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1953-02-28 第15回国会 衆議院 予算委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十八日(土曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 西川 貞一君 理事 橋本 龍伍君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 榮一君    理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       岡本  茂君    加藤 精三君       加藤常太郎君    佐治 誠吉君       重政 誠之君    島村 一郎君       砂田 重政君    高見 三郎君       塚原 俊郎君    永田 亮一君       中峠 國夫君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    貫井 清憲君       野澤 清人君    原 健三郎君       日高 忠男君    南  好雄君       森 幸太郎君    山崎  巖君       山崎 岩男君    井出一太郎君       川崎 秀二君    小島 徹三君       櫻内 義雄君    古井 喜實君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君       山下 春江君    山手 滿男君       石井 繁丸君    受田 新吉君       川島 金次君    河野  密君       堤 ツルヨ君    中村 高一君       門司  亮君    稻村 順三君       下川儀太郎君    辻原 弘市君       長谷川 保君    柳田 秀一君       横路 節雄君    和田 博雄君       福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         内閣官房長官 江口見登留君         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         大蔵政務次官  愛知 揆一君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (理財局長)  石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豐治君     ————————————— 二月二十八日  委員加藤精三君、薄田美朝君、塚原俊郎君、日  高忠男君、高岡大輔君、吉川大介君、受田新吉  君、赤松勇君、稻村順三君及び長谷川保辞任  につき、その補欠として中峠國夫君、佐治誠吉  君、野澤清人君、山崎岩男君、山手滿男君、山  下春江君、堤ツルヨ君、柳田秀一君、和田博雄  君及び下川儀太郎君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員森幸太郎君及び和田博雄辞任につき、そ  の補欠として西村直己君及び稻村順三君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員西村直己辞任につき、その補欠として加  藤精三君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題といたします。  昨日の理事会申合せによりまして、引続き本日は特に警察法等重要法案に関する問題について質疑を行います。
  3. 成田知巳

    成田委員 議事進行。私たち野党は、本予算案に関連のある義務教育学校職員法案あるいは警察法案というような重要法案提出政府に要求いたしまして、この予算委員会で慎重に審議をしたいという要求をして参つたのであります。そのために二日間を要求しておりましたところ、自由党のお立場もあつて、きのう、きよう重要法案審議に入ることになつたのでありますが、昨日義務教育学校職員法案審議に入りましたところ、私たちの予想しておりました通り法案そのものに非常な不備があり、また財政法との関係においても非常な疑問点がある。また文部当局自治庁当局との間の答弁の食い違いもありまして、昨日中曽根委員から、それらの問題についての統一ある政府の弁明を求めるために、総理大臣出席を要望したわけであります。また今日までの総括質問一般質問総理答弁を留保されておる点も多々ありますので、あす最後の総括質問をスムーズに終えたい、こういう見地から、留保されておる問題についても本日総理出席せられまして、責任ある答弁を承りたいのであります。委員長の方で善処されんことを要望いたします。
  4. 太田正孝

    太田委員長 成田君の御趣意のほどは承知いたしました。政府にこれを申しまして、総理大臣が適当の機会になるべく早く出席して、御趣意に沿ういうにいたしたいと思います。  中曽根康弘君。
  5. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は恩給の問題につきまして若干御質問をいたしたいと思います。主管大臣答弁を要求いたします。  まず第一は、政府恩給法の一部を改正する法律案なるものをここへ提出いたしましたが、いかなる精神でこの恩給法改正提出になりましたか。占領中は、恩給法改正についてずいぶん要望があつたにもかかわらず、一向それらしいけはいも見せず、また昨年は、独立の第一年であつたけれども、一時を糊塗するような案が提出されておる。今度出て来たものは、やや目鼻だちの整つたものとは思うけれども、占領中と現在といかなる事態の変化によつて、いかなる精神でこの法律案提出したか、まずお尋ねいたしたいと思います。
  6. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 恩給法は、旧軍人恩給に関しまして、昭和二十一年に総司令部覚書によりまして、ことごとくそれを廃止することになりまして、一部を修正いたしたのであります。昨年四月二十八日日本独立を回復いたしましたので、従いまして軍人恩給に関する総司令部覚書もなくなりました。そこで政府といたしまして、独自の判断に基いて旧軍人恩給をある程度復活した方がいいと考えて、この恩給特例審議を進めるために、議会の了承を得て恩給特例審議会というものを設けまして、その答申に基いて、旧軍人恩給のある意味においての復活をいたすようにいたした次第であります。     〔委員長退席塚田委員長代理着席
  7. 中曽根康弘

    中曽根委員 私がお聞きしたいと思つておりますことは、占領中、官吏は依然として認めておつたけれども、軍人限つて恩給が停止された。占領軍はいかなる関係でこれを停止したか私はわかりませんが、当時日本政府は、その占領軍の意向を受継いでやつたと思う。その占領軍意図は、大体われわれが察するに、軍人に対する懲罰行為としてそういうことをやつたのではないか、つまり軍国主義に対しておきゆうをすえる意味で、あるいは将来の戦争への参加を防止するというような意味において、昔の軍人に対する懲罰的意味において恩給の停止をやつたのではないかと思う。政府はその意図を受けてそれを執行したのであると思うが、官房長官はいかなる精神でそれが行われたと思うかをお尋ねしておるのであります。
  8. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 占領軍の意思がどこにあつたかを明確に察知することはできませんが、政府といたしましては、占領下におきまして、占領軍覚書というものは、ほとんど絶対に近いものでありましたために、それを実施した次第であります。
  9. 中曽根康弘

    中曽根委員 覚書を受継いでやつたのであるけれども、日本国民に対する責任者日本政府であつたはずです。それがどうしてこういうふうに態度をかえて独立したら恩給法というのもを出して来たのか。その前の心境と今度の心境、つまり前はいかなる目的でああいう措置をとり、今度はいかなる目的でこういう措置をとるか、その基本的な精神変化目的変化官房長官にお尋ねしたいと思います。
  10. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府といたしましては、軍人のみの恩給を停止して、それによつて戦争責任軍人のみにかぶせるかのごとき感のあることは、本来好ましくない措置であると考えておつたのであります。司令部命令によつてそれを停止いたしておつたのであります。
  11. 中曽根康弘

    中曽根委員 総理大臣が前にこの委員会において答弁されました言葉を私は覚えております。それは、日本の自衛問題について野党側委員質問いたしましたときに、総理大臣は、遺家族に対する手当も十分できず、戦争責任軍人ばかりに帰しておいて、そういう状態日本の再軍備などというものはとうていできない、こういうことを言われておりました。この言葉は非常に重要な言葉であると思つて、私はその速記録をとつてあります。ただいま官房長官は、戦争責任軍人ばかりではない、こういう答弁をされましたがそれでは一体戦争責任はどこにあるのでありますか。日本独立いたしまして、そういう問題に対する反響をして過去のあやまちを繰返さない精神状態日本人はもどらなければならないときであります。しからば戦争責任総理大臣官房長官はどこに帰そうというのか、まずお尋ねしたい。
  12. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 戦争前のどこまでさかのぼるかは存じませんが、占領軍東京裁判を開くにあたりまして、満州事変までさかのぼつて責任を問うたのであります。私どもは的確に戦争責任満州事変に始まるということは申し上げられないと思いますが、いずれにしましても、満州事変前後から太平洋戦争勃発に至るまでの軍を含めました政府、それに戦争責任があると考えます。
  13. 中曽根康弘

    中曽根委員 国民一般には戦争責任はないと解してよろしいか。
  14. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 直接の責任国民にあるとは申しかねると思います。
  15. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこでお尋ねしたいと思いますが、直接の責任のない一兵卒や応召の将校、あるいは下級軍人等は、占領中は非常にみじめな待遇を受けて、財産権ともいうべき恩給は停止されておる。しかも当時、満州事変以来、特に戦時内閣になつてから、閣僚の身分にあつたり、あるいは栄華を誇つた人たち恩給をもらつてつたということは、われわれ実にふかしぎに考えておるのであるが、この点総理大臣官房長官は、政府政策として穏当であつたと思うかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  16. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、元軍人恩給のみを停止しておつたということは、穏当でなかつた考えております。
  17. 中曽根康弘

    中曽根委員 軍人恩給は停止され、文官恩給は停止されない。しかし官房長官お答えによれば、戦争について責任のある政府の中にあつて文官としての恩給を戦後において受けておる人もある。これは非常なる不公平であります。国民道義に反する措置であると思う。そういう人たちが、戦時内閣において宣伝その他に非常に活躍して、政府責任者として相当な地位を占めておつた人たちが、また戦後において返り咲いて、はなばなしく政治的舞台におどつておるという事実もあるが、こういうことは道義高揚を盛んに主張する内閣として、はたして妥当な行為であるか、そういう人たち責任を感じないのであるかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  18. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 先ほど申しました満州事変以後太平洋戦争勃発に至るまでの軍を含めました政府責任者は、この戦争に関して責を感ずべきであると思います。しかしながらこのことが、特に今日公職につき得ないとかいうことを意味せられるのでありますならば、私は必ずしもそうは考えません。
  19. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は法律的責任を言うておるのではなくて、道義高揚を主張しておる吉田内閣閣僚その他の道義的責任を、いかにお考えになられておるかということを申し上げておるのです。下級軍人その他は何ら罪はない。命令行つて戦闘行為をやつたにすぎない。官房長官お答えによりますと、責任があるのは、政府指導者である、命令を与えた人たちである。その命令を与えた人たちが、戦後において、あるいは文官であつたために恩給をもらつていたという事実がある。あるいはその後において追放解除になつて、再び政治舞台に返り咲いて、はなばなしくやつておる事実がある。しかし一方においては、全然責任のなかつた下級軍人たち、これは恩給ももらえないで、塗炭の苦しみにあえいでおつたという事実がある。道義高揚を主張する内閣がこういうことを見のがしていいのかどうか。その内閣閣僚におられる方々が、精神的に何らかの道義的責任を感ずることはないのかどうか、こういう質問であります。
  20. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 何らかの道義的責任を感ずることはあると思います。それだけに敗戦後の日本の再建には全力をささげなければならないと考えております。
  21. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいまの御心境総理の御心境であろうと思いまして、この問題はこの程度にいたします。  次に承りたいと思いますのは……。(「野党の総裁だ」と呼ぶ者あり)今の質問は与野党を問わず、国民として私は申し上げたのです。  次にお尋ねいたしたいと思いますことは、この恩給法が出て来ておる。ところが内閣には、官房長官の下に社会保障制度審議会ができております。この社会保障制度審議会は、日本における総合的社会保障制度の確立のために建議案を出しておる、勧告案を出しておる。そうして総合的な、統一的な社会保障制度のもくろみをもつて内閣がつくつたものであります。しかるに先般来政府措置を見るというと、あるいは厚生年金の問題であるとか、あるいは公務員共済組合の問題にしても、あるいは恩給の問題にしても、非常にばらばらな中途半端なものの集合になつておる。積木細工のようなものになつておる。これで内閣社会保障制度審議会をつくつて、総合的な社会保障制度を確立しようとした意図に沿つているかどうか。私は沿つていないと思うのでありますが、この問題を主管大臣である官房長官はいかにお考えになりますか、いかなる政策を今後お持ちでありますか。
  22. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 そのお答えをする前に一言申し上げておきます。先ほどの御発言が私に対する御質問であれば、私は戦争責任は満洲事変に始まつて太平洋戦争勃発に至るまでと申し上げたのでありますので、その間の軍を含めた政治に当つておる者を含むのでありまして、私は入りません。  それから社会保障制度のことでありますが、それが理想的に整備されまして、旧軍人及びその遺族のみならず、広く一般国民の生活が保障されることは、まことに望ましいことでありまして、政府も従来から社会保障制度整備拡充のために尽力をいたしておるのであります。ところで国家国家全務員に対しまして、使用者としての立場から、公務員が公務のために死亡したり、または傷病にかかり、あるいは老廃になつたり、退職する場合は、本人退職金または遺族に若干の金を出しまして、使用者としての責任を果さなければならない。こういう観点から、社会保障制度の完備を期しつつあるのであります。その間におきまして、将来この旧軍人恩給の上において不等に差別待遇を受けておることを直すことは、これは国として道義的にも当然のことであると考えまして、今回の措置に出たような次第であります。
  23. 中曽根康弘

    中曽根委員 官房長官の先の方のお答えについては、私はあえていろいろ申し上げません。だれが戦争責任を持つているかということは、本人の個人の心境によつてきまることであつて、形式的にいろいろ外部から責め立てられても筋のないことであるかもしれません。また今度の戦争のいろいろな原因や、たどつて来た経過を考えてみれば、外国人が言つておることは必ずしも百パーセント正しいとは私は思わない。日本には日本の正当な言い分もある。アメリカは最初は百パーセント日本が悪く、百パーセントアメリカがよかつたと言つているけれども、必ずしも私はそうとは限つていないと思う。アジアにはアジアの宿命があり、日本には日本の由来があります。そういう点について連合国側は最近は大分反省していると思う。そういうような観点から私は質問をしているのであつて、必ずしも形式的なことを言つているのではない。しかし少くとも道義高揚ということを施政演説の第一番に言つている内閣としては、この点については進退はきわめて慎重でなければならぬはずだということを申し上げているのであります。  そこで第二の官房長官の御答弁は、私の質問の肯綮に当つていない。私が申し上げたのは、総合的な社会保障制度を確立しようとして、内閣社会保障制度審議会というものをつくつた。ところが現に各省各庁がやつていることは、みなばらばらなことではないか、これをいかに統一して総合的なものへ持つて行くか。総合的な社会保障制度を確立するために、審議会を設置した趣旨に国政を運営しているのかという問題についてであります。この点については恩給法の問題、厚生年金の問題、共済組合の問題、こういう問題を将来どういうふうに統一して行く所存であるか、このことをお尋ねしているのであります。
  24. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 社会保障制度審議会答申は、政府といたしまして事情の許す限り、あるいは政治実情から見まして、これを取入れ得るものは、その精神におきまして十分参考にいたしておるつもりであります。
  25. 中曽根康弘

    中曽根委員 先般この恩給等の問題について、社会保障制度審議会から意見具申が出ているはずであります。この意見具申官房長官はいかにお取扱いになられますか。
  26. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 社会保障制度審議会におきましては、社会保障制度拡充推進ということを目途として献策をされたのでありまして、政府におきましても、今後社会保障制度整備拡充して行く際に、これを参考として行きたいと考えているのであります。しかし一方政府は旧軍人及びその遺族恩給につきまして、恩給法特例審議会調査審議を煩わし、審議会から軍人恩給についての建議がありました以上、政府としてはこの審議会結論を十分尊重すべきものと考えて今回の提案をいたした次第でございます。
  27. 中曽根康弘

    中曽根委員 政府社会保障制度審議会結論を尊重しているとは思わない。いつもこれを無視しているのが政府態度である。今回もまた同様であろうと私は思います。しかしその問題はおいて、時間がないから次の具体的問題に入ります。  まず第一は法律第二百四十四号によつて昭和二十三年以前退職者恩給ベース・アップいたしました。ところが今度の恩給法に伴いまして、旧軍人についても同じ水準、少くとも下らざる水準によつて、この基礎を計算しなければならないはずであります。しかるに今般政府は四百五十億円というわくに入れ込むために、昭和二十三年によるベース・アップの基準をそのまま取上げないで、機械的に四号下げている事実がある。こういうふうな不均等な待遇を何ゆえ軍人について与えるのか。これはこの法案の重大な欠陥であると思うが、官房長官はいかにお考えになりますか。
  28. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 恩給特例審議会建議に盛られました額を四号下げていることは、今おつしやつた通りであります。これは今日国家財政上やむを得ないのでありまして、建議精神といたします旧軍人恩給であるということ、それから文官との均衡をとるという精神は失いませんが、どこまでも尊重いたしますが、この額につきましては、これは何としても国家財政とにらみ合せなければならないので、この点はやむを得ない措置であつた考えます。
  29. 中曽根康弘

    中曽根委員 そうすると、軍人以外の者についてはやむを得ないということはない、軍人については四百五十億というわくをつくつてしまつたので、そのわくにはみ出したものは圧縮して入れる以外にない、そういう御措置をおとりになつたものと私は考えます。これは非常に不穏当な措置であろうと思います。財源とか財政ということを中心にして、国民の公平という観念が第二に押しやられておる。これは政府としてとるべきではない。同じことをするなら、平準化すべきである。文官が高いなら文官を下げても、それを一般国民と同じ平準化した待遇をとるのが政治の本道であると思う。この点については私は政府の重大なる失政であると考えます。  時間がありませんから次に移ります。傷痍者の問題であります。御存じのように七項症を取上げておりません。七項症につきましては、一体該者者がどれくらいおりますか。まず人数からお尋ねいたしたい。
  30. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ちよつと数字を調べております。—この席に六項症までの数字しか持ち合せておりませんので、七項症の数字は後ほど調べてお答えをいたします。
  31. 中曽根康弘

    中曽根委員 こういう重大な問題について手元に準備がないということは、きわめて遺憾な態度であります。七項症は、従来は増加恩給普通恩給と両方もらつておりました。これをやめて一時金にして、勅令第六十八号によつて、当時は小は五百円から最高一万円程度の一時金でおつぱらつておる。この人数がどれくらいあるか私は今お尋ねしておるのでありますが、今度の法案によつても、七項症については増加恩給普通恩給を差上げるという態度が依然としてありません。これまた既得権に対する重大な侵害であります。財政上の理由があるならば、これは内部で作操作すればいいことです。しかし少くとも既得権として与えられたものを一時金でおつぱらうということは、政府が従来戦争へ出て行つてくれと頼んだ人に対する約束を果していない。国家約束した公約を果さないというところに道義が乱れる根本がある。こういうことを放任しておいてはよくありません。これを直す御方針は政府にはありませんですか。
  32. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 六項症までを取上げて七項症を入れなかつたのは、これは恩給特例審議会におきましても非常な議論がありまして、結局審議会において慎重に検討いたしましました結果この結論を得たのでありまして、この軍人恩給の問題が重大な社会的結果を来すことを政府としても承知いたしておりましたので、審議会委員を選ぶにつきましては、各方面の代表的意見のある人、その中には旧陸海軍軍人も入つておるのでありますが、その人たちの選考にきわめて注意をいたしまして、その選ばれました委員の十分な検討の結果、今日の措置としては七項症を除くことはやむを得ないだろうということになつてこれが除かれたのでありますが、政府建前として、それだけのバランスのとれた答申は、特にまた先ほど申し上げましたこの建議精神は、どこまでも尊重しなければならぬという考えから、今度この恩給復活措置をいたすにつきましても、構想は絶対にくずさないという建前をとりましたので、七項症の者も自然落されたわけであります。しかし今質問者の御意見も、社会実情から見ましてもつともな意見でありまして、この点につきましてはさらに政府として研究するつもりではありますが、一応今回の恩給復活にそれを入れなかつたのは、審議会構想をそのまま尊重して行くという建前政府がとつた結果であります。
  33. 中曽根康弘

    中曽根委員 将来何らかの措置をおとりになるというお約束でありますから、私はこれ以上追究いたしませんが、わが党といたしましては、そういう法案については、これを修正する意思を持つております。もし政府がかりに善処するとするならば、法案を修正するかどうかしりませんが、かりに最低限の措置考えられるのは、一時金の金額をふやすということであります。五百円から一万円程度でおつぱらつているということは許しがたいことです。なぜ当時そういうなことをやつたかといえば、占領下の特殊状態であつて占領軍がおつたために、七項症なんかけつ飛ばして、一時金でおつぱらえということでやむを得ず強行されたのでございます。一体その人たちが何人おるか、その人たちがいまだにそういうような待遇を受けておることは、占領政策の是正をやらんとしておる政府としては、重大なる落度であります。これについて一時金で将来慰める措置をするのか、法案修正の用意があるのか、その点だけお尋ねいたしたいと思います。
  34. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 七項症に該当する人の数がわかりましたから申し上げます。七千三百四十五人であります。これを今後どうするかということにつきましては、相当の金額を要することでありますし、すでに先ほど上げましたように、審議会においてそういう点もむろん考慮に入れて十分に審議を尽したあとでありますから、政府といたしましても、これにもし新たに措置を講ずる場合には、十分慎重に検討して他に及ぼす影響等も考えた上にせなければならぬと思つておるのであります。
  35. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいまの七千三百四十五人という数字は誤つておると思います。私が政府のある責任者から調査したところによれば、一万八千八百人おる。私の数字の方が正しいと思う。政府はもう一回それを御調査願いたいと思う。一万人も違えば大きな差になります。  それでは次にお尋ねいたしますが、従来は三年以上の下士官等に一時恩給をやつておりました。それが今度は七年以上連続した勤務を要求しております。しかし現在においては、文官は依然として三年で一時恩給をもらつておる。七年以上の連続した勤務は、非常に大きな制限であります。なぜこのような不公平な措置をおとりになつたかお尋ねいたします。
  36. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これも六年以上にするか、七年以上にするかということは、審議会の一番大きな議論のあつた問題の一つなのでありますが、結局七年ということにいたしたのであります。この点におきましても、審議会構想をくずさずに行くという政府の趣旨に基いたものであります。
  37. 中曽根康弘

    中曽根委員 審議会構想そのままを引継いだと言われますが、何ゆえそういう措置政府としておとりになつたかということを聞いておるのです。七年以上の連続ということは、ちよつとケースがまれになるのです。三年応召して一年くらい帰されて、また三年行く、あるいは四年行く、四年行つてまた帰されて半年ばかりたつてまた応召して五年行く、そういうふうに七年を継続するということはそうはない。そこで政府の方としては、なるたけ財政負担を少くするために、七年連続勤務という非常に大きな制限を設けておつぱらおうとした態度ではありませんか。それではほとんど大部分の下士官等はこの恩典に浴せないということになる。こういうように故意に、せつかく応召その他の国家命令によつて出て行つて勤務して来た人たちを、逃げよう逃げよう、おつぱらおうおつぱらおうという態度でこの恩給法ができておる。これは非常に遺憾な取扱い方であります。なぜこのような取扱い方をしたのか、財政的理由でそれをやつたのか、ほかに理由があるのか。第一、文官とのこの不公平—文官は依然として三年以上です。それがこの恩給法軍人に限つて七年以上、しかも連続して勤務した者ということになつておる。この不公平を何ゆえやつたかということをお尋ねしたいと思う。
  38. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 必ずしも財政上の観点からのみあれを決定いたしたのではないのでありまして、審議会におきましては旧陸海軍軍人の代表的な人も入つており、その人が旧軍人立場からも十分に検討してこの成案を得られたのでありまして、財政観点からのみと言うことはできないと思います。
  39. 中曽根康弘

    中曽根委員 官房長官恩給法特例審議会の会長として今ここで報告しているような態度でありますが、私は内閣官房長官としてのあなたにお尋ねしているのです。審議会がああだこうだということを聞いているのじやない。内閣としてどういう精神文官と武官の関係を不公平にしたかというその理由をお伺いしておるのであります。片方は三年でよろしい、片方は七年以上連続して勤務しなければならぬ、こういう重大な不公平を何ゆえ内閣として認めたかということをお尋ねしておるのであります。
  40. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 旧軍人恩給というものは世論的に申しまして相当問題があると思いますが、政府としてこの恩給措置を決定いたすにつきまして、各方面の意見を十分に取入れて、その結論にまつてやろうというのが、恩給法特例審議会でありまして、その中において相当時間を費しまして旧陸海軍観点からも十分議論を尽しましたもので、しかもその成案は私は相当バランスのとれているものだと考えます。そして文官との多少の今お話のような点がありますけれども、しかしながら今日軍人恩給という非常に莫大な経費を予算に組み込むにつきましては、ほかの財政上の関係考えなければならぬので、その点も審議会並びに政府ともに考慮に入れまして、今回の措置に出ずるほかなかつたのであります。
  41. 中曽根康弘

    中曽根委員 社会的にいろいろ問題があると言われましたが、どういう問題があるのでございますか。
  42. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 軍人恩給に対しましては、相当これに反対する意向があります。その反対論の中にも首肯すべきものもないとは言えないと思うのであります。そういう点から、この扱いにつきましては特に慎重を期したということを申し上げる次第でございます。
  43. 塚田十一郎

    ○塚田委員長代理 石井君の関連質問を許します。石井繁丸君。
  44. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 官房長官に伺いたい。ただいま審議会においては権威者をメンバーに加えて、そして結論を出したのである、こう言われるのでありますが、その審議会に加わつた権威者というのはどんな人でありますか承つておきたいと思います。     〔「すぐわかるじやないか」「官房長官しつかりしろ」と呼ぶ者あり〕
  45. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 何でもないことでありますけれども、恩給局長が一昨日来急病になりまして寝ておりますので、今わかりません。
  46. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 それではお尋ねしますが、有力者を加えたというのでありますから、この問題は非常に重大な問題であるので、その中に応召になつた一般の兵隊あるいは応召から下士官あたりでやめてしまつた兵隊、これらの一番利害関係のある人を加えてあるかどうか、お尋ねしておきます。     〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕
  47. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 応召した一般の兵は入つておりません。
  48. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 実にその点不届き千万でありまして、御承知の通り恩給のとれるような人ばかりを入れている、将校にしても、佐官あるいは将官を入れたのだろうと思う。それからまたそれに参与した関係者も文官等において恩給関係がある人を入れて、一番大きな数百万に上るところの召集令状一本で召集された陸海軍関係の兵隊等は入れておらない。そうして出した結論でありますから、つまり関係者に非常にぐあいよいよ、ほんとうに犠牲を払つた一般の召集軍人に対しては、何らの考慮も払わないという結論が出たと思うのですが、その点について官房長官はどう思つておりますか。
  49. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 そこが私の人選につきまして慎重を要する点と申し上げた点でありまして、必ずしも兵の代表者が出ておりませんでも、陸海軍に長く勤務しておりました人であり、特にその中において軍の中からこれは最も代表的な人であると見られておる人でありますれば、そういう兵の心理状態あるいは生活状態ということを十分心得て、委員としてその意見を代表されたことと信じます。
  50. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 御承知の通り昭和二年の恩給法におきましても、兵隊であつても十二年になると恩給がついたわけであります。つまり加算等を加えるので戦地において長くなりますとと、一般の兵隊でも下士官でなくても恩給がつく、下士官にしましても兵隊から下士官等になりまして、一箇年下士官をしただけでありましても、前後通算して三年になると、これに対しては一時恩給を加える、こういうふうになつてつた。また途中で帰つた兵隊等については論功行賞についての若干の公債等が発行になつてつたのでありますが、これが今回のではすべて御破算になつておる。そうして戦地において四年なり五年なり加わつたものについても、今度の七年において一切この対象にならない。戦争でだれが一番犠牲を払つたかということは官房長官もよく御存じだと思う。人のことを言つてははなはだ失礼でありますが、大将あるいは少将、あるいは大佐、中佐という人は、大体生活が保障できるだけの給料をもらつてつたのであります。ところが召集令状一本で召集された軍人は、五円五十銭あるいは六円五十銭という給料で、五年なり六年なりひつばられておる。その結果におきまして、一応戦争中においても生活を保障された人に対しては恩給復活する。しかるにそういう召集令状一本で犠牲になつた一般の兵隊、あるいは兵隊から下士官になつた人々に対しては何一つ考慮をしない。こういうことは何よりも不都合千万であり、これほど矛盾したことはなかろうと思うのであります。大体において将校あるいは元帥、こういう人々が恩給をもらう前に、まず一般召集軍人に対して何らかの誠意を示すことがあたりまえだろうと思います。それに対して自分の方ではもらうことは考える、そうして兵隊のことは何も考えない、これほど不届き千万なことはなかろうと思います。こういうことについていかに国民の一般召集軍人たちが憤慨しておるか、あるいは一般召集軍人、下士官等がこれに対して不満を持つておるかということは、官房長官もよくおわかりだろうと思う。国に財源がないのであれば、これはやむを得ないということもあろうが、それならばまず戦争中生活を保障された人に対して恩給をやることは停止しておく、あるいは戦争中にいろいろな仕事に勤務した文官等に対して恩給をやる。これらはやはり戦争関係して日本を敗戦に導いたのだから、これらの人々に対しても恩給を停止する、そのかわり応召軍人に対してだけは、何らかの誠意を示さなければ筋が立たぬと思うのであります。別に戦争がすきで行つたわけでもなく、召集令状一本で行つたのである。ところが文官にしましても、武官にしましても、戦争中生活の保障を一応されておつたということは確かである。こういう人々に対して恩給の恩恵を与えておいて、この召集された者に対して何ら一顧だにしないということは、これは言語道断であろうと思うのでありますが、この点について官房長官はどうお考えになつておるか、承つておきたい。
  51. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 年限の制度は私やむを得なかつたのではないかと思いますが、いわゆる職業軍人のみが恩給復活の恩典にあずかつておると考えられるのは、事実に相違しておるのでありまして、私の承知しておりますところでは、九〇%以上が職業軍人にあらざる軍人及び遺家族であると考えております。
  52. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の問題は非常に重要な問題でありまして、これからお尋ねをして行きたいと思います。まず加算の問題でありますが、政府は今度の案によりますと、加算を打切つておる。何ゆえにこの加算の打切りをおやりになつたかお尋ねいたします。
  53. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは一度廃止されました軍人恩給復活する。その場合に、一度にそこまでは国家財政が許さない。これは主として財政的な見地に立つてきめたものだと考えております。
  54. 中曽根康弘

    中曽根委員 一度に許せないということは、将来においてはこれを認める余地があるように考えられますが、その通りであります。
  55. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これはまつたく将来の問題でありまして、日本国家財政が将来どういうふうに改善されますかわかりませんが、そういう今から想像もつかない非常にいい時代になることもあり得ると思います。そういう場合におきましては、むろんこれは適当な措置が講ぜられるものと考えております。
  56. 中曽根康弘

    中曽根委員 国家財政が充実して来れば、適当なる措置が講ぜられるという答弁でおりますが、その答弁は、あつたようなないような答弁であつて、その場で思いついて、官房長官に言つておられたような感じがいたします。いずれにせよ、私がここで申し上げたいことは、ただいま石井君が言つた通りの問題であります。大体応召した軍人どもは、たいてい加算があつて初めて恩給をもらえるという連中が多い。しかしその人たち考えていることは、恩給の金がもらいたいということではない。官房長官は今度の戦争責任は、政府の要路にあつて、一般の軍人その他には直接的にはないと言われた。応召軍人あるいは下士官等の人たちは、まつたく純真な気持で日本を守ろうというひたすらな気持で戦争に出て行きました。そうして非常な苦労をして帰つて来たりあるいは戦死をされておる。四年、五年あるいは六年と続いたこれらの大きな労苦に対して、国家が何らの措置もしないというところに大きな不満がある。必ずしも金をよこせということではありません。従来の恩給法によれば、それが加算という形によつて認められて来た。それが認められないということなのであります。何も問題は加算ではないのです。自分たち国家のために、少くとも純真な気持でお役に立つたと思つたその労苦が認められないというところに大きな問題がある。この問題を何とか解決する方法はありませんですか。
  57. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今具体的の方法につきましてすぐ答弁する準備がありませんが、その点は国としても相当考えなければならぬ点であろうと考えております。
  58. 中曽根康弘

    中曽根委員 私はこのように思います。石井君が言つたように大体職業軍人やあるいは将官とかあるいは上級の軍人たちに割合にこれはいいと思つておる。しかし何十万あるいは何百万という一般の草莽の国民たちは、純真な気持でお国のためと働いている。しかも今日本の中堅層になつている人たちが、今度の恩給法によつて政府から何ら顧みられていないというところにこの法案の重大な欠陥がある。もし政府財政上の困難な問題があるならば、それは内部の問題でバランスをとつたらどうですか。あるいはさらに一時金をやるとか、あるいは公債でもよろしい。あるいは若年停止をその部分については引上げてもいいじやないか。五十才にしても五十五才にしてもいい。とにかく恩給証書とか、国家からその労若を認められた何らかの紙でももらつておいて、自分はこれだけの労苦をしたのだという語りぐさがほしいのだ。その気持を察して政治をとつてやることが、占領政策の行き過ぎを是正したり、日本を再建したりするために一番大事な精神的要素です。それは、戦争を謳歌するという意味ではない。純真な気持で国のために戦つた者に対してわれわれが謝意を表すという素朴な考え方であります。何らかのこういう措置をやらなければ、国民は絶対に納得しません。一時金をやつてもよろしい、あるいは恩給引上げをやつて若年停止を引上げてもよろしい。内部のバランスをとつて上のものを低くしてもよろしい。全体を低くしてもよろしい。とにかく何らかの方法によつてこの加算にかわるべき措置をやらなければならないと思うが、政府はいかにお考えになりますか。
  59. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 年限の短かい者に対しまして加算をしないために恩給に浴しない、年金に浴しない者に対しまして、一時恩給措置を講じておりますことはこの法案にある通りであります。なほその他の点、これは国の力が許せばもちろんいたすべきことでありますが、今日の財政実情から見まして、政府といたしましてはこの法案に盛つてありますものが、やむを得ない最善の措置であると考えております。
  60. 中曽根康弘

    中曽根委員 国の力の問題ではない。閣僚諸公の頭の力の問題だろうと私は思う。頭をめぐらせばそういうものは解決するのです。つまり金額の問題ではなくて、公平の問題だということである。恩給の一番大事な点は、金額の問題よりも公平の問題が一番大事な問題である。ともかく加算を切られたということに対して、何十万という、しかも日本の中堅になつて働いている人たちが、国家から裏切られた感じを否定することはできない。これは将来の大きながんになると思うのであります。従つて何としてもこの恩給法を通させようとするならば、私は若年停止を引上げる方がいいと思う。これを五十歳にしてもよろしい。四十五歳を五十歳にしたらしいが、それを五十五歳にしてもいいではないか。とにかく五十歳、五十五歳、六十歳まで生きている人はそうないでしよう。しかしそういう人たち恩給証書を持つていて孫子の語りぐさになる。そこに精神的な協同体の強固な基礎が出て来る。これが占領政策を是正したり日本再建の力になります。そういう目に見えないあたたかい思いやりをやらないで、一片の法律措置でものを配ろうとしたつて国民は納得するものじやありません。そういう点は緒方さんは一番注意のできる、よくできた人だと思つたけれども、私ははなはだ失望しました。大蔵大臣もそういう点には非常に思いやりがある人だと思つたけれど、これまたはなはだ失望しました。大蔵大臣はこれは何とか修正する意思はありませんか、これは大事なことです。
  61. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私も個人としてはそういう措置を、むしろ行き過ぎるほどにもとりたい気持は十分ありますが、今日の財政上やむを得ない、そういう点も十分に検討した最後の結論として、この法案を出した次第でございます。
  62. 中曽根康弘

    中曽根委員 これは財政の問題ではなくて、先ほど申し上げたように精神の問題です。しかしこの問題は、時間を省くためにこれ以上申し上げませんが、われわれはこの点については事な関心を持つて政府の案に対して修正なりその他の措置を講じようと思つております。恩給法の一番重要な問題は、今の点です。何十万あるいは何百万という一兵卒や下士官や、ともかく純真に国のために働いた人々に対して、国家の大きな愛の手が差延べられていないというところに、この法案の重大な欠陷がある。それは金によつて解決するものではない。政府の思いやりによつて解決する問題である。頭によつて解決できる問題である。その点をよく銘記されたいと思います。その次の問題は裁定の時期による不公平の問題である。武官ですでに裁定を受けた者については加算を認められておる。不幸にして裁定を認められなかつた者、また手続しなかつた者についてはこれは認められていない。しかも裁定を受けなかつた者は全部受けないというのならいい。しかし裁定を受けない者でも時期の早い者もある。時期の早い者で、すでに裁定を受けた者と同じ時期に負傷したり何かで当然権利のある者がある。ところがそれが入り乱れているわけです。裁定の時期と恩給事由の発生した時期と入り乱れておる。これがまた非常な不公平な原因である。これを是正する意思は政府はありませんか。どうしてまたこんな不公平なことを認めたのですか。
  63. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  64. 江口見登留

    ○江口政府委員 お答えいたします。裁定の時期によつて不公平があるというお話でありますが、すでに裁定をしております分につきましては、既得権と申しますか、その金額も確定しておりますし、ことに日清、日露の戦争を経た者もありますので、その方の権利はそのまま認めて、今後新たに裁定する分については、全部の履歴を調査して裁定することは、軍の方の人事記録が完全に整備されておらず、加算をつけるとしても非常に幅があつて、なかなかそういう裁定が困難であります。今後のことにつきましては、その点をただいまお話のあつた通りに改めたいと思つております。
  65. 中曽根康弘

    中曽根委員 日清、日露の話をしておるのではない、打切るところのボーダー・ライン・ケースの問題を言つておる。裁定を受けてない者で、しかもすでに裁定を受けて恩給をもらつている者よりも、先に恩給権の発動した者もあり、そうでない者もある。この入り乱れたところを切つたボーダー・ラインを調整しなければ公平ということが行われない。官房長官はこの問題をお知りにならないでこの法案を出したと思うが、その点は重大な欠陥であるから、政府として善処されたい。この点も重ねて強く要望しておきます。  時間を急ぎますから次に移りますが、裁定の不公平の問題で、戦争が苛烈にならない当時は非常に寛大な条件で裁定しておる。だんだん人数が多くなるにつれて条件を厳格にして来て、たとえば四項傷に入らなければならぬものが五項傷になつている、非常に不公平があります。これも不公平の最たるものである。そういうような裁定基準の緩厳による不公平は、どういうふうにして政府は対処するつもりであるか。これも恩給受給者の一番大きな問題になつておることでおります。
  66. 江口見登留

    ○江口政府委員 やはり総体とのにらみ合せでございまして、予算の問題、財政の問題等から見まして、自然その範囲内でまかなうようにしますためには、現在において多少裁定が厳重になつたり、あるいは寛大になつたりするというような扱いになることはやむを得ないと思います。
  67. 中曽根康弘

    中曽根委員 官房長官は今の答弁でよろしいのですか。
  68. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 同じであります。
  69. 中曽根康弘

    中曽根委員 どうもやはり頭の問題である。金額の問題ではない。恩給の一番大事な点は公平ということなのです。額の問題もちろん重要であるけれども、公平ということです。この点について政府はもう一回反省した措置をとらない限り、日本恩給受給者あるいは未受給者は、政府に対して絶対にこの恩給法を支持するような態度をとらないと私は思う。この裁定の不公平という問題も大きな問題として官房長官は頭の中に入れておいて、将来これを是正してもらいたい。われわれは本国会においてこういう問題についても適当な措置をとるつもりです。  その次の問題は階級差の問題である。将官以下下士官に至るまで、全部階級をもつてつけておるけれども、こういうような大将、中将、少将というようなその階級別を、もつと大まかなブロック別にわけてやるのが適当とも思われる。それがある程度社会保障的意味すら持つて来ておると思う。何ゆえそういう措置をとらなかつたか。恩給法精神からいえば、もちろん個人でありますから、今までの将官その他によつてつてもいいでしよう。しかし時代が違つておる。社会の輿論も違つておる。むしろなるたけ下に厚くして、上の方は薄くして均霑させるという措置をとるべきであつたと思う。なぜそういう措置をとらなかつたか。官房長官にお尋ねいたします。
  70. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ブロック別にいたしますことは、一つは非常に金額が厖大になることと、それからこれは旧軍人恩給復活という考えに基いておりますので、やはり個人々々の利害を考えますと、できるだけ今日の客観情勢とにらみ合せまして、個人々々が自分の恩給復活であると感ずるようにしてあげたい。そういう気持で階級差ということにつきましてもいろいろ問題があつたのでありますが、結局階級差をつけた方が、その意味において適切であるということからさようにいたしたのであります。
  71. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからばお尋ねいたしますが、今度この恩給法によつて恩給受給資格ができて来る者は、総計何万人くらいの数になりますか。
  72. 江口見登留

    ○江口政府委員 推定の人数でございますが、一応集計しましたものを申し上げます。普通恩給者は二十万二千人と推定しております。増加恩給受給者は四万五千人、それから公務扶助料の受給者は百五十万四千人、普通扶助料の受給者が十七万三千人、合計いたしまして百九十二万四千人、こういう推計をした数字を持つております。
  73. 中曽根康弘

    中曽根委員 百九十二万という厖大な国民の該当数ということはわかりました。それではお尋ねしますが、一体将官、佐官、尉官、准士官、下士官、兵、これはおのおの何パーセントずつになりますか。パーセンテージはどうですか。下士官、兵が一番多いはずです。
  74. 江口見登留

    ○江口政府委員 全般にわたつて調べた資料がございませんが、昭和二十一年の二月に軍人恩給が廃止制限されました当時の軍人普通恩給受給者の階級別、年齢別人員というのがございまして、それを申し上げますと、大将から兵に至りますまで総体におきまして、その当時合計六十四万五千人となつております。そのうち大将が百人という数字が出ております。中将が七百人、少将が千百人、大佐が二千二百人、中佐が二千百人、少佐が二千八百人、大尉が五千二百人、中尉が一万五千七百人、少尉が八千人、准尉、兵曹長というところが一万九千百人、それから曹長、上等兵曹というのが六万一千八百人、軍曹、一等兵曹が十万三千九百人、伍長、二等兵曹というところが九万二千三百人、あと兵が三十三万人、こうなつております。
  75. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の数字をちよつと概算しただけでも下士官、兵だけでおそらく六〇%から七〇%に該当すると思う。そういう意味で将官、佐官というものは下士官、兵の数から比べれば、非常に少いわけです。従つて下士官、兵を中心にして一つのブロックをつくつて、それから佐官、将官という方向へ薄くして持つてつたら均衡もとれるのではないかと思うのですが、こういうことはどうですか。
  76. 江口見登留

    ○江口政府委員 数が多いものでありますから、下の方にしわ寄せますと、それだけ非常に金額がかさんで来るということになりますので、上の方を特に厚くしたというわけではありませんで、ずつとその数字をならして、なるべく財政の範囲に納めるようにしたわけであります。
  77. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこに私はこの恩給法の欠陥があると思う。つまり四百五十億という財政わく内に納めようくということが先に立つて、公平ということを無視しておる。あるいはまた、国民として戦争に参加した者に対する思いやりというものが無視されておる。そこにこの法案の重大な欠陥がある。官房長官は気がつかなかつたかもしれませんが、これはよく心の中に入れておいてもらいたい。こういう点についても、われわれは大是正しようと思つております。  それからもう一つお尋ねいよしますが、昔は傷痍軍人については、国有鉄道の無賃乗車証が交付されておつたのだが、これは当然交付されるべきだと思います。われわれ国会議員はこれが交付されておるが、われわれ議員より、あの傷病兵の方が、国のためによく働いておつたかもしれない。非常な困難を受けております。これらの人々に対して、国有鉄道の無賃乗車証を復活する意思はないか、政府にお尋ねします。
  78. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 よく研究してみます。
  79. 中曽根康弘

    中曽根委員 もう一つこれに関して伺いますが、勲章年金の問題であります。勲章年金は占領政策によつて一切廃止され、今は受けておりません。私は太平洋戦争とか、満洲事変とかいう近い戦争について言つているのではありませんが、しかし日清、日露、少くともあの欧州大戦くらいまでの戦争は、日本の正当防衛の戦争である。満州事変ですらも、ある程度そういう性格もあつたろうと思う。アメリカが言つているように、百パーセント日本が悪くて、百パーセントアメリカがよかつたとは思わぬ。少くともフィフテイ・フィフテイくらいにはなるかもしれぬ。いわんや日清、日露の戦争から欧州大戦にかけては、そういうような戦争責任とかなんとかいうことは、問題になるほどの点はいささかもないとわれわれは思つておる。日本人はそういうふうに考えております。しからばあの時代までさかのぼつて、すべての勲章年金を廃止するということは、当を得た措置ではなかろうと思う。その人たちは現在六十、七十のおじいさんになつておる。日露戦争で戦つて功七級をもらつた人が、その年金をもらうことをたよりにして余生を送つておる。何の責任も罪もない人たちが、この年金を打切られて、今路頭に迷つておるということは、これは重大なことである。金額にしたら大したことはないと思う。政府はこれをぜひ復活させなければならぬ。少くとも欧州大戦まので者については復活させなければならぬと思うが、政府はいかがお考えになつておりますか。
  80. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ごもつともな御意見でありますが、戦争の結果ほとんど亡国にひとしい状態になりました際におきましては、勲章年金の廃止は私はやむを得なかつたと思います。
  81. 中曽根康弘

    中曽根委員 日本はもう独立して、占領政策の行き過ぎを是正する段階になり、四百五十億の金が恩給として支給されるような段階になつておる。一体勲章年金を、欧州大戦までの分を復活したならば、幾らの金がいるか、お尋ねいたします。
  82. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいまその資料を持つておりませんので、必要ならば後刻調べて差上げます。
  83. 中曽根康弘

    中曽根委員 欧州大戦までのものについては、年間にして三億いりませんよ。九千六百億の予算を組んでいる政府が日清、日露の戦争から欧州大戦くらいまでにかけて、国のために働いて、それで余生を送つている人のめんどうを見てやれないということはないじやありませんか。それは戦争とかなんとかいうことを離れた、同胞としての当然の措置であります。そういうめんどうを見るところに、私は日本再建の気魄が生れて来ると思うのであります。私はおそらく二、三億だろうと思つておる。私が前に聞いたときには、せいぜい三億ぐらいだろうと言つておる。九千六百億の予算を組んでいる政府に、なぜその金が出せないのですか。大蔵大臣出せませんか。私は何かの間違いでこれを復活させなかつたのだろうと思いますが、官房長官はそれを復活する意見があるかないか、将来何か適当な措置をとる意思があるかないか、お尋ねいたします。
  84. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 勲章年金は、先ほど申し上げましたように、今日かくのごとき財政の際には、これを廃止することはやむを得ないことだと考えております。
  85. 中曽根康弘

    中曽根委員 そういうような無責任な発言を聞いて、私はいよいよこの内・閣を存続させてはならぬと思う。そういう決心をここで披瀝して、一応私の質問を終ります。
  86. 太田正孝

    太田委員長 午前中の会議はこの辺にいたしまして、午後一時から再開いたします。暫時休憩いたします。     午前十一時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時十八分開議
  87. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。門司亮君。
  88. 門司亮

    ○門司委員 私は、きようは特に警察問題に関係いたしまして、予算に関係を持つ部分だけの質問をいたしまして、いずれ逐条の審議は地方行政の委員会において承りたいと思います。予算に関連する面だけでありますので、私どもの納得の行く御説明を願いたいと思うのであります。  官房長官がまだおいでになつていないようでありますが、最初に自治庁の長官にお聞きしたいと思いますのは、御承知のように、法律で地方制度調査会ができておりまして、昨年の暮れの地方制度調査会の発足にあたりましては、総理大臣並びに自治庁の長官がおいでになりまして、地方の行政に対しまする各般の事務その他について十分の御審議を願いたい、政府はそれを資料にして善処したいというようなお話のあつたことは、お忘れになつたわけではないと私は考える。今回この国会に一つは警察法、一つは中小学校の教員諸君の俸給を国庫から支弁することに関する法案が出ておりますが、本国会において最も重要であり、かつ今問題になつておりますこの二つの法案は、地方行政にとりましてもきわめて大きな問題であります。従つてもしほんとうに政府が地方制度調査会を活用し、さらに地方制度調査会の答申をまつて、万全を期した処置をとられるとするならば、私は地方制度調査会の答申をまつて検討されることが当然だと考える。ことに教職員の給与の問題等に関しましては、地方制度調査会は全会一致の意見をもちまして、総会の決議において、政府に対して、この法案提出の見合せ方を要求いたしておるのであります。  さらに警察法の問題にいたしましても、これが地方制度調査会において何らの審議をすることなく、ただ当局の説明を聞いた程度において、ただちに国会に提案されたことにつきましては、これまた全会一致の決議をもつて遺憾の意を表しておるということは、御存じの通りであります。従つてこの両法案を出されるにあたりまして、地方制度調査会に対する政府の所信を、まず官房長官なり、あるいは本多長官から承りたいと考えておるのであります。
  89. 本多市郎

    ○本多国務大臣 まことにごもつともな御質問であると思うのでございますが、政府が今回義務教育職員について制度を改革いたしますのも、さらにまた警察制度について改革いたしますのも、さしあたりこれを実施した方が適当であるという確信によるものでございまして、さしおきがたい緊急の措置を要するという見地から、両制度を提案いたしておるのでございます。義務教育職員につきましては、文部大臣も言つております通り、義務教育に対する国家責任を明確化することが、緊急を要する。さらにまた治安確保についても、その責任を明確化する。これは政府がどうしてもさしおきがたいものであるという見地で、提案いたしておるのでございます。地方制度調査会は「地方制度の一般について御諮問申し上げておりますので、今度の制度の改正がありましても、その上に立つて自主的に御研究を願い、また自主的な御答申を願いまして、さらにその答申と、今度改正いたしました案とを比較検討いたします機会は、その上に来るものと考えております。
  90. 門司亮

    ○門司委員 ただいまの長官答弁でありますが、私は非常に遺憾に考えております。これは警察制度にいたしましても、教育の基本のものである中小学校の教育の問題にいたしましても、国によりましてはきわめて重大な問題であります。これらの制度をそう軽々にとりかえられるというようなことは、できないのであります。少くとも地方制度を改革いたそうといたしまするならば、地方の住民に最も密接な関係を持つておりまする制度でありますから、一たびそれが実施されまするときには、少くとも半世紀くらい、欲を言えば百年くらいの間は、日本の基本教育、あるいは日本の治安を維持いたしまするところの、基本的なものとして検討してしかるべきとわれわれは考えております。しかるに今ありまする法律をここで改正して、そうしてさらに地方制度調査会が自主的にこれをやつてもらいたい、その上で考えるというようなあいまいなことで、またそういうふうにこの問題を軽率に取扱うということは、きわめて危険があると考えておる。もし政府にほんとうに真意があつて日本の教育行政を将来どうするかということ、あるいは治安関係をどう維持して行くかということについて、親切に、熱心に、忠実に国民のためにお考えになるとするならば、今のような大臣の答弁はできないはずだと考えておる。私が大臣に対しまして、こういう気持から、さらにお聞きをいたしておきたいと思いますことは、地方制度調査会の政府への申入れに対して、政府は閣議を開かれて、このことを閣議にお諮りになつた事実があるかないかということであります。
  91. 本多市郎

    ○本多国務大臣 義務教育職員の法案の問題につきましては、地方制度調査会において委員各位から御意見をお伺いし、さらにまた委員会申合せもございましたので、その点につきましては、閣議にも報告をいたしまして、最後的に決定いたしたのでございます。なぜ急いで実施するかという問題は、これが緊急を要することであり、さらにまた政府といたしましては、最善の案であるという確信に到達いたしました以上、緊急を要する案件として、これはこれとして進めるほかはないと考えます。
  92. 門司亮

    ○門司委員 文部大臣がおいでになつておりませんので、文部大臣に対する質問は、この次にいたしまして……。
  93. 太田正孝

    太田委員長 門司君、すぐここに来るようになつております。
  94. 門司亮

    ○門司委員 それでは今犬養法務大臣がおいでになりますので、大臣にお聞きいたしたいと思いますことは、今本多長官のお話を伺つてみますと、緊急を要するのであるからここに出したというお話でございますが、警察制度を改革しなければならない緊急性というれは国民全体の知りたいところだと考えております。警察制度をなぜ改正しなければならないかということ、従つて現行警察法において治安の上にどれだけの欠陥があるか、それからもう一つの問題は、この警察制度改革において、将来日本の治安関係はどうなるかということ、この二つの面について、この際お答えを願いたいと思います。
  95. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。大体普通の警察の仕事、つまり軽犯罪の犯人をつかまえたり、交通違反を取締つたりする、そういうことは、地方の自治的な警察でいいと考えております。従つて私どもは、いばる警察は、あなたと御同様嫌いでありまして、できるだけ地方の生活に溶け入つた警察でいいと思つております。しかし、これから先が御意見との相違になるだろうと思うのでおりますが、戦争の危機は遠のいておりますが、社会の底に流れているいろいろの底流をながめまして、暴力主義的破壊運動のいろいろの祕密文書を見ましてどうも国家的な性格を、本来地方自治的であるべき警察にやはり含有させなければならないという必要を実は考えております。しかしそれは最小限度にとどめておきたい。今のままでどうしていけないかという御質問でおりますが、今の警察組織は御承知のように二本建になつております。国警と自警との二本建になつておりまして、よく自警がだらしがないとか、土地のボスと組むというようなことから政府が思い立つたと言われますが、そうではない。自警は自警で、非常に一生懸命やつてるのでありますが、いかんせん、この間も申し上げましたように、日本人は幾多の美点がありますが、同じような似た仕事を二つの異なる命令系統でやると、どうしてもそこにうまく行かない一つの傾向を持つております。従つて国警、自警の管轄区轄区域の相違から来る一つの盲点があることは、世論がかえつて私どもより、先に指摘してるような始末でございます。管轄区域の相違の盲点をついて行きますと、いろいろそこに地下運動的な仕事が楽にできるような弱点がある。それだけは何とかして備えておくことが、国民に対する義務である。もう一つは、これも昨日参議院で御意見の相違になつたのでありますが、私どもはやはり、同時多発的な事件というものが起つた場合に備えておかなければ、国民に対する義務が果せない。この二つから、これに備える警察組織だけは、急いでやつておこう、これがいわゆる政府の言うところの緊急を要する処置ということでございます。
  96. 門司亮

    ○門司委員 今大臣からせつかくの御答弁でございましたが、現行警察法は国家警察と地方警察にわかれておるというお話でございますけれども、警察法をお読みになれば、国家警察とは書いてありません。国家地方警察と書いてあります。これは決して主管大臣が握つておるわけではございません。今の警察制度というものは、警察制度の建前から申し上げましても、決してこれは国家警察というようなものではない。警察法をいかに民主化するかということについて、やはり警察の一つの概念として、国家地方警察というので、特に地方という文字をつけておるのであります。私は大臣の考え方とは違うと思う。  さらに私は、そういう大臣のお話でありますが、それだけではなかなか納得するわけには参りません。緊急性があるということになりまするならば、自治体警察の持つておりまする非常に大きな欠陥が現われて来なければなりません。今大臣が御指摘になりましたようないろいろな暴動事件等に対する問題が、世論になつておりますし、さらにこの問題を出されました一つの大きな理由の中には、連絡調整の問題等が、必ず私は考えられておると思いますが、これらに対しましても、警察制度というものが十分徹底するに従つて、警察官がみずからの職務を十分体得しまする上においては、当然国警、自警というものが—かりに名前を一応国警と申し上げ、片方を自治警と申し上げましても、相互間の連絡調整は、各自の責任と自覚の上において、十分とり得るのであります。治安の問題は、いかに完璧を期した法律をこしらえて参りましても、それをつかさどつておりまする者の自覚と責任が欠けておりまするならば、運用は必ずうまくは参りません。いろいろな事例でこれを考えてみましても、たとえば今問題になりますものは、警察制度を改革いたしました一番先の問題としては、例の浜松の問題、あるいは平の問題、あるいは吹田事件というようないろいろな問題がありますが、いずれの問題を見ましても、浜松の問題のごときは、警察官制度のかわつた直後でありまして、警察官自身が、警察制度の運営というものを十分心得ていなかつたところに一つの欠陥があつた。平の事件におきましても、あるいは吹田の事件におきましても、事件の発生いたしました地はどこであつたかといえば、彼らの集合いたしました場所、通過いたしました場所は、いずれも国警の場所でありまして、自治警察の場所ではなかつたということである。たまたま事件が自治警の場所で起つたから問題になつておりますが、もし今日あなたがお言いになるように、国警が完全なものであるならば、あの事件は未然に防げたものである。私は決して自治警察の弱点ではないと考えておる。そういうこともかつてはありましたが、しかしだんだんそういうものは直つてつておりまして、今それを取上げてここで議論するほどの問題ではないと私は考える。私はどうしても大臣の御答弁は納得できない。もう一応、それならば将来日本の治安関係というものはどうなるかということについて、具体的に御説明願いたい。地下運動云々というようなことがございますが、地下運動云々というようなことに対して、一体政府はどれだけの実証を握つておるのか。その点はやはり国民の前に明確にされることが、治安確保の上では必要だと考えておるので、この点をひとつ御説明を願いたい。
  97. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。最初にお断りしておきますが、国警、自警と申したのでありまして、国家警察と申したのではないのであります。略語で申し上げた次第でございます。  それから、国警がたいへんよくて、自警がだらしがないというようなお話をしたことはございません。両方ともよくやつているが、いかんせん、管轄区域の相違から来る盲点というものであつて、それを埋め合せなければならぬと申し上げたのであります。またこれは制度の運用の妙によつて行けるではないか。確かにある租度までそれは行けると思います。しかし制度の運用にも、運用の妙を尽す限度というものがございますので、これは私どもの認識から言いますと、たびたび申し上げて恐縮でありますが、二つの命令系統で同じような仕事をする場合、警察問題に限らず、日本人は一番不得手であると私は思う。その日本人の民族的な不得手というものは、政治家の見識でこれを是正して行くことが国民に対する義務である、こういうふうに考えておる次第でございます。またいくらいい制度をつくつても、政治をよくしなければならないことはお説の通りであります。だからいい制度をつくつたら、あとはほつておいていいとは決して思つおりません。ますます政治がよくなり、政治が民衆のためによいことをする責務を、倍加して感ずる次第でございます。  それから地下運動、地下運動と大げさにおどかすけれども、ほんとうにあるのか、警察制度をかえたくてそういうふうに言うのではないかというふうな御疑念があるのではないかと思いますが、私どもは公安調査庁その他で絶えず地下運動なるものを研究いたしておるのでございます。またいい機会に—一々事例をあげた方がいいとおつしやれば、事例を申し上げる機会もあるかと思いますが、表面平静でありましても、今の自由社会の制度をじりじり破壊して行くという運動は、世界中に行われておるのでありまして、これに対して備えをすることが、私は国民に対する義務であると考える次第でございます。
  98. 門司亮

    ○門司委員 今大臣の言われました地下運動について、私が先ほどから申し上げておりますように、ひとつ事例を示していただきたいと思いますが、大臣の言われる地下運動は、はつきり言えば共産党の地下運動であるのか、あるいは右翼国家主義者の地下運動であるのか、この点をひとつ明確にしておいていただきたい。
  99. 犬養健

    犬養国務大臣 さしあたり私どもが注目して参つたのは、今日までのところは主として共産党の関係でございますが、しかし右翼の運動というものも看過してはならないと思います。
  100. 門司亮

    ○門司委員 今さしあたり共産党を考えておる。さらに右翼の問題についても看過してはならないというお話でありますが、私はこの問題についてもう少し具体的に知りたいのでございます。これは私だけではございません。この警察法制度を改革しようとされておりまする政府意図につきましては、国民はことごとくこれを納得をいたしておりません。従つて各地方の自治体、いわゆる都道府県知事にいたしましても、あるいは都道府県の議長会にいたしましても、きようも今第二議員会館の第一会議室でやつておりますが、全国の市会の議長会議を開きましてこの法案に反対をいたしております。こういうふうに考えて参りますと、地方の公共団体のこれらに関係を持つておりまする団体は、ことごとくと言つていいほど反対をいたしておる。従つてこの事例は、明らかに私は国民全体が、この問題については反対をしておるのではないかと考える。国民全体が反対しておるこの問題を、押し切つて政府が実行されようといたしますならば、国民全体の納得の行く、今大臣のお話になりました、地下運動に対して、これこれこういうものがあつて、これにはこういう警察制度でなければ取締ることができないので、了承してもらいたいということを、国会を通じて明確にされることが、われわれは大臣の責任だと考える。この点を明確にお示しを願いたい。
  101. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。門司さんも御承知のように、いろいろの祕密文書—今軍事方針というものをとつておるのでございますが、軍事方針というものがどういうふうな形となつて現われて来ますが、一例を申せば、昨年のメーデー事件でございます。メーデー事件は、自治警察が悪いためだと申すのではありません。しかしああいう事件が同時多発的に今後の日本に起らないとは、何人も保証ができないのでありまして、保証のできないところ、政府としては、政治責任において、同時に多発の事件に処するだけの組織をつくつておくということが私は義務だと思うのであります。しかしそれを大げさにいいまして、全国を警察国家にするようなことをしては、これまた行き過ぎなのでありまして、ふだんそれだけの備えをしておくという態度をとるものでない。ふだん民衆の生活の目の前に触れる警察というのは、交通事故とか軽犯罪とか、そういうものである。それは府県にまかせよう。従つて府県の自治体の代表である公安委員会で全部の管理をやる。ただ万一に備えて、国家の司法警察への橋がかりだけはつくつておく、こういう考え方であります。
  102. 門司亮

    ○門司委員 あとで稻村委員から関連質問があるそうでありますので、私は簡単に申し上げますが、私の聞いておりますのはそういう構想だけではございません。制度を改革いたそうといたしますならば、一つは構想に基いた、長い将来を見通した、達観した一つの考え方から制度を改革する必要がある。しかしこの制度は緊急を要するものではございませんで、十分その議を練つてしかる後にしても間に合うのであります。ところがこの警察制度は、先ほどから申し上げておりますように、国民にとりましてはきわめて重大な問題であります。これを緊急に改正しなければならないという政府意図が、今の御説明だけでは国民は納得しないと私は思う。こういうふうに、あるいは左翼が出て来はしないか、あるいは右翼が伸びて来はしないか、国家を破壊しはしないかという構想のもとにつくられるだけの緊急性を裏づけするだけの答弁には、今の大臣のお話ではならないと考える。少くともここに、これではどうしてもこういうふうにしなければ治安が保てないのだというふうに国民が緊急性を納得する答弁を、私は要求しておるのであります。従つて大臣にして親切でありまするならば、この事例を新聞に発表されましても、私は決してさしつかえないと思う。むしろそれの方が国民が警戒心を起し、あるいはこれが行き過ぎれば国民が恐怖心を起すかもしれない。しかしながら大臣といたしましてはもう少し詳しく、共産党がどういうことを考えているのか、あるいは右翼は今日どういう結束をして、どういうことをしようとしているのか、これに対する対策としてはこの警察をこう直さなければならぬという明確な線をひとつ御答弁が願いたいのでありまして、私はそういう抽象的な御答弁ではなくて、ひとつはつきりしたところをお答えを願いたいと思います。
  103. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。決して抽象的に申しているのではございません。門司さんも御承知のように軍事方針に関する指令が絶えず秘密文書で出ていることは、私よりもあるいはお詳しいのではないかと思います。軍事方針の指令というものは、いつ何どき軍事方針を実行するかわからない、それに対する備えであります。その出来物として現われて来たのがメーデー事件とかいろいろありました。しかしそれは自治警察が悪いからというのではない。国警も地響もおのおの全力を尽しているが、いかんせん制度の不備から来る欠陥というか、盲点がそこにあるのであります。運用の妙というものも結局制度に制約されての運用でございますから、ここに制度を改革しなければならない。それではそんなに早くやる必要があるかということになりますと、これはやはり意見の相違ということになるのでございましようが、この次の通常国会の終るまで、これをほつておけないという考えを私たちは持つておるのでありまして、警察制度の筋金を一本通すことだけは急いでおきたい。こういう考えでございまして、これはあるいは考えの違いになるのじやないかと考えております。
  104. 門司亮

    ○門司委員 どうも私には納得が行かぬのでありますが、これも押問答をしてもきりがないと思いますが、今大臣は、大臣よりも私の方がよく内容を知つていないかというお話でありますが、われわれもある程度の内容は存じております。しかしわれわれの存じております内容については、私どもの知り得る範囲であつて、私はこれは必ずしも警察制度を改革しなければならないほどの重要性は持つていないと考える。まして多少われわれがそういう資料を持つておるといたしましても、国民全体ではございません。私がここであなたに要求をいたしておりますものは、私が納得するというのでなくして、国民全体が今至るところで全国的な反対運動をいたしておりますから、この反対運動をいたしております国民全体に対して、納得の行くようなものを示してもらいたいというのである。従つて大臣はそういう事例がありまするならば、ひとつ事例を一々あげて共産党の機構はこういう制度になつておる、右翼はこういう組織でこういうふうになつているというものを、書いたものでも何でもよろしいから、ここにひとつお示しが願いたいということを要求しておるのであります。
  105. 犬養健

    犬養国務大臣 御要求がございますならば、いずれお見せする機会もあろうかと思いますが、私どもの繰返して申しますのは軍事方針に関する秘密文書、それに対して軍事方針の発展の可能性というものを、政治責任において研究しなければならない、その発展の可能性の考え方がお話を伺つておりますと、大分意見の相違になるのでありまして、私どもは軍事方針発展の可能性を考えて、どうしてもそれに処する道というものは緊急を要するものだ、こういうふうに考えた次第であります。
  106. 稻村順三

    ○稻村委員 ちよつと関連して。今の門司委員と法務大臣との質疑応答を聞いておりますと、結局警察法を改正しなければならぬ緊急問題というのは、破壊活動ということが中心になつて押問答がされたと思うのであります。そうすれば私たちはここに破壊的活動というものの一応の外郭がわからないと、緊急か緊急でないかということの結論が出て来ない。そこで私は国会議員の当然の義務として、法務大臣に質問するのでありますが、公安調査庁の予算の中に、破壊活動調査に必要な経費というのが二億一千七百万円ばかり組まれております。こういうことになりますと、先ほど申しました通り、地下運動は共産党の地下運動ばかりのようではございません。それからまたわれわれの方から見ると、破壊活動の対象も必ずしも共産党の地下組織ばかりを調査しておるものでもございません。従いまして私たち政府がどういう団体を対象としてここに調査をされるのか。具体的に団体の名前をお伺いしたいのであります。
  107. 犬養健

    犬養国務大臣 稻村さんにお答え申し上げます。公安調査庁の調査の対象は大体共産党系統、それから第三国の人たち右翼の人たち、これらの人たちでございますが、どういう団体かという名前になりますと、私覚えておりませはからおひまをちようだいして、政府委員を呼びますから……。
  108. 稻村順三

    ○稻村委員 予算審議もすでに大詰のところまで来ておるのでございます。日にちがたちますと、これは予算を審議するためのわれわれの結論が出て来ないのであります。従いまして私は至急たとえば十なら十、二十なら二十、おも立つたものの固有名詞をここにお伺いしたいのであります。
  109. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。あすとか、あさつてとかいうのではなく、今呼びますから、その間のひまだけをいただきます。
  110. 稻村順三

    ○稻村委員 もう一つ、私がお尋ねしたいことは、破壊活動団体として調査さるべき対象が問題になります。ところがまたここに団体調査報償費というのが一億四千七百万円ばかり計上してあります。そうするとこれはどういうふうな者に報償をやるのか、この点を一つ。この報償というものはたとえば部内の者にやる報償か、それともまた外部からの通報に対してやる報償か。あるいはまたたれかを委嘱してやる報償か。その点の御答弁を願います。
  111. 犬養健

    犬養国務大臣 これも後ほど政府委員からお答え申し上げますが、私の想像でございますが、どうも部内の月給をもらつている官吏にちよつと報償というのはおかしいと思いますので、おそらくその知識の詳しいものに対する報償だろうと思います。また旅費も含まつているんじやないかと思います。詳しくはまた政府委員を今呼んでおりますからお答えいたさせます。
  112. 稻村順三

    ○稻村委員 この報償を出す予算があるならば、報償を出すべき人員とか単価とかがあるだろうと思うのであります。さらにまたその報償をもらうところの人物、大体のところでよろしゆうございます、個人一々なことは申しません。また団体の性格というようなものもございましようが、そういうものに関しても一応ここに御報告を願いたいと思いますがどうですか。
  113. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。これは政府委員に申し上げさせますが、私は報償費の性質上、何番地の何のだれ兵衛というのは申し上げにくい場合があろうと思います。これはあらかじめ御了承願います。
  114. 稻村順三

    ○稻村委員 私は個人の固有名詞を要求するのでございません。大体のところこういう立場にある人間に対して、またこういう組織に対して委嘱したとか、それからそういう人間に対してはどういう基準でもつて、どれだけの単価を払つているかということの御答弁を願つているわけであります。
  115. 犬養健

    犬養国務大臣 よく了承いたしました。これはもちろん国民のお金でありまして、国民のお金を使わしていただいている以上、皆目不明確ということは許されませんから、職務にさしさわりのない範囲内においてお答えを申し上げたいと思います。
  116. 稻村順三

    ○稻村委員 この点が明確になることによつて、私たちはこの公安調査庁の報告がはたして正確なものであるかどうか。そうしてその正確なものに基いて、この警察法の改正というものがなされているかどうかということを判断する重要な材料になりますので、どうか至急提出せられんことを希望いたしまして、私の関連質問を終ります。
  117. 門司亮

    ○門司委員 今、文部大臣がおいでになりましたから、ちよつと一言だけ文部大臣にお聞きしておきたいと思います。それは先ほども本多長官にお話をいたしましたが、この地方行政の関係で最も自治体の大きな問題として取扱われるものが、治安の問題と教育行政であるということは、大体大臣も私は御存じだと思う。その教育行政に対して、国が費用を負担するという建前の上にこれを国家公務員として、そうして身分の切りかえを完全にする。同時に大臣が最終的の人事権を把握するということで、自治体といたしましては自治権の非常な侵害ではないかというようなことを考えられておる。同時にまた大臣の時代におつくりになつて地方制度調査会においても、その答申を待つて議会に提案しなければならないというように、政府に申入れをしておるにもかかわらず、これをここに出されておりますが、私はこの際大臣としての心境をお聞きしたい。それは大臣がかつて自治庁の長官でありました第十三国会において、日にちは五月の十六日であります。衆議院の文部委員会におきまして、小林進委員質問に対する答弁でありますが、当時義務教育費国庫負担法に関する問題が議題になつて参りましたときに、大臣の答弁はどうなつておるかと言いますと、こう答弁されております。「お答え申し上げます。地財委の方で、これに対して賛成をいたしかねておりますことは、地方の自治確立の意味におきまして、しかも財政的見地から、やはり平衡交付金で、こういう平衡交付金の内容を相当に検討しましてやるべきであつて、こういうふうに、今度出ましたような義務教育費国庫負担法、すなわち文部当局が直接地方の自治に介入して行くようなやり方は、これは時代に逆行して行くのではないかというような、すなわち地方の自治確立ということと、地方の財政を確立して自主性を持たせて行くという根本方針にどうも反するように見えるので、反対する次第であります。」こう書いてあります。私はこの速記録に間違いがないとするなら、自治庁の長官は昨年の五月十六日までは、少くとも教育行政に対して中央が自治権に介入することはいかぬという、そういう信念を持つておられたと思う。それが文部大臣になられますと同時に、今度のような処置をとられようとされております。心境変化といえば心境変化でございましようが、一体大臣の真意はどこにあるかということをはつきり聞いておきたい。この昨年の五月十六日の御答弁は大臣の本旨であるかどうか。また同時に地方自治行政に対する大臣のお考えをこの際お聞かせ願いたい。
  118. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。当時自治庁長官としてそういうことを申し上げたことを私は覚えております。しかしながら議員提出として半額国庫負担という法律がりつぱに通りまして、これが国民の御意思であるということがはつきりいたしました以上は、その後段に述べておりますように、私はこれは不徹底であるから全額にしたい、こういうことを当時十六日の委員会で述べております。その全額にしたいという宿願を、今日文部大臣になつて実現するということにしたわけであります。
  119. 門司亮

    ○門司委員 大臣の答弁は詭弁であります。これは大臣どうお考えになつておるか知りませんが、全額国庫負担ということになつていないでしよう。きのうから問題になつておりますけれども、給与費の問題で二十億ないし三十億円不足しておる。これをどうするかということで文部大臣と自治庁の長官の間に食い違いがあつて、きのう長い間問題になりましたが、私は少くとも国民の要望いたしております全額国庫負担というのは、今のこういうべらぼうな法律じやなかつたと思う。羊頭を掲げて狗肉を売るという言葉がございますが、この法案はまつたく地方の自治体の行政に介入するほかの何ものでもない。そこで私は、こういう自己矛盾をするような法律案を無理にこじつけて出さなければならなかつた大臣の真意をこの際お伺いいたしたい。私は率直に聞きます。おそらくこの法案の出て参りました最大の原因は、今まで大臣の口から一言も話されておりませんが、これは日教組の諸君の政治活動を封殺することのために、一応国庫負担という名のもとに、給与を国家から支給するということの名のもとに、これを国家公務員にして政治活動を禁止しようというのが、大体この法律案を出された最も重大な真意だと考えるが、そうでないということをはつきり言えるかどうか、この際はつきり御答弁を願いたい。
  120. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これはたびたび申し上げておる次第でございますが、予算閣議のときに半額国庫負担を一体実行するかせぬか、いかにするかという問題が起きましたときに、いろいろ技術上の面から見ましても、半額国庫負担のあの現行法ではこれはなかなかうまく実行できない。それならば全額にしたらいいだろう。そこで全額になつていないじやないかというお説でございますけれども、これは過渡期でございますから、こういう大きな改革をいたしますときには、どうしても完全無欠のものをすぐ実行するということは、いつやつてもできないと思いますから、二十八年度限りこれは過渡期としてやつて行きたい、こう考えております。  それからもう一つ、何か政治活動を禁止することが真意じやないか。これはたびたび聞かれますが、むろんそのことは相関関係がございます。と申しますことは、国家公務員になれば、国家公務員としてはやはり政治活動はある程度禁止されなければならない。普通の公務員がそうでございますから、当然同じようにこれは出て来るわけであります。     〔委員長退席塚田委員長代理着席〕 しかし私の一番大事な第一点は、国家公務員にして身分の安定をして行きたい。同時に日教組の幹部がやつておりますような、ああいうような秩序を乱し、何か一党一派を支持するとか、一党一派を攻撃するとかというようなことを公々然とやられるところの政治活動、あれは差控えてもらいたい、こういう真意でございますから、両方相関連しておることは確かでございます。
  121. 門司亮

    ○門司委員 私は今の大臣の答弁の中に、あげ足をとるようでありますが、日教組の幹部が何か秩序を乱しておるというようなお話があつたようでありますが、一体そういう事例があつたらお示しを願いたいと思います。
  122. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 これはもし言えとおつしやるなら申し上げますれども、いろいろ政治的にある一党の政府を倒そうとか、われわれは民主政権だと思つております。国民が正当な方法によつて選挙して成立した国会から選出されて内閣をつくつておるのですから、りつぱな民主政権でございますから、その民主政権を倒してあとの民主政権をつくるということでは意味をなさぬ、いろいろございますけれども、そういう活動もございます。
  123. 門司亮

    ○門司委員 私は大臣のあげ足をとつて、けんかをするのは感心しませんが、今の大臣の言葉はちよつと行き過ぎではありませんか。われわれのとつている民主政権をくつがえすことはよくないと言いますけれども、民主政権であれば国民の輿論に立つてその政権は行くべきであります。大臣の真意が、一党のものが倒そうとしているというところにあるようでございますが、民主的に現在のような政府を支持しないという国民思想が現われて来れば、そういうことをしようというのは当然であります。思想の自由は憲法に許されております。ただ憲法で許されておらないのは暴力その他において、これをくつがえそうとするものだけであります。しかし思想の自由で許されておりますものを弾圧するという考え方で、これを国家公務員にしようというお考だとしますならば、大臣の考え方に、私はどこまでも承服するわけに参りません。  それからもう一つこの機会に伺つておきたいと思いますのは、地方の自治行政の中で、教育行政は地方行政であるべきかどうかということであります。これは自治庁長官として長くおいでになりましたので、大体大臣にはお伺いできると思つてお聞きするのでありますが、地方の自治行政の中で教育行政というものは重要であるのかないのか、これに政府が介入することがいいか悪いか、この点についてひとつこの際お聞かせ願いたいと思います。
  124. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 義務教育は地方の事務であると同時に国家の事務でありますから、どちらの事務であるかということは国家的に見れば国家の事務、また地方行政から見れば地方の事務、そしてそれが相関連して義務教育をやつて行きたい、こういうのが新しい憲法下の制度だと思います。
  125. 門司亮

    ○門司委員 これ以上私大臣にお聞きしようと思いませんが、それならもう一つ私はこの次にお聞きしておきたいと思いますことは、国の仕事であり、あるいは地方の仕事でもあるというようでありますが、教育の実体はどこにあるかということであります。これは例の憲法の二十六条にも一応義務教育のことは書いてあります。ところがさらに憲法の九十二条には自治の基本に基いてすべて行へということが書いてある。これは地方住民の自治の基本的のものとなつて参りますと、当然地方の住民の自覚と責任の上において行うものでなければならない。この憲法の二十六条と九十二条との関連性から考えて参りますと、やはり義務教育は当然地方の仕事であるということにしなければならないと思います。これに国が援助することは当然でありましよう。しかしそれかといつてこれを国家公務員にして、しかも教員の身分が安定すると言つておりますが、教員の身分は実際から申しますと三元化いたしております。知事が県の教育を持つて、さらに市町村の教育委員会がこれに介在する。はなはだしい例でありますが、法律の内容によりますと市町村長もこれに介在しようということになると、教育の身分というものは四元化あるいは三元半化して来る。どこに一体教員の身分の安定性があるのか、これは疑わしい。大臣は教員の身分を安定させると言われておりますが、法律の内容を見ますと、教員の身分はきわめて不安定である。少くとも地についた教育をしようとすれば、やはり教員の身分を安定させようとするなら、これは地方の教育委員会なりに一本にしておいて、そうして一元化されたところにはつきりした制度を設けて置くことが、紛争を起さない一つの大きな問題だと考える。こういう点について今申し上げましたように三元化しておると考えますが、これについて大臣はどういうようにお考えになつておりますか。
  126. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 三元化されたとか、四元化されたとかいう問題とは別でございまして、とにかく一つの身分を動かしますのに、ある一つのところでやるよりは三つも四つも関係して討議することの方が、やはり公平に行くのではないかと思つております。独裁的にやるより公平である。それから地方の教育委員会というものでございますが、これは地方の教育委員会が地方地方におけるローカル・カラーを生かしまして教育運営をやつて行きますから、市町村教育委員会ができました以上は、われわれとしては国家公務員として決して地方の教育運営の上に何らの支障を来たさず、地方分権を侵害していない、こう私は考えております。
  127. 門司亮

    ○門司委員 私はそれ以上の意見の相違になりますから、いずれ法案の内容を審議するときにお聞きすることといたします。  さらに警察方面に関して大臣にお聞きをしたいと思うのですが、今度の警察法案を読んでみますと、前の警察法と少し趣がかわつておるようであります。ところが大臣は昨日の参議院の本会議におきまして、吉川議員の質問に答えて、この警察法案は、現行警察法の前文に書かれておりまする趣旨が法案の内容に織り込まれておるから、現行警察法の前文とその精神においてはかわらないというような御答弁をされたように私は新聞で拝見いたしました。もしこれが誤りでないといたしまするならば、私はお聞きしたいのでありますが、警察法の前文には御存じのように「国民のために人間の自由の理想を保障する日本国憲法の精神に従い、又、地方の自治の真義を推進する観点から、国会は、秩序を維持し、法令の執行を強化し、個人と社会責任の自覚を通じて人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここに警察法を制定する。」こう書かれております。この警察法の前文は、大臣はよく御存じだと思いますが、私自身もこの警察法をこしらえますときには関係をいたしておりましたので、よく存じておりますが、これらの前文をつけなければ、日本の非常に官僚行政の強い、ごとに警察国家であつた当時におきましては、この法の内容だけでは十分なる理解をしがたいのであろう。従つて日本法律に今まで前文があつたのはほとんどないのですが、異例にここに前文をつけて、その精神をここにはつきり表わしておる、この精神に対して、内容はほとんどかわつていないと言われるのですが、内容は非常にかわつております。ただ第一条に安全と秩序を保持するということが書かれてあるだけである。警察法案の第一条の目的というところを読んでみますと、「この法律は個人の権利と自由を保障し、且つ、公共の安全と秩序を保持するため、民主的理念を基調とする効率的な警察の組織を定めることを目的とする。」察ということだけが書いてある。これは目的であります。今回現行警察法の前文を削除された大臣の御意思を伺いたい。
  128. 犬養健

    犬養国務大臣 前文をやめましたのは、その前にもう一つ法律体系に関する私どもの意見があるのでございます。前文をつけますのは、わが国の法律体系からいうと異例でございまして、私の記憶に誤りがなければ、憲法、教育基本法、警察法だけなのであります。今度はそういう異例よりは、わが国本来の法律体系にもどろうということが第一の法制的な根拠でございます。決してあの文句がけむたいから、いつの間にか大掃除してどけてしまえというような考えでやつたのではございません。第二条には御承知のように警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その責務の遂行に当つては、不偏不覚且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」というようなことを入れまして、警察が政治警察にならないように、今後権威と自由のよい友であるようにという趣旨を、ここにはつきりいたしまして、その次には服務の宣誓をさせているのであります。また民主的理念という点で、従前の公安委員会制度の存続その他において前文の意味が残されている、こういう解釈をいたしておる次第であります。
  129. 門司亮

    ○門司委員 私は今の大臣の御答弁でありまするが、前文がいいか悪いかということについては別の問題であります。この内容に書かれておりまする警察法は当然でありまして、警察法の中にまさか一党一派に偏していいということを書く法律はどこにもありません。ここに書かれておりますことは至つて平凡なことであつて、あたりまえのことである。決してこれによつて前文をカバーしたと言えないと思う。私は大臣のあげ足をとるようで、はなはだ恐縮でありますが、ここで一言お聞きしておきたいと思いますことは、今の大臣の言葉は聞き捨てならぬ。法律の体裁というか、わが国の法文の取扱いについて、こういうと法律では前文をのけたいということを今お話になつたと思いますが、そうすると大臣のお話に、教育基本法と憲法に前文があるが、これは両方ともおとりになるお考えでありますか。
  130. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。これは私の範囲ではざいませんので、答弁の限りでごいません。また適当な方から答えてもらおうと存じます。
  131. 門司亮

    ○門司委員 大臣は今私の範囲ではないというお考えでありまするが、この前文をとつたの法律の体裁からとつたのだというお考えでありまする以上は、—法をあずかつておりまする大臣といたしまして、これの答弁ができないというお考えでございまするならば、内閣の主宰者であります総理大臣にここに出ていただきまして、そういう内閣総理大臣からその真意をよくおすいいたしたいと思いまするので、委員長におきましては、どうかひとつ内閣総理大臣出席を要求していただきたいと思います。
  132. 犬養健

    犬養国務大臣 お言葉でございますが、私の方の方の役所の仕事は、法務省になりましてから法制意見が法制局に移つてしまつたのであります。それで当時の法律の全体について私がここで申し述べますことは、少し筋違いではないかと思います。それからいろいろな御忠告でありますが、だれも法律をつくつて一党一派に偏するというばかはない、こういうお話でありますが、不偏不党ということを書かなくとも警察法の提案はできるのであります。それを特に書いたということに、そこにみずから制約を受けるところの政治責任が生ずる、この意味をよく御了解を願いたいと思うのであります。
  133. 門司亮

    ○門司委員 それはいずれ総理大臣に来ていただきまして、憲法の前文まで、とりのけるお考えがあるかどうか伺いたい。これは大臣がお話になりました通り、閣議できめたに間違いございませんので、法制関係がいかにございましようとも、内閣の方針として私は総理大臣にお伺いいたします。  その次に聞いておきたいことは、警察の性格でありますが、一体この警察は国家警察であるのか、あるいは自治警察であるのか、その性格をはつきり御説明願いたいと思います。
  134. 犬養健

    犬養国務大臣 これはどなただつたか、この前御質問がありまして、この部屋でお答えしたと思います。(「もう一ぺんやれ」と呼ぶ者あり)もちろんお答えをいたすつもりであります。これはこういう考え方なんです。国警とか、自警とかいうことでなく、新しい府県警察というものを考えよう、こういう考え方でございます。国警が成績がよくて、自警にかわつて国家地方警察という名前が残るとか、自警の方が民衆に好かれているから、自警の名前を残そうというような問題から、もつと白紙に還元して府県単位の警察をつくりたいという考え方でございます。
  135. 門司亮

    ○門司委員 私が今お聞きいたしましたのは、この次の予算に非常に関係を持つからであります。と申しますのは、制度が明確でございませんと、地方財政法に非常に大きな影響を持つて来るのであります。地方財政法の第二条の二項にはこう書いてあります。「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない。」と書いてある。そこでこの問題が地方の責任において行うべきものであるか、あるいは国の責任において行うべきものであるか明確にならないと、地方財政法から考えて負担区分というものが明確になつて来ないのであります。従つて私は性格を聞いているのでありまして、この性格がはつまりいたしませんと、地方財政法をどう解釈していいかわからないのであります。これが国の制度である、国の警察であるという解釈がつきますならば、地方財政法の十二条から考えて行きますと、少し問題が行き過ぎてはいないかと思います。もし国の制度であつて、施策であるということになりますと、現在の府県は警察費を持つておりませんので、警察費を持つておりません府県にこういうものを附加するということは、やはり第十二条に抵触していると思う。従つて今の答弁だけでは両方に責任があるような、ないような答弁で、地方財政法の解釈の上に非常に苦しみますので、もう少し明確に、地方公共団体に全然負担を転嫁しないものであるかどうかということ、いわゆる地方財政法の二条に触れるかどうかということを御答弁願いたいと思います。
  136. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。御承知と思いますが、本年度に限つては経費の支弁は従来の区分通りにいたします。問題は来年度の問題になるのであります。そこで府県警察はどつちのものかというお話でございますが、これは自治体である府県の負担になるわけであります。
  137. 門司亮

    ○門司委員 府県の警察というお話でありまするが、今も府県は県の警察費というものを持つておりません。そこで県がこれを支弁して行こうといたしまするならば、何らかの措置を講じなければならない。これについては財政的の経過措置として私から申し上げまするならば、今まで自治警察を持つておりました自治体が、その費用を負担するように私は仄聞いたしておりまするが、その通りでありますか。
  138. 犬養健

    犬養国務大臣 本年度に限つてはその通りでございます。そうしてこれはまたあとで……。
  139. 門司亮

    ○門司委員 その通りだというお話でありますが、一体いかなる法律で自治警察を持つておりまするところの費用を県に委譲する手続ができるのか、その点をひとつお教えいただきたいと思います。
  140. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 大臣からお答えになつておられます通り、来年度からは府県の負担になりますが、本年度は経過中でありますから、本年度に限りまして従来の自治体警察の組織に属する費用は自治体支弁、国の責任に属する費用は国の支弁、かような方針において定めたいと思つております。
  141. 門司亮

    ○門司委員 私はその点が一向わからぬのであります。警察が府県警察になつて、市町村がそれの費用を負担するということは、私は少しおかしいんじやないかと思う。一体どこに市町村が県の費用を負担しなければならない義務があるのかということであります。身分がかわるのであります。身分のかわつた者の費用をその自治体が支弁しなければならないということでは、困るので、これは経過措置であるから法律であれば何でもできるんだというものの考え方が、私は非常に間違いだと思う。少くとも地方の自治体にとつては非常に大きな問題だと思います。この点をもう少し明確にどういう法律で、どういう手続でやられるのか。
  142. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 原則はまさにおつしやる通りであります。ところが本年度は財政の調整その他を要しますから、財政の負担に関する限りにおいては、なお従前通りということを警察法の附則に明記をしております。
  143. 門司亮

    ○門司委員 法律の中に従前の通りとお書きになると言つておりますが、それならばはつきりと私は聞いておきます。今警察を持つておりまする地方の自治体に、おのおのの議会に、警察の予算に対してこういうものを含めということの指令ができますか。もし自治体に対して、国が二十八年度の予算に限つて、これこれこういう予算を組みなさいという指令ができるというなら、その法的な根拠を示していただきたい。
  144. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 現在におきましても、自治体においてどういう費用をどの程度組めという指令は全然出しておりません。にもかかわらず、自治体は十分警察機構を維持しておられるのであります。制度が改正になりましても、市町村の警察の費用は本年度は従前通りということになつておりまするから、その点はかわりがございません。
  145. 門司亮

    ○門司委員 私は、これは齋藤長官に聞いたつてわからぬのじやないかと思うので、自治庁長官に聞きたいのですが、市町村が今持つております自治警察の職員は市町村の公務員であります。この市町村の公務員の身分が県の公務員の身分にかわつて来る。そのときに、市町村が他の公務員の身分になつておりまする者の費用を支弁することが現行法でできるかどうかということであります。
  146. 本多市郎

    ○本多国務大臣 これは今回の改正措置等によりまして、自治警でやつておりました市町村の警察が、府県警察と性格がかわりましても、その経費を負担するという法律を尊重して、予算を組むと考えております。もちろん今までの自治体の警察の経費は自主的な負担でありましたが、それが今度は今回の改正法に基く義務的な負担にかわる、その性格の相違はございます。従つて性格のかわる義務を課するにつきましては、それに対する必要なる財源措置がなければ相なりません。その財源措置につきましては、すでに現状通りの費用ならば、地方が負担し得る財源措置を講じておくことにいたしますので、費用の性質はかわりますけれども、財源措置も伴う。これなら財源の裏づけといたしましても、法的根拠も明瞭であると考えております。     〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 門司亮

    ○門司委員 私には法的根拠は一向明瞭ではございません。地方の自治体のことを考えて参りますこと、たとえば警察費の負担がかわらぬじやないかというお話でありますが、自治体警察の費用の負担をいたしておりますものの中に、二つの種類がございます。今日本に四百二十二自治警察がありますが、この中で六十、あるいは調べによりますと九十と言われておりまするが、これだけの数は国から平衡交付金をもらわないで、自己財源でこれをまかなつております。残りの三百幾つかの自治警察はある程度の平衡交付金をもらつておる。しかしそれだけでは足りないで、自己支弁の費用が相当あるはずであります。これを総計いたしますと、大体百二、三十億から百五十億くらいになりはしないかと思いますが、国から地方に平衡交付金として支給いたしております、いわゆる人口一人当りについて二百六十三円七十六銭でありますかの費用をかけたものだけは、県に委譲することは困難ではないと考える。しかしそれ以外のものを地方の自治体に負担させることを経過措置として法律でしいられるということは、法律上の問題から行けば、あるいはそれでさしつかえがないようにお考えになるかもしれませんが、しかし受取りまする地方の自治体に、他の身分でありまする者の人件貸を支払う義務が、一体どこから道義的に生じて来るかということであります。この点について大臣はどうお考えになりますか。
  148. 本多市郎

    ○本多国務大臣 義務の生じまする根拠は今度の改正案でございます。結局御疑問は財政措置の点にあると存じますが、国の地方に対する財政措置は、平衡交付金だけではございませんで、地方に財源をそれだけ与えれば、それで財政措置ができるのでございます。たとえば今日東京都におきまして自治警察を持つておる。平衡交付金が一文も行かないが、しかしそれだけの税金をとれる措置を講じておりますから、財政措置が整つている。かように考えますと、ただいま申し上げました通り、平衡交付金をもらつていたところももらつていなかつたところも、もらつているところは平衡交付金とその他の財政収入とを合して財政措置が整つておるわけでございます。そうした意味において財政措置は、この義務負担の性格がかわりましても、すでに整つておりますから、裏づけがついておる、こう考えるのであります。
  149. 門司亮

    ○門司委員 その点が一向わからぬのであります。今のように、たとえば市と国との関係において、自治警察がそのまま動かないで行くのならば大して問題にはいたしません。しかし身分が府県の身分になる。市町村の身分から離れるのである。市町村の身分から離れた者に対してその市町村が、何ぼ法律できめたからといつて、こういうように暫定的に警察法の中に織り込んだことだけで措置されようとすることについては、非常に大きな疑問ができはしないか。地方財政考えて参りますときに、私はこういう措置が簡単にできるとは考えない。その点について本多長官にもう一つお聞きいたしたいと思いますのは、次の問題であります。かりに大臣の言われることが一応地方に押しつけられるといたしましても、実質上の問題といたしまして、市町村議会におきまして、本年度の警察費の予算はこれこれでよいという、悪く申し上げますならばきわめて形式的な、おざなり的の予算を組まれるということになつて参りますと、必ずそこには大きな穴が明くということであるこういう予算を組まれても、審議権に対して国はとやこう言われますまい。そういたしますと、実質上の大きな財政的欠陥というものを、一体何によつて補うかということである。こういうことを考えて参りますと、地方自治庁の長官として、この警察法ができたら、自治警察を持つておりまする市町村に対して、市町村議会に対して、こういう予算を組めという指令をされるかどうかということであります。
  150. 太田正孝

    太田委員長 ちよつと門司君に申し上げますが、ただいま理事会申合せによりまして、本会議が開かれますと、警察法が向うで上程されます。それで関係の大臣が去られますので、それをお含みの上、しかるべく問題を処理して行つていただきたいと思います。
  151. 本多市郎

    ○本多国務大臣 この点につきましても、しばしばお答えいたしました通りに、地方が法律を遵奉するかいなかという問題になつて来るのでございますが、理事的に考えてみましても、地方団体にとりまして、その区域内における治安の確保ということはまことに大切なことでございます。こうした地方団体自体の内部における治安の確保のための経費であるという理論と、今回の改正法によりまして、法律は必ず遵奏してくれる、こういう建前から、私はそうした問題は起きないものと期待いたしております。
  152. 門司亮

    ○門司委員 今そういうことはないというお考えでありますが、これも多少考え方の違いでございまして、私はそういうことがないとは限らないから申し上げておるのであります。もしこのままの法律で、現状の姿でよいといたしまするときに、警察官の中にどういう問題が起るかというと、今国警から支払つておる給与と自治警から支払つております給与の差額であります。これはたとへば警視庁の人を見て参りましても、勤続五年でありまして、そうして家族一人のものについて、警視庁といたしましては大体一万千六九百円を支払つておる。国警におきましては一万四千四百円しか払つておらない。この約二千五百円の差というものが、二十八年度一箇年、同じ警察の中で、今まで国警にいた人と自治警にいた人との間にできるのでありまするが、この差額の支給によつて警察官の指揮権が保たれるというようにお考えになつておるかどうか。これをどういうふうに調整されようとしておるのか。
  153. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先般も御説明申し上げましたように、いわゆる現在の市の組織と、それから現在の国家地方警察の組織、これは費用負担の関係上、来年度に至ればこの間には相当の調整が行われますが、本年度はその組織そのままでありますから、一つの署の中に両方の給与を受けて、別々の者が執務するという形にはならないのであります。
  154. 門司亮

    ○門司委員 今齋藤長官は執務にはならないというお話でありますが、地方財政法の十二条の中には、国の警察官に対する費用は地方が支弁してはならないと明確に書いてある。警視以上の給与を国が支給されるということになつて参りますと、これは一つの国の警察官ではないかと考える。地方の自治体の中におりまする警視以上の警察官は、一体どれくらいいるのか、それらの給与は地方が支弁するのか、国が支弁するのか、その点をひとつはつきりしておいていただきたい。
  155. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 本年度は従来の通りでありますから、国家地方警察に属しておりまする者は、巡査に至るまで国が支弁をするのであります。警視以上はどう、警部以下はどうということは本年度は起らない。
  156. 門司亮

    ○門司委員 あなた方の方では起らないというお考えかもしれませんけれども、これも教育費の問題と同じように、今まではたとえば自治警をそのまま引継ぐといたしましても、警視はどこまでも自治警の中に含まれておる。従つてこれは地方公務員である。ところが今度、警視以上は国家から給料が支給されることになつて参りますと、身分は明らかに国家公務員になると思う。国家公務員になつておりまする警察官の給与を、地方の自治体から支払うということは、これもこの地方財政法の十二条に規定いたしておりまする国の警察官の費用を払つてはならないという、この規定に抵触しはせぬかということであります。
  157. 太田正孝

    太田委員長 門司君、本会議場から法務大臣の出席要求がありますので、しかるべくそこを処理して行つていただきたいと思います。
  158. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは本年度の暫定措置でございまして、二十三年に自治体警察ができ、国家地方警察ができました際にも、当分の間は国の官吏になつた者を府県費で支払う。市町村の吏員になつた者も府県費で支払うという措置をとつたのであります。今度はやはりそれと同じでございます。
  159. 太田正孝

    太田委員長 門司君、法務大臣は今退席いたしますが、御了解願います。
  160. 門司亮

    ○門司委員 本会議に行かれるのならばやむを得ません。またいずれあとでやります。私は法務大臣の方が今の関係がありますから急ぎますので、文部大臣に対する質問を端折つて参りましたが、法務大臣がおいでにならぬといたしますると、文部大臣にひとつお伺いしておきたいことがあります。  先ほどの文部大臣のお話の民主内閣に対する云々の問題でありますが、私は内閣はいずれの内閣といたしましても民主内閣だと考えておる。しかし民主内閣を民主的手段によつて、これを更迭せしめようということは正しいと思う。にもかかわらず民主内閣であるから、この民主内閣を倒閣しようとする者は民主主義者ではないというような、いわゆる暴力主義者であるというように私には聞えましたが、この点はきわめて重大な問題であります。一体大臣はどういうようにこの問題をお考えになつておるのか。自由党内閣打倒ということは、われわれは、大きなスローガンとして掲げておりますが、吉田内閣は民主内閣であるから、これを打倒せんとする者は民主主義者ではないというようなお考えだといたしますと、きわめて重大な問題になりますから、この点はもう少しはつきりしておきたいと思います。
  161. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。自由党内閣打倒、そして民主政権の樹立ということが、私にはどうもふに落ちないから、先ほど申し上げたのであります。ですから自由党内閣がやはり民主政権であるということはつきりしております。そうして自由党内閣を倒して民主政権を樹立するということの話は私にはちつともわかりません。そういうことは教員はおつしやらない方がいいだろう、こう考えております。
  162. 門司亮

    ○門司委員 大臣の答弁はちつともわからぬ。何も日教組といつても暴力的に民主内閣を打倒しようとは毛頭考えておりません。一つの内閣を更迭せしめるためのスローガンを掲げておるのでありまして、もとより民主的手段によつて更迭せしめることは当然であります。もし大臣がそういうように偏見的なものの考え方で、教員を国家公務員にしなければならぬということが今度出された教育法の基本であるとするならば、これは非常に大きな問題であります。こういうことが理念になつて教員を縛るということになりますと、これは明らかに思想の弾圧であります。私は大臣に聞きたいと思いますることは、思想の弾圧とともに行動に対する一つの制約であります。従つて文教の府であります文部省が思想の弾圧を考え、行動の制約をするというようなことは、私は文教の府のやるべき仕事ではないと考える。この点に対する大臣のお考えは一体どうであるか。
  163. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は思想の弾圧をするつもりではございませんけれども、義務教育に従事する職員は、いい子供をつくる教育をすることに一意専心していただきたい、こう考え国家公務員にしたわけであります。
  164. 門司亮

    ○門司委員 私はすでに法務大臣がおいでになりませんし、従つて警察法の問題につきましてはもう少しつつ込んで財政上の問題を聞いておかなければならないと思いますが、財政上の問題について聞くことができませんので、その点は保留をいたしておきたいと思います。  さらに念のためにもう一応委員長にお願いをしておきたいと思いますことは、先ほど犬養法務大臣のお話になりました日本法律の体裁を整えることのために、前文をとりたいという意思があるということを発表されましたが、その意思について内閣の方針がそうであるといたしますと、先ほど申し上げましたように、憲法の前文と教育基本法の前文とをもしとろうというような御意思があるといたしますならば、非常に大きな問題であります。ことに憲法の前文のごときは、これは憲法改正をしなければならぬということであつて、そういう意思が内閣にあるということになつて参りますと非常に大きな問題でありますので、この点を確かめることのために内閣総理大臣出席を後刻委員長から要求をしておいていただきたいということをこの機会に申し上げまして、私の質問はあと警察関係の大臣がおいでになりますまで、一応保留いたしておきたいと思います。
  165. 太田正孝

    太田委員長 門司君に申しますが、総理大臣は大体三時に来て、先ほど理事間の申合せによつて、一時間の範囲内で処理して行きたいということでございます。その意味は門司さんからも野党関係の方にお話を願いたいと思います。—長谷川保君。
  166. 長谷川保

    長谷川(保)委員 まず最初に伺いたいことは、一月三十日の再開国会で、首相は施政演説におきまして、総額の九二%は遺族の扶助料であると、軍人恩給のことについておつしやいました。九二%という数字は間違いございませんか。官房長官にお聞きいたします。
  167. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 間違いないつもりでございます。
  168. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私の手元に配付されました、大蔵省主計局の二十八年度予算の説明によりますと、どうしても九二%にならないのであります。普通扶助料、公務扶助料合せまして約八四・七、八五%くらいにしかならない、どういうところからこういう数字が出たか承りたい。
  169. 江口見登留

    ○江口政府委員 お答えいたします。その率の問題でありますが、今手元にあります率で御説明申し上げますると、人員の率から申し上げますと、公務扶助料受給者、それから普通扶助料受給者の合計は全体の八七%になつております。それから金額の点から申しますと、公務扶助料の金額と、普通扶助料の金額とを合せて八八%でございます。
  170. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ここに当時の速記録がございます。「政府財政の許す範囲において旧軍人恩給復活することにいたしました。しかしながら、旧軍人と言い条、その九八%は普通軍人以外の応召軍人とその遺族であります。総額の九二%は遺族の扶助料であるのであります。(拍手)」こう書いてございますが、首相の演説は間違いでございますか。
  171. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは実は恩給法特例審議会委員の調査によつたのでございまして、その資料に基いて起草された総理施政演説でありまするが、なおよく調査いたします。
  172. 長谷川保

    長谷川(保)委員 金額におきまして、違いは三十億円であります。演説をいたしましたのは一月三十日であります。速記録にちやんと残つておりますのに、あまりにも私は無責任だと思います。大蔵省の主計局の方で調べれば数字ははつきりしております。これはどちらか間違いであるに違いない。この点明確にお調べの上、お答えなされんことを望みます。
  173. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 総理の御演説は、ごく大略の数字であつたろうと考えます。
  174. 長谷川保

    長谷川(保)委員 軍人恩給に対しまする世論の非難は皆様大体御承知の通りであります。その非難に対しまして、いわば世人が納得いたします唯一のものは、遺族傷痍者に対しまするその扶助であります。そこでこのような数字はきわめて重大な数字であります。この数字を、もし演説を聞いた人がこのままにとりまするならば、大きな判断の間違いを来します。こういうことは十分に御注意をなさるべきでありますのに、すでに約一箇月もたちまして、なおこのままにしてあるということは、これは私は決して小さくない責任であると思います。すみやかに御訂正になられるように、また実情を調査なさつて報告なさるように望みます。  次にただいま政府委員からの御答弁によりますと、軍人人数におきまして、遺族数字は八七%というお話でございましたが、これも先ほど申し上げましたように、この金額がこれほどに違つておるのでありますが、これは十分間違いはございませんか。
  175. 江口見登留

    ○江口政府委員 先ほど申し上げました数字は、年金について申し上げたのでございますます。そのほかに一時恩給及び一時扶助料というのがございまして、その金額は百一億七千九百万円になつております。これらを勘案して平均しますと、先ほどの数字になるだろうと思いますが、なおよく計算してみたいと思います。
  176. 長谷川保

    長谷川(保)委員 次に遺族中には、内地の病院において病死いたしました気の毒な応召軍人や、あるいは勤労動員されました人々で爆死をいたしましたり、あるいは同様病院へ入院いたしましてなくなりました人の数は入つていないようでございますが、いかがでありましようか。
  177. 江口見登留

    ○江口政府委員 ただいまの数字の中には、そういう人たち数字は入つておりません。
  178. 長谷川保

    長谷川(保)委員 その人々の人数はどれくらいでありましようか、わかつておりますか。
  179. 江口見登留

    ○江口政府委員 厚生省の方から、詳細な数字はあとで申し上げることにいたします。
  180. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは、それは後ほど御答弁をいただくことといたしまして、厚生省関係はいないのでありましようか。
  181. 太田正孝

    太田委員長 長谷川さん、ほかの方をおやりください。
  182. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは厚生大臣が出ますまで、ほかの方に移ります。  普通恩給を受けます者のうちで、四十五歳以上五十五歳未満の者の人数及びその階級別等の詳細がおわかりでごごいましようか。
  183. 太田正孝

    太田委員長 厚生大臣はすぐ来るそうです。
  184. 江口見登留

    ○江口政府委員 既裁定の分につきまして、大体の比率を申し上げますと、六十四万五千人のうち、四十才未満は三十六万八百人、四十才から四十四才までが九万七千四百人、四十五才から四十九才までが五万二千五百人、それから五十才から五十四才までが三万三千七百人、五十五才から五十九才までが二万三千六百人、六十才から六十四才までが一万七千九百人、六十五才以上が五万九千百人、こういう数字になつております。
  185. 長谷川保

    長谷川(保)委員 厚生年金におきましては、御承知のように五十五才以上でなければ給付を受けられないことになつておりますが、なぜ四十五才以上の者に対しましてこの恩給を支給するようにいたしたのでありますか。その理論的な根拠を承りたい。
  186. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 現在文官の若年停止が四十才になつております。文官軍人両方とも並行するという前提のもとに、軍人恩給を四十五才にいたしましたけれども、それを全額受け得るのは五十五才でありまして、四十五才から五十才までは十分の五、五十才から五十五才までは十分の七、五十五才以上が全額受けるようになつております。従つて文官の方も若年停止を五年引上げることが法案の中に入つております。
  187. 長谷川保

    長谷川(保)委員 確かに文官はお説のようになつておりますが、それ以外の社会保障制度的なものにつきましては、御承知のように大体五十五才以上でなければならないわけであります。
  188. 太田正孝

    太田委員長 長谷川君、お話中ですが、厚生大臣が出席されました。
  189. 長谷川保

    長谷川(保)委員 軍人恩給文官恩給はさようでございますけれども、ほかのものとの差が出て来るわけであります。政府厚生年金を四十五才まで引下げて来るという御意思がありますか、そういう御計画がありますか、承りたい。
  190. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答え申し上げます。厚生年金軍人恩給とは、もちろん軍人恩給も多年軍籍にあつた人に対して支払うものでありますが、しかし厚生年金という社会保障制度の観念とはいささか違うと私は思う。厚生年金は老齢者に対し社会保障制度の見地から国家が補償するものであります。でありますから、軍人恩給が四十五才であるから、厚生年金も四十五才まで引下げたらということは、規模が違いますから、この際ただちにそうする必要はないと私は考えております。
  191. 長谷川保

    長谷川(保)委員 社会保障制度審議一会が政府に対して御承知のような勧告をいたしております。国会もまたこれを実施すべき決議をいたしておりますが、これを承りたいのであります。
  192. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 社会保障制度審議会答申の趣旨は、きわめてけつこうなものであると考えますが、政府といたしましては、軍人恩給だけに極限して申し上げますと、本来軍人恩給は、文官恩給が継続されます以上、やはり停止さるべきものではなかつた考えておるのでありますが、占領期間中、日本の主権が連合軍最高司令官のもとに従属しておるような次第でありましたので、その連合軍司令官のさしずによつて行われました覚書によつて、この軍人恩給が一時停止された。それで日本独立いたしました以上、社会保障制度審議会答申答申といたしまして、この恩給は事情の許す限り復元したいというのが政府の意思でありまして、そういう考えから審議会建議を取入れた次第でございます。
  193. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今回復活軍人恩給文官恩給との間には、相当著しい差ができております。先ほど年齢につきましては、文官が四十五才以上であるからというお話がございましたが、その他の点につきましても相当大きな差異がございます。今日の社会保障制度と見らるべき、たとえば国民健康保険とか、あるいは労災保険とか、あるいは共済組合とか、その他おそらく二十近い各種の制度がございますが、その制度がずいぶんとちぐはぐである。保険料にいたしましても、給付の内容にいたしましても、またその保険の管理の点におきましても、厚生省あり、労働省あり、恩給局ありといつたようなぐあいで、それぞれ違つておりまして、ずいぶんはなはだしいむだもあり、国費の濫費も行われておる。また憲法の精神からいたしますれば、当然国は全国民に対しまして平等、無差別の取扱いをしなければならぬと思うのでありますが、そこに大きな差がある。従いまして、これを整理統一して、完全な社会保障制度の姿において、国に一人の困る者のないようにする、こういうことが当然なことだと思います。そういう意味で、社会保障制度審議会が、このことを早くより勧告をいたしております。しかるに、政府はこれに対してきわめて冷淡な態度で、ことに首相はきわめて冷淡な態度をとつておられると思うのであります。一体この社会保障制度審議会のこの勧告を実施なさる意思があるのかどうか。意思があるとすれば、どういう具体的な計画を持つておられるか、これらの点につきまして官房長官及び厚生大臣の御意見を承りたいと思います。     〔「同じ質問じやないか」と呼ぶ者あり〕
  194. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 社会保障制度審議会答申につきましては、その都度政府としてはそれを十分に尊重いたしまして、できるだけ取入れたいと考えております。将来御指摘のように、社会保障制度によつて全般がカバーされることは望ましいことでありますが、今のところはまだそれをすぐ取入れるところにまで至つておりません。
  195. 長谷川保

    長谷川(保)委員 同じ質問つたそうで、恐縮であります。きよう午前中欠席いたしましたので、二重の御質問をいたしまして、たいへん失礼いたしました。  そこで、もう一つお伺いしたいのでありますが、文官恩給につきまして、近い将来手をつける御意思があるようにも新聞に報道されておりますが、政府の御方針はどんなふうでありますか。
  196. 江口見登留

    ○江口政府委員 今回の軍人恩給復活に伴いまして、従来の文官に対する恩給の規定も多少改正したところがあります。若年停止の問題もこの際引上げました。それから加算制度も一切廃止しております。そういう多少の改正はございますが、ただいまお話がございました全般的な問題から見て何とかもう少し手を入れる必要があるのではないかという御質問だと思いますが、それらの点につきましては、目下人事院において十分研究しておりますので、その答申が出ましたら、その線に沿つて考えたいと思つております。
  197. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私どもも戦争遺家族や傷痍者に対しまする生活の保障は、当然優先して考えられなければならないと思います。しかしながらその措置はあくまでも社会保障的な観点と、国民的な公平の見地からなされなければならないと思うのでありますが、ただいまの質疑で明らかになつて参りましたように、その間に相当矛盾がある。これはすみやかに改善すべきであると私は思います。どうも先ほどの御答弁を伺いましても、政府にはそういう御熱意がないように思われる。今いたずらに軍人恩給だけに力を入れて行かれるということの中に、表面に出ない何らかの企図があるように私どもには思われるのでありますが、政府の率直な御意見を伺いたいのであります。
  198. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 別に隠された特別の意図は全然ございません、不合理と考えられますところは、慎重に検討いたしました上に、なるべく早く善処いたしたいと考えております。
  199. 長谷川保

    長谷川(保)委員 吉田首相は一月三十日の施政演説の中で、「戦争責任を長く旧軍人にのみ帰することは、社会平和をもたらすゆえんでないと考うる」と言うておられます。それで旧軍人恩給復活すると言うておられますが、この意味は、この軍人恩給は旧軍人既得権だというお考えの上に立つているのでありましようか、政府の御意見を承りたいのであります。
  200. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 総司令部覚書に従つて政府軍人恩給は停止いたしまして、恩給証書まで廃棄いたしたわけでありますので、これを的確に既得権ということは、あるいは当らないかもしれませんが、一種の潜在的の既得権があるということは言い得るじやなろかと考えます。なほ、正確な法的解釈は、御必要があれば、法制局長官からも申し上げます。
  201. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今回の戦争は、申すまでもなく全国民が大きな打撃を受けました。ほとんど全国民が財産を失い、家を焼かれ、あるいはおのれの肉親さえも失つたのであります。満州国や中国におられました方々のさんたんたるその惨状は、いまさらここに申すまでもございません。これを既得権と申しますならば、私は全国民が失つたと見ていいと思う。今日もなほ中国におります残されました人々中には、こじきをしておられる人々もずいぶんあり、あるいは心ならずも異国人に肉体をまかせて、いうの日か故国に帰る日を待ちこがれている婦人たちもたくさんあるでありましよう。あの満州におきまして、昭和二十年八月十四日の日に高級将校たちはすでに特別列車を仕立てて引揚げた。次いで第一線の軍隊を引揚げた。あとに残されました開拓民や邦人はどうなりましたか。さんたんたるものであります。既得権というようなことは、私はこういうようなさんたんたる全国民の大きな痛手を思いますときに、旧軍人諸君においても、おそらく正しい方々は言うをはばかるだろらと思うのであります。いまさら何を好んでこの方々、ことにこの中の普通恩給の三十億を受けます方々にこれを認むる必要があるか。先ほど隠された意図はないようなお話がございましたが、国民的な公平という立場に立ちまして、これはどうしても納得できないのであります。何ゆえに既得権を認めなければならないのであるか、その点を十分に伺いたいのであります。
  202. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 先ほども申し上げましたように、政府といたしましては、文官恩給が認められます以上、旧軍人恩給を廃止すべきじやなかつたのであります。それは一に総司令部の指令によつてつたのであります。従いまして、日本独立を回復した以上、これをできる限りにおいて復活することは当然の措置であつた考えます。それは戦争責任に対する観念のお考えだと思いますが戦争責任は、先ほどもこの委員会で申し上げましたように、さかのぼつて軍人を含む政治責任者すべてにこれがあるわけであります。それとは別でございまして、責任のあるなしにかかわらず、恩給文官に残されておりまする限り、旧軍人復活することは少しも正義に反しないと考えます。
  203. 長谷川保

    長谷川(保)委員 先ほどもちよつと触れたのでありますが、満州や中国、その他外地各地に財産を残して日本人が引揚げて参りました。それに対する補償はいかがでございますか。
  204. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 在外資産の問題も、これは無視することができないと思いまするが、何さま国の実情がこういうありさまで、その処置についてどうすばれいいか、目下政府において調査中であります。
  205. 長谷川保

    長谷川(保)委員 先ほど厚生大臣が御欠席でごいましたので、残したのでありますが、内地の病院におきまして病死いたしました応召軍人や、勤労動員された人々で同じく病院へ入院してなくなりました人、あるいは爆死いたしました勤労学徒等につきましては、どういう補償がなされておりましようか。
  206. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 これは遺家族援護法によつて、一時金三万円を支給いたします。
  207. 柳田秀一

    柳田委員 関連して国務大臣にお尋ねしますが、ただいまの長谷川委員質問に関連いたしまして、昭和二十年でありましたが、国民義勇兵役法あるいは国民義勇隊令かと存じておりますが、国民義勇隊なる制度が設けられまして、それによりまして軍の要請によつて、出動したときに、軍属の地位が与えられておつたと思うのであります。八月六日、広島に原子爆弾が落されましたとき、たまたま広島の国民義勇隊におきましては、疎開作業に従事しておつたのでありますが、これらの隊員の戦死、戦傷、戦病に対しては、政府はいかに御処置をなさつておられますか、その点をお伺いいたします。
  208. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 弔慰金三万円を出しております。
  209. 柳田秀一

    柳田委員 これは明らかに軍属の資格と思つておりますが、それに間違いはございませんか。
  210. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 これはいわゆる援護法の対象になつております軍属でありませんので、一般人として取扱つております。
  211. 柳田秀一

    柳田委員 そういうことをお尋ねしておるのではありません。立法措置の根拠によりまして、軍属として認めるのではないかということをお尋ねしておるのであります。
  212. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 従来さように取扱うことにつきましては考慮をいたしましたが、軍属として取扱うことができませんので、一般人として弔慰金三万円を支給いたしました。
  213. 柳田秀一

    柳田委員 私が承知しておりますのは、この国民義勇隊が出動いたしましたときには、軍属の身分が与えられたと思つておりますが、これに対する、厚生大臣でなしに政府のはつきりした御答弁をお聞きいたしたいと思います。
  214. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 今回の援護法の対象になりました中に非戦員というのがございますが、従来有給の雇用人としてありまする者に対して、軍属としておりますが、今仰せのようなものは有給でございませんので、軍属として取扱つておりません。
  215. 柳田秀一

    柳田委員 私はそういうことをお尋ねしておるのではないのであつて昭和二十年八月六日に広島に原子爆弾が落ちたときに、疎開作業に出動しておつた者は、当時は国民義勇兵役法でありましたか、国民義勇隊令でありましたか、いささか記憶が薄いのでありますが、そのときの立法根拠によりまして軍属たる地位が与えられておつたのではないかということを御質問しておるのであります。
  216. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 これは当時閣議決定によつてつたものでありまして、有給の軍属でありませんので法律上いわゆる軍属として、援護法の対象として一時金以外に出すことができなかつたのであります。
  217. 柳田秀一

    柳田委員 閣議決定の日は三月二十二日と覚えておりますが、閣議決定でなしに、国民義勇隊令あるいは国民義勇兵役法というような法的根拠によつて軍属たる地位が与えられておつたのではなかろうかということを質問しておるのであります。
  218. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 たびたび申し上げておりまするように、有給の軍属でありませんので、一般の軍属と多少差別をいたしまして、一時金を出しましたので、有給でない者に対しましては、従来もいわゆる援護法の対象として、法律上の軍属として取扱つておりません。
  219. 柳田秀一

    柳田委員 さようにいたしまして、有給であろうが無給であろうが、軍属として出ておつた者が、単に三万円の一時金でおつぽり出されておる、こういうようなことになつて参りますと、先ほど総理が言われましたように、戦争の痛手を長く国民に植えつけるものでないというような趣旨に反しておると思うのでありますが、これに対して国務大臣の御見解を伺いたい。
  220. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 私も何とかしてさような範囲にまで援護法の対象を及ぼしたいと考えますが、従来やはり法律的な取扱いといたしましては、一応差別をせざるを得ないのであります。やはりこれは雇用関係から申しまして、有給であつて、一定の給与を与えて、それに対する対価として労務を提供する、そういう雇用関係がございません者に対しましては、一般の軍属と多少区別をいたしませんことには、法体系の確保の上から多少疑問がありますので、ただいま申しましたような一時金にいたしました。
  221. 柳田秀一

    柳田委員 今度の恩給法を見ましても、増加恩給等につきましては、二等兵で第一項症でありました者は、その差額がわずかに二方円であります。そういうことは、非常なる身体の障害をこうむつた者に対しては、相当症状を主にして立法措置がとらるべきと思うのであります。そういつた関係から申しましても、戦死した、あるいは非常な大きな戦傷をここうむつた者に対しては、有給であろうが無給であろうが、当然国家が補償するのが建前だと思うのでありますが、これに対して厚生大臣の御見解を伺いたいと思います。  総理が出て参りましたので、これをもつて私の質問を打切ります。
  222. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 重ねて申し上げますが、今回の恩給はいわゆる軍人、軍属を対象といたしております。援護法は御承知のように、いわゆる軍人恩給がポ勅六十八号によつて停止いたされておりましたので、その経過措置として制定されたのであります。従つて援護法と軍人恩給法は、法体系として同じような考え方で行かなければならないのであります。従つてただいま御指摘の通り、これらの方々に対して精神的な援護を考えますことは当然でありますが、法律的には、先ほど申した通り措置する以外には、やはり法体系の確保の上から申しましてもいかがかと思いますので、今後いわゆる精神的にそういう方々に対して援護いたしますのは、いわゆる社会保障的な考えからいたすべきであつて法律的には軍人恩給と同じように考えて行きたいのであります。そこにやはり一定の雇用関係にあります—軍属一定の俸給を与えて、それに対する対価としての一定の労力を提供する軍属と多少違いますから、いわゆる一時金として三万円やる、それだけの差をつくつたのであります。御意見としては承りますが、法律的には、ただいま申しました通りお答するよりほかにないのであります。
  223. 太田正孝

    太田委員長 柳田君に申しますが、もうよろしゆうございますか。
  224. 柳田秀一

    柳田委員 よろしゆうございます。
  225. 太田正孝

    太田委員長 長谷川君に申し上げますが、理事間の申合せによりまして、ここで総理大臣に対する質疑をすることにいたしますから、そのあとで御質問願いたいと思います。  この際内閣総理大臣より発言を求められております。これを許します。吉田茂君。
  226. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府は義務教育費の全額国庫負担を決意していることにかわりはありません。」しかしこの制度の実施は、税制改正等と密接な関連を有するので、さしあたり昭和二十八年度においては、経過的に定員定額による負担措置を構ずることにいたしたのであります。
  227. 太田正孝

    太田委員長 総理に対する発言につきまして、中曽根君から発言を求めております。これを許します。中曽根君。
  228. 中曽根康弘

    中曽根委員 昨夜総理大臣はこの議場にお見えになりませんでしたから、われわれの質問の趣旨がよくおわかりにならないと思います。総理大臣昭和二十八年一月三十日の施政方針演説におきまして、次のように言つておられます。「道義高揚は、究極において教育の作振にまつほかはありません。政府が今回義務教育費の全額国庫負担を決意し、教職員を国家公務員とするの措置をとるは、このゆえにほかならないのであります。」つまり全額国庫負担を決意して、もつて国家公務員にする、全額国庫負担と国家公務員にするというのは表裏をなしている、「このゆえにほかならないのであります。」こういうことを言つておるわけであります。ところが、この施政方針のもとに政府が出して来た法律を見ますと、この言葉が実行されておりません。まず第一に、義務教育学校職員法案という法律が出ておりますが、この附則の十一には、教職の俸給、扶養手当等は昭和二十八年度に限り都道府県が負担する、もちろん昭和二十八年度限りとは書いてあるけれども、しかしあなたの御演説は、ここに書いてありますように、昭和二十八年度の施政方針でお述べになつておる。その昭和二十八年度に全額国庫負担なら、当然国庫が負担すべきである、国家が最後までめんどうを見るべきである。ところが身分だけは国家公務員にして政治活動を禁止しながら、給与の面においては都道府県が負担するというふうに、これにはなつておる。昨年よりはなるほど給与は多少増額している。しかしあなたがここで言明なすつたように全額国負庫担にはなつておらない。大蔵大臣の答弁により、あるいは文部大臣の答弁によれば、三十億円以上の金というものは、地方の県民税やその他でサービスしてくれ、これが暗黙のうちに強制されておるのである。こういうようなやり方をおやりになるということは、全額国庫負担という名前に反する、のみならず昭和二十八年度において実質的な全額国庫負担をやらないのに、身分上の国家公務員だけを先に強行するというにとは変な話ではないか、これが質問の趣旨であります。先ほどの総理大臣の御答弁では、その点十分納得いかないのであります。あなたのこの御演説が間違いであるか、あなたの指名した閣僚の出した法律が間違いであるか、どちらが間違いでありますか、ここで御説明願いたいと思います。     〔「答弁になつていない、答弁答弁」「答える必要なし、先ほど言つた通りでいいんだと呼び、その他発言する者あり〕
  229. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは私のただいまの答弁で尽きておると考えるのであります。すなわちさしあたり二十八年度においては経過的に定める、これが私の答弁であります。
  230. 中曽根康弘

    中曽根委員 それが総理大臣の御答弁だと聞きまして、私は大いに質問すべきものを持つておりますが、時間の関係であしたに留保いたしまして、一応私は下ります。
  231. 太田正孝

    太田委員長 辻原君。
  232. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいま総理答弁があつたわけでありますが、はつきりいたしませんので、なお昨夜来の食い違いの問題について質問をいたしたいと思います。ただいまの答弁によりましても、明らかに総理が述べられた全額国庫負担ということは、これは二十八年度においてはその通りを実施していないということを、裏書きせられておる言葉であると思うのでありますが、この点二十八年度の経過措置においては、明らかに国は給与の全額を負担していないということを総理はお認めになるのかどうか、この点が第一点であります。  いま一点は、一たび国民政府が義務教育の全額を国庫において保障すると述べた言葉によりまして魅了せられ、ひそかに教育財政の確立をこいねがつたと思うのでありますが、次第に内容が明らかにされるに及んで、今日は全額国庫負担どころか、これは減額国庫負担であるという批判の声さえほうはいと沸き上つておるのでありますが、そのことによりまして、政府の出している、総理が述べられているいわゆる全額国庫負担というものは羊頭狗肉であり、これは教育水準を向上せしむるものではないという印象を強く国民に与えております。かようなことは、先ほど中曽根委員が触れられました、総理道義高揚をはかるについてこのような制度を行うと言つたことと背反しはしないか、すなわちかようなごまかし政策、ごまかし法案提出することによつて国民政府自体すら一たび内容をめくれば全然それに非なるものを出しておる、そういう道義高揚どころか、国民の大きな不信の声を与える結果を招来しているものと私は考えるのでありますが、かようなことを総理は最近において知悉せられておるのか、はたしてこれをやることによつて、ただいまの国民の感情において、道義高揚をはかれるとお考えになつておるのか、この点を第二点として承りたい。  第三点といたしまして、第一の問題に関連をして、先ほど総理答弁の末尾に触れられておりました、二十八年度の経過措置として、定員定額でこれをやると申されましたが、この定員定額でやるという趣旨が、国の措置をいたしました予算の範囲内において完全にでき得るとお考えになつておるのか。またはこの点は経過措置だから、昨夜の文部大臣あるいは自治庁長官答弁通り、その一半を都道府県の責任に帰するのもやむを得ないとお考えになつておるのか。この点を明らかにしてもらいたい。  以上三点に対しまして、答弁をいただきたいと思います。
  233. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは先ほど私が説明いたしました通り、本年度においては財源の関係があるからできない。二十九年度において完全に国庫負担にする。これは私の説明で御了承を願いたい。
  234. 辻原弘市

    ○辻原委員 第二、第三の問題につきましては総理から答弁がございませんので、この点は留保して、他の所管大臣にも後日質疑をいたしたいと思います。
  235. 太田正孝

    太田委員長 門司君。
  236. 門司亮

    ○門司委員 私は内閣の首班者としての総理大臣に御質問をいたさなければならない事態になりましたので、率直にお答えを願いたいと思います。これは先ほどの私の警察法の改正に対しまする質問の際に、警察法がきわめて重要な問題であつて、しかも各条項にわたる文章だけの解釈では、この警察法の大精神というものはわからないのであります。従つて日本の従来の法律には異例であるが、そのためにこれに前文が付してある。これをなぜ削除したかという私の質問に対して、犬養法務大臣は、日本法律に前文をつけるということは異例であつて、これは法律の体裁といいますか、建前の上からこれを削りたいと考えて削つたのであると答弁されました。日本法律の中で前文のありますのは、御存じのように第一に、これは法律ではないかもしれませんが憲法、その次には教育基本法であります。それと、この警察法であつたはずであります。憲法は国の一切のことを規定しております。国の進むべき大方針である。従つてその大方針の精神をことさらに具現するために前文がつけてある。その次の教育基本法は、これまた国の最も重要なる一つの問題であります関係から、その精神を表わしますために、当然これにも前文を付しておる。その次に、重要な治安の関係として警察法にも前文を付して、その精神を明らかにしております。この日本の三つの基本的な法律に対しましては、特に前文をつけておるということは、今申し上げた理由からであると解釈しておるのであります。しかるに、法律の体裁においてかつて日本にそういうものがなかつたから、前文を削りたいのだということになつて参りますと、日本の基本をなします憲法並びに教育、治安の三つの重大な問題に対して、その精神をぼやかすような形になりはしないか、これはゆゆしき問題だと私は考えておりますが、内閣の首班といたしまして、将来憲法の前文を削除し、さらに教育基本法の前文を削除されるという御意思があるかどうか、この際お伺いいたしたいと急うのであります。率直にひとつお答えを願いたいと思います。
  237. 吉田茂

    吉田国務大臣 警察法の前文は、今度の改正警察法の中に精神は織り込んでありますから、それで削除いたしまして、前文はつけてないのであります。憲法の前文改正云々については、今日考えておりません。
  238. 門司亮

    ○門司委員 今憲法のことをお話になりましたが、それなら教育基本法についてもう一つ残るのでありますが、先ほどの犬養さんのお話はもちろん、参議院の昨日の本会議でも犬養さんがお答えになつておりますように、前文を削際したということに、今の総理大臣の御答弁と同じでありまして、そうだといたしますと、先ほどの御答弁の中には、これと食い違つた、今までの法律にこういうものはなかつたので、これをとりのけたのであるということがさらにつけ加えられて今日答弁されたのであります。従つて私は総理大臣に聞いているのであります。  それではもう一応お伺いいたしますが、教育基本法等に対しましても、やはり前文を削除されるという御意思はないということを、ここでひとつはつきり御答弁を願つておきたい。
  239. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまのところ、そういう削除をいたす考えは持つておりません。
  240. 太田正孝

    太田委員長 次に総理大臣に対し、きのうまでの間におきまして特に保留されておりました質疑に入りたいと思います。小島徹三君。
  241. 小島徹三

    ○小島委員 私は総理大臣に少しばかりお尋ねしてみたいと思います。  私は前回申しました通りに、吉田総理大臣が、現在の国際情勢において戦争の危機は漸次遠ざかりつつある、そういう観点に立つて再軍備をしないとおつしやることも、また憲法というものは、不磨の大典とは言わないけれども、国のバツク・ボーンをなすものであるから、軽々しくこれを修正するというようなことを考えるべきでない、ただいまのところは憲法を改正する意思はないのだ、かようにおつしやることも多少私たち意見とは相違いたしておりましても、総理大臣の一つの見識として私たちは尊敬してさしつかえないと思うのであります。しかしこの総理大臣の御意思を承りまして、ただ一つどうしても私たちに納得の行かない点ができて参りましたので、その点をお尋ねしてみたいと思うのであります。と申しますのは、私は前回の委員会において岡崎外務大臣に対しまして、日米安全保障条約に、アメリカ日本に対して、日本は「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」と書いてある。この「期待」ということはどういう意味か。一体この文句によつて日本が直接及び間接の防衛を漸増するところの責任が生じているのか、義務があるのかということを尋ねましたところが、岡崎外務大臣は、厳密に法律的に言うならば、権利だとか義務というものではないけれども、この文句は日米安全保障条約の前文に書いてあつて、これを日本国家としては了承しているのであるから、厳密に法律的の義務とは言わないけれども、これを日本が守ることができれば守るべきものであり、また守らなければならぬものであると思われる。しかし現在日本政府としては、当然これを守りたいという気持は持つておるわけでありますけれども、しかし現実においてはできないのであります。こういうことをおつしやつているのであります。その反面におきまして、木村保安庁長官にお尋ねいたしましたところが、直接防衛をするために自衛軍を持つということは、憲法を改正しなければできないということをおつしやつているのであります。そこで吉田総理大臣がこの日米安全保障条約に調印なさいましたときには、総理大臣はこの直接防衛を漸増的にするという約束をなさつている、了承せられているというのでありますが、一体そのときに憲法を改正するという御意思があつたのか、なかつたのか、その点をお尋ねしてみたいのであります。
  242. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをします。第一のお尋ねの漸増の問題でありますが、これは日本独立いたした以上は、日本の防衛を条約その他によつて—みずから守らずして、他の方法でもつて独立を守らんとすることは、われわれのいさぎよしとせざるところであります。でき得べくんば自力をもつて守りたい、これが本則であります。しかしながら、これができない以上は、条約その他によつて—変則というものもおかしな話でありますが、今日は国力がこれを許さないから、条約その他の方法でもつて日本独立と安全の保障をする方法をとるということにいたしたのであります。しかしながら本則としては、国家がみずから守るべき時期が来れば、守るのが本則であり、また外国の兵隊が日本に駐留して、これによつて日本独立を守つてもらうということは、変則でありますから、いつかは日本みずから日本独立と安全を守る時期の到来することを期待しております。しかしながら、それがいつの時期であるか、それはわからないのであります。日本の国力が許さないから—許す時期はいつであるか、これは予定のできないことであります。ゆえにみずから守ることのできる場合においては、憲法を改正することも考えざるを得ないのでありますが、サンフランシスコにおける条約調印の当時、あるいは付属条約の協定をした当時においては、見通しがつかないのでありますから、憲法を改正する考えはなかつたのであります。
  243. 小島徹三

    ○小島委員 総理大臣の御意思は十分わかりました。しかし私が承つておきたいのは、その直接防衛をするための自衛軍をつくるためには、憲法改正をしなければならぬのだという木村長官意見によりますと、もしも安全保障条約に基いて、アメリカ日本に対して、日本はぜ日本の直接侵略を防衛する用意をしないか、準備をしないかということを責められたときに、日本といたしましては、木村長官意見によりますならば、憲法改正をしない限り、アメリカ国家に対しまして、日本国民日本の直接侵略を防衛するための決意をしたということは、表明できないことになつてしまうのではないか。一内閣ととか一吉田総理大臣が、いくら日本日本の国を守る決意をしたとおつしやつても、アメリカからいうならば、木村長官意見に従えば、直接防衛をするためには、どうしても憲法を改正するという一つの手続をとらなければ、日本人の意思表示はできなくなつてしまうのではないかということを私は考えるのでありますが、いかがでございましようか。
  244. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。日本の安全、独立を保障し、もしくは保護するということは、日本の利益であると同時に、アメリカ政策として、あるいはアメリカの太平洋政策あるいは防衛といいますか、太平洋の安全、保護のために必要で、そこで日本に協力して、日本の安全、独立を保障するということになつたのであります。ゆえに、いかなる理由か知りませんが、サンフランシスコにおける安全保障条約の当時においては、お話のように、アメリカ日本に対してみずから守れ、自衛軍を持てというような要求をする意思は全然なく、今日においてもないと私は考えます。
  245. 小島徹三

    ○小島委員 その当時においてなかつたし、現在においてもないということは、まことにけつこうなことだと思うのでありますけれども、国際情勢というものは、いつどういうふうにかわつて来るかわからないのでありますから、そういう際に、もしも木村長官が言われるような説を厳守いたしますと、日本としては、どうしても憲法を改正しなければならぬ状態に追い込まれて来るのではないか。そういう状態に来ることが、はたして日本にとつて好ましいことであるかということは、私たちはよほど慎重に考えてみなければならぬと思いますから、私は総理大臣に、くどいようでありますけれども、一体安全保障条約を締結なさいましたときに、直接侵略を防衛するために漸増的に力を養うのだということで、このときには何も憲法を改正する必要はないのだ、憲法を改正するというようなことは毛頭お考えになつておらなかつた、またする必要はないのだとお考えになつてつたのじやないでしようか、その点を聞きたいのです。
  246. 吉田茂

    吉田国務大臣 お話のように、国際情勢は始終変化いたすのでありますから、講和条約締結当時においては、その当時の状態を主として考えなければならないのであります。その当時においては、米国政府日本政府、両国政府の意思が、ともにともに太平洋の防衛に当ろうという考えをいたして、その点において意思の一致を見て、あの条約ができたのであります。あの条約の存続する限りは、憲法を改正して、そうしてみずから軍備を持つ必要はないわけであります。将来は将来であります。
  247. 小島徹三

    ○小島委員 そういたしますと、この直接侵略を防衛するために自衛軍を持つということは、それでは簡単にお聞きしますが、木村長官の言うように、憲法を改正しなければ持てないものだとお考えになりますか、それともこの条約に書いてある直接侵略を防衛する力というものは、憲法を改正しなくとも持てる、こういうようにお考えでございましようか。
  248. 吉田茂

    吉田国務大臣 軍備を持つという以上は、憲法を改正しなければできないことは当然であります。しかしながら、この安全保障条約の存続する限りは、みずからの力をもつて直接に防衛をする、すなわちみずから軍備を持つて日本独立を守るという必要はないのであります。
  249. 小島徹三

    ○小島委員 私は安全保障条約がある限りにおいては、そういうものは持つ必要があるかないかということをお聞きしておるのではないのでありまして、この条約に基いて、直接侵略を防衛する力を日本が持つということのためには、憲法を改正しなければならぬのかどうかということを、実はお聞きしたいのであります。と申しますのは、これは私の考えでございまして、すべての人の意見ではないかもしれませんけれども、憲法改正ということは非常に重大な問題でございまして、そう簡単にこの手続がとれるということは考えていないのであります。ところが実際におきましては、国民の大多数が憲法を改正してもいいという考えを持つたといたしましても、ある種の手続のために、たとえば議会における三分の二の多数を持たなければならぬというような、そういう一つの手続のために、ほんとうに国民の意思を対外的に表明する機会がないというようなことが起きて来るのではないか。それでありますから、私から言うならば、そこまで突き詰めてきめておくということは、日本の将来にとつて好ましくない、むしろこの安全保障条約というものは、すでに議会を通過しておる法律でありますし、また直接侵略を防衛する力を養うことは、憲法を改正しなくてもいいという観点に立うておる方が、日本の将来のためにいいのではないかと思いますからお聞きしておるのであります。
  250. 吉田茂

    吉田国務大臣 直接防衛は安全保障条約によつて十分日本はできる、こう私は確信いたすのであります。しかして将来のことは将来のことであり、また国民が軍備を持つことを一致して考える場合は別でありますが、私は今日のところは考えておりません。直接防衛は安全保障条約によつて、十分これは日本独立を保護できると確信いたしますから、憲法改正考えておりません。
  251. 小島徹三

    ○小島委員 あまりくどくなりますから、これ以上質問しようと思いませんが、総理大臣のお考えでは、永久にこの安全保障条約というものによつて日本の直接侵略を防衛しようというお考えのもとに立つておるようであります。ですから今のように、直接侵略に対する防衛というものは考える必要はないので、安全保障条約のある限り大丈夫だ、かようにおつしやるのでありますけれども、私たちから申しますれば、このような安全保障条約によつて日本の防衛をしなければならぬということは、私たちは民族的な気持からいつても、国民の気持からいつても、一日も早く、こういう一方的な安全保障条約によつて日本の国を守つてもらうということは、してもらいたくないのであります。できれば相互安全保障条約に持つて行きたいのでありますし、またできることならば、そういう条約を結ばなくて、自分の力で自分の国を守つて行くようにしたいのでありますから、総理大臣のおつしやるような、この安全保障条約がある限り、日本は直接侵略の防衛のことは心配ないのだというのは、どうも私の問いに対して横のことをお話になつておるような気がしてしかたがないのでありますが、もう一度、くどいようでありますが、総理大臣に、今度は質問いたしません、お願いいたしておきます。その点は非常に大事な点だと思いますから、十分お考えおき願いたいと思いまして、これで私の質問を終ります。
  252. 太田正孝

    太田委員長 松浦君。
  253. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 私はこの間中ここで主として人口食糧問題に関する自立経済についてのことをいろいろお尋ねいたしましたが、ちようど総理大臣が御欠席であつたのでありまして、その結論を二、三点お尋ねいたしたいと思います。  前の特別国会のときに、人口食糧問題に対して、総理大臣は、だれが考えても、移民を奨励すること、もう一点は産業を盛んならしめて、貿易を振興すること、次には国土の総合開発計画、この三本の柱で人口食糧問題を緩和するということをお答えになつたのであります。移民の問題も現在本予算の中に少し組み入れられておりますが、いろいろ調べてみますと、軍に一万人以上の移民をすることは困難な情勢に置かれております。これによつて人口食糧の問題が緩和するとは、考えられない。しかし移民ができるということは、青年に大きな希望を与えることは、争うことのできないことであります。次に貿易の問題でありますが、これは各委員から数回貿易の前途についての質疑応答がかわされました。小笠原通産大臣の御答弁は、いろいろの御答弁がありましたが、結局現在の状況から見て、商品輸出は六億万ドルも入超になつておる。特需及び新特需をもつてこれを補つておる。しかも船賃は二億ドルも払つて行かなければならぬというような現状に置かれております。これを打開するために、いろいろコストの引下げやその他の恒久的な考えも加わりまして、努力をいたしておられますが、小笠原さんのおつしやる良品廉価のコストになりましても、国際経済上におけるところの諸条約が、これに対する防遇的な結果を見るならば、いかにコストを引下げましても、わが国の輸出の進展というものは望み得ないのであります。わが民族の前に横たわつているものは、結局今政府が折衝しておるところの、アメリカに対しては日米通商航海条約、あるいはイギリスに対しては日英条約、その他ガットの問題、いろいろなものが横たわつておりますけれども、今やつておるところの交渉の状況においては、われわれの前途に希望を持てる交渉がまとまりそうもないと私は思うのであります。それはなぜかというと、こちらの交渉員が局長である場合、向うも局長が出て来る。あるいは外務大臣である場合でも、局長しか出て来ない場合もありましよう。しかしながらそれらの人々は、国の基本の命令によつてやるのでありまして、なかなか大きな外交をなすことはできないと思うのです。その場合において、今ドイツのアデナウアー総理大臣も近くアメリカに行くと言つており、チャーチルも、組閣当時すぐアメリカに行きまして、これらの経済の基本問題を片づけておる。吉田総理大臣は、この際ひとつみずから体当り外交をやつてアメリカとイギリスに行つて来られたらどうか。そして大きな問題を片づけて、あとは事務的の外交にまかされたらどうかということを私は痛感するものでありますが、これに対する総理のお考えはいかがでございますか。
  254. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えますが、貿易あるいは国際貿易等は、これはときに一進一退がありますので、あるいは不景気になることもあれば、景気のよくなることもあります。世界の貿易が縮小したために困難をするのも、あるいは現在の貿易縮小は、必ずしも日本だけの問題でなくて、世界的の問題であります。現に米国政府に対して、関税の引下げその他を要求しておることは御承知の通りであります。各国ともに貿易の伸張をはかり、また貿易が漸減して参る場合には、何とかして打開して、新しい好景気をもたらすように自然にくふうすることになりますので、一時景気が悪くなつても、それが永久に存続するというわけでもないと思います。要は生産費を下げて市場獲得に努めるのが第一であります。  その次には、お話のように、私が出かけて行つたらということでありますが、御期待はありがとう存じますけれども、私が参りましても、はたしてうまく行くか行かないか、私には確信がありません。今お話のようなことはただいま考えておりません。
  255. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 総理大臣がみずからおいでになつてもうまく行かないものを、部下の閣僚にまかしてそれでどうなりますか。全責任を経済の上に持たなければならないのでありますから、総理大臣がみずから行つて体当り外交をすることがほんとうじやありませんか。国民はそれを要望しておる。
  256. 吉田茂

    吉田国務大臣 各地には各地の在外公館がありますし、適当の処置をとつております。私があえて参るまでもないと思います。
  257. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 もう一点総理大臣に聞きたいことは、国土の総合開発計画の問題です。国土総合開発計画、いわゆる未開発資源の総合開発の問題であります。今これが取上げられまして、この間ここでいろいろお伺いいたしましたが、大体プランはできております。そして十年間に十九地域において三千六百億の資金を必要とするといつております。また北海道の総合開発計画も、五箇年計画で政府の予算は千三百億であります。こういう多額の資金を、現在のようなセクショナリズム的な役所のわけどりでやるのでは完成しないと思う。計画から予算の獲得、事業の実施という面に、一貫した総合的なものがなければできないと思いますが、私はこれに対する一省を創設するなり、あるいは一つの庁をつくるなりいたしまして、計画から予算並びに実行に至るまで、一貫した運営をされたらどうかということをこの間お尋ねいたしましたが、総理がおいでにならなかつたものでありますから、あらためてお尋ねいたします。
  258. 吉田茂

    吉田国務大臣 御意見として伺つておきます。
  259. 太田正孝

    太田委員長 西村榮一君。
  260. 西村榮一

    西村(榮)委員 私先日の分科会で、対日援助費の債務の問題につきまして、大蔵大臣からやや満足すべき御答弁を承つたのでありますが、私はこの点について国家の最高責任者たる総理大臣からもう一度お伺いしておきたいと思います。従来大蔵大臣は、対日援助費は債務と心得るという御答弁をなすつて来られました。しかしながら大蔵大臣が債務と心得るという説明をされた根拠というものは、私とお話をしている間にくつがえつて来たのであります。それはまず第一にわが国の憲法、財政法に違反する。同時にこれはいまだかつて関係国から公式に債務を認めろという交渉はいずれにもなかつた。国時に債務と認むべき数的な資料もいまだ完成していない。同時にこれは過去の歴史にかんがみまして、連合軍司令官がこの対日援助を与えるときの文書は、これは日本国民を救済するために、これだけの物資を送つてやるという通達書がちやんとついておるのであります。同時にこの対日援助物資の取扱い方というものは、これは日本政府の干渉を許さずして、連合軍司令官がみずからの占領統治のために、これに沖縄、朝鮮その他の総司令部占領治下に使用されたのであります。同時に日本国民はこれを贈与されたものと考えまして、感謝感激の決議案をかつては濫発いたして来たのであります。そこで過去の例から考え、わが国の財政上、財政法から考えまして、これを今債務として予算に計上することは不穏当ではないか。従つてこの対日援助費の中から連合国に対する賠償の支払いその他対外債務の処理、平和条約の発効に伴つて処理を必要とする経費のために、平和回復の結果として必要を生ずる経費にこれを充当するということであればいいのでありますが、その間米国に対する対日援助費の返済という文字が、これは総理大臣御承知の通りはさまつてつたのであります。そこで私は以上の私どもの見解を申し上げて大蔵大臣に再考を促しました結果が、大蔵大臣は、調査の結果後日御答弁をするという御回答を先般の委員会で承つたのであります。これに対する最高責任者としてのあなたの御意思をもう一度私は承つておきたいと思います。
  261. 吉田茂

    吉田国務大臣 対日援助費については、かつて占領軍当局者でありましたか、米国政府当局者から話があつたのであります。これに対して私は、対日援助費によつて日本は救済を受け、日本はこれによつて飢餓その他を免れたのであるが、しかし政府としてはただもらいつぱなしにするという考えはない、他日これに対しては相当の支払いをする、したいと思つておるという話をいたしておるのであります。ゆえに今日は契約上の債務ではありませんが、日本国としてはいたずらに他国の慈悲援助によつて生活をつないだ—というのもおかしいが、危機を過した。それをもらいつぱなしにするということは、国民の面目上よろしくないと私は考えておるので、他日米国政府との間に話合いがつけば、相当な報償をいたすべきであると考えておるのであります。
  262. 西村榮一

    西村(榮)委員 その議論をむし返しておりますとなかなか長くなります。従つて私どもは、わが国の憲法第八十五条、財政法第十五条は、国の債務を負う場合には、これは事後において国会の承認を得るにあらずして、事前に承認を得るものだ、こう解釈して、大蔵大臣とお話した結果、大蔵大臣は、調査の結果答弁するということになつて、いまだ私は答弁を受けておらない。しかしながらこれは大蔵大臣みずからも声明されたように、調査の基礎資料も今ございません。何を根拠として払つたらいいのかということもない。従つて私は大蔵大臣が調査の上に回答するということは、最も正しい回答の仕方だと考えている。あなたは大蔵大臣の過日の声明をそのまま御承認になりませんか。資料がない。何にもない。何にもないのであるから、調査の上に慎重なる回答をするということは私は答弁としては一番正しい。どうか総理大臣におかれては、日本国の法規と日本の利益のためになるようなひとつ御答弁を願いたい。
  263. 吉田茂

    吉田国務大臣 いずれ大蔵大臣から調査の上御返事があるでありましよう。お待ち願いたい。
  264. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間もございませんから、その程度にして、調査の結果わが国の法規、日本の利益になるような御回答を煩わしたいということをここに希望して次の質問に移ります。  過日総理大臣が国際情勢は今楽観すべき状態にあるという施政演説をなさつたのであります。私はこの政治感覚をほんとうに日本の施政の上に適用されるかどうかということを考えますと、これは明確にしておかなければならぬと思うのでありますが、総理大臣が過日の施政演説で述べられました国際情勢は楽観すべきであるという根拠は一体どこにお求めになりましたか。
  265. 吉田茂

    吉田国務大臣 私は国際情勢は楽観すべしと述べたのではなくして、戦争の危険が遠ざかりつつあるということをイギリスの総理大臣、あるいはアイゼンハウアー大統領自身も言われたと思いますが、英米の首脳者が言われておるから、私もそう信じたのであります。これは最も戦争か平和かという衝に当つておる当局者の言うことであつて、相当な根拠があつてつておることであろうと考えましたがゆえに、戦争の危険は遠のきつつある。こう私は信ずる。こう申し上げたのであります。
  266. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は日本総理大臣に国際情勢の見通しを承つておる。イギリス総理大臣の翻訳を承つておるのではない。あなたの国際情勢を楽観すべきであるという根拠は、イギリス総理大臣チャーチルの演説においてとられたというのであります。アイゼンハウアー元帥は就任以来楽観説を言つておりません。同時にアイゼンハウアー元帥が大統領に就任いたしまして以来、公式声明は国際情勢の緊迫を力説しておるのであります。同時にアイゼンハウアー元帥が当選して就任いたしまして以来、チャーチルの言動はかわつて参りました。チャーチルはアイゼンハウアーが大統領に就任いたしまして以来、国際関係は楽観すべきであるということはどこにも言つておりません。同時に私はここに問題になるのは、なるぼどヨーロツパの情勢は楽観すべく、一応の危機は緩和したかもしれません。しかしながらその危機の険悪な焦点は朝鮮に移つて来て、世界の危機は朝鮮にその焦点がしぼられて来ておる。そこで私は大臣にお尋ねしたいのであります。イギリスの総理大臣の楽観論あるいは外国の総理大臣の楽観論ではなしに、ヨーロッパは緩和したが、朝鮮の問題を中心にいたしまして、風雲は極東に移りつつあるということをすなおに考えて、これに対して日本国家としては一体どうするのであるかということを、一九五三年の初頭に際して、日本総理大臣日本国民は問わんとしておるのであります。私は現国際情勢というものをすなおにごらんになつて、しかもわが隣国朝鮮に国際危機の焦点が移つておる、その中に立つて一体われわれはどうするのだということを、日本総理大臣国民が問おうとしておるのでありますから、私はこれに対して、やはり日本総理大臣としての国際情勢の見通しとその対策をお述べになることが当然ではないか、こう思うのであります。
  267. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいまの私の答弁は、日本総理大臣として御答弁いたしたのであります。私は確信するのであります。
  268. 西村榮一

    西村(榮)委員 総理大臣は興奮しない方がよろしい。別に興奮する必要はないじやないか。(吉田国務大臣━━なことを言うな」と呼ぶ)何が━━だ。(吉田国務大臣「━━じやないか」と呼ぶ)質問しているのに何が━━だ。君の言うことが━━だ。国際情勢の見通しについて、イギリス、チャーチルの言説を引用しないで、翻訳した言葉を述べずに、日本総理大臣として答弁しなさいということが何が━━だ。答弁できないのか、君は……。(吉田国務大臣「━━━━━」と呼ぶ)何が━━━━━だ。━━━━━とは何事だ。これを取消さない限りは、私はお聞きしない。議員をつかまえて、国民の代表をつかまえて、━━━━━とは何事だ。取消しなさい。私はきようは静かに言説を聞いている。何を私の言うことに興奮する必要がある。
  269. 吉田茂

    吉田国務大臣 ……私の言葉は不穏当でありましたから、はつきり取消します。
  270. 西村榮一

    西村(榮)委員 年七十過ぎて、一国の総理大臣たるものが取消された上からは、私は追究しません。しかしながら意見が対立したからというて、議員を━━━━━とか、━━だとか議員の発言に対して━━だとか━━━━━とかと言うことは、東條内閣以上のフアツシヨ的思想があるからだ。静かに答弁しなさい。  私が今ここにお伺いしておることは、その険悪なる国際情勢に際会して、現内閣は中立放棄の宣言を、岡崎外務大臣が施政演説の中に述べられたのであります。私はイデオロギーとして、今日は共産主義か自由民主主義かの中にあつて中立はあり得ないということは了承します。しかしながら、政治的に中立を放棄するということにつきましては、日本国民としては重大な問題になつて来ている。そこで私は総理大臣にお伺いしなければならぬことは、一体何がゆえに唐突として内閣施政演説の中に政治的中立放棄の宣言をしなければならなかつたか、この理由を承りたい。
  271. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本は国際連合に協力するということを誓つておるのであります。初めからして中立の態度はとつておりません。
  272. 西村榮一

    西村(榮)委員 日本は従来中立でなかつたということは、それはイデオロギーの上において自由民主主義の陣営に参画するというので、思想的な中立の放棄であつたのであります。しかしながら政治的に中立を放棄するということが、軍事的に中立を放棄することに発展するということは力学的にわれわれは考えておかなければならないのであります。政治的に中立を放棄するという上からは、それに対する備えがなければならない。私はそこであなたにお尋ねするのだが、それならば一体日本が一方の陣営に参画して一方の陣営を敵とするがごとき、政治的中立放棄の政策をとつた上からは、一体日本の安全保障をどこから求めて来るのか、あるいはまた政治的中立放棄から軍事的発展にまで来た場合において、日本における安全保障、同時に経済的あるいは国民の生活上の問題というものは、どこに備えがあつてあなたは中立放棄を承認されておるのであるか、この点を承りたい。
  273. 吉田茂

    吉田国務大臣 戦争放棄は憲法の条章に明らかであります。また日本の安全は日米安全保障によつて保障されておるのであります。これをもつて日本の安全は保護できると私は確信いたします。
  274. 西村榮一

    西村(榮)委員 これはまた前回の話をむし返しますから、私はそれを再び繰返しません。安全保障条約で日本は保障されているとおつしやるが、どこにも保障されていないのです。もしも保障されておるならば、北大西洋同盟条約のごとく、日本への攻撃はアメリカベの攻撃とみなくて、アメリカ合衆国は日本を防衛するという一項がなければ安全保障はない。アメリカの都合のいいときは保障してくれるけれども、都合の悪いときは保障してくれなくてもいいという条約になつている。私はそこに安全保障の危険を一つ感ずる。同時に私は総理大臣にお伺いしておきたいことは、政治的に中立を放棄すると片方に敵対国というものを持つのであります。この敵対国というものを持つ上からは、みずからの国を守るという体制を国に整えなければならぬ。同時に三百二十万トンの海外から輸入して来るところの食糧の輸送路、原料確保の道をどこに求めるのであるか。日本の工業は五割五分は外国から原材料を輸入して来るのです。その原材料の確保をどこに求めるのか。海上の輸送路の安全をどこに保障させて行くかという諸問題を解決した後でなければ、中立放棄ということを軽々に論ずることはできない。従つて私はそれらの御準備が今総理大臣の中におありかどうか、この点を承りたい。
  275. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本は中立放棄ということを言つておるのではないのであります。国連に協力するということを申しておるのであります。
  276. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると外務大臣が施政演説に述べられた日本は中立がないということはどうなるのです。あなたの今の答弁と違うじやありませんか。
  277. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私の演説ですからお答えいたします。  私の演説をよくごらんになれば、中立というものは一朝事あるときには国を守るに足らないという議論をいたしておるのであります。何も日本の今の政策が中立であるとか、あるいは過去の政策が中立であつてこれを放棄したとか、そういうことは一切申しておりません。
  278. 西村榮一

    西村(榮)委員 時間もございませんから、重要な問題をしり切れとんぼにしておかなければならぬことは私ははなはだ遺憾であります。ただ問題は、なぜ日本がみずからを守る準備もなしに、安全保障の確約もなくして、唐突に政治的中立を放棄したかということを、アメリカの新政権出現とからんで国民は不安に思つておる。この問題について総理大臣は興奮しないで国民に親切に説明される義務が、一国の行政官の長としてはあるはずであります。しかるに軽々にそれらの準備なくして日本が中立を放棄するということは、これは何と申しましても一方を敵とするということだ。この敵とするということを考慮に入れず、あるいは入れてもそれを無視して、一方の陣営に政治的に入るということは、これは軍事的に協力の態勢に入らざるを得ないのであります。これは一体わが国の憲法と矛盾するではないか。特にそれらの準備なくして、特定国家に向つて中立放棄の宣言をして阿諛迎合するということは、それは吉田内閣の好みではあるかもしれないけれども、あなた方の好みのために、八千三百万の国民が不安にさらされておるという現状をお考えになつて、私はその点について国民に対して、明確なる御説明をなさる義務があるということを申し上げまして、次の質問者にかわる次第であります。
  279. 太田正孝

  280. 和田博雄

    和田委員 総括質問のときに総理大臣が御出席になつていなかつたので、質問しなかつた点を一点と、政府当局の答弁が少しくあいまいであつて正しくしておきたいと思います二点についてだけ、簡単にひとつ御質問申し上げます。  第一点は改進党の松浦君が別の方面からちよつと触れられたのでありますが、今度の施政方針演説なり経済閣僚の演説を見ますと、経済外交、貿易促進ということを非常に重要視されておりまして、政府の施策の中心だと私は思うのであります。従つてその中心になつている施策のために予算なんかにつきましても、集中的にそういう予算がとつてつて、そしてこれが一つの大きな日本の組織としてあらゆる行政部門において促進されて行くようになつておりますれば、私は施政方針演説なり経済閣僚のやられた演説が実際地について、進展して行く日本の経済発展のためにもこれは喜ばしいこと思つてつたのでありますが、この前の予算委員会において多少具体的に聞いてみますと同時に、予算の面を見ますと、なかなかふに落ちない点がたくさんあるのであります。貿易の振興につきましてもあるいは通商審議会をつくるとか、または人口問題なんかの大きな問題についても人口問題調査会か審議会かしりませんが、そういつた名前のものを厚生省の中の予算にとつてある。しかし、私はこういうような事柄は、各省が個別的にやつて行くべきことではないのであつて、むしろ内閣が演説その他において総理大臣の言われておるとをほんとうにやつて行くつもりならば、総理府にでもそういう大きな審議会を置いて、ほんとうに貿易振興なりあるいは経済外交なりを進めて行く体制を、日本の知性を集めて促進して行くだけの態度をとられることは、私は政府として当然やるべきことだと思います。ことに政府は盛んに独立第一年の予算だと言つておられるのであります。しかも世界の経済情勢を見ますと、国際間における競争はますます激甚になつて来ております。日本がこれをどういうように切り抜けて行くか、日本独立した第一年であればあるだけ、政府としてここに施設を集中してやつて行くのが当然だと思うのであります。ところがこの予算を見ますと、実にばらばらであつて統一がとれておりません。通産省一省で貿易審議会をつくつて、そして集まつてかりにやつてみても、これで日本の大きな貿易政策が進展して行くとは思われません。厚生省の一部で人口問題の審議会をつくつてつてみても、それは技術的な面においては多少の研究はあるにしても、大きな国の政策としてこれが発展するとは思われないのであります。こういう問題については、政府がほんとうに誠意を持つてつて行こうというならば、私は堂々とりつばな審議会なりをつくつておやりになるのが当然過ぎるほど当然だと思いますが、そういう点につきまして、一体総理大臣考え直してそういうものをやつて、今の日本の経済的な苦境を打開して、経済面から将来への希望をつなげるような大きな政策をやつて行かれる意思があるかどうか、その点をお聞きしておきたいと思います。
  281. 吉田茂

    吉田国務大臣 貿易振興の問題については、むろん政府として非常な関心を持つております。そこで今お話のような審議会を設けることがいいか悪いか、適切であるかどうかということになりますと、悪いことはむろんないのですが、審議会はずいぶんだくさんありまして、実はその煩にたえない感じがいたします。貿易の問題については別でありますが、貿易の問題あるいは経済の問題については、実は内閣内に経済閣僚だけで集まつて当面の問題を議しております。そこでお話のような大局にわたつて単なる内閣だけの問題ではない、もつと大きな問題について衆知を集める、これも一つの考え方であります。これはまつた委員の人選いかんによる話でありますが、その考えは一応考えて、結論が出ましたら申し上げることにいたします。
  282. 和田博雄

    和田委員 私はみだりに審議会を各省ばらばらにつくることには反対なのであつて、またいやしくもつくつた審議会ならば、たとえば米価審議会みたようなものはもつと権威を持たして行くという態度をとられることを主張もし、希望もするのですが、貿易の問題については、これはひとつお考え直しになつて、りつばな大きなものをつくつて、ほんとうに責任ある貿易政策をやつて行くようにされんことを希望いたしまして、この点の質問は終ります。  第二点は、この前に岡崎外務大臣にお聞きしたことですが、先般芳澤大使が多辺的同盟参加の用意があるということを言われた。それに対する私の質問に対しまして、岡崎外務大臣も、打合せてそういつたことを言つたわけではつい、事実、実際言つたのか、まだはつきり電文で来ていないという答弁でありまして、その電文がわかつたならば、これははつきりしてもらいたいということを私から要求してそのままになつておるのであります。総理はかねがね再軍備はしない、従つて軍事同盟にも参加しない、われわれは再軍備もせず、憲法も改正せず、軍事同盟にも参加しないということを繰返して政府の方針として言つておる。それが出先の相当有力な外交界の長老である台湾の芳澤大使が、軽々にそういうことを言つたということが新聞に出ておりましたので、その点を伺つたのですが、それに対して総理大臣は一体どういうようにお考えになつておるか。もしも言つたことが事実であるとすれば、これはたいへんなことである。御承知のように、台湾は今世界の視聴の中心になつておる点で、朝鮮問題とも関連して来ます。また中共の国連加入の問題にも関連して来ます。アメリカとイギリスとの間の国際関係にも微妙な関係を持つ言動だと思うのであります。いやしくも一国の大使たるものは、その言動は官僚以上に慎んで、そういうことのないようにして行くのが筋だと思うのであります。外交問題においては政府がはつきりした方針をとつておられる—もちろんそれについての意見はあります。私はちは今の岡崎外動大臣がとつておる。また吉田さんがとつておる外交方針については、全幅的に賛成しておりませんが、少くとも今の政府がはつきりした態度をとつておるにかかわらず、それと相反するような、しかも日本の将来に対して、非常に多くの微妙な関係を持つて来るようなことを言われておる点については、これは総理大臣として事実をあくまで究明されて、もしもそういうことを言つておるとするならば、断固たる処置をとつていただきたいと思うのですが、いかがでしようか。
  283. 吉田茂

    吉田国務大臣 芳澤大使が多辺的同盟参加の用意ありという声明をしたという報道があつたので、ただちに外務省から問い合せましたらば、右はおそらくAP通信社の伝えたものであろうが、全然誤報であつて、そのような事実はまつたくないと報告して参つております。
  284. 和田博雄

    和田委員 それが事実であればよろしゆうございますが、私は各外交使臣はよく世界の情勢を認識して、いたずらに政府のためにならないような言動をすることは慎むように、今後は十分なる戒告を与えてもらいたいということを申しまして私の質問を終ります。
  285. 太田正孝

    太田委員長 これにて内閣総理大臣に対する保留質疑は終了いたしました。  次は長谷川君。長谷川君に申し上げますが、本会議の方で恩給法案が上程されておるとのことで、厚生大臣が向うへ行かなければならぬので、簡単なものでありますならば、もう少しとどまつておろうということでございます。さようお含みを願います。
  286. 長谷川保

    長谷川(保)委員 先ほど来伺いましたところによりまして、文官恩給軍人恩給とは、ある関連のもとにこれを復活するのだということもわかりました。またその他の国民戦争におきまするいろいろな犠牲対して、必ずしも十分な平衡を得た補償がなされておらないこともわかりました。私は今日国内に百万の結核患者が、病院に入院できなくてちまたにおる。もしこれを病院に入院する設備をつくつて入れますならば、日の本結核問題は非常な速度をもつて解決する段階に来ておると思う。治療及び薬品の進歩によりましてそれは明らかである。そして日本の結核が急速に減つて行くこともわかつておる。あるいは五千人の癩病患者が病院に入院すれば、プロミン等によりましてすみやかに治癒に向うこともわかつておる。また先ほど承つたところによりまして、内地で応召いたしまして、病院に入院いたしまして、不幸にして死んだ者に対しましても、ほとんど何らの補償がなされておらぬということもあり、それらの遺族が今日非常な苦労をし、自分たちのこの差別的な待遇に泣いておるということも、厚生大臣は十分御承知のところでありましよう。老人ホームも足りない。そうして何とかしなければならぬということは目の前に迫つておる。その他あらゆる点で不幸な人が満ちております。これらの人々はおそらく全部と申してもさしつかえない程度に、全部これは戦争の犠牲者である。戦争によつてそれまで持つておりました社会的な地位や財産全部を失つたのであります。それなのにこれらの人々に対しましては手を尽さないで、少くとも軍人恩給のうちで三十億円を普通恩給といたしまして出すということは、どうしても私どもの納得の行かないところであります。同じ戦争の直接の大きな痛手を今日もなお続けて持つておる人の中に、未復員患者と呼ばれております多数の結核患者があります。この人々は形から申しますならば、召集された後、まだ家に帰つておらないのであります。そうして内地の国立療養所におきまして療養いたしておるのでありますが、おそらくこの数が三千人以上あると思います。この人々のうちでごく貧しい人が生活保護法の扶助を受けておりますが、こういうものを受けておらない人が三千人くらいあると思う。つまり生活の扶助を受けておらないのであります。こういうような人々に対して、ただ病院に入院させておくというだけで、ほかに何らの手当を与えておらない、こういうことさえありますのに、何ゆえに健康な旧軍人たち恩給復活するのであるか、どうしても私は納得ができないのであります。しかも先ほどのお話でわかりましたように、文官恩給軍人恩給と平衡を得ておるというけれども、事実は非常な差がそこにあるのであります。つまりあらゆるでこぼこがそこにできて来、そうして旧軍人恩給復活によりまして、いよいよ大きなでこぼこができて来る。そうしてこれで社会保障制度の全般的な実施は抜きがたき大きな障害をここにつくることになる。私はこういうような大きな犠牲を払つてどうして軍人恩給をしなければならぬのであるか、まつたく理解に苦しむのであります。  そこで私は向井蔵相に一言伺いたいのでありますが、向井蔵相は先般の一月三十日の財政演説におきまして、この軍人恩給に説き及びまして、現在及び将来の財政の許容する限度においてこれを復活すると言うておられます。今日国家財政の非常に窮迫しておることは、お互い御存じの通りであります。お話のように、国家財政の許容する限度においてこれを行う。その中にこの三十億円が、あるいはそのほかに一時賜金といたしましての十五億円があるということになるわけでありますけれども、これらのものを今日打切つて、そうしてただいま申しましたような戦争犠牲者のいまだ顧みられざる方方に、それをまわすということが当然のことと思うのでありますけれども、御所見はいかがでありますか。
  287. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答えを申し上げます。軍人恩給の三十億を結核療養費、あるいは癩予防その他の予防対策に、あるいはその他社会保障の面にまわしたらどうかというお話でありますが、財政全般に対してのお考えは後ほど大蔵大臣よりお話になりましようけれども、御指摘の通り、ただいまの結核療養費は昭和二十八年度においても百二十七億出しております。それから社会福祉の面においても六十八億出している。そのうち御指摘のいろいろな母子対策等を中心といたします社会施設に対しては五十六億出しております。今回母子対策に対して画期的な対策をとつたことは御承知の通りでありますから、三十億を振り向けますこともけつこうであると思いますが、もつと多額の国費をもつてただいま社会保障制度を推進いたしているのでございます。なおまた社会保障制度審議会が二回にわたつて答申しております答申案に対しまして、政府は逐次財政の限度においてというよりも、これは私見でありますけれども、財政の限度を越えてまでも、現在社会保障制度の推進に努力いたしております。ことに第二回の社会保障制度審議会答申によりますと、来るべき年度において重点的に、いわゆる社会保障制度の推進にあたつて実施すべき面は、国民健康保険の給付に対する国庫負担であると指摘いたしているのであります。これは現在の国家財政の許す範囲と言つておりますが、場合によつては越えてまでも、今回皆さんの御協賛を得て実現を期しているのであります。この点は大体御承知のことと思いますが、単に三十億振り向けるという問題にあらずして、政府は重点的に社会保障制度推進のために努力しております。  なおまたただいま未復員患者に対する療養のお話がありましたが、これは先生のあるいは誤解であろうと思うので、未復員患者というものはないのであつて、復員患者に対して現在国費をもつて無料で三箇年間国家の療養所において、あるいは病院において無料治療をいたしております。もしも三年間に治癒いたしませんときには、さらに三箇年延期をいたしまして、やはり無料でもつて治療をいたしておりますので、この点申し上げておきます。
  288. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 ただいま厚生大臣の言われました通り、私も社会保障ということにつきましては、極力その費用をよけいに出すように努めましたつもりでございます。従いまして今後もまたその方針で参りたいと思います。
  289. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今厚生大臣は、多額の金を社会保障的なものに使つているから、三十億円というような金は……というようなことでございましたが、しかし問題は、確かに相当多額のものを使つておりますけれども、しかしなおとうてい足りない。おそらく大蔵大臣も十分なものとは思つていらつしやらない、またきわめて不行届きのものであるということは御存じだと思う。御承知のように、この軍人恩給は、大体三十年しないと解消しない。なるほど毎年少しずつ減つて行きますけれども、三十年間つながつて行くのであります。ここ一年だけのものではない。従つてこれは、蔵相の一月三十日の演説の中にありましたように、将来の財政上の相当大きな負担になります。しかもこういうような犠牲者があるのに、これをさしおいて、何ゆえ健康な軍人に持つて行かなければならないのか、これは不合理ではないか、だからそれを気の毒な人たちにまわして、そうしてさらにあとう限りの努力をして、これらの気の毒なる戦争犠牲者を救うべきではないか、社会保障を断行すべきではないか、こう私は考えておるのであります。  ついででありますから、もう一つ重ねて厚生大臣に伺つておきたいことは、何とかここで社会保障省というようなものをつくりまして、ただいま申し上げましたような、多くの社会保障制度の妨げとなるようなものを除いて整理統合されて、完全な社会保障制度を断行するという御意思があるかないか。ただいまのお話を承つておりますと、どうも大体ここらでよさそうだというようなふうに伺えますので、重ねて念のために伺つておきます。社会保障省をつくつて、これを統合してやつて行く意思があるかどうか、そこまで発展させて行く意思があるかないか、そこを伺つておきたいのであります。
  290. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答え申し上げます。御質問の要旨は、社会保障省をつくるかどうかということにあらずして、むしろ社会保障制度をさらに推進する意思ありやいなやという点にあろうかと思いますから、その点について申し上げたいと思います。  先ほども申し上げましたが、日本社会保障制度というものに対しましては、いろいろ、見方もあろうかと思いますが、まずもつて政府といたしましては、社会保障制度審議会が二回にわたつて答申をいたしております線に沿つて—もちろん政府は、この答申に原則的に賛成をいたしておるのであります。その原則に基いて—しかしながら問題は国家財政の点にありますから、国家財政の限度が、社会保障制度という観点から、いかなるものであるかということに対しては、いろいろ御議論があろうかと思いますが、政府政府の見解に立つて、できる範囲のことをやつて行きたいということを申しておるのであります。先ほどやや詳細に申し上げましたが、まだ御質問があるようでありますから、多少具体的に申し上げたいと申います。  社会保障制度審議会答申いたしておりますものの第一回、第二回を総合いたしますれば、まずもつて社会保険の面社会保障制度の中心は社会保険だといつております。それから国家扶助の面—社会福祉の面、公衆衛生の面であります。これに対して国家がいかにも何にもやつていないじやないかというふうにも伺えますので、申し上げたいと申うのでありますが、社会保険の中の健康保険の給付に対する国庫負担、これが一番重要であるから、これを重点的にやれといつている。これは、先ほど申し上げた通り、本年度の予算において計上いたしております。その次に、たとえば公衆衛生の方面から申しますと、答申案では大体十万人単位でワン・ヘルス・センター、保健所を設けろといつておりますが、これは大体そここまで行つていると思います。また結核対策として、百二十七億を投じて十九万床を目標にしてやつて、年々一万床ないし一万五千床増床していることは御承知の通りでございます。本年度の予算においてはアフター・ケアの施設を設けよといつているのであります。なおまた社会福祉の面については、十万人単位で社会福祉事務所を設けて、こういうものを中心として社会福祉を推進せよといつておりますが、これも大体実現いたしております。なお母子対策につきましては先ほど申した通り、その他社会福祉の面につきましては、いろいろ御不満もあろうと思いますが、日本の現在の財政の許します範囲において、相当推進いたしておると思うのであります。しかしただいま仰せになりましたように、これで決して満足をいたしておりませんので、今後とも国家財政とにらみ合して推進いたしたい、かように考えております。
  291. 長谷川保

    長谷川(保)委員 重ねてもう一言伺います。日本社会保障の関係を厚生省はずいぶんやつているとおつしやいますけれども、社会保障関係の支出は、全予算の八%くらいであると思うのです。これを各国のものに比べましたときに、とうていそんなことではいけない。厚生大臣のそういうような御認識に、根本的な誤りがあると思う。かようなことで近代的な国家というものはできない。そういう点、厚生大臣にお考え直しを願いたい。パーセンテージから申しまして厚生大臣は、それでもなお世界の文明国と軌を一にしている、その程度まで行つている、あるいはその程度に近いものになつている、これで十分である、こういうようにお考えになりますか。私は不十分であると思います。
  292. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 お答え申し上げます。世界各国の例を引かれての御質問でございますが、たとえばイタリア憲法におきましても、大体日本と同じように国民の人権、社会保障に関する規定がございますが、イタリアの総予算に対する社会保障費を見ますと、日本とそうかわつておりません。ただいま八%と仰せられましたが、これもいろいろ数字のとりようがございますが、私の数字では大体九・五、六%に本年度はなつておりまして、八%という数字は多分昨年度をおとりになつたのであろうと思います。アメリカのごときは、向うの国情もありましようが、日本と大差ありません。ただ英国だけが相当——と申しましても、この数字に間違いがありますれば訂正いたしますが一七%か一八%くらいではないかと思います。これもまたとりようがありますから一概に申せませんが、そのようで、日本が特に世界各国に比し、社会保障制度に不熱心であるということは、予算の割合から見ましても申せないと思います。しかし今後とも努力はいたしたいと思つております。
  293. 長谷川保

    長谷川(保)委員 厚生大臣はお急ぎのようでありますから、これ以上は他の機会に譲りますが、私はでたらめな数字を申し上げたのではありません。  最後に大蔵大臣に伺いたいのであります。今私速記録を持ちませんが、大蔵大臣は、昨年十五国会の初めの財政演説におきまして、今後税の増収は、源泉課税に期待するほかないという意味のことをおつしやつたと思うのであります。と申しますことは、先ほどの、財政の許容し得る限度において軍人恩給復活するということと思い合せて、今後この恩給を長く背負つて参ります日本国家財政におきまして—ただいま普通恩給は三十億円でありますけれども、しかしこれは決して少い額とは言えない。なぜかなれば、その出て参ります源はいわば源泉課税、すなわち勤労者の汗とあぶらにまみれたものとも言えるのでありまして、こういう汗とあぶらにまみれました勤労者の源泉課税から出て参りますとうとい金をもつて、私の納得の参りません健康な軍人既得権を生かす、その既得権のために払う。しかも一方に、先ほど申しましたように、たくさんの犠牲者がなおほうつてある。こういうことはどうしても納得が行かない。このとうとい勤労者の汗とあぶらの税金をもつて、こういうものをまかなつてよろしいのかどうか、そのことを大蔵大臣に承りたいのであります。
  294. 向井忠晴

    ○向井国務大臣 特に勤労者の税金をもつて払うといふうにおつしやるのですが、国家財政は全体の勘定から参りまして、支払うべきものは支払い、またとるべき金はとるという見方から参りますと、ただいまおつしやる三十億の方も、いろいろの点から考慮しまして支払うべきものは支払う。税金の方もやはり税制上とるべきものはとつておるという点で、私としてはこれを結び合してどうという考慮はいたしかねる次第でございます。
  295. 長谷川保

    長谷川(保)委員 もちろん税金は集まつたもので払うことにきまつておりますけれども、それはしかし大蔵大臣が今後税の増収は証拠に見るよりほかにないというような意味のことをおつしやつたと思う。だから大きな負担となるそういうものはとうといものでまかなつて行く。それもずいぶん不公平な話である。これをまかなおうということは不届きだこう思うでのあります。官房長官もおりませんし、首相もおりませんから、それ以上にお尋ねできないことを残念に思うのでございますけれども、ただいままでの質疑によりまして、政府は再軍備の伏線といたしましてこの軍人恩給復活するのだということを断ぜざるを得ません。しかしこれはまた他のときに譲りまして、私の質疑をこれで終ります。
  296. 太田正孝

    太田委員長 山手滿男君。  山手君に申し上げますが、緒方官房長官、外務大臣は今のこちらへ来るように申しております。通産大臣と公正取引委員会委員長横田正俊君が出席されております。
  297. 山手滿男

    山手委員 私は独禁法の改正関係いたしまして、関係閣僚、公取委員長に御質問いたしたいと思います。独禁法の改正は巷間伝えられる以上に、日本の経済界にとりましては、将来重大な影響を与えるものであると考えております。未組織な経済界が、さらにこれを通して公々然とカルテルあるいはトラストを結成いたしまして、日本の経済界に非常に大きな影響を与えることは必至でございまして、この問題を政府が慎重に検討をされた上で、この提案をされたものであると確信をいたす次第でありますが、しかしこの提案そのものを見て、私どもは必ずしも納得ができないのであります。  まず第一にお伺いしたいことは、この独禁法の番人であるところの公取の委員長さんは、今度この独禁法の改正案を政府が出すにあたつて、どういう方針で臨まれたか。いわゆる小資本者あるいは中小企業者、一般消費者などの利益を守つて、公正な取引を維持培養して行かなければいかぬという、番人としての立場にあるあなたと、それから日本の産業を不況から救い、貿易を進行して行かなければいかぬ、その責任者であるところの通産大臣と、相当に摩擦がある立場であろうと思うのでありますが、まずそこからお聞きをいたしたいと思います。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  298. 横田正俊

    ○横田政府委員 今回の改正につきまして、公正取引委員会がとりました態度につきましては、いろいろな機会に公表いたしたつもりでございますが、独占禁止法の改正は、実は先般の事業者団体法の改正のときに、すでに御承知のように問題になつておりましたが、当時の諸般の事情によりまして、この改正だけが延びまして今日に及んだわけでございます。もちろんこの独占禁止法の基本の概念でございますけれども、公正自由な取引を促進することによりまして、日本の経済にプラスをもたらすというこの基本の線は、あくまでも今後維持すべきであろうと考えます。この線に沿いまして、かつ日本実情を勘案いたしましてできましたのが今度の改正案でございます。この間におきましてもちろん財界その他諸般の方面の御意見を十分に徴しまして、そのいずれにも偏しません態度をもつて、この改正に臨んだ次第であります。なお関係官庁等とも十分に連絡をいたしまして、この案を練つたわけでございますが、御承知のようにいろいろな立場がございまして、必ずしもすべてこの点において、完全な一致ということは見られなかつたわけでございますが、幸いに公正取引委員会がとりました基本の線というものは、通産省その他各方面におきまして、十分に理解をしていただきまして、今回のような改正案ができ上つた次第でございます。
  299. 山手滿男

    山手委員 今の答弁は少し私の聞こうとするところとピントがはずれておるのでありまして、公取の立場は独禁法のいわゆる番人としての立場であつてできるだけ独禁法の精神をあくまで貫いて行くという立場であろうと私は思います。そういたしますと、たとえば、カルテルを認可するというふうな場合に、この改正の条文から参りますならば、公正取引委員会の認定を得た上で、主務大臣が認可をするということになつておる。これは一種の妥協でこういうつぎはぎの文句ができたのであろうと思うのでありますが、厳格にあくまでもカルテルを認める場合は、例外的にのみ誠めようというふうな、そうして独禁法の精神をあくまで貫いて行くという考え方であなたはおいでになるのかどうか、その点について委員長にお伺いし、後にこういう点についての通産大臣の所見を承りたいと思います。
  300. 横田正俊

    ○横田政府委員 先ほど申し上げました通り、公正取引委員会といたしましては、あくまでもこの基本の線を守つて行きたいと思つておるわけでございます。ただいま御指摘のカルテルの認可権の問題につきましては、多少形はかわつておりますが、実質的には公正取引委員会の認定ということで、われわれの立場意見は、カルテルを認めるかどうかという問題について、十分に反映いたすことができるかと思います。もちろんこの点につきましては、いろいろな考え方があろうかと思いますが、今申しましたような立場からいたしまして、この改正案でわれわれは十分に基本の線は守れると考えておる次第であります。
  301. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 通産省といたしましては、事業をたくさんおあずかりしておる関係上、事業の実態を把握しております関係もございますので、あれが不況であるか、あるいは合理化であるか、こういうふうなときには通産省が主管するのが当然だと私は考えますが、しかしこれはまたそれのみに偏しますと、独禁法の精神を没却することになつてもいけませんし、独禁法の趣旨はあくまで尊重すべきございますから、そこに公正取引委員会の認定を経て、両々相まつてあやまちなきを期したい、こういう考え方からああいうふうになつておる。別に妥協といつたような意味合いではございません。
  302. 山手滿男

    山手委員 この点は私は「あらかじめこの法律において判然とさしておきませんと、問題が起きるであろうと思います。今日、日本の産業界の実態は、できるならば全部の業界がカルテルもつくりたい、あるいはいろいろな防衛措置を講じたい。どの業種といえども一つとしてこれを考えざる業種はないと私は思うのであります。しかしこの独禁法の改正案の条文から行きますならば、はたしてこういうものを—今委員長の話も、大臣の話も、何が何だかさつぱりわからない。それは原則として、場合によつては勇敢に認めて行くという趣旨で、この改正案を出して来たのか、あるいはごく例外的な場合にのみこれを適用して行こうというふうに考えておられるのか、その点はつきりいたしません。たとえていえば、不況カルテルの場合について言いまするならば、現実に市場価格が生産費を下まわる云々、しかもその生産者の大部分が倒産休業のやむなきに至る憂いがある場合にのみ限定をするというふうな字句が使つてありますが、これをどういうふうに解釈して行くのか、一般業界の連中はできるならば、全部がそうした自分たちの防衛措置を講じたいということでありましようが、この法律からぴんと出て来ない。私ははつきり、政府が積極的にこういう従来の独禁法の精神は最低限度に押しやつてでも、日本の産業の育成に邁進をするという考え方で出て来たのか、あるいは公取というものがあくまでがんばつてつて、最低限度にカルテルを認めようという趣旨でやつておるのか、その点を私はもう少しここではつきりしていただきたいと思うのであります。
  303. 横田正俊

    ○横田政府委員 今回の改正の骨子は、カルテルは限定的にこれを認めて参る。結局不況の場合と合理化の必要上やむを得ない場合、なお独占禁止法には出ておりませんが、輸出の振興上必要な場合というふうに、限定的にこれを認めて参る。なおそれを認める場合につきましても、手続といたしまして、先ほど申しましたような単なる届出というようなことではなく、政府の認可を必要とするというふうに全体をごらんいただきますれば、きわめてこのカルテルを認めます場合は限定的であるということが御理解いただけるかと思います。
  304. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 これは公正取引委員会とも打合せた上の考え方でございまして、原則としては今の通りでございます。ただ私どもが不況に際して、日本の産業というものがカクテルをつくらないことによつて、ほかの中小企業とかいろいろな方面にも悪影響を及ぼしてしまつて、それがために産業の壊滅を来すようなことがあつては、国民生活上ゆゆしい問題であるからという、その不況の場合と、それからまた合理化を行つて、どうしてもコストを下げてよそに対抗して行かなければならぬ場合と、さらに今の貿易振興の見地からどうしても—これはひとり輸出に限りません。輸入についても同様でありますが、輸出貿易について必要とする部分についてはこれを行う。こういうことにいたしておりますので“いわゆる許可制度になつておりますことは、限定しておるという趣旨から出ておる次第でございます。
  305. 山手滿男

    山手委員 大体政府考えておられること、あるいは妥協された点がはつきりして来たように思います。しかりとするならば、私は現在の産業人がいろいろ注目をしおりますこの独禁法の改正なるものは、業界人からいえば、さして満足すべき改正ではないという結論になるということをまず申し上げておかなければならないのであります。ところでこの法案から行きますと、私は今の認可そのほかの問題についても不十分でありますが、問題の範囲などいろいろ検討をいたしてみますと、不十分きわまるものである、こう考える。なぜかと申しますと、カルテルをつくりましても、これだけきびしい不況の時期におきまして、そのカルテルは戦前からの例そのほかをつぶさに検討いたしてみましても、アウトサイダーそのほかに対して強制力を持つものでなければ、カルテルなりその協定というものは、ほんとうに生きて行くものではないのでありますが、この条文からは、そういうことはできないような仕組みになつておる。はたしてしかりとするならば、政府は、独禁法からでは表向きにはそういうアウトサイダーそのほかに対する強制力は付与しないけれども、特定の重要産業に対して、設備の規制そのほかアウトサイダーを拘束するような立法をする用意があるのかどうか。また先般議員立法をいたしましたところの中小企業安定法などにつきましても、同様なアウトサイダーに対する措置について政府はどう考えておるか、ここで明らかにしておいていただきたいのであります。
  306. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今お示しのごとくに、中小企業安定法には、アウトサイダーをも必要の場合、主務大臣がこれを規制し得ることに相なつております。今度の独禁法の改正はそうなつておりませんが、しかし現実の問題として考えますと、このカルテルをつくつた場合に、アウトサイダーがあるために効果がないようであれば、これはカルテルの結成をすることはないのでありまして、現実の問題として考えますと、カルテルをつくるときには、アウトサイダーがかりにありましても、そ  の力はきわめて微弱であつて、このカルテルというものが不況対策なり合理化対策なりの一つとして働きをすることと私は考えますので、もしこれをやつてみて、そういうことの効果が上りません場合には、あらためてひとつ考えたいと存じております。
  307. 山手滿男

    山手委員 そこで、さつき私がお尋ねをいたしました特定重要産業安定法に対して、政府はどう考えておられるか。今国会に提案されるか、どういうふうに始末をされる予定か。
  308. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 重要産業安定法につきましては、ただいまのところまず独禁法の改正をもつてこれに臨みまして、これで足りません場合には、重要産業安定法をつくりたい。重要産業安定法の考えの根本は、大体中小企業安定法の考え方でありますが、それをつくりたい。そしてアウトサイダーをも規制いたしたいと考えておりますが、まずこれをやつてみて、実は運用よろしきを得れば、大体これで所期の目的を達するのではないかと、私はそういうふうに考えておるのでございます。
  309. 山手滿男

    山手委員 少し方向をかえまして、この独禁法改正をいたしまして、産業界の一つの組織化を与え、あるいは協定によつて設備なりあるいは生産数量なり価格なりというものを、能主的に規制をさすというふうなことは、私は戦後できるだけ多く物を生産し、できるだけ安く豊富に国民に物資を供給しようという歴代の内閣がやつて来た措置、特に自由党は自由放任経済といいますか、自由経済一本やりで、設備の規制もあくまでこれはやるべきじやないというふうな方針で臨んで参られたのでありますが、これは大きな政策の行き詰まりにぶち当つて、方向転換をされたことになると私は思うのです。独禁法の改正は、この独禁法自体の持つております精神、すなはち小資本家や中小企業者やあるいは一般消費大衆の利益を守り、公正な取引を行わすということが主眼でありまして、私はできるならばこの法律には手をつけるべきではなかつたと思うのでありますが。それにあえて手つけなければならない段階が来たということは、政府の施策に重大な行き詰まりが参つてこういうところに来たと私は断ぜざるを得ないのです。そこで政府がもしこういうものに手をおつけになるのであるならば、その前にもう少し通商産業政策を計画的に長い期間、長い目で、この計画性を持たせて推進をするというふうないろいろな施策が行われなければ、私はとうてい独禁法の改正ぐらいではおつつかぬような事態がそのうちに来ると思うのでありますが、この点大臣はどうお考えになるか。
  310. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 山手さんも御承知のように、日本の独禁法ほど世界で峻厳な独禁法はどこにもございません。たとえばイギリスの独禁法とか、あるいは西ドイツの独禁法は、非常にゆるやかなものでありまして、今度ゆるめるものでもなおこれらに及びません。イギリスのごときは、ただ届出主義で足りておるというぐあいであります。日本のは非常に厳正に過ぎまして、厳重に過ぎたがために、実情に沿わなくなつて来ている。特に国際情勢の変化によりまして、世界的に不況になつて来ております。また日本も滞貨その他ができまして、不況になつて来ておる。こういう状況におきましては、どうしても日本でも拘束を解く必要があるのでありまして、これを最小限に解いて行こう、こういうところから起つておるのでございます。もちろん将来の日本の貿易政策等につきましても、また産業政策等につきましても、一定の方向は定めておるのでございますが、しかしいわゆる計画経済的なことは現在はまだやつておりません。けれども一定の方向のもとにこれはやつておりまして、その意味から申しますと、今度の独禁法の改正は、まあこの程度で今の実情には相応するであろう、かように判断しておる次第でございます。
  311. 山手滿男

    山手委員 産業界の現状はそれとは事実は違つております。商機をつかむことに敏な経済人は、もうかるといえばすぐそれに資本を集中して飛びついて行くというのが現実である。戦後、メリヤス工業がもうかるといえば、メリヤスにどんどん資本をつぎ込む、貿易がもうかるといえば、どんどんそれに資本をつぎ込んで顧みない。その当時経済安定本部は作業をいたしまして、国民一人当りの消費数量は四ポンドなら四ポンドである。それに要する設備は綿紡でいえば四百五十万錘あれば十分であるということになつて、経済安定本部によつて計画的に指導されて、通産省も設備の無制限な拡大を阻止して参つてつた。ところが三、四年前には、かくのごときものは、はずせはずせ、自由経済だということではずされた。ところが今日は何万錘になつておるかというと、七百五十万錘になつておる。七百五十万錘になつて、三割操短、四割操短で操短をして、できた品物は買い上げるか何かしなければいかぬといつて騒いでおる。こういう事態はどうか。一万錘当りが二億も三億もかかるような設備を、二百万錘も三百万鍾も遊休施設にして二重投資をしておる。それで業界人は、借金した運転資金をつぎ込んで設備をして思惑をやつておる。政府は何らこれを計画的に誘導しておりませんから、短期資金をつぎ込んで、思惑で設備を拡大しておる。七百五十万錘もふえておる。実際は安本が四百五十万錘あればいいと言つてつたのが、三百万錘もふえておる。それに対して三割、四割の操短を通産大臣の勧告でやつておる。その遊休施設になつた部分の利子は、当然今日企業を圧迫し、生産コストの高騰になつて輸出の不振を招いておる。そこが私は自由経済本位で何でもかんでも野放しにせよという通産省の行き方の大きな誤謬であると思う。それは単に綿紡績だけではない。肥料工業においても見られる。鉄鋼業においても見られる。ゴム工業においても同様なことが見られる。あらゆるものを野放しにしたから、今日こういう状態が来て、独禁法の改正によつて操短を強制して価格の維持をしなければいかぬようなことになつて来た。それで業者自身はどうかといえば、利子に追いまくられてたいへんな苦労をしておる。日本に恐慌的な不況が今日訪れておるのであります。今日この段階において、なお企業の自由を守るというようなことで野放しにして行かれるということであるならば、これはたいへんである。ここらあたりでもう少し通産省は計画的な指導をしなければいかぬ。政府はその意思があるのかどうか、私はそこを尋ねておる。
  312. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 今お話のごとく、綿紡その他非常に実際の生産力がよけい増加いたしておることは、御承知の通りであります。ただこれにつきまして、操短等も私ども政府が強制したものではございません。実情から見て勧告をしておるだけでございますが、今度の独禁法の改正で、自主的にこれらのカルテルをつくることによつて、この不況対策の一つとしてやれる、あるいは合理化対策としてやれることになつております。また中小企業安定法に基いてこれがやれますことは、これは山手さん御承知の通りであります。これはアウトサイダーまでやれます。だからこの法律が有効になりますと、相当効果があるとは思ひますが、しかしもう少し計画性をもつて指導すべしという御意見は尊重いたします。
  313. 山手滿男

    山手委員 自由経済一本やりではもう行かなくなつておる段階であるということを率直に認めていただいて、政治の上に反映していただけることであろうと思つて、その点私は満足いたします。  そこで私は外務大臣にもお尋ねをいたしたいのでありますが、さつき総理がここで答弁をしておるのを聞いておりますと、貿易がうまく行かないのは、日本だけではなしに、世界各国とも同様であるという御答弁がごごいました。私はこのことについては異議がございます。どういうことかと言いますと、日本の戦前と戦後の貿易量の比較と、ヨーロッパのドイツ、イギリス、フランス、英国などの戦前と戦後の貿易量の比較を比較して復興状況を見ると、私どもは日本と向うとは格段の差があると考えておるのでありますが、経済外交を推進するといわれる岡崎外務大臣から、これは貿易カルテルの問題でありますから、その点まず御答弁をお願いいたします。
  314. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 貿易量の点につきましては、戦前のパーセンテージと比べれば、日本の方がよその国より少いのは認めざるを得ません。
  315. 山手滿男

    山手委員 簡単なお話でありますが、これが今日の日本の産業界の苦悩の最大のポイントになつておると思う。日本の鉱工業生産は戦前の昭和九年から十一年あたりに比べれば、百三十五パーセントに復活したと大臣はおつしやつている。もちろんヨーロッパ諸国も百三、四十パーセントくらいのところまで復活しておりまして、鉱工業生産の面から言いますと、日本は相当な復興であることは認める。ところが貿易の面から行きますと、残念ながら、ヨーロッパ諸国は戦前に比べて百四、五十パーセントになつておりますが、日本は戦前に比べてわずか四十パーセントしかない。向うが百四、五十パーセントまで行つているのに、日本はまだ四十パーセントであるから、日本の貿易量は半分にも行かないという状態になつておる。だから鉱工業生産は戦前以上二割も三割もふえたけれども、貿易は半分しかできておらないというところに、日本の産業界の不幸の原因がある。ところが今日独禁法の改正をやつて、いわゆる貿易カルテルを結成さす。これは輸出取引法なんかの改正もおやりになるようでありますが、外務省の方からは、この独禁法の改正にあたつて、こういう改正をするということになると、諸外国の覚えがよくないから、極端な改正をしてもらつては困る、できるならで公取の初めの案をそのままできるだけ強く打出してもらいたい、こういう申入れをされたようでありますが、その辺について外務大臣の御答弁をお伺いいたします。
  316. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外務省としては、もちろん諸外国の考え方、それが大事であります。いずれ貿易をやるのでありますから、諸外国で不当な輸入阻止等の方法を講じないようにしなければなりませんから、こういう点も十分考慮いたしましたが、今回の改正案ではそういう問題は起らないと考えております。従つて外務省で初めの独占禁止法等を維持するようにというようなことは言つておりません。
  317. 山手滿男

    山手委員 実はそうでなくて、外務省の方からは相当強く申入れをしておられるようであります。これは抽象的に水かけ論になりますから、もうつつ込みませんが、通産大臣にお伺いをいたします。貿易がうまく行かないということは、要はコストが高いということなのです。これはカルテルの問題にもなりますが、このカルテルを結成さ正せて、合理化を推進しようといたしましても、カルテルを認めること自体によつて、むしろ製品が高くなつて、貿易は出にくなるおそれがあるのではないか。ことに今日一部の業者は、このカルテルが認められることを契機にいたしまして、いろいろ価格の引上げなんかのウォーミング・アップをやつておるようでありますが、その点についてどういうふうにお考えか、御答弁を願います。
  318. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 要するに、価格の安定した商品が出て行くということが、輸出貿易増進の一番もとであると思います。価格に動揺がありますことは一番輸出を阻害いたしますので、価格が安定をしておることが一番根本であると考えます。従つてカルテルができまして、価格つり上げというようなことがありますれば、それは阻止いたします。私どもの方でも免許いたしません。しかし価格を安定せしめるという程度で貿易の振興に役立つものならば、これは認める、免許するということになろうと考えます。なお、これはひとつ山手さんも御承知願いたいと思うのでありますが、従来日本でお互いに競争しあつて、これがためにダンピングするというようなことを言われましたが、この非難は今後一切なくなると思います。日本が輸出貿易でダンピングするということはなくなると思いますので、この点は輸出貿易の上にもよく働いて来るのではないかというふうに実は私ども考えておるのであります。もし弊害がありますれば、即時取消しをいたさせます。
  319. 山手滿男

    山手委員 それに関連をしてでありますが、先般肥料に関して、春肥の問題で肥料協会がああいう決定をしております。これは改正独禁法に照してみても、明らかに新独禁法違反になるおそれがあるということを、公取の委員長が一部で語つておられるようでありますが、この問題についてはどうお考えか。  また日本の石油業者が価格協定をやつております。これについても審判を開始するというような御決定のようでありますが、どういうふうに持つて行かれるつもりか、公取委員長の御説明をここでお願いします。
  320. 横田正俊

    ○横田政府委員 硫安の問題につきましては、実はけさほどの農林委員会で一応ただいままで公取で調べましたところを申し上げたのでございますが、すでに新聞紙等で御承知のように、二月二十四日に硫安協会のある委員会におきましてああいう建値を発表いたしたのであります。これはまだ調査の途中でございまして、確定的のことを申し上げる段階に至つておりませんが、この行為は、事業者団体である硫安協会の行為といたしまして、現行事業者団体法の第五条第四号違反の疑いが十分ございますし、またその協会を通じまして硫安メーカーが協定をいたしていることがはつきりいたしますれば、これは独占禁止法の現行法の第四条なりあるいは第三条の問題になり得るということでございます。しかし、なおこの点は、諸般の事情をまだ十分調べておりませんので、現在申し上げることのできるのはその程度のことでございます。  なお、石油の問題につきましては、石油も業者は十一社でございましたが、それがある話合いをいたしまして、大きな入札につきまして話合いをしましたととほんど同じ値段を入れております。この点はやはり独禁上明らかに問題になりますので、つい最近に審判を開始いたしまして、なお業者の方の言い分も十分に聞きました上で、適当な措置をいたしたいと考えている次第でございます。
  321. 山手滿男

    山手委員 この改正法は、私ども長官の提案理由の説明によりますと、外国商社に対しては適用をしないのである、こういうふうな御説明であつたと思うのでありますが、石油業界のように、日本の石油業界の大部分を外国資本によつ、掌握されているようなもの、しかも日本の石油業界だけでなしに、全世界の石油をアメリカと英国の石油資本が世界的なカルテルをつくつて押しまくつている。そのために先般英国の国会においては英国の石油業者がアメリカの独禁法違反をしているというふうないろいろな提訴がされた事実もあるのでありますが、外国商社がこれらの日本の石油業者を資本的につかまえておつて、背後から使嗾して、こういう独占禁止法の改正法にも十分抵触するような行為をした場合には、今度の法律ではどういうように取締つて行かれますか。
  322. 横田正俊

    ○横田政府委員 先般の緒方さんのお話として新聞に載つておりますことは、非常な誤解がございます。御承知のように、提案理由の御説明がありましただけで、その中では何ら申しておらないわけでございます。あれは明らかな誤報でございます。  なお、ただいま御指摘の外国の会社が日本に資本を投下し、株式を持ち、その株式を通じて日本の業界を牛耳るというような問題につきましては、現行法にもすでに株式保有の制限に関しましては、外国会社を含むということが明らかに規定してございまして、この線は今度の改正でも一向かわつておまりせんので、もしこの株式を通じまして、外国の会社が日本の一定の取引分野におきます競争を実質的に制限するおそれが認められますれば、所定の手続に従いまして審判を開くことができるわけでございます。この点は改正前と別にかわつておりません。
  323. 山手滿男

    山手委員 これはこの独占の問題と非常に大きく関係があるし今度のこの改正案によりまして、財閥解体後の一部の大資本家が、他の同業会社に手を伸ばして株式を買い占めるというふうな行為、そして競争会社の役員を兼任するというふうな行為は一切禁ぜられておつたのでありますが、これが緩和をされるとい、うことになつて参ります。そういたしますと、これから先日本の会社では相当な混乱が起きると私は思う。特に今日の日本のような状態でございますと、外国の資本が陰に陽にいろいろ手を伸ばして来おることは事実であります。今石油の話が出ましたから申し上げますが、日本の石油会社でも、五〇%あるいは五一%というふうな資本を握つた会社が、大きいものは上からほとんどそういうかつこうになりつつあるというのが日本の現状である。そういうときに、さらにこの独禁法の改正関係をして、特に外国商社の活動を一これは日米通商航海条終との関係もあろうかと思うのでありますが、いかにもルーズなようにやつてしまうことは、将来非常な弊害を残すのじやないかと思う。この点について通産大臣はどうお考えか、御所見を承つておきたいと思います。
  324. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 その条文にもありますように、競争会社の一方が一億以上の場合でありますと、これはそれぞれ制限がされております。しかし今お話になりました点は、私どもたいへん憂えておるところでございまして、今度の日米通商航海条約でもきまつておりませんが、ある種の事業についての制限が設けられ、またある種の投資についての制限が設けられますので、大きな重要事業についてはそういう御懸念がないように運ばれるように私は承知しております。
  325. 山手滿男

    山手委員 きようは総括質問でありますから、こまかいことは他日に譲ります。以上で大体私は聞き落した重要なポイントはお聞きをいたしました。  結論を申し上げますと、今度の独禁法の改正では、通産省の立場はあまりいれられなかつたような気がいたします。これは日本の経済界の不況を救済するという面から、産業界で要望をしております線から大分はずれておるように思う。半面この点は中小企業者や小資本者、一般消費大衆の利益を守るという立場からも、あいまいな点が残つて来るのではないか、私はこういうふうな矛盾した感じを持つております。時間もございませんから、私は大体この程度質問を終ります。
  326. 中村高一

    ○中村(高)委員 議事進行につきまして発言を求めたいのでありますが、先ほど西村委員質問中、総理大臣が—という暴言を吐きまして、すぐに取消しはいたしましたけれども、これはきわめて重要な問題でありまして、ただちにわれわれは委員会審議の停止を要求いたそうと思つてつたのでありますが、ただいままで進行いたして参りました。われわれは目下この問題について協議中であります。いやしくも総理大臣が、この国会において—というような発言をいたしたことはいまだかつてないのであります。この国会で、しかも予算委員会審議中に、こういう発言をせられたということが一般にわかりましたならば、おそらく大きな批判を受けることは事実でありまして、国会の名誉のためにも。かくのごとき言葉を放たれましたことに対しては、われわれも捨てておくわけには参りませんので、ただちに休憩をせられまして、休憩後にこの問題について、われわれは予算委員会において起りました問題でありますから、まず予算委員会におきまして取り上げて、その問題を協議いたしたいと思います。これからわれわれは協議の必要がありますので、この程度でひとつ休憩をせられたいと思うのであります。
  327. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員長代理 中村君に一言申しますが、議事進行に関する動議の御趣意はよくわかりました。ただ私の承知いたしておりますところは、先ほど総理大臣が—とか—とかなんとかお述べになつたのは、委員長の正式の発言の許可を受けてやられたのではなくて、いすの上に腰かけておられて、私的に述べられたように思います。(「なお悪いじやないか」と呼び、その他発言する者多し)その点はいずれ話し合うとわかりますから、私はその点聞えておりましたがと、一言私が申し述べておきますだけのことで、それらの可否は、先ほど申したように、よく皆さんと御相談をいたすことにいたします。  暫時休憩をいたします。六時三十分より開会いたします。     午後五時三十五分休憩      ————◇—————     午後七時四十一分開議
  328. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代理着席〕(尾崎(末)委員長代理退席、西川委員長代理着席〕〔西川委員長代理退席、委員長着席〕
  329. 太田正孝

    太田委員長 暫時休憩いたします。     午後八時二十二分休憩      ————◇—————     午後十時二十九分開議
  330. 太田正孝

    太田委員長 これより再開いたします。
  331. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 議事進行について発言を求めます。
  332. 太田正孝

    太田委員長 尾崎君。
  333. 尾崎末吉

    ○尾崎(末)委員 ただいまの時刻まで待ちましても、質問者が見えないようでありますから、散会されんことを望みます。
  334. 太田正孝

    太田委員長 ただいまの尾崎君の発言の御趣旨の次第もありますので、次会は明日午前十時より開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後十時三十分散会