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1953-02-24 第15回国会 衆議院 予算委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十四日(火曜日)     午後零時四十六分開議  出席委員    委員長 太田 正孝君    理事 尾崎 末吉君 理事 塚田十一郎君    理事 西川 貞一君 理事 橋本 龍伍君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 榮一君    理事 成田 知巳君       相川 勝六君    淺利 三朗君       植木庚子郎君    植原悦二郎君       大平 正芳君    岡本  茂君       北 れい吉君    小坂善太郎君       小山 長規君    重政 誠之君       島村 一郎君    高見 三郎君       塚原 俊郎君    中  助松君       永田 亮一君    永山 忠則君       灘尾 弘吉君    貫井 清憲君       野澤 清人君    原 健三郎君       日高 忠男君    福井 盛太君       南  好雄君    三和 精一君       森下 國雄君    山崎  巖君       山崎 岩男君    秋田 大助君       井出一太郎君    北村徳太郎君       川崎 秀二君    小島 徹三君       櫻内 義雄君    鈴木 正吾君       早川  崇君    古井 喜實君       宮澤 胤勇君    池田 禎治君       石井 繁丸君    春日 一幸君       河野  密君    日野 吉夫君       平野 力三君    山下 榮二君       吉川 兼光君    伊藤 好道君       稻村 順三君    勝間田清一君       上林與市郎君    和田 博雄君       福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         大 蔵 大 臣 向井 忠晴君         文 部 大 臣 岡野 清豪君         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         通商産業大臣 小笠原三九郎君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君         国 務 大 臣 本多 市郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         大蔵事務官         (為替局長)  東条 猛猪君         通商産業事務官         (大臣官房長) 石原 武夫君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 二月二十四日  委員大泉寛三君、大島秀一君、大橋武夫君、大  平正芳君、加藤精三君、木村文男君、薄田美朝  君、砂田重政君、原健三郎君、福井盛太君、椎  熊三郎君、早川崇君、池田禎治君、石井繁丸君、  加藤勘十君、辻文雄君、前田榮之助君、及び山  口丈太郎辞任につき、その補欠として北れい  吉君、中助松君、塚原俊郎君、淺利三朗君、島  村一郎君、山崎巖君、日高忠男君、植原悦二郎  君、小山長規君、森下國雄君、北村徳太郎君、  秋田大助君、平野力三君、山下榮二君、西尾末  廣君、河野密君、西村榮一君及び八百板正君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員植原悦二郎君、北れい吉君、西尾末廣君、  平野力三君及び八百板正辞任につき、その補  欠として山崎岩男君、三和精一君、池田禎治君、  春日一幸君及び勝間田清一君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員山崎岩男辞任につき、その補欠として植  原悦二郎君が議長指名委員に選任された。 同日  理事本間俊一君及び川島金次君の補欠として西  川貞一君 及び西村榮一君が理事に当選した。     ――――――――――――― 二月二十三日  二十八年度財政に関する陳情書  (第一四一八号)  二十八年度予算案に関する陳情書  (第一四一九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 太田正孝

    太田委員長 これより会議開きます。  この際お諮りいたします。理事本間俊一君及び川島金次君が昨二十三日委員辞任されまして、理事二名欠員となりました。つきましては、この補欠は先例によりまして、委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 太田正孝

    太田委員長 御異議なしと認めます。よつて委員長西川貞一君及び西村榮一君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 太田正孝

    太田委員長 昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題とし、質疑を継続いたします。西村榮一君。
  5. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は総理大臣外務大臣大蔵大臣保安庁長官質疑をしたいと思つておるのですが、関係大臣はどうなりましたか。
  6. 太田正孝

    太田委員長 外務大臣は今宮中へ参りまして、三時まで出られないとのことでございます。総理大臣は今不在でございます。その他のは今交渉しておりますが、出先の関係がまだわかりませんので、とりあえず通産大臣から御質問をお願いいたしとうございます。
  7. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうしますと、総理大臣並びに外務大臣保安庁長官に関する質問は留保してよろしゆうございますか。
  8. 太田正孝

    太田委員長 よろしいのであります。
  9. 西村榮一

    西村(榮)委員 あとで発言を許していただけますか。
  10. 太田正孝

    太田委員長 よろしゆうございます。
  11. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは委員長の御指示に従いまして、御出席通産大臣に御質問いたします。これはきわめてじみなことでありますが、通産大臣でなしに経済審議庁長官にお伺いしたいことは、予算基礎になります国民所得算定であります。政府の原案によりますと、国民所得が前年度より五・三%増加いたしておるのでありますが、昭和二十七年度よりも二十八年度の方が国民所得がふえるという根拠は一体どこにあるのでしようか。予算書を見ましたけれども、この数字では私はちよつとふに落ちないところがある。私はあえてあげ足をとりませんから、具体的にその根拠について御説明を承りたい、かように考えます。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと数字にわたりますから、書類によつて申し上げます。大体昭和二十八年度予算は、国民所得は前年度に比べまして増加いたしまして、五兆六千七百億円余と推定されておるのであります。前年の二十七年度五兆三千八百億円余に比べまして五・四%の増加となつておるのでありますが、これにつきましてはこういうような点から割出しておるのであります。勤労所得ベースアツプとかいろいろな問題もございましたし、それから米価の値上りの面もありますので、結局におきまして所得項目別に申し上げますと、勤労所得が四五・四%、個人業主所得が四二・九%になつておりまして、そのほか法人所得官業所得、あるいは賃貸利子所得、こういうふうになつております。それで大体申し上げますと、勤労所得の方は、二十七年度の一〇六・二%、それから業主所得の方は一〇三・六%こういうようなぐあいになつておるのであります。従つて大体から見まして前年度よりも五・四%の増加を来すもの、こういうふうに実は推計いたしておる次第であります。なお詳しいことは政府委員が参つておりますから、詳しく御答弁申し上げます。
  13. 西村榮一

    西村(榮)委員 これはあなたも御存じだと思いますが、昭和二十七年度予算を成立せしめられるときに、政府はかように説明されておる。鉱工業生産は前年度に比して八・八%ふえる。産業活動指数は九・二%、消費物価は四・四%ふえるというので、これらの総合的な生産拡大見通しとともに、国際収支の問題につきましては大体において受取りが二十三億八千万ドル、こういうふうに見通されたのでありますが、しかし実際は受取りは二十一億九千二百万ドルにとどまつておるのであります。そこで今あなたが御説明になりましたような諸条件というものは、昨年の実績から申しますとこれはくずれてしまつている。しかるに非常な楽観した数字に基いて国民所得算定されておりますが、過去の実績に照して、二十八年度国民所得ほんとうにふえるとお考えになつておられるか。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは私どもの方で調べたところによりますと、昨年度よりは若干ふえるという見込みになつております。それは今仰せになりました、たとえば鉱工業生産のごときもこれは若干増加することに実は見ております。それと賃金のベースアツプ、いろいろな問題もありますし、あるいは農村の米の価格等が上つておるといつたようなこともございます。それら等で私ども非常にいいとは思つておりませんが、大体昨年よりはちよつとよろしいというぐあいに見ておるのでございます。
  15. 西村榮一

    西村(榮)委員 国民所得算定はなかなかむずかしいものでありますが、今経審長官は、昨年よりも二十八年度の方が若干いいようなことに考えておるという御説明がありました。私はあなたのこの見通しを一応承認するとしても、ここに問題になるのは、昨年度生産は上りました。上りましたが、日本においてはいまだかつて前例を見ざる滞貨が激増した。在庫品は昨年度五千九百七十億円に激増しておる。これは従来の三倍です。従つてこの統計で示しますところは、なるほど昨年度生産上つたが、その生産が拡大されてつくられた品物が非常にたまつて売れないという現象を追つて来ておる。こういうふうな中に持つて来て、昨年よりも生産力は拡大されて行くが、しかしこれらのつくつた品物貿易の面か、国内市場の面かにおいて吸収されて、ほんとう国民所得がふえるという根拠が何かありますか。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今お話の点は、大体原料の面がお話のごとく相当残つておりますが、製品の面ではそう滞貨はございません。それでちよつと一例をあげますと、百貨店などの売れ行きなどから見ますと、むしろ非常にふえておるというような実情でありまして、製品の面ではそう滞貨がたくさんあるとは私ども存じておりません。原料の分にあることは御指摘通りでございます。
  17. 西村榮一

    西村(榮)委員 私が滞貨と申し上げたのは、世に常識上判断する原材料ではありません。つくつた品物なのです。デパートの売れ行きの問題ではない。つくつた品物が売れない。半原料ですか、原料から製品なつたそのものが売れない。その売れない大部分が繊維品なのです。そういうふうなものが従来の三倍に激増しておる。そこで私があなたにお尋ねするのは、生産力は高まつたが、この生産力のはけ口が貿易の面か、国内市場の開拓の面かにおいて何か御成算があるかどうか、こういうわけです。
  18. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 貿易の面はせつかく努力いたしておるわけでございます。そう好転とまでは行きますまいが、漸次今よりはよくなるように——経済外交が締結される、あるいは今ポンドなどについても、西村さん御承知のようにいろいろ交渉しております。もう相当見込みもついておりますので、かたがたそういう方もございますが、国内での消費が相当ふえたことは、たとえば生糸の一例でもよくおわかりでありましようが、生糸国内での消費はやはり相当ふえておりますので、今私の申し上げた意味は、原料、材料は非常にふえておるが、製品の方はそう著しくふえてないように私どもは見ておるのです。
  19. 西村榮一

    西村(榮)委員 どうも通産大臣としてならお話ができるが、経審は私が元おつたところでなかなか話がしにくいのです。しかしあなたの国民所得算定については、これは非常に甘いと私は思う。従つてそういうところから予算基礎的な観念が生れて来るということであれば、この予算案は甘いと思うのですが、しかしそれは私は深く問いただしません。ただここに問いただしておきたいことは、昭和二十八年度国際収支見通しについて、経済審議庁見通し大蔵省見通しが違うのです。経済審議庁昭和二十八年度収入が二十億一千五百万ドル、大蔵省は二十一億八千八百万ドルと計算されておるわけです。同じ政府の中で、しかも国会審議基礎をなす来年度国際収支について、なぜ大蔵省経済審議庁との間における見通しが違つておるのでありますか。  それから委員長大蔵大臣はいつ見えますか。
  20. 太田正孝

    太田委員長 もう向うを出たそうでありますから、すぐ来ると思います。
  21. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはしばしば申し上げましたように、多少経済審議庁の方で貿易関係内輪に見るか、大蔵省の方でよけい見ておると思います。経済審議庁の方は内輪に見ておると思います。よけい見るか内輪に見るかで、あとの点はそう大きな開きはございません。この点が大きな開きでございますが、私の方は昨年一億三千万ポンドほどポンドの輸入をいたしております関係を見まして、少くともこれに対する相当なものが出て行くという見通しをつけますと、そこに相当な開きが実は出て来るのです。この間日本タイムスに出ておつて——これは私は正確な数字とは思いませんが、今一億七千万ポンドくらいはかれこれ話も進んでおる点もございまして、これをそのまま見るか見ないかという点で実はわかれるのでございます。従いまして少し甘く見るというよりも、少し内輪に見るか、少し望みを託して見るかというところで、貿易数字がわかれておるわけでございます。
  22. 西村榮一

    西村(榮)委員 経済審議庁見通しは、昭和二十七年度の月額の実績から見て、経済審議庁見通しそれ自身も甘い、これに輪をかけて大蔵省見通しが甘い。しかし今私は、こういうふうな審議庁見通し大蔵省見通しの相違を指摘して、政府の統一を責めようとは思いません。しかしこれはあなたが閣僚として予算審議にあたつて内閣から二つ統計が出て委員の頭を混乱せしめるということになりはしませんか。それは一体どういうふうなお考えか。私は決してあなたを追究するという意味じやない、こいねがわくは政府意見を統一しておいてもらいたい。同時に従来のわれわれの観念からいえば、来年度国際収支見通し並びに国民所得算定というものは、従来経済審議庁所管に属していた。従つて経済審議庁の作業したその計数に基いて国民所得幾ら国際収支幾らということで国会審議を仰いで来た。しかるに本年度にあたつて両方の見通しが出た。この見通しから国民所得が狂つて来る、委員会といたしましては、これは与党の方々も同様だと思うのですが、はなはだ迷惑をする。統一する方法はないですか。
  23. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 国民所得の方は経審の分を基礎としておりますから、何ら差異がございません。片方は見通しだものですから、その見通しについていろいろ意見があつて、今お話のような点もございますから、たとえ見通しにいたしましてもこれは統一することにいたします。
  24. 太田正孝

    太田委員長 大蔵大臣がおいでになりました。
  25. 西村榮一

    西村(榮)委員 今経済審議庁長官は、国民所得算定経審所管であるが、見通しとしては各省それぞれ自分の信ずるところでやるのだ、こういうのです。しかしこの国際収支見通しというものが大体の見当がつかなければ、事務当局としては国民所得算定の作業はできないはずです。従つて国際収支見通しの甘いか辛いか、どこに見当をつけるかということは、国民所得算定に大いなる基本的影響を持つて来る。これは統一して行かなければならぬ、こう私は思うのです。そこで大蔵大臣にお尋ねするのですが、経済審議庁の出された国際収支見通し大蔵省見通しとは違つて来るのです。同じ政府の中の役所において、見通しの違うものを二つ出されるということは、予算審議の上において——御存じ通り国民所得算定をどこに置くかということについては、予算委員としてははなはだ頭が混乱して来る。どつちに解釈すればいいのか、経済審議庁の御見解を正しいと見るか、大蔵省の御見解を正しいと拝承したらよいか、どつちが正しいのですか、これを承りたい。
  26. 向井忠晴

    向井国務大臣 食い違つた数字が出ましたのは、はなはだ申訳ございませんが、今後は極力統一するようにいたします。
  27. 西村榮一

    西村(榮)委員 なかなかきようの答弁は満足です。迷惑しますから、ひとつ将来経済審議庁大蔵省がよくお打合せなさつて内閣として統一した一つ見通しをつけていただきたい、こう思つております。
  28. 太田正孝

    太田委員長 西村君に申し上げますが、今度の予算については、大蔵省のをとりますか、どつちをとるのか、ひとつにおきめになつたらどうですか。
  29. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうですね、今委員長からお話がありましたが、私はあまり向井さんがすなおに答弁されたので、一応遠慮したのですが、なるべく統一されていただきたい、どつちを正しいとするか。
  30. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 経審の分に統一いたします。
  31. 西村榮一

    西村(榮)委員 了承いたしました。  次に私は大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますが、今年度三百億円の《債を発行された、従来私は質問においていろいろ承つておるのですが、これはふに落ちないのです。本年の起債市場消化力というものは、私は大体去年の実績に徴して六百億円ないし七百億円と踏んでおる。昨年は四百六十億円出ました。その起債市場消化能力に加えて、この公債というものは個人にあつては一割二分、法人にあつては一割五厘という高利回りであります。そこで従来政府がしばしば声明せられたように、低金利をもつて生差コストを引下げて、そうして国際競争力を培養しようという線に、これは逆行するように見えるのでありますが、私はこの公債発行をされたという真意がいまだに政治的にもわからないし、技術的にもわからないのですが、ひとつ大蔵大臣の率直な御答弁を承りたい。
  32. 向井忠晴

    向井国務大臣 私も非常に喜んで出すという公債ではないのでございますが、いろいろと費用のかさみますために、やむを得ず発行するつもりでございます。金利の点につきましては、このくらいの金利で行く分には、ひどく市場を撹乱するというふうには私は考えないのでございまして、銀行その他ともよく相談いたしまして、まあ意見を聞きますと、この辺でよろしいというふうに考えていてくれるのではございますが、表面の金利が四分というふうなことで、高い金利ではないということの紙の上のしるしは見えているのですが、実質において御指摘通りでございます。今の市場と比べますと高いが、まあこれでもつてつて行こうというふうに考えております。
  33. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは減税公債という名前を打つているのでありまして、それには六十七億円の減税を見込まれている。これは別な観点から見ますならば、この六十七億円の減税を見返りして公債を発行されるということは、巨大産業に対する形をかえた利子補給の形になるのですが、御見解はいかがですか。
  34. 向井忠晴

    向井国務大臣 御説の通りひもをつけて見ますと、そういう解釈になるのでございますが、これは国の財政を助けるという意味で、しいてひもをつけずに、国の財政を助けるという意味に私は考えております。
  35. 西村榮一

    西村(榮)委員 その問題についてはいろいろ議論がありますが、私はその議論をしようと思いません。あなたは従来しばしばこの委員会において、公債政策というものは本年度限りであつて、来年度はやらないのだ、こう御声明なすつた。今でもそういう御心境にあるか。同時に来年度もそのあなたの公約を後任大蔵大臣——後任大蔵大臣と言うとはなはだ失礼ですが、あなたに万一のことがおありになつてもその方針を引継ぎして、完遂されるというお考えがありますか。
  36. 向井忠晴

    向井国務大臣 私はその考えでおります。
  37. 西村榮一

    西村(榮)委員 来年度はやらないが、本年度だけ公債を発行するということであれば、大蔵大臣心境に去来するものは、この公債政策は悪いということをあなたは思つておられる。だから本年度はやむを得ないが、来年度はこれはもうやめたいということは、この公債政策にあなたの潜在意識反対だという見地から、そういう御方針なつたと思うのですが、そういう意味に解釈してもさしつかえないでしようか。
  38. 向井忠晴

    向井国務大臣 反対と申しますと言葉が強過ぎますが、いやく出すという意味でございますね。(笑声
  39. 西村榮一

    西村(榮)委員 率直な御意見を承つて、私はこれ以上申し上げません。そこであなたがいやいやお出しになるということであれば、別にこのいやなことを人生六十過ぎたあなたが(笑声)おやりになる必要はないのであつて、所信に向つて邁進されればよろしい。あなたの頭の中には健全経済健全財政というものが、これが基本的です。従つて公債政策はいかぬということはおわかりになつている。そこであなたが、公債政策が好きなんだということであれば別ですけれど、いやいやお出しになるということであれば、私はお出しにならないで済む方法があると思うのです。それはほかでもありませんが、これは実収は二百三十三億円です。二百三十三億円というものの財源の出方というものは、物件費を一割倹約する、あるいはその他に現在の予算額からいえば、この二百三十三億円というものは倹約できる余地がどこにもある。自由党の御政策から申しまして、各省これは食い散らし予算だと申しますが、私は自由党に対してそういう失礼な言葉は使いませんけれども、この食い散らし予算でなくとも、物件費節約だけでも二百三十三億円というものは生み出されて来る、そういう方向に本予算案をお考えになつて公債を出さないで済むようにひとつ段取りをつけられてはどうか、私は率直なあなたの御心境を承りたい。
  40. 向井忠晴

    向井国務大臣 物件費節約も十分心がけまして、結局において出さずに済めば一番仕合せだと思いますが、その節約で済みません場合は公債を出そうというふうに考えております。
  41. 西村榮一

    西村(榮)委員 それなら物件費節約ができれば公債は出さなくともいいということにあなたは御同意くださいますか。節約余地があり、節約ができるとすれば公債は出さなくともいいということに御同意くださいますか。
  42. 向井忠晴

    向井国務大臣 節約ができましたらば出さずに済ましたいと考えております。
  43. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は、この公債政策の問題、わずか三百億、実際の財源としては二百三十三億円、これをあなたになぜしつこくお尋ねしているかと申しますと、実は日本の再軍備の問題、賠償の問題、この二つにからんで来る重要な問題であるからお尋ねしている。あなたは実業界出身であらせられるから、私の申し上げることはとくと御了解くださると思う。今賠償問題が論議されております。サンフランシスコの条約において日本賠償の義務は負うておりますけれども賠償能力がないので、役務賠償あるいはサービス賠償としてあの条約が取結ばれた。けれどもフイリピンその他の諸国はそれでは満足しないで、この問題については批准をいたしておりません。おそらく今年の五、六月ごろになりますと、賠償問題は解決しなければならないでしよう。そのときに問題になる解決の方法といたしましては、いわゆる役務サービス賠償からフイリピンその他が要求している現金賠償、これはとうてい日本財政では応じられないから、その中間をとつて役務サービス賠償に加うるに若干の現物か何かの形をもつて賠償しなければ賠償問題は解決できない乏いうふうなときに、この賠償要求国から、お前たちの国は財源がないないと言うているが、本年度はなるほどないかもしれないけれども公債発行という手があるじやないか、これを先例つけたじやないかということを、これらの諸国から追究されたら一体どうするか。同時に私はもう一つ懸念を持つているのは、日本が再軍備できないということは、いろいろな事情もございましようが、吉田さんが主張し、また国民もこれはできないということを主張している一つの理由といたしましては、再軍備をする財政的余力がない、こういうことなのです。しかるに公債発行でできるという先例を日本政府みずから示しますならば、財源がないどころではない、公債発行したらいいじやないか、こうつつ込まれて来たときに、一体財政当局として防ぎ得るかどうか。この点を考えてみると、私はわずか三百億、実収二百三十三億円のこの財源のために、これら国際関係に影響を及ぼすところの大なる公債政策というものは、物件費その他において節約して、おとりやめになつた方がいいと私は思う。私は決してあなたのあげ足をとろうと思いません。あなたがさぎをからすと言いくるめるような、古い政治家の形をおやりになるならば、私はそれに対抗する方法もありましようが、率直な御心境を承るならば、私は決してあげ足はとらない。私は公債政策をなぜあなたに御質問しているかと申しますと、以上の二点を恐れるから言うのでありまして、同時に将来の財政政策としてこの手段を用うべきでないということと三点ある。私は率直な意見をもう一ぺんお伺いしたい、こう思つております。
  44. 向井忠晴

    向井国務大臣 公債を出さずにおくと一番いいと思うのでございますが、予算はやはりつじつまを合せるという点で、いります費用を公債で支弁するという形にします。それで節約のできるときは公債は用いない方がよろしいというふうに考えているのですが、お説のようによその国の金を出せ、あるいは役務を要求されまして、公債を出せばいいじやないかと言われました場合に、公債は出せないのだという返事はできませんが、しかし公債を出せば、国力の減退といいますか、国力をそぐことになりますので、必ずしも今公債が出ているからといつて、これから公債を出せばお前のところは幾らでも出るじやないか。しかしそれで国が疲弊してしまうということは困るという点で、こちらの非常に困るような条件で賠償を払うことを余儀なくされるというふうにならないように手当をしたいと考えております。
  45. 西村榮一

    西村(榮)委員 いや、私は公債政策で恐れるのはその点だという一例を申し上げたにすぎない。そこで公債政策の結論として、あなたにお尋ねしておきたいのですが、先ほどの御答弁のように、物件費その他において節約余地があれば、こういうふうな不健全財政の芽を出す公債政策はやめるとさつき言明されたのですが、その節約余地があれば、ほんとう公債政策はおやめになるということで解釈してよろしゆうございますか。
  46. 向井忠晴

    向井国務大臣 節約ができましたならば、公債を出さずにいたしたいと思つております。
  47. 西村榮一

    西村(榮)委員 次に私がお伺いしたいことは、現在ニユーヨークその他にございます日本の手持ち外貨というものは、どういうふうに活用なすつておられるか、その点をお伺いしたい。
  48. 向井忠晴

    向井国務大臣 外国にありますものは、外国銀行に預けてあるのでございます。
  49. 西村榮一

    西村(榮)委員 預けてあることは私も知つておるのですが、その活用の方法です。同時に最近は少し減つておりますけれども、十億ドル前後のこの外貨をどう活用されておるか。その活用の方法、利用の方法を伺つておるのです。
  50. 向井忠晴

    向井国務大臣 大体これは輸入に使うのですが、商売人が借りたいというものは貸すような方針もとつております。
  51. 西村榮一

    西村(榮)委員 二十七年度は、当初から終始一貫十億ドル前後を往来しておるのですが、それに対する利息収入とかなんとかいうものは、昨年どのくらい入つておりますか。
  52. 向井忠晴

    向井国務大臣 それは私覚えておりませんので、政府委員にお答えいたさせます。
  53. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは本則からいえば無利息で預託しておる。しかし長期にわたる手持ち外貨があるときには、そこにはやはり外国のドル公債を買うとか、イギリス公債を買うとかいうことで、活用の仕方がある。私がさすのは、そういうふうな何か利殖の方法を講ぜられておるかどうか。それが昨年一体どのくらいの収益になつておるかということです。
  54. 東条猛猪

    ○東条政府委員 計数の問題でございますから、かわりまして私からお答え申し上げます。お話通りに、政府の持つております外貨の利子収入をできるだけ上げる。その他そういう意味での外貨の活用につきましては、できるだけ配意しておる方針でございます。昨年の予算額を申し上げますと、利子収入といたしましては十四億八千六百万円見当を計上しておつたのでありますが、本年度におきましては、今西村さんのお話のような余裕外貨を、定期預金に振りかえるとか、あるいは有価証券への活用をはかるというようなことに配慮いたしまして、二十八年度といたしましては五十一億四千二百万円見当を利子収入として計上いたしまして、目下予算として御審議を願つておるわけであります。
  55. 西村榮一

    西村(榮)委員 大蔵大臣としては——私はほかの官僚出身の大蔵大臣ならこういうことはお問いしませんが、少くとも現在の日本貿易規模から申しますならば、大体この手持ち外貨十億ドルの約三割くらいで操作ができるわけです。従つて年初からずつと年末までかけてこれだけの保有金があるとするならば、外国債を買つても、貿易操作にさしつかえない。遊金だけを活用しても二千万ドルないし三千万ドルの利潤が生めるだろうと私は思う。それは三分五厘ないし四分の利息で計算いたしましてもそんなところです。しかも国内においては高金利で悩んで、それがために国際競争力というものは削減されておるという資金難の現状において、今承れば昨年度の収入はわずか十四億円、本年度は五十一億円、これはけた違いなんです。これでは手持ち外貨というものをほとんど活用していないということになると思うのです。実業家出身であるあなたは、これに対してはどういう御感想をお持ちになつておりますか。
  56. 向井忠晴

    向井国務大臣 大いに活用しておるということは申し上げられません。もうかるような方法を研究する必要があると思つておりますので、その方向に進みます。
  57. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではこれを活用すれば、大体約二千万ドルのあれが浮いて来るということになるのですが、しかしそれはあなたの御努力にまつとして、私のお伺いしておきたいことは、日本が外資導入ということを持ち出しながら、なぜそれが実行されていないか。しかも一面手持ち外貨がこういうふうに外国の銀行に無利子で預託されておる。しかも日本貿易の規模からいえば、その三分の一の金があればいいのに、過大な手持ち外貨を持つておる。この活用の道を、国内においても国外におきましても怠つておるということは、これは資産運用の面において欠けるところがあるということできめつければそれまででありますが、私はそれじやなしに、あなたにお伺いしたいと思うことは、この日本の手持ち外貨が日本政府の意思のままに運用ができるか。率直に申しますならば、手持ち外貨は貿易規模とにらみ合せて、それ以上の多いものは円に換算して国内に持つて来るとなあるいは外国において投資するとか、日本政府の意思によつてこれが活用できますか。それとも何かこれは活用を制約されておるような事情がありますかどうか、この点ひとつはなはだ愚問のようですが承つておきたい。
  58. 向井忠晴

    向井国務大臣 それは何も制約は受けておりません。日本政府のかつてに動かせるものでございます。
  59. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、将来国際関係からいつて日本に対する再軍備をしなければならないというときの用意のために、特定国家がこれを国内に留保して置くというようなことではなしに、これはあくまで日本政府の自由なる意思によつて運営ができるということに解釈してよろしゆうございますね。そうすると問題は、歴代の大蔵当局は二千万ドルないし三千万ドルの収益があがるものを、わずかに去年は十四億円。そうすると、これはあなたを追究する意味ではないが、資産運用の方法が間違つてつた、拙劣であつたという解釈であつて、この手持ち外貨というものは、日本政府の意思によつて運営ができる。産業方面あるいは民生方面に活用することも、これは日本政府の自主的な意思においてなされる。これは何らの制約を受けていないということで、単に収益が上らないということは、資産運営の拙劣から来るというだけであると解釈しておいてよろしいか。
  60. 向井忠晴

    向井国務大臣 これで、あなたのおつしやるように、三割残してどうとか、あるいは五割運営してどうとかいう点については、余地があると思います。今かりに十一億ドルがあるとして、そのうちの五億五千万ドルをそのままにしておいて、あとの五億五千万ドルを何かに投資するとか、あるいは貸すとかいうふうなことをしていいかどうかということは、研究の余地がありますが、一部分を運用するということは、危険なしにやれると思います。従つて非常に拙劣とは存じませんが、まだく研究の余地があるとは思つております。
  61. 西村榮一

    西村(榮)委員 これはあなたと議論をやめておきましよう。議論は別として、あなたから承つたことは、手持ち外貨は日本政府の自由なる意思において運用ができるということだけで、収穫はとめておきます。(笑声)  次に私のお伺いしたいことは、金額はきわめて少額でありますが、平和回復善後処理費の中に、本年度も相かわらず百億円を計上しておられます。この説明の中で重要なことは、米国に対する対日援助費の返済という一項がある。これは昭和二十七年度予算のときに、これは大体において違法であるという議論済みであると私は解釈しておつたのですが、本年も相かわらずこれを計上されております。これに対しましてなぜ計上しなければならなかつたのであるか。先般ちよつと御説明があつたようでありますが、これを計上しなければならなかつたいきさつ、これは昨年度大体議論余地がない、財政法上から見て計上すべきでないという結論に到達したと思うのですが、本年度相かわらずこれを計上しているということにつきましては、金額はきわめて少額でありますが、将来政治的にこれは大きな問題でございますから、明快な御答弁を承りたい。
  62. 太田正孝

    太田委員長 西村君にちよつと申し上げますが、その問題につきまして、かねて成田君、稻村君からの御質問もありましたので、あなたがやられたのに関連してやるか、またお二方にお諮りしますが、関連でよろしゆうございますか。
  63. 成田知巳

    ○成田委員 関連でけつこうですが、その前に……。
  64. 太田正孝

    太田委員長 もしあなたの質問で氷解すればいいのですが、しない場合は関連質問を許す。なお福田赳夫君から関連質問を要求されておりますので、あなたがおやりになつて成田君、稻村君、福田君の順序に、この問題を入れて行きたいと思います。但しあなたが質問の順序をかえてあとにまわそうというなら、それでもけつこうでございます。どういたしますか。
  65. 西村榮一

    西村(榮)委員 関連でもけつこうです。
  66. 成田知巳

    ○成田委員 関連でけつこうですが、この前私の質問と稻村氏の質問に御答弁があつたが、その御答弁が尽していないということで、委員長から特に政府に御忠告があつた。そして政府の再度の答弁委員長から要求されたのであります。そこでこの際政府からまず答弁を承つて、それから質疑に入りたいと思います。
  67. 太田正孝

    太田委員長 さようにとりはからいます。
  68. 向井忠晴

    向井国務大臣 さつそく御答弁を申し上げるはずでございましたが、延引いたしまして遺憾でございます。平和回復善後処理費は、連合国に対する賠償の支払い及び米国に対する対日援助費の返済、その他対外債務の処理等、平和回復の結果として必要を生ずることあるべき諸般の経費に充てることを予定しておるものでございます。そして対日援助費は、政府は債務と心得ておりますが、その額、支払いの方法等については、今後米国との間の交渉にまつことでありまして、がつ国会の承認を経て確定することでございますが、この際において予算的措置がまつたくないことはさしさわりがありますので、このような経費を計上いたしておる次第でございます。本年度の外債支払いについても同様の措置をとりましたし、また賠償支払いについても同様の事情でございます。
  69. 西村榮一

    西村(榮)委員 そうすると、私は結論からお伺いしますが、いまだ国会の承認を得ていないということで、半分良心的であり、半分どうもおかしな答弁なんですが、それで日本財政法、憲法に照して見て、国会が承認していないところの債務を計上するということは、これはできないのでありますから、私が大蔵大臣にお伺いしておきたいことは、七めんどうくさいりくつを申しません。この平和回復善後処理費の説明の中に、「この経費は、連合国に対する賠償の支払および米国に対する対日援助費の返済」となつているのですが、米国に対する対日援助費の返済という項目だけは、これは説明の中から削除されてはどうでございますか。
  70. 河野一之

    河野(一)政府委員 私から御答弁を申し上げます。平和回復善後処理費は、二十七年度予算にも、あるいは二十六年度予算にもございましたので、平和回復に伴つて対外的にいろいろな債務が現実化して来る。そればかりではございませんが、そのような経費について、あらかじめ財源をとつておき、その中から支払うということで計上されておるものでございます。外債につきましても、その交渉は確定いたしておらず、その額、その支払いの方法等についても確定しておらなかつたのでありますが、その経費の中から支払うというわけでございます。ガリオアにつきましても、これは前国会、前々国会におきましても、総理あるいは外務大臣から、日本政府としては債務と心得えると答弁されておりますが、もちろんこれは財政法、憲法の関係もございまして、具体的に確定はいたさないのでありますが、そういつた返済ということは、これは起り得べ、きことを予想いたしまして、その分といたしまして財源的にこのように措置いたしている次第であります。     〔委員長退席、橋本(龍)委員長代   理着席〕
  71. 西村榮一

    西村(榮)委員 今河野君から御答弁になりましたが、私は大蔵大臣にお尋ねするのですが、河野君は外債と対日援助費とは同様に扱われているようですが、外債は国会の承認を得て日本が債務を帯びたことは、これは確認された事項なんです。しかし対日援助費というものは、いまだ債務を確認しておらない。従つてこれは同一に取扱うことはできない。区別して取扱うべきだと思うのですが、いかがですか。大蔵大臣から……。
  72. 向井忠晴

    向井国務大臣 政府としては債務と心得ておるという点でこういう取扱いをしておる次第でございます。
  73. 西村榮一

    西村(榮)委員 それではあなたにお伺いいたしますが、債務と心得ておるという根拠はどこから発生されましたか。
  74. 向井忠晴

    向井国務大臣 これは援助としてものをもらつておりまして、これをまつたくただでもらつたというのはよろしくない、そういう精神から出ておるものでございます。
  75. 西村榮一

    西村(榮)委員 それでは私はあなたにお伺いいたしますが、憲法八十五条及び財政法第十五条は、国家が債務を負う場合においては、これは事後の承諾を得たらいいのですか、事前に国会の承認を得なければならないのですか、どちらですか。大蔵大臣からお答えを願いたいと思います。
  76. 向井忠晴

    向井国務大臣 これは事前に承諾を得べきものでございますが、ただいまの債務と心得ておるのは、確定したものではありませんで、条件とか金額等すべて今後の相談にまつ、そういう意味でこの相談ができまして、確定の金高あるいは条件が話合いがつきましたときに、国会の承認を得ればよいと考えております。
  77. 西村榮一

    西村(榮)委員 これを債務と確認する場合においては、事前に国会の承認を得なければならぬといたしますならば、国会はいまだ意思表示をしておりません。従つて政府が債務と考えられるという根拠は失つている。今の国会の説教を私はいたしません。しかし国会の意思によつて政府が動くということであれば、国会はまだ意思表示をいたしておりません。従つてその意味から、政府がこれは債務だと心得るという根拠は失つておるわけであります。債務と心得る根拠は、国会が債務と確認したときに初めて生ずる。従つて私はこの項目からはこれは削除されるのが当然だと思うのですが、どうでしようか。
  78. 河野一之

    河野(一)政府委員 ガリオアの対日援助というものは、事実行為といたしまして日本政府に援助されたものでございます。これをどういうふうに考えるか、政府の立場としては、もらつたものではない、債務と心得ておる。従つて政府の立場といたしましては、将来において返済せらるべきものという考え方に立つておるわけであります。従いまして予算といたしましては、その考え方に立ちまして、一応の財源をとつておく必要があるから、こういうことにいたしたのであります。
  79. 西村榮一

    西村(榮)委員 この対日援助費というものが、ミズリー艦上における無条件降伏の際の条文の中で、日本政府は終戦処理費として占領軍の費用をある程度まかなう、同時にそれに対して日本国を封鎖して一定期間置く間、援助するということがあるが、これは双方関連を持つて来ておる。そこで日本国が債務を負うものならば、当然これは借金の形でなければならぬが、これを日本語に訳しているときでも、これは対日援助費です。助けてやる、こういうことです。それであなたは先ほど、ただでもらう手はないじやないか、当然返すべきだと言う。ところがこの二十億ドルの対日援助費を援助してもらつておるより以上に、わが国は終戦処理費というものをそれの倍近く支払つておる。従つてそれは相殺されている。同時に国会におきましては、アメリカ軍司令官に対して感謝感激の決議案をかつて濫発いたしました。人称してこれは感謝感激のインフレーシヨンなりと言うておつたのでありますが、この感謝感激の中に何と書いてあるか。日本国に対して金を貸していただき、ものを貸していただいて感謝にたえぬとは書いてない。援助していただいて、われわれの生活が楽になつたと書いてある。これはもらつたものにお礼を言つている。しかしこれは結論として申しますが、一体政府がこれに対して債務だと心得なければならなくなつたのは、どういう動機からそういうことになつて来たのか。従来の経緯からすれば、これは対日援助費なんです。  もう一つ申し上げておきましよう。これの運営の方法は、日本政府になかつた。連合国司令官がこれを適当に沖繩にやり、朝鮮に送り、同時にGHQの事務費の一端になつてつた日本国はその使用と運用について何ら関与しなかつた。これをあなたは債務だとお考えになつておりますか。
  80. 向井忠晴

    向井国務大臣 いろいろ御説の通りの事情もございましようが、とにかく当時ものがなくて困るという場合に持つて来てくれたもので、まるつきりただでもらうというのはいかがというふうに私は考えるので、債務と心得てもよろしいと思つておりますが、同時にこれは国会にお諮りしなければ、払うわけには行かないのは当然でございます。
  81. 西村榮一

    西村(榮)委員 今のあなたの御答弁で、私は十分だと思うのです。これは憲法と財政法に照してみて、国会の承認を得なければ、債務と確認することができぬ、こうおつしやつた。一旦債務として日本政府が受入れますならば、これは日本の財産です。従つてこれは当然財政法に基く処理があるのみならず、会計検査院の検査並びにその他の日本政府の機関において、これは決算委員会においてこの問題の収支は出して行かなければならぬ。かつてそういうことは出しておりません。同時に、先ほど申しましたように、連合国司令官の一存で見返り資金にまで運用されている。だから私はくどく申しません。あなたが御答弁なすつたように、この項目を国会が債務と確認するかしないかということは、これは国会の御意思におまかせなすつたらいい。それまでは日本政府国会の意思を無視して差出がましいことをおつしやる必要はございません。しかも日本の不利になるということをあえて買つて出る必要はないでしよう。だから私は今あなたの御答弁で、これが一番正しいと思う。国会の承認を得てから、それは処理できるのだというならば、今申しましたように、米国に対する対日援助費の返済を国会の意思がきまるまで削られたらどうか。
  82. 向井忠晴

    向井国務大臣 御説でございますが、交渉の結果払うこともあるべきもの、むしろ私はただでもらわないとすれば、幾らか払うものというふうに思つておりますので、予算審議に出ても、これはさしつかえないと思います。
  83. 西村榮一

    西村(榮)委員 それならば、交渉の結果にまつて私はこれは援助費だと思つておりますが、国会の多数の意思において、これは債務だと思うから払えばいいんだ、どれだけ払うかということがきまる。しかし私はこれは払う必要はない、こう思つておる。また払うべきものでない。それ以上のものはお返ししてある、先にとられている、だから払うべきものでないと思いますが、国会多数が、あなたのおつしやるように、これは交渉の結果債務だ、と認めようじやないかというならば、これは事後承諾になります。従つて日本国の憲法、財政法に違反する行為ではありますが、しかしりくつを言うよりも、むしろその交渉の結果が現われて来てから、初めて国会に御相談なさるべきである。交渉の結果もわからない今日は、これは重ねて言うようですが、この項目だけは日本国の財政上悪い例を残すから、おとりになつた方がいいのではないか、結果をまつておやりになつてもおそくはありません。この問題はそんなにあわてる必要はないでしよう。
  84. 向井忠晴

    向井国務大臣 私はただいまのお言葉は、御意見として伺つておきますが、やはりその項目は残しておきたいと思つております。
  85. 西村榮一

    西村(榮)委員 残しておきたいということは、国会の承認も得ない。——これは河野君がここにおられるが、あなたは去年こういう答弁をなすつた。「国会の議決がなければ有効な債務の負担はできません。その以前において内閣があるいは債務を負担するような行動をいたしましても、これは憲法上は有効ではない」従つて憲法八十五条、財政法十五条というものは、これは事後承諾ではなしに、事前に国会の承認を得なければならないということになる。しこうして債務が発生したときには、日本政府は、これは債務なりとしてもこの問題について国会の承認を得ておらないのです。国会の承認は得ておらない。しかも承認を得た外債と同一に取扱うということは、私は財政法に悪例を残すと思う。あなたは自説を固執しないで、ひとつこれは現在の財政法に基き、それから従来の日本国会と行政府とにおいて、財政処理の慣例に基いて処理されてはどうか。同時にあなたがどうしてもこれを残しておきたいということだつたら、財政法その他の事情において残しておきたいということを理論的に御説明願  いたい。
  86. 河野一之

    河野(一)政府委員 これは具体的に債務が確定し、その条件、支払いの方法等が確定をいたしまして、それに予算を計上するというのも一つの行き方であります。しかしそういうことの起り得べきことが考えられる場合におきまして、そういつた経費をあらかじめ、財源として予算上計上しておくことももちろん可能でございます。国債の問題にしましても、長い間停止いたしておりましたが、これがいかなる額によつて、またいかなる方法によつて支払われるか、それが確定した後において予算を計上するのも一つ方法でございますが、その以前におきまして、そのことを予定して予算に計上するということは、何ら財政法及び憲法に違反してないと私は考えております。
  87. 稻村順三

    ○稻村委員 ちよつと関連して……。今主計局長西村委員に対して答弁したところは、まだ債務として確定しておらないものであつても、支払う予定として政府が債務と心得てこれを計上した、こういう話だつたのですが、この前の私に対する答弁は、これとまつたく違つております。はつきり債務と確定していると答弁しております。それは十二日の速記録を見てもわかるのでありまして、「しかし平和条約にもこの規定がありますように、これが日本の債務である。」と、こう言つている。この点、はつきりと御答弁を願いたいと思います。
  88. 河野一之

    河野(一)政府委員 どの点でございましようか、ちよつとわかりかねます。
  89. 稻村順三

    ○稻村委員 河野主計局長が、債務を確定していないものをなぜ計上したかということに対して、この十九ページにありますように、「河野(一)政府委員この種の経費は、平和の回復に伴いましていろいろな渉外債務が発生いたしておるのでございますが、こういつた債務の処理につきましては、日本政府が単独でできる性質のものではございません。しかし平和条約にもこの規定がありますように、これが日本の債務である。」と言つているのですから、これははつきり債務だと確定したという答弁ではございませんか。
  90. 河野一之

    河野(一)政府委員 わかりました。これはあるいは私の言葉が足りなかつたかと存じます。その点であらためて訂正をいたしますが、ここで私が申し上げましたのは、平和条約の何条の規定でありましたか、たとえば主として問題になるのは外債の問題でございますが、そのほかいろいろな債務がございますけれども、そういつたものはすべてそのまま債務として承認する、こういう意味でそのことを申し上げたのでありまして、あるいはこれをガリオアにまで及ぼして、お疑いがございますれば、これは訂正いたします。
  91. 稻村順三

    ○稻村委員 これは単なる訂正でなくて、この前の問題は、外債だのそれから連合国財産の補償だなんというような、ある意味ですでに講和条約にきめられている債務と別個な問題として、対日援助費というたつた一つでわれわれが論争しているときに、河野主計局長はこういう答弁をしたのです。そうすれば当然に河野主計局長は、このときにははつきりと対日援助費は講和条約によつて債務として規定づけられておるという答弁をしたととるよりほかにございません。そのほかの解釈をするのはごまかしであります。
  92. 河野一之

    河野(一)政府委員 平和条約の規定ももちろんございます。それからそういつた平和条約の発効に基いて、いろいろな債務も発生いたしておる。その額は確定しない。もちろん法律的な意味においては、ガリオアについては稻村さんも西村さんもおつしやる通りでありますが、しかし日本政府の立場としては発生いたしておる。もちろん法的な手続ではございませんが、そういうような考えのもとに立つておるという意味で申し上げたのであります。
  93. 稻村順三

    ○稻村委員 私はそれは何も債務全体のことについて質問したのではないのであります。はつきりと対日援助費というものを心得ておるとか心得ていないとかということを、政府質問したのではないのです。ところがその援助費について質問したときに、「しかし平和条約にもこの規定がありますように、これが日本の債務である。」こう言つておる。これはごまかす余地がないのです。はつきりとこの点は援助費が債務だと言つておる。それに債務と心得ておるというのはどつちが一体ほんとうなのだ。前の答弁は誤りなのか。こういう重要な問題について事務系統の人が誤つた解釈をすれば、事務当局に知恵づけられてやつとよちよちとして答弁なさつておる大蔵大臣が、間違つた答弁をするのはあたりまえだと思う。これは単なる事務山の違いではなくて、やはり事務当局の政治的責任があると思う。この点もう一度はつきりと、これは間違いか、これを全部取消すか取消さないか、それを言つてください。それは解釈の違いだとか、あなたの思い違いだということは何も言う必要はないのであつて、この前のは私の思い違いだつたから、速記録を訂正しますと、はつきり言つてください。
  94. 河野一之

    河野(一)政府委員 私のこの前申し上げました点が、誤解をお招きするようでありましたならば、訂正いたします。私の考え方といたしましては、そこに申し上げました意味は外債等の問題であり、あるいは言葉は足りませんでしたかもしれませんが、ガリオアについてはもちろん確定いたしておりません。しかし政府としては債務と心得ておるという気持で申し上げたのであります。
  95. 稻村順三

    ○稻村委員 誤解を招くとか何とかいうことを言わずに、ここに現われたところでははつきりしているんです。はつきりしているから、これは訂正してもらいたいと思います。速記録を削るなら削るとはつきりここで答弁なさつた方がいい。これは置いたら必ず誤解される——これは誤解じやない、正解なんです。われわれからいつても、この対日援助費は日本の債務であると、ここではつきり言つているんだから、もし間違いであれば、間違いであるから訂正するとはつきりここでおつしやつたらどうです。
  96. 河野一之

    河野(一)政府委員 私の申し上げました意味は先ほど申し上げた通りでありまして、そのようにとれませんならば取消しをいたします。
  97. 稻村順三

    ○稻村委員 どうも私はごまかすような気がしてしようがない。ならばとか何とかと前提はないんです。これははつきり言つて責任者の問題だ。速記録に出ているのだからごまかしはできぬ。この点ははつきり取消していただきたい。それでは大蔵大臣も取消すなら取消すとはつきり言つてください。
  98. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまのお話は、よちよちとした人間に教えている者が間違つてはいかぬという御親切はありがとうございます。(笑声)そこで私は債務と心得ているだけで、債務となつているとは思つておりませんので、教え方が間違つたとは存じません。しかし主計局長の発言において、そういうことが速記録に載つておるといたしますれば、これは取消してしかるべしと考えております。
  99. 稻村順三

    ○稻村委員 もう一つ向井大蔵大臣質問しなければならぬことができたのであります。それはほかでもないのですが、今西村委員に対する答弁に、平和処理費の中に対日援助費が含まれているということは、妥当だから削るわけにはいかぬとおつしやいました。ところがこの前私がやはりそれに対して念を押したときに、向井大蔵大臣はこういうふうに答えておるのであります。「対日援助費と書きましたのはあるいは穏当でないかとも思いますが、気をつけるようにいたします。」こう言つておるのです。それからあとの方でまた繰返して私が質問したのに対してどういうふうに答弁しているかというと、「対日援助費ということを書きましたのは、あるいは全体の、アメリカに対するほかの債務もあるのですから、それと混同しておるのではないかと思うのですが、よく研究しまして、それは私がごまかすのではなく、よく研究して返事をいたします。」こう言つている。そこで太田委員長は、政府が未熟な答弁をしているからこの次までよく研究して来て答弁せよ、こう言つておる。そうすると、これはアメリカに対するほかの債務と混同して、間違つてこういうふうに書いたという大蔵大臣答弁は、うそをついたということになるのかどうか、この点ここではつきりと御答弁願いたい。
  100. 向井忠晴

    向井国務大臣 今日お返事いたしておることが正しいのでありまして、この前にあいまいなことを申しましたのはまことに相済みません。
  101. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 成田君。
  102. 成田知巳

    ○成田委員 ただいまの稻村君の質問に対して、大蔵大臣主計局長も前言をお取消しになつた。政府の言うことは絶えずかわつておりますから、私もう一度念を押したいのでありますが、大蔵大臣は、これは確認された債務ではないと、この前の委員会で御答弁なつた。ただこちらだけでそういうことを思つている、こういう御答弁つた。ところが私たちに配付された「国の予算」というのを見ますと、その百六十八ページに、「対日援助費は総額約二十億弗余に達し、わが国の経済の安定および復興に顕著な貢献をなした。この対日援助費の性格は当初明確でなかつたが、平和条約の交渉過程においてわが国の債務として確認された。」こう書いてあります。大蔵大臣はまだアメリカと交渉したことはない、日本の内心の意思として債務と考えておるだけだ、決して確認されてない、こう言われた。ところが河野主計局長も御関係になつておる大蔵省のこれには確認されたとはつきり書いてある。この点ひとつ念のために明確にしていただきたいと思います。
  103. 河野一之

    河野(一)政府委員 「国の予算」は部外の者がいろいろ書きましたもので、私は形式的に名前が連ねてあるだけで、「推薦の言葉」が書いてありますが、政府としての確定した解釈の問題としてこれを書いておるのではないのであります。それについて政府がこういうふうに考えておるわけではございません。
  104. 成田知巳

    ○成田委員 これは部外の者がお書きになつたと言つておられますが、池田大蔵大臣はこの前不信任案で首になつたのですが、河野さんも推薦していらつしやる。政府から私たちに配付があつたものと思つておりますが、少くとも相当権威ある書物だと私たちは考えておる。こういうものがもし市中に出ましたら、債務として確認されたということになつていいんですか。世の中の人はそう考えるのがあたりまえです。もしこれが不穏当だというならばこの発禁をおやりになりますか。
  105. 河野一之

    河野(一)政府委員 発売禁止と申しますのは少し何でありますが、結局出版会社で出版いたしまして、国会でお買いになつておるものでありまして、われわれ政府の立場としてのものを書いたものではないのであります。
  106. 成田知巳

    ○成田委員 なぜ推薦されましたか。これは全員にただで配られた本なんです。河野主計局長推薦になつている。その点ひとつ御善処願いたいと思います。これ以上私は申しません。  それからただいまの御答弁で、対日援助費は国会の承認を得てないが、将来払うかもわからないから予算へ計上した、こう言われておる。これはまことに不穏当だと思う。というのは、大蔵大臣は確認されたものではない、正式の債務とはまだなつていない、こう言われておる。しかしながら契約というものは、普通、両方の意思表示が合致して契約ができる。しかし、私人の契約でも、御承知のように、事実行為によるところの契約の成立というのがあるのです。たとえば、私がホテルに部屋を予約する。ホテルの方から、よろしゆうございますと言つて、来れば契約が成立するのですが、来なくても、部屋をちやんととつて用意すれば、それで契約は成立するのです。これは民法の原則なのです。もし大蔵大臣が、確認されているものじやないと言いながら、予算に計上しておれば、これは事実上債務を承認したことになるのです。これは非常に影響が大きいと思うのですが、いかがお考えでしようか。
  107. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまの点につきましては、払うことあるべきということを予想して、確定したものでないものも計上しておいても、私はさしつかえないと思うのでございますが、これがあたりまえの商売でありましたら、決して払わないつもりのものを書き上げたら、これは不利益でございますけれども、大体ただでもらうのでないという気持でおるものを計上して……、(「払わないやつはどうするのだ」と呼ぶ者あり)払わなければこれは必要はなくなると思います。
  108. 成田知巳

    ○成田委員 これは、日本みずからが債務であるということを承認しておるという結果になるので、非常に不穏当なものだと思いますが、さらに政府にお尋ねしたいのは、私たちがこの前質問いたしましたときには、政府は、アメリカとの交渉は全然ない、こういうお話つた。ところが朝日新聞の報道によりますと、昨年末からすでに対日援助費の処理の問題についてアメリカから要求が来ている。これに対して最近政府は奉る意思表示をされた。しかし債務という文字は、非常に政治的な考慮を払つて特に避けておる、こういう報道がされておるのでありますが、そういう事実があつたかどうか、お尋ねしたい。
  109. 向井忠晴

    向井国務大臣 この点は私は今日外務大臣からは聞いておりませんが、交渉はあつたものとは存じておりません。あるいはしかし今日私が聞かなかつただけで、外務大臣から交渉があつたかもしれませんが、私の存じておる限りは、まだ交渉はなかつたと聞いております。
  110. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 成田君にちよつと申し上げます。ただいまの応答も、私の記憶違いだつたら恐縮ですが、前に質問があつて答えがあつたようにも思うのですが、なるべく簡単にひとつお願いをしたいと思います。
  111. 成田知巳

    ○成田委員 それはまた外務大臣にお聞きすることにしまして、一言関連しまして念を押しておきたいのです。今度の予算編成で、最初形式的に組みかえをやると言つておりながら、問題になつたら、もう組みかえはやらないと言われる。きようの稻村氏の質疑応答で、十二日の大蔵大臣主計局長言葉は全部間違いであつたということで取消されたですね。政府の言われることはその日その日によつて違うのです。そこで非常に重要な問題ですから念のため承りたいのですが、対日援助費はこれは対外債務ですね。もし確認された場合は対外債務ですが、対内的な政府国民に対する公債でありますが、今度三百億の公債を発行するということになつているのですが、この三百億という数字には間違いございませんでしようか。よくかわるものですから、念のためひとつお尋ねしたいのです。
  112. 向井忠晴

    向井国務大臣 これは間違いございません。
  113. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、予算書のどこにこの三百億というものを規定しているのでありましようか。
  114. 河野一之

    河野(一)政府委員 産業投資特別会計の予算書公債収入として上つております。それからこれにつきましては、法律を出しましてその承認をいただくことになるわけでございます。
  115. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 成田君、できるだけ簡単にお願いします。
  116. 成田知巳

    ○成田委員 非常に重要な問題ですから。産業投資特別会計に上つておると言われたのですが、局長も御存じのように、この財政法によりますと、その第二十二条には、公債を発行した場合には、予算総則にその限度を規定しなければいけないと書いてある。ところが予算総則には、私の見落しかわかりませんが、書いてないのです。
  117. 河野一之

    河野(一)政府委員 予算総則に規定するということではございませんで、国債を発行するのには、憲法の規定によりまして国会の承認がいるのでありまして、それについては法律を出しまして、特別減税国債の発行について国会の御議決を得るわけであります。
  118. 成田知巳

    ○成田委員 予算総則で規定する必要はないと言われましたが、財政法第二十二条にはこう書いてありますよ。「予算総則には、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為に関する総括的規定を設ける外、左の事項に関する規定を設けるものとする。」とある。そして左の事項の一に「第四条第一項但書の規定による公債又は借入金の限度額」と書いてある。そしてこの第四条第一項但書というのは「但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」と書いてある。すなわち二十二条一号に、予算総則にその限度を明記しなければいかない、こう書いてあるのです。これでも予算総則にないと言われますか。
  119. 河野一之

    河野(一)政府委員 この財政法にありますところの規定は、一般会計において公債を発行する場合においては、その額について予算総則に規定するものであります。
  120. 成田知巳

    ○成田委員 もう少し財政法をお読みになるかして、ごまかしをやらない方がいいと思います。河野主計局長御存じだと思いますが、この財政法には、最初に第一章として財政総則があつて、その財政総則の十三条に「国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。」とある。そして第三章予算、第一節総則、その総則の規定にこの二十二条の規定があるのですから、一般会計だけを規定しておると言われ、ることは、またお取消しにならなければいけないかもしれません。
  121. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。財政法第四条「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」しかしてその限度額について財政法の第二十二条によりまして予算総則に書く、こういうことになつておるわけであります。今回発行いたしまする公債は、一般会計において発行するものではありません。財政法に規定がございまして、特別会計においてはこれと違つた規定を設けることができるということになつておるのであります。現在におきましても、郵政事業特別会計において借入金をいたし公債を発行いたしておりますが、これは特別会計法の規定によつてつておるのでございまして、この財政法の二十二条の規定の適用は受けないのでございます。
  122. 成田知巳

    ○成田委員 ますます話がわからなくなつたのです。これは総則に一般会計と特別会計があるというのですから、筋から言つても当然なんですが、今河野、干計局長は郵政事業特別会計法のことを言われました。郵政事業特別会計法は特別の規定によるのだから総則に規定する必要はないと言つておられる。ところが政府のお出しになつておるところの昭和二十八年度特別会計予算には、第五条にちやんと書いてあるのですが、「郵政事業特別会計法の規定によつて昭和二十八年度において公債を発行し、又は借入金の借入をすることのできる限度額を五億円とする。」とちやんと書いてあるじやありませんか。
  123. 河野一之

    河野(一)政府委員 この規定は、一般会計の予算総則としてそういつたものを出す場合においての規定であります。特別会計におきましては、特別会計にそれぞれの規定がございます。産業投資特別会計におきましては、公債を発行しその収入を……(「それはちやんと出ておる」と呼ぶ者あり)それは出ております。公債を発行する旨の規定がございまして、その規定によつて動いておりますので、予算総則に出ておらないのであります。
  124. 成田知巳

    ○成田委員 まず第一に、第四条の規定が一般会計だけだという御解釈に非常に無理がある。総則にちやんと国の予算というものは一般会計と特別会計にわかつと書いてあるのですから、特別会計も国の予算なんですよ。それを特別会計だけに限定して、二十二条の適用を排除しようとするところに非常に無理がある。それから郵政事業特別会計法にそう書いてあるからやつたのだと言われますが、それは書いたのは当然なんでしよう。しかし現在投資特別会計法という法律はできておらないのですよ。そうすればやはり基本的な財政法に準じて、予算総則に計上するのが当然なんです。
  125. 河野一之

    河野(一)政府委員 産業投資特別会計は、現在国会に提出して御審議を仰いでおります。
  126. 成田知巳

    ○成田委員 それは知つております。が、まだそういう法律はできていないのです。まだそういう法律ができていないとすれば、この財政法というものは、国の予算及び財政の基本原則を定めているのですから、その財政法の規定に基いて予算総則に計上するのは当然だと思うのです。
  127. 河野一之

    河野(一)政府委員 特別減税国債法では第一条におきまして、産業投資特別会計の歳出の財源に充てるため、昭和二十八年度において三百億円を限り当該特別会計の負担において、特別減税国債を発行することができると、書くことにいたしておるのであります。郵政事業等におきましては、毎年公債の発行額が違いますもので、予算総則で毎年の分を書くのでございます。一般会計でも四条の適用を受ける場合はそうでございますが、産業投資特別会計におきましては、本年度限りの措置として法律で書いておりますので、予算総則において規定する必要がないのでございます。
  128. 成田知巳

    ○成田委員 規定する必要がないと申しますが、これは話は元にもどりますが、財政法の十三条の「国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。」というのが、総則の規定になつておるのです。それに基いて第三章予算となつて、その総則となつて二十二条の規定ができているのですから、これを無視することはできないと思うのです。
  129. 河野一之

    河野(一)政府委員 財政法の四十五条に「各特別会計において必要がある場合には、この法律の規定と異なる定めをなすことができる。」こういう規定がございますので、産業投資特別会計におきましては、違う定めをいたしておるのであります。
  130. 成田知巳

    ○成田委員 この四十五条の規定は、こういう総則の規定だとか、根本的な規定を改める規定じやないと思うのです。そういうことでごまかそうとしても、それは無理だと思うのです。  この問題はまた分科会で御議論願うことといたしまして、この問題に関連してお尋ねしたいのですが、やはり財政法の四条二項に、国債を発行するときには、償還計画を国会に出さなければいかぬとなつておりますが、償還計画をお出しなつたのでしようか。
  131. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 成田君、なるべくさつきの直接関連の範囲内にお願いをしたいと思います。
  132. 河野一之

    河野(一)政府委員 この財政法の四条の関係は、この公債というものは、国民の租税負担で将来返されるということの予定を持つた公債でございます。つまり一般会計の公共事業費、出資金等に充てられるものでありますが、それは将来国民の税金で返して行かなければならぬという建前のもとに、この償還の計画が出ておるのでございます。産業投資特別会一計におきましては、これは出資金の配当金あるいは剰余金等によりまして、この償還が充てられるという、産業投資特別会計の本来の性質でなつておりますので、産業投資特別会計においては、特にそのような規定を設けておらないのでございます。
  133. 成田知巳

    ○成田委員 局長は四十五条の特例の規定ばかりを問題にして、総則の規定を全部排除しているのですが、この四十五条というのは、そういう場合をさしているのではありません。総則の規定をこの四十五条で排除することはできないと思う、だからこの問題の答弁にはならないと思うのです。これは水かけ論になりますから……。  その次にもう一点だけ、今の特別会計と一般会計の問題も、もちろん河野主計局長答弁なら関連して来ると思いますが、公債を発行した場合には、公共事業費、出資金及び貸付金、この財源にのみ充てることができるとなつております。特別会計を見ますと、それ以外に相当な金が使われておりますね。この関係はどうなりますか。
  134. 河野一之

    河野(一)政府委員 財政法の四条の規定は、一般の財源に充てるためにということを前提にして一応できておるのであります。ところが特別会計におきましては、おのおのの特殊性があるのでございます。たとえて申しますれば食糧管理特別会計におきましては、食糧証券を発行いたしまして、食糧の売買をいたしておるのであります。これも借入金でございます。しかしそれは当該特別会計法の規定によつて借入金をすることができることになつております。もちろんその総額については、法律をもつて定めてありまして、予算総則に特に規定はないのでありますが、おのおのの特別会計のおのおのの事情によつて、四十五条についての例外を設けておる次第でございます。
  135. 成田知巳

    ○成田委員 やはり一般会計と特別会計にお逃げになりますが、一般会計と特別会計の問題は、一応これを明確にしていただかなければ私たち審議を進めることはできないと思うのです。今の公債発行によつて得た金の使途でございますが、もちろん投資特別会計法の第四条であつたと思いますが、公債発行によつて得た金というものは、国債の整理基金勘定へ繰入れることができるという法律になつております。この法律が財政法の規定に抵触するかしないかは別としまして、一応抵触しないとしましても、予備金が二億円か三億円かございますね。これも第四条の規定から行くと違法じやないかと思うのですがいかがでしよう。
  136. 河野一之

    河野(一)政府委員 予備金があることは違法とはどういうわけでございますか、お伺いいたします。
  137. 成田知巳

    ○成田委員 公債発行で得た金というものは、公共事業費と貸付金と投資、この三つ以外には使うことができないというのが第四条の規定でございますね。今度の投資特別会計を見ますと、日本開発銀行その他への投資以外に、国債整理基金会計約十二億、予備費に約二億使つておる、そういう意味でこの二つは、少くとも財政法の第四条にまつこうから反するのじやないか、こういう質問です。
  138. 河野一之

    河野(一)政府委員 産業投資特別会計の予備費でありますならば、当該特別会計における所要の目的に使われるわけであります。その予備費は当該特別会計の会計法の規定にあります出資、投資等の経費ももちろんでございますが、そのほかに事務の取扱費等にも使われる、あらかじめその金額の予定ができませんので、予備費として計上いたしておるのでございます。
  139. 成田知巳

    ○成田委員 私の質問しました問題の三つは、総則の規定が附則に設けられておるような、別に定める法律で排除できるかどうかという議論のわかれ道だと思うのです、これによつて決定されると思いますが、これを明確にしなければ、今度の予算審議に応ずることができないと思うのです。そういう意味で私の質問はこれで終えまして、後ほどまた質疑を展開したいと思います。
  140. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 吉川君から関連質問の要望がありますのでお許しいたします。なるべく簡単にお願いします。
  141. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 私は関連質問としては最も重要な点につきまして、内閣の責任者としての総理大臣の御答弁を要求するところでありまするが、一等を減じまして、副総理の緒方さんに明快なる答弁を煩わしたい。それはすでに皆様がこの委員会においてお聞きになりまして、はつきりと確認されましたように、河野主計局長の食言問題であります。彼はこの十二日の速記録に載つておる答弁と全然相反する答弁を、同じ予算委員会において本日したわけであります。それをただ単に取消しますというようなことで済むものかどうかということを、聞かなければならなくなつたのでございます。われわれは国民の代表といたしまして、権威のある予算委員会における質疑応答をいたしておるのでありまして、そこでつい一週間ほど前にやりました答弁と全然反対答弁が行われまして、しかも前言を取消すというようなことで事が落着するものでありまするならば、これほど不安心な議事はないのでありまして、しかもそれが国家の数字をあずかりまずところの主計局長であるというに至りましては、不安心きわまると言わなければならないのであります。またただいま成田君との質疑応答を聞いておりましても、これまた前言を翻す点が少くないのでありまして、私は河野君に個人的な何ものもないのでありまするけれども、彼の立場が予算審議の上にきわめて重要な立場でありまするだけに、この点を強調せざるを得なくなつたのでございます。河野君の答弁を聞いておりますと、それは公務員の本領でありまするところのすべての国民に対する奉仕者でなければならないという限界を越えて、彼は吉田内閣のための奉仕者であるような言辞でとどまつておるのである。これがもし大蔵大臣その他の閣僚の間違いでありますならば、これは罷免権が総理大臣にありますから、あすにでもとりかえてよろしいのでありますけれども河野主計局長の責任は、しかく簡単なものではないと私どもは心得ておるのであります。憲法の十五条にも、公務員に関する規定がはつきりと規定されておるはずでございます。すなわちその第二項には「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」ということが明確に書いてある。彼は全体の奉仕者としての責任感を持つた議会行動をしておるか、政府委員としての行動をしておるかということを、私は河野君よりは緒方副総理からまず伺いたいのであります。緒方副総理の御答弁によつて、なお質問を続けるつもりでございます。
  142. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたします。河野主計局長の本委員会における答弁の間に、多少の言葉の(「多少じやない」と呼ぶ者あり)行き違いがあつたことは承知しましたが、それはすでに取消されておりますし、また野党の諸君が早きに及んでその誤りを発見せられましたことによつて、それによつてこうむる迷惑はあまりない、そういう意味から今日におきましても、河野主計局長主計局長の責任をとるに十分たえる人であると確信いたしております。
  143. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 取消した事実につきましては、緒方副総理からも再確認が行われまして、私はこの罪状はもはや動かすことはできないと思うのでございますが、(笑声)そういう緒方副総理の御解釈の点に関連して、こういうことをひとつお答えを得ておきたい。それは、国家公務員法の八十二条の規定に対する緒方さんのお考えでございます。公務員法の八十二条によりますと、「職員が、左の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる」。という規定でございます。長くなりますから全部は読みませんが、そのうちの第三項にありまする「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」ということでございます。これはただ単に委員会における取消しとして簡単に扱つてはならない。われわれもいつかは政府を組織する時代があるのでありまして、そういう場合におきまして、こういうような公務員がただ内閣の走狗に堕するような、こういう議会行動は断じて封鎖しなければならないと思うのでございます。私は、閣僚中における最も良心的な存在でありまする緒方さんの、これに対する明快な答弁を聞いておきたいと思います。
  144. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 私は河野主計局長は、少しも公務員法の八十二条に抵触していないと思います。
  145. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 今の緒方さんの答弁は、私ははなはだ驚きにたえぬのでありまして、先刻来問題はきわめて簡単明瞭であるのでございまして、本日の西村委員、あるいはそれに関連しての稻村委員等の質問がなければ、十二日の答弁——官報に掲載されたままの、河野主計局長自身が取消しましたところの事実が、そのまま政府の解釈として行われて行くのでございます。たまたま質問がありまして、指摘があつたればこそ、彼はこれを取消したのではありませんか。取消した事実を緒方さんが認めておきながら、その非違に対してその事実がないというような、それを認められないというような、ただいまの答弁は、緒方さんらしくないと私は考えます。それがどういうふうなものに発展して行くかということをお考えになつて、もつと明快率直な御答弁をお伺いしたい。その率直な御答弁がない限り、私は繰返しこの質問を続けて行くかもしれません。
  146. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 河野君の取消しによりまして、責任は解除されたと承知いたします。
  147. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 私はこの問題に対する責任は、当然二つあると思うのでございます。なるほど本日の質疑に対する御答弁を裏打ちするために、前会の答弁を取消したということは、その限りにおきましては、緒方さんの今の御答弁で私は満足いたします。しかしながら、もし本日の質問がなかつたならば、その誤つた答弁のままで、予算審議が続けられて行くというこの責任、これは私が取消しただけで、決してその責任をのがれたというふうな解釈をすることはできません。もう少しわれわれは事を慎重に重天に考えなければならないのでありまして、いやしくも国民の生活全体に影響しまするところの予算委員会の審議におきまして、わずか旬日ならずして取消すようなことが、さも当然であるかのような緒方さんの御答弁には、私は満足することができないのであります。この事実を、私はここではつきりと申し上げておきまして、私の質問はこれで打切りましよう。     〔川崎委員委員長、議事進行。議事進行に関する発言は、何ものよりも先に許されなければならない、議事規則によつてやりなさい。」と呼ぶ〕
  148. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 川崎秀二君。
  149. 川崎秀二

    ○川崎委員 私はただいま本委員会国会全体との運営に関運して発言をしなければならない事態が到来をし、この際休憩を要請したいものと思います。(「反対」「理由を聞かないで反対とは何だ」と呼ぶ者あり)今朝以来開かれました議院運営委員会におきましては、予算委員理事会において話合いのつきました昨夜来の問題につきまして、いろいろ御論議が展開をされまして、これによりますると、われわれは昨日この会議場で起りました自由党議員の暴行事件につきまして、委員長から次のごとき処分要求が出たから、これを議長に伝えるということで、昨日散会になつたのであります。事件の内容は御承知のごとく中曽根康弘君に対しまして、委員にあらざる某議員が暴行いたした。このために議場が混乱をいたしまして、昨日会議の一番終りにおきましての委員長の宣告によれば、処分要求書に従つて委員長議長にこのことを通告をした、議長はおらなかつたが、その代理であるところの岩本副議長にはこれを通告をして、処分要求書に従つて委員長の職権を発動したということを申されて、昨日散会になつたのであります。しかるに今日開かれたるところの議院運営委員会の席上においては、委員長から岩本副議長に対するところの電話の内容については、もとよりこれについて逐一報告はされておりますが、これに附加して、処分の問題については、この委員会において確認をしなかつたいわゆる委員長の越権行為なるものが、その中に含まれている疑いがあるのであります。従つて、議院運営委員会においては、この件をめぐつて紛糾をいたし、ただいま休憩になつておる。この議院運営委員会の論議の究極点は、予算委員長の報告が正しいかどうかということについて、議長委員長に対してその事態を調査をしたいということまで、話合いができておるのでありまして、このような事態から見まするならば、当然当委員会はしばらく休憩をし、国会全体の運営とマツチして進めて行く必要があると思うのであります。従つて、しばらく休憩をされんことを要請をするものであります。
  150. 塚田十一郎

    ○塚田委員 ただいまの川崎君の御発言は、昨日及び本日午前におきましての本委員会理事会の話合いと非常に違うのであります。おそらく改進党におきましては、理事委員の間の御連絡が十分でなかつたのではないかと思うのでありまして、一応議事進行についての御発言があつたのでありますから、この機会に委員長において休憩をされて、理事会をお開き願いたいと思います。
  151. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ただいま川崎氏から、ただちに休憩に入れという議事進行上の発言があつたわけでありますが、私ももちろんそうあるべきだと考えております。なおここ数時間内におけるいろいろの議論を聞いておりますと、いわゆる対日援助に対する債務行為について、大蔵大臣及び政府委員は、前言を取消すというような事態にまで立ち至つております。従つてこれに対する考え方は、今後よほどかわつて来なければならぬと私たちは考えております。  さらに大蔵大臣及び政府委員に対する、いわゆる財政法上に基く重大なる疑義、特に国家の債務負担行為を、財政法に従わずに、これを予算総則に入れずに、いわゆる雑則の中にきめておる四十五条によつてこれを処置しようというところに、まず第一の大きな疑点があると考えております。しかももし四十五条で強行せんといたしましても、特別会計が同時にここで審議されて行かなければ、この予算総則にかわる償還計画、債務負担行為というものは明白になつて参りません。従つてごこに、三百億の公債の問題について重大なる財政法上の疑義がある。同時に進行上における重大なる問題があると私は考えますので、川崎委員が提案せられたこととあわせて、私は当然ここで休憩して、これらの問題に対する処置を考慮して行うべきであると確信いたします。
  152. 橋本龍伍

    ○橋本(龍)委員長代理 暫陣休憩いたします。     午後二時四十六分休憩      ————◇—————     午後六時四十二分開議
  153. 太田正孝

    太田委員長 休憩前に引続き会議開きます。(「文部大臣はどうした」と呼ぶ者あり)  この際申し上げます。昨二十三日、第三分科会主査本間俊一君が委員辞任されましたので、その主査の補欠として、委員長西川貞一君を指名いたします。(拍手)
  154. 太田正孝

    太田委員長 これより質疑を継続いたします。     〔「文部大臣を呼びなさい」「文部大臣は今追加して請求になつたから呼んでおるのだ」「文部大臣が来なければ開会しないと言つたじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  155. 太田正孝

    太田委員長 文部大臣の通告はありませんから……。  北村徳太郎君。     〔「文部大臣の出席はどうした」と呼び、その他発言する者多し〕
  156. 太田正孝

    太田委員長 要求大臣ではありませんから……。  北村君。
  157. 北村徳太郎

    ○北村委員 私は首相にお尋ねしたい点があるのでありますが、お見えになつておりませんから、首相及び首相の代理である緒方国務大臣並びに小笠原通産大臣にまず質問をいたしたいと思うのであります。  先般のこの委員会において、井出委員質問はきわめて重大な意義を持つてつたと思うのでありますが、これに対して小笠原通産大臣のきわめて簡単な御答弁がございました。これはわが国の経済の考え方についての基本的な問題でございますので、これがはつきりしないというと、諸般の問題がきわめて混雑をいたして来るのみならず、私の考えますところによると、日本は独立して世界経済の仲間に入つたと申しますが、今日まで吉田内閣がとられた基本的な経済政策あるいは経済理念というものが、世界の波長と合つていない。従つてこの問題は国際的に考えましても、きわめて重要であつて、どこで波長を合せるかということを今にして考えないならば、きわめて危険である、こういうふうなことを痛感するのでございます。たとえば、先般井出君が質問せられました。現にあれほど大がかりな農地改革が行われたけれども、今や七年にして、農村においての経済落差が大きくなつておる。その他一般の経済事情として、経済落差がだんだん大きくなつて来ておるという事実は、これは自由党がお考えになつておる、いわゆる野放しの自由主義経済から来る所産であつて、そういうことがどこで修正せられるかという問題がここで解決しないと、世界と波長が合わない。この点がきわめて重大であるにかかわらず、小笠原通産大臣のお答えは、やはりわれわれは自由主義経済をもつて一貫するのであるというようなことを御答弁になつておるのであります。はたしてそれで現在の世界経済に乗つて行くことができるかどうか。あとで具体的に申し上げたいと思いますが、まずこの点を最初にお尋ねいたしたいと思うのであります。  これはきわめて基本的な重大問題でございますので、私はこの問題については、特に首相が見えておりませんから、緒方国務大臣と小笠原通産大臣からお答えを願いたい。つまりもう少し詳しく申し上げますと、自由党のお考えになつておる、ごく型の古い資本主義、これはそれ自身の中に内包している矛盾がある。これをどこで克服するかということが、世界の問題でありまして、アメリカにおいても、ニユー・デイール以来のアメリカの経済政策は、南北戦争以後のアメリカの一つの革命であると言われておる。単なる資本主義ではございません。イギリスの経済についても、その基礎理念というものは、シユンペーターその他の理論を取入れて、そうして現在の世界の情勢に対応する、非常に大幅な刷新が行われておる。そのことによつて、資本主義の内包しておる内部矛盾を克服しておる。世界は、そのために非常に力を入れて努力しておるにかかわらず、先般の小笠原通産大臣のお答えによりますと、実に安易な自由競争主義、手放しの自由放任主義、こういう経済の基調の上に立つて、それでいいのである。将来は知らぬけれども、現在はそれでいいのである。はたしていいとするならば、これは世界の経済と波長が合つていない。どこで波長を合せようとするのであるか。これは今や日本が独立して、しかも非常な後進性を持つて苦労しながら、日本経済をこれから運営するという場合に、事は重大と思いますので、両大臣より的確なお答えをまず得たいと思うのであります。
  158. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お答え申し上げます。私も現下の時局のきわめて重大なことはよくわかつておりますが、現在の段階におきましては、自由主義をもつてよろしいのである。しかしだんだんと情勢がかわつて来まして、それに対応するような政策をとるためには、あるいは将来において、若干の統制あるいは資本主義の修正を要すること等はあるかと思いますが、現在の段階におきましては、自由主義をもつて進んでよろしいと考えております。
  159. 北村徳太郎

    ○北村委員 緒方国務大臣も首相にかわつて、このことは基本的な問題でありますから、所信を述べていただきたいと思うのであります。  なお小笠原通産大臣は、現在の段階においてはという前置きをつけられたのでありますが、その現在が大事である。現に紡績の女工さんは昨年来四万人の解雇を受けておる。貿易は不振である。相当な失業群ができておる。農村人口も漸次ふえつつあつて、潜在失業者が農村に入り込んでおる。こういうふうな現状でありまして、このいわゆる自由主義の内部的な矛盾というものは、すでに露呈しておる。こういうような現実を見ながら、なおかつ今まで通りの自由主義経済、自由放任経済でよろしいというお考えは、私はそういうことをやつておる国は、きわめて寡聞でありますけれども、戦後二回私はヨーロツパ、アメリカ、世界をまわりまして、今の自由党内閣がお考えになつておる、自由党内閣基礎理念である、そういう型の古い自由主義をやつておる国は、世界にどこにもない。もしあるとおつしやるならば、どこの国であるか、名前をあげてもらつてもよい。そう考えておるのでありまして、将来のことはと言われるのでありますけれども、足元の現実において、これではやつて行けないはずだ。そのことが現に非常に貿易の不振、その他の現象を現わしているのであつて、このままで行くならば、マルクスではないが、資本主義はそれ自身の内包するいろいろな矛盾によつて、自己崩壊しなければならぬのであるから、われわれは非常に大幅な修正と刷新とを行わねばならぬ、こういう基本的な考えを持つているのでありまして、この点について非常に考え方が甘い。現実の問題をどうお考えになつているか。これをはつきりと御答弁を願いたいと思う。
  160. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点につきましては、私どもは現在の段階においてはと申しておるのでありますが、その情勢が世界的にだんだんかわつて来ますれば、——経済政策というものは、これは北村さんも御承知のように、固定した政策ではないのでありまして、そのときの情勢に応じて、経済施策を立てて行くということが、私は本体でなければならぬと思うのであります。従いまして、今現に計画経済をやる必要を私は認めませんが、将来計画経済を立てる必要があるときには、もちろん計画経済を行う必要もございましよう。また将来その情勢に対応して、多少の統制を加える必要が起りますれば、その必要も感じましよう。ただ現在においては、私はさようなことはないと申し上げておる次第であります。
  161. 北村徳太郎

    ○北村委員 今のお話は現在のところでと言われるのでありますが、現在がきわめて大事である。日本が今までのように占領下にあつて温室経済の中におるときはそれでもよかつたけれども、世界に通ずる一つの共通点を見出して行かなければならぬ、言いかえれば、世界の経済に波長を合せて行かなければならぬ。その波長を合わすどころではない、逆もどりして百年前の自由経済をそのままにして、野放しの自由経済をやつておる。私は統制をやれと言つているのではない。しかし資本、主義計画経済というものが現に行われておる。また国家の配慮によつて、こまやかなる計画があつてこそ、そこにほんとうの自由が生れて来るのであつて、経済情勢が各般の客観的情勢によつて考えをかえねばならぬということが、もし小笠原大臣の言われることが事実であるとすれば、現在がそのときである。現在足元にいろいろ問題が起つておる。この内包しておるいろいろな矛盾というものを、一体どうしてこれを克服し、排除するかというこまやかな配慮が国家にあり、政府になければならぬと思うのであります。それを、将来必要が起つたら、とは一体何事であるか。現在の経済諸情勢をどういうふうにごらんになつておるのであるか、その点は非常に認識が違つておると私は思うのでありまして、この点についで重ねてお答えを願いたいと思います。
  162. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 百年前の自由主義をそのままと仰せになりますが、現在の日本におきましても、決して百年前の自由主義を行つておりませんので、現に各種のいわゆる統制という名前はついておりませんけれども、たとえば独禁法があるとか、各種の法律等がありまして、いろいろな制約を受けつつあることは、御承知の通りであります。従いまして、いわゆる百年前の野放しの自由主義経済というものは、現在の日本にはございません。従いまして、私どもが申し上げておるのは、今の段階では今の法律、今の考え方で行つて誤りがない、こういうことを申しておるのでございまして、世の中の諸情勢がかわつて参りますれば、たとえば貿易の不振が続くようであれば、これに対してどうするか、相手の出方によつて政策をかえて行かなければならぬと思うのでありまして、すべては今お話のごとく、この国際情勢というものに変化がございますから、それに対応して進むべきであるということを申しておるわけであります。
  163. 北村徳太郎

    ○北村委員 国際情勢に対応する基本的な今の考え方に誤りがある。私は百年前のそのままの原始自由主義が日本にあるとは思いませんけれども自由党内閣においては、百年前かどうかわからぬけれども、かなり世界から取残された、非常に古典的な資本主義をそのままやろうとしておる。その点はもつと考えなければならぬ点であると思うのであります。  次に問題は、そういう考え方でありますから、国際的に波長が合わない点があるのみならず、国内的には的確な計画が立つていない。総合的な計画が立つていない。この点がやはり問題であります。従つて今のやり方では長期の見通しがはつきりしていない。政府自身が一体定見があるのかないのか、経済の前途に対してはつきりした定見を持つておるか、こういうことが問題であります。その日暮しではないか、従つて財界はまことに気迷いの状態であつて計画を立てることもできない、こういう状態の嘆きを私どもは逐一目の前に見ております。従つてこういう問題に対しては一体どうお考えになるのか。やはり今まで通りの自由競争主義、非常に手放しの野放しの自由、主義、これでいいのかどうか。そのことの所産がいろいろな害悪を持つのでありますから、これを排除するために世界各国がいかに努力しておるか、それにもかかわらず野放しの自由主義——百年前とは申しません。けれども世界の各国で、今の自由党内閣がお考えになつておるような経済理念を持つてつておる国がどこにあるか、そういうことを考えて来ると、国際経済に参加するという日本の前途に対して、私どもは非常な不安を感ずる。でありますから、この問題はきわめて真剣な問題と思いますので、先ほどから緒方国務大臣はお答えがないようでありますけれども、緒方国務大臣からも、このことは重大な問題でありますからお答えを願いたい。
  164. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 日本の経済は、戦争前におきましては中国、満洲を取入れまして、一つの計画経済が成り立つていたと思うのでございますが、敗戦の結果日本は資源におきましてほとんど問題にならなくなつたのであります。こういう点から、ただいま小笠原経済審議庁長官が申されたように、さしあたり国際情勢に対応して行く以外に私は計画のしかたはない。計画経済、社会主義……。     〔発言する者多し〕
  165. 太田正孝

    太田委員長 静粛に願います。
  166. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今日の情勢におきましては、一国だけで社会主義の計画はなかなか立たない。戦争後のポツダム会議以後のイギリスを見ましても、労働党が一九四五年に保守党にかわりまして、社会政策を行いましたけれども、国際情勢とイギリスの国内政治との間  に、それこそ波長が合わない。そこで労働党の社会主義の政策は、七年の政権を保ちましたけれども、遂にこれを維持することができない、国際情勢がそこまでのレベルに来ていなかつた。それが今のイギリスの情勢であると思います。そういうことを考え合せまして、日本の今日の情勢から見まして、ただいま通産大臣からお答えいたしました政策以外に実際のところ立てようがない、これが非常に残念ながら日本の実情であると思います。
  167. 北村徳太郎

    ○北村委員 ただいま緒方国務大臣の御答弁があつたのでありますが、私は自由党の今のやり方を社会主義におかえなさいと言つておるのじやないのであります。また社会主義になればそれでよいとは簡単に考えておらぬのでございまして、ただ今日少くとも世界の経済にある意味において君臨しておるアメリカ程度の進歩性を持たないと、今のこういう状態の日本政府のやり方では、しようがないじやないかということを言つておるのであります。アメリカの経済必ずしも資本主義とはいえない。これはチエーズなどがエツクス経済と言つておる、人民資本主義と言つておる、あるいは社会資本主義と言つておる。アメリカの現在のニユー・デイール以後の経済政策の基本的な物の考え方は、これは御承知の通りつたくアメリカの一つの革命であると言われておる。そういう新しい資本主義の時代が来ておるにかかわらず、古い資本主義で乗り切ろうとするところに国際性がない、これではだめだ、こういうことを言つておるのでありまして、私は緒方大臣からその博識なる御見識を承ろうとしておるのじやない。基本的なる物の考え方がいいのかどうか。——人のことじやありません。自由党内閣の経済の基礎理念が、これでいいのかどうかということを伺つておるのでありまして、もう少し明確なお答えを願いたい。
  168. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 基礎理念におきましては、先ほど通産大臣が申し上げたことに間違いがないと信じております。
  169. 北村徳太郎

    ○北村委員 これはかなり問題の点であります。また今のようなことを言つておると、マルクスの予言の通りに、失業労働者群によつて国内に非常な恐るべき問題が起る。それを恐れればこそ、アメリカにおいても、イギリスにおいても、あるいは西ドイツにおいても、非常に刷新された新しい政策をとつておるのである。このことを考え、私は国際経済に新たに参加する日本の立場として、そういう古い頭をまず切りかえなければ、日本のためにならない。このことを痛感しているのであります。これはいくら申し上げても、石地蔵に説法をするようなものでありますから、やめておきます。(拍手)  次に私は、これはきわめて簡単なことでございますが、この前白洲某君がアメリカに行かれた。これは吉田内閣総理大臣の特使という名前で行かれたように新聞は伝えておるのでありますが、それならば、どういう使命と目的をもつてつたか、あるいは何をもたらして帰つたかというようなことは、当然私は国会にも適当な機会に御報告あつてしかるべきだと思うのでありますが……。
  170. 太田正孝

    太田委員長 北村君に申し上げますが、その問題はすでに総理大臣が明確なお答えをいたしております。     〔「委員長横暴」「まだこれから何を質問するかわかりはせぬじやないか、人の話は全部聞いてからにしなさい」と呼ぶ者あり〕
  171. 北村徳太郎

    ○北村委員 私はアメリカできらわれ者になつた白洲君が特使として行かれたことに非常に不満を持つておるのでありますが、今回新聞の伝うるところによりますと、池田勇人君がまた特使としてアメリカに御出張になるというように伝えられております。緒方国務大臣もこのことを肯定されておるような新聞の記事を読んだのでありますが、はたして渡米せられるということは決定しておる事実であるかどうか、このことをひとつ伺つておきたい。
  172. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたします。まだ内定程度で、はつきり決定したということを申し上げる時期になつておりません。
  173. 北村徳太郎

    ○北村委員 すでに内定しておると伺つたのでありますが、これも御承知の通りに、たとい事柄はどうあろうとも、国会で不信任を受けた人がまたアメリカに行く。前にアメリカできらわれた人が行き、このたびは国会で不信任にあつた人が行くということは、一体どういうわけであるかわかりませんが、それはしばらくおいて、その目的は何であるか。いやしくも国をある意味において代表するものでございましよう。公の使いでありましよう。その使命目的がどういうところにあるか。そのことをまず伺いたいと思います。
  174. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 御承知のように、今アメリカでは、今まで政権をとつておりました民主党政府が共和党政府とかわりまして、アメリカとしても重大な変革の時期に参つておるような気がいたすのであります。このアメリカの国際政策、特にアジア政策に関連いたしまして、日本に直接間接影響の及ぶところも必ず少くないであろうという想像ができますので、このアメリカの転換期に際しまして、日本から、必ずしも池由君一人とは限りませんが、なるべく多くの有識者がアメリカに参りまして、向うの有識者との間に意見を交換し、日本の事情を知らしめるならば、日本といたしましても、アメリカといたしましても、今後共通の政策を進めて行きます上に必ず利益が多いという意味から(発言する者あり)池田君の問題が内定いたしておるのであります。池田君は、今いろいろお声がありますが、長い間大蔵大臣をやつておりまして、少くとも日本の事情を最もよく知つておる一人であると思うのであります。この人が、たまたまドツジ氏が。……(発言する者多し)ちよつと聞いてください。ドツジ氏が予算局の長官をしておりますし……。     〔発言する者多し〕
  175. 太田正孝

    太田委員長 静粛に。
  176. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 その意味におきましても、いろいろな便宜があろうかと考えます。そういう意味から総理が池田君の渡米を考えられたことと想像いたしております。
  177. 北村徳太郎

    ○北村委員 池田君の御渡米は、どういう名目で行かれることになりますか。その使命は先ほどちよつとお話がありましたけれども、なおもつと具体的には外資導入の促進というようなことも、緒方さんの談話の中にあつたかと思うのでありますが、そういうふうなお役目を帯びて行かれるのか、どういう名目の使いをされるのであるか、このことを伺つておきたいと思います。
  178. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 使命は今お話の外資導入も含むと思いますが、それ以外に主たるものは、日本の今の実情をアメリカの新しい政府によく了解をさせようということであります。どういう資格で参るということは、まだはつきりきまつていないように私了解いたしております。
  179. 北村徳太郎

    ○北村委員 幸いにワシントンには池田君以上に広い視野に立つ、日本財政金融のエキスパートである新木大使がおられる。これは任務が違うのでありましようけれども、それに何を苦しんで特に池田君が行かれるのか。そのことはわかりませんけれども、このことは大体いいといたしまして、今はやはりその役目の中に、外資導入を促進するということも一つの仕事になつているというふうにお答えになつたのでありますが、このことについては、私はまたさきの問題に多少触れるのでありますが、先般世界銀行のガーナー副総裁に私は二回ほど会いました。そのときに、率直に申し上げますと、日本に来てどうもはつきりした計画がない。総合的な計画がない。そのことを非常に不便に感じたというようにこぼしておつたのでございます。のみならず、日本に来ていろいろな人から借金の申込みを受けた。政府からもあるいは財界人からも受けた。その借金を申し込まれた額を計算してみると、九億何がしになる。世界銀行は、出発以来世界の四十二箇国ですか、相手にしておるが、現在の総貸出高は十五億ドルである。これで一体日本の人はどういうふうに物を考えているのであるかというふうなことの質問を受けたのでございますが、私は、ここにもやはり日本の今までおやりになつておる経済に一貫した総合的な、また長期を見通した計画性がない。ガーナー氏自身も、一九六〇年になると、日本の人口は一億近くなるのじやないか。それに対してきわめて具体的な計画はと聞いたけれども、はつきりした答えを聞くことができなかつたということを、こぼしておられたのでございますが、そういうふうな点がある。またもう一つ考えなければならぬことは、外資導入は私は非常にけつこうである。政府は今まで大量の外資が割にたやすく入るかのようなことを、国民に印象づけて参りましたけれども、それは私の観測では入りません。そんな八億とか十億ドルというような外資が入る可能性はない。いかにもこの可能性を国民に印象づけて来た。しかしそういうものは入らない。大体私はさように考えております。それで外資の必要はありませんといつたような、政府の態度が少からずアメリカの財界にも反映しておることをはなはだ遺憾に思う。外国銀行の融資を断つた事実があり、あるいは過剰外貨の活用と称して外貨貸出し日本側が為替銀行に設定し、あるいは外貨貸出しについてはさらに外国商社に対してクレジツトを与え、またクレジツトを与えようとしておるような事実がある。こういう事実は、先ほど西村君の御質問にもございまして、今の過剰外貨をどうするか、アメリカに寝ておるところの外貨をどうするかという問題は、確かに問題でありますが、そういうふうにして外国商社にさえもクレジツトを与えるほどの国が、外資外資といつておることは矛盾ではないか。われわれの方はもう外資などはいりませんといつたような行動をとりながら、わざわざある大きなお使いが行かれるが、そのお使いの使命もまた外資導入にあるというなら、これは自己矛盾ではないか。そういうことについて外資に関する見通し、あるいは外資についての具体的な——これは先般こまかい数字の御説明があつたのを聞いたように思いますけれども、今までやつて来た態度というものは、外資導入御断りといつたような態度にさえ見える。その矛盾をどうするのか、そのことについて小笠原通産大臣から伺いたいのであります。
  180. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいままでに入りました外資を、少し数字的に申し上げますと、外資法施行以来昨年十二月までに二千三百七十二件、株式または持分の取得の形で九十億千四百万円、さらに貸付金という形で入りましたものが十六件、百十九億二千二百万円、約二百億円くらいがちようど今までに入つておる次第でございます。
  181. 北村徳太郎

    ○北村委員 私は、今までに幾らつたかということでなくて、外資の扱い方については非常に遺憾な点がある。これはどうも日本の乏しい金であります。しかし乏しいが、これはもう少し日本の産業の遅れておる合理化あるいは近代化等に用いれば用いられるのでありましようが、外国商社にさえもクレジツトを与えるというふうな態度をとることは、これは日本の現状において少し間違いじやないか。そういうふうな仕方を今後もおとりになるのかどうか。これをとりながら外資導入といつてみたところで、これは少し矛盾である。今までに幾らつたかの問題ではありませんで、今おやりになつておる政府の外資に対する対策というものが、私は見当はずれではないか、このことを伺つております。
  182. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま実は途中で北村委員と声がかかつたものですから失礼しましたが、実はこれを申し上げたかつたのであります。実は外資導入につきましてはさつきお話のありましたように、ガーナー氏に私も数回会いまして、その節皆様にも申し上げたように、ちようど電源開発について約三億ドルほど申し込みましたので、一応現在のすべての情勢を見まして、三十二年までの計画を立てて話をいたしました。これについては、これは北村さんもお聞きくだすつたでしようが、おそらく電源開発については、相当向うも確実な資料を得られて見込みを立てておられるように考えるのであります。現在まだその返事には接しませんが、私もそれだけの数量が入つて来るとは思いません。さつき北村さんが言われたように、私が聞いておるところも、過去四十二箇国に対してこれまでに十五億ドル貸しておるだけである。日本がいろいろな事情で九億ドルも申し込んでも、これはとてもできないから、その順位をつけてくれという話があつたのであります。そのときにも電源開発は非常にわかる、こういつて理解されたのでありますから、この分については私は相当入つて来るかと思うのであります。  なおクレジツトその他の問題につきましては、個々の商社のことに関しますので、私はどういう事情にありますかは実はよく存じませんが、御指摘のようなことがありますならば、これははなはだ不用意なことと思うのであります。またわれわれとしては一貫しまして、外資の導入に努めつつある次第でございまして、たとえば技術の導入などをするにつけましても外資を結びつけるとか、各種の結びつきをして、ただいま申し上げましたような、わずかではありますが二百億円を越す外資が今日まで入つておるのも、そういつたためでございます。なお怠らず外資の導入には努めるつもりでおりますから、さよう御了承願います。
  183. 北村徳太郎

    ○北村委員 外資関係でなお若干問題がありますけれども、これは時間を省きまして先に進めたいと思います。  私は中小企業の問題について、これまた小笠原通産大臣に伺いたいのであります。集中と分散とが同時的に存在しておるという矛盾が、これほどの程度であるということは、日本の工業以外にないと思うのであります。この日本の工業の構造上、これは世界にほとんど例を見ないほど集中的な独占形態にあるとともに、企業もまた巨大なるものの底辺に、非常に無数の零細工場が分散しておる、こういう存在の仕方も世界のどこにもほとんど例を見ないことでありまして、従つて日本の中小企業問題はなかなかめんどうな——一方からいえば市場が非常に狭い、市場の狭隘性と同時にまた需要が多種多様である、ことに規格が多い。こういうことから来るやむを得ざる分散もあると思うのでございますけれども、これについて体中小企業対策の対象というものは、どの辺に線を引かれるのであるか。これはよく伺うことでありますが、資本金三百万円以上であるとか、五百万円以上であるとかいうようなことを言われておる。どこかで線を引かなければならぬが、中小企業対策の対象としては、一体政府はどこに線を引かれるのであるか、まずこの点を伺つておきたい。
  184. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在におきましては、工業で申しますと、五百万円内外の企業を中小と見ております。それが大体工場数にして四十九万くらいかと記憶いたしております。さらに商人で申しますと、これは自分がやつておる者や、またそうたくさんの使用人を使わない者を指しておるのでありまして、これが大体百四十二万あるかと記憶いたしております。それをおもな対象にいたしておるのであります。
  185. 北村徳太郎

    ○北村委員 私はこの日本の非常に多様性を持つた中小企業というものを、たとえば従業員の数で線をひつぱる、あるいは資本金の金額で線をひつぱることはきわめて簡単でありますけれども、そういう対策で、非常に複雑多様な日本の中小企業対策というものができるか。今日まではそういうやり方をされて参つたようでありますけれども、それではいけないというふうなことを、最近中小企業の実態に触れて非常に痛感して参つたのでございます。たとえばアメリカにもスモール・ビジネスというものがある。おるけれども、そのスモール・ビジネスの対策は、日本のように資本金が幾らとか、従業員の数が幾らとかいうようなことでなくて、少くとも最近の調査によりますと、四百五十二の製造工業について、業種別にどの規模がどういう割合に当るかというふうなことをきめて、各種の業態から、そのカテゴリーに基いて基準をつくる。それから従業員数を割出して、そこに線を引いておる。たとえば二千四百九十九人の人を使つておるトラクター工業は、その範疇においては小企業である、大ではない。しかしわずかに七十六人しか使つてないハンカチーフの工業は小企業ではない、むしろ中に入る、こういうふうに実態に触れたそれそぞれカテゴリーに従つて線をひつぱつて行くのでないと、十ぱ一からげに、ある従業員数、ある資本金額、こういうところでやる今までの指導方針というものでは実態に触れないじやないか。この点について小笠原通産大臣の御説明を願いたい。
  186. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御指摘のように、これは少し形式的に流れておるかもしれませんけれども、どうも金融その他をやります時分に、大体中小というのはどういう目安かということになりますと、一応そういうふうに置かなければなりませんが、今仰せになりました実態に即してやるということは、これはきわめて大切なことと思いますので、今後そういうふうに努めたいと思います。ただ私の方で今までに約三万の中小の商店を調べ、約九千の工場を診断いたしておるのでありますが、だんだんとその結果を今調べておりますから、それが総合されて参りますと、そこに何か一定の中小工業あるいは中小の企業といいますか、商店もありますが、そういうものの一つの通有性というものが出て来るのではないか。そうすると今の北村さんのお問いに対する答えが、はつきりと出るかと思うのですが、ただいまのところでは形式的にやつておるわけであります。
  187. 北村徳太郎

    ○北村委員 実は中小企業対策というものは、実態を診断せずにはできないはずなんで、あるいはおなかが痛いのに目薬を与えておるかもしれない。そういう指導の仕方では、中小企業のほんとうの実の入つた指導ができるはずはない。最近に至りまして、中小企業金融公庫設置要綱を見ますと、これにはやや分類ができておる。払込資本金もしくは出資の総額が一千万円以下の会社、それから常時使用する従業員の数が三百人以下の会社、商業の場合なら三十人、鉱業は一千人、こういうようなものがこの新しい法律の要綱には書かれておるのでありまして、やや進歩したとはいえますけれども、これでもやはり十ぱ一からげである。ひとしく鉱業と申しましても、亜炭を出すところもあれば強粘結炭を出すところもおる。従つて鉱業なら千人がちようど中小であるというような考え方がまだ残つておる。これはこういう形式的な十ぱ一からげの対象の見方では、ほんとうの指導はできないと思いますので、今大臣もおつしやいましたけれども、これは実態に即して系列を定めてカテゴリーをわけて、ちやんとお考えになることでなければ、中小企業の対策というものはないはずであります。こういうことに思われるのでありまして、その対策を私はさらにもう少し御研究なり御調査を願いたいと思うのであります。なお私は中小企業の問題と申しますと、今もちよつと触れましたけれども、どうもすぐ金融問題のようにとられておる。現政府においては、労働対策というと治安対策になつておる。それと同じように、中小企業問題というと、金を貸せばいいというような安易なお考えがあるかのように思うのでありまして、今日までの中小企業対策は、いつでも金貸し対策であるということはどうかと思うのであります。従つて、集中と分散とが矛盾しながら相並行して同時に存在するという、日本のこの非常に特殊なる市場の狭いところで、非常に多種多様な範疇を持つた日本の中小企業、この集中と分散との調整をどうはかるかというようなことが基本的な問題でなければならぬ。従つてこれについては、非常に弱小なものの協同組合化を促進するということ以外に、私はいい方法はそうたくさんないと思う。私どもは今日まで協同組合主義を非常に主張して参りまして、中小商業、中小企業等の協同組合化にわれわれは今日まで努力して参りました。中小企業の一つは対策として、協同組合化への努力というものが非常に必要であると思うのでありますが、これはやはり通産大臣においてもそういうふうなお考えであるかどうか、中小企業の協同組合化に関しての御信念を伺つておきたい。
  188. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点は、私どもきわめて重大に考え、また大切に思つておるのでありまして、ただいまのところ、二十四年七月以後協同組合をつくりましたのが、今日までにちようど二万八千に達しておると思います。なおこの協同組合を、私どもは今も盛んに機会あるごとに進めておりますので、漸次もつと増加して来ることと思つております。なおこれの指導その他のことは、今中小企業庁等でもこれに当つておりますが、この共同施設等に対しては、わずかながらも、予算面で本年は二億ですが、従来かれこれ十数億のものが出ておると思います。そのくらい出しておるのであります。十分とは申されませんが、その施設の大切なることはよく了解いたしてこれに努めております。
  189. 北村徳太郎

    ○北村委員 もし協同組合化に今後も努力せられるというならば、中小企業金融公庫というものがなぜああいう形で出たか。これは今日まで協同組合を、いろいろな苦労をしながら指導者が一生懸命育成をして来たこの方法によらなければ、弱小なる企業を生かして行く道がないとまで考えておるにかかわらず、今回の中小企業金融公庫は組合を対象としないで個々の人々に金を貸す。しかも従来あつた組合金融機関である商工中金よりも安い金利で、割合にたやすく金が出されるような方向になつておるようであります。そういたしますと、めんどうな組合をつくらないでも個人でかつてに金が借りられる。これでは組合運動の一つの阻害のような結果を来すのではないかと思いますが、このことについて御説明を願いたいと思います。
  190. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 商工中金の方は、現在でもまだ二十億くらいの発行の余力が残つております。のみならず、毎年相当額を、今年もたしか八十億くらいはあそこに出すようになつておるのでありまして、相当資金は出しておるです。この点でなお明確を欠きますので、どういうわけで一体こういうもののであります。ができたのか、商工中金によることなおこれの発達については、むろんしにこういう別途な機関を必要とした衷心からこいねがつておるのでありま理由は、今までの御説明では少しはつすが、同時に今まで中小企業の合理化きりいたしませんので、もう少しはつをしようといたしましても、そういうきりと御説明を願いたいと思います。長期資金を補給するところがなかつた
  191. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 お尋ねの点につきものでありますから、主として普通銀まして、私どもは資金使用の分野が違行と長期銀行とが市中にありますごとうと思つておりますが、同時に今度のくに、商工業者に対しても長期の企業公庫は大体本店だけを置くわけなので合理化等に要する資金をまかなう。言ありまして、主として商工中金その他いかえますれば、資金使用の分野がに大部分の資金を流して使うという考違うこういう機関があることは、両々え方でございます。そこで、個人の企相まつて、あるいはこれと国民金融公業者への貸出しの条件としましては、庫と三つ合せましてこれをやつて行く企業を合理化するに必要な資金というということが、金融の面では一番よろ点に重きを置いておるのでございまししいのじやないか、かように考えておる次第でございます。て、今日本の中小企業は、自分の陳腐化した機械とかその他をかえようとし
  192. 北村徳太郎

    ○北村委員 国民金融公庫のことは、てもかえる資金が乏しくて困つておるこれは別の分野であります。商工中金のでありますから、そういう方面にこと同一の分野に資金が流されながら、れを供給いたしたい、そうして中小工一方は組合主義を一貫して来ておる組業者にみずからの力をつけさせてやり合を対象としており、一方は個人でもたい、こういうのが主たるねらいであよいというのでは、今のようにまだ未ります。ただ同じような金融をすると組織の分野がかなりあるときに、政府いう考え方は持つておりません。の指導の方針として、未組織のままで個々の中小企業家が容易に金が借りら
  193. 北村徳太郎

    ○北村委員 これはきわめてめんどうな問題が起ることと思いますが、このれるというような方法を講ぜられるとことについてはさらに分科会等でもういうことは、これまでの組合に一つの少し詳細にお尋ねしたいと思います。動揺を与え、今後組合組織を大きくすただ、政府の散布超過の金額が少くなる熱意を失わしめるのではないか。政い。ことに本年下半期においては、散府は協同組合主義というものをほんと布超過が相当な金額に及ぶように考えうに育成するという立場であるならられるのであります。従つてこれにつば、なぜ商工中金を強化して同じ分野いてインフレ警戒というものがすでにで働く者に融資しないのか。これにもある。従つて大蔵省並びに日本銀行の長期性の金を貸す方法もあるし、いく方針は、この際インフレを抑止するたらでも方法があるのでありまして、長期性の区別から別途の政府機関をつくめに、一般金融機関に対してきわめて厳選主義をとるという方向に向いてらなければならぬという理由はないのおる。そうなりますと、厳選主義の結果は、置き去りになるものは中小企業である。中小企業の金融は非常に困難であります。利息も高い。従つて中小企業の危機というものはやはり来るのではないかということを私は非常におそれるのであります。また中小企業の労働関係は、これはむしろ家族の労働等が多いのでありまして、ここに合理化ができた場合に、その中小企業ではき出される若干の失業がどこへ行くかということもふわせて親切なる考えがなければならぬ。こういうふうに考えて参りますと、今までの対策が、最初に申し上げたように、実体に触れていないということからいろいろ鵬暮き起すのではないか、これを非常に危険に思うのであります。小笠原通産大臣は、中小企業問題についておそらく前の大臣とは違つて非常に御熱心であると思うのでありまして、この点は了とするのでありますけれども、これは非常に周密なる御計画に基いて協同組合主義に基く推進をしていただきたい。それがためにもしも今回の中小企業金融公庫の出現によつて、協同組合運動に熱意を失わしめるような結果になつてはならぬ。この点はくれぐも警戒をしていただきたいのであります。
  194. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今仰せの点はよく了承いたしました。さような方針で進みたいと存じております。
  195. 北村徳太郎

    ○北村委員 私はこの際若干の問題を大蔵大臣に伺いたいと思うのであります。最近日本の金融体系が非常に乱れておる。しかもまた今日ほど民間の自由な蓄積を必要とするときはないと思うのでありまして、ことに散超等の問題を目前に控えて、金融機関の活動を通じてその蓄績を急いでやらなければならぬというときに、金融体系が非常に混雑をした状態になつておる。これはいろいろの面から観察することができると思うのでございますが、たとえば銀行と名のつくもの、バンクといわれるもので、どこの国に行つても共通した一つの定義の中に入るべきも一のであるにかかわらず、日本においては同じく銀行という宇が使われても、それは銀行法による銀行と、しからざる銀行とがあるというふうな結果になつておる。これはやがてどうかなるべきもの一ではないかと思いますが、それはしばらくおいて、今まで無尽会社1これは日本において非常に発達をした独特のものでありましようが、この発達は非常に喜ぶべきものであり、その活動もなかなか盛んになつて来て、これも喜ぶべきものと思うのであります。しかしながらこれは普通銀行が受けるような規制が全然ない。従つて資金の放出がきわめて自由であるというところから、非常に零細な金を吸収しながら、投資の面においては。パチンコあるいは旅館、料理屋、そういうような方面に非常に流れて、これが本来の目的からいうと、だんだん発達はし、大きくなつたけれども、資金の分野においては消費傾向が非常に多い。こういうふうなことも考えなければならぬと思うのでありますが、この相互銀行関係においているくなお問題は多くある。最近これに対して、たとえば為替の業務をもやらせる、こういうふうなことになつておると聞くのでありますが、これは私は無尽会社という特殊な沿革をもつて発達して来た特殊な金融であつて、金融体系からいうと一つの別の流れである。これが一般のこの銀行業務と同じように為替業務をやるということになると、ここにまた金融の仕事の上に混乱を来す。これは政府が相互銀行法案を提出せられたときに、提案理由の説明というものがあるのでありますが、それによりますと、上の方は省略しますが、「その性格上、債券の発行、為替業務等は行わないこととして、普通銀行との差異を明らかにするほか、一人に対する大口信用の集中を禁止し、中小金融に専念せしめるとともに、営業区域について」云々と法案に対する提案理由の説明において、政府はこういうことを言つておると思うのであります。従つてこういうことを言われたときと現在と非常に事情が異なつたとすれば別問題でありますが、これはきわめて特殊な発達をして来た日本独特の一つの機関でございまして、一般の金融機関、特に非常に厳重な制肘のもとに置かれている一般の金融機関と、ほとんどかわらないような仕事をこれにやらせるということについては、なお非常にこまやかな配慮が必要ではないか。この点について提案理由の説明に言われたときと今と事情が変化しておるかどうか。変化していないとすれば、なぜそういうことが行われるのであるか。その点納得の行くような説明をまずしていただきたいと思います。
  196. 向井忠晴

    向井国務大臣 為替を取扱わせるということについてただいま研究中でございまして、まだ成案を得ないのでございますが、いずれ研究の結果は発表できると思つております。
  197. 北村徳太郎

    ○北村委員 まず大蔵大臣にお伺いいたしたいのでありますが、為替業務をやらせる方針であるか、やらせない方針であるかという御方針だけ、はつきり伺つておきたいと思います。
  198. 向井忠晴

    向井国務大臣 ただいまのところはやらせる方針は持つておりません。     〔委員長退席、尾崎(末)委員長代   理着席〕
  199. 北村徳太郎

    ○北村委員 それではつきりしたのでありますが——なお金融体系が非常に混乱しているということを申し上げましたのは、最近何々経済会とかいうようなものが至るところに堂々と大きな建築をもつてつております。そうしてこれは一体何法に基くのか。おそらく法の盲点をついて仕事をしておるのでありましよう。そういうものが非常に流行しておる。この事実は考えによつては非常に重大である。一方からいえばこういうものが起らねばならぬほど、現在金詰まりであるという現象はこれは見のがしてはならないが、さればといつて何々経済会、あるいは保全会といつたような変態なものが次から次へ出ておる、あるいは株主相互金融というようなものが出ておる。これはオーソライズド・キヤピタルの制度を悪用したものではないかというふうにも考えられるし、中にはすでに問題を起しておるところも少くない。まつたく法の盲点というものによつて悪用せられておる。銀行法違反か、相互銀行法違反か、あるいは投資信託法違反か、何か知らぬが、紙一重で、何かの違反になりそうな仕事をやつておるかのようにも思われるのであります。これをこのままに放置してはならぬ。現在の金融行政上の法規の解釈として、これはやむを得ないかもしれないが、それでは金融行政と言えない。ここに政治は政治として、現在こういうふうなものが存在して、そのことが社会的に将来恐るべき何かを包蔵しておるということだけは言えると思うのでありますが、これについての対策をどうなさるのであるか、この対策について、これは具体的に御説明を願いたいと思います。
  200. 向井忠晴

    向井国務大臣 こういう会がございますのは、私も非常に心配しております。かりに資金を集めるのに預金という形式でやつておれば、銀行法の違反ということが言えるわけでございますか、株を持つというような形で出資をして、そうして大体それは投機的の利益をもつて、割合にいい金利と申しますか、配当と申しますかをしている現象が見受けられます。これの取締りにつきましていろいろ研究いたしまして、その成行きにつきましては、政府委員から詳しく御説明申し上げたいと思います。     〔尾崎(末)委員長代理退席、委員   長着席〕
  201. 河野通一

    河野(通)政府委員 かわりましてお答え申し上げます。今御指摘の株主相互金融方式あるいは匿名組合によりまする資金の受入れ方式、この方式の問題につきましては、事柄が法律的にもあるいは経済的にも非常に複雑であります。かつ影響するところがきわめて重大でありますので、長い間かかりまして、非常に慎重に実は検討を加えて参りましたが、はなはだ残念でありますが、まだ最終的な結論に到達いたしておりません。しかし関係当局と現在せつかく打合せを続けておりますので、近日中には政府としての結論が出るかと思つております。  御承知の通り、問題の点は実は多々あるわけであります。かいつまんで大きなものだけ申し上げますと、第一点は、今申し上げました株主相互金融方式、あるいは匿名組合の方式による資金の受入れの仕方が、金融法規つまり銀行法等によりまして、多数の人から資金を預金の形あるいはこれに準ずる形で受入れることを成規の金融機関以外には禁止をしておりまする金融方式に違反するかどうか、この問題が第一点。この点につきましても、先ほど申し上げましたように、また最終的結論には到達いたしておりません。言葉が非常に悪いのでありますが、紙一重というところにあると思いますので、さらに検討を重ねた上で、不日結論を得たいと考えております。  問題の第二点は、かりにそういつた方式が金融法規に違反しないといたしました場合におきまして、放置していいのか、あるいは何か特別の方法によつてこれを取締りあるいは監督をする法的な措置が必要であるかどうか、この点が次の問題であります。さらに第二の問題をわけてみますと、もし逆の場合でこれが金融法規に違反するという結論にかりになつた場合におきまして、ただ現行の金融法規で取締るということだけでいいのか。あるいはさらにこれを適当な方法によつて法的措置を講ずるということが必要で、あるかないか。こういつた点が主たる問題であろうと思います。そのほかいろいろ商法上その他の問題が多々ございますが、大きな点はこの二つであろうと思います。これらの問題を総合的に勘案しながら、現在実態をきわめることを並行して進めております。先ほど申し上げたように、はつきりした具体的な政府当局としての態度を申し上げることができませんことは遺憾でありますが、遠からずこの点について総合的に全体的に結論を得たい、かように考えておる次第であります。
  202. 北村徳太郎

    ○北村委員 この問題は関するところ非常に広く、ことに害が及ぶとすれば、いわゆる庶民階級に非常に重大な影響を与えると思うのであります。従つてここに至るまでに私は何とかできなかつたかということをしよつちゆう思うのでありますけれども、これはまあ法の盲点で、現行法規の解釈上、いわゆる河野銀行局長言葉のごとく、紙一重の問題であるというように考えられるのでありますが現在の法の解釈においてはいかんともできないが、積極的に新たなる立法措置を講ずるとかなんとか、すみやかなる方法によらないというと、社会的に非常に大きな問題である。また経済界を結果においては非常に乱すことになるのでありまして、日本において正常なる蓄積がきわめて必要なときに、こういうふうに金融体系が乱れた状態でこれが大きく社会的に存在しておるということは、私は大蔵当局としてもひとつ厳重なる取締りといいますか、何というか、その強い対策をきわめてすみやかなる機会にやつていただきたい。このことを希望いたしまして、私の質問は一応これで終りたいと思います。
  203. 塚田十一郎

    ○塚田委員 議事進行についての緊急動議を提出いたします。一般質疑はこの程度にて打切り……(「横暴だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然)明日及び明後日午前十時より分科会を開催せられんことを望みます。本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  204. 太田正孝

    太田委員長 着席願います。塚田君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  205. 太田正孝

    太田委員長 起立多数。可決。よつて……。(発言する者多し)多数。可決。  次会は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後七時四十三分散会