国民に知らされておるでありますが、そういうようなことで、明治の初年か何かの閣議か何かのように、ただ押しが強くてねばつてさえおれば予算をとつて行けるということがもし行われておるとすれば、まことに遺憾千万でありまして、わが石井大臣は非常に評判がよろしいようでありますが、あまり公正すぎて大事な港湾の予算建設省予算に大半食われてしまうというようなおそれなきやいなや。私に何といいましても港湾が大事である。次いで道路である。河川もむろん別の意味におきましては大いに大事でありますけつども、どうかそういうへんぱな予算にならないように、ひとつ大臣のがんばりを願わなければならないのであります。この港湾関係計画なるものを、昨日からようだいしましたこれで見ますと非常に複雑といいますか多岐といいますか、広汎にわたつておるのでありまして、ほとんど全国的にわずかな予算をばらまいておるとしかとれないのでございます。これでは結局ねずみが何か食い散らしたようなことになるおそれはないか。今御答弁にありましたような、工場地帯の整備建設というような計画と並行した港湾行政が行われておるかどうかということを、ひとつ聞きたいのでございます。その御答えによりましてまた続けていたしたいと思います。
  229. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 港湾事業費の公共事業費に占める率は、終戦後わが国の海運が戦争のために相当な打撃を受けて、一時少くなつたのでございますが、その後海運の復興と、また港湾における取扱い貨物の増大に伴いまして、逐次港湾事業費の予算の増大に努めておるのでございまして、今年度におきましては昨年度に比べまして約一割の増額がございますし、また最も重要なものの一つに主要港、すなわち貿易港の整備が必要でございますので、これに対しましては荷役機械上屋等の荷さばき施設に対しましては、港湾整備の特別措置を講じまして、一昨年来から民間企業者やります事業のそういう施設に対しましてては、開銀を通じて政府財政資金の融資をはかつております。これが年額昨年度におきましては十億前後に達するのでございます。また来年度におきましては、これらの財政資金の民間企業に対する融資とともに、別の港湾管理者であり地方公共団体等に対しましては、地方債を十億程度優先的に充当するというような措置を講じまして、目下関係方面とこれが事務的な折衝を開始いたしておるような現状でございまして、公共事業費のわくは本年度に前年度に比べまして多少はふえましたが、全体のわくはなお少いのでございまして、今後貿易の発展あるいは地方の港湾礎開発と相まつて、港湾の整備を促進いたしたい、かように考えておるような次第でございます。
  230. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 政府委員は非常に質問以外のことまで触れての御答弁で、たいへんけつこうでございますが、私は今の荷さばき施設とか、あるいはこれは一つの盲点になつておりますが、埋立て等についても後ほどちよつと御説明を伺いたいと思つておりましたが、港湾に関しまして念のためにもう一つ私お尋ねしておきたいのは、どうも港湾の重要性ということが、在来の一つの習慣とか通念のようなもので支配されておる傾きはないか、戦後における経済情勢の変化等におきまして、相当港の利用価値なり本来の使命なりに、激動というか、激動と行かないまでもかなりの変動があるのではないかと思うのであります。私詳しいことはここに資料を持つておりませんが、どうも従来の考え方を大過なきように踏襲しておるかのようなきらいがあるのであります。私は終戦直後における工業地帯の建設と相まちまして、いわゆる房総半島の重要性を非常に感じております。たとえば館山港、あるいは横須賀、舞鶴等も同様でありますが、これは従来は軍港として使用されまして、いわゆるここで申し上げております港の役目は何も果せなかつたのでありますが、戦後におきましては軍港がなくなりまして、そういうものが全部いろいろな意味の港に使われるようになつたはずでございます。こういう大きな情勢の変化に伴う港湾政策、それに合致する行き方が行われておるかどうかということが私の懸念するところでございます。私はこれは専門外でございますから、あまり詳細にわたつて質問はできないのでありますが、戦後においてそういう港の使命が大きく変動した。それに伴うところの港の取扱い方に思い切つたことが行われておるかどうかということを聞きたい。
  231. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 全国にあります港湾の利用状況の大きな変革は、これまで沖荷役を主としておつた港湾が接岸荷役にかわりつつあるということでございます。沖荷役と接岸荷役の比率は大体全国的に申しまして戦前は沖荷役六割接岸荷役が四割となつてつたのでございますが、終戦後貿易の振興なりあるいは産業の合理化の建前から、港湾の荷役の合理化あるいは運営の近代化が問題になりまして、これに対して荷役機械等の近代化をはかるような方向に港湾の施設整備を向けております。  それからもう一つの変革は、海運市場が相当かわつてつたことでございまして、戦前におきましては、東亜貿易が六割で欧米が四割弱という状態でございましたが、戦後におきましては、アメリカなりあるいは濠州を中心といたしまする貿易が主になりまして、これが六割以上を占めて参りまして、東亜貿易が逆に三割五分から四割程度に減つておるのでございます。かような海運市場の変遷に伴いまして船型が増大して参つたのであります。戦前におきまして主要港湾に入る船舶の平均トン数は、おおむね総トン数四千トン程度であつたものが、終戦後から最近におきましては六千トン近くに相なつでおるのであります。この船型の増大に伴いまして岸壁、さん橋施設の改良、航路を浚渫して深くすること等に港湾施設整備の目標を向けておるような次第でございます。なおはしけ荷役の方は戦災によりまして、はしけが全国的に四割ほど喪失いたしまして、その復旧が今申しましたような合理化の線と見合いまして比較的遅れておるのでございまして、これにかわるべきものを接岸でもつてかえる。これは経済審議庁におきまする経済自立三箇年計画におきましても、従来の沖荷役六割を五箇年に四割程度に減らそうという目標を立てておりますので、それらの目標に合いますように港湾の施設整備を向けて行きたい、かように進んでおるのでございます。
  232. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 たいへん参考になる答弁をいただきましてありがとうございました。私は先刻ちよつと埋立ての問題に触れたのでありますが、その埋立てとか荷さばきの施設と申しますか、そういうものには政府の補助金はないわけでございましようけれども、しかしながらこういうものが並行しなければ、せつかくの港行政も仏つくつて魂を入れない、あるいはそれ以上の重大な結果になるのでございます。私どもの得ておりまする情報では、たとえばハンブルグは岸壁百メートルに対しまして荷揚げの荷役機械と申しますか、これが十六であるのに、東京、神戸はわずかに一であり、横浜が二を持つておるにすぎないという状況であるようであります。こういうような貧弱な状況では、いかに日本が自立経済を叫んでも、貿易を促進する一番大事な港湾でこれが行き詰まるというふうに考えられます。先刻政府委員から荷さばき施設あるいは埋立てに対する地方公共団体の起債の問題等についてのお話を伺いました。私は十分了解をいたしたつもりでございますが、どうか私がここで了解をいたしました線をぜひ具体的に一段と強化されるように切望いたしましてこの質問を打切るのでありまするが、最後にひとつ参考までに伺つておきたいことは、港湾関係予算は、たいてい単年度であると思います。しかしながら仕事の性質上これは継続的なものでなければならないと思うのでありますが、従来単年度でとりまして着手をいたしました港湾事業で、何かの事情で継続できなかつたような例がありまするかどうか、ちよつと伺つておきます。
  233. 黒田靜夫

    ○黒田政府委員 従来単年度でやつておるのでございますが、単年度で港湾の新規事業を始めます場合には、三年なり五年なりの一定計画のもとにこれを単年度として工事を始めるのでありまして、従来途中でこれが打切りになつたような例はありませんでした。もしかような場合がかりに起きますといたしましても、これは港湾を管理しております地方の公共団体なり、あるいは港湾管理者と十分協議してきめて行きたい、かように存じております。
  234. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 それではこの辺でこの問題を打切りますが、ついででありますから、非常に小さいことではなはだ同僚議員諸君には恐縮でありますけれども、ちよつと一つだけ国鉄の駅構内の許可問題につきまして、鉄道監督局長か、あるいは国鉄の旅客関係の方が見えておりますれば、その方でもけつこうでありますから、伺つておきたいのでありまするが、構内で営業を許可します交通機関といいますか、これは今あなたの方の構内営業規則というものを拝見いたしますと、交通機関の方では一、二、三、四と自動車、バス、人力車、厚生車というものを許すことになつておるようでございまするが、それには間違いはないでしようか。
  235. 高倉一雄

    ○高倉説明員 私営業局の旅客課長でございまするが、現在の規定でそうなつておることは間違いございません。
  236. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 そこでお伺いしたいのは、これらの四つの営業を許可してよろしいということになつております業種の中で、甲乙をつけて許可をしておるのでございましようか。いわゆる機会均等で扱つておるのでございましようか、その点ちよつとお伺いしたい。
  237. 高倉一雄

    ○高倉説明員 大体私どもの方では、旅客の需要の最も多いものを対象として許可して行くというような考え方でございます。
  238. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 旅客の需要の多いものというお答えでございまするが、これはもしそうであるとするならば、私は異なことを承るような気がいたします。実は十三国会で参議院の運輸委員会におきましてこの問題が取上げられて、当時の鉄道監督局長が御答弁になつております、資料が実は今ちよつと手元にありませんが、あとでそちらでお調べ願いたのでありますけれども、そこでは別に旅客の需要の多い少いということは、論に上つておらないようであります。その後においてそういうふうに方針がかわられたものであるかどうかということをこの機会に伺つておきたい。
  239. 高倉一雄

    ○高倉説明員 私どもの方の方針は別にかわつておりません。ですから甲乙をつけるという考えは持つておりません。ただいろいろな乗入れの請願が参つた場合に、どれから優先して行くかという場合に、旅客の需要の多いものから考えて行かざるを得ないと思います。
  240. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 私はその参議院における質疑応答を傍聴しておつたのでございまするが、そのときの御答弁では私の記憶に間違いがなければ許可の第一の条件は、むしろ駅の構内の事情による。たとえば車の置場が狭いとか、多いとか、あるいは旅客が雑沓するとか、そういうようなことが主たる原因であるかのように聞いたのでございまするが、今でもそういうことを、許可するしないの理由にしておられるかどうかということをお尋ねしておきたい。
  241. 高倉一雄

    ○高倉説明員 駅の構内には非常に狭い場所がありまして、そこに自動車のみならず、それ以外のいろいろな旅客運送業が乗り入れる場合には、非常な混雑を来して参りまするので、そういう設備を置き得るか、それだけの場所があるかということは、今でも許可の場合の基準事項といたしております。
  242. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 そこで具体的な問題を取上げてお尋ねしておきたいと思いまするのは——私がなぜその十三国会の参議院の運輸委院会をわざわざ傍聴したかというと、当時私の居住いたしておりまする千葉県の船橋という駅の構内に自動車の営業所があります。それに対しまして今の足で踏んで行く厚生車の構内営業許可の出願がなされたのであります。これは千葉の国鉄の営業所を経由して成規の手続になつておるのでありますが、これがどうしても許可にならない。そこでその関係者がたしか国鉄労組出身の参議院議員を煩わしてその質疑応答をやつたので、私も聞いてくれというので、その委員会に参りましてこれを聞いたのでありますが、そのときの事情は今も説明なさつた方が言われたように、駅の構内の事情が主たるものであるというような弁答であつて、これはやむを得ないもののように心得ておつたのであります。その後船橋駅に関しては営業しております自動車の業者が倍くらいにふえております。さらにあそこは競馬場施設が二箇所ほど市の両端にありまして、その競馬場でオート・レースも行われますので、月のうち三分の二くらいはそういうギャンブル騒ぎで人が雑沓するのでありますが、バスもその際は駅の構内へ乗り入れている。正確な数字は知つておりませんけれども、乗用自動車の方なんかはおそらく倍くらいにふえたのではないか。それからバスはあの大きな巨体がひんぴんと駅の構内に出入しておりますのに、その前から合法的に手続を進めております厚生車には許可しておらない。この点はどういう点から考えましても、はなはだ片手落ちの処置のように考えるのであります。最近になりまして、その業者からもいろいろと私どもも話を聞かされておりますので、一見はなはだ小さい問題のようでありますけれども、自動車とか、バスとか申しますような、あえて大資本とは申しませんけれども、厚生車の業者に比べますと、てんで問題にならないようなものには、特にあとからの出願でも許可を与える。許可をしないまでも、ハスの乗入れを黙認するというようなことが行われておつて、厚生車だけはすでに二年以上にもなつておりますのに、一向却下もしなければ、許可もしないというようなやり方は、今日の勤労大衆の考え方から申しまして、はなはだ理解に苦しむ点ではないかと思うのでございます。従つて書類は却下になつておらないようでありますから、お調べいただきますと、どこかで書類がとまつているものと思いますが、それに対する適当なる御処置をすることによりまして、国鉄のこの問題に対する態度あるいは疑惑を解いていただくようなことはできないものかどうか、はなはだ注文がましくなつて恐縮でございますが、せつかくいい機会でございますから、この機会に要望いたしまして私の質問を終ることにいたします。
  243. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 熊本虎三君。熊本君に御相談しますが、熊本君は運輸委員でエキスパートでございますから、こまかい質問は運輸委員会にお願いしまして、本日のところはまだ相当質問がございますので、主として予算関係のある部面についての御質疑を希望いたします。
  244. 熊本虎三

    熊本委員 発言の封鎖を受けたようなかつこうでございまして、まだあとの質問もあるようでございますから、私もできるだけ簡単に済ませたいと思います。  この前の委員会で一応質問いたしましたが、大臣はおいでにならかつたので重なりますけれども、基本的なものだけお伺いしておきたいと思います。  それは、昨年の委員会から非常に問題になつておりました国鉄財政、すなわち経営の基本的な物の考え方でございますが、この問題につきましては、私の質問につきましても大臣は了承をされて、同感の意を表されております。しかるに本年度の予算を見ましても、大差がございません。私は何回も申し上げておるのでございますが、国鉄の経営は公社となりまして、独立採算制という基本的なものが打立てられておることは十分承知いたしておりますし、これが将来自立経営によつてまかなわれ得るがごとき発展と運営のあり方を希望することにかわりはございませんが、さしあたりの国鉄の現状について十分考えなければならないということをしばしば申し上げて、大臣もこれを御了承になつたのであります。その点についてどういうような御勘案のもとに今年度予算を計上されたのでありますか、その点を伺つておきたいと存じます。
  245. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 国鉄の財政の扱い方等についての御注文を、前に運輸委員会で熊本君から承り、公共企業体の建前からして、今の行き方をもう少し直すべきものであるという線において同感の意を表しております。ただいま国有鉄道の規定の中の財政に関する面の改正案をごしらえておりまして、実は明日の閣議に上程するつもりにいたしておりますし、自然皆様方の御批判を仰ぐことになるのでありますが、今度の予算をこしらえます場合に、国鉄はもつと自主的な形をとるべきではなかつたか、もつと自分自身で経営が立ち、またいろいろな仕事もどんどんやつて行けるように力を入れるべきではないかというお心持のお話だと思うのであります。今度の予算を立てます場合に私どもの一番考えました問題は、国鉄のいろいろな改善をして行く——できるだけ資金をその方にまわして改善の実をあげ、また新しく線をこしらえるという要望にもこたえて行かなければならないというので、昨年度に比しまして今年度は財政資金を増し、鉄道債券も初めて発行するという段階に持つて行きまして予算を立てたのであります。ただそういうものが今までのしきたりでやられておるということは、財政規定の上から見ましても、財政の方針から見ましてもな少し物足りいではないかということはあると思いますが、今度の改訂によりまして、この次の場合からそれが実際的に表現されて来る。そういうふうに思つております。
  246. 熊本虎三

    熊本委員 私は、緊急やむを得ざる今日の国鉄の実情、これに対する思いきつた処置を要望しておつたわけでございます。なるほど昨年度百三十億であつた借入金が、本年度は百十億、公債百二十億ということでありまして、この点はいささか前進の形でございます。しかしながら、国鉄自体の発表しております現状報告では、これを利用する国民の立場からいつてはなはだ穏かならざるものがあり、これを運営する国鉄自体また重大な関係を有するところで、これを監督する運輸省またおろそかにできざるところであると存ずるわけでございます。公債百二十億が計上され、国民の要望にこたえるために、昨年三十億足らずの建設費でありましたものを、約三倍の九十億計上されて、この面から行きますと要望にこたえたという一つの現われがございます。しかし反面において腐朽品のとりかえという点に至りますならば、昨年度とおおむねその数字を同一にいたしております。約十億程度の増額を見ておるようでありますが、やはり二百七十六億程度の特別補充取替費でございます。耐用年数必ずしも当るものではございませんが、当局自体の近状発表では四千億以上で、危険を感ずるもの約手五百六十億となつております。しかるに本年度の補充取替費わずかに二百七十六億程度より組むことができないという現状で、はたして生命財産を保障するに足る国鉄の運営ができるかどうか。この前説明を求めたところが、しかく簡単に、大体よろしいという御答弁を受けておりますが、運輸大臣はやはり同じ気持を持つておるのかどうか、この点を伺つておきたいと存じます。
  247. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 お話のように、完全にりつぱなものにとりかえるには相当大きな金がいるということはかねぐ話の出ているところでありますが、今日国鉄のやつておりますとりかえ修繕等の状態からいたしまして、二百七十六億の特別補充取替費を見積りましたことによつて、生命財産にあぶないことのないことを確保し得るとりかえ金額だと私どもは承知いたしております。もし人命財産に極端なと申しまするか、ふだんの状態において迷惑を及ぼすような状態でありますれば、さらにこれから進んで改善して行くというような、電化とかあるいはディーゼル・カーを増すとかいうものを控えても、このとりかえ等にかからなければならないのでありますが、まずこの程度でやつて行けば今日の技術の上から見まして大丈夫という見当においてほかの改善の面にも金をまわしたわけであります。
  248. 熊本虎三

    熊本委員 念のため承つておきますが、なるほど生命財産に危うしとしてこういう予算措置はできないと思います。しかしながら発表されたる以前の数字というものに間違いがないならば、われわれはこの倍額程度のものでもやはり予算に計上してそのとりかえ補修がつくがごとくに当局はあつてしかるべきではないかと思います。やはり予算措置の面で非常にきゆうくつなために、万やむを得ず最悪のもののとりかえ補修によつて糊塗するという以外にはなかろうと考えられます。しかしながらいろいろの関係もありますから、私お願いをいたしておきたいと思いますことは、そういう予算面の制約によつて、そうして国鉄というような重要な産業があやまちがあつてはならない。従つて監督官庁たる運輸省といたしましては、このことについてさらに細部の御検討を賜わつて、その遺漏なきを期していただきたい、かように存ずる次第でございます。  次にお尋ねいたしたいことは、まだ運輸委員会でも問題になつておりませんが、物は急ぐわけでありますからこの機会に聞いておきたいと思いまするが、昨年の委員会において十分問題になつたことで、造船計画に関することでございまするが、私の質問に答えて、少くとも年内には資金の面を検討して、一月早々着工の運びになるという御答弁を得ておりました。しかるに第八次船が、今日に至つてなおかつその見通しにつきまして多くの降路があるということを聞いておるわけであります。そうなつて参りますると、来るべき二十八年度のいわゆる三十万トン計画についての実施がはなはだ見通し困難だという不安があるわけでございまして、この問題につきまして、私は特に石井運輸大臣のみならず、大蔵省の出席を求めて質疑をかわし要望いたしておつたわけでありますが、その問題についての見通しと現状はどうであるかについて大臣から御答弁を願つておきたいと存じます。
  249. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 今年度内にまだ五万トン残つておるのでございまするが、来年度のものも少し繰上げまして、十万トンくらいこの際に着工できるようにいたしたいと思うて先ほどから話を進めております。申出は非常に多く、またその調査も事務的には一通り終りました。大体今度は開銀からの融資で主として船をつくることになりましたので、開銀の方で今せつかくやつておるのであります。これにつきましては今熊本さんのお言葉の中に含みがあるように思うのでありますが、何を申しましても一番先に問題になるのは金融の問題であります。この金融の点からいたしまして、一般の市中銀行から開銀に対しての申出がありました。私どもにも申出がありました。その一部は大体了承できたのでありますが、一つ銀行の損失補償の問題がまだはつきりしてないのであります。これは昨年のこの議会の初めのころに利子補給の問題と合して損失補償の問題を考えておつたのでありまするが、政府部内で話がまとまらないで利子補給の問題だけ決定をいたしました。損失補償の問題はただいまなお話を進めておる最中でありまして、近くこれは何とか運べる。これと並行しながら船の決定の方はだんだん進ましおるわけであります。
  250. 熊本虎三

    熊本委員 時間に制約がありますから多く言いませんが、昨年は年内にその方針が樹立されて、一月早々着工の運びになるという答弁を得ております。年が明けて伺いましたところがまだ進行中であるという。もうすでに二月が過ぎんとする今日、大臣のお答えではまだ進行中であるということであります。このことを気にするために本日わざわざこの席上でこのことを伺つたわけでございまして、損失補償、利子補給の問題等も関連はいたしますけれども、しかしながらこれは政府の方といたしまして、これのみに関連があるとするならば、いち早くこの問題を審議決定して、そうしてそれが成り立つようにされなければならない。しかしながらそのことについての審議もあまりお急ぎにならない。そうしていわばこういうものが確定しておらないからできないのだ、こういうことであつてはならないと思います。先ほど吉川君も言つておりましたが、運輸大臣いろいろ政治の広汎なる面に堪能でありますから、従つてあれやこれやをおもんぱかつて、みずからの所管に関するものについては謙譲の美徳を発揮されておるかとも思いますが、しかしそれであつてはならない。今日の国鉄の問題あるいは造船計画の問題というものは、これがただちに日本の再建に重大なる影響を及ぼすのでありますから、従つて、この問題はきようはこの程度にいたしておきますが、至急にそのことが準備整つて着手されますように、しかして二十八年度計画に遺漏なきような方針を立てていただきたい、このことを特に希望してこの問題は打切りたいと思います。  なおちよつと時間を拝借いたしまして、これは政府提案ではないようでありますけれども、これらに関連する私鉄整備法という法案が問題になりつつあります。これについて念のため伺つておきますが、もとありました地方鉄道援助法とか、あるいは北海道鉄道の補助法とかいうような法律等は、比較的その補助の程度というものが制限されておりまして、その補助の程度というものに明確さを与えておる。しかしながら今回提案されようといたしておりまする整備法なるものは、名は整備法であつても目的は補助法である。その補助法の内容を見ますならば、あるいは固定資産税、あるいは事業税、あるいは償却の特別税によつての免税、こういうふうに税の方面から来る補助が非常に複雑に多くなつております。こういう形における補助というものは、これは幾多の方面に連鎖、関連を及ぼすものであつて、地方においては地方財政の逼迫から、国鉄にすら税金を課するというがごとき陳情すらも参つておるようなときに、さらに私鉄の整備に名をかりて、税制の方面からこれを援助するという方法ははなはだ妥当を得ないと考えております。たとえば観光事業に関する補助育成の問題についても、おおむね税制面の操作によつてこれを補助育成している。当然国家目的のために必要な補助育成の事業であるならば、国家の明確なる資金において、その限度をきめて、これを補助育成すべきが妥当であると考えておるのでありまするが、しかしながら今度の整備法はそうはなつておらない。特に最後の附則を見ますると、運転開始後十年に満たざるものはこれを新線と見なすというふうに織り込んでありまするが、そうなつて参りますると、この税面から地方及び国等におきますところの多くの混乱性を持つて来る。こういうようなことははなはだ妥当でないと考えるのでありまするが、運輸大臣はこの面についてどういうようなお考えであろうかということをこの機会に伺つておきたいと存じます。
  251. 植田純一

    ○植田政府委員 この私鉄整備法案のことにつきまして御指摘がございましたが、実は一昨日でございましたか、国会に提案になつておるということを承知いたしております。私も一応その内容を見ましたが、地方税の減免等につきましては、地方税の減免の道が開かれておる。減免することができるという、地方税法の第何条でございましたか、その適用がある。いわゆる事情によりまして、地方庁のしんしやくによりまして、減免することができるというふうに相なつておると承知いたしております。それでその趣旨はいずれこの問題につきましては、国会の御審議の結果可否がきまるわけでございますので、私から申し上げるのもどうかと思いますし、また詳しくは申し上げる資格もないのでございまするが、要するに国の補助を必要上するかどうかということが根本問題でございまして、国からの助成ということが必要であるといたしまするならば、地方税におきましても何分かの御援助をお願いする道が開けておつてしかるべきじやないか、こういう趣旨のように私は承つておるわけでございまして、必ずしも法律によりまして税を減免するとはつきりと言い切つておらないのでございまして、地方税法第何条かの減免の規定の適用がある、減免し得るという規定の適用がある、かように私は承知いたしておる次第であります。
  252. 熊本虎三

    熊本委員 またあとで委員会でやりますから、多く言いませんが、御用意のためにお願いしておきたい。なるほど法律でそうすることもできるというのでありますが、できるとなればやることになるのです。それができないならば補助育成にはならないのでありますから、基本的にはそういう法律をつくれば、税制面から来る補助というものが当然問題になつて来るわけなんです。従つて私どもは先ほどから言いますように、基本的には、観光問題を取上げては恐縮でありますけれども、この私鉄の問題にも同じようなケースでありますから、言つておきますが、たとえば同じ建造物の耐用年数をいじつて、そうしてそれに対する償却金を多く認めて、そうして免税をする、こういうようなあり方は、その産業の正常なる育成の方法ではない。この地方鉄道の整備法にもやはりそれと同じような償却の問題が取上げられておる。こうして錯綜して一般にはわからないような、複雑多岐にわたる、混迷につぐに混迷の中に補助して、もつてこれを育成するというごとき方針は、根本的にこれは間違つておると私は考える。従つてこの問題が論議になるときには、当局は十分その点をお考えおきになつて、そうしてこの結末をいかにつけるかということについての御用意を願つておきたい、かように考えまして、この点を希望を申し上げてこれで終りにいたします。
  253. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 森幸太郎君より関連質問の申出があります。これを許します。森幸太郎君。
  254. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 この機会に一つ二つお尋ねいたしておきたいと思うのでありますが、各地を歩いてみますと、ずいぶん乱暴なローカル的な鉄道がありますから、あるいはぜいたくに考えられるかもしれませんが、東海道の電化問題であります。これは東京から漸次下り線に沿うてやる。一面においては京都から上り線にやるという意見もあつたのでありますが、たしか占領治下司令部の注意であつたと思いますが、東京から下り線に沿つてやれということで、本年度はあるいは名古屋まで参るかと存じます。政府委員の各位もお通りなつたと思いますが、逢坂山のトンネル、あの上りのトンネルでは、一等、二等に乗つておればまだがまんできますが、三等に乗つていると、とてもいたたまれぬような煤煙であります。貨物列車はときによつては機関士が窒息したことも御承知通りであります。地元におきましては、電化であろうが機関車であろうが、今日のように電圧の低いときには、速力も場合によつては削減せられるし、むしろ機関車の方が時間の正確を期せられるくらいに考えられる次第でありますけれども、とにかくあの煤煙には悩まされない者はおそらくない。ことに外国人なんか来たときには参つてしまうのです。石井大臣も必ずや一年に五回や六回はあの逢坂山のトンネルをお通りになると思う。ところが現在京都まで電化されているわけです。これを地元においては草津まで——あそこには、構内も広いのでありますから、臨時的な機関庫もできようと思いますから、草津までせめてのことに延ばしてもらえないかという希望があるのであります。この点について鉄道当局としてはどういうふうにお考えになつておられるのであるか。また名古屋まであるいは米原までの電化が今日やられると聞いておつたのでありますが、この間の新聞では名古屋までだという話であります。今日通つてみますると、もう相当設備ができておりますが、この間新聞では名古屋まで本年度内にやるというような記事もあつたように思うのでありますが、そこで今それぞれ京都へ連絡するように調査されてあると思いますが、この滋賀県内に二つの川の下をくぐつておるトンネルがある。いわゆる屋根棟川がありまして、川の下をくぐつておるトンネルが二箇所あります。電気機関車を通すのには、あのトンネルを改造しなければならないというようなこともしろうとながら考えさせられるのであります。それについて技術相当考えられたと存じますが、この電化が名古屋でとまり、米原でとまるのも、これは経費の関係上やむを得ませんが、少くとも逢坂山のあの乱暴な煤煙のトンネルを何とか救済する意味において、京都の方から草津まででも臨時的にでも延ばせられないか。また東海道、東京・大阪間の電化がいつごろ完成する予定になつておるか、この点をひとつ意見を承りたいのであります。
  255. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 この問題はよく論議される問題であります。私は西の方の生れであるし、京都のトンネルで悩んでおつて、電化問題が起つたときにも、私もそういうような意見を盛んに述べたものであります。しかし今日東の方からの電化がだんだん進んで、ことしの夏ごろまでには名古屋まで開通するつもりでございまして、今のままで進行を続けて行けばどこまで行きますか、岐阜、大垣とだんだんと進んで行くつもりであります。そのまま行けば、今の程度予算であればどこまで行くかは、あとで政府委員からお答えいたしますが、西の方から進んで来たらどうか。特に悩みの種の逢坂山だけでもやれぬかということでありますが、今の明石から京都まで来ておりまする電車を延長して草津までやるということは、割合にしやすいかとも思うのでありますが、電車が通つただけでは汽車の悩みは一つも解けないのであります。その辺から通学する人だけ、あるいは通勤する人たちだけの問題しか解決しないのであります。やれば明石から草津の間でもやるかというような問題になるのでありまして、これはなかなか簡単に解決できないで悩みながら今日に及んでおるのであります。なおその問題についてはいろいろな意見も出ており、今何やかやとしきりに研究をやつておりますが、そういうことたけしか申し上げられない状態であります。東から行けばどのくらい時がかかるかという問題は、政府委員からお答えいたします。
  256. 植田純一

    ○植田政府委員 二十八年度の電化設備費といたしましては、約七十八億見込んでおります。これは浜松から、名古屋、貨物は稲沢まででございますが、この秋までに開通する。この施設費と、それに伴う車両費とで、約四十億かかります。また山手の貨物線を電化したい。これは東京周辺のいわゆる東海道線と東北線、高崎線との関係の電化を計画いたしております。  そのほか、すでにできておりますところの電化区間の改良、あるいは老朽したところのとりかえを実施いたすことになつておりまして、名古屋以西に投じ得るところの経費は、二十八年度におきましては多くを期待できないような状態でございます。もちろん若干の予算を名古屋以西についても投ずるつもりでございまするが、御承知通り計画といたしましては浜松・姫路間という電化計画になつておりますので、名古屋以西につきましては、二十八年度におきましては、投じ得る予算の余裕がきわめてわずかでございます。今お話のございましたようないろいろな観点から、どういうふうにそれを最も効率的に使うかということにつきましては、目下国鉄におきまして具体的な計画を検討中でございます。全体の予算の概要と申しますと、大体さような状態になつております。
  257. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 今お話の七十八億というのは、二十七年度の予算なんですか。二十八年度の予算は何ぼ見ておられるのですか。蒲郡からちよつと先までですか。現在もうすでに電柱が立つておるのですが、まだ二十八年度の会計は始まらないが、これは二十七年度の予算でおやりになつているのか。二十八年度にはどれだけの予算考えておられるのか。現在やつておるのは二十八年度ではなく、二十七年度でおやりになつているのですか。
  258. 植田純一

    ○植田政府委員 ただいま御説明申しましたのは、二十八年度の予算お話でございまして、その工事の見通しを申し上げたのでございます。実は二十七年度に御指摘の通り名古屋までの工事は大分進捗いたしておりますが、大体二十八年度に入りまして、この秋までに貨物は稲沢まで電化が完成することになつております。従いまして二十八年度になお電化の費用を投じなければならぬ。ことに電化開通となりますると、電気機関車の経費ももちろんこの中から出るわけであります。そういう二十八年度予算の見通しを申し上げたわけでございまして、二十八年度は電化設備費としまして全体として七十八億を計上いたしておるわけであります。
  259. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 今大臣は京都から電車というが、電車でなくても現在電気機関車で汽車をひつぱつておるのであります。あれを草津まで持つて来られないか、こういう問題です。かつては大垣からしり押しして参つたこともあるわけですから、せめて草津まで持つて来て逢坂山のトンネルの苦難を除くような方法はないか、この問題です。
  260. 植田純一

    ○植田政府委員 現在御承知通り西は京都から明石本線は電化いたしております。しかしこの区間は電車運転をやつておりますので、列車は他の区間と同じように蒸気機関車で動いているわけであります。実は電気機関車を動かしますには、現在の西の方の区間を電化区間としまして能率的に動かすには、まだ区間が短かいものでございますから、列車の牽引はやはり蒸気機関車で動かしておるというのが現状でございます。大臣お話になりましたのはその点をおつしやつたのだと思います。
  261. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 逢坂山のトンネルはわが国辱です。外国人が見ても実に憤慨しておるようなところです。まだこんな汽車があるかと言つて憤慨する。国際観光事業のために八千万円とかのお金があるというのですが、あんなトンネルに汽車を通しておつて観光宣伝もあつたものではないと思います。どうか一日も早く東京・姫路間が電化されるように努力していただきたいと思います。  次にお尋ねしたいのは北陸線の複線工事であります。あれは御承知通り複線工事ができて、レールをある程度敷いたのであるが、戦争のためにはずしてしまい、鉄橋も小さな鉄材ができないためにそのままになつてしまつているのであります。トンネルが一つ近く完成すると私は思つておりますが、あれは将来どうなさるつもりか。耕地をつぶして、それをそのままほつたらかしておいて、それを貸しもしない。貸せば百姓があそこで食糧増産もやるでしようが、そのまま鉄道の敷地として複線が敦賀まで現在行つているのであります。あれはやるならやる、やらないならやらないでやめてしまつた方がいい。やりかけた仕事を途中でほつたらかして耕地をつぶしたままにしておくことは、国家の上から言つてまことに損失であると私は思うのですが、せつかくできたものですから、すみやかに複線にしていただきたい。あれは電化の予定であつたわけです。電化のために、現在のトンネルは通れないというので、ことさらに線路をかえてトンネルをつくつて電化の方針を立てたわけでありまして、それが中絶しておるわけでありますが、この鉄道の処置をどうお考えになつておるかということが一点、それはもちろん今急速には参りますまいが、急速に参らないとすれば、過失において米原・長浜間はガソリン・カーが動いておつた。今年の予算を見ましても、デイーゼル・エンジンですか、ああいうローカルな機関車をつくつて、短距離の間に運転さすという方針も持つておられるようでありますが、もしあの複線ができなければ、米原・木之本間——木之本は避難線がありませんから、中之郷駅まで行かなければなりませんが、そこまでがソリン・カーを一日に五回か六回運転さすような計画は立たないか。もちろん北陸線としてはローカル線でありますから、一列車と一列車の間が二時間もあるようなところでありますけれども、過去においてはガソリン・カーがあそこに動いておつたのですから、それを復活させてもらうような計画ができないか、この点をお尋ねしてみたいと思います。
  262. 植田純一

    ○植田政府委員 御指摘の点は、まことにごもつともでございまして、北陸線、いわゆる裏の方の縦貫線と申しますか、その方の輸送力の増強という点につきましても、重々その必要を認めております。国鉄といたしましては、東北本線もまだ全部複線になつておりませんので、これの複線化ということも何とかしたい。また裏の縦貫線、いわゆる北陸線の輸送力の増強ということも必要である、かように考えておるわけでございますが、何分にも予算関係で今日急速に参らない、まだその具体的な計画に上つて参らないというのが現状でございまして、東北線といい、北陸線といい、重要な線区でございますので、国鉄といたしましては、この点の輸送力の増強、線路の改良ということにつきましては、今後とも大いに努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  それから第二段のディーゼル・カーのお話でございます。これも実は戦前たしか四百両近くガソリン・カーが各線区において動いておつた承知いたしておりますが、現在におきましては百八十両程度のものが各地区に配置されておるような状況でございまして、御指摘の通り地方の線区におきましては、非常にその要望の熾烈なものがございまして、国鉄といたしましても、極力この要望にこたえまして、限られた車両費のうちからこのディーゼル・カーをつくりまして、要望のある線区に配置したい、かようなつもりで、実はただいまもお話がございました通り、二十八年度におきまして約三百両くらいのものをつくりたい、かように存じておる次第でございます。ただそれをどういうふうに配置するか。もちろん各地方の必要のある線区に順次配置して参るわけでございますが、以前にそういうガソリン・カーが動いておつたような線区は、もちろんその必要度が高いということが立証できるわけなのでございますから、そういう点につきましても十分考慮して、重点的に配置方を考えて参りたい。また今日までのディーゼル・カーは単車運転と申しますか、一両に一人ずつの運転士が必要であるというような構造であつたのでありますが、最近できて参つておりますもの、また今後できますディーゼル・カーは数両連結いたしまして統制制禦ができるような構造のものができつつあります。今後できますものはそういうようなものをつくり上げたいと存じておりますので、一両ずつ各地区に配置することもできますし、また情勢によりましては、一つの地方にまとめてそのディーゼル・カー何両か連結したものをもつて普通の列車に置ぎかえる、それによつて浮いて来た機関車あるいは客車をもつてまた適当なローカル線にまわすということも考えておりますので、そういう点の具体的な計画につきまして、今国鉄におきまして検討いたしております。大体さような計画で進んでおりますことを御承知願いたいと思います。
  263. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 あまり地方のことばかり申して恐縮ですが、第一に逢坂山の場合だけは何とかするようにぜひ研究していただきたいことをお願いしておきます。
  264. 淺利三朗

    ○淺利委員 関連して。実は私は質問を中止するつもりでありましたけれども、ただいま森さんの御意見を承りまして、われわれの希望以上にあの東海道線をりつぱにする。また今監督局長から北陸線の複線の問題、同時に東北線の問題もちよつとお話が出たようでありますから、との機会にごく簡潔にお尋ねしたいと思います。  大体東北線におきましては、仙台以南は本線と海岸線の二つができております。仙台以北、青森間においては一本であります。現在においては、仙台以北の東北線は一日に八十本の汽車が通つておる。これは時間的に見ても、またレールを酷使する上から言つてもゆゆしき大事だと思うのですが、一体全国に一路線について八十本も列車が通つているという例がたくさんあるかどうか。御承知のごとく、仙台、青森間は北海道とをつなぐ路線であります。それが仙台から南になりますと、常磐線と本線と二つにわかれるが、この区間はただ一本しかない。もちろん秋田まわりの線はありますけれども、これは距離の関係上、時間の関係上ほとんど利用されない。でありますから、この青森、仙台間はすみやかに複線にする必要がありはせぬか。これは地方の要望であります。ことに全国において海岸線のないところは三陸の海岸であります。これも多年要望しており、また建設計画に載つているけれども、ほとんど実現ができない。でありますから、この三陸鉄道というものを実施すれば、これによつて三陸の富源も開けるでありましようし、また北海道に行く路線が常磐線とともに海岸を貫通することになるのであります。もちろんこれは順序はありましようけれども、この東北線の複線化はいつごろ御計画になるか、またどれくらいの費用を要するか、それの御調査ができているか、その点だけを簡単にお示し願いたい。
  265. 植田純一

    ○植田政府委員 東北線の複線化につきましては、もちろん国鉄におきましてもいろいろ調査いたしております。実はただいまその調査資料を持つてつておりませんので全貌につきましてお答えできませんが、この東北線の電化につきましては、逐次予算の事情の許す程度におきましてかかつて参りたい、かように考えておるようなわけでございます。具体的な点につきましては、目下国鉄におきまして検討いたしておりますが、二十八年度におきましても、できますならば少しでも工事にかかりたいと考えておる次第でございます。
  266. 淺利三朗

    ○淺利委員 仙台以北三百六十五キロを複線とするには、二百億円足らずでできるということであります。五箇年計画にすれば四十億、今問題になつておる弾丸道路は九十五億も費やす、こういう点から見たならば、これは少しく国鉄において本気になれば、大した問題じやない。一日八十本の車が往復しておるというこの現状を見まして、われわれは目の子計算でやつても、この路線がほとんどひつきりなしに酷使されておることがわかるのであります。これはここであまり論議をいたしても時間がかかりますから、ぜひこの点については真剣に御考慮願いたいと思うのであります。  なお先刻ディーゼル・カーの話が出ましたが、吉川君の言われる千葉県のごときも、私もかつてあの海岸に住んだことがありますが、木更津まではかソリー・カーが行つておるが、その先は行つておらぬ。京浜地方の工場なり、あるいはその他の人々の居住が飽和状態になれば、どうしてもあの辺も新たに開拓する必要があるという点からいつて、私は吉川君の意見に賛成で、あの線のガソリン・カーをもつと延ばすことが必要じやないかと思います。  同時に岩手県の大船渡線、これは全国まれに見る悪線路であります、線路も悪いが、車両に至つて日本においては、これは骨董品扱いにしているものがあるのであります。最終列車のごときは、冬には石炭のストーブをつけてあります。ほとんど動物列車であります。石炭を燃やしておると、その周囲に皆がよつてたかると、腰かけにかけている人はぶるぶるふるえておる、こういう現状であります。でありますから、貨物混淆であるがためにたくさん出せないというならば、こういうところもディーゼル・カーを運転したらどうか。多くの人はその列車に乗ることをきらつてその日に帰るものが一晩とまるというような現状であります。逢坂山の煤煙は国辱だと申しますが、もしあれを外国人に見せたならば、日本の民度というものはいかに劣つておるか、満州の苦力列車以下であります。こういうことについては何かお考えがあるかどうか。またこの車両の改良——これは昨年も私が分科会において主張したのでありますが、そういう点をどうお考えになつておるか。この点だけをお伺いして、私の質問を打切ります。
  267. 植田純一

    ○植田政府委員 具体的な点につきましての御説明はちよつとできませんので、はなはだ申訳ございませんが、要するにこの工事勘定の中を大きくわけますと、新線建設、それから先ほど来話がございました補充とりかえ、改良、この三つにわけられると思うのでございますが、新線建設は別といたしまして、その他の改良の面におきましては、たとえば線路の改良であるとか、停車場の改良であるとか、車両の改良であるとか、全国的にいろいろの面におきまして改良し更新しなければならない面がたくさんございます。こういう点についてしさいに資料を集めて、予算の許す範囲内において逐次改良とりかえして参るという方針で進んでおるような次第でございます。ただいま御指摘の具体的な線の計画についてははつきりと御答弁できませんことをはなはだ遺憾に存じますが、全国的に見まして緊急を要すると申しますか、程度のひどいと申しますか、そういうものから逐次とりかえあるいは改良して参る方針で進んでおります。
  268. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 これにて運輸省所管についての質疑は全部終了いたしました。     —————————————
  269. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 次に予算三案中建設省所管についての質疑に入ります。  吉川君にお願いを申し上げておきますが、時間が延びましたので、質問申出の淺利君も場合によつて質問をやめてもよいということでありますから、なるべく簡潔にお願いいたします。吉川兼光君。
  270. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 きわめて簡単にお伺いいたします。建設大臣お休みのようでありますが、実質上の大臣三池君が見えておりますから、大臣なつたつもりで責任のある御答弁をお願いいたします。  まず最初に、道路審議会で国道網に関する計画ができておつたように伺つておりますが、その要点を簡単にお伺いしたい。
  271. 三池信

    ○三池政府委員 道路法の改正に伴いまして国道を一級、二級に区分いたしまして、在来国道であつたものは大体一級国道に指定し、これはすでに決定を見たのであります。次に一級国道に準ずる重要な道路につきましては、これを二級に指定いたすことになつております。目下道路審議会におきましては二級国道の選定について審議中でございます。不日この面も決定いたしまして発表の段取りになると思つております。
  272. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 次にこれも道路関係でありますが、府県道以上の主要道路の未改修などがかなりあるかのように聞いておりますが、これはたしか五箇年計画か何かが立ててあるのじやないかと思いますが、その内容も簡単でよろしゆうございますから、お聞かせ願いたい。
  273. 三池信

    ○三池政府委員 道路の戦後の整備がはなはだ不十分であり、自動車の交通が非常に多くなりましたし、またバス、トラックも大型になり重量もさらに多くなつたような関係で、建設省としては道路の整備については非常な力を入れておりまして、とりあえず道路五箇年計画を樹立いたしておるのであります。その計画の骨子はただいま申しました一級国道は全部自動車交通を可能にする、二級国道につきましても、一応自動車の交通が可能な状態に改良する、それから京阪あるいは阪神、北九州というような重要な産業地帯におきましては、一級、二級国道はこれを改良鋪装する。それから自動車の交通が一日に三百台以上の府県道路以上の道路につきましては、これを既改修分につきましては鋪装する。それから現在交通ができなくなつているもの、あるいは重量の制限を受けているような国道並びに府県道の橋梁は、これを全部永久橋にとりかえるというようなのが、大体五箇年計画の骨子であります。
  274. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 ついでに、今淺利さんかどなたかの話の中にあつたと思いますが、弾丸道路でございます。これは私どもの承知しておるところでは、例の安全保障費でやるのじやないかと思いますが、その安全保障費でやりますのは、正確な意味においては弾丸道路ではないじやないかと思います。しかしどうも弾丸道路と同じような線にありますので、弾丸道路と兼用とでもいいましようか、そういう計画が進められておるやに聞いておりますが、その辺の内容をひとつ伺いたいのです。
  275. 三池信

    ○三池政府委員 弾丸道路と通俗に申されております道路は、私たちの方では高速自動車道路と呼んでおりますが、これは御承知のように、先ほど申し上げましたように自動車の交通が戦後非常に多くなりまして、特に東海道線におきましては、わが国の人口がすでにその四〇%近くをこの沿線に持つております。また自動車、トラックの数量におきましても、全国の五〇%近くをこの沿線に持つておるのであります。また産業の面から申しましても、その生産物の動きが全国の約半分近くあるというような状態でありますので、現在の道路網をもつてしましては、どうしてもそれを受入れることができないというのが実情でありますから、これを緩和する意味におきまして、新しい自動車道路の計画をかねがね持つてつたのであります。これは決して安全保障費による道路建設の計画では全然ないのでありまして、たまたま二十八年慶計画しておられますところの東京・御殿場間の安全保障費によるいわゆる防衛道路が、弾丸道路と非常に接近したルートを採用いたしたのでありますから、いろいろの点を考慮いたしまして、この東京・御殿場間の安全保障費による道路をいわゆる弾丸道路のルートに乗せたらばどうかというような考えを持つておるのであります。御承知のように、道路を新設いたしますと、たいへんな耕地をつぶすのであります。その面からだけでも非常な不経済になりますし、将来弾丸道路を建設する場合にも、それを一部改良することによりまして兼用することができるというような趣旨から、大体高速自動車道路のルートによりたいというふうに考えておるのでありますが、しかし道路の規格といたしましては、弾丸道路といわれるものと、今度計画しております東京・御殿場間のいわゆる防衛道路とは根本的に違うのでありまして、これをもつて弾丸道路とするわけには行かないのであります。  弾丸道路の話が出ましたので申し上げますが、弾丸道路につきましては、二十八年並びに二十九年度で大体の測量、調査を終るつもりでおりますが、これの建設がいつできるかということは、財政面との関係がありますので、目下のところ、建設省としてもそれははつきり確定しておるわけでもないのであります。防衛道路でなということだけははつきり申し上げることができるのであります。今度の東京・御殿場間のいわゆる安全保障費によるところの道路と、建設省計画しておりますいわゆる高速自動車道路とのその違いの具体的なことは、道路局長から説明させたいと思います。
  276. 富樫凱一

    ○富樫(凱)政府委員 ただいま政務次官から御説明されましたが、この高速自動車道路と、安全保障費によります道路との規格の相違は、高速自動車道路は幅が二十二メートルでございます。なおすべての道路、鉄道と立体交叉をいたしますために、その施行基面は少くとも五メートル必要であるということになるのでございますが、安全保障費によります道路は普通の道路でございまして、幅も十一メートルくらい、それからすべての道路と立体交叉をするというようなことはございませんで、平面交叉でやるという計画てございます。この二つの点が、この規格におきまする一番大きな差異であると考えております。
  277. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 弾丸道路と、今の防衛道路でありますが、その差異はそれで大体わかりますが、弾丸道路の計画は、今の交叉の点などでも平面交叉ではないというようなことですが、これはたいへんな大計画のうよに思われます。この調査は、二十八年度の予算に調査費が組んであるようでございますが、大体二十八、二十九の二箇年で調査を終えるという今の政務次官の御答弁の通り計画でございますね。いよいよ建設にかかるとして、大体どのくらいの費用と——これはそのときにならないとわからぬと思いますが、建設に要する年次の大体の見通しのようなものがございますか。
  278. 三池信

    ○三池政府委員 金額といたしましては一千百五十億程度の金額を計上しております。現在の計画では五箇年ぐらいを要すると考えております。
  279. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 今日の日本の財政の状態では、あえてできぬとは申しませんが、なかなか実現困難なことのようでありまして、この問題でここでこれ以上の論議は避けた方がいいかもしれません。  そこでお伺いしたいのは、今の御答弁の中に、自動車三百台の交通が云々という話がございましたが、七号国道と申しますか、東京から千葉県の方に出ておりますあの大きな道路、あれは小松川橋というところで行き詰まつておりますが、あそこは最近自動車交通の度合いが非常に高くなりまして、一日に五千台から通つておるかのように聞いておりますが、この七号国道に関する調査費は、七号国道について特別にわけてあるのではないでしようが、明年度のこういう方面の調査費の中に、いわゆる七号国道の調査費も含まれているかどうか、これは道路局長でよろしろうございますから、伺つておきたいと思います。
  280. 富樫凱一

    ○富樫(凱)政府委員 千葉に参ります国道、これは一級国道でございますが、お話のように非常に交通が輻湊して参りまして、ただいま五千台以上の交通量がございます。なお交通上非常に悪い区間がございまして、この改良はかねて懸案でございました。しかし現在の国道を広げるということは、沿道に相当の人家が連続いたしておりますので、不適当であると考えまして、新線をただいま計画中でございますが、この計画相当大きな計画になりますので、二十八年度におきましては、調査費を入れまして、計画を確定いたしたいと考えております。
  281. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 そこで政務次官にお伺いしておきたいことは、先刻私運輸大臣にもお伺いしたのでありまして、その裏づけのようなことになるかもしれませんが、建設省運輸省、それから通産省の間で、いわゆる工業地帯の整備促進とでもいいますか、そういう促進法のようなものを計画されまして、運輸大臣の答えるところによりますと、すでに三省の間の打合せが終りまして、目下法制局にまわつておるという話でございます。それに関連をいたしまして、私はいわゆる京葉工業地帯というものの重要性を運輸大臣にお尋ねしまして、全面的に私の質問の趣旨に賛成のような御答弁を得たのであります。  そこでまずお尋ねいたしたいことは、この京葉工業地帯の地域についての御解釈といいますか、そういうものを伺いたいのですが、実は例の川崎製鉄が、千葉に大きな製鉄所を計画しまして、今どんどん進んでおります。そのことなどが一つの有力な示唆になりまして、千葉県の県当局でも、京葉工業地帯の建設に非常に努力し、調査その他予算化したことを今やつておるわけでございますが、県の方の工業地帯計画は、もちろん県でありますから、県外に及ぶわけにいかぬかもしれませんが、われわれは東京を出まして、船橋という所から千葉を経由して、木更津までを京葉工業地帯と言つておるのであります。しかしこれは、京葉といいますからには、東京が入らなければ意味をなさないのでありまして、国の方の立場から申しますと、おそらく千葉県のきめておる範囲とは違うのだろうと思いますが、政府の方で、特に建設省あたり考えております京葉工業地帯といいますのは、大体どこからどこまでくらいの範囲をさして言つておるかということを、お答えできたら伺つておきたいと思います。
  282. 三池信

    ○三池政府委員 今御質問の点は、いろいろ方々で御意見があるのでございまして、建設省といたしましても、現在慎重に検討中でありまして、各方面の意見を参酌した上で、慎重研究の上に善処したいというふうに考えておりまして、今これを決定しておらないわけであります。
  283. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 まだそういうふうな地区の御解釈がきまつておらないというのであれば、それ以上お伺いするのも何でございますが、いわゆる京葉工業地帯の埋立て計画というものがおありだろうと思うのです。と申しますのは、あの辺を工業地帯としますには、どうしても工業用地というものがつくられなければ、御存じのように海岸すれくに例の国道が走つておりまして、その国道の近くまで人家が櫛比しておるのでありまして、あのままでは、あれは工業地帯に利用することは困難である。またわずかの農地をつぶすというわけにも参らぬでありましようから、工業地帯をお考えになる以上は、当然埋立て計画というものが考慮されておるに違いないと私は思うのであります。それらの点についてお伺いすることができれば、伺つておきたいと思います。
  284. 三池信

    ○三池政府委員 御説もつともでありまして、現在埋立て計画を種々持つてをります。ただ確定してこれを発表する程度にはまだなつておりませんけれども、さつきお話の川鉄附近あたりは、それに該当する一番いい条件を持つておるところじやないかということを、私だけは考えております。
  285. 森幸太郎

    ○森(幸)委員 関連して。七号国道はこれを第一級にしたというさつきの政務次官のお話ですが、国道十二号線はどうなりましたか。
  286. 富樫凱一

    ○富樫(凱)政府委員 国道十二号は、たしか北陸の方の国道だと思いますが、あれは一級国道になつております。
  287. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 これにて建設省所管についての質疑は終了いたしました。     —————————————
  288. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 次に予算三案中、郵政省所管についての質疑に入ります。吉川兼光君。
  289. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 まずお尋ね申し上げたいのは、電気通信関係の二十八年度の予算の修正ということでございます。この二十八年度の政府関係機関予算という中に出ております予算総則の中のゴ十二条、二十三条に関連することでございます。それは電気通信労働組合が、この基準内の賃金につきまして、かねて当局と折衝中でございましたのが、一月の二十日であつたかと思いますが、調停案の趣旨に基く賃金協定に正式な調印が行われたようでございます。この一応の妥結を見ましたところの内容予算化することになりますと、ただいま出ております二十八年度の予算の数字では、不都合が生じるのではないかという件でございます。具体的に申し上げますと、調停案の趣旨に基きまして、二十七年の十一月一日よりの電信電話公社の職員の基準内賃金は、昭和二十七年においては一万四千百十八円が必要である、こういうふうに見るのでありますが、昭和二十八年度になりますと、さらにそれが一万四千六百六十円必要になつてくるという、こちらの計算でございます。しかるに政府案によりますと、二十八年度の予算は、この項に関しましては一万三千四百三十円にしかなつておらないというのでございます。従つてこの予算の差額は、たとえば期末手当でありますとか、奨励手当でありますとか、あるいは超過勤務手当ないしは特殊勤務手当とか、寒冷地手当だの、諸手当の類にも影響いたしまして、基準内賃金を含めまして給与総額がいわゆる予算総則の二十二条において三十一億円余り足りなくなるのではないかということであります。従つて総額を申し上げますと、予算総則には三百三十五億二千七十二万四千円と出ておりますのが、三百六十六億八千二百八十四万七千円になるのではないかという計算です。理由は省略した方がいいと思いますので申し上げませんが、二十三条の規定でありますところの二億円というのは、十五億円くらいにならなければ足りないのではないかというのが私の質問の趣旨でございます。どうかわかりやすい答弁をお願いしたいと思います。
  290. 庄司新治

    ○庄司政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げたいと思います。まず最初の予算総則の第二十二条の給与総額が三百三十五億円というふうに予算総則に出ておるのが、実際は三百六十六億円以上の金がかかるのではないかという御質問でございますが、私どもの計算によりますと、実は基準内賃金をある程度調停案の線まで延ばしたために、当然給与総額がふえると考えられますが、一面期末手当を、予算の面では一箇月見ておるのでございますが、これを〇・五箇月に減すというふうな協定でございまして、そういうものを考えますと、この三百三十五億円のわく内で協定が実行できるという考えのもとに、予算総則の変更はしてないのでございます。  それから二十三条の二億円というのは、これは将来の経済事情の変動その他予測することのできない事態に応ずるため臨時に支給することのできる給与の限度額を二億円というふうに定めておるのでありまして、この二億円に対して、これが足りるか足りないかということに対しては、必ずしもはつきりした根拠が出ないかもしれませんが、一応われわれは予備費を八億見ておる。その予備費のうちの大体二億程度が給与に相当するという見解のもとに、給与の限度額を二億、こう押えたのでございます。以上簡単でございますがお答えいたします。
  291. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 実ははなはだ申し上げにくいことでありますが、私はこの給与関係内容をつまびらかにいたしておりませんので、つつ込んだ質問ができないのでありますが、私の手元に届いております材料によりますと、二十二条は明らかに三十一億円余の不足となるという計算が出ておるのであります。私は今の政府委員の御説明の数字を訂正する材料もございませんが、同時にここに来ております数字をひつ込める材料もないのでありますから、はなはだ不徹底でございますけれども、この問題はさらに次の機会に——予算分科会はきようで終りますけれども、別の委員会で繰返してもう少し掘り下げた質問をいたすために保留しておきたいと思います。  それから第二の方の、今の二億円というところにはこういう説明がついております。立法当時の趣旨では、この金額は給与総額の一〇%以内の額をその都度定めることになつております。また条文の解釈からしても、かかる僅少な額では問題にならないと思いますので、立法当時の趣旨を生かすために、二億円などと少額に刻むことをせず、せめて十五億円くらいに限度を広げるべきだと考えますが、いかがでしようか。
  292. 庄司新治

    ○庄司政府委員 実は私もその給与総額の一〇%が、この二十三条の限度額に適当であるという根拠は、必ずしもはつきりしないのでございますが、一応二十八年度予算では、予備費そのものの額が八億円というふうに押えてありますので、三十億近くの給与の弾力の金は出て来ないのではないか、こういうふうに考えるのでございます。それで御了承を願います。
  293. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 ちよつとお伺いしておきたいのは、今私どもがちようだいしておりますこの二十八年度の予算ですが、これをあなたの方で最終的に決定なさつたのはいつのことですか。
  294. 庄司新治

    ○庄司政府委員 はつきりした記憶はないのでございますが、閣議できまりましたのは一月二十九日ごろだと承知しております。
  295. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 この調停案の日付が一月二十日になつておりますから、二十九日の閣議決定といえば、日にちの点から申しますと、別に二十日の決定に特に違うような予算をつくつたとは思われませんが、ともかく私どもの関係しております筋から詳細な数字をあげまして私のところまでこれは実は先刻急遽届いたのでありまして、まだ検討の時間がないのでございますが、予算委員会は本日が最終の機会でありますから、一応取上げて御質問申し上げておるのでございますが、どうも少し数字の開きがあり過ぎますので、私はこのまま御答弁を納得するわけに参りません。しかし予算が通つてしまつてあとの委員会ではしようがないと言えばそれまででありますけれども、日をかえまして、またもう少し勉強いたしまして、当該委員会で重ねてこの問題で御質問することをこの際保留しておきまして、質問を打切ることにいたします。
  296. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 これにて郵政省所管についての質疑は終了いたしました。  以上をもつて分科会所管予算三案に対する質疑は全部終了いたしました。
  297. 加藤常太郎

    ○加藤(常)委員 本分科会所管予算三案に対する討論採決は、予算委員会に譲られんことを望みます。動議を提出いたします。
  298. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 ただいまの加藤君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 尾崎末吉

    尾崎(末)主査 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本分科会はこれをもつて終了いたします。各位の連日の御精励に対しましては満腔の謝意を表する次第であります。  これにて散会いたします。     午後九時三十一分散会