○川島(金)
委員 この
大蔵大臣が、
公債政策に対して当初から反対をいたしていた理由は、今申し上げたごとくに、
日本経済の今日の
段階において
公債政策に手をつけるがごときは、その後においてインフレーシヨンを誘発し、それはやがて、ようやく安定の緒につきかか
つておるところの
日本経済の根本を脅かすものであるという立場において蔵相は反対をいたしてお
つたのであります。しかるに、一たび
予算編成後においては、その当初の
大蔵大臣の確信と
見通しを翻し、この
公債政策が何らインフレーシヨンを誘発するものではないと、たなごころを翻した言明を繰返しておりますることは、その心中まことに察するに余りありとわれわれは申し上げたいのでございます。(拍手)
日本の
財政経済の上に大きな重圧とな
つておりましたドツジ政策をば根底からはね返すというドツジ政策修正に対する要求は一昨年当初からわれわれの強く掲げて参
つたところであります。
従つて向井蔵相が、吉田
内閣のこのドツジ政策の一つの重点であ
つたインヴエントリー・フアイナンスを廃止いたした事柄については、われわれは必ずしも否定をするものではございません。しかしながら、このインヴエントリーを廃止した一面において、
財政の規模は昨
年度に比べて三百億
程度の膨脹で食いとめたと、こう鬼の首でもと
つたかのごとく宣伝をいたしておるのでありますが、インヴエントリーを廃止したかわりとして、三百億の
財政の膨脹を来したということは、実質的には、二十七
年度に比べて六百五十億の
財政膨脹を来したものであるということにわれわれは断定をしなければならぬのであります。
なおさらに、われわれの強く指摘いたさなければなりません問題は、
政府は本
年度の
国民所得を五兆六千億と推計をいたした旨をわれわれに発表いたしておるのであります。それに反しまして、
政府一般及び
特別会計、
関係機関
予算並びに
地方財政を通じての純
歳計額というものが、驚くなかれ、二兆八千億の巨額に上
つておるということは、
政府みずからがこの
委員会を通じて
国民の前に発展したところであります。今かりに、
政府の推定するがごとく、二十八
年度における
国民所得が五兆六千億であると仮定をいたしました場合に、
政府の今回立案をした国家
財政及び
地方財政を通じての純
歳計額というものが二兆八千億に上るということになりますれば、実に
国民所得の五〇%は
租税その他の形式において
国民の懐中から強引に吸い上げられるという形になるということは、いなめない事実であります。今われわれ一般
国民の生活水準は、
政府がしばしば言明をいたしておりまするがごとくに、なるほど戦争前に比較して、農民諸君の消費生活水準は一〇〇%
程度に回復したとわれわれも一応計算をいたします。しかしながら、農村以外の都市において勤労いたしますところの農村外消費
国民生活の水準は、いまなお戦争前に比較して、わずかに八五%内外をさまよ
つておるというきわめて低い生活水準に押えられておることは、これまた
政府といえ
ども否定するものではなかろうと思うのであります。このことを
考えた場合に、
政府の少くとも
財政経済政策は、独立
日本の
段階において、いかにしてもこの働く大衆の生活と台所を守りながら、名実ともに備わ
つた日本経済の自立達成を目途とするものでなければ断じてならないとわれわれは信じておるのであります。しかるに、ただいま申し上げましたように、
国民所得の五〇%にも上る多額なるところの
政府収奪を強行いたしまする場合において、その影響するところ、
国民経済並びに生活にいかに重大なる脅威を与えるかということは、
数字をあげただけでもきわめて明白な事柄であるのであります。
従つて、この二十八
年度の
政府予算は、現状における
国民経済並びに特に働く大衆の生活と台所を守ることを目途としたのではなくして、かえ
つて、あとで申し上げますが、一方憲法無視による再軍備を強行しつつ、一面においては大企業と大資本の利益に奉仕するところの乱反動資本主義政策をも
つて一貫した
財政政策だと断言しなければならないのであります。
さらに、われわれがこの機会において指摘いたさなければならない問題は、
政府は先般の総選挙以来、
国民経済の圧迫とな
つておるところの
租税の大幅減税を実行したと、これまた大声をも
つて誇称をいたしております。しかしながら、一たびこれを
予算の計数に眼を移しましてし
さいに検討いたします場合には、それは
国民に誇称しているにかかわらず、まことに欺瞞インチキの減税政策以外の何ものでもないということをわれわれは指摘しないわけには行きません。その論よりの証拠といたしまして、一例を
数字をも
つてあげますならば、所得税において、
昭和二十七
年度は補正額を合せまして
租税収入二千六百億万円であります。しかるに二十八
年度においては、
租税収入、所得税において二千五百億でございます。
従つて、この
数字を対比いたしますと、百億万円の減税ということになるのであります。また一方において、法人税においても、二十七
年度の補正額はその
収入予定額一千八百八十億であるに反し、二十八
年度の法人税
収入予定は一千七百七十億円でありますから、その差額はわずかに百十億万円の減税にしか当らないのであります。この
数字をも
つていたしましても、いかに吉田
内閣の一千億減税政策というものが、
数字の魔術であり、ごまかしであり、欺瞞減税政策であるということを何よりも有力に物語
つておるとわれわれは断言せざるを得ないのであります。その半面に、しかも巧妙にも
政府は、並びに与党は、ただいまの与党側からの賛成演説の中に附帯
決議として、「
財政資金の撒布超過の多額なるに備え貯蓄増強の施策を強力に推進する。」こういう附帯
決議をつけるほど自信がなく、
財政資金の散布超過に驚きおののいておるのであります。
しかもまた一方において
政府は、
日本の
経済自立達成のためには
資金の蓄積がきわめて重大な要件であるということを、しばしば繰返して述べておるのであります。その
資金蓄積は、いかにいたしましても
国民経済の消費
節約にまたねばならぬことは言うまでもないのであります。そのようなことを
政府は強調し、自由党の諸君まで貯蓄増強の施策の必要なることを、附帯
決議にまで織り込まなければならないという態度に出ておるにかかわらず、一方において一応酒の税が引下げられて、酒を直接飲みまする場合の単価はなるほど引下げられました。しかしながら、その単価を引下げた裏口においては、昨
年度の酒の税の
収入千三百七十億に対して、二十八
年度においては実に千四百六十億、すなわち酒税の増徴だけでも百億という巨額を見積
つておるのであります。さらにまたタバコの益金のごときにおきましても、昨年の千三百億に反しまして、二十八
年度は千四百億万円を予定いたすことにな
つておりまして、いずれも驚くなかれ百億万円の増徴を予定いたしておるのであります。このことは一体何を
意味するのであるか。
政府は口に
資金蓄積の必要なる要件を強調しながら、一方において酒税の引下げの美名のもとに隠れて、巧妙にも酒とタバコの両面にわた
つて二百億の増徴をはかろうといたしておることは、
資金蓄積を強調いたしておる手前において、きわめて大なる矛盾であると私は断言しなければならないのであります。むしろこの場合において、私
どもの立場からいたしますならば、酒税のごときにおいて、下級酒の引下げはあえてわれわれも反対をいたすものではございませんが、特級酒等の高級種類にわたるものはむしろ引上げて、その増徴をはかることこそが最も妥当なる
税制政策であろうとわれわれは
考えまして、別途の
税制改革案をつく
つたのであります。かように
政府の
税制政策から見ましても、その主張しておりますことと、その実行する政策においては、矛盾きわまるものを如実に露呈いたしておるのであります。
さらに見のがしがたい一つの事実は、先ほ
ども改進党の
早川君もこれを指摘いたしたのでございますが、いやしくも
日本のこの困難な生活を続けておりまする
国民から、血の出るような、いうところの血税を収奪いたしておるにかかわらず、
昭和二十七
年度の防衛費の一月三十一日現在における未使用分、すなわちいまだに使
つておらないところの
総額は、驚くなかれ八百億万円という巨大な額に上
つておるのでございます。少くとも
責任ある
政府が
予算を立て、
財政計画を樹立いたしまする場合には、その
総額は大半
国民の血税によ
つて行われるのでございまするから、あくまでもその
年度において
責任ある
計画のもとにおいて、
予算というものは立案されなければならないのであります。しかるに
政府は今申し上げましたように、一月三十一日すなわち
年度の三分の二を経過いたしておるにかかわらず、八百億万円という驚くべき厖大な額をば未使用分に残しておくがごときは、
国民の血税を徴収いたしておる
政府の
責任者としては、重大な
責任を感ずべきものであると私は主張いたしたいのでございます。しかもこれのみならず、ついでに申し上げるのでありますが、
昭和二十五
年度において使用する役人において不当な支払いをしたもの、あるいは不当な
支出をいたしたと認められるもの、あるいは横領着服等のごとき
事態においてむだに濫費された額は、会計検査院の報告によ
つて、実に驚くなかれ二百三十億に上
つておることはきわめて明白にされておるのでございます。さらにまたあまつさえ二十六
年度の会計検査院の報告においても、三十数億に上る不当
支出があると報告されておることは、
政府もこれを認めておろうと思うのであります。
かくのごとく二十五
年度と二十六
年度を合せただけでも実に三百億万円近いところの不当
支出、不当支払いが行われておるというこの事実は、道義の高揚を強調し、道義国家の建設をば強調いたしておりますところの吉田
内閣の首班である吉田茂氏として、重大なる
責任を感ずべきであるということをわれわれは強調しなければならないのでございます。(拍手)しかもこのような重大な
事態をみずからの
内閣のもとにおける各省において続出せしめながら、みずからの罪状をほおかむりして、ひとり
国民に向
つて道義の高揚を叫ぶなどとはまことに片腹痛しと言わなければならないのでございます。(拍手)
さらにわれわれはこの機会に、
国民の生活にとりまして重大な事項について指摘を申し上げ、われわれが原案に反対しておりまするゆえんを明らかにいたさなければならぬと思うのでございます。この
予算の表裏をなしますところのいわゆる
義務教育学校職員法案、あるいはまた
警察法の
改正、あるいは
恩給法の
改正等は、ま
つたくこの二十八
年度の
予算とは不可分の
関係にあることは言うまでもないのであります。そこで
政府の今般実施いたそうといたしておりまする
義務教育費の問題でございます。本
委員会において、あるいは本
会議おいて、しばしば岡野
文部大臣は、この法律を実施するゆえんのものは、僻陬に在職する小学校の教員にも、大都会の学校に奉職する教員にも、ひとしく俸給の正当な、平等な額を確保しながら、その生活を守るにあるんだ、こう述べているのであります。しかしながら一方においては、この
予算委員会においてもしばしば繰返してわれわれ同僚から主張されたごとくに、せつかく
文部大臣がこの法律を実施するにあたりまして、反面においては、今日
義務教育に携わるところの四十万小
学校職員の基本的人権である、憲法に保障された政治活動を完全に封圧をしようという陰謀をたくらんだものであることは、まぎれのない事実であります。
文部大臣は何か小学校の教員はただ自己の俸給が平均化され、そしてその俸給が守られるならば、いかなる自由、独立、自主権を剥奪されても、それをも
つて満足するものなりと曲解をいたしておるように、われわれは
考えられるのであります。昔から、われわれが言うまでもなく、奴隷か自由を選ぶという場合、古今東西の歴史を調べるに当りません。奴隷か自由かというときには、奴隷か死かという問題でございますから、奴隷を選ぶか死を選ぶかというときには、むしろ死を選ぶであろうということが、人類最高の理想であり、熱願であろうということは、
文部大臣もよく御存じのことであります。しかるに今日付与されておりますところの、せつかく憲法で保障された四十万に上る小学校の教職員諸君に対して、一方において俸給を守
つてやるのであるから、自由権、政治権は剥奪しても教職員は満足するであろうと
考えられております文部事
大臣こそは、きわめて時代錯誤のはなはだしき思想であると断言をせなければならない。われわれは小学校教職員諸君の俸給を守り、生活を守ることにおいては、あえて
文部大臣に何ら異を立てるものではございませんが、一方においてその俸給を守り、生活を守るという美名のもとに隠れて、天賦の人権、憲法に保障された教職員諸君の政治活動を完全に封圧するという、この暴挙に対しましては、教職員諸君とともに断固われわれは反対の意思を明確にしなければならぬのでございます。
さらにまたこの
予算と直接の
関係のある
警察法の
改正でございます。この
警察法の
改正の問題についても、しばしば本
委員会で問題とな
つたのでありますから、いまさら繰返してくどくどしく申し上げる必要はなかろうと思いますが、一言簡単に申し上げますならば、事、
警察法の
改正と言いながら、実質的には
日本に新たなる
警察制度を設置するという、根本的な新しい制度と言
つて過言でない問題であるのであります。しかもこの
警察法の
改正は、十月一日を目途として実施するのであると言
つておるのである。しかもその上に、この
警察法の実施をいたそうという重大なる事由と根拠は、国内の
事態きわめて緊迫、切迫をいたしておるという事柄が、重要なる根拠にな
つておるにかかわらず、この
警察法の実施の準備あるいは
予算的措置、きわめてこれが無準備、無
計画きわま
つておるということは、
予算委員会の本席上において同僚諸君から繰返し質問されました問題に対する
政府の
答弁が、実に朝令暮改、あしたに令し夕に変ずるという盲進無準備ぶりを明らかに露呈いたしておる。この事実をも
つていたしまして、しかもその上にいかなる緊急
事態がありやという、この重要な質問に対しては、実に抽象的で、
国民を納得せしむるに足るところの
答弁は、いまだか
つてこの席上においてはなされておらないのであります。このような無
計画、このような無準備、まさにどろなわ式
警察法の
改正であると断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)しかもこの実施にあた
つて、十月以降は、目下自治警に携わるところの
警察官の諸君は国家公務員になるにかかわらず、経過的措置があるのだからということで、一片の経過措置をもちまして、国家公務員であるところの
警察官の俸給その他の施設の費用をば、従来のごとく市町村にこれを負担せしむるというがごときは、実に
財政法違反の疑い重大であるとわれわれは断定せざるを得ないのであります。かくのごとく無準備に行われ、無
計画に行われ、しかもそのおかげで市町村自治体が国家
警察の諸費用を、
政府の一方的悪意によ
つて強要されなければならぬということは、実に重大な自治への侵害であると私は断言をいたさなければ、ならないのであります。
さらにまた
恩給法の
改正の問題であります。旧軍人の恩給に対しましては、われわれは必ずしもこれを全面的に否定するものではございません。しかしながら今日
わが国の憲法は非武装の宣言をいたしております。
従つて軍備は一応ないという建前を吉田
内閣がと
つていることは言うまでもございません。しかるに今日普通一般文官の恩給を
改正したからと称し、その反面に十七階級という複雑な階級を持
つておる旧軍人の恩給を、そのまま大体において今日復活しようという方針に対しては、われわれは深い疑点を持
つておるのでございます。私
どもの立場を明確にいたしますならば、旧軍人の中で戦争中その主人公あるいは兄弟を失い、夫を失
つた遺家族を初め、あるいはまた明日の生命をも予測のできないという高齢者であるところの旧軍人の人たち、あるいは傷癖者等に対しては、当然の国家的
責任において何らか補償をするということが必要であることをわれわれは認めておるのでありますが、
政府のこのたび
出して参りました一律的な、無差別的な方針に基くところの
恩給法の
改正に伴う
財政措置には、われわれは遺憾ながら反対の意を表明しなければならないということを、ここに明確にいたしておきたいのでございます。
さらにまた、これも先ほど改進党から触れられた問題でございますが、
中小企業の問題でございます。
政府は今般の
予算と、並びに法律をも
つて中小企業に対するところの専門金融機関の設置を試みたことに対しまして、必ずしも異論をさしはさむものではございません。しかしながら
政府の今次の
財政金融的措置をも
つていたしましては、今日のごとき窮迫を告げておりまする
中小企業は断じて救われないという
考え方を、われわれは持たざるを得ないのであります。ここで
中小企業に対する現状について、
政府に対して強力に訴えておきたい事実を二、三あげて、ことに大蔵、通産両
大臣の猛省をば、この際促しておきたいと思うのであります。たとえば
中小企業の現状について、
日本銀行の調査いたしましたところの
昭和二十七
年度中の十二月における不渡り手形の数というものは、千六百十五件、枚数は二千九十八枚、
金額におきましては二百三十一億八千九百万円に及んでおるのでございます。しかもこの不渡り手形の内容を一瞥いたしますと、一件当り百万円以下のものが圧倒的の多数を占めておるという事実であります。これはいかに今日の吉田
内閣の政策下において、
中小企業が大資本の上に犠牲とな
つておるかということを、何よりも有力に物語
つておる証拠であると私は思うのであります。さらにまた注目すべき
事態は、最近における
中小企業の廃業の続出でございます。これまた労働省職安局の調査いたしたところによりますれば、
昭和二十七年一月現在で廃業を届け出たもの六百六十五、さらに順次
増加いたしまして、昨年十二月のごときは実に一千件を数えるに至りまして、
昭和二十七
年度中における
中小企業の廃業者の数は、驚くなかれこれまた一万数千戸に及んでおると労働省は発表いたしておる事実であります。さらにまたわれわれが注目をいたさなければならぬことは、賃金の不払いの問題であります。
中小企業中において賃金を払うことができないという賃金不払いの件数の調査、これまた労働省の調査で明らかにな
つたのでありますが、昨年の十二月のごときには、実に二千件の多きに上りまして、その賃
金額の
総額は、十二月中だけでも数百万円に上
つたのであります。これを
昭和二十七年の一月から十二月までを総計いたしますと、これまた厖大な額に上
つたということを労働省は発表いたしておるのであります。この事実を指摘いたしますまでもなく、いかに
日本の
経済再建の重要なにない手でありますところの
中小企業に対して、吉田
内閣の無
計画な
中小企業対策、池田前
大蔵大臣の
答弁にもありましたことく、実に涙なき冷酷無残な政策をば強行して来た結果によ
つてこれが現われたということは、今の
数字がまた雄弁にこれを証拠立てておるのであります。かくのごとく
日本経済再建の重要なにない手でありますところの
中小企業が、吉田
内閣の諸政策によ
つて重大なる出血的犠牲を強要されておるということは、まぎれもない事実であります。
従つてわれわれはこの
日本経済再建の上にきわめて重大なにない手であります地位を占めております
中小企業の再建助成にあたりまして、現在
政府が実施いたそうとするがごときなまぬるい
答弁のお茶を濁すような施策に対しましては、全国の
中小企業者の名においてわれわれは断乎として反対し、
政府の猛省を促さなければならないのでございます。
さらにまた最後に指摘いたしたいのは、今日の農村の実況でございます。この問題は、先ほど私が消費水準の問題において、今日の
日本全国の農民の消費生活水準は、
政府の発表するところによれば戦前に比較いたしまして百パーセント
程度に回復いたしたと保証をいたしておりますが、一たび農村の中にわれわれが足を入れましてつぶさにその実況をながめて参りますと、必ずしも
政府が発表するがごとく、農村の生活は戦前の域に回復したものとは断定できない各種の事実をわれわれは遺憾ながら見るのでございます。ことに今日農村におけるところの所得税、直接国税は、なるほど
政府の保証するごとくではありませんけれ
ども、若干の軽減を見ておるということは事実であるのであります。しかしながらその反面において市町村民税あるいは県税、あるいはまた肥料等の価格引上げの面においてこれを考慮いたします場合においては、農村の現下の生活の実況というものはきわめて重大な
段階に入
つておるものとわれわれは認めなければならないのであります。論より証拠、農村における最近の預貯金の傾向をも
つて例をあげますならば、一昨年の四月現在と昨年の四月現在を比べると——そのこまかい
数字をあげることはこの際省略いたしますけれ
ども、実に驚くなかれ三割五分も
減少いたしておるということは、農林当局の
数字が雄弁にこれを発表いたしておるのでございます。さらにまた憂うべきこと事は、昨年の四月以来吉田
内閣の農村対策、あるいは市町村税金対策、あるいは肥料価格等の対策において重大なる欠陥がありましたために、この預金の
減少の傾向は昨年四月からさらに急ピツチに勢いを加えまして、昨年の十二月に至りまするや、さらに大幅の
減少を示しておるのでございます。この事実こそは、いかに現下の
日本六百万戸に上りまする農民諸君が——一時はなるほど終戦後において農村の何割かには預貯金をふところにして、あるいは豊かとはいえなくても安定した生活を続けておる者が一面にあ
つたことはいなめないのであります。しかしながらこの事実が物語るがごとくして、吉田
内閣がいかにも農村対策について熱意を示しておるがごとくに選挙の都度やあるいはその他のあらゆる機会に強調しておるにかかわらず、今私があげた二、三の具体的な事実を指摘いたしましただけでも、いかに今日の農民諸君が吉田
内閣の冷酷無残な農村対策の犠牲にな
つておるかということは、繰返して言うまでもなき明かなる事実であるということは、最もわれわれの重大な関心を注がなければならない点であるのであります。これらのことを指摘いたしますならば、いかに吉田
内閣の
財政諸政策が欺瞞政策であり、インチキ政策であるかということを、これまた雄弁に物語る何よりの証拠であると断諭せなければならないのでございます。
今や
わが国は敗戦後七年を経過いたしまして、なるほど一時のごとき
混乱した
経済を若干回復したという事実は、われわれといえ
どもこれを認めるにやぶさかではございませんが、いよいよ独立
日本の前途におきまして静かに今日を
考え、将来を事思いますときに、独立
日本の
経済的前述、国際的前途は、実にいばらの道であるということをわれわれは認めなければならないのであります。いわんや敗戦による荒廃した資源の欠乏、あるいは設備の荒廃、あるいはこれに反する人口の過剰等々を
考え、さらに貿易の今日の停滞の状況、生産の飛躍的な増強が認められない今日、この事実を私
どもは総合して
考えた場合、吉田
内閣が行
つておるようないわゆる手放し資本主義、自由
経済をも
つていたしましては、
日本の早急なる
経済の自立達成というものは断じて望めないし、それができると保証することは、これまた木によ
つて魚を求めることを
国民に示す以外の何ものでもないとわれわれは断言せざるを得ないのであります。(拍手)
日本の現下の実情を
考え、前途いぼらの遠き道を
考え合せますならば、この
日本経済の自立を達成せしめ、働く者をしてその職を得せしめ、働く大衆をしてその生活と台所を守りつつ、貿易の増強と、生産の増強とをはかりながら、いうところの
経済の自立を達成いたしますためには、今申しましたごとく、吉田
内閣がや
つておりますような手放し自由
経済をも
つていたしまするかわりに、徹底した
計画経済をも
つてするにあらざれば、断じて早急なる
日本の
経済自立達成は望めないということを、われわれは最後に強くこれを強調いたしまして、この吉田
内閣の二十八
年度の欺瞞に満ちた、ごまかしに満ちました
一般会計並びに
特別会計、
政府関係機関の総
予算に根本的に反対の意思を表明し、あわせて最後に冒頭述べましたことく、わが党提案の根本的
政府原案に対する
予算の組みかえ要求の動議に賛成の意思を明らかにいたす次第でございます。(拍手)