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1953-02-26 第15回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十六日(木曜日)     午前十時五十八分開議  出席分科員   主査 西川 貞一君       島村 一郎君    塚原 俊郎君       永田 亮一君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    原 健三郎君       小島 徹三君    中曽根康弘君       受田 新吉君    川島 金次君       冨吉 榮二君    和田 博雄君   兼務       北 れい吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君  出席政府委員         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     高野 藤吉君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         文部事務官         (調査局長)  久保田藤麿君         文化財保護委員         会事務局長   森田  孝君         労働政務次官  福田  一君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     百田 正弘君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 富樫 總一君         労働事務官         (労政局長)  齋藤 邦吉君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      龜井  光君         労働事務官         (職業安定局         長)      中西  實君  分科員外出席者         労働事務官         (労政局労政課         長)      阿部 泰治君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    大島  靖君         労働事務官         (婦人少年局婦         人課長)    田中壽美子君         予算委員会専門         員       小林幾次郎君     ――――――――――――― 二月二十六日  分科員日高忠男君、西尾末廣君及び永田亮一君  辞任につき、その補欠として塚原俊郎君、冨吉  榮二君及び山崎岩男君が委員長指名分科員  に選任された。 同日  分科員冨吉榮二辞任につき、その補欠として  受田新吉君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  第二分科員北れい吉君が本分科兼務なつた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算外務省、文部省  及び労働省所管  昭和二十八年度特別会計予算労働省所管     ―――――――――――――
  2. 西川貞一

    西川主査 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算及び同特別会計予算外務省及び労働省所管を議題に供します。   まず昭和二十八年度一般会計予算、同特別会計予算労働省所管について、政府より説明を求めます。労働政務次官
  3. 福田一

    福田政府委員 労働大臣がただいま参議院の本会議で、この席に出席をいたしかねますので、私より御説明申し上げます。  今回提案されました昭和二十八年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきましてその概要を御説明申し上げます。  まず第一に、一般会計におきましては、歳入において総額二億四百三十二万四千円で、前年度の二億二千五百三十一万九千円に比較して、二千九十九万五千円の減となつておりますが、これは歳入の主たる特別会計等失業者退職手当負担金受入額減少その他によるものであります。  一方歳出におきましては、総額二百十五億六千四百五十九万円で、前年度の百九十二億五百三十八万七千円に比較して、二十三億五千九百二十万三千円の増となつております。なおこのほかに建設省所管官庁営繕費に八千百六十五万円を労働省関係分として計上いたしております。今この歳出の内容について概略を申上げますと、  一、労働経済に関する統計を迅速かつ的確に集収整備し、さらにこれを分析し、労働行政施策基礎資料たらしむるとともに、これを労使その他関係方面に提供し、紛争議合理的解決、生産の増強等に寄与するため従来から実施して参りました毎月勤労統計職業別賃金調査、毎月労働災害統計等統計調査整備充実をはかりたいと存じまして、これに必要な経費として一億七千二百三十九万五千円を計上いたしました。  二、国際労働会議分担金その他国際協力に必要な経費並びにわが国労働事情に関し、海外広報活動実施するために必要な経費として、九千七十五万四千円を計上いたしました。  三、民主的な労働組合を育成し、健全な労使関係の発展を助長するため、労働教育刷新強化並びに労働組合福祉厚生活動助長等施策に重点を置いて、これを推進ずるに必要な経費として、七千百十一万八千円を計上し、なお労使関係の合理的かつ円滑なる調整を期し、産業平和の維持をはかるために、中央労働委員会並びに公共企業体等労働関係調整委員会に必要な経費として、一億一千百四十万七千円を計上いたしました。  四、労働者福祉向上と、労働能率増進をはかるために、労働基準行政を一段と刷新し、産業災害減少と職業病の発生防止等に努めるとともに、特に中小企業における労働者技術水準向上をはかることの急務なるにかんがみ、技能者養成普及助成を行うこととし、これらに必要な経費として十二億四千八百四十九万九千円を計上いたしました。  五、婦人及び年少労働者保護並びに婦人地位向上をはかるための諸施策を講ずるに必要な経費として、七千十四万六千円を計上いたしました。  六、労務の需給の状況について現段階において今後の情勢を判断するに、なお楽観を許さないものがあるように存ぜられますので、公共職業安定所効率的運営をはかつてその機能を強化するとともに、職業補導事業を振興し、さらに失業対策事業充実して、失業者就労機会増加をはかり、あわせて身体障害者職業更生援護の道を講ずるために必要な経費として、失業対策事業補助金九十五億円、政府職員等失業者退職手当三億円、失業保険特別会計への繰入れ七十億六千百三十三万三千円、職業補導施設費三億百六十九万三千円、身体障害者職業更生援護費七千百四万三千円、その他就職あつせんに必要な経費、二十四億一千四百七十六万一千円、計百九十六億四千八百八十三万円を計上いたしました。  七、その他一般事務に必要な経費として二億三千三百九万一千円をそれぞれ計上いたしておるのでございます。  第二に、労働者災害補償保険特別会計につきまして申し上げます。この会計歳入歳出はいずれも二百十一億八千六十一万六千円で、前年度の百七十九億二百三十七万六千円に比較して、三十二億七千八百二十四万円の増となつておりまして、歳入の主たるものは保険料収入の百五十九億八千九百万円と、支払い備金受入れの四十八億一千五百八十二万七千円で、また歳出の主たるものは保険金給付の百二十八億四千万円と、被保険者福祉増進並びに保険経済安定確立をはかるためにする保険施設拡充整備に必要な経費として、六億七千二百六十四万五千円を計上いたしております。  第三に、失業保険特別会計につきまして申し上げます。この会計歳入歳出はいずれも二百四十二億二千九百八十八万四千円で、前年度の二百三十二億一千三百八十二万三千円に比較して、十億一千六百六万一千円の増となつておりまして、歳入の主たるものは、保険料収入の百五十五億円と、他会計より受入れの七十五億六千五百三十三万三千円で、また歳出の主たるものは保険金給付の二百九億一千四百万円と、新たに失業者就職促進その他、労働者福祉をはかるため職業補導所宿泊施設等保険施設を設けることとし、これに必要な経費として一億七千三万五千円を計上いたしております。  以上をもちまして、労働省所管関係予算大要説明を終りますが、本予算の成立につきまして慎重御審議の上、何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げる次第でございます。
  4. 西川貞一

    西川主査 まず昭和二十八年度一般会計予算、同特別会計予算中、労働省所管について質疑に入りたいと思いますが、政府委員に対しましての御質疑はございませんか。
  5. 川島金次

    川島(金)委員 主査大臣は来ないですか。
  6. 西川貞一

    西川主査 大臣は参りますが、十二時過ぎになると思います。なおその前に外務大臣出席を求めておりますので、外務大臣から外務省所管予算説明を求めまして、外務大臣に対する御質疑を願うことにもいたしたいと思います。それまでに政府委員でもよろしい御質問がありますれば、質問していただきたいと思います。
  7. 川島金次

    川島(金)委員 大臣がお見えになりますれば、また別途お尋ねを申し上げたいと思いますが、さしあたつて事務的な関係について若干お伺いをしたいと思います。  まず私のお尋ねを申し上げたいのは、現在の現われております失業者の数、それからいわゆる世間でいわれております潜在失業者についての調査がありますればその数、まずそれをお聞かせ願いたいと思います。
  8. 中西實

    中西政府委員 失業者の数は一応労働力調査によりまして、これは月によつて相当出入りがございますけれども、十月の失業者数が四十八万、十一月が四十九万、なおさかのぼりまして九月は四十二万、八月は四十三万、昨年に比べますと若干数がふえております。  潜在失業者の数は今内閣の統計局の方でも調査いたしておりますけれども、現在調査段階で発表する数字はまだございません
  9. 川島金次

    川島(金)委員 責任を持つた潜在失業者の数ということは、なかなか調査のいろいろの議条件によつてつて来るし、またそれぞれの人の立場によつて潜在失業の認識についても違いますから、今ここですぐに責任を持つて潜在失業の数を発表することは若干困難があろうと思いますので、責任を持たぬでよろしいですから、労働省がにらんでおります数などはあろうと思いますが、それはいかがですか。
  10. 中西實

    中西政府委員 ただいま申しました労働力調査で、不完全就労、つまり週に三十五時間以内の就労をしている者、それからそれ以上の者というふうにわけた統計は出ております。しかし本人においてその三十五時間未満就労でも満足しているという者も相当ございますし、結局本人がさらに働きたいという意欲がある数ということになりますと、これは非常に不確かでございまして、結局今の労働力調査不完全就労数字は一応出ておりますけれども、これをもつて潜在失業と言うこともできないのじやなかろうかというので、われわれとしましては実は的確な数字、あるいは一応にらんでいるという数字も、今のところないわけでございます。
  11. 和田博雄

    和田委員 そうすると不完全就業者はどのくらいあるのですか。
  12. 中西實

    中西政府委員 これは誤解のないようにお聞取りいただきたいのでございますけれども、従来三十五時間未満就業者というだけの数でございまして、それがただちに一部失業ということも言えないのですが、一応その数字を申しますと、これも月によつて非常に差異がございます。十月まで手元にございますが、三十五時間未満就業者は五百九十二万になつております。そのうち、今申し上げたようにそれでは不満足だというので、追加就業を希望している者は二十万でございます。これは月によつて相当違いますけれども、一応十月だけ申しますとそういう数になります。
  13. 和田博雄

    和田委員 今の不完全就業者は、農村も含めてですか、それとも都会だけですか。
  14. 中西實

    中西政府委員 これは労働力調査でございまして、全部抽出しておりますので、すべて入つております。
  15. 川島金次

    川島(金)委員 そこで元へ返してお尋ねするのですが、現在の就業人口数はどくらいになつておりますか。それからその就業人口の中での男女の別の数字はどういうふうな割合になつているか、それをお示し願いたい。
  16. 中西實

    中西政府委員 これも月によりまして非常に変動がございます。現在までわかつておりますのは十一月まででございますが、十一月の非農林業就業者が二千百八十二万でございます。それから農林就業者が千七百十七万ということになつております。この農林就業者のごときは、毎年の例でありますけれども、二月、三月と五月以降と比べますと、数百万の差がございます。なお男女別はちよつと今資料を持つておりませんので、あとで調べて申し上げます。
  17. 川島金次

    川島(金)委員 その男女別がわかりましたら、あとで発表してもらいたいと思います。この就業人口を十一月現在で見ますと、およそ三千九百万ばかりになりますが、その男女別人ロ構成を知りたいのです。それからこの三千九百万のうちで満二十歳末満の就業数はどのくらいになつておるか、それがわかつておればひとつついでにお示し願いたい。
  18. 中西實

    中西政府委員 ちよつと年齢別資料手元に持つておりませんので、後ほど調べまして申し上げます。
  19. 川島金次

    川島(金)委員 あとでプリントでもしていただけばけつこうですからお願いいたします。
  20. 西川貞一

    西川主査 川島君、御発言中非常に恐縮ですが、外務大臣出席しましたので、外務省所管予算に移りたいと思います。     ―――――――――――――
  21. 西川貞一

    西川主査 この際外務省所管予算につきまして、政府より説明を求めたいと思います。  外務省予算について資料の御配付はございませんか。
  22. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 特別に用意しておりません。御要求によつて提出いたします。
  23. 西川貞一

    西川主査 今御用意がないそうですから、必要があれば御要求によつて御提出願うことにいたします。
  24. 川島金次

    川島(金)委員 議事進行について。外務大臣説明を聞くこともけつこうですが、従来どこの省におきましても、分科会等審議に入るにあたりましては、必ず予算説明書が配付されて、それによつて説明が行われ、さらにそれに伴うところの詳細な資料が、各省によつて部数に若干の相違はありますけれども、親切な資料が出て来ております。そういうものがないとこの分科会審議にもさしつかえますので、そういう資料が出るのか出ないのか、ますそれを主査から聞いてもらいたいと思う。
  25. 高野藤吉

    高野(藤)政府委員 前国会におきましても、特に御要求のあつた資料をお出しいたしまして、全般的な御説明口頭でいたしております。今回もそれに従いまして特に提出の準備をいたしておりませんので御了承願います。
  26. 川島金次

    川島(金)委員 それではただ口頭説明されてもなかなか記憶に残りませんので、あとでもけつこうですから、ただいまから説明される外相の説明の要旨なりとも、ひとつ至急にプリントして、まず配つていただきたい。あとまたその説明に従つて必要な資料要求いたしますから、迅速にその要求にこたえるよう配慮願いたい。
  27. 高野藤吉

    高野(藤)政府委員 至急本日中に提出いたします。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 資料を十分提出できませんで、まことに申訳ありません。これから説明をいたします。  外務省予算総額は五十六億八千二百九十八万二千円で、これを大別いたしますと外務本省十九億七千百八十三万三千円、在外公館三十七億千百十四万九千円であります。  第一、外務本省一般行政に必要な経費五億三千四百五十八万一千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び付属機関一般事務を処理するための職員千二百六十八名の人件費及び物件費等でありまして、前年度に比し六千十八万円の増加は、職員給与改訂及びそれに伴う経費増額等であります。  第二、外務行政連絡調整に必要な経費一億五千二百四十二万二千円は、本省在外公館との事務連絡のための電信料郵便料及び旅費等でありまして、前年度に比し七千万円余の増加在外公館増加連絡事務増加したためであります。  第三、外交文書編纂公刊に必要な経費五百二十九万三千円は、明治以来の日本外交史実編集し、公刊するための経費であります。  第四、外交電話に必要な経費四千七百八十三万五千円は、在外公館との通信施設改良整備等に必要な経費であつて、前年度に比し千五百万円ほど増加したのは、在外公館新設に伴う電信機械購入増加によるものであります。  第五、外交運営充実に必要な経費三億円は、外交再開の今日において各国との外交交渉により幾多の懸案問題の解決をはかり、また各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため必要な工作費で、前年度に比し二億七千万円の増額なつております。  第六、アジア諸国に関する外交政策及び賠償実施政策樹立に必要な経費八百十六万三千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案、その実施及び賠償実施政策樹立のために必要な経費であります。  第七、欧米諸国等に関する外交政策樹立に必要な経費二千三百二十九万七千円は、北米、中南米、西欧及び英連邦諸国に関する外交政策企画立案及びその実施に必要な経費と、今秋京都において開催される太平洋問題調査会太平洋会議補助金三百万円及び在パリ日本会館補助金百二十三万一千円であります。  第八、海外渡航関係事務処理に必要な経費八百三十七万円は、旅券の発給等海外渡航事務経費と、その事務の一部を都道府県委託費四百六十万円であります。  第九、国際経済情勢調査並びに資料の収集に必要な経費一千万五千円余は世界経済の正確な把握を期するため内外資料文献を広く収集整理するための経費であります。  第十、通商貿易振興に必要な経費五千七十九万六千円は、通商利益保護増進をはかるため、国連後進国開発計画に即応し、東南アジア諸国に対する将来の貿易振興を期待し、財団法人国際学友会事業として東南アジア諸国技術留学生受入れ施設建設拡充のための補助金五千万円と、訪日通商使節団国内規察の際の同行旅費であります。前年度に比し四千五百七十万円の増加は、前述補助金増加したためであります。  第十一、条約締結及び条約集編集等に必要な経費一千七百六十六万七千円は、国際条約締結条約集等編集条約典型作成条約及び国際法並びに内外法規調査研究のため必要な事務費等であります。  第十二、戸籍法及び国籍法関係事務処理に必要な経費三百八十九万七千円は、在外邦人身分関係事務及び二重国籍者日本国籍離脱に関する戸籍法上の事務に必要な事務費であります。  第十三、国際連合への協力に必要な経費六千六百七十四万三千円は、国際連合機関調査研究に必要な事務費及び後進国経済開発技術援助拡大計画醵出金二千八百八十八万四千円と国際連合国際児童緊急醵出費三千六百十五万五千円であります。  第十四、国際労働機関アジア地域会議負担金支払いに必要な経費一千七百十四万一千円は、今秋東京において開催される国際労働機関主催の第二回アジア地域会議に対するわが国負担金であります。  第十五、日本合同委員会日本側事務局事務及び国連軍協定実施に関する事務処理に必要な経費五百十八万八千円は、日米安全保障条約第三条に基く行政協定実施機関である合同委員会日本側事務局事務及び国際連合軍との協定実施に関する事務に必要な経費であります。  第十六、情報啓発事業実施に必要な経費二千九百六十一万六千円は、国際情勢に関する資料の入手、海外に対する本邦事情啓発及び国内啓発等のため必要な経費であります。前年度に比し七百九万三千円の増加は、通信購読料啓発資料作成増加したためであります。  第十七、国際文化事業実施に必要な経費一千六百八十六万四千円は、文化交流を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な啓発宣伝資料作成購入経費及び国際連合協力の意思を盛り上げるため、国家的事業の一環として財団法人日本国際連合協会補助金七百万円と、日本文化海外紹介事業を主とする財団法人国際文化振興会補助金三百万円であります。前年度に比し一千二百十八万九千円の増加は、前述補助金増加文化紹介資料購入作成増加によるものであります。  第十八、未引揚げ邦人調査及び外地にある遺骨引取りに必要な経費二千七百三十八万六千円は未帰還邦人の氏名、生死等を明らかにし、引揚げ促進のための外交交渉及び留守家族援護策実施に必要な資料を整備するための事務費及びこの事務の一部を都道府県に委託するための委託費一千十二万円と、外地において戦没した同胞の遺骨引取り、墓地保存等協定に必要な事務費等であります。  第十九、旧外地関係事務処理に必要な経費五百一万二千円は朝鮮、台湾、樺太、関東州等旧外地官庁職員給与、恩給、その他残務整理に必要な経費であります。  第二十、旧外地官庁引揚げ職員等給与支給に必要な経費六千万円は、二十八年度中の旧外地官庁引揚げ見込み職員三百二十四名と、未引揚げ職員七百三名の留守家族に対する俸給その他の諸給与であります。  第二十一、移民振興に必要な経費三億一千六十八万三千円は、ブラジル開拓移民二千人を送出するための渡航費貸付金二億九千百六十万円及びこれが事務移民団体に委託するための経費一千万円等であります。  第二十二、神戸移民あつ旋所事務処理に必要な経費八百四万二千円は、移民本邦出発前における健康診断、教養、渡航あつせん等事務を行うため必要な経費であります。  第二十三、国際会議参加及び国際分拠金支払い等に必要な経費二億六千二百八十三万二千円は、海外で開催される各種国際会議わが国の代表を派遣し、また、本邦で開催される国際会議に必要な経費わが国が加盟している国際機関分担金であります。  第二十四、在外公館一般行政に必要な経費三十六億一千九百十一万九千円は、既設在外公館五十二館三百十七名と、二十八年度新設予定在米大使館ニユーヨーク分室、キューバ、ヴエネズェラ、カンボジヤ、イラン、オーストリアの五公使館、ヘルシンキ総領事館ペレーン、ダッカ、ラゴス、モンバサの四領事館に必要な職員三十六名及び既設公館職員増加六十五名計四百十八名の給与、赴任、帰朝、出張旅費事務費交際費等であります。昨年度に比しまして四億九千七百四十九万二千円の増加となりますが、そのおもなるものは職員給与改訂事務費及び交際費増加であります。  第二十五、対米宣伝に必要な経費三千六百万円は、日米親善に寄与するためわが国の政治、経済文化等の実情を組織的にアメリカ合衆国各地に紹介するための資料作成費講演謝礼及び事務費等であります。  第二十六、在外公館営繕に必要な経費三千六百三万円は、インド駐剳大使の公邸新営費及びフランス大使館事務所修理費等であります。  第二十七、国際会議事務処理に必要な経費二千万円は、在外公館所在地で開催される国際会議事務処理に必要な事務費であります。  母上がただいま上程されております外務省所管昭和二十八年度予算大要であります。詳細御審議のほどをお願いいたします。
  29. 西川貞一

    西川主査 それでは外務大臣に対する質問に入ります。
  30. 小島徹三

    小島委員 ちよつと外務大臣にお伺いしたいのですが、予算委員会における答弁で、白洲次郎君を特派大使としてアメリカに派遣されるときの費用は、白洲君個人で支払つたので、外務省から全然出ていないとおつしやつたのですが、そうですが。
  31. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そうではございません白洲大使アメリカに行きましたときの費用は、これは費用といつても全部ではありませんが、旅費規程等に認められております限度の費用外務省で支出いたしました。私が申したのは、今般欧州へ参るときに同様の支出をいたそうといたしましたところが、白洲大使は、欧州において電力の状況を視察したい、日本と同様な形にあるイタリアとかスイスとかイギリス等の水力電気の視察もいたしたい、その方の用務もあるからというので、欧州に出張いたしました今回は、外務省の旅費をもらわないといつて拒絶されて持つて行かれなかつたのであります。
  32. 小島徹三

    小島委員 しかしやはり資格としては特派大使ということになつているのでしようか。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 正確に言うと特派大使ではないのでありまして、外務省関係ではいわゆる特命全権大使というのと、それからただ大使というのとあります。特命全権大使というのは、閣議の決定を経まして、認証を行つて赴任する大使であります。いわゆるただ大使と申しますのは、外務大臣限りでその資格を付与しまして、たとえば国際会議に列席するとか、あるいは単に視察その他の話合いでも大使の資格を持つて行つた方がぐあいのいい場合があります。たとえば先般たしか津島壽一氏が外債の交渉で参りましたときも、同様な大使の資格を得ておりますが、これは外務大臣限りでやります、むしろ軽い意味の大使の資格を付与するというものでございます。
  34. 小島徹三

    小島委員 そうすると白洲君も今度欧州に行つたときは、そういう資格を持つているわけですか。
  35. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りです。
  36. 小島徹三

    小島委員 私のお聞きしたいのは、一体外務省はそういう資格を与えた場合に、当然それに伴うところの費用というか、月給というか、派遣の旅費というか、そういうものは外務省の規程によつて支給しなければならぬことになるのではないですか。一体そういう資格をもらつた人間が、自分の都合でその給与を断るというようなことは、給与体系と申しますか、そういうものの根本的な原則をくずすことになると思うのですが、一体その関係はどういうことになるのでしようか。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは各国でも特命全権大使というもの一本では、どうもそのときの情勢に合うような柔軟性を持てないのでありますから、大使として海外に出す人があるわけであります。たとえばアメリカのごときも、大使の資格を持つている人がパリだけで四人おるはずであります。各国でも、中にはたとえば大統領の使節として、大統領のポケット・マネー行でく人もあるようであります。また自分が十分の資力を持つてつて、奉仕的に行く人もあるようであります。またそういう意味ではなくて、ぜひこの人でなくてはいかぬから、金がない人であるけれども無理に頼むということで、費用はこちらで持つという場合もあるのであります。国費節約の意味からいいましても、その程度の余裕を持たして、いらない場合には費用を持たないで出せる方がよろしいということに一般なつております。わが国においてもその例によりまして融通をつけております。必ずしも旅費をいやでも持つて行かせるということもないと考えておりますので、さようにいたしております。
  38. 小島徹三

    小島委員 そういう慣例をつくりますと、将来たとえば実業界の人であるとか、いろな人が政治力を使つて、とにかく費用はいらないから自分に資格だけくれというのがだんだん出て来ると思うのです。現に終戦前におきましては、支那あたりには、そういうようなのがたおさん出て来てごろくしておつて、そういう人が資格を持つているがために、受ける方の相手方としては、これは日本の大使として、あるいは日本のそれぞれの高官として、相当な人だと思つて話をしておつたところが、とんでもないことを行つたために、日本人の官吏の人格とかいろいろなものを疑うというような問題が百起きて来たことが終戦前においてはたびたびあるのです。ですからそういう慣例をつくることは間違つておるのだ。いやしくも大使に任命する以上は、大使としての給与も出して一定の方式を守るということが、必要だと思うのです。現に白洲君の問題にいたしましても、私は個人的に白洲君をよく知つておりますから、かれこれ申し上げたくはないのですけれども、吉田さんが自分の好みで白洲君をそういうようにかつてに出して、しかも大使の資格を与え、費用は、白洲君が多分たくさん持つているのだから白洲君が出すのだということになれば――私は決して悪意に解釈いたしません、吉田さんの方では事情があつて白洲君を派遣なさつたことは、大体私も想像しておりますから、何もかれこれ申しませんけれども、こういう慣例をつくられると、将来とんでもない連中がいろいろな資格を持つて行きたがるときに、断ることができなくなつて来ることになると思いますから、そういう慣例は再び先例としてはやらないということを、この際はつきりしておいていただきたいと思うのでが、外務大臣そういう御意思がありましようか。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは考え方の相違でありまして、私の方から言いますと、外務大臣のやり方が悪ければそれまででありますが、そうむやみに大使を任命するわけでもございません。そこでそういう慣例をつくればいかぬかといいますと、たとえば政治力のある人が、今おつしやつたように何か資格をくれというときに断れないと断定しますれば、それに金までつけて断れないよりは、金をつけないで断れない方がいい、それだけ倹約になるのでありますが、一方には金がないからといつて断る口実がなくなるというお話もありましようけれども、私は人選を厳重にすれば、必要もないのに金をつけてやらなければならぬという非常にしやくし定規な規定に縛られるよりは、この方がいいだろうと実は自分では考えておるのでありますが、これはまだ始めてから一年にもなりませんから、その後のやり方を見て、悪ければかえることは何らはばかるところではありませんけれども、もうしばらく様子を見てみたい。現に金を出さずに派遣した大使というのは白洲君ただ一人でありまして、まだほかに例はないのでありますから、もうしばらく事情を見たいと思います。
  40. 小島徹三

    小島委員 幸い白洲君だけがそういう立場で行かれておるのでありますから、私はそれが再び先例になることはないと思いますけれども、たとえば白洲君にいたしましても、そういう費用を払つてないのだ、ただ大使の資格だけやつたということになれば、勢い外務大臣の指令下に置かれないというようなこともできて、外務大臣がそれでは大使の資格を剥奪すると言つたつて、かつてにしろ、自分は向うでかつてな行動をとるのだということになつて来て、外務大臣の威令が行われないということが出て来るのですから、そういう点はつきりと、これからはそういうことはしない、大使の資格を与える場合は、もちろん人選が第一でありますけれども、月給も払つてやる、そのかわり外務大臣の命令にあくまで従うのだというふうにしておかないと、実際これが将来禍根になつて来るのじやないかと思う点があるのです。現にアメリカの場合は、費用をお払いになつておつたのですから違うかもしれませんけれども、いろいろなうわさも聞かぬことはないのです。ですからそういうものを野放しで、費用は持たぬわ、とにかく資格だけは与えたということで外国に出すということは、私は将来大きな間違いのもとになると思いますから、今後そういう点十分留意していただきたいと思う次第であります。この程度で終ります。
  41. 西川貞一

    西川主査 ちよつと川島君に申し上げますが、外務大臣はよんどころない用件で十二時に退席されまして、また三時ごろから御出席を願うつもりでありますから、一応十二時までにしていただきたいと思います。
  42. 川島金次

    川島(金)委員 今のお話に関連するのですが、白洲氏の大使問題については、世上いろいろの臆測がなされおつて、必ずしも外務大臣白洲氏に対する大使任命は明朗なものを与えておりません。そこで一つ承つておきたいのは、白洲氏派遣の重要なる任務はどこに求めておるのか、それはどういうふうになつておるのですか。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはたびたび聞かれるのでありますが、要するに外務大臣とかあるいはアメリカに駐在する大使とかいうと、とかく相手の人も儀礼を考えますので、言いたいことも言えないということがあり得るのであります。ところがわれわれの最も知りたいのは、率直なる日本に対する考え方であり、また日本の実情を率直に先方に伝えるということであります。場合によつたら日本の悪口も含めて言えるような状況でなければ、お互いのほんとうの真意はわからないと思う。しかしながら日本から特命されて派遣されております全権大使は、日本自体の欠点等をそうむき出しに言うわけにも行かない場合が多いのであります。こういう点につきましては、民間の全然資格のない人では先方が相手にしませんけれども、大使の資格を持つており、非常に自由な立場において意見を交換するということは、決して無益なことではなく、ほんとうに役に立つことでありますし、また過去においてその必要を認めたからこそ、アメリカでもイギリスでも大使の資格を持つた人々あるいは閣僚の資格を持つた人々を各国に出したりして、いろいろ側面からこういう方面の認識をお互いに深めるという努力をいたしております。白洲氏についても、同様の意味でこちらの意見を率直に述べ、向うの意見も率直なところを聞いていただく、こういうつもりでおるのであります。
  44. 川島金次

    川島(金)委員 向うの意見も率直に聞く、こちらの意見も率直に述べるというが、まことに抽象的な事柄でのみ込めないのですが、そういう事柄の範囲の中でも重点的な目的があろうと思う。しからば向うの意見を聞くにはどういう問題について率直に聞こうとするのか、またこちらの実情を訴えるにしても、どういう問題について主力を注いで訴えるか、こういうふうに目的がなければならぬと思うが、この点はどうですか。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはおのずからありますけれども、たとえばアメリカ日本の間ならいかなる問題が今重要に考えられておるか、フランスと日本の間ならどうか、こういう点については御推量にまかせたいと思うのでありまして、わたわたは特にこういう任務を持たせて行かせたということではないのであります。いろいろの問題の中から最も重要と思われる点について、率直なる意見の交換をして行く、こういうことであります。また特命全権大使にしましても同様でありまして、一般的な任務を付与されておりますが、あらゆる仕事をするわけではなくて、重点的に仕事をいたすのでありますから、その点はそういう意味で御了承を願いたいと思います。
  46. 川島金次

    川島(金)委員 特別な任務がないわけではない、特別な目的もあつてという今のお話であれば、やはり特別な目的というものはこういうところにあるのだという二、三の例くらいはあげられるのではないかと思うのですが、その点はわれわれに推量してほしいと言われただけではちよつと納得ができない。堂々と出した大使ですから、堂々たる目的があつてしかるべきだ。その点についてくどいようですが、さしつかえないでしようからもう少しはつきりしていただきたい。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本側で何を最も知りたがつているかというようなことを言うのは、必ずしも国として得策の場合ばかりではないのであります。しかし一つの例を申しますれば、たとえばアメリカ経済は一体どういう状況なつておるか、これは非常に好況であるという説もありますし、あるいはソ連のようにアメリカ経済は、もう資本主義が行き詰まつて、もうじき崩壊するのだという説もあるわけであります。われわれはアメリカ経済がどつちの方向を向いているか、あるいはアメリカの労働問題はどつちの方向を向いているか、この実情を知るだけでも非常な参考になると思います。
  48. 川島金次

    川島(金)委員 何かせつかくの堂々たる大使の派遣があいまい模糊として、漫然と視察してもらうようなかつこうにわれわれには受取れるのです一政府としてもあれだけの人を堂々と派遣したのですから、何か国民の納得できる。なるほど白洲氏にして初めてこういうこともできそうだ、なるほど岡崎外相は適任者を選んだなあと、国民大多数が納得のできる線というものがあつてしかるべきだと思うのです。白洲氏問題については、国民の中にもいろいろの若干明朗ならざる観察をしておる者があるだけに、こういう機会に外相は、せつかくの人を派遣したのですから、国民の納得できるような、いろいろの風説に対しても割切つて公開のできるような説明を国民にするということはたいへん必要なことであると思う。また白洲氏のためにも必要ではないかと思うのですが、もつと一歩つつ込んで率直にわれわれにひとつ話ができないですか、いかがですか。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは先ほど申した理由によりまして、私は差控えたいと思いますが、さらに一つだけつけ加えますれば、日本で今総理も再軍備はできない、経済的の関係もあり、国民の中の考え方もいろいろでありましてまだ一致しておらないと言つておられますが、こういう点についても率直なる説明をいたしてみるということも、これは日米両国の将来の理解のためには非常に必要である。こうも考えられます。
  50. 小島徹三

    小島委員 ちよつと関連して、外務大臣にお聞きいたしますが、そういうことも一つの目的だつたのでしようか。そうすると私は白洲氏の意見というものを聞いておるし、吉田総理大臣の意見というものも私は聞いておるのですが、そういうことを聞きに行つたのではないのではありませんか。それは外務大臣がそういうことも多分関連してやるだろうと思われるというだけで、そうはつきりそういうことを聞きに行つたのではないでしようと私は思うのですが、いかがでしよう。もしそういうことだとすると、私たちもう少しつつ込んで聞かなければならぬところが出て来るのですが、いかがでしようか。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はそういうことの説明も一つの重要なる点である、こう申したのであります。
  52. 小島徹三

    小島委員 説明に行かれたということですね。そう聞いておいたらよいですね。
  53. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その説明にわざわざ行つたわけではありませんが、行つた以上はその説明もする。こういうことであります。
  54. 川島金次

    川島(金)委員 なかなか重大な用件も帯びておるということが、それで一つわかりました。なお時間をかければだんだん小出しに、打出の小づちのように出て来るのでありますが、大臣も十二時には退席の御様子ですから、この問題はいずれまた後にお尋ねする機会を留保しておきたいと思います。  そこで時間がありませんから、一つだけ時間中にお聞きをしておきたいのです。これは外務省の直接の予算には関係がありませんが、日本の財政、予算経済にはきわめて重大な関係がありますし、この問題について私も予算委員会等で時間の都合上お尋ねをしかねておりますので、この機会にここで聞いておきたいのでありますが、問題の対日援助資金の事柄であります。この問題については、いつの間にか政府は、これを日本の立場においてのアメリカに対する債務と心得るということになりまして、昨年度及び二十八年度にわたつての平和回復善後処理費の中にそれを若干予定されておるようでありますが、一体債務と心得なければならなくなつた経過というものはどういうことであるか。これを率直に申し上げれば、対日援助資金に対してアメリカ側から日本政府に対して、これはお前の方に貸した金だという話が正式にあり、従つてこれはいずれは返してもらわなければならないのだという正式の話が行われたかどうか、その点はどういうふうになつておるのでありますか。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう御質問だと逆に私から質問しなければならないくらいになるのですが、一体対日援助費等はアメリカ日本に対する贈与であると言つたことがあるかどうか、私はないと思います。そこでわれわれはこじきではないのだからして、人からただで物をもらうということは好まない。そこでもらつたものは返したい。こういうのが偽らざる気持でありますが、但しどれだけ返すかは別問題であります。
  56. 川島金次

    川島(金)委員 それはちよつとおかしいのであります。なるほどただでもらいたくはないのだという民族的な気概はまことに悪いとは思いません。しかしわれわれの理解し、了解しおりましたところによれば、これは当時から債務であるのやら贈与であるのやら、明確ではなかつた性質であつたことは、岡崎さんもよく御存じだと思います。特にそのウエートをはかつてみれば、その当時の国民及び議会は、これはむしろ贈与されたのではないかというぐあいの感じで、理解をしておつた者が多かつたということもいなめない事実であります。従つてつて予算委員会その他の委員会で、吉田総理あるいは当時の大蔵大臣もわれわれの質問に対して、これが債務であるとははつきり言つたことがないのであります。従つてそれに基いて岡崎さんも御承知のように、本会議で再三にわたつて感謝決議をしたということもまぎれのない事実であります。従つて急に日本政府予算の上に若干でも資金をのぞかせなければならぬ。しかも対日援助資金は債務であるというふうに考えなければならぬような確定的なところに行つたには、それまでに何かのいきさつがあるのではないかと思うのです。今申し上げましたように、アメリカから何らかそのような正式の内意があつたのやらなかつたのやら、その点はどういうことになつておるかという点について、私はもう一ぺん聞いておきたいと思います。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは意見の相違になると思いますが、たとえば私自身のことを申しますれば、私は最初から債務である、つまり借りだと思つておるのであります。しかし債務であると言い得ないのは、額が確定しておりませんし、また国会の承認も得ていない以上は債務と確定はできないが、債務と心得ておる、こう言つたと思います。感謝決議等は私も承知しておりますが、これは当然だと思うのであります。なぜならばあの終戦直後の食糧等の非常に困つたときにおいて、貸してくれるにしても――くれればもちろんなおさらでしようが、かりに貸してくれるにしても、よそのどの国があれだけの食糧を、日本に貸してくれる国があつたでしようか。借りたにしてもわれわれ日本の胃を飢饉から救つた功績は、非常に大きなものであります。そのあとで返すにしても、そのとき融通してくれる余裕のある国は、あの当時の情勢ではほかにはなかつたと私は思うのであります。従つて債務であるなしは別として、とにかくあの二、三年の苦しい状況のときに、難関を切り抜けて来られるようになつたその大きな原因は援助でありますから、これは感謝をいたすのはいずれにしても当然だと私は考えております。あのときもしあれがなかつたら一体どうなるか、これをお考えになれば、もう私が御説明するまでもないと思うのであります。そこで御質問の、何か特別のことがあつたのかということでありますが、そうではないのでありまして、政府は前々から債務と心得ておると考えておりまして、そういう趣旨のことも言つたのでありますが、ただ本年度の予算から組み始めましたのは、独立いたしまして見返り資金等の勘定がかわつて来る。また独立した以上は、この交渉のために必要であろうと考えて、いるかいらないかまだわかりませんが、いるであろうという予想のもとに組んだのでありまして、つまり独立したので新しく予算を組んだ、こういう関係であります。
  58. 川島金次

    川島(金)委員 私はあれをもらつたという立場において、感謝決議が行われたというのではなくて、今申し上げましたように、ウエートをかければそういつた気持も多分にあつて、その基礎の上に立つて感謝決議が行われたと思う。それは対日援助というものが、混乱した日本経済の復興の上に役に立つたということを、われわれは否定しようというのでは断じてありません。ただ問題は、独立以前には政府も大蔵当局なども、これは債務だと言明はしていなかつた。ところが独立すると、にわかに手のひらを返すように債務だと心得るのだということになつて来た。そこに私は歴史的に、段階的に割切れないものが当然に起つて来ていると思う。そこでアメリカ側の方からそういつた一つの申入れとか、あるいは内示というものがあつたのかどうか、そこなんです。それがなくてもあつても、とにかくアメリカではくれたつもりであろうがなかろうと、こつちは返すのだというので、政府が一方的にこれを債務と心得て、なしくずしをしようとして準備をされたのかどうか、その点の微妙ないきさつはどういうふうになつておるのでしようか、それを聞きたい。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカの希望のあるなしにかかわらず、政府とし三はそういうつもりで計上したのであります。そこでただアメリカ側としましても、従来から、何といいますか。対日援助といいますとガリオア資金だけではないのでありまして、たとえばイロアもありましよう、余剰物資もありましよう、あるいは払下げ物資とか報奨物資とかいろいろなものがあります一中にははつきり契約をして、これはこういうふうに払うというのもありましようけれども、全体の、とにかく日本側に対する債権債務の関係を確立したいという希望は、アメリカ側は前からある。従つて向うから全然希望がないとは言えません。言えませんが、どれを債務にするかということについては、まだ話合いはついておらない。われわれの方はそんなことは別として、値りたものは返すという建前で行きたい、こういう考えであります。とえばガリオアにしましても、あれは御承知のように、オキユバイド・エリアということになつておりますから、沖縄も入つておるかもしれず、朝鮮も入つておるかもしれません。従つてガリオア全体の予算面から出ている中で、どれだけがどこへ行つてどれだけ日本に落ちたかということは、これは資料によつて調べなければなりません。先方には資料がありましようけれども、日本側としては、実際これを国内に配給したり何かした資料によつて調べなければならぬのであります。また非常にはつきりしているような余剰物資というようなものでも、向うからなるほどカン詰を何万個もらいましたにしても、その中に役に立たないようにこわれているものもあるかもしれない。そんなものをちやんと勘定してみなければ、実際にこちらはどれだけということは言えないと思います。こういう資料は、日本側としては日本側の資料をつくらなければ、そういう話合いもできないような立場にあろうと考えて、こちら側も資料の整備を急いでおりますが、終戦当時のあの非常に混乱した状況のときには、とにかく物をもらいさえすればいいというような場合もありましたし、また地方によつては、軍の方で見るに見かねて地方に物資を流したというようなこともありますので、なかなかその当時の資料が集まりにくい。そこでこちらとしては、まだ十分な資料が整つたというわけに行きませんので、一体どれが債務であるかということも、話合いはまだできないような状況なつているわけであります。
  60. 川島金次

    川島(金)委員 今の外務大臣の話で初めてわかつたのですが、私はアメリカの方からは何もそういつた意向がないにかかわらず、一方的な立場で、日本だけがこれは債務だということで出発を始めた、こういうふうに今まで聞いておりました。今のお話によりますと、アメリカ側からもこの問題については、対日援助を中心とした債権債務をはつきりさせたいという正式な話があつたと理解してよろしいのですね。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 正式なというのは、どういう意味でおつしやつているのかわかりませんが、正式な話というのは、文書の話もありましようし、責任者同士で口で言つても、また正式な話と言えましよう。とにかく先方にはそういう希望があることは間違いありません
  62. 川島金次

    川島(金)委員 そこでこの問題と似通つた問題で、外務大臣が承知しておつたならばこの機会に明らかにしてもらいたいのですが、アメリカとイタリアとの間の場合はは、アメリカ側からイタリアの方へ、問題の援助資金について請求をするという積極的な形で出たのか。それとも日本のように、イタリアもアメリカの援助に対して、もう初めから向うの話あるなしにかかわらず、イタリア自身が債務と心得て折衝に入つたという形になつているのか。その点がどういうふうになつておつたか、そのイタリアの関係調査がしてありましたならば、この機会に、大臣でなくてもけつこうですが、御承知なら聞きたいのです。
  63. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはたしかに交渉の結果ではありますけれども、今おつしやつたように、どつちが先に話を持つて行つたか、これはちよつと今資料がありませんから、調べてからあとで御説明いたします。
  64. 川島金次

    川島(金)委員 イタリアにアメリカ側からなされた援助、それに対して債務としての請求をされた経過、及び全体の額に対して、どのような形で最終的に、そのうちの何割かが債務と決定して返還をしなければならぬようになつたか、そういつたことについての、あまりこまかくなくてもいいのですが、大体のところがわかるような調査がありましたならば、後刻でよろしゆうございますから、それをこの委員会に出していただきたい、こう思うのであります。さらに、大臣に時間がありますれば続けたいと思いますが、いかがですか。     〔「食事にしろ」と呼ぶ者あり〕
  65. 西川貞一

    西川主査 それでは、午前の会議はこの程度で休憩いたしまして、午後一時から再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十八分開議
  66. 西川貞一

    西川主査 休憩前に引続きこれより会議を開きます。  労働省所管について質疑を継続いたします。川島金次君。
  67. 川島金次

    川島(金)委員 まず午前中に質問をして答えが出なかつた就業人口のうちの男女別の構成、それから未成年者の就業しております数はわかりましたか、それをまずお伺いしたいと思います。
  68. 中西實

    中西政府委員 午前中のお話の表を今つくらしておるところでございます。男女別年齢別との組合せがちよつとすぐにできませんので、できるだけのものをつくつて差上げたいと思います。今わかつておりますのは、全就業人口のうち十四歳から十九歳、この数が十一月で五百十四万という数字が出ております。
  69. 川島金次

    川島(金)委員 男女別はわからないのですか。
  70. 中西實

    中西政府委員 それは今わかるだけのものをつくらしております。
  71. 川島金次

    川島(金)委員 そこで続けてお伺いしたいのですが、この就業者の業種別の平均賃金は現在どのくらいになつておるか、調べがあつたらばこれはこまかい区別でなくてもよろしいです、大ざつぱな部門別の平均賃金、これはねかつておりますか。
  72. 龜井光

    龜井政府委員 所管が違いますから、私からお答えいたします。毎月勤労統計に出ております金額で申し上げますと、これは一般的なものでありますが、製造工業は十一月一万二千八百六十六円という毎月勤労統計調査の結果が出ております。それからマイニングー鉱業の方でございます、これが九千二百十三円、こういうふうになつております。
  73. 川島金次

    川島(金)委員 運輸通信の方は…。
  74. 龜井光

    龜井政府委員 運輸通信事業でございますと、一万三千二十一円でございます。
  75. 川島金次

    川島(金)委員 最近私の調べましたところによりますと、これは労働省でもわかつておろうと思うのですが、いわゆる労働戦線における春季闘争が展開されようといたしておるのであります。この春季闘争の焦点は、いわゆる賃金の引上げを中心としての闘争のようであります。それでたとえば運輸交通に関係のある私鉄は、現行のベースに、地方においては三千円、都市においては四千五百円という現行賃金の三〇%の値上げを要求しようといたしております。鉄鋼またしかり。日通などにおきましても、これは平均新賃金として実に二万五千円という問題を提起しております。全繊ではこれまた現行の二五%の引上げ、きわめて健全な民主的組合といわれております海員組合においてさえも一〇%の賃上げ、なお国鉄においては現行の一万三千四百円を、一万八千五百円の新ベースを確立いたしまして、これが実現に強力な闘争を展開しようと心構えて、すでに中には闘争が開始されたところもあります。こういう問題は次第に全国的に盛り上つて参りまして、やがては一つの政治問題にもなつて来るというけはいが感ぜられるのであります。私はこういつた問題に対する見解をしいて聞こうと思いませんが、今申されましたたとえば全国の製造工業に従事する労働者の平均賃金が一万二千八百円、鉱業のごときはわずかに九千二百円、交通、運輸、通信にしてようやく一万三千二十円という数字が出ておるようでありますが、現在これらの労働階級の平均賃金が、今日の物価の実情や労働階級の生計の実態等からいたしまして妥当なものであると考えるのか、それともこの平均賃金は個々産業別に大差がありますが、これを何とか労働省としては引上げをし、あるいは格段のでこぼこのあるものを調整するという方向に努力するという心構えがあるのかどうか、もしあるといたしますれば、今日までどのような努力を当局としては払つて来たか。これは事務当局にお伺いすることは若干無理のようでございますけれども、所見があればひとつ率直に明らかにしてもらいたい。
  76. 龜井光

    龜井政府委員 先ほど申し上げました数字でございますが、あれは全国のすべての平均でございまして、たとえば五百人以上をとりますと、製造工業におきましては一万五千九十四円というふうな数字なつております。もう少し詳しく申し上げますと、百人以上五百人未満が一万二千三百五十六円、三十人以上九十九人までが九千五百二十八円というふうな形になつております。今の御質問の趣旨は、大臣からでも御答弁いただく基本的な政策的な問題でありますが、われわれといたしましても、現在の給与の問題につきまして、いろいろな角度から検討は加えております。賃金というものは労使間で自主的にきめて参りますものでございまして、政府がこれに介入いたしますことは必ずしも適当でないと思うのでございます。ただそれが中労委あたりの調整機関に出ました場合におきましては、それとして別個の意思決定があろうと思いますが、政府自体といたしましては、賃金の問題につきましては、労使間の自主的な解決にまかしておるわけでございます。ただそれにいたしましても、現在の給与の体系、たとえば生活給、能率給というふうなものが諸外国の例等を参酌いたしまして、どういう体系が適当であるかという問題、また現在の物価の水準あるいは生活の水準等と比べて、現在の賃金がどうあるべきかというふうなことも研究はいたしております。しかしそれがただいま御指摘になりました労使間のいろいろ賃金の争いに、ただちに適用されるかどうかということは別問題でございまして、それにはいろいろな要素が労使間において話合いの上できめられて行くのじやないか、われわれはただそういう諸外国の例、あるいは現在日本に行われておる客観的ないろいろな条件の上において検討を加えておるという段階であります。
  77. 川島金次

    川島(金)委員 大きな政策上の問題については、いずれ大臣にお伺いをいたしますが、最近の労働組合の賃金の算定をいたします有力な基礎となつておるものに、いわゆるマーケット・バスケット方式というのがあります。この問題については組合内にもいろいろの意見があるし、また政党にも、政府にもいろいろの賛があることは峯でありますが、このマーケット・バスケット方式を条件として算定いたしました賃金が、百実際的に現に実施されておるという何か外国の実例が今日まであるかどうか、その点について調査がありましたら、この機会に示してもらいたいと思います。
  78. 龜井光

    龜井政府委員 今所管の部長が参つておりませんのですが、統計調査部でその問題を調査いたしております。私今手元資料がございません。いずれまた連絡いたしまして、御答弁いたします。
  79. 川島金次

    川島(金)委員 これは私どもがぜひ承知をしておきたい重要な問題でありますので、早急にひとつお取調べを願いまして、この委員会の開会中に御発表願いたいと思うのでございます。  そこでさらに続いてお尋ねをいたしますが、先ほど当局の発表いたしましたところによりますれば、いわゆる不完全就業者というものが六百万を越えております。この中には、先ほどお話がありましたように、不完全な状態において満足をし、しいて新たなる完全な就業を希望しておらない向きもある。これはまあ、あろうかと思いまして、われわれも異議をさしはさむものではございませんが、この不完全就業者の中でも、できればひとつ完全就業の位置に立ちたいという者も相当数あるのではないかと私どもは想像をいたすのでございますが、この不完全就業者のうちのそうした希望を持つておる者、あるいはそういうことに努力をしておる者に対する調査が行われておりますならば、これもひとつ数字をあげて示してもらいたいと思うのですが、いかがでございましようか。
  80. 中西實

    中西政府委員 午前中申し上げましたが、五百九十二万のうちで就業を希望しておりますのが、二十万という数字が一応出ております。
  81. 川島金次

    川島(金)委員 私の考え違いでした。二十万という数字は確かにお話がありました。そこで残る五百七十万というものは、不完全なままで満足をしておる状態だということになりますが、この不完全就業者の中で、いわゆる非農林関係あるいはまた反面の農林関係、こういう関係に立つところの区別が調べてありましたならば、それをひとつ示してもらいたい。
  82. 中西實

    中西政府委員 月々で非農林、農林の数字が非常に動いておりますが、大体半々程度になつております。
  83. 川島金次

    川島(金)委員 ではまたさかのぼつた質問になりますが、午前中の発表によりますと、いわゆる完全な失業者が十一月現在で四十九万に及んでおる。この四十九万の完全失業者というものは、失業保険の対象となつておる者だけの数字であるか、失業保険の対象でない者も含めての数字であるかどうか、その点はどうなつておるか。
  84. 中西實

    中西政府委員 今の失業者の数の統計は、労働力統計でやつておりまして、これは全国の抽出調査でやつております。そこで失業保険とのからみ合いがどうなつておるかということの関連がよくわからないのでございます。全然違う統計で出ておりますので、どの程度その中に失業保険の関係が入つておるか、これがはつきりいたしません
  85. 川島金次

    川島(金)委員 失業保険の対象になつておる失業者というものは、きわめて簡単にわかつておるのだと思いますが、労働省ではそれがわからないのですか。
  86. 中西實

    中西政府委員 失業保険の受給者は、大体現在三十二、三万ございます。それと今の四十何万の数とは根拠が違いまして、からみ合いがはつきりいたしません
  87. 川島金次

    川島(金)委員 失業者調査というものは、抽出方式によつて行われておるのですから、必ずしも正確なものとは言えないでしようし、また正確なものをつかみ出すということは、現状ではきわめて困難だと思うのであります。われわれの推測するところによりますと、実はこの程度ではないのではないかという懸念がしておる。そこでお尋ねいたしますが、職業安定所に集まつて参りますところの就職を希望する者は、その日その日によつてもちろんいろいろ数字の格差はあろうと思いますけれども、たとえば完全失業者が十一月現在で四十九万と出ておりますが、十一月現在における全国の職安に職業を求めた者の数はどれくらいになつておりますか、ごく最近における調べがあつたら伺いたい。
  88. 中西實

    中西政府委員 われわれの方で求職の受付をいたしまして、それに対して求人口を見つけて就職させますその申込みは、二箇月間有効にいたしております。そこでこの有効期間中の求職数を申し上げますと、十一月で八十九万八千人、十二月で八十四万八千人、最近若干減つておる傾向にございます。
  89. 川島金次

    川島(金)委員 この調査によります窓口の人員というものは、必ずしも固定された失業者とはわれわれもあえて即断をするものではございませんが、十一月現在で、午前中に発表になりました労働省調査による失業人口四十九万というのと、職安の窓口による九十万近い数とのにらみ合せをいたしました場合に、実際の失業者というものは四十九万よりも相当上まわつておるということが、想像されるのではないかと私は思うのでありますが、労働省の当局はこの点をどういうふうに考えられておりますか。
  90. 中西實

    中西政府委員 さつきの労働力調査におきましても、現在就職しておるが、さらにほかのよりよいところに就職したいという希望者が相当数出ております。同様にこの窓口に現われました今の数字は、大体二箇月分の求職者でございますが、この中にも現に職にあつて、さらによりよいところという希望者が相当あると存じております。それを差引きまして、今の失業者の数とどういう関係になりますか、これは統計上はつきりは出ないのでありますけれども、この中に相当現在職を持つておる者も含んでおるというふうに考えております。
  91. 川島金次

    川島(金)委員 大ざつばな話で恐縮ですが、調査による十一月現在の完全失業者四十九万、職安関係のそういう状況にある者が八十数万に及ぶ、そうすると大ざつぱな見当として、この四十九万と約九十万との中間の線を取出したいわゆる六十万程度のものが、実は完全失業者なつておるというふうに想像しても、あるいはあまり遠くないのではないかという感じが私はいたすのですが、その点はどういうふうに考えられましようか。
  92. 中西實

    中西政府委員 その点今の抽出調査は、先ほどもおつしやいましたように、きわめて少人数のものの抽出調査なつておりまして、従つて月々非常な変動があるのでございます。そこを修正いたしまして、大体十二月は四十九万ということを言つておりますけれども、それと今の窓口に現われましたのと、実はまん中をとつていいのかどうか、その点の確信はございません
  93. 川島金次

    川島(金)委員 それではさらにお尋ねをいたしますが、十二月現在とすれば八十四万八千という厖大な数字になりますが、こういつた厖大な就職希望の申込みに対して、一体どのくらいの就職能率が現われておるか、その点はどうなつておりますか。
  94. 中西實

    中西政府委員 求人の方は、最近の数字を申し上げますと、十一月が二十四万一千、十二月が二十一万九千という数字なつております。
  95. 川島金次

    川島(金)委員 ちよつとしつこいようですが、お尋ねします。この求人の中でどういう種類の業種が大部分であるか、そんなことの調べがありましたら、この際示してもらいたい。
  96. 中西實

    中西政府委員 今産業別の詳しい数字を持ち合せておりませんけれども、概して申し上げますと、サービス業と商業、それに金融機関、こういう方面が相当ふえて来ております。なお工業部門におきましては、雑品工業が若干よくなつて来ております。これに対しまして悪い方を申し上げますと、金属工業、繊維関係、これの求人が最近非常に減つております。
  97. 川島金次

    川島(金)委員 なお続いてお尋ねいたします。今度はその反対側をちよお尋ねしたいと思います。最近特需の関係の仕事が若干ふえて行くという傾向があるのでありますが、この関係できわだつた雇用関係の増大というものが出ておるかどうか、その点はどういうふうになつておりますか。
  98. 中西實

    中西政府委員 特需関係ではことさらに目立つという傾向は、まだわれわれの方で把握しておりません
  99. 川島金次

    川島(金)委員 そうすると、特需関係ではあまり顕著は雇用の増減がないというふうに理解をいたすのですが、そこで特需の話が出ましたから、ついでにお尋ねをいたします。この特需とは直接間接関係あるということになると思うのですが、いわゆる駐留関係に雇用されております労働者関係について賃金、雇用条件あるいは解雇、そういう問題について、最近ひんぴんとして、われわれの立場から受取るならば、あまり愉快でない現象が起つておるようであります。たとえば日本の側におけるところの労働法を基準として行わるべき雇用関係条件というものが、一方的な立場において踏みにじられて来る、こういつた問題もかなり多数出ておるという話であるし、また賃金の問題についても、問題が各所に起つておるという話も聞いておるのでありますが、この駐留関係の雇用労働関係について、最近そういつた問題について、労働省としてはどのような対策を持ち、あるいは処置をしておるか、そういうことについて若干の例をあげて示してもらえればけつこうと思います。
  100. 龜井光

    龜井政府委員 それは調達庁の方が主管でございまして、こまかいことは存じませんが、目下のところ、労務基本契約につきまして、日米相互間におきまして、従来占領中に結ばれました契約の改訂について、外交交渉が継続されているところでございます。まだ結論に到達してない状況でございます。労働条件につきましては、占領中におきましても労働三法の適用があるという建前で進んで参つております。独立後におきましても同じ建前で進むのではないかと思うのです。ただ個々の具体的な労働条件という問題になりますと、賃金の関係におきましては、特別調達庁の長官と駐留軍労働組合との協定によつて参りましてこれにつきましては、労働省としましてどの額が適当であるかというふうなことについては、先ほども申し上げましたように、賃金の決定そのものについては政府は介入しないという建前でございますので、これについての批判はできないのでございます。ただ最近の問題といたしまして、公務員の給与ベース引上げに伴いまして、賃金の引上げ問題について中労委に提訴されております。それにつきまして中労委の裁定がございまして、この二三%増加という裁定につきまして、米軍側で承服しがたいというふうな見解もございまして、いろいろ問題があつたようでございます。しかしこれも最近円満に解決したという報告をわれわれ受けているわけであります。そのほかのこまかい個々の事業場におきまする労働条件の問題につきましては、従前と比べますと、問題が非常に少くなつて参つているとわれわれは考えておる次第であります。
  101. 川島金次

    川島(金)委員 当局は、そういう問題について若干改善されているかのようなお話でございますが、最近私が手にいたしました某雑誌の記事によりますと、労働条件の問題について、かなり随所に、まことに不愉快千万な問題が起つているようであります。この記事が正鵠を得ているものかどうかは別でございますが、至るところに労働者の不当解雇などが頻発しているのではないかという感じを、この記事からは受取るのでございます。たとえばこういうことがあるのです。一ぺん解雇をいたしました労務者は、その請負者が持つている組織のいかなる部分においてもこれを使つてはならないという条件を付して、解雇をする。こういつた問題は、私どもは実にゆゆしい一つの条件ではないかと考えられるのであります。さらにまた、たとえばある工場のごときは、二千人もの従業員がいるにかかわらず、そこには食堂の設備も、湯茶の接待の設備さえもないとか、あるいは夜食は、五時間の残業をしなければ出さない、しかも五時間たつて初めてコッペパンを一、二箇出す程度であるとか、あるいはその職場の中においては喫煙室がなくて、しかも休憩中においても喫煙が禁ぜられておる、その他安全、衛生施設についても実にめちやくちやなところさえもこの駐留軍の労務関係の職場にはある、こういつた事柄が報道されておりますが、こういつたことについて労働省としては調査をしたことがあるのか、また調査をしたといたしますれば、こういう問題に対してどういうふうに指導をし、対処しておるのか、その点をひとつ伺つておきたいと思う。
  102. 龜井光

    龜井政府委員 今御指摘になられましたいろいろな具体的な例につきましては、まだ承知してはいないのでございますが、こういういろいろな問題につきましての監督の結果、その事実を発見いたしました場合には、監督官が現場の当事者と直接話合いをしまして是正させる、あるいは調達庁の労務管理事務所を通じまして是正をさせるというふうな措置を、今までとつてつて来ておるわけでございます。もし御指摘のこういう点につきましてさらに具体的に調査をいたしまして、そういう事実があつたとすれば、われわれとしまして労働基準法に定められております基準に従いまするよう是正をさせたいというふうに考えております。
  103. 川島金次

    川島(金)委員 ここに記載されております工場を申し上げますというと、日本モーター子安工場、これはしかも二千人も従業員がおる。そうして特需工場であります。しかも今申し上げましたように二千人の従業員をかかえておるにかかわらず、食堂もない、湯茶を出す設備もない、しかも一日中労働者には喫煙が厳重に禁ぜられておる。しかもその上に喫煙所などは設けてない。その他安全衛生の施設等について、あるいは機械の不備に対する危険の防止等については、何ら具体的な処置がされておらない。こういつたことが中央公論の三月号に出ております。こういつた実に乱暴きわまる、われわれの常識では判断のできないような労働条件のもとに駆使をされております労働者がおるということをはつきり書いてあるのでありまして、この子安工場だけの問題ではなしに、他の記事を拾つてみますと、さらに驚くべき事実が、不当解雇の問題あるいは工場の設備の問題、労働条件の問題いろいろ問題があるようでありますので、私はいやしくも日本の独立を確保いたしました目上、こういう問題については相手方のいかんにかかわらず、労働者の賃金あるは雇用あるいは労働条件、設備等についても、一層厳重に守られて行かなければならないのではないか。相手方がアメリカであるがゆえに、不当な労働条件に甘んじなければならないという理由は断じて日本側には、ないと思う。従つてこういつた問題について労働省としても、厚生省の関係もございましようが、すみやかに全国的な調査を行い、しかもこれに対する抜本的な解決をはかるよう努力をし、そうして一方においては日本の独立国家の工場としての権威を確立して、あわせて労働者の労働条件の改善及びその条件の擁護のために、政府といたしましても責任を持つて努力をすべきではないかと私は思いますので、この点を強くこの機会に要望をいたしておくわけであります。  そこで続いてお伺いするのでございますが、先ほど申し上げましたように、全国の単産組合が春季攻勢と称しまして、賃上げの強力な闘争を展開しようといたしております。そういつた問題について私は先ほどお尋ねをいたしたのでありますが、事務当局のゆえをもつて、それに対する具体的なお答えをしいることは無理だと思いまして差控えたのでございます。これまた事務当局にお尋ねすることは若干の無理があると思うのですが、たとえば中央労働委員会の最終的な裁定あるいはまた公共企業体関係の最終的な裁定などがあります。これがややもすると、労働者側よりはむしろ経営者側の態度によつて実行ができない、こういう問題がここ引続き出ておるのであります。いやしくもこの委員会をつくりました精神というものは、これは労使関係の最終的な判決だという立場をとるべきだとわれわれは理解をいたしておるのでありますが、一体労働省関係者としては、こういつた事態に対してどのような見解を持たれておるのか、お尋ねをすることは若干無理なこともあろうかと思いますが、そういうことについての見解があれば示していただきたいと同時に、こういつた委員会の裁定をもう少し権威あらしむる方法が講じられなければならぬのだと私は考えておるのでありますが、そういつたことについて事務当局はどんな見解を持つておるか、この機会に示してもらいたい。
  104. 西川貞一

    西川主査 所管の局長出席しておりませんが、よく要旨をお聞きになつあと大臣からでも答弁していただくようにしてください。
  105. 川島金次

    川島(金)委員 この問題は非常に重要な問題だと思いますので、後刻、大臣はもちろんでありますが、大臣が来られませんならば事務当局に一応の見解を承り、さらに大臣の所見なども伺つてみたいと思うのであります。  それからさらに、私一人でお尋ねを申し上げてまことに恐縮でありますが、午前中の説明によりますと、労働者福祉向上労働能率増進をはかるため、さらに産業災害減少と職業病の発生防止、こういつたことに相当な努力をするための費用が計上されたという説明であります。そこでお尋ねするのですが、従来労働委員会等できわめて重要な問題として論議されて参り、しかもその対策についてはまだ必ずしも完全なものでないように私どもは承知しておるのでありますが、いわゆる珪肺対策の問題について、一体労働省はその後どういうような具体的な処置をとつておりますか、その点を示してもらいたいと思う。
  106. 龜井光

    龜井政府委員 珪肺対策につきましては、われわれとしまして、年を追いましてこれに対する対策の強化をはかうておるわけでありまして、来年度予算におきましても、珪肺の巡回検診その他珪肺の関係におきまして約四百万円ほどの増額をいたしまして、この検診の強化をはかりまして、できるだけ早期にその患者の発見に努めるということがその一つであります。第二といたしましては、その発見をいたしました珪肺患者を収容いたします病院といたしまして、ただいま栃木県に珪肺の療養所がございます。これは珪肺の患者を試験台といたしまして、実験をしながら療養に当るという施設でございます。これを来年度におきましても拡充をいたしまして、その規模をさらに大きくしたい。またそこに併設しております珪肺試験室、これはもつぱらこの治療につきましての対策を研究いたすものでございますが、この珪肺試験室につきましても予算増額いたしましてこれの拡充をはかつておるのであります。さらにまた来年度新規に労災病院を約六箇所設定をいたす予定でございます。こういうところにおきましても特に岡山地区のように珪肺患者の多発しておりますところでは、珪肺を主体としますそういう療養の施設というものも来年度予算において強化して行きますつもりであります。  さらにまた昨年九月一日から施行されております労働基準法の改正によりまして、休業補償費のスライド制が実施せられておるわけであります。それが本年一月一日から実施されました関係上、われわれもその推移を見ましてこれが目的といいますか、スライド制を実施いたします目的にかないますよう、事務的な整備を今はかりつつある次第であります。基本的な問題としましては、現在の療養期間三年を延ばすかどうか、あるいはそのほか珪肺特有の問題といたしましての配置転換の問題とか、あるいは栄養の補給の問題、  こういうようなものも検討は加えておる次第であります。しかし根本問題としましては、現在の世界の医学をもつていたしましても、珪肺に対します根本的な治療法はまだ発見されていない段階であります一従いましてわれわれとしましては、極力予防の面に今後の行政の重点を置くべきではないか。これにつきまして通産省とも連絡をいたしておるのでありますが、通産省といたしましては、従来の乾式の鑿岩機を湿式にかえまして、できるだけ塵灰をなくして行くという措置も講じております。さらにわれわれとしましては来年度試験研究費を三百五十万円ほど計上いたしておりますが、これによりましてそういう予防施設の委託研究を今後やつて行くように、われわれとしまして所要の措置を講じたいということを考えております。とともにまた先ほど申上げましたいろいろの給付の面の問題は、直接特定の経営者に負担の増を来します関係上、これをただちに実施し得るかどうかという問題につきまして、今話合いを進めておる段階でありまして、その点についてはまだ結論を得ておりませんが、如上のいろいろの諸施策を総合いたしまして、この対策の強化をはかつて行くようにしたいと思つております。
  107. 和田博雄

    和田委員 三百五十万円の研究費は珪肺だけに対する研究費でありますか、他のものは含まないのですか。
  108. 龜井光

    龜井政府委員 労働衛生全般でありますが、われわれとしまして前年度も約半額を珪肺に使つております。来年度も同様な趣旨で珪肺に重点を置いて委託研究をいたしたいと思つております。
  109. 川島金次

    川島(金)委員 珪肺対策については全力を傾けて、ひとつ徹底させて行かれることを望みます。  さらにこの中に中小企業における労働者技術水準向上をはかること、この技能者養成普及助成ということを説明にうたつておりますが、この技能者養成の具体的な方法としてどういうことをやろうとされておりますか、その点を明らかにされたいのであります。
  110. 龜井光

    龜井政府委員 来年度予算の上に一千万円計上いたしておりますのは、中小企業におきまして共同養成をやつているところがあります。技術の面は各自小規模の工場、事業場でもできるわけでございますが、基礎学科と申しますか、これにつきましては、個々でやりますと講師の謝金その他一つの企業では負担がなかなか容易ではありません。従いまして寄り集まりまして共同の施設において、そういう基礎学科の学習を現在もやつているところがたくさんございます。それらにつきましてこの一千万円で来年度はとりあえず助成をいたしまして、中小企業の負担を軽減して行きたい、そうすることによりまして、こういう方面の向上をさらにはかつて行きたいという趣旨のものでございます。
  111. 和田博雄

    和田委員 この珪肺病の点は労働省としてもぜひ全力をあげてやつていただきたいと思います。予防措置に主力を置くというお話であつたのですが、ただ労働行政としてでなしに、何かそこに立法的な措置までやつて珪肺対策の完全を期するかどうか、そういう点についてちよつと御意向を伺いたいと思います。
  112. 龜井光

    龜井政府委員 単独法の問題は実は先般の国会以来問題になつて奉りまして、われわれもその問題について研究は進めておりますが、ただ問題が通産省との関連もありまして、労働省一存で参りません点もございます。またこの単独法をつくりますことによつて、ほかの職業病との関係、こういう問題も出ておりますので、その間を慎重にわれわれとしては目下検討いたしているところであります。しかし単独法をつくるか、あるいは現行法のわく内でできるのか、あるいは現行法の改正でできるのかというふうな問題につきましては、まだ結論を得ていないのであります。
  113. 和田博雄

    和田委員 その点はぜひ結論を早く出して、対策に万全を期してもらいたいと思います。
  114. 川島金次

    川島(金)委員 労政局長の代理が見えたそうですが、先ほどの問題で答弁があれば一応承つておきたいと思います。
  115. 大島靖

    ○大島説明員 川島さんの御質問にお答え申し上げます。川島さんの御質問は、公共企業体の仲裁委員会でありますとか、あるいは中央労働委員会などによります仲裁裁定というものは、政府といたしましても、また労使双方の山当事者といたしましても、十分尊重して従うべきものである、こういうふうな点についての所見いかん、さらにこれらの仲裁裁定を権威あらしめるための方策いかん、こういうふうな御質問と思います。もちろん御承知のごとく仲裁裁定に当事者双方がこれに服従すべきものであることはお説の通り当然でございます。公労法におきましてもその旨の規定があるわけでありますが、ただ公労法の関係におきましては、これらの法規の適用を受けます公共企業体でありますとか、あるいは国営企業の予算が国家予算として処理されております関係上、予算が国会で御審議を受けなければならぬ。こういう関係で例の十六条の規定があるわけで、その仲裁裁定について国会の御審議を願つた上で処理するという関係なつておるわけであります。ただ中労委等におきます仲裁裁定は、もちろん当事者はこれに服従すべきであります。ただ中労委といたしましては当事者双方の申請とか、あるいは労働協約による定め、こういうものによつて仲裁を受けるわけであります。従つて仲裁裁定は当然当事者双方を拘束すべき性質のものであります。私どもといたしましても労使関係というものができるだけ自主的な団体交渉によつて処理される、またそれがなかなか交渉によつて解決が困難な場合におきましては、第三者機関であります労働委員会かその他の機関によつて調停をする、さらすその上に両当事者の合意の上に立つて公平な仲裁裁定を受けるということがまことに望ましいことなのであります。できるだけそういうふうな方向において労使関係の問題が処理されんことを期待いたしているわけであります。以上お答え申し上げます。
  116. 川島金次

    川島(金)委員 この問題についてこれ以上事務当局にお尋ねすることは無理と思いますので、いずれ大臣が見えましたときにさらにお尋ねをいたしたいと思います。  そこで先ほど私はお尋ねすることを落したのでありますが、日雇い労働者の問題であります。すなわち二コ四と世の中に称されております日雇い労働者の問題は、一つの大きな社会問題でもあろうかとわれわれは了解をして、この問題を重視いたしておるのであります。この日雇い労働者のいわゆる失業救済に関して、もつと何らか徹底した積極的な対策が打出されていいのではないかと思う。たとえば賃金の問題もその一つでありますが、これらいわゆるニコ四階級に対する政府の今後の何か新しい積極的な対策が用意されておるのかどうか。やはり従来通り二十八年度も依然たる方法でこの問題を進めて行くという程度のことかどうか。その点何か用意がありましたならば示してもらいたい。
  117. 中西實

    中西政府委員 失業対策事業はあくまで、いわば窮余の一策といいますか、われわれとしましては、で言だけ一般就労の機会を得るように、その方に日雇いが就労しますことを希望しておるわけであります。来年度は幸い公共事業費も相当増額なつておりまして、その方の吸収も相当に期待できるのではないかと思つております。何分にも今の状況で行きますと、やはりどうしても若干は政府で特別の事業を起して、そこへ就労させるよりしかたがありません。相かわらずということにもなりましようけれども、来年度も引続いて今年のわくを大体二割ばかり広げまして、できるだけ失業者の吸収をはかり、日雇いの吸収をはかるというふうに考えております。
  118. 川島金次

    川島(金)委員 今の日雇者の支給賃金については別に改善の積極策はないのですか。
  119. 中西實

    中西政府委員 これはあくまで先ほど言いましたように救済の一つの方法でございますので、法律上これの給与は、いわゆるプレヴェーリング・ウェーヅが労働大臣によつて告示されております。それの八〇%ないし九〇%ということできめるように規定ができておりまして、今のところ九〇%、一割低いところでこれをきめる。昨年の十一月今のプレヴエーリング・ウエージの告示によりまして、約一割ちよつと値上げをいたしまして、現在このプレヴェーリング・ウエージとの関連でやつておりますので、今ただちに変更する用意はございません
  120. 和田博雄

    和田委員 具体的には単価は幾らになつておりますか。
  121. 中西實

    中西政府委員 平均いたしまして全国二百四十八円九十四銭、二百四十九円であります。
  122. 川島金次

    川島(金)委員 さらにお尋ねをすを機会を失つて、もとへもどるような形になつて恐縮ですが、年々歳々日本では新しい生産人口が二百万にも達しようとしておる最近の趨勢であります。この生産年齢の新しい人たちの増加というものに対する対策は、きわめて重大な事柄の一つではなかろうかと思うのでありますが、こういう問題について、労働省関係当局はどういうふうな見解を持ち、どういうふうな具体的な対策をこれにして行こうと考えておるか、その点をひとつ…。
  123. 中西實

    中西政府委員 毎年経済審議庁の方で翌年の経済の見通しを一応策定いたしております。それによりますと、労働力の人口は来年度大体七十万程度ふえる計算になつております。それに対しまして、われわれの方としましては一応各産業の来年度の見通し、これはもちろんどうなるか何人も的確には言えないのでありますけれども、一応の見通しといたしまして農林、水産その他鉱工業、さらに先ほど言いました公共事業を中心とします建設事業、ことに電源開発、これあたり来年度は本年度より五百数十億のよけいの投資もございますし、この方面のほか運輸、公益事業等に大体七十万程度は吸収できるという見込みでございます。これはもちろん単なる見通しでございまして、特別の事情が起りますればまた別な結論になりますけれども、現在のところは一応七十万程度は吸収できるというふうに考えております。
  124. 川島金次

    川島(金)委員 これら新しい、いわゆる生産人口の対策は、そのいかんに、よつては若き人たちの人生における希望にもつながる大きな問題でありますし、同時にまた労働雇用の問題について、あるいは生産の問題ともつながる大きな問題でありますので、できるだけこういう面にも一層の努力を払われんことを希望してやまない一入であります。  さらにあとでこれは労働大臣とも若干の質問を続けてみたいと思うのですが、何といいましても、現状においては日本失業者も多いし、われわれの経済的な理想からいえば、完全雇用ということが一番望ましいことなんです。こういつたいわゆるフル・エンブロイメントの問題についても、政策上の問題は別として、労働省事務的にもこういつた問題についてはおそらく研究もされ、苦心もされておるのではないかと思いますが、この完全雇用の問題について何か研究されておるところがあれば、ひとつこの機会にわれわれに示してもらいたい。
  125. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 お答え申し上げます。完全雇用の問題は、基本的には経済審議庁が中心となつて計画を策定すべきものでございます。労働省といたしましても、できるだけそういう作業が的確に行きますように要望し、かつ協力しておるのであります。また国連におきましても各国に対してそのことを要望しておるのでございますが、何と申しましても先ほど川島委員から御質問のありましたように、問題はわが国における労働力のあり方、つまり潜在失業者の数の把握でございます。これは言葉の通り潜在しておりますので、これを的確に把握することはできませんので、非常に遺憾ながら今日の段階におきましては、アジア諸国すべて同じでございますが、近代的な完全雇用基準を打立て、その上において計画を立てるという、精密な計画策定の段階に至つておらないというふうに、ひとつ御了承願いたいと思います。
  126. 和田博雄

    和田委員 川島君が大分事務当局に聞かれましたので、私はダブることを避けて、事務当局の方に若干お伺いしたいと思うのです。大臣に対してはまたあとで聞くとしまして、この九十五億の失業対策費ですが、これは資材補助の関係でやつておるものの資材費の補助割合というものは、去年よりは減つておるのですか。
  127. 中西實

    中西政府委員 昨年は一人当り一日平均資材費として二十円、これの二分の一でございましたのを四十五円の三分の一といたしまして、確かに率は減りましたが、額としましては、十円が十五円になりまして、補助の額としてはふえたのでございます。
  128. 和田博雄

    和田委員 それからこの潜在失業の問題がいろいろやかましく朝から論議されているわけですが、私どもは日本失業問題というものは、ほんとうの重点は潜在失業の方にあると思うのです。ただいま完全雇用の問題で、その数字がなかなか出にくいと言いましたが、これは経済審議庁の方で、たとえば五箇年計画を立てるとか、あるいは三箇年計画を立てるとかいうようなことにして行けば、自然に雇用の問題は出て来るし、ことに中心になるわけでありますから、労働省の方として、その総合的な計画をやられていないにしても、大体私は見当はおつけ願つておかないと労働行政をやられる上において困るのじやないかと思うのです。その点正確な数字事務当局としては逃げられておるのかもしれませんが、大体の見通しといつたようなものは、ある程度の推定は持つてないと困るのじやないかと思う。  それからもう一つ事務当局にお聞きしたいのは、どこの国でも、ノーマルな経済においては失業率をほぼ考えて労働行政をやつたり、経済政策をやつておると思うのです。たとえばアメリカなんかでも、去年ですか多少不景気になつて来たときに、失業者が百万人くらいにふえたときでも、全体の失業率からいえば大したことではないというので、トルーマンのブレーン・トラストをなしておる経済学者たちはあまり大きな問題にせずに、そのリセッションを切り抜けて行く政策を考えたように思うのですが、日本の場合でも潜在失業者の問題がわからぬと、はつきりしたものが出て来ない。やはりそういう問題は当局の方としては何らかの御研究があつてしかるべきだと思うのですが、そういう点についてこの予算を見ると、方々で研究的な仕事もされておるようですが、一体どういうようにお考えになつておるのか、何かありましらお知らせ願えれば幸いと存じます。
  129. 富樫總一

    ○富樫(總)政府委員 完全雇用の問題につきまして。ただいまイギリス、アメリカあたりにおきましては、失業率がこの程度ならば摩擦的失業であるということで、言いかえますならば、一定の完全雇用の基準率というものを立てて、施策を進めております。日本においては潜在失業者つまりその大部分は農村あるいは都会地における家族として、あるいは家族従事者という形において潜在しておる者が非常に多い。それはすらわち近代的な夫業者としての形として存在しないで、失業は生活永準の切下げというような形で存在しております。従つてこの数字がどの程度であるかという見当をつけるために、できるだけの努力はいたすべきであります一現にわれわれとしてもいろいろと推定の努力はしておるのでありますが、何分事の性質上把握困難であります。しかも自信のない数字を軽々に発表いたしますと、かえつて誤解と実情に沿わないというようなこともございます。決して努力を怠つているわけでなく、また得たる数字を隠しておるわけでなく、現段階におきましては、そういような事情になつておるというふうに御了解願います。
  130. 和田博雄

    和田委員 この問題はなかなかむずかしい問題でありますし、相当理論的な前提もいりますから、これ以上お聞きしてもむだだと思いますから、その点は打切りますが、労働省の今度の予算を見ますと、賃金行政充実に必要な経費というものが上つております。その中の説明に賃金制度の合理化の指導といつたようなことがあるのですが、事実どういうような指導をやつているのか、例がありましたらお知らせ願いたい。
  131. 龜井光

    龜井政府委員 これはまだ指導をいたします段階の結論を得ていないのでございまして、目下研究をいたしておるところでございます。
  132. 和田博雄

    和田委員 賃金の問題も潜在失業者の問題その他とひつからんで、結局最低賃金とも関連を持つて来るのですが、最低賃金の問題につきましては、本会議でも予算委員会でも聞いたのですが、大臣はあまりはつきりした考えを持つておられない。この最低賃金の問題は、そういう失業その他と関連して、どういつたような角度から、一体この最低賃金の問題を労働省としては取扱つて行こうとしておるのか。もちろん最低賃金の審議会というものがあるわけですが、労働省事務当局としては事務当局としての一定のお考えもあると思うのです。一体どういう視角から最低賃金の問題というものをとらえて立法化し、あるいは行政として実行して行こうとされておるのか、その点をちよつとお伺いしておきたい。
  133. 龜井光

    龜井政府委員 最低賃金の問題は、わが国で初めての経験でございますので、われわれ事務当局といたしましても、日本の現在の経済の実態から見て、どういう形が適当であるかということになりますと、非常にむずかしい問題でございます。従いまして労使公益三者の有識者の御意見を聞きまして、そうして結論を得たいというので、一昨年以来中央賃金審議会におきまして御検討を願つておるわけでございます。問題は、最低賃金を一体どういう形で引くのかという問題が一つございます。この形の問題としましては、中央賃金審議会におきましては、アメリカ式の公正労働基準法に定めておりますような各産業を一律のものとして最低賃金をつくるという一つの考え方、それからイギリスでやつておりますような各産業別の最低賃金をつくつて行くという二本建が、適当ではないだろうかという結論が中間的に出ておるわけでございます。しかしながら、全産業を通じまする一本の最低賃金制度というのは、日本の底の浅い経済、しかもバランスのとれていない経済におきましては、現段階においては必ずしも適当でないのではないか。それよりもイギリス式の各産業別の最低賃金というものを検討すべきではないかという結論からいたしまして、四つの業種につきまして目下この検討が加えられておるのでございます。これが体系から来ます現在の考え方でございます。しからば、一体これらの産業につきましてどういう賃金が適当であるか、これがまた地域別にどうであるか、あるいは経験年数別にどうであるか、あるいは扶養家族数においてどうであるか、いろいろな角度からこの問題が検討されて来なければなりませんとともに、さらに企業の支払い能力の問題もこれに関連して参らなければならぬと思います。はたしてその企業に最低賃金を引いた場合に、倒産をするおそれのある企業におきまして、失業者が一体出るのか出ないのか、出るとすれば、それに対してどういう措置を講じなければならぬのかというふうないろいろな角度から、この問題が検討されなければなりませんので、われわれとしましては、その考え方の基本と申しますか、問題点を研究をいたしておる次第でございまして、結論といたしましては、やはり労使公益三者の話合いによりまする審議会の結論を得ましてから研究したいというふうに考えております。
  134. 和田博雄

    和田委員 最低賃金の問題は、お説のように私も非常にむずかしいと思うのです。ことに日本のように一見非常に合理化されておるような大きな企業においても、賃金制度自体は非常に遅れた面もありますし、それから農村という家族労働を主にした未組織の分野がありますし、工業の方でも、中小企業でそういつたような分野がありますので、なかなかむずかしいのですが、御承知のように世界の最低賃金に対する傾向というものは、歴史的に大きく一つわかれて来ているように思いますし、そういう点で最低賃金の問題は、これはむずかしい問題ではあるけれども、労働行政をやつて行こうとすれば、日本の現段階においては非常に大きな一つの基礎をなすものじやないかというふうに思うのです。それで今おつしやつたように最低賃金の種類が歴史的にきめられて行く。一つは女や子供、ことに非常に搾取されておつた家内工業的な部分の低い賃金を対象にしたもの、あるいは近代的な争議が起つて、そしてそれが調停されたり裁定された結果だんだんとできて来たもの、大体この二つにわかれて来ると私も思うのです。賃金の決定の方法にしましても、今あなたのおつしやつたように国で一律にきめているものもあれば、そうでなくて何かウエージ・ボードに権限を持たしてきめて行くというものもありますし、大体そういう形になつていると思うのですが、賃金基準の点を一体日本ではどういう形にとるのかという点がなかなかむずかしいと思うのです。リヴィング・スタンダードでとるのか、あるいはあなたの今おつしやつたフエアーな賃金にするのか、企業の耐え得る賃金にするのかということになると思うのですが、大体企業の耐え得る賃金という考え方は、だんだん背後に押しやられて行くようになつて来ると思うのです、そういうような意味で、これは労働省として今審議会か何かにまかせられているのですけれども――これはむしろ大臣に問い方がいいのですが、審議会にまかせてからも何年にもなるのです。この聞いただいた資料を見れば何回か開いているけれども、実際のところ大分審議会はなまけていると思うのです。二年も三年もたつて、労働の基本的な立法ができてから相当たつているにかかわらず、まだ業種を四つくらい選んでやつているというのでは、どうもどうかと思うのですが、そういう点で審議会を鞭撻して、最低賃金の問題についてはぜひひとつ早い機会に結論を出し、大きな日本の労働行政、労働政策の向う方向を確立して、勤労階級の生活そのものを安定さすと同時に、一番大きな生産要素である労働力の問題について、それが生産性を高めて行くように基礎をつくつて行く。これはむしろ大臣がおつたら大臣にもよく言いたいのですが、その点を御当局の方でもよくお考えを願つておきたいと思います。  それからも一つお聞きしておきたいのは、労働省予算の中に婦人地位向上に必要な経費がございますが、これは農村の婦人の問題を同時にそこでやられているのでございましようか。
  135. 田中壽美子

    田中(壽)説明員 婦人地位向上の中には、都市及び農村のすべての婦人を含んでいたしております。
  136. 和田博雄

    和田委員 農村関係の方は実際はどういうふうなことをやつておられるのですか、やつておられることをひとつ伺いたい。
  137. 田中壽美子

    田中(壽)説明員 婦人少年局の行います事業は、主として調査と啓蒙と資料作成でございますので、農村婦人に関しましてもやはり農村婦人の生活実態の調査から出て参ります結論によりまして、教育、啓蒙及び資料作成するというような活動をいたしております。
  138. 和田博雄

    和田委員 農村婦人の地位の向上は、農林省の方としても農業政策としての一つの大きな目標になるわけですが、農林省の方の予算を見てみると、生活の方は何かあつたような気がするのだが、あまり経費もとつていないように思うのです。農林省の方とはどういうふうな関係なつておられるのですか。
  139. 田中壽美子

    田中(壽)説明員 農林省の方に生活改良普及事業というものがございまして、農業技術の改良の普及と生活改善の技術を指導しておられます。そのために全国に生活改良普及員を置かれて、衣食住、家計その他の技術面の指導をしておられますので、相当の予算をとつておられるのでございますが、私どもの方は主として実情を調査しまして、その農村婦人の現状を知らせる。それによりまして、農林省その他関係いたしております機関が実際に行政をなさいます参考に供していただくというようなことであります。
  140. 和田博雄

    和田委員 農林省の方は改良普及事業でいろいろなことをやつておることは私も承知しておるのですが、そうすると労働省の方は基礎的な調査だけが主になつておるということです。
  141. 田中壽美子

    田中(壽)説明員 調査と啓蒙でございます。
  142. 和田博雄

    和田委員 それから労働教育労使関係の安定のための経費というのがあるのですが、この実情は今どういうふうになつておりますか。
  143. 阿部泰治

    ○阿部説明員 労働教育と労働関係の安定のための経費といたしまして、おもなるものは労働教育のいろいろな資料をこしらえまして、それを配付するような労働教育資料費、それから労使関係の安定のための経費といたしまして、その中に労働組合福祉活動等に対していろいろな資料を提供して、それ福祉活動の助長に協力して行くというような経費がおもなものであります。
  144. 和田博雄

    和田委員 そうすると労働組合福祉活動は資料の提供だけになるのですか。
  145. 阿部泰治

    ○阿部説明員 労働教育関係では「週刊労働」という労働関係の啓蒙誌、それから労働関係の映画の作成その他パンフレット、リーフレットなどの労働教育宣伝資料費用というようなものがおもになつております。さらに今年度から金額としては二百万円程度のものでございますが、労働関係の教育講座を新設いたしまして、そこに労働組合の中堅の幹部のような人たちが入りまして、かなり長期の労働教育を受けます施設費が含まれております。そのほか先ほど申しました労働組合福祉関係、これもやはり資料費を中心にしたものでございます。
  146. 和田博雄

    和田委員 事務的なことをもう一つ聞いておきたいと思うのですが、労働災害はどういうような件数になつておりますか。
  147. 龜井光

    龜井政府委員 最近におきまする工場災害の状況を申し上げますと、一昨年以来われわれとしましては、産業災害の議のために、いろいろな手を打つて参つたのでございます。その結果だんだんとよくなつておるのでございますが、特にわれわれの方で特別重点を置ていやつておりますのは、非常に災害率の高い産業につきまして、これを毎年千事業ほど選びまして、労使それから監督署の職員三者一体となりまして指導して参つております。こういう事業につきましては特段のいい成績を見ておるわけでございまして、二十六年度の成果におきましては、前年の二十五年に比べまして度数率におきまして約二十五%の減少を見せております。さらに二十七年におきましては、これは別な事業でございますが、三〇%ほどのいい成績を見せております。こういうふうに、特別指導いたしましたところにおきましては、著しい成績を示しておりますが、全般的な問題から見ますと、やはりその減少もまだ微々たるものであります。と申しますのは、災害率が非常に高いのは、電源開発、あるいは貨物の積みおろし、森林伐採というような屋外作業におきまする災害がなかなか婆ないのでございます。特にますます電源開業が進捗するに伴いまして、この面からしまする災害が数の上からはふえて参つておるのでございまして、全体から申しますと、まだ楽観を許さないのでございますが、しかし個々について申しますと、特に製造工業あたりは、非常にその間の成績がよくなつて参つておるのでございます。たとえば製造工業をとつてみますと、一昨年に比べまして約一〇%全体としまして下つておるのでございます。こういうふうなことは、また他面から見ましても、二十六年におきましては約七億百円ほどの料率の引下げを行つておるのでございます。これは、それだけの災害が減りまして、予定の給付よりも少くて済んだということが言えるわけでございます。また、本年度におきましても、大体その程度のものの引下が可能ではないだろうかというふうに考えております。ただ問題は、最近新聞等で御承知のように、化学工業関係の爆発事故が非常にふえて参つております。これは全体の数字から申しますと、率は低いのでございますが、ただ一箇所に多数の死者を出すということにおいて、社会的な大きな反響を呼んでおるわけでございます。そこでわれわれとしましては、特に今後の日本経済における化学化学工業のウエートかからいたしまして、この面に重点を置いて、先般も十五社のおもなる社長を呼びまして、この面の促進方をお願いをいたしました。また化学工業界におきましても、ただちに傘下の経営者を集めましてこの問題の検討に入つておるような状況でございます。今後はこの面からいたしまする問題もだんだんとよくなつて参るのではなかろうかというふうに考えております。
  148. 和田博雄

    和田委員 最後の点は私の方からもお聞きしようと思つておつたのですが、例の兵器生産がだんだんと行われるようになつて来ると、そういつた災害は起りやすいのじやないかと思うのです。と申しますのは、今兵器生産をやつている会社を例にとつてみましても、第一注文を受けるのにすでに非常に出血受注をしておるのが大部分でありまして、三割なり、多いところは半分ぐらい差引いた値段で注文を受けておる。しかも自分の会社でやるのじやなくして、下請へ出してしまうといつたようなことになつて来ると、上で頭をはねられておるわけですから、だんだん悪い条件で下へ来ることはきまつておりまして、結局設備の点にしても、あるいは労働者を働かせるにしても、労働強化になりやすい。従つて非常に不注意が起りやすいということになつて、そういう災害は起つて来ると思うのですが、起つたら、今あなたも触れられましたように、非常に人命に対する危険といいますか、損害は大きなものがあるわけでありますが、これを、ただ、監督官庁として工場主なんかに反省を促したり、認識を促したりする程度では、なかなかその問題を解決するわけには行かないだろうと私は思うのです。やはり監督官庁側としては、何かしつかりした強制力のある処置を必要として来るのではないかとさえ思われるのであります。その点は大臣にお聞きしておく方がいいと思いますが、そういう点も今後は十分お考えを願つておきたい、こう思います。  それから労働情報蒐集に必要な経費というのがあるのですが、実際上はこれはどういう方面に使われておるのでございましようか。
  149. 阿部泰治

    ○阿部説明員 労働組合の組織が全国的に大きくなつておりまして、いろいろの争議等の場合におきましても、全国的にそういう労働組合の争議の状況等を把握する必要がございまして、凡そのことのために、中央と、それから地方の府県庁との間のいろいろな通信、連絡、あるいは実際に参りましての実情の調査というような点が主でございます。
  150. 和田博雄

    和田委員 そうすると、結局、連絡のための通信費であるとか、そういうようなものが主ですか。
  151. 阿部泰治

    ○阿部説明員 大体連絡のための通信費、資料費、旅費が主です。
  152. 和田博雄

    和田委員 たとえば労働協約なんかが方々ででき上つておりますね。そういうものを収集するようなことはどこでやるのですか。ここでやるのですか。
  153. 阿部泰治

    ○阿部説明員 この予算の面におきましては、労働関係法施行に必要な経費、この中へ入つております。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 川島君の触れた点にもどるのですが、失業対策で、たとえば中国あたじの都市からこのごろ盛んに、労力費とか資材費その他を――これはまあ補助と言ておるのですが、ふやしてくれ、今の現状でこの予算でやられたのでは、地方財政に非常に大きな影響がある、かんじんな失業対策もできないという陳情が来るわけですね。そういうような点については、やはりあらかじめ自治庁なり何なりとよく打合せされて、こういう経費をお組みになつたのですか。
  155. 中西實

    中西政府委員 われわれとしましても補助率をできるだけ高くしたいということは考えているのでありますが、今のところ三分の二というのは相当高率な方であります。そこで自治庁と十分に連絡いたしまして、平衡交付金でできるだけ多くもらうようにし、さらに地方債の起債のわくにつきましても、われわれの方としまして十分に自治庁と連絡いたしまして――まだ来年度の分はこれからぼちぼちきまるのでありまして、できるだけのわくをとりまして、地方の負担能力を楽にするという努力はいたしております。
  156. 和田博雄

    和田委員 この労働基準法の関係労働基準監督官というものがあるわけですが、こういう監督官の年次報告といいますか、そういう報告書はやはり中央の官庁でとつておられるのでありましようか。
  157. 龜井光

    龜井政府委員 とつております。国際労働事務局の方へも報告しなければならぬことになつております。
  158. 和田博雄

    和田委員 そういうものは発行されておるのでありましようか。
  159. 龜井光

    龜井政府委員 発表いたしております。
  160. 和田博雄

    和田委員 それは一般に売つているのですか。
  161. 龜井光

    龜井政府委員 一般には売つておりません
  162. 和田博雄

    和田委員 労働省へ行けばあるわけですね。
  163. 龜井光

    龜井政府委員 さようでございます。
  164. 和田博雄

    和田委員 大臣に対する質問が非常にあるので、事務の方は川島君が大体お聞きしましたから私はこの程度でやめておきます。
  165. 川島金次

    川島(金)委員 和田さんからもつと御質問があろうと思つたのですが、一応終つたようですから、続いて私から質問いたします。  毎年問題になつたのではないかと思うのですが、災害の補償保険あるいは失業保険の保険料の問題です。労働者からは毎月々々きちんとこれらの保険料はとつておりながら、経営者側がそれを着服しているわけではないが、納めない。こういう事態が今でも跡を絶たないのではないかと思いますが、こういう問題について最近の実情はどういうふうになつておりますか、一その点を明らかにしてもらいたい。
  166. 中西實

    中西政府委員 失業保険の徴収率は非常によろしゆございまして、現在九十七、八パーセントまで行つております。もちろんそれぞれ業者に出向いて監察をやつております。見つけ次第そういつた滞納の分は徴収いたしておりまして、まずまず保険としましては、徴収率としましても今一番いいのじやないかと考えております。
  167. 川島金次

    川島(金)委員 二十六年度の決算の検査報告によりますと、まだなかなか今の報告のようなことになつていないように感じられるのです。たとえば二十六年度における保険料追徴金の合計額等が大ざつぱに出ております。しかもその徴収をしておらなかつた納付義務者の名前までも明らかになつておりますが、こういた問題は、もうすでに片づいたということになつておるのですか。
  168. 中西實

    中西政府委員 会計検査院の検査の結果、ときに徴収漏れが発見されておりまして、それにつきましてはそれぞれすでに処置を済ませております。
  169. 川島金次

    川島(金)委員 この徴収の納期期限を過ぎて、なおかつ納付をしない、しかも納付をしない原因が非常に悪意であるというような場合、または著しい怠慢であつたというような場合に対しましては、どういうふうな処置をしておりますか。
  170. 中西實

    中西政府委員 これは法律にございまして、もし悪意で不正な申告をしたり、あるいは申告しなかつたりという場合には、追徴金二五%をとるということになつております。それでそういうものに対しては、追徴金をどんどんとることにいたしまして是正させております。
  171. 川島金次

    川島(金)委員 議事進行。本会議が始まつたそうだが、どうでしよう。われわれの希望しておる大臣は一人も見えない。私は時間を尊重する意味で審議を進めて来ておるのですが、たまたま大臣も見えないし、本会議は一方に重要な問題が論議されておるのでありますから、暫時この辺で休憩してもらいたいと思います。
  172. 西川貞一

    西川主査 実は文部大臣がすぐに出席いたすのでございます。それで昨日御要求資料も出ましたし、文部大臣に対する質疑を続けていただきたいと思うのです。
  173. 川島金次

    川島(金)委員 どうですか、本会議がいま三、四十分で終るそうですから、ちよつと出て息を抜こうじやありませんか。
  174. 西川貞一

    西川主査 それでは連絡いたしますから。
  175. 川島金次

    川島(金)委員 私一人の質問で、数時間続けようとするのはなかなか容易じやない。暫時お願いいたします。
  176. 西川貞一

    西川主査 ちよつと申し上げますが、他の分科会も継続しておるそうでございますから、それでもし大臣が御出席まで質問がありませねば、出席までこのまま暫時休憩いたしますが…。ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  177. 西川貞一

    西川主査 速記を始めて。北れい吉君。
  178. 北昤吉

    ○北委員 外務大臣に実は予算総会で御質問したいと思つたのですが、文部委員関係で出られなかつたのであります。実は外務省の方も御存じと思いますが、きのうの日本タイムスにおいて、朝鮮の外務大臣がなかなか驚くべきことを言つておるのです。内容をちよつと見ますと、中共と日本の捕虜を中心として編成した解放軍、これが朝鮮で起したようなトラブルを日本において生ずるであろう、これは数箇月後の問題であるいさらにはこの人の観則ですけれども、結局は合衆国とロシヤとの間の戦争は不可避である、こういうことがあります。私はUS・ニユース・アンド・ワールド・レポートを毎号読んでおりますが。その信頼すべき雑誌記者とのインタービユーにおいても、ソビエト・ロシヤが朝鮮で仕事をしている間に日本にプレッシャーを加えるであろう、さらに日本は自由主義の世界と共同することに誤りを生ずるならば、一朝鮮の行動に対する終結には、共産諸国にとつて非常に有利となるであろう。この朝鮮の外務大臣国際連合への代表者として出ておる。そうしてさらにこういうことを言つておるのであります。ロシヤはこの戦争に加わらない。中共と日本の解放軍を使うであろう、実はこれくらいの記事なら私は驚かぬのでありますが、今より三、四箇月前に変名で日本に来ておる中共の復旦大学の教授が、二つの雑誌へ匿名で発表しておる記事にこれと似たことがあり、ソ連と中共との密約があつて日本の解放を試みるであろう。私はこの事件について相当関心を持つておりまして、蒋介石側の代表として来ておつた張群さんと二人だけで二度ばかりゆつくり話をしたときに、その材料を持つて質問したのです。あり得ることであろう、こういう考え方、日本の新聞雑誌が共産諸国に対してあまり寛大過ぎる。これをわれわれ同志として認めるのは非常に心配だということを言つております。こういう情報は外務省にも多少入つておるのでありましようか。ロシヤは加わらないで、中共と、相当盛リに来ておる日本解放軍を使つて日本に上陸作戦をやるであろうということ。また次々に私は詳しくお尋ねいたしますが、いかがでありましようか。
  179. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 情報としてはそういう話はしばしば外務省にも入つております。われわれの方で見ると、それはむしろ共産側の公式理論とでもいいますか、もうただの思いつきではなくして、常にそういう理論を用いておるようであります。たとえば資本主義国家の崩壊というのと同じ程度に、日本の解放、そうしてこれは主として日本の国民を使うが、中共もこれに大いに援助するというようなことはしばしば耳にいたしております。
  180. 北昤吉

    ○北委員 情報は入つておるそうで、その点は私も安心いたしましたが、実は正直のところ、私は中国の共産系の人とも多少の交際があります。中国の大使館に来ておつて共産系に同情しておるというのでやめた人があります。それからみずから貿易などをやつて、そうして共産中国に憎まれないようにという立場をとつている人が相当あります。そういう人からの情報で見ると、こういうことを言つておるのです。スターリンはジンギスカン戦法を研究しておる。スターリンのみならず、ソビニトの中心人物はジンギスカン戦法を研究しておる。ナポレオンがロシヤに攻め込んだり、ヒトラーがソ連に改め込んだり、日本が中国を攻めたりしたときには、だんだん進んで兵力が消耗されて弱くなつた。ジンギスカンはそこへ行くとアジア流の戦争で、まず封建諸侯的のものを片つぱしから始末して、そうして財産を民衆にわけて、人心をつかんだ。それがためにロシヤへ攻め込む時分には、初めの出発のときの兵隊の数倍になつた。これがジンギスカンの軍がアジア、ヨーロッパの大半を征服し得た根本原因である。ロシヤは決して自分で手を出さない。東洋においてはジンギスカン戦法を用いて、中共を解放することに努力し、日本もおそらくは解放に努力する、ヨーロッパ流の戦争はやらぬ。さらに孫子の兵法に、百戦百勝は善の善なるものにあらず、ほんとうの名将はまず交わりを伐つ、その次には謀を伐つ、それから兵を伐ち、城を伐つ。日本は兵を伐ち城を伐つことばかりやつておつたのです。東洋諸国はまず交わりを伐つ、それから謀を伐つ。少くとも今日の階段では謀を伐つという階段に来ておると思うのです。それは先に外務大臣も御指摘の通りに、自由主義諸国の内部衝突をかもす。すなわち英米の意見の衝突、フランスとイギリス並びに西ドイツとの意見の衝突、フランスとアメリカとの意見の衝突。相当アメリカの恩を受けておりながら、西ヨーロッパ諸国は古い文化の誇りを持つておるがために、一般の民衆はアメリカを快しとしない。相当反米的議論が受けておる。すなわち民主主義諸国の陣営を乱す。東洋においては、日本の国内を撹乱する親ソ的の分子を養成する。一つはまた親米的の分子と闘わせる。現に日本はその謀を伐つという対象になつておる。東洋的の意味においてはすでに第三次戦争が進行中だと私は思うのです。兵を伐ち、城を伐つという階段にはまだ来ない。日本には貧乏な恵まれない人が非常に大勢おる。ソ連が来てもわれわれは大丈夫である。あるいは生活が改善されるかもしれぬという希望を持つておるような者は、われわれ地方講演でもして歩けば相当接するのであります。ことに世帯の苦労の足らぬ青年学徒にはそれが相当多い。そうして私の得ておる情報では、日本解放軍がかりに北海道へでも上つて来れば、日本の人民には一人も危害為加えない、そうして善政をしいて人心を収擬しようということを計画的に進めておるという情報を私は種々の方面から得ておるのですが、要するに交わりを伐つというのは、相手の一方を攻めて一方と切離す。謀を打つというのは、共同して共産国に対する国に仲間けんかをさせる。これが私は深刻に進んでおると思う。従来の日本の軍人はそういう思想謀略についての経験がない。遺憾ながら外務省も、今軍というものを持つておらぬから、軍に指導する力もなくて、岡崎外相の御苦心は十分に察しますが、私はどうも第三次戦争が現に行われておる、兵を伐ち城を伐つという階段には来ないが、交わりを伐ち、謀を伐つという孫子の第二段までの階段には来ておると考えますが、いかがですか。相当組織的にやつておると思います。
  181. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もさように考えております。北さんは孫子をお引きになりましたが、新しい言葉で言えば、それが要するに冷たい戦争とでも言うのかもしれぬと思います。熱い戦争にならない範囲でのあらゆる心理的あるいは文化的あるいは科学的ないろいろな方法によつて、味方を一人でも多くし、敵を一人でも少くする。また敵の中にも味方を植えつけるという、これがとりもなおさず冷たい戦争と今いわれている現状でありまして、今おつしやつたような、昔から孫子等が考えておつたその段階はあると思います。ただそれが大きな戦争に発展するかどうか。おそらく冷たい戦争が最も巧妙なやり方と考えてやつているのでありますから、素朴な、ただ人を殺し合うような手段に訴えるかどうか、これは別問題だと思いますが、おつしやるようなことは確かにある、こう考えます。
  182. 北昤吉

    ○北委員 私もその観測に同感でありますが、日本では社会党の右派の諸君、きようは欠席しておりますが、こういう諸君は国際連合に入れば安全になると考えているようでありますが、私は現在の国際連合の羅をいろいろ検討してみますと、決して入つても安全にならぬ。国際連合国際連盟よりはるかに私は弱体であると思う。道徳的原理もあいまいになつている、むしろ共産系の諸国と自由主義系諸国との争いの場所になつている。また事実武力侵略が行われる危険があつてアメリカ以外に日本を援助してくれそうな国はありません。御承知のごとく、英国は本国でも財政に窮乏している、マレーで相当の兵力と財力を消耗しております。フランスもアメリカの援助がなければ絶対に仏印に勝てないという状態であります。蒋介石の政権もフィリピンも遠く日本を援助する余裕は少しもありません。そこで結局アメリカにたよらざるを得ないから、私は日米安全保障条約をあくまでも死守する。国際連合に入つても大した効果はないと考えておりますが、いかがでございましようか。
  183. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は多少それは違うのでありまして、国際連合の現状においては直接の武力侵略にただちに対抗するだけの措置をとるかどうか、これはわからないと思いますが、国際連合の一員となりますれば、もし日本が不当の取扱いを受けた場合には直接世界の輿論に訴えて、この輿論の力をもつて不当を矯正し得るということは、私は入つていないよりは有効だと思います。また日本自身のことばかりでなく、世界平和という見地に立つて日本が大いにこれに発言をして、そちらの方に持つて行く努力をする場所としても、国際連合は適当の場所と考えております。またさらに、これは御質問のお答えとちよつと違う、よけいなことかもしれませんが、国際連合に入るというのは日本自身の利益ばかりでなくて、今度は日本が積極的に世界の利益のために働けるという、この大国たるの責任といいますか、そつちの方にも努力できるという意味もありますので、国際連合を私は必ずしも全然役に立たぬというふうにはもちろん考えておりません。むしろいろいろな種類の、ことにこの下部機構である労働機関であるとかあるいはエカフェであるとかあるいはユネスコのようなものであるとか、こういうところではなかなかよく実際に動いておりますから……。ただ日本を直接侵略のときに防禦できるかどうかという点になりますと、お話のようなことが起るかもしれないと思いますが、他の意味においてはいろいろ有益な点があると考えております。
  184. 北昤吉

    ○北委員 もちろん国際連合に入る方が、入らないよりは日本の安全に寄与するということは私も同感でありますが、日本では非常に過大に評価しているようです。それは日本国際連盟を脱退して孤立をして非常に苦しんだ経験があるから、今国際連合に入りたいという意見も相当強い。この前外務大臣は御欠席でありましたが、私は富岡元海軍少将に質問したのですが、イギリスとアメリカとは東洋政策に根本的な違いがある。元来日本アメリカとは経済的に衝突すべき理由は少しもなかつた。日本の軍部の考えも間違つておつたとともに、アメリカ日本に対するやり方、議論の仕方が感情を刺激する点が多かつたので、政治的なゼスチュアが下手であつたために日米関係が激化した。実際は日本と英国の方がよけい衝突する可能性がある。これは御承知の通りだと思う。私は昭和十八年十一月のカイロ会談前後に、これは富岡海軍少将に質問した点でありますが、本人はあまりよく知らないで驚いたようでありますが、スマッツ総督が英国政府の了解で、ある公開の席で演説をしている。その演説の要綱が当時太平洋協会の鶴見祐輔君の手に入りまして、私はその内容を見たのであります。今日の国際連合の機構とほとんど同じことを言つているのであります。私は実は驚いた。これは英国政府の了解であるから英国のある程度の方針を発表している。それはこういうことであります。十八年の暮れでありますが、世界は二大陣営に戦後にわかれる、ソ連はヨーロッパ、ロシヤを連ねる歴史以来ない大帝国になる、アメリカもとよりしかり、英国は二流国に転落してしまう、そうして日本は消滅してソビエトのオービットに入るという予言が一つあります。もう一つは、スマッツ将軍は御承知のごとく、第一次大戦のときでも南アフリカ共和国の首相でありました。二度とも首相として戦争をやつたのはこの人一人だと思う。この人がこういうことを言つている。国際連盟はできそこないであつた、それは大正七年十二月に休戦条約が成立すると、来年のたぶん五月か六月に講和条約ができる、一年未満で交戦状態をやめて条約締結される、するとそこに不備な点があるから、今度は敗戦国の日本とドイツはゆつくり占領を続けてこちらの思う通りの改革をして、おもむろに情勢を見てから講和条約をつくれ。日本は御承知のごとく六年何箇月かかつて講和条約ができた。しかしドイツ、オーストリアとの講和条約はまだできない。これはスマッツの意見が入つている。それからもう一つこういうことを言うております。ナチスにも学ぶべきところがある、強者の実力責任というものを考えなければならぬ、いわゆるビューラー・プリンチープ、指導者原理、それを利用して、戦後の五大強国――数はかぞえておりませんが、強国は特権を持たなければならぬ、国際連盟は小国も大国も投票のときには同じく一票であるが、特権を持たなければならぬ。それが今日の否認権となつて現われている。     〔主査退席、島村主査代理着席〕  御承知のごとくスマッツ将軍は、ウィルソンの国際連盟の理想、ウィルソンが空想し過ぎたのを現実化するに非常に功労のあつた人で、最後の力はスマツツ将軍の力によるといわれておりますが、今度の国際連合についてもスマツツ氏の意見が相当私は入つていると思う。そこで英国としては、日本の独立とかソビエトのオービットに入るということは大した問題じやない。すなわち日本経済的に繁栄して復興して来れば、東南アジアでイギリスとの貿易競争が激化する。だから現実的に考えて、日本は中国やソ連と貿易をしている方がかえつて便利である――そこまでは露骨に言つておらぬが、その思想が確かにあると思う。現に香港で貿易をやりたいので香港を大切にするがために、中共を今でも承認をして、東洋政策においてはアメリカと一致しておらない。御承知のごとく中共が破竹の勢いで台湾へ蒋介石の軍を追いやつたときには、香港に累卵の危うきにあつたのであります。周囲は全部共産党の治下にあつて、いつとられるかわからぬということでありました。そこで香港をようやく維持することができたので、今ではあれを根城にして、中共との貿易を考えている。今日では日本などは英国にとつては利用価値がないどころか、じやまである。日清戦争の当時は帝政ロシヤのインドヘの侵略を一面に防ぎ、一面においては日本の東洋、満州に出て来ることを防ぐという意味で日英同盟をやつている。ところが英国は今度植民地がなくなつて、今マレーだけになつてしまつた。今期するところは、本国の財政の欠乏を救わんがために貿易だけを考えている。日本の独立とか日本の擁護ということは、アメリカほど真剣に考えないことは当然である。アメリカはソ連が日本の人口と日本の軍需工業の能力を使用すると、直接にアジアから威嚇を感ずるから、南朝鮮の問題でも非常に真剣であります。英国は非常に微温的で、兵力もごくわずかしか寄与しておらぬ。それであるから日本に一朝事あるときには、兵力を持つて来て英国の利益にならぬことに努力するわけはない。御承知のごとく国際連合で可決しても、国際連合はヴェルサイユ条約の総合のときほどプレッシャーはないのです。これは一種の勧告機関なつておりまして、根本に道徳的原理がない。日本がヴェルサイユでもつて孤立をしたときは、タイ国一国が棄権をして、四十三対一ということで孤立状態になつた。あの当時においては国際平和を貫く一定のイデオロギーがあつたのは御承知の通りであります。ところが今日ではソビエト・ロシヤのイデオロギーと、英米のイデオロギーとは対立しておりまして、一般的決議に何らの権威がない。すなわち普遍的な国際道徳の原理がない。私はその点において国際連合の決議は、日本の安全をはかるにきわめて不十分であるのみならず、きわめて頼みがたいと考えております。日本人は、国際連合に加われば万事が解決すると、元の国際連盟以上のごとき権威を考えているが、私は国際連合国際連盟の三分の一も力がないとえ考ております。英国の東洋政策とアメリカの東洋政策との根本的相違、国際連合の構造について私は相当の疑問を持つておりますが、いかがでございましようか。
  185. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのスマツッのお話は私も非常に興味深く伺つたのでありますが、もう大分前のことで、はつきり覚えておりませんけれども、お話のまうな演説はたしか十八年の暮れにロンドンの両院の議員クラブでやつたと思います。たしか題目はサム・ソート・オン・ピース、平和に関するある構想というもので、非常に有名なものであります。スマッツの言われたことはその通りでありまして、要するに自由主義国家は当時フリードムということを非常に強く主張した。ナチスの方はデイシプリンということを非常に強く主張した。しかしデイシプリンだけあつてフリードムがなくてもしようがない、またフリードムだけあつてデイシプリンがなくてもしようがないので、これは両方合せたものが必要だということから説明をして来まして、当時の国際連盟の欠陥として、一つは小国も大国もイコーリテイ、すなわちフリードムの思想で、イコーリテイにあまり重きを置き過ぎた、それを直さなければならない、それからあの国際連盟は歯がない、これにはティースを植えなければならぬという思想で、つまり国際軍といいますか、この二つの思想を取入れたものが新しいものでなければならない、こういう思想であつたと思うのであります。そこで私は、こうやれというのではなくして、スマッツの考えはいやでもおうでもそうならざるを得ないぞという話しぶりだつたと思いますが、結局大部分それに似たようなヴイトーであるとか、国際ポリス・フオースであるとかということになつたと思います。ただ一つスマッツのためにも弁じておかなければならぬと思いますのは、あのときに彼は日本とドイツはもうしばらくたてばなくなつてしまうということを言つて、その当時まだ日本もドイツも盛んなときでありますから、これは非常に大胆な予言だと言われておつたのでありますが、これは当時敵国でありますから、スマッツがそういうふうに言うのはまたあたりまえのことかもしれません。一つの見通しとしては、相当の理由があつたのかもしれませんが、当時のスマッツの演説から推して、ほかの点がみなスマツツの言う通りになつたから、日本に対する英国側の感じもその通りであろうと、すぐに推定するのは多少気の毒な点もあります。要するにその当時は敵であつたという点も考えなければなりません。それから戦後の状況が、先ほどのお話のような冷たい戦争という状況なつて来ますと、日本であろうとどこであろうと、要するに自由主義国家が一つでも多くなり、それとの結束が少しでも強くなるということは、英米初め各国、デモクラシーズの望んでやまないところでありますから、戦後の今の状況になりますと、イギリスといえども、日本がフリー・ネーションズから離れるということやら、あるいはフリー・ネーシヨンズの中においてもその結果の十分な固めにならぬということは、大きな意味においては非常な損害でありますから、先般も駐英大使が帰つて参りましてその様子を聞きましたが、ただいまのところイギリスにおいても、日本との関係あるいは日本の将来ということについては、非常に大きな関心を払つておることを私は承知いたしておるのであります。イギリスといえども、日本はどうでもいいというような態度は、もう今は決してとれない状況なつておる。いやでもおうでもやはり日本にしつかりしてもらわなければならぬ、こういうことだと考えます。但し先ほどおつしやつたのはその通りでありまして、国際連合といえども、前提はやはり自国の防禦が十分できるという国の集まりでなければならないのであつて、何らかの侵略行為があれば、すぐ手をあげて国際連合に救いを求めるという考えから来てはおりません。まず第一着には自国の防衛をその国がやる。そしてその第二着目には地域的安全保障の形でまわりの国が来てそれを助ける。第三段階国際連合が動き出す。そういう考えで来ておりますから、自分の力で全然守れないとか、あるいは地域的な集団安全保障が全然成立しないで、ただ国際連合にたよつておるということで、自国の守りが全うし得るわけはないと私は思います。この点は御同感でありまして、そのために日本としては現状やむを得ずアメリカとの間に条約を結んで、アメリカに直接侵略に対しては守つてもらう、こういうことをやつておるのでありますが、お話のように国際連合だけにたよることは私はできないと思う。それは同感であります。
  186. 北昤吉

    ○北委員 私はアメリカの有名な社会学者で、アメリカ全体の社会学会の会長をしておる人の国際連合の批判を読んで――これは数年前で、また読み直したのでありますが、実に国際連合の欠陥をついております。御承知のごとく、国際連盟成立のときは世界が非常に熱心だつた。そしてロシヤがボルシェヴィキ革命をやつた後でありますから、ドイツ、オーストリヤは入らないで、ほかの西欧諸国ないし、南米諸国がほとんどみな入つた。そこに一つの共同のデモクラシー擁護というプリンシプルがあつた。後にドイツ、イタリア、ロシヤも加盟するようになりましたが、デモクラシー擁護という一つのプリンシプルがあり、そうして非常に熱心に歓迎された。これはウィルソンの理想でありました。ところが国際連盟も御承知のごとく日本が満州事変で孤立をして脱退し、それから相次いでドイツが脱退し、イタリアが脱退して、だんだん不名誉な最期を遂げて、それでも二十年だけ存続しておつた。ところが国際連合は成立の際からすでに環境が悪い。あの時分には、ドイツ、イタリアが入らぬし、ロシヤも入らなかつたが、デモクラシーが世界を風廃しておつたから、たいていデモクラシーの国は一緒に入つた。今日では環境が非常に悪い。というのは、イデオロギーの違いの強い国があるのです。中国は、今では中共は入つておりませんで、ごく微力な蒋介石政権が入つておりますが、ソ連並びにソ連の衛星国が入つて根本的にイデオロギーが対立しておる。そうして、国際連盟のできた当時には、条約の尊重ということは十九世紀後半期以来どこの国でも希望しているところであつた。御承知のごとく、一九一四年ベルギーの中の立をべートマン・ホルウエッヒが一片ほごであるといつて蹂躙したときに、敵も味方もみな憤慨したくらいものす。ところが今度は秘密協定を盛んにやつてアメリカがそれを否認する考えを持つてもほかの国は応じない。国際的のプリンシプルがないように思う、環境が実に悪い。それから内部組織に非常に欠陥がある。というのは、御承知のごとく五大国か四大国か知りませんが、一国が拒否すれば総会がいかなる決議をしても役に立たぬ。そうして大国の特権を認めておるから、力これ権利という思想がおのずから露骨に出て来る。のみならず、またデモクラシーを尊重する一面もあります。それは御承知のごとく、小さな国でも一票の投票権を持つております。キューバでもアイスランドでも一票を投じる。これらは人口の割からいうと、アメリカの十分の一、ロシヤの十分の一でしよう。これはデモクラシーといえばデモクラシーであるが、ほんとうのデモクラシーであるかないか、そこに一つの疑問があります。それから小国が固まれば、たとえば中南米諸国とアラブ諸国が固まれば半分の力を持つ。それが大国の操縦の材料になる。もう一つは、御承知のごとくアメリカ合衆国は人口も多いし、富も多いし、国力もあるが、一票の力しかない。英連邦は六票ですか、ソ連は三票、大国でも峯の権梨いろいろ違つて来る。内部矛盾が相当にあるから、これに対する不満もなかなかあつて、私は国際連合というものは結局環境が悪いと思う。現に冷たい戦争をやつておる同士が入つておるから、あたかもけんかの場所、宣伝の場所で、アメリカの共和党の有力なる上院議員のごときは、やめた方がよろしい、アメリカはここから脱退して、アメリカ独自の政策をとつた方がよろしいと言つておる。これは少数の意見でありますが、そういう意見が相当強まつて来ておるように思う。そこで私は、国際連合は理想に照せばこれは死産で、生れたときに死んでおるものだと考える。ところが日本では、理想家の、世界政府とか世界国家とかいうようなことを主張する者が相当これをかついでおるが、私はこの問題についてむしろ消極的であります。こういう理想を言うのは、国際間の信義と公正に依存するというて軍備をやらない憲法のやり方と同じことで、結局十九世紀と比較しても二十世紀はますます力の世界になつておる。御承知のごとく革命と戦争の世紀だと学者が言つているくらいであります。どうして日本で自衛の決心をするなら、アメリカと利害相一致している限りは、アメリカから堂々と軍事援助を受けて固めるよりほかはしかたがない。しかしそれは日本の独立心からいうと悪いことです。基地を六百も持つてアメリカ兵が相当わがままをしており、日本人は思うこともできないのは悲しいことでありますが、これはウオーストよりウォースを選ぶという意味において、やはり大国間に処する小国としてはしようがない、そこでこれは、やはり国防を固め――すなわち防衛的の国防を固め、またアメリカとの間をますく密接にして、ただ口先だけでなくて、真の親善をはかつて行く必要がある。アメリカ外交政策はギヴ・アンド・テークでありますから、やはりこちらからもギヴをしてテークするというはつきりした方針を立てるべきである。私は、自由党内閣は保守反動であるとか、岡崎さんはダレスの手先であるとかいう批評を聞きますが、これはむしろ不愉快に思う。アメリカは戦勝国としてはまず寛大の方であります。私は、あくまでも日米親善を基礎にして日本の復興をはかり、日本の安全をはかるべきものであると考えております。私はむしろ岡崎外務大臣並びに吉田総理の決心を強める意味で、また吉田きんがまだ軍備の時期ではないというようなことばかり言うのは、決心が少し弱いように思うから、鞭撻の意味でこの質問をするのでありますが、お考えを承りたいと思うのであります。
  187. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際連合に対する今のお話は、私は多少意見が違うのであります。当時サンフランシスコでまず準備総会を開きましたときのいきさつ、その前のルーズヴエルトの意見、それからトルーマンが引継ぎましたが、トルーマンの意見等から見ますと、漠然とではありますが、ソ連とアメリカとの二大勢力にわかれるという点も考えまして、実は志の合つたものだけで、何かの国際連合というようなものをつくつたらどうかという意見もありましたので、いやそうではない、とにかく志が合わなくても何でも一緒になり、世界的な機構にすべきであるという議論でやつたと思うのであります。そして、やつたあとで、これはイデオロギーの違う仲間がたくさんいるので意味ないというのではなくて、そういう現状を見て、十分ではないにしても、とにかく平和維持の努力をする機関としては、これ以外にはやり方はないという結論になつたのだと思うのであります。従つて、初めから今ほどはつきりはしていなかつたでしようが意識しておつたと思うのであります。そこで、ソ連を入れるためには拒否権も必要であつたでありましよう。あるいはウクライナその他の国の方も認めて行かなければならなかつたと思います。結局そういうふうになつたのでありますが、そのために不十分であることは、これはおつしやる通りでありますが、しかしそれにしても、物言わざれば腹ふくるるというのと反対でありまして、とにかくあそこにああいうものがあつて、そこヘソ連の代表も来る、アメリカの代表も来るというのでやつているのであるからして、まず現状が維持できるのである。二つに画然とわかれてしまつてお互いにかつてなことを言い合つて、相手に質問もできぬという状況であつたら、もつと危険な状況になりはしないか、そういう意味では、私は、消極的かもしれませんが、かなり平和維持にきき目があつたと考えるのであります。しかし、これに入ればすべて安全だというわけには行かないことはもちろん先ほど申した通りであります。  そこで第二点の、アメリカとよく提携して行くということですが、これについては私はまつたく同感であります。     〔島村主査代理退席、主査着席〕 ただ日米経済協力とかあるいは日米親善とかいうことを言つても、とかく日本の側で考えておるのは、アメリカからとることばかり考えて与えようとすることに努めない。これは私は間違いであろうと思います。そういうかつてなことばかりしておりましたならば、将来にわたつてのほんとうの意味の親善はできない、こちらから進んで犠牲を払つても与えるべきものは与える、おつしやつたギヴ・アンド・テークでなければならぬ、こう考えております。今は与えるものがはなはだ少いのではありますけれども、しかし、少くてもその気持で十分努力しなければならないと思います。私どもも向米一辺倒とかいろいろ言われることも知つておりますが、しかし、おつしやるように、今日本の進むべき道はこれ以外にないと考えておりますから、世評はいかにあれ、私がやつている間はこの道を進んで行こう、こういう決心をしておりますので、どうぞひとつ御鞭撻を願います。
  188. 北昤吉

    ○北委員 ただいまのお話で、大体私も了解いたしましたが、やはりほかの国と仲よくするということは、貿易でも何でも私は伸長させて行きたいと思いますけれども、事いやしくも国防の安全ということになれば、腹を打明けてアメリカとは話合いをしたらよかろう。たとえば予算委員会でもしよつちゆう問題になりました、二十億ドル余の対日援助費であるか借金であるかという問題、これは日本が国力を回復して、自然再軍備の状態に来ればくれるのじやないですか、それから再軍備をやらなければ借金にしておく、アメリカの一つの日本に与えた抵当物件のようなもので、当局は答弁に非常に苦しんだようでありますが、私はやはり日本の国防というものが漸進的に強化するようになれば、これは軍事援助あるいは財政援助という形でくれるのであろう、しかしまだ努力が足らず国民の奮発も足らぬから、あるいはそうなるとこれは借金になつて返さなければならぬかもしれぬと、はつきり私は言つた方が少くとも立憲的であり、効果的でありはしないかと思いますが、いかがでありますか。
  189. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは午前中にもお話がありましたが、二十億ドルとかいうふうに一概にいわれておりますが、先方で前々から、これは独立前からでありますが、希望しておりますのは、日本に対する援助というものはいろいろな形でできておる。ガリオアもあればイロアもある。放出物資もある。あるいは報奨物資というのもある。払下げ物資というものもある一いろいろのものがあつていろいろの勘定になつておるので、これをとにかくどれだけが真に日本に与えられた援助であるか、従つて将来日本の債務になるかならぬか、その点の数字等を突き合せてはつきりさせてみたいというのが先方の希望であります。これに理由なきにしもあらずでありまして、たとえばガリオアというのは、申すまでもなく占領地救済資金であります。占領地というのは日本ばかりじやありませんで、日本の一部と言えば言えるのでありますが、沖繩も入つておりますれば、あるいは朝鮮も当初入つておつたのであります。その方に、たとい予算の上からこれだけガリオアがあるとしても、そのうちのどの部分が朝鮮に行き、どの部分が沖縄に行き、どれが日本に来ておるか、こういう点はとにかくはつきり数字で確かめておく、払う払わないは別として。これは先方も希望するであろうしわれわれも必要と考えておる。ただ日本側で、当時は特にそうでありましたが、とにかく物をもらつて国民に一刻も早くわけなければならなぬという状況でありましたから、書類の整備などよりも、まず物をもらうということが大事である。ことに軍放出物資などというのは、中央でやるばかりではなくて、たとえば地方におきましても軍がその現地の状況を見てこれを出す、あれを出すというのもずいぶんありました。従つてどれがほんとうに出ておるか。それから出たものがどのくらいの値打のものであるか、実は正確にはなかなかわかりにくい点があるのでありまして、われわれとしてもその整備に努力しておりますが、資料がなかなかそろわないので、こちら側でこれだけが確かに日本がもらつたものであるという数字が出て来ないのであります。そういう関係で、まだ話合いもいたしておりませんけれども、私はこれは不日こちらの数字もある程度整備すれば突き合せて――向うの数字ばかり見たのでは、これは話になりませんけれども、突き合せて整理する。それでこれだけのものが日本に落ちたということがわかりましたときに、今度これをどういうふうに処理するかということが第二の問題になりますが、お話の再軍備か援助物資を払うかというような、そういう責め道具のような、他人行儀なことはアメリカもいたしますまい。しかし払うものは払うど日本がきめてちつともさしつかえないのであつて、またその上援助を受けるべき理由のあるものは受けてよろしい、これを天びんにかけるというのは、私も考えておりませんが、アメリカ側もそうは考えておらない、こう私はただいま思つております。
  190. 北昤吉

    ○北委員 最後にもう一点。過日文部委員会で沖縄の教育家の陳情がありました。沖繩の復興について、ことに教育設備の復興については、現地の軍当局は非常に冷淡である。内地から見ると、非常な気の毒な状態にある。陳情を受けた委員はみな目に涙を浮べるくらいの惨状であります。これは私どもが非常に心配している点でありますが、あそこは一般人で十六万の死傷者を出し、兵では十万もなくなつている。一番気の毒な戦争をやつたわけであります。そうして遠いところであるからといつて、ほつておくわけに行かない。ところが現地の大佐とか中佐ぐらいといかに交渉しても、根本的に解決はできないから、私は、ちようど元の首里の市長がアメリカへ行つて上院議員のタフトに会つて訴えたところが、タフトは非常に同情して、主権回復のために努力してやろうと言つたというその記事を見たものですから、それを述べて参考に供したのでありますが、これは御承知の通り、カイロ会談で日本の始末の研究を蒋介石、チャーチル、ルーズヴエルトがやつたときには、戦争によつてとつた土地を返す、それから貧欲でとつた土地を返す、これは満洲のこと、それだけであるのに、ヤルタ会議が二十年二月行われて、その秘密協定で――ポツダム宣言では、カイロ宣言は実行せらるべく、しこうしてというところに、ヤルタ協定の内容を入れておつた。そうして日本の主権の及ぶところは四つの島、それから連合国の指定する付近の小さな島々ということになつた、これはヤルタ協定ということを表面に出さないで、実質をポツダム宣言で出している。われわれはああいうものには賛成したくないが、頭を下げなければ爆撃ばかりやられるから、やむを得ずあれをのんで頭を下げたわけです。これはアメカリの従来の外交から行くと非常な邪道でありまして、幸いアイゼンハウアー政府は、ヤルタ協定と露骨には言わぬけれども、秘密協定を認めないという意見を発表しております。これに乗つて、向うの宣言に乗じて、沖縄や小笠原島は日本の元来の歴史的領土である、戦争によつてとつたものでない、このカイロ会談の線に沿うても日本へ返すべきである。さらに昭和十六年の大西洋会談でも、領土の帰属変更は住民の自由意思による。住民の自由意思は日本を離れてアメリカヘつきたいという者は一人もおりません。これを無視していることであるし、領土的野心なしということは、御承の通り、大西洋憲章の初めに載つております。そうして十六年二月大統領が教書を与え、恐怖よりの自由、貧乏よりの自由、さらに言論信仰の自由を主張したが、後の二つは実現されたが、先の二つの自由は行われておらぬ。この大西洋憲章にもそむき、大統領の教書にもそむき、カイロ会談にもそむき、ヤルタ会談の日本を早く屈服させたいという応急の措置として一時にできたものであると、外務省あたりもつつ込んで、アメリカが今までの秘密協定を訂正しようという意思があるのであるから、その大きな向うの主張に乗つて、そうして沖縄と小笠原島を解放すれば、ロシヤに対しても千島や南樺太を返してもらいたいということの根拠にもなります。まず日本に多少の好意を持つているロシヤよりは、はるかに好意を持つているアメリカに、私は外務当局は呼びかけてもらいたいと思うのですが、おそらくは交渉は十分にやつておられるだろうと思うが、沖繩は、せんつての陳情団を見て、私どもは目に涙を浮べた状態である。それで現地のいろいろの事情を、私は友人があそこに行つて水産に従事しているのに聞いてみて、驚くべき状態、食いものが不足である、女の商売婦的の者が非常に多い、それは滞在しておるアメリカの兵隊や軍属の数が、島民の数に比較して内地よりはるかに多いから自然にそういうことになる。生活も窮乏している。これは人道の名においてアメリカの建国の精神からいつても、堂々と主張すべきものでありますから、この上とも外務当局の御奮発をお願いしたいと思います。これは私の希望として申し上げておきます。
  191. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今お話のような事情は私もよく承知してあります。ただ大西洋憲章等の領土の拡大を求めずという点につきましては、アメリカは、あすこを自国の領土にするのではない、日本の主権は潜在的であるが存在すると言つておるし、なお日英航空協定あるいはスカンジナヴイア諸国との航空協定、日米航空協定みなそうでありますが、あすこは、将来日本が完全に行政権等を回復したならば、あらためて協議するということになつておりまして、もうすでに主権はあるし、行政権等も回復することを前提として各国との協定も行つておりますので、今後ともこの実現を促進する、こういう意味で努力をいたします。
  192. 北昤吉

    ○北委員 よろしゆうございます。
  193. 西川貞一

    西川主査 これにて暫時休憩いたします。本会議散会後開会いたします。     午後四時二十一分休憩      ――――◇―――――     午後五時三十九分開議
  194. 西川貞一

    西川主査 休憩前に引続き会議を開きます。川島金次君
  195. 川島金次

    川島(金)委員 私は午後、事務当局に若干のお尋ねをしたのですが、その点幾分無理がありますので、当局から具体的な答弁がありませんでした。そこで労働大臣に端的にひとつまずお伺いをいたしたいと思います。それは公共企業体に関する裁定の問題であります。これは私が言うまでもなく、公労法の定めるところによりまして、公共企業体の労使双方が紛争に入つた場合、その調停あるいは裁定、ことに裁定は最終的な、いわば判決のようなものであつて、これは労使双方がこれに服従すべき旨の義務が明記されております。但し、但書のあることもわれわれは存じておりますけれども、この裁定がややもすれば労働者側においては承服しておりながら、経営者側の立場においてこれが完全に実施されないという事態が最近例外なく行われておるのであります。こういう事柄に対して、何かこの裁定をもつと権威あるものにする必要があるのではないかと私どもは考えておるのでありますが、労働大臣としてはこの問題にどういう見解を持たれておるか。法規の上におきましても、この問題に関して何らか積極的な改正をするというような心構えを持つておるかどうか。その点の見解をまずお尋ねしておきたい。
  196. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 裁定のことにつきまして従来しばしば論議が尽されておることは承知しております。端的に申し上げますと、これは言い過ぎになるかもしれませんが、裁定の取扱いというものについて、制度とマッチして行くところまで行つておらないことが一つのめんどうな点ではないかと思います。理論的には、あるいは法律的には服従はいたします、尊重はしております。そしてまた但書によつて違つた結果が出て来るというようなことで、そこに何となくぎごちないところが常に残るように思うのであります。この点については従来のことがただちに悪いとまで私は考えません。法に従つておるのでありますが、もう少し何か考え方がありはしないか、あるいは法の上でこれを改正することができるのか、あるいはまた取扱いの上でくふうが加えられるべきものか、今後実は省内では、この点についてもう少し研究を加えて行くべきではないかというふうに折々話合いはいたしておるのでありますが、現在の建前では、従来の行き方で行くよりほかにやむを得ないのではないか、こういうふうに考えております。
  197. 川島金次

    川島(金)委員 私はかりそめにも公企労組の人々に対しては、労働者としての基本的権利である罷業権を奪つた以上は、やはりそれに対して納得のできる裏づけをすることが絶対に必要だと信じておる一人であります。従つて今申し上げるように政、府は公労法の改正をするなり何らかの適当な、積極的な処置をいたしまして、スト権を奪われた労働階級の生活権を守るに適応した積極的な処置をとることが必要であろうと私は思うのでありまして、労働省内においてそういう問題についてせつかく研究がされておるというならば、ぜひともひとつそういう問題に対して、もつと熱意のある立場において問題の解決に当られるよう強く要望するのであります。  そこで、ついでにお尋ねをいたします。これは晝間事務当局にお伺いいたしたことでありますが、これまた若干無理があつて、明確な答えを受取るわけに行かなかつたのでございます。現在われわれの目先には約五十万に及ぶ失業者があるということが明確にされております。なおまた一面職安の窓口の調査から見れば、これまた就職を希望する者およそ九十万にも達するという大量であります。この就職希望者の中には、現にすでに就職しておる者で他に転職をする希望者も含まれておりますから、この数字は必ずしも全面的に失業者と見るわけには行かないというその事柄はわれわれも了解ができないわけではありませんが、いずれにいたしましても非常な数に上る完全失業者もあり、あるいはまた不完全な就業者もあるなどいたしまして、かれこれ合せますと相当な数の失業者日本経済の表面にはおるわけでございます。こういう失業の問題に対して、われわれの理想の形といたしまするためには、何らか政府は積極的な政策をもちまして、完全雇用へ持つて行くことが最も望ましい事柄ではないかとわれわれは信じておるのであります。また政府施策のいかんによりましては、かりに百万程度の失業者があるといたしましても、これを救うの道は方法いかんによつては必ずしも不可能ではないのであります。従つて完全雇用の道というものは、今日の状態からいたしましてもあえて不可能だというほどの困難な問題ではないように私は感ずるのであります。たとえば当局の説明によりますれば、すでに現在就業いたしております人員は約四千万に近いのではないか、数字的には間違いがありましても、私はそういうふうにその説明を記憶しておるのでありますが、いずれにいたしましても、現実の失業者を完全に雇用するとしても、現在就職をいたしておりますいわゆる雇用人口総体から見ますれば、きわめて僅少な比率ではないかと思うのであります。従つてこの僅少な比率の問題を抜本的に解決する道は、そうむずかしい事柄ではないように私は考えられるのでありますが、労働大臣としてはいわゆる完全雇用の問題についていかなる見解を持ち、またこの問題についていかなる具体的な、積極的な対策を持とうとしておるか、そういつたことについての所見をこの機会にひとつ伺つておきたいと思うのであります。
  198. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 なるほど全従業者と比較して失業者の数は、その率から行きますればお話の通りそう多い率になるわけではございませんが、その最後のところがなかなかむずかしい点ではないか。また同時に、完全雇用ということはまことに望ましいことでけつこうではありまけれども、なかなか容易に行われるものではない。もちろん望ましいことには違いございません。努めて完全雇用に近い形態に持つて行きたいのはやまやまでございます。なおそうした関係で、就業率を非常に多くするためには、やはり労働省だけの関係ではどうすることもできませんので、政府全体として、雇用量を増大するという面に力を向けて行かなければならぬと思うのでございます。労働省の面はむしろ消極的に、最後に残つた失業者について適当の処置をして行くという関係になるのでございます。はなはだ策がないのかもしれませんが、極力お話の点について努力はいたすつもりでありますけれども、実際に完全雇用に近づけるとういことは非常に困難だと考えております。
  199. 川島金次

    川島(金)委員 それでは逆にお伺いをいたすのでありますが、私どもの考えからいたしますれば、政府が当面想定をいたしておりまする百万程度の失業者を就業せしめる体系をつくることは、そうむずかしくはないと思うのです。それではお伺いいたしますが、今の吉田内閣のやつておるようないわゆる自由経済主義、こういつた体系のもとにおいてはどうしても失業者が出て来る。しかもその失業者を根本的になくすることができないということになるのではないかと思うのであります。そういう点で、労働大臣は吉田内閣の持つ政治的な性格の面において、どうしてもやむを得ず失業者が出てしまうのだという見解をとられておるのか、それとも計画経済とまで行かなくても、経済の計画化を行いまして、この問題の具体的な計画的な解決をはかろうとする方途について十分な熱意と努力があれば、この問題の解決ができるという事柄をわれわれは考えるのでありますが、労働大臣はその点はどういうふうに考えておりますか。
  200. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 自由経済のもとではできない、あるいは計画経済であればできるというのは、いろいろ意見もまたあり得ると思いますが、私の立場といたしましては、やはり政府の現在の政策に基いて、その間に少しでも雇用量の増大することを期待し、やむを得ざるところを労働省関係で取扱つて行くという程度より、ちよつと考えられないのであります。
  201. 川島金次

    川島(金)委員 はつきり聞き取れなかつたのですが、私はもつと端的にお尋ねします。失業問題は資本主義の当然の帰結である、こういうふうには考えませんか。
  202. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 全然形をかえたもので、すべての人に職を見つけるという制度でやり得るならば、あるいはお話のようになるかもしれませんが、現在のわが国の行き方といたしましては、自由主義経済を基本といたしております。それも行き方によつては、雇用量を増大させることによつて、相当程度に失業者を少くするということはできると私は考えております。ただ時の国の経済なり、また国際経済なりという点でそれがスムーズに行かない場合は当然あるのであります。国としては、あるいは政府としても、努めてそういう失業者の少からんことを望み、また施設もいたして行かなければならぬと考えております。
  203. 川島金次

    川島(金)委員 私は何といたしましても、働く意思を持ち、しかも働く能力を持つ国民をして、それぞれその働くところを得せしむるという事柄は、きわめて日本経済の自立達成の上にとりましても重大な事柄であちと思います。しかし今の吉田内閣の考えておるような労働行政、労働政策は、とうていその事柄が満足に行くことをわれわれはあまり期待はいたしておりません。しかし事はきわめて重大でありますので、労働大臣はこの点についてさらに十分の研究と、積極的な熱意を示されんことを強く要望して、この問題は議論にわたつて参りますから、これで打切つておきます。  そこで次にお尋ねをいたしたいのでございますが、先ほどの本会議の問題で、野党三派からもそれぞれの質問があり、労働大臣からも、あるいは関係閣僚からも答弁等があつたのでございます。この電気事業と石炭鉱業における争議行為の方法を規制する法律の問題については、どうもわれわれといたしましても、きようの本会議労働大臣説明を聞いた程度では納得のできない点が多い。これはひとりわれわれの立場を持つ者のみならず、広く院外における労働階級の大半もまた労働大臣説明程度では、何ゆえこれらのストを禁止しなければならぬかという事由が、よく納得できないのではないかと私は考えるのでございます。ことに昨年あの二大ストが勃発いたしまして、しかもそれが長期にわたるのやむなきに至りました最も重大な原因というものは、電産はもとより、ことに炭労関係給与がきわめて劣弱であつたというところにあつたのではないかと、私どもは考えておるのでございます。この炭鉱労働者諸君の給与関係の劣弱であるのにかかわらず、しかも一面において炭鉱業の実態というものは、ことに炭鉱を経営いたしておりまする人たちの多くは、議会でもよく昨年来言われた言葉でありますが、二十五年度のごときは炭鉱業者が長者番付にずらりと十人も並んだという、そういう実態を考えてみましても、炭鉱経営者が労働階級に対して、深い理解と積極的な従業員の生活を守ろうとする熱意の欠如があつたのではないかと私は思うのでございます。われわれはこういう見解に立つておるものでございますが、そういう資本家、ことに経営者側における実情に照しまして、労働大臣は一体どういうふうな見解を持たれておるか。くどいようでございますけれども、この機会にまた重ねてもう一ぺんお尋ねをしておきたいと思うのであります。
  204. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 争議の原因が給与の劣弱な結果であるという御意見でございましたが、給与につきましてこれが高いか安いかということは、私の立場からはあまり申し上げることは差控えたいと思います。毎度申し上げるようでありまするが、そこは労使の間で自主的に解決されて行くことを期待いたしておるのであります。ただ、今回の法案を出しましたのは、昨年の実績にかんがみて、第三者たる国民がはなはだしく被害と脅威を受ける、そういうことから、ことに内容から見ますれば、従来ほとんど違法であると考えられておつたものを、はつきりと規制する法文にした程度のものでありまして、規制そのものが、非常に労働者を抑えたというようには考えておらないのでございます。その考え方は、今の公共の福祉と労働権との調和という点に重きを置いて、考えて参つた次第でございます。
  205. 受田新吉

    ○受田委員 ただいまの給与の問題と労働力との関係について関連質問をしたいと思います。これは昨日閣議で決定したようでありまするが、国家公務員の場合、定員法による定員の削減をする、その方法として欠員は未補充のままでおくという対策を立てられたように、きよう新聞で見たのであります。この定員法で法律に基く定員を減らして、約三千人やら減らす御計画のようでありまするが、一方において非常勤的な性格を持つ非常勤職員がどんどんふえて行く傾向を、われわれは指摘せざるを得ないのであります。この点特に給与費の方でなくして、物件費、普通事業費の中から差繰つておるようでありまするが、はなはだしきにおいては、物件費の中からなど人夫賃のようなものを差繰つて出してまで、臨時費をどんどん採用している傾向が多分にあることをわれわれは知つておるのであります。この点、定員法に基く本筋の通つた常勤職員は、これはわれわれとしては基本的なものであるから、これに対する国家の給与が十分で、その労働力に報いなければならないと思うのでありまするが、これを削つて、一方政府の仕事は少しも減つていない、ますくふえようとしている今日、この定員法に基く定員の削減をやつて、一方では新たなる人的資源を非常勤職員の形で、単純労務者等のごときは物件費からでもこの金を出して、これをどんどん広く採用しようとすることは、定員法によつて定員を抑え、一方において他の方面にそういう者を採用するということになると、給与体系をくずすことにもなるし、国の職員としての品位を保つ上においても、非常勤職員は身分が安定しない。そしてその労働力に報いるところの市当なる給与がされていないというような立場から、非常に不安定な性格を持つて来るのでありまするが、これに対して労働大臣として、政府側の意向を代表しての御答弁をいただきたいのであります。
  206. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 まことにごもつともで、定員法の方で減らしておいて、それがただ形をかえて事業費に移つて行くということでは、まつたく意味をなさない。しかし定員法で少しでも減ずるというその趣旨は、もちろん御了解をいただけると思いまするが、従来これで余裕があつたのだというふうに考えてのわけではないのであつて、それだけみんな勉強するやり方で行きたいものだという意味なのでございます。それでなお一方において、非常勤職員というようなものがあるということでありますが、これがただそのままで肩がわりして行くような形ではいけない。しかしずいぶん国の事業も多くなつておるのであります。そういう方に当然に人が必要になるということもまたあり得ることである。一方で減らして、それをそのまま形をかえて持つて行くということはいけないけれども、事業そのものからどうしても人が必要な面が生じて来ることはあり得る、かように考えます。また定員法の関係と同じように、現在ある非常勤職員につきましても、やはり同じ考え方のもとで、少しでも人件費を節約して行くという方に進むべきものであると考えております。
  207. 受田新吉

    ○受田委員 人件費の節約という立場から言いますと、総合的に見たら、節約でなくて、増額なつて来ると思うのであります。それは普通の場合事業費からまわし、はなはだしては物件費の中に入れてある場合もある。物に対する費用を人に対する費用に振りかえるということは、それは人権尊重の上からも問題なのであつて、この非常勤職員というものは共済組合にも入れない。恩給の対象にもなれない。期末手当も、やつと昨年末にごくちよつぴりした恩恵に浴したにすぎない。こういうことではなはだ不安定な身分になり、また低い給料に甘んじておるのであります。こういう非常勤職員をなるべくなくして、しかも非常動職員で年間を通じて働いておる人たちに対しては、法律をもつてこの身分並びに給与の上の保護を加えるという必要があるのであります。いつでも首が切れる、非常に便利のいい存在である。しかも給与は物の方から出すのであるから、これは非常に軽く取扱つていいのだというような印象になつて来ると、定員法による人件費の節約をしても、実際は人件費総額から見たら、むしろ占えておる。この点できれば資料として、非常勤職員がこの数年間どのくらいふえておるかを御提出いただいて、労働省としても御研究いただき、お示しいただきたいのであります。この数年間のふえ方ははなはだしいものがある。従つて非常勤職員をふやす結果に事実上なり、定員法による常勤職員を減らしても、そういう逆効果が現われるということをお考えいただきまして、政府の仕事が減らない、むしろふえておる今日、その職務の内容と、それに供与する勤務の労働力というようなものとが、必ず一致できるように報いて上げるように、政府としてはそうしたあたたかい愛の施策がいると思うのであります。この点に対するきのうの閣議の決定は、はなはだ心さびしいものであり、一方的なものであり、非常勤職員をふやして、人権尊重の裏をかくものであるという、はなはだ悲しい結果になることをおそれて、ただいま質問したわけであります御研究をいただきたいと思います。
  208. 川島金次

    川島(金)委員 もとにもどつて質問ですが、今度政府が考えた電産と炭労のスト禁止、文字通り事実上のスト禁止、こういう直接のストライキに対する禁止法をつくつた諸外国の例は、ほとんどないと言つてもいいといわれておるのですが、労働大臣は、この種の同じようなスト禁止法がどこかの国にすでに実施されておるというような例を知つておるかどうか。その点例がありましたら、この機会に明らかにしておいていただきたいと思います。
  209. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 私、まだ各国の例について十分に承知いたしておりませんが、英国にはほぼ同様なものがあるように承知いたしております。
  210. 川島金次

    川島(金)委員 英国にほぼ同様なものがあるというのでございますれば、この機会に具体的に知つておきたいと思うのですが、どういう内容でありますか。これは大臣でなくてもよろしいのです。事務当局でもけつこうですから、聞かせていただきたい。
  211. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)政府委員 電気につきまして、一九一九年、電気法という法律がございまして、この電気法において、電気の供給をとめるということについて禁止せられております、
  212. 川島金次

    川島(金)委員 諸外国を見渡しても、わずかに英国にその一つぐらいではないかということは、私も実は知つておるのですが、世界を通じてこういうあまり例のないようなスト禁止法を出すということは、はたして労働組合の健全な発達をこいねがい、同時にまた労働者の生活の権利を守ることにふさわしいものであるかどうかということについて、われわれはきわめて重大な疑問を持つておるのでございます。この問題について、私はこれ以上労働大臣と議論をするつもりは毛頭ございませんが、でき得べくんば、こうした乱暴な法制というものは、できるだけひとつ政府の猛反省を求めまして、一日も早く撤回すべきではないかということを、われわれは強力に要求をするにとどめておきたいと思うのであります。  そこで続いてお伺いを申し上げるのでありますが、昭和二十六年度の決算の検査報告によりますと、鹿児島の労働基準局ほか八箇所で、関係職員が正当なる収入金をほしいままに横領をいたしたのではないかと思うのですが、その事柄が出ております。そしてしかもその金額が実に七百六十万円という巨額に達しおります。われわれ国民の立場から申し上げますれば、政府の使いまする金は、実に文字通りの血税であります。その血税のかたまりを政府の役人がみだりに費消し、あるいはこれを横領して自己の生活その他に充てるがごときは、国民としましても断じて許されないところでございますが、この鹿児島労働基準局ほか八箇所で起りました七百六十万という厖大な横領事件の結末というものは、どういうふうになつておるのか、その結果をひどつこの機会に明らかにしてもらいたいと思う。
  213. 百田正弘

    ○百田政府委員 ただいま御指摘になりました点は、基準局並びに安定所等におきまして、職員が不正事件を起したものでございまして、この点につきましては、平素労働省といたしまして、監察その他の方法によりまして常時厳重なる監督をいたしておるのでありますが、かかる事件が発生いたしましたことはきわめて遺憾であります。関係者につきましては、それぞれ厳重に注意あるいはまた処罰をいたしますと同時に、領得されました金額につきましては、これが回収につきまして極力努力をいたしておる次第でございます。なおその詳細な回収金額はどれくらいということは、今手元数字がございませんので、御必要とありますれば、後ほどお手元に差上げます。
  214. 川島金次

    川島(金)委員 今申し上げましたように、われわれ国民からいたしますれば、政府の金は一厘たりとも国民の血税以外の何ものでもないのであります。そういう貴重なる、しかも深刻な思いをして納めております血税の政府資金が、いたずらに若い心なき公務員によつて濫費されたり、あるいは不正を働く対象となるような事態には、政府としても重大な関心を持たれまして、今後この種事件の発生の絶滅を期するような重大な決意の要求を、私は国民の立場においてしておく次第でございます。  そこでさらに続いてお伺い申し上げますが、私は日中の委員会においても、事務当局の方にお尋ねをしたり、私の希望などを申し上げたのでありますが、日米行政協定に伴いまして駐留軍に従事いたしますこのごろの日本人の労務関係のことであります。これは労働大臣お尋ねをし、その所信なり見解なり対策なりを私はこの機会に明確にしていただきたいと思うのであります。実は私の手元にありますのは「中央公論」の三月号でありますが、この三月号の誌上の記事を見ますと、この中に、わが国の労働問題にとりましても、また独立国日本という立場から言いましても、きわめて重大な記事がかなり広汎な紙面にわたつて報道されております。ことに問題となりますのは、駐留軍労働者に対する不当な解雇の問題であります。さらにまたその解雇に伴いますその後におけるところのいろいろの処置、あるいはまた駐留軍関係の管理工場の設備あるいは労働条件等の問題であります。一つ例を簡単にあげてみますと、大津市の別所という所で、米軍の大津キヤンプのモーター・プールに働いておる運転手が三人ばかりおつた。その三人ばかりの運転手がいわれもなく突如としてある日解雇の通告を受けたという事件であります。しかもその解雇をせざるを得なくなつたという理由が、しばらく後になつて明らかにされた。その明らかにされた理由によりますと、この三人の運転手のうち二人は、大津キヤンプから琵琶湖のホテルに駐留軍を運んで参りますバスの運転に従事しておつた。実はこのコースの所要時間は普通で三十分かかる。この大津キヤンプから京都行きバスに連絡するということになつていたということで、しかも当日はちようど日曜日であつたためは、乗客が多く、スケジュール通りに運転すれば速力の違反となる、速力を規則通りにすれば、スケジュール通りの運転ができない状態であつた。従つて二人は、いずれもこの運転にあたつてスケジュールを守つたために、速力の違反があつたということで首を切られたという問題であります。要するに右をせんか、左をせんか迷つた結果、右をしたならばそれが結果においては速力違反であるということであられもない不当な解雇を受けたという事件があつたということをこの誌上では具体的に報道をいたしておるのであります。さらにまた先ほども私は申し上げたのですが、日本モーター子安工場のことは、雇用契約は毎年一箇年ごとに駐留軍労働者を更新するという契約になつておる。しかもその上に二千人の従業員に対して食堂の設備はない。あまつさえ湯茶の接待をする設備もない。夜食は五時間の残業でようやくコッペパン二個が渡るだけだ。あるいはまた職場の喫煙がまつたく禁ぜられておつて、二千人も労働者がおるにかかわらず喫煙をする場所も設備もない。こういつた、実にわれわれから見ますると驚くべき事態が繰返されておることを、いろいろと例をあげてこの中央公論は掲げております。こういう問題について私は日中お尋ねをいたしたのですが、労働省としてはまだその問題については調査をしておらないようでありますが、こういう事実があつたといたしますれば、一体労働大臣としてはこの問題に対してどういうふうな見解を持ち、これに対する対策を講じようとする心構えがあるか、この点についての労働大臣の所見を伺つておきたいと思います。
  215. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 駐留軍の労務者につきましては、従来もとかくそういう問題が起きた例があることを聞いてもおります。ただいまお話の分につきましては私はまだ全然存じませんが、そうした例があるのは、たとえば言葉が通じなかつたために生じたような場合もありますし、取扱者が考え違いであつたというような場合もあつたようであります。そういうことについては随時是正をするように交渉をいたして参つておるのであります。なお今後もさようなことがないように、十分常識的に、不都合のないようにして参りたい、かように考える次第でございます。
  216. 川島金次

    川島(金)委員 今申し上げましたように不当解雇の問題はもちろん問題でありますが、具体的にここに掲載されてある文章、要するに日本モーター子安工場の二千人の従業員に対して、食堂もない、湯茶の設備もない、そうして禁煙で、しかもタバコをのむ休憩時間にも設備がない、こういつた問題が事実ここに報道されておるのです。これは労働基準法から行きましても、その他の問題からいいましても、実に乱暴な問題だと私は思うのです。こういう問題は単に日本モーター子安工場の問題だけでなしに、他にもあろうかと思います。そういうことでありますから、こうした問題について至急に労働省としては調査の上、これに対する厳重な対策が行わるべきではないか、こう私は思うのであります。それについてひとつもう一ぺん労働大臣としての明確な責任のある見解を承つておきたいと思います。
  217. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 ただいまのお話の点はさつそく取調べることにいたします。なおその上でその実情に応じまして是正させるべきものはしてもらうというふうに、はつきりいたしたいと思います。
  218. 川島金次

    川島(金)委員 予算委員会はまだ残された日が三日ばかりありますので、できればその三日内に調査を命じまして、この問題が事実かどうかその真相をわれわれにさらに知らせてもらいたいと思う。ただ単にこの問題は子安工場だけでない。労働大臣がこの中央公論三月号をごらんになればいろいろ出ておるのでわかります。具体的にしかも名前をあげて出ておりますが、責任ある編集者が編集したと思いますので、よもやでたらめではないと思います。非常にいろいろな問題がここにあります。日本労働者が駐留軍に使われておりまして、非常に人権が無視されあるいは労働条件がまつたく無視されておつて、根本的には人権が蹂躙されあるいは生活権がまつたく無視されれているような具体的な事実がたくさん載つておりますから、この問題を基準としてひとつ至急に調査をされ、それに対する政府の見解なり今後の対策なりを至急に講ずるように、強く大臣に要望しておく次第であります。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 今の川島さんの御質問にも一部関連することでありますが、最近の職場に就職する人たちの問題であります。自由労務者がちまたにあふれて、インテリの自由労務者さえも多数横溢しているような今日、大学を出た者が就職するにあたつても、きわめて不公平な採用がなされているように伺つております。この点職業安定という立場からも、きわめて公平にその才能に応じてその所を得しめるのが国の政治でなければならぬ。その点において、これは文部大臣にも関連するのでありますが、学校卒業者の就職について公平を期する努力を政府としてはどういうふうになさつているか。  もう一つは、この自由労務者は、その職を求めることができないし、失業保険の対象にもならないし、共済組合の対象にもならない。これまた先ほど申し上げた非常勤職員以上の残酷な状況にあるのでありますが、これらに対する保護対策として、政府はいかなる対策を持つておられるのか。この点についてもつと大きな意味の愛の政治が労働政策の上に現われなければならぬと思いますので、以上学校卒業者の就職問題及び自由労務者の保護対策についての労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  220. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 学校卒業者につきましては、労働省職業安定局もむろん緊密な連絡をとりますが、大学については文部省ないし学校当局がやつております。お話の公平にという意味はどういう点をお指しになるかわかりませんが。……
  221. 受田新吉

    ○受田委員 情実のない公平です。
  222. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 情実のないように、努めてその意味の公平に取扱つて行くようにいたしたいと思います。職業安定所で直接取扱つておりますものは中学校、高等学校の程度でありますが、これについては職員一同が昨年以来、本年に対処してかなり勉強をいたしておるところであります。相当の成績をあげているように思つております。
  223. 中西實

    中西政府委員 日雇い労務者がちまたにあふれているが、これらが失業保険ももらえないというのはどういう趣旨のものか存じませんが、結局最低生活の保障ということになりますれば、これは厚生省の方で生活保護をやつておりまして、その点救済はされるわけでございます。日雇い労務者として安定所の窓口に参りますとこれは手帳を交付しまして、そうして極力就労の機会を与えるということでやつておるわけでございます。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 今の問題でありますが、自由労務者の失業保険の対象にならない者は、お説のような生活保護というものがあります。しかし働こうとしている者、働く意欲に燃えている者が、この生活保護の適用を受けるというようなことに対する政治の欠陥を私は認めざるを得ないのであります。十分の能力を持つた者にその職を十分得しめるような施策がとられていない。安定所においても、あのちまたにあふれた人たちを適材適所に持つて行くぼどの、もつと積極的な職場を与えるための方策を強力に講ずる必要があるのではないか。安定所の窓口の方策だけでは非常に微弱であるという点を指摘しておるのです。こういうところへ予算の面にもつと大幅なこれは厚生省にも関係するのですけれども、失業対策等も含めた施策が講じられる必要があると思うのであります。窓口だけでやつておるのでなくて、もつと広く乗り出して、そのところを得しめるような職場を与えるような施策を何かもつと具体的に考えておられないかを私はお尋ねしておるのであります。
  225. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 御趣旨のことにつきましては、なお今後政府といたしましても十分研究し、御期待に沿いたいと存じます。
  226. 和田博雄

    和田委員 私は大臣のおらないときに事務当局から大体事務的のことは聞きましたし、大きな問題については本会議その他で多少聞きましたので、ただ一点だけお聞きしておきたいと思います。それは珪肺対策についてですが、けさもお聞きして、いろいろな行政をやつておるわけですが、労働大臣として、この珪肺問題を一体どういうように解決して行くつもりであるか、その点についての考えをひとつはつきりと御答弁願つておきたいと思います。
  227. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 珪肺対策として、あるいは御趣旨が今のではまだ不徹底だという点がおもなところではないかと思うのでありますが、私その点については御同感であります。ただこれをもう少し年限を延長するとかいう点について、負担の関係等についていま少しく研究を要するのではないかという程度にただいま考えておるのであります。これを等閑に付するという気持は持つておらないのでありまして、もうしそこを研究さしていただきたいと思います。
  228. 和田博雄

    和田委員 研究はけつこうなんですが、こういうむずかしい問題になつて来れば来るほど、やはり私企業としてはなかなか積極的にこれに対する対策を立てることをきらうわけなんです。これはやはり国家が全面的に乗り出して、きちんとした法律をつくるなり何なりして、根本的な対策を立てておかれないと、問題がむずかしいだけにいつまでも放置されて来るということに私はなるだろうと思うのでありまして、そういう点については、ぼくはやはり労働行政を担当される労働大臣としましては、大胆に踏み出していただきたい、こういう希望を持つわけですが、ぜひそういうふうにやつていただきたいと思います。やる意思があるかどうかをひとつお聞きしておきます。
  229. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 もう少し考えさしていただきたいと思います。
  230. 西川貞一

    西川主査 労働大臣に対する御質疑は大体終つたものと思います。  なお川島君から外務大臣に対しまして簡単な質問があるそうでありますから、それをいたしましてから食事をいたしたいと思いますので、しばらくごしんぼうを願いたいと思います。
  231. 川島金次

    川島(金)委員 時間が大分進んで参りましたので、簡単に、午前中残つておりました私の外務大臣への質問を一、二申し上げてみたいと思います。その前に、外務省事務当局に、アメリカのイタリアに対する援助資金の返還の問題についてお尋ねしておいたのですが、まだその資料が出て参りません。これはどういう事情でありますか、主査からひとつ大臣に聞いてほしいと思うのです。
  232. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の了解しているところでは、予算説明資料はさつそく午後にプリントしてこの分科会に出します。それからイタリアの方は、あなたのお話もたしか後刻出してくれという話で、そうお急ぎにならぬと私は思つておりましたが、おそらく慎重にずつと文献を調べておるのだと思います。
  233. 川島金次

    川島(金)委員 それでは慎重に調べて急速にひとつ出してください。まずお尋ねをしたいのですが、昨日厚生大臣ちよつとお伺いをしましたところ、中共地区における在外同胞が十五日から二十日くらいまでの間に約五千人、四月十日に第二船としてさらに若干の引揚げがあるということになるらしい、こういう説明でございましたが、それは今から三、四日前に厚生大臣として受けた情報によるものらしいので、この点は外務大臣の方が詳しいのではないかと思うのですが、この引揚げの具体的な決定がありましたらば、そのことについて知らせてもらいたいと思うのです。
  234. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 やはり今のところ、厚生大臣が言われたと思われますが、十五日から二十日の間に上海とか、天津とか、秦皇島に船を入れる、それは大体五千人程度、三千人から五千人の間というのですが、少しずつ人数がふえて行きそうですから、五千人に近い方じやないかと思つております。第二回目は大体四月十日ごろ、かわつておりません
  235. 川島金次

    川島(金)委員 続いてちよつとお伺いいたしますが、例の韓国との防衛水域の問題でございます。これは昨日の外務委員会におきましても、いろいろ質疑があり、外務大臣らもいろいろと見解を述べられておることが新聞に出ておるのですが、この新聞の程度ではまだ私どもよくわかりませんので、外務委員会の質疑とあるいは重復するきらいがあるかもしれませんが、この機会にお伺いをしておきたいのであります。  大邦丸事件につきましては、わが国と韓国側との主張と見解に相当な隔たりがあるようであります。韓国側に言わせますと、大邦丸は何か韓国の沿岸一マイル内に入つて来た、こういう主張をしておるようであります。わが国の方から言いますれば、さようなことでなくて、沿岸二十マイル以内であつた。かりに韓国の接岸一マイル内であつたとすれば、岩礁が多くあつて、とても操業が不可能な地帯のはずである。こういつたことで非常な食い違いがあるわけです。この食い違いについては、お互いにまだ主張が明確に判定されるところまで行つていないものとは私は思いますけれども、外務大臣が接受いたしました情報によつて、一体この問題はどちらの主張が正当なものになるのか、その辺の情報がはつきり今日わかつておりましたならば、ひとつ明確にしてほしいと思うのであります。
  236. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こちらの方の主張は、十分取調べて信用の置けると思われる材料に基いたものでありますが、先方の方で今言つておりますのは、新聞に出したステートメントですか、談話なのですか、はつきりしませんが、その程度であります。つまりこちらから出した文書に対する正式な返事が――あるいは正式でなくとも文書なり、口頭なりの返事というものはないのであります。そこでいろいろ当を得ていないと思うようなことが新聞に出ておりますけれども、われわれとしては、先方からいずれ最近に正式に回答が来ようと思つておりますので、それを前にして、先方の言葉じりといつては語弊がありますが、いろいろの新聞に出ている、しかも中にはあの部分は取消されたのだか、この部分は訂正されたのだか、あるいは場合によつては、きよの夕刊で見ると、何かまた違うような、今度は大分穏やかなようなのも出ております。それを一々とらえても、かえつて感情を刺激するようなことになるかと思いますので、私はどちらの主張が正確であるかというようなことは、まだ言うのは差控えたいと思うのであります。もう近日中に先方の意向がわかるだろうし、もつともわかりましても、またこれに対し、こちらの主張を言わなければならぬ場合もありましようけれども、今のところ申し上げ得るのは、われわれの方で得た材料というものは、かなり実際にも調べ、また、経験のある人の様子も聞き、それから周囲の情勢、たとえばどのくらい追跡されたとか、あるいは大体網を下におろしていたのかどうか、おろしていたとすれば、下に岩がないはずである。潮流の関係とか、済州島がどの程度宣えたとか、いろいろなものの材料から、かなり正確につかんだ場所だとは信じておりますけれども、その程度のお答えできようはお許しを願いたいと思います。
  237. 川島金次

    川島(金)委員 そこで私は外交のことはよくわからぬのでお尋ねするのですが、一体李承晩ラインというラインは、国際法上もしくは国際法的な慣例から見て、厳たる何か法的の根拠と効力というものがあることになつておるのかどうか、その点はどういうふうになつておりますか。
  238. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際法的には、これは厳たる法的根拠はないのでありますが、これは普通にいう、何と申しますか、沿岸を拡張したとか、あるいはそこまでの権利を主張しておるというのとは少し違うのでありまして、たとえば日本の船であつても、漁船でない商船とか貨物がその中を通つても、それは別に問題ないのであります。要する物品にかに漁船で漁獲をすることが困るという向うの主張であります。そうしますと、これは例のないことはないので、アメリカとカナダの間においても、ここで魚をとつてはいけないとか、いいとかいう議論がいまだに続いております。これは主としてさけなどの卵を放流して大きくなつて上つて来たものをよその国がとつてしまうという議論でしよう。それからメキシコとアメリカとの間にも議論があります。メキシコの方は二十海里というラインを制定したことがある。制定といつては語弊がありますが、ここはわれわれの方の魚をとるところだと主張したことがありまして、解決はなかなかむずかしい、長くかかるのであります。往々にしてそういうことはあるのであります。これに対しては、魚族の保護をやるのなら保護をやるような方法をとろう、あるいは今度のような問題なら、韓国の漁業家が生計が立たないような実情にあるなら生計の立つようにする、これは異議がないけれども、筋を領海のまん中に引いて、こちらからこつちに入つてはいかぬということは、不合理であるという主張をいたしているのであります。今申した通り長く各国の間でもかかつている例もありますから、やはりしんぼう強くわれわれの主張が先方に理解されるように努力をいたさなければならぬので、その前に両方の主張が対立したままですぐけんかみたいな言葉のやりとりをすべきものではない。できるだけ誤解を解いて、忍耐強くこういうものは交渉しなければならぬ。こう考えるわけです。
  239. 川島金次

    川島(金)委員 そこで両国間のこの問題はいろいろと主張がおのずから異なつて来ていることが明確になつております。私はこの問題の対処の仕方というものは、独立日本の最初とも言える一つの外交問題の試金石とも言えるのではないか。従つてこの問題の帰趨というものはきわめて重大であり、それだけに国民の関心もきわめて深いであろう。私はかように考えているのですが、この問題の解決を両国の外交折衝によつて今後ははかるのか。それともこういう防衛水域の問題でありますから、国連軍との関係の中においてこの問題の解決をはかることを考えられるのか、その点はどういうふうになりますか。
  240. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは元来何でもない場合ならば、国連軍も入つてもらつてみんなで解決するのが一番すなおなやり方と思います。思いますが、今の状況でありますと、たとえば日本がかりにある数点を譲歩したとすると、何か国連軍の圧力によつて譲歩したのじやないかというような疑いも向けられる。先方でも同様だと思うのであります。そこででき得る限りは両国間で話をつけて、両国間で納得の行くような解決に導きたい、国連側の仲裁等を要請せずに行きたい、こう考えておりますが、どうしてもうまく行かない場合にはあるいはあつせんということもあり得ようと思います。
  241. 川島金次

    川島(金)委員 今申し上げましたように、この問題はきわめて国民の立場からも重大な関心事であり、この問題の今後の折衝及び解決の仕方は、今外相が考えられているように、日本の主張、立場というものは明確であるということが前提だといたしますれば、その問題の解決は非常に重大なことになるのでありまして、いやしくも日本の独立の権威のためにも、この問題が独立的な自主的な立場においてすつきりした疑惑のない解決の得られるように、断固たる自信がありますれば、処置に出て、この問題の解決に当ることを強く希望を申し上げるのであります。ほかにも若干質問が残つておりますが、時間も過ぎておりますので、私の外務大臣へのお尋ねはこの程度できようは打切つておきたい。
  242. 西川貞一

    西川主査 これにて暫時休憩いたします。午後七時半から再開いたします。     午後六時五十五分休憩      ――――◇―――――     午後七時三十二分開議
  243. 西川貞一

    西川主査 休憩前に引続いて会議を開きます。受田新吉君。
  244. 受田新吉

    ○受田委員 外務省職員給与の中に、旧外地給与費というのがあるのでありますが、この外地職員給与並びに旧外地関係の整理事務というようなものは、早晩もうこれは処理すべき時期ではないかと思うのでありますが、この事務がいつごろまで残存されるのであるか、見通しをお聞きしたいのであります。
  245. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いつという正確な見通しは、政府委員からお答えいたさせますが、これは私どもも大東亜省がなくなつたものですから、やむを得ず引受けたような事情で、実はなるべく早く手放したいと考えております。
  246. 受田新吉

    ○受田委員 次は移民振興費でありますが、昨年アメリカにMRAの招待を受けて行つた際に、ブラジルその他の諸国が非常に日本人を受入れようとする態勢が整つていた事実を突きとめておるのであります。この予算書には、移民振興費に対してブラジル開拓民の二千人分しか予算を計上しておらぬのでありますけれども、そのほかの移民の対象となる諸国家における移民振興に関する外交方針、そういうようなものはどのようにお考えになつておられますか。
  247. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはほかの国もむろん大切でありまして、特に費用を要せずして話がある程度できると思つておりますが、今のところ呼び寄せ移民の可能性が多くて、計画移民のごときはちよつと今見通しがつかないものでありますから、見通しのつかないのを予算に計上するのもどうかと思つてしておらないのでありますが、何とかその方面もやりたいとは考えております。
  248. 受田新吉

    ○受田委員 アメリカでは昨年マッカラン法案が通過しまして、日本におるあちらの関係者の呼び寄せの範囲が非常に拡大されて来ております。こういうことに対して周知宣伝の道も必要であるし、また移民に対してブラジルは大量の歓迎をしておるという事実、チリーその他の諸国においてもこれに関心を持つてくれておるのでありますが、こういうところに大いに移民思想の普及、それら関係諸国の実情に通ずるための宣伝、こういうようなことを積極的にやる時期が来ておるのではないかと思われるのであります。この点周知宣伝方に対する外務省の方策をお伺いしたいのであります。
  249. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これもただいま関係省と協議をいたしております。外務省の希望としましては、まだこれは決定しておりませんが、移民関係に専念する一つの局をつくりまして、ここでもつて専門にこういう問題を取扱いたいと考えております。もつとも、ただいま行政簡素化という方向に政府の意向は向いておりまして、増員はもちろん、今後欠員もできるだけ補充しないで行こうという考えでありますから、外務省としては現在の人間をもつて、また現在外務省に配付されます予算の範囲内で行うので、希望のようなそう大きなものはできませんけれども、それにしてもできるならば一つの局をつくりまして、それで神戸の移住あつ旋事務所と相まちまして、国内の啓発等もいたし、また海外の方にも国内の事情をよく知らせて呼び寄せるようにすることもいたしたい、こう考えております。
  250. 受田新吉

    ○受田委員 科民局のごときを設けるという構想を伺つて、たいへん愉快に思うのでありまして、この点人口のはけ口に困つている日本としては、外務省としても力を入れるべき一面ではないかと思うのであります。  もう一つ、昨年新木大使の就任直後でありましたが、私アメリカの旅のときに、アメリカにおける日本大使館の招宴に各国の代表とともに臨んだときに、その催されたカクテル・パーティーがはなはだ貧弱で、新木大使自身、費用がありませんのでこうした気の毒な状況です、という答弁をされておつたのでありますけれども、その後、諸外国の大使館にわれわれひとしく招かれたときに、タイ国の大使館のごときにおいてさえ、きわめて外交的な儀礼を尽してくれておりました。この点、在外公館における日本の体面を保つ限度の所要経費は、国費を十分それに注ぎ込むことにわれわれはやぶさかではないと思うし、単に遊興的な性格でなくして、国際儀礼を重んずる立場からの費用は、新木大使が悲しむまでもなく、外務省として十分考えていただきたいと思うのでありますが、これに対する大臣の御所見を伺いたいのであります。
  251. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実は本年度の経費はようやく三千万円でありまして、これをドルに直しますと、実にわずかなものになつてしまうのであります。この三千万円で本年は各在外公館に重点的というほどにも振り向けられないのですが、ごくわずか振り向けておつたのです。幸いして今回大蔵省がこれを三億円に増額してくれました。これは全部ドルにかわるというわけではありませんで、国内でも多少いる金もありますけれども、ほとんど相当部分はドルなりポンドなりにかえまして、これでできるだけのことをいたしたい。これでもまだ在外公館の数が非常に多いのでありまして、ドルに直しましても、百万ドルに足りないものですから、月に直しますと、全部ドルに直しても八万ドルで、これを在外公館全部にわけまして、しかも日本に呼ぶ会議だとか、その他のミツシヨンであるとかの接待費、また向うからも人をよこしたり、またこれでもつてたとえば日本の有力者があるいろいろの方々に海外へ行つてもらう場合もあります。通商使節その他のものもあります。十分とは決して言えませんけれども、本年に比べればとにかく十倍になつたのでありますから、これでできるだけ節約して実際の用にかなうだけのことはいたしたい、こう考えております。
  252. 受田新吉

    ○受田委員 未引揚者の問題に関して質問をいたします。  外務省予算書を見ますと、未引揚邦人調査費が遺骨の引取り等に要する費用を合せて、本年度よりも減少をしておる状況であります。この点、遺骨引取りは目下すでに日本丸が各地へ大事な御遺霊をお迎えに行つておるのでありますが、なお南方諸地域、外地等に残されたこれらの遺骨をお迎えするために、きわめて積極的な施策が必要であると思うのでありますが、この予算減少するような状況になぜなつたのか。予算書を見ますと、二千七百万円程度にとどまつておるようであります。今までこの未引揚げ邦人の調査は、外務省で地方の状況調査、あるいは記録を持つている人の呼び出し等によつてまかないをする費用がごくわずかあつたのでありますが、これももはやわずかしか残されておらない、これらの未引揚者のために積極的にその資料を収集するために予算は十分盛るべきではなかつたか、この点未引揚邦人調査費に計上された予算が、本年度より少額であつたというその理由をお尋ねしたいのであります。
  253. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは一つには未帰還者の調査が非常に進みまして、残る部分は非常に狭くなつて来ておる、そのためにその方の調査費は本年ほどはいらなくなつたと考えておりますが、その調査の程度は本年と同様にいたしております。  それから遺骨その他の問題につきましても、これは外務省予算だけではありませんので、援護庁の方にも予算が組んであります。同様一緒にやるわけでありますが、外務省の分は、これも十分とは私の口から言いにくいのでありますが、何とかまかない得るという予定のもとにできるだけ減らしたわけであります。
  254. 受田新吉

    ○受田委員 中共地区の引揚げ問題に関連して、政府は今回あちらへ行く船に政府職員を乗せないという声明を発せられたのであります。これに関してわれわれとしては、あの長い御苦労で帰つて来られる人たちに、あちらの港からこちらの港に着くまでのあらゆる角度からの保障をする責任者のいないということに対するはなはだ大きな不安があるのでありますが、乗船地より舞鶴に来るまでの生命、財産、そのほかあらゆる角度からの人権の尊重は、法律的立場とまた実際問題の立場と、だれが責任を持つようになつておるのか御説明いただきたいのであります。
  255. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれも政府関係者が乗らないことは実は不安でありまして、ぜひ乗せたいとは考えて来たのでありますが、中共側の意向がはつきりわかりまして、これをさらにいろいろ交渉して見込みありやというと、見込みははなはだ薄い状況であります。従つて交渉をやることによつて船の出発が遅れるということがあつてはならず、また交渉が整わないうちに船の中に無理に政府職員を乗せて出発させても、日本の船が向うの港に入れないようなことがあつてもならずと考えまして、はなはだ心もとなくも思つておりますけれども、やむを得ずこういう措置をいたしたのであります。もつとも船の中は警察権は船長が持つているのでありまして、かりに政府のものが乗りましても船長の警察権に服するのであります。また今回の引揚げは帰国どいう建前になつておりますので、船長にすべて一任して帰国をして来る。帰国といえば普通の船のサービスで帰国はできる。それが舞鶴なりどこなり上陸地へ来ましてから政府のものが十分の世話をする。その間にたとえば証明書のようなものの整備であるとか、あるいは原住所、本籍地その他いろいろ書き込むべきものは船の中で船長に依頼しまして、適当の船の職員に委嘱してこれをやつて、そうして連れて来る。こういうこと以外に、どうも引揚げを遅らせないでやる方法がないように考えましたので、やむを得ずそういう措置をとつたのであります。
  256. 受田新吉

    ○受田委員 その場合の船長の職務執行で、政府の依頼したその公的事務は、その船長に政府の依頼した部分に限り、政府職員ではないけれども、日本政府の職務を代行するものとしての責任がありますか。
  257. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 責任ということになりますと、これははなはだむずかしいのであります。それじや責任が果されなかつた場合に、どういう処罰があるかというようなことになるとむずかしいのでありますが、ただいまのところ、船長なりその所属する船会社などで、十分に普通の常識で可能な範囲においては責任をとつてやる、こういうふうに引受けてくれておりますので、これに信頼いたしたいと思います。また船長は今申した通り、船内の警察権も持つておりますから、もとよりこの前の引揚げの状況から見ましても、なかなか船長の命令に服さないようなこともありますかもしれません。あるいは逆に船長がつるし上げになるというようなことも前にはあつたのでありまして、非常にむずかしいとは思いますが、その困難な状況の中においても最善の方法をとるよりいたし方ない、不満足であるけれども、これができ得る最上の方法であろうと思つて、これでとにかくやつてみる。結果が思わしくなければ、さらに第二船については先方によく事情を訴えて考慮を求める、こういたしたいと考えております。
  258. 受田新吉

    ○受田委員 中共地区から帰る人たちの持帰り金の問題でありますが、その限度が一万円を越えて二万円までのものに対しては五千円ないし一万円に足らざる部分を支払う、それ以上持つて帰つたものは帰還手当を出さないという政府の方針にきまつております。これによると、あちらから個人の財産を蓄積して持つて帰つた人たちは、金を持つて帰るよりは物品にかえた方がいいというので、一万円以上持つて来てもだめなんだから、どうせ日本政府でもらえる金が丁万円あるのだ、一万円程度にとどめて残りの部分を品物にかえて帰るという公算が非常に多いと思います。税関その他で関税の徴収もされるのでありましようが、あちらから現金でなくて物で持ち帰られるというこの傾向に対しまして、日本政府としては持帰り金の為替レートの問題、あるいは持帰り金の最高額をどういうふうに外交折衝でしておられるのであるが、お伺いいたしたいと思います。元で持ち帰ることはできないとすれば、ドルでどれだけの限度までを持ち帰ることができるようになつているのか、こういう点をお伺いして、もう一つは帰還手当に対するあちらから帰る人のえたという場合に、むしろこの際帰還手当を多年の苦労に報いるために、二万円までの限度をつけないで、全員に同一に帰還手当を出すという方が、筋が通るのではないかと考えるのでありますが、これに対する御所見を伺いたいと思います。
  259. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実は私もよく知らないのでありまして、この持帰り金がどの貨幣で持つて来るのか、あるいは為替で持つて来るのか、そうすれば一体どういう貨幣の為替があるのか、ドルか、ポンドか、その他の為替があるのか、こういう点がどうも私にははつきりしないのであります。一応何かあるようでありますが、あるいは私の考えが間違つているかもしれませんけれども、私はどうもここのところがよくわからないのであります。政府の希望としては、金にしても品物にしても制限をせずに持つて帰れるようにしたいと考えておりますが、しかし中共の発行する紙幣をたくさん持つて来た場合に、これをみなどういうルートで円にかえるかというと、なかなかこれはむずかしい問題だろうと思います。もう少しよく向うの事情も研究してからでないと、間違つたお答えをするといけませんから、考えさしていただきたいと思います。品物についてはいくら持つて来てもさしつかえないとこちらは考えておるのでありますが、向うで制限をつけられればこれは別であります。
  260. 受田新吉

    ○受田委員 終戦後に蓄積された個人の財産は、中共政府といえどもこれに対して侵害をすることはないと思います。この点、日本が降伏して以後における個人の蓄積した財産はすべて持ち帰ることができるようになつていると思うので、その貨幣をダイヤの指輪とかあるいは時計とか、一個で非常に高価な品物にかえて来るならば、こちらへ持つてつて、一万円か二万円かのそういう限界を騒がなくても、相当の収益を得るわけです。この点政府が帰還手当を五千円ないし一万円に限定したしかもその数は帰還者の中の約六割に限定して、全員に出さないというこの予算上の措置は、はなはだ私としては了解に苦しむのであつて、一応帰る人全員に――三万人ということになれば、三万人全員にこの帰還手当を同率に出すという予算化をしておくべきであつて、約六割だけに帰還手当を出すという政府の決定は、私ははなはだ不審に思われるのであります。この点、多年御苦労をした方々をお迎えするというゆたかな気持からも、全員を一応帰還手当の対象として考えておく、六割なんというけちなことをしないで、あとの四割の人にも一応これを考えてあげるということが、政府としての親心でないかと思うのでありますが、いかがでしようか、これを特にお伺いしたいのであります。
  261. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私はそうはつきり六割とかなんとか規定しているとは考えませんが、厚生大臣の所管でありますので、あまり何か言つて間違えるといけませんから、ひとつ厚生大臣に聞いていただきたいと思います。
  262. 受田新吉

    ○受田委員 これは政府事業であり、特に引揚げに関係しておりますので、外務大臣にお答えを願つたわけでありますが、六割ということになつているように援護庁長官の答弁があつたのです。この点政府として、もつと大きな政治的な立場から是正をされるべきではないか、国務大臣としての岡崎さんは、この点を幅広く、そうけちくさい六割というような――これは何の基準もないそうで、つい思いつきで六割にしたということでありますが、思いつきの六割というようなことをしないで、一応全額を負担するという方が筋が通るという、私の希望であります。  もう一つ、中共地区の引揚げの問題に関係をして、過去数箇年にわたり同胞引揚費というものが、国費の中で二十数億の予算として計上されておりました。ところが本年度これが一万人分の引揚費に削られてしまつて、今まで残留着すべてを帰るものとして対象にしていたのが、急に今度改められて一万人ということになつた。ところがこの一万人の本年度の予算は、中共から三万人返すということになつたから、非常な変更になつて、政府は非常にあわて、厚生省、大蔵省、外務省などが折衝して、この三万人のことを考えた上、さしあたり本人四千円というふうに計上しておられるようでありますが、これもまた予算上の措置としては、全員が一応帰るという予算計上をしておいて、それで帰らなかつたらそれを次の年へまわす、これが予算の運用の上における一つの愛情のあるやり方だと思うのであります。そうでないと、今度のように三万が一ぺんに返されるということになると政府はあわてなければならぬ。今度三万がみな帰られたとしても、残されたまだ帰らざる人たちが五万人以上いるわけでありますが、この五万人以上の残留者の同胞引揚費を昭和二十八年度にはどういうふうに計上をしようとしておられるのか、この点をお伺い申し上げます。
  263. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも実は外務省の所管でありませんので、私からお答えするのはどうかと思いますが、予備費等の費目もあるのでありますから、引揚げて来られる方がありさえすれば、これに妨げになるようなことは政府として決していたしません。必ず十分なることをいたすつもりでおります。
  264. 和田博雄

    和田委員 簡単なことを二、三大臣に聞きたいのです。在外公館の中に対米宣伝に必要な経費というものが三千六百万円かありますが、アメリカに対する宣伝だけに特にこういう予算を組むということは、どういうところから来ておるのですか。
  265. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私も名前があまり適当でないと思うのであります。実情を申しますと、実はアメリカに対する経費が一番多く必要なのであります。これは名前はそうなつておりますが、この一部はカナダにも使いますし、また一部はヨーロッパにも使うつもりでおりますから、あるいは名前をそういうふうに対米とかいう字にしない方が適当であつたかとも考えますが、意味はそういうことであります。
  266. 和田博雄

    和田委員 そうすると、これはアメリカだけでなくて、ヨーロッパ諸国、アジア諸国にも使う日本を宣伝するための費用だ、こういうふうに解釈していいのですか。
  267. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アジアは別にいたしております。主として南北アメリ、ヨーロツパの費用であります。
  268. 和田博雄

    和田委員 それからアジア諸国に関する外交政策及び賠償実施政策樹立に必要な経費でありますとか、欧米諸国に関する外交政策樹立に必要な経費等がありまして、アジアの方は少し減つておりますが、ヨーロッパの方はふえておるわけです。去年も大体千三百万円ばかしの金があつたわけでありますが、これが実際の効果、結果というものは、去年ごとにヨーロツパについては一体どういう形で出て来ておるのか、またアジアについてはどういう形で出て来ておるか、その点を、これは事務当局からでけつこうですが、お示しください。
  269. 大江晃

    ○大江政府委員 ここに書いてありますアジア諸国に対する外交政策実施に必要なる経費というのは、大体事務費あるいは調査費というものでございまして、特に外交上の案件を処理するために必要なものではないのでありますから、どういう具体的の結果が出るかというようなことは、この経費の中からはないわけでございます。
  270. 和田博雄

    和田委員 しかし調査をやられるのなら、たとえばその調査の結果が出ておるとか、それから政策を立てるのですから政策を立てる資料といつたようなあるいは企画、そういつたようなものがあるとか、何かこれは事務上にも結果が出て来なければならないと思うのです。そういうものもないのですか。そうするとただ人件費だけをまかなつておるのですか。
  271. 大江晃

    ○大江政府委員 人件費は別でございます。事務費が大部分入つておりますが、今お話のようないろいろ調査をいたしました資料は参つておるのであります。ただ開館しましてからまだ日が浅いわけでございますから、基礎的の資料調査というような点に重点が置かれておりまして、まとまつた具体的の報告資料というものは、まだ比較的少いという現状でございます。
  272. 和田博雄

    和田委員 これは外務大臣に聞きたいのですが、こういう費用をとられて、ことに政策自体を立てるための経費として使われる以上は、外務大臣においては当然やはり外務大臣としての外交政策をお立てになるときの基礎的な参考資料とか、あるいは自分の考えをまとめる上についての大きな参考にするということになるのだとぼくは思うのです。そういう意味の経費だとぼくは解釈するのですが、いかがでしよう。
  273. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはたとえばどこかの国を例にとつた方が具体的でいいと思います。かりにインドならインドを例にとりますと、インおいろいろの統計資料を見たりあるいはインドの新聞、雑誌等を集めて、これの論説とかその議論の傾向を見る、またいろいろなレポートがありますが、そのレポートを集めて分析してある結論を出すとか、著書その他もあります。それから妙な場合もあります。たとえば溶鉱爐の問題なんかありますと、その方面で、たとえばインドのほんとうのアイアン・オアというものはどういう性質のものか、アイアン・オアの見本か取寄せてみるというようなこともあります。あるいは場合によつては米の種というようなもの、これは農林省の所管ではありますけれども、手伝う意味ではそういうこともあり得るわけでございます。直接すぐこれが外交政策立案の材料になるというようも、それの土台になるようなものを見ておりますが、将来だんだんそういうものが整備されますと、たとえば著書あるいは資料というものが一定限度入手すれば、あとは毎年新しいものをそれに加えて行けばいいだけでありますから、だんだんこれが外交政策の基調に関するようなものになつて来る、こういうふうに考えております。
  274. 和田博雄

    和田委員 特に二十八年度の予算で約倍額近く欧米諸国に対する外交政策のための費用がふえておるわけでありますが、こういう費用をふやして、そういう基礎的な調査をやられることは私は非常に賛成なのです。ただおもに使い方なのですがそういうところに多少ぼくは今までも問題があつたのじやないかと思うのです。それより先に一言聞いておきたいのは、たとえば在外公館などにもこれと同じような費用があつて、緒方君が言つているように情報宣伝局をつくるまでもなく、一番今日本で外国の事情が手取早くわかるのは、現地におる在外公館の諸君だろうと思うのです。従つてそういうようなところで、その国の政治情勢とか、経済的な情勢とか、あるいはとられておるところの経済政策、外交政策、その他についてのあらゆる情勢を分析するなり、資料を集めるなりして、日本の国で外務大臣が広く外交政策をお立てになる判断を与えるための基礎的な資料を報告なり何なりとしてどんどん送つて来ることが、私はやはり大きな外交の一つだろうと思うのです。そういうようなことについて、今一体どの程度に在外公館は仕事をしておるのか、また本省においてこれだけの費用を持つておられるとするならば、それらを合せて、今後どういうふうな形でこれを使い、かつ外務大臣としてりつぱな外交政策を立てるための資料にして行こうとされておるのか、そういう点について構想がおありだろうと思うのですが、もしもあればその点についてお答え願いたいと思います。
  275. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今申したのはおつしやつたような点も入つておるのでありまして、これは現地で材料を入手する場合が多いのであります。従つでこれは円で使うというよりもポンドなりドルなりで使う場合が多いのであります。それを現地でこなして、それによつて報告の基礎材料にするという場合が多いと思います。しかし多くの場合はいろいろの政治上、経済上の意見を報告して来ると同時に、それについての資料はこれくであると書いて、その資料の中で読む値打が特にあると思うようなものは先方でつけて送つて参ります。その他本省でもほしいと思うような資料は、こちらで注文して向うから送らせるというようなこともありますが、こういうふうにして、むしろ在外公館の意見を具申することに必要な材料を集めるという部分が非常に多いのであります。最近の情勢をごくかいつまんで申しますと、初めのうちはなかなか手がまわらなかつたようでありますが、昨年の秋ぐらいからだんだん各地が整備して来まして、政治上経済上の、ただ文書に書く意見でなくして、基礎がこういうことからこうなるというような現実の材料を盛つた意見が相当報告されて参つて来ております。これはかなりうまくこのごろは動いて来ておると思つております。政治上の意見が少いとかいうことが大分前に新聞に出ていたことがありますが、最近はそういうことはないと考えております。
  276. 和田博雄

    和田委員 私は在外公館をフルに使うことと、それから基礎的な材料収集及びそれを分析し、調査して行くこと、言いかえると、だんだんそういうものを蓄積して行くことが非常に重要だと思うのです。イギリスを見れば、岡崎さんも御承知のように昔は領事が、たとえばフランスならフランスの状態についてのレポートを出して、一般に公開しておりました。ああいつたような努力を各在外公館外務省の諸君がやられることが、しかもそれを外務省において適当に整理して、やはり一般に公開して行くということの方が、情報局みたいな妙なものをつくつてしまうよりも、よほど私は事実を知らせ、かつ日本の国民に対する国際的な知識を啓発して行く上に役立つと思うのです。もとより外務省における仕事は多岐にわたつておりますが、そういつた方面の仕事が今まで日本としてはあまりに秘密に付されており、そうして蓄積されたものが一般に知られていない、こういう点で非常に損をしておつたと思うのです。私は今後外交をやるについては役所がそういう点において一番便宜を持つておるし、かつ役人の中立性という点からいつても、たとえば自由党内閣のもとの外務省の役人といえども国外へ出て行けば、その国のあらゆる政党その他の諸君ともよく連絡をとつて、現地のなまくしい実際の動向を知らして来るということが、どれだけ日本の国益を助長するに役立つか知らないと思う者の一人でありますが、ただこういう調査費をとつて、非常に静的な死んだ材料だけを集めて行くというだけでなしに、その点についてもつと動的な基礎的な調査をされることを、この際御要望しておきまして、その点はそれでいいのでありますが、この国際情勢調査並びに資料の収集に必要な経費というものもあるのでありますから、ほとんど各方面にわたつての至れり尽せりの一応経費だけはありますので、その点については外務省当局の御努力をお願いしておきたいと思います。  次に通商貿易振興に必要な経費であります。これはきようの外務大臣説明にもちよつと出ておりますが、実際の人数とかその他どの程度のものが予定されておるのか。これは大臣でなくて事務当局でけつこうです。もしも大臣でわかつておりましたら、大臣から答弁していただきたいと思います。
  277. 大江晃

    ○大江政府委員 これはごく近い将来、主として東南アジアの諸国から、日本に参ります留学生の世話をする国際学友会の受入れ態勢に関するものでございまして、現在のところごく最近参りましたのは、現在予定が立つておりますものが来年度におまして約二百人の留学生が参るという計画のもとに立てた予算でございます。
  278. 和田博雄

    和田委員 この点はもうぬかりはないと思うのでありますが、たとえばイギリスなんかでも、植民地の学生がイギリスに勉強に行く、そうすると下宿その他の問題で、やはり人種が違い、言葉よくわからず、いろいろな点で非常に不愉快な印象を与える場合も、今まであの文明国のイギリスにおいてさえあつたのであります。そういう点については、国際学友会の方々においても遺漏はないと思いますが、政府の方においても十分気をつけて、好感を持たせて、そうして日本にほんとうに親しむ気持を起させるような配慮を願いたいと思います。  それから中共の揚引げのことについて、関連してちよつとお聞きしておきたいのですが、この中共からの引揚げの機会は、私にやはり中国との貿易関係をこちらから打開して行く一つの機会ではないかと思うのでありますが、そういう点について外務省としては、これを十分利用――利用というと少し語弊がありますが、この機会をとらえて、貿易関係の打開をなお一層やつて行くような意思があるかどうか、その点を外務大臣から伺つておきたいと思います。と申しますのは、私はことしの日本経済を見通してみましても、またヨーロツパにおける経済情勢を見通してみましても、東と西との間の貿易ということは、欲すると欲しないとにかかわらず、何とか道を開いて行かないと、世界の経済全体が非常な困難な状態に落ち込む危険が多分にあると思います。ことに日本におきましては、御承知のように今輸出はだんだん減つて来ておるし、国内における諸改革が進まぬがゆえに、生産費が下る見通しもあまりないし、人口はふえて行くし、そういつた点で、地理的にいいましてもまた経済的にいつても、近親関係にある中国と、あらゆる機会をとらえて貿易の促進をはかつて行く積極的な意欲を、外務大臣としては持たれてしかるべきだと私は思うのであります。もちろんこれは、われわれは反対したが、自由党が結んだ平和、安保両条約というこの大きな不幸な制約はありますけれども、しかし経済自体については、その点についてこういう機会をのがすことなく話を進めて行くというのでないと、東南アジアその他いろいろな開発ということを唱えてみましても、最後に帰するところは、アジアにおいてはインドと中国というものがやはり大きな要素をなしている。日本にとつて経済的にいえば大きな要素であります。これを無視して東南アジアというものに限つて一生懸命になられてみても、いろいろな政治的な制約もあつて現に進んでいないように、この貿易関係もなかなか進まないのであります。ことに中国との間の関係は、私はイデオロギーを離れて、経済面においては、こういう帰還の問題であるとかいつたように、両国の友好関係が開かれるこういうあらゆる端緒をとらえて、外務省としては貿易問題については積極的に進んでやつて行くという態度をとられてしかるべきだと思うのであります。そういう点について、外務大臣のお考えはいかがでありますか、お答えを願います。
  279. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今までの和田君の御質問は非常に外務省に同情的というか、注意をされて、非常にアプリシエートしたのでありますが、中共貿易については遺憾ながら多少私は意見が異なるのであります。これは長くなりますから、他日の機会に詳しく申し上げることにしまして、結論を申しますと、先方も今度の引揚げといいますか、帰国の交渉の初まりにおいては、引揚げ問題に限定する、他の問題は切取合わないという態度でありました。私もそれはもつともだと思いまして、こちらから行く代表にも、当時は引揚げといつておりましたが、引揚げに関する交渉だけに限定して話をしてくれという依頼をいたしております。もとより中共に長くおるのでありますから、いろいろ貿易上の問題についても、交渉ではなくしても知識その他を持ち帰ることだろうと予想いたします。それは私の立場からいえば、列国と足並のそろう範囲においてはやるがよかろう。しかし朝鮮事変があつて中共側の戦力を増強する措置をとらないということにいたしておる現在におきましては、イデオロギーにとらわれるということでありませんけれども、その範囲の制限は、これはいたさなければならない。従いましてさしあたりのところは、そう積極的にどんどんやれというような態度は、私としてはとりにくいと考えております。しかしよそでやつておるものまで、こちらで阻害してやらせないというようなことではない点は御了承願います。
  280. 和田博雄

    和田委員 この問題は、これは分科会ですから場所が適当でないから、いろいろ論争したいのですけれども私は控えます。根本的にあなたと意見も違いますし、情勢の認識も違いますが、私ただ一言言つておきたいことは、中共に関する問題は、日本においてだけ起つたのではなくして、たとえば去年でありましたか、イギリスなんかでも、やはり東西貿易がやかましくなつたときに、同様に起つておるのであります。そのときにあなたのおつしやつておるような立場に立つて、中国側やあるいはソ連側の戦力を強めるようなことはやらぬ方がいいじやないかという立場に立つ人もあつて、特にコンサーヴアテイヴな人たちはそういう立場に立ちます。けれども、一面においてそうではなしに、向うが強くなるど同時にこつちも強くなればそれでとんとんじやないか、あるいは向うが強くなる以上にこつちが強くなるものがあるのじやないか。たとえばイギリスなんかでいえば、安い食糧が入つて来るということになれば、多少そこに戦力に関係のあるものが東の方に行つてもかまわぬじやないか。そういうことでかえつて経済をきゆうくつにして、イギリス自体の国力が、貿易の縮小によつて弱くなつて行くよりも、よほどその方がプラスではないか、むしろ積極面があるのではないかという議論を、保守党の中でも進歩的な諸君は新聞、雑誌等で言つたことを私は覚えておるのであります。私はやはりそこの限界というものは、相互の問題なのですから、日本の側としても、この問題はやはりそういう立場に立つて考えてみる必要があるのではないかと私は思うのです。初めから、これは戦力に関係して強くなるから、こいつはだめだということでなくて、あの輸出品目を考える場合においても、その考慮が初めはやはりあつたのじやないかと思う。それをもう一度考え直してみれば、日本と中国との間における双方の経済の確立という面をとつて考えるときに、あなたはこの間の予算総会で、たとえば戦争になれば総力戦だ。防衛力の漸増の限界というものはなかなか言えない。それはなぜなら保安隊だけじやなくして、質の問題もあればその他いろいろな問題もあると言われたわけですが、その考え自体から論議を発展さして行つても、私はそうあまりきゆうくつになつてしまうのはどうかと思うのです。この点はいずれまたあとでしかるべき機会にゆつくりと外相の御意見も聞けば、私の意見も話して、十分審議をしたいと思いますが、きようは分科会でもあるし、そういう政策論はできるだけ避けた方がいいと思いますので、この程度にしておきます。  それからちよつともどるのですが、外務省で今後いろいろな調査をされて出してもいいと思うようなものは、どんどん一般の国民の手に入るように、レポートみたいな形で出されるような御意思はないか。こういう点は日本の官庁がだんだん統計なんかも世の中へ出して来るし、その他のものでもパンフレットとか何かの形で出して来ておることは喜ぶべき傾向だと思いますが、外務関係はもちろん秘密もありますが、外国に関するいろいろな基礎的な資料であるとか、あるいは外交。政策の調査であるとか、そういつたようなものについては、一番世界事情に通じておるのは外務省であるだけに、早くそういうものを一般に報道していただくような配慮に実は出ていただいたらいいじやないかと思いますので、私もぜひそうしてもらいたいと思うのですが、そういう点について一言御意見をお伺いしてみたい。それで私の外務大臣に対する質問は終ります。
  281. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省としましては、出せるものはなるべく出す方針で実はおるのでありまして、一番それでどこからも誤解を受けないのは経済上の資料であります。たとえばマーケットでこれがどれくらいしておるとか、これは今どれくらい需要があるか、そういうことは常に出しております。それからその他のものにしましても、いろいろのものを出しておりますが、和田君なんかのお考えでは大分ゆがめられて出ておるとお考えになるものがあるだろうと思います。しかしそういうことは別どしまして、日本外交政策関係のない相手国の外交政策あるいはその他経済政策、こういうものは実はちよつと余談になりますが、私常に考えておりますのは、ないしよで得た情報はなるほど貴重でありますけれども、オーソドツクスのやり方をして向うで発表されたものをよく見て、公開された材料から勉強すれば、やはり向うの外交政策なり経済政策なり出て来る。こういうものは勉強さえすればできるものであります。こういうものは発表しても一向さしつかえない問題であります。なるべくそういうことにして出すものは出したい。雑誌、新聞等にも出しますし、その他外交時報であるとか、また海外調査月報というようなものを内部でやつておりまして、十分とは行きませんが、できるだけお考えに沿うように努力をいたして行きたいと思います。
  282. 原健三郎

    ○原(健)委員 時間がありませんから、一言だけお聞きいたしたいと思います。この中に報償費というのがあつて、三億円計上されておるのでありますが、報償費の内容はどういうものであるか。少し詳しくお聞きいたしたい。しかも去年が三千万円であつて、ことしは三億円で、急激にふえておるのでありますが、その内容をどういうふうに使われるものか。
  283. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは種々雑多なものがありますが、たとえばヨーロッパでありますと、先ほど受田君のお話でありましたか、人を呼んで宴会をする費用は、普通の定額は配付されております。しかしそれではとても足りませんものですから、こういうものにも使います。それからたとえば何かの拍子に贈りものをするというような場合もありますし、会議を特別にするという場合もあります。あるいはたとえば――これはほんのたとえばの例で、そうやるとは限りませんが、国会議員に海外へ行つて事情を研究してもらうような必要の起る場合もあります。それから国内でもフィリピンのミッションが来る、あるいはインドネシアの、ツシヨンが来る、こういうものに対して宿舎の提供をすることもありますし、あるいは宴会をすることもあります。その他種々雑多なものがあります。日本の有益な書籍を買つて相手に贈与するというような場合もあります。いろいろの場合でどうも在外公館の活動の鈍いのは油が足りないのだということ、これは過去約一年の経験でほぼわれわれも認めざるを得ないのでありまして、そういう藻のいろいろの油を注入するのが主たる目的であります。
  284. 原健三郎

    ○原(健)委員 それでは、油とおつしやられると、機密費と了解してよろしいのでございましようか。
  285. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 機密費といわれてもいいかもしれません。但し機密費というと、買収したり何かするようによくとられますし、またどういうふうに使われてしまうかわからないというような疑いもありましようけれども、そういうことはほとんどこれはないのであります。先ほども申しました通り、全部で九十万ドルにも足りません。それを六十二の在外公館にわけるのでありまして、それも年に九十万ドル以下のものでありますから、これを月々にわけますと、ごく少額になつてしまうので、そう思うようには行かないわけであります。
  286. 原健三郎

    ○原(健)委員 それではそういう在外公館に使わすとおつしやられるものが三億円、さらにまた交際費として三億四千三百四十七万二千円要求している。これは一体どういう区別があるのであるか。配付された説明を見るとほとんど同一のものであると私は了解するのであるが、いかがでありますか。
  287. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 このあどの方はまつたく常例の交際費といいますか、宴会費といいますか、そういう種類のものであります。これはたとえばどこの総領事館には月に一ぺん宴会をやつてよろしいとか、あるいは二月に一ぺん宴会をやつてよろしいというので、それを配付するのであります。それを心要に応じて使う金でありまして、片つ方の今三億円の方は、在外公館ばかりじやありません、国内でも使うのでありますが、一例をあげればフィリピンの大使がなくなられた。そうするとその葬儀に対する手伝いとか、あるいは飛行機を雇つて向うに送るとか、こういうような費用もその中に含まれるわけであります。多くは正常の、経営的の費用でない、予定せざる特別の心要の場合、こうお考えになつていいと思います。
  288. 永山忠則

    ○永山委員 戦犯関係の今抑留されている人の遺族を援護する道は、今回の恩給法ではつきり示されているのでありますが、戦犯死の関係の遺族の援護というのが、恩給法改正ではよく盛られていないのであります。これは条約の第十一条との関連が遺族にまで及ぶものであるかどうか。要するにそれは戦犯の関係を規定してあるので、その遺族を援護するということにには何らさしつかえないものであるかどうか、ちよつとお聞きしたい。
  289. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 平和条約の条文はもちろん戦犯だけに関係するものでありまして、遺族には及んでおりません。従いまして遺族の援護ということについては何ら平和条約関係はございません。また遺族は働き手を失つたのであつて、おそらく大部分あるいは全部の人が生活に困窮しておると思いますから、これを援護することについては列国ももちろん異議は申し出しますまいし、政府もそれはやるべきものと考えております。ただ一言念のためつけ加えておきますれば、戦争犯罪によりましてなくなつたような人を、非常に英雄のように取扱われるということは、それは本人にはお気の毒の点もありましようが、趣旨に反しますので、家族が困つているから援護するのである、決して勲章をやつたりするような意味ではないということさえはつきりしますれば、援護は少しもさしつかえない、こう考えております。
  290. 永山忠則

    ○永山委員 現在戦犯で処刑になつた者の家族の援護に対しては、政府の方でまだ十分の処置がついておらぬようでございますから、十分その点に対して御考慮を願いたい。  またついでですからちよつとお尋ねしたいのですが、私当時議会におりませんでよくわからぬのですが、新聞紙上やわれわれの聞いた範囲では、安全保障条約は北大西洋条約改訂されるときには、やはりこれは改訂されるというようなことを国民は考えておるのであります。すなわち刑事裁判権等の問題でございますが、そういう改訂の見通しといいますか、北大西洋条約どの関連性においてはどういうようにお考えになりますか。
  291. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは北大西洋条約ではありませんで、北大西洋条約に基く軍隊の地位に関する協定というのがありまして、これが日本でいえば行政協定のように、その条約に基いて外国の軍隊の取扱いをどういうふうにするかという地位をきめるものなのであります。ところがこれが各国でまだいろいろ異存がありましたり、ことにアメリカで批准をいたしておりませんものですから、効力を発生しておりません行政協定におきましては、もし北大西洋条約に基く軍隊の地位に関する協定アメリカにおてい批准された場合には――これは全体の軍隊の地位に関するものでありますから、いろいろの問題が含まれておりますが、その中の裁判管轄権に関する条項は、今の行政協定の中にあるのを北大西洋条約に基く協定の中にある裁判管轄権の条項と入れかえよう、こういうことに協定なつております。
  292. 永山忠則

    ○永山委員 裁判管轄権の入れかえ関係は、北大西洋条約に基く軍隊の地位に関する協定が遅れるような場合においては、別にそれとは関連なくして、あるいは一年くらいで改訂をするのではないか、ということをちよつとその当時聞いておるのですが、そういうようなことはございませんか。
  293. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、行政協定をつくりました当時は、北大西洋条約に基く軍隊の地位に関する協定というのは、アメリカの国内で反対が非常に多くありまして、批准される見込みがそう期待できなかつたのであります。従いまして行政協定の中では一項目を設けまして、北大西洋条約に基く軍隊の地位に関する協定が成立すれば、その協定を中に入れる。もし一年たつてもこれが成立しない場合には、アメリカ日本との間で刑事裁判権の問題について協議をして、協議がまとまれば必要な改訂を施す、こういうことにいたしております。ところが今年になりまして北大西洋条約の批准の見込みが前よりは増して来たようであります。まだ上院にかかつておりませんから、むろんいつということもわかりません。はたして批准できるかどうかも明言できませんが、この行政協定をつくつたときよりは、幾分か見込みが増して来ておりますから、私どもはそれに期待をかけておるのでありますが、もし四月二十八日に至つても批准されない場合は、今度はそれとは別に、今までの経験に基いて、刑事裁判権等についての協議をいたすことになつております。それで必要な改訂ができればいたしたい、こう考えておりまして、今準備をしております。
  294. 西川貞一

    西川主査 では外務省所管に対する質問は大体終了したものと認めます。     ―――――――――――――
  295. 西川貞一

    西川主査 続いて文部省所管の問題に対しまして、昨日大体終了いたしましたけれども、なお保留された点がございますので質問を続けたいと思います。
  296. 和田博雄

    和田委員 ただいま、昨日大体終了したと言われたのは与党の質問のことであつて、野党の質問はちつとも終了していないのであります。  文部大臣にお聞きしたいのですが、二十七年度と二十八年度における小学校、中学校、盲聾唖学校等の教職員の定員というものは、事務職員等を含めてどういうふうになつておりますか。まず最初にその点をちよつとお聞きしたい。
  297. 田中義男

    田中(義)政府委員 定員の算定基準をちよと前もつて申し上げますと、大体小学校の生徒五十人について一・五、それから中学校の生徒五十人について一・八、こういうことで計算をいたしまして……。
  298. 和田博雄

    和田委員 それはわかつております。予算定員でいいのです。
  299. 田中義男

    田中(義)政府委員 それで二十六年度が小学校三十一万四千八百六、中学校が十七万四千四百六十八、その他特殊学校三千九百二十一、こうなります。それから二十七年度は中学校が十七万五千二百八十八、小学校が三十二万二、特殊学校が四千四百六、こういう数が一応出ております。それで二十八年度の推定につきましては小学校三十二万三百四十一、中学校十八万三千三十八、そういうふうに一応御承知を願います。
  300. 和田博雄

    和田委員 そうすると、ちよつと伺いますが、二十七年度の予算をお組みになるときに基礎としてとられた小学校の教職員の定員は、やはり三十二万二ですか。  それからもう一つお聞きしたいのは、文部省が二十八年度の予算要求されたときに出した数字というものは、いずれもこれは二十七年度の現員というか、実人員というか、そういうように解釈していいのですか。
  301. 田中義男

    田中(義)政府委員 来年度の予算要求をいたしておりますのは、実人員ではございませんで、予算定員でございます。
  302. 和田博雄

    和田委員 三十二万三百四十一というのは予算定員でございますね。
  303. 田中義男

    田中(義)政府委員 たいへん恐縮でありますが、二十八年度は訂正いたします。小学校が三十三万六千六百五十八でございます。それから中学校が十八万二千六百八十三、それから盲聾学校が三千六百二十三人でございます。それに事務職員として七千七百六十七人、計五十三万七百三十一人、これが二十八年度の予算定員でございます。
  304. 和田博雄

    和田委員 そうすると、二十七年度の実人員はどのくらいあつたのですか。
  305. 田中義男

    田中(義)政府委員 先ほど申し上げました数字が、大体二十七年度については推定実人員になるようでございます。
  306. 和田博雄

    和田委員 というのは、小学校が三十二万幾らというのですか。
  307. 田中義男

    田中(義)政府委員 三十二万二でございます。それから中学校が十七万五千二百八十八と申し上げましたのが、大体二十七年度の実人員に推定されるようでございます。
  308. 和田博雄

    和田委員 そうすると、二十八年度の予算定員としては、二十七年度の実人員よりふえているわけですか。
  309. 田中義男

    田中(義)政府委員 さようでございます。
  310. 和田博雄

    和田委員 数字だけ一応聞いておきます。それから、それで行きまして小学校の給与費の単価というものは、二十七年度、二十八年度はどの程度になりますか。そこのところをちよつとお聞きしたい。
  311. 田中義男

    田中(義)政府委員 二十七年度の単価は、ちよつと今取寄せますからお待ちいただきまして、二十八年度につきましては、大体本俸の単価で、小学校の先生が一万三千六百八十三円、それから中学校の先生については一万四千九百七十四円、それから盲聾学校の先生につきましては、一万五千八百十三円、事務職員については一万二千二百五十六円、これが二十八年度の予算単価でございます。
  312. 和田博雄

    和田委員 これはベース・アップを見込んだ数でございますか。
  313. 田中義男

    田中(義)政府委員 昨年のペース・アップを見込んで、さらに二十八年度の昇給見込みを入れております。
  314. 和田博雄

    和田委員 そうすると、三百四十九円のあの格差というものは含まれた数字になるのでございますか。
  315. 田中義男

    田中(義)政府委員 昨年の給与改訂の場合の単価の計算につきましては、三百四十九円はすでに財政計画として、国の措置としては差引いておつたわけでございます。
  316. 和田博雄

    和田委員 これは切下げておるわけですね。
  317. 田中義男

    田中(義)政府委員 さようでございます。
  318. 和田博雄

    和田委員 結局入つていないわけですね。
  319. 田中義男

    田中(義)政府委員 そうです。
  320. 和田博雄

    和田委員 そうすると、きのうお出しを願つたこの表は、全部今の何を基礎にして出されておるわけですね。
  321. 田中義男

    田中(義)政府委員 さようでございます。
  322. 和田博雄

    和田委員 この表を、なかなかわかりにくい箇所がありますから、ひとつ説明していただきたいのです。
  323. 田中義男

    田中(義)政府委員 それでは差上げました表について御説明を申し上げます。  表題によりますと「義務教育学校教職員法案による二八年度国庫負担金の配分と現員現給との関係について」二月二十六日付の表でございます。一応読みます。  一、給与総額の規模    二八年度における地方財政計画においては、義務教育学校教職員給与関係総額を次のように算定した。    基本給与(本俸、扶養手当、勤務地手当)八九九億円    諸手当(期末手当、その他諸手当、旅費等)二五五億円    共済給合費 三一億円     計一一五五億円  これは来年度の予算を算定いたしました場合に、ここに掲げましてように、来年度の教育費の全国の規模を算定いたしまして、それを国の財政計画においては千百五十五億、こういう計算をいたしたわけでございます。  二、二八年度国庫負担金    二八年度国庫負担金はこの一一五五億円から富裕八都府県に対して交付しないか、又は減額できる額(二五四億円)を差引いた残額九〇一億円である。  御承知のように、来年度臨時措置として、基準財政収入額が基準財政需要額を越えますいわゆる富裕県につきましては、東京、大阪については全然交付いたしません。その他六府県につきましては、その越える額について政令によつて基準を定めまして、その基準によつて交付しないかまたは減額交付するという措置をいたしますので、その見込み額が二百五十四億円、こうなりますので、その二百五十四億円を千百五十五億円から引きまして九百一億円、こういう来年度の予算を得たわけでございます。  三、実支出額との関係    上記の一一五五億円に対して、二八年度における各府県の実支出額がどのくらいになるかは、いまだ的確な推計ができないが、このうち基本給については推計ができる。  この推計が第三枚目に掲げました表でございまして、これは後ほど御説明を申し上げます。  四、現員現給とこれに対応する国庫負担額(いわゆる定員定額)    小・中学校教員給における現員給といわゆる定員定額の関係は次のとかりである。  現員現給は第三枚目に掲げました表で最後に申し上げますが、総額八百七億四千五百万円となるのでございます。それに対しまして国庫負担額、これは基本給でございますが、それが七百八十七億三千五百万円となります。この現員現給、基本給八百七億四千五百万円に対し、今回の国庫負担額すなわち定員定額が七百八十七億三千五百万円になりますので、その比率をとつてみますと、国庫負担率が九七・五%に当る、こういうことになるわけでございます。そこで「註」といたしまして、その現員現給、国庫負担額をそれではどういうふうに計算したかということを説明をいたしておきました。   註一、従来どおり平衡交付金法に基いて基本給だけの基準財政需要額を計算すると、二八年度においては約六七四億円と推計され、この額は現員現給に対して八四%に相当するものである。  さらに平衡交付金に基いて基本給だけの基準財政百需要額を一応計算をいたしてみますと、六百七十四億円と推計されます。平衡交付金法において国が保障いたしますのは、府県にとつては、その基準財政需要額として教育費を計算いたしましたその額に相当するのでございまして、これを計算いたしますと六百七十四億円となる。そういたしますと、六百七十四億円のこの基準財政需要額、すなわち平衡交付金において保障されておるその総額の現員現給に対する保障率が八四%になる。こういうわけでございまして、つまり平衡交付金において保障される額は現員現給に対して八四%、今回の国庫負担額すなわち定員定額においては九七・五%に保障される。こういう計数を得ておるわけでございます。   註二、現員現給とは、二七年六月末の現員と現給に二八年度の教員数増加(約五、五〇〇人)と二七年度中の昇給、ベース改訂及び二八年度の昇給を見込んで推計した額である。   註三、国庫負担額とは、一の財政計画における基本給八九九億円のうち、小・中学校教員分八八一億から国庫負担金を交付しない団体(東京、大阪)の分を差引いた額である。  この現員現給の計算のしかたは、ここに掲げました通りで、別に御説明いたす要はないと思います。それから国庫負担額につきましても、ここに書きましたようなことで御了解いただけることと思います。  五、国庫負担金の配分    国庫負担金の配分は、各府県の学校数、学級数、児童・生徒数、教員構成等の要素に給与の現状を考慮して実状に添うよう配分するものである。    二八年度分の国庫負担金は、上述の諸要素が今のところ的確に把握できないので、具体的な配分見込額を算出し難いが、目下実施中の給与実態調査及び二八年度諸統計の結果をまつて決定する方針である。  各府県へそれではどういうふうにして配分するか、こういうことになりますと、御承知のように山間僻地の多いところ、非常に小さい学校の多いところでありますとか、また教員の資格構成において、教諭が非常に多くて助教諭が少いところ、あるいは助教諭が非常に多くて教諭の数が少いところ、あるいはまた長年勤務している先生の数がはなはだ多いところとか、いろいろその府県の実情に応じて配分する必要がございますので、それらの要素を考え、また実情にかんがみまして合理的な配分をする必要がある。しかし二十八年度分につきましては、ただいますぐに各府県へ配分する額を先ほど申しました基準によつて算定いたしますことは、非常に困難でございまして、ただいまその給与の実態調査をせつかく実施中でございますし、なお生徒数、先生の数となりますと、来年の五月における統計を基礎にいたしませんと、的確な数字を把握できませんので、それらの資料が整つた上で、各府県に的確な配分をなし得るわけなのでございます。  六、二八年度における経過措置    二八年度における給与負担者を都道府県とし(法案附則第一一項)、現に在職する教職員の現級、現号俸をそのまま国家公務員の給与として切替えることとしている(法案附則第二項)。国はこれに対して上述の国庫負担金を交付するものである。  これは法案のそのままの引用でございまして、とりあえず二十八年度は従来通り都道府県の負担として支給することとして、国としては一定額を交付する、先生方自身個人的には現在の級並びに号俸をもつてそのまま国家公務員に横すべり任用される、こういうことをここにうたつておいたわけであります。  最後に第三枚目に掲げました表でございますが、これは現員現級をまず第一段において各府県別に拾つてみましたところ、ここに出ました数字のようにそれぞれ計算されまして、下の欄にございますように、八百七億四千五百万が現員現級の総計でございます。それに対して基準財政需要額をはじいてみますと、ここに掲げましたような数字でございまして、総額において六百七十三億七千六百万円、その現員現給に対する保障率を拾つてみますと、全国平均いたしまして八三・四四%になる。そしてその各府県別の率をなお掲げてみますと、第三段に掲げましたような数字になるわけでございます。これが差上げました表の内容でございます。
  324. 和田博雄

    和田委員 これによりますと二十八年度の教員数増加五千五百人、こうあるのですが、これは二十七年度と二十八年度とを比べての増加数ですか。
  325. 田中義男

    田中(義)政府委員 二十八年度中に二十七年度に比してふえるであろうという推計でございます。
  326. 和田博雄

    和田委員 ところがいまさつき最初にお聞きした二十七年度の実定員とそれから二十八年度における予算定員上比べてみると五千五百ではなくてもつとふえるのではないですか。たとえば二十七年度の小学校は三十二万幾らだし、片方は三十三万六千で、そこだけでもう一万六千違つているし、これはどういうことになるのですか。
  327. 田中義男

    田中(義)政府委員 さつきちよつとお断わり申し上げましたが、二十七年度が大体実数を申し上げておるようでございまして、ただいまはつきりいたしました二十七年度の予算定員が参りましたからそれを申し上げます。二十七年度の予算定員は、小学校が三十三万九千九百八十一、それから中学校が十七万九千二百六、一応こういう数字を得ました。それらに比較いたしまして二十八年度の増員推計でございます。
  328. 和田博雄

    和田委員 盲聾唖学校は二十七年度はないわけですね。
  329. 田中義男

    田中(義)政府委員 盲聾唖もございます。ちよつとお待ち願います。
  330. 受田新吉

    ○受田委員 政府の出された説明書によりますると、四の註一に掲げてありますところの基準財政需要額が六百七十四億として推計されているのでありますが、この中には、この間から非常に問題になつております今までの平衡交付金の千七百二十億、その中から政府が考えております義務教育の給与費の九百一億と十九億の教材費と合せたものを差引いた八百億の残された平衡交付金、それでもつて八大富裕府県の二百五十四億が差引かれ、さらに文部省が実績の調査をした結果の不足額九十六億、それからこの間から知事会の方で出しておりまする知事会の調査の分の不足額四十一億を合せた百三十七億、こういうようなものが総合されて、例の給与費の定員定額による九百一億と、それから八大富裕府県の差引きの部分の二百五十四億と合せた千百五十五億が、ここの第一項で、給与費の総額なつて現われていますね。これをさらに今の文部省の実績による不足額の九十六億を加えた千二百五十一億、そうして知事会の調査――これは今知事会の調査をどういうふうに見られるかわかりませんが、その分の四十一億を加えた千二百九十二億、これとの相関関係によつて地方財政に圧迫を加える部分ができて来るわけでありますが、その六百七十四億という数字の中には、今申し上げたところの文部省の実績調査、それから知事会の調査の不足額、この百三十七億というものはどういうふうに見られているのでしようか、その基準財政需要額六百七十四億しかありませんので、そういう実績の部分を二十八年度の地方財政計画の中にはプラスせんならぬのではないか。実績による、今までの地方財政が事実上負担しておつた部分を、文部省はこれをやめてただ単に定員定額による部分だけで、五十人一学級とした計算だけで、こう割出しているので、実際に今まで地方が支出している部分を基準財政需要額に入れておらぬ、こう判定をするのですが、これに対して文部当局はどういう考えを持つていらつしやいましようか。
  331. 田中義男

    田中(義)政府委員 知事会議で確かに百三十七億でございますか不足するという数字も拝見いたしております。ただ知事会議の計算に私どもから申しますと、何と言いますか、少し甘いのであつて、実際はそれほどではないだろうという見当をつけております。ただお話のように、確かに基準財政需要額で地方が事実教育費をまかなつているわけじやございませんで、基準財政需要額そのものが大体実際の教育費について約八八%ばかりに実は押えているようなことでございまして、従つてそれ以上の部分については、今回は教育費として、そのまま財政計画におけるものを移転をして国庫負担の方へ持つて来たわけでございます。従つて基準財政需要額六百七十四億に対しまして今回七百八十七億、こういう数字が出ましたので保障率は高い。ただ現実地方においては、それ以上に負担を持ち出していたしておりますのでそれが結局少くとも、二五%――今回の国庫負担において九七・五%保障するとすれば、残の二・五%は地方が持ち出しているものであつて、それだけは従来とも自己財源において負担を願つておつたはずでございますので、従つてその分については、とりあえず二十八年度の処置としては、そのまま地方で負担をしていただく、こういう考え方になつておるわけでございます。
  332. 受田新吉

    ○受田委員 その政府の考えております定員の中に産休補助職員、あるいは療養給付を受けておりますいわゆる結核休職者というもののパーセンテージはどういうふうに計算されておりますか。
  333. 田中義男

    田中(義)政府委員 財政計画としては、その基準は先ほどもちよつと申し上げましたが、小学校五十人の児童について先生一・五、中学校五十人の生徒について一・八、そのほかに結核休養者としては百人について一・三三、こういう基準をもちまして、全国の先生の数を出しておるわけでございまして、産休等の処置については、それらの中で大体事実上まかない得る見込みでございまして、それを各府県にどういうふうに割当てますかは、各府県の実情に応じてさらに別途配分計画を立てることにいたしております。
  334. 受田新吉

    ○受田委員 三百四十九円という地方公務員の給与水準が高率であるというので、しばしば大蔵省が地方公務員の上つた分を差引こうとして努力したことは御承知の通りでありますが、この分は――これは二十六年の末の基準ですから、現在は七百何円、もつと高くなつておるはずですが、この分は今回はどういうふうに計算されましたか。全然考慮されないで、国家公務員としての基準に平均されたのでございますか。
  335. 田中義男

    田中(義)政府委員 すでに昨年の財政計画におきましても、国の財政措置としては三百四十九円を差引きまして措置をいたしたのでございまして、今回もやはり国家公務員として計算をいたします場合に、昨年度とりましたその措置を、そのまま継承いたしておるのでございます。
  336. 受田新吉

    ○受田委員 文部省は各都道府県給与単価を、教諭も助教諭もそれらの比率をもつて平均単価を出しておる。そうなるとさらにそれにつけ加えるのに、文部省の考え方では勤務年数、それから学歴も入れておりますが、それを補正するというような案を研究しておるということであるが、それは事実ですか。
  337. 田中義男

    田中(義)政府委員 それらを調査いたしまして、そうしてそういう計数をどういう比率においてこれを採用するかについて検討をいたしております。
  338. 受田新吉

    ○受田委員 助教諭の部分までもこれを平均するということになると、助教諭などの非常に多い山間僻地の学校などはさらに左翼にまわされるわけでありますが、そういうことに対する、いわゆる義務教育の機会均等主義というようなものをうんと水準を高めるとか、そういう目標をこわす結果にはならないか、いかがお考えですか。
  339. 田中義男

    田中(義)政府委員 実はその点につきましては、単に現員現給のみを強くとりますと、お話のように向上がございません。従つて実情を考えながら、同時に多少それよりも上まわるよ、な余裕をもつてその基準を設定いたしたいと考えておるのでございます。
  340. 受田新吉

    ○受田委員 僻地手当をどういうふうに算定をされましたか。現に地方で、この人事院の定めた僻地手当よりもはるかに高いものを実績として支給しておることは、文部省も御承知だろうと思いますし、また文部省も実際の予算要求においては、相当高額の要求をされておつたことを私は知つておるのですが、この問題についてお答えを願いたいと思うのです。
  341. 田中義男

    田中(義)政府委員 僻地手当につきましては、僻地教員の優遇のためになすべき施策としては、この問題が第一の問題と私どもの局では考えまして、お話のようにいろいろ努力をいたしましたが、結局来年度の措置としては、国家公務員並にこれを考えなければならぬということに相なりまして、従つて当初の目標よりは相当引いたわけでございますけれども、二百六十五円のこの規定に、そのまま沿わざるを得ないような実情に相なつておるのでございます。
  342. 受田新吉

    ○受田委員 この学校の教職員の勤務状況というものは、山間僻地にもその真剣さがあふれていなければならないのですが、この定員定額制によると、まことに千編一律の国家公務員の最も冷たい線における基準でお出しになつておるのであつて、現に各府県が負担をして、その教育の振興のために努力している部分は全然考慮されていない。これを厳密にいえば、定員定額の部分だけで、それですでに政府はりつぱに義務教育の職員は、全額を国庫負担したのだというような印象を国民に与えようと企図しておられるのではないか。この点最初義務教育費全額国庫負担というような美名のもとに名乗りをあげようとしたこの法案が、途中から義務教育学校職員法案ということに切りかえられましたが、この点その行きがかり、進行状況は、初め政府がなたを振り上げておるそうとしたときに、全額国庫負担というのではどうもおかしいというので、そうした名称の変更に及んだのではないか、そのいきさつを御説明いただきたいと思います。
  343. 田中義男

    田中(義)政府委員 ただいま申し上げました点は、二十八年度の臨時措置として思し上げたのでございまして、お話のようにこの職員法の本則によりますと、二十九年度から文字通り全額国庫負担をする、こういうことに相なるのでございます。ただ二十八年度の臨時措置として、ただちに全額そのまま国が負担するわけに参りませんので、いわゆる定員定額によつて一定額を交付する。それで地方においては、現状のまま地方負担として持つていただく、こういう考え方でございまして、全額負担というものは全然これは抜きにして、定員定額だという考え方ではないのでございます。
  344. 受田新吉

    ○受田委員 これは中央において与えられた額の配分をいたしまして、そうして地方の都道府県の教育委員会が各市町村にさらに配分する、こういう行き方をとることになると、事実上国家公務員ではないのではありませんか。中央が基本的な給与だけは割当てるし、事実地方では別に地方財政の応援をして出せという。それから八大富裕府県は今まで富裕府県であるというので、平衡交付金を出していないから、この部分はお預けにするのだという行き方で行きますと、全然国家の費用をいただかぬで、国家公務員ということになるわけでありますが、この解釈をいかがしたらよろしゆうございましようか。
  345. 田中義男

    田中(義)政府委員 実はお話のようなことは、二十八年度の臨時措置としての負担の仕方でございまして、従つて二十九年度以降になりますれば、まつたくこれは国家公務員として国が現員現給を引受けることになるのでございまして、従つて国としての財政措置はすべてまるがかえにいたすのでございます。ただ直接中央において支給事務をやるわけに参りませんから、これは段階的に府県に配分をし、府県から市町村に配分するということには相なりますけれども、実はそういうふうな法案になつておるわけなんです。
  346. 和田博雄

    和田委員 関連して。……なるたけそういう質問はきようはしないことにして、数字だけ聞いておきたいと思つたのですが、二十九年度から全額ということになつても、やはり二十八年度に平衡交付金の行つていない大きな都市とか、府県なんかで減額をされているやつはそのままなんですね。だから実は費用を国が持たぬにかかわらず、りくつとしては、全部を国家公務員にすることがやつぱりあるのだということは残るのでございますか。二十九年度だつて同じでしよう。
  347. 田中義男

    田中(義)政府委員 東京、大阪等の不交付団体並びに六府県に減額交付することは、これも国家財政の見地から、むだをなくするための二十八年度の臨時措置でございます。従つておそらく税制、財政等の改正によつて、やはり東京、大阪を初め六府県についても全部国でこれを負担する、こういうことに予定をいたしておるのであります。
  348. 和田博雄

    和田委員 そうすると二十九年度からは地方の財政を改正してしまう、地方の税制制度をかえてしまう、こういう前提に立つておるわけなんですか。
  349. 田中義男

    田中(義)政府委員 法案はそういう前提に立つておるわけであります。
  350. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ奇妙に感ずることは、これはあとから数字の方に触れますが、基本的な問題として、義務教育学校の職員だけを国家公務員にして、高等学校の職員がそのままに残される。国立学校の職員と義務教育学校の職員とが国家公務員になり、高等学校の職員だけが都道府県の地方公務員になるという現象は、これは一つの体系を立てる上で、まことにけつこうな体系だとお考えでしようか。これは私、仮定の立場から今申し上げるのです。
  351. 田中義男

    田中(義)政府委員 高等学校と小、中学校については、本質的に異なるところが多少ないでもございません。すなわち小、中学校は憲法において義務を課したところのいわゆる義務教育でございまして、これについて国が従来以上に責任を明確にして、できるだけの措置をすることは当然なすべき義務でもございます。従つてそういう点で、今回国家公務員にするということにも相なつておるのでございます。ただ高等学校の問題につきましては、今ただちにこれを解決する運びには至つておりません。しかしこれらについては、さらに次の問題として考慮さるべきであろうと思います。
  352. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると政府としては、高等学校教員の問題も次の問題としては国家公務員にするという前提に立つておると解釈してよろしいですか、大臣の御答弁を願います。
  353. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。私はそこまでまだはつきりときめておりませんが、世界の情勢を見ますと、義務教育の年限はだんだん増して行つているようでございます。先般イギリスに参りまして調べましたところ、イギリスでも義務教育の年限は十何年かにしておりますけれども、それが財政上の措置とかなんとかいうものができないために、二年間くらいは義務教育にせずに――法律上はなつているけれども、取扱い上は十四年が十二年だつたと思いますが、そういうふうにしおります。われわれとしましてもこれから文化国家として立つて行くには、できるだけ国民がそういうふうな知識教育を受けることが必要だと思いますから、どうしても検討しなければならぬと思うのであります。この問題は財政上の措置で相当困難なことがあると思います。しかし高等学校全部を義務教育にするかせぬかは別問題として、義務教育はできればもう少し年数を増してもよいのじやないかと思つておりますが、これは将来の検討にまかせたいと思つております。
  354. 受田新吉

    ○受田委員 たいへん新構想の御発表をいただいたのでありますが、私が義務教育、世界の小学校の実情を調査したところによれば、今のような特例は別として、原則として八年が普通であり、たまに九年があるという程度で、日本の義務教育制度は最高の水準を行くと私は今思つております。この義務教育学校の職員が、国家公務員になつているという例が世界にございましようか、この点御答弁をいただきたいのであります。
  355. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。西ドイツは国家公務員にしているそうでございますが、ほかは国家公務員にしていないようでございます。
  356. 受田新吉

    ○受田委員 これはまだ給与の問題について、全額を国庫が負担していないという立場からも、真実の国家公務員になつていないのだし、地方財政の上からも、中央からまわされる部分と地方が負担する部分と、両方を振り向けるというような煩頑な手続がいる。かつ地方によつてはすこぶる苦慮して、教育の実績を上げるために教員優遇の道を講じているところが、全部押し流される結果になることだし、その人事権の三本建あるいは財政の措置における国、地方の複雑性、あらゆる角度から見、これはすこぶる奇怪なうちに法案が通つて行くおそれがあるのであります。もう一少し慎重に研究してほしい。財政的な措置なども、さつきから申される数字の点など非常に誤謬がある。私が数字の上で申し上げたいのは、産休の問題や療養、休養者などの問題で、政府が出された一・三三なんというのはきわめて低い数字で、実際はその二倍、三倍になつておる。そういう数字になるのを一・三三だということになれば、これは療養者を締め出すということになる。産休者よ、お前たちはどこかへ行けということで、きわめて残酷な数字のつかみ方になつておるのです。  もう一つは教材費の問題です。政府要求額は相当出されておつたようだけれども、実際問題として十九億などというわずかな額で、残りをPTAその他に振り向けようとするところなど、非常にずさんなうちに出発するのです。これは何か政府としてこれを出されるときに、内心すこぶる苦慮をして、今なおしやんとしないで後悔していらつしやるのじやないですか、この点ちよつと御答弁いただきたい。
  357. 田中義男

    田中(義)政府委員 今いろいろお話がございましたが、特に教材費の点について申し上げます。教材費についてはPTAの寄付を解消するということを一番の目標といたしておつたのでございますが、そういたしました場合にもう少したくさんの予算がほしい、こう考えていろいろ事務当局としても一定の方針をもつて努力をいたしたのでございますが、結局予算折衝の過程において、十九億円という数字を得たわけでございます。しかしこれによつて、各小学校につきまして一番小さいものでも最低二万円は出したいと思いますし、それから中学校につきましては二万五千円くらい、なお盲学校については五万円、あるいは聾学校については最低四万円、そういつた各学校についてある程度の教材費の交付ができますので、来年度はこの程度でがまんするよりいたし方ないと考えておるのでございます。
  358. 和田博雄

    和田委員 配付された資料によりますると、国庫負担金の配分は、学校数であるとか学級数、児童生徒数、教員構成等の要素があり、なかなか的確につかめないので、結局二十八年度の統計の結果を待つて実情に沿うように配分する、こういうことが言われておるわけですが、今の御説明によると、来年の五月でなければこれらのものが完成しないということになつておりますね。そうすると結局これまでのお話を聞いておれば、二十九年度からは地方財政も税制の方も改正して、そして六大都市とかその他二、三の府県の間に存在する国家公務員にすることによる負担はそれで解消して行く。こういうことになつて来ると、結局すべてがいろいろな資料が出てうまく行くのは、二十九年度なので、その間に政府の方としては非常に無理をされて、二十八年度にいろいろな暫定措置をとられ薫る。現に配付になつていろいろな資料を拝見しても、また説明を聞いても、いわゆる定員額の点で、むしろ今お話を聞けば、五千五百人もふえるのではなくて、逆に減つて、その面でも一応形式的ではあるかもしれぬが、首切りになつてしまうという点も出て来るし、いろいろな点で誤解を招き、またわれわれが見て非常に不手際な点が多いわけなのです。これは岡野さんにお聞きしたいのですが、もう一年先へ行けば、いろいろな材料もそろつて、しかもりつぱなものが出せる見通しがあるにかかわらず、なぜ一体こういうものを突如として出されたのか。これによつて教員の生活が安定するとか言われてみても、やはり全額国庫負担されるのは九四%で、あとの六%はやはりまだ残つておる。それから俸給その他の点についても、それほどよくなるようにはぼくらには思えない。いろいろな点でどうもおかしい点がたくさんあるのですが、どうしてこれを急に出して、そしてあとは野となれ山となれ――しかも来年の二十九年度まで吉田内閣が続くか続かぬかわからぬのであつて、そういう点からいつてみても、どうもその点がわれわれとしては納得が行かないのです。そういう点は一体どういうふうにお考えになりますか。
  359. 田中義男

    田中(義)政府委員 大臣がお答えになります前に、ちよつと私から申し上げておきますが、統計も本年の五月には確定いたします。ですからそう先に延びるというわけでもございません。なお大体本格的にはむろん二十九年度からですけれども、教育の立場に立つて考えますと、従来しばしば文部省において主張をいたしておりましたように、教育費が平衡交付金の中において交付されるということは、これは非常に自由な金の配分に実質上なりますので、教育費の確保になりませんために、教育の振興の上に非常に支障があつたわけでございまして、従つて単に平衡交付金の中からこれをはずして、教育費は教育費としてこれを確保し、交付して行く、こういうところに、非常に強い積極的な価値があり、また意義があるのでございまして、そのために、文部省としては長年国庫負担制度を主張して参つたのでございます。そういう点から申しますと、今回はともかく定員定額の全額を国が直接教育費として各地方に配賦するということになりますので、それだけでもこれは非常に画期的な意義があるわけなんでございます。
  360. 和田博雄

    和田委員 まあそういう議論に一々質問してもどうかと思うので、やりませんが、文部省の役人とされては、あるいはそういう御希望を持たれておるかと思いますが、そういう点も少し考えてみれば、今の地方財政がもつと確立して参りますれば、地方財政平衡交付金でも、りつばにその役割は果せるのです。義務教育費全額国庫負担ということを初めに標標して、今度は名前をかえて職員の法案になりましたが、それに伴つて反面のいろいろな問題がかえつて大きいのです。案そのものを見ましても、いろいろ欠陥があることは、これは政府当局といえども、暫定措置というものをしなければならないということで認められておる。きようは予算分科会ですから、そういう議論はやりませんが、しかし特に急いでこれをやつて行つたその方針というものは、これは岡野さんにはおありだろうと思います。なぜこれをそんなに一時に急がれたか。ただ教員の生活の安定ということだけで急がれたような説明をされたわけですが、それはどうも私たちには納得が行かないのです。今の局長のお話を聞けば、これだけ革命的な制度になろうというわけでございますから、そうだとすれば、その影響がまた大きいことはあたりまえなんで、そういう点をお考えにならずにこういうことをやつたとは、われわれは思えない。何かはかにやはり意図があるとわれわれは考えざるを得ない。それは私は今度の内閣の総理の施政方針以下ずつと通覧して静かに聞いておると、地方自治というものがせつかくできたにかかわらず、自治制度というものに対して、ほんとうにこれを盛り立てて行こうという意図よりも、むしろそれが集権的にくずれて行く、その方向をいろいろな面にとつ薫るように思われるのです。いろいろ警察にしましても、その他の制度改革にしても、そういうにおいが多分にある。私どもは権力は中央に集権するのではなくて、やはり地方に分権されて行くということが、民主的な日本をつくつて行く上において重要な基礎だと思います。そういう点からいつて、この法案自体は、そういうふうな政治的なニュアンスといいますか、何かそういう意図が政府にあるというのでやかましく問題になつていると思うのでありまして、岡野さんはきのうの会議では、どうも教員のことばかり考たような御答弁をされたわけですが、もう一ぺん私はしつこいようでありますが、この点に対する御意見を伺つておきたいと思います。
  361. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 この全額国庫負担にしましたことにつきまして、御説明申し上げますが、全額という言葉が出ましたもとは、昨年あれだけ大騒ぎしました半額国庫負担ということが原因になつておるのであります。御承知でもございますがこの前の法律は、義務教育費国庫負担法ということになつておりました。その中で教材に半額ということは書いてないのでございます。義務教育費国庫負担法というので、しかもそれは半額国庫負担ということに俗に呼ばれておつた。ところが今度それを半額でなしに、全額にするという、その非常に差のある点を打出そうという考えで、全額ということが言われたのであります。その意味におきまして、あるいは世間に誤解を起したかと思いますが、またいろいろそれに反対する宣伝の中には、羊頭狗肉、すなわち全額国庫負担をするのだから、教育費は全部国庫負担するように受取らしておつて、そうして給与だけじやないか、こういうことを言われておりますけれども、これはその半額と区別する意味でいたした。それから私がこの全額国庫負担というものに対して熱意を持つておりますことは、御承知の通りに、先ほども仰せのごとく地方分権というものが、地方の市町村に教育委員会が下りた。もつとも私これまた言い訳を申すようでございますが、教育委員会を末端の小さい村とか町に下ろすということには、私は反対だつたのです。もう少し教育委員会をよく検討してから下ろしたらいいじやないかということで御承知の通りに、党の方でも下ろすということになつておつたのを、私は反対しておつたのです。しかしながらいろいろな事情がありまして、どうしてもあれを改革するわけには行かない、もうちやんと法律で、何年か前に施行期日もきまつてつて、そのときになつて来たものですから、いたし方なく、現行法通りに実施する。そうなつて来ますと、地方分権が教育の面においては確立したということに私は了解したのであります。そこで半額国庫負担につきましては、あれを実施するについては非常に困難なところがあるのです。同時にまた私自身としましては、もともと宿論として、全額の方が好きだ。そういうよういろいろな事情から来まして、同じ苦しい思いをし、しかもその苦しさは、全額よりは半額の方がもつと苦しいというのならば、全額にして、四月一日から実行したらいいのじやないかということが、私が今度こういう方向に進んで来たゆえんでございます。でございますから、全額国庫負担というものの羊頭狗肉でないということは、半額と区別する意味において、俗称全額と言われたわけで、それからこれを半額から全額にするということは私の宿論でもあるし、同時に地方自治はすなわち教育委員会が一つ残されたのでありますから、この委員会におまかせすれば、りつぱに地方分権は立つて行くという見すえがついたことと、それから技術上の点から行きまして、半額国庫負担を実施するにつきましては、もつともつと困難な事情がたくさんございます。そうして昨年私は文部大臣となりましてから、こういう方向に持つて行きたい、こう考えた次第であります。
  362. 和田博雄

    和田委員 そうしますと、この全額国庫負担は九四%なんですが、実際問題として、職員の給料なり何なりは、二十七年度よりも各県について上つて生活が楽になるのですか。そういう数字は一体どこから出て来るのですか。昇給ということを別にして……。
  363. 田中義男

    田中(義)政府委員 このために特に個人々々について生活が楽になるというほどの予算増額はございませんけれども、一応昨年のベース・アップのときに、あの基準を単価として二十八年度における昇給を見込んだものを、実は全額平均単価として計数をはじいておるわけであります。
  364. 和田博雄

    和田委員 だから結局義務教育を国庫負担にするということは、地方よりも国の方がやはり財政力があるということに結局なつてしまうだけのことなんです。それは現在においては地方財政がいろいろな原因で困窮しておるから、そういうことが言えるのであつて、制度自体として考えた場合には、地方財政がしつかりしたものになれば、何も全額国庫負担にする必要はちつともない。しかもおまけに全額国庫負担にすることによつて公務員にしてしまう。公務員にすることが本来の目的であるならば、こういう法律でなくても、国家公務員法でもかえればそれで事は足りるのであつて、私は目的がはつきりしていない点が、何といつてもこの法律に対してわれわれとして疑惑を招く点と思うのであります。そういうことで今おつしやるように、これだけのために特にどうこう――月給が上つたり何とかするということではないということであれば、生活安定というようなことについては、ただ国が今の現状においては地方よりも財政力があるというだけのことであつて、将来地方財政を確立するための手段を講ぜられるのでありますから、どうも私どもとしては聞けば聞くほどだんだん迷わざるを得ないのであります。そういう点でいろいろ聞きたいことがありますが、そういうのはもう一ぺん文部委員会でやりますので、ただ数字の点でただいまの盲唖のものが残つておりますから、その点をひとつお答え願います。
  365. 田中義男

    田中(義)政府委員 盲唖について申し上げますと、二十七年度が三千十九人でございます。それから二十八年度が三千六百二十三人、こういう数字なつております。
  366. 受田新吉

    ○受田委員 これは逐条質問して行けば、ずいぶんだくさんの質問を用意しておつたのでありますが、これはいずれ文部委員会でやる問題でありますので、きようは予算的な措置に関する最後の質問にとどめておきたいと思います。  それは、この義務教育職員の法案については、一応これでお預けにしておきますが、文部省が考えておるこの給食対策について、当局は例の原麦代の二分の一を今まで出しており、また粉乳の資金をまわして出していたわけでありますが、これが二十七年度からいろいろ値上げされて、二十八年度には大体三十五億くらい要求されるべきものだと言われておつたにもかかわらず、まことにあざやかに十七億に削減された。これは文部省の大失態だと思うのですが、(「それはきのう済んだ」と呼ぶ者あり)そうですが。それに対して答弁がありましたか。(「答弁もあつた」と呼ぶ者あり)それではこの質問はそれでおきます。  もう一つ、大臣はしばしば大学の教育について、特に教育学部の学生は二年の制度で小、中学校の教員として適格ではなかろうかというような発言をされておると聞いておりますが、この点は短期大学程度の教育学部で初等中等の教員を間に合せるという可能性を考えて発言されたことでしようか。
  367. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。何か私もよく知りませんが、小学校中学校の先生は資格のない人が非常に多いのです。しかも毎年自然に退職されて行かれる人が五万人ぐらいある。それから教員養成の大学から出て来るのが二万二千七百人ぐらいしかいない。そうしますと、今現にあまりいい資格のない助教員とか何とかいう者で補充しておりながら、しかも毎年五万人も減つて行くときに、有資格者が二万二千七百人しか出て行かぬ。これでは行く行くは、中学校を出た人か、高等学校を出たばかりの人で小学校の教員が埋まつてしまうのではないかという心配を起しました。それならばとにかく短期の大学でもいいから、とにかく二年でもいいから、そういう関係で早く養成して、少くとも五万人減つて行くならば、五万人ぐらいは毎年それで埋めて行き、なおもつとよくやつて行けるようなことがあればけつこうでありますが、とりあえず目先の計画といたしましては短期大学でも行きたい。こういうことで私は考えております。
  368. 受田新吉

    ○受田委員 それでこの問題は義務教育の法案と関連して来るのですが、国家公務員にして、その誇りを感じさせることになるという職員を、二年制程度のもので間に合せておくという軽い感覚をお持ちになると、これはたいへんな誤差が生ずると思うのです。従つて大臣自身のお考えから行く教員の国家公務員化は、当然その教養の上においても高い矜持を持たせるという線に行かなけなばならなぬ。そういう大臣のお考えからいつても、私は今の大臣のお言葉が、初等中等教育がはなはだ軽視されるような形に響いて来ている現象をゆるがせにすることはできないと思うのでありまして、この点特に再考を煩わしたいと思います。  もう一つは、夜間大学あるいは定時制高等学校というようなものがとかく軽視され、さらに通信教育というようなものによつてせつかく勤労青年の教育を振興しようという空気が盛り上つておるときに、これが軽く取扱われるということになると、これはたいへんなことであるのでありますから、この点についても積極的な施策がこの予算の上に出ていなければならぬのですが、今定時制高等学校の経費の負担区分が、この予算の上に平衡交付金を除いて一千万円程度出ておることを知つておるのですが、こういうところをうんと増額して、勤労青年の教育の機会均等ということを考えるべきだ。  もう一つはせつかく大学を出た者が――昼間の大学を出た者と夜の大学を出た者とが就職にも大いに差異をつけられるとか、あるいはせつかく大学を出ても就職の門が閉ざされておるというようなことは、これは学問の自由を束縛するものでありますし、またせつかく学問を学んだ者に道を開くことになりませんので、この点についても、積極的に学問をした者に道を開いてやるということを文部省で考えていただく。特に情実によつて、資本家につながりのある者は金の力や顔でどんどん就職ができるが、実力を持ちながらつながりのない者は路頭に迷わなければいかぬというのは、これは適材適所、人材のところを得ない結果なのであります。こういう点についても根本的にそういう予算的措置とか、あるいは方策というものが文部省として考えらるべきではないか。特に通信教育においては、通信教育で大学に学んで、あのスクーリングに来る諸君のための宿舎あるいは研究に要する施設、こういうものまでも文部省で講じてやつて、勤労青年に恵みを与えてやるというような、そういう考慮が払わるべきではないか、こう思うのでありますが、大臣のそういう面に対する御構想を伺いまして、私の質問を終ります。
  369. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 勤労青年の教育につきましては、できるだけ今後拡充して行きたい、こう存じております。  それから就職の問題でございますが、これは私も昨年以来非常に心配しております。その点におきまして、文部省にしましても、全国にいろいろ人を派遣しまして、就職のあつせんもしておりますし、また今までのように大学を卒業した人が、あまり大きな銀行、会社ばかりをねらわないで、自分の腕でその会社を大きくして行く、そして自分自身の発展と、会社の発展とに尽すというような意気に燃えて、その方面に進んでくれたらいいじやないか、こういうような考え方で、そういう方面にも分野を開くようにしております。また今後ともそれに努める考えでおります。  それから、教員の臨時養成のことでございますが、私はこういうことを考えております。これは文部当局にも頼んでおるわけでございますが、臨時養成の二年の大学を出まして、現職でとにかく相当に成績を上げ、またいい先生であるという者ならば、現職のままあとの二年を留学さしてやる、こういうふうなことを考えたら、本人も元気がつくし、また社会のためにもなりはせぬか、また学校の先生としてもよくなつて行きはせぬかということまで考えております。
  370. 永山忠則

    ○永山委員 育英事業の拡充強化に関しまして、奨学資金の貸付を今度軍人遺家族の分として約一万人の奨学生を採用することになつておりますが、この金額が足らない場合には優先してそれをお出しになりますか。同時に優秀で経済的な理由ということになつておりますが、その条件は多少緩和されて取扱いますか、それだけを一応お聞きしておきます。
  371. 稻田清助

    ○稻田政府委員 ただいまのお尋ねの点でございまするが、育英会の貸与金の根挙となつておりまする法律に、貸付金は優秀なる学徒にして、経済的理由によつて修学困難なものに貸す、こうありますので、優秀性と経済上の理由と、この二つの要素はどうしても考えなければなりません。ただ遺家族の場合におきましては、特に事情が事情でございますので、経済的理由の方を非常に重く見ておりまして、一般の奨学生よりも多くの人数をこちらに振り向けているような次第でございます。ただいまのお話にありましたように、人数も昨年の七万人から九万四千人にふえております。金額にいたしましても、昨年の六千八百万円が一億二千九百万円というふうにふやしておるのでありまして、できる限り潤沢にこちらに振り向けたいと考えております。
  372. 西川貞一

    西川主査 これにて文部省関係質疑は終了いたしました。
  373. 島村一郎

    ○島村委員 議事進行に関しまして動議を提出いたします。本分科会質疑はこの程度をもつて終局し、なお本分科会所管の予算各案に対する討論採決は、予算委員会に譲られんことを望みます。
  374. 西川貞一

    西川主査 ただいま島村委員より提出されました動議について採決いたします。この動議に賛成の諸君の起立を願います。   (賛成者起立〕
  375. 西川貞一

    西川主査 起立多数。よつて動議のごとく決しました。  各位の連日にわたる深夜までの御精励に対しまして厚く感謝の意を表します。  本日はこれにて散会いたします。     午後九時五十五分散会