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1953-02-13 第15回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十三日(金曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 橋本 龍伍君 理事 本間 俊一君    理事 中曽根康弘君 理事 川島 金次君    理事 成田 知巳君       淺利 三朗君    植木庚子郎君       植原悦二郎君    岡本  茂君       重政 誠之君    北  吟吉君       島村 一郎君    砂田 重政君       塚原 俊郎君    永田 亮一君       永野  護君    灘尾 弘吉君       西川 貞一君    貫井 清憲君       原 健三郎君    森 幸太郎君       山崎  巖君    井出一太郎君       小島 徹三君    櫻内 義雄君       鈴木 正吾君    古井 喜實君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       石井 繁丸君    河野  密君       中村 高一君    西尾 末廣君       西村 榮一君    伊藤 好道君       稻村 順三君    上林與市郎君       八百板 正君    和田 博雄君       福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  出席公述人         朝日新聞論説委         員       土屋  清君         日本鋼管株式会         社会長     林 甚之丞君         日本労働組合総         評議会組織部長 石黒  清君         野崎産業株式会         社取締役会長  野崎 一郎君         日本中小企業団         体連盟常任理事 山本 義夫君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた事件  昭和二十八年度総予算について     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより昭和二十八年度総予算につきまして公聴会を開催いたします。  この際申し上げます。昨日御報告いたしました公述人のうち、自由人クラブ事務局長林正夫君を同クラブ常任理事直井武夫君に変更いたしました。御了承を願います。  開会にあたりまして本日御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。申すまでもなく、目下本予算委員会において審議中の昭和二十八年度総予算は、今国会中における重要な案件であります。よつて委員会におきましては、広く各界の学識経験者各位の御意見を聞きまして、本案の審査を一層権威あらしめようとするものであります。各位の豊富なる御意見を承ることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考となるものと期待いたす次第であります。各位におかれましては、その立場々々より腹蔵なき御意見の御開陳をお願いいたします。本日は御多忙中のところ貴重なる時間をおさきになり、御出席をいただきまして私として厚く御礼を申し上げる次第であります。  なお議事の順序を申し上げますと、公述人各位の御意見を述べられる時間は、大体二十分見当にお願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見開陳及びその質疑を済まして行くことにいたしたいと思います。  なお念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして発言の際は私の許可を得ることになつております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御了承を願います。  それではまず朝日新聞論説委員土屋清君より御意見をお聞きすることにいたします。土屋清
  3. 土屋清

    土屋公述人 御紹介にあずかりました土屋清であります。  来年度の予算案は、講和後最初の本格的な予算わが国が独自の立場からなし得る自主的な予算といたしまして、私どもその編成について非常に注目をいたしておりました。これまでの予算編成にはいろいろの制約がございましたが、そのからをどこまで破つて独立日本にふさわしい建設的、積極的な内容を盛り込むことができるかについて、非常に期待を寄せていたわけであります。  来年度の予算案を拝見しまして最も注目されますことは、従来の予算編成原則をなしておりましたドツジーラインの修正がかなり大幅に行われたという点だろうと思います。それは、これまでのドツジ・ラインのもとにおきましては、公債漸減政策をとり、新しい公債発行を押えることはもちろん、既発公債についても、次第に減少さして行くということが行われました。それとともにもう一つは、超均衡予算編成いたしておりました。すなわち財政資金引揚げ超過を来すような形の予算均衡をさらに上まわるような予算編成いたしておりました。この公債漸減政策と超均衡予算編成というのが、今までのドツジ・ライン下予算編成の特色だつたろうと思うのであります。  来年度の予算案におきましては、これに対しまして、公債漸減政策を廃棄して新規の公債発行を認めるとともに、超均衡予算を打破いたしまして、むしろ過去の財政資金蓄積放出する、その意味においては相当散布超過を伴う予算をつくつたのでありましてこの点が従来の予算と著しく違う点だろうと思うのであります。この公債発行と過去の蓄積資金放出ということは、私は必ずしも間違つているとは思いません。但しそれには条件がございましてこれによつてインフレーシヨンが激化する危険がないかということが一つ、もう一つは、財政資金蓄積放出するのを含めまして、予算支出全体が生産的な目的に使われておるかどうか、この二点がドツジ・ライン修正を是とするかいなかのわかれ目だろうと思うのであります。以下この二点をまず中心といたしまして検討いたしたいと思います。  最初の問題は、この公債漸減政策の廃棄と超均衡予算の打破によつてインフレーシヨンを伴うことなしに、予算の執行ができるかどうかという問題であります。まず公債政策の問題でありますが、今回の公債発行は、特別減税国債三百億円と、もう一つは公社債二百二十億円、合計五百二十億円でありますが、その両方とも、一応市中消化を目ざしておるのであります。市中消化を目ざすということは、言うまでもなく、国民購買力を吸収することでありますから、この市中消化が完全に行われる限りにおいては、インフレーシヨンがこの面から生ずるという危険はございません。公債発行をもつてただちにインフレーシヨンの第一歩であると言うことは少しく公式論でございまして、市中消化ができれば、その点に問題はないわけであります。財政法規定におきましても、国債日銀引受発行を禁止しておる。国会の承認がある特別の場合に限つて日銀引受発行も認めておりますが、原則として財政法国債市中消化を期待しておるのでありまして、今回の公債発行は、その財政法の精神に基くものと認めておるのであります。  しからばこの五百二十億円の国債消化が可能なりやいなやという問題があります。これは現在かなり貯蓄が増大いたしておりまして、たとえば銀行預金を見ましても、あるいは株式投資を見ましても、国民消費の増大する割合に比して貯蓄の増大する傾向の方が著しい、そういう段階でございますから、五百二十億円程度の国債消化は、相当努力を伴うことはもちろんでありますが、ある程度の発行条件さえ妥当であれば、市中消化はそれほど困難はないと思うのであります。従つてこの点、今回の公債政策が著しくインフレーシヨンの危険を増大するというふうには考えられません。  もう一つの、財政の過失の蓄積資金放出の問題でありますが、これは過去の蓄積資金約六百億円の放出を含めまして、来年度における財政資金散布超過が大体千二、三百億円と見込まれております。これは一時は千五百億円ぐらいといわれたのでありますが、少しく過大に失するようでありまして、まず千二、三百億円くらいと見られる。もちろんこの千二、三百億円の財政資金散布超過は、ただちにインフレ要因になることは明らかであります。しかしインフレ要因として散布超過が行われましても、一方金融面において、その資金を吸い上げる操作が円滑に行われるならば、経済全体としては、それがただちに物価水準上昇を来すことにはならないわけであります。そこに財政金融との微妙な相関関係があるわけであります。これまでのドツジ・ラインのもとにおきましては、先ほど申しましたように、財政において著しい引揚げ超過であつた。それを補うために、逆に金融面においては著しい散布超過が行われました。いわば財政のしわを金融に寄せる、金融面の放漫な貸出しによつて、辛うじて経済バランスを維持していたようなわけであります。今回は財政面においてむしろ一千億円以上の散布超過が起る。これをカバーするために、むしろ金融面において引締めるという操作が行われるならば、これまたそれほどのインフレ現象を伴うものとは考えられないのであります。もちろんこの操作が必ずしもうまく行くとは断言できません。日銀当局その他の努力が必要と思います。機械的に出しただけ吸い上げるということはとうてい困難であります。かつまた財政資金散布超過によつて潤いますのは、主として大企業関係であり、しかも金融の引締めによつて困るのは、主として中小企業関係でありますから、その間の対象の相違によつて相当の困難な事態が起るということも考えられるのでありますけれども、経済全体として見ますときは、財政金融の一体的な運用が円滑に行われる限りにおきましては、それほどの物価水準上昇を来さないと思うのであります。  このように考えますと、公債政策といい、あるいは過去の資金蓄積と申し、いずれも結局最後は金融の問題になつて来る、公債が消化できるかどうか、あるいは金融面の引締めができるかどうか、そういう金融政策の問題になつて来ることが明らかであります。そうなりますと、ここに金融政策においては異常なる困難が起るということをわれわれは考えざるを得ません。  それは何かと申しますと、一方金融面においては金利引下げという金利政策の問題が存在するからであります。今日わが国世界にもまれな高金利にありましてそれが産業界を圧迫し、ひいては輸出振興に重大な障害をなしていることは申すまでもないと存じます。ところが今申しました財政面からインフレを生ぜしめないようにしようとして金融政策を調節しようといたしますと、そのことがただちに金利政策とぶつかつて来る危険が非常に存在している。これが私には今度の経済の大きなジレンマになるのではないかと思われる。なぜかと申しますと、公債消化を促進するためには、公債発行条件相当有利にしなければいけない。つまり公債金利あるいはその他期間等条件については、かなり甘くしなければならない、つまり金利引下げよりは、むしろ金利引上げに拍車をかける傾向があるわけであります。また金融の引締めを行うということになりますと、散布された資金が吸い上げられるわけでありますから、金利引下げ基礎条件が薄くなつて来る。金融がだぶついて、そこで初めて金利引下げられる条件ができるのでありますが、金融が引締まるのでありますから、金利引下げが困難になる。つまり財政面インフレ効果を消すために、金融政策を行うとすれば、それが金利引下げという大きな問題にぶつかつて来る。これが二十八年度の問題として私には非常に重要だと考えられる。一方においては金利政策を推進する、他方においては財政面インフレ抑圧のための金融政策を行わなければならぬ。このジレンマをどう解くかということになりますと、これは非常に困難な問題があるように思われる。  今日金融政策につきまして、それほど一貫した政策があるように思われないことは、はなはだ遺憾でありまして、今後ますます財政金融の一体的な運用という観点から、特に金融政策調整を行わないと、他の面において重大なる支障を来すおそれがあるように思われる。この点、今後財政金融の一体となつ運用について、もつと配慮を重ねて行く必要があるように思うのであります。  もしもこういう金融政策の矛盾がそれほどの障害を起すことなしに運用されるといたしますと、私は今日においては、世上伝えられるようなインフレーシヨンの危険というものは、いささか誇大に考えられているように思うのであります。それはなぜかと申しますと、今日わが国においては厖大なる滞貨が存在している。しかも企業操短状態に置かれておりまして、ここで経済理論を説くのでもございませんけれども、インフレーシヨンは単に購買力追加が行われると、機械的に物価が上るわけではございません。購買力追加が行われまして、それが物資の需要となつて買い向い、市場に存在するストツクが一掃され、かつまた操短企業完全操業なつた場合において、その後さらに追加購買力放出されれば、そこでインフレーシヨンが起るわけであります。今日わが国に非常なる滞貨が昨年以来存在しており、しかも企業操短状態が厳然たる事実であるとするならば、かりに金融政策調整さえうまく行われれば、この物資面条件によりまして、私はインフレーシヨンを防ぐことができると思う。その意味においては、この滞貨の存在はインフレ抑圧には相当大きなプラスをなすものと考えられる。しかるに今日世上、今回の予算をもつてインフレ発生の非常なる危惧が存在しているとなしている。このことは否定しがたい事実であります。その原因がどこにあるかということを考えてみますと、これは内容をそれほど検討しないということもございますけれども、一般に考えられておるところでは、結局一たび公債政策を採用しますと、最初生産的目的のために公債発行するといいながら、次第に消費的な、赤字的な、赤字穴埋めのための公債発行になる。しかも最初市中消化ということを標榜していながら、結局はずるずると何だかんだ法律の裏をかいて、日銀引受というようなところに持ち込む。そうなれば、とめどもなく歯車がまわり出して、どうにも抑制がしがたい。それがえてして政党政治の落ち込みやすい欠陥である。こういうことが今日インフレのよつて生ずる大きな原因だろうと存じます。一口で申しますと、公債政策前途に対する不安——今年度においては大したことはないが、今後の政治のもとにおいて必ずしも公債政策を適当に運営するということについての自信が持てない、この不安が国民に存在しているのではないかと思います。これは私は日本政党政治議会政治の問題としても、非常に重要なことだと思うのでありまして国民がそういう不安を抱かないように、国会としても謙虚に、誠実に反省することが必要じやないかと考えるのであります。  第二に、予算が生産的に使われているかどうかということが、私はドツジ・ライン修正する場合において、注目される点だと思うのであります。もちろん今回の公債発行と、財政蓄積資金放出は、大体において電源開発であるとか、あるいは開発銀行への出資であるとか、いろいろと生産的目的のために使われているような形を一応とつております。しかしこれは全体として見なければ、必ずしもそういう措置によつて生産できるかいなかは判別しがたいのでありまして、たとえば一般的な支出のもとにおいて、非常に放漫な支出をしている。そして結局生産的方面に出す金がなくなつたから、それを公債発行でもつてまかなうということになりますと、形は生産的目的のために公債発行を行いながら、内実は赤字のしりぬぐいということになつて来るのであります。従つて予算全体として、生産的な方面に使われておる予算にむだがないかどうか、消費的な目的よりは生産的使途に向けられておるかどうかということを検討することが、非常に大切ではないかと思うのであります。  その点におきまして第一に私が感じますことは、今回の予算は従来の旧套を破りまして、経費節減というところに、もつともつと力を注ぐべきではなかつたかと考えるのであります。わが国経済前途の困難を考えますときには、国民各層においても、また政府の諸方面におきましても、もつともつと節約ということを考えて行かなければならない。政府経費節約はもちろんとして、企業においても大いに節約合理化余地があるということは申すまでもないのであります。そういう一般情勢にあるときにおきましては、従来の予算支出の考え方を打破しましてもつと強烈なる経費節減の意図を盛り込むべきだと思うのであります。今回の予算編成にあたりまして、旅費とかあるいは超過勤務手当とか会議費等等、一部の費用については、ある程度節約措置をとつたというふうにも聞いおりますけれども、私はまだまだ日本予算というものは、全体として節約余地が多いと考える。どういう点に節約する余地があるか、これは個々案件を検討して行きますと、なかなかむずかしい問題になるのでありますが、私はこの意味におきまして、経費節約のために今最も必要なことは、人件費物件費を通じまして、予算全体の一割天引きを行うことだと思つております。政府は今回官吏人員整理のため、一割の天引きを考えているようでありますけれども、それは単に官吏人員にとどまらず、予算の全体について、原則として一割の天引きを行うぐらいの覚悟でもつて臨まなければ、今後の予算なり経済に対処する態勢は、でき上らないと考えられる。各省経費につきまして一割節減余地があるかどうかということになりますと、これは私は決してないとは言えないと思う。結局それを政府最高方針として、あるいは国会最高意思として決定することができるならば、実行することは各省の責任において決して困難ではないと思う。われわれが間々接するいろいろな現象を見ましても、まだまだ官庁の経費節減余地が多い。従つて官吏人員整理一割天引きにとどまらず、予算全体についての一割天引きということを考えてもらいたいと思う。戦前において、予算編成された後に、実行予算において予算節約を行つたことがございます。今日の財政法には、それについての特別な規定はございませんけれども、私は財政法の建前からいつて経費節減をはかるということは、決して無謀であるとは考えない。国会及び政府が強烈な決意を持つて経費節減をはかる、そうしてそれによつて生んだ費用を、さらに生産的な使途に投ずる、こういう形をぜひ考えてほしいと思う。その意味での経費節減への努力が、今回の予算に現われていないことは、非常に遺憾だと思うのであります。  第二に、予算の中で問題は防衛費にあると思います。今回防衛費が昨年度に比しまして一二百七十億円削減されたことは、私は相当の成功だと思います。従来われわれが国会等で伺つておりました議論によりますと、二十七年度予算の千八百二十億円というのは動かしがたいわくであるかのごとき観念を与えられておりました。昨年度におきましても、私は昭和二十八年度に安全保障費がはたして動かしがたいものなのかどうか、非常な疑問を持つてつたのでありますが、今回の予算を見ますと、安全保障費全額削除になつておりまして、結局全体として三百七十億円の削減に成功したということは、予算自主性を確保したという意味において、私は非常に重要なことだと思う。この点は明らかに今回の予算編成の大きなプラスだと思うのであります。ただこの防衛費の中に二十七年度において相当使い残りが存在しており、二十八年度に繰越されることは明白な事実であるように思われる。先般政府が提出した、資料におきましても、五、六百億円の未使用分が昨年末において存在しており、さらにこれを一——三月の間に使用するといたしましても、防衛費の中で二百三十億円を二十八年度に繰越し使用するというふうに説明いたしております。そうしますと、来年度において千四百五十億円の防衛費を計上いたしましても、二十七年度からの繰越しが二百三十億円ございますから、結局合体としては千六百八十億円ぐらいになるわけであります。はたしてこれだけのものが二十八年度においてほんとうに使用されるのかどうか、私はその点もつと厳密なる検討を国会が行うべきではないかと考える。われわれはその内容についてまだ詳しくは知らされておりませんけれども、二十七年度において非常に厖大なる未使用分が存在し、繰越しが二百三十億円にも達するということから考えますと、来年度の防衛費個々内容につきましても、相当の使用されない部分があるのじやないかと思われます。その費用というものは来年度の防衛費としてなお削減することが可能であるように思われます。戦前臨時軍事費内容はほとんどタブーになつてつて、手を触れることができませんでしたが、戦後の独立日本戦前と著しく違うところは、防衛費内容について、国会が自主的な判断を下し得るところにあると思う。その意味におきまして現に二十七年度に厖大な未使用分が存在し、また繰越額相当巨額に達するという現状を前にしまして、防衛費内容をもつと個々的に厳密に洗いまして、二十八年度において真に必要かつ使用可能な金額にとどめる。それによる防衛費節減がなお可能ではないかというふうに考えるのであります。  第三に申し上げたいことは、今回の予算においては、財政投資が昨年度よりも増加いたしまして本年度の二千八百億円から来年度においては三千五十五億円にふえております。財政投資がふえたということは非常にけつこうでございますけれども、その内容を見てみますと、私は重点的な配分という考慮を欠いておりましていまだに総花式の感を免れないと思うのであります。たとえば今日最も財政投資の要求される部門は、日本経済最大の悩みである輸出振興のためのコスト切下げ、特に基礎産業コスト切下げという問題であります。今日日本の貿易が八方ふさがりであるその最大の理由は、日本コストが国際的に孤立しておつて世界物価から三割ないし五割くらい高いというところにある。このことをこのままに放置しておけば、日本経済自立はとうてい達成できないわけです。今日辛うじて臨時的な米軍関係の収入によつて国際収支バランスを得ておりますけれども、これが真の経済自立でないことは明白でありまして、その意味におきまして、どうしても輸出振興によつて経済自立基礎をつくろうとするならば、今日においてはコスト切下げのための財政投資を行う、特に基礎産業についてやることが必要だと思うのであります。ところが今回の予算におきましては、電源開発に二百億円出すとか——これは財政資金建設資計画を含めてのことでありますが、開発銀行に五百億円出すとか、いろいろな考慮がされておりますけれども、直接重要産業コスト切下げに役立つような支出というものは、必ずしも明確ではございません。たとえば当面どこで一番コスト切下げるかということになりますと、必要なことは石炭コスト切下げにある。しかも石炭コスト切下げのためには、縦坑開発を行わなければならないということは、大体において各方面の一致した意見だと考えられるのであります。現に通産省案におきましても、七十九本の縦坑を開鑿し、四百九十億円の資金を投ずれば、当該炭鉱について約三割五分のコスト切下げが可能であり、石炭全体としましても二〇%のコスト切下げが可能であるという数字が出ております。私も縦坑開発以外に、日本コスト切下げに直接役立つ方法が、すぐには見出しがたいと思うのであります。しからばその縦坑開発に必要な費用がどれだけ計上されているかと申しますと、これはほとんど予算の中には認め得ない。いろいろ石炭関係のものもございます。それからまた開発銀行への出資などのうちから流れるものもあるかと思いますけれども、しかし今日のコスト切下げの中心が縦坑開発にあるということを考えるならば、これは一般予算において明確に計上をすべきものであり、またそれでなければ、真の効果は上らないと思われます。そういう点に対する重点的な考慮がまだ欠けておる。総花主義に流れておるように思われるのであります。  しかも総花主義ということになりますと、私は常に感じておることは、公共事業費と食糧増産費の生産的効果の問題であります。今度の予算におきましても、公共事業費に一千二十億円、食糧増産費に四百九十二億円を計上されておりまして、これはそれぞれ相当の増額になつております。今日公共事業費と食糧増産費に相当支出を見込むことは、決して反対ではございません。それだけの効果が確保されるならば、われわれもまつたくこれ賛意を表するにやぶさかではないのであります。しかし周知の通り、公共事業費におきましては、その資金の歩どまり効果が非常に少い。公共事業費のうちその何十パーセントが真にこの事業に使われるかということになりますと、はなはだ疑わしい状態でありまして、相当使途の怪しげな、どこにどう消えてなくなつたかわからないような、特に経済的効果に至つては、ほとんど判別できないような支出が多いことは周知の事実であります。公共事業のやり方につきましても、従来は総花主義の弊害が著しく現われておりました。そのために新しい所に毎年々々手をつけますものですから、一つの着手された地点について、それがいつになつても終らない。十年たつても二十年たつても完結しないような所も少くない。これを一箇所にまとめて五年間やればでき上つて一つ経済効果をもたらすものが、総花主義で至る所食い散らすものですから、結局十年たつても二十年たつても、一つとしてまとまつた成果が出て来ない。こういうような弊害が見られる。今回はかなりこの点の是正もされたようでありますけれども、もつと重点的な支出ということを考えて行かなければならないと思います。  食糧の増産費については、なおさらそうでありまして、終戦以来今日までに、食糧増産の名目で支出されました予算額は、二千億円内外に当ると考えられるのであります。これはいろいろの費用を含めての話であります。しかるに日本の食糧生産は、この巨額の予算支出によつて増産になつたという証拠は、どこにもございません。毎年天候がよければ必ず六千七、八百万石になりますが、天候が悪ければ六千万石内外にとどまるので、その間巨額の予算支出で一体どれだけの寄与をしたのかは、だれも判定することができない。これはもちろん食糧増産の特質から申しまして、自然的条件に左右されますから、ある程度やむを得ないと思いますけれども、それにしましてもあまりにこの経費支出と、その生産的効果との間のマイナスが大きいように思うのであります。私は公共事業費と食糧増産費の重要性を認識すればこそ、この費目の支出についてもつと国会が厳正な監査を行い、その効果を上げるように努力を払う必要があると思います。もちろん従来も、それ相当の調査なり監査なりを行つておられたに違いないと思いますけれども、もつとその点について徹底した措置を講ずることが必要ではないかと考えるのであります。  なおこの費用の生産的支出ということに関しまして今回の投資特別会計の新設という問題がございますが、私は投資特別会計を新設いたしまして来年度は一応これでよいといたしましても、一体二十九年度はどうするつもりかということが問題だと思います。二十八年度におきましては特別減税国債と見返り資金等の資金でもつて約七百億円の投資特別会計の財源がございます。しかし二十九年度になりますと、特別減税国債をもう一年さらに行うということはなかなかむずかしい。つまりこれは資本蓄積のために二十八年度だけに限つて行われるという色彩が多いのでありましてさらに減税国債発行するかどうかはいろいろ問題があつて見通しが立たない。しかも見返り資金の余裕というものは、二十八年度において大体なくなつてしまいまして、二十九年度においてはもはやそう存在しないのであります。そうしますと、投資特別会計を二十八年度において新設いたしましても、二十九年度以降の投資特別会計に至つては、まつたくお先まつ暗ということになるのでありまして、必ずしも二十八年度においてこれを新設しなければならないというだけの大きな論拠は乏しいのであります。かつまた財政法全体の精神から考えまして、今の予算一般会計に集中する主義をとつておる、特別会計等はできるだけ抑制するという建前がとられているように思います。そう考える場合におきまして特に今回投資特別会計を新設するだけの必要があつたのかどうか、新設するならばするで、二十九年度以降における運用なり財源なりについての相当の計画がなければならない。その計画なしに、ただ会計だけを新設するということは、財政法の建前からいつてもおもしろくないように考えるのであります。  以上、私の二十八年度の予算に対する所見でございます。御参考になれば仕合せだと存じます。
  4. 太田正孝

    太田委員長 どうもありがとうございました。  この際一言申し上げますが、たいへん委員の方の御出席のよいことはけつこうなことと思います。しかしながら、ただいま土屋清君から財政に対する冷静な公平な御意見がございまして、政府方面において大臣がすきを見て出てくださつたことはよいですが、財政方面から、大臣がもし出られないとすれば、政府委員でも出るべきであるにかかわらず、一名も出ないということは私の最も遺憾とするところであります。公聴会はひまをつくるときではないのであります。われわれ議会人が、政府とともに、世の中の冷静な公平なる声を聞きたいということでございますから、大いに注意あつてしかるべしと思います。何か土屋清君に対して御質疑はありませんか。
  5. 成田知巳

    ○成田委員 ちよつとお尋ねいたします。今度の予算で、経済節減努力が払われておる、こう言われまして、一割天引きの問題と防衛費の問題をお取上げになりましたが、防衛費について、土屋さんは三百七十億の減は成功だ、こう言われたと思う。これはもう土屋さんも御承知の通り、安全保障諸費の五百六十億が今度計上されてない、その結果の三百七十億の減でございます。安全保障諸費は、その性質から行きまして、駐留軍の都市から周辺への移転で、一回限りのものです。従つて安全保障諸費を入れた二十七年度の予算と、二十八年度の予算の比較は、防衛費の増減としては当らないのではないか。防衛費といたしますれば、防衛支出金とか保安隊の費用、それから政府自身も認めておりますが、平和回復善後処理費、連合国財産補償費、この四つの増減を中心にして考える場合に、特に保安庁費と防衛支出金を比較するのが、狭義において正しいのではないか。そういたしますと、保安庁費と防衛支出金は、二十七年度と二十八年度において約二百九億の増になつております。むしろ防衛費というものは増加しておると考えなければならない。さらにそれが広義の防衛費である軍人恩給四百五十億を入れますと六百五十億、少くとも防衛費そのものとしては、昨年度よりは増になつておると考えるのが、ほんとうじやないかと思いますが、いかがでしよう。
  6. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。安全保障諸費が二十七年度限りのもので、二十八年度には必要がないから、それだけ減らせるのではないかというのは、昨年も私はたしか国会において申し上げたところであります。従つてこれは当然なくなるべきものだと考えるのでありますが、従来政府の答弁は、何か特別な事情があるもの、千八百二十億のわくは動かしがたいという印象を非常に与えております。われわれはその内部の事情については存じませんけれども、少くともそういう趣旨の答弁が多かつたように思います。しかも、今回の予算編成にあたりましても、最初は安全保障諸費の削減ということについては、事務当局においてそれほどの考慮を払つていなかつたように思われる。その間の事情がわれわれに明らかでありませんから、とにかく結果として出て参りました安全保障諸費が削減されたということは一応成功だ、こういう意味であります。安全保障諸費は、二十八年度においては当然減らすべきものだというのが、私のかねての考えであります。  なおその他の費用において、たとえば保安庁費等から見まして前年度より二百十億円ふえておるじやないか、これはその通りでありまして、確かにふえておるのであります。それが是か非かという問題は、全体の再軍備の問題に関連して考えなければならない問題でありまして、今回のふえた内容において、特に航空機の生産が行われる、百台を国内発注して十五億円支出する、あるいは艦艇の建造に百三十億円支出するというような点は、単なる兵器生産の問題としてでなく、もう少し全体の再軍備の問題として考えていただきたいように私は思うのであります。  さらに、軍人恩給費を広義の再軍備費だというふうにおつしやられましたが、これは、政府はどう考えられているか知りませんけれども、私は軍人恩給費を特に広義の再軍備費と考える考え方には反対であります。軍人恩給費は支出すべきものと私は考える。ただその支出金額が多いか少いかということになりますと、著しく過大に失する、少くともこれは三百五十億円程度にとどむべきだと考えております。
  7. 成田知巳

    ○成田委員 それから今防衛費の未使用分について御発言がありまして、これは問題だと言われましたが、その数字として二百三十億おあげになつた。これは多分防衛支出金と安全保障諸費で、それ以外のものは、政府といたしまして私たちが要求した資料で、防衛支出金等の使用見込額、使用実績ですが、防衛支出金、安全保障諸費、平和回復善後処理費と連合国財産補償費を入れると三百三十一億、保安庁費七十六億等を入れると四百八億の未使用分がある。そういたしますと、土屋さんのいわれた約倍のものが未使用で残つている。これが二十八年度になりますと、土屋さんの心配がさらに倍加するのではないかと考えますが、どうでしよう。
  8. 土屋清

    土屋公述人 私はその数字を直接いただいて、おりませんのでわかりませんが、繰越使用分は狭義の防衛費に関する限りは二百三十一億円じやないかと思うのであります。しかし、お話のようにそれが四百億円であれば、なおさら私の論旨はそれだけ強まるわけでありまして繰越使用をするというような情勢のもとにおいては、来年度の支出においてもはたして使い切れるものなのかどうか、またそれだけほんとうに必要なのかどうかということについて、もつと厳正なる監査が必要だと思うのであります。
  9. 成田知巳

    ○成田委員 狭義と言われましたのは、平和回復善後処理費と連合国財産補償費を除いた意味ですか。
  10. 土屋清

    土屋公述人 除いてです。
  11. 成田知巳

    ○成田委員 それにいたしましても、保安庁費と防衛支出金、安全保障諸費になりますと、約三百億になります。
  12. 太田正孝

    太田委員長 土屋さんに申し上げますが、その材料はお持ち帰り願いとうございます、政府の提出したものがございますので。お話の筋はよくわかりました。
  13. 塚田十一郎

    ○塚田委員 土屋公述人にお尋ねいたしたいのでありますが、二十八年度予算に、経費節減努力が足りなかつたということは、私もその通りじやなかつたかと思つております。ただ、節減したものをどういう具合に使うかということについて、若干疑点があるのであります。公述人の御意見では、そういう非生産的なものはなるべく減らして、そうして、生産的なものに持つて行くべきだというようにお述べであつたと思うのですが、経費節減して、生産的なものに持つて行くか、減税に持つて行くかということを、実は私どもは今非常に悩んでおるわけです。今までの政府の大体の方針は、なるべく予算は縮めて減税に持つて行く、そうして資本蓄積は民間の手でやらすということになつてつたのでありますが、そういう政策を何年かやつて来た結果、少し弊害の面が出て来ておるのではないか、ということは、どうも民間にいろいろな消費的な支出の面で、むしろ浪費、濫費と思われるものが、いろいろな形で出て来ている。これ以上減税というものを進めて行くことが、そういうものを一層激化することになるのではないかという懸念が一つあるわけです。従つて経費を縮めたもの、つまり財政のわくを小さくしたものを、どちらに持つて行く考え方が正しいかという点について、何かお見通しがあれば伺いたいと思います。
  14. 土屋清

    土屋公述人 私は減税は大体において今回が限度だと思つております。もちろんこれは国民の生活感情として、かつまた日常感ずる苦痛感としては、まだまだ戦前に比べて税金が重いという感覚は非常にあると思います。しかし今度の税収は全体でたしか七千八十億円ぐらいだと思います。これに専売益金を加えましても、国民所得の一五%ぐらい——数字ははつきりいたしませんが、そのくらいだと思います。その率からすれば、必ずしもそれほど過大ではない。ただ生活程度が低くなつておりますから、苦痛感においてはまだ残る。従つて減税の要求がなおあることは当然だと思いますけれども、いろいろ諸般の日本経済が今後においてなさなければならない点を考えますと、減税によつて民力を涵養して、そうして資本蓄積をもたらすという形をとるよりは、減税は、この程度にとどめまして、得られた余裕は、主として財政投資に投じまして、そうして一ぺん回転さしてから、それによつて国民生活が上つて、そうして事実上減税の効果を上げるという道を選ぶべきではないか、それだけすぐ負担を軽くするというのではなく、一ぺん財政投資の形を通つて、それによつて国民生活全体を向上せしめるという配慮をすべきじやないかというふうに考えております。
  15. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 ただいま有益なお話を承つて、たいへん感謝いたしておるのでありますが、土屋先生にひとつお伺いしたいと思うことは、二十七年度に比して二十八年度の国民所得が非常にふえている。この二十七年度より国民所得がふえるという計算を、あなたはどうお考えになりますか。それからもう一つは補正予算を出さなくて済むか済まないか。もちろん国際情勢から来る日本の産業構造の変革による財政投資であるとか、あるいはその他の自衛力の漸増計画であるとかいうことを別にいたしましても、一月に入つてから鉄道運賃、ガス、米価その他の値上りは、朝日の統計だけを見ても八%影響を受けておる、こうなつている。そうすると人事院としては五%以上物価が上れば、ベース改訂に対して勧告せねばならぬという一面義務がある。そこから見て一体本年度のこの予算が、補正予算を出さずに済むかどうか。もしも補正予算を出さなければならぬとするならば、一体その財源はどこに求められなければならないのであるかというような点を、ひとつお教え願いたい。
  16. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。国民所得が二十八年度が二十七年度に比してふえる理由があるかという御質問でありますが、私はやはり二十八年度は二十七年度よりは相当ふえるものと思います。それはやはり緩慢ながら、賃金の上昇傾向というものが続いておりまして、たとえば官公吏の給与をとりましても、引上げられたものが、二十八年度は一年を通じて現われて来るわけであります。石炭業にしても電気産業にしても同様でありまして、そのほか出遅れとなつている各産業の賃金の緩慢なる上昇傾向というものは、やはり依然として続くものと思われます。従つて経済の実勢にはそれほど大きな発展がないにもかかわらず、やはり賃金の上昇傾向は続くのではないか、こういうふうに考えております。  それから補正予算の問題でありますが、二十八年度において補正予算をもし出さなければならないということになると、先ほど申しましたインフレヘの懸念——私は一応これをなしに済ますことが、やり方によつてはできると申しましたけれども、もしも補正予算を出さなければならないということになりますと、その財源関係から申しまして、かなりインフレヘの懸念が濃くなると思うのであります。  そのほか補正予算を必要とする理由は、第一は防衛費の問題であります。これは国策の全体として考えなければならない問題でありまして、私はこの面からも予算の増大は望ましくないと思つております。  第二は賠償費であります。これは東南アジア諸国との賠償交渉のいかんによるものと思いますけれども、これも二十八年度内においては、それほど大きく頭を出して来ることはないのじやないか。今日の予算に計上されている程度でもつて、二十八年度は大体間に合うのではないかと思つております。しかし、もしもこれが急速に話合いが進展するということになれば、これは相当の問題になると思うのであります。  第三の補正予算原因は、今申されましたように、官公吏の給与の面からでありまして、この面がやはり一番私は頭を出して来る問題じやないかと思います。結局これはインフレーシヨンの進展いかんにかかつておる問題でありまして、先ごろたしか七——八%程度の上昇は、一月以来起つておるという数字が出ましたけれども、一年間全体を通じまして、はたしてどの程度になるか、まだ私はにわかに見当をつけにくいと思うのであります。なるほど相当国民所得が増大し、特に消費方面にまわるような賃金給与の増大が考えられますから、一応消費購買力が増大することは確かと思いますけれども、しかし現在、先ほども申しましたように、非常に厖大なる滞貨日本経済には存在しておりまして、かつまた各産業も操短状態に置かれておりますから、相当追加購買力が出ましても、私は一応これが物価上昇へのクツシヨンみたいな役割を果すのではないかと思います。しかしその予想がはずれまして、物価上昇は進展し、従つて官公吏の給与引上げということになりますと、これはやはり補正予算の問題になつて来る。しかもその場合に従来のような自然増収はあまり期待できない、多少給与引上げに伴うはね返りはございますけれども、大した期待はできないと思う。そうなりますと、先ほど申しましたように結局公債財源に依存するような形になつて来るのではないか、その点を非常に懸念いたしております。
  17. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと申し上げますが、質問を制限するのではありませんけれども、実は林さんにこの次お話願いたいと思つて、前から待つていただいておりますので、どうぞ簡潔にお願いいたします。
  18. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 わかりました。もう一つ簡単にお尋ねしますが、実は日本経済の弱点の克服です。これが私は租税収入その他に響いて来る。たとえば昨年度なるほど生産率は非常に上昇いたしましたが、その半面、今土屋先生が御指摘になつたように、昨年度は五千六百億円という滞貨国民投資が行われているわけです。従つて生産の率は上昇したが、つくつた品物が五千六百億円滞貨してこれが従来の例からいうと、二倍から三倍の滞貨になつておる。そして今の国際貿易の状況からいい、いろいろな状況からいつてこういうふうな日本経済の弱点をどう克服して行つたらいいか、これは時間の制限もございますから、簡単にひとつお教えを願いたい。
  19. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。それは非常にむずかしい問題でありますけれども、これは日本経済としてはやはり輸出振興に依存する以外、現在では大きな方策は考えられないと思つております。輸出振興になりますと、先ほど申しましたような結局コストの問題になつて参りまして、経済、外交いろいろ問題はございますけれども、結局コストの問題になつて来ると思います。そのための財政投資が必要になるわけであります。結局当面の滞貨を一掃し、景気もある程度上昇をはかるということのためにとられる措置としては、私は財政投資を盛んにする以外に道はないと思うのであります。これは消費を奨励し、消費的な支出によつて景気に刺激を与えるということは、今の日本経済の実勢からいつて好ましくありません。財政投資を行つて、それが将来における経済自立の基盤をつちかう、同時に当面の景気についてある程度の刺激を与えるということが、必要ではないかというように思うのであります。
  20. 伊藤好道

    ○伊藤(好)委員 土屋さんにひとつお伺いしたいのですが、今の西村君に対する御答弁でやや安心いたしました。二十八年度予算インフレーシヨンの関係ですが、最初のお話の際には、公債発行というような挙に出たために、そこにいくらか不安があるが、この予算そのものは大した危険が感じられないというような意味のお話だつたと思うのですが、われわれから見ますと、私どもはそれについて、一つは今年度はたしてどれだけ膨脹するかは別としまして、自衛力の漸増に伴う防衛費の増大という背景があり、他方に、御指摘になつたように投資特別会計というようなものを設け、かつ特別減税国債が大体今年度限りのものでなければならぬ性質を持つておる。それから投資特別会計における見返り資金のような余裕金がなくなつた、こういうようないろいろの情勢から見まして、単に公債が今度幾らか発行されたということ以上に、財政の実質的な面から見て、具体的にやはりインフレの危険性は相当大きく存在しておる。ただ具体的な発現が今年度はどの程度出るかは別としまして、非常にそこに大きな問題をはらんでいるというふうに考えるのですが、この点について土屋さんにちよつと……。
  21. 土屋清

    土屋公述人 お答えいたします。その点は御指摘の通り、来年度の予算はいろいろインフレ要因を持つているけれども、それがただちにプライス・インフレーシヨン、価格面におけるインフレ現象を伴うとは断ぜられない、他の措置にして適切であればインフレを抑制することは可能であろう、こう申し上げたのであります。しかし御指摘のように全体の予算傾向といたしまして今後において相当支出増大が予想され、かつそのために公債政策というものの踏み出しを一歩行つたわけでありますから、それが国際情勢あるいは国内の政治問題等とからみ合いまして、大きな支出を促すようになつて行けば、やはりインフレーシヨンへの道をたどるという可能性は確かにある。それは否定できないと思います。国民が今ただちにインフレが来るような感じを持つて相当おびえておるのはその点だろうと思います。従つてその懸念にはもつともな理由ともつともでない理由と両方入つているわけでありますが、それだけにつまり前途に対するはつきりした見通しを立て、それに応じた財政計画を持つということが今必要じやないか。公債政策のスタートをするというときには、やはり少くとも五年間ぐらいの長期にわたる財政計画がなければ、ほんとうはなすべからざるものだと思います。もちろんこういう情勢のもとで長期の財政計画は立てにくいと思いますが、立てにくいならば立てにくいだけに、一体自衛力漸増にどれだけの今後の発展が見込まれるのか、ある程度の見当をつける。財政投資にしてもそうでありますが、その努力が必要だと思います。戦前においては必ず相当の、五箇年間ぐらいの長期の財政計画があつたものでありますけれども、今日は来年の計画すら立つていないような実情だと思います。これは国民前途に対して、二十八年度は別といたしまして相当前途に対しまして不安を抱くのは無理はないと思います。できないながらもある程度の財政計画の見通しを立てるということが、大きな国策として必要じやないかと思つております。
  22. 和田博雄

    ○和田委員 土屋さんにちよつと簡単な問題をお聞きいたしますが、大体消費購買力が二十八年度はふえるという点は、私もある程度ふえると思います。しかしその消費購買力がふえるという点と、国民の消費水準がどうなるかという点についての関係ですが、国民の消費水準がどういうふうになるという見通しがあるか、もちろんこれには政府貯蓄政策なり、あるいは物価が関係するわけですが、どういう見通しを持つておられるか、簡単にお答え願いたいと思います。
  23. 土屋清

    土屋公述人 その点は、内部における差が非常にひどくなるということが、明白になつて来るのではないかと思います。たとえば産業界を見ましても、今動乱後の調整過程にありまして、大企業と中小企業との優勝劣敗の現象が非常にはつきりして来る。今年度においてはなおさらその傾向が強く出ると思うのであります。そうしますとやはり中小企業の方に大きなしわが寄る、経営政策についてなどは特にそうだと思いますが、結局そういうことになりますから、消費的な購買力がふえるといたしましても、その内部においては相当のでこぼこがあるのではないかというふうに考えられます。農村においてもその点はかわりがない、つまり全体としてふえるというのではない、不均衡がひどくなる、こういうふうに思つております。
  24. 和田博雄

    ○和田委員 そうすると、消費水準自体は下るというわけですか、上らないかというのですか。
  25. 土屋清

    土屋公述人 消費の水準自体はやはり全体としては上ると思います。それは何と申しましても、国民所得の総額がふえている、しかも消費的部分に帰属する部面がかなり多いですから、やはり全体として上るのではないかと思つています。しかしその上り方は貯蓄の増勢に比べてどつちが大きいかといいますと、これはやはり貯蓄の増勢の方が、二十七年度以来の傾向として著しく続くという傾向がまだある。
  26. 太田正孝

    太田委員長 土屋君どうもありがとうございました。  次に日本鋼管株式会社会長林甚之丞君、たいへんお待たせして申訳ございません。
  27. 林甚之丞

    ○林公述人 私はただいま御紹介にあずかりました日本鋼管の林でございます。この公聴会におきまして何かわれわれの希望等があつたら述べるようにというお話があつたので、この機会を与えていただいたわけであります。ただいま土屋さんから非常に切実なる問題をお伺いさせていただきまして、なおそれに対して質疑応答を拝聴いたしまして、非常に得るところがたくさんあつたのでございます。  私の話そうとすることは、それとはおよそ隔たりがあります。非常に雑駁なお話でまたたいへんお聞き苦しい点もあろうと思いますが、その点をあらかじめお断りしておきます。  私のお話したいと思うことは、私どもがやつております鉄鋼業に関する問題でありまして戦後鉄鋼の重要性というものは、申し上げるまでもないことであります。私は一九二〇年に第三回の旅行をやりましてその帰りに英人のL・ベーカーという人のエコノミツク・ステイツメントという本を読んで参りました。今もつてその本から受けた感じが抜け切らないのであります。その中に二つの点をあげておるようでありますが、一つ石炭一つは鉄鋼であります。石炭を持つておる国は燃料廠を持つており、鉄鋼を持つておる国は兵器廠を持つておるという、この二つの点がなければ、一国の産業政策ははかり得ないのだという点を指摘して、それを中心にして進めておるように考えております。ごく最近の例をとりますと、やはりそういう点を雄弁に物語つております。大ざつぱな話でありますが、アメリカは六億トンの石炭を生産しておる。その次はソ連でありまして三億二千万トンくらいの石炭を生産しております。それからイギリスでありまして、イギリスは二億四千万トン、ドイツは現在でありましてもなお一億三千百万トン、フランスはずつと落ちまして七千八百万トンくらいの生産であります。そういう次第でありまして、石炭の面から見ましても、L・べーカーの言うことはほんとうだと、いまさらながら痛感する次第であります。石炭の面においてもソ連と米国は今世界の制覇を争つておるのでありまして、この上に鉄鋼の問題がどうなつて来るかというならば、鉄鋼の一九五一年の生産は、米国は、はがねに換算いたしまして、一億五百万トンの生産をやつておる。ソ連は三千四百万トン、イギリスは千七百万トン、ドイツは千五百万トン、フランスは千四百万トンということになつております。この点から見ましても、兵器廠と燃料廠とを二つながら持つておる米国とソ連というものは、世界の制覇を争つておる趨勢であります。そこで、生産面から見てさようなわけでありますが、日本はどういう立場をとつておるかというと、はがねに換算いたしまして約六百五十万トンくらいの生産になつております。しかしながら御案内の通り、この三年この方急激なる軍需の拡大というものがありましてそのために鉄鋼需要というものは厖大にふえて参つております。これは平均いたしましてはたしてそういうような趨勢で、どんどん行くのであるかというと、必ずしもそうでないことは、終戦後の四六年から四九年に至るまでの間の各国の統計などに明らかに示されております。現在を見ますと、アメリカといえども七千五百万トン程度であります。ソ連は二千二百万トンくらいであります。そのくらいでありまして鉄鋼の生産というものは、過去三年間に続いて来たような趨勢を今後もたどるとは思われないのであります。同時に、鉄鋼というものを考えてみますときに、軍需であるとか、あるいは厖大な軍備であるとか、あるいは海外の輸出情勢等々を除きまして、国民一人々々の消費量を考えることが一番正確なのであります。米国はただいま人口一人当り七百キロの消費であります。ソ連は百二十キロであります。イギリスは三百キロ、ドイツ、フランスはおのおの二百五十キロくらいの消費になつております。日本は現在の生産面を消費量としますと、約七十キロの消費に当つております。しかし御案内の通り、日本から外国に鉄鋼材が輸出されておりますので、それを除きますと、国民の消費というものはそんなに大きいものではないのでありまして、ただいまのところ人口一人当り五十キロ程度であります。さような趨勢をたどつて参りましたが、何せあれだけの厖大な戦争をやりましてそうして完全に敗戦になつ日本といたしましては、過去七年間に驚くべき回復をして来たと思うのであります。日本は今後どういうぐあいにして行かなければならぬものであるかということを考えてみますると、日本のただいまの五十キロの消費というものは決して厖大なものでないのでありまして、どうしても百キロくらいにしなければならぬ。またただいまのところは人口約八千七百万くらいでありますが、どんどんふえて行く人口を考え、百キロの消費量を考えてみますと、日本はどうしても一千万トンの鉄を必要とするのだ。それでなければ日本の機械工業、造船、鉄道、港湾、発電、建築等々はできないのでありまして、それくらいの鉄鋼の消費ということは、日本人として目標として行つていいのじやないか、それを今生産目標として、来るべき五箇年に達成しなければならぬのじやないかと考えておる次第であります。ところが鉄鋼は、すべての材料、素材中の基本材でありまして、この鉄鋼の価格が高い限り、その国の機械工業も造船工業も、発電も鉄道も、すべてのものがだめになつてしまうのであります。一体どうして価格を下げるかということは、われわれの日夜忘れることのできない研究課題なのであります。  皆さん御案内でありましようが、このごろ非常に鉄鋼の過剰が伝えられて参りまして猛烈な競争があります。もう約三割ぐらいの値下げになつておるのでありまして、大体今のような値段に日本が甘んじて行くということでは、赤字になることは当然であります。ただいまの情勢から行けば、どうしても日本は出血輸出をしなければならぬというような情勢に迫られておるのであります。そのためにどうしてもまず第一番に日本の鉄鋼価格を下げる。価格を下げることは鉄鋼ばかりではありません。石炭も同様でありますが、石炭と鉄鋼の価格をどうしても三割ぐらい下げなければだめだ、そこでどうしたら一体下るだろうかということで、いろいろな方策を施しております。これに対しては機械も整えております。合理化をするために設備のモービリゼーシヨンをやり、増大化をやるということで、非常な厖大な金をかけて今各社ともやつておりますが、しかしながらそれよりかもつと重要なことは、私は原料だと考えておるのであります。というのは、鉄鋼の価格を構成する要素を調べてみますと、機械操作による作業費というものは非常に小さいものであります。銑鉄だけをとりますと、大体一五%くらいが作業費に該当し、八五%は原料費であります。これを鋼材全体に見ましても、約八〇%は原料費でありまして、二〇%だけが作業費になつております。従つて設備の改善等をはかりまして、いかにこれを合理化してみましても、一五%ないし二〇%の範囲内における合理化にすぎないのでありまして非常に小さなものであります。そこでどうしてもいかにして原料を安く確保して行くかということが重大なる問題になつて来るのであります。この原料はもちろん鉱石ばかりではありません。石炭と鉱石はほぼ同様のものでありますが、ただいまのところ日本の使つておる鉱石は約十六ドルであります。それから原料炭は十八ドルぐらいに該当しております。そういうような高いものを使つておるうちは、どうしても値段を下げることはできないのでありまして、これを安く持つて来るということのために、いろいろな方面にわたつて舞と努力をしておる次第であります。極端な話でありますが、この統計はインドは一九四九年、米国は一九五一年、日本はただいまでありますが、米国では、銑鉄一トン当りで原料費が二十五ドル三十二セント、作業費は四ドル七十セントで、合計三十ドル二セントというのが米国における銑鉄の工業原価であります。日本はどうであるかと申しますと、原料費は今のところ約五十ドル、作業費は十ドル、計六十ドルほどかかつております。インドでは、原料費七ドル十九セント、作業費二ドル三十九セント、計九ドル五十八セントが銑鉄の工業原価になつておりまして、非常に大きな差があるのであります。これをどういうぐあいにして、インドまでには行かなくとも、少くとも米国に対抗するだけのものに持つて行くかというようなことでいろいろ苦心をしておるのでありますが、どうしても原料費は、米国の二十五ドル三十二セントに対して、日本は五十ドルなんですから、ただいまのところは倍になつております。これを五割減に、十六ドルの原料、十八ドルの燃料炭を、八ドル、九ドルの原料及び燃料炭にすることができないかということで、いろいろくふうをしておりますが、それほどまでに行くという可能性はないまでも、かなりそれに近いものに行く可能性は十分あるのであります。一方合理化のために、今工場等を非常に改善しておるのでありますが、そういうものとあわせまして作業費も五割くらい減らすというようなことを考えて行きましてどうしても鉄鋼価格を、少くとも来年あたりは相当大幅に下げて行くことができるのじやないかということで、今夢中になつてつておる次第であります。それにつきましては、石炭はかなり大きな問題でありまして、炭価はただいまは約七千五百円程度でありますが、これを五割とまでは行かなくてもいいと思うのですが、三割くらい引下げることができないか、そういうようなことでいろいろ努力しております。これらの点も政府等の御尽力によつて、だんだん炭価を下げる方向に御援助のほどを願いたいと思います。どうしても鉄鋼価格を引下げなければ、日本の機械工業はやつて行けません。それから電源開発も非常に高いものになります。そういう次第でありまして、素材中の素材である鉄鋼価格の引下げということは、われわれに与えられた大きな課題であると思いまして、価格の引下げに一生懸命にくふうしておる次第であります。そうして石炭の問題等々についても、先ほどもお話しました通りに、いかにしてもその原価を引下げるべき方面政府の御努力をお願いしたいる電力が非常に不足しておることは御存じの通りでありまして、そのために起る損害あるいはコスト高というものもかなりあります。その辺を考えると、電力についてもどうしても必要量を早く発電してもらいたいということであります。設備の合理化はただいまどんどんやつておりますが、それにも増しまして、私は電力料の引下げをどうしてもお願いしたいと思うのであります。この点は何とか政治的な操作でできないものかということを、われわれは寄り寄り話しておるのであります。社債を募集するにしましても、今日本の社債は約一割二分に該当しております。これは金利、手数料、引受価額等をずつと換算してみますと、ちようど一割二分に該当するといつたような非常に高いもので、御案内の通り、これは何産業でも同様でありますが、ことに日本の鉄鋼業の自己資本は約二百億であります。今あれだけの能力のあるものを建てようとしますと、四千五百億円のものであります。四千五百億円のものに対してわずか二百億円の自己資本でありますから、おもに借金でやつておるということになります。この借金に対しまして、金利が今日のように高いということは非常に大きな負担でありまして、この点は何とか操作ができないものだろうかと思いましていろいろ考えておりますので、どうかこの点もひとつ御協力のほどを願いたいと思います。その他いろいろお願いしたいことがありますが、一つは独占禁止法のような問題の一大修正をお願いしたい。それから労働基準法等に対しても一大修正をお願いしたいと思います。独占禁止法は、原理的にはその通りでいいと思うのです。しかしながら今日外国から物を買うのに、共同で買いますと非常に安く買えるのですが、その中の一番大きなものは原料でありますが、原料の購入等に対しましても、やはり共同体をとりますと、この法律に触れるおそれが非常にあるのでありましてたいへんきゆうくつに感じておる次第であります。それから労働基準法の問題は、私は労働賃金を下げるなどということは毛頭考えておりません。どの産業におきましても、今日の日本の労働賃金は高いものではないと思うのであります。もつと上げて行つてもいいのじやないかと思います。ただ問題は、必要でない、役に立たぬ人間を養つて行かなければならぬという法律が一体あるかということであります。その点は諸君は十分お考えの上、役に立たない、必要でもない労力を企業の負担において養つて行かなければならぬというような法律は、どうしても改めてもらいたいと思つております。この点は非常に大きな問題でありまして、そういう点はわれわれでなく政府の問題でありますので、十分御考慮のほどをお願いいたしたい思います。  いずれにいたしましても鉄鋼問題はほんとうに基本的問題でありまして、鉄鋼価格が下らなければ、あらゆる産業、国民生活自体が成り立たないのであります。この意味において鉄鋼業は、利潤を目標とする産業ではなく、大きな国家的な使命を帯びているものと考えておる次第であります。その点の皆さんの御協力を願つて、ますますその目的を達成して行きたいと思います。たいへん雑駁な話をいたしまして、相済みません。
  28. 太田正孝

    太田委員長 御質問ございますか。
  29. 成田知巳

    ○成田委員 一点だけお尋ねいたします。今労働基準法の問題のお話があつたのですが、最初御説明になりましたように、作業費というのは一五%くらいで、これを幾ら縮減しても限度は知れている、問題は原料費だ、石炭の問題については三割方引下げができるのじやないか、そういう努力をしているというお話でありましたが、鉱石の問題については全然お話になりませんでした。鉱石は十六ドルが少くとも半分にならなければいけないというが、鉱石の価格の引下げについては、どういう方途をお考えになつておりますか。
  30. 林甚之丞

    ○林公述人 十二ドル以内にしたいと思つております。
  31. 成田知巳

    ○成田委員 これはどういうお考えでありますか。
  32. 林甚之丞

    ○林公述人 今のところは、約七割くらいは外国鉱石であります。だからこれは外国の操作であります。日本のものはそう高いとは思いません。
  33. 成田知巳

    ○成田委員 外国の鉱石だと言われるのですが、その内訳は、大体アメリカからあるい、はインドからどんなふうになつておりますか。
  34. 林甚之丞

    ○林公述人 大体ただいまのところは、マレー半島から百万トンないし百二十万トン、インドはカルカツタ、ゴア等合せますと約百万トン、フイリピンから約百万トン、その他で四百万トンほど持つて来ております。アメリカからは大して鉱石は入つて来ておりません。
  35. 成田知巳

    ○成田委員 中国からは、現在の政府政策で鉱石は入つてないと思いますが、フイリピンだとか、インドだとか、中国の鉱石の値段は大体どういうような状況になつておりますか。
  36. 林甚之丞

    ○林公述人 値段はただいまのところ、むしろ運賃の安いところはFOBを高くしております。どうしても経営権をある程度持ちまして、向うの原価を安くして持つて来る以外にないのじやないかと思つております。
  37. 成田知巳

    ○成田委員 運賃の関係から行きますと、一番近い方がいいのですね。
  38. 林甚之丞

    ○林公述人 近い方がいいのです。それはもうそれにきまつております。
  39. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 たいへん有意義なお話を伺つたのですが、その中で、最後にお述べになつた労働基準法の改正の点でございます。企業の犠牲によつて、必要でない役員をたくさん養つておくことは、どうもおもしろくない、こういう気持はわかるのでありますが、現在労働基準法に対して一番不便に思つていらつしやる点は、今言われた役員等をたくさんかかえても意味をなさぬということ以外に、たとえば実際の面では、どういう点に一番不便を感じていらつしやるか、また組合やあなた方の方で自主的に運営して行かれれば、こういうふうにやれば、今の役員なんかいなくてもいいのだ、こういうことについて感じていらつしやる点があつたら、その点を伺いたい。
  40. 林甚之丞

    ○林公述人 ただいまの組合の組織、役員等に対しては、あまり不便を感じておりません。ただ問題は、必要な仕事の生産量に対しまして適正な配置をしよう、人員をきめよう、そういうことをするときには、ストライキをやつたりして、そういう点が困るのです。
  41. 太田正孝

    太田委員長 御多用中ありがとうございました。  午後は労働問題、貿易問題及び中小企業問題についての公聴会でございます。どうか御出席を願います。  暫時休憩し、午後一時から再会いたします。     午前十一時五十分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  42. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き公聴会を開きます。  午前中も一言申しました通り、公述人各位には御多用中にもかかわらず、貴重なる時間をおさきになつて出席いただきましたことを厚くお礼を申し上げます。おそらくこの供述により、予算案の審議に一段の権威を加えられることと存じます。  議事の順序を一言いたします。各位の御意見を述べられる時間は、大体二十分程度にお願いたいします。御一名ずつ順次御意見を述べられまして、その質疑を済まして行くことにいたします。なお衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は、委員長の許可を受けることになつております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならぬごとになつております。なお委員公述人質疑をすることはできますが、公述人委員に対して質疑をすることはできませんから、さよう御了承願います。  それでは、まず日本労働組合総評議会組織部長石黒清君。
  43. 石黒清

    ○石黒公述人 本公聴会におきましてこの予算案にはつきり反対するのは私だけのようであります。従いまして、私の意見はまことに貴重なものだという自信を深めるものであります。  私はこの公聴会出席するにあたりまして予算案をゆうべ受取りました。従つて内容は全然読んでおりません。しかし長年にわたる吉田内閣の政策というものは、身にしみて覚えておりますので、そういう感覚のもとに、これから予算案の問題について反対をしたいと思います。  この公聴会におきましても、農民の代表が公述をしない。こういうことは民主的ではないのではないか。特に六百万戸からある農民を代表して、どのような供出割当によつて、どのような超過供出制度によつて苦しんでおるかという問題について述べる人がいないということは、特に苦しんでおる農民諸君のために、私は心から悲しく思います。皆さんが超過供出あるいは集荷自由供出ということで、一万六百円やまたは五百円という石当り米価をきめておりますけれども、あのような超過供出のできる人は、一部の地主と中農以上の人であります。多数の農民は、石当り七千五百円とはつきり押えられておるのであります。従いまして、あの米価政策というものは、六百万戸のうち五百何十万戸かの苦悩する農民の米価を保障するものではない、こういう米価政策のもとに、皆さんは資本家を肥え太らせている、かように考えざるを得ないのであります。  中小企業につきましても、皆さんは中小企業の諸君から逆に税金を多くとろうとしている。一千億減税案の問題につきましても、私たち労働者の所得税においても、税法上の減税ということでありまして、実質的には幾らも下つておりません。ところが富裕税の廃止だとか、私たちを安い金で使つている会社や地主なんかの税金が安くなるようにできております。従つて一千億減税は一千億減税でなくて、資本家のために一千億減税したと考えた方がはつきりしていいようであります。  それから文部大臣にしても総理大臣にいたしましても、道義の高揚ということを盛んに言つております。ほんとうに警官も一人もいらない、軍備もいらない、全国民が和気あいあいとお互いが信頼して生きて行くのが、ほんとうの意味での道義高揚であるとわれわれは考えております。ところが吉田内閣の道義の高揚というのは、せつかくささやかな頭をしぼつて、みなでまじめに運営している公安委員会を廃止したり、自治警察を廃止したり、そして警察を厖大に強化し、何かしらものにおびえたように保安隊を強化しなければならない、そういう背景を持つた道義の高揚であります。しかも大東亜戦争や帝国主義戦争において、大佐だ、少将だ、大将だという人たちが中心になつている旧軍人の恩給四百五十億が加えられている。また国債の買上げにいたしましても、百五十億も組んでおりますが、この国債をもらうような人は、軍人の中でも上の一部の人であります。私も陸軍伍長でありますけれども、下士官や兵は国債や恩給をもらうほどりつぱな制度は昔はできておりませんでした。皆さんは電車に乗つたかどうかわかりませんが、日曜日に私たちが小づかいを出して、十円か二十円の電車に乗つて上野に遊びに行きます、その途中において、傷病兵はどういうあいさつの形で十円、二十円の金をもらつているか。あの状態を皆さんは見のがして、あの人たちのためには二十億の金しか出してない。あの人たちは、私たちのようなからだになるような戦争はやらないでください、こういうぐあいに申し上げて、まさに電車の中で戦争の反対を叫び続けているのであります。ところがそういう人たちに対しては、依然として同じような経費しか盛つていないので、あの平和の像のところではすわり込みをやつているのではありませんか。こういう形の中で、われわれは「真空地帯」ではありませんけれども、みじめに日本の若い青年や婦人や学徒を使つた人たちのための旧軍人恩給というものが四百五十億もあるのであります。私がもし総理大臣ならば、このような古いマンモスのような、戦争にも行けないような昔の人に恩給を出すことをやめて、あの傷病兵の皆さんの生活を保障し、未亡人や戦災家族の生活を保障した方が、ずつと戦争反対の空気になるのではないか。吉田内閣は、最も賢明な方々がそろつておるようでありますけれども、その点道義の高揚に抜かりがあるようであります。しかし本質的にそういうことができないのが、吉田内閣の政策ではないでしようか。われわれが考えてみるに、防衛費の問題にいたしましても、一月末で九百六十億の未使用額がある。二月、三月のうちに半分以上使つてしまつてあとは繰越しになる、こういうことを言つておるようでありますけれども、われわれの社会保障的なもの、たとえば生活保護費とか、あるいは結核対策費とか、失業対策費とか、住宅対策費とか、こういう私たち一般大衆がお世話になるお金は七百三十億程度しか盛つていないのであります。ところが旧軍人恩給や、あるいは国債の買上げや、こういうものが七百五十億もあるのであります。皆さん、マンモスのように、もう戦争に行けといつたつて一旧軍人は五十や六十のおじいさんでありますから戦争には行けない。こういう人たちに七百五十億程度のお金を出して、戦争のためにほんとうに苦しんだ、そういう人たちに対して七百三十億しか組んでいないのであります。こういう政策、そうして道義の高揚とか、教育費国庫全額負担とか、いろいろ美名を使いまして、吉田内閣は教育の一本化をやろうとしておる。しかし皆さん考えてみてください。終戦のときに一年生の子供がもう中学校の二年生です。中学校の子供たち、あるいは小学校の終りの子供たちは、もう社会に出て私たちのようなことをやつておるじやありませんか。そのときに、学校の先生は営々として二十年、三十年と教壇に立つております。戦争が終つた、日本の侵略戦争はいけなかつた、軍隊を持つてはいけない、ほんとうの意味での平和と民主主義を守つてくれ、原爆を受けた日本人はそのことを全世界の全人類に対して叫び続けろ、こういうことをマツカーサー元帥は年頭の辞で言われたことがありますけれども、先生が教えた子供がもう社会に出ておるのに、その子供が弟や妹たちに、学生諸君まことに申訳がなかつた、私たちは戦後平和のために、民主主義のために戦争はいけない、軍隊を持つてはいけない、こういうことで皆さんに教育をしたけれども、吉田内閣は四年も五年も続いて、二十八年度になつたところが、この考え方は間違いであつた、だから旧軍人を大事にして、うんとお金をやつて——依然として国電では傷病兵が泣き叫び、そして雇い兵か何兵かわからないけれども、日本のための戦争であるか何かもわからないけれども、皆さんは軍隊に行かなければならない、戦争をやらなければならなくなつた、この平和憲法は間違いでした、と教壇に立つてそのことを訴え得る先生が何人おるでありましようか。皆さんは警察の強化、保安隊の強化によつて日本の民主主義的な教育を受けた民主的な先生や、われわれ労働組合や、先ほど言つたごまかしの供出価格で苦しんでいる農民の人たちを食いとめ得るでしようか。皆さんは労働運動のいろいろな問題について、特に自由党関係の方は、たとえば労働組合の方が皆さんのところへ来て労働組合の情勢を説明したといたしましても、自由党に行つて説明するような労働組合の方は、苦しんでおる労働者のほんとうの声は言わないものであります。あたかもそれが労働組合を牛耳つておるがごとくそういう人たちに説明するものであります。皆さん、真実をはつきりつかんで予算をつくり、政治をやらなければたいへんなことになるのではないか。私は共産主義者ではないし、これは断る必要もないと思いますけれども、組合の一役員として労働運動をやつております。しかしかつて大阪で大塩平八郎が米騒動を起して、ものすごいことになつて、米屋はみな殺されたあのことは、はたして共産主義者で大塩平八郎はあつたかどうか、私はそうでないと思う。問題は、国民をはつきり見詰めて、労働者はどういうことを考えているか、農民はどういうぐあいに苦しんでいるか、そういうことをはつきりつかんで、日本百年の大計を立てることがほんとうの政治ではないでしようか。そういう政治に基いてつくるのが、われわれは国民のための予算だと言うのであります。ところが現在提案されておる予算内容については、まつたく影も姿もないものにおびえて、保安隊強化、何とかかんとか無理をしてでも教員組合や、あるいは警察を一本化して、昔のような教育にしよう、統制をしようという行き方で、苦しんでいる大衆の社会保障費などは幾ばくもない。こういう予算ではたしてこのはげしい国際情勢の中で、日本は八千六百万の国民を守り得るかどうか、こういうことを真剣に考えなければならぬのではないか。  特に労働組合の問題については、自由党内閣に賛成をするような幹部の方しか行つておりませんので、この機会を借りまして、労働組合が今どういう状態になつておるかということについて若干説明を申し上げたいと思います。私は炭鉱労働組合の出身であります。もちろん小学校もろくに出ておりませんから、皆さんにそのことを十分説明し得るかどうかわかりません。しかしほんとうのことだけを申し上げたいと考えるものであります。炭労と電産の秋のストライキの中で、制限法を出したようであります。しかし炭鉱労働組合の保安問題についての制限は、まつたくおかしなものであります。皆さんは、炭鉱の坑内がそんなに保安が確保されて働きやすい職場になつておると思いますかどうか。私たちの同僚は、一番日本でけが人が多い、死人が多い、こういう状態の抗内で働いているのであります。従つて炭鉱労働組合が、逆にそれでは吉田内閣の言う通りに、完全に保安を確保いたしましよう、危険な仕事に入ると人間が死にますから、安全作業をいたしましようということで、三十万の炭労の諸君が、そういう行動に入つたならば、石炭が一日に何割出ると皆さんは思いますか。おそらく私は幾らも出ないと考えております。従つてあの制限をつくつた方々は、何も現実を知らない、ただ保安法規ということで、資本家の方が財産がつぶれるというのでびつくりして、何か戸惑いしてつくつたような法案であります。電産の労働者にしても、炭鉱の労働者にしても、あのような制限法に対してはたして恐怖費えるかどうか。われわれはそういう弾圧や拘束よりも、原爆や水爆や、ナパーム弾の方がずつと恐ろしいのであります。それだけの考え方を八年にわたる労働運動の中で展開しておるのであります。御承知のように海員組合、全繊維組合が総評の行き方は極左的であり、政治闘争主義だという批判をくださつたのは、御承知の通りであります。それに対して国会勢力から言うならば、多数の方々が賛意を漏らしたことを思います。もしもあの批判が当つておつたならば、今ごろ総評で私は組織部長をやつておることはできません。ところが皆さん、あの批判によつてぐらついたのは総評ではなかつたのであります。むしろ資本家であり、四単産の内部であつたではありませんか。日放労とか、その批判に参加したものが不信任をされた。海員組合についても全繊維組合についても、はつきり自覚する人々がふえたではありませんか。そうしてその後の総評の会議は、今までよりもとてもスムーズに会議が進むのであります。なぜ進むか、これは四単産といいますか、四組合の批判のために、それ以外の三十組合にわたる総評のそれぞれの組合が、はつきり本質がわかつたからであります。総評は統一闘争で政治闘争だ、こういうことを言つておりますけれども、国際自由労連に参加しておるベルギーの労働組合が、兵役年限延長反対でゼネストを打ち、そしてその延期を中止させたことを皆さんは知つておると思います。英米の植民地であるイランにおいてもエジプトにおいても、あるいはブラジルにおいてすらも、民族闘争は起きているではありませんか。もうアメリカは孤立しつつある。私たちはもう少し賢明な道を歩まなければ、日本の復興と平和と独立は守れないのではないか。まして八割の人が字が読めないというアジアの植民地諸国の国民、ブラジルやアフリカにおいてもそうであります。そういう人たちですら、われわれは独立はしていない、われわれは全部あわれな者だというので、民族闘争を起しているときに、九割以上の人が字を読み、物事を理解する日本において、はたして今のような状態が続くであろうかどうか、断じて続かないということを宣言せざるを得ない。私たちは、私自身も大東亜戦争に参加をいたしましたけれども、なぜ戦争が起きるのか、こういう問題についても、もう少し考えなければならない。私は社会党左派の党員として総評の組織部長としてわれわれが今やつておることは何か、もしもわれわれが御用組合の幹部になつて会社と一緒に取引をしてやつておつたら、日本の労働者大衆はどうなるだろうか、おそらく共産党か労農党の左ぐらいに行くでありましよう。第二の朝鮮になるのが早くなるでありましよう。従つて現在私たちがやつていることは、自由党にとつても棄べきことである。われわれはまさに自由党の悪政の中から、ともすれば暴力革命が起きんとする状態に対して、総評並びに日本社会党左派は必死の抵抗を試み、平和なうちに、民主的なうちに新しい日本をつくろうとして努力しておるではありませんか。このごとを政治闘争だ、極左偏向だ、こういうぐあいにいかに商業新聞や一部の御用幹部や、自由党の皆さん方がやじりましても、批判をいたしましても、日本の労働大衆はそれについて行くものではありません。苦しんでおる農民、われわれの生活がよくならない限り、われわれの生活するための物をつくつておる中小企業の商人の諸君は幸福にならないのであります。戦争中を考えてみなさい、一軒の店でも幸福の店があつたでしようか。労働組合が生活を確保し購買力を持つてこそ、商人も、その商人のお店に物をつくつて売り出す中小企業も、そして農民の諸君も栄えるのであります。このことが徐々ではありますけれども、終戦後八年の間にだんだんと下部に浸透しつつあることを、自由党の諸君ははつきりと考えて、昭和二十八年を日本の滅びる出発の年とするのではなくて、新しい、青年や婦人や子供たちが生き生きと栄え得るような日本にするための年に、反省をして心を入れかえてしなければたいへんなことになるじやないかという警告をも含めまして、簡単でありますが公述を終りたいと思います。
  44. 太田正孝

    太田委員長 御質疑がございますか。——石黒君御多用中ありがとうございました。  次に野崎産業株式会社取締役会長野崎一郎君にお願いいたします。
  45. 野崎一郎

    ○野崎公述人 自分は公述人であります野崎一郎であります。ただいまお話がございました石黒さんと同じように、実は昨日午後に電話でもつて連絡があつたわけでありまして、予算等については、詳細にわたつて検討する時間もございませんので、ただ自分は貿易面から見たところの予算に関連した点だけをまとめてここに公述いたしたいと存じて参つた次第であります。  予算が千五百億からの散超になつておりますことは、これはインフレ含みであるということで、いろいろ皆さん問題にしております。しかしこのインフレ含みということは、輸出原価が高くなるということになるのでありましてその点においてまず第一に大きな関心を持つ次第であります。現在輸出が不振であります関係上、市中は不況であり、かつ物資は過剰である関係上、インフレは起るおそれはないといういろいろの議論がございますが、貿易を真に振興させるためには、現在の物価を下げることがどうしても必要であり、また同時にそれ以上に奨励策をやりませんければ、世界の現在の貿易競争に負けて行くというのが、実際の現状でありますので、むしろ緊縮予算によりまして、根本的に原価を下げるように是正さるべきであるというように感じております。この点においてわれわれは第一に遺憾に存ずる次第であります。  御承知のように日本は人口が過剰であり、土地は狭いし、また同時に原材料も不足である関係上、どうしても貿易立国にならざるを得ないということは、口ではいろいろ唱えられておりますけれども、今回の予算におきまして、通産省費の中にわずかに一億に当るだけのものが貿易勘定として計上されただけであります。これを他の国に比べますと非常に寂蓼たる感があります。これでいわゆる現在の日本の為政者の考えがどの辺にあるかということを、われわれは推しはかれる次第であります。すこぶる心細く感じておる次第であります。  そこでまず日本の貿易の現状を知つていただく必要があると思うのです。日本の貿易の現状を知るためには、まず国際的と国内的にわけまして検討し、世界の市況、また原価高に関する対策を考え、また同時に競争国の輸出振興策、それらを含めまして予算への希望を申し上げたいと思うのであります。  昨年は世界の貿易高は全体に減少しております。各国ともに御承知のごとくにドル不足で非常に悩んでいる次第でありまして、勢い自衛上から輸入の制限をやり、また同時に逆に輸出振興をやるというような状態で、貿易の面から申しましたならば、半鎖国状態になりつつある次第であります。これを根本的に直しますには、どうしても年々莫大なる米国の輸出超過及び受取勘定を貿易によつて米国が買うか、あるいは援助資金を出してくれるか、あるいは両方してくれるというような型でもつてバランスをとらない限りは、どうしてもアンバランスになるということは皆様の御承知の通りであります。アイクがこのたび共和党の党首となつて大統領になりまして、共和党の党是にもかかわらず、物は買います、関税は引上げませんといつておりますけれども、米国の輸入の統計と、それから在庫等を詳しく調べてみますと、一体何を買つてくれるか、この点が非常に大きな疑問になるのであります。今、米国が買いそうなものは銅一つだけであります。そういう状態であつて、現状におきましては、原料におきましても、また加工品におきましても、米国は世界の大生産国であります。これが受取勘定の超過分だけを無理やりに買つたならば、アメリカの経済はどうなりましようか、必ずそこに大混乱が起つて、関税問題が起つて来るということはこれは明らかなことであります。これが常にアメリカの関税問題がもやもやする理由なのであります。  しからば援助資金をふやしてくれるかとみますと、戦後に三百八十億ドル、約四百億ドルに近い金をすでに貸しておる現在といたしまして、その貸付方はおそらく従来通りイージー・ゴーイングに貸すのではないだろうと思います。おそらく欧州支払同盟とかあるいはポンド、ドルの交換資金だとか、あるいは最近唱えられておりますところの大西洋支払同盟というようなものに、援助するのではないかというように思われますが、そうなつたらば日本はどうなりましようか。戦前の中国の大事なお客さんをすでに失つておりまするどうしても東南アジア地区にお客ざんを求めるほかしようがない。ところが東南アジア地区におきましては、御承知の通りコロンボ・ブラン及びポイント・フオアの政策が実施されておりますが、これが出るだけの金が出ていないというような関係で、ほとんど動いておりません。従つて日本がどうしても買わなければ、商売ができないというにもかかわらず、いわゆる言葉通りの現在は未開発状態であります。それで買えないならば、同時に日本輸出ができないということになります。しかももう一つ問題は、日本とともにお客さんであるところの東南アジア地区は、いずれも先ほど申しました欧州支払同盟とか、あるいは大西洋支払同盟とかいうものには入れないのであります。すなわちドル不足解決の圏外に置かれておるわけであります。従つてこういうアンバランスの結果、お客さんにどうしても売る物がないとすれば、いよいよそのアンバランスの関係で輸入超過をせざるを得なくなり、ますます輸入制限がきびしくなるというと、日本の貿易は縮少生産にならざるを得ないというのが現状であります。  最近米国は軍拡予算によりまして相当援助に力を入れておるようでありますが、これは軍拡生産のできます日本だとか、イギリスだとか、フランスとかいうところにはできますけれども、それ以外のところには大砲を持つて行かれたり何かされたところで、これはドル不足の解決には一つもなりません。最近英仏ともに首相がみずから出馬しまして、その国の財政経済の防戦に努めております。しかも先ほど申しました欧州支払同盟が大西洋支払同盟へと進んでおります。それで最近のごときでは英連邦首相会議で数々の問題をアイクにぶつけております。これがもし実現されなかつたならば、再びブロツク経済に入るということは、彼らがすでに宣言しておるのであります。こうなつたらどういたしましようか。日本は完全にシヤツト・アウトを食うのであります。  また産業方面におきましても、鉄鍋業におきましては、最近シユーマン・プランが完成されまして、実施に移されることになつております、また米国の鉄鋼生産は拡大に向いまして、日本の中に品物をどんどんオフアーして参るというような状態でございます。こうなつたら、せつかく伸びつつあるところの日本の鉄鋼業が、今後非常に悩むということは思い余る事態だと思います。  昨年の世界の貿易の状態を考えますと、先ほど申しました通り、事実不振でありました。しかし日本の貿易の不振はなおひどかつた。一昨年の日本の貿易の状態は、世界の貿易順序からいいますと、輸出においては十番目、輸入においては九番目でありましたにもかかわらず、昨年は輸出においては十七番目、輸入においては十四番目に下つた次第でございます。これをもつて見ても、日本の貿易が不振であつたということは十分おわかりいただけることと存じます。西独を先頭にいたしまして、ベルギー・イタリアは非常に目ざましい輸出振興策をとつております。日本は御承知の通り朝鮮事変までは物価が非常に下つて参りました。朝鮮事変と同時に奔騰参いたしまして、輸出原価は奔騰いたしましたが、だんだんの不振の結果、輸出原価もだんだん下つて参りまして、まずこれなら世界の貿易にも何とか合うだろう、過剰物資の時代になり、いわゆるバイヤーズ・マーケツトの時代になつて参りまして、どうにかこれに対応できるというように思つておりましたところが、西独その他の国がえらい振興策をとつて参りまして、ために世界の国際物価はひどく下つて参りましたために、また日本物価は高くなつてしまつた。言いかえれば、向うにかなわないような状態になつたということであります。そこで勢い日本輸出原価は、真剣に考えなければならぬときが参つたのではないかと存じます。  それにつきまして日本産の輸出原料は非常に高値である。たとえていえば、一番いい例が石炭であります。石炭は各生産工業及び輸出産業の基礎原料になつておりますが、現に高い運賃を払つて日本べ持つて参ります輸入炭よりも、安いので三割、高いのでは九割あるいは十割見当高い、こういう高い原料を使つて日本輸出産業がどうして引合うかということになるのです。われわれはこういう犠牲にはなつておられないということになるのであります。それならば一輸入炭をどんどん入れて牽制したらいいじやないかという方法もございますが、これは炭鉱業者をただいじめるだけにすぎない。炭鉱業者をいじめるだけにすぎないというような結果になつては、日本の将来のためによくないというようなことで、勢いこれには、われわれはいわゆる専門家でないからわかりませんが、縦坑の改善だとかいうような改善資金を当予算のうちに組んで、日本の炭鉱業者を助けつつ、かつ外国炭も入れて牽制をしながら、国際原価のところまで近づけてもらわないと、輸出産業は成り立たないというような状態でございますが、これを予算のうちに編成されることを希望する次第でございます。  以上のほか各生産業の合理化運動ということが一まずく必要であることは論をまたない次第でありますけれども、輸出産業及び貿易業に対しますところの現在の金利は、日本のような高金利はございません。こういう高い金利をもつて貿易をやるということは、とてもできない次第でございますので、今回貿易の振興についてことに改善しなければならぬ問題は、まず金利引下げという問題が次に起つて来る問題だと思います。  以上の条件が満たされましても、なおかつプラントだとかあるいは肥料ですとかいうものは、世界の競争入札にいつも負けておる次第でございます。その負け方が非常に大きいということから、その国々の輸出振興策を調べてみますと、そこに大きな違いがあるということが発見されるのであります。それを今度の予算のうちに訂正ができればけつこう、またできないとすれば、今後において十分御考慮をいただいて、今までの方針をかえていただきたいというために、御参考に申し上げる次第であります。  西ドイツの貿易振興策につきましては、先般小室次長が現地に行つて調査されましていろいろ報告もございましたでしようと思いますので、ここに省きますが、フランスの今度の予算を拝見いたしますと、輸出振興予算というものは合計で四百三十億フランになつております。御承知の通り一フランは約一円でございます。この四百三十億フランの内訳は、貿易業に対する租税の免税が三百億フラン、それから国際入札補助金が百億フラン、自動車工業補助金が三十億フランになつておりまして日本の今回の予算に比べまして、まことに日本予算は寂蓼たる感がいたしまする点を、われわれとしては遺憾に思う次第でございます。  現在日本は、外貨保有量が十億ドルに及んでおりますし、そのうちの六億ドル近くは、無利子に近い外銀に死蔵されておるような次第でございますが、これらについては、もう少し十分に御検討を願う必要があるのではないかと思います。その次に、もう一つ輸出信用保険制度は、これを十分に活用いたしますれば、輸出振興になると思います。これを活用いたしますれば、ダンピングの疑いはかかりませんし、またガツト加入に対しても少しも支障が起らず、また国際通貨基金より苦情も受けないという点がありまして、この制度を十分活用される必要があると思うのであります。ところが現在の制度の上においてまだ不備な点があり、また資金が非常に僅少であるということで、どうにも思うような活動ができないために、この振興に使うことができないというような状態であります。今回の予算におきましては、これが全然削除されました。毎年百億円ずつ計上されておりますが、今年は全然上つておりません。今までの累積資金があるということのために削られました。しかし輸出信用保険の効用を十分に御研究いただきまして今後とも何とかこの点を十分に活用のできるようなことにしていただきまして振興策に御留意いただくことをわれわれとしては希望する次第でございます。  なお今回の予算につきまして、貿易商社強化案といたしまして、クレーム準備金、海外支店に対する償却金を法人税の償却資産と、認めていただいたこと持して、われわれは深く感謝をいたします。しかし貸倒れ準備金あるいは価格変動準備金とかいうものに対しては、いわゆる柱ほど望んで針ほど通つたというような現状で、われわれ業者は少しもかけひきをしなかつたために、多少失望の感がある次第でございます。日本は昔から士農工商というところの観念がありますが、貿易商は口頭禪では大事にされておりますが、実情は以上のような観念がちつともかわつておらないというふうに、われわれはひがみですか感じられる次第でございます。これはたとえば予算の面におきましても、またあるいは税制においても、あるいは貿易政策、すなわち輸入の割当についても、御承知の通りほとんど全部はメーカー割当であります。これも輸入の面におきまして、よほど深刻に御考慮くださいませんければ、日本の貿易は年々減少して参ります。いわゆる各地の貿易戦で敗退しなければならぬという危険があることを十分に御考慮いただきたい。  もしも貿易において敗退いたしましたならば、生産業がいかに拡張いたしましようとも、日本経済は破滅に陥ることはいなめない次第でございます。最近の外商はますます跋扈して、骨の髄までもしみ込んで参ります。これは日本の商社の微弱な点があると思うのでありますが、何しろ底の浅い経済でありますので、各社が金を持つて来て跋扈するには申分のない状態で跋扈しております。これをもしも貿易商社として十分活躍せしめるためには、やはり海外に出て、海外に社を設けて盛んに日本との交通をし、かつ第三国間における貿易をして、初めて日本の貿易立国が成り立つのではないかと思います。こういう点に対して、もう少し御検討いただく必要があると思うのであります。どうぞこの点につきましても、予算において冗費をできるだけお省きいただきまして、それを貿易のために有効に御使用いただきますことを、自分といたしましては切にお願いいたしまして私の公述を終る次第であります。(拍手)
  46. 太田正孝

    太田委員長 御質疑はありませんか。——では、どうもありがとうございました。  次に日本中小企業団体連盟常任理事山本義夫君にお願いいたします。
  47. 山本義夫

    ○山本公述人 ただいま御紹介にあずかりました日本中小企業団体連盟常任理事金融委員長山本義夫でございます。本日は中小企業立場から公述の機会を得ましたことを厚く御礼を申し上げる次第でございます。  昨日昭和二十八年度の予算の説明のパンフレツトをいただきまして、きよう公述するよう命令がありましたものですから、いろいろ検討をいたした次第でございますが、御承知のごとく日本経済、特に世界経済は不況の度高まりつつあり、そのしわ寄せによつて日本経済はますます不況の一途をたどりつつある。それはほとんどが中小企業の犠牲においてなされつつあるといつても、私は過言でないと存ずる次第であります。御案内のごとく大企業におきましては、苦しい苦しいと申されましても課長、係長級に至るまで、いわゆる社用族と申しますか、ゴルフにあるいは麻雀に、ダンスにというような金がある。そういつたような金をもつと合理化しなければならないにもかかわらず、われわれが慨嘆するにたえないような状態でございます。しかも中小企業に対しましては、支払いを延ばすだけ延ばすことに、これ努めていると言つても言い過ぎではないと私は思います。たとえばすでに政府におかれましても、この総説いわゆる経済運営の基本方針においても、「特に中小企業等の面には相当深刻な影響を及ぼし、これが対策を必要としている。」とこうお書きになつておりますが、はたしてこの予算においてどれだけ中小企業に対する施策があるのでしようか、以下私は順に申し述べてみたいと考えております。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕 なるほど財政の規模は年一年と厖大化しつつあります。さらに一般会計外の財政投融資も、年一年と増大しつつあります。しかしながら二つの面をわけまして、金融面財政面とをながめました場合、まず金融面から御説明申し上げます。  昨年一般会計から商工組合中央金庫に投資されました金は二十億であります。二十八年度にはこれがゼロであります。国民金融公庫に出されました一般会計出資は六十億であります。今年は三十億であります。すなわち三十億の減であります。開発銀行において中小企業に出されました金は、昨年度は二十六億であります。今年度はゼロであります。国民金融公庫に対して、昨年度は資金運用資金が四十億、本年度は五十億、プラス十億であります。これに対しまして新たに中小企業金融公庫をおつくりになりました。一般会計から三十五億、資金運用資金から五十億の出資でありますが、これを相殺いたしました場合に、わずか十九億の増加であります。一般会計並びに財政投融資の増加は六百七十八億であります。六百七十八億のうち、中小企業に対する増加は、わずかに十九億すなわち三%に過ぎないのであります。はたしてこれでもつて中小企業に対する施策が十分でありましようか。私は議員各位の反省をお願いいたしたい次第であります。  さらに私は申述べたいことがあるのであります。いわゆるこののたび産業投資特別会計という制度が設けられました。あるいはまた特別減税国債の制度が設けられました。これはほとんどが自由経済を主眼とする現在の日本資本主義の経済下において、すでに総体的に安定に入つておる大企業に対して、何がためにかくも援助をしなければならぬのか。電源開発まことにけつこうでございましようが、百五十億を産業投資特別会計より、さらに五十億を資金運用資金より、合わせて二百億もこれに投ぜられる資金があるならば、人口の四割を占める中小企業業者の層、すなわち三千五百万人になんなんとする中小企業者の層に対して、もつとなさるべきがほんとうではないかと考えておるわけであります。この予算のうち、いわゆる防衛関係の費用としまして六百二十億が出ております。しかしながら三千五百万人の中小企業者が社会不安に陥つた場合に、その状態がいわゆる混乱に陥つた場合に、内外ともに何のための防衛かと私は申し上げたい。まず防衛の資金をお出しになる前に、中小企業の多数の人口層に対する安定した資金をお出しになることが、私は先決問題ではないかと思う次第であります。従いまして経費の配分におきまして、限られた財政支出内においてあとう限り、その重点的配分と効率的活用に努めているという御説明にもかかわらず、その重点的配分は中小企業の犠牲における大企業への重点的配分であり、効率的活用であると私は断言する次第であります。  これを具体的に国民金融公庫が現在扱つております制度について申し述べてみましよう。現在申込みを受けておりまして国民金融公庫のベースに乗りながら、いわゆる資金源がないばかりに貸し出せない金が四百五十億ほどあります。これに対しまして政府は少くとも百億あるいは二百億の金を出さなければならないのではないかと思うわけです。これはもう一般会計だけでお出しになるのがほんとうではないか。資金運用資金の金を合せたならば、少くとも三百億はお出しにならなければならないのではないか。しかるにもかかわらず昨年度合せて百億に対して本年度は二十億減の八十億しかお出しにならない。これでは現在申込みを受けて国民金融公庫のベースに乗りながら、資金源がないために借りられないという層の六分の一に近い金しか、このたびの予算には盛られていない。商工組合中央金庫の場合も同様であります。いわゆる通産省中小企業庁が年来の主張である組織化、すなわち社会政策の面の零細企業者は国民金融公庫へ行つて借りるがいい。中小企業の上の方には市中銀行の中小企業専門店がある、地方銀行がある、相互銀行もある、信用金庫もある。個々に解決でき得る人はそういう線で、どうしても個々にできないものは組合をつくることにおいて初めて金融ベースに乗り、協同組合の資格において商工中金へ行けという従来からの御指導にもかかわらず、商工中金の出資に対しては昨年度は二十億、来年度はゼロ。しかも昨年度の二十億を本年度の中小企業金融公庫において吸い上げるというような形をとられておる。あるいはこれは振りかえたという御説明があるにもかかわらず——それは私は後に申し上げますが、これが中小企業金融公庫に乗りながら、どういう性格のものであるかということを、つぶさにこれから検討したいと思います。  先ほど来私が御説明申し上げましたように、中小企業金融機関をつくるといたしましても現にりつぱな中小企業者、たとい実体が零細業者でありましても、半数は内容としてはりつぱな中小企業の層である。これは市中銀行において十分めんどうを見ておるのであります。こういう方々は十二分の預金を持つております。現在銀行協会なんかの発表では、中小企業への貸出しは、その六割は市中銀行あるいは地方銀行が担当しておるのだと自慢しておられるようであります。その六割すなわち五千何百億の貸出しをしておるといわれますが、そのうちの約七割に近い預金をその債務者から預けられておる。あるいは定期預金あるいは両建あるいは強制の歩積み預金の形でやつております。従いましてその差額わずかに千五百億円の金しかほんとうにはお出しになつていない。無数の銀行があるにもかかわらずこうした状態である。国民金融公庫は一〇〇%出しておる。商工中金においては出資あるいは歩積みがありましても一割八分程度である。従いましていわゆる市中銀行、地方銀行の宣伝にもかかわらず、それが数字の魔術にすぎないと私は申し述べたい。今回中小企業金融公庫の案は、いわゆる名前は中小企業でございましようが、これは中大の企業へ流れる金融公庫であると私は断言する。すなわち組織化ができないような階級、未組織のものにどうして資金を流すかということに頭を使つておられる。なるほど商工会議所あるいはりつぱな経済団体に出られているようなりつぱな中小企業者の方々である。全国銀行協会は政府資金を流せ流せと申されますが、私の考えではこういうりつぱな方方にまで、この乏しい財政のもとにおいて政府資金を流す必要はないと思うのであります。こういう階級の方々にはいわゆる市中銀行、地方銀行、相互銀行、信用金庫に対して信用保険の全面的改正をすることにおいて十分であると私は思います。すなわち現在の信用保険の制度は今未回収債権に対して七五%の割合でしか行われてない。これを一〇〇%、それができなければ少くとも九〇%までは上げていただきたい、これがわれわれの絶えず主張しておるところであります。保険料は年三%、従いましてこれを換算した場合に六厘七毛になつておるのです。金融機関と借主の折半負担です。少くともこの金融機関の負担分は、政府においてめんどうを見ていただきたい、これをわれわれは主張しているにもかかわらず、今回の二十八年度予算につきましては、昨年度は五億投ぜられております信用保険が今年度はゼロであります。これが中小企業に対する施策でありますか、私はこれについてさらに議員各位の反省を促したい、中小企業庁の長官の話によりますと、いわゆる信用保険というものの考え方につきましては、七五%でなければならない、あるいは五〇%でなければならないとか、そういうことは金融機関としては考えていない、危いところには金融機関は貸さないのだ。それは大銀行、あるいは少くとも地方銀行のお考えになる金融機関の考え方でありまして私どもは相互銀行、信用金庫、商工中金、国民金融公庫と集まりましての会合におきましては、どうしてもこれは一〇〇%にしてもらいたい、できなければ九〇%にしてもらいたい、金を貸す側、あるいはまた借りる側がかように要望しておるにもかかわらず、中小企業庁においては銀行の要望を取入れてこれを無視するというようなことについては、通産省における中小企業の指導方針が逆行しているのではないかと私は叫びたい。さらにわれわれは中小企業金融公庫の問題につきまして申し述べてみます。現在設備資金が必要だ、あるいは長期運転資金が必要だといわれている。しかしながら現在の全国の預金の趨勢をながめて見ました場合に、戦前におきましては、その五十五・六パーセントがいわゆる固定性預金、すなわち長期預金であります。戦後におきましては、二十四年の末で二四%、二十五年の末で三〇%、二十六年の末で三五%、昨年の八月末に長期預金は四〇%を越えております。はたして今度の案に言われるように、金融機関が長期貸出しができないのかどうか、四〇%を越えている長期預金を持ちながら、長期の貸出しができないのかどうか、私は断じてでき得ると思う。ただ危険性が多いから貸出さない。しからば信用保険を改正して貸出しし得るような形にすればいいじやないか。それに対して何ら施策が講ぜられていない。何ら改正の案が考えられていない。従いましてこの金は、結局中の小が組織化しなければやつて行けないような、ほんとうの小企業者に流れる金ではなくて、中の大へ流れる金であると私は考える次第であります。しかも財政負担の増加する今日、新たに公庫を設けまして、総裁を置く、理事を置く、やがて建物を置き、自動車を置くのでありましようが、こういう金があるならば、こういう金は信用保険にまわしまして、損失補償の一助ともすれば、私は十分だと考えるわけであります。さらに最近の通産省並びに大蔵省のお考えによりますと、商工中金あるいは中小企業金融機関に預託されている資金は、二十八年度は相当の引揚げがある、上半期は幾分楽であろうが、下半期については相当ある。商工中金に対する預金の吸収は考えていない、出資はない、資金運用資金の貸付はない、金融債の引受けは全体を通じて三百六十億が二十八年度は三百億に減る、こういうような状態のもとにおいて、いわゆる組合金融に依存する中小の小の企業者は、長期資金は申すに及ばず、短期資金においてますます引揚げられて行く。これではたして中小企業に対する施策といえましようか。  私はさらに金利の問題について付言してみたいと思います。国民金融公庫は現在年一割二分であります。現在相当会計検査院の方の監督が厳重でございますので、相当慎重に貸出しているようでありますので、剰余金が出ている。商工組合中央金庫におきましてもこういうような状態である。ただ商工組合中央金庫がいわゆる金融債をお引受けになる場合、資金運用資金から流れている金というものは、約九分に近い金であります。利付商工債券は八分七厘一毛、割引商工債券は八分二厘一毛で九分に近い金である。私は資金運用資金国民金融公庫並びに商工組合中央金庫に流れる場合は、少くとも三分程度にしていただきたい。九分に至るような金を借りまして、銀行の経費を加算しました場合には、当然一割二分あるいは一割三分、場合によりましてはそれ以上になると考えるのも当然だと思うのであります。政府がほんとうに中小企業のために考えられるならば、この資金運用資金はわずか五十億か百億出されるでありましようが、この金利に対してお考えになつても、はたしてどれだけの莫大なる費用がいるでありましようか。この点についても十二分にお考えをいただきたいと考えます。  今回の中小企業金融公庫のように政府が今まで考えていた考えとは全然逆行しましていわゆる未組織の大衆にも貸出すのだと称しながら、上の方のいわゆる中大企業者に流れる。従つて現在組合を結成しているうちのいい組合員は、どんどん組合から離れまして個人で借りて行くような傾向にあります。従つて組合をつくらなければどうしても借りられないというような組合員は、これは組合を結成しても、はたして現在の商工中金のベースで借出しの対象になりましようか、非常に私は疑わしいと考える次第であります。もちろん個々の組合から離れた場合には、全然貸出しする金融機関すらないといいましても過言ではないと考えるわけであります。この点十二分にお考えおき願いたいと思います。私の方の団体では、いわゆる中大企業者の一部の賛成の意見もありましたが、全国役員が集まりました席上においては、今まで私が金融委員長としまして、いろいろの会合をやりましてまとめました結論を持つて参りましたところが、一名の賛成意見もなく、全国反対の意見に統一されまして目下関係方面にお願いをしておる次第であります。すなわち名前は中小企業金融公庫で、実態は中大企業金融公庫の設立には絶対反対の意見を出しております。  さらに私は税制の問題について申し述べてみたいと思います。今回の改正におきまして、法人税のいわゆる税率改正が何もうたわれていない。大企業にとりましては、相当法人税も痛いといわれますが、痛いといいましても、その差額につきましては、ある程度の資本蓄積ができます。中小企業にとりましては、その差額はやつと食つて行けるか行けないかの程度でありまして、とうてい資本蓄積どころの騒ぎじやありません。どうかほんとうに中小企業に対しても、資本蓄積の必要をお感じになるならば、中小企業に対しては税率を低くしてやろうという親心をもつてつていただきたい。同じく四二%ではどうしても中小企業には資本蓄積どころか逆に縮小再生産である。さらに物品税につきましても、至急全廃をはかつていただきたい。あるいはまた大企業につきましては、いろいろな保護の措置が講ぜられております。租税特別措置法、企業合理化促進法、貸倒れ準備金、価格変動準備金制度等あらゆる制度をおつくりになりますが、中小企業に対してははたして何の有効な施策を講ぜられるのでしよう。この点特に御反省願いたいと考える次第であります。  私は通観いたしまして、今回の予算案に盛られました考え方というものにつきましてながめた場合に、皆様方が常に選挙において中小企業の育成強化を叫ばられておられますにもかかわらず、現われました実態は、莫大なる財政資金の中における中小企業の施策はほんのわずかである。はたしてこれでほんとうに議員各位が中小企業のために考えておられるのでありましようか、この点についてとくとお考えいただきまして、私の公述を終る次第であります。
  48. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 ちよつと山本君に伺いますが、今御発言の中に、議員各位に御反省を願いたいという相当強い御発言があつたようであります。このことに関しまして、委員の中から取消しを要求してもらいたいという申出が出ております。その後におきまして、御説明の中にさらに議員各位の反省を促したいという言葉が出たようであります。それから今一番しまいの段階においてこの点特に御反省を願いたい、こういう御発言がありましたが、この予算編成政府がいたしてここへ出しておるのでありまして、国会はこれを審議をいたしておるのであります。いわゆるよいか悪いかの審議の過程におきまして、皆さんの御意見を伺うというのが本日の公聴会の趣旨でありますので、国会に対する御反省等をお促しになるということは行き過ぎかと存じますので、お取消しの御意思があるかどうか承つておきたいのであります。
  49. 山本義夫

    ○山本公述人 これは不敏にして私の考え方が間違いでありまして、この点については率直に取消しをいたします。
  50. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 承知いたしました。  御質疑がありましたらどうぞ。
  51. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 ただいま金融公庫のことについていろいろ御意見を伺いましたが、非常に参考になつたのであります。しからばそれをやめて、現在の中金だけの力で中小商工業の資金運用することができるかどうか。もし金融公庫をやめるならば、現在政府の計画しておるところの八十億ですか、またそれ以上の資金を中金の方にまわしてもらいたいというのか。そこのところをはつきりひとつ御説明願います。
  52. 山本義夫

    ○山本公述人 ただいま御質問がございましたのに対しましてお答えをいたします。御承知のように、設備資金につきましては、中小企業の上の方の階級につきましては、開発銀行の中小事業部、さらにまた相互銀行においても取扱つている次第であります。一般市中銀行においてもある程度考えておられる。あるいはまた商工中金においても設備融資が行われている。国民金融公庫においてもやつておられるのであります。従いまして政府資金をどうしても中小企業の設備資金に、あるいは長期運転資金に流す必要ありとお考えになるならば、既存機関である開発銀行の中小事業部、商工組合中央金庫、国民金融公庫、この三段階にお流しになることにおいて、既存機関の活用において私は十分役目が果し得るものであると考えております。
  53. 重政誠之

    重政委員 ただいまの御説明でございますが、開発銀行に昨年まで中小企業資金政府は流しましたが、今年はそれをやめて、公庫としてそちらへまわすということになつているのは御承知の通りでありますが、開発銀行から中小企業の金の出道は、一般の銀行から中小企業者が金を借りて、開発銀行は何もやらない、ただ銀行が育つて来るやつをよろしいと言うだけで、開発銀行自体が中小企業者の企業についての審査する権限、権限というよりか実際の能力が全然欠如しておるので、そうするとこれはもう銀行まかせということになる。銀行によつては非常にうまく相当事態を認識してやつておる銀行もあるし、それからまた銀行によれば全然ほつたらかしの銀行があつて、実際問題としては地方によつては非常に厚薄があつてつておる状態があるのでありますが、これは御承知になつておられますか。
  54. 山本義夫

    ○山本公述人 開発銀行の中小事業部の利用につきましては、もともと私どものうわさに聞くところでは、あまりお好みにならないというような話だつたと思います。最近における中小事業部に対する申込みは相当活発になつておりまして、従来見返り資金の制度で日本銀行の資金局を通じました資金が、いわゆる今までの代貸しの制度をもつてしてはなかなか順調に行かなかつた。しかしながら開発銀行の中小事業部を新設して見返り資金を引継ぎまして、あるいは政府資金その他の関係のものを流すことにおいて最近相当活発になつております。もとより銀行の性格により、あるいはまた銀行の支店長の考え方によりまして、お好みになる、お好みにならないというようなこともございましようが、最近における開発銀行の利用は非常に順調に行つておりますが、この対象はりつぱな中小企業者であります。私どものながめました場合に、自己資金相当お持ちになり、担保価値も十二分にあるというような方々に対する資金の流れが、開発銀行の中小事業部から行つておるのではないかと思う。従つて私どもの考え方といたしましては、いわゆる財政資金の少い、あるいは資金運用資金の少い場合においては、国民金融公庫あるいは商工中金のごとき、低い階層に対しては政府の金を流す。うんと金が出ればこれは別でありまして、上の中大企業者に流してもけつこうでありますが、資金の額の少い場合には、下の方に対しては、優先的に国民金融公庫あるいは商工中金というふうに漸次ステツプを踏んでそういう流し方をして行く、上の方に対しては、信用資金を流して資金の流用をバツク・アツプしてもらいたい、こういうような考え方をしております。しかし今の重政先生の御質問によりますと、お好みになる金融機関もあり、お好みにならないところもありますが、この政府資金の活用というものは、全国銀行協会の意見にもありましたように相当積極的でありまして、順次順調に行つているように私は拝承しております。
  55. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 簡単ですけれども、今のお話の結論として私がお聞きしておきたいのは、あなたのところの企業団体連盟は、協同組合関係だけですか、それとも他の団体が加わつておりますか。  それからもう一点は、個人の関係の方があなたの構成メンバーになつておりますか。
  56. 山本義夫

    ○山本公述人 お答えいたします。日本中小企業団体連盟となりましてからは、御承知のように第一種組合員は、全国の各府県の協同組合連合会あるいは企業組合連合会あるいは信用組合連合会その他の各府県の中小企業連盟が入つております。第二種組合員は、各種の産業別中小企業の連合会が入つております。第三種組合員としては、個人の中小企業者が加盟しております。金融の面につきましても、私は、現在中小企業金融機関の連絡協議会、すなわち相互銀行、信用金庫、商工中金、国民金融公庫を合せました連絡協議会の幹事を仰せつかつておりまして、協同組合だけの意見を申し述べておる次第であります。  それからまた中小企業は組織化することにおいていわゆる一本立ちになり得るのだ、すなわち中小企業の弱い層は、そうすることにおいて一本立ちになり得る、従つてそういうような弱い層は組織化すべきであるという考えを持つておるのでありますが、りつぱな中小企業者は決して組織化する必要はないと思つておるのであります。中小企業全般は必ず組織化すべしというような議論は少し行き過ぎであると考えておりますので、決して協同組合なりあるいは商工中金中心というような考えは持つておりません。
  57. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 今の金融公庫については、協同組合とか、その他団体金融のみに偏するから、この金融公庫として個人金融を考えなければならぬというようなところに政府の考え方があるのではないかと思いますが、もしそうだとすると、団体金融は中金で行われて行くけれども、個人は借りられないというようなことになるのでありまして、そこのところに個人中小商工業の非常な悩みがあるわけです。その場合に、あなたのおつしやるようにするために、中金の性格をかえて団体金融も個人金融も両方ともできるようにするというような御希望でありますか。
  58. 山本義夫

    ○山本公述人 この点につきましては私は個人の意見を申し述べてみたいと思います。いわゆる組合という組織がなければ金融ベースに乗り得ないというような階層につきましては、組合をつくることにいたしまして、商工中金に結べばよい。それはいわゆる社会政策的な見地を加味しておりますけれども、やはり経済政策の対象であります。いわゆる担保の保証もない、歩積みもよくできないというようなほんとうの社会政策的な対象である零細企業者は、国民金融公庫の方につながればいいのじやないかと考えております。従つて中小企業者の上の方の、預金もできる、担保もあるというような方々につきましては、現に信用金庫もあります。相互銀行もありますし、地方銀行もあり、あるいは市中銀行もあります特に最近におきましては東京における東京都民銀行、埼玉における武蔵野銀行、大阪における大阪不動銀行のごとく、ほんとうに中小企業のために専門にやつておられる銀行も続々と出て来られて、中小企業のために円滑な融資をしておられる。こういう点を考えました場合、商工中金に乗り得ないような、ある程度よい個人の方は、信用金庫あるいは相互銀行、そういう方向に行かれるべきではないか。しからば資金がないではないかというお考えにつきましては、先ほど来御説明申し上げましたように、政府の方からうんと資金をお出し願えるならばいざ知らず、今度のような額の場合には、やはり重点的にまず国民金融公庫、その次には商工中金という程度でおとどめ願いたい。その上の方に対しては信用保険制度の改正によつて十二分に貸し出し得るような体制になり得るということは、金融機関との絶えざる会合においても言い得られるところでありまして、私はそういう見地から結論づけておるわけであります。
  59. 重政誠之

    重政委員 ちよつと今よくわからない点があるのでありますが、ただいまお話になりました埼玉銀行であるとか、その他の地方銀行が、中小企業のために非常にやつておるということですが、その資金は自己資金でやつておられますか、開発銀行の金でやつておられますか。それはわかりませんか。
  60. 山本義夫

    ○山本公述人 現在東京における東京都民銀行、あるいは埼玉における武蔵野銀行、あるいは大阪における大阪不動銀行は、幾分各府県の預託金もございましようが、ほとんどは中小企業の預金を資金源として貸出しをやつております。従いまして金融機関の性格から考えまして、どうしてもそこに少くとも三割程度の債務者預金を持たなければならぬ。たとえて言いますと、百万円の手形を持つてつて割引をお願いする場合におきましても、そこに残高というものが常時三十万ないし四十万なければ貸出しをお願いできないのであります。従つてそういう面をカバーするものとして、信用保険制度の改正をお願いできれば、そういう常時預金残高を必要とすることなくして貸し出し得るのではないかと考えております。
  61. 西川貞一

    ○西川委員 あなたの団体では中小企業の実態について御調査になつておりますか。私の伺いたいのは二十六、二十七、二十八年と三箇年を通じて見まして、そういう人たちの所得の状態が増加傾向にあるか、減少傾向にあるか、横ばいにあるか、そういうような点について根拠のある何か資料をお持ちでありますか。
  62. 山本義夫

    ○山本公述人 まことに申訳ない次第でありますが、本日はその資料は持つておりませんが、大体概観しまして、承りました範囲では漸次低下しつつあるという状況であります。特に下請の場合大企業の下請への支払いが非常に遅延しておりますので、非常な困却をしておる。従つて賃金なんかを支払う場合にも、あるいは税金を支払う場合にも、高利の方に走つて行くという形が大きいものでありますから、高利の金利で、ある程度は利益にもなり得たでありましようし、資本蓄積にもなり得だでありましようが、その金が全部外に流れ出てしまうというような形は、はつきりした事実のようであります。
  63. 西川貞一

    ○西川委員 もう一言伺いますが、商工中金などの金が、金利の高いことを御指摘になりましたが、使用する方の側から見るともつと高いように承つておるのです。いわゆる信用保証協会の保証料とか、調査費というものがかかつて、日歩四銭以上にもなつておるというふうに聞いておるのですが、使う方面の方から見られていかがでしようか。
  64. 山本義夫

    ○山本公述人 国民金融公庫の場合においては年一割二分でありまして、毎月一分の計算で金利を払つております。その上の商工中金の場合におきましては、現在普通短期は三銭でありまして場合によりましては二銭八厘でありました。設備資金の長期資金の場合は、三銭五厘ということになつております。ただ協同組合を通じて金が流れ出るものでありますので、往々にしてそこに協同組合の経費の分担金といたしまして大体日歩一銭、あるいは場合によりましては一銭五厘程度の費用が加算されて行く。この点よく誤解があるようでありまして、皆さん方はすでに御承知かとも存ずる次第でありますが、商工中金を通じたら日歩七、八銭になるというようなうわさがよくあるようであります。かりに日歩二銭の手数料がとられておるというようなことを具体的に検討してみました場合、ある組合が五百万円の手形割引のわくを持つておつた場合に日歩二銭の手数料、すなわち月六十銭の手数料になりますと、結局三万円の収入が入るわけです。そういたしますと大体男子事務員が一人、あとはいろいろな諸経費に充当してちようどくらいのところであります。そういうような見地からわれわれの団体でも組合を結成する場合におきましては、大きい金額を扱う場合には少くとも日歩一銭程度で十分ではないか。小さい額を扱う場合においても二銭程度で十分ではないか。それ以上に剰余金を残すべきではない。還元すべきであるというような指導をいたしておりまして、従つて合せまして五銭以上になつているということはまれな例はありましても、まずないような状態であります。信用金庫におきましては現在四銭五厘の最高が定められておりまして、場合によりましては五銭というところもなきにしもあらずであります。相互銀行においても三銭五厘、あるいはそれに近い数字のところにまで至つております。御案内のごとく中小企業金融機関の取扱う金額が非常に小さいので、たとえば一万円の金を貸す場合におきましても一億円の金を貸す場合におきましても、経費については同じ結果であります。いろいろな諸雑費を計算いたしました場合に——私はこの間各党との懇談会をもちまして社会党左派の稻村先生でありましたか、お話を承りまして新潟県におきましては五千円くらいの金を一週間か十日借りるのに日歩五十銭くらい払うのは何でもないような借り方をしておるという現実を具体的に考えてみますと、いわゆる信用金庫あるいは相互銀行におきます貸出しの日歩も少くとも一万円とか、あるいは五万円以下のものにつきましては、いわゆる金利の自粛統制と申しますか、そういうような大蔵省の指導調整を撤廃していただきましてある程度自由にしていただきますれば、現在横行しております株主相互金融のような三十銭、五十銭と莫大な金利を払わなくても、そういう正規の中小企業金融機関からあるいは五銭、あるいは七銭、高くてもせいぜい十銭程度でも簡単に借りられるのではないかという考えを持つております。
  65. 八百板正

    ○八百板委員 日本中小企業団体連盟として、今までに独占禁止法の改正について何か意見をおまとめになつたことがありましたならば、ひとつお聞かせ願いたい。またおまとめにならなかつたならば、あなたの御意見としてございましたら、ひとつこの際お聞かせいただきたいと思います。
  66. 山本義夫

    ○山本公述人 独占禁止法の問題につきましては、私どもの方の連盟におきましても一昨々日の役員会におきまして廃止反対の決議を決定いたした次第であります。すでに公正取引委員会の横田委員の御説明にもありますように、独占禁止法の廃止が労働者、あるいは中小企業の犠牲においてなされる傾向があるということははつきり申し上げられると思います。という点もまつたくわれわれと同感でございます。この点につきまして詳しく申し述べました場合に、相当現在の経済制度自体の問題にも深く入つて来るような次第でありますので、一応概括的に私どもの連盟ではそういうような見解を持つておるということをお答えしたいと思います。
  67. 川島金次

    ○川島(金)委員 ちよつとお伺いしたいのですが、最近株主相互金融という形で、大体対象は中小企業を対象としながら名称は何々殖産として中小企業から金を集めて金融をやつておる会社が大分籏出しておるようであります。これが東京だけでなく、地方にも大分このごろ進出して目立つておりますが、こういつたことについて企業連盟の立場から、実際において中小企業金融の上に、あるいは中小企業金融的な操作の上に弊害もなく順調に行つているものやら、あるいはその事柄が何か中小企業を対象としながら中小企業を逆に食つている、こういつたことも中にはあるように聞いておりますが、大勢としてはそういつた金融機関が中小企業にどういう役割を果しておるかというようなことについて、お調べがあつたとすればこの機会に御意見なりを承つておきたいと思います。
  68. 山本義夫

    ○山本公述人 お答えいたします。株主相互金融につきましては、最近非常に問題になつておるような事情でございますが、もともとこういうようなやみ金融は古くから存在しております。先ほど御質問にもございましたように、中小企業が大企業の下請をなした場合、その支払いが非常に延びている、そういうようなしわ寄せのために、賃金の支払い、あるいは税金の取立てを食つた場合、簡単に借りるためにはどうしてもやみ金融以外にはないというような状態でありまして利用程度は相当多かつたのであります。しかるところ、最近におきましていろいろな形の会社と申しますか、匿名組合と申しますか、法令の盲点をつきましたような、金融機関でもないような形のものが現われましてからは、実態を調べましたところ、そういう方面の金を大企業が借りるというようなことになつておる。大企業の中でも資金繰りにお困りのところもあるのでございましよう、そういうようなところから三百万円くらいの金を借りる。貸す方も中小企業へ貸すよりもその方が安全でいい。それを大銀行の方へ持つて行かれまして定期預金にする。通常大銀行では大企業に対しては四倍、千二百万くらいのわくをとつておる。株主相互金融というような形が最近跋扈するに至つたので、そういうやみ金融の関係までも中小企業は大企業に食われて、大企業の利用程度が多いということが認められると思います。ただ現実の問題としまして、国民金融公庫の場合は、非常に申込みが多いにもかかわらず資金源がない、あるいは事務職員の人数に制約されました関係上、事務の処理が非常に遅れる。必要な金を早期に借りるためには、手取り早いやみ金融に走る以外にない。あるいは商工中金を含めましたそれ以上の経済政策を対象とする金融機関につきましても、どうしても預金あるいは担保をとられるので、せつぱ詰つた金を借りる場合にはやみ金融に行く。そういうものを利用する形は、本来は中小企業の者が多いということが考えられますが、最近においては、大企業もそれを利用される。従つてああいう形の株主相互金融が出ましてからは、中小企業の方へ流れるやみ金融が減りまして、中小企業者の中には困つておる方が非常に多いというような笑うべき状態であります。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員長着席〕
  69. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 今の独禁法の問題ですが、独禁法廃止反対の御意思はよくわかりますが、生産過剰になつてその生産過剰をひとつ何とかみんなして話し合つて緩和しようと思う場合に、独禁法があるとやれない。中小企業の特定法というものがあつてそれでやろうというようなこともあるが、十分ではない。価格の協定をひとつやつてみようと思つても、これも非常にむずかしい。そういうようなことは中小商工業には起つておりませんか。
  70. 山本義夫

    ○山本公述人 お答えいたします。独占禁止法が廃止になつた場合、いわゆるカルテル、トラスト、コンツエルンのような形が復活するのではないか、そういうような復活も、過去の歴史を眺めました場合、たとえば紡績業におきましては……。
  71. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 その点はわかるのです。生産過剰と価格協定をどうします。中小企業の場合の生産協定、生産過剰に対する生産の操短ですね。
  72. 山本義夫

    ○山本公述人 その操短でございますが、通常大企業はがつちり組んで操短をやります。結局中小企業については全然放任しつぱなしのような形です。いわゆる中小企業も含めましたカルテル、あるいはトラストというような形になれば、また考えようがあるのじやないか。その場合には、カルテルあるいはトラストの形態は、ほとんど大企業のみのカルテルあるいはコンツエルンのような形になつて行く。従いまして協定の形は、中小企業は全然らち外にあるという形からして私どもは反対するわけであります。
  73. 太田正孝

    太田委員長 質疑はございませんか。——それでは山本さんありがとうございました。  本日の公聴会はこの程度にいたします。今日政府側の出席が午後悪かつたのは、他の委員会の関係及び病気等によつて欠席しましたのですが、きつく明日は関係者、大臣の出るように要望いたします。明日は金融関係について、第一銀行の酒井君、日本海員組合長の蔭山君、自由人クラブの直井君が午前に出る予定であります。午後に鈴木拓殖大学の総長、評論家富岡君、経済団体連合会の副会長の植村甲午郎君が出ることになつております。  今日はこの程度において散会いたします。     午後三時八分散会